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1983-11-26 第100回国会 参議院 行政改革に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十一月二十六日(土曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      野末 陳平君     田  英夫君  十一月二十六日     辞任         補欠選任      宮澤  弘君     曽根田郁夫君      林  ゆう君     下条進一郎君      梶原 敬義君     中村  哲君      飯田 忠雄君     塩出 啓典君      前島英三郎君     青木  茂君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         田中 正巳君     理 事                 岩崎 純三君                 長田 裕二君                 上條 勝久君                 成相 善十君                 佐藤 三吾君                 矢田部 理君                 中野  明君                 神谷信之助君                 伊藤 郁男君     委 員                 岡部 三郎君                 梶原  清君                 工藤万砂美君                 佐々木 満君                 下条進一郎君                 鈴木 省吾君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 竹内  潔君                 竹山  裕君                 林  ゆう君                 藤井 孝男君                 降矢 敬義君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 柳川 覺治君                 稲村 稔夫君                 久保田真苗君                 菅野 久光君                 中村  哲君                 中西 珠子君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 抜山 映子君                 青木  茂君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   宇野 宗佑君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣審議官    手塚 康夫君        内閣審議官    百崎  英君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        内閣総理大臣官        房総務審議官   橋本  豊君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府統計局長  時田 政之君        行政管理庁長官        官房総務審議官  竹村  晟君        行政管理庁長官        官房審議官    古橋源六郎君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        北海道開発庁総        務監理官     楢崎 泰昌君        環境庁企画調整        局長       正田 泰央君        環境庁水質保全        局長       佐竹 五六君        国土庁長官官房        長        石川  周君        国土庁水資源局        長        堀  和夫君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        公安調査庁次長  岡村 泰孝君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房審        議官       恩田  宗君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長心得      江藤 之久君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房審        議官       川崎 正道君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁税部長  渡辺 幸則君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   古賀 章介君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        厚生省保険局長  吉村  仁君        通商産業大臣官        房審議官     山田 勝久君        運輸大臣官房長  松井 和治君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        建設省計画局長  台   健君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君        常任委員会専門        員        高池 忠和君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織法の一部を改正する法律案(第九十八回国会内閣提出、第百回国会衆議院送付) ○国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○総務庁設置法案内閣提出衆議院送付) ○総理府設置法の一部を改正する等の法律案内閣提出衆議院送付) ○総務庁設置法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○国家行政組織法の一部を改正する法律案等反対に関する請願(第二二二号外一六件) ○国家行政組織法改悪反対に関する請願(第七八七号外一六件) ○行革法案審議促進並びに早期成立に関する請願(第一一四二号外五件) ○行革法案審議促進早期成立に関する請願(第一一八五号外一件)     ─────────────
  2. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいまから行政改革に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十五日、野末陳平君が委員辞任され、その補欠として田英夫君が選任されました。  また、本日、前島英三郎君及び飯田忠雄君が委員辞任され、その補欠として青木茂君及び塩出啓典君が選任されました。     ─────────────
  3. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。菅野久光君。
  4. 菅野久光

    菅野久光君 私は、最初に外務大臣お尋ねをしたいと思います。  新聞報道によれば、海外事業ができるように公団法あるいは事業団法改正すべきであるというような意見が建設省国土庁で強まっているそうでありますけれども、今日まで海外事業については国際協力事業団が一元的にこれを実施しているものであるわけですね。発展途上国での国づくりの意欲は大変強いし、またそういった面でわが国がこれに協力することは大変重要なことであります。土木建設運輸交通開発計画農林水産から医療保健社会福祉、流通、観光といった幅広い分野専門家派遣事前研修青年協力隊員派遣、病院の建設とかフィージビリティースタディー――事業性可能化調査、こういったようなものなどを実施しているわけですね。  現在でも、必要なときは各種の公団協力を求めているし、また人材の派遣も受け入れているわけです。理事にも建設省出身者がおります。経済協力一元化、こういったような点から言えば、むしろこの窓口を強化してはどうかというふうに私は思っているわけでありますが、外務大臣海外協力について、現在の国際協力事業団で十分だというふうに外務省では考えておられるのか。それとも、こういったような他の公団あるいは事業同等の、何と言うのですか、法を改正して、出るようにしなければできないというふうに考えておられるのか。その辺のお考えをお伺いいたしたい、このように思います。
  5. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま御質問がございました公団法その他の法律改正内容につきましては、必ずしも明確ではないわけでございますが、お話しのように、わが国が国際的な責任を果たすためには、海外諸国に対しまして積極的な経済協力あるいは技術協力を行っておりますし、また行っていかねばならないわけでありますが、そういう中で、政府ベース技術協力は、関係各省協力を得ながら、国際協力事業団が一体的にかつ円滑に実施をしてきております。これは、今日までの状況から見ますと、私は、この海外協力事業団のやり方で十分であるし、また足らざるところがあればこれを補いながら今後やっていけば結構ではないか、こういうふうに考えております。  また、民間ベース技術協力につきましては、民間コンサルタント商業ベースで十分対応してきておりまして、この分野公団が進出することはかえって民間コンサルタントの健全な発展を阻害するのではないか、こういうふうに考えております。  そういうふうな事情から、われわれは現在の体制で十分である。もし足らざるところがあれば、先ほど申し上げましたように、これを補強しながら進めていけば結構じゃないかということで、本法の改正に対しましては私たちは同意できない、こういう立場でございます。そして、この趣旨につきましてはすでに建設省側に申し入れをしてある、こういうことでございます。
  6. 菅野久光

    菅野久光君 外務省としては建設省あるいは国土庁にそういうことで申し入れてあるということでありますが、もしいま建設省国土庁考えているようなことが実施に移されるということになれば、どんなことが外務省としては予想されるのでしょうか。その辺ちょっとお伺いしたい。
  7. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど申し上げましたように、まだ法案改正内容について私も十分承知しておりませんが、現在やはり一元化事業団がやっておりますし、そうした事業団各省協力を得ながらやっております。非常に緊密な体制でやっておるわけですから、これで十分じゃないか。また新しい窓口を設けてやるということになれば、かえって経済協力を複雑なものにして、その効果がむしろ阻害をされる可能性もある。いまの一元化体制を強力に進めることの方が経済協力をさらに進める上においては効果的である、こういうふうに私は全体的に思っております。
  8. 菅野久光

    菅野久光君 いまの外務大臣の答弁で、海外協力についてはいまの国際協力事業団一元化をしていくということで、他の事業団あるいは公団法改正等については、外務省としては認めがたいというか、反対だということで決意されているというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから申し上げました趣旨によりまして、これは認めるわけにいかない、同意ができない、こういうことで関係省庁にはその旨すでに申し入れてあるわけであります。
  10. 菅野久光

    菅野久光君 それじゃ、行管庁長官の方にお尋ねをいたしますが、第二臨調答申でも、特殊法人減量化をしろ、あるいはすでに役割りを終えている特殊法人についてはできるだけ縮小、統合などをすべきだ、こういうことになっておるわけです。本来、特殊法人というのは国民の税金によって設立されたもので、国民生活特定分野の向上のためにつくられ、そのニーズがなくなったら解散すべきものだというふうに思います。  今回のこの動きは、まあ新聞等にも一部出ておりますけれども海外事業公団あるいは事業団の延命を図るためではないかと。そうではないのかもしれませんが、発想はですね。しかし、そういうふうに思われてもいたし方のないようなことではないかというふうに私は思うわけですけれども行革担当大臣としてこのような動きについてどのようなお考えを持っておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  11. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 臨調答申中によりますと、公団事業団等特殊法人につきましては、その任務あるいはまた目的を十分果たした場合にはこれは廃止する、これはもう当然のことでございますが、あくまでもその事業減量化官民事業調整というものを図るという前提に立って廃止すべきものは廃止する、民間法人に委譲するべきものは委譲する、あるいは事業を縮小するというふうなことで、根本的見直しを来年度じゅうに計画を立てるようにという答申があるわけでございますから、その線に沿うて各省にやっていただきたいと考えております。  いまお述べになりましたような、公団事業団海外活動事業団ベースにおいてやるというふうな問題につきましては、当然そうした特殊法人事業目的の変更ということになるわけでございますから、当然行管の方に相談があるわけでございまして、各省からそういう相談を現実受けておるわけでございます。この問題については、いま外務大臣からお述べになりましたように、国際協力事業団という組織がありまして、政府ベースにおけるそういう活動は一元的にこれを行うというのが今日までの政府の方針であるわけでございますから、この問題についてはやっぱり慎重に対処していく必要が私はあるのではないか、かように考えております。  官民分野事業調整民間活力を強化するということが、臨調のそういう特殊法人に対しての基本的な態度でございます。民間活力を強化するという基本線に沿うて、果たしてこういうことが適当であろうかどうか。しかもまた、現実的にはもう外務省が一元的にこうした協力事業を強化しておるわけでございますから、こういう問題についてはなかなかそう簡単にいかない、慎重に取り組んでいきたい、かように考えております。
  12. 菅野久光

    菅野久光君 総理にちょっとお伺いをいたしますが、私どもは、行政のむだを省く、真に国民のための行革は大いに推進すべきであるというふうに考えております。この第百回の臨時国会は、首相みずからが行革国会と位置づけているわけですね。そして第二臨調答申、それを誠実に実行していく、こういうことを首相はみずから、何といいますか、石にかじりついてもとにかくそれをやっていくのだということを常日ごろ表明されております。  そういう中で、いま私が指摘したようなことが政府部内から起こるということについては、私は非常に問題ではないかというふうに思うのです。ある意味で言えば閣内不一致とも言えるようなことではないかなというふうに思うのですが、総理としてこの問題についてどのようにお考えかお伺いいたしたいというふうに思います。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申でも行政簡素能率化ということを言われておりまして、海外経済協力その他につきましても簡素効率化という原則を貫く必要があると思います。ただ、協力内容によりまして、農林関係あるいは通産関係運輸関係厚生関係あるいは文部関係、さまざまの内容があると思いますので、それらの実態についてはそれらの各省庁の協力を必要とせざるを得ぬだろうと思います。  また、国鉄のような鉄道事業については、国鉄技術力というものも当然協力を仰がなければならぬと思いますが、窓口及び事務簡素化能率化という面からは、この事業団というものを中心にして一元化していくという、そういう努力をしていく必要があるだろう。これは要するに行政における実効の問題でございまして、それらにつきましてはできるだけ一元化をねらいつつ、しかも効率化能率化が行われるように、各省庁において協力し合っていくことが望ましいと考えております。
  14. 菅野久光

    菅野久光君 先ほど行管庁長官にもお尋ねしたのですが、臨調答申でも特殊法人の問題についてはきちっと答申が出ているわけですね。そういうことと、何か今度の動きは、そういうことが国会をやられている最中に新聞報道等でも出ているわけですね。そういうことでは非常に問題があるのではないかということを私は言っているので、特殊法人のいろんな持っているノーハウを海外協力に生かすということは、いまの国際協力事業団で十分ではないかというふうに思っているわけですが、臨調答申との絡みでこういうことが出てくるということについて私は問題指摘をしておりますので、そのことがいま政府部内で出ているということについての首相の何といいますか、閣内がそういうことできちっと一致をしておらぬのではないかというふうに私は思うのですけれども、その辺もう少しはっきり言ってもらいたい。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申の線に沿いまして統合し、効率化し、そして事務が円満に動くようにわれわれの方で差配してまいるつもりであります。
  16. 菅野久光

    菅野久光君 閣内不一致ということを首相が認めるということにはならないというふうには思いますが、私どもとしては、何か政府部内でやっぱりきちっとした意思統一が、本当の意味臨調答申を尊重していくといいますか、臨調答申を必ず守りていくという姿勢に欠けているところがこういう中でやっぱり出てきているのではないかということを指摘をしておきたいというふうに思うわけです。  では、次の問題に時間の関係もありますので移らさせていただきます。  次は厚生省関係ですけれども、九十八臨時国会でも大分いろいろ問題になったわけですけれども、例のBHA禁止の問題でありますけれども食品衛生調査会審議の経過を踏まえて、ことしの二月一日から禁止をするということになったわけですが、その禁止の仕方が、二月一日からということで告示をされながら、突然一月三十一日にこのことが決定をされる。そういうことからいろいろ国民の間でこの禁止措置についての疑惑といいますか、そういうものがわき起こったことは厚生大臣も十分御承知だというふうに思います。  ことしの二月二十三日の衆議院での農水委員会で、この食品衛生調査会結論が、適当な期間を置いて徐々にやめていく、行政指導をもって中止していくようにという見解、これが食品衛生調査会BHAに対する答申の中身だというふうに説明員が言っているわけですけれども、そういう中で、ことしの二月一日から禁止をするという告示をすることは、食品衛生調査会の方には当然厚生省としてはこれは連絡はしてあった、そのように思いますが、いかがでしょうか。
  17. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) お答えを申し上げます。  二月一日の施行延期をいたしたわけでございますが、その後行われました食品衛生調査会におきまして御報告を申し上げ、御了承をいただいております。
  18. 菅野久光

    菅野久光君 告示をされて、それから、その告示延期をするということについて厚生省食品衛生調査会との何というのですかね、通知というのですか連絡というのですか、そういうことについてはどのようなかかわりなんでしょうか。
  19. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お話しBHAの話でございますが、五十七年の七月ぐらいから問題が出ておりまして、食品衛生調査会でもいろいろと御議論をいただいたところです。  BHAというのはブチルヒドロキシアニソール、こういう名前でありまして、数十年にわたって実は使われておったものであります。日本でもインスタントラーメンとかポテトチップなどとか、油揚げの菓子とか冷凍魚、煮干しなどにはいままで使われておったわけでありまして、いままでは安全だということで、別にそこで被害が出ているわけでも何でもないわけであります。ただ、伊東先生からいろいろ御指摘がありましたから、食品衛生調査会でもこの問題を取り上げて御議論をいただき、その中で御議論ありましたので、一応いろんな調査をする過程におきまして当分の間、期間を置いて、諸外国との話もいろいろありますから、その辺を見た上でやったらということで大体食品衛生調査会では話がずっと進んでおった、こういうふうに私は報告を受けておったわけであります。  私は思いますのに、こうした問題は科学の問題である、科学的な真実というものを追求していかなければならない、こう思うわけでございまして、科学については私は国境はないと思うのです。技術的にどうアプライするかというのはそれは各国の判断ですが、科学的な真実というものはやはり議論をしてもらったらいいのではないかという形でいろいろと議論をそれまでにずっとやってきてもらっておったところでありまして、その結論がまだ出ないというような話のときにいきなりその使用制限をかけるのもどうか、こういう形で延期をしたわけでございまして、科学的な真実についてどういうふうなことが出るかという話であるならばそのときに対処してもいいではないかという考え方で、食品衛生調査会の方にもそういうふうなことをお話しして、御了解をいただいてやっておるというふうに御理解を賜ればありがたいと思っております。
  20. 菅野久光

    菅野久光君 ことしの二月一日に、これを扱わせない、禁止にするという通知を出したということについて、食品衛生調査会としてはそのことについて、何というのですか、二月一日にやるということは少し拙速過ぎるのではないかというような意見はあったのですか、なかったのでしょうか。
  21. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 昨年五月の調査会におきましてBHAの論議が行われたわけでございますが、非常にいろいろな議論が出たのは確かでございます。最終的には、先生も御承知のように、BHAは原則として禁止をすべきである、ただ、いつから禁止をするかについては、これは行政当局で判断をしてやってもらいたいというような御趣旨の意見書でございます。そこで二月一日延期をいたしたわけでございます。正確にはことしの五月十七日に開かれました食品衛生調査会におきまして、二月一日の施行をこういう理由で延期をいたしましたということを御報告申し上げたわけでございます。調査会の側からは、原則として禁止の方向で、施行期日をいつにするかは厚生省に任せてあるのであるから、二月一日の施行延期については了承をする、こういう御意見をいただいております。
  22. 菅野久光

    菅野久光君 食品添加物の一般の問題については、非常に国民に大きな関心を呼んでいることはもう御承知のとおりであります。特に、四十七年の国会の議決以来この十一年間、七品目が認可をされて九品目が取り消されたというふうに私は承知をしておるわけでありますが、それがこのBHAの問題を皮切りに、先ほどお話のありました五月十七日ですか、このあれで一挙に十一品目を認めるといったようなことになってまいりまして、まさに規制緩和ではないというような答弁も一部あるようでございますけれども国民にしてみれば、一挙に十一品目もふやされた。それが外圧によってそういったようなことになってきたんだというふうに受けとめざるを得ない。そういう状況があるわけでございます。  先ほど厚生大臣が、食品添加物の問題については科学的に物を考えていかなきゃならないというふうな答弁をされたわけでございますけれども、この科学的ということは、化学物質しかもそれが人体に入るということから言えば、何というのですかね、毒性試験、一定の条件を持っている動物で試験をして、その上で毒性があるとかないとかということで認可をするとかしないとかということなんでありますけれども、それには、いま仮に、いわばある一定の条件のもとでの化学的な試験によって毒性がないというふうに判断されたものであっても、長い、ある程度の年月がたったときに、それがまた別な試験によって毒性があるということもいままでの中では出ているわけですね。そういう意味で、食品添加物の問題については慎重にこれは取り扱っていかなければならないというのがあの国会決議になったというふうに思うわけです。  そういうことで、非常に国民の健康に直接影響がある。また健康だけではなくて、きのうがんの問題もいろいろありましたけれども、健康だけではなくて、いま食生活を向上させる上に非常に大きな役割りを果たしていることは認めますけれども、しかし、あの中には変異原性を持っているものもないとは言えないような状況ですね。ですから、それは毒性がないんだということで仮に認可をしたとしても、それはあくまでもいまの時点であって、しかもそれが一つの化学物質だけでの試験でありますから、それが複合されて体内に入ったときにどんなことになるかということになれば、毒性がないんだということを言い切ることはできないというふうに思うわけです。  特に、食生活にかかわる、国民全体にかかわる問題でありますから、食品衛生調査会のあり方の問題にかかわってもいろいろありますが、BHAそのものについても、何か四カ国会議の中では、数カ月から半年ぐらいの期間に実験結果が出るというようなことが出ているようなんですけれども、四月に四カ国会議をやりましたね、BHAの問題で。その後、こういったような実験をなされて結果が出たのかどうか。そして現行のBHAの問題については一時延期ということで、その後どのようなふうにお考えになっているのか。その辺をちょっとお伺いしたい。
  23. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私が先ほど申しましたのは、科学というものには国境がないということを申し上げたのでありまして、要するに科学的真理というものはやはり万国共通で議論をしていただかなければならない。と同時に、それはいろんな、たとえばBHA云々というようなことになれば、いろんな科学が進歩してくれば、昨年はイエスだったものが来年はノーになるということは、科学の進歩によりまして当然私は変わってくるのだろうと思います。ただ、われわれはやっぱり現在持っておるところの科学的な最高の知識レベルでもっていろいろのものを判断をしていくというのが正しいやり方ではないか、こう思っておりまして、常にいろんな問題につきましても、先生御指摘のような変異原性とかいうような問題についても、常に衛生試験所その他で検討を重ねておるところでございます。  それから、御指摘のございました六カ月ぐらいで試験結果が出るのではないか、こういうふうなお話がございましたが、これは商工委員会で事務当局が一遍答弁をいたしましたところでやった資料だと、こういうふうに私は理解しておりますが、いま、それを鋭意検討をさしております。その結果は、来年の三月ぐらいには大体出せるのではないかなというような話を私は聞いておりますが、詳しいことでございましたら事務当局の方から答弁をさせます。
  24. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 昨年の七月ごろからことしの一月ごろまでにかけまして例の四カ国会議、日米英加でございますが、やりました。意見が必ずしも一致をいたしませんで、先生お話しのことしの四月に、WHOとFAOの合同の食品添加物の専門家会議が四月にございました。そこで、それにかけようということになってかけたわけであります。  その結果、そのFAO・WHOの会議で、もう一度ちゃんと犬あるいは猿等を使って実験をしようではないかということになりまして、それを受けまして、日本で八月から犬によります実験をいたしております。大体六カ月、まあ二月ごろには解剖をいたしまして、一月ぐらいかけまして病理標本その他を整理をするということで、大体三月の終わりごろにはそれが出る。それをもって来年の四月のFAO・WHOの専門家会議に出したい。同じような実験をカナダもアメリカもいま進めておる最中でございます。
  25. 菅野久光

    菅野久光君 BHAの問題については、そういうことで来年の三月ごろということを一応いまの段階で予想しているということで受けとめておきたいと思いますが、九品目を、十一品目ですか、これをやったときに関係の団体等にも十分その説明をするというようなことが、これはことしの四月十二日の参議院社労委員会でなさっているわけですけれども、「関係の団体等」という、その関係の団体というのはどういう団体なんでしょうか。ちょっとお伺いします。
  26. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 具体的にどういう表現で申し上げたかちょっと記憶はございませんが、実際上は食品関係の各種の団体でございますとか、あるいは消費者団体が大変大ぜい各方面からお見えになります。その方々に詳細にわたって御説明をいたしたということでございます。
  27. 菅野久光

    菅野久光君 あと十分ぐらいしかないということでございますので先を急ぎますけれども、ことしの九月三十日の朝日ジャーナルのところに守誠さんということで、「輸入レモンに気をつけろ。防カビ剤OPPは戦争よりもこわいから」、こういうことで文章が載っております。「レモンのOPPは、アメリカでは食品添加物としての使用は認められていません。」、これは食品添加物ではなくて何か農薬の方に入れられているというふうにお聞きしておりますけれども、  ところが、日本向けレモンやグレープフルーツなどかんきつ類の防カビ剤としては使われている。アメリカから日本へ運ぶ間に、どうしても白カビがはえる。そのためにOPPが使われる。   そのあと日本では、食品添加物として許可されたのです。でも、これはアメリカの政治的圧力からではないでしょうか。アメリカにとって、日本はかんきつ類の世界最大の市場だし、それに、貿易摩擦もある。   こうした政治とか経済のからみで、危険な食品添加物を押しつけられていくとすれば、これはこわいですよ。ちょっとオーバーにいえば、食品添加物は民族虐殺の武器にもなりうるのですから。戦争よりこわいというのは、そういうことです。   ぼくの知り得たところでは、OPPは食品添加物三四七のうちのワースト・ワン。完全な発ガン性物質です。 こういったようなことが出ているわけですね。  ですから、こういう本の一番最初のところに出ているこういったような記事について、厚生省としてはどのようにお考えか、ひとつお伺いいたしたい。
  28. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) まず眼初に、OPPが食品添加物であるかないかという問題でございますが、わが国では食品添加物として取り扱っております。  御承知のように、レモン等に使用します場合は、収穫をいたしました後でOPPの液の中をくぐらせるということでございますので、国によって食品添加物として扱っているところもございますし、WHOでは添加物じゃなしに農薬として分類をしておるということでございます。しかし、いずれにいたしましても規制をしておるということはどちらもそのとおりでございます。  それからその次に、食品添加物の毒性あるいは安全性の一般論でございますが、食品添加物、これは各国とも同様でございますけれども、動物実験を丹念にいたしまして、動物に何の作用も起こさない量というものをまず決めます。最大無作用量と申しますが、それを決めます。それの百分の一、その百分の一の安全率を見まして、その百分の一を人間に対する一日最大許容量といたします。さらに、その一日最大許容量の約二〇%しか人体に入らぬように使用基準を決めます。それから、実際私ども使用基準を決めまして、使用状況を見ておりまして、使用基準の一〇%から二〇%にきますと、これは危険信号だというふうに考えていろいろの策を考えます。したがいまして、百分の一の二〇%の五分の一のさらに五分の一ないしは十分の一でございますから数千分の一、要するに動物に作用を起こす数千分の一の量で、防腐の作用とか酸化防止の作用があるものに限って使うということでございますので、食品添加物の安全性についてはそういうことで決めておる。  OPPも全く同じでございます。OPPにつきましても同じような考え方で使用量を決めておるということでございます。
  29. 菅野久光

    菅野久光君 非常に食品添加物の規制というのは、微量なもので一定の効果をもたらせるということで、そこのところは厳密にということではありますけれども、しかし、その厳密さというものをチェックする体制でありますけれども、いまの食品添加物あるいは農薬等についての検査体制といいますか、こういったようなものはどのような状況になっているんでしょうか、お伺いいたしたいと思います。
  30. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 食品添加物につきましてはいろいろ御議論がございまして、ここ十年近く再点検作業を進めております。かなりの数の食品添加物、すでに指定をしております食品添加物についてもう一遍再チェックをするという作業を進めております。  それから、前にもちょっとお話の出ました変異原性でございますが、これは新しい技術でございますので、これについてはやはりすでに指定をしております添加物につきまして、年間三十から五十ぐらいの添加物につきまして変異原性テストを、この四年間ぐらい続けてまいっております。
  31. 菅野久光

    菅野久光君 輸入食品なんかの食品衛生監視員は、いま調べますとわずか五十六人ということで、輸入食品の検査実施率は六%程度と。そして、その六%程度しか検査を実施していない中で、四・六%が不合格であるというような実態だというふうに私は押さえているわけですけれども、このことについてはこういう押さえで間違いがないかどうかお伺いしたい。
  32. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 先生お話しのとおりの数字でございます。  そこで、私ども輸入食品の検査に当たりましては、前から何回も来ているようなもの、そういったものは安全であるということで、たとえば全く新しく輸入されるもの、それから途中で汚染をされた疑いのあるもの、それから前に違反のあったところから来たようなもの、そういったものに重点をしぼりまして検査をしておるというのが実態でございます。
  33. 菅野久光

    菅野久光君 いよいよ時間がありませんので、最後にちょっと総理にお伺いしたいと思いますが、いま食品添加物あるいは農薬、医薬あるいは合成洗剤等を含めてわが国国民の健康に非常に大きな影響といいますか、そういうものを及ぼしているものが多々あるわけですね。そしてこの中には、ただ単に発がん性ということだけではなくて、先ほど言いましたけれども、変異原性、これを持っているものもある。そうなりますと、この変異原性を持っているものはその年代、次の年代だけではなくて、国立遺伝学研究所の田島弥太郎先生でしたか、三代四代になってからその遺伝的なものがあらわれてくる、こういったようなことが蚕の実験で出ているわけです。  ですから、私は国を守るという、そういう意味で防衛外交には大変首相は御熱心でありますし、また、日本を守るという面でそういうことも必要だということでおやりになっていますけれども、やはり日本の国民を守るという意味では、毎日とにかくわれわれは食料を口にしなけりゃならぬ。そういう中でこの食品添加物などを含む食品を六〇%とかあるいは七八%国民は、そういう添加物の入っているもので食事をしているというような話もあるわけでありますけれども、日本の将来、日本の民族の将来ということにおいてこの問題は非常に大きな問題。だからこそ、消費者団体あるいは生産者団体も含めていまの食品添加物の規制緩和反対、こういったようなことについて熱心な運動を繰り広げている。  いまの食品の検査体制についても、先ほど私が申し上げました本当に微々たる検査体制しかできていない。国を守る、日本の民族を守るという面から国民が安心して食生活ができるような、そういう検査体制ども含めてこれからやっていかなければならないというふうに思うのですけれども総理の所見をお伺いしたいというふうに思います。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 食品添加物につきましては、家庭の主婦の大きな関心が寄せられていると思いますし、国民の皆さんも新しいものが続続出てくるような状態におきましては不安を禁じ得ない面も出てくるかもしれません。そういう意味におきまして、食品添加物等に対する行政はこれからよほど力を入れて、綿密に科学的に行わなければいけないと思っております。特に、いまおっしゃったような後代に影響が出てくるというようなものにつきましては、非常に厳重に検査をし、また監督していく必要があるだろうと思っております。  ただこの問題は、やはり国際的水準というものをある程度考える必要があるのでありまして、なるほど、あるものについてよけいとり過ぎればどんなものでも害を及ぼしてくるということはあたりまえであります。おしょうゆはうまいけれども、おしょうゆばかり毎日飲んでおったら必ず肝臓を害するのです。したがって、摂取量の問題、摂取のやり方という問題もやはり出てくるのだろうと思います。そういうような点をよく注意いたしまして、日本人全体の健康を守るために厚生省等を中心にして、その体制をますます強めていく必要がありますし、また、国際機関との連携を緊密にいたしまして、科学的データの交換あるいは標準的スタンダードの確立、こういうことによりまして国際的にも安定した食品添加物行政というものが行われる、これが必要であると思っております。
  35. 菅野久光

    菅野久光君 以上で終わります。
  36. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 和田教美君。
  37. 和田教美

    ○和田教美君 INFの交渉が中断ということになりました。非常に日本にも重大な関係のある問題でございますから、まずその問題についてお尋ねをしたいと思います。  ジュネーブでまる二年間にわたって行われておりました米ソの中距離核戦力制限交渉、つまりINF交渉でございますが、これが二十三日にソ連の交渉打ち切り宣言によって中断をされました。そして、アンドロポフ・ソ連共産党書記長は二十四日に早速声明を出して、西側が計画どおり米国製の新型中距離ミサイルの年内欧州配備に踏み切ったことに対して、三項目の対抗措置をとるとの声明を発表いたしました。  このINFの問題というのは、もともとソ連が新しい中距離核ミサイルSS20を欧州、アジアに実戦配備したということから始まった問題でございます。そうして、これに対してヨーロッパ戦域における核バランスが西側に不利になるというふうに判断をしましたNATO、北大西洋条約機構がソ連との間でこの問題についての核戦力の削減交渉はやるけれども、もしそれが不調に終わった場合には八三年、つまりことしの十二月に西ドイツ、イギリス、イタリアその他五カ国に米国製の新型パーシングII型ミサイル、それから地上発射巡航ミサイル、これを配備するという決定を行いまして起こった問題でございます。  それで、二年間の交渉の経過はもう報道されておりますとおり非常に曲折があったのですけれども、結局条件が折り合わずに、西ドイツ連邦議会が二十二日に西独に新たな核を、当面はパーシングII型九基にすぎませんけれども、これを配備するということの決議案を可決したということをきっかけにソ連が交渉打ち切り宣言をした、こういう経過でございます。  パーシングII型の第一回の配備は、全部が百八基の予定ですから、その中でわずか九基でございますし、またイギリスやイタリアあるいは西ドイツに配備されます巡航ミサイルにしましても、第一回の配備数は全体のごく一部でございます。したがって、これによってヨーロッパの核バランスが大きく変わるということは、私はないだろうというふうに思います。しかし、西側の配備決定に対しまして、その対抗措置としてソ連が、いままで行ってきたSS20などの凍結措置を解除するということをアンドロポフが言っておること。あるいはまた東独、チェコへの新型短、中距離ミサイルの配備の準備をすると言っておること。さらに米本土に直接脅威を与えるミサイルシステムの海洋配備をやる、準備するというふうなことを言っておるというふうなことから見まして、ソ連の態度は相当強硬だというふうに判断せざるを得ないと思います。  まあINF交渉の再開の見通しについては悲観論、楽観論が入り乱れておるという状況でございますが、確実に言えますことは、この交渉の中断によって米ソ関係、東西関係が軍縮どころか実際には核軍拡の新しいラウンドに入ったということではないかというふうに私は考えます。INF交渉の中断は、日本を初めアジアにも非常に大きな影響を与えるわけでございます。御承知のとおり、ソ連はすでに極東地域にSS20百八基を配備、最近防衛庁の発表によりますと、これが百三十基ぐらいになるのではないかという予想もあるわけでございますが、総理はこのINF交渉について、アジアの犠牲において交渉がまとまることは困るということで、グローバルベースにおける交渉ということを、レーガン大統領にも申し入れたということを承知しておりますけれども、しかし、交渉が中断ということになりますと、少なくとも、現在ある極東のSS20の削減という日本側の希望はかなえられないということになるわけでございます。  とにかく実際に、もしソ連が譲歩しないのなら配備するぞということを、そういう強い態度を示すことによってソ連の譲歩を引き出すというレーガン方式は、現在の段階では成功していないというふうに私は思うわけでございます。もちろん私は、交渉の再開を熱望するものでございますけれども、一体、こういう事態について総理はどういうふうに判断をとっておられるか。また、交渉の再開の見通しはどうお考えになっておるのか。さらにまた、新たな核軍拡競争の始まりという問題について、日本政府としてどうお考えになるか。その辺のところをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) INF交渉が中断しましたことは、はなはだ遺憾でございます。速やかに両方がテーブルを狭んでこの交渉が再開されることを熱望してやみません。こういう事態があらわれることを恐れておりましたために、過般、コール首相が東京へ参りましたときに東京声明を出しまして、その声明の第四項に、強くテーブルを離れないように、そして不屈不撓の努力で話し合いをまとめるように要望してきたところなのでございます。その事態が、結果が思わしくない方向へ来たことはまことに残念であります。しかし、ソ連の声明等を見ましても、ディスコンティニューというような言葉を使って、続けないと、中断という意味であって、やめたとは言っていないのです。  それから、STARTの方の交渉は別個に行う可能性もある。情勢によってはSTARTとINFが次のレンジで合体して進められるかもしれない、そういうことも言われておりますが、いずれにせよ、ともかくINF問題も含めて、テーブルに着いて話し合いが一日も早く再会されるように熱望してやみません。  そこで、私は、この一月以来、アメリカに行き、アメリカ大統領に会い、あるいはサミット等におきましてもある程度積極的に発言して、世界平和を早く招来するためにはINF等の問題も含めて、レーガン・アンドロポフ会談をできるだけ早く実現するようにという期待を持って、いささか努力をしてきたものでございます。しかし、遺憾ながら、大韓航空機事件等々も勃発いたしまして、それがだんだん望みが消えてきているということははなはだ残念でございますが、この努力をやめるべきではない。終局的には、INFの問題はアメリカとソ連との話し合いで、その周辺にフランスやイギリスの核兵器も纏綿しているということで、主力はやっぱりアメリカとソ連の話し合いであります。  したがいまして、来年になるというとアメリカ大統領選挙等もありまして、なかなか日程が込み合ってきておりますが、チャンスをできるだけ両方でつくり合って、話し合いの機会をできるだけ早く復活させる方向に努力してもらいたい、そう考えておる次第でございます。
  39. 和田教美

