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1983-09-19 第100回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十八年九月八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    上村千一郎君       小渕 恵三君    越智 伊平君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       倉成  正君    栗原 祐幸君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    田中 瀧夫君       渡海元三郎君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       稲葉 誠一君    岩垂寿喜男君       大出  俊君    岡田 利春君       木島喜兵衛君    小林  進君       佐藤 観樹君    沢田  広君       野坂 浩賢君    大久保直彦君       草川 昭三君    矢野 絢也君       木下敬之助君    竹本 孫一君       金子 満広君    瀬崎 博義君       不破 哲三君    山口 敏夫君 ————————————————————— 昭和五十八年九月十九日(月曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    上村千一郎君       小里 貞利君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    工藤  巖君       倉成  正君    栗原 祐幸君       近藤 元次君    澁谷 直藏君       砂田 重民君    田中 龍夫君       玉沢徳一郎君    渡海元三郎君       橋本龍太郎君    藤尾 正行君       藤田 義光君    宮下 創平君       村山 達雄君    石橋 政嗣君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春秋    木島喜兵衛君       小林  進君    上坂  昇君       沢田  広君    堀  昌雄君       大久保直彦君    草川 昭三君       正木 良明君    木下敬之助君       中野 寛成君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    正森 成二君       中馬 弘毅君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  宇野 宗佑君         運 輸  大臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  禿河 徹映君         内閣法制局長官 茂串  俊君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         行政管理庁行政         管理室長    門田 英郎君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁次長 小谷  久君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         部長      木梨 一雄君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         国土庁長官官房         長       石川  周君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主計局次         長         兼内閣審議官  保田  博君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省食品         流通局長    小野 重和君         水産庁長官   渡邉 文雄君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省基礎         産業局長    野々内 隆君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省自動車局         長       角田 達郎君         運輸省航空局長 山本  長君         海上保安庁長官 石月 昭二君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         郵政省人事局長 三浦 一郎君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         日本専売公社総         判       長岡  實君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本電信電話公         社副総裁    北原 安定君         参 考 人         (日本銀行総裁前川 春雄君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 九月十九日  辞任        補欠選任   金子 一平君    宮下 創平君   正示啓次郎君    玉沢徳一郎君   根本龍太郎君    近藤 元次君   藤本 孝雄君    工藤  巖君   武藤 嘉文君    小里 貞利君   稲葉 誠一君    石橋 政嗣君   佐藤 観樹君    堀  昌雄君   野坂 浩賢君    上坂  昇君   矢野 絢也君    正木 良明君   竹本 孫一君    中野 寛成君   金子 満広君    正森 成二君   不破 哲三君    中路 雅弘君   山口 敏夫君    中馬 弘毅君 同日  辞任        補欠選任   小里 貞利君    武藤 嘉文君   工藤  厳君    藤本 孝雄君   近藤 元次君    根本龍太郎君   玉沢徳一郎君    正示啓次郎君   宮下 創平君    金子 一平君   石橋 政嗣君    稲葉 誠一君   上坂  昇君    野坂 浩賢君   堀  昌雄君    佐藤 観樹君   中野 寛成君    竹本 孫一君   中馬 弘毅君    山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  4. 久野忠治

    久野委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁前川春雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 久野忠治

    久野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  7. 大出俊

    大出委員 このメモには載せておりませんけれども、当然のことでございますから書きませんでしたが、政治倫理確立という問題につきまして、最初に総理所信を賜りたいのであります。  昭和二十二年の五月に新憲法のもとで初めて開かれました第一国会から数えて第百回目の臨時国会ということになります。総理行革減税国会としきりに話しておいでになりますが、どうも行革、もちろんこれは小さい政府をつくる、同氏の皆さんのためにということでやらなければなりませんが、どうも新風がこの行革を評して、中身が全くない、人も減らない、金も減らない。総理、本会議の御演説によりますと、演技過剰ではないか。しかし、これは大事なことでございますから、国民皆さんのためになる行革をやっていきたいと私ども思っております。減税も、これはたび頂なる約束でございまして、私もどうも、仏の顔も三度という言葉がありますけれども、いささかどうも待ちくたびれて、何遍約束してもおやりにならぬ。やはりこれは伯仲国会にしなければだめだなという気がするのであります。  だが、この二つの問題、当然でありますが、その上に家は建ちません。政治信頼をここで回復をするために、政治倫理確立がどうしても必要でございます。総理の本会議における施政方針演説を何回か読んでみましたが、美しい形容詞などが並んでおりますが、一〇・一二判決というものをめぐっての所信はどこにもございません。しかも、田邊書記長以下、各党の代表の方が御質問を申し上げましたが、ときには准音だとおっしゃる。そうなると、これは取り消して済む筋合いじゃない。私が七十七国会以来今日までずいぶんこの問題を取り上げてまいりましたが、すべて雑音か。国会自浄作用という意味でみずから改めたいという気持ち質問をしてまいりましたが、ずいぶんそれが検察その他の事件真相究明に役立った面もあったはずでありまして、私は断じて雑音でない、こう思っておるのですが、雑音とおっしゃった真意をひとつお聞かせをいただきたいのでございます。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法におきましては、三権分立の原則をしかと定めてあるのでございまして、行政行政立法立法司法司法司法の中心は裁判所でございます。この行政政府立法国会司法主として裁判所、こういうおのおのがその分限を守り、そして憲法の命ずるところに従って職責を果たしていくというのが、正しい憲法の運用であると思います。  今回のロッキードの問題につきましては、いろいろな経緯があり、法廷におきまして検察弁護側の攻撃、防御も行われておりまして、いよいよ第一審の判決という大詰めまで来たわけでございます。国民の皆様も非常な御関心を持って見守っておられることと思います。われわれも同様でございますが、そういう司法作用の非常に重要な部面が展開してくるわけでございますから、裁判官に対して、立法あるいは行政の側から、いささかなりとも影響を与えるようなことは慎んだ方がいい。そういう意味におきまして、静かにこれを見守っていくというのが正しい、そういう趣旨で申し上げたのでございます。
  9. 大出俊

    大出委員 もっとも、四十五年に、佐藤内閣のときに中曽根さんが防衛庁長官におなりになりまして、私もびっくりしたんだが、参議院の羽生さんの質問に陸軍だ空軍だ言い出しまして、大騒ぎになったことがございましたが、ときにそういうことをつい口からおっしゃる総理の御性格でございますから、知らぬわけではありませんが、それはそれだけにいたしますが、どうも口ではそうおっしゃるが、気持ちの中、腹の中では雑音なりと思っておいでになるとすると、これは大変な間違いでございまして、念のために申し上げておきます。  そこで、一般公務員皆さんですと、起訴をされれば休職でございます。一審の判決が出て有罪となれば免職でございます。しかも、これは懲戒免職政治家だけはということになるというのは、世間の一般通念がここまで来ると許さない。そういう意味で、しかも幾つかのルートを解明してきた今日のロッキード事件でございますけれども、いずれも有罪という判決が出ております。だから先が見えている、こう私は思っております。  私も元総理田中さんという方とは縁がありまして、私が労働組合書記長時代の、三十九歳何カ月というお若い郵政大臣でございます。徹夜で交渉をやったことも何遍もあります。人間的には好きな面もたくさんございます。だが、それとこれとは違う。明確にここで、もう一遍申しますが、崩れた土台の上にうちは建ちません、崩れた土台の上にはうちは建たない道理でありまして、だから、あなたも、キングメーカーと言われる田中さんでございますから、いろんなあなた自身の立場もございましょうけれども、それだけに、総理として、総裁として、きちっと、これは元総理田中さんに対しての、あなたの、つまりけじめをつけるという意味の身の処し方について、話し合われる必要が私はあると思うのですよ。  だから、そういう意味で、はっきりそこですれば、国会でがたがたすることはなくなってしまう。そのことも含めてあなたが御決断が必要なんじゃないか。そこでけじめがつけば、一生懸命あなた方は、行革については、中身はないのだけれども、これだけは十月十二日までに何とかやってしまいたい、あとはみんな後ろに送って、減税公務員給与も裁定もそういう戦略は要らない、長い国会ですから。その御決断がいただけないかと私も歯にきぬ着せずに率直に申し上げている。あなたも総理である前にまず人間でしょう、私もそうですが。そういう意味で、そこのところだけ一点ひとつ聞かしていただきたいのであります。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御決断という意味が何を意味するか、必ずしもよく了解しにくいところがありますが、しかし、この事件はすでに数年を経た長い間の事件でございまして、その過程におきましては関係者もいろいろな試練も受け、また、いろいろお考えになっている点もあるのではないかと思います。  結果は裁判所において明らかにされていく。日本の場合は三審制でございますから、最終的には最高裁でこれが確定する、そういうことでございますが、ともかく昭和二十二年以来政界に身を置き、かつ自民党の有力者としていままで党のためにも貢献されてきた大人物でもありますから、自分のことは、自分でちゃんとお考えになる出処進退について人から言われるまでもなく、そういう問題については自分の判断をお持ちであると私は考えております。したがって、外からとやかく申し上げる必要もないし、必ずしもそういうことが適当であるか、私は疑問に思う。やはり、すでに三十数年にわたって国会議員ともなり、選挙民皆さんといろいろ公約もし、また緊密な関係を維持してきて、代表者として活躍している方でございますから、そういういろいろな面についてはいろいろなあらゆる方面からお考えになっていることでしょう。だから、その進退についてはいかなる点につきましてもこれは御自分がお考えになることが一番適当である、そう考えております。
  11. 大出俊

    大出委員 ここで議論をしたからといって、それが予断を与えるという意味で大きな影響が起こるというようなことであれば、裁判というものは公平中立裁判はできない、そんなことはありません。また、いまあなたはそう言っているけれども、十月十二日は目の先であります。私はその意味で、いまここで回答をもらおうとは思っていないけれども、やはり国民が納得するようにしなければならない責任があなたにも私にもある。  重ねて申し上げますけれども、一般の世の中の公務員ならば、起訴をされただけで休職である。官庁に出てこられないのですよ。しかも、一審の判決が出て有罪なら懲戒免職。これこれの経歴だからこれはあなたを総理にされた方かもしらぬ。田中総理は私の首を切った人でもあるけれども、そこらのこととこれとは違うので、そういう意味総理として、総裁としてきちっとけじめをつける時期が来ると私は思うので申し上げたわけでありまして、いまお答えをいただこうとは思っていない。  国民皆さんが納得するような決断をやがてあなたがなさるべきである。そして、政治倫理確立する。そして、政治倫理委員会もつくる。政治資金規正法の懸案である改正もしなければならぬ。また、議院証言法改正も、私は何遍も詰めておりますけれども、急ぎます、急ぎますと言って、竹下さんの時代の小委員長に鈴木前総理は篤と言いますなんということまで言ったのだが、これもそのまま。ここらを全部処理をすることが本国会に課せられている国民皆さんに対する責任だと私は思っておりますから、その点だけを冒頭に申し上げておきたいと存じます。  次に、ロッキード問題にいま触れましたので、大韓機の問題に入らせていただきたいと思うのであります。  二百六十九名の皆さん日本皆さん二十八名が被害に遭われたわけでありまして、御家族にとりましてはまさに痛惜のきわみだろうと思っておりますので、私はその意味でお見舞いを申し上げたいと存じますが、それだけに国会の決議もございます、まずもって真相究明ということ、そしてソビエトに対する責任、そして、いかなる補償、賠償をソビエトもあるいは大韓航空自体皆さんに行うかというたくさんの問題がございます。  そこで、一つだけ冒頭に申し上げたいのでありますけれども、総理大韓機の今回の事件についで、あの地域における一触即発という状態、潜在的にという言葉を使っておいでになりますけれども、これが御理解いただけただろうと思う、こういう発言をされました。  ここで言われる一触即発というのはどういうことですか。私は、一触即発というと、これはどうも戦争が起こるのじゃないかということなんでありますが、いかがでございますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 普通の国や普通の常識におきましては、民間航空機武装も何も持たない飛行機が紛れ込んできた、そういう場合には、これはあらゆる手段を通じて強制着陸させるとかそのほかのことをやるべきものなのであります。しかし、今回の事件は、非武装民間航空機で、しかも、いろいろな情勢を見ますと、航空機の方は知らない情勢で撃墜された。そういうようなことは、およそ人道の面から考えてみても、あるいは国際法の面から考えてみても考えられない。しかし、そういうことをあえてやるというのは、よっぽど国防上重要な問題があるのか、あるいはそういう厳命が来ているのかよくわかりませんが、われわれからすれば非常に野蛮な、ある意味においてはいわゆるシビリアン・シュープレマシーとかシビリアンコントロールというものか行き届いていないのではないか。国防国家みたいな、戦争前の軍国主義日本みたいな感じもいたしまして、あそこがそういう状態であるということは潜在的には一触即発である、そう申し上げた次第でございます。
  13. 大出俊

    大出委員 私は、通常、一触即発と言えば、一つ間違えば戦争が起こる、潜在的にとおっしゃったが、これが顕在化すれば、一つ間違えば戦争だということになる、こういう発言だと理解をしているわけであります。  ところが、ここで、長女、二児のお母さんだった方を亡くされた台湾の方でございますけれども、作曲家の方、陳錦江さんとおっしゃるのですか、この方が北の海においでになって、「ソ連のやり方に憤りを覚えるが、パイロットが民間機と知って撃ち落としたとは思えないのです。あのパイロットだって親も妻も子供もあり、人の心の痛みは知っていた人だと思う。憎しみ合いからは平和は生まれない。人間の性が善であることを私は疑わない。私は、こういうことが二度とないように互いに譲り合って平和な世界を築き上げるようにみんなが努力すべきときではないかと思うのです。」と静かに語ったというのです。東洋の道義を語ったというのであります。  私は、これは単に反ソ感情をあおるということではなくて、あなたが一触即発とおっしゃる極東、この地域における大変な緊張をさらに激発をするということでなくて、緊張をどう緩和するかということを考えるのでなければ、政治というものは存在しないと思っているわけでございますが、いかがでございますか、簡単にお答え願いたいのです。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 お亡くなりになりました方々の御家庭の皆様方には私も心からお悔やみを申し上げたいと思いますし、御家族の皆様方に対しましては、政府としてもいろいろ損害賠償そのほかの面につきまして御協力させていただいておるつもりでございます。  いまの台湾の方の御発言は、非常に東洋人らしい、奥ゆかしいお言葉であると拝察をしておりますが、しかし、国家間の問題やら今後の民間航空機の安全を維持していくという大問題、公的な問題という面で考えますと、やはりけじめをつけるところはけじめをつけるのが国家としての責任であると考えておる次第であります。
  15. 大出俊

    大出委員 したがって、私は、基本的には一触即発状態をつくってはならない、戦争日本が巻き込まれたくはない、だから緊張を緩和するその方向への日本の努力が必要だと申し上げているわけであります。  そこで、私、外務省の皆さんに申し上げましたが、第二次大戦後、この種の侵犯に基づく事故、撃墜あるいは銃撃、そして国際的な問題になったのは六回ございます。この中で、私も実は今回の事件で腹に据えかねているのが一つございます。それは、一九六一年の二月に、フランスがアルジェリア近辺につくっておりますA17、防空識別区というのがある。これはフランスの防空識別区であります。ここに当時のソビエトの国家元首であるブレジネフ氏を乗せた、モロッコに向かっていったソビエトの民間機、これが領空侵犯をした。したがってフランスは、このソビエトの民間機を銃撃をした。たまたま幸いに機体には当たらなかった。ところが、この後、ここに書いてありますけれども、ソビエトは、民間航空機に対する銃撃はどのような場合であっても断じて許されないと厳重にフランス政府に抗議をした、こうなっているのですね。これは私は注意を外務省の皆さんに喚起しておいたのですが、だから、ついこの間、グロムイコ・ソビエト外相がミッテラン氏に会ったときに、ミッテラン大統領はきわめて不快である、こう開口一番言っている記事が伝えられております。  これを裏返せば今回の事件と反対でございまして、この事件でいかなる理由があろうと、どのような場合でも民間航空機に対する銃撃というのは許されないと厳重に抗議をするというソビエトならば、理由はいろいろありましょう、ありましょうけれども、われわれの主張、国会の決議にもございますが、素直にこれはソビエトの側は認めるべきだ。その意味で、私はまことにもってこれは腹に据えかねる、こう申し上げたわけでありますが、外務省、私、これ御指摘をいたしましたが、お調べになりましたか。
  16. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 事実関係につきまして私どもの承知しているところを申し上げますと、一九六一年の二月九日に、いま大出委員より御指摘がありましたようないわゆる銃撃事件というものが発生したというふうに承知しております。  事実関係の詳細については、私ども、公表された雑誌等に出ております記述以上承知しておらないわけでございますが、ソ連側がフランスに対して主張いたしましたことはただいま大出委員の御指摘のようなことでございまして、これに対しましてフランスは警告弾を撃っただけだというような応酬があって、そのままに終ったというふうに承知しております。
  17. 大出俊

    大出委員 いかにもこれは身勝手過ぎますのでね。私は、本院に議席をいただきましてからソビエトという国には一遍も行ったことはございませんから、また、ソビエトの方、どなたにも会ったこともございませんからわかりませんけれども、これはいずれにしても身勝手過ぎる。何としても、二十八名のわが同胞が亡くなっておられると見なければならぬ状況でございますから、そういう意味でこれは捨てておけない。この点は追及すべきだと私は実は思っている。このことを念の止めに申し上げたい、こう思って取り上げたわけであります。  さて、具体的な中身に入らせていただきますが、国会決議がございまして、事故調査団、これは国際機関ICAO等を指すのでございましょうが、大韓機の領空侵犯、大変な、時に五百キロと言われ、時に六百五十キロと言われる。五年前の、ムルマンスクのときが六百キロでございますが、これらの真相究明をする。その意味では、現状犯人が二人いると書いている新聞がございます。一方はソビエトであり、もう一つは、こんな大変な領空侵犯をムルマンスク事件以来重ねてした大韓航空である、とういうことなのでございますが、そちらの方にも補償、賠償の責任がある。  ムルマンスク事件というのは、菅野義隆さんという方が亡くなっておられますけれども、これは横浜の方でございますが、裁判を五年やっていてまだ片づかない。外務省は最初は非常にいいことをおっしゃっておったようでありますけれども、それっきり。自力で懸命にやっておる。五年、ところが、今回のこの事件が起こったら、いきなり外務省から電話がかかってきて、その後どういうことになっていますか。ふざけたことを言っちゃいけない、そういう無責任なことは許しませんよ。  そこで、今回の事件も、後でそこを申し上げますが、まず真相究明という意味で承りたいのですけれども、稚内の通信傍受施設がございます。今回クローズアップされました。これは米軍のものを自衛隊が肩がわりした。本来米軍のものであります。三沢の米軍基地にいわゆる象のおりと呼ばれる直径四百メートルの巨大なおりのようなアンテナがある。傍受施設であります。その出先機関がいまクローズアップされている稚内の傍受施設であります。したがって、稚内でキャッチした情報は米軍に直結している。そのまま三沢に入っていくわけであります。つまり、これは日本の情報であると同時に米軍の情報である。間違いないでしょう、防衛庁長官
  18. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国とアメリカ合衆国の間には日米安保条約がございます。(大出委員「簡単でいいです」と呼ぶ)。そして、わが国は独立国といたしましてわが国の自衛のためにあらゆる種類の情報につきましては常に関心を持っておるわけでございますが、同時に、わが国を防衛する条約上の義務を持っておりまする米側とは常に緊密にこの面につきましても連絡をとり続けておるわけでございますが、いついかなるときに、いつどういう種類の情報をお互いに交換し合っておるかというようなことにつきましては、この場ではこれは性格上明らかに申し上げるわけにはまいりません。
  19. 大出俊

    大出委員 これはいいですか、自衛隊の、名前を申し上げてはまずいから言いませんけれども、おたくの幹部の方が、早い時期に交信テープがひとり歩きした、こっちが知らないうちに、アメリカのレーガン大統領が、大統領の部属で議会関係を呼んでテレビに映している、そして、ちょうどゴールデンアワーと言われる一番視聴率の多いところでこれをテレビに流した、知らなかったと言っている。危険なことであります。統幕議長さん、村井さんですか、記者の方が聞いておりますけれども、秘中の秘だから言えない、言えないけれどもツーカ−の関係である、カウンターパートだ。だから、日本の情報であると同時に米軍の情報でしょう。その点は指摘しておきます。  ところで、米軍の情報というのは、日本と比較すれば収集能力はけた外れに高い。それが日本の情報だけでわかったんじゃない。サハリンのソ連基地からソビエト本土への交信がこの時期に頻繁に行われておる。米軍は暗号無線の傍受は非常に進んでおる。ソビエトの基地問、サハリンと本土、米軍は全部傍受しておる。だから、シュルツ国務長官の発表によると、「午前三時三十分、大韓航空機は高度五千メートルにあると報告され、午前三時三十八分レーダー画面から消えた」、発表したとおり。時間のずれがある。自衛隊の方でとっております交信記録その他みんな私出していただいておりますけれども、自衛隊の方のレーダーの航跡というのは三時二十九分までです。シュルツさんの言っているのは三時三十分を過ぎるところ、三時三十八分、ここのところの八分、九分というのは大変大きなところです。五千メートルまで落ちるところまでちゃんと知っている。初めからわかっておる。こういう状況にある。  これに対して自衛隊の制服の方は何と言っているかというと、シュルツ長官が断言できたのは米国がソ連基地の無線を傍受していたからである、はっきり言っている。ここで言うレーダー画面というのはソ連のレーダー画面のことであると言っている、非公式には。名前は申し上げませんけれども。そうでしょう。だから、今回アメリカが感謝決議すると議会は言っているけれども、それはアメリカの持っている情報を全く出さないで、手のうちを見せないで、自衛隊の情報であると同時に米軍の情報というこの情報で十分だという判断ができた、日本の方はこの五、六年おくれていると嘆いているけれども。ここなんですよ。  そこで、こんなに早い時間にわかっていたのに、九月一日の夕刊各紙は無事と報じたでしょう。これは一体何ですか。御家族の皆さんにすれば、ここにたくさんありますけれども、皆抱き合って泣いて喜んだ。「乗客・乗員は無事」「サハリンに強制着陸」、大きな見出しですよ。二百六十九人全員無事。そうでしょう。各紙みんなそうです。しかも、CIA情報でしょう。あなた方は知っていて何でこういうことにさせるんですか。私は、この間、アメリカが情報操作をしたとしか思えない。  そこで聞きたい。時間がなくなっておりますが、成田の管制塔から谷川長官大韓機行方不明が伝えられたのは一日の午前五時前。そこで、あなたの方は直ちにレーダー航跡の調査を指示をした。約二時間後にサハリン上空の航跡図でソ連機の形跡を発見した。サハリン上空の航跡図を果て、ソ連機の追跡でございますが、発見ができた。そして、防衛庁は航跡図から撃墜と判断をした。これはその後二時間です。午前五時前ですよ、連絡が長官に行ったのは。そして、午前十時になって夏目次官が後藤田官房長官に報告をした。午前十時。そして、並行的に行われたのはソ連パイロットの交信記録の解析。これは午前十一時に交信記録の中で撃墜が明確になっている。正午には日本語に訳された記録ができた。できているけれども記者には発表しない。これはいまだかつてないんだ。翌朝の未明だよ、記者に配ったのが。そうでしょう。(発言する者あり)そして、いま向こうで不規則発言がございましたが、安倍外務大臣が発表したのは午後の八時十五分でしょう。十時という段階にはこれは関係各省庁みんな知っておったんだ。  私は、亡くなられた方がたくさんおいでになるというのになぜこういうことをなさるか。そして、わかっていながらなぜその日の夕刊にかくのごときぬか喜びをさせるんですか。これはずいぶん酷な話ですよ。こういうことがあってはいかぬと私は思うからこの点を申し上げているんだが、間違いないでしょう、防衛庁長官。たくさんの記者の方が聞いているんだから。
  20. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 所沢にございます東京航空交通管制部、これは運輸省の機関でございますが、それからわが方の入間の航空自衛隊の中央救難調整所に異常の照会がございましたのは、ただいま御指摘のあったように九月一日の午前四時五十六分でございまして、それから後、わが方はあらゆる手だてをもちまして異常の確認を始めたわけでございます。そして最初に、これまたただいま御指摘のございましたように、レーダー航跡が、あるいはこれが大韓航空機の航跡であろうかと思われる三時二十九分で切れているところを発見をいたしました。これはもうすでに航空機が撃墜をされた後になります。その後で、またこれも御指摘のございましたように、さらに交信記録をわが方は解析をいたしたわけでございます。それに少々の時間を要しております。  なお、わが方といたしましては、余りにも今回の事件が重要かつ異常であるという判断をいたしまして、ただいま申し上げましたような資料に基づきまして、さらに一層各情報について鋭意この収集に努めておったわけでございまして、その間が、ただいま先生の御指摘のような時刻が刻々と移っていった時間でございます。わが方が得ておりました情報は、一つはレーダー航跡でございまして、これは先ほど申し上げましたように三時二十九分で切れておる。それからもう一つが交信記録でございます。  この二つは、ただいま申し上げましたように、もう一遍繰り返して申し上げますが、運輸省の航空交通管制部からわが方に異常の照会がございました午前五時前後以降私どものやりました作業でございまして、これを公にするかしないかは、余りの事柄の重大性、異常性から、内部でさらに確認を急いだりいたした作業が続いた、こういうことでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 稚内の傍受施設というのは陸幕調査部二課別室、私はかつて二別、こう言っていたことがありますが、これは陸幕の陸幕長の傘下にない、不思議なところであります。室長は一体だれかというと、いつも警察庁から出向しておられる方、警視正であったり何かされる方です。そして、実際の室長はだれかというと、内閣調査室長であります。これはどこにつながっているかというと、内閣官房長官。不思議なことです。  一日の午前十一時過ぎ、ここではもう官房長官のところで全部わかっている。関係各省全部知っていた、こういう状況ですね。聞いてもどうせお認めになるに違いないので私が申し上げているのですが、これは全部調べたのだから間違いない。時間がありませんから言いませんが……。  ところで、情報の交換から何からかにから米国の言うとおりやっている。そして、夜の八時何分まで、アメリカの方が決まらないから待っている。おたくの方のさる人にいたしておきます、私のことだからたくさん知った人がございますから。さる人のお話によると、恐らくアメリカはソビエトと話をしていたのでしょうと、こう言う。そう思われる節が次々に後、出てくる。これは大国のエゴですよ、ソビエトもアメリカも。これじゃ事前協議もへちまもあったものじゃないじゃないですか。大変危険だ、こう申し上げたいわけであります。  官房長官に承っておきますが、官房長官、何時に知りましたか。いま申し上げた内閣調査室、二別から入ってきているのを何時に聞いたですか。それだけで結構です。
  22. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 第一報は一日の八時半ごろでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 朝ですか、夜ですか。
  24. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 朝でございます。私は、私の秘書官から、行方不明の韓国民間機がどうもそれらしい、こういう報告でございまして、まだその段階では撃墜云々ではございませんでしたが、その後、十時ちょっと前でございましたが、これはソ連の軍用機によって撃墜をせられた公算が大きい、こういう報告でございまして、防衛庁の次官からは十一時に同じような報告を受けました。
  25. 大出俊

    大出委員 そうでしょう。十一時、私が指摘しました。午後は一時ごろからあなたのところに各種情報がいっぱい入っている。それもよくわかっています。八時十五分に、夜の八時ですよ、安倍さんが発表された。朝の八時前にあなたは聞いておられた。それならば強制着陸などということは初めから、本来ない。そうでしょう。この日の夕刊は全部、強制着陸、乗客二百六十九人全員無事、日本人も全員無事、こうでしょう、各社みんな。しかも、CIA情報。これじゃ政府は要らないじゃないですか。こんなばかなことはないでしょう。遺族の皆さんには、本当のぬか喜びをして、奈落の底にぱっと落とされた気持ち、その慟哭、恐らく鬼哭啾々たるところがあると私は思いますよ。これはあきらめ切れませんよ。なぜこういうことをするか。いかに大国の情報操作であっても許しがたい。だから申し上げた。指摘しておきます。  次に、航空自衛隊北部航空方面隊、司令部は青森県の三沢。非常呼集を発令したのは何時ですか。
  26. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま手元に資料がございません。すぐ調べます。
  27. 大出俊

    大出委員 じゃ、私の方から申し上げておきましょう。違っていれば後から直してください。  稚内の、つまりレーダースコープから大韓機が消えた、さっき申し上げましたように三時二十九分であります。午前五時という時点で航空自衛隊はDEFCON3——DEFCONというのは1から5まであります。5が一番軽い。1は大変、戦争。3というと大変高い。これは一体何か。そしてわずか、大韓機がレーダースコープから消えた二十九分から一時間半とたたない。そして、第二航空団、これは北海道千歳、三〇二です、部隊が。F4ファントム、ここは。二〇三、F104。第三航空団、三沢、三と八、これはいずれもF1、四個戦闘飛行隊、計七十二機の戦闘機がいつでも発進できるように、パイロットに非常呼集かけて、整備員も緊急招集されて待機。  海上自衛隊はどうしたかというと、このDEFCONとあわせまして、どんどん海上自衛隊の船が出ていきましたですね。根室沖に勢ぞろいです、五隻。海上自衛隊大湊地方隊の第三十二護衛隊から護衛艦「おおい」千四百九十トン、第三十五護衛隊から「いしかり」千二百九十トン、「ゆうばり」これも同じトン数、第四十七護衛隊から掃海艇「おうみ」三百八十トン、それからまた第二航空群、青森の八戸でございますが、P2J対潜哨戒機、これ、ずっと出ていった。朝ですね、その後すぐ。これは一体何か。事故現場にというなら方向が全く違う、根室沖なんだから。そうでしょう。  しかも、このDEFCONというのは米軍と連動ですよ。私は現地をルポしてきた方々に聞いた。だから、船の名前までその方々言っておいでになる。これは私は、国民の立場からすると非常に心配であると同時に、ここで申し上げたいのは、この時間に、五時という時点に非常呼集がかかっているということは、普通何がどういうふうにレーダーから消えたのかわからぬ、どこの飛行機かわからぬというのなら、そんなことできないでしょう。どこの飛行機がどういうわけであそこまで行って、どうして落とされたかというのがわかってなければ、さっきどなたかお答えになった、長官も後藤田さんも答えられたけれども、一生懸命調べてみなければわからなかったというのならば、そんなこと、DEFCONかけることはないでしょう。  だから、言いたいのだ、私は。とめられたのではないか。わかっていたのではないか。外交関係あるんでしょう、ソビエトとだって。気に食わぬけれども、ソビエトっていうのは、私は。だけれども、言うこと言ったらどうなんですか、そのときに直ちに。そういうやり方というのは、私は本当に腹に据えかねる。いまの点はひとつお調べをいただきたいのであります。わからぬはずはない。レーダースクリーンから消えてわずか一時間半足らずのところですでにDEFCONがかかるというのは、何がどうなったかわからなければできないでしょう。  お答えになりますか、否定されるならそれでもいいが。
  28. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のDEFCONの発動をいたします場合には、これは防衛庁の方に報告が上がることになっておりまして、その報告は上がってきておりません。  それからもう一点、海上自衛隊の出動の件につきましては、これは当初救難対策本部の方から、根室沖の方向に、本来の航路に沿った地点での墜落の可能性もあるということで出動の要請がございまして、私どもの方といたしましても海上自衛隊から数隻の艦艇が出動したという経緯がございます。
  29. 大出俊

    大出委員 半分お認めになりましたね。方向が違うのですよ、明確にこれは。根室沖ですよ。場所もわかっておる。まあそう言わざるを得ぬかもしれない。  ところで、次に入ります、時間がありませんから。  ソビエトはなぜ民間機を撃ち落としたか、ここにちょっと問題があります。時間がありませんからずらっと私の方で言いますが、たくさん申し上げたいことがございますので、こればかり時間がとれません。  フライトプラン、飛行計画ですね、これが間違っているという説が一つある。一けた違った。ところが、これはある新聞社がフライトプランのコピーを入手して、私も見せていただきましたが、全然間違ってない、だからこれは消えます。  コンピューターのインプットミス、INSの。INSは私直接こう入れていただくのを見たりもしておりますが、三台ある。しかも、これは一つ十億円するのですよ。月まで人間を運ぶのです、INSというのは。そんなに正確なものです。しかも、義務通報地点というのは全部で九つですけれども、こっち側は七つ、ニーバ、ニッピなんというところがいろいろ問題になっております、ノッカというところが問題になっておりますが、七つございますが、慣性航法でございますから、打ち間違いがあっても、つまり物体が、下におもりがあって上に物体があって飛んでいくとすると、飛んでいる方がそれるというと、こっちは真っすぐいこうとする慣性を持っている、だからこの誤差でもって戻ってくる。これはもうミサイルの原理ですよ、慣性航法。だから、どこか途中間違っても、正確に入っているところに戻ってくる。向こうに行ってしまいはしない。はっきりしている。そして、いろいろな方に聞いてみましたが、このコンピューターのインプット、ミス、INS、これについては、もし事故があったとしても、いま、向こうに行ってしまうなんていう事故は天文学的数字だ、ないに等しい。そうすると、これも消えていく。  次に、INSのセンサーの部分。ジャイロがあります。つまり、盤がありまして、そこへ三つ方向が決まっています。真北とか真東とか垂直とか決まっている。これが傾くと、地球にたとえるわけですから、わずかの差でも非常に大きな誤差が出る、こう言われておる。  ここで一つ承っておきたいのですが、先例がありますけれども、この場合にアラームランプがつきますかつきませんか。つくと言っている人たちとつかないと言っている人がいる。ランプが赤くつく、いかがでございますか、運輸省。簡単に答えてください。
  30. 山本長

    山本(長)政府委員 インプットミスがあれば、アラームランプがつくということになっております。
  31. 大出俊

    大出委員 つくと解説している方が正しい。アラームランプがつけば、そこに三人いるのだから、操縦士、副操縦士、機関士がいるのだから嫌でもわかる。そうすると、これもない。消去法で消していきますと、みんな消えていく。  あと燃費の節約。これはアメリカの新聞が書いております。突然にとんでもない方向に行ったのじゃないのです。間違いなくちゃんとソウルを目指している。そうすると、アメリカの情報当局の話によれば、ソビエト領空を通る、そして燃費節約で行ってしまうということを否定はできないという言い方をしていますから、これは何がしかの問題が残る。これはここに意図ありになる。  私がここで申し上げているのは、ここに意図ありということになるのだとすれば、これは撃ち落としたことについてはまことにけしからぬけれども、意図を持った大韓航空の責任はまさに大変に重大だという部分がある。そうでなくて、単純なミスでもって知らずに入っていったというものを撃ち落としたのなら、これは遭難ですから、逆にソビエトに一救助義務がある。大変大事な場面です、これは。  消去法で消していきますと燃費節約、だから入っていった、ここに意図あり。これはアメリカ情報当局のというアメリカの新聞、ニューヨーク。タイムズでございましょうが、これを見ますというと、疑いが残る。  ハイジャック。ハイジャックというのは、ハイジャックボタンがいっぱいありますからどこか押せる。どこにも通信施設に入ってきていないのだから、なかった。  電波妨害、これはINSは左右されませんけれども、コンピューターは大きく左右されるという意味で、向こうにソビエトが引きつけたのだろうなどと言っているのはたった二人。一人は大韓航空社長、小佐野さんとも盟友、趙重勲でございます。この方。もう一人は、趙重建という副社長さん。日本に来ておっしゃった。二人同じことを言っている。きわめてミステリアスなことだ、ソビエトはそういう機器を開発したのじゃないか。みずからの責任逃れをされてはいけないのでありまして、これもどうも信憑性がない。  最後にスパイというのが残る。だが、ここには一つ大きな疑問がある。二百六十九名の方を乗せてそんな危険なことを果たしてするかという意味で大きな疑問がございます。しかし、消去法で消していくと、ここに意図ありしか考えられない。しかも、起こったこの事件二つ。五年前のムルマンスク事件、六百キロ領空侵犯。今回五百と言われ、六百と言われ、六百五十と言われるが、いずれも大韓航空でございます。  以上私申し上げましたが、ここでお答えをいただきたいのでありますけれども、長い御答弁は要りません、時間がないから私が申し上げたのですから。もしも、私がいま申し上げたことについてもっと的確に一体何が原因だということがおわかりであればお知らせいただきたい。運輸省の皆さん
  32. 山本長

    山本(長)政府委員 先ほどお答えしたものについて、若干不正確な点がございますので御説明いたします。  INSの操作のミスがありますと、アラームランプがつくということでございます。操作のミスはなくてインプットミス、データの入れ間違いというものがありますと、その場合にはアラームランプはつかない、こういうことでございます。  もう一つ、考えられることについてはいろいろございますけれども、現在のところ全くわかりません。
  33. 大出俊

