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1983-10-04 第100回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十八年九月八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 竹内 黎一君    理事 麻生 太郎君 理事 川田 正則君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上  泉君 理事 北山 愛郎君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       赤城 宗徳君    石原慎太郎君       木村 俊夫君    北村 義和君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    玉沢徳一郎君       中山 正暉君    古井 喜實君       松本 十郎君    宮澤 喜一君       河上 民雄君    高沢 寅男君       土井たか子君    八木  昇君       渡部 一郎君    林  保夫君       中路 雅弘君    野間 友一君       楢崎弥之助君     ――――――――――――― 昭和五十八年十月四日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 竹内 黎一君    理事 麻生 太郎君 理事 川田 正則君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上  泉君 理事 玉城 栄一君    理事 渡辺  朗君       奥田 敬和君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       松本 十郎君    河上 民雄君       八木  昇君    林  保夫君       野間 友一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務政務次官  石川 要三君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         財務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         農林水産大臣官         房審議官    中野 賢一君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用第一課長   江間 清二君         防衛庁防衛局運         用第二課長   上田 秀明君         防衛庁防衛局調         査第一課長   松村 龍二君         法務省入国管理         局入国審査課長 宮崎  孝君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     上野 博史君         運輸省航空局監         理部国際課長  向山 秀昭君         運輸省航空局管         制保安部管制課         長       小山 昌夫君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ――――――――――――― 委員の異動 九月十九日  辞任         補欠選任   林  保夫君     竹本 孫一君   中路 雅弘君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   竹本 孫一君     林  保夫君 同月二十日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     中路 雅弘君 十月四日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     赤城 宗徳君     ――――――――――――― 九月二十七日  核兵器禁止全面軍縮に関する請願外一件(吉  原米治君紹介)(第二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、わが国外交政策の樹立に資するため、関係方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 久しぶりの外務委員会でありますが、けさの新聞によりますと、レーガン大統領フィリピンから東南アジアの国々を訪問することを取りやめた、こういう報道がなされており、そのことは勢いこの十一月の九日から予定されておるわが国への訪問もあるいはと懸念されるような記事も見受けられておりますが、これは大体間違いないですか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ政府からの連絡によりますと、アメリカ議会都合フィリピン、タイ、インドネシア等ASEAN訪問を取りやめるということでありまして、わが国あるいは韓国への訪問についてはこれまでの基本方針を変えないということでありますから、ASEANに対する訪問は取りやめということになったわけですが、日本あるいは韓国に対する訪問は行われるというふうに判断しております。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 そのことは、フィリピンASEAN諸国と比較をして、日本あるいは韓国アメリカは重視しておる、こういうふうに理解していいですか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、アメリカからの連絡によれば、アメリカ議会関係ということでASEANへの訪問を取りやめたということでありますから、日程関係日本韓国への訪問は行われるということはアメリカもこれを認めておる、こういうことです。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 しかし、そういうことは一つ儀礼上からも、甲の家へは幾日に行きます、それから乙の家へは幾日に行きます、こう言っておって、議会関係で、その日程で甲のところへは行けなくとも乙の日が行けるとするならば、やはりその手前から、計画したところから順に行くのが外交的な儀礼じゃないかと思うわけですけれども、私はそれは素人だからわかりませんけれども、本来はそういうものじゃないですか、日程は。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回は、もちろん日本韓国だけじゃなくてASEAN関係も重視する、こういう立場訪問が決まったわけでありますが、これはいわゆる内輪の事情といいますか、アメリカにおける議会日程関係でということでありますから議会日程上の都合だ、こういうふうに私は受け取っておるわけです。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 それは、アメリカ議会日程ということで逃げればそれで逃げられるかもしれぬけれども、日本としては、日本韓国とにレーガン大統領が今日この時期に訪問してくるということは、歓迎すべき訪日じゃないと私は思うわけです。むしろレーガン大統領日本へ来ることに、最初にカール・ビンソンという巨大な航空母艦日本に送り込んできてデモンストレーションをやっておいて、そして今度は、ASEANはやめたけれども日本韓国とには行きますよ、これは日米韓、三つの同盟的な関係をさらに強くするためのものではないかと私どもは今日の段階では思うわけですけれども、大臣、どうお考えですか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはいままでのアメリカ連絡から判断する以外にないわけですが、それは議会対策上、議会日程上ということですから、御承知のように、レーガン大統領訪問日韓だけではなくて、ASEAN諸国ということももちろん発表され、そういう方向で準備を進めておったわけですから、そういう意味では別に日韓だけに主力を置いたということではない。ただ議会日程都合ASEAN三国には行けなくなったと解釈をして差し支えないのじゃないかと思うわけです。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 そうなると、大統領意思でやめたんじゃない、議会意思でやめた、議会筋関係でやめた。そうすると、レーガン大統領日本へ来る場合にも、来るということがもうすでに決まって日も迫っておるわけですけれども、議会筋都合によってあるいは延期もあり得るということは、これは考えておって間違いないでしょう。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 議会意思というよりは、大統領意思としては訪問したいということでしょうが、日本にもよくあることですけれども、国会議会日程で行けなくなったからこれを延期するというように聞いておりますから、いずれはASEANへのレーガン大統領訪問ということもあり得る可能性はあると判断いたしております。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは日本は、仮にレーガン大統領の来日が中止あるいは延期になった場合、別にそう日本のいまの政府が、中曽根内閣がやる外交政策の上に影響はないですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本への訪問中止あるいは延期というふうな連絡をまだ何も受け取っておりませんし、われわれとしては、これまでの日程どおりいまの段階では訪日が実行される、こういうふうに判断しております。しかし、ASEANへの訪問中止といいますか延期ということになったわけですから、この点はこれから日米関係で早急に詰めなければならないと思っております。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、いまの段階ではということでありますからその答弁を予といたすわけですけれども、中曽根総理は山荘にレーガンを迎えて、ロン、ヤスの緊密な間柄を誇示する、そういうふうな報道がなされておるわけですが、これは、外務大臣外交というか日本外交に取り組む姿勢については、中曽根総理の指図によって動いておるのか、外務大臣としての一定の自主性を持った外交活動がなされておるのか、どっちでしょう。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん私も中曽根内閣の一員ですから、総理大臣十分相談をして外交を行っておるわけです。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、中曽根総理相談をし、中曽根総理意思によって外交政策を進めていくということになると、あなたの外交に対する信念はどこで生かされるのですか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり同じ内閣、特に中曽根内閣という、総理大臣中曽根総理大臣ですから、私の考えももちろん十分相談をしながら、了解も求めながら、理解も求めながらこれを行っておるわけですから、一体でやっておると言ってもいいのじゃないかと思うのです。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 そうすると、外務大臣としての自主性というものは余りない、こう考えておっていいですか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の意見も十分取り入れた形で、総理了解を求めながらやっておるわけですから、そういう意味においてはもちろん私の考え外交の中に生かしてこれを進めておることは間違いありません。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 あなたの意見総理に言うことによってあなたの自主的な外交姿勢総理理解してもらって、それで日本外交政策を進めていく、それは非常にそつのない見解ですけれども、そうすると歴代外務大臣がかわるけれども、それは総理の指揮棒によって動いていく外務大臣であって、本当に安倍外交という歴代に残るような外交政策を展開するということは不可能な二とですか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり同じ内閣総理大臣外務大臣がばらばらで外交を進めていったのじゃ外交一体性というものがなくなってくるわけですから、そういう意味では十分連絡意思疎通を図りながらやっておるということです。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、そういう意思疎通を図っていく、閣内の統一ということでそういうことは考えられるでしょうけれども、たとえばあなたの所属しておる世間で言う派閥、その福田さんが日本外交アメリカ一辺倒ではいかぬ、全方位外交でなければいかぬ、こういうことで全方位外交を展開された。そのことはあなたも十分御承知のことだと思うわけですけれども、総理がそういう方向に変わったら、またそういうことになるのですか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それぞれの内閣カラーといいますか、また外務大臣カラーというものがあると思いますけれども、われわれはやはり自由民主党内閣でありますし、自民党の大きな外交政策枠組みの中で外交を進めておるということです。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、今日の自由民主党外交政策に全方位外交というような考え方を持って外交政策を進めるということはない、こういうふうに理解していいですか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは全方位外交ということのとり方だと思いますけれども、いまの日本外交自民党内閣外交枠組みというのは日米間を基軸とするわけですが、しかし、いずれの国とも仲よくする、体制の違っておる国とも仲よくしていくというのが日本外交、われわれの外交基本ですから、そういう意味においては別に大きな質的な変化というものはない、こういうふうに御承知いただきたいと思います。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 あなたがイランからずっとあっちの方面訪問され、そうした外交を展開された、そのことについて私も非常に敬服をしておったわけですが、やはり日本外交というものは対米一辺倒ではいかぬ、あらゆる国と仲よくする積極的な全方位平和中立外交でなければいかぬ、そういう認識の上に立って行動しておるのではないか、こういうふうに思っておったわけでありますけれども、これからの日本政治を背負う安倍外相としては、もっと自分自身外交に特色を持たすような何物かを国民期待をしておると思うわけですけれども、そういうような期待を感ずることができないのは非常に残念に思うわけですけれども、今後においてもさらに私は安倍外交の真髄はこうだったのだということが残るような外交姿勢を展開してもらいたい、こういうことを要望しておきたいと思います。  そこで、あなたの外交政策の中で、たとえば今度の大韓航空機の問題についてはもう政治的決着をした、こういうふうに言われるわけですけれども、あなたはこの間ソ連を名指ししてソ連のこの無謀きわまることに対して国連でも演説をされて、そのことに対するソ連から何らの誠意のある回答もなされていないのに、これでもう大韓航空機問題は政治的決着をしたというのは、どこをとらえて政治的決着と言うのですか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政治的決着をしたというふうに言っているわけではありませんで、私が言っているのはたとえば国連における決議ですね、ソ連批判、非難の決議といったような動きがあったわけでございますが、これもいまICAO調査も行われておる段階でありますし、そうした動きが現在においてはさらに拡大をして、決議案の提案というところには進む状況にはなくなったということを言っておるわけでございます。  同時にまた、ソ連に対する真相追及、それからまた責任追及は今後とも行っていかなければならない、これは当然のことでありますが、ソ連がこれに対してあくまでも責任を認めようとしない、こういう態度は依然として変わらない、今後とも変わる状況にはないというふうに私としては判断をした、こういうことを申し上げたわけであります。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 そのことは新聞の見出しては「政治的には一段落ついた」、政治的にはこの問題は終わったからあとは事務的なことだけだ、こういうふうに国民理解をするわけですが、これは一段落っいたどころでなしに、より一層政治的な活動というものがこの大韓航空機の撃墜問題についてはなさねばならないことではないか、こう思うわけですけれども、大臣はもう政治的に一段落っいたということによって、これを政治的な面の引き合いに出すことはもうしないということですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本としてもこれまでもソ連に対しましては損害賠償要求もしておりますし、あるいは国連安保理においても証拠を挙げてソ連責任追及もいたしております。  また、私も国連における演説の冒頭で日本立場をはっきりと打ち出して、真相追及責任の所在を求めておるわけであります。この姿勢はもちろん今後とも変わりないわけでありますが、ただ、ソ連態度を変えていないということも事実であります。  また、ICAO調査がいま続いておる、こういう状況もあるわけでございますので、いまの情勢からいきますと、国連でこの問題を大きく取り上げるというふうな状況はもうなくなったというふうに判断をせざるを得ない。決議案が上程されるというふうな状況はなくなりつつある、こういうふうに判断せざるを得ない。  そして、むしろいまICAO調査の結果を待つとともに、いわゆる遺族の補償の問題、あるいはまた今後のいわゆる民間航空機航行安全保障の問題、そういう方向へいま議論が移りつつある、こういうふうに私は判断をいたしておるわけであります。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 「政治的には一段落ついた」と報道されておるということは、国連の場における政治的なこれに対する対応ができなくなった、一応の決着がついた、見通しがついたという意味における一段落、こう理解しておっていいでしょうか。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま申し上げましたように、国連において決議が上程されるというふうな状況はなくなりつつある、とともにソ連責任を認めるというふうな動きはいまの情勢ではとうてい考えられない、こういうことを私は言ったわけであります。しかし、ソ連に対する責任はあくまでも日本としてもあるいは関係国としても追及していくという姿勢には変わりはないということを私は言っておるわけであります。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、私はソ連責任追及するということは当然なすべきことであると思うわけでありますけれども、なぜ大韓航空機領空を侵犯したのか。いわゆる操縦士の未熟なためかあるいはソ連の言うスパイ活動のためなのか、これは何といっても大韓航空機に乗っておった日本人を含めるところの多数の民間人というものは航空機に安心をして乗っておるわけでしょう。それが領空侵犯をした。その領空侵犯ということを意識せずに侵犯したのか、それからどういう中で領空侵犯になったのか、その辺のことについての究明というものはほとんどなされないし、そういうふうなことについての報道もほとんどされないわけですが、この点について日本防衛庁は、あの当時のソ連機大韓航空機を発見し、それを追跡しておる姿その他については非常に正確に把握をしておったわけですが、そういう場合に、どうしてソ連領空に入っていたのか、なぜこっちに返らないか、そういうような手だてはできなかったのか、みすみす領空を侵犯し、ソ連機が追っかけておるのをそのまま見過ごしてきたのか、その点はどうでしょう。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさにそういう点の真相を求めるためにいまのICAO調査が続行されておるわけであります。日本にも調査団が近くやってきまして調査をするわけであります。あるいは韓国にも行くわけであります。恐らくソ連にも出かけていくのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  どうして大韓航空機が大きく進路をそれてソ連領空を侵犯したのかということについては、いろいろと言われておるわけでございます。しかし、それはICAOの最終的な調査を待たなければはっきりしないことでもありますし、また、その調査の上で非常に大事な問題点は、いわゆるブラックボックスを手に入れるかどうか、これが回収されるかどうかということが一つのかぎになっておることもまた事実であります。  ただ、日本立場からいいますと、御承知のように、大韓航空機が撃墜される寸前まで成田管制塔連絡をしておるわけでありまして、大韓航空機機長自身はいままでの既定の路線を走っておるというふうに思い続けて航行をしておったということは成田との交信の状況からはっきりしておるわけであります。しかし、果たしてそれがどういう状況のもとに行われておるかということについては、これはこれからの調査を待たなければならない点もあるのではないか、私はこういうふうに思うわけでございます。その間にあって、防衛庁とかあるいはまたその他の民間管制塔等大韓航空機が大きく進路をそれてソ連領空を侵犯しておったということを事前に知るすべはなかったということは、日本についてははっきり、先般も外務省情文局長談話をもって詳細にその辺のところは明らかにいたしておるわけでございます。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 防衛庁もそうですか。
  38. 江間清二

