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説明員(
藤井貞夫君) 去る五日に、本
年度の
国家公務員の
給与に関する
勧告を
国会及び
内閣に対して提出をいたしました。本日の当
委員会で、早速その
内容について御聴取いただく機会をお与えくださいましたことに、心から感謝を申し上げる次第でございます。
お手元に御配付を申し上げておる一件資料の中で、「
給与勧告の
骨子」という一枚の印刷物がございます。これに
給与勧告の
内容の概要を記載いたしておりますので、これが一番わかりやすいことだと思いますので、私からこれに沿いまして概略の御
説明を申し上げさしていただきたいと思います。
まず、本年の
官民の
較差でございますが、これは金額にいたしまして一万五千二百三十円で、パーセントにして六・四七ということに相なったわけでございます。
ちなみに、
較差の内訳を申しますと、いわゆる本
較差、すなわち本院の
職員が
調査に参りました時点においてすでに
春闘についての妥結が行われて、四月分の
給与から
ベースアップ分が加味されて支払われておるというところでございますが、これの分が六・一二%でございます。それから
遡及改定分というものがございまして、これが〇・三五。これは御
承知でございますように、
調査に参りました
職員が
調査をいたしましたところ、四月分にさかのぼって
給与を
改定するということは決まってはおるけれ
ども、まだ
現実に
給与の
支給をやっていないというところの
事業所でございます。その分もこれは無視できないということで、従来から
一定の方式に従って算定をいたしました結果をこの
較差に入れております。これが〇・三五でございまして、合わせて六・四七ということになるわけであります。
ちなみに、昨年
勧告をいたしました率は四・五八%でございましたので、ただ単に算術的にこの差額を出しますと一・八九ということに相なるわけでございます。いわば実質的にはこれが今年の
春闘分を反映したものということに相なるわけでございます。
これの
配分をどうしたかということでございますが、当然、幅も狭いことでございますので、
俸給表の
改定とそれから
生活給的な諸
手当ということに
重点を置いて
配分をいたしました。その結果、
俸給表の
改定では五・四九%、諸
手当では〇
・六七%。それから
はね返り分というものがございます。これは
俸給が上がれば当然それを基礎にして
改定をされてくる
手当、
調整額その他がございますので、この
はね返り分が〇・三一ということになりまして、
配分をいたしたような次第でございます。
なお、そこに
括弧書きで書いてございますように、
行政職(一)について見ますと、昨年の
給与が額にいたしまして二十三万三千七百三十八円でございましたのが、本年の場合は二十三万五千二百九十七円ということで大差はございません。これは去年の
勧告が見送られた結果、若干の昇給その他が加味されてこの
程度の差となってあらわれておる、ほとんど
現状と変わりがないという結果が出ております。
平均年齢も四十一・二歳で、これは去年とことしと全然変わっておりません。私たちが一ころ
心配をいたしておりましたのと違って、各省庁とも
それなりの
努力をしている結果だと思いますが、新陳代謝がかなり順調に推移している結果ではないかというふうに見ております。
改定の
内容について簡略に御
説明申しますと、第一は
俸給表でございます。
俸給表は、
初任給が
高校卒が五千七百円
アップ、
大学卒が六千七百円
アップということにいたしております。一ころ
初任給が大変高くなった時代がございましたが、ここ数年は余りに
初任給が高過ぎるというような
傾向で抑え
ぎみに推移をしてまいりましたことは御
承知のとおりでありますが、ここ一、二年の
傾向を見ますと、またごくわずかですが若干
上がりぎみということに相なっておりまして、ことしの場合、
高校、
大学卒ともに六・六%という比率の上昇に相なっております。
俸給表全般の
配分傾向でございますが、ことしの場合も、
民間をよく調べてまいりましたところ、幅が非常に狭いこともございまして、ほとんど
上下相違がない、ほとんど均等
配分的な
傾向が強く出ております。その中であえて見れば、やはりどうしても
世帯形成層あるいは
中堅層というものに若干の
重点を置いておるという
傾向が認められます。
公務員の場合も当然そうでございまして、なかんずく
世帯形成層、
中堅層というものについては、従来からわれわれも
努力をしてまいりましたが、やややはりひずみを受けておるというような点がございますので、その点漸次
改善をしてまいってきておるのでありますが、ことしの場合も枠がございますので十分なことはできませんけれ
ども、それでも
最高六・八%というような率を出すことによってここに
重点を置く
傾向をとったわけでございます。
その他の各
俸給表の
平均引き上げ率は大体六・四%
程度でございます。
それからもう
一つの点は、
指定職の
俸給表、いわゆる各省の
局長さん等に適用される
俸給表でございますが、これは
民間との対比におきましては
大変差が広がってまいりまして、ことしの場合で言えばその差は三〇%を超えるというようなことまでになっております。ただ、この点につきましてはわれわれも
大変苦慮はいたしておるわけでございますが、全体としてこういう幅の時期でもございますので、上の方だけをここで急に上げるというわけにもまいりません。そういうことで、やはり六・四%ということで
行政職の
給与改善率と同じことにしたいと考えております。この結果、一番
指定職で高い
俸給を受けますのが東京大学と
京都大学の学長でありますが、これが現行九十二万円が六万円
アップの九十八万円、それから次官が現在九十万円でありますものを五万八千円上げて九十五万八千円ということにいたしたいということでございます。
それから
手当については、
扶養手当、
通勤手当、
住居手当等について若干の配慮をいたしております。
なかんずく
扶養手当というのは、これは
生活給的なものの一番
