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1983-11-25 第100回国会 参議院 選挙制度に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十一月二十五日(金曜日)    午前九時一分開会     ─────────────    委員の異動  十月十二日     辞任         補欠選任     中村  哲君     目黒朝次郎君      山田  譲君     高杉 廸忠君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松浦  功君     理 事                 金丸 三郎君                 関口 恵造君                 田沢 智治君                 上野 雄文君                 多田 省吾君     委 員                 岩上 二郎君                 加藤 武徳君                 小島 静馬君                 小林 国司君                 斎藤栄三郎君                 田中 正巳君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 藤野 賢二君                 村上 正邦君                 大木 正吾君                 高杉 廸忠君                目黒朝次郎君                 大川 清幸君                 田代富士男君                 山中 郁子君                 栗林 卓司君                 前島英三郎君    衆議院議員        発  議  者  天野 公義君        発  議  者  片岡 清一君    国務大臣        自 治 大 臣  山本 幸雄君    政府委員        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        郵政省電波監理        局放送部企画課        長        岡  利定君    参考人        日本放送協会放        送総局総局長  尾西 清重君     ─────────────   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院提出)     ─────────────
  2. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  公職選挙法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会に、参考人として日本放送協会役職員出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  また、同法案審査のため、明二十六日、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 松浦功

    委員長松浦功君) 公職選挙法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、発議者衆議院議員片岡清一君から趣旨説明を聴取いたします。片岡君。
  7. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容の概略を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の選挙実情にかんがみ、選挙制度改善を図るとともに、金のかからない選挙の実現に資するため、選挙運動期間短縮立候補届け出期間短縮経歴放送の回数の増加及び立会演説会制度の廃止その他所要の改正を行おうとするものであります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一は、最近の選挙実情にかんがみ、各選挙選挙運動期間短縮することとし、衆議院議員選挙については二十日間を十五日間に、参議院議員選挙については二十三日間を十八日間に、都道府県議会議員選挙については十二日間を九日間に、都道府県知事選挙については二十五日間を二十日間に、指定都市議会議員選挙については十二日間を九日間に、指定都市の長の選挙については二十日間を十五日間に、指定都市以外の市の議会議員及び長の選挙については十日間を七日間に、町村の議会議員及び長の選挙については七日間を五日間にそれぞれ改めることといたしました。  第二は、選挙運動期間短縮に合わせて立候補届け出期間現行の二日間から一日間とし、また、選挙公報掲載文申請期間現行の四日間から二日間に短縮することといたしました。  第三は、連呼行為街頭演説及び街頭政談演説を行うことができる時間について、現行の午前七時から午後八時までを、午前八時から午後八時までとすることといたしました。  第四は、経歴放送に関する事項についてでありますが、衆議院議員参議院選挙選出議員及び都道府県知事選挙においては、新たに、日本放送協会によるテレビジョンの経歴放送候補者一人について一回行うことといたしました。  第五は、立会演説会に関する事項でありますが、最近の立会演説会の実態にかんがみ、この際立会演説会制度を廃止することといたしました。  最後に、この法律は公布の日から施行することとし、衆議院議員及び参議院議員選挙については施行日以後初めて行われる選挙から、その他の選挙については施行日から起算して三月を経過した日以後行われる選挙から適用することといたしております。  以上がこの法律案の要旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  8. 松浦功

    委員長松浦功君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 大木正吾

    大木正吾君 私は、まず総論的なところから伺ってまいりたいのですが、大体この選挙法改正というものそのものが、立法府メンバーを決めるルールという意味合いを持っておりまして、議会制民主主義という立場に立ちますと、きわめて重大なといいますか、案件についてはきわめて重要な案件と、こう考えております。一般法律も決して重大じゃないとは申し上げませんけれども、特に立法府メンバーを選ぶルールづくりでございますから、他の法案とは少しく質的に違う、こういう認識をまずいたしておりまして、そういう意味合い冒頭に伺っておきたいのでございます。  今回のこの選挙法改正の手続でございますけれども、特に参議院側においては事前の話等自民党さんからも余りありませんでしたし、いえば自民党選挙制度調査会等の一党の関係委員会の中から出てきた、こういうふうに考えております。こういったことが、選挙法ですから小選挙区問題も入るし、同時にこういった選挙の技術的な問題も入ることは、双方ともこれは同じでございますから、一つ政党選挙制度調査会考え方が法案として急に出てくる、緊急に浮上する、こういったことがあっていいかどうか。この辺の問題について、まず自治大臣並びに提案者といいましょうか、提出者の方の御見解をお聞きしたい、こう考えております。
  10. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 選挙制度という問題は、これは常に検討をされなければならない問題であろうと思いますが、私どもは、自民党選挙制度調査会でもそういう方向でいろいろ御検討になっていた、そこで今回は当面の問題点をお取り上げになってこのような提案をなされたものであると聞いております。もとより、いろいろな選挙制度にかかわる問題については熱心に御検討をされておると聞いておるわけでございますが、その中で特に今回この問題をお取り上げになった、こう承っております。
  11. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 選挙法というのは民主主義制度の基本に関することであり、そして各党共通土俵をつくって国民批判を受ける、こういう制度でございますので、いわば不磨の大典ではございませんで、これは時勢進運とともに合理的に改正していくということが望ましいものであるという、こういう基本的な考えのもとに、わが党といたしましては選挙制度調査会というものを設けまして、随時、この改正の必要があるかないか、必要はどういう点であるかというようなことを常に検討いたしておるわけでございます。  その後の状況からいいまして、このたびのような選挙期間の問題あるいは立候補届け出期間問題等、最近の実情に照らして時代進運とともに改めた方がよい、こういう結論に達して、党内の意見の調整のできたものについて今回案をつくりまして、各党にいろいろ御相談をして提案することにいたした次第でございます。
  12. 大木正吾

    大木正吾君 いま片岡さん御自身土俵という言葉を使われたわけですな。いまちょうど九州場所をやっておるんですよね。あの土俵の大きさ知っていますか、どれぐらいあるか。あれを簡単に一メートルとかあるいは五十センチ直径を変えたらどうなるんですか。スポーツの話をしたくはないけれども、たとえば野球のドラフトにしたって、スポーツ関係でもそれは同じことですよね。テレビは昔なかったのだから、ラジオ放送だけがあったぐらいでしょう、相撲なんかにいたしましても。テレビが入ったからルールを変えるという話にならぬでしょう。  そういうことでございまして、すべての問題について、この種のことは特に関係する方々意見が相当広範に求められて、そうして成案ができる、こういうことで、最近の問題では比例代表制が導入されましたね。賛否こもごも含めてこの話は二、三年くらいやりました。特に全国区残酷区のときから振り返って六、七年やっておった、比例代表制問題につきましてもですね。  そういう関係等を見て、まず今度の場合には、これはわが党のたしか佐藤君が衆議院質問した記録をちょっと拝見したけれども、こんな話はしたくないけれども、この席上ですが、ロッキード問題を隠したいのかとかそういう質問があったでしょう、衆議院で。そうとられてもしようがないというようなことがやっぱり社会的には出てくるんですね。同時に、けさの朝日新聞記事をさらっと拝見したのですが、聾唖団体方々が「立会演説会を残せ」、こういう記事が出ています。同時に、皆さん東京の話が多いのですけれども予定候補者方々運動も、朝立ちから含めて立会問題、自民党方々等も含めてこれはちょっと困ったな、こういう話が出ているんですよ。電話戦術なんて、これはいまどこだってやっていますね。こんなことでだんだん電話戦術がふえてきたら、電話がかかって選挙の話になったらすぐすぱっと切られますよ。  そういうこと等々考えていきますと、これは本当にもう少し、大体公選法そのものも第一条ではむしろ選ばれる側より選ぶ方のことを強く、いえば参加の方法等について相当重要な規定等がございますね。そういう点等考えると、まして参議院の場合、たとえば五日間縮まりますと結果的には二十三日が十八日になってしまう。山梨だけですね、この周辺で一選挙区で衆議院と一緒にやっているのは。東京は十一選挙区あるんですよ。埼玉でも神奈川でも五選挙区、干薬だって四選挙区ありますよ。どう回るのですか、一体これは。北海道はどうするのか。  そういうことを考えていきますと、私はこの法案自身は、何か中曽根さんの意見だと出口の方がふさがれて、こういう感じがしていますからね、腹の中、胸の中、むしゃくしゃするんですよ。あなた御自身選挙区の関係では、それは自分の選挙区の中を考えてやる。与野党分別なく、私たち全国区で回るときだって、たとえば山梨県は最低三日行きますよ、一回りするだけでね。岩手県は五日行きますよ、愛知県は六日行きますよ、一巡だけですよ、その話は。そういったことまで含めて、何もあなた方は衆議院提案の中でもって書くことはないんだ、こんなものは。そうでしょう。そういったこと等を考えて、私たちはどうしてもこの法案自身は、比例代表から、出口は、都市化が進みますから当然小選挙区なんて話題も出てくるかもしれないですね、将来は。そのときまたこの方法をやられたら議会制民主主義は一体どうなるんですか。  もう一遍、大臣提出者の方の御意見を伺います。
  13. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いま提案者片岡さんからもお話がありましたように、やはり選挙制度というのも、時勢進運に応じてそれぞれ改めるべきところは改めていくというのが筋であろうと思うのです。そういう意味からしますと、今回の改正趣旨提案者からお話のあったとおりだと思いますが、やはり私どもも、いまの事態に適合してそれに対応していくという意味でこういう法案が出てきたものであろうと思い、それが選挙の運営の上においていい効果をもたらすことを願っておるわけでございます。
  14. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) お話しのように、今度の改正は何か選挙される方の都合のよいことばかり考えてやったというようなことにとられがちでございますけれども、しかし、やはり選挙運動というのは、最近道路事情もよくなり、あるいは通信機関も昔と違って非常に進歩してきた、こういう時代、そしてテレビ等によって茶の間で十分いろいろな政治上のこともみんな知り得る状態になって、そういう時代になってきたというようなときに、何も二十日間、二十五日間、があがあと言うて歩く必要もないじゃないかという声が一般選挙民の間からもわれわれはときどき聞かされるわけであり、またいろいろの会合を通じてそういう意見をよく伺うわけでございます。  そういうことを考えましたときに、この二十日間というのは昭和三十三年、いまから二十五年前に決められた日数でございますが、そのころは、私の選挙区のことを申しますと失礼ですが、いまお話しのように選挙区によって広い狭いがあり、広いところでは大変な時間がかかる。そこを一回りするにも時間がかかるというようなことは確かにあると思います。私の選挙区のことを申し上げて恐縮なんですが、平家の落武者の住んでおったという五箇山という山がございます。そこへ行くには、昔ですと二、三日泊まり込むつもりで行かなければ選挙運動ができなかったのですが、いまはもう道路がよくなりまして、一時間か一時間半で行けるようになったわけでございます。そういうことを考えますときに、できるだけ時代の進展に応ずるように、そして選挙区の皆さん方にも余り迷惑にならぬように、そういうようなことも勘案しながら、まあ皆さんとお話し合いの上でコンセンサスの得られる問題について適時適切に改正をしていきたい、こういう立場から今回の改正案をまとめた次第でございます。
  15. 大木正吾

    大木正吾君 いまあなた、があがあとかいう言葉を使われたわけですが、私たちだって選挙は、何も政治家になったから——その前の政治活動とか応援弁士ではもう二十年やっておるんだ、私。たとえば病院があったとしましょうか、あるいは子供さんが授業中の学校の周辺に行ったらどうしますか、あなたの場合だったら。ボリュームをきゅっとしぼりますよね。ささやく話をするんですよ、そのときには。大体、選挙民の票を減らす運動をするばかがありますか。朝立ちだって、最近ではぶつかった場合にはお互いにのぼりを立てただけでやっていますよ、ビラをまいてね、小さい話をしながら。そういう実情というものを全然知らないで、ただあなたよりぼくが詳しいのは、総評事務局長当時からずっと列島じゅうを三回ぐらい回っているからね。岩手県の道路事情はどうだとか、四国の香川、これはもう高松を中心にして全部車でもって一日のうちに往復できますよ。新潟三区は道路事情はもっとよくなっています。  そういうこと等ございまして、たとえば、私この記録をちょっと拝見したけれども定数是正のことを言ったときに今度はどういうことをあなたは言ってるの。たとえば地域状況が違うと。地域事情が違うということでもって一方逃げながら、この問題のときには、やっぱり時代が変わりまして交通事情もよくなった、こういう言い方なんですよね。余り都合のいい方便主義じゃ困りますよ。現行の二十日、二十三日、これはぎりぎりですよ。選挙民の方がそれでも候補者の顔を見たい、握手もしてみたい、話も聞きたいという方々の中で、二十日間でもって、どうでしょう、恐らく選挙民方々の五分の一ぐらいが、どこかの候補者とすれ違ったとかそういったことがあるぐらいでありまして、短縮をする理由なんというのは、いまあなたがおっしゃった交通事情とか、たとえばテレビの問題も、全部これ拝見しました、あなたがしゃべった話を。  選挙民方々支持者方々が熱心に二回でも三回でも同じことを聞きますか。私は、社会党のメンバーでありましても、一遍聞いたらもう二回聞かないですよ。それを、たとえばマスコミがここにたくさん入っているけれどもマスコミ方々がやっぱり競争し合っている。そういったときにはお互いに工夫をこらして、同じ選挙状況を知らせるにしても、局面なり画面を変えながら工夫していますよ。それがマスメディアの選挙民との対応じゃないですか。そういうときに、政見放送テレビを一回ふやして同じものを流して、そんなもの、あなた意味ありますか。むだですよ、こんなものは。  私は、そういったことを含めて、これは委員長にぜひお願いしておきたいのですが、この種の、要するに私が申し上げる根幹的なことは、きのうきょうと大分院内法案が上がっておりますけれども、要するに、これは経済的な面で質量ともにはかれる問題じゃないですね。そういった法案が多いのですけれども、しかしこの選挙法自身は、日本議会制民主主義が本当に国民方々から支持されるかどうか、民主政治がだんだん変わってしまって全体主義に変わってしまうかどうかの、その根幹ですよ、この話は。ですから、ルールとしまして、今度は出口が決まってまことに困っているんですけれども自民党先生方も大ぜいいらっしゃるし、数で負けるのでこれは困るんですけれどもね。どうでしょう、これはやっぱり委員長理事会で御相談願って、絶対こういった唐突な法案の出し方はやめてもらいたい。このことはぜひ委員長に、これはまあ提出者の方もございますが、大臣委員長に特段の配慮をお願いしたい。このことが私の冒頭質問並びに見解でございますので、よろしく御配慮いただきたい。どうでしょうか。
  16. 松浦功

    委員長松浦功君) 伺っておきます。
  17. 大木正吾

    大木正吾君 それじゃそのことを一応終わりまして、二つ目質問に入らせていただきます。  この間ありました六月の私たち選挙の問題に絡んででございますが、五七%の投票率、これは史上最低で、山本自治大臣の御答弁等を拝見いたしますと、十二年目にめぐり来る低調選挙の季節、こういうお話もあるのですけれども、私はやっぱり比例代表制国民になじまないという問題が相当大きな要因だと、こう考えております。まあ棄権率は少なかったかもしれませんが、投票率そのものが落ちているということは相当深刻な問題と、こう考えております。  一部の選挙直後の新聞の報道ですと、やっぱり日本個人選挙の流れが戦後ずっと続いておりますから、新聞アンケート等を拝見いたしますと、個人名がいいというのがまだ五五、六%あって、そして政党名でいいというのは一九%ぐらいです。ヨーロッパは比例代表制が定着していますが、この種の問題について、比例代表制そのものに対しまして何か新しい、これは試験的にやった面も相当ございますから、この制度について手を加える、あるいは修正する、そういった問題についての御感触自治大臣どうでしょう。どういう考えですか。
  18. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 投票率の問題が出ましたが、私は、ことしの六月の選挙投票率関係しまして二つお願いをしたわけです。  一つは、投票率を何とか上げてほしい。これは過去の参議院選挙投票率を調べてみますと、地方統一選挙と同時に行われた、二、三カ月隔ててはいますが、ほとんど同時に行われたというのは今回がたしか三回目でありましたが、前二回とも五〇%台に落ち込んでおりまして、地方統一選挙の後の参議院選挙というのは大変投票率が悪い。したがって、そういうジンクスを何とか破れないか。それは同時選挙に近いものは一体なぜ投票率が低くなるのかということもございますけれども、しかし、いずれにしろ投票率が低いというジンクスを破れないかということ。  それからもう一つは、いまお話の、この制度は従来日本の有権者が経験した個人選挙から政党選挙ということになったものですから、なじみが薄い。選挙の実施の上におきましても、選挙管理の上において心配したのは、間違って投票されるという、無効投票がふえはしないかということを非常に心配したわけです。  その二つが問題だったのですが、投票率はやはり悪くて、五七%にとまったというのは大変私どもも残念に思ったのです。一方無効投票率の方は、これは世上は一〇%ぐらいあるだろうと言われていたのですけれども、二%台にとどまった。これは私は、今度の制度をよく国民理解を、投票という選挙管理上は少なくも理解をされたと、こう思うのでございます。  そこで、比例代表選挙というのは党の選挙でございますから、従来からのやり方とは全く違う。この選挙制度基幹に触れた問題というのは、これは私はやはり与野党間でよくお話し合いの場をつくって、そこでお話し合いをしていただきたいと思うのです。しかし、私に意見を求められれば、私は、この制度は初めての制度でありますけれども、やはりその基幹は維持しながら、改善すべきところがあるとするならば改善をしながら維持すべきものであろうと、こういうふうに思っているわけであります。確かに国民なじみの薄い選挙ではありますけれども、従来の参議院全国区というもののあり方についての批判といいますか、それに対する私は一つのアンチテーゼとしてこれは出てきたものであろうと、こう思うので、これはいろいろまだ問題点もあるかもしれないけれども、しかし何とかこれを育てていくという方向に持っていくのがいいのではないかと、こう私は思っているわけです。
  19. 大木正吾

    大木正吾君 名簿登載者の順位決定問題、これは自民党さんも大分いろいろ御意見が内部にもあった模様ですが、わが党の中にもございました。これはむずかしい問題で、きょうは触れませんが、大臣、この二つについての所見、どうでしょうか。金がかからないという話から始まった選挙なんですね。同時に、全国を回りますと大体二年間ぐらいかかりますから、残酷区という話もございましてやったのですが、結果的に、これは金の方ですからまだそういった最終的な集計はできてないかもしれませんけれども、金がかからないという問題についてはどういうような結果になっているか。たとえば、これは名前は出しません、記録に残しちゃ困りますからね。後援会を何万つくれとか言いまして、そして相当後援会の出し方について金がかかりますね、実際問題として。そういったことと絡んで、金の問題についてどういう感触を得ておられるのか、これが一つです。  二つ目の問題は、私たち実は名簿登載候補者であったわけでございますけれどもぞうきんのごとく、宅急便のごとく使われましてね。しかし本人は非常にのれんに腕押し型でもって張り合いのない選挙をいたしました、端的に申し上げまして。ですが、たとえば今度やる場合に、いま比例代表制そのもの制度はまだと、こういう話がちょっと個人的御見解でありましたけれども選挙方法あるいは技術的なこと等を含めて、たとえば名簿登載者事務所とか個人名政党名を書いた事務所、それから宣伝カーの動かし方、本人一人につきまして一合で結構ですから。それからチラシとかステッカー、はがき、そういったものについてもう少し、自分の本当の選挙というものにつきましてヨーロッパの例等も入れながら、少しく窮屈にし過ぎている面もあるようですから、そういった技術的な面についての御検討の用意があるかどうか。  お金の面が一つと、選挙技術面のことが一つ、この二つについて御見解をいただけませんか。
  20. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 金が一体かかったか、かからなかったのか、またどういうところに金がかかったのか、あるいはかからなかったのかということ、いろいろこれは私はあると思うんですよ。どこまでが選挙費用なのかということもありまして、全般としてはやはり制度のたてまえからして金のかからないという、つまり残酷区と言われた、体力の問題もあったでしょうが、金のかからないという方向は一応私は何とか達成をされたのではないか。  それから、選挙方法の規制とか、そういった問題につきましては、これは個人選挙から党の選挙に移ったものですから、やっぱり党の選挙という場合にはそれぞれのやり方があると、こう思います。  なお、いま相当具体的なお話も出ましたから、選挙部長からも答弁をいたします。
  21. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 一、二細かいことをお答え申し上げます。  一つは、いまお話に出ました選挙費用でございますが、ただいま大臣から申し上げましたように、選挙運動費用、候補者自身がその選挙運動のために使った金、これは確かに今度の制度でかからなくなったのだろうと思います。まさに今度の制度がねらいとした金がかからない選挙というのも、この全国区のかなり膨大な選挙運動経費を候補者が個人で負担するというところに問題があったわけでございますから、その意味では一つのねらいを達成したのではないかと思います。  運動方法、手段についても、ただいま大臣から申し上げましたとおりでございまして、いろいろ御意見のあることは承っておりますけれども、また、今回の比例代表選挙が党の名前を書く党の選挙であるという意味で、いわば政党本位の選挙運動にふさわしい幾つかの運動、手段に限り、他は全部落としたというのも一つの御見識ではないかというようには思っております。  もっとも、そういう御意見もあり、これからそういう、いわば基本的な部分でございますので、それをつくり直す、ないしは検討をするということになると、これは今度の比例代表側のあり方そのものにかかわってくることでございますので、やはりそもそも議員提案としてこの院から始まったお話であるということもあり、まずは各党の間でのお話、それを見ながら対応してまいりたいというように存じておるところでございます。
  22. 大木正吾

    大木正吾君 よく答弁の中で各党間、各党間ということが出てくるのですが、私が伺っていますのは、要するに、いま十一月でございますから五カ月前の選挙の話をしているわけです。所管省の自治省自身が、たとえば、ミニ政党と言っちゃ失礼でございますけれども、十八の政党東京都では立候補をいたしまして、そうして公営掲示板を見ていますと、大体七つぐらいは張ってありますけれども、あとはあいているとか、そういったことがございましたね。そういうことなどについてどうお感じになっているかということもあってもいいと思うんですよ。  同時に、私が申し上げたいのは、私自身が比例の名簿登載者であったわけですから、事務所はない、宣伝カーはない、はがきも出せませんし、そして周辺支持者方々からは、どうもわかりにくい、やりにくい、何とか大木さん名前書く方法はないですかと、いろんな話がありました。しかし、大臣のお答えの中でもって、やっぱり比例代表制そのものは、個人的見解と申しながらも残してという意味お話が、ニュアンスがありましたからね。しからば、その選挙のやり方について具体的に補完する方法はないかと、こういう問題です。これはいずれも選挙公正の原則ですよね。選挙民と選ばれる私たち立場の接点というものをもっとふやしていかなくちゃいけない、こういうことで申し上げているわけですから。たとえば事務所、宣伝カー、ポスター、はがきですね、そういった問題について、これも全部各党でもってやれとおっしゃるのですか。  半年前にやったホットな選挙の流れについて一体どうか、こういうふうに聞いているわけですからね。声が小さければもっとでかい声を出しますよ、聞こえなければ。とぼけているのなら別ですけれども、私の質問は相当明確に申し上げているはずでございますから、答えてくれませんか。
  23. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) この選挙が終わりました直後、国会でも大臣から、この制度の基本については、これはその制度の成立の経過からしても、まず各党の間でのお話し合いということによらざるを得まいということを申し上げました。そして実際の選挙の管理執行の運営といいますか、ここのところをこうやったらもう少し本当の選挙の現場、管理の現場は助かるのにというような話はまずわれわれのところでまとめたいという姿勢で臨んでまいりました。実際にそれで私どもは各県の選挙管理委員会意見どもいろいろ聞いたわけでありますけれども、今度の選挙が比較的トラブルなしにいきましたためか、後段申し上げました事務的な面というのは大きな問題はないと言ってもいいような状態なのでございます。  ただ、一つ非常に大きな問題が浮かび上がっておりましたのは、いま先生からお話のありました政党の乱立の話が確かにあったのでございます。それも特定の、まあ政党の乱立というのはちょっと言葉は悪うございましたけれども選挙選挙において、特定の選挙区において、全国区に名簿を出すためと言うと言葉は悪うございますが、候補者をそろえるためでありましょうか、まとまった立候補がある。それが選挙の管理執行の上でいろいろ問題があるということが非常に大きな問題であったわけです。ただ、この問題は裏を返しますと、まさに政党要件の話でございまして、いかなる政党立候補を認めるか、いわばこの制度の根幹部分に当たりますので、このことについてわれわれの方から余り事務的に物を考えるのはいかがであろうか。確かにわれわれは管理執行の面でこういうように急にある選挙区の候補者がふえるのは困るという問題はあったわけですけれども、そこから先はやはりいま申し上げたような政党要件の問題にも絡むので、余り具体的な発言は差し控えておるわけでございます。  選挙運動の点についても御指摘のとおりではございますけれども、これもいま申し上げましたように、政党を中心の選挙であるから、したがって個人の候補者を表に出すような選挙運動はなるべくやらないのだという、この制度のいわばセオリーにかかってくる部分でございます。ですから、これはまずそのセオリーに関する部分で皆様方の合意がございませんと、事務所一ついいだろう、車一台いいじゃないかというように、その面だけで割り切ってまいるわけにもいくまいかというのが実はいまのわれわれの考え方なのでございまして、決して答弁をごまかしたりとぼけたりしているわけではございませんので、御理解をいただきとう存じます。
  24. 大木正吾

    大木正吾君 部長の話はわかりましたが、ただ、こういうことだけは考えてもらいたいと大臣にもお願いしておきたいんです。先ほど、五七%の投票率につきまして、十二年サイクルで回ってきまして、戦後二回か三回ございましたけれども、このときはいつも下がるんだと、こういう話がありますね。ダブルのときには七〇を超えまして、六年前の私たち選挙のときにはたしか六七、八%ございましたですね。そういう関係等考えていきますと、大体一〇%以上普通の状態でもって下がっているわけですがね。しかし同時に、今度の場合には、比例代表制の問題については、自治省の費用がどれぐらい減ったかふえたか余り詳しく私もここで聞くつもりはございませんが、ただ、きょうおいでになっているマスコミ方々が、ずいぶんと新聞テレビを通じながら、選挙方法を変えましたと、こういう話をやりましたね。私これは民放のスポンサーとの関係等からいきますと、延べ時間では相当な時間だし、金に換算したら相当な額だと思いますよ。そういったことの手助けが側面的にございましてやっと五七%。  こう考えてみてもらいますと、選挙部長にお願いしたいのですが、確かに選挙技術問題は大事な問題がありますが、ぜひ投票率を上げるためにはどうしたらいいかについて何らかの見解が、まあこれは非公式でも結構ですからあってしかるべき、こう考えている問題点がございます。そこのところは、政党間の話し合いもいずれ来年に入ったらやらなきゃならないでしょうけれども、私たち非常に今度の選挙については、当初からどうなるかという問題について心配もし、同時に、やってみて肌で感じた問題が幾つかございます。そういう点を含めて政党間の話もさせてもらいますが、そういう際自治省もぜひこれは御協力を願いたい、こういうふうに申し上げておきたいわけであります。  同時に、いまお話のありました政党法の関係でございます。これは日本の場合には政治資金規正法の中で、適用される団体云々のところにそれらしき政党に関する規定があるだけと、こう拝見いたしますが、今度の選挙の中で私も、厳し過ぎてはいけないし、同時にヨーロッパ、ドイツやイギリスではこういった問題等について一定の、特に西ドイツなんかは規定がございます。比例代表制そのものが、従来の全国区が比例代表に変わりまして、地方区は選挙選挙、こうなっていますが、これ自身、法の根幹からしますと、いわば二票投票するんですよ、一票じゃないんですよ、そして二票の中でもって、従来の全国区は政党名ですよ、地方区は個人名ですよと。こういうことが永劫にいけるかどうかという問題については、法律の問題はまだ時間がありませんから検討しておりませんけれども、疑問があるんです。そういったことに絡めて、できましたら伺いますが、政党法について、自治省として制定の可否につきましてどういうふうに対処されるか、あわせてこの際伺っておきたい、こう考えます。
  25. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 選挙制度が、いままで日本は個人本位の選挙である。それが今回は初めて比例代表政党と。その選挙制度のあり方が、個人本位であった方がいいのか、あるいはやはり政党間の政策の争いで選挙をやった方がいいのかという一つの選択の問題があると思います。過渡的にはまたそれをどっちにウエートを置いてやっていくのかという問題もあると思うのです。しかし、政党本位の選挙だ、こういうことになってきますと、理論的に私は、これは参議院選挙もありますが、国政選挙としては衆議院選挙もございますから、そういう問題、原則的なルールというものを一体どうしていくかによって相当大きな変革になると思うのです。  そこで、初めて比例代表でやったわけなんですけれども全国区という制度のいわゆる残酷区と言われた弊害を除こう、何とかそれを救おう、救いたいと、こういう気持ちから比例代表が出てきた。それで、比例代表というものが非常にいいのだから、これがいいのだから採用しようと、こういうことよりも、むしろいままで残酷区とか言われた批判にこたえてその改善策としてといいますか、出てきたと、こういうふうに思うのです。  ですから、そう簡単に一挙に党中心の選挙になっていくとも思われないわけなんですけれども、そういう基本的な問題は、これは各党で、ひとつ国会の場でしっかり今後のそういう、何といいますか、方向といいますか、そういうものは、お話し合いになった上でなければ、その線に沿わなければ、われわれの方も選挙のやり方についてもいろいろ一つの何といいますか、セオリーといま言いましたが、セオリーに基づくルールというものがなかなか出てこない。そうすると、結局いまの個人選挙政党本位の選挙との妥協点みたいなものでやろう、こういう形にならざるを得ないのかなと、こういう感じがいたすわけであります。  つけ加えて申しますが、今度の比例代表選挙で、私はいま国家公安委員長を兼務しておるわけでございますが、選挙違反が激減したといいますか、ほとんどなかったというのは大変警察は楽であったということでございまして、そういうことも一つ選挙のあり方についての参考といいますか、そういうことにもなるのかなと、こういう感じもいたしておるわけであります。  いずれにしろ、基本的な大きな問題でございますから、これはぜひひとつ、もしもう少しそういうことについて進めようというお話がございますなら、国会の場でいろいろひとつお話し合いをいただけたらと、こう思うのでございます。
  26. 大木正吾

