運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-04-02 第98回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二日(土曜日)    午前九時二分開会     ─────────────    委員の異動  四月一日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     宮澤  弘君      岩崎 純三君     田沢 智治君      植木 光教君     森山 眞弓君      渋谷 邦彦君     鶴岡  洋君      上田耕一郎君     近藤 忠孝君      秦   豊君     前島英三郎君  四月二日     辞任         補欠選任      山田  譲君     本岡 昭次君      柄谷 道一君     田渕 哲也君      前島英三郎君     秦   豊君      宇都宮徳馬君     田  英夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 板垣  正君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 亀長 友義君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田沢 智治君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 宮澤  弘君                 森山 眞弓君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 鶴岡  洋君                 中野 鉄造君                 三木 忠雄君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君                 田渕 哲也君                 秦   豊君                 前島英三郎君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局経済部長  佐藤徳太郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁長官        官房総務審議官  門田 英郎君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁調整        局審議官        兼内閣審議官   横溝 雅夫君        経済企画庁国民        生活局長     大竹 宏繁君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        科学技術庁計画        局長       下邨 昭三君        科学技術庁振興        局長       原田  稔君        国土庁長官官房        長        宮繁  護君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        国土庁土地局長  小笠原正男君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       岡崎  洋君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        国税庁次長    酒井 健三君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        厚生省医務局長  大谷 藤郎君        厚生省薬務局長  持永 和見君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        水産庁次長    尾島 雄一君        通商産業大臣官        房審議官     斎藤 成雄君        通商産業省立地        公害局長     福原 元一君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        中小企業庁長官  神谷 和男君        運輸政務次官   関谷 勝嗣君        労働省労政局長  関  英夫君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  永田 良雄君        建設省都市局長  加瀬 正蔵君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治大臣官房審        議官       田中  暁君        自治省財政局長  石原 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十八年度予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本日は午前中お手元の質疑通告表のとおり財政経済に関する集中質疑を行い、午後から締めくくり総括質疑に入ります。  それでは、これより和田静夫君の質疑を行います。和田君。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 まず、警察庁。一昨日の私の質問新聞報道等で知って訴えてこられた方々が何人かいらっしゃるのでありますが、本題に入る前にその一件についてだけちょっとお尋ねをしておきます。  熊本県上益城郡にお住いの中林太利さんからの訴えですが、この人は昭和五十六年九月、熊本警御船警察署に逮捕された。事件は、九州高速道路建設にまつわる土地問題で紛争があった。道路公団側が建てたフェンス中林さんが五十六年七月に公団高速道路警ら隊及び御船署刑事課長らの立ち会いのもとで撤去した。このときには立会人はとめなかった。ところが九月十日になって突然御船署刑事部長上杉さんという人がやってきて逮捕した。これは九月十日の午前十時五十三分のことであったと主張をされています。  これにまつらういろいろの関係があるのでありますが、これは私の方も調査を進めていますので、この事件について調査を求めます。
  8. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) お答えいたします。  御指摘の事案につきましては五十六年の九月に熊本県の御船警察署が取り扱いました事件だと思います。現在までに私どもの方で把握をしております事実関係について申し上げますと、九州自動車道路建設用地の買収に絡みまして、道路公団交渉の際に、腹を立てましたこの被疑者が、道路フェンスを四月十七日に二十一メートルにわたって損壊をした、その後五件ばかりありまして、合計六件につきまして道路公団側が告訴をしたと、こういう事件でございます。  警察におきましては所要の調査を行いまして、九月九日に器物損壊逮捕令状を請求いたしまして、その発付を得ました。翌十日に御船警察署捜査員三名が被疑者宅に赴きまして逮捕した、こういう事実でございます。その後、この事件は十一日に熊本地検の方に送致をいたしまして、その後、被疑者は事実を全面的に認めまして公団の方と損害賠償に関する示談が成立をいたしました。その結果、十二月二十三日、地検の方で不起訴処分の裁定を受けた、こういう事実でございます。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 若干の食い違いは、立ち会いのもとにおいて行われた、しかも二十一メートルの部分のうちの一定の部分町当局が過去においてやっておったことである、残りの部分自分であると、こういう行き違いに基づくところの警察とのいろいろのいわゆる交錯する問題があるわけであります。そこのところを正確に調べてもらいたい。よろしいですか。
  10. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) ただいまのお話のいきさつにつきましては、私どもの方余り詳しく現在把握しておりませんので、今後調査をしたいと思います。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 もう一問ですが、引き継ぎの問題ですが、一昨日外務大臣に対しましてINF交渉に関して質問をし、大臣からは自分も積極的にあちこち飛び回る、折衝したいとの御答弁をいただきました。  そこで、中曽根総理総理としても中距離核ミサイルについて極東配備問題をアメリカ任せにしておくのではなくて、積極的に、ダイレクトに関係諸国首脳にひざを突き合わせて話し合ってみるぐらいの決意が今日示されてしかるべきではなかろうか、そう思いますが、いかがでしょうか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核軍縮の問題につきましては、われわれも重大な関心を持ち、その推進を期待もし、また協力もいたしたいと思っておるところでございます。  最近問題になりましたINFにつきましても当然のことでございまして、あの欧州を中心にする戦域核中距離核ミサイルの展開問題というものは、単にアメリカヨーロッパだけの問題のみならず、あるいはソ連アメリカソ連ヨーロッパとの関係のみではない、全世界的な影響力を持つ重大な問題であると心得ております。そういう意味において、まず、アジア地域の犠牲においてそういうものはなさるべきではなく、全地球的規模において削減が推進さるべきである、そうして、ゼロオプションと言われるゼロにまで行くということを、われわれは最終的にこれを持続して捨てるべきではない、そういう考えに立ちまして、関係方面についても強く働きかけてまいりたいと思っております。  先般、レーガン大統領からこの問題に関して相当前にわれわれのところへ意見を求められてまいりましたが、以上のような考えアメリカにも伝えてあります。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 ソビエト側に対して総理は何か直接的におやりになるお考えはありませんか。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何に対してですか。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 ソビエト側に対して。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはアメリカソ連あるいはヨーロッパ諸国みんな関係していることでございまして、もちろんソ連側に対しましてもわれわれは外務省のスポークスマンを通じ、あるいは外務大臣の本国会における答弁等を通じまして、わが国の強い要望を世界的にも明らかにしておるところでございます。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 総理御自身が外交ルート等を通じながら、もっと積極的にこれらの問題について関係諸国に意思を通ずる、そういうお考えはございませんか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 適当な機会を通じまして、われわれの真意を関係各国に強く働きかけてまいりたいと思います。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 景気対策の概要が固まりつつあるようでございますが、政府としては何を積極的におやりになるのか、この辺のところが十分私の方は理解できませんので、何か答弁を聞いておりますと、原油の値下がりにもたれかかっておられるような、そういう景気対策という感じがしないでもないわけでありますが、総理の見解を承りたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内政事項の中で非常に大きなウエートを占めるものは行政改革でございますが、景気の問題もまた非常に重要視しておるところでございます。しかし、これは思いつきというようなことで目前のことにとらわれてやるという考えよりも、長期的な景気を持続させる基礎をこの際つくっておこうと、そういう考えが私らの考え方の基本にあります。景気対策をやるといっても財政が出動する余裕はほとんどない状況でございまして、制度的な改革やら、あるいはいま最近行われました石油の値下げというものを、いかに長期的にこれを活用し得るかというような点に考え方中心を置きまして、また進めておるところであります。また、金利につきましては、これは日本銀行専管事項とも言うべきもので、これは日銀総裁にはっきり任せて、われわれがとやかく言わないという方針を持っておりますが、そういうような点をすべて総合的に考えまして、ようやくアメリカ景気も回復し、ヨーロッパにおいても、やや薄明かりがドイツあたりに出てまいりましたが、日本におきましても、このにじり上がりの情勢をつくりつつ、長期にわたって景気が安定的に持続する方策を考えていきたいと、そのように考えておる次第でございます。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 いまお触れになりました公定歩合引き下げによって、どの程度景気回復というものを総理はお考えになっているわけですか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公定歩合引き下げというのは総理大臣がやることではなくして、日本銀行総裁がおやりになることでございますから、私の方はそういうことには言及しないことにいたしております。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 後ほども触れたいと思うんですが、日銀総裁総理との会談があって、報ずるところによれば、総理の側からは公定歩合引き下げについて強い要請があったかのごとき印象を与える状態になっているわけでありますから、あえて問うたわけでありますが、お答えありませんか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう報道は、もしあったとしますると全くそれは誤報でございまして、私は就任しましたときから日銀総裁とは毎月一回定期会合をやりたいと、そういうことをお願いいたしまして、日銀総裁には毎月一回来ていただいておる。それは特に私は国際経済に非常に弱い者でございます。全般的に弱いのですけれども、特に国際経済には非常に弱い点があります。そういう点で一番権威者である日銀総裁から時々刻々その変動の模様をお聞きし、また勉強いたしたい、特にサミットにおきましては、国際経済問題が非常に大きなウエートを占めてまいりますから、そういう意味においてもふだんからよく勉強しておきたい、こういう意味で、私の先生か講師という意味日銀総裁においでいただいているので、そんな公定歩合の約束とか密約をしようなんという、そんな考えでやっているのではございません。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 アメリカ景気問題について回復基調というお話がいまありましたが、まさにこの第三、第四・四半期並みでこの第一、第二・四半期が行くというふうに踏んで、そうお答えでしょうか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカ側からの情報は、大体景気は回復してまいりまして、特に住宅自動車消費購買力等が非常に出てきた模様でございます。いろいろな統計によって違いますが、このまま行けば大体三%から四%の経済成長は年間を通じて見込まれるという強気の見通しが非常に強くなってまいりました。  先般、一月の末にシュルツ国務長官が参りましたときに、彼は経済専門家でありますが、彼自体がもう確実に景気は回復いたしますと、そういうことをわれわれに言っておりまして、われわれはそんなものかなと内心思っておりましたが、彼の予言どおり、やはりアメリカ景気は確実に上昇に転じたと考えていいように思います。しかし、どの程度上昇力があるかということは、もう少し時間をかさないといけないと思っておりますが、しかし、自動車住宅に関する限りは、われわれが予期した以上の購買力が出てきておるという点で、ちょっと驚いている情勢でございます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 私たちも決して疑ってばかりはいませんが、しかし、アメリカの構造的な赤字というのは非常にひどいわけでありますから、そう楽観は許せる状態にはないのではなかろうかというふうにも見ます。  日銀総裁、ちょっと美濃部教授からいろいろ論議があったようでありますが、私はちょっと違った観点で公定歩合問題を取り上げてみたいんですが、コール金利が下がっているようですね。そうすると、私はこれは公定歩合引き下げに歩調を合わせる動きというよりも、どうも資金需要が落ちてきていると見るべきだと考えるのですが、その辺はいかがでしょう。
  28. 前川春雄

    参考人前川春雄君) コールレートの低下は主として季節的な要因で下がっておるわけでございます。お話しのように、全般的に資金需要が弱いわけでございまするけれども、そういう点を反映いたしまして、市中金利は少しずつ下がってきております。しかし、コールレートがこのところ下がってまいっておりまするのは、年度が越えました季節的な要因が主な要因でございます。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 日銀総裁のお言葉ですが、コール金利下落の現象というのは季節的な要因と断定されているわけですか。私はかなり長期的なものじゃないかという疑惑を持つのですが。
  30. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 資金需要が全般的に弱いわけでございまするから、市中金利全般に、市場金利でございますが全般的に弱いという背景はございます。しかし、このところコールレートが下がってきておりまするのは、主として年度変わり財政資金の散布によるそういう意味季節的要因と、こういうふうに考えております。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 為替相場に対する影響というのはどういうふうにごらんになるわけですか。
  32. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 為替相場は、短期市場金利も若干は影響いたしまするけれども、主として長期金利の方がいまのところは大きな影響がございます。短期資金が、ューロダラーがいま九・五ぐらいでございましょうか、日本コールが六%台ということでございまするから、その金利差が三%くらいありまするけれども短期資金は主として先物でカバーされる取引でございまするので、この短期金利がそれだけ開いたことがすぐ為替影響する、若干は影響しますけれども、ということにはならないというふうに判断しております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 年度で見ますと資金需要が不足しているようですが、五十七年度の不足は、これは円買いドル売り介入によって主として起きている、そういうふうに判断していてよろしいですか。
  34. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 五十七年度につきましては、外為会計が売り操作をいたしました。資金需給では一兆七千億でございましたか、売り操作をいたしましたので、それだけ資金市場から吸収したということになっておりまして、その分だけ、そのほかにもございまするけれども資金需給の面から言いますと不足になっておるわけでございます。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 いまお話にありましたけれども、長銀の調査のやつですが、企業の設備投資計画が落ちているわけですけれども公定歩合を下げてどの程度この設備投資計画が上向くのだろうか。これは下げ幅の問題ももちろんありますが、どういう感触をお持ちなんでしょうか。私は、この設備投資の低迷というのは循環的な性格であって、利下げでどの程度上向くか、これはやや疑問視をしているのですが。
  36. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 設備投資は企業の長期計画、少なくとも大企業の方はそういうことでございますが、中小企業の方は設備投資が当面の景気状況に左右される面が大きいわけでございます。そういう意味で、金利だけが設備投資の将来を左右する要因ではございません。ただ、金利が下がることによって企業収益がよくなるということになりますると、企業はそれだけ設備投資をする積極的な意欲がわきやすいという環境にあると思います。どの程度であるかということはなかなか判定が困難でございまするけれども景気の先行き等にも影響いたしまするので必ずしも数字的には申せませんけれども、一般的には企業の収益がよくなることによって企業投資意欲がわくということは言えると思います。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 総裁、最後ですが、公定歩合操作、これは総理も言われるとおり、もちろん日銀の決定事項であることはよく知っていますが、非常に慎重な態度をとっていらっしゃいます。ところが、政府の側から金融政策の機動的運営が出される、こういう状態にあることもまた否めない事実であります。そういうような状態の中で、あなたとしては公定歩合引き下げに当面どのように対処されるわけですか。
  38. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 総理からのお話もございますように、私の方に任せていただいておるわけでございまするので、それだけ責任も重いわけでございますので、十分慎重に判断しなければいけないと思っております。  公定歩合全般につきましての考えは、しばしば申し上げておるわけでございまするが、景気がこのように低迷しておる、しかも物価が安定しておるという環境の中で、景気に少しでもいい影響があるならば、それをすることは当然であろうというふうに思います。ただ、金利引き下げによって、その効果は確かにございまするけれども、一方逆の効果もある、非常に狭い、いろいろの制約がございまするので、狭い道を歩かなければならないということでございます。  その制約は、一つは国内金利が果たしてそれだけ下がるであろうかどうかということがございます。先ほどお話がございました長期金利が果たして下がるかどうか、短期金利はある程度下がりますが、長期金利が果たして下がるかどうかというのは、また別の要素を考えなければいけないということがございまするので、その点の制約が一つございまするのと、それからもう一つは、最近の状況では円相場でございます。円相場が安くなりますると、これは全般的には、長い目で見ますと物価に影響があるということもございますし、また円安になることが貿易摩擦を激化するという心配もございます。  最近御承知のように、アメリカ側もいまの円相場は円安に過ぎる、振れ過ぎているということをしばしばいろいろな面で発表しておりまするけれども、そういうことから円安にさらに振れるということは、貿易摩擦その他海外からの反響について十分考えなければいけない面がございます。また、せっかく原油価格が下がったわけでございまするから、ここで円安になっては原油価格が下がったことの恩恵が国内に均てんしないということもございまするので、円相場をどうしても円高の方向に安定させるという必要があると思います。最近の円相場は、御承知のように二百三十九円から二日四十円ぐらいのところで、とかく円安の方に振れがちな状況でございまするので、さらにこの国内の金利水準が下がるということは、内外金利差をそれだけ広げるということになる。昨年の円相場がああいうふうに大きく円安になりましたことの大きな要素、これは内外金利差であったろうというふうに思います。  そういう意味で、内外金利差をさらに広げるように作用する措置につきましては、十分慎重に対応してまいらなければいけないというふうに思います。そういう意味で、円相場に悪影響がないかどうか、その辺のところは、これは市場のことでございまするから、なかなか安定はむずかしいわけでございまするけれども、十分その点はわきまえて対応しなければいけないというふうに思っております。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 もう一問だけ。  いま、慎重に対応されると。私は慎重に対応されることに反対じゃないのであって、慎重の上にも慎重であるべきだと思っているんですけれども、ただ、その対応される期間の問題ですが、それはかなり短期的なものと考えておいてよろしいですか。
  40. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融政策は機動的に運用できるのが政策の特色でございまして、それ以外の経済政策とはその点が非常に違うわけでございます。したがいまして、機動的に対応するという考え方を私どもは持っております。機動的に対応するというのは、環境が整えばということでございまして、それはいつ整うのかというのは全く市場全体の総合判断でございまするので、すぐやるのか、もうちょっと待つのかという点につきましては、以上のようなお答え以外には申し上げられないわけでございます。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 どうもありがとうございました。
  42. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 前川総裁には早朝より御出席をいただきましてありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 補助金問題に入りますが、実は土光前臨調会長の参考人としての御出席を求めておったんですが、実現をいたしませんでして、非常に残念であります。新聞やテレビ等にお出になっていろいろなことをおしゃべりになるが、国会には出てこれないというのは私にとっては非常に不満なのでありますが、しかし、そう言っておっても仕方がありませんから、行管庁長官には臨調の議事録の公開を私は過日求めたところでありますが、これも拒否されておりまして、しかしながら、理事会で協議の結果、内容討議の十分に納得がいくような説明は委員会でさせるからと、そういうふうになっていますので、その前提に立って幾つかの御質問をいたしたいと思うのであります。  一つは、土光さんは読売新聞のインタビューで、補助金削減は全くだめだった、こういうふうにおっしゃっていられるわけであります。せんだって来、実は時間の関係もありまして、ここで論議をしようと思ったのを、地方行政委員会の日切れ法案の論議に当たって、補助金問題も若干の論議を自治大臣と煮詰めさせていただきました。ところが、やっぱりどうも総論賛成、各論反対という感が深いのであります。  そこで、いま一度少し具体的な例を挙げて質問をいたしますが、まず総理大臣、補助金の統合メニュー化というのは何のために行うものでしょうか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 補助金が零細化し過ぎまして、そのために資金効率が必ずしもよくない、こういう意味から補助金を束ねて、大きな枠の中で自由に市町村、公共団体が使えるようにしよう、また選択の可能性、自由性を広げようと、そういう意味でメニュー化という発想が出ていると思います。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 私も同感であります。  そこで農林水産大臣、あなたの資料を御提出願ったわけでありますが、大変に事務当局御苦労願いました。この資料は前に配付をされていましたあの配線図的なものよりもこれは数段改善をされました。当然、大臣、両方ともお目を通されたわけでありますが、前の資料と今回の資料を見比べられまして、まず概括的にどういう御感想をお持ちですか。
  46. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) より詳細、詳しくなっております。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 五十六年度のこの補助金、ちょっといま答弁聞き取れなかったんですが、補助金のうんしゅうみかん需給安定対策推進指導費というのがございますね、事務当局。これは資料の四十二ページですが、これが五十七年度には農蚕園芸振興事業推進費補助金、それから農作物生産改善等対策推進事業費に統合されたとなっているわけです。ところが温州ミカンの需給安定対策としては、この推進指導費のほかにも、うんしゅうみかん園転換促進事業、あるいはかんきつ園地再整備促進事業、それから、うんしゅうみかん計画生産出荷促進事業、これなどがあるわけですね。こういうふうに見てきますと、四つの補助金の補助目的は一言で言えばどういうことなんですか。
  48. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘の補助金につきましては、現在温州ミカンが非常に過剰傾向にございますので、この需給安定を図るということが本来の目的でございます。ただ、その補助の仕方、あるいは相手方につきましては市町村、あるいは農業者団体、あるいは果実生産出荷安定基金協会とかいうような事業主体が違いがございます。そういうことでございます。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 でしょう。言ってみればこの補助の目的というのは温州ミカンの需給安定にあるということですね。つまるところはそうなんですよ。これは皆さん方の「地域農政推進のための主要事業ガイド」百六十二、百六十三ページで明らかなんです。これらは統合しようとすれば統合できるはずですよね、農水大臣
  50. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、補助の事業目的は同じでございますけれども、補助金の統合メニュー化の場合には、たとえば事業主体が同一であるとか、あるいは事業地域が大体同じであるとか、あるいは補助の流通経路がたとえば間接補助があります場合には間接補助事業者がその間にありますので、その辺が大体仕組みとして同じであるというような点がやはり同一であることが望ましいと考えております。その関係で全部が全部必ずしも統合メニュー化できる場合もないということでございます。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 もちろんないものもありましょう。しかし私は目的別に統合していくという方向の方がより正しいのではないかと実は考えたので、農林省のこの問題を論議をしながら全省庁の問題を考えようと思っているわけです。  このお出しいただいた資料によりますと、ミカン園の転換促進事業費の方は果樹産地総合整備事業費に統合されている。それからミカン園の転換推進費の方は、地域農業生産総合振興推進指導費補助金に統合されているわけでしょう。この二つの補助金は補助目的は何であるのか、なぜ別のものに統合されたのか、これはいずれも交付対象は地方自治体なんですよ。これは大臣いかがでしょう。
  52. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  先生御指摘の果樹産地総合整備事業の場合、あるいはもう一つの地域農業生産総合振興推進指導費補助金の場合、ハード事業、補助の対象がハードである場合と、補助の対象がソフトというように事業の内容が違っているということがございまして、この点につきましては現段階では二つのものに分けたということでございます。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 現段階では分けたというのは、将来はやっぱり考える余地があるということですか。
  54. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 統合メニュー化につきましては、御指摘のとおりまだ私ども五十七年から始めたばかりでございますので、まだまだ改善できるものもあるかと思いますけれども、これらにつきましてはなお今後慎重に検討したいと考えております。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 五十七年度の例ですが、統合の例、これ四十二ページですよ。いわゆる農蚕園芸振興事業推進費補助金、農作物生産改善等対策推進事業というのがありますね。これは十五の補助金を統合したとなっているわけでしょう、この場合。たとえばお茶の生産流通安定対策費と甘味資源の生産対策費、あるいはおそば、ミカン、これらをごっちゃにしているわけでしょう。そうすると補助金をもらうために各自治体は事業計画を出すわけです。これは非常に苦労している話はこの間地方行政委員会で十分にやったんですが、農水省ね、そばもミカンもサトウキビもお茶もみんなごっちゃですよ。それはどういう事業計画積算するんです、これ。ちょっと最も具体的に積算やってみてくださいよ。ただし、これ往復ですから余りしゃべられると困るんだけれども
  56. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  ただいまのは大体土地利用型の畑作物が主体でございますので、同じ地域におきましてそういう作物がある場合には、その地域地域の実情に応じましてそれができるようにということで、私ども先ほど申し上げました原則で、同一地域あるいは同一の事業主体であるという場合には、統合ができるというように考えまして統合したわけでございまして、したがって、その中身につきましては、その市町村あるいはその地域ごとに何が一番適しているか、適作物をそこでやっていくというようなことで統合したわけでございます。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 どうも積算をどういうふうにしてやるのかというのは非常に私は疑問でして、もう少し官房長一遍詰めましょう、ゆっくり。  総理並びに大蔵大臣、これは予算というのは支出目的が明確でないと編成できませんよね。
  58. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは当然のことでございます。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、農業政策で言いますと、温州ミカンはアメリカのオレンジと競合する問題でしょう、保護か自由化か。そういう作物です。お茶は違う。それからこのなたねも違う。それぞれの作物によって行政がどのような手当てをしなければならないのか、それぞれ違うはずですよ。そうでなければならないのに、それらをごっちゃにして統合をする。統合したと称する。大蔵大臣、これは私は正しい統合ではないと思いますよ。何か補助金隠し的な性格を持っている統合である、そういうふうに感ずるのですが、いかがですか。
  60. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) この間も実は申し上げたのでございますが、大きな流れといたしましては、たとえばアメリカとかイギリスとかの例を見ましても、補助金はだんだん統合する方向で動いている例が見られるわけでございまして、私は日本の場合にも統合というのは、あるいは統合の場合にメニュー化も含むわけでございますけれども、補助金をもらう方、地方団体が主でございましょうが、もらう方で使うときに創意工夫がよく発揮できるようなというメリットがございます。それから手続的にも簡素化されるというメリットがございます。そういう方向で今後考えていかなきゃいかぬのじゃないか、大きな方向としてはそうじゃないかと思います。  ただ、確かにおっしゃるように補助金のつまり目的、補助目的というのがございますから、何でもかんでも統合するというわけになかなかいかないので、そこが現実問題として各省苦労しているところだと思うわけでございます。一定のまだ限界があろうかと思いますが、方向としては統合する、その場合メニュー化も加味するというのがよろしいかと思います。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 私は素人ですが、非常に疑問に思うのは、温州ミカンとお茶というのはどういうように行政が手当てしなきゃならぬかというのは、これは当然違うと思うんですね。  そこで、予算編成時にはどのように積算をして、どのように査定されるんですか、ちょっと大蔵省教えてください。
  62. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) いまの御指摘の補助金は、いわば地域特産に対する補助金だと思うわけでございまして、これはもう今回もそういう統合メニュー化というのが行われているようでございますが、相当前から、十数年前から実はそういう工夫は行っているところでございまして、つまり、前はハッカの補助金とか、紅茶の補助金とか、細かいのがたくさんあったわけでございますが、もらう方からいたしますと、その地域には一つの特産物でいい、一つとか数の限られた特産物でいいというケースがございますので、そういうある計画を立てて、もらう方が、たとえば紅茶なら紅茶をこういうふうに育てていくのだという計画を立てました場合に、どういう程度の助成をするか、それはモデル的なケースをつくってみましてそれで積算いたします。しかし、実行に当たりましては、かなり実情に即して、予算積算どおりというわけじゃなくて、実情に即して地域配分が行われているというふうに考えております。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 同じ温州ミカンを補助対象とする農作物生産改善等対策推進事業費というのがあって、それから果樹産地総合整備事業費、こうあるわけですよ。これはどういうふうに査定されているんですか。――時間がたちますから、その査定の方法、あるいは査定基準、これは後で少し教えてください。詰めます、少し、具体的なことは。委員会でなくてもよろしいです。  そこで、ここで一言言っておきたいのは、大蔵大臣、こういうようなことがあります。私は疑問を残したままでありますが、どういう行政効果を上げたのか、これはおわかりになりますか。
  64. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 御質問は、どういう査定をしたか、あるいはどういう積算をしたかということでございますが、それは実はただいま提出しております、御審議いただいております予算政府全体の責任のものでございますので、当然のことながら所管官庁、いまの例で申しますれば農水省から御説明に上がるということだと思います。  それから事業効果につきましては、これはかねがね私どもも関心を持っている予算の使用が効率的に行われるということでございますので、これは行政管理庁でもいろいろ監察等を通じて御検討になる。それから、場合によりますと検査院の検査の際もいろいろ御意見が出てくる。私どもも、特に補助金につきましては、補助金実態調査というようなことを財務局を通じましてやっておりまして、それらを総合勘案しながら将来の予算査定に当たっていくというふうにやっておるわけでございます。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 どういう行政効果が上がったのだろうかということについて、行管庁長官、何か見解ございますか。
  66. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 効果が上がるように統合したんだと思うのでございます。効果のないような統合をするということは私ども理解しかねるわけでございますが、お話しのような点については、監察やるかやらぬかは別といたしまして、当庁においても十分検討いたします。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 私は、どうも邪推をし過ぎると言われればそれまでかもしれませんが、どうも統合というものを悪用した補助金隠し、いわゆる日本のすぐれた官僚的手法がまたまかり通るんじゃないかと思って非常に危惧しているんです。ということは、国会による財政のコントロールができなくなる、そういうための補助金隠しが、いま幾つかの例を挙げたんですが、これらの中で見られるのではないだろうか。もっと詰めてみなければわかりませんがね。  農水省で言ってみますと、農作物生産改善等対策推進事業費、それから果樹産地総合整備事業費、十幾つの補助金を統合した。それならどれだけ具体的な事務簡素化ができたのかというと、これはたとえば自治体の側面から見ると、いっぱいの手紙が来ていますけれども、この間自治大臣にはお読みいたしましたが、委員会で。あんなような状態なんですよ。そうすると、どうも疑問に思うんです。この質問に具体例で答弁できますか、いま。
  68. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  この統合メニュー化に伴いまして、具体的にいま事業合理化がどの程度できたかということでございますけれども、事務の問題でございますので、計測というのは非常にむずかしいかと考えております。  ただ、私ども先ほど来御説明申し上げておりますように、まず統合メニュー化によりまして地元の実情に即した事業が、地元の総意によって選べるという点がまず第一の目的でございますし、それに伴いまして、いままでたとえば補助要綱にしましても作物別、あるいは事業別に補助申請を出すというふうなことがやはり一本の補助申請でやれるという意味では、申請する側にとりましても非常に簡素化されている。具体的な例ということは、前にも申し上げましたけれども、補助事業を行います場合の実施計画、これは大体私どもの生産総合対策で見ますと、実施計画書の分量は従来の約三分の一程度になっているというふうなことは具体的にあらわれてきております。  また、私どもの方の行政の立場から見ましても、行政組織の問題でございますが、できるだけ窓口を一元化して、補助を受ける方々の便宜に資するというふうなこともやっておりますので、そういう意味では相当合理化が進んでいるというふうに考えているわけでございます。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 統合メニュー化には私は反対する立場で物を言っているのでないことは、この間からのずっと論議でおわかりのとおりであります。  ただ、私たちがコントロールできない、国会の審議で見ただけではさっぱりわからぬという状態に補助金が隠されていってしまうということについては非常に疑義がある。その辺をちょっと指摘をしているわけでありまして、国会のコントロールを免れようとする詐術として、こういうものが使われるということについて私は警告をいたしておきますが、最後にここのところ、総理の御見解を承っておきます。
  70. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに補助金の統合メニュー化、和田委員御指摘になりましたいろいろ手紙が来ていると、私は、さらにこのいま御審議いただいている五十八年度予算が通過、成立した後の執行の段階において、その手紙が少なくなることを大変期待しているわけです。  そこで、やはり大蔵省が調整機能を持ちながらも、政府一体の責任で予算編成をして御審議いただく。そうすると、その執行は当然のこととしてその所管省、その効果をやっぱり絶えず判定しておられるのも所管省だ。しかし、別途行政監察の出動とか会計検査院、そういうものの別の角度からのこれに対する監視がある。と同時に、やっぱり防衛におけるシビリアンコントロール――少しオーバーな言い方かもしれませんが、と同じように、国会の審議というものがそれをチェックするから、したがって、国会をだますといいますか、そういう形の補助金の統合メニュー化というものは、結果としてそれはできるものじゃない。やっぱりそこに国会というものが国政調査権の範囲をも含めつつ、これに対して一番監視の大きな役割りを果たしているんじゃないか、そういう考え方に立つべきではないかと思っております。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 ことしの資料は、いろいろなことがありましたが、ようやく若干の改善をされたものが出てまいりました。しかし、なお不満であります。さらに私は、やっぱり統合前の補助金が個別に幾らあって、統合して幾らになったのかというのはちょっとわからないと困りますね、一覧で。あるいはそこまでの資料が出てこなければ、やっぱり補助金の合理化論議というのは、本当の意味で突っ込んだことをわれわれはできない状態だと思うんです。来年はそういうような資料を提出されるように大蔵大臣に要求しておきますが、よろしいですか。
  72. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) その要求にできるだけ沿うような努力をわれわれの方もさせていただきます。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 総理、自治体側としては、何遍も言っているんですが、起債枠を確保するために補助金を、たとえ十万円の零細補助金であっても獲得するのに懸命なわけです。起債の認可というのは一ころよりかなり改善されましたが、なお一層地方の財政自主権を拡大する必要があると思います。そういう意味で見解を承ります。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も、起債枠を確保するために補助金をどうしてももらわなきゃいかぬ、補助金がつかなければ起債を認めない、こういうふうに結びついているやり方というものは、果たして合理性があるかどうか非常に疑問に思っております。こういう点は、ひとつ関係省庁においてよく将来のために検討してもらいたいと思っております。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 税制に移りますが、一昨日、税制改革問題について若干官房長官並びに大蔵大臣と意見の交換をさせていただきましたが、まず総理、「増税なき財政再建」を最終答申が堅持をされた。これは私は正しいと考えていますけれども、この「増税なき」の「増税」とは、仮称一般消費税だけではなくて、EC型付加価値税、あるいは庫出税を含んで大型の消費税を導入しないで財政再建を行う、こう理解をしておいてよろしいでしょうか。
  76. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 臨調の第五次答申、これは第三次答申もそれぞれ同じでございますが、「「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」と、こういうふうに私は理解をいたしておるわけでございまして、これは第三次答申においてもこういうふうに記載されておるわけでございます。  こうした全般的な行革の答申につきましては、政府としては最大限尊重するという基本方針はすでに決めておるわけでございますので、この趣旨に沿って理解をしていくべきではないか、こういうふうに考えております。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 総理、よろしいですか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行管長官が申し上げましたように私も理解しております。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、臨調答申は国民所得に対する租税負担率を明確にしていませんが、これは現行の負担率であると了承しておいてよろしいですか。
  80. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 租税負担率というものそのものが経済情勢の推移によりまして分母、分子が違ってきますので、現行負担率が絶対のものだという考え方には必ずしもぎりぎり詰めてみれば立てないかもしらぬ。しかし、大変重要なポイントとして念頭に置くべきものであるという理解の仕方で対応すべきではなかろうかという考え方であります。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、臨調の答申の負担率は幅があるというふうに、大蔵大臣は見ていらっしゃるわけですか。
  82. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 租税負担率というものそのものが変動するものである限りにおいては、そういう前提に立てば幅があるということにも理解されると思います。ただ、幅があるということをまず認識した上で理解すべき問題ではない、こういう考え方であります。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 行管庁長官、実はなぜこれあれしたかといいますと、一昨日の読売新聞のインタビューで土光さんは、「租税と社会保険料を加えた負担率が、国民所得の三五%を超えないように上限は抑えてある。」と、こう言っているわけです。そうすると、この三五%というのは現行の負担率より御存じのとおりやや高目なんです。現行の負担率は、加えてみたって三三・七%ですから。そうすると、具体的な数字の問題でありますから、ここのところは臨調ではどういう討論があったんですかね。
  84. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 租税負担率につきましては、いま大蔵大臣がお述べになられましたところでございますが、臨調で数字、率の、ああ言っておりますのは、租税負担と社会保障負担とを合わせました国民の負担率、それを一応現状は三五%と、こう見ておるわけでございますね。そして、その三五%というのは、将来の高齢化社会に対応して、まあ特に社会保障の関係だと思いますが、そういうことによってこの現状の三五%よりは上昇することとならざるを得ないだろうと、これは。しかしその場合でも、国民全体の負担率というものはヨーロッパ諸国のように五〇%というのでは高過ぎますよと。それよりは低いように抑えていかなければなりませんよということで、租税と社会保障負担というものを頭に入れて一つの考え方を示したと、こういうふうに私は考えております。
  85. 和田静夫

