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1983-10-04 第100回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十八年九月八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 登坂重次郎君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 森   清君 理事 渡部 恒三君    理事 後藤  茂君 理事 水田  稔君    理事 長田 武士君 理事 中野 寛成君       天野 公義君   稻村佐近四郎君       植竹 繁雄君    浦野 烋興君       小川 平二君    越智 通雄君       奥田 幹生君    梶山 静六君       亀井 静香君    木部 佳昭君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    中川 秀直君       中島源太郎君    野中 英二君       鳩山 邦夫君    宮下 創平君       粟山  明君    上田  哲君       上坂  昇君    清水  勇君       城地 豊司君    中村 重光君       渡辺 三郎君    岡本 富夫君       北側 義一君    横手 文雄君       小林 政子君    渡辺  貢君       石原健太郎君 ————————————————————— 昭和五十八年十月四日(火曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 登坂重次郎君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 渡部 恒三君 理事 後藤  茂君    理事 水田  稔君 理事 長田 武士君    理事 中野 寛成君       天野 公義君    植竹 繁雄君       浦野 烋興君    奥田 幹生君       梶山 静六君    亀井 静香君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    中川 秀直君       中島源太郎君    鳩山 邦夫君       宮下 創平君    上田  哲君       上坂  昇君    清水  勇君       城地 豊司君    岡本 富夫君       北側 義一君    横手 文雄君       藤原ひろ子君    渡辺  貢君  出席国務大臣         通商産業大臣  宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君         中小企業庁長官 中澤 忠義君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  仲村 規雄君         国税庁税部所         得税課長    岡本 吉司君         国税庁調査査察         部調査課長   木下 信親君         文化庁文化部宗         務課長     大家 重夫君         農林水産省食品         流通局商業課長 高橋銑十郎君         日本国有鉄道常         務理事     橋元 雅司君         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ————————————— 委員の異動 九月十九日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     野坂 浩賢君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     上坂  昇君 十月四日  辞任         補欠選任   小林 政子君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     小林 政子君     ————————————— 九月八日  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案北側義一君外二名提出、第九十四回国会  衆法第一六号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律  案(長田武士君外二名提出、第九十八回国会衆  法第二号) 同月二十七日  織機登録制の存続に関する請願橋本龍太郎君  紹介)(第二四号)  同(保岡興治紹介)(第一四七号)  岩手県をテクノポリス圏域として指定に関する  請願小沢一郎紹介)(第一三五号)  不況対策に関する請願小沢一郎紹介)(第  一三六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 登坂重次郎

    登坂委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する事項  中小企業に関する事項  資源エネルギーに関する事項  特許及び工業技術に関する事項  経済計画及び総合調整に関する事項  私的独占禁止及び公正取引に関する事項  鉱業一般公益との調整等に関する事項 以上の各事項につきまして、議長に対し、国政調査承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  エネルギー基礎素材及び鉱物資源に関する諸問題を調査するため小委員二十名よりなるエネルギー基礎素材及び鉱物資源問題小委員会並びに  流通に関する諸問題を調査するため小委員二十名よりなる流通問題小委員会を、それぞれ設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  両小委員会の小委員及び小委員長選任につきましては、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  両小委員会の小委員及び小委員長は、委員長において追って指名し、公報をもってお知らせいたします。  なお、小委員及び小委員長辞任補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 登坂重次郎

    登坂委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
  9. 上坂昇

    上坂委員 ことしの五月、九十八国会で、海外商品取引の問題について質問をいたしました。ちょうどことしの一月に、海外商品取引受託規制法が施行になりました。それに基づいて、その後のいろいろな問題が出てきておりますので取り上げたわけであります。そのときに、プラングッド・インベストメント・ジャパン株式会社、これは農水省が立入検査をやった事件であります。それから、日本貴金属株式会社、これは通産省業務停止命令を下したわけであります。もう一つ東海交易というのを悪徳商社として取り上げました。そして特に、商品取引のまがい商法といいますか、豊田商事というのを取り上げたわけでありますが、きょうは、この豊田商事に特にしぼって質問をいたしたいと思います。  いままで商品取引においては、先物におきましても、またブラック、現物まがい商法と言われるその市場におきましても、非常に多くの被害が出ておりますが、その被害者相談相手になって精神的な支柱を務めてきました悪徳商法被害者対策委員会というのがあります。そこに最近、金の現物取引まがい商法被害を受けた人たちの訴えが、というよりも相談がたくさん集まっておるわけであります。  昨年、五十七年の一月から十二月までの一年間にどのくらいの相談があったかと申しますと、男子で二十件、女子が八十件、合計百件であります。その被害総額は三億二千九百万円に達しておる。一人平均三百三十万円になっています。問題なのは、このうち、その被害に遭っている人たちがどういう年齢構成になっているかということでありますが、五十五歳以上の人が四十三名おりまして、そのうち男子が十一名、女子が三十二名であります。特に、この五十五歳以上の中で六十歳以上という人が三分の一を占めております。  それから、ことしに入りまして、一月から八月までの八カ月間に、すでに男子十九人、女子五十九人、合計七十八件の苦情対策委員会に寄せられている。その総額が二兆五千百万円であります。一人平均で昨年同様三百二十万円に達しています。そして、そのうちの五十五歳以上の年齢構成が、男の人が十一人、女の人が二十五人で三十六人、そして、この三十六人のうちのやはり三分の一が六十歳以上のお年寄り、一番ひどい人になると八十三歳という人がおります。  このことはどういうことを意味しているかというと、先物取引ではなくていわゆる現物のまがい商法をやる場合には、女性が非常に被害が多いということ、それからもう一つは、お年寄りが非常に被害者になっているということです。ねらっているところは、正常な判断を下すような人ではなくて、むしろまあ一人暮らしをしている女性とか老人とか、だれにも相談をすることができないというような人たちとか、それから病床に入っていてだれもめんどうを見てくれないので困っている人、そういう人が対象になっているというところに問題があるわけであります。  私は、ここに一つ被害者の実例を持っているのでありますが、この豊田商事というところのいわゆる何というか、勧誘員というのですか、外務員というのですかね、そういうのが訪問をして、まあ言ってみればお金を巻き上げている。この人たち、精神分裂症の奥さんがいる。そして老人性痴呆症お母さんがいる。このお母さんが八十一歳。そしてその金額ですね。奥さんの方は、娘さんですね、五十三歳でありますが、百万円。それから八十一歳のお母さんの方は二百三十八万九千七百円、これだけ金(きん)を見せ金にしてその代金として持っていってしまう、こういうのが出てきました。それで、これはいま私が言いました病状でありますが、ここに西宮市甲子園の池田医院というところの院長の診断書があります。老人性痴呆症という八十一歳の御婦人、それからもう一人は茨木市高田町の医師の診断書があります。これが第一の例であります。  第二の例は、これも同じ豊田商事被害者でありますが、これは一人暮らしの七十九歳のお年寄り、東京都に住んでおるわけですが、この人も老人性痴呆症診断書があります。この人はことしの四月に六百八十六万円、金(きん)を見せ金にして、金(きん)を買ったことになるわけでありますが、六百八十六万円取られている。そして五十八年の八月にまた六百八十万円ほど取られそうになったのですが、ここではそこの近所にいた娘さんが気づいてこれをとめて警察の方にも届けを出したのですが、これは刑事事件にはならなかったわけであります。  こういうふうに非常に被害が多くなってまいりまして、これからその被害がどんどん出てくると自殺者なんかも出てくるおそれがあるんじゃないかというふうに私は心配をしているわけであります。  そこで、問題なのはどういうことかというと、この豊田商事は金(きん)を勧誘員が持ってきて、そしてお年寄りに見せるわけです、こういう金(きん)がありますと。そしてこの金(きん)は、あなたが幾ら幾ら買えば——六百万円ですと大体二キロになりますか、一キロですと三百万円ちょっとで、それを見せて一キロお買いになりますか、二キロお買いになりますかというかっこうになるわけですね。そして、一キロ買うということになれば、それを売ったことにして、お金を取るわけです。ところが、そのお金は取るんだけれども、その金(きん)は置いていくかというと絶対に置いていかないのです。置いていったのではこれは現物取引ですから、これはどこで買ってもいいわけですから、置いていかないのです。そして、その金(きん)をもう一回、あなたが持っていたのでは盗難に遭ったりすると危ないからこれは置いていかない、私の方で預かって運用しましょう。そして、金(きん)は値が上がりますからきっと利益が出るから私の方で預かって運用します。これはスイスとか何かに預けるというようなことを言うらしいですね。そしてそのかわり、その純金を預けますという形になれば純金ファミリー証券という預かり証をちゃんと出すわけです。  そして、その金(きん)を預かっただけではなくて、これを豊田商事の方は賃借りをする。賃料を払って借ります、こういうかっこうになって、大体一割の賃借料というんですか、それを置いていくわけです。ですから、三百万円というと三十万円置いていくわけです。二キロの場合には、六百万円もらえば、六十万円置いていくわけです。そういうやり方をして、そしてその金(きん一は置いていかないで持っていってしまう。そうすると、何というんですか、お客の方は六十万円あるいは三十万円とか一割もらって、そして三百万円とか六百万円は向こうに預けてしまう、こういう形になっているわけです。  それで不安になりまして、途中で解約をするという申し込みをしますと、どういうことになるかというと、前にやったのが賃借料で、途中で金(きん)を返すことになるんだから前の預けた三十万円を下さい。三十万円くれ。そしてそのほかに三百万円のいわゆる三割、九十万円ですね、九十万円は違約金として下さい、こうなるわけです。ですから百二十万円取られてしまうというかっこうになってしまう。ですから、百二十万円取られたんじゃこれはかなわないから、そこでみんな、じゃあというんで、何というんですか、考え直すというのか、また続けてしまう、こういう形になるわけです。  そして今度は、大体契約の場合には一年後に解約をしようとすると、そのときにまた金(きん)は持ってくる場合もあるし、持ってこない場合もあるけれども、同じようにして絶対に相手には渡さないのです。そして継続をさせてしまうというやり方をしておるわけです。  こういうやり方で、実はこの会社は去年は二十数店の支店を持っていたんですが、ことしは実に四十数店に増加をしていて、この四年くらいの間に実はいま従業員が四千人から五千人くらいいるんじゃないかというふうに言われておるわけです。その人が九州から北海道まで全国的に散らばって、そして勧誘をやっているわけです。ここのサンシャインというところに行きますと、何階ですかわかりません、私の知人が行って調べてきたんですが、見てきたんですが、サンシャインのフロアを一つ借りまして、そこではもう百人くらいの女の人がひっきりなしに電話を無差別にかけているわけですね。そしてちょっとでも脈があって、話を聞きましょうというようなかっこうになったら、もう外務員といいますか、勧誘員がぱっと飛んでいく、こういうシステムになっているわけです。  私がおそれるのは、こういうかっこうで集めた金(かね)が一体どういうふうに使われているのだろうか、また、もし一年後の解約のときにすべての人がみんなで取り立てをして金(かね)をくれ、こういうことになった場合に、果たして渡すだけの金(きん)があるのか。金(きん〉は運用しますから、売ったり買ったりしていますから、なくなる場合があると思うのです。その場合にはそれに見合うところの返すお金が一体あるのかどうか、ここは非常に問題だ。もしなかったとすれば、これはえらいことになる。  そこでこの前の質問のときも、私は擬装倒産などということも考えられて、そのときには大変なパニック的な状況が起きるのではないか。集めた金(かね)が、巷間うわさされるところによりますと、四百億か五百億かというふうに言われております。あるいはそんなものじゃない、一千億ぐらいになっているんじゃないか、こう言う人も実はいるわけであります。こんなところで問題が起きたら大変なことになりますから私はおそれるわけであります。  したがって、豊田商事が本当に良心的な会社であるならば、その裏づけとしての金(きん)を保有し、あるいはまた金額をちゃんと準備する、そこまでいけばこれはりっぱな商売になるだろうと私は思うのですが、そういうものができないということになりますとこれは大変な問題でありまして、これは放置するわけにはいかないのではないか。そういう点でお聞きをしたいわけでありますが、これはエネルギー庁の鉱業課で扱っているそうでありますが、こういう実態を一体どの程度把握しているのか、ここのところをひとつ、通産省としての考え、いままでのお調べになったことについて、あるいは苦情を受けたものについての報告をいただきたいと思います。  それからもう一つは、そういう苦情なり報告なり調査なりを通じてどういう対策をやってきたのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。  まず先にこの二つだけ聞きまして、その後質問をしたいと思います。
  10. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 上坂先生指摘豊田商事という会社につきまして、この会社パンフレットによりますと、昭和五十六年四月に設立されております。社長が永野一男氏、本社大阪でございます。資本金が二億五千万円でございまして、事業所の数は、先ほど先生指摘のように支社が七つ、事業所が四十六ございます。そのパンフレットによりますと社員が五千六百八十二名でございまして、年商が五十七年度実績で三百五十億円と書かれてございます。  なお、私ども直接豊田商事株式会社営業内容等について調査したことはございませんけれども、私ども本省及び通産局に消費者相談室というのがございます。そこに寄せられました相談事例の中に金(きん)に関する部分がかなり多く含まれております。ちなみに、昨年度全体で相談件数が、いろいろなものでございますけれども、六千四百三十八件ございましたけれども、そのうち金の取引にかかわるものが六百六十七件、一〇%でございました。  なお、その相談件数にかかわります金額を挙げてみますと、十七億七千四百八十九万円ということになってございます。その中にはいわゆる金の現物まがい商法にかかわるものかかなり含まれておるわけでございます。本年度に入りましてからも、四−六月の実績でございますけれども、やはり金の取引にかかわるものが二百六十七件ございまして、全体の一四%を占めている実態でございます。  それから第二番目の御質問でございますけれども、私ども、このような金の現物まがいもの商法というものに関しましての対策でございますけれども、やはり一般の方々が金の地金を買うことに対しましてはいろいろ模造品排除の問題あるいは売買に伴うトラブル防止の問題がございます。こういう観点から、信用のある金の地金商から買ってもらいたい、それも店頭で現物と現金との交換で購入をしてもらいたいというふうに考えております。こういう点からPR、あるいは消費者啓発というのでしょうか、PRを第一にいたしてございます。  健全な金の地金流通機構といたしまして、五十四年の十月に社団法人日本金地金流通協会というものを設立してございます。この協会登録店制度をとっておりますので、この登録店売買をいたせば非常に健全な金の取引ができるというふうに考えております。また、この協会を中心にいたしまして、通産省もやっておりますけれども、健全な金の売買という点でのPRテレビ、新聞、雑誌等で行っているところでございます。
  11. 上坂昇

    上坂委員 通産省でも、いろいろ関心を持たれて、相談もたくさんありますから調査せざるを得ないという形でいま調査をされたのだと思いますが、PRも非常に大切でして、何といっても啓発することが一番大切でございますけれども、なかなか行き渡らないのですね。特に、老人なんか一人で住んでいる場合には、自分でテレビをつけるわけでもないし、ラジオを聞くわけでもないし、そういう人たちのところへ上がり込んじゃう。  たとえばここに「実業界」という雑誌がありますけれども、この「実業界」のことしの十月一日号に「インサイド・レポート」というのがあります。そこに「金の”現物まがい商法”で暗躍する豊田商事実態」というのが書かれています。それを見ますと、女のセールスマンの人が八十三歳のひとり暮らしの家に行って、何から何までめんどうを見て三日間ぐらい泊まり込んじゃったというのです。そうして三日目くらいに、どうもなかなか言うことを聞いてくれないということでさめざめと泣いて、くどいて、とうとう九百六十万円の代金と引きかえに金を買わせることができた、こういう記事もあるわけであります。  ですから、非常に問題なので、私がさっき言ったように金(きん)が現実にその商事にあればいいのです。あるいはそれに見合うお金が用意されていれば、それは私は確実だと思う。そういうことで、金(きん)の保有はあるのかどうか、ここまでお調べになったかどうか。それから、もし金を買うとすれば、いま言ったように金地金流通協会がありまして、ほとんどそこに会員になっている業者の人たちから買うことになると思うのですね。ですから、金をどのくらい購入したかということも一年間の動きで大体わかるわけです。そうすると、豊田商事がどのくらい買っているかということもつかめると私は思うのですね。そういう点で、わかっていればそれをここで発表していただきたいと思います。  それからもう一つ、この「実業界」の本には「集めた資金商品相場に投入して大負け」と書いてあるのですよ。これはいま言ったように集めた金一かね一をそっちの方に流用して  これはどういうふうに使うかということは会社の考えだからとやかく言うわけにはいきませんけれども、国内の商品取引資金にして、五十七年度は輸入大豆と精糖で相場を張った。そうして数十億円マイナスになったのではないかと言われている。  これは農林省の方にお聞きしたいと思いますが、乾繭ですね、実はことしも取引を行っている。しかし、これは豊田商事名前でやっているのではなくて、恐らくダミーとか会員である取引員を通じてやっているのだとは思いますが、委託者としての名前としては豊田商事名前は出てこない、こういうふうにいま言われているわけです。その辺のところを、調べてありましたらお聞かせをいただきたい。
  12. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 豊田商事株式会社社団法人日本金地金流通協会会員ではございません。  なお、この協会の正会員は三十四社でございます。  また、豊田商事株式会社がどのくらい金を保有しているかにつきましては、私ども承知しておりません。
  13. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答えいたします。  豊田商事の集められた金が商品取引所に入って先物取引用に使われたのではないか、そういう御質問でございますが、昨年、そういう疑いがあるということで農林水産省といたしましても調査をいたしまして、取引所を伴って調査をいたしまして、たとえば豊橋乾繭、前橋乾繭等においては、取引所の責任において、特定の業者について売買停止あるいは外務員の一定期間の停止あるいは過怠金等についての処分をやって、そのような疑いのあるものについては適正な措置をとってまいった次第でございます。
  14. 上坂昇

    上坂委員 答弁が聞いていてよくわからないのだけれども、結局は豊田商事だということはわからないということなんですか。
  15. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答えいたします。  先生も御指摘のように、豊田商事という名前ではやっておりませんで、その辺は確実にそうだということは明確になりませんでしたが、非常にその疑いが強いというところで、一定の取引会員等について、先ほど申し上げましたような処分をやった次第でございます。
  16. 上坂昇

    上坂委員 わかりました。非常にそういうことがあり得るということはいまお話を承って納得したわけでありますが、勧誘する場合に、いわゆる金地金純金というのは本当にいいものだというのでセールスマンが持って歩いている、いろいろ書いているのがあるのです。その中にたくさんありまして、七十数項目、これをみんな覚えちゃうのですね、そして勧誘するわけなんですが、そこに無税だ、無税だというのがかなり出てくるのですよ。無税で目減りがしないのだ——これは目減りはしないわけなんです。  それから、日本では金はどんなにたくさん持っていてもこれは税金がかからないのだ、こういう宣伝をするわけです。そのかわり賃料として、借りる場合に一割向こうへ渡すわけです。その場合、六十万円くらいだと聞いておるのですが、そこまでは税金がかからないけれども、それ以上になると税金がかかるという表示があるのです。そうしますと、もし七十万円置いていくとすれば、それはいわゆる地金を買った方では結局収入になりますね。そうすると、七十万円以上になればこれは無税でなくなっちゃうと私は思うのです。だけれども、ここでは無税だ、無税だ、こういうふうになっておるわけです。ですから、PRする場合も、もし一割のお金をもらって、その一割がいま言った課税の上に出るというものであれば、その買った人は収入になってしまって、これは税務署が入れば税金を払わなければなりませんよ、こういうPRもやはり必要になってくると私は思うのですね。その点で、このことについては、大蔵省の方が来ておればひとつお答えをいただきたい。
  17. 岡本吉司

    岡本説明員 一般的に申し上げまして、資産の貸し付けによる所得につきます課税でございますが、現在の所得税法で、その資産が不動産ということになりますと、不動産所得といたしまして課税することになりますし、本件のように不動産以外ということになりますと、雑所得として課税の対象になります。したがいまして、お尋ねのような件につきましては、これが金地金を貸し付けたというようなことになりまして、賃貸料、貸付料を得たということになりますと、その収入につきましては、いま申し上げましたように雑所得として課税の対象になるわけでございます。  いま先生から六十万円云々というお話がございましたが、ちょっとそれはわれわれ理解しかねる話でございまして、雑所得が生じますと、その生じた価格に対しまして税金がかかる。もちろん申告をどの段階からしなくてはいけないかという問題がもう一つあるわけでございますけれども、通常の場合ですと二十九万円という基礎控除がございます。したがいまして、この雑所得、得ました所得が、ほかに全然所得がないと仮定いたしまして、この二十九万円を割っていれば、少なくともそれは基礎控除以下でございますので税金がかからない、こういうことでございます。
  18. 上坂昇

    上坂委員 もう一つ聞きますが、三十万円になっている場合、二十九万円を割ってない、以上になっている場合には、雑所得として税金の対象になる、こういうことですか。
  19. 岡本吉司

    岡本説明員 ほかの所得がないと仮定いたしまして二十九万円までですと、その申告の段階で基礎控除ということで所得が落ちてしまいますので、税金が結局、計算するとゼロになるということでございます。二十九万円を超えますと、それに対しまして一定の税率で税金がかかってくる、こういうことでございます。
  20. 上坂昇

    上坂委員 いまの問題もやっぱりPRの中で、そういうような場合には決して無税ではないんだ、だから税金も取られますよということでの忠告を出してもらうように、そういうものも何かに入れてもらうようにひとつお願いをしたいと思います。  そこで、問題なのをもう一つお聞きいたしますが、実は私はここに写真を持っている。先に見せればよかったのですが、だれかこっちへ来てこれを見てください。文化庁の方ですね。これをお見せします。  実は最近、豊田商事があるいはその関係者からかどうかわかりませんが、宗教法人の認可申請が大阪府に出された、こういうふうに聞いておるわけです。この辺についておわかりでしたら、それのいきさつといいますか、そしてまた、もし申請が出されているとすれば、その申請に対してどういう措置がなされたのかというところまでお答えをいただきたい。
  21. 大家重夫

    ○大家説明員 お答えいたします。  文化庁の宗務課長の大家でございます。  宗教法人の所轄でございますが、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を所管庁といたします。他の都道府県内にある宗教法人を包括する宗教法人にあっては、その所管庁は文部大臣と、こうなっております。  ただいま御質問豊田商事あるいはその関連の者から大阪府に宗教法人の設立申請がなされたか、あるいはその進捗状況はどうかということにつきまして、大阪府に早速問い合わせたわけでございますが、現在までのところ、そういう設立申請は出ていないということでございます。  それから、この設立申請についてどういう態度かという御質問でございますが、宗教法人というのは、宗教法人法第二条にこうございます。「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする」団体である。お尋ねの件につきまして、設立に係る規則の認証申請があれば、果たして宗教団体の実体を備えているのか、あるいは法令違反の規則がないのか、その他組織に不備があるかどうか、そういった点を慎重に審査して慎重に対応するように所轄庁に対して指導してまいりたい、かように考えております。
  22. 上坂昇

    上坂委員 いまそちらにお見せした写真ですね、これはいま大阪の豊田商事会社の中につくられているいわゆる宗教関係のいろいろな設備、大変な設備が行われています。そして九月二十六日の朝日新聞の夕刊に「ビル内に異様なムード豊田商事宗教施設 地獄絵や水子観音」とかなり大きく出ています。この写真がそれによって裏づけられているわけでありますが、かっていわゆるネズミ講、天下一家の会、これがやはり宗教法人に移行しまして、そこへ財産をみんな移してしまって、そしていっぱい集めた金をそちらへ移してしまったために脱税ができるようになりましたし、宗教法人ですから税金が取れないということです。それで資産の温存を図っていく、こういう例があります。  したがって、そういう形のものがもしこういうかっこうで移されているとすれば、これは決して、いまお答えがあったようにいわゆる宗教の教義を広め、またその信者に対するところの教化育成、そういうものをするためのものではなくて、財産隠しのいわゆる隠れみのになる、こういう形になったのでは、これは宗教団体とは言えないと思うのです。したがって、それだけの設備をつくるわけですから、恐らくただ観覧料を取って見せるというようなものではないような気が私はするのです、近代的なすばらしいビルの中につくるわけでありますから。恐らく信者を呼ぶというようなかっこうになり、あるいはその信者というのはお客になった人たちかもしれません。そういう形になりますと、これは大変な問題がある、こういうふうに思うので、この問題について、形式が整っているからそれで簡単にそのまま認可をしてしまうというような形であってはならない。十分そこのところを確かめて、そして調査をして、その段階で判断を下すというような形にしてもらわなければならないと思います。その点で、いま私が申し上げたようなことについて、お答えがいただければありがたいと思います。
  23. 大家重夫

    ○大家説明員 先生の御意見を外しまして、所轄庁に慎重に対応するように指導してまいりたいと思います。
  24. 上坂昇

    上坂委員 国税庁の方おりますね。もう一度お聞きしますが、先月の初句に豊田商事の方に、これは税務の調査ですか、そういうものをやったというふうに聞いておるわけでありますが、おやりになったかどうか。
  25. 木下信親

    ○木下説明員 国税当局としましては、一般的に申し上げますと、国会の論議あるいは新聞、雑誌等の報道、これらすべて貴重な情報として参考にさせていただいておりまして、なお国税内部で蓄積いたしております資料、これらの資料を合わせまして納税者の申告が適正であるかどうかを十分審査し、必要があれば調査を行って適正な課税処理に努めでおります。  お尋ねのこの法人に対して調査をしたかどうかということにつきましては、従来から個別の事項にわたることにつきましては御答弁を差し控えさせていただいておりますので、御客赦いただきたいと思いますが、このように社会的な関心の高い法人につきましては、万遺漏ないように処理しているつもりでございます。
  26. 上坂昇

    上坂委員 いまのお答えで結構です。どうか十分慎重に対処していただくようにお願いをしたいと思います。  それから警察庁の方おいでになればちょっとお聞きしますが、この前もこの種の会社に対して、いろいろ問題を生じるおそれがあるし、被害がたくさん及んでいくとえらいことになるかも、いまのうちに十分調査をしておく必要があるだろうし、また問題があれば、これは警察としても手を入れるか何かしなければならないのではないか、こういう質問をいたしました。お答えは、重大な関心を持ってそれはやっています、こういうお話でしたが、その重大な関心がいまどんなふうになっているか、これをお答えいただきたいと思うのです。
  27. 仲村規雄

    ○仲村説明員 お尋ねの豊田商事に関する対処方針等につきましては、きわめて具体的な事案にかかわりますので、ちょっと答弁を差し控えさせていただきたい、かように思いますが、一般的に申し上げまして、警察庁といたしましては、こういった金の取引を初めといたします商品取引をめぐる不法事案につきましては、消費者保護の観点から非常な関心を持っておりまして、的確な取り締まりに努めております。昨年の八月以降こういった関係で七業者、人員にして九十五名ほど、こういった者をすでに詐欺罪等で検挙いたしておるところでございます。
  28. 上坂昇

    上坂委員 なかなかこれはそう簡単にこういうところで発表はできないだろうと思いますから、これはお願いになるわけでありますが、社会的な影響が非常に大きいわけでありますから、今後も十分にひとつ監視をされる、あるいはまた下部機関に対しましても、いろいろな事件というのはその場所場所でいろいろ起こりますけれども、これはすぐに警察に駆け込むというようなこともなかなかないと思うので、そういう点についても十分ひとつ監視を怠らないように、趣旨の徹底をお願いしたいと思います。これはお願いです。  そこでもう一つ問題なのは、最近豊田商事のいわゆる現物まがい商法をまねする会社が数社あらわれてきている。どうもあっちこっちで同じような、そっくりまねた純金ファミリー証券であるとか契約の仕方、ほとんど同じものが出回っているわけです。そしてあっちこっちで行われてきている。これは実を言うとサラ金業界なんかでも問題になりましたが、取り立てをする場合に、いわゆる暴力団のようなところに取り立てを依頼したりなんかするというような形が実際に出てきているわけです。そういうので、そうした人たちがこの問題に絡み合いながらこの商法を覚えちゃって、そしてこれをまねて同じような会社がつくられるというようなことになったら、これはまた大変な影響を及ぼしていく。そっちの方の資金源になってしまうようなかっこうになると、これは麻薬の取り締まりをやったりピストルの取り締まりをやっても、そっちの方から今度資金が回ってくるというようなかっこうになりますと、私はいろいろな問題が生じてくるだろうと思うのです。  そういう意味で、いまもうすでに数社これに類する会社があらわれているということでありますので、これについて調査なり何なりでおわかりになっている点がありましたら、これを発表していただきたいというのと、それからこうしたものが出てくるということについて十分な関心を持ち、また予測を持ちながら、早急にこうした商売のやり方といいますか、これに対して対策を立てる必要があるのじゃないか、こういうふうに思うので、その点についての御見解をいただきたいと思うのです。
  29. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先ほど申し上げましたわが省の消費者相談室には数社入っておりますけれども、詳細は明らかでございません。
  30. 上坂昇

    上坂委員 いま何と答えたのですか、もう一回。
  31. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先ほど申し上げました通産省消費者相談室へ消費者の方々から金に関する相談がございますけれども、それに関しまして、いろいろ現物まがいのようなものが数社含まれておりますけれども、詳細は明らかではございません。
  32. 上坂昇