    大木正吾君 どうも、大臣衆議院での答弁の記録もちょっと拝見いたしましたのですけれども、こっちの側にお返しされることが多くて、金丸先生に聞いた方がいいかなという感じもしているのでございますけれども。いずれにしても、確かに政党間の話もございますからこれからもやらせていただきますが、特に本案の提案者でございます方々に、いまの大臣の話もありましたけれども、各政党間の話しはもっともっと重要視してもらいたいことをつけ加えてお願いしたいと思います。  次に定数是正問題について伺うわけでございますが、実は今度の参議院選挙の実績をゆうべちょっと簡単に調べてみたのでございますが、新聞報道に出ていますことは、五・五対一という形のことがございますね。同時に衆議院の場合には、違憲とまで言っておりませんが、違憲的、違憲状況という言葉で四・七対一が出ていますね。  ちなみに今度の参議院選挙状況等をゆうべちょっと調べてみましたところが、地方区の議席の関係で見ていきますと、自民党さんが四三・二%で四十九議席、社会党が二四・三%で十三議席、あとずっと公明、共産と続くわけでございますが、四三・二%の得票で四十九議席を占めまして、そうして票のパーセンテージで五六・八%をとっておる野党側が実は二十七議席しかちょうだいしていないんですね。  こういうような状態で国会の運営というものが、数が多いからどんどん多数政党が押し切っていくのだということは、これは議会制民主主義の根幹の問題としまして、一票の公平さ、あるいはそういったこともございましょうけれども大臣、こういうような要するに四三・二%の政党が四十九議席を占める。地方区は七十六議席の改選ですからね、そうして五六・八%とった野党が、おまえら政党が分かれているからしようがないんだということかもしれませんけれども、二十七議席。そういう状態についてどういう御感想ですか。  今回の法案提案者にも伺いますが、これらについてどういうふうな御感触でございましょう。これは最近の例でございますから。さっきの五・五対一、これも個人の名前に関しますから名前は出しません。四・七対一、これも出しませんが、この辺の問題についてどういうような、特に地方区、比例代表区のことは申し上げませんが、七十六改選の中で、四三%とった政党が四十九議席で三分の二以上を占める。そして五六・八%とった野党が二十七議席で終わる。こういった問題についてどういう御感想をお持ちですか。
  27. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 確かにおっしゃるような乖離はあると思うのです。これは選挙制度そのものに関連があるのであって、たとえば今回の比例代表の場合はそういう乖離はなかった。しかし、選挙区を区切りまして一選挙区というものをこしらえて、それで多数の立候補者がその中から出て選挙戦を争うというときには、こういう得票率と議席の占有率との差というものはやっぱり出てくるものであろうと。結局死票がそれだけ出るわけでございますから、こういうことは私は、いまのそういう選挙制度があればやはり乖離はある程度やむを得ない結果として出てくる。それはできるだけそういう乖離をなくする、あるいは死票をなくするというのは、選挙制度のあり方としては一つの目標ではありましょうけれども、いまのような制度であれば、ある程度の乖離というものは結果としてやむを得ない結果であると、こう私は思っております。
  28. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 選挙区の定数の問題は大変これはむずかしい問題でございまして、普通には一票の重みということで人口の要素というものが一番大きく問題になるわけでございます。しかしながら、これは今回最高裁の判決がございましたので、その判決の趣旨は十分尊重しなければなりませんし、これに応ずる改正考えていかなければならぬことは、かねてからわが党の選挙制度調査会では十分その線に沿うて検討はいたしておりましたが、判決がありました段階でさらに早急にこれを解決する方向に向かって努力し、そして法案をできるだけ次の国会に間に合うように準備をするという決意をしておるわけでございます。  いまお話しのように、いろいろの問題がございます。したがいまして、これらの問題についてはさらに各党の間でいろいろお話し合いをしながら、妥当な線に向かっていくように努力したいと、かように思っておる次第でございます。
  29. 大木正吾

    大木正吾君 いま片岡さんがおっしゃった中で、次の国会という話が出てまいりました。参議院の行特の二十二日の委員会におきまして、中曽根総理もそういった意味の発言をされているわけですが、これは片岡さん、今度の法案、私ども参議院は非常に迷惑しておるんです、実際。与党の方もそうだと思いますけれども出口を決めてしまって、これを通さなかったら後の影響、こういう話でしょう。脅迫に近い話が入ってきている。朝に夜に入ってくるんですよ。ですから、そういったことを考えると、本当はこの法案全部返したいのです。たとえば、あなたが述べられた中に、五日間短縮衆議院結構。しかしこの参議院、さっき申し上げましたけれども、北海道はどうするの、たった十八日でどう回るのですか。一回しか回れませんよ。私も北海道へ行ったことがありますが、この雪の中でもって、でかい戦車みたいなトラックを仕掛けるんですよ。吹雪の中で演説ぶつんですよ。そういった問題等ございますので、私はこの法案本当は返したいけれども、これは非常にいまでも、いま質問中でも頭を痛めている問題なんですよね。  それで、私一つ確認しておきたいことは、定数是正問題について、あなた御自身おっしゃったのだから、当然、今度選挙をやっても、きょうもゆったりしているわけで、あなたは今度の選挙、当選間違いないでしょう。この提案者なんだから、あわせて専門家の金丸先生等含めて両院の定数是正問題について相談をして出していただくということについては、確認しておいてよろしゅうございますか。
  30. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 先般の選挙制度調査会会長ここにおられますが、調査会で決めましたとおり、最高裁の御指示、最高裁で言われております線に沿うてできるだけ速やかに、次の国会を目標にしてこの話し合いを進めていきたい、これはそういう決意でおることを重ねて申し上げます。
  31. 大木正吾

    大木正吾君 最後にあなた決意という言葉で逃げちゃったけれども、こういうことはもっと、相当ベテランだからあなたもこれは提案されたのだから、やっぱり責任を持ってこういうことをやってほしいわけです。  ただ問題は、行革絡みでございますから、従来の二回の定数是正はいずれも定数をふやしながらやった経緯もございますが、恐らく五百十一人の衆議院、二百五十一一人の参議院、全体をふくらますことはまず不可能ですよ、国民の声としまして。中における問題ですからね。特に自民党さんの場合には、東京でも大阪でも、大都市でもって、わが党も余りよくないけれども、いえば完全に逆転しているわけだから。そうでしょう。今度の参議院選挙においても、自民党さんは東京で四名中一名、あとは野党が三名とっていますよね。神奈川の場合には大変な数が多い中で、これも二名しかいないですね。千葉も埼玉もそうなっていきます、この周辺だけ考えていきましてもね。  そういう点等を含め、しかも入れ物の中にある品物の数は同じだということの中でもって、これは与党内におきましても、野党との関係におきましても、党の利害、個人の利害が相当絡んできますよね。そういった点をお含みの上でもって、私、まあ努力じゃなしに、これはもう裁判所の判決も出てくる心配が、いろいろこの周辺でもって裁判が係属中のものもございますからぬ。違憲状態ということはもうまさしく違憲ということになるし、同時に参議院の四月の最高裁の判決等も、内部で見ていきますと、いえば現状にそぐわないという意味のことは、違憲と言わなかった判事の方もおっしゃっておられる。同時に、少数意見は違憲ということを述べているんですね。  こういうこと等を考えていきますと、完全にこれはもうわれわれ自身定数是正問題に決断をすべき時期が来ている。これは間違いありませんね。だからそういう点で、これは再度確認いたしますが、自民党さんにとっては総体的にはこれはどうしても余り得はないと思うんですよ。同時にあわせて定数是正との兼ね合いで小選挙区ということをぶつけてくるということも、これは勘ぐりますと出てくる心配もあるわけですよね。そういう点等含めて片岡さんもう一遍、申しわけないですが、御意見をちょうだいできませんか。
  32. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いま大木先生が御指摘のとおり、この問題は大変いわば党間、党利党略、派利派略といいますか、そういう点で非常にむずかしい問題を含んでおると思いますので、われわれの党内においてのコンセンサスを得るということ自体もかなりむずかしい問題がある。いままでも経験をしておりますし、そのことが予想せられるわけでございます。いわんや、各党の間のお話し合いということになるといろいろの御意見が出てくると思いますので、むずかしい点があると思います。それは数だけの問題でなしに、いま御指摘のありましたような、制度そのものについての検討もしなければならぬというような意見も出てくるかと思います。  しかし、それらの問題を乗り越えて、とにかく早くこの問題に決着をつけなければならぬという現実の必要性が迫っておるわけでございますから、ことに会長もおられますので、会長とともに決意を新たにして御趣旨に沿うように努力を、努力といいますか、進んでいきます。
  33. 大木正吾

    大木正吾君 いまの問題について、片岡さんの御決意を相当はっきりいただきましたので、大臣どうでしょう。いまの定数是正問題について、各党間と言わないで、自治省としての見解等について何かございますか。
  34. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) この問題は、今回の最高裁の判決を受けまして、自民党選挙制度調査会も、速やかにということで先般来決議をなさったようであります。しかし、これは先ほどのお話しのように、党としては大きな私は問題だろうと思うのです。選挙制度のあり方によって党の消長というものが出てくることでありますから、党としては私は大変な問題点であろう。のみならず、候補者個人にとっても大きな影響のあることでございますから、なかなかむずかしい点がいっぱいあると思います。あると思いますが、最高裁の判決もああいうふうに出たのでありますから、何らかの形で各党でひとつ合意を得ていただきたい。私ども政府側の立場は、正直に言いましてやはり各党間で大筋は少なくとも決めていただかなきゃならぬだろう。  衆議院定数是正も、前二回は増員で処置した、ふやしたわけですけれども、果たして増員ということでやれるのか、やれないのか。それから区割りということになってきますと、これがまたいろいろむずかしい点が出てくると思うのです。ゲリマンダーなんというようなことをずいぶん言われるということでありまして、区割りがまたこれは具体的な問題として大変な問題である。しかし、いまのは中選挙区みたいなもので、各区の定数は五、四、三という数字にある。この五、四、三を一体どうするんだということになってきますと、区割りの問題は私は大きな問題点として浮かび上がってくる、こう思います。  そういう非常に基本的な問題というのは、これはどうしても各党間でいろいろお話し合いを願わないと私は進まないだろう、こう思います。何らかの形のお話し合い、どういうところでおやりいただくか存じませんけれども、何らかの形の協議をされる機関といいますか、あるいは場といいますか、そういうものをひとつお考えを願って、私どももそれを受けて協力していきたい、こう思っているところでございます。
  35. 大木正吾

    大木正吾君 これは選挙部長にも伺いたいのですけれども、地方自治体の場合には、基準がある自治体が相当多うございますね。それから同時に、選挙法自身もある程度そういった人口移動によりまして変えていく、こういう法律などがあるようです。自治体の方はそうしておきながら、国会議員の方はゆるふんでいいということと同時に、いま大臣もおっしゃったのですが、政党間に任せるということですね。この辺どうも、地方議員はいま少しずつ数を減らしているところもございますけれども、ちょっとやっぱり私たち国会議員として地方に参りまして恥ずかしいということもときどき感じます。同時に、西ドイツあるいはイギリス等ではこういった問題について見直の基準がございますね。  そういったこと等を含めて、自治省として政党間に任せるとだけおっしゃらないで、資料の提出はもちろんですけれども、そういった外国の例とか、同時に地方の自治体の議員の選び方の基準等々を含めて、この問題について積極的に、政党間で合意する、相談をする、コンセンサスを求めていく、そういった場所をつくる責任が私はあると思うのですが、どうですか、部長。
  36. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) お話にございましたように地方自治体、都道府県でございますけれども都道府県の県会議員の場合の選挙区の決め方につきましては、公職選挙法の上に一定のルールがございます。郡市の区域を基本的にその選挙区とすること、そしてその郡市の区域の人口が〇・五、議員一人当たり人口の半数を割ったような場合には他と一緒にしなければならないこと。若干の例外がございまして必ずしも人口どおりにいくようにはなっておりませんが、一定のルールは設けられております。  ただ、なぜこの部分についてだけあるのかというのは確かに問題なのでございますが、まあ古い物の本などを読みますと、この部分については、国の法律で地方の制度の決め方を書いておるのでルールを書いてあるんだと。国会議員選挙区のあり方につきましては、国会そのものが自分で法律でお決めになるわけですから、自分でお決めになる法律の中に、国会議員選挙区はかくかくあるべしとみずから書き込む必要はないというように考えられたものではないかというような話を聞いたことがございます。  一方、ただいまお話がありましたように、西ドイツやイギリスのように、ある状態のもとでは選挙区の確定に関する委員会が勧告を作成して国会に提出をするというようなルールのあるものもございます。ただ、これは御承知のとおり法律にそのやり方が書いてございまして、かくかくの状態になったときにはやれ。いまのお話にございましたように、西ドイツですとその平均のプラス三分の一マイナス三分の一の間に入るようにせい。そうすると、マイナス三分の一で三分の二、プラス三分の一で三分の四ですから、上下二対一の中に入るではないかというルールがございます。  そういうルールが与えられれば、それは数字を持っておりますわれわれの方として計算はできないわけではないのでございますが、まさに問題は、そういうたとえば定員増でやるのかやらないのか、三、四、五人区をどうするのか、仮に割るとした場合に、市町村の境界との関係をどう考えるのかといったたぐいのルールが全く与えられていない。で、いまの公職選挙法の中に規定がないということでありますように、むしろそれは国会で判断するんだというたてまえになっているというところに、やっぱりわれわれが事務的に試算をしてこれでどうですと言いづらいところがあるわけでございます。  加えて、おしゃべりになりますが、ただ単に数字の上だけで一律になればそれでよいというものでもないように思います。地域の沿革とか、そういったものもございましょうし、それを考えますと、先ほど来大臣から申し上げておりますように、やはり少なくとも大綱について各党の間でのお話をしていただかないと、ちょっと物が進まないのではないかという感じを持っているわけでございます。  どうも大変失礼しました。
  37. 大木正吾

    大木正吾君 きょう実はデータをつくって持ってこようと思って、時間がなかったものですから間に合わなかったのですが、西独のいまお話のあった基準などを少し日本的に当てはめていきますと、これはぜひ冷静に聞いてほしい、私がずっと頭で計算してやってみて、次点の方々、この方々が仮に上がってきたということで定数是正を若干しましてやっていきますと、衆議院の場合には準伯仲状態、ほぼそういった状態が現出できるようなあれが出てくるんですよね。参議院の場合でも、これはさっき極端なことを申し上げましたけれども、要するに選挙候補者がおって、私たちは名簿登載でいくわけですが、いえば比例代表区と選挙区、これ自身が法的に非常に基盤的に矛盾ですわね。まあ法律論は余りやっていませんけれども、もしこれをすべて比例代表選挙型にしていきますと、これまた準伯仲もしくは逆転状態に入ることになるんですね。  相当これは重大な問題でございまして、自民党選挙対策委員長もおられますし、同時に片岡さんもえらい今度は御苦労なさったわけですからね。そういったことをお含みの中で、国民の感情からしますれば全体の定数増はなかなかむずかしいということを含めて、しかし私は、やっぱり裁判所、最高裁なりが違憲だから、極端なことを言えば将来は選挙そのものが無効なんということが出てきたら、これは大変な立法府の恥ですからぬ。そういう点を含めて、定数是正問題につきましては次回の国会という話もありましたので、そういった中でぜひ出していただきたい。私たち野党側、特に社会党側といたしましてもこの問題については積極的に問題点意見をまとめましてお出しをする、こういうふうに考えておりますので、この問題についてぜひ、これは重大な立法府のあり方を問われる問題でございますので、そういったことを最後にお願い申し上げておきたいと思います。  さて、最後の項目でございますが、これは今回の選挙法改正を私がひがんで見ているわけでもありませんが、どうも端的に申し上げて、先ほど片岡さん、党利党略、派利派略、派の方が入ってきたのですが、私は派の方を言うつもりなかったのですけれども、結局、戦後のずっと選挙法改正の流れを見ていきますと、もうほとんどか運動の圧縮なんですね。時間の制限ですね。  そういったことがずっと継続しているわけでございますが、今度の選挙法でも、大体五団体ぐらいありますが、有権者同盟とか、あるいは日青協とか主婦連とか、こういった方々がこの法案について、選挙をする側の市民、国民立場に立ってこの法案に反対です、こういう要請が出てきているわけです。私はこれは単なる市民の、いわばローカルの団体ではないと思うのです、主婦連にしても日青協にしましても。おつき合いを持った方々が相当メンバーの中におりますのでね。全国的な団体ですからね。このバックには相当な影響を受ける方々がおるわけです。そういったこと等の関係の中での意見も、やっぱり選挙をする側の立場ということについてほとんど触れてないし、だんだん窮屈にされているんですね。  極端なことを言えば、私自身の例ですが、六月に選挙がありまして、実は田舎の方にあいさつに行ったのだけれども、家内からそでを引っ張られまして、お父さんいま行ったら危ないですよと。お布施問題等の話も新聞にがんがん出ていましたからね。お盆に墓参りのついでにと、こういう話になったことがある。これは現実のケースなんですよね。八月のお盆というと二カ月過ぎますからね。そういったことも考えたりしているのですが、特にいまの場合に、選挙民方々は自分がやりたいということができない。しかも運動員の方々も、告示後はもうほとんど違反ですと言っているんです。どうすればすれすれのことができるか、この判断なんですよね。なぜそうしてしまったかが問題なんです。  私は、戦後三、四回の選挙法改正がございますが、ほとんどが窮屈にするばかりであって、党利党略なんですね。派利派略の方はどうぞ自民党の内部でやっていただきたいのですが、そういうことについて、片岡さん、もうちょっとオープンにできる方法について今後考えるというお気持ちがございましょうか、どうでしょうか、それは。
  38. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いまお話しのように、今度のは外部からというか、実質的にもそういう批判が出ると思いますが、どうしても何か国民の自由濶達な選挙運動に対して一つの枠をはめよう、縮めようという実に陰気くさいやり方になるのではないかと、こういうことの御心配でございます。確かにそういう面については十分注意をし、そういうことにならないように、国民皆さん方が自由濶達に議員を選ぶやり方にならなければならないと思うのでございますが、そしてそういう立場からいろいろの団体、いろいろの政治関係意見を述べられる方々意見は、私も新聞その他のところで伺っておるわけでございます。そういう立場から言いますと、今度の計画についてかなり御批判のあったことも私は承知いたしております。  しかしながらまた、われわれが選挙区を回りましたり、あるいは選挙管理委員会その他それぞれの場で御意見を聞いてみまして、いろいろなところへ発表されていない声なき声といいますか、そういう一般方々の間には、私が一番当初に申しましたように、選挙運動が少し長過ぎるのじゃないか、そして、があがあと言うとまた先ほどもおしかりを受けましたが、やかましい声をがなり立てて、ああいうことをすることももう少し何か考えたらどうかというような意見もかなりございまして、われわれの党内においてもそういう声が持ち寄られて、できるだけ選挙民方々に御迷惑をかけないような方法で何か合理的に考え方法検討すべきである、こういう声も出てまいりました。  そのためには、やはり文明の利器であるマスコミ、そしてまたテレビがその後非常に大きく進展をいたしました。二十五日から二十日に減らしました当時の昭和三十三年から、もう二十五年たっておるわけでございます。その二十五年前のことを考えますと、テレビというものが各戸にどれだけあったかということを考えますときに、まことに隔世の感があるように思われるわけでございます。今日、もうラジオは当然のことながら、ラジオは車の中であるいはまたどういうところでも聞ける。テレビも各戸に数台入ったという今日の状況において、やはり運動のやり方に近代的なものを加味して考えるということも大事なことではないかというようなことも考えられまして、そしていろいろ相談、煮詰めました結果がこのような結果になったわけでございます。  できるだけ文明の、いまの時代に合ったような方法で、国民皆さん方に御判断をいただく機会をできるだけ縮小しないで、むしろ拡張して、そして他の少し古いやり方については縮小になるかもしれませんが、そういう点を考えながら、うまく調和のとれた近代的な合理的なやり方ということでかような案をつくったことを御了承賜りたいと思います。
  39. 大木正吾

    大木正吾君 最後になりますが、あなたは大分大臣だか役人だかわからぬけれども、答弁がうまくなったですな。  お願いいたしたいのですけれども、確かにおっしゃるとおりテレビの普及も相当なものだし、道路事情もよくなっております。しかし、やっぱりスキンシップといいますか、国民方々テレビで見ることも確かにそれは選挙運動一つかもしれませんけれども、目の前でもって本人がおられる。八代英太さんきょうおられますけれども山梨、甲府に彼が行ったら大変ですよ、本当に集まってきますよ。ちょっとでもいいから指にさわりたい、こうなりますよね。私みたいなお粗末な人間でも、握手したらしばらく手を洗わずにおこうと、こういう人も中にはいるわけですよ。そういったような人間としての情緒を、選挙の中にロマンを生かす、こういうことを考えてもらわないといかぬのでね。  最近電話戦術はパンクですよ。私は電通の出身だけれども、これは電話はパンク。本当ですよ。恐らく今度やったら、電話でもってずっと告示から始まったら大変なことが起きてきますよ。古い電話局は中でもって燃えますよ、機械が。山中さんも電話局の出身でございますけれども。そういったこと等についてお調べになっていないと思いますけれども、いろんな障害が起きることは間違いない。  ただ問題は、総じてお願いいたしたいことは、戦後三、四回選挙法改正しておりますが、特に機関紙の号外とか宣伝カーの制約とか、そういったもの等を通じて選挙する側の国民との接点をだんだん減らしたということは、これは間違いありませんからね。そのことについて私はどうしても新しい、きょう片岡さん一生懸命考えると、こういうお話があったけれども、これは前広にもっと欧米型の自由化をした選挙方向ということを考えてほしい。自分たちで狭めていきまして、だんだん選挙民政治不信になっていって、行っても行かぬでも同じことだ、こういうことをつくっていくことはよくありませんよ。逆ですよ、これは。そういったことを含めて考えてほしいのが第一の問題でございます。  第二は、さっき申し上げた定数是正の問題です。これは自民党にとっては得はありませんからね、はっきり申し上げて定数是正問題は。とは言いながらも、裁判所から五・五対一とかあるいは四・七対一とかということにつきまして選挙無効なんということになったら、これはどうにもなりません。そういった恥だけは残さないことが重要です。だから定数是正問題が第二の重要課題です。  第三に、つけ加えてお願いいたしたいことは、政党法の問題と、ヨーロッパで進んでいます十八歳の成人の問題です。これは義務教育で、扶養関係の税制問題で高校でもって切られていくわけですね。同時に、二十を過ぎている方々で結果的には税金を納めない学生がおって、高卒、中卒の方々が税金を納めていることも、これも変な話ですわね。国民の権利平等の立場に立てば、私はやっぱり十八歳以降の方々には選挙権を与える、そういったことですね。  幾つかの非常に基本的な問題がございますから、そういう点を含めて、自民党選挙調査会長きょうおられますし、同時に、野党の側も一生懸命こういった問題について研究してまいりますから、そういう点を受けまして、ぜひ定数是正等を中心にして、次期の通常国会には新しい選挙法問題についてもっとしっかり議論ができる場をつくってもらいたいし、選挙する側の意見を特に私は聞く機会を持ってもらいたい、このことをお願い申し上げておきたいのです。そういったことについて、最後に片岡提案者の方から御意見をちょうだいして、私、質問を終わらせていただきます。
  40. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 先ほどのお話の中に出ましたように、できるだけ人に接し、スキンシップといいますか、握手するようなことによって本当に候補者選びということが可能であるのだから、そういう方向についてももっと大きく自由に広げるような方向考えてほしいということでございます。その問題で一番いつも問題になりますのは、戸別訪問の問題を自由にしたらどうかという御意見もたびたびわれわれ党内にも出ておりますし、また野党の方とのお話し合いの中でもいろいろお話が出ました。これらの問題についても十分検討いたしましたが、それらの問題にはやはりそれぞれそれに表裏になってうらはらのいろいろな弊害も出てくるというようなことで、戸別訪問のごときはさらに検討すべき点がたくさんある、こういうようなことから今回は取り上げておらないわけでございます。  それらの問題について、今度幸い個人演説会というようなものもかなり自由にたくさん開けるようになるのではないかと思います。立会演説で縛られた時間がかなり自由になりますので、そういうときにできるだけ個人的な接触ができる個人演説会その他というものが考えられるわけでございまして、そういうような問題でできるだけ自由に選挙民に接し得るようなやり方をさらに今後考えて、御要望の線に沿うように努力をしていきたいと考えておる次第でございます。
  41. 大木正吾