    和田静夫君 そこで総理、いまの数字のところまでは増税にはならぬと、こういう認識でしょうか。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調の中にいろいろ議論があの当時あったように思います。それでああいう表現に最終的にはなったのでありますが、その場合でも、この「「増税なき財政再建」とは」という定義と、それからいま申し上げた租税プラス社会保険費、それが三五%から、まああのころ四〇%をちょっと超えるぐらいまでは最終的には将来やむを得ないんじゃないかと。高負担高福祉というような時代にだんだんなっていくと、そういうような議論もありました。欧米のような、いま齋藤長官申されましたように、五〇%以上にはならぬようにしなきゃいかぬと、そういうような説がありました。  その両方の議論というものを見てみますと、一つは非常に長期的な、将来的な話をしておる、一つは当面の話をしている、そういうふうに私は理解しております。それで、その中でもいわゆる租税負担率というものについては非常に弾力性のあるような見解も多少あります。  しかし、いずれにせよ、言いたいことはどうであるかというと、どうも自然増収による分は新たなる租税上の措置とは言えない。あるいは既存の税目をいろいろ活用する、こういうものも新たなる措置とは必ずしも言えない。あるいは直間比率の変更、しかし、上限がある程度税収が一定しておれば、それも新たなる措置とは言えないだろうというような議論があのころありまして、その辺を政府がどういうふうにこれから酌み取っていくかという問題ではないかと思います。
  87. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣も同じ考えですか。
  88. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 総理のおっしゃったことと基本的に一致しております。
  89. 和田静夫

    和田静夫君 総理、どうも私わからないのは、臨調が掲げた「増税なき財政再建」の初心というのは、いわゆる大型間接税による財政再建は安易であるというものだったと思うんですね。ところが臨調答申は、いま総理の答えの中にもありましたように、一方では直間比率の手直しを示唆されているわけです。  そうすると、直間比率の手直しを今年度予算ベースで計算をし直してみますと、五対五として七兆円を直接税から間接税に移しかえなきゃなりません。これはこの間大蔵大臣にも見解を承ったところでありますが、そうすると、一方では所得税の減税を伴いながらも、間接税の大増税をしなけりゃならぬ、こういう関係というのは総理としてはどういうふうにお考えになりますか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会で何回も大蔵大臣及び私が申し上げておりますように、いわゆる大型間接税というようなものを考えたり指示したり検討していることはないと、これは一貫しております。
  91. 和田静夫

    和田静夫君 行管庁長官、いまの私の質問、一般論としてはどういうふうにお考えになりますかね。
  92. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) あの答申にありまするように、新しい税目を起こすというふうなことは、新しい「増税なき財政再建」ということではなじめないわけでございますから、総理がおっしゃったように、一般消費税、括弧ですか、そんなことはもう全然考えていないということは私はっきり言えると思います。  あの臨調の審議の中では、先ほど来お話のありましたように、総理もお述べになりましたように、直間比率の問題とか、所得税の問題とか、そういうことは税制の問題として指摘はされているというふうに私は理解はしております。
  93. 和田静夫

    和田静夫君 小倉税調会長が朝日新聞とのインタビューの中で、「「増税なき」は前口上に過ぎないと言う人もあるが、前口上が各条の前提になっていると考えるのが常識だ。」と、こういうふうに述べられております。きょう実はどこか旅行中でお見えにならないのでありますが、私も常識だとそれは思うんですが、総理もそうお思いになりますか。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 小倉さんが本当にどういう真意でどういうことを正確に言ったか、私まだ把握しておりませんので、うっかり不確かな資料で論評することは差し控えたいと思いますが、政府といたしましては、一貫して大型間接税等につきましてはいままで申したことを守ってまいる、そういう考え方であります。
  95. 和田静夫

    和田静夫君 守っていかれる政府の立場はわかりました。  行管庁長官、それはわかっていることにしまして、臨調では大型間接税の利点、欠点について何か論議はございましたか。
  96. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 当時の事務局であった人に聞きますと、そういう話はなかった。要するに、税の公正確保のために直間比率の問題とか、所得税の最低限度というものは検討の対象でございますよというだけを指摘しておる、こういうふうに理解していただきたいと思います。
  97. 和田静夫

    和田静夫君 総理、実は一昨日、大型間接税は逆進的であると私は官房長官、大蔵大臣と若干の論議をさせてもらって、逆進的であるがゆえに、したがって、俗な言い方をすれば金持ち優遇税制につながるという立場を私はとりながら発言をしたわけでありますが、後藤田官房長官、竹下大蔵大臣ともにそのことについては一定の見解を示されましたけれども総理はいかがでしょう。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく考えてないんですから、検討したこともありません。したがって、批判する余地もないということであります。
  99. 和田静夫

    和田静夫君 委員会答弁としては非常に名答弁であります。私の期待に沿わない答弁でもまた一方ではあります。  土光さんは実は郵政審の会長さんなんですね。そうして、郵政審の答申の郵貯認識と臨調答申の郵貯の認識とは大分違うわけですよ。これには郵政大臣、非常な不満をお持ちで、決算委員会でも大変な勢いで、またここでもちゃんとしっかりした答弁をなされました。臨調答申に対して非常な不満を示されました。それで、正反対の結論を同一人格の会長が出すということについて、私は非常に疑問なものだから、そこのところできょう土光さんに来てもらって、あなた郵政審の会長なんですから、これは現在そうですから、やめた臨調の会長じゃないんだから、現在の方が生きるでしょうねというようなことを論議をしてみたいと思っておったんですが、お出ましになりませんでした。私もこれ両方読んでみて幾らか混乱するわけですよ。臨調会長であった土光さんと現在ある郵政審会長である土光さん、こうなるとどちらを信じるかということになるんですが、行管庁長官、これ人のこと答弁できないでしょう。
  100. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 臨調の方は先般解散したわけでございますが、臨調の答申というのは行政全般について高い次元から答申をしていると、こういうわけですね。それから郵政審議会というんですか、その方は特定の専門的な事項について答申をする、意見を述べると、こういうたてまえになっている専門的な審議会でございますね。  そこで、行革の答申につきましては、先般政府においては最大限尊重するという政府の方針を決めておるわけでございますから、行政全般についてこの行革の答申の趣旨が生かされていくべきものであると私は考えております。そしてまた、今後それを期待しておるわけでございます。  しかしながら、それぞれの専門委員会は、当臨調の考え方というのは、その任務なり、方向なり、見方というものがそれぞれやっぱり私は違うものが将来出てくるんじゃないか。多少のニュアンスは私はあると思います。全般的にはやっぱり臨調答申の方針というものは理解されると思いますが、多少ニュアンスの違いは私は出てくるんじゃないかと思いますが、その場合には、やっぱりそれぞれの審議会の意見を踏まえながら、政府において総合的に判断をして決着をつける、これが政府の仕事じゃないだろうか、こんなふうに私は考えております。
  101. 和田静夫

    和田静夫君 わかりました。  ただ、そうお考えになっているが、最も具体的な例として、郵政大臣は、郵貯についての答申は預金者保護の立場がなく納得できない。これは明確な答弁でございまして、決算委員会とここと二回連続的に私は確認をしたのであります。私は郵政大臣のこのお気持ちはよく理解ができるわけですが、総理としましては、いま御答弁がありましたが、関係する審議会が違う結論を出した場合に、郵貯についての取り扱いというのは、いま行管庁長官が言われましたように、やっぱり制度審というものにもう一度かけながら慎重にその意見を聞いていくという態度に変わりはないわけですね。
  102. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 第五次答申につきましては、最大限尊重という政府の方針はすでに決めておるわけでございまして、具体的な項目についてどうするか。これを取りまとめる新しい行政改革大綱といいますか、それをつくらざるを得ないと思うんです。したがって、具体的ないまの例についてどうされるかということについては、まだ方針を決めてないわけでございますから、いずれ新しくできる行政改革大綱の中で、これに対する具体的な政府の方針というものを決めていく、こういう手順になろうかと思います。
  103. 和田静夫

    和田静夫君 総理、いかがでしょう。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行管長官の御答弁のとおりであります。
  105. 和田静夫

    和田静夫君 ちょうどここにお座りになっている嶋崎理事が、行革の特別委員会で鈴木総理といろいろこの問題についてやりとりをされていまして、鈴木総理は、臨調のいわゆる最終答申を踏まえながら、「政府はそれを実行に移そうとする場合には、これを既存の調査会、審議会にお諮りをして、そして専門的立場からさらに論議を深めていただいて、その答申を得た上でこれを政府として国会に法律案あるいは制度の改正、あるいは予算措置等で対処していきたいと、このように思っております。」とお答えになっているわけです。中曽根総理もこのことは変わりがないわけですね。
  106. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 鈴木総理も、行革の内容をいろいろ実施するに当たって、実定法でいろいろ法律によって審議会にかけなければならぬというものがありますれば、それはかけましょうということだと思います。それはもう当然、特に社会保障関係の法令等は社会保障制度審議会とか、あるいは厚生省の中の社会保険審議会とか、そういうものにかけて実行していく。これはもう当然のことだと思います。
  107. 和田静夫

    和田静夫君 総理、よろしいでしょうか。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行管長官の御答弁のとおりであります。
  109. 和田静夫

    和田静夫君 次に移りますが、これ政府の方針を聞きますと、大型間接税考えていないからというさっきの総理の名答弁になりますから、主税局にお聞きしますが、課税対象を広い。品目にとってみるわけです。いろいろ否定されたところで、これいまやっぱり話題としては最大の話題でありますから、つまり生活必需品にもかける、そういう間接税というのは所得に対して逆進的になりますね。
  110. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 税制の一般的な理屈の問題としてお答え申し上げますが、いま御指摘になりましたように、財政学の教科書にも書いておりますけれども、生活必需品に対する課税は可処分所得に対して逆進的であるということは通説になっております。
  111. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官、大変恐縮ですが、一昨日、後藤田官房長官は大型間接税のかけ方によっては逆進的にならないとおっしゃったわけです。私それからずっといろいろ考えてみまして、かけ方というのはどういうことだろうというようなことで、いま一問出してみたんですが、これはどういうことを御想定になった御答弁だったんでしょうか。
  112. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 率直に言いまして、もう税金の話は大蔵省の方にお願いしたいと、こう思います。  私が申し上げているのは、確かに幅の広い消費一般に間接税をかければ、これは従来から税の理論としては逆進性はあるという一般的な考え方はございます。あるいはまた、物価にどうとかといったようなこともありますね。しかし、それはその中身の制度の決め方によるのではありませんかと、そういった難点を除去することは、これはやはりそういった間接税といえどもあり得るのではないのかなということを私は一般論として申し上げているわけでございます。さらにまた理論的には、そもそも税金について一つの税目だけをとらえて逆進であるとか累進であるとかということは果たしていかがなものであろうか。やはり税制というものは、全般的に税全体の中でいまのようなことは論議をするのが本当のあり方ではないのかなと。さらにまた、広く言えば歳出にまで考えてそういうことは考えるべきであって、金持ちにどうこうとかなんとかというのは少し短絡的ではないのであろうかなと、こういう意味合いで申し上げておるわけでございます。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 いや、この間も言いましたけれども、税の行政の道を歩いたことのない官房長官なら質問するつもりは全然なかったんですが、地方税に関する限り大変な大家でございますから、したがって質問したわけです。  議論をわかりやすくするために私は挙げたんですが、商品を奢侈品と生活必需品に分けて考えてみますと、奢侈品の税率を高めて生活必需品を低い税率にする、そういうことでもお考えになったのかなというふうに実は思ったんですが、これはもう答弁求めません。  そこで大蔵大臣大臣も官房長官答弁をこの間追認されましたから、これはいまの官房長官のようにあちらに任せますというわけにはいきませんからね。税率をいま私が言ったように傾斜させれば所得に対する逆進性を免れるかもしれぬ、これはわからぬわけじゃないんですが、フラットにかけるのであれば、これは間違いなく所得に対して逆進的だということになると思うんです。それは主税当局答弁になりましたが、大臣も間違いありませんね、ここは。
  114. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 一般論として理論的にそのように肯定をします。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 すると、税率の傾斜させた大型間接税などというものは技術的に可能だろうか。個別物品税ならできるけれども、対象品目を広くとっていくと税目でそんなことが可能になるのだろうかということをちょっと考えるんですが、大型間接税のメリットがなくなるというふうに思いますね。これはどうですか、一般的には。
  116. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これも税制の理屈として御説明申し上げるわけでございますが、たとえばECタイプの付加価値税では、各国によっていろいろやり方は違いますけれども、たとえば食料品等の生活必需品につきまして、イギリスなどではゼロ税率でございますし、ほかの国では一般の標準税率よりも軽減税率を設けるとか、いろいろな工夫をいたしております。
  117. 和田静夫

    和田静夫君 私は、この間も言いましたアーロンの著書で見ると、逆進性がもう非常に免れない状態がありまして、これの二十六ページで、フランスの大蔵省の役人のトップクラスの皆さんが出しているあれでありますが、フランスの例を挙げてみまして、ずっと一覧表を見ますと、一万フラン以下の世帯では二二・一七%の負担率、十万フラン以上では五・四四%の負担率でしかないわけです。逆進性を免れないことはECの経験から実証されています。これは非常にすごい逆進性、付加価値税のやつでなっておりますが、これはそういうふうに認めておいていいですか。
  118. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) この問題につきましては、五十二年当時、例の一般消費税(仮称)が税制調査会で論議されましたときに、ヨーロッパのいろんなデータを参考にしながら税制調査会でも議論がございました。結局、結論的には課税対象物品によって税率にいろいろ工夫をするとかということでトータルとして累進性を緩和できる、あるいは場合によっては緩い累進型の効果を持つような税制まで仕組めるのではないかという議論がございました。同時に、これは先ほど官房長官が御指摘になった点でございますけれども、その調査会の議論の中では、税負担の逆進性という議論をする場合に、究極的には財政を通ずる所得再配分の議論であるから、その税目だけを取り上げるということは問題であって、少なくとも、税体系全体がどうなっているか、つまり所得税の累進構造とかみ合わせたところで税体系がどうなっているか、さらには社会保障支出等の歳出面での所得再配分を加えた再配分効果がどうかということで議論をさるべきであるということになっております。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 そういう議論もこれからずっと煮詰めさしていただきますけれども、ところで自動車、カラーテレビ、ルームエアコン、これらは生活必需品ですか、奢侈品ですか。
  120. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これも五十二年当時の税制調査会の議論をトレースして申し上げますと、広く消費全般に着目する間接税の議論が出てまいりましたのは、実は間接税の歴史から申しますと、たとえば、わが国の物品税のように、基本的な考え方は、当初奢侈品のようなものあるいは高級便益品のようなものに特別の税負担を求めるというかっこうで発展したわけでございますけれども、特にわが国のように所得が非常に平準化してまいりますと、同時に所得の水準が上がってまいりますと、いまや大衆消費と奢侈消費というのを明確に区分するということは非常に困難になってきておるわけでございます。たとえば乗用車等につきましても、普及率から見まして果たして今日これを高級品と言えるのかどうか、電気製品のたぐいについてもそうでございまして、今日の世界の大勢といたしましては、消費税の議論をする場合に奢侈品であるか生活必需品であるかというものが、ごく限られた物品につきまして、たとえば高級の貴石とか貴金属とか、そういうものについてはそういう区分はできるでございましょうけれども、大部分の生活商品につきましてはそういう区分がむしろむずかしいという前提に立って今後の消費税のあり方を考えなければならぬのじゃないかというふうになるのではないかということでございます。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 そうなんですね。それで大蔵大臣、私はこれらの品目はいまや生活必需品。そうすると、そういう部類に入るからこれらは御存じのとおり個別物品税がかけられていますね。電気洗濯機、掃除機、そうなんです。現行物品税はすでにそういう意味では所得に対して逆進的になっていると思うんですが、この辺のところは改められる御用意はあるわけですか。
  122. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かにいまおっしゃいました電気洗濯機とかいう問題が一九五〇年代の後半、一九五〇年代の庶民の一つの暮らしの潤いの象徴としての三種の神器のワン・オブ・ゼム、それから一九六〇年代になりますとカー、クーラー、カラーテレビ、三Cがすなわち潤いのシンボル、こういうふうに変わってきて、したがって、かつての概念の中の奢侈品が所得の平準化につれて生活必需品の範疇の中へ入ってくる。したがって、本当に奢侈品というものは、ここまで世界経済全体、なかんずくわが国の経済がこういうふうな形になってきますと非常に限られたものになってくる。そうすれば、今後の一般論としての議論の中で出てくるのはやっぱり奢侈性というものの持つウエートがうんと減ってくるのじゃないかという感じがいたしますので、もとより予見を持って税制調査会で何をお願いしようという考えがあるわけじゃございませんけれども、私はいわゆる物品税の持つ意義というものも奢侈性というものが逐次減殺されて、いわば税体系全体の中における間接税という一つの税目の中の位置づけになってきつつある、こういうふうに認識しております。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 この辺は、いわゆる何といいますか、少し物を考え直すというお立場のようでありますが、私はそういうような状態にある上に大型間接税をかぶせたら、税による所得再配分機能はより一層後退する、そういうふうに考えたものですから、前段のところで御見解を承ったのですが、この辺は税に詳しい通産大臣、経企庁長官、大体私のところでいいですか。
  124. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 税の方は勘弁してください。
  125. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) いろいろの御意見を同わしていただきましたが、私はいろいろの評価がありまして、経済事情に関連して言わしてもらいますれば、一概には言えない、こんな感じでございます。
  126. 和田静夫

    和田静夫君 個人消費支出に対する影響というのは、いわゆるさらに冷え込ませる、そういうようなことに機能しませんかね。
  127. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これも一般論でございますが、いわば個人消費の対象としての問題ということになれば、それに伴う物価上昇、こういうことが念頭に置かれるべきことになると思いますが、物価というものはやっぱり私は税というものの存在以上に、そのときの経済情勢の中で、需給のバランスの中で、自由主義経済でございますから自然に位置づけられるものであるから、それそのものがストレートには結びつくというわけではない。しかし、単純な計算の場合、私は和田さんの理論を否定するという考えではございません。
  128. 和田静夫

    和田静夫君 最近、学者の皆さんの中に、間接税の方が何か所得税よりも合理的である。なぜなら、資産家の消費もサラリーマンの消費も同じである。したがって、源泉によって不公平の生ずる所得税より合理的だ、公平だ、そういう説をなす人がいるのですが、これは大蔵大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  129. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる間接税が経済情勢に対しては中立であるとか、それからいまおっしゃいました学者の議論というものが存在しておるということは私どもも承知しております。
  130. 和田静夫

    和田静夫君 私は、この議論というのは本末転倒の議論だと実は考えておりまして、この議論はまさにクロヨンを念頭に置いているのでしょうけれども、クロヨン問題は所得をきちんと把握するように努力してみるのが筋ですよね。それは大臣、そうでしょうね。
  131. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 税の公平確保という見地から言えば現行税制の中で、このいわゆる不公平感がないような行政執行上の措置を行うというのが先行するということは私も同感でございます。
  132. 和田静夫

    和田静夫君 大型間接税のメリットとしまして、アングラマネーをあぶり出すことができるというふうに最近特徴的に主張していらっしゃる学者がいらっしゃいます。  しかし、ECでの経験をずっと、少し上っ面だけでありますが勉強してみますと、ECの経験というのは必ずしもアングラ化を阻止し得ない、こういうふうになっているように大綱思うのです。経済の現物化を生み出すという指摘があるわけですね、これは大臣、何かお考えありますか、あるいは大蔵省。
  133. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 所得捕捉との関係で間接税なり支出税を支持するという学説はございます。わが国でも学者の間でそういう議論をする人もいらっしゃいますし、むしろそういうことに力点を置かない説もございまして、まさにそれは学説の問題として対立しているわけでございますが、いまおっしゃいましたように、たとえばEC型の付加価値税を導入する場合に当たってヨーロッパ諸国がそれでアングラマネーを捕捉するというような観点から税制を導入したというような経緯はないように思います。
  134. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、何遍かでありますが、大型間接税は物価上昇を免れない、とすれば物価上昇のあおりを受けて財政支出がふえる、こういうような関係にはなりませんか。
  135. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは一般論として、物価上昇をもたらせれば、あるいは生活保護費の算定基準とかあるいは人件費の官民格差等の問題の算定とかいう場合に連動して、それが財政支出の増加につながるということはそれなりの筋だと思っております。
  136. 和田静夫

    和田静夫君 私は、直間比率の手直しがお金持ちの優遇につながると思っていますが、所得税の税率緩和ですね、最高税率の手直しもこれはやり方次第では所得の多い者の優遇につながっていく。大蔵大臣、あなたの前任者であった渡辺大蔵大臣と私は幾つかの論議をした中で、彼は、一千万円以上の所得の人がふえてきている、その人たちに四二%以上のいわゆる限界税率は過酷である、こういうふうに答弁されたことがあるのです。国民経済的に見まして、勤労意欲がなくなるのだという答弁になっているわけです。こういう見解は同じ見解でしょうか。
  137. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 税に対する個人的な評価というのを非常に差し控えさしていただいておりますのは、いわば与野党の合意というものがあって従来よりは少なくとも早目に税制調査会に御議論をお願いしなければならぬという意味においては予見を挟んではならないから差し控えさしていただいておる。こういうことでございますが、学説として申しますならば累進税率構造という問題が勤労意欲の問題に大きく影響を及ぼすという学説は、これは存在をしておると思っております。
  138. 和田静夫

    和田静夫君 これは非常に細かい質問で、通告してありますからあれですが、民間の大会社で給与収入が一千万円になる人たちというのは、大体どういうクラスでしたか。
  139. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 国税庁の担当者が実は来ておりませんので、いますぐ問い合わせますが調べていると思います。
  140. 和田静夫

    和田静夫君 これは早くからあれしたのですがね。私の調べでは、東芝で言えば部長クラス大卒四十五歳程度日本鋼管で言えば次長クラス五十歳の人たち、富士銀行で言えば次長、四十三ー四十五歳程度、こういうことになっているわけであります。  所得税問題なのですが、大蔵大臣大臣ですら年収四千万円超の方がいまの現内閣ではわずかにお一人、年齢的に言えば大変お若い人がそちらのクラスでありますが、まあ若いのと収入は別でありましょうが、おおむね一千万から二千万円台であります、五十六年度の申告、公示されたものでずっと当たってみましたところ。  そうすると、年収八千万円以上の人は何人いるのか。これは統計がありません。大蔵に求めていましたけれども、出てきませんでした。したがって、五千万円以上の人が一万八千七百九十三人、これも昭和五十六年。この人たちの勤労意欲が税金が高いためになくなって、そして日本が滅ぶとお考えになるというのは、これはどうも解せないわけですがね。日本が滅ぶというのは余分ですか。
  141. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私は事務当局でございませんから、若干不正確なことを言ってもいいという意味じゃございませんが、政治家の議論としてよくやりますときに、いまのいわば上場会社のトップと学卒初任給と比べますと、まあ手取りで大体八倍で、限界が十二倍ぐらいかなと、こういう説をなす人があります。したがって、いわばこれは給与所得でございますので、給与所得に関してはまあ先進国の中では上下の差が一番少ないのが日本の所得体系だと思うのです。したがって、これが余りにも少ないということは、場合によって、部長さん方もこんなにがんばっているのに、きのう入ってきた人とおれは三倍の力しかないだろうかと思う場合もあるかもしらぬという意味におきましては、わが国の所得税における税率構造というものに対していろんな説をなす人が出てくる一つの根拠であると。それから一般論としていわゆるその他の株式配当所得でございますとか、そういうものと勤労意欲というものとの結びつきよりは、やはり給与所得の中における結びつきの方が、私は勤労意欲という概念で言えば強いのじゃないか。これもまさに一般論としての感想を述べたにすぎません。
  142. 和田静夫

    和田静夫君 総理、私は恐らく八千万、これは五千万円でもいいのですかね、以上の高額所得者というのは勤労所得によってはそうそう発生しないのだろうと見ているのですが、それは総理はどんなお考えですか。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろなものが重なって統合的にそういうふうになると思います。配当所得も入るでしょうし、あるいは不動産所得もあるかもしれません。
  144. 和田静夫

    和田静夫君 したがって、私が言いたかったのは、実は最高税率を下げる必要はないと考えているわけです。課税最低限の引き上げと引きかえに最高税率を下げるお考え、税制改革は、中曽根内閣はそういうふうに指導されますか。
  145. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これこそまさに厳密に言いますと予見をもって税制調査会に臨むわけにはいきませんので、最高税率はフィックスすべきであるとかいうことを申し上げるわけにはまいりませんが、私は税率構造そのものについては臨調も税調もいままで御指摘なすっておりますので、それなりの御検討、御議論がいただけるテーマではないかというふうに想像しております。
  146. 和田静夫

    和田静夫君 総理もやっぱり同じことですか。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ日程に上らない話でございますから、大蔵省に任してあります。
  148. 和田静夫

    和田静夫君 どうも私は日程に上っているような気がするのですがね。確定申告基準の引き上げというのはその布石なんじゃないのですか。
  149. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確定申告基準の引き上げというのは、ずいぶんその所得層が多くなったから、いわば税務の窓口業務の繁雑化からもっと引き上げたらどうだというのが国会の方でむしろたくさん意見が出て、それにこたえてこれから勉強する課題だと思いますというふうにお答えしているというのが現状でございます。
  150. 和田静夫

    和田静夫君 どうも世間では、限界税率と年収に対する所得税負担率を混同しているようでありますからお聞きをしておきたいのでありますが、税率ブラケットごとの給与収入に対する所得税負担率を説明してください。
  151. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 御指摘のとおり、累進税率構造を持つ場合の所得税負担率と、それから追加されます所得に対して適用されますいわば上積みの限界税率というのは概念が違うわけでございますが、前回御指摘がございまして資料を改めてまとめたわけでございますが、たとえば課税所得一千万円超、これは給与収入に換算いたしますと一千三百五十七万円、年収。所得税の課税所得に対する負担率が二五・四%、それから給与収入に対する負担率が一八・七%、このブラケットに適用されます限界税率は四二%でございます。  以下、ずっと申し上げますか。
  152. 和田静夫

    和田静夫君 はい。
  153. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) それから千二百万超千五百万のクラスは千五百万までのところで、負担率が二五・三%、限界税率四六%。それから二千万までのところ、負担率三〇%、限界税率五〇%。それから三千万までのところ、負担率三六・九%、限界税率五五%。それから四千万までのところ、負担率四一・六%、限界税率六〇%。それから六千万までのところ、負担率四八%、限界税率六五%。八千万までのところ、負担率五二・四%、限界税率七〇%。それ以上になりますと、地方税とのトータルで八〇%までが制限税率になっております。
  154. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、景気対策から所得税減税が抜かれた、今後取り組むべき課題にされたと、こういうのですね。これははなはだ遺憾なことだと思うのです。総理、なぜ先送りをするのですか。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 景気対策は、先般党首脳部及び関係各閣僚が集まりまして、こういう方向で検討しようということで大体の要目及び大ざっぱな内容等を先般決めまして、いよいよ政府が、予算が成立した後におきまして的確に作業に入ろうと、そういうことでやったものでございます。所得税減税につきましては与野党の話し合いの結果というものがありまして、それを尊重する立場にございますが、具体的な内容等につきましては、やはり七月前後の税収の状況等々をよく見てみませんと的確な話はできません。そういう意味におきまして、これは七月以降の税収状況等をにらみ合わせながら具体的に中身やら時期を決めていくと、そういう問題でありますので、今後取り組むべき問題として挙げてあるわけであります。
  156. 和田静夫

    和田静夫君 けさの報道によりますと、いま総理が言われました与党首脳は一兆円と決めたと、こういうふうに報ぜられています。  そこで大蔵大臣政府としてはここでおおよその額ぐらいはもう出るのではないですか、これを受けて。
  157. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) それこそ一番大事な点でございますので、いま総理がおっしゃいましたとおり、具体的に運びを詰めていくというのはやはり五十七年度決算確定後ということであります。したがって、景気を浮揚するために役立つと、こういうことになりますと、その議論を余りぎりぎり詰めるということは、せっかく各党の代表者の方が高度な判断からお使いいただいた言葉でもございますので、それを直ちに数値に結びつけるということはかえって非礼千万ではないかと、こういう考え方で慎重に取り扱っていきたいというふうに思っております。
  158. 和田静夫

    和田静夫君 自由民主党の首脳が発表されたことは、自由民主党は自由民主党だと、大蔵大臣、あれは全然いまのところはタッチしていないと、そういう言い方になりますか。
  159. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 自由民主党の首脳が別に数字をぱっと挙げられたということでもなかろうと思っておりますが、当然各党の合意というものが存在しておりますので、本当に真剣に検討すべき課題でありまして、この数値そのものでひとり歩きしないように、われわれも絶えず戒めておかなければならない課題だというふうに理解しております。
  160. 和田静夫

    和田静夫君 私は、所得税減税というのは、まず課税最低限の引き上げ、そこから手をつけるべきだというふうに考えているのですが、この私の考え方は尊重されますか。
  161. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これも予見を持って申し上げるべきでない範疇に入るかと思いますが、臨調また税調、たとえ税調五十九年度以降という前置きがあったといたしましても、そういうものを検討すべきだということがまあなされておりますと、そういう答申がなされておるということに思いをめぐらせば、そのような点が御議論の俎上に上るではないかというふうに想像しております。
  162. 和田静夫

    和田静夫君 総理、非常に私くどいようですがね、所得税減税と直間比率の手直しというものを名目にして大型間接税の導入というものはあくまでもすべきではない、総理はそういう方針で断固として進まれるべきである、そういうふうに考えますが、もう一度答弁いただいておきます。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大型間接税の導入というものは考えておりません。何回もこれは申し上げているとおりでございます。
  164. 和田静夫

    和田静夫君 通産大臣、電力の設備投資について業界と協議を進めていらっしゃるようでありますが、これは大体どのくらいの線で落ちつくことになりそうでありますか。
  165. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはいま政府あるいは政府・与党の間で景気対策というものを検討していますが、その中に公共事業の前倒し論議があります。そうしますと、民間設備投資というものはいかにすべきかということで、やはり去年あたりから全部設備投資の下方修正を業界が行っておるものですから、その環境の説明は省略しますが、ことしの景気刺激のために民間産業がどのように既定の予定している設備投資が前倒しできるのかという一環として、電力業界にもそういう検討といいますか、どういうふうな用意があるのか、あるいは用意がないのか、そこらのところをいま調査をさせておるところであります。
  166. 和田静夫

    和田静夫君 いま、だけれども非常に抽象的な段階ということですか。
  167. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) もちろん抽象的な段階でありますし、具体的に言ってありますのは、原油の値下がり益が生じたときのことを前提として、その金額に直せば、その分を設備投資に乗せなさいということはやってはいけないということを命じてあります。
  168. 和田静夫

    和田静夫君 通産大臣、その石油価格の低下なのですがね。私はまあ石油価格の低下というのは、いわばまあ神風のようなものだろうと思うのですが、これは除くといたしまして、一体この程度景気対策で幾ら成長率がアップするというふうにお考えになっているわけですか。
  169. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 総理並びに通産大臣もいまお話しのとおり、これからまだまだ仕上げるわけでございます。各方面の成果をまちまして、企画庁でこれからどの程度の成長率に影響するか検討するところでございまして、まだその率は申し上げることができないのは大変残念でございます。
  170. 和田静夫

    和田静夫君 経企庁長官、後で答弁をもらおうと思っていたのですが、通産大臣は同じ答弁になりますかね。
  171. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 現在のところ、政府の段階では公共事業、これはもう総理がおっしゃっているとおり、予算が成立した後でないと国会に対して僣越な議論をすることになりますから延ばしてありますが、しかしながら、民間において通産省所管の業種の設備投資が大部分でございますから、これも政府の施策がもしそうなるならば、前倒しが可能かという検討は先ほど申しましたとおりいたしておりますが、そのために成長率が幾らになるだろうか、その貢献は幾らかというのは前倒しでございますので、ちょっと前倒しの段階で、じゃあ前倒しした残りはどうするかという議論を残したままで成長率の推測はきわめてむずかしいのではないかと思います。
  172. 和田静夫

    和田静夫君 一九八六年ごろ第三次石油危機が来るという説がございますね。この説は私はあながち的を外れたものではないと思っているのですが、これは通産大臣は何か御見解をお持ちでしょうか。
  173. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そんなふうに、もし順調にいけば、また石油の需給はタイトになって、そしてカルテルが実際上値上げする力を持ってくるということの推測だと思うのです。しかし、私どもがいま念頭に置いて一生懸命推測を交えながら計算をしておるのでは、どれぐらいの期間そしてどれぐらいの金額というのはほぼ二十九ドルで、イギリスの国営石油も五十セント引き下げましたが、ナイジェリアはしんぼうすると言っておりますし、そうなるとそこを手がかりに、またきっかけにして、値下がり議論になるのではないかということはどうやら避けられる。そうすると、これで一応安定して二十九ドルというものでどれだけ続いたらわが国経済の再活性化、世界経済の活性化というもので石油の需要というものはどんな変化を示していくであろうかと思いますが、一方においては日本で決められないことであり、しかし、日本はそれをなるべく見通しながら経済運営をしていかなければならないという、大変受動的な情けない立場でありますけれども、むずかしい立場に置かれておりますが、私どもは最低二年もしくは五年ぐらいは続いてほしい。ただ、その間の経済運用によって、石油をかつての無限の資源であるとはもう考えないでしょうが、この価格でずっと手に入るのだということで野放しにしますと、全世界的な規模になるわけでしょうが、そういう国際経済の運営がなされますと、再び値上げに対する力を持つカルテルが復活するということにおいては、年度をいつごろということに決めるのは大変むずかしいのではないかと思いますが、願望としてはそこまでいかないで、世界経済がこの天恵と申しましょうか、そういうもので再活性化の道に正常なペースで戻っていくということの方を私は念願して、国内政策もそのようにしたいと考えております。
  174. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、いまお話がありました公共事業を前倒しするというわけですが、前倒ししただけでは効果が出ないということは、昨年度でも立証済みだろうと思うのです。そうすると、その先ということになりますが、その先は一体何かお考えになっているわけですか。
  175. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 公共事業の前倒し措置というものがここのところやられてきまして、そうして私が五十八年度に対してのいろいろこれから勉強することでございますが、いま一つの期待として持てる問題は、昨年暮れに議了いただきました二兆七百億円の公共事業、これの執行というものが大体契約が数日前には終わった。そうすると、平素構造的にと申しましょうか、転勤その他ございまして、四、五月というものが大変に落ち込んで、ある種の端境期をもたらす、これは順調に埋めて仕事がなだらかに続くのじゃないかと、こういう感じがいたします。したがって、理論的に言えば前倒しすれば下期が息切れするではないかと、そういう御指摘でございますが、なだらかな執行の中に、それが可能な限りないような形で執行するとともに、その執行そのものがいわば民間の活力を刺激して、総じて見た場合になだらかな公共事業及び公共事業的なものが続いていくような形の中で、総合して判断しなければならない課題であるというふうに考えております。
  176. 和田静夫

    和田静夫君 より突っ込んで、もう少し具体的に何かいまお考えになっているということはありませんか、いわゆる哲学的なことはわかりましたけれども
  177. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いま通産大臣からもお答えがございました、民間のそうした問題にも期待をかけなければならないという考え方は基本的にはないわけではございません。が、なだらかな執行というのは、契約行為そのものと、そしてもう一つは工事のいわば完成期限、そういうものとかがありますし、さらにこれは執行のきめ細かい配慮の中には用地比率の少ないものとか、そういうようないろんな配慮があるのではなかろうかというふうに考えております。
  178. 和田静夫

