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1983-10-06 第100回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十月五日(水曜日)委員長の指名で 、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  恩給等に関する小委員       愛野興一郎君    狩野 明男君       佐藤 信二君    田名部匡省君       吹田  愰君    堀之内久男君       宮崎 茂一君    山花 貞夫君       渡部 行雄君    鈴切 康雄君       和田 一仁君    中路 雅弘君       河野 洋平君  恩給等に関する小委員長    堀之内久男君  在外公館に関する小委員       愛野興一郎君    池田 行彦君       佐藤 信二君    田名部匡省君       吹田  愰君    堀之内久男君       宮崎 茂一君    矢山 有作君       渡部 行雄君    市川 雄一君       和田 一仁君    三浦  久君       河野洋平君  在外公館に関する小委員長   愛野興一郎君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十八年十月六日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 堀之内久男君    理事 渡部 行雄君 理事 市川 雄一君    理事 和田 一仁君       池田 行彦君    上草 義輝君       狩野 明男君    始関 伊平君       吹田  愰君    堀内 光雄君       宮崎 茂一君    上田  哲君       山花 貞夫君    木下敬之助君       中路 雅弘君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房広報室長兼内         閣官房内閣広報         室長      小野佐千夫君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         外務省条約局長 栗山 尚一君  委員外出席者         国土庁長官官房         震災対策課長  清水 一郎君         国土庁大都市圏         整備局整備課長 立石  真君         外務大臣官房領         事移住部領事第         二課長     田中 三郎君         外務省北米局安         全保障課長   加藤 良三君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       丹波  実君         大蔵省主計局主         計官      田波 耕治君         運輸省航空局飛         行場部長    松村 義弘君         運輸省航空局技         術部長     長澤  修君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ――――――――――――― 委員の異動 十月六日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君      上田  哲君   河野 洋平君      中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   上田  哲君      角屋堅次郎君   中馬 弘毅君      河野 洋平君     ――――――――――――― 十月六日  靖国神社公式参拝に関する陳情書外二件  (第  一号)  旧軍人・軍属恩給欠格者に対する恩給法等の改  善に関する陳情書外五件  (第二号)  人事院勧告完全実施に関する陳情書外九件  (第三号)  憲法改悪反対に関する陳情書  (第四号)  青少年健全育成対策に関する陳情書外五件  (第五号)  元日本赤十字社救護看護婦慰労給付金に関す  る陳情書(第六号  )  地域改善対策特別措置法における奨励費に関す  る陳情書(第七  号)  プライバシー保護法制定等に関する陳情書外二  件  (第八号)  自衛隊法改正に関する陳情書外二件  (第九号)  奄美大島における航空機戦技訓練評価装置の設  置計画反対に関する陳情書外二件  (第一〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出、第九十八回国会閣法第二〇号  )  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出、第九十八回国会閣法第二一号)      ――――◇―――――
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、第九十八回国会閣法第二〇号、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び第九十八回国会閣法第二一号、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 最近、最大の国民の不安、話題の中心は、カールビンソン寄港であろうと思います。この正体がよくわからないということで、国民各層にさまざまな波紋を呼んでいるわけでありますが、この国民の不安を防衛庁長官はとういうふうに把握しておられるでしょうか。
  4. 谷川和穗

    谷川国務大臣 西太平洋地域におきまして、その周辺における米海軍プレゼンス強化というものは、日米安保条約、それから現在の国際情勢その他いろいろな問題から勘案して、むしろ歓迎すべきことだというふうに私ども考えております。  その意味で、カールビンソンを初めとした艦艇がこの周辺に配備され展開されておるということは、われわれにとってはいま申し上げたような観点に立つものでございます。そのカールビンソンわが国寄港をいたしてまいったわけでございますが、当然、あれだけの大勢の船員の乗り組みの艦艇でございます。日本寄港して、わずかな期間でありましたが、休養を遂げでまた出港していった、こういうふうに理解をいたしております。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 私がお伺いしたいのは、国民各層に非常に大きな不安を残して去ったであろう。この不安をどういうふうに受けとめておられるか。率直な感想であります。
  6. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど申し上げさせていただきましたように、むしろある意味では、極東ソ連軍潜在的脅威というものが拡大しつつある今日において、西太平洋におけるアメリカ側プレゼンス米海軍プレゼンスというものが低下した方が私は不安につながるというふうに考えておるわけでございます。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 その辺のところは、軍事戦略上の見解の相違は別にいたしまして、日本の政権を担う、しかも軍事担当防衛庁長官政治家としての認識を私はもう少しく深くついて、お改めをいただきたいと思うのであります。  私は率直に言って、いま長官指摘されたような軍事的プレゼンスに対するさまざまな見解はあるとしても、八万一千六百トンという、しかも近代兵器の粋を集めたこの巨艦が水を分けるようにして日本の港に入ったということに対する不安は、第一のものではないか。この不安をどのようにお受け取りになっていらっしゃるか、もう一遍だけ伺いたいと思います。
  8. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これはグローバルな面でのことでございますが、特にベトナム戦争以降、西側防衛整備努力というものは比較的低位に推移したかと存じます。しかし、その間にも一貫して、ソ連の特に極東軍事力増強というものはまことに目覚ましいものがございます。これはもう事実だと思いますが、そういうことから勘案いたしましても、やはり西側の平和の基本戦略である抑止力信頼性の回復のためにも、私は、この米側プレゼンス強化努力に対しましては、先ほど申し上げました理由から歓迎をいたしておるわけでございます。その中において、航空母艦という艦種の果たしております現実的な意味合いから考えましても、私は、むしろかつての状態よりも今日の方がこの極東の安全と平和の維持には大いに裨益しておるというふうに考えておる次第でございます。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 質問を変えますが、これについての事前協議はなかったわけですね。
  10. 谷川和穗

    谷川国務大臣 米艦艇に限って申し上げますと、米艦艇移動行動につきましては、事前に逐一、条約上の義務があって日本通告してくるというようなことはございませんが、カールビンソンに限って申し上げますと、外務当局を通じまして入港の直前にはわれわれにも通告がございました。  それから、いま先生の御指摘の分は、あるいは俗に言われる核に関係して、核の持ち込みに関連した事柄かと存じますけれども、これはむしろ外務省から答弁させていただくべきかと存じますが、今回に限りましても、別段米側からその事前協議を求められたというふうには私は承知はいたしておりません。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっと確認いたしますが、私が申し上げているのは、外交手続としての、制度としての事前協議を受けたかどうかということでありますが、長官お答えの中には、それとは別に実質的な通告があったんだというふうに受け取っていいのでしょうか。
  12. 加藤良三

    加藤説明員 事実関係に関する御質問でございますので、私からお答えさせていただきます。  先生指摘事前協議というものは、カールビンソン寄港についてはございませんでした。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、長官外交手続としての事前協議はなかったが、それ以外の事実上の通告はあったといまおっしゃいましたが、どういう通告があったわけでございますか。——いや、防衛庁長官のところでお答えいただきたい。外務省ではない話。外務省ではなくて、長官がいまお答えになったことについて、長官からひとつお伺いしたい。
  14. 谷川和穗

    谷川国務大臣 詳しい事実関係につきましては外務当局からも答弁していただくことにいたしますが、香港を出港いたしましたカールビンソンが近日中に日本寄港するという通告は、外務省を経由して私どもも受け取りました。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、長官、それはカールビンソン性能装備内容等々について触れるものですか、そうでないのですか。(加藤説明員委員長」と呼ぶ)いや、長官に聞いているのです。あなたは答弁能力はないのだ。どうぞひとつ、長官とのやりとりだから、
  16. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私どもは、アメリカ海軍艦艇移動につきましては、逐一条約上向こうからの報告を受けるというような権利といいますか、そういうものがあるわけでもございませんで、米側米側として、米側考えに基づいて艦艇のいろいろな移動をいたしております。カールビンソンに関しましてもまさにそのとおりでございまして、米側としては、いま先生の御指摘のような条約上の義務といいますか、そういうものを持ち合わせてはおりません。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 それで長官にお伺いしたいのは、条約上の事前協議はなかったけれども、やってくるよという通告があったとおっしゃる内容は、カールビンソン装備に触れるものですか、ただやってくるよというだけのことでありますか、その点、明確にしていただきたいと思います。
  18. 谷川和穗

    谷川国務大臣 別に、装備について通告は受けておりません。私ども外務省を通じまして受けましたのは、休養を目的として日本寄港いたしたい、こういうことを受けたわけでございます。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 事実関係だけ伺うわけですが、それは外務省を経由して長官の方に届いたのですか、それとも他の方法によるものですか。
  20. 谷川和穗

    谷川国務大臣 日米安保条約のたてまえからいたしましても、この種の手続外務省を通じて行われております。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 その場合、防衛庁長官としては、この入港に対してイエスとかノーとかと言う立場があるのですか。また事実上、過去にそういうことはあったのでしょうか。
  22. 谷川和穗

    谷川国務大臣 防衛庁長官といたしましては、日米安保条約の有効な運用を心から期待をしていくわけでございまして、条約上から申しましても、この種の寄港につきまして何らこれについて異議を唱えることもございませんし、そういう姿勢で終始いたしたわけでございます。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、条約上の問題としての事前協議はなかったけれども外務省を通じて防衛庁長官寄港通告があり、防衛庁長官としてはそれに対して歓迎の意を表したということになるわけですね。
  24. 谷川和穗

    谷川国務大臣 カールビンソンにかかわらず、また艦艇にかかわらずでもございますけれども条約事前協議の対象となりますものは明定されておるわけでございますが、その中で、核の持ち込みに関しては、当然アメリカ側条約上の義務がございまして、日本政府に対して事前協議をいたさなければならぬことになっております。  今回、アメリカ側としては日本側にそのことについて事前協議を求めてきた事実はないと私は存じておりますし、当然でございますが、もしそういうことがあった場合には、内閣が毎々答弁をさせていただいておりますように、これはお断りをするという形になっておるわけでございますが、今回のカールビンソン日本寄港についてもその意味事前協議はなかった、こういうふうに理解をいたしております。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、防衛庁長官は今回のカールビンソン寄港に対して、核を持っていないということでの御理解でこれを受け入れたということになるわけですね。
  26. 谷川和穗

    谷川国務大臣 アメリカ事前協議を求めてきてもおりませんということの事実から徴しましても、私はそのように理解をいたしております。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 カールビンソンに限らず、こうした米艦寄港については、そういうようないまのルート、外務省を通じて防衛庁長官の意向も確かめるということが行われているわけですね、防衛庁長官
  28. 加藤良三

    加藤説明員 若干、事実関係に即するところでございますので、私から御説明をさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、安保条約地位協定のもとで、米軍艦船、それは航空機も同じでございますけれども地位協定の五条によりまして、日本にある米軍施設区域はもとより、日本の港、空港に出入りする包括的な権利を認められているものでございます。したがいまして、通告というようなことは、一般的に申し上げればその限りでは必要ではないわけでございます。しかしながら、原子力推進の船ということになりまする場合には、モニタリング等との関係がございまして、米軍の方針といたしまして、二十四時間以上前に日本側入港につき通告があるということになっているわけでございます。  カールビンソンの場合には、先ほど防衛庁長官からも答弁がございましたように、九月十六日に米側から、十月一日から五日までカールビンソンが佐世保に寄港する、こういう通告があったわけでございます。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 せっかく外務省答弁したがっていますから、外務省事前協議というものの項目、そしてその決定された日時を答えてください。
  30. 加藤良三

    加藤説明員 事前協議の主題となりますものは、累次御答弁申し上げておりますとおり、合衆国軍隊配置における重要な変更装備における重要な変更及び施設区域を使っての直接戦闘作戦行動への発進ということでございまして、この事前協議制度ができましたのは、新安保条約締結の時期でございます。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 防衛庁長官、定められている限りの事前協議というのは、すでに四半世紀以上たつ時期の制定にかかわるもので、いまのような項目が決められております。外務省もそれだけしゃべりたければもうちょっと詳しくしゃべった方がいいと思うのだ、内容となると大変簡単に言いましたけれども。  それと別に、カールビンソンというとにかく世界注視の、しかも八万トンを超える巨大な新兵器の軍艦の寄港に対しては、当然防衛庁長官としての意思表示がなされている、こういうふうに理解をいたしました。  そこで、形式議論ではなくて、もうカールビンソン原子力空母であることは当然でありますし、また、このカールビンソンには核兵器搭載のA6が装備されている、これも常識であります。こういう常識の中で、防衛庁長官が核がないということはどういうわけで確信をされたのでありますか。
  32. 谷川和穗

    谷川国務大臣 条約に基づくアメリカ義務事前通告義務を指すわけでございますが、これが行われていない限り、私どもといたしまして、アメリカ核搭載をして日本の国に寄港をするということは行われていない、こう判断をいたしておる次第でございます。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 カールビンソンというのは十五年間燃料を補給しないで作戦行動ができるわけですし、A6攻撃機など八十五機を搭載しているわけですね。A6というのは核兵器を積まなければ意味のない飛行機です。だから、今回積んでいるか積んでいないかについての議論をちょっとおいても、A6というのが核兵器搭載機であるという性能についてはお認めになりますね。
  34. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私どもが保有している航空機でもございませんので、その性能諸元を詳しく存じているわけではございませんが、アメリカ空軍アメリカ海軍アメリカ陸軍それぞれ米軍に所属する軍用機の中で、核搭載可能の航空機が幾つか機種としてあることは私は存じております。A6そのものについての核搭載可能であるなしという議論は、私は直接いたす能力も実はないと言えばないことになろうかと存じますが、以上のようなことで判断をいたしております。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 それでは防衛庁長官は勤まりませんよ。  それでは、兵器専門家といいますか、兵器についてちゃんと答えられる人はだれでも結構です。A6というのが核搭載可能の機種であるかないかという点については、事実の問題でありますから、どこをごらんになっても世界常識のデータには出ていることですから、一般論としてきちっとお答えをいただきたいと思います。
  36. 新井弘一

    新井政府委員 A6に限って申しますと、核爆弾搭載は可能であると一般論として申し上げることができると思います。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 一般論として核兵器搭載可能の兵器であります。これは常識であります。防衛庁長官がそんな常識中の常識を持っておられないと私は信じないのであります、国民のためにも。一般的常識である。私たちから言わせれば、核兵器を積まなければ意味のない飛行機がやってきた。テレビを見ておりまして、あのA6が映ったときに、その鼻先にちょうど三菱のマークのような核搭載マークがちゃんとついていたと、専門家がみんな言っていますよ。だから、これについて核兵器が載っているんじゃないかなと、みんなが思った。そういうものに対して、絶対に核兵器を入れることは拒むのだとおっしゃる非核原則の閣僚として、それではこのカールビンソン、A6その他に核兵器が載っていないということを明らかにしなければならない義務がありますね。その義務があることについては同意していただけるだろうと思います。
  38. 谷川和穗

    谷川国務大臣 答弁を繰り返すようで恐縮でございまするし、また、搭載能力搭載することにつきましては一般論のような答弁を申し上げて恐縮でございますが、搭載可能な能力とそれから持ち込みの問題とは、全然別の次元の問題でございます。  それから、先ほどの答弁に戻るようで恐縮でございますが、条約締結の一方の当事国であるアメリカ条約上の義務を履行していないとは私はどうしても考えられませんので、別に事前協議がない今日の状態、今日の状況のもとにおきましては、日本寄港するあらゆる米側艦艇、これが核を持ち込んできておるというふうには理解はいたしておりません。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 長いこと続けられてきた議論ですから、禅問答になってしまうのは省くべきだと思いますからこういう形では繰り返しません。繰り返しませんが、ひとつ長官一般論として、核搭載可能の兵器と現実に積んで入ったかは別だということの形式論理は、私も十分に認めます。しかし、積まなければ意味のない兵器がここまで来ているという実態の中で、やはり国民の不安というのは、非核原則を厳守しておられる政府に対して積んでないならないということを胸を張って証明してもらいたいということは当然だと思うのです。  長官にずばり伺うけれども、まさにこのA6、カールビンソンには核兵器は載ってないのだということをあなたは本当に胸を張って言える自信が、手続上の問題だけではなくて、あるのですか。
  40. 谷川和穗

    谷川国務大臣 どうも答弁を繰り返すようで恐縮でございますが、条約上の義務が明定されておるもとにおいて、アメリカが核を搭載した艦艇寄港させておるということはあり得ない、事前通告なしにそういう行為はあり得ない、私はそう考えております。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 外務省に伺うが、事前協議は明定されておる内容があります。これは先ほど来お話しのように、もう四半世紀前のものであります。この三項について、たとえば、あえて陸上部隊の例を挙げれば一個師団程度空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は一機動部隊程度配置ということになっております。四半世紀前の規模制定と今日の兵器の大幅な進展に伴う概念とは変わっていないとは言えないと思うのですね。その点について、これだけ以前に決められた概念といまとは、適用されて全くずれがないというふうにお考えですか。
  42. 加藤良三

    加藤説明員 核の持ち込みの点を含めまして事前協議制度に関する日米間の取り決め、これは今日におきましても変更の要はないと私ども考えております。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 こういうことは国民の平和のために問題だと思いますよ。防衛庁長官、ここに明定されておりますが、「海軍の場合は一機動部隊程度」のもの、これは駆逐艦が何隻ついているかどうかというようなことがいろいろ議論されてきましたけれどもカールビンソン、八万一千六百トン、あれだけの大きなものが入ってきた。これはとにかく、四半世紀前の規模でもって当てはめて何も定規は変わらぬよということではない柔軟性といいましょうか適応性といいましょうか、そういうものは考えられなければならぬのではないかと思いますが、いかがですか。
  44. 加藤良三

    加藤説明員 船の大きさその他ということを問わず、艦船によるものであれ、また航空機によるものであれ、核の持ち込みということをいたします場合には事前協議をしてくる、これがアメリカに課せられた条約上の義務なんでございます。したがいまして、事前協議がない以上、核の持ち込みはないと私どもは確信しておるわけでございます。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 もういいです、これは時間のむだだから。防衛庁長官に聞いているのです。むずかしいことを言ってないのです。安保条約が決まったときに決まった古い形の一機動部隊という概念を、カールビンソンの時代にそのまま当てはめることが妥当であるかどうかという観念を聞いているんだから、条約解釈をすることを専門にしている役人さんの答弁ではなくて、その常識を聞かせてください。
  46. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これこそまさに条約解釈をする担当者の意見を徴することが必要だと私は思います。というのは、わが国条約の一方の当事国でございます。したがいまして、両国の政府間において条約解釈は常に確立されているのは当然のことでございまして、その意味から申し上げましても、その実際の担当であります者の答弁は、私が答弁をさせていただくことと全く同じことでございます。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 そうですか。そうしますと、一般論で結構ですが、こうした規模にはまらなくなるような状態が生まれた場合、たとえば宇宙兵器なんというものはこの中に入ってないですね。たとえばそういう規模内容のものが生まれたときに、事前協議というもののメジャーを変えなければならないということは一般論としては正しいと思いますが、いかがですか。
  48. 谷川和穗

    谷川国務大臣 新しい事態が生じたときに考えるべき問題であろうと存じております。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 事前協議というのは、そういう場合、一方的に向こうからの通告だけですか。こちら側から協議を求めるということはあり得ませんか。
  50. 加藤良三

    加藤説明員 制度の事実的側面に関する問題でございますので、私からお答えをさせていただきます。  事前協議につきましては、米国のみが発議権を持っておりまして、日本側はそれを有しておりません。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 それではどうも対等な関係ではないと私は思います。押し問答の時間を省きますが、国民は大変不安を持っているのであります。  アメリカプレゼンスにむしろ信頼を深めたという御答弁でありますけれども、立場を超えて、国民各層が持つ不安というものを率直に受けとめていただくべきではないか。この戦略的位置づけの議論は、多分かみ合わないと思いますから省きますけれども、たとえば新聞各紙にあらわれた論調でもそういう不安が非常ににじみ出ていると思います。どれを取り上げても同じなんですが、私が感銘いたしました毎日新聞の十月一日の社説をぜひ読んでいただきたいと思います。「私たちはこの反復寄港の動きを歓迎できない。」こういう書き出しで、カールビンソン寄港のねらいが、一連のNATO化現象、日米安保条約をNATOと同じような地位に位置づけようとする米戦略ないしはこれに追随する形の日本軍拡というものの大変大きな意味づけに合致するものだ、こういう表現がきちんと述べられています。  私は、こういう巨大な、それこそかつて見ることのなかった兵器日本の港に反復寄港をし、そして国民の不安が十分に解消されないまま既成事実が日本列島をいわゆる不沈空母として覆い尽くす、あるいは米ソ対決の前進基地として築き上げられるということを非常に懸念するものであります。これまでのような解釈論で押し通すやり方というものは、国民の不安を解消するものにはならなくなっているだろうということを強く申し上げて、この項は終わっておきたいと思います。残念であります。  さて、次の問題ですけれども、当面の問題をお聞きしておきます。  防衛庁長官は、さきの訪米でワインバーガー国防長官と会談をされました。それ以前からでもそうでありますが、今回のお話し合いの中で、強く厚木のタッチ・アンド・ゴーの代替飛行場を早くつくれという要請があったと伺っておりますけれども、その具体的な内容、あるいはかなり日にちが急がれるような要請であったと思うのでありますが、その辺の問題について御報告をいただきたいと思います。
  52. 谷川和穗

    谷川国務大臣 今年に入りまして八月に一回、これは定期協議、それから九月に一回、引き続きまして二回日米防衛首脳会議が実現をいたしておりますが、その中におきましては、国際情勢その他につきまして率直な意見の交換がございました。その中に、二国間の個別の問題の一つといたしまして、米艦の艦載機の夜間訓練の問題が出ました。特に現在厚木で行われております訓練につきましては、日本側からもこれ以上訓練の頻度を高めることは無理ということを事前に話をしておったこともございまして、この問題のできるだけ早い解決を願うという要望がございました。それに対して私の方からは、わが国の事情を説明いたしまして、目下鋭意努力はいたしておるけれどもなかなか時間のかかる問題である、いま鋭意努力中であるということを申し述べたわけでございます。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 先方は、いつごろまでにということを示されておりますか。
  54. 谷川和穗

    谷川国務大臣 できるだけ早い時点にということを希望いたしておりました。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 長官の受けとめ方は、できるだけ早い機会というのはいつごろだというふうに理解されたのですか。
  56. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これはむしろ私の方から先方へ伝えたことでございましで、五十八年度国家予算においてもわれわれは調査費を計上して目下調査をいたしておる段階であって、その経過について申し述べたわけでございます。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 調査費は五十八年度九百万円、また五十九年度概算要求一千万円というふうに承っておりますが、そういう規模で、少なくとも五十八、五十九年度中には一定の方向を出すというふうに理解していいのでしょうか。
  58. 塩田章

    ○塩田政府委員 五十八年度約九百万円でございます。五十九年度は現在、予算概算要求で約一千万円の要求をしておりますが、これは二年かかるというのが前提という意味ではなくて、早くできればそれでよろしいわけでございます。ただいまの時点で五十八年度中にこの問題が解決するかどうかということについて見通しがございませんので、五十九年度のことも考えておきまして約一千万円の概算要求をいたしておりますが、これはそのことによって何年間に、あるいは五十九年度末までにとか、そういうことではございません。なるべく早い方がいいと思っております。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、スタンバイはかけておくけれども、できれば五十八年中にはっきりさせたい、こういうふうに理解していいわけですな。
  60. 塩田章

    ○塩田政府委員 長く問題を残したくない、早く解決したいという気持ちはいっぱいでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、五十八年度で解決できるかどうかという自信はございません。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 五十八年度中ぐらいにできないと、防衛庁長官はワインバーガー長官に対して大変ぐあいが悪いですか、長官
  62. 谷川和穗

    谷川国務大臣 前長官と事務引き継ぎをいたしましたときに、前長官から引き継いだ防衛庁の業務の中では、実は私自身が防衛庁長官を任命されましてから十一カ月近くなるのではございますが、まだ根本的な解決策を見出し得ない問題の一つであることは事実なんでございます。したがって、私といたしましては、できるだけ早い時期にこの問題の解決を見たいということで、目下鋭意努力中でございます。
  63. 上田哲

    上田(哲)委員 どうもよくわかりません。  担当者から伺いますが、アメリカ側から言われているのは、たとえば三沢では遠いだろうということで、いまの厚木から大体どれくらいの範囲とか、そういう要望がございますね。それを明らかにしてください。
  64. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体的に距離を言っておるわけではございませんけれども、言い方としまして、関東及びその周辺地区、こういう言い方を米側はしております。具体的な話の中では、西の方で言いますと浜松ぐらいまでは彼らの言う関東及びその周辺ということで理解をしておりまして、向こうもそのつもりでおるようでございますから、ほぼそのくらいの範囲のところという感じでわれわれはネゴをしておるわけでございます。
  65. 上田哲

    上田(哲)委員 ということは、距離で言うと半径どれくらいということになりますか。
  66. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま仮に浜松の名前が出ましたが、浜松が百七十七キロでございますから、二百キロ前後以内であれば対象になるというふうなつもりでおります。
  67. 上田哲

    上田(哲)委員 伊豆七島は入りますか。
  68. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま伊豆七島のどの島が何キロということを全部覚えておりませんのですが、約二百キロと言えばおおむね入るのではないかと思います。正確には覚えておりません。
  69. 上田哲

    上田(哲)委員 環境庁の基準がありまして、航空機騒音に係る環境基準七十五WECPNL以下でなければならぬ、こういう基準を超えないように努力をするという項目を防衛庁はお持ちですか。
  70. 塩田章

    ○塩田政府委員 環境庁の、いまお示しの基準はわれわれも承知しておりまして、もし具体の場所について検討するような段階になれば、いま御指摘のような基準は当然前提にして検討する必要があるというふうに考えております。
  71. 上田哲

    上田(哲)委員 防衛庁としては、第一に、関東地方ですでにある飛行場で代替可能なものはないか、第二に、新設をすることができないか、第三に、それもなければ海上の飛行場というものも考えられるか、論理的にはこの三つで進めておるように伺っておりますが、そのとおりでしょうか。
  72. 塩田章

    ○塩田政府委員 私ども、現在その三つの項目で作業をいたしております。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 運輸省に伺いたいのですが、伊豆七島の飛行場の現在の実態と今後の整備計画を明らかにしてください。
  74. 松村義弘

    ○松村説明員 伊豆七島には幾つかの飛行場がありますけれども、一応東京都から二百キロの範囲内の島に限ってお答えさせていただきます。  大島が東京都の都心から百十キロでございます。大島の飛行場は現在滑走路が千二百メートルでございます。就航しておりますのはYS11でございます。  それから二番目に三宅島でございますけれども、これは百八十キロでございます。滑走路の延長は大島と同じく千二百メートルでございます。同じくYS11が就航しております。  そういう状態でございます。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 八丈島も言ってください。七島全部言ってもらえるとありがたいな。
  76. 松村義弘

    ○松村説明員 八丈島は東京都の都心から二百八十キロ離れております。これは滑走路延長千八百メートルで、YS11及びボーイング737、ジェット機でございますが、それが就航しております。  以上でございます。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、各島の現在の飛行場施設と、それからこれから新設の段取りがございますね、新島なり神津島なり。それを全部言ってください。
  78. 松村義弘

    ○松村説明員 五十九年度の予算要求でわれわれが考えておりますのは、新島の村営飛行場を東京都営の第三種空港として整備することを考えております。新島は東京都心から百六十キロでございます。現在あります村営飛行場の滑走路は八百メートルでございます。  以上でございます。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 タッチ・アンド・ゴーに必要な飛行場の条件、特に滑走路の長さ等々はどうなっていますか。
  80. 塩田章

    ○塩田政府委員 米側の提示しております条件としましては、長さが、向こうはフィートで言っておりますけれども、直しますと約二千四百メートル。ただし、両端に拘束装置をつければ千八百メートルくらいまでは可能であるということ。それから滑走路の厚さが約三十センチ。二十五センチ程度でも結構だと思うのですが、二十五センチないし三十センチ程度の厚さがあること、こういったことを要望しております。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 既存の飛行場を考える場合あるいは延長する場合に、千八百メートルというところが基準になるわけですね。  そうすると、いまは伊豆諸島に限りますけれども、二百キロというのは絶対のものでないとすれば伊豆諸島全部を見ておかなければ議論にならないと思いますが、この場合いまの尺度からいって、たとえば八丈島は大変可能性があり得る。大島は、いまのところないけれども滑走路を延長するならばあり得る。その他のところもかなり無理をすればないわけではないという危惧が出てくるわけですけれども、そうした見通しについてはどのようにお考えですか。
  82. 塩田章

    ○塩田政府委員 私ども先ほど三つの項目で調査をしておりますと申しましたが、いまの御指摘は、そのうちの第二の新設飛行場、島の場合は新設ばかりではなくて既存の飛行場の延長ということを含めてお尋ねだと思います。  私どもは、いまの作業の順序からいきまして、第一の内陸部の既存の自衛隊の飛行場を使えないかということに現時点ではほとんど精力を投入しておりまして、第二、第三の問題につきまして具体的な調査あるいは検討をするというような段階に至っておりません。したがいまして、いまここで個々の島、個々の飛行場についてどうすればどうだというようなことをお答えできる段階に至っておりませんので、いまのお尋ね、ちょっとお答えいたしかねます。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 いまのお話だけ聞いていると、内陸部の既設飛行場だけが対象だというふうに聞こえるのです。ところが、現実に五十八年度九百万円の調査費の中で、たとえ机上プランであるにせよ、伊豆諸島もその対象に加えられたと私は理解をしているのですが、いかがですか。
  84. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げました第一の調査項目の、既存の自衛隊の基地で使えないかということでやっていると申し上げましたが、その前に申し上げましたように、第二、第三の項目も当然調査項目ではあるわけでございます。第三の海上フローティングの案も含めまして、私たちとしましては第二項目も第三項目も当然考えていかなければいかぬとは思っております。ただ現時点でそこまでいっていない、こういうことでございます。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 やはり微妙なところが出てまいりまして、第一と第三をやっていて第二をやらないはずはないので、そういう問題がいま現地で非常に強い不安を巻き起こしております。  私はこの質問に先立って、昨日もそれぞれの島の代表者とお話をいたしました。大島の町長さん以下、大変な不安をお持ちなのですね。そこで大島では、いま千二百メートルでありますけれども、この先延ばせないわけではない土地もある、こういうふうに見られているので、大変だということで、九月二十七日に議会は全員の満場一致で反対決議をいたしました。関係省庁にも陳情したはずでありますけれども、この議会で町長も、断固断る、無条件に断る、こういう話をされているわけであります。八丈島でも同じように九月の十四日に議長職権で議会を開いて、満場一致で反対をした。ここは千八百メートルの滑走路をすでに持っているわけでありますから非常に危機感が強い。新島も九月二十七日に村議会が村長に対して、どういう条件でも絶対断れ、こういう強い意思表示をしているわけであります。他の島も同じでありますけれども、そういう地元の非常な不安が起こっています。この際、ひとつこうした不安を解消しなければならないと思います。いかがでしょうか。
  86. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたように、個々の島、個々の飛行場について検討しておる段階でございませんので何とも申し上げられませんが、いま御指摘のような地元の動き等は、お見えになったりあるいは新聞報道等で承知いたしております。  いずれにしましても、これは島に限りませんが、こういった問題は具体の話になった場合には当然地元の御理解を得なければできない問題でございますから、その時点ではよく地元との話をしました上で進めていくということになろうかと思います。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 どうも歯切れが悪いので、もう少しく伺いたいと思います。  少なくともこの三つについていま特に申し上げておきたいのですが、大島では、この千二百メートルの滑走路をもし延長するとすれば、こんなことはあってはなりませんが、ここは役場、学校、保育園、老人ホームが密集しているところでありまして、もともとこうしたタッチ・アンド・ゴーの訓練滑走路ということではなくて、五十八年二月でありますけれども、ジェット機の乗り入れをしたらどうかという東京都からの話に対して、やはりそれでもいけないということで白紙撤回している経緯もあるわけであります。もしこれを延長するということになれば、座り込みをしてでも阻止しなければならぬという強い意思があることを、私はきのう町長さん自身と話したのでありますが、ぜひひとつお伝えをしておかなければならない。  特に問題となるのは、防衛庁当局の発言の中に、どうも内陸部の人口過密地帯にはむずかしいから過疎地域へ持っていったらどうかという言い方の中で、伊豆諸島が浮かび上がってくる。人が多いところでは困るのは事実でありましょうけれども、だったら、人の少ないところならいいじゃないかという発想は島の立場としてはまことに許せない、こういう意見が私は正しいと思いますね。これらを含めて大島にはどうですか、いまのところ大島に向かって進めるという御意見は具体化しませんか。
  88. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、どの島にどうだという検討をしておりませんので、いま大島について、延長線上にいろいろなものがあるとおっしゃいましたが、そういうようなことを調べているところまでいっておりませんので、何ともお答えいたしかねますというのがまだ現段階でございます。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり、大島については調べていませんね。そして八丈島についても調べていませんね。それから新島についても調べていませんね。
  90. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま挙げられました三つの島につきまして、いまの滑走路を延長した場合に何メートル延長する必要があるかとか、あるいはその延長線上に何があるかとか、そういうようなことを調べるところまで至っておりません。
  91. 上田哲

    上田(哲)委員 はっきり確認をしておきます。八丈島は人口一万のうち空港周辺に七千五百人いるんですね。これは、もしここで強行されるということになったら大変なことであります。そういう意味で、過疎のところならいいだろうなどということは通用しないわけですから、八丈についてもいまのお話は当然同じことでありますね。
  92. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げたとおりでございます。
  93. 上田哲

    上田(哲)委員 新島の場合は八百メートルということで、先ほどのお話のように目指しているわけでして、かつて射爆場問題がありましたから人々の関心は非常に強いわけであります。あの当時と状況も違って、道路の問題、港湾の問題がどういうふうに交換条件として出てきても断固としてこれは受け入れるわけにはいかない、こういう意向が強いわけです。  繰り返し繰り返し申し上げるわけですが、いま私はたまたま三つの島の声を代表して言いましたけれども、たとえば新島でも、議会の方々が全部集まってきのうも強い意思表示の伝達がありました。その意向の一つは、どの島というわけではない、もう伊豆諸島全体どれであっても困るのだという強い意向であることでありますから、それを受けとめていただいて、はっきりと、いま調査の対象になっていないし今後も具体的なプログラムはないということを御確認いただきたいと思います。
  94. 塩田章

    ○塩田政府委員 先生のいまの御発言はよく承りました。先ほども申し上げましたように、私どもは、先生の御指摘の中にもありましたが、いまの内陸部の調査につきましても同じですが、人口が多いから少ないからといってどうこうという判断をすべきではない。それは全く先生の御発言に同感でございます。いずれにしましても、地元の了解なしにこういう話が進むわけではないということはよくわきまえておるつもりでございます。  ただ、最初に申し上げましたように三つの項目で調査をしておりまして、現在第一の項目しか余り進んでおりませんけれども、中身は余り進んでおりませんが、第二、第三の項目についても調査をしたいという気持ちがあるということは、これはこの際はっきり申し上げなければならないと思います。ただ、現時点で先ほども申し上げたような段階である、こういうことでございます。
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 気がかりだから何度も申し上げるのだが、今後調査をするというニュアンスはどうも残っているようでありまして、調査をすることは隠密にやらない、調査の段階を含めて地元の了解をしっかり求めてやるということは確認をさせてください。
  96. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体的な調査にはいろいろな段階があると思いますけれども、必ず地元の御理解は得べく努力した上で進めていくということでございます。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 心配されることは、とは言うものの突如として閣議決定などが行われて強行されることはないかということを地元は非常に心配をしております。長官、ひとつそのような事態はあり得ないということをお約束をいただきたいと思います。
  98. 谷川和穗

    谷川国務大臣 この問題ばかりでございませんで、わが国の独立を確保していくために防衛庁としては自衛隊基地、米軍基地、これを運用いたしておりますが、その基地周辺の住民の皆様方には、何せ大変国土の狭隘なわが国のことでございます、懸命になってわれわれは周辺整備の事業もいたしながら御了解をいただきつつ仕事を進めておるわけでございまして、この問題につきましても、いままで防衛施設庁長官答弁をさせていただいた線でわれわれとしては進んでいく覚悟でございます。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 長官、レーガン大統領が来日されたときに、おみやげにこれを出すということはよもやないでしょうな。
  100. 谷川和穗

    谷川国務大臣 この問題は、大変にいろいろな角度で検討をし続けていかなければならない事務的な分量の多い仕事でございまして、そういう意味からいきましても、私としてはまことに残念なことでございますが、長官に就任いたしましてから十一カ月、最終的な解決案というのをまだ見出せない状態でおります。したがいまして、当然でございますが、あとわずか一カ月そこそこに迫っております両国首脳会談でこの問題が持ち出せるというわけにはなかなか時間的にはいくまい、こう考えております。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわかりました。  最後に一つ。硫黄島を、少しは遠いけれども、しょうがないじゃないかということで準備が進んでおるというふうにも伝えられております。硫黄島はあの第二次大戦の最大の激戦地としてまだ記憶に生々しいところでありますし、二万三千人の将兵の遺骨が全然収集作業も行われないままにいるところへ、先般、急遽東京都の鈴木知事が島へ駆けつけられて、慰霊の丘をつくって一つの戦後を処理された。それは新しい戦前ではないか、基地化ではないかと非常に心配をされているところでありますから、あるいはファントムなりF15なりの基地としても米戦略全体の中での位置づけが非常に憂慮されているところでもあります。硫黄島をそういう立場で使うという話し合いが進んでいるやに聞く点は、いかがでございますか。
  102. 塩田章

    ○塩田政府委員 NLPのことに限って申し上げますと、硫黄島は非常に距離が違うございまして、もともとこの問題が起こったのが三沢、岩国では距離が遠いというところから起こった問題でございまして、その三沢よりも倍以上あるものですから、実際問題として、NLPの対象としては米側としてはとても受け入れられないというのが米側の立場でございます。私どもとしては、硫黄島であればいまの飛行場の条件とかそういうことはもうすべて整っているわけですからできるじゃないかという気持ちもないわけではございませんけれども、いま申し上げたような距離の関係等からしまして、実際に取り上げて対象になっているというわけではございません。先生いま、何か話し合いが進んでいるというようにおっしゃいましたが、そんな状況ではございません。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 この際硫黄島について一言申し上げますが、小笠原の皆さんが硫黄島への帰島を願ってすでに三十数年たつわけであります。遺骨収集もままならないわけでありまして、再び戦火にまみれさせるということがあってはならない。しかもまだ、これが新しい基地として、平和復帰を願う島民の、いない間にどんどん進んでいくという事態を避けなければならぬという気持ちは、かつての島民に非常に強いわけであります。小笠原村の人々の気持ちもそこに集中をいたしております。これについての十分な御配慮がなければならぬということを強調しておきたいと思います。  ひとつ話題を変えさせていただきますが、先般の大韓航空機撃墜の事故の後で、日本側からテープの公開がございました。このテープの公開について、防衛庁長官事前アメリカ側との何らかの協議はあったのですか。
  104. 谷川和穗