    江間説明員 お答え申し上げます。  ただいま外務大臣の方から御答弁ございましたように、防衛庁当該航跡大韓航空機のものではないかというふうに認識いたしましたのは、これは所沢にございますところの航空管制当局から大韓航空機が行方不明であるという異常事態を一日の午前五時少し前に連絡を受けまして、その連絡を受けた後の調査結果によってそれが判明をしたところでございます。  少し詳しく申し上げますと、この連絡を受けまして三沢にございますところの防空管制指令所の記録を調査しました結果、その時間帯に飛んでおるのが根室沖の方ではなくて、稚内のレーダーサイトでとらえておる航跡ということで、これが大韓航空機のものではないかという認識を持ったところでございます。したがいまして、航跡があらわれた時点においてこれが大韓航空機のものであるというふうな認識をする、何らの知る由もなかったわけでございますので、それに対して警告を発するというようなことは不可能であったということでございます。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 大韓航空機領空を侵犯したということが言われておるわけですけれども、これには間違いないですか、結果から判断して。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、これまでのいろいろの状況から判断しまして、大韓航空機進路を大きくそれてソ連領空を侵犯した、カムチャツカ半島あるいはまたサハリンの上空等領空を侵犯したということは間違いない、こういうふうに判断せざるを得ないと存じます。
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 そうすると、これはまさに二百六十九名という民間人が大きな犠牲になった、この犠牲は、大韓航空機がそういうふうに領空を侵犯したこと、さらに、民間機でありながらそれに対してソ連が不法にも撃墜した、こういうことが折り重なって不幸な事態を招いておるわけですから、私はそういったことに対して――これは国連でも外務大臣は、「乗客、乗員の皆様に対し心から哀悼の意を表し、御家族の悲しみに深く同情の意を表明するものであります。」この気持ち外務大臣のみならずわれわれも皆持っておるわけですが、ただ、その気持ちがそれだけであっても亡くなった人の命は帰らない。そして亡くなった原因というものが、大韓航空機のそういう領空侵犯の問題であるし、ソ連の撃墜だ。つまり、亡くなった人にはいわば何ら罪はないわけです。  そこで、こういうふうないわば国際的な波紋のある、関係のある事件で亡くなった、それは韓国人とかその他の国の人のことはともかくとして、少なくとも日本国民に対しては、ただ単に心から哀悼の意を表するというだけではなしに、何らかの物質的な、つまり大韓航空責任追及し、大韓航空の方からしかるべき賠償の措置を要求するというような手助けを外務当局としてもなすべきではないかと思うわけですけれども、どうですか。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、何といいましても領空を侵犯したことは事実だと思いますが、幾ら領空を侵犯したとはいっても、無抵抗、非武装な民間航空機ですから、これを撃墜するということはどんなことがあっても許されないわけですから、責任は第一義的にソ連にあることは当然であります。したがって、日本としてはソ連に対しまして、国際法違反そして非人道的な行為に対しまして厳しく責任追及して損害賠償要求いたしておるわけでありますが、残念ながらソ連口上書すら受け取ろうとしないわけでございます。なお、この損害賠償については今後ともわれわれは引き続いて要求し続けてまいりたいと考えております。  同時にまた、犠牲になられた方々の補償問題につきましては、これは民事上の問題として今後大韓航空との間で交渉が行われるわけでございまして、日本政府としてもできるだけ側面的な支援を行って、遺族の皆さんが何とか満足のいけるような補償が支払われるよう努力を重ねてまいりたい。この点については韓国政府にもすでに申し入れておりまして、韓国政府としても大韓航空に対して、十分なる被害者に対する補償措置を行うように政府としての措置を求め続けてきておるわけであります。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 それは基本的にはソ連が悪いことはわかっておるようですが、だから、その責任追及していくために外務省としても、大臣としても一生懸命取り組んでおられる。ところが一方においてはソ連との対話を継続、これもまた必要なことでありましょうけれども、一つのめどをつけるためには多少対話することがおくれても決着をつけていかなければなかなかソ連という国は片がつかぬのじゃないか、こういうふうに思うわけなので、その辺についてもっと強い姿勢というものをとれないかどうか、その点。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれとしてもソ連に対し、責任を回避するといいますか、責任を認めないその態度に対しまして抗議をするとともに、抗議の意思を具体的にあらわすための一連の、第一弾、第二弾の対ソ措置をとったわけでございます。この措置は、すでに第二弾については各国共通でとったわけで、一応終わったわけでございますが、第一弾の措置は依然として続けておりますし、なおソ連との外交折衝等におきましても、ソ連責任追及する姿勢は変えておりませんし、これを求め続けておることには変わりはないわけでございます。  なお、ソ連との間のいろいろの対話関係につきましても、対ソ措置とともに今日まで延ばしてきているということも事実でございます。
  45. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、このことを利用して日本韓国アメリカ、この三つの国の軍事同盟的な関係をさらに強化して対ソ関係の緊張を激化するような、そういう行動に出ることについては、これは厳に慎むべきことではないかと思うわけです。  そこで、カール・ビンソンが日本に寄港したわれわれはこれに反対をし、これに対する抗議行動も展開してきたわけですけれども、日本は安保条約というものがアメリカとの関係である。それで、日本の防衛は核の抑止力に頼っておるということがよく言われるわけですが、これは事実でしょう。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはそのとおりであります。
  47. 井上泉

    井上(泉)委員 そうすると、アメリカの核抑止力というその核はアメリカにあるのですか、それとも日本にあるのですか、韓国にあるのですか、これはどこにあるのですか。
  48. 北村汎

    北村政府委員 従来からも御答弁申し上げておりますように、アメリカは核の所在については肯定も否定もしないというのがアメリカのいままでの政策でございます。
  49. 井上泉

    井上(泉)委員 その核の存在を肯定も否定もしないということによって核の存在を位置づける。カール・ビンソンに核を搭載しておるかおらぬかということも言わぬと言うけれども、その核を、搭載しておった核を韓国なりあるいはどこかの国に置いて日本へやってくる、そういうことは考えられないと思うのですが、北米局長、それは考えられますか。カール・ビンソンは核を搭載しておるけれども、その核は、日本に来るときにはこれを積んでおるとも積んでおらないとも言わないし、日本は非核三原則があるから核は持ってきていないだろう、こういう認識に立つ、そうするならば日本に来るときには核をどこかへ置いてくるだろう、こういうふうに思うのですか。
  50. 北村汎

    北村政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、アメリカは核の所在については何も、肯定も否定もしないというのが原則でございますので、カール・ビンソンに核が搭載されておるかどうかについても、アメリカはこれに対して何ら否定も肯定もいたしておりません。  そこで、いま日本に来る場合にカール・ビンソンに核が搭載されているかどうかという問題でございますけれども、これも政府が何度も御答弁いたしておりますように、日本アメリカとの安保条約によりまして事前協議という制度があり、アメリカ日本に核を持ち込みます場合には必ず事前協議が行われる、その事前協議が行われる場合には日本政府はこれに対して拒否をするということを日本政府の方針としておるわけでございます。
  51. 井上泉

    井上(泉)委員 核を持ってきておるか持ってきていないか、持ってくることについては事前協議の対象になるとか日本へは核を持ち込んでいないだろう、こういうようなことを言っても、国民の間ではごまかされない現実じゃないかと私は思うわけなので、そういう点についてはっきりしたらどうですか。国民のそうした常識的な解釈に対して依然として、核は持ち込まぬことになっておるから持ってきておらぬでしょう、またアメリカは持っておるとか持っていないとかいうことは言わないというようなことで国民の目をごまかすというようなことはもうできない情勢じゃないか、こういうふうに思うわけですけれども、大臣、そこら辺はもうはっきりしたらどうですか。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これははっきりしておると思います。従来から申し上げておりますとおり、安保条約上いかなる核兵器のわが国への持ち込みも事前協議の対象であり、事前協議が行われた場合、政府としては常にこれを拒否するという所存であります。また、事前協議に関する約束を履行することは米国にとって安保条約上の義務でありますし、政府として米国のかかる約束が履行されていることには何ら疑いを有していない、こういうことでありますから、きわめて明快であると考えております。
  53. 井上泉

    井上(泉)委員 言葉は明快ですけれども、事実は明快じゃないと思うわけですけれども、時間がありませんのでこの問題はこのままでまた次の機会ということにして、最後に、あなたは国連総会においても朝鮮半島の問題を取り上げておられるわけです。そして、ことしの外務委員会が始まる前のあなたの外交演説の中にも朝鮮民主主義人民共和国との間の交流は積み上げ方式によってやっていく、こういうようなことを言われて、それから総理もまたそういうふうなことを所信表明でなされたわけですが、あなたは外務大臣として朝鮮民主主義人民共和国との間において具体的にどういうことをやってこられたのですか、いままでやってきたことについての御説明をお伺いしたいと思います。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御承知のように、政府は朝鮮半島の緊張緩和のためにはまず南北対話が必要である、こういうふうに考えております。対話再開に向けての関係者の努力を見守りつつ、環境づくりといった面でわが国なりの立場からできることがあれば貢献していきたい旨を内外に表明し、具体的なアイデアも出してきたところであります。  たとえば先般の国連総会で私が行った演説において、この面における国連事務総長の役割りに言及をいたしまして、わが国としてその努力を期待し、かつ支持したことはその一例でもあります。  また、日朝関係につきましても、わが国としましては、日韓友好関係基本的な枠組みは維持しつつも、北朝鮮に対しかたくなな態度をとっておるわけではないことは再三明らかにしてまいりました。たとえば五月に東京で開催されたアジア・アフリカ法律諮問委員会に出席をする北朝鮮代表団三名の入国を認め、またその歓迎レセプションに代表を招待したことも御案内のとおりであります。また、文化、スポーツ等における交流につきましても、たとえばピョンヤン学生少年芸術団であるとか世界卓球選手権に参加するための選手団の入国を認めておることも御案内のとおりでございます。
  55. 井上泉