    和田静夫君 雇用情勢でありますが、七〇年代半ば以降、GNP成長率と雇用の関係、これは六〇年代にわずかながら相関関係は認められたのですが、七〇年代以降はほぼ無相関、GNP成長率を高めても失業率は減少しない、これはスタグフレーションの状態だろうと思うのですが、フィリップス曲線が上向いてきているというマネタリストの指摘現象、それはそこのところはそうだと思うのですが、そのマネタリストの主張は失業率と賃金上昇率、ないしは物価上昇率の関係、私は、GNP上昇率と失業率の関係についても……
  179. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 和田君、時間が参りました。
  180. 和田静夫

    和田静夫君 似たようなことが言えると思うのです。多少景気は上向いても失業率は低下をしなかった、こういう、逆に上昇するケースすらあるわけです。  したがって、そこのところを経企庁長官にお尋ねをして、労働大臣には、そういう状態の中における雇用政策というのはどうあるべきなのか。
  181. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 一般的に申し上げまして、公共投資の前倒しは目的が二つあると私は思いますが、公共投資の前倒しによって、それ自体で成長を早める効果を持たす。しかし、それだけで終わりだと思います。それからもう一つは、公共投資の民間投資誘発効果でございます。在庫調整の進展状況によって公共投資の前倒しの効果は相当違ってくる。昨今のように民間の在庫調整が進んでまいりますと、公共投資は民間投資の刺激効果が出てくるような効果を生みやすい傾向にある、私はこんなふうに過去の経験から見ておるところでございます。
  182. 大野明

    国務大臣(大野明君) 失業の減少と雇用の安定を図りますためには、根本的には経済問題ということになるわけでございます。  そこで、いずれにしても経済の拡大というものを図っていかなければ雇用問題も論じられないということでございますから、いずれにしてもそれらを十二分に勘案して、今後とも適切な経済運営を行って、そして雇用需要の確保に努めていきたいと考えておりますし、また今日までもやってまいりました。  しかしながら、近年、わが国は労働市場の変化といいますか、高齢化の問題、あるいはまた女子の職場進出の問題、あるいはサービス経済化の問題、そしてまた特に技術革新の進展、目ざましいものがございますので、それらに対応できるようにしなければいけないのではないか、またこれも今後ますます進展していくということも当然予想されますので、こういう点も含めて、現在、鋭意努力はいたしております。  中長期的には、いずれにしても現在、経済計画の見直しというような中において、雇用審議会の場で検討を進めておりますので、その検討の結果を待って適切にかつ迅速に行いたいと思っております。
  183. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で和田静夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  184. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、太田淳夫君の質疑を行います。太田君。
  185. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最初に、総理にお尋ねしたいのですが、いよいよ日程的にもサミットということが当面の大きな問題になってきておりますが、総理としましても先進国首脳の一員としまして、世界経済の活性化への責任ある立場、そういうことで、議題につきましてもいろいろと個々にこの席におきましてもお話がありましたけれども、最終的にやはり一つの責任ある立場として構想をお示しになる段階じゃないかと思うのですが、サミットにどのような御構想で臨まれようとされていますか。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五月のサミットに向けましては、各国の首脳の個人代表が逐次会合いたしまして、どういう項目を議論するか、どういうやり方でやるか等いまやっておりまして、あと二回やることになっております。まだ固まっておりません。したがいまして、順次固まりぐあいを見ながら当方の考え方をまとめ、それに対する態度を決めていきたいと思っておりまして、まだ具体的に何をどうするかということは決めておりません。  ただ、いい機会でございますから、日本の立場や日本考え方を宣明し、かつまた世界的協力というものをなし得るように、ある意味においては積極的に行動していきたいと考えております。
  187. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 世界公共投資基金について具体的検討を指示されたとありますが、それも一つでしょうか。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはまだ決まったこともないし、言ったこともないので、どうしてそんな新聞記事が出てきたかと思われる記事であります。
  189. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、総理は中曽根ミックスとかというものを打ち出したいというような御構想もあるように承ったわけでございますけれども、最近のある世論調査等を見ますと、むしろ国民の皆さん方は冷厳な眼で中曽根総理経済政策を見つめているというような結果が出ているようですね。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕 中曽根内閣の経済政策に期待が持てないという声は大体七割もあると言われておりますけれども、その点についてどのようにお考えになりましょうか。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはまた非常な応援団の声であるとも思っております。
  191. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 しかし、いろんな面で、国会の審議等を通して見ますと、外交、防衛問題につきましては相当な見解を持ち、強気な態度に見えるが、経済問題については一歩弱腰じゃないかというような判断が国民の皆さん方から下されているのじゃないかと思うのです。  次に、経企庁長官にお尋ねしますけれども、この予算委員会等でも、景気は厳しい現状だが次第に明るい兆しが出てきている、このように述べていらっしゃいますが、また秋ごろには日本景気も回復をする、このように説明されておりますけれども、経企庁長官のお考えの中の明るい兆しというのはどのような経済指標で判断されているか、その点お聞きしたいと思います。
  192. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) もう御指摘のように、現在の経済状況はなかなか厳しい状況にございます。  個人消費、設備投資につきましても、伸び悩み、あるいは将来なかなか伸びそうにないというような動向が出ておりますけれども、私は今後の動向を推察いたしますと、六つばかりの明るい兆しがあるかと思います。  一つは、在庫調整の進展が五十六年、五十七年、先般発表いたしました国民所得統計速報の中で、五十六年の十月―十二月には二兆円ばかり、五十七年の十月―十二月期には一兆円ばかり、このような在庫調整が進展しておるということでございます。  第二点は、円高の進展でございます。五十七年の平均は二百四十九円でございましたが、いまは二百三十円台でとにかく終始しているような気配でございます。  第三は、金利の低下傾向でございます。五十六年の十月―十二月には七・五五七、このような長期金利の約定金利の動向でございましたが、いまは七・一三四、こんなような状況でございます。  さらに第四番目といたしまして、一月、二月の住宅投資の状況は、これは息切れするかもしれないと言われておりますにしても好調であることは、一月が二〇%で百三十万戸ベースであったというようなこと、二月も五%増で百十六万戸はいって去年よりもふえるのではないか、こういうことを言っておることでございます。  それから第五の動向といたしまして、これはもう御案内のように、アメリカ経済の急速な回復、これがだんだんと日本の輸出産業の在庫調整が今度積み増しの方向に行きつつあるということでございます。  第六番目の要素は、原油の値下がりでございまして、これは皆さん方もう周知の事実でございます。  以上でございます。
  193. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで、ちょっとお尋ねするんですけれども、やはりいま国民の皆さん方はなかなか景気の動向については非常に厳しい状況にあるということを感じてみえるわけですけれども、そういう国民が肌で感じるような指標というのは何かございますでしょうか。
  194. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほども申し上げましたように、国民は確かに肌で感じて厳しい状況であると認識していると思います。それは個人消費のと申しますか、名目所得の増加も鈍化傾向でございます。さらにまた、民間設備投資は特に中小企業、その中でも特に製造業が一五%減とかいう指標が出たりしておりますことであります。それからまた、倒産状況が減少いたしておりますけれども、なかなか深刻な状況であることは御案内のとおりでございまして、こんなような状況から、現在のところ私が申しました明るい兆しもなかなか果たしてそれが本当に実現できるのかどうか、こんなような危惧で見ているのではないかと、こういう気持ちが私はいたしております。
  195. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そのとおりでして、いろいろと国民の皆さん方の名目所得の伸びが低下しつつある、収入はふえる可能性が非常に少ないということで不安を感じてみえるのですね。  所定外労働時間の統計も一つございますけれども、これがやはり景気の動向を非常にあらわしているんじゃないかと思うんですが、いわゆる残業時間の増減ですが、これも労働省の統計によりますと、残業時間の推移というのは、前年同月比の動きで見ますと、五十七年度は二月以降七月を除くと、ことし一月まで前年同月比マイナスが続いているということで、やはり労働者や企業経営者が肌で感じる実感経済というのは、体温で言えばどんどん下がりっぱなしじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点どうでしょうか。
  196. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘の点は私どもも大変注視しなければならない現象だと考えております。
  197. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それから最近の消費の動向はどうでしょうか。百貨店とかスーパーとか、どうでしょうか。
  198. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) ことし一月の家計調査、全世帯で見ますと前年同期比で実質三・六%、十二月が一・六%に対しまして一月はまずまずの数字を示しております。ただ、この内容を見てみますと家具、家事用品といったようなのがプラスである、あるいは自動車関係費、それからその他諸雑費というものが中心になっておりまして、衣料関係は余り伸びていない。衣料関係中心にいたします先ほどお尋ねの百貨店等の売り上げは、一月が一・五%、二月が一・一%、チェーンストアも一月が一・三、二月は三・五という状況でございまして、家計調査の中でも衣料品関係は伸びてない。しかしながら、物でも家具、家事用品といったような耐久消費財というようなものは伸びているというのが実情でございます。
  199. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほどのお話の中にも、一つはアメリカ景気の立ち直りということが期待されるということでございますけれども、しかし、アメリカ情勢を見ましてもやはり大幅な財政赤字によりまして、昨年七回も行われました金利の利下げもストップしておるような状況ですし、またアメリカ景気は若干よくなったとしても日本からの自動車とか鉄鋼などの輸出の増加というのはそんなにふえないのじゃないか、こういう感じもするわけです。  国民の実感する経済というのは何としても所得がふえる、そういう期待が持てるということじゃないかと思うんですが、今度の景気対策を見ましても減税、また後でお話をする予定ですけれども、それには、減税には余り力を入れてないということですね。これでは余り国民の期待するような景気の回復は期待できない、このように思いますし、また公共投資の増額も三年連続で伸び率がゼロになっているわけですけれども、これも一つの所得をふやす政策として必要ではないかと思うんですが、たとえ前倒しをやったとしましても、全体的な量がふえなければこれは余り大きな期待ができないと思うんですが、その点どうでしょうか。
  200. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほどもお答え申し上げましたが、確かに前倒しだけで経済的な効果が直ちに生ずるわけじゃございません。繰り上げという効果であろうと思います。  しかしながら、先ほども申し上げましたように、公共投資の前倒しの効果はこれによって民間投資、つまり在庫投資と設備投資の誘発をねらうことだと考えているところでございます。ここ二年間ばかりは在庫調整の進展がまだ十分でなかったために、やはり量を追加しなければ民間投資もついてこない、こんなようなことが言われましたが、先ほども申し上げましたように、在庫投資もだんだん進展してまいりまして、ここ四カ月ばかり在庫は減少ぎみでございますし、こんなようなときに前倒しをいたしますれば、私は公共投資の追加という問題を離れて、民間投資がこれからどこまで起こってくるか、つまり最初は在庫投資、それからその次に設備投資にどこまでつながれますか、これを十分に見てからの公共投資の予算上の配慮が行われるべきであって、いまこのことを論ずることは私は適当でないような気がいたします。
  201. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 民間設備投資の点でも、きわめていままでの伸びは伸び悩みがはっきりしているわけですね。今後それが、まあ推移を見るというお話でございますけれども景気回復のてことなって、国民の所得増加につながるような力強さというのは感じられないのじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  202. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 公共投資、ケインズ政策も昨今の低成長下では大変な限界があって、これが民間設備投資を誘発する効果はかつてのような大きなものではないと言われているところでございます。私もそのような点があるから、なかなか財政の上でもそのような政策がとりにくい、こういうふうに考えているところでございますが、しかし、これはやはりそのときそのときの経済情勢、私が先ほど申し上げましたように、在庫調整が過去に比べて非常に進んでいることを考えますと、私はそのような効果も期待していいんではないかと、こういうふうに、楽観ではございませんけれども、期待していきたいと考えております。
  203. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 どうも期待感が大き過ぎるのじゃないかという心配もするわけですが、昨年も同じように、秋口になれば世界経済の回復によって日本景気も回復するんだということでお話があったわけですが、昨年と同じようなパターンの繰り返しということも感じられるわけですね。その点で景気対策につきましては、四月の六日に決定をされるというわけでございますが、経企庁としましては、この効果というのは先ほどもちょっとお話しになりましたけれども、再度お伺いしておきたいと思います。
  204. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) これまでいまによくなるよくなるという話があったが、さっぱりよくならなかったという御指摘がいまなされました。先ほども申し上げましたように、ただ大変運がよいことに、昨年と違った事情がことしは六つばかり生じたことを申し上げたところでございます。したがいまして、私は公共投資の前倒しによってこのような効果をさらにより確実にしていく、そういうふうに考えていろいろの対策を各省にお願いしているところでございます。
  205. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで景気対策の点でございますが、四月六日に決定されると言われております景気対策の内容ですが、これはどのようなものですか。
  206. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) これにつきましては総理からもお話がございましたが、二回ばかり大きな項目について与党の幹部、あるいは関係閣僚の方方がお集まりいただきまして御議論願ったところでございます。項目的に決定いたしておるようなところでございまして、まだまだその内容につきましてはこれからだと、こういうふうに御理解願いたいと思います。項目的に申し上げますれば、当面の課題といたしまして九項目、今後の検討課題として三項目挙がっていることはもう御案内のとおりでございます。
  207. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 現在の不況というのは内需の不足が原因となっているわけですが、内需拡大につきましては、どうもこの項目、まあ最終決定はしていないということでございますけれども、非常に具体的に効果があるというものが少ないような感じがするわけですね。総理はその点どのようにお考えでしょうか。
  208. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 景気対策というものはやはり総合性を持ってやらなければいけないと思っております。また余り輸出に偏向すると国際摩擦が起きてまいります。したがいまして、やはり内需中心ということは当面は中心であると思いますが、やはりある意味においては輸出も内需も総合的に考えながらバランスをとっていくということが必要ではないかと思います。
  209. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 特に、先ほどの同僚委員からも質疑がございましたけれども、やはり与野党合意に基づきました所得税の減税の問題につきましては、これは今後の取り組むべき課題だということでなっているわけでございますけれども、衆議院における与野党合意の点から考えますと、これは最重点課題ではないかと、このように思うわけでございますが、せんだってわが党としましても所得税減税につきましていろいろと提案をしております。その中で、方法とか規模とか財源についても、これはいろいろと提案をしているわけでございますけれども、そのことにつきまして御所見も承りたいと思うんですが、一兆円以上の所得税減税を盛り込んだ所得税改正法案、これを今国会中に提出をするという点と、あるいは財源につきましても先ほどからもいろいろお話がありましたけれども、今年度の税収の見きわめのできる六月か七月ごろまで待つということじゃなくて、やはりこれはいま一つの大きな日本景気の回復の、あるいは国民に対する積極的な姿勢ということでこれは当然臨むべきじゃないかと、このように思うんですが、その点を含めまして御所見を承りたいと思います。
  210. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いま総理からもお答えがあっておりましたが、与野党の合意を尊重いたしまして、財政改革の基本的な考えを踏まえながら真剣に検討を進めていくと。しかし、お答えになりましたとおり、税収動向の見きわめとか、それから税制調査会の検討も必要でございますので、その時期、規模、財源を明示できる段階にはございません。したがって、この与野党の合意というものは、財源問題を含めてなすっていただいておりますので、国会の論議等を踏まえながら税制調査会で御検討いただく。そして、いつでも御答弁申し上げておりますように、税収動向がある程度明らかになるというのが七月ごろと、したがって、財源を含めて、方法、時期、規模の具体的な検討に着手できる時期だと思うと、こうお答えしておると。そうなれば、やはり今後のまさに検討事項だというふうに理解しておるわけでございます。  ただ、いろいろわが党というお言葉をお使いになりましたが、一党の党首の方がいわば国会等に対して、政府がぐずぐずしておれば法律の改正も出すぞと、こういう御発言もあることは私どもも存じております。何分議会制民主主義、すなわち政党法こそなけれ政党政治でございますので、一党の党首の発言というのは大変重いものである、したがって、とやかくの論評はまた加えるべきものでないと、こういうふうに理解しております。
  211. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に項目の中にある点で何点かちょっとお尋ねしたいと思うんですが、一つは公共事業の前倒しの契約率の問題ですけれども、大蔵省におきましては契約率を七〇%程度とするという方針を固めたというような報道がございましたけれども、大体七三%程度で決着をするということでございましょうか。
  212. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) その点はこれからの検討事項でございます。
  213. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 せんだってもこの予算委員会質疑におきまして大蔵大臣は、昨年十二月の公共事業費追加補正での効果が出てきつつあるというような御答弁をされまして、前倒しの必要がないと、こういう言い方をされていたと記憶するわけですが、今回前倒しをすることにした理由は何でしょうかね。
  214. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私がかねてから申しておりますのは、従来非常に四、五月というものがある意味においては端境期と、こう言われるわけであります。ところが、本院で議了していただき成立いたしました二兆七百億円の公共投資をも含める総合経済対策、それが大体一週間ぐらい前にほとんどのものが契約が完了したではないかと。そうすると、それがまさにこの四、五月の端境期というものを、いわば間断なき仕事の継続というようなものの下支えの役割りを果たす、したがって、そのことは私は従来とはかなり違った要素にはなりはしないかという一つの期待感をも含めて申し上げておるわけでございます。  しかしながら、先ほど来経済企画庁長官からお答え申し上げておりますように、誘発効果あるいは刺激効果というようなものが、前倒しによってその効果を発揮するだろうと、まあそういう観点に立ちまして、先般もこの公共事業の前倒しという問題が、いわゆる当面の対策の中に書かれておるわけであります。そして、具体的にそれをどのようにして行うかということはこれからの検討課題でございまして、いずれ本院で五十八年度予算を議了していただいた後の段階において、これは発表申し上げることになりはしないかと。基本的には前倒し効果というものは、言ってみれば諸般の情勢が変わりましただけに、下期における民間投資等の刺激誘発効果というものが期待できる状況になってきたというのは、やはり経済情勢のいい意味における推移の一つではなかろうかと、こういうふうに理解をいたしておるところであります。
  215. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 昨年も同じようなことをおっしゃってお見えになっておりましたけれども、公共事業費の追加補正に追い込まれたわけですね。本年はいろんな他の要因が昨年とは大分違うということでありますけれども、やはり下手をしますと同じような状況になりかねないような情勢です。先ほども同僚委員の方から話がございましたけれども、五十六年度は、これは公共工事請負金額は、第一・四半期は前年同期比一五ないし三五%と伸びてますけれども年度末には逆に二〇%減っている、あるいは五十七年度も五月は一七・五%増になりましたけれども、十月以降にはマイナスになっているという状況でございますし、やはり後半の息切れということは雇用にも設備投資にも好影響ないと思いますし、やはりそれに対する、民間設備投資に対する刺激を期待するということじゃなくて、何らかの具体的な方針というものもはっきりそのときにはお示しになれるんでしょうか。
  216. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる太田委員の御議論の背景には、あるいは前倒しそのものを行った場合に、下期に公共事業そのものをとらえてみれば、従来の経緯からしても追加措置が必要になる可能性がある、それらも含めての対策を考えておるかと、こういう御趣旨であると推測して申し上げますならば、いま一つには、今日御審議いただいております予算というものは、政府といたしましては最良、最善と信じて、少なくとも補正要因、修正要因を含まずして議了さしていただけることを期待して御審議いただいておると。したがって、補正要因というようなものを軽々に申し上げるべきものでない。これは行政府とハウスとの一つの節度であろうという気持ちが一つあります。  それからもう一つは、これは財政自体を現実認識いたしますと、財政が、よしんば公共事業であれ、景気刺激策の一つとしてそれに対応していくであろうという余力、これは残念ながらいまあるという状態にはない。したがって、この執行に当たりましては、息切れしないようなもろもろの工夫を考え、しかも先ほど来、通産大臣なり、経済企画庁なりがおっしゃっておりますように、民間設備投資ないしは公共的事業とでも申しましょうか、そういうものに対する刺激波及効果を期待して、前提に置いて勉強して、できるだけ早い機会に具体的に結論を出さなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
  217. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次の項目ですけれども、金融政策の機動的運営、これはどのようなことを考えてお見えになりますか。
  218. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 金融政策につきましては、先ほど日本銀行の総裁が申されましたような方向で、何と申しますか、機動的に運営されるものと私は考えております。
  219. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 なかなか日銀のガードかたいような感じもするわけですけれども、この公定歩合引き下げと切り離して、政府系金融機関の利下げをするということはどうでしょうか。
  220. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 政府関係金融機関の基準金利というものは、これは民間の最優遇金利でありますいわゆる長期プライムレートと連動するということを原則としておりますので、それによっていわば民間金融機関、そして補完的意味を持つ政府関係金融機関とのバランスというものが今日まで歴史的にもずっと保たれてきておるわけでございます。したがって、やっぱり今後の政府関係金融機関の基準金利をどうするかということは、他の長期金利の動向を見守った上で判断すべき課題である。これだけを金利政策の中でいじるということは、金融全体のあるべき姿に逆行するわけでございますので、いろいろな中小企業の対策の観点でございますとか、そういう問題についての配慮というものは、法律の裏づけとか、そういうことで今日までなされて、それがそれなりに稼働してきておるということであります。
  221. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 政策金融の目的というのは、それは皆さん方あれでございますけれども景気の動向とか、あるいは産業の振興であるとか、あるいは中小企業対策、あるいは住宅対策、そういった個別の政策目標につきまして金融面からリードする点にあろうかと思うんですけれども、このように景気が低迷をしているときに、また失業がふえたり、あるいは中小企業の収益が厳しいときこそ、やはり政策金融の出番じゃないかと、このように思うわけです。日銀の公定歩合の変更は総合的な観点から行われるにしましても、個々の政府関係機関の利率につきましては、その目的に照らしてこれは決定されるべきじゃないかと、このようにも私たち思っておるわけですけれども、そういう中小企業に対する金融面でのてこ入れや、あるいは住宅建設促進、それによる景気振興という観点から、やはりその点について利下げに踏み切ることが機動的運営にもなろうかと、このようにも思うわけですし、また、いろんな節約をしまして、むだな支出を切り詰めまして、たとえば百億円の支出を切り詰めれば、それを一%利下げのための利子補給に回すとしても、一兆円のやはり融資額の利下げが可能というようなことになるわけでございますし、そういった点でも再度御答弁をお願いしたいと思います。
  222. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは現に国民金融公庫、中小企業金融公庫の基準金利は、これは長プラと同水準に設定することを原則としておりますが、最近の中小企業を取り巻く経済金融情勢等にかんがみまして、長プラを下回る水準となっておるわけでございます。したがって、両公庫の収支というものはきわめてそれなりには悪化をしておるということを勘案してみますと、これ以上両公庫の基準金利引き下げるということは私はなかなかむずかしい問題だと。さすれば、その利下げ分を財政が支出をすればいいじゃないか、こういう御議論でございますが、現在の財政というものにその余力というものを期待することは困難ではないかというふうにいま考えられます。ただ、総じて金融そのものは環境は緩んでおりますので、適時適切なる対応がそれぞれの立場で行われておるというふうに理解をいたしておるところであります。
  223. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、通産省の関係だと思いますが、構造不況業種対策の推進でございますが、この点はどのようにお考えですか、具体的に。
  224. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 今国会に構造不況業種に対する継続部分と期限切れが来ます部分を延長する点と、それから新しく活性化、その前提としては企業の設備の整理、そういうもの、あるいは共同集荷、販売と、そういうようなものを加えたもので新しく法案を提出いたしておりますから、後刻参議院においてもそれに対して御質疑を願いたいと存じます。
  225. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 確かにわが国の素材産業、石油化学、アルミ、肥料、塩ビ、紙パルプ、石油精製、いろいろなそういったエネルギー多消費型産業、これは四十八年以降の二回のオイルショックに大きく揺さぶられているわけですが、そして五十五年ごろから構造不況産業に陥っているわけですけれども、最近の各業界の構造不況現象、特別に重大事態に陥っているんじゃないかと思うんですが、その点どうでしょうか。
  226. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) ただいま御指摘がございましたように、二度にわたる石油ショックによりまして、原材料やエネルギー価格の高騰等を招きまして、大変深刻な状況に陥っているわけでございます。代表的なものといたしまして、特にたとえばアルミ製錬業等におきましては、電力料金の値上げ等によりまして大変な状況になっております。最近の状況を見ましても、たとえば生産で申しますと、五十五年度に百四万トンでございましたものが五十六年度六十七万トン、五十七年度はおおむね三十万トン程度ではないかと思っております。あるいはまた、御指摘の石油化学につきましても、五十四年度には四百八十万トン程度の生産がございましたが、最近では三百六十万トン程度となっておりまして、かなりの過剰設備も抱えております。ただいま大臣からお答えがございましたように、そういった過剰設備の処理等を含む対策を今後進めていきたいというふうに考えております。
  227. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 自由経済におきましては産業調整ということ、すなわち一方で産業の成長、あるいは他方での産業の停滞または衰退というのが市場のメカニズムの作用によって行われてくるわけですけれども、そこに政府が介入したり、あるいは競争制限的な方策をとるということは産業調整をゆがめることになろうと思うんですが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  228. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 確かに一面においてはそういう見方が成り立つと思います。しかし他方、国民経済の立場からどうしても必要なものであれば、国があくまでも民間産業の自主性、あるいは自活、そういうものに立って申し出てきた場合においては、まあ業種も七業種にしぼってございますし、したがって、それらの業種が立ち直りのために計画を持ってきた場合は、それを民間からの申し出を受けて政府の方でやっていくわけでありますから、全く政府が民間経済に介入しないというたてまえからいけば、少し介入したとは言えると思うんですが、政府の方でこうしなさいとは言わないんです。持っていらしたらこういうふうにしてあげます、したがって、計画を持っていらっしゃいと、あと独禁法との問題は御質問が後であるでしょうから、そういう法律になっておりますから、政府の行政の介入とは恐らく民間自体が受け取っていないんじゃないでしょうか。
  229. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、通産省の産業構造審議会の基礎素材産業対策特別委員会の答申によりますと、過剰設備の計画的な処理が当初目標どおり実施され、それによって指定業種では稼働率が向上し、経営状況の改善が図られたと、このように前向きに評価されていますけれども、これに対して公取委員会の依頼を受けました経済調査研究会報告では、指定十四業種の大部分が、設備処理が行われた後もなお稼働率が低く、収益状況も改善しないし、また厳しい国際競争力の低下に悩まされていると、こういう否定的な評価をしているように思うんですけれども、それに対する通産大臣及び公取委員長の御所見をお伺いしたいと思いますが。
  230. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは過去の法律をそのままの考え方で延長する場合においては、まさにそのような批判にさらされなければならないと思うんです。したがって、私たちはそのような過去の実態を顧みて反省をし、そしてこれからこういう形でやっていきたい、したがって、新しく追加する法については独禁法の適用除外とはせず、スキームを持って通産大臣が承認を与える場合は、公取との協議という新しい仕組みをつくりました。そのために産業行政法である私たちの新構造不況業種に対する法律と、まあ監督法とも言いませんが、一定の――公取委員長うまい表現されましたのでかりますと、交通整理をするという立場の独禁法を持つ公取委員会との間で、このようにトラブルなしの形で、しかも常時産業の実態と、まあ取り締まり法と申しますか、そういうものとが話し合いを続けていきながら、そこに一つのものを生んでいくということは、いままでの法律にはなかった新しい形態で、私どもは相互に評価し合っているところであります。
  231. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 昨年の十一月の五日に私どもの方の事務局の私的な諮問機関であります経済調査研究会から報告が出てまいりました。その報告の中で、いま委員からお示しのありましたように、基礎素材産業対策の現状の認識という点で幾つかのことが書かれておるわけで、その中には、第二次オイルショックがあったことにもよるけれども、一律処理等、限界企業の温存につながるというような設備処理の仕方には問題があるということを言っているのは事実でございます。しかしながら、いま通商産業大臣からもお答えがありましたように、基礎素材産業が現在置かれている厳しい状況の認識、それから、そういう現状にあります構造不況産業に対しては何らかの対策が必要であるという点では産構審と経調研の間では意見が同様であろうと思います。  そういう対策を施してまいります際に、お話のありますように、市場のメカニズムを活用して、業界の自助努力を前提とした政府介入をするとしても、最小限度にとどめるべきだとか、波打ち際で輸入を制限するというようなことは絶対とるべきじゃなくて、技術革新なり、生産の合理化によって不況を克服していくということとか、その二つの点では対策のあり方についても同様であろうと思います。  事業の集約化、これの進め方については独禁法の枠の中でやれというのが経調研の考え方でございますし、いま通産相からお答えのありましたように調整スキームを設けるという解決になっておるわけでございますが、改正法案は、集約化について独禁法の適用を除外していないということもまた御審議を願います法律の中では明らかになっておるわけであります。  指示カルテルの運用については、先ほどの経調研の報告の中にありましたようないろいろな問題もありましょうから、今後運用に一層注意していかねばならぬというふうに考えておる次第でございます。
  232. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 通産大臣、新法案の政策、これから参議院でも審議されるわけですけれども、これらの構造不況のもとにあります素材産業が活性化をしていくという見通しは、まあおありになると思うんですが、その点はどうかとお聞きしたいんですが、たとえばアルミ製錬ですと総コストの四割を占める電力コストが外国の二倍から七倍ということになりますね。また石油化学では、製造コストの七割を占める原料費が外国より四割から六割高いということがありますね。このように原燃料のコストが外国よりきわめて高いことが基礎素材産業の不況の大きな原因じゃないかと、このように思うわけですが、この問題の解決がありませんと素材産業の活性化はないんじゃないかという意見もあるんですが、その点どうでしょうか。
  233. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いまのお話は、基礎素材産業が生き延び、活性化していくために……、そこんとこどういうあれですかね、質問は。
  234. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 原燃料コストの問題をいま言いました。
  235. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) わかりますが、それを、どうですか。
  236. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その問題の解決なしには素材産業の活性化はあり得ないんじゃないかということをいまお伺いしたのです。具体的なことはまた後でお聞きしますが。
  237. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 原燃料価格が大きな不況要因、しかも、構造的な不況要因ということでございますが、その構造というのは、これはたとえばアメリカ、カナダの例に見られるアルミで言えば、低い電力料金にはとても太刀打ちはできない。かといって、その料金が原因で輸入がどんどんふえて、アルミの例ではもう輸入の方がはるかに多くて、七十万トンで食いとめようと思ったけれども五十万トンに終わった。五十万トンも支えられなくて三十万トンに落ち込んでいく。ほっとくとゼロになるでしょうね。しかし、それは国民生活の上から見て、アルミ産業を持っていない国家に私たちがなっていいのか。これは日常生活その他を含めてそうあってはならないだろう。そうすると、それを国の方の意思として、国民の御理解を得ながら一定の限度にはとめなきゃならぬという意味でございますので、それに対して、電力料金の問題を答えていいかどうかがちょっとあれなんです。聞き直したわけですが、もうあらゆる自主努力によって、いわゆる人手じゃなくて自分たちの、外部からじゃなくて自分たちの努力でかんばんなさいと、そのためには独禁法上の問題等もこういうふうによく相談をしてやることに決めましたから、自信を持って、法律の根拠に従ってびくびくしないで活性化への道を探りなさいと。それは集約化もあれば、廃棄もあれば、あるいは共同生産もあり、出荷もある。そういういろんな業種によって違うにしても、そういう企業の合理化努力というもので太刀打ちできるまでがんばりなさいよということを言っているわけでありますから、その次に御質問があるだろうと思ってさっき言ったわけですから、そこのところは次に残します。
  238. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは次の質問ですが、まあそういう産業をいろんな方途でこれからそれぞれ活性化を目指して努力もされると思いますけれども、通産大臣はOPECの原油価格の引き下げ決定を受けて、いろんな面で電力問題についても発言をされておるわけでございますけれども、やはりこういった産業は電力をたくさん消費するということでございますし、政策料金を導入して救済されたらどうかというのが次の質問だったわけでございますが、どうでしょうか。
  239. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そうであろうと思って先ほどの答弁をいたしました。  そのような産業に対して、政策ごとに料金を変えるつもりはございません。これは他の一般国民の生活の問題と比べてもですが、産業間でも歯どめがなくなりますから、したがって、それは政策料金はとらないということでございます。
  240. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、石油化学業界のナフサの問題ですけれども、これが国際価格よりも三割も高いということで非常な苦境に陥っているわけですけれども、これが国際価格でナフサを自由に輸入できるというような方策はとれませんでしょうか。
  241. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ここらは過去の通産行政の反省という、私から見れば批判になるかもしれませんが、現在の石油の輸入に関する石油関係の業法の中で、入り口のところはだれが入れてもいいことになっているんですよね。しかし、実際には石油業界のみが入れることを認められてきた。これは消費地精製主義というものからもたらされた当然の、その当時は正しかったんだろうと思いますが、しかし、石化業界がとても国内の高いのには耐えられないし、輸入もあるし、それは安いし、自分たちで入れさしてくれという申し出に一番苦悩したのは、業法のもとでそれをだめだと言えない通産省の行政指導当局だったと思って想像しているんです。どのように苦しかったかはわかりません。ですから、そのかわりに、入れるのはやっぱり石油業界と、しかしナフサの輸入、自主輸入を言っている人たちにもしんぼうしてもらって代理契約を結んでもらう。そのかわりに、輸入ナフサと同じ価格で国内の石油産業から出るナフサについても価格面において配慮をして、輸入ナフサと同様の価格の扱いをするという、ややこしい変てこな解決案になっているようでありまして、こういうようなことをやらなければならない消費地精製主義というのが、シンガポールの石油精製施設や、あるいはIJPC等の、いわゆる産油国でない国がシンガポールは製品をつくって売ろうとしているわけですし、産油国においてもそろそろ付加価値をつけた製品にして売り出そうかという傾向が強い。したがって、その制度というものが、そろそろ輸入、そして製造設備の許可もしくは廃棄ということも考えていかなきゃならぬ状態に実情ありますが、あとは国内の末端の各油種の販売の実態、たとえばガソリンが値崩れをしても、あるいはガソリンスタンドをこれ以上ふやしてはもうお互いだめだと思っていても、申請があればそれは登録をさせなければならないという、そういうような現状などはすでにもう法体系全体がもう一遍河川改修を必要とすると思っておりまして、このことはことしやるつもり――今度の国会に出すほど急ぎはしないが、少し基本から洗い直して見直そうじゃないかということで、部内で検討をしてごらんなさいといって、私は私の意見を持っておりますから、そういうことで、いま体制をきちんとしてやって、だれの目にもはっきりわかるような、そして現実に合うような法律に変えたいと思っておりますが、これはいまのところ私の大臣としてのそういう考え方を持っておるということにとどめたいと思います。
  242. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この新構造不況法案のかなめは、やはり事業の集約化ではないかと思うのですね。これは集約化を独禁法の適用除外にしないこと、また公正取引委員会と通産省との間で協議スキームを新設することで同意したということでございますけれども、それまでに至る間にいろいろな経緯もあったと伺っておりますけれども、この集約化の問題につきまして、その点の合意、これにつきまして通産大臣と公取委員長の意見を承っておきたいと思います。
  243. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 去年からずっと交渉、相談をし、私どもの法律を書き上げるまでの間も相談は続けてきておりましたし、事務当局同士の十分の意見のすり合わせはできておる。もちろん途中では意見が違うから相談をするわけでありまして、意見の違うところを逐次ならしてきて、最終的に私がよろしいということで判断をしたときには、公取委員長も異論はないという形でともに決着したことで、途中はいろいろ議論するのはあたりまえであって、しかし、政治的な決断としては独禁法の適用除外としないということを前提にやっているわけでありますから、そうすると新しい調整条項というものがそこに要る。私は、むしろ今後産業政策についてはそういうふうに、独禁法は自由主義経済をつぶすために存在するのではないんですから、公正なる競争をさせながら、そしてその競争の成果というものを国民に与えよう、こういうものでありますから、やっぱり産業法といえども、あるいは実体法といえども、このような方法が今後とらるべきが至当ではなかろうか、むしろ今後はそういう方向でいった方がいいという考え方でこれをセットしました。
  244. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 産業構造改善を進めていかれる主務官庁である通商産業大臣と、私どもの方との間の意見調整を具体的な集約化についてどうやっていくかということでございます。  いま通産大臣からも詳細お答えがございましたけれども、事前に私ども公取委員会と主務官庁の間で意見交換を行うことによって、この法の運用が独禁法との関係においても問題を生ずることなく適正、円滑に進められる、それをねらった規定を置いておるわけでございます。  その趣旨は、それぞれの権限と責任の範囲を尊重し合いながら、相互に協調して法の趣旨を達成していきたいということにあるわけでございまして、法律の御審議をいただいて成立した暁には、その運用を通してその実を上げてまいりたいというふうに考えます。
  245. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 公取委員長、御退席いただいて結構でございます。
  246. 嶋崎均

