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1983-11-22 第100回国会 参議院 行政改革に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十一月二十二日(火曜日)    午前九時三十分開会     ─────────────    委員異動  十一月二十一日     辞任         補欠選任      内藤  功君     上田耕一郎君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      吉川  博君     吉村 真事君      梶原 敬義君     菅野 久光君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         田中 正巳君     理 事                 岩崎 純三君                 長田 裕二君                 上條 勝久君                 成相 善十君                 佐藤 三吾君                 矢田部 理君                 中野  明君                 神谷信之助君                 伊藤 郁男君     委 員                 岡部 三郎君                 梶原  清君                 工藤万砂美君                 佐々木 満君                 関口 恵造君                 竹内  潔君                 竹山  裕君                 林  ゆう君                 藤井 孝男君                 降矢 敬義君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 柳川 覺治君                 吉村 真事君                 穐山  篤君                 久保  亘君                 志苫  裕君                 菅野 久光君                 飯田 忠雄君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 柄谷 道一君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   宇野 宗佑君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣審議官    手塚 康夫君        内閣審議官    百崎  英君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣総理大臣官        房広報室長        兼内閣官房内閣        広報室長     金子 仁洋君        内閣総理大臣官        房総務審議官   橋本  豊君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府統計局長  時田 政之君        行政管理庁長官        官房審議官    古橋源六郎君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁総合        計画局長     大竹 宏繁君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        国土庁長官官房        長        石川  周君        法務省刑事局長  前田  宏君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長心得      江藤 之久君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        国税庁次長    岸田 俊輔君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省公衆衛生        局老人保健部長  水田  努君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省年金局長  山口新一郎君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君        常任委員会専門        員        高池 忠和君    参考人        国立大学協会会        長        平野 龍一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国家行政組織法の一部を改正する法律案(第九十八回国会内閣提出、第百回国会衆議院送付) ○国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○総務庁設置法案内閣提出衆議院送付) ○総理府設置法の一部を改正する等の法律案内閣提出衆議院送付) ○総務庁設置法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいまから行政改革に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十一日、内藤功君が委員辞任され、その補欠として上田耕一郎君が選任されました。  また、本日、吉川博君が委員辞任され、その補欠として吉村真事君が選任されました。     ─────────────
  3. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案の各案を一括して議題といたします。     ─────────────
  4. 田中正巳

    委員長田中正巳君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として国立大学協会会長平野龍一君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 田中正巳

    委員長田中正巳君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。久保亘君。
  7. 久保亘

    久保亘君 私は、行政改革の前提となるべき政治倫理の問題について最初にお尋ねをいたします。  松村謙三先生が、かつて中曽根さんのことを緋縅のよろいをつけた若武者と評されたことがございます。私も中曽根さんの若い時代のいろいろな演説や御発言等について、ずいぶん当時も読んだり聞いたりさせていただきましたが、今度もまた少し念入りに調べさせていただきました。私は、その時代中曽根康弘さんがいま同一人物なんであろうかと思うほど、あなたのお考えがお変わりになっているのじゃないかと思うことがあるのでございます。  まず、その点についてお尋ねいたしますが、昭和二十九年二月二十二日、衆議院予算委員会において造船汚職に関連をして、綱紀粛正についてずいぶん厳しい御質問を展開されたことがございますが、そのときのことを御記憶でございましょうか。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大分昔のことでございますが、趣旨は記憶していると思います。
  9. 久保亘

    久保亘君 この予算委員会には、出席者、これを調べさせていただきますと、倉石委員長のもとに、現在も議席をお持ちの方やまだ活躍中の方がたくさん出ておられます。  この予算委員会に出ておられる委員方々の主な方は、灘尾弘吉さん、福田赳夫さん、稻葉修さん、河本敏夫さん、櫻内義雄さん、古井喜實さん、春日一幸さんなどが出ておられ、そしてこの委員会中曽根さんに、百万円収賄疑惑ありということで名指しで追及を受けられた石井光次郎さん、大野伴睦さん、こういう方々国務大臣として御出席でございます。また出席政府委員の中には当時の刑事局長、現在弁護士をおやりの井本臺吉さんが御出席で、ずいぶん御答弁になっております。  この会議録によりますと、中曽根さんは、その日国会逮捕許諾の請求が出ました有田議員の問題について、「私は同じ国会議員といたしまして、政党政派を離れて、今日の事態国会に及んだということを、国会議員の一人として国民に申訳なく思います。議会政治の権威を高めて、国民の負託に沿うという点については、党派を離れて国民に対して共同連帯責任」を持つものだとまず冒頭に述べられております。  そして、特に問題なのは、この問題をめぐって当時の内閣に辞職するよう責任追及されたことに対して、副総理緒方さんが、「問題は今や司直の手にゆだねられておりますので、私どもといたしましては、司直の厳正公正なる取調べの結果をまって、それに対する善処の道を考えるべきであると思っておりますし、その間におきまして時局はきわめて重大であります」から、この法案審議予算審議あるいは今回御審議を願っております重要法案を一日も早く実現できるようにというのが緒方さんの答弁でございます。  この答弁に対して中曽根委員は、「私は緒方総理の御答弁をきわめて遺憾に聞いておりました。」、こういうことでこたえられて、「今日の問題は、法案の問題であるとか議会手続の問題ではありません。」、これはあなたが言われたのですよ。「御存じのように、この国会をとりまくすべての社会に、議会否認の思想が横行して来ているのであります。これは恐るべきもの」なんだから、「司直の手が延びて、これが司直の手によって判断を受けるまでは、このまま政治が継続されるということをお考えになるその考えが、私は今日の国家の災いをなしている考えだと思うのであります。」、こうおっしゃっているのでありますが、今回の田中問題に対するあなたの態度は、ちょうどそのときあなたが遺憾であると言って御批判になりました緒方国務大臣考え方になっておって、あなた自身の考え方は当時とずいぶん国会のあるべき考え方について変わってきているのではないか、この点についてお聞かせいただきたいのであります。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治倫理が非常に大事であり、民主政治国民の信頼の上に成り立つという、そういう考えは変わっておりません。  ただ、やはり政府になりますと、重要法案というものを抱えて、国民生活というものを目の前に見て、いろいろ公約もしておるわけでございます。私は今度の行革国会、あえて行革国会という名前をつけましたが、この国会おしん国会である、いかなる艱難辛苦をしても法律を通そう、そして政策を遂行しよう、特に減税と行革法案等々はどんなことがあっても、石にかじりついても地に伏しても成立させなければならぬということをまず国民にも党員にも申し上げまして、それで必死になって一生懸命やってきておるところでございます。韓信のまたくぐりまでやると言って、一部言葉が不適切であると言われたこともある。それぐらい法案あるいは政策遂行公約の実行というものにかけて一念を持ってやってきておるのでございまして、そういう立場をはっきり宣明していま努力しておるわけなのでございます。  政治倫理の問題も大事な問題でありますけれども、その政治倫理に関する問題については、若干、久保さん及び社会党皆さんと取り扱いについて見解を異にしているところがございます。これは残念でございますけれども、しかし政治がやはり国民の信の上に立たなければならぬ、そしてさらに国会議員あるいは集団倫理として考うべき点があるという考えをここに明らかにしておるのでありまして、一田中問題、個人の問題というもののみにとらわれないで、議会全体として、政治全体としてどういうふうに制度的にもこれを改革し、直していくかということが大事なことなので、そういう意味で倫理協議会設置とか、あるいは国務大臣や政務次官に就任したら財産を公開しようとか、あるいはいまの定数問題までもひとつ検討しようとか、あるいは議院証言法を推進しようとか、そのほか具体的な集団倫理としての政治家全体が政治を浄化するための施策もあえて申し上げており、先般は新自由クラブと合意を見て、それを正式に実行するということを新自由クラブとの間でも約束しておるわけでございます。私は、それがさらに一歩前進したやり方である、そう考えております。  そのころは、まだそういう制度全体をどう直していくかということについては発言がございません。いまもう一歩前進いたしまして、具体論をもって政界全体をどうきれいにしていくかということを社会党皆さんにも申し上げている、そういう次第なのでございます。
  11. 久保亘

    久保亘君 私がお尋ねしているのは政治哲学の問題です。三十年前の中曽根は今日の中曽根にあらずとあなたがおっしゃるのならば結構ですよ。そうすると、まさに風見鶏ここにあり、こういうことになるのでしょうがね。  しかしその後が、もっとあなたの発言は今日のわれわれにとっては大変参考になることを言っておられるのです。「一体政治というものは逮捕状ラインで移動しておつてよろしいものでありますか。政治というものは、道義であるとか倫理であるとか、そういう線で動いておらなければ国民を指導するものにはならないはずであります。逮捕状の線で政治が常に動いておるというのであれば、これは検察庁にすべて政治をまかせればよいということになります。これでは政治の価値もなければ存立の意義もありません。今日の世の中の状態を一体国民はどう考えておるか、政治家党利党略で金がほしさに財界と結託して収賄ばかりして、それが出て来たら隠そう、逃切ろうとしておる。」これはあなたが言われたのですよ。  そして、逮捕状ラインではいかぬ、政治道義とか倫理とかいうものはもっと政治責任でやれと言っておられるあなたが、今日は逮捕状ラインどころか、三審、最終判決ラインまでこの政治道義とか倫理の問題を先送りしようとされているのですから、これはもう中曽根康弘三十年前とは同一人物にあらず、こういうことになるのじゃないかと思うのだけれども、いまのあなたの御答弁というのは、そういう基本の問題をそらして、私は総理大臣だから法案を通してもらいたいと思っているのだ、こう言っておられる。この時代には、あなたは緒方さんがそうしてくれと言われたら、そんな答弁はまことに遺憾であると言われているのです。だから、その辺のところを、私はその当時は間違っておりましたとおっしゃるのならそれで結構ですが、もう一遍聞かしてください。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 久保さんには、状況に対する判定において私とあなたと違うところがあるということがわかりました。逮捕状まであるいは起訴までという段階と、一たん裁判所に係属されてしまった後の段階では違うわけであります。  したがって、ロッキード事件が起きましたときに衆参両院国会決議がありまして、この政治的、道義的責任の究明に調査に協力する、政府は協力すべし。あのときは責任追及とは言っていないのです。調査ということを言って、そしてロッキード委員会ができたわけであり、ですからそれがあのときの国会決議調査を行うということであります。  それで、今度は一たん逮捕され、起訴され、裁判所に係属されたという、裁判に係属された以後というものは、これは三権分立趣旨にのっとりまして、裁判所がやることをわれわれは静かに見て、裁判所判定に影響を及ぼすようなことは慎むというのがやはり三権分立を重んずる国会議員立場ではないか、また行政府の長としての責任を持っておる私の立場ではないか、そう思うのでございます。  裁判に係属される前と、一たん裁判に持ち込まれてしまった後とは、状況がまるっきり違ってきている。そういう判定もやはりここでしていただかなければ判断を間違う。裁判に係属された後は三権分立の原則を守っていくということが正しい。起訴とかあるいはそれに至る前というものは、やはり政治的、道義的責任という問題で真相を究明し、調査するということは当然正しいことである、私はそう思っておるわけです。
  13. 久保亘

    久保亘君 中曽根さん、いろいろと苦しい立場を御回答になるのはわかりますけれども、それならあなたはロッキード事件が起きたとき与党幹事長であった。そのときに、やっぱり昭和二十九年造船疑獄追及されたときのあなたの考え方に立てば、与党幹事長としてこの問題にきちっと決着をつけるということをおやりになってしかるべきだったのじゃないですか。それをそのときやらなかったことが、あたかもこれから先この問題はもう三権分立だから裁判に任しておけばいいのだというようなことにはならないのでして、そしてあなたはこのときに、疑惑段階でも責任をとるべきだということで、私の政治責任をかけてということで、石井運輸大臣とか大野国務大臣に百万円ずつ渡ったということでずいぶん厳しい追及をされております。  そして大野石井大臣は、そのことに対して弁明をその場でやられておる。それで、政治責任とは何をやるのかと言って大野伴睦さんはあなたに激しく詰め寄っておられますが、そのことに対してあなたは余り深追いをせずに、これで私の質問を終わりますということで最後は結ばれておりますね。しかし、あなたにとってそのときの考え方というのは、これは逮捕状であるとか刑事犯罪であるとか、そこまで事態がいかなければ責任もとらぬ、そういう事態民主主義の没落を意味するという発言までありますよ。  だから、それぐらい政治というものに対して厳しい、また国会における責任のとり方というものに対して非常に厳しい立場をとっておられたあなたが、一転してこの問題については三審制度だからとか、あるいは無所属の人だからというようなことで、言を左右にしてこの問題の決着を避けられたということは、それがかえって国民にとって法案審議がおくれるというようなことで迷惑をかける一番の原因だったのじゃないですか。その点は、少なくとも昭和二十九年にあなたが主張せられたそのことに立って考えるならば、中曽根さんは、あなたがもし自分政治信念は一貫して変わらぬと言われるならば、今日においてはあなたはごまかしておられる、そういうことになるのじゃないでしょうか。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、これが裁判に係属されて法廷で争われる、そういう段階と、その以前のまだ事態がはっきりしない、そして起訴も行われない、そういうような段階とはまるっきり状況が違うのでありまして、そういうまだ起訴も行われないというような状況のもとにおいては、これは国会はその疑惑をただすために質問をする、それは厳しくやりたわけであります。しかし、一たん裁判所に係属されて裁判官判断、そして検察と弁護士がここで攻撃防御をやって裁判官判断を求めるという法廷に移管された場合には、これは静かに見守るというのが行政府としての正しい態度であり、立法府としての正しい態度である。そういう点はちゃんとけじめをつけて申し上げておる。
  15. 久保亘

    久保亘君 これ以上あなたにこの問題をお聞きしても少しお気の毒な気持ちもいたしますので、しかし、疑惑段階でも政治家として道義倫理けじめをつけると言っておられるあなたが、一審の判決が出た段階で、これは裁判の問題だからといって国会において道義倫理けじめをわれわれがやるべきものじゃないとおっしゃるのは詭弁に過ぎるのじゃないでしょうか。それは私は中曽根さん聞こえませんと、こうお答えしなけりゃならぬと思うので、もう一遍お暇がございましたら、自分でおやりになった質問でございますからお読みになって、当時の中曽根康弘を思い起こしていただきたい、こう思うのです。  次に、国税庁長官見えておりますか。——見えてない。それじゃ、だれか政府委員で答えられる人いますか。  金脈事件について田中さんは、金脈事件が国会で問題になったときに、逐条これらの問題は自分調査をして国民の前に公表するという約束をされて九年、この問題はそのままになっております。こういうことが政治の信頼を国民から失うもとなんですが、とりわけ当時国税庁を中心にして金脈事件、ロッキード事件にかかわって調査をされたはずでありますが、この金脈事件における所得隠し、それからロッキード事件における収賄五億円などについて、国税庁はこれを所得とみなして徴税の措置をおとりになったのかどうか。おとりになったとすればその結果はどうなっておるか、御報告をいただきたいのであります。
  16. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  17. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 速記をとって。
  18. 久保亘

    久保亘君 それではいまの問題は答弁がおできになる段階で答えてください。  総理に続いてお尋ねいたしますが、田中曽根会談と巷間言われているホテル・オークラ九百二号室の密談ですね。これはプライベートな会合と言われておりますが、報道されるところでは、与党の役員会等で協議をされ、しかもその結果について与党の公式機関に御報告になったと聞いておりますが、これはプライベートな会談ですか。
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和二十二年に同じく国会に議席をともにした、自来三十数年間日本の独立あるいは日本の復興のために努力してきた友達として、友人として個人的に会ったということであります。
  20. 久保亘

    久保亘君 プライベートな会談にしてはいろいろその前後のかかわり方が国民にとっては余りにもわかりにくく、やっぱり総理大臣刑事犯罪人の田中さんと会われた。そしてきのうの説明では、政局打開や日本の民主主義の発展について話し合ったと、こう言われるのですね。そうすると、総理大臣刑事犯罪人が政局の打開や日本の民主主義の発展について話し合うということは、やや国民から見ると理解できない、常識以前の問題という気がするのですが、いかがでございますか。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) きのうの御答弁でも申し上げたと記憶しておりますが、政局の問題あるいは政治倫理の問題等々も話をして、そして自分としてはできる限りの助言をいたしましたと、そう申し上げた、そのとおりでございます。
  22. 久保亘

    久保亘君 余りそういうことをあの時点で、国会で問題になっている人物についてあの時点で総理大臣がプライベートなことだといっておやりになるのは、かえって政局を混乱させるもとになったのではないか。その後、会談の片一方側は記者会見を通じて公式に自分立場を表明された。あなたの方は公式にはノーコメントになっている。だから、相手の了解があればと言われるが、一方の方はそれを受けて自分立場を表明された。あなたの方は一切それはプライベートな会談だからというのでは、なかなかわかりにくいことじゃありませんか。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、個人的に友人として助言いたしましたそういうことについては、党の幹部からも、党の総務会にある程度申し上げる方が適当であろうというお話もあり、私もそういうふうに感じましたから、そういう点に関する部分については報告もなし得る限度においてやったわけであります。  私との会談の後、田中総理自分の所懐あるいは所見をお述べになった。 その所懐というのを読んでみますと、国民皆さんに申しわけなかった、あるいは党員に御迷惑をおかけした、あるいはジャーナリズムについては自分はこう考えている、試練に耐えていくと、そういうことで田中総理自分の心境について国民の皆様方にそれを表明したということが出てきたようであります。私はどういう御意図でそういうものを出したか知りませんが、それは田中総理が個人の自由において自分のそういう所信を表明されたことであり、それはそれなりに評価しておるのであります。
  24. 久保亘

    久保亘君 あなたが昭和二十九年には公式の委員会において、疑惑だという段階政治家についてここで名前を挙げて、金額を挙げて糾弾をされた。そういうあなたが田中さんに対して、やっぱり日本の政治浄化のためにはあなたはやめるべきだということもおっしゃらなかったということになれば、これはもう、緋縅のよろいなどはとっくに外された、老獪なる中曽根さんしか残っていない、こういうことになりそうでありますが、あなたが言わぬと言われるのをこれ以上聞いたってむだだと思う。  それなら、田中さんの側の開き直りの一つに対して、あなたどう思われますか。田中派の幹部で毎日新聞のインタビューを受けられた方が、田中派だけがなぜ悪い、他派閥も企業から受け取っているではないか、企業が何もなしに金を出すわけがない、見返りがあるからだ、こういうことをおっしゃっております。他派閥というとあなたの方も入ると思うのですが、どういうふうな御感想をお持ちですか。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はその記事を読んでおりません。やっぱり出典を確かめて前後の脈絡をよく見ないと、こういうところで責任ある答弁はしない方が適当であると思います。
  26. 久保亘

    久保亘君 あなたも出典も明らかにせずに政治責任をかけて大野伴睦さんを追及された。こんなの、出典はもういつでもはっきりしますよ、新聞の第一面に大きなスペースで載せられたことなんですから。都合の悪いことはほおかむりして、どうもここでは答えにくいとかいっておっしゃいますと、私の方も聞きようがないわけでございますけれども。  それでは、あなたがそういうような状況を踏まえて、全法案成立と正常化がその後の政局運営の前提であるということを言っておられる、その政局運営というのは、衆議院の解散を意味するのですか。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政局運営ということは、いまの状況あるいは政治の進行、あるいは自民党としていろいろ十二月に行われる予算編成に対する準価、そういうすべてを包含しておる運営方針を言うわけであります。
  28. 久保亘

    久保亘君 しかし世間は、衆議院の皆さん、われわれを含めて十二月十八日総選挙を既定の事実としてやっておりますわ。そして地方の選挙管理委員会も大体それで準備を始めているのじゃありませんか。その政局運営というのはそういうことだと思います。  そうすると、余り腹を立てずに聞いてください。たしかあなただと思うのだけれども、総理の持つ解散権というのは黄金の小太刀のようなものだ、一遍この小太刀を手にしたら、これにほおずりをしたくなるのが云々ということをおっしゃったのは、たしかあなただと思うのだ、非常にかっこいいことを言われるから。そうすると今度の場合は、田中決議案の上程を阻止し、そして何とか国会をみずから空転させたものを中央突破を図っていくという、そのことのために黄金の小太刀をだれかに渡されたのじゃないか。そういうことを考える人たちが出てくるのでありますが、総理専権の解散権と田中決議案とを置きかえた、取引した、こういうことはありませんか。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうことは全然ございません。
  30. 久保亘

    久保亘君 あったか、なかったか、やがて結果がはっきりさせるでしょう。  それから、辞職勧告決議案をあなたが批判される、そのときに、多数党の少数党に対する配慮だと、こう言われる。これはおかしいのじゃないですか。もし多数党が少数党を葬る凶器として使うということになるなら、二分の一であろうと三分の二であろうと数は問題じゃない。要するにそれは民主主義の問題なんじゃないですか。三分の二だったって、三分の二を擁する多数が少数の政敵を葬るという武器にやっぱりなるのじゃないですか。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三分の二と二分の一というのは大変な差があるわけです。憲法上三分の二の多数を要すると特に規定しているというのは、三分の二に意味があるから言っておるのであって、二分の一というなら、いま自民党がやろうと思えばほとんど何でもできるのじゃないでしょうか。三分の二ないからそういうことはできない。そういうことなんで、この二分の一と三分の二というのは大変な差があるというふうに御認識願いたいと思います。
  32. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 暫時休憩いたします。    午前十時六分休憩      ─────・─────    午前十時二十分開会
  33. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 再開いたします。  御案内のような事情でございますので、午前十一時まで休憩することといたします。  なお、平野参考人には御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございましたが、御案内のとおりのような事情でございますので、本日は御退席いただいて結構でございます。大変恐縮でございました。  それでは休憩いたします。    午前十時二十一分休憩      ─────・─────    午前十一時開会
  34. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいまから行政改革に関する特別委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、梶原敬義君が委員辞任され、その補欠として菅野久光君が選任されました。     ─────────────
  35. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。神谷信之助君。
  36. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、まず田中問題についてお聞きいたしますが、昨日の総理答弁を聞いておりますと、刑事責任政治的、道義的責任とを混同するというか、ごまかすというか、すりかえる、そういう答弁になっているように思うのです。したがって、田中辞職勧告決議案をなぜ今日の国会の最優先課題として重視しなければならないのか、まずこの点を明確にしなければならぬと、こう思います。  われわれが問題にしているのは、田中被告の刑事責任ではありません。それは裁判所の独自の問題であり、そして第一審判決はそれについて懲役四年の判決を下しているわけであります。他方、国会政治的、道義的責任を究明するのでありまして、これは総理が言う三権分立に反するどころか、三権分立のもとにおける国権の最高機関としての国会本来の責務にほかならない、こういうように思います。だからこそ五十一年のロッキード事件にかかわる議長裁定でも、国会政治的、道義的責任の有無を調査すると、こう明記しております。しかも、総理は前々国会のわが党の宮本議長の質問に対して、本院決議と議長裁定はいまも尊重するとお答えになっている。国会ロッキード事件に関する政治的、道義的責任調査すべき責任を持っている、そういう任務を持っているということ自体は総理自身お認めになると思うのですが、いかがですか。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりでございまして、この問題について私がごまかしているとか、そらしているとか、そういうことは全くありません。
  38. 神谷信之助

    神谷信之助君 ところが、この国会での審議を通じても、総理はこの議員辞職勧告決議にいろんな疑義があると、こうおっしゃっておられますが、それはわれわれから言うならば田中擁護のためのごまかしと言わざるを得ない、こう思うのです。  その証拠に、田中彰治代議士の恐喝事件があります。そのとき自民党国対委員長みずから辞職勧告を提起をしております。当時は幹事長田中角榮元首相であり、そして副幹事長は現在の二階堂幹事長らがおられる。そういう状況の中でこれが提案をされ、そして総理自身も当時、この田中彰治代議士の辞職勧告決議案に対して賛成をなさっている。だから、田中彰治代議士のこういう事件でさえも、当時その政治的、道義的責任を指摘して辞職勧告決議を行うということになっている。  ところが、今回は、御承知のように総理の地位を利用して五億円という巨額の賄賂を手にし、そして一審で有罪と断定された現在の段階で、田中角榮被告に関する問題です。判決の中に、内閣総理大臣は、」「公務員として最高の地位を占め、最も広汎かつ最も強力な権限を有しているのであるから、その職務執行に対し要求される公正さの程度は最も高く、したがって」「本件贈収賄罪が敢行されたことによって」「その社会に及ぼした病理的影響の大きさにははかりしれないものがある。」「これより生ずる」「航空行政の適正な運営を担保すべき運輸大臣の認可権限の行使を直接、間接に利権化することを意味し、わが国対外経済政策ないし航空行政の公正な運営、さらにこれが内閣総理大臣の行為にかかるものであることから国政全般に対する国民の信頼にそむくこと極めて大なるものがある。」こういうように一審判決の情状の部分で裁判所も指摘をしているわけです。  だから、田中彰治代議士の時期の恐喝事件とは雲泥の差の重大な政治的、道義的責任ある問題だというように思うのです。したがって、御本人がみずから辞職なさらないときに、国会がその責任を果たす意味から言っても、辞職勧告決議案に決着をつけ、これを明らかにしていくというのは当然のことじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から申し上げますように、国会議員は憲法により及び国会法によりまして議院から放逐される、追い出される、やめさせられる、そういうときには三分の二の多数で行うというふうに保障されておりますし、また選挙民がそれをもう一回当選させてきた場合には拒むことができない、そのように書かれておる。これは国会議員の言論の自由を保障する、身分保障を徹底してやらして、そして公正な議会政治、少数者を保護してやろう、そういう配慮からきておるわけであります。三分の二という多数でなければできない、二分の一ではできないということは、それだけ慎重に扱って少数者を保護し、言論の自中を確保しようという、そういう配慮から行われておるのであります。それを二分の一の決議で、決議は二分の一でいいわけですけれども、二分の一という数字で、それでこれを国会の外へ追い出すような、事実上政治的効果を及ぼすようなそういう決議案というものは、果たして憲法や国会法との趣旨から見ていかがであるか。  結局、国会というものは国権の最高機関で、日本の主権の重要な部分を形づくっておる国家の機関でありますけれども、この機関がどうして動いているかと言えば、選挙民が代表者を選挙して、その代表者がいろいろ働いてこの国会としての、最高機関としての機能をつくっているわけであります。そうしますれば、結局、本人が自分でやめると言うか、あるいは選挙民がもうあなたやめなさいと言って投票しなくなるか出てこれなくなる、そういうこと以外に第三者が選挙民と国会議員との関係を切断してしまうということは、よほどこれは注意を要する。  もう二分の一で事実上そういう強制力、影響を持つというような形でやってしまえば、これは笹本委員長だって、自民党が、じゃ前の事件で結審した場合には国会から追い出されちまう、二分の一でやればやれる。現に自民党の玉置議員や何かがそういうものを提起したわけでしょう。われわれはそれになぜ慎重であるかと言えば、やはり二分の一という形でやると、後に議会政治の上に大きな傷を残しはしないか。かつて齋藤隆夫議員が粛軍演説、反軍演説をやったときに、時代はとうとうとして新聞もラジオも国民も除名すべしというような気分になった。それで除名してしまった。しかしそれは、あの齋藤先輩を除名したということは戦前の軍国主義時代国会の大変な汚点になったわけです。われわれがそういう冷静な判断をもって将来の日本の議会政治を擁護していくという点からも慎重に行動するということは当然のことなのでございまして、そういう意味からも私は慎重にしなければならぬと、そういうことを申し上げておるわけなのでございます。これは少数者を擁護して、そして言論の自由を保障する、そういうために私たちは特に配慮しておることなのであります。
  40. 神谷信之助

