運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-10-04 第100回国会 衆議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十八年九月八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       石田 博英君    上草 義輝君       小里 貞利君    太田 誠一君       川田 正則君    岸田 文武君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       羽田  孜君    保利 耕輔君       松野 幸泰君    三池  信君      三ッ林弥太郎君    渡辺 省一君       串原 義直君    新盛 辰雄君       田中 恒利君    竹内  猛君       前川  旦君    松沢 俊昭君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       東中 光雄君    阿部 昭吾君 —————————————————————— 昭和五十八年十月四日(火曜日)     午前十時七分開議 出席委員   委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 小川 国彦君    理事 日野 市朗君 理事 武田 一夫君    理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       川田 正則君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       保利 耕輔君    松野 幸泰君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       新盛 辰雄君    田中 恒利君       竹内  猛君    前川  旦君       松沢 俊昭君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    神田  厚君       寺前  巖君    藤田 スミ君       阿部 昭吾君   出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君   出席政府委員         農林水産政務次         官       楢橋  進君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産省食品         流通局長    小野 重和君         農林水産技術会         議事務局長   関谷 俊作君         食糧庁長官   松浦  昭君         水産庁長官   渡邉 文雄君   委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   上野 浩靖君         国税庁調査査察         部調査課長   木下 信親君         通商産業省貿易         局輸入課長   奈須 俊和君         通商産業省貿易         局農水課長  土田 清蔵君         会計検査院事務         総局第五局上席         調査官     天野  進君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   内村 良英君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 委員の異動 十月四日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     藤田 スミ君     ————————————— 九月八日  農産物の自給の促進及び備蓄の確保のための農  業生産振興に関する法律案安井吉典君外八  名提出、第九十八回国会衆法第一二号)  総合食糧管理法案安井吉典君外八名提出、第  九十八回国会衆法第一三号)  農民組合法案安井吉典君外八名提出、第九十  八回国会衆法第一四号) 同月二十七日  標準価格米制度廃止反対に関する請願小川  国彦紹介)(第八号)  農産物輸入自由化枠拡大阻止等に関する請願  (串原義直紹介)(第九号)  同外六件(中村茂紹介)(第一〇号)  同(小川国彦紹介)(第八三号)  水田利用再編第三期対策に関する請願藤井勝  志君紹介)(第二三号)  韓国に対し漁業水域に関する暫定措置法適用に  関する請願川田正則紹介)(第八二号)  農作物冷害防止対策確立に関する請願小沢  一郎紹介)(第一三三号)  農業基本政策及び米穀政策確立に関する請願  (小沢一郎紹介)(第一三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち  農林水産業振興に関する事項  農林水産物に関する事項  農林水産業団体に関する事項  農林水産金融に関する事項  農林漁業災害補償制度に関する事項 以上の各事項について、衆議院規則第九十四条に、より、議長に対し、国政調査承認を要求することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 山崎平八郎

    山崎委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀井善之君。
  5. 亀井善之

    亀井(善)委員 限られた三十分という時間でございます。若干の問題につきまして八大臣初め関係当局質問をいたしたいと存じます。  まず、米の問題、水田利用再編対策の三期対策の問題が出ておるわけでございます。  米の需給につきましては、今年は幸い作況指数が九九と、平年並みの水準を維持することができたわけでございます。したがって、長期的には米の需給過剰基調にある、このようにも判断できるわけでございます。そこで、明年度から始まります第三期対策内容を早く明らかにしてほしいと農業者から強い声も出ておりますし、農薬経営の安定の見地から早期に明示をしてほしい、こういう考え方が強いわけでございます。  ます最初に、大臣から、三期対策基本的な考え方をお伺いをいたしたいと存じます。そして、さらにあわせて、事務当局から、若干のそれなりの説明をお受けをしたいと思います。
  6. 金子岩三

    金子国務大臣 次期水田再編対策について、基本的な私の考え方はずっと通常国会以来申し上げております。よく猫の目農政ということを言われておりますのは、やはり減反面積が毎年くらくら変わるということが農家にとって大変苦痛になっておるというようなことだと私は考えておりますので、何とかして次期対策長期展望に立って、農家が安定して、そしてまた転作作物を定着させるようにというあらゆる面から検討しますと、これはひとつ慎重に長期計画を立てたいということになりまして、関係局は皆精力的にいま動いて詰めております。  それで、その具体的な詰めの内容は、まだ結論までいっておりませんので、事務的に政府委員から御説明申し上げたいと思いますが、ただ、米が過剰基調であることは間違いないわけです。したがって、やがては、三年先には過剰生産のために持ち越しができる。かつて六百五十万トンを五十二年以来持ち越したために二兆一千億の財政が必要になってくるし、そしてそれがことしいっぱいかかって大体処理できるという事態なんですから、ああいういわゆる持ち越しをやり過ぎていわばむだ金を使うことがないようにということで、今後備蓄を多少やっていくにしましても、毎年絶えず新米を持ち越していくというような考え方に立っていけば大体かつてのような古々々々米というものはつくらぬで片づく、こういうことでいかにして財政負担を軽くして、そして農家の方がまあこれならと言って生産に意欲を持てるような仕組みにするかということで努力いたしておるわけです。
  7. 亀井善之

    亀井(善)委員 いま大臣から基本的なことにつきましてはお伺いをしたわけでございます。  そこで、具体的に若干お伺いをしたいと思います。  まず、転作奨励金単価の問題でございます。  本年三月の臨調の最終答申に、転作奨励金単価引き下げを求めているところがあるわけでございます。水稲を作付けるために整備をされた水田畑作物を導入するということは、基本的になかなかむずかしいわけでございます。現在の奨励金でさえ米をつくる場合に比べれば減収となる、こういうような批判が強いわけでございます。したがって、第三期対策奨励金を打ち切ったりあるいは大幅に引き下げをすることは、農家経営の安定を図る上でも、また転作推進を図る上でも適当でない、私はこのように考えるわけでございます。ぜひこの三期対策奨励金について、転作の円滑な推進、その定着化を促進する、そういう観点から適正に定めていただきたい。この点、農蚕園芸局長、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  8. 小島和義

    小島政府委員 いま御指摘ございました臨時行政調査会答申でございますが、「奨励金依存からの脱却を図るため、第三期対策においては、米と転作作物との収益性格差の動向を見極めつつ、奨励金単価引き下げるとともに、転作定着化が一層進むよう奨励金体系改善する。」こういう最終答申が出されております。また、昨年八月に出されました農政審議会報告では「転作奨励金からの早期脱却を図りつつ、水田有効利用を含む地域農業の発展を図る」という報告がなされておるわけでございます。  その意味におきまして、水田利用再編対策も過去六年やってまいっておるわけでございますし、これらの成果を踏まえまして、次期対策におきましては奨励補助金水準並びに体系につきまして改善をいたしたいというふうに考えておるわけでございますが、ただいま米と転作作物相対収益性格差あるいは転作定着化状況、さらには五十九年度予算のシーリングの問題もございます。それらを総合的に勘案して定めたいと考えておるわけでございまして、ただいま御指摘ございましたように転作がそれによって進まなくなるというふうな事態は起こらないように努めてまいるつもりでございます。特に、従来行っておりました加算制度につきましては、地域実態に即しまして、転作定着化が一層促進されますよう仕組みについても工夫をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  9. 亀井善之

    亀井(善)委員 引き続きまして、三期対策で他用途利用米の導入あるいはまた政府在庫の積み増しを検討している、このように仄聞をしているわけでございます。第三期の目標面積については、これらを踏まえて五十八年度から円滑に移行し得るような規模にすべきではなかろうか、このように考えておるのですが、その点、ひとつ局長からあわせてお話伺いたいと思います。
  10. 小島和義

    小島政府委員 転作面積につきましては、従来の食用だけの単年度需給均衡を図るための目標面積ということではなく、在庫水準大分低位にございますので、今後の在庫復元の問題を織り込みまして、さらに、従来過剰米をもって充てておりました他用途米というものの生産も織り込みました上で実質的な転作目標面積を定めたいというふうに考えておるわけでございます。特に、昨年、五十八年度転作目標面積を三万一千ヘクタール引き下げるに当たりまして、第三期対策への円滑な移行にも配慮するということを申し上げておりますので、ことしから来年に向けての円滑な移行ということも十分念頭に置きまして目標面積を定めたい、かように考えております。
  11. 亀井善之

    亀井(善)委員 時間の関係で次から次にいろいろお伺いをしたいわけでございます。  いま私ども農民に一番関心のございます例の日米農産物貿易の問題につきましてお伺いをしたいと思います。  去る九月十四日、十五日に日本におきまして交渉があったわけでございます。これにつきましていろいろ取りざたされております。アメリカ側から、自由化基本原則は取り下げられないとしながらも今回の交渉の中で進展を図る見地から提案が示された、このようなことも言われておるわけでございます。また、新聞報道新聞各紙がその内容につきましてさまざまな報道をいたしております。ぜひ衆議院のこの委員会におきまして、当表者であります経済局長から今回の協議並びにアメリカ提案内容について御説明をしていただきたいと思います。
  12. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  十四日、十五日に行いました協議につきましては、大変申しわけないのですが、先方との合意によりまして、米御提案が出されたということ以外は一切その協議の模様は外部に漏らさないという約束をしてしまっておりますので、その点お許しをいただきたいと思います。
  13. 亀井善之

    亀井(善)委員 いろいろ新聞報道で戸惑うような、何が正しいのか、若干困っているようなわけでもございます。いまのお話伺い、私ども、それを踏まえてさらにこれからまだまだ続くわけでございます。ひとつ粘り強い交渉お願い申し上げたいわけでございます。  大臣にひとつお願いやち考え方をお伺いをしたいわけでございます。  御存じのとおり、わが国農産物輸入額の四〇%あるいは六十四億ドルの相当分アメリカから輸入をしているわけでございます。アメリカの総輸出の一五%、特に牛肉柑橘については、それぞれ六割、四割を占める最大の輸出先でもあるわけでございます。一番のお客さんでもあるわけでございます。  農産物貿易に関しては、ヨーロッパの国々はいろいろ輸入制限措置保護措置を講じておるわけでございます。また、アメリカもみずからがガットのウエーバーによる十三品目の輸入制限のほか、砂糖であるとか食肉についても輸入規制を行っております。日本農家方々アメリカのこのような態度は身勝手なものだ、このように受けとめ、強い反発を持っております。消費者団体方々からも、わが国食糧安全保障、こういう観点から、農産物のこれ以上の自由化には反対である、こういう立場の表明もあるわけでございます。わが国として、今後の日米協議等においても、日本農業の将来に禍根を残さないように、農政基本を少しも揺るがさず毅然とした態度交渉に当たるべきである、このように考えるものでございます。わが国農業現状から、牛肉柑橘等農産物輸入自由化は、私どもわが国といたしましては絶対に反対をすべきである、このようにも強く考えているものであるわけです。  当面、十一月のレーガン大統領訪日を控えているわけでございます。牛肉柑橘等農産物の問題が政治決着、このように言われておりますが、この点について大臣はどのようなお考えをお持ちでございますか。いろいろのところで大臣の御発言、お考えというものは承っておるわけでございます。この問題に対しまして、この場で、どのように対処されるか、大臣のその決意、お考えのほどを承りたいと思います。
  14. 金子岩三

    金子国務大臣 いま亀井さんが御指摘になりましたとおり、アメリカ態度というのは私どもには理解し得ない態度をとってこの問題に取り組まれておるようでございます。私が就任以来農産物市場開放について申し上げておる考え方は、今日もいささかも変わっていません。ただ、レーガン大統領訪日するということが決定しましたその日の閣議の後の記者会見で、レーガンさんが訪日するとするならば、一月に中曽根総理が訪米した折に、この問題は専門家レベルで検討を続けていく、こういう約束をして帰っておるわけですから、この経緯から考えますならば。当然レーガンさんが十一カ月後にお見えになるのだから、ひとつできるなら結論を出しておきたい、出すべきだ、これが国際儀礼だ、こういうことを強調しましてからよく新聞でいろいろ書かれておりますようですけれども、ただ、私は、国際儀礼上、レーガンさんの訪日前にぜひひとつこの問題に目鼻をつけたいという考え方で現在取り組んでおるわけです。そういう呼びかけをしたので、九月十四、十五日の会議は向こうから申し入れがあって行われたわけでございまして、私は、あの会議が持たれただけでも前進である、その間、四月、五月、六月、七月とたびたび、いわゆる局長を初めこの問題でアメリカ申し入れをしていますけれども、一式にそういう会議を持つまでに至らなかったのが、あのような会議を持つことができたのは大変前進であった、このように考えております。  ただ、その後どのように動いておるかと申しますと、なかなかむずかしい、アメリカ姿勢が非常に強い。けさも閣議の前に、安倍外務大臣に出かけるときにいろいろ私からお願いをしておったので、それに対してお話がありました。一口に言うと、大変アメリカは厳しいということでございます。しかし、厳しくてもやはり日本の実情をよく認識するまでは説き伏せていかなければならない。私どもは、昨年四月の国会でこの委員会決議もあるし、十二月にはそれを裏づけする強い申し入れも受けております。したがって、日本農業経営に影響を及ぼすようなことはいたさない、こういう考え方で今後ともこの問題に取り組む姿勢を続けてまいりたい、このように考えています。
  15. 亀井善之

    亀井(善)委員 大臣からお考えを承ったわけでございます。なお、大臣行革委員会がございます。ぜひひとついまのような基本姿勢で、特にいろいろ複雑な、農業新聞やそれぞれの新聞報道で、政府内での不統一の問題であるとか、いろいろ報道されているわけでございます。ぜひこの問題、大臣が中心になりまして、日本農家皆さん方が大きな問題として心配をしておる問題でございますので、引き続きひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  それでは最後に、最近の卵の問題、養鶏の問題について畜産局長に何点か御質問をしたいと思います。  いま、卵の価格が二百二、三十円台になってきている。ことしの一月ごろはキロ当たり二百円という最近では例を見ない低価格であったわけでございます。若干回復の兆しが見えておるようでございますが、いまの卵価現状、また今回の卵価異常低落に対して政府はどのような対応策を講じておりますかどうか、その辺をお伺いしたいと存じます。
  16. 石川弘

    石川(弘)政府委員 鶏卵需要状況はここ数年ほぼ横ばいでございまして、約二百万トンぐらいでございますけれども生産面で申しますと、五十五年と五十六年が三百円を超えるような高卵価でございまして、全国的に見まして増羽が行われました結果、五十七年、五十八年、基本的に供給過剰の状況にあるわけでございます。  したがいまして、卵価は、御指摘がございましたようにことし一月に二百円という非常に低い水準になりましたが、その後、三月に一時三百円を超えましたけれども、それ以降、卵価補てん基準価格でございます二百四十六円を下回りまして八月まで推移してまいりました。幸い九月になりまして生産の一種の安定化需要が伸びてまいっておりまして、九月の平均価格が二百六十円を超えまして、昨日は二百八十円ということで、ほぼ均衡的な価格まで来たわけでございます。  しかし、この間いろいろと問題がございましたので、五月に、四年ぶりでございますが、全国液卵公社による液卵の買い入れを再開いたしましたし、それから生産者自主保管をある程度実施させること、それから加工メーカーにつきましては割卵をいたしましてどんどん買い入れるようにというような要請をやってきております。この間、やはり養鶏農家方々に、価格が下がってまいっておりますので、四月から八月までの間、先ほど申しました卵価安定基金の発動によりまして約八十六億円の補てんをいたしております。したがいまして、現在ではほぼ均衡状態に達しておりますが、その間、計画生産と同時に需要拡大のための割卵とかあるいは補てんをして現在に至っておるところでございます。
  17. 亀井善之

    亀井(善)委員 いろいろ問題があったわけでございます。そこで、それらの原因の中でやはり無断増羽の問題がある、このようになるわけでございます。需要が頭打ちのもとで卵価を安定させ、養鶏経営の安定を期するためには、需要に見合った計画生産推進がきわめて重要なわけでございます。その計画生産を実効あらしめるためには、いわゆる無断増羽をなくすことが一番必要ではなかろうかと私は思うのです。しかし、実際には無断増羽は依然として後を絶たない、こういう現状にあるわけでございます。先般も養鶏皆さん方が大会をおやりになったり、いろいろ御苦労されているわけでございます。  先ほど私申し上げましたような今回の卵価の低迷、これが、無断増羽によるそういう供給過剰が原因でなっている、このように私は考えるわけでございますが、行政当局はそのような実態をどのように把握をされているのか、また、この無断増羽の問題に対してどのような指導をされているのか。また、昭和五十三年には国会でも、当委員会でも決議がなされているわけでございます。この辺、実態把握並びに政府指導、この点についてお伺いをしたいと思います。
  18. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、比較的生産が伸びてまいったのは五十五年、五十六年の高卵価に誘導されました飼養羽数の増加にあると考えておりまして、五十六年に「鶏卵計画生産推進について」という行政通達を出しておりますが、それによりまして各県それから全国という形で一定の指標羽数を定めまして、その中におさまるようにということをやっていたわけでございます。そういう高卵価の中で、実は全国的にそういう動きがございましたので、われわれとしましても実態把握すべく、まず五十五年当時の通達を出します際に把握しました数字で申しますと、全国で約百をちょっと超えます経営体がその計画数字を上回っていたわけでございますが、その後の行政指導それから県における自主的ないろいろな生産者動き等もございまして、ことしの五月時点で調べましたところでは、その経営体数は三十八経営体ということで、数は減少しているわけでございます。  ただ、これを内容的に見ますと、数は減ってまいったわけでございますが、現時点で無断増羽をやっております企業体は比較的大規模なものが多うございまして、これを何とかして自主的な姿で減羽させる必要があろうかと思っております。  まず、私ども現実把握が大切でございまして、一ころ立入検査等もなかなか困難だということがあったわけでございますが、今回はすべての経営体を立ち入り調査しまして羽数現実把握をいたしております。把握をいたしました結果、無断増羽が明らかであり、これを是正することが直ちにできないものにつきましては、私ども行政指導といたしまして、卵価安定基金それから配合飼料安定基金の方への加入を認めないことにいたしておりますので、直ちにその事実を通知をいたしまして、これらの価格安定基金から排除するという方法をとっております。  しかしながら、この中にはこの種の基金からもうすでに排除されているものもあるわけでございまして、これらのものを誘導いたしますためにはやはりもっといわばきめ細かい指導が必要と考えておりますので、現在これらのものにつきましては、これらの企業体がどのような形で飼料を購入しているのかとか、あるいは製品をどのように販売しているかというようなことも含めまして実態調査をいたしまして、それらに基づきまして各県のいわば協議会がより具体的に動けるような素地づくりをいたしておりまして、これは非常にある意味では厳しい指導になるわけでございますが、一つ一つ問題のあります企業を誘導するということを現在やっているところでございます。
  19. 亀井善之

    亀井(善)委員 いろいろ指導の問題についてお話があったわけでございます。方法はいろいろあろうかと思いますが、なまぬるい形でなしに少し厳しい指導を、いろいろ基金の問題等々お話を伺ったわけでございますが、積極的にこの問題について指導をひとつお願いをしたいと思います。  この無断増羽に関連をいたしまして、北東北の大規模増羽実態報告、こういう資料を養鶏関係者の方々からちょうだいをしているわけでございます。これをいろいろ読みましても、大変なものである、このように考えておるわけでございます。  そこで、ひとつ八戸の飼料工業団地の問題についてお伺いをしたいと思います。  現在、青森県の八戸に大規模飼料工業団地が造成されております。この団地への飼料工場の進出を契機として周辺地域無断増羽動きが活発化している、こういう報道があるわけでございます。当団地の造成に当たっては既存工場のスクラップ化等により需要に見合った生産を行う計画であった、このようにも聞いておるわけでございますが、このような無断増羽動きなどを見ますと、当初の計画どおり実行されてないんじゃなかろうか、このように思われるわけでございます。  そこで、この団地の造成の経緯と、なおさらに飼料メーカーが後ろでいろいろ後押しをしておる、こういうようなことも報道されておるわけでございます。ひとつ団地の造成の経緯と飼料メーカーに対してどのような指導をされているのか、最後にお伺いをしたいと思います。
  20. 石川弘

    石川(弘)政府委員 北東北地方は御承知のようにこれからも畜産の相当発展するところでございますが、御承知のようにあの地域につきましては配合飼料工場が能力が非常に低うございまして、五十五年当時の数字で申しますと、あの地域需要に対する供給の比重が四割ちょっとぐらいでございました。したがいまして、関東地方等からかなり高い運賃を使って向こうへ運んでいたという実情がございましたので、私ども極力北東北地方につきましても低廉な価格配合飼料が供給できるようにということであの工場団地の立地を認めたわけでございますが、先生も御指摘がございましたように、飼料生産の総量につきましては決して不足しておるわけではございませんので、工場をつくります際にも、いままで東北地方に送り込んでいたような生産量を減らす、主として関東でございますが、そこで減らすということを条件にいたしまして新規の立地をいたしたわけでございます。  昨年来、工場が逐次稼働しておるわけでございますが、最初に稼働しました工場につきましてはスクラップはいたしたわけでございますが、生産拡大のテンポがいささか早うございましたので、私どもとすれば規定のスピードに生産を抑えるようにという指導をまずいたしました。それからその後着工します工場につきましても、そのようなことがないように、新規のいわば生産に見合っただけのものを各工場でスクラップするようにということで、われわれとしてもそのようなことが行われるように確認をいたしながら指導しておりますし、今後操業を予定される工場につきましては、逐一そういうことを確認の上、操業を開始させるつもりでございます。  それから、飼料工場等が無断増羽等について何らかの援助をしているのではないかというような御指摘があるわけでございまして、私ども実は無断増羽問題というのは、この三十八経営体を調べてみましても北東北関係は非常に少のうございまして、むしろ関東等の方が数が多いわけでございますけれども、そういうことが行われては困るということで、先ほど申しましたように、逐一無断増羽をしておりますものと飼料供給者との関係を調べております。そういうことで、問題があると思われるものにつきましては今後とも逐一指導いたしますが、現在われわれの把握しておるものの中には明白にその関係が浮き出されておるものはございません。しかし、そういうおそれがあろうということでございますので、今後とも指導を怠らないつもりでございます。
  21. 亀井善之

    亀井(善)委員 大変問題は大きいわけでございます。ぜひひとつ先ほどの局長お話のとおりよく指導監督をしていただきまして、心配のないような形というものをおつくりをいただきたいと存じます。  これで終わります。
  22. 山崎平八郎

  23. 日野市朗

    日野委員 私は、二点にわたって質問をいたしたいと思います。  まず一点は農産物自由化問題であり、他の一点は生産調整の第三期対策の問題でありますが、自由化問題について、これは大臣がいま行革特別委員会の方に行っているようでありますから、大臣が戻ってからということにいたしまして、まず第三期の問題について伺うということにいたしたいというふうに思います。  先ほど亀井委員からも基本的な第三期対策についての考え方についてただされたわけでありますが、私もこの基本的な考え方をもう一度聞いておきたい。特に、水田利用再編対策が始まりまして第三期に入るわけでありますが、その間ずいぶん事情の変更と言っていいものがあったのではなかろうかというふうに思います。この第三期を考えるに当たって、どのようにそういう事情を読み込んでおられるのか、そこいらも含めて、基本的な考え方を聞いておきたいと思います。
  24. 小島和義