    大木正吾君 終わります。
  42. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 いま幾つかの提案、提言もありましたように、総論的な立場大木委員からの質疑がなされました。私は、運動期間、運動時間、届け出期間立会演説会など、できるなら各論的な立場で以下質問をいたしたいと存じます。  いまお話がありましたとおりに、新聞報道等によっても明らかなように、本年は一年間のうちに統一地方選挙参議院選挙、それに近く行われる衆議院選挙となりますと、実に三十六年ぶりの選挙の年となるわけですが、これは単に全国規模の大きな選挙が並んだということだけではないと考えます。  先ほどの質疑でも明らかなように、また大木委員の指摘にもありましたように、広がらなくなった政治基盤、パイ、そこに根差す金権腐敗と言われる政治の行き詰まり、政治の大前提である倫理の挫折、厳しさがつのりつつある生活の実感、それらを包み込む国際情勢の不透明感、言うならば歴史の大きな分岐点に立たされた中での選挙の年である、このように思うのです。私どもは、こうした情勢、状況判断によってこの年を八三年政治決戦の年としているのであります。しかしながら、皮肉なことに、有権者の政治参加はきわめて残念な状況であります。まことに遺憾な結果であります。  先ほどもお話がありましたとおりに、四月の統一選挙では十三都道府県知事、四十四道府県会議員、九十九の一般市長のそれぞれの選挙の結果は、過去十回の統一地方選挙の歴史を通じて、いずれも史上最低の平均投票率記録いたしました。首都東京都知事選挙については、投票率は五割を割っています。六月における参議院選挙もまた同様に、比例代表区、選挙区ともに投票率は五七%であったことも先ほどお話しのとおりであります。史上最低であります。全国都道府県においても、三年前の前回を大きく下回っている状況であります。そこで大臣並びに提案者にまずお伺いしますが、どのようにお考えになっておりますか。また、一体何が原因だとお考えになりますか、まず伺います。
  43. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 投票率は、これはそのときどきの選挙にもよると思います。一つは、やはり選挙状況で、選挙民選挙に対する関心度というのがどこまで上がってくるかによって私は投票率というのは決まっているような気がするのです。それはその一つ一つの具体的な、現象的な事態にそれぞれの投票率が出てくる。  いまのお話は、もっと根本的に、投票率全体として一体どうなのか、こういう問題は確かにあると思うのです。それは議会制民主主義という立場から言えば、やはり選挙がその根幹でありますから、国民は参政権を行使して投票してもらうというのが本筋でありまして、できるだけ投票していただくという方向で努力をしておるわけであります。  いろいろデータがあります。たとえば男女の投票率はどんなことになっているのかと調べてみますと、昭和四十三年以来は女性の方が投票率は高い、こういうことが出ております。また地域的にも、たとえば東北と九州と比べたらどうなのかとか、あるいは余り全般的な統計じゃありませんけれども、年齢別、そして男女別の投票率はどうかとか、そういういろんな数字的なデータを集めてやってみますと、やはり政治に対するあるいは選挙に対する関心度がどう高められるかということにほぼ私は投票率の消長というものが左右をされている、こういうふうなことを思うのであります。そういう限りにおいて、投票率をいろんな方法で、いろいろな方法と言っても、この方法もなかなか限度がありましてむずかしいし、それぞれ有権者の方々投票に行ってもらうという気持ちになってもらうというのには、やはり選管その他のやり方の上においてもある程度の限界がある、こういう気がいたしております。しかし、今後ともそういう投票の実態というものに即して投票率を上げる方向で努力していかなければならぬであろう、こう思っております。
  44. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 私からも一言。  いま自治大臣からお話がありましたように、投票率は私は基本的には、その選挙の争いといいますか、その目的になっておることが非常に国民なり住民の方々の関心を引く、そういう問題について対決が行われる、そういうことがその投票の中に出てくるときに私は投票率一般的に上がるのではないかと思います。したがいまして、大きな選挙では、国民に信を問うというときに政策上の大きな争いがある。それをどう国民に判断していただくかということに国民が非常に関心を大きく持つ問題であるときには、私はやはり投票率が上がるのではないかという、こういうことが一般的な傾向ではないかと思うわけでございます。  同時に、さらに基本的には、国民議会制民主主義というものに対して信頼を持っておるかどうかという政治に対する道義感、これが乱れておるときには、乱れておるといいますか、乱れておるときにはやはり国民の関心が薄くなる。こういうことは確かにあると思いますので、そういう意味で、議会制民主主義においては常に国民に信を得られるようなりっぱな政治が行われるように、やはり政治倫理の上でもしっかりしたものを平素から打ち立てていくということが、この投票率を上げていく一番大事な点もそこに含んでおるのではないかと、かように思っている次第でございます。
  45. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、有権者の政治離れについて伺うわけですが、有権者の政治離れがしきりに言われて今日なお続いていると思います。しかし、いまお話もありましたように、問題はそこにとどまらずに、無関心、意識の多様化、流動化などとらえにくくなった有権者の現状をよいことにして、政治の方が身勝手な振る舞いに及んでいるとさえ言われていると思うのです。  倫理にしても、いまお話がありましたが、世間一般の常識とは異なる論議。うやむやにしています。去る十月十二日のロッキード判決以来、私ども国民にわかりやすい政治に信頼を回復するために政治倫理の確立を実現させるよう努力してきた。ところが、多数の力で一カ月間もこの重要な臨時国会が空転をし、しかも多数の力で国民の目から逃れ、言うなら政治の方から有権者を遠ざけていくというような現象に思われるわけです。きわめて遺憾だと思います。これでは有権者の政治離れというよりは、むしろいま与党であります多数の政治が有権者離れをしているところに問題があろう、こういうふうに思うのです。そこに投票率の問題、政治の関心等も関連をするわけでありますが、どのようにお考えになりますか、提案者の方に伺います。
  46. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 先ほど私も申しましたように、そういう問題も確かに基本的にはありますことを私は認めざるを得ないと思います。ただ、今度の、高杉先生から具体的な問題といいますか、問題について御指摘がございましたが、その問題については私は一般的な問題として先ほど申し上げたように感じておるわけでございます。  私は、同時に、野党の皆さん方がいろいろの問題の結果審議に応じられなかったという結果でございまして、これが国政が非常に渋滞したという結果を招いたわけですが、私は望ましいことは、やっぱり審議の場でありますから、この審議の場で大いに審議をしていただく、そういう点についてもひとつ御努力を願う。そういうことでないとやはり国民は、いろいろ議会政治というのはむなしいなということになる可能性もあるのではないか、そういう一面もあることをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  47. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 いまの論議をしていきますと、重要な選挙法の各論に入れませんから。いずれにしましても、私どもは一貫して、政治倫理の確立をしていくことが国民政治信頼に対する期待にこたえる道である、したがってそれを一日も早く実現させる、こういう立場で取り組んできたことは御承知のとおりであります。  そこで、この論争はさておいて、具体的に時間が限られておりますから、それぞれの項目について伺いますが、まず、選挙運動期間短縮について提案者並びに大臣にも伺いたいと思うのです。  すべての選挙について短縮をすることとしていますけれども、これは一体いかなる趣旨に基づくものなんですか。それから、最近の選挙実情にかんがみて改正短縮する必要があるということでありますが、客観的に見て、最近の投票率の低下傾向は、先ほども話がありましたように、むしろ選挙民の一層の参加を図るための創意や工夫など、主権者たる国民、有権者の触れ合いの場を多くすべきである、こういうふうに私は考える。どのようにお考えになりますか。
  48. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 投票率を上げていくというのにはいろいろな方法、手段があると思いますが、運動期間が長くなったから投票率が上がるのであろうか。これはいろいろ見方はあると思いますけれども運動期間の若干の短縮というものが投票率を下げるという方向に働くかどうかは、私は必ずしもそうならないと思っているわけであります。要するに、投票率に影響のありますのは、先ほど来お話しのような選挙に対する関心度の深さ、厚さであると思うのです。そういうものを高めるという方向は、投票のあり方としては考えていかなきゃならない問題だと思います。  それから、先ほどの問題にちょっと私も意見を申させていただくならば、いろいろいまの政治のあり方についての御批判もありましたが、選挙というのは、やはり参政権を通じて国政に参加されるわけですから、仮にいまの政治に対して批判的な方があるとするならば、私はそういう意思表示をされる投票をされることであろう。むしろそういうことで政治の流れを変えようということであるならば、私は棄権をなさらずに積極的に参加さるべき筋合いのものではないのか。それが国政の運営の上においてはいい結果をもたらすものではなかろうかと、こう思っておるのであります。  いずれにいたしましても、御趣旨は、要するに選挙のあり方として、候補者選挙民との接触の機会あるいは度合いというものをより多くする、あるいは厚くするということは選挙のあり方としては正しい方向であろう、こう思っております。
  49. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いまの高杉先生の御質問でございますが、選挙期間短縮するのは金のかからぬようにするんだということのようだが、それもあるだろうが、やはりもう少し自由に機会を与えて、選挙を自由濶達にするように方法を講じてはという御質問でなかったかと存じますが……。
  50. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 違うよ。そういう質問じゃないよ。いかなる趣旨によるものかということ。
  51. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) この期間短縮は、何と申しましても、先ほど提案理由の説明のときに申し上げたのでございますが、やはり基本的には、選挙を正しくよいものにするためには金のかからない選挙にすべきものである、こういうたてまえから、金のかからない選挙にするための一つ方法として、この選挙期間短縮というのもこれは物理的に非常に大きなそういう目的を達する一つ方法である、こういう関係からこれを御提案申し上げたのであります。  それが一番大きな主眼であり、同時に、先ほどから申し上げておりますように、選挙をされる国民一般立場からもできるだけ気持ちよく選挙に参加していただく、そのためには必要以上に迷惑をかけるようなことのないようにしていくのも一つ方法である、こういうたてまえから今度御提案を申し上げた次第であります。
  52. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 これまでの改正の経緯を見ますと、常に期間の短縮が行われてきたわけですね。法制定時には、衆議院選挙参議院の通常選挙もともに三十日間だったわけです。これが昭和二十七年には衆議院選挙が二十五日間、昭和三十一年には参議院通常選挙が二十五日間、続いて昭和三十三年には衆議院が二十日間、昭和三十七年には参議院が二十三日間、こういうようにそれぞれ短縮されてきています。今回のこの法案が成立すれば、衆議院は十五日間、参議院は十八日間、法制定当時に比べるとほぼ期間は半分ですね。  これまでの改正については一体どういう理由か、具体的にひとつ明らかにしていただきたいと思うのですが、選挙運動期間を一体どこまで短縮していけばそれは終息するのか、選挙制度の保持という点から見ますと私は非常に危惧を覚えるのです。各選挙運動期間短縮された期間がそれぞれどのような合理性に基づくものなのか。これは各種それぞれ期間を全部市町村まで短縮しているわけでありますが、それぞれの合理性に基づく理由というものを明確にしていただきたい。また、運動期間というものは短縮し、短くなっていくことが趨勢なんだと、こういうふうにお考えなんですか、その点も明らかにしていただきたいと思います。
  53. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) ちょっと沿革がらみのお話ですので、便宜私から答弁をさせていただきます。  御指摘のとおり、昭和二十五年の公職選挙法の発足の時代は、国及び都道府県選挙は全部三十日、その他は市町村に至るまで全部二十日でございました。それが、ただいま高杉先生がお挙げになりましたようなたび重なる改正を経まして本日のような形になってまいりました。その間それがどうなったか、何でここで三日、何でここで五日という理由は一々は述べられておりませんけれども、主として他の選挙とのバランスみたいな配慮があったのだと思います。  またさらに、今回の改正の中で提案者が述べられましたような選挙運動手段の発達その他の事情による社会情勢の変化というようなものが考慮されてきたのだと思います。たとえば、いまお挙げになりました昭和三十三年の改正、それから最近の改正でございます昭和四十四年の改正、そういった改正のときの国会の審議や提案理由などを見ておりますと、選挙運動の手段の発達その他選挙実情にかんがみて、選挙運動の期間を短縮することが合理的であると判断されたというような文言が出てまいります。そういった総体判断によったものだというように考えております。
  54. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 ところで、いま経緯についてのお話がありましたが、正確に言えば、公示または告示が少なくとも何日前になされなければならないという期間であると、こういうふうに考えるのですね。ところが、立候補者側から見ると、立候補の届け出締め切りの日から選挙の前日までが最低限保障された運動期間、こういうことになります。必ずしもいまの経緯で見ましても短縮される一方ではなかった、こういうふうに思うのですけれども時代的背景や選挙実情から運動期間を短くしなければならない、こういう論理は必ずしも妥当でないと考えます。どうでしょうか。
  55. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 選挙運動期間の告示日、これは選挙の期日前少なくとも何日と、こう書いてあるわけですが、その少なくとも何日ということが、ただいまも申し上げましたように縮まっていったことは沿革の示すところでございます。  そこで、もとに返りまして、そもそも少なくとも何日と書いてあるのだから、短縮をしてもその前に公示をしてもいいのではないかという御議論でございますけれども、確かに法律の文言上は「少くとも」ということになっておりますので、法律上はその定められた期限の前に公示または告示をしても、直接法律違反というわけではございません。しかしながら、法律趣旨、つまり何日何日という取り決めがそれぞれの選挙について細かく定められていること、そういったことからして、われわれの方としては、たとえば市の選挙が十日なら十日よりも前に告示しても構わぬよ、それで一向差し支えないということではないんだよ、法律の文面はさることながら、これは前十日に告示をしなさいという趣旨なのだよという指導を本日までいたしてまいりました。ほぼ全体としてはこういったやり方が守られておるというように考えております。  したがいまして、今回期間がさらに短縮されるということになれば、従来のそういった指導をしていくことになりますので、ほぼそういった線に沿って運動期間が一般的には短縮するものというように考えております。
  56. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 細かに聞いてまいりますと時間が非常にかかりますから、端的に申し上げまして、いま各選挙運動期間の短縮率、短縮率という言葉がいいかどうかわかりませんが、見ますと、衆議院選挙においては二五%になっておりますね、二十日間を十五日にするわけですから。参議院選挙については二二%。ずっとありまして、町村の議員及び長においては二九%、まあ三〇%近くなっているわけですね。こういう各選挙短縮するのにもばらつきがあって、ばらばらですね。一体これは、そういうばらつきがある差というのはどこに理由があるのですか。
  57. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 御指摘のように、そういうふうに正確な比率を求めますと御指摘のとおりでございます。しかし、いま選挙部長からお話がありました従来の経緯、過去の沿革をみましても、必ずしもそういうパーセンテージがはっきり定められて、それに応じて一般的に短縮されるというようなことが行われておりませんのであります。先ほど御指摘のように、衆議院の場合は昭和二十五年、二十七年、そして三十三年と、こういうことでございます。参議院の場合は三十一年とそれから三十七年ということで、それ自体沿革的にばらつきが見えるわけでございます。地方の選挙についても何かその都度問題になったときに、応急的と言うと語弊があると思いますが、それぞれの時代の要請に基づいて行われたということしか言えないのではないかと思います。  今度は全般的にも中央、地方を通じてやったわけですが、国の段階では五日間、それから府県段階では三日間、そして市及び町村段階では二日間といったような、率からいいまして必ずしも妥当でないかも存じませんが、これは一日のうち何分の一というわけにもまいりませんので、そういう点ではやや大まかになりましたが、それぞれの段階において適切と思われる日数を決めて短縮をしたということでございます。
  58. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 ちょっとそれはどうしても私にはわからないわけなんですよね。たとえば市町村の選挙は、元来選挙運動期間は市が十日、町村が七日、これでもほかの選挙に比べたら短いわけなんですね。特に、短縮するといってもそういうところに配慮をすべきでありますけれども、よりによって町村の七日間、これが最大の三割になるわけでしょう、五日間。どうしても理解ができないのです。どういう根拠なんですか、町村を三割短縮したというのは。
  59. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 御存じのように、これらの短縮についてそれぞれ地方六団体の関係皆さん方の御意見も聞いて決定をしたわけでございますが、御承知のように村や町といってもそれは大小の差がございます。ございますが、ああいう最下級の自治団体としては、これは平素からお互いにみんなよく知り合っておる。どこのたれべえさんはどういう人だということもみんなよくわかっておるのでございまして、そういう人たちの間の人を対象に選ぶわけでございますから、余り金のかかるような運動期間というものをそう長くする必要はないのじゃないかという声が、ことに町村の場合に非常にわれわれの耳に入ってまいりましたし、また私ら事実地方でそういうことを痛切に感ずるというようなことから、この声をやはり具体化すべきである、こういうことで提案をいたした次第であります。
  60. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 六団体の代表とのお話が出ましたからね。私が聞いているところによりますと、知事会や都道府県議長会から、特に北海道のような例がとられまして、離島を含む県もあって地域実情をぜひひとつ考慮してほしい、こういう訴えがあったというふうに聞いているわけなんです。こういう点はどういうふうにされるのですか。
  61. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 町村の場合の御意見を承った対象の方は北海道の方でございまして、それらの方々にも御判断を願って、いろいろ離島関係、それから地域の非常に広いところということも確かにあるようでございますが、できぬことはない、地域によってはそういう問題も若干あるかも存じませんが、何とか工夫をすればできぬことはないという返答を得ましたので決断をしたような次第でございます。
  62. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 先ほども話がありましたように、法理論的に言っても、公示、告示、これは少なくとも何日前までにという形の規定でありますから、だから事実上そういうようにいろんな特殊な事情がある場合については、公示や告示を早めるようなことについても私は可能だと思うのです。これは大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  63. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 先ほどお答えをいたしたところでありますけれども法律上は少なくとも何日前と書いてありますので、公示が少なくとも何日プラス一日といったようにその前に行われましても、そのことだけで違法というわけのものではないと考えております。ただ、先ほど申し上げましたように、法律がこういうようにきちんと決めている線からして、ひとつそれぞれの選挙はこの日にちでやるようにという指導を従来行ってきましたし、今後も基本的にはそういう指導をしてまいりたいと思っております。
  64. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、立候補届け出期間について伺いたいと思うのですが、今回の改正案では、従来二日間が認められていましたが、これを一日、こういうふうにしたわけですね。この理由というのは、提案者どういうふうに考えますか。
  65. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いままでの立候補者状況を調べてみましても、二日間あるんですが、ほとんどいままでの実績は、公示になりました、また告示になりましたその日のうちに届け出が済んでおりまして、二日目に届け出たというのは、これこそパーセンテージにして一%ないし二、三%というところでございまして少のうございます。  しかも、今回日数の制限をいたしました関係から、少なくとも出馬することに決意した人は、できるだけ早く決意をしてその運動に耐えてもらう、こういうことが大事だ。またそれくらいの熱意を持った人でなければ、それは出ても余り仕事ができないのではないか。やっぱりやろうという人はそれぐらいの情熱を持って早く準備をするということが望ましいということでございまして、さような点を考慮いたしました。  それから、町村段階の選挙管理の事務においても、二日目まで待たなければすべての行動が起こせない、事務が運べないという場合がございますので、そういうことはやはりきちんとできるだけ早く着手できるようにすることがいまの社会において必要なことであろうと思います。また事前に、届け出その他についていろいろの指示をする場合には、あらかじめ事前審査をする、調査をする、集まってもらって指示をする、こういうふうにしていけば事務的には私は支障がない、かように思っておる次第でございます。
  66. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 時間がありませんから詳しく申し上げる余裕がありませんので、端的に言いますけれども届け出期間についても最初のころは衆議院選挙については七日間あったのです。参議院選挙については十日間あったのです。それがずっと改正になってきて、四十四年の六月には二日間、こうなったわけですね。こうした届け出期間運動期間も短縮をされてきた。  問題は、公示や告示というものの法的な性質から見て、正式に有権者が選挙が将来行われるということを知り得る最初なんですね。つまり公の機関の発表である、選挙執行の法的効果発生の要件だと考えるんです。そういうのがその日だけだ、こうなったら私は大変な、言うならば権利の侵害ではないのかなというふうに思うのですが、どうでしょう。
  67. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 理論的にはおっしゃるとおりでございますが、事実上は、このごろのマスコミが非常に大きく発展した今日、もういろいろの予想、出馬予想、そういうことがわりあいに早くから言われて、選挙民方々もそれぞれのものを通じて知り得る立場にあるわけでございます。非常にスピーディーに物が運ぶ時代になりましたので、やはりできるだけ簡潔に物事を運んでいくということが時代に即したやり方ではないかと、かように判断しておるわけでございます。
  68. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 近く選挙が行われるというような風聞で届け出の意思を固めて準備をしていればよい、こういうふうになりますと、そうした情報を得られる人と得られない人、こういうふうになりますと社会的身分により差別が出てくる、こういうことも予想されるのです。原則的に、原理的に公示、告示の後で立候補の意思を固め、届け出が済ませるだけの時間が用意される必要がある、こういうことになりますと、余裕がなけりゃならぬと思うのです。公示、告示の当日のみを届け出期間とする今回の改正、こういうことになりますと、法的な保障、憲法十四条に保障されている国民の権利にも私は触れるのではないかというふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  69. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) これは議論になるわけでございますが、今日いろいろなものが非常にスピーディーに運ばれる時世になってまいりました。ことに市町村において、これから市町村政を担当して大いに市町村民のために、地域のために働こうと、あるいは国の場合、県の場合も同じでございますが、それくらいの決意をしておる人はやはりそれ相当の立場の人であり、したがってそれに応じてできるだけ早く決意をして、選挙される人たちもそういう立場からあらかじめいろいろの情報を手に入れるということが可能な、いろいろな方法で私は得られるものと、身分によってあるいは立場によってそれほど違うということはちょっと私は考えられないのではないかと、こういうふうに思うわけでございます。
  70. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 先ほどもお話がありました事前審査ですが、これは事前審査には法的根拠があるのですか。
  71. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 事前審査についての法的な根拠はございません。むしろ選挙管理委員会がサービスとしてといいますか、実際の届け出事務をスムーズに行うために、立候補予定者の方にお願いをして事前に審査を受けていただいておるわけでございます。これはいわばその方の便宜のこともございますし、その人の段階で書類の不備などがありまして立候補受け付け事務がとまってしまいますと後が大変でございまして、しかも理論上はといいますか、立候補届を受け付けた後でなければその方の選挙運動ができないわけです。立候補の受け付けを始めましたらできるだけ短期間の間に全部の受け付けを済ませてしまいませんと、広い選挙区の向こうの端で予定している選挙運動を、本人の立候補届が終わるまでとめるなどということができませんので、そういう意味で御協力をいただいておる性格のものでございます。
  72. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 やはり事前審査等も届け出期間も余裕があって、候補者になろうとする人たちに保障される条件というのは確立するべきであると、こういうふうに思うのです。これは意見です。  時間がだんだん迫ってまいりましたから、次に選挙運動期間、特に町村について不在者投票あるいは出稼ぎの方々投票を保障する、そういうことになりますと必ずしも日曜日じゃなくなるわけですね。ですからそういう場合に、不在者投票の人たち投票ができる条件、あるいはまた選挙公報の発行等を見ても、町村によっては発行しているところがあるわけですね。部長も御承知のとおり、二割ぐらいが町村では発行していると思うんです。そうなりますと、さっきもお話を申し上げましたが、わずかに届け出期間が一日、運動期間が五日、そうすると締め切ってから四日間しかないんですね、投票まで。そうでしょう。そういう計算になりますね。  そうなりますと、その期間に不在者投票が一体できる保障があるのか、物理的にですよ。選挙公報だって、届け出を締め切ってわずかに四日間で写真を加え、それぞれの人の政見も加え、抱負も加えて印刷をして、有権者の人たちが選択できるように間に合うようにするために、物理的にどうでしょう皆さん、四日間でできるかなというふうに、私は物理的に言って無理があるんじゃないか、こういうふうにどうも思えるのです。ですから、少なくとも国民の知り得る権利もそうですし、投票し得る権利もそうなんです。そういうすべてにきちっとした保障をされた、そういう環境をつくることが政治参加、投票率が上回って政治が信頼を回復する、私はそういう条件だと思うのです。これは大臣、どうですか。
  73. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 確かにいま御指摘がございました選挙公報の発行というのは、日程的に大変今度は忙しくなるわけでございます。しかしながら、任意制の選挙公報、とりわけ町村の選挙公報という場合には、一般的には選挙公報の原稿の字数も少のうございますし、かつまた配布する世帯数といいますか、枚数もそんなに大きな数ではございません。  それで、実は全部の選挙公報の配布について承知しているわけではございませんけれども、統一選挙のありました年に、任意制選挙公報を発行した町村の印刷発行の日数というものを見てみますと、ほとんどの団体が四日以内に印刷、配布を終わっております。中には五日かかった、六日かかったという報告のあるところもあるわけですけれども、これらの団体を地図でちょっと拾ってみますと、その団体が特に世帯数が多いとか、特に広いとかいうわけのものでもございません。むしろ現在の日程一週間あるということに合わせてやっているのではないかと思われる節もございます。  加えまして、実は先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、町村議長会の北海道の代表の方といわれるのがこれまた、おれの町で出しているよ、しかしおれの町だって二日縮んでも出せるよと、こういう御意見もございましたし、加えて印刷技術の発達ということもございます。さらにまた、今回、御承知のとおり選挙公報の原稿提出期間の繰り上げということもございまして、まあ何とかいままで程度のサービスを確保できるようにやれるように指導してまいりたいというように思っております。  それから、もう一つお話のありました不在者投票でございますが、これはやっぱり一番問題は、当該選挙管理委員会から投票用紙の郵送を受けて、その郵送を受けた投票用紙を持って自分の所在地なんかの選挙管理委員会投票し、そこからもとへ送られるという郵便の往復のある部分が一番問題だろうと思います。これにつきましては、確かに今回そういう期間が縮まるわけでございますが、実はこの制度につきましては、従来から告示前の投票用紙の請求を認めるシステムがございまして、ただ、いままでは、告示前に請求はさせるが、選挙管理委員会投票用紙を発送するのは告示を終わってからだというようになっておりました。これを今回、そういう期間短縮のこともございますので、ひとつ事前に、選挙管理委員会が定める日から発送を始めるというのを、これは政令の改正でやれますので、政令の方で取り入れることによって御趣旨を生かしたい。そのことで、二日なり前から発送すれば少なくともいままで程度のサービスは確保できるのではないかというように存じております。そういう線でいかせていただきたいと思っております。
  74. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 これは、いろいろいいことをやっているのですから、公報が滞りなくできるような、非常にスピーディーな時代ですからできないことはないというお話ですが、私はかなり無理がある。不在者投票についても満足するような状態にならない、こういうふうに考えます。厳格にこれはやっていただきたいと思います。  時間がわずかになりましたから、たくさんあるのですけれども、要点をしぼって御質問をせざるを得ません。  立会演説会の廃止、それから時間の短縮、これについて、私は意見も加えて申し上げたいと思いますけれども、一体立会演説会を廃止する、これはどういう理由なんですか。それから、立会演説会にもデメリットはある。これはいろいろわれわれも経験をしております。しかし長所は、自治省のコメントなどにもあるようにやはり捨てがたいものがあるわけですね。だから全廃ではなく効果のある範囲内で残していくべきだと私は考えるのです。  しかも、運動時間も、朝の通勤時間の一番われわれ選挙する側にすれば大事な貴重な効果的な時間帯なんですね、通勤の方々も含めると。何で八時に一時間貴重な時間を短縮したのですか。この立会演説会と時間の短縮、どうも私には理解できないのです。ですからその理由、根拠を明確にしてください。
  75. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 立会演説会は、確かに御指摘のように本来はきわめて妥当な方法だったと思います。立候補しておる人たちが皆一堂に会してそれぞれ持ち時間で意見を述べるということで、選ばれる選挙民の方たちがそこへ出て品定めをするには最も妥当な方法であったということでこの制度が設けられたと思うのでありますが、その後の経過によって、これは統計的にも非常にはっきり出ておるのでございますが、前は非常にたくさんの方が立会演説会出席してもらった。昭和二十五年ぐらいのときには、回数が衆議院の場合で六千百九十回、そして聴衆者が五百三十何万ということでございました。ところが今日、回数はだんだん減っておるわけでございますが、この間の五十五年の衆議院選挙を見ますと、千三百四十回で、集まった聴衆者が七十四万ということで、百万を切っております。しかも、この人数は出たり入ったりした人を全部総計しての問題でございます。  ところが、このごろは、もう初めから終わりまで聞いておるという人はきわめて少なくて、自分の支持している候補者が出るときにはたくさんばあっと入ってきて、それが済むとぱっと出てしまう、こういうことが常のようになりました。全く初めから終わりまで、できればおって品定めをしてもらうという本来の目的が全然形骸化してしまった、いわゆる立会演説が本来の使命を果たしておらぬと、こういうことになりましたわけでございます。  そこで、この立会演説を聞く方の側あるいは演説をする側、いずれも非常に長所があり便宜があるわけでございます。ところが、いま申し上げました形骸化によってそのプラスの面が非常に少なくなってきて、むしろ運動をする、選挙される方の側から言いますと、これは自由なもっと有効に時間を費やして、自分の有効な方法運動をしたいという時間が相当制約を受けるということになって、代理を立てるというようなこともだんだん出てきて、その形骸化が一層進んだ。こういう立場でこの問題を何とかやはり考え合わせなきゃならぬだろうということで、党内において一応話が決まったわけです。その段階でも、できるだけ回数を減すという方向でいこうかということで各党と御相談をいたしたわけですが、その各党との御相談の段階で、むしろ全廃してもその方がいいんじゃないかという御意見が出まして、そしてわれわれもその一致した御意見に基づいてこういう案をつくった次第であります。  それから、朝の街頭宣伝演説会等の制限の問題ですが、これは確かにおっしゃるような便宜もあります。また非常にその点も大事だと存じますが、これは駅前その他一定の場所で朝の早くから非常に静ひつを害して、そして選挙民方々が非常に困っておるという意見が相当出てまいりまして、われわれもそれをほうっておくわけにまいりません。そこでこういう案をつくって各党に御相談をして結論を得た次第でございまして、いろいろの意見がございますが、大方の意見はこれでまとまったということで御了承を賜りたいと思います。
  76. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 提案者ね、先ほど大木委員からの質疑を通じ、また私の質疑を通じても明らかなように、各選挙運動期間を大幅に短縮した。立候補届についてはわずか一日にした。運動の時間までも、しかも効果的な朝の時間帯、貴重な一時間を制限する。また政策や政見の発表できる絶好の機会である立会演説会を廃止する。さっきもお話のあったように、投票率を上げるために選挙の争点を浮き彫りにする、結構だと思うんです。だとすれば、有権者にわかりやすい選択の機会を奪い、有権者との触れ合いの場をいきなり廃止する、これは私は暴挙だと思うんです。どれ一つを見ても、私は改正ではなくて改悪だと考えます。とうてい納得できないんです。  したがって、私は、第一に、運動期間については衆議院議員選挙を除いて他の選挙現行どおり。第二に、選挙運動時間を朝の七時からできるように現行どおり。第三に、立会演説会選挙区ごとに創意工夫をころして、少なくとも五、六カ所できるようなもので存続をする。四番目に、当該選挙区における候補者を立てている政党については政連車が十分活動できるように。こういうようなやっぱり主権者たる国民の知る権利というものを保障しながらも運動できる、しかも権利が保障されるというような中での環境をつくっていく、こういうふうにすべきだと思うのです。ですからこれについてのコメントをいただきたい。  もう立っている間に時間が参りますから最後に申し上げますが、参議院通常選挙は御承知のとおりに去る六月行われました。次の通常選挙までは二年七カ月あるわけです。政治日程からして、十二月十八日投票衆議院選挙は周知のごとくですから、当面は差し迫った衆議院選挙だけにしぼって行うべきじゃないか、こういうふうに考える。参議院選挙にかかわる法制度は、われわれは本院独自、本院の良識によって慎重に、しかもきわめて民主的に、国民の合意を得てルールを確立すべきであると考えます。どうですか、大臣。  参議院においては、御承知のごとくに、本年六月における参議院通常選挙において比例代表選挙を初めての試みとして行われておるわけです。この種の選挙制度の基本にかかわる本院の特殊性もあり、その成果や欠陥についても抜本的検討を加える必要があると考えますし、広く国民参加の上でルールを確立すべきであると思うのです。したがって、より慎重に、政治の信頼の回復のためにも、衆議院のようにある日突然、しかもロッキード裁判で判決の日に厳正な審判に関心を寄せているときに、党利党略によって単独とも言うべき姿で強行採決を行い、選挙制度を一方的に変える。このような非民主的なことではなくて、本院は、国民的合意を得るためにも、第一に、主権者たる国民の参加の上で法制度改正を行うべきである、第二に、国会においても与野党の完全な合意によって改正すべきである、このように考えます。  私は、こういう基本的な立場に立って、以上質問を終わるわけでありますが、この際大臣並びに提案者から所見を伺い、さらに、最後であります、委員長にお願いをするわけでありますが、本院の良識を示し、慎重に審議され、いま申し上げたことを基本にして本法案の取り扱いをお願いいたしたい、このように強く要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  77. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 国民の知る権利というのは、これはもちろん尊重しなければなりませんし、また選挙制度というのは、選ばれる者というよりは選ぶ側の立場に立って考えなきゃならぬというのも賛成であります。しかし、一つ制度考えるときに、絶対にこれでプラスだというわけではないので、やっぱり全体を見てプラス、マイナスという観点からも考え制度は立てていくべきもの、したがって今回の改正は、私は彼此勘案した場合には妥当の線をいっておるものだと、こう理解をするのであります。  なお、参議院選挙制度については抜本的改正を要する、こういうお話でございます。私は、抜本的という言葉が適当であるかどうかはわからないと思います。思いますが、いずれにせよ、初めてやった選挙でございますから、これについてはいろいろ反省もあり、私はやり方の上において改正すべき点もあろうと思います。また、諸般の選挙制度の問題につきましては、先ほど来いろいろの場合で申し上げてきましたが、与野党でいろいろお話し合いを願うということは非常に望ましいというか、むしろそれが絶対必要とも考えるのでありまして、ただいまの御意見には、私は与野党でお話し合いをぜひしていただきたいと、こう思っております。
  78. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) ただいま御意見がございましたが、今回提案いたしましたものは、自由民主党がいろいろ案を確定する前に各野党の皆様方にも御相談をして、そしておおよそのコンセンサスを得、御意見を承り、そして皆様方の御納得のいく線でまとまったものでございます。そしてその後衆議院の審議の段階、あるいは参考人の段階、それらのもので総括をして、そしてこれが一番妥当な線であるということで御提案を申し上げた次第でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  79. 金丸三郎