    谷川国務大臣 この事件は、非武装の民間の航空機が撃墜されるというまことに異常な、また重大な事件でございます。しかもその事件がわが国の近くで発生をいたしたということもございますが、この事件が発生をいたしましたときに、ソ連政府当局は、どういう事情があったかは存じませんが、なかなか事実について明らかにしない状態が続いておりました。そういう状況下におきまして、私どもの持ち合わせておりまする材料をアメリカと共同して、ソ連政府をして真実について触れるという材料に使えればという気持ちで、わが方の持っておりまする材料を公開いたすことに決定をいたしました。  それから、日本アメリカとの間の情報の交換についてでございますが、日米安保条約体制の中におりまする二つの国の関係でございますので、常に平時におきましてもあらゆる事態において各種の情報の交換をいたしております。ただ、情報という事柄の性格上、いつどういうときにどういう情報がお互いに交換されておるかというような事柄については差し控えさせていただきたいと存じております。  大韓航空機に関連をいたしましたわが国の材料につきましては、ただいま申し上げたような判断で、これを公開するということに踏み切った次第でございます。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 私が伺っているのは、あのテープを発表するに当たって、その前に日米間で何らかの協議、話し合いはあったのかということです。
  106. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもの持っておる材料を、アメリカ協議をいたしまして、そしてこれを使うことによってソ連政府をして真実を語らしめるという目的をもって使ったことは事実でございます。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 私が伺っているのは、何のために発表したかということではないのです。これを発表するに当たって、日米間で、いつ何をどのように発表しというような問題について事前の話し合いがあったかどうかということを伺っています。
  108. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、安保理事会で交信テープの内容を公表する前には日米両国間で協議をいたしましてそういった決定に至ったわけでございますが、どういった方法でどういう時期にそういった協議を進めていたかということにつきましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、そういった一般的な情報交換の内容、仕方等については御答弁を差し控えたいということで、御理解を賜りたいと思います。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 角度を変えますけれども、官房長官は、まだたくさん中身はあるんだ、出してないところがあるんだということを他の場所で国会答弁をされているわけですが、そうした残っているものもあるんだというような問題もアメリカ側と話をしたのですか。
  110. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先日だと思いますが、後藤田官房長官お答えになりました趣旨は、ソ連政府に対して大韓航空機を撃墜した事実を認めさせるために必要な措置としてこういった交信記録の公開をしたということをおっしゃったわけでございまして、一般的に、情報の持っている内容とか、それからそれをどういうふうに処理しているかといったようなことについては申し上げるわけにいかないということを言われたものと理解をしておるわけでございます。  今回の大韓航空機の事件につきましては、いま申し上げましたように、交信記録の内容を安保理事会に提出をして公表することによってソ連に大韓航空機撃墜の事実を認めさせようということで、その件をアメリカ政府協議をいたしまして、あのような措置に至ったということでございます。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 目的は聞いておりません。事実関係だけをお尋ねいたしますが、日本側で発表したテープ、それ以外のテープもあった。それで、その話し合いは日米間で協議をして決めた。当然、官房長官の言われるまだ発表してない部分について、アメリカは知っているということでいいわけですね。
  112. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私どもが公表いたしましたのは、大韓航空機の撃墜の事実を証明するために必要とされた交信記録を公表したわけでございます。  一般的に申し上げまして、わが自衛隊がいかなる情報を収集し、いかなる情報を日米間で交換をしているかということにつきましては、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  113. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなことは全然聞いてないのです。どうかひとつ、上から下へ向かって物を言わないで、国会のシビリアンコントロールに対して謙虚に答えていただきたいのです。あなた方がおっしゃる防諜の意味というものを針でつっついて引きずり出そうとしているのではありません。シビリアンコントロールのすれすれのところで最低限のことを伺っているのだから、あわてふためいて問題をはぐらかさないで、質問にきちっと答えていただきたいのであります。  防衛庁が発表された交信テープ、それ以外にももちろんあったが、そのことについてはアメリカ側とも話を済ませているのだという事実関係であります。どんな音がしたか、どんなことを彼らが言っているかということを言えと言っているのではありません。
  114. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 繰り返して申し上げて恐縮でございますが、一般的に申し上げまして、情報業務の性格上、いかなる情報を収集しておって、それをいかなる方法によりまして情報交換をやっておるかということについては、答弁を差し控えさせていただきたいということをかねて申し上げておるわけでございます。  今回の事件につきましては、大韓航空機の撃墜という事実を明らかにするということの必要から、そのことを証明できる交信記録について、アメリカ側協議をいたしまして公表をするということに踏み切ったということでございます。
  115. 上田哲

    上田(哲)委員 同じことを言わさないでください。  だから、発表してない部分についても、アメリカ側が何を発表しないのかということを知っているのだなと。その内容が何であるかなどということを聞いているのでもなければ、一般論を聞いているのでもありません。三回も四回も同じことを言わさないで、イエスかノーかだけのことですから、ちゃんと答えてください。
  116. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 情報の業務並びにその情報交換に関しましては、どういうことを知っているかあるいは知ってないかということをお答えすることを差し控えさせていただきたいということを申し上げている次第でございます。
  117. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなことちっとも聞いてないじゃないですか。  発表されたテープは、公開されているのだからだれもわかっているのです。そして官房長官は、それ以外にもあるのだと言っているのです。そして防衛庁は、アメリカ側とちゃんと事前に話し合いをしたと言っているのです。ならば、アメリカには、発表してないという部分がこれだけあったなということはわかっているのだなと。もしわかってないというのだったら、一体いまの論理はどういうことになるのですか。途中から急に一般論にすりかえないで、簡単なことなんだから。それでいいんでしょう。
  118. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 繰り返して恐縮でございますが、やはりそういった、どういうものをアメリカ日本で交換をし、相互にどういうものを知っているかということ自体が、私どもとしては情報業務の一般的な性格から申し上げましてこれは具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたい、こう考えている次第でございます。
  119. 上田哲

    上田(哲)委員 具体的に言えとは言ってないじゃないですか。  発表したものをAとします。発表しでないものをBとします。AプラスBがトータルです。アメリカ側と話し合いをしてAを決めたのならば、Bという部分があるということをアメリカが知っているだろうなということがどうして答えられませんか。Bの内容について触れるとは言っておりません。
  120. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 つまり、いまの御質問の問題についていろいろ申し上げるということになりますと、防衛庁が具体的にどういった情報を収集し、どういったものを持っているということを前提として明らかにしないとできない話になるわけでございまして、そういう意味で、どういう情報がとれるかとれないかということにまた結びついてくる問題でございますので、これは一般的な問題といたしましてお答えすることは差し控えさせていただきたいということでございます。
  121. 上田哲

    上田(哲)委員 時間をむだにするために答弁しているような気がしますから、防衛庁長官、実は、これについては事前の話し合いがなかったのでしょう。いかがですか。
  122. 谷川和穗

    谷川国務大臣 事前の話し合いとおっしゃられた、事前という意味がちょっと私よくわかりませんが、私どもといたしましては、ソ連政府が撃墜した事実というのをなかなか認めないということがございまして、どうしてもソ連政府に撃墜したという事実を認めさせるという行為を行わないと、かえってこの地域における国際緊張の度合いも高まってくるおそれもあるという判断も確かにございました。そこで、日米で協力をいたしまして、あのようなわが方の持っております材料をもとにして作業をいたしたということでございます。そして、その材料というのは二つでございましたが、その二つを公表するということに踏み切った次第でございます。
  123. 上田哲

    上田(哲)委員 重ねて伺いますけれども事前のそういう話し合いがちゃんとあって、日本側の意思、日本側判断ということのみで発表したのですか。合同で出したものですか、日本側の意思だけでやったのですか、アメリカの意思ですか。
  124. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まことに恐れ入りますが、事前と言われる意味をちょっと……(上田(哲)委員「テープの発表前のことです」と呼ぶ)事前という意味は、国連の安保理事会において公表するその前と言われる意味ですか。(上田(哲)委員「はい」と呼ぶ)日米の間では十分協議をいたしまして、その行為をとることによって、くどいようでございますが、事実をソ連政府をもって語らしめる、事実を認めさせる、われわれそういう努力をいたしまして、九日間かかりましたが、ソ連政府から撃墜したという事実があらわれてきたのは御承知のとおりでございます。
  125. 上田哲

    上田(哲)委員 角度を変えて伺いますが、では、アメリカから大変よくやってくれたという感謝のメッセージは届いているのですか。
  126. 谷川和穗

    谷川国務大臣 政府政府との間の問題は別にいたしまして、アメリカの議会でそのような決議が採択されたということは報道で聞いております。
  127. 上田哲

    上田(哲)委員 長官のところには届いているのですか、ないしは政府の何らかの機関に届いておりましょうか。
  128. 谷川和穗

    谷川国務大臣 政府の何らかの機関というのは私よく存じませんが、私の手元には別にそういうものが届いておるわけでもございません。
  129. 上田哲

    上田(哲)委員 自衛隊のテープは稚内の施設でキャッチした。この稚内の施設というのは、もともと米軍が使っていて自衛隊が肩がわりをした。これは三沢の米軍基地に直径四百メートルの大きなアンテナがあって、その出先機関が稚内。ということは、稚内でキャッチされた情報のすべてはアメリカ軍に十分わかっておる、こういうことだと理解するのが普通だと思うのです。アメリカにとってみれば、日本がそうしたテープを発表するということは何一つ知らないものではなかった、こういうふうに理解するのが妥当だと思うのですが、いかがですか。
  130. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 アメリカ側がどのような情報をどういう方法で収集しているかということにつきましては私ども承知をしていないわけでございますが、今回の事件につきましては、少なくとも私どもの部隊で収集しましたそういう交信記録というものが役に立ったというふうに私ども理解をしております。
  131. 上田哲

    上田(哲)委員 水かけ論にならないように一言申し上げて御見解を承りますが、いまのジグザグの御答弁を全部つなぎ合わせてみると、目的はソ連に撃墜の事実を認めさせるためだった、それはおいておきましょう。  稚内でキャッチした自衛隊の情報をその目的で発表した、その前には事前の話し合いがあった、こう言われるけれども、この施設のシステムから言って、当然これはアメリカ側の情報として同じように伝わっていたはずだし、さらにアメリカ側能力からすればもっと豊富な情報というものを持っていた、特に日本側だけが発表しなければならないものではなかった。アメリカ側にしてみれば、その意味でのアメリカ側の情報機能等々を赤裸々にすることなく、日本を活用することによってその部分が守られだというのが感謝決議であろう。またその感謝決議も、そういうふうに努力をし、日本の情報機能を明らかにしてしまってはまずいぞということをさんざんおっしゃっていて、しかもあえてされたという防衛庁長官にも感謝決議が届いていないというのは、私はまことに不可思議な形だと思うのです。  これは十分な話し合い、自主的な立場での双方イコールな立場での話し合いなどというのではなくて、私は十分な話し合いはなかったというふうに理解をしておりますけれどもアメリカ側のいわば何らかの形の指示に基づいてこの公開が行われたのじゃないか。申し上げたいことは、日本の自衛隊、いわゆる防衛機能と言うけれども、これは結局その意味でもアメリカの全体戦略の中に組み込まれ、しかも、アメリカから感謝をしてもらえるほどのアメリカ側のために大変肩がわりと申しましょうか、犠打を打つ立場がここに象徴されたのではないか、こういうふうに懸念をいたしております。防衛庁長官の感想を承っておきます。
  132. 谷川和穗

    谷川国務大臣 今回公表に踏み切った材料は二つでございます。うち一つは、レーダーの航跡でございます。これにつきましては、わが方は常にわが国に向かって飛来してくる物体について監視を怠ってはならないという意味で行っていた作業のうちの一つが材料として生きた、役に立ったということでございます。もう一つは交信記録でございますが、この交信記録につきましては、われわれとしてはこの交信記録が、最終的にはソ連政府が九日間かかりましたけれども撃墜の事実を述べるに至った面で、大変に役に立ったというふうな感じがいたしております。  なお申し述べさせていただきますと、私どもといたしましては、わが国の防衛のために三百六十五日、一年平常やっておりました作業をやっておっただけのことではございます。実はレーダーにつきましては先ほどのようなことでございますが、その他日本の上空に飛来してまいりまする各種の電波につきましては、これを懸命にとらえておりますけれども、何をどういう形で分析をしているか、どういう情報を用いているかということは申し述べられませんし、また、それを同盟国といえアメリカに対していつどういう形でその種の情報を公開しているかということについても事柄の性質上お答えできませんが、基本的に申し上げさせていただきたいことは、あくまで日米両国の作業は対等の立場に立って行われている作業であるということは御理解を賜りたいと存じます。  なお、今回のわが国の情報の公開につきましては、政府全体が各般の諸情勢を判断いたしまして、これを公表することに踏み切ることによってソ連の回答を引き出すという決意に至ったという行為でございます。
  133. 上田哲

    上田(哲)委員 目の前の幾つかの問題をちょっとおきまして、じっくりひとつこの機会に議論したいと思っておりますが、四次にわたる防衛力整備計画、そして「防衛計画の大綱」、そうしたさまざまなプロセスを経て、日本の軍事力がいま世界各国からも注目されるところにあるわけですし、日本国民の視点もまた一つ大きな分水嶺を感じているわけであります。  先般の中曽根総理大臣と石橋社会党委員長との討論の中で大事なことが二つ確認をされていると思います。今日の世界情勢の中で、いかなる防衛論も絶対というものはない、相対的な努力をひとつ相磨くべきであろう、軍事同盟保障論も申立保障論もそれぞれ相拮抗する立場で議論されるべきであって、この有効性をお互いに競うべきだという点は、両党首の討論として大変意味を残したと私は思います。もう一つは、そのために国民合意をどのようにして取りつけるかという努力は、また双方の確認されたところだと思うのであります。一回の論議でそうした面を一瀉千里にはいきませんけれども、私はそのことをこの機会にじっくりお話をしてみたいと思います。  そこで、基礎認識として伺いたいのでありますが、これだけの日月をかけ内容を高めてまいりました、われわれからすれば既成事実ではありますけれども、今日の自衛隊あるいは防衛費、防衛体制と包括されるものについて、長官はどれぐらいの国民的支持があるというふうに、特にこれはあらかじめお願いしておきましたので、各種の世論調査等々を踏まえながら御見解を承りたいと思います。
  134. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず、自衛隊についての国民の御理解は年々高まってきていただいておって、ある種の調査によりますれば、自衛隊の存立を認めるという方々は八割を超しておるという数字もあるというふうに理解はいたしております。  それから、防衛費総額についてでありますが、これはやはり一つには、敗戦直後わが国が全部武装を放棄したというような事柄から、国民の間で防衛費の増強に対しては必ずしも賛成はしないという非常に根強い国民的感情が今日なお続いておると思っております。しかしながら、最近の国際情勢の進展とともに、日本国民の中にも、まことに徐々ではありますが、やはり自分の国は自分でできるだけのことをしていくべきであって、そのことは国防においても当てはまることであるということで、ある一つのめどを持った防衛力整備の計画については、少なくとも計画の内容について十分に検討を加えながら日本の進むべき道を決めていくべきであるという論争が非常に現実的なレベルにいま立ち入りつつある面もあるように私は理解いたしております、  ただし、後段の場合には、日本国民の何%がどういう態度になっておるかというような問題につきましては世論調査が区々であって、必ずしもいまここで直ちに数量的にどのくらいの国民の割合だと言うわけにはいかない議論がとも存じております。
  135. 上田哲

    上田(哲)委員 二段に分けて御答弁がございまして、第一の問題は自衛隊についての世論調査、これは御提出いただくようにお願いしてありましたけれども、時間の関係で、いま八割というお話がありました。総理府の調査だから、私たちとしては、もう少しく民といいましょうか、官でない調査というものも見たいと思いますが、とりあえず総理府の調査でいうと、三十一年は五八%、四十年が八二%、四十七年七三%、五十三年八六%、五十六年八二%、こういうふうに出ておりますね。これを八割とおおよそ言われたわけでありましょうから、これは総理府の調査として私たちも受け取っておきます。  そこから議論を始めることにしますが、第二の問題は、これは数字というわけにはいかないが、ある種の現実的な対応があるではないか、こういうように言われた。それは先ほど申し上げたように、両党首の討論の中で、絶対はない、国民合意をつくろう、これは一つの一致した点だろうと思うので、そういう立場で議論を進めるべきではないかという点はいいわけですね。
  136. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は、現実的に日本の国の安全を守り独立を確保する手だてとして、幾つかの手だてが考えられると思いますが、私自身は、現下の国際情勢、さらに国際機構その他の現実的な面などから考えて、わが国はみずから侵略を防止し、侵略が生起した場合にはこれを早期に排除するという意味で、必要最小限の実力を保持していくということは必要だという判断に立っております。  それはそれといたしまして、国民合意の上で進んでいくという基本的な姿勢、これは政治を論ずる上できわめて大事な点であるというふうに考えておるわけでございます。
  137. 上田哲

    上田(哲)委員 抽象論をやりたくないものですから、できれば私もかなり踏み込んで議論をしたいと思っておりますから御答弁をさらに繰り返して求めませんが、絶対はない立場で相対的な努力をしようじゃないか、そのために国民合意を築かなければならぬじゃないかという点が出発点だなということは、いいわけですね。——結構です。  その上で、政府のいま国民合意に向かって努力をする原則というのは、おおよそ三つだろうと思っております。GNPの一%枠、非核原則、専守防衛、この三つは堅忍不抜、今後とも守っていかれる、政府としてはその上に国民合意を築くのだということは変わらないんだということでよろしいですか。
  138. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず第一に、何といっても憲法があろうかと思います。それを除きまして政策論の面で申しまして、いま御指摘のうちの二つは、むしろ憲法に準ずるような、あるいは国の基本的な防衛の施策であろうかと思います。  しかし、もう一つの問題につきましては、私もう一つの問題と言うのは一%の問題でございますが、これは五十一年十一月に、当時の閣議で、当面の間一%を超えないことをめどとして閣議決定をされておる問題でございます。私といたしましては、現下の防衛力整備の計画を推し進めていくに当たりまして、そのときどきの国の財政事情あるいは他の施策とのバランスを考えながら取り進めていきたいと存じますが、五十一年に決定をされております閣議決定はできるだけこれを尊重いたしたい、そしてその範囲で整備についてぎりぎりいっぱいの努力を続けていきたい、基本的にこういうふうに考えておる次第でございます。
  139. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に重要な御発言なんですが、私はこの三つは、総理大臣以下常に公的に発言をされてきているお約束だろうと思います、私たちが党を挙げて公的にそれでいいと申し上げたわけではないけれども。特に、一%にしぼりましょう、政府として、まさに五十一年、一九七六年の閣議決定としてみずからの政策課題としてこれを決定されたこの一%というのは、大体国民合意になっているのじゃないか、いま八割というところに近いのじゃないか。わが党の立場がどうあるということはちょっと別にして、客観的に言って一%というところが、ほかの言葉で言えばほどほどというところにあるのであり、それを守っていくことがナショナルコンセンサスだ、政府の政策態度だろうと思っているのですが、いまのお話だと、この一%を変えるということを目指しておられるということでしょうか。
  140. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は、現在持っております防衛力整備の計画、すなわち具体的に申し上げますと「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く到達をいたしたいと念じておるわけでございますが、それを行うに当たりまして、財政当局へ提出をいたします要求あるいは政府原案の決定を見ます防衛費につきましては五十一年の閣議決定の線に沿って進みたい、こう考えておる次第でございます。その線の中でぎりぎりいっぱい努力を続けたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  141. 上田哲

    上田(哲)委員 政策ですから未来永劫という話になってもいけないかもしれないが、少なくともいま五十九年度概算要求の段階で、しかもシーリングはああいう形で、二回予算編成があるのじゃないかというぐらい国民の前に明らかになっている。そして六十年度はすぐ目の前に見える。少なくとも五十九年度、六十年度ぐらいは一%を厳守するということは間違いないのでしょうね。
  142. 谷川和穗

    谷川国務大臣 中曽根総理も他の委員会で、一%の線を保持していきたいという御答弁をされました。私自身といたしましても、五十九年度概算要求を八月の末に大蔵当局、財政当局へ提出する時点におきまして、五十一年に閣議決定をいたしております線に基づきまして実は概算を取りまとめた、そして財政当局にこの要求を提出した、こういう形でございます。
  143. 上田哲

    上田(哲)委員 繰り返しますが、五十九年度は一%を厳守しますね。
  144. 谷川和穗

    谷川国務大臣 概算要求を提出するときにいまの判断をいたしたということは、先ほどの答弁のとおりでございます。  なお、これから失政府原案が決定するまでまだしばらく時間がございますが、その後わが国経済がどういう姿になるかということはちょっとはかり知れない、わからない不確定の要素がございます。同時に、概算要求の提出をいたしましたいま時点でございますが、これから五十九年度予算の政府原案が確定するまでの中で、防衛費がどういうような形で決まっていくかということも実はまだこの時点では申し上げられない問題でございます。この二つが不確定要素としてございまして、いまこの時点で一%はどうなるのだろうかというようなこと、五十九年の場合にはGNPの比率に対して防衛費がどのくらいの割合になるかということを予測することはできないというように考えておるわけでございます。  ただ、申し上げましたように、概算要求を出しますときに当たりまして、先ほど申し上げました五十一年の閣議決定の線というものを尊重してわれわれといたしましては概算をつくり上げて、財政当局に要求したということでございます。
  145. 上田哲

    上田(哲)委員 大変な御発言が出てきたのですね。一%というのは、でき上がった姿における政策責任のはずなんであります。いまのお話だと、スタートにおいてそれを目指すが、結果はわからぬ、こういうことになるわけですね。五十九年度予算において、防衛庁としては一%内におさめようという態度で出発するが、結果においては一%を超えることもあり得るかもしれぬ、こういうことですね。ひとつ端的に答えてください。
  146. 谷川和穗

    谷川国務大臣 経済には、当然政府といたしましても経済計画あるいは見通しがございます。私どもが一%以内の概算を取りまとめるに当たりましても、その種の指標は十分考慮に入っております。ただ、先ほど私が答弁させていただきましたのは、五十九年の防衛費はどうだ、こうおっしゃられましたものですから、五十九年の防衛費がどうなるかというのは、いまここでは、一%の問題に関する限り不確定の事柄がございまして、超える、中だ、こういうふうなことだとか、あるいはどのくらいの割合、パーセンテージに落ちつくんだというのは見込みでしか申し上げようがございませんで、結果的な問題としてしか申し上げにくい。いまこの時点では、五十九年の経済の見通しにつきまして私どもは確たるものを持っておるということではございませんという答弁をさせていただいたわけでございます。
  147. 上田哲

    上田(哲)委員 大変はっきりいたしました。これは大変なことなんですね。経済見通しがどうなるかわからぬから何とも言えぬということになりますと、政府は経済見通しもまたつくっておられるわけでありますから、一貫責任はどうなりますか。  政府の経済見通しはさまざまありますけれども、経済審議会の数字によれば、最高七%成長であれば三百五兆六千百九十一億円、最低五%成長であれば二百九十四兆三百九億円、したがってGNP一%の枠では、最大三兆五百六十二億円から最小二兆九千四百三十億円の幅となります。ところで、五十九年度で防衛予算額に追加し得る範囲は、最大で三千二十億円、最小で千八百八十八億円ということになるわけです。ところが、すでに今回のシーリング六・八八のところで千八百九十五億積んでいるわけですから、千八百八十八億をもう超えている。総額は二兆九千四百三十七億円となっています。したがって五%成長以下であったら、五十九年度軍事費はGNP一%の枠を明白に超えてしまうという計算がここにあるわけです。  問題は、政策としてこれを守るということは、そうであっても一%以下に抑えるということでなければならないわけで、スタートはそれで行くけれども結果はどうなるかわからぬということは、すでに政策的な完結責任においてはもう一%論を放棄されるということになってくるわけで、これは大変なことになるわけであります。私どもは一%にしなさいということを申し上げているんじゃなくて、政府が打ち出された五十一年閣議決定の政策をみずから変更される意思表示をされるということは問題ではないかということを申し上げざるを得ないわけであります。つまり、もう少し具体的に伺うけれども、これまでの予算編成の中では、非常に突出と言われる突出のあり方が、最終段階で全く、いわば不意に上にまんじゅうを重ねるようになってまいりました。五十七年度予算の中では、自民党三役折衝が難航しまして、総理大臣裁断で五十九億円を積み上げて最終的には三百十億円が追加されるという結果になった。〇・九三三%ということになっておりました。五十八年度予算では、閣僚折衝が二回行われて結局百三十八億円が増額されて、三役折衝では首相裁断でこれも二百十九億円、合計三百五十八億が増額された、こういう形で最終段階の積み上げがあるわけです。防衛庁長官は、やはり今回もこういう最終段階の積み上げがあるということを御期待になっておられるということでもありますね。
  148. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私といたしましては今回財政当局、大蔵大臣とシーリング枠決定の時点で話し合いをいたしまして、あらゆる種類の枠の中でぎりぎりいっぱいの、実は可能の限りのシーリング枠を財政当局に認めさせようというあらゆる努力をいたしましたが、財政当局の方は財政当局といたしまして現下の厳しい財政事情につきまして話し合いがございました。その結果六・八八%というシーリング枠を認められたわけでございまして、今回の八月三十一日に提出をいたしました概算要求は、この枠の中で決定をいたしたぎりぎりいっぱいのわれわれの要求額でございます。したがって、防衛庁長官といたしましては、政府原案の決まります時点においてわれわれのぎりぎりいっぱい重ねました努力が認められることを心から願っておるというわけでございます。  なお、御指摘のような最終的にどういう決まり方をするか、これについていまここで予測をもって論評することはいたすべきではないと思いますが、いずれにいたしましても、国会で御審議をいただく予算案の政府原案は政府全体の責任において確定されるものでありますが、その中におきます防衛費につきましては、五十九年度の予算決定において、先ほど私が申し上げさせていただきましたように、私どもが現在財政当局へ持ち込んでおりますぎりぎりいっぱい認められることを私は期待、希望いたしておるわけでございます。
  149. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に外側からのお話ですが、おっしゃっていることはわかりますよ。  ちょっと伺いますが、この前訪米されるときにホノルルでクラウ太平洋司令官にお会いになって、三沢の思いやり予算について胸をたたかれた。実際には後年度負担を含めて六十五億でしたか、今度計上されているというか目算されているわけですね。六・八八が決まった後なので私は念のために伺うのですけれども、クラウ司令官に約束をされた思いやり、三沢基地のあの膨大な施設を提供するというのは、六・八八の中ですか、外ですか。
  150. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これは五十九年度に必要となる経費六・八八%の中でございます。  それから、先ほど来御審議をいただいております問題の中の特に一%の問題につきましては、私からもう一度ここで申し上げさせていただきたいと存じますが、私はこの一%の枠はぎりぎり努力をしていきたいというふうに考えながら現在の概算要求をつくり上げておるということでございます。
  151. 上田哲

    上田(哲)委員 中だということになりますと、これまでの思いやり予算の編成の仕方とちょっと疑義が出てくるので、私はその辺もお話したいのですけれども、時間を節約して先にいきます。  別な観点で、このままのつまりいまの六・八八%の積み上げ、あと最終段階でどういう加算があるかどうか、御期待になっているはずなのだがそれは別にしても、いま五六中業を遂行するためには六・八八%では足りないという認識をお持ちだと思いますが、いかがですか。
  152. 谷川和穗

    谷川国務大臣 五六中業そのものは、実を申しますと、これは防衛庁内部におきます防衛力整備の一つのめどでもございます。したがいまして、五六中業そのものは、防衛総費、防衛庁の持っている総額、すべての金額をあらわすものではございません。と申しますのは、五六中業は正面装備についてはできるだけ精緻な積み上げをやっておりますけれども、その他経費については触れてもおりません。  それを前提にして申し述べさせていただきたいと存じますけれども、実は、五六中業は五年間で完成をいたしたいというめどになっております。五十九年度が第二年次でございます。しかしながら、第一年次からわが国の財政事情が非常に窮迫してきておることは事実でございまして、われわれとして第一年、つまり五十八年度において必ずしも満足でなかったことも事実なんでございます。しかし、五十九年度を含めましてあと残った四年間で何としてでもこの完成を見たいと思っておるわけでございます。具体的には、実は残ったまだこれから整備をしなければならないものを順次考えまして五十九年度の概算の中でおさめて概算をいたしておりますので、現在の私どもの気持ちからいたしますと、あと四年間に努力をするその努力のいかんによって五六中業の達成は不可能ではないというふうに判断をいたしながら概算を要求いたしたわけでございます。
  153. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわかりました。このままでは達成できないペースだ、初年度でもがくんとしているので、あの五六中業の数字を計算していくと、五十九年度以降八・五%の増高でなければ計算ができない、こういうふうに思いますか。
  154. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この試算の仕方はいろいろあるかと思いますが、五六中業の所要経費は、ただいま大臣から申し上げましたように正面経費についてはある程度詳細な見積もりをしておりますけれども、その他の経費、つまり人件糧食費及び後方関係につきましては詳細な見積もりをしておりません。そういう性格のものの一種の推計として私どもが五六中業を作成いたしましたときに申し上げました数字が、五カ年間でおよそ十五兆六千億ないし十六兆四千億であろうということを申し上げた経緯はございます。この数字自体がいま申し上げましたように綿密な積み上げでないという制約を御理解の上でお聞き取りをいただきたいのでございます。  そこで、初年度の五十八年度の予算二兆七千五百四十億円を五十七年度価格に逆算いたすわけでございます。これは全体が五十七年価格で計算をした経緯がありますのでそういう技術を使うわけでございますが、それを差し引きまして、残りのものを等比で伸ばすということにいたしますと、それが七・三ないし九・八%と二つ数字がございます。低い十五兆六千億の総額で見ますと七・三%、高い方の十六兆四千億で見ますと九・八%という数字、これが実質でございますけれども年率の数字になるだろうということは、すでに国会でもお答えをしたことがございます。
  155. 上田哲

    上田(哲)委員 そういうわけですね。防衛庁としては、初年度がだめだった上に、次年度、二年目が六・八八ではとうてい足りないのだということがあるはずであります。だから、先ほどのようにどうも一%ではいかぬぞということが出てきてしまう。これは困るのですね。  だんだん時間がなくなりますからひとつまとめてお伺いいたしますけれども、一つは二十七万と俗称されておりますが、充足率が低いわけです。人件費は定員いっぱいでとるのか、実人員でとるのか。そうでない余った場合はどうするのか。逆に言いますと、人員が充足されてしまったらどうなるのかという問題があります。これだけでも増高要因になるだろうということを一つ言いたいわけであります。  それから、何とかやりくりしなければならぬと言うのだけれども、人種費が非常に問題だ。二点目ですよ、ぴちっと答えてください。人件費と食糧費、人種費が非常に高まってまいりまして、五十八年度が四四・五%だ。中業中は四二・七%に下げたいというもくろみはありますけれども、四四・五%、ひどいときは四七%まで行っているわけです。そこで、五十九年度に将補、佐官の定年を一年延長してこれで百三十億円の退職金を節約した。しかし、六十年、六十一年にはその倍に当たる七千人の退職があって、この分がどっと山が向こうへ行く。これだけでも人件増高分が出てくる。これが第二ですね。これてどうしても一%は守れなくなっているという実態があるのをどうするのかという宇ことであります。
  156. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 まず、人件費の計上の仕方でございますが、陸、海、空それぞれ充足率というのがございますから、たとえば陸でございますれば、定員に八六・三三というものを掛けたものが一年間ならした全体の人員ということで予算は計上するわけでございますのでございますから、実際の実人員は、年間通しました形でその八六・三三%の充足率になるように調整をして過不足のないように、こういうことで運営をしてまいるわけでございます。  それから二番目に、人種費がふえていくんじゃないかということでございますが、これは御承知のように、かつては五〇%を超えたこともあったわけでございまして、一番人糧費に何がきいてくるかといいますと、人の数もさることでございますけれども、給与の水準がきいてくるわけでございまして、五〇%を超えて一番高いころは、四十九年、五十年ごろの人件費のアップが非常に大きかったということを反映しておるわけでございまして、近年はそういうことが一段と落ちついておるものでございますから、毎年人糧費のウエートは全体として下がってきておるわけでございます。五十八年度は、先ほど御指摘にありましたように四四・五でございますが、今度の予算要求でいま出しております数字は四三・七ということでございます。
  157. 上田哲

    上田(哲)委員 そうだとなかなか言わないでしょうから、問題の提起だけしておきます。  私の試算では、五六中業、軍艦や飛行機は千分の六とか八しか頭金を使わないで、あと全部後年度負担に持っていってしまうようだ。計上分は少ないけれども、実際には飛行機や軍艦は来るわけだ。それを動かす人たちが必要になってくる。それを陸上と海上だけにしぼってみましても、五六中業の正面装備の主なものでどうしても必要になる人員というものが三千七百十三人います。後から資料出しますけれども、そちらも御計算になっていると思う。これを全部計算いたしますと、これだけでも四百十七億出てまいります、人勧などを加えますと。こういうのがどんどん増高をされていくわけでございまして、これは、前年、前々年の総理大臣の最後の官邸での積み上げぐらいではおさまらないところに来ているのです。これを一体どうするのか。これはいろいろな説明をされても、明らかにこうした人件費だけでも一%なんというのは守れなくなっていると思うのですね。  時間がなくなりますからもう一つだけ加えていきますけれども、私のところへこんなものが来ましたよ。自衛隊の「募集のご案内」というのが私のうちに来ましたよ。これを見せましょう。こういうものが私のところまで来るというのは相当なことですね。だから盾の両面で一生懸命ふやさなければならぬ。またふやすには人がなかなか来ない。いろんな問題があるのですが、相当の無理がある。  私は結論に入りたいのですけれども、GNP一%というものを政策として守っていかれるについてもかなり大きな無理があるということです。その大きな無理の中で、しかも一%を超えるという状況が不可避的に物理的に進もうとしているこの実態について、防衛庁長官、いまのそのはがきの感想も含めてお答えをいただきたいのです。
  158. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私どもはあらゆる種類の侵略に対してわが国を防衛をしなければならないという使命を負っておるわけでございますが、その中におきまして、防衛費に関しては、国民の合意を得つつすでに確立をされておりまする枠内において必要最小限のぎりぎりの努力を続けながらこれを決定していくという姿勢をとっておりまして、当然でございますが、そのときどきの財政事情あるいは国の他の施策とのバランスを考えながら、その年度ごとに防衛費を決めてきております。そして、いま五十一年の閣議決定の一%の問題を御指摘になられましたが、私といたしましては、この一%の枠というものはこれを尊重いたしてまいりたい、こう考えて概算要求をつくりましたが、実は五十九年の概算要求を決定するに当たりましては、これを決定いたすまでの間、われわれとしましては内部でまさに文字どおりのぎりぎりいっぱいの努力をいたしまして、そのため実はあらゆる節減合理化、効率化というものを行ったわけでございます。そして五十九年度予算の概算を作成いたしまして、現在これを大蔵当局に要求をいたしておるということでございます。  なお、わが国全体の経済の情勢につきましては私から申し述べるわけにはいきませんが、私といたしましては、実は、わが国を含めて自由主義経済の再活性化が遂げられまして、日本の国の経済の成長ということを別の面でもまた大いに期待をいたしておる立場におるわけであることを申し述べさせておいていただきたいと思います。
  159. 上田哲

    上田(哲)委員 長官、このはがきが私のところまで来るようだと、これはきっといろんな操作があるのでしょう。どうして私のところまでこんなものが来たかというところ、どの名簿が使われるとかいろいろあるでしょうから、これを御調査の上、御提出をいただくことをお約束いただきたい。
  160. 谷川和穗

    谷川国務大臣 はがきについて申し述べることを失念いたしまして、申しわけございませんでした。先ほどの御要望につきまして、内部で検討いたしまして御要望の線に沿うように、委員長にお許しをいただきまして、努力をさせていただこうと思います。
  161. 上田哲

    上田(哲)委員 長官、私は非常に踏み込んでみたいと思っているのですが、これは国民合意をつくらなければいかぬのです。双方の二つの議論が、たとえば中立論ではだめだよと言って頭からののしるという議論ではもう成り立たない。したがって、国民合意の側から議論を進めるという態度をとりたいと思うから、非常に思い切って個人的な意見で申し上げるのだけれども、八割とかそういうことがあるのであれば、政府が一%を守るというなら一%の中身をきちんと詰めていくことで、一体軍事同盟保障にいくのか、中立保障にいくのか、こういう方向を国民に問おうじゃないか、こういう出発点はあろうかと思うのです。先ほど来私が幾つかのデータを挙げて申し上げたけれども、データはまた詳しく申し上げるが、このデータを見ていけば、五十九年度でGNPの一%は超えざるを得ない。だからそういう意味では、どういう状況があろうとも一%を最終的政策責任として守るということ、五十九年度予算の中で最終像として一%の中にきちっと守る、少なくとも六十年度までもきちっと守るという約束があるならば、突っ込んだ議論はこれからできると思うのですよ。きょうはその出発点になり得るのじゃないか。私はかなり踏み込んで申し上げたのだが、そのお約束をいただけませんか。
  162. 谷川和穗

    谷川国務大臣 この一%の問題につきましては、私といたしまして五十一年の閣議決定の線に沿いましてぎりぎりいっぱいの努力をいたしたい、こう考えております。
  163. 上田哲

    上田(哲)委員 最終像としてきちっと一%でおさめるということを、責任を持ってお答えできないのですね。
  164. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほどすでに答弁をさせていただきましたごとく、実は不確定要因が多うございまして、いまこの段階で結果どうなるということを申し述べることはできませんが、私といたしましては、先ほど来答弁をさせていただいておりますように、この閣議決定の線は守っていきたい、こう考えておる次第でございます。
  165. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、幾つかの方法として、たとえば後年度負担を繰り延べる、五年間の継続費の枠を超えさせて後年度負担を繰り延べるというような、たとえばいま二兆四千億円なるものをもっと小さな範囲で後へ繰り延べるというような措置をとられるという意図はおありですか。
  166. 谷川和穗

    谷川国務大臣 いまの御質問あるいは御意見というのは、恐らく一%を超えた場合どうするかという事柄に通ずる御指摘であろうかと存じますが、実はその問題につきましては、先ほども申し上げましたようにぎりぎりいっぱい努力をし続けていきたい、こう考えておるさなかでございます。もし一%を超える場合に新しい考え方あるいは一%にかわるものを含めた物差しのつくり方、そういったものにつきましては、その時点になって考えるというふうに私は考えておる次第でございます。
  167. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に危惧を持ちますので、きちっとお答えをいただきたいのです。  その時点で考えるというのではなくて、防衛庁当局としては、五六中業という至上命題から発すると六・八八ではもはやだめだ、五六中業五年間の趨勢としては先ほどの数字にも明らかなように七%ないし九%でいかなければならない、したがって五十九年度からすでに一%を守るわけにいかなくなる。政策姿勢としてはスタートラインの姿勢であって、結果は問わぬところまで来ている。ついではそれにかわる基準としてほかのことをお考えになっているのかどうか。  つまり、私は継続費、後年度負担の五年の年限を延ばすということはあってはならぬと思います。だから、それはそれで議論はこの際別におきますけれども、たとえば予算額の税収分等々の一割とか、幾つかの案について御検討を始めでおられるのかどうか、その一点をお聞きして、どうしても一%を最終的に守り切るということが言えるのか言えないのかについて言及をしていただきたいのです。
  168. 谷川和穗

    谷川国務大臣 防衛庁長官名をもって内部に作業開始を命じたことはございません。  それから、一%の問題につきましては、繰り返して恐縮でございますが、経済の動向、財政のポジションその他、防衛総費がどうなるかというような問題につきましても、この時点でまだ不確定要素が多過ぎまして、結論をもって申し述べることができないことは御了承いただきたいと存じます。
  169. 上田哲

    上田(哲)委員 たった一つだけ。  私はかなり踏み込んでみたつもりなのですが、一%、非核原則、専守防衛、ここにある種の、端的に言えばまあこの辺だなというような意味での国民のコンセンサスがあるように思う。そういうことからすると、そこから現実的な議論を始めるということが先般の首相・党首討議の一つの努力でなければならないと思うので、この三つを確実に守っていただけるというのなら議論はできるのではないかと私は思うのですが、そういう立場でのコンセンサスをどのように進めるかということのための議論の出発点をそこに求めるということは、いかがでしょうか。
  170. 谷川和穗

    谷川国務大臣 最初に申し述べさせていただきましたように、私どもといたしましては、あらゆる態様の侵略に対応するためには実力を持たざるを得ない、持つべきだと考えて、計画に基づいて防衛力整備を続けてきておるわけでございますが、この内容について現実コンセンサスを得るべく各政党間で活発な御討議をちょうだいして、それによって国民のコンセンサスが形成されていくという事柄につきましては、防衛庁としても大いに考えさせていただきたい、こう考えております。  それから、条件につきまして、これも最初にその前提に一つ大きく憲法というものがあると申し上げましたが、それに従いまして後の二つは憲法に準ずる大きな原則、もう一つのこの一%というものは政策のレベルの問題だと思いますが、それを含めまして各般の議論が行われることは、非常にありがたいことだと私は思っております。それから、私自身といたしましては、くどいようでございますが、この五十一年の閣議決定の線に沿って、これを尊重して続けていきたいと存しております。  それから、五十九年度の防衛総費が国の国民総生産に占める比率についてどういうふうになるかという問題につきましては、先ほど来答弁させていただいておりますように、五十九年度の防衛総費がどういう決まり方になるかということも予測がまだできておりません。それから、日本の国の経済がどういうふうになるかということもこの時点ではまだ決定しているわけでもございませんので、実はどういう姿におさまるか、どういう比率になるであろうかということは、いまここでは決定的なことは申し述べられないということは御理解をいただきたい、こう考えております。
  171. 上田哲

    上田(哲)委員 重大な発言でありますので、よく記憶にとどめまして、今後の討論にいたします。
  172. 橋口隆

  173. 市川雄一

    市川委員 カールビンソン寄港問題に関連して、事前協議のことをまずお伺いしたいと思います。  エンタープライズの佐世保寄港、引き続いてカールビンソンの佐世保寄港、レーガン大統領の登場以来原子力空母日本寄港がたび重なっているわけですが、私たちとしては、日本アメリカ世界戦略の対ソ拠点基地として組み込まれていくのではないかという観点から非常に憂慮をしているわけでございます。そういう立場でお伺いをしたいと思います。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕  まず最初に外務省にお伺いしますが、政府の従来の見解は、単なる寄港、いわゆる単なる一時寄港事前協議で言う配置変更の対象にはなりません、こういう答弁をされていると思いますが、そのお考えに変わりはないかどうか。
  174. 加藤良三