    神谷信之助君 国会議員の身分が保障されておるし、そして国会議員は主権者たる国民が選挙するのだ、この点はそのとおりです。一方、国民は公務員を罷免する権利を持つし、そして選挙権を行使することによって自分の意思を表明する権利を持っておるわけです。問題は、辞職勧告決議案が法律上直接的拘束力を持つものではない。これは明らかだ。しかし実際上の政治的圧力を加えるのだと、こうおっしゃる。しかし、国会決議を行うということは、本人の自発的な意思を促す、その決定を促すということであると同時に、私は国会の意思を国民の前に明らかにすることなんだと。本院決議及び議長裁定に基づく、そして国会みずからがみずから決議して自分の責務というものを国民の前に公約した、そのことを放棄して短絡的に国民の選挙によって求めるということは、国会みずからの決めた責任を放棄するものです。このことがいま国民国会に対し要求している最大の問題じゃないか、私どもはそう考える。  したがって、総理が議長裁定をいまも尊重するとおっしゃるならば、この議長裁定に基づいてその政治的、道義的責任調査をし、そしてその結論を、決着をつけられる今日の状況の中で、国会が、本人が辞職をしない限り国会自身の意思を明らかにする意味で田中辞職勧告決議案を衆議院の本会議に上程する、採決をするということは当然のことであります。総理はいろいろおっしゃったけれども、結局国会の任務の放棄を要求し、そして田中問題をうやむやにし、結果として田中を擁護するという、そういう結果にしかなってない。政治は結果だとこの間からおっしゃっていますけれども、そういうことじゃないですか。
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは政治倫理ということを言われますが、きのうも申し上げましたようにお医者さんの倫理もある、あるいは学校の先生の倫理もある。お医者さんの倫理で一番大事なことは何かと言えば、私生活がきれいだという点もありますけれども、患者を大事にして、りっぱな手術をして病気を早く治してくれる。そして正しい生活をしていただく。お医者さんに一番期待しているのは病気を治してくれるということなので、それに一番忠実で一生懸命やってくれるのがお医者さんの倫理なのじゃないでしょうか。学校の先生の倫理というのは、やっぱり生徒を愛して、そして一生懸命子供たちを育ててりっぱな子供たちをつくってくださるというのが教師の倫理であって、教師が個人としてりっぱな生活をしてくださる、これももちろん当然のことであります。しかし、お医者さんの倫理は病気を治してくれる、先生の倫理というものは子供をかわいがってりっぱな子供を育ててくださる。  政治家倫理というのは何であるか。選挙民の委託にこたえて公約を実行して、そして選挙民を繁栄させ国を安泰にしていく。これがやっぱり政治家倫理の大事な点で、しかし生活も正しくりっぱでなければならぬと要請されておる。しかし、政治家というものが存在しておるという独特の理由は、やはり仕事をして、国民に対して公約を実行して生活をよくしてくださる、それが政治家倫理の大事なポイントである、私はそれを言いたかったのです。  ですから、今度の国会におきましても、いま減税をやろうと思って法案を出しておる。行政改革を実行しようというので七つの大きな法案を出しておる。いろんなそういう大事な仕事をやっておるのです。それなのに倫理倫理と言ってそっちばかり騒いで、大事な法案の方、大事な生活の問題がなおざりにされているということは、私は国会議員倫理に反しているのじゃないか、むしろこっちの倫理の方が国会議員としては大事な倫理でもあるのです。個人の倫理も大事だと思いますよ。それはお医者さんがずぼらな生活をしていいとは思わない。いわんや政治家においてをやであります。しかし法案が出て、減税を公約して与野党一致して減税をやろうと一年間もやってきた、この大事な仕上げのときになって国会を休んでやらないというのは重大なる倫理違反である。だから両方やっていただきたいと私は思います。
  42. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま総理答弁を聞いていると、総理の言う政治倫理、すなわち選挙民に対して実績を残したらそれでいいのだ、その総理の言う政治家倫理がちゃんと確立されていれば、片一方の五億円という前代未聞の巨額の賄賂をもらって、そして判決文にあるように、日本の政治を利権化する、行政を利権化してもよろしい、こういうことになるのです。この判決の条章のところではっきりと、先ほど言いましたように航空行政や対外的な経済政策、これを利権化し、そしてゆがめてしまった。そして国民の信頼を失ったこと、そして国民の大きな批判にさらすのは当然だというそういう点は、逆に国民の喜ぶことをしたら結構です、そんなことはもう政治家倫理の一つにすぎないというようにおっしゃる。だからそこに田中擁護があるわけです。  しかも減税も、あるいは行政改革についても、これは後で触れますけれども、ごまかしの減税なんです。増税抱き合わせの減税、そういうものをやること。われわれやらないとは言いませんよ、やることも大事です。しかしいま国民国会に求めているのは、総理大臣の地位を利用して五億円という巨額の賄賂をふところに入れ、日本の政治をゆがめたこと、これに対し国会はきっぱり出せ。総理大臣も、われわれ反対したけれども国会で多数で決めた、選出したのです。田中角榮氏を総理大臣に決めたのも国会なんです。その国会が決めた総理大臣が五億円の賄賂をふところに入れて政治をゆがめた。国会責任が問われるのはあたりまえだし、それぞれ国会がきちっとした責任を明らかにするのは当然のことであります。そのことを抜きにして、そして前へ行きなさいというのはあなたの御都合主義です。逆に言うならば、田中問題は棚上げして自分の希望することだけやってくれ。ひとりよがりもはなはだしい、独善そのものと言わなければならない、そうじゃありませんか。
  43. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 倫理も大事であるということを前から申し上げましたが、田中総理がやめて倫理が片づくという問題でもないのです。そういう個人の問題よりも大事なことは、国会全体として、政治家全体としてあるいは政党全体としてああいうことを将来起こさないようなどういう措置をやるか、それが大事な政治家倫理なんです。  そこで、われわれは新自由クラブとの間でも話をし、私も党の幹部にこれだけを検討してもらいたいと言って、大臣、政務次官になったら資産を公開する、あるいは議院証言法、これをつくることに努力していこうじゃないかとか、あるいは国会倫理協議会をつくって各党各派がこういうふうに自分たちが自粛する、そういう方法、方策を決めて自分たちで実行しようじゃないか、そういう政治倫理のための協議会をつくろうじゃないか、あるいは金のかからない選挙をやる選挙法の改正について検討しようじゃないか、あるいは議員定数の問題もある。議員定数の問題もひとつこういうときだから考えようじゃありませんか。そういう点で、国会全体として、政党全体としてみんながかぶる大事な倫理の問題を片づけていこう、これが実のある前進なのです。そういう意味において私たちはすでに新自由クラブと約束もし、私自体も党にいろいろな勉強をお願いして指示しておるところなのでありまして、決して倫理の問題をおろそかにしているのではない。  一方において、暮れになってきて国民皆さんは減税を待望していらっしゃるし、来年の減税についてもわれわれは一兆円の減税を約束しているわけですけれども、どういう減税をやってくれるのか、そういうような質問国会議員はやるべきです。しかし、この委員会において余りそういう質問を聞いたことはない。みんな倫理倫理と言って一日中リンリン言っているという感じなんです。生活の問題をなぜ取り上げないのか、国民はそれを待っているのじゃないか、それを私は特に申し上げたいのであります。
  44. 神谷信之助

    神谷信之助君 総理、きわめて重大です。先ほども宮本議長の問題を出しましたけれども、これは歴史的にも法律的にも解決済みの問題なんです。まさにすりかえ、ごまかしの論理であります。いまも倫理倫理とおっしゃる。そして生活の問題をやらないとおっしゃる。しかし総理が、また自民党が反対をせずに衆議院の本会議ですぐ採決すれば済む問題なんです。それを四の五の言って引き延ばして、そして国会自身の責任をみずから放棄することを強制する。そこに問題がある。時間がかかる問題じゃない。みずからの責任を棚に上げてとやかく言うというのは、私はまさに田中擁護の姿だというように思うのです。  そこで率直に聞きますけれども、田中角榮氏が居座っています。これを総理はお認めになるのですか。それとも、これは困るというように思っておられるのですか。
  45. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、いま総理とおっしゃいましたけれども、ともかく内閣総理大臣という行政府責任者として、議員の進退について干渉がましいことは言わない、特に立法府の議員に対して内閣にある者がいろいろつべこべ言うということは差し控えなければならない、そう思っております。
  46. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうやって逃げておられるのですけれども、結局のところは田中さんがおやめにならなければそれも仕方がない、こういうことになるのでしょうね、本人の御意思だから仕方がありませんと。  それはそのままにしておいて、政治倫理に関して協議会をつくっていろいろやろうとおっしゃる。これもいただけない。ロッキード問題が起こって真相解明を追求する中で、再発防止のために各党はいろんな提起をいたしました。しかし、結局のところは自民党が反対をしてなかなかまとまらない。今度は、鈴木内閣時代でしたか、佐藤孝行事件が起こったときには、同じように政治倫理委員会をつくろうと、こう言って自民党は提案をした。それは議運の理事会でやりましょうとなって、衆議院の議会制度議会にゆだねられた。ところが、自民党の方が、政治倫理委員会というのは研究すればするほどわからぬ、こう言ってずっといままで何にもやっていない。  いま田中問題で国民の大きな批判が高まって、そうして政局の混迷状態を迎え、何とかそれを切り抜けようといって、その田中問題をごまかすためにいま盛んにこの国会新自由クラブと約束したということを得々と述べる。内容にはいろいろ問題があるけれども、そのこと自身はわれわれがずっと要求してきたことなんです、中身は違うけれども。逃げ回ってきたのはあなたじゃないですか、あなた方自民党じゃないですか。だから、そこに明らかに田中問題をすりかえる、こういう重大な事態が生まれてきているというように思うのです。  今日の田中問題というのは、私は個人の問題ではないというように思うのです。それは一つは、田中角榮氏自身が自民党の総裁であったし、そして自民党内閣総理であった、その時期に起こった犯罪事件である。そしてその地位にかかわって犯した重大な現職総理の犯罪であった。 だから、ここで問われているのは、田中角榮氏自身の政治的、道義的責任とともに、それらを生んできた構造的なもの、言うなれば自民党の金権腐敗的な政治そのものが問われているのじゃないでしょうか。この点はどうお考えですか。
  47. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げておりますように、われわれは言論の自由とかあるいは少数者保護ということをゆるがせにしてはいかぬ。一時の興奮に駆られたら大変な議会政治の汚点を残す。齋藤隆夫先輩の例を申し上げました。そういう考えに立ってやっておるのです。  それで、倫理委員会倫理協議会は性格が違うわけです。倫理委員会と言って皆さんが申したころは、恐らく特別委員会か常任委員会でおつくりになるという考えであった。これになるというと、大体揚げ足取りで泥合戦になる危険性がある。これはますます議会の品位を低めて余り芳しからぬ結果をもたらす。そういうのじゃなくて、むしろ倫理協議会としてもっと高度の、そして集まる協議委員方々も党を代表するていの方にお集まりをいただいて、政党政治をよくし、また議員の倫理を向上していくためにこういう方策でいこうという大局的見地に立った判断をして、各党がみんな持って帰ってそれを実行する、そういう倫理協議会をつくる方が好ましいというので、私たちはそういうことを提議し、また新自由クラブともそういう話で一致したのです。  恐らく参議院におかれましても、この間、本会議倫理協議会のお話をお決めになりました。私は非常に敬意を表しておりますけれども、そういう御趣旨ではないかと思うのです。あれは特別委員会でもなければ常任委員会でもないようでございます。私は、ですから非常に敬意を表して、われわれは忠実に実行いたしますと申し上げた次第なのでございます。どうぞわれわれの真意を御了解願いたいと思っておる次第です。
  48. 神谷信之助

    神谷信之助君 あなたはまた何遍もそうやってすりかえておられますが、それじゃひとつ変えますが、十月二十八日に会談をなさったものについて、きのうも、あれはプライベートな会談だから相手の承認を得ずに中身を公表することはできない、こういう御答弁ですが、しかし、プライベートであれ何であれ、総理であるあなたが、なぜわざわざ無所属で第一審の実刑有罪の判決を受けた刑事被告人と会わなければならなかったのか、この点はいかがですか。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 判決以来、国会は空転の状況になって非常に残念でございます。われわれは、ともかく行革法案を成立させ減税法案を成立させ、そして国民皆さんに対する公約を実行しよう、こういうわけで臨時国会をお願いしておるわけでございますから、また私は臨時国会前から、今度は行革国会おしん国会だ、どんながまんをしても法案を成立させて公約を実行するのだ、そういうことを申し上げてきたわけです。そういう観点からすると、国会が空白になっているということは国民皆さんにも申しわけない次第でもあるし、こういうような状況のもとにどういうふうにしたらいいのだろうかと。  そういうわけで、私は自民党総裁でもなければ総理大臣でもない一友人として、昭和二十二年以来一緒に国会に入ってきて、日本の独立やら日本の繁栄のために苦労してきた一友人として田中総理に会いまして、そしてこの国会の模様あるいは政局の問題、あるいは政治倫理の問題、こういう問題につきましてもお互いに意見を交換して、私としては最大限の助言をした、友人としての自分の誠意を尽くしたお話を申し上げた、そういうことなのであります。
  50. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、田中総理に対して、あなたのやったことについて政治的、道義的責任があるのじゃないのか、政治家として出処進退をはっきりさせなさい、それが国民の声です、そう率直におっしゃったのじゃなかったのですか。
  51. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人間には名誉というものがあります。友人が二人で話した内容をこういう公開の場所で申し上げることは私はお互いに慎んだ方がいい、そう考えておるわけです。
  52. 神谷信之助

    神谷信之助君 友人には名誉もあるのです、しかし真の友人は、本当のことを助言し合うのが真の友人ではないですか。あなたの先ほどの話ですと、政局が混迷している、その打開のためにわしもおしん国会ということでがまんにがまんをしているのだから、あなたもこの祭ひとつがまんをしてもらえないか、言うなれば犠牲になってもらえぬか、そうするとお互いに助かるのだと、こういうことでしょう。これでは田中総理もやめるにやめられないですよ。あなたは一審判決でこのように厳しくその責任が問われている、政治家ならその責任をとるべきじゃないか、こう言って率直に政治家としての、昨日の瀬戸山文部大臣の言葉をかりれば、偉大な政治家なら偉大な政治家らしくきっぱりとしてくれや、すべきだと言うのがあたりまえじゃないですか。しかもそれは、プライベートな会談だと言いながら、これでけじめがついたということで自民党の方は法案成立を目指して中央突破をやってくる、こういう状態になった。それで、その中身自身も自民党の総務懇談会で正式に行われているわけですから、プライベートな問題で言うわけにいかぬという問題ではないのじゃないか、私はそういうように思うのです。  だから、結局総理は、田中角榮氏の居直りを事実上認めて、そうして一方で、もう済んだものだということで悪法をごり押しにする。まさに私はこれは国民を裏切るものだというように思うのです。ですから新聞でも一斉にあの会談を茶番劇だというように報道していたわけでありますか、側隠の情と言いながら涙まで流す、そこまで田中角榮氏を擁護しなければならないのは一体なぜかという問題です。それは田中角榮氏とあるいは田中軍団の自民党における政治支配といいますか、隠然たる力、これが存在するからではありませんか。
  53. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に擁護なんかしているわけじゃありません。  それから第二に、自民党は公党であって、ちゃんと機関で物が決まっていく政党です。総務会があり、あるいは議員総会があり、また総裁というものもある。そういう全党の人たちが参加して、そして機関で物が決まっていく、したがって、一人の党の外にいる人の力が党を動かすなんということは、そんなことはあり得ないことなんです。共産党ならあり得るかもしれぬが、自民党ではあり得ない。
  54. 神谷信之助

    神谷信之助君 共産党を事実も挙げずに口先で誹謗するような不謹慎はやめてもらいたいと思います。けしからぬですよ。  それじゃ、あなたおっしゃるように、確かに機関運営を形式的にやっている。しかしそれは、その中で田中軍団が大きな力を持ち、そして党の機関の要職を握りやっていることは事実だし、その田中軍団の隠然たるやみ将軍と言われるのが田中角榮氏であることもまた世間の常識じゃありませんか。  ですから、田中角榮氏自身があの判決の日に、「総理大臣自分でなったつもりでいるから、(いろいろいわれると)右往左往するんだ。そうじゃないですか。」とか、「それを総理総裁に適任なのは自分しかないと思っているやつがいる。そんなことで総理総裁は務まらん。生意気なことをいうな。」、「総理総裁なんていうのは帽子なんだ。」というように言ったと報道されていますが、この帽子というのは単なる言葉のあやじゃないと思うのです。田中がここで帽子と言っているのは、田中角榮氏の意思でいつでも脱ごうと思えば脱げるぞと、だからみずからキングメーカーであるということを公然とうそぶいたと言わざるを得ないと思うのですが、この問題について総理、どうお考えですか。
  55. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは先般申し上げましたように、私は内閣の首班と言われるので、帽子じゃなくて首であると申し上げたとおりです。
  56. 神谷信之助

    神谷信之助君 そんな子供だましみたいな言葉のあやじゃないのです。帽子というのはいつでも自分が脱ごうと思ったら脱げるんです。脱がすことができるんです。そういう意味で言っているのですよ。そのことをごまかしてしまうというところに私は重大な問題があると思います。  田中問題に決着をつけて田中政治支配を断ち切るということが、今日の日本の民主政治の原点にかかわる重大問題だ。だから、そこで先ほども言いましたように、判決文で田中被告らの汚職行為、これが航空行政、それの適正な運用を担保すべき運輸大臣の認可権、権限の行使を直接、間接に利権化する、こういうことをやっている。 ここまではっきり断罪された刑事被告人がそのまま日本の政治を牛耳っている、こういう状態というのは私は世界に恥ずべきことだと思います。だから、こういう人物がいまなお自民党の最大派閥田中軍団を通じて自民党を支配するような事態を放置して、私は政治倫理を語る資格があるのかどうかと、そう言わなければならないと思うのです。  田中総理みずから第一回公判で、総理大臣だった者が逮捕され、起訴されたこと自体万死に値する、こう述べて、みずからその政治的、道義的責任を痛感するかのごとき態度をとっておりながら、有罪判決が出れば居直り、居座る。そして総理はこれに辞職を勧めることもしなければ、政治的、道義的責任を明らかにすることも勧めない。そして、国会自身がみずから課した責任である国会責任を果たすための辞職勧告決議案も上程することを妨害する。そして結局この居座りを是とし、事実上認めている。その上で集団的政治倫理の確立と言っても、国民にとってはきわめてそらぞらしい、白々しい言葉としか聞こえないわけであります。われわれは断じてこれを許すわけにはまいりません。  しかし、時間がありませんから、次は秦野問題に移ります。  総理は、十八日の本会議で、それからまた昨日の当委員会でも、法相として懇切を欠き、説明不十分の点もあったので注意をしたと言って、内容はなかなかいいことを言っている面もある、法相は非常に正直者で情熱家で正義感が強い、特に人権擁護に心を砕いている善人だということも昨日来盛んにおっしゃっております。ここで言っている、総理のなかなかいいことを言っているというのは、こういうことじゃないのでしょうか。文藝春秋の十二月号の対談で、加瀬秀明氏の「誰が田中だけを責められるかということですよね。」、こういう発言を受けて法務大臣は、「今、田中さんに辞職を迫っている連中に、人のことやめろという資格があるかと問いたいんだ。」、こう法務大臣は答えています。われわれが田中さんやめろと、そんな資格があるのかと問わなければならぬ、こう言っている。われわれも含まれるかと思ってよく考えてみると、この点については田中総理がちゃんと説明をしています。すなわち、判決の当日に私邸で次のように言っています。「あんなことをやれば」、つまり判決ですね、「あんなことをやれば国会議員は全部、有罪だ」と。だから、国会議員田中さんと同じようなことを皆なさっているのだ、こういうことを田中角榮氏自身が言っています。  わが党は、御承知のように、企業献金は一円ももらったことはない。国民の支持の中で政治活動をやっていますが、田中さんに言わすと全部有罪だと。「私のことをガタガタいう連中が党の一部にもいる。私は三十八年も国会議員をやってきた。そんなやつらが昭和二十年、二十一年にしてきたこと、それ以前のこともおれはすべて調べている。みんな知っている。」、こうおっしゃっています。こういう田中さんの発言になりますと、これは自民党員の中、あるいは自民党周辺のことなんだなと、こうわかります。だから総理、私は思うのですがね、法務大臣は、いま田中さんに辞職を迫っている連中に人のことをやめろと言う資格があるかと問いたいのだというのは、なるほどそういう意味では正直に正直者らしくなかなかいいことをおっしゃっていると、総理のおっしゃる指摘はここなのかなというように思うのですが、いかがですか。
  57. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのを御答弁申し上げる前に、自民党が田中総理から非常に影響を受けているようなことをおっしゃいましたが、私が内閣総理大臣を拝命いたしましてから一年になりますけれども、たとえば韓国へ行ったとか、あるいはアメリカへ行ってレーガン大統領といろいろな話をし、あるいは牛肉、オレンジの問題でも毅然たる態度をとってきたとか、あるいはウィリアムズバーグで世界の各国の指導者と世界の平和と軍縮の問題、特にSS20の展開問題等についていろいろ話をしてきたとか、あるいは行革を推進するために今度こういう法案を出したとか、われわれがやってきたこの足跡を見ても、どこに田中総理がそういう影響を与えたのですか。これはみんな自分で決めてきたことです。私の見識において、過去三十六年の国会議員としての勉強と見識においてこれをやっておるのであって、田中総理から言われてウィリアムズバーグでこうやったとか、韓国へ行ったのも田中総理の暗示であるとか、そんなことは全然ないのですよ。ですから、実績を見て物を言ってもらいたい。空想で物を言われたらこれは大迷惑であります。どこに、いままで自民党が政策を展開し、国会をいまこうやって政策を展開しておるのについて田中総理がおちょっかいしましたか。そんなことは全然ない。これは明らかにしておきます。あるなら証拠を出してください。  第二番目に、秦野法務大臣の文藝春秋の記事ですけれども、私はなかなかいいことを言っておると言った一つの部分は、ともかく一般論として刑事被告人でも人権があるのだ、いまとうとうたる大きな流れのもとに人権の声がしりつぼみになっちゃって、いまあえてそれを言うのは何か悪いことみたいな雰囲気があるでしょう。しかし、法務大臣の仕事というものは、法秩序を守るということと人権を守ることが法務大任の一番大きな仕事ですよ。みんな何か言えないような雰囲気の中に、敢然として人権擁護とか法秩序の擁護ということを言っているということは、私は職務に忠実であり正直者である、そう思っておるのであります。  たとえばあの中にも、判決前にあたかも有罪であるがごときことの前提のもとに世論調査が行われた、これは人権無視もはなはだしいではないか、平沢貞通さんが帝銀事件で……
  58. 神谷信之助

    神谷信之助君 わかっていますから簡単にしてくださいよ、時間が足りませんから。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 死刑の判決を受けても死刑は執行されない。これは何ですか。何でそういうことがあるのか。人間の生命尊重という人権があるからじゃないですか。免田事件だってそうじゃありませんか。最高裁で死刑の判決を受けた方でも、もう一回再審という立場が認められているというのは人権があるからです。その人権の大事さということを秦野法務大臣が言っておる。つまり……
  60. 神谷信之助

    神谷信之助君 私が指摘をしている発言について答えなさいよ。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あなたは秦野法務大臣発言は悪いと言っているから。私はなかなかいいことを言っているという意味の、こういう意味で私は秦野法務大臣はいいことを言っていると、そういうことを申し上げているわけです。
  62. 神谷信之助

    神谷信之助君 秦野さんの発言と、それから田中総理判決当日に私邸でしゃべったこと、これは報道されています。それらは、自民党の中にはこのように金をもらっている人はたくさんおるのだと、こう言っていますよ。これは正直者である秦野さんが言っているのですよ。「今、田中さんに辞職を迫っている連中に、人のことやめるという資格があるかと問いたい」と。このことを聞いているのです。  総理、あなたはまともに質問に答えない。別のところの問題を出して、これはいいじゃないかと。秦野さんがどんなに悪い人でも、一から十まで悪いことばかり並べるはずはないのです。あたりまえですよ。そうでしょう。まして、そんな極悪非道な人じゃないのだから。いいことを言っているところもありますよ。だけれども、問題はここのところですよ。たとえば「政治家に古典道徳の正直や清潔などという徳目を求めるのは、八百屋で魚をくれというのに等しい」、こうおっしゃっている。確かにこの対談の冒頭では、判決には触れないとおっしゃっているけれども、しかし判決でやめるのも男だし、やめないのも男だ、こう言っているのだ。それは田中判決を意識して話しをされている。だとするならば、田中角榮氏が五億円の賄賂を受け取ったということも、あるいはその後も根を断たないところの汚職腐敗事件、金権政治、これは当然なんだ、そんなことをけしからぬと言うのは、まさに「八百屋で魚をくれというのに等しい」、こういうことになるわけですよ。そうとられても仕方がないじゃないですか。だからそれをも、私は端的に聞きますよ、総理は肯定されるわけですか。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はここでも申し上げましたように、裁判判決については厳粛に受けとめなければならぬ、そう申し上げておりまして、私は個人といたしましても、また内閣総理大臣といたしましても、あの判決につきましては厳粛にこれを受けとめて、われわれみずから深く反省もし、また自戒しなければならぬ点が多々ある。そして国会政治のあり方についても改革しなければならぬ点が多々あると、そう私は反省しているわけでございます。本当にそれは国民の皆様に対して政治家としてまことに申しわけない、ともかくわれわれとしてはあの判決というものをまともに考えて、そうしていかに政治を改革するかという点については良心を持ってまじめに努力していかなければならぬ、そう思っておりまして、その点は努力してまいりたいと思っておるのであります。  しかし、秦野さんのあの発言内容等につきましては、全体をお読みいただきまして、何を言わんとしているかという点をお酌み取りいただきたいと思います。そういう意味において、いま秦野さんが発言したいそうですから、秦野さんをして答弁させます。
  64. 神谷信之助