    ○和田教美君 総理は、二十四日に胡耀邦中国共産党総書記と首脳会談をやられましたけれども、そのときにもSS20問題について、日本が非常に重大な関心を持っているということを表明されたということが報道されております。それからまた、二十五日には、安倍外務大臣が呉学謙中国外相と会談しましたが、そのときもINF問題が話し合われたということでございます。私は、日本と中国がお互いに連絡をとりながらこういう問題に対応していくということは非常に重要なことで、結構なことだと思うのですけれども、この会談の内容はどうであったか、ひとつお話しを願いたいと思います。  まず総理大臣から。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、ソ連が極東に展開している百三十五とも最近は言われておりますが、SS20の展開についてはアジア全体、日本の国益等考えて重大な問題を持っておる。中国側におかれても、安倍外務大臣報告によれば、国連における呉学謙外相との会談等において同じように大きな関心を持っていて、そして、ときによっては情報交換等もあり得るというような報告を受けておるけれども、自分はそのようにこれを重要視しておる。そういう意味において極東におけるSS20のこれからの展開、その処理等については日中両国はともに重大な関心事項であるのであるから、ともに今後ともこの問題に深く留意をするとともに、お互いが情報を交換したり話し合いをしたりする。そしてこれが縮減、廃止の方向にいくように努力したい、そういうことを申し述べまして胡耀邦総書記も大体それに賛成をした、そのように考えております。  そして先方は、対ソ連正常化の問題について、その中に大きな項目として、中ソ国境におけるソ連軍の配置の問題が一つの障害になっていると申しましたが、その中にSS20の問題も入ってきている、そういうことを言明いたしまして、いままで三十五個師団とか言われておる既成の兵力やあるいはミサイルのほかに、SS20という問題もその話の重要な条件として入ってきたということをわれわれは確認した次第であります。
  41. 和田教美

    ○和田教美君 外務大臣
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま総理から答弁をされたとおりでありますが、私も呉学謙外相とニューヨークで会いまして、またさらに今回会談をいたしました結果、中国がSS20の配備につきまして非常に重大な関心を持っておるということが明らかになったわけでありまして、中国側としては対ソ交渉を始める中で進めておるわけですが、その中で三大障害の一つ、すなわち中ソの国境におけるソ連の軍備増強、その中にこのSS20の配備が行われておるということについては、われわれとしてはこれを認めるわけにはいかない。したがって、中ソ交渉においては今後とも中ソ国境における、極東におけるSS20の配備については、これを大幅に削減するかあるいは撤去するよう強く求めていく考えを明らかにいたしました。  なお、わが国としてもグローバルな立場でこの交渉が推進されるべきであるし、同時にまた極東は犠牲にしてはならない、こういう立場を堅持しておりますし、この点については中国側も大体同じ認識を持っておるわけでございますから、中国とさらに今後とも情報の交換等も行いながら、今後SS20の極東における配備の大幅削減あるいは撤去に向かってともに努力をしていきたい、こういうふうに考えておるわけです。
  43. 和田教美

    ○和田教美君 また、先日十九日でございましたか、カナダのトルドー首相がわざわざ来日をされまして総理と会われまして、そして五大核保有国による核軍縮の場を設けることなどの四項目の軍縮提案をされたと聞いております。緊張緩和のための政治対話を促進するという考え方は、私は非常にタイミングのいいことではないかと思うのですけれども総理はレーガン大統領にいろいろ言うということ以外に、たとえばトルドー式のそういう呼びかけというふうなものを、この際軍縮提案をいまのような状況の中で考えていかれるおつもりはないかどうか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、トルドー首相に対しまして、INFの問題あるいはそのほかの問題、たとえば大韓航空機の事件やらあるいはラングーンにおける爆発事件やら、あるいは最近における中近東におけるPLOの問題とか、ともかく国際関係が非常に手詰まりになってきておる。こういうときにトルドー首相が、この手詰まりの状況を心配して、そして何とかこの手詰まりを打開する一つの雰囲気づくりに乗り出してきたということについては敬意を表する、私らもそういう必要を感じております、そしてあなたが具体的提案を持ってヨーロッパの各国を歴訪し、また、わざわざ日本にも来られたということについては大いに評価すると。  それで、そのいろいろな御提案の中で彼がかなり強調したのは、結局は、核を持っておる五大国が一堂に会して、そしてこの問題について話し合うことが大事だ、そういうことを強調しておりまして、私に同調を求めましたから、私も原則的には賛成だと。しかし、中国は核拡散防止条約には入ってないし、フランスも入っていない。そして国連軍縮委員会に対する立場も非常にみんなおのおの違っておる。そういう状況のもとに、INF自体がまだまとまらないという状態で五大国が一緒に一堂に会するということはきわめてむずかしいでしょうと。だから五大国が、いずれ終局的には一堂に会して核兵器の問題を真剣にお互いが論じ合い、そして具体案をつくってもらうことが必要であると私も考えています、最終的にはそういう仕上げでないと核兵器の問題は仕上げができないのだろうと思っています。ただ、それへ前進するために、やはり何といったって目前のINF問題が片づかなくてそこまでいけるはずがない。そういう意味において、INF問題を片づけ、STARTの問題を片づけていくところにわれわれはまた大いに努力しましょう。しかし、あなたのおっしゃることは非常に私はよくわかりますと。  それからもう一つ大事な点は、今度は私から言ったのでありますが、われわれは核拡散防止条約、NPT条約に批准しておる。あのNPT条約を見ると、核保有国が自粛措置を講ずると書いてある。それから原子力平和利用について、核兵器を持たない発展途上国等に積極的に便宜供与をやる、そういうことが書いてある。ところが、われわれはそれを期待して核拡散防止条約に調印して、そしてこれは発効しておるけれども、核保有国側の自粛措置が足りない。これはわれわれ大いに核保有国に対して責めべきポイントではないだろうか。それから、原子力の平和利用につきましても、やはり発展途上国その他についてこれを便宜供与することをもっと勇敢にやってもらわなきゃいかぬし、平和利用のためにやっている国が拘束を余り受け過ぎるという点では困る。日本なんかはその一つの国になっておる。そういう意味において、核拡散防止条約の面からひとつこの問題をわれわれは持ち上げていこうじゃありませんかということをトルドー首相に申し上げました。  彼も、その具体的なそういう足場を持って言うということは非常に私もよくわかりました、それは非常にいいアイデアだと。で、あなたがそう言うならば、ニューデリーへあなたこれから行かれるようだけれども、英連邦の三十数カ国の首脳部が集まるそうだが、東京で中曽根がこう言った、そういうことを英連邦の諸国の人々にも申し上げて、大いに共鳴をとるようにしてくださいと。あなたの考え方には私は原則的に賛成です、そのこともお伝えください。そういうことを申し上げたところなんであります。
  45. 和田教美

    ○和田教美君 いまソ連のSS20の脅威という問題については、いろいろ政府側のお話もあったのですけれども、しかし、SS20の脅威ということを強調するだけではアジアにおける核の問題というのは私は十分ではない、正確ではないというふうに思います。  ソ連がアジアで核を中心とする軍事力を増強しているということに対抗いたしまして、当然アメリカも戦域核その他の戦力の増強を図っておるわけでございます。そして、アジアにおける戦域核という問題を見た場合に、一つの問題は、アメリカがいま進めております海軍の兵力近代化、この計画の一環として、海上、水中発射の巡航ミサイル、つまりトマホークでございますが、このトマホークの配備計画の問題だと私は思います。トマホークには、御承知のとおり核、非核両用がございますが、まず非核のトマホークから配備をするということで、これはすでにニュージャージーなどには配備済みだということが報道されております。そしてアメリカ側の発表によると、来年の半ばぐらいから核弾頭つきのトマホークの太平洋第七艦隊の水上艦艇、潜水艦などに対する配備を始めるということも報道されておるわけでございます。  アメリカの軍事筋の情報などによりますと、この近代化計画によって、アメリカは非常に太平洋における核戦力のバランスを取り戻す、立て直すということを重視しているということでございまして、アメリカの権威ある民間研究機関の軍縮協会がことしの五月に明らかにした巡航ミサイル問題についての特集によりますと、今後十年間に日本に寄港するアメリカの主要艦艇はほとんどトマホークを積載することになると。これはもちろん攻撃型原潜、戦艦、巡洋艦などを含むわけでございますが、そして、十年後には日本に寄港する可能性のあるトマホーク艦は約八十隻になるだろうというふうな予想も出しておるわけでございます。もちろん、このトマホークは核、非核両用でございますから、どれだけが核弾頭をつけるということになるかどうか、これは恐らくアメリカの秘密であって、核の所在を明らかにしないという原則から見て明らかにしないのだろうと思います。  しかし、そこで問題は、日本の非核三原則との関係ということになってまいりますが、こういうふうに約八十隻のトマホーク積載艦が日本の港に入ってくるというふうなことになってまいりますと、核を積んだ米艦の日本寄港は認めないというこの非核三原則が、そのまま国民に対して説得力を持つかどうかという問題が一つ出てくるのではないかというふうに思います。非核三原則の中で、核を持ち込ませずという条項については、陸上への核持ち込みは断るけれども、しかし艦艇の寄港は認めざるを得ないというふうな、いわゆる三原則を二カ二分の一原則に変えるというふうな考え方がすでに自民党の中にも出ておるように聞いておるわけですけれども総理はその辺のところをどういうふうにお考えなんでございましょうか。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核三原則は従来どおりこれを堅持してまいるつもりです。
  47. 和田教美

    ○和田教美君 私は、非核三原則が修正しなければならないような事態に陥るということを決して望んでいるわけではございません。そういう日本の国是に関係する重大な問題が起こってくる可能性のある問題が、このINF問題の底辺にあるということを指摘したいわけでございます。それだけに、何としても米ソ両国の自制を強く求めて、余り相手をお互いに刺激するような行動をとるべきでないというふうに考えるのです。  いま総理は、核保有国の会議だとか、そういうものに原則的に賛成だということもお話しになりましたし、いろいろアジアの他の国の首脳に対してもアプローチをするようなお考えもあるようでございますが、これは非常に結構なことだと思うのですけれども、もう少し具体的にその形をとる時期に来ているのではないか。つまり、核抑止論ということ一点張りではとめどもない核軍拡競争になっていくわけですから、抑止論の効果というものを私は全面的に否定するわけではないですけれども、その抑止論に加えた新しい何か考え方というものを出すべき時期に来ているのではないか、こう思うわけで、たとえばスウェーデンのパルメの提唱している共通の安全保障というような考え方ですね、そういうようなものもすでにこの委員会でも取り上げられましたけれども、それも一つの模索だというふうに思います。核抑止論だけではいかない、そのいろいろな穴をどうやって防ぐかというのが問題だろうと思うのですが、その辺についてどうお考えでございますか。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、たしか一九八〇年でしたか、中国に行きまして伍修権副総参謀長というのですか、中国の軍の二番目の偉い副総参謀長に会いましたときに戦略論をやったことがあるのです。そのときに私が申し上げたのは、あなた方の方は大陸型人民遊撃戦術だが、私の方は海洋型あるいは列島型総合抑止戦略だと、そういうことを言うたのです。中国の方は膨大な国土を持っていてふところが深いですから、遊撃戦的な発想が成り立ち得る。日本はせんべいみたいに細い、人口がこれだけ過密な場所ですから入れたらだめになる、そういう意味において総合抑止戦略だ、その差がある、そういうことを指摘したことがあります。やはり、総合抑止戦略というのは日本に非常に大事なんで、しかも列島型という、この大八洲を守っていくということを基準にして考えていくということが必要ではないか。そういう意味において、和田さんと基本的に同じ考えを持っているのではないかと思います。    〔委員長退席、理事成相善十君着席〕
  49. 和田教美

    ○和田教美君 INF問題と関係をいたしまして、アジアにおける軍縮会議といいますか、軍縮を討議する場づくりというものを、その可能性を探るべき時期に米ているのではないかというふうに私は思うわけです。ヨーロッパでは、何だかんだ言ってもたとえばINFの交渉あるいはまた戦略兵器の削減交渉、STARTですね、それからさらに、来年の初めに開きます欧州の軍縮会議、かつては全欧安保会議というふうなものもあって、そういう場がとにかく継続的にできておるわけでございます。そして、そこで軍縮、軍備管理の問題がいろいろ話し合われるということなんですけれども、北東アジアでは、いままではそういう地域的な軍縮の問題を話し合う場が全くできてない、また、そういう交渉も行われたこともないということでございます。もちろん、ヨーロッパと日本ではいろいろ事情も違いますし、困難性があることは十分承知ですけれども、この地域での軍縮、軍備管理の交渉の、あるいは堺づくりの必要性を説く議論が非常に学者などにも多くなっておる現状でございます。  また、いわゆる信頼醸成措置と申しますか、たとえばNATOとワルシャワ条約機構の間には大規模な軍事演習の事前通告とか、主要な軍隊の移動の事前通報とか、そういうふうなことについて一応の協定みたいなものができておるわけですね。アジアにおいては、それすらないわけでございます。そういう問題も話し合うというふうな場をぜひつくっていくことが必要ではないかと思うのですが、その点についてお考えを聞きたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ヨーロッパの場合は歴史的因縁がございまして、わりあいに軍備管理という問題が成熟してきておる、熟成していると言ってもいいと思います。これはやはり、第二次世界大戦が終わってからのいろいろな因縁がありまして、初めは陸上兵力を、特に戦車というものを中心にして兵力の均衡というものが論ぜられておった。ところが、ソ連軍が相当な戦車をワルシャワ条約体系の中へ投入した、二万とか二万数千とか言われておる。それに対して西側のNATO側は非常に微弱である。そこで、アメリカの核兵器、戦術核兵器を導入してきて、それでソ連の戦車群に対抗して均衡を成立させた。そういうところから軍備管理というものが幾何学的に、物理学的に数量計算で成り立ち得るという基礎があるわけであります。    〔理事成相善十君退席、委員長着席〕  ところが、アジアの場合はそういう幾何学的な、数量的な均衡という場にまだなれておりません。非常に流動性を持っております。それで、どっちかというと、アジアの場合は遊水地みたいなものがあるのですね、水を遊ばせるような場所が。堤防がきちっとできて、数量計算までぴしっとできているという要素はない、非常に政治的な流動性を持った点がございます。それはごらんのとおりです。そういう意味で、ヨーロッパのような原理をアジアに適用できるかというと、私はむずかしいと思っておるのです。のみならず、わが国自体は、憲法によりまして日本列島の防衛にのみ防衛というものは重点が置かれておる。そういう情勢を見ますと、なるほど軍備管理、軍縮というものは非常に望ましいことでありますけれども、おのずから限界が、ある程度あります。日米安全保障条約ということにのみわれわれは現在安全保障の相手方を求めているわけであります。  そういう面からいたしまして、終局的に将来、アジアにおける国々がその北東アジアを中心にして軍備管理の会議を設けるという構想もあながち否定すべきではないと思うのです。そういうものが将来できれば、それはつくり方によっては望ましい形になるだろうと思う。しかしいま、ではそれがすぐできるかというと、中ソの間ですらまだSS20やらあるいは国境における三十五個師団のソ連軍というものの処理、モンゴルにおけるソ連軍の進駐、駐留、そういうような問題をめぐってそれですらまだ片づかない。そういう状況のもとに、いますぐそれが可能であるかと言えば、ヨーロッパから見ればまだまだ未熟成の要素がございまして、いますぐそれをわれわれが推進するとかなんとかという段階にまだ事態は来ていない。  それよりも、日本固有の立場を考えつつ、しかもアジア全体における抑止方法というものをどういうふうに展開していくかという政治戦略等も加味しつつ、戦争を起こさないような必死の努力をしていくことが現実的ではないかと、いまはそういうように考えております。
  51. 和田教美

    ○和田教美君 INFの問題はこれぐらいにいたしまして、行革の本論に入るわけでございますが、まず最初にお聞きしたいのは、総理はこの特別委員会で、臨調答申の線に沿って増税なき財政再建を堅持する、仮に総選挙があれば増税しないと公約したい、私個人としてはそう考えているという趣旨のことを答弁をされました。  ところが、その後、竹下大蔵大臣初め各閣僚のお話を聞いておると、個別の税目については増税あり得るというふうなニュアンスがあるわけでございます。また、臨調答申そのものが必ずしも一切の増税を否定しているというものではないわけでございます。臨調の言っている増税なき財政再建というのは、この間ここへ参考人として出てこられました瀬島さんなんかのお話を聞いても、全体としての租税負担率は余り上げないということなんであって、たとえば直間比率の是正とか、見直しとか、所得税を減らした場合にはそれに見合って間接税をふやすとかというふうな考え方は否定していない、というふうな趣旨の発言がございました。総理の言われるいわゆる、私個人としては増税はしないという意味も、結局そういう意味でございますか。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず第一に、私は、臨調が言う増税なき財政再建という基本原則をできるだけ最大限に堅持して、これからも財政政策の運用をやってまいりたいと思います。  第二に、仮に総選挙というものが近くあるといたしますると、来年度予算の編成問題が出てまいりますが、その来年度予算編成については臨調答申の線を守って増税いたしません、私はそう申し上げておるので、これは私は実行していきたいと思っております。党が具体的にどういう公約をするか、まだ党の公約はいまやっている最中でありまして最終的なものは見ておりませんが、私は、自民党員は、今度の仮に選挙があった場合には、来年度予算については臨調の線をわれわれは守って増税しません、そういう形で公約して差し支えないと思っています。  恐らく野党の皆さんは、増税するぞ、増税するぞと言って大分御宣伝なさるのじゃないかと思いますが、そういうことはないということをはっきり私は申し上げておきたいし、そういうことをまたお訴え申し上げたいと思っているのです。
  53. 和田教美

    ○和田教美君 しかし、いま私も申しましたように、臨調の基本答申そのものが、増税なき財政再建というものについては全体としての租税負担率を上げないということであって、いま申しましたように、「所得税制における課税最低限及び税率構造並びに現行の直接税、間接税の比率等税制上問題のある重要課題につき検討すべきである。」と書いてあるわけですね。そして、いま言ったように、所得税の減税分に見合って来年度間接税を引き上げるというふうな政府税調の考え方、そういうものについても基本的に矛盾はないと瀬島さんははっきり言っているのですよ。われわれの考え方と基本的には矛盾はないと言っているわけですから、総理考え方というのはもう少し正確に言っていただかなければ、一般国民は非常に、何というかナイーブに、増税なきと言われるともう一切の増税がないんだと思っちゃうわけでございますから、その辺のところをもう少し明確に言っていただきたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私、行政管理庁長官をしておりまして、臨調の御議論内容もわりあいに知っている一人でございますが、私が行政管理庁長官をしているときから増税なき財政再建ということを臨調はいろいろ御議論になりまして、この間瀬島さんがおっしゃったような線が臨調が言われるものであり、それは文章化されておるのです。  GNPに対する租税負担率というものは変えない。新しい税目を起こしたり何かすることはしない。ただし、でこぼこ調整はいままでもやってきた。そういう意味で、たとえば租税不公平措置の是正、そういうような意味でいろいろでこぼこ調整をやってまいりましたが、たとえばそういうことはいままでもやってきていることであり、それはまた可能なことではないか、そういうふうに思っておりまして、そういう臨調の線に沿ってわれわれは財政政策もやり、来年度の予算編成に当たっては増税はしない、臨調の方針に沿ってやる、そういうことを私は演説で約束したいと、そう思っておるのです。
  55. 和田教美

    ○和田教美君 いまの問題について、総理の言っているのは、一般消費税のような大型間接税は今度やらないということであるけれども、大蔵省などは個々の税目の見直しなんということは当然なんだというふうな考え方があるということで、またそういうことがよく報道されるわけですけれども、いまの総理の答弁をお聞きになって竹下大蔵大臣はどういうお考えでございますか。
  56. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) お答えいたします。  総理の答弁は非常に正確であると私は思います。確かにいろいろな報道がなされますが、いわゆる一般消費税(仮称)、そういう大型新税については、税調におかれましても国会決議があるということを十分踏まえた上のことでございますので、したがって、これについては私は絶えず否定的な発言を明確に申し上げておるわけであります。  そこで、いまも総理から申されました、でこぼこ調整という表現をお使いになりましたが、国会審議の場におきましても、いわゆる増収措置についてはいろいろな提言を含めた議論が今日まで行われてきております、各党から。それを、各党からいわゆる増収措置あるいは新税等をやったらどうだと言われたものは、全部私整理してみますとたくさんな数がございます。それを、すべてをその都度検討したりしております。  それから、もう一つ国会議論の中で大きなポイントになっておりますのは、自分たちの言ういわゆる是正措置というものは、たとえば特別措置の改廃等はこれは増税ではない、これは是正だと受けとめろと。しかし、それの対象の適用の人から見れば増税と受け取られるかもしらぬ。しかし、それらが総合的に見て、いま総理が言われた、従来ともやってきたでこぼこ調整というようなものは、国会議論の場を通じたりしながらそれを税調に正確に報告して、その都度結論を得ておるわけでございます。  したがって、すべてを現状施策を固定した上でお答えするということは、あるいは国会議論に対しても、あるいは税調に対しても、それは当局としては避けて通らなければならぬことではなかろうかなというふうに思います。したがって、いま増税なき財政再建、これに対してまさに糧道を断って歳出削減に努めて、いささかも念頭に置くことなくそれに取り組んでまいりますという趣旨総理発言というものを拳拳服膺し事に当たらなければならない、これが私の使命である、このように考えております。
  57. 和田教美

    ○和田教美君 次に、行革法案内容に入りたいのですけれども、その前に総務庁設置法案に関連をいたしまして、中西委員の関連質問をお願いしたいと思います。
  58. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 中西珠子君から関連質疑の申し出がありました。和田委員の持ち時間の範囲内においてこれを許します。中西君。
  59. 中西珠子

    ○中西珠子君 行革関連法案の中で、総理府設置法の一部を改正する等の法律案、また、総務庁設置法案などに関しまして質問をさせていただきたいと思います。  昭和五十年の九月二十三日の閣議決定に基づきまして、国際婦人年世界会議における決定事項の国内施策への取り入れその他婦人に関する施策につきまして、関係行政機関の相互調整を緊密にし、また総合的かつ効果的な婦人問題に関する対策を推進するために、婦人問題企画推進本部というのが設けられておりますが、総理府設置法の一部を改正する等の法律案が通りますと、その婦人問題企画推進本部の副本部長である総理府総務長官、また本部員であります総理府総務副長官などが廃止されることになっております。  それで、こういった状況は非常に婦人に不安を与えておりまして、一体婦人問題企画推進本部がどうなるのか。多分内閣官房長官あたりが後をおやりになるのかもしれないけれども、一体どうなるかわからない。また、総務庁設置法案が成立いたしまして総務庁ができ、行政施策の総合調整機能を強化することを一つの目的としている総務庁というものに行かないで、総理府の中に残されることになります婦人問題担当室が一体どうなるのか、仕事がやりにくくなるのではないかと懸念する向きも婦人の問にあるわけでございます。  そこで、婦人問題企画推進本部長でいらっしゃいます総理大臣の御見解をお聞きしたいと思うのでございます。
  60. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) お答えさせていただきます。  いま先生の御指摘は、総務庁の設置に伴い、婦人問題企画推進本部の副本部長である総理府総務長官と、本部員である総務副長官が廃止されることになる、これによって本部が弱体化するのではないか。また、本部の弱体化により婦人問題の担当室の仕事が大変やりにくくなるではないかという、大変御心配を、考えお尋ねくださったのでございますが、それについてお答えさせていただきますけれども、婦人問題企画推進本部は、先生もいま申されましたように、昭和五十年の九月二十三日の閣議決定により設置されたものでありまして、今回の法改正により廃止されたりその機能が弱体化するものではない。  なお、本部長、副本部長をどうするかについては、今後また総理のもとでよく検討されることでございまして、いずれにいたしましても、婦人対策については、婦人差別撤廃条約批准のための条件整備を初め、「婦人に関する施策の推進のための「国内行動計画」後期重点目標」の達成に向けて今後一層の推進を図ってまいりたい、さよう申し上げてお答えにさせていただきます。
  61. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。総理が婦人問題に対しまして引き続き強力なまた効果的な施策を展開していただくことを心から希望いたしまして、次の質問に移ります。  国連の婦人の十年の中間年の昭和五十五年、コペンハーゲンにおける世界婦人会議で、日本政府は国連の婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に署名いたしました。この署名したということは、国連の婦人の十年が終わる前、すなわち昭和六十年までにこの条約を批准することを国際的に約束したことになると思うのでございますが、外務大臣の御見解をお伺いしたい。あわせてこの条約の批准状況に関しましてもお尋ねしたいと思います。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 婦人差別撤廃条約につきましては、昭和五十五年六月の婦人問題企画推進本部の申し合わせにのっとりまして、目下関係省庁との間で批准のために必要な国内法制等、諸条件の整備につきまして鋭意検討を進めておるところでありまして、できる限り早く、少なくとも昭和六十年に開催が予定されております国連婦人の十年最終年世界会議までには同条約を批准したい、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、本条約はこの締約国に対しまして、女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃し、男女の平等を確保するために、すべての適当な措置をとることを求めておりますが、わが国におきましては、特に国籍、教育、労働、公職、社会保障等の分野におきまして、国内法制等の整備につき検討を進めております。国籍並びに労働の分野における措置については、それぞれ関係審議会におきまして検討中でありまして、近くその答申が得られる、こういうふうに承知をいたしております。
  63. 中西珠子

    ○中西珠子君 国連の婦人の十年が終わるまでにぜひこの国連の婦人差別撤廃条約は批准していただきたいと思いますが、この批准を実現するためには、次の通常国会関係国内法の改正案を出さなければ、また次の次の通常国会にはこの批准案件を出さなければ間に合わないこととなると思うのでございますが、ただいま国内法の整備の問題で一番難航をきわめているのが労働省だと聞いております。労働大臣の御見解をお願いしたいと思います。
  64. 大野明

