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島田委員 ビートに移りたいと思います。
畑作の中で、特に
北海道にとっては
てん菜、
バレイショというのは麦とともに重要な
畑作の柱になっておるのは御承知のとおりであります。私は、非常に気になっておりますのは、昨年は
ビートが大変よくとれました。手もとれました。昨年のような年を悪い年と言うのはよほど根性曲がりでしょうから、これは正確にいい年であったと評価をしておきたいと思うのであります。ところが、それにもかかわらず
農家経済が大変苦しくなっている。ここのところが大変私は気になるのであります。気になるだけではなくて、問題の点ではないか、こう思うのです。
調べてみますと、私はよくこの席で交易
条件という言葉を使います。これは、私がオリジナルに出した言葉ではございません。農業白書でもこれを言っておるのであります。これは大変大事な
農家の経済を考える場合のバロメーターでありまして、最近、九月三十日に
統計情報部が発表いたしました農村
物価指数というのがございます。これは五十七年八月でありますけれども、そのほかに五十七年度の全体のものが出ておりますが、それを見てまいりますと、この中で、農産物の
価格は五十五年を一〇〇として五十七年は〇・六上がった、こういうことであります。ところが、これらを
生産する
生産資材は総合で二・九%上がった、このように
統計情報部は発表いたしております。そして、五十七年度の農業の交易
指数というのをそれからはじき出してまいりますと、九七・七六で一〇〇を割っている。これは一〇〇を割りますと、農業経営は赤字になって生活が苦しくなる、あたりまえのことでありますが。売るものが上がらなくて使うものがそれよりも高くなれば支出が多くなるわけで、経費がよけいかかって所得は出ないわけでありますから、生活が苦しくなるというのはあたりまえの話であります。
こういうものを見てまいりますと、昨年あれだけ物がよくとれた、豊作だという気分でございましたのに、
農家経済、
農家生活は逆に悪くなっているというのは一体どういうことなんだろうか。そういう点を正確に実態として把握しないで、
てん菜の
価格あるいはジャガイモの
価格を
決めた、これだけでは済まないと私は思う。昨年これだけよかったのだし、おととしはこうであった、そうした趨勢値の中から
傾向として
農家の経済はこうよくなるはずだと言われたって、実際問題はそれだけではかすみを食っていきていくようなものでありまして、統計の
数字だけでは生きていけないのであります。ところが、いみじくも統計もそういうことを
指摘しているのであります。ですから、この辺を頭に置きながら
価格決定に当たってまいりませんと、行政は不親切だ。不親切だけではない、
農家の生殺与奪の権を持っておるわけでありますから、息の根をとめてしまうということになりかねない。
ちなみに、これも
農林水産省北海道統計情報事務所が発表いたしました
北海道農林水産統計年表によりますと、五十二年からのものをちょっと一覧表にまとめてみました。その結果、これは五十七年がまだ出ておりませんけれども、五十六年までにずいぶん
農家経済が悪化をしておる。所得がこの年はずいぶん、例の湿害によって苦しんだ年ですから当然と言えば当然でありますが、農業所得は五十四年に五百万、五十五年で五百十万、五十六年ではその半分以下の二百四十八万円と落ち込みました。しかし、経費は決してそれにつれて、並行して落ちたわけではありません。つまり、かからなかったわけではありません。この五年間で一番多い六百六十万円ほど経費がかかったのであります。ちなみに前年はどうかというと六百四十万、五十二年には四百三十万の経費で済みました。
そして、これまた当然のことながら、農業所得率は四二%、四八%、四九%、四五%と続いてきましたのに、五十六年には二七・三%と所得率ががっくり落ち込んだわけであります。その分を五十七年である
程度取り戻していけるかと思ったのでありますが、現実にはそんなに甘いものではなくて、この落ち込んだ所得率は依然としてそんなに取り戻すことができないで今日苦しんでいる。
また、十アール
当たりの所得というものを見てみますと、十アールと言えば三百坪でございます。きょうも坪何百万とかの土地があるというテレビがありまして、三百坪とたった一坪との値段、こんなことのいわゆる矛盾を私はつくづく
感じたところでありますが、それを単純に比較するというのはちょっと筋が違うと言われればそのとおりでありますが、十アール
当たりの所得がどれぐらいになっているのだと調べてみましたら、五十二年にわずか二万七千円であります。そしてその後少し上がりましたが、五十六年には二万一千円、こんな所得でしかないのであります。これではとても食える話じゃありません。ですから、こうした
状況というものがちゃんと頭の中に入っていて
価格を
決定していただかないことには
農家はとても救われぬ、こういうことになるわけであります。それで、たまたまことしの
価格決定ということになりますれば、昨年はよかった、そういう頭で、ほとんどどなたも疑いなくそういう
感じにいま支配されている、こう考えるのであります。
私はそういう点を昨年も同じように言いまして、たまたま限界
生産費方式というものを採用してはどうか、こういうことを申し上げたわけであります。
小野局長は新しくきょう初めてこうやって私とお話をするわけですから、この限界
