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1983-10-07 第100回国会 参議院 外務委員会、内閣委員会、運輸委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十月七日(金曜日)    午後一時三十分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。    外務委員会     委員長         後藤 正夫君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 松前 達郎君                 抜山 映子君     委 員                 石井 一二君                 岩上 二郎君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 久保田真苗君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 立木  洋君                 秦   豊君    内閣委員会     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 野坂 昭如君     委 員                 板垣  正君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 林  ゆう君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柄谷 道一君    運輸委員会     委員長         矢原 秀男君     理 事                 梶原  清君                 下条進一郎君                 瀬谷 英行君                 桑名 義治君     委 員                 小島 静馬君                 斎藤 十朗君                 内藤  健君                 吉村 真事君                 小笠原貞子君                 伊藤 郁男君                 山田耕三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君        常任委員会専門        員        林  利雄君        常任委員会専門        員        村上  登君    参考人        慶應義塾大学法        学部教授     栗林 忠男君        航空評論家    関川栄一郎君        航空評論家    青木日出雄君        日本航空株式会        社運航本部B—        747運航乗員        部副部長     巖  祥夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○大韓航空機撃墜事件に関する件     ─────────────    〔外務委員長後藤正夫委員長席に着く〕
  2. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会内閣委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が連合審査会会議を主宰いたします。  大韓航空機撃墜事件に関する件を議題といたします。  本日、本連合審査会に御出席をいただきました参考人方々は、お手元に配付いたしました名簿のとおりでございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、貴重な時間をお割きいただき、当連合審査会のために御出席を賜りましてまことにありがとうございました。委員一同を代表いたしましてお礼を申し上げます。  本日は、大韓航空機撃墜事件に関する件につきまして、参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々から順次御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進行上、まずお一人十五分程度でそれぞれ御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答えいただくことといたしますのでよろしくお願いを申し上げます。  それでは、まず、栗林参考人お願いをいたします。
  3. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) 慶應大学栗林でございます。  私は、国際法を専攻しております関係上、この事件について国際法の観点から一言述べさしていただきたいと存じます。  一九四四年にシカゴで締結されました国際民間航空条約第一条は、「各国がその領域上の空間において完全且つ排他的な主権を有すること」を規定として置いております。これは、これまで確立されておりました領空主権の原則を宣言しているわけでありますが、国際法上、領空侵犯に関する規則というのは必ずしも確定しているとは言えない部分がございます。その理由一つには、従来、主として東西対立状況の中で数多くの領空侵犯事件が発生しておるにもかかわらず、事件をめぐって関係国が抗議の応酬を繰り返すばかりで、一度として権威ある国際的な司法判断が下されていないということによります。しかしながら、これまでの諸国実行並びに学説から判断いたしますと、民間航空機による領空侵犯が発生した場合には、あらかじめ警告進路変更強制着陸などの命令が先行すべきであって、それらの事前の措置がとられることなく実力行使が行われた場合には、そうした行為は不当なものとして抗議し得るというふうに解されているように思います。もちろん、民間航空機による領空侵犯は、遭難や不可抗力など悪意に基づかない理由によって行われる場合が往々にしてあり得ます。民間航空の安全、人命尊重見地から、私としてはそのような不測の場合には、民間航空機は他国の領空内に立ち入る権利すら認められるべきだろうというふうに考えております。もとよりその場合には、侵入機は自己の正体を明らかにし、警告進路変更着陸などの命令にはこたえなければならないことになります。この種事例におきましては、常に一方で民間航空交通重要性他方国家安全保障という二つ立場が含まれております。  一九五五年に発生いたしましたブルガリア空軍機によるイスラエル旅客機撃墜事件の際には、撃墜された航空機本国であるイスラエルと、死亡した乗客本国であるアメリカイギリスが、ブルガリアを相手取って国際司法裁判所に提訴したことがございます。この事件の場合には、ブルガリア側には裁判所管轄権を受け入れる義務はないとして結局実質審理は行われませんでしたけれども、イスラエルアメリカイギリス三国が裁判所に提出した文書によりますと、民間航空機に対する撃墜行為国際法違反として厳しく非難しております。国際社会全体としても、こうした事例が発生するたびに、少しずつではありますが民間航空の安全を確保する措置を進めてきているのが現状でありますし、多国籍の乗客を大量に運送する民間航空実情からして、今後ともそのような要請が強まるものと予想されます。  実際に国際民間航空条約ではその第六章で、国際航空に関する規則標準手続などの統一化のために各国が協力することを約束しておりまして、それらは現在幾つかの附属書として成立しておりますが、その中の第二附属書として航空規則という部分があり、その第三章では要撃についての規定がございます。またその「付録A」には、要撃の場合に使用する信号に関する規定があり、さらにその「添付A」には、民間航空機要撃に関する規定がございます。しばしば問題とされるのはこの「添付A」と呼ばれる文書の七、つまり「武器使用」に関する部分でありまして、そこでは、「要撃機は、民間航空機要撃するいかなる場合においても武器使用しないものとする。」と規定されております。こうした規定は、民間航空の安全を少しでも確保しようとする国際的な動きの一環であることは言うまでもありません。  しかしながら、これらの「国際標準及び勧告方式」と呼ばれるさまざまな規則が、国際民間航空条約本文の諸規定と果たして同一の拘束力を有するかどうかは疑問のあるところであります。とりわけ、これらの規則実行可能な限度統一化を図ることを協力し合うということになっており、各国実情に応じてその規則からの相違、乖離を認めているからであります。もとより、航空活動は何よりも手続標準統一化が強く要請される分野であることは言うまでもないことですが、この点は一応指摘しておきたいと思います。また仮に、附属書の諸規定国際民間航空条約本文同等拘束力があるものと認めたといたしましても、具体的に第二附属書規定内容を眺めてみますと、「付録」と言われる部分規定は、基準及び勧告方式の一部を構成するものとして位置づけられてはいるものの、「添付」と呼ばれる部分は、基準及び勧告の補足をなす資料であるかまたは適用のための一つの手引きとして含まれているにすぎないものとして位置づけられております。この意味において、要撃機武器使用してはならないという要請は、必ずしも附属書本文同等効力を持つものとは言いがたい側面があります。これらの附属書の諸規則法的地位というものがいかなるものであるかは、最終的には司法的判断が下されることが望ましいわけですが、ここでは一段と低い地位に置かれ、一つのガイドラインであることを指摘しておきたいと思います。事実、この武器の不使用に関する規定がわざわざ「添付」という形で設けられた背景には、それを附属書本文同等の強い形で認めたくなかったという声が反映したためであります。  これを見てもわかりますように、民間航空機に対する実力行使に関しては、なお諸国立場実行がある限られた側面ではありますが、統一的でない部分があるように思われます。特にこの点に関しては、東西間の国家実行上の相違が存在しているために、領空侵犯に関する慣習法成立基盤が統一的に欠けていると言わざるを得ません。  一例を挙げれば、一九五二年にスウェーデン軍用機バルト海上空ソ連空軍機により撃墜された事件につきまして両国間で交わされた公式文書によりますと、一般的には侵犯した軍用機発砲を受ける前に着陸する機会を与えられるべきだとする了解があったと言われますが、このときのスウェーデンソ連両国の態度には基本的な相違が見られまして、スウェーデン側は、外国航空機進路を変更し領空外へ立ち去るならば発砲されてはならないという理解を示し、ソ連側は、着陸しないで立ち去るのであれば発砲の対象となるという考えを示したと言われております。 このように、安全保障を重視する法意識を持つ国の存在を全く無視して、すべての場合に実力行使違法行為だとする国際法上の規則が確立しているということは、きわめて限定された範囲ではありますけれども妥当ではないというふうに考えます。換言すれば、警告を発し、進路変更強制着陸の指令にもかかわらず正体を明かさず、応答もなく、未確認飛行物体が悪意ある飛行として国家安全保障上やむを得ざる緊急の事態を引き起こす可能性がある場合に、これまでの若干の国の実行から見まして、そしてまたいま述べましたように国際法規則がこのぎりぎりの点において必ずしも統一的に明確化されていないという現状から見まして、撃墜という行為を含めて実力行使がとられることを一律に違法と見ることは法的に困難であるというのが現状であろうかと思います。したがって民間航空機側は、その侵犯がやむを得ざる状況によって発生したものであることを立証する責任を負い、他方実力行使を行った国は、その侵犯自国安全保障上不可欠な重大な危険を及ぼすものであったことを立証しなければならないことになります。この大きな枠組みの中でさまざまな事実が介在することになるわけでございますが、このたびの大韓航空機事件においてはいまだ明らかにされていない部分が多くあり、私が以上申し上げたことも、当然それらの事実に依存する考えであることをお断りしておきたいと思います。  もう一つ補償の問題に簡単に触れておきますと、理論的にはソ連を相手取って遺族が訴訟を起こすことも考えられますが、その実現性ははなはだ疑問であります。また、ソ連撃墜行為国際法違法行為であるならば、国家責任を追及するという形で賠償責任を要求することができますが、これは国家間の責任問題でありまして、必ずしも個人に対して十分な補償となり得るかどうかは疑問であります。こうした措置が実現される可能性が余りない現実状況の中で、遺族による大韓航空会社側に対する民事責任の追及という方法があります。この場合には、航空運送人責任に関するワルソー条約あるいはハーグ議定書に基づく運送行為であるか否かが問題となりますが、大韓航空モントリオール協定に加入していることから七万五千ドルの特約条項は適用されることになります。ただし、大韓航空側故意または故意に相当すると認められる過失が立証される場合はこのような限度額はないことになります。これらの点はすべて訴えが係属する裁判所司法的判断を待たざるを得ないことになりますが、いずれにせよ航空事故運送人責任額が依然として少ないという一般的に不備な状況は残された問題であります。  最後に一言つけ加えさせていただければ、民間航空重要性人命尊重見地から、将来にわたってこのような出来事は繰り返されてはならないと思います。航空界航空技術上の立場からも今後さまざまな御意見が出されることと思いますが、国際法上もいろいろな改善策考えることが望まれます。  国連憲章第九十六条に基づいて国連の総会または安全保障理事会、あるいは国際民間航空機関のような国連専門機関が、領空侵犯の法理につきあるいは国際民間航空条約附属書規定効力につき勧告的意見国際司法裁判所に求めるとか、あるいはまた、国際民間航空機関のような国際機関事件発生後直ちに事実調査のできるような方策を通じて、法の明確化に少しでも資する道を探っていく必要があろうかと思います。今回の事件において、事実がそうでないということが将来明らかにされたといたしまして、それにもかかわらずソ連自国国境警備軍行為を違法でないとするならば、今後不信感とあつれきを国際間に増すだけであります。かつて、先ほども述べました一九五五年のブルガリアにおけるイスラエル機撃墜事件並びに一九七三年のイスラエルにおけるリビア旅客機撃墜事件の際に、実力行使をしたブルガリアイスラエル両国は、それぞれ違法性はないとして国際法上の国家責任をとることは拒否いたしましたものの、遺族に対する補償金を支払おうとした事実にかんがみまして、私としては、民間航空機乗客遺族に対して最低限このような誠意をとることをソ連政府に要望したいと考えております。  以上で陳述を終わります。
  4. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ありがとうございました。  次に、関川参考人お願いいたします。
  5. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 関川でございます。領空侵犯事件に対する対策につきまして一言申し上げてみたいと思います。  領空侵犯対策といたしましては二つに大きく分けて考えることができるのではないかと思います。つまり、領空侵犯そのものを起こさないという予防的な措置と、二番目には、不幸にして侵犯が起こってしまった場合、それが破局的な結末を招かないようにするという方法と、この二つ対策があるかと思います。  まず第一に予防的な措置でございますが、基本的にはただいま栗林先生から御指摘のございましたいかなる場合にも民間機に対しては武力を行使しないというふうな国際的な取り決め拘束力のある取り決めを結ぶことが肝心でございますけれども、しかしこういう拘束力のある取り決めを結ぶことに直ちにソ連が合意するとはいまの情勢ではとても考えられないわけでございます。それから二番目には、仮にソ連の合意が得られたといたしましても、民間機であるということの識別を一体どうするか大変むずかしい問題を含んでおりますが、場合によっては、発砲撃墜という事態が起こった後でそれの弁解といたしまして、民間機としての識別ができなかったのだというふうに言ってしまえば問題はそれまでであります。こういうふうに大変微妙な問題を含んでおりますので、国際的な取り決めを結んでみても、それが一〇〇%予防的な効果を発揮するかどうかという点ではかなり問題が残っておるように思います。つまり、現実の問題としては望み薄と言わざるを得ないように私は思います。  それから二番目に、設備とか制度あるいは装備といったものを改善するという問題がございます。まず、現在の航空路を再検討してはどうかという問題がございます。つまり、共産圏に大変近く設定されております航空路を廃止するとか、一部コースを手直しするとかいうことで飛行機共産圏国境線から遠ざけるという方法がございます。しかし、現在の航空路というものはできる限り最短距離を飛ぶようにつくられておりますので、これを廃止したり変更したりすることは、大なり小なり飛行機の飛ぶ距離が延びまして燃料をたくさん使わざるを得ないという結果を生むわけでございます。それからもう一つは、仮に航空路共産圏から遠く離してみましても、今回の大韓航空事件のように、五百キロも本来のコースから外れてしまうというふうな常識では考えられないような問題が起こりますと、少々離しても効果はないわけでございます。  御記憶のように、いまから五年前の一九七八年四月の二十日にいわゆるムルマンスク事件というものが起こっております。このときは、パリを出発いたしましてスコットランドからグリーンランド、カナダの北部を経由いたしましてアンカレジへ飛ぶはずの飛行機が、つまり西へ飛ぶはずの飛行機が逆に東へ飛んでしまった。そしてムルマンスクからソ連領に侵入してやはり発砲を受けておるわけでありますが、こういうふうな非常識な問題が起こりますと少々航空路を手直ししてみても全く無意味でございます。  それから三番目には、民間用レーダーをふやすとかあるいはレーダーそのものの性能を高める、そして探知距離を長くするというふうな方策考えられるわけでございますが、これには莫大なお金がかかります。一体、何十年に一回起こるか起こらないかわからないような領空侵犯の防止のためにだけ膨大な投資をするということが許されるかどうか。つまり早く言えば費用効果という問題でございますが、ここでも一つ大きな問題が残されておるわけであります。  それから四番目には、人工衛星を使って宇宙から飛行機動きを監視して、少しでもコースを外れれば警告を出すようにしてはどうか。これはアメリカで現在研究が進んでおりますが、これにもやはりお金がかかりまして費用効果の問題があるわけでございます。それならば現存する軍の、軍事用レーダー民間機を監視させる機能を持たしてはどうかということがございますが、これは軍の機密とも関係いたしますので、暫定的な措置ならともかく、永久にこういう制度をつくるということはかなりむずかしい問題ではないかと思います。  一番手っ取り早くやれることでかなり効果があると思われる問題は、飛行機飛行に関する、運航に関する情報国際間の流れをもっときめ細かく迅速にする。ソ連国境の近くを飛ぶ飛行機についての情報は、たとえば北太平洋航空路で申しますと、情報流れておるのは現在日米間だけでありましてソ連圏には流れておりません。これをもう少し改善をして、共産圏にそういう報告を出すということがいいことか悪いことかわかりませんけれども、国際間のそういった情報流れをもう少し風通しをよくいたしまして間違いを起こさないようにするということがございます。  以上申し上げました点はやろうと思えばやれるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような費用効果という問題もございますし、軍の機密という問題もございますし、なかなかすぐにこれも一〇〇%効果を生むかどうかという点ははなはだ疑問でございます。  五番目に、関係者安全意識の向上という問題でございますが、これはまず企業経営者経営姿勢の問題がございます。つまり、これは国の責任でありますけれども、乗員管制官なんかの管理、詳しく申しますと訓練とか教育とかいった問題になるかと思いますが、そういったクルー管理の問題でございます。これは現在のところほぼ世界的に円滑に行われておるとは思いますけれども、しかし今回の大韓航空事件と前回のムルマンスク事件と比べてみますと、どちらも民間航空界にとっては前代未聞と言ってもいいような非常識な考えられないような事件でございました。それも同じ航空会社が二回も続けて起こしておるとなりますとこれはどうも偶然とは思えません。やはり会社人事管理、特に乗員管理に何か欠陥があったのではないかというふうに考えられるわけでございます。  その次に同じ安全意識の問題ですが、経営者と同時に直接運航に携わる人たち、具体的に申しますと飛行要員といいますかコックピットクルーといっておりますが操縦要員、その人たちコースを厳守することを徹底させるという問題がございます。これはもうパイロットとしてはABCの問題でございまして事新しくそんな教育をするまでもないことでございますけれども、しかし最近指摘されております問題の一つといたしまして、機械が余りにも発達し過ぎたために機械を過信するという例がどこの航空会社でもあるようでございます。たとえば今回の大韓機事件で問題になっておりますINSという自動航法装置がございますが、これは太平洋を八千キロ飛んで誤差がわずか一キロ以内というふうな非常に高度に精密な機械でございます。しかもこれが三台普通はついておりましてお互いにチェックをしながら飛行いたしますので、まず間違いというものは絶対にと言っていいほど起こらないわけです。乗組員はいつの間にか余りにも高度な機能を持つその機械に依存し過ぎておりまして、つい本来人間の、人手を加えなければならないところまですべて機械がやってくれるような錯覚を持ちがちだということを現職のパイロットの方もおっしゃっております。たとえどんな精緻な機械でありましてもしょせん機械機械であります。トラブルということはゼロではございません。したがってその機械が正確に動いておるかどうか、飛行機が予定のコースを飛んでおるかどうかということを必ずほかの手段 でもってチェックをしなければならないわけであります。たとえば飛行機にはレーダーがついておりますしコンパスがついております。それから、地上から出ております標識電波をつかまえて自分の位置あるいは方向、距離を知るような機械もたくさんついております。そういうふうに補助的な手段というものが、仮にINSが故障しましても正しく飛べるような補助的な手段というものが四重にも五重にもついております。そういったものを全部使えば、仮にINSが故障いたしましてもすぐに見つけることができます。つまり、航路をそれ始めた時点ですぐに見つけることができます。それからまた見つけたらすぐ引き返すこともできますし、正しいコースに戻すこともできるわけでございますが、つまりそういうふうな規定があるにもかかわらず今回の事件が起こったということは、パイロット規定を守っていなかったという可能性が非常に強うございます。これはひとつ規定を守るように徹底させるということが大事だと思います。  次に、侵犯が起こった後のいわば事後処置でございますが、これはよく言われますように、侵入された国の地上管制機関から侵入してきた侵犯機に対して警告を出すとか通信をするというふうなことが非常にむずかしい。あるいは迎撃に飛び上がった戦闘機と侵犯した民間機の間の意思の疎通が非常にむずかしいというふうなことがいろいろ言われるのですけれども、これは通信手段をもう少し改善することによって物理的にはこういう問題を改善する余地はあるわけでございますけれども、しかしこれも先ほど申し上げました問題と同じように、幾ら設備がよくなりましても肝心の乗組員がそれに気がつかなければ何にもならないわけであります。たとえば戦闘機と民間機との間に通信ができるようになりましても、パイロットの方に伺いますと、ほかから無線で呼びかけてくる場合に、自分の飛行機のコールサインを頭につけて、たとえば日航何便というふうな呼びかけ方をしなければ、ただどこそこの飛行機というふうに言われれば自分が呼ばれていると気がつかないことが多いということをおっしゃっております。確かにそのとおりだろうと思います。  それから、これは現にあった例でございますけれども、操縦室にはいろんな警告装置でベルが鳴るようになっておりますけれども、墜落した飛行機のボイスレコーダーを調べたところが、たとえば高度が下がっているというふうな警報が鳴っているのが録音されているにもかかわらずパイロットはどうもそれに気がついていない、高度がどんどん下がるままにほったらかしておったらしいというふうな例もございます。ですから、幾ら設備を改善してみましても、そういうふうにパイロットが、乗組員がこれを活用しなければ何にもならないわけであります。ほかにも、たとえば軍隊のパイロット民間機識別を積極的にやらせる、識別方法教育するとか、あるいは民間のパイロットにも、迎撃された場合の手順をもっと徹底的に教育するというふうなこともたくさんございますけれども、要は人の問題でございまして、先ほどからるる申し上げておりますように、経営者を初め関係者全体の安全意識を高めるということが最後に残された基本的な問題であろうかと思います。  これで終わりたいと思います。