    井上(泉)委員 朝鮮半島に依然として厳しい情勢が続いておるという認識でありますけれども、朝鮮半島に俗にいう南と北との関係において緊張が続いておる、いつ発火点になるかもわからないというような緊張状態はない、私はこう思う。しかし、政府はそれはあると考えておられるわけですけれども、これはむしろアメリカ日本韓国とのあの日米韓の合同演習に見られるような形、北の脅威、北の脅威ということでこの三国が共同の演習をやるというようなことのいわば口実を設けておるにすぎないのではないかと思うわけです。  そして北との対話の中で、これはもう二年ぐらい前ですけれども、私が当時の木内アジア局長に申し上げたのですけれども、第二次世界大戦の終戦当時、いわゆる東北地方から、朝鮮からずっと引き揚げてくる、そういう人たちが非常に苦労して、難儀をして、難渋をきわめ、そして朝鮮の人たちにもずいぶん厄介をかけ、その上で何十万人かの人が死んだ。日本に帰ってきた家族の者が、そういう自分の父母が亡くなった土地を訪問して霊を慰めたい、せめてそういうようなことについての便宜を図ってくれぬか、こういうことを提起したときに、日本赤十字社を通じて向こうの赤十字社と対話をして、そのことが実現できるように努力をします、そういう話をされて、それで後刻したかというとしてなくて、今度やります、それが橋本アジア局長に引き継がれておるかどうか知らぬけれども、そういうふうな朝鮮民主主義人民共和国の人たちと、あの地で非常に難渋を受けて、それでお世話になって日本へ引き揚げてきた人たちの心の触れ合いのため、あるいはそういう人たちが、亡くなった自分の家族の者に対する追悼の気持ちをささげに現地へ行こうとするようなことについては、やはり北との対話を進める上においてきわめて人道的な有意義なことではないかと思うわけですが、そういうことについて話をされておるのかどうか、その点アジア局長から承りたいと思います。
  56. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生のただいまの御発言の御趣旨は私も十分理解をいたしましたので、その後の状況につきましてできるだけ詳細に調査をしてみたいと思っております。  それから、最後の御質問の現在どうなっているかにつきましては、私の承知しておる限り、ただいま先生の御趣旨が生かされるような形での日本関係者の方々の北朝鮮訪問ということが直ちに実現できるというような状況に残念ながらないということもまた事実でございます。これにつきましては、今後どのように取り進めていくかにつきまして関係者、特に日赤、厚生省その他とも十分協議しながら対策を進めていきたいと存じます。
  57. 井上泉

    井上(泉)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、少なくとも私は、アジアの緊張を緩和するためには朝鮮の二つに分断をされている国が自主的、平和的に統一をされるということが最大の要素だ、こう思うわけで、その要素を破壊するような日本韓国との関係というものについては十分検討すべき問題が多々あるということを申し上げて、私の質問を終わります。
  58. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、河上民雄君。
  59. 河上民雄

    河上委員 ただいま井上委員から御質問がございましたが、大韓航空機の事件につきまして質問をいたしたいと思います。  今回の事件は大変痛ましい出来事で、二百六十九名の乗員、乗客の方の犠牲に対しまして私どもはこの機会にも心から哀悼の意を表したいと思いますし、また御遺族の方の悲しみに対しましても何と申し上げてよいかわからないのでございます。  先般、テレビ等で報道されております御遺族の言葉の一つに、この事件は結局国際的な事件として私たち遺族のことはやがて忘れられてしまうのではないかという予感がするというようなことを言われておったのが私には大変印象に残っているわけであります。今回の事件は、いま大臣も言われましたが、非武装、無抵抗の民間航空機を撃墜したソ連の行為というのが一つ大きな問題であることは言うまでもございませんし、私どもこれは人道上許されないことだと深く確信をいたしておるのであります。私たちはこの衝撃の中で、感情的になるなということは無理でありますけれども、しかし二度とこのような事件が起きないようにするためには、私どもとしてはむしろ冷静な判断が求められるのではないか、こう思うのであります。特にムルマンスク上空でKAL、大韓航空機が過去においても領空を侵犯いたしまして今回二度目でありますので、正確に言えば三たびこのような事件が起きないようにするということが私どもにいま求められていることではないかと思うのであります。その意味ではさきの国会決議にもうたわれるように、真相の究明を怠ってはならない、こう私も思いますが、ただわからないことが非常に多いのでこの機会に、井上委員からいろいろ御質問がございましたが、余りそれと重複しないように幾つかのことをお尋ねしたいと思うのであります。  ソ連責任については言うまでもありませんが、KALの領空侵犯責任というのも私はやはり大きいと思うのでありまして、どうしてあのような考えられないような領空侵犯が行われたのか、領空の一部をかすめて通ったということではなくて、領土の上を二回にわたって横切るというような領空侵犯がなぜ起きたのかという、これはいまだにどうも明らかにされておりません。先般の国会決議でもそれを明らかにするように求めているわけですが、いまの大臣の御答弁ではまだそこに至っていないということのようでございます。  そこで私は、一、二角度を変えて御質問したいんでありますが、国会決議におきまして、「いかなる理由があったにもせよ国際航空慣行・国際法を無視した非人道的行為でありここうなっておるわけです。そしてまたもう一つ、安倍外務大臣が先般の国連総会の一般討論で演説されましたときにも、「人道と国際法に反する暴挙」であるということが述べられておるんですが、この場合人道に反するということは非常によくわかるわけでございますけれども、国際法違反という場合、一体どの部分が国際法違反であるのか。ここで国際法とは何を指すのか、具体的にどの条約とどの条約を指すのか。それともまた一般的に慣習法として述べておるのか。私も、今回いろいろな事件を、航空関係の国際条約を少しひもといてみましたけれども、その点が実は余りよくわからない。よくわからないのでこの機会に教えていただきたい。
  60. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 御質問の点に端的にお答え申し上げますと、平時におきまして非武装の民間航空機に対しまして領空侵犯を排除するために武力を行使するということは、今日の一般国際法のもとにおいては明確に禁止されておるというのが今日の国際社会全般の認識であろうと思います。
  61. 河上民雄

    河上委員 いまのは 通の認識である、いわば慣習法的なものとして国際法を理解しておられる、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  62. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 結論から申し上げますと、いま委員御指摘のとおりであろうと思います。  若干敷衍して申し上げますと、そういう認識に基づきまして、委員承知のようにICAOにおきましても、国際民間航空条約の第二附属書の付録におきまして、いかなる場合にも民間航空機を要撃、インターセプトする場合に武器を使用してはならないという規則がございます。この規則自体は、厳密に申し上げますと、条約というような意味で法律的な拘束力のある文書ではございませんけれども、その背後にあります法的な認識というものは、先ほど私が申し上げたような、平時におきまして非武装の民間航空機に対して武力行使は禁止されておるという国際社会の法的な認識というものが厳然として存在するだろうと思います。さらにもう一つ申し上げれば、委員承知のように、国連憲章におきましても武力の行使というものは一般的に禁止されておるということは御承知のとおりでございまして、武力行使が認められるのは自衛権行使等の一定の場合のみ、こういうことでございますから、そういう国連憲章という観点から見ましても今回のソ連の撃墜行為というものは不法な行為である、こういうことでございます。
  63. 河上民雄

    河上委員 重ねて申しますが、「人道と国際法に反する暴挙」と言う場合の国際法というのは具体的にどの条約ということは言えない、言えないけれども、そういう国際法の背後にある一つ認識としてそういうように理解をすべきものである、それについては世界各国は同意をしておる、こういうようにお考えになっておるわけですか。
  64. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 そのとおりでございます。
  65. 河上民雄

    河上委員 それでは第二に質問さしていただきますけれども、領空というのは排他的な主権が行使される場、ICAOの条約の第一条でもそういうようになっていると思います。「締約国は、各国がその領域上の空間において完全且つ排他的な主権を有することを承認する。」こうなっておりますから、領空侵犯というのは主権侵害というふうに考えられるわけでしょうか。
  66. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 いま主権の侵犯というお言葉を使われましたけれども、どういう意味によって使うかということによろうかと思います。委員御指摘のように、もちろん領空に対してはその下の国が排他的な主権を持っておるわけでありますから、条約、協定あるいは個別の許可なくして他国の航空機がそこへ入ってくることは許されない、許可なくして入ってくれば、その領域国がその領空侵犯を排除するために国際法で認められている範囲内で一定の措置をとることができる、こういうことでございます。
  67. 河上民雄

    河上委員 それでは、もし日本の上空に不明機が侵入した場合、日本政府としてはどういう措置をとるおつもりでしょうか。
  68. 江間清二

    江間説明員 お答え申し上げます。  現在、自衛隊法の八十四条に基づきまして、領空侵犯が行われました場合には領空侵犯対処のことが自衛隊法上に明記をされております。これを受けまして、防衛庁におきましては、防衛庁長官の訓令によりまして領空侵犯対処の具体的な手順を定めておるわけでございますけれども、これは秘で、内訓でございますので詳しくは申し上げられませんけれども、その概要について申し上げますと、まず全国二十八カ所のレーダーサイトわが国周辺を飛来する航空機についての動静をキャッチしておるわけですけれども、これで領空侵犯のおそれがあるという場合には、俗に言われますスクランブル、緊急発進を行います。それで飛び上がりました要撃機が確認、航空機のその状況の把握等を行うわけでございます。その結果、領空侵犯機を確認した場合には、要撃機はそれに対しまして領域外への退去あるいは最寄りの飛行場への着陸等を警告をする、着陸をさせる場合には誘導を行うといったような手順が定められております。
  69. 河上民雄

    河上委員 安倍外務大臣にお尋ねいたしますけれども、先般社会党の委員長であります石橋氏と総理大臣であります中曽根氏との間で予算委員会で質疑応答がありましたが、そのときに、日本の場合、日本土空に不明機が侵入してもこれを撃ち落とさないという方針を明らかにされておるのでございますけれども、外務大臣としてはそのように確認をされますか。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま防衛庁から答弁がありましたような防衛庁の方針によって排除していくということになることは当然ではないか、こういうふうに思います。
  71. 河上民雄

    河上委員 いや、その場合に、警告を無視したり何かした場合でも撃ち落とさないというのが日本政府の方針であるというように受け取れる答弁を中曽根さんはしておられます。それは外務大臣、お変わりないですか。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 民間機の場合においてはもちろんこれは当然のことであろうと思います、軍用機といった場合においては、防衛庁の定める方針に従ってたとえば強制着陸とかその他の排除措置をとっていくことになるのではないか。これは私の領分ではございませんけれども、民間機についてはいかなる場合といえどもこれを撃墜するなどということはあり得ないということは当然のことだと思います。
  73. 河上民雄

    河上委員 そうすると、中曽根総理の発言を承認されるわけですね。  防衛庁の方にもう一度重ねてお伺いいたしますけれども、そういう場合日本政府がとるべき措置、つまり日本の上空に不明機が侵入した場合に自衛隊がとる措置といたしまして、自衛隊法八十四条に基づいて御説明がございました。そのときに、第一に確認、第二に警告、第三に誘導、こういうように言われたのですが、その次に、実は第四に武器の使用ということが決められているのではないのですか。これは昭和五十三年八月十六日に防衛庁責任者が、局長がはっきりそう答弁しておられますが、いまの御説明はその第四のところを抜かしておっしゃっておるのですけれども、私はなるべく冷静に事実だけを確認していきたいということで御質問させていただいているのです。
  74. 江間清二

    江間説明員 お答え申し上げます。  ただいま私は誘導までを申し上げまして、あと等というふうに申し上げましたが、御指摘のとおり武器の使用についても定められております。しかし、この武器の使用は領侵機が、要撃機が警告あるいは誘導する際に、それに従わないで発砲するといったような実力をもってこれに対して抵抗してくるような場合に、領侵措置の一環といたしまして正当防衛あるいは緊急避難の要件に該当する場合に限って武器の使用が認められております。したがいまして、ただいま委員の御指摘のように民間機に対しまして、これは無防備の民間機でございますから、これが要撃機に対して危害を与え、正当防衛、緊急避難の要件に該当するというようなケースには当たらない。したがって、無防備な民間機に対して武器を使用するというようなことは通常は考えられないというふうに考えております。
  75. 河上民雄

    河上委員 委員長にもちょっと御注意願いたいのですけれども、こういう重大なことを微妙なところは隠して御答弁されるのはわれわれにとって非常に不愉快なことでございますので、こういうことのないようにしていただきたいと思うのです。これは昭和五十二年八月十六日の内閣委員会防衛庁の伊藤局長がいま言った四つの条件を順次挙げているのです。そういう場合に、三つだけ言ってというのは非常に不誠実な答弁だと私は思うので、ちょっとそれだけは注意していただきたいと思うのです。  いまのお話でございますと、確かに武器の使用につきましては正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合に限ってとなっていることはそのとおりでございますが、民間機であるか軍用機であるかという認識が確実にできれば問題はないわけですけれども、軍用機であるか民間機であるかということはなかなか確認できないことが多いと思うのです。そうなりますと、この点は一体、言葉の上では明確に仕分けされているようですけれども、実態としてはかなり灰色の部分があるというような印象を受けるのでありますが、防衛庁のいまの御答弁、また外務大臣の御答弁からいたしますと、相手が民間機の場合は領空を許可なくして侵犯した場合は第四のことはあり得ないというふうに理解してよろしいわけですか。
  76. 竹内黎一