    小島政府委員 事情の変更ということでございますが、従来、水田利用再編対策を始めました当時におきましては十分なる在庫も持っておりましたので、食用のみの単年度需給均衡を図るというふうな観点から転作目標面積を定めておるわけでございます。御承知のように昨今の在庫水準は非常に低下いたしておりますので、第三期を考えますに当たりましては、在庫の積み増し問題というのを織り込みまして目標面積を定める必要があろうというふうに考えております。  また、この一期、二期を通じまして、加工用のいわゆる他用途米につきましては過剰米をもって充当いたしてきた経緯があるわけでございますが、これもいよいよ底をつきますので、来期を考えます場合には、他用途米生産というものも全体の需給計画の中に織り込んで考える必要があろうというふうに考えております。  それから、奨励金水準並びに仕組みの問題につきましては、この制度が発足いたしました当初から、私どもとしても長期的には奨励金に依存しないような農業の体質をつくっていくということを一つのスローガンにしてきたわけでございますが、去る三月に臨時行政調査会の方からも、第三期におきまして米と転作作物との収益性格差の動向を見きわめながらその単価引き下げますとともに、転作定着化が一層進むように奨励金体系改善するように、こういう答申をいただいておりますし、また、農政審議会からも、昨年八月に「転作奨励金からの早期脱却を図りつつ、水田有効利用を含む地域農業の発展を図る」というふうな報告もいただいておるわけでございます。そういった方向を踏まえまして、さらに現地で実際にやっております転作の姿というものも見きわめまして、さらに、この財政の厳しい際でございますから、五十九年度予算につきましては大変厳しいシーリングがあるわけでございます。そういった事情にもかんがみまして転作奨励金水準考え直さなければならぬ、かように考えております。  また、その際におきまして、従来からも各種の加算制度をとってきておりますが、今後の加算制度におきまして、地域実態に即して転作の定着が一層促進されるように、その仕組みについて工夫をいたしてまいりたい。そういったことが、従来やってまいりましたことと今後の問題を考えます場合の一つの状況の変化ではないか、かように考えております。
  25. 日野市朗

    日野委員 いま何点かについて、第三期についての新しみといいますか、そういうものが出たのですが、どうもこれらの問題は、いままでとそう大きく方向を転換したのかということをずっと私なりに考えてみまして、必ずしもそうとも言えないのではなかろうかというような感じが多々するところであります。  そこで、各点について一つ一つ伺ってまいりたいというふうに思います。  在庫積み増しというお話が出ました。これについては、水田利用再編対策が始まった当初ですか、二百万トンということがずっと言われていたわけでありますが、今度の在庫積み増し、私は、これがどうも従来考えられてきた二百万トンというものと非常に格差があるような気がしてならない。ここらについてはどのようにお考えになっておられましょうか。
  26. 松浦昭

    ○松浦政府委員 最近三年間の連続の不作もございまして、在庫水準がかなり低下しているということは事実でございまして、今回の水田再編対策の第三期対策の中におきましても、この積み増しを考えてまいりたいということが基本的な構想として入っておるわけでございます。  そこで、お尋ねのその水準でございますが、米の備蓄につきましては、やはり農林水産省といたしまして、昭和五十年の「総合食糧政策の展開」という中におきましていわゆる二百万トン備蓄ということを掲げまして、その後過剰が打ち続く中で実際にこれを上回るような在庫を保有してきたというのが実態でございます。しかしながら、先ほども申しましたように、五十五年以降の不作の連続によりまして、現実の前年産の米の在庫水準が著しく低下しているというのが実態だちうと思います。そこで、今後この備蓄在庫の積み増しということをどう考えて、最近の在庫をどう持っていったらいいかということでございますが、やはり先ほど大臣も御答弁ございましたけれども、金利、保管料といったようなコストの問題、これは財政的な観点からどうしても私どもとしては検討しなければならぬ問題でございますし、また、消費者のいわゆる新米志向といったような傾向もございまして、大きい在庫を持つということはどうしても消費の拡大という点で問題が起こるという感じもいたします。  こういった種々の問題も提起されておりまして、昭和五十五年には農政審議会から見直しを求められているというのが実態でございます。今後の在庫のあり方につきましては、このような観点も含めまして、しかしながら同時に在庫水準も低下しているという状況も十分に踏まえまして、長期的な見地からいわゆる適正在庫ということでこれを考えてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、現在第三期の対策の中で鋭意検討いたしているところでございます。
  27. 日野市朗

    日野委員 長期的に見た適正在庫ということで鋭意検討をなさっているということでございますが、何しろ現実に米の在庫というものが現在非常に窮迫していることは言うまでもないところであります。どうも私どもの感覚で言いますと、米びつに米がないというのは非常に心細いものでございまして、これを国民的に見てもやはり同じだろうと思うのです。どこかにあるだろうということでは、これはやはり国民としては非常に不安を持つと思います。やはり在庫在庫としてきちんと心配ございませんよという、国民が安心感が持てるような在庫にぜひともしてもらわなければならない、こういうふうに思います。それについてどうでしょう、私の考え方は違いますかね。手短で結構です、イエスかノーかぐらいで。
  28. 松浦昭

    ○松浦政府委員 ただいま先生がおっしゃられましたように、現在の在庫水準はかなり低い状態でございますので、これを積み増して国民の食糧の供給に不安をなからしめるということは、どうしても必要なことだと私も考えます。ただ、同時に考えねばならぬことは、先ほどからるる申しておりますコストの問題あるいは新米志向といったような傾向もございますので、さような点もあわせ考えながら適正在庫に持っていきたいという考えでございます。
  29. 日野市朗

    日野委員 一家の家計を考えてみますと、お金がない、そうしたら一番最後に残るのはやはり食料費でございますね。そこいらは国の財政だってそう変わったものではないと私は思いますが、一般国民の感覚、それから特に生産者あたりを中心にそういう感覚である。そして、そういう感覚はそう間違ったものではないと思いますので、そこいらは十分御留意をいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  それから、他用途米について伺いたいと思います。  この他用途米については、これはいろいろ取りざたをされているところでございますし、農水省あたりもいろいろな団体などとの協議をお進めになっているようでございますけれども、これについても、一般的に他用途米をどのように取り扱っていくのかということについて、どのようにこれからやっていくか、共補償というようなことが言われておりますけれども、そこいらのイメージがまだ定着していないような感じがいたしますが、これについてのイメージをちょっとお伝え願えればというふうに思います。
  30. 松浦昭

    ○松浦政府委員 他用途米につきましては、まずその趣旨を申し上げますると、現在実施いたしております水田利用再編対策は、すでに地域によりましては転作率も相当高くなっているところもございます。さようなことで、この転作拡大には限度感といったようなものもあろうかと思います。また一方、水田というのは非常に効率的な農地でございますから、その水田の機能というものを十分に発揮させてこれを保持するということが必要だろうというふうに考えられます。それからまた第三点といたしまして、先ほど小島局長からも御答弁申し上げたところでございますが、従来この他用途米に充てるべき米と申しますると、これはやはり過剰米の処理ということで対応いたしてまいったわけでございますが、本年度をもちまして過剰米の処理は一応完了いたすわけでございます。さようなことから、どうしても加工原材料用の米穀を供給確保ということになりますると、もしもこれを導入しない場合には輸入といった事態も起こってまいるわけでございまして、さような政策は必ずしも適切ではないというふうに考えられますので、どうしても私どもとしましては米の需給均衡化の対策の一環といたしまして、この他用途米というものにつきまして、当面、みそ、しょうゆあるいはせんべい、あられといったような加工原材料用の米につきましてこの制度を導入してみたいというふうに考えているところでございます。  しかしながら、このような用途に充てられます米につきましては、何と申しましても現行の主食用の米価と比べまして大幅な価格差があるということは否めない事実でございまして、そこでこの格差をどうするかということが基本的な問題である、そこがやはりただいま先生御指摘になりましたイメージの問題と非常にかかわってくる問題であろうというふうに思うわけでございます。  そこで、この格差の問題につきましては、どのような対応をするかということを検討中でございますが、やはり水田の機能の確保といったようなことを考えますると、十分に他の転作作物とのバランスも考えながらでございますが、政府も助成の道を開くということが必要ではないかというふうに考えているわけでございます。その際に、基本的に申しましてこのような水田を他用途という形で利用していくということでございますので、農家方々にも共補償ということが考えられるわけでございまして、この点はいわゆる農薬者間の自助努力ということで検討されるべき問題であるというふうに考えまして、この共補償につきましては、現在生産者団体にもこの問題を投げかけまして、その取り組みをお願いしているという状況でございまして、その状況を見守ってまいりたいというふうに考えている次第であります。
  31. 日野市朗

    日野委員 いまの御答弁の中にもありましたけれども、やはり他用途米のようなものを設けまして、米にいろいろな利用の道をいろいろな方向で探っていくということは必要なことだろうというふうに私思うわけでございます。その点については全く異存ございませんし、私たちも飼料米というようなものについてずいぶんいろんな試みもやってまいりました。そういう中で感ずることは、やはり価格問題というのが非常に大きな問題でございます。非常にここは悩みの種でございまして、私どもそういう必要性を一方に見ながら、一方においては価格の問題を何とかしなくちゃいかぬ、こういうふうな思いはいま長官がおっしゃったとおりでございます。  ただ、この価格差は非常に大きいということから見まして、これを共補償というような形、これはいろんな共補償の形態は考えられるでございましょう。それから、自助努力ということもおっしゃいましたけれども、まず当面するところ、この道を開くとすれば、やはり国の側からの助成措置というものがかなり大幅でなければまず緒につかぬのではないかというふうに私考えるわけですね。どうもこのごろ妙な楽観論がはやっていまして、国の方で助成とか保護をしなければ自助努力が無限に拡大していくような考え方が一部とられているようでありますが、私はその論にはくみしません。やはり国としてはきちんとした助成ということを腰を据えてやらなければならないのではなかろうかというふうに考えております。長官、いかがでございましょう。
  32. 松浦昭

    ○松浦政府委員 他用途米につきましては、ただいまも御答弁申し上げましたように、かなりの価格差が出てくることは事実でございまして、このような価格差がある中においてどのように生産者方々に他用途米生産していただくかということが一つの大きなポイントになるということは、先生御指摘のとおりだと思います。ただ、その場合に、政府の助成ということを考えてみますると、基本的にやはり水田再編対策というものは、従来まで行われてまいりました各般の施策、特に他作物への転換というものにつきまして、これを定着化させるということが非常に重要な原則でございまして、これは第三期になりましても私どもとしては変わらない原則であるというふうに考えておるわけでございます。さような麦あるいは大豆、飼料作物等への転換ということを定着させるということを考えてまいりますと、これのバランスということはどうしても考えざるを得ないということでございまして、このような基本的な方針を他用途米の導入によって覆すわけにはまいらないというふうに考えるわけでございます。  さような意味で、私どもといたしましては、当然この水田の機能の発揮、その機能の保持という観点から、このような他用途米生産していただく、しかもその際に、価格差もあるということから政府の助成は考えてまいるつもりでございますが、一方においてさようなバランスというものを十分考えてまいらなけれはならぬという状態でございます。さような点におきましておのずから限界があるということでございまして、さようなことも含めまして、やはり私どもとしては今後の財政の措置というものについて検討してまいらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  一方におきまして、共補償につきましては決して先生申されるように無限にわれわれ考えているわけではございませんけれども、しかしながら、やはり生産者の自助努力ということについてはおのずから検討されてしかるべきであるというふうに考えまして、このような問題として生産者団体に投げかけているということでございます。
  33. 日野市朗

    日野委員 いまだに共補償だとか自主努力、自主性というようなことを言われながら、ではどのような形でこれを現実のものとして実施していくかということについて、はっきりしたイメージがどうもわかないというのが関係者の一様の考え方ではないかと思うのですが、一方ではこれは早いところきちんとしてもらわぬと、では来年どういうふうに営農設計をしていったらいいかということで、みんないま非常に困っていると思うのです。大体いつごろをめどにこの案を確定されるおつもりでしょう。私は、これはできるだけ早い方がいい。ちょうど九月段階での作柄の調査も出ているわけでありますから、これは早く決めてもらいたいものだというふうに思っています。大体いつごろをめどという見当でございますか。
  34. 小島和義

    小島政府委員 私ども次期対策内容につきまして、できるだけ早くという気持ちは同様に持っておるわけでございます。第一期のときの最終決定が十一月十九日であったと記憶いたしますし、第二期のときには、たまたま当年が冷害という事情もございましたが、十二月に入りましてからの決定ということに相なっておるわけでございます。そういう遅い時期では困るということが各地から言われておりますし、また、大臣からも厳しく言われておりますので、できるだけ早くということで考えておるわけでございますが、何分にも相手方もある問題でございますので、私どもといたしましてはできれば十月中に決めたいという意気込みを持って現在取り組んでおります。
  35. 日野市朗

    日野委員 それから、他用途米の導入ということから、他用途米というのはいかんせん価格が非常に低いものにならざるを得ないだろうというふうに思うのですが、それが今度は食用米の方にはね返って、米価を引き下げるという事実上の要因にならないかということについては、これはやはり一応合理的な疑問の残るところではなかろうかと思います。ここらについてどのようにお考えになっておられるか。
  36. 松浦昭

    ○松浦政府委員 他用途利用米につきましては、その用途が主食と異なっているという点から、その用途に応じまして主食用より低い価格で設定されるということになると思うわけでございます。やはりそうでなければ、一定の加工用の米というものをもちまして、これに対しまする生産というものをやっていただくというわけにはいかぬというふうに考えるわけでございます。したがいまして、その価格水準はおのずから主食用とは異なってくるということは、これはやむを得ないというふうに考えるわけでございます。  そこで、先生お尋ねの、それでは主食用の米というものに対する影響がないのかどうかという点でございますが、この点につきましては、当然この主食用の米というものにつきましては、政府が食管法の規定に従いまして米穀の再生産を確保するということを旨といたしまして定めるものとなっておりますので、それは毅然たる区別があるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この他用途利用米が今後生産者と実需者との間でその導入の趣旨に即しながら供給価格を決定していくということがございましても、これが主食用の米とは価格の形成の関係において違っているということで、そのことは十分に頭に入れまして今後の対応をしてまいりたいということでございまして、さような混淆はいたすつもりはございません。
  37. 日野市朗

    日野委員 他用途米価格と主食用米の価格というのは全く関係がない、俄然とその問は断ち切られているのであって、主食用米の価格には一切影響はない、させない、間違いございませんね。
  38. 松浦昭

    ○松浦政府委員 おのずからその用途に従いまして価格体系は決まっているわけでございまして、さような意味で、私どもこれは截然と区別して価格の設定に当たるということでございます。
  39. 日野市朗

    日野委員 それじゃ、今度は転作面積についてのお考えをちょっと伺いたい。  これは、先ほどから私は事情の変化というようなことを申し上げましたけれども、確かに長官の言われるように在府が非常に不足をしてきている、窮迫してきているという事情もありまして、私考えてみて、第三期における転作面積、これはそんなに大幅にはなり得ないものだろうというふうに考えているわけでございます。いかがでございましょう。
  40. 小島和義

    小島政府委員 私どものきわめて単純な試算をいたしますと、食用のみでの単年度需給均衡という発想で、これまでの計算を年次的にずらして第三期の転作目標面積を計算いたしますと、七十万ヘクタールに近いぐらいのものが出てくるわけでございます。ただ、先ほど来御議論をいただいておりますような在庫積み増し問題、さらには他用途米の問題を織り込んで考えてまいりますと、本年度の目標面積の六十万ヘクタールに対しまして上下それほど大きな違いにはならぬのではないかというのが現段階での私どもの腹づもりでございます。  具体的には、在庫積み増しを明年度なら明年度幾ら見るかということによりましてその水準は動いてくるわけでございますので、ただいま断定的なことはちょっと申しかねます。いずれにいたしましても、本年度から明年にかけての円滑な移行ということも念頭に置きまして決定をいたしたい、かように考えております。
  41. 日野市朗

    日野委員 単純計算でのお話だったのですが、単純計算のほかに政策的な見方というのは当然入らなければならないわけでございますね。私どもは、三年続きの不作ということの背景にあるものもよく考えてみなければいけないだろうと思います。それは、地力の低下であるとか農民の米作意欲の減退であるとか、そういったものも十分に政策的な配慮としてつけ加えていかなければならないものであると思っております。私は、いま、米づくり農民の意欲はかなり減退をしているという事案だけは指摘しなければならないと思いますね。確かに、もう米だけでは食っていけないという意識が非常に強くあります。米だけで食っていけないということは確かにそのとおりでございますけれども、そういうふうな意識を持つ背景には、一つは、米作に対する農政のあり方に対する不満というものが隠されているということを見抜いておかなければならないだろうと思うわけでございます。  さらに、第三期対策におきまして無謀に転作面積をふやしていくというようなことは避けるべきであろう。水田生産力ということを考え合わせながらできるだけ水田を残していく方向を考えていくことは、国土保全という意味からも非常に大切なことではなかろうかと思います。何しろ水田なんというのは小さなダムがいっぱいあるようなものでございまして、日本の国土を保全する、土地を保全するという意味からも非常に重大な役割りを持っていると思いますので、転作面積は可及的に小面積にとどめるべきである、私はそう思うのです。そういう政策的な配慮も十分にやっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  42. 小島和義

    小島政府委員 いま御指摘の点は、いわゆる潜在生産力が今後どのように推移すると見るかという問題に端的には表現される問題であろうと思います。御指摘がございましたように、稲作農家、その担い手が非常に兼業化が進みましたり、あるいは老齢化いたしましたり、人的な側面から見ましても以前ほど生産力が強くないのではないか、こういうふうな疑問も各方面から指摘されております。  また、一面におきましては、たかだか数年前におきまして、御承知のような好天に恵まれまして、五十三年で四百九十九キロ、あるいは翌年の五十四年におきまして四百八十二キロというふうな平年収量を大変上回るような生産実績を上げたという経過もあるわけでございまして、そのとき以降の生産力の変化というものはそれほど大きなものではないという見方もあるわけでございます。その意味で、省内におきましても、今後の稲作の生産水準をどう見るかについては大変厳しい分析、検討を行っているところでございますが、御指摘ございましたように、全体を定めます際にそういった政策的な配慮をどこまで織り込めるかということにつきましては、今後御注意を十分念頭に艦きまして、鋭意取り組んでまいりたいと思います。
  43. 日野市朗

    日野委員 時間の関係もありますので、転作奨励金について伺っておきたいと思います。  私の農水省に対する不満を一つ言いますと、財政当局から押されますとすぐぽきぽきと折れちゃうというふうな感じがするのですね。私たちも努力をしているんだよ、こうおっしゃりたいのでしょう。しかし、その努力の気魄がもう一つ足らぬような感じがいたします。これは私の意見として問いておいていただきたいわけですがね。  さて、奨励金なんですが、この奨励金というものは農村の経済の大きな部分を支えている、もちろんそういう認識はお持ちでしょうね。
  44. 小島和義

    小島政府委員 本年度の予算におきましても、計上いたしております転作奨励金が三千四百億円ほどございます。それらはそれぞれの転作内容に応じまして各生産農家に交付されておるわけでございますから、それが稲作農家にとりまして一つの所得源になっておるということについては総論を同じくいたしておるわけでございます。
  45. 日野市朗

    日野委員 行政改革に関する第五次答申の中の水田利用再編奨励補助金、これについては、先ほど亀井委員からの質問の中でも引用されておりました。そこで「米と転作作物との収益性格差の動向を見極めつつこというような文言が入っておりまして、奨励金単価引き下げろ、こう書いてあるわけであります。ところで、現在農民は転作の努力をやっているわけであります。第二臨調なんかで問題になったりしたのには、たとえばレンコンをつくったところ米よりもよけい収益が上がったではないか、こういうところにまで補助金を出すのはどういうものかというような話があったやにも聞いております。これは、転作作物でうまくいったものはございましょう。しかし、うまくいったものというのは非常に少ない品目であるというふうに私言わざるを得ないですね。大豆にしても麦にしても、これは米との間にずいぶん大きな収益性の格差がございます。こういうものについて、いまこれを減らしていく、または打ち切っていくというような方向は、私は無謀な議論だ、こういうふうに思っておりますが、そこらの基本的な認識はいかがでしょう。
  46. 小島和義

    小島政府委員 転作定着化という問題は、単に従来の水稲生産に比べまして収益性が上回っているからそれでよしとするものではございません。転作奨励金が仮になくなりましても、その作物が水田において十分に栽培されまして、その地域の営農ないしはその農家経営の中に十分組み込まれて微動だもしない、こういう状態に接近することが私どもの努力であるというふうに考えております。  ただ、御指摘ございましたように、そういったことはなかなか容易ならざる事業でございまして、全国各地におきましていろいろそういう工夫をされまして、収益性の高い作物を導入してりっぱな産地を形成しておりますとか、あるいは作物そのものの単位当たりの収益性という点からいえば稲作よりは劣っておりますけれども地域の工夫によりまして集団化、団地化をいたしまして、それによる全体の水田耕作と申しますか、その中に水稲と他作物を組み合わせまして合理的な土地利用を行っているというふうな事例もかなり多く育ってきておるわけであります。そういったことをさらにエンカレッジしていくというふうなことが私どもの務めでございますので、その意味で転作奨励金を早急に打ち切るというふうなことはとうてい不可能であると考えておるわけでございます。  ただ、この転作奨励金も、この水田利用再編対策が始まりましてからでもすでに六年間、最初の米の生産調整、昭和四十六年から始まりました生産調整から見ますと十年以上の経過をたどっておるわけでございますから、それぞれの地域の努力というものが積み上げられまして、いままで以上に畑作物がそれぞれの地域で生かされていく、そういう農業経営をつくるべく一層の努力をする必要があろう、かように考えております。
  47. 日野市朗

    日野委員 いまのお話を聞いていますと、どうも奨励金の中で加算部分でなくベースの部分についての非常な不安感を私は感ぜざるを得なかったのですが、そのベースになる部分についてはどんなふうにお考えですか。これは、その削減はもうやむを得ないのだというふうによもやお考えになっているわけじゃないのでしょうね。
  48. 小島和義

    小島政府委員 転作奨励金の全体の水準をどうするかという問題は、先ほど申し上げましたように、いまだ検討中の問題でございます。しかし、奨励金の中身におきまして、どんな作物でもあるいはどんなつくり方でも転作をしていさえすれば交付されます奨励金部分と、よりよい転作を行ったことに着目をいたしまして交付されます奨励金と、二種類あるわけでございます。前者が基本額、後者が加算額、こういうふうに呼んでおるわけでございますが、転作奨励金水準引き下げるとすれば、その作物の種類に応じまして一律に交付される基本額の方をより優先的に考えていく。加算金につきましては、よりよい転作を育てていくという配慮が含まれておるわけでございますから、そちらの部分についてはできるだけ手をつけたくない、こういう気持ちで全体の中身を詰めておるわけでございます。
  49. 日野市朗

    日野委員 大臣がお見えになってから自由化問題についての質疑をしようと思っていたわけでありますが、大臣はどうも予定よりかなりおくれているようでありますから、ちょっと私この自由化問題について伺っておきたいと思います。  まず、経済局長あたりからお答えをいただける部分はそっちからお答えをいただきたいというふうに思います。  九月の十四日、十五日に協議が日米間で行われているようであります。これについては米側から新たな提案がなされた、この問題については各紙報道いたしまして、気の早い新聞社なんかは交渉は解決へ向けて大きく前進したかのごとき見出しをつけた新聞もございます。そうすると、われわれこうやって考えてみますと、これについては米側は従来の主張の自由化一本やりから枠の問題に争点をおろしてきたのかなというような感じがするのですが、いかがでございましょうか。
  50. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  アメリカ側輸入制限撤廃問題についての原則的な立場というものは、これはいささかも変更はないわけでございまして、いろいろ巷間憶測が流れておりますが、その点は米側の態度に何ら変更はございません。ただ、従来の米側のアプローチと若干異なる点があるといたしますれば、従来は輸入数量制限の撤廃問題ということだけで日米はぶつかってしまって、先の議論に全く入れなかったわけでございますけれども、今回はそういうことにならないように米側なりに工夫をしたアプローチをしてきたということであるというふうに申し上げるのが適当ではないかと思っております。
  51. 日野市朗