  6. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ありがとうございました。  次に、青木参考人お願いいたします。
  7. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) 青木であります。  非武装の民間旅客機がたとえ領空侵犯したからといいましても、戦闘機のミサイル発射によって撃墜をされて、二百六十九人のとうとい人命が失われるなどという事態はあってはならないことだと思います。その点は強く主張しておきたいと思うのです。  現在の世界に、状況によっては侵犯機に対して武器使用し強硬な措置をとるような国、その種の空域が存在することも確かであります。われわれが日常使っております航空図にも、この地域に入ったとき無警告で射撃をされるという注意を書いてある場所が随所にあります。日本の近くでも、ソ連、中国はもちろんでありますが、ベトナム、ラオス、カンボジア、朝鮮半島の三十八度線及びソウル上空、ビルマ——これはビルマはちょっと特殊な例でありまして夜間でありますが、夜間のビルマ、それからソ連が侵入する前のアフガニスタン、これはコリドーという回廊だけを設けてありまして、その回廊以外を飛行してはならないという規定があります。現在戦争をやっておりますイラン、イラクも当然そうであります。その中でイラクは、特に許可を受けた航空機以外は全国土の領域が飛行禁止空域であります。また、現在告知が出ておりますのはレバノンについても同じであります。ですから、別に共産圏ということには関係なく、世界じゅうに飛行禁止をされ、あるいはそこに立ち入ると無警告で射撃をされるという注意が出ている空域はずいぶんあるのであります。特にソ連の場合には、先ほど話が出ました五年前のムルマンスク領空侵犯事件以後でありますが昨年国境法で成立をいたしまして、国境を侵すものについて武器使用することがあるとはっきり法律によって決めているわけであります。特段の取り決めのない場合には、その地域におきましては国内法が優先をいたしますので、現在の国際的な規定、先ほども栗林先生からお話がありましたように、実はそれの拘束力がどこまであるかということについて疑問がございますので、現在の状況であるならば、武器使用することが国際的な常識あるいは慣行から考えましてどこまで不当であるかというのが疑問な状態であります。現在の国際民間航空機構の取り決めではこの点が不十分でありますので、民間航空機の航行の安全についてもっと厳格な条約、それに領空侵犯機に対処する要領、警告信号の要領、それを受けた航空機の方の行動要領、実はこの点も現在の取り決めでは非常に不十分でありまして、受けた方がどう行動をすれば相手の警告がわかったかという動作について明確化をする必要があると思います。結論的に申し上げまして、現在は領空侵犯をした場合それにどう警告をするか、また警告を受けたものがどう行動をすれば了解をしたことになるかということがきわめて不明確だということであります。  第二に、今回の事故の起きました空域について申し上げておきたいと思います。  実際上ただいま申し上げましたような国際的な取り決めが不十分であり、ソ連には新しい国境法がありという状態では、どの空域で領空侵犯を起こしましてもソ連側の強硬な措置が行われたであろうとは予測されます。ただ、今度の事故の起こりましたR20——ロメオ20の航空路に隣接をいたしますアリューシャン、ベーリング海、カムチャツカ、オホーツク海、サハリン、この空域については特に軍事上の問題がいま差し迫っていると思います。  この空域が、この地域が脚光を浴びてまいりましたのは一九五〇年代の終わりからであります。アメリカ及びソ連に長距離の戦略爆撃機ができまして、相互に戦略攻撃が可能な体制がとれた、これが一九五〇年代の終わりであります。そのときにアメリカもアラスカ地域に戦略爆撃機の基地を設けましたし、ソ連の方もカムチャッカ半島に四カ所の戦略爆撃機用の分散基地を設けました。この両者に対抗いたしまして両国ともそれを探知するためのレーダー網をつくったわけであります。今回の領空侵犯で一番初めに通過をしたと考えられますコマンドルスキー諸島があります。これがアリューシャン列島に対するソ連側の一番端末のレーダー基地であります。また、これに対抗いたしましてアメリカ側が置いてありますのはシェミア島の基地であります。それで、コマンドルスキー島のレーダーとシェミア島のレーダーとは両方相向かい合っておりますが、警戒空域が重復しておりまして、両者ともそこでの動きがわかるような形になっております。  ただ、この空域が非常に大きな変貌を遂げてまいりましたのは一九六〇年代に入ってからであります。このときに米ソ両国とも潜水艦発射のミサイルが開発をされましてこれの配置が始まったわけであります。そのときにソ連が配置をいたしました戦略ミサイル潜水艦の基地は、これも奇妙な話なんでありますが、五年前に大韓航空機が領空侵犯を起こしましたムルマンスクと今回問題になりましたカムチャッカ半島のペトロパブロフスクであります。この二つソ連の戦略弾道ミサイル潜水艦の二大基地として配置をされたわけであります。ただ、一九六〇年代は潜水艦発射のミサイルの射程が非常に短うございましたから、ペトロパブロフスクに配置をされた潜水艦も、アメリカの西海岸まで行って射撃をしなければアメリカ本土の中心部には届かなかったわけであります。  ところが、一九七〇年代に入りましてからソ連にデルタ型潜水艦とSSN8——われわれが呼ぶSSN8であります、ソ連の名称は違いますが、SSN8のミサイルが開発をされまして、このときからベーリング海あるいは北太平洋を潜水艦の射撃位置といたしましてアメリカの中心部にミサイルが届くようになったわけであります。この時期からヨーロッパ以上にアジア、カムチャッカ半島の重要性が増してまいりまして、特にこの長射程のミサイルを搭載しておりますデルタ型潜水艦は、従来の北海あるいは黒海の造船所ではなくて極東のムルマンスク造船所で生産をしております。ムルマンスクで生産をした潜水艦をペトロパブロフスクに配置をするという関係になっております。これがいままた新しく注目を集めるようになりましたのは新たにSSN18というさらに長射程のミサイルができたことであります。これを搭載するのがデルタIIIと呼ぶデルタ型潜水艦の一番新しい型でありますが、この型の潜水艦ならばカムチャッカ半島のペトロパプロフスクの港の中から、あるいは逆にカムチャッカ半島の西側からミサイル発射をしてもアメリカ大陸には届くという関係になったわけであります。  さらに一昨年からでありますが、一九八〇年代に入りましてより新しいミサイルと潜水艦が開発をされた。これはミサイルはまだ試作段階にございますのでSSNX20と呼んでおります。潜水艦は昨年のワインバーガー報告などにもございますタイフーン潜水艦であります。現在まだ一番艦しかできておりませんで、現在はムルマンスクに配置をされております。今年末に二番艦が就役をする予定でありまして、恐らく二番艦以降は極東に配置をされるだろうと。その時期には、ミサイルの射程が約一千キロ延びますのでオホーツク海の中央部あるいは中央部よりもサハリン寄りに位置を占めてもアメリカ大陸に届くという形になるわけであります。ソ連はこれについて長期の計画を持って配置をしているように感じられます。といいますのは、この四、五年間にわたりまして今回の戦闘機の発進基地であろうと思いますドリンスクソコール基地——サハリンの中央部の基地でありますが、それを初めといたしましてサハリンに四カ所、わが北方領土の択捉島、国後島、それにオホーツク海の北部にありますマガダンの港とマガダンの飛行場とも改修をやっております。さらに海軍の基地といたしましては、現在千島列島の中のシムシル島に基地を新設しているというふうに聞いております。こうやってオホーツク海の周辺を取り巻く基地の増強とそれについての部隊配置を進めております。これは恐らく来年以降に新しい潜水艦と新しいミサイルが配置をされ、オホーツク海がソ連の対米戦略上きわめて重要な場所になるからそれについての準備を進めているものと考えられます。  このように軍事体制が進んでおります地域を、一般には二回と呼んでおりますが、ソ連側の発表している航跡だけから考えますと三回、コマンドルスキー島とカムチャッカ半島のペトロパブロフスク上空、それに第三回目はサハリンのユージノサハリンスク付近でありますが、この三カ所にわたって領空侵犯をしたといたしますと、やはりソ連側の強硬な措置を招いてもやむを得なかったのではないかと思います。ただ、ソ連側は現在、大韓航空機についてスパイ行為をしたという発表をしておりまして、これは九月六日のソ連政府の公式声明と九月九日の参謀総長の記者会見とで明瞭に言っておりますが、スパイ行為を働いたという言い方をしております。  ところが、いままでわれわれが入手をしておりますこの大韓航空〇〇七便の飛行計画及び地上との交信状況、これを見ますと、少なくとも交信でわかる限りは正確にR20の航空路飛行していたつもりだったろうと思うのです。この区間の義務位置通報点というのがございまして、そこでは位置通報をしなければならない場所です。特にこの機長は、この義務位置通報点を通るたびに通過時間と通過高度、それから次の義務位置通報点の場所と通過予定時間、これは義務として定められているのですが、そのほかに各所で風向、風速、外気温度、残燃料の報告をしております。必ずやっているわけであります。ですから、これだけから見ますと別にパイロットが眠っていたわけでも手を抜いていたわけでもない。  特に、現在INSを装備している航空機、これは型によってちょっと違う場合もございますけれども、普通INSですと、第一のポジションに置きますとその飛行をしている位置、緯度と経度が出ます。二番目のポジションに回したときに、次の打ってあった、INSに記憶をさせていました場所までの距離と時間、所要時間が出ます。第三番目の位置に回したときに初めてそこでの風向と風速が出るのであります。それで、このパイロットが風向と風速を通報しておりまして、それはアンカレジを離陸する前に持っていた予報の風向、風速と違うのであります。ですから、そこではINSを確かめていたことは確かであります。風向、風速を見ていたのであれば、その場所、一番初めの位置で緯度経度が出ておりますので、それも見ていただろうということは予測できます。  それから、サハリンで事故が起こるまでの間に飛行計画では二回の高度変更を指示しております。わずかに時間の違いはありますけれども、そのパイロットはやはり二回高度変更、三万一千フィートから三万三千フィート、それから三万三千フィートから三万五千フィートへの変更をしております。そうすると、高度の方で飛行計画に従って飛行をしたということは、経路についても飛行計画どおりにインプットをしていたという可能性が高いと思います。そうすると、意図的にスパイ飛行をするという形跡は見当たりません。しからばなぜこのような航路からの逸脱が起きたのかということが疑問になりますが、この点は日本航空から参考人も来ていらっしゃいますのでそちらの方から御説明をいただきたいと思いますが、少なくとも現在ソ連から非難をされているスパイ行為ということは、飛んでいた間のパイロットからの通報だけを見る限りではあり得なかったのではないかと考えられます。  ただ、いずれにいたしましても先ほど申し上げましたようにこの地域が現在もソ連アメリカのつばぜり合いの地域であり、これからはもっと重要性を増してくる地域、特にこれは確認をされないのでありますが、アメリカ側のワシントン・ポストの報道では、九月一日にソ連の新しい戦略ミサイルSSNX24でありますがこれを発射実験する予定で、その弾着地域がカムチャッカ半島の沖合いであったというふうに言っております。実際上はこの事件が起こりましたので当日は発射実験は行われませんで、三日後にソ連側は発射実験を行っております。まことに不幸なことでありますが、ちょうどそういうような地域で符節を合わせたように九月一日の早朝にその地域を通過し、それが領空侵犯を起こすような高度であったというきわめて不幸な条件の一致があったのではないかというふうに考えられます。  ただ、いずれにいたしましてももし間違って領空へ入った場合に、それに対する警告要領、また警告を受けた方がそれに対処をする要領についてはっきりした規定もないし、現在それを十分にさせるような設備もございません。このような事件を二度と起こさないためには早急にそれらの取り決めを行い、またそれが可能なような設備を航空機側にも地上側にもつける必要があるというふうに考えております。  以上であります。
  8. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ありがとうございました。  次に、巖参考人お願いいたします。
  9. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) ただいま御指名を賜りました巖でございます。  まず初めに私の航空歴を簡単に紹介させていただきます。  私は、昭和三十一年に日本航空に入社いたしまして、航空士、副操縦士を経て昭和四十一年にボーイング727型機の機長に任命されました。また、その後の経験を経て昭和四十七年に、通称ジャンボジェットと呼ばれていますボーイング727型機の機長となり、乗員訓練部の教官、その後、日本—アメリカ間の路線を主として担当するボーイング747運航乗員部米州第四路線室長を経て、現在はボーイング747運航乗員部副部長として勤務いたしております。  私のいままでの総飛行時間は一万三千六百二十二時間でございまして、そのうちボーイング747型機の飛行時間は四千九百二十五時間、うち機長として四千四百七十四時間の経験を積んでおります。特に今回の事件が起きたアンカレジ—成田間は、月平均して一回ないし二回ぐらい飛行しております。  今回の大韓航空機の事件は、私ども民間航空に携わる者といたしましてはまことに遺憾なものであります。この事件で亡くなられた二百六十九名の方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の皆様方に謹んでお悔やみを申し上げます。  初めに申し上げましたとおり、私は日本航空のパイロットとして約一万四千時間の飛行経験を持ち、特に747型機の機長としての操縦の経験も多く積んでおり、ここ二年間、アンカレジ—成田間を月一、二回飛行しておりますが、新聞、テレビ等から得た情報を私の経験に照らして考えますと、今回の事件はきわめて不可解としか申し述べようがありません。現在ICAOなどによりまして事故原因の調査が行われていると聞いておりますが、私も一パイロットといたしまして運航の安全はきわめて重要なものと考えており、一日も早く事実が究明され、また十分な対策が講ぜられることを待ち望んでおる次第であります。  そういったわけで、私にとりましても今回の大韓航空機のコース逸脱は全くのなぞでございますが、本日は私個人のいままでの経験から、ボーイング747型機の運航に関しまして、主としてINSを中心とした航法上の位置並びに航空機の方位の確認等につきまして皆様に一般的な御説明を申し上げます。それとともに、特に今回の事件にかんがみ、私ども日本航空においてアンカレジ—成田間を通常どのように飛行しているか、実運航に携わる者の立場から御紹介申し上げます。  それでは、航空機の航法、主として航空機の位置を確認する方法につきまして御説明申し上げます。  まずINS、イナーシャル・ナビゲーション・システム、日本語では慣性航法装置と申しますが、これによる航法でございます。これは出発飛行場の駐機位置の緯度、経度をあらかじめ入力——インプットと申し上げます、インプットすることによってその後の航空機動きを感知し、刻々と航空機の位置その他の航法上必要とするデータを計算表示するコンピューターを利用した航法装置であります。なお私の聞くところでは、大韓航空機のINSは日本航空のボーイング747型機のものとは製造会社が異なっているとのことですので、その機能は多少異なるものと思いますが、原理的には同じものであろうと考えられます。INSは、地上の無線航行援助施設等を利用できない地域でもこれだけで飛行することができる能力を有する航法装置でありまして、非常に精度が高く、また信頼性も非常に高いものであります。ちなみに申し上げますと、アンカレジ—成田間を飛んでおります日本航空のボーイング747型機ではこのINSを三台搭載いたしております。  次に、地上の無線航行援助施設を用いた航法があります。これは地上からの電波信号を受けて、その発信局からの方位、距離をもとに自分の航空機の位置を確認するものであります。具体的にはVOR・DME、ビーコンと呼ばれるものがこれでありまして、国内においてはこの方法により飛行を行っております。日本航空のボーイング747型機では、このための受信機、表示装置等をそれぞれ二台装備いたしております。  次に、気象レーダーの利用があります。気象レーダーは、通常、ルート上の雲の状態を見るレーダーでありますが、少なくとも二百海里、これは約三百七十キロに相当いたしますが、二百海里以上の範囲で地形を映し出すことができ、その地形との相対位置で自分の航空機のおおよその位置を確認することができます。日本航空のボーイング747型機ではこの装置は二台装備されております。通常の運航では、いま申し上げましたこれらの機器から得られる情報を互いにチェックしながら総合的に判断して、常に自分の航空機の位置を確認しながら飛行を行っております。  もう少し詳しく申し上げますと、洋上飛行の場合、主としてINS使用して飛行いたしますが、その場合でも、通常、洋上に出るまでのかなりの範囲で地上からの無線電波等による航空機の位置の確認ができます。また、場所によっては気象レーダーによる島影あるいは海岸線の影像により位置を確認しております。さらには、機首方位や予定地点通過時刻等、飛行にかかわる基本的なデータを飛行計画と実際のものと比較することにより予定どおり正しく飛行しているかどうかを確認しております。  冒頭にも申し上げましたように、今回の大韓航空機の飛行コースのずれについては不可解としか言いようがなく、原因については想像もできません。ただ、私のボーイング747型機機長としての知識、経験に照らして一般論ではありますが、航空機コースから外れる原因としては次のようなものが考えられるものと思います。  一つにはINSの故障を考えることができます。しかしながら、主たる機器であるINSは、先に述べましたように日本航空では三重装備になっている上、信頼性も非常に高く、三台とも同時に故障する可能性はほとんど考えられません。このようなことが発生する確率はまさに天文学的数字ではないかと思われます。日本航空では常日ごろ十分に点検整備が行われておりますので、私自身のいままでの経験でも三台が同時に故障したケースは一度もありません。  次に、INSの操作上の誤りを考えることができます。  その一番目のケースとしては、INSは電源を入れてから正常に作動するようになるまでにある準備時間を要します。われわれはこれをアラインと呼んでいますが、このアラインが完了するまでの間に機体を動かしますと誤差が出ます。この誤差は時間がたつにつれて増加する傾向にありますが、通常は警告灯が点灯して乗務員に異常を知らせてくれます。  第二のケースとして、出発地、たとえばアンカレジで駐機場の緯度、経度を最初にインプットすることはさきに御説明いたしましたが、このときにその値を入れ間違えることが考えられます。この場合も警告灯が点灯し運航乗務員に異常を知らせます。  次に三のケースとして、ウエーポイント、すなわちあらかじめ定められた飛行経路上の通過地点を入れ間違う、さらにはその後の確認時にも見逃すことが考えられます。この場合、間違った方向に予期せぬ機体の変針があります。しかしながら、さきに述べたいずれのケースであっても、万一そのようなことが起こるとしても、先ほど来申しておりますように、いろいろな飛行にかかわる基礎データや地上航行援助施設のデータ、気象レーダーなどを相互に比較することにより異常は早期に発見できるものと考えます。これは日本航空では常に励行されております。  たとえば、私がたびたび飛行しておりますアンカレジ—成田間をルートR20で飛行する場合について申し上げますと、まずアンカレジを出発しますと、アンカレジの西約百六十海里、二百九十キロメートルに相当いたしますが、約百六十海里のコース上にはケインマウンテインというビーコンがあり、また三百五十海里、六百五十キロメートルに相当いたしますが、三百五十海里の地点にはべセルというVORがあって、これらの地上無線施設を利用することによってINSのデータを確認しております。また、ベセルのVORを通過してからおよそ二百海里、これは約三百七十キロメートルに相当いたしますが、およそ二百海里西方まではこのべセルの無線施設によってINSデータの確認が可能であります。ルートR20のやや南方でアンカレジ—成田間のほぼ中間地点には米国領のシェミア島があり、ここに設置されている地上航行援助施設を利用しております。シェミアからさらに成田に寄るとソ連領コマンドルスキー島、カムチャッカ半島の先端、点在する千島列島の島々を機上の気象レーダーで捕捉することが可能であり、これらの島々との相対関係で自分の飛行機の位置を確認しております。  以上、私はパイロットとして、日本航空におけるボーイング747型機の航法について、またR20ルートを飛んでおります機長としての経験を申し上げましたが、再三申し上げましたとおり、今回の事件は私ども民間航空パイロットには予測し得ない不可解なものであります。私ども日本航空としても、この悲劇的な事件にかんがみ、当面の措置として要撃を受けた際の対応等につきまして改めて運航乗務員等の関係者全員に注意を喚起して、一層安全運航に徹するよう心がけております。  運航の安全は、私どもパイロットのみならず民間航空に携わる者、また御利用いただくお客様すべての願いであります。この点につきまして、本日ここに御出席委員皆様方の十二分なる御理解、御協力を賜りたくよろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  10. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ありがとうございました。  以上で各参考人の御意見の開陳は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 梶原清