    ○理事(嶋崎均君) 公取委員長、どうぞ。
  247. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、次の点なんですが、この項目の中に住宅建設促進とございますので、その点で何点かお尋ねしたいと思いますが、総理、よろしいでしょうか。  総理が、景気浮揚対策ということで、建設省に対しまして、東京の山手線内で、住宅中心とした五階建て以上の建築物を建てたいときにはすべて建てられるよう、高さ制限をしている規制の緩和を指示したと、このように伝えられているわけですけれども、これはどのような御発想によるのでございましょうか。
  248. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは年来考えていたことでございまして、私は昔、十数年前に目白に私の父がうちをつくってくれましたが、二階しか建てられない。百二十坪の土地で、家族も多いしお客さんも来るので、部屋数をよけいしようと思ったが、どうしても二階しかできない。地下室をもう少し下へ伸びられないかと思ったらこれもなかなか制限が多い。とうとう二階しか建てられなかった。そういう経験がありまして、あの目白の辺で二階しかというのはいかにももったいない。周り近所のぐあいを見れば、みんな隣に大きな空き地があって、大きな高い家が建てられる情勢にあったわけです。そういう経験もありまして、いかにももったいない。今度景気対策をやるにつきましては、財政が出動することはむずかしいから、できるだけ規制解除をやって、そしてそういう需要を起こす、それを考えてやったわけです。  ですから、それが山手線の中になるか、七環になるか、八環になるか、ともかく建設省に検討してもらいまして、五階までは自由に建てられると。ただ、いろいろな周りの人の苦情とか、あるいは協調とか、いろんな面はそれはあるでしょうけれども、そういうふうに規制を解除してあげて自由にやれるようにする。しかし、それは単に家をよけい建てるという意味じゃなくて、それによって空閑地をよけい増して、小さな公園とか、子供の遊び場とか、あるいは緑をよけいふやすとか、そういうことにも役立てよう、いわゆる容積制限をやることによって、道路を広げるとか、子供の遊び場とか緑をふやす、それも非常にねらっておるわけです。そういう発想に立ちまして、この間の景気政策の中の建設省の分担分の中に、規制解除による都市改造、あるいは住宅建設増加、そういうことを並べました。その中身の一部がそういう一つの例示です。  それから、鉄道、国鉄に対しましても、大井の操車場とか、新宿の操車場とか、汐留の操車場とか、あるいは駅の周りにもかなりのまだ土地があります。  この間、飯田橋でありましたか、あるマンションをつくったら、これが、もう少し知恵を出せば、駅のホームに直結させるようにつくればもっと価値が出ると思いました。そこまでやらなかったらしいですけれども。鉄道の駅の周りにはかなりそういうものもあるし、駅自体を利用できるものがあるんじゃないか。そこへかなりの高層のものを建てれば、上は住宅にしても、下は集会場とか商店街にもなるし、そういうことによって東京の地価を下げようと。  大阪におきましては、さっき申し上げた五階制限というのはないんです。一種、二種というあれになっていますけれども、大阪はそういう制限してない。なぜ東京だけ制限しているのかと聞くと、因縁があったらしいですけれども、もはやそんな大阪と東京を区別する段階ではないし、それから国鉄の駅を中心にした、あるいは操車場を中心にしたことは民間の力によって思い切ってやってもらうと。民間はかなり金を持っておるし、知恵も持っておるわけでございますから、もうそういう時期にきた、そう思って、その方向で検討していただいて実行したい、こう思っているわけであります。
  249. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 建設大臣、何か。
  250. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 先般の経済対策の会議におきまして、ただいま御指摘のように、総理の方からそういう御指示がございまして、いま建設省は全般的に検討をいたしておるところでございます。もちろん、地域住民とのいろいろ調整も図ってまいらなきゃなりませんし、問題点もあるかと思いますけれども、高度利用ということと、容積率を拡大して、いま総理もおっしゃったように、緑と空閑地を確保した上で五階建て以上のものができないか、こういうことで、実際問題としては東京都が第一種、第二種ということを決めておるものですから、東京都と具体的な折衝をやっておるという段階でございます。
  251. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 時間もあれで、最後になりましたけれども、やはりこの項目の中で、増改築の推進ということで検討を進めているようでございますが、今年度住宅投資総額を見ましても約十七兆円ですね。これはGNPの約一・六%になります。そのうち五ないし七兆円が増改築関係、このようにも言われておりますね。五十五年度におきましても約十六兆円の住宅投資総額の中で増改築が五兆円ということでございますし、これは土地代もかかりませんし、いろんな面で有益ではないかと思いますし、増改築を望む方は約四百万世帯、このように全国的には言われているわけでございますけれども、この戸数の増加とか、あるいは見積体制、こういうものをやはり公的機関で整備をしたり、あるいは公庫融資の拡大を図ることがこの推進として必要じゃないかと思いますが、その点いかがお考えでしょうか。
  252. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) わが国におきましては、住宅はすでに三千五百万戸を上回っておるような実情でございます。したがいまして、先生御指摘のような新たに宅地の手当てを必要としない増改築ということにつきましては、大変有効で、景気刺激のためにも役立つというようなことで力を注いでおるところでございます。  昨年十月、住宅金融公庫の住宅改良融資といった面につきましても貸付限度額を引き上げておる。さらに、増改築を推進するために全国的なキャンペーンを行なっておると、いろいろな手当てを進めておるわけでございます。
  253. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 終わります。
  254. 嶋崎均

    ○理事(嶋崎均君) 以上で太田淳夫君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  255. 嶋崎均

    ○理事(嶋崎均君) 次に、近藤忠孝君の質疑を行います。近藤君。
  256. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 政府並びに自民党は、四月六日に正式決定するということで、景気対策を決めたということで議論になっておりますが、その中身についてまず経企庁にお伺いします。  この中身を見ますと、中小企業対策、雇用対策、それから構造不況業種対策などの景気対策の中身は、昨年十月に決まった総合経済対策と中身はほとんど同じじゃないか。これで果たして当面の景気対策として効果があるんだろうか。
  257. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 現在検討いたしておりますのは、景気対策中心の概念でございまするけれども、総合経済対策と考えているわけでございます。それは昨年十月の総合経済対策とタイトルでは変わっておりません。しかし、いかなる場合においても経済対策と言えば、やはり労働者の立場に関係するところの雇用対策、あるいは中小企業の立場に対する中小企業対策、さらにまた、昨今ではまだまだ大きく解決を要するところの構造不況業種、これらの対策はいついかなる場合においても私は取り入れる必要がある。それは多分に景気に関連するところでございます。ただ、内容につきましては、これから検討することになっているのでございます。
  258. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 住宅対策も、いま議論ありましたように、基本的な土地問題を解決しないとこれはむずかしいんですね。その議論は時間の関係でやめます。  私は、総理にお聞きしたいんですが、景気対策にしてはならないものを項目に挙げているんじゃないか。  その一つは経済協力です。  経済協力景気対策に挙げたのは、いわばひもつき経済協力ということで、商品を買うことを条件に海外協力をするとなりますと、これはいま内需拡大とは矛盾をするし、貿易摩擦をむしろ拡大することになりはしないか。外務省筋ではこれに対しては大変かんかんだという話も聞いていますが、私はこれは景気対策から削除すべきものではないかと思うんですが、どうですか。
  259. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは決まっておるわけでありませんが、プラントそのものを日本でつくって、そして持ってきてほしいという、二、三年前にブラジルに製紙プラントをつくり上げて、そのままアマゾン川に据えつけ、そこで加工した、そういう例を御存じと思いますが、そういうものが実はたくさん、現在でも約六百億ぐらい追加しなければならないほど、発展途上国が中心でありますが、自分たちのところで中に持ってきて組み立てるとかなんとかということよりも、発電機がなぜか非常に多いんですが、そういう日本で組み立てたものをそのまま運んできて据えつけてくれぬかという希望があるわけです。これは向こうの希望に沿い、しかもほとんどが発展途上国ですから、私たちの力でできれば御加勢申し上げたい人々であり、あるいはしてあげなければならない国々であり、そしてこちらの方も関連のそういうものが国内でプラントになるわけですから、それに対して景気に対する貢献の効果があるということで申し上げたわけでございまして、閣僚会議の中の議題の一つになったわけでありますから、まあ貿易関連、内需関連ということで私がかわって答弁をいたしました。
  260. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 報道によりますと、外務省は不見識だということで反対だというんですが、これについてはどうなんですか。
  261. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 実は今度の関係閣僚会議は、総理の発案によって、総理が議長になられて、お互いに自分たちの所管の垣根を取っ払って議論をしようということで、大変私はュニークな有意義な会議になったと思いまして、相当私も発言数は多い会議になりましたが、そこのところで言ってありますから、したがって、それに対して異議のある官庁というものがあれば、当然その意見もまた総理のもとで調整され、当然ながら全体が調整されたものが出てこなきゃならぬ。したがって、いまは検討中であると申しましたから、反対であるならばそれは反対で受けとめて、どうしたらじゃ前進できるかという相談をしていきたいと思います。
  262. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次の問題は、いま御指摘があった山手線内のこれは建設規制緩和の問題です。これは私は当面の景気対策になるんだろうかという疑問があるんです。総理からは、私はいままできちんとした東京の都市計画についての見解は聞いておりません。先ほど初めていかにももったいないという話はお聞きしましたけれども、まず都市計画があり、東京の都市をどうするのか、これがあって規制を緩和すべきか緩和すべきでないか、これが決まるべきなのに、そしてまたそれは大東京の高度利用というんで、これは大変な問題ですわね。それなしにいきなり規制緩和、取っ払えと、景気対策と、これまた余りに不見識じゃないかと思うんですが、どうですか。
  263. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その前に、いま山中通産大臣がお答えしたことはそのとおりであります。わが国においては昭和五十年にLDCアンタイド、五十三年に先進国アンタイド、そういう方針をちゃんと決めておって、要するにその国が自由に選択できるというやり方で経済協力をやっておる、こういうことになっておるんで、日本が利己主義で自分で全部取ろうとかなんとかいう、そういう考えではございません。しかし、わが国はこの五年間にODAを倍増しようと、そういう積極的意欲を持って国際協力をやろうとしておるので、その中にはいろんなものがLDC、あるいは途上国から要望で出てくる可能性があるわけです。そういうことも含めていまのような表現にしてある、こういうことであります。  もう一つは、輸入認証制度、あるいは基準等の緩和をやると。これもやはり民間活動を活発にする、そういうことにもつながってくるわけであります。  それから、いまの山手線と申したのは、山手線だけじゃなくて、私は環状線ということを言っておるので、それは八環になるか七環になるか、専門的に検討してもらいたい、そう思っておるわけでありますが、もちろんこれは建築基準法とか都市計画法とか、そういう既成の法律との関係をよく考慮してやるべきものである。私がいろいろ目の子算用で調べた範囲内においてはそう矛盾するものはございません。さっき申し上げた一種二種の区別については、大阪ではもう取っ払ってそういうものはないわけです。みんな五階までは、二階とか三階というんじゃなくて、五階くらいまではもう自由に建てられるという、そういう可能性がみんなあることになっておる。なぜ東京だけ大阪と違ってそんな窮屈なことをさしておくのか。住民の要望から見たらもっと緑が欲しいし、子供の公園も欲しいし、空間が欲しいだろう。それには高さを高くする。あるいは地下室ももっと自由につくれるようにしてあげる。いま地下室はほとんどできないです、いろんな規制がございまして。もったいない話です。そういうような面から見まして、国土の積極的活用、それはひいては景気の回復にもつながる。  私は、最初申し上げましたように、景気の政策というのは、当面のいますぐ熱を上げるというようなものよりも、むしろ長期持続のものを考えていますとここで申し上げました。そういう意味も御理解願いたいと思うのであります。
  264. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この問題は、一つは私は、都心の規制を取っ払えというのは、総理の親しい江戸英雄さん初め財界の要求が一つあるということ、また不動産業界の要求がある。それに応じたものではないかという、こういう問題を一つ指摘せざるを得ません。  それからもう一つは、こういう規制が取り外された場合一体どうなるのかという問題ですね。都心に昔から住んでおりながらおれなくなってくる人がおる。これは単なる日照権がどうのとか、電波障害がどうのという問題以前に、もっと根本的な問題として住めなくなってくる人がおるわけでありますね。私はそういう点では、ちょうどいま東京のマイタウン構想というようなもの、これが要するに大東京を思いのまま掘り返して鉄とコンクリートの町とするんじゃないか、こういう指摘がされておりますけれども、それと軌を一にするものではないかということを指摘をします。  時間の関係で次に進みますが、金利の問題であります。公定歩合の問題については、先ほど日銀総裁の発言もありましたように、やはりいまの円高問題を考えますと、なかなかこれはむずかしいんじゃないか。この問題は私は大蔵委員会でも関税の問題で指摘をしてまいりましたけれども、要するに外国の要求にむしろ屈して関税を不当に下げている。そして片ややっぱり円高傾向を保とうということでやってきたわけですね。だから、私は、いま政府としては公定歩合を下げる状況にないんじゃないか、こう思わざるを得ないんです。まあ賛否は別としてですよ。その点どうなんでしょうか。
  265. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず一つは、関税下げを行った、こういうことは決して、いわゆる自由貿易主義を基調とするわが国の国是の上に立って、そして諸外国の保護貿易主義というものが台頭しないように、そういう大義名分の上で行った措置でございますので、圧力に屈したものでは断じてない、これがまず一つであります。  それから、公定歩合操作の問題につきましては、日本銀行専管事項であることは申すまでもありません。したがって、景気、金融動向、内外金利差、外為相場の状況等を見守りながら、適切かつ機動的に対処されるものである。一般論としての感想を申し述べるにとどめさしていただきます。
  266. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで経企庁にお伺いしますが、今回のこの景気対策は、一つはいつ実現するかわからない所得税減税と、もう一つはいま公定歩合を含む金利引き下げ、この二つを除きますとほとんど効果は期待できないものばかりじゃないかということは、これが明らかになってから各紙がこれは一斉に期せずして批判している点でありますね。そして、減税もいつになるかわからない。それから公定歩合も、先ほど日銀の総裁のお話のとおり、やはり慎重である、先送りという状況になりますと、本当に実際いま大事なことは消費不況をなくすことですから、そういう点での対策はほとんど絶無になってしまうんじゃないか。こういう批判にはどうおこたえになりますか。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕
  267. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほど中曽根総理もお答え申し上げましたように、今回の総合経済対策は、単に線香花火的な景気の刺激的な浮揚、これをねらっているのではございません。これだけじゃありません。御案内のように財政、金融政策ともに大変選択の幅の狭まった状況でございます。しかしながら、やれることはやって、国民のいま経済に対するところの不安、これをひとつ解消して、考えてみますと、やはり五十八年度経済成長程度はぜひ確実に達成する方向に進みたい、こんなような考え方中心でございまして、公共投資の前倒しがどうだとか、あるいは金融政策がまだ動いてないではないかというような、個々の項目についてお考えいただくよりも、全体としてとらえていただきたいと思います。
  268. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いま大事なことは、やはり消費不況をなくすために、実効性のある個々の措置が必要だと思うのです。  そこで、先ほどこれは太田議員から中小金融三機関の金利を下げるというお話しがありましたが、私全く同感です。ただ、それを求めましても次の質問者に別の答弁が期待できませんので、それは質問いたしませんが、それに加えて、私は繰り上げ返済の場合、住宅公庫ですね、その場合期間短縮しかいま認められていませんが、これは減額返済を実施すべきではないか、これが一つです。それからさらに、いま返済がかなり行き詰まっている人がおる状況の中では延納措置が考えられないか。それから場合によっては、既存の貸付分について高金利時代の金利引き下げ、これらについては考えられないか、いかがですか。
  269. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 矢継ぎ早の御質問でございますが、住宅金融公庫の問題につきましては、借入者の返済能力に応じた資金計画を立てるよう、まず事前に相談をして指導をしてきております。著しく借り入れ後に返済が困難となった方につきましては、個々の事情等を勘案して、払い込み方法の変更等の返済方法の変更措置を講じて延滞者の救済に当たっておるところでございます。やっぱり基本的には、いわばお借りになる人もお貸しする方も返済不能という事態が生じないような適切な対応、これが一番大事なことでありまして、初めから返済不能を前提としての措置ということには、やはり借りる方もある意味においては活力を失ってはならないというふうに考えております。 それからもう一つ、金利の問題でございました。民間住宅ローンの延滞者に対する救済措置ということにおきましても、相談所を設置するなどの事前相談強化が行われております。利用者の立場に立って今後とも指導をしていきたいというふうに思っておるところであります。  それから、金利そのものの問題につきましては経済対策でどうするかということをいま政府でも検討をされて、住宅建設の促進が挙げられておるわけでございますので、これはいわば民間金融機関が自主的にお決めになるものでございますけれども、いろいろな角度からその余地があるや否やと検討をしておるというところでございます。ただ、貸出金利が二十年に及ぶ長期金利としては、どこから見ても相対的には非常に低位の水準にあるということは言えるというふうに思っております。
  270. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 あと残された時間、ヨーロッパで実施されておりますEC型付加価値税についての大蔵省の調査の状況についてお伺いしたいと思うんですが、一つは、ヨーロッパではすでに取引高税などの間接税が広く広がっておって、その弊害を是正するため、かつこれにかわるものとして付加価値税が採用されたもので、直接税中心のわが国とは条件が違うんではないかという点が一点です。それから最近採用したイタリア、イギリスなどはそういう状況に加え、付加価値税採用がEC加盟の絶対条件であったんではないか。それから三番目に、準備期間としてはイタリア、イギリスなどでも大分長期の期間を要した。イギリスでは検討が始まってから十年、それからグリーンペーパーが出てから三年、イタリアは六年、こういう状況についてはどうでしょうか、端的にお答えいただきたい。
  271. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) EC型の付加価値税、一九六〇年代の後半から七〇年代の初めにかけて各国導入されたわけでございますが、その前の税制として、一般的に売上税を持っておったということは御指摘のとおりでございます。  それから第二点ですが、イギリス、イタリアにつきまして、EC全体が税制のハーモニーという志向が非常に強いわけでございますけれども、イギリスは導入理由としては、その前にありました仕入れ税、それから選別雇用税、これが経済に対して差別的である、中立的な税制ということで、付加価値税を導入するというのが政府の公式の提案理由でございます。イタリアの場合は、やはり累積型の売上税を持っておりましたけれども、これは経済に差別的であるということのほかに、ECのハーモニゼーションの指令にこたえるためということを政府は公式に提案理由で述べております。  それから、準備期間の話でございますが、イギリスにつきましては、グリーンペーパーが出ましてから実際に実施されますまで二年、これは御指摘のとおりであります。法律が通りまして施行まで約八カ月。イタリアは、部内で勉強を始めたというのは、いつごろから始めたかどうかということは私どもわかりませんけれども、法律が通りましてから施行までは約二カ月でございます。
  272. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから一般消費税について、これは五十三年十二月の税調特別部会でも示されたのですが、その計算によって現在の民間消費の状況に合わせますと、税率が一%ふえるごとに約七千五百億円の増収と見ることができる、こういう計算ができるかと思うんですが、その点どうでしょうか。
  273. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) そういう計算はしてみたことはないわけでございますけれども、一般消費税(仮称)が検討されたときに、食料品それから医薬品、医療関係品等、課税の対象外にするという前提で、大まかに最終消費の大体六割ぐらいが課税対象になるということで、そういう大まかな計算が出ております。
  274. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その大まかな計算をひとつ基礎にしまして、今度わが国で、もしも大型間接税導入が問題になる場合は相当の高税率にならざるを得ないんじゃないか。それから課税範囲の広いものにならざるを得ないんじゃないか。というのは、先ほどから和田委員質問で、課税対象をずっと減らしたらば、そういう場合、初めて逆進性が緩和されるので、そうでなけりゃやっぱり逆進性がある、こういうことになるとなりますと、わが国の場合は、導入する場合には、むしろ財源としてやるわけですから、いままでの所得税を減らしてそれにかわるものとしてやるとなりますと、むしろ相当高税率にならざるを得ない。それから、課税範囲はやっぱり広くせざるを得ない。また、余り課税対象を減らしますと、ややっこしいことになって、イギリスみたいにこれはずいぶん税務署との間に問題が起きるようですね。そうなった場合、たとえば五十九年の要調整額が四兆一千六百億円、そして、それにもし減税を一兆加えるとなりますと、五兆を超えるわけですね。そうなりますと、先ほどの計算は約七%の税率という、きわめて高税率のものにならざるを得ないんですが、計算上そういうことになりませんか。これは、間接税を採用してそれに充てた場合ですね。
  275. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは先ほど来総理、大蔵大臣がお答えになっておりますように、いま具体的な新しいタイプの間接税の仕組みを検討しているわけでもございませんので、そういう計算はできないわけでございます。
  276. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは、私が大蔵省から一応の了解を得て計算したものによってそういうことになるんです。  それから、これは国税庁にお伺いしますが、イタリアの脱税の状況、EC型付加価値税を採用しておる状況で、要するに課税逃れの状況について報告いただきたいと思います。
  277. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 一般的に申しまして、脱税の状況を的確に把握するというのはなかなかむずかしいことでございまして、ましてほかの国の状況を把握するというのはさらにむずかしいわけでございますが、お尋ねのイタリアにおける脱税の状況につきましては、イタリア政府の公式な計数というものもございませんし、公式に御報告、御説明申し上げかねる状況でございます。
  278. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これ、ブルッキングス研究所の調査結果によりますと、イタリアの場合、付加価値税の脱税率は四〇%、また潜在的税収に対する脱税率は六六・三%という結果が報告されておりますが、そういう事実はあるでしょう、報告の事実。
  279. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) ブルッキンギス研究所の主催で、一九八〇年の十月にヨーロッパの付加価値税に関する経験についての国際セミナーというのがございまして、そこに提出された論文がまとめられまして、「付加価値税 ヨーロッパ諸国の経験」という本になって出ております。その本の中に、ローマ大学のアントニオ・ペドーネという方がイタリアの付加価値税に関する論文を掲載しておりますが、その中で、一九七七年のイタリアにおける付加価値税の脱税率が六六・三%と、カンパという人が推計しているのを引用していることは承知いたしております。
  280. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 最後に総理になりますが、大型間接税は導入は考えてないというんですが、ブルッキングス研究所の報告は、逆進性の問題でもまた必ず……
  281. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 近藤君、時間が参りました。
  282. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 物価上昇になるということを見ましても、それからいまの脱税の問題でもきわめてマイナス面が多いんです。  そこで、結論部分はこうなんですね。特にイタリアの先ほどの教授が、イタリアの付加価値税導入のただ一つの教訓は、いかに導入するかではなく、いかに導入しないかである、こういう結論なんです。この教訓を総理はどう受けとめますか。
  283. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全然考えていないんですから、それ以上の問題だろうと思います。
  284. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で近藤忠孝君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  285. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、柄谷道一君の質疑を行います。柄谷君。
  286. 柄谷道一

    柄谷道一君 わが国の現在の経済財政状態を一言で表現すれば、経済はじり貧、財政はどか貧、これに尽きると思うのでございます。長期にわたる景気低迷が三%台の低迷を長期にわたって繰り返し、これが税収の伸びを低くいたしておると思います。政府はこの要因を世界経済の停滞というところに置いておられるわけでございますが、これはある程度想定されておったことでございます。したがって、政策展開としては、内需を喚起することによってこれを補いたい。しかし私は、端的に申しまして、財政が本来持つべき景気調整機能というものよりも、むしろ財政の緊縮ということに力点を置いた結果がこういう事態を招いたことであり、私はそういう意味において政策不況という色彩が強いということを、まず質問ではなくて、これは総理に指摘いたしておきたいと思います。  そこで、経企庁長官にお伺いしたいわけでございますが、五十六年減税によって内需を喚起すべきところ、逆に約一兆四千億円の増税をされた。公共事業は上期に七〇・五%を前倒ししながら、下期は災害復旧費のほかは特段の手当てをしなかった。五十七年度も減税をせず、三千五百億円の増税を行うと同時に、公共事業は名目横ばい、実質マイナス。下期の追加措置も不十分であった。こうしたことが最近の経済指標に反映されているわけでございますが、経企庁長官は、今日までとってきた政策選択というものが内需喚起の足を引っ張ったと御認識でございますか。
  287. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は、内需喚起の足を引っ張ってきましたのは、何といってもやはり世界経済の低迷によるものが最大原因だと、こういうふうに考えているところでございます。その前、なぜいまおっしゃったように、公共投資を前年よりも減らしてというようなことは、確かに、内需の喚起にマイナスではないかという御指摘だと思いますが、これはやはり五十三年からの例のサミット以来の機関車論、これによって財政が、いまや公共投資を増大するだけの力を失ってきた、これによるものだと思います。さらにまた増税したこと、これはいま御指摘ございましたが、私は消費に対する増税よりも、法人利潤に対する増税は設備投資をおくらせた、これがたまたま世界経済影響を受けたと、こういうふうに考えているところでございまして、これが原因によって内需拡大が妨げられた。もちろん増税でございますから、いまのような影響はあったと思いまするけれども、世界経済影響の方がより大きかったと、こういうふうに考えております。
  288. 柄谷道一

    柄谷道一君 人かわれば認識も異なるもので、前河本経企庁長官の認識と現長官の認識とがさほど違うということにつきましては私は驚くほかはございません。しかし、このことをやっておってもしようがございませんので、総理にお伺いいたしますが、総理は昨年末の自民党総裁選で、五十六年度赤字を埋めるために約一兆四千億円の増税をしたが、それは不況の原因になっていないとは言い切れないと述べられたと。これは日経新聞に報道されている総裁選中の――当時は総理ではございませんが、御発言でございます。  そこで端的にお伺いしますが、増税は不況につながるというのがこの認識ですね。この認識は現在もお変わりになっておりませんか。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原則としてそういう考えを持っております。行管長官のときも、「増税なき財政再建」という理論の一つといたしまして、増税は不況を招き、あるいはそのこと自体が需要の喚起を阻害し、そして結局は財政の肥満、肥大化、乱費を招くと、そういうことを言ってきております。
  290. 柄谷道一

    柄谷道一君 問題を先に進めたいと思いますが、大蔵省の発表いたしました財政の中期試算、これは三年先赤字国債ゼロにする場合、五年先、七年先、いわゆるA、B、Cの試算を発表しておられますが、その額が相当膨大なものである。金額は申しませんが、指摘のとおりでございます。これに加えて、五十七年税収は三千億ないし五千億減収になるのではないかということも言われておりますから、もしそういう事態になれば、五十八年度は税収のスタートがそれだけダウンする。さらに、同僚の議員から指摘されましたように、五十八年の減税は公党間で公約された。すれば、この要調整額はさらに大きくなると思われるわけでございます。問題は、この要調整額をどのような政策選択によって埋めていくか、これが財政の今後の重大課題になると思います。  そこで総理にお伺いいたしたいわけでございますが、私が大蔵委員会質問いたしましたとき、大臣は、赤字国債の借りかえ措置をするということは不見識の感を免れないと、こう言われたわけでございます。特例国債の要償還額は六十年度以降急速に増加いたしまして、六十五年には七兆三千億円になると大蔵省は試算いたしております。  そこで総理は、特例国債の借りかえは今後も行わないということを御確認下さいますか。
  291. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御意見を交えての御質問でございますが、特例公債の償還額が累増いたすことが予測されると。そのとおりでございます。公債は国の債務でございますので、その償還は確実に行うべきことは当然であります。なかんずく個人の人には正確に現金で償還されると。それこそまさに国債の国に対する信用をつなぐ、こういうことでございます。  そこで、特例公債について従来から国会答弁または法律がそのようになっております、借りかえを行わないと。そういう方針をとっておりますので、私はやはりこの方針を貫くべきものであると。ただ、この特例公債の本格的償還にどのように対処していくかということになりますと、歳出削減か、あるいは負担増か、あるいは借りかえを含む償還のための財源調達の公債発行かと、こういう議論が、しぼってみれば三つになるかもしらぬと。しかし現在、そのような借りかえを念頭にして対応したら、まさに歳出構造そのものに対してのわれわれの姿勢が甘くなりますので、したがって、借りかえというものを念頭に置いてはいないと、こういうことであります。
  292. 柄谷道一

    柄谷道一君 特例国債の借りかえは念頭に置いていない。  そうしますと、次の問題は、政府は臨調答申に対して最大限尊重という政府声明を発表されました。その臨調答申には、一時的な緊急避難措置は回避せよという趣旨が強く盛り込まれております。これは経企庁の「昭和五十七年経済の回顧と課題」の中に、約八千億円の後年度負担があるということが指摘されております。これには国債整理基金への繰り入れ一時停止、一兆二千億円が含まれておりませんから、これを入れれば大体二兆円、五十八年度予算における後年度負担と目されるものは、私の試算では二兆三千億円に及んでおります。臨調も、このように財政体質改善の見地から何の意味も持たないばかりか、むしろ財政の実体を国民の目から覆い隠すという意味で、緊急避難措置の回避ということを求めていると思うのでございますが、総理は、臨調答申を尊重されまして、今後緊急避難措置はとらないと御確約なさいますか。
  293. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これもやはり私からお答えすべきであると思います。  財政の硬直化をもたらす制度の是正という中に、臨調から、いまおっしゃったとおり、制度の根本的改革につながらない一時的なやりくりのための措置については、今後極力回避するとともに、既往の措置はできる限り早期に解消する、こう書かれてございます。したがって、歳出の見直しに当たりましては厳しい検討を行って、各年度ごとに必要な経費を計上してこれからもまいります。したがって、その際はあくまでも中長期的見地に立った財政運営を円滑に進めるために、負担の平準化措置も一部取り入れる必要はそれはございます。今度税外収入等についていろいろ御審議賜りましたが、単なる一時的なやりくりのための措置は、これは極力回避するのが当然であると考えております。したがって、今後はまさに財政改革との考え方に立ちまして、この歳出構造の見直しを進めていく中で、いまの臨調の御指摘を踏まえて、これに対応していく決意であります。
  294. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは次にさらに進めますが、そうなると、行政改革による歳出カットということが大きく浮かび上がってくるわけです。私は大蔵大臣にも委員会で指摘いたしましたが、二月十四日の予算委員会における大蔵大臣質問。五十六年の中期展望で、歳出規模五十八兆三千億円ぐらいだったのに対して、実際五十八年度予算は五十兆三千九百七十六億円だから、現実に八兆円程度が何らかの形で削減されたことになるという発言に対して、私は具体的に例を引きながら、これは五十八年の中期試算そのものの甘さというものを正常に戻したということがこのうち八割を占めておるということは指摘をいたしました。さらに大蔵大臣は、この財政演説で、「国債整理基金への繰り戻し額を除いた実質的な一般会計予算規模は、対前年度三・一%のマイナスとなっている」と、こう強調されたんですが、これもこの比較のベースが異なっているわけですね。五十七年度には定率繰り入れ等一兆一千九百八十四億円を含んでおったわけでございますけれども、今回の場合、これを含んでいない。同じベースに引き直せば、これは〇・七%の歳出カットということが逆算されるわけでございます。  そこで私は、大蔵大臣に苦言を呈したいんですけれども、歳出カットの効果というものがいま非常に上がっているという印象を、実体の比較のベースを変えたり、当時の展望の甘さというものを覆い隠して誇大に発表されるということは、国民の私は目をそらすことになりはしないかと、こう思いますが、御反省されますか。
  295. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) あらゆる経済活動、あるいは商業活動、国会答弁含めて誇大広告はいけないことだと思っております。それが基本的な考え方であります。これは柄谷さんたびたび御指摘になりましたが、この国債整理基金への繰り戻しは、いわば五十六年度決算の後始末であります。したがって、これを除いて前年度予算と比較いたしまして、単純に比較した方が五十八年度予算の性格を総体として国民に理解いただけるのに便利だと、こういうふうに考えたからでございます。だから、五十七年度当初予算額から定率繰り入れの金額を差し引いた金額と比較しますと、これは柄谷さんの御指摘のとおりでございます。いずれにしても、五十八年度予算は、そういう国債整理基金への繰り戻しやら国債費等を除いた一般歳出で見ても、前年度予算に比べましてマイナスとなっておりますので、これは高度経済成長の中にわれわれの体質がなれておる中に、このマイナス予算というものは、これはやっぱり抑制を図っていった一つの結果としての証左ではなかろうかと思っておるわけであります。しかし、御指摘のように、誇大広告等は厳に慎むべきであるということは肝に銘じさせていただきます。
  296. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、大蔵大臣、攻撃しているんじゃなくて、やっぱり国民がこの財政の現状、そして歳出カットというものが現在どの程度政府によって行われてきたのか、これをやはり正確に把握しなければ国民の合意が形成されるはずはないと思うのでございます。これは恐らく事務局がこの原稿は書かれたと思うんでございますが、大臣も、これは詳細に分析すればするほど国民はわからなくなると思いますので、今後御注意をお願いをいたしたい。  そこで、私は、消去法ではございませんが、総理、いままでの答弁で、特例公債の借りかえ措置は念頭にないと言われたですね。それから今後財政の緊急避難措置はとらないと、こう言われておるわけです。次に、今度は行政改革による歳出カットでございますが、今日までそう大きな効果は発揮していない、確かに努力はされておりますよ。しかし、行政改革だけでこの五兆円になんなんとする要調整額を埋めるということは、これはきわめて至難であろうと、こう思うんですね。そうしますと、どんどん消去で消していきますと残るのは増税と、こうなっちゃうんですよ。事実、小倉税調会長が参考人として出席されましたときに、増税なき財政再建ということはちょっと迷惑であるという趣旨の答弁もしていらっしゃいます。  そこで、総理にお伺いいたしますが、参議院通常選挙後も、来年度予算編成に当たって臨調答申のごとく、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような新たな措置、すなわち増税措置はとらないと、こうお約束を願えますか。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建の臨調の本旨をあくまで貫いて努力してまいります。
  298. 柄谷道一