    加藤説明員 お答え申し上げます。  時間の長短にかかわりなく、核の持ち込み、これは、艦船寄港、通過を含めて事前協議の対象になるというのが、政府の一貫して申し上げております答弁でございます。
  175. 市川雄一

    市川委員 聞いておりますのは、事前協議で言う配置変更、その配置変更はータスク以上、海軍ではこういうことになっておりますが、この配置変更という対象に寄港が含まれるのかどうか、これをお尋ねしているわけです。
  176. 加藤良三

    加藤説明員 実は、配置におきまする重要な変更というのは、従来でも国会の御論議の際に申し上げてまいりましたとおり、陸、海、空についてそれぞれ大体の基準というものがございまして、海軍の場合には一機動部隊程度配置ということになっているわけでございます。他方、核の持ち込みの方は、「装備における重要な変更」ということとの関係事前協議の対象になっているというのが政府が従来申し述べてきたところでございます。
  177. 市川雄一

    市川委員 まだ核のことは聞いていない。これから聞くのです。  要するに私が聞いていることは、事前協議制があって、いわゆる「装備における重要な変更」とか「配置における重要な変更」とか、日本を基地とする作戦行動とかあるわけですよね。そのいわゆる配置変更ですよ。寄港というものは事前協議で言う配置変更の対象外だ、こういう政府答弁がいままでなされてきたわけですが、それは変わりないかと、こう聞いているわけです。
  178. 加藤良三

    加藤説明員 「配置における重要な変更」ということは、米軍の先ほど申しましたような規模の根拠地としての駐留を言うというのが政府の従来からの答弁なのでございます。この点は変わりございません。
  179. 市川雄一

    市川委員 要するに、根拠地としての施設区域の使用を事前協議の対象とします、しかし寄港は、根拠地をほかに持って、たまたま船が来るわけですから、これは事前協議で言う配置の重要な変更という対象外でございます、こういうふうに理解してよろしいわけでしょう。どうですか。
  180. 加藤良三

    加藤説明員 「配置における重要な変更」というのは、根拠地としての駐留でございますから、短期間の寄港というものはその対象ではないということでございます。
  181. 市川雄一

    市川委員 そこで、たとえば昭和四十四年四月二十二日の参議院の外務委員会で、当時の佐藤条約局長がこういうふうに答えていますね。配置変更とは、「もともとこの交換公文自体が、施設区域をどういうふうに使うかということから出てきたものでございますから、施設区域を本拠として駐留する場合というふうにいままでずっと御答弁しておりますわけで、したがって、単なる寄港と申しますか、ほかのところの本拠の船が入ってきた、そういうふうな場合には配置変更というふうに考えない」こういうふうに答弁しています。この答弁はいまも同じですか。
  182. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 同じでございます。
  183. 市川雄一

    市川委員 そこで、こういう見解外務省が立っているということは、米側と公式に了解されておるのでしょうか、どうでしょうか。
  184. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 御質問の趣旨を私は必ずしもはっきり理解いたしたかどうかわかりませんが、「配置における重要な変更」の意味につきましては、安保条約締結以来、すなわち岸・ハーター交換公文というものができまして以来、日米間において明確に了解されているところでございます。
  185. 市川雄一

    市川委員 ということは、いま私が申し上げた外務省佐藤条約局長答弁、この見解アメリカも合意している、了解している、こういうふうに外務省理解しているのだ、こういうことですね。
  186. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 そのとおりでございます。
  187. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いしたいのですが、単なる寄港はいわゆる事前協議で言う配置変更の対象外だ、こういうことになりますと、それではータスクフォース以上の機動部隊日本に一時寄港した、この場合も事前協議の対象にはならないということに論理的にはなりますね。どうですか。
  188. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 同趣旨の御質問は、正確には記憶しておりませんが、過去におきましても国会でございましたと記憶しておりますが、そのときにおきましても、政府は、そのような一時的な寄港というものは事前協議の対象にならないということを御答弁申し上げております。
  189. 市川雄一

    市川委員 ということは、たとえばータスクフォース以上二タスクフォース、こういうものが来ても、一時寄港であればこれは事前協議の対象じゃない、前にも国会で議論されているのですが、これは非常に重要な問題だと思うんですね。  そこでお伺いしますが、核を積載した米軍艦艇、これも一時寄港であれば、要するに事前協議の対象外ということになりませんか、いまの同じ論理で解釈しますと。
  190. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 核を積載した軍艦の一時寄港は、もちろん「配置における重要な変更」には該当いたしませんが、他方におきまして事前協議の対象になります「装備における重要な変更」というものに該当いたしますから、当然これは事前協議の対象ということになります。
  191. 市川雄一

    市川委員 それではお伺いしますが、仮にータスクフォース以上のものであっても、一時寄港であればこれは事前協議の対象にはなりませんといまおっしゃいましたが、その理由は何ですか。理由を聞きましょう。
  192. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 市川委員の御質問が、一機動部隊以上の規模米軍艦艇わが国の港に一時的に寄港するということが事前協議の対象となっておる「配置における重要な変更」に該当するかという御質問であったと理解いたしますので、「配置における重要な変更」には該当しないということを御答弁申し上げた次第であります。  他方、一隻の軍艦でありましょうとも、それが仮に核兵器を積載しておるという軍艦であれば、そのような軍艦がわが国寄港するというためには、これは「装備における重要な変更」に該当いたしますから、事前協議を行う必要がある。その場合の日本政府の対応ぶりについては、従来から政府が申し上げているとおりでございます。     〔愛野委員長代理退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  193. 市川雄一

    市川委員 そこまではよくわかったのです。それでは、なぜ、一機動部隊以上であるのにもかかわらず、一時寄港であれば「配置における重要な変更」という事前協議の対象にならないのか、しないのか、その理由をお聞きしているわけです。
  194. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 委員承知のように「配置における重要な変更」というのは、交換公文にもございますように、英語では「デプロイメントインツージャパンオブユナイテッドステーツアームドフォーシズ」と書いてありますが、このようなデプロイメント、すなわち配置というのは、わが国を本拠として駐留する、そういう態様のわが国の領域内における米軍の展開であるということでございますので、先ほど来委員質問のような態様の米軍艦船の一時寄港というものは、そのような意味での配置には該当しない、したがって事前協議の対象にならない、こういうことでございます。
  195. 市川雄一

    市川委員 そうなりますと、一時寄港というのは核を積んでいるとか積んでいないとかという区別なく、要するに寄港というのは安保条約で言う施設区域の使用に該当しない、こういう見解なわけでしょう。どうですか。
  196. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 もちろん施設区域への出入というのは施設区域の使用の一態様でございますから、施設区域の使用に該当しないということではございません。ただ、この施設区域の使用の態様が、先ほど来申し上げておりますように、その施設区域を本拠として米軍が駐留するというような態様ではないので、事前協議の対象にならない、これだけのことでございます。
  197. 市川雄一

    市川委員 ですから同じことを言っているわけですね。要するに、態様という言葉をお使いですが、使い方、本拠として使うかどうか。ですから、一時寄港は本拠として使うわけじゃありませんから、条約で言う施設区域の使用には該当しないのではありませんか、こう言っているわけです。どうですか。
  198. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 使用という言葉の定義の問題かと思いますが、安保条約六条で申しております施設区域の使用というのは、当然、一時的であると否とは問わず、通常の艦船の当該施設区域への出入も含むということは理の当然だろうと思います。
  199. 市川雄一

    市川委員 非常におかしい。矛盾を感ずるのですが、それではもうちょっと端的にお伺いをしましょう。  この佐藤条約局長答弁ですと、「もともとこの交換公文自体が、施設区域をどういうふうに使うかということから出てきた」、まずこういう概念が一つあって、そして、施設区域を本拠として使用する場合というふうにずっと答弁してきておる。したがって、単なる寄港、ほかのところの本拠の船が入ってきた場合には配置変更とは考えない、ということは、要するに第六条で言う施設区域の使用というふうには見ないということですか。施設区域の使用というふうに見ればこれは事前協議の対象になるわけですから、事前協議の対象外だと言っている根拠は、要するに条約で言う施設区域の使用ということは配置における変更においては施設区域を本拠として駐留する場合を言っているんだ、こう言っているわけですね。ところが同じことが、同じ安保条約六条という根っこから交換公文ができたわけでありますが、その交換公文の中に「装備における重要な変更」もあるわけですから、そうなりますと、寄港ということが条約で言う施設区域の使用にならない、日本を本拠として使う場合は条約で言う施設区域に当たります、しかし日本を本拠としない施設区域の使用は条約で言う施設区域の使用ではない、だから事前協議の対象外だ、こう配置変更では言っているわけですよ。同じことが「装備における重要な変更」にも言えるのじゃありませんか。
  200. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 私の御説明が若干舌足らずだったのかもわかりませんが、施設区域の使用自体を事前協議の対象と定めているわけではないわけでございます。安保条約の六条におきまして、一般的に米軍に対してわが国が提供します施設区域の使用を包括的に認めておりますが、その中で、一定のその施設区域を使用しながら米軍がとるある種の行動につきましては、日本政府の同意なくしてはやってはいけない、こういう趣旨で事前協議制度というものができておるということは委員承知のとおりでございます。それで、そのような日本政府の同意なくして一方的な行動をとってはいけないというものがどういうものかということが岸・ハーター交換公文において定められておるわけでございまして、その甲で「配置における重要な変更」というものは事前協議の対象になる、こういうことでございまして、「配置における重要な変更」というのは、先ほど来御答弁申し上げておりますように、海軍の場合にはータスクフォース以上、陸空軍の場合には一個師団程度以上、こういうことでございまして、施設区域の使用そのものが事前協議の対象ということではございませんで、ある種の施設区域の使用の態様が事前協議の対象になっている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  201. 市川雄一

    市川委員 ですから使い方なんですけれども配置の重要な変更という項目というか範疇では、一時寄港を対象から外しておるわけですよね。「配置における重要な変更」では、一時寄港事前協議の対象から外しているでしょう。一時寄港は「配置における重要な変更」の対象外ですと、対象外に外していますよね。そうすると「装備における重要な変更」、これも同じ第六条から出たものでしょう、交換公文というのは。「配置における重要な変更」が一時寄港を対象外で外しであるならば、「装備における重要な変更」も、これは一時寄港は外れてしまうんではないですか。一時寄港というのはとにかく条約で言う施設区域の使用に当たらない、条約で言う施設区域の使用とは、要するに本拠地を日本に置いて施設区域を使う場合を言うんだ、こう言っているわけでしょう。だから「配置における重要な変更」には当たりませんと、外しちゃうわけですね。だから、一機動部隊が来ようが二機動部隊が来ようが論理的には事前協議の対象外、こうなるわけです。では、なせ「装備における重要な変更」だけ一時寄港が事則協議にかからなければならないのか、その論理がおかしいんじゃないかということを申し上げておるわけです。どうですか、それは。
  202. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 いまの御疑問の点は、もともと事前協議制度の基本を御理解いただければ容易にわかっていただけるのではないかと思いますが、もともと艦船施設区域内への出入りというものは、安保条約の第六条、それから地位協定の五条に基づきまして、施設区域及び、施設区域のみならずその他の日本の港に対しても包括的に出入りの自由を認められておるわけです。これは包括的なアメリカ権利として条約わが国が認めておるわけでございます。しかしながら、その艦船の出入りの中で、ある種のものについては日本政府の同意なくしてはできない、こういうふうに定めておるのが事前協議制度でございまして、「配置における重要な変更」、すなわち一定規模以上のアメリカの軍隊の日本への駐留規模の増加、こういうものについては日本政府の同意なくしてはできません、それから核兵器日本の領域内に持ち込むことは、これは一時的な持ち込みであろうと恒常的な持ち込みであろうと、これも日本政府の同意なくしてはできません、こういうことを定めておるのが岸・ハーター交換公文でございます。したがいまして、「配置における重要な変更」というものの中に艦船の一時寄港は含まれないからと申しても、他方におきまして核兵器持ち込みについて、それは一時的なものを許容しなくてはならないということには論理的には全くならないわけでございまして、それぞれ全く別個のものとして岸・ハーター交換公文において合意されておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  203. 市川雄一

    市川委員 別個のものとしてそれぞれ独立に岸・ハーター交換公文において規定されておる。しかし、もとになるのは安保条約六条の極東の安全、日本の安全のために施設区域の使用が許可される。その施設区域の使用をめぐる事前協議なんです。だから根っこは同じなんです。そういう意味でその論理はちょっとまだ納得できないのですが、次に、もう一つお伺いしたいと思います。  時間が限られておりますのでちょっと経過を省いて御質問したいと思うのですが、ライシャワー元駐日大使がいわゆるイントロダクションとトランジットの日米間の解釈をめぐる違いを発言して、国会で議論になりました。そのときに私も外務省や関連の省にお伺いをしたわけですが、そのとき当時の伊達条約局長あるいは淺尾北米局長答弁をされたのは、こういうことなんです。事前協議で言う核持ち込みの中に寄港や領海通過が含まれている、これは岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解に明々白々でございます、こう答弁しているわけです。藤山。マッカーサー口頭了解はいつ日米間で了解されたものかということについては、昭和四十四年、当時の愛知外務大臣が、一九六〇年の一月十九日ですかワシントンにおいて、というふうに国会で答弁されているわけです。  そうすると、昭和三十五年以来、日本政府見解は核持ち込みの中に一時寄港も領海通過も含まれる、こういう見解で首尾一貫しております、こう答えているわけです。新安保条約に改定された昭和三十五年以来、ずっと事前協議で言う核持ち込みの中には寄港も領海通過も含まれております、これは首尾一貫しております、こう言っている。ところがもう一方では、こういうことも言っているわけです。昭和四十三年までは、領海条約の問題がそこで起きてくるわけですが、その昭和四十三年までは米軍の核積載艦艇の領海通過は無害通航として認めてきましたということも答弁しているわけです。国際法に従った当然の権利の行使として、米軍の核を積んでいる船であっても日本の領海を通過することは国際法で言う無害通航として認めてきました、こう一方では答弁されているわけです。  そうしますと、だれしもが疑問に思いますことは、一方では三十五年以来核持ち込みの中には寄港も含まれる、領海通過も厳しく事前協議の対象にするんだ、こう言いながら、一方では米軍の核積載艦は四十三年までは日本の領海通過は無害通航として認めてきました、こう言っているわけです。そうなると、事前協議で言う核持ち込みの中に領海通過が含まれるということは四十三年までは全く機能していなかった、こういうことになるわけでございます。そういうことをお聞きしましたら、そうではないんだ、領海通過の中に種類が二つあるんだ、これが淺尾北米局長の御答弁でした。どういうふうに二つあるのか。無害通航としての通過と無害通航でない一時通過と、二つあるんだ、こういうふうに答弁をされているわけでございます。それは昭和五十六年五月二十九日の外務委員会内閣委員会安全保障特別委員会連合審査のときの淺尾局長答弁でございます。ということは、政府は二本立てでやってきたということになるわけですね。  要するに、事前協議の核持ち込みの中に領海通過は含まれますよ、したがって米軍の核を積んだ船が日本の領海を通過するときは、これは事前協議の対象でございます、こう一方では言いながら、一方では国際法で言う無害通航でございますのでこれは結構でございますということを言ってきた。これは非常に矛盾しているわけです。通過に二つあるんだ、無害通航としての通過と無害通航でない一時通過と二つあるんだ、こうはっきりおっしゃっておるわけですが、質問の前提として、いま栗山条約局長も同じ考えにお立ちになっているのかどうか、確認をしておきたい。
  204. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 簡単に申し上げますと、無害通航というものの考え方について淺尾前局長が御答弁申し上げたことは、そのとおりだろうと思います。したがいまして、昭和四十三年以前においては観念的には二種類の領海の通航があり得た。すなわち、国際法上無害通航として事前協議の対象外になるきわめて単純な領海の通航、いわゆる領海の端をすっとかすめて通るという答弁例がございますが、そういう態様での通航とそれ以外の通航というものと二種類、事前協議との関連においては観念的には存在したということでございます。
  205. 市川雄一

    市川委員 いまちょっと時間が中途半端なので非常に詰めづらいのですけれども、こっちの問題意識はそこからスタートしたわけではありませんでしで、事前協議の核の持ち込みには灰色の領域があると長い間言われてきたわけです。いろいろな新聞社やマスコミの方が苦労して取材をされて、たとえば藤山・マッカーサー口頭了解の当事者である藤山氏は、新聞のインタビューで堂々と、当時寄港とか領海通過ということを議論した記憶はありません、むしろ米軍の核を日本の領土に陸揚げさせないということが精いっぱいでございました、したがってそれを防いだということが大成功と言うと語弊がありますが、限界でございました、こうおっしゃっておられる。マッカーサー駐日大使もそういう議論をした記憶がない、こう言っている。二人が記憶がないと言いながら、後になって国会に藤山・マッカーサー口頭了解というものが出てくるわけでございます。こういうおかしなものがつきまとっている。あるいは岸元首相も、当時は大所高所からの議論であって、そんな一時寄港がどうだとか領海通過がどうだなんということは議論にならなかった、こういうこともおっしゃっているわけです。ですから、私たちの問題意識としては、外務省は岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解に明々白々でございます、核持ち込みの中には一時寄港も領海通過も含まれているのですと胸を張って御答弁されておるのですが、その当時外交交渉された御当人たちはそういう問題意識もなかった、こうおっしゃっているわけですね、ですから非常にあいまいなわけです。そういうものを詰めていきますと、三木外務大臣がまた、三十五年の安保国会で、核を積載していても無害通航で認めているわけです。  要するに、言いたいことは、米軍の核積載艦を無害通航で認めていた政府に、それを今度は事前協議で一方では厳しくチェックするという問題意識があったのか。裏返して言えば、なかったのじゃないのか。だって、無害通航で認めるのですから、無害通航で認めるものを何で事前協議で縛るのか、こういう問題意識から実はこの問題を提起したわけです。そのときに答えたのがいまの二つの答えなんです。ところが、伊達条約局長もあるいは淺尾北米局長も、当時の政府委員はそういう答弁をしておりません。無害通航と無害通航でない一時通過をちゃんと区別しておりますと言っているのです。そこで、当時の議事録を拝見いたしましたら、そうは言ってないのですね。高橋条約局長答弁しているのですが、それは要するに一時通過を二つに分けて答弁はしていない。領海の一時通過は無害通航です、しかし、遊よくするとか停泊するとか、これは無害通航ではございません。何が無害通航で何が無害通航でないかという答弁外務省はしているのであって、一時通過を二つに分けた答弁なんかしていないめですよ。  その点外務省は、栗山局長、通過という概念に二つあるというのは間違っているのじゃないですか。通過は通過ですよ。遊よくば遊よく、停泊は停泊。これは違うのですよ。ですから、次の議論に入る前に、まずその辺を確かめておきたいのですが、外務省では通過とか遊よくとか停泊とかというのは全部ひっくるめて大きい広義での通過という概念でくくって、そういう非常にアバウトな国際法の理解をお持ちなんですか、どうなんですか。
  206. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 無害通航というのは、御承知のように沿岸国の領海の中を停泊したり遊よくしたりすることなく単純に通航するという、そういうものに対しては無害通航権というものが国際法上認められるということでございまして、わかりやすく御理解いただくために一つの例を申し上げますと、たとえば海峡を東の端から西の端へ抜けていく場合に、軍艦が単純に通過をしていくというのであれば、これは無害通航権が国際法上認められる。他方におきまして、海峡内で一時的に停止をしたり、あるいはたとえばそこで演習を行ったりするという場合には、究極的に海峡の一方の口から入りまして他方の口へ抜けていく、そういう意味での通過でありましてもそれは国際法上の無害通航権は認められない。そういう意味におきまして、領海通過というものには、無害通航権が認められるような態様での通過とそうでない通過の二種類が国際法上、海洋法上ある、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  207. 市川雄一

    市川委員 本当は御本人がいれば一番議論しやすかったのですけれども、遊よくと停泊と通過は違いますよ。外務省が違う解釈ならば別ですけれども、遊よくというのはあちこち航行する、通過というのはすうっと抜けていくわけで、停泊というのは泊まるわけですから、これは明らかに違うと思うのです。それを、何か通過に二つあって、一つは無害通航で、一つは無害通航でない一時通過という表現であえて逃げたわけです。  領海通過という問題がいわゆる核持ち込みの中に含まれていたというのですが、それではお伺いしますが、四十三年のときに、領海条約との絡みで日本政府非核原則の立場が強くなってきたので、もう核積載艦はたとえそれが無害通航の形態をとっていても無害通航とは認められない、四十九年にそれをはっきりさせて、外務省の統一見解ですか政府の統一見解をつくって、これをアメリカ政府にきちんと伝えてあります、こういうことなんですが、これはどういう形で確認されたのですか。要するに、四十三年までは、核を積んだアメリカ艦船日本の領海を通過する場合は国際法で言う無害通航でございます、したがって事前協議の網にかからなかった。四十三年からは、日本政府非核原則の立場を非常に強めてきた、したがってこれは無害通航でなくなった。無害通航に対する考え方を外務省並びに政府変更したわけですね。その変更したことをアメリカに言ってあるのかと言ったら、四十九年にアメリカに言いましたということなんですが、日米の了解がきちんとした形で行われているのですか。もう核積載艦は国際法で言う無害通航ではありませんよということをアメリカ日本の間できちんとした形で取り交わされているのでしょうか、どうでしょうか。
  208. 加藤良三

    加藤説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、この件につきましては、四十九年の十二月二十五日から日を置かずしまして、外務省から在京米大使館に対しまして、国会の論議をも紹介した上で統一見解内容説明いたしました。これに対して米側は異論を示さなかったということであるわけでございます。(市川委員「だれとだれが会ったか、日にちとか、わかりますか」と呼ぶ)具体的にだれがだれに説明したのかというところは、外交的な接触の中身にも入りますので、相手のあることでもございますので、米側につきましては御容赦いただきたいのですが、日本側は当時のアメリカ局長から米側に伝えたわけでございます。
  209. 市川雄一

    市川委員 本会議前の質問を一応ここで中断させていただきたいと思います。
  210. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 午後一時二十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時二十八分開議
  211. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。市川雄一君。
  212. 市川雄一

    市川委員 防衛庁にお伺いいたします。  今年度の防衛白書の中の第二部第二章に「米艦艇の防護の問題について」という項目がございます。この項目の中で「わが国に対する武力攻撃が発生し、自衛隊が個別的自衛権の範囲内で日米安全保障条約に基づき米軍と共同対処行動をとっている場合に、わが国の防衛のために行動している米艦艇が相手国からの攻撃を受けたとき、自衛隊がわが国を防衛するための共同対処行動の一環として、当該攻撃を排除することは、わが国を防衛するための必要な限度内と認められる以上、わが国の自衛の範囲に入るものであり、集団的自衛権の行使につながるものではない。」こういうふうに述べているわけでございます。  そこでお伺いいたしますが、ここで言う「共同対処行動をとっている場合」というのはどういう事態を指すのかということをお尋ねしたいわけでございます。たとえば、中曽根総理のことしの予算委員会での御答弁では、「日本が侵略された場合に、日本防衛の目的を持ってアメリカ艦船日本救援に駆けつける、そういう場合に、それが阻害された場合に、日本の自衛隊、自衛艦というようなものがそれを救出する、そういうことは自衛の範囲内に入るのではないか」、こう中曽根総理は述べておるわけでございます。そうしますと、この防衛白書で言う共同対処行動というのは、領海もしくはその周辺ですでに日本が武力攻撃を受けて、日本の領海もしくは日本の領海周辺で自衛隊が日本防衛の活動に入っている、米軍も集団自衛権を発動して日本と対処行動をすでに行っている、こういう場合にというふうに受け取れるわけでございます。そういう意味であるのかどうか。総理の言っているのは、これから救援に駆けつけてくる、まだ駆けつけてくる途中にいるわけですね、まだ共同対処行動に入っていない、これから入ろうということで、救援に駆けつけてきている、こういうふうに普通日本語は理解するわけですが、防衛庁で言う共同対処行動というのは、救援に駆けつける途上にある米艦船も、もうすでに共同対処行動に入ったのだと認定する、そういう広い概念なのか。それとも、先ほど私が申し上げたような、この文言を素直に拝しますと、武力攻撃を受けた領海並びに領海周辺で共同対処行動をとっている場合。これは区別があるのかないのか、この辺をお聞きしたいと思います。長官、どうですか。
  213. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 日本が他国から武力攻撃を受けまして安保条約五条が発動されたというような事態におきまして、日米が共同でわが国の防衛に当たるということの実際のやり方といたしましては、これはガイドラインでも言っておるわけでございますが、日米両国間で緊密な協議、調整を行うわけでございます。その調整を通じまして共同作戦計画が遂行されていくわけでございますから、そういったような調整の過程から出てくる共同の対処行動というものが、こういった現在の政府の統一見解の中で言っております共同対処行動をしている米艦艇ということに相なると思うわけでございます。  ただいま御指摘のございました、わが国の近海において米艦艇が救援に駆けづけたという例を中曽根総理の御答弁から御引用になりましたけれども、これは一つの典型的な例として総理がおっしゃったものでございまして、基本的には最初に申し上げましたように、わが国の有事の場合において米国の艦艇わが国日本防衛のために共同対処行動をとっているという場合には、これはこの統一見解によって明らかでございますように、日本の防衛のために必要な限度においてわが国艦艇が米国の艦艇を防衛することは個別的自衛権の範囲内にあるというふうに理解をしているわけでございます。
  214. 市川雄一

    市川委員 ですから私が伺っているのは、日本に武力攻撃があって、安保条約第五条が発動されて、日本米軍が共同対処行動をとっている場合という、その場合の概念解釈、枠、これをお尋ねしているわけです。総理が言っているのは、要するに、日本の救援に駆けつけている途上なのですよ。だからまた途上、日本に到着していないわけですね。日本の領海近辺、近海だから、まあ近海の範囲も問題なのですけれども、どの程度を近海と言うのか、これもはっきりおっしゃっていないわけですけれども、こういう救援駆けつけ途上のものも防衛庁の言う共同対処行動をとっている場合に入るのですか、こう聞いているのです。いかがですか。
  215. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 いまの御質問の点については、二つ問題があるように思います。  一つは、日本有事の場合にわが国が個別的自衛権を発動し得る限界は一体どこまでかということが、まず基本にあるかと思います。この点につきましては、しばしば御答弁申し上げておりますように、これは領土、領海内に限るものではなくて、公海及びその上空にも及び得るものであるということでございますから、そういった意味での自衛権の行使の限界というものは、公海及びその上空に及び得るというふうに私ども理解をしておるわけでございます。  ただし、第二点といたしまして、さはさりながら、日本の自衛隊の現在の防衛力整備の目標といたしましては、周辺海域にありましては数百海里、航路帯を設ける場合には千海里程度の海域というものを防衛する能力を持とうということをめどにしてやっているということがございますので、そういった意味での能力上の限界はあろうかと思いますので、そういう限界を踏まえながら対処をしていくことになろうかと思います。  また、具体的に一体どういうケースがあり得るかということにつきましては、これはその事態に応じまして千差万別であろうと思いますので、一概には言えないかと思います。
  216. 市川雄一

    市川委員 質問にちゃんとお答えいただかないと議論がかみ合わないのですけれどもね。私はそういう質問をしていないと思うのです。やはり議論というのは、聞いたことにきちっと答えることによって対話が成り立つわけですから、私が伺っているのは防衛白書、いまあなたが統一見解とおっしゃられた中にある、日本の自衛隊が米艦を防衛できる条件として、いろいろな条件を挙げていますね。個別的自衛権の範囲内というのが一つ。それから日米安全保障条約に基づき米軍と共同対処行動をとっている場合、これがまたもう一つ。それからわが国の防衛のために行動している米艦、こういう概念がもう一つ。それが攻撃を受けた場合、自衛隊がわが国を防衛するため共同対処行動の一環として守ることは集団自衛権の行使ではない、こういう論理構造でこの文章はでき上がっているわけです。大別して四つの柱でこの文章はできているわけです。  この四つの柱の中の一つに、日米安全保障条約に基づき米軍と共同対処行動をとっている場合というのがあるわけでしょう。それは、総理の言う救出に駆けつけている途上にある米艦も含まれるのかというのが私の質問なのです。したがって、含まれます、含まれませんというのがお答えなのです。簡単に答えてください。
  217. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの御質問の点は、そういった米艦艇日本に救出に来ているというその行動が、これまさに先ほど申し上げましたように日米間の協議によりまして日米共同作戦を実施していくわけでございますから、そういった調整の過程を通じましてそういう共同対処行動をとるということで向かってきている艦艇でありますれば、これは当然この中に入るということでございます。
  218. 市川雄一

    市川委員 それはハワイを出発したときから、要するに安保条約が発動されて共同対処行動に入るということが日米で合意されて、周辺艦艇では足らないからハワイから米軍艦艇が急遽日本に駆けつける、いまの解釈によりますと、そういう共同対処行動ということが日米で合意さえされれば、距離に関係なく、その任務につくという目的がはっきりしている艦艇はもう全部共同対処行動中の米艦艇だというふうに判断するのだというふうにいま理解したのですが、そのとおりですか。
  219. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの問題は、仮にハワイから発してくるとすれば、そのときからそういうことをやるのかという御質問がと思いますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、わが国の自衛権の行使という観点から言えば、わが国の領域内には限られない。したがって、公海及びその上空にも及び得るということでございます。しかし、それが具体的にどこまで及んでいくかということは、わが国に対する武力攻撃の態様等によりまして一概には言えないと思います。要は、わが国を防衛するため必要な限度内という限界内で考えなければいけないというのが第一点。  第二点は、先ほども申し上げましたように、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の範囲でわが国の海上交通を保護し得る能力を持つことを目標に防衛力整備をしておりますから、そういったような意味で、有事におきまして海上自衛隊がそういった海上交通保護のための行動をする地理的な範囲というものには能力的に見ておのずから限界がありますので、御質問のような事態になることは現時点ではなかなか考えられないのではないかというふうに考えております。
  220. 市川雄一

    市川委員 言わんとする意味はわかるのですけれども、シーレーンのことをいま聞いているわけじゃないので、いわゆる航路帯を設ける場合は千海里、周辺数百海里の能力しかないから、ハワイまでは出かけていかれませんということをおっしゃりたかったのだろうと思うのです。しかし、それはまだ半分の答えにしかなっていないと思うのですね、そういう意味では。そうすると、日本が自衛の限度内だという判断さえ主観的に下しさえすれば、それはまた延びちゃうじゃないですか。  じゃあ、もう一度最初の質問に戻しますよ。防衛庁の言う日米共同対処行動というのは、日本の領海もしくは周辺ですでにもう対処行動に入っているという艦艇だけではなくて、その対処行動をしている日本の領海もしくは周辺地域へ救援に向かっている船も入る、まずこれははっきりしていますね。入るということですね。遠いか近いかは別として、まず入る、そうですね。
  221. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げましたように、日本有事の場合における日米の共同作戦というものは、日米間の協議、調整を通じて実施されることになるわけでございまして、そういった土俵の中で駆けつけてくるという米艦艇でございますれば、これはやはり統一見解で申します日本艦艇による護衛、日本の自衛のために必要な限度内での個別的自衛権の行使としての護衛が可能になるというふうに考えております。
  222. 市川雄一

    市川委員 そこで問題になってくるのが、予算委員会でも角田法制局長官お答えになっているわけですけれども、非常に遠いところはだめだ、こうおっしゃっているのですね。それから、もっぱら日本の防衛と関係のある行動をとってないのもだめだ、こう言っているわけです。たとえばわが近海においてと、こういう言い方もしているわけですね。どうも中曽根内閣登場以来、個別自衛権の範囲が何となく従来の政府見解を巧妙にすりかえるような形でじわじわ拡大されてきたという印象をわれわれは強く持っているわけですよ。どうも集団自衛権との接点が限りなくあいまいになってきた、個別自衛権が限りなく逆に集団自衛権に近づいてきた、こういう疑念を強く持っているわけです。したがって、言葉じりをとらえた解釈というふうにお受け取りになるかもしれませんが、これは非常に重要な問題だと思う。要するに非常に回りくどい、いかようにでも逃げられるような文章をつくっているわけですね、こういう場合、こういう場合と。  そこで、法制局の方においでいただいておりますのでお伺いしますが、いまの議論を踏まえて、近海というのはやはり何か物理的な線引きが可能なのかどうなのか。それとも、政府あるいは防衛庁の自衛の限度内という恣意的な判断があれば、伸縮が自在になってしまう近海を長官はおっしゃっているのか、この辺のことを明確に法制局の立場で御答弁をいただきたいと思います。
  223. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 御指摘の角田前長官お答えは、お答えしました内容のものがいわゆる共同対処行動のきわめて典型的な例であるという観点からお答えしたものでございます。  その場合の近海の範囲については、特に言及はされておりませんけれども、それが個別的自衛権の範囲内のものでなければならないという前提で申し上げていることは当然でございます。
  224. 市川雄一

    市川委員 近海の範囲は、物理的な線引きは可能というふうに考えているのか、考えていないのか。それから、もしそれが可能というふうに考えていないとすれば、政府なり防衛庁の自衛の限度内という判断が加わりさえすれば、近海の概念が広くなったり狭くなったりすることが可能になるわけですね。そういう性質のものなんですかと僕は聞いているのです。ちゃんと質問に答えていただきたい。
  225. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 近海の地理的な範囲につきましては、具体的な態様との関係がございますので、一律的にどこからどこまでというようなことは申し上げられないと存じます。  要は、結局、わが国の行使いたします自衛権が個別的自衛権の範囲内にとどまるものでなければならないということは、憲法九条のもとからいたしまして当然だということでございます。
  226. 市川雄一

    市川委員 二問目に答えてないんですよ。だから、個別的自衛権の範囲内だという判断政府がするわけでしょう。国会がするのですか、政府がするのですか。政府がそういう判断さえ持ってしまえば、近海という概念がぐっと広くなるわけでしょう。そういう伸縮自在のものなんですかと聞いているのですよ。法制局はどう考えますか。
  227. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、自衛力の限度が問題になりますと同様な問題であると考えます。したがいまして、その限界につきましては、政府見解だけでなく、国会等の論議を通じて確定をされる、こういうことになると思います。
  228. 市川雄一

    市川委員 国会での議論ということをつけ足しみたいにおっしゃっているのですけれども、しかし、結局政府の恣意的な判断が近海を決めちゃうんじゃないですか。そういう意味で、この見解には歯どめがないのですよ。歯どめをしっかり持たないと、集団自衛権にどんどん限りなく近づいていくということを指摘しておきたいと思うのです。  次にお伺いしますが、防衛庁長官、ことしの二月の予算委員会で、大分激しい言葉も使って失礼な場面もあったかと思うのですが、いままで防衛庁がいわゆる丸山答弁で、そう申し上げればもうわかると思うのですが、簡単に申し上げれば、いろいろな言い方をしているのですが、結果として守る。米艦護衛という問題は、武力攻撃があった場合——共同対処行動、もちろんそういう条件は前提としてあるわけですよ。前提としてそういう条件をつけながらも、米艦を守る目的で動いていきません、日本を守るために海上自衛隊が戦っている、戦っていることは結果として米艦を守ることがあり得ます、こういう答弁をずっと何回もされているわけです。  ところが、中曽根総理の答弁は、日本に救援に向かっている米艦艇が阻害をされたときは、これを救出に向かう。もう明らかに米艦を守る目的で動いていく。丸山答弁と中曽根答弁は非常に大きな食い違いがあるわけです。あのとき、ほかの問題も抱えておりまして十分に詰め切れなかったので、ここで改めて蒸し返すのも恐縮でございますが、お伺いしたいのですが、丸山答弁と今回出された防衛庁の見解というのは矛盾してない、こういうお立場ですか、長官、どうですか。
  229. 谷川和穗

    谷川国務大臣 矛盾していないという立場でございます。
  230. 市川雄一

    市川委員 そうすると、丸山答弁はいまでも生きているのだ、こういうお考えですか。
  231. 谷川和穗

    谷川国務大臣 答弁といたしましては、その当時の丸山防衛局長答弁、何回か答弁をいたしておりますが、これは私の判断でございますが、裏返して言えば、日本の近海には日本有事の場合にはいっぱい米艦が遊よくしていることはあり得る、行動しておる、すべての米艦を守るということになれば、これはいろいろな意味で問題があるということが一つあったと思います。もう一つは、われわれとしてはやはり原則としてあくまで、われわれが行動することは、みずからをもってわが国を防衛する、わが自衛隊はわが国を防衛するという、その必要の限度内で行動するというのが一つございます。それからもう一つは、いまのような形でたくさん米艦日本近海にありましても、もっぱら米艦を守るという目的を持って行動することはないのだ、こういう大きな枠がございます。この大きな枠については、これは首尾一貫いたしておることでございまして、わが国を防衛するために来援をしてくる米艦を守るということは、いま申し上げました、ずっと首尾一貫政府答弁としてやってきた中で、これはやはりその流れからいっても当然わが国の自衛の範囲の中に入るものだ。そういう意味で、私最初に申し上げましたように、丸山答弁以外の答弁もございますが、ずっと答弁をさせていただいてまいりましたことは一貫してきておるというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  232. 市川雄一

    市川委員 そのもっぱら米艦を守る目的で動くわけではないというのは、丸山答弁はそういう趣旨で答弁されているわけですね。だけれども、中曽根答弁は、もっぱら米艦を守る目的で、それはもちろん自衛隊全体が米艦を守る目的で動いているわけではないにしても、救出に向かうというのは、それが船であれ飛行機であれ、もっぱら阻害されている米艦を守りに行く、もっぱら米艦を守ることを目的に動くということですよ。ですから、やはり従来の丸山答弁の、もっぱら米艦を守ることを目的に動くのではなくて、日本の自衛隊と第三国の日本を侵略しているものとが戦っていること自体が結果として守ることがありますというふうにおっしゃっているわけですね。ですから、これはやはり中曽根答弁とは違う、私はこう思うのです。今回の新見解は、どうも中曽根答弁を引っ張ってきて載せてあるわけですね。  それではお伺いしますけれども、丸山答弁が生きているというふうにおっしゃるなら、なぜ防衛白書にもうちょっと丁寧に、もっぱら目的として米艦を護衛するものではありません、結果として守るという意味でもありますということをつけ加えないのですか、丸山答弁を。あえて削除してあるじゃないですか。中曽根答弁の解説がそのまま基調になった見解ですよ。丸山答弁が生きていると言うなら、そういうものもちゃんと正直に防衛白書に書くべきですよ。違いますか。
  233. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のように、いろいろと過去に答弁の経緯はあったわけでございますが、それはただいま長官からもお答えを申し上げましたように、政府の一貫した考え方に基づいてのお答えであったということを申し上げたわけでございます。そして、防衛白書に書きましたことは、これまでの政府見解を全部整理いたしまして統一見解として発表をしたわけでございますから、そのことをそのまま白書に記載をさせていただいて、国民の御理解を得ようということを考えたものでございます。
  234. 市川雄一

    市川委員 いままでの防衛庁の見解を整理してまとめたと言うなら、丸山答弁のニュアンスも反映されなければしょうがないじゃありませんか。反映されてないと言うのですよ。そこに何となく、丸山答弁は隠しておきたい、事実上はもう撤回したいというものが働いているのじゃないかというふうに私は申し上げておきます。これ以上は水かけ論になりますから、そういうふうに非常に不信感を持ってこの見解を見ているということを申し上げておきたいと思うのです。  次に、共同訓練中の米艦への洋上補給の問題を、この間、内閣委員会でお尋ねしました。いま調整中であるという装備局長の御答弁。今日の時点ではどうなんですか、調整はできたのですか。
  235. 木下敬之助