    国務大臣(大野明君) 現在、御承知のとおり、婦人少年問題審議会において鋭意検討を進めていただいておるところでございます。いずれにしても六十年ということでタイムリミットもございますので、年内に答申をいただけるだろう。そのことについては、先月、審議会の進捗状況あるいは中身等について公表したところでございます。特に、時間外労働とか休日の労働とかあるいはまた深夜労働とかいろいろむずかしい問題ございます、基準法に基づいた点においての。それらをいま鋭意検討していただいておりますので、その答申をいただき次第、早急に労働省としては対応をしていく、こういうふうに考えておるところでございます。
  65. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいま女子雇用者は昨年度の平均によりますと千四百十八万もおります。この女子雇用者が採用の前の募集の段階から昇進、昇格、賃金、また訓練、教育、そして退職といった面でも差別されているという実態がいまだに存在しているわけでございますから、そして諸外国も男女雇用平等法のような、働く婦人に対する機会均等と待遇の平等を確保するための法律をOECDの加盟国のほとんどが持っている状況でございますので、一日も早く男女雇用平等法を制定していただきたい。公明党・国民会議といたしましては、このような国際的な潮流、また婦人に対する差別が現在存在しているという状況を見まして、迅速適切な差別の救済というものも考えて雇用平等法案を提出したわけでございますが、この問題に関しましては、速やかに制定をお願いいたしたいと思います。  また、千四百十八万の婦人労働者の二割はパートタイマーでございます。このパートタイマーは、賃金、労働条件が非常に低い、雇用の安定がない、また社会保険が適用されていないというふうな、また雇用契約の内容が非常にはっきりしないというふうなことで多くの婦人が困っているわけでございますが、ことに、主婦でありパートをやっている人の課税最低限の問題が大きくクローズアップされているわけでございます。  現在、パートをやっている婦人の収入の非課税限度額は、基礎控除が二十九万円、給与所得控除が五十万円、計七十九万円でございますが、現在政府が提案しておられます減税法案によりましても、基礎控除がたった一万円上がるだけ、三十万円になるだけで、また給与所得控除というものは据え置きになっておりますので、パートの非課税限度額は八十万円と、一万円上がるだけでございます。そして、この減税法案が通りましても、八十万円を超えるという収入を持っているパートの主婦は、所得税や地方税を払うばかりでなく、夫の配偶者控除というふうなものがなくなってまいりますので、その世帯の税金が急激に上がりまして、主婦がどんなにパートで一生懸命働いても、家族全体の収入はかえってマイナスとなるという現象も出てきております。それゆえ、税金を取られないために、年末の繁忙期に休んだりして労働時間の調整と収入の調整を図っている主婦のパートタイマーもいるわけでございます。そして、こういったことは使用者側にも不便を与えていると聞いております。また、課税最低限を超えない程度に主婦のパートの賃金を低く抑え込むという口実を使用者側に与えるということにもなっているわけでございます。  昨年度のパートの収入の年間平均額は八十六万円となっているので、非課税限度額をせめて百万円とすることを御提案申し上げたいのでございますが、大蔵大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  66. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 委員の御指摘のことを正確に整理してみますと、いまおっしゃいましたように、七十九万円を超えますとみずからが納税者になるのみならず、夫の所得について配偶者控除の適用が受けられなくなる。そして、現行の仕組みのために労賃が場合によっては低く抑えられるとか、それから年末において、いみじくも御指摘なさいました就労を自制、調整するとかいう現象が生ずるので見直しを行うべきであるという意見、これはかねて所属される政党からも出ておる意見でございます。また一方では、パート収入がそれを超えた場合の負担の逆転という不自然さを回避するため、妻に所得がある場合の配偶者控除額を妻の所得を差し引いた額とすべきである、こういう意見もございます。  そこで、主婦であっても一定以上の所得があれば相応の負担を求めるのが所得税の応能主義から言えば一応考えられますが、現行の所得要件の水準は、主婦に所得のない世帯等の負担のバランスから見れば高過ぎるとか、あるいは職業を持つ主婦で七十九万円を上回る水準の収入を得ていらっしゃる方もふえておるというようなこと、それらを勘案しますと、いわゆるパート問題についてということになりますと、なかなか定義のむずかしい点はございます。が、当面は百万円という、感覚的にはわかりますが、やはり税制となれば腰だめで決める、腰だめという表現はいささか不適切でありましょうが、大ざっぱな感じで決めてもならぬ。  そこで、「当面は、給与所得控除と配偶者控除の適用限度額の組合わせという現行制度の枠内で対処していくことが適当」ではないか、こういうふうに税調が最終的には指摘された。そうすると、いまおっしゃいましたように、大蔵委員会では議了していただきましたが、まだ本会議にはかかっておりませんが、今年度税制は、五十八年税制は御指摘のとおり一万円ですね。来年度税制をどうするかということになりますと、結局今後の税調の審議でその控除額そのものがどうなるかということで、おのずから算定されてくるわけでありますが、その問題についていま直ちにおよそ何ぼになりますと言うわけには税調の審議を前にしてお答えはできないのじゃないか。御趣旨は絶えずお聞かせいただいておりますので、よく頭には入れておくつもりでございます。
  67. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいまの大蔵大臣の御答弁にもございましたが、税調の答申も私読みましたけれども、給与所得控除とか扶養者控除といった控除額をもっと大きくすることによりまして、何とかパートを救っていただきたい、少なくとも百万円ぐらいまでは非課税限度額になるようにお考えいただきたい、これは婦人のパートの人の要望としてお伝え申し上げておきますので、どうぞ前向きに善処していただきますようにお願いいたします。  それから、まだちょっと時間をちょうだいいたしまして、婦人差別撤廃条約はその第十一条と第十四条で、婦人が「社会保障計画から直接に利益を受ける権利」というものを掲げておりますけれども、これは厚生大臣の御所管になるかと思いますが、日本においては被用者年金を受ける妻の地位の従属性が問題となっているように思われます。被用者の無業の妻が国民年金に任意加入している場合以外は、夫が死亡後は、夫が死亡したからといって生活の基礎経費が半分で済むものではございませんのに、夫の老齢年金の半分が遺族年金としてただいまは支払われるだけでございます。また、高年齢で離婚した妻は無年金となるといったような制度上の欠陥がございます。婦人の固有の年金権の確立が急務であると思いますが、厚生大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。  また、あわせまして、この婦人差別撤廃条約批准のためには、ただいまございます生活保護における男女の基準の違い、差別といったことや、託児所の拡充強化といったものも問題になると思いますが、あわせて厚生大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  68. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、現在の年金制度は婦人にとりまして非常な問題があるということは、もう事実でございます。現在では、被用者の妻は原則として夫の年金によってカバーされる。一方、国民年金では任意加入の道が開かれておりますが、どちらも入ってないということになると非常な問題が出てくるということもありますし、特に昨今では婦人の働く方がふえておる、こういうことで、婦人の年金保障問題はこれから考えていかなければならない点は当然のことだと思います。  基本的には、すべての婦人を公的年金に強制加入させることによって固有の年金権を付与するという考え方もございますし、また、被用者の無業の妻につきましては、夫の年金に対する加給という形で保障を別にするという考え方もございますが、私たちといたしましては、次期通常国会に提出を予定しておりますところの国民年金、厚生年金の統合の問題におきまして、この婦人の年金保障を充実する立場に立って現在検討しているところであります。社会保険審議会の厚生年金保険部会の意見書でも、被用者の妻の大半がすでに国民年金に任意加入していることなどを考慮して、すべての婦人に独自の年金権を確立するという方向で検討すべきである、こういうふうな答申をいただいておるところでございますので、この方向に沿い、検討を現在鋭意行っているところでございまして、近くその具体案をお示しできるところまで来ていると思います。  次に御指摘のございました問題といたしましては、生活保護の問題がございます。  中央社会福祉審議会の意見も踏まえまして、男女の消費実態に応じまして五十七年、五十八年度で二分の一程度の縮小を図ってきたところでありまして、今後ともさらに、その変化に対応しながら、実態に即した形で生活保護の問題は解消してまいりたい、こういうふうに考えております。  また、保育所の整備につきましては、児童福祉法に基づき、婦人の就労の増大等に対応しましてこれまで整備を進めてきた結果、全国的にはほぼ必要な水準に達しておりますが、なお、保育需要の多様化に対応するように、保育所機能の強化に努めてまいる所存でございます。
  69. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいま厚生大臣の御答弁にございましたけれども、婦人の独自の年金問題の確立、そしてまた生活保護における男女基準の差の解消、そういったものは大いに推し進めていただきたいと思います。  ただいま、ほとんど託児所は需要を満たしているというお話でございましたけれども、産休明け保育とか、ゼロ歳児保育、また長時間、夜間保育というふうなものが非常に欠けておりますために、ベビーホテルなどの弊害も出ておりますから、そういった面の規制も大いに行っていただくと同時に、保育需要の多様化に対しまして対応できるような体制を整えていただきたいと思います。  次に、婦人差別撤廃条約のもう一つの要件といたしましては、男女同一の教育課程の問題があると思います。これは家庭科教習の問題にもつながるかと思うのでございますが、文部大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  70. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 御指摘の婦人差別撤廃条約第十条(d)項、これには男女同一の教育課程にしようということが書いてございます。  一方、わが国の高等学校の教育課程では、御承知のとおり、女子に対しては四単位の、食物とか、あるいは被服、あるいは保育とかいうような、四単位の家庭教育、家庭課程を実施するようになっております。これが差別というようになっておるわけでございますから、これはわが国の社会生活の実態に沿うようなということで今日まで来ておりますが、この条約との関連では、これを見直しをしなければならない。そういうことで、これは小中学校のいわゆる家庭科の授業にも関連しておりますので、いまそういう教育課程の内容について中央教育審議会で検討してもらっておりますから、その結果を見て、条約の批准には支障のないような措置をとりたいと、こう考えております。
  71. 中西珠子

    ○中西珠子君 中央教育審議会の答申を待ってというお話でございますが、大臣としても、どうぞ、その前向きの姿勢で取り組んでいただきたいと思います。  それからもう一つ、差別撤廃条約を批准するに当たっての要件は国籍法の問題だと思いますが、現行の国籍法は父系血統主義になっておりますが、これを父母両系主義に改めるということでございます。しかし、ただいま審議会で審議中ということを外務大臣から承りましたので、法務大臣への質問はちょっと省略さしていただきます。  時間の関係もございますので、総理大臣の御決意のほどを伺いたいと思うのでございますが、現在五十一カ国が婦人に対する差別撤廃条約を批准し、またOECDのほとんどの国が男女雇用平等法というものをつくっております。こういったときに、やはり日本がこの条約を批准し、また職業上、雇用上の男女差別をなくすという法律を制定いたしませんと、日本は婦人に対する差別を是認し、婦人を差別しながら低賃金で雇って品物をつくっている、そんな品物は買えないのじゃないかというふうな、日本製品ボイコットだとか、貿易規制の強化というふうな口実を与えかねないという心配があるわけでございます。その国際社会における日本の地位を高めるために大変努力をなすっていらっしゃる総理大臣でございますから、この点はぜひ早く実現していただきたいと思うのでございますが、総理の御決意のほどを伺わしていただきたいと思います。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 婦人差別撤廃条約は、政府としてはこれを批准する方針をもうすでに決めておりまして、それに関するいろいろ環境整備にいま努力しておるところでございます。御趣旨を体しまして、できるだけ早期に環境整備をして批准ができるように持っていきたいと思います。
  73. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうも総理大臣、ありがとうございました。多くの日本の婦人が総理大臣のただいまのお言葉を信じて一生懸命やっていくと思いますので、よろしくお願いいたします。  これで終わります。
  74. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  75. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 速記を始めて。
  76. 和田教美

    ○和田教美君 それでは、総務庁設置法案についてひとつお尋ねをいたします。  総務庁設置法案が通りましたら、政府計画によりますと、総務庁の内部部局としては、行政管理庁の全部とそれから現在の総理府の人事局、恩給局、総計局などが加わって総務庁ができるということでございますが、一方、新総理府には、大臣官房のほか賞勲局などが残るだけの非常にスリム化したものになる。そして大臣がその担当と。総務長官もなくなるわけでございますね。そういうスリム化したものまでどうしてわざわざ新総理府本府として残す必要があるのか。いっそのこと内閣官房長官が一緒にやればいいんじゃないか、そういう素人の意見はかなりあるわけなのですが、その点がまず一つでございます。  それから、この委員会で齋藤大臣の答弁を聞いておりましても、総務庁ができても簡素化効率化と申しますか、再編によって予算も人員もほとんど減らないということのようでございます。たまたま衆議院行革特別委員会で附帯決議がつけられております。「総務庁の設置に当たっては、」「予算、人員等につき所要の合理化を図る」という注文でございます。そういう附帯決議も踏まえて右の二点について、ひとつ齋藤行管庁長官の御見解を伺いたいと思います。
  77. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まず最初の問題は、総務庁設置に当たりまして、総理府がスリム化した以上はむしろそれを内閣に移したらどうだ、こういうふうな第一点のお尋ねでございますが、御承知のように、内閣というのは国務大臣をもって構成される合議体の行政組織でございます。そういうわけでございまして、総理府の仕事というのは、御承知のように、内閣法におきましては、行政事務というのは各省大臣が分担管理するというたてまえでございまして、どうしてもやっぱり一つの省で管理する、分担させることは困難である、数省庁にまたがっている事項、そういう問題の総合調整というのは、当然これは総理大臣がやる仕事でございまして、内閣という合議的な機関にこれを行わしめるということは適当ではない。現在の内閣法のたてまえから言って、総理大臣の総合調整という仕事は最後まで残る。そういう意味において新総理府というものが残る、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、衆議院における附帯決議の点でございますが、政府としては、附帯決議の趣旨を踏まえて誠意を持って努力をしていかなければならぬと考えております。  今回御提案申し上げておりますのは、組織に関する法律でございますから、人員の問題あるいはまた予算の問題等については触れておりません。その問題は五十九年度の予算編成の際に措置しなければならぬ、こういうふうに考えております。  そこで、人員につきましては、すでに御承知のように、国家公務員の定員削減五カ年計画というものがございますから、それに基づいて新しくできる総務庁の人員の削減というものは当然これをやっていかなければなりませんし、予算等についても、できるだけ節減に努力するというふうにいたしたいと考えておりまして、その内容等は、具体的に決まりますのは五十九年度の予算編成過程である、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  78. 和田教美

    ○和田教美君 次に、国家行政組織法改正案についてお尋ねをいたします。  国家行政組織法改正案の目玉といいますか最大のねらいは、現在、各省庁の内部部局の新設、改廃は法律によるということになっておりますのを、今度政令事項に改めるということでございます。この問題については、国会のコントロールを弱体化させる、いろいろな批判があることは言うまでもないわけでございます。あるいはまた、官僚の強化策だというふうな意見のあるのもお聞きだろうと思います。  公明党・国会会議といたしましては、衆議院の段階で修正が行われまして、部局の新設、改廃をしたときは、「その状況を次の国会報告しなければならない。」という義務規定が入りました。それを一歩前進だというふうに評価をして実はこの法案に賛成をしたわけでございますが、しかし基本的に見ますと、法律事項を政令事項に変えるということは明らかに一種の授権法であって、場合によっては高級官僚の権限強化法につながっていくおそれが十分あるというふうに考えております。そういう意味で、チェックの機能を果たすべき国会としては、今後の運用に非常に重大な監視の目を持っていかなければならないというふうに思っておるわけでございます。  そこで、ひとつお聞きしたいのですけれども政府案によりますと、「毎年一回国の行政機関の組織の一覧表を官報で公示する」ということだけでございました。それが今度新設、改廃のときは、「次の国会報告」するという規定に修正されたわけでございますが、「官報に公示する」ということと報告義務というのは、一体政府としてはどういうふうに違うとお考えなのか。また、報告というのはいろいろな形式がございます。単にプリントで国会議員に配るというのも一つの報告だし、委員会にちゃんと報告して論議をするということも報告でございます。その辺のところは齋藤長官としてはどうお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  79. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 御承知のように、国家行政組織法ができましたのは昭和二十三年、今日までもう四十年近く経過いたしたわけでございますが、当初は、御承知のように、議院内閣制というものも十分成熟してもおりませんでしたし、そういうふうなことで、やはり国権の最高機関である国会を通して法律でこれを規制する、膨張を抑制するというたてまえであったわけでございまして、私は、それはそれなりの非常に大きな効果があったと思います。しかし、そういうふうな長い間の経過を経ました後に、一方には行政需要の変化というものも目覚ましいものあるがわけでございまして、その行政需要の変化に対応して機動的、弾力的に内部部局の再編成を行い得るようにしていただきたいという要請、特にこれは臨調が非常に強い主張でございましたので、今回政令に委任していただきたいということを御提案をいたしたわけでございます。  そういうことでございましたので、政令に委任するということになりますと、政府が何でも一方的にやってしまって、国会のチェック機能というものが十分働かないのではないかといったふうなお話もございましたので、私どもは、実は当初は、行政組織一覧を官報に公示する、国会を含めてごらんいただきたい、そして、それによって御承知いただくと同時に、国会においては国政調査権ということもありますし、さらにまた、予算を提出するに当たりましては、参考書の中で各省の局の数もちゃんとお示しをいたすわけでございますから、それで十分国会で御審議いただけるのではないか、こういうふうに考えたわけでございますが、それだけでは不十分だ、行政機構、内部部局のそういう弾力的な再編成と国会審議、監督というものの調和をもっと図るべきである、こういう御主張から、御承知のように報告義務ということになったわけでございます。  さらにまた、五年後は見直しの規定も入る、こういうふうになったわけでございますが、この二つの条文の修正は結局のところ、内部部局の弾力的再編成と国会審議、監督権との調整、調和ということからできた修正でございまして、私どももこれはごもっともな御意見であるというわけで従っておるわけでございます。  そこで、その報告と官報公示という点でございますが、官報公示は行政組織の一覧を官報によって一年一回公表する。報告は内部部局の再編成、局の新設、改編がありましたときには、その次に開かれる国会に御報告するというわけでございまして、報告のやり方等については十分検討しなくちゃなりませんが、衆参両院の議長あてに御報告を申し上げる。それは新設のもの、それからまた改編したもの、官房、局のものについて御報告をする、そういうことによって国会審議が容易に行い得るようになる、こういうことでございますから、あくまでもその趣旨というものは弾力化の要請と国会審議、監督権との調整を図るためにごもっともな修正であるわけでございますから、その趣旨に従って政府としては報告の義務を果たし、さらにまた五年後には見直しをする、こういうふうにいたしていくべきであると考えておる次第でございます。
  80. 和田教美

    ○和田教美君 国家行政組織法改正案に関連をいたしまして、私、前の関連質問でいろいろ指摘しましたとおり、中央省庁の機構で見る限りは簡素化、つまり簡素化といいますと仕事減らし、機構減らしでございますけれども、これとははなはだ縁の遠いものになっておるということを指摘したのですが、そのとおりだろうと私は思います。  特に、中央省庁の数は、現在一府、十二省、八委員会、二十四庁ということですが、齋藤長官の答弁によりますと、総理府は大臣ではなくなるということでございますが、この一府、十二省、二十四庁という数は変わらないわけでございます。それからまた、内部部局の局の数も、政府はこの国家行政組織法改正案が通ったら、臨調答申に基づきまして八省庁の内部部局の再編成をやるという計画でございます。しかし、臨調答申は、一局、三部削減を提案をしているわけですけれども長官のお話ですと、臨調答申指摘をいたしております厚生省の援護局もすぐにはなくならないということでございます。  また、省庁組織について臨調答申指摘をいたしております、国土庁北海道開発庁及び沖縄開発庁の統合という計画でございますけれども、この統合構想もどうもなかなか実現しそうにもないということのようでございます。つまりそういうスリム化といいますか、機構の簡素化という中央省庁に関する限りはどうも答えはないない尽くしであるという感じがするわけで、これは官僚の抵抗がいかに強かったかということを示しておると思うわけでございます。  なるほど今度の改正案によりますと、現在以上の行政機構の肥大化を防ぐため、当分の間、官房及び局の総数の最高限度を、現在あります百二十八に抑えるということが書いてございます。つまり総数規制でございますけれども、しかし、これは現状より減らすということではなくて現状に固定するということにすぎないわけでございまして、これまた非常に突っ込み不足ではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、ひとつお尋ねをしたいのですが、この問題についても、実は衆議院で附帯決議がついてございます。「国家行政組織法等の運用については、時代の変化に即応した機構の見直しを促進し、その合理的再編成及び整理簡素化を推進するものとし、」と、こうなっておるわけでございますけれども、上限は百二十八と決まっているけれども、しかしそれ以下にどんどん減らしていくという努力を今後怠るべきではないと思うのですけれども省庁の、つまり機構減らしという問題も含めて長官のお答えをいただきたいと思います。
  81. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 中央省庁の数は、お述べになりましたように一府、十二省、八委員会、二十四庁ということになっておるわけでございますが、この中央省庁の問題につきましては、今回行政管理庁と総理府の機能、組織を一体的に統合していこうということでございまして、この総務庁の設置によりまして、総理府というのを庁と数えるわけにはいきませんけれども、まあ一言で言えば庁と考えていいと思うのですが、国務大臣を長とする庁、庁ではありませんけれども、そういう一つの中央省庁の役所が減るということはこれは事実でございますね。これはもう御承知のように、戦後中央省庁の変遷というものは増加の一途をたどっておるわけでございますから、大臣を長とする一つの役所が減るということは、私はこれは画期的なものだと申し上げていいのではないかと思いますので、その点はひとつ評価いただきたいと考えております。  なお、国土三庁の問題等でございますが、これは私もたびたび申し上げておりますようにそれぞれの特殊の、沖縄はまだ復帰して十年ということでございまして、北海道にはまた北海道の特殊な事情もあるというわけでございますので、将来十分検討はしなくちゃならぬと思いますが、そういう特殊事情を踏まえて検討をしていかなけりゃならぬだろうと考えております。  それから、省庁のほかに局の問題がございましたが、援護局等の問題については、中長期的な問題として臨調指摘をいたしております。しかしながら、御承知のように援護業務というものはいますぐなくなるわけでもございませんし、非常に縮小されるわけでもございませんので、もうちょっと将来の推移を見てそういう問題は検討していきたい、こう考えておるわけでございます。そこで、官房、局の百二十八という数でございますが、これは現在中央省庁にありまする局の数を抑えておるわけでございます。したがって、これはこれ以上にふやしてはいけませんよ、これが立法の趣旨でございます。  しかし、それと同時に衆議院における附帯決議等の趣旨、それから修正いただきました五年後に見直すという規定が今度入りましたですね、あの規定等の趣旨から言えば、膨脹抑制のみならずできるだけ減らすような努力を政府はすべきである、という意図が私はその修正の趣旨の中にあらわれておると思います。したがって、附帯決議の趣旨等もございますので、将来できるだけ減らすような努力をしなくちゃならぬということを政府にある程度義務づけるということはどうかと思いますけれども、そういう趣旨も含んでいる、こういうふうに御了承いただければ幸せだと考えておる次第でございます。
  82. 和田教美

    ○和田教美君 次に、国家行政組織法第八条に規定されておりますいわゆる八条機関に関連した問題でございます。この八条機関の中の「審議会等」でございますが、現在の国家行政組織法第八条に、「附属機関その他の機関」について「法律の定めるところにより、審議会又は協議会及び試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関を置くことができる。」こういうことになっております。これが通常八条機関と言われるもので、しかしその中には種々雑多なものが含まれているわけでございまして、今度の改正案ではこの八条機関を「審議会等」、「施設等機関」、「特別の機関」に三分類して、現在八条機関の設置についてはさっきも申しましたように、すべて法律事項となっていたのを改めて「審議会等」及び「施設等機関」の設置については法律事項または政令事項とするというふうになるわけでございます。しかし、そういう現在は法律事項になっておる「審議会等」にもかかわらず、私がここで指摘をいたしたいことは、最近大臣局長のいわゆる私的諮問機関というふうなものがやたらにふえているのではないかということでございます。  行管庁の資料によりますと、大体大臣の私的諮問機関というのは四十三ぐらいあるというふうな報告でございましたが、私が少し調べてみましたところ、大臣局長等の私的諮問機関は九十一ございます。そして審議会が全部で二百十三あるわけなんですが、それに対する割合は実に四二・七%と大変な数でございます。そして予算も各年度大体一億から一億五千万円使われておるということでございます。最近は総理大臣の私的諮問機関もどんどんふえているというような状況でございますが、法律事項である審議会をやるのはめんどうくさいから、つい私的諮問機関をどんどん各省が乱造しているという傾向がいま出ているのではないかと思います。その辺のところは実質的に脱法行為ではないかというふうにさえ思われるわけで、今後この私的諮問機関についてどういうふうに行管庁としてはお考えになっているか、それを最後にお聞きしたいと思います。
  83. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 行政組織法におきましては八条機関というものは「審議会等」あるいは「施設等機関」、その他の「特別の機関」、こういうふうに三分類に改めまして、十分組織規制を進めてまいるところでございます。  ところで、いまお話しの私的審議会というお言葉でございますが、これは大臣なりそれぞれの省の何と申しますか、私的懇談会でございますね。審議会ということでございますと、そういう学識経験者等による合議体の機関でございますが、私的懇談会ということになりますと、これは法律的には審議会でございませんから、合議体として答申を出すとか意見を出すというわけにはまいりません。それぞれその審議会に加入しておる人々の個人的な意見を大臣なり局長ですか、そういう方面に出しまして、行政運営の参考にしていただきたい、こういうわけでございますから、性質は違いますけれども、ややともするとそういう懇談会というのは審議会と間違えられるのではないかといったふうな御意見等もございます。  そこで、たしか去年、おととしでございましたか、総理大臣行管長官時代に発言をいたしまして、こういうことはお互いは厳に戒めていこうではないかという閣議における発言等もございましたので、今後ともみだりにそういうものをつくっていくということは適当ではないと思いますから、必要な点は私はわかります。そうしてまた必要なものもあるということも十分わかっておりますが、みだりに混淆を来さないように努力をしていかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  84. 和田教美

    ○和田教美君 もう一つ、いまの問題に関連をいたしまして、今度は法律事項と政令事項と二つになるわけですね、審議会等は。その場合に私的諮問機関はある程度コントロールするという意味で、そういう乱造を避けるという意味で政令によって定めるというふうなことにしていくということはできないのでございますか。私的諮問機関は、いまのところ、各省を調べてみますと、これをやめてしまうというところはほとんどありませんね。そうすると、政令によるものにさらに私的諮問機関を加えるとむしろふえるというふうな状況にさえなるわけで、その辺の規制措借というふうなことをお考えになっているかどうか、お尋ねしたいと思います。
  85. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 審議会等はなるべく整理していくというのが政府としての基本方針でございますから、その懇談会を政令に基づく審議会にするということは直接的に結びつかない問題でございまして、否、むしろそういう混淆を来さないように、行政運営の必要に応じてつくる懇談会でございますから、その任務が終わったり目的が達成したらやめていくというのが私本当じゃないかと思います。
  86. 和田教美

    ○和田教美君 それじゃこれで終わります。
  87. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時再開することとし、休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ─────・─────    午後二時四分開会
  88. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいまから行政改正に関する特別委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、梶原敬義君が委員辞任され、その補欠として中村哲君が選任されました。     ─────────────
  89. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。久保田真苗君。
  90. 久保田真苗

    久保田真苗君 総理行政改革に関する基本答申の中で、行政の今後を目指すべき目標としまして二つの大目標を挙げております。一つは活力ある福祉社会、もう一つは国際社会への積極的貢献ということになっておりまして、これに関連しまして、経済力ではわが国は大国化したけれども、しかし国際社会に対する受け身の姿勢はなかなか改まる気配がないという見方をしておりまして、またこれに続いて、安定した国際的政治経済秩序をつくること、そして世界の平和に貢献していくことがわが国の最大の目標とならねばならぬ、そして非常にこの「国際社会に対する積極的貢献」というのに比重を置いていると思われます。  総理は、この答申の見方に対して原則的に同意されておられますか。
  91. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりでございます。
  92. 久保田真苗

    久保田真苗君 レーガン大統領が訪日されましたときの会見の中で、総理はグレナダ問題について話し合いをされたということでございますが、今回のこの武力介入と、それから外国軍隊の撤退についても何か意見、助言を言われましたでしょうか。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 言いました。
  94. 久保田真苗

    久保田真苗君 どのようなことをどのようにおっしゃいましたでしょうか。
  95. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この場所でもすでに御答弁申し上げておりますが、まず、武力介入という事実についてはきわめて遺憾である、しかしいろいろ実情を聞いてみると、アメリカの市民の生命、財産を守るためにやむを得ない措置であったということ、あるいはカリビアン機構といいますか、あの周辺の国家機構の諸国の要請に基づいて一緒にやった、そういうような点を考えてみると理解はできる、しかしこれは異常な事態なのであって、できるだけ早く撤兵をして、一日も早く事態を正常化することを望む、アメリカ側はすでに三千五百人撤兵したとか、あるいはイギリスの総督が内閣を組織するようにいま活動しているとか、すでに内閣はできたとか、そう言われておることは結構なことだ、さらに撤兵を促進して正常化することを望む、そういうふうに申し上げました。
  96. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務大臣伺います。  十一月二日の国連総会で、グレナダ情勢に関する決議案というのが百八の圧倒的多数をもって採択されておりますが、日本は棄権しております。このときに、棄権投票に当たってどんな理由を説明されましたでしょうか。
  97. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、先ほど総理が申し上げましたような、いわゆる実力行使を含む事態の発生を見るに至ったことは遺憾である、一方またアメリカの行動については、米国人の安全確保の問題や関係諸国の強い要請等の事情があった、こういうことでありますが、そういう事態を踏まえて決議案の投票に当たっては棄権ということにいたしたわけでございます。
  98. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、このグレナダ決議案の項目別について、もう少し疑問の点を伺いたいと思います。この項目は六項目ございまして、項目別に採択しておりますので、その投票の理由を御説明いただきたいのです。  その第一は、こういうふうにあります。「国際法及びグレナダの独立、主権、領土保全の重大な侵害であるグレナダにおける武力介入を深く遺憾とする。」これは日本は棄権しておると思いますが、その理由をおっしゃっていただけますでしょうか。
  99. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、主文第一項、分割投票になりまして、わが国は棄権いたしております。第一項は先生御指摘のように、今回のグレナダ事件に絡みます東カリブ諸国及び米国の行為を国際法違反と断定いたしておるわけでございますが、本件につきましてのわが国の立場は、当委員会において総理外務大臣から御説明されましたように、わが方が承知いたしております状況、事態からは最終的にそのように判断できないという立場でございますので棄権いたしました。
  100. 久保田真苗

    久保田真苗君 先ほど米人の生命、財産に危険があって救出するためのという御指摘がありましたけれども外務省の方では、米人に危険があったとか被害があったとかいう事実をつかんでおいでになったのでしょうか。
  101. 江藤之久

    政府委員(江藤之久君) お答え申し上げます。  ただいま御質問の点につきまして、米国としましては当時のもろもろの状況から米国人の安全を確保する必要があると判断するに至ったという説明を行ってきておりますけれども、一方、日本につきましては、詳細な事実の把握ということは、現地に大使館もないということもございまして限界がございます。
  102. 久保田真苗

    久保田真苗君 もう一つ、それでは武力介入が行われる前に米人の問題について外交交渉等があったかどうか、そういうことはお聞きになりましたでしょうか。
  103. 江藤之久

    政府委員(江藤之久君) お答え申し上げます。  大変詳細な情報というものは持ち合わせておりませんが、当然相当のやりとりがあったのではないかというふうに理解しております。
  104. 久保田真苗

    久保田真苗君 やりとりがあったということを確認していらっしゃるわけですね。
  105. 江藤之久

    政府委員(江藤之久君) いいえ。米国は米国人の安全確認のために近隣諸国に在留しますところの外交官四名を派遣いたしました。その結果、一時期におきましては、それまでに危害が加えられていないという実情を把握して米国政府報告したということでございまして、この点につきましては一部新聞に報道されたのみならず、私どもも後になりまして米国政府からそのような説明に接しております。しかしそれは、ある時点におきまして危害が加えられていないということを確認したのみでありまして、その後の状況全体の進展を勘案して、米国政府のみならず、事態の進展を前前から非常に心配しながら注目してきておりましたところの近隣諸国も、同じように非常に差し迫った事態である、このように判断して先ほど来の措置に至ったもの、かように理解しております。
  106. 久保田真苗

    久保田真苗君 それは、差し迫った危険とかあるいは被害ということが事実あったと確認されたわけですか。
  107. 江藤之久

    政府委員(江藤之久君) お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、日本としてそういう事実関係を確認したということではございませんで、全般として米国及び関係諸国がそのような説明を行っておりますので、現時点におきましては私どもとしてそのように理解しているということでございます。
  108. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういう説明がその関係諸国の方からあったということですが、実際には余りわからないままに投票しているから棄権している、こういうことでございますか。
  109. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  ただいま中南米局長の方からお答え申し上げましたのは在留米国民の安全の点でございますが、私どもが国連の本決議に棄権いたしましたのは、東カリブ諸国及び米国がとりました行動は、グレナダにおいて当時機能し得る政府がなく、スクーン総督からの援助の要請によって援助のために派遣されたという事情も勘察し、これを国際法違反と断定する立場にございませんので棄権したわけでございます。
  110. 久保田真苗

    久保田真苗君 第二項について伺います。  第二項は、「武力介入による無辜の市民の死を遺憾とする。」というふうになっております。これについて日本はやはり棄権しておりますけれども、これはどういう理由なんでしょうか。これはボタンの押し間違いじゃないのでしょうか。
  111. 山田中正

    政府委員山田中正君) 今回の事件で無辜の市民の方が亡くなられたこと、これは大変遺憾なことと考えております。ただ、この決議につきましては、先ほど申し上げましたように、東カリブ諸国及びアメリカの行為が国際法違反と断定した前提での決議でございますので、そういう立場に同調する立場にないということから葉椎したわけでございます。
  112. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務大臣、国連総会の演説で大臣は、大韓航空機撃墜事件についてソ連を名指しで非難しておられます。その場合に、それは民間機の撃墜であって、民間人が多数死んだということを政府として何度も遺憾の意を表しているわけですけれども、そういたしますと、グレナダの場合は同じように無辜の市民の死があるわけですけれども、それを悼むことはできないのでございましょうか。つまり、この投票に賛成した方がよかったとお思いになるのじゃございませんでしょうか。
  113. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) グレナダにおいても無辜の市民が亡くなられたということに対しましては心から遺憾の意を表するものでありますが、ただ決議につきましては、御承知のようにこれが国際法違反であるという大前提のもとに出されておるわけでありますが、日本の場合、いま局長が説明をいたしましたように、国際法違反と断定をすることは、日本の立場としてそれだけの確信を持てないということでこれは棄権をした。その背景には、もちろん武力行使は遺憾である、しかし同時にまたアメリカが武力行使を行った背景等については、いま先ほどいろいろと申し上げましたようなことを踏まえてわれわれとして対応しているわけであります。
  114. 久保田真苗