    ○梶原清君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま参考人方々から御陳述をいただきました事柄となるべく重複することを避けまして、若干の御質問をさせていただきたいと存じます。  まず第一に、今回の事件大韓航空機が大きくコースを逸脱いたしましたことに関連して、巖参考人関川参考人にお尋ねを申し上げたいと存じます。  まず、巖参考人にお尋ねをいたしますが、日本航空では今回の事件のように大きくコースを外れた事例がありますのかどうか、この点をお尋ねしたいと存じます。
  12. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) ございません。
  13. 梶原清

    ○梶原清君 先ほどの巖参考人の御陳述にもございましたわけでございますが、大韓航空機が大きくコースを外れました原因といたしまして、INSの故障や操作ミス以外に何か別の原因が考えられるかどうか、この点につきまして関川参考人にお尋ねいたします。同時に、仮にINSが故障したりデータのインプット、いわゆる入力ミスが生じました場合でも安全に飛行を継続することができるのかどうか、この点について関川参考人にお尋ねを申し上げたいと存じます。
  14. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 最初の御質問でございますけれども、ハイジャックの可能性を全く否定するわけにはいかないと思います。これは、残された交信テープに残っております大韓航空パイロットの声が非常に平静だったということから、機内でそういうふうな変事があったというふうにはちょっと考えにくいという問題もございますし、もう一つは、ハイジャッカーが仮にソ連領土へおりる予定であったとすれば、パイロットが当然ソ連地上機関に対して着陸の許可を求める交信があったはずだと思うんですが、それがないということから蓋然性としては非常に小さいと思います。しかし、その可能性は全くゼロではございません。  それから第二番目ですが、INSが故障したり操作ミスがあったりしましても、飛行機は十分安全に飛べます。これは先ほど巖機長から御指摘がございましたように、INSの故障をチェックする方法、設備をたくさん持っております。現にこのINSという装置が世界的に普及いたしましたのは一九七〇年ごろ、いまから十二、三年前でございますが、そのINSができる前は飛行機INSというものがございませんでした。それでも十分に安全に飛んでおりましたので、INSの故障が直ちにその事故に結びつくということはございません。
  15. 梶原清