    木下政府委員 御質問の点につきましては、関係省庁との調整及び米軍側との調整がまだ継続中でございます。
  236. 市川雄一

    市川委員 法制局にお伺いしたいのですが、共同訓練中に米軍に燃料を貸与する、後で返してもらう、こういうことをやるわけですね。ところが財政法では、日本の法律に基づかないで国有財産を貸与したりしてはいけないと書いてあるわけです。しょうがないので物品管理法というものを根拠にしてやろうというお考えのようですが、物品管理法というのは、そういう軍事的な、海上自衛隊が米軍艦艇に燃料をお貸ししますなんというものを想定してつくった法律ではないわけですね。言ってみれば、国有財産の管理ということが主体でつくられた法律であるわけです。  そうなりますと、私たちが一つの心配を持っておりますのは、たとえば防衛庁は共同訓練中というふうに一つの枠をはめてはおりますが、これが将来、ひょっとすると極東有事の際にもエスカレートして燃料貸与ということが行われていくのじゃないのか。いやそんなことはありません、共同訓練中でございます、こうお答えなさる。しかし、そういう問題を含んでいる。あるいは含んでいると感じる人が多いわけです。防衛庁はそういうふうに思ってないかもしれないけれども、これは恐らく極東有事の場合にどうなんだろうというふうにだれしもが思う。そういう問題を含んでいるということは承知していただきたい。  そういう問題の歯どめなんというのはこの法律にはないわけですよ。そんなものは扱えないわけです、この法律は。極東有事のときは借りませんなんということは書いてもいないし。ですから、物品管理法という法律で海上自衛隊の燃料を米海軍に貸与すること自体が無理なんじゃないのか、この法律ではくくれないことがたくあんあるのではないか、こう私は思うのです。もしどうしてもおやりになるというなら、たとえば自衛隊法とか、そういう本来の自衛隊関連の法律が、あるいは安保条約地位協定の絡みか、そういうもので行われるべきものではないのかと思うのです。それを物品管理法を根拠にしてやる。非常に不適当じゃないのか、私はこう思いますが、法制局としては防衛庁の判断が適切である、こうお考えですか、どうですか。——委員長に申し上げます。僕はいま法制局に聞いているのですから、法制局の方に答えていただきたい。いま防衛庁に聞いているわけではない。法制局にも質問通告をして来ていただいているのですから、そういう失礼なことはなさらないでください。  法制局の判断を何で防衛庁が答えるのですか。おかしいじゃないですか。法制局の判断を何で防衛庁が判断して答えなければならないのか、おかしい。
  237. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 先ほど防衛庁から御説明がございましたように、関係省庁の一つとして当局の方にも事情説明等はございましたようですが、まだ正式な意見を求められる段階に至っておりませんので、ただいま御指摘のような点まで十分検討する段階に至っておりません。ただ、物品管理法は、物品ということでございますので、特に自衛隊の物品を排除しているものではないということだけは言えようかと思います。
  238. 市川雄一

    市川委員 そこまでおっしゃるならちょっと法制局の方にお伺いしますけれども、もちろん物品ですから、国有財産という意味においては自衛隊の持っている燃料も国有財産ですね。ですから、排除してないというのはよくわかります。しかしやろうとしている事柄は、海上自衛隊が共同訓練中に米軍艦艇に燃料を貸与するという、言ってみれば防衛目的あるいは軍事目的なんですね。ですから物品という概念に当てはまるかもしれませんが、国有財産の管理なんという法律で、極東の有事の場合はやりませんという歯どめがあるのかないのか。これは普通、法律ならちゃんとそういう条項だって入ってくるはずですよ。だから援用すること自体に無理があるのじゃないのかということを私は申し上げている。排除してないというだけの答えじゃなくて、無理があるのかないのか。それでは、防衛庁からまだ何も聞いてないということですか。どうですか。
  239. 木下敬之助

    木下政府委員 法制局からお答えの前に、防衛庁としての考え方を御説明申し上げさせていただきたいと思います。  防衛庁といたしましては法制局にも一応事情の御説明等はしておりますが、最終的にまだ御判断をいただいている段階ではないということでございます。  私ども考えておりますのは、先ほど先生がおっしゃいましたように、財政法九条によりまして国の財産は効率的に運用すべきだという一般的な基本原則ができておるわけでございますが、それをベースといたしまして物品管理法二十九条で、「物品は、貸付を目的とするもの又は貸し付けても国の事務若しくは事業に支障を及ぼさないと認められるものでなければ、貸し付けることができない。」ということで規定しておりまして、その趣旨とするところを私どもといたしましては、国の物品、防衛庁の持っております燃料もそれに入ると思いますが、それは貸し付けを目的とするもののほか、本来国の内部で使用すべき目的が与えられておるものはその本来の目的に従い国の内部で使用すべきものである、したがって、みだりに外部に貸し付けてはならないということが一応の原則になっておるかと思いますが、その場合に、国の物品の効率的な運用の観点から見まして、国以外のものに貸し付けても国の事務あるいは事業の遂行に支障がないと認められる場合でなければ貸し付けてはならないということで、国以外のものに貸し付けることは支障さえなければできるということになっているわけでございます。  したがいまして、どのような場合に貸し付けが可能であるかどうかという点につきましては、個々の具体的な事例に従って判断せざるを得ないことだと思いますが、防衛庁といたしましては、防衛庁の業務として、有事に即応し得る態勢を維持向上させるため平素から任務として部隊の教育訓練を行っておりまして、その一環として米軍との間の共同訓練も行っているわけでございますから、共同訓練を行っている際、その現場におります補給艦から米軍に必要に応じて補給をするということは、この物品管理法め考え方で十分認められているものというふうに考えているわけでございます。
  240. 市川雄一

    市川委員 ただ、おっしゃることだけの枠の中にとどまっておる性質の問題であれば一応理解はできるのですが、この種の問題は必ず後で枠が広がっていく性質のものであるわけです。また、皆さんも余り縛られたくない。大体が防衛庁なり自衛隊の関係というのは、法律解釈をなるべく縛られないように、フリーハンドを握るようにということで首尾一貫しておるわけですから、そういうことを考えますと、物品管理法でくくるのは適切ではないのじゃないか、問題が残るのじゃないかということを申し上げているわけでございます。  米軍に貸すのはいい、では韓国にも貸せるのか、こういう疑問も起きてくるわけでございます。ほかの国にも物品管理法で貸してくれと言われたら貸すのですか。
  241. 木下敬之助

    木下政府委員 物品管理法、その法律自身は、明文でどういう場合に貸せる、どういう場合に貸せないということは一切書いてございませんで、国の事務に支障がないときに限って貸し付け得るということを書いてあるだけでございます。しかし、それ以外の全体の状況を判断していかなくちゃいけないということでございまして、私どもとしては、米軍との間では特別の安保関係にもありますし、共同訓練も常時行っているというようなことでございますので、いまのところ考えておりますのは、米軍との共同訓練だけについて検討しているわけでございます。
  242. 市川雄一

    市川委員 ですから、それは法律が禁止しているわけじゃないわけですね。法律解釈としてはこの法律ですと防衛庁さえ判断すれば、ほかの国にも貸せるわけですよ。そうやって貸す国が広がっていってしまう。  また、平時における日米共同訓練中というのも、防衛庁判断の自己規制であって、法律が禁止しているわけじゃない。有事のとき貸してはいけないというふうには書いてないわけだ、物品管理法では。有事のときにも貸そうと思えば貸せるわけですよ、違いますか。ですから、援用することが無理な法律だというふうに私は申し上げているのです。有事のときにも貸せるわけですよ、法律判断であるいはほかの国にも貸せるわけですよ、貸そうと思えば。どうですか。
  243. 木下敬之助

    木下政府委員 現在考えておりますのは、米海軍との共同訓練の際にそれを貸し付けをするかどうかということで現在詰めを行っておるわけでございます。有事の場合はまだ検討の対象としてはおりませんけれどもわが国作戦行動をしている場合に、場合によっては米軍と共同対処行動をやるということもあり得るというようなことであれば、その場合にはまたそういう形で考えなくちゃいけないことじゃないかとは思っております。  ただ、そういうことがやれるから、当然韓国やそれ以外の国に対しても同じようなことができるじゃないかということについては、防衛庁の任務自身のことを考えて決めていかなくちゃいかぬことではないかということでございまして、現在全く検討の対象としておりません。
  244. 市川雄一

    市川委員 ですから、物品管理法そのものにはそういう規制がないということを申し上げているわけです。韓国へ貸そうが、いまの論理なら貸せるし、有事のときも貸そうと思えば貸せる。ただいま防衛庁としてはそういうことを考えてないというだけであって、将来、考えれば広げられる。ですから、そういう意味で物品管理法でくくることは非常に不適切じゃないかということを強く指摘をしておきたいと思います。  次に、厚木基地の問題について施設庁にお伺いをしたいと思います。  昨年の二月以来、空母ミッドウェーの入港の都度騒音の激しさが増して、実際現地へ行ってみますと、これはもうとても人間が耐えられる限度の音ではない。それがしかも夜間に、離着陸の練習によるジェットエンジンの音が物すごい音で響いてくるわけですね。確かにこれはもうイデオロギーとか、安保条約に賛成だとか反対だとか、そういう問題を乗り越えて、とにかく人道的にこういうことが許されていいのかという実感がわいてくるような、そういう騒音ですよ、実態は。御承知だと思います。これは早く何とかしなければならない。施設庁、いまどう解決されようとしているのか、これをお尋ねしたいと思います。
  245. 塩田章

    ○塩田政府委員 まさに御指摘のような状況でございまして、私どももこの対策に苦慮をしておるわけでございますが、現在やっておりますことは、従前の基地周辺対策の一環としての厚木の周辺の防音対策を強化するということは当然だといたしまして、この問題のいわゆる代替地の提供の問題につきましては、五十八年度に約九百万円の予算をもちまして、一つは関東内陸部あるいは関東周辺地区の既設の飛行場で代替機能を果たせるところはないかということ、一つは関東及びその周辺地区で新しく飛行場をつくるということの可能性はどうか、三つ目は、これは主として地元側からの御要望で出た問題でございますけれども、海上に何らかの構築物をつくって、そこで訓練をするということの可能性はどうか、こういったような三つの点から現在調査を進めておる段階であります。
  246. 市川雄一

    市川委員 先日、新聞報道によりますと、硫黄島に米軍関係者と自衛隊関係者がどういう目的で行かれたか、新聞では下見に、暫定措置として硫黄島をどうかという形で見に行ったという記事が出ておりましたが、そういう検討がなされておるのですか。
  247. 塩田章

    ○塩田政府委員 この問題は、そもそも厚木でやる前に、現在でもやっておりますけれども三沢とか岩国とかを使ってやっておりますが、もともと三沢とか岩国では遠過ぎるというので米側から出された問題であります。同時に厚木の地元側からは、厚木では現状では耐えられないからどこかへ移ってもらえないかという、両方から出た問題でございますが、米軍の立場としましては、いま申し上げましたように遠過ぎるということから始まった問題であります。  したがいまして、いまお話しの硫黄島につきましては、現在あそこに海上自衛隊の飛行場があるわけでございます。また、一般の島民も現在は住んでおられませんので、そういう意味では訓練に適地と言えるかもしれませんが、そもそも距離的に大変遠いものですから、もともとこれは日米間でNLPの対象として検討しようじゃないかということになったことはございません。ただいま申し上げましたような飛行場の状況からしまして、ああいうところが使えるといいがなというような話が日米間で話題として出たことはあります。現に私もプライベートな立場では、硫黄島なんかが使えるといいがなと言ったこともございます。そういうこともありまして、米側としては一遍見ておこうかという気持ちになったのではないかと思います。御承知のように自衛隊の飛行場の整備もだんだん進んでおります。そういうことも含めて米側としては一遍見ておこうという気持ちになったのではないかと思いますが、そういう意味で、九月八日だったと思いますが米側が見に行ったということを聞いております。
  248. 市川雄一

    市川委員 施設長官に申し入れに伺ったときにも伺っておるわけですが、厚木から回数を分散するという案が一つ、それから海上浮体装置ですか、浮体空港というのか浮体物をつくってやるという考え方が以前あった。それから厚木と全然違う、分散ではなくて代替地を別個に考える。いま一番現実的な解決策として長官御自身がお考えになっているのは、どんな方向ですか。それとも、現実的な解決策がまだ手探りの状態で、ないということですか、どうですか。
  249. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げましたように、まず既存の飛行場で使えるところはないかということが第一の項目でございまして、目下、防衛施設庁としてはもっぱらその点に全力を挙げているという段階でございます。しかしながら、その点も含め、あるいは新しい飛行場あるいは海上構築物を含めまして、現時点で防衛施設庁長官としてこの案だというものがあるのかという点につきましては、正直申し上げまして、目下具体案はございません。
  250. 市川雄一

    市川委員 防音工事さえすればいいということで申し上げるのではないのですけれども、当面、ベストではないけれどもベターの選択としては、防音工事という問題があるわけです。厚木では八十WECPNLという基準でやっておられるようですけれども、小松なんかではもう七十五でやっておるやに聞いているのですが、厚木こそそういう防音工事の面で、できるなら暫定措置として基準ももっと範囲が広げられるような基準に防衛庁自身が見直してやるべきではないのか、こう思いますが、その辺についての考え方はどうですか。
  251. 塩田章

    ○塩田政府委員 まさに御指摘のように逐次七十五に直しておりまして、厚木も現在作業をしております。当然のことながら、去年の例のNLPが始まる以前は、厚木の場合、同じ米軍の飛行場といいましても比較的騒音度がそうやかましくなかった。あるいは海上自衛隊の飛行機はプロペラ機であるということで、率直に申し上げて必ずしも重点的に防音工事が進んでおる地区ではなかったわけでございます。  しかし、去年のああいう事態が起こりまして、当面の措置ではありますけれども、私どもとしましては五十八年度一挙に倍以上の住宅の戸数にして現在やっております。五十九年度も当然それよりさらに上回る約八千五百程度を厚木の周辺に実施いたしたいと考えておりますが、最初に申し上げましたように今度七十五以上ということでございますので、さらにコンターが広がるということで当然考えられます。そういうことも含めてもっと積極的に今後やっていかなければならぬと考えております。なお、そのコンターの広がった後の公表につきましては、近々にできるのではないかと思っております。
  252. 市川雄一

    市川委員 七十五に下げるということですか。厚木も適用する、その方針は早く決めるということですね。
  253. 塩田章

    ○塩田政府委員 告示によってその対象とします区域を七十五まで広げるということでございます。
  254. 市川雄一

    市川委員 池子弾薬庫の跡地に米軍住宅を建設する問題で、地元で非常に強い反対があるわけです。反対の理由は、御承知かと思いますが、非常に自然環境がすばらしい、恐らく関東周辺で唯一残された原生林というか自然環境、これを破壊したくない。一回破壊すると自然は戻らない。これは単に逗子市の市民というよりも、将来ここに国営大規模公園誘致という問題があるわけですが、そうなりますとむしろ関東周辺の人たちにもそういう原生林で自然環境を味わっていただくという恩恵が生まれてくるわけですけれども、そういう意味で私は非常に貴重な財産だと思うのです。壊したくない、一回壊したら戻らない。あるいは一般市民の感触としては、横須賀のEMクラブ等周辺でずっと過去にやはり風紀の問題がございましたが、米軍住宅が移動してきた場合にそういう問題が起きるのではないかということを心配しております。そういう逗子市の市民感情というものをもっと施設庁に感じてほしいと思っているのですが、その辺はどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  255. 塩田章

    ○塩田政府委員 ただいまの点につきましては、逗子の市当局あるいは市議会関係者のみならず一般市民の方々からもいろいろな御陳情を受けておりまして、私どもとしては緑を保存したいというお気持ちはよく理解しておるつもりでございます。  ただ、一方私どもの立場としましては、横須賀地区で米軍の住宅不足が千三百戸という大きな不足をしておる状況でございまして、その間米軍に住宅を提供しなければならない立場にある防衛施設庁といたしましては、何とかこの辺、地元の方々の御理解を得ながら建設ができるようにと願っておるわけでございます。
  256. 市川雄一

    市川委員 この緑は非常に貴重な緑だと思うのですね。そういう意味では、これは単なる逗子市とかいう問題ではない、もっと広域な立場での損失になると思うのですね、この緑を失うということは。私もこの問題では、できればほかに代替地を探して、やめてもらいたいという気持ちを強く持っておるわけです。  そこでちょっと念のためにお伺いするのですが、米軍の住宅が千三百足らないということを前々から国会でお聞きしでおるわけですが、ここでは一応千戸ということになっておるわけです。地元の住民の中には、一千戸というけれども、将来またふえていくんじゃないのか、ますます自然が破壊されていくんじゃないか、こういう懸念が強いわけですけれども、千戸で終わりなんです、千戸以上はやりませんということは確約ができるのか、確約ができる性質のものなのかどうなのかが第一点。  第二点は、かつて池子弾薬庫で火災事故があって、非常に黒々とした煙が市内全域を覆うという事件が不幸にしてありました。その記憶が非常に市民の中には強く残っておるわけであります。近くまで住宅がかなり密集してきているわけですね。そういう意味で、いまは弾薬庫として使われていない、したがって、これから米軍がもう池子弾薬庫は弾薬庫として使用しない、将来日本に返還されたとき自衛隊がこれを弾薬庫として利用はしない、いわゆる弾薬庫としての使用はやめてもらいたいということを強く思っておるわけですが、その辺の問題について、もう弾薬庫としては米軍も使用を考えていないし自衛隊も考えていないんだということを市民に向かって皆さんはお約束ができるのかどうか、その辺はどうですか。
  257. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず戸数でございますが、私ども現在、マスタープランの段階におきまして千五十六戸という計画をいたしております。それ以上の計画はございません。  それから第二に、残った地区を将来弾薬庫に使うのか使わないのか、使わないと確約できるのかという点でございますが、現在米軍はすでに御承知のように弾薬の貯蔵はいたしておりません。補給品等の置き場として使用しておりますが、今後も同様に補給品等の置き場として使うんだという計画を持っているように聞いております。
  258. 市川雄一

    市川委員 いま、第一点の方の千五十六戸ですか、そういう計画で、それ以上の計画はありませんというのは、将来に向かってもありませんと確約できるのかどうかということを聞いたのです。将来に向かって千五十六戸でもう終わりなんだということなのか、いや先のことはわからない、いまの時点では千五十六戸ですということなのかどうなのかということが一つ。  それから、米軍は弾薬庫として使う予定はないという展望、見通しをお聞きしました。今度返還されたとき、自衛隊が使うのか使わないのか、その辺はどうですか。
  259. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず戸数の方でございますが、将来とも千戸よりふえることはないのかということでございますけれども、これはもちろん将来のことを私がいまここで約束できる立場ではございませんが、あの地形を考えまして、千三百戸、そこに対してああいう計画を立てたのでございまして、実際問題として、あれ以上住宅を建てていくということはむずかしいのではないかと私は思いますが、それ以上ここで将来のことをお約束する立場にはございません。  それから、自衛隊があそこを弾薬庫として使うことはないのかという点でございますが、これも私としていま言えますことは、そういう計画は何ら承知していないということでございまして、それ以上のことをここでお約束する立場にはございません。
  260. 市川雄一

    市川委員 以上で終わります。
  261. 橋口隆

  262. 山花貞夫

    山花委員 まず、過日発表されました防衛白書を中心としてお伺いをしたいと思います。  初めに、ちょっと疑問に思った点がありますので、本論に入る前にお尋ねをしておきたいと思うのです。  「日本の防衛」と題された防衛白書は、昭和四十五年十月に発表されてから今回が九回目であります。そのときにおける防衛庁長官の防衛問題に対する基本的な見解がこうした防衛白書には強く打ち出されているものである、このように理解をしております。第一回四十五年、防衛白書が発表されました当時の防衛庁長官は、中曽根現総理大臣であります。どのような考え方が第一回の防衛白書について強調されておったかということを調べたいと思いまして、実は国会図書館に行きまして、九冊を並べてみたわけであります。第二回以降今日までの防衛白書につきましては、その冒頭に防衛庁長官の刊行に当たっての談話が掲載されているわけですが、不思議なことに第一回の防衛白書だけについてはこれが外されているわけであります。国会図書館に調べていただいたわけですが、実は第一回だけが外されてしまっております。  私が聞くところによりますと、なお調査の必要があると思いますが、当時中曽根防衛庁長官の刊行に当たっての談話は確かに印刷され、添付されたのだけれども、その後回収されてしまったということから国会図書館に現物がないわけでありまして、実は先ほど国会図書館で調べたばかりの問題ですから、どうなっているか、わかりましたらということで初めにお伺いしておきたいと思うのですが、防衛庁の方で、なぜ中曽根防衛庁長官の刊行談だけが公式の記録から削除されてしまっているのか、この事情についておわかりでしたら、御説明をいただきたいと思います。
  263. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  防衛庁は御承知のように昭和三十年に発足したわけでございますが、四十五年まで白書が作成をされておりませんでした。事情はつまびらかではございませんが、白書の性格上、過去一年間の業績を国民にお示しをするということで警察もやっておりますし、いろいろな主要官庁もやっておりますが、防衛庁はその段階ではまだ白書を作成して国民にお話を申し上げるというような段階ではなかったのではないだろうか。正確に申し上げますと、二十九年に防衛庁が発足いたしまして今日まで三十年でございますが、当初の段階では、なかった。四十五年に中曽根現総理が防衛庁長官になられましたときに、白書を作成すべきである、こういうお立場から初めて作成をしたと承知をいたしております。  ただいまの、前文になぜ四十五年のものだけ長官の巻頭言が載っておらないのか、こういう事情につきましてはつまびらかではございませんが、中曽根総理の送り状といいますか、初めてつくったものに対する解説と申しますか、送り状のようなものをつくって別に御送付をした、こういうふうに承知をいたしております。以後まだしばらく防衛白書はとだえましたが、五十一年になりまして、やはり作成すべきである、こういう時の長官坂田先生の御判断で再度始められ、以後毎年作成をするということに正式に決まりましたのが五十三年度の参事官会議でございます。そういう事情で、四十五年分には、私もつまびらかではございませんでまことに申しわけございませんが、中曽根総理のごあいさつ状というようなものが添付された、したがって、正式の巻頭言にはなっておらなかったと承知いたしております。
  264. 山花貞夫

    山花委員 中曽根防衛庁長官当時に初めて白書ができまして、その後まだしばらく白書が出ていなかった、こうした経過の中にも中曽根現総理大臣の防衛問題に対する一つの姿勢が大変よくあらわれていると思うわけです。  いま御説明がありました第一回の防衛白書につきましては、いわゆる巻頭言、談話が別刷りだったという御説明なわけですけれども、確かにそのようにも伺っているわけですが、その別刷りのものについて回収されてしまいまして、公式の国会図書館の資料にはないというのが先ほど私が調べてきた実情であります。冒頭申し上げましたとおり、ことしのものについては谷川長官からいろいろお伺いしたいと思うのですが、長官の主張というものが盛り込まれるのが防衛白書の一つの見方だと思いますので大変関心を持ったところ、そうした状況でございます。いまのいまの質問でありますから、この問題につきましてはまた後ほど、防衛庁の方でおわかりになりましたならばその間の事情についてひとつ御説明をいただきたい、そのことをお願いして本論に入りたいと思います。  実は、今年度の防衛白書を拝見いたしまして、昨年に引き続きまして防衛問題についての大変新しい考え方が盛り込まれている、そう理解しております。何といっても鈴木元総理の同盟関係あるいはシーレーン発言以降、日本の防衛政策がアメリカのいわゆるレーガン戦略に大変強い影響を受けているのではないだろうか、そして五六中業を進める中、そうした考え方が昨年以来の防衛白書に大変強く打ち出されている、こう受けとめているわけです。  長官にお伺いいたします。ことしの防衛白書におきまして長官御自身で特に強調したかった点、今回の白書の中で問題点として指摘している点ほどんなところにあるのか、そのことについてお伺いいたしたいと思います。
  265. 谷川和穗

    谷川国務大臣 白書を刊行するに当たりまして、最初のところで「刊行によせて」と私書がしていただきましたが、その中にただいまの御質問の大半は私の気持ちとして書き上げさせておいていただきました。私は防衛庁長官といたしまして、この白書が一人でも多くの国民の皆様方に読まれて、そして防衛問題、安全保障の問題を御論議いただく場合に御判断の一助とでもなればまことに望外の幸せという気持ちで、ぜひ多くの方々に読んでいただきたい、これが私が持ちました一番大きな気持ちでございます。  それから内容につきましては、すでに御案内かと存じますが、政府刊行の白書でございます。特に防衛白書に関しましては、過去一年間行われてまいりましたわが国の防衛に関する努力、それから進みましたこの一年間を振り返って白書で取りまとめるのが大体毎年白書の扱う姿勢でございますが、本年の白書に関しましては、特に私は日米安全保障体制の信頼性の維持向上が図られる、ここに私なりに特にアクセント、要点を一番強く置かしていただいたつもりで、白書の監修に当たっては特に私からの希望としてもそれを事務当局に命じたようなことでございます。  あと、それに沿って具体的に幾つか、この一年間を振り返って日米両国で行われましたそれぞれの防衛努力に関する具体的な事例、あるいは、これは毎年の白書で出てまいりますが、概括されました国際情勢の分析、特に本年の白書については昨年までと違いまして地域をそれぞれ取り上げて記載をいたしておりますが、そういう白書の構成その他につきましては、追ってまた順に事務当局からも答弁をさせていただこうと思います。
  266. 山花貞夫

    山花委員 長官から抽象的に日米の信頼関係という御説明があったわけですけれども、当時の新聞に報道されました一般的な受けとめ方、各紙の見出しを見るとよくわかると思うのです。たとえば「「西側陣営の軍隊」なのか」、これは社説の見出してあります。千海里シーレーンの防衛について既成事実化したではないか、随所に大国の気負いがある、あるいは「防衛白書にみる危険な主張」、これも社説であります。西側と軍事連携を強調している、「歯どめを失った防衛力増強、ソ連の脅威前面に 「シーレーン」に初言及」「日米安保強調の防衛白書」、西側結束の重要性を訴えている白書、「ソ連脅威再び強調」等々と、いまちょっと読み上げましたような問題点がことしの白書の特徴ではなかろうかというように思っているわけです。  どのマスコミ論調の中でも指摘しておりますのがソ連脅威論でありますけれども、昨年の白書と比較いたしまして中身が大部違ってきているのではなかろうかと思います。去年の白書と比べてソ連脅威論をどのように変えてお書きになっているのか、問題点ほどこにあるのか、このことについてお伺いをしたいと思います。
  267. 新井弘一

    新井政府委員 ただいま先生から、ソ連の脅威云々を強調しているというお話が、新聞の見出等をクォートされつつ、ございましたけれども、私どもは、ことさらにソ連の脅威を強調するということではなくて、現実にソ連が軍事力を増強しているその実態を客観的に述べたということに尽きるわけでございまして、この点でまさに昨年の防衛白書もことしの防衛白書も基本姿勢においては全く同一でございます。
  268. 山花貞夫

    山花委員 基本姿勢について私は変わっておると思います。たとえばことしの白書四ページ、第一章第一節「世界の軍事構造」に次いでの第二節でありますけれども、「ソ連軍事力増強と勢力拡張」という項の冒頭におきましては、「ソ連は、帝国主義が存在する限り戦争の危険は回避されないとの認識の下に、軍事力の増強を国策の最優先課題の一つとしてきた。」こうした記述があります。昨年はなかったものであります。一言で言いますと、世界戦争は不可避であるとよく言われるその主張、テーマがここに盛り込まれております。昨年の白書にはありませんでした。その意味においては、白書の冒頭「世界の軍事構造」の中で、世界戦争不可避論を掲げ、以下こうした認識のもとに全体の白書が出てきているということでありますから、この点については昨年とは全く違った新しい観点を打ち出しているということになるのではないでしょうか。もし去年の白書にそういう部分があるとするならば御指摘をいただきたいと思います。去年の文章にはありません。
  269. 新井弘一

    新井政府委員 お答え申し上げます。  ことしの白書で、「ソ連は、帝国主義が存在する限り戦争の危険は回避されないとの認識」を有しているという記述があったにもかかわらず、昨年の防衛白書にはこの記述がないという御説明でございますが、実は昨年の防衛白書の七ページ「第二節 ソ連の軍事力及び勢力拡張」、その冒頭に同趣旨の記述がございます。  それから、戦争不可避論ということが今回の防衛白書の主張ではなかろうかということでございますが、遺憾ながらこの先生の御判断には同意しかねるというのは、全体を読んでいただければおわかりのように、あくまでもその抑止力によって戦争の危機がこれまでも回避されてきており、さらに今後バランスの維持回復によって引き続き戦争を回避するということが、われわれの基本的な考え方として打ち出されているわけでございます。そういう意味で去年どことし、結論から言いますと変わりございません。
  270. 山花貞夫

    山花委員 昨年の白書七ページ、御指摘の部分については、戦争不可避論は出ておりません。出ておるなら、ここのところだと説明していただければと思いますけれども、どこがそうだと言うのですか。ことしの白書の四ページ冒頭のところでは、明らかに世界戦争不可避論というものが強調されています。そしてこの白書は、こうしたソ連の戦争不可避論というものから来る軍備増強路線、そのことに対抗してのアメリカ世界戦略、そしてこれに西側一員としてくみする日本の防衛の体制を説いておる、これがことしの基本的構造の特徴だと思いますが、昨年の七ページのどこにその戦争不可避論が出ていますか。ことしのははっきり出ていますが、教えてください、そこのところを。
  271. 新井弘一

    新井政府委員 先ほど私がちょっと読みましたのは、七ページの一番最初の部分に、「ソ連は、帝国主義が存在する限り戦争の危険は回避されないとの認識を有しておりこということでございます。これは、ソ連の文献を読めばその記述が出てまいります。そういう客観的な事実を述べたということでございます。
  272. 山花貞夫

    山花委員 その部分について、ことしの白書の書き方が明らかに違っているのではないでしょうか。この戦争不可避論を最優先の課題の一つとした、こういうように位置づけまして、その上にソ連の軍備拡張路線がある、これに対するアメリカの戦略がある、こういう基調、書き方をしているわけでありまして、昨年の場合には単なる認識ということかもしれませんが、ことしの場合には明らかにその姿勢というものが違っているということではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  273. 新井弘一

    新井政府委員 私、先ほど一行目だけ読みましたけれども、二行目を、去年どことしの白書の部分についてそれぞれ御紹介いたします。  昨年は、ソ連がそういう「認識を有しており、その軍事力を自国防衛及び対外政策の不可欠な手段とみなしこという表現でございます。ことしの防衛白書においては、その部分は「軍事力の増強を国策の最優先課題の一つとしてきた。」ということでございます。これは確かにレトリックは違いますけれども、それぞれの文章に盛られている実態については変わっているというふうには私は思わないわけでございます。
  274. 山花貞夫

    山花委員 いま、違っているところはあるけれども中身はそうじゃないんだ、こういう御説明だったわけですが、これ以上になりますと見解の違いになるかもしれませんけれども、この戦争不可避論を前提として、そのもとに「軍事力の増強を国策の最優先課題の一つとしてきた。」と、今年の防衛白書の前提は明らかにソ連の戦争不可避論であります。単なるソ連の脅威ということ以上に、戦争不可避論を前提として、そのことに対してのわが国の防衛問題を議論している、そのように理解しないわけにはいかないわけでありまして、見解の相違もあるかもしれませんが、この文章はそう読まざるを得ないのだと思います。  実は、そうした全体の基調から幾つかの新しい問題が提起されておると思います。一千海里シーレーンにつきまして、防衛白書の中にはっきりと打ち出されたのはことしが初めてということではないでしょうか。この点について伺いたいと思います。
  275. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 言葉といたしましてシーレーン防衛についてまとめて記載をいたしましたのは今回が初めてということでございますけれども、シーレーン防衛と申しますのは、もともと御承知のようにわが国の海上交通の保護を目的とするということでございまして、そういった海上交通保護のための防衛力の必要性ということにつきましては、過去の白書におきましてもいろいろな個所で説明は加えてきているものでございます。
  276. 山花貞夫

    山花委員 これも、それぞれの個所で説明してあったけれども本年度はっきりと明文で出てきた、こういう御説明ですが、中身として考えてみた場合には、去る八月、ワシントンにおける日米防衛首脳定期協議の後、アメリカ側国防総省が発表した声明を見てみますと、一千海里シーレーン問題につきまして、これは日本が独力で行うことを期待する、こういう文章が発表されているわけです。  長官に伺いたいと思うのですが、この定期協議におきましては、一つは、基本の問題としていわゆる防衛力の大綱見直しというような趣旨での発言、要請があったのか、なかったのか。一千海里シーレーンにつきましては、そのこととの絡みになりますけれども、独力で日本にやってもらいたい、こういう要求があったのか、なかったのか。五六中業、この点についてアメリカ側の主張はどうであったのか。この三点についてお伺いしたいと思います。
  277. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 事実関係の点だけひとつ私から前もって説明させていただきますが、八月の日米防衛首脳会談の後でアメリカ側から出されたブリーフィングといいますか会談内容説明の中に、独力でシーレーンの一千海里内の防衛をやれというふうに書いてあったのではなかろうかという御疑問の点でございますけれども、私どももその原文を読みましたけれども、それはそういうことではなくて、日本がいま実施しておりますみずから選んだ政策を日本ができるだけ早く達成することを期待するという脈絡で書いてございまして、たしかイットセルフとかいう言葉がそこにございましたけれども、文脈はそちらの方でございましで、シーレーンの防衛については、周辺数百海里、航路帯を設ける場合には一千海里程度の海域を守れるようなことを目標として防衛力整備を行うということで日本がいまやっているわけでございますが、それは第一義的にはシーレーン防衛は日本が行い、アメリカがそれを支援する、こういう立場にあることはガイドラインにも明らかにされているところでございまして、全部日本でやれというふうに言われたと伝えられたのは、これは正しくないあれだと思います。
  278. 谷川和穗

    谷川国務大臣 防衛大綱の見直し論は一切出ませんでした。  それから、いまの政府委員答弁にさらに重ねて私から申し上げさせていただきますが、はっきりと明確に日本に肩がわりを求めておるものではないということと、有事の場合に共同対処する原則は崩さない。それから話し合いの中では、日本の島という言葉を使われましたが、英語ではこれは複数になっておりますから日本列島と言っていいのかもしれませんが、それとシーレーン防衛は、自分らとしてみれば、いま政府委員から答弁させていただきましたように、日本がいままで立てた計画によってできるだけ早くこれを達成できるような防衛力整備を行うことを期待をしておるという趣旨の発言はございました。  それから、五六中業にかかわったような具体的な発言は一切ございませんでした。
  279. 山花貞夫

    山花委員 実は防衛白書の中には、先ほど私が長官の強調したい点が出ておるだろうと申し上げたほかに、昨年、ことしの防衛白書を拝見いたしますと、どうもアメリカ側の期待というものがまた防衛白書の中にあらわれているのではないか、こういう気がしてなりません。そうなってくると、大綱とのかかわりということももう一遍検討しなければならないのではないか。私どもは、昨年、ことしの防衛白書に強調されている五六中業、表裏一体のこの政策というものは、大綱を事実上廃棄していく、こういう作業を進めているのじゃなかろうかというように感ずるところであります。  そこでお伺いしたいと思うのでありますが、防衛白書の五十七ページ以下「わが国の安全保障と防衛力」という項があります。冒頭第二節「安全保障」の「侵略等の態様」というところがありますけれども、ここには、わが国の安全を脅かす侵略等の態様として直接侵略と間接侵略及び軍事力をもってする不法行為がある、こういうように説明がなされております。このうちの直接侵略の部分ですけれども「限定的かつ小規模なものから、これを超えるものまであろう」、こう書かれてあるわけですけれども、限定的小規模な直接侵略とは一体何を意味しているのか。「これを超える」とは、限定かつ小規模ではないといいますから、無限定、大規模なということになるかもしれません。そういう直接侵略とは一体何を説明されようとしているのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  280. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 限定的かつ小規模な侵略についてということでございますが、にれは「防衛計画の大綱」の基本的な考え方が「限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で排除することとし、侵略の規模、態様等により、独力での排除が困難な場合にも、あらゆる方法による強じんな抵抗を継続し、米国からの協力をまってこれを排除することとする。」という基本的な考え方に立っておるものを受けて、そこに記載をしているものでございます。  「限定的かつ小規模な侵略」とは一体どういうようなものかということでございますが、これは短期間の準備によりまして小規模な侵略をするというような態様を考えているわけでございまして、大がかりな準備なしに短期間で侵略をしてくるような場合を想定をして、そういうものであればわが国原則として独力で排除するということを考えていきたいというものでございます。
  281. 山花貞夫

    山花委員 「これを超えるものまであろう」という点について、もうちょっと具体的にお話しいただけませんか。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  282. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この超えるものもあるであろうという点は、先ほど私が御披露いたしました「防衛計画の大綱」の方の後段に当たるものでございまして、前段の「限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で排除することとしこということの後に、「侵略の規模、態様等により、独力での排除が困難な場合にも、あらゆる方法による強じんな抵抗を継続し、米国からの協力をまってこれを排除する」、こういう態勢を大綱自身が想定をしておるわけでございますから、その辺のことも含めてここに記載をしてあるというふうに御理解いただいていいかと思います。
  283. 山花貞夫

    山花委員 いま御指摘の部分につきましては大綱の後段と御説明されたわけですけれども、大綱の冒頭の「目的及び趣旨」、今回のこの白書の冒頭のところと関連、対応するような部分だろうと思うのですけれども、これまた御説明の中にありましたとおり、「これをもって平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものを目標とすることが最も適当でありこういうように「防衛計画の大綱」で「目的及び趣旨」が明記されているわけであります。  「限定的かつ小規模な侵略までの事態」と、限定的に文章がされているわけであります。したがって、当時、大綱の説明といたしましては、一言で言うならば平和時における防衛力の整備、こういった観点で説明された部分もありました。しかし今回の白書によりますと、「限定的かつ小規模なものから」ということで、大綱で言っている範囲が広げられまして、「これを超えるものまであろう。」そうした意味におきましては、いわば平時における防衛力整備というよりはむしろ戦時における防衛力整備、そこまでこの白書の中では強調しておられる、五六中業の中身がそうした観点で全体計画が進められている、こういうように受けとめますけれども、明らかにこの大綱の趣旨とは違っているのではないでしょうか。
  284. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま先生御引用になりましたのは「防衛計画の大綱」の最初の「一 目的及び趣旨」というところの第二パラグラフのところかと思います。そこの脈絡がどうなっているかと申しますと、「わが国が保有すべき防衛力としてはこという前提がございまして、それは先ほど先生がおっしゃいましたように、いろいろ間にございますけれども、「平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものを目標とすることが最も適当でありこういうふうに書いてあるわけでございまして、つまり、わが国が保有すべき防衛力としてはそういうものであるという趣旨でございます。  私が先ほど申し上げましたのは、ずっと後の方へ参りまして、「三 防衛の構想」の中の小項目の二番の「侵略対処」というところの部分でございます。いま申し上げましたような限定的小規模な侵略に対処し得るような防衛力を自分ではまず持つ。それで今度は、実際に侵略が起こった場合にどういうふうに対処するかということがここに書いてあるわけでございまして、そこに、限定的かつ小規模な侵略であれば、これは当然ですが、原則として独力で排除するというふうになるわけでございますし、さらにそれを超えるようなものも侵略の態様としては当然あり得るわけでありますから、そういう侵略の規模、態様等により、独力での排除が困難な場合にも、強靱な抵抗を続けた上で米国からの協力をまってこれを排除する、つまり日米安保体制と自主的な防衛力という二つの柱が基軸になりまして、これを適切に運用していくことによって全体としての侵略に対処していく、こういうことが大綱の基本思想で出ているわけでございまして、私が申し上げましたのはそのことでございますし、白書で記載しておりますのもそのことを表現をしたものでございます。
  285. 山花貞夫

    山花委員 いまの御説明、ことしの白書で引用しているところは二百八十三ページの部分と二百八十五ページの部分、これをともに引用されまして、したがってことしの白書と矛盾をしておらない、こういう御説明ですけれども、二百八十三ページの部分というのは、あくまでも「防衛計画の大綱」についての目的と趣旨、いわば全体的な趣旨について書いてある部分でありまして、いま御指摘の第二番目の部分というのは「防衛の構想」の中の侵略に対する対処の部分、こういう観点で書かれておるわけです、  ことしの場合でも私は構造は全く同じだと思いまして、冒頭の方に侵略の態様その他いわば防衛力整備の一つの目的について書かれ、その後いろいろ、これに対する態様がさまざまな同盟関係からの説明がなされているわけです。したがって、いまの御説明では、大綱の幾つかの部分、前段の目的の部分と対処の部分を一まとめにいたしまして、それらを盛り込まれたものがことしの白書における直接侵略についての新しい文章である、こういうように矛盾はないとおっしゃっているわけですが、大綱におきましては、趣旨、目的の部分におきまして「限定的かつ小規模な侵略まで」ということで明らかに限定的に使っておりまして、あくまでも平和時における防衛構想である、ここが強調されているのではないでしょうか。しかし今回の白書につきましては、まさにその観点というものが、いろいろ御説明あったような言葉によりまして捨てられているのではなかろうか。言葉の上ではそういうふうにとれるかもしれませんけれども、実態としてはこれを超えるものまでも直接侵略の一形態として、これに対応できるような自衛力の整備、五六中業の推進、こういうことになっているというようにも私は理解するわけです。  くどいようですけれども、明らかに防衛大綱における目的の部分とは違っている。ここのところはそうなんじゃないでしょうか。文章上大変明確だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  286. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 大綱は、第一番目に「目的及び趣旨」から始まりまして、二番で「国際情勢」、三番で「防衛の構想」、四番で「防衛の態勢」というぐあいになっておるわけでございまして、さらに五以下もございますが、これ全体が「防衛計画の大綱」でございます。そして、私が申し上げておりますのは、その「防衛の構想」の中の「侵略対処」の中には「限定的かつ小規模な侵略については、」云々ということと、それから侵略の規模、態様等によっては米国からの協力をまって排除する場合もあるということと、二つ書いてあるということを申し上げておるわけでございますが、いま先生が御指摘になっております白書の五十七ページのところは、第一節「安全保障」「1 侵略等の態様」という見出しになっておりまして、侵略等の態様がどういうものがあるか。その中に直接侵略、間接侵略等があるし、直接侵略の中には御指摘のような括孤書きがついておるということでございますから、「侵略等の態様」の説明としては、当然のことながらただいま申し上げました大綱の「侵略対処」の中に書いてあります侵略の態様を受けてここに記載することが自然ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  287. 山花貞夫