    神谷信之助君 時間がないから簡単にしてくださいよ、あなたの弁明の機会をつくっているのじゃないのだから。政治の基本をやっているのだから。
  65. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 私も共産党から問責決議案が出ていまして、この文章を見ましたから、おっしゃる趣旨はここにあるだろうと、こういう前提でお答えをしたいと思います。  私は、田中判決には一指も触れていない、触れるべきではない、これがまず第一の前提であります。  それから、これを読みますと、「この程度の国民なら、この程度の政治」とか、それから「徳目を求めるのは、八百屋に魚をくれ」とか、その他二、三ありますけれども、全部前後の文章の脈絡を断って、言葉というものは、これはインタビューですから話し言葉ですよ、私が文章を書いたわけじゃないのだけれども、話し言葉だから多少粗いところがあるかもしれませんけれども、都合のいいところだけ、悪く取られるような部分だけを抜き書きしてお書きになっているが、これははなはだ、悪い方にばかり書いている。まるでお医者の車みたいなものでね、悪い方にばかりこう行くわけです。これはやっぱり制止してもらわなければいけない。全部を見てもらわなければいけない。  まず第一に、「徳目を求めるのは……
  66. 神谷信之助

    神谷信之助君 ちょっと待ってください。簡単にしてください。
  67. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) いまおっしゃったから言うのですよ。私がしゃべったことだから、総理にばかり聞かれたのじゃ困る。  それで、「徳目を求めるのは、八日屋で魚をくれ」といまおっしゃったでしょう。この前にあるのですよ。古典的な道徳の徳目からいってもと、ここが大事なんです。古典的道徳というのは、言うならば子供に言って聞かせてもいいような道徳観だ、こういう意味なんです。そういう意味からいうとそれは無理だと、こう言っているわけです。なぜ無理かというたら、たとえばわれわれの政治というものは、ここでいろいろありますけれども……
  68. 神谷信之助

    神谷信之助君 委員長。ちょっと待ちなさい。決められた時間にだらだらだらだらやられたらたまったものじゃない。質問のとおりに答えたらいいんだよ、一口で答えなさいよ。これはまさに質問者に対する質問妨害だ。
  69. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) いや、質問があったから答えているのです。
  70. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 法務大臣、簡潔に質問に答えてください。
  71. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 簡潔にやります。  それから、これは総理も言っていただきましたけれども、罷免をする資格がないということを申したのは事実です。しかしなぜかといいますと、あれは少数党の保護なんだ。少数党というのは未来多数になる可能性があるから少数意見も大事でしょう。そのための、保護のための規定なんだから、そんなやめるやめると言うのはこれはおかしいのです。自殺行為じゃないかというふうに私は思っているわけです。それが一つ。  それから、いま一つおっしゃったのは……
  72. 神谷信之助

    神谷信之助君 それは聞いていないじゃないか。いま徳目の問題だけじゃないですか。大体あなたに聞いているんじゃないのだよ。総理に聞いたことです。
  73. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) だけれども、私の文章だもの、無理だよ、それは。
  74. 神谷信之助

    神谷信之助君 あなたの文章を総理がそのことについて……
  75. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ちょっと待ってください。質問者も答弁者も委員長発言の許可を求めてやってください。
  76. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 質問はなるべく私に答えさせてください。
  77. 神谷信之助

    神谷信之助君 だれも彼に発言を求めない。いいかげんにしなさいよ。  あの人の発言だけれども、あの人の説明はきのうからきょう何遍もやっています。それに対する総理の見解を聞いたのです。委員長が勝手に彼に発言を許して、じんぜんとだらだら時間をつぶす。この時間を削除してもらわなければ困る。  次にいきますが、私は、確かに言葉の端々をとらえているように御本人はお感じになるだろう。だけれども、全部読んでいるひまはないのです。たとえば「「清き一票」なんてあれほどイヤな言葉はないよ。」と、こうおっしゃっている。正直におっしゃっている。この諭拠は、先ほどから総理がおっしゃっている政治家倫理というのは別なんだ、それぞれにありますよという話です。しかし、「「清き一票」なんてあれほどイヤな言葉はないよ。」、汚い一票も結構ですよ、買収選挙結構です、こう言っているじゃありませんか。買収選挙の取り締まりをやらなければいかぬ法務大臣がこんなことを言って適格と言えますか。この点からも重大な問題です。単に説明不十分とか行き過ぎがあったとかいう程度の問題じゃないのです。政府自身も清き一票運動をやっているのです。清潔で公正な選挙運動を推進しているのです。明正選挙運動もやっているのです。「「清き一票」なんてあれほどイヤな言葉はないよ。」と法務大臣が言うのです。まさにその資格ありますか、総理、いかがですか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまも秦野君が言いましたように、全部を読んでみて、その全部の脈絡の中で判断しませんと、一つだけぽつっと取り上げてきて論難するということは必ずしも適当ではないと思っている。私は、清き一票をどうぞ中曽根康弘に与えてくださいといままで言ってきました。今度選挙がもしあればまた清き一票をお願いいたしますと私は申し上げるつもりで、やはり一票は清くなければいけないし、清くなるようにみんなで努力する必要がある。いやしくも、選挙違反を起こしたり、あるいは司直の手にかかるような選挙をやってはならない、そのように思っております。
  79. 神谷信之助

    神谷信之助君 このように、部分をとらえて言うなとおっしゃるのだけれども、しかし百万言いいことを並べても、一言法務大臣として不適格なもの、しかもそれには根拠をつけて述べておられますから、しかも秦野法相自身八〇年選挙公約の第一に、清潔な政治を実現するための政治改革の先頭に立つ、こう言って公約なさっている。だからこの秦野発言というのは、総理が言うように注意をすればそれで済むというような問題ではない。いやしくも法務大臣としては適格性を欠くということを証明して余りある。すでに先ほど法務大臣自身もおっしゃったように、わが党は本院に法務大臣の問責決議案を出しています。直ちにわれわれは罷免すべきだと思うし、その責任を明らかにする必要があるというように思います。この点を申し上げて、きょうの午前中の質疑はこれで終わります。
  80. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  81. 田中正巳

    委員長田中正巳君) ただいまから行政改革に関する特別委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 神谷信之助

    神谷信之助君 増税隠し問題について質問したいと思います。  政府・自民党は、一兆二千百億円減税というふうに宣伝をされていますが、これはインチキもはなはだしい。国会に出ている減税法案は年内の減税分だけです。その額は千五百億円のみであります、所得税減税。これは国民の最低限要求の一兆四千億円減税のたった十分の一ぐらいにしかすぎません。たとえば年収三百万円のサラリーマン四人世帯の現在の税額ですと六万六千円。減税後は六万一千二百円。だから、わずか四千八百円の減税にすぎない。これは毎月減税するのじゃなしに一年分の減税です。  二階堂幹事長政治生命をかけると豪語して、景気浮揚に役立つ相当規模の減税をやると鳴り物入りの宣伝をして、そうして国民に期待を抱かせて、この年の暮れになってたった一年分五千円そこそこの減税だ。総理、これでも大幅減税と言えるのですか。私はペテンだと思わざるを得ないのですが、いかがですか。
  83. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ペテンという御指摘でございますが、断じてペテンではございません。それこそ与野党合意に基づいた、精いっぱいの努力をした結果であるというふうに私は考えております。いま御指摘になりましたように、五十八年分所得税の臨時特例等に関する法律案、これによりますと御指摘のとおりの四千八百円の軽減額となります。それはそのとおりであります。しかしながら、私どもが申し上げておりますのは、今回の減税は五十八年、五十九年度を通じて総額一兆二千百億円に上る、言ってみればこれはまさに大規模なものであります。  したがいまして、当初一兆四千億とおっしゃっておった、なるほど共産党さん、一兆円の所得税、四千億の住民税、こういうことを前々からおっしゃっておりました。しかしながら、これは昨年の三月四日以来、減税小委員会とかいろんな積み上げの中に議論をされておって、いきなり単独で一兆四千億ということを言い出されたのは最初は共産党さんです。しかし、審議の経過をごらんになりますならば、これが五十八年中の減税として行われるであろうという御議論というものはこれはあっておりません。したがって、景気浮揚に役立つ相当規模というものは今後の全体の経済成長、すなわちいま三・四%というものを見込んでおるわけでありますが、それをより確実ならしめるものであらなければならぬ、こういうこと、そうしてこのたび発表いたしました内容において当然のこととして、これは期待感というものが出てくる。  したがって、これがペテンであるなどという言葉は慎んでいただけないものかなと、私が神谷さんに期待を持つ。言うはやすく行うはなかなかむずかしい問題でございますから、その辺はやはり責任ある立場に立ってペテンとかごまかしとかいうような言葉はできるだけ控えていただくべきものではなかろうかなと、これは常日ごろ思っておりますことをあえてこの際申し上げたわけであります。
  84. 神谷信之助

    神谷信之助君 昨年の三月四日以来、衆議院の大蔵の小委員会がつくられて議論になっていることは私も知っています。そこで、わが党は軍事費にメスを入れ、そして大企業への奉仕の仕組みにメスを入れ、そして汚職、腐敗をなくしていくならば十分に財源はあると、このことを数字を出して議論をしてきているところです。そうして、今年五十八年中に一兆四千億、この減税をやれということもこの春の通常国会予算委員会その他を通じて一貫して主張していることです。  そういう中で、共産党を除く与野党合意というもので相当大規模のというやつが出てき、それが二階堂幹事長の最終的な政治生命をかけたということで、わが党にもそういう話がありました。それは今年じゅうにそういう景気浮揚に役立つ相当規模のやつをやろうじゃないかと、こういう話で国民的なコンセンサスはできてきている。あなた方の方が言葉を使い分けて厳格に言っておられたのかどうか知りませんが、国民の期待なり願いというものは、一兆四千億の減税をやれという国会請願が多数出てきていることでも大きな期待になっていることは事実であります。だが、ふたをあけてみたら、わずか千五百億にすぎない。だから、国民の常識から言うたらうまいことペテンにかけられた、こういうことになるのです。  そこで、いま来年度のお話も含めてありました。来年度を含めて一兆二千百億円の大幅な減税なんだというお話ですが、問題はその財源は一体どうなるのかという点です。政府の税制調査会の小倉会長は十六日の中期税制答申提出の後の記者会見で、来年度税制改正で増税と減税を差し引きまして、ある程度増収を考えておかねばならない、こういうことを述べておられるわけです。こうなると、結局いまのところは盛んに減税だ減税だとおっしゃるけれども、来年度はそれは見せかけだけで、増税と抱き合わせではないのか。しかも、小倉会長の言をかりれば増税分の方が多いということではありませんか。総理いかがですか。
  85. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 税制調査会の中期答申、これを読んでいただきますならば、本当に私、答申を拝読したときに、これは財政審の答申かなと思うぐらい、まず財政改革をしっかりやれよとおっしゃっておって、そして、それがためにはとにかく歳出カットに対して精魂を打ち込みなさいよ、そういう一、二と。そこで三番目におっしゃっておるのが、税というものはいずれにいたしましても国民のニーズに対応してやっぱり絶えず見直しを行っていかなきゃならぬ。その定性的な観点からもろもろの問題がそこに提示されておるわけであります。したがって、この中期答申というものは、言ってみれば今後におきますところのいわば税の一つの哲学ではないかと、中期的とはいえそのような感じで受けとめておるわけであります。  したがいまして、私ども、これは具体的に各方面の意見を伺いながら、先ほどなぜ今年度の千五百億だけ出したかと、こうおっしゃいましたが、一般的に今日まで歴史的に振り返ってみましても、恒久税制というのは一つの方向が示され、それが現年度にまたがる場合は現年度分の税制についての法律案が出されて、そして今度は新税の年度からいわば恒久的なものが出されていくわけでございますので、したがいまして、これから五十九年度税制、その次は六十年度税制というようなものが、予算の編成作業に最終的に入ります場合にそういう御答申をいただくわけですから、しかも税制調査会というものは、まさに経済界のお方、労働界のお方、学者先生、大変りっぱな方々が、それこそ大所高所から御議論をなさるわけですね。そういうものを踏まえてこれから具体的には決めていくわけですから。  そして、いま増税はどうする増税はどうするとおっしゃいましたが、共産党からお出しになっております、いわばまあ、いわゆる各党合意のときには仲間外れになっていらっしゃいました、どうしたことか知りませんけれども。が、あといろいろ聞いてみますと、いろんなものはしりかりお出しになっております。が、そのしっかりお出しになっておるものを見れば、不公平税制の是正であれ、あるいは防衛費の削減であれ、それなりの考え方がそこには示されておりますものの、税一つとってみれば、不公平税制の是正とおっしゃる人もありますれば、その対象になる人から見ればそれはまた増税であり、増収措置である、こういうふうに受けとめられる。そこに、一概にあなたのおっしゃる増税、増税というものは現状固定においての考え方なのか、いろいろそこに議論がございますので、一概にこの問題を明快にお答えするというのは、それは確かにむずかしい問題です。  ただ、私どもはかねて申しますように、国民になじまなかったいわゆる一般消費税(仮称)、これらの手法をとる考えはないということだけはたびたび申し上げておるところであります。私が五十四年に大蔵大臣でありました当時から数えれば、まさに四年間同じ言葉で正確にお答えしておるということだけをさらにつけ加えさしていただきます。
  86. 神谷信之助

    神谷信之助君 時間が限られているのですからね、答弁はもっと簡潔にやってもらいたいのですよ、質問にちゃんと答えて。いいですか。  それじゃ、端的に聞きます。今回の税調答申は、具体的なこの増税品項目といいますか、これをずっと並べておられる。そこで、まず端的に聞きます。お酒の税金、酒税ですね、これが取り上げられている。これは来年度引き上げるのかどうか。どうですか。上げるか上げないか、一言でいい。
  87. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) イエスかノーかを言える問題ではございません。なぜなれば、あなたにも発言の時間がありますから私にもくださいませ。お願いいたします。少なくとも個別問題については、かくあるべき検討項目として御提示いただいておるので、これが具体的には五十九年度税制に当たっての税調の答申をいただいてから考えることであるというふうに御理解をいただきたい。
  88. 神谷信之助

    神谷信之助君 増税はやらないと先ほどもおっしゃっていたのですがね。だから聞いている。時間がありませんから言いませんけれども、酒税でしょう。それからさらに税調答申は、この酒税の中でも酒類間及び級別間の税負担格差の縮小、これを図れと、それから特級酒、一級酒、二級酒の格差とか、日本酒、ビールとの格差とか、ウイスキーとの格差とか、これを図れ、こう言っている。だから、それらを含めて上げるのか上げないのか。それはこれから考えるのだ。上げないとはおっしゃらない。  それから化粧品とか腕時計、ラジカセ、カメラ、とにかくこのような庶民がいま多く利用しているそういう物品、これにかけられるのが物品税ですね。これも増税の検討項目として税調は言っている。これはどうです。来年やるのですか、どうですか。
  89. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる物品税、これを個別の問題につきましては時代の推移の中において絶えず見直しなさいよと、こうおっしゃっているわけであります。それから、いまお酒の問題もございましたですよね。いわば日本が世界最高の言ってみれば中産階級意識とでも申しましょうか、そういう所得構造になっておる今日、またお互いの嗜好の変化からして、いまの酒の等級が妥当であるかどうかというようなのも勉強してみなさいよと、こうおっしゃっているわけでございます。  したがって、重ねて申し上げますように、五十九年度税制のあり方という答申をいただいて、それに基づいて勉強すべき課題であるというふうに考えております。
  90. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、これも引き上げないということはおっしゃってない。増税はしないということはおっしゃらない。  それから、交付一件について一万円と報道されている自動車の運転免許税、これはどうですか、新しくつくるのですか。
  91. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 税調の中期答申におきましては、自動車運転免許に関する税の問題について触れておりますけれども、内容的にはいわば両論併記のようなことでございまして、導入することについて検討すべきであるという意見もあるし、適当でないとする意見もあったということでございます。大蔵大臣から答弁ございましたように、この答申は中期的な基本的な税制のあり方についての答申でございまして、これを具体的にどうするかという問題につきましては、今後各年度の税制改正に関する審議の中でお決めいただくことというふうに考えております。
  92. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ税調答申にはこのほかにも固定資産税、それから自動車税、軽自動車税等々の引き上げが検討課題というか、勉強課題というのですかね、まあそういうことになるのでしょう。そういう場合、いまの質問に対しても、これは年末に出てくる来年度の税制に関する答申が出てから勉強さしてもらうというふうに答弁されているのですけれども、しかし、どれ一つでもそれは増税はやりません、せっかくの減税をやったその効果を発掘させるのに増税はやりませんと、そういう答弁はなさらない。きっぱりとは言われない。これは増税すると言うと選挙に影響しますから、これは言えないだけじゃないですか。しかし、これだけの税が、どれだけ上がるかわかりませんが、上がってくると減税なんかは、特に大衆課税ですから所得の水準の低い人にもかかってくるので、吹っ飛んでしまうということになると思うのです。  しかも、私が指摘したいのは、現在の税制で所得税や住民税が払えないところの低所得世帯、これはもう減税のしようがないから一切減税はないわけですね。それならば、そういう低所得者は増税を免税してもらえるのかどうか。たとえば低所得者、いわゆる所得税、住民税の払えないそういう方々には、たとえばお酒の税金は、ほかはいっぱい上がってもそこは上げませんというようなことにならぬでしょう。すなわち、間接税というのは所得の高い人にも低い人にも同じようにかかるのですね。だからそうじゃないと。それとも低所得世帯には酒税も物品税もかけないようにするのだというふうにおっしゃるのかどうか、この点はいかがですか。
  93. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 俗に言われます、税制の中で所得に対して課税するものあるいは消費の段階で課税するものとございますよね。いまおっしゃいました間接税というのは、これは所得の高低に限らず一定の物品なら物品にかかっておればそれは納めるわけです。しかしながら、間接税というものに対する一つの評価基準というのは、言ってみれば消費者に選択の幅が与えられておるではないかという問題があるわけでございます。  そこで、それから敷衍いたしまして、いわば課税最低限以下の所得にある者は物品税と間接税とを免税されるのか、こういう御議論でございますが、そもそも課税最低限というものは、一応私どもといたしましては生活保護の一つの基準というものをいつでも念頭に置かなければならぬ。その生活保護費というのが大体年間百七十八万円でございますか、四人世帯で。そういたしますと生産者米価上がる前のちょうど百俵でございますね。これは国際的にはかなりの水準でございます。しかし、それでいいということで言っておるわけではございません。したがって、そこにそういう制度があるわけでございますから、税でもって所得に応じて物品税一人一人変わっていく、そういうことは税制上なじまざる問題であると、このように考えております。
  94. 神谷信之助