    大出委員 御専門でいらっしゃる航空局長さんが全くわかりませんと言われると、どうもこれはぬかにくぎ、のれんに腕押し、聞いたってしょうがないことになる。調べてくださいよ、私もずいぶん時間をかけて苦労して調べたんですから。こういう問題はあなた方が机に座っているだけじゃだめですよ。  さて、そこで焦点を申し上げましょう。  消去法で消していきますと、民間テレビの皆さんの中でも一生懸命調べている方がたくさんおりまして、青木日出雄さん、これは防衛庁におられた方ですが、皆さん出てきていろいろおっしゃっておられる、研究しておられます。いろんなことを懸命に分析をしてみていま私は申し上げている。どうも天文学的数字、確率は本当にないに等しい。  そうすると、残るのはさっき申し上げた二つしか残らぬことになるのだが、二つの一つの、二百六十九人の方を乗せていてそんなことができるかという問題が残ると申し上げている。消去をしていくとそこにいってしまうのです。  そこで、東京国際対空通信局、成田でございますが、大韓機は午前二時十分にニッピ通過の義務通報をした、ニッピを通過をした、新聞に出ていましたね。ところが、米国は、シュルツさんの発表でございますが、零時五十一分段階ですでにコースを大きく外れていた。零時五十一分ですよ。そうすると、二時間までは——仮に一時間四、五十分前から外れていた。ニッピじゃないのです。ニッピは通っていないのです。シュルツさんの公式発表。これは一体どうなった。もっと向こうから、二ーバあるいはもっと先から大きく外れていたことになる。いいですか。義務通報点というのは、必要なところだけ申し上げます。二つだけ省略しますが、ベット、ナビエ、ニーバ、ニッピ、ノッカ、ノッホー、ナナック、これからソウル、こうなる。そうすると、ニーバ、これよりまだ向こうから外れていたことになるのですね。そうすると、これはアンカレジを立ってどのくらいから外れたかということになる。  ところが、ここで不思議なことに、これも軌を一にするソビエトのオガルコフ参謀総長の発表によりますと、いいですか、その前にもう一つつけ加えておきますが、シュルツさんの発言の中には、零時五十一分段階ですでに大きくコースを外れてソビエトのレーダーにとらえられていた、アテンドという言葉を使っていたようですけれども、とらえられていた。  さてところで、オガルコフさんの方は、ソビエトの方は、アンカレジを離陸直後からコースを外していた。ペトロパブロフスク、カムチャツカ半島の突端の軍港、この北東八百キロの地点では五百キロもコースを外れている。そうでしょう。両方とも、外れていたことについては一致している。そんなに大きな航跡の違いはない。そこで、そんなに外れていたのにアメリカのレーダーがとらえていないはずはないのだから、なぜ一体どこかで警告をしないのかという問題が残ります。  そこで、それを立証いたしますが、アンカレジの空港には皆さん行っておられますけれども、航空管制センターが十キロばかり離れたところにございます。ここでほとんどわかる。ここでわからないのは、アンカレジの町の郊外にエルメンドーフといいますが、米軍のエルメンドーフ空軍基地、ここに大変りっぱなレーダーがある。半径二百キロ以上ございましょう。一万メートルの四百キロぐらい直径では見えるのですけれども、エルメンドーフの基地、この二つで調べれば、この二つの情報が入れば、アンカレジを飛んだときから外れていたのか、義務通報点とこから外れたのか明確にわかる。子供でもわかる。ところが、さて取材班が行ったらワシントンから箝口令がしかれている、アンカレジはまさに箝口令の町であったと言っておられる。どこに行っても全部断られてしまった。アメリカがこれだけいろいろおっしゃるならば、なぜとこのところを明らかにしないのか。オガルコフ氏は、飛び立ってすぐ外したと言う。シュルツさんは、ニッピのはるか向こう、零時五十一分から外れていたと言う。なぜこれがはっきりしないのですか。一致する点も出てくるでしょう。  それからもう一つ、アラスカを出ましてアラスカ半島を飛んできます飛行機は、私が前に三原さんと飛んでいった一緒のところを飛んでいくんだから。この前一緒に行ったところを通る。だれだって知っている。アラスカ半島を出外れるとアリューシャン列島、アリューシャン列島を出外れるところに玉砕の島アッツ島があります。アッツ島のすぐ手前に小さな島がある。これをシェミアという。シェミア島。ここに米軍の強力なレーダーがあります。有名なレーダーであります。シェミア・レーダー、こう言っております。これは五本の航空路、R20、ロメオ20でございますが、この五本の航空路全部入れている、はるか横の方まで。だから、日航のパイロットの方々に聞いてみたって、少し外れるとソビエトに三分ぐらいで飛んでいっちゃいます、三十キロぐらいしか離れてないんだから。このシェミア・レーダー、軍用ですけれども、民間に開放して一々警告をしてくれる。だから、その点はシェミア・レーダーには感謝をしながらいつも飛んでいる、こう言われる。必ず通報する、連絡が行く、外れるぞ。そうでしょう。  一体、今回の〇〇七——〇〇七という名前が私は気に食いませんが、この大韓機をこのシェミア・レーダーでもしとらえていないんだとすれば大変なことになる。もっと北の方から思い切ってコースを外してカムチャツカに入っていったことになる。物理的にそうなる。ところが、今回に限ってこのシェミアは一言も言わない。シェミア情報はない。ゼロ。調べてみて、専門家の方とも話してみて、こんなばかなことはないでしょう。しかも、すぐその前にソビエト領に入ります向かい合ってコマンドルスキー島、コマンドルスキー諸島といいますが、島ですが、ここにソビエトのコマンドルスキー島のこれまたりっぱな軍用レーダーがある。向かい合っている。どっちか通らなければカムチャツカに行けないのですよ。  そうなると、大国のエゴじゃないけれども、アメリカもソビエトもシェミアのレーダー、コマンドルスキー島のレーダー、ここでとらえている航跡がわかれば、どこからどういうふうに飛んでいったか一目瞭然にわかる。政府はなぜこれを出させる努力をしないのですか、承りたい。国民の疑惑があるんだから、被害に遭われた方の御家族の心情もあるんだから、真相はきちっと究明する義務がある。決議がございますから政府にありますよ。お答えください。  外務大臣、安倍さん、ひとつあなた、おわかりいただけなければそれでいいんだが、やはりあなた、これは外交ルートを通じて確かめる義務がありますよ。そういう意味でお調べいただけますか。
  34. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま初めてあなたにお話を聞いたわけですから、十分検討いたしまして……。アメリカと密接な連絡協議はいたしております。われわれの判断では、これまで発表されましたように、日本に関してはもちろんでありますが、そうした大韓航空機については、撃墜寸前まで大韓航空機はそのことを知らなかった、既定路線を飛んでおったということのみ知っておるだけであります。しかし、いまのお話につきましては、アメリカとは連絡をとってみます。
  35. 大出俊

    大出委員 私はどうも物事を、一応これはどうなのかなと思って調べるくせがございます。へきがございます。その私のへきからいたしますと、へきというのはくせですが……(「辟易」と呼ぶ者あり)どうも辟易とおっしゃるけれども、実はどうもひっかかりますのは、シェミア・レーダーの情報というのはいままでの例からいくと出している。今回に限り黙して語らず。出てくると、どうもアメリカにとって都合の悪いことでもあるのじゃないか。  たとえば、ここから先は私の推理でございますが、大韓機がどういう理由か知りませんけれども外れて飛んでいく、カムチャツカに入っていくのを、いかなる反応が起こるかなと、飛行機はどこから飛んでくるかとか、どこのレーダーがつかまえるかとか、基地間の通信はどうなるかとか、大変に神経を使って情報合戦をやっているわけですね。それを見ようなどという気があったとすれば、これは見過ごしたことになりますから、レーダーに入っているのに。いつも日航だの何かはたくさん注意されているのに。そうでしょう。そうすると、何かがそこにあったのではないかという、そういう疑問を私は持ちます。そういう意味で、何で領空侵犯をどこかでとめられなかったかというのが皆さんの悔いになっているのですから 私もそうですが、そういう意味でさっき自衛隊の方を申し上げましたが、そういうわけで、ぜひひとつこれはお調べをいただきたいと存じます、御存じないのでございましたら。  それから、稚内の日本のレーダーというのは、限られた範囲しか見ていない。これも一万メートルなら一九千メートルぐらいが民間機の場合はICAO条約等によりまして規定でございますが、だけれども、一万メートル近くに行っているとすれば、四百キロぐらいはとれるわけであります。しかし、その範囲であります。そうすると、このソビエトとアメリカの大国のエゴをひとつ砕いていただいて、いま私の申し上げた焦点をはっきりさせる、これがいま最も大事なことだ、こう私は思っているわけであります。  そこで、もう一つ。〇〇七機はRC135と一緒に飛行するなど奇妙な行動をとっていたとオカルコフさんが言う。レーガン大統領はすぐこれを受けて、いや、飛んでいた、こう言う。オカルコフ氏が七機も八機も飛んでいた、こう言うのです。レーガン氏が言うのは、通常の飛行をしていた、偵察活動をやっていた。あらゆる電波をキャッチするのですからね、RC135というのは。これはボーイングの707の改造型です。ムルマンスク事件のときの大韓機はこのRC135と同型の707でございましたが、これは後ろから見るとわからない。尾翼を見るとわからない。前を見るとわかります。後ろを見ると、方向舵その他を見てもわからない、そういう性格のものであります。そこでアメリカ側が直ちに受けた。そうすると、後尾から見ているとどうも間違ったのじゃないか。二機同一飛行をしていた、こう言うのです。ソビエトは、一つ上にいた、大韓機の上にRC135が、こう言っている場面がありますが、そこでRC135は帰ってきちゃった。そうしたら、〇〇七の方はそのまま入っていっちゃった。だから、ソビエトは偵察行動、偵察機が入ってきたと考えた。  そこで、さてここに一つ問題がある。アメリカ側の発表によりますと、明確にソビエトはRC135と誤認をしたんだ、なぜならば、アメリカがあらゆる情報を総合してみたところが、八〇五だと思いましたが、交信記録にございますけれども、撃墜した飛行機、これはスホーイ15でございますが、八〇五ですね、八〇五のパイロットが一番近づいたのですが、それも大韓機の高度に乗っていない、六百メートル下しか飛んでいない。三機迎撃した、近寄った飛行機いずれも大韓機のコースより上に行っていない、下から見たら747だとはどうしても料断できないとアメリカ側が言っているのです。ジャンボ機と見分けることはできない、ホワイトハウス、国務省及び国防総省の高官がそういうふうに言ったというのです。ニューヨーク発です。まさにここのところ。  さて、そこから一歩突っ込んで、何時何分の時期に、何時何分から何時何分まで同一飛行をしたのか、アメリカ側は発表してないでしょう。ここのところは外務大臣、どういうことなんですか。聞いてみたらどうですか。
  36. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカ側の発表によりましても、RC135が偵察飛行をしておったということは認めておるわけですが、大韓航空機が撃墜された時点においては、アラスカの基地に帰投しておるということも発表いたしております。  また同時に、このRC135といまの大韓航空機、私はRC135の現物は見たことはありませんが、写真その他で判断をいたしますと、これは十分判断し得るのじゃないかとわれわれ常識的に考えても思います。大きさから違いますし、と同時にまた、ソ連のパイロットは目視できたわけですから、二キロ程度までは近づくことができたわけですから、これは完全に識別ができたはずだ、こういうふうに思いますから、私の考えでは、そういうふうに軍用機と誤認をするということは常識的にはあり得ないと考えざるを得ません。
  37. 大出俊

    大出委員 アメリカ側が流している情報なんですよ、これは。いいですか。六百メートル下を飛んでいた、初めからしまいまで同一コースに乗ってないという。そうすると、僕は両方とも調べてみましたからよく知っていますが、確かにわかりませんですね。747は七十メートルありますよ。ところが、片方は四十一メートルちょっとです。しかし、尾翼、水平翼その他全く一緒です。頭が違う、明確に。頭を見れば一遍でわかる。そういうことですから、これがあえて合わしているのやらわかりませんから、そこらのところを、真相究明という国会決議があるのですから、六百メートル下を飛んでいて終始同一メートルには行っていないというのだから、確かめていただきたい。あわせて聞いていただきたいのです。  そこで、何発に一発か曳光弾が入っているロケットを撃って警告をした、しない。最初発表された、あなた方の未明に発表されたこの交信記録によりますと、八〇五が言っているのは、「十分時間はある。」となっている。ここらは変わってきていますね。それから、その後で聞き取れないところがあった。「十分時間はある。」というところは、「彼らは当方を見ていない。」アニメイニー・ニエ・ビジャット、こういうことになるのだ。だから、これは入れかえた。アメリカが入れかえた。次に聴取不能の部分、ここで「機関砲を連射する。」ダーユ・オーチェレディー・イス・プーシエック、こうなっていますね。これを見ると、つまり機関砲を発射した。これを解析をして、ソビエトが言ったら、オガルコフ氏が言ったら、ほど経てアメリカが、日本の交信記録では低くて聞き取れないのだけれども、解析をしてみたら機関砲を撃ったということになっていると追加したですね。  ここらが、さっき私が申し上げたように 長い時間たって発表した間にそういう意味の情報操作、皆さんの方の防衛庁の方が言っておりますけれども、米ソ間の話し合い、こういうことになっていた。ここらは非常に私は納得しかねるのでございまして、だから、そこらのところはぜひひとつ安倍さん、確かめていただけませんかね。さっき私が申し上げた六百メートル下を走っていたと言うのですから。いかがですか。向こうの情報なんだから。
  38. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 六百メートル下を飛んでおったというのはソ連の発表ですから、ソ連に確かめる以外にないと思います。
  39. 大出俊

    大出委員 いやいや、アメリカ側ですよ。
  40. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ソ連に確かめる以外は、それはないわけです。ソ連は、これまでソ連の言っていることは次々と変わってきておりまして、私たちはこれまでのソ連の大使を呼んだ回答を見ましても、初めはとにかく領空には存在しないと言っているし、あるいは領空外に去ったと言っているし、墜落したと言っているし、最後は撃墜したということで、転々として変わってきておるわけで、その間の真相をやっぱりはっきりしなければならぬということでICAOでも決議をされたわけでありますから、この真相につきましては、これはソ連当局に対しましても、われわれはICAOという立場を通じ、さらにまた日本政府としても追及はしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  41. 大出俊

    大出委員 両方に言ってください。ただ、この情報はアメリカなんですよ。いいですか。これはニューヨーク発です。「ABC放送が十六日のニュース番組で伝えたところによると、米情報当局はこのほど「ソ連側は撃墜された大韓航空機を米国のRC135偵察機と誤認し、ジャンボ機とはみていなかった」との調査報告を作成、ホワイトハウス、国務省および国防総省の高官に提示した。」というところから始まるのですが、ですから、どういう提示があったのかをアメリカに聞いてみなければいかぬでしょう。そして、何らかの形でソビエト側の真意を確かめなければいけない。真相究明という国会決議を、あなたは一生懸命やるとおっしゃったのだから、いいですな。
  42. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まず、やはりソ連のそうした撃墜した真相責任を追及しなければなりませんが、日米関係におきましても緊密に連絡をとっておりますし、アメリカの持っておる情報は確認をしたい、確かめたいと思います。
  43. 大出俊

    大出委員 もう時間がありませんからさらっと申し上げますが、大韓航空のパイロットの皆さんに、予備役軍人だから、アメリカ側がスパイの特訓をしている、契約ができているなんという記事まである。こういうのは新聞が、マスコミが記事にしたのだから、やはり確かめて、否定するものはきちっと否定をしておいていただきたいということ。  それから、ブラックボックス、これはどういうことかといいますと、飛行記録と操縦室内のパイロットの会話をおさめたもの、コックピットの中にある。だから、韓国から委譲を受けてアメリカ、日本はブラックボックスを捜そうとしているわけですよ。ソビエトもやっているのでしょう。  ところが、どういうことになったかといいますと、これについてアメリカは、ワシントン発「米国務省筋は十六日、一日にソ連戦闘機に撃墜された大韓航空機が米国の要請によるスパイ偵察に従事していたというこれまでのソ連の主張を裏づけるための証拠をソ連が近く発表するだろうと米軍事情報当局が見ていることを明らかにした。同筋によると、ソ連側の証拠は記録書類ないしにせもののオーディオテープあるいは飛行記録が収録されているブラックボックスのにせものを持ち出してくることもあり得るとしている。」こうあるのですがね。ここらのところは非常に問題が問題ですから、緻密にひとつ皆さんの方も気をつけて、否定するものは否定し、これはきちっとしていただかぬと、何が出てくるかわかりませんけれども、そこらのところも皆さんの方に申し上げておきたいと思います。  最後に、この問題の補償、賠償の問題でございますけれども、趙重勲氏あるいは副社長の趙重建さんが来て、ミステリアスだとか、ソビエトがとんでもない機器を開発して妨害電波で向こうへ持っていったとか、いろいろ言っていますが、これはいささか非常識なのですね。  五年前のムルマンスク事件の結果がどうなっているかと言えば、ワルソー条約の二十二条に基づいて——これはヘ−グで改定して改定ワルソー条約、ヘーグ条約、改定しておりますが、補償の限度が一万ドルであったものを二万ドルにした。だから、日本円にすれば六百万かそこらだ。前の、つまり菅野義隆さんは、ムルマンスク事件でお亡くなりになった方は五年間も裁判をやっているわけであります。いまだに解決をしない。このワルソー条約の二十五条に、重過失があれば運送人の責任だから、ワルソー条約自体では幾ら幾らまでしか支払い義務はないとなっているけれども、その義務を外れて例外で、重過失があれば運送人がもっとよけい払う、こうなっている。そのよけい払う部分の重過失の立証というのを東京で裁判をやっているわけです。そうしたら、大韓航空の方は、当方に重過失があったのなら原告の側、菅野さん、あなたの方が立証しろ、こう言っている。一民間人でそう簡単に立証できませんですね。政府が何か考えてあげなければできません。大韓航空はそういう渋いところがある。  今度は、モントリオール協定に入っていますね。モントリオール協定というのは何かというと、ワルソー条約にアメリカは入ってない。補償が安過ぎる。ICAO、国際民間航空機関からも抜けると言う。だから、もっと大きな補償をするようにしろとアメリカは突っ張った。アメリカのためにと言っていいのですけれども、航空会社間の協定を結んだ。そしてそれが七万五千ドル、千八百万という上限になっている。ムルマンスク事件はパリから飛んでいるからモントリオール協定の対象にならない。今度はニューヨークですから対象になるはずであります。そこらも含めて、大韓航空は補償問題について政府と何か連絡がございますか。十万ドルという話がありますが遺族の方のお話でございますけれども、支店に聞けば全く聞いてないと言っている。不可解であります。何か十万ドル払いそうなことを言うたようでありますが、支店は全然知らないと言っている。お気の毒なことになりますから、いかがですかそこらのところ。
  44. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 遺族に対する補償の問題でありますが、その前に、日本政府としましては、ソ連政府に対しまして、賠償、補償の要求を正式にいたしております。これは、どんな理由があっても民間航空機を撃墜することはできない、国際法違反ですから。ただ、ソ連はこれを拒否しておる、せっかく政府が提出した口上書を突っ返しておるという状況で、きわめて残念に思うわけであります。  同時にまた、遺族に対する大韓航空の補償につきましては、これから話し合いが行われるものと思っております。したがって、政府としては最大限遺族の要求が入れられるように側面的な協力というものをしなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  45. 大出俊

    大出委員 大韓航空が言っておられる十万ドルなら、これは二千三百万ぐらいになるのでしょうけれども、これも五年前の例からいくとなかなか危ない。私は心配しております。五年前の菅野さんの裁判は一億三千万の要求になっています。だから、そこらも含めて、政府がそれなりのお手伝いをしてあげるというのが筋だと私は思います。  ソビエトに対する謝罪であるとか賠償責任、これはとことんまでやっていいわけです。さっき冒頭に申し上げたように、自分の方もさんざっぱら物を言ったのだから、人の国にやられたら勝手なことを言っておいて、今度は自分のところでやったらほっかむりするというのは、これは筋が通らない。だから、私は外務省にあらかじめ注意を喚起してあるわけでありますが、ぜひひとつお願いをしたいと思います。  そこで、ICAOの決議。六つ起こった事件で、調査委員会が行って調査している国もございます。どうも拒否をするという態度のようでありますけれども、あわせて、ICAO条約、シカゴ条約ですね、これの改定。これは附属書第二だと思いましたけれども、ここの資料のかっこうで、理事会で申し合わせて、それぞれの国が民間機の領空侵犯にこう対処するというふうになっておりますけれども、民間機を撃ち落とすことはすべきでない、こういうことが資料のかっこうでできているわけであります。これはミッテラン大統領も言っておりますが、よろしくない。六回起こっているのですから、今回の事件をきっかけに条約に明確にすべきである。はっきりさせていただきたい。将来なくさなければいけませんから、これはあくまでも御努力を願いたいと思うのですが、いかがでございますか。
  46. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 全くおっしゃるとおり、いまは資料の中で民間機の撃墜を否定する条項が載っておりますが、あくまでもこれは条約本文の中に入れるのが今後の民間機撃墜を阻止する基本になると思いますので、日本政府としては全力を挙げてICAOの本文に載せるように努力を重ねてまいりたいと思います。
  47. 大出俊

    大出委員 それから、五年前の菅野さんの件につきましても、五年も一民間の方が一生懸命やっておられるというのは大変に骨の折れることだろうと私は思うのでありまして、そういう意味でやはり政府が一臂の力をかさなければいかぬという気がするのであります。この事件が起こったら電話を入れたというのですが、そこのところ、外務大臣、どうお考えでございますか。片づけてあげていただきたいのですが、いかがでございますか。
  48. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まだ五年前の事件が解決していないというのは非常に残念に思います。政府、外務省としましても、できるだけこの交渉が円満に解決するように側面的に努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  49. 大出俊

    大出委員 それから、最後でございますけれども、大韓航空に対する調査なりあるいは事情説明なり求めなければいかぬと私は思うのですよ、二回もあるのですから。おまけに機長の手柄寅さん、この方について、先輩の高英一さんが、この人が機長のときに手柄寅さんは副機長をやっていたわけですか、大変りっぱな人物で、紳士的であり、きわめて慎重な人だ、インプットミスなど起こすことはない、こう言っている。そして、おまけに高さんが言っているのは、ロメオ20を飛ぶときには、アリューシャンに近づいたら必ずウエザーレーダーを確認をして行けということを大韓機は裁務づけられている。ウェザーレーダーとは何か。コックピットの中にありまして、雷にぶつかったら大変ですから、雷雲を見るレーダーであります。これを多少傾けると島影が全部写るようになっている。三十キロぐらいしかないのですから、それを確認しながら飛べというのを大韓航空機に義務づけている。そうすると、さっきのインプットミスだ何だといろいろ言ったって、それはあり得ないのだ、このレーダーを義務づけられているとおりやれば。  だから、そこらのことも含めて、調査をする、真相究明というのですから、大韓機に対して、やはり条約上の運送人ですからその責任は明確にさせる必要がある。重過失があったのかなかったのか、それによって補償が違う。それから、二度とこれがあってはならぬわけでありますから、そういう意味で、明確な責任の所在を日本政府の側としても、さっき冒頭に私がある新聞が犯人が二人いると書いたと申し上げましたが、そういう意味でぜひひとつ御調査を願って、いずれ御報告を願いたいと思うのでありますが、いかがでございますか、外務大臣
  50. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 韓国は撃墜された当事国ですから、いま情報を収集して、調査委員会等もつくりまして懸命に努力をしておるわけでありますし、また、日本も御承知のように二十八人の国民の犠牲者が出ておるわけですから、これに対しまして真相を明らかにするための努力を重ねておりまして、日韓間で、この間については全面的に情報の交換等の協力をいま進めておるわけでございます。その段階において明らかになった事実は発表いたします。
  51. 大出俊

    大出委員 次に、景気対策について二、三御質問申し上げたいのであります。  日銀総裁前川さんお見えでございますが、前川さん、日銀の短観を見ますというと、短期経済観測でございますかね、短観、短観と言っておりますから正式名称は違うかもしれませんが、これを見ると中小企業は非常に悪いですね。時間がありません、たくさん問題を抱えておりますので簡単に申し上げますが、悪過ぎる。  そにで、四月に政府がお決めになった景気対策がございます。六月八日にその実施状況を含めての十一項目ばかりの発表がございます。この中で「金融対策の機動的運用」というのが入っております。抽象的でございますが、これは一体何だと言ったら、公定歩合の引き下げというわけであります。確かに公定歩合の引き下げは金利との相関関係がございますし、円安、円高との関係もございます。だから、アメリカの高い金利との関係もございます。  しかし、ここに数字がございますが、いままでの経緯を眺めてみますと、いまわが国は公定歩合は五・五%ですが、多少これに手を入れて入れられないはずはない。なぜならば、過去三カ年間を通じまして中小企業というのは悪いばかりだ。中小企業金融公庫等の調査資料を見ましても、三年間でまあよかったというのは二カ月、強いて言えば三カ月くらいしかないと書いてある。そういう状態で、千四、五百件倒産するのはあたりまえだと言っていられない。そうすると、売れないのだから生産は縮小する。在庫は積み増しができない。さあ縮小するから、金繰りが苦しいから金利はかさむばかり。こういう状況だから短観を見ても悪過ぎる。何とかしなければならぬと私はいまでも思っている。そこのところ、前川さん、言いわけしてはかりいてはしょうがない。機会を失ったというなら失ったでいいのだが、将来に向かってどうなさるおつもりか、承っておきたいのであります。いかがでございますか。
  52. 前川春雄

    前川参考人 日本銀行の短観、八月現在で最近発表いたしたところによりますると、主要企業に比べて中小企業の状況が悪いことはおっしゃるとおりでございます。内需が一般的に力が弱い。いまの景気状況は、やはり輸出の方はいいわけでございますが、内需は需要項目どれをとっても力がない。そういう点から申しまして、内需拡大のために必要な施策はできるだけとった方がいいというふうに私も思っております。  金融政策の面におきましても、内需拡大に資するようにいままで金融政策の緩和政策をとってきたわけでございます。公定歩合につきましては、御案内のように一昨年の十二月以来動かしておらないわけでございます。いまの物価状況から見ますれば、公定歩合というものは、金利は下げた方がいいというふうに私も思っております。ただ、その結果円が安くなるという心配がありまするので、その点は慎重に配慮してきたつもりでございますが、円が安くなることが素材産業の収支を圧迫する、あるいは貿易摩擦を激化するというおそれがあるということからあれしておるわけでございます。これからも、いまアメリカの金利が高いためにどうしても円安に振れがちでございまするが、そういう事態に円相場を安定することが、円高方向に安定するということの見通しがつけば、公定歩合につきましても対処するつもりでございます。ただ、そういうふうに両面ございまするので、その点お約束はできませんけれども、金融政策はあくまで弾力的に執行するというものでございまするので、私どももそういう方向で考えてまいりたいというふうに思っております。
  53. 大出俊

    大出委員 何とか考えなければならぬという、公定歩合は低い方がいいというニュアンスをお残してございます。預金金利との関係等もございます。そこらも十分お考えいただきたいのでございます。  何しろこれを見ますと、日銀の短観は、資料がございますけれども、五十八年の上期、主要企業はマイナスの〇・五、中小企業はマイナスの〇・九なんですね。おまけに五十八年の下期、主要企業はマイナスの三・四、ところが中小企業はマイナスの一一なんですね。これをほっておいては中小零細企業の皆さんに、まあ法律用語上は零細企業という言葉はございません、小規模企業でございましょうけれども、とにかくこれでは政治がないに等しい。余りといえば気の毒。成り立たない。多くを言っている時間はありませんが……。  そこで、いま総裁の言うのは、内需を喚起しなければならぬ。そうなれば、これはやる方法は二つか三つしかない。公共事業の前倒しをやったのだから後どうするかとか、もっと大きな問題は、思い切った、一兆四千億なんというのは少ない、五兆円くらい本当を言えば減税をやらなければいかぬ、五兆円くらいよけい取られ過ぎちゃっているのですから。さらに公務員賃金、裁定。内需喚起をやらなければいかぬですよ。これはやらなければなりません。  そういう意味前川さんに、いまちょっと含みに聞こえるのですけれども、やるお気持ちが、いつとかもちろんそんなことは申し上げませんが、もうちょっと突っ込んで、あるのかないのか。中小企業の現状等を考えてみて、内需の、これは後から経企庁長官にも承りますが、閣議でこの間この九月期の経済情勢が報告されたときに、塩崎さんもいろいろ言っておられるようですけれども、何とかしなければまた貿易摩擦になるという。そこらを含めて、またアメリカに対して物を言いにくいでしょう。そこのところいかがでございましょうか。前川さん、もう一遍。
  54. 前川春雄

    前川参考人 金融政策は機動的に運営いたしまするが、いつどういう段階になればいいかというのは、総合判断でやらせていただくよりしょうがない。内需拡大のために金利を下げるというのは、確かにそういう点で内需振興のための効果があると思います。  一方、円がもし安くなるということでございますれば、いまのような素材産業が一般的に悪いときに、コストがさらに上がる。ただいまのように需要の弱いときには製品価格になかなか転嫁できない、企業収益がさらに悪化する、全体の企業マインドを悪くするという危険もあるわけでございます。また、いまお話しのような貿易摩擦、非常な黒字が拡大しております。そういうときに円安になるということは、さらにその貿易摩擦を拡大するおそれがある。内需振興のためには役に立ちまするけれども、そういう面の問題もあるわけでございます。  その辺の判断、これは非常にむずかしいわけでございまするけれども、いま私どもの考えは、申し上げましたように、物価が安定している折から、金利は下げられる環境になればいつでも下げたいというふうに思っております。
  55. 大出俊

    大出委員 ありがとうございました。何か次の御予定があるようですから、わざわざお運びいただきましてありがとうございました。  いま前川さんおっしゃっておられますけれども、確かに問題はある。アメリカの景気が回復をしてまいりまして、四月−六月で成長率にして九・二%、大変なもの。日本より条件うんと悪いでしょう、塩崎さん。そこがあるのに、それは確かにべらぽうな千何百億ドルの減税もやっています、三年ばかりでやっています。だけれども、四−六でこれだけ大変な成長率を示せば、九・二%にもなれば、日本の輸出はどんどんアメリカに伸びるでしょう。嫌でも貿易摩擦が拡大するでしょう。  だから、九月十六日に発表したこの景気の現状、これは皆さんのところの発表だと思いますけれども、経済情勢を発表されていますね。確かに財政の大赤字は消えてないわけでありますから、政府発表で少し虫のいい発表をしていますけれども、それでも千何百億ドル残るというのはまだ大分先のことですね。そうなると、金利を下げられぬということで九%ぐらいになっているわけですね。しかし、この九・二%を眺めてみると、いつまでこれが続けられるかという問題もある。そうすると、前川さんじゃないけれども、何とかここで金利をという時期も来ないことはない。  そこらも含めて、一体企画庁長官は、輸出主導型であって、この間の十六日の皆さんのこの報告によりましても、どうも内需の盛り上がりに欠ける。どうすればいいんだ、それなら。内需の盛り上がり、まさに欠けています、ここに数字がございますけれども。輸出は伸びているけれども、これでは個人消費なんというのも、ちょっとその後六月以降、七月ですか、少しまた調子いいようでありますけれども、勤労世帯で言いますと、三月がマイナス〇・四、四月にプラス一・五になりましたが、五月にまたマイナス〇・六に落ちて、六月にまたマイナス〇・五であります。皆さんの資料によると、つまり実質消費支出、五十八年六月マイナス一・六、それから五十七年の四一六、これも。マイナス〇・一、こうなっている。だから、盛り上がりが悪い。アメリカの景気がいい、外需が伸びる、ますます摩擦がふえる、こういうことでしょう。そうすると、また農産物——こっちに川俣理事がおられますけれども、自由化しろ、こうくるでしょう。そこらのことも含めて、どうなさればいいんですか。  私は、減税も大幅減税すぐやれと言いたい。公務員賃金だって恩給だって、みんな連動するんだから上げろと言いたいんだ。あなたは公共事業の前倒しぐらいの穴埋めぐらい考えているんですか。新聞にそう発表しましたね。いかがですか。
  56. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  経済の現状についての御認識、私は、いま大出委員が、去る九月十六日に発表いたしました国民所得統計速報から示されたところであると思います。〇・九%、前期に対しまして成長いたしましたけれども、そのうちの〇・五%というものは外需である、内需によるところの寄与度は〇・四であるということは、私は将来の経済政策のあり方を物語っていると思います。  しかし、これは去る四月五日決定いたしました「今後の経済対策」という内需拡大を中心といたしますところの政策を着実に実行する、そして、その効果をもう一遍十分な検討をしていく、さらにまた最近の現象を織り込みまして、これから対外経済対策の問題を含めて検討すべき問題だ、こういうふうに考えております。
  57. 大出俊

    大出委員 私は、この貿易収支、経常収支でいいんですね、どのぐらいになるのかといって、この間おたくの方々に来ていただいて聞いてみたら、まあ二百億ドル、あるいはこれを超えるぐらいになりはせぬか。あなたのところがそう言うのでは、民間か言っているのもあながちうそではないな、二百四十億ドルを超えてしまうのではないかと言ったら、民間が二百四十億ドルという数字がございます、これ以上という数字はまだないようでございますが、あるいはと、こう言う。大変なことですよ、これは。  加藤六月さんがおいでになるけれども、私は二人で例の貿易摩擦のさなかにアメリカヘ行って、さんざんやり合った。向こうは構えていて、国会議員同士だというので、私もどうもむかっ腹立って二人でまくし立てたことがあるんですけれども、また問題になりかねない、これは。そうでしょう。  そうすると、公共事業の前倒しをやりましたね。これは前とはちょっと違う。前倒しの度合いが七二・五%ですか、去年七七・三%前倒ししましたね。建設業界の副会長等も来られていろいろ話を私聞きましたが、こう言う。前倒しをされても食いつなげないから、食い延ばすと言うのですね。だから、後を先に決めてくれなければ効果はないと言うんだ。具体的な話を聞きました、ここで言っている暇はないけれども。皆さん、頭はクリアなんですよ。従業員抱えていて遊ばせるわけにいかないのだから。だから、ここで報告されていますけれども、どこまで効果があったか疑問。  そうすると、あなたの発表によると、次の来年度予算、ここで補正か何か持ってきて、ここで追加というお考えのようなんですが、そうなんですか。簡単に答えてください。
  58. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この問題は、私は別にいまこういうふうにしろというような考え方ではございません。これから研究すべき問題であって、いままでの実績では、御案内のように、前倒しをした場合には、常にそれをオフセットする意味においての補正予算あるいは追加が組まれておることは事実でございます。しかし、これは今後の経済の動き、さらにまた経済対策のあり方との関連で慎重に検討すべき問題だ、こういうふうに思います。
  59. 大出俊

    大出委員 これは塩崎さん、あなたの答弁が、新聞に出ているのと違うんだ。閣議でこの例の九月期の情勢報告をあなたはなさった。そのときに、名前まで言えば宇野通産大臣おいでになりますね、田中六助さん、こういう方々から、どうも経済のできばえがいいことを、パフォーマンスと言っておられますけれども、それを理由に対策をおくらせるというのは問題である、対策がおくれているようじゃないか。あなたは、おくれて申しわけない、こう言っている。だから、内需拡大政策が必要だということではコンセンサスがあって、仮にも対策がおくれるようなことは問題である、こういう意見になってきて、同対策づくりを早急にする方針をあなたが言ったというのです。  いま何だか、いつになるかわからぬ、こう言うのだが、それでは新聞のミスですか、いかがですか。そこだけはっきりしてくださいよ、違うんだから。
  60. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ただいま経済対策閣僚会議においてのお話が出されたようでございますが、私は現実の政策として、ことに財政問題に影響するようなときには慎重に、その規模まで見当をつけて決定すべきだと考えております。
  61. 大出俊

    大出委員 だんだんどうも中曽根さんに似てきましたな、塩崎さん。  私はこの際、時間がありませんから明確にしておきますが、内需、まことに悪い。輸出主導型で何とか底離れというのでは将来大変に危険である、こう思っておりますので、そういう意味で、中小企業の皆さんも苦労されている、小規模企業の方もそうである。だから、金融政策の機動的運用というのは公定歩合を下げるということでありますが、前川さんのお話もございます、そこらを早急に御検討願うということと、あわせて、前倒しをするのなら後どうするかということをなるべく早く結果を出していただくということ。そうしないと、効果が半減される。  それから、思い切った減税に踏み切る。前任者である河本敏夫さんは、野党がばかなんだと言うんだ。経済認識が薄いんだと言う。三兆円ぐらいの減税をなぜ言わないか、一兆四千億とは何だ、こう言う。そんなものは景気浮揚に役立たぬじゃないかと研修会で言っているでしょう。そうでしょう。  そこらもお考えをいただいて、塩崎さん——これは総理ですな。総理、ひとつ早急に内需拡大の対策をお立てになる必要があると思うのですが、いかがでございますか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点につきましては、景気対策及び外貨対策、両方考えまして、各省庁で政策をこの八月につくらせまして、いまそのすり合わせをやっておる最中です。経企庁長官を中心にしていま諸般の対策を検討してもらっておる次第で、できるだけ早くまとめていきたいと思っております。
  63. 大出俊

