○
説明員(森下忠幸君) 御
説明いたします。
お
手元に横長の二枚紙がございます。「水道水源用
井戸の
汚染について」。これは
一つは、
東京都においての水道水源中の
トリクロロエチレンの
汚染の事例、その
対策について一ページ目にまとめてございます。それから次のページに、
トリクロロエチレン等による水道水の
汚染に対する
厚生省の対応方策を記してございます。
初めに、
東京都の水道の
概況についてざっと御
説明申し上げたいと思いますけれ
ども、
東京の水道と申しますと、従来
東京都の水道局は、特別区でございます二十三区を給水区域として給水をしております。それから多摩
地区につきましては、それぞれの市町村が経営
主体となりまして比較的小
規模の水道を
設置し管理しておったわけでございます。ところが、
昭和三十年ごろから多摩
地区が急速に発展してまいりまして
都市化が進展するということで、区部と多摩
地区の間、あるいは多摩
地区でも市町村の中で行政面の格差がいろいろ出てきたということでございます。
特に、水道について問題点を申し上げますと、料金などについて住民の負担がまちまちであった。あるいは、多摩
地区では主な水源を
地下水に頼っておりますけれ
ども、その他下水の水位が低下して取水がなかなかむずかしくなった。それからもう
一つ、市町村によりまして水道の普及の
状況に差があるというふうなことで、
東京都といたしましては、多摩
地区を含めて水道を都へ一元化していこうということをお考えになったわけでございます。この一元化計画が
昭和四十六年の十二月に発表になりまして、送配水管を含めましてこれを有機的に一体化していこうということで、四十八年の十一月から実施されておるわけでございます。
現在は都の水道は、二十三の特別区と多摩
地区の二十五の市及び町を給水区域としております。そしてさらに多摩
地区の四市一町に、きれいにいたしました水、浄水を臨時に分水するということをしております。多摩
地区の四市一町と申しますと武蔵野、三鷹、調布、昭島の各市、それから羽村町でございます。これらの四市一町は、都の給水区域から外れまして自前の水道をまだ持っておるわけでございます。こういう
状況でございます。
ところで、
東京都が水道水源の中で
トリクロロエチレンを発見したといいましょうか、検出したということが五十七年にあったわけでございますが、そのきっかけは、実は水道水の中でトリハロメタンの
対策というものを
厚生省の方で重視いたしまして、
昭和五十六年の三月に通知を出しまして、
全国の水道
事業、水道用水供給
事業、専用水道、それぞれ浄水場の系統ごとに所定の回数トリハロメタンの
測定をするようにという指示をいたしました。この
測定を各
事業者がやってまいりました。この
測定はガスクロマトグラフという機械を使うわけでございますけれ
ども、この分析の中で
トリクロロエチレンも一緒にといいましょうか、その操作の中で
測定ができたわけでございます。
東京都がトリハロメタンを
測定しておりますときに
トリクロロエチレンが実は発見されたということで、それでは全体について
調査をしてみようということでなさった結果の取りまとめがお
手元の表でございます。
表を見ていただきますと、左の方に「区分」とございまして「上水道」「専用水道」と分けてございます。上水道と申しますと、五千人を超えます大きな水道でございます。それから専用水道と申しますと、社宅とか寄宿舎あるいは療養所など自家用の水道で居住人口が百人を超えるもの、こういうものを専用水道と言っております。
この表を見ていただきますと、上水道につきまして多摩
地区の水源の
井戸は全部調べました。検査をいたしましたのは、それぞれの水道
事業者、つまり多摩
地区については都の水道局、それからさっき申しました独立の水道でございます四市一町の水道、これはそれぞれが検査をいたしました。検査実施期間が五十七年の九月から十一月。検査の
井戸は、これは全数でございまして百五十七本。
検査の結果でございますが、まず、
トリクロロエチレンが発見されませんでしたものが百九本。それから
WHOの
ガイドラインの案でございますが、これは暫定的に三十マイクログラム・パー・リッターとなっておりますけれ
ども、これ以下であったものが四十三本、これを超えたものが五本。市別に分けますと、超えたものの五本の内訳は府中が三本、八王子が二本。御
参考までにそのときの最高の値を示してございますが、府中につきましては四十、五十、九百三十マイクログラム・パー・リッター、八王子につきましては五十五、七十八という
数字でございます。
これに対しまして、その対応でございますが、この
ガイドラインの暫定
基準案を超えました
井戸につきましては直ちに取水を停止いたしまして、これを
河川水を源水といたします水道の系統に切りかえました。具体的には、この
地区は東村山浄水場から来る水でございまして、多摩川の上流から原水を取っております。こういうことで切りかえたわけでございます。
それから専用水道につきましては、特別区と多摩
地区と分けまして、それぞれ
東京都衛生局が全数
調査いたしました。五十七年の十月から十二月でございますが、これは専用水道の数といたしまして特別区で五十九カ所、多摩
地区で九十三カ所。以下検査結果は右のとおりでございますが、
ガイドラインを超えたものが特別区では一カ所、それから多摩
地区で二カ所ございまして、場所は練馬区が一カ所、町田市で二カ所ということでございます。
それから、超えた値でございますけれ
ども、練馬区は百六十マイクログラム・パー・リッター。これにつきましては取水を停止して、不足いたしますから、この分については上水道から給水する。町田市の分につきましては四十七、百四十という
数値でございましたが、これは水道へ切りかえるという