    上坂委員 なかなか巧妙に商売をやりますから、実態がなかなかつかみにくいと思いますけれども被害はこれからまた出てくるのじゃないかと思いますから、十分関心を持ってもらいたいと思います。  そこで、今度はちょっと質問をかえますが、農林水産省が前に、悪徳商社、これは先物取引あるいは海外取引、どちらでも結構ですが、いろいろな紛議を余り起こし過ぎるとか消費者に対して大きな被害を与えている、そういう企業があった場合にはこれを公表する、また、通産省の方も公表することにやぶさかではない、こういうお話があったわけでありますが、その後、こうしたものがあったかどうか。また、かなりうわさに上っている海外取引のいわゆるブラックマーケットと言われるところの商社等について、これから発表する準備はしているのかどうか、その辺について、農林省の方また通産省にお伺いしたい。
  33. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答えいたします。  農林水産省といたしましても、この一月に海外規制法の施行後、海外商品取引にかかわる悪質な勧誘行為の規制についてのPR、あるいは立入検査の実施及びその結果に基づく処分、苦情照会に対する迅速な対応等を行ってまいりまして、同法に基づく効果的な運用に努めてきたところでございます。  しかしながら、御存じのように、苦情等の件数は依然として早急に減少する傾向にはないため、苦情等の申し立て件数の多い業者から所要の報告を求め、目下、苦情の内容等、取引実態について、その把握に努めているところでございます。この結果に基づきまして、個別業者に対しては所要の措置を講じたいと考えております。そして、一般委託者がこうむることとなる被害が少しでも少なくなるように、その被害の発生を未然に防止するとともに、苦情等の申し立てが多いその他の業者についても、必要に応じて報告を求めること等により、遺憾のないよう対処していきたいと考えております。
  34. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 通産省といたしましては、海外ブラックマーケット問題、常に問題があれば公表するという方針でまいっております。しかし、五十七年の三月から金が上場されましたので、現実にはこのような問題はまだ起こっておりません。
  35. 上坂昇

    上坂委員 農林省も、最近、そうした悪徳商法をやるような会社については企業名を発表する、こういうことをこの間新聞でちょっと見たのですが、その意思はあるわけですね。
  36. 高橋銑十郎

    高橋説明員 先ほど申し上げましたように、当省としましては、苦情件数の多い企業から現在、報告聴取をし、その内容を明らかにすべく努力しております。その内容の結果次第によっては、海外規制法上の処分も含めて、業者に対する個別行政指導を行うことを、現在検討しております。  先生のおっしゃるように、新聞等、業界紙等にあるいはこの件に関する記事が載っていたかとも思いますが、現在のところ、われわれはまだはっきりとした方向を確定はしておりません。
  37. 上坂昇

    上坂委員 私は、金の上場の場合、本当のことを言うと反対した。なぜ反対したかと言うと、金がいわゆる公認として、市場の指定商品になるという形になると、恐らくそれは先物取引の中でだけ扱われることはないだろう、むしろ別なところで、金というものが国まで認めたいわゆるりっぱな取引商品としてクローズアップされることを理由にして、そして、まがい商法的なものがはびこってくるのじゃないか、そして、それを海外の取引所につなぐか、つながないかは別にして、そうした商売が出てくるのじゃないか、そこをおそれる、こういうふうに言ったわけです。  現在、金の取引の状況を見ますと、何だか先物市場にしたかいがあったのかどうか。まことにお粗末な出来高なんですね。全くこれは伸びてないのです。ここのところ、ずっと、横ばいというよりも、余り動いていないと言ってもいいくらいだと私は思うのですね。したがって、金はいわゆる当業者がヘッジをやるような、そんな状況、にない、こんなふうに私はいまの金取引所については感じておるわけです。ですから、そういうふうに実際に当業者が入って、そして先物が動くというような形の、いわゆる先物市場ではないから、むしろ金という名前を利用して、金の魅力というものを利用して、現物まがい商法が出てきたり、あるいはブラックマーケット的なものが出てくる、これが現在だと私は思うのです。ですから、いまだに金をめぐっての取引のトラブルは一向に減らないわけであります。むしろ、ふえてきていると言ってもいいくらいだというふうに私たちは思うのです。  いま審議官の話では、これは海外取引の規制法ができてから、昨年の三月以来、余りない、こういう話でありますが、通産省に言ったってやってくれないから、頼りにならないからというので持っていかないのかもしれない。民間の方には、どんどん苦情が来ているわけです。そうなりますと、やはりこれは問題なんです。  そこで、いまのうちに、先ほど言った豊田商事のような形の取引方法について、本当に対策を講じておかないとだめだと思うのです。  いま問題になっているのは、銀とプラチナが最近出てきました。それで通産省は、いまさらに検討して銀とプラチナをまた上場するというつもりのようですね。今月中にそれが実現をするかもしれない。ところが、銀とプラチナを上場して指定商品にしたからといって、それではこうした商売の方法が一体なくなるのか、私はなくならないと思うのです。これはどうしますか。PRだけでこれはとても収束することはできない。ということになると、これは基本的な形での対策を、いまのうちに講ずる必要がある。それは決して、通産省だとか農林省だとかと言っていられない。  大体、日本の取引所というのは、これは大臣に聞いていただきたいのですが、通産省が管理するところの流れが一つある。そうですね。それから農林省が管理をしている流れがある。この二つの流れがあるためにだめなんですよ。取引所は行政の一元化をやらなければだめなんです。ここが一つで、その商品取引をすべて見渡すような形の行政の一元化をやっていかないとだめなんです。これが行革なんです。そういうところには全然目をつけないで行革なんて言ってみたって、だから消費者の方は迷惑をこうむるばかりなんだ。これは実際に取引をしている人がそう言うんですよ。  たとえば一つの商社に私と清水君が頼むとするでしょう。私は二つ頼むとしますね。片方が生糸で片方がゴムの場合は、これは農林省が扱うのと通産省が扱うのと違うのですが、この商社は生糸を扱っている取引所にもあるいはまた通産省の物資を扱っている取引所にも加盟しているわけです。会員なんです。ですからふところは同じなんです。ところが手続は皆違うのです。そうすると、こっちで得してこっちで損した場合はどうするんです。生糸では得していわゆるもうけがある、だけれども片方の通産省の扱っているものでは損をしている、こういうふうになっだときにどうする。こっちに二百万円お金があっても、こっちはなくなっちゃってマイナスになったら、追い証をとられるでしょう。ここでその人は手続をとって、またお金を融通してここへもっとやる、こういう不便があっちこっちで起こっているわけです。ですから、この一元化をやらなければ本当は取引所は健全な形ではなかなか発展をしていかないと思うのです。  しかも問題なのは、いま金をまぜて十九品目が乗っかっているわけです。この乗っかっている中でストップしているのが大分あるでしょう。全然取引に動かない。取引の対象にならないのがたくさんあるわけです。しかも、これは輸入大豆は花形かもしれませんが、日本の国産大豆なんてのはだめですね。それから繊維だって、番手で四十番、三十番手ですか、これはだめですね。そういうふうにだめなのがあるわけです。そういうものを一体いつまで放置しておくんだという問題もあるわけです。ですから、私はここで言いたいのは、いまの行政の一元化というものはいますぐ直ちにできないかもしれないけれども、これについては十分やらなくちゃいけないから、お互いの連絡の中でやって縄張り争いをやめる、こういう形のものにしていってもちいたいと思うのですね。  そこで、先ほど言ったいまの豊田商事対策、そうしたまがい商法対策については、おれは通産省だ、おれは農林省だと言わないで、お互いに連絡をとって、そこに警察庁もちゃんと入れて、どうやったらこれをきちんと取り締まるかという対策を私はぜひ早急に立ててもらいたい、その検討に入ってもらいたい、こういうふうに思うのです。いかがですか。
  38. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 関係各省と連絡をより一層密にしてまいる所存でございます。
  39. 上坂昇

    上坂委員 月並みな答弁をしないでね。だれが聞いてもそう思うでしょう。大臣が聞いてもそう思うでしょう。私の話はいかがですか、大臣からお考えを。
  40. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いままで商品取引に関しましてはいろいろとトラブルがあることは私も何回か知っております。いまおっしゃったように、通産、農林両省に分かれておる。それには一つの経緯、いろいろないきさつがあったことと思いますが、しかし、そうした意味で、今後もそうしたトラブルが続くということは決してよいことじゃありません。したがいまして、私といたしましては、今後それにどういうふうに対処するか、いまいろいろ御意見を拝聴いたしておりましたが、なるほどとうなずいておるところも多々あるわけでございます。したがいまして、検討させてもらいます。
  41. 上坂昇

    上坂委員 いまぐらいな答弁がほしいですね。  私、いまの問題についてはこんなに持っておるのです。新聞の切り抜きだけでもこれだけあるわけですね。そうしたらまた出てくるわけです。「大衆資金 商品相場に流用 被害二万人、一千億(全国) 悪質投機排除を農水、通産両省指示」、こういうふうに十一月二日でなっておるのです。これは金ブームに乗って金の現物相場取引を装う悪徳商法が横行しておるから農水省も通産省も指示をしたのだ、こう言っておるのですが、これはいつおやりになったのですか。これはうそなんですか。どちらでも結構です。
  42. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答えいたします。  先ほど質問の前半において先生質問なさったことと関連する件だと思いますが、関係省庁、通産省と十分連絡をとって、不当な行為によって集めたお金を使って他の商品取引所で玉を建てるということは厳に自粛してもらいたいということを昨年強く指導いたしたわけです。その結果、昨年、全国商品取引協会連合会において理事会決定をいたしまして、そういう問題のある方からの商品取引の受託についてはこれは一切行わない。あるいは現在受託を受け建て玉を有しておる場合には可及的速やかにこれを減ずるように努める。それらのことを理事会決定で申し合わせをして、商品取引所の襟を正すということをした次第であります。
  43. 上坂昇

    上坂委員 通産省も同じですね。いまの指示は非常に結構な指示だと思うのですが、ただ取引所の実態として、外務員なり何なりの人が本当に徹底してそれをわきまえてやれるかどうかというところに問題がありますから、そこのところは取引員協会の自粛あるいは自戒、そういうものを十分やれるように、十分な行政指導をいただきたいというふうに思います。  それからプラチナと銀は、何かきょうあたりの閣議で決定するような話でありますが、これは今後はどういうふうになるか。
  44. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 銀とプラチナを政令指定することにつきまして、本年七月二十日商品取引所審議会におきまして、そうすべきであるという答申がございました。これを受けまして、所要の手続をとっておりましたけれども、いま上坂先生がおっしゃいましたように、けさほどの閣議におきまして、商品取引所法の施行令が改正されまして、そして、この法に基づく売買取引の対象に追加されたわけでございます。これの施行日は十月十七日になっております。この施行によりまして、金と同様これら二品目につきましての私設の先物市場は消滅することになります。
  45. 上坂昇

    上坂委員 そこで、それはそれでいいのですが、今度ダイヤが出てきたのです、ダイヤモンドですね。株式会社日本商品流通市場というのが出てきた。そして今度はダイヤをやっているわけです。また早晩指定しなければならぬということになってしまうのですね。私が言っているのは、切りがないのだ、もうどんどんいろいろなものが出てくる。たとえば海外取引の問題にしても、この間香港、そして今度はニューヨークに移り、シカゴに移り、ロンドンに移るということになれば、もうすべての海外市場みんなそれに乗っけていかなければならないでしょう。そのたびごとに法律改正なり何なりやっていかなければならない。そういう形にずっと法律がいってしまうと思うのですね。  そこで問題なんですが、私がおそれるのは、上場するのはそれはいいですよ、いいけれども、まがい商法が相変わらず出てくるのじゃないか。今度は銀とプラチナは先物市場ができました。ところが、一般の消費者と言われる人は、先物市場とか現物市場と言ったって、本当のことを言ってこれはわからない。だから、取引所と取引市場ということになれば、何かみんな一緒くたになってしまう。そうするといろいろな勧誘にひっかかってしまう。それから、これから厳しくなってそれが取引業界の中から外れていくのもあると思うのです。今度は純資産を高く上げるとか何かという中から経営がいろいろな形で大変になってくる、それはめんどうくさい、それならもっともうかる商売をやった方がいいという形に移っていって、いまの現物まがい商法やあるいは新しい商品のこれをやる。そうなってくると、銀、プラチナの場合は今度先物市場ができないと私は思うのですが、しかし、いまの商品取引所法の第八条になりますと、ダイヤモンドの方は幾らやったって構わないわけですからね。先物であろうと何であろうと構わないわけですから。そういう解釈を通産省は、政府はしたわけだから。  そこでいろいろな問題が生じでくるんじゃないかと思うのです。ここにあります五十八年八月一日のサンケイ新聞「今度はダイヤをたねに 退職金取られた 群馬などで被害 実態調査」こうなっています。それから東京新聞の方は「ダイヤで大やけど 詐欺まがい先物取引登場」こうなってきた。これは通産省調べたということですから、どういう形なのか報告をいただきたいと思いますが、根本的に私の言いたいのは、いま言ったように、まがい商法の詐欺まがいの先物取引が出てくる。そうするとまたこれについて、これは審議会にかけて、三カ月やるのか五カ月やるのか何か知らないけれども、そうするとまたこれは上場した方がいいだろう、こういうかっこうになってしまうのじゃないですか。ずっといっぱい品物が出てきてみんな上場していかなければならない、これはどうですか。
  46. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先生指摘のダイヤモンド、やはり高価なものでございますので、金あるいはプラチナ類似のものだと思います。しかし、金、プラチナというものは比較的品質が均一でございまして、取引するにしても個々の商品というよりは金は金でございますけれども、ダイヤモンドにつきましては一つ一つに個性がございまして、均一とは思えない商品だと思います。したがいまして、ダイヤモンドが商品取引所法の第二条の第二項に規定される商品として取り上げられることはないのではないか、かように存じております。
  47. 上坂昇

    上坂委員 いいですか、金とかダイヤモンドというのは財産形成という魅力があるわけですよ。ところが、先物取引というのは財産形成じゃないのですよ。間違ってもらっては困るのです。そうすると、一般の人を金なら金の市場に誘い込んだって、これは手数料取りですよ。あるいはさや稼ぎですよ。だけれども、さやを稼げない場合には手数料が業者に入るだけですよ。もうかるだけなんですよ。素人が先物買いして財産に資するかといったって、そういうことはできないのです。そうでしょう。  大体取引所の先物市場の一番の問題は、根本的には当業者の、関係のある業者のヘッジなんだ。そうなると、先物市場をつくったって防げない、いまのあれは。いいですか。というのは、実際に魅力があるのは現物取引で、自分がそれを所有しているかどうかということなんだ。だからひっかかってしまうのですよ。そうでしょう。それを、先物市場をつくれば何でも大丈夫だという。しかもいを言ったように、貴金属で貴重なものだ。ところが、貴重なものだから問題が起きるのですよ。そこのところを把握しておいてもらわないと、被害は、トラブルはいつまでたったって減らない。ふえるばかりだ。そして業者の方が利口ですから、巧妙ですから、どんどん新しいタイプを考えて被害を及ぼしていく。これを未然に防いでいくのにはどうしたらいいか、ここのところが根本的な問題だと思うのですね。ですから、単に審議会にかけて上場すればそれで事が済むというようなものではないので、商品取引というものについては本当に根本的に考えてもらわなければならないということが第一点。  もう一つは、第八条の解釈だと思うのです。一局長が見解を発表したからといって、その見解によって二十数年間続いてきた政府の解釈が一挙にして覆ってしまうようなやり方をするからおかしくなってしまうのです。いま見せましたこのダイヤモンドの市場というのはブラックじゃないですから、ホワイトなんですから、公認ということより、幾ら市場をつくってもいいわけなんだ、いまの法律では。そうするとどんどんできますよ。そうするとどんどん被害がふえるじゃないですか。これは第八条の解釈についても根本的に改めていかなければならないと私は思うのです。そういう点で第八条の再検討に入ってもらいたい。このことについての御意見を聞いて私の質問を終わります。
  48. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 金、プラチナなど非常に高価なものであり、財産である、こういう先生の御認識、私も同様でございます。だからこそ一般大衆がこれを買おうということでございます。一般大衆はやはり現物を安く手にしたいというふうに先生も思っていらっしゃり、私どもも同じように思います。したがいまして、ただいま銀とプラチナが金とともに貴金属として上場されますので、これ以外の普通のものにつきましては、類似の私設先物市場が発生する可能性は少ないのではないかと思っております。しかし、いまダイヤモンドの御指摘がございましたように、こういう問題につきましては啓蒙、普及、PR、そして先物取引を活用した悪質取引による被害を万全に防止しなければならないと存じております。
  49. 上坂昇

    上坂委員 私は、質問を終わりますが、先ほど申し上げましたように、いま商品取引業界は過渡期に来ていると思うのです。本当に体制を整えていかないと、わが国の適正自由価格といいますか、そういうものの形成のために、せっかく設けられている取引所がいわゆる世の中の指弾の的になってみたり、非常に大きな社会的な影響が出てくる。そういう意味で、商品取引の行政についてはひとつ十分関心を持ってもらって、本当に体質改善のできるような、そして一般の消費者を巻き込んだトラブルが本当に起こるということのないような、そういう体質のものに変えていくように、特に国際的な経済の状況になった折から必要である、このことをひとつ大臣に特にお願いをしておきたいと思います。  それでは、終わります。
  50. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、水田稔君。
  51. 水田稔

    水田委員 石油備蓄問題について冒頭、大臣に基本的な考え方をお伺いしたいと思ったのですが、行革委員会に出られたということで、担当の局長にお伺いしたいと思うのですが、具体的な数字から入ります。  昭和五十三年に国家備蓄三千万キロリットルを決めたときと、今日の石油の需給関係というのは、全体のエネルギーの見通し、そして石油の依存度、大変な変わりようだと思うのです。五十三年に国家備蓄三千万キロリットルを決めたのは、これは目の子でやったのではなくて、少なくともそういう需給状況の数字を見た上で、いわゆるナショナルセキュリティーという立場からどれだけというのが出たと思うのです。その根拠は一体どういうものだったか。それから、きょう現在それだけ状況が大変変わったにもかかわらず、なお三千万キロリットルということを言われておる計数的な、あるいは納得できる計算上の根拠について御説明をいただきたいと思います。
  52. 豊島格

    ○豊島政府委員 御承知のように、わが国の一次エネルギーは石油依存度が非常に高い。しかも、その中の大部分を輸入に依存しているということでございまして、国際的に見ましても石油備蓄ということは非常に大事なわけでございます。そこで、当時考えましたのは、エネルギーの消費大国として、そういう言葉が適当かどうか存じませんが、西欧並みの水準を達成するということで、民間の九十日備蓄に加えまして三千万キロリットルを目標とするということであったわけです。  それで、当時のOECDの加盟国の平均というのは大体百十日程度ということでございますが、民間備蓄九十日に対しまして国家備蓄三千万キロリットルというのはどのくらいに当たるかといいますと、当時の予想では六十年度需要が一日当たり大体百万キロリットルということですから、国家備蓄三十日をやれば百二十日になる。それで、IEA方式というのが、大体一割ぐらいはデッドストックがあるということで引くものですから、大体百二十日というのが百八日ぐらいになる、こういうことで三千万キロリットルをやれば欧米並みになる、こういう見通しであったわけでございます。  しかし、最近の情勢は、御承知のようにこのところ石油の輸入量といいますか、消費量自身も五十四年をピークといたしましてだんだん減っておるということでございます。したがいまして、三千万キロリットルの九十日ということになりますと、現在で大体三千万キロリットルは五十三日分ぐらい、あるいはさらに将来考えても五十日分ぐらいになるということでございます。そうしますと、大体百四十日強が備蓄されるという結果になろうかと思います。ただ、最近の先進諸国といいますか、IEA諸国の備蓄の平均は大体百六十七日ということでございまして、西独が百三十日強、アメリカは三百日ぐらい持っているということでございます。そんなことで、欧米並みといいますか、IEA平均に比べましてまだまだ低いということ。それから、先ほどちょっと申しましたけれども、デッドストックを一割くらい引くということになりますと、大体三千万キロリットル達成しても百三十日弱、百二十六日か八日といいますか、その程度の数字になりまして、決して高くないといいますか、最近の各国の石油備蓄の情勢から言えばまだ低過ぎる。しかも、日本の石油依存度は欧米に比べましても非常に高いわけでございまして、そういう観点からいいまして、まだまだ決して十分とは言えない数字だ、このように考えておる次第でございます。
  53. 水田稔

    水田委員 IEAの備蓄日数というのは、備蓄量を一日当たりの純輸入量で割ったもので数字が出ておるのではないですか。そうすると、これは参議院で三月に論争をやっておりますから多く触れませんが、一般的に百二十とか百六十とかいう数字は、日本の場合と産油国あるいはアメリカ、カナダとは全然違った数字になるという点で、純然たる日本の国内の、いわゆるエネルギーをどうするのかという立場で考える方が正しい判断ができるのではないか。IEA平均というのは根拠が全く違うわけですから、そういう点ではその数字だけにこだわることがいいのかどうか、私は疑問がありますが、いかがですか。
  54. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生指摘のように、この数字は純輸入量で備蓄量を割るということでございまして、したがって、たとえばその国の石油の全消費量当たりの備蓄日数というものとはおのずから違うわけであることは先生指摘のとおりです。  ただ、なぜこのような備蓄を行うかということは、きっかけになりましたのは例の第四次中東戦争でございますか、いわゆる一九七三年の石油危機で、石油が政治的な問題としてストップする、あるいは七八年の暮れから七九年にかけましてのイランの革命におきまして、イランの石油輸出がとだえる、こういうような状態でございまして、いわゆる国内で生産しておる石油にかかわるもの、これはストライキとかなんとか事故もあろうかと思いますが、特にこれを考えましたのは、そういうOPECからの輸入の途絶に対する対応ということでございます。したがいまして、そういう観点か皇言えば、やはりこの備蓄の趣旨というのは、純輸入量に対応して何日持っているかということが一つの目安になる、こういうふうに考えるべきだと思います。  さらに、一次エネルギー全体の立場からいいますと、石油以外の一次エネルギーの依存度が高ければそれだけリスクは少ないわけでございまして、日本の場合は、先ほどもちょっと申しましたけれども、いまだに六〇%を超える石油の依存度、欧米では大体五〇を切って四〇ぐらいというところが多いわけでございますが、そういう脆弱なエネルギー供給構造からいたしますと、むしろ純輸入量に対する石油の備蓄ということであっても、さらに日本の方がより多く備蓄を持つという必要性があるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  55. 水田稔

    水田委員 百六十日分あれば、これはいま言われた、もともとは三十日ということで、当時一日百万キロリットルの消費量に対して論議をして決めたわけですね。では、たとえば百六十日あれば日本の国民生活なり産業が絶対心配ないという保障はないでしょう、これは。全体的に日本のエネルギーを確保するために備蓄を考える場合、どういう条件を加味しながら考えられるのですか。
  56. 豊島格

    ○豊島政府委員 御質問の趣旨を私、十分理解してなければもう一度お答えさせていただきますが、やはり石油備蓄をするに当たりましては、結局問題となりますのは、石油が途絶したときに何日もつかということだと思います。しかし、それはまあ多ければ多いほどいいということでございますが、われわれとしては西欧、欧米並みということを目標にいたしておるわけでございますが、これとても、一次エネルギーに占める石油の比率あるいは輸入石油の比率といろいろあるわけでございます。  そこで、どういう観点からかということでございますが、エネルギーの安全保障の観点から言えば、当然、そういうリスクの多い石油への依存度を減らすということが一つの目標になっておる。しかし、幾ら減らしましても、当面は六〇ある。さらに五〇%以下を目指して政策を推進しておるわけですが、やはり一つエネルギー源としては非常に石油に依存するところが多い。諸外国でも四割依存しているというとかなり多いわけでございまして、したがって、その安定供給を図るためには、石油の備蓄量で考えるということになろうかと思います。  もちろん、そのほか考慮すべきファクターとしては、いわゆる石油の供給ソースの問題も当然あるわけでございまして、この点につきましても、残念ながら、日本の中東依存度というのはいまだに七割前後ということで、世界の各国でも一番高いわけでございまして、中東依存度といいますか、そういうものもほかの地域へ分散化していくということもあわせて考えなければならない問題かと存じます。
  57. 水田稔

    水田委員 長官も言われたように、石油はほとんど産出しないのですから、多いにこしたことはないですね。だけれども、それはやはり限界があると思うのです。  一つは、いま言われたように、代替エネルギーの努力も必要でしょう。しかし、ホルムズ海峡を越して、大半の七〇%を超す石油が日本へ来ておるという現実ですね。これは安全保障上言えば一番危険なことなんですね。あるいは途絶えたら、一年分の備蓄をしていたって、二年目には日本は産業も国民生活もパアになるでしょう。とするならば、一つは、備蓄の日数ではなくて多様な原油の輸入先というのをやるというのは、これは安全上絶対的な条件でしょう。だから、備蓄にばかり金をかけるのじゃなくて、そういうことも必要だろうし、それからもう一つは、備蓄にかかる経費を考えれば、国民経済上のコストの問題というのは当然考慮に入れるべきですね。もう一つは、国家財政上の問題ですね。全体の国の財政が大変厳しい中で、それだけに目を向けてほかをほうっておくということにはならぬだろうと思うのです。そういうものが具体的に、総合的に施策として出た中で、そして何日分の備蓄をするのがいいのかというようなことを本来考えるべきではないかというぐあいに思うのですが、いかがですか。
  58. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生指摘のとおりでございまして、セキュリティーというのはコストがかかるわけで、そのコストというものをどの程度——セキュリティーと、それから国民の負担ということとを総合的に考えるべきものだということは、御指摘のとおりだと思います。  それで、正直言いますと、三千万キロリットルでは足りないという議論も一部にはございまして、五千万キロリットルまでやれという提言も一部にはあったわけでございますが、われわれとしては当面、ヨーロッパ、欧米並みにはならないけれども、三千万キロリットルということを最低限といいますか、そこで一応の区切りといいますか、一応の目標としておるわけでございます。  それから、もちろんそういう場合でも、同じ量の備蓄を行う場合におきましても、できるだけ安いコストでいく、あるいは財政負担をできるだけ少なくしていく、こういうことの必要性も当然でございまして、御承知のように、当初国家備蓄につきましては、民間の基地を含めまして陸上には備蓄すべきものがなかったということでタンカー備蓄をやっておったわけでございまして、現在でも、五十七年度末に二十七隻あるわけですが、これをことしは八隻おろすとか、そういうことで安い陸上備蓄基地に移す、あるいは国家備蓄基地の建設に当たりましても、こういう財政が苦しい折から、ある程度建設のスピードを落とすということで、その間、現在余っている民間の備蓄タンクを使うというような努力は一方ではしておるということでございます。
  59. 水田稔

    水田委員 大半をホルムズ海峡を越して持ってきておるということについては、長官もよく御存じだと思うのですね、そのことの危険性というのは。これはまさに、国内の備蓄を考える場合と安全保障から言えば、多様な石油の供給源を求めていくというのは、金はそんなに要らぬわけですからね。だから政策というのは、金を幾らでも使ったらいいというものじゃない、国家財政上言えば。  それからもう一つは、備蓄で問題点があるのは、コストの問題で言えば、これは石油も同じような傾向にあると思うのですが、最近の状況では、LPGの問題で言えば、これは五日分の備蓄を義務づけた。そのために、原油の生産が落ちたことによってLPGも落ちたということで値が上がった。大体二割から三割上がって、二百ドルぐらいのものが二百二十五ドルぐらい。最高、日本は備蓄で幾らでも買うからというので、つい最近四百ドルまでいったわけですね。そして一昨日、そんなばかな話はないということで三百二十五ドルに落ちた。  だからそういう場合に、教条的に日数で義務づけるのがいいかどうかという、コストの点からいって国民経済上問題だ、そういう問題も運用上あるわけですね。そういうことなり、あるいは備蓄を百二十日を百六十日にするとか、あるいは五千万キロリットルにするとかいう論議があるなら、当然いまの輸入形態を変えていく、国家安全保障ということで、もう少しウエートをそういうところへ置いていくという考え方はありませんか。それが必要だと私は思うのです。
  60. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生のおっしゃるとおり、石油の供給途絶として、OPECも世界に散らばっておりますが、その中でも特に中東ということが、政情その他からいって危険が多いわけでございます。したがって、これを極力多角化といいますか、ソースの多様化ということに努めておるわけでございまして、最近の情勢でございますと、たとえばインドネシア、これは大分前からふえておるわけですが、そのほか中国とかあるいは北米とか、現にできておる油の購入ソースをいろいろ多角化するということと、さらに、そういう地域の石油開発に積極的に参加していく、こういうようなことで、御指摘のようなことで、できる範囲で最大限を進めておる次第でございます。
  61. 水田稔

    水田委員 ですから私は、三千万キロリットルというものが最大、最善の石油対策、いわゆるエネルギー対策ではない、むしろ根本的には、輸入先の多様化という問題の方が、二十日、三十日の備蓄をふやすよりも重要であろうし、それからもう一つは、それを教条的に数字だけを民間に押しつければ、国家もそういうところへ持っていくということで、そのために値段が高騰したときでも入れなければならぬというのは、全体的には消費者に負担をかけるような備蓄のあり方を、これは運用上の問題ですが、そういう点では当然考えていくべきではないか、そういうぐあいに意見として申し上げておきます。  次は、現在の国家備蓄の状態。タンカー備蓄なり民間借り入れもあるわけです。むつ小川原も少し入ったようでありますが、それらの備蓄の現状、それから、タンカー備蓄、民間備蓄あるいは直接の国備の関係のコストといいますか、備蓄にかかる経費について御説明願いたいと思います。
  62. 豊島格