    日野委員 恐らくそれ以上伺っても、これはいろいろな外交上の問題点なども含みますのでお答えいただけないだろうというふうに思います。  それでは、これはちょっと農水省に伺っておきたいのですが、非常に緊張した日米間の協議が行われているわけでございますね。この問題については、米側の非常に強い部分と、それから、こっちからいろいろな説明をすれば聞いてくれるというような部分があるだろうと思いますが、やはりアメリカ側の論調、これをリードしていくためには、アメリカの議会筋またはアメリカの一般の農業関係者の意見、こういったものにこちらからも強く訴えていく必要があるだろうと思うのですね。そういう努力がなされていなければならない。私などの見聞においては、アメリカ生産者団体なども、これ以上日本農産物について市場の開放を求めるということは無理ではないかということを考えている向きもあるわけでございますね。これは、アメリカに対して日本側の事情をどのように説明しておられるのか。特に牛肉柑橘についてのこれが自由化された場合の日本に対する影響というようなものはどんなものなのかということをどのように説明しているのか、その点について教えていただきたいのです。
  52. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 アメリカ側に対する広報活動というのはいろいろなことをやっておりますが、最近の一つの例を申し上げますと、これは私どもの先輩でございますけれども農政調査委員会の事務局長をやっている吉岡さんに、アメリカの各地でずっと講演をして回ってもらいました。  彼の講演の中の一つのポイントは、わが国の零細な農業経営というのは、現在の農産物輸入制限措置が仮に米側の言うように撤廃をされるとすれば、それはとうてい競争力がなくて壊滅的打撃を受けるのであるということと、それから、実はそういう日本の零細な経営規模農業経営というのは、戦後アメリカ軍の占領時代のGHQ指導下に行われた農地改革を通じて形成されたものであって、当時はアメリカ側も、そういう自作農民が日本をしてアメリカの信頼に足りる同盟国たらしめる社会的基盤を形成するものであるというふうに認識をしておったはずである、その事情は現在でも何ら変わっていないということについて、米側の有識者の注意を喚起するということに主眼を置いた講演をしたわけでございます。それで、その少し後、たとえばロサンゼルスタイムズがその吉岡さんの演説を引用いたしまして、同盟国日本にとってこのように重大な意義を持っている多数の日本の農薬者に壊滅的な打撃を与えるというふうに日本人が一般に信じているような要求を突きっけるということは、どうも現在のレーガン政権は事の軽重の判断を誤っておるのではないかというような社説を載せておりまして、少なくとも有識者の間では非常にいい反響を生んでおるということが、最近の例ではございます。  その他、大使館、総領事館の一般的な広報活動を通じて、わが国アメリカ側の最も信頼できる最大の顧客であり云々という、こういう席でも旧常的に話題になっておりますような論点は、これはあまねくPRはいたしております。
  53. 日野市朗

    日野委員 農水省でもそういう努力をなさっているということでございますが、農協あたりがもうこらえ切れなくなって、自分たちがレター作戦であるとかテレビに対してコマーシャルを出すとか、そういう努力までせざるを得ないというような、非常に追い込まれた状況になっているという、この日本農業実務者たちの苦しみというものはよく理解をしなければならないし、その苦しみは、アメリカ側に対しても十分にアピールするような手段をひとつこれからも考えていただきたいというふうに思っています。  大臣、到着が遅いものですから、いま佐野経済局長といろいろ話をしていたところでございますが、とにかくいま経済局長お話の中でも、農産物自由化が行われた場合の日本農業は壊滅的な影響をこうむるということについてのお話が出ていたわけであります。ここらの認識については、恐らく日本じゅうでそう異論はございますまい。日本農業を預かる大臣として、自由化問題について、大臣はいままで自由化というようなことは考えておりませんぞ、こう言っておられた。しかし、何かそっちこっちでややもすると大臣態度は変わったのではないかと思われるような発言があるわけです。たとえば、中曽根内閣の閣僚の一人としては、というような修飾語をつけまして、若干ニュアンスの違ったような発言が散見されるのでありますが、真意はいかがでございますか。まさか自由化問題について態度が変わったなどということはございますまい。いかがでございましょう。
  54. 金子岩三

    金子国務大臣 先ほどもお答えしましたとおり、この農産物市場開放の問題については、私の基本的な考え方はいささかも変わっておりません。ただ、レーガンさんの見える前に云々という話をしたことも、何か僕が変わってきたんじゃないかとか、いろいう言われております。いまも申されました中曽根内閣の一員であるという発言をしたことも、やはり何か考え方が変わっているのじゃないかといろいろよく言われておるようでございますけれども、私の基本的な考え方は、いわゆる自由化はもちろんのこと、枠の拡大も、必要でないものは拡大しない。余るものを枠拡大して輸入して冷蔵庫に詰め込むような、そんなばかなことは、私は合理主義者だからやらないといったようなことを言っておりますので、別にいささかも変わっておりません。  ただ、レーガンさんが見えることが決まったから、見えるなら、中曽根さんが一月に訪米したときに約束しておる約束事がありますから、やはり専門家で検討させると言って別れておる以上は、専門家の検討はさせるべきだ。どこにどういう妥協点があるかわからぬけれども、ひとつ話し合いもアメリカが応ずればしてみて、日本の実情を説明して得心させるべきじゃないか、こういう考え方に立って、話し合いをすること、交渉することは、日本の実情を知ってもらうということがまず先決なんですよ。それで、アメリカが言っていることが、私どもには理解ができないようなことを申されておりますので、日本農業実態をよく把握してなくてああいうむちゃなことを言っているのじゃないか、こういう考え方なので、アメリカとの接触を続けていくということは、日本実態を知ってもらう、こういうことなんですよ。それで、この問題については今後とも、レーガンさんが見えるのは十一月ですから、やはりそれまでは精力的に、アメリカの方が応じてくれるならば大いに話は進めていきたいという考え方ております。  ただ、レーガンさんが見える前に結論を出すといって、日本側が焦ってこの問題の処理に当たるというようなことは全然ありません。来年三月まではいまの東京ラウンドがあるわけですし、昨年の四月に本委員会決議もあっております。十二月にそれを裏づけする強い申し入れもあっております。日本農業に被害を与えないように、そういう基本的な考え方に立ってこの問題に取り組んでまいります。
  55. 日野市朗

    日野委員 いまレーガン大統領の来日について、大臣はその時期についても触れられましたが、いままでの交渉の進展の速度から見て、それから問題点の大きさから見て、これは大統領訪日前の決着というのは無理ですね。いかがですか。これは佐野経済局長の見通しとして伺っておきたいのですが、そういう協議を政治的に急げと言われたって、これはやれることとやれないことといろいろございますので、それは見通しとしていかがですか。大統領訪日前の決着ということはできますか。
  56. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私のいまの心境を率直に言わしていただければ、せめて一寸先くらいは見通したいものであるというのが私の気持ちでございまして、とてもいま日野先生お尋ねのような見通しは持てずにおります。
  57. 日野市朗

    日野委員 大臣、そういうことのようでございますね。大臣はもう篤とお聞きになっておいでになると思います。無理をして日本側が折れてまで大統領訪日前に決着をつけるというような政治的なプレッシャー、これを佐野局長におかけになるつもりはいまないでしょうね。いかがでしょうか。
  58. 金子岩三

    金子国務大臣 ほかと話し中に佐野さんが答えていたものですから、何を答えていたのかわからぬのでちょっと耳打ちしたのですが、私たちはやはり希望を持って、相手に敬意を表して、いわゆる国際外交の基軸がアメリカであるというのがいま日本の立場でありますから、農産物アメリカとお互いに国民感情を必要以上に悪くする必要はないと思うわけですよ。したがって、話を積み重ねていっておるうちに何となく国民感情に何も残るものはなくて一件落着することもあるのじゃないでしょうか。そういう意味で、私は話をすることが賢明であるということで、精力的に話をしてくれということを専門家にも頼んでおるわけです。
  59. 日野市朗

    日野委員 いま、お互いにそれは胸に何も残らぬように、恨みを残さないようにというようなお話がありましたね。しかし、日本農業事情、それから農民団体のいろいろな考え方、これを見ますと、いますぐやって恨みが残らないものかなということは、私考えてみまして、いやこれは確実に残ると思います。きのうあたりからやはり輸入自由化阻止の問題で集会を開いたり、いろいろな行動をいろいろな団体がやっております。御承知でしょう。このことは御承知だと思う。あの人たちの決意、これは並み並みならぬものが眉宇に漂っておりますな。やはりこれはもっと時間をかけて、そしてアメリカ側にも納得させるという気魄が必要だと私は思うのです。  大臣おいでになる前に佐野さんともそのところはお話ししていたのですが、一応の努力はなさっているようです。さらにもっと努力をなさって、向こうにも胸に物が残らぬように、こっちも胸に物が残らぬように、その解決を模索すべきであろうかと思います。私は、もっと時間をかけるべきだ、そして関係者の意見もよく聞くべきだ、こんなふうに思っておるのです。中曽根さんがアメリカに行って、日米の関係、これをよくしようというのは結構でございますけれども、日米の関係が非常に良好なものになっていくためには全国民的なものでなければならないわけでして、そういうことからぜひとも自由化については毅然とした態度を維持してもらいたい、私、こう思うのです。中曽根内閣の閣僚であることは十分存じ上げております。そういう立場に立って、なおかつ毅然として事に当たる。われわれ農水委員会決議もしておりますから、最後に、毅然としてやれるかどうか、一言。
  60. 金子岩三

    金子国務大臣 日野先生の御指摘は、私も全く同感でありますよ。ただ、取り組む姿勢を、むだなことならやらぬでもいいんじゃないかというお気持ちがあるかもしれませんが、私はむだでも何でも構わぬ、とにかくお互いこういうもつれごとの場合は話をすること以外に方法はないのですから、話を積み重ねていけるうちに何か見出せることができるならということで話を続けていきたい、こういうことを申し上げておるのですから、それはよく皆さん方のお気持ちを承知しながら、その理解を持ちながらこの問題には取り組んでまいります。
  61. 日野市朗

    日野委員 時間ですから終わります。
  62. 山崎平八郎

  63. 松沢俊昭

    松沢委員 私は、きょうは米の需給事情とそれから第三期の減反対策、二つにしぼって質問したい、こう思っておりましたが、その前に、私たちの団体でもきのう集会を持ちまして、いわゆる貿易の自由化・枠の拡大阻止という行動をやってまいりまして、きのうは金子大臣にもお会いをしていろいろと要請を申し上げたわけなんでありますが、この際でありますから、一言大臣考え方をただしておきたいと思います。  と申し上げますのは、やはり貿易の摩擦というのが日米間にありまして、そういう立場から見ますと、アメリカの方で貿易のバランスをとってもらいたいというところの要望が出てくるということは決してアメリカがやぼこいているということにはならぬと私は思うのです。二百億ドルも黒字が日本には出てきているという、こういう状況でありますから、そしてどんどんと自動車なんというのは日本から輸出をするわけでありますから、向こうの方は自動車メーカーはぶっつぶれたり、そのことによって失業者が出てくる。迷惑この上ないわけなんでありますから、日本はけしからぬという気持ちになるのは、これは当然だと思うのですよ。  ただ、その日本の工業製品を売りまくって、そして日本の財界の方でもうかったところのつけというのを回すに回して、一番弱いところの日本の盛業、それに競合するような農産物自由化だとか枠の拡大をやれとかということは、日本農業、農民にとってははなはだ迷惑な話なんでありまして、したがって、アメリカにだけ物を申すということではなしに、日本の財界に対して、こういうやぼな貿易政策というのはやめた方がいいのじゃないかという、そういう開き直りを日本の農林大臣としておやりになるべきなんじゃないか、私はそう思うのですよ。また、通産省なんかも財界のしり馬に乗らぬようにして、そういう点はしっかりしてもらわなければならないということを通産大臣にも言うべきなんじゃないか、こう思っていますが、農林大臣として金子さんはどうお考えになりますか。
  64. 金子岩三

    金子国務大臣 私は、たびたび申し上げておるとおりでありまして、初心は変わってないわけです。ただ、手続、手段としてアメリカとどういう話をしていくかとか、どういうっき合いをしていくかとかいうことは、それぞれ人によって手段が違います。けんかをしてみたり、いちゃいちゃしてみたり、いろいろやる人もおるし、じわじわじわじわどこまでこの話が、本当に真剣勝負の段階までいくのか詰めていくいわゆる交渉の手段もある。したがって、この手段については、はたから見て大変歯がゆいような思いもあるかもしれませんけれども、いわば腹けってけずらかせというようなお気持ちのようですが、そのお気持ちもよくわかります。それは、私自身も大体気の短い方ですから。しかし、やはりこのことは、先ほどから申し上げておりますとおり、日米関係のいわゆる友好関係にひびを入らしてはいけないという念頭にまず立って取り組んでおりますので、皆さん方から言うとかゆいところに手が届かないような交渉をしておるようにお感じになるかもしれませんけれども、その点はひとつお認めいただきたいと思うのでございます。
  65. 松沢俊昭

    松沢委員 だから、日米の貿易摩擦なんというのは日本の農民や農業が起こしているのではないのでありまして、要するに日本の財界が起こしているわけなんだから、その責任は財界からとってもらうべきなんであって、いま佐野局長なんか大変な苦労をしておられますけれども佐野局長が苦労する、そういう筋合いのものではないのではないか。日本の財界の連中が苦労しなければならぬじゃないか。農林省だけが苦しまなければならぬという理屈はないじゃないか、財界が苦しんでもらわなければならぬじゃないか、私はそう思っているのです。それは大臣も同感ですか。
  66. 金子岩三

    金子国務大臣 御推測の御発言があっていますが、いろいろ御推測は大体当たっておるように考えます。その中で、私はやはり中曽根内閣の中で日本農業を守るただ唯一の存在ですから、毅然として、私の責めはいかなる困難があっても背負うて立つという決意でやっておるのでございますから、ひとつ御協力を願います。
  67. 松沢俊昭

    松沢委員 毅然として、日本農業日本の農民の生活を守るために大臣がこれからも努力をしていただきたい。御要望申し上げておきます。  そこで、本題に入りますけれども、米の需給状況を御質問申し上げたいと思います。  政府のいままでの発表からしますと、五十八年の米の需給計画ですが、五十六年の米というのを米穀年度末で四十万トン繰り入れをやった。そして五十七年、千六十五万トン生産計画であったのが崩れまして、千二十七万トンですか、そういうところの生産であった。であるから、これを計画的にやるというには、五十三年の古米を活用したりなんかしてやっていけば、五十八年の十一月一日には新米穀年度になりますから、大体十万トンくらい繰り入れというのをやることができるのではないか、こういうことをいままで言ってこられたわけなんであります。  それで、春のこの委員会で、私はそうはいかないんじゃないか、こう言ったのですよ。ということは、千二十七万トンというのはどこどこの倉庫の俵が何俵あったというのを積み重ねていって積算した上に立った千二十七万トンではないのであって、これは作況のいわゆる坪刈りから推測したところの数量だ。その坪刈りの米選機のふるいの目というのは、統計事務所の使っているのは一・七だ。しかし、全国には産米改良協会というのができまして、そして商品価値を高めるということで、そういう米選機、ライスグレーダーとかいうものを改良しまして、一・八以下のものはなくなっているわけなんですね。ひどいのになりますと、一・九というのもあるのです。そうすると、そこに〇・一ないし〇・二の狂いというものが起きてくるわけです。そうすると、〇・一の食い違いで大体どのくらいよけいくず米になるのか、そういうことをいろいろ専門家に聞いてみますと、そのときの作柄によっても違うけれども、まあ五%ぐらいの違いがあるのじゃないか、こう言っているわけだ。そうすると、一%というのは日本国じゅうから見ますと十万トンぐらいなんでありますから、五%ということになれば五十万トンのずれというものが出てくるじゃないか。そうなれば、千二十七万トンから五十万トンを引いたものというのが実際政府の指定倉庫に入っているところの米の数なんじゃないか。だから、非常に安易に考えているようだけれども、恐らく端境期になると大変な状態に入るのじゃないか、こう言ったのですよ。  そうしたらどういう状況が出てきたかと申し上げますと、八月の末になったら食糧事務所の所長が各農協に対しまして、九月の十日までにあなたのところの農協から千五百俵米を出してくれとか、十二月にはあなたのところの農協から二千俵出してくれとかと言って、まだ稲刈りが行われていないというのに米の出荷要請というものが出てきたわけだ。そうして農家の方としては、農協から頼まれたものですから出さなければならぬということで、それじゃそれに合わせて稲刈り計画というものを立てる。五日ごろ刈って十日に間に合わせる、こういうようなやり方でやったわけなんです。そして検査してもらうために検査場へ米を運ぶ。検査官が待っていて検査をする。判こを押した途端に待っていたトラックがその米を積んで消費地に走る。農協の倉庫には米が入らぬという状態が川できたわけなんです。そして、私の県では九月の十五日からいわゆる標準米はもう全部新米に変わってしまっているわけなんです。  大体、昭和五十八年の米というものは昭和五十八年十一月一日から使わなければならぬ米なんでしょう。これはそうですよ。新米穀年度、計画からいってそういうことになるわけだ。五十七年の米と五十六年の米が足りないものだから、五十二年の古米を使って需給計画を立てていく。そうすれば五十八年の十一月の一日には古米を十万トン繰り越すことができる、こういう需給計画であるわけですから、したがって九月に新米を食べなければならぬという理屈というものはないわけなんです。だから、私はこれは大変な事態に入るのじゃないか、こう言っておったわけなんでございますが、絶対心配ございませんと言われた。私の言っているのは、五十八年、いま心配だなんて言っているわけでありませんで、五十九年の七、八月ごろになったら大変な状態になるのじゃないか、それを心配しているわけなんであります。ですから、こういう点は一体どうなっているのか。  それから、これはこの前この委員会で要請があったわけなんでありまするが、大丈夫だというのであるなら五十七年の在庫がどの倉庫にどれだけあるか、そういうやつを全国的に調べて資料を出してもらいたい、こういう要望があったのだけれども、それは食糧庁の方からいまだに出ていないわけなんであります。でありますから、私は、いまのこの状況は一体どういうことになっているのか、その点を明らかにしてもらいたいということと、もう一つ、要するに私の調べた範囲におきましては、連続不作というのは、大体二年連続というやつはありますけれども、三年の連続不作、四年の連続不作、こういうのは日本の歴史にはないようでございまするが、その辺は食糧庁の方でお調べになって、あったら聞かせていただきたいと思います。  この二つ、まず御質問申し上げます。
  68. 松浦昭

    ○松浦政府委員 米の需給状況についてのお尋ねでございますが、まず五十八米穀年度につきましては、先生御指摘のように、五十七年の十月末の前年産米の在庫量、これを四十万トンということにいたしまして、先ほど御指摘のように、五十七年産米が一千二十七万トン、それにその他の五十三年産米も加えまして、供給量として一千七十五万トン、さらにこれに対応いたしますところの五十八年の米穀年度におきますところの需要量、これが一千六十五万トンということで計画を組みまして、十万トンの在庫がことしの十月末にあるはずであるということで、需給に不安はないということを食糧庁としてはるる答弁をいたしてまいったのでございます。この状況につきましては、率直に申しまして、現在の需給状況を見てまいりますと、おおむねそのとおりにいったのじゃないかというふうにまず考えておるわけでございます。  ところが、ただいま先生御指摘になりましたように、問題は五十九年の米穀年度にあるのじゃないか、現在地元の食糧事務所の対応あるいは米の輸送の状況、そういうものから見て相当深刻な需給状態になっているのじゃないか、こういう御指摘であろうと思います。  この点につきまして御答弁申し上げますと、確かに私どもの下部の機構でございます食糧事務所が相当な集荷督励を行っているということは事実でございます。と申しますのは、御案内のように、改正食管法におきましては、適正な運営を図っていくということのために、集荷については逆正を期すということでいわゆる適正集荷ということを推進しておりますし、また特に改正食管法におきましては、不正規米の流通ということにつきましてはその発生を何とか防止するという立場でございまして、さような意味で、本年もこれまで同様に相当な集荷の督励を行ったということが背景にあると思います。  それからいま一つ申し上げたいと思いますのは、やはり先生も御指摘のように、十万トンの期末在庫というのは決して高い水準ではございません。非常に低い水準であろうと言わざるを得ないと思います。このために、食糧庁といたしましては、万が一どこかで供給のショートが起こるといったようなことがありますと、これはもう世上不安が起こります。したがいまして、私どもとしては早目早目にできるだけきめの細かい集荷対策需給操作ということを指示いたしておりまして、そのために各食糧事務所も相当な努力をいたしたということは事実でございます。これによりまして、私ども、先生のごらんになったところで相当新潟からも米が出ているのじゃないかというふうにお考えになっておられると思いますが、要はそのような適正集荷あるいは早目早目の対策をとっていったということからそのようなふうに映ったということであろうと考えるわけでございます。  実態といたしまして、先ほど先生、五十八年の米穀年度の末までは五十七年産米というもので対応しなければならぬじゃないか、五十八年度産米はとっておくべきじゃないかということをおっしゃられましたけれども、過去の経験から徴してみましても、このような年でない年におきましても、大体自流米を中心にいたしまして四、五十万トンのその年の米の早食いというのはいたしておるわけでございまして、さような意味では、このように米穀年度を十月末に決めております以上、そのような事態が生ずるのは毎年やむを得ないというふうに考えるわけでございます。さような早食いの分というものはさほど昨年と違っていない。私、率直に申しますけれども、若干これは多くなっておる。しかしながら、さほど多くなっていないというのが私どもの見方でございまして、さような意味では当面の需給に心配はございませんし、また、実際現在国民の間にも不安は何も起こっていないという状況でございますから、五十八米穀年度は十分に安定した形で越せるということだろうと思います。  そこで、五十九年はどうなるかというのが先生のお尋ねでございました。  五十九年につきましては、先ほどお尋ねもございましたが、五十八年産米の状況は、御案内のように北海道、東北におきまして一部不作のところはございましたが、全国といたしましては一応平年作を確保できたわけでございまして、さような意味で、一千七十二万トンというのが九月十五日現在わが方の統計情報部が推定いたしております本年産の作柄でございます。かようなことを考えてみますると、実はこの作柄九九というものを前提にして考えてみるわけでございますが、その場合に五十八年産米の生産量、実はこれも御報告いたしたと思いますけれども、一千九十五万トンという推定をいたしたことは事実でございます。そのような状態のもとにおきましては、年度末の在庫、つまり五十九年十月末の在庫は大体五十万トンから六十万トンあるのじゃないかというふうに考えておりました。  しかしながら、九九の作況あるいは転作の面積その他を考えてみますると、やはり一千七十二万トンという数字がここに出てきたわけでございまして、そこの間に約二十万トンぐらいのギャップが出ているわけでございます。さようなことから申しますると、五十万トンないし六十万トンを見込んでおりました明年の十月末の在庫という分は若干訂正をせざるを得ないというふうに考えるわけでございまして、当面の見込みを申しますと、もしもほかの事情に大きな変動がないということを想定いたしますと、大体三十万トン程度の在庫というのが明年の米穀年度末の在庫じゃないかというふうに考えます。さようなことを考えてまいりますと、ことしは十万トンで切り抜けてまいりましたが、三十万トン程度の在庫ということになりますと、五十九年の米穀年度のポジションというものは明らかに現状よりもよくなっているというふうに考えますので、私といたしましては五十九年も問題なく推移ができるというふうに考えているわけでございます。  なお、最後にお尋ねの、三年連続不作あるいは四年連続不作がかつて日本の歴史にあったかどうかということにつきましては、私も不勉強で的確な御答弁が申し上げられませんが、三年はあったのではないかというふうに考えます。ただし、四年というのは余り聞いたことがないというふうに考えるわけでございます。
  69. 松沢俊昭