    ○梶原清君 次の問題でございますが、民間航空機要撃を受けました場合にどのように対処されるのかということに関連をいたしまして巌参考人にお尋ねをいたしますが、日本航空では外国でこのような要撃を受けられたケースがあるのかどうか、そういう事例があるのかどうかにつきましてお尋ねを申し上げます。
  16. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 外国で要撃を受けたケースはございません。
  17. 梶原清

    ○梶原清君 次に、青木参考人にお尋ねを申し上げたいと存じます。  それでは、外国機がR20を飛行中に要撃を受けたケースがあるのかないのか、この点についてお尋ねを申し上げます。
  18. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) 現在まで、R20を飛んでおりました航空機要撃をされたということはございません。R20につきましてはまだ設定をされましてから一年余りにしかなりません。昨年の春についた航空路でありまして、これを決めるときに、コースとしてはそれほどむずかしいコースではないのですが、ソ連領に非常に近接をするということで特にバッファーゾーンを設けてあります。実際にはソ連領空まで入る可能性があるんですけれども、このR20航空路から五十マイル、約八十キロになりますか、そこまでの間は飛行をすることを認められておりました。これはICAOでソ連からの同意を得てR20の航空路を開設したという事情になっております。
  19. 梶原清

    ○梶原清君 次に、仮の話でございますが、日本航空機がそうした要撃を受けました場合にどのように対処されるのか、この点につきまして巖参考人にお尋ねを申し上げたいと思います。
  20. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 万一要撃を受けましたときには人命を第一と考え要撃機の意向を十分に確認した上その指示に従うことになっております。
  21. 梶原清

    ○梶原清君 第三点でございますが、去る九月十九日の衆議院予算委員会で、ある党の委員から御指摘を受けておる事項でございますけれども、シェミアの米軍基地付近を飛行します場合に、コースを外れますれば同基地からアドバイスがあると、このような意味の質疑があったように記憶しておるわけでございます。巖参考人にはそのような御経験がありますのかどうか、この点につきましてのお尋ねをいたしたいと存じます。
  22. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) ございません。
  23. 梶原清

    ○梶原清君 次の問題でございますが、先ほども関川参考人からお話がございましたけれど、大韓航空機が軍用機と誤認をされて撃墜をされた。このように新聞でも報道されておるわけでございますけれども、民間機軍用機がそれほど識別がむずかしいものかどうか、新聞紙上でもこの主張がちょっと食い違うておるようでございますけれども、この軍用機民間機識別の難易等につきまして詳しく御説明をいただきたいと存じます。
  24. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 識別の難易というのはこれはケース・バイ・ケースでございまして、一目見ればだれでもわかる場合もございますが、非常にむずかしくて玄人でもちょっと見分けにくいような場合もございます。  たとえば、今回の大韓航空機事件について申し上げますと、撃たれた方は大韓航空のジャンボ機でございます。それから、ソ連が誤認したと称している方はアメリカのRC135という偵察機でございまして、これは航空専門家ならば一目見ればわかるわけでございます。大きさが全く違います。ジャンボの方が大きゅうございますし、横から見ますとジャンボの方は頭が非常にふくれたおもしろい形をしておりまして、これは玄人が見れば一目でわかるわけでございます。ただそれは、晴天の日の昼間に真横からわりに近寄って見た場合というふうな条件のもとではそうでございますけれども、夜間、特に月のないような晩にたとえば下から見るとか上から見るとか、あるいは真後ろから見るというふうな場合ですと大きさの識別というのはほとんどできません。また、上下あるいは後ろから見ますと形もよく似ております。ですから、この場合には識別は非常にむずかしかったと思います。ただ問題は、その飛行機を見分けるかどうかではなくて、たとえばソ連の場合で申しますと、第一線のパイロット民間機識別する訓練を積極的にやっておるかどうかということであろうかと思うんです。つまり、ソ連国境侵犯に対する方針というものが、民間機であれ軍用機であれ国境を越えてきたものはもう直ちに攻撃するんだという方針をとっておるといたしますと、積極的にパイロット識別の訓練などしていないと思います。ただ、パイロットが常識として、あるいは個人的な勉強として民間機の形を覚えておるという程度のことにすぎないんじゃないかと思うんです。ですから今回の大韓航空事件の場合、果たしてソ連の言うように軍用機と誤解しておったのかどうかと申しますと、私は誤解していた可能性は非常に高いと思います。
  25. 梶原清

    ○梶原清君 次に、先ほども青木参考人がお触れになっておりましたR20のルートの問題でございますが、巖参考人現実にR20を飛びましての不安があるのかないのかと、こういう問題につきまして御所見を承りたいと存じます。
  26. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) R20を飛行しておりまして不安を感じたことはございません。
  27. 梶原清

    ○梶原清君 最後に、先ほど栗林参考人から御陳述をいただいた件でございますけれども、無防備でそれこそ何の抵抗もしない民間航空機領空侵犯したからといって直ちに武力行使をするということは、今回のように撃墜をするということは、人道上からもまた国際法上からも絶対に許すことのできないことではないかと信ずるわけであります。先ほどの御陳述にもございましたけれども、私どもとしましては一日も早く安全に飛行ができる、そして二度とあのような悲惨な不幸な事件が起きないように適切な措置が講じられなければいけませんのですが、その点につきまして具体的にどのようにしていけばいいのか、どのような問題があるのかにつきましては先ほどの御陳述で十分尽きておるかと思いますけれども、つけ加えて栗林参考人から御陳述をいただければ、御回答をいただければ幸甚に存ずるわけでございます。
  28. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) 先ほど申し上げましたように、民間航空機が他国の領空侵犯した場合に、これまでの国家実行、学説というものから判断いたしますと、警告進路変更それから強制着陸といった一連の事前の措置がとられない限り、いきなり撃墜する行為というのは国際法上違反である、違法であるというふうに私は判断いたします。もとより、このような事態が発生した場合にその識別あるいは確認、さまざまな問題がほかの参考人方々から言われましたようにございますけれども、民間航空重要性、安全、人命尊重といった立場からこの国際法上の原則は動かないというふうに考えております。私が申し上げましたのは、ただそのような事前の措置がとられたにもかかわらず、なおかつその国家安全保障上緊急の事態があるというふうな判断をした場合の実力行使が、一律に違法であると言い切れるかどうかという疑問を申し上げたわけでございます。今後、さまざまな国際機関あるいは外交交渉などを通じて国際法の一層の充実を図っていく手段といたしまして、私は、まず法の内容を確定していくこと、それが現実には適用上無力の状態があるかもしれませんが、次第にそのような状況国際社会に確立していくというそういう努力を進めるべきだと思いまして、たとえばICAOにせよ国連の安保理あるいは総会にせよ、国際司法裁判所勧告的意見を求め、その法の現状についての明確な司法的判断を下してもらうということが、まず第一に考えられることではないかというふうに申し上げたわけでございます。
  29. 梶原清

    ○梶原清君 どうもありがとうございました。  遺族方々に対する十分な補償措置と、このような不幸な悲惨な事件を二度と繰り返さない適切な措置が速やかにとられますことを強く期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  30. 松前達郎

    ○松前達郎君 ただいま四方の参考人の方からいろいろお話を伺ったわけです。きょうはお忙しいところを大変ありがとうございました。  人命尊重の観点からしますと、この事件というものは非常に悲惨な事件である、こういうことでございます。非常に残念であったと思うんですけれども、大きく分けると二つに分けられると思うわけです。その一つは、領空侵犯をした民間の航空機に対する対応の問題、それからもう一つは、なぜ領空に入ったか、その二つに大きく分けられるんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。そういう観点から、多少うわさなどもいろいろ出ておりますから、そういうものも含めて参考人の皆さんにお伺いをいたしたいと思うわけであります。  まず最初に巖さんにお伺いしたいんですが、いまのお話でR20のルートに入る入り方を御説明になりました。アンカレジを出てからCRN—BETですか、これのVORによってルートを飛ぶということで、しかもJ501というルートですか、このルートを飛んでそれからR20に入っていく、こういうふうなことだろうと思うんですが、そのルート20に入るときに確認をされるといま申されたわけですが、これは普通どのパイロットでもその場合にはもう常識的にそういう作業を行うものかどうか、それをひとつお伺いしたいんです。
  31. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 先生のおっしゃるとおり、常識的と申しますか、これはもう当然のことでございます。必ず確認はいたしております。
  32. 松前達郎

    ○松前達郎君 それからもう一つ、アンカレジからニッピというんですか、その間、これは恐らく日本側の管制といいますか通信の範囲に入っていないんだと思うんですけれども、幾つかの位置通報点があるんじゃないかと思うんですが、これを通過するときに、日本航空の場合でも結構なんですが報告をするわけですね、その報告相手は一体どこに報告をするのか、それをひとつお聞かせいただきたい。
  33. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) われわれの言葉でアンカレジ・センターと申しますが、アンカレジの航空管制機関でございます。
  34. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、日本側の、さっきお話の中にもありましたいろいろな気象とか風の方向とかスピードの報告があったというお話がありましたけれども、アメリカ側の方がどうも発表がなされていないような気がするんですね。さっきのお話の中で、たとえばシェミア島にはレーダーがある、とりわけ四千キロのかなたまで到達できる超遠距離レーダーもあるわけでありますが、そういったレーダー網に恐らく引っかかっているはずであるから、アメリカ側がある程度情報を持っているんじゃないか、こういうふうに私は判断をするわけなんですが、その情報がほとんど入ってなくて日本側の情報ばっかりが主たる情報として使われている、こういうことなんで、そういう面から考えますと何かちょっと勘ぐらざるを得ない面も出てくるわけなんですね。  そういうふうなことで、後でまたお伺いしますけれども、たとえばべセルのVORから真っすぐソウルに大圏コースで線を引きますと、ちょうど大韓航空が飛んだコースになってしまうわけですね。その辺もまた一つ大きななぞだろうと私思うわけなんですが、そういったいろいろな情報情報といいますか勘ぐりといいますか、いろいろと行われておるわけなんですが、その中で特にこれは青木さんにお伺いしたらいいんじゃないかと思うんですが、これはアメリカはもう有名な話で、ちまたでもうみんな知っている話なんですが、このボーイング747—230B、機体でいくとHL七四四二ですか、この飛行機が八月にアメリカのアンドリュース基地で特別な改装を受けている、こういうことを私もアメリカの方から聞きましたし、盛んに言われている。その改装、改造というのは一体どういうものか知りませんけれども、そういううわさが流れているということをお聞きになったことございますですか。
  35. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) その話は聞いております。私どももそれに疑問を持ちまして調べてみたのですが、ただ、いままで航空機が改装をすれば、あるいはアンドリュース空軍基地へ入ったといたしますと必ず記録が残っております。その記録を現在まで大韓航空側に質問をしても出してくれませんので確認の方法はないのですが、八月というのは航空会社にとって一番航空機使用の最盛時でございまして、そのときに特に大韓航空の場合には基地がソウルでございますので、もしアメリカで一機の改装をするといたしますと、持っていった定期便の帰り便を別に出さなければいけないわけです。それからまた、改装を終わってそこでその飛行機を定期便に使うとしますと、その前にニューヨーク行きを別に出さなければいけない。その航空機の余裕はなかったものというふうに考えております。ただ、実際上アンドリュース空軍基地で民間航空会社航空機を改造することは認められておりませんのでそれはあり得ないだろう。しかし、現在話にありますようにもし改造を受けたとすれば、そこでつけられたのは情報用の無線送受信機ではないか。現在そのような種類のものがわれわれの呼んでおりますフェレットという衛星、ソ連側でフェレットDが今度飛んだと言っておりますけれども、フェレットの衛星にその装置をつけるとすれば確かにそのような情報収集も可能であったかとは思います。ただ、それをつけたという証拠もございませんし、いままでのところわれわれも聞いていないということであります。
  36. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまのは私の勘ぐりでありますから、いまおっしゃったようなことじゃないかと思いますが、もしかこの勘ぐりでずっと進めてまいりますと、合成開口レーダーをくっつければもうずばりと天候のいかんにかかわらずすべてがわかってしまう、こういう状況であるわけですね。そこへまた同時にさっきお話にありましたように、九月一日がミサイルの発射実験といいますか試射の日に合致をしていた。これはSIPRIあたりの情報によりますと、ソビエトのチラタムですとかあるいはその他の海の中からもICBMの試射をやるその弾着がこのペトロパブロフスクの北東のということになりますので、その辺もまたたまたま一致したとおっしゃったわけですね。いろいろ勘ぐれば切りがないわけなんですが、どうもアメリカ側の発表が余りないものですからどうしても勘ぐらざるを得ない、こういうことでいまお伺いをいたしたわけなんです。  それからもう一つお伺いしたいのは、フライトレコーダーその他ブラックボックスと言われているものをいま米ソで回収にかかっておるわけなんですが、このフライトレコーダーその他の——ブラックボックスというのはこれまだほかにあるのかどうか知りませんけれども、こういうものはもしか回収されたとするとどの程度のものが判明していくものでしょうか、その点ひとつ御説明いただきたいと思いますが。
  37. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) これは各社で幾分違いはあるのですが、大韓航空のHL七四四二についておりましたのは通常の三十分録音可能なボイスレコーダーと、それから二十チャンネルを超える——二十一だったか二十三だったか忘れましたが、二十チャンネル以上ございます現在の磁気記録式のフライト・データ・レコーダーであります。一九六九年以降の生産機にはこれをつけておりますので、それがついていることは間違いないと思います。  まずボイスレコーダーでは、事故の起こる三十分前までしか録音をされておりませんが、その間のコックピットの中の会話及び地上管制機関との交信は全部記録をされているはずであります。もしそれが回収をされれば、警告を受けたといたしまして、それが大韓航空機側に伝わっていたかどうかということについては何らかの反応があると思います。それから、ミサイルで攻撃をされたことについてどういう反応を示したかということもわかると思います。現在の地上との交信記録では途中雑音が入りまして、アメリカの三時二十七分でございますか、それの記録が途中からわからなくなっておりますが、普通ですとボイスレコーダーにはあの部分ははっきり入っているはずであります。それでわかるのではないかと思います。  それからフライト・データ・レコーダーの方は、これもまた各社幾らか相違がございまして、チャンネル数が多いものですから入っている記録が少しずつ少しずつ違うのであります。ただ、従来のメタルテープにダイヤモンドの針で穴をあける、あけるといいますか押していくレコーダーとは違いまして、そこでの情報量が非常に多いものですから、この航空機がどういう経路——高度や速度は別といたしましてどういう経路を通ったか、たとえばどこでコースを離脱したかということと、そのコースの離脱がたとえば風に押し流されて動いたものか、それともパイロットのインテンションあるいはオートパイロットが働きましてかじを操作して旋回をしたものか、ここまではわかると思います。事故の起こりましたところから逆算をしてまいりますと、そのあたりのことについてははっきりわかるのではないか。これは記録時間は二十五時間でございますし、この飛行機がアンカレジではなくてニューヨークを出てからの記録は全部入手はできるというふうに考えております。
  38. 松前達郎