    大出委員 私、先ほど通り過ぎてしまいましたが、総理大韓機問題も幾つか問題点を指摘しましたが、先ほど担当の方々にお答えいただきましたけれども、総理も、これは被害にお遭いになったと思われる御家族の方等の御心配もございますから、ぜひひとつ力を入れて、数々申し上げましたが、御対処いただきたいと思うのですが、あわせてお答え願いたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大出委員の、この真相究明に対する非常な御熱意につきましては、非常に敬意を表する次第でありまして、われわれも全面的に努力してまいりたいと思っております。
  65. 大出俊

    大出委員 次に、減税問題でございますが、時間が余りございませんので、少し駆け足をさせていただきます。  これはもう数々の、申し上げても仕方がないほどに実は与野党間のいろんな話し合いが続けられ、約束が積み重なっておりますが、実現をしない。五年になるのでしょうかね。  中曽根さんは前の選挙のときに、これは中曽根さんのお言いになったことを新聞が書いておるのですが、やると言ったら断固やると中曽根さんは確約をされて、中曽根という男はそういう男だ、こうおっしゃっているのですね。それから、増税という問題に触れまして、減税はやるが増税もやる。減税もやるが増税もやるというのじゃしょうがないじゃないか、こういう記者の方の御発言もあった。そうしたら中曽根さんは、大型間接税によらずして減税を実施するのが政治家の腕前である、こうおっしゃっているのですね。つまり、大幅増税をやらないで減税をやるというのが政治家の腕前である、自分なりの考え方はある程度できている、こうおっしゃっているのですが、何もあなたに具体的にと申し上げないけれども、あなた自身の考えというのはどういうことなんですか。はっきりしないのですな。やります、こう言っただけじゃさっばりはっきりしない。どうでございますか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 減税につきましては、サラリーマンの皆さんや主婦の皆様方が非常に強い御要望を持っていることはよく知っておりまして、われわれもその必要を痛感しておりますので、これは断行いたします。  ただ、減税をやるにつきましてはいろいろな手続が要りまして、政府の税制調査会の審議を経た上でこれをやるというのがその手続でございますので、この審議を非常に促進していた。だきまして、中間報告でもともかく出していただいて、法案作成にかかって、この間二階堂幹事長が野党の皆様方とお話し合いになりました線を尊重いたしまして、実行してまいりたいと思っておる次第です。
  67. 大出俊

    大出委員 いまの御答弁でひょっといま思い出したのでありますが、奥さんのということをおっしゃいましたから、先にこれは忘れないうちに申し上げておきたいのでありますが、大枠はやりとりしておりますが、これは国会予算委員会でございまして、具体的な問題についてお答えをいただけぬなんてはかなことはないのであります。質問する私は責任がございますし、皆さんは御答弁なさる義務がございます。そういう意味で承りたいと思います。  最初に、いま奥さんというお話が出ましたから忘れないうちに申し上げておきますが、私の周辺に、妻のパート、奥さんのパートの問題で七十九万円の壁がある。新興住宅街に行ってみますと、建て売りでございまして、新しい家がずっと並んでいる。私も知られていない顔でもない。マイクを持ってみますと、森閑として声がない。人が住んでいないのかと思って見ると、洗濯物なんかかかっている。しかし、人がいない。夜行って聞いてみますというと、ほとんど全部の奥様がパートで、やっと建て売りを買えた途端にパート、子供はかぎっ子、こういうわけです。しかも、総理府の就業構造基本調査というのがございますが、この奥様方でお勤めに出る方は五〇%をついに超えてしまいました。二軒に一軒以上奥さんがパートに出ておいでになる。にもかかわらず、七十九万円が税金のかからない限度でございます。これ以上、八十万になると税金がかかる。  どういうことになるかといいますと、給与所得控除、最低五十万でございますから、これと基礎控除二十九万でございますから、両方合わせて七十九万円、ここまでは税金がかからない、こういうわけです。  ところが、この壁、具体的に申し上げますが、夫婦二人と子供さん二人の四人世帯、年収四百万円の方、給料にいたしますと、年収四百万だと二十三万五千円でございます。これは大体ことしの人事院勧告でも二十三万九千円近いのでありますが、大体民間もこの辺が平均です、四百万。十七カ月計算で二十三万五千円。この二十三万五千円の給料の方が一体年間の税金を所得税、住民税で幾ら払うかというと、二十八万七千円。給料は二十三万五千円です。これは一・三カ月分も税金のために働いているようなものです。ひどい税金です。課税最低限を六年間も据え置いているからなんです。これを四百万から税金を引きますというと、所得税、住民税、残りは三百七十一万三千円となります。  さて、奥さんが七十九万円までの収入でとまってますと、そっくり、つまり四百万円から二十八万七千円の税金を引いた三百七十一万三千円に奥さんの七十九万円が加わる。だから、四百五十万三千円の手取りにお二人でなる。ところが、奥さんの収入が一万円ふえた。八十万円になった。八十万になるとどうなるかといいますと、まず、会社の妻帯者手当というのがなくなっちゃう。奥さんへの手当をくれなくなっちゃう。奥さん、税金を払うのですから。そして、この夫の配偶者控除二十九万円も税法上なくなっちゃう。さて、夫の健康保険から奥さんは消えちゃう。新しく入らなければならぬ。この奥さんが七十九万円前後で入るというと、大体一万三千円。そうすると、夫婦の手取りはどうなるか、四百三十一万一千円になります。  御夫婦二人で七十九万どまりならば、四百万の側主人の収入、税金二十八万七千円引かれる。差し引いて三百七十一万三千円。奥さんの七十九万を足しますと四百五十万三千円。ところが、奥さんが一万円ふえただけで、四百五十万三千円のものが四百三十一万一千円に減っちゃう。マイナス十九万二千円なんですよ、一万円ふえただけで。そうでしょう。だから、奥さん方は非常にこの壁で苦心惨たんしているのですよ。他人名義を使ったりしている人もいます。そういうひどいことをさせては私はいけないと思うのですよ。二軒に一軒以上もみんなお勤めに出る世の中になったのですから。いいですか。  そこで方法は、七十九万を百二十万ぐらいに上げるべきなんです、私に言わせると。ただ、その場合、人約三控除の中の、つまり基礎控除等の部分があります。二十九万。みんな横並びになっています。そこをどうするかという問題があります。それから、給与所得控除、最低五十万でございますが、これが刻みになっています。金額によってみんな違うわけであります。そこらの問題の関連があります。しかし、これは後の減税と絡みますからそこから先踏み込みませんが、七十九万を超えても夫の配偶者控除を残すという方法もある。取り上げない。取らない。控除をする。これは逆転防止になります。それから、配偶者控除の額を何とかもう少し落としてもいいから、こういう結果にならぬようにする。基本的には百二十万円ぐらいまで上げなければならない。そこまでいまの奥さんのパートの賃金はきている、こう私は思います。  大蔵大臣でしょうかね、だれですかな。大蔵大臣、答えてください。この点は真剣に私は聞いている。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるパートタイマーの問題、七十九万円、長い間据え置きになっているのではないか。最近の雇用情勢を見てみましても、いわば御婦人の方で働きたいという意欲をお持ちになっている方は年々ふえております。ただ、問題がございますのは、言ってみれば、いわば勤労者はすべてそれぞれの個別の経済的事情や家庭の事情を有しておりますので、パートタイマーという形で働いている人だけを取り上げて課税最低限を設けるということは、一つには新たなる不公平が生ずるという点はございます。まだ子育てに手のかかる人、あるいはもう子育てをある程度卒業された人、あるいは子供のない人、ある人、いろいろな形態が違います。  したがって、私どもといたしましては、これらの問題はたびたび本院においても議論されておる問題でございますので、その議論の経緯等を正確に税制調査会にお伝えをいたしております。したがって、税制調査会でいま御答申をいただくべく御協議いただいておる中には、課税最低限の問題あるいは基礎控除の問題等全部入っておりますから、その中の議論というものの結果を見守っていきたい、こういう考え方であります。  ただ、具体的にいま御指摘になりました数字等につきましては、御必要ならば事務当局から正確にお答えさせていただきます。
  69. 大出俊

    大出委員 後で議事録に残りますからごらんいただけばいいので、私は間違ったことを言っていない。  いま課税最低限や人約三控除、給与所得控除をどういうふうにするかという時期なんですから、いまでないと時期を失するから申し上げている。これは大変な問題です、たくさんの人の。だから、これは真剣に——事務局は、税制調査会といったって皆さんのところじゃないですか。隠れみのみたいなものじゃないですか。だから、あなたがうんと言えばこれはやれる、竹下さん、そうでしょう。逃げないでくださいよ。しかし、時間がないから先に行きます。  住宅ローン控除という問題がありますね。住宅ローンを見ますと、最近ひどいのです。払えない方、代払い制度がありますが、半年以上払えない人が千人に一人を突破しているのです。これがどんどんふえています、賃金を抑えていますからね。ことしの春闘は労働省調査で四・四%でしょう。史上最低でしょう。公務員は凍結でしょう。公労協の諸君は手当を削られているでしょう。恩給も年金も上がらないでしょう。だから、どんどんこうなるのです。大変なんです。  だから、出てくる要求として、アメリカがやっているのだから、住宅ローンがこんなにふえたのだから十五万ぐらい控除できないか、こういう考え方。欧州を見ましてもそうでございますが、源泉徴収を受けているまじめに働く皆さんは、本当なら個人申告が必要だと私は思っているのです。欧州に行ってみると税の不公平感が意外にない。それはなぜかというと、必要経費をはじいて申告ができるからでしょう。そういう意味で、住宅ローンに対する控除、アメリカは利子は無制限に控除しておりますが、一言だけ聞いておきたいのであります。御検討願いたいのです。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 恐らく、大出委員質問になっております問題は、いま税制調査会が中長期にわたっての基本的な問題を審議しておる、その中に、私どもは国会で議論された問題は正確にこれをお伝えする、こういう責務があるわけです。その意味も含めて具体的な御質問であったと思うのであります。ただ、御案内のように、五十八年度税制で住宅ローンの問題について一つの前進を見た、その結果をいま見守りたい、こういう考え方であります。
  71. 大出俊

    大出委員 私も質問する限りはわかり過ぎて聞いているつもりなんですが、これはぜひ検討を願わなければならぬ、こう思います。  それから、少しここで数字を挙げて、最後に私は減税問題で皆さんの御見解を承りたい。  国税総収入に占める、つまり源泉課税されている方々の割合、ここらをはっきりさせたいのでありますが、国税総収入というのは昭和五十三年から本年まで——五十三年という意味は、昭和五十二年に四人世帯なら二百一万五千円という課税最低限を決めた。御存じのとおり課税最低限というのは、生活費には税金をかけないという原則に基づいて、四人世帯の二百一万五千円までは生活費である、しかも、四十二年の税制調査会答申で、この生活費は最低生活費を意味するのじゃない、標準的生活費だという答申が出ています。  ところが、五十三年から実施された四人世帯二百一万五千円は今年まで全く据え置きであります。その間に国税の総収入は八四・九%ふえている。ところがサラリーマンの、給与と言った方が皆さんにおわかりいただけやすいのでありますが、サラリーマンの給与は二・四倍であります。これは五十八年七月の大蔵省が税調に出した資料がここにある、その資料に基づいて申し上げているのです。この点が一つ。  つまり、この資料によりますと、五十三年当時はサラリーマンの給与というのは総額で国税総収入の六分の一足らずだった。ところが、足かけ六年間据え置かれているために、所得税がどんどんふえ過ぎまして、何と六分の一足らずが四分の一になっちゃったのです。まさにサラリーマンの所得税の自然増収頼りの財政だということになっているのです。こんな不公平なことを私は放任はできない。これはおたくの資料で言っているのですから、違いがあれば途中で言ってください、後で、一括お認めいただけるかと言いますから。  次に、いまサラリーマンの皆さんが百人集まりますというと、そのうちの八十七・三人、まあ九十人近い方々が全部所得税を払っているわけであります。昭和五十二年では二千七百九十八万人払っておりましたが、いま三千六百六十三万人、これは八八・一%、五十八年度はまだ途中でございますからあれですけれども、五十七年で百人中八十七・三人の方、五十八年度は八十八・一人、だから九十人近い、こういうことになります。ところが、さて自営業をやっている方々はどうか。自営業をやっている方々は、悪いというのじゃないですよ、制度がそうなんだ。税金を払っている方は百人のうち三十八人。サラリーマンは九十人近い。自営業は三十八人。農業従事者はどうか。百人のうち十二人、これしか払っていない。サラリーマンは九十人近いのですね。だから、六年間も据え置いていますから、所得税自然増収依存型の財政です。これをもって不公平と言わずして世の中に不公平があるかと言いたい。そうでしょう、これは。  さて、ここに問題があります。つまり、これは財源があるとかないとかの問題じゃない。ひとしく国民である限りは権利義務、平等であります。税制上の不公平、これは私に言わせれば憲法違反だ。そういうことです。  なぜこうなるか、理由だけ明確にしておきます。自営業の方や農業所得の方々は所得の分散ができるからです。法律上の従業員をつくる。奥さん、子供さん、親戚に所得を分散する。累進課税でございますから、いずれも課税限度額に達しないから払わぬでいい、こうなる。これが悪いというのじゃない。そういう制度なんだ。農業従事者もそうであります。だから、百人で十二人が農業従事者の方々の納税人数。百人で三十八人しか払ってないというのが自営業者の方々の人数。サラリーマンというのは百人のうち八十八・一名払っている、これは大変な不公平であります。  もう一つ、必要経費の計算が、物価がどんどん上がっておりますから、その物価上昇に合わせて高く見積もれるから、だから納税者が減ってしまう。われわれ源泉だからそれができない、不公平であります。  さて、ここに一つの数字があります。五十八年度、これは補正後を指しているのだと思うのでありますが、三十二兆三千百五十億円の、つまり補正後の税収に対して、一兆八千三百七十億円の増収を政府は見込んでいる。ところが、一兆八千三百億円というのは、例の税制改正による増収分三百三十億円と関税引き下げの減収分二百六十億円を相殺しますからね。そうすると、自然増収額の残りは一兆八千三百億円。一兆八千三百億の自然増収を見込んでいるのだが、この中の何と五六・六%の一兆三百六十億円が所得税の自然増収分だ。一兆八千三百億のうちで一兆三百六十億。法人税は一体幾ら自然増収を見込んでいるかというと、わずかに四千四百億円。所得税の自然増収が一兆三百六十億、つまり圧倒的にサラリーマンの所得税の自然増収で政府のいまの自然増収見積もりは成り立っている。厳然たる事実でしょう。こういうことを放任はできません。  さて、公務員の方の平均賃金、あれは人事院が勧告なさいます。人事院がおいでになりますから、いけなければおっしゃってください。私は念のために調べてみた。例の四人世帯、課税最低限二百一万五千円を実施した年は五十三年でございますから、五十三年の人事院勧告に基づく全職員の平均給与は幾らか。十九万三千七百八十五円でございます。これは一体年収にすると幾らか、三百三十万円でございます。賃金が全職員平均で十九万三千七百八十五円、したがって年収は三百三十万円でございます。これが五十三年。  そこで、ことしの人事院勧告を見ますと、全職員二十三万九千七百七十五円と勧告をされている。年齢は四十一・二歳です。そうすると、この二十三万九千七百七十五円の方の年収は四百十万円です。そうすると、先ほど申し上げましたこの六年前の人事院勧告に基づく平均給与十九万三千七百八十五円が二十三万九千七百七十五円に、インフレのために物価が上がってここまできた。どういう相関関係を持つか。  賃金の方は、三百三十万という年収が四百十万になった。二四・二%賃金がふえた。ところが、税負担はどうか。所得税、住民税合計で、年収三百三十万なら、六年前に十五万二千円税金を取られていた。ことしの勧告の方、平均賃金もらう方、二十三万九千円の方、これは幾らになったか。年収四百十万でありますが、はね上がって約倍です。三十万一千円取られている。六年前には三百三十万の収入で、これは平均なんですから、十五万二千円税金を払っていればよかった。六年間課税最低限は据え置きだから、今度は、賃金はインフレで四百十万になった、二四・二%ふえたが、税金は倍の三十万一千円になった。賃金の方は二四・二%だが、税金の負担のふえ方は九八%、約二倍。これで苦しくないはずはないのです。おわかりになるでしょう。  一括最後に承りますが、現行の課税最低限というのは一体どうなっているかというと、一人は八十三万一千円、これは一カ月に直しますと四万八千八百円。単身貴族、独身貴族、熟年貧乏と大蔵省は言うけれども、八十三万一千円、これが一人の課税最低限。これは月給に直しますと四万八千八百円。幾ら独身者だって、若い人だって、はだしで会社へ行くわけにいかない。裸で会社に行けない。部屋も借りなければいけない。これは、いまちょっと手当が削られまして、手当が五カ月をちょっと切れるところもありますけれども、おおむね手当五カ月。十二カ月の給料プラス手当五カ月ですから、十七カ月計算をいたします。これが通常であります。そうすると、月額四万八千八百円。これでは独身貴族じゃございませんね。生活できませんよ。  百十三万六千円というのが二人の方の年収の課税最低限。夫婦二人。これは月の金額に直しますと六万六千八百円。三人の場合、百五十六万九千円が課税最低限でございますが、月に直しますと九万二千二百九十円。子供さんができて三人で月に九万円でやっていけないですよ。六年間課税最低限を据え置いているからこうなる。四人世帯は御存じのとおり二百一万五千円。これを月に直すと十一万八千五百二十九円。四人世帯で家を借りて、いま公団住宅に申し込んだって、二DKなら家賃も六万円取られる。十一万八千五百二十九円でやっていけないでしょう。着る物も着ないわけにいかないのだし、食べる物も食べなきゃいかぬのだから。これが現行の課税最低限。何と言われてもこれは直してもらわなければ困る、上げてもらわなければ。  そこで、課税最低限の推移に触れておきます。  課税最低限を据え置いたというのは二回。昭和三十年—三十五年、この間四年間いじらなかった。それから、昭和四十九年のところですね。四十九年、五十年、この二年間が百八十三万円で同じ額でございまして、据え置き。過去にはこれだけです。そして、昔も間が二年だけ。そして、昭和五十二年に決めたいま申し上げた課税最低限が延々と、五十三年から実施されましたが、五十三、五十四、五十五、五十六、五十七、五十八年、ずっと据え置きです。こんなことは過去にない。あなた方は、所得税の自然増収取りっ放し。それでも、約束しているにかかわらず減税をしない。  そこで、結果はどうなったか。あなた方が税調に出した資料には、真ん中をうろ抜いていますから、それで六百万から一千万円を手直しする、こう言いますが、そうはいかない。それなら五百万の方はどうなるんだということになる。年収五百万の方。十七カ月計算をいたしますと、月給は二十九万四千円、三十万ない。年収五百万で二十九万四千円の月給しかもらってないサラリーマンが所得税、住民税を一体幾ら取られるか。四十八万九千九百円取られるのですよ。二十九万四千円ですよ、月給は。四十八万九千九百円、一・七カ月分近いですよ。一・七カ月分税金のために払っている。そんなばかなことはないでしょう。だから、五百万のところは重税感がない、そんなことはない。  さらに、四百万の方。いま申し上げましたが、もう一遍言いますが、年収四百万なら月給は二十三万五千円、正確に言えは二十三万五千二百九十四円。この方の税金は、所得税、住民税で二十八万七千円、一・二二カ月分税金です。四百万だってちっとも軽くない、大変な重税感がございます。  しかも、この四百万、五百万という方はサラリーマンの中心なんだが、みんな四人世帯で、二十五歳くらいで子供さんをお持ちになると、その子供さんが高校からいまやまさに大学へというところ、子供が大きくなったから家が狭い、何とかというのでローンによって家をという時期、金が一番かかる。ここでみごとにこれだけ課税最低限を六年間ぶん延ばしているために、大変な所得税の自然増収を取り上げている。これは人道的に許せぬ。国民の権利義務は平等です。  念のために六百万円の方。年収六百万円の方は月給三十五万二千九百四十一円でございます。高い給料じゃない。この方の所得税が四十二万二千円、住民税が三十万四千円、何と年間七十二万六千円税金を取られているのです。二カ月分税金で持っていかれてしまう。年収六百万ですよ、月給三十五万二千九百四十一円ですよ。どうですか、これは。  念のために七百万の方も申し上げておきます。七百万の方の月給は四十一万一千七百六十四円。四十一万円の月給もらっている方、サラリーマンで古い方はこのくらいもらいます。この方は所得税、住民税を幾ら取られるか。年間百二万八千三百円取られる。なぜこういうことになったか。不公平も不公平、とんでもない不公平です。放任できる不公平ではない。  それで熟年貧乏、独身貴族。独身貴族といったって八十三万一千円でしょう、独身者の課税最低限は。月給にしてみれば四万八千八百円でしょう。だから結論は、課税最低限をまず上げなければしょうがないのだ。上げなければしょうがない。上げてください。あなた方はしきりに答えない方法をおとりになるから、私はいま具体的例を挙げて申し上げているのです。聞いておいていただいて結論を求めます。  ところで、私は念のために、新聞発表でございますが、大蔵省が、物価上昇というのはこの六年間で二八・九%上がっている、もちろん本年度は見込みでございます。二八・九%。五十二年に決めた四人世帯の課税最低限二百一万五千円を二八・九%物価スライドをさせるとどうなるか。課税最低限は二百六十万になります。毎年調整してきているとすれば、いま二百六十万台になっていなければいけないのですよ。過去にみんなそうやってきたのだから。二回しか外してないのだから。そうでしょう。そうすると、どういうことになるか。四人世帯の課税最低限二百一万五千円、昭和五十二年に決めて五十三年から実施した。これっきり六年据え置いているために、上がってないのだから、これを物価上昇分二八・九%だけ上げると二百六十万円。  この場合に四百万円の人はどうなるか、所得税だけ申し上げます。その方がいいと思いますから。収入が年間四百万の方は、さっき申し上げましたように月給が二十三万五千円ばかりございます。この方は、二百一万五千円の五十三年のときは十六万四千円税金を取られていた。いまの税金はもうすでに申し上げましたから言いませんが、二百一万五千円で十六万四千円税金を取られる。ところが、この二百六十万になりますと税金が幾らかかるかというと、年間十一万三千円しかかからない。毎年物価調整してきていれば、いま十六万四千円も払っているのだけれども十一万三千円でいい。五万一千円減ってしまう。そうでしょう。五万一千円少なくなるのですよ。  では、年間五百万の方は、月給二十九万四千百十七円ですけれども、二百一万五千円のままだから、いま二十八万二千円税金を取られている。この方を二百六十万に上げるとどうなるか。二十二万です。六万二千円安くなる。これは所得税だけですよ。住民税というのは所得税の比率の約七割くらいですからね。  さて、年収六百万の方、月給三十五万二千九百四十一円。いま二百一万五千円の課税最低限で一体幾ら税金を取られるかというと、四十二万二千円取られる。これが課税最低限が二百六十万になったらどうなるか。三十五万二千円で済んじゃう。ぴったり七万円減るんです、六百万の方で。これだけあなた方は搾取ですよ。  毎年上げてきた課税最低限を六年据え置いている。過去にこれを据え置いたのは二回しかないんです。だから、財政は所得税の自然増収型なんだ。五十六年に二兆八千九百億自然増収を予算書に見積もった。それから、五十七年には一兆八千九百億自然増収を予算書に麗々と書いている。これだけぬれ手でアワでよけい取りますよということを予算書で書いている。こういうことを放任はできぬでしょう。おわかりいただけると私は思うのですがね。だから、まず課税最低限を上げなければいけません。  時間がなくなりますし、まだ賃金等も残っておりますから……。どうせあなたはまた税調にと答えるんだから、私はやはりサラリーマンの皆さんに怒っていただかなければ——だからサラリーマン党ができるんでしょう。こういう状況だということを申し上げて、最後に、サラリーマンはいままで一体幾ら取られて損しているか。大蔵省がB—32という資料を出した。つまり、物価上昇は五十三年が六・八、五十四年が四・九、五十五年が六・四、五十六年が五・五、五十七年が四・七、五十八年が三・三%、これは見込み。これは大蔵省が衆議院の予算委員会にことしの二月に出したのです。何でこれは当初見積もつの物価上昇率をここへ出しているのかというのがわからぬのだけれども、しかし、あなた方とにかく計算できない。だから、これは実際とは違う。五十五年のように六・四%の上昇見積もりが七・八になっているときもある。だから、トータルすると二%くらい上がります。  あなた方は二方法出しているけれども、五十三年に六・八%の物価上昇分に見合って課税最低限を上げていれば、国の所得税の総収は二千四百億円減る、こう言う。上げなかったんだから、逆に所得税を払っている連中は二千四百億よけい取られた。五十四年、千八百億よけい取った。五十五年、二千七百億よけい取った。五十六年、二千六百億よけい取っている。五十七年には二千三百億よけい取った。五十八年には千八百億よけい取る。ところが、五十三年の二千四百億はそのまま五十四、五十五、五十六、五十七、五十八にずっと引き続いている。五十四年の千八百億は、五十五、五十六、五十七、みんな引き続いて上積みになっている。だから、目下急激なふえ方、よけいな取られ方。ある新聞が去年あなた方がこの資料を出したときに五十七年度で計算をされているのを見ると、大変に大きな額になります。  一つだけ申し上げておかなゆればなりませんのは、さっきから申し上げておりますように、あなた方は物価上昇の確定した数字でこれを出してこない、二年とも。だから、これで計算するしか仕方がない。そうすると、ある新聞の計算によりますと、去年でサラリーマンは三兆四千億円よけい取られている。それを同じ筆法で私が計算してみたら、本年は四兆八千四百億。物価上昇は実際との間ででこぼこは多少ありますよ。ありますけれども、四兆円前後になる。それで一兆四千億でがまんする野党も野党だと河本さんに言われれば、それはそのとおりなんです。つまり河本さんの方がよっぽど利口だ。われわれはばか。  だけれども、こういう状況の中で、総理に承りたいんだが、おためごかしと言ったら口は悪いけれども、あなたは腹づもりがあるとかなんとか言っていて、中曽根康弘というのはこういう男です、やると言ったらやりますと言っていて、予算委員会の席上で質問すれば、あなたは竹下さんの口をかりて、税調でございます、お伝えいたします、これでは政治がないと言うに等しい。予算委員会は必要ない。  私がいま言っているのは、財源のあるとかないとかじゃない。ひとしく国民なら、税金の制度は公平でなければならぬ。サラリーマンだけ山ほど取られて、皆さんの自然増収の中心である、財政はそれでもっている、そういう不公平な税制を放任できますか。あなた、おわかりになるでしょう。具体的に例を挙げた。後で議事録を読んでください。だから、ここまで来たらお答えくださいよ。総理、どうなさいますか、大幅な、相当規模の。景気浮揚に役に立つ、どうですか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げますように、私は本臨時国会における所信表明演説におきましても、サラリーマンや家庭の主婦の皆さんの御苦労はよくわかるから減税を断行いたしますとお約束をしておるのでございまして、そのやり方についてはいろいろいま政府間の手続、いままで決められた手続がございますから、その手続に従って案を出してもらって、そうして決断をする、そういうことを申し上げ、さらに与野党間の話し合いにおきまして二階堂幹事長がいろいろお約束をいたしましたが、それも尊重いたしますと申し上げておるわけでございます。十月末までに法案を提出するということをたしか二階堂幹事長億約束をしておるのでありますが、それも実行をしたいと思っておるわけであります。
  73. 大出俊

    大出委員 片っ方で減税をすると言って、こっちのふところに幾らか入れてくれる、こう言って、こっちからいただきますよと持っていかれたんでは、経済企画庁の担当の方を呼んで私聞いてみたら、それはトータルでゼロになる限りは景気浮揚のくその役にも立たぬとおっしゃる、そのとおりなんです。  いま新聞を見てごらんなさい。やたら、しょうちゅうからビールから二級酒から、片っ端税金の引き上げでしょう。三〇%も上げるというんでしょう。(「しょうちゅうは上げさせぬ」と呼ぶ者あり)しょうちゅうの好きな人もここにいるんだ、そんなに上げてはいけませんよ。そうかと思うと、原付自転車なんというものまで物品税を広げて上げる。そうかと思うと、前に問題になっている、これは私の頭にはないと竹下さん言ったんだが、電話利用税だ、テレビ広告税だ、出国税だといっぱいある。スキーだテニスだにみんな税金をかける。サービス関係のものにみんな税金をかける。世の中じゅう税金値上げなんですよ。おまけに健康保険で六千二百億もふんだくろうと言う、本人十割を二〇%下げて。  それで、片っ方の行革の方を見ると一銭も、人も減らないという行革を出してきて、演技過剰だ。大変な、一里塚でどうのこうのおっしゃるけれども、全く中曽根さんというのはよく滑るから、滑りっ放し。滑りっ放し。で中身は何にもない。それではだめですよ。政治になりませんですよ。信用できぬ。  どうですか、大蔵大臣、あなたはどう考えますか、いまの点、答えてくださいよ。こっちから減税だと言って少し入れます、こっちからよけい持っていって、これで減税になりますか。
  74. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの税制調査会に対する議論が一つございましたが、政府税調というのは、この権威ある国権の最高機関たる国会で通していただいた法律に基づいて設置されておるわけでありますので、これの手数をおかけするというのは、これは行政府として当然とるべき経過であると私は思います。  そうして。いまの政治論として、いわば減税してもほかで増税をすれば、それは景気プラス・マイナス。ゼロにするではないか、こういう御意見でございますが、およそ財政というのは、そのときどきの国民のニーズに対応をいたしまして、それぞれ、ある意味における富の再配分という役割りを果たすものでありますだけに、すべてを固定的に考えて、一方、いわゆる歳出面においてはこれの削減をしてはならぬという議論は、これはある意味において暖房と冷房と一緒にかけて、そして電気は使うな、こういうような議論にも受け取れないわけでもございませんので、やはりそこには歳出、歳入に対するいわば国民のそのときどきのニーズを吸い上げた調整の問題というのが財政当局に与えられた仕事ではなかろうかというふうに考えております。
  75. 大出俊

    大出委員 大体竹下さんは頭のいい方で、私もよく知り過ぎていますが、よく聞いていると、しまいの方は何を言っているのかわからない。またよく聞いていると何にもないのですね。  暖房と冷房だと言う。暖房と冷房を一緒にしてみなさいよ、暖かくも冷たくもないじゃないですか。何にもない。暖房と冷房と一緒にしたんだ、これは暖かくもならなければ冷たくもならない。現状どおりじゃないですか。そういうことはいけませんですよ。申し上げておきましょう、時間もありませんから。  課税最低限をともかく上げなければいけません、物価上昇二八・九%あるのだから、またやってきたのだから。その上で一〇%から始まって七五%で終わる四十九年に決めた所得税率、この中のひずみは金があればどこか直そうかということにするのは結構。しかし、奥さんのパートの七十九万というのは、これは百二十万ぐらいに上げなければいけない。ぬかにくぎだが、このことだけ申し上げておきます。あなた方は税制調査会という隠れみのを着て逃げるばかりで、予算委員会、何のために開くかさっぱりわからぬ。  ところで、人事院の勧告問題について承りたいのです。  総理に承りたいのですが、総理、前国会で私が総理に御質問いたしましたブランシャールILO事務総長、深谷副長官をおやりになりまして、政府の特使として事情をお話しになった、こう言っておられるわけですね。これは何のためにもう一遍再現するかといいますと、深谷さんがこっちに帰ってきて記着発表して、ブランシャールILO事務総長が政府の窮状は理解してくれた、こう発表した。日本側の田中理事が、そんなばかなことがあるかといって事務総長のところに乗り込んだ。そうしたら、発表する話は全くなかったんだ。発表したって何の足しにもどっちにもならないんだがと嘆かれて、本当のことを言いますと言って言ったのがこの文章になっている。  ここで深谷さんが一体どういうふうに言っているかという問題なんですが、その要点だけ触れておきますが、「今回は例外として、今後は従来どおり実施し、今回のような措置を繰り返さないと確約できるかどうか。」と事務総長ブランシャールさんが聞いた。何度も確認をした。深谷さんのお答えは、はっきりと、「はい。」つまりイエスですということでございました。はっきりしているのですね。「今回は例外として、今後は従来どおり実施し、今回のような措置を繰り返さない」、なぜこれをブランシャールさんが念を押したかというと、ここに御本人が述べておいでになる。「凍結という新しいルールができて、それが今後繰り返されるということになると、これは大変なことになる。したがって、そうならないようにと思ってその点を確認をしたのです。」そうしたら「今後は従来どおり実施すると何回もイエスとお答えになった」、こう言うのです。  私は、あのときによほど、私はここに待っているから、総理、あなたはブランシャール事務総長に真偽を確かめてくれ、それまで私はここでお待ちしますから、こう申し上げようと思ったのですけれども、そうもいかぬ状況にございましたから、私の方がお調べを願いたいと言って引き下がったのですが、ブランシャールさんにその後会ってどなたか聞かれましたか。  いいですか、時間がないからがまんしますが、私の方は念のために人を介して確かめているのですよ。間違いない。あなた方はちゃんと国際機関に約束している。その結果として中曽根さんの答弁は、これは初めてこういう答弁をなさったのですが、「最大限努力をいたしてみたいと思います。こういう御答弁。「最大限努力をいたしてみたいと思います。」どういう努力を最大限なさいましたですか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題につきましては与野党問でいろいろお話し合いもしたこともあり、また新しく八月には人事院勧告も提出されました。仲裁裁定も出ました。それらにつきましてはいろいろ検討をいたしまして、仲裁裁定につきましては国会の御判断を仰ぐように、また人事院勧告につきましては給与関係閣僚会議におきましていろいろ目下検討しておる最中でございます。
  77. 大出俊