    松沢委員 これはお互いに現物を勘定しながら話しているのではないのであって、推定での話なんでありますから、水かけ論になる可能性というやつはあります。ただ、理屈から言って、要するに米の集荷というものを先手先手でやったために足りないように映ったのじゃないか、こういうお話でございますが、それならば十万トン余る米というものはどこにあるのだというのですか。それを明らかにしてもらわぬと、長官が幾ら強調されてもそれはやはり納得できないところなんじゃないですか。だから、もし何でしたら、その在庫というものはこうなってあるのだよということを明らかにしてもらいたいと思います。  それからもう一つの問題は、ことしの第二期の減反の目標というものは六十七万七千ヘクタールなんですね。ところが、そういう目標を立てたとたんに不作不作というものが続きまして、そして二期の三年目の五十八年に六十万ヘクタールに減らしたわけですね。だから、六十万ヘクタールが不作でない状況で米がとれたということになれば、来年は政府計画どおりいくわけなんだな。だけれども、これがトータルしてみると六十三万ヘクタール、こうなっているのでしはう。そうすると、五百キロ平均としても、それでも当てにしておった生産量が十五万トン減ってくるということでしょう。それと、さっきの私の論からするならば、ふるいの目がそうなっているんだし、実際、そんな強がりを長官は言っているけれども現実はこういう状況だよ、こう私の方が言っているわけですから、いまも長官が四、五十万トンぐらい早食いすることもあるんだということを言っておられましたが、四、五十万トンの早食いをしなければならぬようなせっぱ詰まったところの状態であったということになりますと、五十九米穀年度の状況というのは相当苦しくなってくるじゃないか。  そこへもってきて作況が九九ということになれば、ことしもまた不作だ。三年連続不作というのは聞いたことがあるようだというけれども、いつの年なんだか、はっきりしてもらいたい。四年というのはないというのだが、じゃ、どういうわけで四年間もこういう不作になったのか。おてんとうさまが機嫌悪くなったわけじゃないだろう。それは、日本農業政策というものは農民に生産意欲を減退させるという、そういう農政をずっとやってきた、これが一番大きな原因なんじゃないかと思うのですよ。だから、やっぱりそういう反省というものを農林省はやっていかなければならぬのじゃないか、こう思いますが、その辺御答弁願いたいと思います。
  70. 松浦昭

    ○松浦政府委員 まず、五十九米穀年度の末の状態、ここで不安はないか、特にその場合に、転作面積につきましていわゆる超過分がある、そのために十五万トン程度のギャップが当初の予定よりも出たのじゃないかというお尋ねでございますが、これはそのとおりでございます。  と申しますのは、先ほども御答弁申し上げましたように、われわれ、作況指数一〇〇というのを前提に置いて考えますれば一千九十五万トンを五十八年産の米穀によりまして供給できるというふうに考えておったわけでございます。しかしながら、統計の数字から申しましても一千七十二万トンという数字になっております。このギャップは、その多くの部分が恐らく超過達成分ということに考えられます。もちろん作況指数一〇〇と九九の差というのもございます。これが相互に関連をいたしまして、トータルといたしまして当初の予定よりも約二十万トンの減になったということでございまして、さようなことは当然織り込まなければならぬという先生の御説はそのとおりであると私も思います。  ただ、そのような一千七十二万トンという状況になりましても、先ほど申しましたように一千九十五万トンの状態で五、六十万トンの在庫というものを来年度末に見込んでおったということでございますので、さような状態から申しますとそれが約三十万トン程度に下がるのじゃないかという状態でございまして、これが明年の十月末の状況である。それは現在の十万トンよりもかなり改善された状況でございますので、したがいまして、来年も心配がないのではないかということを申し上げた次第でございます。  それから次に不作の状況でございますが、この点につきましては、私どもの手元にあります資料では、明治十六年以降三年連続の不作はなかったそうでございます。戦争直後の状態はこれはちょっと異常でございますから、それを抜きますと明治十六年以降三年連続の不作はなかったということでございまして、確かに先生おっしゃいますように基本的に農政の問題ということがあろうかというふうに思いますが、やはり農業というのは天候に左右されるものでございまして、ことし四年連続の不作にはなっていない、平年作並みを確保できだということは、これはやはり天候がことし初めは冷夏と言われておりましたけれども、これを相当回復できるような天候の状況になったということは一つあろうと思います。  それと同時にまた私考えますに、やはりあのような異常に天候の悪かった七月の状況においても、農家方々が冷夏ということを前提にいたしまして非常な御努力をなさったということがやはりこの平年作を保ち得た基本であるというふうに考えておるわけでございまして、私といたしましては、さような農業の技術あるいは農家の御努力というのもあわせましてこの平年作の状況になっているんじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  71. 松沢俊昭

    松沢委員 第三期の減反についてでありますが、新聞にいろいろと出ておりますので、それなんかも参考にしながらお聞きしたいと思いますが、七十万ヘクタール、これが転作目標面積というふうに設定して、そして備蓄というのも考えていかなければならぬから、四万ヘクタールぐらい備蓄のための米づくり。それから加工原料米ですか、みそだとかあるいはせんべいだとかという、そういうものが大体三十万トンぐらい要るんだから、六万ヘクタールぐらいはいわゆる他用途米ということで生産をしてもらう。考えてみますと、四万ヘクタール、六万ヘクタールということになると、米をつくるのですから、そうすると七十万ヘクタールという目標は立てたけれども、実際は六十万ヘクタールの目標という、こういうふうに新聞は伝えているわけなんであります。  そこで、他用途米価格の問題ですね。さっきも日野さんの方から質問があったわけでありますが、普通の食用米は大体トン三十万円、そういうみそだとかせんべいの原料にするというのは大体十二万円ぐらいということを聞いておるわけですね。そうすると十八万の差というものが出てくるわけなんでありまして、農協中央会等にも聞きただしたわけなんでありますが、共補償なんということをわれわれは研究もしていませんし、討論もしていませんよ、とにかく政府の責任において補償してもらわなければできませんよ、こう言っているんだ、こういう話なんであります。そうすると、これは三十万トン要るんですからね、原料米で。だから、もし農家の方で、そんな共補償とか、ろくな金も出さないで、それでつくれつくれと言ったってつくられませんよ、こう言った場合に、要る米なんですから、その米というのは外国から輸入するということになるのですか。どういうことなんでしょうか。ここのところをひとつ聞かせてもらいたいと思います。  それから、二百万トン備蓄というのは、食管法の改正のときの議論として、農林布の方としては二百万トン備蓄という話を出されたわけなんです。さっきの答弁からしますと、いや国民はやはり古米というのは嫌うんだから新米を食べさせるということになると、そうよけい備蓄するというのもどうかと思うのだ、こういうお話でありましたけれども備蓄と言ったっていろいろな方法があるわけなんでありまして、回転備蓄であれば確かにそういう問題というのは起きます。だけれども、棚上げ備蓄ということでいくとするならばそういう問題は起きないのでありまして、私たち社会党の考え方としましては、三百万トンぐらい備蓄すべきなんじゃないか。だから、回転備蓄でいって、そうして年間百万トンずつ備蓄していって、四年ごとにそれは払い下げをやっていく、そういうふうにすればこれは問題ないじゃないか、こういう考え方ております。(「何に払い下げするんだ、そんなことできるかね」と呼ぶ者あり)自民党はできないと思いますけれども、わが党が天下をとったらそういうことをやる。とにかく、回転備蓄とあるいは棚上げ備蓄と二つあると私は思うのです。だから、長官の言っておられるのは、棚上げ備蓄じゃなしに回転備蓄を指しておられると思いますが、そうなれば、やはり消費者の皆さんだって古米ばかり食べさせられて嫌だということになると思いますが、棚上げ備蓄考えていくということをそのときは言っておられたのですよ。併用していきます、こういうことを言ったのですがね。だから、これからの要するに備蓄の方法、備蓄水準をどういうふうにしてお考えになっているか。  それから、これは局長に聞いた方がいいと思いますけれども、確かに豆それから麦は減反奨励金をつけたことによって自給率が上がってきましたね。上がってきたけれども、これは精いっぱいもらったという計算で私はやってみましたら、豆は大体トン八十万円ぐらいになるんじゃないかな。それから麦は四十万円ぐらいになりますよ、目いっぱい奨励金をもらった勘定でいきますと。そんな高いもの一しかし奨励金があればつくる。ところが、臨調の方では奨励金からの脱却ということを言い出しているわけなんですね。そうすると、奨励金から脱却したという場合においては、この麦、豆というものが果たして定着するのであるかどうか、はなはだ私は疑問に思っているのですが、その点は農林省の方ではどうお考えになっているか。  それから、青刈りというのが全国で三万ヘクタールくらいあるということを聞いているわけなんでありますが、あの青刈りというのは、所によってはえさになっているところもあるかもしれぬけれども、ほとんどは刈り捨てている状態に置かれている、こういう状況でございますので、もったいない話なんだから、何とか利用できる方法を考えるべきなんじゃないかということで、われわれはホールクロップサイレージとして利用したらどうかという提案を申し上げたわけなんであります。最近農林省のお話なんか聞きますと、検討中だ、こう言っておられるわけなんでありまするが、要するにその検討中だという検討の状況はいまどうなっているのか、それを明らかにしてもらいたい。  それからもう一つは減反の問題で、奨励金の使い方であります。何しろ年間三千四百億円という減反奨励金が出ているわけなんでありますから、これはどうなるのかということですね。臨調ではそういうのはよくないというような考え方で来ているわけなんであります。農林省の方としてはこれを守っていこうという立場でおられると思いますが、五十九年の予算編成の場合どういうぐあいにやるつもりなのか、お伺いをしたい。  同時にまた、お話を聞きますと、基本の五万円なら五万円という奨励金と加算、団地化加算だとか計画加算だとか、そういうものを逆転させるというお話も聞いているわけなんでありまして、基本の方が安くなって加算の方に重点を置く、そうして有効に奨励金を使っていきたいというお話も聞いておりますが、その場合に、基本額というのは大体いままで五万円ぐらいになっておりますけれども、これは今度はどのくらいに下がるのか、これをお開かせを願いたい、こう思うわけであります。  それから、えさ米の研究をおやりになっておりますが、どの程度進んでいるか、これも聞かせてもらいたいと思います。  それから、われわれがえさ米を認めなさいということを三年ほど前にいろいろ追及したことがあるわけでありますが、当時の亀岡農林大臣は、いやそれはえさ米も結構だけれども、何しろさわるとすぐぽろぽろと落ちてしまうので、脱粒がひどいのでとても認めるというわけにはいかぬとか、あるいはまた採算がとれないじゃないかとか、それから最も大きな理由といたしましては識別ができないというのですね。主食用の米と識別ができないのだから、万が一それが不正規流通として出回ったなんということになったら大変なことになるのだ、こういうことを言っておられたわけであります。他用途米という米は普通の米と変わりない米なんでありますが、三年前まではえさ米というのは識別がつかぬから認められないということであったのが、今度は同じ米なんでありますが、それは三十万トンぐらいつくってもらったらどうかと、こうなるわけであります。いままでの考え方といまのこの考え方と大変大きな違いが起きている。それはどういうわけか。  私の勘ぐるところによりますと、皆さんは米が足りないなんということは口が裂けても言えない、足りないことは間違いないのだけれども。そこで適当に、備蓄米が四万ヘクタールだとか他用途米が六万ヘクタールだとか、こう言っているわけだけれども、非常に不安な米の需給状況になっている。だからもう恥も外聞もない、とにかく識別がつくとかつかぬとかはかかわりなしにつくってもらわなければならぬ状態に入ったのだ、こういうことを言っておられるのじゃないかと思いますが、私の勘ぐりでしょうか、どうでしょうか。それも明らかにしてもらいたいと思います。
  72. 松浦昭

    ○松浦政府委員 私から御答弁申し上げる分を先に答弁させていただきます。  まず第一点の他用途米につきまして、これが本当にきちんと生産できるものかどうか、それは価格の髪もございますから、この価格の差をどう補てんするかにかかるのではないか、こういう御質問であろうと思います。  私ども、先ほど御答弁申しましたように、他用途米を導入したいというふうに考えておりましたもとは、基本的には水田という非常に効率の高い、しかも国土の保全ということからも非常に重要な機能を持つ農地というものを確保していきたいという気持ちであり、また転作面積も非常に高率のところもできて、やはり限度感というものもだんだんできてきている。さらに加えまして、過剰米の処理が済んだ現在の時点におきましては、やはりこれを国内でつくる、輸入をしないという体制で臨みたいという気持ちでございます。したがいまして、他用途米について輸入ではなくて国産で賄いたい、この気持ちは私どもは変わりはないわけでございます。  そこで、それでは本当にこれをっくってもらえるかどうかという問題でございますが、先ほども申しましたように、各種の需要、主食以外の需要を持ちますところの他用途米につきましては、やはりそれなりの格差というものは設けざるを得ない、これは先生も御了解いただけると思うわけでございます。その流通の価格が大体十二万円程度であるという御指摘がありましたが、これもそのとおりであるというふうに思います。  そこで、この大幅な格差というものをどうやって埋めるかということでございますが、その場合に、私ども財政負担というものも考えてまいりたいということも先ほど御答弁いたしたわけでございますが、同時に、他作物への転作定着化ということを考えますと、この助成というものをバランスの上で考えていかなければならぬということもございまして、やはり基本的な他作物への転作の定着ということを基本に置きながら他用途米を導入していくということになりますと、おのずからそこに限度があるということでございまして、さような立場から、また農民の団体におかれましても自主的な御努力というものを御検討願ってはいかがかということで現在お諮りをしているという状況でございます。  ただ、新しく他用途米を導入いたしましても、実際にこれをつくりますところというものはおのずから団体の中でいろいろと御調整をいただき、またお話し合いをしていただくならば、これに適したところというものはやはりあると私どもは思います。それからまた同時に、この他用途米をつくります場合には別に新しく農機具を買うわけでもないし、いわゆる限界コストと申しますか、さようなもので生産ができる、そういう利点もございます。さような意味で、価格差がある程度までございましても、これが生産されないということはないんじゃないか。この点は団体側と十分にお話をし、そしてまたその趣旨を十分に徹底して、特に日本水田を守り、また同時に、輸入をしないで国内で賄うのだという御趣旨を十分に御説明すれば、乗ってきていただけるものというふうに私は確信をいたしておる次第でございます。  それから次に備蓄の問題でございますが、備蓄につきましては、確かに先生おっしゃられますように、いわゆる回転備蓄と棚上げ備蓄と、この二つめ考え方があるということは私も存じております。ただ、棚上げ備蓄三百万トンという数字をおっしゃいましたけれども、このように毎年毎年積んでいって、それを最後に一遍に吐いてしまうということになりますと、その間におきますところの負担と申しますものはやはり大変なものになっていくということでございまして、これはもちろん国民の税金なりで賄わなければならぬということでございますから、それが余りにも過大になるということは問題があると思うのでございます。  また、先ほど大臣が冒頭に御答弁なさいましたように、備蓄の問題を考えるに当たっては、当然現在のような非常に低い水準在庫の状態からは積み増しをしていかなければならぬ、これはそのとおりでありますけれども、同時に、大臣は過剰をもう一遍生ずるといったようなことがあってはいけないということをおっしゃっておられるわけで、そのとおりであろうと私も思います。やはりコストも考え、いろいろなことを考えながら適正な在庫水準というものを考えていかなければならぬということでございまして、さような意味におきましては、やはり古米も入れながら回転的に備蓄をしていける限度、その上にやはり何年かの連続の不作ということに加えるというための備蓄というものも必要だということで考えるわけでございます。しかしながら、同時にそれは適正在庫、コストの面あるいは新米の早食いという傾向、そういったものも十分勘案いたしながら決定するということにならざるを得ないというふうに考えるわけでございます。  最後に識別の問題でございますが、私ども決して今回は識別が急にできるというふうに考えたわけではございません。この点につきましては、やはり他用途利用米につきまして食管制度の基本は揺るがすまいということで、食管制度の枠内で物を考えていくということでございますので、農産物の検査というものは他用途米につきましても十分適用いたしますし、また、必要な流通規制措置というものもとってまいるつもりでございます。特に流通の段階におきましては、これが主食の米に影響が出てくるということは大変であるということでございますから、破砕してこれを流通させるということも検討しておるわけでございます。その点で、確かに前にえさ米の議論を行いましたときと違うじゃないかという御指摘もございますが、過剰米の処理の過程を通じましてこの他用途利用米につきましてはかなりルートも明確になっておりますし、また、破砕といったようなことを考えてまいりますれば識別は十分可能だし、また、混用されることはないという制度を仕組んだ上でこれを適用したいと考えておる次第であります。
  73. 小島和義

    小島政府委員 幾つが御指摘ございましたが、逐次お答え申し上げます。  まず転作奨励金の問題でございますが、現在、麦、大豆等に出しております転作奨励金は、十アール当たり平均いたしますと六万二千円ぐらいでございます。小麦の場合ですと、大体三百キロぐらいとれますので、トン当たりに換算いたしますと大体トン二十万円ぐらいの水準でございます。大豆の場合ですと、単収が低うございますからそれの倍以上の額になろうかと思います。ただ、そういった事態そのものが決して私ども健全な姿であると思っておるわけではございませんで、これらの作物につきましての単取水準を引き上げていくというふうな努力と相まちまして、この奨励金水準については逐次引き下げていくべきもの、かように考えておるわけでございます。  それから、御指摘ございました青刈りの問題でございますが、松沢委員からも常々御指摘いただいておりますように、どうも余り利用の状況が芳しくないというふうな事例が散見されるわけでございまして、会計検査院あるいは行政管理庁あたりの指摘の中にも、この仕組みについては考え直すべきではないか、こういう意見を寄せられておるわけでございます。ただ、私ども今回三期対策を迎えるに当たりまして、各地方の意見を聴取いたしておりますと、確かにいろいろ問題はありますけれども、湿田地帯におきましてなかなか他の作物を導入しにくいというふうな地域におきまして、転作目標を達成するためのいわば最後の手段として使われているという実態もあるわけでございます。また、例としてはそう多くございませんが、畜産農家飼料源として有効に利用されているというケースもなくはないわけでございます。そういう衷情から、三期に移行するに当たりましては、この青刈り稲そのものを全く認めないというふうなことにはしてくれるな、こういうふうな要望が強いわけでございまして、仮にその奨励金水準等について見直しが行われましても何とか制度は存続きしてくれ、こういう希望が比較的強いわけでございます。  ただ、一面におきまして飼料源としてより有効に使っていくという観点からいたしますと、御指摘ございましたホールクロップサイレージというのも一つの有効利用の方法でございます。従来、糊熟期以前の青刈りだけを認めておりましたけれども、それ以降のものにつきましても飼料として利用されるということが確実に担保されるのであればこれも認めるという方向で考えたい。ただ、従来の青刈り稲は刈り跡を確認するということだけをもって足りるわけでございますが、今後はサイロの中に納められました時点で確認をしなければならぬということになりますと、確認の事務というのが非常に煩瑣になることがございますので、その刈りましたたんぽとサイロの所在地あるいはその確認事務の市町村における便宜、そういったことを少し総合的に勘案いたしまして、ある種の条件を付して考えるという方向がいいのではないか。無条件に広く認めるというのは若干問題があるような気がいたしております。  それから予算の問題でございますが、すでに農林荊として提出をいたしております概算要求におきましては、水田利用再編対策、それから食管特別会計の繰り入れなどを含みました食糧管理費の頭の金額で前年比五%カットということで、約九千億の食糧管理費のうち四百五十億円を減額するという概算要求を出しておるわけでございます。内容の振り分けの問題はもちろんございますけれども、そういった予算のシーリングから来ております問題、さらには臨調、農政審からの従来からの御指摘もございます。また、転作実態を眺めてみましても、やりようによってはかなり内客の充実した転作ができておるということも各地とも実際の姿として見受けられておるわけでございますから、そういった問題を考えながら転作奨励金水準を決定いたしてまいりたいと考えております。  ただ、先ほど申し上げました仮に水準引き下げるとすれば、作物ごとに違っておりますが、俗に言うパラ転でも何でも出る基本額部分と、内容のよい転作をした場合に出る加算額と、どちらの方に傾斜をつけて考えるかということになりますと、その加算額部分というのはりっぱな転作をやった者に対する奨励的な措置であるという意味合いもございますので、そちらの方については、内容はともかく、総額として余り手を触れたくないというのが私どもの率直な気持ちでございます。現在、基本額対加算額の比率は予算総額で八対二ぐらいの関係になっております。その八の方の内容について吟味をしなければならぬ、こう思っておりますので、比率は多少変わるかもしれませんが、御指摘ございましたような逆転というふうなことにいたすつもりは毛頭ございません。基本額は転作した者に対してあまねく交付される額でございますから、そちらの方がより比重が低くなるというのは変則であろうというふうに考えておるわけでございます。  大体御指摘はそんなところだと思いますが、あと、えさ米の問題については技術会議の方から。
  74. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 えさ米関係の試験研究についてのお尋ねでございますが、御承知のように超多収作物の開発ということで、昭和五十六年度から稲につきましては大体五割増の収量が実現できるような品種を育成するということを目標に研究を進めております。  現在の段階は、まず外国稲と日本稲の交配という方法で、たとえば半優性のインディカタイプのものを日本稲と交配するということでやりますと、多収事例は見られるわけでございますけれども、耐冷性とか耐病性あるいは脱粒性、そういう面で若干問題もございます。当面のところは、たとえば暖地向けの中国九十一号というふうな品種なども出てまいりまして、第一段階で大体一割増ぐらいを目標にしておりますが、それの達成の可能性のある品種がそろそろ出てきておる。それから次の第二段階、第三段階へ向けまして、そういう育成されたものを使いましてさらに多収の稲を育成するということを進めてまいりたい、かように考えております。  なお、その過程で最近ございますような雑種利用、そういう方法も開発できないかということも五十八年度から研究内容に入れてまいりたい、こういうふうに考えております。
  75. 松沢俊昭

    松沢委員 時間が参りましたのでやめますけれども、長官、備蓄をどの程度やるのかという、二百万トンというところのそれはこの前発表されたわけなんでありますが、それが今度変わってきたというのは財政事情からそうなったのか、それともいまあなたが言われるように、消費者の志向というのも考える、こういうことなのだと思いますけれども、大体備蓄というのは非常事態のとき心配のないようにしておくというのが備蓄なんでありますから、味の問題がどうだとかこうだとかいうのは二の次になるわけですね。そういう点を考えて、やはり二百万トンなら二百万トンをこういうふうにしてやるのだというものを明確に、いまそれを持ち合わせておられなかったら、それはひとつ省内で検討してもらいまして、しっかりしたものをつくってもらいたい、こう思うわけなんです。  最後に、大臣に一つ御質問申し上げますが、いま米の問題をめぐりましていろいろ御質問させてもらいましたけれども、いままでの時期のように決して米が余って余って困っているという時期ではないのであって、むしろ大変逼迫をした状況になっているんだ。そして、こういう農産物というものは、工業製品のように計画的に、計画どおりにばっちり答えが出るものではないわけでありますから、相当余裕を持った生産体制をつくっていかぬと大変なことになるのじゃないか、こう思います。ですから、第三期の減反の時期に来ているわけでありまするが、その場合におきましても、私は農家生産意欲を減退させるようなやり方だけはやめてもらわなければならぬと思うのですが、改めて大臣からこれからの減反のあり方について御答弁をいただきたいと思います。
  76. 金子岩三

    金子国務大臣 御指摘の点、私も同感でございます。それを慎重に時間をかけて、できるだけ早くと、こういうことで進めておりますけれども、やはり慎重に、皆さん方が納得できるような線を出したいと思います。
  77. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時五十七分開議
  78. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件について、本日、小川国彦君の質疑に際し、日本中央競馬会理事長内村良英君を参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  80. 山崎平八郎

    山崎委員長 質疑を続行いたします。小川国彦君。
  81. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、きょう、農水省、それから中央競馬会に競走馬輸入事件におけるその後の対処の問題について質疑をいたしたい、こういうふうに存じます。  最初に、中央競馬会の理事長にお伺いをしたいと思いますが、昨年の七月、アメリカから輸入したハンザダンサー三億一千百万円の問題が表面化しまして、これがいわば藤井治商事に規定の二%という手数料以外の金をだまし取られている、こういうような形の事件が発覚をしているわけですが、その後、中央競馬会が調査した中で、新たに藤井治商事に八千六十七万円、野沢組に八千十一万円の返還請求をされているということですが、この返還請求をするに当たって、中央競馬会はこの金の性格というものを一体どのように判断しておられるか、その点をまず伺いたいと思います。
  82. 内村良英