    ○豊島政府委員 現在、民間備蓄九十日に対しまして、五十八年八月末といいますか、五十七年度中に備蓄されております国家備蓄の量は千二百五十万キロリットルでございます。それで、その内訳でございますが、タンカー備蓄が七百八十五万キロリットル、それから民間タンクの利用が四百六十五万キロリットル、合計千二百五十万キロリットルでございます。  それで、基地はどうなっているかということでございますが、現在国家備蓄基地につきましては、これまでむつ小川原、苫小牧東部、白島、福井臨港、上五島、秋田の六地点の立地を決定しておりまして、そのうちでむつ小川原及び苫小牧東部の両地区では順調に工事が進んでおる。それから福井と秋田では今春着工していま進めておる。それから白島及び上五島では現在工事準備中でございます。特にむつ小川原につきましては今秋一部の基地が完成いたします。現在それに対して原油を搬入中ということで、国家備蓄基地として初めてそこへ油が入るという情勢になってきております。  それから備蓄のコストでございますが、結局幾らかかるかということですが、タンカー備蓄はキロリットル当たり大体六千九百円ぐらいかかるということでございまして、民間タンクの借り上げは大体四千九百円ぐらいということでございます。大体二千円の差がある。それから、国家備蓄基地の利用料につきましては、現在基地によって若干違うと思いますが、竣工いたしましたものについては当面利用料をおおむね三千九百円ぐらいと考えておるわけです。ただ、これにつきましては、基地の建設に関するいろいろな金利等の負担があるわけでございまして、これを合わせますと民間タンクとタンカー備蓄の大体中間ぐらいになるのではないか、こういう感じがしております。
  63. 水田稔

    水田委員 国備の金利負担というのはキロリットル当たり年間で大体二千数百円になるのじゃないですか。そう見ますと、ほとんどタンカー備蓄に近い六千数百円がかかると見るべきじゃないですか。  それから、これはいまの計算ですが、建設費はおくれればおくれるだけ安くなることはないわけですね。それからもう一つは、安く上げようと思ってやったのかどうか知りませんけれども、むつ小川原のタンクは不等沈下を起こしておるわけですね。たとえば、こういうものが起これば当然それの復旧というのは建設より相当余分な金がかかる。だから、建設費を安く上げようとして欠陥工事をやっていっておるのではないか、こんなことが続けばこれは大変なことになる。むしろ国備というのはそういう点では大変負担の大きいものになっていくのではないか、こう言われるのですが、どうですか。
  64. 豊島格

    ○豊島政府委員 いま先生指摘の、金利だけで二千円ぐらいかかるのではないか、こういうことでございますが、われわれは、その金利負担はあるということはそのとおりだと思いますが、使用料として払うのは三千九百円ぐらいということですから、先ほど申しましたように、民間の既存のタンクの利用が大体四千九百円、それかもタンカー備蓄は六千九百円としますと、仮に先ほど利用料三千九百円と申しましたが、それに二千円加えると大体中間になる、こういうふうにお考えいただきたい。タンカー備蓄よりは相当安いということでございます。  それから基地の建設につきまして、いま御指摘のような若干の問題点が生じておることは事実でございます。目下その辺のところにつきましては調査中でございますが、この負担がいわゆる発注側にあるのか、あるいは受注した方にあるのかということで、仮に受注側でそれを負担すればそれはコストの問題とはまた別かと思います。しかし、いずれにいたしましても、この基地といいますかタンクにつきましては、安全が第一ということは当然のことかと思います。  なお、御指摘のように国家備蓄基地は高くなるのじゃないかということでございますが、もちろん安全性を第一としながらも、できるだけコストを安くするという努力は続けなくてはならないと思います。  それからもう一つ、国家備蓄基地としての重要な要素ということになりますと、たまたまある民間の備蓄基地はいま若干余裕があるわけでございますが、民間のタンクを使うということ以上に国家備蓄としての機能を果たすとなりますと、その全国的な配置あるいはそれの緊急時に対する操作のあり方等々もございまして、そういう意味で国家備蓄基地の建設は、現在たまたま民間タンクを利用する、あるいは船を利用するということでございますが、最終的にはやはりちゃんとしたものを持つべきであろう、このように考えております。
  65. 水田稔

    水田委員 長官は中間に位置すると言うのですが、今後できるものは建設費がますます高くなるし、むつ小川原も最初の国備の原油を搬入するタンクが不等沈下を起こすようなことというのは、国備については、今後については金がかかることが問題だからということで安上がりにしよう、そういう一つの例がここで示されたのじゃないか、そういうぐあいに思うわけです。  ですから、いま一千万キロリットルの民間のタンクがあいておる。これは時間がありませんから私の方から全部申し上げますが、石油産業というのは過剰設備で、これを一八%ぐらい廃棄しようということになれば、タンクも一緒に廃棄する、そんなむだなことは必要ないです。  それから、現に操業しておるところは港湾の設備もちゃんとあるわけですね。新しく港湾をつくる必要もない。これは借り上げをやればこれの方が安く上がることはだれが考えてもわかる。そして、金が幾らでもあるのなら幾らでもつくればいいです。だけれども、大事なことは、それよりもむしろ輸入源を多様化していくという、金のかからぬ安全保障策があるわけですから、そうして、現実に石油の見通しは二億四千万キロリットルから二億五千万キロリットルで、あとはこれからふえるエネルギーは代替エネルギーでカバーしていくということになれば横ばいということなんです。一たん廃棄すれば、それの設備更新はあっても設備増強はあり得ないだろう。そのタンクまでつぶすというのは国家経済上では大変なむだなことですから、それらを有効に国家備蓄の中に組み入れていくということは当然考えるべきじゃないかと思うのです。  ですから、いますでに四百六十五万キロリットルは借り上げておるわけです、暫定的なものとして。しかし、一千万キロリットルはこれからずっと永続的に民間では余ってくるということを、幾らの量というのじゃなくて物の考え方の中に、国備の中に民間タンクを活用していくという考え方は当然導入すべきじゃないかというぐあいに思うのですが、いかがでございますか。
  66. 豊島格

    ○豊島政府委員 御指摘のようにできるだけ経済的に、しかも安全性もあるから建設費を安くするといっても問題があるじゃないか、こういうことでございます。ただ、当面のわれわれの立場といたしましては、備蓄基地の建設というのは、いろいろな国家備蓄としての機能を果たすために、あるいは地元の従来の協力等々から考えましてこれは進めていかざるを得ない、いきたいと考えておる次第でございますが、そのほかに民間タンクの利用というのは十分させていただきたい、このように考えております。
  67. 水田稔

    水田委員 石油特会の五十九年度の予算要求を見ますと、これは全体で四千七百九十六億円、このうち石油代替エネルギーの経費はわずかに五百六十七億円なんですね。ですから、これから需要のふえるエネルギーについては、少なくとも代替エネルギーでやろうというのにしては全体の中でこれだけしかない。そして石油対策のうちの備蓄関係というのは二千五百十六億円ですから、全体のほとんど半分ですね。ですから、私が先ほど来申し上げますように、安全保障という点ではまず一番に、ホルムズ海峡を越すところにほとんどの石油を依存しておるというところに日本の安全保障上の問題があるわけです。多様化して金のかからぬことでやれるということを考えれば、当然こういう点についてはそういう対策なり、代替エネルギーに対してもう少し金をかけて、少し石油事情が緩んだら片一方手を緩めるということは、私は政策としてはとるべきではない、こういうぐあいに思います。  それからもう一つは、これは法律上の問題ですが、この中には借入金三百七億円を財源としておるわけです。これはいまの法律を改正しなければ借入金というのは年内に借りて年内に返すならともかくも、借り入れをそのままにするのならば当然法律改正をやらなければならぬ。それほどの無理をしてまでも、ほかの民間備蓄なり民間タンクの活用なりあるいは輸入先の多様化なり、そういうことで努力をしてカバーできることをもちろんやっておるけれども、それは十分でなくて、こういう財政上も法律上も無理のある財源をやりながら、なおかつ三千万とか五千万だということを言うのは、私は政策全体として整合性に欠けておると思うのですが、この点はいかがですか。
  68. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生指摘の、代替エネルギーの開発促進あるいは石油の供給源の分散化といいますか、ホルムズ海峡からほかのところへ移すということの重要性につきましては、私どもも全く同じ考えでございまして、御指摘のとおりだと思います。  ただ、それにいたしましても、現実問題として努力はいたしておりますが急にそうなるわけでもございません。そういうことで、備蓄そのものにつきましてもやはりその重要性は失われない。もちろん三千万キロリットルが金科玉条かどうか、こういうことにつきましてはいろいろ御議論があううかと思いますが、八月二十二日に総合エネルギー調査会から中間報告が出されましたが、そこでも、いろいろと知恵を出すということは必要でございますが、やはり石油の備蓄は三千万キロリットルくらいはどうしても必要じゃないかという従来の対策は続けるという報告もいただいておるわけでございます。そういうことであるわけです。  ただ、その中におきまして、やはり財政が苦しいということでわれわれもいろいろと五十九年度の予算を決めるに当たりまして、概算要求を出すに当たりましてはいろいろな努力といいますか、節約の努力あるいは効率化の努力というのをいたしたわけでございます。しかし、何分にも大蔵省から示されましたシーリングの四千四百六十億ということではどうしても賄い切れないということでございまして、万やむを得ないといいますか、そういう観点から、従来のエネルギー政策をいろいろと考慮した上でさらに推進するという中で、どうしても足らない分というのが三百七億できました。これを借入金にしたということでございました。この点につきましても、先生指摘のように、現在の法律ではたしか一時借入金ということで年度内に返さなければいけないというシステムになっております。したがって、これを行うには当然法律改正も必要かと思いまして、この辺は今後大蔵省ともよく御相談をしてまいりたい、このように考えております。
  69. 水田稔

    水田委員 備蓄の量はいま国備で千二百五十万キロリットルですが、これがふえればふえるほど石油買い入れの利子補給もやりますね。それから、建設が進めば進むほど設備に対する金利負担というのが膨大にふくれ上がってくるわけですね。とにかくことしだけやりくりをして、いままでの五千億の別途の積み立てがあるからというお話もありますけれども、長い目で見た場合に成り立つのかどうか。そういう中から、大変不況が続いた中で、基礎素材産業等苦労しておる中で石油税を一・五%上げる、そういうものを考えなければこういう石特の会計が貯えぬという状態の中で、全くいままでと同じような感覚でやっていいのかどうか。だから、考え方を変えれば、たとえば多様化する輸入先を考える、あるいは民間のタンクを活用する、そしてその出費を抑えていく、ですから、そういうもので事実上百二十日、国備がたとえ三十日が四十日であっても、それ以外で多様化された輸入先によって二十日や三十日は大丈夫だということになれば、将来展望を考えていくと、こういう形で備蓄だけの量を固定して、このやりくりをするために国民に大変な負担をかけるようなことはやるべきでない。私は石油税の値上げは絶対反対です。だからそういう国家財政上の問題、国民経済上の問題まで考えて、根本的にこの備蓄という問題は考え直す時期へ来ておるのではないか。その点について、これは本当は大臣に聞きたいのですよ、石油税を含めて御答弁いただきたいと思います。
  70. 豊島格

    ○豊島政府委員 石油及び石油代替エネルギー対策の財源といたしましては、従価税の石油税がございまして、これが五ドルの石油値下がり、それから石油の需要の停滞といいますか、最近は減少を続けておるということで非常に大きな減収、われわれ計算しますと千億以上の減収になろうか、こういうことでございまして、従来考えておりますエネルギー対策を進めていく上におきまして、非常に大きな問題となっておることは事実でございます。  これに対してどう対処するかということでございますが、先生も御指摘になりましたように、従来の政策というものを十分見直す。もちろんそれは備蓄も含めてでございますが、そういうものを見直して節約できるところはできるだけ節約する、あるいは重点を置くべきところは重点を置くということでいろいろ工夫をしておるわけでございます。それでもなおかつ足りない分をどうするかということにつきましては、すでに一般会計に入っておりまして、この特別会計に繰り入れられておらないいわゆる未済額というのが五千億ぐらいある。その取り扱いをどうするかということもございますし、また来年度、五十九年度だけの問題ではなくて、今後たとえば六十五年ぐらいを目標にして石油政策及び石油代替エネルギー政策を進めていく上において、どのくらいの財源が要るかということを含めまして、いろいろな角度から石油エネルギー政策の推進あるいはそれの財源問題というのは総合的に考えていかなければいけないということでございます。  ただ、そのエネルギー政策を進める上においても、いかにいろいろな努力をしても財源問題が残るということだけは、それをどうするかは別として残る、非常に重要な大きな問題であるということだけは変わらないのじゃないか、このように感ずる次第でございます。
  71. 水田稔

    水田委員 時間の関係もありますので、予算がらみのことですが、これはまた正式に予算が提案された中で論議を深めていきたいと思うのです。私がずっと申し上げましたように、そういう施策を考えるなら、いま進めておる国備の六カ所の合計は三千百四十万キロリットルになりますか、それは進めておられるわけですから、それと私が申し上げたようなこともひとつ検討いただきたい。しかし候補立地点というのがあります。     〔委員長退席、渡部(恒)委員長代理着席〕 これらは、いま私が申し上げた点から言えば、もはやそういう形での国家備蓄ということを考えるべきではない、そういうところへ来ておる。いまの需給の関係から、国家財政の状態から、あるいはコストの点から、そういう点からいまやっておるところについてそれはそこまでは言いませんけれども、少なくともこれからなお手を上げてやろうじゃないかというようなことはまさに税金を食うだけということに私はなると思うのです。国民経済上も決してプラスにならぬ。せめてその点だけはひとつ計画を中止する、それはいま出してもだめですよ、そういう点だけは明確にしておいていただきたいと思います。
  72. 豊島格

    ○豊島政府委員 三千万キロリットルの国家備蓄をするに当たりまして、備蓄基地がどのくらい要るかということでございまして、実はすでに六地区で三千百四十万キロリットルの容量があるではないか。それ以上は、仮に三千万キロリットルを積むとしても余分じゃないか、こういうお考えです。先生の御指摘はそれだけではないかと思いますが、われわれとしましては、三千万キロリットルを備蓄するためには、いわゆる消防法その他の関係から若干の空きタンクを持つというようなことも必要でございまして、そういう意味からいきますと、容量としては四千万キロリットルぐらいが要るということでございます。そういうことからいきまして、六基地だけで十分であると必ずしも言えない状況にあるわけでございまして、六基地以外は絶対にやめろという御指摘かと思いますが、その点につきましては、やはりそれだけでは足らないんじゃないかというのが私どもの考え方でございます。  もちろん、備蓄につきましていろいろと問題を御指摘いただきました点につきましては、総合的にわれわれとしても考える必要がある。特に御指摘の供給ソースの多様化ということにつきましては、まだまだ努力が足らないという御指摘かもわかりませんが、その辺は大いにやっていく必要があると思って十分検討いたしたいと思っております。
  73. 水田稔

    水田委員 長官の話を聞いていますと、とにかく多いに越したことはない、それはあたりまえのことなんです。石油はほとんど出ないんですから。それだけでいいのかということを何回も私は言ってきたんですから。そういう点から言えば、むしろ三千万を減らしてもいい、民間を有効に使ってとさえ考えるわけですね。そうすると、まずいまやっている六カ所については、やるにしてもそれで三千百四十万キロリットルだから、そうすると、民間を使えばそれだけで、全部借りれば一千万キロリットルあるわけですから四千万超すわけです。そういう点を考えれば、先ほどの答弁で、民間もできるだけ活用していくというなら、当然そこでは新しいものの計画は中止してしかるべきだと思います。時間の関係がありますから、その点は私の意見だけ申し上げまして、この質問を終わりたいと思います。  次は、来年の二月の国鉄のダイヤ改正問題いわゆる貨物の合理化問題についてお伺いしたいと思うのです。  私どもは運輸じゃありませんから、これが大変影響を受けるわけです。現在の八百五十一ある貨物取扱駅を四百五十七駅に減らすわけですね。こういうふうに私どもは大臣にも申し入れし、通産政務次官も運輸の政務次官と話をしてもらって、日本の産業に大変な影響を与える、場合によったら地域産業がつぶれてしまう、そういう影響を受ける、そういう立場から運輸省と協議をしてほしいという申し入れもしてまいりましたし、通産省としてもそれなりの努力をしていただいたわけであります。しかしどうも考えてみて、通産省の取り組みは事前の相談は全くなし、日本の産業構造に大変な影響を受けることを一方的にはっと決めて後追いになっていると思うのですね。だから本来言えば、これはいま通産省に持ってきてない大手の企業も実は大変な影響を受けている。私どもが聞きますと、財界ですから、まあ土光さんが言っておるんだから、やれるところは地方のあるところはコストに転嫁して、結局消費者に降りかかってくるわけですよ。そういう形で、まあ声を上げてないから余り大きく聞こえませんが、中小が特に存立が危うくなるということで、いま大変だと言って通産省へもいろいろ個別にお願いに来ておると思うのですね。  もともとこれだけの交通体系、運輸体系の改変というのは日本の産業に大変な影響を及ぼす、そういう点からは事前に、相当前から国鉄は検討しておったわけですから、当然それはわが国の産業にどういう影響を与えるのか、特にいわゆる基礎素材について、あるいは化成品等そういうものに、たとえば肥料とかセメントとか、量は多いけれども値段の安い分でその輸送体系の改変によって大変影響を受ける、そういうものについてどういう影響があるか、そもそも調査しておかなければならぬ問題です。そういう点を事前め調査がされたのかどうか、あるいはまた現在までどういう取り組みをされたのか、お伺いしたいと思うのです。
  74. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 本年の二月に国鉄の貨物合理化計画が明らかになりました。それ以来、逐次通産省所管物資に対する影響を調査いたしたわけでございます。その結果、計画どおりに実施された場合には、国鉄輸送からの代替が困難と見られます化学品、これを中心に影響を生ずるおそれがあることが判明した次第でございます。このため、化学品を中心に通産省所管の物資の輸送が円滑に行われるように、所要の具体的措置について各ケースごとに個々に随時運輸省及び国鉄に対して申し入れを行ってまいっております。運輸省及び国鉄におきましては、私どもの申し入れに基づきまして、荷主と各地方通産局との間で具体的な調整を行って現在に至っているわけでございます。その間、水田先生も宇野大臣のところへお見えくださいまして、その結果、渡辺政務次官から運輸省の関谷政務次官、あるいは私ども事務当局といたしましても、運輸省国鉄部長、国鉄の貨物局長等に申し入れをし、調整を行ってまいってきておる次第でございます。  なお、個々の品目につきまして以外に、いわゆる赤字ローカル線の問題がございます。当省関係で申しますと北海道の歌志内線、幌内線、それから例の足尾線でございます。こういった貨物駅四駅の廃止につきまして、私ども国鉄及び運輸省に対しまして強く再考をお願いしてきたわけでございますが、先般、九月二十六日、運輸省及び国鉄から、赤字ローカル線の承認等の手続がおくれておりますということから、来年二月のダイヤ改正には含めない、当面実施を延期する、こういう連絡を受けたところであります。  それから中小企業に関する問題でございますけれども、私ども中小企業、大企業にかかわりなく、この貨物の問題につきましてはケースごとに随時運輸省、国鉄に申し入れておるわけでございまして、中小企業への影響も十分配慮しつつ運輸省、国鉄と相談を今後ともしてまいりたいと思います。
  75. 水田稔

    水田委員 それじゃ幾つか例を挙げて、具体的な対応をお伺いしたいのですが、一つは北海道曹達の問題です。北海道曹達というのは、道庁も出資をいたしまして、北海道内の水道の滅菌の塩素を供給する、そういう役割りを果たしておるところです。これが大変不況で倒産寸前までいきまして、いま旭硝子の協力を得て再建途上にあるわけです。御承知のように、北海道の荷物は貨車航送は本州へは来ない。もう一つは青函連絡船の貨車航送のあり方の問題です。  それから今度の改変では、危険物もたとえば乗客と同じところへ積むようないわゆる有川のバースを廃止するという問題等もあるわけです。これはいわゆる再建のために塩素を月に千八百トン、とにかく本州に送っておるわけです。これは一体どうなるのか。  それから時間の関係で全部一緒に申し上げますが、兵庫県の瀬戸内海岸に多木化学というのがあります。これは肥料ですが、これまた値段の安い過燐酸石灰です。山陽線の土山駅が貨物取り扱いが廃止になる。そうしますとトラック輸送に変えなければならぬけれども、大変な経費がかかる。そしてそこには別府鉄道という多木化学の一〇〇%出資の子会社がある。これは貨物の扱いがゼロになるわけですから、やめなければならぬという問題が起こってくるわけです。  それから私の地元で、岡山県の笠岡で、過燐酸石灰ですが、神島化成というのがあります。これは山陽線の笠岡駅というのが五万トンの荷扱いがあるわけです。あるにもかかわらず廃止する。これは東福山駅まで持っていけと言いましても、国道二号線のとにかく一番交通渋滞のところなんです。そこヘトラックで持っていく。経費の点もあるけれども、交通渋滞は大変なことになるわけです。そしてここはまだ未完成でありますが、ほぼ干拓はでき上がっております。笠岡湾干拓という大きな国営干拓が完成しておるわけです。ここは米をつくろうと思ったが、米はつくるなということになりまして、いわゆる牧草なり飼料の供給基地にしようということですから、これからその駅を使って、完成すればこの一、二年で配分が決まるわけでありますから、そういう飼料が大量にここから出されることはわかり切っておるわけです。そういう点についても全く配慮がないままに進められておるわけです。  ですから、こういう点については、申し出があったところは取り上げてやっておるようですが、事前の調査というのは通産省は十分できてないと思うのですよ。大変だということになってあわてていま調べておる。あるいは取り組んでおるということでしょうから、実施まで若干時間もあるわけですから、そういう点ではひとつ通産省も本腰を入れて、大手でコストに吸収すればいいというようなことではなくて、まさに日本のこれからの産業、分散して各地でやっていこうというのですから、地域産業としてその地域の経済を支えていたところがつぶれるようなことがないように、そういう立場での取り組みをもう一遍ぜひやっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 北海道曹達のケースにつきまして、先生指摘のとおり液体塩素等の輸送の問題でございます。この輸送が支障なく行われるように、私ども、基礎産業局の基礎化学品課長から国鉄の荷物課長にすでに申し入れを行っているところでございますが、国鉄におかれましては、申し入れに基づきまして検討を行っていると私ども承知いたしておる次第でございます。  多木化学と神島化成、両方とも先生指摘のように肥料でございますけれども、地元の鉄道管理局がこの当該企業と調整中でございます。国鉄におきましては企業の理解あるいは協力、逆に企業の方は国鉄の協力ということで現在折衝中と承知いたしております。
  77. 水田稔

    水田委員 国鉄はおいでになっていただいていますか。同じことで国鉄の方へお伺いしたいのですが、いま私が通産省に申し上げたように、産業構造上大変な事態が起こる。それについて、発表になった後から代替輸送をどうする、運賃をどうする、そういう論議がされておるので、私は、国鉄も荷物を運ぶのは運送会社と同じで商売ですから、そういう点では荷主に対して大変冷たい扱いをいままでしてきたのではないか。それからもう一つ、国鉄総裁はいろいろな論議の中で、荷主には迷惑をかけない、こう言っておるわけです。現にかかっておる。かかっておるからみんな文句を言っておるわけですね。具体的に、かけないというのはどういうぐあいにしてかけないということを言われておるのかお答えいただきたいと思います。
  78. 橋元雅司

    ○橋元説明員 お答え申し上げます。  明年二月に予定いたしておりますダイヤ改正は大変大きな変革でございます。鉄道創業百十年になるわけでございますが、初めての大変革でございます。したがいまして、今年の一月三十一日に具体的な構想を発表申し上げたわけでございますが、自来連日のように御意見、御批判、御要望をちょうだいいたしております。本社におきましても地方鉄道管理局におきましても、それぞれ具体的に個別的にその御要望を伺いまして、ダイヤ改正にそれを反映しようということでやってまいりました。  八月の上旬にダイヤのおおよその骨格が固まりまして、それを各地区に持ち帰りまして現在最終的な調整を行っているところでございます。近くダイヤを確定いたしました上で、組合に対しましての労働条件の提示ということをいたしたいと思っております。確かにいろいろ御迷惑をかけるわけでございますが、ただいまお話しのような北海道曹達のケースであるとか神島化成のケース、それぞれに個別具体的にいろいろ対応方を考えております。  その一つは、やはり何と申しましても、鉄道の貨物は従来の一車一車の輸送ではなくて、取りまとめて列車で輸送する、大量、定型、高速というのが鉄道の特性にマッチした輸送方である。それでない小量、分散の輸送はむしろトラックの得意とする分野だ。したがいまして、トラック輸送、道路輸送と鉄道輸送のコンビネーションを少し変えようじゃないか、最近の道路の発達もございますので、コンビネーションを変えようということでいろいろ考えておるわけでございます。  たとえば、先生指摘のように、確かに笠岡の駅は現在七万トン強の取り扱いがございますけれども、十キロ離れたところに東福山という大変大きな貨物駅がございます。そこへの輸送方について、国道渋滞等もございますけれども、何らかの手段で、たとえばコンテナ化をしていただきましてぜひ輸送していただきたいというようなお願いを申し上げたり、あるいは拠点間直行列車の、原案では入っていなかった停車駅を追加いたすということで問題の解決ができるというようなケースもございます。また、化成品につきましては拠点間直行列車の間の乗りかえと申しますか、私ども、再託送などと申しておりますが、そういった託送がえをして御不便のないようにするというようなことで、個別具体的にいま対応を考えておるところでございます。  並行いたしまして、私ども二月から四月にかけまして全国八千の事業所でいろいろアンケート調査をさせていただきました。これは私どもの出荷量の大体力〇%をカバーするわけでございますが、そういったきめ細かないろいろな御要望を十分伺いまして対応してまいりたいと思っております。  なお、二月のダイヤ改正はこれで固まるわけでございますが、二月以降いろいろな御要望もまた出てまいるかと思います。それに対しては十分積極的に対応してまいりたい、こう思っておるところでございます。
  79. 水田稔

    水田委員 もう一つ、これは国鉄ですからお伺いしておきますが、荷主もさることながら、国鉄と連結しておる私鉄の関係の貨物扱いについても、たとえば私の地元の水島臨鉄ではそのために貨物が四〇%減る。小さいところですから、この収支というのはすごく、もう存立に影響するわけですね。あるいはさっき言いました別府はゼロになる。小名浜臨港も五〇%減る。あるいは三重県の三岐鉄道は、これまた貨物中心ですから大変な、いままで八百五十一とこの駅でも行っておったのですが、百四十になりますから、貨物は半分近く減っていく。あるいは福島臨海鉄道等も大変な影響を受けるわけですね。私鉄の問題については、そういう点迷惑もかからぬということでお考えになったことですか。
  80. 橋元雅司

    ○橋元説明員 現在、私どもで貨物輸送について連絡運輸をしておりますのはたしか六十数社だったと思いますが、そのうち出荷量のきわめて少ない私鉄につきまして、約二十から二十五社程度だったと思いますが、これはひとつ連絡運輸を廃止させていただくということでお話を申し上げております。大部分の私鉄さんにつきましては、これはやむを得ぬということで御了解をいただいております。その中で、先生が御指摘のようないわゆる臨海鉄道につきましては、私どもこれは出資をさせていただいておりますが、いまおっしゃるような輸送ルートの問題でいろいろ困難がございます。そこで、発荷主、着荷主がはっきりしておりますので、これもいろいろ具体的に考えておるところでございます。  なお、水島臨海鉄道につきましては、むしろ四国との航送が非常に問題になってまいりますので、水島臨海鉄道を四国の貨物輸送の出入り口にこれからしていきたいという方向で、むしろこれは積極的にいろいろ対策を考えているところでございます。
  81. 水田稔

    水田委員 ちょっと先ほどの答弁で、大体無理なところはコンテナを使ってくれというようなことでしたね。コンテナというのは利用者が自分でつくることになるのですか。それから、国鉄はいまコンテナを幾ら持って、年間幾らくらい補充していこうと考えておられるか、その点もひとつお答えいただきたいと思うのです。
  82. 橋元雅司

    ○橋元説明員 私どもが所有いたしておりますコンテナは、有蓋の汎用コンテナというものが大部分でございますが、そのほかにも冷蔵コンテナであるとか、あるいはタンクコンテナあるいはホッパコンテナ、いろいろな種別がございます。私どもが所有いたしておりますコンテナは約五万個でございます。それ以外に、先生指摘のような、私有コンテナと私ども申しておりますが、荷主がつくられるコンテナが約六千個ばかりございます。これもまた五トンであるとか十トンであるとかいろいろなコンテナがあるわけでございます。  そこで、私どもはこれからコンテナ輸送を拡充整備するということを考えておりますので、コンテナにつきましては増備、これは私有コンテナも含めまして積極的にいろいろこれを増備する方向で考えておるところでございます。そういったことで、コンテナにつきましては、車扱いとは違いまして、これはむしろ積極的にビルドアップしていく、こういうことでございます。
  83. 水田稔