    山花委員 単なる文章の解釈だけではないわけでして、中身の問題があります。特に昨年、ことしの防衛白書を拝見いたしますと、いま指摘いたしましたとおり大綱に言う平時における防衛ということではなく——いわばそこでの意味は専守防衛的な色彩が強いということになると思いますけれども、実は昨年、ことしの白書によりますと、専守防衛から一歩進んでいるのではないだろうか。白書の中におけるシーレーン問題も同じ問題でありますけれども、三海峡封鎖あるいは制海、制空につきましての説明等々が昨年来大変強く盛り込まれているわけでありまして、単なる言葉のあやで済む問題ではないのではないかと考えます。  この問題、また後に触れたいと思いますけれども、もう一つ忘れないうちに伺っておきたいのですが、白書の中にいろいろ図表が、昨年来カラーになったりいたしまして、わかりやすくという趣旨で御説明があったりいたしましたけれども、たくさん出ているわけですが、出典がない。たとえば、ぱっと開いたところでは三十四ページ、三十五ページあたりにずっと一ページに一つくらいずつ、「極東ソ連の中距離核戦力の推移」であるとか「極東ソ連の師団数の推移」であるとか「極東ソ連の航空兵力の推移」等々、図面でたくさんの表が出てまいりますけれども、出典がないと一体何を資料としてこうした記事になったのかということが大変わかりにくい、後検証しにくいという問題なんですけれども、これはどうなっているのでしょうか。この出典その他につきましては何らかの説明の附属資料があるのか、あるいはないとするならば、どの部分はどういう根拠でこういう数字が出てきているのか、この点について説明をしておいていただきたいと思います。
  288. 新井弘一

    新井政府委員 ただいま御質問の、たとえばソ連軍の軍備増強の実態あるいはSS20等々についての図表に出典がないということでございますが、これにつきましては、防衛庁といたしましていろいろな情報を総合的に分析、判断して、防衛庁の見解、見方としてこれを掲げたものでございます。したがいまして、個々に単一の資料に基づいてその出典を挙げるというようなことはやらないわけでございます。
  289. 山花貞夫

    山花委員 ということですと、客観的な資料に基づいてというよりも、防衛庁の立場でいわば主観的に数字をかき集めたものではないか、こういう疑問も出てくるわけであります。さまざまな国際的な機関の発表したもの、あるいは政府関係筋の発表したものありますけれども、いまのような御説明でありますとどうも客観性がないのじゃないだろうか。こうした問題につきましては、今後の問題として、もし読む者に説得力を持たせようとするならば出典についてははっきりすべきではないだろうか、こういうように思いますけれども、いかがでしょうか。
  290. 新井弘一

    新井政府委員 先ほどの説明の過程で一言私申し上げるべきだったと思います。それは、いろいろな情報を総合的にかつ客観的に分析、評価したものであるということでございます。その客観性につきましては私ども、私どもなりの自信を持っております。世界にも通用すると思います。
  291. 山花貞夫

    山花委員 言葉で客観的と言ったって、主観的に客観性を打ち出しているのじゃないかということにもなるわけで、こんなことは水かけ論になります。やはり説得力を持たせようとするならば出典を明らかにすべきである、そうでなければ一方的な主張ではないかということになる、こういうように主張をしておきたいと思います。大臣のお時間なども聞いておるので、先に進みたいと思います。  防衛力のGNP一%論についてでありますけれども、この問題につきましては、ことしの予算編成はすでに始まっておりますが、五十八年度段階から、たとえば防衛庁職員二十四万人に人事院勧告完全実施されたならば幾らになるかという問題を含めて、もう大体限界を超える段階に来ているのじゃなかろうか。従来から防衛庁内部でもこの問題について検討されているということがたびたび新聞にも報道されております。長官がこう考えているとか次官がこう考えている、いずれも一%論について新聞報道で伝えられているわけでありますけれども、まず基本の問題として、防衛庁長官としては、GNP一%論にかわる新しい基準を設けるという考え方が新聞に報道されたりしておりますけれども、この点どうお考えになっているのか、防衛庁内部でそういう問題について議論が進められているかどうか、この点について伺いたいと思います。
  292. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま新聞報道のことにお触れになったわけでございますが、私ども防衛庁といたしましては、現在のところ五十一年の閣議決定を変える必要はないという立場に立っているわけでございます。したがいまして、私どもも内部におきましてそういったGNPの一%にかわる新しい歯どめの研究といったようなものに着手をしているという事実はございません。
  293. 山花貞夫

    山花委員 ただ、ことしの予算書を拝見しても、GNPと防衛予算とのすき間が非常に小さくなっている。人勧が完全実施ということになるとほとんど埋まり切ってしまうのじゃないでしょうか。防衛庁でもその辺は一%論とのかかわりで研究されておると思いますので、その点はいかがですか。たとえば人勧一つとったってもうすき間がほとんどなくなる、こういう現状にあるのではないでしょうか。
  294. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 人事院勧告の取り扱いについては、御承知のようにまだ決まっておりません。したがいまして、私どもといたしましても人事院勧告を仮に実施したらというような計算を実はいたしておらないわけでございますが、いまお話がありましたようにGNP一%、つまりことしてございますと二百八十一兆七千億というのがGNP総額になっておりますから、その一%は二兆八千百七十億になるわけでございまして、その差は六百数十億ございますし、それから一%分といいますか百十億分だけ予算に組んでございますから、七百数十億分だけすき間があるわけでございますので、いま御指摘のことではございますが、人事院勧告の取り扱いについて五十八年度実際どうなるかわかりませんけれども、仮に人事院勧告完全実施というようなことになりましても五十八年度に一%を超えるというようなことにはならないのではなかろうかと思っております。
  295. 山花貞夫

    山花委員 いま御説明がありましたとおりGNPの一%二兆八千百七十億円、これと五十八年度防衛費二兆七千五百四十二億円で六百二十八億円のすき間があるわけでありますけれども、御説明にもありました給与改善関係についての一%だけでも約百十億円、こういうことだといたしますと、われわれ計算いたしますと、いまの給与一%を含めて七百三十七億円が所要経費枠となってまいります。人勧に必要な金額は七百五億円ということでありまして、こうやって計算いたしますと、人勧が実施された場合には、私の計算したところではGNPとのすき間はわずか三十二億円ということになる。この人勧だけでそのくらいになるのじゃないでしょうか。  そうすると、ほとんどすき間が埋まる、こういう現実は目に見えているのではなかろうかと思いますけれども、人勧がもし実施されたならばすき間はわずか三十二億円だけになってしまうのではないかということと、たちまち一%は、来年はもうその線ではむずかしいのではなかろうかと思いますけれども、この点について御説明いただきたいと思います。
  296. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先ほど申し上げましたように、仮定の計算をいたしますといま委員が御指摘になりましたような計算もあり得ると思いますが、何せ人事院勧告の取り扱いについてはまだ決まっておらないということが一つございます。それから五十八年度につきましても、今後補正予算が組まれるのかどうか、まだ全く不明でございますけれども、予算の執行につきましては慎重にこれを行うようにということをことしの四月に大蔵大臣が閣議で御発言なさり、そのようなことで対処してきておることもございますし、それから五十九年度につきますれば、GNPがどのくらいになるのかというのは今後のことでございまして、これは私どもわからない。それから五十九年度の予算につきましても、ただいま大蔵省と折衝をいたしておりますが、これも年末になりませんとわからないということでございますので、私どもとしては、大臣がいつも申し上げておりますように、五十一年の閣議決定を守るような努力をこれからしていくということでございますので、いま御心配のようなことは直ちに当てはまらないかと思います。
  297. 山花貞夫

    山花委員 努力の目標は結構ですけれども、もうそれが破綻することは目に見えているということではなかろうか。谷川長官の方の構想はこうだということが新聞に出たり、夏目次官のそんなことは検討していないと言うことはあり得ない、これは新聞によりますと公式談話ということで出ておったりしたわけでありまして、恐らく十分検討されているのじゃないだろうか。いろいろな思惑、差しさわりがありますからその中でおさめるのだ、こうおっしゃっているにすぎないのじゃなかろうかというようにわれわれ考えるわけであります。  別の観点で大蔵省の方に伺いたいと思うのですが、今年度予算要求その他につきまして、いま申し上げました防衛費の大変な増大、三年連続の突出、ほかは全部ゼロあるいはマイナス一〇%というところに、防衛予算だけは大蔵省としても聖域扱いしているのじゃなかろうか。これは人員要求についてもそうでありまして、約二千名の人員要求。昨年はゼロというような経過もありましたけれども、大体臨調の考え方によれば五年間で公務員一〇%マイナスである、こう言っているさなかに防衛庁だけはどうも別枠、防衛庁はそうお思いになっているのじゃなかろうかと思いますけれども、大蔵省の取り扱いとしてはどうなっているのでしょうか。聖域扱いしているのじゃないか、この点についてお伺いしたいと思います。
  298. 田波耕治

    ○田波説明員 お答え申し上げます。  防衛庁からの要求につきましては、現在、細部につきまして御説明を伺っておるところでございます。これから鋭意査定に取り組んでまいるわけでございますけれども、私どもといたしましては、御指摘のように非常に厳しい財政状況でございますから、他の経費と同じように厳しい査定方針で臨んで、ほかのいろいろな施策とのバランスも十分に考えて、場合によってはかなり厳しい査定を行うという結果になるようなことでございますので、そのように御理解いただいてよろしいかと思います。
  299. 山花貞夫

    山花委員 たてまえ論をお伺いしたわけですが、他の省庁と同じように厳しく査定するといっても、どだい六・八八という枠その他がいろいろと出てきているわけでありまして、いまの抽象的な御説明だけでは率直に言って大変頼りない、こういう気がいたします。  ついせんだって、これは十月二日付の新聞ですけれども、「防衛費さらに抑制へ 来年度大蔵方針」「増員、大幅カット 後年度負担一部繰り延べ」こういう見出しで出ておりまして、中身といたしましては「大蔵省は、一日、五十九年度予算編成で最大の焦点となっている防衛関係費の伸びを大幅に抑制する方針を決めた。」となっており、その具体的な詰め方につきましても、第一は二千人強の増員要求の大幅カット、第二は後年度負担の歳出化分の一部繰り延べ、第三は教育訓練費など後方支援費の大幅削減、具体案までずっとここに提起されているわけでありますけれども、大蔵省としてはこんなことについてある程度検討されたのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  300. 田波耕治

    ○田波説明員 その新聞記事は私どもも拝見いたしましたけれども、先ほど申し上げましたように、現在、私どもは御説明を伺いつつ個々の査定をやっているところでございまして、ここのところをどうする、ここのところをどうするというところまで申し上げる段階に至っていないということを御理解いただきたいと思います。
  301. 山花貞夫

    山花委員 なかなかおっしゃりにくい問題かもしれないと思うのですが、ただ、大蔵省ごらんになっておって、継続費の問題と後年度負担の問題等々歴年の実績を見ると大変硬直化して、防衛庁の要求も非常にむずかしくなっていると思いますけれども、大蔵省のカットの仕方といいますか要求の抑制の仕方も大変むずかしくなっているのじゃなかろうか、こういう気がどうしてもいたします。  また、後年度負担や継続費の問題はわれわれはなかなかわかりにくいところでありまして、以下、具体的に質問したいと思いますけれども、そういう後年度負担や継続費がある中で、大蔵省としてはことしの財政事情から抑制方針を考えたいと言っているのですけれども、その点はできるのでしょうか、どうなんですか。その点について伺いたいと思います。
  302. 田波耕治

    ○田波説明員 後年度負担につきましては、私どもといたしましては、御指摘のように翌年度以降の予算編成を過度に圧迫することのないように十分配慮して必要最小限にとどめているところでございまして、現に五十八年度の予算編成におきましても、前年度よりも規模を圧縮したというような実績も見ているところでございます。     〔佐藤)信)委員長代理退席、愛野委員長代理着席〕
  303. 山花貞夫

    山花委員 その後年度負担、継続費の絡みでわかりにくいところがあるので、防衛庁の方にお伺いしておきたいと思うのです。  白書の百二十一ページを見ると、「一般的すう勢として、現代の装備が高価格なものとなる傾向は否めない」、こう指摘もあるわけでありまして、たとえばここ七、八年の武器の購入価格というところを見てみますと、次から次へと大変大幅に上がっている現状があります。私どもがいただいている去年どことしの「概算要求の大要」というものについて、去年どことしでありますから値段はそんなに違わないのじゃなかろうかと思って見ておりますと、これまた細かいところまでやると時間が大変でありますから省略はいたしますけれども、比較してみると、値段がどんどん上がっていることに気がつくわけであります。  たとえば主要装備、正面装備関係をずっと見てみますと、一番冒頭の九ミリ拳銃二千百七十五丁というのがあるわけですが、去年が八万六千円、ことしが十万九千円、二七%のアップになっております。こんなに一年で変わるものでしょうか。拳銃なんというものは、改善、改良がなくなってほぼ完成品じゃないでしょうか。人件費あるいはインフレを考えましても、二七%アップというのはずいぶん上がり過ぎじゃなかろうか、こういう気がしないわけではありません。あるいはP3Cなどにつきましても、備考欄に平均価格が出ておりますけれども、去年が百十二億八千六百万円、ことしが百十六億二千五百万円と何億円も違ってきているわけでありまして、そうした意味におきましては、非常に価格がどんどん上がっていくという状況があると思うのです。たとえばF15戦闘機あるいはP3Cについて見ると、P3Cでは、一番最初の五十三年度の購入の際が六十六億円ぐらい、これが五十五年度に九十五億円になって、五十七年度が百十五億円、とんとんと上がっていっているわけであります。F15戦闘機ですと、きょうまた資料をいただきましたので数字を調整しなければいけないと思いますけれども、当初六十億前後から八十四億、百七億、百十四億と非常に上がっているわけであります。  この異常に上がっていることについて、われわれはいろいろ資料で検討しようと思っても、なかなか検討することができません。防衛庁の他の質疑における答弁などについても拝見はいたしておりますけれども、なかなかのみ込みにくいという問題があります。そこで、わかりにくいものですから、具体的に一つだけ伺っておきたいと思うのです。その中から問題を解明していきたいと思うのです。  たとえばF15戦闘機、P3Cなどにつきましては、五十三年度予算にのっかりましてその後契約を結んで、五年間という期間が過ぎて大体みんな清算がついている、こういうように理解をするわけでありますけれども、たとえば五十三年度の予算にのりましたF15戦闘機十五機について、いつごろ契約をして、どこと契約をして、契約に基づく納期は一体いつだったのか、契約の金額はどのくらいだったのか、あるいは単価はどのくらいだったのか、支払った金額はどのくらいだったのか、この点について具体的にわかりましたならば、これ一つだけでも結構ですから御説明をいただきたいと思います。
  304. 木下敬之助

    木下政府委員 防衛庁の調達しております装備品の幾つかについて、値段の点について御質問がございましたが、F15について御説明申し上げます前に、ごく簡単に全体の傾向について申し上げますと、まず、ことし要求しております拳銃についての御質問がございましたが、拳銃につきましては新しい拳銃を五十六年度から調達しておりまして、今年度調達の契約につきましては、従来から国産しております拳銃をベースに原価を計算したということもありまして、実際に生産に入りましで以降の細かいデータ等を見ましたところ、五十九年度で要求した金額が一番妥当なものであるということになって値上がりになったものでございます。  ただ、一般的に申し上げますと、五十九年度で要求しております兵器航空機等の値段は、従来からのアメリカによるインフレの影響等が鎮静化いたしまして、一般的には価格の上昇が非常に少なくなってきておるということが言えるかと思います。P3Cにつきましては来年度の要求は若干上がっておりますけれども、F15につきましては来年度の予算単価は下がっているというようなことでございます。  いま御質問のF15の五十三年度の契約でございますが、五十三年度のF15につきましては、アメリカから購入しましたFMSの分とそれから国産化の分と両方ございますが、国産化しました分について御答弁申し上げますと、契約の時期は五十四年三月三十日、契約の相手先は、機体は三菱重工、それからエンジンは石川島播磨、その他搭載機器についてはかの企業とも契約しております。それで、納期は五十八年二月二十八日ということになっております。契約額は、五十四年三月三十日に契約したときには千二十四億円ということでございます。一機当たりの単価は六十八億円でございます。
  305. 山花貞夫

    山花委員 いまのF15戦闘機につきまして、当初、予算書にのったときの金額はどうなっておったのでしょうか。最近のものは資料がありますからわかりますけれども、当時のものは私持っていないものですから、それを教えてください。
  306. 木下敬之助

    木下政府委員 五十三年度のF15の予算成立単価でございますが、国産機につきましては、ブライアウエー・コストといいまして初度部品を除いた価格で六十九億六百万円、それから初度部品込みで七十八億六千二百万円でございました。
  307. 山花貞夫

    山花委員 これは後年度負担絡みで、最終的には五年がかりで納期も終わり、そしてトータルでの決済もなされた、中間確定の整理も済んでおる、こういうことだと思うのですが、為替差損などが出ておるのではないでしょうか。  為替差損が出たような場合の処理の仕方でありますけれども、これはほかの兵器でも同じだと思いますけれども、これは一体どうなるのでしょうか。具体的には、このF15戦闘機の場合に出た為替差損がどのくらいであって、その処理は一体どうなっているのかということについて伺いたいと思います。
  308. 木下敬之助

    木下政府委員 F15につきましては、為替差損の御質問がありましたので、国産化のものと、国産化じゃなくてアメリカから輸入しておりますFMS輸入分と、両方について御説明する必要がありますが、その両方をまとめました数字で、五十三年度に契約いたしましたときの予算額が千六百十二億円でございます。契約いたしました金額は、FMSと国産化の分と合わせまして千四百三十四億円。それで、実際に納入がされました段階で確定しました額が千三百六十九億円ということになっておりまして、現実の予算額よりは少なくなっております。それは、主としてFMSで輸入しましたものにつきましての為替レートがそのとき以降円高ということになりまして、円ベースでの支払い額は少なくて済んだということでございます。
  309. 山花貞夫

    山花委員 もう一遍、為替差損額というのは幾らになったのですか。
  310. 木下敬之助

    木下政府委員 非常に複雑になりますが、五十三年度の契約の場合にFMSで購入したものはむしろ為替の差益が出たという感じでございまして、国産化したものが差損が出た形になっております。  なぜそういうようなことになりましたかと申し上げますと、予算がつきましたときの為替レートは一ドル二百六十二円ということでついておったわけでございますが、FMSの契約は、年度の初め、六月ごろ契約いたしますので、そのときの為替レートはやはり一ドル二百六十二円だった。ところが、国産化分はその翌年の三月に契約いたしましたので、そのときの為替レートは一ドル百九十五円ということで、非常に円高になっておったわけでございます。ところが、御承知のように、その後、円が非常に安く推移することになりまして、そのためにFMSの方では為替差益が出ましたが、国産化分については為替差損が出ておりまして、それについて申し上げますと、国産化分の当初予算額が千四十八億円、それが契約いたしましたときに九百二億円でございまして、確定しました金額は九百十億円ということで、その確定しました金額は単に為替だけによって変動があったわけじゃございません、したがってその数字自身の差し引きで出てくる数字ではございませんけれども、為替の差損という形で出てきた数字は五十五億円でございます。その分だけが、国産化分については為替が安くなったために支払いを多くせざるを得なかった金額ということでございます。
  311. 山花貞夫

    山花委員 いろいろ説明された結論として、五十五億円ぐらいの数字をおっしゃった。私が別の関係で調べておる数字では四十九億三千七百三万三千円というのが為替差損分である、実はこういう数字をつかんでおるわけなんですけれども、これは調べたルートが違いますから、一遍調査さしていただきまして、いまの全体の価格の問題についてはまたいろいろ御質問させていただきたいと思います。  三時半から大臣お出になると伺っておるものですから、施設長官もお出になるということなので、別の問題についてちょっと伺っておきたいのですが、部かにある稲城のいわゆる多摩弾薬庫と言われておる地域、大変広い地域でありますけれども、この返還の問題、長年の地元の強い要望であるわけですが、この見通しはどうなのか、現状はどうなのかということについてだけ、施設関係でひとつお伺いしておきたいと思います。
  312. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘の多摩サービス補助施設は在日米軍人等の福利厚生施設として現在使用されております。内容的には、ゴルフ場の部分と屋外練成地区とに分かれておりますが、いずれも現在使用されておりますので、その返還を求めることはきわめて困難であるというふうに考えております。
  313. 山花貞夫

    山花委員 きょうは行革の委員会にお出になるというふうに伺っておるものですから、本来いろいろな問題についてなお伺っておきたいと思うのですけれども、実はいま御説明のような使用の形であるわけです。大変広大な土地でありまして、現状を私たちもよく行ってみて知っているわけですけれども、大体ゴルフ場に使っておる。あとはまあキャンプ場等に使っているというだけでありまして、広大な土地が全く空き家の状態にあるというのがわれわれの認識しているところであります。聞くところによりますと、沖縄以外、国内にはこの場所しかないということから、米軍の方がなかなか返してくれないということは聞いておるわけなんですけれども、都内の近郊にある広大ないわば遊休土地とわれわれは考えているわけでありまして、きょうは時間の関係もありますからまた重ねての質問は遠慮させていただきますけれども、今後ともこの問題についてはわれわれの希望につきましてもいろいろお伝えしたいと思いますので、ぜひ御検討いただきますようお願いしておきたいと思います。  それでは、次の質問に移りたいと思います。  ちょっと話が途中になってしまいましたけれども、実はいまのF15戦闘機絡みで考えてみましても、いまその契約関係をいろいろ伺ったわけですけれども、この防衛庁の予算とか決算とか非常にわかりにくい仕組みになっておりまして、とりわけ継続費の関係と後年度負担の関係というものは大変つかみにくいわけであります。予算書を見ましても非常に大枠で出ている部分が多いのじゃなかろうかとわれわれは考えているわけでありまして、たとえば予算要求書その他のいろいろな資料を見ましても、さっきの説明にも出てきましたとおり、正面装備などの購入につきましても単価が出てこないわけですね。単価というものが出てこない。いまも御説明ありましたとおり、五年たって全部トータルで処理し終わったというところでやっと出てくるということでありますから、単価幾らかというのが出てこないわけですね。われわれがいただいている資料でも、大体平均の価格がこれくらいになるのじゃなかろうかということで、平均の価格ということで出てまいります。これに諸要因を含めると、その兵器は大変高いものなんだけれども、一体値段が妥当であるかどうかということは全く見当がつきにくい、こういう問題があります。  F15戦闘機でも、たとえば五十八年度の予算要求は最終的には十三機で決まって、大体一千四百九十三億八千九百万円、これだけのお金がかかる。そして、五十八年度予算にのっかっておりますのはわずかそのうちの三億一千三百万円、五十分の一だけが五十八年度の予算要求の中身でありまして、五十分の四十九というものが全部後年度負担ということになっているわけです。そういたしますと、後年度負担が何年間で払われるにいたしましても、次期金額ということについて一つ一つ追っかけて調べるということはなかなか困難になってまいります。五年たったところで全部トータル終わってお金が出てくる、そこで平均価格だったものが単価としていまのような形でやっとお話をしていただけるということでありますから、そういう意味では非常につかみにくい問題があります。  いまちょっと質問させていただきまして、照らし合わせたいろいろな金額が私の調べたところと全部違っておるものですから、これは改めて、先ほど申し上げましたとおり、もう一遍資料を確認いたしましてお聞かせいただきたい、こういうように思います。  こうした関係で、この国庫債務負担行為と継続費の関係につきましては財政硬直化の一つの大きな理由である、これでは防衛予算だって組みにくいということになってくると思うのですが、ことしの場合でも非常に大きな比率を占めておりまして、今後一体どうなるのだろうということが大変気になります。たとえば、こうした国庫債務負担行為、継続費につきましての全体防衛費に対する割合がこれまで大体どうだったのか、これからについては大体どれくらいを見通しておられるのか、見通し、金額をも含めてもしわかりましたならば、今後の問題を含めて御説明をいただきたいと思います。
  314. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 防衛庁の予算は、御承知のように艦船でございますとか航空機でございますとか、一遍に発注をしてすぐに買えるというものが少ないわけでございまして、その間、契約いたしましてから調達が終わりますまでに四年かかるものもあり五年かかるものもあるということでございますから、必然的に継続費とか国庫債務負担行為とか、そういった制度を使わざるを得ないというのが一つの宿命みたいなことになってございますのでございますから、国庫債務負担行為、継続費が多いからといっておしかりを受けるわけでございますが、それはいま申し上げましたような事柄の性質上やむを得ないものだということを私ども申し上げているわけでございます。  お尋ねの、国庫債務負担行為、継続費がここ数年間どんなような形になっているんだ、こういうことでございますが、五十八年度で申しますれば、継続費、国庫債務負担行為が新規の分が一兆一千六十八億、後年度負担の分が一兆九千七百五十一億ということになっております。それから五十七年度でございますと、新規の分が一兆一千四百十三億、後年度負担分が一兆七千四百七十一億ということでございます。五十七年、五十八年、そのときどきの歳出予算額に対します比率は、それぞれ六七・六%、七一・七%ということでございますから、約七割ぐらい、こういうことになっております。
  315. 山花貞夫

    山花委員 六、七割ということで、今後も恐らくふえていくのじゃないでしょうか。そうなった場合には、さっきの防衛予算一%のその枠を考えますと、予算書はできなくなるのではないでしょうか。この点について経理の面から御説明いただきたいと思います。
  316. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 今後の見込みでございますが、これはどのくらいになるかということは一概に申し上げますのはなかなかむずかしいわけでございまして、毎年毎年の予算のでき次第ということにならざるを得ないと思います。ただ、定性的に申し上げれば、調達までに長期間時間のかかるような経費が多くなってまいりますれば、後年度負担といいますか、国庫債務負担行為または継続費というのは相対的に多くなるということは言えると思うわけでございますが、その割合が一体どのくらいになっていくかということにつきましては、今後の見込みとしては確たることは申し上げられないと思います。
  317. 山花貞夫

    山花委員 一%を含めて今後の問題は確たるものとは言えない。長官以下大体異口同音に、この問題については将来の問題である。われわれとすれば、解散、総選挙が終わったらたちまち出てくるのではなかろうか、こういう気がするわけでありますけれども、この問題は、きょうの質問でもやりとりがありましたとおり、継続費、後年度負担という問題が絡んで、防衛庁の装備その他についての単価その他が大変わかりにくい。その上に後年度負担問題など大きな問題をたくさん残していくということになりますと、いわば一%の枠というのは財政的なコントロールという意味では非常に大きな役割りを果たしているというようにわれわれは思います。総予算の何%とか、そうした安易な枠の変更ということについては絶対に慎むべきである、このことを強調させていただきまして、次の質問に移りたいと思います。  実は、防衛庁関係でいろいろ調べる、お伺いをするということになりますと、われわれが伺ってもプレスセンターで発表した程度のものしかなかなか拝見させていただけない。どうもガードが固いといいますか、秘密ばっかり持っているのじゃないか、こういうような気がしてならないというのがわれわれ日常の仕事を通じての強い印象であります。  実はこの点についてちょっと伺っておきたいと思うのですが、防衛庁の関係で、秘密保全に関する訓令あるいはMSA関係の防衛秘密の保護に関する訓令、いずれも昭和三十七年度に作成されたものでありますけれども、そういう秘密に関する訓令があることについては承知をしております。ただ、この秘密に関する訓令の内客を拝見いたしましてもなお非常にわかりにくいところがあるわけでありまして、幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。  まず、秘密保全に関する訓令に関するところで伺いたいと思うのですけれども内容を拝見いたしますと、一条に大体この訓令による秘密の範囲が書かれておりまして、第五条に、秘密については保全の必要に応じて機密と極秘と秘のいずれかに区分する、こういうことになっております。また、具体的な問題といたしまして、この機密、極秘、秘というのはどういう基準で区別をされておるのか、現在のところ、防衛庁がこの訓令とのかかわりで持っている機密、極秘、恥の件数と点数ということになると思いますが、それを明らかにしていただきたいと思います。
  318. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの秘密保全に関する訓令というのがございまして、秘密の保護を要するものにつきましては、この訓令によりまして保護の措置をとっておるわけでございますが、その際に、先ほど御指摘のありました第五条によりまして、秘密というものを保全の程度に応じて機密、極秘、または秘、この三つのいずれかに区分をするということにいたしておるわけでございます。  機密というのは、「秘密の保全が最高度に必要であって、その漏えいが国の安全又は利益に重大な損害を与えるおそれのあるものをいう。」わけでございます。それから極秘というのは、「機密につぐ程度の秘密の保全が必要であって、その漏えいが国の安全又は利益に損害を与えるおそれのあるものをいう。」ということになっております。それから三番目の秘というのは、「極秘につぐ程度の秘密の保全が必要であって、関係職員以外の者に知らせてはならないものをいう。」ということになっております。  しからばどのぐらいの件数があるかということでございますが、五十七年の十二月末現在で申しますと、機密に該当するものが約二千件、極秘に該当するものが約五千五百件、秘に該当するものが約九万件、合計約九万八千件ということに相なっております。
  319. 山花貞夫

    山花委員 いまの件数で伺って約十万件ということですが、点数ですね、何件何点というかっこうでもたしか防衛庁は整理されておると思いますが、何点ぐらいありますか。
  320. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま手元にありますのは、この約九万八千件という件数の資料でございますので、申し上げる材料はございません。
  321. 山花貞夫

    山花委員 点数にするとその約十倍ぐらいあるのじゃないかというふうに私は伺っているのでありますけれども、また後ほど資料として請求させていただきたいと思います。  もう一つの方の防衛秘密の保護に関する訓令、こちらでは数は現在大体どのくらいあるのでしょうか、この点について伺いたいと思います。
  322. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のいわゆる防衛秘密の方でございますが、これは極秘に該当するものが約百九十件、それから秘に該当するものが約四千六百件、合計いたしまして約四千八百件ということになっております。
  323. 山花貞夫

    山花委員 いまそれぞれの訓令についての実数を伺ったわけでありますけれども、たとえばこの機密、極秘、秘にかかわるもの、抽象的な御説明はこの訓令自体にもありますし、いま局長からもお話しいただいたとおりだと思うのですが、具体的にどんなものがどういうふうにランクづけされるのかということはなかなかわかりにくいわけでありまして、具体的にどういうものが機密になり、どういうものが極秘になるのか、そのこと自体秘密であるということになれば話になりませんけれども、具体的にもうちょっと、色分けといいますかランクづけといいますか、どうなっているかということが一つと、たとえばいま御説明がありましたものは、機密も極秘も秘のものも、それに該当するとすればわれわれが国会質問その他でこれをぜひ教えてくださいと言ってもやはり教えてもらうことができないのか、どこで線が引かれているのか、この点をちょっと伺いたいと思います。
  324. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  いまの機密、極秘、恥の区分の基準、それは何であるかと言われましても、先ほど申し上げましたようなことでございまして、結局重要度に応じまして分類をして保全措置を講じておるということが基本でございまして、具体的にこれこれがこういう指定を受けているということ自体がこれまた非常に微妙な問題でございますので、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思っておるわけでございます。  それから第二点につきましては、防衛庁といたしましては、従来から国会における審議に際しましてはできる限り誠意を持って御説明をしてきておるわけでございまして、必要に応じて各種の資料も提出をいたしておるわけでございますし、今後ともそういうことで対処させていただきたいというふうに思ってはおります。しかしながら、防衛上の問題と申しますのは、国家の安全というものに深いかかわりのある事柄でございますので、そういう点はひとつ十分御理解を賜りたいと存じておる次第でございます。
  325. 山花貞夫

    山花委員 大体そういうお答えになるのではないかと思っておったわけですが、具体的に機密、極秘、秘とありまして、国政段階でのいろいろな議論に使用するとしても、秘のものが約九万ぐらいある。秘という部分に当たればこれはやはりいろいろな理由から教えていただけない、こういう取り扱いになるのでしょうか。
  326. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 秘密保全の措置を講じております対象の物件と申しますのは、要するに公にすることが適当でない、つまり秘匿を要するということが基本的な性格になっておるものでございますので、そういった性格につきまして御理解を賜りたいというふうに私どもは思っておる次第でございます。
  327. 山花貞夫

    山花委員 せっかくお伺いしても結局よくわからないというのが結論になるわけでして、実はそうした問題は、いま申し上げました秘密に関する訓令に基づいて、われわれがいろいろ調べようと思ってもなかなか厚い壁があるということは、国会内の問題として提起させていただきたいと思います。いまお話の中にありましたとおり、国会審議についてはできるだけ協力してきているつもりである、こういうことにつきましては、ぜひ今後もよろしくそういう立場で、その立場を強調してお願いしておきたいと思います。  ただ一つだけ私は伺っておきたいと思うことがあるわけですが、実は過日、十月四日−十月十六日行われます北海道での日米共同実行訓練につきまして、新聞社の取材をしたいという希望を出しました。新聞社というのは社会新報というわが党の新聞でありますけれども、新聞の記者がぜひ見学をしたい、こういうことで取材の申し入れを行ったわけです。九月三十日に編集長の取材申請書を、取材予定者を書きまして陸幕の広報室の方に届けました。答えは検討するという答えだったわけなのですが、十月五日になりましてから、大体検討したのだけれどもちょっと無理である、こういう内意がもたらされまして、そのうち取材拒否、われわれはそう言っているわけですが、その理由といたしまして、政党の機関紙は遠慮してもらっている、こういうかっこうで政党の機関紙だからだめであるということになりまして、最終的に取材に行くことができなかった。  ちょっと先ほどの問題とは違うかもしれませんけれども、こうした自衛隊関係の広報の問題については、さっきの防衛白書をカラーにしてわかりやすくしたというところにもあらわれておったり、あるいはさまざまな地域における広報活動、われわれが宣撫活動と言っている部分もありますけれども、たくさんあるわけです。そうした中で、自分たちの立場で広報したいものだけは自由にしておって、こっちから見せてくれというものにつきましては、一般のマスコミの記者の皆さんはいいのだけれども、政党の機関紙の記者はだめなのだ、何か書かれてはいかぬじゃないか、こういう心配をするのはわかりますけれども、これはちょっと門戸を狭くし過ぎているのじゃなかろうか。政党の記者でも、あるべきところを見せてお互い批判する立場からも批判をする、そこから勉強することもあるかもしれません。ちょっとこれは予定外の質問でありますけれども、基本的な広報に対する姿勢の問題です。こうした演習について、記者のマークをつけて記者団の一員として行動をともにするという、いわば慎み深い姿勢で取材申請をした場合には、やはりこれは認めていただく必要があるのじゃなかろうかと思いますけれども、この点いかがでしょうか。これはどなたになるかわかりませんけれども……。
  328. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  共同演習等の取材に関しましては、御承知のように各省庁にはそれぞれ記者クラブがございまして、この記者クラブの幹事を通じまして公共の報道機関に対しましては、広報活動の一環として十分お打ち合わせをした上で取材の機会をお与えをしておるというのが現在の広報の姿勢でございます。  ただいまお尋ねの社会新報の問題、突然のお尋ねでございますが、仮にそういう各種の諸団体の機関紙、これはいろいろございます、社会新報だけではございませんで、たとえば自民党の機関紙もございますし、その他の政党もございますし、いろいろな関連の業界紙、こういうようなものもございます。こういうものに対しましては、私ども考え方といたしまして、防衛庁の記者クラブを中心に、それを優先して取材の機会を与える、こういう考え方でやっておりまして、社会新報だけをお断りしたということではございません。この点、たとえば現地におけるいろいろな便宜供与、輸送の問題であるとか給食の問題であるとかいろいろな問題もございますので、その点については決して社会新報だけをお断りをしたということではございませんので、御理解を賜りたいと存じます。
  329. 山花貞夫

    山花委員 いまのお話、半分くらいはわかるわけですけれども、私が問題としましたのは、政党の新聞だからだめなのだということになりますと未来永劫そうした機会はなくなるのではないか、こういう気がいたします。一定の慣行とかルールとか実績とか、クラブの関係の皆さんの関係、これもよくわかるわけですけれども、そういうきちんとした手続を踏んだりあるいはそうしたクラブの皆さんの同意を得られたり、そういういろんな手続問題について円満に事が進んだならば、これは政党の機関紙の場合にも、場合によったら見せていただくことがあってもよろしいのじゃないだろうか。  いま、そういうことで概念を広げれば業界紙もあるということですが、それは確かにたくさんあるわけでありますけれども、単なる名前もない業界紙と違って、政党の新聞ということになればそれなりの看板を出しているわけでして、読者もそれなりにおります。あるいは日常の活動につきましては一般の記者の皆さんとかなり共同の活動もしておるし、一般の取材についてはそういう問題になってないわけですから、さっき申し上げましたように、いまの御説明で半分くらいはわかるわけですけれども、政党の機関紙の場合には、日米合同演習、共同演習等については見せることができない、こういうことでは大変困ると思うわけでありまして、そういうことではない、こういうようにぜひ考えていただきたいと思うのです。くどいようですが、その点いかがでしょうか。
  330. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  基本的には先ほど申し上げましたような線でやらせていただきたいと思いますが、せっかくのお申し出でございますので、防衛庁記者クラブの意向も打診せねばいけませんし、現地のいろいろな便宜供与上の諸事情等も勘案をいたしまして、絶対に拒否ということではないわけでございますが、現時点におきましては社会新報だけを差別をしてお断りをしたのではないということを改めて申し上げまして、御理解を賜りたいと存じます。検討をいたしてみます。
  331. 山花貞夫

    山花委員 本来のクラブの皆さんに御迷惑をかけるということがあってはいけないと思いますけれども、そういう手続面についてある程度円満に事が進んだ場合には、政党の機関紙だからだめだということにはならないように、場合によればいろいろ検討していただいて便宜を図っていただくこともあってよろしいのではないかというように思いますので、これはいろいろ議論するということとはちょっと違う問題だと思いますけれども、ぜひ要請をさせていただきたい、こういうように思います。  次に、大臣いらっしゃらなくなりましたけれども、また白書の関係に戻りまして、白書の中で、軍備管理、軍縮交渉などについて触れられた部分があるわけですが、実は国連軍縮特別総会、二回開かれました。かつて園田外務大臣が出席をし、前回は鈴木総理が出席をいたしました。そうした中で、私はきわめて高いレベルのと申し上げてよろしいと思うのですけれども日本の平和に対する考え方を国連で高らかにうたいとげて、各国の大変大きな評価を得たというように私は承知をしているつもりであります。  そうした中で、この軍備管理、軍縮関係に触れる部分ということで考えますと、いずれの演説等を検討いたしましても、単にいわば国の側、行政の側からのこうした仕事ということだけではなくて、いわゆる核の問題で言うならば、広範に広がった反核の国民運動、そういうものの支えの中で核の軍縮についても進めていくべきではないか、こういう問題提起があるわけであります。国の方向といたしましては、国民の間にほうはいと起こっている核反対という声を踏まえて国際的にアピールしていく、こういう姿勢がこれまであったと思います。念のため、国連軍縮総会における日本代表の発言なども検討いたしました。そうなっておりました。  実は防衛白書にはそういう観点が全く抜けているわけですね。五六中業に沿って進めていく、こういうことだけは、そこだけは進めておって、国内のそうした——いま私は九条の問題どうこう、非武装の問題どうこうということを議論するわけではありませんけれども国民の中に起こっている国連軍縮総会のときに象徴されたようなほうはいとした反核の動き、そういうものについての分析等、こういうものは防衛白書の中では全く対象にならないのでしょうか。国の政策の中では織り込まれるのだけれども、自衛隊関係の白書では全く無視されておるということはいかがなものかという気がするわけです。この点はどうでしょうか。
  332. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  申しわけございませんが、担当政府委員がちょっとおりませんので、その問題については、白書の編集をいたしました私からとりあえずお答えを申し上げたいと思います。  軍縮の問題につきましては、今回、INF関連におきまして、従来の観念的、理想的な軍縮論より一歩進みまして、いわゆるアームズコントロール、軍備管理という問題について、余り長い文章ではございませんが触れたつもりでございます。  その内容等につきましては、御承知のように、INF問題は所管官庁が外務省でございまして、これを防衛庁が正面で取り扱うということがいかがかという防衛白書の性格の問題もございまして余り行数は割いておりませんが、今回そのことについても言及をいたした、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  333. 山花貞夫