    柄谷道一君 そうなりますと、全部消去法で消えちゃったんですね。それは部分的には効果がありますけれども、要調整額のすべてを埋める道は何かと、こうなりますと、残された道は、経済を活性化して税の伸び率を高めるということが最大の重点になってくるということに私は帰着すると思います。  そこで、時間もありませんのでお伺いいたしますが、まず経企庁長官に、近く打ち出されようとしております総合景気対策は、三・四%という既定の実質経済成長率を確保するというところに目標を置いているのか、それともこの経済成長率を上方修正することを可能にする条件を成熟させようとしているのか、これが経企庁長官に対する質問。  次に、公定歩合につきましては、これは日銀の専管事項であると逃げられるに決まっておるわけでございますが、総理ないしは大蔵大臣にお伺いしますが、与党、政府間の検討項目に、公定歩合についてはできる限りの引き下げを図ると、こう検討事項に入っているわけですね。その趣旨は日銀にすでに伝えられておるのかどうか。また、総理公定歩合引き下げの諸条件は熟していると認識されているのかどうか。  それから、公共投資につきましては多くの方の質問がありましたから省略します。  所得税減税について、公党間の約束に基づいて政府が責任を持って財源を確保し、早期かつ景気浮揚に役立つ相当規模の減税を責任を持って実施すると再確認願えるのかどうか。  第四点として、原油基準価格が下がっております。これらの収益を還元する方法は三つしかございません。一つは、これを電力関係等の投資に振り向けまして長期安定化に役立たせることはよって還元するという道。第二は、電力料金を割り引く等の方法で直接消費者に還元するという道。そして第三には、従価税である石油税を操作いたしまして歳入の増加を図るという道、ないしはこれの併合であろうと思うのでございます。総理としての基本的なお考えをお伺いしたい。  そして、最後に通産大臣に、関税引き下げ、その他努力しておられますけれども、構造的にそれだけで日米間の貿易不均衡を解消することはできない。そこで浮かび上がってくるのはアラスカ原油の輸入問題ということになろうと思うのでございますが、この点に対する通産大臣の見解を伺いたい。  以上、一括して御質問いたします。
  299. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) まず第一の、最近とろうとしておりますところの総合経済対策は、先ほど来中曽根総理も御説明がございましたように、日本経済の体質を改善しながら、中長期的な観点も加えながら、原油の引き下げ、その他あらゆる施策を駆使して三・四%程度経済成長の見通しを確実に達成したい、この目的のために全力を挙げようとしておるものでございます。
  300. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず一つは、この公定歩合についての御議論でございますが、再々申し上げておるとおりでありますが、政府でつくったペーパーにそもそも公定歩合という言葉を使ったことはございませんし、またそういうことをお伝えすべき性格のものでもないというふうに考えております。あくまでも私どもの限界として拳々服膺をしなければならないのは、機動的、弾力的金融政策の運営と、それが私どもの限界であるというふうに理解しております。  それから減税問題でございますが、最終的には、これは政府の責任において措置しなければならないことは事実であります。しかし、昨年以来の経過を顧みてみますと、本当に専門家の各党のお方が時間を費していろいろ議論をしていただきました。それらをやっぱりフォローしていくのが私はあるべき本当の姿ではないかと。御協力をお願いいたします。
  301. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず第一点の石油値下がりに伴う、三つの手段しかないではないかとおっしゃいましたけれども、そのうち消去法でいきますと、あなたの手段をかりてですね、石油税の減少による問題をどうするかということは別として、石油の値下がりによってもたらされる分は全国民的にそれが享受されるべきものであろう。したがって、その点はまずいまのところカットしたい、消去すると。それから、第一点の、これを全部電力会社の設備投資その他に回してという方法は、これもまた、それをやらないとは言えませんし、ある程度昨年値上げ申請をしかかっていた状態の体質、こういうものも十分に吟味をし、分析をして、そして第二の国民に対して還元していく手段というものを基礎として考えて分析をしていきたいと、そういうことでございます。  それから、アラスカ原油の問題については、後ほど総理が御答弁になるでしょうが、中曽根・レーガン会談における合意等もございまして、日本との間でいまワーキンググループをつくっておりまして、石油、天然ガス、石炭、こういうものを日本に売るという問題の中の一つでございますが、ただし、これはアメリカの国内法で九月まで輸出をしてはならないという法律がありますので、それをアメリカ側がどう扱われるのか、それは扱われ方によって日本側はコマーシャルベースで、民間取引でありますから、どういうふうに、日本に持ってきてもいい具体策があるかどうか、そこらは検討を加えてまいりたいと思います。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 所得税減税に関しまする政党間の約束は誠実に守ってまいりたいと思います。  公定歩合に関しましては日銀総裁に任せてあります。
  303. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。(拍手)
  304. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で柄谷道一君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  305. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、前島英三郎君の質疑を行います。前島君。
  306. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は、財政改革の問題につきまして少々質問したいと思うんですが、財政問題については専門分野でありませんので、きわめて素朴な質問をいたします。  当委員会のこれまでの論議を拝聴してまいりました中で、国民が当然私と同じように疑問に思うであろうという点ばかりでございます。先ほども柄谷委員も触れましたが、まず第一点は、大蔵省が出しました財政の中期試算における要調整額、つまり不足する財源を今後どうして穴埋めしていくかという点に触れたいと思うんですが、試算A、B、C、どれを見ましても五十九年度で四兆円から五兆五千億円、以後年度を追うにつれて財源の不足額がふくらんでいくという試算になっています。これに対してどう穴埋めして手当てをしていくのか。先ほども何点か消去法がございましたが、この点について各委員が繰り返し質問しているんですけれども政府答弁は納得のいくものじゃないような気がするんですね。よくわからないというのが率直なところです。財政改革のいわば前提条件のようなものを列挙してみますと、赤字国債を発行して穴埋めすることはない。それから増税はしない。ただし、税の増収は期待できない。歳出は切り詰める。ただし、それだけで四兆円、五兆円穴埋めできるはずがないし、そんなに切り詰められたら、むしろ大変なことになると思うんです。大まかに言ってこのような前提条件のもとで考えるわけですから、来年度五十九年度以後の収支のギャップを埋めることが本当にできるのか、これはだれが見ても納得できないと思うんですね。そうなると、前提条件の方が崩れざるを得なくなってくるのは当然だと思うんです。赤字国債を減らすというのが目的だけれども、逆にふやさざるを得ないという事態だと思うんです。五十七年度はまさにそうだったわけでありますし、あるいは増税なき財政改革が逆に大型新税による財政再建にならざるを得ないという事態だと私は思っています。歳出カットの努力は必要だし、その努力をするんだけれども、しかし、いま述べたような事態に直面していると、そう言えると思うんですね。それをあたかも歳出カットで財政改革ができるかのような、そんな印象を与えるとしたら、これは結局国民を欺くことになるのではないか。そういう部分は誇大広告的に、何か国民の中には歳出カットでこの財政改革はするんだというふうなものが何となく行き渡ってしまっている。試算のA、B、C、すなわち三年、五年、七年という試算のどれに近い形で赤字国債を減らしていくのか、それすらいまの段階では言えないというのがいままでの流れですね。ということですと、どのような形で、この要調整額が数兆円に上ると政府が試算しているわけですから、これをどうするのか、この辺からまず伺っておきたいと思うんですが、いかがですか。
  307. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 素朴な角度から御質問いただいております。事実、私どもこの特例公債の減額幅につきましては一定の仮定のもとに試算をいたしまして、そこで要調整額というものが出てきているわけであります。だから、たびたび申し上げますように、これは財政の中期展望、あれは最初は財政収支試算、中期展望、中期試算と三回変わってきておりますが、なかなかこれは確かなデータに基づくことはむずかしいわけでありますので、仮定に立っておるということをまず御認識いただきたい。そうしますと、その三つの七、五、三ということで調整額というものもはじき出されてくるわけであります。それをどうしてやるかということになりますと、やはりまず赤字公債の持つところの悪い面、そしていわゆる負担増を求める国民の皆様方に対する対応ということになりますと、やっぱりまず歳出構造の見直し、カットというところから手をつけませんと、財政当局自身にしてもイージーになりがちだと思うんであります。だから、姿勢としてはあくまでも歳出構造の見直しを大前提にやりますと、こういうことをまず国民の皆さん方に理解を得なければならぬと、その後で国民の皆さん方が、さはさりながら現行の政策水準というものはどうでも保たなきゃならぬという合意というものを見定めたとしたら、そこで初めて、受益する方も国民でございますし、また負担するものも国民でございますので、その点に立って国民との問答の中で理解を深めていかなきゃならぬ問題だと、こういうことになるわけですね。だから、二足す三は五と、こういうふうにならないというのが経済運営であり、財政そのものである、そして、加うるに私の説明の拙劣さもあるいはあるかもしらぬと、こういうことで御了解をいただきたいと思います。
  308. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では非常に応用問題が複雑多岐にわたっていまして、私はこの財政改革という一つの打ち出しは、いわば増税へのイントロであるというふうな解釈すらあるような気がするんです。大型増税かインフレか、一年先、二年先に控えているのはまずこのいずれかしか考えられないんじゃないかという気がするんですが、その辺はどうですか。
  309. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、確かに私が徹底的な歳出構造の見直しをしましょうと、そして現行の政策水準を維持するためにはもう一遍問答して負担増を仰ぐかと、こう言いますと、増税への布石じゃないかと、こう見えるかもしらぬ。しかし、私は筋としてはその筋を通していかなければならないというふうに思っておるところでございます。したがいまして、インフレ政策と、いわゆる俗に言われる財政インフレと、これは一番、単独な国でなく、国際経済社会の中に一一%ぐらいなシェアを占める日本経済というものでございますから、本当に国際経済社会の中に位置づけた場合インフレ政策などというものはこれはまさにとれるわけがない、ということになりますと、やはり国民との問答の中にどうして民間活力というものに力をつけていくかという議論、それに基づく政策選択をやっていかなければならぬというふうに考えております。
  310. 前島英三郎

    前島英三郎君 日本財政というのは、財政危機ということが言われておりますが、私はすでに破綻してしまっていると言っても過言ではないと思うんです。その立て直しにはしたがってカンフル剤が必要になってくるというふうに思うんですが、そこで、先日の一般質問では美濃部委員が国債発行残高を早期に大幅に縮小を図るような施策が必要であると、こう述べまして、例として三つほどの方法を挙げました、これは一つの知恵だと思いますが。大蔵大臣は三つとも大変むずかしいといった答弁でしたけれども、重要な私はポイントだというふうにも思うんです。政府の試算でも明らかなように、赤字国債の発行額を年次的に減らしていっても国債の発行残高はふえていくと思うんですね。その償還、その利子払い、これが将来にわたってわが国の財政を圧迫し続けると思うんです。それは大変に巨大な金額に上るわけでありますし、しかもひどいインフレにでもならない限り、将来の国家財政を持ちこたえられるというようなことは、限界をすでに越えているような気がしてならないんですね。ですから、早い時期にその国債残高を大幅に縮小するカンフル剤を打っておく必要があるんじゃないか。ただ、それに要する巨額の財源を庶民から集めるんじゃなくて、持てる者、富める者に出してもらおうというのが美濃部委員の一つの提言の趣旨であったような気がするんです。つまり言いかえるならば、もう増税かインフレしか考えられないといった状況にあるにしても、庶民を圧迫するようなやり方は困りますと美濃部委員は訴えたんだろうと思うのです。そのかわり、もっと違う方法がいろいろ考えられると思うんですが、そういう意味では政府としては何かそういうカンフル剤的なことを、景気刺激という先ほどもお言葉がありましたが、これとてもこんな多額な赤字を償還するまでには、とてもその刺激には、並み大抵のことじゃないと思うんです。そういう意味での一つの国の施策の中のカンフル剤的な処方せんはあるんですか。
  311. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) カンフル剤的処方せんがあるかと言われれば、私はこれはノーと答えざるを得ない。やはりいま日本経済、あるいは国民所得なりいろいろ見てみますと、けさも予算委員会が始まります前にいろいろ議論いたしました、サミットの問題等についての単なる勉強会でございますけれども。それは一人当たり所得を見ても、そしてまたいろいろな政策水準を見ても、まさに世界の先進国の最高水準に達しておると。しかも諸外国から見れば、いわば破綻しておる財政であるとはなかなか見てもらえない、いかに説明しましても、預金いわゆる国民の貯蓄性志向の高さとかいろんなことから申しますと。それだけに、単なる国内だけの問題で議論ができなくなっておるというのが事実であります。  美濃部委員の御指摘になりましたオーソドックスなあれは経済政策の一つでございますが、いささかも賃金と物価というものの悪循環というものはないという前提の御議論が一つであったと。私から丁重に、何といいますか、先生の御意見を尊重しつつ否定的なお答えをしたんでございますが、その問題が一つありました。  それから、いきなり補助金を半分にしろと、こうおっしゃいましたが、本当の心の中では、東京都の公園を半分にしたらどうなるだろうなとか、私の田舎の道路を半分にしたらどうなるだろうなあというようなことも考えておりましたので、半分にばっさりできるというものはなかなかない。  それからもう一つは、一過性であろうといわゆる土地の増価税をやれと、こういう、これは前から一つある議論ではあるんです、いわば富裕税に類するものでございますけれども。この問題は、やっぱり土地というものはそれが売れた場合に初めて価値を生ずるものだという税制の基本にかかわる問題でございますので、非常にネガティブな、否定的な御答弁を丁寧にいたしましたけれども、見識として承るにはやぶさかでありません。
  312. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういういろいろなカンフル剤の調整をやっぱり考えつつこれは乗り切ることが非常に緊急課題ではなかろうかというふうに思うんです。  そこで、先ほど来出ている受益と負担両面にわたる考え方ですね、そういう意味ではこの負担は税負担のことではなく、税外負担のことを私は指していると思うんですが、昨年七月に出されました臨調の基本答申では社会保障関係費用の将来における増大について触れております。その中で、「現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低位にとどめることが必要である。」としながらも、「租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民の負担率は、現状よりは上昇することとならざるを得ない」と、つまり「受益と負担の対応を明確にする意味からも、租税負担よりは社会保障負担の方を重視していくことが肝要である。」というふうに述べているわけですが、しかしこうした税外負担の増加はもうすでに始まっていますし、国民のこれはコンセンサスを得て慎重に行われるべきだと思うのです。昨今の財政状況の中でもし安易にこうした負担が増加するとなれば、これはもう実質的な増税に入っていると、実質的な増税が何となく巧みな方法で国民の上に押しかかってきているというふうな気がするんですね。
  313. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 前島君、残念ですが時間が参りました。
  314. 前島英三郎

    前島英三郎君 ですから各党の合意の減税の問題も、実はそれが大きなまた引き金になって、増税へのイントロになっていくんじゃないかという危惧も多くの国民がしていることを、指摘していることを最後に申し述べまして、大変十二分という時間の中で集中審議などはとてもできません。私の持ち時間もなくなりましたので、そういう意味を込めまして、ひとつ破綻の財政を救っていただきたい、こう思います。  どうもありがとうございました。
  315. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で前島英三郎君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  316. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、田英夫君の質疑を行います。田君。
  317. 田英夫

    ○田英夫君 最初に対外経済協力の問題で伺いたいんでありますが、五十八年度予算の中で純粋の対外経済協力費が幾らになっているのか、それに対前年度比伸び率を教えていただけますか。
  318. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 主要経費の対外経済協力費の数字を申し上げますが、五十七年度の当初予算に比しまして三百三十一億円七%増の五千四十三億円を計上しております。
  319. 田英夫

    ○田英夫君 伸び率から言いますと防衛費等に次いで伸びているということですが、ここで総理に伺いたいんでありますが、総理は総合安全保障という考え方に対してどうお考えか、鈴木前総理はこの点を大変強調しておられたと思いますが、日本の立場からすると非常に重要なお考えと思いますが、いかがですか。
  320. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安全保障はもとより総合的に行わるべきものでございまして、総合安全保障という考えについては賛成であります。
  321. 田英夫

    ○田英夫君 いままでの――過去何カ月になりますか、中曽根内閣ができてからの国民の批判ということを率直に考えますと、余りにも防衛問題への傾斜が強かった。一般的な印象は防衛費の拡大であるとか、そういう形で考えられてしまっているわけですが、いまのお答えからするならば、むしろ対外経済協力ということにもっと力点を置いた意味の基本姿勢をおとりになるのがいいのではないか。  たとえば青年海外協力隊というのがありますけれども、毎年若い青年が出ていく。その出発の送別会のようなものがありますが、非常にささやかなもので、多分外務大臣も歴代出ておられないと思います。私は出たことありますが、こういうものこそ、実際に私も海外で彼らの活動に触れたことがありますけれども、非常に重要な役割りを果たしているし、もっと強化してもいいんじゃないか。経済的にも予算的にも強化していいんじゃないか、こういう気がいたします。大変この青年海外協力隊という名前からしても、中曽根総理好みのことではないかと思いますが、こうした送別会などには総理みずから出られて激励をすると、同時にここにもっと力点を置くと、実態を恐らく御存じと思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  322. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 青年海外協力隊を始めるときには、私も非常に協力して努力もした一人であります。自来非常に忙しくなりまして、われわれの方の政党の青年議員の諸君が非常に努力をしておりますが、青年海外協力隊の実績については非常にすばらしいものがございまして、各国との友好親善、あるいは各国に対する社会福祉の増進に非常に貢献していると高く評価しております。それらの皆さんの御苦労に対しても、われわれの力が多少なりともお役に立つならば、そういう会に出席することも喜んでしていきたいと思っております。ただ、そのときに公務の状況がどういう状況か、そういうものとにらみ合わしてやりますが、優先的にできるだけそういうところへは出席さしていただきたいと思っております。
  323. 田英夫

    ○田英夫君 次に、例の大変問題になりました韓国に対する四十億ドルの経済協力、現在韓国政府との接触がどのような形になっておりますか、現状をちょっとお知らせいただきたいと思います。
  324. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 韓国との間では円借が十八・五億ドル、民間合わせると四十億ドルを一応めどにしましてこれから積み上げていくわけですが、五十七年度についてはいま事務当局間でプロジェクトを突き合わせまして検討いたしておりますが、まだ結論には達してないと。韓国の方は七百億というようなことを言っておりますし、わが方は四百億ちょっとということで、その辺のところの具体的なプロジェクトについての検討でございますから、その辺がまだ最終的に詰まっていないというふうに聞いております。
  325. 田英夫

    ○田英夫君 これは期間はどのくらいに考えておられますか。
  326. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一応は、めどとしては七年間ということが一応の目標であります。
  327. 田英夫

    ○田英夫君 このことを詳しく伺いたいんですが、時間がありませんから次にいかしていただきますが、これは本来きのうの集中審議で伺うべきことかもしれませんけれども、例の金大中さんの問題ですけれども警察庁警察の方で御本人から事情を聞ける状況にいまなったわけで、この点についていまアメリカとの折衝もすでに行われているようでありますが、現状どうなっているかお知らせいただきたいと思います。
  328. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 金大中氏の問題については、田委員もすでに会われたとお聞きしておりますが、警察庁の方から事情聴取をしたいということで、外務省としてアメリカ政府に対して照会をいたしておりまして、アメリカ政府を通じましていま金大中氏に事情聴取に応ずるかどうかという問い合わせをしてもらっておるわけでございますが、金大中氏の方から正式な文書で提出をしてほしいということで、いまアメリカ政府がその文書でもって金大中氏に日本政府の意向を伝えると、こういうことで準備をいたしておると聞いておりますが、まだ文書として金大中氏の手元に渡った、こういうふうには聞いておりません。
  329. 田英夫

    ○田英夫君 これは警察としては当然事情聴取をすべきだとお考えと思います。これは政治決着ということ自体私は反対し続けてきたわけですけれども、しかし、警察の立場からすればあのような経過、もう詳しく申し上げませんが、当然事情聴取をしなければならないと思っておられると思いますが、現状では金大中さんのお気持ちからすると必ずしもすっきりと事情聴取に応ずるということにならない。警察の立場からこの辺どうお考えか、国家公安委員長お答えいただきたいと思います。
  330. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 警察としましては、金大中さんの事件については捜査を継続中でありまして、被害者とも言うべき金大中さんから事情を聴取したいという気持ちには変わりはないわけであります。
  331. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、これは安倍外務大臣にもうすでにお伝えいたしましたけれども、一月の末にワシントンで私がお会いしたとき、それ以後も、つい最近も講演などで金大中さん自身述べておられるようでありますけれども、基本的に二度にわたる政治決着の際に、当事者である自分に、韓国政府はもちろんですが、日本政府からも何の連絡もなかったと。その結果としてきわめて苦痛を味わう結果になったわけで、その辺を日本政府はいまどういうふうにお考えなのか。決して開き直ったという気持ちではなくて、素直に私は言っているんだということを、そういう言葉もありましたけれども、その日本政府の気持ちを、いまの気持ちを率直に伺いたいんだと、こういうことを御本人は言っているわけですね。同時に、日本政府は本当に真相を解明する気があるんだろうかという気持ちも持っていると、これが金大中さんからの伝言であったわけですけれども、いまの国家公安委員長のお答えからしても、これはこういう席での公式のお答えですから、以前からずっと続いている日本政府の捜査当局の態度として、この時点で改めて受けとめさしていただきたいし、金大中さんも受けとめると思います。  もう一つは、その政治決着という問題ですが、これは私どもが反対してもすでに二度にわたって行われたという事実はあるわけでありまして、これを乗り越えて、いまこのとげをどう抜くかという、そこに問題があるように思います。これはまあお互いに人間同士でありますし、隣人同士でありますから、いま接触をできる状態になっている。韓国政府もあのような形で金大中さんに、アメリカという限られた場所ではありますが、自由を与えているという状況からするならば、いろいろ方法はあるんじゃないだろうか。いま接触をやられているというお話ありましたけれども、たとえば日本政府を代表すると思われるしかるべき人がワシントンの金大中さんを訪ねて、まず何というんでしょうか、見舞うというんでしょうか、かた苦しい話ではなくて、まず見舞うというようなことがすでにいままでにあったならば、私はずいぶん御本人の気持ちも違っていたんではないだろうか、そんな気持ちもするわけでありまして、大変行政府に対して立ち入ったことを言いますが、たとえば大使というような肩書きであるのが適当かどうかというならば、公使というふうな方がとりあえずこの状況の中でお見舞いをする、苦痛を与えたことは事実でありますから。日本政府のそうした気持ちを行動であらわすという意味で、そういうことはいかがなものかという気もいたしますが、外務大臣どうでしょうか。
  332. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この問題につきましては、田さんからもお話聞いております。金大中さんのそうした感じもわかるわけでございますが、まあすでに金大中さんとの間では、韓国でかつて自由になられたとき、日本の駐韓大使等が会ったということもあるわけでございます。したがって、私もまあいろいろと考えておるわけでございますが、何といいましても、いまはアメリカの主権のもとにおられるわけですし、それから、いま公安委員長が申し述べましたように、捜査をいま継続して、これから事情聴取をするという準備をいましておる段階でございますから、一応この事情聴取に対する手続等を進めまして、そして事情聴取が行われる、こういうふうなことをまずやることが必要じゃないだろうか、こういうことで、いまその問題は私も考えないわけではありませんけれども、そうした捜査の継続という段階のもとにおいて、これをまず第一に優先的に進めておるということでございます。
  333. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  334. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で田英夫君の質疑は終了いたしました。  これをもちまして、財政経済に関する集中審議は終了をいたしました。  午後二時に委員会を再開することとし、これにて休憩をいたします。    午後一時十三分休憩      ─────・─────    午後二時二分開会
  335. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度予算三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  336. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 締めくくり総括質疑に関する理事会における協議決定事項について御報告をいたします。  質疑を行う日は本日二日及び明後日四日とすること、質疑時間総計は二百分とし、各会派への割り当ては、日本社会党九十分、公明党・国民会議五十分、日本共産党及び民社党・国民連合それぞれ二十分、無党派クラブ及び新政クラブそれぞれ十分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  337. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  338. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、これより赤桐操君の締めくくり総括質疑を行います。赤桐君。
  339. 赤桐操

    赤桐操君 私は、五十八年度予算の審議の締めくくり総括に当たりまして、本委員会質疑答弁を通じまして解明されておりません幾つかの問題点等がございます。政府があえて答弁を避けられたり、遺憾ながら明快にされない点がございますので、これらの点についてただしてまいりたいと思います。  まず、政治倫理の問題でありますが、総理は、政治倫理については議員個人の問題であるという立場を固執をされているように存じます。このお考えにつきましては、国民大衆の考えておられる倫理の問題とは大分離れているのではなかろうかと、こういうように私は感ずるんですが、総理のお考えはいかがでございますか。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 議員個人の問題であると同時に、いま議院の問題として提示をされていると思います。  議員個人の問題という意味におきましては、前から、民主主義及び代表制のもとにおける選挙民と被選挙者、代表者との関係というようなことを申し上げた次第でございますが、ただいまはまた議院運営委員会におきましてこれが案件としてすでに提示をされておりまして、各党間で審議が進められておる段階になっておりまして、議院の問題でもあると考えております。
  341. 赤桐操

    赤桐操君 倫理と申しますか、いわゆる道義、道理ということになると思います、人間として実践すべき道義、道理というものになると思いますが、少なくとも政治に携わる者の道義というものが、ある者はこう考え、ある者はこう考えるということであってはならないと私は思うんです。そこには共通の基準というか、物差しというものがなければならぬと考えます。こういういわゆる共通の物差しがなくてはならぬと思うんですが、この点については、総理、どうお考えになりますか。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的には共通の物差しが必要であると思います。つまり、民主政治というものは国民の信頼の上に成り立つ、国民の信頼を受けてやるべき国会議員がおのおのその信頼に対してこたえる政治倫理をみんな持っていかなければならぬ、こういう意味においては共通した尺度があると思います。
  343. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、少なくとも政治家の道義というものがいま大変厳しく国民から問われているそういう中で、これは総理もお認めになっていると思いますが、国民世論にこたえて、総理がそういうお考えに立つならば、何が一体政治家のとるべき道であるか、こういう段階において。政治家の踏むべき道義の規範というものを少なくともみずから御努力をいただき、お示しをいただくべきだろう、こう思うのでありますが、衆参両院の国会論議の中を通じましては、遺憾ながらこうした立場は、残念ながらいまのお答えとは違う立場で通されたように思うのでありますが、この点はいかがでございますか。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど一般論として基礎的なことを申し上げましたが、その基礎的なことを具体的にこれを応用するという問題になりますと、これはいまの代表制、あるいは選挙民と被選挙者という問題はぶつかってくると思います。この点につきましては、過般の衆議院の議院運営委員会におきましても、参考人の中において意見が分かれているやに私も聞き及んでおります。そういうさまざまな価値観というものを皆さんはお持ちであると思いまして、これらの問題は終局的には議院の審議の中において案件としては処理されていく、こういう問題であると思います。
  345. 赤桐操

    赤桐操君 私は、国会においては、少なくとも私どもの国権の最高機関として国の政治を預かる立場からいたしまして、当然そこには、いろいろな問題が発生した場合においては自浄作用なり、あるいはまた自助努力なりによって解決する、そういうあり方がなくてはならないと考えるわけでございます。今回のロッキード事件につきましても、少なくとも政治倫理にもとる、国民共通の倫理側、共通の物差しからははるかに外れた事件である、こういうように私ども考えるわけでありますが、この点も総理はお認めになれると思います、いまのようなお考えであるならば。これが認められるとするならば、少なくとも国会がこれをただし責任を問うということは当然しておかなければならないだろう。それがまたいわゆる国会における自浄作用であり、自助努力だと、こう私は考えるのですが、その点いかがでございますか。
  346. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会の案件となりましたこの事案につきましては、やはり各党の樽俎折衝、国会における審議というものによって処理されていくということであると思います。議員個人個人が持つ倫理観や、あるいはそういう問題に対する認識というようなものにつきましては、これは個人個人がおのおのお持ちになっておるものがあると思っております。
  347. 赤桐操

    赤桐操君 どうも肝心なところへくるとそういう御答弁が繰り返されるわけでありますが、私は、いろいろな質疑の中では、総理も少なくともこの政治倫理の確立については、議会制民主主義に不可欠なこれはもう根底である、こういうことを何回もお答えになっていらっしゃると思うんですね。しかし、政治不信なり、政治倫理欠如が問われているこういう段階になって、現実にはどういう態度を最終的におとりになるかというと、いまのような御答弁になる。総裁であり総理である御自身において、国会の自助努力なり、あるいは自浄作用なり、こうしたものがいま与野党を通じて盛り上がっているそういう中で、逆にこれは水をかけ抑えることになるのではないか、こういうふうに私は思うのであります。だから、前段でお答えになられたことと後段でお答えになっておられることが大分違っているように私は思うのですが、この点いかがですか。
  348. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり議員の進退に関する問題、そういうような問題、特に辞職に関する問題というような問題になりますと、これは民主主義の基礎と結びつけて深く考えなければならぬところがあると思うのであります。私はそういう部面についても、ここで皆さんに申し上げたことがあると思います。また一面において、今度は国会の案件となってきた問題がすでにまたございます。この案件になった問題は国会の手続に従って処理されている、そういう二つの次元の違う性格の問題がこれには内包されている、こう思っておるわけでございます。
  349. 赤桐操

    赤桐操君 総理にひとつお答えをいただきたいと思うのでありますが、いまロッキード事件の問題をめぐりまして、大変な国民の皆さん方の不信感が出てきている。そうした中で、こういう政治倫理追及の国民の声というものを前にして、一体国会は、あるいはまた総理御自身は何をしなくちゃならないのか、何もしないでいいのかどうなのか、この点ひとつお考えを承りたいと思うのであります。
  350. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会の案件となりましたこの決議案の問題につきましては、国会の審議を見守るというのがいまわれわれの態度でございます。
  351. 赤桐操

    赤桐操君 どうもいまの御答弁では恐らく、私どもももちろんでありますが、国民の皆さん方も納得されないと思うのでありますが、政治倫理とか、政治責任というものについては、少なくともこれは政治家の大きな基本的な問題だと私は考える。時がすべてを解決するとか、あるいはまた国民が次第にある時間を経過すればその中で忘れ去っていく、こうしたような形の中で解決されるべき問題ではないと私は考えるんです。そういう意味合いから、少なくともこういう形でじんぜんこの問題を引き延ばしながら、ピリオドを打つような決意さえも持たれない、措置もされない、こういう形で国会は遺憾ながらこれになかなか結論を打ち出せないまま、総理もこれを見守るという形の中で過ごしていくということは、一体どのように国民の目に映るのでしょうか。私はますます、総理考えておられるこの倫理の問題と、国民が求めておることの間の乖離というものは激しくなってくると思うんです。その結果私は大変な事態に発展するだろう、こう考えるので、このことについて最後にひとつ総理のお考えを承っておきたいと思います。
  352. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民主政治は国民の信頼の上に成り立つものでございますから、一人一人の議員はいわゆる議員倫理というものも十分意識をして、そしてみずからを戒め、国民の信頼の上に立つという者の地位にふさわしい行動が必要であると考えております。その判定はその個人個人、議員議員がおのおのの倫理観に従ってまた処理するという点が非常に大きいものではないかと思っております。この問題につきましては、議員の進退、あるいは辞職というような問題に関しますと、議院の構成、あるいは言いかえれば統治権を構成する一つの重要な機関である国会のその基礎にかかわる問題にも触れてくる問題でございまして、そういう問題のほかに、いますでに裁判所に係属されている事件といたしまして、そういうような三権間の関係という問題もまたございます。そういうような点もよく考えてみる必要があると思っております。なお、すでに国会の案件に登場してきて、議院運営委員会において審議されている事件でもございますから、この事案事案につきましては、国会の審議を見守るというのが政府の態度でございます。
  353. 赤桐操

    赤桐操君 最後に、この問題については、せっかくの国権の最高機関みずからの力で整理すべきものは整理しなきゃならぬ、そういう私ども立場に置かれていながら、これがじんぜん時を過ごしていくということは許されないと思うんです。総理もひとつみずから積極的に問題の解決に、そしてまたこの尺度をつくられるように御努力をいただくことを私は重ねて申し上げて次に移りたいと思います。  次は憲法問題でございますが、衆議院段階におきましては、総理は積極的に改憲論の立場で議論をされたと思うのであります。これはいろいろの報道や私も衆議院の論争を聞いておりましたが、そういう積極能動的な姿勢でおやりになったように思います。しかし、参議院におきましては大分変わられまして、むしろ改憲論者ではないというような印象さえも感ずるような態度で終始されたように思うのでありますが、この点ひとつまず真意を伺っておきたいと思います。
  354. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は一貫したことを言っておるつもりであります。つまり、戦前戦後を生きてきた人間といたしまして、戦前の日本と戦後の日本は非常に変わった。戦後の日本は非常に自由になり、伸びやかになり、社会福祉は向上され、平和は確保されておる。基本的人権は確立されておると、そういう意味においていまの憲法の果たしている役割りは非常に大きいと。私はそれは惜しみなく高く評価するものである。それは戦前の生活を知っているだけに実感を持って言えるのであります。しかし、あらゆる制度について完全というものはない。社会制度一般について言えるように、常にこれを見直し、さらによりよきものへこれの改革を志すということは、人間が進歩していく上に不可欠な条件でございまして、憲法もその意味において国民の皆さんが大いに論議し、また検討を加え、そして見直す、そういうことはほかの制度と同じように心がけてしかるべきものであると、そういう態度を一貫して申し上げておる次第でございます。
  355. 赤桐操

    赤桐操君 総理は与党議員の質問に対しまして、一たん獲得した自由、人権、福祉国家の理念、これはこんりんざい放したくないという強い熾烈な要望が市民社会の中に現在深く根差している、特に御婦人の皆様方には強いと、そういう点についてわれわれのやり方は多少無神経ではなかったかと反省をしていると、こういうことを先般言っておられました。これは私もよく聞いておりましたが、こういう答弁をなさっておるわけでありますが、これは間違いございませんか。
  356. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは間違いございません。私は、過去の経歴にも示されているように、昭和二十年代、特にマッカーサー元帥の占領下、その占領の終末期におきましては、憲法を改正すべしと強く論じた一人であります。しかし、その後憲法調査会が昭和三十二年か三年に発足いたしまして、憲法調査会の委員となって一生懸命憲法を勉強いたしましたし、現在の憲法ができたいわれにつきまして発掘をして調査もいたしました。そしていろいろ改憲についてその当時は努力をしてきたことでございます。それらも総括して、憲法調査会の最終の私の総括の言葉の中に、意見の中にそういうようなことも一部述べているところがあると思っております。
  357. 赤桐操

    赤桐操君 一たん獲得した自由や人権、あるいはまた明るさを失うまいとする必死の市民の念願は一〇〇%尊重し、そして盛り育てる真摯な態度が必要である、こう述べておられるわけでありますが、これは憲法を守り実践をしていくという決意を述べたものとして理解をさしてよろしいかどうか、この点伺いたいと思います。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当時、憲法を改正しようと、あるいは憲法を見直そうというものには合理的根拠があったと思っております。しかし、なぜ憲法改正がそう簡単にできなかったのであろうかということを反省してみますと、昭和二十年代においては、やはり占領の屈辱といいますか、復員軍人で帰ってきて、そして憲法をつくるのにも自由がなかった。改正についても、当時改正案を持ってマッカーサー司令部へ行かなければ許されなかったと、それもすべて認められたわけではないと。そういうような情勢等々の経験をいたしまして、やはりリンカーンが言うように、民主主義とは何かと言えば、ガバメント・オブ・ザ・ピープル、バイ・ザ・ピーブル、フォア・ザ・ピープル、それがいわゆるリンカーンが言った民主主義の基本原理で広く言われているところでありますが、オブ・ザ・ピープル、フォア・ザ・ピープルという、人民のためにとか、あるいは人民のというのは、そういう理念的なものはごまかされやすい。ヒットラーでも世界のためとか、人類のためとかと言ったので、そういう点は非常にごまかされやすいと。しかし、ただ一つ明らかにこれが民主主義だと言われるのは、バイ・ザ・ピープルだと、国民自身によってつくられたと、上から与えられたものではないと、独裁者によってつくられたものでもない、国民全体でつくったという手続が大事だということを私は宮沢俊義教授から教えられたんです。そのことを私は憲法調査会でも言って、宮沢さんに参考人として出てきてもらってその真意をただしたことがあります。そういう点もわれわれは占領下非常に感じたところなのであります。  しかし、なぜ憲法改正容易にできなかったかと言えば、いまあなたがおっしゃり、私が前に申し上げたような、やはり人権とか、自由とかというようなものを一たん国民が獲得したら、こんりんざい放すまいという必死な願いがあったと思うのであります。そういう点についてわれわれは善意で憲法改正ということを当時唱えたけれども、受ける国民の側は、自由がとられるんじゃないか、人権がとられるんじゃないか、また徴兵になるんじゃないかと、そういう一部の宣伝にもよりまして、そういうような恐怖感を抱いたと、それが憲法改正というものを実施できなかった大きな理由であろうと。したがって、ここに思いをいたして、国民の気持ちもよくそんたくして、そして慎重にこの問題は取り組んでいくべきである、そういうものを踏まえた上で見直すとか、改正するとかということを考えるべきである、そういう趣旨のことを言ってきたのであります。
  359. 赤桐操