    ○内村参考人 お答え申し上げます。  御案内のように、中央競馬会が輸入馬を購入いたします場合に、これまでは五十年以降軽種馬協会に委託いたしまして、軽種馬協会が指定してきたと申しますか、申し出てきた商社、藤井商事及び野沢組と契約を抽んで種牡馬の輸入を行ってきたわけでございます。その輸入に関しまして、ただいま先生からお話のあったようなことがわかりましたので、競馬会といたしましては、その金について返還請求をすることにしております。  その法的な理由でございますけれども、要するに藤井商事及び野沢組は競馬会と委託契約を結びまして業務に当たってきたわけでございますが、委託契約の施行について債務不履行があったというところから、債務不履行に伴う損害賠償請求という形で返還を求めるわけでございます。
  83. 小川国彦

    小川(国)委員 委託契約に基づいて債務不履行と言われるのですが、そうすると、その債務の不履行というのはどういう債務の不履行というふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  84. 内村良英

    ○内村参考人 委託契約の場合に、受任者は委託者のために最善の努力をして仕事をしなければならないわけでございますけれども、その点について債務不履行があったということでございます。
  85. 小川国彦

    小川(国)委員 その最善の努力ということの前提は、手数料が一応二%、こういうふうに定められている。たとえば、ハンザダンサーで言えば二%という手数料が定められて六百二十五万円余という手数料になっているのに、それ以外に八千七百万円のいわば手数料的なものを取っているということはこの委託契約に反する、こういうことでございますね。
  86. 内村良英

    ○内村参考人 そうでございます。
  87. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、いわば二%という手数料の枠を超えて多額の手数料を取っていたということは、これは重大な背信行為である、こういうふうに御判断なすっているわけですね。
  88. 内村良英

    ○内村参考人 そのとおりでございます。
  89. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、ハンザダンサーの三億一千百万においては、すでに五十二年の金の支出でありますが、五十七年度決算で収入として処理されている。これはやはり重大な背信行為、いわゆる委託契約に反する背信行為、違約行為といいますか、に基づく返還である、こういうふうに判断してよろしゅうございますか。
  90. 内村良英

    ○内村参考人 ハンザダンサーにつきましては、五十七年の七月二十九日に藤井商事を通じましてゴドルフィン・ダーレイから三十二万五千ドルの返還が行われたわけでございます。この金の法律的な性格については、購入馬の代金の修正があったものというふうに考えております。
  91. 小川国彦

    小川(国)委員 その購入馬の代金の修正ということは、そうするとどういうことなんでございますか。後からその金額——当初の契約金額は動いていないわけですよね。動いていないので、八千七面万の性格というものはそうするとどういうふうに規定されるわけですか。
  92. 内村良英

    ○内村参考人 私どもは、自主的返還があったということは、鳩代金が修正されまして向こうから返ってきたというふうに思っております。したがいまして、二%の手数料分についても向こうは返還してきているわけでございます。
  93. 小川国彦

    小川(国)委員 馬代金の修正といいましても、総額は動いていないわけですね。
  94. 内村良英

    ○内村参考人 総額は払いまして、それが戻されたわけでございます。そのうちの三十二万五千ドルが戻されたわけでございます。
  95. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、総額の代金から八千七百万円引き下げられたものが新たな契約代金になった、こういう説明ですか。
  96. 内村良英

    ○内村参考人 修正があったものと考えております。
  97. 小川国彦

    小川(国)委員 その場合の修正の根拠はどういうことでございますか。
  98. 内村良英

    ○内村参考人 修正の根拠は、ハンザダンサー号につきましてちょっと事実関係を申し上げますと、ハンザダンサー号につきましては五十二年に買ったわけでございまして、購買地はアメリカ、取扱商社は藤井治商事、外国側の取扱商社はファッシグ・チプトン社であったわけでございます。  これにつきまして、今回の調査によりますと、藤井治商事とファッシグ・チプトン社の間にフランスの商社ゴドルフィン・ダーレイ社のアメリカの会社であるワールド・ホース・エージェンシーが介在し、同エージェンシーが本会支払い代金百二十五万ドルのうち三十二万五千ドルを取得し、残額九十二万五千ドルをファッシグ・チプトン社に支払い、ファッシグ・チプトン社はこのうち手数料として二万五千ドルを取得し、残額九十万ドルを馬主に支払っているということが明らかになったわけでございます。したがいまして、三十二万五千ドルをゴドルフィン・ダーレィが戻してきたのは、ワールド・ホース・エージェンシーの取得分について返してきたわけでございます。
  99. 小川国彦

    小川(国)委員 くどくどと理事長は回りくどくおっしゃっているのですが、結論から言えば、やはり八千七百万円というものを規定よりもよけいに金を取られていた、だから返してもらった、こういうことでしょう。一番最初の出発点は、このお金を払った相手は藤井治商事であるわけで、その藤井治商事から転々としている中で八千七w万円というものが上乗せとしてあった。だから修正させた。しかし、当初、一番最初に支払った相手が藤井治商事であるということには変わりないわけですね。
  100. 内村良英

    ○内村参考人 支払った相手は藤井商事でございますけれども、ただいま申し上げたような形でお金は流れていて、その中の三十二万五千ドルをゴドルフィン・ダーレィが返してきたわけでございます。
  101. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、背信行為のあったのはダーレィという乙とになるわけですか。
  102. 内村良英

    ○内村参考人 受任者としての義務を忠実に果たしていなかったのは藤井治商事だと思います。
  103. 小川国彦

    小川(国)委員 ようやく藤井であるということを認めたと思うのですが、そこで、さらに皆さんの方では、五十年以降の調査の中で新たに藤井治商事についてはラインゴールドの一千四百七十二万、それから五十六年のノノアルコ、サンティクリーク、六千六百九十三万ですね、これの返還要求、それからさらに野沢組に対しても、五十五年のジャッジャー、六千五十八万円、それから五十六年のウォロー、二千百万円、それぞれの返還要求をなされているということでありますが、これに対する当事者の対応はどのようになっておりますか。
  104. 内村良英

    ○内村参考人 私どもといたしましては、早急に返還請求をいたします。まだ法律的にはいたしておりません。正式にはいたしておりません。しかし、内々、こういう民事のことでございますので両社と話し合っておりますけれども、両社とも今週中に返事をするということになっておりまして、まだ対応ぶりについては私どもは承知しておりません。
  105. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、今週中に返事をするというのは、いま自主的な交渉の段階であって、そして今週中の返事で両社がこれを支払わない、自主返還に応じない、こういう場合にはどういう対応をなさるわけでございますか。
  106. 内村良英

    ○内村参考人 ただいまの答弁、ちょっと訂正させていただきたいのでありますが、野沢は来週ということでございます。重役会を開いて来週返事をしたいと育っております。藤井は今週中に返事をするというふうに言っております。  そこで、私どもといたしましては、いずれにいたしましても民事のことでございますので、返還請求を正式にいたしまして、その後においてもなお向こう側といろいろ話し合いはしたいと思っております。しかし、どうしても返さない、これはもちろん一定の限度がございまして、そう長い期間ではございません。その間に向こうが返さないということであれば、民事訴訟で請求したいと思っております。
  107. 小川国彦

    小川(国)委員 そこで、返還訴訟を起こすということになりますと、また新たな弁護士等の委任による訴訟経費もかかるわけでございますが、その辺の裁判の見通しについては、裁判を起こすだけの論拠なり根拠なり証拠なり、そういうものを皆さん方がお持ちになっているかどうかということですが、その点はいかがですか。
  108. 内村良英

    ○内村参考人 ただいま御指摘がございました種牡馬については、私どもは請求し得る根拠を持っております。
  109. 小川国彦

    小川(国)委員 請求し得る根拠があるということでありますが、その場合に、それぞれ約八千万円ずつの請求になろうかと思いますが、藤井治商事、野沢組に対する請求を起こすその前提として、それぞれの金額というものはどういう性格の金だというふうになっていらっしゃいますか。
  110. 内村良英

    ○内村参考人 先ほど申し上げましたように、債務不履行による損害賠償の請求でございます。  そこで、その具体的額はどうなのかという御質問かと思いますけれども、それは私ども調査の結果、二%の手数料以外に、これは国際慣行があるということが私ども調査でも出ておるのでございますけれども、外国の商社と折半して手数料を取ったという額を私どもは返還請求をするわけでございます。
  111. 小川国彦

    小川(国)委員 その場合に、その債務というのはやみくもに債務が起こるわけじゃなくて、債務の前提として、これは先ほどおっしゃられたような委託契約に対する義務違反といいますか、契約違反といいますか、そういうものに反するからということの債務不履行、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  112. 内村良英

    ○内村参考人 種牡馬を買うという行為を委託しているわけでございまして、ただいま先生から御指摘のあったとおりでございます。
  113. 小川国彦

    小川(国)委員 いや、その種牡馬を買うということはわかっているわけでございますが、藤井治商事に八千百六十七万円、野沢組に八千十一万円の返還請求をするその根拠というのですね。委託契約違反である、だから返還請求をすると思うのですが、いずれも、八千百六十七万や八千十一万は、借銭誠実に基づく契約というものを行わなければならない、それから皆さんの方の委託契約では二%ということになっている、そういうことに違反して取得した金であるからこれは返還すべきである。端的に言えばいわゆる不法領得といいますか、不法な取得である、こういうふうに判断されているわけですね。
  114. 内村良英

    ○内村参考人 いずれにいたしましても、受任者としての義務に反したわけでございまして、これが民法上の不法行為と言えるかどうかという点については問題があると思います。
  115. 小川国彦

    小川(国)委員 競馬会は物事に大変おおらかで、八千百六十七万円、八千十一万円という金を、私どもから言えばだまし取られたというようなふうに判断されるわけなんですが、それに対して去年の七月に事件が発覚してからもう一年三カ月、調査もなすってきたと思うのですが、これからということで、大変手ぬるい感じがするわけなんです。いずれにしても、これに対して裁判を起こしてもやる、こういう決意は変わらない、こういうことですね。
  116. 内村良英

    ○内村参考人 そのとおりでございます。
  117. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、そのほかになお不明なフランス関係の三頭の問題がございますが、これについては今後どういう対処をなさるおつもりですか。
  118. 内村良英

    ○内村参考人 中央競馬会といたしましては、アメリカ、イギリス、フランスのそれぞれの調査機関に調査を依頼いたしまして、調査をしたわけでございます。  フランスは、パリのクリフォード・ターナー法律事務所、これはかなり信用のあるところでございますが、そこへ調査を委託いたしまして、鋭意調査をしたわけでございます。ところが、フランスの場合には関係者の口がかたいと申しますか、いずれにいたしましても、商取引のためなかなか関係者の証言が得られなかったということで、鋭意努力したわけでございます。私ども調査の完結がおくれましたのもこのフランスのせいがかなりあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、調査の結果具体的なものを得ることができなかったわけでございます。その点につきまして、私といたしましてはやはり最善の努力はしたつもりでございます。最善の努力をいたしましたけれどもうまい結果が得られなかったということの背景に、フランスでは税金の問題がきわめて厳しくて、その関係から関係者の口がかたかったというようなことも言われておりますけれども、事実そうであるかどうかはわかりませんが、いずれにいたしましても、フランスの場合にははっきりした調査結果を得ることができなかったわけでございます。
  119. 小川国彦

    小川(国)委員 フランス関係調査をなすったのは、それはそれで結構だと思うのですが、問題はすでに一年三カ月も経過をしている中で、皆さん方は、これがさっきおっしゃるように訴訟も辞さないというぐらい受託契約に違反するということであるならば、藤井治商事に対しても野沢組にももう当然返還要求というのをそれぞれなされていてよかったのじゃないかと思うのですが、いままではまだこの請求はなすってなかったのですか。それはいつごろ請求なすったのですか。
  120. 内村良英

    ○内村参考人 調査が完結したのは最近でございます。したがいまして、完納後速やかに返還請求するということにしたわけでございます。
  121. 小川国彦

    小川(国)委員 皆さんとしては、これは非常に長い間の契約関係を持っているので、少なくとも藤井治商事や野沢組においても、裁判をしないでもこういうものを返させるというような信頼関係がなければならないと思うのですが、そういう信頼関係に基づく返還というのは困難なんでございますかね。
  122. 内村良英

    ○内村参考人 先ほども申しましたように、藤井治商事と野沢組がどういうふうに対応してくるかということはまだはっきりいたしません。
  123. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、この問題に対するきわめてマンマンデー的な取り組みに対しては大変不満を持つわけであります。いずれにしても、私どもが聞くところによれば、藤井治商事というのはこうした問題についてはきわめて強硬な態度で、これ以降のものについての支払いの意志をほとんど持っていないというふうに開いているわけであります。そういうふうにいたしますと、これは中央競馬会としてはどうしても訴訟に訴えざるを得ないというような問題になってきて、問題がさらに長期化していく、きわめて不透明な中にいくというふうに思うわけなんです。  そこで、国税庁がお見えになっているので、私は国税庁の方にちょっとお伺いしますが、昭和五十二年のハンザダンサー、五十四年のラインゴールド、五十五年のジャッジャー、同じくアンズプリテンダー、五十六年のウォロー、ノノアルコ、サンティクリーク、こういう関係の馬の手数料が、いま言ったように受託契約に反して領得されている懸念がある、そういうことでこの返還を求めるということなんですが、これらについての所得申告は国税庁として受けられているかどうか、その点をちょっと伺いたいと思います。
  124. 木下信親

    ○木下説明員 国税当局としましては、国会のこういう論議あるいは新聞、雑誌等の情報、こういうものをあわせまして、われわれの内部に蓄積されている資料等々と総合いたしまして、納税者から提出されました申告書と突合させ、必要あらば調査をするなど適正な申告の指導に当たっております。  リベートを把握しているかどうかという御質問でございますが、まことに恐縮でございますが、個々の納税者にわたる事項につきましては従来からお答えを差し控えさせていただいておるわけでございますが、一般的に申し上げまして、国税当局ではこういうような海外取引のある法人の調査に当たりましては海外取引を重点的に調査しておりまして、また、海外取引の調査に当たりましては、特に不正が行われやすい受取手数料あるいは支払い手数料またはこれにかかりますリベート、こういうものを重点的に調査をして、適正な課税に努めているところでございます。  御指摘の法人につきましての国会の論議あるいは中央競馬会からの報告を含む各種の資料につきましては、貴重な情報として的確に処理をさせていただきたいと思っております。
  125. 小川国彦

    小川(国)委員 それでは、私どもがいま申し上げた点について、その情報に基づいて、ひとつ的確な調査をぜひお進めいただきたい、こういうふうに存じますので、その点は国税庁にお願いをしておきたいと思います。  それから次に、これらの行為についてはすでにもう昨年来警察庁としても取り組みをしていただいてきているわけでございます。これについては、広範な調査も進める、こういう御回答をいただいてきておりますが、警察庁としてはその捜査はどのように進んでおられるか、それから現状把握をどのようにしておられるか、警察庁の方からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  126. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えを申し上げます。  御指摘の事案につきましては、警視庁におきましてこれまでに日本中央競馬会の関係者等二十数名、これは延べにいたしますと八十数名の方になるわけでございますが、これらの方々からの事情聴取を行いました。また、そのほか外国照会を行う等、所要の捜査を行っておるところでございますが、一部外国照会の回答が得られていないこと等によりまして、現時点におきましてはいまだ結論を得るに至っておりません。今後これらの回答の結果等を踏まえまして、総合的に検討した上で判断をいたしたいと報告を受けているところでございます。
  127. 小川国彦

    小川(国)委員 会計検査院がお見えになっていると思いますが、会計検査院はこの実態をどういうふうに把握、対処されておりますか。
  128. 天野進

    ○天野会計検査院説明員 本件につきましては、会計検査院では、毎年日本中央競馬会本部の検査でこの種の種馬の購買について検査を行ってまいりました。このような外回産種馬の購買については、商慣習として契約書類等の関係書類の作成は省略していたり、また、馬の価格の妥当性を判断するということについてはきわめてむずかしい特殊な要素が絡んだりしたことであり、しかも海外における取引でもあること、私企業の取引でもあったので、われわれの検査が及び切らなかった面がございました。  本件種馬の問題について、昨年以来、委員の御指摘もあり、その後重大な関心を狩って検査を進めてきましたが、何分にも会計検査院は直接検査し実態の解明に当たるとか疑惑の解明に当たるということが非常に困難な情勢にありましたものですから、日本中央競馬会からの調査結果の報告を随時受けるとともに、関係資料の収集を図り、本部実地検査の際などには競馬会が入手したすべての調査資料等についてその確認を行うなど、事態把握に努めてまいりました。
  129. 小川国彦

    小川(国)委員 国税庁それから警察庁、会計検査院、それぞれお取り組みをいただいているわけでございますが、いま行政改革の中で国が大変な財政難、財源難に陥っているそういう状況の中では、国の予算の執行というものは適正に行われなければならないものでありますし、ましてや今日の中央競馬会の請求している金額というものは、考え方によってはまさに詐欺行為になるか背任になるか、そういうような問題を含めた藤井治商事の八千百六十七万であり、それから野沢組の八千十一万であり、この一億六千万というのは国民の一人一人の税金と同じ内容のお金であるわけです。  ですから、こういうものが中央競馬会の手ぬるい返還請求の中で、あるいはまた新たに民事訴訟を起こすということになれば、またさらに国費、弁護士代をつぎ込んでやるということになってくるわけで、国の機関の綱紀の紊乱のためにそういうことがあってはならない、こういうふうに考えるわけで、国税庁当局あるいは警察庁当局においてはそれぞれの立場からさらにこの問題の究明に当たっていただきたい、こういうふうにお願いしたいと思いますが、この点はいかがでございますか。国税庁、警察庁、それぞれ御答弁いただきたい。
  130. 木下信親

    ○木下説明員 先生のおっしゃったとおり、しっかりやるつもりでございます。
  131. 上野浩靖

    ○上野説明員 先ほども申し上げましたように、外国への照会の回答の結果等を踏まえまして、総合的な立場で判断いたしまして今後進めてまいりたいと考えております。
  132. 小川国彦

    小川(国)委員 そこで、私は農水省にお伺いをしたいと思うのですが、中央競馬会の怠慢な対応というものもさることながら、農水省としては、当然こうした中央競馬会のあり方——総額でいきますと、藤井治商事だけで一億六千六百五万円、こういう金額をいわば詐欺的に不正領得していた。それからまた、同様に野沢組においても八千十一万というお金を領得している。両省合わせますと二億五千万に上るわけです。二億五千万ものいわば国民の税金と同じような国の予算をだまし取られてきたという中央競馬会の体質、このあり方というものは、中央競馬会の責任だけではなくて、やはりこれは農水省としても大変な監督責任があるのじゃないか。特に畜産局の中には競馬監督課というものがあるわけですから、そういう点ではこの監督指導というものを一体どういうふうにお考えになるか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  133. 石川弘

    石川(弘)政府委員 昨年来この案件につきましていろいろ競馬会を督励いたしまして事実の解明に努めてまいったわけでございます。非常に膨大なことでもございますし、また、海外の事案でございましたけれども、ようやくこういう全貌と申しますか、全体の姿の一端を明らかにいたしまして、必要な請求ができるように競馬会を指導してまいったわけでございます。  もちろんわれわれといたしましても競馬会のいろいろな予算の執行とかあるいは業務の執行につきましては重大な関心を持っておりまして、いままでもこういうことの適正な実施ということに努めてまいったつもりでございますが、今後も一層自戒をいたしまして、このような事案が二度と起こらないように日々これ指導監督をしていくつもりでございます。
  134. 小川国彦

    小川(国)委員 この藤井治商事は、いま私ども伺っているところでは、ハンザダンサーの八千四百四十万は別として、これは一応五十七年度の決算で歳入として取ったわけでありますからその問題はさておくとしましても、新たに請求している八千百六十七万、これの見通しはまだ不明なわけです。私どもの承知しているところでは、とうていこれを返そうという誠意はない、こういうふうに感じているわけです。  ところが、農水省では、一方そうしたきわめて悪質と思われる会社に対してオレンジの輸入割り当てをしている。五十六年度で七万五千トン、約百四十二億円のオレンジが日本輸入されているわけですが、その中で藤井治商事は第一位で、かなり高いシェアの輸入割り当てを受けているというふうに私ども伺っているわけですが、この藤井治商事に対してのオレンジの輸入割り当てというものが現行どのようになされているか、その点をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、加藤(紘)委員長代理着席〕
  135. 小島和義

    小島政府委員 輸入割り当て物資につきましてはいろいろな仕組みがあるわけでございますが、オレンジの場合には、直接消費せられる物資でございますので、農林水産省といたしましては通産省から輸入割り当て数量についての相談を受ける、それは総体の数量でございまして、これを上期、下期にいかように分けるか、いつごろ割り当てをするか、こういうことについて相談を受ける立場にございまして、業者別の割り当てにつきましては通商産業省の専管事項、こういうことに相なっておるわけでございます。
  136. 小川国彦

    小川(国)委員 通産省の方から、その割り当てをしているかどうかについて御答弁願いたい。
  137. 土田清蔵

    ○土田説明員 お答えいたします。  商社が割り当て申請を行っているかどうか、あるいは行ったかどうかということ自体、その商社にとりましては企業活動の一環というようなことになりまして、私企業の秘密にかかわるというようなことでございますので、私ども役所の立場からは、明らかにすることは輸入業者に対しましていろいろな影響を与えるというようなことで、これまでも申し上げることは差し控えさせていただいてきているわけでございます。  ただ、先生ただいまお話がございましたように、巷間そういうふうに言われているということは事実かと思います。
  138. 小川国彦

    小川(国)委員 こういう方が日本政府の役人としているからこういう事件が起こってくるんだと私は思うのですよ。私の方でいろいろな、もちろん業外の中の業界紙その他を見ても、この人は日本柑橘輸入協会の会長をなすって、しかも五十二年では一七%、五十三年でも一五%、五十五年でも一四%という割り当てを受けているということはもう一般的に周知の事実なんですね。しかも、この藤井治商事というのはオレンジの輸入割り当てを受けている九十六社の中の一社であるということ、これも既定の事実なんですよ。そういう事実を、あなた方は通産省の立場で一切そういうことも申し上げられない、私が端的に聞いた、輸入割り当てを受けていますか、このことも答えられないとおっしゃるのですか。
  139. 土田清蔵

    ○土田説明員 お答えいたします。  先ほど私が申し上げましたのは一般論としてということでございまして、先ほどもお話し申し上げたかと思いますけれども、藤井商事自体どうであるかというようなお話であるとすれば、実際に割り当てを行っているというふうにお答えしたいと思います。
  140. 小川国彦

    小川(国)委員 大分手間のかかる話だ。  それじゃ、割り当ては業界の中でかなりな高いシェアを占めている、こういうように承知してよろしゅうございますか。
  141. 土田清蔵

    ○土田説明員 お答えいたします。  割り当てを受けております商社の中でどのくらいのランクを占めているか、その順位につきましても、実は先ほど申し上げましたように企業活動等にいろいろな影響を及ぼすというようなことで、私ども公表は差し控えさせていただいておりますけれども、ただ、先生いまお話がございましたように、藤井商事につきましては上位にランクされているということは言えようかと思います。
  142. 小川国彦

    小川(国)委員 それからさらに、農水省の所管の中で、藤井治商事が経営しております、社長になっているインペリアル航空、これはヘリコプター十機を所有しているわけでありますが、これが社団法人農林水産航空協会で行う年間約十六億三千万、この農林水産航空協会の一部の仕事を行っているわけです。その中で松くい虫のヘリ防除の仕事も請け負っている、こういうことも私ども伺っているわけですが、これは事実でございますか。
  143. 小島和義

    小島政府委員 ただいま、私、正確な数字は記憶いたしておりませんが、ヘリコプターも所有いたしておりますし、農林水産航空協会のメンバーにもなっているはずでございますから、水田におきます防除並びに森林におきます松くい虫防除の仕事もしておるというふうに記憶いたしております。
  144. 小川国彦