    久保田真苗君 この国際法云々に関しましては、これは第一項に挙がっていることなのです。そして第二項は、ただ「武力介入による無辜の市民の死を遺憾とする。」。総理も先ほどから武力行使は遺憾であるとおっしゃっている。そして無辜の市民の死を悼むことになぜ――私は言葉の揚げ足を取るつもりはないのです。しかし、これは国連総会において日本が世界に向かって日本の態度を表明する場ですから、こういうときの適切な投票というものは非常に大事だと思うのです。現にこの投票に対してアメリカ自身は賛成票を投じているわけです。これはやはり日本としてはアメリカへの気がねというようなことでこういう投票をしたのではないかと思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  115. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほどから申しましたように、やはり決議いろいろと分かれておりますが、決議全体としてわれわれは把握をいたしまして棄権をしておるわけです。その決議は全体的にアメリカのとった行為が国際法違法であるという前提に基づくものでありまして、先ほどのお話のような大韓航空機の事件とは全く異質である。大韓航空機の撃墜事件というのはもう明らかに国際法違反であります。そういう立場でわれわれとしてはいろいろな状況判断から国際法違反とこれをとらえることはできない、こういう判断のもとに全体的に見て棄権をいたした、こういうことであります。
  116. 久保田真苗

    久保田真苗君 第三項につきましては、「全ての国に対してグレナダの主権、独立及び領土保全を厳格に尊重することを要請する。」となっておりますけれども、これには日本は賛成しているわけですね。そういたしますと、どうしてこれは賛成なすったのでございますか。当然賛成すべきものですけれども、同じことならば国際法違反のもとにあるものだということで、全体が筋が通らないとおかしいのじゃないでしょうか。
  117. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  第三項に、先生御指摘のようにわが国は賛成いたしております。この内容は、国連憲章にもうたわれておりますとおりの、それぞれの国の主権、独立、領土保全を尊重するという大原則でございます。日本としてこれに全く異議ございませんので賛成いたしました。
  118. 久保田真苗

    久保田真苗君 どうもおっしゃっていることがちっとも筋が通らないのですね。それだったら第二項も当然賛成すべきだったと思いますし、私は非常に日本の投票ぶりは残念だったと思います。やっぱりアメリカへの気がねいちずというような自主性のなさ、こういうことから投票されているのではないか、そういうふうに思わざるを得ないわけでございます。  第四項につきましては、「武力介入の即時停止及び外国軍隊のグレナダからの即時撤退を要請する。」、これは棄権しておりますけれども、なぜでしょうか。
  119. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  第四項につきましても、わが国が国際法違反と断定する立場にない事態、それを武力介入という表現で、その事態の即時停止、撤退を求めておるものでございますので棄権いたしました。
  120. 久保田真苗

    久保田真苗君 現在、外国軍隊の状況について把握しておられるか、また撤退の予定について何かお聞きになっているか。
  121. 江藤之久

    政府委員(江藤之久君) お答えいたします。  現在外国軍隊は、米国軍につきましては二千三百名程度、先ほど総理からも三千五百名の撤退が実現したということで、残りの二千三百名というふうに承知しております。また、米国と一緒に上陸いたしましたところの他の七カ国の軍隊、これは全部で三百名ちょっとというふうに承知しております。  また、撤退の予定につきましては、米国に関します限り、米国の戦闘要員は十二月二十三日までに撤退するということを、すでに去る十七日、ホワイトハウスのスピークス副報道官が公式に言明をしております。
  122. 久保田真苗

    久保田真苗君 第五項は、「グレナダ人民が自らの政府を民主的に選ぶことを可能ならしめるような自由選挙を可及的に速やかに行なうことを要請する。」となっております。これは日本は賛成しておりますけれども、外国軍隊の占領下で自由選挙というのは非常にナンセンスだと思いますので、この米軍の早期撤退について、総理は米大統領にもそういう意見を言われておりますし、今後撤退を早期にするという姿勢で日本は国連総会にぜひ臨んでいただきたいと思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  123. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま局長が答弁いたしましたように、外国の軍隊は早期撤退ということに相なっております。そういう状況の中で自主的な政府が生まれるということをわれわれは期待をいたしておるわけでありますし、またグレナダのいまの情勢からいけば、自主的な独立政権というものが生まれてくることは間違いないと判断しております。
  124. 久保田真苗

    久保田真苗君 ぜひ予定の時期までに外国軍隊が完全に撤退するように努力していただきたいと思います。  第六項ですが、これは「事務総長に対し緊急に状況を評価し七十二時間以内に総会に報告するよう要請する。」、こういうふうになっております。これに棄権されたのはなぜでしょうか。
  125. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  わが国は、一般方針といたしまして国連の平和維持機能を重視いたしております。それの関連で事務総長の調査権限の強化、これは常に支持いたしておるわけでございますが、本決議の中にございます、いま先生御指摘ございました第六項は、先ほどから申し述べておりますように、東カリブ諸国及びアメリカの行動が国際法違反であるという断定のもとにできておりまして、そのような前提に基づいた上での御調査、これについてはわが国として積極的に支持する立場にないという観点から棄権いたしました。
  126. 久保田真苗

    久保田真苗君 しかし、日本の場合は在外公館もなく、先ほどのように自分の手でわかる情報がないわけでございまして、それであれば、国連のような第三者的な中立的な、そういう機関が行って実情を調べる。特に相手は十一万の非常に小さい小島でございまして、そこへ何カ国かの軍隊が行っているという状況でございますので、こういうことを調査してもらうということは、基本的にはどうなんでございましょうか。国連が今後こういう問題に関して調査を行う、あるいは調停の労をできるだけとる、こういうことについて基本的にはどうなんでございましょうか。
  127. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国連がその平和維持機構としての役割りを大いに果たしていく、そのために調査をするとかあるいは調停、あっせんに乗り出すということについては、われわれは賛成でありまして、むしろ国連はそうした役割りをもっと積極的に行うべきであるというのが基本的なわれわれの考えであります。
  128. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、グレナダにつきましても国際法、国際法と、そこのところは私も時間がありませんから論議に入りませんけれども、国際法の一点にだけこれをかけて、非常に後ろ向きな態度をとっているということからやはり日本としては脱皮する必要があるのじゃないでしょうか。そういう後ろ向きの態度から前向きに建設的に、この問題を国連にどういうふうに扱ってもらうかという姿勢を打ち出していただくことが、この臨調の言っている趣旨に合うことなんじゃないでしょうか。
  129. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 決議に棄権をいたしましたのは、先ほど申し上げましたような、いわゆるこの武力行使の断定が前提にあるわけですから、そこで、日本と立場が違うものですから、棄権をいたしたわけであります。しかし、国連が平和維持を図っていくための積極的な活動の一環として調査をし、あるいはまた調停をするということについては、私どもはむしろこれは積極的に取り組んでまいりたい、こういうふうに思います。
  130. 久保田真苗

    久保田真苗君 日本は国連への拠出第二位でございまして、一〇%もの拠出金を出しております。もっと堂々と筋の通った表決をしていただく、あるいは意見表明していただくということをぜひしていただきたいと思うわけです。日本がやったことでもないのに、他国のために日本の信用を落とすような、そういう何といいますか、気がね外交、受け身の外交、こういうものからぜひ脱却していただきたいと思います。  臨調は、外務省にはなかなか好意的のようでして、情報機能の強化なんか挙げております。しかし情報を集めても、それを公明正大に使っていく勇気がなければ、仏つくって魂入れずなんじゃないでしょうか。行革は真っ先に頭の中から始めるべきなんじゃないでしょうか。ですから、十二月二十三日予定されている撤退が完全に行われるように、ぜひ外務大臣から決意を表明していただきたいと思うのでございますけれども
  131. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一日も早く外国軍隊が撤兵をするように、日本政府としても関係各国に対しまして積極的に働きかけたいと思います。  なお、国連活動の一環としてのいわゆる調査、調停、これは今後とも積極的にこれを推進してまいる。国連に対してもわれわれ強く言っておりますし、国連の演説でも私もこれに触れておりますが、今後ともそういう姿勢で世界の平和のために役割りを果たすことについて積極的に対応してまいりたいと、こういうふうに思います。
  132. 久保田真苗

    久保田真苗君 総理大臣伺います。  お聞きになっていたかどうか、わかりませんですが、レーガンさんにいろいろ言っていただいたのですが、密室の中でお友達として助言する、それも大事なことですけれども、それだけでなく、やっぱり国連あるいは外交の場で堂々と日本の立場を、筋の通った表決をしていただく、このことを私はぜひお願いしたいと思います。理解は理解、筋は筋だと思うのです。そしてそういうふうにすることで日米関係が壊れるなんて、そんなことはないと思います。それはイギリスでもフランスでも、自分の立場を表明しているけれども、それで外交関係が壊れるなんということはないと私は思うわけですし、そうしていくことがやはりアメリカの道義的立場というものを結局は救っていくことになるのじゃないかと思います。ですから、いまも外務大臣お約束をいただいたのですけれども、予定されている外国軍隊の撤退日にぜひそれが完全に実施されますように、総理もあらゆる努力をお払いいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、前から申し上げていますように、国益を守るのは政治家の美徳である、タフ・ネゴシエーターは政治家として心がけなければならぬことである、こういうことを考えておりまして、御趣旨を体してやりたいと思っております。
  134. 久保田真苗

    久保田真苗君 私もう一つ、これは政府にお伺いするのではなくて、この国会はアフガニスタンのときも大韓航空のときも、全会一致で決議を採択しております。今度のグレナダにつきましても、少なくとも外国軍隊の一日も早い撤退について国会の意思を表明すべきであると思います。このことを同僚議員に訴えまして、この件を終わります。  次に、環境庁にお願いいたします。  いま全国的に湖や沼の汚染が広がってきておりますけれども、環境庁の環境基準というものがございますね、これについてごく簡単に御説明いただけますか。
  135. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 国は公害基本法に基づきまして、あらゆる行政施策の目標といたしまして環境基準を定めております。水質につきましても環境基準を定めておりまして、この内容といたしましては、まず河川、それから湖沼、それから海域と、それぞれにつきまして幾つかの項目につきまして環境基準を定めております。健康項目につきましては一律に定めておりまして、生活環境項目につきましては利用目的に応じて幾つかの類型を定めているわけでございます。その当てはめは都道府県知事にゆだねられているところでございます。
  136. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで、いま全国の代表的な湖沼のうち、これは百三あるそうですが、環境基準に達している湖沼が四十三ということで、海や川の場合と違いまして、水が動かないので湖沼の場合は非常に汚染がひどくなっておるわけでございます。  社会党が土曜協議会というところで、千葉県手賀沼の問題を住民の方あるいは政府の方と一緒に研究しておりますけれども、それによりますと手賀沼の汚染が非常にひどうございまして、過去にあった水草の三十六種のうち、現在ある水草はたった五つ、魚等水生動物につきましては、過去に生息した魚が四十六、絶滅してしまったのが二十八、減少したのが十三、いまでもいるという魚はたった五種にしかすぎない。非常に汚染がひどくなっております。  ところが、残念なことに、全法案を通すことを目標とすると言っておられますけれども、これは実際には六本も積み残しがございまして、そのうちこの湖沼法案と、それから環境影響評価法案、いわゆるアセス法案ですけれども、環境庁が提出していらっしゃる二本が積み残しになってしまっているわけです。それで環境庁長官にお伺いしたいのですが、こういった湖沼の状態から見て、あるいは環境破壊が進んでいる状態から見て、この二つの法案は非常に緊急性が高いと思いますが、どうなんでしょうか。
  137. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) お話のとおり、大変大事な法案だと思っております。
  138. 久保田真苗

    久保田真苗君 今回積み残しになったわけですが、私は内容的に必ずしもこの法案が十分だとは思っておりませんし、なまぬるい点が非常に多いと思うのですが、こういうものをともかく出していただかなければ話が始まらないわけです。今回こういうことになってしまったのですが、この二法案の後始末を環境庁長官はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、何か御決意があるか、それを伺わせていただきたいのですが。
  139. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) 国会はあさってで終わりでございますから、率直に申し上げましてこの国会でこの二法案は成立しない、これは仰せのとおり、そのとおりになると思います。私も久保田委員と同じように、まことに残念だという気持ちは同じでございます。  そこで、しかしいまお話しのように大変大事な法案でもございますし、これは私は近視眼的に見るのと、経済全体の先を見通して、やはりこれはいまの間に成立させておく必要がある、このように私は考えております。そういう意味で、今回は残念ながら成立を見なかったわけでございますが、次の通常国会、これにはぜひ再度提出いたしまして成立を図っていきたい、努力したい、このように考えております。ぜひひとつ社会党の方でも絶大な御支援をお願い申し上げたいと思います。
  140. 久保田真苗

    久保田真苗君 どういう御事情があるか知らないけれども、ぜひ実効が上がるような内容のものにして、受益者負担、受益者負担とおっしゃるばかりじゃなくて、やっぱりこういう汚染者負担の問題、これにかかわることもしっかりやっていただかなければならないと思うのです。もしまともなお仕事ができないような事態になるようでしたらば、私はこの行革の中で、むしろ環境庁をつぶすという提案をなさる方が中曽根内閣としても正直なんじゃないかと思います。ですから、この法案の後始末、どうぞしっかりお願いいたします。  最後に、文部大臣にお伺いしたいのでございますけれども、どうも行革は大人だけの問題じゃなくて、まず真っ先に子供の方にやらなければいけないのじゃないか、こう思うわけです。と申しますのが、もう何度も国会にさんざん出てきた問題なんですが、共通一次試験の五教科七科目、これを改めることについて御検討をしていただいているわけでございます。昨年の本院の予算委員会でも、文部省は、五教科七科目の科目選定については大学に自主的な選択を認める方向で、六十年度以降実施したいというようなことを言っておられますし、衆議院の文教委員会三月十八日には、具体的な改善方法について五十八年度において結論を出す、こう言っていらっしゃるわけですね。  ところが、五十八年度というのはあと余すところ四カ月しかないのです。それで、国立大学協会等の審議状況などを見ますと、この時期がどうもおくれるのじゃないか。しかし、ここで行革行革と、こう言っている中で、やはり科目別の縄張りでもってもうとめどもなく科目肥大が行われまして、子供の上にのしかかっているわけでございます。この行革趣旨からいって、当然これは早急に結論を出していただかなければならないと思いますし、これを早い時期に実施していただきたいと思うのですが、文部大臣、この辺についての状況と、大臣のお考えを伺わせていただきたいのです。
  141. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お話しのとおりに、いわゆる共通一次試験についてはいろんな方面から議論がなされております。五回目の実施をいたしましたが、教科あるいは科目の問題、あるいは実施時期の問題、それから選択制がどうだとか、いろいろな意見が出されておりまして、いまお話しのように検討しておるわけでございますが、なかなかそれぞれの主張がかみ合わない。大学あるいは高等学校長協会、文部省にも入試研究の組織をつくっております。そこで実施時期の問題については一応結論が出ましたから、これは六十年度から、準備期間がありますから六十年度から実施しよう。教科、試験科目の問題についてもいま鋭意検討を続けておりますが、正直なところ、六十一年度を目標にどうしても改革をしたい。内容はこれからでございますけれども、そういうつもりでございます。
  142. 久保田真苗

    久保田真苗君 わかりました。それでは、六十年度から実施ということをお約束いただいたものとして、どうぞしっかりやっていただきたい、お願いいたします。どうもありがとうございました。
  143. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に、神谷信之助君。
  144. 神谷信之助

    神谷信之助君 きょうは、法案の中身について若干質問をしたいと思います。  まず、国家行政組織法関係の二法案でありますけれども、当委員会で昨日わが党の近藤委員が、この法案を提出した理由について齋藤長官お尋ねをしました。また当委員会で総理の方も、同じようにその理由を述べられております。まとめて言いますと、この法律ができて三十数年経過して、国会も非常に充実したし、それから議会によるコントロールあるいは国政調査権というものは非常に充実して活動できる状態になっている。そして諸官庁に対する監督もかなり行き渡ってきておるし、同時に、もう一つは日本の社会が非常に円熟をしてきて大きな変化が起こっている。その変化に機動的、弾力的に行政機構みずからが対応できるように改革をするということにねらいがある、こういう答弁です。  そこで、この問題で若干質問をしたいと思うのですけれども、まず第一の問題は、国会は国権の最高機関である、こう明記をした憲法原則からいっても、国会の機構というものは今後ますます国権の最高機関たるにふさわしく名実ともに強化されなければならないというように思います。こうした方向こそが憲法が要請していることだというように思うのですけれども、ところが、そういう国会が国権の最高機関にふさわしくその内容を充実する。すればするほど、これでもう国会のコントロールが十分になったから、国会のコントロール、これを骨抜きにしてもよろしい、そういう理屈になって、どうもこれは話にならぬのではないかというように思うのですが、この点はいかがですか。
  145. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 国会が骨抜きになっていいではないかと、そんなことを私ども考えているわけではございませんので、法律で内部部局の設置、廃止等を行うという従来のこの行政組織法の規定が施行されまして約四十年経過したわけでありますが、その間に行政上の変化というものが著しくあるわけでございます。  そこで、従来のような方式でいきますと、中央官庁の部局等につきましては、ややともすると硬直化し、自律的なそういう再編の努力というものがややともすれば劣ってくるということは、現実避けがたい今日までの経過であったわけでございます。そういうふうなこともありますので、この際、従来のような法律で決めるというやり方について、国会のコントロールも十分強くなったことでもございますから、政府を御信頼していただいて政令に御委任をいただきたい、こういうことでございまして、国権の最高機関に対してこれを弱めようなどという考え方ではないことを明らかにしておきたいと思います。
  146. 神谷信之助

    神谷信之助君 今日までこの法案を変えようということで三回も法案が出されて、そしてそれが慎重審議されて成立するに至らなかった、廃案になった。そのことは結局、国会法律に基づいて行政機構についてこれをコントロールするということが必要だという認識ですね。ところが、いまの長官の答弁は、そうやって国会のコントロールを得ているとなかなか間尺に合わぬ、思うとおりにできぬ。だから思うとおりにしてもらいたいということは、逆に言うと国会のコントロールを外してもらいたい、こういうことになるわけです。だから、一方国会が国権の最高機関にふさわしいそういう内容を持ってくれば、それは十分必要なものは必要として法律を成立させるでしょうし、それに異論があるものは異論ありとしてストップをかける、チェックする。それを煩わしいとか、だからそれでは間尺に合わないとか言うのでは、まさに何といいますか、政府の側の、立法機関のコントロールといいますかチェック機能、これが煩わしい問題だと。これは国会軽視になる、こういうことになりはしませんか。
  147. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 国会のコントロールが煩わしいということではありませんので、行政改革というものを考えてみますと、やっぱり官庁が自主的、自発的に活動するということが一番大事なことであるわけでございまして、恒常的な自己改革、これが行政改革において最も大事なことでございますので、ややともすると硬直化し固定化しておりまする官庁機構について、自発的に自主的に恒常的な改革を行うという行政改革の精神から言うて、この際法律から政令に御委任を願いたい。こういたしましても、この法律の中には、御承知のように国会における国政調査権というものもありますし、それからまたさらに予算を審議の際におきましては、予算の参考書として各省ごとの局の内容等もお知らせいただくわけですから、国会審議に際して十分御審議いただけるわけでございます。さらにまた先般の衆議院の御審議の際には、官報公示ということだけではなしに、国会報告するという義務も与えることにいたしましたし、五年後は総合的検討をするということでございますから、国会においての十分な審議は私は十分あると考えておるわけでございます。  すなわち、今回の改正というものは、修正案を含めて、弾力的な機構再編成の要請と国会審議、監督権の調和というものを図るということから出ておるものでございます。
  148. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま幾つかの理由をお述べになりました。その幾つかについて、一つ一つ私はお尋ねをしていきたいと思うのです。  まず第一の問題は、いま国政調査権の問題をおっしゃいました。しかしこれは現実には、諸官庁に対する監督がかなり行き渡ってきているとおっしゃるけれども、事実は決してそうじゃない。私はそう思う。たとえば現在国家行政組織法で政令事項となっている各省庁の課、室、官ですね、この設置改廃について、今国会衆議院行革特別委員会でわが党が、来年度の機構改正要求、これで予定しているものを資料として提出するように要求したのに対して、行政府の内部の資料だから出せないと、こう言って提出を拒否されている。都合の悪いものは提出を拒否されておる。国政調査権というものは事実上機能していない、こういう実例があるのですが、いかがですか。
  149. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 資料の要求に対しましては先般、政令に御委任願いたいとお願いしておりまする部局の内容については資料として提出をいたしてございます。ただ、いまお尋ねの課の問題でございますが、これは予算編成の際に最終的に決定を見るわけでございますので、私ども事務的な処理の方法としてここまで提出することは御勘弁願いたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  150. 神谷信之助

    神谷信之助君 事務上繁雑だからということで提出を拒否するというのは、これは大変なことじゃないですか。それは理由にならぬです。来年はこの行政組織法そのものの審査をするのに必要な資料として要求するのに、事務上繁雑だからと言って提出を拒否する、これは理由にはならぬじゃないですか。
  151. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 予算編成の過程において決める事務的な内容の問題であるという考え方でございます。
  152. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、私どもが要求したのに対して、行政府内部の資料だから出せないというのは、それは理由じゃないのですね。
  153. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 必要なものは提出をいたしておるわけでございますが、課の問題についてはこれからどんどんいろいろ動いていくわけでございますから、予算折衝の過程において事務的に折衝をしていく問題でございますから、これはまだ申し上げるまでに至っていない、こういうことでございます。
  154. 神谷信之助

    神谷信之助君 概算要求の方は大蔵省に出す、それから機構改正要求書とか定員改正要求書というのは、これは行管庁を経て大蔵省に回ってきますね。だから概算要求の言うなれば根拠になる機構なり定数の改正、こういったものは同じ資料なんです。片一方は出せるけれども片一方は公表できない、これはおかしな話であります。  今日も法律事項になっているのは局、部までですかなそこまでは出します、しかし政令事項になっているものは繁雑だから出さないとか、現に概算要求と同時に行管庁に出されているのにそれは出せません、あるいは言葉をかえて言ったら、行政府内部の資料だから出せぬと言ってみたり、事務上繁雑だから出せないと言ってみたり、国政調査権もくそもないじゃないですか。  しかもこれは、局、部の改廃についてもわれわれは知りたいと同時に、課や室、官の改廃あるいは増減、あるいは所掌事務の変更、これを見ることによって政府の政策の重点がどこへ向けられようとしているのか、あるいはこの政策はもう必要ないから切ろうとしているのかというのは、その内容を見れば来年はどこに重点を置こうとしているのか、したがってそれに基づいて概算要求はこういうものになっているのかということが理解できるわけなんです。国政をチェックするのにわれわれはそういう資料が必要なんだ。ところが、それはもう出しません、これでは国政調査権は機能していないじゃないですか。
  155. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 定員の要求の問題、課の問題等につきましては、先ほどからたびたび申し上げておりますように、予算折衝の過程においてお互いに話し合いをしながらまとめていく性質のものでございますから、一応事務的なものとしてこれはお出しすることはどうであろうかと、御遠慮させていただいておるわけでございます。
  156. 神谷信之助

    神谷信之助君 それは同じことですよ。概算要求書も、それは大蔵省と折衝するのだから決まったものじゃない、これから大蔵省と折衝して、そうして最終的に予算として決まるまではまだ単なる言うなれば内部資料とも言えるものですよ。そしてその概算要求書に基づいて、課をふやすとか減らすとか、あるいは審議官を一人ふやすとか、参事官をふやすとか、そういう概算要求によって大体ここに力点を置いている、あるいはここはもう切ろうとしておる、減らそうとしておると。同じ資料じゃないですか。こっちは出せて、こっちは出せない、どっちもこれは話し合いはするのです。いまの答弁は私は理由にならないと思う。  だから事前に、来年度の予算がどうなるのか、そして各省がどういう政策遂行のための予算要求をしているのか、あるいはまたそれに対して機構をどう考え、定数、定員をどう配置しようとするのか、こうして初めて政府のやろうとする政策に対して立法機関がチェックする、そういう力を持つことができる。全部それがなしで、事後で国会にということでは、それこそ国会の国政調査権というのは機能しない、こういうように言わざるを得ぬと思うのです。その点は指摘をしておきたいと思うのです。  それからもう一つは、いまおっしゃった理由の中で、この行政改革をやっていくのに、一々国会審議をしてもらうというよりも、ひとつ委任をしてもらって、そしてその後は官報に載せたり、あるいは修正によって今度は国会報告することになったんだと、こういうようにおっしゃるのですけれども、それは欧米の先進諸国の行政組織規制というのは弾力化されていて、行政府にその権限がゆだねられている。わが国はこれに比べて余りにも厳しく制約され過ぎているから、こういう点もひとつ考える必要があるということをいままでの中でもおっしゃっていますね。しかしそれは、それぞれの国の行政機関というのはそれぞれの歴史やあるいは憲法、制度、行政機関と国会との関係、こういう関係の中で生まれてきているのであって、わが国の立法府と行政府との関係も戦後の今日の憲法体制の中で生まれてきている。だから一律に外国がどうだからこうしなければならぬということにはならない、そういうように思うのですが、この点はいかがですか。
  157. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) それは、もとより外国は外国のいろんな特殊の事情があって、行政機構の規制の方式というものがあるわけでございますが、わが国におきましては、昨日も申し上げましたように、旧憲法下における行政機構の規制の方式に対する反省等々もありまして、法律で部、局を決めるという方式をとってきたわけでございますから、これは日本は日本独自の立場でございます。しかし日本独自の方式と言いましても、やはり外国のことも参考にしなくちゃならぬということもあると思いますけれども、日本は日本なりにやっぱり考えていく。特に、この法律施行されてもう四十年近くなりますから、その間に経済社会の事情も変わり、行政需要も非常に変わり、そしてまた議院内閣制もこれだけ成熟してまいりますれば、国会行政府との関係において信頼の上に、法律でありましたことを政令に御委任いただきたい、こう考えるのも自然の動きじゃないかと、私はかように考えております。
  158. 神谷信之助

    神谷信之助君 おっしゃるように、外国に何も右へならえする必要はない。しかし、いいところはとらなきゃならぬだろうと私も思います。  そこで、立法府と行政府との関係行政機構に対する立法府の関与の問題、それと政府との関係、この点でいろいろ外国の例もありますが、たとえばアメリカのやり方ですね、これは長官も御承知だと思いますけれども、アメリカの方は一九七七年の行政機構改革法ですか、これで今日運営されている。機構改革について立法府は部分的に、全部あるいは一部それぞれ違いますが、それを行政府に、大統領に委任をしていますね。  今度の法律改正もある意味ではこれに似て、先ほども長官おっしゃったように委任をしてもらいたいということで局と部の問題が出ているわけですけれども、それでもアメリカはそういうふうに大統領に行政機構の改革について委任しておりますけれども、アメリカの場合は白紙委任ではないですね。大統領の方から行政機構改革計画を議会に出す。議会が六十日以内にそれに対して否定をしないならば、六十日たってからその計画が発効する。したがって、その機構改革を実施する以前に、その計画自身に議会の方でチェックする必要があればチェックする、こういうことになっていますね。だから編成権はやっぱり議会にあるんだと、機構編成は。このことを原則で確認して、そして議会と大統領とがチェックし合う、議会がチェックするというそういう関係、これを軸として残し併用する。これで行政権の権限も一定程度拡大をする。こういう併用といいますか、こういう環境をつくっているでしょう。  ところが日本の場合、今度出てきているのは、先ほどもおっしゃったように委任ですよ、白紙委任。そして事後、変更した後官報に載せたり、修正されて今度は議会に報告される。事後なんですな、事後審査。事前審査ではない。これが非常に大きな違いだ。私はここのところが今度の日本案について根本問題と言えるものだと思いますが、この点についてはどう考えますか。
  159. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) アメリカにはアメリカの方式で、事前に大統領に委任いたしましても、その大綱について委任していただくということもありましょうが、日本は事前でなくて事後において、事後においてと申しますか、局の設置廃合が行われますれば次期に開かれる国会報告するとか、あるいは予算編成の際に行うとか、あるいはまた五年後には総点検をしようというふうな修正が行われておるわけでございますから、私は事後だからそれはいけないのだということにはならぬ。やはり国会審議、監督権というものは十分及んでいく、こういうふうに考えております。
  160. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまの長官の答弁、私は非常に重要だと思うのです。アメリカはそうなっている、それはアメリカのことで、日本は日本なりに考えたらいいのだ、こうおっしゃるのでしょう。  日本は一体どうであったか。第一回国会、第二国会続いてこの行政組織法の議論があったときに、現憲法のもとで国権の最高機関である国会がちゃんとこれは決めにゃいかぬ、国会法律で決めなけりゃならぬ問題だということでこれは修正されたのでしょう。だからアメリカがどうであろうと、日本は国会行政機構の改廃については法律でこれを定めるのだということで修正をされたわけだ。  当後の本院の決算委員会の委員長はこういうふうに言っていますね。「この部局というものは」「これは明日に法律によって決めねばならぬものであります。」これを「政令でやるというような考え方は、戦時中に法律で定むべき事項をやたらに勅令に委任したと同じ考え方でありまして、これは勿論新憲法の精神に違反するのであります。」「修正は、現われた文字から見ますると誠に簡単のようでありまするが、その含むところの内容は真に重大なものがあります。それは、従来の旧憲法の官制大権のごとき思想をさらりと捨てまして、すべては国民の代表たる国会におきましてこれを決定すべしとする国会至上主義、新憲法の精神に則る国会至上主義の実現であります。我々憲法を最も合理的に運用せんとする考えを持つ者にとりまして、これは重大原則の確立であります。」  日本の歴史的経験から言うたらこれなんです。そうして六十五国会以降ですか、三回にわたって提案をされても、国会はやっぱり国会で決めるのだと、国権の最高機関である国会は三回にわたってこれを廃案、審議未了にしてきたわけなんです。これが日本の伝統です。  アメリカは、先ほど言いましたように、一九七七年以前からもありましたが、これがつぶれたり復活したりして、そして七七年以降の現在の法律になってきている。アメリカはそういう経験を経てやっと、日本が第一回、第二回国会で確立した国会で決めるのだという原則を最近になって確立して、そして大統領に一定の委任はしたけれども、白紙委任ではなしに国会のチェック機能というのを残すという、国会が権限を持っているのだというその原則をいま貫いてきている。日本はずっと貫いてきている。だから日本は日本でそれを貫くのがあたりまえだ、後退をする必要はないじゃないか。こう思うのですけれども、この点はどうですか。
  161. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 新しい憲法ができた後の行政機構のつくり方につきましては、たびたび申し上げてありますように、旧憲法下における行政組織のあり方についての反省等もありまして、法律ですべて局の設置廃合をやるというふうになったこと、私はそれなりのりっぱな局膨張の抑制という効果を十分果たしてきたと思います。  しかし、それ以来今日までもう四十年近く経過いたしまして、わが国の経済社会も大きく変わりつつありますし、そしてまた議会制民主主義というものが進んでまいりましたので、国会のコントロールの機能というものも本当に強くなってきたわけですね、戦争前は全然関与できなかったのですから。それは十分に監督することができるようにもなってまいりましたし、そしてまた最近におきまする、特に行政需要の変化に対応して弾力的にやるということが行政機構の自発的、自主的な向上、改革というものの要請にこたえるゆえんであるということを考えまして、従来の方式でやってまいりましたが、議院内閣制がこれだけ成熟してまいりました今日、国会政府を御信頼いただいて、政府もまた国会審議権を尊重して、そしてそれぞれの立場に立って法律から政令に御委任をいただきたいと、こう申し上げておるわけでございまして、戦後四十年間にわたる経済社会の変化、行政需要の変化に対応し、弾力的な措置が必要であるという考え方でこの際委任していただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  162. 神谷信之助