    赤桐操君 私は、この御答弁の中では、少なくともこれは、時間の関係がありますから繰り返しませんけれども、大変な評価をされていると思うんですね、新憲法に対して。これは改憲論者の言うことではないですよ、率直に申し上げて。少なくとも参議院における御答弁はそういう姿勢で答弁されてきたと思うんですね。これは私はそれなりにまた評価していいと思うんです、そういう御答弁については。そういう考え方に立つと、これは憲法自体に対しても衆参両院の論争予を通じて、総理自身もいろいろとお考えが深められたと、こう私は考えておる。そういう中で、この憲法の評価を改めてし直しておられると、こういうようにこの御答弁の中では感ずるわけであります。日本憲法が果たした平和国家、明るく伸びやかな社会建設に貢献した、これは事実そう述べておられる。そうだとするならば、憲法を改めなきゃならぬ理由はどこにもないじゃないですか。むしろこの憲法を素直に守りますと、そして憲法の九十九条の示すとおり、この憲法を最大の基本として私は守り抜きます、こういうことをお認めになるのがあたりまえじゃないですか、少なくとも参議院における御答弁や論争を通じては、それがあなたの前提になっておられるように私どもは伺っておるんですが。そうじゃないとすれば、これは何か別な意図でのカムフラージュがされておると、こういうように理解せざるを得ないと思うんですが、いかがですか、この点は。
  360. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の憲法を高く評価している発言は、私は前から一貫して言っております。憲法調査会においてもそれは明らかに言っております。だから、参議院に来て初めて言ったんでもなければ、衆議院で初めてそれを明らかにしたのでもありません。それはいろいろな経験をいたしまして、いろいろまた自分でも考えまして、そして自分考えというものは次第次第に形成されてきておったと思います。しかし、にもかかわらずという面が必ずしもなきにしもあらずであった。その点については、私は閣僚という地位になる前までは自由に発言もし、物にも書いてきたのでございます。しかし、一番新しい著書におきまして、閣僚になる前の著書でございますが、それはやはり憲法の見直しということを言っておる、あるいは再確認ということを言っておると、これはやっぱりバイ・ザ・ピープル、国民の手によってという点が私の考えの底にあったから、そういうことが最終の本の中には書いてあるわけであります。しかし、閣僚になって、特に内閣総理大臣という、こういう地位になりました以上は、憲法改正に関して軽々に誤解を与えるようなことがあってはなりませんから慎んでおる、そういう次第でございます。
  361. 赤桐操

    赤桐操君 私はもうすでにバイ・ザ・ピープルになっておると思う。あなた御自身もこのように答弁されておるじゃありませんか。「この憲法自体が果たしている役割りというものは、戦後国民の皆様方の中にかなり厳然としみついてきておると思うのであります。そして、基本的人権の尊重とか、自由とか、民主主義とか、あるいは国際協調主義とか、平和主義とか、こういうものは国民の皆様方に謳歌され、しみついてきていると思います。そういう意味においては市民社会の岩盤が厳然としてここに、戦後の日本に出てきている、特に若い人たちの間にはそれはもう疑いもなく出てきてかたく固っていると、そういうふうに思うのです。」、こう言っておられるんじゃないですか。また次のところでは「やはり一たん獲得した自由、人権、あるいは福祉国家の理念というものは、こんりんざい放したくないという強い熾烈な要望がこの市民社会の中にある、特に御婦人の皆様方にある。」、これは戦争を少なくとも回避しようとする、私は婦人の大きな真実の声だと思う。そういう中からこの考え方が強くあなた御自身にも受けとめられたんではないかと思うんであります。御自身の御答弁の中にこれだけのことが出ているんですよ。これ、バイ・ザ・ピープルじゃないんですか。もはや国民の憲法ではないんですか。私どもにはこれが他人のものだとはどうしても思えない。戦後何年たっておりますか。この中でそういうことが言えますか。しかもあなた御自身もこういう答弁をなさっておられる。いかがですか、これは。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の本の中には、そのバイ・ザ・ピープルという以外の点にも幾つかの論及がございます。しかし、総じていまの憲法が日本の戦後の歴史の上に果たした役割り、あるいは明治以来日本に対して果たした大きな役割りという点については、申し上げたとおり非常に大きな歴史的意味を持った憲法であると、そういうふうに高く評価している、これは変わりません。
  363. 赤桐操

    赤桐操君 どうも私は、いまのこうした御答弁や、これを中心としたペースでの参議院における御答弁、こうしたものを思い返してみまして、いまの御答弁はいささか納得ができないんです。私ども本当にあなたのお考えはどうですかと、こうただすというと、あなたは別な立場をおとりになる、これでは国民の皆さん方に、安心した憲法問題に対するところの総理のお考えが理解されないと思うんですね。安心してこれはなるほどと、こういう理解の仕方に受けとめられることは不可能だと思うんですね。やはりこれは私は残念ながら総理のお考えは、どうも参議院におけるこの御答弁そのものについては、いささか納得いたしかねるものがございます。選挙も近寄ってまいりましたし、いろいろやはり思惑もおありになると思いますが、少なくともこうした問題については衆参両院一貫した物の考え方というもので終始さるべきではなかろうかと、このように思いますが、さらにこのこと一つ申し上げて憲法問題を終わりたいと思います。  次に、経済運営の問題について伺いたいと思うのでありますが、経済運営の羅針盤とも言うべき長期経済計画、これを政府が示さないために今国会は大変混乱をいたしたと思うのであります。政府考え方が国民にもわからない状態に現在置かれている、これは、前段の総括質疑の中でもそうでありましたし、一般質疑の中でもそうでありました。世界経済が動揺しておる今日の状況の中で、長期の策定ということは困難であるということはわかりますが、困難はともかくといたしまして、それだけに将来の見通しを早く示すということは、これは国民の生活の面からいたしましても、あるいは企業経営者の指針という立場からいたしましても、今日一番大事な問題じゃないかと、こう思うのでありますが、総理のお考えはいかがでございますか。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 確かにそのように思います。そういう基準をできるだけ早く明確にしていただきたいと思っております。そういう意味から、経済審議会に対しまして私は諮問をいたしまして、そういう新しい指針、あるいはガイドラインをつくっていただくようにお願いしたところでございます。  私が内閣総理大臣を拝命いたしましたときに、いわゆるいままでの七カ年計画の修正の意味の五カ年計画案というものが作成されておりました。しかし、その考え方や運び方について私は若干疑問を持ちまして、そしてこれに対する考えを述べ、審議会に対して新しい方途で勉強してくださいとお願いをして、いま申し上げたこれからのわれわれが向くべき経済指針というものをつくっていただき始めたという状態なのでございます。若干時間が要りますけれども、その間は、それらのものができるまで単年度の計画で進んでいく、今年度は、五十八年度経済については経済企画庁からその考え方が示され、また、われわれも内閣総理大臣の施政方針演説や大蔵大臣、経企庁長官の所信表明演説によりまして、その所信をおのおの示しておるところでございます。そういうことで、現在進行しているということを御理解いただきたいと思います。
  365. 赤桐操

    赤桐操君 総理は、この経済計画というようなものでなくて、展望的なものをひとつつくり上げていきたいと、大変意欲的にお取り組みになっておられるようでありますが、具体的に、従来の政府長期計画とはどんなような点が違ってくるのか、御説明いただきたいと思います。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私たちは、特に自由民主党におきましては、やはり自由主義ということと市場経済というものを中心に物を考える手法をとっております。そういう面から、いままでの経済計画につきましてはそれなりの評価もあり、歴史的な意味もあったと思いますが、この二回の石油危機を経た今日、いままでのような考え方だけで果たしてよろしいかという点に疑問も持たれてきたわけであります。そういう意味において、余りリジッドな細かい計画までぴしっと決めたような、そういう性格のものでなく、より弾力的な、より幅の広さを持った、そしてより長期的な、そういうものに考えを改めて御研究願いたい、そういうふうにお願いしておる次第なのでございます。
  367. 赤桐操

    赤桐操君 大体いつもいろいろこうした私ども質問に対しましては、いまのような御答弁なり、あるいはより機動的であるとか、弾力的であるとか、あるいは自由、そしてより長期の基本姿勢、こういったようなものが答弁の中で出てくるわけでありますが、もう一歩突っ込んでいろいろ伺いたいと思っておるのでありますが、いまの長期計画につきましても、実際にはいろいろ何年カ計画で出ておりましても、その寿命は二、三年ぐらいで乗りかえてきている、現実には。そういう状態の中で、今度はセブラルイヤーズですか、何か大蔵大臣の話では五年とか七年とか十年とかなるようでありますが、長いものになるそうでございますけれども、こういった長期のものをお考えのようでありますが、そんな長い期間使えるものというものはできるんですか、この点ひとつ伺いたいと思います。
  368. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 総理に対するいわゆる経済運営の長期展望ということから説き起こして、財政運営の長期展望ということに対する御言及でございます。確かにこういうふうに事ほどさように国際経済社会というものが不透明な状態であるという場合に、中長期の展望を立てましても、それが結果として整合性を失うということは確かに間々ございます。したがいまして、やはり私どもといたしましては、いままで五十九年赤字国債脱却ということを一つの財政再建のめどとして設定して御審議をいただいておったわけです。それがいわば、これを断念せざるを得なくなったということになると、やはり財政改革という言葉にいたしましても、まず赤字国債の脱却、その後に続く公債依存率の引き下げ、こういうことからいたしますと、やはり何らかのめどというものが必要ではないか。それを各般の角度から検討しますと、いわば仮定に基づいたものであるといたしましても、中期試算をお示しいたしましたのはまず五年、七年と、こういうことをいわばこの数年ということで申し上げておるわけであります。  したがって、総理からお答えにあります五年、十年、これは確かに数年でございますが、私どもとしてお出ししておる資料からすれば七年までしか出しておりませんので、七とか五とかいうものが数年という範囲に入るものであると、したがって、いささか中長期の目標を設定をしても、何とかその目標を達成することによって国民の信頼にこたえていくべきであると、長期に過ぎるのではないか、それは確かに一つの御意見だとは思います。しかし、事ほどさように不透明であったとしても、やはり中長期の展望そのものは持ちたい。こういうことからいま苦心をいたしておるところであります。
  369. 赤桐操

    赤桐操君 ひとつ総理に伺いたいと思うのでありますが、従来の長期計画というものは資金的な計画が欠けておった、したがって、これを組み込むべきだと考えている。こういうような構想が示されておると思うのでありますが、この構想をもうちょっと具体的に伺いたいと思うのであります。
  370. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はいままでの経済計画につきまして、いわゆる厳密な意味の計画性というものが日本になじまないという意味に、一つは、日本は貿易国家で資源を自分で自活できない、自給自足できない、だからソ連や中国のように、あるいはフランスのように、大部分の資源を自分で持っている国ならば、アウタルキーである程度の統制、あるいは計画経済ができるけれども日本の場合にはそういう条件が非常に少ない。石油の値段が変わっても、為替の相場が変動しても、すぐGNPに大きな変化が出てくる、また、国民経済影響が出てくる。そういう点や、あるいはそういうような状況からして、資金的裏づけが非常にむずかしい、そういうようなことも指摘してきたわけです。  そういう面から見まして、いままでありました社会経済七カ年計画が、石油危機の影響もありましたでしょう、公共事業費でも二百四十兆から百九十兆に削減する、委員会自体で削減するというような大修正をやりました。こういう経験も考えてみまして、やはりガイドラインなり、指針というやり方の方が適当であると、こう考えているわけであります。
  371. 赤桐操

    赤桐操君 世界経済全般をいろいろ見ながら、インフレ率とか、あるいは利子率のぐあいなどまで、長期的にひとつ見ながら資金計画を裏づけていきたい、ガイドラインと称するものでしょうかね、よくわかりませんが、そういういろいろいままでやられたことのないものに取り組まれるということでありますけれども、このインフレの率とか、あるいは利子の状態とかというものについては、これはなかなかそう簡単に私はいかないと思うんですが、これはどんなふうに見通しをなさる問題ですか。
  372. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) これは、これから作成する問題でございますので、いま確たる具体的な数字については申し上げられないところでございますけれども、すでに経過報告といたしまして、経済審議会が報告していただきましたものの中には、たとえば成長率は名目で五%から七%、そしてまた実質では三%から四%というふうに幅を示しておりますし、物価等につきましても、一定の幅を示しながらその中にあらわれているところで御判断していただきたいと思います。
  373. 赤桐操

    赤桐操君 企画庁長官の御説明でありますけれども、たとえば単年度ごとの国債の消化とか、あるいはまた民間が調達する資金なんかの状態なんかを見ましても、これは大変なものだと思うんですね。そういうものが全部長期にわたって見通しをつけながら資金計画として計画化されなければ、いまの総理お話のいわゆる資金計画じゃないと思うんですよね、単なる長期計画ではなくて資金的な裏づけも考えたいと、こう言っておられるわけだから。私が理解するところではそこまでいくんじゃないかと思うんですけれども、こういう、どの一つをちょっととってみても大変なことではなかろうかと思いますが、この点はどうなんですか。
  374. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 現在でも、新経済社会七カ年計画の参考資料の中に一応の資金計画等も、たとえば貯蓄と投資のバランス等という形であらわれているところでございます。  総理は、これがもう少し詳細な、しかしながら弾力的な、常にまたフォローアップのできるような資金計画をつくっていただきたいと、こんなふうな意味だと思いますので、こういった観点から私ども資金計画についても研究していただきたいと、こんなふうに考えております。
  375. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろ利子の上げ下げの状態やインフレの状態などは、当然これは簡単なものではないわけであります。たとえば、アメリカの異常金利なんかの状態にしたって、これはそう簡単に見通すことのできないものであったはずであります。それが、いまもうちょっと詳細にいろいろそういうものを裏づけたいと、こう言っておられるわけでありますが、たとえば卸売物価なんかの状態を見ましても、五十四年度で対前年一三・〇上昇、五十五年になると一・一でしょう。それから五十六年になると一・三になるわけですね。こういったような上がったり下がったりの状態、消費者物価の方だっていろいろ変動が激しい、こういう状況の中で、経済展望の一つの手法だと言われるのでありますが、総理が言う経済展望の手法で一体そういうことで新しい形のものが成り立つものなんですか。
  376. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、資金計画を詳細につくれと言っているんではないんです。日本ではむずかしいということを言っているんです。ですから、経済社会七カ年計画が破綻したと。二百四十兆を百九十兆に大削減しなきゃならなかった。事ほどさようにむずかしいものであって、資金計画というものを詳細に裏づけることはむずかしいんだと、そういう意味で申し上げてきておる。ですから、より大まかな、より毎年見直し得る、より弾力的な、そういうような、しかし性格を持ったものでなければなりません。どういう国を目指すか、どういう社会を目指すか、どういう国土計画に根差してそれはできているか、そういうようなある程度の具体的骨組みというものはなくてはいけません。そういうものはやはり厳然として必要であると、そう申し上げておるのであります。
  377. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、総理が御答弁になっておられたいわゆるこの長期計画、また資金計画、こういう長期計画の中に資金計画が欠けておったという、こういうお考えはこれはどういうことになるんですか。
  378. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 欠けておったということよりも、資金計画の裏づけが必ずしも十分行われ得ないものであったと、そういう意味であります。それは日本のようなこういう貿易国家の場合において、変動要因が非常に多いですから、正確な厳密なものはなかなかできにくい。しかし、一応はみんな載っかっておるわけです。空港五カ年計画、道路五カ年計画以下、みんな風鈴のようにぶら下がってそれができて、その総計が二百四十兆になり、それが百九十兆に減らされたと、そういうことであります。それはむずかしい、やりにくいことなんだと、だからワイダーバンドみたいなそういう概要的な考え方に立ったものの方がより現実的ではないかと、そういうふうに私はいまのところ考えておるのであります。
  379. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、従来のようないわゆる、大蔵大臣も言っておられますけれども、一つのある程度一定の期間を区切って見通しを立て、そこに計画化しながら持っていくという、そういうものではないということですか、その考え方は。どうも私はよくわからないんですがね。
  380. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは初めて日本でもつくるものですから、新しい仕事に取っ組むので、つくられた輪郭というのはなかなかできにくい。企画庁も非常に苦しんでおるようであり、われわれもそういう一般的な感覚的な輪郭は持っておるわけですけれども、具体的に、じゃそれが第四全総――第四次国土総合計画とどういうふうな整合性を持つであろうかというような点はこれから作業してつくっていくところであります。しかし、自由主義経済で、市場経済を重んじているわれわれの基本的立場からすれば、そういう方面の方がより望ましいと、そう考えておるわけです。
  381. 赤桐操

    赤桐操君 総理は、この計画を四月末までに、経済審議会で委員の任期切れまでにつくりたいと、こう言っておられますが、そういう膨大な初めてのものができ上がるんですか。
  382. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四月末までにつくれなんということは言ったことはありません。それは相当な時間がかかるものだろうと、そう思っておるわけです。
  383. 赤桐操

    赤桐操君 いまのようなお話の中では、残念ながら私はいわゆる計画性を持った一つの展望なり指針と申しますか、そうしたものがいま国民の間から求められているにもかかわらず、それではいささかどうも納得できない。きわめて将来の羅針盤とも言うべきものができ上がらないということになると思うのでありまして、これは残念ながらどうも私どもにはいただけない構想であると、こういうことをひとつ申し上げておきたいと思います。  次に、財政関係の問題に入ります。
  384. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 和田静夫君の関連質疑を許します。和田君。
  385. 和田静夫

    和田静夫君 財政問題の前提で、けさからのちょっと引き続きでありますが、大型間接税を導入されないということは、中曽根内閣が続く限り導入をしないというのか、それとも五十八年度限りのことなのか、総理はっきりさせてください。
  386. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前に国会で決議されました一般消費税(仮称)ですか、ああいう意味のものは、これは採用しないと。しかし、中曽根内閣いつまで続くかわかりませんが、大型間接税と称するものはどういうものであるか、まだ内容もわかっておりません。したがいまして、将来増税の問題がどうなるかということと絡んでまいりますが、いまのところわれわれは、ともかく増税なき財政再建ということを真一文字に進んでおるのでございまして、そういう大型間接税云々ということは考えておらないと申し上げる次第です。
  387. 和田静夫

    和田静夫君 その将来の増税の問題がようやく出てきたんですが、大蔵省の資料では、五十九年度五兆四千五百億円、六十年度八兆八千五百億円要調整額が累積している。これでは幾ら歳出削減をすると言っても限界がある。一方では赤字国債を減らさなきゃならない。そして大型間接税は導入しない、これでどうやって五十九年度以降の予算編成が可能なのか。まさに手品でもやらなきゃならぬのじゃないかというふうに思うんですが、総理いかがですか。
  388. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはやはり私どもは、増税なき行政改革財政再建、これを基本に置かなきゃならぬと思うんであります。したがって、いま和田委員御指摘になりましたいわゆる中期試算の数字、全く無責任な数字であるとは申し上げませんが、一つの仮定計算に基づいたものでございます。したがって、まずはやはりこの増税なき財政再建という、まさに糧道を断ってという言葉が使われておりますが、それをてこにして、まずはこの歳出構造そのものにメスを入れていく、その後現行の政策水準、それを維持するためにどうでも必要だと、こういうコンセンサスの場合、受益者も国民でありまた負担するのも国民でありますので、国会の問答を通じてその後の施策として考えるべきである。だから、手品ではないかと。が、やはり私どもは、それをてこにして歳出削減からかかっていかなければ、いわば国庫担当の、予算の調整権限を持つわれわれとしても、とかくイージーになりやすいということを自粛、自戒していなきゃならぬというふうに考えております。
  389. 和田静夫

    和田静夫君 財政再建を先送りされるということはないわけですか。
  390. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 財政再建の期間がいつぞやと。仮にとりあえずのめどを赤字国債脱却ということに置くといたしますならば、それを数年ということにこれから定めんとするわけでございますが、定めたものをその都度またどんどん先送りしていくというようなことをすれば、国民の皆様方の信頼を失う結果になる。やはり定めたならばそれに対して渾身の努力を傾注していくべき課題であるというふうに考えております。
  391. 和田静夫

    和田静夫君 総理、せんだっての補助金論議の際に、五千数百億整理しましたと断言をされたんですが、再確認できますか。
  392. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの数字はとっさに質問を受けまして自分の記憶の数字を申し上げたんですが、後で調べてみたら間違っておりまして、四千七億円が正当な数字でございました。失礼いたしました。
  393. 和田静夫

    和田静夫君 総理予算審議中にがん対策を打ち上げられたわけですが、予算枠はどうなるのですか。たとえば丸山ワクチンの認可問題などはどうされるわけですか。
  394. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) がん対策は、がんの制圧というのはもう国民的な課題になっているだろうと思います。五十六年からがんの死亡率が日本の死亡率の第一位になってきたことは先生御承知のとおりでありますし、いまや国民的な課題としてこれを取り上げていかなければならない。そのときにがんの発生機序その他の問題につきましてこの原因究明をやることが必要だろうと思いますし、いろいろとお話を聞いておりますと、相当医学的な技術、科学が発達をしてきている。ある人に言わせますと、もう夜明け前だというお話もございます。そういったこともありまして、一刻、一日でも早くこのがん制圧に取り組まなければならないだろうと、こう考えておるところでございますし、総理から特にがん撲滅についてひとつやってみろというお話でございますので、総理の御指示によりまして、先月の二十八日にがん関係閣僚会議を開きまして、専門家の方々にもお集まりをいただいて発足をした次第でございます。  これから専門家の会議を四月の中旬にも第一回をやりましていろいろなことの御議論をいただこう、関係するところの分野は非常に広い分野がございまして、分子生物学の技術が非常に発達をしているということでもございますが、これは分子生物学にとどまらない、関連するところの隣接諸科学のいろいろな方々の協力とそれの動員をまってやらなければならないと思いますので、その具体的な方針を早急に煮詰めたいと、こう考えておるところでございます。  それから、いまお話のございました、丸山ワクチンのお話だろうと思いますが、丸山ワクチンの話は、先生御承知のとおり、五十六年八月十四日の中央薬事審議会の審議の結果、提出された資料の中からはその有効性を確認することができないので、現段階では承認することは適当でない、という答申をいただいております。ただし、この答申の中には附帯意見がございまして、この物質を無効と判断するものではなく、医薬品としてその有効性を確認するためには、引き続き試験研究を行う必要がある、こういう附帯意見がついているわけでございます。  申請者ゼリア新薬工業におきましては、この答申及び附帯意見の趣旨を踏まえまして、現在、丸山ワクチンの規格及び試験方法の検討など基礎的な試験研究を実施中であります。相当著名な大学の教授の方々にもお願いをしていろいろとやっているという話でもございますし、今後これらに基づきまして新たに得られた資料が提出されれば、改めて中央薬事審議会において審議を行っていただくということで考えております。  しかし、丸山ワクチンにつきましては、現在、多数の患者が使用している実績を考慮いたしまして、昭和五十六年十二月二十一日より有償によるところの試験を開始し、患者が郵送などによる方法によりまして引き続き入手できるように配慮をしているところでございます。  もう一つ申し上げますならば、丸山ワクチンの問題は薬事審議会の問題でございます。実際にこの薬をどう使うか、この薬の安定性、有効性というのがどうであるかという問題でございますし、がんの対策の閣僚会議またその専門家会議の方は研究をどういうふうな体制で進めていったらいいだろうかというふうな問題でございますから、直接にこの二つの問題が結びつくものではない、こう御理解いただければありがたいと思っています。
  395. 和田静夫

    和田静夫君 この関係大臣のがん対策で、どういうアイデアをお持ちなのか、また必要な予算措置をどうなさるのか。予算の枠は、総理答弁
  396. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本人が最近がんで死ぬのは、一年間に十六万人だそうです。一日五百人ずつがんで死んでいる。いま、死亡率の最高位に上がってまいりました。ところが、最近の学界の研究が進みまして、特に遺伝子の研究が進みまして、いわゆるDNAというものの解明が進んで、最近の通説ではがんが起こるのは遺伝子が傷つけられた場合に起きてくる、そういうところまでわかってきまして、がん解明の前夜にまさに来ていると癌研の学者等も言っている状態であります。  そこで日本といたしましても、この最大の大きな死亡率を持つものに政治が挑戦すべきであると。挑戦するといっても、学者が研究してその解明に便ならしむるような手だてを政治として講ずる。そういう意味で、先般、閣僚協をつくり、それから十人の専門家にお集まりいただきまして、私も出席いたしまして御意見を承りました。当面やることは、この学者によりまして「対がん十カ年総合戦略」というものをつくっていただこう。そのやり方につきましては、あらゆる面から総合計画を練っていただいて、どういう順にどういう手だてで着手していくか、どういう分野から提携協力しながら攻めていくか、国際的にもどういうふうな連携をどの機関と持ったらいいか、あるいはそれに必要な資金、あるいは研究のマウスの供給、そういうような問題に至るまで詳細な総合戦略を立てていただきまして、それをわれわれがいただいて、今度は閣僚協として予算措置とか各省庁の協力とか、特に科学技術会議が中心でこれ動かしていくことになっておりますが、そういうようなわれわれとしての具体的推進の方途を至急講じよう、こういうことでいま進みつつあるところでございます。
  397. 和田静夫

    和田静夫君 文部、科学技術。
  398. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 概括的なことはいま総理からお話のとおりでございます。  文部省関係は、これは御承知のとおり、どうしても基礎的研究が一番大事でございますが、相当進んでおるそうでありますが、大学における基礎研究あるいは癌研究所における基礎研究、日米共同研究、そういうものを含めまして五十八年度が約七十億と、これを予算としてお願いして進めておる。学術審議会等の意見も聞きながら、いまお話しのように総合的に進めていかなければならないと、かように考えております。
  399. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) いま厚生大臣総理、並びに文部大臣からお話ございましたが、総理から御指示がございまして早速これに対応すると、こういうことで三月の十四日、科学技術会議を招集されました。そのときに総理からがん研究についての具体的対応についての体制を整えよという御指示を受けたわけでございます。早速科学技術会議の方におきましては、ライフサイエンス部会の中にがん研究に関する研究グループ、これをつくる、こういうことを決めました。このグループのリーダーはいま海外へ行っております。早速その問題について行っておるわけであります。いずれにしましても、科学技術会議はこのがん研究に対する戦略の基本的計画を、これを作成しまして、どういう分野にどういう分担でどういう目標で、そういう全体路線を、計画を、戦略を、この科学技術会議のライフサイエンス部会のがん研究推進基本方策分科会が担当すると、こういうことになるわけであります。それを受けまして、いろいろ各省庁の分野があるわけでありますが、科学技術庁として直接いまお話の出ましたのは、総理からお話ございました膀胱がんにつきましては、いわゆるそのがんそのものの遺伝子の究明というものは、これがとらえられたわけであります。これは私たちの理研の方で、当然遺伝子組みかえの中でこれが究明すべき、そういう仕事であると、こういうふうに思っておりますし、これはもう科学技術庁で言いますと、放医研、いわゆる放射線医学総合研究所、これがどのようにこれに対応するか、おのおの分野は今度はっきりしまして、具体的にこれに真剣に取り組むと、こういうことでおのおの各省庁がその体制をいま整えてこれから入ると、こういうことでございます。一生懸命にこれに取り組んでいくと、こういう決意であります。
  400. 和田静夫

    和田静夫君 予算は。
  401. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) 予算の問題につきましては、いまその全体計画、いわゆる基本計画を、そして目標を、戦略をどうしたらどういう形になるだろうか、科学技術会議のこれが出てくるでしょう。そのときにおおむねのラインというものがとらえられるだろう、そのときにひとつ御相談をさせてもらおう、こういうことでございます。
  402. 和田静夫

    和田静夫君 日本経済にとって科学技術はかつてなく大きなウエートを持ってきました。技術開発が私はどうもそれにもかかわらず大規模プロジェクトに偏っている、そういうような感じがするのですが、これはいかに対処されますか。
  403. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) 大規模プロジェクトに偏っている、私たちはそういうように理解はしていないわけでありますが、いまほど厚生大臣からお話ございました、いわゆるこれは国民的課題であると、こういうことでお話ございましたが、また総理の方からもいろいろお話ございました。この前のベルサイュサミット、このときにミッテランさんと鈴木総理と二人の提言によりまして、いわゆる同時不況の中で、今後科学技術、これをてこにしてひとつ再活性をやろう、こういう中で二十のテーマがとらえられました。だから私たちはやはりこのテーマのとり方につきましては、国際的なそういう立場に立って物をとらえる、こういうことも非常に必要になってまいりました、国際協力というもとに。いずれにしましても、しかし大規模のプロジェクトというものはこれは私は絶対やっぱりやらなきゃならない、もう自分だけで一つの分野だけでもってこれは処理できないような今日のいわゆる国際社会の課題である、こういうふうにとらえておりますから、大規模のプロジェクトというものは、われわれ政策選択の中ではやっぱりどうしてもやっていきたい、やらなきゃならぬ、こういうふうに理解しております。
  404. 和田静夫

    和田静夫君 通産大臣ね、レーガン大統領が大型オートバイの輸入規制のために関税四五%引き上げですか、これから五年間。もう発表しましたですな。これは大臣、どういうふうにされますか、対応は。
  405. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはハーレー・ダビッドソンという世界的に有名な大型オートバイの会社が営業不振に陥って、結局は日本のオートバイにやられたんだというようなことで、大統領に輸入規制かもしくは関税引き上げ、関税引き上げをやってくれ、こういうことが、結局大統領がきょうそれを決定したと、初年度四五%という異常な高い関税をかける、それに次の年が三五%、次の年が二〇%、一五%、一〇%と、その間、関税をかけるんだそうでありますが、しかしこれは明らかにガット第十九条の二項に日本側としては該当すると思いますし、その間にも折衝は続けていたんですが、一応大統領の決定をしなければならない日というのがまた決まっていたということもあって、一応あのような結論になりましたことは、事前の話し合い主義をとってまいりました私にとっては大変残念なことではありますが、しかしガットの場の正式な協議、あるいはまた賠償のそれに対する請求、こういうものも進めながら、どうもハーレー・ダビッドソン社は外国のオートバイが入ってくることを規制するためにでしょうか、少なくするために関税を高くしてもらった、そのことによってハーレー・ダビッドソン社が立ち直れるかということになると、あれはどうも日本車のオートバイの影響に押されて経営がおかしくなったんではなくて、体質上どうも八千万ドルとも言われている負債を抱えているというようなことがありまして、日本側の方の企業も相談をさせておりますが、金で済むことならという低俗な発想ではなくて、ハーレー・ダビッドソン社の経営危機に対して関税でかけられてもほっとくか、あるいは向こうにもその気がありますから、日本側のオートバイメーカーで一定の金額をハーレー・ダビッドソン社に払うことによってこの問題がなかったことになるのか、ここらの裏が実はございまして、話し合いをいろいろとさせておりますが、表向きはガット条項に移行せざるを得ないということでございます。
  406. 和田静夫

    和田静夫君 最後ですが、この問題で他の品目の関税を相殺するという対抗措置を大臣の方でお考えになっているというふうに伝えられる向きもあるんですが、そういう場合にはどういう品目を選ばれようと考えているんですか。
  407. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは当然ながら日本側にもそれに対してアメリカの品目を選んで、それに対して同じような打撃を与える報復が認められているわけでありますから、それを考えてみているんですが、そのことはしかし何か前進を生むだろうか、報復合戦になりますから、日米の関係のみならず経済で生きていく日本が、その経済の中で報復合戦を始めたときに、保護貿易主義のいよいよ深淵に陥っていく。やがてはそれが世界経済の縮小となって一九三〇年代の後戻りをするということは私たち国民に対して申しわけのないことである。でありますから感情的には殴り返してやろうかと思っているんですが、ちょっといまこぶしをおさめながら、じっと堪忍袋の緒を締めて交渉中ということをやっているわけであります。その手段は当然日本に与えられておると思っております。
  408. 赤桐操

    赤桐操君 それでは私の方から引き続いて財政関係質問を続けてまいりたいと思いますが、きょうは四月の二日でございます。このまま締めくくり総括が順調に進んでまいりまするというと、明後四日には打ち上がることに相なります。五十八年の会計年度予算がなくても始められることになりますが、これは一体できるのかどうなのか。また、予算空白にどのような責任をお感じになっていらっしゃるか。中曽根内閣としては初めて成立した初の予算がこういう形でスタートを切ることになりますが、総理、いかがでございますか。
  409. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず私からお答えをいたします。  政府といたしましては予算年度内成立を強く期待しておりました。したがって、一昨日の夜中まではそれなりの期待権というものがあり得たと思うわけであります。しかし、残念ながらきょうの事態を招くに至りまして、いま御指摘なさいましたとおり、現実いまのこの時間、言ってみればいわば予算空白の時期と、こういうことになるわけであります。しかし、これまで予算委員会の皆様方の御努力によりまして予算審議が円滑に進められてきたということに対しては、大変心から感謝を申し上げております。したがって、いまの素直な心境を申し述べますならば、可能な限り早く予算が成立して空白期が最小限にとどめられるということにまさに念願といいますよりも悲願を持って見つめておると、こういうことでございます。今回の予算の空白が生ずることになりましたのはまことに遺憾でありますが、言ってみればわずかな期間にとどまるものといま期待をいたしておりますので、空白期間中は前例に従って最小限の財務処理を行うことによって国民生活自体に支障なく対処したいと考えておりますので、この点平に御理解を賜りたいと思っております。しかも、昨年の予算委員長見解というものがございました。その趣旨を尊重して、予算の空白が長期化して国民生活への影響を及ぼすような場合には、暫定予算の提出等各般にわたって適切に対処していかねばならない課題であると。しかし、今日の時点においては空白期間がわずかな期間にとどまるものという期待感がそれに対して先行をしておるということで御理解をいただきたいと思います。
  410. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五十八年度に入りまして、まだ五十八年度予算の成立を見ませんことははなはだ遺憾に存ずる次第でございます。今日に至るまで与野党各党各派の御協力によりまして、政府の不手際にもかかわらず、本日最終の総括質問に入ることができましたことを厚く感謝を申し上げる次第でございます。願わくはこの空白期間を最小限にいたしまして、またその間におきましても政府は適切な財務処理をやりまして、国民の皆さんに御迷惑をおかけしないように全力を尽くしてやりたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げる次第でございます。
  411. 赤桐操