    ○金丸三郎君 提案者自治大臣にお伺いいたします。  私は、選挙運動制度として考えます場合、質の面と量の面とがあると思います。今回の改正は質と量の両面にわたっておると思いますけれども、先ほど来の御質問を聞いておりますというと、特に量の問題が問題にされておるのではないか。端的に申しますと、衆議院選挙運動の期間が二十日から十五日になりますと、量がいわば四分の一減るわけでございます。また、選挙によりまして十日が七日になる、七日の期間が五日になると三〇%近い量が減らされてくる。そうすると、やはり質で補わなければならないわけで、この改正によって質的に量の減る分が補えるのかどうか、ことが問題の焦点の一つではなかろうかと、私はそのように考えます。  提案者の御答弁を承っておりまして、道路事情とかあるいはテレビ、ラジオの発達とか、いろいろなコミュニケーションの手段が発達をいたしましたというようなこと。また、わが国の選挙の実際を見ておりますというと、昭和二十年代、三十年代と、四十年代、五十年代に入ってまいりまして非常に端的にあらわれておりますのは、立候補者の数が減ってきたということでございます。これは私は一面は世の中が安定をしてきておるということ、それから再選、三選が非常に多くなりまして、なかなか新しい人が出にくいというような社会政治情勢もあるように思います。  わが国の選挙の実際を見ますというと、選挙の告示、公示等がありましてから本格的な選挙戦に入るわけでございますけれども立候補の準備といいましょうか、これが相当長期間にわたって綿密に行われるようになってきた。これが新人がなかなか出にくいということ。だから公示、告示が始まりますともういきなり終盤戦だということが新聞等でもよく報道され、また現実にそういうふうにわが国の選挙の実態はなってきておるのではないかと思いますが、このわが国の選挙の実態についてどのように提案者はお考えになっておりますか。  また、量的な制限は私は一つの流れ、時代の流れ、あるいは世の中の趨勢と、こういうふうにも思うわけでございますけれども、今回の制限は四分の一、三分の一というその点だけから見ますというと、これは相当な私は選挙制度は量的な減少になると思うわけでございますけれども、これでも十分に選挙運動は行える、こういうふうに提案者は確信をお持ちなのであるかどうか。  また、衆議院では参考人をお呼びになって御意見もお聞きになったようでございますけれども参考人はどのような御意見でございましたのか。そういうことについて提案者のお考えを承りたいと思います。
  80. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 金丸先生は選挙法についてのベテランでいらっしゃるので、私から申し上げると何か釈迦に説法をしておるようなかっこうで大変言いにくいのでございますが、いま御指摘のように、今回の改正案は、いわば選挙二つの要素であるところの選挙運動の質と量、この中で調整をして、量をある程度制限するということから質の方を近代的に改めていく、こういうところにわれわれは的をしぼって提案をしたような次第でございます。  この点を御理解をいただいておると思いますが、この点でいままで一般的には確かに長い期間にわたって、選んでもらう選挙民方々が自由濶達にやってもらうこと、そういうことが望ましいことではあるけれども、やはりそこで一般の社会の方々が常識的に近代的な文化の程度、あるいはいろいろのマスコミあるいは通信機関の発達に応じて適切なふうに改めてもらいたいという要請、これはおのずからわれわれに声として伺うことができるわけでございます。その点でわれわれは量から質へという立場で今度のような案をつくって御提案申し上げたような次第でございます。したがいまして、これは決して私は、この案で選挙の自由が束縛され、あるいはまた選挙民の方たち候補者を選ぶのに非常に大きな実質的な制限になるというふうには考えておりませんので、時代の進展に伴ったやり方でこの選挙の要請にこたえておると、こういうふうに確信をいたしておる次第でございます。  したがいまして、この前衆議院の段階で参考人方々の御意見を承りました。やはり両方の御意見がございましたわけでございますが、しかしその中でも、いま申し上げたような、時代に即応したやり方でいくことに賛成という意見が大体大きな方向であったと存じますので、私も非常に今度の提案について確信を抱いた次第でございます。  一部にそういう何か制限に過ぎるのではないかという御意見は、先ほど諸先生からお話がありましたような問題は確かに指摘せられたのでございます。これらについてもわれわれは十分考えながら、適切な事項改善充実のために必要な措置を講ずるよう努める、こういうことを決議条件に、附帯条件に付せられたわけでございまして、その決議にありますとおりその後もいろいろ話し合いを進めてきたわけで乙ざいますが、大方の、全部の一致した意見ということにはならない点が多うございました。したがいまして、そういうものはやむを得ずここで取り上げるという段階には至らなかったのでございまして、現在お手元に差し上げて御審議をいただいておりますものがそういう全体の立場から最も適切な案である、こういうことに結論を得た次第でございますので、その点を御理解の上御審議を賜りたいと思います。
  81. 金丸三郎

    ○金丸三郎君 次に、立会演説会の廃止と選挙公営について自治大臣と選挙部長にお伺いいたしたいと思います。  立会演説会については提案者は廃止というお考えでございますので、これ以上御質問をしてもしようがございませんから、大臣立会演説会についてどういうふうに御認識なのか、それに関連して選挙公営についてお伺いしたいと思います。  実は私も六月に参議院の地方選挙を経験した者でございます。どうも県によりまして立会演説会の回数は非常に違うようです。鹿児島県は離島がございます関係から、離島で一回ずつ二日、往復では四日取られます。全体で二十六回でした。だから、二十三日間の選挙運動の間にどうも十五日間が立会演説会に取られます。自由に活動できるのは八日です。そして、立会演説会の自分が演説を始める三十分前には来てくれということになっておりますから、三十分前には行っておらにゃなりません。大変な制約を受けます。  だから私は、先ほど高杉委員がおっしゃいましたように、立会演説会には本当に捨てがたいといいましょうか、これをやめることについては私自身も後ろ髪を引かれるような思いがします。しかし、今日は八〇%ぐらいはいわゆるサクラじゃないかと思います。各候補者が自分の支持者を集めておるとか、こういうことが非常に言われております。そしてそれぞれの候補者の演説が終わると聴衆がどっと帰っていく。これはまあ少なくとも私の県ではあちらこちらで見る光景でございました。  それから、今日はテレビが非常に選挙運動としては有効になってきた。また一面から申しますと、先ほど大木委員がおっしゃいましたが、物すごく電話が使われておることは御承知のとおりです。五十台、百合を準備して、電話番号簿を全部が分担して持っておって、もう全部にかけるというのがわが国の選挙の実態です。それと、街頭演説をするよりも握手した方が票につながるというのもわが国の選挙の実態じゃないでしょうか。  こういうことを考えてみますというと、私は、非常に選挙運動の自由がむしろ束縛されるような立会演説会はざらりとやめてしまうか、あるいは数回で、候補者がとにかく一堂に集まってそれぞれの意見を述べて有権者に聞いてもらうというようなことは、確かに捨てがたい立会演説会のいいところだと、これは私も認めるのです。これは認めるのですけれども、総体としてどっちがいいのかというような考えで、提案者としては、そういうような捨てがたいところもあるけれども、この際は質のいいところを残していい運動をやるようにして、今日選挙の実際はだんだん違ってきておりますから、そちらの方に候補者運動員が集中するようにしていいのではなかろうかという結論でこういう御提案になったのだろう、こう実は思うわけでございますが、自治大臣立会演説会の廃止についてどのように考えていらっしゃるかをお聞きしたいことが一つ。  それからもう一つでございます。私は、選挙公報がどうも官報みたいで全然食欲をそそりません。あの内容をもっと、写真を入れてもいい、漫画をかいてもいい、極端に言えば何でも自由に、掲載を申請する人のあれでもっと伸び伸びと、あそこで候補者選挙運動をする人あるいは政党が知恵を競うようなことができないものか。  それからもう一つテレビ、ラジオであります。これをもっともっと使わせるようにできないものか。公営にも一番なじむものでありますし、あるいは公営でなくて、もっと政党なり候補者テレビを使えるような工夫ができないものか。テレビで失敗すると落選するとまで言われるぐらいに、テレビは今日選挙運動の媒体としては非常に重要になってきました。また小さいテレビ局もふえましたし、まだ若干ふえるようです。それから、ラジオは聞くかどうかわかりませんけれども、もうラジオの短波等の放送は今後非常にふえるようです。私はこれもひとつ選挙部の方で今後の選挙公営の方向として、選挙公報がもっと興味をそそるような内容に改めるような工夫、それからラジオ、テレビの公営の拡充、あるいはこれをもっと選挙運動をやる人が自由簡単に使えるような方法考えていただけないのか。これをぜひ大臣にお願いをいたしたいと思います。
  82. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 私は、制度はこれは百点滴点であるというものはなかなかできないので、結局メリットとデメリットを比較しまして、そして当初の、当初というのか、その目標に向かってこれが最もべターな方法であると、こういう選択をするわけだと思うんですよ。そこで選挙制度の場合は、やはりなるべく知る権利というものを尊重する、そして選ぶ側の立場に立って制度考えるという大筋はそのとおりだと思います。  そこで今回の立会演説会の問題でございますが、これは確かに当初は運営上も私はわりあいうまくいっていたと思うのです。しかし、何としても来てくれる有権者が多くなければ意味をなさない。有権者が八千四百万もおられるのに、立会演説会に来てくださる方はまあ何%か、もう本当にわずかなものになってきた、どんどん減ってきたということ。そしてまたその実態を見ますと、特に今回の参議院の場合の東京都なんかは私は相当ひどかったと思うような運営であったと思うのです。そういうことになってきますと、それよりはもっとほかに選挙の運営、やり方でいい方法はあるのではないだろうか。そこで先ほどお話しの、いろんな選挙のやり方が変わってくる。  私は、今回この法律を通していただくと、従来の選挙のやり方にそれぞれ工夫がなされて、これは各党もそうだし、各候補者もそうだと思うのですが、それぞれ御工夫があって、なるべく皆さんに知っていただくという権利を活用するためのやり方をそれぞれお考えになっておやりになるだろうと思うのです。それは一つは、先ほどのお話のように自由にやれるという、選挙期間中の候補者の体の拘束が解けるという点だと思うのです。そういう意味では、運営次第では乙ざいますけれども、やはり選挙民とのコミュニケーションというものは候補者がいろいろお考えになるということになってまいりまして、それぞれ特異性を発揮されて、私は総合的には、結果としてはむしろいい結果が出るのではないだろうかと、こう思うのです。  それから公報とかテレビの問題でございますが、このコミュニケーションをふやしていくというのは時代の新しいやり方として当然の成り行きだ、趨勢だと思うのです。公報については一工夫も二工夫もせいという話で、ごもっともであります。私も賛成であります。ただ、余り、候補者が何でもいいから出してくれといって、政治というのは私はこれはまじめでなきゃいけないと思うので、語弊があるかもしらぬが、ふざけたと言ったら失礼でございますけれども、やっぱり政治というのはまじめな真剣な問題、真剣勝負なんでございますから、そういう感じはひとつ出すような工夫は欲しいなと、こういう感じはいたします。  それからテレビの問題は、これはできるだけふやしたいということでございますけれども、相手のあることでございまして、なかなか簡単にいかないということでございますので、今後とも一層テレビの方の御協力をお願いしまして、そういうマスメディアというものをふやしていく方向は確かに私はやりたいものだと思っております。
  83. 松浦功

    委員長松浦功君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時四十五分まで休憩いたします。    午前十一時四十四分休憩      ─────・─────    午後零時五十一分開会
  84. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公職選挙法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 田代富士男

    田代富士男君 質問に先立ちまして一言申し上げたいことは、午前中にも同僚議員からも御発言がございましたが、さきの衆議院におきましての質疑においては、いまだ審議が尽くされていない段階で自民党による強行採決が行われたのでございます。また、いま本参議院におきましても、会期末の日程の余裕のないときにこのような大事な法案が審議されるということはまことに私は遺憾であると思いますが、大臣といたしましていかがでございますか、この事態を。まず大臣からお尋ねいたします。
  86. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 私どもは行政のサイドでございまして、これは国会でおやりになっていらっしゃることでございますので、私がかれこれ申し上げる筋合いでないと、こう存じますので差し控えさせていただきたいと思います。
  87. 田代富士男

    田代富士男君 では提案者
  88. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 審議の途中とおっしゃいますけれども委員会ではそれぞれの時間を持って審議を尽くしておるのでございまして、最後の段階において、いろいろ党の御都合もあったんだと思いますが、御審議に参加いただけない段階で採決となったことは事実でありますけれども、審議はそれぞれ持ち時間の中で尽くされておると私は考えております。したがいまして、今回もえらい短期間のうちに急に審議をして結論を出すというようないまのお話でございましたが、これはしかし、事情があって一カ月間審議が中断したわけでございますが、これはだれの責任かということになると私はなかなか申すことの資格も能力もございません。しかし審議を尽くす時間は十分あったと思います。われわれは常にひとつぜひ審議に出ていただきたいことを希望しながら、じんぜん日が過ぎたということでございまして、その点まことに残念でございます。
  89. 田代富士男

    田代富士男君 参議院における審議はおおむね二十日間というのが慣例になっております。そういう立場から質問をしてまいりたいと思うのでございますが、最初に選挙制度改正国民主権についてお尋ねしたいと思います。  これまでの選挙制度改正は、いずれの場合も選ぶ側の国民立場よりも選ばれる候補の立場が重視されまして、また、同じ候補者でも現職が重視される傾向にあったと思います。これは御存じのとおりでございます。今回の改正案におきましてもこのことを指摘せざるを得ないのでございます。提案者はこの選挙制度のあり方についてどのような基本的な考えを持っていらっしゃるのか、最初にお尋ねをしたいと思います。
  90. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 選挙制度は、何といいましても議会制民主主義の基本をなすものでございますから、これは選挙をしていただく選挙民方々にも、できるだけ自由濶達に候補者の選別をしていただくということが望ましいことであり、また選挙をしていただく候補者の側からも、できるだけ意を尽くして、そして選挙民に自分の政見を訴えて御判断を願う、そういう開かれた、そしてできるだけ自由濶達な選挙が行われるということがきわめて望ましいことであります。したがって、その間いろいろのことで選挙の公正を害するようなことが行われてはなりませんし、そして公明正大な批判の中で選別をしていただく、選挙をしてもらう、こういうことになることが最も望ましいことであると存じております。
  91. 田代富士男

    田代富士男君 いま提案者は、この選挙制度というものは議会制民主主義の基本である、このように言われました。私もそのとおりだと思います。そこで、選挙制度というものは公正でなければならないと思います。そのために、各党各派の利害の対立というものを避けて、調整するためにも、内閣総理大臣の諮問機関としての選挙制度議会があります。これは御存じのとおりでございます。  今回の改正案は、前回の参議院制度改正のときと同様に、作成段階におけるこうした第三者機関の審議を経ずに出されたわけでございますが、公正を保つという観点から言うならば、また、いま提案者議会制民主主義の基本であると言われました観点から言うならばまことに遺憾であると思いますけれども、どのようにお考えでございましょうか、提案者として。
  92. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 選挙制度議会という総理大臣の機関がございますが、私は、この改正案というものは常に選挙制度議会を経なければできないものであるというふうには考えておりません。ことに今度は議員立法で提案をいたしましたものでございまして、これは各党の相談の上で、まず原案は自由民主党が選挙制度調査会検討をいたしたものについて、党としての決定の前に各党の皆様方にも御相談をして、そしていろいろ御意見も賜る、そういう機会を何度か持ったわけでございまして、その点は十分議員立法としての立場考えて、そして手を尽くしたというふうに考えておる次第でございます。
  93. 田代富士男

    田代富士男君 提案者は、私が最初お尋ねしたときに、この選挙制度というものは議会制民主主義の基本であると。いまこれは議員立法だからと、こういうような御意向でございますが、選挙制度を変えようという目的でおやりになっておりますけれども、その選挙制度改正しようとする場合には、改正の順番があると思うのです。私は、この選挙制度改正しようと思うならば、まず定数是正の問題、これが第一番じゃないかと思うのです。第二番が政治資金の規制の問題、それから第三番目が選挙運動の自由化、こういうものを優先すべきものと考えるわけなんです。だれが考えてもこれが最優先でございますが、この点に対して提案者はどういうお考えですか。また自治大臣はこのことに対してどういうお考えでしょうか。御両人からお答えいただきたいと思います。
  94. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 選挙制度改正というものにもいろいろの種類がございます。お話のように、選挙制度の基本に関する、いわゆる選挙制度の枠組みという基本的な問題についての改正というものは、これはやはり大変な重要問題でありますので、これらについては当然政府においてもいろいろ考えられなければなりませんでしょうし、普通でありますればこれは政府提案というかっこうになるのが通常の例であろうかと存じます。そのような場合には、これは基本に関する問題でございますので、総理はその発案に当たって自分の諮問機関に諮問をして十分な議論を進めるということも一つ方法であり、また当然の処置ではないかとも思いますが、今度の問題は、そういった基本の枠組みの問題ということよりも、選挙運動の仕方、そしてその仕方をどういうふうに改めていくかというようなことでありますので、前にも政治資金の一部の改正、それから選挙運動の仕方の一部の改正、そういうものがすでに行われましたわけでございますが、それらはいずれも選挙制度議会に正式に諮ってその諮問を受けてからということの手続は必ずしも踏んでいないわけでございます。  午前中にも私が申し上げましたように、選挙法というのは、いま申し上げました比例代表にするとかあるいは小選挙区制にするとか、あるいはその他大きな枠組みを変えるというような問題については十分慎重でなければなりませんし、これは党派のそれぞれの立場からいろいろの問題のあるところでございますので、これについては十分な検討を要することは言うまでもありませんが、その他のことにつきましては、これは不磨の大典というようなものではございませんで、やはり時勢進運とともに適切な運営を期していくということも考えられなければならない。そういう立場から考えますときに、今度の問題も私は手続としては十分各党の御意見を聞き、そして進めてきたことでございますので、私はそう大したそごはなかったというふうに考えておる次第であります。
  95. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いまお挙げになりました三つの大きな課題、そして今回の改正、これは私はどれが先だ、どれが後だと順番に並んでいるのではなくて、横に並列で並んでいる。だからできるものからとにかくやっていかなければなかなか進まない。現実の問題で、実際問題としていまお挙げになりました三つの問題を進めていく上において、先ほど来まず与野党間で、国会の場でひとつお話し合いをいただきたいと、こういうことでございますが、これも私は率直に言ってやっぱり相当手間がかかるだろうと思うのです。ですから私は、この三つの問題は一つ一つ切り離して考えてもよろしい、三つは連動しているわけじゃないんだと、こう思うので、できるものからひとつ私はやっていただきたいと、こう思っております。したがいまして、どれが先だ、どれが後だというお考えではなくて、できるものから次々とひとつ新しい時代に即した選挙制度改正といいますか、あり方を目指してやっていっていただきたい。私どもそういうようなつもりで今後とも取り組んでいきたい、こう思っております。
  96. 田代富士男

    田代富士男君 いま自治大臣は、できるものからやっていきたいと。まず、私が第一番目に取り上げました定数是正の問題でございます。この問題は、御承知のとおりに、議会制民主主義のもとにおきましては国政に国民の声を正確に反映するということが最も枢要なことであることは私が言うまでもございませんが、そのためには選挙の公平を確保するということが肝心ではないかと思います。そういう意味から、選挙区の定数の不均衡というものは常に解消していくように努めるべきでありまして、最高裁の判決におきましても、この問題は午前中にもいろいろ論議されましたけれども、国会の怠慢がしばしば指摘されているところであるわけでございます。できるところからやっていかなくちゃならないという大臣お話でございますし、最高裁からのそういう指摘もありますから、そういう意味から私は第一番目にこの問題を取り上げなくちゃならない。そういう意味から定数の不均衡是正にどう取り組んでいくのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  97. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 今回の最高裁の判決を待つまでもなく、この問題は前々から衆参両院ともそれぞれの問題を抱えていたと思います。しかし今回の最高裁の判決は、やはり是正に合理的な期間というものについての発想がございます。したがいまして、そういう考え方で速やかにひとつ是正をするようにと、こういう判決の内容でございますから、もちろん私はそれに沿って、午前中にもありましたように、自民党選挙制度調査会で速やかにこの問題の解決に向けて取り組む、こういう姿勢でございますし、各党の皆様方も私は同じ気持ちであろうと思うのでございます。  速やかにというのがいつごろまでかと、こう言われるとこれもまたちょっと困るようなことでございますが、文字どおりひとつ速やかに、この問題についての何とか私は各党話し合いの場というものをつくっていただいて前進をしていっていただきたいなと。私どもももちろんそれに協力をいたしまして政府としてもやらなければならない、こう思っておるところであります。
  98. 田代富士男

    田代富士男君 この問題も取り組まなくちゃならない最重要課題であるという、そういうお考えであることはある程度理解ができるわけでございますが、そこで、問題を解決されるときに、この定数是正の場合私はちょっと申し上げたい。それは、常々、法の附則第七項の改正でいままでの定数是正をやっておいでになりました経過があるわけなんですが、定数というきわめて重要な事項を取り扱うにいたしましては、そのような扱いでなくして、別のもっと、重要な問題でありますから扱い方があるのではなかろうか。このやり方は手軽過ぎるのではないか。そういう意味から、定数の是正は附則の改正で済まされるのでなくして本則の別表の改正によるべきだと思いますけれども、どうでしょうか。私も大阪でございますが、大阪の衆議院の一区と三区の問題は具体的な例としていまのことで言えると思うのですけれども、これは本則の改正を明確に、この問題は大事でありますからやるべきだと思いますが、どうですか。
  99. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) これは定数是正をいざやろうというときに、具体的な内容に入っての問題だと思いますけれども定数是正のやり方あるいは内容、あるいは程度といいますか、どの程度のことをおやりになるのかということなどを踏まえて、その上でやり方、いまお話しのようなどういうやり方がいいかということになってくるのでありまして、それを見た上で、いままでのはやや暫定的な措置というような考え方もあったと思うのです。しかし根本的にということであれば、そういうようなお考えも私は確かに出てくる、こう思っておるのです。
  100. 田代富士男

    田代富士男君 いや、根本的な考え方は、それを思っているじゃなくして、早急にやらねばならないという決意発表をいまさっきおやりになったけれども、どうですか。そういう話だけじゃなくして、大臣の決意をひとつ。
  101. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) それはこれからのお話し合いの中身になってくることでございますから、まずその入り口で、どういうやり方でどういう場でお話し合いになるかということが始まって、それから後どういう内容になってくるかと、こういうことになるのだろうと思うんです。
  102. 田代富士男

    田代富士男君 次に私は、第二番目に大事であると申し上げました政治資金規正法の問題についてお尋ねをいたしますが、この政治資金規正法附則の第八条では、「この法律の施行後五年を経過した場合においては、新法の施行状況を勘案し、政治資金の個人による拠出を一層強化するための方途及び会社、労働組合その他の団体が拠出する政治資金のあり方について、更に検討を加えるものとする。」と、このようにございますけれども、現在はすでに八年を経過しておりまして、明らかに現在の状況法律違反の実情ではないかと思いますけれども、政府として速やかに措置をとるべきではないかと思いますが、この問題に対してどうでしょうか。
  103. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 政治資金規正法の改正というのは、やらなければならないし、同時に、なかなか各党事情というものを考えるとむずかしい問題もたくさんあるという長年の課題だと思うのです。この八条では、個人による拠出を強化するという方途、それから会社、労働組合その他の団体が拠出する政治資金のあり方というものにさらに検討を加えようと、こういうことになっているわけでございます。これはやはり各政党のよって立つところのその財政基盤もそれぞれ違うわけなのでございまして、それは各党政治活動そのものにも直接関連してくるという、現実問題としては各党にとって大変に重大な問題になってくるわけでございます。  個人の拠出ということにつきましても、この法律が出ましてから後の実情を見てみますと、率直に言いまして余り進んでおりません。したがって、もっとこういうものが進むような方途を考えなきゃならない。同時に、もう少しほかにも知恵を出す余地はないのかということも私ども考えてみなきゃならないのではないか、こういう感じもいたします。私どももそういう事態を今日まで見守ってきたという経過もございます。  これにつきましても、やはり私どもが行政の立場からというよりは、これは各党間の政治活動の根本に関する問題でありますから、まあこれもと言ってはなんでございますが、各政党間で、一体この問題の進捗の上にどうしたらいいかということをひとつ御相談いただいたらと、こう思っております。
  104. 田代富士男

    田代富士男君 では次の問題に移ります。  住所の移転と投票権の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、去る五十五年三月二十四日、私は参議院の決算委員会におきまして、有権者でありながら選挙人名簿に登録されない人があるという登録制度の欠陥につきまして、三つのケースを列記いたしまして指摘をいたしました。そして、その一カ月後の四月の二十三日には、まだ当時大平総理、生きていらっしゃいましたけれども、大平総理に対しまして同様趣旨質問をいたしまして、欠陥の改善の約束をとったわけでございますが、私の指摘いたしました三つのケースにつきまして、その後公職選挙法改正がございましたが、どのように解決されたのか、自治省より説明を求めたいと思います。
  105. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) たしか五十五年三月のいまの先生の御指摘は、その前の年、五十四年九月から十月にかけて行われました総選挙のときの選挙時登録の省略に端を発し、それからさらにそれを一般論にして、現在のシステム全体について御指摘になったものだと思います。  その基本は、要するに、転出者は転出してから四カ日後には旧住所における登録を抹消される。転入者は転入後三カ月たたなければ登録されない。そして、登録される時点が選挙が始まる前であるために、その選挙運動期間とその三カ月というものを足すと、その期間は四カ月とぎりぎりに重なってきている。転入後すぐにでも届けを出したものはとにかくとして、そういった両方から落とされてしまうものがあるという御指摘でございました。  その後、直接ではございませんが、五十六年に行われました公職選挙法改正で、一つは、それまで省略されておりました、つまり九月の直後にありました選挙では省略されておりました選挙人名簿の登録、選挙時の登録というものが省略されない手続になりました。このことによって、五十四年十月に生じたような大きな欠陥というものは一応カバーされた。  かつまた、定時登録そのものにつきましても、従来は九月一日現在で十日に登録をする。これがまたそういう期間の問題があったわけですけれども、それを九月二日に引き上げるという修正が行われました。その結果、これは先生の御指摘に対する直接のお答えではなかったかもしれませんが、ある程度の改善になったと考えております。  それから、話が少し先走るかもしれませんけれども、これも直接のあれではありませんが、今回のような期間短縮法案が成立すれば、その意味でもいまの三カ月に足す分が減りますので、かなりのその見地からする改善にもなるのではないだろうかというように思っております。
  106. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、今回提出されております自民党案と、転出、転入に伴う投票権についてお尋ねをいたしますが、有権者の住所の移転、すなわち住民基本台帳に定める転出と転入が過料の科せられない二週間以内に行われるとして、衆議院選挙及び参議院選挙運動期間がそれぞれ今回五日間短縮されたわけでございます。そうしてみた場合、自民党案で考えた場合、有権者の投票権はどのようになったのか、まず最初にお尋ねいたします。
  107. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 大変恐縮でございますが、そのもとが参議院決算委員会の政府答弁から発しました問題でございますから、私からお答えをさせていただきます。  恐縮でございますが、むしろ後ろにお書きになりましたその資料の線に近いのではないかと思います。具体に一々は申し上げませんけれども、今度十五日という関係になりますと、転出四カ月でございます。片方は転入三カ月、そしてその後十五日目に選挙と、こういうことになりますから、選挙期日を四カ月目に合わせて逆算してきますと、三カ月と十五日のところでその四カ月との間に差ができます。そうすると、恐らく十六日だろうと思いますが、十五日、十六日ぐらいの余裕がその間にできますので、その意味では転入後二週間の転入届を提出した者につきましては、十四日はその十六日の間に入りますので、その点では一応解決をしているのではないかというように思っております。
  108. 田代富士男

    田代富士男君 提案者にお尋ねしていますけれども、いま説明がありましたけれども衆議院選挙の場合は一応はこれが解決されているんです。しかし、参議院選挙にこの自民党案を適用した場合に解決されていないんです。この実態おわかりですか、提案者。どうですか、片岡さん。
  109. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 片岡先生に対する御説明みたいになってしまいますけれども、いま申し上げましたように、差が十六日、つまり一カ月から十五を引いて十六日で、十六日が十四日よりも大きいからいいぞと、こういう議論をしているわけでございますから、参議院の場合は引く数字が十八になりますから、したがいましてそこのところは、一カ月から十八日を引きまして残った十二日でございますか、まあ月の大小という問題もあるわけですが、いずれにせよ十四より少のうございます。したがいまして、ある特別なときに転入なさった方が十四日ぎりぎりに提出なさったような場合には、両方の名簿に載っていないという状態が生ずることがございます。ただ、これは話の出発点がそもそも十四日間という住民基本台帳法の上の要請といいますか、その不可罰期間というものを直ちに選挙の方へ移すというところから出発しております。したがって、法の不整合であるとか、それはなければない方がいいとかいう意味では確かに仰せのとおりでございますけれども、片一方で、選挙選挙という側面もないわけではないのだということを御理解いただきたいのでございます。
  110. 田代富士男