    大出委員 中曽根さんという方は非常に能弁な方ですから、理論家でございますから、私が理論的に詰めましたら、山中君がそこまで当時お答え申し上げていたとすれば大変恐縮でございましたというので、後答弁なさらなかった。だから昨年の、五十七年十二月十五日、国会の審議がここでとまってしまった。とめ男だ、とめたとおっしゃるけれども、言論の府でございますから、答弁がおできにならなければ進まないのはあたりまえでありまして、私がとめたわけじゃない。  そのときにも山中さんのこの答弁、財政事情はどうあっても完全実施するというルールを四十五年に確立した。それを閣議でお決めになった閣僚のお一人があなた、防衛庁長官なんだから、あなたは非常に低姿勢で釈明をなさいましたから、当時みんなが苦労したのはよくわかる、そうでなければならぬと思っているというふうにおっしゃるから私もそれ以上はやめたんですが、あのときによほど使おうかと思った資料なんですが、申し上げなかった。これは私以上に明確に中曽根さんが御自分予算委員会でも質問なさっているのですよ。当時民主党においでになったわけですよね。私はこの二十五年というのは官公労事務局長をやっていまして、中曽根さんのお部屋にお願いに行ったことがあるのですよ、五、六人で。そうしたら、中曽根さんから逆に私は教えられました。当時、もっとも中曽根さんもお若くて、全く黒髪ふさふさしておられた時代です。私もこんなに年をとらぬで、紅顔可憐だったわけです。  そこで中曽根さんのおっしゃっておられるのは大変に明確なんですね。もうたくさん言っていますから、ずいぶんしかし中曽根さんは質問始めると執拗ですよね。はっきり「公務員給与改訂を実施する。これがためにとりあえず二百億円の金額を計上する。六千三百七円を七千八百七十七円ベースに改訂」しなければならぬ、こういうのですね。国鉄、専売は実施しておいて、公務員をやらぬとは何だ、こうおっしゃっている。去年なんか国鉄、専売の方はやったんですよ、本体は。あなたは全く私の言ったのと同じことを言っている。  また、そのすぐ後で、これは六番目に、「人事院勧告を尊重して、公務員給与水準を七千八百七十七円ベースに改訂し、漸次民間賃金にさや寄せする。」やらなければならぬ、こう言っているのですね。  そうかと思いますと、これはもう私も全く同感で、本当にそのとおりだと思っているんですが、これは予算委員会、「第三番目に、勤労者はどうであるかと言えば、御存じのように公務員は六千三百七円ベース。七千八百七十七円ベースが出て来ておるけれども、これには」いまの内閣は「振り向きもしない。国鉄の裁定に対しては、」「第一審の判決があった。これには不服で申し立てる。」というところから始まりまして、「勤労者から罷業権を奪う。しかし法律秩序の自動的な操作の中でこれを解決して行こう、こういう考えで」ブレイン・フーバー氏が言ったことでも明らかであるように、代償機関として人事院というのはつくったんだ。一方において罷業権を剥奪し、一方において今度はその人事院が七千八百七十七門を勧告したら、その芽を摘んでしまうというのはみずから法を破る態度ではないかと総理御自身が言っている。そのとおり。  次に、いいですか、これは昭和二十五年三月九日の予算委員会でございますが、「公務員給与改訂二百億、これは債務償還でデフレになる要素を公務員の生活費として与えてやるのであって、これが有効需要の根本になる、直接商取引を多くする、あるいは景気を回復するというようなものは、こういう公務員給与のような、消費にすぐ向けられるものに使ってやらなければ有効需要は起きない。」ですから、余り長く申し上げても切りがないから、あなたはたくさん言っているんですからね、いいですか。  中曽根さんは、これは大論戦しておられる。「私は民主党を代表いたしまして、本法案に対しまして反対をいたします。」というところから、給与を上げろと言うんだ。「給与問題は、吉田内閣にとって財政政策の一端でありまして、財政政策より私は批判しなければならないと思うのでありますが、この点」は予算で申し上げました、さっき言ったとおりですね。「三点についてこということで、「まず第一は、法律秩序の擁護ということであります。吉田内閣は国家公務員法を制定し、人事院をみずから創設して、それによって人事院の勧告という権限を認めているのでございますしかるにその法的にきめられた正規の機関が、」国会に対していわゆる七・八ベースなるものを勧告しておるのでありますが、この機関の機能をまったく無視する態度に再三出ておるのであります。今回の法案も、この現われにすぎないのであります。」というところから、「ある程度の財源の苦しさはあっても、法治国家としての体面を守るという意思があるならば、私はこのような法案を出すはずはないと信ずるのでありますしかのみならず、人事院勧告の内容をしさいに検討して」みると、民間賃金との落差を埋めるということである、だから公務員諸君の負担の程度がわかるから六・三ベースから七千八百七十七円、ベースに上げなければならないというところから、景気浮揚にこれだけ役立つ施策はないとあなたはるる述べておられる。私はこれを見て、私よりみごとに論理的だと思って感心しているわけです。  私は総理に申し上げたいのは、あなたの若いときでまさに黒髪ふさふさしている時期でございましたけれども、しかし変わっちゃいけませんですよ。世の中は風見鶏ということをあなたにおっしゃるようですが、私は言ったことはないですけれども、風見鶏というのは、風が吹いてくると、心棒は一つでございまして、あっち見こっち見くるくる変わるから風見鶏というのです、仕掛けは。心棒は変わらないのだ、風見鶏というのは。心棒がなくなったら風見鶏でなくなっちゃう。どこかに行っちゃう。そうでしょう。あなたは鳥でもタカでもない、哺乳類だと言ったけれども、心棒がなくなっちゃってはしょうがないでしょう。  心棒とは何だ、法治国家だ、罷業権の代償につくった人事院だ、その勧告だ、認めるのは当然だ、予算が苦しい、苦しいだろう、しかし、そこで使う予算公務員の諸君を通じて消費に使う、商取引はふえる、売れるのだ、有効需要を創設するのだとあなたは言っているじゃないですか、私はそう言っているのだ。御自分でおっしゃっていることをお認めになりませんか、どうですか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのころ言ったことは正しいと思います。すなわち、人事院制度ができたというのは労働権の代償としての考えからもこれはできておるのでありまして、政府としてはこれを最大限に尊重する義務がある、そういう意味政府所信をただしたのはその考え方で、また、公務員給与が上がればこれが消費に回って景気回復に役立つということもそのとおりであって、そういう意味におきましても減税というような問題については二階堂幹事長も景気回復に役立つかなり幅のある減税をというふうにもお約束もしておるわけであります。  しかし、それは三十年前の話で、今日は行政改革をやってみておるのです。そして、野党のころは民諭を代表して国民皆さんの声を熾烈に国会に反映する努力をするので、大出さんと同じような立場でやったのでありますが、政府へ入ってみまして、台所と財布の中を見ますと、これはもうすっからかんになっておるわけです。そこで台所とどういうふうに調和するかという点で与党と野党の差がここへ出てくるので、そこでいま苦労しているということをぜひ御同情願いたいと思うのであります。
  79. 大出俊

    大出委員 私は、石橋さんを委員長にお出いただいてニュー社会党ということでございまして、ですから、きょうはじっくり内政の問題を承ろうと思って聞いているのですが、そこまでお逃げになるとすると、これはちょっとそうでございますかと言うわけにいかないのですよ。ただしかし、ここまで進めてきたわけでございますから、まあ、しかし総理は何がしか腹にこたえるところもおありのようないまお話ですから、何となくそう感じますから。問題は一つしかない。二年続けて凍結をしない、こうおっしゃってきたわけです。(「約束だ」と呼ぶ者あり)約束でしょう。  そこで、八日の日に、どこか知りません、某ホテルでいろいろなことを相談を、密議をなさっておいでになるわけですね。これは読売新聞、新聞の名称を私は挙げないことにしております。つい口に出まして、ごめんなさい。二つの新聞が取り上げておいでになる。これを見ますと、今度は人事院勧告というのは政府が態度を決めると言っているのだ。だから、自民党は与野党間で同意するなんということはやめてくれと言っている、ここで。政府が答えなければいかぬのですよ。与野党間というのは前に例がある。一昨年の十一月二十六日、与野党間で決めて政府にやれということになった、それをやってくれるな。出席していた方は、この衝に当たっている方はみんな出ている。  その後である新聞の記者の方に、竹下大蔵大臣、あなたが言っている。ことしの人事院勧告六・四七%をまるまるやるとすると四千五百十四億円かかる、四月から実施。七月だと、ずらすと三千百六十億円、十月だと二千三百十億円だ、来年一月だと九百三十八億。仲裁のように手当への波及を全部カットして、本体の賃金の上がる、本俸の上がる分だけやる。四月だと三千二百五億円、七月だと二千三百七十億円、十月だと千六百四十億円、来年一月なら八百四億円、こう数字を挙げている。そして、この話し合いの中身というのは、去年の四・五八%、ことしの六・四七%、六・四七から四・五八を引いた一・八九で千二百六十億円だ、解説しておられるのですね。どうなんですか竹下さん、まさか一・八九でもやろうというのですか、答えてください。これなら二年続けて凍結じゃないですか。
  80. 竹下登

    竹下国務大臣 いまのお述べになった数字は私も正確だと思いますが、私は元来余りおしゃべりしない方でございますので、特に新聞社等に対してそのような解説をしたことはございません。だから、基本的にはいま総理から申されたとおり、人事院勧告制度の基本は十分尊重しながら、私はいま財政当局にございますので、財政当局側としては今日の状況からすれば厳しい対応をしなければならないという発言の限度を超えないように自分の身を持しておるつもりであります。
  81. 大出俊

    大出委員 丹羽総務長官、あれから大分たちましたから、あなたは一体人事院勧告をやるのですが、やらないのですか。あなた自身の考えを聞かしてください、担当大臣だから。
  82. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  給与担当大臣としての私は、先ほど大出先生がいろいろと総理に対して御質問がございました。総理はその御質問に対してはっきりお答えしておられますので、ああした答えを私は当然守っていかなくちゃならない。そして、いまのところは財政、国政全般の中で考えるということも言われておりますけれども、給与担当大臣としてはでき得る限り最大限の努力をして人事院勧告を尊重するようにしてまいりたい、努力をさしていただきたい、かように考えております。
  83. 大出俊

    大出委員 総理も最大限努力してみたい、こうおっしゃっているわけでありまして、だから最大限実施してみたい、こう言うのでありまして、押し問答になると思いますから、ここで電電公社の副総裁お見えでございますが、例の仲裁裁定四・一三、公労協加重でございましょうが、二・三%を引きますと、つまり定期昇給を引きますと一・八三ぐらいになると思いますけれども、財源的に電電公社はおやりになるでしょうな、政府がいけないと言わなければ。財政的にどうですか。
  84. 北原安定

    ○北原説明員 お答えいたします。  財源的には、試算しますと二百九十五億円ほど要ります。ただいま予算措置がされておりますのが百六十五億、約百三十億円ほど不足いたします。経営の努力をいたしまして何とかやり通したいと考えており・ます。
  85. 大出俊

    大出委員 やればできるというだけでありますが、専売の総裁長岡さん、ひとつお答え願いたいのですが。
  86. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  専売公社の仲裁裁定実施のための所要見込み額は約三十四億円でございます。予算上計上されております給与改善費が約二十億円ございますので、約十四億円の不足になるわけでございます。現時点におきまして、実はことしは私ども、大変仕事の面では厳しい状況にございまして、五月のたばこの値上げ等もありまして、売れ行きもまだ前年度水準以下にとどまっております。したがいまして、現時点におきましてははっきりしたお答えを申しかねますけれども、しかし、年度を通じましてできる限り企業努力をいたしまして実施に努力いたしたいと考えております。
  87. 大出俊

    大出委員 国鉄、高木さん、お見えでございますか。  大変お苦しいところでございましょうけれども、職員に罪はない、責任はない。そういう意味で、これから国鉄はいろいろな企業努力をなさらなければならぬ、職員の協力を求めなければならぬ点が多々あると思うのでありますが、そういう立場で、給与総額を減らしていく、この必要はありましょう、しかし、生きて生活している方の賃金を抑えるというのは、これは人道上大変なことです。そういう意味で、お答え願います。
  88. 高木文雄

    ○高木説明員 所要額は三百七十六億円でございます。いまの予算案との関係では百億円以上不足をいたしますが、私どもといたしましては、四十万人の職員の生活の問題でございますので、いろいろ努力をして何とか実現させていただきたいと念願をいたしておるところでございます。
  89. 大出俊

    大出委員 郵政大臣、四現業を代表されてという意味で承りたいのですが、郵政自体は大体いまの財政状況で一生懸命御苦労願えればやれないことはないと、私も出身ですからわかるのですが、そう思っておりますが、いかがでございましょうか。簡単にお答えください。
  90. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 お答えをいたします。  今回の仲裁裁定による郵政事業特別会計の完全実施のための所要額は二百六十二億円、それに対して給与改善原資が百四十五億円計上されておりますから、百十七億円が不足ということになるわけでございます。現在の予算の実施上可能かどうかということについては、可能と断定できないということで国会の御判断を仰いでおるわけでございます。国会の御判断が出ますれば、その御判断に従いまして最大限の努力をいたしたい、そう思っております。
  91. 大出俊

    大出委員 国会がさあやろうということになればやれるという御答弁。一番苦しい国鉄、高木さんのところでございますが、先ほどの御答弁、大変苦労されている御答弁でございますけれども、ぜひひとつ御尽力をいただきたい、こう思っておるわけであります。  お呼び立ていたしまして恐縮でございました。ありがとうございました。  最後に、六、七分しか残りませんけれども、承りたいのでありますが、林さん、厚生省でございますけれども、健康保険制度の見直し、これは概算要求とくっついているのですね。これはおたくの概算要求を見るというと説明も何もなくて、これは年金もそうでございますが、数字だけ載っかっている。これはずいぶんふざけた話だと私は思うのですがね、世の中をこんなに大騒ぎさせておいて。  それで、どういうふうにするのかというので見てみると、これは一番先に出てくるのは、福田派の皆さんは反対を表明したなんて新聞に書いてある。福田派の皆さんはまとまって反対だ、こう言っておられる。それだけじゃない、医師会も反対ならば、各労働組合の団体の皆さんも反対なんですね。これはゆゆしき大事でございます。六千二百億ばかり抑制する。減税だなんて言っているけれども、こっちから六千二百億持っていってしまおう。  それで、これを見ると、専門家の方に来ていただいていろいろ御説明もいただきましたが、一世帯あたり年間に四万円医療費がよけいかかるというのです。虫垂炎、七日間の入院が必要である。これは盲腸です。これから始まる。虫垂炎で現行は本人ならば四千三百円。虫垂炎で一週間入院して本人ならば四千三百円。ところが、この案が通ると、法律になるというと、三万三千四百二十八円になる。四千三百円が三万三千四百二十八円取られる。だから、よけいかかる分だけで計算するとプラス二万九千百二十八円。うっかり盲腸になれませんよ。痛くても、行けば取られるのははっきりしている。入院七日、給食六日間、こういうわけであります。こちらの方のもございますけれども、これは一般の方の健保本人。それから、非課税者その他ございますけれども、とにかく大変なことであります。  胃がんの場合、入院三十日、給食二十五日、大病院の例です。現行法なら本人は一万五千八百円なんです。これが、この案が通ると六万九千円なんですね。五万三千二百円ふえてしまう。ここにずっと表ができています。  かぜを引いた、三日間通院した。これは現行でいきますと、三日間通院して本人、初診料八百円、これだけです。これも九十円ふえる。家族が千三百三十五円ですね。本人が八百円ですね。これはどういうふうに考えましても、ちょっとあれですか、かぜも引けなくなるんじゃないですかね。  そして、ビタミン剤だ、かぜ薬だと、何か大幅に適用を除外しようとここに書いてありますね。私は基本的に受診の制限になることには賛成いたしかねる。財政面だけから健保をいじることに不賛成。国民の健康がどうなるかということがポイントだと思うのですね。それから、診療するお医者さんの側からすれば、診療の制限になるということは大変なことだ。だから、患者の側からすれば受診の制限、行きたい、だが金がというので行けないで、売薬を薬屋さんで買っているうちにこじれた、えらいことになる、こういう場合だって当然あります。また、診療するお医者さんの側でも、こういう制約が出てくるというと、つい診療の間口が狭くなる、患者の健康にまことにぐあいが悪い、こう考えざるを得ない。  各紙の社説を読みましても、いろいろな専門家のものを幾つも読みましたが、どちらを向いても、いきなりこういうことをやるというのはいかなることか、こういうことで、将来高齢化社会が来る、財政、医療費の全体を眺めてみて考えなければならぬ、これはそのとおりなんだけれども、これは幾ら何でもひどい。しかも、健保はここのところマイナスかと思ったらプラスになっているのですね。黒字になっているのですね。そういう時期にいきなりこれを概算要求ではかっとやる。中を見てみたら説明も何もない。これは私は何とも不賛成でございまして、やがて来国会の大きな問題になると思うのでありますが、これは認められない。いかがですか。これは御撤回願えませんか。みんなが困るのですから御撤回願えませんか。
  92. 林義郎

    ○林国務大臣 大出委員からのお話でございますが、私は思いますのに、三K赤字というのがございます。健康保険の問題も一つの問題であると思うのです。毎年一兆円ずつ医療費がふえているというのが実情でございます。これを社会保険料で賄っておる。そういった中で、その中の一部を国庫で負担をしているというのもこれはまた事実であります。私は、そういったことで毎年毎年一兆円ずつこの医療費が伸びていくという事実は大変なことだろう、むしろこの辺をどう考えていくかということを考えていかなければならないのではないかというのが基本的な考え方であります。  それで、現在の医療保険制度を見ますと、組合健康保険は本人十割、家族七割、政府管掌保険も大体そういうふうな形になっていますし、国民健康保険も大体七割または八割というふうな形での給付になっているのです。そういったことを考えますと、いま七割にしたところでいまの受診を抑制していくとは考えておりませんし、そういった形での平等的な考え方、家族と本人とのやはり平等ということを考えなれけばならない。と同時に、一部を負担をしていただくことによりまして忠省さん、医療側の方の自制というものも出てくるだろう、こう私は思うわけでございまして、全体として受診の制限になるとかあるいは診療の絶対的な制限になることはない。全体として、いまの医療制度、保険制度によりますところの医療というものが国民の健康に非常にいい役割りを果たしてきているということはあります。そういった基本を押さえまして、どうした形でこれから給付と負担との関係をやっていくかというもので考えて、いろいろな御提案をしているところでございます。  そうした意味で、先生のような御撤回をというお話でございますが、私は撤回をするつもりはありませんが、いろいろな点が私はあると思います。そういった点を十分国民の皆様からも御議論をしていただければありがたいことだと考えておるところであります。
  93. 大出俊

    大出委員 時間がないところで長い御答弁をいただきましたが、だが、国民の健康を損なう、家庭を破壊する、それから診療側も患者の側も困る、事国民の健康ですから、こういうものを出すんなら、いきなり急激に寝耳に水で、概算要求書見たって何にも書いていない、こういうやり方はいけません。私は、あくまでもこれは撤回を求めたいと思っているわけでございます。それだけ申し上げておきます。  最後に、行革について一言承ります。  今度の七法案、年金統合がございますけれども、国家行政組織法の改正、つまり局、支分部局等の改廃について政令事項にしようというのですが、これは前に何遍も出ている。私が内閣委員会にも出て、国会の審議の歴史からして、官僚の阿房宮をつくるから法律でなければならぬということになって今日に来ている。これは何遍もつぶれています。しかし、ここからはこのままでは何にも浮いてこない、人も金も。  それから総務庁、これについてもずいぶんちぐはぐなまとめ方をしたものだと私は思いますけれども、ここで政務次官が一入減る。減ってみてもその方は国会議員でございますから、総理附の方が出している、国というか省が払っているのを今度は国会議員で国が払うのですから同じなんです。政務次官に連動しているのです、国会議員の給料というのは。変わりはない。次官ぐらいのグレードの人を、次長ですからそのちょっと下に下げる。この違いだけは一つ残りますけれども、幾らもこれは金については違わない。では、この次官クラスの方はどこに行くのかといえば、首を切るわけじゃない、金に関係ない。  それから、地方の出先機関の整理という問題があります。地方行政監察局、行管。地方公安調査局、法務。大蔵省の財務部。これも前に出てきた法案です。ところが、たとえば横浜財務部を見ても、財務部長が所長になるだけ、その財務部長が首になるのじゃない、ほかに転勤する。経理が二十人ぐらいいるんだけれども、それを本庁に引き取るだけなんです。人も減らない。大変忙しいのですよ、財務部というのは。銀行との関係もある、国有地の管理をやっていますから大変なんです。それならば財務部の方がいい、金が減らないのですから。そういうふうに考えなければならぬ。ここからも人も金も減りはしない。  だから、ここに社説が一つございますけれども、中曽根さんが所信表明演説の中で、困難を突破し、将来に向かって国民の皆様に希望と生きがいを与える一里塚であると位置づけている。国民の生きがいの一里塚、こうおっしゃる。これは演技過剰だ。これでも行革国会が、これは何だ、国民にとってプラスになるようなものは何もない。行政の簡素化、定員の削減などにつながるようなものは何もない。いわば見せかけ、水増しの行革なのである。冒頭に申し上げましたように、私も国民のためになる行革、小さい政府をつくりたい、そう思っています。だがしかし、ほかの党の方々も討論会などでおっしゃっておりますように、幾ら何でもこれでは、国民にこういう言い方をして、そうして実際には中身は何にもない。考えようによってはなお悪い。それを行革で、小さい政府で、国民の希望の一里塚、国民の生きがいの一里塚、こう言われたんじゃ黙っておれぬですよ。  だから、こういう出し方をされたんじゃ、行革特別委員会をつくって議論するだけの価値がないと実は私は思っている。もうちょっと各党にも呼びかけて、本当に国民のためになる、そういう小さい政府づくりに協力しろということにして練っていただけぬかという気が私はするのです。協力しないと言っているのじゃないのですから、いかがでございますか。私は前にこの大きな法案は国家行政組織法も審議しているから、また三省の出先を整理するということも内閣委員会に出てきた法案なんですから、あなたも、私が十五年行政機構を一生懸命手がけてきたことは御存じでしょう。私はそういう意味で、ぜひひとつこれは考え直していただけぬかという気がするのですが、いかがでございますか。反対ばかりしているわけじゃない。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、数歩大きく前進すると思っております。総務庁をつくる問題にいたしましても、中央省庁の統廃合をやるというのは三十年ぶりぐらいでありまして、なかなかできないことでございました。今度の統廃合によりまして大臣を一人浮かすとかあるいは副長官二人を廃止するとか、そのほか機能的にも、人事、組織、定員、機構、そういうような問題について政府は統合的に運用できるという面も出てまいります。また、地方支分部局等につきましても、府県単位の行政監察局やそのほかを廃止する、これも簡素化する、一部はあるいはブロック機関に引き上げるかもしれません。いずれブロック機関につきましても法案で御審議願うという段階になるだろうと思います。そういうようにして一歩一歩着実に前進しておるのでございます。  国家行政組織法の改正にいたしましても、かつて大出先生御審議いただいた公務員の定員法につきまして、あれは昭和四十三年でございましたか、つくったために、国家公務員は現在あれだけ需要がふえましても一万人ばかり減っておるわけです。実負が減っておるわけです。しかるに地方行政官庁、公共団体、府県、市町村、特に市町村においてはその間膨大に人間がふえてきておる。もちろん事務もふえましたけれども、ふえてきておる。こういうことを見ますと、公務員の定員法というのは非常によくきいているわけです。  ところが今回は、局の定員法をつくろうというようなもので、中央官庁の局を、たしか百二十八であったと思いますが、それに限定してそれ以上ふやさぬ。それ以上ふやす場合には国会がこれを決める、しかし、それ以下にすることはよろしい、その範囲内においてスクラップ・アンド・ビルドで各省庁が時代に合うように改編、編成がえを行いなさい、そういうことでありまして、いま大体八省庁ばかりの、運輸省以下が機構の大改革をやって、許認可官庁から政策官庁に脱皮しよう、そういうことをいま待っておるわけです。そういうような情勢から見ましても、行政の前進あるいは国民の利便あるいは規制解除、そういうような面からもこれは数歩前進する結果を生むのでございまして、ぜひ御審議して御賛成いただけばありがたいと思う次第でございます。
  95. 大出俊

    大出委員 これで終わりたいと思います。  時間がありませんが、長い御答弁ですから一言言わないわけにはいかない。私は中曽根さんとのおつき合いは長いので、さんざっぱら行政機椎で議論してきた。あなた通産大臣のときには、朝六時ごろ私のところまで電話をかけておいでになった。何とかこの機構改革を通してくれ、大改革、資源エネルギー庁をつくったんだから。物価局だ何だといっぱいつくって、大変に機構が広がった。小さい政府ならああいう形のものはいけないのですけれども……。つまり、そういう経験もお互いにある。だから、私はわからなくはない。  そこで、職の定数というのは法律で決めている。職とは何か、仕事なんです。ここに仕事がある、人を確かなければならない、だから、その職をたどっていくと何人の人が要るというので、法律で決まるのが定員でしょう。そうすると、定員を減らそうというのならこの仕事をなくさなければ減らない。かくて金は減らない。この間、一昨年の行革国会のときには、いろんなごまかしがありますが、それでも二千四百億ばかり減った。減らない。それで、これだけの発言を施政方針でおやりになるから演技過剰だ、こうなるのであって、中身がないということになるのであって、いまお話しのところはわからぬわけではないのですけれども、これはぜひひとつもう少し、本当に国民皆さんのためになるという行革をおつくりをいただくようにしていただかぬと、われわれも協力したくとも、これでは審議のしょうがないじゃないかということになりますので、そこのところはひとつ御検討願いたい、これだけ申し上げまして、終わります。
  96. 久野忠治