    神谷信之助君 いままでどおり局や部の改廃についてはそれぞれの各省の設置法なり組織法なりの改正案を出し、そして国会審議を経て改廃をすればいい。それで、それ自身が重大な問題がある場合には継続になったりすることもあるでしょう。それほど多く廃案になったりなんかしてないでしょう。そうやって国会審議を経て、局、部局の改廃についての可否について国会審議をし、そしてオーケーを与えたりノーと言うというのは従来やってきている。その権限を取ってしまおうというのだから、まさに国会の権能を弱めるもの、あるいは取り上げるものだということが私は重大な問題だと申し上げているわけです。  だから、行政改革の必要な場合だから国会のそういうコントロールは困る。困るというのは、国会がよろしいと言うのは構わないわけでしょう、法律で提案して、よろしいと言う場合。よろしいと言えぬようなものが出たら困る。まさに国会がノーという問題がある。それを政府が自由にやれるようにしてもらいたいということでしょう、実施することになれば。だからこの点では私は納得ができないのであります。  修正されました内容について修正案の提出者に続いて質問をしたいと思っておりましたが、きょうは御都合が悪くて御出席いただけませんので、いずれ次の機会にこれは譲っていきたいと思うのです。  さらに、その他の法案についても質疑がございますが、こればかりやるわけにはいきませんので、重大な問題があるのでそちらの問題に移ります。  これは総理お尋ねをいたしますが、当委員会の審議を通じて、きょうの午前の質疑の中でもお述べになっているようですが、臨調答申の線に沿って増税なき財政再建を堅持する、近く総選挙があれば増税しないと公約したいと私個人としては考えている、こういう御発言がありましたが、これはいまもお変わりないですか。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 変わりございません。
  164. 神谷信之助

    神谷信之助君 これはわざわざ、私個人としてそうお考えになっているということなんですが、これは総理の見識を示して、総理としてこう考えるというように言ってはいかぬのですか。
  165. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は先ほどは、自由党総裁としてもし選挙になれば演説をいたしたいと思うと、そう言っておきました。
  166. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、また自由党としては決まっていないということですね。  そこで問題は、この増税なき財政再建の増税なきという中身の問題です。これが問題なんで、臨調が増税なき財政再建というのを基本理念にするということを明らかにいたしましてから、国民はこれを素直に受け取っています。ああもうこれで税金をふやさぬで、上げないで財政の再建をやってくれるんだな、そういううまい道があるなら結構なこっちゃと、こうなっているのでしょう。  ところが、この間、当委員会で参考人で瀬島さんに来ていただいて聞きましたけれども、中身は違うのですね。租税負担率は動かすな、しかし直間比率の見直しはよろしい、一つ一つの税目では増税なり増収があっても、それは増税なきという範疇に入るのだ、こうおっしゃっているわけです。総理のおっしゃる増税はしないと公約をしたいという、その増税はしないという意味はそういうことをおっしゃっているのですか。いわゆる直間比率の見直し、具体的に言いますが、物品税やその他の引き上げはしないという意味でございますか。どうですか。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般論として臨調答申に従ってやろう、増税なき財政再建、臨調答申考えに従ってやろう、そういうことであります。
  168. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、臨調答申に沿えば、これは直間比率の見直しがあってもよろしい、税目一つ一つの中には増税あるいは増収があってもそれは増税なしということである、こういうことになるわけでしょう。これは臨調の瀬島さんに確認をした。それじゃ、これは国民の側から言ったら、増税なしと公約しながら、きのうは酒税は上げてもらいたくない、上げないように祈っているという御答弁ですけれども総理が祈れば上げずに済むかどうか知りませんけれども、あるいは物品税や酒税が上がる、そういうようなことが結果になって起こってくれば、選挙で増税なしと言いながら選挙の後にそうなるということになれば、これは国民は公約違反だ、だまされたということになるでしょう。そういうことにはならないということなのか、なるのか、どっちですか。
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままででもいわゆる不公平税制の是正、そういうようなことはやってきたので、でこぼこ調整というのはやってきたわけであります。ですから、いままでの考えに沿ってやっているということです。
  170. 神谷信之助

    神谷信之助君 大企業などに対する特別の措置、これの見直しは私ども要求をし、きわめて微微たるものでありますけれども、若干のことはやられた。私が言っているのは、大多数の国民にとって影響のあるような増税をやるのかどうかということです。  先日も私、総括質問でやりまして、時間が十分なかったのでなんでしたけれども、たとえば今度の税調答申では、所得税の最低税率は引き上げなさい、最高税率は下げなさい、こうなっておるわけでしょう。こうなりますと、最高税率の方はたとえば五%下げるということになれば、昨年の長者番付第七位の松下幸之助さんが十億円ちょっとですね、こうなると三千六百万円ぐらいの大幅な減税になる。しかし最低税率、仮にいま一〇%を一二%に二%上げただけでも、そこのクラスは一万二千円の増税になります。減税と言いながら、片一方その財源としてそういうものを考えなさいと税調は言っている。それだけではなしに、物品税や酒税や自動車関係諸税やあるいは運転免許税などというふうなものも新しくつくりなさいというようなことまで言っているわけでしょう。  これに対して私は、当委月会では大蔵大臣に、地方行政委員会では自治大臣に聞きました。本当に増税しないと約束できますかと。そうしたら、年永の来年度税制についての税調の答申が出る前にノーということを申し上げるわけにはまいりませんと。だから増税をしないとは言えない、こういう答弁だった。そうしたら税調で言うようなそういう増税が年末に出てきたら、これは増税なき財政再建の範疇に入らないと臨調は言っているのですから、そうしたらそういう増税はやりますということになるわけですね。
  171. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いささか事務的な問題もございますので申し上げますが、税調から中期答申をいただいておりますのは、いわば定性的に税制のあるべき姿というものについてそれぞれ検討項目等を指摘されておる。
  172. 神谷信之助

    神谷信之助君 それはこの間も聞きました。
  173. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いや、この間もお話ししましたが、これは何回でも話をしなきゃなりませんから。  そこで、それに基づいて今度は五十九年税制のあり方というものをこれからまた御審議いただくわけですね。言ってみれば政府がお願いした税調のこの五十九年税制のあり方あるいはその後の年度税制のあり方が出る前に、あらかじめ予見を持ってこれに対してノーとかイエスとか厳格に言うべき筋合いのものではない、こう申し上げたわけですね。  それで、事実今度はこのおたくの党からのいままでいろんな場合にお聞かせいただいておるのをずっと見てみますと、これは増税すべきだという意見もございます。それから、これは不公平税制の是正の範疇だという意見もございます。そういうもろもろの意見を正確に報告して、それに基づいて問題点の提示がなされておるわけでございますから、この問題点が提示されたものは増税の方向が示唆されたものだという考えを持つこと自体が私どもは誤りではないか、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  174. 神谷信之助

    神谷信之助君 この間のなには、言うならば三年間ほどのある意味の税制の見通しといいますか、問題点というものが出された、それは承知しているのです。それで、大蔵大臣もこの間の答弁の中でおっしゃったように、今度の税調答申は財政審議会の答申かいなと間違うほど前文がついている。言うなれば歳出カットをしっかりやれよ、そうした上でやっぱり財源は増税に頼らにゃいかぬだろう、やるとすればこういうようなものが考えられると、こう並べてありますね。だから年末の状況になって、今度は具体的に税についてはどうしたらいいという来年の税制についてお示しになるだろう、こういうわけですね。その場合にはざあっと物品税から固定資産税からずっとようけ出されているものの全部が出るかどうか、それは別ですね。それ以外のものは出てこないわけですね。その中から全体のたとえば歳出カットの状況などを見ながら、それも財政当局の意見を聞いたり政府の意見を聞いたりして、そしてこういうように来年の税制をしなさいという問題提起がなされるであろう、それはよくわかっているのです。  私ども言うように、政府の方が歳出カットを、たとえば正面装備はもうやらないということで一兆四千億の財源をつくれば、これは全く増税をする必要ないということも可能になります。政府がそういう方針をとるかとらぬか、これもわからぬ。恐らくいままでの答弁ではおとりにならないでしょう。仮にそれをもしやらなければ、歳出カットといったってそう大きいものができるわけではないし、新しい人件費増その他の財政需要の要因も生まれてきますから、そういう関係を見れば、やっぱりある程度増税をして相当新しい税収に頼らなきゃならぬ、こういうことになるのはこれは大体明らかであります。  とにかくこの間大蔵大臣もおっしゃったように、去年からことしにかけて衆議院の方の小委員会で減税をやるための財源探しを一生懸命やった。どうやってといって増税の相談、結局ないなあということになった。減税をどうやって実施するかということから財源探しをやったけれども、なかなかむずかしくて、去年はとうとう減税なしになった。今度は政府の方でちゃんとつくってやれ、こうなって出てきたのがいまの状況ですね。そういう状況はわかっている。  だからそれを考えてみたら、いままでの政府の方針を堅持していくならば、当然、税の増収に頼らなきゃならぬ。そのことをまた予知して先般の税調の答申が出ているし、恐らくそれを踏まえた年末の来年度税制に関する答申も出てくるであろうし、そうすれば必ず、全部とは言いませんけれども、相当の部分の税についての引き上げなり何なりが出てくるであろうということを考えなきゃならぬ、こういうように思うのです。特に所得税の税率の最低引き上げ、最高の引き下げというのは、これは具体的に言われていますから、だからこれは減税の方としてそういうことは当然お考えになる。その率をどうするかはいろいろ検討されているだろうと思うのだけれども、そのことは間違いないと言えるのじゃないですか。
  175. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いままでのいわゆる税調のあり方に対するいまの神谷さんの認識は正確であると私も思います。  ただ、そこで一つ大事なことは、昨年の三月四日以来のいわゆる減税小委員会というものは、施行されつつある、言ってみれば進行形中の歳入歳出予算というものの前提の上に立って、これからのものでやったわけじゃないのですね。したがって、その中で財源探しというのは、各党の専門家がお集まりになりましてもやっぱり大変な作業だったと思います。どなたがどういう税目を御主張なすったか皆ございますけれども、これは言ってみれば内輪の審議でございますからそれを公表する考えはございません。しかし、見つからなかったということでやむを得ず見送った。  今度は、政府税調はその事実も踏まえながら、五十八年はできぬが、五十九年度以降考えるべきだという答申をいただいたわけです。しかし、国会でさらに減税問題について各党合意の問題があって、それではというので、その範囲内において今度は政府考えろと言われて、したがって進行中の五十八年度予算については新たなる増収措置ということはにわかに見当もつきませんから、五十七年度の剰余金を使わせてくださいと、こう言って御審議をいただいているわけですね。  そこで、五十九年度以降の問題については、指摘されたような中期答申も絶えず念頭に置いて、われわれもその年度ごとの答申を踏まえて議論をしていかなきゃならぬ課題です。そこでいまおっしゃいました今度は最低税率、最高税率の問題ですね。大体十九もブラッケットがある。これが日本の所得税としては多過ぎるじゃないか、こういう議論も一つございます。それから課税最低限は大体世界で一番高いところにございますが、最低税率は世界でまた一番低いところにある。したがって、これらもいろいろに見て調整していったがいいではないかというような御指摘もありました。それから特に中間層、この定義は非常にむずかしいのですけれども、中間層に、いわば総理の言葉を借りれば子持ちとか、ちょうど学校へいらっしゃっているとか、そういうところが優遇されるような形の累進税率構造というものを考えれば、おのずからそれはなだらかなものになりますね。特定のこれをつかまえて特に上げよう、下げようじゃないわけですから、税率というものは。その税率構造というものを考え直していこうと。  そこで誤解がありますのは、いわば最低税率を引き上げたらすぐそれだけ実質増税じゃないかということですが、いわば課税最低限が上がりますから、仮に二百からいまのように六十刻みであったら、二百六十の人は六十の一〇%がかかるわけですね。今度それが二百三十になり四十になれば、それから上に対して税率がかかるわけでございますから、実質増税になるという階層は恐らくないだろう。ただ、あらゆる控除のない人でたまたまそういう、予測するのはいろいろむずかしいのでございますけれども、ひとり者さんで、それから自営業者でちょうどそういう層ができはしないかということを理論的にもいま探してみておるのですけれども、それらが仮にもしありせば、それらもいわゆる実質増税にならぬようにして差し上げなきゃならぬじゃないかというような勉強はしておりますけれども、いま税調答申、なかんずくいまおっしゃいましたのは所得税・住民税部会の中間報告、部会報告を基礎に置いた税調答申でございますだけに、これはまさに五十九年度の税制のあり方についてというものを見てからやるわけでございますが、そのような勉強は絶えずしておりまして、事実個々の人によって増税になるということはないようにはしなきゃならぬと思っております。
  176. 神谷信之助

    神谷信之助君 これで六年間、所得税減税はなかったわけです。これは本院の予算委員会でも私は指摘したと思うのですけれども、六年間で一人平均約六万円の増税ですね。そういうぐらいの実質の増税になっております、所得税減税がないので。同時にまた不況でもあり、生活が厳しくなってきているという状況の中で、所得税、住民税合わせて一兆四千億の減税という、これが国民的な要求になってきておる。したがって、ずっといままでとめてきたのですから、だから課税最低限を引き上げる、控除額を引き上げてという措置をなさるというのは、これはある意味で言ったらその六年分の一部を戻してやる、かためてやるということにもなる、そういう問題だと私は思うのです。  それで私は、増税をせずと総理はおっしゃるのだけれども、しかしその中身をそういう意味で見ますと、少なくとも高額所得のところは大幅に減税になります。確かに増税をしないことになるでしょう。大衆課税である間接税が少々上がっても大幅減税になる。しかし低所得層、特に年収四百万円以下というと七五%の国民ですよ、ここには、どの程度間接税を引き上げるかによりますけれども、いま考えられていることをやられるとすれば、これは減税ではなくて増税になるということになる。もちろん歳出カットがどうなるかとかいろいろありますよ。だが、そういう財源を税収だけで求めようとすれば計算はそうなる。だから、大多数の七五%の国民に対して実質増税になるようなそういう減税と増税の抱き合わせ、これは総理の言う増税はしないというのはそういう中身になってしまうということを指摘して、もう時間が過ぎましたから、これで私は終わります。
  177. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に伊藤郁男君。
  178. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 先ほど来、増税なき財政再建に関連いたしましてさまざまな議論があるわけですが、先ほども総理は、いままでもやってきたのだからでこぼこ調整というのは認められるのだ、こういうことを言われました。総理の言われているでこぼこ調整という中身が、いまのところではどういうことなのか私にはわかりませんが、そこで私、確認をしておきたいのですが、総理の言う増税なき財政再建という意味は、一切の増税はしないという意味なのか、それとも一般消費税のような大型間接税やあるいは減税の規模を上回るような増税はしない、こういう意味なのか、この点をお伺いしておきたいと思うわけでございます。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 来年度予算編成についての話と、それから長期的な財政計画の話と二つあると思うのです。  長期的な財政計画に関しましても、臨調答申の線を守って努力していきます、増税なき財政再建という形で努力してまいります、そういうことも申し上げてきておるのであります。それはこの間、瀬島さんがここで申し上げましたような考え方が基本にあるわけであります。  それから、来年度予算の編成については、でこぼこ調整ということはあり得ます。しかし、一般消費税のような大型間接税などは絶対やりません。それから、新しい税目を起こして税を課徴する、そういうようなこともやる考えはない。でこぼこ調整という範囲内にとどめて来年度予算はやる、増税はやりません、そういうことであります。
  180. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 私は、でこぼこ調整というのも一部増税だ、こういうことだと思うのです。  そこで、来年度は一兆円規模の減税が実施される、こういうことになるわけですが、では一体その財源をどうするか、いまだそれは明らかにされていないわけですね。しかしそれは、間もなく予算編成の作業が始まると明らかになってくるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、これはわが党の柄谷委員指摘しておるわけですが、このような財源不足、しかも要調整額が三兆六千億にも達する。大蔵大臣はどのような玉手箱を持っておるかわかりませんが、いずれにしてもこれは埋めていかなければならぬ。そうすると、国債整理基金のさらに繰り延べとか、そういうやりくり手段はあるわけですが、いずれにいたしましても、総論的に言いますと、思い切った歳出削減か、私どもの計算によると一兆円規模どうしても不足してきますから、これに対する、減税に伴ってこれの見返り増税をしなきゃならぬという道しかないのではないか、こう思うわけですが、総理はいま、でこぼこ調整程度はやるんだ、それ以外はやらない、こう言われるわけですけれども、そのような私は見通しを持っておる。  そして、伝えられているのは、これは税調でも中期答申で明らかにしているわけですが、しょうちゅうなどの酒税の増税に加えて、自動車関係諸税の増税ないしは新税の導入、こういうことが伝えられているわけですが、たとえば、伝えられているような自動車関係諸税がもし行われるとしたら私は大変な影響がある、こういうように思っております。    〔委員長退席、理事長田裕二君着席〕  いま自動車ユーザーには九種類の多額の税が課せられているわけです。その負担額は年平均十数万円と言われている。これに加えまして有料道路料金とか保険料とかさまざまな負担を入れますと、負担総額は年額にして約四十六万円にもなるわけですね。したがって、もうこれ以上の負担には耐えられない、こういうのがユーザーの気持ちではないかと思う。もし自動車関係諸税が伝えられるように導入をされますと、これは内需の回復にも水を差すことに私はなると思うのです。いまは自動車を取り巻く輸出環境というのは非常に厳しいわけですから、結局内需に依存しなければならない、こういうことになりますから、内需回復にもこの自動車関係諸税というものは水を差すことになるのではないか、こう思うわけです。  しかもこれは、総理の言われるでこぼこ調整といった程度の影響ではないと思うわけですね。いまは自動車を一世帯一台以上保有していますから、したがって全世帯に影響を与えてくる、こういうことになるわけですが、昨日総理は、しょうちゅう愛好者だからしょうちゅうの税金は上げてほしくないなあと、こういう気持ちを表明されたわけでありますが、来年度のことになりますけれども、この自動車関係諸税につきまして、これもやはり相当の影響があるから上げてほしくないなあということをここでお答えができるかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  181. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 来年度予算編成についてはまだ何も決まっておりません。全く白紙の状態でおります。
  182. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 私がいま指摘しましたように、来年度予算編成、いずれにしてももうすぐ明らかになってくるわけですから、そのときに、こういう問題も含めまして、意見を十分踏まえましてやっていただきたい、こういうことを希望しておきたい。  そこで、行革の問題につきまして、私は締めくくりというような意味で質問を若干続けていきたいと思うのですが、今回の行革法案は、今後の本格的な行政改革を推進するための一里塚と、こういう位置づけ、もちろん総理もそういう位置づけをされているわけですが、そういう位置づけの中でわれわれも賛成に踏み切っているわけでございます。  しかしながら、政府におきましては、新行革大綱決定以後の行革に対するプログラム、スケジュール、こういうものはまだお示しをされていないわけです。したがって、今後の本格的な行政改革に対する国民協力と支持を得るためにも、新行革大綱以後の行革のタイムスケジュール、こういうものを具体的に示すべきではないか、こういうように私どもはこの時点で考えておるわけですが、御見解をお伺いしておきたい。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体いま七法案お願いしておるわけでございます。これはぜひ成立を期してやっておりますので御協力願いたいと思っています。  それから五十九年度予算編成過程で結論を得るものは、当面は八省庁の部局再編成に関する具体的実施方針、これは運輸省以下の大改編が入ってくるわけです。それから地方支分部局、ブロック機関及び支所、出張所の整理方針、第三番目が特殊法人等の事業整理合理化、その次が郵政、林野等の合理化方針、それから五番目が補助金の整理その他と、こういうものが予算編成過程で結論を得るものとして出てきます。  それから、次期通常国会を目途に法律案提出準備を進めている。これは電電公社の改革案、それから専売公社の改革案、それから地方事務官制度の改革、それから特殊法人の統廃合、これはかなりやろうと思っております。  それから向こう数年にわたって実施すべきもの、これは一つは国鉄事業の抜本的改革です。これは五年間という約束になっております。それから国家公務員の定員の削減、これは定年制もいよいよしかれるわけでありますから、実質的に大いになたをふるっていこうと思っております。その次は各省庁の課等の整理再編、これも思い切った削減をやろう。昔、一省一局削減というのをやりましたが、課についてもかなりのことを心がけていきたいと思っています。それから地方支分部局の整理、それから特殊法人民間法人化、それから統計事務整理、これが向こう数年間にわたって実施すべきもので、大体三年から五年以内ぐらいには完了したいと思っています。  それから中期的展望のもとに進むべきものは、年金改革、年金の大統合計画を実行していく。それから財政構造の健全化、その他でございます。  大体以上がおよその目安として申し上げたものでございますが、その他一般の課題については、遅くとも臨時行政改革推進審議会の存置期間とされる三年以内、つまり六十一年の六月までにおおよそ成果を得るようにいたしたい。  大体こういう計画でございます。
  184. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 いま総理から詳しく今後のタイムスケジュール的なものをお伺いしたわけですが、そこで、それでは具体的にお伺いをしていきたいのですが、行革の中でもそのかなめになるものは、私は、旧態依然の体制のまま肥大化した中央の行政機構を今後の行政需要の変化に対応し得るよう簡素で効率的な機構に改めることだと思うのです。これは総理考え方は同じだと思うのです。しかし、中央省庁の統廃合につきましては、先ほどのタイムスケジュールの中にもございましたですけれども、今回の総務庁の設置以後具体的に計画が示されていない、こういうように思うのです。  そこで、これは午前中の委員質疑の中にもございましたけれども、たとえば臨調でも指摘されておりますように、国土庁と北海道、沖縄両開発庁との統合、これは一体いつ実施するのか。また、臨調が検討を要望している七つの機構改編というのがあるのですね。これは各省庁にまたがって方向を指し示しているわけですが、この七つの機構改編について、どういう手続によってこれを具体化していくのか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  185. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 中央省庁の問題につきましては、ただいま御提案申し上げておりまする総務庁の設置、すなわち行政管理庁と総理府の組織、機能を一体化して総務庁をつくろう、これが一番大きな問題でございます。  そこで、臨調答申にありますのは国土三庁の問題でございますが、これにつきましては、きのうも申し上げたとおり、それぞれ特殊なやっぱり事情があるわけでございます。沖縄は、沖縄が返ってまいりましてからまだ十年きりたってない、そういうふうな特殊な事情等もありますし、北海道は北海道の特殊な事情等もありますので、中長期的な問題として処理をしていくということが必要ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、中央省庁の局の再編問題でございますが、臨調答申におきましては八省庁ということを言われておるわけでございます。ところが、そのほかに、各省の中でもやはり自己改革をやろうではないかという機運が盛り上がってきておりまして、現在いま行管相談のありますのは、そのほかにもう二つくらいの省からも出ておるわけでございまして、この部局の再編問題は来年度の予算編成の過程においてこれを決めていく、こういう手順になっておるわけでございます。
  186. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 いまの長官の御答弁は私は不満なんです。やはり中長期的に、中央省庁の統廃合については一歩一歩、総務庁が終わったらこの次はこうするという、そういう考えでいきたいとこうおっしゃるのだけれども、それじゃ中身はどうかというと、まだ具体的に何ともいまのところ申し上げられない、こういうことだと思うのですね。したがって、私はその点について不満なんですね。だから、予算編成の過程における問題でいま総理からかなり長期にわたってタイムスケジュールの大綱的なものを御説明いただいたわけですが、やはりそれに基づいてより具体的な方向を打ち出していくべきじゃないか、こういう考えなんです。それは一つ要望としておきます。  次に、地方支分部局の問題ですけれども、これはこれまでの地方支分部局の設置経過が示すように、現業部門はもちろん除きますが、現業部門を除く地方支分部局というものは、戦後地方自治制度の確立とともに設置されてきたものであることは、これはもう長官も御承知のところです。それは公選知事、こういうものに対する不信が一つあり、あるいは交通手段の未発達、こういうものが背景になりまして、地方支分部局、約七千にわたるわけですが、そういうものが設置されてきた。しかし今日、交通手段についてはもう目覚ましい発達を遂げている。そしてまた地方の行政能力も著しく高まっている、こういうように私は思うわけです。したがって、現業部門を除く地方支分部局はもはや存在理由がなくなった、私どもはそういうように判断をしているわけです。  ところが、今回の改正は、地方支分部局については単なる看板のすげかえにすぎなかったのではないかというように私ども考えているわけですよ。したがって、この地方支分部局の抜本的整理合理化について、次期国会にその計画を示していくべきではないか。もう本当に地方支分部局は存在理由がないのですよ。そういう意味から、この点については早急に手を打っていただきたいと思いますし、その計画は速やかに示していくべきではないか、こういうように思うのですが、長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  187. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 府県単位の機関につきましては、今回御提案申し上げておりまするように、ブロック機関がありながら府県にもさらにある機関、それはこの際縮小改組しよう、行政監察局、財務部、公安調査局、この三つについては縮小改組をしていこう。縮小改組をいたしまして、その事務はブロック機関に集中処理をさせる。そして、それぞれの縮小改組された機関の定員は約二〇%ブロック機関の方に移していく、こういうやり方にしていきたい。これはもう御提案申し上げているとおりでございます。  そのほかに、さらに小さな、小さなというのはおかしいのですが、地方支分部局がたくさんあるわけでございます。郵便局とか税務署、これはできません。それ以外のものが、大体数字で申しますと、これもたくさんあるわけでございますが、大体五千八百あるわけですね。郵便局と税務署を除きますと五千八百。この五千八百については、今後五年間に一二%減らしていく、廃止していく、こういうことになります。それは来年度の予算編成過程において、今後五年間にこの出張所は幾ら減らしていくかという計画を五十九年度の予算において確定していこう、こういう計画で進めておるわけでございまして、今後とも地方支分部局については、現業を除いて全部廃止するというわけにはまいりませんけれども、五千八百について今後五年間に大体一二%減らしていこう、こういう計画で進めてまいりたいと考えております。
  188. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 次に私は、これも昨日具体的な提案も含めまして長官質疑を交わしたわけですが、そのときには総理は外交諸日程をこなされまして大変お疲れのようでございましたので、余り議論は聞いていなかったと思うのですが、例の総務庁の設置に伴う統計局の二分割案なんですが、これについてもう一度、これは総理から御答弁をいただきたいと思うのです。  この二分割ですね、私は、行革というのは組織を再編統合して、そして効率的な行政をやっていくのだ、こういう基本理念があるわけですが、その理念からいきますと、どうしてもこの統計局の分割、分断というのは行革の理念に反しているのではないか、こういうことを、これは衆議院行革委員会でもわが党の議員が再三入れかわり立ちかわりお話を申し上げてきたところなんですが、この統計局の二分割案というものをやはり考え直していただけないだろうか、こういうことなんです。具体的には統計主幹を官房に移して、そしていまの総理府統計局はそのままの形で運営していくというのが最もいい姿ではないか。  いま統計局というのは非常に、私も現場を見てまいりまして、近代化され、非常に合理化されているわけですよ。これは二十年間にわたる職員の努力によって、しかもこれは製表部門と企画部門と双方が一体になってなし遂げてきたものですね。総理も御承知のように、統計事務というのは、調査企画の段階からずっと作業手順というのは連綿とつながっているわけです。そういうことですから、それを分断していく。確かに総合的な立場に立って企画立案をする部門が必要なんだ、こういうことはわからないことはないわけですが、せっかく積み上げてきた今日のこの努力、しかも行革の私は先駆をなした職場だと思うのですが、そういうものの職場を破壊するような方向におけるこの二分割案というものについては、私は非常に疑問を持っているわけです。それは齋藤長官に言わせますと、長い間議論を内部で積み上げてきたんですがと、こう言われますけれども、長い間積み上げてきたにしては結論がどうも余り適切ではないように私には思えるわけですが、昨日は総理お波れで議論を十分に聞いておられなかったのではないかと思いますので、この点について総理の御見解をお伺いしたいわけです。  そして、これは政令で今度はやっていくわけですから、政令はこの法律が通りますと来年七月ですから、七月の段階までにはやはりわれわれの意見を、これは私個人の意見じゃないのですから、中道四党が出している意見ですから、これらの意見を十分に参酌していただいて、よりよい方向にいっていただけないだろうか、こういうのが私の願望であり希望であるわけでありますが、総理の御答弁をいただきたいと思います。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 伊藤さんを初め民社党の皆さんが、衆参両院におきましてこの統計問題を取り上げられて、非常に熱心に御議論なすっているのは私よく承知しております。また、先般もここであなたがおっしゃったことはよく覚えております。  なかなか、行政学的にどう仕分けをするかという筋を通した話をするとむずかしい問題なんです。ですから、わが党の橋本行財政調査会長がいろいろ苦労をして、総務庁法案をつくるときに、党内各方面の意見も聴取し、また旧総理府諸君ともいろいろ話をして、ずいぶん詰めをやってくれたのです。  そういういろいろな苦労をした結果、現在のような案に落ち着いたのでございまして、やはり、国勢調査に基づく統計の実務をおやりになっている方、つまり図表作成とかそういうところと、それから各省庁にわたる統計のスタンダードをつくったり総合調整をやっているところというのは性格が違うわけですね。それで、総理府の総務庁の内局として置くべきものは、そういう各省全体の調整にわたる仕事をやるべきことである。そういうので、行政管理庁がやっておった統計主幹というものは、まさに各省庁全体にわたる統計のスタンダードづくり等をやり、国際的な関係も実はやってきたので、それは当然総合調整として内局に入るべきである。  問題は、総理府にあった国勢調査を中心にするようなそういう統計関係について、現場業務と企画部門とをどういうふうにするかという問題で、党の行財政調査会長から言えば、これは現業なんだから全部外局にいくべきものである、行管庁がやっておったような各省庁全般にわたるスタンダード、調整とは違う仕事であり、また国際関係とは違う仕事である。そういう筋を通した議論が非常に強うございまして、それでこの総務庁をつくるについて、その面でひっかかってしまって総務庁ができないぐらいのピンチに陥ったこともあるのです。  その結果、妥協的な発想として、総理府がやっておったその国勢調査に関する等々の中でも、企画調整に関することは内局に入れましょう、統計局にしましょう。しかし現業部門にわたるところは、外局と申しますか、センターと申しますか、そういうところで同じ総務庁の中には入っている。そういう仕分けをしたのでございまして、つくるについても非常に苦労をして、これでどうやら筋は通っている、そういうことでできたので、その点はぜひ御了承願いたいと思うのであります。
  190. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 経緯はわからないわけではないわけです。昨日も申し上げましたけれども、統計の仕事というのはやはりわれわれが素人目で考えるようなものじゃないわけですね。しかも正確さが要求される。迅速さが要求される。こういうことですから、やはり企画調査、そして製表が一体になって作業がずうっと進められていかなければだめなわけですね。現実の問題として分けられてきますと、その間の調整というのがまた必要になってくる。したがって、行革で再編統合して行政事務を効率的に運用しようというのがまた内部が複雑になってくるという、そういう障害もあるわけでございまして、その点のこともまだ考慮の余地があると私は思いますので、十分に検討をしていただきますようお願いをしておきたいと思います。  それで、次にお伺いをしたいわけですが、公務員の大幅削減の問題でございますが、私が先ほど申し上げましたように地方支分部局の合理化あるいは民間委託の推進等、こういうものを積極的に進めていくことによって、私は国家公務員数の大幅削減は一人の首を切ることもなく実現できるのではないか、こういうように思っておるわけです。これは必ず可能である、こう思うのです。したがって、現在約四%である退職者の補充率を二%にとどめることによって、五年間で実質一割削減することを目指して現在の第六次定員削減計画を改定強化すべきではないかと思うのですが、この点についてどうお考えか、御見解をお伺いをしておきたいと思います。
  191. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 公務員の定員削減につきましては、五十七年度から五年間に五%削減するという計画を進めておるわけでございまして、五%を削減し、その削減した数をプールとして緊要な行政需要に充てるという方式をとっているわけでございます。そういうふうなことで今日まで努力をいたしておりまして、五十七年度は千何百、五十八年度も千六百幾らというふうに純減をいたしておるわけでございまして、五十九年度におきましても、五十八年度を上回る純減を出していくというふうにしたいと考えておるわけでございまして、いま計画実施の途中でございますから、いまこれを改めるということよりも、いまの計画を着実に行っていく、これを着実に実行していくということが一番大事なことじゃないかと思っておりますので、いまこれをやり直すということよりも、いまの計画を着実に行っていくということによってその成果を上げていくということが適当ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  特に、六十年の三月になりますと、御承知のように一万何千人に定年法がしかれてくるわけでございますから、そういうこともにらみ合わせながらいまの計画を着実に実行に移していく、実行を進めていくというふうにしたいと考えておるわけでございます。
  192. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 次に、国家行政組織法改正についてお伺いしておきますが、この問題で私どもが最も心配をしておりますことは、第一回国会以来ずっと続いてきた国民を直接代表する統制機能ですね、国会ですか、この機能をなくして、パーキンソンの法則ではありませんけれども政府各省庁が変化に対応すると称して、役人の本能とも言うべき組織の肥大化に将来さらに走ることがないだろうかというのが心配です。果たして臨調答申が述べているこの恒常的な自己革新、組織の自律機能の強化、これが図られて、それが組織簡素化効率化という行革の本来的課題を実現できるのかどうか。公務員が現在やっている仕事、これ自体の必要度というものを役人自身が再吟味して、仕事そのものを減らしていく、こういうことが役人自体としてできるのだろうかということが大変心配です。  そこでお伺いをしていくのですが、この人員や予算の節減を実現し得るという保証ができるのかどうかという点が問題なんです。この点について総理の確信と、それから具体的根拠を私はお伺いしておきたいと思っているわけですが、いかがでしょう。
  193. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 人員等につきましては、先ほども申し述べましたように、削減計画を着実に実行していく、これによって処理していく考えでございます。  それから、今回、国家行政組織法改正をお願いしておる政令委任の問題でございますが、これについては、すでにたびたび申し上げておりまするように、局の数は百二十八、これ以上に絶対にふやさない、これは法律でそう規定されておるわけですから、上限抑制でございます。上限が規制されておるわけでございます。それと同時にまた、今回の法律案について衆議院からいろいろな、二点にわたる修正をいただいておるわけでございまして、部局の設置、廃止等につきましてはその次の国会報告をせよ、さらにまた、五年後は百二十八の総数並びに部局の再編状況について総点検をする、総点検をして必要な措置をとるということが規定されておるわけでございますから、それにまた、附帯決議が付せられておりますから、そうした趣旨から言いまして、百二十八というのは、総数の上限を決めて、これ以上肥大化させていかぬということと、同時に、できるだけそれは減らすように努力しなさいよという意味も含まれておるわけでございます。    〔理事長田裕二君退席、委員長着席〕 私どもはその法律、修正を含めた法律趣旨、附帯決議の趣旨、それを十分踏まえて、この目的を達成するように政府としては努力していかなければならない責任を負わされている、こういうふうに理解いたしておりますから、私は間違いなく期待に沿い得るようになると確信をいたしております。
  194. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 この点について総理の御見解もお伺いしておきたいのですが。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人員の実質的削減につきましては、私も非常に強い関心を持って、できるだけ努力してまいりたいと思います。齋藤行管長官がおっしゃったとおりでございますが、今後とも総理として行管庁とよく話し合いをいたしまして、相ともに協力して進めるようにいたしたいと思っています。
  196. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 次に、許認可制度の整理の問題について質問をしておきたいのです。  許認可制度は、それは国民の生命財産の保全、公益などの見地から国が国民生活、社会経済活動に介入し、これを規制する制度、そして行政が果たすべき重要なこれは役割りだ、こういうように思います。したがって、これは全部をすべて許認可というものが悪いのだというような考えにはもちろん私どもは立ちません。  ところが、最近この許認可の問題について、時代おくれの許認可が相当残っているのではないか、それが民間活力の発揮を阻害して国際的摩擦の一因ともなっている、あるいは国民に繁雑な手数と過大な負担を強いている、あるいは一部の者の既得権益の擁護に偏したり、政、官、財癒着の一因ともなっているというような、さまざまな批判が続出していることは御承知のところと思います。社会経済情勢の発展等に伴う行政需要の変化に対応してこれを整理していく、可能な限り整理していくということは当然のことであるし、それがいま強く国民の間から出ている声ではないかと思うのです。これはもう政府も十分御承知のところであります。  ところが、今回の提案を見ますと、約一万件に及ぶ許可、認可事項、このうち整理の対象になっているのはわずか三十九件、それは臨調が提示した当面の目標である七十二件の改善項目にはるかに及ばないものであるということは、これはもう提案者も十分に御承知だと思うのです。しかし、このようなことを続けておると、いつまでたっても本格的な許認可の整理というものが進んでいかないように思うのです。  それで、臨調の瀬島さんにも私は質問をしてみたのです。一万件もあるもののうち七十二件、それだけしか今度の場合には提起されなかったのはどうなんだろうかということでお伺いをしましたが、とにかく一万件もあるものを一々法律を全部精査する暇がなかった、したがって当面これだけのものを提起をしたんですよと、こういうことを言われておるわけです。確かに私は、この許認可というものを全部、主な法律だけで千五百本あるわけですから、その千五百本を精査するということは大変なことだと思います。だから臨調の作業も間に合わなかった。これはわかります。  ただ、それと同時に、私は許認可というものを整理していく上で非常に障害になっていることが一つあると思うのです。それは、行政需要の変化に対応しつつ絶えず許認可を見直しチェックしていく、それを立法や行政に反映させていくというシステムが存在していない。ここにこの問題の大きな障害があるし、ネックがあると思うのですね。臨調は、したがって、そういう意味も込めてでしょう、その最終答申におきましてチェックシステムの具体化の検討を提言しておるわけですね。先ほども申し上げましたように、許認可制度というものはほとんどが法律に基づいて定められているわけですから、関係法律の整備というものが当然許認可制度の整理についてはその前提となるわけでありますから。  そこで、これは具体的に提案をしておきたいと思うのです。千五百本もある法律、しかも臨調が二年間かけて間に合わなかった、こういう事情等にかんがみまして、国会にこの許認可等に関する法律の整備、そういうものについての検討委員会というようなものを設けて法律の見直し、そして改革措置、そういうものについてやっていくべきではないか、こういうように思っているわけでありますが、とにかくこの問題はかなり重要な問題でありますし、そうして膨大なものでありますから、盛んに言われておる民間の活力の導入という当面の課題にも即応していかなきゃならぬ、こういう側面も持っているわけでありますから、この点について御意見をお伺いしておきたいと思います。
  197. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 一万件あると言われておりますが、どうも許可が、一万件一万件と言われるのですが、それが全部悪であるかのごとく伝わる向きもありますが、これはやっぱり国民の生命、身体を守るために必要なものがたくさんあるわけでございますから、その点十分御理解をいただいているようでございまして、その点はありがたいと思います。  ところで、今度提案申し上げておる法律は、臨調指摘しておりまする法律事項のうちの約半分程度を御提案申し上げておるわけでございますが、これで私どもも十分だとは考えておりません。今後ともやはり許認可の問題についてはもう少し整理合理化を図っていくという必要がある、かように考えております。  さらにまた、臨調答申に述べられておりまするチェック機能をどうするかという問題もございまして、これは法令、法律とかあるいは政令等を審査される法制局等の御協力もいただかなければなりませんので、新しくふえる問題については相当チェック機能を考えていく必要があるであろう、かように考えております。それから役所においてもできるだけ、臨調答申にこだわらずに、もっと整理合理化に努力をしていきたいと考えております。  そこで、国会内にそういうふうな委員会をつくったらどうかという御意見でございますが、これは国会内の問題でございますから、各党で十分お話し合いの上結論を出していただくべき問題ではないだろうかというふうに考えております。政府政府なりに今後とも努力をいたしていきたい、かように考えております。
  198. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 最後に、総理、この行革はまさに国民的課題であり、国民がかなり期待をし注目をしているわけです。ところが、きのうでしたかきょうでしたか、NHKの世論調査をテレビで私見ましたけれども、この国民の期待感に反して、いまの行革の進め方、これは地方の行革も含めてだと思うのですが、非常に不満を感じておる人が多いわけですね。待望の期待感が大きいから、よけいその不満があると思う。したがって、この行革につきましては、先ほど総理が言われましたようなタイムスケジュール、さらにその中に具体的なものを加えながら不退転の決意でこれはやっていただきたい、こういうことを思うのですが、最後に総理の御所見をお伺いして終わります。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民の皆様方に対するわれわれの御説明不足の点も多々あると思います。今後ともよく御理解をいただきまして、また各党各派の御鞭撻をいただきまして、強固な意思を持ってあくまで貫徹していく所存でございます。     ─────────────
  200. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ここで委員異動について御報告いたします。  本日、宮澤弘君が委員辞任され、その補欠として曽根田郁夫君が選任されました。     ─────────────
  201. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に青木茂君。
  202. 青木茂