    神谷信之助君 結局低所得層は一円も減税かないと。そうして間接税の大増税で増税だけが残っていくということになります。もう時間がありませんからあと申し上げますが、しかも間接税の増税だけではなしに、所得税、住民税そのものの中にも来年度分で大がかりな増税が隠されている。それは最低税率の引き上げと最高税率の引き下げです。たとえば所得税の最低税率を仮に二%上げればそれだけで一万二千円ですね、六十万円ですから、一方二千円の増税になります。そうして片一方高所得者、これには最高税率の引き下げで大サービスということになるわけで、所得税の最高税率を五%下げれば、これは年所得十億円のクラスで四千六百万円の減税になる、そういう計算になります。  ですから、十八日の本会議質問でわが党の安武議員が質問をしたのに対して総理は、原則として総合的に負担増をもたらさない考えに立った予算を編成したいと、こうおっしゃっておる。増税を全面的に否定をするということは避けられた。しかし総合的な負担増をもたらさないということですから、総枠は変わらぬけれども負担の区分には異動がある、変化があるのだ、こういうことですね。  具体的に言うと、結局庶民にはお酒の税金、自動車関係税、あるいは所得税の最高税率の引き下げ、こうやって、庶民大衆の方には減税よりも逆に増税になる。大体わが党の試算でいくと年収四百万の人、ここがラインになる。四百万円以下というのがサラリーマン全体の中で七五%強です。四分の三強が実際は間接税の増税で減税の恩典に浴さない。わずか四分の一ぐらいの高額所得者が減税の恩恵を受ける。だから、たとえば五十七年度所得で十億五百五十五万円の松下幸之助さん、この方ですと、五%引き下げということになれば四千六百万円も減税になる。こういうのがいま来年度計画されている中身ではないかというようにわれわれは考えざるを得ないのです。  先ほど大蔵大臣も財源問題をおっしゃっておりましたけれども、わが党は財源がないんじゃないと。大蔵大臣おっしゃったように、軍事質にメスを入れる、あるいは大企業奉化の化組みにメスを入れる、汚職腐敗をなくして浪費をなくす、こういうことがやれるならば、これはもっと減税はできるし、そして福祉、教育をふやすことができるということを言っているのですよ。  だからこの点は、もう時間がないので指摘をし、さらに私は、今回の行政改革で、われわれは汚職腐敗の根絶、それから浪費をなくすこと、簡素で効率的なそういう行政をつくること、これを国民が願っているのだということで、午前中も、またこれからも追及をしてまいりますが、特にいまこの国会で提案をされております防衛二法案ですね、衆議院で強行採決されましていま参議院に回ってきていますが、その中身というのはP3CやF15の要員確保を含めて自衛隊員二千名の増員を図ろうとするものであります。ところが、調べてみたら四十二年と比べて自衛隊の方は二万一千八百名ふえている。それを除く行政府職員の方が逆に四千百名余り減っているわけです。ここに私は国民の望む行政改革と全く異なるものが存在をするということを証明できると思います。  時間がないのでこの点を指摘をして、あと関連質問に移りたいと思うので、お願いしたいと思います。
  95. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 上田耕一郎君から関連質疑の申し出があります。神谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上田耕一郎君。
  96. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、関連質問で日米首脳会談の問題について、時間も余りありませんので、幾つか質問をしたいと思います。  第一日の会談でレーガン大統領はグレナダ事件についての日本側の態度に謝意を表すると、そう述べました。きのうのこの委員会でもいろいろ議論されましたけれども、ヨーロッパ諸国は賛成、棄権ですね。進んだ資本主義国でアメリカから感謝を表明されるというような態度をとったのは悲しいことに日本だけだと思うのです。イギリスのサッチャー首相は非常に非難しているし、フランスはアメリカと反対の国連総会で決議にそういう投票をしているわけで、非常に民族自決の原則を踏みにじった明白な侵略行為だと思うのですけれども、中曽根さん、改めてあなたが強く非難していたソ連のアフガニスタン侵略、あれと一体今度の問題は原理的にどう違うのかお聞きしたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) グレナダ問題につきましては、全体会議の席で私からレーガン大統領に申しました。それはグレナダ問題武力行使が起きたということは遺憾であると。しかし、あの実情をある程度調べてみるというと、たとえばカリビアン機構の国々がグレナダ問題によって非常に危険を感じてアメリカに出動を求めたということ、あるいはさらに現地の総督が同じように要請したというような情報もありました。そういうようなところと、あそこにおる医学生そのほかのアメリカの市民の生命財産に危険が及んだ、そういうところからアメリカが出兵をしたというような状況は、これは理解できる。ただし、こういう不正常な関係が続くことはよくないので、できるだけ早く内閣をつくって、そして状態を正常化して米軍が撤兵することが望ましいと。すでに内閣もできつつあるようであるし、米軍の一部撤兵が実現してきた、これは結構なことだと。速やかに事態を正常化することが望ましいし、われわれの考えである、そういうことを申し上げたわけです。先方は、そういう日本が実情についてある程度理解を示してくれたことについて多とすると、まあ感謝といえば結構でしょう、そういうような意味の表現がありました。  しかし、これがアフガニスタンと違う点はどこにあるかというと、アフガニスタンの場合には、総理大臣から要請があったとかといってやっていますが、その総理大臣が殺されておるわけです、御当人が。そして入ってきたソ連軍に対してアフガニスタンの住民が猛烈な反撃をやって、そうして自主独立を守ろうとしていまでもまだ反撃をして相当なソ連軍が殺されておる。けさの新聞を読むとヘリコプターが撃墜されたというぐらいの物すごい抵抗をアフガニスタン人自体がやっておる。  ところが、グレナダの問題は住民が抵抗しているかというと抵抗はしていない。抵抗したのは何かというと、キューバの兵隊ですか、工作員ですか、飛行場建設等をやっておった六百人ばかりのキューバの軍人やその他が抵抗しているというのを私はテレビで見ました。そうすると、これはアフガニスタンとグレナダは大分違うなと。それで、グレナダの問題は、アメリカは早々に撤兵を開始し、また残存兵力もできるだけ早く帰そうとしておる。現にすでに相当の撤兵が半分以上行われておる。ところが、アフガニスタンの場合は撤兵どころじゃない。十万の大軍があそこへまた来ておって、ときによっては増強されているという情勢です。そういう点から見ると、情勢がまるっきりグレナダとアフガニスタンは違うと言えると思います。
  98. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 具体的状況の違いはたとえあったとしても、民族の自決の原則を踏みにじって外国軍隊が侵入したという点では全く同じです。ですから、アフガニスタン侵略の場合も今度のグレナダ侵略の場合も、国連総会で圧倒的多数でこれを重大な国際法違反だという決議が通過しているということです。  で、東カリブ海機構から要請があったとか言いますけれども、これはやっぱりからくりです。からくりを使うこともアメリカとソ連と同じなんですね。バルバドスの首相が明らかにしたところでは、アメリカは二十五日に入ったのですよ。ところがもうすでに十五日にアメリカ政府関係者がグレナダに対する軍事介入問題を持ち出したということを明らかにしているのですね。こういう事実が次々と明らかになっているわけです。その点で私は、今度のアメリカのグレナダ侵略に対して日本が理解を表明したと、きわめて残念です。  今度の侵略がどういうものであったか、ワインバーガーアメリカ国防長官の在郷軍人会の演説で明らかです。グレナダ侵攻は、ソ連に対しアメリカに挑戦することがソ連の利益にならないことを明確にし、敵対国にアメリカの能力と意思を示すことができた、こういうことを本音を吐くわけですよ。こういう点、非常に重大な問題で、これをソ連のアフガニスタン軍事介入と全く違うなどと称して理解を表明するというのは、私はまことに残念だと思います。  特に、私がこの中曽根内閣態度を重視するのは、日本はかつて侵略戦争を行った国です。戦後再び侵略をすまいということを全国民が決意した国のはずなんですね。ところが、中曽根首相が、象がアリを踏みつぶしたというように言われている今回のグレナダ侵略に理解を表明して、血にまみれた手でレーガン大統領が日本に来ると何とこれを大歓迎をする。あなたはジャストマリッドだとかハネムーンだとか、はしゃぎ過ぎるというような態度を表明している。これは非常に僕は悲しむべき、恐るべき事態だと思うのですね。あなたは戦後政治の総決算などと言っているけれども、再び侵略すまいという日本のこれは国是と言っていいのだけれども、そういうものをあなた自身が少しずつ掘り崩す状況に戦後の総決算という踏み出しを行っている、このことが私が非常に大問題だということをあえて指摘しておきます。  それから、もう時間も余りありませんので、あなたの新聞発表ですね、これをひとつお聞きしておきたい。あなたはレーガン大統領と新聞発表を行いましたが、レーガン大統領の側は、日本ができる最も重要な貢献は日本が自衛を行い、相互防衛努力をより多く負担することにあるなどということを言いましたけれども、あなたの方はこういうことを言っている。西側は、自由と平和を守るため、連帯と結束のもとに毅然として対処し、そのために払うべき艱難をいとうべきではないと考えると。これはコール首相との東京声明の中にもこういう言葉があるのだけれども、あなたが何回も繰り返す西側の結束のために艱難をいとうべきではない、艱難とは一体あなたは何を考えているのですか。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは東京声明でコール首相と私と声明を発出したその中に書いてあるところであります。それは一般的な精神的な表現であります。あの東京声明の中では、まず冒頭にこの間のウィリアムズバーグ・サミットで確認したところをわれわれはもう一回確認したと。その一つの大事な点は、ソ連のSS20の移動についてアジアや日本の犠牲においてこれを解決してはならない。それが確認されているということであります。これは一番大事な点で、あの声明を発出した一つの大きな意味でもあります。アジアや日本の犠牲においてやられてはならない。それと同時に、自由主義陣営は連帯と結束を守っていこうということです。  それから第二に指摘した大事な点は、ちょうどいま世界が非常に危機的状況になっておる、各地で暴力事件あるいはそのほかの忌まわしい大韓航空の事件とかビルマの事件、いろんな問題が起きてきている。そういうときに当たって世界の各国にドイツと日本がアピールする意味で呼びかけた言葉があるわけです。つまり平和を維持、つくり、そして軍縮を遂行していくために各国は粘り強く話し合いを続けるべきだと。交渉のテーブルから離れないようにしなければならない。そして段階的な案やあるいは漸進的な案、暫定案といいますか、漸進的な案もそれを必ずしも拒否すべきではない。そういうふうにしてうまずたゆまず最終目標に向かって努力をし続けるべきだという意思表示をした。というのは、この二十三日にパーシングIIがドイツに運び込まれる。そういう場合にソ連とアメリカとの反応はどうなるか、やはり交渉のテーブルから離れないで粘り強く交渉を続けていくべきであるという考えが基礎にありまして、平和を維持していくためにそれをやってもらいたい。交渉のテーブルから離れないということがやっぱり平和を持続する、また世界が安心する非常に大事な要素であるからあえてそれを強く訴えたということです。  それから西側陣営、いわゆる自由主義陣営の連帯と結束というものをもう一回確認をした。その中にわれわれは連帯を維持して、そして平和を守っていくためには艱難もいとわないというわれわれの精神的な意思表示をしておいたと、こういうことであります。
  100. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたはSS20が削減されてアジアへ回らないことというようなことをいま言われましたけれども、あなたは十一月一日のコール西ドイツ首相との会談で、コール首相が十一月中にパーシングIIを配備する、そう述べたのに対して、あなたは断固たる決意に感銘を受けたと、敬意を表するという答えをしたということが報じられているのですね。これは大変なことだ。あなたは艱難というの精神的な意味だというふうに言われたけれども、西ドイツの首相が西ヨーロッパにパーシングIIを配備すると、きのう連邦議会でもコール首相は配備を明らかにしましたね。そういうことに敬意を表するというようなことは、世界で唯一の被爆国の首相として、また非核三原則を持つ日本の首相として断じて言うべきでないのですよ。他国が核ミサイルを配備するのを敬意を表するなどと言う首相は、じゃ西側が団結のために日本に核兵器を持ってきてくれと言った場合、そういう決意をするということの間接的な意思表明としか思われない。  あなたの言う艱難というのは、まず第一にアメリカが要求している軍事、軍備大拡張、これをオーケーしようということだろうし、そして核兵器持ち込みですね、これへの一歩を実は公然と踏み出そうとすることであろうし、またあなたが最後に言われた西側の団結ですね、西側は自由と平和を守るため連帯と結束のもとに毅然として対処する。キャプテン、あなたの言う頭ですな、帽子か頭か知らぬけれども、アメリカのレーガンですよ、そういうレーガン大統領、グレナダ侵略を平然とやるような人が指揮棒を振って、それに毅然として団結する、しかも艱難をいとわない。どういうことになりますか。私は、こういう西側の団結、結束という口実でいま進んでいるヨーロッパ、アメリカ、日本の実際上の軍事同盟の一体化ですね、これは大変なことだと思う。日本は西側の一員でなく、実はアジアの一員であり、これを主張すべきなんです。唯一の被爆国なんですね。平和憲法を持っている。  こういう独自の主張をしないでそういうことをやっていくと戦前の日独伊防共協定、あのときも共産主義反対、共産主義反対と言って侵略に進んでいったのです。今度もまた共産主義反対などと言って進んでいくという歴史のそういう反省をいまこそすべきではないかと思うのですが、あなたは首相として戦前のあの不幸な日本の歩みから、またいまの事態からどうお考えになるのか、最後にお伺いしたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は共産主義に反対である、それは前からここで申し上げているので共産主義賛成とは言いません。しかし、世界の平和については非常な念願を持って、どうして具体的に戦争を起こさせないように、核兵器、核戦争を起こさせないように、また軍備を縮減するようにできるかという点においてはあなた以上に苦労もし、現実的にそれを実現するように努力をしておる。  そこで、西ドイツ首相について私が言ったのは、ウィリアムズバーグへ行きましたときに、本会議が始まる前に二国間で話し合ったときに、コール首相は私に、われわれは北大西洋条約機構で決めた既存のタイムテーブルは崩さない、われわれはわれわれの考え方を貫く、そういうことを言うたので、私は実に信念の強い人だな、ぐらぐらしないな、そう思って敬意を表した。それでその後状況を見ておるというと、やはりコール首相は自分の信念を崩しませんですね。かなりの波の中をああいうふうに信念を貫いておる。私はアデナウアーに匹敵するような人物じゃないかと、そういう感じがしましてコール首相の信念の強さには私は敬意を表したのであります。  しかし、それはなぜかと言えば、相手が相手だからです。つまりパーシングIIの対象になっておるのはソ連でありますけれども、ソ連の外交のやり口というものを見てるというと、それはとことんまで行くところまである程度行かぬと相手は言うことを聞かない、そういう情勢がいままでの外交交渉で読み取れておった。したがってパーシングIIの展開というようなものは何も好んでやっている国は一つもないと思うのです。しかし、ソ連がSS20を、アメリカがベトナム戦争や何かで相当くたびれ、またヨーロッパも軍備を拡張することをできるだけやめようという留守に大軍備拡張をやって、知らない間にSS20というのは三百五十基もヨーロッパ地帯に展開されてしまった、こういう現実を前にしてどうしてあれを減らすことができるかと言えば、口先だけではソ連は言うことを聞かない国だとあのヨーロッパの国は考えた。だからおまえも減らせ、おれも減らす。おまえがやらなきゃおれの方やるぞと、そういう形で相手に減らさせるために、ソ連のいままでのやり口を見てヨーロッパの国は嫌だけれどもそういう決定をしたのでしょう。  ですから、ゼロオプションとかダブルトラッキング・オプションとかと言ってゼロにしようと初め申し込んだ。それでお互いやめょう、ゼロにするのがいやならお互いに量を減らそう、そういう形で話し合いを申し込んでおるわけですよね。  今後ソ連がそれに対してどういうふうに出るか、私はあの声明の中でも言ったように、テーブルから離れないで交渉を持続するようにと強く念願をしておるものであります。そういうヨーロッパの側におけるいままでの対ソ交渉の経過からかんがみまして、彼らは彼らなりに苦労してパーシングIIなりあるいはソ連のSS20を減らしていくための嫌な手段としてもがまんしてそれをやっておるわけであります。  北方領土について、われわれが粘り強くソ連に要求しておるけれども、ソ連はミグ21まであそこへ配置して一個師団近くの兵力を持ってきておるじゃありませんか。こういうやり方を見ると、やはりドイツがやっている、あるいはヨーロッパの国が連合してやっているというやり口は、ああいうやり方以外にないのかもしれぬなと同情にたえない点もある。そういう意味で、私はコール首相に対して敬意を表したのであります。しかし、核兵器をなくし、日本を戦場にしないというためには、私はまた別の面でも非常に努力すべき点があると思っておる。  だから、土曜日にカナダのトルドー首相が参りまして、そうして核兵器を廃絶し戦争を起こさせないためにどうするかということを二人で一時間四十分にわたって話をした。で、終局的にはやっぱりアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国、いま核兵器を持っている国が一堂に会して、そしてお互いが合理的な話し合いをしてこれをやめるとか減らしていくという約束をしない限り終局的な目的は達成されないだろう、だから五大国が一堂に会してそれをなくす相談をしてもらいたい、その点においては私はトルドー首相と意見が一致した。ただ、それが現実にすぐできるかというと、これはなかなかできない。パーシングIIとSS20のこのアメリカとソ連の間の問題がある程度いま解決しなければ次には進みっこないわけです。  だから現実問題として、そこへ持っていくためにはINFの交渉が成立するように、成功するようにわれわれは側面からまた努力しよう、それがこの東京声明です、粘り強くやれと言っているのですから。だから、トルドー首相にこの東京声明を支持してもらいたいと言ったら、彼は欣然として参加いたしますと、私も支持いたしますと、そう言ったわけであります。そういうわけで、カナダはカナダ、日本は日本の立場に立って核戦争をなくし、核軍備をなくし、そして軍縮を実行していくために具体的、現実的に努力しているのだということを御理解願いたいと思うのです。
  102. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 またいつか反論いたします。
  103. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に、柄谷道一君。
  104. 柄谷道一

    柄谷道一君 田中総理の議員辞職勧告決議案の問題、秦野法務大臣の文藝春秋に対する発言の問題、この問題につきましてはすでに三党からそれぞれ代表して質問がございました。  十月十二日、あの一審の有罪判決ということは、その日をもって田中さんは刑事被告人から刑事犯罪人という立場に置きかえられた。本来、三億円という保釈金を積まなければ法のたてまえでは刑務所に収監されておられる身でございます。この田中さんに対してわれわれが議員の辞職を求める、その問題についても中曽根総理は、議員辞職勧告決議案を本会議に上程する、そしてわれわれ参議院の出しております政治倫理確立の決議案を本会議に上程することに対して否定的な見解を示されました。そして、秦野法務大臣発言問題につきましては、終始これを擁護する立場をとられました。  私は、時間の制約もございますので、あえてこの問題に重複した質問は避けたいと思います。しかし、総理のそのような政治倫理確立に対する姿勢は、私は十二月十八日、国民の審判を受ける総選挙において厳しく国民の審判を受けるであろう、このことだけを警告をいたしまして具体的質問に入りたいと存じます。  まず、臨時行政調査会は五十七年三月の基本答申及び本年三月の最終答申の中で、行政改革の基本的課題は「変化への対応」、「総合性の確保」、「簡素化・効率化」、「信頼性の確保」、この四点が前提とならなければならない、こう指摘をいたしまして、特に「信頼性の確保」につきましては「行政が円滑にその役割を遂行していくためには、国民の行政に対する信頼を確保することが必須であり、」こう述べ、さらに具体的に「汚職や腐敗に関する国民の目が、公的部門の場合、民間部門よりも厳しいのは当然であり、公的部門に勤務する者は、公共事業の執行や補助金の交付等についての国民の批判を謙虚に受け止め、清潔かつ公正に仕事を行うよう、特に心掛けていなければならない。」、こう指摘をいたしておるわけでございます。  そこで、総理行政改革の遂行と信頼性の確保という観点についての御所見をまずお伺いいたします。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず柄谷さんが冒頭に申された中で、参議院の倫理決議案に対して私が反対しているような御趣旨発言がありましたが、そういうことはありません。私は参議院の倫理決議案は拝読いたしましてなかなかりっぱな決議案をおつくりになったと思っておる。ただ、これは各党でお互いに話し合って満場一致で成立させることが好ましい。むしろ積極的に私はあれは支持しておったのでございます。その点誤解がありますからここで明らかにして、参議院の倫理決議案には私は基本的には賛成であるということをここで申し上げるのであります。  次に、行政改革政治の清潔性の確保という点でございますが、行政改革は臨調答申によりますれば、一番大きな主題というものは時代の変化に対する対応力をつくる、そして簡素にして効率的な政府をつくる、そして国際時代に対応できるふさわしい政府をつくっていく、そういうような趣旨の点が中心テーマであったと思います。 しかし、それを実行していく過程におきましても、やはり行政における清潔性の確保ということを言っておりました。今回臨調ができました一つの背景には、電電公社の関西方面における経費の乱費の問題等々もございまして、これを促進した点もございます。そういう意味におきまして行政を清潔ならしむる。そうして機構を振粛するという点も行革の非常に大きな大事な部門でございまして、それらにつきましてもわれわれは臨調答申の線に沿って今後とも努力してまいりたいと思っております。  これは機構的にもいろいろ考える必要がありますが、また一面において公務員の自粛自戒という面からもさまざまな考慮を行う必要もありますし、それから民間レベルと公務員レベルの均衡性、公平性の回復という面も、年金とかその他の面でも、退職金の問題なんとかでもございますし、あるいはさらに情報公開、そういうような面からする行政の民主化という面もわれわれは考慮しなければならぬ面がある、このように考えております。
  106. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は議院運営委員会の理事もいたしております。われわれ野党の出しました参議院の決議案について対案も示さず、本会議に上程できなかったのは与党責任でございます。 いま総理が言われましたようなことがわれわれの趣旨に賛同されるというのであれば、これは早急に与野党の議を促進をして本会議に上程すべきなのです。この点だけは私は議運の理事として、事実と異なりますので、この点だけでやりとりいたそうとは思いませんが、私の受けとめ方をこの際申し上げておきます。  そこで、十月十二日のロッキード判決で岡田光了裁判長がその判決理由の中に、総理大臣は公務員として「最高の地位、権限に対して要求される職務執行の公正さの程度が極めて高く、したがって国民の信頼をはなはだしく失墜し、社会に及ぼした病理的影響の大きさにはかり知れないものがある」こう述べられ、また、行政を直接、間接に利権化することは「国民の公務の公正さに対する信頼に背くことにおいて極めて重大なもの」があり、「最高の非難をまさに直接にこうむらなければならない。」こううたっているわけでございます。  私は、この判決の内容についてどう思うかと質問すれば、総理はいままでのように、行政府の長として裁判内容に触れることは避けたいとこうお答えになるでしょう。  一般論としてお尋ねします。  私は、総理たる者は率先して公正に職務を執行し、国民政治に対する信頼を失わしめるような病理的影響を根絶することに政治責任をかける、それこそ総理の基本姿勢ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原則的に大事な点であると私も思っております。
  108. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、田中さんの一連の行動がこの原則に沿って政治倫理を高めたと認識されておりますか、政治倫理の中できわめて大きな汚点を残したとお考えでございますか。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会が齋藤隆夫先輩を除名したときのような過ちを犯させないために必死の努力をしていたと後世評価されるだろうと思います。
  110. 柄谷道一

    柄谷道一君 いままでの答弁の中で、齋藤隆夫さんの場合は、事国会議員の言論の保障に関する問題でございます。このことに関しましては、少数党の立場を守りながらその取り扱いについて慎重を期さなければならぬ、これは私は、総理と全く同じでございます。今回の事件は刑事事件ですよ。齋藤さんの問題と田中さんの問題を一列に並べてそして同様の論評を加えていくというその姿勢に私は問題があると思うのです。  さらにお伺いします。  公務員は、国家公務員法七十九条におきまして刑事事件に関し起訴された場合は休職でございます。そして禁錮以上の一審判決を受けた場合は公務員として官職につく資格を失うと、厳格に国家公務員に対してはその倫理性を求めているわけでございます。総理大臣というのは公務員の特別職でございます。その特別職であった方がこのような姿勢をとられるということをもって、国家公務員に対して厳正な公務員倫理を求めるということが可能でございましょうか、御所見を伺います。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的には、特別職の公務員も一般職の公務員も全体に対する奉仕者でございまして、政治倫理あるいは行政倫理というものを秘めてまじめに努力しなければならない、そういう立場にあると思います。  ただ、一般職の公務員の場合は、政府と雇われる雇われないという、いわゆる特別権力関係と申しますか、契約関係でその地位が成立するわけであります。ところが国会議員のような場合は、選挙という行為によりまして主権者である国民が参画してその身分が初めて成立するという立場にございます。おのずからしたがって地位に変化がある。だが倫理を重んずるという点においてはおのおの一人一人は同じように考えなければなりませんけれども、しかしそういう職務の性格に変化があるということも、またわれわれとしては考えなければならぬところであります。
  112. 柄谷道一

    柄谷道一君 上正しからざれば下必ず乱るという言葉がございます。今回の一審判決の中で裁判長の示しておる見解は、一般職よりも総理大臣たる者はそれを超えてさらに高い倫理が求められるという発想でございます。このことは否定されますか。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地位が高くなればなるだけ、強い責任感とそれから自粛した気持ちで戦々恐々として仕事をしなければならぬという点は、私はみずからそういうふうに考えて怠らないようにいたしたいと思っております。しかし、裁判判決について一々私が内容に立ち入ることは避けたいと思っております。
  114. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、いまのこの総理大臣の御答弁で、果たしてこれから大きな行政改革を断行していく中で国民政治に対する信頼が確保されるであろうか、国民はただいまの御答弁ではますます政治に対して失望し、そして行政改革という大業をなし遂げる上で、いまの総理の姿勢ではかえって壁をつくる結果になりはしないか、このことを深く憂うるものでございます。  具体的な問題について質問しましょう。  臨調の答申が行われました後に参議院選挙が行われております。その本年の参議院選挙におきまして、一々事例を挙げることはこの際避けましょう、五月十九日の自民党全国幹事長会議におけるあめとむちとをちらつかせながら集票に力を注がれた事実、二階堂幹事長や中尾全国組織委員長の各団体に対する圧力、内海建設大臣の青森市及び神奈川県建設業協会の公共事業推進決起大会で述べられた発言内容、さらに長崎市における政談演説会における二階堂幹事長発言等々は、私は政権党たる自民党の幹部、大臣が利益誘導によって集票しておる、このことが国民の中に新聞報道を通じて広く流れているわけでございます。私はこういう政治体質の温存こそが金権、腐敗を呼ぶ温床であり、政治不信を招く病根であると考えるわけでございますが、今後自民党は一切このような利益誘導的な行動を、少なくとも総理以下各大臣は行わないということを国民の前に確約していただきたいと思います。いかがですか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お答えを申し上げます前に、先ほどの政治倫理の問題で一言申し忘れたことがありますが、公務員倫理という問題も非常に重要でございますが、われわれは一面において政治家でございまして、国会議員という特別の職務を持っておる人間です。この場合には国会議員の身分保障ということが憲法上、国会法上厳重に守られておる。その憲法で直接守られている国会議員の身分保障という問題を軽々に扱うべきではない。少なくとも二分の一という、そういう少ない数で進退を問うようなやり方は憲法や国会法の趣旨から見て適切でない、そう私は考えておるので、国会議員という別の立場からこの問題を論じていただきたいと私はお願い申し上げたいと思っておるのです。  それから、ただいまの利益誘導の問題でございますが、利益誘導はいけません。ただ、与党の場合にはいままでの実績がございますから、自分たちはこういう仕事をしたといって報告することは十分あり得る。これは野党がもうめちゃくちゃに与党をやっつける、これも御自由でございますが、与党だって自分がいままでやってきたことを選挙民の皆さんに説明しなければ殴られっ放しということで均衡を失します。ですから、やっぱりその正しい範囲内において自分たちはこういうことをやってきたということを御説明申し上げることは許されると思うのです。  ただ、票を獲得するために具体的な個別的な件についてそれが利益を誘導する、そして票に結びつくというようなやり方は選挙違反のおそれがありますから、それはいけないと思います。選挙違反のおそれのあるようなことは避けた方がいい。しかし政策を説明するということはこれは思う存分やっていいことではないかと思っております。
  116. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理はいつもそういう答弁をされるのですけれども、憲法とか国会法は、国会議員が刑事事件の刑事犯罪人になるということを前提に決められているわけではないのです、これは。むしろ戦時中の言論抑圧に対して国会議員の活動の場を保障しなければならぬ、それが憲法なり国会法を流れている根幹です。 したがって、刑事事件等によって犯罪人になればそれはその議員の良識において議員を辞職するであろうということでございますから、私はそう受けとめております。    〔委員長退席、理事長田裕二君着席〕 したがって、いまの総理の御答弁にはどうも納得しかねるものがあることをこの際申し上げておきたい。  さらに、私はこういうことをやったということが悪いと言っているのじゃないのです。五月十九日の自民党全国幹事長会議で、これは新聞報道ですから真偽はわかりませんよ。総理みずからが、「市町村ごとに競争してもらう。中央と地方の補助金を悪用、乱用する気はないが、投票率の悪いところはそれなりのお仕置きをし、優秀なところは表彰する。」これはまさに利益誘導を巧みに言葉をかえて述べられたとしか思えないのですね。それは公選法の違反であり、今後そういうことはないと断言されるわけでございますから、私はそれを一応信じておきましょう。しかし、いやしくも総理責任ある答弁でございますから、もし今後そのような事実が出た場合はとうていこれは許されるべき問題ではないということだけをこの祭申し上げておきます。  次に、私はこのような閣僚や政権党の幹部の利益誘導に輪をかけておりますのが高級官僚を当選させるための省庁ぐるみの選挙運動ではないか、こう思います。この中にもおられますので失礼になるかもしれませんが、現在改選数五十名の全国区、現在比例代表区と名は変わっておりますが、この中に占める官僚出身者は、五十二年全国区選挙で十名、五十五年全国区では十名、五十八年比例代表区では十三名の当選者を出しております。本年二月、わが党の塚本書記長が予算委員会で総括質問の中で指摘いたしましたように、補助金や許認可権をちらつかせながら党員、支持者の獲得等を行った行為というものは国民の目に余るものがあります。しかし、残念ながらこれらの実態につきましては公選法違反に問われた例はございません。  そこで法制局長官にお伺いいたしますが、私は省庁ぐるみの選挙運動は憲法第十五条二項「公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」公選法第百三十六条の二「公務員等の地位利用による選挙運動の禁止」、同じく二百二十一条「買収及び利害誘導罪」等に当然抵触するものと思いますが、長官の御見解を示していただきたい。
  117. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいまお述べになりました憲法なりあるいは公職選挙法の規定は承知しておりますが、何分にもただいま御指摘の省庁ぐるみの選挙運動なるものの実態を私全く承知しておりません。 したがいまして、そのような行為なり行動が果たしていま言われましたような規定に違反するものであるかどうかということをこの席で申し上げる自信は全くございません。
  118. 柄谷道一

    柄谷道一君 それじゃ、法務大臣にお伺いいたしますが、私は省庁ぐるみの選挙運動が行われているということは天下公然の事実であろうと思うのです。ここで時間の関係から一々その例は指摘しません。にもかかわらず、それが選挙違反事件にならないということは、法律に抜け穴があるか、検察当局がそれを見逃しているかのいずれかであろうと思うのでございます。これは法治国家として私は許されるべき問題ではないと思います。  秦野法務大臣にお伺いしますが、また八百屋を出して失礼ですけれども、公務員に選挙運動をするなと言うことは、八百屋で魚を求めるようなものでございますか。
  119. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 御指摘のようないわゆる省庁ぐるみの運動と申しますか、そういう行為が御指摘のような罰則に触れるかどうかということになりますと、やはり具体的な事案事案に応じて検討いたしませんと結論は出ないわけでございますが、先ほど来御指摘のように、公職選挙法違反あるいは国家公務員法違反という問題も十分考えられるわけでございますが、いま申しましたように、やはり事案事案に応じて判断しなければならないものと考えております。
  120. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは今後事案事案に対して法律に照らし厳正に対処することがお約束いただけますか。
  121. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 具体的事件の取り締まりは第一義的には警察当局がおやりになることでございますが、検察といたしましても警察と十分連絡をとりながら適切に対処するものと考えております。
  122. 柄谷道一