    久野委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後一時開議
  97. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋政嗣君
  98. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総理大臣になられました中曽根さんに私が質問するのは、きょうが初めてでございます。社会党の委員長に今回就任したわけでございますけれども、党の委員長予算委員会で質問するのも初めてではないかなと思っております。いずれにいたしましても、せっかくの機会でございますから、実りあるものにしたいと考えておるわけです。この場合、実りがあったかどうかという判断は、国民皆さん方が下すわけでございますけれども、私としましては、国民皆さん方にわかりやすい質疑応答にしたい、そして、できるだけ水かけ論にならないようにしたい、そういう心がけでこの質問をしてみたいと思うのです。  国の安全保障というものにとって一番大切なのは、私が改めて申し上げるまでもございません、国民的な合意が成立することなんです。国民が一致しないで安全保障はないわけであります。そういう意味からは、たとえ考え方は違っても何とかコンセンサスが得られないものだろうか、そういう努力がお互いになければならない。私はそういう意味も込めて、できるだけ水かけ論にしたくない、こう申し上げておるわけであります。しかし、成功するかどうか、これは総理の協力を得なくちゃならないわけでございます。わが党の代表質問もしないのに、非武装中立ナンセンスなんというような態度をとられているんじゃ、これはなかなかむずかしいわけでございますので、あらかじめ特にこのお願いをいたしておきたいと思うわけです。  私の本を総理は二度もお読みいただいたそうでございます。本当に読まれたのでしたら、目は通されたかもしれませんけれども本当に読まれたのでしたら、これだけ違った考え方の中でも何か接点はないだろうか、そういう私の努力の跡は読み取れなかったものだろうか、そんな気がするのですよ。結局、私どもは軍事力によって国の安全保障は確保できないと言い、あなた方は軍事力によって安全を確保しようとする、全然違います。そこで、これを強調しておったのでは、これは接点がないわけです。だから、私はなるべく総理の方の土俵に乗っかって、軍事力による安全保障というものを考えるのならば、この点、こうおかしいのじゃないですか、こういうことをあちらこちらで言ったつもりであります。これが私の言う接点を求める努力をしたということなんです。それも読み取っていただけないで、一方的な非難をなさるということでは本日の論議についても実りが期待できないのでございますので、私、もう一度申し上げるわけです。  若干、質問をいたしたいと思うのですが、私の安全保障についての考え方の基本は、この本の中で何度も申しておりますように、あんなに何度も言う必要はないのじゃないかという批判をなさった方があるぐらいです。それは安全保障というものに絶対はない、これが私の基本的な考え方だと何回も言っております。いまちょっと触れましたが、こうすれば絶対に安全というものはないんです。あくまでも比較、選択の問題だと私は理解しております。皆さん方は、軍事力によって日本の安全を図ろうとする。私たちは、非軍事的な手段、特に外交的な手段を中心に据えて日本の安全を図ろうとする。どちらの方がましだろうか。私は、後者の方がましなのではないか、そうしたら絶対に日本は安全なんという断定は、してないわけであります。  そこで、最初にお伺いしたいわけですけれども、この私の基本的な安全保障についての考え方についてどのようにお考えか、この辺から御質問してみたいと思います。
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、平和を求めようという点においては一致しておると思います。この理念においては完全に一致しておると思いますが、その方法において石橋さんと考えが違うのではないだろうか。  理念というものは非常にとうといものでございますけれども、政治の世界に入ってまいりますと、それが現実性があるかどうか、その理念を実現する具体的な、納得する方法が講ぜられているかどうかという点が政治の世界の問題なのであります。宗教家や道徳関係から見れば、理念がよければ結果はどうでもいいということでありますが、政治の世界においては、いかに理念がよくても結果が悪かったら、それは責任を全うできない、これが政治の独特の世界であると思いまして、われわれはそのような意味において、国民皆さんが安心と納得のいける具体的方法を申し上げておる、そういう考えに立っております。
  100. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、安全保障というものに絶対というものがあるのか、私はないと思いますが、いかがでしょうとお尋ねいたしておるわけですが、どうでしょう。
  101. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは絶対はないと思います。やはり安全保障というものは相対的なもので、選択の問題である、どちらがよりベターであるかという選択を政党なり個人の責任において決め、国民の御批判をいただく、こういうものだろうと思います。
  102. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、なぜ軍事力による防衛というものは困難であるか、不可能であるか、その理由は後で御説明いたしたいと思うのですが、少なくとも軍事的な防衛というものを考えるよりは、非軍事的な手段によって日本の安全を確保する道を考えた方がましじゃないか、こう思っておるわけです。  それについて、それは理想は理想だとして正しいとおっしゃるのですけれども、理想とか理念とかいったら、何か政治とは関係がない、宗教の問題だという認識は私は間違いだと思いますよ。理想なしに何を追求するのですか。現実、現実と言って、理想を失っていいものですか。そういうことが許される社会が、世界が。これも後でゆっくりお話しいたします。  そこで、私たちは少なくともどこの国とも仲よくする、お互いに攻めるとか攻められるとかいう不安や不信感を持たない国際環境をつくる、その中で日本の安全を図っていった方がましなのじゃないか、こう言っているわけです。  長年、非武装中立と言いならわされてきておりますから、私もそれを踏襲しておりますが、そういう意味で、私の言わんとしていること、この本に響いてありますことを正確に表現するならば、中立などという簡単な言葉じゃないのです。もっと的確に表現する方法はなかろうかといま考えておるわけですが、単なる中立というよりは、非同盟中立全方位外交と言った方がまだ私の考えているものの実態に近いと思うのです。  この全方位外交という言葉は、福田総理もかつてお使いになりました。しかし、等距離ではございませんよとおっしゃいました。中曽根さんも、全方位外交はとらない、おのずから濃淡がある、日米が軸だと申しました。両方の内閣でもこれだけの違いが出てきているわけですね。私は、本当の全方位外交をとるべきだ、どこの国とも仲よくする手だてを講ずべきだ、このように思うわけなのです。  そんなことは理想で現実は簡単にできないよと。簡単ではございません。しかし、幸いに生きた見本、生きた証拠が私たちの目の前にあるのです。それが何かと言えば日中の関係なんです。  十年前まで、私たちが何と言っても、中国の脅威をあなた方は叫ばれました。膨張主義の国と非難もされました。国際舞台に迎え入れるべき時期が来ていると私たちが言っても、あらゆる手だてを講じて国連加盟を阻止なさいました。重要事項指定方式だとか逆重要事項指定方式だとか、本当に悪知恵の限りを尽くして妨害したのは日本政府です。それがどうですか。いまではみごとに友好関係確立しているじゃないですか。体制の違う国です。共産党指導の国であることには何の変わりもない。それでいて、アメリカの対市政策が変わり、日本の対中政策が変化したら、みごとに日中関係、このような友好関係をつくり出すことができた。  できるじゃないですかと私は言っているのですよ。やる気がないからできないのであって、やる気があればできるじゃないですか。こんな生きた証拠はないのです。いま中国が攻めてくるなんということを言っても信用する人はおりません。そんなばかなことを言う者も余りおりません。私は、ここに本当の意味の安全保障政策というものが実験としても成果を上げている、こう申し上げたいのです。  日ソの関係となれば、領土問題を抱えておりますし、日中の関係よりももっとむずかしいかもしれません。だからといって、せめていまの日中のような関係をつくろうという努力を放棄しておいて、単なる理想だ、理念だというようなことを言っておったのでは政治ではないじゃないですか。  確かに大韓航空の撃墜事件というまことに遺憾か不祥事件が起きております。それをチャンスとばかりに、ナンセンスなんという態度は責任ある総理のおとりになる態度じゃございません。日本国民の生命財産に責任を持ち、日本の安全、世界の平和に責任を持つ政治家としては、責任を追及する、ソ連の非人道的な立場、それを追及することは当然ながら、なぜそのような不幸な事件が起きたかという背景をしっかり見きわめて、これを解消する努力をしようと誓うことがなければいけない、私はそう思います。  そこで、この不幸な事件について、私ふっと思ったことがあるのです。どんな理由があろうと、領土、領空侵犯があろうと、二百六十九名の人命を一瞬にして失わせた、これは容認できません。責任は追及しなければなりません。しかし、ふと考えてみたのです。日本ならどうしただろう。  夜間、国籍もわからぬ、どういう任務を持って飛んできた飛行機かもわからぬ、日本の領土の上を通っている。直ちにスクランブルだってあるでしょう、領空外に出ていけと言っても、出ていかない、着陸しろと言っても、着陸しない。どうなさるのでしょう。私は、そのことも本当に真剣に考えました。どうしたらいいのだろう、そのとき。日本の要撃戦闘機には、いまでは空対空ミサイルが装備されているのです。私たちの批判を無視して、現実に装備しているのです。一体、日本ならこういう場合どうするのだろうか、ぜひお教えいただきたいと思います。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の自衛隊の航空機は、非武装民間航空機を撃墜するようなことは、絶対やりません。それは私は断言いたします。それは、ああいうような不幸な事態が仮に起きたといたしましても、日本の航空自衛隊は、あらゆる面でその民間航空機に、航路が間違っている、したがって返せ、あるいはそれでも言うことを聞かない場合には、着陸信号を送るとか、あるいは曳光弾を先方に発射するとか、あるいは飛行機の前方へ出るとか、上空に出るとかあらゆる努力をして、相手側に識別させるということをやるでしょう。  今回のソ連の場合は、交信記録を読んでみましても、大韓航空機は全然知らないで撃たれた情勢でございます。そういう状況を見ると、ソ連の方は、あそこに何があるか知りませんが、恐らく軍部に権限がゆだねられていて、国防上の必要からああいう措置をやったのではないかと考えられまして、日本の航空自衛隊なら、あらゆる努力をして、そして着陸なり、引き返すなり、やるでしょうし、もし、それが民間航空機であった場合には、ちゃんと国の識別標まで撮り、あるいは写真を撮って、後日の証拠のためにして、その国とかけ合うことになるでしょう。その場合には、遁走されても仕方がない、日本の自衛隊はやると確信しております。  それから、最初の御質問の中国とめ関係でございますが、私は、中国がなぜアメリカや日本や自由世界と友好、良好な、安定的な関係になってきたかということを考えてみたいと思います。  ソ連に対しては中国は非常に友好的でありました。私が昭和三十年前後に、最初の保守党議員として中国へ参りましたときには、工場へ行こうが、どこへ行こうが、「誠心誠意学習ソ連」という標語がどこでも張りめぐらされておった。それぐらいソ連を信じ、友好関係を結んでおったのです。「誠心誠意学習ソ連」、いまでも覚えています。  ところが、その後ああいうような関係になった背景を見ると、中国側は反覇権ということを強く言ってきている。反覇権がなぜ出てきたか、いろいろな原因もあるでしょうけれども、あの国境問題があったことは一つであったと思います。あらゆる部面から見て、中国はソ連に対して脅威を感じてきたのじゃないかと思います。そういう意味において、中国は日本あるいはアメリカとも友好関係を維持して自分の国を守ろう、あるいは安定させよう、あるいは経済を復興させ、工業の近代化、軍の近代化をやろうと心がけてきたんじゃないでしょうか。ですから、アメリカに対しても、武器技術あるいは高性能の機械等についても輸入することを認めるように働きかけておるやに聞いております。  こういう情勢を見ると、反覇権ということが非常に厳しく言われて、かつて憲法にはソ連社会帝国主義、覇権主義をののしるような、ののしるというよりも批判するような文章すら書かれておった。今日の状態では、一覇権主義を批判して、アメリカの覇権主義も同じように批判はしておりますが、批判の度はソ連に対する方が強いのではないか、警戒の度も強いのではないかと私は考えます。  そういう面を考えると、やはり中国自体が、この国際情勢やらあるいは日本やアメリカの態度やらあるいはソ連の態度を見て、外交政策を非常に激しく変換させて、ニクソン訪中になりあるいは田中訪中になり、そして妥協し得る範囲内において妥協しつつ、友好安定関係を維持してきている。これはやはり均衡論、バランス・オブ・パワーに基づく原理があるのではないかと思うのです。ソ連に対して中国一国だけでやるというよりも、友好関係をアメリカや日本とも結び、自由世界とも広く手を広げて、そしてバランスを維持していく、あるいは近代化を促進する、そういうような関係に立ってバランス論あるいは均衡論あるいは抑止政策というような考え方からそれが来ているのではないかと思うのであります。そういう面からいたしまして、この日本と中国はよくなったという原因をもう少し突き詰めてみれば、われわれが考えているような均衡や抑止という理論においても中国はおとりになっているのではないか。  私は、あなたの本を読んでみまして、その中でこういう言葉があるのです。これは伍修権副総参謀長の見解が最も代表的なものとしてあなたが紹介している。それは一九七八年四月に日本の軍事評論家が訪中したとき述べた言葉で、こういうことを言っております。「ソ連が拡張をはかっている現在の状況下では、日米安保条約は必要だ。今のままで破棄すれば、ソ連の脅威は、日本にも中国にも大きくなり、極東全体にも不利を招く、この問題は国際的な相対関係の中で考えるべきだ」、こう書いておる。あなたの本にこれが書いてあるのです。  こういう点を考えてみますと、やはり日中関係がこういうふうになってきたということは、私は日本のためにも中国のためにも喜ぶべきことであり、こういう良好な関係をずっと維持していくようにわれわれは誠心誠意努力していきたいと思っておるのですが、やはり根本的な考えはこの本に書かれておるような考えで変わっているのではないか。ソ連覇権主義というものが大きな主題として登場してきたからではないかと思います。
  104. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最初の質問、答えになっていないと思うのです。結局、あらゆる手だてをした、領空、領海外に出なさい、それも聞かなかった、強制着陸を命じても聞かなかった、悠々と日本の領土の上を国籍不明機が飛び続けたときにどうするんでしょうか。見逃すとおっしゃいましたが、それなら何で実弾ミサイルなんかつける必要があるのだろうか、私はそんな疑問を持つわけです。  それと私は、栗栖さんが奇襲対処という表現を使ったのが気になるわけですよ。やはり今度の場合でも、ひょっとしたら政治が関与しないで軍部が先走ったのではないかという疑問が持たれていますが、栗栖さんがかつて統幕議長のときにいみじくも指摘した奇襲対処の思想と一緒なんですね。政治家なんかに相談しておったんじゃ間に合わない、これが軍の本質であるということを前提に軍事を論じなければ、それこそ空論だということを申し上げたいのです。  冒頭に、きょうはできるだけ単なるやり合いにならないように、私そういう気持ちを持っているということを申しましたから、領空侵犯の問題についてはこの程度にします。  次の中国との関係ですね。  あなたの論法でいくと、ソ連に対して激しい敵意を持っておる国になったから仲よくした、これは重大ですよ。私は、日中の友好関係というものはそんなものじゃないと思う。過去の反省の上に立って、そして日中がどんな条件のもとにおいても仲よくしていかなければいかぬ、腹の底からそう思っております。中ソの関係改善がなされたら、それじゃ日中の関係もいままでのように友好的な関係は持続できないということですか。あなたは私の本を引用されましたけれども、一番大切なことは引用してない。いまは中ソの対立激しいけれども、何年たつが知らないけれども、必ず関係改善は成功するんじゃなかろうか。三年前に私はその本の中で指摘しております。だんだんその兆しが見えてきておるじゃありませんか。それが急速に進むとは私も思いません。中国の国内建設との絡みの中で進められるでしょう。米中との関係というものもにらみながらやるでしょう。しかし、少なくとも中ソの関係がいまよりも悪くなるなんということは絶対に私はないと思います。関係改善の方向に進むと思います。しかし、それもわからない。  だからいま、それじゃ中ソの関係が改善されたらいまのような日中の友好関係持続はむずかしいということですか、いかがです。
  105. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一九七二年に田中元首相か訪中されまして、両国の共同宣言を発しました。これで国交が正常化したわけです。その共同宣言の中で日本が何と言っておるか。これが政府の意思であり、日本の意思でありまして、私の意思でもあります。その冒頭の辺には、過般の大戦あるいは事変等中国の国家及び国民皆さんに大変苦痛を与えて損害を与えたことを深く反省しておる。そして、友好協力関係を設定していくように自分たちは努力し、誠意を尽くしたい、そういう趣旨のことが書かれておるわけてあります。  日本の過去を反省して、中国の皆様方に多大の苦痛、困難を与えたという日本の過去を厳しく反省して、その反省の上に立って中国と将来過ちなきように友好協力をしていくということをわれわれは約束しておるのでありまして、これが日中国交正常化の基本であり、また、将来われわれが日中提携していく上の一つの基本になっておるということを申し上げるのでございます。  中国とソ連との関係は第三国の関係でございまして、それは中国が自分でおとりになる政策ですから、われわれはとやかく言うべき問題ではありません。われわれは中国の意図をそんたくして申し上げたわけで、それはここに本に書いてあるから、私はもっともだと思って、そういうふうに申し上げておるわけでありまして、日本は平和を維持し、日本の独立を全うしていくために、そのときの状態に応じて最も適切な政策をやってまいりますが、少なくとも世界の平和やアジアの平和、繁栄のためには、一番近い大国である中国と協力して、そのためにお互いが努力し合うということは日本としての基本的な政策である、こう考えております。
  106. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最初からそう言っていただけばいいのです。今後、米中の関係がどのように悪化しようとも、中ソの関係がどのように改善されようとも、日中の友好関係は揺るぎないものにしなければならないし、自分としてもそのために全力を尽くすとはっきりおっしゃいますね。
  107. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日中関係回復の宣言及び友好平和条約の基本精神を堅持してまいるつもりであります。
  108. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私たちは、この体制の相違を超えて友好関係確立しなくちゃならない、その中にこそ日本の安全というものがあるのだ、何度も申し上げるようにそう考えておるわけです。  そこで、最近しきりにおっしゃる自由民主の体制を守るのだ、西側防衛の一端を担うのだという言葉がちょっと気になってくるわけなんです。そこに、私が、日中の関係についても本当に不動のものにしようという気があるのかなという懸念がつきまとう要因があるわけなんです。しかし、それはいま一応けりをつけます。あなた方が言う西側、自由民主の体制というもの、そちらの側にちょっと土俵を移してみたいと思うのです。  近隣の国で仲よくしなくちゃならない国、一番近い国、韓国です。これは自由民主の国なんですか。政敵を日本の国内から不法に拉致していく、合法的にあるいは非合法的に殺そうとするような政権が現実にある。フィリピン、政敵を白昼衆人環視の中で撃ち殺す、そういう隣国もある。これは一体自由民主の体制の国なのかどうか、どういう御認識を持っておられるのか、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、われわれに非常に近いアジアの友邦のこの国々を論評することは差し控える方がいいと思っています。しかし、どの国も、みんなそれぞれの国情に応じまして、そして民主主義、自由主義あるいは福祉国家の理想に向かって営々たる努力をし、そして憲法をさらに民主的なものにしていこう、また、その運営も民主的なものにしていこうという懸命の努力をしておる。しかし、それはみんな国々によってその状況が違います。民度も違いますし、あるいは政治構造や社会構造も違います。  そういう意味において、われわれの日本でも、明治維新以降しばらくは太政官制度でもありますし、また旧憲法時代においては行政権が非常に優位を持った中央集権的国家でもありました。しかし、それがいまの憲法でまた変わってきている。そういうように、国々は、そのときの情勢、その国々の必要あるいは客観情勢に応じてみんな変わっていくものであります。そういう営々たる努力を日本も明治維新以後してきた。あの太政官制度と今日とを比べればまるきり違うわけであります。自由民権で挺身して亡くなられた先輩も多いわけであります。あるいは最近においても、斎藤隆夫さんとかそういう方々もおるわけであります。犬養木堂先生もおりますし吉田茂先生もある。みんなそれぞれの歴史を持っておる。  韓国においてもあるいはフィリピンにおきましても、その他のアジアの諸国においてもあるいは北朝鮮においても、みんなそういう努力をおのおの懸命にしているんだろうと私は思っております。したがいまして、その国々のやり方については、われわれはやはり十分理解をして、そして冷たい論評はしない方が、日本のためにも国際関係のためにもいいと思っております。
  110. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 本当の友好関係というものは、当然批判すべきことも口にしないということの中から生まれないのですよ。それはごまかしにすぎないのです。最も基本的な問題です、私さっき例を挙げたようなことは。それについて一切の批判を避けるという態度は、私はもう一度申し上げますけれども、真に友好関係確立する道じゃない。  今度はその証拠を挙げましょう。  政府同士は遠慮している。支配階級同士はそういった遠慮をし合って、傷口をなめ合って友好関係確立しているかもしれぬけれども、肝心かなめの民衆レベル、国民レベル、人民レベルはどうですか。韓国の安全は日本の安全と一体だと政府同士では言っているけれども、韓国の皆さん日本をどう見ていますか。この間、私は世論調査で、NHKでしたか、聞いておりましたら、一番嫌いな国はどこだ、韓国で調べた。かつて戦火を交えた北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国じゃなくて、日本だ。  真剣に考えたことがございますか。なぜこんなことになるのか。考えたことがあるとおっしゃるならば、その理由をあなたなりにここでお述べいただきたいと思います。
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げましたように、その国にはその国の歴史があります。韓国のそういう世論調査も私は知っております。しかし、それだけにわれわれはなおさら誠意を尽くして友好協力関係を発展させていかなければならぬ。なればなるほどわれわれは誠意を尽くすべきものです。それは明治以来の日韓間の不幸な歴史を考えてみて、われわれ自体も反省をして、そして誠意を尽くすというのはあたりまえのことではないかと思っておるわけであります。  石橋さんも内閣を組織する、陰の内閣をおつくりのようですが、やはりあなたは、こっちの席に来ますと、いまのような発言をすると日本は孤立してしまって、アジアから完全に浮いちゃうおそれがあるわけです。ですから、政権をおとりになるというお気持ちがございましたら、私と同じようにぜひともふんわりした御発言日本のためにしていただきたいとお願い申し上げておきたいと思います。
  112. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ようやく政権を引き渡す気が多少起きてきたんじゃないか。結構なことです。私もそれでは総理大臣になったつもりで、十分にその点も考慮しながら御質問を続けたいと思います。  私は、やはり非常に深刻に考えざるを得ないのですよ。何でこんなに嫌われるのか、一番近い国に。それは民衆レベルで言うならば、買春ツアーなんというまことに腹立たしいことが目の前にある。そういう感情的なものもあるでしょう。しかし、それだけじゃないはずです。さっき私申し上げたように、四十億ドルも援助すると言いながら、それが本当に民衆の生活向上につながっていかない。独裁政権の維持のために使われている。はしなくもそういうことが金大中問題などで出てくる。そういうことに対する不信感というものが根底にあるんじゃなかろうか。  しかし、もっとさかのぼっていくと、過去の日本軍国主義の犯した罪に対する本当の反省がない、そういう見方をしておるのが一番重要なんじゃなかろうか。教科書問題ではしなくも出てきたわけです。これが心を閉ざしてどうしても日本の方に開こうとしない、一番嫌いな国という原因じゃなかろうかと私は思うのです。こんなことでは幾ら政権同士の話し合いがうまくいっても、私は、真の友好関係確立とはちょっとかけ離れたものじゃなかろうかと思います。  そこで気になるのですけれども、中曽根首相自身が本当に過去の戦争日本軍国主義の犯した犯罪というものに対して腹の底から反省をしているだろうか、そんな気がしてなりません。あなたも私の本をお読みになったそうですから、私もあなたの演説やらお書きになったものやらちょっと読んでみました。そうしますと、去年軽井沢セミナーで行政管理庁長官として講演なさった内容が月刊「自由民主」に載っておるわけですが、しきりに大東亜戦争、大東亜戦争とおっしゃるのです。活字にちゃんとなっているわけです。私は、大東亜戦争なんて言われると、大東亜共栄圏建設と掲げたあの当時の大義名分を思い出してしょうがない。どうなんでしょう。本当にあの戦争に侵略戦争という反省がおありになるのでしょうか。そのことをちょっとお尋ねしておきたいと思うのです。
  113. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人間にも歴史がありまして、やはり石橋さんも予備士官学校へいらして軍隊教育を受けられたからおわかりだと思いますが、私らもやはり海軍の教育を受けたり、また戦争前の学生時代を送った人間ですから、そういう人間のにおいとかしみというものはついているのだろうと思います。  大東亜戦争という名前がいいか悪いか。飛鳥田さんも使ったことがあるのですよ。一回、本会議演説でしたかどこかの演説で、大東亜戦争という言葉をお使いになった。それから、飛鳥田さんでも、平林さんがお亡くなりになったときに、名誉の戦死というような言葉をやはりお使いになった。私はあれを見て、やはりわれわれと同時代人だなと感慨を深くしたものであります。  大東亜戦争という名前がいいか悪いか。私は、大東亜戦争というのは、閣議で、戦争が始まったときにたしか決めたと思うのです。それをその後戦争に負けて、じゃ、あの過般の不幸な戦争を何と命名したか。太平洋戦争というふうに命名したかどうか、私は疑問に思っているのです。ですから、閣議か何かで名前を変えたのかどうか、その込もう少し調べてみないとわからぬと思うのです。ただ、戦争に負けたという理由で大東亜戦争という名前を使ってはいかぬのかいいのか、その辺もやはり考えてみる必要がある。たしかアメリカは太平洋戦争という名前を使っておった。東京裁判においてもそういう名前をたしか使っておったと思います。しかし、名前はいずれにせよ、過般の戦争についてわれわれが重大な反省をしなければならぬことは事実であります。あの戦争について厳しい自己批判、自己反省をしている演説を私は各地でやっております。その点は御理解いただきたいと思います。
  114. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、いま大東亜戦争という用語が使われているということだけをもって、あなたが本当に反省しているのかなという疑問を持ったというわけじゃないのです。この内容を読んでみてしみじみ思うのですよ。  去年のあなたの演説ですから覚えておられると思いますけれども、「私は大東亜戦争の教訓から「外交に五原則を持て」と言っております。第一は、国力以上のことをするな。大東亜戦争は明らかに国力以上の戦いでした。」反省は、侵略戦争だったとかよくなかったとかいうことじゃない。国力以上の戦いであった。「第二は、賭けでやるな。大東亜戦争はヒトラーが勝つだろうと予測して、ヒトラーに賭けて負けた。もしヒトラーが負けると思っていたら開戦しなかったでしょう。」と言っている。戦争というのはこんな手軽なものなんですか。幾ら過去のことであれ、こんなことなら、いまでもこの反省の上に立つなら、国力相応の軍隊をつくろうとか、今度はアメリカなら勝ちそうだからアメリカにかけようとか、そういう参考にしかならないじゃないですか。  私は、単なる大東亜戦争という用語の使い方だけを問題にして言っているのじゃないのです。その裏に本当の反省がないのじゃなかろうかという疑いを持ったので、私はお尋ねしたわけなんです。そういうところが体制のいかんを問わず、教科審問題に象徴的にあらわれたように、中国も韓国もすべてがぴりぴりっとするわけですよ。これがいま日本にとって一番大切なんじゃなかろうか。それを抜きに本当の友好関係確立はないのじゃなかろうか、そういう気持ちで私申し上げておるわけなんです。  単に揚げ足取りのつもりでこんなことを引用しているわけでもありません。そのことは御理解願えると思うのです。私たちは本当に近隣の国々と友好的な関係をつくらなきゃいけません。そうして、日本の安全を確保する道を考えなくちゃいけません。韓国の民衆とも仲よくすべきです。ただし、私たちが迷惑をかけたのは朝鮮民族なんです。南半分だけじゃない。その分断を固定化するようなことはできない、認めないと言っているだけなんです。ドイツのようにお互いが認め合っているなら、私たちの判断もまた違ってきますよ。そのことも御理解いただきたいと思うのです。そこで本当の反省というものが具体的に今後一つ一つ示されていかなくちゃいけない。教科書問題もただ字面を直すというだけじゃなくて、本当に腹の底から申しわけなかったという気持ちを持つことでなくちゃいけない。  それから、私は中国の問題を一つ申し上げるならば、経済協力が進んでおります。援助、援助と言いますけれども、少なくとも私たちの気持ちとしてはこれを援助ととらえてはならない。これはわれわれの償いだ、この認識を失って日中の真の友好関係はないと私は思います。賠償も払ってないのです。必要ないと言われたからそれは片づいたという、そういう心がけでは、本当に日中の——あなた、さっき国際情勢がどう変わろうと日中の友好関係は変わらぬとおっしゃいましたけれども、それが基本になければ私は非常に不安定なものになると思いますから申し上げておきたいと思うのです。  とにかく、日本のこれから進むべき道というのは、日本のこの経済的な力というものを開発途上国に対して十分に活用させる。そして、軍拡競争に巻き込まれるのではなくて、国際的な緊張というものを盛り上げるのではなくて、第三世界、開発途上国の本当の仲間としてこの経済力を活用し、これらの国々から信頼と、場合によっては尊敬をかち取る。そして、世界の平和のために存分に腕をふるう、そういう立場をこそ選ぶべきだと思います。  そこで、質問を次に移します。  私たちは、軍事力による防衛、戦争考えることはもはやできないということを申し上げたいのです。お読みになったと思いますけれども、日本は地理的条件も非常に恵まれている国です。日本がみずから紛争の原因をつくらない限り、他国から侵略されるおそれというものはきわめて少ない国です。過去の例からいってもほとんどないと言っていいに等しい。そう言うと、ずいぶん昔をさかのぼって元寇の役を持ち出しできますけれども、近代国家として生まれ変わった明治以後を考えてみただけでもおわかりのように、こちらが全部侵略した、そういう戦争です。  それからもう一つ、戦争がどうしてもわれわれとしては考えられない、そういう最大の原因は、原材料の大半、食糧の約七〇%、エネルギー資源のほとんどすべてを外国に依存している、主として貿易によって経済の発展と国民生活の向上を図る以外に生きる道がない、こういう日本なんです。戦争というものを想定できないのですよ。シーレーンの確保なんておっしゃいますけれども、専門家は一致して、海上交通路の確保などというのは不可能だと言っています。岡本のユニホームもアメリカの海軍作戦部長もはっきり言っております。あなた方の目標にしたところで、いま一年間に六億トンの輸入をしなければ日本経済の維持ができない。シーレーンの確保をして一体何%確保しようとしているのか。二億トンですね、三分の一ですね。間違いございませんか。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 幾つかの問題で御質問がありましたので、お答えいたします。  まず、中国の賠償問題でございますけれども、これは、日中関係の平和宣言をやりましたときに、たしか第五条で中国一は賠償を放棄しておる。これは非常にありがたいごりっぱなお考えで、われわれは感謝しておるところです。したがって、法的には日本には賠償の義務はないのです。しかし、その宣言の冒頭でも書きましたように、日本は多大の苦痛を与え、損害を与えたことについて深く反省し、将来を戒めなければならぬと思っている。したがって、中国に対するいろいろな御協力については、われわれにそういう精神的要素もあるということもこの際申し上げておきたいと思うのです。  それから、私の外交五原則についてお話しになりましたが、二つばかり言ってあとの三つをおっしゃっていないのです。その三つが大事なんです。  その次は何であるか。まず最初は、国力以上のことをやるな、それから、かけでやるな、その次は、世界の正しい潮流に乗っていけ、それから、内政を外交に利用するな、それから、超党派でやるべきである。それは外交当局が、また政治家考えなければならぬ外交の技術的、専門的な心構えとして申し上げておるのでありまして、過去の大戦の反省からそういう五つの原則を私は自分で持っておるわけであります。特に大事なのは、やはり世界の正しい潮流に乗っていかなければいかぬ、そういうことでもありますし、また超党派でやっていかなければならぬ、そういうような考えで申し上げているわけです。  それから、北鮮の関係について御言及がありましたが、韓国と北鮮とは国際的に判定、認定が違うと思います。つまり、あの不幸な朝鮮戦争のときに、北鮮軍は南に侵入をした、侵略という意味で国際連合においてその判定を受けて、国連軍が形成されたわけです。そういう意味において、北鮮と韓国とは、やはりわれわれから見れば立場が違うし、そういう点もわれわれは国際外交上の問題として考えておるわけであります。  それから、日本は海国であるから侵略されないだろうというお話でございますが、私は、自分で防衛しなければ侵略される危険が出てくる、いつでも出てくる、そう思っております。そういう一つの、一番いい例は例の北方四島であります。あの北方四島を調べてみましたら、あのとき案内した日本の少佐の本が出ておる。ここにある「北方領土奪還への道」という、水津満という人の書いた本で、この人は北千島作戦参謀をやった少佐です。  この人は、書いた本によりますと、侵入してきたソ連軍に案内を命ぜられて、この人は北千島軍の参謀であったんですけれども、ソ連のその入ってきた。連中の水先案内をやらされた。そうして得撫島まで来たときに、明らかに向こうの将校は、もうわれわれはここまでだ、そういう話になっておる、そういうことをはっきり言っているのですね、この本の中に明確に書いてありますから。  こう言っております。彼は「これより以南はアメリカの担任だからソ連は手を出さない」とはっきり答えた。これは参謀長です。そうして北の方へ船団をまた向けて帰った、そういうことをここで言っておる。その後また得撫島へ来て、そうして様子をうかがって偵察隊を出したら、どうもい。ないらしい、いないらしいというのでそこから入ってきた、それがいまの四島が占領された歴史であります。もし、あすこへ日本軍がおり、あるいはアメリカの軍がおったらソ連は入ってこないことになっておったらしい。それをやったというので、この少佐は二階級特進で師団長に任命されたとこの本に書いてあります。  私は、この本をそのとおり正しいか正しくないか確めたわけじゃありませんが、案内した参謀が響いておるのでありますから、したがって、防衛もしないでおるという状態になれば、北海道全体があのときこういう状態になったかもしれません。それはわれわれが最近経験したことでもありますから、具体的事実でこういうこともあるから、われわれはやはり守らなければいかぬのだということを申し上げたいのであります。
  116. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は最初からお願いをしたわけなんです。できるだけ水かけ諭にならないように、わかりやすいようにしましょうと申し上げているわけで、私は私の考え方を述べていますから、総理自分考え方を、すりかえないできちっと答えていただきたいのですよ。  さっきの五原則の中で私が省いたのは、超党派外交を展開することが望ましいなんていうのはあたりまえなことです。これが大東亜戦争の反省からどうして出てくるのですか。大東亜戦争に超党派外交なんかなかったですよ。まさに超党派そのものじゃないですか。反対する者なんかなかったんです、政治に対して、すべてについて。それが逆に悪かったんじゃないですか。いま私たちのように野党があってこそ、民主主義というものの維持ができるのです。批判する者があることが民主主義の大前提でしょう。私は、だからこれはわざと省いたんであって、何も私に不利な材料だから省いたわけではないのです。きょうの話には直接関係がないと思ったわけなんです。  私がいま言っていることは、戦争というものを想定して、前提にして、それが防衛戦争と名づけられようと何と名づけられようと、日本というものはもうやっていけないじゃないですか、こう申し上げているわけなんです。六億トンの輸入を確しなければ日本経済の維持ができない、戦争をやっちゃったら全部沈められてしまう、だから大変だからといってシーレーンの確保とおっしゃるけれども、海上交通路を確保してこの輸入量を確する道はないのです。逆立ちしたってない。  一体、シーレーンの確保、シーレーンの確保とおっしゃるが、海上交通路を確保してどの程度の輸入量を確保しようとおっしゃるんですかと聞いたら、過去において必要量の三分の一の大体二億トンだという答えが政府からはね返ってきているわけなんです。それで間違いないんでしょうかと申し上げたわけなんです。しかし、私は二億トンもむずかしいと思いますよ。しかし、その目標でやるんだということには間違いがないんでしょうか。これは非常に国民の判断の材料に役立ちますからお伺いしているのです。改めて総理大臣言葉として聞きたいわけなんです。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 二億トン云々とか島国云云というお話がございましたが、じゃ、われわれが防衛できないのか。幾らやってもむだじゃないか、そういうような御議論の筋で来ていらっしゃると思いますが、しかし、まず、そういう事態を起こさせないためにわれわれは努力しておる。それが抑止力と均衡の理論なんです。つまり、アメリカと安保条約を結ぶことによって、そうして向こうが手をかけられない、どの国からも手をかけられないようなそういう体制をつくっておく、これが戦争を起こさせない大事な要請であり、平和を維持していく大事な要請である。  そういう意味において、自衛力もわれわれは憲法の範囲内において持つし、アメリカと提携して日本の防衛を全うするという外交姿勢も堅持しておる。これによって、まず戦争を起こさせないということを考えておるのである。私は、そういう努力も要らないということ同体が、なぜ要らないんだろうか、そうすれば、いま北方四島で申し上げたように、何が起こるかわからぬじゃないかというふうに申し上げたい。(「全方位外交」と呼ぶ者あり)全方位外交でやれば大丈夫だと、いまその辺からお話がありましたけれども、そういう一片の抽象的な観念的な外交政策で、ほかの国が全部神様みたいに従ってくれるでしょうか。いま申し上げたような北方四島の例を見ても、これはわかるのではないかと思うのであります。
  118. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 さっきから申し上げているように、国民の判断の材料になるポイントの一つですから、いまお考えになっているシーレーンの確保によってどの程度の輸入を確保しようとなさっておるのか、ぜひお伺いしたい。六億トンなければならないのだが、それはとても不可能、三分の一の二億トンなら二億トンの確保が目標なら目標、間違いないなら間違いないとおっしゃってください。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは非常に専門的な技術的なことで、運輸大臣あるいは防衛庁長官に答弁してもらいたいと思いますが、政治家としてあるいは総理として二番大事なことは、そういう技術的問題は第二段の問題で、それ以前に戦争を起こさせないだけの、国民が安心し得る具体的措置をつくっておくということが、さらに政治家としては大事なことなのでございます。  その点で、石橋さんと私とは考えが違うわけです。石橋さんは、非武装中立論がいいとおっしゃる。私は、均衡と抑止に基づく防衛体制をつくった方がよろしい、こう申し上げておる。この優劣、どっちがいいかということが決まって、それから、いまのような次の技術論というものに物は展開していくのではないかと思うので、まず第一番、政治家が一番やらなければならぬ外交や安全保障の基本を、まず私は申し上げたいと思うのであります。何億トンあったら安全であるとかなんとかという問題は、それは第二段階の問題、そういうことを起こしてはならぬからこそ、われわれは抑止と均衡によって戦争を起こさせないように安全確実な方法を持っているのだ、そういうふうに申し上げておるのであります。
  120. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 どなたでもどうぞ。
  121. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御質問の中に出てまいりました輸入量に関する問題は、これは過去におきましてもしばしぱ国会で御質疑がございました。  これはどういうことかと申しますと、かつて昭和五十年から五十一年にかけまして、防衛庁の中の海上幕僚監部の中で一つの事務的な研究といたしまして、有事における輸入量の試算という作業をしたことがございます。それは、当時の総輸入量が約六億トンぐらいございまして、最低生活を維持していく場合には約二億トンぐらいのものが必要ではないかというふうな一つの推計があったわけでございますが、これは防衛庁として正式に取り上げたものではございません。  それからまた、このことが防衛力整備の問題に結びついているわけでもございません。  以上、お答え申し上げます。
  122. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総理大臣大臣もシーレーンの防衛と盛んに口にするけれども、一体どの程度の輸入量を確保しようかという数字すら頭にない。そういうことこそ非現実的じゃないですか。これだけ力を入れているのに、そのことによってどの程度の輸入量が確保できるなら日本の経済がどうなるのか、眼中にない。その実態がわかればそれでいいですよ。  そこで、あなたは抑止理論を言いました。抑止の理論については、私は後でやろうと思ったのですが、この抑止理論でいくと、とてもおっかなくて日本には攻めてこられないというような脅威を与えない限り、それぐらいの軍備を持たない限り、抑止の効果は発揮できない。常識ですよ。これは専守防衛ということとは全然うらはらですよ。栗栖さんが統幕議長のときにはっきり言ったじゃないですか。私はこれは正しい理論だと思いますよ。これは、一応そういう私の見解だけ申し上げておいて後でやります。  私がいま問題にしているのは、日本戦争なんて考えられない。一つの条件として経済的な理由を挙げました。  もう一つは、安全保障、防衛という限りにおいては、国民の生命と財産を守るということが至上命題、これが近代戦争ということになると、国民の生命財産なんというものは全く問題にならないのです。いいですか。過去における、最近の戦争による非戦闘員と戦闘員との犠牲者の比率を私はここで御紹介いたしておきます。  第一次大戦のときには、非戦闘員はすべての死者の二%にすぎませんでした。それが第二次大戦になりますと、七〇%に飛躍的にふえました。朝鮮戦争になりますと八四%です。ベトナム戦争になりますと九〇%です。死者の九〇%が一般市民なんですよ、近代戦争というのは。この島国で逃げるところもない日本戦争をわれわれが想定できますか。攻めるとか攻められるとかいうそういう危険な状況を何とかなくそうと努力することが、すべてのわれわれの最大の任務じゃないですか。今度もし戦争が起きるということになった場合に、一体どんなに国民が犠牲をこうむることになるだろうか、考えただけでぞっとしました。  まず第一は、兵器の発達がもう過去と全然違いますね、第二次大戦前と度合いが。それから、原爆、水爆の数がもう全然違いますね。第二次大戦のときにはわずかに二個でしたが、現在では約五万個と言われています。  それから、国内の条件を見ますと、いわゆる危険物と思われるものがそれこそ無尽蔵にある。自動車四千万台、危険物貯蔵庫六十万カ所、石油、ガソリン、ガスの備蓄、これまた数知れず。問題は、原子力発電所二十四基。原爆が仮に使われなくとも、原子力発電所が破壊されたら、放射能害という点では原爆が投下されたと同じような被害をこうむるのです。それが、いますでに二十四カ所も原子力発電所があるのです。  こういう状況の中で、なぜ私たちが戦争というものを想定できるか。どんなに困難であろうと、すべてをかけて戦争回避、そう考えた場合には、どこの国とも仲よくしようという必死の思いが出てくるのが、政党政治家として必然ではないかと私は申し上げているのです。あなた方は、現在のようにアメリカと軍事同盟を結んで軍事力増強に邁進して、非常に緊張した国際環境をつくっておいて、そして非武装中立ナンセンスなどとおっしゃるけれども、私たちが政権をとったからといって、すぐに自衛隊が解消できるとか、安保を一方的に破棄して済むとか思っておりませんよ、できないですよ、そんなことは。あなたたちがつくったこの環境というものを改善しないで、どうして手をつけることができますか。(発言する者あり)
  123. 久野忠治

    久野委員長 御静粛に願います。——御静粛に願います。
  124. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 黙って聞くほどのゆとりもないのですか、大政党が。(発言する者あり)恥ずかしいと思いなさい。自信があったら、私の言うことを堂々と聞いて、改めて反論なさればいい。
  125. 久野忠治

    久野委員長 委員長から申し上げます。  ただいま真剣な論議が続けられているのでございますから、でき得る限りその論議はひとつ真剣にお続けいただきたいと存じます。静粛にひとつお聞きをいただきたいと存じます。御静粛に願います。
  126. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 もう一つ大切なことは、食糧の海外依存率が非常に高い。いまやカロリー計算で七割が外国依存、こんな状況で戦争というものが想定できるのだろうか。海上交通路がとだえて原材料が入ってこないということを私さっき言いましたが、食糧というのはきょうからの問題です、七割の食糧が入ってこなくなったら一体どうなるのですか。それでいて、どんどん日本の農村を破壊していった。自給率を低下させていった。これで安全保障を論ずるなどということは、逆立ちだと私は言いたいのです。  何度も申し上げますけれども、とにかく、安全保障というのは国民の生命財産を守ることなんです。体制を守ることではありません。国民の生命財産がこのようにまさに危機にさらされるということがわかっておって、その道をまっしぐらに進むなんということは、政党政治家として私はどうしても容認できないのです。あなたがいみじくも口にされた不沈空母論とかあるいは日米運命共同体論とかいうのは、本当に国民の生命財産というものを守るという一点から気持ちが離れているのではなかろうかと私は疑いを持った。  そこで、軍事力による防衛というものは、私たちから言えば、逆にいまや現実的じゃないんだ、こう申し上げたいのです。しかし、やはり憲法という問題も一言は触れておかざるを得ません。なぜかというと、憲法そのものが、スタートしたときに、私たちがいま言っているような立場に立ち、考えに立ってつくられているということは紛れもない事実だということなんです。それがその後ゆがめられて、憲法解釈が拡大されて、そして武装集団が存在している。日米安保条約というものが現実にある。残念ながらこれが現実です。だから、私たちの言っていることが理想になっちゃったのです。憲法が守られておるならば、非武装と非同盟中立が現実であったはずなんです。私は、ここのところはどうしても触れておかざるを得ない。  総理は、いまの憲法も軍事力を認めているとおっしゃいますけれども、それはこじつけですよ。あなたは、憲法改正試案なるものを一九五五年におつくりになって発表された。これも拝見させていただきましたが、この中にもはっきりと、宣戦、講和の、項目、非常事態宣言、緊急命令の項目、国民防衛の義務の項目、軍事裁判所の設置、全部書いているじゃありませんか。これは中曽根康弘著「自主憲法の基本的精神——忍法擁護論の誤りを働く」「自主憲法のための改正要綱試案」として発表されたものです。あなたも、軍事力というものが肯定されている限り、少なくとも憲法の中にこの程度のものはなければおかしいとお考えになったのでしょう。いまの憲法には一針の軍事規定がないじゃないですか。何にもないじゃないですか。やはりこれがH番の問題だと私は思うのです。  少なくとも軍事力というものを、防衛力と言おうと何と言おうと認めているならば、最低限あなたがこの試案の中でお示しになった程度のものがなければ成り立たないのです。無理なんです。専守防衛、守る専門なら大丈夫だとおっしゃいますけれども、それはこじつけです。  さっき申し上げたように、軍事論のたてまえからいっても、抑止の効果を持つことが最大だとあなたもいみじくもおっしゃいました。軍事を肯定するならば、私はその議論の方が正しいかもしれぬと思います。恐ろしいから攻めてこれないうっかり手を出したらやられてしまう、これが最大です。これが軍事力による戦争回避の理想ですよ。だから各国とも、みんな精いっぱい軍事力増強を図ろうとしているのです。しかし、制約があるのです。その制約は何かと言えば、一つは財政経済上の制約なんです。できれば他国が、隣国が恐れをなすほどの軍隊を持ちたいけれども金がない。日本はそうじゃない。いまや経済大国でこの制約はなくなったに等しい。  もう一つ、原爆もつくりたい、精度の高いミサイルも持ちたい。しかし、それをつくるだけの技術がない。これも制約です。日本にはこれもありません。つくろうと思えばあしたにもつくれる。  三つ目、これはいわば国民の感情と世論です。いまや日本で、この果てしなく自己増殖を続けていく軍事力増強路線に歯どめをかけられるものがあるとするならば、ただ一つこれだけなんです。憲法を守れ、憲法の原点は非武装中立じゃないか、これでやっと歯どめがかかっているのです。だから、あなたたちもここまでいきたいと思っても、憲法のたてまえ上できませんと言わざるを得ない。確かにブレーキになっているのです。社会党までが軍事力はもう必要だよ、こういう立場をとったら一切のブレーキはなくなるじゃないですかと私は言っているのです。そういう意味での非武装中立論というものの持つ役割りというものは、まさに重大です。  あなたは先ほど超党派外交とおっしゃいましたが、過去の歴代内閣の中には、みごとにこのような社会党の主張を利用した内閣すらあるのです。幾らアメリカから増強しろと言われても、そんなことはできません、日本にはやかましい社会党という野党がおって、そんなことをやったら国民の相当部分が批判をします、勘弁してくださいと言って逃がれた内閣もあるんです。何も超党派外交というのは、何もかも一致するということだけが超党派外交ではないのです。それを邪魔者扱いするということは、ほかに意図があるんじゃなかろうか。結局、憲法改正の障害物としてしか見切れないのじゃないかと私は思うのです。  だから私は、論争をあなたから挑まれたときに、受けて立ちます、国民の前で堂々とやりましょうと言ったときに、一番訴えたいのがここですと言ったのです。護憲か改憲か、これが結局は中心じゃないか、こう申し上げた。専守防衛ということは、これはどう考えてもむずかしいのです。先ほど申し上げたように、もし守る専門とおっしゃっても、攻撃的な軍備、防御的な軍備、攻撃的な兵器、防御的な兵器と分けられたとしても、それは結果論として分けられるのじゃないでしょうか。どういうときにどういう目的で使われたか、結果が出たときに初めて分けられるのじゃないですか。栗栖さんが言っているのもそういう意味だと思いますよ。初めから攻撃的な軍備、防御的な軍備なんて区別ができない、私もそう思うのです。むちゃですよ、それは。結果論としてでもむずかしいのじゃないかと私は思う。  たとえば、それじゃあなたに意地悪じゃなしに聞いてみましょうか。結果論としてむずかしいというのは、太平洋戦争は防衛戦争ですか侵略戦争ですか、日中戦争はいかがですか、シベリア出兵はいかがですか、明快に答えられますか、防衛戦争だ、侵略戦争だと。いかがでしょう。
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 太平洋戦争や日中戦争に関するいろいろな御質問の前に、石橋さんの一番大事な点の御開陳がありました。その点、私も非常に大事な点だと思って謹んで拝読したところであります。それで、石橋さんが貴重な御体験からいまのようなお考えをお持ちになった筋もよく理解できるのであります。  占領下におきましては、私もそれに似たような感じも持っておりました。しかし、その後においても、私は、人類武装、民族非武装という理念を持っているということを私の著書にも書いており保まずし、それをいまでも考えておる。民族非武装、人類武装、これがわれわれの目標であり、理念である。その点は、石橋さんと私と一致している点があると思うのです。そうして、戦争を起こしてはならぬ、戦争を起こさせないようにすることがポイントだ、これも全く一致していると思うのです。  そこで、違うところはどこかといいますと、ともかく占領下において私が石橋さんと同じような感じを持っておったというのは、ある意味において、マッカーサーに支配されて、日本憲法も動いてもいなかった。まあ旧憲法はなくなり、いまの憲法も占領下ですから十分の働きは必ずしもしていない。国会でも、法律をつくるには一々、この間来たウィリアムズ博士の許可を求めなければできない、そういう状態であった。そのころ非武装中立論、マッカーサーは守っていてくれましたからね、そういう意味において非武装中立論というのを唱えられたのは、ある意味における占領軍に対するレジスタンスの気持ちもおありになったでありましょうし、一種のナショナリズムの表現でもあるのです。現在、非同盟国家あるいは中立国というのがあるのは、一種の超大国に対するナショナリズムの表現でもあると思うのです。ですから、占領下そういう感じを持つということはよく理解できたし、私も一時そういう感じを持っておった。しかし、その後日本が独立して一人前になったときに、果たしてそれでやり得るかという疑問を持ったわけであります。  そこで、マッカーサーの強大な軍事力によって守られたときと、日本が保育器から出て一人前になって。独立独歩で出ていくというときになったら、おのずと対応は違ってこなければいかぬ。いつまでもそういう状態にしておったら、いつまでも占領軍は日本におるし、帰らない。現実的に占領軍をできるだけ早く帰す、そして基地を整理するということが、われわれの当時の大きな仕事であった。そういう意味において、われわれは憲法に対する解釈もそのころからいろいろ検討して、いわゆる清瀬理論あるいは芦田理論というものも出てまいりまして、憲法というものが存在する以上は、占領下なら別として、独立して存在する以上は、憲法は、存在を守る、独立自尊を守る方策を講じておらなければ憲法ではない。その憲法自体が独立自尊で侵されない、それを守っていくということは、結局国家が侵されないことであり、国家が独立自尊を守るということと同じである。  その方法いかんということになれば、必要最小限の自衛力を持って、自衛権を有効に発動し得るような体制をつくっておくということが憲法を守るゆえんである。そういう措置まで講じないでおくということは、これは結局護憲ではない、憲法を捨てることだ。私に言わせれば棄憲である。これは全く危険な考えだと私は思っておる。憲法を捨てる棄憲というものに通ずる、私はそう思ったわけです。  そこで、独立を回復した以上は、必要最小限の防衛力を整備するという考え方、いわゆる清瀬理論、芦田理論というもので思想統一を党として行って、改進党がそういう考えで自衛隊をつくり、自由党ともいろいろ協商、取引、話し合い、折衝を行いまして、そしていまの自衛隊法を成立させて、そして今日までずっと流れてきたわけでございます。  そのころから石橋さんと私の考えは違ってきた。独立当初におきましては、私はかなり衝動的な、率直に申し上げて独立に対する非常に強い要望がございましたし、占領軍に対する反感も当時はありまして、日本の防衛をどうするかというので、勉強不足の点もありまして、「自主憲法の基本的性格」という本を書いた。「基本的精神」じゃない、「基本的性格」という本です。しかし、その後いろいろ勉強いたしまして、私の最終的な考え方というのは、昭和三十六年であったと思いますが、昭和三十六、七年の憲法調査会で最終的な締めを行った、最終発言をした、その最終発言の中に私の最終の考え方というものは盛られておるのです。その中には、いまのような最初に書いたものは全部影をひそめておって、そして私に言わしめればこれが穏健妥当な考えであるというものに変わってきておる。これは参議院でも質問を受けまして、それを説明申し上げたこともあるのであります。そういういきさつがあるということを御了知願いたいと思うのであります。  そこで、いま石橋さんは、護憲をやる一番の核は非武装中立であるとおっしゃいました。それは本にもよく書いてあります。しかし、護憲をやる勢力の中には民社党もおりますし、公明党もおりますし、そのほかいろいろな政党政派もあります、共産党は別として。共産党は、社会主義政権ができたら憲法改正して軍事力を持とう、そういう疑いを持つ、そういうようなお考えのように承っております。がしかし、民社党とかあるいは公明党の皆さんは護憲です。しかし非式装中立てはない。非武装中立ではないけれども、護憲を堂堂と唱えている政党がここにあるわけです、りっぱな政党が。そういう意味において、非武装中立が護憲の中核であり、それが本尊様であるというのは、ではほかの政党はどういうふうにお思いになるでしょうか。私は、その点については釈然としない面がある。  われわれはいままで申し上げましたように、抑止力と均衡の理論に基づきまして戦争を起こさせない、これはあなたと一緒です。戦争を起こさせないという懸命の努力をしておる。しかし、ソ連の膨大な軍事力あるいはその他の膨大な軍事力に対してどうするかと言えば、日本の独力ではできないし、憲法上の制約もございますから、アメリカと提携して、両方の総合的力で抑止力を形成して戦争を防止している。現に、その力によって三十数年間平和が続いてきているわけであります。平和が続いている一番大きな理由は、社会党が非武装中立を唱えたからだと石橋さんはおっしゃいますが、果たして国民皆さんが本当にそういうふうにお思いでしょうか。ほかの考え方もおありになるのではないでしょうか。そういうふうにやはり考えが違うところがあるということを申し上げたいのでございます。(発言する者あり)
  128. 久野忠治