    青木茂君 大変くどいようですけれども、もう一度御確認を申し上げます。  増税なき財政再建、その理念はあくまで堅持なさいますね。
  203. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 増税なき財政再建、これは臨調からお示しいただいた理念として堅持してまいります。
  204. 青木茂

    青木茂君 今度の政府税調の五十九年税制のあり方の中にもし各物品税の増税案、それがぼんぼん出てきた場合は突っ返されますか、増税なき財政再建の理念の中において。
  205. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 中期的に見てこのような問題点があるという御指摘はいただいておりますが、まあぼんぼん出てくるというのも、やはりそれは予見のうちに入ると思いますので、出ないと思いますが、申し上げるのは税調に対してはいささか非礼かなと思います。
  206. 青木茂

    青木茂君 全部予見、予見で逃げられてしまって。しかし、税調を何かにしきの御旗なのか隠れみのなのかよくわかりませんけれども、予見とおっしゃいますけれども、過去の政府と税調の関係を見てみまして、果たしてそれほど税調の答申政府が尊重なさったかどうかということにつきましては、大変私は疑問を持っておるわけでございます。極端に申しますと、政府の過去の税制政策というものは税調の無視の歴史であり、同時に税調自体が政府政策へ追随した歴史だというふうなことが過去の事実にはっきり出ておるわけなんですよ。政府はいままでかなり予見を持って税調というものを実はお考えになっていたのじゃないかと思うわけでございます。  一例を挙げますと、たとえば昭和四十八年度のみなし法人課税のときに税調はこれは適当でないからやめなさい、やめなさいと言ったわけです。ところが政府の方は、これは完全に無視して事業主報酬制度をおつくりになりましたね。あるいは昭和五十年度、医師特例、悪名高き医師優遇税制、それに対して税調は何回となくこれの是正を要望している。これに対して政府は常に見送りであった。実現したのは何と昭和五十四年度であった。あるいは昭和五十七年度の農地の宅地並み課税のときに、税調はすでに五十五年度答申で強化の方向を打ち出していた。ところが税調自身は、五十七年度答申では非常にトーンダウンしているのです。これは税調が政府の政策に屈服した、追認した歴史を物語っているわけなんです。あるいは五十八年度、税調は準備金であるとか特別償却であるとか、そういう企業関係の特別措置につきまして見直しを行うべきだというふうに答申しています。これに対して政府の方は設備投資促進税制ですか、それを創設なさいました。税調はそこでも無視されております。  時間的に申し上げましても、昭和四十三年から四十六年度までは政府税調の答申が出た日と自民党税調の出た日はずばり同じです。同じ日に出ているのですよ。ところが、昭和四十七年から五十七年までは自民党の税調の方が先に出ているのですよ。そして政府税調がほぼ同じ内容を次の日に出しているのですよ。五十八年度は同日ですけれどもね。こういう歴史的な事実から見まして、一体政府の方が政府税調をそこまで予見しちゃいかぬ予見しちゃいかぬとおっしゃるけれども、事実これはかなり過去の歴史の中において予見があったというふうに言わざるを得ない。今回だけなんですよ、政府税調の答申が出るまで、出るまでとおっしゃっているのは。だから私は、これは隠れみのじゃないかというふうに言わざるを得ないのですよ。ここのところはいかがでございましょうか。
  207. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かにいま歴史的にお述べになりました事実、後ほど申し述べますが、肯定する事実もございます。税調は内閣総理大臣の諮問を受けて税制に関する基本的事項を調査審議することを目的として設置されているものでございますので、税制全般について幅広く審議の上、答申をお取りまとめをいただいて、それを政府が踏まえまして毎年度の税制改正作業を進めてきております。したがって、やっぱり諮問の仕方を見ましても、言ってみれば「国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」という形で、一般的な形で諮問を行っておるわけです。これが予断を与えることのないようという一つの諮問の言葉からして、それを意図してそうした形の諮問を申し上げておるわけであります。  それで、今日までいま御指摘になりましたみなし法人、医師、宅地並み、これは地方税でございますけれども、準備金の問題等々御指摘がありました。その御指摘を現実の中に調和してどのようにして実現するかということが、その都度最大限の努力をしながら歩んできた調和の歴史じゃないかと私は思っております。確かに、私ども遅きに失したという感じを持ったことも率直に言ってございます。  そこで、この予見ということは避けるようにしておりますが、われわれの考え方なり今日のいわゆる諮問に申し上げておりますように、まさに財政上ということ、「国民経済の健全な発展を目途」としてということを前提に諮問申し上げておるわけでございますから、言ってみればそれらに基づく資料の提出、あるいはきょうもこうして御議論いたしておりますそういう論議の経過、そういうものを正確にお伝えする、これまた神様でないですから、予見を全く与えたことになるかならぬかという疑問点はあろうかと思いますが、われわれで見れば、そういう御参考にしていただくための資料を正確にお届けするという立場をとっております。  そこで、いまもう一つおっしゃいました四十三年からずばり同日、それから党税調が先、五十八年は同日、こういうことでございますが、私どもも自民党内にも税制調査会が存在しておりますが、これは議院内閣制のもとで政府として与党の意見をできる限り吸収するという意味では、これはあるべき姿でございましょうし、同調査会の審議には私ども政府も出席いたして政府側の意見等を伝えたり、税調の審議過程もお伝えしたりと、こういうことをやっております。で、ときどき過去にも例があるように、後追い税調じゃないかとか、いろんなことを言われたこともございます。それに対して税調の議論の中でもそのような議論も懇談等でなされたこともございますので、特に五十八年度税制は所得税減税の声は高かったがこれは見送ろう、五十九年度以降に考えなさい、こう言われたのを、国会の与野党の合意で五十九年もう一遍審議してくださいと。  私、一番気を使いましたのは、そのときに一事不再議じゃないか、仮にそういう議論が出たらどうしよう。それこそ緊張に緊張を軍ねまして私もお願いしました。そうしたら、われわれも一応は五十九年度にはということを言っておったのだから、それを早めてやってやろうと、本当にほっとした。だから隠れみのというよりも、まさに経済界、労働界、学界、消費者代表等々でおやりになっておる権威ある機関でございますから、われわれとしては最大限結果を尊重するはもとよりでございますが、それに対する対応の仕方というものも絶えず緊張に緊張を重ねて対応申し上げるというのが私の考え方であります。
  208. 青木茂

    青木茂君 それにしても昭和四十三年から昭和五十八年まで党の税調の政策発表の内容と、それから政府税調の答申内容、ほぼ同じものがもう同日だとか一日しかずれずに、党の方が早いですからね、これは連係プレーがきつ過ぎるというのか、内部でもうすでに話し合いがどんどん進んでいるとしか見れないわけなんですよ。もしそうだとしたら、五十九年の政府税調の答申内容も、すでに大蔵大臣少なくともおわかりじゃないかと思うのですよ。おわかりだったらちょっとおっしゃっていただきたいのですけれども、おわかりじゃございませんでしょうか。
  209. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 重ねて申し上げるようでございますが、議院内閣制のもとで政府として与党の意見をできる限り尊重するということは、これは一つの事実であろうと思います。各党におかれても、いずれ政権をおとりになるという立場からそれぞれ税制調査会をおやりになっておるわけでございますから、これはそうでございますが、従来から大事なことは、特定の立場に偏ることなく審議が行われて必要な建議をいただいておるという立場を政府税調にはおとりいただくような形で、精神でわれわれは対応しております。したがって、おまえ大体五十九年度税制の方向というのがおのずからわからぬかと、こう言われましても、国会議論等を通じて一問一答しておる間にある種のニュアンスは出たといたしましても、それをいま申し上げることはそれこそ慎むべきことだというふうに考えております。
  210. 青木茂

    青木茂君 そうすると、大体はおわかりだけれどもちょっと言えない、こういうことでございますね。お立場としてはそうでしょう。  そこで、これは総理にお伺いしたいのですけれども、増税はやらぬ、でこぼこ調整はやむを得ないのじゃないかということでございますけれども、でこぼこ調整、何がでこで何がぼこだかよくわからないのですけれども、どことどこをどう調整するということは総理の御胸中にはおありでございますか。
  211. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは具体的にどこがでこでどこがぼこかといいますと、これは各党のいわゆる税制に対するお考え方を読んでみますと、各党ごとにそれなりのニュアンスが出たでこがありぼこがあるわけです。それらを総合的に政府税調でクリアしていただいて、それで具体的には判断することでございますので、一般的によく言われる不公平税制を是正しなさい、これはでこであるかもしれません。だが、それはまた人によって不公平たるものの基準がどうしても税制の問題は自己中心になりがちでございまして、その辺むずかしいところはございますが、それをクリアしていただいた税調の答申をいただいて、政府としてそれを最大限尊重してやっていく。  だから、具体的にでことぼこを示せと言われましてもそれは現実問題なかなかむずかしい。だから、各党の税制に対する考え方を読めばその党なりのでことぼこというものはおのずから判断資料にはなりますけれども、いまの場合これがでこでこれがぼこだということは全くでこぼこして言いにくい問題であると思います。
  212. 青木茂

    青木茂君 だんだん永田町式問答になってくるものだからわからないのですけれども、われわれの方には小会派で時間が少ないものですから問題を変えます。  またこれも大変くどく辛くなりまして恐縮でございますけれども、私は、本会議におきましても、またこの委員会におきましても、いま国民が一番要望しているのは税における不公平感の解消である、その不公平感のしわを一番ひどくかぶっているのは給与生活者、すなわちサラリーマンである、だから税制改正というものはサラリーマン固有の控除であるところの給与所得控除というものを中心にやっていただきたい、こういうふうにお願い申し上げましたね。これに対しまして、原則的には御賛成をいただいたと私は存じております。速記録にもそのように載っておるのじゃないかと思います。  もう一つ、そこで申し上げますけれども、もし今度の政府税調の五十九年の答申において給与所得控除に対しましてきわめて冷淡な答申が出たとした場合、これは修正をさせていただけるのかどうか。政府としてそれを乗り越えて給与所得控除の拡大というところへ持っていっていただけるのかどうか。この点をもう一つお伺いをしたいと思うわけでございます。
  213. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる所得控除の問題についての中期的な考え方というのは税調にも載っております。なかんずく中堅層の方に配慮しなさいよ、こういう趣旨でございます。これから御審議いただくわけでございますけれども、きわめて冷淡という表現、私は、権威ある方々のお集まりでございますから冷淡というような答えが出てくるとは思いませんけれども、とる人によってそれは冷淡だと言われる分まで否定するわけにはいかぬだろう。しかし、これとてやはりこれ以上予見めいたものを申し上げるわけにはいかぬと思います。
  214. 青木茂

    青木茂君 予見問答ですね。中堅所得者の減税方式と給与所得控除を中心とする減税方式というものは意味が違うのです。ですから、本会議におきまして総理から御答弁をいただきましたように、中堅所得者を非常に広く解しまして家庭持ちサラリーマンであるというふうにお考えいただけますならば、給与所得控除の拡大によるところの減税方式というものは、それで私は中堅所得者減税につながると思います。  思いますけれども、本来ならば中堅所得者の減税方式というのは税率の刻みを緩やかにするとか、あるいは総理自身御指摘になりました教育費に悩む家庭、だから教育費控除をつくるとか、あるいは住居費に悩む家庭、家賃控除、住宅ローン控除をつくるとか、そういうところに、本来ならば中堅所得者減税にしぼるならば、むしろその方がはっきりしているわけなんですね。ですから、給与所得控除の拡大によるところの減税というのは、実は全サラリーマンに対して中堅所得者を含めまして影響が大きいわけですから、むしろ私どもとしてはそちらを考えていただきたいのですけれども、とにかく給与所得控除拡大イコール中堅所得者減税ということにおいては、中堅所得者というものを幅広く解釈しなければいけないと思うわけです。その点これはもうよろしゅうございますね。
  215. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはいわゆる「中堅所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ」とか、「多人数世帯の負担軽減に重点的に配慮する」というふうに述べられております。そこで、中堅所得者層あるいは多人数世帯といった表現の持つ意味ということになりますと、常識の線に沿って考えられるべきものでございますので、具体的な内容あるいは定義ということになるとなかなかむずかしい点がございますが、今後この税制改正に対する税調の審議の過程でその言葉も徐々に整理されていくのじゃないかというふうに期待をいたしております。
  216. 青木茂

    青木茂君 時間が来てしまいましたからこれ以上のことは申し上げませんけれども、ひとつここでお願いだけ申し上げておきます。  たとえば、明治の末から大正の初めにかけまして、ちょうど日露戦争が終わりまして外債をどうやって返すかというような問題が出たときに、そのとき当時の税法審査会は、まあいまの税調でしょうね。明治三十九年五月十七日から三十九年十二月二十二日までわずかな間に何と五十四回会議を開いた。その間にこういうような考え方が述べられている。不労所得については全く甘くすることはないから全額課税してしまえ、営業所得については一五%ぐらいまけてやって課税してやれ、給与所得については三〇%ぐらいまけてやって課税してやれという答申がすでにわれわれの先輩たちから出ている。そういうものの考え方というものを踏まえて税制を今後お考えを願いたいというお願い、これが一つ。  それから、もう一つのお願いは、三つの増税論だけを避けていただきたい。一つは第二臨調、土光さんの問題ですね。土光さんほどりっぱな方があれだけのメンバーをそろえておやりになったのだけれども行政改革というものはなかなかうまくいかないのです。うまくいかないからしようがない、さあ増税だ、このさあ増税論をひとつ抑えていただきたい。第二はいまの税制調査会ですね。あれだけのりっぱな人物がやはり増税なきゃできないと言っているのだから、さあ増税だ、このさあ増税論ですね。第三は、中曽根総理行政改革、努力をしたと、努力をしたけれども財政再建というものに間に合わなかった、間に合わなかったから間に合うまでさあ増税だと。この三つのさあ増税論ですね。これだけはひとつ私もう一回くどくも辛くも御留意を願いたいということだけお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  217. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に田英夫君。
  218. 田英夫

    田英夫君 ちょうど折から中国の胡耀邦総書記が来日をされて、中曽根総理と数回にわたって会談をされ、きょうもお話し合いがあったようでありますが、そのお話し合いの中でさまざまのことを話されたと思いますが、われわれ日本の最も近い隣国である朝鮮半島の問題についてどのようなことを胡耀邦総書記が言われ、またそれに中曽根総理がどのような対応をされたか、このことをお聞かせいただきたいと思います。
  219. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私から、わが国は朝鮮半島の永続的平和を望んでおりますと。もちろん、朝鮮半島の統一の問題は南北おのおのの国々の直接の話し合いで自主的に平和的に行わるべきものであると思うけれども、しかし半島の永続的平和ということは周辺国家もみんな重大関心を持っておることであって、そういう意味において朝鮮半島の永続的平和、緊張の緩和を望む、そういうことをまず申し上げました。その点については胡耀邦総書記も同じ考えで、朝鮮半島の永続的平和を望みます、そのために政治的に関係国が協力し合うということは結構なことである、そういう話がございました。  それで、私からは、韓国と日本は非常に友好親善の関係にあります、日本はまたアメリカとも非常に友好親善の関係にありますと。そういう関係等も通じて、朝鮮半島の永続的平和というものについて、ある意味における政治的な影響力を持つことができると思う。あなたの国は北朝鮮とまた特殊の友好協力関係にあるようです、したがいまして、あなたの国はあなたの国としてまたそういう影響力を及ぼすことができると思う、日本と中国がそういう共通の意思を持ってできる限りの協力をし合っていくということがまた朝鮮半島の永続的平和に役立つものであるだろうと思うと。しかし、あくまでこれは南と北が自主的に平和的に話し合いをすべきことが第一義である、そういうことを申し上げました。  それから、韓国と中国との関係について、韓国側は中国との関係改善を望んでおる。特に、中国におる韓国人、そういう残留者といいますか、ともかく滞在、存在する人たちと親戚とを会わせるという問題がある。そういう問題もありまして中国との関係改善を望んでおる。われわれの方に、そういう韓国側の考えを機会があれば伝えてほしいという要望があるからここでお伝えいたしましょう、そういうようなことも申し上げた次第であります。
  220. 田英夫

    田英夫君 私も、実は十月に中国をお訪ねしたときに胡耀邦総書記と会談をする機会がありまして、かなり詳しく朝鮮問題についての中国側の考え方を聞きまして、いま総理が言われたニュアンスと同じなんでありますが、特に私が注目したいと思いましたのは、中国が朝鮮の問題について三つの基本的な考えを持っている。一つは、南北の連邦国家というものを支持する、これは表現がそのとおり連邦国家を支持するという表現でありまして、かねて北朝鮮の金日成主席が提唱されていたものそのものなのかどうかというような点についてはわかりませんけれども、それが一つです。もう一つは、北は南進をする意図もないし能力もない。このことを金日成主席が胡耀邦総書記に直接話していた、自分もそう思うと。三番目は、南が北進をした場合には、中国はこれに手をこまねいているわけにはいかない。  こういう三つを言いまして、この考え方は鄧小平氏から、この九月に中国を訪ねましたワインバーガー国防長官にも話をした。ワインバーガー国防長官はそれをレーガン大統領に伝えますと言って帰っていったと、こういう話がありまして、同時に、どうもアメリカの指導者は北朝鮮のことについて詳しくないのじゃないか、同時にまた南、つまり韓国の指導者の言うことにごまかされているのじゃないかと私は思っています、こういうことを率直に胡耀邦さんは言っていたわけであります。  こういうことの中で、いま総理が言われたと同じように、最終的に、現在のような朝鮮半島の緊張状態は好ましくない、下手をすれば相当なことが起こるという懸念がある。そこで中国は、日本、アメリカ、中国、こうした三つの国がこの問題の解決のために条理にかなった解決を求めて力を合わせるべきではないかと思っている、こういう話をされたのでありますが、いまの総理のお答えとあわせて考えますと、中国の考え方は大体よくわかるわけでありまして、そういう中で、特に北は柄進の意図も能力もないという胡耀邦総書記の発言について、総理はどのようにお考えになりますか。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も会談の席でいまの三つのことは中国側の考えとして聞きました。それは中国側の考えとして私は理解をしたところであります。  南進につきまして、北朝鮮がその能力ありや意思ありやということは、私にはわかりません。また、韓国側が北進する意図はありやなしやという問題は、私はないと思っております。これは韓国の皆さんに直接会って話しているわけですから、自分で実証してそういう話を現認しているわけですが、金日成氏に会ったことはないし、直接聞いたことはないから、間接の話というのはそうにわかに信用するわけにはまいりません。そういうこととしてお聞きをしてきたと、そういうことであります。
  222. 田英夫

    田英夫君 そこで、いまの胡耀邦総書記の発言の最後の部分で、日、米、中が力を合わせて朝鮮半島の緊張緩和のために役立ったらどうだろうかと思っている、こういう発言がありまして、そのことがアメリカの方では、非常にワインバーガー国防長官もそのことをアメリカで述べたようでありますし、私も北京でこのことを話しましたので、それがはね返ってワシントンポストあたりはかなり大きく日米、中、特に米中で話し合いか、というような見出しで書いております。  そこで、中曽根総理のお考えをここで聞かしていただきたいのですが、こうした中国の最高指導者の考え方、つまりわれわれにとっても朝鮮半島の緊張緩和は、あのラングーン事件というまことに残念な、しかも許されない事態が起こったわけでありますから、ますますその緊張は最近激化していると、こういう状況の中で、すでに中曽根総理とレーガン大統領は朝鮮半島の問題を話されたと聞いていますし、またいまお答えのように中国とも直接話をされた。そういう意味で、中曽根総理を一つの接点にして日、米、中がすでにこの問題についての話はされているわけでありますけれども、これをもう一歩進めて胡耀邦総書記が言われるように、日、米、中が朝鮮半島の問題について共同の場で三者の話をするというようなことがあり得るのかどうか。そうしたことを、接点に立たれた中曽根総理としてお考えになる可能性があるかどうか、希望を込めてお伺いをしたいと思います。
  223. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの環境は残念ながら非常に悪化してしまったのです。それは、ラングーン事件で北鮮政府の工作員がビルマという他国へ行ってその主権を侵して、そしてほかの国の重要な要路の人々を爆弾で死傷さした。そういう未曾有の事件が起きたために、韓国の方の激憤というものは、われわれが想像しても余りあるぐらいあると思っております。それを抑えているわけです。これはアメリカも韓国によく話をして自重してほしい、日本もそういうわれわれの考え方はお伝えしておるわけです。しかし、韓国の内部の感情を考えると煮えくり返るようなものがあるだろうと思うのです。そういう状況を見ますと、いまのような考え方というものはにわかにできるとは思っておりません。  しかし私は、昔、周恩来首相が生きているときに周恩来首相に、両独方式みたいに、東独と西独みたいに交錯承認して国連に入るという考えは私は合理的だと思うのだが、あなたはどう思いますかとそう言ったら、周恩来首相は、金日成首相が賛成しないでしょうと、そう一言言った。周恩来首相がどうかということは言わないで、金日成首相が賛成しないでしょうと言った。それは恐らくそのころから、いまあなたがおっしゃったような連邦国家構想というものが北側には厳としてあるので、それが高麗連邦であるか、あるいは民主的連邦国家、人民民主連邦国家という名前になるのかそれはよくわかりませんが、ともかくそういう発想があって、その北鮮側の発想については中国側も敬意を表しておると。そういうところからよう踏み切れぬところがあるのだろうと私は想像しておりました、周恩来首相との対談の中で。  今回どういうものかなと思いましたが、大体似たような北朝鮮側の考え方を支持しているやに見られておるので、いわんやラングーン事件という問題が起きておりますから、これはなかなかむずかしい。しかし、韓国と中国との間は、アジアオリンピックがありますから、スポーツの選手が出入りするとか、あるいは今度オリンピック自体が韓国でございますから、その場合にどうなるであろうかとか、文化とかあるいはスポーツ等の交流を通じて次第次第に善隣関係が出てくればそれは間接的に機連を醸成するということになると思います。  今日、国際社会で緊張緩和して安定的な関係を確立するには、信頼醸成措置というものが非常に要る。私は、今回、胡耀邦総書記との会談で、中国が言っておる平和友好、互恵平等、それから長期安定に別互信頼というのを入れたらどうですか、そう申し上げたら、非常にこれは喜んで早速取り入れて三番目に入れましょうと。長期安定の前に相互信頼があって、それから長期安定になるのだ。きょうも昼食事しましたときに、そういうことをおっしゃっておりました。  そういうことで、信頼醸成措置というものは、やはりこれからの外交戦略上も非常に重要なことなので、そういうことが次第次第に展開されるような素地をつくり、また政策を実行していくということが大事ではないかと考えております。
  224. 田英夫