    ○松前達郎君 ありがとうございました。  巖さんにちょっとお伺いしたいんですが、直接ソビエトの領空上を日本航空が飛んでいるわけですね、現在モスコー線で。私も何回か乗ったときに、やはりソビエトの戦闘機が並行飛行をしていたことを何回か窓から見たんですけれども、そのモスコー線の場合、現在安全の確保等についてソビエト側とどういう合意をされているのか、その辺ちょっとお知らせいただきたいと思うのですが。
  39. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 申しわけありませんが、私は米州専門なものですからちょっとわかりません。
  40. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、何か戦闘機が近くまで寄ってくるとか、スクランブルとは言わないんでしょうけれども、確認に来るのかもしれませんけれども、そういうことは御経験——アメリカが専門だから御経験がないかもしれませんが、どなたかから聞かれたことがありますか。
  41. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) モスクワ線を飛んでおりますパイロットからそのような言葉は聞いたことはございません。
  42. 松前達郎

    ○松前達郎君 どうもありがとうございました。
  43. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最初に巖参考人にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、いままでお聞きした範囲ではこの747が非常によくできた飛行機で、INSが仮に故障をしたとしても、あるいは操作を誤ったというようなことがあったとしてもランプがついてすぐわかるようになっていると、こういうお話でございました。また、気象レーダー等を見ることによって現在地を確認することはできるということでございましたが、たとえばこのニーバからニッピまで行く間に、その間にコースを外れたというふうに大韓航空機の場合は想像されるのでありますが、このニーバからニッピを飛ぶ間に自分の飛んでいる場所がわからない、誤ると、錯覚を起こすといったようなことはあり得ることでしょうか、どうでしょうか、その点は。
  44. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) ポジション・ニーバで常に自分のポジションを正確に出しておりまして、その後先生のおっしゃったように間違うとか錯覚ということはございません。
  45. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、千島列島とサハリンとを間違えてしまうといったようなこともこれはあり得ないというふうに考えてよろしいでしょうか。
  46. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) あり得ません。
  47. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 問題は、この大韓航空機が善意の過失で飛んだ場合と、それから意識して領空侵犯をした場合とでは責任がずっと違ってくると思うんです。いままでいかなる理由があっても民間機を落としちゃけしからぬという意見がございましたけれども、もしその民間機が意図的に領空侵犯をしたということになりますと、落とされても仕方がないという理屈も出てくるんじゃないかと思うんですね。それが全然悪意がなくて全く善意の過失でミスをしたという場合は別です。しかし、そうでなくて意識的に領空侵犯をしたと。御丁寧にカムチャッカ半島の上空を通過してサハリンを横断しようとしたということになると、スパイ行為をやろうとしたのかあるいはそのまねをしたのか、あるいはテストをやったのかそれはわかりませんけれども、いずれにしてもこれは国際法上かなり問題の行為になる、撃墜される以前の領空侵犯としても問題の行為になるというふうに考えられるのでありますが、その点は栗林参考人、どのようにお考えでしょうか。
  48. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) 民間航空機が他国の領空を通過するというのはいろいろな場合がございます。定期航空業務としてその国の許可を得て継続的に飛んでいる場合もございますし、また航空路を開設するときにテスト飛行としてその国の特別の許可を得て飛行する場合もございますけれども、通常そのような許可がないときに他国の領空侵犯した場合でも、これは先ほども申し上げましたように幾通りものケースが考えられるわけでございまして、悪天候、計器故障、不可抗力といったような人為的にはどうしようもなし得ないそういう状況の中で立ち入る場合には、私は民間航空機の方に立ち入る権利すらあるというふうに思っておりますけれども、そうではない悪意のある領空侵犯である場合に、その場合も恐らくスパイ行為とかあるいは攻撃目的とかさまざまな場合が考えられるわけでありますが、スパイ行為の場合に、領空主権を盾にいきなり撃墜行為ができるかどうかというのは、私は領空主権というものが保護すべき法益はそれほど強いものかという疑問を持っておりますけれども、しかし未確認物体が近づいてきている被飛行国の立場からしますと、安全保障上のやむを得ないぎりぎりの立場では、そのような実力行為もなし得る可能性を否定するほど国際法は十分に確立してないというふうに考えます。特に、ソ連並びに共産圏諸国はそのような国家実行を持っておりますし、国際社会における法を確立していく上において、ソ連その他の国々が持つ実行の重みというのはかなりのものがあります。  そういう意味で客観的に眺めまして、一律に国際法領空侵犯した民間機撃墜したことは国際法違反であるというふうには言えないというのが私の論旨でございます。
  49. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 巖参考人のお話によりますと、パイロットが自分の飛んでいる場所がどこだかわからないで飛んでいるということはこれはあり得ないと、こういうふうに聞き取れます。それはレーダーを見れば下の地形がわかる、INSを操作しておってもその誤りがあればチェックされる、そういうように二重、三重のチェック機能が働いている限りは、この自分の飛んでいる航路あるいは位置というものは常にわかるようになっていると、こういうふうにお聞きしております。その点間違いございませんね。
  50. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 間違いございません。
  51. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうしますと、大韓航空機が領空侵犯をしたというのは承知の上で領空侵犯したということを考えざるを得ないわけです。居眠りをしていたということは、一人で操縦しているわけじゃないから、三人も四人もそろいもそろって居眠りするということはないだろうし、それからまた席を離れるということも、時間、場所でもって通報しなきゃならぬですね、したがって、そろいもそろって後ろの方でマージャンやっているということもこれはあり得ないことですね。そうなりますと、この大韓航空機は承知の上で飛んでいったというふうに考えざるを得ないのです。その場合にどうやって誘導するか、強制着陸をさせるかという撃墜以前の問題が出てくるわけです。鳥じゃないのですから綱でもってひっかけて押さえるというわけにいかない。おりろと言ってもおりなくて逃げようとした、場所はちょうどサハリンを横断したところで落とされているのですね。そうすると、考えようによっちゃ追っかけられて何とかずらかっちまおうというので逃げようとしたけれども、ついに逃げ切らないで落とされたと、こういう見方も出てくるわけなんです。  それから青木参考人のお話ですと、スパイ行為をやったことは通報ではあり得ないと、こうおっしゃったのです。しかしスパイというのは、大体私はいまスパイをやっておりますということを通報しながら飛ぶということはないのじゃないか。泥棒が、おれは泥棒だと言いながら人の家へ入るということはこれまたやらないような気がする。そうすると、通報だけでもってスパイ行為をやったかどうかということもこれは確認のしようがないという気がするのですがね。その点スパイ行為をやったのか、スパイ類似行為をやったのかあるいはそのまねごとをやろうとしたのか、かけでもやったのかといったようなこと以外には余り考えられなくなってくるのですが、もし過失であったとすればどういう過失なのか。過失でなかったとするならば当然これは故意である、わざとやった、承知でやったということになるのですが、承知でやった、しかも逃げようとした、こういう場合にはこの過剰防衛という問題がいろいろ微妙になってくると思います。警告が十分でなかったということになると、落っことしたのはひど過ぎるじゃないか、何も落とすことないじゃないか、こういうふうにソビエト側の責任が重くなってくる。しかし、承知の上で逃げようとしたということになると、スパイと間違われても仕方がない。実際にスパイ行為があったかどうかわからぬとしても、スパイと間違えられても仕方がないと、こういうことになってくると思うんですね。その辺、責任の所在が違ってくると思うんですよ。  たとえば、個人の家でも夜中に怪しい者が入ってきた、ぶん殴ってみたら隣のだんなだった。こういうような場合はこれは殴った方が間違いだったということになるけれども、しかし入っていった隣のだんなにだってこれは責任があるわけですね、夜の夜中に人の家へ入っていったんならば泥棒と間違えられたってしようがない。この場合は二時間半も領空侵犯をやって、しかもカムチャッカ半島を二回にわたってその飛行禁止区域を横断するようになっているのですね。余りにも念が入り過ぎている。この余りにも念の入り過ぎている行為に対して撃墜という報復措置が出てきたのです。だから、どちらが悪いかということになると非常にむずかしくなってくるのですね。その辺は関川参考人なんかはどのようにお考えでしょうか。法的な問題は栗林参考人からお聞きしましたから、関川参考人と青木参考人にこの点をお伺いしたいと思います。
  52. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 私は、スパイ行為という可能性はまずゼロであったと考えていいと思います。それはなぜかと申しますと、何もこの韓国の飛行機にスパイを頼まなくても、アメリカは十分に偵察機を持っておりますから、宇宙衛星からも偵察できますから頼む必要はなかったわけでございます。また、もし実際に頼んだといたしましても、民間の旅客機、しかもお客さんをたくさん乗せておる旅客機にできる偵察行為というものはたかが知れております。ですからそんなものを頼む必要もなかったし、頼んだ事実もないと考えるのがいいのではないかと私は思います。  しからばなぜこの大韓機がソ連領内に迷い込んだかという問題でございますが、実はこれが一番のなぞでございまして、データが全くございませんのでお答えの申しようがないわけですが、実は同じ状況が五年前のムルマンスク事件のときも起こっております。あのときにも、パリを出発いたしましてかなり早い時点で飛行機コースからそれ始めたわけでございます。結果的には意図しておった飛行コースと全く逆の方向へ飛ぶという航空史上前代未聞の事件であったわけですが、これについても妥当な説明というのは五年後の今日まで出されておりません。ですが、前後の状況からいたしまして、私は今度の事件でもムルマンスク事件でも共通して言えることは、長時間にわたって継続的に三人の乗員がすべて何か気をとられるような行為があったのではないかと考えております。今回の事件でわりにはっきりしておる問題の一つでございますが、ニッピの地点を通過いたしましたときに、この大韓機の乗員は日本の成田の管制所に対しまして、ただいまニッピを通過したというリポートをしております。ただしそのときに、恐らく考えられる大韓航空機の飛行地点はかなり北の方にずれておったはずでございます。恐らくカムチャッカ半島の南端からかなり内に入ったところだったのではないかと思うんですが、自分が飛んでいもしないところをただいま通過したという報告をしておることから考えますと、この韓国機のパイロットは何かほかのことに気をとられておって、実際にINSその他に表示されております現在位置というものを見ていなかったのではないか。つまり、事実でないデータを成田の管制所に送信してきたのではないかと考えております。
  53. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) パイロットが意識的に領空へ入ったかどうかというのはこれはもう本人でないとわかりませんので何とも言いようがないんですが、ただ先ほども御説明を申し上げましたが、この大韓航空機のパイロットが、少なくともパイロットとしてやらなければならぬ業務についてはやっていたように思う。それから、飛行計画に沿って忠実に飛んでいたつもりであったと思うというふうに考えたわけでございます。  ただ、確かに一、二疑問がございまして、この飛行機がベセルを通過した、これは十三時四十九分でありますが、ベセルを通過するまでは国内航空路の501、このVORで飛んでいたわけであります。これは地上管制機関からも、「ダイレクト・ベセル」という、ベセルへ直進するように指示を受けまして、途中までレーダー管制をやりながら飛んでおります。ところがべセルを通過いたしまして十四時三十二分にナビエという位置通報点に到着するわけですが、このときの交信が地上に聞こえておりません。  それで、大韓航空の〇〇七便のすぐ後ろを飛んでおりましたロサンゼルス発のKE〇一五という同じ大韓航空の便がございますが、これが通信を中継しております。これ中継をしましたのが十四時三十五分でありますが、その後十四時四十四分にアンカレジをもう一度〇〇七から呼んでまいりまして、これでもう一回位置通報を繰り返しています。  その次の、ここが一番肝心なところなんでありますが、ニーバの位置通報も同じように〇〇七便からはございませんで、このときの位置通報をしたのは中継をしたKE〇一五便であります。肝心なと申し上げますのは、これは巖機長に聞いていただければ一番間違いないわけでありますが、ニーバが無線航法を使って飛べる最後の場所であります。ここで二百七十度百三十五マイルと、これはだれでも知っていることなんでありますが、百三十五マイルを距離測定装置ではかりましてニーバの位置を確認するというのは普通の方法であります。ところが、百三十五マイルといいますと大分距離が遠くなりますので、ときどき受信状態がよくないときはハンチングといいまして計器がくるくる回り始める。ディジタルのインジケーターなんですが、これがくるくる回り出します。そうすると赤い棒が計器の上に出てまいりまして、その位置は不正確というふうな指示をするわけであります。もし正常にニーバに到着をしておりますと、そこでの位置通報は聞こえたのではないか。それが全く聞こえた記録がございませんので、これはアンカレジのテープにも入っておりません。全く聞こえた気配がなくて〇一五便が中継をしておりますので、そのニーバの位置で大分ずれていたのではないかという可能性もあるわけです。そこでの距離の違いが、遠く離れていたから距離が出てこないのではなくて、計器の距離測定装置の受信状態の不良でハンチングをしているというふうに考えたのではないかというふうにも考えられるわけです。  ただ、もしここで距離測定装置が百三十五マイルという位置をとれませんと、普通ならばレーダーを使いましてコマンドルスキー島を見る、あるいはカムチャッカ半島までこの位置ではもう見えますので、これを見て測定をするのが普通だろう。なぜニーバからニッピの間でコースから外れたのかというのは非常に疑問には思います。  それから、交信記録だけから言いますとその辺が非常に疑問だということになりますが、ただこの飛行機、十五時七分にニーバを通過した後で高度を三万一千フィートから三万三千フィートに上げております。これについてもKEの〇一五便が中継をいたしまして、それで高度を上げている。同じように、これはもう実はニッピよりも大分前に高度を上げるように、ナイテムという非義務位置通報点がありますが、そこで高度を上げるように飛行計画では指示をしてあったわけでございます。このとき何かの事情で——といいますのは、同じ三万五千フィートをKE〇一五便が飛んでおりました。非常に近い距離を飛んでおりましたのでその関係ではないかと思いますが、実際には向こうの考えていたであろうノッカの位置付近で高度を三万三千から三万五千に上げたというのがこの飛行の経緯であります。  通常、飛行計画に指示をしてあります高度変更といいますのは、これは燃料の節約を図るためにやることなんでありますが、このステップアップを計画どおりにやっているからにはほかに他意はなかったのではないか。飛行計画に書いてある高度指示を守っているのならば、少なくとも経路の指示も守っているつもりではあっただろう、そういうふうに考えられるわけです。それで、実際に位置通報はこの区間では各地点一時間以上の差といいますか、一時間以上にわたって位置通報しなくていいわけでありますが、その途中で各々高度の上昇とか、あるいは中継機に対する連絡とかということをやっておりますので、その間遊んでいたわけではないということは一応記録からも言えるのではないかと思うんであります。
  54. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 十四時とか十五時とかいうお話がございましたけれども、十四時とか十五時というのは昼間なんですけれども、これは夜中の二時……
  55. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) これはグリニッジ標準時でございます。
  56. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 夜中の二時、三時の……
  57. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) ではございませんで、これは各場所によって時差が違いますので、日本で言いますとこの時間に九時間を足していただきますと日本時間が出る。実際には夜中でございます。
  58. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 実際には夜中だと、こういうことなんですね。いまのようなことで、青木参考人の話ですとどうもよく注意しなかったんじゃないかというお話なんですが、最後に巖参考人に。  何かに気をとられていたとか、あるいは位置確認をしなかったのではないかという疑問が提起されておりますけれども、実際のパイロットとしてこの間を飛んでいて、そういうふうに何かに気をとられてみずからの位置を確認しないで飛んでいるというような時間があったかどうか、またあり得ることかどうか、その点はどうでしょう。
  59. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 私どもはポジションの確認というのが一番重要なことでございまして、何かに気をとられてポジションをロストするということはございません。
  60. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ありがとうございました。
  61. 黒柳明