    柄谷道一君 自治省地域政策課がまとめました五十七年版行政投資実績、国税庁がまとめました国税庁統計年報書、自治省広報課がまとめました地方自治便覧、これをもとに私なりに試算をしてみました。ところが、たとえば公共投資額と国民の国税負担の関係がいかにもいびつである。いまわが国には一票の重さについて問題が出ておりますが、国費の使い方自体にまた重さの違いがあるということを気づかざるを得ませんでした。  たまたま新潟県、これは公共投資額は全国一位でございます。公共投資一人当たりの額は三十八万八千円でございます。これに対する一人当たり国税負担額は十二万六千円と低いわけでございます。二位は北海道、これは北海道開発という特別事情がございましょう。第三位は大蔵大臣のおられる島根県でございます。公共投資額は一人当たり三十七万円、一人当たりの国税負担額は八万四千円でございます。これに比べまして神奈川県は、一人当たりの公共投資額は十八万円にしかすぎない。さらに国税負担額は逆に二十六万円と高い。大阪は、一人当たり公共投資額が十七万円に対して国税負担額は三十七万四千円である。これは、国民の負担とそして投資という関係においてきわめて大きな断層があることを物語っております。  たまたま、田中軍団と言われます木曜クラブ、これは、その中で当選六回から九回といういわゆる中堅議員の方が十五名おられますけれども、この方々がおられます県は、公共投資額上位十位の都道府県の中に六名顔をそろえておられるわけでございます。こういった点を総理何と御解釈されますか。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱり発展県と発展途上県の差がありまして、恐らく日本海側に面している県は所得も少ないし、また社会資本の蓄積が足りませんから、ある程度重点的に投資が行われると。ところが、神奈川県とかそのほかにおいてはかなりもう社会資本の投下が済んでいる、蓄積もある、しかも人口が非常に多い。そういうような面から、数学計算をするとそのような差が出てくる。これは考えられるところであって、あながちそれは悪であると否定するべきものではない。むしろ日本海沿岸のさびれている地帯に対してわれわれが思いやりをやるということは、政治として御政道の筋にかなったことではないかと思います。
  124. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、社会資本がまだまだ貧弱な県に対して公共投資をしていくことを否定するものではないのです。しかし、大都市圏はそれではどうかといいますと、大都市圏は大都市圏としての悩みを多く持っているのですね。たとえば神奈川、東京の場合は、大規模地震という問題に対して余りにもその対策が貧弱である。大都市圏では人口急増対策を早急に進めなければならない。その中に社会資本の充実で求められている問題も数多くある。都市再開発の問題もある。もうすべて大都市圏は事ここに成れりという状態ではないのです。この間にバランスをとっていくというのが、私は中曽根さんのお言葉を返さしていただければ御政道であって、有力な国会議員がいるから公共投資をたくさん持ってくる、その持ってきた国会議員は選挙が強い。これでは国民は、余りにも一票の重さの違いと同時に国政の日の当たらざることを憂えるのではないでしょうか。大蔵大臣いかがです。
  125. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のように、国税負担倍率で見ますと、確かに私の島根県が一〇〇として四四〇ぐらいじゃないかと思います。その次が沖縄でありまして、その次が鹿児島、それから岩手、まあ大体覚えております。それから、一人当たりの公共事業投資額というのも、年々多少の違いはございますけれども、いま柄谷委員御指摘と余り大きな違いはございません。そのことを感じてみますと、私は、国税負担倍率が高いというのは、結局本社企業等が全くない、そういう地域を選挙区に持ちながら、依然としてそういう状態にあるということに対しては、みずからの非力を毎日本当に感じております。もっとがんばらなきゃいかぬと思っております。  公共事業の投資額で見ますと、これは確かに総理からもお答えがございましたように、言ってみれば社会資本の充実度合い等の低いところから傾斜配分されていくというのは、これは一つの私は御政道としてのあり方であるというふうに思っております。と同時に、最近、私なりの統計で見ますと、なるほどなと思いますのは、たとえばプール一つをとってみますと、非常に地方の方は、まずPTAがちゃんと勤労奉仕なさいます。それから、土地はただで出そうやと、そういう地域社会の郷土意識というものがあるからよけいそれが進捗するのじゃないかと、こういう感じがします。  と同時に、大都市圏において、私、建設大臣もした経験を持っておりますが、もろもろの事業を行った場合にはいわゆる反対というのが、統計してみますと人口過疎地帯からいえばはるかにその件数が多うございます。そういうことも公共事業執行の上に弊害になっておるではなかろうかと、そういうことを考えながら、私ども全国を歩きますに当たりましては、なかんずく都市部の人には、やはり社会資本全体の充実のためにはある種の自分で私権制限をするような気持ちを持っていただきたいということをお願いをして歩きますし、また地方の方々には、よりお互いが地域社会を整備することによって、国税負担倍率等々で私どもが肩身の狭い思いをしないようにお互い協力しようやというようなことを言って歩きますと、大変結構なことだというふうに言っていただいております。
  126. 柄谷道一

    柄谷道一君 各部道府県における国民一人当たりの公共投資額、これと対比すべき国税負担の額、この関連につきましては、これはいろんな観点からの精査は必要であろうと私も思います。しかし、やはり公平、公正、これが政治のモットーでなければなりません。いやしくも総理大臣は、大臣たる者、政権党たるもの、そういう公共投資とか補助金をえさにという表現ははなはだ失礼かもしれませんが、集票に結びつけていくということは誤りであるということを総理大臣も認識されておるわけでございますから、私はそのような事実の根絶について強く総理以下大臣に求めて、次に問題を移してまいりたい、こう思います。  いまお手元に資料を配ります。  昭和五十八年から六十五年までの財政中期展望につきましては、衆議院段階でわが党の大内啓伍政審会長が質問に取り上げておりますので、私はこれとの重複を避けて、五十九年の予算の問題に限定して御質問をしたいと思います。  まず歳入関係でございますが、五十九年度の試算、これは財政の中期試算のCでございますが、税収の伸びを六・六%といたしております。これはこれまでの平均名目成長率の中央値六%に税収の過去の平均的弾性値一・一を乗じて六・六%の税収の伸びとしておるわけでございますが、昭和五十八年、本年八月末の租税及び印紙収入の累計額の対前年比が一〇〇・五%でございますから、来年度の予算の中に六・六%の税収の伸び率以上を見込むということは至難であろうと、こう思います。  次に、公債金収入でございますが、総理大臣は、八月十二日の閣議決定を踏まえまして九月十日の所信表明で「昭和六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却」を図ると、こう国民の前に公約をされたわけでございますから、来年度の赤字国債の発行額を一兆円減額するということは総理大臣自体の公約でもございます。これをゆるがせにするということになれば、財政再建は初年度にしてつまずくという結果になろうと思います。  税外収入につきましては、私はたびたび大蔵委員会でも指摘いたしておりますが、五十八年予算におきましては、緊急避難措置と称しまして、実質的な赤字国債に匹敵する金額は二兆二千九百十二億円に及んでおります。臨調は、この緊急避難措置を回避せよ、こういう答申を出し、財政の中期試算でもこの意を受けた税外収入を見込んでおります。したがって、収入に関しましては、いま財政中期試算Cに求められました数値を上回る税収を確保することはむずかしい。  一方、国債費、地方交付税、さらに一般歳出における概算要求の額を対比して見ますと、お手元の資料のように、五十九年度は実に二兆八千百五十八億円の要調整額が出る、それだけ金が足りぬということがはじき出されるわけでございます。これに仮に政府原案どおり通ったとして減税を行えば、来年七千億円の税収減でございます。われわれは反対でございますが、二%の政府案どおりになったとして、これに恩給、年金等のはね返りを加えれば、歳入はさらに二千五百億円増加いたします。    〔理事長田裕二君退席、委員長着席〕 このように私なりの試算によりますと、実に五十九年度は三兆七千億円金が足りぬ、従来の政府政策展開を続ける限り足りぬという答えが出てくるわけでございます。  総理大臣はたびたび、租税負担率は現状を維持する、こう公約されております。この三兆七千億円の歳入欠陥を増税なくして埋め得るという確信がおありでございますか。
  127. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 柄谷委員お出しになりました「昭和五十九年度財政事情の試算」、その前提も含めての御説明でございますが、その前提を含めての御説明の限り、これは私どもも参考にしなければならぬし、誤った試算ではないと、正確であるという前提の上に立って私もお答えしたいと思います。  まず、租税負担率の問題がございました。租税負担率という問題は、これは私どもいろいろ議論をいたしてみますが、結果として出てくるものであって、あらかじめ定量的にこれを確定さすということはなかなかむずかしい問題だと思います。したがって、最近大蔵委員会等で柄谷委員ともたびたび議論をいたしますが、この租税弾性値の問題、それから租税負担率の問題を定量的に示すことはなかなかむずかしいという問題については、ある程度の私は御理解をいただきつつあるではないかと思います。しかしながら、少なくともその年度の予算を編成した際には、歳出、いわゆる行政需要に対して最終的には租税負担が決まっていきますならば、それが一応のめどとしてはお出しできる数値であるというふうに思っておるわけであります。  そこで、御意見を交えての御質問の中で、まず一兆円の減額の問題に言及をなさいました。これは本年八月十二日の「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、これが閣議決定されまして、その対象期間中に特例公債依存体質からの脱却に努めるという努力目標が示されたわけであります。この努力目標に向かっては何としても最大限の努力を重ねていくべきである、このような認識に立っております。そこで、今後どのようにして、されば毎年度特例公債の減額を進めていくかということになりますと、五十八年度予算審議の際にお示し申し上げました、言ってみれば機械的に一兆円ずつということを申し上げたわけでございますが、私は、この問題はそのときどきの財政事情等、諸般の情勢を総合的に勘案して、年度年度ごとに決めていくべきものである。しかし、たとえ機械的とはいえ一兆円ということをお示しいたしておりますので、そのことが頭の中にこびりついておるということは申し上げるべきではなかろうかというふうに思っております。  それから次の問題、御意見を交えての御質問でございましたが、いわば税収見積もりでございます。いま、いみじくも八月までの税収の実績をも資料として踏まえて試算なすっておるようでございますが、私は、今後の税収についていまどのように申し上げるべきかということについては定かな自信が必ずしもございません。原油価格の下落などというものが、実際問題、いわば税収にどれだけプラスの面ではね返ってくるか、一九六〇年代の二ドル三十五セントから一ドル七十五セントまでの油の値段のときの比率でどれぐらい後に効果が出たかという実績もなかなか正確につかめません。したがって、ある人は十五カ月ぐらいかかるだろうとかいろいろ申しますが、いま税収そのものについて、柄谷委員の御質問よりももうちょっといいですよとか悪いですよとか言うだけの自信はございませんが、いずれにいたしましても、毎年度の税収見積もりは、予算編成の一環として、その時点までの課税実績と、いまおっしゃいました課税実績、それから政府経済見通しの諸指標を基礎として、個別税目ごとに積み上げて行うわけでございますので、来年度の政府経済見通しもない現段階において、税収について確たることを申し上げるということはできません。中期試算において申し上げました税収は、五十八年度予算を前提として、一定の仮定計算のもとに機械的に述べたものでございます。  いま一つ、それから特別財源対策についてもお触れになりました。この問題は、委員たびたび御指摘がございますように、緊急避難的な措置というようなものが五十八年ございました、確かに。したがって、五十九年度においてそのような措置をするということは前提に置いてもおりませんが、非常にむずかしい問題だと私どもも思っておるわけでございます。  かれこれ勘案いたしますと、やはり結局予算編成に対しては、私どもは、まずこの財政改革の方針として申し上げておりますように、歳出に対して徹底的なメスを入れていくということから始めていかなければいけない。初めからある種の聖域を設け、それを絶対なるものとして判断してまいりますといろいろな矛盾が出ますので、やはり歳出削減に当たっては、それこそ制度、施策の根源にさかのぼって、また、まさに地方が負担する分野か国が負担する分野なのか、あるいは企業個人が受け持つべき分野なのか、そういうところの施策の根源にまでさかのぼって対応していくという姿勢で、いわゆる概算要求が提出された後、今後も部内で鋭意作業の積み重ねをさしていただいておるというのが現状でございます。
  128. 柄谷道一

    柄谷道一君 いままでの各委員質問を聞いておりまして、私は、中曽根総理魔法遣いじゃないかと思うのですね。財政は、個別の小さな項目をどうするこうするは多少問題残りますよ。しかし、大枠においてほぼ正確だと大蔵大臣言われたのですから、何しろ三兆七千億円の金がないということでしょう。まずそれの見当ないのですよ。そのうち所得税減税は、自民党さんは、恐らくこれは直接税が間接税に振りかわったのだから租税負担率の増加にはならないと、こう逃げられるのでしょう。仮にそれを認めたにしても、なお三兆円足りないのですね。そして緊急避難措置は、また実質赤字国債として先送りすれば一兆六千億円の金は浮いてきます。しかし、それは臨調答申に反することになります。赤字国債の発行額を減額していくというと一兆円できない。ことしは少なくて次は多目にといっても、国債の本格償還はむしろ六十年から始まるわけですから、財政はさらに厳しいということですね。それをあえてやろうとすれば、総理の本会議所信表明は実行できない。  そうすれば一体どうするのかということになれば、政府と意向をしめし合わしておられるのかどうかわかりませんが、それを受けて出たのが税調の中期答申ではないかと思うのです。中期答申では、五十八年における大幅所得減税、パート減税、教育費減税、中小企業事業承継税制、法定耐用年数の短縮等、減税にかかわるものはすべてこれを否定されております。同時に、「検討」という名をつけておりますけれども、これからの洗い直しの対象として増税の方向を示唆されておりますのが、実に勘定いたしますと二十九に及んでいるわけでございます。これでは抽象論ではなくて財政の現状というものを踏まえると、選挙が終われば増税が出てくるぞと、国民はこういう細かなことを知らなくても、その心配をするのは私は至極当然であろうと思うのです。本当に、総理は今度の総選挙で増税しませんということを公約にしますと、こうおっしゃいました。まことにりっぱな御決意でございます。それで予算が編成できると、こういう確信が総理おありでございますか。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) きのうも申し上げましたが、われわれは臨時行政調査会の答申の線を守りまして増税なき財政再建ということを堅持すると、そういうことを重ねて申し上げまして、今回、仮に将来選挙がある場合には増税しない、臨調の線に沿ってやるということを公約にしていいと、私個人は考えております。
  130. 柄谷道一

    柄谷道一君 個人では困るのでございまして、増税はしない、承っておきます。  臨調答申は最大限尊重されるというのでございますから、緊急避難措置はよもやなさるまいと思います。六十五年赤字国債依存体質の脱却、これも着実に五十九年第一歩を踏み出されるものと受けとめておきます。  それで、この三兆七千億円に及ぶ財政不足がみごと満たされると。私はその理由がわからないので、そこで魔法遣いではないかというはなはだ失礼な発言を行ったわけでございますけれども、そんなことが果たしてできるのかなと、こう思いますが、そう約束されるのでございますから、そのまま受けとめて、国民はテレビで聞いておりますから、この公約が実現されるものと思いますし、仮にそれが守られないとすれば政治に対する国民の信頼は一層失われるであろうと、このことを憂慮するものでございます。  そこで、増税項目いろいろ全部やりたいのですが、時間もございませんから一点だけお伺いしておきます。  現在、自動車には出荷、取得、所有、そして利用段階まで実に九種類に及ぶ税制がございます。しかも、その税の種類は国税、府県税、市町村税に分散をいたしております。私なりに計算をいたしますと、これらの税金を合わせ、かつ保険料、有料道路料金、駐車料金等を含めますと、現在、自動車ユーザーの年間負担額は約四十五万円に達しております。そういう状態の中において、両論併記ではございますが、今度新たに自動車運転免許課税ということがうたわれております。自動車はもはやぜいたく品ではございません。自動車運転免許保有者は四千七百万人を数えております。免許適齢人口における割合は、男子は七二%、女子は三〇%となっておりまして、二人に一人は免許証を保有しているというのが現状でございます。しかも、自動車運転免許は所得の多寡にかかわりません。車を持っているか持っていないかにもかかわりません。こうした中で自動車運転免許保持者に一律に新税を課すということは、これは弱者いじめの課税となる。そして大衆課税の強化、税負担の不公平につながるものと思います。  このように一項一項を挙げますと、それぞれがたくさんの問題を抱えているわけですね。こういう問題につきましては、時間の関係で私は、詳細各項目に触れることは本日は避けたいと思いますが、少なくとも大蔵大臣としては、ましてこの問題は両論併記でございますから、より慎重な対応というものが行われるべきである。その過程においてはわれわれの意見も十分反映する場を求めていただきたい、こう思うのでございますが、いかがでございましょう。
  131. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 地方税として取り上げられておりますから、私からお答えをいたします。  今回の税制調査会の「今後の税制のあり方についての答申」は、これは中長期的な税制の諸問題を取り上げて検討をされたわけでございます。したがいまして、そこにいろいろな具体的な個別の税についても挙がっておりますけれども、これらについては、まだこれから各年度ごとに、それぞれその年その年の問題としてまた税制調査会で御審議があるということになっておりまして、その段階でまたいろいろ審議がなされることであろうと思い、今日の段階ではまだそれについて私どもかれこれ申すことができないであろうと、こう思っております。
  132. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、自動車免許税、酒税、こういった大衆課税の中でも慎重な配慮を要すべき項目はたくさんある、このことだけを指摘いたしておきまして、また改めての機会にそれぞれの委員会等で意見を申し述べてまいりたい、こう思います。  次に、防衛費のGNP一%枠の問題について総理にまずお伺いいたします。  これは五十七年十二月十四日衆議院予算委員会におけるわが党大内委員質問に対して、これは速記録から持ってきておりますから読ませていただきますと、こういう御答弁をされております。政府は防衛計画大綱の防衛力水準を達成しようとしており、その一過程として五六中業がある。GNP一%のメルクマールがあるのも事実だが、大綱水準の達成が防衛政策の中心である。一%枠だが、三木内閣でできたときもこれは当面の政策ということであった。その後諸般の変化が出て、最大限度の努力をしてもそれが満たされない状態になればやむを得ない、こうお答えになっているわけですね。  いわば、これは防衛力整備、五六中業の達成がその前提であって、結果としての一%突破もやむを得ないことを示唆されたものと受けとめております。ところが、五十八年六月十二日の日立市における記者会見での御発言は、防衛費を聖域とせず、一%を守る方針は変わっていないし、その線で努力する。これは努力に変わっておられます。そして、五十八年九月十三日の衆議院本会議での答弁、これはわが党竹本委員に対する御答弁でございますが、防衛費GNP一%枠内の方針は維持していくと。維持するという答弁ですね。努力するという答弁、そして五六中業の達成がまず基本に置かれるべきだという三様の答弁国会内において行われているわけでございます。  国民はどれが本当の総理のお考えかはなはだ迷うわけでございまして、改めて総理の御所見をこの場で明らかにしていただきたい。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和五十一年でありましたか、三木内閣がつくりました一%以内にとどめておくというこの原則は変える必要を認めない、その三木内閣の決定を守っていくために努力をしてまいりたい、そういうことでございます。
  134. 柄谷道一

    柄谷道一君 それじゃ総理、具体的にお伺いいたします。  ことしの防衛費、五十八年防衛費のGNpに対する対比は〇・九八二でございます。これはたまたま人事院勧告を政府の案どおり二%に抑えた結果一%の枠内にとどまっているわけでございます。これを、われわれが要求いたしておりますように人事院勧告。六・四七%を完全に実施した場合、GNP対比は一・〇〇二、本年すでに一%枠は超えざるを得ないという状態でございます。  来年のGNP対比がどうなるか。これについてはもちろん、経済成長率が何%見込めるのか、概算要求が一体どうなるのか、さらには来年度のベースアップがどれだけになるのか、三つの不安定要因がございます。仮に、仮にでございますよ、五十八年、本年政府が経済見通しを立てました五・六%成長、こう仮定をしますと、来年ベースアップ三%で一%の枠を超えます。六%成長としても、ベースアップが四%であれば一%の枠を超えます。すなわち、五十九年もベースアップを抑制するという方針をとらない限り一%枠を維持することができない、これが数字上はじき出されるわけですね。一%枠をそれでも変えないと言われるならば、私は五六中業の達成目標時期をずらすしかない、こう思うのですが、防衛庁長官いかがでしょう。
  135. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) ただいま御指摘のように、五十八年度予算ではGNP比〇・九八二%でございまして、この一%の枠といいますか天井といいますか、に大分近づいてきておることも事実でございまするし、またただいま幾つかの事例を挙げられまして推定の計算をなさいましたが、その計算そのものが成り立つことも恐らく事実であらうかと存じますが、ただ私どもが申し上げたいことは、五十九年度の防衛費の対GNPはどのようになるかということにつきまして、いま委員の御指摘にございましたような主として三つの問題がまだどういう動向になるか不確定でございまして、いまこの時点では何とも見通しを申し上げることは困難であることは御理解いただきたいと存じます。  先ほど総理から御答弁もいただきましたけれども、われわれとしましては従来から、防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く到達をいたしたい、こう考えて防衛力の整備に当たっているわけでございますが、実は財政当局に対しましても、反面、五十一年に閣議決定を見ました一%という当面めどがございまして、このめどを尊重するようできる限りのぎりぎりの努力を行っておるところでございます。そして、私自身といたしましては、先ほど総理の御答弁にもございましたが、いまのところこの閣議決定を変えねばならないというふうには、変える必要はないと、こう考えておるわけでございます。  また、もとへ戻って恐縮でございますが、五十九年度にどうなるかというような問題につきましては、先ほど申し上げましたように、いまこの時点ではこれは何ともお答えができない不確定要素がたくさんございます。ただ、先ほど御指摘のように、幾つかの推定を入れた計算はこの時点でやればできないことはない、こういうことになろうかと存じます。
  136. 柄谷道一

    柄谷道一君 長官、来年概算要求が一%の枠を超えないというのは、人件費のベースアップを一%しか見てないからつじつまが合うのですよ。一%のベースアップで来年終わるはずがないのですね。とすれば、経済成長率にもよりますけれども、さらに二%積むだけでオーバーしちゃうのですよ。人事院勧告が出た場合、一%をオーバーしなきゃならない。 そのときに人件費を抑え込むのですか。
  137. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 防衛総費の中に占めまする人件費の比率といいますか、これはなかなか高いものがございます。仮に二%といたしましても二百数十億というようなオーダーになりますが、しかしながら、また一面、わが国の経済そのものもこれも相当大きな経済でございまして、この経済の先行きで、経済が上向くというようなことでもございますると、またこれも相当大きな育ち方をするわけでございまして、いまこの時点では推定をして数字を置いて計算はできますけれども、どういうふうになるか、防衛総費の五十九年度の政府の原案のでき上がり方もわからないこの時点でございますので、的確にはこれについていまこの時点で御答弁を申し上げるわけにはいかない、こういうことでございます。
  138. 柄谷道一

    柄谷道一君 それじゃ防衛庁長官、もう一点御質問しましょう。  あなたは十月三日の本院の決算委員会で、決算ベースでもGNP一%を守るよう努力すると、こうお答えになっていますね。これはきわめて重大な発言ですよ。年度当初に経済成長予測を立てますね。この経済成長予測というのは一〇〇%当たるという保証はないのですね。決算段階でも一%を守るということは、仮に、仮にの話ですよ、その年の経済成長率が六%であろうというその六%成長を対比に防衛費を決めた。ところが、経済成長率は仮に予測に反して悪くて四%ぐらいになっちゃったということになると、決算段階で一%を守るということは、決められた予算を削って、人間の人件費は削れませんから、正面装備という内容そのものを削っても一%を守ると、こういう決意がなければ言えない発言なんですが、そういうお考えですか。
  139. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) これには質疑応答の経過がございまして、私、決算ベースにおきましても一%のめどを守るという答弁はいたさせていただきましたが、その答弁のときにつけ加えさせていただいたわけでございます。政府予算原案を作成いたしますときには政府の経済見通しというのがございます。その決算はかくかくであろうという推定も、決算自体は実は一年ないしは一年ちょっとおくれるわけでございますが、時の経済の推移などを考えながらも頭の中に置いておることは事実でございます。したがって決算の場合には、決算ベースではどうかという御質問がございましたので、当然でございます、政府の原案をつくるときに一%ぎりぎりのめどを努力といたしますので決算においてもしかりでございますと、こういうふうな答弁を申し上げたわけでございます。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 GNP一%枠ということに対する総理の御発言は、これははなはだ失礼かもしれませんけれども、就任当時タカ派という国民の批判が非常に強かった。そういう批判をかわそうという政治的な配慮から一%堅持と、こう言っておられるのか、それとも景気回復が順調に進んで、そるすればGNP自体がふえるわけであるから一%枠を守っても五六中業は達成できるという確信を持っておられるか、そのいずれかでなければ、そう国民の前に、一%は断固守りますという発言はできないと思うのですね。仮に一%を突破すれば、ただいま言われました総理の御発言は食言になります。仮に一%を守るという前提で防衛計画をずれ込ませば、日米摩擦の原因になりかねません。こういう問題について私は、増税問題と同様でございますけれども、余りいい子、いい子の顔をして果たしてこれからの日本の安全保障がどうなるんだろうという気持ちを抱かざるを得ないわけでございます。  総理の御所見をお伺いいたしますと同時に、かつて私の質問に対して総理は、五六中業がずれ込んでも日本が精いっぱい努力しておれば日米摩擦にはならぬ、それはアメリカが理解してくれるはずだ、こう御答弁になりました。今回のレーガンさんと会われた後もそういう感触をお持ちでございましょうか。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げておりますように、GNPは対する一%の枠以内にとどめるように努力してまいりたいと思っております。  なお、日本の防衛政策というのは、日本の主権の範囲内におきまして憲法を守って自主的に決められるべきものであります。もとより、国際的な話し合いというものもあって、その点も一方においては考慮いたさなければなりませんけれども、あくまでこれは自主的にみずから決定すべき性格のものでありまして、そういう点についても十分配慮してまいるつもりでおります。
  142. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理のただいまの発言をそのまま受けとめておきましょう。  しかし、いつまでもそういう姿勢で逃げ切れるものではない。新たな歯どめをどうするのか、この問題については防衛庁も総理と十分御協議になって、国民合意を得られ得る新たな歯どめについて真剣な検討が進められるべきである。同時に、国の安全保障というのは正面防備の問題だけではない。われわれが指摘いたしました、有事に対していかに対応するか、この法的整備も全然進んでおりません。私は、金のないときこそ体系の整備、このことにより重点を置いた安全保障政策が展開されてしかるべきである、この点だけを申しておきたい、こう思います。  次に、時間の制限がございますから、医療保険問題について御質問をいたします。  三K赤字の一つと言われました政府管掌健康保険は、五十六年六月の診療報酬八・一%の引き上げにもかかわらず、五十六年度決算では当初見込みより四百八十四億円上回る七百六十九億円の黒字を出しております。これによりまして、四十八年度までの棚上げ累積赤字五千三百八十八億円は別として、再出発をした四十九年以降の累積赤字は一挙に八百三十一億円になりまして、当初六十年をめどに解消を予定したものが、早ければ五十九年中にも解消されるのではないかという見通しも出かかってまいりました。にもかかわらず、厚生省は五十九年概算要求で、本人給付率八割を初めとする改正の考え方を示されたわけでございます。私なりの試算によりますと、仮に厚生省案どおりになりますと、四人世帯の医療費負担は現行の四万円程度から倍額の八万円程度にふえることになります。これは国民生活を大きく圧迫するものと言わなければなりません。  そこで、大臣に率直にお伺いしますが、今回の措置はこれが妥当なりと、正しいと思って御立案になったのか。それとも、マイナス一〇%シーリングという大きな壁がある、厚生省は法的補助金がほとんどである、削りようがない、万やむを得ず手をつけたお考えであるのか、この点を正直にお述べいただきたい。
  143. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 柄谷さんの御質問にお答え申し上げますが、先ほどお話がございました数字は政府管掌健康保険の数字だと思います。  政府管掌健康保険はいろんな努力によりましてやっと黒字の状況になってきておりますが、また赤字になるという可能性も出ている。非常にわずかなところでありまして、浮き沈みをしているというふうに御理解を賜りたいわけであります。  しかし今回、いまのようなお話、いろんな改正案を出しましたのは、このままでほっておきますと、実は医療費が毎年毎年一兆円ふえてきているという事実がございます。これに対しまして、単に五十九年度をどうしようかとかという話でなくて、中長期にわたりまして医療保険制度の改正をこの際考えておかなければ大変なことになるであろう、そういった観点から、単に先生御指摘のようにことしの財政事情はどうだ、マイナスシーリング一〇%という話ではないわけでございまして、トータルの話として本当に国民に信頼されるようなところの医療制度の改革をやっていくことが必要であろう。先生にもよくいろいろと御指摘をいただいておるところでありますが、医療につきましては、医療自体について薬づけ医療、その他の非難がございます。医者がもうけ過ぎているのではないかというような批判もある。不正な医療があるではないかという批判もある。また、薬価の問題につきましてもたびたびいろんな御指摘のあるところでございまして、そういったものをトータルの問題として含めまして改正をやろうというのが今回の考え方でありますので、御理解を賜りたいと思います。
  144. 柄谷道一

