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国務大臣(
竹下登君) いま五十六年度の税収見通しが大きく狂ったということに対する反省とか、あるいは今後の財政当局者としての心構え等についての
お尋ねでございますが、まあやはり私もこの数字で見てみますと、結局大きな
経済変動を行ったときはいつであろうかと。
決算の対当初予算比あるいは補正後予算比で見ますと、一つは四十年でございます。これはやっぱりオリンピックの翌年の戦後最大の不況ということではなかったかなあと。その次が四十六年でございます。いわゆるドルショック等、新しい不確実な、予想だにしなかった
事態が起きて、しかし、それを避けて通ることのできなかった状態であったと思います。その次がやっぱり五十年であると思います。これはやはり四十八年の暮れとはいえ、四十九年から五十年にかけてのいわゆる第一次石油ショックの影響をもろに受けておると思います。その次がまあ大体五十二年、そうして五十六年、そして五十七年、こうなるわけであります。やはり五十六年、五十七年というものは第二次石油ショック、いわば
国際不況というようなものが大きな理由であったと思いますので、私はまさにこれ当初比で三兆三千三百十九億円、補正後予算でも二兆八千七百九十五億円でございますから、まあ大変なものでございます。
五十七年をこの間締めまして、よく本
委員会等で、まあ一%は誤差のうちというようなことを言っておりましたが、五十七年もそういう状態の中で若干の剰余金が出たとはいえ、当初から比べればこれもまあ大変な見込み違いであったと思うのであります。
やはり世界
経済の停滞が予想以上に長期化した、そして、その回復がおくれたということによりまして、企業の生産活動や消費が全く伸び悩んだと。こうした、言ってみれば予見しがたい
経済情勢の推移によるものとは言いながら、見積もりと実績に大幅な乖離が生じたことは事実でございますので、その後におけるその要因を十分に分析はいたしております。この苦い経験を生かして税収見積もりに必要な
資料の収集、推計方法等について一層の工夫をこらしまして、なお精度の向上に努めておると。
御案内のように、
歳出ということになりますと、与えられた範囲内において
歳出権を付与されるわけでございますが、
歳入の場合は見積もりでございますので、それは狂うこともあり得るわけでございますけれ
ども、なお精度の向上に
努力していかなきゃならぬということでございます。したがって、これから税収を生ずる母体であります
経済そのものが大変流動的でございますだけに、この作業は本当はむずかしい作業でございます。約三十兆といたしまして一%と言えば三千億でございますが、三千億は誤差のうちというようなことをこの席上で答えたことがございますが、これは私も別に学問的にそういうことを言ったわけでなく、事ほどさように見積もりが狂いがちなものであるという前提の上に立って申し上げたわけでございますものの、まあたとえば、そういうような心構えでこの精度の向上に努めていかなきゃならぬというふうに思っております。
いつも御議論になりますが、予算編成時におきましては個々でずっと積み上げてまいりまして、できるだけ精度の高いものと。またこれを済んだ後で批判するときには、いわゆる租税弾性値を名目成長率に掛けるとかいうようなことをやりますけれ
ども、これも厳密に言うと、ただ過去の十年間なら十年間の結果として出てきた租税弾性値というようなものを参考にするだけであって、実際問題どれだけの精度があるかとおっしゃれば、そのときの
経済情勢に大変な変化がございますのでむずかしい問題でありますが、あらゆる諸指標を、まずできるだけ可能な限り正確な諸指標を基礎にしてこれから積み上げて、大きな乖離を生ずることのないような
努力は引き続いて鞭撻を受けてやっていかなきゃならぬ重要な課題だというふうに
考えております。