    ○黒柳明君 公明党の黒柳でございますが、本日はお四方の貴重な御意見を拝聴させていただきまして感謝する次第でございます。  時間が往復で十八分と限られておりますものですから早速質問さしていただきますが、青木さん、先ほどこのオホーツク海周辺というのは米ソの軍事緊張、新しい軍事緊張が高まっているところであると。私お話をお聞きしますと、何か航路をはずれたとこういう前提があるにせよ、犠牲になったのもこの米ソの軍事緊張、新しい局面を迎えたこういうところで起こった事件だからということで、間接原因がそこらあたりにもあるんじゃないかというような気がしましたが、いかがでございましょうか。
  62. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) やはり感じといたしましては確かにそう感じます。これは先ほども申し上げましたように、ソ連国境法などを厳密に解釈をすればどこでも起こり得ることかというふうには考えられますけれども、やはり現在米ソ間で焦点になっている地域、ここは現在のソ連の軍事力の増強、これは世界全部を通じまして、現在ソ連が一番軍事力の増強に対して経費的にも兵力的にも投入をしている場所はこの地域であります。というところで、それに対してアメリカも神経をとがらせまして、昨年の秋から従来行いませんでしたオホーツク海の演習を始めたわけであります。ことしの三月にも大演習を行いまして両方が軍事力のつばぜり合いになりつつある地域というところでありますので、やはりそこに迷い込んだということが、意識的であるかどうかにかかわらずそこに入ったことが事件を起こした、撃墜までに至らせた一つの大きな理由ではないかというふには考えられます。
  63. 黒柳明

    ○黒柳明君 巖さん、いま青木参考人がおっしゃったような、こういう米ソの緊張が非常に最近高まった地域がR20だということを認識しておりましたですか。
  64. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 私ども新聞、雑誌等である程度のそこに書かれてありますことは読んでおりますが、特にそれ以上の認識というのはございません。
  65. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど関川さんから、いわゆる予備的に領空侵犯を避けるには、やっぱり共産圏なんか相当国境を離れた方がいいとこんな御意見もありまして、これは経済的なことも考えなければならない、こんな話があったわけでありますけれども、どうですか。先ほどR20に航行することについて恐怖はないかと言ったらないと、こうおっしゃったんですけれども、やっぱり何がこれから起こるかわかりませんね。普通の航路を飛んでいたといったって何があるかわからない。こういう国際緊張が激化している航路であることはこれはもう改めて読み物以上にこうお感じになったと思うんですが。恐怖というような言葉が当てはまるかどうかわかりませんけれども、あるいは改めてきょうの参考人としてお出になられて、また参考人の御意見をお聞きになって、R20の航路について注意すべき点があるとお感じになるのか、そんなことは全然ないと、いままでどおりでいいとこういう御判断をなさるのか、いかがですか。
  66. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 私ども日本航空のパイロットは常にコースの中心を飛ぶように心がけておりまして、そこを飛んでいれば特にどのコースを飛びましても問題はないというふうに考え飛行しております。
  67. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほども米ソの資料が出てないと。関川さんと青木さんにお聞きしたいんですけれども、確かにこの委員会におきましても、本来的にはこういう参考人の御意見を聴取する場合には、少なくとも政府のいろんな資料を私たちなりにこう詰めさせていただきまして、そして参考人の御意見を承ると。しかし今回は自衛隊の関係資料、それについて政府の意見も十二分に伺った段階ではありません、いま現在は。しかもその当事者の大韓航空から何にも事情聴取はされていない、アメリカの資料は何にも公表されてないと、こういう段階で御意見を承るわけでありますけれども、このアメリカの資料が公表されていないということについてどのような御意見をお持ちでしょうか。関川さんと青木さんにお聞きしたいと思います。
  68. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 実はこの事件を究明する上で一番大きなポイントになるのがアメリカの握っている資料の公表でございますが、これは現在のレーガン政権の方針でございますと恐らく出ないと思います。ただこれが出ますと、この事件の全容とまではいきませんがかなり核心に迫まる部分がわかるのではないかと考えております。
  69. 青木日出雄

    青木日出雄君 アメリカの資料の中でアメリカ運輸省、FAAの交信記録については実は公表されているのであります。ただどういうわけか日本のマスコミが余り取り上げませんので、先ほども申し上げました時間関係とか、この飛行機が報告をしていたことにつきましてはこれはアメリカ運輸省が公表した資料であります。  ただ、実際にはこの資料ではどこでコースをそれたかがわかりませんで、運輸省のレーダーはアンカレジから百三十五マイルしか責任範囲を持っておりませんので、その外側につきましては軍のレーダーの資料が要るわけであります。ですから、ここでアメリカ軍が知り得ました大韓航空機のコースだけでも発表をしてもらえばいろいろな推測もつきますし、またそれについての対策もできるわけですが、軍からの資料というのは全く出ていないというのは先生のおっしゃるとおりであります。
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 ブラウン管を通じて、あるいは活字で読んだ知識しか私もないんですが、当然先生方の御意見もその中にあったかと思うんですが、私もちょうど一日には下田会議でワシントンに行っておりまして、シュルツ国務長官の発表がすぐさまにあった。その時点では国内情報が余りわからなかったんですが、日を追うにつれて、何か発表までに相当時間がかかったのは日米間で事前調整があったからではなかろうかと。いろいろな活字やお話は承っておりますけれども、いまお二方がおっしゃったが、こういう貴重なアメリカ情報が出ていないと。それがわかれば——アメリカ運輸省当局の情報は若干出ている、それではもうほとんどわからない、相当核心に触れられるものがあるにもかかわらず日本政府はまだこれを詰めていないんです、実は国会で。詰めていないということはいま言ったとおりでありますが、日本政府がまずそれを出させようという意思がいままではないような感触なんですけれども、どうして日本政府が——ミステリーと言うこれだけの重大事件になり、これだけ日米ソの緊迫、あるいは米ソはもうすでに余り緊迫状態をつくってはいけないという前提でもあるのかわかりませんけれども、少なくともこれだけ真剣にこの問題に取り組んでいるはずであるその日本側の政府が、なぜそれだけ貴重なデータというものを、すでに時間がたつこと二カ月になろうとしている今日、出させようという気かないのであろうかということについてどう推測されますか、お二人に。
  71. 関川栄一郎

    関川栄一郎君 私この間アメリカに行きましてその問題についてアメリカ人と少し話をしたわけでありますけれども、アメリカ人の中でも見方がいろいろ分かれているようであります。私が聞きました意見の中で一番多かったのは、レーガン政権はこの大韓航空機の問題について本気で取り組もうとしていないということを皆言っておりました。それはなぜかと申しますと、軍事情報、つまりアメリカの軍事レーダーなんかがつかんでいる情報があるはずなんですがそれを一切出していない。そのほか対ソ制裁と言いながらも、何の効果のある対策も一切とっていない。レーガンがこの事件でやったことは、アメリカじゅうの役所の国旗を半分に下ろしたことだけであるというふうにこきおろす人までおりましたけれども、これはレーガン政権がどういうふうに考えておるのか本当のところはわかりませんけれども、少なくとも表面に出ましたところを見ますと、余り本気で取り組もうとしていない。つまり、アメリカの秘密をある程度出すことによってアメリカの国益を損ってまで取り組むほどの問題ではないというふうに 解釈しておるのではないか。それが日米間の話し合いで、日本側としてもそういう感触を得て、これはアメリカに強請をしてもとてもデータは出ないというふうに判断をされておるからではないかと思います。
  72. 青木日出雄

    青木日出雄君 私、民間人でございますので、これはたとえば運輸省を経由すればアメリカのFAAの資料は入ると思いますし、それから、防衛庁の場合にも稚内での受信テープを向こうに渡しているわけでありますから、それと同じように、日本が特に一番興味というか知りたいのはシェミアのレーダー記録でありまして、これを交換にあるいはもうもらっているかもしれませんし、もらうことは可能だと思うんであります。それは向こうのレーダーの能力が幾らあるかということとは関係がございませんので、向こうで見ていたレーダーのどこをどういうふうに通ったかということだけがあればいいわけであります。これはひとつ運輸省及び防衛庁に御要求いただければ出てくるのではないかというふうに考えます。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も下田会議では、国防総省あるいは国務省の高官がおりまして、そこでいろんな——当然インフォーマルですけれども、この問題は発展しないぞと、こういうインフォーマルな雑談もいやというほど聞かされていて、もうその時点においてこれはソ連はとんでもないという話から、何となくやっぱりこれおかしいなという何か認識が変わってきまして、時間がたつにつれていま関川先生がおっしゃったようなことでありました。この点どうなのかなと、こういうふうに感ずるわけであります。  巖さんは先ほどから、日本航空はという前提だと思うんですがね、少なくとも安全である、安全であると。何かこれから日本航空に乗るべしというPRを盛んに私たちは聞かされた。私は日航しか乗ったことがないんです。ですからもう私はいいんで、ほかの先生方よくお聞きいただきたいと思うんですけれどもね。  ただ、INSでもメーカーが違う、こうおっしゃいましたですね。それじゃKALが三重の装備をしているか、どうですか、これ三重装備しておりますか。あるいはINSにインプットする場合に、日航の場合には——日航のどことだれということは差し控えますが、私いたんですからアメリカに。もう巖さんよりもっとベテランの先輩の元パイロットのおえらい方に聞いたわけでありますが、日航の場合は当然インプットしたものをコンピューターから出して、インプットが正しいかどうか見るけどKALはどうなのかなと、こういういろんなことを言っておりました。こういうことについてあくまでも考えられないと言うのは、日航の巖さんの経験で考えられないということじゃないでしょうか。KALはまたKALでやり方もあるし、KALの機器もあるしということじゃないんでしょうか。いかがでしょうか。
  74. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) INSのオペレーションに関しましては、すべてその会社のエアクラフト・オペレーティング・マニュアルで定められておりまして、私申しわけありませんか、KALのエアクラフト・オペレーティング・マニュアルを見ておりませんのでわかりません。申しわけありません。
  75. 黒柳明

    ○黒柳明君 三重ですか、KALは。
  76. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) ちょっとわかりません。
  77. 黒柳明

    ○黒柳明君 KALはインプットしたのをペーパー出しますか、コンピューター……
  78. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 先ほど申し上げましたように、メーカーがリットンでございましてわかりません。
  79. 黒柳明