    水田委員 コンテナを民間は自分でつくれということが柱のようですが、これはさっきから名前を挙げたところは、長期不況の中で耐えられる限界まで来た産業が多いわけですよ。基礎素材中心ですから、そこへつくれというのは荷主に大変な迷惑をかけることになるのが一つ。それから国鉄がいま持っておられるコンテナというのは四万八千でしょう、四万八千個で一万個は行方不明なんです。そして年々いわゆる補充していくのは千個なんですね。コンテナというのは大体三カ年で償却するわけでしょう。だんだんこれはなくなっていく、数年すると国鉄の持っているコンテナはこの補充の割りでいけばなくなっていくということになるのです。まさに不況で苦しんできた産業に全面的な負担をかけた上で、たとえばコンテナをつくれと言っても、本当に銀行借り入れがむずかしいような、そういう産業というのがあるわけですよ。そういう点についての思いが私は国鉄については足りないと思うのです。  そこで、その点についてお答えいただきたいと同時に、全然違う観点からちょっとお伺いしておきたいのですが、先般、週刊朝日に西武の堤社長と渡辺元大蔵大臣の対談が載っていました。いまの国鉄再建というのは寄ってたかって国鉄をつぶしにかかっておるやり方だ、こう言っておるのですね。それについて国鉄の幹部としてどういう御感想があるか、それも含めて私このやり方はまさにやたけただと思うのです。自分も生き残れぬかもしれぬけれども、関係のある業種全部をけちらしていくような国鉄の今度の貨物合理化、そういう感じがして仕方がないのです。コンテナの問題、数字を申し上げたのですからそれに対する答えと、それから基本的な国鉄のいまの再建監理のあり方について御感想があったら聞かせていただきたいと思います。
  84. 橋元雅司

    ○橋元説明員 五十七年度のコンテナの所有量は確かに四万八千でございます。数年前は五万一千、二千という時代もございました。  そこで、現在、帳簿上の償却年限は大体三年でございますが、私ども大体五年くらい使えるということでやっておりまして、そのコンテナ、しかもこれは一方開きのコンテナしかございませんので、二方開きのコンテナをつくるとかいろいろなことで、特に今年度から来年度にかけましては十分な量を整備したい、こう思っております。  それから、一万個くらいちょっと行方不明じゃないかというお話もございましたが、これはいろいろな見方がございます。これは国鉄の駅から外へ出ていくものでございますので、これの把握方について、これは通運事業者がやっておりますので、通運事業者ともども、たしか若干のものはそういう個数もございますけれども、十分きめ細かな把握をいたしてまいりたい、こう思っております。  それから、私有コンテナにつきましては、従来おっしゃるような問題点が幾つかございました。そこで今回は、抜本的にこれも運賃制度の上で改めまして、私有コンテナをおつくりいただきやすいような条件をいま整備中でございます。これは近く発表させていただきたい、こう思っております。  それから最後に、国鉄問題、ただスクラップするばかりじゃないかという御指摘でございますが、私どもむしろこれは積極的にビルドアップしていくというつもりでございます。  いずれにいたしましても、明治以来やってまいりましたヤードによる一車一車の輸送というのは、いかにも鉄道の特性の発揮しにくいと申しますか、鉄道の特性を発揮できない形になっております。むしろ大量、定型の省エネルギーの低公害の輸送体系に一日も早く改めて、抜本的にシステムチェンジをして、鉄道貨物輸送が物流の一翼を十分担い得るように早く体質改善を進めるということでございます。いろいろ赤字の問題もございますけれども、むしろそうした体質改善を進めることによって鉄道がもっともっとお役に立つ、よってもってその赤字も解消できるということで、いまいろいろ抜本的な改善策を考えておるということでございますので、よろしく御鞭撻のほどをお願い申し上げたいと思います。
  85. 水田稔

    水田委員 先ほど理事から、今度の五九・二のダイヤ改正はこれで一応終わりだという言い方があったのですが、私どもも一たん七月の末に、これは大変産業に影響を及ぼすから一カ月くらい本会議の決定を延ばすべきだ、こういう話もしたわけですが、八月の初めに強引に決めてしまったわけです。これは私どもが知ったのは——線引きというのは一たんやると、全体ですから、専門家がおってやられて大変な専門技術が要るようですが、決まったものは調整といってもほとんどいらえないだろうということを言ってきたのです。その点は国鉄としてはどうなんですか。
  86. 橋元雅司

    ○橋元説明員 おっしゃいますように、ダイヤの骨格自体は、一度決めますとなかなか次の機会までは変えにくいということがございますが、具体的には私どもは大体四半期ごとの貨物輸送計画というのがございまして、そういった中でできるものは、たとえば発着時間を修正するとか、あるいは構内の入れかえ作業を多少やりくりするというようなことはやっておるわけでございます。また、四半期ごとにいろいろ貨物の量が変わってまいりますので、かなり季節物資等が秋冬繁忙期に殺到する、あるいは春には米とか肥料が動くというようなことがございますので、そういった四半期計画できめ細かく、またさらにブレークダウンをしてやっておるわけでございます。ただ、二月一日にダイヤ改正をするということで逆算いたしますと、どうしても八月の上旬には骨格を決めなければならぬということで、大変いろいろ御批判ございましたけれども、一応決めさせていただいたということでございます。  なお、先ほど申し上げましたように、二月以降もそういったことで、できる範囲ではよりよいダイヤをぜひつくるべく考えてまいりたいと思いますし、またさらには、六十年には恐らくさらに大きなダイヤ改正の機会があろうかと思いますので、そういった機会をとらまえまして、いろいろな御要望なり御意見を取り入れてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  87. 水田稔

    水田委員 通産省へお伺いしたいのですが、私どもは、一たん線引きされると、これはそう簡単には変わらぬと申し入れのときに申し上げたのですが、通産省は、運輸省の方はそれは調整できるんだ、こう言って、それは甘いということを何回も申し上げたのです。いま国鉄から言われたように、五九・二は動かせぬ、その次だ、こういう言われ方ですね。しかしそれでもう決定的な影響を受ける。先ほど例を挙げたのはわずかですよ。大変な数の産業が基礎素材を中心に、セメントもあります、非鉄金属も全部あるわけですね。そういうものについて、いまの国鉄の答弁で私どもは大変なことになる、こう思っておるわけです。  ですからこれについては、通産省としては国鉄のそういう態度に対して、日本の産業を基礎素材とか、あるいは地域産業、これを何としても守っていくんだ、こういう立場で腰を入れて運輸省なり国鉄と当たっていただきたい、このことを要望いたしますが、決意のほどを聞かしていただいて、この質問を終わりたいと思います。
  88. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先ほど申し上げました足尾線とか歌志内線、幌内線等につきまして運輸省あるいは国鉄と折衝を重ねてまいりました。その結果、この四貨物駅につきましては、一時延期という私どもとしては一応の成果を得たと思っております。今後とも荷主あるいは産業、国鉄を利用する立場と国鉄の再建計画との間に入りまして、国鉄あるいは運輸省と腰を据えて個々の案件ごとに万全の措置を講じてまいりたいと思います。
  89. 水田稔

    水田委員 それじゃ、次の大型店の問題について御質問いたしたいと思います。  本当は大臣には石油備蓄の問題で冒頭お伺いしたかったのですが、時間の関係で、大店法の問題について大臣にお伺いしたいと思うのです。  ことしの二月にこの商工委員会で同僚の清水委員が、全国各地で政治問題あるいは社会問題になっている大型店問題にしぼって質問したわけです。当時の大臣は山中前通産大臣であります。ここでは、昨年の二月に出したいわゆる指導通達に基づいて、大型店の問題については抑制的な方向で現行大店法を運用そして調整していく、こういうぐあいに明確に御答弁な。されたわけであります。これは大臣かわられても、当然行政の継続性、一貫性という点から、恐らく新大臣も同じ方針で取り組まれると私どもは確信しておるわけですが、大型店問題についての大臣の基本的なお考えをまずお伺いしたいと思うのです。
  90. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 もちろん私も自民党でございますから、前大臣と大筋におきまして何ら変わることはございません。  ただ、説明をせよということでございますからあえて申し上げますならば、やはり大型店問題というのは地域社会との関連が非常に大切であります。一つは、どういたしましても商店街、中小企業、この関連は重視しなければならない、こう考えておりますし、また、消費者のニーズということも忘れてはならない問題ではないか。したがいまして、現在は産構審、中政審におきましていろいろこの問題を今後どうするかということを検討していただいておりますから、私はその答申に期待いたしておりますが、そうした答申が出ますまでは現在の「当面の措置」、それに従いまして行政を行っていきたい、かように考えております。
  91. 水田稔

    水田委員 昨年この指導通達を出してから現在までの一種、二種を分けての三条届け出の件数、それから現在の届け出の状況、それからこれまでに三条届け出が行われておって五条結審が出されてない案件の総数を、これまた一種、二種それぞれ何件あるか、お聞きしたいと思います。
  92. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 大型店のただいま先生おっしゃいました届け出件数でございますが、昨年二月から講じられております「大規模小売店舗の届出に係る当面の措置」の効果もございまして、五十七年度の三条届け出は第一種で百三十二件となっております。これはピーク時の五十四年度五百七十六件ございましたけれども、これに比べまして約五分の一の件数でございます。また、五十六年度と比べましても約三分の二と大幅に減少いたしております。     〔渡部(恒)委員長代理退席、後藤委員長     代理着席〕  本年四月以降の実績でございますけれども、八月までの五カ月間、三条届け出第一種、これが四十一件となっておりまして、依然として低い水準で推移しております。むしろ昨年度よりも届け出のペースは落ちているわけでございます。  それから、第二種についてでございますけれども、これは五十七年度の件数が二百七十件でございまして、五十四年度のピークが千二十九件でございますから、これまだかなりの低い水準になっております。四月から八月までの五カ月間で百八件でございますから、第一種同様昨年度よりもペースが落ちておる実績でございます。  それから、残高と申しますか最後の点につきましては、第二種はちょっとわかりませんが、第一種につきましては約四百五十件残高がございます。
  93. 水田稔

    水田委員 全体的には確かに減っていますが、去年どことしの月々の申請件数を見ますと、横ばいかもしくはふえぎみのところがありますね。そして、現実に起こっている事態というのは、集中豪雨的な、全国各地であらしが巻き起こるような状態は若干落ちついてきておりますけれども、数は減ったけれども、内容を一つずつ見ると、その地域、地域では大変だという問題がなお続いていることは間違いないと思うのですね。  私の地元に倉敷の水島というところがありまして、この間商調協で反対派が実力で入り口をふさいで商調協が流会するという事態があったわけでございます。この地域は御承知のような水島臨海工業地帯で、基礎素材を中心に大変な長期にわたる不況が続いておる、鉄鋼石油コンビナートですから、まさに一番最たるものです。  そこへ数年前に、例の問題になりましたニチイが大型店ですでに一店来まして、その両方から商店街というのは大変な苦境にある。そういう中で水島臨鉄が、操車場の騒音ということもありまして、操車場を移転する、そしてそれに絡めて駅前の再開発ということで進められてきたわけです。この地域の商業者は再開発に反対は全くしていないわけです。再開発すべきだ、そういう考え方を持っておるけれども、そこへこの再開発の目玉になるのはキーテナントがまた大手のスーパーのダイエーということで、まさに一つは不況の中で全体の売り上げが落ちる、ニチイが来て落ちてくる、さらに再開発という名目でやられるところに問題があるわけです。ですからこの商店街にとってはそれぞれの商店がつぶれるかもしれないという不安を持っておるわけです。     〔後藤委員長代理退席、渡部(恒)委員長代理着席〕  そして、これは昨年の十二月に三条申請が受理されてから、いわゆる事前商調協というのはわずか六回しか審議されていないわけです。ですから大変な状況の中で、中小企業なり現在の商業者の意見を聞くというなら慎重な配慮があってしかるべきだと思うのです。それを強硬にやろうとする中で実力阻止という問題が起こってきた。まさに意思疎通が十分に図られていない、十分な慎重な審査が尽くされていないところに今回のような混乱が起こったのではないか。  この点考えてみますと、一つは都市再開発という、これは建設省関係の予算ですから、それらの日程との関係でその方にウエートを置けば、当然片一方がおくれると困るからということで強引な商調協の運営がなされたのではないだろうか。そういう点から言えば、先ほど大臣からも御答弁があったような指導通達が十分生かされた商調協の運営がされてないのではないか、そういう嫌いが一つはここにあるのじゃないか。  それからもう一つは、みんなが心配しておりますのは、これは水島だけじゃなくて、ここに見られるように、いま国内消費回復のためのいろいろな施策が国から出されているわけですね。その中にいわゆる内需拡大の柱としては都市開発ということがいま位置づけられて進められようとしておるわけですね。この都市再開発が大変膨大な資金が要るものですから、そういう点から言うと、これは総理大臣も通産大臣もみんな民間活力、こう言うのです。都市再開発で売り上げが落ちて、いわゆる斜陽化してくる商店街の再開発、民間活力というのは、そこには力はそれほどないわけです。そうなると、そこではまあ町づくりの目玉になるのは資金を持っておる大手スーパーということになってくる。促そうなれば再開発ということで、国内消費の回復ということで、どうもこれから都市再開発という大義名分の中でこういう大手スーパーの資本がクローズアップされてくる、こういうことになるのではないかということを、これまた全国の商業者は心配しておるわけです。それが象徴的にあらわれたのが一つは水島の例だろうと思うのです。この二点について御答弁をいただきたい、こういうぐあいに思います。
  94. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま御指摘の水島の案件につきましては、水島として再開発事業にかかわる予算の執行手続などの関係から早期結審の希望を表明した経緯はございます。しかし、私ども国といたしましては、商調協の審議を急がせるような指導はした事実はございません。通産省といたしましては、昨年二月の例の「大規模小売店舗の届出に係る当面の措置」の趣旨に沿いまして、商調協において慎重かつ十分な審議が尽くされるように指導をしているところでございます。現在もなおその審議が続行中でございます。  なお、市の予算執行の決議というのが九月十六日になされておりますけれども、その後も商調協では継続して審議を行っておる次第でございます。  それから、第二段の御質問の点でございますけれども、都市再開発というのは、景気対策としても、また国家百年の大計といたしましても、重要な問題だと思います。しかし、この都市再開発にかかわる出店案件につきまして、大手スーパーが出やすくなっているという事情は、私どもといたしましては、特にあらわれているとは思っておりません。  ただ、都市再開発ということに関しましては、私ども先生も、あるいは大臣も御指摘の「八〇年代流通ビジョン」というものを現在審議中でございますが、その過程でも議論をされております。そこでは、都市政策と商業政策、この二つが整合的な運用で行われる必要があるのではないだろうか。具体的には、都市再開発計画の策定段階におきまして地元の商業者の意見が十分反映される必要があるのではないか。また他方、商業調整ということを行っていく場合におきましても、町づくりという観点から、これはただいま大臣も商店街ということで申し上げましたけれども、配慮した調整を実施する必要があるということで、両面通行と申しますか、こういったことが必要だという大方のコンセンサスが得られているところでございます。  そういうことでございますので、今後とも通産省といたしましては、計画の策定、それから商業調整、この段階におきまして、建設省等の関係行政機関と密接な連絡をとってまいる所存でございます。
  95. 水田稔

    水田委員 私の地元でありますが、私もあの町の状況をよく知っていますから、再開発に反対ではありません。しかし、商業者がああいう気持ちになるような商調協の運用ということについては、通産省の出先の方で、通産省の基本方針に基づいた十分な指導というのをやっていただきたい、こういうぐあいに思います。要望しておきます。  それから、いまも御答弁の中にありました、来年の一月末を目途に「八〇年代の流通ビジョン」というのが作業が行われておるわけです。その中には、来年一月末以降の調整制度のあり方についても、何らかの考え方がそこで示されるのではないか、そういう時期が来ておるわけですね。そして、これだけ通産省が指導通達に基づいてやっておっても、なおかつ出先では十分それが生かされない面もないとはいえないわけですね。これは来年一月末というとすぐですから、その間の混乱を避けるために、いま申請されておるものについては、現在の調整制度のもとにおいて申請されたものについては手続を凍結する、いわゆる将来の調整のあり方の考え方が大きく変わってくるわけですから、そういう点ではその間を凍結するということは考えられないかどうか。  私どもは、大臣も言われたように、やはり中小商業者の生活なり事業というものを守っていく、同時に消費者のニーズにこたえるという点では、その間に大変な、お互いが大戦争するような相互不信の中で行われるという点——これは私どもが審議してつくった大店法そのものの中に足りない点があったという反省も含めて、逆に言えば新しい考え方を出していこうと努力をしておる最中ですから、混乱を避けるためにも、当然いまの調整制度のもとにおける事案については手続を凍結するということも一つの考え方ではないか、ぜひそのようにお願いしたいと思うのですが、いかがなものですか。
  96. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、大型店の問題、来年二月以降どうするかにつきましては、現在、産業構造審議会と中小企業政策審議会の合同会議の場におきまして検討中でございます。これは「八〇年代の流通ビジョン」ということで検討いたしておるわけでございます。昨年二月から実施しております「当面の措置」の効果というのを先ほど数字でお示しいたしましたけれども、これを見きわめた上で、このビジョンとそれから現在の措置の効果、こういうものを踏まえまして結論を出すことが適当だと思っております。  したがいまして、新方針が確定するまでも、現在の措置を十分徹底することによりまして、地域の実情に応じました調整を行っていく必要があるのではないかと思っております。したがいまして、一律に出店を凍結するというのは適当だとは思っておりませんで、当面、現在の措置の運用に万全を期す、こういうことが重要ではないかと思います。
  97. 水田稔

    水田委員 それでは最後になりますが、対米自動車輸出の自主規制の問題について、これは大臣、この間行ってお話ししてきたばかりでありますから、お伺いしたいと思うのです。  通産大臣は九月二十七日にカナダのオタワで、アメリカのブロック通商代表と会われて、向こうからは別に正式に表立っての要請というのはない、いろいろおもんぱかって、こちらから自主規制の話をされたようであります。来年四月以降も自主規制を延長して実施する、十一月のレーガン大統領訪日前には結論を出す、こういうぐあいに記者会見で発表されたようであります。そして昨日の報道では、これは名前は挙げていませんが、アメリカの政府筋ということで、日本が二百万台以下のところ、まあ大体二百万台に近いところでしょう、そういうところで自主規制を決めるということなら大変歓迎すべきことだ、そして、レーガン大統領が来ればそこらは大変いいみやげになるだろう、こういう報道があったわけですね。  この点について、なぜこういうことを御判断になったのか、大臣に所見をまずお伺いしておきたいと思うのです。
  98. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ブロックさんとの会見は、私のホテルへブロックさんからやってきました。そして、宇野さん、何から話そうか、こう言いますから、私は、あなたの思っていることをお話ししなさいよ、こう言ったところが、実は、自動車の話を向こうから話したのです。したがいまして、その長い長い話の中においては、いわゆる自主規制延長の要請はなかった、こういうふうに私は言っておるわけでございますね。だから、各報道機関がいろいろ表明とか書いてございますが、私はあえて報道機関の報道を否定いたしません。それぞれ考えてお書きになったことだろうと思います。  そうした中におきまして、実はアメリカの国会等において依然として保護主義が台頭しておって、しかも幾つかの法案が準備されておる、こういうことでございますね。特に自動車に関しましては、ローカルコンテント法案、もしこれが成立したならばわが国の自動車業界にどういう影響を与えるだろうかということも、やはり担当大臣といたしましては十分考えていかなくてはなりません。したがいまして、そういうお話もございました。だから、それを総合的に私が判断いたしまして、どうする、こうするという具体的なものはまだ持っておりませんし、数字もまだあげつらっておりません。しかしながら、レーガンさんが来られる前に解決した方がいいんじゃないかい、こういうふうに私が言いますと、ブロックさんも、それはいいな、こういうことでございます。  だから、いつどういう形において解決するか、まだこれはお互いに考えてみょうということでございますが、互いに頭の中に描かれておりますのは、やはりこれからの世界の貿易というものは、あくまでも保護主義を排して自由貿易体制というものを常に確立することが大切だ、これを私たち、実はカナダの四極会議でお互いに主張しておりますから、そうした頭がございますので、そうした中から、ひとつ、難問ではございますが、私も十分国益のことを考えながら、相手の方々もやはりいろいろなことを考えていると思いますが、できる限り早い機会に解決をしたい、これが私の現在の心境でございます。
  99. 水田稔

    水田委員 時間がありませんから、質問より私の方から、状況を話しながら意見を交えて申し上げたいと思うのです。  三年前にこの自主規制を決めた。私は、もともとこれ自体が問題があると思うのは、アメリカの自動車産業自身に問題があったのに、日本の小型車が入るということでああいうことを要求してきたわけですね。というのは、大型車の方がもうけがいいから、小型車は余り力を入れなかった。そこヘオイルショックが来て燃費のいい小型車に需要が変わった。それに対応できなかったアメリカの自動車産業に本来問題があったわけですね。それにもかかわらず当時の貿易収支の日本の黒字ということもあり、やむを得ず決めたわけですね。そうして、アメリカでの自動車産業の大変な失業者が出るという現実、いま言われたローカルコンテント法案なりいわゆる保護主義に移っていくアメリカのそういう条件等も勘案してやったわけですね。しかしこれはそのときの取り決めといいますか、話で、「一九八四年三月までの三年間を限度として以下の措置を講ずる。」として自主規制を決めたわけですね。そしてどのような場合でも八四年三月を限度として終了するものである、こういうことで決めたわけですね。三年目が来年の三月に来るわけですね。  では、そのアメリカに決めたときと同じ条件があるのかといいますと、アメリカの自動車産業は、今日一九七七年の史上最大と言われた自動車企業の五十一億ドルという利益を上回る収益をいま各自動車会社が上げておるわけですね。アメリカの状況というのは鉄綱と工作機械をのけてはほぼ多くの産業が大変な回復、本格的な回復基調にある。そういう中でなおかつこの前三年を限度としていかなる場合もやらないと言ったことをやらなければならない理由というのはないと私は思うのです。まさにここで自主規制を引き続いてやるということになれば、これは長い目で見た日米の関係で私は決していい結果にはならない。逆に言えば、この三年間自主規制をやったことによってアメリカの消費者は高い車を買わされておるわけですね。そして日本の自動車会社も、数量を抑えてもあそこへ割り当てをもらって出しておるところは安定した利潤を上げておるわけですね。逆に言えば、まさに日米でカルテルを結んだような状態になっている。だから、長い目で見れば多くの消費者からの不満が出てくるということになるし、まさにこれはECとの関係を考えれば、アメリカに対してやるのなら、それでなくともEC諸国はフランスのように大変な保護主義でやっておるところを、それはまさにおれたちのところもそうやれ、アメリカだけじゃなくてECとの間の貿易関係でも保護主義が台頭してくるという危険があるわけですね。  だからアメリカとの関係というのは、本当にいい関係をつくろうと思えば、その条件が変わった、そしてアメリカの今日の自動車産業は回復基調にある、しかも史上空前の利益を上げた中でそういうことを言うのはおかしいということを主張すべきだと思うのですが、その点について私はもうどうしてもうなずけないわけです。あのときの決定はやむを得ないいろんな条件の判断であったとしても、今日、状況は百八十度反対に変わっておるわけですね。まさに自由貿易を言うのなら、保護主義の台頭云々と言うのなら、ここでつらくてもアメリカは、よろしい、それは三年限度でとにかくやりましょうと言うのが本来だろうと思うのですね。その点について、どうしてもうなずけませんので、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  100. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いまおっしゃることはもっともでございまして、実は会話の中におきまして、私は一々こうだ、ああだとは申しませんが、当然私の務めといたしまして、いろいろ日本の立場を主張しておりますし、同時にまた、アメリカの立場に対する質問も私はいたしております。お互いがそこは心得てしゃべっておるつもりでございます。だから、まだどういう形にするかということすら私は言明しがたい状態にあると思うのでございます。  確かに来年で三年の満期が来ます。だから、私がいち早く満期が来ると言っただけであれだけ大騒動があったということでございますから、いまあの騒動は非常に静かになっております。だからそういう意味で、ここでまた私がそれを申し上げますとまた大騒動になって、せっかくアメリカの政府もこれは静かに解決をしたい、こう考えておりますし、私もさように考えておりますから、これは外交でございますので、十二分にいま申されましたことは私も意にとめまして、そして静かにこの問題は解決したい、かように思っております。
  101. 水田稔

    水田委員 最後に、基本的には私の考え方はそういうことで申し上げておきますが、現実に三年間の自主規制の中で、割り当てについて私はあのときは短兵急に強引に通産省が抑えつけたような感じがして仕方がないのです。会社名前を申し上げませんけれども、当時向こうと提携した会社が全く売り上げゼロで、そういう実績のままで割り当てられた、あるいはこれからいこうということで、本来あのまま自由にしておけば相当程度伸びたであろうものが低い水準で抑えられた、あるいは全く実績がなかったということで全く入れないというようないろいろな不満があると思うのです。その点についての御見解はどんなものですか。私は、あの決め方というのは業界で不満が残るのはあたりまえだし、それによってその企業に働く労働者が大変そのための影響を受けておることも間違いないと思うのですがね。その点について、これからの問題ではなくて、まず現在の割り当てについて問題ありかなしか、若干でも配慮すべきあれがあったかどうかということだけで結構ですから……。
  102. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 現在決まった経緯は、はっきり申し上げまして私はわかりません。したがいまして、いろいろ話は聞いておりますが、だから百六十八万台がどういうふうにして決まったか、その割り当てがどうであったかということに関しましては、現在私は業界の代表とも会っておりますが、そのこと自体に対して私はいろいろ尋ねたこともないし、また向こうから質問を受けたこともないというのが現在の私の心境であります。  しかし、たとえばこの間申し上げました中には、もう三年で切れるということを前提としてアメリカのGMと、そして日本の新しい二社とが提携をして生産に乗り出しておるという事実も、やはりこれはあるよということは私は申し上げておるというわけでございまして、それが今後どういうふうに展開いたしますか、まだ私たちといたしましては業界の話も聞いておりませんし、またこれから業界をいつ呼んで話をするかということも、まだ予測はいたしておりません。十二分に慎重に対処していきたい、かように考えております。
  103. 水田稔

    水田委員 大臣の立場では、いま非常に微妙な段階ですから、そういうお答えなんでしょうが、百六十八万台についてあの当時問題があった、私どもはこう考えておるわけです。ですから、そういう点については私どもやはりアメリカと仲よくしていくという、貿易関係でもですね、向こうの産業、労働者の雇用という問題も考えると同時に、消費者の問題、同時に逆に言えば、日本の自動車産業が強いところだけが自主規制によっていい目をするというのもおかしな話で、あったという意味じゃないですけれどもね、そういう点では十分国内における調整も、物を処理する中では判断の中に置いていただきたいということだけ申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  104. 渡部恒三

    渡部(恒)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  105. 登坂重次郎

    登坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長田武士君。
  106. 長田武士

    長田委員 通産大臣はオタワにおきますところの三極通商会議に出席をされまして、お帰りになりました。そこで、通商問題についてお尋ねをしたいと考えております。  言うまでもなく、わが国経済にとりまして、輸出の安定的拡大、そして自由貿易の維持は経済発展にとりましても必須の条件でございます。しかし残念ながら、昨年は世界貿易が前年に比べましてマイナスとなりました。これは昭和三十三年と昭和五十二年に続きまして戦後三回目でございます。こうした中で、わが国の貿易収支や経常収支の黒字が大きくなりますと、当然摩擦の問題が惹起してまいります。その都度わが国が被告の立場に立たされまして、世界各国から攻撃を食らう、こういうことでございます。その第一回目は四十六年から四十七年にかけまして貿易摩擦が起きております。それから第二回目は、五十二年から五十三年、そして今回は五十六年以降すっと貿易摩擦が続いておる、こういう状況でございます。  金額でちょっと申し上げますと、四十六年が八十四億二千万ドル、これは貿易収支。四十七年が八十三億三千三百万ドル、経常収支においても六十三億あるいは六十一億、このような状況でございます。さらに、第二回目の五十二年においては、国際収支においては二百三億ドル、五十三年が二百五億ドル、経常収支においても百三十九億ドル、そして五十三年が百十八億ドル、さらに今回五十六年、五十七年を考えてみますと、貿易収支においては二百三億ドル、さらに二百一億ドル、経常収支においても五十九億ドル、九十一億ドル、このような膨大な貿易収支や経常収支の黒字ということで、逆にアメリカは対日赤字で苦しんでおる、こういう図式でございます。  しかし、前回の第一回、第二回、直後に、第一回の場合には昭和四十八年オイルショック、第二回にはまたさらに第二回目のオイルショック、こういう状況で、日本から外貨がオイルダラーが流れた、こういうことで貿易摩擦も自然におさまったというような状況でございます。しかし私は、今回は逆に原油が五ドル値下げしておるというような状況も考えてみますと、貿易収支あるいは経常収支はともにふえる一方であろう、ほかの状態はどうも考えてみると出ない。  そこで、政府も五十六年度以降数次にわたりまして市場開放策を講じてきたわけでございます。その第一が五十四年度の東京ラウンド、この合意によって関税の引き下げあるいは撤廃の前倒し等いろいろやりました。第二が輸入制限の緩和、第三が外国たばこ等の流通促進をやりました。第四が政府に市場開放問題苦情処理対策本部、OTOと言いますけれども、この設置と輸入検査手続の改善、これもやりました。そして、第五次が前国会、この委員会でいろいろ審議をいたしまして成立をいたしました基準・認証制度、内外無差別とする法律が本年八月一日から施行されることになったわけでございます。  こうした一連の処置によりまして、わが国の関税率あるいは輸入制限品日数を見てまいりますと、すでに欧米諸国並みになってきておる。非関税障壁の問題も解決されておる。国内市場は国際社会に開かれたものとなっておる、このように私は考えております。  そこで、オタワにおきましてこれらの一連のわが国の開放策の評価はどうであったのか、あるいはまた、諸外国はまだわが国を閉鎖的な市場だと考えておるのかどうか、あるいは日本に対する誤解がないのかどうか、この点について通産大臣の率直な意見をお聞かせいただきたいと思います。
  107. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 オタワにおきましては、御承知のとおりに自由貿易体制をあくまで堅持しよう。そして保護主義を排除しよう。この目的で四極が集まったわけでありますが、いまいろいろと列挙せられましたそうした一連の政策に対しまして、他の三極は評価をいたしております。特に日本が一番先んじて東京ラウンド、関税の前倒しをやってくれた、二度もやってくれた。これは高く評価いたします。同時に、去る国会におきましても御協力を賜わりました基準・認証制度、いわゆる無差別でございまして、八月一日から実行できるように私たちも努力いたしておりますが、こうした一連のことに対しましては非常に評価をいたしております。  ただ、残念であるのかないのか別といたしまして、にもかかわらず日本は黒字がふえ続けておるというのが現状でございますから、私も輸入促進したいのだけれども、何分にも原油の価格が下がったこと、あるいはまた、それに伴って当然他の原資材等々の輸入価格も下がったこと、さらには、残念だけれども、まだ日本は内需がこれといって促進されておらぬのだ。輸出によってやっと景気は回復しておるようなことで、これは余り好ましいことじゃない。だから、輸入拡大のために私は内需を喚起したい。しかしながら、言うならばアメリカさんの高金利政策があるからそれもなかなか思わしくない。ありとあらゆることを申し述べておりますが、しかしながら、一応今日までとりました政策には高い評価を与えながら、しかし、依然として日本は何とかやってくれないかというような不満が至るところにある、私はこのように肌で痛感した次第でございます。  御承知のとおりに、特に産業政策というものは、私たちは今日アメリカ等々から指摘されるようなことはやっておりませんけれども、何かございますと日本は新しい産業政策で、そして市場閉鎖をして他国に攻撃をかけておると言わんばかりのことがまだあるということだけは事実でございまして、しかもそうしたことに対しまして、一連の保護主義的な法案がいろいろと準備されつつあるということも事実でございまして、やはり私たちは総合的に判断しなければいけないな、かように思っております。
  108. 長田武士