    竹内委員長 委員長から答弁者に申し上げます。  答弁者は質疑者の意を体して的確な答弁をお願いいたします。
  77. 江間清二

    江間説明員 お答え申し上げます。  民間機に対して武器を使用するということは通常あり得ないというふうに考えております。
  78. 河上民雄

    河上委員 いま通常はというふうに言われたのですが、そのとおりだと思うのですけれども、判別がなかなか困難な場合が多い、しかも、マッハというような速いスピードで飛び去るわけでありますから、武器の使用という第四の場合、瞬間的な判断要求されるので非常にむずかしいと私は思うのです。これは現場の人が判断するのですか、それとも上の人が判断するのですか。そして、武器の使用というのは前に警告ということがありますから、武器の使用は単に警告するだけではなく、警告を越えたものであるというふうにどうも文脈上想定できるのですけれども、その辺は大変むずかしい問題だと思うのですが、これは現場の人が判断するのか、上の人が判断するのか。
  79. 江間清二

    江間説明員 武器の使用の関係につきましては上級の指揮官、通常、総隊司令官あるいは方面隊司令官の許可を得て武器を使用するというのが原則でございます。ただ、現実にみずからが攻撃を受けるということで正当防衛、緊急避難という場合にその許可を得ているいとまがないような場合には、そのパイロットの判断で武器を使用することもあり得ます。
  80. 河上民雄

    河上委員 いまの御答弁によりますと、相手側から攻撃を受けた場合はそうだということでありますが、攻撃がないけれども明らかに領空を侵犯して公海上に飛去するという場合は、第一、第二、第三の手続を踏んだにもかかわらず言うことを聞かないで、しかし攻撃をしてきたわけじゃなく逃げていこうとした場合は、この第四は当たらないわけですか。
  81. 江間清二

    江間説明員 お答え申し上げます。  正当防衛や緊急避難の場合でも、みずからが攻撃を受ける場合でないような場合、その領空侵犯機がわが国の領土に対して何らかの攻撃を加えようとしておるというようなケースもあり得ようかと思いますが、そういうような場合には、みずからが攻撃を受けるということでその判断を得ているいとまがないということとはちょっとケースが違うと思いますので、そういうような場合には、先ほど申し上げましたように、原則になっております総隊司令官あるいは方面隊司令官の許可を得て武器を使用するということになるわけです。  それから、ただいま先生御指摘の、単に何もしないでそれが領空を通過していくということに対しましては、現在のところは、警告等を発するということにとどまるのが現状でございます。
  82. 河上民雄

    河上委員 これは領空侵犯がどういう意図で行っているかどうかということとも大変かかわってくる。その判断はこちら側にかかってくる。侵犯された方の側にかかってくる。これは非常に重大な問題だと思うのです。  いまKALのケースに限定して伺いますけれども、今回はカムチャツカ、サハリン上空を横断いたしました。これが不法行為というふうに判断されるのか、単なる過失であるのか、あるいはまた重過失というような判断がなし得るのか。先ほど井上委員から賠償の問題が出ておりましたけれども、それとも非常に重大な関係がございます。日本政府としてはどういうふうに御判断でありますか。つまり、不法行為であるというふうに見るのか、それとも単なる過失と見るのか、それともこれは非常に重大な過失であるというふうに見るのか。これは御遺族に対する賠償にも非常に関係があると思いますので、お伺いしておきます。
  83. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 若干法律的な関係が複雑でございますので御説明させていただきますと、国際法の次元で申し上げますと、大韓航空機領空侵犯を行った状態というのは、先ほど御説明申し上げましたように許可なくして他国の領域に侵入したわけでありますから、それに対して国際法で認められる範囲内でそういう領空侵犯行為を排除する当然の権利がその領域国に生ずる、こういうことでございますけれども、国際法で認められた範囲ということでございますから、撃墜行為は正当化されないということでございます。  それから、大韓航空機自身の行為につきましては、これは先ほど大臣から御説明申し上げましたように、現在ICAOが中心になりまして事故の調査真相究明というものを行っておりますので、現在の段階におきまして、それが単なる過失によるものか、あるいは委員から言及がございましたいわゆる重過失的なものであるのかというようなことは、これからの事故の原因についての調査の結果を待たないと何とも申し上げられない、こういうことであろうと思います。その結果によりまして、大韓航空機の被害者、遺族の方々に対します民事上の損害賠償責任というものはおのずから異なってき得るであろう、こういうふうに考えております。
  84. 河上民雄

    河上委員 それじゃ、もう一つわからないことでお伺いしたいのでありますが、この前の予算委員会でわが党の大出委員がいろいろ御質問しておる中の一つに、KALがあのとき使用いたしましたルートは大変危険だという定評になっておって、それだけに、外れた場合にアメリカの方で、外れていますよというふうに教えてくれるという話が出ておるのでありますが、「アッツ島のすぐ手前に小さな島がある。これをシェミアという。シェミア島。ここに米軍の強力なレーダーがあります。有名なレーダーであります。」あと中略をいたしまして、「民間に開放して一々警告をしてくれる。だから、その点はシェミア・レーダーには感謝をしながらいつも飛んでいる、こう言われる。」こうなっているのであります。これについて安倍外務大臣、覚えておられると思いますけれども、安倍外務大臣は、「いま初めてあなたにお話を聞いたわけですから、十分検討いたしまして……。」云々ということを申しておられるのでありますけれども、これについてその後わかったかどうか。
  85. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 アリューシャン列島の西側にありますシェミアのレーダー基地、私どもがアメリカから聴取している限りにおきましては、これはもっぱら軍事的な目的のレーダーである、したがって民間機航跡を追跡する、そういう義務は負わされていないということでございます。かつ、この基地のレーダーの使用目的は米国の防衛という面に向けられておりまして、西から東へ来る船、西から東へ来る飛行機を中心に探索しているというふうに了解しております。  なお、いま河上委員からの御指摘がありました日航の経験でございます。シェミア・レーダーで教えてくれる、大出議員からそういう指摘がございましたので、実は私ども日航に調査をいたしました。日航の数人の機長の証言によりますと、そういう事実はなかったというふうに聴取しております。つまり、シェミアのレーダーで航跡が間違っているというような指摘を受けたことはないという証言を得ております。
  86. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、KALが使用しておりますこれは第五ルートですか、これは非常に危ないということでありますけれども、これに対して危険を予防する何の手だてもないということになるのですか、それともほかに何かあるとおっしゃるのですか。それとも、今後アメリカとも協議をしてそうした措置がとれるならば協力をしてもらおうというようなお考えがあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  87. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御質問は、民間航空機航行の安全確保ということでございまして、必ずしも外務省の所管事項ではないと考えます。しかしながら、今後の措置といたしまして、民間航空の安全を確保するためにICAOの条約の改正も含めて諸般の措置をとるということがわが国基本方針でございますし、現に採択されたICAO決議に基づきましてそういう検討が進められているというふうに承知しております。したがいまして、今後、単にアメリカのみならず、諸外国との協調の上にますます民間航空の安全を確実なものとするための措置が国際的に進められるものと考えております。
  88. 河上民雄

    河上委員 今後こういう事件、つまり第三の不幸な事件が起きないようにするために、いまの非常に抽象的に言われましたことを私はもっと早く具体化する必要があると思うので、きょうは時間が余りございませんのでこのことはこの程度にとめたいと思いますけれども、いまのお話でございますと、要するに日航から聞いたという話は事実ではないというふうに否定をされたわけでございますね。その上に立って今後どうするかということについて、抽象的にではありますが、ICAOのいろいろな新しい対策を中心として努力したいというふうに私は伺ったわけでありますが、それでよろしいわけでございますね。  それでは外務大臣、余り時間がございませんので伺いますが、去る三日の記者会見で安倍さんは、どうも国連ではKLA問題で決議ができないという感触を語っておられるのでありますけれども、これは一体どういうことであるのか、また、大臣御自身として、これはどうも困ったことだ、何とかしなければいかぬというふうにお考えなのか、それともこれは大勢やむを得ないというふうにお考えなのか、その辺、大臣のお答えをいただきたい。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も国連総会に出席するに当たりまして、各国の外相との間で大韓航空機問題を取り上げまして日本立場も明確にしてまいったわけでありますが、その間の会談を通じまして、大韓航空機事件のような非武装の民間航空機を撃墜するということはきわめて遺憾である、同時に、こうした事件が二度と起こらないような措置を講じなければならぬという考えが各国に共通して見られたわけであります。しかし、先ほどからお話がありましたように、大韓航空機がどうして大きく方向がそれたのかという点についてはまだ明確でない、その点についてはいまICAO調査をしておる、こういう状況にあって、国連としてそうしたICAO調査等がはっきりしていないような状況の中でいま決議をするということはなかなか困難であるというのが全体の、私が会談した国等の感触でございました。したがって、私の判断としては、恐らく国連において決議が取り上げられるあるいは決議を提出する、こういうふうな状況にはならないであろうというように考えたわけでございます。  しかし、ICAO調査の結果というものがどういうふうに出てくるかというのはこれからも注目をしてまいらなければならぬ、こういうふうに思いますが、全体的にはそうした国連の空気でございますし、われわれとしてはICAO調査を見ながら、さらに、今後のソ連に対しては、これまでどおり責任追及していく、同時にまた、先ほどから欧亜局長答弁しましたように、いわゆる今後の民間航空の安全運転ということについての具体的なICAOの条約の改正等については、日本は積極的に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  90. 河上民雄

    河上委員 それでは、そういう方向でやっていただきたいと思いますが、俗に、領土、領空、領海、こう言われますけれども、領海の場合は無害通航権というのがありまして、領海を通る場合に、軍艦なら大砲にふたをするとか、漁船なら網を上げるとか、あるいは潜水艦なら浮上をするとかいうようなことで、領海を横切ることは権利として認められているわけですが、空に対しては全く排他的な主権の行使でして、それだけに大変むずかしい問題だと思いますので、ひとつ冷静にやっていただきたいと思います。  最後に一言だけ申し上げたいのですが、この事件を一つのきっかけにして、いろいろ感情的な対応というのは大変盛んなわけですけれども、やはり外務省だけは世論が沸き立っても冷静に対処する、ある意味においては、ソ連にだけは最も冷静に対応するというようなことが私は一番望ましいと思うのでありまして、その点、外務大臣、ぜひ心にとめていただきたい、このように思いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  91. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、玉城栄一君。
  92. 玉城栄一

    玉城委員 私は、在日米軍基地と第三国人との関係について、一般論として基本的な点について、まず最初に、外務大臣に確認をしておきたいわけでありますが、在日米軍基地について第三国人が訓練の目的で使用することはできないという政府考え方につきましては、たしか昭和三十年、この委員会で当時の重光外務大臣の御答弁、そしてまた、その後昭和四十七年の政府答弁書によっても、できないということは明らかになっておるわけでありますが、その考え方は現在でも変わっていないのかどうか、その点をまず確認しておきたいと思います。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまでの政府答弁どおりであります。変わっておりません。
  94. 玉城栄一

    玉城委員 変わっておらないということでございますので、いわゆる在日米軍基地を第三国人が訓練の目的で使用することはできない、こういうことはいまも変わりはないということでありますが、これは北村さんでも結構ですが、その考え方のいわゆる法的な根拠を御説明いただきたいと思います。
  95. 北村汎

    北村政府委員 これは委員よく御承知のところでございまして、安保条約第六条によりまして、在日米軍基地の使用を許されておるのは米国でございます。したがいまして、そういう在日米軍基地において訓練などを行い得るのは米国に限られておる、第三国ではないということでございます。
  96. 玉城栄一

    玉城委員 そうしますと、第三国人が在日米軍基地内において、米軍の演習とか訓練とかを見学するというような場合は、許されるのですか、許されないのですか、どうでしょう。
  97. 北村汎