    田英夫君 この問題を短い時間の中でいろいろ討議することは困難でありますけれども、いずれにしてもわれわれの日本の位置している場所や歴史から考えて、中国はもちろんでありますが、朝鮮半島の平和、緊張の緩和ということはむしろわれわれの責任でもある。過去の不幸な日本の責任を反省するときにますますこのことは大切だと思いますので、今後もあらゆる機会を通じて緊張緩和のために日本政府が努力をしていただきたい。  しかも、先日のレーガン大統領の訪日後の訪韓のときのレーガン大統領の行動、発言、態度というものは、中国も指摘しているとおり、残念ながら緊張緩和の方向ではなくて緊張激化に力をかしたというふうに私なども思わざるを得ない。わざわざ三十八度線という南北対立の場所に、アメリカの大統領があそこにいる米軍を激励するためとはいいながら、なぜあそこに立つ必要があるのかということは、世界のリーダーとしてやるべきことでないと私は言わざるを得ないと思いますし、そうしたアメリカの態度をたしなめることができるのは日本である、そうしたことをぜひお考えをいただきたいということを申し上げて、残念ながらこの問題はここまでにいたします。  次は、どうやらあさって二十八日月曜日には衆議院解散ということになるようでありますが、ここで一つ、もう長年国会国会議員として活動してこられた中曽根総理には昔からこの議論についてはよく御存じのことと思いますが、総理大臣の解散権という問題、これは過去に、特に昭和二十年代に激論が闘わされてきたにもかかわらず、いまだに結論が出ないばかりか、政界はもちろん学界の中でも憲法学者の間でも意見が真っ二つに分かれたままになっている。しかし同時に、最近の今日に至る経過の中でジャーナリズムの報道などでは、総理大臣にいわば伝家の宝刀が与えられているかのごとく書かれているものが非常に多いのでありますが、そうした伝家の宝刀が与えられているかどうかさえ実は反対をする学説もあるわけでありまして、私は全くないとは言いませんけれども、今回のこのあさってに至る事態の解散というものは中曽根総理は七条解散とお考えになるのか、六十九条解散とおとりになるのか、そのいずれかをお答えいただきたいと思います。
  225. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 解散があるかどうかは全くわかりません。そういうお話をここで初めて承ったので、そんなことが問題になっているのかと初めて知った次第であります。私が関心を持っているのは解散の問題じゃなくて、全法案が正常下で成立するということが私の最大関心事なのであります。  一般論として、解散の問題については七条とたしか六十九条でございましたか、苫米地訴訟がありました。あれはマッカーサーの占領下われわれは当時野党で自由党を攻撃しておりましたが、七条けしからぬという議論もあり、GHQの国会課長のウィリアムズ博士等が多少あのころは野党に肩を持って、それで強引に解散という形に持っていって、六十九条という形でみんなが決議をして解散をする、そういう産婆役をやったことが占領下あったのです。それからそういうものが根づいてきた。しかし、その後は七条解散で凛然とやる、だらだらでれでれやらないと、そういうことがわりあいに実際問題としては定着してきたと思うのです。私は七条解散の解釈論が正しいと思っておりますが、それを今回使うか使わないかということは、私にすれば全法案が成立するかどうかということに関心を持っておるということであります。
  226. 田英夫

    田英夫君 また余りその全法案のことを言われると問題が起きるといけませんのでその点はつきませんけれども、解散権の問題についてはいまはしなくも、七条解散が正しいというか、七条解散を支持するようなお考えが述べられたのでありますけれども、昭和二十七年六月に、これも中曽根さんはよく御存じのとおりの経緯がありまして、いまおっしゃったGHQが乗り出した二十三年の事態、これは当時は民主党は野党で、中曽根さんもその中で七条解散反対を主張された党の中のお一人だったのじゃないかと思いますが、そういう中で今度は二十七年には逆転して自由党が七条解散反対を言われるというような混乱があった。その直前ですね、二十七年の六月に両院法規委員会で一つの見解、これは勧告という形で出ていた。これはもう御記憶だと思いますので内容は言いませんけれども、要するに、本来議会制民主主義の常識からいって六十九条というものが解散のあるべき姿だけれども、七条解散というものもどうしても民主主義を守るという事態の中で起こり得ることであるけれども、これをつまり内閣の恣意によって乱用してはならないという、そういう意味のことがあったと思います。  また、亡くなられた保利元衆議院議長が、亡くなる直前に解散権の問題について、内閣の恣意によって解散権を乱用してはならないという意見を文書にまとめておられたものが亡なられた後出てきたという、そういう報道も承知をしているわけでありまして、残念ながら時間がなくなってしまったのでありますけれども、この問題は、議会制民主主義の基本に触れてくる問題でありますし、日本国憲法の解釈の非常に重要な問題として残された問題であります。  また、日本の憲法によると、議院内閣制という制度になっているという、そういう中での問題でありますから、なおさら重要な問題で、明治憲法の解釈と現在の憲法の解釈との間の、つまり天皇制、天皇の権限の国事行為の解釈の問題にも触れてくるというところで、いつまでもいまのような形で両学説が分かれていて、その中で中曽根さんは七条、つまり自分は伝家の宝刀を持っているのだというふうにおっしゃりたい気持ちはよくわかりますが、それに真っ向から反対する学説も存在することはこれまた事実でありまして、そういう中でいつまでも放置さるべき問題ではない、こう思います。  このことは、ぜひひとつ、われわれも今後とも議論をすべきであると思いますけれども総理大臣のお立場にある中曽根さんが自分には伝家の宝刀があるのだということだけで行動をされては困る、このことを申し上げて、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法上の政府の行為については疑義を残しておいてはいかぬと思いますので、あえてお答えいたしますが、政府は法制局等ともよく検討いたしまして、七条による解散は可能である。もちろん六十九条による解散も可能ですけれども政府は七条による解散権な持っておる。そのように考えて、大体実践的にはすでにこれは解決しておる、そう思っております。
  228. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に、佐藤三吾君。
  229. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 大変お疲れだと思うのですが、私がきょうの最後の質問ですから、ひとつ目が仲よしになっておる方は開いていただきたいと思います。  そこで、まず、先ほどわが党の久保田真苗委員が質問をしました国立大学の共通一次試験問題について、私から一問だけ追加さしていただきたいと思うのです。  科目数と並んで問題点とされてきた点は実際の試験実施日の件でありますが、六十年度は一日二十六日、二十七日の両日とする、こういう案が具体化しております。ところが、この案が果たして最良のものかどうか、いろいろな意見があるようであります。国立大学協会の方で全国高校長会の代表を呼んで意見を求めたところ、高校側は国大協案は改悪であると答えたそうであります。一方、受験生の立場からは高校長会とは違った意見も強いと言われております。  そこで、私の提案は、来年の一月、共通一次の試験当日に受験生に直接アンケート調査をしてみないかということでありますが、今月の十一日、読売新聞で受験生の投書がありましたので、一言だけ提案して、お答えいただきたいと思います。
  230. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 共通一次試験をいつやるか。現在は御承知のとおり一月中旬にやっておりますが、これでは高校三年の三学期の授業がほとんど行われない状況になる。それで、もう少し繰り下げたらどうか。一月下旬がいいとか二月中旬がいいとか、いろいろあります。そうすると、また一面においては雪の降るときは困るのだと。いろいろな意見が出ておる中で、先ほどお答えをいたしましたように、国大協あるいは入試センターといろいろ協議し、高等学校校長会の意見も聞きながら、先ほど申し上げましたように二月下旬にしようか、こういう方向でいま進んでおります。  一々受験生の――今度の改革は、これはお触れになっておりませんけれども、いわゆる科目の問題等についても検討を進めておりますが、受験生の立場を十分考えなきゃいかぬという、学校や先生だけの頭じゃだめだという考えから受験生の立場を考えながらやろうということで進めておるわけでございますが、これは一々アンケートをとるといってもなかなか正確なものは私できないと思いますので、いまそういう考えはございません。
  231. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 一つの提案ですから、今後ひとつ検討しておいてもらいたいと思います。  そこで、人事院総裁見えていますか。人事院総裁にお伺いしたいと思うのですが、例の給与法案に関連して人事院の態度を聞きたいと思うのですが、その前に総理、あなたは二十四年十二月二十一日、人事院勧告七千八百七十七円ベースの勧告があった際に、政府は財政難を理由にして実施をしない、そのことに対して、あなたはそのとき、野党の立場からかどうか知りませんが、こういう国会における質問をやっておるわけですね。ちょっと読み上げますよ。  「御存じのように国家公務員法が制定されたのは、これは国家公務員に対して労働運動上の重大な制限を加える。」、こういう前段で、「従って労働運動に制限が加えられた。その反面において保護を加えられなければならぬことは、理の当然であります。しかも三割近くの生計費の上昇を見るのでありますから、客観的に見ても、ベースの改訂は当然しかるべきでなければならない。それがこのような年末手当という涙金によって糊塗しようという態度は、私は国家公務員の権利義務に対する非常な侵害であると考えるのであります。」と。そうして、「国家公務員の生活を保護する緊迫な事態を、われわれは考えなければならぬと同時に、このような法秩序を無視する吉田独裁政府のやり方に対して、超党派的に国会の権威にかけて、われわれの権限は守らなければならないと考えるのであります。」、「人事院を軽視した考えをもってやられたのだろうと思う。こういう点、私は現内閣の態度をはなはだ遺憾とする。」と。  これはあなたが国会でやった、人事院勧告を無視する政府に対する怒りを込めた質問です。これはもうそっくり、いま中曽根総理、あなたが言われているようなそういうなにじゃないかと思うので、私はここまであなたがかつてやってきた経緯から考えれば、いまやろうとしておることについてはこれはどういうふうに受け取っていいのかわからない、こういうのが私の率直な感じでございますから、ぜひ反省をして、まだ間に合うわけです。まだ給与法は審議に入っていないわけですから、直ちにひとつ撤回して改善していただきたいということをまずひとつ申し上げておきたいと思います。  そこで、人事院に対して質問したいと思いますが、人勧は、昨年は凍結されました。今年度はわずか二%のアップでございます。しかも、かつてこの人事院勧告の歴史の中でもございますように、給料表にさわるというか、これをやりかえるとか、こういうことはなかったことでありまして、今回は全面的に政府が書きかえるという事態になっております。この点について私は、勧告制度そのものの根幹に触れる重大な問題である、こう思うのでございますが、人事院の総裁の見解を聞いておきたいと思います。
  232. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) お答えいたします。  この点については、ただいま先生がおっしゃいましたとおりの私も見解を持っております。去年はああいうことで凍結、いろんな事情がありましても凍結ということがございましたし、ことしは六・四七%という勧告をいたしましたのに対して二%ということで政府決定で法案が出ておるという状況でございまして、これは人事院の立場としては絶対承服できない大変遺憾千万なことだという立場はそのとおりでございます。特に俸給表自身は、これは人事院が昔からいろいろ専門的な立場から検討をいたして確信のあるものとして出しておるものでございまして、これを手直しをする、あるいはいろいろの立場からとは申せ手を加えるということは大変合理性に欠けるというふうに私たちは信じておりまして、その点では国会においてもひとつ慎重に御審議をいただきたいという心からの念願でございます。
  233. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 政府は、いま人事院の総裁がおっしゃったように、重大な問題であるこの勧告に対して、公務員の労働基本権を否定する。手足を縛っておって、代償措置を置いておるからいいんだと、こう言ってきたこれまでの政府の態度、この面から見ましても、その代償措置すら機能しないというような今回の一連の措置だ。このことは、返って言いますと、労働基本権の権利、憲法で保障された、いわゆる合法かどうかという問題に私はならざるを得ないのじゃないか、そういうふうに思うのです。全農林のいわゆる警職法事件ですか、この判決を見ますと、人事院総裁の従前の答弁の経緯に徴して考えると、いまの政府の措置、人勧に対する扱いは憲法問題にまで発展せざるを得ない、こういうことを私は思うのであります。違憲の疑いが濃厚である、こういうふうに考えるわけでございますけれども、人事院の総裁、もう一遍この問題についての御見解をいただきたいと思います。
  234. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) お答えをいたします。  いまのような状況が憲法問題あるいは憲法違反の問題に発展するかどうかというのは、これは私の立場において断定的に申し上げるわけにはまいりません、ただ、いま御指摘になりましたように、最高裁でもこれに関連して問題がございました。また、人勧制度自体の持つ意義から申しまして大変これは重要な問題を含んでおるというふうに私自身も受け取っておるわけでございまして、この取り扱い方いかんによっては、いつまで幾らぐらい削減措置が講ぜられあるいは凍結というような事態が続けばそういう事態になるかどうかということは私の口から申し上げるわけにまいりませんけれども、これが長く継続するというような事態になりますれば、当然やはり憲法問題にも展開しかねない重要な問題を含んでいるのではないかということははっきり申し上げてよかろうかと思います。
  235. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 いま人事院総裁がおっしゃったように、憲法問題にかかわる内容にあると私は思います。  これは、きょうは時間がございませんから、また後ほど内閣委員会の方で審議をされる状況にございますから、政府が猛省いただいて、この法案の扱いについてはひとつ慎重に対処していただく、そして、少なくとも中曽根総理が二十四年に堂々と主張したように、そういう独裁政権になってはいかぬと思うのです。これはそういう意味で、総理もひとつ昔を思い出して、そしてこの問題の処理をしていただきたい。私は、言いかえれば、この問題は人事院そのものを否定する、こう言ってもいいというふうに思っておるわけですから、そういう意味では重大な問題だと思いますので、ぜひひとつそこら辺は、後ほどまた給与法審議がございますから、その際にひとつ配意していただきたいということを強く求めておきたいと思います。  そこで、行政組織法の問題について若干お聞きしておきたいと思いますが、総理がよく、テレビでもそうでございますが、この国会の中でも再三言っておることで、私は気になって若干数字を調べてみたのです。  それは何かと言いますと、あなたは、総定員法ができて十六年間に純減で一万二千人職員が減っている、五十七年度は千四百三十四人だと、これは衆議院本会議で言っていますね。それから五十八年度は千六百九十五人だと、こういうことを盛んに、一つの成果という意味も込めてだろうと思うのですが、強調なさっておるわけです。今度、きょうのこの委員会の審議を見ましても、行政組織法でいわゆる法律から政令事項になるに当たって、百二十八の部局の定数をきちっと抑えておけばこのように心配はないのだと、こういう一つの強調をするのにこの数字を使っておるようですね、きのうもそういうことを言っておりましたが。  そこで、私が調べてみると、どうも一つ抜けておるのじゃないですかと言いたいのです。あなたが言う一万二千三百四十七というのは、この数字で見ますと、これは沖縄の復帰職員の政令定員を含めてないのですよね。それを含めると四千百四人の純減ですよ。これがまあ正確な答えなんです。あなたは、一万二千は減になっておる、こう言っておるのですけれどもね。  それが一つと、この実態を見ると、さっき伊藤さんとのやりとりを聞いておったのですが、純粋に減員になっておるのは第一次の定員削減の四十六年までですね。それ以後は増員になっておる、ふえておるわけです、各省庁定員が。ただ、五現業の職員が無差別にだんだんだんだんずうっと削減されておるものですから、総体として減というかっこうになっておる。いわゆる非現業の職員を見た場合にはそうなっていない。わずかに減が目立ち始めたのは第六次、五十七年からですね。こういうことをあなたは盛んにおっしゃって、言うなら自分のいい数字だけ拾い上げている。あたかもそうだと、こう思わせるように。だから今度は、行政組織法でも百二十八を抑えればそれで十分できるのだと、こういう印象を与えるかのような発言が少し多過ぎるのじゃないか、こういうような気がするのですが、いかがですか。
  236. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの中には沖縄の数は入っておりません。それは、沖縄が後から復帰してまいりまして、どうしても沖縄の行政を扱うについては人間が要るわけでございますから、それはそのまま認めてふやしてあるわけであります。沖縄の数まで中へ入れるということは、新たに付加された仕事があるわけでございますからそれは気の毒である、そういう意味で外してあるわけであります。
  237. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 気の毒で外したということでございますが、私が言いたいのは、きのう、きょうの答弁でもずっと出ておりますが、行政組織法で法律事項を政令事項に直していくとそこで歯どめがかからなくなるのじゃないか、こういう質問に対して、総定員法の例を引用して、決してそうでないのだ、こういう答弁を盛んに繰り返しておりますから調べてみたのですが、そういう意味では適当じゃない。国民の皆さんも、何か総理の話を聞くと、一万二千名が減員になったのじゃないか、こういうような錯覚に陥るのではないかと思うのです。これはやっぱり今後正確に国民の皆さんには、数字ですから、そしてこんなことは調べればすぐわかることです、そこで言いつくろっても。ですから、やはりひとつ、物を引用するのは結構ですけれども、何か国民の目をごまかすような引用の仕方は私はよくないのじゃないかと思いますから、そこら辺はひとつ申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、総理がこの問題で国民の皆さんから見ると問題があると思いますのは、調べてみますと、総定員法でぐっと抑えられた。そこで役人は何を考えたか。そこからいわゆる特殊法人、これが物すごく伸びておるわけです。できてきておるわけです。たとえば非現業職員を抑えた。抑えた結果特殊法人がどんどんふえ始めた。これが四十七、八年ごろから国会でも問題になって、そして国民の批判が強まってきたものですから、今度は特殊法人が百十四までいっていたのを、これをやっぱり統廃合で減らしていくというかっこうをとっておりますね。ところがそれと並行して、今度は認可法人が続々とできてくる。これは九十二まで伸びていますね。そこに五万、十万という職員が当然入ってきますから、ですから、そういうことから見ると、結果的には総定員を抑えたということだけでは、行政改革というか、人員を抑えるとか、そういうことは事実上できていない。あなたも行政管理庁長官をやられたわけですけれども、しかしその行政管理庁が機能していなかった、こういうことが言えるのじゃないかというふうに思うのですね。  最近では、これはここ五十年代に入ってから見ると、今度は公益法人がどんどんふえていますね。ちょっといま調べてみると五千二百ほどになっております。この公益法人がまた拡大していく、こういうようなかっこう。そこに出向職員が行っておる、天下りが行っておる、こういうような内容になっている。  ですから私は、これは一つの例でございますけれども、そういう観点から見ても、今回のこの行政組織法の改正というか、法律事項を政令事項とするということについては、非常に危惧を持つわけです。公務員総体から見ると、外国と比較すると決して日本は多くございません。むしろ少ない。少ないんだけれども、あなたたちが行政改革行政改革ということを言って、そして何かこれがすべて国民の目から見ると、縮小して、人員が減っていって、そして小さい政府になっておるというような発想というのは私は誤りだと思う。そういう意味で私は指摘をしておきたかったわけです。  そこで、もう一つの問題として、今度の行政組織法がいま出されておりますが、この総定員法の中曽根説明のように、率直に言って歯どめがきかなくなる。むしろいま法律事項であった際でも中央官庁の膨張というのは非常にふくらんでおる部分があるわけでございますから、ましてやそこに歯どめがきかなくなった場合には一体どうなるのだ。きょうのこの法案審議そのものが大変な失敗をする。後世に過ちを犯した、こういうことになるのじゃないかというような気がしてならぬわけです。確かに衆議院の修正で、報告義務づけと、五年に一遍洗い直すというそういった附則がついたことは一つの歯どめにはなると思いますが、しかしこれには拒否権がついてない、承認がついてない。ですから、結果的には一方的な報告でやられるのじゃないか、こういう気がするのです。この点はいかがですか。
  238. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 確かに第一の問題は、特殊法人あるいは認可法人等々がずっとふえてきた経過、私もよくそのとおりだと思います。そこで、臨調におきましてもそういう問題についてやっぱり根本的に見直すべきではないかという意見が出てきたことは、私はもう当然であったと思います。したがって、私どもも今後臨調答申趣旨に従って特殊法人の見直し、こういう問題に努力をしていきたいと考えております。  第二の問題の官房、局の問題でございますが、このたび、いままで法律でありましたのを政令に委任していただきたいということをお願いしておるわけでございますが、その局の数は百二十八と、こう抑えておるわけでございますから、もともと法律から政令に委任していただくということは基本的にはやっぱり国会行政府との信頼関係の私は基礎に立っていると思うのです。そういうふうなこともありますので、政府としてはその法律趣旨を完全に踏まえ守って、百二十八よりも絶対超えないように、それから、否むしろ、先般の衆議院において受けた修正の趣旨あるいはまた附帯決議等の趣旨を踏まえて、今後とも減らすような努力をするということが私は政府の責任になってきている、こういうふうに理解しております。したがって私どもは、その法律趣旨なり附帯決議なりの趣旨を十分に踏まえて、誠意をもって努力をしていきたい、かように考えておるものでございます。
  239. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 人事院総裁、結構です。  いま長官が言うように、率直にお認めのように、私はなかなか理想どおりにはいかぬと思うのですね。  ちょっと余談になりますが、二十九年以来大臣の就任月数を調べてみたのです。そうしたら何と七カ月ですね、平均。その政府が責任を持って抑えていくというのでしょう。僕はやっぱりなかなかそうはいかないような気がしてならないわけです。  そういう意味で、この段階で撤回といってもなかなか政府としてもいまさらということになるでしょうけれども、しかし私は、これはそういう意味で大変な誤りを犯すような結果になるのじゃないかという気がしますから、どうでしょう、いろいろ議論すればあるのですが、時間がございませんから結論から言いますが、最低限、報告義務に加えて、いわゆる承認をつける、こういうことで措置するのが一番この時点における妥当な措置じゃないかと思うのですが、そういう点については考慮の余地はございませんか。同時にまた、もしできるなら私は、やっぱりこういう法律的な措置と別個に、運営面で、きょう大臣の答弁で、そういう措置をとっても結構ですと、こういう答弁がいただければそれも一つの歯どめになってくるのじゃないかと思うので、いかがですか。
  240. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 局の数の問題、膨脹抑制の問題等につきましては、当初政府におきましては、国会を含め全国民に知っていただくという意味で官報公示という制度を提案いたしたわけでございますが、その歯どめとしていろいろ衆議院において論議があり修正をされたわけでございまして、局の設置改廃等につきましては、それが行われた次の国会報告をする、これが義務づけられてくるわけでございますから、そこで十分私は御審議をいただけるものと考えております。さらにまた、五年後には百二十八の数も含めて行政組織全般について再検討しろ、こういうわけでございますから、私はこの程度で御了承いただきたいと思います。  先ほども申し上げましたように、従来の法律から政令に御委任願いたいということは、議院内閣制の成熟というこの情勢を踏まえて、そして行革という行政組織の弾力的再編成というものの要請にこたえるという意味において提案をいたしておりますので、これは国会行政府との先ほども申し上げました信頼関係が私は基礎だと思うのです。政府も誠意をもってやる、国会はまたいろんな機会に御審議いただく、そこで両々相まって法律目的を達成していく、こうなるのではないだろうか。私は基本にあるのはやっぱり相互信頼だと思います。これは議院内閣制の成熟に伴う相互信頼、これが基礎にあるのだと、こういうふうに私は確信をいたしております。
  241. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 この問題をいろいろ追及したいのですが、時間がございませんから……。しかし長官、そういうあなたがおっしゃるような姿勢でこれから内閣がきちんといけば信頼関係ができるかもしれませんよ。しかし、いまの現状からいくと、いままでの実態から見ると、なかなかそうはいかない。だから私は歯どめがあったと思うのです。ですから、そういう意味で、この問題についてはひとつ運営に当たっては慎重な配慮をしていかないとえらいことになるということだけは一つつけ加えておきたいと思います。  もう一つ、時間がございませんから一点だけ質問しておきたいと思うのですが、総理は先ほど伊藤さんの質問に対して、今度の予算編成、それから次期国会、さらに行革審のある二、三年の範囲内の措置、中期と、こういう四段階に分けて行革の推進についての説明をなさっておりましたね。その中で私はさっき気になったのだけれども、一番後に出てくるのが補助金なんですね。ところが、国家予算のもういま三分の一に達しておるのが補助金ですよ。そして臨調ではここをやっぱりかなり、一番厳しく議論しておる。ところが、その対応は五十九年度予算編成でやるというわけですから、見守らなきゃならぬわけですけれども、いろいろ補助金がございます。ございますが、この問題について一体どういう考えで臨むのか、この点を聞いておきたいと思うのです。  それは、産業助成の問題ですね。臨調答申では、「産業活動等に対する行政の関与・助成を民間の主体性に待つことの困難な分野等に限定し」と、こうなっている。いいですか。ところが、たとえば民間輸送機開発費補助金の場合、八二年度で約十八億八千三百万ほど計上されておりますが、その協会を構成しておるのはわずかに三菱重工と川崎重工、富士重工、この三会社だけですね。そこに十八億八千三百万の助成をするということ。それから、民間航空機用ジェットエンジン開発費補助金、これは日本航空機エンジン協会に交付するのですが、そこに適用になるのは石川島播磨と川崎重工、三菱重工、三メーカーだけですね。臨調が言うように、「民間の主体性に待つことの困難な分野」に限定するという範囲に入ってない。重質油対策技術研究開発事業費補助金、これにしましても重質油対策技術研究組合、これは石油十五社、鉄鋼七社、電力など一団体一社、プラントメーカー五社、これに八十二億八千八百万ほど助成が出ておる。こういった問題について五十九年度予算編成に当たってどう対処するのか、これは一例でございますが、聞いておきたいと思うのです。
  242. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 各企業、結果としてそれぞれの大企業が補助金をいただいておる、こういうことに対して具体的な項目を挙げての御質問でございます。一つ一つになりますと所管省がございますので、あえて私がお答えするのが適切かとも思いましたが、総体的に申しますならば、臨調答申のいま御指摘を踏まえながら、いわば年々それの補助率とかいうのを減しながら今日に至っておる。しかし、やはり先端産業でございますとか等々の問題は、今後開発リスク等もございますので、ほかの国の制度を見ましても一概にこれは否定していないというふうに考えます。
  243. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 私は、五十九年度予算編成に当たって最大のポイントは、やはり補助金問題だと思うのですが、その中の一つを例示したにすぎません。ぜひひとつこの辺は臨調趣旨に沿うようにきちっとしていただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。  そこで、総理に質問をしたいと思います。政治倫理の問願です。  総理は、この新聞を見ましたか、ことしの五月二十九日です、「第二次田中金脈調査」。国税庁は来ていますか。  この内容を見ると、私が二年前ですか、決算で取り上げた問題の一つも入っておるわけです。これは何かといいますと、田中さん系統のいわゆる幽霊会社、これを中心に土地転かし、それから節税のための逆さ合併、こういった一連がずっと出ておるわけですね。これは決算でも取り上げたわけですが、その中で国税庁調査をした結果、軽井沢商事が所有していた東京都新宿区の土地をマンション業者に売却した際の倒産会社を経由さして利益を消し去ったという事件、それから新潟遊園と東京ニューハウスという幽霊会社ですが、この吸収合併、逆さ合併という例の問題です。それと室町産業と新潟遊園が目白の書生の人件費や水道光熱費などを肩がわりしていた、こういう事件ですが、税務調査の結果、ことしの五月に軽井沢商事については一億六千万の追徴課税が行われておるわけです。  そして、私が調べたところでは、この一億六千万の追徴課税はまだ支払ってなくて差し押さえしておるようですね、その物件を。それから田中系企業の新潟遊園、それから室町産業、この二つがいわゆる目白の田中邸における秘書の人件費を払ったり、田中本人が裁判所に行く際のクライスラーを無料で貸し出しておった、こういう点が確認されまして四千万の申告漏れが更正処分されておるわけです。この点について私は国税庁にお聞きしたいのですけれども、これは全く事実に反する、そういう問題ではないと思うのですが、いかがですか。
  244. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) お答えいたします。  先生御指摘新聞報道でございますが、おおむねそのような内容であるということにつきましてあえて否定はいたしませんけれども、これはすべて別の問題でございますので、具体的内容につきましてはお許しをいただきたいと思います。
  245. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そこで総理、この件は六件あるのです。しかし、二件がいま申し上げたように国税庁も否定してないというように、一億六千万の追徴とあわせて申告漏れ四千万の処分がされておるわけですが、これは調べてみると、いずれも田中さんの裁判の過程の中における事件です。五十三年と五十四年の事件ですね。彼はいま一〇・一二判決に見られますように有罪判決、こういう判決を受けておりますが、その刑事被告人時代におけるこういう事例なんです。あなたは、この国会の中でも、これほど混乱をして国民世論も非常にこの問題の国会処理を求めて強く出ておるときに、終始一貫して擁護した。擁護するか沈黙か、続けてきたわけでございますが、こういう事例を見てどういうふうにお考えになりますか。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) すでに国税庁で取り上げられておる具体的な事件でございますから、論評することは差し控えたいと思います。
  247. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 多分そう言うだろうと思いました。  そこで総理、私は、本来ならこういう事件が起こって、そして一国の総理もやったということになれば当然やっぱり、本人自身が公判の初頭に言っておるように、万死に値するということで自粛自戒して謹慎をするというのがこれは常識的な判断だと思うのですね。しかし、政治的な面でも再三指摘されておりますように、もう私はここで重複することはないと思いますが、加えてこういう犯罪行為をやっておる。しかもいろいろ調べてみますと、どうもやっぱり新潟遊園との逆さ合併も田中さんが提起をしたらしいですね、越後交通の常務の話によりますとね。そういうようなことが許されていいのかというのが私は国民の怒りの一つでもあろうと思うのです。あなたは、国税庁が認めたことだから言は左右しませんと。例のとおりですね。しかし、これはそういうことで済まされるような問題ではないと思います。そういう意味で、ひとつぜひ田中問題の処理に当たって過ちのないようにしていただきたいというのが私は国民の声だと思いますから、強く求めておきたいと思います。  そこで、総理はきのう、おとといですか、この委員会の中でも、選挙が近づいたことと関連して、意識的に新自由クラブと政治倫理の協定を結んだということを強調しております。しかし、政治倫理の問題につきましても、きょう新聞を見ますと、自民党さんは六項目か七項目の選挙公約を出しているようでございますが、これも私はおかしな話だと思う。どうしておかしいかといいますと、政治倫理委員会を設置するというのは、鈴木さんが総理に指名されて登場するに当たったときに、みずから政治倫理委員会を設置する、そのためにはロッキード特別委員会を解消する、こう言って出てきた。ところがいまだにそれが実現していない。あなたの場合にはそのことも内閣に出たときには言っていないのですね、登場したときに。それから政治家の資産公開、これもわが党はもう六年前に議員立法で出してある。しかし自民党さんがこの審議に応じない。だからできないのですよ。それからロッキード事件に関連して会計検査院法の改正というのがございました。ダグラス、グラマン、いわゆる輸銀の融資先を検査する、この問題についても福田さんや大平さんは総理のときには約束した。国会では六回にわたって衆参両院で決議したのですよ。法の改正案もちゃんとできた。それを棚上げしたのはだれか、これも鈴木さんになってから棚上げになった。あなたになってからは言わなかった。これもいまだにお蔵に入ったままになっている。さらに政治資金規正法、この規正法も三木さんのときにできて、五年目には見直すと、こうなっていた。それを見直さなかったのはあなたなんだ。それが今度は急に政治倫理を提起する。そして大体同じようなものを六項目挙げる。  これは私は、口は重宝なものと言いますけれども、胸に手を置いて静かに反省してもらわぬと困ると思うのですね。一国の総理たる者がすぐばれるようなことを平気で言いふらす、そうして何というのですか、国民の前にいかにも政治倫理確立は私は望んでおるぞと、こういうようなすりかえた発言をする。私は、やろうと思えば、いま申し上げたように会計検査院法にしても、それから資産公開法にしても、政治倫理委員会にしても、これはもう参議院はできましたよ。これは二十八日までにできないことはないですよ。いまさら公約を掲げることはない。それをやらなかったのは一体だれなのか。そこをあなたは抜きにして国民にお答えしておるということは、私は許すべからざる、一国の総理としてはまことに残念な態度だと、こう思わざるを得ないのですが、いかがですか。
  248. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治倫理については、前から申し上げておりますように、個人倫理の問題とそれから集団倫理の問題があると申し上げておる。個人倫理の問題というものは強制すべきものではない。特に、憲法や議員の身分保障という問題を考えてみるとなおさらそういう感を深うする。  ある道徳界の最高権威者は、この間私お会いしましたら、倫理という問題は強制をしたらそれは死んでしまうのだ、倫理というものが生きている間は、個人が自発的に自主的に物をやった場合に生きているので、それが強制された場合には、ある場合には陰謀に変わり、ある場合には派閥争いの利用になるのだと、そういうことを道徳家が私に言っていました。私はやっぱり倫理というものの生命力というものを見ているお方の言葉ではないかと思ったのです。  集団倫理という場合は、これはみんなで自粛自戒しようというので、そのために選挙法の改正を行うとか、あるいは内閣として資産公開を決めるとか、あるいはそのほか、かつてわれわれが新自由クラブと合意をしてやろうとした、諸般の政界全体で自粛自戒を示す共同行為を出しておるので、私は自由民主党が、この間の判決にかんがみ、国民の前にある意味においては自粛自戒の多くを示す一つのやり方としてあれを示した。すでに参議院においてもいまや倫理協議会ができておる。衆議院におきましては自由民主党は議院運営委員会でこれを提議しておる。そういうことでありますから、機運は乗ってきたのですから、どうぞ社会党やその他の野党の方々もこの機にそういうことが実現するように御協力願いたいと思っておる次第であります。
  249. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 あなたは、何か行き違いなんですか、そういう言い方で拒んでおりますが、たとえば大平さんのときに賭博事件を引き起こした浜田幸一さん、それから大量の選挙違反で世論の批判を集中させた宇野、糸山両氏、それからKDD事件で疑惑で辞退しました服部郵政大臣、これはいずれも大平さんの責任で議員を辞任し、もしくは立候補を辞退さした。そして事後措置を自民党自体できちっとした例がある。私は、中曽根内閣はどうしてそれができなかったのか、このことが、私だけじゃくなくて国民の皆さんが見ておる目じゃないかと思うのですよ。  ですから、あなたは確かに口はうまいですよ。すっとすりかえてやる癖を持っておるんじゃないかと思うけれども、しかし、そんなことで私は国民はごまかされないと思う。ごまかせるなら、こんなに国民の皆さんがいまになってもなおかつそれを要求しておる、とうとう解散、総選挙をせざるを得ない、こういう情勢になってきたのもその一つのあらわれたと思うので、そういう点はひとつ僕はもうおやめになって、そして自分の責任、一党の総裁として、総理としての責任はきちっと果たす、こういったきょうの段階ぐらいでの答弁があってほしいんじゃないかと思ったのですが、残念ながらそれがなかった。  調べてみますと、ロッキード事件で笠原運転手を含めて十六人が自殺もしくは怪死、こういう事態が発生しておるのですね。ですから、この事件というのは、単なる収賄とか、ロッキードから五億もらったとかもらわぬとかいう性格のものじゃなくて、殺人事件を含んだ大疑獄事件ですよ。こういう問題であるだけに国民の皆さんは、この事態でもなおかつこの国会で片がつけられぬのか、このくやしさが私はあると思う。そのことがあなたにはない。まことに私は残念でならぬと思うのです。  私は、もう時間がございませんから、委員長がやきもきしておるようですからここでやめますが、答弁はいただけなきゃいただかぬで結構ですが、それはひとつ総理、そんな一時逃れで言い逃れるのも最後まで続けるのはやめた方がいいんじゃないですか。そして、本当に国民に謝罪するなら謝罪して、自民党の総裁として、総理として、そうしてもう一遍ひとつ仕切り直す、こういう気持ちになった方がいいのじゃないかと、私はそう思う。この問題に対する、政治に対する信頼というものは物すごく不信になっていると思うのです。政治は、やっぱり国民の信頼のないところにいかにあなたの内閣が仕事をやるんだと言ってみても意味がないと思いますよ。ましていわんや、行革という問題を抱えたときに、そういう態度というものは私はよくないと思いますので、一言つけ加えて終わりたいと思います。
  250. 田中正巳