    長田委員 今回のオタワの会議でも、いま答弁がございましたとおり、なお関税の引き下げ問題が話題になったようであります。  わが国の総輸入額に対する関税収入の比率を見てまいりますと、昭和五十五年で日本が二・五%であるのに対しましてECが二・八%です。そしてアメリカが三・一%となっておるわけですね。こうした状況を見てまいりますと、わが国は決して国際的に見劣りするような関税政策はとっていない、数字が物語ると私は思っておるのです。こうした実情がどうもわかりにくいのじゃないかというようなことを私は痛感するのですが、その点どうでしょうか。
  109. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 細かな数字に関しましては局長から説明をさせますが、とにかく私は次のように申し上げております。  あらゆる点において各国に劣らざる市場開放をしておりますよ。だから、もっとアクセスを強めてください。私たちは世界に十万の人たちを出して、そして輸出をなしておるかもしれぬけれども、それに化するにはやはり欧米各国がまだ努力が足りぬのじゃないか。だから、関税は下げましても、じゃ下げたからといって輸入は促進できるものではない、やはりもっとアクセスを強めてほしい。日本にどうすれば皆さん方の品物が買えるか、私たちもそれは努力しておるけれども、さらに諸外国におかれてもそういう努力もしてほしいということを私は率直に申し述べておるわけでございます。
  110. 長田武士

    長田委員 五十八年度におきますわが国の貿易収支は、四月から八月までのわずか五カ月間の数字を見てまいりますと百四十四億ドル。そしてこのまま推移しますと、今年度は実に三百億ドルを突破するんじゃないか。恐らく史上空前の黒字になるのではないかということが予想されるわけですね。また経常収支の黒字を見てまいりますと、同じく四月から八月までの五カ月間、政府の見通しとしては九十億ドル。ところが、もうすでにそれは突破いたしまして百四億ドルですね。そして、これまた史上空前の二百五十億ドルぐらいにいくんじゃないかというような予想も実は立てられております。  こうした状況の中で、この秋には西ドイツのコール首相やアメリカのレーガン大統領が来日をされるわけであります。その上来年は大統領選挙もございますし、そういう点では、本格的な政治の季節を迎えよう、そういうふうに私は見ております。そこで、アメリカの対日圧力もこれから激化してくるであろう、このことが予想されるわけであります。ECにおきましても、本年は対日赤字が百億ドルを超すだろうと実は言われております。また強い不満が噴出してくる、このような予想がされておるわけであります。  そこで、この黒字減らしが何といいましても当面の日本の貿易におきますところの大きな急務であろう、そういうことが考えられます。非関税障壁についても日本は決して劣っていないとか、そういう点では閉鎖的でもない。そういう点を考えますと、日本は黒字である、ここいらがどうもねらい撃ちされているように思うのです。そうすると、やはり当面は黒字をある程度減らさない限り、この批判というのは私は静まらないような感じがいたしております。しかし、この黒字の原因が、アメリカの急速な景気の回復に対しましてわが国の景気の回復がおくれておる。そして、アメリカの高金利によりますところのドル高・円安、ようやく二百四十三円前後になりつつありますけれども、依然としてまだ円安でございます。いままでずっと円安が続きました。そういう点では簡単にこの問題が解決できないだろう、そう簡単ではなかろうと私は考えております。結局即効性のある貿易摩擦解消といいますか、それは相手国の要求しておりますところの個別の問題、これを解決していく以外どうも方法がないんじゃないか、私はこのように考えております。  すでに日米通商摩擦の象徴ともなっておりますところの牛肉やオレンジ、これなどは、九月二十九日付の夕刊によりますと、通産大臣はオタワの帰途、ワシントンでボルドリッジ商務長官に会われましたね。そして電電公社の通信衛星の開発には、ソフトウェアばかりじゃなくてハードウェアまでについてもどうかアメリカから買ってほしいという要請を受けたようであります。さらにアメリカの競争力の強い産業分野、恐らくこれは石油化学製品だろうと思いますけれども、そういうものも日本に日米合弁会社が設立しやすいように要請を受けておるようであります。あるいはアラスカ炭の輸入を促進してほしいなどといろいろ注文をつけられております。  こうした個々の問題もどれ一つとりましても非常にむずかしい問題ばかりでありまして、したがって、摩擦の解消の本来的治療法は、何といってもさっき大臣がおっしゃいましたとおり内需拡大、これしか方法がないだろうという考え方でございます。しかし、内需拡大をしても、果たして内需拡大が成功するかどうかという問題も疑問がありますし、日本におきましてそのむずかしさはありますけれども、思い切って内需拡大をし、正攻法に出るしかこの黒字は減らないというふうに私は考えております。ですから、中曽根総理もウィリアムズバーグで、サミットで内需の拡大の約束をしてまいりました。そして四月五日の景気対策では公共事業や電力会社の設備投資の前倒し発注が目ぼしい対策と実はなっておるわけであります。  こういうわけですから、先日発表されました四月から六月までの国民所得統計でも外需依存型となっておりまして、内需が辛うじてプラスとなったものの、民需ではなく公共事業に依存した結果で数字が出ております。こういうことでは外国からのわが国に対する不信感というのは解消できないであろう、私はこのように考えております。西ドイツのコール首相やレーガン大統領が訪日を前にいたしまして、政府は九月末までには対外経済対策を打ち出す、このように言っておったのですけれども、依然としてどうもまとまっていないような感じであります。個々の問題につきましては通産大臣の所管に属さないものもございますけれども、一体この貿易黒字対策をどのようにして切り抜けるべきか、この点通産大臣と、きょうは経企庁長官おいででございますから、両大臣に御意見を賜りたい、このように考えております。
  111. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いろいろ方法はございましょうが、私は常に輸入を促進し、そして世界の期待にこたえるためには円はもっと高くあってよいのではないか、かように考えます。しかしながら、アメリカが高金利でございますから、勢い本邦の資本がそちらの方に流出しておる、それが円安の引き金になっておるということも事実でございます。しかし、いつまでもアメリカの高金利だけが元凶だ、その責めを問うておるだけでは能がございませんから、したがいまして、そういう一連の問題に関しましても私たちは機動的な政策を考えなくてはならぬ、かように考えております。  その一つとして、いまおっしゃいましたような内需拡大政策というものは焦眉の急ではなかろうか。私は、欧米の人たちの、四極で申すのですが、率直に言って即効薬はなかなかむずかしい。しかも多額の黒字であろうけれども、そのうちの百億ドルはたとえば原油価格引き下げによるものであり、あるいは資材の引き下げによるものであるから、これは欧米ともに、日本だけがメリットを受けておるのじゃないから、そういうげたを履いておるということもひとつ考えてくださいよ、その上のものが問題だろう、こう考えますと、百億ドルと一口に申し上げましても、輸入を百億ドル減らそうかと思えば、それに見合うものはやはりGNPが伸びてその一〇%が輸入に該当する、こういうふうに考えますとこれはなかなかの金額と相なるわけでございます。  したがいまして、私たちは、即効薬はなかなかむずかしいけれども、長中期にわたって日本としては内需拡大を考えておるのだから、そこら辺はぜひともひとつよろしく御了解賜りたいと申しながら、いままでのたとえば減税も一つの方法でございましょう、あるいは公共事業も一つの方法でございましょうが、新しい民力回復と申しましょうか、活用というものは、つまり本邦資本がどんどんと高金利目指して流れておるわけですから、それをストップかけるわけにはまいりませんので、むしろ国内においてそれらの投資が新しい魅力を持った場所を創出するということが必要じゃないか。これが私たちが唱えておる新しい民間の活力活用という問題でございますので、そうしたことに対しましていまいろいろと経企庁長官が苦労されて内閣全体の問題をまとめていらっしゃる。私たちといたしましては、さらに具体的には幾つもございますが、いませっかく政府としての案を得ようとして努力しておるわけでございますので、幾つかの案は私たちは出しておりますが、それがどのような形においてまとまるか、これはもう少しく時日を必要とするのではないだろうかと考えております。
  112. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  いま宇野通産大臣が詳細に申されましたので、それに尽きるかと思うのでございますが、これからの経済政策の大きな目標は何としても貿易摩擦の回避にあろうかと私は思うのでございます。  そのためには、いま長田委員指摘のように、一番無理なく経常収支の黒字あるいは貿易収支の黒字が解消できますのは、何といっても内需拡大であることは言うまでもございません。私どもは内需拡大の方向を、去る四月五日に決定いたしたものから、さらにまた最近の情勢で見直して、新しい形の内需拡大も考えていかなければならぬと思っているところでございます。  それからまた第二には、何としてもまだまだいろいろ言われておりますから、市場開放措置についてもいろいろと見直してみる。  それから第三には輸入の拡大。これは内需拡大とうらはらでございますが、ともかくも輸入に対してインセンティブを与えるというようなことも、かつて輸出に対して私どもがいろいろとインセンティブを与えたことを考えてみますと、輸入に対しても何らかの刺激を与えることが必要ではないかと言われておりますので、こんな点も研究しなければならぬかと思っております。  第四は、先ほどまた宇野通産大臣が言われましたように、円レートの適正化と申しますか、円とドルとの関係の適正化の方向を目指して、やはり円高の傾向を促進していくような方向をとって輸入を拡大していく方向、このような方向を考えていかなければならないと思っているところでございます。  以上、四つの方向のもとでいま鋭意検討しているところでございます。
  113. 長田武士

    長田委員 それから外国の見方は、日本の輸入構造といたしまして、製品輸入の割合が非常に少ないという指摘も実はございます。もっと製品を輸入してほしいという要求が非常に強いわけであります。ちなみに五十七年度におきますわが国の輸入構造を見てまいりましても、輸入総額三十二兆七千億円、このうち耐久消費財が一・八%、非耐久消費財が二・三%、資本財が六・五%、工業用原料が七五・二%、食料品が一二・一%となっておりまして、七割五分までが原油を含む工業用原料となっておるわけであります。しかし、原油の輸入量にしましても、十年前には約三億キロリットルあったものが五十七年には約二億一千二百万キロリットルと、輸入も減ってきております。また原油価格も安定しておることから、輸入金額もそれなりに、先ほど通産大臣がおっしゃったとおり、百億ドルぐらいあるだろうということで実は減少しております。そうなりますと、必然的に輸入総額そのものも減ってくるということでありまして、また黒字がふえるという結果とこれは当然結びついてまいります。今後どうしても製品輸入をふやす方向で努力せざるを得ないという方向になってくるのではないか、このように私は見ております。  ところで、各国の製品輸入の状況を見てまいりますと、GNPに占める割合では日本が二・八%、アメリカが五・〇、イギリスは八二二、フランスは四・二、西ドイツは五・八となっておりまして、わが国の製品輸入の比率はいかにも低過ぎるように私は思います。特に、発展途上国はいま多額の債務を抱えておりますし、こうした国から原油などの原材料だけでなくてもっと製品を買ってあげる、そのような国の経済に協力してあげる、そういうことが私は日本の立場としては急務であろう、このように考えております。そうして、実はわが国のこうした発展途上国からの原油を除く輸入額のうち、製品輸入の占める割合というものは非常に少ない状況なんですね。  さっきと同じように昭和五十五年の統計によりますと、日本は二三・二%、アメリカは五三・四%、イギリスも五三・四%、フランスは四五・七%、それから西ドイツが五二・九%と実はなっております。わが国の場合、この点でも余りにも見劣りがいたします。こうした点についてもっと積極的にやらなければならない、世界経済の貢献に当然これは日本の立場としてはつながってくる、そのように私は考えております。この点につきまして通産大臣はどのように考えていらっしゃるのか、どうすれば製品輸入がふえるとお考えでしょうか、この二点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  114. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 おっしゃるとおり、わが国は資源小国で、原油等の輸入量が輸入に占める割合というものは非常に高こうございます。したがいまして、勢い商品輸入というものがそれに比して軽いということは否定できないと思います。  したがいまして、各国からも商品輸入を日本はひとつ促進してほしい、輸出を五億ドル制限するよりもむしろ輸入を一億ドル促進してほしい、これが偽らざる欧米の考え方ではないか、こういうふうに思っておりますから、まず第一番目には、どういたしましても、いろいろとそうした面におきまして関税の引き下げ等メリットを与えていかなければなりません。その点は先ほど申し上げたとおりであります。特にLDC各国に対しましては、すでに特恵関税、五割増したとか、いろいろとそうしたメリットを与えまして、極力そうした国々も輸出能力を持っていただくように私たちも力を込めていることは事実でございます。  また、先般はアメリカに使節団を送りましたし、また欧州にも送りますが、一過性の輸入促進のための使節ではなくして、欧州あるいはアメリカから見て、日本の市場にどういうものが輸出しやすいか、こういうふうなミッションを送りました。その後、意外といろいろと問い合わせが来ておるらしゅうございますから、そうしたこともどんどんと推進しながら輸入拡大をいたしたいと思いますが、そうした直接法と同時に、先ほど経企庁長官も言われましたが、内需拡大によって国民が一つでも多くの物を買える、また、できたならばそうした諸外国の物を喜んで買える、こういうことも必要だろうと考えておりまして、そういう一連の政策を推し進めておるというところでございます。
  115. 長田武士

    長田委員 貿易黒字を減らす一環としまして、私は去る五月二十日の当委員会におきまして前山中通産大臣に、アラスカ原油を購入したらどうかという提案をいたしました。大臣の答弁は、サミット直前でもありましたので、アメリカ国内でもいろいろな問題があったのでしょう、いまはそのことに余り触れてくれるなというような、どうも消極的な態度でありました。ところが、十月一日の日経新聞によりますと、アメリカの要求していました石炭の購入をふやす条件といたしまして、アラスカ原油を売ってもらうということが政府方針として報道されておるわけであります。これは対米黒字の解決策にとりまして私は非常に有効な手段であろう、そういうふうに考えております。ぜひともひとつ実現してもらいたいと思うわけでありますけれども、この点通産大臣、いかがでしょう。
  116. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私もお説のとおりだ、こういうふうに考えております。したがいまして、すでにアラスカに対しましては、石油連の会長の永山さんがそうした問題を抱えましてアメリカの一連の政府の人たちとも話し合いをいたしまして、そしてアメリカの感触も得ましたし、また日本としては大いに関心あるということでいろんな使節団を送った次第でございますが、御承知のとおり、アラスカ原油に関しましては、アメリカ自体のセキュリティーという問題から、議会におきまして輸出をそう簡単にしてはならないという法案がございます。しかしながら、私たちがもしもLNGであるとか、あるいは西部炭であるとか、そうしたものを将来にわたって入手したいという表明あらば、それはまたひとつ考えてもよいという有力な情報もありますし、特に私が接触いたしました面におきましても、やはりそうしたことは十二分に考えられるんじゃないか、私はこういうふうに思っています。  ただ、石炭に関しましては、もうすでに国内の需要が落ち込んでおりますから、いますぐに輸入できますよという状態でないことは事実でございますから、長中期にわたりまして、われわれとしては当然輸入すべく努力をしたいね、こういうふうに申しまして、現在日米間にはワーキンググループがございまして、これが答えを近い将来に出してくれるのではないか、こういうふうに考えておりますので、そういう一連の問題の上に立ちまして、アラスカ原油の輸入、これはわが国といたしましても当然もっと熱意を持って考えてよい、かように私は思っております。
  117. 長田武士

    長田委員 個別の問題が解決をいたしたといたしましても、経常黒字の問題が基本的に解決できない、私はそう思っております。そうなりますと、来年の二月はアメリカの大統領選挙の予備選がスタートいたします。そのころにはアメリカの失業者も余り減らないんじゃないかという感じを持つんですね。そうなりますと、日本の貿易黒字そのものがどうも選挙の一つの標的になるんじゃないかというような感じを私は持つわけであります。現に、OECDが発表いたしました五十八年度の対日審査報告でも、日本の最近の景気回復は輸出主導型であるから、間接税の増税によって公共事業を拡大するなど内需拡大を図るべきである、このように言っております。つまり経済大国の日本が貿易黒字を出し続けることは、世界経済の運営上重大な障害である、公共事業を中心とした景気刺激型の財政運営を行うべきである、それが世界経済に対する日本の責任であると、このようにまで実は言っているわけですね。これはわが国の経済運営そのものを標的にいたしましたマクロ的な対日批判と受け取れるわけであります。こうしたOECDの対日審査は、欧米に日本経済運営そのものに対するマクロ的な批判があるあかしであろうと考えます。したがいまして、今後の対応を誤りますと大きな禍根を残すであろう、私はこのように考えますが、長官はこのOECDの指摘に対してどのようにお考えになっておるか。  また、去る十月一日の日本経済新聞によりますと、長官は、生命保険会社資金など民間資金を活用して公共事業をやる、公共事業のための目的税の創設など、これは以前からあなたの持論でありますから私はわかるのですけれども、外人記者クラブでこのように話しておりますね。私は、民間資金の活用については資本の流出、先ほどおっしゃいましたけれども、そういう点も防がなくちゃなりませんので、資本の流出を防ぐ、そして円安を防止する、そういう意味から私は賛成であります。この点についてもひとつあわせて経企庁長官から御答弁をいただきたいと思います。
  118. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 まず第一の、OECDの対日審査の中で言われておりますところの、内需拡大のための間接税のタックスペースを拡大して公共事業を行うべし、そして世界の景気の回復に比較しておくれているところの日本の景気の回復を促進したらどうか、こんなような考え方であろうかと思うのでございますが、私は、そういった意味の内需拡大の方向は、一般的に内需拡大といえば一つの方向だと思うのでございます。しかしながら、問題は間接税のタックスペースの拡大によるところの公共事業というところになかなか受け入れられない面がありはしないか、こういうふうに思うわけでございます。  それは、間接税のタックスペースの拡大という意味が必ずしも明瞭でありません。恐らくまた一般消費税みたいなことを考えておるのかもしれませんけれども、いずれにしても、いまの内閣は増税なき財政再建ということ、増税なき行政改革ということを大きな旗印としておりますだけに、私は、間接税のタックスペースの拡大による公共事業によるところの内需の拡大ということは簡単にできない、内需の拡大はまた別の方向で努力をしなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。  そこで、第二の御質問は、私が申し上げておりましたところの民間資金の活用として、生命保険会社資金等の利用を拡大することによって公共投資を拡大したらどうかということでございます。この点につきましても、たびたびここでも申し上げましたが、先ほど通産大臣も申されましたように、現在は内需が不振である、しかもアメリカの高金利が現実に存在するということで、御案内のように毎月二十億ドルくらいの長期資本が外国へ流れているわけでございます。私は、この点を一つ着目するならば、やはり内需を活発化することによって、流出するところの資金を国内にとどめ置いて、日本で産業に投資をされ、あるいは公共事業分野に向けられて、雇用の機会が増大し、所得が引き上げられ、経済が活性化することが望ましい、こういうふうに言っているわけでございます。  その方向として、もうすでに財政投融資計画の中では、住宅部面に生保資金が活用されてございます。これはたしか池田大蔵大臣のときから、住宅のために生保資金を活用しかかって、いまそれが恐らく七千億くらいに、当時千億でございましたが、七千億ぐらいになっているかと思うのでございますが、このように質的には確立されておりますところの生保資金をさらにまた量的にも活用できないか。先般、生保会社はサラ金方面に金を流していることで大蔵省からは自粛を要請された経緯がございます。これは投資先がないことに多分に原因するわけでございますし、また生保資金は、御案内のように最も長期の金でございます。私は、このような金をいま申しました財投計画に活用する。さらにまたもう一つ、御案内のように、いまでもすでにやっているところでございますが、都市の再開発は、生保会社がいま中心となって高層ビルなどをやっております。今度の規制緩和によって、生保資金はさらにまた大きく活用される面が出てくるのではないか、こんなふうに思っているわけでございます。  評論家がよく論じているところでもございまするけれども、かつては三兆円ばかり外国から金を借りて貿易収支の赤字に充てておった日本、いまや逆に六兆円ばかりの金を外国に流出させるような日本の内需の状況でありますことを考えれば、これの活用を考え、しかもまだ、民間設備投資が恐らく特殊な分野を除きますれば不活発でございます。やはり公共投資分野は世界各国いずれに比べてもおくれているわけでございますから、このような外国に行くような金を何らかのインセンティブをつけてでも引き寄せて、そして日本の内需を拡大させるべきである、こういうことを主張しているのでございます。
  119. 長田武士

    長田委員 国際収支の黒字の問題の解決には、為替問題、金利の問題等もありますけれども、いまお話がありましたとおり、私は景気の浮揚、内需の拡大、この正攻法な政策であろう、このように考えております。  そこで、経済問題について少しお尋ねをしたいのでありますけれども、去る七月末に経企庁は、本年二月を景気の底といたしまして、まる三年という長い不況のトンネルから脱出を宣言をいたしております。そして去る九月十六日には、四月から六月までの国民所得統計が発表されております。これによりますと、四月から六月までのGNPは、一月から三月に比べ実質〇・九%の成長となりまして、年率換算では三・六%の成長となっております。  そこで、経済成長の内容でありますけれども、〇・九%のうち〇・四%が内需、そして〇・五%が外需、こういう内訳でございます。つまり、経済成長の半分以上が輸出等による外需ということになります。  さらに、内需について内訳を見てまいりますと、住宅建設の大幅な落ち込みと消費低迷によりますところの民間需要はマイナス〇・一%となっておりまして、内需全体を〇・四%のプラスに支えたのは公共事業を中心といたしました公的需要が〇・五%のプラスに転じたからであります。この公的需要も、五十七年度の補正予算の分や五十八年度の前倒しがありましたからこういう結果になったんだろうと私は思うのでありますけれども、これが今後ずっと続くという保障はどこにもございません。  そこで、経企庁長官にお尋ねをしたいのでありますけれども、政府は去る五月末のウィリアムズバーグにおきましてのサミットで、わが国は本年度内需を拡大し、世界経済にその責任を果たしたいということを宣言していますね。約束したのでありますけれども、わが国の内需がなぜ拡大できないのか、伸びないのか、この点について長官どうなんでしょう。これはサミットで大宣言してしまったのですが、それとうらはらに内需は依然として低迷しておる、この原因を長官ひとつお聞かせをいただきたい。
  120. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 内需不振の原因を述べるという大変むずかしいお話でございます。  全般的に、かつての高度成長時代から現在の低成長の時代に入ってきた、これが私は根本的に内需が伸びない最大の原因かと思うのであります。しかもまだ、日本は輸出と設備投資で成長してまいりましたが、外国の景気がいま回復しつつありますけれども、三年間も大変苦しんでまいりました結果、輸出からだんだんと不振に陥りまして設備投資が低迷してきた、このことが全体といたしまして内需不振につながってきたわけでございます。しかしながら、おっしゃるように現在の経済の成長の状態を見ておりますと、そしてまた産業の設備能力の状態等から見ますれば、内需拡大の方向をとるべきであり、またその方策はある、私はこういうふうに思うところでございます。
  121. 長田武士

    長田委員 余り的確な御答弁じゃございませんので私の感じておることを申し上げたい。そしてまた御意見をお聞かせください。  まず第一点は、これまでのところ物価の鎮静が必ずしも個人消費の回復にプラスになっていないということです。あなたの前の河本経企庁長官は常に私の質問に対しまして、物価が安定すれば必ず消費が伸びますと何回答弁したかもう数え上げれば限りがございません。ことしに入ってからすでに三回、三月と五月と六月と実質消費支出がマイナスになっております。GNPの統計で見ましても、一月から三月が〇・六、四月から六月が〇・三でありまして、消費マインドに明るさが出てきていないということですね。  わが国の場合、物価の鎮静にスライドいたしまして名目所得や実質所得の伸びが低下しているからでありまして、勤労世帯の実収入は実質において五月と七月が前年比マイナス、名目においてさえ七月にはマイナスと実はなっております。さらに労働省の賃金統計においても八月は前年比名目で一・五%減と、実に二十八年ぶりのマイナスになったという状況でございます。  次に個人消費でありますけれども、アメリカでは四月から六月が前期比九・七%、前年同期比で四・六%であり、西ドイツでは五期連続してマイナスであった個人消費が——三月期では前期比一・七%とやっと上向いてまいりました。イギリスでも四−六月期は前期比で一・八%、前年同期比では六・四%と非常に明るさを取り戻しております。わが国の——三月期〇・六%、四—六月期〇・三%、これに比べますと非常に力強さを感ずるわけであります。  内需不振の原因について私の感じております。その第二点は、政策面での対応、これがどうもわが国とこれらの国とはちょっと違うのじゃないか、そういう感を私は強く持ちます。経済というのは心理学だということもよく言われます。先行き見通し、経済運営というのはそういう点では人間の心を大きく変えます。そういう点で先行き不透明さが不景気にさらに拍車をかけているということはもう論を待ちません。そういう意味で私は政策面での対応が日本はちょっとまずいのかなという感じがいたしております。その違いが回復度の違い、私はどうも結果として回復度に差が出てきたんだなという感じがいたしております。  まずアメリカですが、レーガン政権が誕生いたしまして八二年から八四年、この三年間実に千八百十七億ドル、レート二百三十五円に換算をいたしましても四十二兆七千億円、この個人所得減税を行っております。その後六百億ドルの増税をやりましたが、それにいたしましても差し引き千二百億ドル、約二十八兆円の大幅な大減税を実はやっております。そうしてアメリカは昨年七月以来七回にわたりまして公定歩合の引き下げも実施いたしております。一二%から現在八・五%です。  イギリスにおいても減税が実施されておりまして、八二年から八三年の両年度で四十億ポンド、四百二十円換算で約一兆七千億円の所得減税が実施されております。その上基準金利、ロンドンの手形交換銀行の基準レートでありますけれども、本年三月以降三回引き下げられておりまして、一一%から現在九・五%です。  西ドイツにおいても減税が実施されておりまして、八三年から八四年の両年度で六十五億マルク、百円換算で六千五百億円の所得減税が行われております。また公定歩合についても昨年の八月以降四回引き下げられておりまして、七%から現在は四%に下がっております。イギリス、西ドイツ、この予算規模はわが国の約半分です。したがいまして西ドイツの場合は六千五百億円ですけれども、日本の予算規模に当てますと一兆三千億円くらいに比較されます。ところが、わが国は六年間も減税はやらない、その王公定歩合も一昨年の十二月から五・五%のくぎづけ、内需が不振なのに公共事業の前倒し程度のことしか、小手先しか全然使わない、そうして世界経済の回復に便乗して今度日本はどんどん輸出をふやす、それでわが国だけがひとり大幅な黒字を出しておる。  こうした状況で、外国から見ればどうも日本という国は利己主義であるとか、日本の国の利益しか考えないのじゃないかとか、そういう批判が出るのは、一方の面から見れば私は説得力があるのじゃないかと思うのです。だから、OECDの対日審査報告のようなことを言われまして、わが国の経済運営のあり方までくちばしを入れられているようではどうにもならぬ。そういう意味で政策手段、実行というものをもっともっと的確にやるべきだ、そして内需拡大、景気浮揚対策に真剣に取り組む、こういうことが貿易摩擦の解消、ひいては黒字減らしになる、私はこのように考えておりますけれども、経企庁長官の御所見を拝聴したいと思います。
  122. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  いま、外国の種々の施策から外国の景気の回復が日本の景気の回復よりも早いのだ、こういうような御指摘から、日本の政策の対応が、特に減税を行っていないことが内需の不振を招いているのではないか、こういうお話でございます。  私どもは、いま御指摘の消費支出の不振は、原因は名目所得の伸びが低迷しているところにある、その中にもちろん所得税減税が行われれば、これが貢献することは言うまでもございませんけれども、根本的には、経済が不活発なために、景気が悪いために賃金が伸びてこないことが消費支出低迷の最大の原因だ、こういうふうに思っているところでございます。  いや、そこで減税をやったらいいじゃないか、こういうお話でございます。しかしながら、アメリカの減税でおわかりのように、アメリカは大きな財政赤字を冒して、おっしゃるとおり膨大な減税をやってまいりましたが、これはレーガンの意図では、御案内のように、貯蓄をふやし、投資をふやして供給力をふやす、消費をふやすというのがねらいではございませんでした。しかし、そのねらいが消費景気の方に動いたわけでございまして、その反面、したがいまして、アメリカは供給力が追いつかなくて、日本からの輸出に頼らざるを得ない。したがって、貿易赤字が六百億ドルとか、あるいは来年は千億ドルになると言われているわけでございまして、相当バランスを崩しながらの景気回復である、こういうふうに私は見ているところでございます。  私ども、所得税減税、これはもう今後の内需拡大の方策として大きく取り上げようとしているところでございまするけれども、やはり現在では、財政赤字の問題を考えて、バランスのある内需拡大の方策を起こさなければ、本当に覚せい剤のように一時しのぎの、たとえばまた高金利が残るだけであるというような形での経済のひずみが残りますので、私は、バランスのとれたところの内需拡大、その中で所得税減税も考えるべきでございますし、それによって消費支出が上がることは当然期待すべきだ、こういうふうに考えております。
  123. 長田武士