    柄谷道一君 この医療保険制度の抜本改正問題が取り上げられましたのは昭和三十年十月十日、七人委員会が報告書を出して以来でございます。すでに二十八年の歳月がそれから経過いたしております。そして、その七人委員会の報告がなされましてから、各党、保険者団体、被保険者たる労働組合、医療団体から数多くの意見が述べられました。「医療保険制度抜本改正の解説と資料」、これだけの本にまとめられる意見が各団体から提示されたわけですね。  そこで社会保険審議会は、このような各界各層の意見を取り入れて医療保険抜本改正をいかになすべきか、昭和四十四年の厚生大臣の諮問以来、実に五十五回に及ぶ審議会を開いたわけでございます。私も当時この審議会の委員としてすべての審議に参加いたしました。そして昭和四十五年十月、医療保険制度の前提問題についての意見書を大臣に提出しました。次いで四十六年十月、医療保険制度の抜本改正に対する答申を行ったわけでございます。それ以来十二年間経過いたしております。  今回出されました厚生省の案は、その十二年間、医療制度を取り巻く前提諸条件について、一部手直しはやりましたけれども、何ら答申に沿う抜本的な問題に手をつけずして、しかも本人給付八割ということは、明らかにこの審議会の答申と逆行する措置をいまとられようといたしているわけでございます。これでは、都合のいいと言ったら失礼ですが、政府にとって都合がいい税調の答申はそのまま採用さしていただきます、むずかしい問題は聞きおくにとどめます。これでは何のために審議会を持っているのか、まさに厚生大臣の姿勢は審議会軽視と言われてもやむを得ない今回の提案ではないかと、こう思うのです。  与党田中政調会長はこの問題につきまして見直す見解も示唆されております。総理は九月二十六日の衆議院の行政改革特別委員会で、概算要求は概算要求であり、十二月の予算編成までに自民党内の論議形成を見守りたいと、こう答弁されているわけでございますから、これは見直す方向を示唆されたものと受け取るのが当然でございましょう。厚生大臣、あなたは天下国家、筋を立てて出した案だと言われるのですけれども、この案が審議会の答申とぴったり合っていると思うのですか。これは背中と裏合わせじゃないですか。いかがでしょう。
  145. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 先生御指摘のとおり、医療制度の改革の問題につきましては長年にわたる御議論のあったところでございますし、また、四十六年の十月に社会保険審議会で、先生御指摘のように五十五回も御審議を先生も加わっていただいてその当時やっていただいているということはよく承知をしているところでございます。そのときの内容も十分に私は拝見いたしまして、いろんなお考えもこの中に盛り込まれているのがあるということは知っておりますし、その中でやっているものもたくさんあるわけであります。たとえば、生涯を通じての健康管理制度というものはやはり考えていかなければならないであろう、単に治療だけでなくて、予防、リハビリテーションを通ずる一貫した体制づくりをやっていかなければならないという話であるとかいうものは、老人保健法によりましてすでに実行がされつつあるところでありますし、また、医療供給体制につきまして、地域医療について計画的なことをやっていくというのも、実は現在、医療法の改正案ということでお願いがしてあるところでございます。  ただ、四十六年の時期といまの時期と、率直に申しましてやはり医療を取り巻くところの社会環境というものは大きく変わってきていることも事実でございまして、四十六年と申しますと、ちょうどドルショックのあったときでございます。まだ高度成長の時代と言っていいぐらいのときではないかと思いますし、まだいろいろな形で経済発展というものが考えられておった時期だろうと思うのです。いまやそういった時期ではなくなってきているし、経済の成長というものも変わってきている。また、その当時に比べまして疾病桐造の変化ということもございますし、人口の高齢化というものが非常に進んできておるところでございまして、客観的な条件というものは相当に変わってきているというふうに私どもは認識をしているところでございまして、給付と負担の両面における格差の是正であるとか、適正な受診時の負担の導入であるとか、保険財政の安定化を目指しておるところでございます。  この当時、四十六年の答申を見ましても、保険制度間のバランスを図ること、それから給付の改善を図っていかなければならないという点、そういったことで、やはり保険制度でもってやっていこうという基本的な考え方、それから公費負担のものは特別のものにしていこうという考え方、そういったものにつきましては、私は基本的な認識につきましては変わってないのではないかなという感じを持っておるわけでございます。要は、今回出しましたのも、その後の社会経済情勢の変化に対応したものだというふうに御理解を賜ればありがたいと思っておるところでございます。
  146. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、厚生省が去る六月八日発表いたしました国民医療費推計結果を見ますと、五十六年度の国民医療費は前年度より七・四%増加して十二兆八千七百九億円。これは国民一人当たり十万九千二百円に達しておる。対GNP比は五・〇七%。これが、自後、予算ベースの推定を加えれば、五十七年度には十三兆八千七百六十一億円、五十八年度は十四兆五千三百億円になると。非常な勢いで国民総医療費はふえていっておるわけですね。  しかし、このような国民総医療費の増加につきましては、社会保険審議会、社会保障制度審議会などが再三、もう十数年前に出しております医療制度の前提問題について政府が勇気を持ってメスを入れ抜本的改革を行うということがなくして、ただ安易に国民にしわ寄せをするというような給付率の引き下げや、また新聞報道によりますと、差額ベッドをさらにふやすという方法や、ただそろばんをはじいて、減す方の抜本改革をやらないでふやす方の負担ばかり考える。こんなことで私は国民の理解が得られるはずはないと、こう思うのです。  この問題とあわせて、厚生省が九月二十六日に五十七年度の指導、監査実施状況を発表されましたね。個別指導を行った医療機関が六千七百九十三機関、保険医の数は八千四百七十九人、これでも不正の疑いが深いとして監査を行ったのが百三十四機関、保険医は百六十七人。監査の結果、不正請求があったとして指定を取り消されたもの五十機関、保険医登録を取り消されたもの五十五人、返還さした金額は十億一千九百三十三万円、こういうことですね。  これは、いま全国の医師の総数から比べますと、ごく一部にしかすぎないわけですね。これだけをチェックしてもこれだけの不正請求がある。また、これは国税庁が約六百人の開業医に税務調査をした結果、約二十七億円の不正請求を発見したということもございます。いま十万人を超える医師の中で六百人のチェックをしただけでこれだけの金が出るのですね。この問題にももっと大きなメスを入れるべきだ。たとえば、昭和五十五年に発足いたしました医療Gメンと言われる医療指導監査官は全国で九名にしかすぎません。しかも、国家公務員である都道府県の保険課に籍を置く指導医療官は、五十七年現在、定員百七名に対して七十六名しか充足されておりません。また、愛媛県には専任官が一人もおりません。栃木、高知、宮崎、山梨では近隣の専任官の応援を求めている状態でございます。  私は、お医者様にもりっぱな方が多いと思うのです。しかし、やはり不正請求をしている方に対しては、政治というものが厳正にこの問題に対して取り組むということなくして、医療前提問題も不正請求もあいまいにしながら被保険者、保険者に対して条件は切り下げますよ、保険料は上げますよと、これでどうなんですかね、厚生大臣、そういう姿勢を直す必要があるとお考えになりませんか。
  147. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) いまお話がございましたが、差額ベッド云々というのはいろいろ問題がございます。現実に差額ベッドのところが解消してないのでどうするかということで、いま中医協でいろいろ御議論をいただいているところでございまして、何か新聞報道で差額ベッドを全面的に認めていくというようなお話ではないわけでございまして、御理解を賜りたいと思います。  私も先ほど申し上げておりますように、医療制度の改革というものは抜本的にトータルの形でやっていかなければならない。たびたび申し上げておりますように、医療というものが国民の信頼のおかれるような形にしなければならないことはもう当然のことでございまして、不正請求の問題も、いま御指摘のような数字、私も数字を持っておりませんから正確な数字は照合しておりませんが、こういった不正請求につきましては今後も徹底的にやっぱり調べていかなければならないと思います。特に、高額の医療または非常にたくさん費用を使っておられるような病院等につきまして、やはりいろいろな監査等をやっていくことが必要でございます。来年度の予算要求におきましても、その辺の人員をふやしていくという要求をしておりましたり、また、新しく技術顧問団というものを設けてそういったもののチェックをやっていこうということでございます。  患者負担、患者負担と、こうお話がありますが、実は私は負担の公平化、適正化ということを考えておるわけでございまして、国民健康保険におきましては現在一律に七割しか給付の中を見てもらえない。一方の組合であるとか政府管掌の方であると、本人十割、家族の方は七割、八割という形になっておるわけです。国民全体として考えますならば、やはりその辺の給付を受けるのは同じでなければならない。これは先ほど先生お話がありました四十六年の答申の中でもやっぱり同じようなかっこうに持っていくべきだというふうな御答申があるわけでございまして、そういったものを考えながらやっていかなければならない。特に十割と七割というふうな差別がありますと、どうしても十割の方は、言いますとただより高いものはないという原則が働いておるのではないかという気がするわけでございまして、そういった点も考えながら医者のあり方について直してもらう。特に私は、薬が十割の場合には非常に多く使われているということも事実でございますから、そういったことをやっぱり直していくということも一つの改善方法ではないかということで考えているわけでございます。
  148. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間がございませんので、最後に総理にお伺いいたします。  財政の現状も実に深刻でございます。指摘いたしましたように、三兆七千億の歳入欠陥を見込まざるを得ないという現状でございます。金がないから積極的経済政策への転換ができない。これは簿記でいきますと、単年度単式簿記の発想でございます。そのような政策展開を続ける限り、経済はますます縮小均衡をせざるを得ません。そのことが経済の活力を弱め、かつそれが税収にはね返ってくる、悪循環を招くと思うのでございます。  民間企業におきましても、天下の大企業でも借金のない会社はないのですね。問題は、その投資額が将来のために有効に活用されるかどうか、その投資の内容にかかるわけなんです。そうした視野が一年度に限ってということは、大蔵大臣、失礼かもしれないけれども、学年度単式簿記の発想から中期的な複式簿記の発想に転換をして、五年、十年先の財政を展望しつつ、政治として果敢な政策転換を行っていくという政治姿勢に転換しなければ、現在当面いたしておる財政の危機もまた福祉の後退も乗り切れるものではない、私はこのような考えを持つものでございます。  時間がございますならば具体的にその政策の内容にも触れたいところでございますが、時間は守りたいと思いますので内容には触れません。かつ、通告の中には行革六法案の内容についても通告をいたしておりましたが、これは一般質問等でまた申し上げてまいりたい、こう思います。総理及び大蔵大臣の私のただいま申しましたことに対する御所見を承りまして、私の質問を終わります。
  149. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、私からお答えをいたします。  確かに、いま柄谷委員おっしゃいましたすべて中長期的なまず一つの青写真を描いて、そこへ歩一歩と行政、国民のニーズに対応して単年度の予算編成をしていかなきゃならぬという基本的な考え方は、私は否定をいたすものではございません。ただ、いわゆる国の予算というものは単年度主義という原則がございますだけに、その中長期的な視点と単年度主義をどのように調和させていくかというのが私どもに与えられた仕事であるというふうに考えます。貴重な意見を拝聴させていただきました。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御指摘のとおり、財政事情は非常に厳しいということもよく存じております。この厳しい中でわれわれがいままで言明したことをどういうふうに実現していくかということもまた非常に大きな試練の中で予算編成をしなきゃならぬということになると思います。しかし、臨調でも指摘されておりますように、あるいはこの間の政府税調でも指摘されておりますように、やはり歳出歳入構造を思い切って見直して、そして合理的なある意味におけるでこぼこ調整とか、そういうこともある程度必要ではないかと。われわれが約束いたしましたGNPの一%範囲以内とか、あるいは臨調答申を堅持して増税をやらないとか、そういう線はわれわれ全力を尽くして実現するように努力していきたいと思っております。
  151. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に、青木茂君。
  152. 青木茂

    ○青木茂君 御質問申し上げます。  総理行政改革というのは三代の内閣にわたるほどの大事業であるということを常におっしゃっていらっしゃいますけれども、まだそのお気持ちでございますね。三代の内閣にわたると。かなりその中には長期安定政権があるとするならば、これを裏返しにすればいつのことやらわからぬと、こういうことにもなるわけですね、成果が上がるのが。それはもちろん天下の大事業、いつのことやらわからぬ、これは私は仕方がないと思います。思いますけれども、その間にもうどんどん国民生活、特にサラリーマンの生活というのは悪くなっていくわけですね。  資料をお配り申し上げましたが——行っていませんですね。じゃ、数字だけ簡単に申し上げますけれども、昭和五十二年と五十八年とを比べまして、実質所得ゼロであるにもかかわらず、税額はもう一・八倍だとか二・三倍だとかふえておるというような状況、あるいは十年前と比較いたしまして、たとえば昭和四十九年には勤労所得税は総理府家計調査によりますと五千四百六十四円、これは肉類の購入額が四千九百九円、野菜の購入額が五千八百六十五円。肉類の月購入額とあるいは野菜の月購入額とその月の税金はほぼ等しかったですね。ところが、昭和五十七年、月の勤労所得税は一万七千二百八十六円。肉類が七千九百四十八円、野菜類の購入が八千三百二十五円、合計いたしまして一万六千二百七十三円です。つまりほぼ十年たちますと、十年前は肉か野菜どちらかをやめれば税金を払えた。ところが、いまや肉プラス野菜を犠牲にしないと税金を払えないというような条件が出ております。つまり国民生活は悪くなる一方である。  そこで私、本会議質疑でも申し上げましたとおり、行政改革の実が上がるまで何らかの応急措置ですね、応急手当ての必要をお感じになっていらっしゃるかどうか、これがまず第一点でございます。
  153. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は三代十年かかると。十年という言葉を大体の目見当で申し上げておるのです、行政改革にかかる時間ですね。それからサラリーマン、特に子持ちの勤労者の重圧をいかにして軽くやるかということはわれわれの大きな仕事であるとよく認識しております。そういう意味におきまして、ことしいまある程度の減税もやりますが、来年からの本格的減税に当たりましてはその点を特に考慮して、いろいろな点について実が上がるようにしていきたいと実は考えておるわけでございます。この間の政府税調の答申の中におきましても、中堅所得者層を中心とする税の重圧感というものをいかに軽くしてやるかという点の指摘もございまして、その点もわれわれは心がけなければいけないと考えておるところです。
  154. 青木茂

    ○青木茂君 子持ち、家庭持ちのサラリーマン層にこれからの減税のアクセントを置いてくださるという総理からお約束をもらったわけでございますから、それは大変ありがたいのですけれども、応急手当ての必要あるかなしかという御質問とともに、もう一つ、やはり国民が税金の問題につきまして非常に不満を感じているのは、税の多い少ないということよりも、税金の不公平感だろうと思うわけでございます。そういたしますと、これからの税制改正におきましてこの不公平感是正という角度を強くお持ちいただけるかどうかということをもう一つお伺いしたいわけでございますけれども、これは総理でございますか、大蔵大臣でございますか。
  155. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 青木委員の御質問、言ってみれば不公平感、私は国税を担当するわけでございますけれども、主としてやっぱり所得税ということだと思いますので、私からお答えをさしていただきます。  いまおっしゃいましたように、国民一人一人私は税を納めなきゃならぬという義務意識は十分あると思っております。ただ、そこに一番問題なのは、御指摘のとおり不公平感である。だから、そのときどきの事情に応じながら、絶えずその不公平感を少しずつでも減していくための不断の努力というのが税を扱う者の背骨にぴしっとあらねばならぬ考え方だという意味においては同感であります。
  156. 青木茂

    ○青木茂君 不公平感是正と、やや抽象的で再度の御質問ができかねるのですけれども、そうすると大体浮かび上がってきたわけですね。一つは不公平感の是正だということ、それからもう一つは、国民生活が破綻に瀕する中での減税だからかなりの規模を持たなきゃならぬということ、それからまた、国民生活を救うという意におきましては、ゼロサムの減税じゃしようがないのですから、一方においてやはり増税がないということははっきりさせなきゃいけないだろう。つまり不公平感の是正ということと大規模ということと増税なしということ、これがこれからの税改正のいわば減税三原則だと言ってもいいだろうと思います。  それを踏まえまして具体的にこれからお伺いを申し上げたいのですけれども、第一は給与所得控除の問題でございます。  私、本会議におきまして、不公平感是正の意味でも今度の減税方式は給与所得控除、サラリーマン固有の控除でございますところの給与所得控除を中心にお願いを申し上げたいという御質問を申し上げました。そのときには総理は、基本的には御賛成をいただけたというように拝聴したのですけれども、間違いございませんでしょうか。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 減税を実施するという場合にはいろいろな面に心を配ってやる必要があると思っております。給与所得控除の問題もございますが、またそのほかの控除の問題もございましょう。要は公平感ということが大事でございまして、その不公平感あるいは重税感というものをどういうふうにして是正するかという点で心を砕いてまいりたいと思っておるところです。
  158. 青木茂

    ○青木茂君 不公平感というものを最も多く持っている者はやはり給与生活者層だろうと思うのですよ。そうなりますと、給与生活者の持つ所得税制の不公平を是正するといったら、どうしてもその問題が給与所得控除中心にいかざるを得ないわけで、それを私は本会議で御質問申し上げたわけですね。それに対する御答弁の中で原則的に賛成という御答弁をいただいたのだから、給与所得控除中心の減税方式について総理は基本的に賛成と、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 給与所得控除も大事であるとは思っております。しかし、ほかの課税限度の引き上げの問題であるとか、あるいはそのほかの所得控除の問題もございましょう、あるいは女性の立場考えるとか、あるいはパートの主婦の課税の問題であるとか、さまざまな問題もございまして、それも一つのアイテムであると考えてわれわれは処理していきたい、そう思っておるわけであります。
  160. 青木茂

    ○青木茂君 ただいま主婦のいわゆるパート課税の問題が出ましたのですけれども、これも御承知のとおり、七十九万円という壁がございまして、本当にいま七十九万円を超えると配偶者控除の対象から吹っ飛ぶし、それからまた自分も税金を取られる、夫の税金もふえるということで、みんな計算をいたしまして月六万円ちょっとでやめてしまう。企業経営者の方も、せっかくパートとはいえ仕事になれてきたけれども、そこのところでやめられてしまうということで、この主婦パートの七十九万円の壁というものはもう使う方も使われる方もいま弱り果てている内容なんです。給与所得控除中心の減税ということをしていただけるということは、そのままそれがこの主婦のパート減税枠の拡大につながるわけなんですよ。そういうことからも給与所得控除中心の減税方式ということ、これはもちろん総理おっしゃいますようにいろんなほかにも配慮しなきゃならぬ点、当然ございます。ございますけれども、給与所得控除中心の——中心という言葉が悪ければ取り下げますけれども、給与所得控除を忘れないでいただきたいということをお願いを申し上げたいのですけれども、それはよろしゅうございますか。
  161. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、私はすべてに目をみはってこれはやる必要はある、そういうふうに申し上げている次第なんです。
  162. 青木茂

    ○青木茂君 どうもそこら辺がちょっと永田町用語でよくわからないのですよ。すべてに目をみはる、それはそうですけれども、やはりアクセントはどこかに置かなきゃならぬと思うのですよ。八方美人ではもうやれない、財源限られていますからね。だから、どこにアクセントが置かれるかということを実は私伺っておるわけでございますけれども、実はあの政府の税調の論議の経過を見ておりますと、給与所得控除というものに対して少し冷淡ではないかという気がしないでもなかったわけですよ。だから、そこで御決定いただくのは政府なんだから、税調はあくまで審議会なんだから、そこら辺のところでここは政府の関係の方の御決意をいまくどくも伺っている、しつこく伺っていると、こういうわけでございます。さらにもう一回。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま自由民主党の中におきまして、その点は非常に論ぜられ検討されておるところです。サラリーマン議員連盟というのができまして、あなたに負けないように大いにサラリーマンのサービスをやろうということで、橋本龍太郎君が会長になってサラリーマン本位の減税を言ってきて、私のところにも手元に資料も来ております。それから、政務調査会におきましては、子持ちの中堅所得者層を中心にこれも考えなきゃならぬし、いま申し上げたパートの女性の問題もありますし、あるいはそのほかの扶養控除とかあるいは教育費の控除とかございますね。そういう問題について、いま自民党の内部において検討を進めておるところです。しかし、私はサラリーマン党に負けないような自民党のサラリーマン議員連盟の言い分も考えなきゃいかぬだろうというところで、目下検討中であるということを申し上げたい。そこで、いまこういうふうな御答弁になっておる次第なんです。
  164. 青木茂

    ○青木茂君 自民党の中でサラリーマンという言葉が出てきたということは大変これは大きな進歩であって、少しはこの前の参議院選挙が自民党さんにインパクトを与えることができたかと、いまちょっとほんのちょっぴり実は満足をしたわけでございます。ありがとうございました。  それからもう一つ、この給与所得控除についてお伺いをしたいのですけれども、総理はこの前の本会議の御答弁で中堅所得者つまり子持ちのサラリーマン家庭というような中堅所得者ということをかなり広く解釈した定義を与えられたように実は伺ったのですけれども、これは間違いございませんか。本会議の速記録を見ていただきたいのです。まあこれはきょう間に合わなくてもいいのですけれども、中堅所得者つまり家庭持ちサラリーマンの減税につきましてと、こういうあれなんですけれども、だから中堅所得者というのをかなり広く解釈をなさっていらっしゃると、これでよろしゅうございますね。
  165. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の頭の中には中堅所得者ともなればみんなもう家庭持ちでそして家のローンに追われ、奥さんにしりをひっぱたかれていると、そういうような光景が頭に浮かんでおりまして、税調答申の中に書かれておる「中堅所得者」というような言葉の中身は家庭持ちという面があるのではないかと、私の中にそういう考え方が浮かんでおりましたからそういうふうに申し上げたので、正確には大蔵大臣から御答弁申し上げます。
  166. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 青木委員の御質問に対して総理がお答えになった政治家としての中堅所得者に対する概念、これはそれで結構じゃないかと思います。
  167. 青木茂