措置をしてございます。
それから、これは五十七年の
調査でございますけれ
ども、下の方に注2といたしまして三鷹市のことがちょっと書いてございます。三鷹市は、先ほど申しましたとおり、自前の水道を持っておりまして、
東京都の水道局の給水区域外でございますけれ
ども、先ほど申しましたように臨時の分水ができるようにパイプでつながっております。三鷹市で五十八年の八月、すなわちことしの八月に
調査いたしましたところ、新たにこの
トリクロロエチレンについて高い
数値を示した
井戸が三本あった。三本の
うち最高のものは百四十マイクログラム・パー・リッターであったということで、この三つの
井戸につきまして直ちに取水を停止いたしまして、水量が不足いたしますから、その分につきましては
東京都水道局から分水を受けている、そういうことで補っているということでございます。
これが
東京都の現状でございます。
停止いたしました
井戸につきましては、その後も追跡
調査を二カ月に一回ないし一カ月に一回の程度でやっておりますけれ
ども、なかなかこの
汚染状況は回復していないというふうに聞いております。
次が二ページ、二枚目でございますが、
トリクロロエチレン等による水道水の
汚染に対する
厚生省の対応方策。先ほど
環境庁の方から御
説明ありましたとおり、
生活用水の
地下水への依存度が高いわけでございますので、これについて私
どもかなり積極的に取り組んでいかなきゃならぬと思っておるわけでございます。
その
一つが、上に書いてございます
水質基準の設定ということでございます。現在、
数値を申しておりますのは、
WHOの
ガイドライン案を引き合いに出しておるわけでございまして、これは
一つの目標ということで使われておるわけでございますが、
厚生省といたしましては、
わが国の独自の
基準ということを今後つくっていきたいということで、厚生大臣の諮問機関でございます生活
環境審議会の中の
水質専門
委員会で昨年からいろいろと研究を始めておりまして、
トリクロロエチレン、
テトラクロロエチレン、あるいはこれよりも
物質をふやすかもしれませんけれ
ども、こういったものについて
水質基準あるいは
汚染の
監視体制、それから
汚染された場合水道側でのこれを低減化させる技術的な方策、こういったものについて御審議いただいておるわけでございまして、これをぜひ審議を早めていただいて、五十八年度末を目途に取りまとめていただこうというふうに考えております。その結果によりまして、
厚生省といたしましては所要の
措置を講じていくということとしておるわけでございます。
それから二番目といたしまして、当面の
措置。これは今回
環境庁が御発表になりましたデータを
もとにしてのことでございますけれ
ども、そのことについてここで触れておりますが、今回
環境庁で御発表になりました内容を
厚生省の方で水道の立場から分析いたしますと、まず
環境庁で対象にされました水源の
井戸につきましては、すなわち水道水源用の
井戸につきましては今回は、たまたまと申しましょうか、
水質基準あるいは
WHOの
ガイドライン案の値を超えたものはなかったわけでございます。
それから飲用の、家庭用の
井戸でございますね、家庭用の
井戸の中で
トリクロロエチレンまたは
テトラクロロエチレンが
WHOの
ガイドライン案の値を超えたものが幾つかあるわけでございますけれ
ども、これがございます
井戸は、水道の給水区域の中に存在しておるということで、水道の方に切りかえが可能であるということが判明したわけでございます。そこで私
どもは、この
環境庁の御発表になりました
実態調査の結果を踏まえまして、また、それを拝見いたしますと大変
汚染が広範囲になっているということ、そういうことで
飲料水の安全性を確保するというため、八月五日付で当面の
措置ということで次のような内容の通知を都道府県に対してしたわけでございます。
一つは、ここにございますように、トリハロメタンの検査というのは引き続きやっておるわけでございます。それから
トリクロロエチレン、
テトラクロロエチレン、これらの
物質はトリハロメタンの検査のときに一緒にできるということ。それから、この二つの
物質は、今回の
環境庁の御
調査でも
検出率、検出
濃度とも特異的に高かったということ。それから、今回の御
調査以外にも一般の苦情という形で、家庭用の
井戸がこれらの
物質で
汚染されているというふうなことも私
ども情報として持っておりますものですから、今回この二つの
物質についてトリハロメタンにあわせて
測定をするようにというふうなこと、そして
汚染実態の把握に努めるようにという指示をいたしました。
それから二つ目に、こういった検査をいたした結果高
濃度の
汚染が出てきたという場合には、私
どもに相談をしていただきまして、水源を転換するとかあるいは水処理ということでこの
濃度を下げるというふうな
措置を講ずるよう連絡をしてくれというふうなこと。
それからもう
一つ、一般用の、家庭用の
井戸でございますね、こういうものについて高
濃度の
汚染が判明した場合には、水道への切りかえ等適切な
措置を講ずるように、こういう指示をいたしてございます。
八月以後の
状況でございますが、それぞれの水道
事業、まあ簡単にはかれるとは申しましてもやはり準備がございますものですから、
トリクロロエチレン、
テトラクロロエチレンの
測定方法について統一的なやり方を県レベル等で協議しておりまして、ぼつぼつ検査が始まっておりますが、その結果問題となりました上水道の水源等につきましては所要の
措置、すなわち取水停止をするとか切りかえるとかというふうなことが行われておるわけでございます。
以上、
厚生省関係の水道の
対策について御
説明申し上げました。