    赤桐操君 会計年度は四月の一日から始まりまして翌年の三月三十一日に終わることになっております。この間予算なしでは一日たりともこれは許されない、こういうことは財政法上きちっと決められておるわけであります。そこで、私はそういう事態を発生させないために、財政法ではきちんと法律で決められておる暫定予算の制度というものが設けられていると私は思うんですがね。これはなぜ、こういうものがあるにもかかわらず、大蔵大臣の御答弁でありましたけれども、期待権を持ちながら予算なしの状態を放置しながらおやりにならなければならないのか、この点私にはわからないのですがね。総理のひとつ所見を伺いたいと思います。
  412. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは赤桐議員百も御承知のように、旧憲法時代はこの空白期が置かれないように、いわば前年度予算を執行すべしと、こういう条項がございました。新憲法になりましてから、そこにいま御指摘の暫定予算という制度があったわけであります。したがって、暫定予算というものの準備を当然のこととしてすべきだと、この意見は私にも理解できるところでございます。  そこで、言ってみれば政府がハウスに対する節度の問題としては暫定予算というもの、これが旧憲法の前年度予算を執行すべきに当たるものであるという理解の上に立てば、これは通さなければならないと、こういう性格のものになってくる。したがって、やはり私どもとしての節度としては期間内に議了していただくということの期待感をまずかけて進むべきものではないか、これが余りにも長期にわたる場合は、これは委員の御指摘のとおりでございますが、まだこの期待権というものを持ち得る範囲内――その辺の議論は非常にむずかしい議論になりますけれども、言っていらっしゃいます趣旨そのものは、私は、降参しますというとちょっと表現悪うございますが、御説のとおりであると思います。
  413. 赤桐操

    赤桐操君 これは降参されても困るんでありますが、私はこれ五十年代をずっと見たんですけれども、全部年度を越えちゃっておるんですね。いずれも四月に入ってから成立をしている、こういう状態でございます。こういう状態がいつまでも続けられていってよいのかと、こういう立場に立って御質問申し上げているわけです。これは私どもの方の矢田部委員から過日質問をされているわけでありますが、きょうは総理もおいでになっておりますので、この点はひとつしかと私から伺わなければならないと思って、改めていわば繰り返しの質問になりますけれども申し上げるわけなんですが、大変私はこの五十年代をずっと見まして、まことに節度のない結果になっているということを言わなければならない状態にあると思うんですね。これはもちろん総理御自身としては大変大きな責任を感じておられるとさっきお話がございました。少なくとも財政法上許されないこういうことをやっていくということについては、憲法七十三条の項を引っ張り出すまでもございませんで、これは重大な責任が伴うものだと思うんですね。そういう意味で私はひとつ、当初お述べにはなりましたけれども、そういう五十年代全体を貫いて考えてみた上で、私は改めて総理にお伺いするんですけれども、お考えはいかがでございますか。
  414. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように新年度に入りながらなお予算成立を見ていないということははなはだ申しわけない事態でございまして、深く遺憾の意を表する次第でございます。こいねがわくは最小限にこの空白期間をとどめまして、国民の皆さんに御安心のいくように努力してまいりたいと思う次第でございます。
  415. 赤桐操

    赤桐操君 私は、昨年私どもの方の竹田委員がこの問題を取り上げて予算委員会で真剣に質問をされたと思うんです。そのとき総理は同じ内閣に入っておられてこれを当時の鈴木総理と御一緒に聞いておられたと思うんですね。したがって、私は鈴木総理がどんな答弁をされたかということについては十分に御承知のはずだろうと思うんです。その上に立って、いま内閣を組閣されて総理という最高の責任の立場に置かれて、こういう事態を再び私は招来しているわけでありますが、ここに至るまでの間にどういう御努力をなさいましたか。
  416. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昨年におきましては、予算委員会においてたしか植木予算委員長から大変きつい警告の言葉を内閣はいただいたと思っております。ことしはそういう事態がないようにと思いましていろいろ努力もいたしてみましたが、非力のいたすところ予定どおり進行いたしません。いろいろ政府の不手際等もこれあり、そういう事態になったことをはなはだ遺憾に思う次第でございます。
  417. 赤桐操

    赤桐操君 前鈴木総理は、予算の空白が避けられないということが予見された際においては暫定予算を編成して御審議を願う、こういうことをかたく約束をされているんですね。ここに私も議事録持っておりますが、これ明確に出ておるんです。私は、先ほど予見ということを言っておられましたけれども、五十年度以降ただの一年もこれ空白が起きなかったという年がない。こういう実情の中で、当然ことしも衆議院の予算通過の時点で、この空白が発生するだろうということは予見されたと思うんですよ、現実の問題で。その時点で少なくとも暫定予算の準備を万一に備えて備えられるということが当然だと私は考えるんですが、この点はいかがですか。
  418. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、そのいまの立論を私は否定する考えは全くありません。ただ、私なりにいろいろなむずかしいところでございますのは、いわば自然成立要件を仮にもし具備をしたという状態の中で本院で御審議が始まったという場合、あるいはそれに何日かずれ込んだ場合、その場合に、もとより部内の準備はこれは進めなきゃならぬ問題であると思っております。しかしやはり、それ以前に私は、年度内に議了していただくというためのわれわれの精いっぱいの答弁等に対する努力、そして大きな期待感というものとの兼ね合いで、結局率直に申しますと、印刷行為そのものに入らなかったというところで、これはやっぱり非常に私は、昭和五十三年以来三日、二日、三日、一日、四日と、こういう空白期間ができております。その都度毎年この問題で悩むところでございますが、基本的な趣旨はやはり昨年の委員長見解にも盛られ、そしてただいまの立論に基づいての御議論にあったということについてはまさに遺憾の意を表する、これに尽きると思うのであります。
  419. 赤桐操

    赤桐操君 それでは総理にお伺いいたしますが、前鈴木総理の御答弁をいただいておりますけれども中曽根総理はこのお考えどおりでよろしいですか。
  420. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 万やむを得ざるときには当然暫定予算を用意しなけりゃならぬと思います。しかしながら、政府は国民の皆さんに迷惑をかけないように、できるだけ空白の期間を今日といえども最小限にするように努力いたしまして、そして国民の皆さんに安心していただくことが本旨であると考えております。
  421. 赤桐操

    赤桐操君 前鈴木総理答弁の内容をもう一度私読んでみたいと思うんです。「先ほど来るる竹田さんから御指摘がございまして、私どもも反省をいたしておるところでございますが、予算の成立が新しい年度の開始後にずれ込む、予算の空白は避けられないと、こういうことが予見されました際におきましては、暫定予算を編成をし御審議を願うということはこれはごもっともなことでございます。私どもは今後十分そういう点につきましては注意をいたしてまいりたい。」、以下書いてあるわけですね。これでよろしいわけですか。この点ひとつ再度御答弁願いたいと思うんです。
  422. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鈴木前総理が言っている趣旨のとおりであると思います。
  423. 赤桐操

    赤桐操君 私は予算委員長にも一つお願いがございます。  五十七年度予算審議の最終段階で、少なくとも昨年与野党が一致して、こうした見解を踏まえて植木前委員長が、暫定予算を提出し、参議院の予算審議権の確実な保障を政府に要請いたしたわけでありますが、昨年に続いてことしもまた同じ事態を招いている、こういうことにつきましてまことに私は遺憾であると考えるんです。  委員会並びに委員長の権威からいたしましても、二度も続くということは、昨年あれだけの討議をいたし、あれだけの確認をしながら今回またこういう結果になったということについては、大変今後に大きな問題を残していると思いますが、委員長の御見解をひとつ承りたいと思うんです。
  424. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 私も昨年予算委員会の理事を務めさしてもらっておりまして、その問題につきましては十分理解をしております。今後、政府に対しましても、委員長といたしまして審議日数が確保でき得ますように強く要望いたしてまいります。
  425. 赤桐操

    赤桐操君 以上をもちまして、暫定予算問題を終わりたいと思います。  次に、財政再建の方法について若干不明確な点がございますので、この点ひとつ伺っておきたいと思うんでありますが、臨調では増税なき財政再建をわが国の今後の再建の最も大きな基本柱に据えておる、こういうように私たちは考えておるわけでありますが、総理、行管庁長官の御見解をひとつ伺いたいと思います。
  426. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 土光臨調の第一次答申以来第五次答申に至るまで、増税なき財政再建という根本方針は堅持していかなければならない。この増税なき財政再建をてことして行政改革をやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございまして、この方針は先般内閣において最大限に尊重するということを決定をいたしておるわけでございますので、今後とも増税なき財政再建というものを基本方針として進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  427. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 齋藤行管庁長官が申し上げたとおりでございます。
  428. 赤桐操

    赤桐操君 この増税なき財政再建という臨調の答申でありますが、国民の皆さんが一番期待されているのはやはり増税なき再建だろうと思うんですね。この点についてはまさに国民の期待をするところであります。これを裏切るようなことはございませんか。
  429. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) この方針につきましては、政府としては最大限に尊重するということを決定をいたしておるわけでございますから、この方針を守ってまいる、かように考えております。
  430. 赤桐操

    赤桐操君 いまの言葉の中にも出ておりましたが、本委員会質疑を通じまして政府がしばしば申しておられることは、増税なき財政再建を歳出削減のてこに使うという答弁であります。これは少なくとも、ちょっと本末転倒しておるのではないだろうかと思うんですが、政策運営の基本姿勢というものからするならば、万難を排して政府の努力によってこの増税なき財政再建そのものを図るべきだと私は思うんですが、この点はいかがですか。
  431. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 臨調の最終答申にもお書きになっておりますように、「そのような行政改革を推進するテコとして当調査会が掲げた方針が、「増税なき財政再建」にほかならない。すなわち、予算編成において、いわば糧道を断ちつつ、歳出の削減によって財政再建を図る限り、」、だから、まさに私はこの意味におきまして増税なき財政再建というものは理念であり、てことして堅持すべきものであるというふうに考えております。
  432. 赤桐操

    赤桐操君 歳出削減だけに重点、もちろんこれはすることに対しては結構でありますが、それだけがすべてであって、そして、それが少なくとも増税なき財政再建を、これをてことして使う、こういう立場に立っておるためにいろいろとまた弊害も出てくると私は考えるんです。  その第一は、いろいろ論議の中でも出ておりましたが、ツケ回し、後送り、こうした問題が予算編成の後に必ず出てくる。その弊害が起きることを反省しなければならないと私たちは考えるのでありますが、この点についてはいかがでございますか。
  433. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさにそのことも指摘されておるとおりであると思うのであります。  御審議賜っております五十八年度予算、これで五十六年度のいわば繰り戻しのものがございますので、言ってみれば税外収入等を従来に比してたくさんお願いをしておりますが、あくまでも、諸施策を行うに当たってそれが一時的な、一時逃れと、したがってそれがまた後年度にツケを回すという性格のものは断たなければならないという御指摘もいただいておりますので、拳拳服膺すべきものであると考えております。
  434. 赤桐操

    赤桐操君 私は、申し上げたいと思うことは、結局一時的に当面いろいろと形だけつくり上げて、本当の意味における財政健全化の方向を打ち出すことができない、こういうことになってはならない、こういうように考えるわけであります。  次に、歳出削減のてことして増税なき財政の再建、これを次の第二の弊害として考えることは、まさにこれが削れなかった場合どういう問題が出てくるか。事実上、後に後にいろんな問題が発生して、負担の増加がやがて出てくる。具体的に申し上げれば、増税や保険料の引き上げやその他各種の値上げ、こうした問題が考えられるわけでありますが、こういう危険はないのか。第二臨調や国民が一番期待しておることは、増税はしないという不動の大目標達成のために諸般の施策を徹底してやってほしい、こういうことだと思うんですがね。この点はいかがでございますか。
  435. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、いまいわば歳出というものの必要性を前提に置いての御議論、これもまたそれなりに私は筋の通った議論だと思うのであります。  私どもは、やはりまずは、申しましたように、その「糧道を断ちつつ、」という姿勢の中にこの財政再建というものに、それをてことし、基本理念として取り組んでいくと。そして、やっぱり国権の最高機関たる国会におけるこういう問答等を通じて、現行の施策、制度、水準をすべてこれは残すべきだとかいう議論に対してある種の合意を見た場合、初めて、負担する者も国民であり、受益者もまた国民であるという考え方で負担増の問題というものが議論されてくる、そういう手順を踏まなければできない、こういう考え方に立っておるわけであります。
  436. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろと御答弁を聞いておりますと、中曽根内閣の増税なき財政再建というものは、結局はこれを主張しながら、やがて実は増税の逃げ道をつくりつつあるような感じがするんです、率直に申し上げまして。これが国民の皆さん方が疑問に思っている点であるし、臨調もいろいろと注目している点じゃないかと思いますがね。そういう意味で、少なくともこういったいわゆる国民の不安というものを抱かせるようなそうした姿勢ではなくて、これが払拭できるという、そういう状態の中でなければ私は国民の協力は得られないと思うんですが、その点いかがでございますか。
  437. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱり負担していただいておる方はこれは国民であります。だから国民の皆様方に、したがって五十八年度予算編成に当たりましても、そういう基本的考えを踏まえて、とにもかくにも一般歳出で昨年同額以下にこれをお願いして御審議をいただいておる、そういう歳出に対する厳しさというものが、国民の皆様方にまず御理解をいただかなければならない問題のまず一番最初にくる点は、その点ではないかという基本理念で進めていかなければならないと思っております。
  438. 赤桐操

    赤桐操君 それでは、次にひとつ景気対策の問題に入ってまいりたいと思いますが、政府は四月の六日に景気対策を発表するということでございますけれども、なぜ四月六日に発表されることになるんですか。この点ひとつ伺いたいと思うんです。
  439. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御承知のように、予算はまだ成立していないところでございます。しかしながら、今年度経済見通し三・四%をひとつぜひとも確実に達成したい、さらに昨今の経済事情にはなかなか厳しい要素がある、こんなようなことで、ひとつ経済の活性化の対策をとっていただきたいということで、いま二回にわたりまして関係閣僚と与党の幹部との間で項目的に打ち合わせしているところでございます。  六日というのは、いま申しましたように、予算成立後、予算によらないで、よらないといいますのは、追加予算とか補正予算とか、あるいは新しく法律によらない行政権に任された範囲内においての経済の活性化を図ろうという意味でございます。
  440. 赤桐操

    赤桐操君 いま予算の審議のさなかなんですね。なぜここで発表され、ここで論議をさせるようにしないんですか。少なくとも予算委員会というのは、私どもは茶番劇をやっているわけでもございませんし、こうした景気の問題についても大変な論議を重ねてきているわけです。その中で、いろいろの御答弁は繰り返されておりますが、終わってからなぜ発表をしたり、いろんなことをしなくちゃいかぬのですか。大蔵大臣よくおっしゃっておられるように、問答を集約しながら、そして私どもは確立をしていきたいと、こう言われるんでしょう。問答を重ねてきているんですから、何も六日を待たずに、ここで明確な政府考え方を明らかにされることが、むしろ立法府の立場として、大きくこれは、これ将来のために立法府と行政府との関係考えても、そういう形をとるべきものじゃないかと私は考えるんですが、大蔵大臣いかがですか。
  441. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは予算に対してと申しますと、端的に申しますならば公共事業の執行の問題等があるわけでございます。この問題につきましては、従来ともその方針に対する議論、それはいたします。が、やっぱり今日予算が審議されておる、その具体的執行については予算が通った後発表をする、これは個所づけ等を含めてもそうでございますが、それがやっぱり行政府として最善最良のものと信じつつも、いま御審議いただいているわけでございますから、その後に出すというのが、やはり行政府の立法府に対する節度、守るべき節度というものではないかな、こういうふうに考えております。そして、こうして問答をやっている景気対策そのものをまさに集約して発表をすると、こういう意味においても私は一つの適切な措置ではなかろうかというふうに考えております。
  442. 赤桐操

    赤桐操君 いま、せっかく予算委員会のさなかですよ。この中でむしろ発表をして、さらに問答を加えた中のものを一つの政策としていくということが本来のあり方じゃないかと私は考えるんですかね。いろいろ物の言い方はあるかもしれませんが、少なくともそういう形でなければ本当の意味における議会制民主主義というのは育たないんじゃないんですか。いまのような形で、予算が成立した後で、一切の審議その他を終わった後に、予算予算、この執行は執行と、別な形で政府がおやりになるということについては、私どもには納得できないが、この点いかがですか、総理
  443. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは赤桐委員、なかなかむずかしい問題でございまして、かつての議論の中には、いわば二院制度になっておって、まあマジョリティーの問題を別に考えますとあるいは異なった議決が行われるという可能性ももちろん法律論上はあり得るわけですね。したがって、あくまでも前提を置きながらいつでも答えなければならない、それが節度だと思っておるわけです。だから、いわゆる景気対策に対する論争は、きょうもこのようにして行われておるわけでございますから、仮にもし赤桐委員の方で、政府景気対策についてかくかくしかじかのものについてどう思うかと、これはもちろん議論になるところでございますけれども、やっぱり予算というものを最善最良として御提案し審議していただいておるという限りにおいて、御要求のないまま、原案どおり通ることを前提としての議論をお願いするというのは、これはやっぱり私は、立法府と行政府の節度の中から言えばむしろ非礼に当たることじゃないかなと。これは何回も議論した問題でございます。
  444. 赤桐操

    赤桐操君 まあいろいろ論議されてきた問題でありますけれども、少し端的に申し上げますと、予算委員会が終わって――それまでの間はいろいろの議論が出る、終わった後で政府政府なりの立場でいろいろとおやりになると、どうもそんな感じがするんですね。たとえば昨年度予算が終わったのは五日だったと思う。七日の日に二兆円を超えるところの穴があいた、歳入欠陥が出たということを大蔵大臣が明らかにしたじゃありませんか。その後の大蔵委員会の説明の中では、わが方の質問に対して、五十八年度は四兆円ぐらい超えるかと聞いたら、そのくらいになるかもしれぬと、こういう言い方でしょう。たった二日の差ですよ。なぜ、予算委員会のさなかに、そういうことが明らかになっていながらこれを伏せておかれるんですか。私は大きな問題だと思うんですよ。こういう過去の例から考えてみても、私どもの方でどうも感ずることは、とにかく国会は国会で通しておいて、終わった後で、政府政府の立場で、これはまあひとつ別の立場で運用していこうと、こういう感じがしてならないんですね。これ、去年の予算が終わった後の例を私は一つ例として申し上げたわけですが、恐らくどの委員もそういうことを感じながら討論をしていると思うんですが、この点いかがですか。
  445. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 恐らくいまおっしゃいましたのは、まあ言ってみれば、歳入欠陥問題が予算審議が終了した直後にかなり規模の大きいものを発表したんじゃないかと。私はその点確かに昨年――まあいままで三回ぐらい例がございますが、確かにいわゆる大幅の歳入欠陥というものが、ある種の予知し得る段階に来ておる時期だと思うのであります。ただ、今年のように、言ってみれば三十兆といたしまして、仮に一%を誤差の範囲内とでもいたしましょうか、その中で見込み得るかどうかという、ある種の期待感を持ちながら持っておるときと、大変に大きな乖離が生じたときは、まあやはり発表する時期、予見する時期というのもおのずから違うんじゃないかなと。昨年の場合は、私は、すでにいまのような段階においてかなりの見込みがつき得たからそういう御発表があったんではないかというふうに感じております。
  446. 赤桐操

    赤桐操君 いずれにいたしましても、これはいままでいろいろ論議が重ねられてきた問題でありますから、重ねて私はこの点をひとつ強調して先へ移りたいと思います。  経企庁長官に伺いたいと思うのでありますが、景気対策の目的はどういう目的でお考えになっていらっしゃるんですか。先ごろの審議では、日本経済は回復過程にあると、こうおっしゃっておられる。それからさらに三・四%の成長についても自信を持っておると、こう言われている。だとするならば、年度がわり早々になぜこんな大型な景気対策を打ち出さなければならないのか。景気が急変をすると、こういう事態でもあるのかどうなのか、この辺ひとつ伺いたいと思います。
  447. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) ここでたびたび申し上げておりますように、現在の経済の現況は確かに厳しいものがある。しかしながら、在庫調整の進展、あるいは円高、あるいは金利水準等に明るさが見られる。したがって、私どもは五十七年度の実績の三・一%見込み、これはもう達成できるという見通しは持っております。  しかしながら、三・四%の五十八年度の見通しは、これからの問題でございます。一応の五十七年度の達成によってその基盤は固められたと思うのでございますが、私どもはより確実な経済成長を達成したい、そしてまた、国民のいま持っておりますところの先行き不透明感、こんなような不安をなくしたいと、こういう趣旨でございます。  かてて加えて、御案内のように公共投資は五十六年も五十七年も前倒ししたような状況でございます。こんなようなことを考えてみますと、いま大変大型だと申されましたが、今度の景気対策は、景気対策と申しますか、むしろ経済総合対策と言った方がいいかもわかりません、そのように名づけられておりますように、つまり日本経済の体質を変えながら、中長期的な観点を加えての、たとえば規制の緩和にあらわされますような形での、一つの経済の活性化の方向でございます。したがって、このような形で持続的な、安定的な成長に持っていきたい、こういう趣旨でございますので、これが大型というふうな気持ちは私どもは持っておりません。
  448. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、三・四%のこの見通しについては自信を持っていると、こういうことになるんですか。
  449. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は、三・四%という見通しは、先ほど申し上げましたような理由から、達成は可能であると考えるのでございますが、より確実な達成の方途をとりたいと、こういう趣旨でございます。
  450. 赤桐操

    赤桐操君 いままでの経済見通しとか経済運営の基本的な態度の中には、こうした対策はどこにも出ていなかったわけですね。急にこれは出てきているわけであります。だから、私どもの受け方としては、何でこんなに急に出てきたのかなと、三・四%の達成も困難になってきたのかなと、こういうように受け取るわけですが、その点は大丈夫ですか。
  451. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は、三・四%の達成は自信を持って言い得ると思います。
  452. 赤桐操

    赤桐操君 この景気対策というのは、景気を引き上げることに役立たなきゃならぬわけでありまして、そのための具体的なものが出ていなければ景気対策にならないと思います。ただ項目だけ並べてもこれは景気対策ではございませんので、少しその内容について伺いたいと思うのでありますが、どうも景気浮揚に役立つような、そういう内容になっているのだろうかどうなのか、こういうふうに私ども感ずるんですかね。せいぜいいって公共事業の前倒しぐらいじゃないのかと、中身が一体どんなものなんだろうかと、こういうように実は疑念を持っているんですが、この点ひとつ御説明願いたいと思うんです。
  453. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) まだ決定はいたしておりませんし、項目での段階の検討の状況でございます。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕 当面の課題といたしまして九項目、そして、今後取り組むべき課題といたしまして三項目、といったような項目が新聞紙上をにぎわしているところでございますが、私どもは、これを全般といたしまして先ほど申し上げましたような相互関連を持った、一つの経済活性化のための持続的安定に向かうための方策だと考えております。
  454. 赤桐操

    赤桐操君 その中にも大分強く打ち出されているようでありますが、公定歩合引き下げなどの問題も出ておりますが、まあ日銀総裁も大変頭を痛めておられるように答弁をされておりますけれども、そういう状態の中で果たしてこれは景気対策としてどれを中心に一体これを受けとめていいんだろうかと、午前の質問にも出ておったと思いますが、改めてひとつこれは伺いたいと思うんです。
  455. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) どれを中心としてと申されると大変答弁がむずかしいわけでございますが、私は九項目、そしてまた検討の三項目、いずれも関連を持った、重要な施策だと、こういうふうに考えております。
  456. 赤桐操

    赤桐操君 たとえば住宅建設の項などを見ましても、金融公庫の融資の円滑化が取り上げられております。しかし、この程度の、まあ何が円滑化を意味するのかちょっとわかりませんが、これもひとつ御説明願いたい点でありますが、いままで公庫融資に円滑さが欠けていたのかどうなのか。この点もょっと私もよくわかりません。  そのほかあと、宅地の供給の円滑さのためには、線引きの見直しとか、地方自治体の開発指導要綱の是正、こうしたものがあります。あるいはこうしたものについてはいろいろの考えがあって打ち出されていると思うんでありますけれども、どんなふうにこれは具体的に進めていかれるのか伺っておきたいと思いますがね。
  457. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほど来たびたび申し上げておりますように、まだまだ項目の段階でございまして、これはこれからひとつ肉づけをし、具体的な形として打ち出したいと思っております。  いまのような住宅建設の項目につきましては、三つばかりの項目が挙がり、なお規制の緩和の形として二つばかり項目が挙がっているところでございまして、これはこれからひとつ詳細に検討していくわけでございますが、先ほど御指摘の住宅金融公庫の問題につきましては、御案内のように、公的資金によるところの住宅建設は、増改築を含めて、最近は好調でございます。それをなおより適切な方策で進めたいというようなことで、建設省を中心として具体的にいま検討をしていただいているところでございます。
  458. 赤桐操

    赤桐操君 建設大臣に伺いたいと思いますが、住宅建設はいろいろ内容的にあると思うんです。私の認識をもってすれば、四期五計の中の住宅建設が順調にいってない理由の最大のものは、民間の自力建設が進まないことだろうと思うんですね。私はそう理解しております。いま経企庁長官は大変順調に進んでいるとおっしゃっているのですが、大体日本住宅の大半は民間の自力建設ですよ。住宅政策の景気浮揚や何かに役立つための政策ということであれば、自力建設が促進されなければ、今日の状態ではそう大きな影響を持つには至らないだろうと思うんですね。どういうような御理解の中で長官が御答弁になっているんだか私はわかりませんが、私がいまお尋ねしているそういう形の中で進んでいると思うんですが、建設大臣の御認識はどうなんですか。
  459. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 公的住宅資金の問題につきましては、いろいろ制度上、税制上改善をいたしまして、相当需要がふえてきておるということも事実でございますが、先生御指摘のように、民間金融機関のいわゆる住宅ローン関係が最近伸び悩んでおるということもまたこれ事実でございます。したがいまして、そういった民間金融機関のローン関係住宅促進、こういった意味も含めまして、経済対策閣僚会議等でも議論になっておるところでございます。したがいまして、それはいま建設省では検討中で、いろいろと関係方面とも相談をいたしておるというところでございます。
  460. 赤桐操

    赤桐操君 私は、少なくともこの住宅建設の一つの例をとってみても、たとえば公共用地のいわゆる公的負担分などを地方公共団体にかぶせてみたり、あるいはまた線引きを若干見直してみたところで、私はこれは住宅建設の促進にはならないだろうというふうに感ずるんですかね。経企庁長官いかがですか。
  461. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、私はそれだけで住宅建設が格段に進むとは思いません。公的資金によるところの住宅建設、並んで民間自力建設、さらにまた増改築、統合的な広範な政策が必要だと思います。
  462. 赤桐操

    赤桐操君 先般の総括の中で、私の質問に対して総理答弁されておりましたが、公共投資の公共関連関係の費用について、住宅宅地関連公共施設整備促進事業費というのが盛られております。これはこの前の中で明らかにされていると思います。きょうはこれには触れませんけれども、これを設置した理由は、少なくとも公共的な負担分まで一般の入居者に負担させるということは本来あるべき姿でないと思うので、とりあえず予算の範囲内でそういう措置をとったのだろうと思うと、こういう答弁をされておりますね。私は、やっぱり問題は、公共投資のこうした公共関連の費用というものを本格的に組まなければ、本当の意味における住宅政策にはならないだろうと思うのですね。  諸外国の例を私はこの間申し上げたわけです。あるいは金利の面についても、日本の場合においては、なるほど金融公庫の問題で引例されますけれども、実際にはそのほかに自分でいろいろの費用を借りておりますね。そうすると、金利全体の負担というのは大変高いものになってくる。それがまた造成されていく過程の中で、建築されていく過程の中で、金利負担というものが大変多額なものを使っておる。大体諸外国の例で申し上げれば一ないし三%ですよ。これは西独においてもフランスにおいてもそういう形で出てきておる。  こういう状況などから見ましても、どうもわが国の住宅政策一つとって見ても、本当の意味における景気政策のてこにするようなものになっていないんじゃないか。若干期間を延ばすとか、あるいは事業家の方に対する、企業の側に対する対策を緩めるだけであって、本当の買う方、建てる方、入居者の方の側に立った政策というものが出ていないんじゃないか、こういうように私は考えるのですが、この点いかがですか。
  463. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 住宅建設につきましては、公的資金を使う面と民間金融を活用する面と、また公営住宅とこういった三本立て。持ち家にしましても二通りあって、公団その他いろいろ住宅政策についてはやっているところがあるわけでございますが、先生の御指摘のような面も確かにあると私どもも思います。  しかしながら、その取得能力といいますか、取得能力と実際の宅地の単価というものとがいま非常にアンバランスになっておるということもまたこれ事実でございまして、そういった面を解決するという意味からいきますと、長期的な立場に立って見ますと、線引きの見直しであるとか、あるいは都市の再開発であるとか、いろいろの方途を講じながら解決をしていかなきゃならない。また、さしあたり宅地の供給を必要としない増改築、こういった面も大幅に促進をして皆さん方の御要望に沿おう。こういうことも一つの住宅政策の大きな面ではないかと思っておるわけでございます。
  464. 赤桐操

    赤桐操君 いま都市再開発の問題が出されておりますが、こうした点についても、先般何か新聞で報ぜられるところによりますると、山手線の内側の方に住宅を五階建て以上にするという何か新聞記事が出ておりましたけれども、いずれにしても、こういった都市再開発の問題をやっていくためには条件整備の検討が当然必要になってまいります。この条件整備の内容を一体いつごろまでに検討を終了するのか、あるいはまた実行するために必要な法律改正というものはどんな措置をするのか、こうした問題について伺っておきたいと思います。
  465. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 大変重要な問題と考えまして、私ども企画庁の中におきまして、各省と連絡をとりながら、法の改正はもちろんでございますけれども、広く検討をしているところでございます。できる限り早く、何としても総合経済対策の一つでございますので、早目に見通しをつけ、法律の改正が必要とするものにつきましては法律の改正案の手続をいずれまたとらせていただきたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
  466. 赤桐操

    赤桐操君 いま私は、いろいろ金利の問題であるとか、あるいは住宅政策の問題であるとか、こうしたものを取り上げて伺いましたけれども、九項目全部伺う時間もございませんので、とどめたいと思いますが、こうした一つの例をいろいろお伺いしてみても、打ち上げられたものの裏づけというものはないんですね、率直に申し上げて。私は、こんな程度住宅政策なんか進められないと思うのですよ。この中の柱で大きな影響力を持つのは、公共投資の問題もあるし、住宅政策の問題もあるし、金利のいろいろ引き下げの問題等もあると思いますが、一番大きな影響力を持ってくる一つとして私はいまお尋ねしてみたんです。しかし、残念ながら、その裏づけというものは準備されていない、こういうように私には考えられるんです。いささか宣伝だけは大きいけれども裏づけが伴っていない、そういう発表じゃないかと思うんですがね。いかがですか、この点は。
  467. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私どもはそのように考えておりません。住宅政策におきましても、先ほど来申し上げておりますように、住宅金融公庫の融資の円滑化という形で、私どもはもう何としても公的資金によるところの住宅建設を進めたい。もうそろそろ第一回の募集をするようなところでございます。こんなようなことからひとつ具体的に進んでまいりたいと思います。  それから住宅金融ローン等につきましては税制改正が今度でき上がったわけでございます。これを活用するほかに、新聞に出ておりますように、住宅金融ローンの形態、たとえば期間の長期化あるいは利子等に変更が行われている、こんなことがありますので、具体的な裏づけもだんだん整ってくる、私はこんなふうに見ております。
  468. 赤桐操

    赤桐操君 私は特に西ドイツの例を申し上げるわけじゃないんですが、最近大変西ドイツでは住宅政策についてかなりの思い切った手段を用いているようであります。一九八三年の西独の予算を見まするというと、住宅投資関連支出に充当する目的で、これは思い切った資金対策をとっております。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 高額所得者に対するところの課税、これを財源といたしまして、二千五百億を超えるところの資金をつくっているじゃありませんか。これは御存じだろうと思うんですがね。  しかし、こういう対策から私たちは考えるんですけれども、それならば本当に売れる住宅をなぜつくらないのかと、こういうことになってくるんですよ。売れる住宅をつくるためには、価格を安くしなければつくれないということをこの間私は申し上げたわけだ。そうでしょう。皆さんの所得が上がるか、あるいはいまの所得でも買えるようなものにするか、いずれかをとる以外にないと申し上げたはずだ。その方法もあるということを申し上げておる。御答弁の中で、関公費に対するところの予算が現在一千億ですね、五十八年度。これをさらに倍加して、西独におけるところの二千五百億程度のものにこれをひとつ引き上げていくとか。本来ならこの関公費は現在ただいまでは千五、六百億になっているはずですよ。それを一千億まで上がってきたところでとめてしまった。これをあのまま進めていれば一千五、六百億になっている。そこにもう一千億ぐらい上積みして、こうした政策をとりますというなら、話はまだわかるんですよ。しかし、いまのような程度お話では、これは残念ながら住宅建設になりませんよ。七百七十万戸を四期五カ年間でやろうとしたって、とてもじゃないが、それは実現することができない。  こういうように考えると、いささかどうも宣伝は大きいし、鳴り物入りではあるけれども、内容が大変整わないものではないのか、こういうように私は申し上げねばならぬと思うんですよ。いかがですか、この点は。
  469. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 四期五計は、先生がおっしゃるとおり、目的を達成できないかとも思いますけれども、いろいろな改善措置をとりまして、全力を挙げていま住宅建設に鋭意努力をいたしております。したがいまして、できるだけその目標に近づけるように、われわれはがんばらなきゃならぬと、こう思っているわけでございます。
  470. 赤桐操

    赤桐操君 率直に申し上げまして、金利を下げようとして大分御努力をいただいているようでありますが、これも結構でありましょう。あるいは住宅の問題についても、ふやそうとして御努力をいただいているようでありますが、これも結構でありましょう。しかし、金利を下げましても、あるいはまた宅地をふやしてみたところで、設備投資をするような企業も出てこないし、住宅を建ててくれる人もないということになれば、これは残念ながら、政府のただ考えて絵にしただけの政策に終わるんじゃないんですか。どうもいままでの御答弁を聞いているというとそんな感じがする。これでは私は問題にならないだろうと思うんですね。これだけの政策を掲げながら、大変重要なことを一つ落としているじゃないですか。  これはこの一、二年間真剣に論議されている問題です。可処分所得が一つも上がらないということですよ。上がらなければ買うことできないでしょう、どう考えても。住宅の例をとるまでもありませんが、いま三千五百万から四千万のこうしたものを労働者が買うことができますか、現実の問題。幾らに下げれば買えますか。これを計算されたことがありますか、企画庁長官は。ないでしょう。私は、そういう本当に買えるものは何だというところから計算をし、設備投資にしても、中小企業に対してどれだけの効果のあるものをすれば、中小企業は本気になって投資に応じていくのか。こうしたところまで真剣に考えたものでなければ、こんなものは画餅ですよ、率直に申し上げて。  そういう意味合いから、私はもう一つ忘れられている具体的な可処分所得の問題についてひとつ入ってまいりたいと思うのであります。時間の関係がございますので要約して入りたいと思いますが、ことしは残念ながら人事院勧告が凍結の中で終わったわけであります。そして新年度を迎えてしまいました。これは衆議院の場合においても参議院の場合においても、私どもは声を大にしてその実施を迫ったわけであります。あるいはまた仲裁裁定にいたしましても、残念ながら完全実施には至らなかった。労使の間でこれはいろいろと論議を尽くし、そしてまた私ども政府がこれに対して対策をとるべきだということも主張してまいりましたが、残念ながらこれも完全実施には至らなかった。  こういう形の中でともかくひとまず年度を越えたわけでありますが、これは民間のたとえば労使関係の例で言うなれば、労働大臣に伺いたいと思いますが、少なくとも労使がお互いに合意に達して調印を行い、ここに協定ができ上がったときに、この協定を経営者側が履行しないと出たときに、労働大臣、どのような御処置をなさいますか。
  471. 大野明