    北村政府委員 訓練というものが許されないということは先ほどから御答弁しておりますけれども、もともと第三国の軍人が在日米軍基地に立ち入りを許されますのは、在日米軍基地において米軍が持っております管理権のもとで、その第三国入が視察あるいは連絡、そういう目的のために立ち寄ったり滞在するということでございます。ですから、一つの行為が訓練に当たるかどうかというのは、やはりそのことをいろいろよく調べてみませんとわかりませんけれども、しかし、ただいま先生がおっしゃいましたような見学をする、これは親善で連絡とか視察ということの中に入る場合もあろうかと私は考えております。
  98. 玉城栄一

    玉城委員 そうしますと、ちょっと整理しますと、安保条約六条に基づいて、第三国人は在日米軍基地の訓練はできないが、いま視察とか連絡とかあるいは見学とかそういうことについてはできる、こういう二つに分かれると思うのです。その場合、当然許される部分と、いわゆる訓練とか許されない部分、そういう間の灰色的な灰色ゾーンと申しますか、そういう場合が当然出てくると思うのです。そうしますと、さっき局長さんがおっしゃいましたように、いろいろ調べなければならぬということもおっしゃったわけでありますが、その場合は当然その都度個々のケースによって外務省政府が検討するということになるわけですね。
  99. 北村汎

    北村政府委員 そういうことでございまして、先ほどからも答弁いたしておりますように、安保条約上第三国人が訓練の目的でその施設、区域を使用するということは認められないわけでございますから、それ以外の場合、それは先ほども申し上げましたように、個々の実態についていろいろ調査をしてみなければ一概には言えないところであろうと思います。
  100. 玉城栄一

    玉城委員 個々のケースについての実態を調査して検討する、こういうことでありますが、そこでちょっと事実関係についてお伺いしておきたいのですが、先月二十八日から三十日、三日間沖縄の嘉手納米空軍基地内においてセイバースピリットⅡ、そういう名称で韓国軍人も参加して競技が行われておるわけですが、その事実関係について御報告いただきたいと思います。
  101. 北村汎

    北村政府委員 ただいま先生御指摘になりましたように、私どもがいままで得ております情報によりますと、韓国空軍の弾薬専門家のチームが視察及び連絡のために嘉手納の飛行場を訪問しておりまして、その訪問の機会に先ほど先生が御指摘になりました第五空軍主催の第二回弾薬装備年次競技会、これがセイバースピリットⅡと言われておりますが、それに参加したというふうに承知いたしております。
  102. 玉城栄一

    玉城委員 ですから、その参加をした韓国軍人は、どこからどういう経路でどういう飛行機に乗って嘉手納基地に入ってきたのか、その点も報告していただきたいと思います。
  103. 北村汎

    北村政府委員 私どもが承知いたしておりますのは、韓国空軍の大都基地から米軍の飛行機に乗って、九人参ったというふうに承知しております。
  104. 玉城栄一

    玉城委員 九人というのは間違いないのですか。
  105. 北村汎

    北村政府委員 間違いございません。
  106. 玉城栄一

    玉城委員 それでは、次に法務省の方に伺いたいのですが、韓国軍人が参加のためにわが国に入った、その入管手続はどういうふうになっていたのでしょうか。
  107. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 問題の九人の韓国軍人は、九月二十二日に一名、二十四日に六名、二十九日に二名入っておりまして、十月一自に五名、十月三日に残りの四名が出国しております。  手続といたしましては、通常の入国手続、出国手続をやっておりまして、入るときには短期滞在者ということで十五日の在留期間を与えております。もちろん査証は在韓日本国大使館で取りつけてまいっております。
  108. 玉城栄一

    玉城委員 その目的ですね。在留資格はどういう資格でありますか。
  109. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 在留資格は先ほど申しましたように短期滞在者ということでございます。
  110. 玉城栄一

    玉城委員 それは出入国管理法の何条何項何号に該当する資格になるわけですか。
  111. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 俗に四-一-四と申しておりまして、入国管理法の四条一項四号に定められている在留資格でございます。
  112. 玉城栄一

    玉城委員 その四条一項四号ですか、それはどういう内容ですか、ちょっと御説明していただきたいのですが。
  113. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 短期在留者と申しますのは、従来観光の在留資格と言われた在留資格でございまして、実は観光だけではなくて短期の商用、一般的な友人訪問、親族訪問といったような、簡単に言いますと日本において職業を行い、その他報酬を受けるような活動を行わない、そのような活動を目的として入る場合に短期滞在の在留資格を与えるわけであります。
  114. 玉城栄一

    玉城委員 いまおっしゃいました四条一項四号、観光、それには友人訪問とかなんか――この韓国軍人はそういう目的で、そういう在留資格で入国した、こういうことですか。
  115. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 いまちょっと説明が舌足らずだったかと思いますが、そういう観光とか友人訪問その他、すべてのいわば報酬を得ることを目的としない活動を目的として入国する場合にはこの在留資格が与えられるわけでございます。非常に広い在留資格でございます。
  116. 玉城栄一

    玉城委員 この韓国軍人について、その手続はどこでされたわけですか。
  117. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 これは嘉手納の基地に入管の出張所がございまして、嘉手納の基地の第二ゲート前にあるわけでございますが、そこで手続を行います。
  118. 玉城栄一

    玉城委員 嘉手納の空軍基地の中にわが国の出入国管理事務所があるということもやはりそれだけ需要があるということですね。第三国人が出入域しているということになると思うのですが、詳しい数字は時間がありませんからあれですが、相当の数がこれまであったわけですか。
  119. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 沖縄が復帰いたしましてから昨年まで、つまり昭和四十七年から昨年まで、出入国管理統計年報によりますと、二万七千九百五名の日米地位協定非該当者が入国しておりまして、そのうち第三国人は二千二百四十九名でございます。
  120. 玉城栄一

    玉城委員 手続したのは九名、間違いありませんか。
  121. 宮崎孝

    ○宮崎説明員 九名は間違いございません。
  122. 玉城栄一

    玉城委員 よろしいです。  次に、運輸省の方に伺いたいのですが、第三国の軍用機がわが国に入る場合は、運輸省としてはどういう対応をされるのですか。
  123. 向山秀昭

    ○向山説明員 外国の航空機わが国の領域に入る場合の手続につきましては、航空法の百二十六条で定めております。大まかに言いますと二つのカテゴリーがありまして、一つは、民間航空機が通常の航空路を通って入ってくる場合です。この場合については許可を要しないということになっております。それ以外の場合、すなわち外国の政府の――これは軍を含めまして、外国の政府航空機が本邦の領域に航行してくる場合には運輸大臣の許可を要するということになっております。  お尋ねの第三国と申しますのは、この場合、韓国のことをおっしゃっておられるのだと思いますが、韓国政府航空機が本邦領域に入ってこようと思いますと、この規定によりまして運輸大臣の許可を得なければならないということになります。  ついでに申し上げますと、いま問題になっております期間に韓国政府航空機がこの規定に基づきます許可を受けた事例はございません。
  124. 玉城栄一

    玉城委員 許可を受けた事例はないとおっしゃるわけですが、私たちが得た情報によりますと、このセイバースピリットⅡの韓国軍用機が嘉手納飛行場に来ておるのですね。その事実を運輸省は知っておりますか。
  125. 向山秀昭

    ○向山説明員 きのうから最近の分を調べてみたのでございますが、そのような事実はございません。
  126. 玉城栄一

    玉城委員 事実はないということははっきり言えますか。
  127. 向山秀昭

    ○向山説明員 若干言葉足らずでございましたけれども、航空法百二十六条の許可を得た事実はございません。
  128. 玉城栄一

    玉城委員 いわゆる許可を得たという事実はないというわけですね。  そういう韓国軍用機が嘉手納飛行場に飛来していたかどうかについてはいかがですか。
  129. 小山昌夫

    ○小山説明員 事実関係につきましてお答えします。  最近の三日間に韓国から嘉手納に入ってきております韓国の軍用機は特にございません。それ以前につきましてはまだ調べておりませんが、通常は運輸省の国際課におきまして運輸大臣の許可を得たものだけが入ってくるというぐあいに理解をいたしております。
  130. 玉城栄一

    玉城委員 それはその事実関係も含めて許可を――許可申請がなかったということとそういう事実があっなかなかったか、これはまた別な話ですからね。その点、いかがなんですか。
  131. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答えいたします。  ただいまのところ、最近の二十六日から二十八日までの三日間につきまして調べましたところ、そういう事実はございませんでした。
  132. 玉城栄一

    玉城委員 外務省、いかがですか。
  133. 北村汎

    北村政府委員 私どもも、承知しております限り、そういう事実を知りません。
  134. 玉城栄一

    玉城委員 委員長にちょっとお願いがあるのですが、これは非常に重大な問題です。いま運輸省の話がありましたけれども、外国軍用機がわが国に飛来していた、そういう事実があったかどうかについては、もしそういうことが事実であったらこれは独立国家として重大な問題になるわけですから、これは外務省の方にきちっと正確に調査するように指示をしていただきたいと思うのです。
  135. 竹内黎一

    竹内委員長 外務省の方でもう一遍事実調査の上、当委員会に報告されるよう委員長から希望します。
  136. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、いま問題になっておりますセイバースピリットⅡ、いわゆる兵器装着競技ですか、これは非常に重要な部分ですから、この内容について外務省の方からもう少し詳しく御説明いただきたいのです。
  137. 北村汎

    北村政府委員 私どももいまアメリカの方にいろいろ本件の事実関係について調査をいたしておりますので、ただいままでに私どもが知っておる限りのことを申し上げますと、このセイバースピリットⅡという競技行事は、アメリカ空軍のF15、F4、RF4及びA10に対して爆弾とかミサイルとかカメラ、そういうものを早く装備する、そういう競技をやる行事であるというふうに承知いたしております。
  138. 玉城栄一

    玉城委員 そういう競技であり行事であるとおっしゃいますけれども、ミサイルを装着するとか爆弾を積載するということは非常に重要なことだと思うのです。それで、これはアメリカの第五空軍が主催をしているわけですが、この第五空軍におけるこういう、いまおっしゃる競技というものの位置づけというのですか、これはどんなふうに外務省としては理解していらっしゃるのですか。
  139. 北村汎

    北村政府委員 まだアメリカの方にいろいろ調査をしておりまして、そういうことを踏まえた上でなければ最終的な位置づけはできないわけでございますけれども、私どものいま知っております限りで申しますと、今回の行事は野外でアメリカの軍人とかその家族という観客がたくさんいる前で行われた行事でございまして、また、この競技の模様につきましてはアメリカの軍のテレビで報道されたようでございます。そういうことで、親善を目的とする競技の行事であるというふうに解釈しております。
  140. 玉城栄一

    玉城委員 そうしますと、私が最初に申し上げました日米安保条約第六条に基づいて、いわゆる在日米軍基地を使用できる部分とそれから使用できない部分がありますね。そうしてまた、中間に灰色ゾーンといいますか、いまのケースはどの部分に当たるのですか。
  141. 北村汎

    北村政府委員 さらに事実関係調査した上でなければ最終的には申し上げられないと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、これはあくまでも親善を目的とした競技行事のように思われますので、そういうものであるならば、それに対して韓国の軍人が参加したということがございましてもそれは安保条約あるいは地位協定上特に禁止されておる行為とは考えておりません。
  142. 玉城栄一

    玉城委員 これからいろいろ調査して最終的な結論を出すということをおっしゃりながら、これは親善的なものであるから、冒頭申し上げましたように見学的な許される部分だというようなニュアンスのお答えなんですが、そのようにもう結論を出されていらっしゃるのですか、あなたがいまそのように判断していらっしゃるわけですか、あるいはこれから調査をして、できない部分に入るかもしれませんね、その可能性だってありますね、いかがですか。
  143. 北村汎

    北村政府委員 先ほども幾たびか申し上げましたように、私どもは目下いろいろ調査をしておるわけでございます。したがいまして、最終的に地位協定上あるいは安保条約上問題がある行為であるという結論も出せませんし、そうでないということもいまのこの段階では私は申せません。しかし、私どもは、いまさっき申し上げましたように、あくまでも親善を目的とする競技行事への参加ということであればそれは許されるのではないかという感じを申し上げただけでございます。
  144. 玉城栄一

    玉城委員 親善を目的とするということをおっしゃいますけれども、どうして軍用機にミサイルを装着したり爆弾を積載するという、そういうことに参加することが親善を目的とするとおっしゃることになるのですか、これは明らかに軍事的訓練の一環ですよ。ですから、いま結論は出しておられないとおっしゃいますから、これは私たちは米軍側の重大な条約違反だという考え方ですけれども、どうですか、北村さんのお考えは。
  145. 北村汎