    小川(国)委員 そこで、農林水産大臣にお伺いをしたいわけでありますけれども、いまお聞きのように藤井治商事、それから野沢組は長年にわたって日本中央競馬会の競走馬の輸入に携わってきていた。しかし、今日判明しただけでも両社だけで二億五千万に上る不当領得というか不正領得というか、中央競馬会をだましてそういう多額のリベートを相手方から受け取っていた。あるいはこれは共謀の上でなされた詐欺行為かもしれない。これは今後警察庁や国税庁の調査を待たなければならないわけでありますが、そういうように長年にわたって不正事件を引き起こしてきている。  しかも、この藤井治商事の場合は、かって佐藤内閣の時代の河野一郎農林大臣のころの競走馬の不正輸入から事件を起こした当事者の一人であった。刈時逮捕されたということも事実としてあるわけです。そういう業者がその後依然として、農林水産省から、所管の中央競馬会からも仕事を受ける、あるいはこうしたオレンジの輸入の割り当ても受ける、あるいはまたヘリ防除の飛行機も持って、ヘリコプターも持って仕事ももらう。こういう形で、昭和五十一年十七億程度であったところが、五十五年では六十一億円という膨大な売り上げを持つところにまで来ている。その売り上げの五割がオレンジで、二割が競走馬の輸入だ、こういうふうに言われているわけですね。このように中央競馬会がお金を一億八千万も早く言えばだまし取られて、一億六千六百五万円ですか、だまし取られて、そして八千四百四十万は返させたものの、そのあとは、これからまた訴訟でもしなければならないというような状況に追い込まれている。  そういう会社が、一方でオレンジ業界でいま通産省でも言われるように輸入割り当てを受け、大変高いシェアの配分を受けている、ヘリ防除の仕事も受けているということは、これはやっぱり大変な癒着があるんじゃないか。農水省とこの藤井治商事との間には大変な癒着があって、それがゆえに、こういう不正なことを行われても、その金を——本来なら、ハンザダンサーの八千四百四十万の事件は去年の七月七日に発覚しているわけですよ。もう一年三カ月たつ。そのときすでに、五十年以降の競走馬の輸入について不正があったのではないかということはもう当然想像されている。一年三カ月も中央競馬会が外国の調査会社を頼んだり、あるいは探偵事務所みたいなものを頼んだり、あるいはまたいろいろな会計事務所なり調査機関を頼んで、弁護士事務所も頼んで、これも大変な調査費を使ったろうと思うのですよ。そして今度はまた裁判費用も使わなければならない。こうした公序良俗といいますか、あるいは信義誠実といいますか、国の機関を相手に商売をする人は、人一倍商社としては信強誠実に基づいた商売をしている人でなければならないと思うのですよ。それが八千四百四十万も委託契約の違反だということで取り戻されて、さらにまた一億六千六百五万円をやっぱり委託契約の違反で返せと言っても返す気配がない。そういう商社に、一方でこういうヘリ防除をやらせたり、オレンジの割り当てをしてもうけさしたりして果たしていいものかどうか。  これはやっぱり農林水産大臣としても、こうした中央競馬会なり農水省を指揮監督する立場で、当然こういうことがあってはならないというふうに私はお考えになるべきじゃないかと思うのでございますが、大臣、その点は御所見はいかがでございますか。
  145. 金子岩三

    金子国務大臣 小川さんの御指摘は適切な御指摘だと思います。当然農林省に責任があります、監督の地位にあるのでございますから。いろいろ癒着云々のお話質問の中にありましたけれども、そこの辺は私は承知いたしませんけれども、この問題、長い間世間を騒がせておるわけでございますから、五十年以来、わが方には監督の地位にありながら大変手落ちがあった、このように反省いたしております。今後はひとつ強い姿勢で競馬会を指導してまいりたいと思います。
  146. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣が反省をしているということをおっしゃられていて、それから適切な指導監督をすべきにそれが欠けておった、世間を騒がせたようなことは申しわけない、今後取り組むということはわかるのですが、私どもからしますと、五十七年七月七日に発覚したこの事件が延々一年三カ月もかかっている。そして、その調査結果が出たのが一年三カ月かかったつい数日前だ。この調査自体も、私どもに言わせれば何も海外の調査機関を使って高い費用を払って調査をしなくても、当事者である藤井治商事なり野沢組を呼んで、どういう経過で競走馬の輸入でリベートを受け取ってきたのかということをもっと突き詰めてやるならば、国内的に当然この問題はもう処理がついていいはずなんですよ。一年三カ月もうだうだと海外の調査結果を待たなくても、本当に藤井治商事、野沢組が信義誠実の原則に基づいて民法の言うような商社としての商行為をやってきているなら、こういうふうに二億五千万も返せ、まあ八千万は返したけれども、一億八千万はこれからなんですね。そういうようなことをうだうだとやらなくても、もういままでに当然解決がついていなければならない、常識的に考えればですよ。そういう問題が解決を見てない、ここに私は中央競馬会なり監督する農水省の畜産局なりの無責任さがあると思うのですよ。  言うなればもう今日までの時点で、この二億五千万は早く言えば詐欺的な行為に遭った、これはわれわれの監督不十分であった、したがってその両方の業者は切る、一切の仕事を切る、と同時に、そういう監督の不行き届きであった中央競馬会なり農水省の監督責任にある者はきちんとその責任をとる。責任のとり方はいろいろあると思いますけれども、やはりそういうけじめををきちんとつけられる日本政府機関でなければならないと思うのですよ。そういう反省がなくてずるずるとやって、これからまた裁判を起こして結果を見ますなんということでやっていたら、また裁判は半年、一年かかるでしょう。二年、三年かかるかもしれませんね。そういうことをやっていたら、こうしたきわめて不祥事が起こったことのけりというのがつかないと思うのですよ。行政のけじめというのがつかないと思うのですね。  競馬会の理事長にしても、長年役人生活をされた方で、その最高の地位につかれているわけですから、こういう問題の責任というものは、五十年以降この問題になった二億五千万に該当する馬の購買に当たってきた責任者は一体だれなのか、担当理事はだれであったのか、購買課長はだれであったのか、そこのところでこういう談合的なこととかあるいは多額のリベートを取るという不正なことが行われたことの監督ができなかった購買課長とか担当の理事とか、そういう者にどういう形においても反省すべき責任というものはきちっととらせる、それはやはり役所のけじめだと思うのですよ。  同時にそれは、農林省の畜産局においても競馬監督課という一課を設けて中央競馬会を監督する立場にあるわけなんで、それがやはりこういうふうに一年三カ月たってもまだ結論が出ないというようなことをしているんじゃなくて、もう私が質問をしたのは、この春の三月五日、三月三十日、予算委員会とこの農水委員会で二回も質問しております。早期結論を出しますと言った、それから半年たっているわけですよ。半年たったいまにおいてまだ解決しないで、まだ自主返還を求めて、これからまた裁判をやるかもしれない。そういう無責任なことでは、国の特殊法人としての中央競馬会も農水省も、行政の折り目、筋目を正すことはできないというふうに私は思うのですよ。  その点について、まず当事者の中央競馬会の理事長と畜産局長からそれぞれ御答弁いただきたい。
  147. 内村良英

    ○内村参考人 ただいま先生から、国内的な調査でわかったんじゃないかという御指摘がございました。私どもは、昨年の七月事件が起こりまして後も、ことしの奏も藤井商事、野沢組を呼びましていろいろ聞いております。しかし、今日に至るまで、藤井商事はそのような金品は一切受け取っておらぬ、こう申しております。野沢組につきましては一部認めましたけれども、これは商取引上のリベートなんだ、税務処理も全部済んでいるんです、競馬会には御迷惑をかけておりませんというような回答をしておりまして、私の判断では、とても旧内調査だけでは真相を明らかにすることができなかったのではないかと思っております。  それから、これだけの事件を起こして競馬会は何ら責任をとらないのかというような御趣旨の御質問だと思いますけれども、私は、競馬会としてはきちっとした処理を、本件についてはしたいと思っております。
  148. 石川弘

    石川(弘)政府委員 今回の事案につきましてのわれわれの監督責任でございますが、五十年以来の事情につきまして十分調査の上、事案の性格をも勘案しまして、今後慎重に検討してまいるつもりでございます。
  149. 小川国彦

    小川(国)委員 いま内村理事長の答弁については、一応きちんとした処理をしたいということですから、その推移を見守りたいと思いますが、石川畜産局長の答弁は事案の推移を見たいということなんですが、それはどういうことでございますか。
  150. 石川弘

    石川(弘)政府委員 過去に起こりました各種の事件につきましての指導監督責任という問題がございますので、そういうものとのバランスと申しますか、いろんなことを考える必要があろうかと思います。
  151. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、この問題の決着を見てその指導監督責任の所在を明らかにする、こういうふうに理解してよろしいですか。
  152. 石川弘

    石川(弘)政府委員 そのとおりでございます。
  153. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、お二方にそれだけの決意があるならば、やはりこの問題の真相究明と事態の解決というものをもう少し積極的にやるべきだと思うのですよ。少なくとも一年三カ月かかって、これから裁判をやるというようなことではなくて、やはり当事者をきちっと呼んで、しかもそれぞれ農業関係の仕事をしている会社で、今後とも政府機関とのいろいろな接触なり交流なりなしには成り立たない企業だと思うのですよ。そういう企業が、国から裁判を起こされなければ金を返さないということ自体が、常識的にあり得ないのですよ。いま内村理事長さんは内部処理の責任については非常にいいことを言っているのですが、ただ、藤井はもらってない、こう言っているというのでしょう。もらってないという言い方だと、当然これは裁判に持ち込まざるを得ないですわね、現状では。見通してはそういうことになるんじゃないですか。
  154. 内村良英

    ○内村参考人 今週先方が藤井治商事としての態度を私どもに回答することになっておりますので、それを聞いてみないと、ちょっと何とも言えない段階にございます。
  155. 小川国彦

    小川(国)委員 しかし、もらっていないと言って言い張る限りにおいては裁判に訴えざるを得ない、こういうことですね。
  156. 内村良英

    ○内村参考人 そのとおりでございます。
  157. 小川国彦

    小川(国)委員 これは農水省の石川局長にも考えていただきたいのですが、中央競馬会はこういうふうに一年三カ月かかって今日に至る、そして結局もらっていないと言っているという状況の中で、この一週間以内の回答によっては裁判に移行せざるを得ない。移行せざるを得ないということは、私はこれはやはり不始末だというふうに思うわけですよ。こういう一億八千万もの金を領得して、常識的な中央競馬会としては恐らく弁護士さんとも相談されたりいろいろな法的角度を踏まえて、それから先ほどおっしゃるようにいろいろな事実を究明した証拠資料をもって返せと言っているわけですよ。それを裁判に移行しないでも、これをきちっと返させるというような監督指導が畜産局でできないものか。
  158. 石川弘

    石川(弘)政府委員 この事案が起きましてから、一つ一つの事案につきまして、その事案の性格に応じまして競馬会も弁護士さんとよく相談をいたしておりますし、私ども関係の省庁等にも報告をしながら相談をしております。事柄の性格上、片一方におきましては国際的な商慣習とかいろいろなことを言っている場合もございまして、私ども、できることならば競馬会との間の話し合いの中で事柄が解決するようにとは思っておりますけれども、どうしても意見がいません場合はやはり裁判という手段を使わざるを得ないと考えております。私どもも一生懸命そういう面での指導あるいは行政的な指導等もいたしますけれども、どうしても意見の合わない場合には裁判という手法を使わざるを得ない。それしか現状において方法がないということでございますので、極力努力はいたしますが、やはり意見がどうしても合わない場合には民事の訴訟という手法を使わざるを得ないと考えております。
  159. 小川国彦

    小川(国)委員 石川局長にもう一度伺いますが、たとえばヘリの仕事とか、あるいはオレンジの輸入の仕事とか、これは農水省の仕事そのものをやっている商社ですよね。そういうところに農水省の立場で、おれの所管じゃないからということじゃなくて、わきにいらっしゃるそれぞれの所管の局長さんなどと相談をすれば、そういう仕事をやって片方で裁判を受けなければ金を返さないような会社に、一方ではどんどん仕事を与えておるのですよ。会社に大変な利益を与えるような仕事を与えておるのですよ。こういう矛盾が存在する中で、あなた方は、農水省の仕事をしていく業者である限り、こういうことをきちっと話し合いの中で返せ、そういう筋目の話はできないのですか。
  160. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども、ごく常識的に考えられる手法としてはいろいろと努力はいたしておりますけれども、それでもどうしても意見が合わない場合には司法的な手段を使わざるを得ないと考えております。
  161. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、そういうところにきわめて無責任さがあると思うのですね。  それからもう一つ。言うならば、そこに癒着があるのじゃないかと言われるわけですよ。藤井治商事というのは、河野農相の不正競走馬の輸入に始まって、馬の輸入ではもう前科者なんです。それから数十寒。そしてまた今日こういう問題を引き起こしている。しかも、膨大な利益を上げた中では、日本精蝋という会社を何十億のお金を使って買い占めるようなこともやっている。そこには元総理大臣佐藤榮作さんの長男の方が一緒に買い占めした会社の役員に入っている、こういう事実もあるのですよ。そうすると、河野農相時代からのつながりとか佐藤榮作元首相のつながりとか、そういうものが現に生きているがゆえに農水省がこういうことに対して明確な方針なり態度をとれないのじゃないか、こういうふうな疑惑すら持っているのです。保守の政界からのいろいろな圧力やそういうものがあるがゆえにけじめのある行政ができないのじゃないか、こういうふうな疑惑すら持たれるのですが、その点はいかがなんですか。
  162. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども、たとえばいまおっしゃった癒着とか、そういうことがあるのでございますれば、そういう司法的手段に訴えるとか、こういうことはなかなか言えぬのだと思うのですけれども、私どもはまさしく行政的にやるべきことをやった上で、それでもなおどうしても解決がつかないことは、いまの日本の制度からいえば訴訟で要求を貫くという競馬会の立場を支援するわけでございますので、御心配のようなそういう何らかの圧力とか、そういうものは一切ないわけでございます。
  163. 小川国彦

    小川(国)委員 これは農水省としてはどうしてもおかしいと思うのですよ。年商六十億の売り上げのうち半分の三十億はオレンジで稼がしてもらっているというのですよ。それから、二割の十億は競走馬でもうけさせてもらっているという会社なんですよね。そういう会社が裁判でも起こさなければ金を返さない。そういう不正な、不当な会社に一方では巨額の利益を与える仕事をやっているのですよ。これじゃけじめがつくわけないでしょう。片方で裁判を起こさなければならないような不誠実な相手なら、そこに仕事を与える必要はないでしょう。これは常識だと思うのですよ。そういう常識的なことをやれないところに農水省が監督責任を果たせない重大な責任があると私は思うのです。  これは最後に大臣伺いますけれども大臣、こういうことで物事のけじめがついていくと思いますか。農林水産行政のけじめがついていくと思いますか。片方で不正をやって金を返さない、裁判を起こさなければ取れるかどうかというような相手に一方でどんどんまた仕事の割り当てをして稼がしてやっているのですよ。これはおかしいじゃないですか、常識的に考えて。大臣の公正な行政の最高責任者としての判断を求めたいと思います。
  164. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいまの御指摘のとおりであるとするならば、やはり矛盾が大変はなはだしいと思います。いま申されましたとおり、片一方では迷惑をかけ、損をかけて、片一方ではもうかる、こういうことは常識でやれることじゃないのでございます。農林水産省がその内容実態把握し切らぬでこういうことがずっと続けられておるのかどうか、私もよく承知いたしておりませんので、最後の御指摘の点は初めてきょう承りました。よく検討をして、ひとつ善処をいたしたいと思います。
  165. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  166. 加藤紘一

    加藤(紘)委員長代理 小川君の質問はこれで終わります。  続いて、吉浦忠治君。
  167. 吉浦忠治

    吉浦委員 鶏卵のやみ増羽問題にしぼりまして質問をいたしたいと思います。  現在の養鶏農家は二年続きの低卵価に泣いておりますけれども、この経営状態は全く危機的な状態だろうというふうに思うわけでありまして、いまアメリカ等で農作物等の、いわゆる飼料作物等の不作が伝えられておりますが、今後飼料作物というものは大幅な値上げをするんじゃないかというふうな危惧の念も抱かれておる折に、もしもこのまま低卵価で推移してまいりますと、ほとんどのまじめな養鶏農家は全面的に崩壊するんじゃないかという危険さえ生んでいるわけであります。  そこで、私はすでに何回も繰り返して養鶏問題を取り上げておりますけれども、五十三年六月に国会決議を行いました。与野党一致の国会決議を行いましたが、これは鶏卵生産調整の強化等に関する決議でございます。その中において「養鶏農業の一部門として位置づけ」るという明確な位置づけがございます。その後、五十六年でございますが、鶏卵計画生産推進事業の強化という点で、無断増羽者等の二五%減羽ということで生産調整の協力という中に入れてまいりました。あらゆる手だてを踏んではこられましたが、今日、一部商社でございますけれども飼料業者等を指していいと思いますが、そういう関係業者の方々が大規模なやみ増羽を行っている現状がございます。逐次申し上げたいと思いますが、これはいま行われております鶏卵生産調整、計画生産というものが崩壊寸前にあるのじゃないかというふうに考えるわけです。  そこで、私は、まず第一点、わが国養鶏政策の基本というものは行政指導に基づく計画生産、また安定的な卵価をつくり出すという点にあると思いますが、昭和四十九年より需給調整の名のもとに、また先ほど述べましたように五十六年からは計画生産という名称で来ておりますけれども基本的理念というものには変わりがないのじゃないかというふうに思います。そのあたりの養鶏政策に対する基本的な考え方をまずお答えいただきたい。
  168. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように五十三年に決議をいただいておりまして、私ども日本養鶏業を考えます場合に、非常に良質のたん白質というものを安定的に供給するという面では大事な産業でございます。しかも、それが単に企業的な活動というのじゃなしに、かなり大規模のいわば農家養鶏というものに支えられておりますし、その人たちの合理的な努力によって価格の面では最も安定的に推移してきた、そういう事実を踏まえまして、先ほど先生もおっしゃいました農業の一部門として位置づける。何か加工畜産という言葉もございますけれども農業者が諸活動をする中で生産を上げていくという基本理念については変わっておりません。五十二年度の御決議の中にもありますように、卵の需要自身はほぼ上限値に近づいております。したがいまして、急速に需要が伸びるということはもうないわけでございますので、極力その需要の高さに生産を合わせていくということを基本にいたしまして、これも先生から先ほど御指摘のありました五十六年の通達の中でも、この計画生産が守れるような体制づくりをするという基本方向で進んでまいっております。
  169. 吉浦忠治

    吉浦委員 くどいようですけれども、五十三年の国会決議の中に「養鶏農業の一部門として位置づけ、農民が生産意欲をもって取り組める基本養鶏政策を確立すること。」こう第一項にうたっているわけですね。私が申し上げたいのは、この「農業の一部門として位置づけ、」同時に「農民が生産意欲をもって取り組める基本養鶏政策を確立する」、いまこういう点で局長はどういうふうにお考えですか。
  170. 石川弘

    石川(弘)政府委員 どちらかと申しますと、農民が意欲を持ってやるという場合に、かって大規模化等を進めた段階のように、設備投資とかそういうもので誘導するといいますよりも、極力卵価が安定するようにというところに政策の基本を置いておりまして、予算的に申しましても、御承知のように卵価安定基金に相当の政府の資金を出すとか、あるいは過剰時におきましては今回発動しましたような液卵公社の活動を促すとか、それから生産資材について、えさの値上がりの時期にこれを抑制しますための飼料安定基金飼料価格を安定させる、ここの三つのところに政策の重点を置いてやっておるわけでございます。
  171. 吉浦忠治

    吉浦委員 私は前の委員会から名前を余り挙げないで来ましたけれども新聞に出ておりますからきょうは少し名前を挙げさせていただきます。  この基本政策を乱す養鶏企業というものがあらわれてまいりまして、この中のイセ、タケクマ、御存じでございますね、この業者が混乱させたのが昭和五十三年だ、私はこう思うのです。最近はまた違った形で出てきておりまして、五十三年当時イセ、タケクマが混乱をさせた状態のときにこの国会決議をいたしたわけですけれども、この国会決議後に安定した卵価というのは一時期ございましたが、今度の場合は商社系、しかも飼料メーカー系に支援された養鶏企業というのがやみ増羽の元凶ではないかな、こう思っております。このことによって良識あるまじめな養鶏農家方々が生活を追われてくるというふうな現状を見ますときに、今年の手取り卵価というものがキロニ百円以下というふうにごく最近悪くなってきておりますけれども、低卵価原因というのはどこにあるというふうにお考えでございましょうか。
  172. 石川弘

    石川(弘)政府委員 卵価につきましては、御承知のように五十六年に平均卵価で三百円を超えまして三百四十円というような比較的高い卵価が形成されました時期に、こういう高い卵価に誘導されて増羽が行われるのではないかということを大変心配いたしまして、生産者方々等相集いまして、例の県段階でのいろいろな需給調整のためのことをやったわけでございますが、あれ以降の動きを見てまいりますと、率直に申しまして、地域を限らず、あるいは大規模、中小規模を限らず若干増羽傾向が続いたことは事実でございます。そのことが五十七年卵価を下げましたし、さらに五十八年一月以降の低卵価になったわけでございますが、先ほどもちょっと申しましたように、幸い昨日の卵価は二百八十円台まで回復しておりますけれども、やはりそういう全体としての増羽傾向の動きがあったように思います。  しかしながら、御承知の五十六年の計画生産の県段階への浸透に伴いまして、いわばやみ増羽をなさっている企業体の数は、五十六年通達の前提となっております五十五年五月の調査では当時百一企業体でございましたが、ことしの五月、これは各県を使いまして厳密に再調査した結果は三十八企業体に、企業体数だけは実は減ってきたわけでございます。しかしながら、かつてのやみ増羽は比較的羽数の増加の仕方の少ないものもあったわけでございますが、この三十八企業体を見ますと、この中でいわば大規模なやみ増羽、要するに基本的に与えられました羽数をかなりオーバーしているものがある。こういうものにつきまして特定の系統と申しますか、一種の大型養鶏の傘下と申しますか、そういうものがかなりあるというのは事実でございまして、現在、ことしに入りまして以来のやみ増羽問題の論点は、この数は少なくなったわけでございますが、やみ増羽規模の大きいものをどうやっていわば調整していくかということが中心になっております。  これは先生十分御承知のように、今度調査しました三十八企業体につきましては逐次県段階でやみ増羽の認定をいたすとともに、卵価安定基金それから飼料安定基金から排除する方向をとっております。卵価につきましては実はもう補てんは八月以降は行っておりませんけれども飼料につきましては、たまたまこれからしばらくの時期は価格安定制度が非常に効果をあらわす時期でございますので、これから排除しますことは経営にもかなり大きな影響を与えると思っておりますので、こういうものを使いながら、数は少なくなったわけですが、規模が大きいやみ増羽の企業に対して生産者と一体になりまして行政指導を進めていくつもりでございます。
  173. 吉浦忠治

    吉浦委員 百一の経営体でありますけれども、これが年々減少してきたことだけは好ましい状態ではあります。経営体は確かに三十八というふうに少なくなった、この農水省からいただいた資料は間違いないのですけれども、そのやみ増羽羽数はそれに反比例して物すごい羽数になっていますね。御存じですね。  ちょっと県名を挙げて申しわけないけれども、これはちゃんと新聞に出ておりますので、北東北各地の企業養鶏、大規模やみ増羽ということで青森県、岩手県それから秋田県、三県にしぼりまして御報告いただきたい。やみ増羽のつかんでいらっしゃる現状を御報告いただきたい。
  174. 石川弘

    石川(弘)政府委員 青森県でやみ増羽として典型的なものにつきましては、それにも出ているかと思いますが、日本鶏業というのが一つ大きなやみ増羽のものであろうと考えております。青森県で調査をいたしました結果、これが台帳記載羽数を上回っているということでございますので、超過と認定をいたしまして両基金へ通知をいたしております。それから、この企業は岩手県におきましてもやっておるわけでございますが、これにつきましては現在超過はないわけでございます。  それから、岩手県につきましては幾つかのものがございまして、これは企業体で申しますと、先ほどのものを除きまして五企業体がございます。現在、やみ増羽と明確に認定されておりますのは三企業体でございます。これらにつきましても県協議会で超過をしたという認定をしておりまして、両基金に通知をいたしております。一企業体は、そこには問題のあるものとして挙げでございますが、これは現在許可なしに工事を着工中のものでございまして、工事の中止命令等を出している企業体であろうかと思います。  それから、秋田県につきましては二つの企業体が挙がっておりますが、一つにつきましては、確認調査に入りました結果、超過はないということでございます。それから、一つの企業体につきましては明らかにやみ増羽でございまして、これらにつきましては、現在、基金に通知をいたしますと同時に、県といたしましては、これは本来育成鶏の農場として認めたものでございますのが採卵鶏をやっているということで、育成鶏の農場に戻すようにという指導をしているところでございます。
  175. 吉浦忠治