    山花委員 いま御指摘のあったことについてはその部分として理解はできますけれども、要するに防衛白書というかっこうで防衛庁の考え方だけを一方的に押しつける。たとえばさっきの資料の問題でもそうですけれども、防衛庁としてはこれは客観的な数字なんだということで出典も書かないで、これが間違いないと言って、押しつけると言ったら言葉が過ぎるかもしれませんけれども、そのことを国民に対して読ませようとする。いまの問題でもそうでして、反核の問題、核の問題、核の管理の問題、一つの側面ではありますけれども、ヨーロッパを含めて大衆の中に起こってきた反核の運動というものをどのようにとらえるかということは、今後の核の管理の問題を含めて大変大事なんじゃなかろうか。そういう問題についてもやはり含めて議論をしていかなければ、国民の納得を得るといってもなかなかそういうことにはならないんじゃなかろうか。政府の国際舞台における発言の中には必ずこうした問題が含まれているわけでありますから、やはりこうした問題についても白書の中でも検討すべきではないか。これは一つの問題提起、われわれの主張でありますけれども、ひとつ申し上げておきたいと思います。  時間の関係がありますので、個別の問題について若干伺っておきたいと思うのですけれども、一つは、さっき稲城の多摩弾薬庫について伺いましたけれども、ちょっとその北の方に上がりますと、かつての関東村、調布の飛行場があります。調布の飛行場、米軍の跡地の利用の問題といたしまして、都有地と非常に絡んでおるものですから、大変長い間、処理が今日までおくれております。実は、つい昨日もこの跡地問題につきまして、都庁に行きましていろいろ相談をしてきた経過もございます。いま都の方がいろいろ立案をして、地元のための施設を含めて検討していただいている、こういう現状もあります。青果市場を持ってこいとか、あるいは魚商の市場を持ってこいとか、中央市場を持ってこいとか、こういう要求がたくさん出ているわけでありまして、今後の問題としてそういう問題については処理をしていきたいと思っているわけですが、跡地との関連で、運輸省いらっしゃっていますでしょうか。いらっしゃいますね。  運輸省の方で調布飛行場の移転の問題について大分仕事が進んでいらっしゃるというように伺うものですから、これは差しさわりのある部分については省略していただいても結構ですけれども、現状につきましてちょっと御説明をいただきたい、こういうふうに思います。
  334. 松村義弘

    ○松村説明員 先生指摘の調布の飛行場の代替飛行場の選定でございますが、五十五年、五十六年、五十七年と調査を進めてまいりました。五十七年までに調査したところで、現在十六カ所の候補地が抽出されております。五十八年度になりまして、その十六カ所の候補地一つ一つにつきまして係員を派遣して、現地調査を現在進めておるところでございます。
  335. 山花貞夫

    山花委員 いま結論だけお伺いしたわけですが、過日六月二十一日段階で「代替飛行場の調査の概要」ということについていただいておりますので、経過は省略いたしたいと思いますけれども、いま十六カ所について係員を派遣して現地を当たっている、こういうお話でしたけれども、大体そういう仕事というのはどれくらい時間がかかるものなんでしょうか。それと今後の作業日程といいますか、これはもちろん一年二年でどうこうということにはならないと思いますけれども、できれば概括的に御説明をいただきたいと思います。
  336. 松村義弘

    ○松村説明員 われわれの計画といたしましては、現地調査を五十八年度中に全部終了したいと思っております。それから先、五十九年度に入りましたら、十六カ所の中からさらに可能性の高いところを選びまして、それ以上の調査を進める必要がございます。その段階に至りますと、関係の地方公共団体の方々の御協力が必要かと思います。したがいまして、五十九年度のしかるべき時期に関係の地方公共団体の方と御相談いたしまして、さらにそれ以上の調査を進める必要がございます。一般的に、空港を設置する場合には三年間の気象条件その他の調査をいたします。したがいまして、地方公共団体との御相談がうまくまとまりまして、より候補地がしぼられた段階で、気象調査その他が実施されると思います。
  337. 山花貞夫

    山花委員 そういう調査等全体の将来の見通しですけれども、何年がかりぐらいになるのか、この点だけひとつ伺っておきたいと思います。
  338. 松村義弘

    ○松村説明員 具体的に年数を申し上げられればよろしいのでございますけれども、候補地の選定におき良しでわれわれが痛感いたしましたのは、関東地方に新たな空港の用地を求めようとする場合には、空域が非常に錯綜しております。関東地方には大空港、小空港、さまざまの空港ございますので、空域の調整が非常にむずかしゅうございます。また東京の近郊に広く市街化が進んでおりますので、用地の確保が非常にむずかしゅうございます。そういったことを考えますと、地方公共団体の方々とのお話し合いもなかなかまとまらないんではないかとわれわれは危惧しております。そういった話し合いにつきまして、ある一定の年数をお示ししますとまた関係の方々を拘束するようなことに相なっても申しわけございませんので、ひとつ年数については申し上げるのを差し控えさせていただきます。  ただ、運輸省といたしましては誠心誠意、大至急候補地を選びまして、さらに一段と進んだ調査を進めたいと思っております。
  339. 山花貞夫

    山花委員 いま、最後におっしゃっていただきましたへ大至急、誠心誠意というところに大きな期待をかけまして、今後ともいろいろ状況について御説明をしていただきたいということを希望して、次の問題に移りたいと思います。  国土庁、いらっしゃっておりますから、お願いします。  立川基地の跡地の問題ですけれども、全体どうなっているのか。十月二十六日公園の開園の問題もあるようですけれども、特に立川広域防災基地につきましていろんな配置の計画などができ上がっておる、全体の絵図面ができ上がっておるというふうに伺っているわけですけれども、どういう内容になっておるのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  340. 立石真

    ○立石説明員 立川基地跡地の全体のことにつきまして私から御説明申し上げます。  立川基地の跡地利用につきましては、昭和五十四年十一月十九日に国有財産中央審議会から、大規模公園と広域防災基地を二本の柱としながら周囲に業務地等の用地を配することを骨子とする処理の大綱の答申がなされました。それで、跡地利用の基本方針が確定したわけでございます。  この答申を受けまして、大規模公園につきましては建設省が国営昭和記念公園建設事業を実施してまいりまして、いま先生指摘のように、近く一部開園の予定でございます。  また、広域防災基地につきましては、国の災害対策実施本部あるいは警察、消防等の防災関係機関の施設等の配置について昨年国土庁案を作成し、関係省庁と調整中であります。この点につきましては後ほど担当課長からさらに詳しく御説明いたします。  また、業務地につきましては、周辺市街地と一体的に整備する方向で、現在関係機関において検討中でございます。
  341. 清水一郎

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  立川防災基地の計画につきましては、とりあえず国土庁の案といたしまして地元等にお示ししたものでございますが、その内容は、全体約百十五ヘクタールでございますけれども、そのうちの約八十五ヘクタールが自衛隊の飛行基地となっておりまして、消防防災関係施設等は残りの三十ヘクタールになっておるわけでございます。  その内容を具体的に申し上げますと、まず災害対策の実施本部施設でございますが、これは災害の応急対策等の活動の総合調整を行う本部の予備施設でございます。  それから警察防災関係施設がございまして、これは救援活動の拠点になります施設あるいはヘリコプター関係施設等々でございます。  さらに消防防災関係施設もございまして、これも災害救急情報の収集等の中枢となる施設あるいはヘリコプター関係施設等々が内容でございます。  それから海難救助関係施設でございまして、災害時における航空機等の中継基地になる部分がございます。  そのほか、救急医療等の担当をいたします医療施設、それから備蓄食糧等を保管いたします食糧倉庫、それから多摩地区の防災救援拠点となるための地域防災関係施設、こういったものが内容になってございます。  以上でございます。
  342. 山花貞夫

    山花委員 いまいろいろな予定されている施設配置全般について御説明いただきましたけれども、関連して、去る三月ごろ、ちょっと古くなりますけれども、新聞幾つかに、この立川基地の広域防災基地建設と並行的に、基地内に災害対策本部の中枢となる第二首相官邸を設置する構想を固めた、こういう記事が報道されました。第二首相官邸となるのかどうかということについては若干議論された経過もありますけれども、仮にそうでなかったとしても、災害対策本部というものがここにできることになるのじゃなかろうか、そういう気もするわけでして、この第二首相官邸構想、その事実の有無はさておいて、そういった構想というものが立川基地の中に考えられているかどうかということについて若干御説明をいただきたいと思います。
  343. 清水一郎

    ○清水説明員 いま先生指摘のような報道がなされたことは私ども十分存じておるわけでございますが、立川の災害対策実施本部の施設でございますけれども、これは南関東地方に広域的な大災害が発生した場合の応急対策を円滑に実施するための災害対策本部の予備施設として設けようとしているものでございますので、いまお話のありましたような第二総理官邸というふうな性格のものではございません。
  344. 山花貞夫

    山花委員 当時の各紙を拝見いたしますと、きわめて具体的に政府筋から出た話として紹介されておりまして、総理を本部長とする災害対策本部が国土庁に設置されるということを前提として、いざ官邸倒壊、その他中央部における諸機能が麻痺した場合には、災害対策本部、立川の中に総理が乗り込んで総指揮をとるというようなことが書かれております。  これは、第二首相官邸といいますと大げさになってまいりますし、またいろいろな議論も出てくるということになると思いますけれども、立川の災害対策本部諸施設の体制を見ると、単に南関東ということだけではなく、もっと広い意味での機能を持つことになるのじゃないだろうか、こういう気がするわけであります。これは、国土庁のお考え方はそうなんだけれども、どこか政府筋からということになりますとこういう案がどこかから出たのじゃなかろうか、こういう気もするわけなんですが、その点はお確かめになっているのかどうか。そして、第二首相官邸という構想でないといたしましても、災害対策本部というような形でさらに将来この中身に拡充ということがあるのかどうか、こういう点を伺っておきたいと思います。
  345. 清水一郎

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  新聞に出ております政府筋なるものがどういった点を指しておるのかは不明でございますけれども、この点につきましては、総理大臣自身及び国土庁長官からもそういった性格のものではないという答弁がすでになされたところでございまして、第二総理官邸といったような性格のものではないと私ども考えておるわけでございます。  さらに、いまの本部に総理大臣が入られるということでございますが、南関東に大規模な震災が発生したという場合には、緊急災害対策本部というものが設けられまして、霞が関等の施設が使えないというふうな事態になりますと、これが立川に移って応急対策をするということになるわけでございます。それで、この災害対策本部の構成につきましては、法律によりまして本部長内閣総理大臣、副本部長内閣総理大臣が指名する国務大臣、それから本部員は関係省庁の担当局長等、要するに関係行政機関の職員、こういうことになっておるわけでございます。
  346. 山花貞夫

    山花委員 いまお話を伺いますと、第二首相官邸というような大げさなといいますか、そういうものではないけれども、性格を異にするけれども、災害対策本部ということからするならば、中心的機能が立川に移ることがあるかもしれぬ、こういうお話でありまして、その意味ではあり得ることではないかという気がするわけであります。     〔愛野委員長代理退席、堀之内委員長代理着席〕 実はそういう役割りを立川基地が持っていくということになりますと、これは防衛庁の見解を伺っておきたいと思うのですが、かつて自衛隊の災害派遣計画ということで、大地震、火災等が発生した場合には自衛隊の災害派遣の計画はこうなっているということを発表された時期がありました。その後どう変わっているかということについても私はつまびらかでありませんけれども、いまお話がありましたような立川基地の災害対策本部という性格を持ち得る南関東大震災の基地が本格的にできていくということになりますと、そこでの計画の中身がこの立川の関係で固まってきているんじゃないか、実はこういう気がするわけでありまして、まず防衛庁の方で、災害派遣というようなことから立川の新しい基地について何らかの位置づけをしているということはないのかどうかということについてお伺いしておきたいと思います。  実はこの問題、かつて議論された経過の中で、特に大災害が起こった場合には自衛隊をどう派遣するかということが大変細かくその中に出ておったわけでありますけれども、かつて国会で議論したときには、その中にある「VIPの緊急輸送」という項につきまして、中身が大変未確定の状態にありました。VIPを緊急輸送する、たとえば「宮家、総理大臣初め政府要員等を要請によって所定の個所にヘリコプター十台から十四台」を使って移動させるのだ、こういうことが緊急の場合の自衛隊の仕事として位置づけられておったわけでありますが、一体どこにお連れするんだということについては、これはまだ検討の枠の外である、大変具体性がなかったわけでありますけれども、いまその立川基地跡地につきまして公園が開設され、大変広い公園でありますが、同時に南関東大震災に備えての災害対策の諸施設がそこにでき上がりつつあるということになりますと、こうした自衛隊の災害時における活動の中で立川基地というものが位置づけられてきているんじゃなかろうか、こういうように思うわけですけれども、この点はどうなのかということを防衛庁に伺っておきたいと思います。
  347. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 防衛庁といたしましては、広域防災基地の一環としまして陸上自衛隊の立川基地の整備を進めてきたことは御承知のとおりでございます。  一方、先ほど先生から御指摘のございました「大震火災が発生した場合の自衛隊の災害派遣計画についで」という計画文書なるものは、実は四十六年三月に防衛庁で作成をされた経緯があるわけでございますが、すでにもう十年以上も経過をいたしております関係上、内容といたしましても現状にそぐわない点もあるようでございまして、かねてから修正の検討を進めているところでございます。  いま御指摘のございました政府要人等の緊急輸送の問題につきましては、政府全体といたしまして今後さらに協議、検討を進めるべき問題であろうかと思っておりまして、現在、防衛庁といたしまして特に決まった細かい具体的な計画がある、あるいはそういう構想があるというような状況ではございません。この四十六年の時点の考え方といたしましても、その御要請がありましたならば、災害対策に従事いたします要人等を災害対策本部など所要の個所に輸送するために航空機の提供が必要になるであろうということを考慮いたしまして、その事柄を計画に盛り込んだということでございまして、対策本部等の具体的な場所がどこであるかというところまで想定をしていたわけではないというふうに理解をいたしております。
  348. 山花貞夫

    山花委員 いまお話しありましたとおり、四十六年三月、十年以上前にできた古いもの、したがって改めてこの問題については検討を進めなければならないだろうというお話はよくわかるわけでして、過去における議論にも、そういうことについて伺った機会がありました。大地震対策特別措置法ができる前の議論としてこの問題は議論されたわけですが、以降、自衛隊の災害派遣という形でこうしたいわば体系的な計画というものができているのかできていないのか、あるいは作業を進めるとなるとどこで進めることになるのか、どのくらい進んでいるのか。最近の地震に対する国民の関心からするならば、そういった場合に自衛隊がどんな計画を持っているのかということは大変関心のあるところでありまして、現実にこの計画というのはつくっているのでしょうか、あるいは作業中なのでしょうか。この辺はどうでしょうか。
  349. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私ども承知いたしております限りでは、国土庁の方におきまして南関東地域地震被害想定調査というものを実施されていると聞いておるわけでございまして、その調査の結果に基づきましてそういった国土庁としての新しいプランのようなものが出てくるのではないかというふうに存じておるわけでございます。そういうものを踏まえまして、防衛庁としても新たにそういった対策の具体案を見直していこうということはかねがね思っておるわけでございますが、私どもとしてはそういった国土庁の方の作業の状況を見守っておるということでございます。
  350. 山花貞夫

    山花委員 いま国土庁の方でそういった計画について作業がどの程度進んでいるのか、もしできましたらその辺倒説明いただきたいと思います。
  351. 清水一郎

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  いま防衛庁の方からお話のございました被害想定調査でございますが、これは、被害がどの程度生ずるかという人的、施設的な被害の想定を調査いたしておるわけでございます。この調査につきましては、今年度中にその調査を完了すべく目下作業中でございます。さらに来年度以降におきましては、この調査を踏まえまして、応急対策をいかにやったらよろしいか、こういうふうな調査に入りたい、このように考えておる次第でございます。
  352. 山花貞夫

    山花委員 立川基地を中心として災害対策の中心と位置づけられている立川が、一体どのように変貌していくか、どういう役割りを担うかということについては、地元でも大変関心の強いところでありますので、今後またいろいろ作業が進みましたならば教えていただくよう要請をしておきたいと思います。  以上で私の質問を終わらせていただきます。
  353. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 山花貞夫君の質問はこれで終わります。  次に和田一仁君。
  354. 和田一仁

    和田(一)委員 防衛二法に関係いたしまして、主として防衛庁にお尋ねしたいと思います。  まず、現在の自衛隊の陸、海、空それぞれの充足率について、ひとつお知らせをいただきたいと思います。
  355. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 陸上自衛隊の充足率は八六・三三%でございます。それから、海上自衛隊及び航空自衛隊の充足率はいずれも九六%となっております。
  356. 和田一仁

    和田(一)委員 陸上自衛隊の場合は、五十八年三月よりは充足率が下がったわけですか。私の手元にあります白書の資料の中には八六・六%という数字になっていますが、これは間違いでしょうか。
  357. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 いま確かめておりますが、恐らく年間のある月の末の充足率ではないかと思います。私が申し上げましたのは、年間を通じて平均をいたしますと、陸上自衛隊の場合は八六・三三%になるように執行をしておるわけでございます。
  358. 和田一仁

    和田(一)委員 海、空と比べてやはり充足率が下がっているようですね、悪いようですね。平均から見でも陸の場合は充足率が大変低いように思いますけれども、地域によって充足率が違うのかどうか、あるいは、陸の場合には甲師団、乙師団とあるようですが、そういった師団の類別の違いによっても充足率は違うのかどうか、この辺はいかがでしょう。
  359. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 陸上自衛隊の場合は甲、乙の師団の別がございますし、それからまた、地域別に配置をされていることは御指摘のとおりでございますが、各師団ごとの充足率ということにつきましては、方面別の地域の特性とか人事補充上の可能性、あるいは装備の近代化のテンポなどを勘案いたしまして、特に北海道の師団の第一線部隊につきまして、その精強性、それから即応性の向上を図ることにしておるわけでございます。そういうことでございまして、五十九年度の概算要求におきましても、北部方面隊につきまして、第二師団や第五師団の充足率の向上を計画をしております。  それから、いわゆる甲、乙師団につきましては、そう任務におきまして異なるところはございません。定数としては九千人あるいは七千人でございますけれども、任務に異なるところはございませんから、甲、乙別で充足率を異にするという考え方はとっておりません。
  360. 和田一仁

    和田(一)委員 地域によって若干違うということになりますと、高い地域があるならば、平均より低い地域があると思うのです。一番低いような地域は、そういった充足率の低いところで部隊編成なんというものは一体どういうふうにやっておられるのか。私は、海、空と比べて陸というのはやはり人が非常に大事な部隊ではないかと思うのですが、その一番大事な人の部隊において充足率が低い、それも地域によってはバランスが違うということになると、北海道のようにいいところ、高いところがあれば、平均より低いところもあるのではないか。当然そうなりますね。そういう低いところでの部隊編成はどういうふうになるのですか。
  361. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように北海道にかなり厚く配置をしているわけでございますが、その状況を申し上げますと、北海道の場合第七師団、これは機械化師団でございますが、九二%、それから第二師団が八四%、第五師団は七五%、第一一師団は七一%と、やや低くなっております。本土の師団は、いずれも七一%ということになっておるわけでございます。  そういう状況でございまして、充足率が低いという状況に対応いたしまして、部隊の運用をどうやっていくかという点は非常に大きな問題でございます。私どもも、できる限り訓練の練度を維持するという観点からいろいろ工夫はいたしておりますが、やはり、部隊の中の一部の分隊を欠にするとかいうふうなことをやって、最小限の訓練体制の維持を図っているという状況でございます。
  362. 和田一仁

    和田(一)委員 フルに編成されていなければならない部隊の中で七割ぐらいの部隊編成、私、これを見てみますと、幹部、准尉、曹、士、そういう階級別の充足率で、陸の場合には士が一番悪い。七〇%を割ってしまっている数字ですが、上の方は大変充足率が高くて、これは指揮官ばっかりの部隊になっているのではないか、こんな感じがするのです。実際に、たとえば全体で七割ぐらいの部隊で指揮官だけは充足率がいいということになれば、士の方は大変低いのじゃないかと思うのです。そういう部隊編成の中で演習をやってどういう効果が上がるか、私は大変疑問に思うのですけれども、そういう点ほどういうふうにして克服しておられるか、ちょっとお知らせいただきたいと思うのです。
  363. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 確かに、定数いっぱいに人員が配置をされておりますとそれはそれなりの充実した訓練ができますし、そもそもそれだけの人数があれば防衛力としても非常に向上できるということは事実でございます。  したがいまして、私どもが現在やっております措置は、有事即応のためにどうしても不可欠だということは踏まえながらも、日常の訓練に支障のない限度で、ぎりぎり八六%程度の充足率で維持をしてきているということでございます。したがって、実際の運営といたしましてはやはりいろいろな工夫が必要でございまして、その点は、第一線指揮官、上級部隊の指揮官、いずれも大変苦労をしながら、訓練の練度を少しでも維持し向上させたいという努力を積み重ねておるということで御理解を賜りたいと思います。
  364. 和田一仁

    和田(一)委員 白書の中にも、陸上自衛隊のところに「特に陸上防衛力における「人」は重要な意味を持っており、一人一人が防衛力としての役割を果たさなければならない。」と、人が中心であるということを強くうたっておるわけでございます。これは「一人一人が防衛力として」という表現から言えば、大変まだ防衛力が充足されてない、私はそういうふうに思うわけですけれども、五十九年の予算の概算要求は、こういった人件費の面について、定員増についてどういう要求をされておりますでしょうか。
  365. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五十九年度の概算要求におきましては、現在の平均充足率八六・三三%を八六・七五%に引き上げるように要求を出しておるわけでございます。  その考え方は、一つは、北海道の第五師団の特科連隊及び戦車大隊の充足率は一〇〇%にしたいということでございます。これは、第二師団につきましてはすでに五十七年度に同様の引き上げがなされております。それと同じようなことをやりたい。もう一つは、第二師団と第五師団を通じまして、普通科連隊の一部につきまして充足率を八〇%まで引き上げたい、そういう計画をしておるわけでございまして、そのための人員の増加数としては七百数十名を考えておるわけでございます。
  366. 和田一仁

    和田(一)委員 八六・三三から八六・七五に上げる、〇・四二%ですね、人数として大体七百人を超える、こういうことでしたが、私は、警察とか消防とか、こういうところの人員のふえ方というものはいま非常に大きいと思うのです。行政改革が厳しく言われている中でも、地方における警察官とか消防の人員というものは必要なものであるという認識で市民、国民は受けとめておる、こういうふうに理解しております。そういう意味合いにおいては、こういう大事な部門における充足率というものについても国民理解は十分得られるもの、こう私は思っておりますので、先ほど来申しておりますような観点から、この充足率を上げるということについてもう少し積極的にやっていただいてもいいのではないか、こういうふうに考えております。  そういう兵器だとか人を充実させるということは、防衛力を整備していくという基本的な、大変大事な事項ではあると思いますけれども、それだけやっていればいいというものでもないと私は思うのです。長官、防衛力を整備していくということと並行して、この整備された防衛力が、何かのときに、有事の際に本当に活用されるような状態に絶えず置いておかなければいけない、これはもう当然のことだと思うのです。  そこで、この春の国会のわが党の代表質問の中で、塚本書記長の質問で、防衛力の整備に関して有事立法の整備が行われているかという質問がございました。この有事法制の問題につきまして、長官、私はまずこの法制化についていまの状態はどんな状態が、ひとつ御認識のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  367. 谷川和穗

    谷川国務大臣 たしか、前国会の予算委員会におきます塚本委員の御指摘は、いまは幸いにしてわが国は平和決裂の状態に陥っていないが、しかしそういうときにこそ有事に備えて検討をし、必要のある手続をとっておくべきではないかという御指摘であったかと存じております。私も実はそのとおりに感じておりますが、防衛庁が所管をいたします関係の法律はともかくとして、他省庁との関連のあります第二分類の分野の法律ということになりますと、何せ関係する省庁の数、それから関係する法律の数が非常に多いものでございますから、いま鋭意努力し、関係省庁と協議を重ねておる段階でございます。  もちろん、この検討がある段階に達した時点におきましては、国会を通じまして国民の皆様方にもそれを報告いたしまして、われわれとしてどう判断をしていくかということにつきましても申し上げなければならない、こう考えておりますが、ただいま申し上げましたように、目下各省庁との関連について鋭意検討を続けておるという段階でございます。
  368. 和田一仁

    和田(一)委員 確かにいますぐ必要でないものかもしれません。しかし、いっ必要になるか、いつまでは大丈夫だという保証はどこにもないと思います。したがって、これはこういう検討を行える時期に可及的に急いで研究、検討して法制化をしていくということは、防衛力整備につながる一番大事な、基本的な問題ではないか、私はこう思うわけなんです。  いま、第一分類の分はやっておられるようなお話でございましたが、第二分類あるいは第三分類ということになりますと一体どうなっておりますのか。五十三年九月に防衛庁としての取り組みが始まりまして、そして五十六年四月、国会への中間報告がされました。では、それ以後ほどのような状態かをお知らせいただきたいと思います。
  369. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  ただいま五十六年の中間報告以後、特に第二分類の具体的検討状況はどうなっておるかというお尋ねでございますが、第二分類と称せられております関係法令は非常に多数に上っておりまして、関係する省庁も十指に余るという状況でございます。自衛隊の行動の態様に応じまして他省庁関連の法令を八つの項目に分けて、現在、各省庁と調整を図っておるところでございます。  八つの項目とは、まず第一に部隊の移動、輸送に関連する法令、第二に土地の使用に関連する法令、第三に構築物建造に関連する法令、第四に電波通信に関連する法令、第五に火薬類の輸送、貯蔵に関連する法令、第六に衛生医療に関連する法令、第七に戦死者の取り扱いに関連する法令、第八に経理会計に関連する法令。  たとえば、第一の項目につきましては、部隊の移動と道路交通法上の問題、あるいは第二の問題点につきましては、土地の使用につきまして森林法であるとか海岸法、河川法等の諸規定との中でそれぞれの管理者、これは都道府県知事等が管理者になっておりますが、この管理者との協議手続の迅速化の措置、あるいはこれらの関係法令に非常事態に関する規定がございますが、この非常事態とは、いわゆる防衛出動のような有事、防衛庁にとっての有事が解釈上含まれるのかという解釈の問題、有権解釈あるいは例外規定、除外規定があるかどうか、こういうような問題等につきまして五十七年度の四月ごろから検討協議に入りまして、五十七年度の夏、各関係省庁、建設省、農水省、運輸省等約十の省庁に対しまして有権解釈をいただくよう御依頼をしておるところでございます。現在までのところ約一年有余たちましたが、関係省庁に検討を依頼いたしました約七十項目のうち約三〇%程度については何らかの回答に接しておりますが、それぞれの省庁において慎重御検討をいただいておるという関係で、まだ回答に接していない部分がかなりあるという現状でございます。  第三分類はどうなっておるかということでございますが、第二分類に引き続きまして第三分類も、たとえば有事に際しての住民の避難誘導等の措置、あるいは人道に関する国際条約いわゆるジュネーブ条約の国内法制化の問題、具体的に申し上げますと、戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関するジュネーブ条約、あるいは海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の状態の改善に関する条約、捕虜の待遇に関するジュネーブ条約、戦時における文民の保護に関するジュネーブ条約等が第三分類としてあるわけでございます。これにつきましては、現時点防衛庁の所掌事務でございませんが、どこの省庁が所管をするのかということについていまだ明確でないというような問題点がございまして、まだ十分な検討が行われておらないということでございます。  なお、各省庁にかかわる第二分類の項目につきまして、過去に国会答弁におきまして約百の項目があるという御答弁を申し上げたことがございますが、その後各省庁との協議の結果、他省庁所管だとわれわれが思っておりましたものがその省庁の所管でないということから、約三十項目が第三分類の方に移った、こういうことから、先ほど御答弁申し上げましたように約七十の関係法令項目について現在各省庁と協議中、こういう状況でございます。
  370. 和田一仁

    和田(一)委員 約百ぐらいの検討課題があって、そのうち七十が他省庁、あとは属するところがはっきりしない、これは第三分類に入るわけですけれども、これだけあるということは、いまもし有事になって部隊を運用するとなったらこれだけのものがぶつかってくるわけでしょう。いろいろと問題が出てくるのと違いますか。とすれば、私はやはりこれはそんなにのんびりとやっている問題とは違うと思うのです。この辺、私らは非常に気にしているのですよ。正面装備やら人員も結構ですが、幾らそれが整っていても、いよいよそれを運用していくというときに、こういう法的な整備ができないために使えるものが使えないというようなことを放置しているのは国会の怠慢、われわれの怠慢だ、そういう判断でわが党は絶えずこの問題については深い関心を示しているわけなんです。これをどういうふうに取り込んでもらうのか。先ほど長官はできるだけ早くこれを検討整備して国会の方にというようなお話でしたが、私もそう思うのですが、長官いかがですか、まさにこれは急いでいただきたい、こういう感じですけれども。  さらに、この第三分類のようなものになると、防衛庁の皆さんに幾ら言ってもちょっと無理だと思うのです。これは総理がお見えになったときに私は総理にお聞きしていきたいと思いますけれども、とにかく全部含めてこういうことは基本的な一番大事な問題だ、こう理解しておりますので、長官、先ほどはできるだけ早くというような含みで国会に提出されるようなお話でしたが、いかがでしょうか。
  371. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まさに御指摘の一番大事なところは、先般の予算委員会でも塚本委員の御指摘がございましたが、有事法制というと戦争をやるための準備だというふうに理解する向きもあるが、そうじゃなくて、実際に現在そこで生活をしている住民の保護とか保障とか、こういったことは一体どうなるのだということに関連をしてくるのではないかという御指摘もございました。私どもといたしましては、侵略が生起したときはこれを排除しなければならぬ。しかし、もっと前に、侵略を起こさせない、これが一番大事なことだと思っておるわけでございます。しかし、御指摘のようなこういう時期にこそまさに法整備その他についての検討を進めるということは、おっしゃられるとおりかと存じます。  ただ、これは少しあれですが、防衛庁といたしましては大変に関係する省庁が多いものでございますから、いまこの時点で、先ほど政府委員から答弁させていただきましたように、鋭意努力をいたしてはおりますけれども、実はなかなか省庁の数もそれから関係する法令も多いというところで、懸命に目下努力中でございます。  なお、実は、さきの国会での御審議もございまして、この夏に改めてもう一度防衛庁長官の名におきまして各省庁に依頼をさらにいたして、作業を進めておるところでございます。
  372. 和田一仁

    和田(一)委員 各省庁それぞれ関係している面があっても、私はこれを推進していくのはやはり防衛庁だと思うのです。ほかの省庁の方からそういう有事の法制化について、うちの方の関係はこういうものがあるからこれをといって積極的にはなかなかいまやるような雰囲気ではない、こう思います。ともすれば、いままで大丈夫だったようにこれからも大丈夫だというような風潮がぬぐい切れずにあるのではないか、こう思うわけでございまして、やはり防衛庁長官あたりが先頭を切って閣議の中でこういうものの推進のために発言をしていただきたい、推進していただきたいと思うわけでございます。  奇襲対処問題については、これとはまた別の観点から処理していかなければいけないのだろうと思います。こういった大事な問題についていま余りテンポがはかばかしくないという状態を見ていますと、何かあったときにはまた別の考えがあるのかな、何かあったときにはあったような対応の仕方があるんだ、だからそのときはそのときで切り抜けられるよ、そんなお考えがあるのかどうか。いわゆる超法規的な措置もとり得るとか、そうでなくても何か対応の仕方がある、だからぽつぽつやっているんだということなのかどうか、その辺はいかがですか。
  373. 谷川和穗

    谷川国務大臣 少なくとも法制度を整備しなければならないということが一番基本の問題であることは、私どももその問題の焦点について認識をいたしております。  それから、重ねて答弁をいたして恐縮でございますが、そういう考えをもちまして目下懸命に努力をいたしておりまして、いましばらくこの第二分類の問題につきましては時間をいただきながら、関係省庁とさらに一層努力を続けることを申し述べさせていただきたいと存じます。
  374. 和田一仁

    和田(一)委員 だんだん整備されて、国民の目からも、自衛隊、防衛庁が大きくなってきて、自衛隊の力もついてくる、こういう中で、シビリアンコントロールといったてまえからいってもこういう実力部隊を運用していく、そういう時期を考えますと、そういうものがきちっと体系的に法制化されるということがやはり必要ではないか、こう思うわけでございまして、これはこういう時期にこそ冷静に論議をしながらやはり至急に法制化していくべきものだ、こう思います。  そういったことから、先ほども伺っておりましてちょっと気になった問題でございますけれども、共同演習ですね、二十五日から五日まで、きのうまでですか、合同演習があったと思うのですが、いろいろな法上の不備のために大変おかしなことになっているんじゃないかという感じがいたしました。たとえば演習の中での燃料の貸し借りですね心こういうような問題、これは先ほども質問があったようですが、これはいまは物品管理法の解釈でやっているわけですか。
  375. 木下敬之助

    木下政府委員 先ほども説明申し上げましたが、海上における海上自衛隊と米海軍との共同訓練の際の燃料の問題につきましては、米軍からは購入という形で洋上で給油を受けた例は過去においてもたくさんございます。その逆のケースができないかということでいろいろ検討をしておりまして、物品管理法の二十九条でやれるのではないだろうかということで、現在詰めを行っておるところでございます。  それから、それ以外の陸上自衛隊あるいは航空自衛隊についての共同訓練等の場合の給油の問題もございますが、具体的には、航空自衛隊の場合には、別の自衛隊法に基づく規定で、米軍に対して便宜供与を行うという形でやっておるわけでございます。
  376. 和田一仁

    和田(一)委員 わが国の方は、補給艦が行ってないときにはそこで油を買える、逆の場合には貸すというようなやり方でやっておるようですが、私はうわさで聞いたので、これを一遍確認しておきたいと思うのですが、貸与して、返してもらうときには八%よけいにもらうという話を聞いたのですが、どういうことになっておるでしょうか。
  377. 木下敬之助

    木下政府委員 まず自衛隊の飛行場におりてきました飛行機に対して給油します場合には、これは自衛隊法百十六条の二に基づきまして無償で貸与できるということになっておりますので、これは無償で現在でも行っておるわけでございます。  それから海上の場合には、百十六条の二と同じような規定がございませんので、物品管理法で検討しているわけでございますが、物品管理法の場合には有償でなくてはならないということになっておりますので、その有償をどのくらいにするかということで、現在米軍側とも話し合っているということでございますが、その率は私どもとしては二%程度のものを考えております。
  378. 和田一仁

    和田(一)委員 その二%というのは、何に対して二%なんですか。
  379. 木下敬之助

    木下政府委員 油を貸しました場合に、貸しました油の二%程度を現物で返してもらうときにつけてもらうという形でできないものかということで、関係省庁及び米軍と話し合っておるところでございます。
  380. 和田一仁

    和田(一)委員 米軍から日本が油を買うときにはどうなんですか。これは後で決済するんですね。
  381. 木下敬之助

    木下政府委員 海上自衛隊が共同訓練をやります場合に、洋上で米海軍から給油を受けました場合には、これは金を払うという形で、調達の形でやっておりますので、油の値段に加えまして、米軍側の管理費ということで二%を通貨で払っておるわけでございます。
  382. 和田一仁

    和田(一)委員 これはいま共同の訓練の際にはそういうようなやり方というふうに聞いておりますが、それ以外の場合、さっきの御質問と全く逆な観点なんですが、たとえば大韓航空が撃墜された、米軍も救助、捜索活動に入る、ヘリも飛ぶ、艦艇も入ってくる、こういう中で、補給艦を連れてくるわけにいかない、そこで油が足らないので調達したい、そういう申し入れがまずあったかどうか、もしあったとすればどういうふうに処理されますか。
  383. 木下敬之助

    木下政府委員 ただいま北海道で米軍のヘリコプター等も活躍しているようでございますが、一度現地レベルで、自衛隊の飛行場におりた場合に給油してもらえるかというような打診があったやに聞いております。ただ具体的な形で最終的に要請がございませんで、いまのところ北海道で捜索活動に従事している米軍航空機に給油はいたしておりません。  ただ、もしそういうような要請が米軍側からあった場合には、先ほど申し上げましたが、自衛隊法第百十六条の二に規定がございまして、「自衛隊の航空機以外の航空機が自衛隊の飛行場に着陸した場合において他から入手するみちがないと認めるときは、次の飛行に必要な限度において、かつ、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、」燃料等を「無償で貸し付けることができる。」ということがございますので、その要件の範囲内であれば貸し付けをすることは可能ではないかと考えております。
  384. 和田一仁

    和田(一)委員 これに関連してまだ伺いたいのですが、また総理等いらっしゃる別の機会にしたいと思います。  いま大韓航空の問題に触れたので、私はこの事件について御質問したいので、委員長ちょっと資料を配っていただきたいと思います。
  385. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 どうぞ資料を配ってください。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  386. 和田一仁

    和田(一)委員 これは国民にとって大変ショッキングな事件でございまして、どうしてこういうことになったのか、あるいはその真相を知りたいのは当然のことでございまして、私もこういった事件が起きてすぐ、国会に委員会でも招集していただいて真相を少しでも知らせていただきたい、こう思っておったわけでございます。いろいろその後新聞報道がございました。この事件に関して大変大事な時間帯の中においてどんな交信が行われたか、新聞にたくさん出ておりました。一つはこちら側のいろいろな情報の公開、あるいはソ連側の言い分、こういったようなものがたくさん出ておったので、私、整理してみましたのがいまお手元にお配りした表でございますが、これをごらんいただきながら、ぜひひとつわかるように御答弁をしていただきたいと思うのです。この国会の予算委員会でも質問がありましたけれども、私はそういったやりとりを聞いてもどうもまだ腑に落ちない点もあるものですから、ここで時間のある限り御質問していきたいと思います。  まず、こういった事件が起きました一日なんですけれども、一番早くどこからどういうルートでこれが伝えられたのか、どこへ伝えられたのか、こういう点についてお聞きしたいのです。これは外務省の官房の方なんでしょうけれども、まず第一報はどういうかっこうで入ってきたか。運輸省の方では交信がとだえた、こういう状態で、その後幾ら呼びかけても答えがないという中でこれはおかしいなと思ったのでしょうけれども、そういう相互の連絡の中で、落とされたらしいという第一報はどこからどのようなルートで入ってきたのか、それをまずお聞かせいただきたいのです。
  387. 丹波実

    ○丹波説明員 外務省に関します限り、アメリカ側との情報交換、意見交換でございますけれども、いまから考えますと、撃墜された時間から相当遅い段階での一日の午前中から、未確認情報というような形でいろいろな問題について意見交換をしておりました。  官邸その他との関係については防衛庁の方から御聴取いただきたいと思います。
  388. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 大韓航空機が行方不明になったことを自衛隊が知りましたのは九月一日の午前五時ごろ以降のことでございまして、これは航空管制当局からの連絡によって知ったわけでございます。それを受けましてレーダーの記録を調べてみたわけでございますが、これが稚内の航空自衛隊のレーダーの記録でございまして、それによりますと、九月一日の午前三時十二分から二十九分にかけまして稚内レーダーに、サハリンを南西に横切る形で同機のものではないかと思われる航跡が見られたわけでございます。これが三時二十九分にレーダーから消えているということがわかったわけでございます。さらに同時刻ごろ、その航跡に寄り添うような三つの航跡が稚内レーダーに同様に見られたわけでございまして、これはソ連機によるスクランブルではないかというふうに考えられたわけでございます。  他方、交信記録でございますが、自衛隊の部隊におきましてそういった交信記録をたまたまキャッチしていたものを、こういった情報をもとにしまして調べてみた結果、その中に三時二十六分前後に、発射したとか目標は撃墜されたとか離脱するとかいうふうなソ連機パイロットの声が発見された。そういうことを総合判断いたしまして、どうも撃墜をされた公算が大きいというような判断をするに至りまして、そういった点につきましては政府部内におきましてできる限り早い段階で官邸その他外務省にも御連絡は申し上げた次第でございますが、その詳細については御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  389. 和田一仁

