○千田公述人 千田でございます。
私の仕事は、
もともとは皆様の御
意見を聞くのが本来の仕事でございまして、ちょっととまどっております。したがいまして、多少失礼なお話を申し上げることになるかもしれないことを懸念しておりまして、そういうことがございましたら平に御容赦をいただきたいと思います。
私は、当
特別委員会で審議をされている
行革関連
法案について、今
国会において早期成立をされることを期待しております。いや、むしろ必ず成立をさしていただきたいと、そういうふうに
お願いをしたいと思います。
私、仕事柄いろいろの方のお話を聞いたり、講演会で
行政改革についてお話を申し上げる機会がありますが、ここ二年間の経験を見て考えてみますと、
最初ぶつけられた一般
国民の素朴な疑問というのは、
行政改革というのは一体何かということでございます。最近は少し変わってきております。私
たちに
行政改革でできることは何だろうか、そういうふうに変わってきております。
行政改革という言葉は非常にむずかしゅうございます。非常に広範で多様な
内容を含んでおります。たとえば、歴史的な出来事として明治維新、あるいは戦後の政治
改革、そういったものも含めて言う場合がございます。あるいはまた、単なる
行政機構の
機構を改編をするというそういったこと、それから人員
整理を指す場合もございまして、そのときどきに応じて言葉の含む意味が非常に多様であるのが特徴だろうと思うわけですが、私は今回問題になっている
行政改革について御説明——特に私は報道機関の仕事をしておりますので、読者の方々に御説明をする際にこういう説明をいたしております。視点は二つあろうかと思います。
一つは、納税者の立場から考える、そういう視点でございます。もちろん納税者というのは
国民と重なってまいります、一般
国民と。主権者でもあります。自分
たちの納めた
税金の使い道についてこれは関心を持つ、そういうふうに言ったらよかろうかと思います。むだな使い方がないのか、ふらちな使い方がないのか、有効に使われているのか、そういったことが、いわば納税者の立場から
行政改革について考える出発点になろうかと思います。そこで出ます素朴な疑問というのは、これは
行政改革そのものにつながっていく原点になると私は思います。
単純な例でございますけれ
ども、四千万円退職金の問題がなぜ大きな問題になったのかというのは、納税者の立場で考えれば別に不思議なことではございません。私
どもの
新聞に投書がございまして、ことしの七月一日ですが、「わたし
たちの
行革」という小さなコラムでございます。そこで、東京大手タクシーの会社員の方なんですが、会社都合による退職金の改定要求を出したわけですね。勤続三十五年で、それで要求額が八百四十九万二千四百円、現行が六百二十八万七千四百円である。三五%アップの要求なんですが、そういった要求をしている
民間のいわば納税者の方々の感覚からしますと、四千万円退職金の問題というのはやはり非常に不思議なことであり、おかしなことである、そういう問題になろうかと思うのですね。
一体どういうところからそういう問題が出てきたのかということを追跡をするところから、いわば納税者サイドの
行政改革というのは始まるだろうというふうに思うわけです。それで、納税者にとっては最終的に自分の意思を表明するのは、これは
選挙しかございません。一票を行使することによって意思を表示する、そういうことになろうかと思います。
もう
一つの
行政改革の考え方と視点といたしましては、何といいますか、ガバナーといいますか、管理者といいますか、
理事者側といいますか、あるいは
行政の執行側といいますか、そういった方々の立場で言う
行政改革の問題がございます。これはいま申し上げました納税者の立場、納税者の要請にこたえる形で自己
改革を進めていただくということにほかならないと思うわけであります。効率的で簡素な体制を常に考えるというのは、これは当然要求されることであります、こちらのサイドの方々には。これは
国会に対しても当然要求されます。
国民の代表者である皆様方は、当然そういう要請を踏まえてお考えになっているはずだと私は考えております。
私の立場は、もちろん納税者の側であります。本日申し上げます私の所見というのは、そういう基本的なスタンスで申し上げることになります。
特別委員会に付託をされております六
法案は、
臨時行政調査会が出しました答申、それを受けて
内閣が決定した
改革プログラムに基づいて
法案が
国会に提出をされた。
政府は全体構想の第一段階の立法
措置であると説明をしております。広く
国民が
行政改革の必要性に関心を持っている状況の中で
国会がこの
法律についてどういう決定をされるかということは、非常に重大な意味を持っておると私は思います。
こういうふうに申し上げますのをもう少し端的な言い方で申し上げますと、ここ数年の状態というものを振り返ってみて、現在開かれております臨時
国会と、特に当
委員会で御審議をなさっている皆様方の立場というものを、やはり私なりに考えてみたいと思うわけです。
行政改革というのは、いま抜き差しならないととろに来ている、端的に申し上げれば、私はそのように申し上げられると思います。
理由は二つございます。
最近、政界の引退表明をされた西村英一さん、この方は福田
内閣で
行政管理庁長官、副総理格として入閣をされた方ですが、この方が回想録を書いておりまして、この中で、福田
内閣当時、福田首相から福田
内閣として何をやるべきかということを副総理格の立場で聞かれた。それで、エネルギーと高齢化
社会の問題と
行革を重点にすべきであるということを、その当時の総理に進言をした。五十二年の八月に福田さんから、
行政改革案を一週間ぐらいでまとめてほしい、そういう指示を受けた。それで党と協議をされたり、
省庁内部の
意見をまとめて、定員
整理、特殊法人、
審議会、補助金、
行政事務の六
項目の
改革案をまとめた。御承知のように、これは、福田
行革というのは失敗をしております。