    吉浦委員 ちょっと細かく詰めてみますけれども、名前がちゃんと挙がりましたので、青森県における日本鶏業、これはいま何と百万羽の増羽を図ろうとしているのですよ。御存じですか。
  176. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私どもでは、台帳記載羽数が十三万三千六百羽に対しまして、本年八月の立ち入り調査では十六万七千三百六十四羽ということでございまして、三万三千羽ばかりの超過でございました。
  177. 吉浦忠治

    吉浦委員 この日本鶏業というのは、旧福田種鶏場、こう言っておりますけれども、これは種鶏場を排除して採卵養鶏に全面的に切りかえてきた企業でございます。この企業が五十七年の初めには約二十万羽の無断増羽をやっております。これは、県の需給調整協議会指導のもとに従うということでその枠の中には入れてもらったけれども、その復そういうふうな甘い汁を吸った上にどんどんと増羽意欲をつのらせてきているのが現状でございます。悪いのは、一つの県だけに限らずに二県も三県もまたがってそういう無断増羽の棟をどんどんとっくってくるというような現状にあるわけでして、増羽羽数は大体一棟三万羽、こういうふうに推定されますけれども、その高床式鶏舎を九棟建設中でありまして、この九棟が完成しますと総羽数が約七十万羽から八十万羽と言われておる。  こういうのがどんどんとできているのにそのまま放置されているということは、やはり早く国会調査団でも来てもらって的確に手を打ってもらわなかったら、とどまるところがないというふうな現状でございます。これを国会で問題にしなければ、このまままた——県の弱腰の需給調整協議会等で任せられているというふうな答弁では私は納得ができない。こうなりますと、この背後にはその企業を支え、融資をしている商社がいるに決まっているわけです。何十億という資金が必要でございますから、その金がどこから流れてきているのかということになるわけです。日本鶏業だけでできるわけがないわけです。したがって、背後に強力なバックアップをするものがいるはずだということで、日配なりニップンというふうに支えている業界がございます。そこで、その背後には大きな商社がいるというふうに言われているわけです。それがこの東北市場をフル稼働させながら資金面のめんどうを見ているのではないか、そしてその増羽を強行させているのではないかという疑いがあるわけです。どのようにお考えになりますか。
  178. 石川弘

    石川(弘)政府委員 実は私どもは、御指摘のような事案につきましては、一つ一つ、企業の当事者それから飼料を供給していると言われているもの、そういうものからの聞き取りをいたしております。  いまの日本鶏業につきましては、資本金の大半と申しますのは先生も御指摘の方、個人が六割以上持っておりまして、そういう意味で、資本的にいえばまさしく個人の色彩の強い会社でございますが、いま御指摘のありましたような商社とか配合飼料メーカーが資金的援助をしているのではないかというふうなことにつきましては、実はこれは、かつて養鶏団体の方々がそう言われておりますようなところに行きましていろいろ話し合いをされました際にも、そういう資金援助は全くしてないということをはっきりさせております。それ以外に、私どももどういうところからえさが入り、どういうところに物が流れているかということも含めましていろいろ調査をいたしております。  現段階で、そういうものが資金的に援助をしているということを明瞭に確認できるようなものを私ども持っておりませんけれども、この企業は御承知のように配合飼料基金とか価格安定基金に入っている企業でございますから、私どもはこういう無断増羽実態が明瞭になりましたので両基金から排除する、実はこの前も、そういうことで排除するぞというようなことで減羽を指導した経緯のある会社でございますが、今回も、そういうことをやりますことにより減羽を指導しますとともに、えさを供給すると思われるものにつきましても、この企業がいわば計画生産に反した行動をとっているということを熟知させまして、取引が拡大されることがないように個別にも話を行っているところでございます。
  179. 吉浦忠治

    吉浦委員 ちょっといまの答弁では納得できませんけれども、秋田県等においても、これははっきりとタケクマグループが三十万羽農場建設をしております、これは御存じですか。県の需給調整協議会の立ち入りを拒否しているという。それで県がその確認の点で弱っているというふうな現状があります。これは八郎潟のすぐ北にあります八竜町というのですか、このタケクマグループの八竜養鶏組合が、昨年、ひなの育成施設と称して農場建設をしている。その後調べてみると、どうやら成鶏が入っているというふうなうわさがあるわけです。こういう点で立ち入りを拒否しているという点、これはおかしなことをやっているから立ち入りを拒否するわけでありまして、その件はどういうふうにとらえていらっしゃいますか。
  180. 石川弘

    石川(弘)政府委員 立ち入りを拒否されているというようなことがございましたので、強力に指導いたしまして、立ち入りをいたしました結果、先生も御指摘のような育雛としてつくりながら採卵鶏を入れるということでございますので、県は九月十六日に県協議会を開きまして、えさ基金とか卵価安定基金から排除するという手続をやっているわけでございます。これにつきましては、設立の当時からいろいろと問題がありましたので、確認手続はたとえば建築確認とか国土利用計画の確認だとか森林法の確認とかいう諸段階で常々見張っていたわけでございますが、最終段階で育雛と言いながら採卵鶏を入れたということでございますので、ちゃんと立ち入りをしました上で確認の上、基金から排除の手続をとりました。
  181. 吉浦忠治

    吉浦委員 岩手県における同じタケクマグループのやみ刈羽の七十万羽ということが言われて、この前大会がございました折に、岩手県選出の代議士の方からも、農振法や森林開発等の許可もとっていないということで、不法建築であるという点からもこれは当然差しとめすべきだ、また、差しとめるという強い決意表明等も私は開いております。森林田発の許可もしない、また農振法に関する違法なこともやっているということで、しかもその中で秋山の八竜養鶏組合と同じように収容能力が三万羽ある高床式鶏舎一棟建設中で、この工事現場等から見ても成鶏舎というふうにはっきりわかる。地元の話では七十万羽の計画というふうに言われているわけですね。三万羽の鶏舎が二十棟建設が進められている、こういうわけです。  そこで私は考えていただきたいわけですけれども、これはブロイラーの販売会社ということで日本鶏業というふうになっておりますが、秋田、岩手のタケクマと青森の日本鶏業の増羽というものが関連したものじゃないか、その背後で大きな商社経営の物産会社が操っているのじゃないかというふうに言われている。秋田で三十万羽、岩手で七十万羽、それだけでももう百万羽です。日本鶏業が青森で百万羽、こうなりますと、それを合わせただけですでに二百万から三百万羽を増羽してくる、こういうことになって、確かに先ほどの三十八経営体というふうに百一から減ったけれども、やみ増羽は依然としてふえている現状、この根本的な解決策を図らなければならないときが来ているのじゃないかというふうに私は感じます。いかがでございますか。
  182. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま御指摘の岩手の事案につきましては、先生も御指摘のとおり、これは林地開発の許可もとっていないとか農振法上も問題があるとか建築確認も出さないという、違法行為のいわば束になって出てきたような事案でございますので、県もそういう段階で工事を差しとめております。したがいまして、養鶏というのにはなかなかいかない。しかし、そういう非常に不法な行為をしているというものの代表であろうかと思います。  私、実は五十三年以降の養鶏振興の姿をずっと見ておりますと、高卵価になった場合にこういうようなものが出るという可能性があったわけでございますが、幸いにして数はだんだん減ってきた。しかも、今回はこのような事情、卵価がある程度下がってえさ価格が上がってくるという段階でございますから、こういう段階では実はわれわれが政策的にやっています卵価安定基金とか飼料安定基金から排除されるということは、鶏卵経営上も非常に致命的な条件ができるときでございます。したがいまして、私ども、両基金からの排除も的確に、しかも迅速にやることによりまして、これら数は少ないわけでございますが、どうも無断行為の多いものについては強力に指導できる条件は整ってきているのではないかと思います。ただ、それでもなかなかという場合もございますので、飼料の購入先なりあるいは卵の販売先といったものについても十分に精査をいたしまして、一つ一つ、いわばそういう不法行為をさらに助長し得るような環境を少しでも絶っていく。最終的には、これは強権を伴うことはなかなかむずかしいわけではございますけれども、行政上のいろいろな手法もございますので、これの限りを尽くしまして、こういうものの数をさらに減らすように努力をしていくつもりでございます。
  183. 吉浦忠治

    吉浦委員 農水省として私特にお願いをしたいのは、いま県の指導を強力にしてもらいたい、あるいは地方の農政局ですか、また県の指導というものに任せていらっしゃる向きが多いわけですけれども、これをどのような指導をなさっておられるかという点で少しばかりお尋ねをしたい。  無断増羽と認定された件について、各県とも需給調整協議会等が調査をする場合に、調査が拒否されてその羽数確認ができないという声も聞かれているし、また、無断増羽の認定をしても、いま局長の言うように基金から除外すればまた勝手なことをやる、だから中に入れておいて守ってやった方がまだいいんだというような弱腰の点が多々ある。また、局長も恐らくその腹ではないかと私は想像しているのです。そういうことで、あるいはひなが売れなくて成鵜になってしまったというふうなことで、しばらく様子を見てくださいということで、県の単位であれば顔見知りでもありますからなかなか指導がうまくいかないということで、その日延ばしで今日まで来ている点が多いのではないか。そのやみ増羽現実は、県、また国の指導の弱腰から来ている点が多分にあると私は思うのです。  そこで、私はいま三つの県を挙げて、ここは一番顕著でありますから挙げさせてもらいましたけれども、タケクマ等の例に見るように、悪質な無断増羽者というのは各三県ともにまたがるくらいの大きな農場を持っているわけですね。そうなりますと、それを支えている商社というのが支援をするということで、県では個々のケースとして扱いますけれども、その効果は調べてみても非常に薄い。三県なら三県のものをまとめて指導すれば効果はありますけれども。そういう点の手ぬるさがあるのではないか。そういう点では、国における強力な指導がもう必要な段階になっていはしないか。一たんは地方に任せても、それがうまくいかなければやはり国で何らかの手だてをやっていくべきではないか、こういうような気がしてならないのです。いかがでございますか。
  184. 石川弘

    石川(弘)政府委員 すでに前国会におきましても先生から御指摘がありまして、県だけではたとえば立ち入りを拒否されたというようなこともございまして、私ども今回五月の立ち入りの際は農政局の担当者を派遣をいたしまして、農政局から行って調査もすべて完了したわけでございます。今回は立ち入り拒否というのは皆無でございます。  そういうぐあいに、すでに国は相当前面に立って指導いたしておりますし、先ほど基金から除外をすると好きなことをするから、むしろ中に入れてというのではないかという御質問がございましたけれども、実はこれは経済条件のいかんによりまして大変違いまして、比較的卵価が安定しえさの価格が安いときは、実は排除されるということは余り問題はないわけでございますが、現在のようにどちらかというと低卵価で資材費が上がってくるというプロセスでは、両基金から排除するということはかなり致命的な経営上の負担になるはずでございます。  私ども、三十八企業体のうちすでに二十二企業体につきましては確認行為を終えて両基金から排除をするように通知もいたしておりますが、そういうことはこれからの無断増羽を抑える面でもかなり役立つのではないかと思っております。御指摘のように国がどこまでやるかということはございますけれども、私ども決して後陣に控えているわけではございませんで、農政局を通じまして、特に県をまたにかけての事案だとか、あるいは県の中ではどちらかというと地元産業育成というようなニュアンスもありまして指摘がしにくいような事案とか、そういうものにつきましては国も直接指導をするということでございます。  無断増羽全体で申しますと、いま先生が御指摘のように東北が比較的大きく目立ったものがございますが、数から言えば関東等も相当ございますので、その地域地域に応じて必要なことをやっておるわけでございます。
  185. 吉浦忠治

    吉浦委員 ここで具体的な提案を私は行いますけれども、こういう事態の発生というものは国にも大きな責任があるわけでございますから、全国生産者方々のこの事態の対処の仕方によっては、将来に対する不安なりあるいは現実の問題等、かなり政府に対する不信を抱くだろうと思うのです。  そこで、最低次の事項が実現されるまで生産者は追及の手を緩めないとは言っておりますけれども、国に実現を図ってもらいたいという要望がございます。  その一つは、秋田のタケクマ及び青森の日本鶏業等に関して、新しくつくりました鶏舎は改造によって使用目的を変えるかどうかということですね。あるいは新設分に相当する旧鶏舎を取り壊させるような行政指導はできないものかどうか。これが第一点。  第二点は、融資が大きな商社によってなされているという、数十億とも言われている融資をしているやみ増羽、日配飼料というふうに言われておりますが、これは私新聞を資料といたしておりますので、調べていただきたいのですが、こういうことが事実ならば保税承認工場としての資格を取り消しても構わないのではないか、これくらい強力な手だてをしなければいかぬのじゃないかというふうに考えます。  この二点、お答えいただきたいと思います。
  186. 石川弘

    石川(弘)政府委員 合法的につくりました鶏舎につきましては、その使用目的に応じて使えということは当然言わなければいかぬと思いますが、取り壊しを命ずるということはわれわれの行政のルールの中ではなかなかないわけでございます。合目的的な使い方以外はしてはいかぬ。そういう使い方をするのであれば両基金からも排除する。それから、そういうことをやっておる限りは飼料供給者等についても逐一われわれとしては追及をするつもりでございますが、いわば何らかの正当な権限をもって鶏舎の取り壊しを命ずるということはなかなか無理かと思います。  それから、商社とか飼料メーカーが関与しているのではないかというお話につきましては、私どもそういうことのありますメー力ー等につきましてはいろいろとその実情を開いておりますが、これが明らかに融資をして信用を与えて工場をつくらせているということは確認するには至っておりません。そういうことにとどまるだけではなくて、われわれはいろいろえさの関係の業界等について、こういうメーカーについてはかねがねこういう計画生産に非協力なメーカーであるということで両基金からも排除されているということを十分熟知の上商取引をしてもらわなければ困るということを言っておりますので、彼らとしても大変慎重な態度で臨んでいるはずでございます。  それから工場の承認制度でございますが、これは工場承認制度の趣旨から申しますと、たとえば保税倉庫等のことで要するに合目的的にやらなければいかぬとか、いろいろあるわけでございますが、そういうことに背反をいたします場合につきましては、私どもそういうことの停止等もし得るわけでございますが、いま言いましたようなたとえば無断増羽というところに若干でも飼料が供給されているということだけをもってしてこの承認制度で云々することはなかなか困難かと思います。しかし、私どもはそういう手法ではなくて、先ほど言いましたようにみんなが計画生産をして卵価を維持しようとしているときに非常にそれを阻害しているような行動をとること、そういうことを恒常的にやっている者については飼料メーカーあるいは流通業者としても十分考えた行動をしてもらいたいということの行政指導は怠るつもりはございません。
  187. 吉浦忠治

    吉浦委員 もう少し一般の農家に対する温かい思いやりをやるのが政府の手だてでございますから、そういう点からすれば、十分な手だてをしていただかなければならない段階が来ている。どうも局長の答弁では納得できませんので、最後に大臣の答弁をいただきたいのですが、その前に、養鶏農家を守る点では最終的には通達やら指導というものよりもやはり立法措置が必要なときに来ているのではないか。これは仮称でございますが、養鶏安定法等のことも要望が出ていると思うのです。そういう点から、いま卵価のいろいろな問題を申し上げたのでございますけれども、その養鶏安定法、仮称でございますけれども、そういうお考えをお持ちなのか、どういう点で問題があるのか、その点を先にお聞かせ願いたい。
  188. 石川弘

    石川(弘)政府委員 養鶏安定法と仮に言われておりますものの中身につきましては、いろいろお考えの遠いがあるようでございますが、たとえば新規参入を完全に排除する、要するに既存の業者だけでやっていくという形で業者数を抑え込むとか、そういうことになりますますと、御承知のように独占禁止法とか、いろいろな法制との調整が必要でございます。  実は、養鶏の世界はある種の合理的な大型化の中で進んできたわけでございます。そのことは、農家養鶏といえどもそういう努力の中で安定的な経営をやってきたわけでございますので、そういう自助努力というものをもとにしていまの経営をどうやって改善するか。特にいま御指摘のあったような、非常に数は少ないわけでございますが、そういういわばアウトサイダーと思われるものをどうやって調整するかという問題でございますので、私は、法律の性格その他からいたしまして直ちにそういう排他的なことだけを主眼としましたような立法措置をとることには必ずしも賛成しがたいという立場でございますが、現状のいろいろな助成制度をうまく活用することによりましてかなりの程度の制約はかけられますし、現にそういうことの努力の結果、最近卵価も二百八十円台まで上がってきておりますので、さらに努力を続けるつもりでございます。
  189. 吉浦忠治

    吉浦委員 最後に、こういうやみ増羽の問題等について私は何回も何回もくどくどと質問をいたしておりますけれども、その根本的解決策というものはなかなかいまの行政指導ではできない、むずかしい。また、これをこのままに放置しておけばなおこれに輪をかけたみたいに増羽が図られてくるということで、最後には本当の一部商社経営なり企業経営だけが生き残れる。民主主張というものはこうあってはならないと思うのです。それだからこそこれに対する政治の対処の仕方が問題であって、真の民主主義というものは私は弱肉強食ではない、こう思っているのです。  こういう点で、最後に大臣の御決意のほどを開かせていただいて終わりたいと思います。
  190. 金子岩三

    金子国務大臣 吉浦先生の御指摘を承っておりまして、養鶏が非常に経営が困難であるということ、もちろん卵価にも相場に非常に大きな変動があるということでありますが、これはやはり養鶏経営安定を図り、今後養鶏農家が意欲を持って取り組むような政策をきめ細かくこれからひとつ検討させてみたいと思います。いろいろ御指摘の点は十分承りました。
  191. 吉浦忠治

    吉浦委員 ありがとうございました。終わります。
  192. 加藤紘一

    加藤(紘)委員長代理 以上をもって市浦忠治君の質問を終わります。  続いて、寺前巖君。
  193. 寺前巖

    寺前委員 日本生国の農民代表の方々が、あす日米農産物交渉をめぐって自由化。枠の拡大反対だということで大きな決起の集会をおやりになるようです。前後して農民団体いろいろがいまやっておられますが、幾つかの点について朝から質問がありましたが、私も聞いてみたいと思います。  まず第一に、アメリカの側が日米農産物交渉についてどんな態度をとっているのか、これについて聞きたいのです。  朝からの話を聞いていますと、交渉の過程だからということで公表を避けておられるようです。しかし、どういうわけか新聞にはいろいろ数字が出てきております。見てみると、その報道内容は、高級牛肉で現行枠の六割だとかオレンジで三割をふやすような数字が出てきます。高級牛肉では、来年一年間の輸入増加量が一万八千トンで、過去五年に増加した量一万四千トンを一年間ではるかに大幅に上回っている数字が一部の新聞に流れています。オレンジでは、これまで毎年五千トンずつ拡大してきたものを来年だけで二万五千トンふやすように迫るものが流れています。私は、記者会見金子農林大臣がむちゃくちゃだとおっしゃる以上は、国民の前にいま流れている報道というのが大体アメリカ側の要求なんだ、姿勢なんだというふうに受け取らざるを得ないと思うのですが、そういうふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。
  194. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  けさほど来繰り返し申し上げていることでございますが、十四日、十五日の協議につきましては、双方とも米御提案があったということを除いて一切外に出さないという約束協議を始めたという事情がございますので、新聞に書かれている記事の論評も結果的にはその約束と両立しがたい事態に立ち至るおそれがございますので、御容赦をいただきたいと思います。
  195. 寺前巖

    寺前委員 しかし一方で、記者会見でむちゃな要求だと言われるが、それじゃ大臣、何のことかわからぬじゃないですか。一方で、交渉の後の局長の発言を見ていますと、自由化原則の話から枠の拡大の話のレールに乗ったのだからそれは一歩前進だというようなことがちらっと出てきたりする。何が一歩前進なんだ。もしもこのような要求をしているとするならば、全中の皆さん方の言葉をかりて言うと、自由化以上の要求をしてきて何が一歩前進などと言えるか。それだったら、金子大臣がおっしゃるようにむちゃな要求だな、こういうことになるじゃないか。国民の前に記者会見金子大臣がむちゃな要求だとおっしゃるのだったら、大体そういうような話なんだということだろうと国民は理解せざるを得ぬじゃないですか。  私は、いま交渉の細部の話を言っているわけじゃないのです。基本的にアメリカのとっている態度が、自由化以上の枠の拡大の話になるじゃないかと率直に全中の幹部の皆さんがおっしゃるような、ああいう話じゃないか。これがアメリカ姿勢ですよというふうに受け取ることは、大臣、間違いでしょうか。
  196. 金子岩三

    金子国務大臣 私自体もその具体的な数字を承知しておるわけでなくして、あの数字が各紙に出まして、ははあと驚いてむちゃくちゃと、こういう発言をしたのですが、局長がその交渉に当たっておりますので内容をどうだと聞くと、ただ話になりませんというだけで数字は何も言わないわけですよ。したがって、あの数字は農林省から出ておる数字じゃないと私は思うわけですね。それで、あの数字がもし事実だとするならむちゃくちゃだ、こういう発言をしておるわけでして、その点はひとつ御了承を得たいと思います。
  197. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、あれが事実とすればむちゃな話だ、しかしこっちは知らぬ。ところが局長アメリカで、交渉の後で自由化原則から枠の拡大の話に乗ってきた、一歩前進だというようなことを言っている。おまえ、あんなことで一歩前進などというようなことを言える話じゃないじゃないか、こうやって交渉に行く局長をしからなければいかぬことになるのじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
  198. 金子岩三

    金子国務大臣 私は、いま寺前さんが申されておるような一歩前進なんということを聞いたことがないのですよ。
  199. 寺前巖

    寺前委員 たとえば、私、毎日新聞をここに持っていますけれども、米側が枠拡大提案をしてきたことは一歩前進と言えるが云々というふうに日本側代表の佐野農林水産省経済局長は、という記事を持っていますよ。だから、現地での話ですよ。枠拡大の話に変わってきたから一歩前進だというふうにおっしゃったのだろうと思うけれども、枠の拡大だったら構わぬ、そんなことないはずですよ。それだから全中の人が、自由化したって入ることのできないほどのむちゃくちゃな数字を言っておって一歩前進とは何事だと言って怒るのは当然じゃないですか、もしもそれが事実とするならば。  そこは一番大事なところだから、交渉に当たらすに当たっては、冗談じゃないよ、あんなものはもともととんでもない話だ、こういうふうに大臣指導しなければいかぬじゃないですか。わしはそれは知らぬじゃ済まぬじゃないですか。これははっきりしておいてもらわなければいかぬ。こういう事態だったらはっきり私は言わさしてもらいますと、こう大臣は出なければいかぬじゃないですか。私は大臣姿勢を聞いているのです。
  200. 金子岩三