    ○黒柳明君 結構です。  ですから、要するに五年前にも同じような全く考えられないことがあって、また今回も考えられないことがあった。ということは、どなたかの参考人がおっしゃったように機械に対する過信、これが相当やっぱりあったんじゃなかろうか。だから、日航の経験ですと三人コックピットにいまして、操縦士と副操縦士と機関士がいて、機関士だって燃料のあれからどこを通っているのかは、あるいは島影やいろんなことで絶対考えられない。先ほど社会党の先生が冗談ぎみに、どっかでマージャンでもやっていたのかと。そういう考えられないことが起こっているのは、やっぱりKALはKALなりの、あるいはそのとき撃墜された747——コックピットに三名いたかどうか私わかりませんけれども、——なりの状況というのがあったんじゃなかろうか。そこまでも全くこれミステリーなわけです。ですから、日航の経験あるいは巖さんの認識している範囲においては考えられない、ですけれどもKALの場合には、これで五年間に二回も考えられないことをやったわけ。そのやったわけがミステリー、こういうことでありまして、これは、いま言いましたように、日航は三重装置になっておりましてすべて完璧でございますので、今後も日航へ乗れば絶対生命の安全は保障されるということはもうますます私も自信を深くしたわけでありますけど、KALはKALなりのやり方がある。私はこういうふうな情報をワシントンでさんざん聞かされてきた、こういうことも一つあるやに承っております。別に巖さんはKALのパイロットじゃございませんものですから、ここらあたり御存じないということでいたし方がないと思うんです。  最後に栗林先生でございますが、先ほどからたびたび国際法の不備がある、改善をしなければならない、国連通じて云々、あるいは遺族補償問題もあると。当然これは遺族だけでというわけにいかないと思います、大韓航空の場合でもあるいはソ連の場合でもと思うんでありますが、日本政府は当事者の一国でありますので、先ほども若干聞かせていただきましたが、どういうステップを踏んで、要するに国連の場において国際法改善なりあるいは遺族の確たる補償を取りつけるための先頭にも立ち、あるいは遺族の後押しもしなきゃならないのか、そのとるべき手段方法をお教えいただけますか。
  80. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) いまの御質問に対しては部分的に最初にお話ししたことがございますが、一つには、もし私が申しましたような論旨で、ソ連がこの事件において国際法上違法な行為をしているんだというその判断に立ちますならば、まず国家国家国家責任を追及する方法がございます。  それから、自国民が外国で不法な取り扱いを受けた場合には、国家が外交保護権を発動してその個人のための救済を図ることがございますが、この場合にはその外国人、今回の場合ですと遺族の方になろうかと思いますが、その方々ソ連の国内法上さまざまな司法的な手続を経たということが前提で必要でございます。  三番目に、私は多分できないだろうと申し上げましたのは、遺族個人がソビエト政府を相手取った訴訟を起こすということでございます。私つまびらかでございませんが、ソビエトの国内法上そういった訴訟当事者として外国人をどの程度受け入れるのか受け入れないのか、なかなかむずかしい問題がございます。  それから四番目に、KALを相手取った遺族に対する補償がございまして、これも先ほど言いましたように、今日の航空事故に対する責任額というのは航空会社に非常に低い限度で定められておって問題があろうかと思いますし、また、故意または故意に相当する重大な過失を立証しなければならないという遺族側にとってのむずかしい問題点もあろうかと思います。  それから、要するにただいまの御質問の二番目の、日本政府として、今後こういう状況が発生するのを防ぐために国際社会においてどのような役割りを果たすべきなのかという点につきましては、私は、日本は無資源国でございますし、国際交通というものに大きく頼って生存している国でありますから、国際航空交通の安全性、重要性というものはどの国よりも強く声高に国際社会に向かって言うべきだと思います。その手段方法につきましては、先ほど述べたようなことがまず手始めになろうかと思います。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 どうもありがとうございました。
  82. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 民社党の伊藤でございます。きょうは専門的なお話を聞かしていただきまして本当にありがとうございます。  巖参考人に最初にお聞きをするんですが、巖さんの経験からいくと、ソ連領空に入っていったという経験がないということはお聞きをしたんですが、日航としていままでに今回の事件のようなものと類似する——大小にかかわらずそういうことが過去にあったのかどうか、その点をまずお伺いをしておきたいと思います。
  83. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 日本航空の場合、そういうことはございません。
  84. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それからもう一つお伺いをしたいんですが、これは先ほど梶原委員からも質問が出まして巖さんから御答弁をいただいているんですが、シェミア島にある米軍レーダーは、上空を飛ぶ民間機飛行ルートを外れてソ連領空に近づいた場合は警告することが通例になっている、こういうことが衆議院の予算委員会である委員から言われているわけでありますが、そういう経験はないということを先ほどお聞きをしたんですが、これ専門家の青木参考人にお伺いするんですが、そういうことを米軍というものはやるのかどうか、その点お伺いしたい。
  85. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) 必ず警告をしなければならないという規定はございません。ただ通常の場合ですと、軍のレーダー基地に、ここの場合ですとアンカレジにAMISという組織がございまして、そこで航空管制機関から軍の方に通知がございます。それを各レーダーサイトへ流すわけでございます。そういたしますと、たとえば日本の場合ですとバッジシステムをとっておりますのでフライトプランが出てくる、そのフライトプランを打ち込んでおきますと、フライトプランに沿った飛行機がフライトプランどおりに動きますと、その飛行機のブリップというレーダースコープの上に出る点がございますけれども、その上に箱がつくんであります。それでフライトプランどおりに飛んでいるということがわかるようになっております。アメリカは、ここはセージシステムをとっておりますので日本の方式とは少し違いますが、やはりフライトプランに準じて飛んでいるかどうかがわかるようにはなっております。ですから、それから著しく外れますとそれが出ないわけです。出ないと機種不明機、機位不明機になってしまいますので、これは一々問い合わせなければいけないわけですね。でないと味方機であるか敵機であるかの識別ができない。その識別をした結果フライトプランと相違があることがわかれば、それはコースを逸脱している航空機になりますから知らせてやることはできるわけであります。それで、いままで知らせていた例もずいぶんございます。  ただ、一つはそれが義務ではないということ、もう一つは、コースどおりに通りますと、先ほど申し上げましたようにニーバの位置がシェミアのレーダーから百三十五マイルになります。ここのシェミア島には、先ほどほかの先生からもお話がございましたが、コブラディーンの非常に距離の長いレーダーを置いてあります。ただ、これはミサイルを探知するレーダーでございまして、通常の航空路を一万メートルぐらいで飛んでいるわりあいに遅いマッハ〇・八ぐらいの航空機を発見するということは非常にむずかしいわけであります。  それで、ここで使っております、別に併設してありますDEW——DEWラインとわれわれ呼んでおりますが、これのレーダーがございましてこれで発見することはできる。ただ、正確な能力については発表されておりませんけれども、普通の場合ですと一万メートルの高度を飛んでいる航空機というのは四百キロから四百五十キロの間ぐらいならば確実に捕捉できます。マイルで言いますと二百から二百二十五ノーチカルマイルぐらい、これぐらいまではわかるわけです。そうすると、百三十五マイルの飛行機が百マイルぐらいオフコースをしても何とかそのレーダーの範囲内に入る。ところが、ここで二百マイルもオフコースをされますとレーダーの覆域外になりまして、これは警告をしたくてもできないということになります。  そこで、先ほど私も申し上げました向こうのレーダー記録が見たいといいますのは、どこでコースがずれたか、それは記録によればわかるわけですよね。それは警告ができたのかできなかったのかということがそれで一応推測することができるだろうということであります。
  86. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 これは関川参考人にお伺いしたいんですが、ソ連の基地と戦闘機との交信記録の問題ですけれども、これはこれがはっきりすればソ連の行動の全容がわかってくると思うんですが、まだその辺がはっきり明らかにされていないわけですね。後藤田官房長官はあの事件の直後の六日の会見で、地上からの発信も把握していると、こういうことを新聞に発表しているわけです。あるいはアメリカのホワイトハウスのスピークス副報道官も同じ日に、地上からの交信テープを保有していると、このような発言が新聞に報道されているわけですが、それらのことが事実と想定できますかどうか、そういうものを持っているのかどうか、関川さんのお考えをお聞きしたいと思うんです。
  87. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 私は持っておると思います。  今回の事件につきまして参考になるようなデータと申しますのは、パイロットから地上へ送った送信と、地上からパイロットへ送った送信と、地上管制官同士のやりとりあるいは司令部とのやりとり、つまり地上地上の間の通信、この三種類あるわけでございますけれども、今回発表されておりますのは、パイロット地上に対して物を言っているうちの一部でございます。あとの地上からパイロットへと、地上地上の間と、この二つは全く出ておりません。なおかつ地上に対するパイロットの送信もかなりの部分が秘匿されたままだというふうに承知しております。
  88. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 これは青木参考人にお伺いするんですが、ソ連の軍用飛行機がKAL機に一番近づいた距離は二キロメートルと、こう言われているわけですが、二キロくらい近づけばあのKALの標識ですね、これが識別でき得るものかどうか、その可能性について。
  89. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) 当日は月齢二十三・三だったというふうに記憶しておりますが、満月のときの一けた下、大体十分の一ぐらいの明かりであります。ですから、その月の明かりだけでは標識は見えないと思います。  それから、通常の場合に民間航空機識別する一番いい方法は窓の明かりなんであります。旅客機の場合窓の明かりなんでありますが、現在どこの航空会社もこのコースを飛んでいるときは機内で映画をやっておりまして、映画が終わった後もお客さんがお休みになる時間になりますから、朝食が出るまでは窓のブラインドをおろしております。外から見るとほとんど明かりが見えない。そういたしますと、民間航空機で、それで時間が朝食の一時間半ほど前でございますので、そのときに外から明かりが見えなかったはず、それから機体に書いてあるマークもその月齢では読めなかったはずだと思います。
  90. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 時間が参りましたので、もう一、二点お伺いをしたいんですが、ソ連の戦闘機が最初はミグ23だと言われていましたけれども、その後で、いまではスホーイ15だというように言われているわけですが、これはどちらと判断をしたらいいのか、関川さんおわかりでしたら。
  91. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) ソ連はオガルコフ参謀長みずからがスホーイ15だと言っておりますし、それに対しまして防衛庁側はミグ23だと主張し続けておられるんですが、一国の総参謀長が言ったことを否定するほど強い何か資料をお持ちだと思うんです。ですから、防衛庁の言うことも全く否定するというわけにはいかないと思います。
  92. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 非常に疑問になるところがまだ本当に解明されていないわけですが、自衛隊のレーダーでとらえたものと、あるいはKALと成田との交信とか、アメリカ情報とか、ソ連が発表したものとこういうものを組み合わせて当日の事実関係をずっと追っていきますと、目標が撃墜されたとソ連が言っている時刻三時二十六分二十一秒と、その後きわめて正常な交信で今度は大韓航空機から、こちら大韓航空機ですということで成田に交信があった、その後二十七分十秒にこちら〇〇七ということで、そのうちガーガーといって聞こえなくなってしまった。そしてアメリカが発表したものの情報によりますと、その三十八分にKAL機は墜落したと、こうなっておりますね。そうすると、ソ連が目標は撃墜されましたと言っている時間と、墜落したというようにアメリカがとらえた時間との間に十二分もあるわけですね。だから、この十二分の間一体どういう状況にあったのか、ソ連撃墜したというのはどういう意味を持っているのか、その辺のところが非常にわからないんですけれども、この辺青木さん、どういう状況に大体あったんだろうかと想定できるものがもしございましたらお話をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) これは非常にむずかしいことなんですが、まず第一はソ連側の交信記録の問題であります。これは日本の場合でもそうなんですが、戦闘機のパイロットが使っておりますのはほとんど符牒でございまして、ですからこれを正確に、たとえばあの場合はロシア語ですけれども、正確にロシア語に置きかえたからといってその意味を持つかどうかという場合とは違うわけであります。それからミサイルの発射とかミサイルの命中、撃墜等をどの時期に言うかということにも問題がございます。といいますのは、発射というのは何も発射の瞬間に言わなくてもいいわけでありますからこれにもずれがございますし、命中というのもミサイルが爆発をしたときをもって言うのか、それとも相手が破壊をされたとき破壊されたことを確認して言うのかということで、ここでも時間の違いがございます。  それから、これは防衛庁にお尋ねいただければいいことなんでありますが、現在運輸省が使っておりますテープの記録装置と防衛庁が使っております録音テープの記録装置は方式が違います。いずれにいたしましてもJJYという時報信号がございますので、それを適宜記録しておけば時間は正確になるんですが、たとえばテープが何時間にもわたって回し切りの場合とそれから音が入ったときにスタートをする方式がございまして、それを使っている場合とでは時間のずれが出てまいります。それで、時報というのは一秒ごとに入れているわけでございませんで途中要所要所に入れますので、その時報から計算をいたしました換算時間というものにも差が出るわけであります。それで、これは運輸省と防衛庁との間でわずかな時間差が出るということはあり得るというふうに考えております。  ただ、アメリカ側の言っております墜落時間というのが何を基準にしているのかわれわれにもわからないんであります。これが地上からの——地上からといいますか、地上航空機の間の送受信を基準にして言ったものか、あるいは地上基地から地上基地への報告、連絡等を基準にして言ったものか、これで確認の時間が変わってくるというふうに考えます。ただ、そこもまたむずかしいことなんでありますが、現在、稚内で聞いておりますような対空通信の送信記録というのは、この場合にソ連側が使っておりますのはVHF、超短波の電波でございまして、これの場合に発信をする場所によって非常に強度が変わります。航空機の場合も、姿勢とか飛んでいる位置とかによって変わるんですけれども、一番大きく変わりますのは、空中で電波を発射した場合と地上で電波を発射した場合との差であります。電波は指向性を持っておりますので、地上から発射をいたしました電波は、もし同じ強度で電波を発射いたしますと、傍受をしている受信の方では一けた差が出てくるわけであります。十分の一以下の強度になってしまう。ですから通常、傍受の場合には空中からの交信はよくわかりますけれども、地上からの交信はその電波が飛んでくる位置にアンテナを出さなければ非常に聞こえにくいということは確かであります。それから、地上基地と地上基地との間というのはVHFを使っておりませんで、新しい方式ならマイクロウエーブの送信のようなものを使います。そうでない場合にはHFの短波を使っております。これらの受信というのは全く違う組織、全く違う設備で行いますから、そこの間でどの方式でどこの電波を聞いたかによって時間関係などが変わってくる。アメリカ側がなぜあの時間を墜落時間としているのかということについてはわかりませんが、一つはその傍受方式の違いあるいは傍受をした相手の違いによって時間差が出たんではないかというふうに考えております。
  94. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 どうもありがとうございました。
  95. 立木洋

    ○立木洋君 青木参考人にお伺いしたいんですが、昨日は情報収集の重要性についてここで御説を承ったんですけれども、先ほど言いましたシェミアの基地の問題ですね。機能については先ほどいろいろ御説をお伺いしたんですが、もろもろの状況から判断して、このKAL〇〇七便を捕捉し得た可能性の方が大きいとお考えになるかどうか、いやその方が少ないというふうにお考えになるか、どちらでしょうか。
  96. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) どこでコースを逸脱したか、それはそのコースの逸脱をした距離が幾らかによりますけれども、私は捕促できた可能性は非常に高いと思います。
  97. 立木洋

    ○立木洋君 栗林参考人にお伺いしたいんですが、そういうふうに捕促し得た場合、その航空機の安全を守るために国際法上あるいは慣習上どういうふうな措置をすることが適切なのか、また必要なのか、その点についてはどういうふうになっているんでしょうか。
  98. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) 国際民間航空条約の中には、自国の領域内で外国民間航空機が遭難した場合にできるだけの援助をするという規定がございます。しかし、領域外のところでそういうものがあったときにまでこれが果たして国家を義務づけるものかというのは疑問だろうと思います。  それからたとえばハイジャックのような事例が生じた場合にはまたハイジャック防止条約の中で、機長が正常な航空機のコントロールを回復するに必要な措置を各締約国はとることを義務づけられております。そういうような状況でございますので、果たして今回のような場合に、大きくずれているということを他の国が警告する義務があるかどうかというのは私は疑問だろうと思います。
  99. 立木洋