    久野委員長 委員長からちょっと申し上げますが、先ほども御注意申し上げましたように、国の基本的な政策についていま真剣な論議が進められているのでございますから、でき得る限りひとつ委員皆さん発言は御留意願いたいと思います。どうかひとつ御静粛にお願いいたします。これは、国民の注視の的になった本日は論戦でございますから、どうかひとつ御静粛にお願いをいたしたいと存じます、
  129. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 やはり、長々とおっしゃったんですけれども、私の聞いていることはお答えにならないのですね。軍事力というものを肯定する限りにおいて、それは防衛のためですと幾ら言っても、分けられないのじゃないかと私言っているわけですよ。これはユニホームの大方の意見でもあることは、栗栖発言や竹田発言、歴代の統幕議長が現職のまま発言していることによっても証明されているわけですね。私も、どうしてもこれは分けられないのじゃないかと思う。強いて分けるとすれば結果論じゃなかろうか。防衛のために使ったか侵略のために使ったか、結果で判断するしかないのじゃないか。しかし、それすら立場により考えにより、むずかしいのじゃないか。それで結果論として、材料として私申し上げたわけです。  一番近い太平洋戦争は、それでは防衛のための戦争ですか。当時は、そういう説明を私たちも受けたんです。それで、あなたも私もはせ参じたわけですね。その前の日中戦争、これも太平洋戦争の中にも包括されるわけですけれども、やはり切り離すべきでしょう。その前にはシベリア出兵というのもある。その前には第一次大戦もあり、いわゆる日露戦争や日清戦争もあるわけですけれども、この最近の新しいものを三つ取り上げてみても、日本防衛のための戦いであったのか、侵略のための戦いだったのか、あなたがここで自信を持ってお答えできにくいほど微妙な要素を持っているんじゃないでしょうか。明快にできるとおっしゃるならば前進するのですよ、この議論。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは歴史的ないろいろな経緯がございまして、たとえば日露戦争については、これは防衛戦争であると世界的にも認められておるようです。しかし、その後の日支事変とか日中戦争とか、こういうものになりますというと、これは日本が外国を侵略した、そういうような批判を受け、国際的にもそういうようなことが大体通念になってきているという情勢をよくわれわれはわきまえて、そして反省し、自戒して、こういうことを起こさないようにする、そういう考えを私たちは持っております。太平洋戦争につきましても、いろいろな原因はあるでしょう。人によって考えも違うでしょう。しかし、太平洋戦争全般というものを考えてみると、われわれとしては非常に反省し、考えていかなければならぬところがある。ああいう戦争が起きたという理由にはいろいろあります。いま申し上げたヒトラーというものに幻惑された点もあるでしょうし、あるいは持たざる国と持てる国というものの対立抗争の中に巻き込まれて、その理論に乗っかったという面もあるでしょうし、あるいは国内において軍国主義が台頭して、戦争に軍部の連中が持っていったと言われる面もあるでしょう。しかし、第一線で戦った将兵の相当部分は、これはやはりアジアの解放の戦争である、聖戦であると純粋に信じて戦って戦死した人もかなり多い、非常に多いと私たちは思っております。しかし、あの太平洋戦争をやってアジアの解放というようなことを言っておりましたけれども、じゃ果たしてアジアの解放というのであったら、南方方面を占領したときになぜすぐ独立を与えなかったか。戦争が負けてきてから大東亜会議を開いたりして独立を与えたてばないか、そういうような批判もあるわけです。そういうような批判全般をよく受けとめて、ともかくわれわれは、私自体はあれは間違った戦争である、私個人としてはそういう判定を持っております。そういう反省に立って私たちはこれから平和のために努力していかなければならぬ、そう考えておるのであります。
  131. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私も、強いて言えば結果論としての判定しかできないんじゃないか。戦争を始めたときには国を守るためという大義名分をどこでも掲げるのです。国民はそれを信じて戦うのです。私たちもその経験を持った。そこで反省したわけです、戦争に負けてから。だまされた、侵略戦争に駆り立てられたと。その思いを込めて憲法の前文にどのように書かれているかというと、再び政府の行為によって国民が悲惨な体験を受けるようなことがあってはならないと誓ったわけです。宣言したわけです。  政府の行為によってですよ。ここが一番大切なことなんです。幾ら国を守るためといっても、政府戦争に駆り立てるときには大義名分をつくるわけですよ。いま同じようなことが繰り返されているんじゃなかろうかと私たち心配するわけなんです。ちょうど鬼畜米英、鬼畜米英という、そういう宣伝を朝晩聞かされたと同じような状況がいま出てきておるのじゃなかろうか、そんな心配をするわけです。  第一、守る専門と言いますけれども、私はそれはむずかしいと思うが、仮に信じたとしても、その場合は戦場は一〇〇%この日本の領域内です。一体、この国土を守ると称して、防衛であろうと何であろうと戦争を始めて、結果はわかっているんじゃなかろうか。  二十四万人しか自衛隊員はおらない。予備自衛官を全部集めたところで三十万を超えることはない。どうするつもりなのか、私にはわからない。第二次大戦のあの最終段階では、九州だけでも百万の陸軍をわれわれは維持しておつたのです。私もその一人です。米軍の本土上陸があれば、真っ先に戦死の運命に置かれたところに私はおりました。百万の陸軍があの九州にいても、手を上げざるを得なかった。いまは日本国じゅうで二十四万の自衛隊。徴兵制もない。一体どうするおつもりなのか。  軍隊では認められている、認められているとおっしゃるが、どうしてこれ戦おうというのか。二十四万人のうち何割死傷者が出るまでがんばるとおっしゃるのか、納得できないのです。軍事力による防衛というものを考えるならば、一億の国民すべてが武器をとるという意思を持たずして成り立たないのです。軍事力による防衛というのはそういうものだと私は思います。そういう体制になっていない。やろうといったってできない。少なくとも防衛力というものが憲法で認められているというならば、せめて徴兵が憲法の中で認められておるはずだ。そうしなければ成り立たないのです。成り立ちますか二十四万人であとの国民は逃げ惑うのですか。逃げるところもないですよ。総理、矛盾をお感じになりませんか。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 石橋さんのお考えは、前からそういうお考えをおっしゃっているのですけれども、私は考えが違うのであります。ともかく戦争を起こさせない。いまのように、二十四万人で守れるかとか、あるいは攻撃的兵器、防御的兵器という、そういう理詰めのお話をなさいますが、私は、攻撃的兵器、防御的兵器というのは一応成り立つと思うのです。たとえば、攻撃的兵器というのはみんな防御に使えます。しかし、防御的兵器で攻撃的になかなか使えないものがあります、ある程度限定すれば。たとえば、航空母艦とかICBMとかIRBMあるいはサブマリンの中のSLBMとかあるいは長距離戦略爆撃機とか、日本から出ていって、外へ出ていってもやれる、こういうものは攻撃的兵器と一応言えて、われわれはそれは持ってはならぬ、そう言っているわけです。しかし、戦車とかあるいは防空戦闘機とか、こういうものは非常に短い距離でしか移動できない、そういうものは一応防御的兵器というふうに概念が整理できると思うのです。そういう意味で、われわれは防御的兵器と攻撃的兵器というものを区分けをしております。  それから第二に、石橋さんのお考えは、守っても守れないのだから、じゃ降伏した方がいいじゃないか、本にそう書いてある。強いて聞かれれば、それもあり得ると……(「そういうけちをつけるな、あなた」と呼び、その他発言する者あり)いや、書いてある。強いて言われれば口分はそうも言い得ると(発言する者あり)
  133. 久野忠治

    久野委員長 御静粛に願います。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうふうに書いてあって、降伏した方がいい、そういう場合もある。そうおっしゃっているのです。しかし、これは大変大事なお言葉なのでありまして、私は、日本の有力な政治家が、そういう降伏していいというようなことを言うということは、これは侵略を誘発する危険性が非常にあると思う。いまの北方四島の話を申し上げましたように、これは無抵抗でやるのだから、それじゃ簡単にどこか占領してしまえ、これを誘発する危険性が非常にある。  太平洋戦争のときに負けてよかったじゃないかということも、この中に書いてあります。しかし、太平洋戦争を戦い戦い抜いて、もう本当に疲れ切った最後の段階のことで、しかも相手は、アメリカに大体降伏した。ソ連は降伏した後で参戦した国であります。アメリカの占領というものは、あなたがよかったじゃないかと言われるような寛大なものでありました。しかし、ソ連があのときどうしたかと言えば、スターリンは日本を四つに分割しようとしたわけです。北海道、東北はソ連が占領するとか、四つに分割して占領しようと言って、これをアメリカのトルーマン、マッカーサーは拒否したわけです。しかし、スターリンが言うように、もしあれで四つに分割されておったら、日本の運命は北鮮と韓国の関係あるいは東独と西独の関係、民族分裂の悲劇が続いているという形になりましょう。  じゃ、いま言ったような関係だけで一国が占領したらどうなるかと言えば、これはアフガニスタンとか、あるいはチェコやハンガリーでも占領ではないけれども、あれだけの軍隊が入ってきて、そして何百万が逃げておる。ポーランドの場合は一千万人があそこから逃げておる。ハンガリーの場合は四百五十万人の人間があそこから逃げてきている。あるいはほかの国の場合でも、ボートピープルのようなもので、ベトナムでは六十万人が、五分の一しか生きないという確率でも外へ出てくる。あるいは亡命者が出てきている。われわれの近辺にも起こっておる。こういう状態を見ますと、自由と人権があるのか。サハロフは何を言ったか。そういうことを考えてみると、果たして降伏するということが本当にいいことなのか。これはわれわれの目の前で見ておる現象です。  そういうようなことも考えてみると、これは大変なことではないかというふうに思うわけであります。白旗と日の丸は違うのです。日の丸には一億の人間がおるし、国家の尊厳やら民族の伝統というものがある。白旗は単なる白いきれであります。その差があるということをわれわれは厳格に知っている一人であります。  そういう意味において、そういう悲劇を起こさせないという処置にまず万全を尽くす。初めからあきらめ切ってしまって何もしないというやり方よりも、たとえ苦労があっても、多少お金がかかっても、われわれは、そういう悲劇を起こさないためにやれるところまでは全力を尽くすというのが国家のあり方であり、政治家のあり方である、そう考えるわけであります。
  135. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私が質問を始めますときに一番心配した様相を帯びてきたわけです。私が質問していることには絶対に答えない。自衛隊員は二十四万人しかおりません。二十四万人だけで戦うのですか。そういう軍事力というものがどうして存在しますか。これに対してお答えないじゃないですか。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本は、いまの憲法のもとに平和な生活を営んで、これだけ繁栄をしてきている。そして、国民もいまの憲法をその意味においては評価しておる。私も評価している一人であります。しかし、そのもとにおいても、われわれは最小限の防衛費で安全を保持する道は何か、いまの憲法のもとで許される安全確実な方法は何か模索して、それによって安保条約というものを締結いたしまして、そしてアメリカのかなりの強大な軍事力と提携しつつ日本列島の防衛を維持してきて、それでこれだけ繁栄しているわけであります。私は、この自衛隊プラス日米安保条約という方式は非常に成功しているケースである、このように考えておるわけであります。
  137. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 まだ答えていないわけです。私は、軍事力による防衛ということを考える限りにおいては、限られた二十四万人の自衛隊員にお任せします、私どもは逃げ惑いますというようなことでは、のっけから不可能ですと言っているのです。一億の国民がすべて老いも若きも男も女も武器をとるという決意なしに成り立たない発想でございますと申し上げているのです。そういう状況にはないし、憲法もそんなことは許していないということはお認めになっている。いまの憲法では、徴兵はできないとはっきりおっしゃっているのですから。もうこの一点からいったって、軍事力なんというものを認めているというのがいかに憲法解釈の歪曲であるか裏づけているじゃないですかと私は申し上げているわけなんです。さっきも、軍事力を認めているならば少なくとも軍事法廷とか非常事態宣言とか宣戦、講和とかという項目が要るとあなたはお認めになって、自分の試案の中に書いていると言いましたが、もう一つ大切なのは、徴兵制が認められていない。これは軍事力というものを前提に全然考えていないということなんです。  それからもう一つ、兵器でも分けられるとあなたはおっしゃいましたが、ICBMやIRBMあるいはSLBM、そういうものは防御に使えないからこれは憲法め禁止する攻撃的な兵器だとおっしゃいましたが、原爆でも、いまあなたがおっしゃったような長距離ミサイルでも、防衛のために使う、第二撃能力として使うなら憲法違反じゃないと言い始めているじゃないですか。分けられないじゃないですか。こちらから先に使わないで後から使う分には、防衛のために使う分には憲法違反じゃないと言っているじゃないですか。原爆すら防衛の範囲の兵器だと言うのに、どうして防衛専門、絶対に攻撃に使わない兵器なんというのがあるんですか。本当にあなた、そんなことを信じていると私は思えないです。憲法の手前そう言わざるを得ないというだけでしょう。そこに無理があるんですよ。  それから、盛んにあの降伏のことをおっしゃいますけれども、私は本に何度も言っております。攻めるとか攻められるとかいうような危険な険悪な関係をつくらないように、どこの国とも仲よくしよう、特に近隣の国々とはそういう友好関係確立しよう。それでも攻めてきたらどうする、攻めてきたらどうするとおっしゃるが、そんなことをおっしゃる方は、それじゃ第二次大戦の際に降伏したことまでいけないとおっしゃるのですかと私は言ったのです。あなたは降伏はいけないようにいまだに思っているんじゃないでしょうか。  この「憲法改正の歌」を見ますと、一番目に、   鳴呼戦に打ち破れ   敵の軍隊進駐す   平和民主の名の下に   占領憲法強制し   祖国の解体計りたり   時は終戦六カ月 もう一つ、五番目は、   この憲法のある限り   無条件降伏つづくなり   マック憲法守れるは   マ元帥の下僕なり   祖国の運命拓く者   興国の意気挙げなばや  あなたは、どうもあのとき無条件降伏したのは間違いてあったという意識がやはり潜在的にあるんじゃないかと思う。「この憲法のある限り 無条件降伏つづくなり」、マッカーサー憲法を守るということはマッカーサー元帥の下僕になることだ、一貫してそういう思想があるように思うのです。その証拠に、青雲塾の「我が宣言」というところには、「外国軍隊の完全撤退促進」というのもあるんですよ。まだおりますね、外国軍隊。  私は、基本的に中曽根さんの考え方というものは主張としてここにあるんじゃないかという気がしてしょうがないのですよ。だから、いまの憲法を何としても改正しなくちゃならぬ。それなら平仄は合うのですよ。いまの憲法では軍事力を肯定しておらぬ、だから憲法改正して軍事力を堂々と持てるようにしなくちゃならぬ、これなら首尾一貫するのですけれども、そうじゃなくて、ごまかそうごまかそうとするから支離滅裂になる、私が聞いてもストレートにお答えできないということになるわけなんです。
  138. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、占領下、私ら復員して、マッカーサー元帥に占領されている日本を見て実に情けないと思い、特にまた、われわれの同胞はまだシベリアやその他にあるのを見て、非常に悲憤慷慨したものです。そういう意味のナショナリズムあるいはそういう屈辱感というものを当時青年将校と言われたころ持っておって、それがそういうものにも出てきた。しかし、だんだん時間がたつに従い、また勉強が進むにつれて、憲法調査会で正式に公式に記録した文章は先ほど申し上げたようなものだと申し上げたわけです。  いまの「憲法改正の歌」でも、一番最後のところには、   国を愛する真心を自ら立てて守るべき自由と民主平和をば我が憲法に刻むべき原子時代におくれざる国の理想を刻まばや こういう文章もある。(発言する者あり)
  139. 久野忠治

    久野委員長 御静粛に願います。
  140. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それで、私の質問に答えてない分をお答え願って、先に行きたいと思うのです。  二十四万人だけで戦うのですか。国民はどうするのですか。それから、あなたはICBM、IRBM、SLBMといったようなものは、これは攻撃的にしか使えないから憲法上持てないとおっしゃったが、原爆すら防御のためならば憲法違反じゃないと言う。いま御指摘になったような兵器も第二撃能力としてのみ使うならば、これは防御の範囲、そういう解釈もある。分けられないのじゃないですか。
  141. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自衛隊二十四万だけで守るか、あるいは予備自衛官を入れて三十万だけで守るかという御質問に対しては、先ほど来申し上げますように、日米安保条約を有効に機能させ保て、米軍の軍事力プラス自衛隊、あるいは自衛隊プラス米軍の軍事力、これによって抑止力を維持して戦争を起こさせないようにしていく、それは先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、航空母艦やICBM等々、これらは攻撃的兵器であって、いまの憲法のもとでは持てない、このように政府はここでも言明しているとおりであります。
  142. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は各地でこの問題についてずいぶん演説をして回ったのですけれども、国を守るために軍隊は要る、自衛隊は要る、しかし徴兵制は反対、そんな理屈がどこの世界で通用しますか。少なくともそういう考え方を問い詰めていくとどういうことかというと、どこかの国が攻めてくるかもわからぬと言われればそのとおりだ、だから軍隊要る、しかしうちのお父ちゃんとお兄ちゃん絶対やらないよ、お隣のお父ちゃんとお兄ちゃんがんばってちょうだい、そういうことになりますよ。そんな理屈がこの世の中で通りますかと私は言っているのです。  同じように、今度はアメリカの救援を待つとおっしゃいますが、二十四万人の自衛隊だけがんばって、あとは知らぬ存ぜぬ逃げ惑うという状況の中で、アメリカが救援に駆けつけてくれるのですか、そんな甘い前提に立って安全保障を考えておられるのですかと申し上げざるを得ない。  アメリカの中にも、まだ国民のレベルでは真珠湾を忘れない、根強いものがあります。これはもう紛れもない事実です。それから御承知のとおり、アメリカはベトナム戦争でこりごりして、戦争権限法というものを制定しているわけです。アメリカの政府がいかに武力援助をしてやりたいと思っても、国民が承知しない、議会が承知しないという厳しい条件がいま課せられているのです。それから、かつてのように圧倒的な国力、軍事力の優位性というものも失っているのです。  そういうときに、いざとなったらアメリカが駆けつけてくれるよ、そんな安易な考え方で日本の安全保障というものが成り立つのですか、そこのところはどうお考えですか。
  143. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本が万一外国によって侵略された場合には、アメリカは必ず日本を救援に駆けつけ、また、日本の基地におる米軍は日本防衛のために全力をふるって戦うという」とはかたい約束でありまして、これは必ず実行いたします。(発言する者あり)
  144. 久野忠治

    久野委員長 お静かに願います。静粛に願います。
  145. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 中曽根さんがいつからアメリカの大統領になったのだろうと錯覚するような断言がいまなされたわけですけれども、これはちょっと無理ですね、どう考えても。  その救援を前提に物を考えるとしても、相当長期間持ちこたえなくちゃならぬ。これがまた問題なんですね。二十四万人でがんばる限界というものはもう目に見えている。かつて国防会議の事務局長をしておられた海原氏は極端な議論をなしているわけですが、ソ連が攻めてきたら航空自衛隊は十分間で壊滅だ、海上自衛隊も二、三日で壊滅だ、陸上自衛隊も部隊として組織的に行動できるのは三、四日であろうと言っております。国会で野党議員の質問に対して金丸防衛庁長官は、せいぜい一、二週間しか持ちこたえられないだろうと答弁しています。これが現実ですよ。幾らあなたが日本の自衛隊二十四万とアメリカの救援で何とかするのだとおっしゃっても、こういう状況ではどうにもならぬ。仮に救援が期待できるとしてもどうにもならぬ。そんな軍事力による安全保障なんというのを私たちは支持するわけにはいかぬわけです。  時間がなくなりましたからもう一つだけ言いますけれども、それと、私たち現代の政治家がもう一つ忘れちゃならない視点は、いまや日本の安全というそれだけにかかずらわっておってはならない、人類が生き延びるためにはいかにあるべきか、そういう視点を絶対に忘れてはならないということです。  いまこの地球上に五万発の原水爆があるという。広島、長崎に投下された原爆の百万発分に相当するという。あなたたちは、私たちがどんな国とも仲よくするという努力をしさえすれば攻めてくる国などはないよと幾ら言っても信じない信じないと言いながら、こんなに膨大な核兵器だけは絶対に使われないということだけ信じる。こんな非現実的なことがありますか。原爆は現実にもう広島と長崎で使われているのですよ。これを使わなければもう負けだというときに、使われないで済みますか。  こういう時代に私たちは生きている以上、どんなに困難であろうとも、やはり国際的には完全全面軍縮、国内においては非武装というこの大理想を現実のものとする努力を絶対に私たちは怠るわけにはいかぬ、この理想を放棄するわけにいかぬ、これが私たちの非武装中立論というものの根幹の考え方であるということを付言しておきたいと思うのですが、最後のところ、ちょっとお考えをお聞きしたいと思います。
  146. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 石橋さんの平和に対する情熱、あるいは日本のために平和を最後まで維持しようという熾烈なる御希望については、われわれも同感を禁じ得ません。また、政党はおのおの自分たちの考えを持ち、国民の皆様の御支持もいただいて、国民の議論を盛んにしつつ国の方向を決め、できるだけコンセンサスを獲得して安定さしていくべきものでございますから、石橋さんを初め社会党の皆さんがそのお考えを持つことは御自由でありますし、また国民の中にもある程度共鳴なざる方があると思います。  その理念については共鳴するところはある、私も同じだと申し上げましたが、しかし、現実的方法については、私はまたいろいろ議論があり得ると思うのであります。しかし、これらにつきましては、国民の皆様方の間でわれわれ両党でよく説明もし、どちらが御理解をうんといただくか、これは両方の腕前によりますが、石橋さんの御健闘をお祈りする次第であります。
  147. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 時間がありませんからこれでやめますけれども、非常に重要な問題なんです。国の基本にかかわる問題ですかう、これからも十分に時間をとって論戦を継続したいと思います。一方的に切り捨てるようなことだけはお互いに慎みたいと思います。どうぞよろしく。
  148. 久野忠治

    久野委員長 これにて石橋君の質疑は終了いたしました。  次に、正木良明君。
  149. 正木良明

    正木委員 私は、公明党・国民会議代表して、若干の質問を申し上げたいと思います。  ただいま二時間にわたって、中曽根総理大臣石橋社会党委員長との間で、安全保障の基本理念の問題についてのいろいろの意見交換がございました。私は、この二時間お話を承りながら感じたことは、どうも日本人というのはオール・オア・ナッシングという議論が好きなんだなという感じを受けたわけです。私に言わせれば、両方ともきわめて両極端の議論を、かみ合わないままに二時間おやりになったというような感じがいたします。  おのずから公明党は、公党として、安全保障政策にそれはそれなりのわれわれの考え方を持っておりますけれども、引き続きこれを議論してまいりますと、いまこの防衛の問題は国の基本的な政策の問題でございますから重要であるということを認識しつつも、そのほか、この際国民生活に密着したいろいろの問題でお伺いしなければならない点がございますので、これは後ほど時間があればやらしていただくということにして、まずお尋ねしたいことがございます。  一つは、外務大臣にお尋ねしたいのですが、けさ新聞を見ますと、国連の役割り強化という問題について外務大臣から検討を委嘱されていた国連の平和維持機能強化に関する研究会の提言がまとまって、これを外務大臣が、今回の国連総会出席の際にデクエヤル国連事務総長に手渡すことになっているというふうに伝えられておるわけでございます。この点について、外務大臣の御見解をお伺いいたします。
  150. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 お答えをいたします。  現在の国連のあり方、あるいはまた特に平和維持機構のあり方等について、各国のあるいはまた各国の有識者の意見を求めるべきである、こういう昨年の国連総会の決議に基づきまして、国連事務総長の依頼等もあり、さらにまた各国が積極的にこの決議の趣旨に従っていま提言を国連事務総長に行っておるわけであります。そうした状況の中で、外務者としても国連決議に基づいて有識者の意見を聞きたいということで、昨年以来有識者の皆さんに集まっていただきまして検討を進めていただきました。そして、その提言が私のところに提出をされましたので、国連事務総長のもとにこれをお渡しをするということが、これはもう国連決議、さらにまた各国が行っておる、そういう状況から見て、わが国としても当然のことではないか、しなければならない、こういうことで、私もその提言を、これは政府考えとは違った面もありますが、この提言は国連事務総長にお伝えをしたい、こういうふうに考えております。
  151. 正木良明

    正木委員 この提言の内容を見ますと、わが国のとるべき役割りとして、国連軍に段階的に積極的に参加していくということが盛り込まれております。また、自衛隊が警察活動、また兵たん補給、監視。パトロール活動等に参加することになっておりますが、これらは武力行使につながる問題もあり、憲法上、自衛隊法上できないのではないかというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  152. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国連の平和維持機椎の強化という面につきまして、わが国の有識者の提言が行われまして、その中には、いまおっしゃるように、国連の警察行動に対して段階的に日本も参加していくべきである、こういうふうな趣旨も盛られておるわけですが、現在のわが国の法制のもとではこれはできないということは、この国会においてもしばしば政府の立場を明らかにしたとおりであります。
  153. 正木良明

    正木委員 これは国連決議のもとにこの提言を行うということになってはおるけれども、しかし、少なくとも外務大臣が委嘱したこの委員会の提言を外務大臣がみずから国連総長に手渡すということになれば、その内容について何らかのわが国の方針と背馳するものがあるならば、それを是正するということでやるのでしょうか。その点いかがですか。
  154. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この点につきましては、有識者の自由な論議のもとでの提言でございますから、内容についてはもちろん政府のいまの立場と違ったところがあるわけでございますが、しかし、これを私が事務総長の手に渡すということになりますと、いろいろと誤解を招いてもいけませんので、その点は明確にして、日本政府考えでない点も含まれておるということは明確にして、日本の有識者の提言であるということでお渡しをしたい、こういうふうに考えております。
  155. 正木良明

    正木委員 それはちょっとおかしいんじゃないですか。少なくとも従来政府の見解では、国連軍の任務が武力行使を伴うものであるならば自衛隊の参加は憲法上許されぬ、また、武力行使を伴わない場合は憲法上許されないわけではないけれども、現行自衛隊法上これは許されない、こういうものでありますから、先ほど申し上げたように、そういう内容を含んだわが国の国内法において、また憲法上非常に問題にされており、むしろ違憲であると言われているようなものを、外務大臣がいかに注釈を加えるとしても、国連の事務総長にそれを手渡すというのは問題があるのではないでしょうか。
  156. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府考えといまの提言とは違った点があります。しかし、いま国連から各国の有識者の意見を求めるということで、各国からも有識者の提言を提出していることも事実であります。どういう形で事務総長にこの提言を手渡しするかということについては、誤解が起こらないように、政府の立場ははっきりしてやらなければならない、これは十分注意していきたいと思います。
  157. 正木良明

    正木委員 これは幾ら民間の意見だとしても、政府がその中継ぎをして国連へそれを提言するということになれば、非常に大きな問題がある。むしろ、これはかえって、要するに自衛隊の海外派兵につながるという疑惑をわが国の国内に巻き起こすという問題点があると思うのですが、総理はどうですか。
  158. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民間の方々が、外務大臣の委嘱に基づいて出てきた結果を、一応国連のいろいろな申し合わせ等に基づきまして提出するという由でありますから、それは国連の一つの手続として日本としても協力するということはしかるべきであると思いますが、われわれの方は、いま自衛隊法を改正して国連軍に協力する、自衛隊が協力するという道を開こうとする考えは持っておりません。
  159. 正木良明

    正木委員 これは私どもとしては非常に問題があるということで、今後また論議を続けていきたいと思います。  さて、いま非常に問題になっていることは、御承知のとおり、もう目の先、十月十二日にロッキードの一審判決が行われるということですね。したがって、この判決の問題について、われわれとしては、政治倫理確立するという面においてこれに厳正な態度で対処してもらいたいということを、かねてから強い要求をいたしておるわけでございますけれども、いわゆる田中総理の議員辞職勧告決議案の問題がどういうふうな形で取り扱われるかということについては、御承知のとおりの経過で、われわれとしては非常に不本意な自民党の抵抗によ力でそれが棚上げされている、これが非常に大きな問題点であると私は思うのです。  ところが、そういう面でわれわれは政治倫理確立ということをはっきりとさせていかなければならぬという考え方の中には、午前中の大出委員からの話もございましたけれども、やはりそれが国内のいろいろな階層におけるところの道義の退廃につながっているという面が一つはある。しかも、これが政治不信に大きなつながりを持っているということであります。  行政改革に政治生命をかけるとおっしゃった総理、その意気は壮とするところがあるわけでございますが、これとても、やはり行政改革をやっていくためには、痛みを分かつという言葉が使われていますように、これはやはりそれぞれに痛みを感じるわけです。国民にも耐乏をお願いしなければならぬという問題が、財政上の問題からいっても数々将来起こってくるであろう、こういうふうに考えられるのですが、やはり国民に政治に対しての不信感が大きく存在している限り、なかなか国民の協力を求められない、こういう点でひとつ耐乏してもらいたいということを国民に説得をしても、どこかで得をしている者があるのではないか、自分だけが損をしているのではないかという政治に対する不信感がそういう結果を生んで、決して円滑にこのことが運ぶとは私は思われぬわけで、そういう意味から言えば、民主主義もやはり——具体的な政策で言うならば行政改革を実現していくためにも、政治倫理確立ということをやっていくよりほかに道がない。これはやはり政界がすべて、われわれも含めて襟を正していくという態度でなければ国民の理解を得ることはなかなかできないだろう。  その中での象徴的な問題がこのロッキード一審判決に出てくるわけでありますから、これに対しては、やはり国民に対して総理ははっきりとした考え方というものをむしろ前向きに、いままで、判決が出るまで静かにしようとか、浅井副委員長質問に対して、雑音だ、雑音を上げないようにしようなんというふうなお話をなさっておりますけれども、そういう態度ではなくて、本当に国民に語りかけ、国民政治倫理確立するという決意を前向きに態度として出していかなければならないんじゃないかと思いますが、総理、どうですか。
  160. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治倫理問題に関する公明党の御熱意については、つとに敬意を表しておるところであります。また、民主政治が国民の信頼感の上に成り立つということもまさにそのとおりであると思います。  そういう意味におきまして、われわれは戦々恐々として、政治家も政党も道徳性という問題について戒心していかなければならぬと思いますが、やはり憲法上の三権分立という原則もまた民主政治上の大原則でございまして、この前から申し上げているように、いよいよ判決が近づいてきているというこういう段階におきましては、静ひつを維持してその判決を見守る、そういうことがやはり三権分立の上からも好ましい態度ではないかと思う次第でございます。
  161. 正木良明

    正木委員 これは判決が出てからの議論が大層盛んになるだろうと思いますから、余りこの問題について時間をとりたくありませんけれども、総理総裁をなさっている自民党には、自由民主党賞罰規程というのがあるんだそうですね。この中の第六条で   党員が汚職、選挙違反等の刑事事犯により起訳されたときは、役職停止の処分に付する。ただし、第一審において無罪の判決を受けた場合は、本処分はなかったものとしてこれを解除する。  1 党員が刑事事犯に関与し、起訴された場合又は起訴猶予若しくは不起訴となった場合においても、党の名誉を著しく損じるときは、役職停止又は除名の処分に付することができる。 こういうふうになっているのです。  田中総理は自民党をみずから離党なさっておりますから、この条項は適用されないものであると私は思うのですけれども、少なくとも自民党にいらっしゃったとするならば、この条項が適用されるべき性質のものであろうというふうに思うわけです。自民党としては、党員に対してはこんなに厳しい倫理観を持って、そうして賞罰を明らかにしようと臨んでいらっしゃる。これは私はりっぱなことだと思うのですけれども、しかし、自民党がそういう処置をしようと思っても、自分で自民党を離党してしまえばこれはできぬわけです。だから、私の考え方から言うならば、田中総理は自民党に対しては責任をおとりになった。したがって、みずから自民党を離党なさった。しかし、まだ国民に対しての責任はおとりになっていない、こう考えざるを得ないわけであります。  そういう意味からいって、われわれとしては、しかもあの決議が成立したからといって、私たちは直ちにやめえとかなんとかいって懲罰にかけるわけでも何でもないわけでありますから、国会の意思として、衆議院の意思として、おやめになるということをお考えになったらどうですかという勧告をするわけなんですから、これは当然、もし十月十二日有罪判決が出たときにおいてはこの決議案を国会へ上程する、このことについて自民党も賛成なさって、もしこの決議案が不当な内容であるとお考えになるならこれを否決なさればいい、このようにわれわれは考えるのですが、いかがでしょうか。
  162. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 判決の結果について予断を許すことはできませんし、いまそれを申し上げることはきわめて不適切であると思います。やはりただいまは、第一審判決が出る直前でございますから、裁判官に少なくとも、何といいますか、あらかじめいろいろな影響やら何かを及ぼさないように心がけることが大事だと思います。そういう意味において、一切これらの問題につきましては静ひつを保って事態の経過を見るという時期にあると考えております。
  163. 正木良明