その結果について西村さんは、その回想録の中で「行管庁と官邸だけでドタバタと作ったものがスンナリ通ったためしはない、第二
臨調で案をつくった鈴木
行革さえ猛烈な各論反対にあっている。福田
行革は
政府各
省庁、自民から総スカンを食った」、こういうふうに書いておられるわけですが、西村さんは所感として、
議員定数を減らすくらいにまず
国会議員がみずから範を示さなければ役所がついてくるはずがない、
行革はそれほどむずかしいという、そういう所見を書いていらっしゃいます。
西村さんはさらにそのあと、その後の
政府は
行政機構の
整理など私が考えていたと同じ線を追っている、ただ
中曽根君が違うのは、鈴木首相と相談をして土光敏夫さんを中心に第二
臨調を
設置し、
行革を進めていく環境をつくったことは私
たちより賢明であった、こういうふうに述懐をされております。私は、ですから、
行革の問題というのは、やはり福田
内閣のときまでさかのぼって、流れとしてとらえてみる必要があろうかと思うわけです。
それで、第二
臨調が発足をして、五次にわたる答申が出されて、現在ここで
法案を御審議になっています。非常にわかりにくい
法案でございます。これは
行政組織の問題であって、当然一般の、何といいますか余りよく知らない、
行政技術について深く知識を持たない人にはなかなかわりにくい
法案でありますけれ
ども、第一段階であるということが重要な意味を持っているのだろうと思います。
これは、私は
新聞記者としてさまざまな御
意見を聞きました中で、第二
臨調が発足をしたときに、恥いろんな言い方がございました。戦前の枢密院のようなものだ、あるいはもう
一つの
政府、そういう言い方がございました。それからさらには、GHQになぞらえる、そういう言い方もございました。私は非常に、こういうなぞらえ方というのは興味がございました。というのは、裏返しにして考える必要があろうかと思うわけです。単なる
政府の一審議機関にすぎない第二
臨調が超越機関のような言い方をされたということは、実は代表民主制の
もとで
責任を持つべき諸機関が十分に
機能していなかったのではないか。
これは皆様方に苦言を申し上げるようで申しわけないのですが、
国会もそうでございます。
国会改革というのは、
国民の多くの人が望んでおります。たとえば定数の問題でございます。公職
選挙法第四条では、四百七十一人というふうに書いてあります。私は、これは基準の数字だろうと思うわけですね。戦後四百六十六人で出発をして、沖縄が祖国復帰をした。四百七十一人というのはそういった意味の数字だろうと思うわけですね。四十人多いわけですね、現在の現実の定数というのは。私は、
国会はそういう意味での定数是正ということをもっと真剣にお考えいただければと思っているわけですけれ
ども、
国会改革で、
国民の側から見ておりますと目立った
改革が行われたというニュースは、私は残念ながら耳にしたことはございません。
いまの
行政改革というのは、戦後三十八年を経て、政治経済のいわば底流において解決困難な諸問題にわれわれがぶつかっている。袋小路に入っている。それから脱出するためにどうしてもやらなければならない問題、
課題として、
行政改革というのがわれわれのいわば
国民的な
課題として現在提示されてきたことだろうと思います。これについてくだくだ申し上げる必要はなかろうと思うわけですね。
行政改革自体、
国民的な
課題であるということについては、ほぼ
国民の合意が成立をしていると思います。
一体、この問題というのは、本来は
国会がお考えになる問題ではなかったのかということを申し上げたいわけです。現実に福田
内閣で
行政改革を取り上げたときに、これは毎日
新聞でございました対談ですが、参議院議長の河野謙三さんと衆議院の保利茂さん、この方の対談の中で、
行政改革というのは
国会がイニシアチブをとるべき問題ではないか、そういう発言を保利さんが現実にされていらっしゃいます。われわれは期待をしておりました。
国権の最高機関である
国会こそがこういった問題に本格的に取り組むべき場所ではなかったのかというふうにわれわれは思うのですが、現実には超越機関と言われるような土光
臨調というものを発足をさせて、その答申を受けて現在御審議になっていらっしゃるということです。しかも、
国民が求めている
国会改革について目立った実績をお上げになっているというふうには思えません。それで、
国会に残された最後の手段というのは、要するに選択というのは、やはり現在提示されている
行革関連
法案について早く結論をお出しになることではないのか、私はかように考えております。
それで、背景には政治不信がございます。現在、全国各地で起きている自治体
行革というものの展開、動向というものをごらんになってもおわかりになると思うわけですが、住民運動をなさっている方々の御
意見を聞きますと、いま一番心配しているのは何かといいますと、実は
国会なんです。今度の
行革国会というのはちゃんといくのだろうか。たとえば若い青年経済人の方の中には、おやじから勘当をされて、それで地域の
行革に取り組んでいる、そういった話を私は二、三聞いておりますけれ
ども、若い人
たちがやはり一生懸命におやりになっています。そういう方々が心配しているのは、一体政治の中枢部ではきちんと決定をされるのでしょうかということです。私は、
国会が、そういう意味で非常に抜き差しならないところに皆様方がいまお立ちになっているのではないか、そういうことを申し上げたいわけです。
それで、
特別委員会の審議を拝見しておりますと、中道各党で
政府提案をさらに
強化して、そういう方向でぜひともこの
法案をこの
国会で成立させようじゃないかというふうに御
意見があるやに伺っております。大変結構なことだと思います。いずれにしても今
国会中に必ず成立をさせていただきたい。それが納税者の立場に立ってのこれは皆様方への
お願いといいますか、希望といいますか、そういう意味で私の所見を申し上げます。(拍手)