    北村政府委員 先ほどお答え申し上げたことを繰り返すことになりますけれども、現時点においては事実関係調査しておるわけでございまして、これが条約違反であるとかという結論はいまのところ出しておりません。
  146. 玉城栄一

    玉城委員 時間が参りましたので大臣にお伺いしておきたいわけでありますが、先ほど冒頭に申し上げましたとおり、昭和三十年にこの委員会でのやりとりの中で、当時の重光外務大臣は、これは当時、国府軍のケースでの質疑、いわゆる第三国人ということなんですが、非常にいろいろ法的な複雑な問題が絡んでいる、見学的なものについてはさっきの御説明もあったとおりですけれども、いろいろしかしそれについても問題があるので中止を申し入れしている、こういう御答弁があるわけです。したがいまして、いま質疑でお聞きになって大臣も御理解していらっしゃると思うわけでありますが、やはり第三国人が在日米軍基地において、たとえ競技という名目であろうと爆弾の積載だとかミサイルの装着だとか、訓練を前提としてその成果を競う、これは単なるスポーツの争いと違うわけですから、それはいわゆるおっしゃったところの訓練ということはできないという範疇に当然入ってくると私たちは考えるわけです。したがって、今後調査してという局長さんのお答えでありますので、いずれにしましてもこれは非常に重要な問題だと私たちはとらえておりますので、こういう問題は慎重に検討していただいて、そして今後そういうことのないようにちゃんと処置をとっていただきたい、このように思いますが、大臣いかがでしょう。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま局長答弁しましたように、最終的には調査をした結果判断をしなければならぬと思いますが、これは先ほどから局長が言っておりますように、単なる親善を目的とした競技への参加、こういうことになれば地位協定によって禁止されておることに反するかどうかということは、私は早急には判断はできない、単なる親善を目的の競技参加なら地位協定上は違反にはならないんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、最終的にはもう少し調査をして結論を出したいと思います。
  148. 玉城栄一

    玉城委員 時間が参りまして、せっかく防衛庁いらっしゃっていますので、この競技なるものに当然自衛隊というのは参加してないと思いますが、いかがですか。
  149. 上田秀明

    ○上田説明員 お尋ねのセイバースピリットⅡでございますか、これには自衛隊は参加しておりません。
  150. 玉城栄一

    玉城委員 見学もしてないわけですね。
  151. 上田秀明

    ○上田説明員 見学もしてございません。
  152. 玉城栄一

    玉城委員 以上です。
  153. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、林保夫君。
  154. 林保夫

    ○林(保)委員 第三十八回国連総会への御出席、さらには多忙な、多端な外交日程の御消化など本当に御苦労さまでございます。それだけに私どもも、また国民みんなも、国際情勢がどうも雲行きがおかしい、大変な緊迫だ、一体どうなるのだ、こういう感じを強く抱いていると思います。現に、大臣国連総会の演説におきましても、大変厳しい判断が示されております。  そこで、そういった形を踏まえまして、きょうは、国際情勢一般につきまして、国連総会での演説そのほかを中心に質問いたしたいと思います。  大臣は総会に御出席されて、レーガン大統領初め各国の首相、外務大臣とも会談されて、私なりに理解いたしますと、わが国外交姿勢を強く訴えられておったと思いますが、その成果について大臣はどのような御印象を持っておられますか、お伺いしたいと思います。
  155. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は九月二十八日に、国連総会におきまして一般討論演説を行いまして、平和と繁栄を主題として、わが国の積極外交努力を強調してまいりました。  演説では、冒頭で大韓航空機事件を取り上げた後に、軍縮への熱意あるいはまた南北問題への積極的な取り組み、イラン・イラク紛争の早期解決も呼びかけ、さらに北方領土問題に対するわが国立場を表明をいたしましたが、各国から比較的高い評価を得たもの、こういうふうに考えております。  また私は、国連総会出席の場を利用いたしまして、米国であるとかあるいは中国、イラン、イラクを含む二十数カ国の首脳、外相と会いまして率直な意見の交換を行ったわけでありますが、こうした会談を通じまして、INFあるいはイラン・イラク紛争、大韓航空機事件及び南北問題を特に強調をしましたが、このような外交努力につきましては、わが国外交の幅の広さを象徴したものである、こういうように考えておりまして、それなりの成果を上げることができた、こういうふうに存じております。
  156. 林保夫

    ○林(保)委員 重ねまして、ここの大臣演説にありますように、「今日の国際社会の実相は、一歩動きを誤ると世界的な危機につながりかねない危険性をはらみつつ、かろうじて均衡を保っている」、こういうことでございますが、その中におけるわが国の役割りについていまお触れになりましたけれども、個別的にはいろいろあろうと思いますが、具体的にはどういう方向で役割りを果たすべきか、その辺のところを。大臣、今度二十数カ国の首脳とも会談されまして、わが国の果たす役割りは本当にあるのかないのか。わが国は現に平和憲法のもとに、あるいは非核三原則のもとに、あるいは個別自衛という立場のもとに、やろうとしてもできないという政治上の制約がございます。その中をかいくぐってでもやろう、大臣、こういう御意思だと承っておりますけれども、しかしどういう点が方向性としてあるのか、恐縮ですけれども、もう一度ひとつお答えいただきたいと思います。
  157. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、わが国外交はあくまでも平和外交を中心とするものでございますが、最近のわが国に対する世界のいわゆる期待というものは非常に強くなっておるというふうに判断をいたします。私が国連総会へ参りまして、私に対する個別会談の申し込みが四十数カ国に上ったということから見ても、わが国に対する期待は非常に強くなっている。これは、国際経済面だけでなくて、いわゆる国際政治面における役割りを期待する面も非常に強いというふうに思うわけでございます。  そういう中で、先ほどからお話がありましたように、わが国の役割りにはおのずから憲法を初めとするいろいろの制限があることは事実でありますが、そういうものを踏まえながらやはりやっていかなければならぬ。たとえば、いまのINF交渉の問題にいたしましても、先般のウィリアムズバーグ・サミットにおいて、いわゆる政治宣言にわが国は参加をいたしたわけでございますが、これはINF交渉が、ただ単にアメリカソ連の交渉というだけでなくて、日本にとりましても直接重大な関係を生ずる、こういうことで参加をしたわけであります。特にアジアの平和と安定ということを考えますと、INF交渉によってアジアが犠牲にならないということを日本としては世界に対して強く主張して、効果を上げていかなければなりませんし、同時にまた、そのためにはグローバルな立場での交渉を求めていくということが、日本が世界平和、アジアの平和のために貢献をする役割りであろう、こういうことでINF交渉についても積極的な注文をつけたわけでございます。  同時にまた、世界の各地に起こっております紛争の平和的な解決のための日本の役割りというものもまたあるんじゃないかと私は思います。カンボジア問題における日本の役割り、あるいはまた、私が直接出かけてまいりましたイラン・イラク紛争、これも単なる二国間の紛争だけでなくて、これが一歩誤れば、私は世界的な危機につながるのじゃないかという危機感を持っております。その中で日本のみが、いわば西側の諸国の中ではイラン、イラクとは親しい関係を持っておるわけですから、そうした日本の独自性というものを生かした平和解決への役割りといいますか努力というものも十分あり得るわけで、そういう点はやはり、どこの国にもでき得ない日本なりの平和努力、平和外交というものを積極的に進めていくことが必要じゃないか、そういうことで懸命な努力を続けておるわけであります。  私はそういう意味で、今後とも日本外交というのが、平和に徹した中で、もっと幅のある、また、ある意味においては、独自な外交というものを展開することが世界に対する貢献につながっていく、こういうふうに確信をいたしておるわけであります。
  158. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  時間がございませんので、個別の問題でちょっと急いでお聞きしたいのですが、大韓航空の撃墜事件、あってはならないことということで、大臣のここでの御見解表明は正しい、私はこのようにも考えます。そして大臣、昨日でしたか、この問題は政治決着がついたというような新聞報道大臣の記者会見の談話として出ておりましたが、どういう形で政治決着がついたと御判断されておるのか、手短で結構ですから……。
  159. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 決着がついたというふうに言っているわけではございませんで、政治的に一つ段階から新しい段階に入ろうとしている、こういう意味で言っているわけです。それは、たとえば国連の場において、たとえば安保理事会等でこの大韓航空機事件が大いに議論をされたわけでございます。そして、今度の総会では決議案が提出されるんじゃないかという動き等もあったわけでありますが、いまの状況判断すれば、その決議案の提出というものもむずかしい状況になったというふうに思います。  同時にまた、ソ連責任問題ですが、これはあくまでも追及していかなければなりませんけれども、ソ連がいま、その態度を変えようという状況にはとうていあり得ない、こういうことから、問題はむしろ、あるいはICAO調査結果を見ながら、再びこうした事件が起こらないための国際的な努力というものがこれからなされなければならない。同時にまた、遺族の補償問題等は、新しい展開としてわれわれ焦点を置いて努力していかなければならぬ課題になりつつある、こういうふうに考えたわけであります。
  160. 林保夫

    ○林(保)委員 ソ連に対する制裁決議ですか、これがどうしてだめなんだろうか、こういうふうにみんな率直に思うのですが、大臣、一言で言いまして何が原因でしょうか。
  161. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、ソ連に対する措置はやはりソ連には相当パンチを与えたのじゃないか、こういうふうに思います。たとえば、グロムイコ外相が国連総会についに出席しなかったということもやはりそれなりの、ソ連の相当な動揺といいますか、そういうものを示す証拠ではないか、こういうふうに考えております。しかし依然としてソ連は、撃墜の事実は認めましたけれども、責任についてはあくまでも他国にこれを転嫁するという態度は変えておらないわけでございますから、今後ともこの点についてはわれわれとしてもさらに追及は重ねていかなければならぬ、このように思っております。
  162. 林保夫

    ○林(保)委員 いろいろ国際ルールもありまして法的にはむずかしい問題だと思いますけれども、民間機同士の問題ならともかくといたしまして、軍用機という国の任務を遂行するものが撃ち落としたわけですから、それについての賠償問題、補償問題については、一般国民認識からすると日本政府もやはりきっちりソ連から取ってください、こういう要望が強うございますが、これはできますでしょうか、どうでしょうか。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 損害賠償はあくまでもソ連に対しては要求し続けていきたい。ソ連口上書さえ受け取らないということでありますけれども、あくまでもわれわれは主張を変えないで追及していきたいと思っております。  また、大韓航空と遺族の補償問題は、民事上の問題としてこれから交渉が行われるわけでありますが、政府も側面から全面的に遺族をバックアップしてまいりたい、こういうふうに思います。
  164. 林保夫

    ○林(保)委員 ぜひひとつその点をがんばっていただきたい。時間がありませんので要望にとどめます。安全航行の問題について大臣も大変御関心が深いと言っておられますのでぜひやっていただきたいと思いますが、港あるいは船の問題と違って空の問題は新しい対応が国際的にまだできてないように思われますので、国際慣行あるいは国際法上、条約上の問題を含めてひとつしっかりした対応をこの機会にやっていただきますことを要望しておきたいと思います。  次いで、大臣は総会の演説の中でINFの例の削減交渉について言及され、またレーガン大統領の提案を強く支持されたようなことになっておると思いますが、レーガン大統領と実際に会談されましたね。それから、SS20の問題では呉学謙中国外務大臣とも会談されて、情報交換なんでしょうか、あるいはもう少し、共同対処するというのでございましょうか、その辺のところを、アメリカと中国がSS20に対してどういう態度であったかということを手短で結構ですからお話しいただきたいと思います。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカソ連とINFの交渉をする直接の国でありますが、ウィリアムズバーグのサミットにおきまして、御承知のように、日本政治宣言に参加をしたわけであります。そしてその宣言に基づきまして、アメリカとしてはグローバルな立場でこれを行う、こういうことを約束いたしましたし、今回のレーガン提案にもその趣旨が貫かれております。したがって私たちはこれを評価したわけでありますが、同時にまた、交渉の結果アジアが犠牲になるということは困るわけでございますので、私はレーガン大統領に対しまして、レーガン提案は日本としては支持するとしても、あくまでもその交渉がアジアを置き去りにすることのないように、犠牲にすることのないようにひとつ配慮していただきたいということを強く申し入れた次第でございます。  同時にまた、日本と同じように中国もSS20に対する非常に強い危惧感というものを持っておるわけであります。これは、日中閣僚会議においても私は非常に強く感じたわけでございます。したがって、中国の外相と会談をした際も、SS20に対しては日本も中国もやはり非常に重大な関心を持たざるを得ない、その認識は同じである、したがってアジアが犠牲にならないように中国と日本とは意見の交換はしながら、それぞれの立場でともに対処してまいりたいということでは意見の一致を見たわけでございまして、それはそれなりの、米国、ソ連、あるいはまたヨーロッパにアジアの立場というものを日中両国外相で表明したということは今後の交渉に大きな意味を持つものである、私はこういうふうに認識をいたしておるわけであります。
  166. 林保夫