    長田委員 次に、石油税の問題についてお尋ねをいたします。  この税金は、昭和五十三年の六月から実施された新しい税金でございます。石油開発や供給確保対策、石油備蓄、代替エネルギー対策等の費用といたしまして石炭石油特別会計に繰り入れられて使われている税金でありますけれども、その税収額を見てまいりますと、五十七年度の予算では四千三百四十億円でしたけれども、同決算では三千九百五十六億円となっておりまして、予算に対して九一・二%という結果になっております。これについて、五十八年度の予算では四千二百九十億円と、前年度予算よりも五十億円減らしてはおりますが、この税は従価税、三・五%でしたね、となっておりますから、原油の五ドル値下げがありますと税収は大幅に落ち込んでまいります。かつて三億キロリットルもありました原油の輸入が、ことしは二億キロリットルを割るのではないか、このように言われております。こうしたことから、税率を引き上げようという動きが実は出ておるわけであります。  経企庁長官は、三月四日の物特委での私の質問に対しまして、石油備蓄等の費用を確保しなければならないから石油税の引き上げはやむを得ないというような趣旨の発言をされましたけれども、仮に石油税が引き上げられますと、せっかく五ドルの原油の値下げがありましても、その効果が相殺されてしまう。経済運営としては余りりっぱとはいえないというようなことも実は言われております。すなわち、電気料金などへのよい効果も失われてしまいます。ですからOECDが、石油関税の導入等対応策を誤れば経済成長は逆に低下するというように、先進国へ警告をいたしております。  あのときに私はあなたに申し上げましたね。エネルギー関係の税金といたしまして、すでに電源開発促進税が本年度から引き上げられております。そして、電気代が実は値上げされております。一千キロワットアワー当たり三百円であったものが四百四十五円に引き上げられております。政府はこれで約百七十億円ほどの増収になりましたけれども、これは全部国民の負担増によって増収になっているわけですね。その上さらに石油税を引き上げるとなりますれば、電気代を初めエネルギーコストを押し上げ、経済の足を引っ張ることはもう間違いない。さらに、いままで論議をやっておりました内需拡大、これにも、確実に足を引っ張る、そういう効果が出てまいります。  この問題について、どうかひとつ両大臣の御所見をお尋ねをしたいと思います。
  124. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私が先に名前を挙げられましたので、お答え申し上げたいと思います。  この点につきましては、たびたび長田委員におしかりも受け、御注意も受けたところでございまして、私は、憲法三十八条の自己に不利益なる供述は強制されないという憲法論まで申し上げてこの問題をお答えしたところでございます。とにかく、私は税の仕組みを申し上げたつもりでありましたが、そのようにとられたことは事実でございます。  いま、二つの目的税の性格を上げられました。しかしその前に、長田委員が引用されましたOECDの間接税のタックスペースの拡大と似たところがあると私は思うのです。つまり、増税は必ず消費者の負担になって消費が落ちるだけかというと、これは一般論でございますが、とにかく、貯蓄に回っておるものが一つのゆとりであるといたしますれば、消費は削減されないで、その増税した部分増税と言いますと不都合かもしれませんが、あるいは税を引き上げた部分がまずゆとりのある貯蓄の方に食い込む、私は、これがOECDの考え方であろうと思いますし、各国が、日本の高い貯蓄率をなぜ財政赤字の解消に使わないかと言うのは、貯蓄に食い込め、このような方策の中に一つの税があるということを言っているわけでございます。  これが単に消費の節減につながるかどうか。それは、弾力性のない消費の性格のものでありますれば、その税の引き上げは、消費の節減よりもむしろ貯蓄の方に食い込む、ことに、金持ちの方々、所得の高い方々はそういう効果を生む、私は、そういうふうに理解もできると思うわけでございまして、それを一概に、これがむしろ不景気になるんだというようなことでは、目的税というものは成り立たないし、目的税の効果はやはり、直ちに投資に結びつけることによって国民経済の中に還元されて内需拡大の面につながる、こういう面があることをOECDも考えているのだ、私はこういうふうに思っております。
  125. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いまおっしゃいましたとおりに、原油価格の値下げは勢い諸税の歳入減を来します。したがいまして、どうするかというようなお話でございますが、私としては、そこに歳出ありき、だから、歳入が足らぬ、だから短絡的に増税と、そこら辺はやはり考えてみなくてはならないところではないかと思います。  また一方におきましては歳出、従来の歳出の構造でいいのだろうか。この点におきましては、やはり効率的、さらに合理化、これも図らなくてはいけないと思います。そして、一般財源のあり方もございましょうし、そうしたバランスの上に立って考えていきたい、私はさように考えております。
  126. 長田武士

    長田委員 それでは次に、電気料金についてお尋ねをいたします。  私は、前通常国会の五月二十日に当委員会で、原油の五ドル値下げに関連をいたしまして、山中前通産大臣に、電気料金についてその考え方をただしました。その際山中前大臣は、値下げ分はあらゆる面を通じて国民生活に還元されていくべきであると述べました。さらに、自然にほうっておいても下がるべきである、なお下がらなければ、電気事業法によって通産大臣の料金値下げ命令を出すこともできるわけであります、それをやるとは言っていませんが、そこのところを考えていただいて言動してもらった方がいいのじゃないかと、関係者にはあらかじめ警告を発しておく次第ですと、非常に強い調子で料金値下げの決意を示されたわけであります。  そこで、新大臣は就任直後の記者会見におきましては、電気料金の問題については料金の長期安定、これを念頭に慎重に対処したい、このように記者会見をされております。  この席で、新大臣といたしまして電気料金に対する考え方、どうかひとつ正式にお答えをいただきたいと思っております。
  127. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 電気料金に関しましては、私は就任直後に申し上げましたとおりに、やはり長中期にわたりましてエネルギーの供給そのものが安定しなくてはならない、そういう観点に立ちましたときに、いま五ドル下がったからすぐにそれを還元していいかどうか、この点に関しましては、私は勢い慎重にならざるを得ない、こういうようなことを私みずから申し述べておきました。現に今日の中東情勢等々を考えますと、この間も何人かの外人の方々にお目にかかりますと、やはりイラン、イラクというのはなかなかむずかしい問題がある、こういうふうに承っております。もし、それがあそこで戦火というものが不幸にして拡大するならばどうなるのであろうか。今日、石油はだぶついておる、需給は緩和しておる、いろいろ言われておりますが、やはり私たちといたしましては、そうでないことを望むわけでございまして、そういうふうな環境にありとは申しながらも、常に供給安定ということを考えておりますると、私はやはり着実な備蓄というものが今後も必要ではなかろうか、こういうふうに考えてまいりまするし、そうしたことが勢い電気業界との間におきましてもどのような関係を生み出すかということを考えますと、私はいますぐに電気料金を下げた方がよろしいという考えはなかなか浮かび上がってまいりません。それよりもむしろ私は、そうしたことがあって電力会社に余裕があるのならばさらに設備投資を進めてほしい。それによって内需喚起につながり、さらには万一の場合、油断大敵という言葉どおり油断がないようにしたい、それによってあらゆるエネルギーの確保に努めたい、私は現在こういうふうな心境におります。
  128. 長田武士

    長田委員 そうすると通産大臣、料金の値下げについては当面考えていないということですね。そして長期安定に資する、こういう意味ですか。もう一度答えてください。
  129. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私の現在の心境を述べると言われれば、現在はさように考えております。
  130. 長田武士

    長田委員 通産大臣、時間がございませんから、ちょっとだけ私は申し上げたいのですが、景気浮揚のために設備投資を電力がやれという、そういうことが常に話題になります。過剰設備投資という問題も現実に電力会社はあるのですね。それがコストプッシュの原因になるということも通産大臣ぜひ考えていただきたい。景気対策で公共事業、なかなか思うように進まない、じゃ民間だ、さあ電力だ、こういうことになりますと、勢い負担がだんだん重くなりまして過剰設備という問題が必ず出てくる、供給の幅というものが非常に、何といいますか、遊びが出てまいりまして、過剰設備ということが必ず出てくる、こういう点が第一点。  第二点は、私は前回山中前通産大臣に提案をいたしました。つまり利益が出たもので設備投資をする。これは利益が減るわけじゃありませんから、利益として残り、半分ぐらいは当然税金で吸い上げられちゃいますね、いわゆる企業の利益というのは。そしてかえって減価償却費という、いま申し上げましたように設備投資を推進する、これは一考を要するということは減価償却費という重荷が非常に残るという意味なんです。したがって、企業としてはコストアップの原因になりますよということを私は申し上げたいのです。  それよりも国民にわかりやすい形で残しておきまして、為替の変動やあるいは原油価格の変動、いま申されましたように、中東情勢としても非常に安定的な見通しという点では疑問が残るということでございますから、そういう意味ならば、私は価格の変動などのリスクに備えまして、当然それを準備金であるとか、あるいは積立金であるとか税金抜きの、ひとつそういう積み立て方式をきちっと確保すれば、いざ中東情勢が変化した、油がなかなか高価になってしまったとか、そういう場合のリスクに十分対応できる。それがひいてはいわゆる電気料金の公共性といいますか、料金の長期安定に資するという意味での提案を私はいたしました。これについてどうかひとつ、最後になりますけれども、通産大臣の率直な御所見をいただきまして、私の質問を終わります。
  131. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私の申し上げました設備投資、確かにいま御指摘のとおりコストプッシュというふうな状態になることは、これは極力避けなければなりません。したがいまして、いまも御指摘がありました今後の為替変動という問題も一つはございましょう。私は常に、やはりそうした意味でも円高を望みまして、一つでも輸入品が低廉に入って、それが一つでも有効に国民生活安定のために回らすことをこいねがっております。だから、いろいろの点におきましては十分慎重に対処いたしますが、電力料金という一つの問題に対しましては、私は現在の気持ちを申し述べたまででございますので、いままでの御指摘、私といたしましても十二分によき参考といたしまして、今後の諸問題に対処したいと思っております。
  132. 長田武士

    長田委員 終わります。
  133. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、横手文雄君。
  134. 横手文雄

    横手委員 私は、繊維産業の現状について通産省がいかなる認識でおられるのか、また将来に向かっていかなるビジョンをお持ちか、産業の活性化を図ろうとしておられるのか、さらにまた、現在大変問題になっております設備の登録制の問題等々について御質問を申し上げます。  わが国繊維産業が置かれている現状は、過去二回にわたるオイルショックによる内需の極端な不振、また発展途上国の追い上げ、輸入の拡大に見舞われております。  しかし、このような厳しい環境の中にあっても、新しい商品の開発による需要の拡大や国際競争に打ちかつための自助努力が懸命に行われているところでありますが、通産省は繊維産業の現状をどのように認識しておられますか、まずお伺いをいたします。
  135. 黒田真

    ○黒田政府委員 わが国の繊維産業をめぐります内外の環境は現在非常に厳しいものがあるという認識につきましては、先生指摘のとおりでございます。現在安定成長下で、特に需要は大変低迷しております。他方需要が多品種少量化するということで、生産側、供給面ではその対応を迫られるという状況にもございます。また御指摘のように、発展途上国、特にアジア近隣諸国の繊維産業が大変競争力をつけておりまして、その産品との、最初は輸出市場における競争、そして現在では国内市場における競争というものがきわめて厳しくなっておるということ、そして最近のオイルショック以後原燃料価格が高騰している、あるいは繊維産業に従事する人たちが従来とかく高齢化してきているというような問題点を並べますと、大変厳しい状況がございます。  しかしながら、他方、発展のといいますか、前向きの芽もあるわけでございまして、最近の繊維品に対する需要というものが、生活必需品という要素から、やはりファッション性といいましょうか、生活文化を体現したものをまとっていくというような、いわばニーズの高度化というような状況もございます。私どもは、そういった新しい状況に対応する繊維産業は先進国型産業というふうな呼び名で呼べるんじゃないかと思っておりますが、それを支える技術革新も非常に進行しておるというような現状もあるわけでございます。  一つのそういう発展の結果として、輸出市場で相当後退を重ねておりましたが、昨今日本の技術を生かした先染めの綿織物でありますとか、ポリエステルの長繊維、合成繊維の長繊維の薄手の織物でありますとかいうようなものが新しい市場を見出しまして、大変増加しているというような力強い動きもあるわけでございまして、これらは繊維産業が従来どちらかというと後進国から追い上げられて、おくれた部分がどんどん蚕食されていく衰退産業だというイメージから、相当食われるものが食われた今日、やや開き直って先進国型産業として生きる道があるぞというふうな認識も出ている。ただ、これは現在ある繊維産業、現在従事している従業者全体がそういう発展に享受できるわけではございませんで、新しい内外環境に適切に対応した者のみが生き残れるというような、ある意味ではきわめて厳しいけれども、そこに将来に希望を持つ、そういった認識を私ども持っている次第でございます。
  136. 横手文雄

    横手委員 私もそのような認識に立って、おっしゃいますように繊維産業全体は一時斜陽産業あるいは夕暮れ産業、このような呼び名で呼ばれたこともございました。繊維産業に生きてきた一人として大変残念に思っていたのでございますけれども、しかし、長い歴史を持つわが国の繊維産業はそういったことだけではなかった。新しい分野、新しい素材の開発によってファッション化し、そして生活の中のエンジョイする部分に繊維産業が入り込んでいった、そういった部分についてはまさに日の出の産業であり午前十時の産業である、そういった一面を持っておると思うのであります。  これから先もそのようなわが国の伝統と歴史のある繊維産業の活性化のために、政府並びに業界が努力をしていかなければならないのでございますが、今後のわが国繊維産業の活性化のために、昨年から繊維ビジョンの策定が進められるとお聞きをいたしております。その検討状況あるいは今後のスケジュール、描かれている青写真、そういったものについてお聞かせをいただきたいと思います。
  137. 黒田真

    ○黒田政府委員 私ども、現在産業構造審議会及び繊維工業審議会に対してビジョンづくりをお願いしております。これは過去も節目節目には審議会で御議論をいただいてきたところでございますが、特にこの十年間、二度の石油危機というようなことから始まりまして、先ほど申し上げましたような繊維産業に特有の非常に大きな環境変化がございます。そういった新しい状況を踏まえ、もう一つ、時あたかも四十九年におつくりいただきました繊維工業構造改善臨時措置法という、繊維のための特別法が明年六月をもって一応の期限が参るというような一つの節目もございます。そういった状況を勘案いたしまして、実は昨年の六月に審議会に「今後の繊維産業及びその施策のあり方いかん」という諮問をしたわけでございます。  審議会の従来の検討状況でございますが、これは来年切れる法律のための審議会の準備を昨年の夏前からやるということで、大変長期計画でやっておるわけでございまして、海外調査あるいは業界からの相当丁寧な意見聴取というようなことを重ねまして、昨年の十二月にいわばビジョンの総論ともいうべき繊維産業の志向すべき将来像についての中間的取りまとめというものをつくって発表いたしたわけでございます。これは先ほど申し上げましたことと若干重複いたしますが、キャッチフレーズ的に申しますと、「技術革新と創造性を軸に知識集約化を進める先進国型産業」、二つ目に「産業全体の総合性の発揮により発展するシステム型産業」、そして「国際分業の中で発展する国際的産業」、そういう三つのキャッチフレーズ的な性格を一つの将来像というふうにうたいとげたものでございまして、発表後のいろいろな世の中での受け取り方というものは、非常に積極的なものでよろしいという評価をいただいておるように思うわけでございます。  しからば、そういった将来像実現のためにいかなる方策があるかという各論が大事なわけでございまして、この点については本年に入ってからいろいろな専門委員会、作業グループというような組織をつくりまして、関係の方々の大変な御熱心な討議を毎週重ねるというようなことで、克服すべき個別問題の洗い出しとその対応策を精力的に審議をしていただいて、本年の七月に大部の数百ページに及ぶ専門委員会報告書を取りまとめたというところまでこぎつけたわけでございます。  現在そういったきわめて専門的な、詳細にわたった報告書を基礎として最終の起草段階に入るということで目下鋭意作業中でございまして、私どもの現在の審議会としての、あるいは私どもの希望としては今月末ぐらいを一つのめどに御答申がいただけるのではないだろうか。来年の通常国会に延長法律をお願いするというようなラインも出されておりますが、もしそういうことになりますと、今月ぐらいに一つの方針を打ち出していただくということが時期的にもよろしいのではないかという見地で、いま申し上げたような作業経過を経て最後の段階、今月中というところに達しているのが繊維産業のビジョンづくりの現状でございます。
  138. 横手文雄

    横手委員 大変な御努力をいただいております当局並びに関係者の皆さん方に敬意を表する次第であります。  御説明の中にもございましたように、この問題については広く識者の意見あるいは業界の意見を参酌しながら、そうして的確な市場調査あるいは今後の見通し等を立てながらそれらのビジョンをつくっていくということが大変大事であろうし、またでき上がったビジョンが、ただ単に絵にかいたもちでなくて、業界の皆さん方が争って食べるようなメニュー、そしてそのことが活性化への道につながるという形になり、それがわが国の繊維産業の大きな発展の礎になる、新しい一ページを開く、このような目的でひとつ精力的な作業をお願い申し上げる次第であります。  さて、私は次に、この専門委員会の中の一つとしていま議論がなされておる設備の登録の問題についてお伺いをいたします。  この問題は、いまお話がございましたように、検討が進められ、深められ、間もなく答申の起草にかかろうとする重要な時期であるということは承知をいたしております。したがって、審議会に諮問された通産省として、この種の議論について余り突っ込んだ議論はどうかというようなこともあろうかと承知をいたしておりますけれども、あえて御質問を申し上げます。  この問題はきわめて重要な問題であり、その結論の帰趨によっては全国一万数千企業に及ぶ繊維産業、とりわけ中小企業にとって死活問題にまで発展しかねない内容であると思うからであります。通産省がお出しになりました「個別問題の専門委員会における審議状況について」これを一部参考にしながら、業界の意見あるいは要望その他私の意見も交えながら、主務官庁であります通産省のお考えをお聞きいたしたいと存じます。結論が出てしまってからでは遅過ぎるという面があるからであります。  まず、その設備の登録制廃止問題について第一ワーキンググループにおいて検討が進められているわけでございますけれども、その検討の内容はいかがなものでございますか。
  139. 黒田真

    ○黒田政府委員 登録制の問題は、ただいま御指摘のように、ある意味で今回のビジョンづくりの一つの大きな問題点といいましょうか、論点になっていることは事実でございます。ただ、私どもはあるいは審議会の多くの方々の御意見といたしましては、先ほど申しましたような繊維産業の将来のビジョンというものを頭に置いた場合には、繊維産業がいかにしてその構造を改善して先進国型産業へと脱皮していくかということが中心に据えられるべきであって、その観点から、たとえば設備登録制というような、ある意味では非常に長く続いた既存の制度というものの役割りを、そういう点から光を当ててみようというわけでございますので、率直に申し上げて専門委員会の意見は批判的でございます。その政策的な役割りは終わったし、むしろ弊害が目立つというよう狂指摘になっております。  これは実はすでに、昭和五十一年にやはり有識者の方々あるいは繊維産業の関係者が集まりまして議論いたしました際に、私ども五十一年提言と呼んでおりますが、指摘された点でございまして、段階的な廃止の方向で準備をするよう検討せよというような提言をいただいておるわけでございまして、基本的には、専門委員会の考え方は、その方向を踏襲しつつ、その廃止に向けての早急な取り組みを期待した形で、もうその意義はないぞというきわめて厳しい結論を出しているわけでございます。  他方、御指摘のように、現在その登録制のもとにある業界の立場から申しますと、従来昭和二十九年、その大部分は昭和二十九年から実施されておりますので、三十年近く存続いたしました制度のもとにあるということでございますので、それが外れた状態というものは、率直に申し上げて不安の多い状態であることは否定できないわけでございまして、そういう意味から死活問題だという形で批判といいましょうか、反対意見が多く出されている。したがいまして、現在その専門委員会報告をベースにしながら関係の方々の御意見を伺い、起草委員会としての意見を取りまとめてお話し合いが進められている、こんなことになっているわけでございます。
  140. 横手文雄

    横手委員 大臣にお伺いをいたします。  先ほど来、いろいろ議論をしてまいりました。およそ通産省の任務、それはわが国産業の発展と興隆にこそ全力を尽くすべき通産省である、それが使命である、このように考えておりますが、大臣、それでよろしゅうございますか。
  141. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 そのとおりだと存じております。
  142. 横手文雄

    横手委員 それでは、その登録制の廃止に対して、先ほど局長の御答弁の中で、その現状はいかがでございましょうかと言ったときに、五十一年提言を踏まえて、いま大変業界の皆さん方にとっては厳しい結論になろうとしておりますというような発表と同時に、業界の皆さん方にとっては死活問題である、このような声も大きく聞こえております、こういう御説明であったわけでございますが、まさにそのとおりでございます。この登録制の廃止に対しては、現在この登録制を存続しております十一の業種のたった一つの例外もなく、すべての業界がこれに対して猛烈な反対運動を展開しておられますけれども、この動きに対する通産省のお考えはいかがでございますか。
  143. 黒田真

    ○黒田政府委員 登録制というものは、中小企業団体法、中小企業団体の組織に関する法律に基づきまして、事業者間の過当競争によって円滑な取引の阻害状態が生じ、相当部分の中小企業者の経営が不安定となった場合あるいはそのおそれのある場合の緊急避難的な措置として一定期間に限って実施を認めるというのが、いま申し上げましたのは法律上の規定を申し上げたわけでございますが、従来、一年ごとにそういう状況を審査いたしまして、過去延長されて今日に至っているという状況にあるわけであります。しかしながら、同時に、これが非常に長期間にわたって存続維持されてきたということから、これが産地のいろいろな組合活動の支えになっているという状況にあることも、これまた一つの事実であるということは、率直に申し上げて私どもも認識をしております。  しかし、しからば登録制をやめると、その結果として突っかい棒が外れてしまうから産地の組合が成り行かない、したがって登録制を残してくれという主張もあるわけでございますが、これは法律のたてまえから申しますと、過当競争的状態、設備過剰状態の緊急避難であったものが永続して今日まである。しかし、その効果が組合を支えている、その支えている効果がなくなるから登録制をと言うのは、やや議論が本末転倒ではないかという意見になるわけでございます。  したがいまして、審議会の諸先生方も、本来持っていた政策効果あるいは政策目的というものについてはきわめて疑わしいけれども、しかし、それが直ちに外された場合に生ずるかもしれない混乱、またはその混乱に対する不安というものは理解できる。したがって、そういった混乱なり不安を解消するための手だてというものを講じながら、本来のあり方に戻るといいますか、登録制というものを解消できないだろうか、こういうような考え方が提示されているわけでございます。  最近、起草委員会、審議会の中立委員先生を中心に提示されました考え方というものは、産地の方々の、従来は登録制が頼りになって組合運営の基礎が固められたという御主張に対して、そうではなくて、やはり産地としての共通の利益の増進のために産地組合というものが自立をするような、そういった産地のビジョンと、その産地のビジョンの中における組合の役割りというものをもう一遍よく見据えてほしいというような形での問いかけが行われて、そういった活動を通じて、組合というものがそれ自身の活動の上に成り立っていくという状況を一刻も早くつくり出すような猶予期間はひとつ見てあげよう。こんなことで審議会の先生方が対応しておられるわけでございまして、現在そういった審議会から出された検討の視点をめぐりまして、産地の方々の御意見を伺ったり、調整を鋭意進めているというのが私どもの立場でございまして、私どもといたしましては、最終的なビジョンというものは、答申が出された上で私どもの判断をするといったてまえにあるということはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  144. 横手文雄

    横手委員 私は、現在業界の皆さん方がこぞってこれに反対をしておられる。ですから、その審議会の内容について通産省に対して、いいんですか、悪いんですかとかいうようなことを聞くのは、諮問をされた通産省としてはなかなか言いにくい問題でございましょう。ただ、いわゆる主務官庁としてこれらの動きについていかがでございますか。先ほど大臣は、業界の発展と興隆を願うそのことこそが通産省の役目である、これに対して、全くそのとおりである、このようにおっしゃったわけでございます。したがって、その任務を持っておられる通産省としていかがですか、こういう立場でお伺いをいたしております。  そこで、その業界の反対運動に対していかがですか、こういうことをお聞きをいたしました。私は、一言で、これはわかると言われるのか、それはちょっとやり過ぎである、このような判断が示されると思ったんですが、いわゆるいろいろな状況の説明がございました。それらの問題について、それでは少しずつ触れさしていただきたいと思います。  私もこの登録制について問題があることは承知をいたしております。つまり、言われますように、緊急避難的処置が三十年も続いていることは、なるほど不自然であります。また、業界も政府の強力な統制命令にいつまでも頼っているということもいかがであろうか、こういうことは率直に思うのであります。だからといって、業界が悲壮なまでの状態で反対をしておられるものを、論理や一部の現象をとらえてこれを押し込んでしまうということは許されない。そもそも、産業及び業界に対するビジョンの策定は、産業、業界の発展につながる、このことでなければなりません。その業界の人たちが明らかに、その方針ができ上がってしまうと混乱と衰退への道へ行ってしまう、こういうことで叫んでおられるのであれば、その叫びに対して十分に耳を傾ける、その姿勢というものはまさに必要なことではありますまいか、こんな気がしてならないのでございますが、いかがでございますか。
  145. 黒田真

    ○黒田政府委員 私ども日々進めております仕事が、私どものそれぞれ責任を持って所管をいたしております産業の興隆発展を願っておるということはまことにそのとおりでございまして、その点には一点の疑いもないわけでございます。ただ、興隆発展を願うということと、それから現在の当該業界が言っていることをそのまま聞くということは必ずしも一致しないかもしれない場合があるわけでございまして、私どもとしてはその辺の、もし食い違いがあるような場合には十分なすり合わせをしながら、説得といいましょうか、納得といいましょうか、話し合いの中から方策を見出していくということを私どもの任務と心得ているわけでございます。そのような観点から申しますと、現在反対運動というような形でいささか盛んに燃えているような姿というものは、私ども当該業界を所管し、責任を持っている者としては実体申しわけなく思っておるわけでございまして、そういった何か運動がなければ政策が見出していけないということでは本来あってはならないことだというふうに私どもは反省はしているわけでございます。  しかし同時に、私どもといたしましては、やはり、当該登録制のもとにある方々は混乱が生ずる、不安であると言っておられますが、その他の関係の方々、これは学識経験者と言われる少し距離を置いてごらんになっている方々だけではなくて、周辺の関係業界の方々も、少し長く続き過ぎてしまったために、かえってこういうものの存在が場合によっては活力をそいで、これから大きな転換期に向かっている繊維産業の発展のためにはよくないことかもしれないぞというような御意見があるわけでございますから、登録制のもとにある方々もそこは十分認識されていく必要があるのじゃないだろうかと思っております。  それで、私ども政府の立場は、態度は先ほど申し上げたようなことでございまして、現在は諮問をいたしまして答申をいただくという、私どもはちょっとわきにいるわけでございますけれども、そういった反対運動というような形で大きくなっていくことは決して好ましいことでもございませんし、その中には登録制本来の問題と、長く続いたことに伴ういろいろな付随的な効果に伴うような点もあるわけでありますので、その辺の事情等も十分解析し、対応策も講ずるというような余地がないだろうか。私どもの見る限りでは、起草委員会から出された一つの方向というものもその辺は十分配慮された上での考え方のようにも思いますが、いかにも法律というものが大変テクニカルな要素も含んでおりまして、なかなか理解を得るのには時間がかかっているのではないかと思っておりますが、さらに一段と理解を得て、業界の正しい発展、正しい興隆のための施策を私どもとしては講じさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  146. 横手文雄