生産費方式なんというような言葉についてはあるいは初めて聞いたとおっしゃるかもしれません。私は、この点について若干解説を加えておきますと、実はこの間
統計情報部がこれまた発表してくれました。統計の方、いらっしゃるのですか。——おりませんか。
統計情報部は呼んでいたはずでありますが……。まあよろしい。これはひとつ
小野局長、聞いておいてください。
実は、
生産費調査の中の単収が十アール
当たり六千百二十五キロ、つまり六トンとれている、こういうことであります。ところが、先ほど
局長が
説明されたのは五トン九百であります。そして、全体的に面積としては、五十七年につくられた
ビートの面積は、正確に言いますと先ほど御
説明にあったとおり六万九千六百八十三ヘクタールでありました。そこで、五千九百キロの単収を上げて全体で
収量は四百十万トンであります。こういう報告でありました。
統計情報部のこの単収に面積を掛けてまいりますと、四百二十六万八千トンになっちゃうんですね。
こういう全く実態にないような
数字が
統計情報部から発表されるということについて、きょうに始まったことではございませんよ、前にもこんなことがありました。この辺のところは勉強が足らぬのか、どうも私はわからないのであります。もっとこういう点は実態に合わせて、みんなが納得できる
数字があってしかるべきだと思うのです。
調査の仕方について私は間違っているということを申し上げているつもりはありません。でも、なぜこんな
数字が出てくるのかという点については、依然として疑問なしとしません。こういう
数字が発表されて、
てん菜の
価格決定に当たってはこれがそのまま使われることはないということは私も知っています。これを参考にしながら、趨勢値としてそこを根っこにして
価格決定を行う、パリティでありますから、その他
経済事情参酌で
決めていくわけでありますから、この
数字がそのまま使われているというふうに私は申し上げるつもりはありません。でも、限界
生産費方式というものの主張はもう一つ違うところにあります。
たとえば、実はこの五年間の
平均の単収というものを
北海道で
ビートをつくっている百七十四市町村について調べてみました。これは大変なエネルギーを必要とする
資料であります。必要ならば後で農林省に上げてもいいぐらいであります。これは正確です。
統計情報部が発表いたしました正確な
数字をもとにして、五カ年間のうちの最高と最低を除いて三カ年の
平均で単収を見てみました。
統計情報部が言っている六千キロの
収量を上げることができている町村は何カ町村あるかと思ったら、一番目が妹背牛町であります。これが六千四百十五キロ、それから中富良野が六千百八十キロ、池田町が六千百五十三キロ、滝川市が六千百二十七キロで、まさに四番目のところの
水準がこの
統計情報部が出しております単収になっているのであります。高いと思いませんか。百七十四カ町村のうち
統計情報部が出した単収よりも上げている、つまりそこのところのボーダーラインにいるのはたった四町村でしかないのであります。これは
統計情報部のおいでにならぬところで長々お話ししたって始まりませんから……。
たとえば、そういう点で一体どれだけの
収量をこの四カ町村で上げるのかというと、わずか十一万一千トンしか
ビートの原料を
生産し得ないのであります。六十五年見通しなりあるいは需給計画に基づいて
政府が考えております、去年の場合は四百十万トン
生産された、こういうことになりますと、四百十万トンを
生産するといえば、これは全町村が一生懸命になってこの
水準の単収を上げたとしてもなかなかかなう
数字じゃないということになるわけであります。計算上はそうでしょう。それは町村にはいろいろばらつきがありますよ。たくさんとっている人もおれば、少ない人もおります。ですから、そういう点でいいますと、三百五十万トンの原料
ビートを
生産し得るところで見てみますと、風連町の百二十六番目というのが大体その辺の
数字に近いところであります、六十五年見通しのところからいいますと。ここでの
平均単収はどれぐらいかというと、四千三百三十七キロであります。とてもじゃないが六トン以上とるような、そういう町村の
平均でやっていったのでは、農林省がお考えになっている原料の
確保さえできないということに実はなるのであります。
時間が来てしまって、私はこの話はまた後ほど詰めてお話をしなければならぬかと思います。要は、そういう
数字というものが採用されていく段階で、第一にはやはり交易
条件が必ずしもよくなっているわけではない、そのことによって
農家経済が大変苦境に陥っている、
ビートもずいぶんとれた、
バレイショもたくさんとれた、昨年は水もよかったし麦もよかったという
北海道でありますが、
農家経済は一向によくなったという結果には相なっていない、ここのところをしっかり頭に置いて物の値段をお
決めいただかないと、
農家は営農を続けていくことはできません。離農に追い込まれてしまうのであります。これは、昨年もう一時間ぐらいかけてこの話ばかりしました。前
局長は納得をされたようであります。それで昨年は思い切った、百点満点とはいきませんが、六十点か七十点近い点数の
価格をお出しになったのであります。新しい
局長、ひとつこの辺のところは十分頭に置いて
価格決定に当たっていただきたい。時間がもうあと三分しかないので、国鉄にも物を言わなければならぬから、一言でいいですが、私の考えている点についてのコメントはとてもできないと思いますのでも、そういう気持ちをにじませた
価格決定をぜひ
バレイショと
てん菜に、あるいは
大豆にお出しいただきたい、こう考えます。