    ○青木茂君 政治家としての概念というのはどういう意味だかよくわからないのですけれども、まあ結構でしょう。特に総理並びに大蔵大臣が、住宅ローンに追われて、女房にしりひっぱたかれているかどうかは知りませんけれども、住宅ローンに追われて子供の教育費に非常に悩んでいる家庭に対して政治的配慮をしてやろうと言ってくださったこと、これは大変われわれとしてもありがたいと思うわけでございます。どうもありがとうございました。  もう一ついいですか。質問を変えます。  給与所得控除とともに、私、前回の本会議におきまして、行政改革の実が上がるまでまだ時間がどうしてもかかると。かかることに対してその中で国民生活は悪くなっているのだからその間の応急手当てをしていただきたい。その応急手当の一つの私案ですね、一つの私案として私は減税国債というものを御提唱を申し上げたわけです。これはあくまで私どもの私案で、これをどうだこうだ、ごり押すと、こういうことじゃございません。財源を示さぬで減税、減税言うのはけしからぬと政府の方はよくおっしゃるわけですよ。だから財源対策の一つの私案として申し上げたわけでございます。  その減税国債というものに盛られました内容は、第一には規模において大体二兆円だと。それから戻し税方式で行ったらどうであろうかと。それから第三番目は、償還財源は、まあ脱税という言葉が非常に抵抗がございますものですから、漏税でもいいのですよ、漏れた税金でも。何でもいいのです。要するにアングラマネーなんです。そういうものでもって返していったらどうでしょうかと、こういう御質問を申し上げました。それに対して大蔵大臣のお答えも、こういうことでよろしゅうございますか、とにかく今度の税制改正はいわゆる本格減税でやるのだと。戻し税減税じゃないのだ、それから赤字国債によらないことも与野党一致しているのだと。それから最後何かありましたね、納税者は神様だとかなんとかいうのが。国民は神様であるし性善。として善良であって、初めから脱税があるなんというふうに考えるのは非礼だとかなんとか、こういうことでしたね。そういうふうな御答弁でございました。  これにつきまして、私の方はちょっと私があのとき御提唱申し上げた減税国債と御答弁趣旨が若干三つばかりの点においてずれるのですよ。それをちょっと申し上げさしていただきたいのですけど、私が申し上げましたのはあくまで応急手当てなんです。つまり本格減税はいま政府が非常に御努力になって進めていらっしゃる一兆二千一百億ですか、それで結構なんだ。しかし、足りないのだ、応急手当てとして。ビタミン剤だけじゃ困るのだ、ここでひとつ抗生物質投与してくれ。そのために私はプラス二兆円と、こうお願いをしたわけです。政府のお考えになっているものに取りかえてという意味じゃございません。つけ加えてという意味です。  そうして、戻し税ということを申し上げましたのは、そのプラス二兆円も、本格的減税でやればそれが一番いいに決まっているのですよ。しかし、国債で一番こわいのは、毎年毎年追加発行することが一番こわいですね。だから、戻し税減税の方式は一回だけなんですから、だからあえて戻し税減税と言ったのです。そういう意味だということ。  それから脱税の問題ですけれども、まさか政府が脱税を予定して予算をお組みになるわけでもないだろうと思いますから、たとえば所得税において三月十五日以降に調べて出てきたものは一応、脱税と言わぬでも、漏れた税金、漏税と言っていいのじゃないか。そういうものを、これは一種の隠れた剰余金だ、それで返していけるのだから、資料にございますように申告所得税、五十七年において徴収税額と加算税を加えたら千百八十七億円ある。法人税関係で三千四百九十六億円ある。源泉徴収関係で六百四十四億円あるのです。五十七年分の滞納税額で二千一百七十一億円ある。合計七千四百九十八億円とにかくあるのですよ。 だから、徴税強化でも何でもないのです、あるのだから。毎年毎年これぐらいあるのだから、それでもって返していくのだったら、二兆円ぐらいの国債は日本経済に何ら悪影響を及ぼすものではないというのが私どもの考え方であったわけでございます。その点を踏まえまして、ちょっと大蔵大臣の御意向を承りたいのですけれども。
  168. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず一つ、青木委員の御提言でございましたが、ユニークと言えばユニークということになるかもしれません。が、今日まで税の議論の積み重ねをずっと見てみますと、確かに赤字公債の発行によってこれを財源としてはならないこと、それから、やる場合にはいわゆる恒久税制によることというようなことは、いつの場合にも意見が一致してきております。ただ、本院とまた衆議院との議論の中に、そういう議論もあるが、しかし赤字国債を財源として減税をし、それを将来の増税によって返せば、一年それだけのものがあってもカンフルの役割りを果たすではないかという種の議論もあったことはございますが、総合的に各党合意とかいうことになりますと、先ほど言ったようなことになるわけです。  それからもう一つ、戻し税ということにつきましては、かつて高度経済成長のときにあるいは物価調整減税とかいう形のものがございました。が、今日戻し税というものに対して非常に否定的なのは、五十五年度予算の剰余金の四百八十四億を五十六年度に使わしていただいて戻し税でやったということが、ラーメン減税とかいうような批判を受けて、そのようなものは基本的な減税として認知できない、こういう一つの空気がいわば戻し税というものはいけないという思想になって今日議論をされてきておるのじゃないかというふうに私は思っております。  したがって、やはり私どもが今度やっておりますのは恒久的制度改正によるものでございますので、まさにそういう議論されたものを下敷きにして税制調査会へ正確に御報告しまして、その上で議論していただいた、まあ言ってみれば所得税・住民税部会の報告ということになっておると思っております。  もともと、いわゆる脱税摘発額はすでに年々の税収に含まれて歳出に充てられておりますので、新たに減税財源として予定することは、これはできない話ではないか。だから、税というものはやっぱりそれは積み上げ方式と言えば見積もりでございます。したがって、従来とも結果において歳入欠陥のときもあれば、自然増収が出ることもあるというわけでございますので、いわば政府国民から借りますところのいわゆる赤字国債でございます、建設国債じゃないわけですから、赤字国債です。そうしたものを償還財源として、いま脱税という言葉でなく漏税という言葉をお使いになりましたが、含めて脱漏税と仮にいたしましても、それを充ててみるというのは、私は財政の健全あるいは法定主義あるいは財政民主主義の方からしてもその発想は適当でないではないか。ただ、本会議でお答えいたしましたのは、私も感覚的に受けとめて申しましたのは、初めから神様である国民、それが脱税するではないかという前提の上に立ってそういう仕組みを考えること自体が、神様に対して非礼じゃないかというふうに申し上げたつもりでございます。だから、ユニークな発想としてもちろん税制調査会へもきょうの議論も報告されるわけでございますが、いまの場合、これが財政法の中で生きていける仕組みになるというふうには、残念ながら私いま肯定する立場にはないと思います。
  169. 青木茂

    ○青木茂君 まあ三分の一くらいお褒めいただいて、三分の二は断固拒否されたわけなんですけれども、現実の問題といたしまして漏税というものはある。何もこれから徴税強化をしなくても、現時点において毎年毎年これは大蔵省御発表になっておるとおりだ。  それから、大体今度の減税法案が景気浮揚に役立つ相当規模ということになっているのですね。一兆円というものが景気浮揚に役立つ相当規模と言えるかどうか。それにプラス二兆円したらちょっとなるのじゃないかという気がしますし、それからもう一つは、大体減税というのは戻し税ならばサラリーマン、特にさっき問題になりました家庭持ちサラリーマンのところへたくさん返ってくる。それで脱漏税はサラリーマンというのはやってないのだから、不公平是正という意味もあるというようなことで、これはあくまで最初申し上げましたとおり一つの私案でございます。私案でございますけれども、大規模、つまり三兆円程度の規模を持つ減税でないと景気浮揚に役立つ相当規模ということは言えない。そこら辺をひとつ踏まえていただいて、こんな減税国債なんていうおかしな代案よりも、もっと本当にオーソドックスなもので、もう少し大幅に不公平是正、それからその裏に増税という影がちらほらしない、そういうような本格的な減税をやっていただけたら大変ありがたいと思うわけでございます。  それから、時間が迫ってきてしまったわけでございますけれども、不公平な税制を変えるという意味において、もう一つ不公平なのは、事業経営者の場合は奥さんか何かに所得を分けちゃうわけですね。専従者給与とか、みなし法人とかいろいろありますけれども、分けてしまって、低い税率で計算をして合計するから税額そのものは低くなる。これに対しまして給与生活者の場合はそれができなくて、つまり所得の分散ができなくて、もろにかぶってしまう。つまり所得分散の不公平というものがある。ひどいのになりますと、自分の妻に二千九百万円給料を払ったというのがあるのですよ。これは大会社の社長でもそんなにもらってない。みなし法人とか専従者控除というのはそういう欠陥が山てくる。それがサラリーマン家庭と非常なアンバランスなんだから、そういう意味において、そのアンバランスを解消するという意味においていわゆる二分二乗方式というものの御採用を、来年すぐでなくても前向きに御検討中であるかどうかということをお伺い申し上げたいのですが。
  170. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる二分二乗方式というもの、これが適用されておると言えば相続税等にその考え方があると思います。したがって、今日の所得税体系の中でいきなり二分二乗方式というのは、私は現実問題としてはむずかしい問題だと思っております。ただ、二分二乗方式の問題もいつでも議論に出てくる問題でございますので、勉強は絶えず続けていかなきゃなりませんが、現実にそれを、観念的にはわりにわかりやすい制度で、現実問題として扶養控除とかいろいろなことでやってみると、なかなかむずかしい問題だ。勉強はさせていただきます。
  171. 青木茂

    ○青木茂君 二分二乗方式は、それは確かに共稼ぎ世帯の問題もありますし、高額所得者ほど有利という問題もありますけれども、所得分散の自由が給与生活者にないということもこれまた事実でございますから、そうでなかったら、ひとつサラリーマン家庭の妻にも若干ながら亭主の方から給料を払ったら、それが必要経費になるというぐらいのことがあると大変ありがたいのですけれども、これはちょっと日暮れて道遠しかもしれないわけですね。減税国債につきましてはこれだけにいたします。  それからもう一つは、これはきょうの朝までは、あるいはきのうの朝までは非常に強く申し上げようと思っておりましたが、もうすでに前の方の御質問で非常にたくさん出ましたから軽くいきますけれども、増税なきということは、これはもう御質問というよりお願いでございます。とにかくリップサービスでない、それから五十九年度だけではない、あるいは選挙までではない、つまり一つの信念と申しますか、一つの理念と申しますか、そういうところの、そういう意味合いにおいて増税なきということを御堅持願いたいというお願いでございます。  御承知のとおり、第二臨調は増税なきということを掲げていらっしゃいますが、政府の税調は、中期答申にしろ何にしろ、増税の影が非常にはっきり見え隠れしている。一体、第二臨調の増税なきということと、政府税調の、これはもう増税ありと言ってもいいと思いますよ、どちらにアクセントを置いてこれからの財政運営に当たられるのだということですね。これはどうしても伺っておきたいわけなんです。第二臨調と政府税調は必ずしも方向が一致していない、これは紛れもない事実じゃないかと存じますから。
  172. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ここで総理からもたびたび申されておりますように、増税なき財政再建、この基本理念はあくまでも堅持してまいる、このように申されておるわけであります。  そこで、いま青木委員の、いわゆる税調の中期答申を見ると、これは増税ありということを紛れもなく示しておるのではないかということに対する私どもの感じでお答えをいたしますと、今度の中期答申で私は何よりも感心しておりますのは、まず財政改革をやれということが一つにうたわれ、そうして二つ目に歳出削減を徹底的にやれ、これがあって、三つ目に、いわば定量的ではない、定性的な税制のあるべき姿について提示されておるわけでございます。  したがって歳入面、三番目につきましては、社会経済情勢の変化に対応して絶えず見直しはしなさいよ、これはまた不公平税制というものをなくしていくための大きな方途であるよと。税制をより公平かつ絶えず御主張になります経済に中立的なものとするよう努めるべきであるという基本認識にまず立って、その上で個別税目について、たとえば所得税は数年に一回程度の見直しは必要でありますよという方向を示していただいておりますので、この認識というのは私はきわめて、常識的という表現が適切でありますか、模範的であり、常識的なものではないかと思います。  したがって、今回の答申をもって増税路線を打ち出したものであるというふうには考えるべきものではないのではなかろうか。やはり私ども基本理念として持っております増税なき財政再建というものの上に立って、不公平税制を是正し、できるだけ経済に中立的な税制のあり方というものは絶えず基礎に置きながら対応していくべきものであって、今度個別的な問題につきましても、不公平の問題からいろいろ議論のある点が、それが個別税目として書かれてあるだけでありまして、これをすべて直ちに実行すべきであると、こういう考え方ではなく、一つの不公平感を少しでも直すための精神に沿った具体的なものとしてそれらが打ち出されておりますので、増税路線を打ち出されたものであるという見解はとるべきでないというふうに考えております。
  173. 青木茂

    ○青木茂君 これはいろいろな解釈の問題であるのですけれども、しかし、どちらが正しいかはこれは事実が証明してくれるでしょうね。具体的に一体増税が日の目を見てくるのか、さらに具体的に言うならば、その最大の踏み絵は私は酒だと思いますから、酒の税金が一体具体的に上がってくるのか、こないのかというようなことで事実として出てくるのではないかという気はしておりますから、この質問はこれでとどめます。  それからもう一つ、まだ時間ありますね。
  174. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 四時四分までです。
  175. 青木茂

    ○青木茂君 四時四分までだそうですから、私は絶対時間は間違えませんから、あと一つお願いいたします。時間いっぱいやらせてください。  どうも私はまだ一年生でよくわからないのだけれども、大変いままで疑問に思っておったことは、行政改革特別委員会で実は私は税制の質問をしていいのかどうか迷っておったのですよ。この六法案質問をしなきゃいけないのじゃないかと思っていたのだけれども、先輩の質問を聞いてみると、税制どころか、方々へ飛んでいるから私もやらせていただいていいだろうと思います。  最後に、今度の総務庁というのか、総務本庁というのか、何だかよくわかりませんけれども、あの中で私がただちょっと心配するのは、統計局の政治的中立性なんですよ。つまり統計というものは時の政府に対して、政治権力に対して中立でなければ統計の意味はないんです。また、客観的な統計によって政治をやってもらわなきゃいかぬわけですから、そういう意味で、どうもちょっと統計局が弱くなっちゃってどうなんだろうという心配がございます。しかし、これは強くなったのだという見解もありますから、それは私ども素人じゃわかりません。わかりませんけれども、統計というのは本来ならば統計省でもいいんです。一つの省だっていいぐらい重要なものです。それは行政改革の精神に逆行しますから、そこまでは申し上げません。しかし、統計が時の総理の、あるいは時の政府の意向によって上がったり下がったりするというようなことのないように、これは何か歯どめの組織をおつくりいただきたいと思います。  昭和四十九年四月二十七日、大変有名になっております元首相が総理大臣のときに、消費者物価が上がり過ぎているような統計が出ているから、少し下がるようにつくり変えろという御指示をなさったという記録もあるわけですよ。そういうことがこれから繰り返されるということになりますと、統計の中立性、統計が政治によって自由に悪用されるということの心配がございますから、そういうことのないように、統計というものの中立性に何らかの歯どめをかけていただきたいということだけお願いをして、私の質問を終わります。
  176. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 現在、統計は行政策の立案や企業経営の指針等として広く活用されております。その中立性の確保はきわめて重要なことであると承知しておりますし、考えております。総理府統計局で実施している国勢調査等の各種調査においても、中立性の確保については従来から十分配慮してきておるのでありまして、総務庁の設置後においても、御指摘のようにこの点についてはなお一層の努力を払ってまいりたいと思います。
  177. 青木茂

    ○青木茂君 どうもありがとうございました。
  178. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に、野末陳平君。
  179. 野末陳平

    ○野末陳平君 竹政改革ですが、総理も先日の本会議の御答弁で、総論は賛成だが各論反対というのは困る、総論賛成、各論も賛成でと、これはもう当然だと思うのですが、なかなかそれがむずかしいと思うのですね。行革の実現まで時間もかかるが、しかしその間にいろいろ障害もあるだろう。  そこで私、持論になってしまうのですが、やはりこの行革というのは人にやらせるということばかり言うのでなく、臨調の答申にもありますが、「立法府及び司法府においても自発的に改革の努力をされることを強く要望する。」とありますね。これですね、やはり全国的規模における議会のぜい肉落としといいますか、端的に言えば議員減らしといいますか、こういうことも同時にしないと、ただ口で行革をと言ってもなかなかむずかしいであろう、結果的には各論反対ということになりかねない、そういう危惧を抱くわけですね。そこで、いわゆるこの行革を遂行するためには、成功させるためには、やはり議員減らしというものに対して内部的に自発的にどういう努力をしていくか、これを見せるということは非常に重要なことで、まあ持論ですから、これをまず最初にお聞きして、それから年金、税金などに質問を移していきたいと思うのです。  まず、参考までに自治省にお伺いしておきますけれども、全国で一体議員と名がつく人たちがどれくらいいるかということですね。これを具体的に内訳を交えて総数などを、国会の方はわかっておりますので、地方議会ですが、自治省のひとつ説明をお願いします。
  180. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 地方団体の議会の議員の数に関する御質問ですが、御案内のように、地方自治法で人口段階別に法定されております法定数と、一方、地方団体ごとに自主的に条例で減数条例を設けて定数を決める、こういうシステムがとれることになっております。  まず法定数から申し上げますと、都道府県の議会の議員の法定数が三千二十一人、市議会議員の法定数が二万三千四百八人、特別区議会議員が一千九十六人、町村の議会議員が五万九千四十八人、これが法定数でございます。  それで、ことし四月現在の条例定数を申し上げますと、都道府県議会議員が二千八百九十八人、法定数と比べて百二十三名の減員としております。それから市議会議員の条例定数が二万二百十九人、法定数に比べまして三千百八十九人の減員となっております。特別区が一千七十三人で二十三名の減、町村議会議員が四万六千八百二十二人で一万二千二百二十六人の減員、こういう数字でございます。
  181. 野末陳平

    ○野末陳平君 ついでにお聞きしますけれども、欠員もありますので、それでは現在の合計数はどのくらいですか。
  182. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 合計数は、法定が八万六千五百七十三名、これに対しまして条例定数が七万一千十二名、法定数に比べまして一万五千五百六十一名の減員でございます。
  183. 野末陳平

    ○野末陳平君 総理、お聞きのとおり、減員の傾向が出ておりますので、これは非常にいいことだとは思うのですが、しかし、それでもなおかつまだ多いという声が各自治体など全国的に出ているわけですね。  私ここに、衆参両院議員の数も含めまして、大体いま日本全国で議員という名のつく人たちの合計が七万二千人にちょっと足りないぐらい、七万二千人ぐらいだと、こういうふうに概数でとらえますと、これは国民どのくらいが一人の議員を抱えているかという単純な計算をします。そうすると、人口が一億一千七百万人、そこで七万二千人からの議員さんがいる。そうすると、約一千六百人の国民に対して、これはもちろん赤ちゃんも全部含めますから、千六百人に一人の割りで議員さんがいる、こういうことになるんですね。そうしますと、これはちょっと抱え過ぎじゃないか。つまり、これを全部税金で抱えるわけですから、どう考えても一般の納税者の感情からいいますと議員さんは多いのじゃないかということで、私もそうだろうと思うのですが、総理はどうですか。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行革の進行に伴いまして、各地方公共団体で条例等によって議員の定数を減らしてくだすっているということは、大変私は喜ばしいことで自治体の努力に対して敬意を表しておるところでございます。  国の議員の数と国民との割合がどの程度であるのが好ましいかということは、その国の民主主義の発展度合いとか国情によって一概には私は言えないと思います。日本の場合には、ほかの世界の国々との水準から比べてそれほど議員が多いという数字ではないのではないかというふうに私は思っておりますが、その点はもう少し勉強してみないとはっきりしたことは申し上げることができないと思います。
  185. 野末陳平

    ○野末陳平君 総理の御答弁のとおり、多い少ないは一概に言えませんし、それから日本の場合世界の国と比べてと、これはこういう物差しが当てはまるかどうかわかりにくいので、私の調べたところではやはりかなり多い部類なのですね。 しかし、この行革をこれから断行していこうという場合には、やはり納税者がどう考えるかということの方がむしろ大事で、われわれが議会の定数はこんなものでいいんだと言ってはいけないと思うのですね。そうしますと、いま全国的に、総理もいま評価なさいましたように、議員を減らしていこうという運動が地方の議会の内部から、あるいは住民パワーなどで非常に起こりつつある。非常に喜ばしい傾向だと思うのです。  そこで問題は、果たして思うように数が減るかどうか、これはなかなかむずかしいのですね。東京の例を聞いていただきますと、東京も実はその面積に比して、まあ人口比で見るか面積比で見るか、それとも能率的な仕事の内容、いろいろありますが、東京の場合とにかく二十三区は六百平方キロばかりだそうですが、この中に千人を超える議員さんが当然いるのですが、地方議会ですが。これは世界のどの都市よりも議員密度は高いそうです。それでいまこの議員減らしの動きがあるのは、たとえば台東区は二人減った。それから品川区とか杉並区も削減の陳情が、これは住民の方から出ているのですね。しかし議会の方はなかなか取り上げないとか、あるいは葛飾区、荒川区、この辺も住民パワーがやはり減らせと動き出している。それから新宿なども、これは区議会の内部に削減を求める声があるし、それから墨田区も四人減らしたけれども、まだ多いからさらに減らせという声もあるのです。  こういう削減をしていこうという波にいまここで国会も呼応して、まず何といいますか、どんどんこの動きが本格化するようにすることがやはり行革を考える上から非常に大切だと思うのです。いまの二十三区の例はほんのまだ一部でして、いずれ私はこの行革は議員減らしからやれというようなことが天の声になるのじゃないかと、こう思っている。東京二十三区だけでなくて、近郊都市でも国立とか田無とか、それから武蔵野市、多摩市など、本当にぼちぼち実はやっているのですが、本当に少ないのです。一割、二割なんていうところにいかない。数人なんです。やはりこれは数人では、やったと言っても実効が上がるほどの減らし方じゃない。ですから、これを一割がいいか二割がいいか、そんなラフなこともなかなか言いにくい問題ですが、少なくも本格的に定数を削減していこうという、こういう動きが全間的に定着するような、これをいま望むわけです。それが結果的に行革を成功させることにもつながると思うのです。  そこで総理にお願いなんですけれども、こういう運動に、運動といいますか、こういう動きに対して総理がここで積極的に賛意を示して、この方向を進めてほしいというようなことをはっきりお答えになれば、これを住民パワーの運動にもはずみがつくし、議会内で周囲の反対を押し切りながら削減の提案をしているという議員さんたちにも非常に励みになると思うのですね。ですからどうかひとつ、評価はいただいているようですが、もう一段と積極的に総理のお考えをお示しいただけたらありがたいと思います。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 野末さんのお考えに私養成でございます。  地方議会におかれましても、住民の声によく耳を傾けていただきまして、条例等によりできるだけ議員の数を削減して行革の実を上げてくださるように、この議会にお願いいたしたいと思います。  それと同時に、じゃ、中央はどうするのかという反問が来ると思いますが、この点につきましては、先般、定数問題で最高裁判所からのお示しもございました。そういう点もあり、この間新自由クラブと自由民主党との間で定数是正等の検討にもすぐ入るという話し合いも成立いたしておりますので、そのときに定数問題自体も検討していくべきであると考えております。
  187. 野末陳平

    ○野末陳平君 定数の問題は、事実いわゆる定数是正を速やかにしなければならないということと絡み合いますから、非常にいまの御答弁は今後前向きにどこまで早い機会に実現していただけるか、そこが焦点なんです。そしていま総理のお話にありました、じゃ、われわれ国会はこれに対してどうするのだ。本来は国会から始まって地方議会に及ぶのがいいわけでしたが、しかし、地方議会からすでにそういう波がいま押し寄せつつある。これに対して自発的にどうするか、これも当然これからいろいろと御意見をお聞きしなきゃなりませんからそちらへ入りますが、その前に、先ほどの質問でちょっと税調答申に関することで、もう少しお答えをはっきりしていただきたいことがありましたので、その前にそれをやりたいと思います。  大蔵大臣にお願いしますが、この税制調査会の答申ですが、そこに最高税率の七五%を引き下げるという方向が示されているのです。そこで、大蔵大臣としてはこれをどうなさるか、この七五%という最高税率をどの辺まで下げたらいいというようなお考えか、その辺のところを現段階のお考えで結構ですから、それをお願いします。
  188. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 野末委員御指摘のとおりでありまして、「今後の税制のあり方についての答申」の中に、「税率構造」「我が国の所得税の税率構造は、主要諸外国に比べ、課税最低限の水準が高い割りには最低税率が低く、最高税率は極めて高い水準にあり、また、その間の税率適用所得階級が細かく刻まれている(十九段階)という際立った特色を持つている。」ということが指摘されて、「税率構造については、昭和四十九年度(高額所得階層については、昭和四十五年度)の改正後手直しが行われていない」という指摘があるわけであります。  したがって、これは確かにそのとおりでございますが、今度どういうふうにこれに対応するかということは、結局これは中期答申で一つの方向といいますか、哲学が示された。それを五十九年度にどういうふうに扱うかということは、五十九年度税制に対しまして、これから任期も延ばしていただいて引き続き議論していただくことになったわけでございますから、それが出る前に予見めいたことは差し控えなきゃならぬかなと、こう思っております。
  189. 野末陳平