    金子国務大臣 佐野局長から一歩前進という話は私は聞いたことがありません。ただ、私の考え方を申し上げますならば、中曽根総理が一月に訪米して専門家に検討させようという約束をして帰ってこられてから、いままで四回か五回か佐野局長あるいは前の次官が非公式に訪米をしてこの問題で話を持ちかけてみても、ただ自由化一点張りで問題にならないというようなことを繰り返しておりましたので、九月十四、十五日の会談で自由化をわきに置いて枠の話をしておるから、自由化一点張りでおったのが、自由化をわきに置きながら今度は枠に取りかかって物を言っておるからということで前進という意味のことを言ったのだろう、私はこのように想像いたします。私もそれが前進だと言えば前進として受け取っていいのじゃないかと思うのですね。話し合いのテーブルに向こうは着かないわけですから。  それで、こちらから、レーガンさんが見えることが決まったちょうどその閣議の後の記者会見で、懸案事項は大統領が見えるならばできるだけ誠意を持って詰めることが国際的な儀礼だということを呼びかけまして、この私の発言についてもいろいろ是非の批判がありましたけれども、その呼びかけが九月十四、十五日の会談になった。向こうから出かけてきて日程を決めてやっておるわけですから。やがてはこの東京ラウンドは来年三月いっぱいで切れるわけですから、それまでのことは一応いいですけれども、それから先のことをどうするかということは、来年三月三十一日になって決まるわけでもあるまいし、やはり一年前、半年前からお互いの立場を話し合い、日本のいわゆる農薬の実態もよく理解してもらい、こういう話を積み重ねていって、話し合いがつく時点が見出せるならばレーガンさんが訪日する前に決着をしたいなと、私はいまでもそう考えておるわけですよ。しかし、十四、十五日のあの出方をいろいろ考えますと、これは容易ではない、ただごとではないな、こういう見方をしておるわけでございます。  ただ、新川で高級牛肉六〇%の、柑橘三〇%のといって書いてあることをはっきり経済局長も言えない立場は、やはり今後の交渉をしていく上において、そういう数字を念頭に置いて物を言うということは、私が言ったようにむちゃくちゃな話ですから、いわば無視しておるというように御理解をいただけば寺前さんも御理解をいただけるのではないかと思います。     〔加藤(紘)委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 寺前巖

    寺前委員 アメリカの通商代表部のブロック代表が、九月二十日過ぎですか、大河原駐米大使に会って、農産物問題一つとってみても米側の提案に対し何の回答もない、日本側には誠意が見られないと言ったということが新聞報道に流れておりました。何の回答もない、即座に冗談じゃないと言える話じゃないか。いまの大臣で言えば無視しているということなのか知りませんけれども、向こうはそういうふうに新聞記者に言っている。そして、近くワシントンで開かれる予定の交渉のときには日本側から対案を示してもらうことになっているんだという種類の報道が流れています。  そうすると、私が気になるのは、大臣もいまちょとおっしゃったように、デッドロックに上がっているような話が枠の拡大という話に乗ってきおったんだ。しかし、出されてきた話はむちゃな話だからそれは無視したらいいんだ。だけれども、今度日本側が提起することになっているんだということになってくると、一体どっちが譲歩したことになるのだろう。向こうの側の要求のベースの上に乗っていっていることになるんじゃないだろうか。次回は日本側から枠の拡大の案を持っていくことになっているんですか。局長、どうですか。
  202. 金子岩三

    金子国務大臣 交渉の手順、やり方なのでございまして、まだ日本側から枠でも言い出すような段階まで来ていないというようなことです。  私は、かねて崎山化はもちろん枠の拡大も必要はない、こういうことをずっと言い続けておるわけでございます。いまの枠というのは、東京ラウンドで、牛肉の場合三千三百トン、柑橘の場合五千トン、ずっと毎年ふやしてきておるわけですが(私はそれ以上の枠を拡大する必要はないということを強調しておるわけなんですから、もし日本側が何か日本側としての案を出すとすれば、私が強調しておる範囲を超えることはない、このように御理解いただいていいと思います。
  203. 寺前巖

    寺前委員 それではちょっと角度を変えますけれども金子農水大臣はこの間の衆議院の決算委員会でも、自由化はもちろん枠の拡大もいまのところ必要ないのだときっぱりとおっしゃっていましたけれども、総理の発言を聞いているとちょっと事情は微妙になりますね。衆議院の予算委員会の記録を見ましても、貿易黒字が膨大になっている、がまんできるところはがまんし、合理的調整が必要だなんというような話になってくると、ちょっと話は変わってくるニュアンスになりますね。一体、交渉政府の手でやられるわけでしょう。金子農水大臣の全責任においてやるわけじゃないのでしょう。そうすると、この微妙なニュアンスの違いというのは閣議でちゃんと調整ができているものですか、できていないのですか。ここのところはどうなんです。
  204. 金子岩三

    金子国務大臣 別に閣議の話題になったこともございません。そういう私のニュアンスの違いについては、私は話が下手なので一遍一遍ニュアンスは違うわけなんですよ。しかし、私の基本的な考え方は、自由化はもちろん枠の拡大も必要はない、こういうことを自分の信念としてこの問題に取り組んでおるわけなんです。ただ、内閣全体として物を考える場今いろいろあるだろうというようなことを言ったりいろいろしまして、そのとき私が私の基本的な姿勢が変わって言っておるというようにお聞き取りになっていろいろ記事になったりしますけれども、私は何も変わっていないわけですから、そのようにひとつ御理解をいただきたいと思います。
  205. 寺前巖

    寺前委員 私は閣議ですかっとさしておかなかったら困るというのは、最近のこういう問題の中にも出てくると思うのです。前にもブロックの書簡をめぐって当委員会でも話題になったことがあります。要するに、通産省の所管の連中がいろいろ政府代表で活動するときに、農林省の皆さんがやっておられる立場と違う事態現実には生まれる、外交交渉でおかしなことが生まれるじゃないか。  最近の問題で言うと、九月十三日にアメリカの議会の有力議員と対日市場アクセス促進ミッションの中内副団長が会見した際に「中曽根総理も決断できないことをやらせるようにしてほしい。オレンジの季節自由化や、その他の農産物の大幅自由化をやらせるよう米議会から圧力をかけてくれ」という種の要望をしたと伝えられているのです。これは日本政府として対米交渉がはっきりしていたら——それは個々の個人の見解はいろいろあるかもしれない、しかし政府代表としてアメリカヘ行っているところの副団長ともあろうものが、こういう事実をもしもやっているとするならば、一体日本の国はどうなっているのだと外交相手国から批判を受けるのは当然だと私は思うのです。これは事実ですか。事実とするならば、これに対して今日までどう対応をとっておられるのですか。私は重大だと思うのです。大臣、いかがですか。
  206. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  アメリカで御指摘のございましたような発言が行われたという報道は、私もけさ新聞で知ったところでございまして、新聞報道の真偽を確認するには至っておらない状態でございます。
  207. 寺前巖

    寺前委員 大臣、こういう事実がなされておる。これについてどういうように思われますか。これに対してどう対応しますか。前にも書簡問題をめぐって話題になったことがある。重大な外交交渉の中で、外国に頼んで日本の議会を工作せよということ自身がとんでもない話であるだけではなくして、政府代表団がそんなことをやっておって、大臣、これは知らぬ顔して済ますわけにいかないのじゃないですか。
  208. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 通産省から答弁の用意をしておるそうでございます。
  209. 奈須俊和

    ○奈須説明員 お答えいたします。  新聞報道されておりますような、引用されておりますような趣旨の発言、そのようなことがあったのはどうも事実であるようでございます。  ただ、若干非常に重要な事情がございますので、簡単に御説明させていただきたいと思います。  御指摘の対日市場アクセス促進ミッション、これは工業製品の日本輸入拡大アメリカから日本への輸出拡大、それを目的としまして日本のビジネスのリーダー、総合商社、百貨店、スーパー等のトップがアメリカに出向きまして、アメリカ輸出業者に対していかにして日本にそういう工業製品を売ればいいかということを教えるために行くミッションでございます。そういうことで行ったわけでございまして、したがって、まさにビジネスレベルといいますか、政策本来の対象にはなっておりません。したがって、このミッション自体が農産物自由化の必要性を訴えるということは全然目的にはしていないわけでございます。そういう趣旨のミッションでございますが、やはりアメリカに行くということでございますので、団員には事前にオレンジ、牛肉等の日本農業問題、これについては十分説明いたしまして、その結果、このミッションはニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ロサンゼルスと参ったわけでございますが、そういう訪れた先で実は牛肉、オレンジに関する質問が各地で出たわけでございます。それに対しましては、わが国農業事情が非常に厳しい状況の中である、その中でオレンジの輸入枠の拡大を行ってきている、日本としては最大限やってきたんだ、日本農業は非常にむずかしい事情にあるということは中内副団長初めこのミッションから十分な説明は各地でしておるわけでございます。  ところが、ワシントンでは、実はアメリカ政府の高官、それから上院、下院議員、これはミッションとして当初表敬の予定をしておったもの以外に向こう側から会ってくれということもあったわけでございますが、ワシントンでそういう各政治家、政府方々にお会いしましたときに、オレンジ、牛肉について非常に厳しい意見がミッションに浴びせられた、こういう空気からミッション全体が大変な危機感を持ちまして、そういう危機感を背景にしまして中内副団長個人としてそういう趣旨の発言をされたということでございます。  以上、経緯を説明させていただきました。
  210. 寺前巖

    寺前委員 大臣、これに対して、事実だということは明確なんですから、どういうふうに対処されますか。自分の側の都合のことで攻撃を受けたら、それはそっちでひとつ工作をしてやってくれ、そんな政府代表団というのはあるでしょうか。私は、政府代表団自身、こういうことが他の分野で行われているということは、閣議で対外政策をきちんとした上で人を派遣しなければならない性格を示していると思うのですよ。大臣、いかがです。
  211. 金子岩三

    金子国務大臣 いま新聞をちょっと拝見いたしましたが、アメリカに出かけていっても、いろいろ立場立場によって自分の立場を守るため、自分の職場にプラスになるためには思い思いの発言をしておるわけなんですね。それはやはり自由主義、民主主義の国でありますから、こういう大きな農産物市場開放の問題が机上に上っていたとしても、その立場によって向こうに行って自由に発言しておることであって、それが政府の方針ではない、いわば商社的立場で出かけていって意見を述べておるわけですから、それを私らがとがめるとかあらかじめ意見を統一するとかいうことも適当でないと私は思います。  ただ、アメリカに行っていろいろひそかに向こうの様子を聞かせても、アメリカでもかたくなに日本をとっちめて締めつけるようなことを皆言っているようでもない。そう日本が嫌がることを無理して、アメリカ農家経営を安定させるためということで日本農業を圧迫して圧力をかけることはやはり日米友好上よくないなということを、向こうの政治家でもそういう意見を言っていらっしゃる人がおるということも私は承っておるわけです。したがって、交渉事はぎりぎりまで努力をしてお互いが相手国の実情を認識してやることで正しい結論が出る、こういうふうに私は考えていますので、交渉に熱心に取り組ましておるわけでございます。いま財界のミッションの方々が向こうでどう言ったからといって、私は別にそれをとがめ立てする必要はないと思います。
  212. 寺前巖

    寺前委員 私は承服しかねます。大体、日本の議会に圧力をかけるとは何事だというんです。そうでしょう。あそこへ攻め込みなはれなんて日本の代表団が言う。民間の人が自由に話しているというのとは性格が違いますよ。政府代表団ですよ。そのことに対して圧力をかけなさいなんということ、そんなことを言うべき性格ではないですよ。私はその分野の外交権を持っていませんからと堂々と言うべきですよ。あたりまえのことです、政府代表団という以上は。自分の立場を明確にしなければいかぬですよ、政府代表団としては。私はそういうふうに思います。皆さんが行って勝手なことを言えますか。農業の分野でないところの問題について提起されたときに、それは攻め込みなさいなんて、そんなあほなことが言えますか。常識から見てもそんなことは言えない性格ですよ。もう一回再考願います。これは承服をしかねます。  時間の都合がありますので、しぼってオレンジの輸入の問題について聞きます。  一九七八年の五月二十七日に、当時の農水大臣でありました中川さんは、生産調整のさなかにこれ以上オレンジの輸入の枠を拡大することは応じられない、こうおっしゃっていたわけですが、その年の十二月になると、オレンジの輸入枠を大幅に拡大するところの東京ラウンドの合意が成立しています。すなわち、一九七七年の二万二千四百九十九トンから五年間に、一九八二年の八万二千四百二十一トンと、三・六七倍にふえております。この間の国民一人当たりの柑橘類の購入数量は、総理府家計調査を調べてみると、二十・七キログラムから十六・五キログラムヘと二割も低下している。そのために、温州ミカンは七九年よりことしまで全国的に二割減反が余儀なくされています。  そういうふうに輸入枠はふやした、国民の消費量は減っている、そしてそういう事態の中で一生懸命自分のミカンの改良をやりながら減反をやらざるを得ない、生産調整に入らざるを得なくなってきているという今日までの実情を踏んまえてみるときに、アメリカが要求しているように、あるいは先ほど大臣もおっしゃっているように、柑橘類の消費や生産の動向を考えて、いま引き続いてこのような枠の拡大などというようなことは言えるものではないのじゃないか。しかも、来年度からさらに三年間に一割の作付転換が進められる、ことしは豊作で四十万トンの摘果を実行する、価格は暴落している、どこから考えてもこういう事態の中でオレンジの農産物市場開放というような方向に向かって、枠の拡大という方向に向かって日本実態は進んでいくわけにはいかぬのじゃないか、私はそういうふうに思うのです。担当者から、一体需給状況というのは輸入枠を拡大していくような方向に存在しているというふうに見ておられるのか。オレンジの輸入枠をふやす余裕があるというふうにいまの需給状況は見られるのか、率直な見解を聞きたいと思うのです。
  213. 小島和義

    小島政府委員 最近のわが国の果物の需給状況を眺めてみますと、温州ミカンはもとより柑橘全体でも、あるいは果物全体といたしましても消費が減っておる、こういう状況にあるわけでございます。減っておりますものの非常に大きなウエートを占めておりますのが温州ミカンであり、輸入果物ではまたバナナのようなものであるわけでございます。  そういう需給の姿から見ますと、オレンジの輸入量は、まだ本年度で東京ラウンドの最終合意で八万二千トンという数量で、数量としては決して多いものではございませんけれども需給事情から眺めてこれ以上輸入をふやす余地があるかどうか、こういうお尋ねでございますれば、私どももふやす必要はないような需給事情である、さように理解をいたしております。
  214. 寺前巖

    寺前委員 担当の局長需給状況から見ても輸入することができるような状況ではないということが明らかである以上、大臣としても、明確に、自由化はもちろんのこと、粋の拡大についても国会決議もあるとおりきちっと拒否をしていただくようにお願いをしたいと思うのです。  その次に、最近の報道で出てきた問題ですが、EDBの使用禁止という問題です。  米国環境保護局が発がん性があるということで、これについて農薬に対する問題を提起しております。九月三十日です。そして、使用禁止に踏み切るということが出されているわけです。このEDB薫蒸は、台湾、ハワイ、フィリピン、イスラエル、オーストラリアなどで広く使用されているというふうに聞いております。また、わが国においても奄美のインゲンや土壌消毒用に使われているというふうに問いております。これは輸入問題にも関係することでもありますが、同時にわが国の対応の問題でもありますので、一体この問題についてどのように対処されようとしているのか、お聞きをしたいと思います。
  215. 小島和義

    小島政府委員 EDBにつきましては、従来、世界各国ともこれは大変揮発性の強い残留性の低い農薬であるということで、幅広い分野において使われてきたものでございます。今回アメリカ合衆国環境保護局が、これに対しまして一部使用禁止措置を伴う規制の内容を発表いたしております。  日本の使用状況を申しますと、量的に一番多いものは土壌薫蒸剤として使用されているものでございまして、そのほか木材害虫の消毒用、あるいはお話がございました沖縄、奄美からの移動規制生果実等の薫蒸剤として、ごく少量ながら使われておるわけでございます。  今回のアメリカ合衆国の規制の内容というのは非常にわかりにくい内容になっておりまして、アメリカにおいて一番多く使われております用途は、自動車のハイオクタンガソリン、これに鉛が入っているわけでございますが、その鉛の沈でんを防止するための添加剤として使われている用途が一番多いわけでございます。しかしながら、今回の規制はそのことについては全く触れておりませんで、そのほかの用途、土壌薫蒸用については即時停止。それから、日本では使われておりませんが、貯蔵穀物あるいは製粉機の薫蒸用、それから伐倒木の薫蒸用途に使われておりますが、これにつきましては三十日以内に異議の申し立てがない限り今後使用禁止。それから、生果実等の薫蒸用途に使います場合には来年の九月一日以降使用禁止。そのほか、マイナーな用途につきましては使用上の制限を課した上でその使用を継続させる、そういう内容のものになっておるわけでございます。  日本の場合、従来土壌薫蒸用として使ってまいりまして、作業環境上の安全性の問題、さらには土壌残留の問題、いずれもきわめて安全であるという認識のもとに使われてきたわけでありますが、アメリカ合衆国の場合に、地下水の中から検出されたということが今回の規制の発端になっておるようでございます。日本の場合に果たして同じような問題が出るのかどうか、従来地下水から検出された事例はございませんが、その辺についても早急に調べてみたいと思います。  そのほかアメリカの規制の根拠、あるものについては禁止、あるものについては使える、こういう扱いになっているわけですが、そういう扱いの根拠につきまして、向こうの資料を取り寄せて十分吟味をいたしまして、農林水産省以外に環境庁、厚生省など関係する官庁も多いわけでございますから、その辺と十分相談をいたしまして、日本実態に即しまして必要な対策を検討いたしたい、かように考えております。
  216. 寺前巖

    寺前委員 日本の実情の上に立って検討されるのは結構ですが、現に植防法上EDB薫蒸を義務づけている内容もあろうかと思うのです。そうすると、相手国では発がん性のあれがある、やめようじゃないか、やめるという措置がとられている。ところが、日本の側で義務づけておるということになってくると、これは矛盾が生まれてくることになります。ですから、アメリカの側で提起された、この発がん性を認めた態度を尊重して、日本の植防法上の問題の対応も明確にされる必要があろう。あるいはまた日本自身の問題にとっても、発がん性の指摘があった以上は重視をして速やかに対処されるようにお願いをしたいと思いますが、いかがですか。
  217. 小島和義

    小島政府委員 今回のアメリカの使用規制につきましては、詳細はまだわからぬ点があるわけでございますが、生果実の薫蒸につきましては、その薫蒸作業に従事する人の健康の保持、こういう作業従事者は反復継続してそのガスに触れるという危険を持っておる、そういうふうな意味からの使用禁止であるように見受けられるわけでございまして、アメリカ合衆国内に流通いたします生果実につきまして、その残留の限界値のようなものが定められておりますし、今後も恐らくそういう扱いが続くのだろうと思います。したがって、果実の摂取ということによるところの害まで重視しているのかどうかというのは若干わかりかねる点があるわけでございますので、その辺の事情はよく調べました上で、日本側としても同じような考えに立つかどうか、これから検討するところでございます。  それから、お話ございました日本輸入されております果物につきまして、一部のものについてはEDB薫蒸が行われておるわけでございますが、これは、従来輸入禁止品でありましたものについて向こう側が殺虫のための実験を行いまして、EDBを使用してこういう消毒をすれば虫は十分退治される、こういう証明をいたしまして、日本側が審査の上それを妥当と認めて解禁をしたわけでございまして、日本側から積極的にこの薬剤を使うようにということを義務づけたことはないわけでございます。したがいまして、アメリカ国内におきまして使用禁止ということになりますれば、アメリカからの当該消毒による輸入というのは向こう側の事情によってできなくなるわけでございますし、そのほかの同につきましては、現在そのような動きがあるか、私ども察知いたしておりませんが、その国においてそういう消毒を継続するかどうかという問題と、わが国がその消毒済みのものを今後国内で流通させるかどうか、これは食品衛生の問題に絡むわけでございますので、厚生省とも十分打ち合わせをいたしまして、そういうものの今後の扱いを決めてまいりたい、かように考えております。
  218. 寺前巖

    寺前委員 万遺憾なく対処してほしいと思います  お約束の時間がもう迫ってまいりましたので、予定しておりました鶏のやみ増羽の問題についてはまだ次の機会にやらしてもらうことにいたしまして、一、二ちょっとお聞きをしたいと思います。  その一つは、最近豆乳がずいぶん広がってまいりました。ところが、豆乳というのは飲みにくいものだと私も思っておったわけですが、非常に飲みやすくなっている。中にいろいろの調製がされておるようであります。そうなってくると、豆乳という宣伝ほど中身はそういう役割りをしないということになってくるのではないか。ですから、こういう豆乳の表示について、お客さんが、われわれ消費者が期待を持っている内容と違う内容になってくるということをまがいものというふうに言うならば、まがいものになってくるという要素が出てきているのではないかということで、各方面から批判も出ております。これに対して農水省としてどういう対応をしておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  219. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 いまお話しのように、最近豆乳製品の需要が大変ふえております。そこで、農林水産省といたしまして、消費者の商品選択に資するという観点から、一昨年の十一月にJAS規格を制定しまして、豆乳と調製豆乳、それから豆乳飲料、三種類の規格を定めたわけであります。したがいまして、このそれぞれの規格に合うものについてそういう表示をするということになるわけでございますが、最近問題になっておりますのはいわば商標なんでございますけれども、○○社の豆乳というような商標をその製品に印刷する場合に、それが大変大きい。JASで決められているこの三種類の表示、これよりも大きいという問題がありまして、誤認しやすいじゃないかということがございます。そこで、そういうことのないように、私ども業界団体である日本豆乳協会に指示いたしまして、協会としても消費者団体とよく話し合って、こういう誤認を避けるのにどうするかというようなことについていま検討している。私どもも十分指導してまいりたい、かように存じております。
  220. 寺前巖

    寺前委員 その結果で、大体いつごろから改善されますか。もう近々やりますか。これまでずいぶん広がっていますよね。ああいうものは僕はぴちっとやるんだったら早くきちっとやった方がいいと思いますよ。
  221. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 なるべく早くそういう結論を出すように指導してまいります。
  222. 寺前巖

    寺前委員 それから、もう一件ちょっとこの際にお聞きをしておきたいのは、私、この前近畿農政局に直接行きまして問題を提起したのですが、所管の局長さん、お見えですか。京都に名神高速自動車道路というのが走っているのですよ。それの道路の京都市内の稲荷山の南の方のところになるのですが、地域としては桃山城があり、緑地帯の景色の非常にいいところなんですが、その周辺に自動車の廃棄物をぼかしたり、建材の廃棄物をぼかしたり、不法にいろいろなものを投棄してきて、周辺の住民はもうまいっているのですよ。不法建築で人の土地に住宅を建てるというようなとんでもないことも起こったりしているわけです。  そういう地域だけに前々から私も問題にしていたわけですけれども、何とか整理がつかぬのか。その一役に、実は農林省の所管するところの土地も利用されていたのです。これも前々から指摘をしてきておった点なんですが、五十三年の六月ごろから、京都市伏見区深草中ノ郷山町というのですか、名神金属という会社の手によって不法占拠がなされているのです。そこで不法投棄が行われているわけです。近所の住宅にも迷惑だし、それがまた契機となって地域全体に悪い影響を及ぼしておる。いろいろな意味において直ちにこの不法占拠を処理しなければいかぬと思うのですが、一向にらちが明かない。何でこういう国有財産がきちんと管理できないのか。処置すべきものはさっさと処置できないのか、何で時間がかかるんだろうか、私は不思議でかなわないのです。一体こういうものの管理はどういうふうにしているんですか。御説明をいただきたいと思う。
  223. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘がございました土地の件について、まずお答え申し上げます。  御指摘のように、五十三年七月から不法占拠が行われたことは事実でございまして、自作農財産でございますので一義的な管理者は京都府でございますので、京都府が有限会社名神金属に対して原状回復と土地の明け渡しを再三要請してきたことは事実でございますが、なお片づいておりません。  そこで、実は近畿農政局が直接、御指摘もあり、乗り出すことになりまして、去る九月十二日に会社の責任者を呼びまして話をしたのでございますが、社長が外国に行っておりまして、おりませんで、らちが明きませんので、結局最終的な折衝というか、勧告というものを行うということで、今月の十二日に社長を呼んでおりまして、最終的な勧告を行うつもりでおります。  しかし、これに応じない場合も考えられますわけで、私どもとしては、所管法務局と現在協議を進めておりまして、やはり訴訟に訴える、それによって是正措置を講ずるという最後の手段を講じなければならないと思って、準備を進めておるところでございます。
  224. 寺前巖

    寺前委員 お約束の時間が来ましたので、終わります。
  225. 山崎平八郎

    山崎委員長 次回は、来る十一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十八分散会