    ○立木洋君 巖参考人にお伺いしたいんですが、FAAが九月の十一日にアンカレジと〇〇七便の交信記録を発表しておりますが、また東京との間でも九月の十三日ですか、これも発表されております、これは日本側ですが。これらのことから私に幾つかの疑問に感じる点があるので、それに即してお伺いしたいんですけれども、先ほど言われた、通過する点は厳重に確認されなければならない、その通過する地点を相手側に通報する場合に、いわゆるアンカレジのセンターから確認の要請が求められているにもかかわらず、その〇〇七便がみずからその地点を相手に通報しないというふうなことはあり得るんでしょうか。
  100. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 私ども日本航空の場合、そういうことはございません。
  101. 立木洋

    ○立木洋君 それから先ほどお話がありましたけれども、約二十分後に同じKALの〇一五便が飛んでいるわけですね。そして〇一五便に仲介してもらってアンカレジに通報しているというふうなことがあるんですけれども、そういうような仲介を依頼するというふうな場合がふだんあり得るのかどうか。もしかそういうことを行うとしたらどういう場合にそういうことを行うのか、これは日航の経験で結構ですから。
  102. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 日本航空の場合に考えられますことは、ほかのフリクエンシーを傍受するためにその周波数をオフにしてしまって、そのままその通信を終わった後にまたスイッチをオンにするのを忘れた場合です。そういう場合に中継してくれというふうな依頼を受けたケースはございます。
  103. 立木洋

    ○立木洋君 それからナビエを通過してニーバの通過予定をアンカレジに通信することが行われているんですけれども、これは当初〇一五便を仲介して通報しているんですね。ところがその約九分後に、分度〇〇七便が同じことを通報しているんですよ。ところが通報したその通過地点の予告が四分間差があるんですが、これはどういうことを意味しているのか、経験上巖参考人と、それからそれについてのお考えを青木参考人にお伺いしたいのですが。
  104. 巖祥夫

    参考人(巖祥夫君) 私どもちょっとそのことについてはわかりかねます。わかりません。
  105. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) これも想像にすぎないんですが、一つはあのときの記録、それから向こうが言っていることについて不確かな部分がございます。非常に雑音が多い。〇一五が中継をしたその連絡ははっきり入っているんですが、後で〇〇七から言ってきた報告というのは、これは交信テープも現物といいますかコピーはございますが、これは非常に聞きにくいものでありまして、この時間が正確であるかどうかということには疑問はあります。ただ先ほどから申し上げておりますように、ナビエからニーバまでの間にやはり一番疑問はございまして確かに時間に差があるようだ、ここで一番おくれておりますので、もしオフコースを大きくしたとすればこの位置というふうに想像はつくんであります。いずれにいたしましても、これらの報告が先ほども申し上げましたように風向、風速を一緒に言っておりますので、INSのウエーポイントまでの距離と時間を基準にして言っているわけです、次の到達予定を。そういうふうに考えられますから、たとえばINSにインプットの間違いがあったとすればここからということになります。あるいは何か異常といいますか、何かの問題が発生をしていれば、やはり一番疑われるのはこのナビエからニーバの間ではないかというふうには考えております。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 関川参考人に。  いまのお話聞いていただいたわけですけれども、つまり通過地点をみずからの飛行機から相手側に通報もしないで、通報を要求されてもいわゆる仲介を依頼するだとか、交信状態が悪かったという話がありますけれども、それからその後遠く離れたところで最後に交信しているわけですね。だから、そういうことも考えてみますと、交信上の問題だとか、いわゆる通信の機器の事故だとかというふうなことは全然考えられないんですが、いわゆるこういう安全上きわめて注意しなければならないにもかかわらず全く考えることができないような事態が起こった、先ほど来から問題があるんですが、こういう交信記録をごらんになって関川参考人はどういうふうにお考えでしょうか。
  107. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) この事故を起こしました〇〇七便は、ニューヨークを出発してアンカレジに飛ぶ区間でHFの通信機が故障したそうでございます。それをアンカレジで修理をした記録があるんです。その後、せんだって運輸省航空局の方に伺った話なんですが、成田の管制所で受信をしたテープを回してみたところが、たくさん毎日交信があるわけでございますけれども、その交信の中で一番悪い状態の交信に比べてもなお悪かった。ですから、アンカレジの修理そのものがかなり余り効果的でない修理をして、アンカレジ出発後もHFの通信機が故障しておった可能性が非常に強いという話を聞きました。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 最後に委員長お願いしたいんですが、いま言ったように交信記録を見てみるといろいろな疑問があるんで、これに関する資料を努力して御入手いただけるようにお願いしたいんですが、一つは、アンカレジのセンターとそれから二十分後に飛んだという〇一五便、この交信記録が一つです。それからもう一つは、〇〇七便とそれから〇一五便との交信記録、それからもう一つは、東京管制センターが交信を失って後、いわゆる国内的あるいは国外的にどういう対応措置をとったのかというこの記録と、それから、先ほど来出されておりますけれども、ソ連軍用機ソ連地上局との交信の状態、これらの問題について入手していただくように要請を申し上げて私の質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
  109. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまの立木君の御要請については、理事会に諮りまして、どのように取り計らうかを決めたいと思います。
  110. 秦豊

    ○秦豊君 やはりきょうも一種のもどかしさを分かち合っていると思うんですけれども、アメリカのニューヨーク・タイムズとCBSがごく最近世論調査をいたしまして、KAL事件についてアメリカ政府は果たして真実の全容を明らかにしているかという設問に対して、六二%のアメリカ市民がノーと答えています。恐らく同種の調査をいまこの時点で首都圏で行ったとしても大体同率の反応になるのではないか。きわめて情報が軍事的意図によって閉鎖されている、閉塞されている、断ち切られていると思うんです。  そこで、参考人の皆さんの中で関川さんと青木さんにあえて伺いたいんですが、今後、情報閉塞状態の中にあってなおかつ唯一と言われている真実に肉薄するためには、やはり至難と言われているブラックボックス——ボイスレコーダー、フライトレコーダーを含めた——の回収が一つのアプローチであろうと思いますが、回収の可能性について関川さんと青木さんは端的にどう考えていらっしゃいますか。
  111. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 私は現場の状況がよくわかりませんので五分五分と申し上げるより仕方がございませんけれども、一つは、仮に無事にレコーダーが揚がりましても、中に果たして参考になるようなデータが取れているかどうかという点も五分五分ではないかと思います。一つは、長い間海水につかっておりますので、塩に害されてテープが少し聞き取りにくいとか読み取りにくいとかいうこともございましょうし、それからもう一つは、空中爆発があったようですが、そのときの衝撃でレコーダーが一部壊れているという可能性もございます。  それから、フライトレコーダーの方は仮に取れたとしましても、ボイスレコーダーの方はこれは——これは外国でよくあることなんだそうですが、乗組員がマイクロホンにふたをするケースがあるんです。と申しますのは、ボイスレコーダーのマイクロホンと申しますのは、パイロットが二人座っておりましてその真ん中の天井についているんです。たとえばパイロットが何かぐあいの悪いプライベートな会話をするような場合、帽子か何かでそのマイクロホンにふたしてしまうことがよくあるということで、果たして仮に回収できたとしましても完全な記録が入っているかどうかということは疑問でございます。  それからもう一つ、これは日本であった例でございますけれども、フライトレコーダー並びにボイスレコーダーとも整備が悪くて、回収できたけれども記録が読み取れないという例もございました。そういうふうな事情もございますので、仮にボイスレコーダー、フライトレコーダーが無事に揚がりましても中の記録がうまく入っているかどうか、それが読み取れるかどうかという点でも大きな疑問が残されておると思います。
  112. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) 回収は技術的には相当むずかしいと思います。ですから、私も回収できる確率というのは半分以下であるというふうに考えておりますが、フライトレコーダーの方は、もし無事に回収をされますとある程度のことはわかるのではないかというふうに考えます。ただ、レコーダーの回収以上にいまやはり知りたいと思うのはアメリカレーダーデータの方であります。
  113. 秦豊

    ○秦豊君 今回の場合のアメリカの対応ですけれども、アメリカは失ったものは何にもないわけです。わが国が失ったものはかなりの程度あり得た。オガルコフ参謀総長とシュルツ国務長官が発表したフライトコースは、航跡はかなり差があるわけですね。しかし、われわれはオガルコフ氏のコースの信憑性、リアリティーについて分析し追求をするデータを持たない。  そこで一つの問題は、これは委員長にも御配慮をいただきたい。いま同僚議員からもありましたが、政府の要求に対しまして、アメリカ政府は去る九月二十二日、大韓航空機のコースのずれは察知ができなかったと。その論拠として挙げているのが何とアンカレジのレーダーなんですよ。これは全く機能と目的が違うレーダーについてそう答えている。日本政府が問い合わせしましたのはまさに先ほどからしばしば登場するシェミア・レーダーのデータなんです。なぜかアメリカ政府はそれを発表していない。発表することによって失うものがあるのか、国防機密を害するのか、その辺は全くわかりません。だから資料要求の中に、これは外務省経由になると思いますが、重ねてシェミア・レーダーのKAL〇〇七便についての航跡のすべてを、あるいは交信記録のすべてを日本政府に送付されたいという要求をもあえてつけ加えていただきたいと特にお願いしたいと思います。理事会でお諮りいただきたいと思います。
  114. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 理事会でお諮りいたします。
  115. 秦豊

    ○秦豊君 それから、時間が切迫しておりますので参考人に、これも関川さんと青木さんに伺いたいんですが、いまICAOの代表団が滞日中です。たしか九日までの日程と承知しております。そこで、さっき栗林先生からいろいろお話があったんですけれども、何さま相手が、仮にソ連に限定した場合には、フランスのあるコメンテーターの表現によるとパラノイア愛国主義、あるいはパラノイア国防主義による過剰反応と言っていますので、ICAOが何を取り決めても通ずるかどうかは保証の限りではない。ないけれども、なおかつ私は、この際ICAOで日本側提案として、緊急時の警告要領、対応要領一つにしぼって、特に夜間を重点にした民間機の緊急通信波、たとえば一二一・五メガヘルツ、これを社会主義圏の、この場合はソビエト防空軍の迎撃戦闘機も受信できる、地上基地はなおさらというふうな、交信、受信が一二一・五メガヘルツについてこれは可能だというせめてダブル回路だけは設定しておかないと問題は際限なく繰り返されるおそれもある。したがって、この一点にしぼって私はICAOに緊急提案をする意義がありはしないかということと、それから巖さんには特に伺いませんけれども、多分おたくの同僚ではないかと思うが某大新聞に投稿されて、最近INSに頼っているコックピットの中では目が外界になれるまで相当時間もかかるし、やはりスホーイであろうがミグ23であろうが、翼を振るうが警告弾を、機関砲を発射しようが高度や位置によって全くわからないし、この際この百二十一・五メガヘルツとあわせてポータブルの強力な信号灯をパイロットが常備して、そしてそれをコックピットに向かって照射をするというふうな、はなはだマニュアルだけれども、手動的だけれども、素朴だけれども、それと百二十一・五メガヘルツを併用した安全策を構ずべきではないかというふうな提案もされています。  このことを私が申し上げる理由は、たとえばGPS、アメリカによる全地球位置決定システムが恐らく完全に作動しますのは八七年からであるとされている。あれが作動すれば十六メーターの誤差の範囲内で特定の対象物を特定できるかもしれないが、それまで四年という歳月があり得ます。したがって、非常に素朴なようだがこういう緊急措置を積み重ねることによって少しでも災害を免れる、再発を防止する、こういう観点に私立っているわけですが、重ねて関川さんと青木さんにそのことの是非、またお二人の御判断、これを伺いたいと思います。
  116. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) おっしゃるとおりだと思います。先ほど私申し上げましたけれども、費用効果ということもございますが、この際、やれることはすべてやるべきじゃないかと思います。
  117. 青木日出雄

    参考人青木日出雄君) 百二十一・五メガヘルツは、もう現在ソ連もICAOに入っておりまして、ソ連の装備は全部VHF装備でございますので送受信ともできます。それで、航空機の方もやろうと思えばできる、DまたはGのチャンネルに入っておりますから。  ただ、世界的な趨勢で現在UHFに軍用機の無線機が変わっておりますので、これも実は倍周波数の二百四十三メガヘルツをガードに使っておりますから、伝えようと思えば伝えられないことはない。ただ、先ほど関川参考人からもお話がありましたけれども、呼びかけの符号なしに言ってみても実際には聞こえないわけです、ということに問題があるんです。  それから警告要領では、現在どこの国も新しい戦闘機はアフターバーナーつきの航空機になっておりますので、わからないときは目の前へ行ってアフターバーナーを点火すると一番わかるのであります。現にそれを使った例もございます。ですから、これはICAOで何かの決まりさえできれば現在でももっと有効に信号する方法がある。ただ、現在決められております航行灯の点滅なんかは——航行灯はそもそも見えません。見えませんので、現在あそこにストロボライトをつけているような状態なんですね。ですから、いまのICAOのアネックスにございます要領では、なるほど現在の時代には通用しないということは言えると思うんです。  それから、非常に近い特別な空域についてはGPSをもっと早い機会に使う可能性はございますし、またGPSの受信機が非常に安くできる見込みになっておりますので、そのあたりは使うことも不可能ではないだろう。ただ、本当はやってほしいと思いますのは、おのおのの国に主権がありましてそこへ侵入を禁止するのならば、その位置に地上の航法施設をつけてもらえばいいわけです。だれも間違いはしないということで、実際上はそれらの国に何かの標識をつけさせる義務を課すというような方法もございます。
  118. 秦豊

    ○秦豊君 どうもありがとうございました。
  119. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しい中を本連合審査会調査のために貴重な時間をお割きいただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査に十分活用させていただく所存でございます。連合審査会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  これにて本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後四時十五分散会