    横手委員 通産省の方として、答申の諮問をされた。そしていわゆる学識経験者と言われる人たちは、法体系から見ても、あるいはずるずる来た現状から見ても、あるいは一部業界の現象等を見て、さらに五十一年の提言を踏まえて、これはもうやめるべきだ、こういう意見が強い。ところが、業界の皆さん方は、そのようなことでまさに死活問題だということで反対をしておられる。その間に入っていろいろと御苦労をなさっていることはよくわかるのであります。大変感謝をいたします。  ただ、私はくどく申し上げますように、これはかくのごとき理屈があるからかくのごとき理屈に基づいてこの行政を行えということではなくして、企業は生き物であります。生きたものに対してすべて理屈でこれを割り切っていけということでは、ちょっと乱暴過ぎる。見方はいろいろあるでしょうけれども、現実に生きている人たち、日に三度三度そのことによって飯を食っておる人たち、この人たちが大きな危機感を持っておられる、こういうことに対してはもっと配慮が必要ではありますまいか。  そこで、皆さんが最もおそれておられることは、業界の秩序が乱れてしまう、あるいはそのことの延長は組合の崩壊につながってしまうという懸念があることは御案内のとおりであります。もしそれが本当にそういう形だとするならば、これはゆゆしき問題であろうと思います。特に、個別問題専門委員会における審議状況等についても御指摘があるわけでございますけれども、業界は、組合員が積極的に構造改善を進められるよう、組合員に対し指導及び教育事業、情報提供事業、調査研究事業等を通じて多品種少量対応への技術開発、技術指導を積極的に推進すべし、このよ、算書いておられる。これは通産省から出された審議状況、略されておると思いますが、このような指摘も入っておりますね。そうしますと、私は、業界の皆さん方が大変おそれておられるということが、この専門委員会においても業界に期待をする、これから積極的に組合員の指導をしなさいと言っておられる、そのことに対しても波及をしてしまうおそれがあるのではないか、こんな気がしてならないのであります。  先ほどから問題になっております五十一年の審議会においても、この問題に対する答申がなされておりますが、ここにもこのように記載をされております。「しかし、この制度が長い間毎年延長されてきたため、これを直ちに停止することは、現実問題として混乱を生じる可能性があるので、段階的な解消の方法の検討を含め必要な準備を早急に進めるべきである。そして、現行法による構造改善事業の成果を見きわめつつ、できるだけ早期にこの延長を停止すべきである。」それからしばらく行きまして、「業界団体が新しい理念に基づいて果たすべき役割を探求するなど、業界に無用な不安を与えないよう配慮する必要がある。」このように答申をしておられるのであります。  七年たった今日、この答申の中身はそのままの状態じゃないか。私は、この間放置されていた、あるいは責任の所在がどこにある、こんなことを議論しようとするのではございません。事実として当時と同じような状態にありますよということは、直視すべきであります。つまり、業界の反対を押し切ってやるのではなくして、この中にも指摘されておりますように、業界に無用な不安を与えないよう配慮する必要がある、つまりバックグラウンドを整備して業界の不安の解消を図ることこそ具体的な日程にいまこそのせていくべきではありますまいか、こんな気がしてならないのでございますが、いかがでございましょう。
  147. 黒田真

    ○黒田政府委員 五十一年提言で述べられたような状況が今日もなおあるのではないかという御指摘は、私そのとおりのように思います。  その後、五十一年以降業界といたしましても構造改善努力をいろいろ進めてまいりました。また五十二、三年にかけては相当大規模な設備の共同廃棄事業というようなものも行われたわけでありますが、第二次の石油ショックというようなこともあって、必ずしもその所期の成果を十二分に上げ得たかということになるとそこにはいろいろ議論があるわけでございます。  したがいまして、その準備といいましょうか、業界、特に産地の組合が本来の組合事業を行うべき基盤、そしてそれの前提としての構造改善の推進というものについてなお不十分かもしれないという御指摘はあるわけでございまして、そして私どもも、特に審議会の御提案というようなものも方向として、ここで登録制の廃止というものをやはりはっきりさせる必要はあるけれども、同時に、おっしゃいましたような不安を起こしたり混乱を起こすということは避けなければいけないから、あるいは一定の猶予期間というようなものを設けながら、その間の不安を解消し、混乱を生ぜしめないような手だてを講じるような努力をすべきである、そういうような形での審議会の御提言でございまして、大変末端の方々のすそ野が広うございますので、組織された反対運動というものがひたひたと燃え盛っておりまして、実情、考え方というものがすべて通じておるのかどうか、私どももその辺はいろいろな努力をしておりながら、まだもう一ついまたしかなと思っておる点でございますけれども、御指摘のように、不安を解消するための手だてというものは十二分に講じながら施策を展開していくというのは当然のこと、そういうふうに考えております。
  148. 横手文雄

    横手委員 これは通産省にも行っておることだと思いますが、各業界あるいは協同組合単位の陳情書、要望書等であります。これはその一つでございますけれども、この中にいろいろわれわれは今日まで努力をしてきた、そして何とかこの道で食っていこうではないか、「このやさきに、前記織機の登録制廃止の問題が突然、新聞紙上に発表される等、将に晴天のへきれきといわざるを得ずこのような形で記載をされているのであります。これは個人の方が書かれたのではない、ある協同組合の話であります。  これはそのようなことが議論をされておりますように、やがてわれらの業界の中にもこの登録制というものは、そのバックグラウンドの整備に入らなければならない、そしてそれが完成をする、あるいは見通しがついた時点でこの問題については廃止の方向である、このような提言がなされていたということについてほとんど御存じなかった、このような証左であろうと思うのであります。それが、この人たちの言葉をかりればまさに青天のへきれきと言わざるを得ない、このようなことだろうと思うのであります。私は、このことを議論しよう、その責任がどうだったかこうだったかということを議論をしようとするのではございません。事実としてかくのごとくでございますよ、こういうことを申し上げたいのであります。  それは五十一年提言があることは私も承知をいたしておりますし、通産省としても、当然のこととして業界の皆さん方は御存じのはず、だから次のときにはもうちょっと進んだものが出てくるであろうということを業界の皆さん方も御存じのはずと思われていたに違いない通産省に対して、協同組合からのこのような提言があるということはまことに心外ではありますまいか。ただこういうことであるという事実でございますね。その辺のことについてもお互いに反省をし、そしてその事実の上に立ってどうすべきやということが先でなければならない。  先ほどから申し上げておりますように、論理やあるいは一部の現象だけが先に走ってしまうというのはまさに危険ではありますまいか。そして業界の人たちは、何遍も申し上げておりますように、あるいは通産省にもそれぞれ請願書、陳情が出ておりますように「中小零細機業の崩壊」「当組合、引いては福井県構造改善工業組合の崩壊」につながってしまいますということを繰り返し述べておられるのであります。  私は、そういったことで企業は生き物である、したがって将来性も見詰めていかなければならないし、通産省は当然のこととしてその将来像も描いていかなければならない。多少の無理があっても、これは歩まなければならないときには業界の皆さん方を叱咤激励して、これを歩め、そのことがやがて広い道につながるのだということも当然あってしかるべきであろうと思うのであります。しかしそのときには、少なくとも身も心もといいましょうか、そういった状態でなければならないはずであります。  ここに過去多くの業種がこのような登録制をしいてきた。そして多くの業種はもうすでにこれを廃止しておるわけでございます。繊維産業の十一業種だけが今日なお生き続けておる、こういったような事実、これを廃止されるときも多少の抵抗はあったでございましょう。業界の皆さん方の抵抗もあったでございましょうけれども、しかし今日のような状況、そのことによってその組合が崩壊をしてしまいますというような全国的な反対運動というものは、私はそこまでは行ってなかったのじゃないか。むしろ通産省の説得の範囲内にあったのではないか。つまり身も心も、多少その身はおくれても、大体同じような形で歩いてこられたのではないか。私は、いまの現象をこのまま進めるとするならば、身も心もという言葉がありますけれども、まさに心だけが先に行ってしまって体だけは残ってしまう。その体はまさに腑抜けの業界になってしまうおそれがございます。このことについて、その主務官庁である通産省はどうでございますかということを再度御質問を申し上げます。
  149. 黒田真

    ○黒田政府委員 御指摘のございましたように、すでに五十一年段階で提言をされ、はっきりと指摘されておりましたその登録制の延長停止の問題が、いわばことし再びその繊維産業のビジョンづくりの過程で取り上げられました際に、あたかもそれが青天のへきれきであったというふうに受けとめられているというその事実、これは私も非常に深刻に受けとめておるわけでございます。私も、実はそういう懸念もあったものでございますから、従来から審議会のビジョンづくりというものは関係団体の代表という方々に集まっていただいて議論をしておるわけでございますけれども、いま繊維産業が非常に大きな転換期にある、そして個々の事業者がいまのままで、そのままその発展の可能性を享受できるわけではないかもしれない、非常に大きな転期、非常に大きな決断に迫られているということをできるだけ多くの方々に十分御理解をいただきたいというふうに考えまして、先ほど申しました中間取りまとめ、将来像等につきましてはできるだけ広く皆さんに知っていただく努力をしたつもりでございますし、しているつもりでございます。  と同時に、それを実現するための諸方策を議論される過程で、やはりどうしても設備の登録制という、おっしゃるように一つの秩序維持の手段ではございますが、やや現状固定的の傾きのある秩序維持の姿でございますから、そういうものがいつまでも続いていいだろうかという反省、批判は他方出てくるのも当然でございますから、私としてはそういう考えが審議会で議論されていますということをやはり多くの方に知っておいていただくことが必要だというふうに考えたわけでありますが、その受けとめ方としては青天のへきれき、これは大変なことになる、組合の崩壊だ、したがって反対運動というふうに進んできましたことは、先ほども申しましたように、私ども担当官庁としては反省すべき発展経路をたどったのではないか。  われわれももう少し努力をして、説得を十二分に尽くしておくべきだったと思うわけでございますが、現在なお、実は、審議会から出されました案は、私どもから見れば、ある意味で非常に業界の持っている懸念、不安というものにこたえたように考えられますので、その点の理解をさらに深めていただくというようなことで、いま私どもなりに懸命の努力をさせていただいているという状況にあるわけでございまして、おっしゃるとおり、頭で考えた観念的なことだけですぐに成立するとは思っておりません。  しかし、同時に、登録制で守られている姿が将来の繊維産業の発展に結びつくというふうには、当該業界は別にいたしますと、どうも多くの方々は考えておられませんし、私どももまだ意見を言う立場にはありませんが、そういう傾きで物事を見るというふうな傾向があるわけでございますので、そういった、今後の厳しい状況に直面する繊維業界の人たちがどういう態度で今後運営していったらいいのか、そのときに登録制がどういう効用を果たし、どういう効用を果たしていないのかということについても、私ども、さらに議論を深めて、理解をし合いながら進めていくことの必要性は痛感しております。
  150. 横手文雄

    横手委員 登録制に関する起草委員会の検討方針、五十八年九月二十九日にお出しになり、翌日の新聞にも報道されたことでございますけれども、業界の皆さん方から見れば、この方針についても、五年後に登録制が廃止されるということが明らかになってきた。仮になったとするならば、この種の問題については、その時点でこの規制はすでに終えんだ、いわゆる野放し状態に入っていってしまうということを大変懸念しておられます。  これはやってみなければわからぬことでございますけれども、百年の歴史を持つ産地で、そして常に過剰設備の中で大変苦しみながら、何かいい方法はないかということで大変苦労してこられた皆さん方、そして、いまこの登録制の問題によって今日何とか過剰設備は食いとめられておる。しかし、これが外されると、またぞろその問題が出てきて、業界全体が大変な過当競争になってしまうのだということは、実感的に体で感じておられることであろう、このように思うのであります。  ですから、そのためにこれから先どうするのか。このままではいけないから、新しい道を見つけていかなければならない。業界が、協同組合が崩壊しない、そして、それがなくても協同組合に魅力あるようなものをつくり上げていかなければならない。このことは、今日までいろいろやってみたけれども、いまさしあたってこれにかわるべきものはない。だからといって、これをやられると、たちまち崩壊につながってしまう懸念がある、こういったことで、大変もだえ苦しんでおられる姿が私にはよく見えるのであります。だから、今日までそのままにしてきた責任を追及したり、あるいはその責任の追及の結果、どちらがどうだというような結論を出してみたって、この業界の皆さん方は別に腹がふくれないのでございます。事実がこうであるという認識に立って対処してもらいたいということでありましょうし、私もそのとおりに思うのであります。  私の福井県につきましては、繊維産業はまさに基幹産業であります。そして、県全体における工業製品の出荷額においても、あるいは従業員数においてもこれは全国一であります。しかも、典型的な地場産業を形成し、中小零細企業が密集しております。長い歴史を持ち、事業主も従業員も地縁、血縁のつながりが多く、したがって技術水準も高いところで平均化されております。  メーカーの人たちも、北陸の産地をたたえて、メーカーが新しい原糸をつくる、そして新商品の開発をする、物のみごとに北陸の皆さんは製品化してくれる、さらに、メーカーでは考えてもいなかった新分野にまで、新しい素材は応用が広げられる、その技術は見上げたものだ、まさに世界の産地であると言っておられるのであります。それは事業転換がきわめて困難であり、他に職を求めようのない、長い歴史を持つこの地方での食うための知恵であり、努力であり、根性であります。これからも生き続けていかなければならない。さらに、高度化への構造改善を進めていかなければなりません。そのために業界の連帯と秩序の維持は不可欠であります。  先ほど来話が出ておりますように、専門委員会指摘の中にもありますように、登録制度の延長理由に、「業界の秩序維持」のため云々というのは、その目的から見れば副次的であり、反射的効果であるかもしれません。しかし、さしあたって業界の安心を保障するものであれば、これにかわるべき事業の見通しがつくまでこれを柱とするということが悪いことであろうか、これがやはり現場からの叫びであると思いますが、いかがでございますか。
  151. 黒田真

    ○黒田政府委員 登録制というものを廃止して、設備の新増設を野放しにする、あるいはだれが、たとえば機を織っているか、織物を製造しているかわからなくなるというようなことでは、とても組合の存立基盤がなくなるというような御指摘は、従来からございます。この点につきましては、起草委員会の検討方針の中でも示されておるわけでございますけれども、たとえば届け出制というような形で、織物業を営む人がどういう設備を使って機を織っているかというような意味での現状把握的な制度は、ひとつ将来にわたって残したらいいじゃないかというようなことも提案をされているわけでございます。  確かに、登録制を通じて、設備の制限を通じて過当競争が防止されている、あるいは過剰設備の発生が防止されているという御議論はございますが、現状においても登録制がありながら、過剰設備の存在というものは残念ながらあるわけですし、過当競争もある。それが登録制の廃止によってさらに悪化するのではないかという不安が示されていることは、御指摘のとおりでありますが、他方、ほかの方から見ると、そうではないのじゃないだろうか、これだけ三十年間登録制をやっても、本来の問題でありました過剰設備は解消していない、設備を処理してもどうしても過剰な状態は残っているし、あるいは過当競争性はそこにあるじゃないか、もしかすると、設備登録制というもので何か守られているというある秩序の、既存秩序が保障されているかもしれないという一つの観念が、ことによると、安易な増設、安易な競争に結びついているということも考えてみなければいけないぞ、もし、自己責任を徹底するならば、将来の当てのない設備が次々につくられることはないはずだというような御議論もあるわけでございまして、一方において、現在の方々の不安の御議論というものは十二分に承知しておりますが、同時に、将来の発展の方向を考えたときに、現在の枠組みをいつまでも、いつまでも続けていくということが、本当に業界の発展になるのだろうかという、その他の方々の御指摘にも十分耳を傾ける必要があると思いまして、私どもとしては、そういう考え方が十分理解されるように、懸命の努力をしているところでございます。
  152. 横手文雄

    横手委員 いま局長のお話しの中で、いろいろ述べられました。それらの問題について、いや、そうでない、反論というようなことになってくると、とても時間が足りませんし、すでに私の持ち時間も終わろうとしておるのでございますが、繰り返し申し上げてまいりましたように、現状の事実を十分よく見てくださいということであり、この廃止の期間が、一定期間を置いてその年限が示されたその時点で、すでにそれはもうなきに等しい状態に入ってしまうおそれがあります。したがって、七年前に提言がなされたそのときと同じような状態であるという事実にかんがみ、この七年の間は多くの反省をしなければならない点があった。けれどもこれからはそうじゃない、目に見えて何かをなしていかなければならない、その向こうに、その設備登録の廃止の問題がある。当面そのバックグラウンドの整備こそが最も大事なことではありますまいか。そのことが、業界の皆さん方が不安を抱かずにこれらの方向に一緒になって努力をしていかれるたった一つの道ではありますまいか。そのことを通じて、私は日本の繊維産業の活性化の道がそこにある、このことを信じて疑わないのであります。そのことを申し上げておきます。  時間が参りましたので、一言最後に、大臣の地元もこのような産地を抱えておられますし、多くの陳情もいただいておられることでございましょう。一言御所見をお伺いいたしますが、九月三十日のある新聞の夕刊の囲みにこのような記事がございました。それは今回の繊維登録の問題をいろいろと解説をした後で、「長年定着してきた設備規制を一挙に撤廃することには、多くの懸念が伴う。企業の強すぎる生存意欲が衝突し合い、大幅な需給失調や弱小企業の行き詰まりを招く可能性を、軽視するわけにはいかない。過剰設備がいったん発生してしまえば、その処理に手を焼くことは必定であり、政策への信頼感は大きく揺らぐことになろう。そうした政策のリスクをどのように回避するか。余裕期間を設けて、段階的に撤廃していくといった方法は当然考慮されるだろうが、それ以外にも、業者の安心を保証する工夫を付け加えることが望ましい。ここ数年来、問題の処理を見送ってきた通産当局に、さえた手さばきを期待したい場面である。」このような記事がございますが、これらに対して大臣の御所見を最後にお伺いして、私の質問を終わります。
  153. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私、戦後の日本のあらゆる産業を総覧いたしまして、よく外国の人が、なぜここまで日本はよくなったのかという質問をされますが、それに対しましては、絶えざる構造改善、絶えざる技術革新、絶えざる経営革新、いろいろなことを日本人はがんばってやってきた。だからそれはみずからやられた場面もあるし、あるいはアメリカやヨーロッパが非難する産業政策ではありませんが、やはり通産省がそうした意味の産業を指導したという面もあるんだ、こういうふうにお答えいたしております。  したがいまして、先ほど来の局長の答弁は、一人の行政官としての姿勢を貫いておると私は考えますし、また横手委員のお話は、業界を代表し、また地元を代表された本当に熱烈なるものを私は感じ取らしていただいております。やはり政治というものは、民間が混乱を来すというようなことを好むべきでない。そういう点におきましては、やはり私も一人の政治家といたしまして、この問題を慎重に考えていきたいと思っておる次第でございますが、業界の御意見も私もしばしば伺っておりますし、審議会におきましても業界の意見を十分聞いておられるだろうと思いますが、そうしたものが調整をされまして、そして適切な結論が得られるようにやはり私たちも今後いろいろと考えていきたい、かように思っております。
  154. 横手文雄

    横手委員 御奮闘を期待して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  155. 登坂重次郎

  156. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私はきょうは、織機登録制廃止の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  いま産構審・織工審合同政策小委員会、ここにおきまして、織機登録制廃止問題が審議をされております。通産大臣も、滋賀県の長浜市などは御関係がありますので大変関心をお持ちですし、いまも慎重にやりたいという御答弁がございました。そこで、通産省にお伺いをいたしますが、一九七六年にも繊維産業ビジョンの中ですでに登録制の廃止が提言をされているわけです。ところがこの登録制度を通産省は延長して今日に来ているわけでございますが、どんな理由を持たれて延長をされてきたんでしょうか。
  157. 黒田真

    ○黒田政府委員 現在、織布業等に対して行われております設備登録制というものは、中小企業団体の組織に関する法律というものに根拠を持ちまして、一言で申しますと、業界の過剰設備あるいは過当競争状態というものに対応する形で設備の新設の制限を行うという規制でございまして、法律上最長一年半というような期限があらかじめ設けられております。運用上は、従来、一年間の期限ということで毎年審査をされて、一年間限りで延長を繰り返して、実は二十数回延長されて今日に至っているという状況でございます。
  158. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それじゃ、通産省といたしましては、この登録制に対するメリット、それからデメリット、こういうものをどのように考えていらっしゃるのでしょうか、お教えいただきたいと思います。
  159. 黒田真

    ○黒田政府委員 本来、これがスタートいたしました昭和二十九年あるいは三十年代の前半というものは、日本の繊維産業が大変な活力を持ち、輸出競争力等をつけながら世界に進出した時代でございます。余りの勢いていろいろな問題が起こったりいたしまして、その設備増強の勢いを抑えなければいけないじゃないかというのが当初の立法趣旨と申しましょうか、規制をスタートいたしましたときの理由であろうと思います。  そして、それは新たな設備というものの増設は認めない。もし設備の新増設を個々の業者が行おうとするときは、既存の設備をスクラップした場合に限るという形で、全体の設備規模というものを一定のところに抑え込もう、そういうことによって過剰設備の発生を防止し、ひいては過当競争をできるだけ少なくしようというねらいがあって実施されたと思います。  しかしながら、三十年近くなった今日から見ますと、当初立法された、規制がスタートした当時の政策目的というものが次第に薄れつつあるのではないだろうか。そして長い間続けられたことに伴う秩序、それがやや現状固定的な秩序に偏っているのではないかという御意見が最近出されつつありまして、五十一年提言というものもそういった観点から、政策的な意義というものは失われつつあるようなんで、この辺で解消のために段階的な措置を準備するように検討したらどうだという御指摘があったというふうに理解しております。
  160. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 この問題で、私は昨日も京都の西陣織工業組合の皆さんとお会いしてまいったわけであります。  業界では、登録制が廃止されれば各業者がばらばらの状態となり、産地組合の組織の維持が困難となり、従来組合の実施している金融等の安定事業はもとより、構造改善事業の実施も不可能になるというふうに訴えておられます。さらに登録制の廃止で業者間の過当競争が激しくなり、生業的中小零細企業が倒産し、家族労働、高年齢、パート従業員の解雇等、社会問題に発展するというふうに大変懸念をしていらっしゃるわけですね。同じようなことは大阪府下の泉州地域の繊維業界の皆さんからもお聞きをしているわけでございます。  ここに第十次の西陣機業調査委員会報告書があるわけでございますが、これによりますと、登録制のもとでも企業間格差が広がっていることが統計によって示されているわけですね。昭和四十一年から五十六年の間に織機十台以下という企業は四九・三%から三六・九%に減っているわけです。逆に五十台から百台という規模のものが六・八%から一二・一%にふえているという現象が出ているわけです。この上にいまの登録制が廃止されるというふうなことで、大資本が進出することがあれば、中小零細企業は危機に瀕するというふうに大変な危機感を持って訴えていらっしゃるわけです。こういういわば産地の秩序を破壊して、そして弱肉強食ということを進めるようなことに絶対ならないんだという保障はあるのでしょうか、いかがでしょうか。
  161. 黒田真

    ○黒田政府委員 現在わが国の繊維産業というものは非常な転換期に直面していると思います。  繊維産業というものはきわめて歴史も古く伝統的な産業であります。しかし他方、いまさらながらにと申し上げてもいいぐらいに技術革新の波が押し寄せておりまして、新しい革新的なきわめて能率の高い織機というものが実用化、導入されております。またコンピューターを利用した生産工程というものが、繊維産業は他の産業に比しますとやや立ちおくれておりますけれども、しかし、それでもいろいろな形で導入をされておりまして、コンピューター利用の自動柄出し機とか自動編み立て機というような形で非常に新しい技術革新の波がひた寄せてきているわけでございます。  そういうような状況の中で、登録制というもののいかんにかかわらず、繊維産業全体が非常な転換期に直面しているという状況にあるわけでございまして、実は現在通産大臣から繊維工業審議会、産業構造審議会に「今後の繊維産業及びその施策のあり方いかん」という諮問をいたしておりますが、その答申の総論ともいうべきビジョンの中で、現在繊維事業者は非常に厳しい選択に迫られていますよ、変化する状況に対応する決意と熱意がない限りは次の繊維産業を支えていくことはできないかもしれません。きわめて厳しい国際競争状況下で厳しい対応が迫られているということでございますので、いま先生指摘の点はいろいろな企業規模、グループの変化をおっしゃったと思いますが、実は今後、いま申し上げたような情勢のもとでは、多分いろいろな変化が起こってくるのではないだろうか、それは企業規模の拡大型に当然なるとも必ずしも考えませんけれども、現在のような産業組織、産業構造のままで今後推移するとはむしろ考えないわけでありまして、その中では非常に大きな変化が起こってくるのではないかということが予測されております。  ただ、一つ申し上げたいと思いますのは、私どもは非常に危機的な状況になるのではないかという懸念を業界からも伺っておりまして、その中の一つとして、大資本が参入するというような御指摘もあるわけでございますが、残念ながら、どうも現在までのところ、川中と呼んでおります織物業を中心といたします繊維の中間段階のところは競争も相当激しいし、利益率も高くありませんし、小回りのきく能力が必要でありますので、私どもの見る限り、大資本がいまから大きな投資をするほど魅力のある分野ではないのかもしれないというようなことで、どうも実態的に大企業の参入ということは余り起こらないのではないだろうか、大企業自身の参入ということは起こりにくいのではないだろうかというのが現在の時点における評価と申しましょうか判断でございます。
  162. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 繊維産業が転換期にあると予測される、これはだれしも、私自身も予測しているわけですけれども、これに対応する熱意と決意が要る。と同時に、行政としては産地の秩序破壊をするというようなことがその中でないように、弱肉強食ということが起こらないようにという指導、援助が必要だと思うのです。それが絶対ないんだという保障はいま御答弁の中からは一言も出てこないというふうな実態だと思うのです。  それと同時に、いま大資本の参入というのは残念ながらない、いまの繊維業界というのは魅力がないんだ、だから心配要らないんだという意味のことをおっしゃったわけですけれども、それではどうでしょうか、絹織物の逆輸入の問題が現在も大変な問題になっているわけですね。この問題の発端は、商社が介在をしまして西陣の技術を韓国に輸出したてとから、韓国産の西陣織というものが日本に逆輸入されるというふうなことが起こって、日本の絹織物の産地が大きな打撃を受けたわけです。西陣だけではありません。大島紬などもそうですね。大資本というものはもうけになりさえすればよいということでどんどん侵食してくるということはもう実験済みのことですね。このことを私ははっきりと申し上げておきたいと思うのです。  その点と、またそれだけではなくて強い者が弱い者を駆逐していく、こういうことが許されるということであれば、末端の業者というのは織り元同士の競争のための犠牲にされてしまうということが起こるわけなんです。  私は、この問題につきまして一九八一年の二月に予算委員会の分科会で取り上げさせていただいたことがございます。それは歩引き、難引きというような値引き問題です。これにつきましては公正取引委員会調査をされたというふうに聞いておりますので、その結果はどうであったのか、今後ほどのようにされるのか、公取の方からお答えをいただきたいと思います。
  163. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 お答えいたします。  公正取引委員会におきましては、絹織物業界の歩引き等の不合理な取引慣行につきまして、昭和五十七年度の特別調査として調査を実施いたしたところでございます。  本件調査の対象は東京、名古屋及び京都の各地区に所在いたしております絹織物卸売業者百社を選定いたしまして、まず書面による調査をいたしました。その結果、歩引き等の疑いのある卸売業者三十二社に対し立入検査を実施したわけでございます。その結果、下請法で禁止いたしております不当な値引きに該当するおそれのある歩引きとか協賛引き、そういった行為が認められましたので、昭和五十八年九月二十九日付で個別事業者につきましては合計二十三社に対し文書によって厳重に警告を行っております。また当該事業者の所属いたしております団体である東京織物卸商業組合ほか二団体に対しましては、自主規制基準、そういったものの策定を含む強い要望を行っておりまして、あわせて他の繊維関係五十団体に対しても取引の公正化について要望を行いました。当委員会は今後繊維卸売業者を定期的に調査するとともに、違反行為に対しましては勧告あるいは値引き額の返還等の厳しい是正措置を講じていく所存でございます。  なお、この種の問題はまず業界自身が自発的に改善を図ることが肝要であるというふうに思われますので、所管の官庁でございます通産省中小企業庁と連携いたしまして業界に対して強力に改善方の指導、たとえば啓蒙普及活動でございますとか自主規制基準の策定、あるいは難引きとか返品につきまして公平な判定のできるそういった判定機関の設置、そういった指導を行っていく所存でございます。
  164. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 大臣にお尋ねをいたしますが、公取は、各産地に公正な判断を下させるような判定機関というようなものを設置した方がよいということでございますが、もし設置するならば、下請の織り手さんであるとか自治体の代表も入れたようなものにする必要があるというふうに私は思うわけでございます。自主規制基準を策定させるということですけれども通産省はこれらのことについてどのような考えを持っていらっしゃるのでしょうか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  165. 黒田真