中心でございますから、
重点的な
改善を図ることにいたしました。
配偶者については一万二千円から千円
アップの一万三千円、それからそのほかの
扶養者、その
中心は
子供さんですが、
子供さんについては、二人までは三千五百円を一千円上げて四千五百円ということを
中心の
改正をいたしております。
通勤手当につきましても、先般の
改正以来運賃の
引き上げ等のことがございますので、それは対応する
措置を講ずることにいたしております。
なお、
医師の
初任給調整手当というものは(4)に書いてございますが、これはお
医者さんについては従来非常に
採用難でございまして、なかんずく
離島あるいは
僻地等の病院とか
診療所等につきましては
大変医師を確保することが困難な
事態が続いております。その後、厚生省その他の対策でお
医者さんの数は毎年相当
程度ふえておりまして、そういう事情は漸次
改善されつつあるとは思いますけれ
ども、なお急にはそのことは実現はむずかしいことでございまして、ことしの
調査の結果でもやはり
民間のお
医者さんの
給与というものは
相当高目に出ております。そういうことに対応いたしまして、
公務員の場合は
医師の
初任給調整手当ということで
カバーをしておるわけでございます。これは
公務部内においては
一定のそれぞれの職種との間の
均衡がございます。そういうことで、
俸給表一本でこの
措置をするということはとうていできません。それと、
俸給表で上げますと、そのこと
自体が直ちに
退職手当なり
退職年金にはね返るというようなことでございますので、そこに限界がございます。したがって、
本俸は
本俸としてある
程度考慮はいたしますけれ
ども、それと並行して
初任給調整手当でもって
カバーをしておるというのが
現状でございますが、ことしもやはりそれに照応いたしまして、
最高の
離島等については一万五千円の
アップをいたすことにお願いをしておるわけでございます。
それから
特別給、賞与でございますが、これは
民間の実態を
調査いたしましたところ、ちょうど
公務四・九カ月分に相応する四・九〇でございましたので、これは据え置きということでございます。ただし、
支給日については
公務員の方が
民間と比べてやや早いということがございまして、この点が従来も問題になっておったこともございますので、この際
支給日について夏の分は十五日繰り下げて六月十五日を六月三十日、冬の十二月五日を十二月十日ということにそれぞれ
改定をいたしたいと思っておりますが、これは急にやるわけにもまいりません。それぞれ
準備期間が要りますので、五十九
年度から変更をいたしたいと思っております。
これらを
内容といたしまする
勧告は、当然本年の四月一日にさかのぼって
実施をしていただきたいということでございます。
なお、
勧告実施について昨年
凍結というような
事態がございましたので、
人事院といたしましてはこの際やはり強く
勧告の
実施を御要請申し上げるということについて強調をいたしておるわけでありますが、その
骨子は、要するに
見送りによって
職員の
士気の問題なりあるいは
現実の
生活等への
影響というものをこれは無視することはできない、さらに
仲裁裁定の対象になりまする四現業については昨年についても
実施をされておるというような
事態があって、それとの
均衡を図ってまいらなけりゃならぬ、それを無視することはとうてい許されないということがございます。それと、何よりもわれわれが一番
心配をいたしておりますのは、
国会その他の大変な御
努力で長年
不完全実施であった
勧告が
完全実施をされるということになりまして十年を経過するというような
事態がありまして、これを踏まえて
公務員の
労使関係というものはまずはきわめて安定した良好な
関係を保って推移してまいっておるというふうに考えております。ところが、このような去年からの
事態、あるいはその前二、三年続いておりますが、抑制あるいは
凍結というような
事態が続くようなことになりますと、せっかくのそういう安定した
労使関係というものに大変な
影響を与えてくることを
心配いたしております。そういうようなことから、ぜひ本
年度の場合は
勧告の速やかな
実施をしていただきたいということを強く要請いたしておるのであります。
それから最後に、
人事行政改善の諸
施策という
ものでございまして、これは三年前からこの
勧告の場合に
報告として打ち出しております。と申しますのは、現在の
公務員制度は
制度としては大変すぐれた
制度でありまして、戦後三十年にわたって定着をし、
それなりに
運営をされて良好な成績を上げてきておると思います。ただ、その後の
社会経済の変化というものはきわめて顕著なものがございまして、なかんずく高
年齢化の
現象あるいは
高学歴化の
現象というものについてはこれは放置しがたい
状況がございます。これに対応する
公務員制度全般の見直しを図っていく必要があるのではないかということで鋭意検討を進めてまいっておりました。
大体、
任用、
給与、研修、その他
公務員制度各般にわたって具体的な
施策についての
改善施策の方向がまとまってまいりましたので、本年の場合は従来よりもさらに一歩前進した形で
提案をいたしまして、今後もこの
提案に基づいて
関係各方面ともさらに案を練り、
国民の
意見等も十分に参酌をいたしまして、結論が出れば
漸次勧告なりあるいは
意見の申し出なりという
措置を講じていきたいというふうに考えております。
私といたしましては、ちょうど
昭和六十年に
定年制が
実施されますので、その時期にでき得るならば
スタートラインを並べてというふうに実は考えておるわけであります。ただ、物事によってはそう簡単にいくものでもございませんし、必ずしも全部が全部そのときに
スタートラインにつかせなければならぬというものでもございませんので、その点は慎重に順序、
手段等を勘案しながら
漸次改善措置の
施策を打ち出してまいりたい、かように考えておるところでございます。
以上、ごく簡単でございますが、本
年度の
勧告の
内容について御
説明を申し上げました。