    正木委員 私が、国民に対して責任をおとりになる方がいいのじゃないですかと申し上げた理由は、朝日新聞が九月十二日号に発表いたしておりますけれども、この中で、やはりこの世論調査においては、結果が、明らかに国民の意識というものが出ているわけですね。  たとえば、ロッキード事件が明るみに出てから七年たったけれども、まだあなたは関心があるかというと、関心があると言った人が六四%あります。また、田中元首相は無実だと主張しているけれどもこの主張を信じるか、八一%の人が信じない、こう言っていますね。そして、田中元首相は有罪判決を受けたらどうすべきかということについては、政界から引退すべきだというのが五六%、まず議員をおやめになることだというのが三〇%だというふうに出ていますね。さらにまた、有罪とされた場合に、次の選挙で当選すればいわゆるみそぎをしたということになるか。みそぎとは書いておりませんが、道義的にいって問題が残らぬかということについては、八二%は道義的には問題が残る、こう言っておるわけです。  これは、一億一千万一人一人に聞いたわけじゃありませんから、これは信じられぬと言えばそれきりのものであろうと私は思いますけれども、しかし、少なくとも無作為で抽出された意識調査をやってこれだけの結果が出ているということについては、やはり国民はこういうふうにこの問題を眺めているし、政治倫理というものについても深い関心を持っているということははっきりとわかると思うわけなんですが、ただじっと見て1じっと見てもいいでしょう。じゃ、十月十二日にもし仮に有罪判決が出たときには中曽根総理はどうなさいますか、それまで静かにしているということですけれども。
  164. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 第一審判決を前にいたしまして裁判官に予断を与えるようなことは一切避けるのが行政府の長であると考えております。一般の民間の団体がいろいろな企てをやることは、これは言論の自由でございますが、少なくとも立法府とかあるいは行政府とかそういう三権の枢要を占めておる場所におきましては、お互い三権の立場を尊重し合うということが大事である。特に行政府の長におきましては、その点については慎重に行動しなければならぬと思っております。
  165. 正木良明

    正木委員 この問題で余り時間をとりたくありませんが、あの事件が起こったとき、ロッキード問題調査特別委員会というのがありましたが、そうすると、総理のお立場から言うお考えから言えば、あれは検察に対して重大な予断を与えた委員会だったと思いますか。
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あれは政治的道義的責任調査する、そういう意味でできたと思います。つまり、政治的道義的責任調査するという意味におきましては、検察庁と性格は違うと思います。検察庁は刑事責任究明する場所でございます。そういう意味におきまして、あのような委員会ができたことは、国会がおとりになった措置であると思っております。
  167. 正木良明

    正木委員 その辺は矛盾しませんか。じゃ、裁判所は刑事責任を追及して、その判決を法律の裁量によって行うということが使命でありますが、道義的政治的責任というようなものも裁判所が判断することになるのですか。そうなってくれば、国会で道義的政治的責任を判断するよりほか道がないじゃないですか。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 道義的政治的責任というものが、いよいよ判決という大きな一つの節目になりますと、その直前において裁判官に対して予断を与えないようないろいろな万全の措置を講じておくことが、三権の他の二権の側における配慮である、このように申し上げている次第であります。
  169. 正木良明

    正木委員 この問題は、十月十二日、判決が出た後、また議論をいたしましょう。ただ問題は、このままの推移であるとするならば、国民の政治不信は決してぬぐうことができない、払拭することができないということだけはひとつ御認識をしていただきたいと思います。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  次に、大韓航空機撃墜事件について、けさほどから大出委員から詳細な質問がございましたので、私はできるだけ重複を避けたいと思います。  いずれにせよ、この無防備、無抵抗の民間航空機をソ連の軍用機が撃墜をしたというのは、まさに人道上蛮行としか言いようがないのでありまして、この不幸な事件にお遭いになって亡くなられた皆さん方や、また御遺族の皆さん方に心から哀悼の意を表するわけでございます。  そこで、けさの議論の中で大体おぼろげながら明らかになってまいりましたので、それは避けることにいたしまして、一つだけ聞いておきたいことがございます。  それは、一つは、特にこれは運輸大臣にお聞きしなければならぬだろうと思いますが、あの大韓航空機が飛行いたしましたルート、いわゆるロメオ20と言われるルートですね。あれは五つか六つあるらしいのですけれども、ここをJALも飛んでいるわけですね。日本航空も飛んでいるわけですね。どういうことで領空侵犯をしたかという真相については、けさのお話では十分調査をするという話でありますからおいおいわかってくるかもわかりませんが、しかし、それがわかってからじゃしょうがないので、JALが現に飛んでいるわけでございますから、これに対してどんな処置というか指導というか、安全航行のための手だてをおやりになったかということをお話しいただきたいと思います。
  170. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あの事故が起こった、私の方にわかったとたんに、まず第一、いままでないことですけれども、得たる情報は全部公開して、そして将来に備える。と同時に、日本航空などに対しても、同じコースを飛んでいるわけですから、ああいう事故にかんがみて、安全運航に特に気をつけるように、こういうふうに申し渡しております。
  171. 正木良明

    正木委員 それはその程度のことなら運輸大臣じゃのうても言いますわ。だから、そんな素人が物を言っているようなことを言わぬと、あなたでなければ航空局長でもいいですが、具体的にどういう処置をとったか、言ってください。
  172. 山本長

    山本(長)政府委員 原因が十分解明されてないわけでございますけれども、原因が解明される以前におきましてもとるべき措置はとるべきだという観点から、私たちといたしまして、起こったのが一日でございますけれども、直後に日本航空に対しまして、コースを逸脱しない措置、これは具体的に申し上げますとコースを正確に飛ぶ機器がございます。こういった機器について問題がないかどうか。それから、機器の扱いがございます。扱いが正常であるかどうか。あるいは、その機器に頼るわけでございますけれども、この正確に飛ぶ機器以外の機器、つまりレーダーを用いてそれを必ずチェックをするというふうな措置がございますけれども、こういったコースを逸脱しないための現在守るべきマニュアルというものが決められております。それを徹底的に運航乗務員に徹底させるようにという指示をいたしました。  二日に、これは日本航空の運航本部長から各乗員一人一人に対してその指示をし、徹底を図って、コースの逸脱がないように措置したつもりでございます。
  173. 正木良明

    正木委員 そこで、この航空の安全確保のために、日本だけでは十分じゃないというふうに考えられるわけなんですが、必要な航空管制システムや航行レーダー綱の整備というものが緊要の問題だと思うのですが、偶発的事故を防ぐための、武力行使が考えられないような環境を築くために、イデオロギーや体側の違いを超えて開放的な国際通信手段というのを設置するお考えはありませんか。  三つありますから、三つとも聞いてしまいます。通信衛星、航行援助衛星の打ち上げ、その利用により国際航空管制システムというものを充実すべきではないかと思うが、どうか。  三番目に、航空の安全確保のために今後どのような措置をとり得るか。いまの問題以外に方法はないのか。特に、この前のJALの事故のように心身症なんというのが起こってからではどうしようもないのですけれども、そういうチェックも十二分に乗務員にやってもらわなければならぬ、操縦士にやってもらわなければならぬと思いますが、それらのことを含めて、この三つの点についてお答えください。
  174. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えします。  前回のJALの操縦士の事故というものは、どこから見ても完全に隆路、ネックから入ってきた事故でして、とてもあんなことは考えられないことであります。しかし、それが航空界に与えた不信、それから日航に与えたところの不信用、こんなことがありますし、また操縦士全体の信用回復のためにも、厳重にそんなことのないように会社に話をし、私自身もまた管制本部等を視察しながら激励したことです。  今度の事件にいたしましても、いろいろなケースが考えられますけれども、ありとあらゆる機器などを活用して——今度の事件はとにかく乱暴な事件で、とても考えられない事件です、大韓航空の問題は。ミサイルで、三百人いるのが一発で撃墜されることですから。そういうことですから、そんなことはあり得ませんけれども、機器の充実、管制の連絡を万全に、いままで以上に気を使っていこう、こう思っております。
  175. 正木良明

    正木委員 時間がありませんから次へ参りましょう。非常に関心の高い景気の問題について質問をしたいと思うのです。  ところで塩崎長官、これは当初予算予算委員会の関係がありますが、はっきり申し上げて、全部狂いましたね。塩崎さん、二月八日に予算委員会であなたに私が質問をいたしまして、あなたがお答えになったことは全部狂いました。したがって、こういう経済見通しの責任がどこに所在するかというのがわからないうちにいつも済んでしまうということは、私は非常に残念だと思っておるのです。まあ非常に厳しい財政難の時代でございますから、景気対策といってもなかなかそれがとりにくい事情というものもよくわかっております。しかし、あのときに私は申し上げた。これは党利党略を離れて、超党派でこの問題を議論して知恵を出し合っていかなければ、この不況は乗り切れないのではないですかというふうに申し上げたわけであります。ところが、最近、自民党内閣に見られるのは、見通しが狂いますと事情変更の原理。確かに経済というものは生き物でありますから、変わってくるでしょう。しかし、事情変更の原則だけで片づけられてしまうというのであるならば、政府のとった経済見通しというもの、それを中心として経営をやっていこうという人たちにとっては非常に不安なことがあると思うわけでございます。したがいまして、やっぱり景気回復というものはどうしてもこの際必要だと私は思っておるわけでございます。  そこで、総理と経企庁長官に伺いますけれども、お二人ともことしの冒頭施政方針演説、塩崎さんの方は経済演説で、五十八年の経済運営の第一の課題として、国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大を実現し、雇用の安定を図る、つまり内需の拡大と失業の減少を主な目的として演説をなさったわけであります。しかし、景気の現状は、この間、九月十六日に発表された国民所得統計をとってみても、四—六月期は一—三月期の低迷からややよくなったというような程度でございまして、総理長官が言われた内需拡大の公約とはほど遠い結果になっているわけです。いわゆる輸出は好調である、しかし内需が低迷している、そして失業と中小企業の倒産が高水準で続いておる、こういうふうな結果になってしまったわけなんですが、この点、どうお考えになりますか。
  176. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  二月八日の速記録を読み直しましても、たびたび正木委員から、経済成長の見通し並びにこれに対する責任のお話がございました。先般発表いたしました四−六のいわゆるQE、国民所得統計速報では、おっしゃるように〇・九%の成長率が前期に対して認められたわけでございますが、そのうち内需分が〇・四、外需分が〇・五、このあたりをつかまえて、内需の拡大という政策方向に対して、いま大きな疑問を投げかけられたと思うのでございます。私どもも経済成長を、私どもが見通したとおり努力するべきことはもう当然だと思っておりますし、それなりの努力をしているところでございます。  雇用情勢の御指摘もございましたが、雇用情勢についても大変厳しいのですけれども、昨今はだんだんと完全失業率が低下しているような情勢でございます。統計方法の変更があって上がったように見えておるのですけれども、昨今は輸出の回復から上昇しておるような傾向も見られる。ここで私どもは、これから、内需拡大の四月五日の「今後の経済対策」についてもさらにまた着実に見直して、そして、その効果を見守りながらまた新しい内需拡大の対策を立てていく、いま、こんなような段階ではないか、こういうふうに私どもは考えております。
  177. 正木良明

    正木委員 内需拡大の対策というのは、もうしばしば提言をしているのですよ。それで、一切そういうことはおやりにならずに今日を迎えたということなんです。これがやはり問題なんですよね。  ことしの一—三月期、この間発表された四—六月期の景気動向から見まして、私はやはり政府の景気見通しというのは大きく狂うだろうと思いますよ。だって三・四%の実質経済成長率を達成するためには、この後やはり一・一%ぐらいの瞬間風速でずっと伸びていかなければいかぬじゃないですか。そうでしょう。確かに四—六月、年率に換算すれば三・六%になるだろうということが言われておるわけでありますが、これからずっと続けばいいのだけれども、それを続かせるためには何が必要かということをこれから論証していきますから、答えてください。  特に内需、国内需要については、実質経済成長率三・四%、名園五・六%、このうちの二・九%を内需で達成するというふうに政府は言っておったわけです。いわば三・四%の実質経済成長率のうちの二・九%というのは、八五・三%を内需でやるということですよ。ところが、いまお話にありましたように、四−六月期は〇・九%の成長のうちで〇・四、これが内需、〇・五分は輸出ですね。そうすると、この〇・九%のうち〇・四しか内需が稼いでいない、経済成長に寄与していないということは、四四・四%しか寄与していないということになるのです。そういうことでしょう。政府の最初の見通しは八五・三%じゃないですか。経済成長三・四%のうち二・九%を内需でやるというのだから、それはシェアとしては八五・三%ですから、それのうち、今度は四—六月がよかったと言ったって、四四・四%にしかすぎぬ。しかも、一—三月期は、実質〇・二%の成長のうち内需はマイナスの〇・三%だよ。しかも、四—六月期は、この内需は公共事業の前倒しによってやっと支えられている部分が多い。それは公的資本形成を分析してみるとわかりますね。一−三月期はマイナスの五・三%だったのが、四—六月ではプラス五・二%に転化しているから、これは前倒しが効いてきたのだろうと思いますよ。  また、内需の内訳を見ましても、民間在庫の好調さを除けば、政府見通しは大きく下回りつつありますね。たとえば政府は、それぞれ実質で民間最終消費支出、これは年三・九%、こういうふうに見ておりましたが、四—六月では〇・三%。民間住宅では二・六%と見ておったけれども、四—六月はマイナスの一三・七%、マイナスですよ。民間設備投資は二・九%見ておりますけれども、四—六月は一・〇%、内需の主要項目というのはそれぞれ低迷しているわけですよ。これは年率ですから、いきなり比べられはいたしませんけれども。  そうすると、こういうふうに考えてくると、経済見通しの主要項目の数字の下方修正をしなければいかぬという事態が起きてくるのじゃないかと思うのですが、そうしないための対策、何か考えていますか。
  178. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ただいま五十八年度の経済見通しについて、各主要項目についてお話がございました。私どもも、このような方向を立てた昨年の十二月、そのときの情勢と現在の情勢、これはまさしく大きな変化があることは認めざるを得ないと思います、  それは二つございます。一つは、三月に決定いたしましたOPECの原油一五%、一バレル五ドルの引き下げという、経常海外余剰に与える好影響の部面でございます。第二は、私どもが想定いたしておりましたよりもドル高で、なかなか円安傾向が修正できない、この点において輸入が伸びない。この二つが現在のところ大きな影響を来して、いまのような四−六の数字が出ている、私はこういうふうに判断するところでございます。しかし、貿易摩擦あるいは内需拡大のこれまでの方向等を考えますと、これらの動向を十分考えながら、今後また内需拡大の方向を検討していく、こういうことになろうかと思います。
  179. 正木良明

    正木委員 要するに、いつも大事なこういう議論をする委員会のときに、いま対策を検討中です、検討中ですという話ばかりになっているのですよね。これじゃ、私たち議論しようと思っても議論できないじゃありませんか。  あなたから言ってもらいたかったことはどういうことかといえば、一つは、三・四%の実質経済成長率を確保していくために必要な対策というものは、検討しているという問題ではなくて、だれだって頭の中に浮かんでくるのですよ、政府のやれる仕事なんというものはそんなにたくさんないのですから。政府がやれるという意味は、財政のやれる仕事というのはそんなにたくさんあるわけはありませんよ。財政でやれることは、一つは減税、一つは公共事業の追加ですよ。それ以外に何があります。  いま中曽根総理は、民間活力、民間資金の導入なんて言っているけれども、そんなに簡単に民間資企の導入なんてできますか。昭和五十八年度の経済見通し、三・四%の実質経済成長率確保のために、いま民間資金の導入のためのいろいろの規制を取っ払ったり、それをやりやすくするような方策というのはできますか。金融の面では、公定歩合の引き下げだとか金融緩和しかないのですよ。  この二つですよ。財政の面でも二つ、そうして金融の面でも二つ、これをやらないでどんな考え方が出てくるのですか、今後の経済対策として。出てくるわけはありませんよ。だから、それをやらなければならぬということを私たちが申しているわけなんです。間違いですか。
  180. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 非常な財政的な制約があるにいたしましても、政府のやることは、財政、そしてまた日本銀行を通じての金融政策、これによって景気の浮揚を図ることが重要なことであることは、もう申すまでもないところでございます。
  181. 正木良明

    正木委員 そこまでじゃだめなんです。それだけだから、何をやるかということをあなたが言わなきゃいけない。
  182. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 五十八年四月五日の保「今後の経済対策について」という政策方向の中で、御案内のように八項目の内需拡大の方策、さらにまた、今後の研究課題として三つの、減税を含めての方向が示されてあるところでございます。しかし、それは四月五日のときの現況での案でございます。私どもはその後の状況を考えて、この四月五日の「今後の経済対策」がどの程度経済の実勢の中に影響しておるか、これは十分に検討を重ねて、それからまた新しいステップを講ずべきである。恐らくそれは多分に、正木委員御案内のように、補正予算とかそういった財政上のきわめて国会関係する部面にあるわけでございますので、今後の問題だ、こういうふうに考えております。
  183. 正木良明

    正木委員 長官、それがおかしいのですよ。あなたは四月五日の「今後の経済対策」ということをおっしゃったでしょう。その中には減税が入っていると言ったじゃないですか。公共事業の追加も入っているのじゃないですか。金利の引き下げも入っているのじゃないですか。これを実行しなかったからこんな結果になっているのに、それをやらなかったことを反省もしないで、また新しく対外経済対策をいま考えているのです、九月末に発表するつもりです、これじゃ議論にならぬじゃないですか。何も責任がないじゃありませんか。この経済見通しを達成するためにこういうことが必要だという対策を並べておきながら、それを実行しないでまた新しい対策を立てたってしょうがないと思うのですが、どうですか。
  184. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  この点につきましては、正木委員少し誤解がおありではないかと思います。公共事業については前倒しの点だけが規定されておりますし、民間活力の具体的な方策があるところでございまして、その後の下期の問題等については何ら触れていない。そしてまた、公定歩合については、おっしゃるように、機動的な運用ということで、まだまだ発動されておりませんけれども、日本銀行総裁は機を見て、いま虎視だんだんそのチャンスをねらっておられるのだと私は思うので、そういった意味で、あの中でのやるべきこと、そしてまたきめの細かい民間活力の導入策、これらについても実施面でまだまだ検討しなければならないこともございます。それからまた、あの中に書いてありますところの今後の研究課題である減税はこれからの問題だ、こういうように考えております。
  185. 正木良明

    正木委員 あなたも経済の専門家でしょうに。だって、経済企画庁長官だもの。  ここに日銀の総裁を呼んでいないから議論できませんけれども、日銀の総裁は虎視たんたんとと言っているけれども、そんなもの、アメリカの金利が下がる気遣いなんかないじゃないですか。アメリカの金利が高水準を保っている、プライムレート一一%なんというような水準にあるということがどこから来ているかといったら、アメリカの二千億ドルの財政赤字じゃありませんか。そんなに簡単に二千億ドルの財政赤字がなくなりますか。これがなくならない限り、日本と貯蓄率の全く違うアメリカにおいては、民間資金を圧迫して金利を高くしなければ政府は金を借りられないから、金利は下がらぬのじゃないですか。それなら中曽根総理大臣に行ってもらって、向こうの軍事力をがばっと削るとかなんとかしてこの赤字をなくさない限り、こんな金利なんか下がりませんよ。だから、そんなものを待っていたってだめなのだから、円安の問題があれば円安の問題はほかの手段で極力防ぐという形をとりながらも、やはり金利の引き下げというものをやらなければだめだよ。こうなってきたら、それは決断ですよ。待っていたらいつかは、そんなことは当分絶対にないな。  そこであなたに反論をしておきますが、確かにあれは前倒ししか言っていない。前倒ししか言っていないけれども、前倒しをすれば後半息切れが起こってくるから、公共事業の追加をするということは、だれが考えたってあたりまえの話なんです。だから、五十七年度は銭がないから補正予算で追加はしなかったけれども、債務負担行為で追加したじゃありませんか。そうでしょう。そんなのはあたりまえの話であって、公共事業を前倒しにやれば、後は息が切れてくるということは当然のことです。だから、たったあれだけの債務負担行為だから、後で証明しますが、がたんと率が下がってきているのですよ。  この二月八日をもう一回見てください。私が質問したことに対して、三・四%達成できるのか、この要素を幾つかお挙げになった。アメリカの景気回復、物価安定、内需拡大、これによって三・四%は必ずできます、こうおっしゃった。私はその見解に対して、これは正直に申し上げますが、アメリカの景気回復は、政府見通しの八三年後半よりおくれて、八四年の前半になるのじゃないだろうか。そのときの観測は、石油の値下げがありませんから、そういう観測が行われていた。二番目に、内需拡大は政府予算案では力不足である、したがって内需拡大による景気回復のためには減税の実施と公共事業の上乗せが必要である、こういうふうに申し上げました。  その後の景気を見ますと、これは私の見通しの狂ったところを謝らなければいかぬが、アメリカの景気回復は、政府や私が言ったよりも早くて急激でした。物価安定には石油価格の引き下げが加わって超安定だ。現在の四—六月のプラスに上向いてきた瞬間風速〇・九という問題は、この辺に負うところが——物価安定と原油価格の値下がりにあっただろうと私は思います。しかし、内需の拡大は、残念ながら私の見込みどおり力強さに欠けております。内需拡大の必要性というのは、ことしの年度初めから全く変わっていないのです。私としては、物価安定だとか在庫調整だとかという内需の自律回復の条件がそろっているのにもかかわらず、内需の拡大に至らないのは、政策の誤りとしか言いようがないと思います。  その第一は、個人消費対策ができていない。要するに減税をやっていないからです。何遍も言うようで申しわけないけれども、政府は実質経済成長三・四%のうち二・九%を内需で、しかもその内需の二・一%を個人消費の伸びで確保するというふうに見ていましたね。これに対して私は、所得減税の見送りによる実質増税一兆三百六十億円、五十七年度の人勧凍結三千三百八十億円、人勧凍結による地方公務員給与抑制四千九百二十億円、人勧凍結による福祉関係の物価スライドの停止千四百億円、私たちの簡単な計算でも、ざっと約二兆六十億円の個人消費に対するマイナス要因がある。加えて、民間のベースアップも多くは望めないので、政府の個人消費の伸び率三・九%は楽観し過ぎるのじゃないかというふうに申し上げました。  私の指摘に対して、長官はこう言ったのですよ。消費支出を決める要素は、名目可処分所得の増加、二番目は消費者物価の動向、そして三番目には消費性向だ、この三つがその要素だ。ところが、この三つはどうです。名目可処分所得の伸びは非常に苦しいじゃありませんか。消費者物価は安定しております。そうして消費性向は非常に高いのです。ところが、実際にはなかなかそうはなっていないのです。そこで、長官は五十五年の例をお引きになったのです。五十五年度は雇用者所得が九%も伸びたけれども、消費者物価が七・八%も上昇したので、消費支出の実質の伸びは〇・八にとどまりました、昨今は消費者物価の安定が消費支出の動向を決定するのだからというので、わざわざ私に教えてくださった。しかし、私は、物価と個人消費の関係は認めるとしましても、五十八年度は、政府が実質増税や人勧凍結などで名目可処分所得のマイナス要因をつくっているのであるから、せめてこのマイナス要因を減税で取り除くことを重ねて要求しましたけれども、政府は頑として受け入れなかったのです。  ところで長官、個人消費動向はどうですか。私から申し上げますと、昨年の十—十二月期一・四%、本年の一—二月が〇・六%、そして四—六月が〇・三%と、だんだん落ち込んできているのです。また、総理府の家計調査による個人消費支出の動向は、四月が一・五、五月マイナス〇・九、六月マイナス一・六、四—六月でマイナス〇・一ですよ。消費者物価は四—六月では二・一%と、政府見通しの三・三%より鎮静している。消費性向、去年の四月は九七・六、五月が九五・九、六月五九・八、本年は四月九八・七、五月九五・〇、六月五八・四、昨年とほとんど同じです。九七・六というのは、一〇〇%のうち九七・六%は物を買いますというのが消費性向です。この残りが貯蓄に回るのです。要するに、消費性向はきわめて高いと見なければいけません。  こう考えてくると、個人消費が伸びなきゃいかぬじゃないですか。何で伸びぬのですか。
  186. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 正木委員も十分御理解をして御質問されていると思いますが、消費支出の低迷しておる理由は、やはり賃金の伸びが予想外に少なかったということが最大の原因だと思いますし、その根本的な原因は、やはり経済活動がまだまだ不活発である、したがって企業収益も、さらにまた租税の自然増収も十分に回復していない、このことから来ているものだと思います。
  187. 正木良明

    正木委員 そうなんです。要するに、名目可処分所得が伸びてないというところにこの唯一の原因があるのです。これは、賃金を凍結した、人勧を凍結した等の問題が波及した形で賃金を抑えた、そうして実質増税がどんどん進んでいる中で減税をやらない、これですよ。認めますね。可処分所得の伸びが非常に低迷しているということがこの個人消費を伸ばさない原因だ。認めますね。
  188. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 その点につきましては、いまその理由までつけて申し上げたとおりでございます。
  189. 正木良明

    正木委員 総理、お聞きになりましたか。要するに、景気の足を引っ張っているのはそこなんです。だから、これは明らかに政府が個人消費の足を引っ張っているとしか言いようがないわけです。そこでどうしてもここで減税をやってもらわぬといけません。したがって、私はこのほかに公共事業の問題がありますから、公共事業の問題をまたやりますけれども、要するに景気対策としての減税という意味をよく理解をしていただきたいのです。  減税の問題には二つの要素がありまして、税負担の不公正を是正するというのが一つ、これがメインにある。そして景気刺激のために可処分所得をふやすというための減税、この二つの面があるということをおわかりいただいておると思います。  われわれは一兆四千億円、けさ大出さんは五兆円なんてでかいことを言っておりましたが、それは多々ますます弁ずるでありまして、多い方がいいと私は思いますよ。(発言する者あり)いや、それはそうなんです。五十七年度のGNPが二首六十六兆九千億円ですから、個人消費はその中の約五二%ぐらいですね。だから百五十兆ぐらいあるのだ。そこへぽとんと一兆ぐらい落としたって焼け石に水だって、だれが考えたってわかる。それはだれだって二兆の方がいい、三兆の方がいい、五兆の方がいい。これは、その議論は成り立つでしょう。しかし、そんなことをやれと言ったってようやらぬのだから、せめてわれわれは、いままでの課税最低限を据え置かれた期間におけるところの物価上昇分についてある程度返していただくという形で勤労者は減税を求めている、一兆円で地方税四千億円、これは妥当な線だろうと非常に遠慮ぎみに要求をしているわけであります。それをわかってもらいます。  それと、民社党の竹本先生という、この前代表質問でおやりになりましたが、りっぱな議論をなさる、経済については非常に詳しい方でありますが、この人はいつも口癖のように、経済学は心理学やと言います。人間の気持ちというものが景気を上げたり下げたりする非常に大きなファクターを持っている、彼の議論はそういうことです。  総理、病気というのは気という字を書きますね。これは、病は気からというのです。景気も気と書くのです。したがって、景気の問題は、一兆円の減税なんか焼け石に水だと言うのは、こういう問題を無視して言っている議論なんです。たとえ一兆円であろうと——それは二兆の方がいい、三兆の方がいいし、五兆の方がいいに決まっておりますよ。しかし、たとえ一兆であろうとも、大体われわれの計算でいけば一軒当たり五万二、三千円税金の負担が減るわけですから、それが景気に対して非常にいい効果をあらわしていく。だからわざわざ気という字を使っております。だから、ひとつ心理学であるということで、国民がいわゆる消費性向が非常に高い、ゆとりがあれば物を買おうという性向が非常に強いという統計上の数字が出ているわけでありますから、この減税によって個人消費を伸ばすということが非常に大事だ、こういうふうに思うのですが、まあよろしいわ、こんなことを言うたって、どこまでわかっているのかようわからぬから。  そこで塩崎さん、こういう事情でありますから、この九月に出すという中身は、減税の問題をこの対策の中に絶対入れなければだめですよ。そしてもう一つは、公共事業の追加をしなければだめですよ。三番目には、金利引き下げが不可能であるならば、金融緩和のためにあらゆる手段を講じなければだめですよ。  そこで、大蔵大臣総理にちょっと減税の問題でお尋ねしますが、なぜ減税が必要かというのは、けさ大出委員がさんざんやってくれました。ちょっと覚え切れぬくらい細かくやってくれた。しかし、政府はそれを断行すると言ったわけです。減税に賛成であり、それを断行するということは参議院の選挙中からずっと約束されているわけでありますから。  そこで、あの議論を聞いていましても、税調税調という話が出てぐるのですよ。政府の税制調査会へ諮問をしておりますから、だからその結論を待ってという話ばかりです。政府の税調は、きょういみじくも竹下大蔵大臣が——竹下大蔵大臣もああいうところに来ると事大主義的なことを言うね。三権の最高の議決機関である国会が、立法機関である国会がお決めになった法律によってつくられた政府税調なんて、あんなのはよけいなことですよ。私は、まず税調の答申を待たなければ決断できぬということについてちょっと疑問があるのです。  一つは、非常に逆説附な言い方かもわかりませんが、五十八年度減税については政府税調はすでに答申しておるのですよ。いいですか。これはわれわれにとってはまことに不本意な、減税の必要は認めるけれども、ちょっと無理やということを書いてあるのです。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕しかし、法理論的に言えば、五十八年度に減税するという諮問を税調にして、税調から一応これに対する、われわれが気に入る入らぬは別の問題として、答申が出ている。これは一事不再議と違うのですか。
  190. 竹下登

    竹下国務大臣 いま正木さんおっしゃいますとおり、いろいろな議論のあった結果、昭和五十八年度において所得税の見直しを行うことは財政状況等から見て見合わせざるを得ないとの意見が多数を占めた。が、「しかしながら、昭和五十九年度以降できるだけ早期に、税制全体の見直しを行う中で、所得税及び住民税の課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行う必要があると考える。」こういうのが五十八年度税制に対する税調の答申であったわけです。したがって、やはり政府が判断して、国会の話し合い等というものがいわゆる抜本的にやれという判断である限りにおいては、この「五十九年度以降」という言葉を除けば税調と考え方が一致するわけです。したがって、税調の審議を仰ぐべきだという判断に立つ。そうすると、いまおっしゃった一事不再議の議論が出るんじゃないかと私も幾らか懸念をいたしました。  一事不再議の議論が出ますと、はてさて持っていき場所がなくなる。それで、もちろん法律に基づいて、いわゆる経済界、労働界、学界あるいは役所の先輩等々で構成されておるところの知恵をかりたいという気持ちがあるわけです。したがって、恐る恐るきわめて慎重にお伺いを立てましたところ、われわれも五十九年度以降抜本的なということを、税率構造から課税最低限というものも言っておる限りにおいては、やはりそれを早めてやれという趣旨と理解して、それでは審議に取りかかりましょう、こういうお答えをいただいたわけです。  そうなると、当然のこととして、十一月のたしか十二日でございましたか、任期が一参りますから、それまでには答申がいただけるだろうというある種の期待感を持つわけです。しかし、諸般の情勢、なかんずく国会における情勢をその都度税調にお伝えいたしますと、急いでいただけるような雰囲気が出ておるような気持ちを酌み取りまして、そこで私から正式に、十一月前できるだけ早い機会に答申を出していただけませんか、こういうお願いをして、そしてやってやろう、こういうことになっていま御審議いただいておるわけですから、一事不再議の議論は私なりにもむしろ心配しながら、しかしおっしゃっている趣旨から見ると、五十九年度以降ということできるだけ早期にということが書いてあるものの、税制全体の見直しと課税最低限、税率構造等に抜本的な検討を行う必要があると答申していただいておりますから、その限りにおいては趣旨が一緒だという意味においては、私どもが期待しておったように審議の促進を今日していただいておるという現状認識でございます。
  191. 正木良明

    正木委員 いや、一事不再議のどうのこうのということになると、それなら諮問しなくてもよかったのじゃないか}そうすると、さきの五十八年度には実行しなくてもよろしいという答申が生きてくる。何を正木は血迷うてそんなことを言っておるのかとお思いになるかもわからぬけれども、私が言うのは、そんな諮問は必要なかったと思うのです。これは、あと総理決断しかなかったと私は思うのですよ。再諮問したというのはどだいおかしいのじゃないかと私は思っておるのです。  だって、税調の答申というのは金科玉条ではないでしょう。あなた方はいままで税調の答申をばかんばかん破ってきたじゃないですか。一つは、大平内閣のときそうじゃありませんか。そうでしょう。あのときに一般消費税の問題は実行すべきであるという答申が出たために、それを選挙の公約に掲げて一敗地にまみれて、そうしてそれを引っ込めたじゃないですか。グリーンカードもそうじゃありませんか。グリーンカードをやれという税調の答申じゃありませんか。それを三年延期ということで事実上棚上げして、これを抹消しようとしておる。これは全部税調の答申を踏みにじっておる。  事ここに至りてもう一回諮問したというのは、これは明らかにこの税調の答申を隠れみのにして、減税という問題をできるだけ向こうへ持っていこうという作戦としか、普通の常識を持っておる者はそうとしか考えられませんよ。どうですか。
  192. 竹下登

    竹下国務大臣 そういう手続を得ていくというのは、やはり行政府としてはそうあるべきであるし、しかも五十九年度以降できるだけ早期にということで、国会で指摘されておるような問題を検討すべきであるという答申があるわけですから、それを少し早めてもらえぬか、こういうことは、私は行政府としてはきわめて必然的なあり方ではなかろうか。  もう一つは、大蔵委員会につくられた小委員会です。大蔵委員会でつくられた小委員会は、所得税減税の必要性は認めた。赤字国債はあかん。そして財源を探したが、それでその合意を得るに至らなかったという中間報告です。したがってもう一つは、小委員会へお願いするか、こう言ったって、それは小委員会をつくってくださいということを政府側から言うべき筋のものでもない。それで幹事長・書記長会談等、そして国対委員長会談等でその受け皿をつくり、そして最終的には幹事長保書記長会談でこれを締めくくるというようなことも約束されておるということになると、私どもは、かつての大蔵委員会の小委員会の参加者の意見を個人的にも収集しながら、そして税調の進みぐあいというものに対しては、きょうのような意見もそのまま素直に伝えて、その審議を急がすことによっておおよその国会の合意の期待にこたえていかなければならぬという筋を踏んでおるのでありまして、きわめて忠実にやっておるつもりであります。
  193. 正木良明

    正木委員 田中判決の問題は、司法権を尊重せにゃいかぬから、立法府と行政府は余りがたがた言うな、こうでしょう。非常に司法をお立てになっている。立法府は国権の最高機関と言われているんですよ。その立法府の各政党が合意をしたものを、当然これは行政府がそれを具体化するために決断をせにゃならぬと私は思うんですよ。それが本当の議会制民主主義だと思う。それを、行政といたしましては税制調査会へ諮問をいたしまして、答申をいただかなければ身動きできませんなんて、そんなことは通りませんよ。  だから、ここで総理減税の規模、いつからやるか減税の実施の時期、その減税はいつまでさかのぼるかというやつはあるんですよ。それともう一つ、いつやるかということと方法、これは明らかにしてもらわぬといかぬです。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点につきましては、大蔵大臣が御答弁申し上げましたように、いま税調で審議を促進していただいておりますが、しかし、ともかく十月下旬までに法案を国会へ提出いたします。その法案提出に間に合うように中間報告を税調から求める、そういうことでいま督促しておる最中でございます。  それで、どの程度いつから始めるかというような問題につきましては、これは税調の答申を経て、また政府といたしましては二階堂幹事長の約束等を尊重いたしまして決断していきたいと思っておる次第でございます。
  195. 正木良明