    ○野末陳平君 だけれど大臣、予見めいたとおっしゃるけれども、もう引き下げろと出ているわけですね。ですから、じゃもう少しはっきりさせて、引き下げた方がいいとお思いなのか、それとも七五%でいいじゃないかと思うのか、どちらか、その辺のところはどうなんですか。
  190. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この問題につきましても大蔵大臣が、言ってみればその方向は示唆されたものの、五十九年度税制の前にそれが結構ですという表現、そういうお答えをすることはやっぱり差し控えなきゃならぬかなと思っております。ただおっしゃるように、個人的見解とおっしゃるといたしますならば、そもそも自由主義経済理論の根底にはやはり努力と報酬の一致というものがあって、その努力と報酬の一致というものがほぼ限界に達しておるというような認識は私自身も持っております。
  191. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで、その点は後でもうひとつ少し詳しく質問したいのですけれども、総理にお聞きしますが、これは聞いた話で、確認しながら総理の御所見をお聞きするのですが、一流企業の社長さんたちがつくっている何か税金を考える会とかいうのがございまして、その会が総理との懇談の席でいろいろと陳情があったといいますか、税金に対するいろいろな意見、どちらかというと不平不満といいますかね、そういうものがいろいろとそこで出たという話があるので、それは事実だろうと思うのですが、そこで総理に直接お聞きしたいのは、その席で一流企業の社長さんたちがどういう不満あるいは不平を述べたか知りませんが、総理自身はどういう点に共鳴し、どの点は是正した方がいいのじゃないかなというふうにお考えになったのか、そのポイントだけをちょっと説明していただけますか。
  192. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは前から言われておったことですが、中小企業の皆さんの集まりの席で陳情がありまして、それは高額所得者の場合は中央の国税と地方税を入れるというと九三%取られてしまう。そうすると百円稼いでも七円しか残らぬ。これでは働けません、ですから一定限度額以上働いたらもうそれ以上働かないという、そういう現象も起きている、そういうようなことの陳情もありました。私はその話を聞いて、前からそういうことは聞いておりましたが、これは困ったものだな、やっぱり一生懸命働いて、働いた効果がその人に返ってくるようにするということが資本主義じゃないだろうか。もちろん公平感というものは大事で、お金持ちの人たちにうんと負担してもらうということはがまんしてもらわなきゃいかぬところである。したがって、公平感という面からこれは考えなきゃならぬところはあるけれども、余り行き過ぎるというとどうだろうか。  外国の例がどうであるかということを調べたことはありますが、外国の場合は九三%取られてしまうという例はないようですね。国によっては七五%とか八〇%とか八五%とかありますが、九三%も取られてしまうという例は余りない。そういう点を見ると、日本はその点がかなりきつくなっているのだなということを私は知りました。こういう問題もやはり一つの検討課題ではないか、そう思っております。
  193. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしたら、いま大蔵大臣にお答え願った最高税率の七五%も、きついから低くしてくれというような陳情もその席でありましたですか。現実にあったかどうか。
  194. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしか九三%になるには、国税の七五%と地方税の何%かを足すと九三%になる、そういう数字であったかと思います。    〔委員長退席、理事長田裕二君着席〕
  195. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで大蔵省の方にお聞きしたいのですが、いまの総理のお答えにあったような話がたとえ話のようにしてよく高額所得者の間から出るのですが、百円稼いで実は七円しか残らないというケースはそんなにないのですよね。事実この百円というのは所得ベースで言うのですから、その所得の種類によっては大分違いますがね。どうでしょうか。これはたとえですから正確な数字は出ないですけれども、いま総理が言われた、中小企業でも大企業でもいいのですが、百円で九三%が住民税込みで取られちゃうと残り七円だというようなケースというのは、実際にはあるのですか。それともほんの少しはという、その辺のことをちょっと大蔵省から答えていただけますか。というのは、誤解が非常に多いのですよ、この辺はね。
  196. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点も、私調べてみましたら、何か足切りみたいなことで事実上九三%取られるというケースは余りない、その辺は何かのしぐさがあって予防している、そういうことも私調べて知った次第です。
  197. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 国税につきまして七五%の適用をされるのは課税所得で八千万円でございますが、国税庁の統計によりますところの数字は課税所得ベースの数字がございませんので、それに適合する正確な数字はないのでございますが、国税庁の統計によりますところの所得金額、これは各種所得控除を引く前の合計所得金額ベースでございますが、これで出ております最高の刻みは五千万のところでございます。五千万のところを超える合計所得金額の方は、二万人ぐらいがこのグループに入っておるわけでございます。最高の八千万円を超えて七五%を適用される方につきましてはなかなかこれに合致した正確な数字はないのでございますが、いろいろな推計をいたしますと五千人くらいはこの中に含まれておるだろうというふうに考えられるわけでございます。    〔理事長田裕二君退席、委員長着席〕  それから、先ほど総理から御説明がちょっとございました仕組みでございますが、総理がお話しのように、限界税率としては九三%でございますが、国税と地方税を合わせまして、根っこからの所得から合計しまして八割以上を国と地方がいただくということのないように、地方税の規定におきまして賦課制限という特別の規定があるわけでございまして、この規定によりまして、下の方は一〇%から始まりまして、限界税率としては九三%にまいりましても、絶対的にその人のふところには二割は残るという仕掛けがあるわけでございます。これは大体一億二千万円ぐらいを超える方方につきましてはこういう規定が働くようでございまして、いずれにいたしましても、限界部分としては九三はいきますけれども、ふところには必ず二割は残る、そういう仕組み、先ほど総理から御説明ございましたとおりでございます。
  198. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、高額所得者がずいぶん税金高い高いと言うのですが、結論としては、オーバーに言って、事実じゃないのですね。ですから、百円で二十円は残るわけですね。しかも、その人たちは一億というような所得の人に関してであって、二、三千万の人は全然また違いますね。そうすると、高額所得であると最高税率七五%が高いから、ほとんど税金だ、だから安くしろなんて仮に話があった場合、それは違うのですよ。そういうところをはっきりさせないと、いかにも稼げば稼ぐほど税金ばかり取られちゃって働く意欲もないなんということを言っているけれども、やはりそこには間違いもあるということははっきりさせておきたいのですね。  総理もおわかりだったと思いますけれども、いまの大蔵省の答えどおり、百円稼いでも二十円は残るわけですね。となると、最高税率の七五%ですが、高い高いと言っていても、実は所得八千万は課税所得ですからね、収入ベースにすれば一億を超える人も一億近い人もある。課税所得八千万以上のいわゆる八千万を超えた部分が七五ですから、実効税率はもっと低いわけですから、下の方は低い税率ですよ。となると、八千万を超えた部分のそこに七五%がかかるのだから、そこだけをとって全体の税金を七五%もきついと、こういうことを言っているのです、実は。これは違うのですね。  そこで、まずそういう間違いを正しておいて、実効税率は低い。結局限界税率という言葉上は九三あるけれども、しかし現実には八〇%で済んでいるのだということを踏まえますと、私はこの最高税率の七五%というものを税調答申のように引き下げることには反対なんですよ。というのは、八千万、一億という高額所得者は最高税率の七五ぐらいがまんできると思うのですね。諸外国に比べて高いという比較はあります。しかし、少なくも税調答申のように最高税率を引き下げろというのは、なぜならば「民間活力の維持・充実等の観点にも配慮し」と言うのですけれども、こういうほんの数千人の、五千人いくかいかないか、そういう人たちの最高税率を下げて「民間活力の維持・充実」なんて、そんなのはちょっと税調ともあろうものがおかしいのですよ。そう思いませんか、総理
  199. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはいま野末さん御指摘のとおり、最高税率は英、仏ではそれぞれ六〇%、六五%。したがって、日本が七五%というのは、私は確かに税調答申のようにこれは諸外国に比べれば高いし、また昭和四十五年以来これの水準の手直しが行われていないということは、やっぱり素直にこれは認めるべきことであるというふうに思っております。  そこで、いまおっしゃいましたいわゆる「現在、主要諸外国に比べてもかなり高い水準にあるところから、民間活力の維持・充実等の観点にも配慮し、ある程度の引き下げを行うことが適当である。」と、こういうふうに指摘されておるわけであります。具体的にどうするかはこれからの問題でございますけれども、私はちょうど国会に出て二十五年になりますが、二十五年前、一人当たり所得がアメリカのそれに比べて五分の一、それから十五年前が三分の一、十年前が約半分、七年前が一〇対七・五ぐらいで、いまは、いわゆる為替レートの換算で多少違いますけれども、おおむね一〇対八・五とか九とか言われております。  その所得水準を比べてみますと、たとえばアメリカの第七艦隊の二等水兵さん、これが百六十三万円、日本の海上自衛隊の二等水兵さんは百九十万円。大体所得構造を見ますと、表現の仕方がどのように表現すべきでありましょうか、基準賃金水準とでも申し上げましょうか、その辺は日本の方がアメリカよりも高くなっておると思います。それで、オーナーが多いということもございますけれども、いわゆる使用者側とでも申しますか、そういうところは、日本の場合は大体どの企業を見ましても、株式配当等を別として見ますと、大体手取りで七・五から八・五ぐらいのところがいわばトップの給与である。学卒初任給とトップの給与を比べると大体八割程度かなと。これは自治体等になりますと大体五・五から六・六ぐらいの間でございます。  そういうことから見ると、これは中産階級意識のできる所得構造になっておるから革命も起こらなかったし、よかったよかったと思いつつも、ある種の限界というものに達しておる。その限界というものがある程度これが是正された場合、やはり働いて得た所得に対する社会奉仕、そういうものの精神がより活発になって、それは奉仕のみでなく、また民間活力等の活発化にもつながっていくのじゃないか、こういう演説を最近私はして歩いております。
  200. 野末陳平

    ○野末陳平君 それはせいぜい四、五千万円ぐらいまでの人に言うか、あるいはもっと高額でもいいけれども、給与所得だけに限られている人に言うならわかるのですけれども、配当所得とか不動産所得とか、あるいはその年の譲渡所得とか、そういうものを含めて八千万、一億の所得があった、そういう人たちのは、民間活力、こういうのはちょっと違う。少なくも最高税率七五%を引き下げるような根拠は何らないということが言いたいのですよ。ですから、だれでも稼げばそれだけの見返りがあるというのが一番いいのですから、その一番上だけを、僕は全部一緒くたに考えるのが嫌いなんですよ。だってその証拠に、最高税率七五%はいじってほしくないということなんですが、同時に総理、税調では最低税率も引き上げることになっているからね。いいですか、最高税率は引き下げて減税にするわけだ。所得八千万以上のような人が減税の恩恵を受ける。あるいはもうちょっと下までいくかもしれない。ところが今度は、最低税率、いま一〇%から入っていくけれども、そこを小幅でもいいから引き上げろというのですが、こっちは増税になっちゃうからね、さっきの質問にもありましたけれども。となると、上は減税、下は増税というのですけれども、こんなことを税調で当然のように書かれると非常に迷惑なんですね。  大蔵大臣、じゃ、聞いておきますけれども、最低税率の一〇%を引き上げる方ですが、これもまだどこまでという方針はむずかしいと思いますが、どうなんですか。これはやっぱり単純に言えば増税ですからね、減税と増税と一緒にやるのですか。上に厚く下に薄く、こうやるのですか。
  201. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまの御指摘のとおり、「最低税率については、所得水準の上昇、所得分布の平準化、所得分割の状況等にかんがみ、また、今回の見直しにおいて課税最低限が国際的にみてかなりの水準に引き上げられることをも勘案すれば、主要諸外国の最低税率の水準との比較においても、この際、最低税率を引き上げることが適当である。」こういうふうな指摘があります。それと同時に、課税最低限の引き上げの程度と関過しながら、「低所得者層の負担にも配意して、当面、小幅にとどめるのが適当である。」と、このようになっております。  これをどう扱うか、これは野末さんおっしゃいましたとおり、これから五十九年度税制のあり方についての答申をもらってからでございますが、この間、野末さんのいまの御意見と同じような御意見がございまして、一応内部でささやかな勉強でございますけれども、してみますと、課税最低限が仮に二割なら二割上がりますと、そこから始まって刻みになっていくわけですね。そういたしますと、現実は標準世帯で考えた場合だれも増税になる者はいない、こういうことになります。がしかし、それでもなおかつ、たとえば一人者でお子さんもなく、一人者ですからお子さんがあっちゃ大変でございますが、お子さんもなく、本当にいわゆる各種控除が一番少ない自営業者の場合で、何か例外的にでもそういう層が一人でも二人でもありはしないかと、いろいろな勉強をしてみましたが、なかなか見当たりません。観念的にはあるような気がいたしますので、そういう問題につきましては、いわゆる個々だれだれに至っても一人一人が理論的増税というのがないようなことは配意しなければならぬなと、ほとんど私はないと思います。が、その辺がこの課税最低限の引き上げの程度と関連しながら、「低所得者層の負担にも配意して、当面、小幅にとどめるのが適当である。」と、こうなされておりますので、私は増減税という対象としてこの二つを論ずることはできないじゃないかというふうに考えます。
  202. 野末陳平

    ○野末陳平君 だから私は、納税者はそういうふうにとるだろう。率直に言いまして、総理、最低税率の一〇%が仮に一二ぐらいになる、これは検討せざるを得ないと私自身は思っているのです。だけれども、同時に今度最高税率の七五%を引き下げちゃってということであれば、七五%の場合は民間活力の維持充実の観点で引き下げるというのだ。だったら、最低税率を引き上げられたら、それこそ民間活力の維持充実じゃなくて、こっちの方がよっぽど意欲喪失のマイナスですよ、これは。だから納税者が一緒に、つまり納税者にとって上は減税、下が増税になっているというような印象を与えるような、同時に引き下げと引き上げ、これは反対だと、こういうことなんです。  そこだけはっきりしてもらわないと、大蔵大臣は別に考えているから、あなたはそう考えても、一般の納税者はそう考えない。これだけははっきり言っておきますので、総理に要望ですから、よろしくお願いしますよ。どうですか。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も政府税調の答申を読んでみまして、その点は非常に関心を持っておったところです。それで、やはり課税最低限は引き上げる、そういうことにおいていまの税率を多少上げるというところを相殺して、負担の実質的な増加をもたらさないように配慮しているのかなと、そう思っておりました。このような答申をいただきましたので、具体的にどうするかということは、これから政府として真剣に勉強して取りかかっていきたいと思います。野末さんのような専門家の御意見をいろいろよく拝聴して、間違いないように今後とも努力してまいりたいと思っております。  いまの七五%云々という問題は、事実上そういうふうに八割以上は取らないというような形になっているならば、それはそういうふうにはっきりしたらどうだろうか。地方税の操作かげんでそういうふうな取り組みで配慮を示してやっているというならば、じゃ堂々と表に出してはっきり公明にやったらどうかという、そういう気持ちも私はしておりますね。それから諸外国との比較という面もやっぱりある程度考えてみる必要があるだろう。総合的に公平感、そしてよくバランスがとれたような感じで手をつけたらどうかと、そういうふうに思っております。
  204. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) もう一つつけ加えさせていただきます。  わが国の累進税率構造、課税最低限は世界的にも高いところにあって、累進税率構造は大変な急カーブになっております。そこで、この問題はやはりもう一つの税調の答申で見ますと、「所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ、全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で見直しを行うことが適当」だと、こう書いてありますので、基本的には上、下という議論よりも、言ってみれば平準化した構造になった今日、それをよりなだらかなものにしていくということが基本的な思想にある。私、諸外国等のことばかり申し上げましたので、その御指摘についてもつけ加えさせていただきます。
  205. 野末陳平

    ○野末陳平君 実際大蔵大臣のお答えのとおりで、たとえば大蔵委員会で専門家同士がやるのだったら、いま言った中堅所得層の、まあ僕は年収四百万円ぐらいから千二百万ぐらいまでが一番税率構造の刻みをどうするかむずかしいところだ、そこが減税になるようなのが一番いいと思っていますが、わかりいいのは、上を下げて下を上げちゃったというのはこれわかりいいのですよ、マイナスの面で。ですから、そういうところにもやはり慎重にしてほしい。少なくも上を下げる意味は余りないじゃないか、根拠に乏しいということを言いたかったわけです。  それから、総理のいまのお答えのとおりでして、高額所得者が税金が高いと言うときに、必ず実効税率のことは言わないのですね。いわゆる実際に払っている税率は住民税を含めてもぐっと低くなっていくわけですよ、根っこのところから計算していきますから。ところが、上の上積みの限界税率のみを私の税金だ、高い、働く意欲もない、こう言うから、むしろ一般の人までが日本というのはそんなに税金が高いのか。それは確かに高いかもしれないけれども、そんなにほとんどゼロになるぐらい取るなんということはないのだから、というところもやっぱり一般人をごまかすので、僕は高額所得者というのは本当にけしからぬと思いますよ、がまんできるんだもの。だから総理が、そういう財界の社長たちがどんな会をつくっているか知りませんが、そこでもっていろんなこと言われる。そういうものにうかつに陳情に乗るなんということはとんでもない話で、それは慎重にしてもらわなきゃ困りますよ、本当に。間違いが多いのですから、勘違いも多いけれどね、訴える人たちの。ひとつそこはよろしくお願いします。  さて次は、これは税金をやっていると、諸外国との比較も出たので、本当は諸外国と比較してもまだまだ問題があるのですよ。まあこれは大臣、大蔵委員会で。こればかりやっていられないので。  総理、先ほどから新自由クラブとの合意書ですな、政治倫理確立のための合意の六項目がありましたけれども、あれは総理が速やかに具体化して、国民を裏切らないようにしてくれるということを何度かおっしゃいました。一つだけちょっとお聞きしたいところがあるのですが、この六項目の三番目、総理大臣及び国務大臣並びに政務次官に資産公開を義務づけるという項目がありますね。これはいままでも言われていたことですが、なかなか具体的になっていなかった。さてこれをどういう形で具体的になさるのか。これは義務づけるというのですから、特別の法律に基づくのか、それとも何か申し合わせで精神的な義務づけになるのか。その辺のことをちょっと総理の率直なお考えをお示し願いたい。
  206. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がたしか十月十七日に党の四役の皆さんにお越し願って、こういう考えはどうだろうかと言ってお示しした中に、第一に書いてあったのは、国務大臣内閣総理大臣、政務次官の資産公開の問題でありました。そのときの私の心構えは、なるたけ早くやった方がいい、そういう意味で一つのパターンを示して、閣議決定か閣議了解でやったらどうかなと、そういう気がしたのです。法律でやりますと時間がかかります。通常議会まで待たなきゃならぬ。それでも閣議了解か閣議決定でやって、後で法律で確認するというやり方もございますけれども、私がそのときに頭にすぐ来たのは、閣議決定か閣議了解ですぐやったらどうかなという気持ちでございました。これはどういうふうなやり方でやったらいいか、検討してみたいと思います。
  207. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは強いて法律と言わなくても私はいいと思うのです。閣議決定であっても、これを公にすればやはりこれは義務づけになりますから、それは速やかにやっていただくことの方が先でして、法律にこだわらない。ぜひお願いしておきますね。  それから、もう時間が来てしまいましたので、国会が自発的に行革を推進するために改革の努力をという点に触れることができなくなりましたので、実はわれわれ参議院においても、本会議は一年でどのくらい開かれているか、委員会は延べ時間どのくらいで、一人当たりどのくらいの時間を費しているかということを全部調べまして、それを発表したいと思ったのですけれども、これはもう時間がないですから別の機会に譲ります。  それで最後に、地方議会においては議員削減、定数削減の方をどんどんしてくださいよと言いながら、今度われわれは知らんぷりというわけにいきませんから、どうでしょうか、国会にも要するに定数を見直す、これは定数是正ということが裏にありますけれども、定数を見直すというようないわゆる機関を総理がおつくりになるなり何なりして、いまやこれは、われわれがこの定数でいいのだということを判断する時じゃないのですね。やはり国民判断してもらって、多いということであればやはり削らざるを得ないというためにも、何かそういう権威ある定数見直しの機関を、これをやはりやるべきじゃないか。それが行革を今後スムーズに進行させることであり、行革の精神というものはやはりこの立法府も例外じゃないのだというところにあるのですから、そういうことを提案したいと思いますけれども、最後にそのお考えをお聞きしたいのです。
  208. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 定数是正の問題の前に、国会考えなきゃならぬのはやっぱり審議するということなので、一日休むと一億六千万円吹っ飛ぶそうです。そうすると、三十八日間休みましたから六十億円の税金が吹っ飛んでしまった。国民皆さんが、中小企業の皆さん方が年末にそれをお聞きになったら、何てことだというお気持ちになっているのじゃないかと思います。六十億円といえば膨大なお金です。そういう意味で、やはり国会に出られたら審議に参加していただいて、一日も早く法律を通すなら通す、あるいはやめるならやめる。議了するということが私は望ましいのではないかと思っております。  それから定数の問題は、これは国会における各党の民主政治のグランドルールをつくる問題ですから、そういう意味において各党各派が参加して、そして商議する、自分たちの意見を持ち合って相談する。それがやっぱり私はいいと思うのです。よく第三者機関に任して、その人の言ったことを絶対もう受け入れてやったらどうかという御議論もありますけれども、私はそれよりも、やっぱり国会は有機的なところですから意見が食い違うことは当然あるのです。ありますけれども、みんなで努力し合って、じゃこの辺で妥協しようやというところまでみんなで努力し合う。それがやはりグランドルールづくりに大事な点なのでありまして、そういう各党各派の折衝によってできるだけ早くまとめるということが好ましいと考えております。
  209. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 次に、矢田部理君。
  210. 矢田部理

    ○矢田部理君 久保亘委員の健康につきまして大変御心配をおかけしましたが、その後回復をしまして、本人も元気になりました。したがって、ぜひ質問を続行したいという意向を伝えてきているのでありますが、その前に、昨日私が留保した質問について、本会議の議事録が手元に配付されましたので、むしろこの方を重点に決着をしたい、処理をしたいというふうに考えますので、私の昨日の残時間と久保委員の時間の若干をいただきまして質疑を行いたい。したがって、久保委員の方は後日に質疑を譲ることにいたしまして、きょうはしないことにいたします。  そこで、本論でありますが、十一月十八日参議院本会議の議事録を読んでみますと、上條議員、そしてまた中野議員に対する答弁で明白なのでありますが、両院の議長から全法案の成立について保証をもらっていると、こういう趣旨答弁を、若干ニュアンスの違いはありますが、本会議総理はいたしているのであります。  そのことをきのう私は指摘をしましたら、そんなことは言ってない、議長の話からそういう向きを感得したのだと、感得論で総理は問題をすりかえてしまったのであります。議事録を見たら違うじゃありませんか。まずその辺のところから総理、お答えをいただきたいと思います。
  211. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、議長さん及び自由民主党の皆さんといろいろ接触いたしまして、両院議長さんも私とそれから二階堂幹事長及び小此木国対委員長をお呼びになって、両院議長臨席のもとにいろいろお話もしたのであります。そのいろいろな体験を踏まえましてああいう発言をしたのでありまして、この時局の問題に関して私がある判断をするという限りにおいては、確信がなければなかなか判断をやれるわけにはいきません。私も公党の総裁であり、あるいは内閣総理大臣という大切な職責を持っておる人間であります。したがいまして、その点についてはきわめて厳格な態度で実は臨んだのであります。そういう意味におきまして、議長さんがいろいろごあっせんと申しますか、両院の議長さんがお出ましになりまして、いろいろな御苦労をしていただいた、その結果について私は議長さんのお考えを聞いたわけです。これは幹事長、国対委員長立ち会いのもとにお聞きいたしました。それで私はあることを感得したわけです。私側の解釈というものは、全法案の成立、それから国会正常化に努力する、そういうようなことでありまして、両院議長さんはその点についてはおまえ確信持っていいと、そういう趣旨のお話があったわけです。ストレートにそういうことを言ったかどうかというのではなくて、そういう趣旨の話があった。私はこれは保証であると思いました。そういう保証がなければ、一党の総裁としてなかなかそう考えをまとめるわけにいきません。そういう意味で、ここに「ある意味における御判断のお示しをいただきました。私は、その保証をいただきまして、今後どういうふうな政局対処を行うかということは、」「全法案が成立するかどうか、国会審議が正常化するかどうかということを重大な関心を持って見守りながら政局に対処する考えをまとめていきたいと考えておる」と、そういう意味でこれを申し上げておるので、間違いのないことであります。
  212. 矢田部理

    ○矢田部理君 その点を私がきのう指摘をしましたら、いや保証とは言ってない、いろんな話から私は感得したのだと、こういうお話ですから、そうだとすればきのうの発言は間違っているということになります。そうじゃありませんか。  同時にまた、委員長に申し上げたいのでありますが、私どもが法案審議に入る前から、少なくとも院の議長が行政府の長に対して全法案の成立を保証する、これはとんでもない話なのでありまして、みずから議会民主主義を否定するもので、審議権を放棄するものとさえ指摘できるのでありまして、もし総理の言うとおりだとすれば、逆に今度は議長の方に問題がある。さあ、この点いかがいたしましょうか。
  213. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法案につきましては、各党各党みんな賛成、反対の立場があるのであって、防衛庁設置法の法案について社会党は賛成するとは思っておりません。しかし、議了するということは大事なのであります。賛成、反対おのおの意思を表示して、そして議了するということ、そういう意味であります。そういう点から私は御判断のお示しをいただきました、その保証をいただきまして自分考える、そういうことなのでありまして、そういうふうに保証をもらったと自分考えていて、それで果たしてそのとおりいくかどうかということを自分は推移を見守っていきたい、そういうことで、私はそういうふうに感得したという意味であります。
  214. 矢田部理

    ○矢田部理君 単にいろいろなニュアンスでこう感じましたという、みずからの判断が感得の方ですね、感じ得たということです。保証というのは裏打ちしたということでありまして、言葉の意味内容は本質的に違うのであります。保証、裏書き、裏打ちということになるわけでありますから。  総理が、単なる願望があり、議長のいろんな話からそういうふうに感得したというレベルの問題、ちゃんと全法案の成立を保証したということになると、国会の今後のあり方、ありようにとっても大変ゆゆしさ問題を提起しているのでありまして、総理は、したがって、きのうのあのはぐらかしはやっぱり間違っているということを明確にしてきのうの発言を取り消すべきだし、同時にまた委員長、これは議長にその真意と事実経過を確かめなければ、そんな状況のもとでわれわれはまともに審議をすることはできない。その点、委員長に要求をしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この私の発言の中にもありますように、御判断をお示しになった、それは自分は保証であると考えた。議長が保証したというような直接の考えよりも、御判断を示したということははっきりしている。それを自分は保証であると考えた。したがって政局の推移を見る。こういう三段階になっておるのでありまして、私は自分が感得したこの全法案が果たして議了してわれわれが考えているように成立するかどうか、その問題を注目して今後の対処を考えている、そういうことであります。
  216. 矢田部理

    ○矢田部理君 議事録を読んでみれば明らかじゃありませんか。正確に読みます。「全法案の成立、国会の正常化ということにつきましてある意味における御判断のお示しをいただきました。私は、その保証をいただきまして」と、評価じゃない、「保証をいただきまして」と明確にしてあるのでありまして、いまの言葉は非常に微妙でありますが、中身はすりかわっている。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御判断をお示しになったというのはもう事実ですね。それを保証と私は受け取ったということも私の自由である、そういう意味です。
  218. 矢田部理

    ○矢田部理君 ある判断があって、じゃこの判断をまずお聞きしますが、それをあなたは保証と考えたという評価の問題じゃないのです。保証そのものをいただいたと、こう規定をしておるのでありまして、これはやっぱり明確に違うのですよ。「ある意味における御判断のお示し」をいただいた。「ある意味における御判断」とは、それじゃ何でしょうか。
  219. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そこは余り言わない方がいいのじゃないかと思いますが。
  220. 矢田部理

    ○矢田部理君 きちっと言ってください、どういうことですか。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう表現をしたのは、そういうところで言わない方がお互いのためにいいと思ったから、ある種の判断という言葉をわざわざ使ったのでありまして、私の配慮のほども御了承を願いたいと思います。
  222. 矢田部理

    ○矢田部理君 そんな思わせぶりなことを私は言ってもらいたくないのですね。それは明確にしなきゃならぬ課題でしょう。これは明確にしてくださいよ。
  223. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会というところは有機的なところでありまして、与野党がいろいろ話し合いをし、そしてある場合には感得をし、そうして国会というのはスムーズに運営されている、そういう場所であると私は思っておるのです。したがいまして、国会でいろいろ要人たちが話し合ったことを全部そのまま表に出していいという問題ではない、人間の社会にはそういういろんなものであるだろうと私は思っておる。ただ、われわれの立場からすれば、全法案の成立、国会の正常化というものはわれわれにとっては非常に重要な条件である、そういうふうに申し上げておるのです。
  224. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理のいまの御答弁でも私どもはやりぼり納得できません。むしろ議長の発言そのものの、評価ではなくて、議長そのものが保証を与えたというふうに受け取るのがこれは読み方の筋なんでありまして、その点納得できません。いまの総理答弁に私は納得する筋ではありませんし、中身が違うということをやっぱり指摘をしておきますが、同時に総理は重大な発言をしているわけですね。議長が総理に全法案の成立を保証したと。これは議会にとっては大変なことなんでありまして、少なくとも審議の衝に当たるわれわれとしては、これは議長にその真意と事実関係を明確にさせるということを、委員長としてぜひそういう措置をとっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
  225. 田中正巳

    委員長田中正巳君) 本件については、後刻、理事会において協議をいたしたいと思います。  本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時一分散会