    田代富士男君 それはいけませんよ、そんな言い方は。ほかの省の法律はほかの省の法律だと、そんな言い方はありませんよ。私はそれは納得できません。自治省は自治省のをやっておけばいいんだ、ほかの法律はほかの法律だと。全部法律というものは、その法律を守っておけば自分自身も守られていくんだというのが国民に対する立場と違いますか。これはぐあい悪いが、しんぼうしてもらわなくちゃいけません、そんな言い方は納得できません。整合性なんかありはしませんです。  だから、提案者がこういう実態があるということをわかって今回のこの選挙制度の改革案をお出しになられたのか。衆議院選挙の場合はこれは解決しているんです、この表でいきますと。(図表掲示)  旧住所で投票できるのは四カ月前で、投票日の応当日以降転出している場合である。だから、衆議院選挙、今度の選挙まだ決まっていませんよ、仮定してやりましょう。十二月十八日ということが言われている。そうしますと、この四カ月前が投票日の応当日になるわけなんですね。そうして十二月の三日が公示日となる。これは仮定ですよ。そうしますとこの三カ月目が基準日の応当日になります。投票日応当日と基準日応当日は十六日の期間があるわけなんです。だから、旧住所で投票できるのは四カ月前の投票日の応当日以降に転出している場合。これからこちらに転出する場合は旧住所。新しい住所地で投票できるのはこの三カ月前の基準日の応当日までに転入している場合。だから基準日の応当日は、ここまでに転入している場合には新しい住所で投票できるわけなんです。  そうすると、いま言うように、住所を移った場合には住民基本台帳法というものがありまして、十四日以内に手続をしなくちゃならない。十四日を過ぎますと過料を取られるわけなんです。だから、国民法律を守るとして十四日以内にやった場合には、ここへ転入してきて十四日以内にやった場合には新住所で投票できるわけなんです。だから今度の衆議院選挙においては一応は免れているわけです。  今度はこれを参議院選挙に当てはめてみます。参議院選挙は、私も先日終わったところでございますが、六月二十六日が投票日でした。これで当てはめてみますと、六月二十六日の投票日の四カ月前が投票日の応当日です。そして公示日の二日前が基準日になっております。衆議院参議院は一日違います。基準日の三カ月前が基準日応当日になるわけです。そうすると、いまの説明でいきますと、旧住所地で投票できるのは四カ月前で、投票日の応当日以降に転出届をした人です。新住所で投票できる人はこの基準日応当日のこちらでなくちゃならない。この期間は、二月の場合は二十八日しかないから、三月の六日までのこの間は要するに九日間しかない。そうすると、いま私が言いましたとおりに、この住民基本台帳が十四日後と決めているのはけしからぬというような言い方をされたけれども、この住民基本台帳を守っている人は法律を守っている人、この人は十四日以内に、この十日目にその手続をとっても新住所では選挙はできないのです。  だから、今回の改正案、この自民党案では衆議院の問題は解決している。しかし参議院の問題は解決されていない。提案者、この意味おわかりでしょう。それなら私提案者に聞きます。私は今回の六月の選挙をとりましたが、これは二月のこういう二十八日というあれがありましたけれども、二月と六月というケースの場合は九日なんです。これが一カ月ずれまして七月と三月の場合には、今度は投票日の応当日と基準日の応当日のこの日にちは何日になりますか、提案者。御存じでしょうか。お答えいただきたい。何日になりますか。
  111. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) どうも私、頭が悪くて計算がよくできませんが、それはなかなか特殊な場合でありますね。われわれも自治省と立案のときにはいろいろ相談をして、いろいろなケースを考えながらやったのでありますが、その場合には、そういう困るような事態はないという段階で決意をしたわけです。
  112. 田代富士男

    田代富士男君 それなら、その段階でこの法律をつくられたら、この中身はここまで詰めずに議員立法の作業は進められたのですか。これは特殊な例と言うが、提案者、これは特殊な例でも何でもありませんよ。こちらの話を聞いてくださいよ。  いま提案者は特殊な例とおっしゃった。特殊な例ではありません。すべてこのように法律で定められてある、それをこのように図解して説明をしているんです。特殊な例でも何でもありません。衆議院選挙の期間を短くする、衆議院におきまして皆さん議員立法された、これで衆議院の問題は一応は解決しているんです。参議院の問題は一つも解決していない。参議院はどうでもいいのか。衆議院さえちゃんとしていれば参議院なんか知らないよと、こういうもとにつくられた今回の議員立法であると言われても仕方がないと思うんです。提案者どうです。
  113. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) それは申し上げるまでもなく、何も衆議院だけがうまくいけばいいので参議院はどうでもいいなんということは毛頭考えておりません。
  114. 田代富士男

    田代富士男君 現実はどうですか。現実はこうなっている。これはどうなんですか。
  115. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) その問題はひとつ自治省から。
  116. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 私の方がそこのところを、何日どうだという話を詳しく提案者に御説明を申し上げておりませんから、御存じないのはごもっともだろうと思います。  つまり、私ども考えましたのは、今回の改正というものは、もちろん私どもも田代先生の御指摘がこのことを考えるときに頭になかったと言えばうそでございまして、意識はしておりましたけれども、これをゼロにすることを目標にしてやった改正ではございません。しかしいずれにせよ、これは田代先生の御指摘に対しては、プラスに働く部分でございます。先生の御指摘ではございますが、衆議院についても五日、参議院についても五日改善が図られたわけでありまして、たまたま参議院の方はその五日ではカバーできないだけの問題がありましたので、何日か残ったという形になっているのでございまして、いずれもプラスに働きますものですし、繰り返して申し上げますが、これが主目的でなかったものですから、片岡先生にここのところの関係を一々申し上げておりません。したがって、その点はもう無理のないこととお許しをいただきたい。いずれにせよ、かなりの改善になっていることは確かだという形でお受け取りをいただきたいのでございます。
  117. 田代富士男

    田代富士男君 衆議院の方は両方とも解決になっているという、これが頭にかすかにあったと言うけれども、なかったからこういうことが起きているんです。  それで、衆議院の方はこれで全部住民基本台帳法の十四日でおさまるかといいますと、これはおさまらないのです。私が一応おさまると言ったのはその意味なんです。おさまらないのは、今回の参議院選挙投票日の六月二十六日に衆議院投票日があったとしましょう。そうした場合に投票日の応当日は同じく二月二十六日になる。そしてこの基準日の応当日が三月の十日になる。だからこの間は十三日になる。そうしますと、住民登録を法に定った十四日以内にという最終日の十四日になった場合には、法を守っていてもそこでは投票できないのです。たとえ一日たりともできない。だから、これも衆議院も厳密に言うならば、一応は解決されているけれども、深く突っ込んでいった場合は解決されていない。これは今回のを考えるときに出してなかったんです。だから提案者に言われてもだめですよ。しかし、一つ法律をつくるときには、われわれもその作業をしたことがありますが、いろいろな、法制局を呼び、各省の関係どうなっているかとか細かい詰めをやって一つ法律をつくり上げるのです。皆さん方はそれを御苦労していらっしゃる。われわれも一つ法律をつくるときは大変な苦労をする。それにこれは抜けておりましたと、こういうお粗末な今回の提出されたあれでしょうか。どうでしょうか。
  118. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 繰り返しになりますが、私どもとしては田代先生が御指摘になっていたことについてもかなりの解消になる、今度の十六日の期間が。いままでですと十一日間であったんですね。今度の場合の九日間がいままでは四日間であったわけです。そこまでは解決しているので、このことは、田代先生がかつて御指摘になったことの解決のための立法ではないからそのことは完全に解消しないけれども、少なくとも田代先生の御指摘になっておられた方向から考えても一歩の前進であるという意識は確かに持っておったのでございます。  実を申しますと、その十六日間というのは、今度は逆に名簿の立場から出しますと、その方が双方の名簿に載っていらっしゃる期間ということになりましょうか。それから九日の分もたしかそうなりましょう。それから、この場合は三カ月と十五日でこうやりましたけれども、三カ月一週間というような場合にはこの期間はさらに延びている。たとえば町村選挙のような場合にはさらに延びているわけです。そういう意味で、実は名簿の方の三カ月とか四カ月とかいうのは、ある意味でそういう二重登録の防止であるとか、そういう名簿の方の要素も一つございまして、おっしゃるとおり十四日というものをまるまる取り込めれば一番いいのかもしれませんけれども、本来ほかのところから出発した両方の話でありますのでなかなか完全に一致していない。こういうギャップがあるということはわれわれも今後とも頭にとめて、今後の改正についていろいろな見地から検討したいとは思いますけれども、今回の改正についてはそういう意味で一歩前進というようにおとりをいただけるとありがたいのでございます。
  119. 田代富士男

    田代富士男君 それでお尋ねいたしますが、法第二十一条では「被登録資格等」について「引き続き三箇月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者」と規定してありますけれども、「三箇月以上」とする理由は何でありましょうか。
  120. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) これはいわゆる選挙人名簿の登録要件と称するものの住所要件に当たるものでありまして、一体どういう人をその市町村の選挙人名簿に登録をするか。このときに、現在日、たとえばこれで言うと基準日と書いてある日がそれでございますが、その基準日現在においてその人はその名簿に載る資格があるかどうかということを調べるわけですけれども、その日にそこに住所を持っているからといってそれを直ちにそこの名簿に載せるわけにもいくまい。やはりその選挙区と申しますか、その市町村と申しますか、それとその方の住所とがある程度恒久的というか、永久的というか、永住的というか、永続的というか、の形で結びついていることをやはり必要とするのではないかと思われます。  そういった意味で、いままでも選挙人名簿の登録要件としては一定期間の住所を要することということが上がってまいりました。それはかつて一年であったこともあります。六カ月間の住所を要するということにされたこともあります。現在はその期間が三カ月とされ、それから住民基本台帳制度ができてからは、その三カ月の住所というところを、三カ月間引き続いて住民基本台帳に登録されているというかっこうで住民基本台帳とリンクをしたという形でございまして、そういったようにそこの住所の永続性を保証するということ。それからもう一つは、ある意味でこの名簿は地方公共団体の選挙人名簿でもありますので、地方公共団体の選挙権の要件たる三カ月ということとダブらせるというような配慮もあったのではないかと思っております。
  121. 田代富士男

    田代富士男君 いまのお話のとおりに、一つは住所の永続性を保証する。その地の地縁を濃くするという立場意味じゃないかと思いますし、それと名簿の正確性を期する立場から三カ月と、こういうことで三カ月ということがなされてきている。これは過去に一年のときもあった、それがずっと諸整備が整って三カ月まで来たと、こういう御説明でございます。  それで、私がいまこの図表で、まだこれ以外にもいろいろな例がありますけれども、時間の関係で三つの例を私きょうも取り上げましたけれども、これでこういう欠陥があるわけなんです。これはお認めになっているわけだ、こういう欠陥があるということ。これを努力すれば解決できる方法があるんです。私がそれをやるわけにいきませんから提案をいたしますが、自治大臣、これによって解決できるんです。よく見ておいてくださいよ、大臣。  ここで三カ月と、このようにありますけれども、これはいま言ったとおりに地縁を濃くする、あるいは名簿を正確にするために三カ月としてある。三カ月ですから約九十日。この三カ月であるとしているのを、もし八十五日、この基準日応当日を八十五日。八十五日が悪いとするならば八十日としたなら、この間十日のずれです。八十五日か八十日にこの基準応当日をずらした場合には、いま私が指摘しました、私は五十五年にもずっと指摘してきたが、言うなればこれはパートスリーです。このパートスリーの私が指摘した問題点は、これを八十五日か区切りが悪ければ八十日にするならば全部解決するんです。この点検討する余地はないのか。また、問題を指摘して、問題があるじゃないか、こうすれば解決するじゃないか。解決方法もこれは不可能ではないと思うのです。この点大臣いかがでございますか。これは大臣から。指名する人がきょうは答えないというのはどういうことなんですか。大臣答えてくださいよ。
  122. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) かなり技術的な問題でございますので、私からお答えを出し上げさせていただきたいと思います。  おっしゃるとおりでございまして、たとえば三カ月をそれこそ八十日にしなくても、早い話が二カ月にし一カ月にすれば、こういう問題は雲散霧消してしまうことは御指摘のとおりなのでございます。しかしながら、これは先ほどから申し上げましたように、やっぱり名簿の正確性と、それから名簿に載る人とその土地とのつながり、それは三カ月でなきゃならぬのかとおっしゃると、これはまた問題なのではぐざいますけれども、長い間を通じて三カ月という定着してきたルール、約束、しきたりみたいなものでございます。それを急に何日に改めるということになると、そこにはいろいろ問題も出てこようかと思います。  たとえば、地方公共団体の選挙権の方をいじらないで三カ月未満で載せてしまいますと、結局選挙権を持っていない人間を名簿に登載するというような問題も起こります。それから、そういった方がその後さらに転出した場合の扱いを実はちょっと複雑に変えなければならぬような側面もございます。また、実はただいま一年から六カ月、三カ月と、こう申しましたので、そういうように縮まっていく方の印象ばかり与えたかもしれませんけれども、実はわれわれの聞いております中でも、現在の三カ月というのは短過ぎるという御議論も実は片一方にはないわけではないわけでございまして、一年とかいうことを決めて、たとえば一月一日現在の住所か何かで一年間ここの有権者はこの人と、こう決めてしまって確定した方が選挙人の確定という面ではいいのではないかという意見もないわけではぐざいません。  そういういろんな複雑な問題がございまして、八十五日にすれば解決をするということは御指摘のとおりでございまして、そのことに異論を挟むわけでございませんけれども、今後の研究課題ということにさせていただきたいと思います。
  123. 田代富士男

    田代富士男君 そういうかたくなな、改善策を言っているのに指摘されたことに対してそういうかたくなな言い方というのは、それはそういう言い方もあるでしょうけれども、指摘して改善策をこうすればいいじゃないですかと。投票率を上げるために各地の選挙管理委員会がどれだけの予算を使っていますか、投票率を上げるために。その地で選挙さすためにあれだけの金を使っているじゃないですか。そうでしょう。  そういうことから考えたならば、これが八十五日か八十日。これは一カ月でもいいですよと、そんな極端な言い方をしているんじゃないのですよ。この問題が解決できる範囲内ならば八十五日でできるから、区切りが悪ければ八十日として何の支障がありますか、いろんなことをおっしゃったけれども。その気で検討しようと思うならばできないわけないじゃないですか。だから私は欠陥を指摘して、解決策はこれだけですよと。そのくらいは前向きに検討するくらいのあれがなければ、自分たち都合のよいのはこれはこうこうこうだ、指摘された分についてはかたくなに守る、そういうのはよくないと思うんですが、大臣どうですか、問題点と解決策を言ったにもかかわらず、それがどうも煮え切らないあれでは。指名する人が答えないなんて、答えられないのですか。明確にこの問題を私は解決すべく指摘しているわけなんですが、どうですか。
  124. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 大変具体的な問題だし、それからややテクニカルな問題でもあると思うんですよ。だから少し時間をかしていただきたい、こういうことです。それで、さっきも選挙部長も、研究課題とさせていただきますと言っているのですから、そんなにかたくなでもないと私は思っているのですが、そういう意味で時間をかしていただいて預からしていただくということにしていただきたいと思います。
  125. 田代富士男

    田代富士男君 いや、預かるだけではどうにもしようがない。検討をしてくれと言っているのですが、どうですか、大臣。預かって、これ検討をしなさいと。私は過去に二回指摘して、徐々に解決しているけれども、まだここらの問題があるけれども、いま言ったことをやれば過去から指摘してきた問題が全部解決できると言っているのですから、解決できる方法を言っているのですから。どうですか、検討してくださいよ。
  126. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 預かるということは検討しますということなんですよ。
  127. 田代富士男

    田代富士男君 はっきり言えばいいじゃないですか、それならば。それじゃ次に進みます、大臣検討をするということでございますから。  それで、いろいろ質問を準備しておりましたが、立会演説会のことについてお尋ねをしたいと思いますが、きょうは午前中にも同僚委員からこの問題が出されておりまして、何かと批判が起こっていることも事実でございます。改善すべき点があることも事実でございます。私も参議院選挙を四回やってまいりました。そういう立場からも考えまして、この問題、検討すべき問題はあるかと思いますが、規格品と言えば語弊がありますけれどもテレビやラジオの政見放送をふやすことと引きかえに、手づくりの味とも言われるべき立会演説会そのものを全廃するというのは行き過ぎではないか、私はこのように思います。  立会演説会では、立候補者と有権者が直接接触することができるという利点があるばかりか、立会演説会の全廃は困るという意見も出ております。提案者は、この立会演説会を全廃した方がよいという声があったからこういうことをやったんだという午前中のお答えをしていらっしゃいましたけれども、特に聴力障害者の方々から立会演説会はやってもらいたいという声が非常に強い。だから立会演説会における手話通話は、聴力障害者にとりましては貴重な選択のための判断材料を与えるものでありまして、むしろこの立会演説会において手話通話がなされていないところを拡充してもらいたいという、そういう要望があるわけなんです。これはもう事実でございます。また、たとえすでに支持している人を決め、まあきょう委員会の発言の中でサクラとかいうお言葉をどなたか使っていらっしゃいましたけれども、余りそういう言葉は使わない方がいいと思いますが、支持する人を決め、自分の政見や政策と異なる有権者に対してでも候補者として直接訴えかけるということは、もう皆様御承知のとおりに、民主主義政治を育てる意味からもきわめて有益ではないかと私は思います。  そこで私は重ねて伺いますが、公営選挙の拡充という観点からテレビやラジオの政見放送がふえることは望ましいけれどもテレビやラジオの政見放送の回数がたとえどれだけふやすことができたとしましても、立会演説会が全廃されては失うものが多過ぎるのではなかろうかと私は思います。だから、開催数だとか不規則発言の対策だとか、こういうような立会演説会の運営に工夫をとらしまして存続すべきであると思いますが、提案者のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  128. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) ただいまの立会演説会についての御意見でございますが、確かに最初の採用になった発想の段階では、これは本当に一堂に会して候補者が一定の時刻の間に意見を述べる、こういうことでございますから非常に望ましいことであり、私はやはりこれも公営選挙としては大事な点である、こういう認識も持っておったわけでございます。したがいまして、党内の意見取りまとめのときもいろいろございまして、まあ最小限維持をしてはどうかというような意見もございました。しかしながら、われわれは最初柔軟な考えでもって野党の皆様方と折衝をいたしたのでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたが、まあそういう内容まで申し上げることはどうかと思いますけれども、実はわれわれの党としては比較的柔軟な考えでもって御相談をしたのでございますが、野党との御相談の段階において、形骸化していることについては皆認めざるを得ない、だからこの際やはり全廃ということにしてはどうかという御意見が非常に多くて、結局それで皆さんの合意が成り立ったと、こういうことでございましたので提案をいたした次第でございます。  ただいま特殊な、身体障害の方のたとえば手話を立会演説に採用するというようなことで、これらの方々の御要望にかなえるようにだんだんとできておるという御指摘でございますが、これも‐本当にそういう方々のために望ましいことではございますけれども、このごろテレビでも手話を交えてのテレビが相当ございます。ですから、これはなかなかむずかしいことでしょうが、むしろ前向きの考え方としてテレビ政見放送の中にそういうものを取り入れていただいて、そして身体障害者のそういう皆様方の便宜を図る、皆様方の選挙人としての立場を保護してあげる、こういうことも一つ考えではないか、こういうふうに思います。手話のために皆さんが一応コンセンサスを得たものを、立会演説をやるという立場よりも、新しい近代的な方法によって選挙民の皆様方に選挙に御参加をいただく、こういうたてまえから、むしろ私が申しましたテレビに手話を取り入れていただくような考え方でいくというととの方が望ましいのではないか、こういうふうに思っております。ただ、これができることかできぬことか、これはよくNHK、民放の方々と御相談をしなければなりませんが、立会演説についてはいま申し上げたような基本的な考え方を持っておることを御了承賜りたいと思います。
  129. 田代富士男

    田代富士男君 次の質問に移りたいと思いますが、通常の場合、衆議院選挙または参議院選挙では、それぞれの政見放送または経歴放送について、その収録から放送までどういう手段で行われていらっしゃるのか。特に東京圏とローカル圏の放送局ではどのようになっているのか。これはNHKの方に参考人に来ていただいておりますので、このことをまずお尋ねしたいと思います。  それと同時に、ふだんのときですらこれは大変じゃないかと思いますけれども、まして正月番組や新番組の収録されるころの東京のNHKのスタジオというものは、フル回転しなければならないのじゃなかろうかと思うのです。この上に衆議院選挙が重なった場合、あるいは法案成立、公布、施行から公示までに余りにも時間がないと予測されます、いまのところ。決まったわけじゃありませんけれども。今回のような場合、果たして遺漏なく対応できるのか心配される面がありますけれども、忌憚のない御意見を聞かしていただきたいと思います。
  130. 尾西清重

    参考人(尾西清重君) お答えいたします。  まず、政見放送の収録から放送までの手順についてのお尋ねでございますが、これは大電力圏の東京、大阪と、それから地方と全く変わりはございません。  申し上げますと、収録から放送までの間に、われわれといたしましては、収録いたしましたものを放送の順に並べて時間以内におさめる、われわれの言葉でアラ編集と呼んでおりますが、そういうものをまずいたします。それから二番目に、収録いたしました素材の間、間に候補者方々の御紹介、あるいは最後の方には次の選挙放送の時間その他告知アナウンスなどを入れる、いわゆるアナウンス枠の作成ということをいたします。三番目に、一定の時間帯ごとに、完成した番組にする作業がございます。これを私ども言葉では完プロ作業と言っておりますが、この三つの制作行程というのがございまして、これは東京全国どこも変わりはございません。ただ東京及び大阪と地方局の違いは、何しろ東京、大阪と地方局の候補者の数の違いでございまして、われわれの作業の量の違いということになるかと存じます。  それから二番目のお尋ねの番組改編期と申しますか、年末年始というような時期にこういう政見放送というようなものをやることについてどうだというお尋ねだと思いますが、確かにおっしゃるとおりでございまして、年末年始番組の制作にわれわれはいまのところ大わらわでございます。もし仮に十二月十八日に選挙が行われるといたしますと、われわれの年末年始番組の作業スケジュールというものは大幅に前に早めたりあるいはおくらせたり、いろいろなことはしなければならないだろうと思います。しかし、そういうことをいたしましても、われわれが持っておりますところの機材あるいはリソース、そういうスタジオでございますとかあるいは機械、VTRでございますとか、そういうものはほかのスタジオとかを借りないでも現段階では可能であろうというふうに考えておりますし、また選挙放送に万全を期するのはわれわれNHKの公共放送としての責任だろうと感じております。
  131. 田代富士男

    田代富士男君 それで、特に前回の選挙がダブル選挙であったわけでございます。そして大平総理の急死というようなことも重なったわけでございますが、このようなダブル選挙のときの選挙が今日における一つの限界ではないかという声がおありになるというようなことも聞いております。ところが、今回の改正では放送回数がふえる、そして放送を許される選挙運動期間短縮される。これは公共の放送を責任を持ってやらねばならない立場にありますからやりますよと言っていらっしゃいますけれども、この対応は大変じゃないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  132. 尾西清重

    参考人(尾西清重君) 今度の選挙が、もし仮に十八日に選挙法改正を待って行われるといたしますと、われわれといたしましては、一日に七時間ぐらいの、テレビでございますが、選挙放送をしなくてはならないだろうと思っております。したがいましてかなり限界状況に近いということは申し上げられるかと思います。もし仮にダブル選挙というようなことになりますと、単純な計算をいたしますと倍になるわけでございますので、われわれとしてはこれはちょっと限界を超えるのではないかというふうに考えております。
  133. 田代富士男

    田代富士男君 いまNHKの参考人のお方にお尋ねしましたが、郵政省にお尋ねしたいと思います。  放送法第四十四条四項の条文の中に、「協会は、国内放送の放送番組の編集に当つては、特別な事業計画によるものを除くほか、教養番組又は教育番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け、放送番組の相互の間の調和を保つようにしなければならない。」と、このようなことが説明されているのでございますが、この規定の趣旨から言いますと、今回の改正案内容は私は問題があるのではないかと思うわけなんです。まず郵政省のこの四十四条に対するお考え方と、今回このように提案されている改正案問題点とのかかわり合いに対して郵政省としてはどのようにお考えであるのか。また、この問題、四十四条のこの趣旨からいってこれは問題があると私が指摘することに対する提案者のお考えを聞かしていただきたいと思います。  私の質問の時間が来たようでございますから、お二人からの答弁をお聞きして終わりたいと思います。
  134. 岡利定

    説明員(岡利定君) お答え申し上げます。  放送番組の編集につきましては、御存じのとおり放送法第三条によりまして放送事業者に編集の自由が保障されておるわけでございます。しかし、国民的な財産であり、かつ有限、貴重な電波を独占的、排他的に使用するということでございますので、それに伴う公共の福祉の観点からの制約として、放送法第四十四条におきまして、放送事業者として守るべき番組準則というものを規定しておるわけでございます。この準則の一つに、先ほど御指摘のございました第四項において、放送番組間の調和を保つということが定められておるわけでございます。  この規定の趣旨でございますが、教育専門放送局とかあるいは音楽番組専門というような特別の事業計画をする場合を除きまして、まず一つは教育、教養番組、それから報道番組、娯楽番組という番組の種類を設けて、それを行いなさい、そして、かつこれらを行う場合には、多くの国民皆さんの多様なニーズにこたえるために、全体として番組の何といいますか、量的にもバランスが図られておるということが必要であるというのがこの規定の趣旨でございます。  先ほどからのお話でございますが、選挙期間中におきましては、政見放送あるいは経歴放送は、いま申し上げました放送法の中では報道番組ということに位置づけてNHKも実施いたしております。当然のことでございますが、この選挙期間中におきまして、短期的には政見放送あるいは経歴放送にかかわります報道番組がかなり大きなウエートを占めてくるということはございます。しかし、この放送法の第四十四条四項の趣旨は、必ずしもその日全部バランスがとれていなければいかぬということを求めておるのではなくて、ある一定の期間、私どもは一カ月なりその辺の期間を考えておりますが、そういう期間の中で全体としてバランスをとってもらうということが必要だということでございますので、直ちに選挙関係放送が非常に多いから四十四条違反になるというようには解釈いたしておりません。
  135. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 御質問の御趣旨につきましては、ただいま郵政省から法の有権的解釈についてお話がございました。  私たちは、この案を進めます上においては、NHK、それからまた関係の各省とも十分連絡をとって御意見を聞きながら、これは差し支えないといいますか、これはその段階では十分やっていける、こういうことでございましたために案を作成いたしました次第でございますので、ただいまのお話とあわせてひとつ御理解を賜りたい、こう思います。
  136. 多田省吾