    ○林(保)委員 ソ連のアンドロポフ書記長さんが大変異例の声明みたいなものを出しまして反発を実はしておる、こういう現実も一方にございます。しかし、なおINF交渉はやはりどうしても成功されなければならぬと思いますが、大臣、これは成功するでしょうか。  もう一つはSS20の極東配備の削減。中国の場合はウラルから東の問題、全部ひっかかるわけですけれども、どういう御展望をお持ちになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 せっかくのレーガン提案をアンドロポフ書記長が拒否をしたということは、INF交渉の前途を考えますときに非常に憂慮すべきことであろうと思うわけでございます。しかし私は、アメリカもソビエトもINF交渉については合意させなければならないという基本的な考え方は捨ててはいないと思いますので、今後の交渉の推移を見守ってまいりたい、こういうふうに思う保わけてあります。  同時にまた、少なくとも日本がこれまでグローバルなこの交渉を主張し、さらにアジアを犠牲にしてはならないということを強く主張した結果として、いわゆるヨーロッパからのSS20の移転という点については阻止することが可能になった。同時にまた、アジアにおけるSS20の増強ということがいま言われておるわけでありますが、この点にも歯どめをかけることができた、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、交渉の推移をわれわれは注意深く見守りながら、なおかつ、その上に立ったアジアが犠牲にならないための努力は今後懸命に続けていかなければならない、それがアジアの平和と安定、日本の平和と安定にとって欠くことのできないものである、こういうふうに考えるわけであります。
  168. 林保夫

    ○林(保)委員 せっかくの御努力をお願いしたいのです。  国際連合の機能の問題ですが、大臣も最後に「国連及び関連諸機関が不要不急の、あるいは、重複した活動を行う事例が目立ってきておりますがこというくだりがあります。そしてまた「国連の機能弱化を嘆くことは容易でありましょう。」――やはりこういう点で弱いのでしょうか。そしてまた、その前段では「我々は、全人類に計り知れない惨禍をもたらした第二次大戦の後、戦争の惨害から将来の世代を救い、国際の平和と安全を維持するため力を合わせるという国際連合発足の原点に立ちかえりこういうことを大臣は言っておられる。私も感覚としてはわかります。しかし実態はどうなのか。山田国連局長、これはどういう意味なのか、原点に返るというのは具体的にはどういうことなのか。そして国連の機能弱化というのは具体的にはどういうことなのか。また要らぬことをダブってやっておる、この辺をちょっと説明していただきたい。
  169. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  大臣が一般演説で申されました国連創設の原点に返りということは、国連が創設されましたときには、国連こそが、第二次大戦という惨禍を経てその後の世界の平和を維持するために加盟国が協力して実効的な措置がとれるという趣旨でつくられたものであるとわれわれ理解しておるわけでございますが、先生御承知のように、その後の国連の実態を見ておりますと、いわゆる国連の強制措置としての平和を維持する機能が停止いたしております。したがいまして、結局それは国連という機関に欠点があるというよりも、やはりそれぞれの加盟国の意思の問題ではないのか。したがって、われわれとしてはもう一度原点に戻って、この国連の平和維持機能というものを強める努力をしたいというその願望から大臣演説になったものでございます。  それから第二点の、先生おっしゃいました国連活動が非常に重複しておるというのは、やはり国連及びその専門機関の機構がずいぶん肥大化しております。これは国連及びその専門機関が扱う対象が非常にふえてきた。多くの加盟国がそれぞれ国連期待するものが多うございますのでふえてきたわけですが、その過程において、それぞれの機関でのダブリが非常に目立ってきております。したがいまして、わが方が申しましたのは、そういうものをもう一度再整理して、限られた予算の範囲内でより効率的な国連システムというものを発展させていきたい、そういう趣旨で申し述べたものでございます。
  170. 林保夫

    ○林(保)委員 山田局長がおっしゃいますように、大変当初の期待と――当初期待した方が大体おかしかったのではないかという感じもいたします。いまだに日本は敵国条項が残ったままだと思います。しかし、国連には加盟している。大臣、この点なんです。実は去年も、核兵器の禁止、廃絶、軍縮、一千万も二千万も三千万も四千万も、みんな汗水たらして署名して持ってきますね。現実には何もしていない。署名簿を送り返されるあるいは受け取らぬ、こういう状態もあったやに聞いております。今日の大韓航空機事件、これは風連が出てきっちりやってくれる、こういう期待国民一般はしております。これはまさに政治責任だと思う。責任逃れを向こうに押しつけた。枚挙にいとまがありません。これをどうやるかという問題で、実は先般私も委員会でこのことを前の大臣にも質問し、御答弁をいただいております。きょうは触れません。  しかしなお、外務省は、大臣がニューヨークでデクエヤル国連事務総長に手渡す国連の平和維持機能強化に関する研究会、座長斎藤鎮男元国連大使、この提言を持ち出すんだ。ここで最後には、新聞報道ですが、委員会でも異論が多少あった。これは正式に出されたわけですか、それとも引っ込めてしまったのですか、あるいは修正して出されましたか。
  171. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 いま先生御指摘ございました、わが国の有識者の研究の結果出されました「国連の平和維持機能強化に関する提言」でございますが、その提言の中には、国連としてこうあってほしいという部分と、それから国連の平和維持機能に対するわが国の協力ぶりに対する提言の両者が含まれておったわけでございます。  この提言につきまして種々の御議論がございました。そして研究会の方から、後者のわが国の果たすべき役割りの部分については、わが国の国内で広く議論をしていただきたいという問題提起をする趣旨で提出したものであるので、この部分については別扱いにしていただいて差し支えないというお申し出がございました。その申し出を受けまして、先般、大臣国連事務総長と会談されました際に提出いたしましたものは、わが国の役割りの部分を外した提言を提出いたしまして、国連事務総長において御検討いただきたいという趣旨で大臣から手渡していただきました。
  172. 林保夫

    ○林(保)委員 これはひとつ資料要求でちょうだいしたいと思います。  大臣、そういうことでございまして、これはわが国のコンセンサスが成熟していないということもございます。しかしなお、これは、私は政権を持っていらっしゃる大臣方のグループにあれしたいのですけれども、やはりきっちりと日本の平和、安全を守るという立場から――何か責任国連へすりかえるような発言がいままで、戦後何十年間も、多過ぎたと思うのです。いざ実際に問題が起こってやってみると、やはり自分でやらなければいかぬのかなという感じにみんななっていると思いますが、大臣、この辺をとらえられまして、大変御苦労な役割りですけれども、ひとつぜひしっかりやっていただきたいという要望でございます。大臣、この点をどのようにお考えになりますか、承っておきたいと思います。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはり国連の平和維持機能というものはもっと強化されなければならぬ、こういうように思っております。いま世界の各地で紛争が起こっておりますが、国連がこれに対してその役割りを十分に果たすことができないというまだるこしさをわれわれ非常に強く感じておるわけで、そういう意味で、提言等も事務総長に手渡して、事務総長のいわゆる勇気ある行動を求めたわけでございます。同時に、これは国連だけに任じておくわけにはいきません。やはり日本日本なりの世界平和に対する貢献というものも当然あってしかるべきだということで、私も、イラン・イラク紛争の平和的解決といいますか、平和環境をつくるために努力を重ねておる。わが国わが国なりにやっていかなければならぬ。同時にまた、国連にももっと平和維持機能というものを強化していただきたいというのが私たちの注文であります。  日本は、何といいましても国連に対してはアメリカに次いで最も大きな分担金を出しておるわけでございまして、それだけに国連外交といいますか、国連活動、役割りというものにはいわば非常に強く注文をつけられる立場にありますから、今回もその点を踏まえて事務総長にも要求をいたした次第であります。
  174. 林保夫

    ○林(保)委員 大きな負担国でございますので、大臣のおっしゃられる注文をひとつぜひつけていただきたい。同時に、国連とは一体どういうものなのか、この辺が限界だということもやはり私たちは国民に伝えなければならぬと思います。その辺のバックアップもいたしたいと思いますので、この問題はひとつ継続で質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。終わります。
  175. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、野間友一君。
  176. 野間友一

    野間委員 最初に、日米農産物交渉についてお伺いしたいと思います。  九月十四、十五日に行われました。この中では、とりわけオレンジについていいますと、べらぼうな枠の拡大、あるいは自由化の時期を明示しろ、そういう要求が出されたやに聞いております。中身については、オレンジの場合には、枠の拡大が約三割、二万四千六百トン、それから牛肉については六割の拡大、こういうようなことが報道されておりますが、これは事実かどうか、まずお伺いしたいと思います。
  177. 上野博史

    ○上野説明員 お答え申し上げます。  先般の協議におきましてアメリカ側の考え方を示したということは事実でございますけれども、これについてはアメリカ側の強い意向もございまして、外交上のことでもございますので厳秘の扱いをするというふうに両国間の話がなっておりまして、内容をお示しすることはできないことをぜひお許しいただきたいと思います。ただ、その内容は大変厳しいものでございまして、日米考え方の間には大きな隔たりがあるということは事実でございます。
  178. 野間友一

    野間委員 いま数字を挙げましたが、これは各紙書いておりますが、この事実は否定はしないでしょう。
  179. 上野博史

    ○上野説明員 新聞にいろいろ書かれていることにつきましては、いま私申し上げましたように、日米間の約束事でございますので、それが正しいかどうかここで申し上げることをぜひ差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
  180. 野間友一

    野間委員 あしたも農協中心で危機突破大会が行われるわけですけれども、こういう要求、自由化の明示とかべらぼうな枠の拡大、これがもしやられたとするならば柑橘農家は本当にはかり知れない打撃を受けると私は思います。歴代の農水大臣は、自由化は絶対やらない、こういうことを一貫して答弁をしていたわけですけれども、その立場を堅持するのかということ。  それから、金子農水大臣がこの交渉の後、むちゃくちゃや、こういう評価をしておるわけですね。ですから、このむちゃくちゃだという評価の中にはとうていのめない、そういうものがあったということは当然出てくるわけですけれども、そのむちゃくちゃな中身については絶対のめない、もちろん自由化の時期も明示しないという方針に変わりはないのか、この点をはっきりしておいてください。
  181. 中野賢一

    ○中野政府委員 お答えいたします。  アメリカの方では貿易の自由ということを原則にいたしましていろいろ言っておるわけでございますが、私どもの方としましては、柑橘につきまして自由化いたしますことは、日本農業の一番重要な、中心をなしております柑橘農業に非常に大きな影響を与えますので、非常に困難と考えております。
  182. 野間友一

    野間委員 枠の拡大についても、従前からの答弁もありますが、絶対許さないという立場でひとつ交渉に臨んでほしい。  時間がありませんので、もう一つあわせて聞きますが、六月時点で金子農水大臣は、レーガン大統領が十一月に来る、国際的な儀礼としてそれまでに農産物交渉については決着をつけたい、こう記者会見の中でも言っておられるわけですが、この点についてレーガン大統領のみやげにするために訪日前に決着をつけるというようなことでいまやられておるかどうか、その点どうですか。
  183. 上野博史

    ○上野説明員 お答えを申し上げます。  私どもの大臣が、牛肉、柑橘の問題につきましては、レーガン大統領訪日が予定されていることでもあり、今後解決を目指して積極的かつ慎重に取り組んでいきたいというような趣旨の発言をいたしておるわけでございますけれども、これはそういう合意点が見出せればそうしたいということでございまして、先ほど先生のお話にもございましたように、なかなか両国の意見に大きな開きがございますので、これをまとめていくのは容易なことではなかろうという感じがいたします。しかし、ともかくその解決に向けてできるだけ努力をするということでございます。いずれにいたしましても、私どもといたしましては農業者が犠牲になるというようなことはないように最善の努力を尽くしてまいりたい、かように考えております。
  184. 野間友一