    委員長田中正巳君) この際、暫時休憩いたします。    午後六時一分休憩      ─────・─────    午後七時三十七分開会
  251. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいまから行政改革に関する特別委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、林ゆう君が委員辞任され、その補欠として下条進一郎君が選任されました。     ─────────────
  252. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 休憩前の質疑をもちまして質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  253. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 御異議があるようでございますから、改めて採決を行います。  質疑を終局することに賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  254. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、質疑は終局することに決定いたしました。     ─────────────
  255. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 委員長委員長不信任動議を提出します。
  256. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいま近藤忠孝君から賛成者と連署の上、文書により私委員長の不信任動議が提出されました。よって、委員長はこの席を譲り、長田理事に会議を主宰していただきます。    〔委員長退席、理事長田裕二君着席〕
  257. 長田裕二

    ○理事(長田裕二君) 行政改革に関する特別委員長田中正巳君不信任の動議を議題といたします。  まず、提出者から本動議の趣旨説明を願います。近藤君。
  258. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君      委員長不信任動議   本委員会は、委員長田中正巳君を信任せず。  右の動議を提出いたします。  以下、右動議提出の理由を述べます。  ただいま議題となっている行政改革関連六法案は、いずれも国民生活、民主主義に重大な影響を与えるものばかりであります。そのため、わが党は、この法案の重要性にかんがみ徹底審議を要求し、具体的にこれら六法案の一括審議ではなく、法案一つ一つについて徹底審議を行うこと、公聴会並びに連合審査を行うこと、質疑時間を十分に保障することなどを要求したにもかかわらず、田中委員長は、会期末で審議日数が少ないことなどを理由にこれらの要求を無視し続けてきたのであります。  たとえば、衆議院でのこれらの法案審議経過と比べても、衆議院では委員会は公聴会を含め十回開かれ、質疑時間は五十七時間十分であったにもかかわらず、参議院では委員会は四回、質疑時間はわずか二十三時間十分にすぎないのであります。また、第九十五国会における本院の行政改革特別委員会審議経過と比べても、九十五国会においては、委員会は地方公聴会を含め十四回、質疑時間は八十一時間十五分となっており、これを見ても本委員会における審議は全く不十分であり、審議はまさに尽くされていないのであります。  特に、第九十五国会に提出、可決された行政改革関連法案は、臨調の第一次答申を受けて、一本の法案で三十六法律改正を一括処理しようというものでありましたが、今回は臨調の第一次から第五次に及ぶ答申を受けて六つの法案で三百十法律改正を処理するという膨大なものであり、一層多くの質疑時間が保障されなければならないものであります。  さらに、わが党の神谷委員政府提出法案衆議院における修正部分の発議者に対し質問すべく本委員会への出席を要求いたしましたが、この当然の要求を拒否し、質問通告に対し答弁がないまま質疑打ち切りがなされるという異常な事態まで発生したのであります。また、審議に際し、わが党委員から最低限必要な資料の提出を要求したにもかかわらず、いまもって提出されておりません。これを放置したまま質疑打ち切りを行った田中委員長の行為は、委員審議を軽視するものと指摘せざるを得ません。  本来、委員長の職責は審議の円満かつ公正な進行を図ることにありますが、田中委員長は、以上述べたように十分審議を尽くすという本院のよき慣例をも打ち破り、ただただ法案成立のみを急ぎ、質疑続行を求める正当な主張を排除して質疑を一方的に打ち切り、いま採決を強行しようとしております。これは当委員会委員長としての重大な職責を著しく踏みにじるものであり、田中正巳君は委員長の資格に欠けるものと言わなければなりません。同時に、中曽根総理の、両院議長より全法案成立の保障を得たという議会制民主主義の根幹にかかわる発言について、わが党主張のように、決着がついていないにもかかわらず審議を進めた行為、及び私の当委員会における質問に対する中曽根総理の答弁中、福田衆議院議長がその趣旨の発言を行ったのに対し木村議長は黙認したとする重大発言をも放置したまま審議を進めた田中委員長の行為も、委員長の職責を果たしたものとは言えません。  以上が行政改革に関する特別委員長田中正巳君不信任動議を提出した理由であります。  何とぞ、慎重審議の上、賛成くださりますようお願いいたします。
  259. 長田裕二

    ○理事(長田裕二君) これより採決をいたします。  行政改革に関する特別委員長田中正巳君不信任の動議に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  260. 長田裕二

    ○理事(長田裕二君) 起立少数と認めます。よって、本動議は賛成少数により否決されました。  委員長の復席を願います。    〔理事長田裕二君退席、委員長着席〕     ─────────────
  261. 田中正巳

    委員長田中正巳君) それでは、これより各案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。稲村稔夫君。
  262. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、日本社会党を代表して、国家行政組織法の一部を改正する法律案など、本特別委員会審議に付されております行革関連六法案反対の立場から討論をいたしたいと存じます。  討論を行うに当たりまして、まず最初に明らかにしておきたいと思う点があるわけであります。  その第一は、本日のこの委員会の運営についてでもそうでありますけれども、こうした重大な法案審議するに当たりまして、審議の時間が短いというきわめて異例な状況の中で本院が審議を余儀なくされたわけでございます。したがいまして、本日も審議はもっと継続をすべきである、こういう立場で私どもは主張いたしましたけれども、取り入れられずに打ち切りになりましたことはきわめて遺憾でございます。今後かかる運営がないように、ひとつ委員長からも今後の運営についてはいろいろと御配慮を賜りたいと存じます。  次に、そもそも行政改革は、国民の立場に立って福祉、生活の向上を基本に、行政簡素化効率化を図るという、そういう観点から行われるべきであります。したがって、こうした国民の立場を踏まえた行政改革を積極的に推進すべきである、そういう熱意を持っているわけでありますけれども、その熱意を持てば持つほど、今回の行革関連法案に疑問が多く出てくるわけでありまして、審議の時間がもっとほしいということでございます。  さらに次は、こうした時間がきわめて短いという異例な中にもかかわらず、その貴重な時間が行政の最高の責任者である総理の不用意な発言によって空費をさせられたということはまことに遺憾でありまして、今後かかる事態が起こらぬよう十分に留意をしていただきたいと思うのであります。  さてそこで、国家行政組織法の一部を改正する法律案並びに同法施行に伴う関連法律案についてでありますが、私は、これに行政改革関係法案という呼び名を冠することはそれこそ羊頭狗肉だと言わざるを得ないのであります。行政の肥大化とか非能率などと言われているものをスリム化し、効率的なものへと向かって第一歩を踏み出せると言うのでありましょうか。  たとえば、膨大かつ強力な許認可の権限を中央に握り、縦割り行政をがっちりと固めて、これをてこに利益誘導型政治が行われ、莫大なエネルギーと金を使った陳情政治が行われているという現状を、今度のこの法案がどこで歯どめをかけようとしているというのでありましょうか。極端な言い方をすれば、官房それから局及び部などの設置を政令事項とすることで政府が勝手に機構いじりをする、そのことができるというだけではありませんか。加えて、国会のチェック機能は、法律審議ではなくて政令事項の実施報告のみで国会には拒否権がないのでありますから、結果として政府の方針のみが押し通されるということになるのではありませんか。  本改正案を附帯条件つきで認めておられる立場からも、国民生活の面から、あるいは身障者対策等福祉の立場から、その他多くの疑問や要望が出されておりますけれども、これらのことが後向きに処理されることがないという保障が一体どこにあるのでありましょうか。とすれば、これは憲法に保障された民主主義の侵害になるではありませんか。そして、そのことをチェックすべき国会の権限を縮小するということになるのではありませんか。まさに、国民の大多数の立場から要望されているという行政改革とは全く無縁の政府の財政上のつじつま合わせの手段であるばかりではなく、民主主義を危機に陥れるおそれのある本法案として受け取らざるを得ないわけでありまして、反対の態度を明らかにいたします。  また、総務庁設置法案並びに総理府設置法の一部を改正する法律案についてもそうであります。大臣を減らすでもなく、局や部、審議会の縮減でもなく、あまつさえ財政節約にもならないと思われるわけでありますが、単なる看板のかけかえにすぎないのではありませんか。  総務庁設置法の一部を改正する法律案にしても、国民に対する行政サービスの窓口になっている地方出先機関をいじくり回すだけで、分椎の姿勢は全くないではありませんか。縦割り行政、利益誘導型政治に手を染めるところはどこにもないではありませんか。  行政事務簡素化及び整理に関する法律案については、一体どの程度簡素化され、整理されるというのでありましょうか。各省庁で手放しても余り痛痒を感じないものばかり、しかも全体の中でごくわずかのものにしか手を染めないでいるという、俗に言うお茶を濁した程度でしかないではありませんか。  以上、私は、理由を申し述べまして、国家行政組織法の一部を改正する法律案などの行政改革法案反対をするものであります。(拍手)
  263. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 成相善十君。
  264. 成相善十

    成相善十君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました国家行政組織法の一部を改正する法律案外五件に対し、賛成の討論を行うものであります。  今日、わが国をめぐる内外情勢は、内にあっては財政事情の悪化、急速な高齢化社会の到来、環境やエネルギー面における制約、国民の中における価値観の多様化など、多くの課題を抱えており、また外にあっては、最近におけるINF交渉の中断を初めとして、国際軍事情勢の激化、経済摩擦問題の深刻化などに直面をいたしております。こうした厳しい内外の環境の中で、政治はいまこそ時代の要請に対処して平和と国民生活の安定に努めなければなりません。このためには、高度成長時代の肥大化した行財政を根本的に見直し、簡素で効率的な政府の実現が喫緊の課題であります。この意味からも、行政改革は、財政改革とともに今後のわが国が二十一世紀に向けて活力ある社会と経済を構築するための避けて通れない国民的要請であります。  このため、わが党は、臨時行政調査会の答申を最大限に尊重するとの基本方針のもとに、行政改革の推進に全党を挙げて努力してまいったところであります。すでに行政改革の全体構想については、臨時行政調査会の最終答申に至る全答申を受けて、わが党と政府側との緊密な協議により、去る五月に決定されたいわゆる新行政改革大綱において示されているところであります。  議題の六法案は、この新行政改革大綱に沿って当面早急に措置すべき事項について政府において立案の上、提出されたものであります。その内容は、省庁の内部組織などの弾力的再編を促進するための国家行政組織法改正、昭和二十七年以来の本格的省庁再編成としての総務庁の設置、地方支分部局の整理合理化の第一弾としての地方行政監察局、財務部等府県単位機関の整理行政事務簡素合理化のための許認可及び機関委任事務整理合理化に関するものでありまして、いずれも今後行政改革を着実に推進していく上で欠くことのできないきわめて重要な措置であります。こうした措置は、行政改革を強力に推進すべしとする国民的課題に、わが党政府がこれにこたえてその第一歩を踏み出すものでありまして、まさに時宜に適したものであると思います。  しかしながら、今回の措置はまだ序の口であります。今後やらねばならぬ重要な課題は多く残されております。政府においては、今回の法律案の成立をてことして、今後とも行政組織、定員、事務事業等、多方面にわたり行政の合理化、簡素効率化のため格段の努力を求めるものであります。  最後に、今期国会は一カ月に及ぶ審議の空白があり、このことはきわめて遺憾でありますが、行政改革特別委員会は去る十八日の本会議質疑以来、総括形式による集中審議、土光元臨調会長等の参考人の意見聴取など、限られた時間のもとで効率的かつ幅広い充実した審議が行われましたことは、国民行政改革の期待にこたえる、あるべき参議院の姿として同慶にたえぬところであります。  われわれは、新しい時代の行政を今後とも真剣に模索し、わが国の将来への明るい展望を開くために、国民とともに進む決意を表明して、賛成の討論を終わります。(拍手)
  265. 田中正巳

  266. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、日本共産党を代表して、国家行政組織法改正案など、いわゆる行革関連六法案に対し、一括して反対の討論を行うものであります。  日本共産党は、今日まで一貫して国民本位の行政改革を主張し、汚職腐敗を生み出す行政上の要因をただし、ガラス張りで清潔な政治に改めること、むだと浪費をなくし、簡素効率的な機構で国民サービスの向上を図ること、地方自治体に大胆に権限を移し、二重行政の弊害をなくすることなどを具体的に提起してまいりました。しかし、この法案はその内容のみならず、これを提出した政府の基本姿勢において、また、その審議の経過においても、全くこの方向に逆行するものと言わざるを得ないのであります。  まず第一に、中曽根内閣は、その基本において行革の原点を欠落させています。  本来、行政改革は汚職腐敗政治の根絶と清潔な政治の実現を原点とすべきものであります。ところが、中曽根内閣は一〇・一二田中判決後も議員辞職と政界引退を求める国民世論に背を向け、議員辞職勧告決議の上程を頑迷に拒否し続けてきました。その上、中曽根総理田中総理と会談し、あたかも議員辞職で話し合ったかのようなポーズをとりながら、これでけじめがついたと称して、悪法の一斉強行採決など、田中擁護のいわゆる中央突破を図ってきたのであります。これは刑事被告人田中角榮議員の自民党支配ばかりか、自民党政治に深く根ざした腐敗汚職の構造の温存を意味するものであり、わが党の糾弾せざるを得ないところであります。  第二に、本法案の容認は国民生活への犠牲の押しつけと、その一方での軍拡、財界奉仕の臨調路線を一層進めることになるからであります。  中曽根内閣は、増税なき財政再建は堅持すると言いながら、みずからが約束してきた景気浮揚に役立つ相当規模の減税からははるかに遠い見せかけの減税を提案し、その裏で酒税、物品税の増税など低所得者泣かせの増税を計画しています。また、健康保険に本人負担を持ち込む大改悪や私学助成の大幅削減も計画する一方、自衛官の大幅増員を目指す防衛二法改悪の強行、日米首脳会談に見る軍事分担の増大と軍事費の聖域化など、軍拡路線が進められています。土光敏夫氏が社長、会長を務めた東芝など巨大企業に対し、国民の血税を使った多額の補助金を出す仕組みや大企業に対する優遇税制の是正には何ら手をつけようとしていないのであります。わが党は、このような国民犠牲、財界奉仕、軍拡の政治を絶対認めることはできないのであります。  第三に、この法案審議の過程で明らかになった政府・自民党の一連の乱暴な議会制民主主義のじゅうりんの問題であります。  中曽根首相は、国会の最優先課題である田中議員辞職勧告決議の審議は拒み続けながら、野党が昼寝して苦労するとか、田中問題以外の他の課題に応じないことこそ政治家固有の政治倫理にもとるなどという、すりかえ論理に終始してきました。その上、解散までも田中擁護に利用して、十二月十八日投票の総選挙日程を前提に、十一月二十八日までの会期延長を強行、両院議長の保証を得たとして全法案の成立を強行しようとしています。もし仮に、中曽根首相の言う両院議長の保証が事実であるとすれば、それは参議院が何ら審議に入らない前に、法案の成立を議長が行政府の長に約束したことになり、これこそ立法府の自殺行為、審議権の重大な侵害と言わざるを得ないのであります。  ところが、当委員会では、わが党の主張に反して、議長は肯定も否定もしなかったとの見解により、真偽をはっきりしないまま審議再開が強行されたのであります。そして、わが党の近藤委員の質問に対し、総理は、福田衆議院議長が判断を示した、木村参議院議長は発言しなかったが、訂正する必要はないと強弁したのであります。これが事実とすれば、参議院で全法案を成立させる保証を木村議長が黙認したこととなり、木村議長の責任が問われることになります。わが党は、この問題の重大性にかんがみ、行革法案審議に優先して、この真偽をはっきりさせるべきことを強く主張してきたところであります。  また、わが党は、委員長の不信任動議の提案理由説明で明らかにしたごとく、きわめて不十分な審議のまま終局に至ったことは、本院の歴史に汚点を残すものとして、まことに遺憾であります。  第四に、この法案内容の問題であります。  国家行政組織法案は、各省庁の部局の設置規制を法律事項から政令事項に格下げし、軍拡、国民犠牲の臨調行革に即した行政機構の再編を、国会のコントロールなしでできるようにすることを最大の眼目としたものであり、国権の最高機関としての国会への重大な挑戦であります。また、総務庁設置法案は、臨調の総合管理庁構想に沿い、行政管理庁に総理府の人事機能を移し、機構と人事管理を総合的機能的に強化し、行革推進の中核機関を設置しようとするものであります。  府県単位機関整理法案は、国と地方の二重行政排除の期待に反して、住民に必要な部門の人員は縮減する一方、違憲のスパイ弾圧機関である地方公安調査庁については縮小でなく看板の塗りかえだけを行うなど、こうして六法案国民不在の行政改革推進のてことなるものであります。  以上、私は具体的な反対理由を明らかにいたしました。このような反国民的な六法案反対し、あくまでも国民のための真の行政改革実現を目指す日本共産党の決意を表明して、私の討論を終わります。(拍手)
  267. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 中野明君
  268. 中野明

    ○中野明君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました国家行政組織法の一部を改正する法律案等、行政改革関連六法案に対し、行革推進の立場から賛成の討論を行うものであります。  いまや、行政改革国民的課題であり、全国民の要望であります。その断行の一切の責任は、すべて政府にゆだねられており、その実行を具体的に移す段階に来ているのであります。ところが、今回の政府提出の行革関連六法案は、今後の行政改革をどのように進め、臨調答申をどのように実行に移すかがあいまいであり、当初の基本構想から後ろへずれ込んでおります。単なる機構再編で済ますなど、中曽根総理行革の第一弾と名づけているには、少し迫力の欠けるものであります。  わが党は、衆議院において民社党・国民連合、新自由クラブ、社会民主連合と協力し、行革関連六法案について修正要求をいたしました。その結果、国家行政組織法改正案につきましては、自由民主党との間に合意が成立し、公明党・国民会議、民社党・国民連合等の努力によって修正が実現したのであります。  その修正内容は、行政組織管理の弾力化と国会審議椎、行政に対する国会の関与監督権との調整を図るとともに、行政簡素効率化に資するものであり、評価することができるのであります。しかし、他の法律案につきましては、本特別委員会で私どもが具体的問題点を挙げて厳しく指摘してきましたように、総務庁設置が今後の中央省庁の統廃合につながるものであるかどうか不明確であることや、地方出先機関、機関委任事務、許認可等の整理も十分なものとは言えないのであります。真に簡素で効率的な行政に改革するには、税金のむだ遣いをなくし、ぜい肉を落とすための懸命な努力を続けるとともに、実質的な削減を伴う仕事減らし、機構減らし、人減らし、金減らしが必要であることを私どもは主張してまいりました。これらの実行があって初めて国民の期待にこたえられる行政改革となるのであります。その場しのぎでお茶を濁すといったことは断じて許されるべきではありません。それこそ、臨調答申が目指す活力ある福祉社会の建設も、国際社会に対する積極的貢献も図ることができずに終わってしまうことを懸念するものであります。  政府は、官僚や圧力団体の抵抗に屈せず、国民的立場に立って臨調答申を実行に移すべきであります。それによってこそ、増税なき財政再建述も可能になると思うのであります。したがって、行政改革は避けて通れない大事業であり、国民の理解と協力なくしてはとうてい達成できません。  このように、政府提案の行革関連六法案は必ずしも十分な内容とは言えないのでありますが、われわれの具体的質問に対する政府答弁によって、今回の行革法案行革の第一歩とすることが確約され、将来にわたって私どもの要求どおり、政府行政改革に取り組むことを条件として、私は、政府提案の行革関連六法案に賛成の態度を表明するものであります。  最後に、私ども公明党・国民会議は、本特別委員会で具体的に指摘した問題点に対する政府答弁を誠実に実行するよう強く要求するとともに、今後の政府行革推進を厳しく監視しつつ、その実行を迫っていく決意を表明して、賛成の討論を終わります。(拍手)
  269. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 青木茂君。
  270. 青木茂

    青木茂君 私は、参議院の会を代表し、いわゆる行革法案について、反対の立場で討論をいたします。  長い時間の審議の中で、この法案内容に関する質問はほとんど行われず、ほかの問題ばかりがいろいろ議論されている。これはどういうわけかというと、これはこの六法案が中身、内容とも余りにも取るに足らないものでしかなかった、機構、定員、予算の削減に何らつながらなかった、中身の薄いものであったからではないでしょうか。  元来、行革の問題が出てきたのは、大きな政府、小さな政府という問題よりも、われわれの税金をむだ遣いするな、浪費のない政府をつくってほしい、これが国民の要望であったはずでございます。この原点に照らしてみますと、余りにもこの法案は問題を矮小化してしまっております。一体、この六法案はどこが行革なのか、これが国民の素朴な疑問ではないでしょうか。どれもこれもが国民生活に直接プラスするものはない。行政簡素化効率化、定員の削減につながるものはなかったのであります。いわば、この六法案は虚像としての行革でしかなく、国民の望んでいるのは行革の実像、具体像そのものでございます。  したがって、一里塚とか、ファーストステップという決意はわかるにいたしましても、それが本来の行革に将来どう結びつくか、少しも明らかではございませんでした。いろいろなプランは今後おありのようですが、この六法案の中に少しは具体的な姿を見せてくれてもよかったのではないかと私ども考えております。  一日も早く行革本来のねらいである機構、定員、予算削減を伴った中央、地方官庁の統廃合、補助金の抜本整理特殊法人の大幅削減、これらの具体策を提示していただきたい。これが提示されるならば、われわれは双手を挙げて賛成をいたしますが、いまは反対でございます。  以上です。(拍手)
  271. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 抜山映子君。(拍手)
  272. 抜山映子

    ○抜山映子君 私は、民社党・国民連合を代表し、国家行政組織法の一部を改正する法律案を初め、今回提出されております行革法案に対し、一括して賛成の討論を行うものであります。  言うまでもなく、行財政改革の断行は今日の国政の最重要課題であります。戦後の古い体質のまま肥大化した行政機構、歴代自民党政権の放漫な振る舞い行政などは、国債残高約百十兆円、地方の借金約五十七兆円に及ぶ財政破綻という憂うべきツケを国民に残しているのであります。また、先進国にもその例を見ない急速な高齢化社会の到来、国際化の一層の進展は、縦割り行政の中で硬直し切った行政機構の抜本的改編を不可避としているのであります。  わが国経済と社会の再生の道は、断固行財政改革を断行する以外にありません。政府においては、増税によって危機を乗り切ろうとする意図が見え隠れしておりますが、増税は問題を直視することを避けるものであり、問題を先送りするにすぎません。またそれは、改善の徴候の見え始めたわが国経済と国民生活を再び逼塞状態に陥れることはきわめて明白であり、とるべき道ではありません。  民社党・国民連合は、このような観点から行財政改革の断行を叫び続けてきたものであり、今回の行革法案についてもこの立場から取り組んでまいったのであります。  官房、局の設置改廃をこれまでの法律事項から政令事項とする国家行政組織法改正は、行政需要の変化に機動的に対応する措置として妥当であります。同時に、政令委任に伴う省庁の独断専行を抑えるため、官房、局の改廃状況を報告させるという形で国会審議権を確保する規定を設けたことや、行政機構の一層の簡素合理化を進めるため、官房、局の総数の上限規定を五年後に縮小の方向で見直す規定を設けたことなどはきわめて妥当であり、高く評価できるものであります。  総務庁設置法案総理府設置法の一部改正法案は、中央省庁改革の第一歩として評仙するものであります。政府としては、今後、中央省庁の抜本的統廃合のための中長期的な計画を樹立するとともに、わが党がこれまで再三指摘してきたように統計行政に支障を来さないよう政令で措置すべきであります。  総務庁設置法等の一部改正法案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案は、いずれもその内容が不十分かつ不徹底なものであります。地方出先機関は現業部門を除き原則的に廃止すべきであります。また、許認可及び機関委任事務は地方分権の推進や民間活力の維持という視点から抜本的に整理合理化を図るべきであります。われわれは、今回の改正はきわめて末梢的な改革にすぎず、今後この改正を契機として、さらに政府がこれらの改革に積極的に取り組むことを期待し、要望して、この両法案に賛成するものであります。  以上、討論を終わります。(拍手)
  273. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ほかに御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  274. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。  まず、国家行政組織法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  275. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、国家行政組織法の一部を改正する法伴の施行に伴う関係法律整理等に関する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  276. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、総務庁設置法案について採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  277. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、総理府設置法の一部を改正する等の法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  278. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、総務庁設置法等の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  279. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  280. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、中野君から発言を求められておりますので、これを許します。中野君。
  281. 中野明

    ○中野明君 私は、ただいま可決されました国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新政クラブの各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案に対する附帯決議(案)   行政改革の推進を求める国民世論と現下の極めて厳しい行財政事情とにかんがみ、行政簡素化効率化をより一層推進するため、政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。  一 国家行政組織法の運用に当たっては、時代の変化に即応した機構の見直しを行い、その合理的再編成及び整理簡素化を促進し、厳正な組織管理に努めること。  一 総務庁の設置に当たっては、既定の方針を踏まえ、予算、定員につき合理化を図るとともに、総合調整機能が発揮できるよう努め、また統計行政の円滑・公正かつ効率的な遂行に支障をきたすことのないよう、十分配意すること。  一 審議会等の整理合理化については、今後更に検討を進め、その推進を図ること。  一 総務庁設置法等の一部を改正する法律施行に当たりては、行政事務の見直しを行い、機構及び定員の合理化に努めるとともに、本法により措置する機関以外の府県単位機関についても、臨調答申趣旨に沿って、その整理縮小を図ること。  一 許認可等、機関委任事務については、更にその在り方を見直し、整理合理化を一層推進するよう努めること。    なお、都道府県知事への事務の委譲に当たっては、国と地方の役割分担と費用負担の在り方を見直す一環として、その事務等の実態に応じ、所要の財源措置を検討すること。  一 本改正法における国会報告に加えて、政府は今後毎年行政改革実現の成果を国民に公表するよう検討すること。   右決議する  以上でございます。
  282. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいま中野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  283. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 多数と認めます。よって、中野君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、齋藤行政管理庁長官及び丹羽総理府総務長官から発言を求められておりますので、この際順次これを許します。齋藤行政管理庁長官
  284. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえつつ、制度の運用に努めてまいる所存でございます。
  285. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 丹羽総理府総務長官。
  286. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を踏まえつつ、今後努力してまいる所存でございます。  どうもありがとうございました。
  287. 田中正巳

    委員長田中正巳君) なお、各法律案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  289. 田中正巳

    委員長田中正巳君) これより請願の審査を行います。  第二二二号国家行政組織法の一部を改正する法律案等反対に関する請願外四十一件を議題といたします。  今国会中本委員会に付託されました請願は、お手元に配付の付託請願一覧表のとおりでございます。  理事会で協議いたしました結果、付託請願はいずれも保留とすることに意見が一致いたしました。  理事会協議のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時二十二分散会