    ○多田省吾君 私も、先ほど田代委員冒頭で申されましたように、本法案衆議院提案あるいは審議過程状況において大変残念な審議状況だと、このように思います。特に、会期末まであと三日という本日、国民の主権にかかわる公職選挙法改正という重大問題に対して質問しなければならないことを大変遺憾に思うわけでございます。野党の要求する公聴会も設定されないままに審議がなされている状況です。  特に、今回の自民党の御提案は、選挙運動期間短縮、そして運動方法の一部廃止を主な内容とするものでありますけれども、これは特に政権政党とか、それから選ばれる側あるいは現職議員に有利な党利党略の改定ではないか、こういう非難が強まっているわけです。逆に選ぶ側の国民、有権者側から見れば、このような改正をする理由がないだけではなくて、ますます選挙から有権者を遠ざけるというような内容になっているわけでございます。特にまた新人候補にとっても大変つらいような内容になっている、このように言えると思うのです。特に、最高裁判決にもありますように、いま一番早急に行わなければならないのは衆議院定数是正であり、また参議院選挙区の定数是正である。また、政治倫理確立のために政治資金規正法の改正を図らなければならない。あるいは戸別訪問の自由化のような選挙運動の自由化が強く望まれている。こういったものが一切置き去りにされてこういった提案がなされるということは、私は非常に残念に思うわけでございます。  提案者提案理由説明の中に、今回のこの法律案につきまして「最近の選挙実情にがんがみ」とか、あるいは「金のかからない選挙の実現に資するため」という理由を述べておられますけれども、確かに期間短縮なんかすれば少しは金がかからないようになるかもしれない。しかし私はそれ以上に、買収等が激しくなればかえって金がかかるおそれもあるし、また有権者と候補者の間の直接の触れ合いがなくなるということ自体がまたそれ以上の大きな問題ではないかと、このようにも思うわけです。午前中も提案者からいろいろ御答弁がありましたが、まず最初に私は、この提案理由説明にありますところの「最近の選挙実情にかんがみ」とか「金のかからない選挙の実現に資するため」とか、こういう理由をもう少し具体的にお述べ願いたい。
  137. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) ただいまのお話によりまして、あの中にございましたように、今度の選挙法改正は現職者に有利ではないかとか、あるいは選挙をされる選挙人をだんだん選挙というものから遠ざける結果にならないかというような御心配でございます。  私は、先ほど金丸委員からもお話がございましたように、このごろは選挙に出ようという人は、現職であろうと新人であろうと、新人であればあるほどあらかじめいろいろの準備をし、そしていろいろの配意をしなければなかなか出られるものでないという現実の姿、いろいろの面で非常に告示前、公示前に相当の準備がなされておるというのが現実の姿であろうと存じます。したがいまして、公示後、告示後の選挙運動日数というものの数日の差というものが、それほど大きな当落を決める材料になるものではないように思われるわけでございまして、むしろ選挙民一般方々が、今日のようにマスコミ通信機関、それからまた交通機関、交通路も整備された段階で、いつまでもあの長い選挙というものは必要ないのじゃないかというような意見がちまたに相当出ておった。出ておるし、またかなり有力な、あふれていると言うとちょっと語弊があるかも存じませんが、そういう声が非常に強いということはこれは事実であろうかと存じます。したがいまして、そういう点から今度やはりもっと時代に即応するように合理的に選挙のやり方を改めようというのが、今度の改正の目的でございます。  そしてまた、後からお話がございました、もっともっと大事な基本的な問題が、もっと先にやるべきものがあるじゃないか。たとえば定数の是正というようなものはもっともっと大事な点ではないか、一票の重みというものから、選挙のすべての人の前に法は平等でなければならぬというたてまえから言うと、そういうものの方がもっと大事ではないか、こういうような御指摘もございました。  われわれももちろんそういうことも十分考え、私の党といたしましても選挙制度調査会に三つの小委員会を設けまして、基本問題あるいは政治資金の問題、あるいはまた選挙運動の具体的なやり方というようなものを、それぞれ小委員会で細かに平素から検討をずっと続けておるわけでございます。ところが、この定数是正の問題、また先ほどからいろいろ御意見がありましたように、もっと基本的な問題ということになりますと、これはもう選挙のやり方の枠組みそのものに及んでくる問題でございます。これは党内においてもいろいろ意見がありますし、また、いわんや各党各党の御都合なりお立場というものを考えますときに、そう簡単にその枠組みが、皆さんのコンセンサスを得られるというにはかなりむずかしいものがあると存ずるのでございます。おのずからそこに、当面の問題で解決すべきもの、あるいはまた中長期にもっと研究調査を進めるべきものということにおのずから分かれてまいります。  そこで、今回提案いたしましたのは、いま申し上げました当面の問題でできるもの、そしてわりあいに皆さんのコンセンサスを得られるものということでこのような案がまとまって提出するようになった次第でありますので、この点御理解を賜りたいと思います。
  138. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、選挙運動期間短縮という問題は、選挙運動の自由の制限に大変つながるものだと思うのです。なぜならば、いま片岡さんは告示前に相当の準備が行われていると申されましたけれども、事実は、日本選挙法では事前運動というものは禁止されているわけです。事前連動か政治活動かどうか非常に微妙な問題もありますが、選挙の事前運動は禁止されておりますよ。これは私はほとんど日本だけじゃないかと思うんですね。外国の例を見ますと、イギリスは事前運動は制限なしです。そして国の選挙も地方の選挙も二十日前に告示される。アメリカは事前運動に一切の制限はない。西ドイツも制限はない。ただし運動開始日は政党間の協定で決める。フランスも選挙運動投票日の二十日前から開始するということになっておりまして、事前運動についての罰則、取り締まりはない。日本だけが事前運動の禁止ということをはっきり打ち出しているわけですね。ですから、選挙運動期間短縮されるということは選挙運動の自由の制限に大きくつながる、このように思うのです。  それからもう一点は、田代委員質問に答えられて提案者片岡さんは、総理大臣の諮問機関である選挙制度議会に諮る必要はない、こういう答弁をなさいました。私はもってのほかの御答弁だと思うのです。事実、昭和三十六年から昭和四十七年に至るまで、第七次選挙制度議会まで、たとえば第一委員会衆議院参議院選挙制度、第二委員会選挙運動方法ということで、選挙制度議会だけでももう十一年の間審議されてきたわけですよね。そういう過程があるわけです。それほど重要な問題ですよ、選挙運動方法も。それを選挙制度議会に諮る必要はないと。大変な暴言だと思うんです。そして選挙制度議会では審議の過程において、選挙運動期間については衆議院では二十日間で運動することはとうてい無理だから、三十日に延期をしたらどうかなんて意見が出されているんですよ。なぜならば、無所属とか小会派、新人のために、また政治に新風を吹き込む必要性からむしろこういう案が出されている。これは一番新しい選挙制度議会の議事録にありますよ。  そういったことを考えると、私は、選挙制度議会でもこういった短縮という問題は話されていない、あるいは答申もない。しかも事前運動は禁止されているわが国において、運動期間の短縮というのは私は反対じゃないかなと思うのですが、その点どうですか。
  139. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 私は、選挙制度改正というものは慎重にやらなければならないということについては十分よく承知いたしております。そしてその関係から、総理の諮問機関である選挙制度議会意見を聞くことも大事であるということについてもよく存じております。ただしかし、先ほどから申し上げておりますように、選挙法というものは不磨の大典でなくして、一遍決めたものは絶対に改正しちゃいかぬものだというような窮屈なものではなしに、これはおのずから選挙法の中にいろいろな軽重の差があると思います。しかも今回の提案はわれわれ議員の立法でございまして、議員提案でございまして、この段階でわれわれが考えたことについて、党の中で決定する前に他の野党の皆様方の御意見も聞き、そこで話が煮詰まったものについては、それは私は当面の必要なものは、どしどしと言うと語弊がありますが、できるだけ時勢に合うように改正していくことも大事なことである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  140. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは衆議院でも同僚議員から質問があったと思いますけれども、特に町村議員選挙でわずか五日になったわけでございますが、いわゆる地方選挙でも公営はほとんどありませんけれども、従来から任意制の公営が推進されてきておりまして、たとえば任意制の公営の運用というものが非常に困難になるのじゃないか。町村の議員選挙でも確かにいま一部で公報なんかも渡されているわけですよ。その場合、掲載文の申請が二日間、それから二日前に配布という法律を適用しますと、準備期間は中一日しかない。こういう状況になりますけれども、公営拡充の声が強まる中で、このような町村議員選挙は五日間というような制限はそれに逆行するものじゃありませんか。これで本当に運用が正しく行われますか。
  141. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) この五日間というのは町村段階のことを御指摘のようでございますが、町村というのは、これは住民に直結した日常の生活そのものが町村の生活でございますから、その段階では、本当に村の隅々というまでもいかないまでも、大体どこの人はどう人であるということは皆承知しておるわけでございます。そしてその方はどういう経歴の人であり、どういう働きを持った人であるかということについての認識も、日常の生活を通じて十分承知しておる場合が多いわけでございますから、やはり長々と選挙運動に日を費やして、そして経費がかかり、そしてまた国民皆さん方にも御迷惑になるようなことはできるだけ短時日に済ます、こういうことが適当ではないかと考えておる次第でございます。必ずしもそれが非常に選挙の自由を束縛するものだというふうには私は考えておらぬわけでございます。
  142. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは法案そのもの質問ではありませんけれども、自治省にお尋ねしたいのですが、選挙期日の告示は、法律には少なくとも何日前という表現で規定されているわけです。そうすれば、もし衆議院が十五日前と決まっても、前ならいいのですから、二十日で運用するということも可能なわけでございますが、そういうやり方を活用する意思があるのかどうか。また、できないとすればどういう理由か。過去に例がないのはどういうわけか。なぜこういう少なくとも何日前という規定にしたのか。その辺ひとつ簡単でいいですから説明してください。
  143. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 少なくとも何日前と、なぜそういう書き方がされておったかというのは私もよくわからないのでございますけれども、法文上、ただいま多田先生の御指摘のとおり、少なくとも何日前でありますから、その前の日に告示または公示をしたからといって法律違反になるわけはないというように考えております。ただ反面、こういうように衆議院は何日、参議院は何日、都道府県知事がと、こう一つ一つ別に決めてあるのは、その選挙はその日でやれという趣旨だというように解しておりまして、私たちはこの日にちでおやりなさいという指導をしてきております。  ただ、実を申しますと、昔例があったかとおっしゃいましたけれども、実はいつごろでございましたか、たとえば二十日という計算を、衆議院の総選挙につきましては中十九日で告示をし、参議院選挙につきましては中二十日で告示をしておった時代がございます。それなんかはいまの少くともという考え方からすれば、一日余裕を見ておった例が、過去もうずいぶん昔の話でありますけれども、なかったわけではございません。  また、そういう趣旨でございますので、今後とも、今回この法律が通りました場合には、この法律に沿って告示をするように指導はしてまいりたいと思っております。
  144. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから立会演説会ですけれども、先ほども田代委員から質問がありましたけれども、全廃ということは、これは切り捨て御免の措置です。形骸化しているというような批判もありますけれども、たとえば政党立会演説会に切りかえるとか、それから討論形式にテーマを定めて運用するとか、いろいろ方法はあるわけです。また、選挙制度議会でも確かに廃止の意見は一部ありましたけれども、それも義務制を任意制に改めるという内容でございます。  また、先ほど午前中の審議でも、五日間か六日間程度に減らす方法もあるし、その中で効果ある立会演説会にすればいいじゃないか、こういう議論もありました。とにかく全廃というのはまさに切り捨て御免の措置だと思います。なぜそういうやり方をしなかったのか。先ほど、一部野党がそう言ったからなんて、そんなおかしなことは私は絶対にないと思います。とんでもないことです。はっきりひとつその辺答弁願いたい。
  145. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 私はいいかげんなことを申し上げておるのではなしに、衆議院の公選法の特別委員会理事会皆さん方お話をしました。これは各党の理事が出ておられまして、自由討議にして皆さん方の御賛成を得たものでございまして、やはり立会演説には先ほどから申し上げておりますような長所、短所それぞれございます。長所も大いにありまして、本来の機能がそのまま生きておればこれは大変私はいいものであるとは存じますが、最近の現状はこれは事実として形骸化したということでございますので、これのために自由な選挙運動が非常に制約せられるということでございます。そういうことを身につまされて感じておられる皆さん方意見が一致した、こういうことでございますので、(「どこで言っているんだよ」と呼ぶ者あり)いま申しましたように、衆議院公職選挙法特別委員会理事会でございます。(「何月何日だ」と呼ぶ者あり)それは私がここで言わなくてもおわかりになっておると……。
  146. 多田省吾

    ○多田省吾君 本日の私の最後の質問といたしまして、最高裁の定数判決を受けて自治大臣及び自民党提案者自民党選挙制度を代表してどういうお考えでおられるか、ひとつお聞きしたいと思うのです。  十一月七日に最高裁の大法廷が、衆議院の定数配分の現状は違憲状態という態度を発表いたしまして、できる限り速やかな是正を要望するという判断を示したわけでございます。われわれは、定数配分均衡につきましては、最高裁の判断をまつまでもなく、一致して国民立場から再三再四、機会あるごとに即時是正を強く求めてきたところでございます。ところが、政府・自民党では一切これをやらなかった。大変残念なことでございます。  諸外国の例を見ましても、アメリカ、イタリア、ベルギー、オーストラリア、スイス、カナダ、スウェーデン、アイルランド等、民主国では定数条項というものは憲法事項でございます。その他のすべての国々で、選挙法には必ず詳細な定数法規が実在している現状です。偏差の限界についても、ほぼ一対二以内というのが定着しているようでございます。翻って、わが国では制度上、法規上完全な空白であって、とうてい民主国とは言えない状況です。これを放置することは、政界の多数、少数というものも架空のものであって、議会の多数決はその真実を保証されていないということになります。  最高裁はまた違憲判断の基準として、合理的期間内のものかどうかという判断を示しておりますが、これはいつ行われるかわからない解散、総選挙、毎年開かれる国会の多数決を考えた場合は、私どもはこれは明らかにおかしな考えであって、国会の裁量権というものも平等基準の偏差の限界内におさめなければ、平等原則そのものが雲散霧消してしまうということも考えられるわけでございます。  そこで大臣とそれから片岡さんにお尋ねしたいのですが、先ほどもお話がございましたけれども、特に衆議院定数是正というものを次の通常国会等で必ずおやりになるかどうか。それから、もしや小選挙区制なんというものを考えていないと思いますが、その点はどうか。それから是正の大綱ですね、たとえば一対三以上を是正するとか、一対二以上を是正するとか、いま現在どういう考え検討されているのか。その辺をひとつ最後にお伺いしたい。
  147. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 衆議院の定数どうかというお話なんですが、これは何も最高裁の判決を待つまでもなく、当然に考えていかなきゃならぬ問題だったと思うのです。最高裁の判決が出まして、違憲の状態である、こういう判定。しかし、それには合理的な期間というものの許容というものも許される、しかし速やかに改正をしなさい、是正をしなさいと、こういうことだと私は思っているのです。  そこで、この問題は先ほど来いろいろ御意見が出まして、各政党の皆様方も非常な意気込みだということを、いままでもそうだと思っておりましたけれども、一層強く感ずるわけでして、大変私は心強く思うのです。どうぞひとつそういうお気持ちでこの問題と取り組んで、これから各政党とのお話し合いをしていただければと、こう思います。原則論的なことは、これは大体もうみな御承知でございますから、各論的な具体的な論議にぜひひとつ入っていただかなければ前進がなかなか見られないのではないだろうか、こう思います。  自民党側もいち早く、速やかに是正の方向でいこうという態度も決めておられますから、繰り返し申し上げるようですけれども、どういう場でこれを話し合いをされるのか、その辺のところもひとつお話し合いが進めば私は大きな前進になると。選挙制度議会というものはありますけれども、いまは全く閉店状態にありますからちょっとすぐには動かないかもしれません。そういうこともございますから、どうぞひとつ各政党間でお話し合いをしていただくというふうにお運びをいただきたいなと、こう思っております。
  148. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いま自治大臣お話しになりましたように考えております。
  149. 松浦功

    委員長松浦功君) 午後四時から委員会を再開することとし、休憩いたします。    午後二時三十六分休憩      ─────・─────    午後四時一分開会
  150. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公職選挙法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  151. 山中郁子

    ○山中郁子君 まず、自治大臣にお伺いをいたしますが、一昨日、十一月二十三日付の朝日新聞記事の中に、「すでに確定した十一月二十八日解散、十二月三日公示、同十八日投票の日程は、公選法改正を前提にしてのことだ。地方選管によっては、立会演説会会場を確保しないなど、改正を前提に選挙準備を進めているケースも多い。」という記事があります。  この法案参議院できょうから審議が始まったばかりでありますし、成立するか否決されるか、継続審議になるか、あるいは審議未了で廃案になるか、これはわからないことです。現段階におきましては。こういう事態を自治大臣としてはどのように考えられるか。同時に、自治省として、まさか成立を前提にして準備をしたりあるいは指示をしたりしているのではないと思いますけれども、あわせてお伺いをいたします。
  152. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) お尋ねが選挙管理委員会に対する指図の話になりましたので、便宜私から答えさせてください。  御承知のとおり、選挙管理委員会といたしましては、いついかなる事態が起こりましても、それに対応せざるを得ません。あれだけ新聞にいろいろ書かれていることでもありますので、何がありましてもやれるように、仮に法案が通りましても、または仮に通らなくても、または解散が仮に言われるとおりありましてもなくても、とにかく何があってもやれるようにということで、順次自分の独自の判断で作業をやっております。そういう意味で言えば、決してこの法案は必ず成立すると決めてかかって、立会演説会の会場に関しては全くそっぽを向いて関心を持っていないということではないと思います。  なお、私どもの方からああせい、こうせいというようなことは、これはいままでのしきたりもございまして、一切公式の指示は出しておりませんで、いわば選挙管理委員会の独自の判断、そこがその選挙管理委員会のあうんの呼吸の見せどころといったような状態にございまして、公式には何も指示はしておりませんので、その点はお許しをいただきとうございます。
  153. 山中郁子

    ○山中郁子君 成立をしてもしなくてもとおっしゃるけれども、この記事が指摘しているように、立会演説会会場を確保しないなどということは、結局もし成立しなかったら立会演説会ができなくなるわけですね。私は一つの例として申し上げましたけれども、こうした事態について自治大臣の御見解を簡単にお伺いをいたします。
  154. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 法律案は両院の御審議をいただいた上で議決をいただき、その上で実施されるものでございますから、行政府はそれを受けて準備をする、こういうのは当然でございます。これは私どももしかと心にとめておるわけでございます。  ただ、この問題は新聞等でいろいろ書かれておりますし、第一線といいますか、地方の選管としましては先へ先へと物を考えることだろうと思うのです。それで準備をしているのであろう、準備をしているところがあるとするならば、私はそういう先へ先へと準備をしているのであろうと思うのでありまして、決して私どもの方から何らかの指示をしたというようなことはありません。ただ、もし国会の方でそういうことをお決めいただいて、国会を通ったということになったときにあわててはいけないという気持ちが強く先立つのだろうと思います。そういう気持ちもわからないではないと思っております。
  155. 山中郁子

    ○山中郁子君 数多くの事例が出ておりますので、後ほどまたそのことについては、きょう以降の質疑の中でも触れたいと思います。  次に、私は委員長に申し上げたいことがございます。  一つは、この法案衆議院段階での取り扱いの経過と本院への送られ方です。けさほどからも指摘が幾つかございましたけれども衆議院では野党の強い要求であり、有権者からも切実に要望されていた公聴会も開かれない。そして、かろうじて行われた参考人質疑も、三名のうち二人までが選管関係者である。最終的には田中角榮に対する有罪判決が下された直後の異常事態のもとで、後の本会議も含めて、事実上自民党の単独強行採決で通過して本院に送られてきたものであります。審議時間もわずか六時間余りにすぎませんでした。経過はそういうことです。  二つ目には、いま自治大臣にもただしたように、すでに法案成立を前提にして、十二月三日公示、十八日投票の線で事態が走り出しています。一方、本委員会の審議期間は日曜日を除けばきょうから三日間にすぎません。しかも自民党は、理事懇談会などで今国会の成立を主張されている。また、本会議や行革特の質疑の中で、全法案成立の保証を議長からいただいているというような趣旨の答弁を総理大臣が重ねている。こういう状況にあります。  三つ目に、このような経過と条件の中で、もし本委員会が数を頼んでこの改悪案を可決するようなことがあれば、衆議院での田中辞職勧告決議案を棚上げで国民の怒りを買ってきた国会が、それに加えてさらに参議院での良識のかけらもにおいもない、そういうやり方で有権者、国民政治不信を頂点に達せしめる、そういう事態を招くことは火を見るよりも明らかであります。私たちは有権者の代表としてここに出ています。国民の代表としてここに出ています。したがって、本委員会国民に顔向けできないような、そんな恥ずかしいことをしては絶対にならない。それは議会制民主主義を圧殺する自殺行為に等しいものだと私は考えます。特にこの法改定は、選挙の基本にかかわる重大な改悪を目前に迫った選挙に適用することを前提にして、そして強行的に成立させようとしている、そういう内容です。  私は、この点に関して委員長のまず基本的な、委員会を運営するに当たる責任者である立場からのお考えをただしておきたいと思います。
  156. 松浦功

    委員長松浦功君) よく承りました。委員の皆様方とよく御相談の上措置をいたします。
  157. 山中郁子

    ○山中郁子君 それでは、参議院段階ではいままでの慣例としても二十日間の審議は必要だ、そしてまた公聴会開催は絶対に外すことのできない基本的な要件であり、そして各議員質疑時間は十分に保証して慎重な審議をする。私は、理事懇談会においてたくさんの課題が山積しているこの法案の審議に照らして、十時間の質疑時間は最低必要だということを申し上げてまいりましたけれども、こうした趣旨でそれらのことが保証していただける、そのような運営を図っていただけるお約束をいただきたい。重ねて委員長の御決意を伺いたいと思います。
  158. 松浦功

    委員長松浦功君) 委員の皆様方とよく相談をして措置をいたします。
  159. 山中郁子

    ○山中郁子君 申し上げたその趣旨に照らして考えていただくならば、委員会は民主的にそして十分でかつ慎重な審議が行われ、国民の有権者の意見が反映されなければならないということを私は重ねて強調しておきたいと思います。  次に提案者にお伺いをいたします。  選挙法を変える際の基本は、各党各会派の合意を得るということと同時に、有権者、選ぶ側の立場を尊重することが当然であると考えますけれども、この点については御異存ないと思いますが、念のため一言御見解を伺いたいと思います。
  160. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) この法案を決めるに当たりまして、各府県の市町村の各段階、いわゆる地方六団体の御意見も十分聞いて大体の、大体といいますか、御了承を得ておりますわけでありまして、そしてまた普通の一般選挙民意見というのは、これは特別にわれわれは機関を設けてということはやっておりませんが、しかしわれわれは日常選挙民と接しております。そして、その意見というのはわれわれは十分その声を通じて承っておるのでありまして、それらの問題を総合して、そしていろいろ話し合いをしたと、こういうことでございます。
  161. 山中郁子

    ○山中郁子君 恣意的な、つまり御自分たち都合のいいような有権者との接し方と称する意見のくみ上げでは解決しない、ここのところをはっきりさせたいと思います。  いま委員長に申し上げました本法案の経過や現在の条件を別にしても、この法案の重大な内容は、選挙期間や時間の短縮立会演説会の全廃など、ともに選ぶ側の有権者の立場意見を全く無視している。提案者側の希望やあるいは党利党略によっている点、これが大変重要な問題だと思います。たくさんの声がマスコミを初めとしてさまざまなところで反映されておりますけれども、その一つとして、私はもう一度ここで皆さんにこの問題に関する新聞各紙の社説に限っても提起されている意見を御紹介をしたいと思います。  九月十日付の朝日です。「立会演説会の全廃や選挙運動期間と街頭の選挙運動ができる時間を短縮しようという案が自民党から出てきた。発想が間違っているといわなければならない。」「あれもだめ、これもだめというような制限が強まる「目隠し、不自由選挙」は、政治の金権腐敗とともに民主政治の根幹を掘りくずす危険な兆候であると、この際重ねて強調しておきたい。」。九月十七日の毎日です。「有権者に対する十分な説明もなく、その納得も得ていないのに、性急に改正を急ぐのは、民主主義ルールに反するものといわなければならない。」「民主政治にはある種のコストはかかるのであって、手続きを簡素化し、期間を短縮しようという考えは、民主政治の基本である選挙とは本来なじまない性質のものである。」。  九月二十六日付の東京です。「問題なのは「選ぶ側」の有権者の権利は全く無視し「選ばれる側」の候補者、しかも、大政党の現職議員都合を優先していることだ。」「「金のかからない選挙」をいうなら悪質な選挙違反の連座制を強化し、利益誘導や金権選挙を一掃することが先決だ。」。九月二十六日付サンケイです。「今日、多数の国民政治に対して求めている国会改革とは何らつながりがなく、しかも選挙をされる側のご都合主義で発想された改正にすぎないといっても言い過ぎではないだろう。」「ましてや、年内総選挙に間に合わせようというにいたっては、動機不純なお手盛り改正というべきだ」。  十一月十五日付毎日、「一票の格差が”違憲状態”と指摘され、その格差がさらに拡大傾向にある中で、解散、総選挙の日程が確定しようとしている。しかも「選挙運動期間短縮」という、有権者不在の公職選挙法改正案がまかり通り、間もなく成立するという。だれのための公選法かと改めて問いたい。」。十一月十八日、ごく最近です。これも朝日です。「解散前にやってはならないことがある。自民党が持ち出した公選法の改正だ。」「広い範囲の人たちが、公正で活力ある選挙のために努力しているのである。改正に当たっては、国会は関係者の意見を聴取すべきである。」「いま参院で、あわただしく結論を出す必要はまったくない。」これは全部社説です。  そしてこのほかにも社説だけではなくて、「論壇」だとか投書欄、インタビュー記事、「読者の目」等々、こうした意見に類するこの公選法の改悪に対する批判、怒りが満ち満ちています。これに対して、有権者の声としてこれを支持するというのはほとんど見当たらないといっていいです。盛んに地方六団体とおっしゃっているけれども、知事会とか県議会議長会とか市長会、市議会、こういうものは選ばれる側の立場の人たちですね。そしてまた衆議院段階で意見参考人に聞いたとおっしゃったけれども、選管関係者から賛成の意見を聞く、そういうことでは全く選ぶ側の有権者の声が反映されていないことはもうはっきり示されていることだというふうに思います。  これは新聞論調だけではありません。政界浄化や理想選挙に情熱を傾けてこられた市川房枝さんが推進者でもありましたけれども、婦人有権者同盟、主婦連、地婦連、日本青年団協議会、理想選挙推進市民の会、こういう各団体による選挙法改正運動議会や憲法会議を初めとするたくさんの団体、また十月四日には立命館大学の天野総長を初めとする四十一名の学者、弁護士による反対アピールも出されている。数多くの反対アピールや要請、廃案を求める請願が積み重ねられています。最も新しく十一月二十一日にも、いま申し上げました選挙法改正運動議会から廃案の要請が来ています。これは各党にも寄せられているはずです。  私はあなた方のいままでの、またいまの弁明は全く根拠がないと思いますけれども、重ねて、どこに有権者の声が反映されているのか、はっきりきちんと簡潔にお答えをいただきたい。
  162. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) ただいまお読みになりました、御被露になりましたそれぞれの社説なりあるいは論評なりいろいろございますことは私も存じております。それは確かに一つの大きな世論であり、一つ意見である、一つといいますか、貴重な意見であるというふうに思います。しかし、われわれが日常選挙民に接し、そしていろいろな会合に直接国民の皆様方と接しておるわけでございます。私は、そういういわゆる物に書いたり意見として発表されたりしたものではございませんが、われわれが日常の政治活動の上で耳に入り骨身にひしひしと感ずるものは、これは確かに声なき声といわば言いますか、そういうものだと思います。そういう大衆といいますか、そういう人たちの声もこれは私は聞かなければならぬものであり、またその方面の意見には、われわれが平素日常の政治活動といいますか、政治のいろいろの要望をくみ上げて、そして国政に反映するというのがわれわれの日常のこれは政治活動でございますが、その段階において非常に多くの声が、そういうところへあらわれない声があることをわれわれは非常に感じておる次第でございます。  そういうものが党内のいろいろの意見として出ておるわけでございまして、われわれは決して自分の都合のことだけでなしに、さらに基本的には、できるだけ金のかからない選挙にする、これがやはり政治を浄化し、政治をきれいなものにするという私は基本的な立場である、こういうふうに思いますわけでございます。かねてから申しておりますように、最近の交通、道路、そういうものを考え、そして彼此相調整しながら、健全なわれわれはやはり判断能力を比較的持っておりますので、そのものを調整しながら判断をして、それは声なき声もあるということを十分感得してこの案を立てた次第であるわけであります。
  163. 山中郁子

    ○山中郁子君 提案者のおっしゃるのは、実体のない声なき声だけでもって、こんなにたくさんちゃんとあらわれている、活字にもなっている、要請書にもなっている、そういう声に背を向ける提案だということで全く根拠がないと言わざるを得ません。  いま交通の発達などとおっしゃいましたけれども、これはもう議論に値しないと思います。つまり文明が発達していろいろなことを国民が享受するということは、この選挙の問題に関して言うならば、そもそもが選挙というのは政党の政策やあるいは候補者の政策、人柄、こういうものをより豊富に、文明の発達した状況で昔よりもより豊富に受け取る、そのことが社会の発展の基本的な仕組みなんですよ。そういうことを持ち出して、文明が発達した、つまり交通手段ができたからとか、通信手段が発達したからといって逆に縛りをかけてくるというふうなことは全く逆行するものだということを申し上げておきます。これはもう議論に値しないと言わなければなりません。  ここで私はひとつ、けさほど来たとえば立会演説会の廃止の問題なんかも含めて、こうした提案者がお出しになった議員立法のこれは、各党のコンセンサスを得ている、あるいはわれわれは少し残したらいいと思ったけれども、むしろ全部やめてしまえという御意見だった、こういうことを何回かおっしゃいました。私は、提案者、つまり自民党とほかの党の方たちとの間でどういうお話し合いがあったかということについてはいま触れるつもりはありませんけれども、少なくともわが日本共産党に関して言うならば、そういう話し合いなどはもちろんないし、そういうことについて合意をしたとか、あるいは立会演説会を全廃しろなどと言ったことは全く事実と違う。われわれは一貫してこの法案に対して反対し、立会演説会を廃止するなどとはとんでもないことだということを主張してまいりました。この事実に相違がないことだけを御確認いただきたい。
  164. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) ただいま山中先生からお話がございましたように、共産党の方は最初からこの法案全体に対してやはり御賛成をいただけなかったわけでございます。それから、何にもそんなことを言う必要はないのですが、実は、私が各党の理事の方といろいろお話し合いをしたわけですが、参議院の方はどういうことになっておりますか、理事懇談会で非公式にいろいろ話し合ったり、あるいは個別的に話し合ったりするわけでございますが、衆議院においては共産党の方は理事になっておられないわけでございますので、理事懇とかなんとかというときにはオブザーバーとして入っていただくことはございますが、そういうことから、それは恐らく初めから全面的の御反対でありましたので、いわんや立会演説等についてはもちろん御賛成でなかったというふうに私はそんたくしております。
  165. 山中郁子

    ○山中郁子君 はっきりしていただければ結構です。  次に、提案理由の中にも、主要な問題として金がかかるということをよくおっしゃいます。そして今回も「金のかからない選挙の実現に資するため、」こういうことが大きな理由になっておりますけれども、私は一つお伺いしたいのですが、これは提案者である片岡議員の八〇年六月二十二日投票選挙での選挙運動に関する収支報告書を県選管から見せていただいたのですが、この届け出によりますと九百六十九万六千五百四十九円の支出となっています。今回このように選挙期間短縮するなどの法を変えることによって、実際にはどの程度のお金がかからなくなるというふうに思っていらっしゃるのか、そこのところを簡単にお願いします。片岡先生、私はきょう四十分しか時間をいただいていないので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
  166. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 算術的にちゃんと計算いたしますれば二十日間の四分の一の節約ができるだろう、こう思いますが、しかし、全般的な問題もありましょうから確実に四分の一が節約できるとは思いませんけれども、相当の経費が浮くと、こういうふうに私は思います。
  167. 山中郁子

    ○山中郁子君 四分の一としてもほぼ二百五十万ですよね。もちろん御承知のように印刷費だとか家屋費、これがかなり大きく出ているわけですから、そういうものは四分の一機械的に減るものじゃないですね。そうすると二百万とか百五十万とかそういうレベルのお金です。だけれども、お金がかかるという問題について言うならば、この選挙運動期間の中の経費、こういうふうに改定することによっていまおっしゃったように減るよとおっしゃる、そういうものと全く違った次元でのお金のかけ方が問題なんです。多額な金を使うということは、明らかに違法な買収行為、これは別にしても、地盤培養という言い方でされている日常的な有権者へのばらまき行為がまず問題になります。  これは朝日新聞の「政治腐敗 金権の構造」特集の十月十八日付に、自民党議員の声として次のように紹介しているんです。本来の政策活動には金はそんなにかからない、有権者とのつき合いに金がかかるんだ、こういうことを言っておられます。それでは有権者とのつき合いなるものの実態についてどういうことかというと、新聞で紹介されている例をとりましても、自民党主流派の一代議士の裏帳簿で見るということで紹介されていますが、千円会費の後援会会合で二千円以上の料理を出すとか、地元からの陳情団や国会見学グループには八百円の弁当を出す。いわゆる飲ませ食わせの事実上の日常的な買収だと私は思います。さらに問題なのは、この記事の中にもありますが、十人の秘書、運転手のうち、三人分を支持企業が社員の名目で人件費を払ってくれる。同じように月四、五十万のガソリン代も企業が経費名目で落としてくれる。こういうことが述べられています。  私は、こうしたところに、一つはもう公然とした露骨な買収ということがまずありますけれども、それ以外でも実質的な日常的な有権者とのつき合いと称する地盤培養の中での買収が行われている。ここに多額なお金が使われているわけです。自治省にお伺いしますが、いま私が例に挙げました、つまり新聞に紹介されていましたようなこういう出し方で一企業が百五十万以上出すことは、政治資金規正法上できないということははっきりしていますね。
  168. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 御承知のとおり政治団体に対する寄附の量的制限がございまして、政党の場合を除きますと、一団体に対して一企業から百五十万という限界がございます。この百五十万というのは現金のほかに財産的価値を移すことも含みますので、個々のケースについては具体にその構造によって判断を異にする部分もあるかもしれませんけれども一般論としてたとえばガソリンを上げたりすれば、それは現物による寄附になるものと考えております。
  169. 山中郁子