    正木委員 間に合わぬのですよ、そんなことを言っていたら。要するに、先ほど申し上げたように、政府はみずから政府税調の答申を金科玉条として墨守しているわけじゃないんです、自分の都合によってはそれを踏みにじっているわけですから。だから、そういうふうな形に逃げないことが非常に大事なことだと私は思うんですよ。これを言ったって恐らく水かけ論になるでしょうが、それだけはよくわかってください。議会制民主主義というのはそういうととなんだということをよくわかってもらいたいと思う。  それじゃ、税調の答申が出ますね。もし幹事長・書記長の会談で合意された内容とは違う内容だったら、その合意の方へ政府の力で答申のいかんにかかわらず引き戻しますか。
  196. 竹下登

    竹下国務大臣 政府税調も各界の代表皆さん方で構成されております。したがって、正確に本委員会における議論でございますとかあるいは各党間の話し合いでございますとか、通じておりますから、私はその趣旨が底辺には存在したお答えをいただけるものだという期待をしております。そこで違ったやつが出たらどうするかというようなことは、やはりいま論評は避けるべきじゃないか。そういういわばいろいろ議論されたことが底にあった答申が出てくることを皆さん方と一緒に期待しておっていいんじゃないかな、こういうふうに理解しております。
  197. 正木良明

    正木委員 だって、税調はそう言っているじゃありませんか。政党同士が話し合って合意をした、それは税調の知らぬこっちゃと言っておる。それには拘束を受けない、これは税調の一貫した考え方じゃありませんか。やはり政府政府として、議院内閣制のもとにおいては自民党の幹事長が約束したことはそれを必ず実行するんだ、その合意と答申が違ったときにはその合意の線で政府が訂正するという、このことがなきゃいかぬと思うのですが、どうですか。
  198. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、税調の中の統一された考え方が政党間の話し合いなんか知らぬことだということでは私はなかろうと思います、その都度こういう推移については報告するわけでありますから。一部それはいろいろな方がいらっしゃいますから、純粋な学問的に考えた場合にいろいろ議論はあろうかと思います。政党間の取り決めというのはどっちかといえば荒っぽい——荒っぽいという言葉は取り消しますが、これは取り消しますが、若干精度を欠くことも間々ございますので、その点は、それらを総合的に勘案して御答申いただけるものと私は期待をしております。  それから、いままでネグったことがあるんじゃないかとおっしゃいました。これは、例示としてお出しになりましたのが、一つはいわゆる一般消費税(仮称)の問題でありますが、これは選挙というものに対して大きなインパクトを感じて政府自体でそれを取り上げなかった、こういう結論を出したわけであります。しかし、その措置については、もとより税調の了解も得ておるところであります。  それから、グリーンカードの問題につきましては、その後各方面、なかんずく国会の中において議員提案もなされたというような一つの大きな理由があってこれを変更をした、こういうことでございますので、その間には選挙とか国会とか大きな力が存在してそういうことになっておるのでありまして、これもまた税調にその後始末の問題も今日諮問をしておるという状況でございますので、大変一方的にこれをネグったとかいうような状態ではなく、円滑にこれは機能しておるというふうに私は理解をいたしております。
  199. 正木良明

    正木委員 いまグリーンカード問題で議員提案という重要な問題があった。これは非常に重要な御発言ですので、ちょっと後へとっておきますから、ひとつ御留意ください。  それで、一つ例を出しますが、年内減税というのは昭和二十六年と昭和四十六年の二回行われているのです。このうち四十六年は額で千六百五十億円で、所得控除の引き上げと税率変更によって、夫婦子供二人の標準世帯で、課税最低限が平年度で九十八万円から百三万円に引き上げられた減税が行われた。このときの法案の成立までの経緯を見ますと、法案が衆議院に十月二十五日に提出されて、参議院の本会議成立は十一月の十七日です。二十三日間もここでかかっているのです。  この四十六年のときには賛成は自民党だけで、野党は少な過ぎるというので反対したのです。全会一致でない場合の日数というのはこれぐらいかかるものというふうに考えなければいかぬ。今度だって、内容によっては全会一致になるかどうかわかりません。そうすると、できるだけ早いうち決断をしてこれを整えないと、サラリーマンの皆さん方の年末調整に間に合わぬです。ところが今度は、十一月十六日が会期末でありますが、それまでに成立させなければいけません。もう恐らく十一月十六日が期日としては極限と見なければならぬ。したがって私は、いまその内容というものをある程度明確にしなければならぬと思うのです。  そこで大蔵大臣、五十八年中にやるということは言えますね。それで、どうですか、あの合意では景気浮揚に役立つ相当規模という話があるのです。いいですか、これは金額だけを意味しているのではなくて、やはり五十八年の景気浮揚ということになると、どうしてもさかのぽらぬといけませんよ。したがって、これは五十八年の一月一日からやってもらわぬといけませんな。それを年内に実施する、課税最低限の引き上げで国税一兆円である。どうでしょうか。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 それこそ一番微妙な御質問でございまして、一兆円とか四千億とか、そういう議論が出ておることは承知しておりますが、時期、規模、方法につきましては、これはまさに、隠れみのではない、この税調の御審議を得た上で、財源等をも含めて政府自体が決断をしなければならない問題であるというふうに思っております。  ただ、抽象的におっしゃる景気浮揚に役立つということになりますと、いまも正木さんと塩崎経企庁長官との議論にありましたいわゆる三・四%をより確実にするためという意味で、四月五日の対策がとられておるわけでございますので、それらの見通しという問題も一つの議論の中心になるところではなかろうかというふうにいま私は思っております。  ただ、その三・四%をより確実にするしないの問題については、私は、いまのところ、四—六のQEだけでもってその見通しが狂ったという判断をするには、いささか時期尚早ではなかろうか。去年も、十二月でございましたか、補正予算の際に三・一%に下方修正さしていただいたものが、結果からいたしまして五十七年度は三・三%の実質成長ということにもなりましたし、もろもろの状態考えますときに、私は、三。四%というものが実現不可能な数字ではないという感じを今日持っておりますし、したがって、景気浮揚に役立つという言葉そのものからくると、いわば額というものは相当なものだという議論もあるでありましょうし、三・四%をより確実にするためというなれば、その規模というものもおのずからまた考えられるということもございましょう。だから、幹事長・書記長会談で、高度な政治判断でもって景気浮揚に役立つというお言葉をお使いになったのではないか。それはまさに、そういう高度な判断で偉い人がお使いになった言葉であるというふうに私は理解を正直にいたしております。
  201. 正木良明

    正木委員 とりあえずアメリカの景気はいいのですから、このままむちゃくちゃに輸出を伸ばしていけば、これは伸びるかもしれませんよ。円安でありますしね。しかし、三・四%の実質経済成長率が達成できるということで満足してはならないものであって、その中身が大事だということを先ほどから申し上げているのです。これはもう通産大臣なんて頭を抱えるだろうと思いますよ、これから貿易摩擦がますます激化してくるというような情勢にあるわけだから。現に総理は、あの先進国のサミットではっきりと、内需拡大による景気対策を講じるというふうに約束しているじゃありませんか。  だから問題は、確かに三・四%の成長率を確保するということも大事だけれども、その三・四%の実質経済成長率の中身というのを、内需中心にするのかそれとも輸出にするのかということで変わってくるのです。これはもう、国際経済の中で日本の立場というものは非常に困難な状況になってくるだろうと思うから内需をやれということなんで、内需をやれということになってくれば、内需を拡大するための方策という経済政策を用意しなければならぬ。ただ漫然と、三・四%は達成するでありましょう、これだけではだめだろうと私は思いますね。  それで大蔵大臣、私の言いたいのは、二階堂幹事長が約束した景気浮揚に役立つ相当規模というのは、景気浮揚ということを重点に置いているのですから、どうしてもやはり五十八年をさかのぼらなければ意味はないのです。ちょこちょこっと十二月、一、二、三なんてやられたら、景気浮揚にも大した役に立たないわけです。景気浮揚に役に立つためには、一月一日までさかのぼった形での一兆円の減税というものが行われなければ、景気浮揚のためには役に立たない。景気浮揚に役立つという言葉意味はそういう意味なのである。偉い人がアバウトにこういう言葉を使ったのだというような認識をどうかひとつ改めていただきたいと私は思います。  それと同時に、この法案を出すと言っていましたね、十月末までに。十一月ですか、大蔵大臣。そのときに減税のための補正予算を一緒に出すのかどうか。
  202. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる減税法案、財源等々を見ながら、幹事長が各党の皆さん方と話し合ったことは十分承知をいたしております。したがって、減税法案が国会に提出された場合に補正予算を出すかどうかということにつきましては、補正予算は、まず考えてみますと、昨年はなぜ早かったかという問題が一つあると思います。結果は政変等がありまして遅くなりましたけれども、それはやはり、歳入欠陥をどうして穴埋めするかというのが補正予算の一つの大きな眼目として存在しておったと思うのであります。  今回は、いま歳入欠陥をどうして穴埋めするかという要因は、今日現在はまだ存在はいたしておりません。そうなると、いわば不確定の要素が余りにも多過ぎる。一つ、まず災害でございます。これも、私の郷里もやられたわけでございますけれども、なかなか私どもが一般的に思っておるように査定等も進むものではございません。幸いに予備費がございますから、応急は間に合います。そうして人勧、仲裁等々まだこれが確たる結論も出ていない。余りにも不確定要素の多い今日、補正予算をいつ提出するかということをここで申し上げる時期にまだないということであります。促したがって、私が、不確定要素が多過ぎるからということで言明を避けておりますが、観測をするならば、その際補正予算を一緒に提出するということは、ない方が多いであろうというふうに考えております。
  203. 正木良明

    正木委員 大体そういうお考えだろうということは、これこそ推測ができます。恐らく、歳入の変更の問題であるから、歳入はあくまでも見積もりだから、これはもう年度末に一括して、年度末ないしは減税法案と同時でなくても、おくれても構わないという考え方だろうと思うのですが、そういうことでしょう、結局の話が。
  204. 竹下登

    竹下国務大臣 歳入は確かに見積もりそのものでございますから、まあおくれても構わぬであろうという、おくれても構わぬというよりも、同時にしなくても済むというふうに理解していただいても、それを否定するものではありません。
  205. 正木良明

    正木委員 それさえはっきりすればいいのです。要するに、減税法案と補正予算というのは、同時提出というのは恐らくないであろう、こういう認識であるということがわかれば、それでいいです。  そうすると、大蔵大臣、これは総理にも関係がありますが、補正予算政府の方でやってくださいよ。政府の方で補正予算は提出を。おくれてもいいですから。われわれ野党はよく話し合いをいたしまして、議員提出で減税法案を出させてもらいますわ。これはいかぬと言えぬでしょう。一緒に補正予算もつけて議員提案をしろ、そんなむちゃなことは言わへんわな。あなた、別々にしますと言うたじゃないか。可能ですね。
  206. 竹下登

    竹下国務大臣 予算の提出権はこれは政府にあると思いますので、減税法案というものが議員立法の形で出る場合、従来の経緯からすれば、まあ政府提案では間に合わないとか、各党の合意でやったがいいとかというようなこと、あるいはそういう議員立法の話が進んで、それならばその趣旨を政府が受けて政府提案にしましょう、こう言って提出したこと等がございますので、厳密に言ってそれだけで割り切れるものではないじゃないかなと思っております。  私もいま正確にそこのところを定かにする知識がございませんので、場合によっては、財政法、税法の問題についての正確な答弁は事務当局にいたさせます。
  207. 山口光秀

    山口(光)政府委員 国会法によりまして、歳入法案あるいは歳出法案を議員提案でお出しになります場合には、その財源についても示さなければいけないということになっておりまして、かつ、その政府の意見を述べる機会を与えなければならないということになっていると思いますが、必ずこの補正予算を組めとか、そういう規定にはなっていないというふうに思います。
  208. 正木良明

    正木委員 可能ですな。財源を示すがな。そうすると、そのとき自民党が反対すれば、自民党、減税に反対ということになりますよ。財源を示しますから。気に入るか気に入らぬかは別の問題として。  だから、総理、こういう事態も存在するのでありますから、われわれもあえて事を好んでいるわけのものではありません。これは国民の大多数の合意としての要求ですから、減税というのは。そのために何遍も何遍も二階堂幹事長と野党の書記長との間で話し合いが進められて、そうしてあの合意が生まれてきているわけですから、その公党の合意というものを行政府はあくまでも尊重するという立場で、そうして、あの合意の中に含まれているいろいろな問題を具現するための減税というものを決断してもらわなければいかぬのです。ですから、どうかひとつ、この国民皆さん方が望んでおる減税を、われわれが望んでいる欲や時期や方法によって減税法案を出してもらいたい。本当はそうしてくれれば別にそんなよけいなことしなくたっていいんです。そうでなければ、われわれはそういう方法でしか皆さん方を覚せいさせるわけにはいかぬ、こういうふうに考えているのですが、どうかひとつ覚えておいてください。
  209. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、各党の話し合い、そうしてその経過についてはその都度承っておりますが、各党におかれて大蔵委員会小委員会においてあれだけの努力をなさったわけですから、最後に財源問題について議まとまらずとはいえ、したがって、各党に対しての御理解を得ていくならば、私はそういう事態は避けられ得るし、また避ける努力をしなければならぬと思っております。
  210. 正木良明

    正木委員 そういうことで、われわれとしては、この減税を実現させるために異常な決意で臨んでいるということをひとつ御理解をいただきたいと思います。  そこで、もう一つ塩崎さんにありますな。最気回復のための公共事業の下期の追加の問題です。これはあなたと総理と意見がどうも違うらしいんだよね。これは新聞の報ずるところでございますから、ここで確かめておきたいと思うのですが、総理は、九月二日の全国知事会で、下期に公共事業の追加を行う考えはない、こういうふうに発言なさったと聞いていますが、そうですか。また、理由は何ですか。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昨年とことしと比べてみまして、公共事業の前倒しの率等々をいろいろ数量的にも計算してみますと、大体特別措置をやらなくても去年程度の事業率は確保できる、そういう見通しである、現在の見通しはそういう状況である、そういうふうに申し上げたのであります。
  212. 正木良明

    正木委員 数字的に示せますか。
  213. 竹下登

    竹下国務大臣 いま総理が、知事会でもお答えがあり、いまおっしゃったとおりでございまして、上半期中の契約済み額の割合を七二・五%とすることを目標として施行の促進を図っているところでありますが、この目標が達成された場合にも、下半期の契約残額は、昨年秋の総合経済対策による公共事業の追加を織り込んだ、いわゆる補正後でございますね、この下半期契約残額とほぼ同水準の金額となるということが言えます。  それからいま一つは、先ほどの経済論争でもお使いになっておりました物価の超安定というような言葉をお使いになっておりましたが、デフレーターが大きく低下しておって、今後仮にこの傾向が続くということを前提にすれば、下半期において昨年度同程度以上の事業量が残されるということになるわけでございます。  したがって、さらにこの問題につきましては、今日の基本的考え方がそこにありまして、そこでしかしながら、なお内外の経済動向を注視しながら適切かつ機動的な政策運営に努めなければいかぬという考え方がいま一方にございます。  いまの場合、そういういろいろな指標なり数字を見た場合に、昨年同期というものを比較してみた場合には総理がおっしゃったようなことになるわけでございますので、今後の問題につきましては、経済動向を注視しながら機動的に政策運営をしなければならぬというふうな気持ちは持ち続けております。
  214. 正木良明

    正木委員 塩崎長官、あなた八月の三十一日に、どこでやったのかよう書いてないが、東京都内でと書いてあるが、「最近の経済情勢と経済政策」についてということで講演をなさっているんですね。内需拡大の重要性を指摘なさって、所得税減税と公共投資の増額が重要課題だ、こういうふうに言っているそうだ。総理は要らぬと言っておる。あなたは必要だと言っている。
  215. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 総理のただいまのお話もありましたが、私は九月二日の知事会議総理のお話も伺っておりましたし、大蔵大臣の御説明も聞いておりました。  私の見るところ、総理は、ことしの上半期の契約率が七二・五だから、去年に比べて五%程度低めておる、したがって、五%が下期に来ておるから事業量は大体同程度の規模が行われるからというような、事実の御指摘があったと私は思うのでございます。これを、内需拡大の見地からどのように見るかは別問題でございます。  私が都内の講演会で申しましたのは、質問がございまして、先ほど正木委員のおっしゃいましたように、上半期に前倒しすれば必ず下半期は何らかの対策、それは財源を伴い、国庫債務負担行為にしても追加の契約ができるような方途があった、こういうことを申したのがそういうふうに出たわけでございまして、これまでの実績、過去の経験を私は申して、そして、今後は内需拡大の見地からこの点はまた研究をしなければなるまい、こういうことを申したわけでございます。
  216. 正木良明

    正木委員 いまどう思っているんですか。必要だと思っているんですか。
  217. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、現在の経済状況のもとでは、最も確実に内需をふやし得るのは公共投資。御案内のように、民間設備投資に比べて大変おくれがあるのが社会資本でございます。外国から見たら、すばらしい設備投資は持っておりながら、社会資本は大変おくれておるというようなこと、さらにまた、私は赤字公債にも関係はしないのが公共投資であろうかと思います。さらにもう一つは、御案内のようにこの際民間資金の活用も考えて、私は、公共投資の総額の問題を考えていくならばこの財政の問題も十分対応できる、こういうふうにも考えて申しておるつもりでございます。
  218. 正木良明

    正木委員 去年は二千七百七十億円債務負担行為で追加しているのですよ。よろしいか。その前に言わなければいかぬ。要するに、公共事業費というのはゼロ成長なんです。横ばいでしょう。この間名目金額が横ばいであるということは、事業量というのは減ってきているということを考えなければいけませんね。これは常識だ。三年続きだ。建設省は、一〇%か一五%実質的には事業量というのは落ちているということを言っていますよ。かてて加えて、去年は二千七百七十億円の債務負担行為を追加しているのです。債務負担行為を追加しているということは、昭和五十八年度二千七百七十億円の公共事業を先食いしたということです。確かに前倒しの率は昨年よりもことしの方が少ない。しかし実際問題として、去年は何もしなかったのではなくて、債務負担行為という五十八年度予算を先食いする形で公共事業の追加をしているのです。これはもう私はスズメの涙ほどとしか言いようがないけれども、やることはやったわけだ、これは地方も入れてだけれども。ことしはそれもやらぬのですか。しかも、二千七百七十億円は五十七年度分に事業量としては食われているのですよ。五十八年度、金だけ払うのですよ。どうなんですか。公共事業は低迷するのに決まっているじゃありませんか。
  219. 竹下登

    竹下国務大臣 これはそれぞれの建設省、運輸省、農林省等々所管があるわけでございますが、いわゆる昨年度の補正予算における二兆七百億円の公共投資の追加であります。まあ災害復旧という大きな分野がございましたが、地方単独あるいは法律を伴わない財投の弾力条項の活用、そしていまおっしゃいました債務負担行為の追加、俗称ゼロ国と申しておりますが、それらでもって二兆七百億円というものを手当てをした。したがって、これは理論的におっしゃるとおり先食いではないか、こういう理論になるわけでございますが、現実の姿としては契約繰り越しあるいは未契約繰り越しという姿に多くのものがなっていく、それが逆に五十八年度の公共事業の下支えをしておるということも私は一画言えるではないかというふうに思います。と同時に、先ほど来の議論の中にありましたいわゆるデフレーターという問題は、そういう状況が今後とも続くという前提に立ったとしたならば、私は事業量で見たときに、それは昨年の補正後事業量が実質確保できる額ではないかというふうに思っておるわけであります。  しかし、先ほどおっしゃいましたように、内外の経済情勢を見ながら、弾力的な対応の仕方というものは、いつ、いかなるときでも考えていなければならぬ課題であるというふうに考えております。
  220. 正木良明

    正木委員 抽象的なことを言っていてもしょうがありません。去年と実質価値から判断してそんな違いがないからというのがどうも追加しない論拠のようだけれども、五十八年度下期の公共事業を工事ベースで見まして、五十七年度の下期とほぼ同じだと仮定しましょう。国民所得に対する比率としては、五十七年度の十—十二月期の実質前期比はマイナス四・四%です。五十八年の一—三月期も同じくマイナスの五・三%です。去年と同じでいいということはマイナスになっていいんですね、大蔵大臣。去年はそうなっているよ。五十八年度の工事ベースの公共事業費は、仮に補正がないといたしますと約十三兆二千七百億円、五十七年度は補正等があって約十四兆六千億円です。五十八年度の年間公共事業は、このままだと五十七年度より一兆三千億円少なくなるのです。こういう数字が出ているんです。去年よりマイナスがもっと強くなりますよ。  だから、ただ感じで言うのではなくて、やはりいまの景気というものを何とかしなければならぬ、景気を回復させて、企業の収益を上げて、そこから税金をいただいて自然増収をふやしていくという、要するに非常に正当な正循環の財政再建の方へ持っていかなければいかぬのです。それには減税と公共事業がどうしても必要なんです、この場合。政府がいままでやってきたこと全部じり貧です。これは経済白書の中にも出てくるけれども、いま五十八年度末の恐らく百十兆になると言われておる累積赤字、完全雇用が達成されても出てくる赤字というのを経済白書ははじき出しているわけですね。六割でしょう。そうすると、いまの累積赤字の六割が構造赤字であり、四割が循環赤字だということが言えるわけです。  構造赤字というのは行政の肥大化とか行政の非効率なんというものから生まれてきた赤字だから、これは断固として行政改革を進めて、そうしてこの構造的赤字というものを少なくしていくということは、私ももろ手を挙げて大賛成です。しかし、循環的赤字というのは、やはり景気の好況、不況ということによって生まれてくる赤字でありますから、不況が続いて、そうして収益が少なくて利益が上がらないから税収不足になる。だから、これは別個に考えなきゃいかぬ。  構造的赤字と循環的赤字というのは別に分けて考えなきゃいかぬのだが、政府はもうみそもくそも一緒にして、何でもぶった切りゃあいい、ぶった切りゃあいいというのでぶった切っている。循環的赤字をなくすための対策というものを明確に立てていないというところにこのじり貧、言い直せば縮小均衡、縮小再生産という悪循環が起こって、結果的には赤字が出て、それにまた赤字国債をぶち込まなきゃ決算ができないというような状況にここ数年追い込んできたのではありませんか。  だから、そういうことを考えれば、やはりこの五十八年度の下期に対しての景気対策というものをいま検討なさっているなら、先ほど申し上げたように政府が打つべき手というのはそんなにたくさんないのだから、それを的確に勇気を持って決断して、その景気対策をやっていくということにおいてこの財政再建の道というのを歩んでいかなきゃいかぬのじゃないでしょうか。どうですか、総理
  221. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほど来御議論になっておりますこのQEを見ましても、政府支出の固定資本形成、これが四—六は〇・五%の実質寄与度というものになっておるわけであります。これはやはりデフレーターというものも大きく効いておる。(正木委員「それは先ほど申し上げたように前倒しの結果なんですよ」と呼ぶ)それから前倒しの結果はもとよりそれはございます。したがって、私はいまたびたびお答えしておりますように、要するにもう一つ申し上げなきゃいかぬ問題は、公共事業をやった場合に、いわばその財源を建設国債に求めた場合を仮定をしてみますと、やはりそれは特例債であれ建設国債であれ、これが市場金融を圧迫して金利の上昇をもたらして、別の意味において景気の足を引っ張るということも、もちろん私どもの念頭を離れない一つの理由でございます。したがって、今日私どもは追加等の新たなる措置をとらなくても、災害は別といたしまして、昨年度の追加後と同等の実力は維持していける。さらにデフレーターをプラスしてみれば、それなりの期待が持てるではないかということを申し上げておるわけであります。  しかし、いま正木さんのおっしゃったような議論が今日各方面にございます。したがって、私は内外の経済動向を注視しながら、今後なお機動的に対処していくという用心深い姿勢だけは持っていなきゃならぬというふうに申し上げておるわけであります。
  222. 正木良明

    正木委員 これも果てしない議論になりますから、よく覚えておいてください。そういう強硬な意見があるということを覚えておいてください。  それで、公共事業をやったって余り経済効果ないのじゃないかというような話をちらちら聞くことがあるのですがね。ところが、建設省はそうじゃないと言っていますね。建設大臣、あなたのところから「建設経済の構造とその経済効果」というのを八月に出しましたね。大いに公共投資が経済効果があるのであるということです。あなたは宣伝のチャンスだから言いなさいよ。
  223. 内海英男

    ○内海国務大臣 景気対策に公共事業の拡大が効果があるということにつきましては、かねがね建設省でいろいろ調査いたしておりますが、景気に及ぶ波及効果といいますか、一・五一倍ある。減税については〇・八七。それから社会福祉については〇・七一というような調査のデータも出ておりまして、したがいまして、景気対策ということで公共事業の大幅前倒しということが行われたと私は判断をいたしておるわけであります。  したがいまして、下期のことについていろいろ御心配の御質問をいただきまして大変ありがたいことでございますが、下期につきましては、私は経済対策の際に、今後の内外の経済情勢の推移を見ながら適時適切に措置してまいりたいというような口頭了解というようなものがございまして、当然下期につきましてはその了解に基づいて何らかの措置がとられるであろうということを私は期待をして、公共事業の推進を図っておるわけでございます。
  224. 正木良明

    正木委員 これだけの時間じゃ全部言い尽くせないだろうと思いますが、確かにあなたのところから出してきたデータというのはおもしろいデータが出ております。やっぱり公共投資が一番効果があるみたいなことを響いてある。これはまた別に建設委員会でやりましょう。  余り時間がありませんから、これが最後になるかわかりませんが、物価問題。  先ほど私は、物価は非常に安定している、超安定という言葉を使いましたが、超はちょっと言い過ぎであったかもわかりませんが、安定しているという状況ですが、ところが、どうも物価の値上げ、特に公共料金を中心とした物価の値上げがちょっとメジロ押しに並んできているのですね。そこで、物価問題について、やはりいまからはっきりした考え方を持っておりませんと、まさにこれはもう気でありますから、どういう狂乱を起こすかもわからぬということが言えるわけです。  まず第一に酒税を上げますな、大蔵大臣。それから運輸大臣、国鉄運賃上げますね。予定でしょう。私鉄の運賃も申請が出ていますね。六大都市のタクシー料金の値上げというのがありますね。大都市のバス料金の値上げというのが控えていますね。文部省では国立大学の授業料の値上げというのが言われていますね。ビール、セメント、石油化学等の素材産業製品も目立って値上げ傾向を強めてきております。政府が言うような楽観的な見通していいのかどうかは、非常に心配でございますが、これらの物価の値上げという問題について、これはやはり長官の方かな、総括して一応お願いします。
  225. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  いま正木委員、たくさんの商品について、あるいはサービスについての値上げの、何と申しますか、将来の予測のお話ございました。私どものところには、まだまだそのような商品の値上げについての詳細な報告もございませんし、また政府が介入するものあるいは政府の管理価格、このものでないと、なかなかこれに干渉することはいまの体制では許されないわけでございます。しかし、私どもの介入ができるあるいは管理するものにつきましては、単に財政が赤字であるからというような理由からの引き上げは、これまでのとおり厳重に監視していくつもりでございます。
  226. 正木良明

    正木委員 農林大臣、秋冬野菜、要するにお正月前になりますと例年野菜が上がるのですが、ことしはこの秋冬野菜−現在の野菜の値段というものはそんなに上がっているわけのものではありません。非常に安定していると思いますけれども、これから秋から冬にかけての野菜の値上がりということが例年予想されるのだけれども、何か対策をお考えになっていますか。
  227. 金子岩三

    金子国務大臣 野菜は、大体七月大変冷夏でありました関係で、前年の同月と比較して三・三%上がっております。八月はやはり、日照条件がよくなりまして、大変持ち直して、前月比の〇・六の値上げになっております。いろいろ野菜供給安定基金等がありますので、やはり契約栽培を行い、年末に生鮮野菜の高騰がないように極力手配をいたしております。
  228. 正木良明

    正木委員 よくお願いしますよ。値上がりを期持しているわけでも何でもないのだから、万全の事前の手を打っていただきたいと思います。  それから、どうもけしからぬのはガソリンの値上げですな、通産大臣。どうなっているの、これは。このガソリンの値上げの問題をよく事情を説明してほしいということと、もう一つは、これからいよいよ季節に向かって灯油の価格の問題が起こってくる。これについて何らかの対策は立てているのですか。
  229. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 九月になりましてから、小売と元売りの間で値決めがなされたということを承っております。これは、従来から値決めをすることが後回しにされておりまして、小売が過当競争で安く売って、そのツケを元売りに回すというふうな傾向があったものですからなされたというふうなことでございますが、もちろん政府といたしましては、ガソリンの値段はあくまでも市場原理に基づいて売買されるものでございますから、介入はいたしません。  なお、詳しいことは事務当局から御説明させたいと思いますが、十分注視をして考えてみます。  なお、灯油は現在は需要期ではございませんが、やがて需要期がやってきます。したがいまして、風生物資でございますから、十分そうした点にはわれわれといたしましても注視をしていきたい、こういうふうに考えております。
  230. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま大臣が答弁されたとおりでございますが、特にガソリンにつきましては、OPECの基準価格、原油の価格がバレル当たり五ドル下がったということを前提といたしまして、ことしの四月から、昨年の八月に比べまして大体キロリッター一万二千円、リッター十二円くらいですか、それくらい元売り価格の仕切り何格を下げたわけでございますが、実は過当競争体質が石油業界にございまして、末端の小売価格がどんどん下がるということでございまして、十二円ところかもっと下がってしまう、何十円も下がるということでございまして、健全なる経営ではないということで、先ほど大臣が答弁いたしましたように、仕切り価格について、後で幾ら安くてもめんどうを見るということではおかしいということで、九月から事前に価格をちゃんと決めていくということでございまして、」大体当初値下げする程度の段階へ戻す、予想したところへ戻すというのが実態でございます。もちろん、その価格決定につきましては、市場メカニズムで決まるということでございます。  それから、灯油について何か対策を考えているかということでございますが、これは確かに需要期を迎えましてこれが非常に上がって民生に悪い影響を与えるということではいけませんので、例年実施しておりますように、九月までに六百七十万キロリッターの在庫をちゃんと積みまして、需給が逼迫しないような万全の措置を講ずるということをいたしておりますが、なお価格の動向については十分注視していきたいと思っております。
  231. 正木良明

    正木委員 これは私確かめたわけではないのでわかりませんが、通産省が七月の下旬に各元売り会社の販売担当役を呼んだ、八月下旬には各社の社長を呼んでいる、また各通産局、これは地方の通産局ですね、元売り会社の支店長を呼んで、これがどうも市況の立て直しのために仕切り価格を上げるということを指導したのじゃないかということが言われているのですけれども、どうなんですか。
  232. 豊島格

    ○豊島政府委員 ガソリン、石油製品の価格は市場メカニズムによって決まるということでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、非常に過当競争体質で、ガソリンを販売競争をして幾らでも安く売る、そうすると、それをあと全部元売りがしりをぬぐう、そういういわば悪い慣行がございます。石油産業、もちろん原油価格の五ドル引き下げということは、十分消費者に還元するということは非常に大切なことで、これはぜひ実行してもらわなくちゃいけないわけですが、実際問題として、それを大幅に上回る値下げが起こって、そしてその結果、元売り業界は毎月、五月以降相当の赤字が出るということで、エネルギーといういわば国民生活、産業にとってどうしても必要なそういうものを供給する産業がそんなに体質が悪くなったのでは困るということでございまして、われわれとしては一体どういう販売方法をしているのかということについて実態を風いたわけでございまして、かねて石油籍議会でも、値決めはできるだけ事前にするという合理的な慣習に戻るべきであるということを忠告しておりますので、そういう過当競争の行き過ぎにつきまして、特に事後調整問題について注意を喚起したということでございますが、特別にこういう値上げをしろ、そういうことを示唆したわけではございません。
  233. 正木良明

    正木委員 それはそう答えるだろうけれどもね。確かに過当競争が存在しているということを認めないわけじゃありません。しかし、市場メカニズムに任せた形でガソリンの店頭値段というものが下がってくるということは、消費者にとっては大歓迎なんです。われわれが考えることは、ガソリンスタンドの数の問題とかそのほかいろいろございますけれども、本来的に過当競争が起こってくるような体質、そういう体質には全然メスを入れないで仕切り価格を上げる、値段を上げるということで体質を強化しようなんて、これは邪道もはなはだしいと思うのだよ。どうでしょうか。  それで、末端価格は一リッター大体百五十五円ぐらいになるみたいだね。百三十円台でずっと看板を出していて、全部一夜に書きかえられて、こういうふうに大体統一されるということは、何らかの手が加えられなければこういう形にはならぬですよ。仕切り価格が十二円上がったのなら十二円プラスすればいいだけの話なのに、大体統一されてしまう。百四十円台のところもあったし、百三十円台のところもあったのに、大体百五十五円に統一されてきた。そして、元売りからのバックマージンである価格の事後調整金も、各元売り会社も廃止するというふうに言っているそうだけれども、値上げ時期、値上げ幅、末端価格、これの統一ぶり等を見て、どうも自由な意思によってこれが値上げされたとは思えないのだけれども、公取委員長、どうです、これはあなたのところ、何かやらぬでもいいのですか。
  234. 高橋元

    ○高橋政府委員 いまも通産省からお答えがありましたように、ガソリンの価格は崎山な市場経済の中で決まっていくべきものだというふうに思うわけであります。石油製品が産業の活動なり国民生活に非常に広い、また深い影響を及ぼしておりますから、私ども公正取引委員会といたしましても、価格動向は十分注視をいたしております。いやしくも違法なカルテルによる値上げが行われることのないよう十分監視をしているわけでございまして、ただいまもエネルギー庁長官からお答えのありました通産省の事情聴取につきましても、私ども通産省からその実態について伺っておりまして、いわば経営指導でありまして、価格については触れられておらないという御報告をいただいておるわけであります。ただいま価格の動向につきまして情報の収集に努めておるところでございますが、値上げがいやしくも違法なカルテルによって行われたという疑いを示すような具体的な端緒がありました場合には、もちろん厳正に対処していきたいと考えております。
  235. 正木良明

    正木委員 公取委員長さん、ビールのあの同調的値上げというやつは報告することになっていますね。今度も同調的な値上げをするわけでしょう、結果的には。事前にカルテルの相談があったとかなんとかは別の問題として、あんなのは報告を出すだけでいいの、ああいう寡占産業について。あれを改めるなんという気持ちはありませんか。
  236. 高橋元

    ○高橋政府委員 ビールは上位三社の市場シェアが七〇%を超えておりますので、独占禁止法の十八条の二という規定がございまして、同調的値上げをした場合には、その理由の報告を聴取するという制度がございます。  ただいま新聞紙上等で、ビールの値上げについて業界でいろいろ一部に検討が行われておるということが伝えられておりますが、まだ値上げが実現をするというような話は、国税庁からも直接には聞いておりません。  それで、先ほども石油に関連して申し上げたことでございますけれども、価格の引き上げが、その引き上げにつきましていやしくもカルテルがあります場合にはもちろん厳正に対処しなければならないわけでございますが、そういうことがない場合でも、ビールにつきましては値上げの理由報告を聴取いたす、そして同会に御報告する、こういうことになろうかと思います。
  237. 正木良明

    正木委員 国会に報告するのは、それはもう決まっていることだから、それはそれでいいのですよ。それではちょっとなまぬるいのじゃないですかということをお聞きしたのです。時間がありませんから、それはまた別な機会にお尋ねいたしましょう。  そのほかこの値上げの問題では、運輸大臣に、国鉄料金の値上げの問題、タクシー料金、私鉄料金の値上げ等の問題についてお聞きしようと思いましたが、時間がありません。また別の機会にしたいと思います。  そのほか値上げがメジロ押しであるというふうな状況の中で、いま安定している物価というものがどういうふうな刺激を受けるかということについては非常に問題がある。仮にそういう値上げがメジロ押しで起こってきた、そうなってきたときに減税をしてもらったって、その減税分がそれで全部消えてしまうということでは、国民生活に対して何の併与もしなかったということになるわけでございまして、その点は非常に私は心配でありますので、また別な機会にその点についていろいろと申し上げてみたいと思います。  きょうは人事院勧告問題についてお尋ねしようと思いまして、わざわざ人事院総裁にお越しをいただきましたが、こういう事情で時間がございませんで大変失礼いたしましたので、ひとつ御了解いただきたいと思います。  一貫して私が申し上げましたことは、やはり減税という問題が、一つは税負担の不公正を是正するという大きな問題を含んでおるということ、さらにまた、可処分所得を増加していくということが非常に重要な景気との関連で存在しているという問題等を中心にして、景気問題等について申し上げました。また機会があればさらに深い議論をしていきたいと思っておりますが、どうかひとつ総理も重大な決意でこの問題には臨んでいただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わります。
  238. 久野忠治

    久野委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十六分散会