    ○黒田政府委員 ただいまの公正な判定機関につきましては、すでに京都におきまして、地方公共団体の手で、第三者による客観的な判定機関というようなものを設けていただいておるというようなことも聞いておるわけでございまして、特に製品の仕上がりの欠陥をめぐる議論というようなものは相当専門的な判断を要するようにも思われますので、私としては、公正な技術的知識を持つ第三者というような方々にもしお願いすることができれば、業界のトラブルをより少なくすることができるのではないかというふうに考えて、京都の前例等をよく参考にさせていただきながら、もう少し広く普及できるかどうかについて考えてみたいと思っております。  また、自主規制基準につきましては、先ほど公正取引委員会の方からもお話がございましたように、私ども、民間の手による繊維取引近代化推進協議会というものを設けまして、従来から繊維取引近代化憲章というようなものをつくったり、その普及ということを通じて取引改善のための各種の事業を行っておるわけでございまして、従来毎年二月を強調月間ということでいろいろな運動をしておりましたが、ことしからはそれに加えましてこの十月も強調月間に加える。たまたま九月三十日に公正取引委員会から絹織物の流通に関連する問題調査の結果の御報告があり、問題点が指摘されたというような時期の符合もございましたので、この十月の期間には絹織物に関連した問題を積極的に取り上げるということで、日本織物中央卸商業組合連合会及び繊維取引近代化推進協議会事務局を呼んで、不正取引行為の是正というものを要請いたしますとともに、今後ともこういう面で問題がないように一層努力するように申し渡したところでございます。
  166. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 時間がありませんので先へ進みたいわけですが、一言だけ申しますと、歩引き、難引きで一番泣いている人は賃機を織っている人、その人たちですね。ですから、この人たちの意見がよく反映される、事実がよく見きわめられるという自主規制なり判定機関というものが必要だということを強調したいと思います。  先ほどのことに戻るわけですが、繊工審と産構審の合同政策小委員会、この起草委員会が検討方向をまとめたと言われておりますが、その内容は、一つは五年以内に届け出制にする、そして二つ目には、産地組合ビジョン作成を義務づけるということでございますね。  そこでお聞きしたいのは、現在産地組合としてビジョンと言えるようなものを持たない組合があるのでしょうかね。すべての組合というのがビジョンを持っているのでしょうか。もし持っていないというふうな組合があるとするなら、どんなところが持っていないのでしょうか。簡単で結構ですからお答えください。
  167. 黒田真

    ○黒田政府委員 私ども従来から、産地のあり方は産地自前で考えてほしいということは、ある意味で当然のことでございますが、申しておりました。そして、産地が自前で進めようとする方向を政府が側面的に支援するというのが繊維政策の基本でございます。したがって、それをビジョンと呼ぶかどうかは別といたしまして、多くの産地が産地としてのビジョンづくりというものをいろいろな形で努力をしてきているというふうに理解をしております。ただ、相当はっきりとした具体的な何々ビジョンというふうに名づけたものから、ちょっとビジョンの体裁にはほど遠いようなものまであろうかと思いますが、基本的にはそれぞれの産地が産地自立の方向というものは模索をしておられるというふうに理解をしてございます。
  168. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 そうしますと、きちんとしたビジョンをすべての組合が持っているというわけでもない。それで、結局それは現実にはつくる力がないというふうに思うわけですね。そういうようなところもあるという中で一年以内にビジョンをつくりなさいというふうなことが現実にできるのかどうかというところに大変疑問があるわけですね。結局は登録制廃止、そして弱肉強食の競争にゆだねてしまうということにならないのか。そうなると、いままでは登録制のもとで何とか発展をしてきた産地でも、それでだめになってしまうというふうなことになるのではないか。そこのところが一番心配なわけですから、明快にお答えをいただきたいと思います。
  169. 黒田真

    ○黒田政府委員 登録制が一つの秩序をつくって、そのことによって強い者が弱い者をのみ込んでいくということが防がれているという一つの前提を置いて、登録制というものがなくなると秩序が壊れて弱肉強食になるのではないかという論理展開があるわけでございますが、先ほど来申し上げましたように、登録制というもの自身がそこまでの機能を果たしているのだろうかどうだろうかということもございますし、また強い者、弱い者とおっしゃられましたときに、それが大きい者、小さい者というふうには必ずしもならないわけでございます。強い力のある人たち、これは規模の大きさには関係がないのだろうと思いますが、なかなか工夫をこらした人たちは発展をしていくし、比較的停滞的なことしかできない人たちがやはり力を小さくしていくといいますか、少なくしていくというのはある一つの大きな流れでございまして、できるだけ多くの人たちが共同しながら力をつけて厳しい国際競争、国内競争、産地間競争というものを耐え抜いていこうという努力をしているわけでありますが、どうも登録制がすべての問題の発生を防止し、その登録制の廃止によって一斉に問題が発生するという議論は、原因と結果、手段と目的というものがやや短絡的に結びつけられて議論されている場合が多いように思われる点、審議会その他でもいろいろ御指摘のあるところでございまして、ひとつその辺については産地の皆さんにも一段とよく理解していただくように、私どもとしてもさらに意を用いたいと考えているところでございます。
  170. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 だからこそ私は、先ほどこの調査報告書、第十次西陣機業調査委員会がまとめましたものを取り上げて、この報告をしたわけなんです。しかし、聞いておりますと、通産省はもう固定してしまっている、登録制を廃止するんだということに固定をしてしまって、答申に、無用な不安を与えないよう配慮せよとかいうふうなことがあるから、一定の期間を置いて手だてを十分に講じて施策を行ったようなふりをしてと言ったらきついですけれども、そういうものの配慮だということでいろいろ業界を集めたりなんかして話もし、意見も聞いているような体裁は整えておられるわけですが、五年先にやりそうだというふうなことをいま意見を聞いている段階ですと言っておりますが、結局はもうこれは登録制廃止の方向だということで固定してしまっているというふうに私は強く感じるわけです。  私は繊維産業の振興、とりわけ中小零細というところがほとんどという産地の振興というのは、織機の登録制が障害になっているのではない、何よりも大事なことは何かといったら、まず需要の拡大だということですね。西陣で言えば和装を着る人をふやすということが大事だ。そのためには消費者の購買力を高めることが必要だ。また販路とか市場の拡張というようなことが必要だし、そういうことが必要な業種もあるということですね。それだけではなくて、大企業に負けないような新商品の開発をするとか、技術革新についても、もっと産地全体を振興させるということから、積極的に取り組むというふうな課題が私はあるというふうに思うのですね。  西陣の場合は、かつて二百三十人もおりました紋彫り業者ですね、この人が、コンピューターが導入されることによって、現在では百二十五人というふうに半分になっております。各企業がばらばらにこういうことをやったのでは、こういう状況が各産地とか各職種の中でどんどん広がって大変なことになるわけですね。ですから、どうしても産地が一体となってこれは取り組んでいかなければならない。ところが、これらのことを中小零細な業者の集まりであります産地組合が独自の力でやり抜くということは、大変いま困難であるわけですね。そしたらどうするのか、どうしても政府の援助が必要であるわけです。ですから織機登録制の廃止ということよりも、まず政府は何をしなければならないか、これはやはり援助ということに力をいたすことが必要だということを私は感じるわけです。  時間が参りましたので、この点は強く要望をさしていただいて、終わりたいと思います。
  171. 登坂重次郎

    登坂委員長 渡辺貢君。
  172. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 八月ごろ中曽根内閣は、景気底入れだ、これから景気は順調に回復をする、こういうふうな宣言を出していたわけですけれども、ところがその宣言の出た後、たとえば労働力調査では、九月三十日の発表では百五十八万人の失業者、二・八%で戦後最高であるとか、あるいは総理府の家計調査でも、これも戦後三十年ぶりという実質名目の可処分所得の減少だ。あるいはそうした影響がもろに中小企業にもかぶさってきて、八月の倒産の件数というのは千六百七件、八月としては戦後最高だと言われているわけですね。そういう意味で、巷間、現在の不況というのは不況の二重構造だ、一方で国民生活が破壊をされ、あるいは中小企業が塗炭の苦しみに陥っている、構造的な不況ではないか。しかも東京証券市場上場一部の大企業などを見ると、来年三月の決算、これは推計でありますけれども、今年度に比べてこうした大企業の利益率というのは大体四五%前後だというのですね。ここに深刻な二重構造の特徴があろうと、こういうふうに言えると思うのです。そういう意味で、とりわけ日本経済の土台を担っている中小企業に対する施策というのは、そうしたトータル全体を見ながら積極的に進めていく必要がある、こう思いますが、時間もありませんので、二点だけ特に質問したいと思うのです。  一つは、産地地場産業対策です。もう一つは官公需の問題ですけれども昭和五十四年に産地法が制定されて二百二十産地が指定される。当初三年間という予算措置が二年間延長されて五年になる。一定の成果は上げてきているのではないかというふうにも思うのですが、しかし、当初指定された六十産地というのは今年度で終わってしまう。ですから来年度の中小企業庁の概算要求の中でも、今年度に比べて産地対策費というのは減額しているわけですね。つまり六十産地はもう切り捨てるのだ、こういうかっこうになっているわけなんです。  そこで、この問題では二つあるのですけれども一つは六十産地ことしで終わってしまいます。しかし、いままでの振興ビジョンをつくって助成も受けながら、たとえば川口の鋳物などコールドボックス、新しい造型機の開発をやった。いよいよこれが商品化されて普及していく段階になるわけなんですが、しかしその段階ではもう補助、助成は打ち切られてしまう。そういう点で新しい機械をせっかく開発をした、これを受け入れるたとえば鋳物業者などがそういう機械を買い入れる場合の金融など、やはりこの振興政策が十分に効果が上がるような措置を、補助が継続できればいいわけですけれども、その点あるいは金融の面でカバーできないか、これが一つ。  それから産地法は円高対策ということでできたわけでありますけれども、もう昭和五十四年から四年、五年たって若干情勢も変化している。産地自体の性格が単に円高対策というものではなく、もっと積極的に地域におけるさまざまな変化、そういうものにこたえながら発展をさせていこうということになると、この法律ができて五年になりますから、全体をどういう状況になっていくかを把握をしながら、産地に対する改めて積極的な施策が必要ではないかというふうに考えるわけなんですが、この二点についてまずお答えいただきたいと思います。
  173. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 産地問題についてのお尋ねでございます。先生の御指摘のとおり、産地対策法は五十四年からスタートいたしまして、スタートした動機につきましては、円高問題、非常に激変いたします円高に対して、各産地がどのように対応するかというそのビジョンづくりと振興事業、これを早急に図らなければいかぬということでスタートしたわけでございます。  この五カ年間に新しい製品の開拓あるいは需要の開拓あるいは人材の養成、またそれらの事業を確立するという計画に即しまして五カ年間、着々とこの振興事業がスタート以来定着してまいりまして、私どもといたしましては、一応の成果を見たというふうに考えております。  ただ、まさに先と言われましたように、これらの振興事業によって出てきた成果をどのように各企業の段階で実らせるかというのが現在の問題だと思います。そのような観点から、私どもといたしましては、このような形で開発されました製品を地場、産地を問わず、全国一元として総合展をするということで、一つは展示会を開催するということで新しい需要の喚起を図ってまいりたい、かように思っております。これが一つの振興策でございます。  またもう一点は、まさに先生指摘されましたように、産地の中小企業者がこれをどのような形で合理化として実現し、あるいは製品化をするかということでございますので、これまでのような振興事業という形から、むしろ産地振興貸し付けというような形で、特別の優遇されたような形での金融を行う、あるいは新しい事業を興すにつきまして信用が足りないという場合もございますので、信用補完という形から信用保証制度につきましての特例を設けるというようなこと、あるいは研究開発につきましての税制上の優遇措置をとる、こういう形での各企業段階におきます振興策について十分な手当てをしたいと思っております。  この点につきましては、五カ年間この振興事業が済んだわけでございますけれども、六十一年までございます産地振興法の期限切れのいっぱいまでこのような金融、税制あるいは信用補完の面での手当てを十分尽くしたいと考えております。そういう意味でいままさに産地対策の問題は収穫期に来ておる、それに対する十分な政策的な手当てをしたいということでございます。  もう一点お尋ねの、六十一年以降の産地に対する新しい政策的な方向をどのようにするかということでございますけれども、私どもといたしましても、せっかく定着をいたしましたこの産地振興の実績を、どのような形で新しい時代に即応する産地のあり方に求めるかということは非常に大事な問題でございますので、本年度いろいろ研究いたしました結果、来年度の段階で産地におきますもろもろの組合あるいは事業の実態というものを十分に改めて調査いたしまして、この六十一年以降の産地対策というものを新しい観点から練り直したい、かように考えております。そういう意味で、従来に引き続いて前向きに取り組んでまいりたいと思っております。
  174. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 長官からかなり積極的な答弁もあったのですが、五十年代の初めごろと違った様相がかなり出ているわけです。それから、中小企業自身にしてみても、そういう振興政策の中で自分たち自身が参加してビジョンをつくっていく、そうして新しい商品なんかも開発するし、人材養成や後継者養成でもかなり努力している、そういう努力にきめ細かい施策を今後も十分にしてほしいということを申し上げておきたいと思います。  同時に、地場産業の振興でありますが、これは法律ではなくて施策として昨年度から進められてきておるわけなんですが、たとえば埼玉を見ると、県北と県南と産業構成なんかもかなり違いますし、地域における地場産業といっても性格的にもそう単純ではないわけなんですね。地域性がある、あるいは異業種間との連携もしなければならないという意味でも、一つの県の中でも県南と県北とで相当な違いがあります。ですから、埼玉県の場合には県北の地場産業の振興ビジョン、ことしの五月には県南の地場産業振興ビジョンをつくっているわけですが、この県南のビジョンの中では三十一市十八町一村、五十市町村が入る。対象になる事業所総数が一万五千事業所くらいになるわけですね。この計画をつくって県に助成が与えられるというわけですけれども、情報収集であるとか、あるいは計画の策定に力をかすというくらいなんですね。  あと、大きな事業ということになると振興センターの建設、これは昨年県北の方に予算措置をとっていただいたわけでありますけれども、もう一歩何か踏み込んだ振興策が必要ではないか。地場産業といっても、たとえば鋳物だけだとか織物だけではなくて、もっと今日の社会経済の変化に照応したような努力も、県の振興計画を見ると策定をされておりますので、そうした点で金融政策がいいのか税制政策がいいのか、あるいはいまの産地法を違った角度から発展をさせながらこうした地場産業の総合的な振興対策を立てるか、もう一歩踏み込む必要があるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点についてどんなふうにお考えでありましょうか。
  175. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 地場産業問題の方でございますけれども先生いま御指摘になりましたように、地場産業につきましてはまず県段階でそれぞれの地域の地場産業ビジョンを作成いたしまして、そのビジョンにのっとりまして地場産業振興地域に指定されましたその地域につきましては、地場産業の振興ビジョンに基づいて行います振興事業の助成を行っておるところでございます。  確かに地場産業の場合には複数のいろいろな地場産業あるいは組合が共同してその地域におきます中小企業性の産業を興していくという、産地問題と若干異なった側面がございますので、私どもといたしましては、幾つかの複数の地場産業が共同して新しい製品を開拓する、あるいは新しい需要を喚起するというような複合的な事業に対しまして、これを積極的に助成してまいりたい、かように考えております。  確かに、環境変化によりまして新技術を製品の製法に取り入れていく場面もございますし、あるいは新しい需要に向けて製品に対していろいろな異業種間の協力を必要とする場合もございます。したがいまして、私どもといたしましては、地場産業の振興ビジョン、あるいは振興ビジョンに基づきます共同開発事業につきましては、積極的な助成策を講じていくわけでございますけれども、それに加えて、新しい政策として考えております一つの方向といたしましては、異業種間の交流に対して、積極的な異業種間交流プラザというような形での、もろもろの事業者の間での交流を進める、あるいは新製品の開発のために異業種間での共同開発に対して助成を行う、こういう方向で地場産業に対します新しい方向づけを行っていきたいと思っております。  なお、御指摘のように、地場産業センターにつきましては埼玉では北地域にできているわけでございまして、南の地域とは別途の問題になっておりますけれども、センターというような実際上の施設がなくても、私どもとしては、いろいろな方法での技術あるいは新製品の開発というものは進めていけると考えておるわけでございます。
  176. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それでは、そういう点もすでに策定されておりますし、積極的な努力を求めたいと思います。  二番目に、特に中小企業の仕事の確保、官公需の問題でありますけれども、比較的中央官庁などは発注についての努力もされているわけですが、意外と公団や公庫の場合に、全体としては平均、たとえば三七%より低いというのが現状なんですね。  ちょっと具体的に申し上げたいと思うのですけれども、住宅・都市整備公団の場合、一九八二年度の住宅建設戸数全体が二万二百十九戸、このうち木造住宅が二千九十五戸なんです。ところが、この木造住宅の発注先を見ると、大企業が千百八十六戸、中小企業は九百九戸、全体の四三・四%です。ところが、八〇年度の実績を見ますと、中小企業向けは五九%なんですね。だから、官公需をもっとというふうに言われているときに、逆にウエートが減ってきているというのが住宅・都市整備公団の現状なんです。  これは官公需適格組合のある建設の協同組合の方に聞いたのですけれども、そこは三戸木造を請け負いをした。非常にいいものができて、見学に来た需要者の皆さんは、ランクをつけていくとその建物については一位、二位、四位であったというのですね。そういう意味では大変消費者のニーズにこたえるような、そういう努力をやっているわけでありまして、そういう意味で、こうした公団公庫などに対する——とりわけ全体の取りまとめをやっております中小企業庁として、これは個別具体的な例でありますけれども、そういう点について現状と、そして、どんなふうに公団等に対する全体の施策を進めていくか、中小企業が仕事が確保できるように措置をするかという点についてひとつお尋ねをしたいと思います。
  177. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 現状のような非常に国内の消費需要、なかんずく住宅建設需要が停滞しておりますときに、中小企業者に対しまして官公需あるいは住宅発注の確保をしていくということは、非常に大事な問題でございます。本年度の官公需の目標比率を決めます際にも、建設省あるいはただいま御指摘のありました住宅関係の公団等につきましても、直接いろいろ実態につきましてのヒヤリングを行いましたり、あるいは建設省等々に対しまして、極力官公需比率の引き上げ、確保だけではなくて、実際上、実行上の段階として官公需適格組合を積極的に活用するというようなことでございますとか、あるいは分割発注のような形で中小企業者に需要が向かう、発注が向かうというようなことにつきまして、中小企業庁といたしましては積極的な要請及び依頼をしてきたわけでございます。  本年に入りましてからも、三月あるいは四月の段階の二度にわたりまして、それぞれ関係省庁に対しまして私どもから文書をもちまして、ただいま申しましたような趣旨での官公需適格組合の活用あるいは分割発注等の措置についての協力要請をしております。また、府県に対してもこれを行っているところでございます。  いまおっしゃいましたように、いろいろ工夫をいたしますと、現在の体制でも中小企業者により多くの発注ができるということの知恵がございますので、そういう面につきましては、毎年官公需の目標比率を決めます際に、国におきます措置等につきましてきめ細かく決定を行っておるところでございます。  ただ、一部公社公団等につきまして、大規模な建設工事が中心になりますような公団、たとえば本四架橋のような大きな発注になりますとどうしても大口の発注になるということもございますし、あるいは科学技術関係の発注につきましては、非常に大型な受注になるということで、中小企業がなかなか入りにくい側面もあるわけでございますけれども中小企業者に発注が可能であるというようなものにつきましては、私どもも、毎年の官公需の比率を決定する際にはもちろんでございますけれども、それ以降のフォローアップにつきましても、各省に十分な配慮をしていただくように要請をしているところでございます。
  178. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 ただ文書でこうあるべきだということだけではなくて、たとえば行管庁なんかでもいろいろ監査をやっている、こういう具体的な事例があるわけですね。ですから、そういうものが大いに行政に反映できるようにぜひしていただきたいと思うのです。  とにかく、国等の官公需総額昭和五十七年度で十兆円を超えているわけでありますし、三七%、総額三兆七千億円ですね。五十八年度はほぼ同じくらいの水準で三七・三%、〇・三%しか上がっていないということでありますからね。その中でも、国などの場合にはほぼ四四%、ところが、公団公庫は三〇%そこそこなんですね。そういう意味で、改善の余地はまだ十分あるのではないかというふうに思いますので、かなり強力な取り組みをする必要があるのではないかというふうに思うのですが、もう一度、どうですか。
  179. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 もちろん、一片の通達でもって事足れりというような気持ちでおるわけではございません。現に私どもも、本年度の官公需比率を決める際には、私自身も建設省あるいは大口の官公需を擁しておる官庁には参りまして、予算執行の責任者でございます官房長あるいは担当局長等にひざ詰めで、その目標比率の引き上げ、あるいは確保をお願いしておるということでございます。  また、いま御指摘のような、公社公団等につきまして現実の発注のあり方をより十分なものにするという努力は当然必要でございます。したがいまして、そういうことを実現いたします際には、各省、形の上では主務官庁がそれぞれの公社公団等の監督をしておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、中小企業向けの契約の実態を十分把握しながら、こういうやり方もあるではないか、あるいはこういう形でやったらより中小企業向けの比率が上がるのではないかということで、主務官庁と共同いたしまして、公社公団等から実態、現実の姿をヒヤリングをしながら、そういう形を通じながら、実際に中小企業向け比率あるいは中小企業向け発注が伸びるような形に誘導すると申しますか、実現を図っていくということをしておるわけでございます。  御指摘のように、公社公団が三一%、国は四四%というふうに、なべて見ますと国の方の発注比率が高いわけでございます。ただ、これは先ほども申しましたように、一概に公社公団が熱意がないとか、あるいは努力を怠っているということではなくて、大口発注を擁しておる公社公団というものがあるということのために、ある場合には性格上中小企業向けの発注比率が低い水準にとどまらざるを得ないという経済実態があるということを御了解いただきたいと思います。
  180. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それでは、そういうことでひとつ努力をしていただきたいと思うのですが、時間がないので次に進みたいと思うのです。  ガソリンの価格の値上げが起きているのですね。九月一日ぐらいからずっと一斉に、リッター当たり二十円前後の値上げが行われているわけなんです。通産省やエネ庁などによくお話を聞くのですけれども、大体こういうものは市場メカニズムによるものだ、こういうことで、公共料金の場合でも比較的そういう話が多いわけでして、これは民間が適切に決めればいいという御意見が非常に強いわけなんです。  ところが、今度の値上げの問題について経過をたどってみますと、かなり通産省の指導というか示唆というか、そういうものがあったというふうに言えると思うのです。たとえば、七月の下旬にエネ庁が元売十三社の販売部長クラスからヒヤリングを実施する、八月四日には松尾石油部長も参加して元売社長から異例のヒヤリング、そして八月十七日には松尾石油部長が自民党の石油問題調査会政策小委員会に出席して状況説明と見通しを述べている。こういうものを七月の下旬からやりながら、九月一日にエッソ系の販売店が一斉にリッター当たり約二十円、百五十五円ぐらいに上げる、こうなっておるわけなんですよ。ところがずっと推移を見ると、一般の消費者から見るとOPECでバレル五ドル下がっている、全体としては下がるのではないか、実際上四月、五月、六月というふうにずっと下がっていってリッター当たりほぼ百三十円から百三十五円ぐらいに下がった。それが突如としてこう上がっていくわけですね。そういう意味で、こうした経過から見ても通産省の積極的な価格形成についての介在があるのではないかというふうに断ぜざるを得ないと思うのですけれども、その点についてはどうでしょうか。
  181. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 先生指摘のとおり、ガソリンなどの石油製品の価格につきましては、市場メカニズムを通じて形成されることが基本であるというふうに私どもも考えているわけでございますが、先ほど御指摘のありましたヒヤリングのことに関連して申し上げますと、確かに私ども元売各社から事情聴取をいたしましたけれども、この趣旨は、かねて石油審議会におきまして、商品を引き渡す前に極力値決めを行う慣行を確立していくなど、取引慣行の合理化を図るべきであるということの指摘を受けておったわけでございます。そのような基本的な方針のもとに、元売の仕切り価格の事後調整などの実態を把握いたしまして、不合理な取引慣行の是正を促したというのが私どもの行いました作業の趣旨でございます。  確かに、そのような私どものヒヤリングの後に元売各社の値戻しが行われたのは御指摘のとおりですけれども、ちょうど私どもがそのようなヒヤリングを行っております過程におきましても、私ども感じましたことは、元売企業が安値競争に対する反省と厭戦気分というものを大分みなぎらしておりましたけれども、その後ある元売企業が値戻しをするということを通告したというふうな雰囲気の中で、各企業が自主的な判断のもとに御指摘のような値戻しを実施したものであるというふうに了解しております。
  182. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 松尾部長、当事者で大変弁明も苦しいだろうと思うのですが、本来エネ庁長官がいるわけだったのですが、行革特の方に出ているというわけで、やはり大変苦しい弁明をしていらっしゃるのですが、いま言った元売の厭戦気分などというのは業界紙にも出ているわけなんですが、一般に事情を聴取したということではなくて、九月には流れが変わるであろうというふうなことも部長が自民党の政策小委員会で言っている、あるいは元売販売の自覚を求め、適正価格の復元を図りたい、末端百五十円という心積もりで取り組んでいるようであり、それを念頭に置いてやっていきたい、こういうふうにかなり踏み込んだ発言をしているようなんですね。ですから、これはまあある意味では通産省のサゼスチョンもあるし、あるいはそういう意味でのインパクトがあった、こういうふうに客観的に見なければならないと思うのですね。  ですから、私はそういう意味では、そうした指導を撤回すべきである、もし行き過ぎの指導があってそういう結果を生んでいるとすれば、また客観的な経過はそういうものだというふうに私どもは見ざるを得ないわけですから、それを是正すべきだという点が一つと、もう一つは、国民生活に相当大きな影響があるんですね。  たとえば自動車の免許保有者は四千八十一万人、乗用車の保有台数は二千四百六十一万台、そしてエネ庁などが見ている自動車用のガソリンの需要見通しは一九八三年度で三千五百四十五万キロリッター、こういう見通しを立てているわけです。ですから、単純に計算してみると、リッター当たり二十円上がった、リッター当たり二十円上がって、こうして国民が保有している自家用車などが全部動いたというふうに仮定をしてみた場合に、一年間その価格で推移をしてみたという場合には、リッター二十円上がっただけで総額七千九十億円、これは単純計算ですからね、上がるわけなんです。国民が負担しなければならない。そういうことを実際上通産省、エネ庁は考えているのか。こういう一つの価格が十円なり二十円なり一たん上がった場合に、どんなに国民生活に影響があるのか、こういうことをやはり考えていきませんと、正しい行政指導を進めていくということはできないと思うのです。  そういう意味で、上がったから仕方がないんじゃない、業界もやってしまったんだから仕方がないというのではなくて、改めてそういう経過も考えながら適正な行政、逆に価格をもとに戻すとか、そういう国民生活を考えた施策をむしろとるべきであるというふうに私は思うのですが、その点についての御見解を承りたいと思います。
  183. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 先ほど先生から御指摘ございました、自民党の石油問題調査会の政策小委員会での私の発言のことでございますけれども、九月中に流れが変わるのではないかというようなこと、あるいは末端の値段についての念頭に置いている状況についてお触れになられましたが、この点はちょうどこの調査会の小委員会が開かれました時点では、すでにある元売会社の値戻しの発表も行われておりまして、そういう状況の中でもございましたことも踏まえ、ほかの元売企業においても、先ほど申し上げましたように、ヒヤリングの過程で厭戦気分とか反省というものも大分出てきているようだという状況も頭にございましたので、すでに発表いたしたある元売企業の値戻しについては、これがやはり石油の市況の流れを変える一つの要素になるのではないだろうかというふうに存じまして、さような趣旨の発言をいたしたわけでございます。  それから、末端の値段がどうなるかということにつきましては、いろいろお尋ねがございましたけれども、まさにこれは市場が決めることでありまして、元売企業が幾らにしたいと申したからといって、必ずしもそうならないものであることはもう言をまたないところでございますので、いろいろお尋ねがございましたので、値戻し値上げを発表した元売企業はどのくらいのところを念頭に置いているんだろうかと言えば、この辺ではないだろうかというふうに考えるということを、御質問に応じてお答えしたにとどまっておりまして、もとより価格は市場メカニズムにより決定されるものだと考えているわけでございます。そのような趣旨で申し上げたつもりでございます。  なお、先生指摘のように、ガソリンの価格が上昇すれば、それが国民にいかなる大きな負担を招くかという点は、私どもも常々、石油というものが、ガソリンに限りませず、国民生活にとっても産業活動にとりましても、きわめて重要な基礎物資であるということにかんがみまして、その安定供給の確保には常々意を用いているつもりでございますけれども、今後とも市場メカニズムを基本としながら、価格の動向については十分注視をいたしてまいりたいと存じます。
  184. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 時間がありませんから終わりますけれども、ぜひひとつ、これはかなり具体的な踏み込んだ発言の結果、たとえば元売りがこういうふうにやっている、だからということを引用しながら発言をされるということは、それを認めていくし、大体全体がこういうふうに並んでいくんだというふうにとられるわけですね。それだけ行政の持っている重みというのがあるわけです。ですから、そういう意味で、われわれとしてはこの値上げについては通産省の積極的なインパクトの結果もあったと見ておりますので、そういう国民経済的な視点からも十分な検討もされるように、そして問題があれば是正するように強く求めて、私の発言を終わりたいと思います。
  185. 登坂重次郎

    登坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会