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大内委員 そういう厳しい認識を持っておられるということは非常に大事であります。しかも、
中曽根総理も、たとえば
公共事葉については追加の必要がないというようなことをいろいろなところでお話しになっておりますが、今後の
懸念材料として三つの問題があります。
一つは、五十六年、五十七年に
経験したと同じように、下期における
公共事業前倒しの
反動が生まれる
可能性が非常に強いということ。五十六年も五%台の
経済成長を初め予想しました。五十七年もそうでありました。たとえば五十七年の場合は五・二%と予測して、夏には四・七%になり、暮れには四・一%になり、そして春になったら三・一%になって、最終の
段階で三・三%に修正されました。なぜか。
公共投資の
前倒しが終わった十月以降の
指標は、みんな
公共投資マイナスになったのです。これは
政府が出した数字で全部出ている。十月、十一月、十二月、一月、二月、三月、みんな
マイナスになった。この結果、四・一%という
成長率予測も狂って、実は当時三・一%になったんです。五十七年度も同じなんであります。したがって、この五十八年度におきましても、そうした
意味での実は下期における
公共事業の
前倒しの
反動が予想される。これが
一つの
懸念材料であります。
もう
一つは、
内需拡大の好
材料というものがほとんどいま見当たらないということなんです。
総理がサミットで約束されて、
内需中心の
経済を推進していくだけの具体的な
政策というものが見当たらないということです。
減税問題につきましては、
政府がやるという決意を表明されました。これは
一つの
材料なんです。いま
アメリカやヨーロッパは、ある
意味での
景気回復を実現しつつあります。しかし、この欧米の
景気回復と
日本の
景気回復の
動向とは全然違うのです。
たとえば
アメリカにおきましては、
レーガン大統領が大変な
減税をやりました。たとえば八二年度、
個人所得税の
減税で二百六十九億ドルです。
法人税を含めて三百七十七億ドルであります。これは九兆円を超す
減税であります。また、八二年から八四年にかけまして企業
減税は五百八十一億ドルであります。つまり、個人
減税というものと法人
減税というものを組み合わせながら、他方において増税をやりながら、しかし、それ以上の
減税をやる、そして、それによって
個人消費を刺激し、
設備投資を刺激していくというこの方式をとることによって、いま
景気回復過程にあるのです。
日本の場合のちょっとした
景気の明るさというのは何でしょう。いま私が申し上げたとおり、輸出を伸ばす、そして
公共事業の
前倒しというこの二つの組み合わせだけでやっとこさっとこいまの
景気を支えている。これは本格的な
景気回復のパターンじゃないです。私は
一つの
予断を持って申し上げているのではありません。冷静に、客観的にこれからの
景気の
一つの問題点を探るときに、そうした問題がやはりある。
そして三つ目には、それではこれ以上輸出に頼っていけば、
政府が出しておる九十億ドルの黒字予想というものがどんどんどんどんオーバーして、二百億ドルを突破してしまうという
状況に目下あるということは御存じのとおり。そこから出てくるものはまた貿易摩擦ということになる。したがって、輸出という問題に対して、外需で
景気回復を図るということにも限界がある。ということになれば、この問題はやはり
内需の喚起という方向で幾つかの
政策が組み合わされなければならぬ。すでに八月八日にはOECDは
日本の黒字増について警告を発しまして、どうか
内需を喚起してほしいという注文を出している。私はこれまでもこの
委員会で論じてまいりましたけれ
ども、五十六年、五十七年度の財政運営は、私は失敗だったと思うのです。渡辺
大蔵大臣とも後で私的に話してみましたけれ
ども、やはりわれわれの中に相当の理があるということも認めておられました。
そこで、
景気という面から見て、つまり
国民のいまの最大の関心事である
景気回復を達成することが
政治の使命だという観点に立って、次の四つのことについて
総理、
大蔵大臣あるいは
経企庁長官が真剣に検討していただきたいのは、第一は、一兆四千億程度の
減税という問題です。これはすでに出しているのです。これは後で論じます。
もう
一つは、二兆円程度の
公共投資の追加です。この
減税とそれからいま申し上げました
公共投資の追加で、
経済成長率は約一・一%
上昇します。したがって、あの「一九八〇年代の展望と指針」、ここで示されている四%台の
経済成長率は、この二つの
政策を実施することによって達成の
可能性が強まります。
三つ目は、中小企業に対する投資
減税を拡充強化してもらいたい。投資
減税というのは実需が先行いたしまして、それから
減税が起こるわけでございますから、この
減税というのは相当確実性がある。そうして、中小企業はそのことを待望している。それから、特に中小企業に対しては機械、設備等の法定耐用年数の短縮をやってもらいたい。それからもう
一つ、
庶民にとっては住宅ローン
減税の拡充及び住宅資金贈与に対する控除という問題が大きな問題になってきている。贈与については現在はたしか六十万円まで控除されておりますが、これをもっと大幅に控除したらどうか。つまり住宅
減税という問題を実施したらどうか。
四つ目は、これは
政府自体ができることではありませんが、公定歩合の引き下げ。
私は、この四つを
日本の
景気回復を実現するために、つまり
内需中心の
経済運営をやるために不可欠のものだ、こう思っているのですが、まず
総理から
見解を伺いたいと思うのです。