    和田(一)委員 だんだん解析していくうちにはっきりしてきたものだと思うのですけれども、発表の時点で、安倍外務大臣の発表やら後藤田官房長官の発表、それからアメリカ側のシュルツさんの発表、これがいずれも三十八分にKAL機は撃墜されたという発表になっているのですね。これはその後も、三十八分が時間変更というか、もっと前だったということにはなっていませんですね。
  390. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 そういった御疑問が出る一つの原因は、恐らく防衛庁が発表いたしました稚内レーダーの航跡の消えた時刻が三時二十九分であるということがあるためではないかと思います。しかしながら、このレーダーのキャッチをした航跡と申しますのは高高度の飛行の分をキャッチをしておるわけでございますから、三時二十九分というのはその航跡が消えだというだけの事実を示すものでございます。  他方、政府といたしまして一日の午前三時三十八分ごろに海馬島に撃墜されたものと判断をしたのは、政府として諸情報を総合した結果そういう判断をしたわけでございまして、この判断については現在も変更されていることはございません。
  391. 和田一仁

    和田(一)委員 その辺が、発表していただけない部分もあろうかと思うのですけれども、一方交信録、ここではかぎで書いてございますが、これはソ連側の地上と、要撃に上がった、スクランブルしてきた飛行機との交信です。そういう交信を傍受したものを分析したところによりますと、二十六分二十一秒に「目標は撃墜された」、その前に、二十六分二十秒に「発射した」という交信があって、その後、一秒後ですけれども「撃墜された」、こういう交信があった。それから見ると、発表の時間までは十二分あるわけですね。これはこんなに、十二分も——レーダーにはたしか二十九分まで映っていたのですから、ここには三分間ぐらいあります。三分間くらいはまだ空中分解も何もせずに機影がレーダーに捕捉されるような状態で飛行を続けていた、そしてその後は消えてしまった。撃墜されたのは三十八分。こういう諸情報をあわせて、こういう分析をされて発表されたというのですが、この十二分間というもの、こういう時間、可能なものなんでしょうかね。その辺、これはどうなんですかと聞かれたときに、私答えられないのですよ。もし差し支えなければ専門の立場で。
  392. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 いまお話ございましたように、交信記録の方では三時二十六分二十一秒に撃墜されたという交信がございました。それから、レーダー航跡の方は二十九分に消えている、それから総合判断した撃墜の時刻は三十八分だ、こういうことを前提といたしまして、その時間の経過の中において大韓航空機がいかなる状況にあったかという点につきましては、私どももこれだけの記録からは判断がいたしかねる状況でございまして、どういうふうな形で最終的な墜落にまでいったのか、この点は視認もできていないことでございますので、私どもにも推測をいたしかねる問題でございます。
  393. 和田一仁

    和田(一)委員 こういったことが起きた一つの原因は、まずKALがコースを外れたためだ、これは第一義的な原因ですけれども、このコースを外れた原因は、INS、慣性航法装置ですか、このINSにデータをインプットしていたにもかかわらずこれだけ外れた、こういうことになりますと、ソビエト側はいかにも意識的に外して入ってきたというような報道をしておりますね、向こうの参謀総長の記者会見では。私は、本当にINSというものが故障しないものであり、入れたデータが間違いなくて、インプットにもミスがないというのであればあるいはそういう意識的にコースを外したという言いがかりもこれは通るかもしれないと思うのですが、この辺は、一体こういう装置は絶対に故障しないものなのですか。  三台あって三台とも全部故障するというのもちょっとおかしいと思うのですが、よく聞いてみますと、打ち込むときには、一つのデータを一人で打ち込むと三台同時に入る、こういうことも聞いておりますから、まず打ち込んだときに間違いがあったかどうか、それから、それは間違いないとしても、あと操作の中で誤作動があって三台とも同時に作動が間違っていた、そういうことが考えられるのかどうか。これは運輸省の方、どなたか見えておりますか。もし専門的にお話しいただけたらお願いしたいと思います。
  394. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいま御質問のございました、どうして大韓航空機が大幅にコースを外れたか。その原因としてINSの信頼性のお話がございましたけれども、INSそれ自体は非常に信頼性の高いものでございまして、これを三台装備しておるということは、一台が壊れてもほかの二台で、それが壊れてもさらに残りの一台があるということで、それ自体が飛行中に三台とも故障するという確率は常識的にはきわめて低いものだというふうに考えます。  そこで、いま先生指摘がありました、ではINSにデータを打ち込むときの打ち込み方に問題があるのかどうかということでございますが、大韓航空がどういうふうな打ち込み方をしておるのかということを私ども承知しておりませんけれども、たとえば日本航空がINSにデータを打ち込みますときには、二回チェックをいたします。手順を追って申し上げますと、まず副操縦士が打ち込むべきINSのデータを読み上げますと、機長が、ジャンボの場合INSを三合積んでおりますが、その三台を一度に機長が打ち込みます。打ち込んだのを副操縦士が目で確認をいたしながら、機長が打ち込んだ数字が間違っていないかどうかを確認する手段をとっております。そして、一応出発点から必要な数の打ち込めるウエーポイントを打ち込みますと、今度は打ち込んだ一番最後のところから逆に、機長と副操縦士が役割りをかわりまして読み上げて、確かに打ち込んだ数字に間違いがないかどうかということを確認をする。これは日本の航空会社の場合でございますけれども、そういう手順をとって打ち込みにミスがないように十分注意をいたしております。  それから、それではその打ち込むときに誤作動か何かが起こるかということでございますけれども、INSを打ち込みます場合の手順というのは、各航空会社ともオペレーションマニュアル、マニュアルの中で手順を決めておりまして、それに従って打ち込むということになっておりますので、通常では非常に考えにくいケースではないかというふうに思われます。  現在、このコースをそれた原因につきましては、国際民間航空機関、ICAOの調査団が日本にも参っておりますが、関係のところで調査中でございますので、私ども、その結果を注目してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  395. 和田一仁

    和田(一)委員 一番大事なところの原因がいま調査中で、どうしてかがわかれば一番いいと思うのですが……。  さらに、この〇〇七機が、位置の通報、義務通報をしなければならない、そういう地点を通過しているときに通報していない、こういうことを言っているのですね。韓国機がチェック地点を通過した際に必要な報告がなく、その上、韓国機が同航空路から姿を消したにもかかわらず米国の管制当局がなぜ直ちに警告を発しなかったか、ソビエト側は、通報地点で何も通報しない、だから忍び込んできたんだ生言わんばかりの発表ですね。こういうことに対して、これはもちろん日本の通信範囲の外でございますけれどもアメリカ側の発表では、いやちゃんと通報がある、こういうふうに新聞には出ておりますけれども、運輸省なんかはそれは確認しておりますか。
  396. 長澤修

    ○長澤説明員 当該大韓航空機が東京の航空交通管制部で管制を行っております領域に入ってくる最初の点がニッピというポイントでございますが、東京のFIRの中では、私どもの成田にございます東京国際対空通信局が〇〇七便からの連絡をキャッチしております。
  397. 和田一仁

    和田(一)委員 いや、ニッピに入ってきてからはもちろんあるのですが、ソ連側の言い分は、アンカレジを出てから黙って飛んでいた、本来ちゃんと位置を通報しなければならぬのがありますね、ベッセルだとかナビエだとかニーバだとか、こういう地点での通報を全然やっていなかった、だからこれはもう初めから忍び込んでくるつもりで、やるべき義務的な位置報告をしていなかった、こう断言しているのですが、アンカレジの方はやっていた、こう言うのですが、その確認がありましたかということです。
  398. 長澤修

    ○長澤説明員 航空交通管制はそれぞれ受け持ちの区域を定めてやっておりますので、私どもの東京航空交通管制部では、いわゆる東京FIRと呼ばれる範囲については責任を持って管制を行っております。  それで、ニッピに到達します前の、いま先生お話ございましたベッセルとか、そういったような位置通報点ではアンカレジの方が責任を持ってやることになっておりますので、私ども、アンカレジの方へそういう通信があったかどうかというようなことに関しましては承知をいたしておりません。
  399. 和田一仁

    和田(一)委員 時間がなくなってしまったのですが、こういう事件が起きまして、責任の所在がはっきりしないようなかっこうで、韓国の方はこの補償についてもある程度の意思は出しております。しかし、撃墜した当事者であるソビエトの方は、いかにも入ってきたのは違法であって、それも意図があって入ってきた、撃墜は当然である、したがって謝罪する必要もなければ補償にも応じない、こういうような姿勢でございますが、まず韓国に対して、この補償について外務省は、遺族の立場を考えてこれをサポートしていくような姿勢がございますか。
  400. 田中三郎

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  遺族に対する補償問題につきましては、大きく言いまして、日本からソ連に対する国と国の請求の問題とは別に、日本人の遺族の方と大韓航空会社との間の問題がございます。先生の御質問は後者だと存じますけれども、この問題につきましては、基本的には両者の民事上の問題ということでございまして、外務省としては、この民事上の問題という条件のもとではございますけれども、側面的にできる限りの協力をしたい、こういう考えでこれまで努力をやっております。  具体的には、その一番大きな側面的な協力といたしまして、安倍外務大臣が先般ニューヨークに出張いたしました際、韓国政府の代表と申しますか外務部長官にこの補償問題について直接申し入れしておりますし、その数日前、東京で大韓航空の社長が日本に参りました際、同じように外務大臣から補償問題について最善の努力をするように申し入れております。
  401. 和田一仁

    和田(一)委員 ソ連に対しての賠償要求、それは外務省の方から日本側の口上書を手交すべく努力をされたようですが、その受け取りは拒否された。また、内容証明で送ってもまた送り返されたというような報道を見ておりますが、そのとおりでありますかどうか。そして、これはこのままでほかに対処のしょうがないのかどうか、どういう方法を考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  402. 丹波実

    ○丹波説明員 日本国としてのソ連に対しますところの賠償請求の問題は、いま先生がおっしゃったとおりでございます。日本政府としての口上書をソ連側にぶつけたわけですが、その前に、そのぶつける会談をまずパブロフ大使を招致いたしまして欧亜局長が行ったわけですが、その会談の席上、日本側の基本的な考え方は口頭で申し述べたわけです。その上で口上書を渡そうとしたところが、先方はこれを拒否した。したがいまして、私たちは内容証明つきの郵便で大使館に送り届けたわけですが、大使館がまた証明つきの郵便で送り返してきた、こういうことでございます。  ただ、私たちは、日本政府の基本的な考え方は大使はじっと聞いておったわけでございますし、私たちの考え方は本国政府に伝達されているであろうと思います。しかしながら、そういうわれわれの考え方については、ソ連政府としては受け入れられないというのが遺憾ながらソ連政府の立場であろうと思います。本件につきましては、私たちはこれで打ちどめであるというふうには考えておりません。今後、あらゆる機会に本件をソ連側に提起し続けていくべきものであるし、続けていくという考え方ております。
  403. 和田一仁

    和田(一)委員 大変しり切れトンボになりましたが、時間が参りましたので、きょうはこれでおしまいにします。
  404. 橋口隆

  405. 中路雅弘

    中路委員 最初に、海上自衛隊の演習の問題について御質問したいと思います。  その前に、ガイドラインの、ことし一月から始まりましたシーレーン防衛の日米共同研究ですね、日本有事の研究の中で、このシーレーン防衛の問題がどこまで進んでいるのか、最初に御説明いただきたいと思います。
  406. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 シーレーンの防衛に関します日米共同作戦の計画についての研究の作業は、本年の三月から開始をされておるわけでございますが、現在の段階は、脅威の想定あるいはシナリオの考え方、そういったようなものについて日米間で調整作業を行っている段階でございます。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  407. 中路雅弘

    中路委員 もう一点、ガイドラインの極東有事研究ですね、これはどこまで進められているのか。その中での通峡阻止といいますか、海峡封鎖の研究はどこまで進んでいるわけですか。
  408. 加藤良三

    加藤説明員 お答え申し上げます。  いわゆる六条事態というものについての研究でございますが、これは引き続き作業を継続中でございまして、必ずしもいまだ大きな進展というものが得られていない状況にあるわけでございます。  なお、その関連で通峡阻止でございますか、その作業との関連についての御質問でございますけれども、六条事態に関する研究というものは、そもそも極東において何らかの事態が生じている、そのために米軍の活動が必要とされるという状況ではあっても、日本に対する武力攻撃がまだ行われていない状態、そういう状況を前提といたしまして米軍に対して日本側がいかなる便宜供与を行い得るかという研究なのでございます。そのような状態のもとで日米が、たとえば海峡の通峡コントロールを共同して行うといったようなことはもともと考えられないところでございまして、そのような研究は行われておりません。
  409. 中路雅弘

    中路委員 海自の問題に移りますけれども、九月二十五日から十月五日まで海上自衛隊の日本周辺の海域あるいはシーレーンを舞台にして、これは五年に一回の全部隊参加の甲演習と言われていますけれども、この海自の演習の訓練内容、参加規模あるいはシナリオ等について最初に御説明いただきたいと思います。
  410. 西廣整輝

    西廣政府委員 いまお尋ねの海上自衛隊演習でございますが、先生おっしゃいましたように、今回の演習は五年に一回行います海上幕僚長が統裁をいたします、海上自衛隊としては自衛艦隊、全地方隊等が参加いたします最大規模の演習でございまして、艦艇が約百五十隻、航空機が約百七十機、人員三万人ほどが参加をした演習であります。  なお、演習想定等については、事柄の性質上詳細は差し控えさせていただきますが、内容的には、海峡あるいは重要港湾、沿岸等の防備といったような周辺海域の防衛、あるいは護衛作戦等の海上交通の保護、掃海、そういったものを含めまして各種戦の訓練、対潜作戦なり防空戦、そういった各種戦訓練をやったということでございます。
  411. 中路雅弘

    中路委員 シナリオについては御報告いただけませんか。
  412. 西廣整輝

    西廣政府委員 演習の想定等については、先ほど申し上げましたように細部を申し上げることは事柄の性質上差し控えさせていただきたいわけでございますが、特に全般的なシナリオというものはございませんで、いま申し上げたようなそれぞれの各種戦、各海域において相手方と防備側とに分けて演習を行ったというものであります。
  413. 中路雅弘

    中路委員 この演習に第七艦隊が参加をしている、一部は日米の共同演習だということも報道されていますが、この海自の演習に参加をしたアメリカ艦艇の艦名ですね、それからどういう参加の仕方をしたのか、簡潔にお知らせいただきたいと思います。
  414. 西廣整輝

    西廣政府委員 米側で参加いたしました艦艇は、駆逐艦が一隻、フリゲート艦が三隻、それから補給艦が二隻、計六隻でございますが、艦名は、駆逐艦が「エリオット」という駆逐艦でございます。それからフリゲート艦がジョン・A・ムーア、メイヤーコード、バグレーといった三隻でございますが、これらはいずれも主として南西諸島海域及び硫黄島周辺のいわゆる南東航路と言われる海域あたりで、艦船の護衛作戦につきまして日本側と共同訓練をいたしたということでございます。そのほか、米海軍航空機が若干参加をいたしております。
  415. 中路雅弘

    中路委員 いま駆逐艦のエリオットを初め水上艦艇六隻というお話でしたけれども、新聞ではあと二隻、原子力潜水艦が加わっているという報道がありますけれども、これは参加したのですか。
  416. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま御質問の原子力潜水艦あるいは航空機等で、いわゆるターゲット、目標として支援をしてもらったものはございますが、共同訓練そのものに参加をしたということではございません。
  417. 中路雅弘

    中路委員 航空機と潜水艦が仮想敵といいますかターゲットとして参加したという御説明だと思いますが、先日佐世保に入港しましたカールビンソンはこの演習に参加をしたのですか、しないのですか。
  418. 西廣整輝

    西廣政府委員 カールビンソンは演習に参加をいたしておりません。
  419. 中路雅弘

    中路委員 幾つかの新聞の報道ですね。一つはアメリカの十八日付の太平洋軍の機関紙パシフィック・スターズ・アンド・ストライプスは、カールビンソン空母が極東訪問中に、この海上自衛隊演習で「小さな役割り」と書いてありますけれども、部分的に参加をしたということが報道されております。また、カールビンソンの艦長が二十五日に空母の艦内で記者会見をしまして、一千海里シーレーンを舞台に始まった海上自衛隊演習で、参加する米部隊に通信情報や航空管制の支援をするということで一定の役割りを果たすことを明らかにしているわけですが、この報道についてはいかがですか。
  420. 西廣整輝

    西廣政府委員 私どももこのスターズ・アンド・ストライプスの記事は承知しておりますが、カールビンソンが演習に参加したということはございませんし、記事にありましたように、たとえば情報交換というような形であれ、演習に参加をしております海上自衛隊の艦艇等々と交信をしたという事実は全くございません。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  421. 中路雅弘

    中路委員 新聞の報道だともう少し詳しく言っているのです。演習に参加する他の艦艇との情報交換、また複数のサービスを提供する。具体的には、「同空母が装備しているデータ・リンク通信機器など戦闘指揮システムを使って、参加艦艇への戦術情報の提供をしたり、空母機動部隊に属する補給艦を使って補給活動をする」という意味の報道もされているわけですが、こうした報道あるいはアメリカの軍の機関紙の報道、艦長の言っております情報提供あるいは支援、参加する米艦に対して「小さな役割り」ということを言っておりますけれども、こういう形での参加というのは全くなかったということですか。
  422. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、海上自衛隊の演習参加部隊とカールビンソンとの間では、情報交換であれ何であれ、全くの交渉がなかったということでございます。  なお、米側の演習参加部隊とカールビンソンが情報交換をしたかどうかということについては私どもは知り得ない立場にありますので、その点についてはわかりません。
  423. 中路雅弘

    中路委員 私がお聞きしているのも、この参加した米艦艇に対する情報提供や支援ということについて報道していることをお尋ねしているので、いまの御答弁でもその点については否定はされていないわけですね。そうですね、もう一度お聞きします。
  424. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどもお答え申し上げたとおり、わからないということでございます。
  425. 中路雅弘

    中路委員 三海峡を封鎖するといった、さっきシナリオについてはお話しされませんでしたけれども、限定してお話ししますけれども、こうしたシナリオは想定されていると伝えられていますけれども、この点については報道されていますからお聞きしますが、事実ですか。
  426. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の海上自衛隊演習の演習海域には三海峡あるいは重要港湾等が含まれておることも事実でございますし、また、航路帯が集束する重要港湾なり海峡というのは、わが方の船舶が非常に多く航行する海域であるということも間違いないわけであります。したがいまして、ターゲットになった方の潜水艦がその海域に出撃をして攻撃をするということは当然考えられるわけでありまして、その段階で防御側が発見をすればそこで対潜作戦が行われることもこれまた当然であります。したがいまして、先生の海峡封鎖という御質問意味、よくわかりませんけれども、あるいは違っておるかもしれませんが、そういう意味で海峡周辺で海峡防備のための対潜作戦、海峡防備作戦の訓練が行われたかどうかということであれば、そのとおりであります。
  427. 中路雅弘

    中路委員 先ほどこの点は御報告にありましたけれども、もう一度この点を確認しておきたいのですが、今回の演習に海上自衛隊の戦闘機とともにアメリカ海軍の潜水艦、これがターゲット、仮想敵として参加をした、先ほどもお話ありましたけれども、この報道についてももう一度確認しておきたいと思います。
  428. 西廣整輝

    西廣政府委員 米海軍の潜水艦に目標艦として支援を依頼をして、出てもらっております。
  429. 中路雅弘

    中路委員 陸、海、空の大きな共同演習が最近相次いでいるわけですけれども、この演習の問題についてはまたまとめて改めて御質問をしていかなくてはならないと思いますが、きょうの質問の中でも、カールビンソンが報道されているような形でこの演習に事実上参加をしているということは否定されていないわけです。また、海峡の防衛の問題、この点についてもシナリオの中に想定されるということも、いまの御答弁の中で確認できるのではないかと思いますが、一応、海自の演習については後で一、二点また出ますけれども、先へ進めさせていただきたいと思います。  これは別の問題ですが、外務省が来ておる間に一点お聞きしておきたいのですが、ワインバーガー国防長官や、最近はフォーリー太平洋艦隊司令長官も、来年以降の巡航ミサイルトマホークへの核装備など配備衡計画はほぼ予定どおり進んでいるということを語っておられます。日本にも、しばしば横須賀等にも寄港しています潜水艦、水上艦艇を初めとして、これらの艦艇に対する核巡航ミサイルの配備は予定どおりと言っていますが、これまで、八四年の六月ということも言われています。この予定どおりと言われています配備の計画について、もう一度確認をしておきたいと思いますが、どういう配備計画になっていますか。
  430. 加藤良三

    加藤説明員 私ども承知しておりますところでは、核を搭載いたしましたトマホーク、これは予定どおり一九八四年中ごろに配備が開始されるというふうに聞いております。また、通常弾頭つきのものにつきましては、すでにことしから一部水上艦艇の配備に移されているというふうに承知いたしております。
  431. 中路雅弘

    中路委員 いまの点は、核の装備が来年中ごろとおっしゃいましたけれども、六月とも言われていますが、予定どおり配備の計画が進んでいるということを確認しておきたいと思います。  核の持ち込み等の問題についてはまだ改めて御質問したいと思いますが、もう一点、F16の三沢配備の問題です。四十八機から五十機、二個飛行隊の八四年の三沢配備に関連してですが、この三沢の配備について国防総省が八三年一月十三日にアメリカの下院歳出委員会に提出しました資料を見ますと、第一期、第二期、第三期と分けていますけれども、F16の三沢空軍基地配備について、第一期として二千九百九十万ドル、これは後で最終的にはたしか千七百万ドルに削減をされて通っていると思いますけれども、経費の見積もりが出ています。後でお話ししますけれども項目別の見積もりも出ているわけです。  最初にお尋ねしますけれども、全体としてこのF16の三沢配備についての費用、全体の費用と、それから日米の間の費用の分担といいますか、これは大体どういう約束になっているのですか。
  432. 塩田章

    ○塩田政府委員 このことは当然アメリカが計画していることでございまして、アメリカ側が全体としてどういう計画を持ち、その費用をどれだけ計画しておるかというようなことは、私ども承知いたしておりません。  また、後段の全体の費用がどれだけで日米の割合がどうかということにつきましても、私どもは一定の総枠を置きまして一定の割合で日米が負担しようということではございませんで、日本日本の立場から毎年度予算の範囲内で提供施設の整備費を負担しておるということでございますので、全体の計画については、あるいはその割合といったものについては承知いたしておりません。
  433. 中路雅弘

    中路委員 長官、それはおかしいじゃないですか。承知してないという、全くそれはおかしいと思いますよ。  一、二、資料でお話ししますけれども、たとえばこれはアメリカの下院歳出委員会軍事建設小委員会における一九八三年三月三日の国防次官補代理のブレーカー氏の証言です。長いですから一部だけちょっと読んでみますと、「我々が近い将来予定している米軍態勢における改善という点は、三沢空軍基地でのF16の二個飛行隊の基地化である。」というところでずっと詳しく述べていまして、「日本政府は、八四年度から八八年度において三沢での施設予算のおおよそ四分の三」、これを分担するということになっているんだというアメリカの証言というのが行われていますし、また同じ下院歳出委員会におけるマッコイ空軍次官補の証言ですが、一九八三年二月九日です。先ほど言いました第一期分ですが、「二千九百九十万ドルは、日本の三沢空軍基地での二個飛行中隊を配備する計画の初度予算である。これは、三億七千三百万ドルの要求のうち、」日本の方が「約二億七千五百万ドルを提供することを予定した日本との共同の日米資金計画である。」ということも証言をしているわけです。  日本の場合は毎年度の予算でこれから具体化していくわけでしょうけれども、しかしアメリカ議会の証言で、アメリカ側として考えている全体計画の数字も出ています。そのうち日本政府の言っているのはこれくらい持ちましょうということで、アメリカ議会で当事者が皆証言しているところですから、いま、全く関知してないということじゃなくて、一定の話し合いが進んだ上での配備の問題が進められているというのは当然じゃないですか。
  434. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまいろいろ御指摘になったようなことは私どもも報道を通じて承知しておりますけれども、いずれもアメリカ側の期待としで私ども承知しております。私どもアメリカ側との実際の折衝におきましては、先ほど私が申し上げましたように、毎年度予算の中で、われわれはそのときの財政状況あるいは緊急度合いといったものを判断しながら毎年の予算を決めていくということでございまして、あくまでも全体的に幾らで、その負担割合をどうするというようなことをあらかじめ決めておるというものではございません。
  435. 中路雅弘

    中路委員 だから先ほどの、全く知らないんだということじゃないですね。いまアメリカ側の期待どおっしゃいましたけれども、この文章の中では、たとえば「日本政府は、八四年度から八八年度において三沢での施設予算のおおよそ四分の三を予算化することを要求した。」それから「三億七千三百万ドルの要求のうち、約二億七千五百万ドルを提供することを予定した日本との共同の日米資金計画である。」ということを言っているわけですから、少なくともこういう話がアメリカ側からも話し合いの中では出ていることは事実じゃないですか。
  436. 塩田章

    ○塩田政府委員 念のために繰り返して申し上げますが、そういう報道は知っております。報道は知っておりますが、われわれとアメリカ側との実際の話し合いの場で、アメリカから、全体がこれだけだ、そのうち日本はこれだけ持ってくれといったような話があるわけではございませんので、私どもは全体の計画を知らないと申し上げておるわけです。  われわれが知っておりますのは、八五年からですか、四十ないし五十機来るということ、全体として三千五百人ぐらいになるだろうといったこと、そういった大まかな全体のあれは知っておりますが、あくまでも毎年の予算について、たとえばいまで言いますと、五十九年度についてアメリカ側は何を希望するか、それに対してわれわれは何を受け入れるかということを決めてきたわけでございまして、全体についての割合とかあるいは計画とか、そういうものを持っておるわけではございません。
  437. 中路雅弘

    中路委員 これはアメリカの議会での証言ですから、やはり日本の議会の方も率直に話し合いの中身については話していただかなければならない。  防衛庁長官、向こうの首脳とお話しのときに、F16の配備は承知してこられましたね。その際に、大まかな費用分担のことなんかは当然話に出てくるんじゃないですか。そうしなければ今度の、最初は五十九年度どのくらい持っていくとかいうところに入れないでしょう。いかがですか。
  438. 谷川和穗

    谷川国務大臣 この問題は、前内閣で基本的に協力をするという決定をいたして現内閣に引き継がれた問題でございまして、私どもも基本的に協力をするという姿勢でございます。  八月にワシントンへ参りましたときに、たまたまアメリカの議会の審議の一つの節目でございまして、ワインバーガー長官からアメリカ議会の審議の模様について私は話を承りましたが、まだわが国の五十九年度の予算の概算要求が確定した時期ではございませんでしたが、私としては、わが国に駐留する米軍経費の中でこの問題については最優先、重点を置いていきたいという意思表示だけはいたしておいたわけでございます。  以上でございます。
  439. 中路雅弘

    中路委員 もう少し具体的にお聞きしますけれども、先ほどお話ししました、たとえばアメリカの議会に出された国防総省の資料の、第一期ですね、先ほど言いましたF16の三沢配備の第一期の中に、大きく言って五つ、二千九百九十万ドルの中身が五つの項目に分けられています。航空機運用施設、オペレーションの代替、建設に四百四十万ドル、飛行場施設の代替、建設に三十九万ドル、航空機修理施設の代替、建設に九百七十六万ドル、弾薬庫の建設に七百十二万ドル、基地支援施設の代替、建設に八百二十二万ドル、合計二千九百九十万ドルというのが出ていますけれども、これはアメリカの方の経費の見積もりですが、それでは、こうした建設の中でいわゆる施設整備費といいますか、思いやりですね、それで受け持つ場合、どういうものを対象にして考えられているわけですか。
  440. 塩田章

    ○塩田政府委員 私ども、いま五十九年度の概算要求を出しております予算で、三沢のF16配備に伴うものとしましては、隊舎の整備を四棟、住宅の整備を二百四十八戸、そのほか、環境関連施設の整備としまして消音装置でありますとか、あるいはその他の施設としまして管理棟でありますとか倉庫でありますとか、そういうことで、合計、契約ベースで百八十二億、歳出ベースで六十四億五千万円を要求しているわけであります。
  441. 中路雅弘

    中路委員 アメリカのたとえば先ほど期待とおっしゃいましたけれども、四分の三ということになりますと、いま挙げました中で大変大きな金額になるのがありますね。たとえば弾薬庫の建設というのがありますね、七百十三万ドル。今後の問題ですけれども、弾薬庫の建設は思いやりでやれるのですか。
  442. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもが五十九年度に要求をしておりますのは先ほど申し上げたとおりでございまして、弾薬庫は入っておりません。
  443. 中路雅弘

    中路委員 アメリカの方のこれは第一期計画ですから、これを具体化していく中で今後出てまいりますね。五十九年度はどれだけやるかということはいまお話しになりましたけれども、この計画の中では弾薬庫の建設というのも入っていますが、これはたとえばその際に対象になるものですか、思いやり予算の。
  444. 塩田章

    ○塩田政府委員 それは、仮につくるとすれば六十年度以降に何か言ってくるか、あるいは五十九年度で向こう側がおやりになるか、その辺は私どもにはわからないことでございます。
  445. 中路雅弘

    中路委員 いや、私が聞いているのは、たとえば向こうからそういう要請があった場合に、日本の側としていわゆる思いやり予算でこれはやれるものですか、それとも、それとは別のものですか。
  446. 塩田章

    ○塩田政府委員 いわゆる思いやり予算といいますものは地位協定の範囲内でありますから、地位協定の範囲内である限りは少なくとも、何といいますか、検討する対象にはなるわけでございます。アメリカ側から要望が来るかどうかわかりませんけれども、来たときに私どもとしては、そのときの財政状況なりあるいはそのほかの行政あるいはわが方の考えるプライオリティー、そういったものによりまして何を採択するかということになりますが、そのときに向こう側から言ってくるかどうかわかりませんけれども、言ってくれば検討の対象にはなると思います。
  447. 中路雅弘

    中路委員 弾薬庫も思いやり予算の検討の対象になるわけですか。やれるわけですか。
  448. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたように、逆に言えばアメリカ側からこういうものを希望すると言ってきてはいけないというものではございませんから、言ってくることは自由だと思います。それであれば私どもとしては、言ってくれば採択するかどうかは当然検討いたします。
  449. 中路雅弘

    中路委員 検討するということは、検討の結果によっては採択をすることもあるということですね。いまの御答弁は、もともと弾薬庫というのはそういう思いやり予算の対象にはならないんだということではないですね。
  450. 塩田章

    ○塩田政府委員 地位協定に基づく提供施設の整備でございますから、その範囲内である限りは、あらかじめこれはだめだ、これはいいとかいうふうに決めてあるわけではございませんから、そういう意味では対象になり得るわけであります。
  451. 中路雅弘

    中路委員 対象になるというお話ですけれども、これは何をやってもいいということではないでしょう、思いやり予算は。  たとえば、これは最近、五十六年六月四日の参議院の外務委員会の審議の中で、外務省の淺尾さんの答弁ですけれども、シェルターのことが論議になったときに、嘉手納のシェルター、これは防御的な施設であるということを挙げて、これもけしからぬと私たちは思いますけれども、シェルターは防御的な施設だということでこれは予算で認めてほしいということを言っておられるのです。しかし、この思いやり予算というのはあくまで野放しであるわけではなくて、やはり基準を設けていかなければいけないということをおっしゃっているのですね。あるいは、地元がそういうものを受け入れることについて賛成いただけるかどうか、いろいろな要素を勘案して考えていかなければいけないという答弁をされているのですが、いまの御答弁ですと、弾薬庫という、文字どおり兵器そのものを入れる、もう攻撃的な弾薬を入れる弾薬庫もそういう思いやり予算で負担できる対象のものだという御答弁ですが、確認していいですか。
  452. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの淺尾局長答弁は、実際の判断の場合のことを言ったと思いますが、いまお尋ねが、理論的といいますか法律上といいますか、できるかというお尋ねでございますから、地位協定二十四条第二項によりまして日本が提供義務のあるものの範囲内で提供するわけですから、その中で、二十四条の二項の中をあらかじめどういうものはいいとかどういうものが悪いとか区別してありませんので、そういう意味ではすべて検討の対象になりますということを私は申し上げたわ捗です。実際問題として私どもは、現在米側の一番強い要請は何といっても住宅問題でありまして、わが方の予算の伸びからしましても住宅を中心にしたことにならざるを得ないだろうというふうに思いますけれども、先ほどのお尋ねが、解釈上できないかというお尋ねでございますから、それはそういうことはありませんというふうに申し上げているわけです。
  453. 中路雅弘

    中路委員 きょうの御答弁ですね、弾薬庫も対象にできるということ、これは、これまでの思いやり予算で言っておられた性格もさらに一変していくような重要な問題ですね。三沢のF16の配備に伴ういまとられている措置というのは、予算の金額の規模においてもあるいはその性格においても、これまでの政府の皆さんの答弁、ある一定の線も引いておられましたけれども、これも一変するような重要な問題ではないかというふうに私は思うわけです。五十九年度の概算要求では六十四億五千万ですか、アメリカの方は、先ほど言いましたように、膨大な予算の四分の三を日本側に期待をするといいますか分担を要求してきているわけですし、その中にはいまおっしゃったように弾薬庫も当然入ってくるということになれば、思いやり予算について歯どめも何もなくなってしまうという性格を持つものじゃないか。これは大変重要な問題ですし、こうした歯どめをなくした思いやり予算の膨大な増強は絶対認められないと思うのですが、いかがですか。
  454. 塩田章

    ○塩田政府委員 何度も申し上げますが、当然弾薬庫が入ってくると申し上げた覚えはありません。理論的な話を申し上げましたが、私どもはあくまでも米側の要求をそのままのむのでなくて、わが方の判断におきましてプライオリティーを置き、また財政上考えて実際の予算は決めていくということでございまして、そのことと、いま先生のおっしゃるように三沢について当然に弾薬庫が入ってくるというふうに直ちに結びつけになることは、いささか早過ぎるのじゃないかと思います。
  455. 中路雅弘

    中路委員 いや、私が確認しているのは、今度の概算要求はまだ入っていませんけれども、弾薬庫が対象になる、できるんだということをおっしゃっているわけですから、これは大変重要な問題だということを指摘をしているわけです。具体化される過程で、改めてこの三沢配備の問題についてはまた取り上げていきたいと思います。  限られた時間ですから、日米交渉の首脳会談の中でも一つの焦点になっている問題について、二、三またお尋ねしていきたいと思いますが、一つは、先ほども若干質問がありました神奈川県の池子弾薬庫の米軍住宅建設の問題です。  これは御存じのように、神奈川県知事を初め逗子市、市長、市議会、市民総ぐるみでいまこの住宅建設の計画の中止を要求しているところですが、防衛施設庁もすでに調査を開始されて、七月には地元に適地だという通告もされています。計画の概要について、全体面積の二百九十ヘクタールの中で八十ヘクタールの区域に約一千戸の住宅を建設するということが言われているわけです。部分的にはいろいろ新聞で報道されているのですが、この際まとめてお聞きしておきたいのですが、この一千戸の住宅、低層住宅もあると思いますし中層の住宅の計画もあるそうですが、こうした低中高層階層別の計画戸数、それから間取りと一戸当たりの床面積、予定されている関連施設の種類、まずこうした点について概要を説明していただきたいと思います。
  456. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず全体的なことを申し上げますと、いまお触れになりましたが、二百九十ヘクタールのうちで約八十ヘクタールを計画区域として決めまして、その中に建てる、その場合に四〇%以上は緑地として確保していくというような計画でございます。  現時点ではいわゆるマスタープランでございまして、細かいことは決まっておるわけではございません。いまの時点で申し上げられますことは、中層住宅としまして十二棟、五百五十二戸、低層住宅としまして九十三棟、五百四戸、合計千五十六戸というのが現時点でのマスタープランでございます。
  457. 中路雅弘

    中路委員 関連施設の話を具体的にされていますけれども、どういう施設をつくられるのか。
  458. 塩田章

    ○塩田政府委員 住宅以外の施設として現在考えられますものは、販売所でありますとか集会所、あるいは運動施設等であります。
  459. 中路雅弘

    中路委員 もう一点、神奈川県のアセスメント条例に一応かけられるというお話ですが、このアセスの実施の予定年度、それから住宅建設の造成と住宅建設の着工及び完成の皆さんの方が考えられている予定年度、それから事業費の総額の見込み、こうした計画について概要を説明していただきたいと思います。
  460. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまもお話ございましたように神奈川県の条例がございまして、それに準じて手続を進めていかなくてはなりません。現在、そのための調査をやっております。県にそのための手続を進めました以降どれだけの期間がかかるかわかりませんけれども、私どもは一応一年ぐらいはかかるのじゃないかというふうに見ております。  それから後のスケジュール等はその時点で考える。いまの時点でどういうふうな段取りでいくというようなことを申し上げられる段階にはないわけでございます。
  461. 中路雅弘

    中路委員 いまのアセス条例との関係ですが、防衛施設庁は一応神奈川県の環境影響評価の条例の適用を受けることは表明されているわけでございますけれども、神奈川県や当該の市は、その以前の問題だ、いまこういうふうに言っているわけです。一番最近は、先日十月三日、県の本会議で県知事は、この問題はアセス以前の問題だ、自分たちは計画の中止を今後とも要求していくんだということを述べていますし、その前に八木副知事も新聞記者会見で、私たちとしてはこれを認めたわけではないので、アセスにかけてほしいと持ってこられてもこれは受け取れないんだということですね。実際に、一般の開発事業の場合、その事業が地元の市町村の方針と相入れないという場合に、その意向を飛び越えて県が一方的にアセスを受けることはできないのが現状だろうと思うのです。いま県はそういう姿勢で県の主張をしておられるわけですけれども、これはまた県内の住民全体の要望でもあるわけです。  神奈川新聞の報道ですか、施設庁が県のアセス条例について、これは条例だ、根拠になる法律がない以上必ずしもやらなくてはならないということじゃないんだということも述べておられます。そのことは、もし話がつかなければ強行するというお考えもあるのですか。あくまで県の条例にかけて検討していくというお考えですか。
  462. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、県の条例は尊重して、これに従った手続を踏んでいくというつもりでおります。  それからいま、県当局あるいは地元住民の反対があってアセス以前の問題だというふうな御指摘がございましたが、私どもは、できる限り努力いたしまして地元の県当局あるいは市当局あるいは住民の方の理解を得たいと念願しております。
  463. 中路雅弘

    中路委員 御存じのように池子弾薬庫の残された緑、これは各関係の学者の人たちの研究もいろいろ出ておりますけれども、特にここにある常緑葉の樹林は、広い面積でこれだけ残っているのは全国でも九州の一部と山口県の拘留孫山だけだと言われているわけでありますけれども、首都圏にあるという点では最も際立っているわけです。鳥類でも、関係者の皆さんの調査でもいま三十九種類が確認されていますが、さらに観測を続ければ五十種、百種にも上ると言われております。緑を残すといっても一度破壊されました自然は戻るわけじゃありませんし、こうした点の学術的な調査も行っておく必要が私はあると思いますが、この点は建設計画の調査の前に、そうしたいろいろ出ています学術調査等、文化財のことも出ていますけれども、そういう調査もその前にまずやる必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  464. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど環境アセスのための調査を実施しておると申し上げましたが、まさに御指摘のようなことを実施するわけでございます。
  465. 中路雅弘

    中路委員 いま対象になっている地域の計画、私たちは計画の中止を強く要求していますけれども、その計画以外の、たとえば貯蔵施設、地下弾薬庫がありますね、これは今後どうされるわけですか。これからも残して、場合によってはまた使用する、使える状態にしておくというお考えですか。残された弾薬施設については今後どのように考えていかれるのか。
  466. 塩田章

    ○塩田政府委員 当地区は、現在米軍は弾薬の貯蔵はしておりません。これは御存じのとおりでございますが、補給品置き場等として使用しておるということでございます。今後とも引き続いてそのような使用をする計画を持っているというふうに承知しております。
  467. 中路雅弘

    中路委員 私がお聞きしているのは、横穴式の貯蔵施設、地下弾薬庫は全部残っていますね。これは弾薬庫として残して、またいつでも使える状態に置いておく、そういうお考えですか。いまは弾薬は入っていません、そうした用具が入っているだけですけれども、あくまで弾薬庫として再使用できる状態に置いておくというお考えですか。
  468. 塩田章

    ○塩田政府委員 私がいまお答えできますことは、米軍が現状の形で引き続き使用する計画だということを承知しているだけでございまして、将来計画について米軍がどういう考えを持っているかは承知しておりません。
  469. 中路雅弘