    ○山中郁子君 個別の問題に立ち入る時間がありませんけれども、いま選挙部長も認められたように、こういう形での政治資金規正法の違反、そうしたお金の使われ方、お金が要る、こういう問題になってくるわけです。それでこういうような日常的な地盤培養と称する実質的な買収行為で政治活動という名の事前運動がしのぎを削っているという、これが実態です。  ことで私は、自民党の引退された議員さんの言葉を紹介したいのですが、これは八〇年の選挙で引退された元自民党の代議士である廣瀬さん、このように言っておられます。私の選挙は前回で三千万程度、今度は二、三億円は要る。実際公示前からの金を含めればそのくらいかかるだろう。何せこの前の大分県議選でも一億五千万円かかったというんだから。そういうふうにおっしゃっているんですね。それからまた、八二年の八月に行われた自民党の地方議員研修会での後藤田官房長官の発言もこれを裏書きしています。つまり、政治に金がかかるというのはなぜかと言えば、選挙に金がかかるということなんです。今日の選挙法で言えば政治活動選挙運動の区別がはっきりしていません。したがって、選挙に金がかかるということは、その前段階の政治活動に大変金がかかる。そうしなければ当選が得られないわけなんです。こういうふうに後藤田官房長官が講演をされています。  提案者の方たちが、そしてまた一九六〇年以降九回にわたって選挙法の改悪がずっと重ねられてきました。そのたびごとに理由にされたのが、金がかかる金がかかる、金をかけない選挙。そういうことは全く見当が違っていると私は申し上げたい。つまり、そういう理由でさまざまな手かせ足かせで、べからず選挙にしていって、そして有権者の権利を狭め、正当な候補者活動を規制し、そして本当に本来金がかかっているこうした実質的な買収に近い地盤培養と称するお金のかけ方、あるいはまた実際上の買収選挙、そうしたものについては何ら徹底したメスを入れないままに事態を放置してきているというのが現状だと。実際に金がかかると言って、いま片岡議員も、提案者もお認めになったように、百五十万か二百万か減る。これだって問題はあります。もっともっとそんな減り方はしないと私は思いますけれども、それはいま横に置くとしても、そういうお金ではなくて、自民党の代議士だった方がおっしゃっているように、五千万も一億も二億もかかる。こういうところにこそお金がかかるんだという、後藤田官房長官も認められている。ここのところに本当にお金がかかるのではないですか。  だから、あなた方が金がかかる選挙をなくすためにというふうにおっしゃっているのは全く見当違いだというふうに言わざるを得ないのですが、この点について、金がかかるという、いま私が紹介し、自民党の方たちがおっしゃっているわけよ。そして後藤田官房長官も言われている。そういう金のかかり方は一体どういうふうに考えていらっしゃるのか、お伺いします。
  170. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) ただいまいろいろ御指摘のありましたようなことは、議員さんの中には、中にはそういう方があるかも存じませんが、私はやっぱりそんなものではない。ときどき選挙違反等で大きな金を使われておるという現実があらわれてくることがありますから、これは全然ないとは言えませんが、そういうこともあるかもしれませんが、それがもうだれもかれもみんなそうだということではないと思います。ことに私は、そういう大きな、平素選挙区から来た人にごちそうをしたりする金もございませんし、そういうことをしたこともございません。したがって、いま御指摘のようなことは私には考えられぬことでございまして、それは特殊な一部の方々にあるかも存じませんが、そういうものでない。だから、できるだけやっぱり金のかからぬようにあらゆる面で工夫をして、そして皆さん方に金のかからぬ選挙をしてもらうということで、だんだん選挙がりっぱになっていく。  ことに私は、選挙区の方々東京へ出てきてごちそうしてくれないと票をやらないんだというような、こういう機運がまだ残っておるところがなきにしもあらずだと思います。そういうことがやはり選挙を汚くするゆえんであろうかと思いますので、これは国民皆さん方も、この金のかからぬ選挙ということを国民にわかっていただくことによってそういう反省も、国民の側の御反省も願えるのじゃないかと、こういうふうに私は思っておるわけでございます。
  171. 山中郁子

    ○山中郁子君 後藤田さんが講演されたことを御紹介しましたけれども、これは自民党の地方議員研修会で話されたことなんです。そして選挙制度の諸問題と称して講演された中なんです。だから、いま提案者がおっしゃるように例外的なものだなんというはずはないわけです。官房長官がそういうふうにして話しをされているわけですから、選挙制度の重要な一つの問題だということでね。そういうことはやはり私はもう余りにも見え透いた詭弁にすぎないと思います。  二百万、もし仮に提案者のお言葉をそのまま使わせていただいて、二百万のお金が少なくて済むとしますでしょう。だけれども、一方で億の単位のお金が使われなきゃならない、したがって大変だというのがこれが実態だとするならば、結局この選挙法を改悪することによって何が残るのか。お金がかからなくなるというのではなくて、結局のところは、有権者の知る権利、選ぶ権利、候補者の活動の権利、そういうものが奪われていく。いままで繰り返されてきた公職選挙法の改悪の最も悪いケースをここでまた積み重ねるという以外の何物でもないと思います。  もう一つ、もっと問題にしなければならないことは、利益誘導や地位利用、ぐるみ選挙、こうしたものが蔓延していることです。金がかかるという点から言うならば、いま問題は指摘したとおりなんですけれども、さらにいまこうした利益誘導や地位利用、ぐるみ選挙などの重大な問題が次々と表に出てきています。悪名高い越山会査定というふうに言われている利益誘導ですね。地位利用による、官庁や企業ぐるみによる実質的な事前運動、田中型選挙全国に拡散されているということがマスコミでも指摘をされています。こういう実態にメスを入れるということなしに、金のかかる選挙あるいは腐敗、利権、こうしたものを解決していくことができない、一掃していくことができないということは余りにも明らかだと思います。  元最高裁の長官であった藤林さんが、政治家選挙で使った金を回収しなければならない、そこに汚濁の根源があるというふうに批判しています。目に余る利益誘導、それから利権選挙、そして企業ぐるみ、官庁ぐるみ、こういうものにこそいま徹底したメスを入れて、政界浄化、政治をきれいにする、選挙をきれいにする、そういうことに力を尽くさなければならない課題だと思っておりますけれども、この点は国家公安委員長でもある自治大臣の御意見を伺っておきたいと存じます。
  172. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 選挙に金がかかるかかると、こう言いますが、これはいま片岡さんのお話のように私はいろいろだろうと思うんですよ。個人差があります。また、それぞれの政党に所属している方々のそれぞれの特色も私はあると思うのです。選挙のやり方がそれぞれ違う。たとえば保守党の場合は、やっぱりこれは個人選挙ですから、本人がやらなければならないという選挙ですから、少し様子は違うと思うんですね。ただ余り極端といいますか、非常にかかり過ぎていると思われるようなものを挙げられまして、それで全部が同じようなことをやっているのだというのも事態の正確な把握にはほど遠くなるのではないかということも考えられるわけであります。  しかしいずれにしろ、やっぱり選挙はなるべく金を使わないような方向に持っていかなきゃならないということはこれは間違いのない方向だと思います。そういう方向に沿うような施策というのですか、制度というのですか、そういうものはできるだけ考えていくということになっていると、こう思うのです。
  173. 山中郁子

    ○山中郁子君 大臣にそれじゃはっきりしていただきたいのですけれども、たくさんの例がありますが、要するにそういう利益誘導型選挙、そしてまた企業ぐるみ、あるいは官庁ぐるみ、こういう選挙は正しくないし、あるべきではないし、法律上も問題があるんだということについてはそういう認識をお持ちなんでしょうね。自治大臣や国家公安委員長がその点についてあいまいな態度をとっていらっしゃるようでは、とてもじゃないけれども選挙をきれいにするなどということはかなわないことになりますから。
  174. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 選挙の態様というのは、それぞれの政党にもそれぞれの特色があるし、それからまたそれぞれの政党に所属した個人にもそれぞれのそのやり方、特色があると思うのです。ですから、いまおっしゃるような見方をすればこういう選挙であると、こういうきめつけ方もあると思うのだけれども、その辺は相当いろいろの選挙があるんだと。しかし、自分の物差しだけで全部をはかるわけにもいかない面がやっぱりあるのではないだろうか。ですから、それは各党の方あるいは各個人のそれぞれの特色を出しておやりになっているものであろう。ただ、私ども立場から言えば、厳正な選挙をやっていただきたい。私ども立場は、もし非違があればそれは正すということには間違いないということだと思います。
  175. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういうあいまいな姿勢でいらっしゃることが、それが大臣の姿勢だから、利権、金権、腐敗をはびこらせるもとになっているということを指摘せざるを得ません。あまたある利権の中でも、問題になりました滋賀県ぐるみの四十五億脱税汚職もみ消し工作で、山下元利代議士が防衛庁長官時代に二千万円受け取ったという問題は、私はとうてい不問に付せるものではないと考えております。  いずれにいたしましても、きょうの私の質疑時間はもう残りわずかになりました。これらの利権、企業ぐるみ問題も含めまして、選挙運動期間の時間の短縮、期間の短縮立会演説会の廃止の問題、さらには、けさほど来皆さんが指摘されました定数是正の問題、戸別訪問の自由など選挙運動の自由の拡大の問題、企業献金禁止などの政治資金規正法の問題その他等々、質疑し解明しなければならないことが山積をしております。したがって私は、初めに申し上げましたように、最低でも十時間の質疑時間が必要だと申し上げてきておりますけれども、あとの問題は次の機会に譲らざるを得ませんが、重ねて委員長に、慎重で十分な審議を保証してくださる委員会運営に当たっていただくよう強く要望いたしまして、きょうの質問を終わります。
  176. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 発議者にまずお尋ねをします。  さっきいろんなやりとりの中で、選挙制度として直さなければいけないものが幾つもあります、だけど、早急にコンセンサスを得てできるものというとなかなかむずかしいものもありますし、当面の問題、中期の問題、長期の問題に分けながら、まず幅広くコンセンサスを求められるような内容について今回は御提案をしましたという趣旨のお答えがあったと思います。それで問題は、コンセンサスを本当にこれは得てきたのだろうかという点をお尋ねしたいのです。もし幅広いコンセンサスを得たということになりますと、衆議院でも少なくも全会一致、あるいは反対が出るとしてもごく少ない会派の反対でこちらに送付をされるという姿が、コンセンサスを得たという言葉からは当然のことながら一番ぴったりとくる。実際どうかというと、ほとんど単独強行に近い形で委員会採決が行われたわけですね。  これは非常に込み入っていましてね、実際は。よく知っています。だけど、民社党の場合でいきますと、なかなか最後まで態度を決めなかった。決めなかったということは、党内のコンセンサスがなかなか見出しにくかったということです。それでいよいよぎりぎりになって反対の態度を決めました。ということは、党議として反対と決めたわけであります。となったら、民社党もそうだ、ほかの政党はどうかな、これまで聞いておったところでは賛成という話だったけれども、どうも違うのではないかというところで一遍この問題は踏みとどまるべきではなかったか。それをどうしてあのどさくさの中で事実上単独強行のかっこうでこちらに送られたのか。それがどうして幅広いコンセンサスを得たということになるのだろうか。お尋ねしておきます。
  177. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いわゆる普通に言われる根回しという言葉がよく政治の上で使われるわけでございますが、そういう段階は、これはいろいろ公にしてどなたがいつ何どきどう言われたというようなことは一々言うべきことではないと存じます。審議の途中でいろいろ政治情勢が変化いたしましたので、その都度それぞれの党におかれましては採決に加わるべきか、反対すべきか、それからまた反対はするが進めていくことには邪魔しないというようないろんな段階がございます。それを一々私はここでどの段階でどうだったということを申し上げることは差し控えさせていただきたいのでございますが、それぞれの関係方々お話をし、おおよその御賛成を得ましたのでこの案がある程度進むことになったということだけはひとつ御理解を賜りたいと思います。
  178. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私が申し上げていますのは、たとえば立会演説会一つをとってみても、あれは私も代理で出たことがありますけれども、やっぱりむなしさを感ずるのです、ある選挙区によっては。したがって、そういった選挙区ではもうあれはやめたいとおっしゃるでしょうし、ほかの選挙区ではあれがなくなったらおれは選挙できないというところもあるのです。選挙法になりますと、実際には議員めいめい自分のことを考えますから、なかなか党内のコンセンサスというのは得やすいようで得にくいのです。したがって、もっと時間をかけてこの結論を求めていったら私はこうはならなかったと思うのです。  いろいろ根回し段階でいろんな話があったということは私も知っております。だけど、うちの党を例に出しますと、最終的に民社党は反対と決めたのです。これは決して軽いことじゃないのです。各党とも、私知りませんよ、したがってそれがどうこうということは私は言いません。しかし、結果としてあの不正常なかっこうで委員会採決になっちゃった。なりそうだとなったら、これはちょっと待てや、もう少し時間をかけて練らないとだめではないかという形で、少なくも衆議院の公選特の舞台では踏みとどまるべきであったのではないだろうか。重ねて、これはお答え要りません、申し上げておきます。  もう一つ聞きたいのは、とにかく従来から続いていた二十日の選挙期間を十五日に縮める。これは選挙期間というのは、片や候補者のものだけれども、片や有権者とのかかわりがあることは言わずもがなのことですね。それから立会演説会をやめる。これはもう従来からずっと続いていたのをやめるわけですから、賛否は別にして、一体声なき声をどうやって聞いたらいいのだろうか。聞きましたとおっしゃいますけれども、同じようにみんなめいめい聞いているのです、それは。したがって、正規の機関で国会としてはきちんと聞きましたということをやはりしなければいかぬでしょうし、それから街頭運動時間が一時間繰り上げになりましたといったって、運動によってみんな違いますよ。だけど、特に都市部を中心にして、あれしか有権者に声をかける時間がないという経験をしている議員は、とんでもないと、こう言うわけです。その議員議員なりに自分の支持者、有権者との関係で痛感しているわけですね。したがって、これは大きな関心を恐らく有権者も寄せるであろう法案改正である。この点は恐らく異論がないと思うんです。となると、なぜ公聴会を衆議院でお開きにならなかったか。
  179. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 参考人をお呼びいたしまして意見を聞きました。しかし、公聴会を聞くことについては、これは正式に理事会でいろいろお話し合いをして、そして結局、公聴会まではまあ必要なかろう、それにかわる参考人意見聴取でこの案を進めていこうという皆さん方意見がまとまってそういう事態になったということを御理解賜りたいと思います。
  180. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 他院のことですからとかく注文がましいことは言いませんけれど、どうにも理解できないのですよ。根回し段階で、運動期間の日数を減らす、立会演説会をなくす、あるいは街頭での運動時間を繰り上げるということをばかに軽く考えられたのじゃないか。それは議員としますと、選挙というのは一面つらいものですよ。だけど、一面やりがいがあるものですよ。したがって、あれは縮めればいいということだけで済むかということ、なかなかそれぞれの議員をとってみると結論というのは単純じゃない。たとえ二十日でもやっていますと、これは応援で入れば特にそうですよ、長いなあと思いますよ。といって、その感情に乗って、じゃ縮めろ、それだけの別に軽い問題だと扱ってしまえるのだろうか。立会演説会をやめろ、やってみたって動員しても来ないじゃないか、やめてしまえということだけで扱ってしまっていいのだろうか。  衆議院の公選特の根回し段階でどういったお話があったかは別にして、国会法五十一条に、重大な関心がある法案は公聴会を開いてよろしいという条項があるのだから、それは当然公聴会を開くべきではなかったか。しかし開く価値がないと御判断になったのだろうか。重ねてお伺いします。
  181. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 確かに公聴会という一つの何といいますか、物を決めるには、どんな人の意見を聞いてどうするかということは、なかなかこれは神様でない以上できないわけでございます。したがって、公聴会を開いて来ていただくということは、これは一つの民主的な手続として大事であることは私も存じております。しかし、だからそれが唯一の方法でなければならぬということは必ずしもないのであって、そのために理事会でいろいろ具体的な手続についてその都度いろんな情勢を判断しながら決めていく、こういうことになったので、決して公聴会を開かないということを決めたのも単独で勝手にやったわけではございませんで、その段階では一応皆さんと相談をして決まった、こういうことでございますので御理解を賜りたい。
  182. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 公聴会についてもう一つだけお尋ねをしていきますと、重要な歳入法案は公聴会を開かなければいけない、こうなっていますね。その重要な歳入法案はなぜ公聴会を開かなければいけないとわざわざ国会法で書いたのだろうか。これは歳入ということは、出す側は全有権者でしょう。ということになってくると、それは公聴会を開かなければいけない。では重要な歳入法案、同時に選挙法も開かなければいけないとやってしまうと、かえって問題が出るわけですよね。開かなくてもいいような細かい手続法案だったらそれはそれでやっていってよろしい。したがって、やらなくてもいいとは書かないけれども、できるんですよとあえて五十一条に書いてある。あの精神を踏まえると、それは私はやるべきではなかったかと思うのですが、他院のことですからこれ以上は言いません。  では、参議院で審議をする場合に、一体その公聴会というのは開くべきか、開かざるべきか。これは御意見は求めません。言えることは、開こうと思っても時間がない。その意味でもちょっとこれは根回しが私は不足し過ぎた。みんな手前勝手に思い込んじゃって、それでいざ党議がどうかといったら反対だ。メンツがないじゃないか、構わない、やっておけというような、これはうちの党がそう言ったと言っていませんよ、何となくそんな感じで衆議院が転がってしまったんだ。  それで、今回の御提案なんですが、お金をかけないということが主たる理由一つに挙がっておりますけれども、公職選挙費用というのがございますね。これは自治省が決めるわけですね。公職選挙費用というのは、たびたび伺いますと、自治大臣が毎度お答えになるのは、最低限度必要な人件費、物件費あるいは実費弁償費用などを積み上げ計算して定める額でありますと言っておりますが、これは間違いありませんね。
  183. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 間違いございません。
  184. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうすると、これは最低限度の額を積み上げるということなんですが、実際にかかって、これだけかかりましたといって届ける費用が最低限度とおっしゃっているこの額と離れていったら、この公職選挙費用というのは、公職選挙費用を決めたのが間違っているのか、それとも各立候補している連中がさぼっちゃったのか、どっちなんですか。  具体的に数字で申し上げますと、片岡さんの場合、ごめんなさい、例を引きますとこうなっているんです。これは五十五年の選挙ですけどね。片岡さん富山二区でしたね。そうすると、このときの選挙運動法定費用額は千二百九十万円でした。実際にあなたがおかけになったのが九百六十九万、約九百七十万。約千三百万の法定費用に対して実際には九百七十万。これはあなただけでしたら別に奇妙に思わないのですが、ほとんどそうなんですよ。  天野さんの例を引きます、お座りになっていますから。天野さんは東京六区です。法定選挙費用が千三百六十万、実際におかけになったのが千百十九万。それぞれ非常に倹約をして、自治省がお決めになった最低費用よりもはるかに下にいったんだということが御答弁に本当になるのだろうか。なぜかというと、この選挙に一体幾らお集めになったか。これは天野さんだけに聞くのじゃなくて、大なり小なりみんなそうなんですよ、ここに書いてあるのは。お座りになっていますから例を挙げますと、このときに選挙資金としてお集めになったのが四千三百九十万、法定選挙費用は千三百六十万、実際にかけたのが千百十九万。するとあなたは、四千三百九十万集めて、実際には千百十九万しか使わなかった。議員というのはそんなにもうかるものですか。これは皆さんそれぞれ額は違っても皆同じなんですよ。この点についてはどうお考えになりますか。
  185. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) あえて手を挙げましたのは、多少申しわけをしなければならないところがございまして。  先ほどつい栗林先生の名調子につられまして最低とすらっと言いましたけれども、それは結局多少はレトリックでありまして、まあこの程度であれば何とかがまんしていただけるかなという金額を並べたというわけで、これが最低だから、それ以下の最低はあり得ないはずだということにはあるいはならないのではないか。これは最低の人件費と言いますけれども、それはこれ以下だったら人が絶対に雇えないだろうという人件費ではなく、まあこれくらいならばまずそんなにぜいたくではない、まあまあ節約した人事費と言える額なのではないかという額をもとにして積んでいますので、それより下が絶対にあり得ないということにはなるまいかとは思いますが、個々の報告書の内容についてはちょっとお答えいたしかねます。
  186. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 率直に言って、あのやろう嫌なこと聞くなという意味だと思うのです。もうわかっているじゃないかという言葉がことまで出ていると思うのですよね。実際にはそんな議員になってもうかるものですか。ひいひいみんなやっているんですよね。  お三方の、大臣も含めてですが、お名前をここへ出すのは失礼ですから、自民党のOさんの例を引きますと、収入が四千六百万、かかったのが千三百万。そうすると三千三百万選挙のたびにもうかっちゃったとなるかということ、そうではなくて、問題なのは公職選挙費用が空洞化しちゃっているわけですよ。全部事前運動に行っているわけ。そこに金がかかるんですよ、いまは。だから公職選挙期間中の法定費用を決めたって、これは自治省の計算どおりかかるわけはない、前からですから。  この前をどうするかというのがいまの大問題でしょう。そのときに公職選挙運動期間を縮めます、立会演説会をやめます、街宣活動の時間を繰り上げます、一体どうしてこれで金がかかるのがなくなるのですか。わが党でも、この法案が通ったら大変だ、事前に全部ぶち込めと言っていますよ。どこの政党だってそうだよ。とどのつまりどうなるかと言ったら、午前中大木さんがおっしゃったように、電話作戦はどんどんやる。しかも、かかる内容については一切変化はない。むしろふえるかもしれないというのが実態ですよね。この実態を踏まえて、金がかからないようにするからといって、いまやどうしようもないようなかっこうになってしまった公職選挙法をなぜいじるのか。逆に言うと、いまもうどうしようもないかっこうになっちゃったから、こんな形骸化した法定選挙というのはなるべくやめにしていこうじゃないかということです。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕
  187. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 私も大変答弁がむずかしいのでございますが、これはちょうど終戦後のやみ屋のような問題で、なかなか実情から言うてはっきりは出ないものである。やみの中に葬られておる面もあるかと思います。そういう点がやみでなしに全部はっきり出てくるということは望ましいことであり、私はやっぱりその方向制度としても行ってもらいたいというふうに思うわけでございます。そういう点で、政党法などによって政治資金などをはっきりと、国から政党がある程度援助を受ける、そのかわりに収支をはっきりさせる、こういう方が私はやはり基本的に一番大事なことではないかというふうに思っておるのでございます。自民党としてもいま、今度の政治倫理の問題等で総理からも政党法を検討しろという指令が出ておるわけでございまして、これらの問題についても十分検討を進めて、本当にできるだけ透明度をはっきりさせていくようにしたい、かように私は基本的には思っております。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕
  188. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの政党法をつくってということも確かに一つの御主張でして、努力をすべきだと思います。  ただ、あわせて、事前運動というのはたてまえはしてはいけないことになっているんですね。ところが実際はやっちゃっているわけですよね。してはいけないことになっているから取り締まりの規定は一切ない。しかも、各党てんでに歩いていますから、各党が合意をしながらこの辺でやめようかということも、これは党間、派閥間、個人間、とても話し合いはつかない。それでみんな弱り抜いているんです。だから一番最初に手をつけるとすると、形骸化したかどうかは別にして、この公職選挙期間中だけ選挙をやって、もうそれで十分という本来の公職選挙法趣旨に戻そうじゃないかという御議論が本来はなければいけなかったのだろうと思うんです。  それでは公職選挙期間の前の事前運動期間をどうするか。いまわれわれ悩んでいるのですけれども、外国の例を聞くと、こういったぐあいに公職選挙期間と事前運動期間をきちっと分けている国というのはむしろないのです。したがってそこでは、選挙資金をどう使ったかという取り締まりは事前運動を含めて全部かぶっているわけです。そっちの方が正しいはずじゃないかと私は思うんですよ。  ところが、こっちはむずかしいからほうっておいて、それでこの形骸化した公職選挙期間だけ縮めめてしまえというのが今度の御提案なんですけれども、縮めた結果、十五日という公職選挙運動期間は一体どこの国並みの数字なんですか。世界のどこの国を見てもこんな短い選挙運動期間を持っているのは少ないのです。十四日といいますとチュニジア、マレーシア、十五日がカメルーン、セネガル、八日から十五日がモナコ。この国がなぜこう期間を短くしたかは知りませんけれども、一億一千五百万人の日本、こういう狭い国と、マレーシアは人口は多いけれども、ちょっと政治事情が違いますが、それと一緒にしていいのだろうかという反省ぐらいはやっぱり持ってほしかったと思うのです。  しかも、衆議院の場合には、二十日についてはちょっと長いから十五日ということがあるいは根回し段階で出たとしても、雑談としてはあったかもしれない。だったら、参議院選挙運動期間をついでに減らしてしまえという話にどうしてなってくるのだろうか。これは両院を通らないと法律にならないわけですから、われわれとすると、衆議院はほうっておいてこっちは戻せというような修正案をつくりたくなりますよね、どうしても。修正案をつくっている衆議院に送ったら喜んで受け取っていただけますでしょうか。
  189. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) たとえばいま御指摘の立会演説でございますが、立会演説が形骸化したということは、これは栗林先生もお認めといいますか、少なくとも感じていらっしゃると思うわけでございます。そうしますと、われわれが選挙運動をやるときに、何かこうわかり切ったような人が来ておられて、そして本当にうまく機能していないようなこういう制度を生かしておく、そのことが民主的な手続だからいいじゃないかと栗林先生はおっしゃるのだろうと思いますけれども、そういうむなしいもので隠れて、そして先ほどから御指摘の本体のものにほおかぶりしておるということは、これは私はやっぱり許されぬことだと思います。  われわれ自民党といたしましても、選挙制度調査会の中にさっき申し上げましたように三つの委員会をつくって、そして、たとえばいまお話しのように、寄附の禁止というものをもう少し厳しくやって、どういうものについても全部罰則をつけてやろうじゃないかというようなことを真剣に議論をいたしております。それからまた、先ほど御指摘のような後援会の旅行とかなんとかというようなことで政治運動に金がかかる、こういうようなことも、やっぱり後援会の段階でもうそういうことをできなくしようじゃないかというようなことも全部洗っております。洗って検討をしております。  ところが、これが、まあ余り本音のことを言うこともできませんのですが、非常にむずかしいものである。なかなかコンセンサスを得られない。やっぱりそれぞれその選挙運動のやり方にはその人その人のやり方がございますので、皆一様にこれはいかぬ、あれはいかぬということに決めることがかえって——後援会活動というものはそれ自体悪いんじゃないのだと。それはお話しのように、選挙運動期間というのは日本は厳しくやっているけれども、アメリカあたりはもう年じゅう選挙運動で、別に期間が決められていない。そういうようなことから考えますと、やはり後援会活動というものももうがんじがらめにできなくしてしまうということは、明朗濶達な選挙をやっていこうという一つ立場から言うと行き過ぎではないかというような議論も出てきまして、なかなかまとまりができない。  ただしかし、われわれは決してそういう本体的に考えなきゃならぬ問題を棚上げして、そして都合のいいことだけをやっておるということでないことだけはひとつ御理解を賜りたいと思います。
  190. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ぜひそうあっていただきたいと思うんです。  今度の御提案の中で、最近の選挙の実態を踏まえながらということが、お金がかからないという前に書いてあったものですから、最近の選挙の実態に触れて、いま片岡さんがおっしゃったことをひとつ申し上げたいのですけれども、最近の選挙で皆痛感しているのは、都市部と農村部と比べて都市部の投票率が低い。交通は都市部の方がある面では便利かもしれない。いろいろな文化的なものは地方よりも持っているかもしれない。ではそこに何がないかというと、仲間がいないのです。  しかも都市部というのは非常に流動性が高い。ある衆議院議員に言わせますと、次の選挙までに大体名簿のおしりの二五%は動いちゃっていると言っていましたけれども、大体どこへ行って聞いてみても同じような数字ですから、大体そんなことだろうと思うのです。ところが、流動性が高いということは実は国の活力でして、これはもう認めていかざるを得ない。非常に流動性が高い、しかも隣の人は何する人ぞというかっこうの都会生活に入っている。あの人たちが、一体選挙で有権者と候補者がどうやってつながっていったらいいのか、これは大問題ですよ。最近の選挙の実態を見るのだったら、まずそれを考えなければいけない。では答えはというと一つではないと思うのです。  そこで大都市部の立会演説会考えますと、それは確かに、出てみたって泡沫候補もいますし、それはいわく言いがたいですよ、本当に、おっしゃるように。だけど、こういう立会演説会をやっている国がどこかありますか。ないんです。日本だけなんです。なぜ日本だけが立会演説会をやっているか。街頭の運動を制限しているから。戸別訪問を禁止しているから。したがって、有権者の皆さん出てきてくださいというような場所をつくらざるを得ない。  したがって、立会演説会が形骸化してだめだと言うのだったら、そのもとにさかのぼって戸別訪問は先進国と同様に自由にする。ところが、これが自由じゃないでしょう。そうなったら一体候補者はどうやって各家庭に入っていったらいいんですか。しようがないからラッパのボリュームを上げるんですよ。世界のどこ行ったって、あんな連呼行為をやっている国はないですね。もっと静かですよ。なぜあんな選挙になるのか。もとをただせば戸別訪問を自由にしてないから。というところまでさかのぼりながら御検討いただいて初めて立会演説会の問題も将来の方向が出てくると思う。それをしないで、あれはやってもつまらないから、やってもむだだから、人によってはおれは外に応援に行くので代理を立てるのがつらくてしようがないからというかっこうだけでやめてしまっていいのだろうか。最初から軽くお考え過ぎになっていると私は思うのです。  それこれひっくるめて議論をするわけですけれども、われわれとすると、せめてこれぐらいは直してもらわないと使い物にならぬではないかという修正案をもし出すとしたら、喜んで受け取っていただけますかということです。
  191. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いまの戸別訪問、一例としてお話がございましたが、これは日本のように中選挙区制をとっておるところと、比例代表、それから小選挙区制をとっておる、あるいはこれと両方加味したものをとっておる、こういうところでは私は戸別訪問そのものはそんなに弊害はないし、そう大きな害はないと思うのであります。しかし、これについても検討いたしましたが、戸別訪問を認める、こういうことになると、それは頼みに来た者でないと投票してやらぬのだということになると、朝から晩まで波状的に選挙民のところへ来ると選挙をされる人も非常に困るのじゃないか。そういうことなど、あるいはまた、まだまだ個人的に妙なものを持っていったり訪問のときにいろいろの不正が行われるというようなことも考えなければならぬということで、中選挙区制においてはむずかしい、こういうようなことで、これもやはりもう少し慎重にしないと結論が出ない、こういうことになったわけでございます。  さようなことで、栗林先生がいろいろお考えになっておりますようなことについては、決してわれわれはなおざりにしたわけではございませんで、皆洗って見直しをし、そして皆の賛成を得たものは逐次実行していきたい、こういうふうに思ってやっておるわけでございます。したがいまして、今度やりましたものは、そういう段階でようやくコンセンサスを得たものについて、そして野党の皆様方にもお話し合いをして、そして最善の案である、こういうことで出しておるのでございまして、われわれはこの修正をされてもちょっとどうしても賛成するわけにはいきませんし、提案者としては勘弁していただきたい、こういうふうに思っておる次第でございまして、あしからず御了承賜りたいと思います。
  192. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまもコンセンサスを得てやったとおっしゃったのですけれども、うちの党は反対と党議決定をしたのです。念のため申し上げますと、他党も全部反対、新自由クラブは賛成でした。というのが党として正式に決められた態度ですよね。党内ではそれはやった方がいいという人もいるでしょうし、それは困るという方もいたでしょうけれども、だんだんの議論を積み重ねながら最終、党の態度はそうなったということは軽く見ていただいては私は困ると思うんですよ。それは公選特の委員会に出ている人に全部預けているわけじゃないのだもの。選挙というのは議員一人一人のものですよ。だから党の決定として反対と決めたということは、そうなったらもうしようがないからコンセンサスを得たということは言えないなということぐらいは、やっぱりきちんとわきまえていただかないと私は困ると思うのですよ。したがって、今度の法案というのは自民党プラス新自由クラブ、それだけ賛成、あとは反対。もう裏も表もないんです。そうですよ、これは。それでこちらも困っているんですよ、このどさくさの中でこういう法案を送り込まれて。しかも衆議院の連中はじゃんじゃん走っている。何たる立場参議院のわれわれを立たしてくれたのだろうかといった意味では、いら立たしい気持ちでいっぱいなんですよ。  立会演説会につきましても、最近ふえているのは、立会演説会をやってもらって、あれをテレビに撮って、それで有権者に見せているという地域がふえてきました。なぜかというと、あれは各党お互いに相手を意識しながらしゃべるたった一回の機会なんですよ。それを今度は地方のテレビ局がありますからそれを取材して映して有権者に届ける。だから、有権者の方は決まった定食の選挙放送よりはおもしろいからこっちを見るということを考えてみると、いまや形骸化したかに見える立会演説会だって、結構いまのテレビ時代で使いようは出てきている。  あと一つだけ伺いますけれども理由はもう一切申し上げません。これは自治大臣にお尋ねする方が筋道なのかもしれませんけれども、この間最高裁の判例が出ました。あれだけ票差が開いたら状況としては違憲状態と判断せざるを得ないねと言ってあるのが一対三・九四です。定数是正については真剣に取り組むと再々の御答弁でしたけれども、そのときに自治大臣とすると、大体一対幾つが正しい数字だとお考えになっているのだろうか。一対四・八三のものを五十年改正をして一対二・九二に落としたわけです。これはいい仕事をしたと褒めてくれているわけです。ところが、時間がたって五十五年六月では一対三・九四になっちゃった。ところが一対二・九二から一対三・九四にいつなったかということはちょっとわからないから、五十年から五十五年六月にかけて徐々になっていったのだろう。徐々になっていったのだから、五十五年六月の選挙改正が間に合わないとしても、それは国会の責めというのはおかしい。これが判決の大まかな粗筋ですよね。  来年六月には間違いなく衆議院選挙があるんです、任期いっぱいですから。来年六月の選挙をいまの定数でやって違憲であるのか、ないのか。あの違憲判決というのは、五十五年六月だからまだ政府がしなくたって悪いとまでは言えないねというのです。これが五十九年六月だったら四年もたっているんですよ。それを半年早めてことしの年末選挙となったって、果たして合憲と胸を張って言えるのだろうか。一体、一対幾つの割合が正しいと自治大臣考えになっているのか。それから、年末か来年か知らないけれども、その選挙現行の定数でやることが違憲状態と言われるのだろうかどうなのか。二つだけ伺います。
  193. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) この問題につきましては、最高裁の判決の中にもありますが、一つは、やはり定数というものは選挙制度の根幹というのか、根本であり、また、党利党略という言葉も出ましたが、あるいは個利個略かもしれない、そういう非常に候補者にとりましては重大な問題でありますから、私もそう簡単に結論が出て進んでいくとは思いません。これは最高裁の判決でもそういうことを言っていると思うのです。  それからもう一つ最高裁の判決の中にありますのは、頻繁に変えられて政局の安定というものに影響が及ぶということについてはやはり慎重な態度を要する、こういうことも言っているわけなんです。これは私は、なかなか選挙制度のあり方そのものの現実ということについて認識を持っておられるなという感じがするわけです。そういう現実を踏まえまして、なるべく早く、速やかにという感じは私どもも十分に持ちたいと思います。しかし、そんな簡単に進むものであろうか。先ほど来申し上げておりますように、何としてもこれは各党の合意というものを得なきゃならない。しかし、選挙のやり方は、先ほど私が申し上げましたように各党で相当な違いがあると思います。保守党は完全に個人で地盤を開拓して自分でやらなきゃならないという選挙なんです。必ずしも自分みずからがおやりにならなくても、ちゃんとした組織があって、その組織の上にお乗りになってやれるという私は党もあると思うのです。ですから、いろいろなやり方がございますから、そのやり方の中で合意を得るというのは非常にむずかしい問題であろう。  ですから、あの最高裁の判決の中身をよく熟読玩味を私どももいたしますが、国会の先生方にもひとつ熟読玩味していただいて、一体どういうお感じを持たれるのか。そこから私は一つの協力が生まれてきて合意に進んでいきたいものだな、こう思っておるわけでございますが、これは私は非常なむずかしい問題である、しかし同時にこれは越えなければならないハードルである、こう思っています。したがいまして、時期的にと、こうおっしゃられると私も返事に困りますが、なるべく速やかにという気持ちは、これは私は先生の気持ちと同じような気持ちであると思っております。
  194. 前島英三郎