    野間委員 時間がありませんのでこの辺でおきますが、自由化はもちろん枠の拡大もこれ以上は許さない、いま減反がずいぶんやられていますからこれ以上は絶対譲歩できないという立場を堅持して、今後とも臨んでほしいということを強く要望しまして、この問題についてはこれで終わりたいと思います。  さて、大韓抗空機の事件についてお伺いをいたしたいと思います。  同僚委員の方からも再三にわたってお尋ねがありました。この事件については、すでに本会議決議もあり、私ども共産党としても九月一日の当日直後から、ソ連政府の許されざる蛮行だという評価をして真相の究明とか責任追及という立場で談話を発表し、またソ連のパブロフ大使にも会いまして、本国にもこういう要求もして今日まで来ておるわけですけれども、わからないことがずいぶんあるわけですね、外務大臣。午前中、先ほどからのいろいろな質疑の中でもおわかりのとおり、本会議決議ではもちろんソ連がけしからぬということで責任追及あるいは真相の究明、損害の賠償というようなことについて決議の中にも入れておるのですけれども、それにしても真相究明という点から考えてみて、大韓航空機領空侵犯をなぜやったのかという原因の究明あるいはそれに対しての損害賠償、こういう問題に関連してこの真相究明がこれからますます大事になってくると思うわけであります。また、日米の軍事当局のこの措置、果たしてこれ以外に打つ手がなかったのかどうかということも不鮮明な部分が多過ぎると私は思います。  そこで、まずお聞きしますけれども、大韓航空機ソ連領空内への航行領空侵犯であるという評価、これはすでに本会議決議の中でも明確に「領空侵犯」という評価をしておりますし、先ほどからの大臣あるいは栗山さんの答弁でも、そのことは明確にされておる。領空侵犯という事実について、大韓航空機の本件行為はそうなのだということをもう一度確認しておきたいと思うのです。
  185. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろの状況から判断すればソ連領空に対する侵犯である、かように思います。
  186. 野間友一

    野間委員 その侵犯の中身ですけれども、これは航跡からしてカムチャッカ半島それからサハリン、この二カ所あるわけです。二カ所に対する侵犯、そういう御認識でしょう。
  187. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろの状況から判断すればカムチャッカ半島の領空あるいはサハリン島の領空に入ったというふうに判断せざるを得ない、かように思います。
  188. 野間友一

    野間委員 栗山さんでもいいのですが、領空侵犯というのは、故意、過失かどうかは別にしても、これはまさに違法行為である、不法行為であることは間違いないと思いますが、確認したいと思います。
  189. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 御質問の趣旨を必ずしもはっきり理解いたさなかったわけでありますが、民間航空機が許可なくしてその国の領空へ入るということはもちろん認められないことはおっしゃるとおりでございます。ただ、もし委員の御質問が、そういう不法な状況責任大韓航空機の登録国、国籍国である韓国の国際法上の不法行為だというふうな認識かということであれば、その点はそういうふうには認識しておらないということでございます。
  190. 野間友一

    野間委員 そこまで聞いていないので、大韓航空機〇〇七、この領空侵犯という評価、領空侵犯という評価は当然その中身として違法行為あるいは不法行為ということを前提としなければ領空侵犯ということが出てこないわけです。だから、大韓航空機についてのそういう点についての確認を求めておるわけです。
  191. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたけれども、そういう領空侵犯によって違法な状態が存在しておって、それに対して、その領空を侵された国が国際法の範囲内での侵犯を排除するための措置をとることができる、そういう状況でございます。
  192. 野間友一

    野間委員 いまの条約局長の話でも、要するに大韓航空機が違法行為を行ったということについてはいま認められたわけですけれども、ICAO理事会の中で韓国政府は、この点についてはソ連領空内へ入った事実は否定しないがというようなことで、明確に領空侵犯という違法行為については韓国もいまなお認めていないというのが現状なんですね。私は大変遺憾だと思うのであります。そうして同時に、ICAO理事会の中で、機器の故障もあればあるいは人間のミスもあるんだというような、人を食ったようなことを韓国の代表が言っておりますね。これは記録の中にもはっきり出ております。人間も失敗することがある、機械にも故障があるんだと。本件で、仮に機械に故障がありあるいは人間に失敗があったとした場合でも違法性は阻却されないということは間違いないと思うのですが、いかがですか。
  193. 栗山尚一

    ○栗山(尚)政府委員 どうも委員の御質問のポイントが私は理解されないのですが、違法性が阻却されないというのは、もちろん過失がありましても領空侵犯という事実が正当化されるわけではございませんし、それに対して相手国が一定の措置をとるということは許容されるわけでございますから、そういう意味において、領空侵犯というものがいかなる理由があるにせよ正当化される行為ではないということは、それは言えると思います。ただ、どういう理由で航路を誤って領空侵犯に至ったかということにつきましては、これは当然のことながら調査の結果を待たないとわからない、こういうことでございます。
  194. 野間友一

    野間委員 私がお聞きしているのは、韓国の代表が公式の場で発言しておる中身が、機械には故障もあるし人間にも失敗があるんだ、こういうことを言っておるわけで、そういうことが事実であるとしても、そのことによって違法性がなくなるということではない、これは当然のことですねと私は申し上げているわけで、栗山さんもその点は認められたわけです。  そこで、パイロットを職業とするこういうクルー、乗組員――たとえば機器についてもしょっちゅう新聞報道や専門家が言っておりますように、INS、これの故障があるいは入力ミスですね。よくわからないわけですけれども、いろいろなことが言われておりますね。しかし、どっちにしても、業務上非常に重要な任務を帯びたパイロットがこういう事故を起こす、それがたとえ機械の故障であったとしたって、二重三重にチェックをしなければならない義務があるわけでしょう。VOR、地上局との無線での交信とかあるいは、マッピングとかいうそうですけれども、電波の方向を変えて、そして大陸なり地上からそれを受けて自分の位置を正確に戻す、そういういろいろな操作をやらなければならぬという責務があるわけで、そういう責務に違反したということが明らかだと私は思うのです。そういう点で私は、ソ連はもちろんですけれども、本会議決議にもありますように、大韓航空の補償責任、これは当然だと思うのです。この点について私は、前のムルマンスクの事件もありまして、日本政府としてもそういう立場からきちっと損害賠償をするように外交上のプッシュ、これが必要だと思いますけれども、いかがですか。
  195. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 遺族の大韓航空に対する補償要求についてはこれからも行われるわけでありますし、これは民事上の問題として出されなければならないと私は思います。  そういう中で日本政府としては、これまでも各国の政府に対しましてしばしば――私も今回あの国連総会で李範錫外相に会ったときも、大韓航空に対して韓国政府が誠意を持ってこの補償に応ずるように努力をしてほしいということを要請いたしたわけでありますし、また、大韓航空の社長が私のところへやってまいりまして、その際も大韓航空は誠意を持ってわが国の遺族の補償にこたえるべきであるということを強く要請したところであります。
  196. 野間友一

    野間委員 防衛庁にお聞きしますが、この撃墜事件に関して防衛庁あるいは制服組がアメリカに対して情報を渡した最初の時期、時間は一体いつなのかということ、さらに、アメリカ側から情報を受けた最初の時間、これはいつなのか、これを明らかにしていただきたいと思うのですね。これは情報の中身を聞いておるんじゃなくて、その時間を私はまずお聞きしたいわけです。
  197. 松村龍二

    ○松村説明員 お答えいたします。  今回の事件の異常性と重大性にかんがみまして、真相究明のため交信記録を米国に提供しまして交信内容を米国と協力して慎重に検討したわけですが、いっどのような方法で行ったかということにつきましては、情報業務の性格上、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  198. 野間友一

    野間委員 いや、その中身じゃないですよ。その最初の時間を聞いておるわけですよ。それも言えないのでしょうか。
  199. 松村龍二

    ○松村説明員 日米安保体制下におきまして、日米が対等な関係に立ちまして必要な情報を交換しているところでございますが、その具体的な内容につきましては、業務の性格上、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  200. 野間友一

    野間委員 私はけしからぬと思います。そんな時間一その中身について聞いておるわけじゃないんで、これは真相究明をしなければならぬというのが国会決議なんですね。これが避けられ得たものかどうかという点について、それらの情報の交換が非常に大事になってくる。だから、真相を明らかにするという立場から、そういうけしからぬ態度でなくて、ぜひその点について明らかにしてほしい。この点についてさらに、委員長理事会でぜひ協議していただきまして要請をしてほしいと要求しておきます。  それから、時間がありませんが、シェミアの基地の問題が午前中あるいは予算委員会の中でも出ておりました。このシェミアの基地、米軍基地ですが、ここではレーダーサイトで〇〇七、これを捕捉しておった、これは違いないというふうに私は思うのですね。先ほどのお答えでは、これは軍用目的であるから民間航空機については捕捉していないというお答えを、加藤さんですか、されたと思いますが、これはいつだれに確認されたのかということと、捕捉していないということは、レーダーサイトに全く映らなかったということを意味するのかどうか、その点どうですか。
  201. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 本件につきましては米側と常時緊密な協議、協力体制をしいております。シェミアの基地の問題につきましても頻繁に意見交換、情報交換を行っております。いつという具体的な時日はいまここでお答えできませんが、私の記憶では九月の二十日前後に最終的に情報を得たというふうに承知しております。  米側のレーダー基地でございますので、その内容等について私どもはつまびらかにいたしておりません。しかし、同盟国、友好国であり、かつ日本と同じような被害国であるアメリカの証言というのは、それ相応の重みを持ち、かつ真実性のあるものである。アメリカがシェミアの基地は民間航空機の機影を追う義務は負っていないということを言っておりますので、これを信用するのが適当ではないかと考えます。
  202. 野間友一

    野間委員 いや、その義務がないということと、具体的にこの〇〇七についてシェミアの基地がレーダーサイトでとらえておったかどうか、これは全然別の問題ですね。先ほどの答弁を聞いておって私はおかしいと思ったのですが、〇〇七をシェミアの基地のレーダーでは全くとらえていなかったということが回答があったのかどうか。これはとらえておるのがあたりまえなんですね。シュルツ氏も一日の午前一時、ソ連に要撃された、追跡されたということを認めておりますし、RC135とこの〇〇七が接近しておったという事実も認めておるのですね。レーダーその他で捕捉しなければこんなことはわかることがないわけです。いかがですか。
  203. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 私も技術的な専門家ではございませんので正確にお答えできるかどうかわかりません。ただ、常識的に考えまして、レーダーに点というような形で何かの飛行物体が映ることはあり得ることだと思います。しかし、それが大韓航空機〇〇七であるというアイデンティフィケーション、確認というのは非常にむずかしい作業ではないかと思うわけです。  アメリカ政府が繰り返し私どもに言っておりますのは、日本の場合と全く同様、本件の撃墜という事実は、撃墜された後になっていろいろな情報を総合した結果判明した事実である。たとえそれがシェミアの基地のレーダーに映っていたとしても、それが問題の韓国機であるかどうかの確認は当時はできなかったというのがアメリカの説明でございます。この説明は私ども素人の常識にも合致するものではないかと考えます。
  204. 野間友一

    野間委員 時間が来ましたのでやむを得ませんが、これは軍用目的のレーダー、しかもアメリカの場合には軍民が一体なんです。レーダーでとらえて民間航空機の航空計画全部を連絡しておりますよね。ここで国籍不明あるいは民間航空機、軍用機以外のいろいろなものもとらえているのはあたりまえなんですね。おかしいとすればみずから交信するなりあるいはアンカレジの管制塔連絡するなり、これが普通です。先ほどの答弁だれでしたか忘れましたけれども、結局このシェミアの基地でJALのパイロットがかなりいままでも交信によってずれを直した、そういう事実はないんだと調査の結果言いましたね。私は、いろいろ実際のパイロットに聞いたところが、何回も助けられた、これは常識だ、そういうことを言っておるわけですね。あなたたちの調査、おかしいと思うのです。RC135と〇〇七が接近あるいはレーダーで重なった、これはソ連のオガルコフの記者会見にもありますが、アメリカは、百三十五キロですか離れておった。時間がありませんから申し上げませんけれども、とにかくいろいろな疑問があるわけですね。しかもそれが軍事優先でなかなか情報を出さない。こういうことでは真相究明ができないと思うのです。  きょうの理事会でもさまざまな資料の要求をやったわけですけれども、ぜひ委員長理事会で検討していただいて、すべての可能な資料を出していただいて、その中で真相究明して、二度とこういうことが起こらないように万全の措置をとる、そういう必要があろうかと思います。  最後に外務大臣にその点についての所見をお伺いして、終わりたいと思います。
  205. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そうした真相についていまICAO調査団を設けて日本にもやってきますし、アメリカソ連等いろいろと状況を把握して調査結果を発表するということにいたしておりますので、この調査の結果をいま見守っておるところでございます。
  206. 竹内黎一

    竹内委員長 野間委員要求の資料提出につきましては、引き続き理事会で協議をいたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十四分散会