    中路委員 今後も使用できる状態にしておくという御答弁だと思います。  もう一点。塩田長官はお会いするたびに、現在米軍住宅は一千戸不足しているんだということを繰り返しおっしゃっておりますけれども、たとえばことしの四月一日の参議院の予算委員会で、安倍外務大臣はこういう答弁をしていますね。原子力空母カールビンソンや戦艦ニュージャージーの乗員家族の居住地を横須賀に考えることはあり得ないことではないというふうに答弁されています。今後さらに横須賀や佐世保に空母の寄港が頻繁になってくることは、アメリカの最近の戦略から見ても当然予想されるわけです。安倍外務大臣も、カールビンソンやニュージャージーの乗員の家族の居住地とする可能性があるという見通しを言っておられるわけです。  また、中曽根総理が先日、八月だったですか、横須賀の電気通信研究所を視察されたときの記者会見で、逗子の池子弾薬庫の住宅建設の問題を聞かれて、細かいことは承知していないけれども、これはやはりアメリカの第七艦隊の増強と関連があるのではないかということを記者にも語っておられます。  私はこれの方が本音ではないかと思いますが、塩田長官はいまの不足分だとおっしゃっておるのです。安倍外務大臣の予算委員会答弁を見ましても、この住宅建設が、さらに今後の横須賀寄港が予想される空母を初めとして基地の機能を一層強化していく、そして乗員のための住宅の増強、こういうものの第一歩になるのではないか、地元でもそういう不安、心配を強く持っているわけですが、この点はもう一度確かめておきたいと思います。
  470. 塩田章

    ○塩田政府委員 この点は中路先生もよく御存じのように、池子というよりも横須賀地区で千三百程度不足しておる、何とかしてほしいという話はずいぶん古い話でございます。カールビンソンだとか先ほどの安倍外務大臣の御答弁とかというはるか前の、何年も前から米側としては強く希望している問題でございまして、私どもはあくまでも現時点における横須賀地区の住宅不足に対する対策として受けとめておるわけでございます。
  471. 中路雅弘

    中路委員 繰り返しそういう答弁ですが、しかし、じゃ横須賀で民家を借り上げている米軍家族がどれぐらいあるのか、こういうことをお尋ねすると、数字は全然出してこられない。千三百戸不足していると言う。じゃ、どういう内訳になるのか、これについてもお答えにならない。  もう一度ここでお尋ねしますけれども、千三百戸不足しているというのは、たとえばいま入っている空母あるいは艦艇の乗員のどの分が幾ら不足しているのか。千三百戸という数字は言っておられますけれども、そういう中身についてお答えできますか。
  472. 塩田章

    ○塩田政府委員 これもいつかお答えしましたが、現在横須賀地区で提供しておる住宅が約二千戸、それに対しまして不足が約千三百ということでございますが、その千三百不足している理由は、民家を借り上げておってそれが規格に合わないとか、あるいは古くなったとか、あるいは家賃が高いとか、あるいは家族を呼び寄せたくても住宅不足のために呼び寄せることのできない人たちといったようなものを合わせて千三百ということでございまして、その一つ一つの理由は米側説明をいたしておりません。合わせて千三百ということでございます。  いま先生、どの軍艦の乗組員の分が足らないのかというお尋ねでございますが、これは当然米側としては、横須賀地区全体の米側が把握している住宅を全体的に運用していると思うのです。ですから、どの船と言われましても、恐らく出たり入ったりしておると思いますから、そういう意味でどの軍艦の乗組員の分が足らないというふうには特定はできないのではないか、これは私の想像でございますけれども、そういう気がいたします。恐らく米側としましても、どの船の乗組員の分が足らないというふうな振り分けはしてないのじゃないかと思います。
  473. 中路雅弘

    中路委員 答弁が納得できませんけれども、じゃ、関連してこういうことをお尋ねしておきたいのです。  ちょっと話は別ですけれども、横須賀市はことしからごみの収集を、分別収集といって、ごみの種類によってやっているわけですね。しかし横須賀に居住している米軍や家族、軍属はこの実態が全くわからないために、分別収集をやるのに、これをアメリカの軍人に徹底させなきゃいけないということで苦労しております。  市長が七月十八日ですか、基地司令官に米軍人の居住の状況、家族の人員、こうした資料の提供を求めたのですが、米軍側はこれに対して、日本政府の適当なチャンネルを通じて情報を求めてくれという回答です。横須賀市も困っているのですが、そういう点で、いま居住の話が出ましたけれども、市内で借り上げている居住の米軍や家族の状態、現状を、これは横須賀市が要望していることですから、日本政府の適当なチャンネルを通じて情報をとってくれというのがアメリカの司令官の回答だそうですから、この市長の要望には協力していただけますか。
  474. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま先生の御指摘ありました横須賀市の御要望につきましては、わが方の横浜防衛施設局がこの八月に横須賀市からそういう話を伺いまして、これは施設外におられる米軍の問題でございますので、果たして当局の所管がどうかという問題もありまして検討を続けておりますが、近くこれについても検討結果をもちまして解決に努力したいというふうに思います。
  475. 中路雅弘

    中路委員 居住の状態も実際は皆さんつかんでいないのですね。それでいま千三百戸不足しているのだ、こういうことじゃ全く納得できないですね。  ごみの話が出ましたから、この前の質問の続きで一点だけこの機会にお尋ねしておきますが、アメリカの基地内から出るごみの処理はいままで無料になっていました。この問題で私が何度か委員会質問してきました。最近は四月十三日の衆議院の外務委員会でこの問題についての私の質問施設庁は、一応米側の方も支払いに応ずるという意向は示しているわけでございますが、どの程度の負担をするかについては市との間でいま協議中だ、当時、まだ決着はついてないと答弁されていますけれども、この結末がどうなったのかということと、四十七年のこの無料でやるという協定は米側が払うということになれば破棄して、新しく米軍との間でいわばごみの処理についての協定が必要かと思いますけれども、簡潔に一点だけお伺いしておきたい。
  476. 千秋健

    ○千秋政府委員 横須賀海軍施設のごみ処理問題につきましては、ただいま先生指摘のように、四月に先生から外務委員会におきましてそういう御指摘があったわけでございます。これにつきまして、現在、横浜防衛施設局の方で、横須賀市と米軍との間に立ちましてこれの負担の金額、支払い方法等につきまして調整を行っているところでございまして、これも近く話がつくというふうにわれわれは思っております。
  477. 中路雅弘

    中路委員 私がもう一点聞いているのは、米側が払うという意向でいま市と折衝しているわけでしょう。そうすると、四十七年に結んだ米側のごみは無料で市がやるという協定は、当然直されなければいけないわけですね。そういうこともきちっとしなければいけないのじゃないかということをお聞きしているのです。
  478. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま、そういう方向で調整をしておるわけでございます。
  479. 中路雅弘

    中路委員 あとの時間で、ミッドウェーの艦載機の夜間離発着訓練の問題に関連して幾つかお聞きしたいのですが、最初に、谷川防衛庁長官がワインバーガー国防長官と八月二十二日にお会いになったときに、この問題について米側からも強い要請があったということが報道されていますけれども米側の要請、そして防衛庁長官はこの問題でどのような意向を米側と話をされたのか、お聞きしたい。
  480. 谷川和穗

    谷川国務大臣 米側と話をいたしましたときに、厚木における訓練の制限がいろいろあって米側は十分な練度の達成がむずかしい、したがって、この問題についてはできるだけ早く解決をしてもらいたいという要請もございました。それに対して私は、実はこの問題は私自身としても目下解決の方向で懸命に努力中であるということを伝えたわけでございます。
  481. 中路雅弘

    中路委員 新聞の報道ですと、この二十二日の首脳協議で、たとえばワトキンズ海軍作戦部長は、厚木で行っている訓練の七〇%を分散させたいので厚木から百六十キロ以内の関東平野周辺に新しい基地を設けてほしいと言っているということが報道されています。米側の代替基地、施設についての具体的な要求についてこうした報道もなされていますが、この中身は事実ですか。
  482. 塩田章

    ○塩田政府委員 米側がわれわれに申しておりますのは関東及びその周辺地区ということでございまして、いまの何キロメートルとかという数字は申しておりません。ただ、その場合の飛行場の長さでありますとか滑走路の厚さでありますとか、そういったことは条件を申しております。
  483. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃった滑走路の長さとか厚さとか、条件を言っているというのでしょう。その条件をお話ししてください。
  484. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま私が申し上げている米側の要求というのは、首脳会談のときではございませんで、その点は御理解いただきたいと思います。  米側が申しておりますのは、滑走路の長さで二千四百メートル、両方に拘束装置をつけた場合には千八百メートルでも可能である、滑走路の厚さの方は、ファントムの重量に耐えるということで二十五センチないし三十センチの厚さを希望しておるということでございます。
  485. 中路雅弘

    中路委員 いま関東周辺の候補地について検討されていると思うのですが、検討されるのは、分散の場合に複数の候補地ですか、どこか一カ所分散のことで検討されているのですか。
  486. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもは、まず第一に、現在の関東及びその周辺地区で既存の飛行場で、ないかということで検討いたしております。その場合、特定の飛行場でどうかというふうにしぼって検討しておるわけではございません。
  487. 中路雅弘

    中路委員 もう御存じのあれだけの耐えがたい騒音を出している問題、この分散ですから、検討する際に住民や自治体の意向を無視することは当然できないと思うのです。それとともに、安保条約六条に基づく協定の実施に伴う国有財産の管理に関する法律がありますが、この第七条に基づいて関係者の意見を当然聞くべきだと私は思います。  この二点、こうした第七条に基づいて自治体や関係者の意見を当然聞くということ、それから、対象の自治体とか住民の意向が十分尊重されなければいけない、意向を無視して分散を強行することは絶対できないと思いますが、お伺いしておきます。
  488. 塩田章

    ○塩田政府委員 いずれにしましても、実施する場合には地元の御了解が要ることは当然であります。  それから、国管法七条の適用の問題につきましては、これは具体の場所が決まった時点で適用があるかどうかを考えるべきではないかと思いまして、現在、どこに行くかまだ全く当てもない状態でございますから国管法の適用について考えたことはございませんが、その時点において考えるべき問題だと思っております。
  489. 中路雅弘

    中路委員 その時点で国管法については考えるということですね。しかし、こうした施設の問題で国管法を適用したことは、いままで全くないのです。「軽微である」ということ、あれをよりどころにして、こうした基地の問題については国管法に一切かけていない。この問題は、あれだけ大きな被害を与えている問題の分散ですから、当然国管法で関係者の意見を十分聞く手続はとるべきだと私は思いますが、いまその時点で考えるというお話ですから、否定はされていないのですね。国管法についても、その対象が具体化された場合には当然検討するのですね。全く検討しないということではないですね。それも考慮に入れて今後検討されるわけですね。
  490. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体案が決まった時点で検討いたします。
  491. 中路雅弘

    中路委員 最近、佐世保にはエンタープライズ、カールビンソン寄港していますし、アメリカの対ソ戦略、柔軟作戦によって日本周辺でのアメリカの空母の運用が今後ふえることは必至だと思います。いま空母ミッドウェーの艦載機の訓練が問題になっていますけれども、今後こうしたふえてくる寄港でまた空母の艦載機の訓練が加わってくれば、当然いままで以上の事態が起きてくるわけですし、対象にされている、いま検討されているところの人たちもミッドウェーの艦載機の分散には当然反対ですけれども、さらに他の空母の訓練も今後それに加わってくることが当然予想されるという不安、心配もあるのですが、ミッドウェーの離発着訓練だけに限っていまの対象をどうするかということを考えているわけですか。
  492. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在、私どもアメリカから要請を受けているのは、ミッドウェーの艦載機についてであります。
  493. 中路雅弘

    中路委員 他の空母の訓練については、要請があった場合にはどうされるわけですか。
  494. 塩田章

    ○塩田政府委員 どういう事態がわかりませんけれども、いま私が言えますことは、ミッドウェーの艦載機についての要請を受けているということだけでございまして、それ以外にほかの空母というお尋ねのようでございますが、ほかの空母であれば、ほかの空母がいわゆる母港化されたときとかいうことを想定しておられるのかと思いますけれども、私どもいまそういう想定をしておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  495. 中路雅弘

    中路委員 厚木そのものの問題ですけれども、これは皆さんもお読みになっていると思いますが、「厚木基地周辺実態調査の概要」という神奈川県がまとめた相当膨大なパンフがあります。この中に、ミッドウェーの夜間発着訓練によって住民にどれほど大きな被害を、耐えがいものをもたらしているかということが詳しく述べられているわけです。  施設庁にもまた防衛庁長官にもたびたび関係の自治体、住民から要請が来ていると思いますが、いまの厚木の耐えがたい夜間訓練、この問題について防衛庁長官はどのような認識を持っておられますか。
  496. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私といたしましては、現在行われている訓練そのものが米軍の艦載機のパイロットの練度の維持のためにはどうしても必要な訓練ということは、基本的に私もそのこと自体は認めておるわけでございますが、しかしさればといって、現在の厚木の使用の頻度をこれ以上に高めていくというようなことにつきましては、厚木の現状からして無理であるというように考えております。  したがって、われわれとしては一日も早く恒久的な案を取りまとめてこの問題の解決に当たりたいと鋭意努力いたしておるさなかでございますが、仰せこれだけ狭隘な国土の中でのことでございましてなかなか思うような解決策をまだいま見出していないということでございまして、私は私なりにこの問題について懸命に目下努力を続けておるところでございます。
  497. 中路雅弘

    中路委員 たびたび関係の住民、自治体から繰り返し要請もしていますが、いま、九月十二日から十月十五日まで訓練がやられていますね。この問題について当該の大和市長から四日、数日前ですね、防衛庁長官施設長官に要請文が提出をされています。その要請文にも出ていますけれども、厚木基地では九月十二日以来、米空母ミッドウェー艦載機の夜間連続離着陸訓練を続けているが、三日夜の訓練は午後五時から十時まで七十ホン以上の騒音が五秒以上続いたのが百六十二回を数え、うち午後七時から七時半までには五十一秒間に一回という物すごさだったということです。このため、市民からの苦情、中止の要請が市役所にも殺到しているということを述べている。そして要請書では「言語に絶する騒音に、乳幼児を抱える母親の悲痛な訴え、老人や病人の寝られないという叫び、会社から帰宅した人など、あらゆる市民から多数の苦情が寄せられている」ということを繰り返し述べて、大和市長もまず夜間訓練の中止をいま要求しているのです。  これを分散させるというそういう問題じゃなくて、こうした過密した横浜の一部、町田から含めた関係の人は百万を超えるでしょう、その上空での耐えがたい離発着訓練は、大和市長あるいは神奈川県知事も言っていますように、ここで中止をするということが住民の多数の要求であるわけです。また、この県の調査の概要を見ましても、調査対象の七〇%以上という多数の人が基地そのものを撤去してほしいという意向にいま変わってきています。こういう事態について、施設長官、中止というのがさしあたっての住民の要望なのですが、どのようにお考えですか。
  498. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま述べられましたような状況ということはもちろん私どもも把握しておるわけでございますが、一方、このミッドウェーの艦載機の訓練というものの重要性もまたわれわれとしては当然否定することができないわけでございまして、私どもの立場としまして訓練を中止するということを要請する立場にはございません。
  499. 中路雅弘

    中路委員 時間が来でいますのでそろそろ終わりますが、もう一点、硫黄島の暫定的な使用というのですか、新聞で報道がありましたけれども、この経過やお考えはどうなんですか。
  500. 塩田章

    ○塩田政府委員 この点も先ほどお答えをしたことでございますが、そもそもこの厚木の問題が起こりましたのは、一方で住民から非常に騒音がきついということでどこか移転してほしいという要請と、一方で米側から言いますと、三沢でありますとか岩国でありますとか、そういうところでやったのでは距離が遠過ぎるといったことからこの問題が発生しておるわけでございまして、したがいまして、硫黄島につきましては三沢の倍以上の距離がございますので、そういう意味で硫黄島がこの問題の検討対象というには余りにも距離が遠過ぎるわけでございます。  そういう意味で、われわれは米側との間に硫黄島のことを検討したことはございません。ございませんが、率直に申し上げまして、いろいろな私的な会合でありますとかプライベートの立場での話題の中では、硫黄島ならば夜間の訓練も自由にできるし、飛行場そのものもりっぱな飛行場があるというような話は出たことはございます。私自身も米側関係者にそういうことを言ったことはございますが、もちろん日本側として提案したことはございません。  ただ、そういったような話題が出ておる経過もございますので、米側としては一度見ておこうという気持ちは持ったのではないかと思います。たまたまそこで、いま自衛隊の関係の訓練基地としての整備も徐々に進んでおりますから、そういったようなことも含めて一般的な視察というようなことで米側が視察に行ったということは事実でございまして、たしか先月の八日だったと思います。その結果は、もちろんわれわれが申し入れて行ったわけではございませんので返答が来るという性質のものではございませんけれども、まあ感触的に言えば、米側関係者はやはり遠くて検討対象にはしにくいというような感触であるように承知しております。
  501. 中路雅弘

    中路委員 最後に、長官に一、二点お尋ねしたいのですが、いまの問題は、結局事実上、関東首都圏の周辺の自衛隊基地が当面対象になるだろうと思うのです。しかし関係の住民は、千葉でも、また茨城県の百里でも静岡でも、みんな自治体ぐるみで大きな反対の声を上げ、要請をしています。こうした自治体や関係住民の意向を無視して強行するということは絶対にしないということを約束をしていただきたいのと、もう一つは、私も先日厚木へ夜行きました。基地を抱えている沖縄選出の私たちの瀬長議員と一緒に行きましたけれども、もう瀬長議員もびっくりされていましたね。沖縄でもいろいろ体験をされていますけれども、あの爆音といいますか轟音というのは、はらわたがひっくり返るようなすさまじいものです。私は、この問題を検討されている防衛庁長官もぜひ一度現地へ行って、どういう現状なのかということも体験をしていただきたい、いま中止の要求が強く出ているその住民の声を直接聞いていただきたいということもあわせて要望しておきたいと思いますが、最後に長官の御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  502. 谷川和穗

    谷川国務大臣 わが国の独立を確保して平和を維持し続けるために、われわれとしてはあらゆる努力を傾注をしなければならぬと覚悟はいたしておるわけでございますが、それに伴って防衛庁としては、米軍の基地のみならず自衛隊の基地につきましても、これだけ狭い国土で、基地周辺の住民の方々には本当に一緒になって御心配をかけ、御苦労をかけてきておるわけでございます。そういう意味で、今後ともこの基地周辺の整備の問題には鋭意努力を重ねていきたい、こう考えております。  この厚木基地の問題につきましては、厚木のごく近くの周辺の方々のみならず、もっと広い範囲の方々にも同じように言えると思いますが、この厚木の周辺の方々だけにこの問題で、特に騒音の問題でありますが、これ以上というわけにはいかない。そのためにも、先ほど申し上げましたように、一刻も早く解決策を得たいと腐心をいたしております。今後どういうふうに努力して、どういうような結論を見出し得るか、実はまだこの段階では申し上げられない段階でございますが、今後とも大いにこれは努力をして解決策を得たい、こう考えておる次第でございます。
  503. 中路雅弘

    中路委員 もう一問だけ。  いまお尋ねしたことですが、現地の問題ですけれども、先日、神奈川県選出の国会議員の知事との懇談の集まりがあったのです。その席上、地元の与党の自民党の議員の皆さんから、この問題は超党派でひとつ取り組んでほしいという強い要望が出ました。自民党の国防部会に属する議員さん、そういう人たちからも強い要望が出ている問題なんですね。私が最後にお話ししましたように、機会があれば長官もぜひ一度現地へ行って、どういう状況かということもひとつ実際実地で調査をしていただきたい。先ほどお話ししましたけれども、この点はいかがですか。機会があればぜひお願いしたい。
  504. 谷川和穗

    谷川国務大臣 この問題は、まさに関係する者すべての努力を集中して解決をしなければなかなか簡単に解決ができない大きなむずかしい問題だ、私はこう考えておりまして、いま御指摘のございましたように、すべての政党の方々から非常に強い御要望ももうすでにちょうだいいたしております。そういう意味で、私も先ほど申し上げましたような姿勢で鋭意努力を続けていこう、こう考えております。
  505. 中路雅弘

    中路委員 終わります。
  506. 橋口隆

  507. 中馬弘毅

    中馬委員 大分夜も更けてまいりまして、長官も長時間お疲れでしょうから、余り細かい問題ではなくて、資料もなく率直にお答えいただいたらいいような問題を少しお尋ねさせていただこうかと思います。  これも細かい問題が大事ではないということではなくて、やはり自衛隊というのは国民の自衛隊でなければならないことは、もう申すまでもございません。多くの国民というのは、細かい法律論を知っているわけでもなければ、条約を知っているわけでもない。あるいは戦術論に詳しいわけでもないわけです。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕 したがって、自衛隊は合憲かあるいは違憲かといったようなことだとか、あるいは集団的自衛権の行使が是か非かとか、それから核の傘が有効か無効かとか、あるいは事前協議の範囲がどこまで必要なのかとか、あるいはP3Cがどんな飛行機なのかあるいはナイキが何キロ飛ぶのか、こういうことはわからぬわけですね。ある意味ではどうでもいいことかもしれない。しかし、要は戦争をしたくない、戦争に巻き込まれたくないというのが、やはり多くの国民の率直な感じなんですね。  そういった場合に、確かにソ連という国があることも事実です。ソ連は余り気持ちのいい国ではないけれども、しかし何分にも相当な軍事力を持った超大国で、これを怒らすことはないじゃないか、何とかうまくやってほしい、これも率直な気持ちかもしれません。またアメリカは、確かに日本との関係で大事な国だ、しかし、最後の最後までアメリカが守ってくれるか、これも少し信頼が置けないというのも、これまた率直な考えかもしれませんね。やはり結局みずからの国はみずからの手で守らなければならない。それも、守るということはただ単に軍備だけでなくて、外交や頭といったことももちろん含めてでございますけれども、そういうことを感じていると思うのです。  しかし、自分の手で守るといっても、核戦争になればこれまた話は別で、そして日本はもちろん、世界人類が滅亡する問題ですから、そこまで備えるということはこれは言うべくして無理な話であろう、これも国民の率直な考えかと思います。しかし、もちろん勇ましいことを叫ぶ人がおられまして、ソ連と対抗するように核兵器を持つべきだとか、あるいは逆に理想論を説く人もあることも事実ですけれども、これはやはり少数がと思います。そのような多数の人たちが、いまの自衛隊あるいはいまの防衛のあり方で率直に疑問に思っている。これに率直にわかりやすく答えていく必要があるのではなかろうか。  今度の防衛白書でも、色刷りの、そして写真も多く載せたのが出ておりますけれども、これを多くの人が読んでいるわけでもないわけです。一般国民の防衛の認識は、やはり発動されることがあってはならないものだ、永久にむだであってしかるべきものなんですよね。しかし、やはり万が一には備えなければいけない。ということは、フォークランドの紛争、アルゼンチンが国威発揚のためにフォークランド紛争を起こすことがある、あるいはベトナムが民族解放の名目でカンボジアに侵攻することがある、そういうときに、そういう国際情勢の中で非武装であっていいとはこれまた思っていないのも率直な防衛のあり方かと思うのです。やはりそういう形で生命、財産、国土が何とか保全されるべきだとは思っているでしょう。しかし、その規模というのは、万が一に備える程度であって、万が一というのをたとえにしますけれども、その万が一に起こることにはもちろん備えなければいけない。それが千一あるいは百一、これはもちろん万一に備えているわけですから十分対応できるわけですね。しかし、百万の一、億の一ということまで備えることは、これはやり過ぎだということもこれまた率直なことかもしれません。そうしますと、このような自衛隊のいまのあり方も含めて、やはりこれもまた自分たちの税金を使ってやることですから、少ない掛金で大きな保険が担保できることが望ましいわけですね。このような認識を持った大多数の国民、そしてそういう人たちが税金を納めているわけでございますけれども、その率直な疑問あるいは単純な質問かもしれませんが、これにわかりやすい言葉で答えていく必要がある。答えてほしいと思うのですね。  ですから、あちこちの町の座談会だとか、そういったところで拾い集めたことを、きょうは中馬弘毅質問するということじゃなくて、そのような方々の率直な疑問なり質問といったものをぶつけてみたいと思うのです。ですから、これをわかりやすい言葉でその方々にお話しされると思ってひとつお答え願いたいと思います。  たくさんあるのですけれども、時間がございませんからその中で一つ二つ紹介しながらやっていきますけれども、まず、いまの自衛隊ですね。近代的な兵器による戦争の時代、これは太平洋戦争のときとは、核は除くとしても、相当軍事技術が進んでいるわけですね。このときに、いわゆる鉄砲担いだ兵隊さんがなぜ必要なのかという単純な疑問がある。これにはどうお答えになりますか。
  508. 谷川和穗

    谷川国務大臣 一つ一つお答えをさせていただく前に、総枠的なことについて申し上げさせていただくことをお許しいただきたいと思います。  私は、現在、防衛庁長官を拝命いたしておりますが、いま一番大事なことは軍縮、軍備管理だと思います。不信感に基づく軍拡競争を続ければ、やはりこれはきわめてゆゆしき事態に陥る。したがって、いま何としてでも軍縮、軍備管理の時代に入り得るような態勢を整えていかなければいかぬ。しかしながら、一九七五年以降、特に七九年前後からの国際情勢考えた場合には、われわれが軍縮、軍備管理の効果的な環境をつくり上げるためには、やはり低位に推移してきた西側のある程度の防衛整備の努力というものをいたして、パリティという感覚が生まれてこないとなかなかこの問題には到達し得ないというふうに私は判断をいたしております。  それから第二点目には、核というものの出現によって大規模な破壊を伴うような全面戦争というものはそう簡単には起こり得ないというふうに思いますのであるからこそ、したがって核の敷居を高めるために地域におけるそれぞれの防衛力の整備をし、抑止の信頼性の効果を高めることによって平和を維持し得る、こういうことを考えていくべきであると思っております。そして、通常兵力においてももしそれが大型化すればやはりいずれかで核の使用というところにつながり得るのであって、したがって日本の防衛を考えた場合には、基本的にやはり一番大事な問題は、当然アメリカとの日米安保条約によって最終的には担保されるけれども、平時常に考えなければならないことは二つあって、一つは日本以外の地域で紛争が起こったときにその紛争の中に巻き込まれて日本が動揺をしないこと、これが一つであるし、もう一つは、日本がみずからの国をみずから守るという意味で、自分でできる防衛力の整備に従って、専守防衛の基本にのっとって日本の防衛力整備をすることが平和を長続きし得るもとだ、こう考えます。  以上のようなことから、もとへ戻りまして、御指摘のございましたこれだけの近代兵器の発達したときに何で小銃を担ぐ兵隊が必要なのか。兵隊という言葉はお使いになられませんでしたが、自衛隊をつくって一体何になるのかという御質問がございましたが、前段に申し述べたようなことから、私どもは陸上自衛隊を中心といたしました通常兵器によって武装した集団も、それから、近代兵器を駆使する海、空の戦力も——海、空の戦力という言葉を使うべきではございません、訂正いたします。実力もともにこれはバランスを持って整備をしていく。もちろん専守防衛という大きな枠の中で整備をしていくことが日本の安全と独立を確保し得る道だ、こう判断をいたしておるわけでございます。
  509. 中馬弘毅

    中馬委員 ですから、もちろんその枠の中での話なんですけれども、陸上自衛隊、定数十八万人、実数は十五万五千ぐらいしかいませんけれども、しかしそれがなぜ必要なのか。防衛費二兆七千億のうち人件費、糧食費が四五%、一兆二千億も払っている。日本のいまの置かれた地理的な状況からしてどういう戦争を想定してこのような、鉄砲担いだ兵隊さんとあえて昔の言葉を使いますけれども、それが必要なのかということを明確に国民に知らせる必要があるのじゃなかろうか。逆に、それが必要ないのであればこれを改める必要もあるんではなかろうかと思うのですが、いかがですか。
  510. 谷川和穗

    谷川国務大臣 特に一九七九年以降のヨーロッパにおきまする各種の防衛力整備の決定の状況とあわせ考えてもそれは言い得ることだと思いますけれども、抑止の効果を高めるために、やはり通常兵力の整備というものは、どうしてもこれはある程度のレベル必要であるということは言い得るのであろうと思います。
  511. 中馬弘毅

    中馬委員 それじゃ国民は余り納得しませんよ。国民の方は、もう少し単純に考えていろいろなことが疑問だなと思うのじゃないかと思うのですね。  それと少し関係しますけれども、海外派兵はしない、ただ守るだけ、しかも他国と陸続きで国境を接していない、それに戦車がなぜ必要なのか、どのような場面で使うのであろうか。いま戦車は九百五十両、装甲車五百三十両もございます。こういうのはどういう場面を想定して使われるのか。
  512. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 陸上自衛隊の果たすべき役割りと申しますのは、いろいろなわが国に対する脅威の事態が想定されるわけでございますけれども、その中のあり得る想定といたしまして、一つはわが国に対する着上陸侵攻というものを想定をいたしますと、陸上自衛隊の場合は、そういったような侵略が仮に起こった場合にはこれを早期に排除するためにできるだけ水際あるいは沿岸地域で阻止、排除をするということがまず第一でございますけれども、さらに侵攻してくる敵に対しましては内陸地域におきまして各種の作戦を行って撃破するということもまた必要になるわけでございまして、そういった機能を海、空の自衛隊と協力をして実施をする中心となるのが陸上自衛隊であるわけでございます。  そういった陸上戦闘を展開をしていく場合におきましては、戦車といいますのは、御承知のように火力、機動力あるいは装甲防護力に大変すぐれている兵器でございまして、そういう意味で陸上防衛力の中核となるものだと思っておるわけでございます。それからまた、戦車は相手方の戦車に対する対戦車火器としても有効な装備であるわけでございまして、わが国防衛のために必要かつ重要な装備であるというふうに考えておるわけでございまして、そういう考えに立って戦車の整備を進めておるわけでございます。こういったような力を持つこと自身がまた究極的には抑止力を構成していくというふうに私ども考えておる次第でございます。
  513. 中馬弘毅

    中馬委員 それでもやはり国民は納得しないのじゃないですかね。陸続きで国境を接しているならば、機甲師団が国境を越えて怒濤のように入ってきて散開する、それを迎え撃つにはどうしても多くの戦車を並べておく必要もあるでしょう。しかし、海ですよ、海に囲まれているのですね。そうすると、そこに戦車がひとりで上がってきません。必ず船で、あるいは場合によっては飛行機で落下傘でおろす、こういうことになるわけです。そうするならば、それを事前に撃ち落とすことの方が大事ではなかろうか。日本のようなところでそれが上がってきたときには、いや逆に言えば、それが上がってくるような状況であれば、制海権も制空権も全部押さえられておるはずです。そういうのが押さえられずにのこのこと輸送船団が上陸するばかはいないので、そうしますと、そのようなものが果たして要るのだろうか、もう少し別の方に使うべきではなかろうかというのが、こういうことを御質問になる国民の疑問のはずなんです。それにいまのお答えでは納得されないと思いますよ、もっとわかりやすい言葉でお答えしてあげないと。
  514. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 わが国の地理的特性といたしまして、御指摘のように四面環海であるという状況があることは事実でございまして、したがって、わが国の防衛力あるいは防衛構想を考える場合にそういった条件を常に念頭に置く必要があるわけでございます。御指摘のように、万一わが国を侵略をしようということであれば、それは当然に経空、つまり空からの攻撃あるいは経海、海を経由しての攻撃ということがルートになるわけでございますが、御指摘の海に囲まれているからそう簡単には来れないのではないだろうかというような御疑念、これもよく聞くところでございます。しかしながら、近代兵器の発達した今日におきましては、この海に囲まれているという障壁の力というものが昔に比べますとかなり低くなっているのではないかというような見方も有力でございまして、そういう意味におきまして、私どもはそういった経空、経海の侵略の可能性ということを排除するわけにはいかないというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、そういうものに対処しますのには、もちろん水際ないしは沿岸の先の方でできる限りこれを排除するということも当然考えるわけでございまして、そのための装備体系といたしまして、航空自衛隊の機能あるいは海上自衛隊の機能、あるいは陸上自衛隊でもいろいろな対舟艇火器の整備とかいったような装備が必要でございますが、と同時に、万一それが岩上陸をした場合にはどう対処するかという態勢も必要なわけでございまして、そういう意味で防衛力と申しますのは縦深性のある体系を持っていないと真の抑止力にはなり得ないというふうに私ども考えている次第でございまして、そういう意味におきまして、陸上自衛隊はやはりその中核として必要でありますし、戦車の機能も決して無視することはできない、そういうふうに考えている次第でございます。
  515. 中馬弘毅

    中馬委員 多々ますます弁ずで、もちろんそれもそれ、それはそれなりに有効かもしれませんけれども、しかし、限られた、あるいは逆に軍事大国にならないといった、あるいは周辺の国に脅威を与えないといったことまでも含めたときに、先ほど言いましたように、もう少し水際で、優秀なレーダーでそれを把握しミサイルで撃ち落とす、沈めてしまうといったことの方にもう少し力を入れる方が大事だというのが、やはりこれもある程度物のわかった人の考えじゃないかと思うのですけれども、どうなんですか。
  516. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 もちろん、その先生指摘のような機能が要らないわけではございませんで、そういったような機能も当然に重視をしなければいけないということでございますが、では、そういうものだけで足りて陸上自衛隊が不要かと申しますと、それは決してそうではないだろうと思いますし、そのことは十分御理解をいただけることではないかと思います。要は、各種の防衛機能というものを総合的に組み立てていく、そこに縦深性のある防衛力を形成をしていくということが基本にあるべきであって、そういった考え方に立ちまして、「防衛計画の大綱」に従いまして私どもは所要の防衛力を均衡のとれた形で整備をしていこうというふうに施策を進めておる次第でございます。
  517. 中馬弘毅

    中馬委員 いや、陸上自衛隊が要らないと私は言っているのじゃないのです。その機能の置き方、ウエートの置き方。場合によってはこういうことを言ったら陸上の方がひがんで、空、海の方はそれはそうだ、そうだとおっしゃるかもしれませんけれども、そういうそれぞれのセクショナリズムの話じゃないのですね、私の言っているのは。そのことは御理解いただきたいと思います。  その陸上自衛隊なんですけれども、大半が北海道に配備されていますよね。しかし、もし裏日本や九州に侵攻された場合に、兵員の移動はどのようにして行うのか。もちろん、そういう状況の中では津軽海峡は封鎖されておるかもしれませんし、青函トンネルはそういったものを通すようにはなっておりません。それから国道の橋梁の強度も七四戦車を通すようになってないことは、私が何遍も指摘しているとおりでございます。それから、最近のようにすべてを電化した中で、電気を少しとめられると、もう石炭の機関車がないわけですから、なかなか輸送はできないということになっちゃうわけですね。そういう点についてはどうお考えなんですか。
  518. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在の五十一年に策定しました「防衛計画の大綱」の中におきましては、陸上自衛隊はいかなる地域における事態にも対処できるように均衡のとれた配備をしようということでやっておりますことは御承知のとおりでございまして、これを全国の地域の特性を考えまして、北海道を道北、道央、道東、道南というように分けたり、あるいは東北、北陸とかいったような各地域に応じましてそれぞれに各師団を配置する、そういう考え方で陸上自衛隊の編成を考えておることはもう御承知のとおりでございます。  そういったことで、有事にどこに来るかわからないということはもちろんでございますが、いかなる地域において事態が生じましても迅速に初動の動作をとれるように平素からいろいろと検討をしておるわけでございまして、陸上自衛隊自身がそういった行動のできる能力を持つためにいろいろな事態の能力を整備するということも必要でございまして、そういった装備品も現在の防衛力整備の中で逐次進めていることは御承知のとおりだと思います。
  519. 中馬弘毅

    中馬委員 私が国民を代弁して言ったことのお答えになっていないような気がするのですけれども、最初にも言いましたように、わかりやすい言葉で、平易に理解をさせる努力をしなかったら、いまのような抽象論を言っておったところで国民は納得しませんよと言っているのです。国民が納得して、やっぱり協力しようじゃないか、われわれだって自分たちの生命、財産が大事なんだということでもっともっと協力するためには、こういった疑問にももっと率直にわかりやすく答えていく必要があるのじゃなかろうか、それを私は言っているわけでございます。  シーレーンの防衛についても同じなんですね。日本の輸送船舶を南海上で撃沈せねばならないような敵性国家があらわれるとして、なぜ南海の奥の方だけで日本の船だけを沈めるのか、なぜ本土の方を攻撃しないのかといった疑問もまた町の中ではありますよ。
  520. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げましたように、わが国は四面環海の国でもございますし、それからまた、資源の多くを海外に依存をしているというような特性を持った国家でございます。したがって、国の安全保障を考えるという場合にはそういった特性に応じて考える必要があるわけでございまして、わが国国民の生存を維持していくという観点から申しますと、海上交通の安全を確保していくということはやはり防衛の非常に大きな使命ではないかというふうに考えておるわけでございまして、事態がどういうふうなことが起こるかということは、これは千差万別でございますから具体的にはなかなか特定をしがたい点はございますけれども、少なくとも海上交通の安全を確保するための力をわが国としても持っている必要があるということで海上自衛隊の整備を進めているということでございます。
  521. 中馬弘毅

    中馬委員 それは防衛白書に書いてあることで、それでは一つも国民の疑問に答えてないじゃないですか。そういうことをやっているからいつまでたっても自衛隊というのが理解をされないし、また、そのような形で日本の国の防衛をつまらぬ観念論だけでやってしまって、本当の意味日本国民の生命、財産を守るという形にいつまでたってもならないのではないですか。  もっと身近なことをみんなは心配していますよ。戦争が始まったら戦術的にいかに戦うか。勝つか負けるか、それはともかくとして、いまのこの社会の中で自分たちの日常生活はどうなるのだろうか。昔なら違います。それぞれが自分たちで生きていくことができました。それぞれ備蓄を持っていました。水も、田舎であればもちろん一年の飯米を持っていました。普通の家庭でもしちりんやまきや炭もありました。しかし、いまはどうですか。すべてが電気ですよ。電気がとまったいまの日常生活、その晩の食事のことから考えてください。あるいは水道がとまった場合に飲み水をどうするか。昔は町の中でも少なくとも一つか二つは井戸があったかもしれません。いまはないですよ。飲み水も確保されない。もちろん、先ほど言いましたようにガスがほとんど普及していますから、煮炊きもできない。これは戦争どころじゃなくなってくるのではないですか。パニック状態ですよ。  そういう環境も整備した上でなら、そういうことが起こっても、われわれも耐えていこうじゃないか、このぐらいのことならがまんしてやっていける、同時に、そういう不測の事態を想定して、そういうことのためにある程度軍備も持っていこうじゃないか、これならわかるのです。そちらは全くなおざりにしておいて、軍備を幾らふやす、何をふやす、これじゃ納得されませんよ。大臣、どうお考えですか。
  522. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は、一人の政治家として物を考えたときに、最終的にはわが国国民の意識であろうと思っております。自分は自分で守るということが確立をするかしないかがこの国のこれからの非常に大きな課題であろうかと思っております。いかに大きな力が働いても、その大きな力が働くことだけで簡単に物事は解決をしないということは、戦後三十八年の各般の地域的な紛争を見ましても明らかでございます。したがって、わが国国民がみんな自分の身をしっかり守るということに徹していくことが、やはりわが国の独立を最終的には確保していく一番基本の問題であろうと思います。  しかし、振り返って考えてみますと、戦後占領された国民でございますが、占領軍はわが国の武装解除をしたわけであります。その間、日本国民は自分の国をほかの国が守るということがあり得る経験をしたわけでございまして、非常に厳しい経済の復興の時期でもあったこともあって、今日なお、できることなら防衛費についてもできるだけ低位で済ましていくことの方がよりベターであるというような意味で、必ずしも防衛問題あるいは安全保障の問題について国民が熱心にこれを討議する、議論するというようなことにはなれていなかったかもしれません。しかし、ここ最近に参ってにわかに、いろいろな国際情勢の変化があったせいかどうか存じませんが、日本国民の中でもそういう問題についてずいぶん熱心に身近な問題として、現実的な問題として議論をし始める風潮があるという感じがいたします。その意味で、いま中馬先生は一番基本的な問題を御指摘になられたのではないかと思っております。むしろこれからわれわれがみんなで考えていかなければならない問題を幾つも抱えているところに来ているというふうに私は感じておるわけでございます。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕
  523. 中馬弘毅

    中馬委員 そういった疑問が町にあふれていること、それを、先ほども言いましたようにそれぞれ具体的にわかりやすく理解をさせて、そして、基本的なところからちゃんと安心もさせて、日常生活における危機対応能力、これはただ戦争勃発のときだけじゃなくて、三宅島の噴火じゃないですけれども、あんな大災害の場合だって十分にそれがまた機能するわけですから、そういったことを考えた町づくりだとか備蓄の問題、こういったことをちゃんと施策もあわせてやった上で、そしてわが国の地理的な状況を考え、あるいは国民の納得のいく、そういう手法も得た上で、私はただ少なかったらいい、多かったらいいと言っているわけじゃないのです、効率的に、本当に有効に、そして国民も納得する防衛体制をつくってもらいたい、そういう意図で言っているわけでございまして、細々としたことはいき言っておりません。時間は少し残しておりますけれども、そういうつもりで今後処していただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  524. 橋口隆

    橋口委員長 次回は、来る十一日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十三分散会