    前島英三郎君 いま栗林委員の御質問に対しまして自治大臣は、定数を変えていくと候補者もたまったものじゃない、政局の安定にも非常に差しさわりがあるというようなお答えがありましたけれども、主役はどっちであるかというのをずいぶん勘違いされているんじゃないかというような気がするのです。主役はあくまで有権者であるということを、私たちはやっぱり何となく違いを感ずるのです。  その有権者にとって、選挙制度のあり方というのはこれはもう最も大切な財産でありますし、しかもこの制度というのは民主主義の根幹にかかわるものだというふうにも思うのですけれども、その制度改定に当たってはより公平に有権者の意向が反映されるように、当然踏むべき手順というもの、ステップがあるはずだと思うのです。このことはずっといままで語られてまいりましたけれども、この前の参議院比例代表制の導入、許しがたい強行採決がこの委員会室でも行われまして、その光景が本当に思い返されるのですけれども、今回のとの改正案、いずれもその手順というものを踏んだものとはとうてい思えないのです。この点発議者はどう考えておられますか、まず伺いたいと思うのです。
  195. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いまお話しのように、これは選挙ルールを決めることでございますから、非常にあらゆる手段を講じて慎重にやるべきであるということについては先生の御指摘のとおりだと思うわけでございます。しかし、やはり選挙というものは一つの手段、方法、技術に属する面もございます。それらの問題は時代とともにある程度変えていかなければやはり時勢にそぐわない点が出てくる、こういうふうに思うわけでございます。  今度取り上げました項目はいずれも、かねてから申しておりますように、時代の趨勢から見ていままでのやり方に改革を加えて、そして時世に合うように、そしてまたいろいろ新しい文明の利器ができてきた、そういうものを利用して選挙民皆さん方にできるだけ便宜を図りながら、一方において古いやり方については改正を加えていく、こういうことが必要ではないか。そういうことで、基本的に大きな問題として中長期的に考えなければならぬもの、それから当面いま申し上げましたような立場から改革した方がよい、そしてまた世論の上においてもそういう声が確かにあるというようなことを考えながらこれに所要の改正を加える、こういう立場から今回の提案をしたような次第でございます。
  196. 前島英三郎

    前島英三郎君 時勢に合うようにとか、文明の利器の発達によってとかというのはわからぬでもありませんけれども、しかし、いずれにしましても、演じる側が勝手に台本をころころ変えたのじゃ、これはお客さんが入りっこないし、お客さんからそっぽを向かれるのはあたりまえなんですね。やっぱり主役は有権者であるということを考えてみますと、第三者機関による検討、あるいは有権者の意見を聞くための公聴会、あるいは各党間の十分な話し合い、国会における十分な審議、こういうことが積み重ねられてこそ本当の有権者のための選挙制度になると思うのです。このいま挙げた中で一つとして果たして本当に踏んでいるだろうかと思いますと、まず全然踏んでいないんじゃないですか。  しかし、先ほど各党間における十分な話し合いは何かずいぶんあったようなお話をされておりましたけれども、いま聞いている状況では、共産党さんにはどうも話がなかったようだ。民社党さんもどうも、根回しは若干あったけれども、党内ではそういう決定になっているようだ。そうすると、あと根回しの中の舞台には公明党、社会党かなと。新自由クラブは恐らく乗っただろうと思うんですね。社民連まで果たして根回しは行き届いていたのだろうか。先ほど根回しという言葉が出て、これも余りいい言葉じゃありませんけれども、しかしそういう意味では各党間のコンセンサスを十分にやっているような発言をされておりましたけれども、そうすると、あと公明、社会とは十分な根回しを含めたコンセンサスをやっているということですか。その辺はどうですか。残るはあと公明、社会になるわけです。
  197. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) その根回しという言葉がいいのか悪いのか、これは大変耳ざわりな、余りよくないことであり、またお座へ出せるような話ではございません。そしてまた、そういう段階における話し合いというものは、ここで皆さんの前に持ち出して、どなたがどうおっしゃった、こうおっしゃったということを言うべき筋合いでもないと思います。  そこで私がいろいろ御相談をいたしました段階では、おやりください、反対はしません、実力をもって阻止するようなことはしませんと、そんなことまで言っていいのか悪いのか問題ですけれども、そういう御意見もあるわけです、意見の中には。それですから、それを私が聞くときには、なるほどこれは御賛成かなというふうに聞こえてくるんです。これは提案者としてできるだけまとめてやりたいなという気持ちを持ってやっておるものですから、自然にそういうふうに聞こえてくるのだろうと思いますが、そういう点でそれぞれの手続をもっと慎重にやれということについては、これは十分傾聴して、承って、今後に対処していきたいと思いますが、今回のはそういうことで私としてはできるだけのことをある程度やった。ある程度といいますか、やったつもりでおりますので、御理解をいただきたいと思います。
  198. 前島英三郎

    前島英三郎君 ある程度やったと言うので、ぼくは衆議院政党のことはよくわかりませんけれども、少なくともその中で、われわれ参議院の二十三日間も十八日間になってしまう。そういう意味では何となく参議院がこけにされたような、そんな雰囲気もないでもないんです。われわれは全く根回しなど受けていませんし、その辺の状況はよくわかりません。大きな政党間でどういう裏舞台が展開するかは定かじゃありませんけれども、しかし、かけがえのない一票を持っているのは有権者である。選ばれる側の御都合の中でこういうものを短期間に選び、しかも、それも異常な形で衆議院を通過して、そしてまた参議院の中でもいよいよもうあと残すところ土曜日と月曜日という状況の中で、全法案が成立することが選挙への突入であると。何となくこれはどうも、話し合い解散にするんだけれども話し合い解散はうまくないから何かちょっと野党も参議院で突っ張る部分がないのかみたいな、どうも国民には納得できないような裏があるように思うんです。  いみじくも発議者は根回しという言葉を先ほど出されましたから、その根回しが恐らく衆議院の七つの政党の中にも(「根回しなんかやっていないよ」と呼ぶ者あり)それはおっしゃっていますから。それはわかりませんけどね。そういう意味では、その根回しという言葉の中で、恐らく大きな政党と根回しがあったと思いますよ。私はそう思います。  そういう点で、定数是正の方は各党間で話し合ってと言いながら、比例代表制の導入とか、あるいは今回の場合は単独というのは、どうやら聞いていますと根回しがないようだという意見もありますから、恐らく単独だろうと思うんですね。そうすると、午前中の発議者の意見とは大分違いますが、これは非常に矛盾しているのじゃないか。都合の悪いところは各党間で各党間でと言いながら、この部分は本当に自民党の御都合主義の中で衆議院でつくられ、衆議院からこちらへ送られてきたのじゃないかという、こういう矛盾を感ずるのですが、その辺はいかがですか、矛盾については。
  199. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 矛盾といいますか、表向きといいますか、それぞれ政党立場というものは国民に向かって堂々とおやりにならなければならぬ立場がございます。そういう立場はわれわれは十分了解しながらお話し合いをしておるということでございます。
  200. 前島英三郎

    前島英三郎君 じゃ、お話し合いをしたということにいたしましょう、私も。しかし、これからは参議院はそうはいきません。参議院はやっぱり徹底的なお話し合いをしましょう。私はそう思うんです。  この前の比例代表制導入と今回の改定とはいずれも新人が出にくい、あるいは何といいますか、新しいグループは出にくい、こういうことですね。金のかからない選挙と正直におっしゃいますけれども、私はもう追いつめられて福祉党というものをつくりました。供託金四千万円。しかし私は一議席を得ましたら三千二百万円ぶったくられました。これは返ってきません、言ってみれば、そうでしょう。この選挙制度ほど正直言って金のかかる選挙は、とんでもないのでね。そういう意味じゃ本当に強者の論理、大政党の論理ですべて先行しちゃうわけですよ。だからこそ、声なき声というものもある、いろんな人たちが一億一千七百万の中にはいるんだということを踏まえますと、こういう形の選挙制度というものの審議のやり方や、それから政治への声を摘むようなやり方というのは、全く許せないという気がするのです。  しかし、先ほどはまた発議者は、そうは言っても、十五日ぐらいになっても、新人なんかは事前にあらかじめ出馬表明をしておって、すでに十五日間というその選挙の期間というのはもう最終段階的という発言をしましたけれども、これとてもたてまえから言えば大変遺憾なことに違いないわけですね。その辺はいかがですか。新人が非常に出にくい。しかも何といいますか、限られた日数の中では非常に選挙区は回りにくいという問題になりますけれども、その辺はいかがですか。新人なんというのはあらかじめもうやっているのだから、どうということはないとやっぱりいまもお考えですか。
  201. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 少なくとも国政の場に出る、あるいは府県において県政の審議に携わって県政の進展に寄与していこう、あるいは市町村においてそれぞれの自治体の発展を期そう、そういう一つの抱負を持って出られる方というのは、それくらいの抱負経綸を持って、また意欲を持ってやる人でなければ、私はやっぱり議員さんとして正しく務めていただくことができないのじゃないか、こういうふうに思います。いやしくもそれくらいの情熱を持ってやろうとされる方は、これはいわゆる足まめにそれぞれの人に政見を訴える、部内の人に政見を訴える、そうして理解を得るというようないわゆる事前活動といいますか、何といいますか、それは選挙の事前運動だ、すぐそれが直ちに違法の行為であるということにならない段階のそういうものが当然あるでありましょうし、またそれを本人がやらなくても、マスコミなり地域の人々の口の端に上って、そうして事前に相当やはり知名度の点が出てくる。  これは知名度が高いか低いかということは、それぞれ個人的な差がございます。したがって、幾ら前からやっても知名度がなかなか出てこないという人もございましょうし、とにかく少しマスコミに名前が出ただけでも知名度の高い人もいる。こういうことで私は知名度の点ではやはり個人差があると思いますので、そういう点などを総合いたしますときに、選挙運動期間が少ないからといって、それが新人の進出に非常に大きなさわりがあるというふうには必ずしも考えておらぬのであります。
  202. 前島英三郎

    前島英三郎君 衆議院参議院の国政レベルならいざ知らず、これを一律に市町村議会まで非常に短期間にしているわけですね。確かに国政選挙の場合には、かなり事前運動が暗黙の了解のうちにはなばなしく展開されていますよ。先般も、正直言いまして、私三重県の津市へ行きましたら自治大臣のポスターが町一面にかなり張られていまして、何か津市の人はもう終盤戦ですよというよなうことを言っていました。これがもう公然と実は行われているということもそれは確かにうなずけるのですが、しかし、法律法律として守っていくような姿勢がありませんと、これはやっぱりだめなんじゃないかなというような気がするのです。  そういう意味で、今度の改革は、言ってみれば有権者側にとっては寝耳に水的な大改革になってしまいまして、一体どういう形で候補者を選んだらいいのだろうか、自分の一票を託したらいいのだろうかという不安は、これは非常につのるだろうと思うんですね。その結果、事前運動が非常に激化してまいりますから、選挙運動の通年化といいますか、日常化という事態が生じてくるのじゃないかというふうな気がするんですね。その辺に全然メスを入れることなく、単に選挙期間を短くしただけで一体済むだろうかというような気がしてならないのです。むしろ、何かそういうところに発議者のねらいなんかも実はあったのじゃないかというような気がするのですけれども、その辺はどうですか、そういう危惧は。
  203. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 選挙運動が事前と告示後といろいろ行われるわけでございますが、いわゆる推薦の段階、そしてまた自分が出ようと思うときには、これは自転車に乗るなり、あるいは歩いて自分の知人、友人を訪問して自分の政見を聞いてもらう、あるいはまた同級生の中へ行って話をして賛成を求めるといったようなものは、これは決していわゆる事前運動ということでなくて、一つの推薦の段階の運動である、こういうふうに思うわけでございます。私は、そういうことについてはそういうことが可能であり、また、そういうことが行われてやはり口の端に上ってくるということで、知名度も逐次出てくるというようなものではないかというふうに思いますので、必ずしもそこに矛盾を感じたりしないわけでございます。
  204. 前島英三郎

    前島英三郎君 大変時間が短いものですから……。  きょうも、立会演説の廃止は一体どういう理由なのかとか、あるいは形骸化していると言うが効果も大変立会演説会にはあるんだとか、あるいはまた、今回は知事選とか市長選なども立会演説会がないわけですよね、こういう場合地方選挙まで全廃する理由はどこにあるのかとか、実はいっぱい質問があるのですけれども、特に先ほどの聴覚障害者、これは昭和四十四年からでしたか、自治省が聴覚障害者のために立会演説会に手話通訳をつけて、これを公費負担にしているわけですね。今度テレビ政見放送ということに切り変わっていくわけですけれども、ここが唯一の聴覚障害者の一つの窓口になるんですが、発議者は前向きにということなんですけれども、この辺なんですが、前向きということは、この選挙から手話通訳も当然テレビ政見放送の中には入れるということの前向きと理解してよろしいですか。
  205. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 実は、私が先ほどテレビに手話を取り入れるという方法もあるのではないかということを、これは本当にそのときの思いつきで申したのでございまして、これはNHKの、あるいは民放の方々の御意見を聞いて、そういうことが可能であるかどうか、そういうことを確かめた上での発言ではなくして、これは本当に私の思いつきを申したのでありまして、そういうことがもしできるとすればそういう方向考えていってもいいじゃないかという私の思いつきを申したことでございます。したがって、それが可能であるかどうかということについては、さらによく実際やっていただく方に相談をしないと決まらぬわけでございます。決まらぬといいますか、計画できないわけでございます。
  206. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうすると、聴覚障害者はいま三十五万人おります。この人たちは全くいわゆる政見放送を聞く資格はないと、こういうことですか。
  207. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) いや、そう簡単に片づけられても困るんです。それですから何かいろいろな方法によって、いまも立会演説のすべてが手話を取り入れられておるということではございませんで、その市町村によって、地域事情によってそれが行われておる、こういうことでございますから、まあ今後の問題として何とか前向きに検討することもできるのではないかという私の思いつき、感想を述べたということで御理解をいただきたいと思います。
  208. 前島英三郎

    前島英三郎君 四十七都道府県で、これから立会演説会に入っていくのにまだちょっとおくれているという部分は七県しかないのです。あと四十都道府県は、自治省が昭和四十四年から啓蒙を始めまして、手話通訳者に対しては派遣事業として組み入れているわけですよ。だから、この選挙は間に合わないじゃ、この選挙の三十五万人の聴覚障害者は要するに切り捨てられちゃうわけですよ。しかし、では技術的にどうかといいますと、私も放送局に十年も勤めていましたが、これは簡単にできるのです、手話というものは。手話は簡単に画面でも恐らく私はできると思う。  ただ、これからNHKの方に聞きますけれども、NHKには手話の時間もある。手話がいろんな意味で各自治体でいろいろ育てられている。そしてまた、手話派遣事業というようなものも活発になっている。労働省でも厚生省でも手話の派遣に対しては非常に力を入れている。その聴覚障害者も国民の一人であることは、これは変わりはないですね。この人たちは、実は立会演説会でも一般の人のパーセンテージに比べて十倍の出席率なんですよ。そこしか実は彼らは政見を肌で言葉として聞く場面はないわけですね。選挙公報はありますよ。選挙公報の漢字というものは、なかなか聴覚障害者にとっては文字という部分の理解はむずかしいんです。しかし生活の中における手話というのは言葉ですから、やはり立会演説会場のその政見が彼らにとっての一つ候補者を選ぶ基準になっているのは、これはもうわかり切ったことなんですね。そこでNHKさんに聞きますけれども、恐らくこれは可能であろうと僕は思うのですが、NHKさんはどう思いますか。
  209. 尾西清重

    参考人(尾西清重君) お答え申し上げます。  私どもが日常生活言語としての手話の重要性というものに注目していることは先生よく御存じだと思いますが、われわれとしては、先生も先ほどおっしゃいました聴力障害者の時間で、トータルコミュニケーションというやり方で、手話のみならず、口話、字幕スーパーなどを組み合わせたやり方をとっております。  そこで、政見放送の中に手話を導入するということがむずかしくないのではないかというお話でございますが、私どもといたしましては、政見放送のような抽象性の非常に高い言葉ですとか思想とかというものを伝えることは、非常にむずかしいという判断を持っております。また、小さな画面の一部でトータルコミュニケーションをすることは非常にむずかしいわけでございまして、そこが立会演説会と違うところだろうと思います。  それからもう一つ理由といたしましては、普通の政見放送でございますと、一つのカメラを備えて録画するわけでございますが、仮に手話を脇に入れるということになりますと、われわれの用語でいうところのワイプという技術を使わなくてはなりませんし、カメラも二台以上要るということでございまして、短期間の政見放送の収録という非常に限られた時間の中でやるということは、リソース的にこれはむずかしいということを申し上げなければならないわけでございます。また、仮にその技術上の問題が解決いたしましたとしても、その技能の高いレベルの人を一斉に全国的にそろえる、しかも大変短期間にそろえるということは、NHKがこれを確保するということになるとほとんど不可能に近いのではないかというふうに考えております。
  210. 前島英三郎

    前島英三郎君 NHKが別に確保するわけじゃないので、NHKは自治省から与えられたものをやるわけでしょう。自治省は四十四年からそういう形で立会演説会に手話を啓蒙してきたわけですよね。今度この選挙法で聴覚障害者には何ら候補者とコミュニケーションの場を与えないというような形というのは、そんなことでは自治省のいままでの十四年間は一体何だったのですか。自治省はどう思いますか、その辺は。  手話というものはいま非常に国際的にも育ちつつあるのです。彼らは手話というものが一つ日本語なんですよ。ワイプというのですけれども、それは技術的には僕は簡単だと思う、NHKさん。ワイプに入れさえすれば、手話はすべて手ですからこれはできます。カメラ二台、一方の手話は備えつけでいい。候補者はアップ何回、引くが何回でいい。どアップなんというのはないのですから、大体このあたりにワイプで閉じ込めばここには労力は一切かかりませんよ。カメラ二台あればこれは十分ですね。これはおわかりいただけるだろうと思うのです。  しかし、この聴覚障害者の人たち政治参加というものがこういう形で閉ざされてしまうということは、ぼくは大変ゆゆしき問題だというように思うのです。自治省はどう思いますか。聴覚障害者に対する、候補者政見放送に対するその保証というものはどんなようにいま考えているのですか、この選挙制度になった場合、立会演説会が廃止された場合。あなた方は十四年間かかって一生懸命啓蒙してきたのでしょう。そしていま東京都から始まったものが四十都道府県まで育ってきたのです。義務づけられてきているんですよ、いま。そういう状況で、これをあなた方はぶっ壊そうとするが、どんなに物理的に大変であっても、民間放送がこれから五回、六回政見放送をやるでしょう。金を出すのは国ですよ。税金を払っている聴覚障害者だっているんですよ。この人たちをのけものにしながら立会演説会を廃止していくというやり方が僕は非常に許せない、こう思うのです。自治省いかがですか。
  211. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 立会演説会という機会を使ってそういう手話通訳の便宜をできるだけ図ってまいりました。そういう姿勢からも、そういう機会を使ってわれわれが前向きに物を考えておったことはお酌み取りをいただけるだろうと思います。  もし仮にことでこの法律が成立しまして立会演説会がなくなるということになれば、立会演説会に対する方法はなくなるわけですから、そうすれば今度は、このことに限らなくても、いままででも政見放送に対するあれをどうするかという問題はあったわけですから、今後は政見放送という場を借りて、ほかにも何かあるかもしれませんけれども、何らかの方法考えていかなければならないのだろうと思います。ただ、具体にそれではこの政見放送についてどうかということになれば、これはやはり技術的にそれが成り立たなければならないことですから、NHKさんのお話、民放さんのお話ども聞きながら今後研究をさせていっていただきたいというように思っております。
  212. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は、もし立会演説会が非常に形骸化しているというならば、しかしその立会演説会だけにすがっている人たちもいるということをまず皆さんにわかってもらいたいのです。発議者にもわかってもらいたいのです。そしてその人たちが、じゃ今度は立会演説会にかわるものとして政見放送というならば、その部分もやっぱり心の中にとどめておいてほしかったのですよ。この人たちは、今度の選挙制度の中では正直言って恐らくだれを選んでいいかわからないという状況になるだろうと思うんですね。そういう意味での反省は、発議者いかがですか。  そしてしかも、これはいま自治省も研究という形ですから、今回もし間に合わないならば、次回からは必ず政見放送の中に手話は組み入れるということを私は約束してもらいたいと思うのです。  この人たちは、街頭でスピーカーのボリュームがどんなに上がったって何を言っているかわからないんですよ。そしてこの人たちは公報をもらっても、公報のむずかしい言葉というものは、酒を飲んで運転をしてはいけない、運転するときには酒を飲んではいけない、こうした言葉の中で、聾教育の問題の中から意味にちょっとちゅうちょする部分があるんですよ。しかし、言葉から発せられる一つの手話の形の中においてはいま三千語ぐらいありますけれども、これがもう各都道府県の中に手話派遣事業が大きく育っている。NHKもそうした手話の時間、聴覚障害者の時間も設けている。こういう形で非常に啓蒙されている状況の中に、かけがいのない一票を行使する国政選挙なりあるいは通常選挙の中で、自分たち政見放送を聞けないというこの孤立感を考えますと、やっぱりそこには、今回は間に合わないならば、次回からは必ずそれは組み入れるぐらいの僕は発議者に心を求めたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  213. 片岡清一

    衆議院議員片岡清一君) 大変貴重な御趣旨をちょうだいいたしまして、謹んで承りました。この次からの問題については、十分さようなことも考えながら発案をしていきたい、こういうふうに思っております。
  214. 前島英三郎

    前島英三郎君 また、NHKでは文字多重放送というのも始めましたですね。これは、ことしが世界コミュニケーション年で、文字多重放送がいまのところ東京、大阪だけれども、やがては全国的にという一つの願いもあるでしょう。たとえばこの文字多重放送をこうした政見放送に使うということはいかがなものなんですか。
  215. 尾西清重

    参考人(尾西清重君) 私どもは、十月三日から御存じのように聴力障害者の方々に向けて文字多重放送というのを始めました。この文字多重というのをいまパターン方式というふうな呼び名で呼んでおりますが、これがなかなか実は大変手間のかかるものでございまして、いま連続テレビ小説「おしん」は十五分の番組でございますが、文字多重でやっておりますが、これに二人で約延べ十四時間の作業時間がかかるわけでございます。たとえば、せりふを聴力障害者の方々向けに正確に理解していただけるように要約するという作業がどうしても必要でございます。もう一つは、登場人物の動きやあるいは口の動き、そういったものに合わせてその要約したせりふを機械に打ち込んでいくという作業もございまして、わずか十五分の連続ドラマでございますけれども、延べにして十四時間かかるという事実がございます。  これは障害者の方々には大変喜んでいただいていると私どもは確信しておりますけれども、総選挙の場合にこれを短時日にやろうとすると大変な作業になりまして、これはもうとうてい現段階では不可能と申し上げるほかはございません。
  216. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうしますと、やはり一番簡単なのは手話なんですよ。一番手話がまた彼らにとってわかりやすい一つの意思の疎通なんですね。ですからこれはぜひ自治大臣、自治省が今度はそういう形の請け負いをするわけですから、それぞれ民間放送にも電波料を国から払って政見放送をしていくわけですから、そういう意味でも、これをむしろ義務づける方向に前向きな努力をひとつ最後にお約束をいただいて、私のきょうの質問を終わりたいと思います。自治大臣、いかがでしょうか。
  217. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) これは私どもで決めてやれる問題でもないので、NHKさんあるいは民放さんともよく御相談をしてやらなきゃならない問題だと思います。そういうことを踏まえまして、いまお話の点は承りました。今後検討をいたします。
  218. 松浦功

    委員長松浦功君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会