    国務大臣(大野明君) 協定は履行するものであると考えております。
  472. 赤桐操

    赤桐操君 それを一方的に履行しないと経営者側が言ったときどうなさるか、こう質問しているんですよ。
  473. 大野明

    国務大臣(大野明君) 要するに賃金不払いの問題でございますから、その場合は監督署等を通じて処置をいたしたいというふうに考えております。
  474. 赤桐操

    赤桐操君 これは協定違反として御処置をなさることになると思うんですね。時間がありませんからはっきり申し上げますが、同じことでしょう。  人事院勧告や仲裁裁定というものが出されるに至った今日までの歴史的な経過から見るならば、民間におけるところの労使関係のこの関係が基準になってつくられてきているはずですよ。ですから、少なくとも仲裁裁定というものが決まった以上は、これは完全に履行されるのがたてまえですよ。これを政府やあるいはそれぞれの公企体の使用者側が履行しないということは、そういうことは許されないことじゃないですか。  人事院勧告に至っては、法に示すとおり、年一遍政府並びに議会に報告ないしは勧告をすることになっている。これは少なくとも民間のいろいろそうした状況等をも勘案して出すことになっておりますが、公務員の立場というものは、先ほど当初にお尋ねしたところの民間の労働組合、労働者、こうしたものが持つところの労働三権を持っていない。抑圧されている。その代償として少なくとも各種の保護規定が設けられておるはずであります。その一つとして人事院が設けられているんじゃないですか。あるいは公企体の関係の職員に対しては公労法の適用がなされるようになっている。一定の制限をすれば、それに見合うところの保護をしていく。こうでなければ憲法違反の法律になりますよ。存在し得ないことになる。だから、立法当時においてもこのことが論争をされて、たとえば人事院勧告が実施されなかった場合はどうするんだという質問に対しては、これはオーダーであって、そういうことはあり得ないと答弁しているじゃないですか、当時の状態は。そういう状況の中で、少なくとも私は今回も人事院勧告をなされたはずであります。  この人事院勧告というものの中には、残念ながらこれは労働者の意思が直接反映されてないんです、そういうシステムですから。人事院という独立した存在がみずからの資料に基づいて勧告をするんですから、これは民間における労使関係のように、原則的に言うならば、半分経営者の考え方が入って、半分労働者の考え方が入ってでき上がった協定書とは違うんですよ。人事院というものが客観的な立場に立って勧告したものですよ。だとすれば、労働者の意思が入らない、直接。それほどの実は立場に置かれている労働者に対する勧告ですよ。これは労使の間で、団体交渉権、団体行動権、ストライキ権を背景として、そういう中から妥結に至ったところの協約、協定よりももっと権威があってしかるべきものではないんですか。私はそう思うんです。  この点をひとつ、まず基本的な問題として伺っておきたいと思いますが、総理並びに労働大臣の見解を承りたいと思います。
  475. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 総理のお答えになります前に、先ほど先生から御指摘の、今年度の五十七年度の国家公務員――国のために働いておっていただく方々の給与の改定ができなかったことは、給与の担当大臣として申しわけなく思っておりまするし、遺憾に存じております。  しかし、五十八年度においては、先ほど先生から御指摘のございましたように、労働基本権のいわゆる代償措置の一つとして人勧制度がございますので、これが今年度のように実施、行われないようにして、見送るなんていうようなことのないように、何としても五十八年度はこれらの措置を、勧告が十分と申しまするか、でき得る限り守られるように努力をしてまいりたいと思っております。  そこで、御案内のように、昨年の八月の六日でございましたか、国会と、これも先生が御指摘ございましたように、国会及び内閣に対して勧告は出されました。それで、政府はこれを受けて、勧告の当日すぐその日と、九月の一日と、九月の二十日の三回にわたって給与関係閣僚会議を開催し、その取り扱いについて労働基本権の制約、また特に良好な労使関係の維持等に配慮しつつ、種種検討してきたのでありますが、御案内のように、五十七年度は残念ながら六兆円を超える税収不足が見込まれる未曾有的な財政危機事情のもとにあって、国民的課題である、先ほど来問題に出ておりまするように財政改革を担っていただく公務員が、率先してこれに協力していただく姿勢を示す必要があるということにかんがみまして、万やむを得ない措置でございましたが、当時の総務長官も涙を出して、閣議でもこうしたことは残念だということを強調しておられますけれども、ただいま私の申し上げましたように、今年は異例な措置としてごしんぼう願おうと、こういうことにいたしましたのでございますけれども、五十八年度においてはかようなことの繰り返されないように、給与担当大臣として全力を挙げてひとつ、何と申しますか、努力をさしていただきたい、これを申し上げておきたいと思っております。
  476. 赤桐操

    赤桐操君 人事院総裁にお尋ねいたしますが、五十八年度は五十七年度の勧告の分と五十八年度の分と合わせて勧告をなさると思いますが、いかがでございますか。
  477. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 五十七年度分が見送りということが決定をいたすということに相なりますれば、人事院といたしましては、当然五十八年度においては四月分の民間の給与の実態というものを詳細に調査をいたしまして、その結果較差が出ますれば例年どおりの手法で勧告をいたします。  したがいまして、昨年の四・五八分というものが実施されなければ、その分が当然この四月分には加算をされるという結果に相なることは申すまでもございません。
  478. 赤桐操

    赤桐操君 これは総理にお伺いしたいと思いますが、五十八年度分の勧告に対しては完全に実施するということをひとつ伺いたいと思いますが、いかがでございますか。
  479. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院の勧告が出ましたら、これを検討して、尊重して、できる限り実施することに努力いたしたいと思います。
  480. 赤桐操

    赤桐操君 完全実施ということをここでひとつ言明していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  481. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院の勧告が出ましたら、これを検討いたしまして、できる限り尊重することにいたしたいと思います。
  482. 赤桐操

    赤桐操君 私は、少なくとも五十七年度分についても、本当の私は、血もあり涙もある人であったならば、最後の一カ月や二カ月の分くらいはこれは考えるのはあたりまえだったと思うんですよ。十二カ月完全凍結と十一カ月でもってこれを凍結をやめるということで、政府はどれだけの差があるんですか。私はこれは政治ではないと思う。このことをひとつ最後に申し上げておきたいと思います。
  483. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 赤桐君、時間が参りました。
  484. 赤桐操

    赤桐操君 五十八年度の勧告に対して完全実施を求めて終わりたいと思います。(拍手)
  485. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で赤桐操君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  486. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、大川清幸君の締めくくり総括質疑を行います。大川君。
  487. 大川清幸

    ○大川清幸君 私は、締めくくり総括に当たりまして、総理の政治姿勢、それから財政経済の問題、それから産業関係の問題等について、逐次質問をしてまいりたいと思います。  初めに総理にお伺いをいたしますが、ちょうど三月の中旬ごろ、毎日新聞並びに読売新聞等で世論調査が行われておりまして、総理もごらんになって御承知だと思いますが、これは内閣の支持率も昨年十二月から見るとちょっと逆転をいたして、不支持の方のパーセンテージが高くなっていることや、とりわけ毎日新聞のこの世論調査では「言動が信頼できない」というのが三七%ありまして、要するに安保、防衛政策についてもかなりパーセンテージが高い。これは不安だということの結果だと思います。これはアメリカなんかで総理が御発言をなさったことについては、この予算委員会の審議でもいろいろ問題になりまして、総理の御発言の跡をフォローアップするのに防衛庁あるいは外務省は大変御苦労なさったんじゃないかなと推測をいたします。  それから、内政問題では、先ほどから論議になっておりますし、私も指摘をいたしましたが、どうも経済の見通し等についてははっきりしたことをおっしゃいませんし、スタートは決まっているがどうも目標もはっきりしないというようなことも質問の中で明らかにした次第でございます。こういう点についてはやはり景気に期待できない、これは七〇%を超えております。  それから、わりあいに高いパーセンテージは、憲法問題に積極的というか、好ましいというのが、これがちょっと高いだけでして、あとは防衛あるいはその他、どうもいろいろ見ていると、データはよくない。特に政治倫理については五一・八%が好ましくないということできわめて消極的、こういうようなデータがそれぞれ出ておるわけでございまして、これらのデータ、国民の持っている評価から考えますと、御反省もなさっている点もおありではないかと思いますが、これらの世論調査の結果についてはどういう御見解をお持ちでございましょうか。
  488. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世論調査に対してはそれなりに受けとめております。また、みずから戒める材料にしております。  しかし、やっている政策の質から見るとそう悪い質ではないと私は思っておりまして、声なき声は相当支持しているんではないかと思います。大体政治家は余り毀誉褒貶を気にしないで、そういうものは神様仏様に預けて、やることを一生懸命やるのがいいのではないかと思っております。
  489. 大川清幸

    ○大川清幸君 内政問題については、国民がこの世論調査の中でも不安に思っている点については、一つ一つ指摘をしながら御意見を伺っていきたいと思うんですが、先般、三月三十日ですか、ヨーロッパ、それからOECDの大使の方々がお帰りになったときに米ソ中距離核戦力、INFの削減交渉の問題と、それから五月末に予定されておるサミットに対しての各国の期待がきわめて大きい等の意見が述べられたように新聞では報道されています。  先ほどですか、集中審議のときに、アメリカに対してもソ連の中距離ミサイル、SS20ですか、これのことについてはアメリカに直接言ったというような御答弁をちょっと総理なさったように思うんですが、いつ、どんなふうにお伝えになったんでしょうか、これは。
  490. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般、INF問題及びサミットに備える等の目的を持ちまして、欧州在勤の大国の大使を東京に招致いたしましていろいろ意見を聞きました。各国駐在の大使の意見は、いろいろニュアンスはありますが、レーガン提案を支持するというのが大部分の強い声でありました。  レーガン大統領との間におきましては、あの提案をなす前にレーガン大統領から内面的に親書あるいは電報が参りまして、それに対してわれわれの意見を求めてきておりました。われわれは、検討の結果、ゼロオプションをあくまで目標にしつつ、レーガンの暫定的な提案を支持すると、そういう返事も出しておいたところであります。そこでレーガン大統領の提案がありましたので、三月三十一日に外務大臣の声明をもちましてこれを支持するという態度を明らかにした次第であります。
  491. 大川清幸

    ○大川清幸君 それから、サミットに向けて世界経済の活性化の件にかかわる問題につきましては何か腹案をお持ちですか。具体的に検討なさっている問題がございますか。
  492. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ある新聞に世界的大公共工事を提案するような記事が載っておりましたが、あれは真実ではありません。別にああいうものを検討しているものではございません。  サミットに対しましては個人的代表が数回もう集まって、会ってどういう話をするかという話し合いの基礎をいまやっておりまして、それらが固まりましたらわれわれの態度を正式にいよいよ検討に入ろうと思っておりまして、まだその段階には至っておりません。
  493. 大川清幸

    ○大川清幸君 日本側として何か提案するものもお持ちでないと、こういう意味でございますか。
  494. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それも含めて、そういうことがありやなしやも含めましてこれから検討を始めると、そういう段階であります。
  495. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、経済計画関係について入りたいと思います。  先ほどもちょっと申し上げたんですが、国民の皆さんは経済の先行きについてやはり不安を持っていることは紛れもない事実だろうと思います。その理由は、やはり景気が長い間低迷していること、それから政府の現在の姿勢からは先の見通しが、大蔵大臣等の御答弁でもみずからおっしゃっておったように、不透明であること、特に政府長期展望が明確でない、これ大変問題だと思うんです。こういう点から考えますと、国民の不安感をどうしても払拭する必要がありまして、そのためにはやはりそれなりの方針なり計画を早く策定をしていただく必要があると思うんです。これ、経済審議会の委員の皆さんは任期が四月でございまして、先ほど経企庁長官も、うちの太田議員の質問に答えられておったかと思いますが、これについてはいかがなさいますか。任期までに策定をする方針なんでしょう。違いますか。
  496. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お説のように、新しい経済運営の指針と申しますか、経済展望を含めての経済運営の指針はできる限り早く策定していただきたいとお願いしてございます。ただし、任期が二年でございます。新しいまた総理からの構想を織り込んでいただきたいと申しておりますので、四月にはなかなかむつかしいようでございますが、できる限り早くその後においてもいただいて、私どもの大きな指針をつくっていただくようにお願いしているところでございます。
  497. 大川清幸

    ○大川清幸君 先ほどの答弁とただいまの答弁で、なるべくならば早く出したいということで、任期いっぱいには間に合わないおそれもあるわけですね。先ほどの長官のお答えの後でお立ちになって総理がお答えになった意味では、どうもこの作成については急がないというんですかなんですか、ちょっと長官の発言を否定するような意味合いのお答えをしたように私記憶するんですが、記録見ていませんから明確には判断できませんが、いかがですか。
  498. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 次の経済展望あるいはガイドラインというべきものを、四月までにつくるかというお話でございましたから、そんな簡単につくれるものじゃありませんと、そうお答えしたのであります。
  499. 大川清幸

    ○大川清幸君 長官、四月いっぱいで間に合わなければ再任するかどうか、これは任期が来てからの問題だと思いますが、急がせるといって、いつごろというようなめどでいらっしゃるんですか。
  500. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 委員の任期は延長していただいても、再任していただいても、できる限り早く、夏ぐらいにはいただけないかということを、ときどき私どもの内部で話し合っているところでございますが、これはもう経済審議会の御努力いかんでございます。いつまでもこれをほうっておきますことは、経済展望の性格から見まして御指摘のとおり適当ではございません。できる限り早くいただきたいと思っております。
  501. 大川清幸

    ○大川清幸君 総理も大体夏ごろまでにはつくりたいという御希望でしょうか。
  502. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 時期を明示することは避けたいと思いますが、なるたけ早くつくっていただきたいと思っています。
  503. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、総理は、従来のいわゆる計画というものに余り御満足なさっておらないような御様子に拝見をいたします。展望という形で指示したという話も聞いておるんですが、この計画と、それから現在経済審議会で策定中の展望という中身についてはどういう点で違いがあるのでしょうか。
  504. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) この点につきましては、もうたびたび申し上げましたが、私は、経済計画という言葉が本当に誤解と申しますか、いろいろの拘束的なあるいは固定的なあるいはフォローアップをおくらすようなところがあったように見受けられるわけでございます。昨今の事情でございますから、これを固定的に考え、そしてつくられた数字に振り回されて政策が硬直化する、こんなことがあってはいけないと思うんでございます。そういった意味でひとつ弾力的な柔軟な、そしてまた事情の変化に応じて直ちにフォローアップができるような形態での私は一つの展望と指針をつくるべきだというのが総理のお考えだと思いますし、そしてまた単に五年という短期の固定された期間じゃなくして、もう少しより長期の期間で見通すような弾力的な計画――計画と申しますか展望、こういった二つの点からの新しい方向を出していただきたいと思って、御努力をお願いしているところでございます。
  505. 大川清幸

    ○大川清幸君 いま長官答弁になりましたように、計画その他が固定的というか、硬直的な要素になって数字に振り回されるという説明の仕方があったんですが、そういう対応の仕方自体の方がまずいんであって、目標がまずいかどうかの問題はまた別の問題だと思うんですよ。この経済指標の問題はやはりきちっとしたものを、いろんな要素を積み重ねた上で検討して出してもらいたい、きちんとしたものを。  これは、経済は生き物ですし、自由経済社会の中でつくった目標がいろんな条件の変化によってぴたっといかないということは私も承知していますので、年々経済事情がいろいろ変化した場合にローリングすることは私は認めます。また、そうでなければ自由な効果的な対応ができませんから、そこは私認めたいと思うんですが、この言葉は計画と言おうと、それから展望と言おうと、いずれにしても政府経済政策の指針であることは間違いないんで、そっちへ指導して持っていこうと、日本経済を、こういう指標ですから、指標については、指標までがわけがわからないで動いちゃうみたいなことを言われると困るんです。これはちゃんと検討した中で、きちんとした目標をつくるということで努力をしてもらわないと困りますよ。いかがですか。
  506. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私どもは見通し得る限りの資料に基づきまして、できる限り精度の高い目標数値等を決めてまいりたいと思います。しかしながら、それが幅を持たない一本調子のものでないことは、私は一つ考えられる方向でございます。少しこれまでの数値を見ますと、非常に細かくて一本調子であったような気がするわけでございます。OECDの数字等を見ますと、非常に幅のあるような点もございます。これらを参考にしながら信頼性のおけるような数値を出し、同時にまた経済現象でございますから、変更が当然予想されるところでございますので、非常に迅速なフォローアップあるいはローリングプラン、こんなような仕組みを織り込んでいきたいと考えております。
  507. 大川清幸

    ○大川清幸君 私は心配して申し上げるのは、いろいろなつくった目標なり指標というものが外れてしまうと、いろいろまた国会なんかでつるし上げられるのがしんどいものだから、幅を持たせるということでもないだろうと私は思いますよ。けれども、一月の経済審議会の報告書、これは若干の幅持たしてますね。このことがいいか悪いかの論議、きょうここでしていると時間がかかりますから私はあんまりしませんが、幅を持たせることもよく考えた上でやってもらわないと、指標が当てにならないという財界に対する影響、あるいは経営者、企業者に対する影響、あんまりよくないんですよ。この点は慎重に考えてやってもらいたいと思いますが、どうですか。
  508. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) この経過報告の中におきまして、成長率あるいは物価指数等はおっしゃるように幅を持って示しました。しかしながら、幅を持って示すことが適当でない、きわめて、何と申しますか、幅の持たれ方の少ない数値等もございます。おっしゃるように、そのような点を振り分けながら、私どもは新しい展望をつくっていきたいと思います。要は、むしろ大事なことは、私はフォローアップであり、あるいはそれに基づくところのローリングプランであり、この目標数値に振り回されないことだと思います。
  509. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、それでは中身について少し伺いたいのですが、この展望の中で最も重要なのは、やはり何と言っても、先ほどからも論議になりましたように、今後の経済成長率をどう見るかということだと思います。一月の発表ですと、この経済審議会報告書の中では三ないし四%、実質、こういう見方をしておるんですが、今回の新しくプランを立てる中の展望では、どの程度に見込んでいこうと思っていらっしゃいますか。それもこれからですかな。
  510. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) これはいま御指摘のように、これからの問題でございまして、原油の引き下げ等の新しい事態がその後生じました。さらにまた、アメリカ経済があのように早急に回復をいたしております。三・一%から四・七%の修正が一九八三年の第四・四半期に行われるような状態でございますので、これらを勘案して、私どもは新しい成長率を想定していきたいと、それをお願いしたいと考えているところでございます。
  511. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、これはもうきちんとした指標を出していただくことが私は望ましいと先ほどから言っておるんですが、問題は指標をきちんとつくる作業といいますか、そういう手順の中で各論の部分になりますと、政府の内部、各省庁の調整、なかなかむずかしいんじゃないですか、実は。違いますか。結局出るものは、言葉は悪いんで申しわけないんですが、いわゆる妥協の産物みたいなものが出てくるんでしょう。うんと言っているからそうらしいな、これは。そういうものの羅列も新聞でも、後でちょっと触れようと思っていますが、先ほども赤桐委員がちょっと取り上げておりましたが、当面の景気対策でも大分評判悪いですよ。だから、この辺の何といいますか、そういう羅列に終わらないような努力をしてもらわなきゃならないけれども、むずかしいでしょう。どうですか。
  512. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は各省各庁が大変な御努力をされておりますし、各省各庁との間あるいは企画庁との間の切瑳琢磨によって私はいい数字が出てきておる。これがこれまでの経済計画の数字だと思うんでございますが、根本は私は経済の事実と、現象と離れるところに大変な問題がある。私は政策の方向について各省間の争いというものは、やはりおのおの権限がございますので、それほど大きなものではない。むしろ切瑳琢磨によっていい数字が出ておると、こんなふうに見ております。
  513. 大川清幸

    ○大川清幸君 成長率の問題もこれは論議していると水かけ論みたいになりますから、もう一つの問題を取り上げてみましょう。  それは、いろいろな指標の中で、やはりもう一つ大事な問題は、これも論議になりましたが、租税負担率の問題が一つのファクターとして私あるように思います。これはどの程度租税負担率の問題については煮詰まっておるんでしょうか。いかがですか。
  514. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆるこの租税負担率の、大川さんと私と一般的に大蔵委員会、いろいろなところで経済論争するときの話とは別において、窮屈な租税負担率の定義と、こういう意味で御質問をいただいたと思ってお答えしてみたいと思います。  やっぱり通常用いられる租税負担率の概念というのは、これは租税総額を国民所得で除することによって得られた比率を指すと。そこで、臨調答申において、「当面の財政再建に当たっては、」「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、」とされております。なおのことこの租税負担率について、いろいろ議論がかまびすしくなったわけでございます。どの時点を基準にするかということは明らかにされておりません。したがって、それがどの程度の水準を示しておるかということをぎりぎり詰めれば、確かに明らかでないわけでございます。そうしてまた、租税負担率というものは経済の自然な流れの中で分母も分子も変わってまいりますので、固定して考えるべきものであるかどうかというところにやっぱり基本的な私は現実の政策論争の基礎がありはしないかなあと、こういうふうに思っております。それで一方また、この臨調の御答申を見ますと、租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民負担は現状よりは上がるが、ヨーロッパよりも低目に抑えると、こう書いてある。だから、ここでお書きになったものは一つの大筋の方向をお示しなすったものというふうに考えて、やっぱり現状というものは確かに頭にあります。と同時に、新たなる措置というものをどう判断するかというところがこれからこうした問答を通じながら煮詰めていく問題じゃないかなというふうに理解しております。
  515. 大川清幸

    ○大川清幸君 大蔵大臣の言っていることを聞いていると、本当みたいでどこかでごまかされそうな気がするんですよね。  それで、答申に書いてあること確かにお読みになったとおりなんですね。しかし、論議をする場合に、臨調ではこういう表現をしたんですが、実際に行政を運営し、それから予算を決定して国の経済を動かしていかなきゃならない立場から考えると論議、推論という理論でやっているわけにはいかないと思うんで、やはり租税負担率ということが答申に出ておればいつの時点のどこを基準にするということでありませんと、これは租税負担率を上げるとか下げるとかと論議したって一体何をどうするんだかわからぬ論議になるわけで、ここはちゃんと設定をした上でいろいろな計画策定に入るというのが私は基本的な姿勢では正しいんだろうと、こう思いますが、そういう態度ではないんですか、大蔵省は。違うんですか。
  516. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは経済社会七カ年計画の二十六カ二分の一、私どもはあれができましたときに一つのやっぱり指標だと思いましたよね、率直に言って。いま考えておりますのは、大川委員の御議論はよくわかるんですが、そういう断定的に決められるものかどうかと。だから、やっぱり一つの概念をこの問答をしながらも定めていって、そして結果として出ますから、多小の相違はあるでございましょうけれども、それが、大きな相違というものが政治論争に余り大きくつながらないような形のものを模索しなきゃならぬ課題の一つであるとは思っております。
  517. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは先に進んでお伺いをいたしますが、経済社会七カ年計画ですね、ここでは財政再建を政策目標にいたしまして、その際の租税負担率は二六・五%、いろいろお話が出ていたとおりでございます。ですから、これをちょっと見方を変えて言いますと、租税負担率二六・五%にすることで一応財政再建が達成できるという考え方をいたしますと、それは今度はあれですな、この新しい展望の方ですね、財政再建をこのベースで推進をする、小なくともいまお話をしている二六・五%が租税負担率になると、新しい展望の方の、そう考えていいんですか、違ってくるんですか、どうなんです。
  518. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほど大蔵大臣が言われましたように、私ども考えでは新しい展望をつくります際に成長率がどのようになるか、またそれに応じて税収がどうなるか、さらにまた財政再建がどうなるか、これらを総合的に勘案して後で率が出てくる、こんなふうに考えておりまして、初めから二六・五にして、そして財政再建をやっていくんだと、こんなようなお考えには聞かなかったわけでございます。これは多分に成長率に影響され、弾性値に影響され、さらにまた税制改正等に影響される問題でございますので、これはまた大蔵大臣から御答弁があろうかと思います。
  519. 大川清幸

    ○大川清幸君 大蔵大臣、同じでよろしいですか。
  520. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 基本的にいま企画庁長官の申されたことと一緒であります。ただ、二六・五というのがあの新経済社会七カ年計画に出ましたよね。あれは大変私どもにとって印象的なものであったと思うんです。しかし、その経済社会七カ年計画も下方修正されていく。そうするとやはりいまおっしゃいましたとおりもろもろの指標の結果として出てくるものである。しかしいま、今度は財政当局として臨調の答申等がある場合にはある種の概念というものは模索しておかなきゃならぬのかな、こういう感じを持っておるということを申し上げておきます。
  521. 大川清幸

    ○大川清幸君 もう少しこの租税負担率の中身について確認をしておきますが、せんだっての質疑応答の中で、大蔵大臣は租税負担率二六・五%も一つの目安かなというようなことをおっしゃっておりましたが、あのときのこの二六・五%、これは経済計画ベースのものなのか、あるいは大蔵省ベースでいわゆる租税負担率みたいなものがありますな、国、地方を合わせた租税の分、その中身の問題でちょっと……。それ、どっちの租税負担率の論議になるんでしょうか。
  522. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) このいわゆる租税負担率、臨調さんで申されている租税負担率とは何ぞやと、こう言ったときに分母、分子の説明をいたしまして、されば一体どういうものが念頭にあるかと言われれば現行のもの、あるいはかつて経済社会七カ年計画のときに示された二六・五というような数字がすぐ頭に入る数字であって、それが土台になって議論しようという意味で申し上げたわけではございません。
  523. 大川清幸

    ○大川清幸君 それはそれでじゃ了解をいたしますが、そうすると事務レベルベースではどうなりますか。五十八年度、三二・七%見込みでしょう。だから二六・五%ということでいたしますと――その二六・五%ちょっとおくとしても、どうなりますかな、〇・五%ぐらい差があるはずですから結果的には二四・二%程度を見込んでいることになりますかな、事務レベルでは。どうですか。
  524. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほど先生から御指摘のございましたように、二六・五の数字は国民経済計算ベースの数字でございます。私ども税として用いておりますのは、国税、地方税合わせましたところのものを国民所得で割る、これは五十八年度といたしましては二三・七、それから経済計算べースでは二四・三ぐらいかと承知いたしております。
  525. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうすると大臣、いまのお話からしますと、その差がちょっとありますね、二六・五と。この間は恐らく自然増収も幾分か見込めると思いますよ、これからの経済の動きを見ても。しかし、それでも足りないはずです、試算をしてみると。足りない分はやっぱり増税かなんかという議論にこれなりがちなんですけれども、どういうことになりますかね、この差。どうですか。何かで埋めなきゃならないでしょう、これを達成する、二六・五を。どうします。
  526. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほどの御議論にもございましたように、二六・五は七カ年計画の数字、結果として出ている数字でございまして、一応そうした数字はございますが、現在の七カ年計画は見直しの段階にあるわけでございまして、私ども現時点で二六・五を何らかの指標として物を考えておると、そういうことはないわけでございます。
  527. 大川清幸

    ○大川清幸君 はいわかりました。  しかし、いま大蔵省が考えているこの二三・七%、〇・五%上積みしても国民経済計算ベースで二四・二、三%にしかなりません。これあれですな、経済社会七カ年計画のベースで経済を持っていこうとする場合には足りないですね。これどうしますか。
  528. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 経済社会七カ年計画の仮に下方修正もしない前の段階でいきますと、それはおっしゃるとおりです。
  529. 大川清幸

    ○大川清幸君 おっしゃるとおりで、あとはちょっと対策についてはいま答えようがないですか。  それではもう一つお伺いをいたします。読売新聞で土光さんが会見をなさって、そのインタビューでいろいろお話しになっている報道が出ています。現場にいなかったから、話の中身はこのとおりかどうか、先ほどからどうも最近の報道は違っているみたいなお答えが政府側からたびたびあるんで、私も新聞だけじゃどうも聞くのに心配だなという感じもするんですが、この中を見てみますと、「①増税なき財政再建を貫くため、租税と社会保険料を加えた国民の負担率は国民所得の三五%を上限とする②その範囲内で直接税と間接税の比率を見直す③国鉄改革には、民間と協力して、遊休資産を活用し、地域開発の視点を取り入れるべきである」、こういうようなことが載っているんですよ。臨調で、土光さん中心でこの間ああいう最終答申が出されました。これ財政再建、財政改革の点では大変重要な問題だと思うんですが、臨調が解散してまだ余り時間もたっておりません。このような具体的なことを土光さんが記者会見で正式の意見としてお述べになっているとすると、さては財政再建と、それから先ほどのその臨調の、私もちょっと租税負担率のところなんかで読んだああいう回答が出ているんですが、この程度のことはどうも事前にいろいろ下敷きみたいな話はあったんじゃないかという推測もしたくなるんですが、そんなことも全然煙の気もなかったですか、どうなんですか、これは。
  530. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 土光前会長がどういうことを言われたか、その真意も私はよく承知はいたしておりません。その臨調の中では、将来の問題としては、租税負担と社会保険料の負担と合わせて三五%といったふうなことを言われ、そしてまた、税制については、どうせい、ああせいということは言っておりません。言うておりません。ただ、所得税の問題とか、直間比率の問題というのは、税制の問題では検討すべき問題ですよという指摘をしているというだけでありまして、いまのようなお話を具体的にどうのこうのということを臨調の中で相談なすったということは全然聞いておりません。
  531. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは、大蔵大臣、「増税なき財政再建を貫くため、租税と社会保険料を加えた国民の負担率は国民所得の三五%を上限とする」、この土光さんの御見解、財政再建、行政改革には最も頼りにしていらっしゃる土光さんの御意見ですが、この御意見を聞いてどうお受け取りになりますか、解釈なさいますか。
  532. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはやっぱり臨調答申に述べられておりますことを素直に解釈して、記事のニュアンスは私もわかりませんので、現状よりは上昇することにならざるを得ないが、現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低位にとどめることが必要だよとお諭し賜っておる、こういうように考えます。
  533. 大川清幸

    ○大川清幸君 総理、この土光さんのこうした租税負担率や直間比率の問題でちょっと、中身は確かに行管庁長官がおっしゃるように細かくは触れておりませんが、これから政府経済政策をとったり、税制をどうするかということについてはやっぱり影響のある御発言だと思うんですね。これは妥当な御発言だったんでしょうか、御迷惑だったんですか、どうなんでしょう。
  534. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新聞の記事というものはわりあいに断片的に報道されまして、新聞の方で選択されたところが出てくる危険性が非常にあるんで、われわれもしばしばそういう被害を受けております。経験済みでありますから、土光さんのことも全面的に取材をしてみないと、果たして正確に出ているかどうか、もう一回確かめる必要があると思っております。
  535. 大川清幸

    ○大川清幸君 確かに総理のおっしゃるように影響のある方の御発言ですし、これから中曽根内閣で一番重要課題の財政再建あるいは財政改革を、これを推進していかなきゃならない。こういうようなことを考えますと、これはきちっと一回真意を確かめるなりしませんと、今後影響ありますね。そう思いますが、いかがですか、影響ありませんか。
  536. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やはり大方針として承っておれば、ぎしぎしした、確定的な数値というような点は、その都度、関係者との私どもは接触の機会もございますけれども、公式に、ぎしぎしした確定した数値をお求め申し上げるというようなことはしないで、大筋をお示しになったというふうに理解すべきじゃないかなと思います。
  537. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、経済見通しについて何点かお伺いをいたしたいと思います。初めに原油の値下げ等の影響関係して何点かお伺いをしてみたいと思います。  最近の景気でございますが、経済指標、これを見ますと、物価を除く限り余り好転を示唆しているような指標は見当たらないですよね、正直言って、残念ながら。原油値下げやそれからアメリカ経済の好転というか、上昇基調――基調とまで言えないと思うんですが、幾つかそういうものはあるにはある。しかし、いま言ったように、統計数字の上では鉱工業生産等はマイナスですよね、相変わらず。ですから、今後当面のことを考えても、輸出だってこれは横ばいか減っているわけですし、そういう面だけ見ると悪化の指標の方がどうも多いように見える。これはびっこに見ちゃいけないんで、全般を見た上で判断をしなきゃならないと思うんですが、こうした状況をとらえてみますと、正直言って景気の現状というのは一体どういうふうにとらえたらいいのかということをお聞きしたいと思うんです。これはちょっと漠然とした聞き方なんですが、例の失業率の問題で、前から論議になりましたけど、大蔵省と企画庁でちょっと見解が違った経緯がございましょう。景気上昇期なのかあるいはそうじゃないのかというような論議があったんじゃないですか。ですから、景気に対する認識をはっきりしてもらいませんと経済政策も後の手の打ち方も決まりませんので、この辺の認識は経企庁長官はどうお考えですか。
  538. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 経済の現状認識でございますが、これはもうたびたび申し上げておりますように、確かに厳しい状況でございます。消費支出の基礎をなしますところの名目所得の伸びの伸び悩み、さらにまた、鉱工業生産の停滞から来るところの設備投資の、特に中小企業の伸び悩み等がございまして、大変厳しいような印象を受けることはもう御案内のとおりでございます。しかしながら、もう御案内のように、先般発表いたしました国民所得統計速報、昨年の十月―十二月の統計速報からおわかりのとおりに、五十七年度の三・一%という実績、成長見通しは達成されることはまずまず確実と、こんなふうに見られているところから、私は、五十八年度の三・四%の基礎固めはできた、こういうふうに思っておるところでございます。その上に、五十八年度の成長率の際に予測されませんでしたところのアメリカ経済の、異常なると申しますか、急速なる回復、その上にまた原油の五ドル値下げ等の現象が追加されてきたことは、この三・四%の達成に好影響を与えるであろう、こういうふうに見ているところでございます。
  539. 大川清幸

    ○大川清幸君 その辺、私も考え方は余り変わらないんですが、経企庁長官、これは、あれですか、一月の失業率が問題になったときに、これは五十三年度とよく似ている状況だとかなんとかいう論争があって、しかし、経企庁の方は、これはリセッションの年だったんだ、五十三年は、あのころは。だから、景気回復期と判断するのはちょっと早いか、あるいは間違いかというような御判断じゃなかったんですか。どうなんです。
  540. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先般、一月分、二月分について発表されました失業率は、御案内のように、統計数値の、何と申しますか、標本の拡大によりまして、いままでは二・四%程度の失業率が人口に膾炙いたしておりました、これが二・七%という数値になったわけでございますが、これはまだまだ、統計数値が急に変更された結果であるから、もう少し様子を見ようということになっておるところでございます。そして、二・七%は、雇用の実態が悪くなったということよりも、就業者も雇用者もふえている、そして有効求人倍率も横ばいである、こういうことから見て、いま、一部には、景気が底をついてこれからだんだんよくなる場合の状況に似ているからというような意見があったわけでございますが、まだまだ、私は、二・七一%のいまの失業率の見方について、今後なお様子を見ていかなければ判断ができないんではないかと思っております。
  541. 大川清幸

    ○大川清幸君 経企庁はああいう御意見です。伺うところによりますと、景気回復期の特徴的な現象、こういうふうに大蔵省は判断して、景気は回復期にある、こういう御判断を大蔵省はなさったんですよ、同じ時期に。違いますか。
  542. 吉田正輝

    政府委員吉田正輝君) 御指摘の点でございますけれども、この御意見は大蔵省の公式の見解ではまずないわけでございます。大蔵省の中に委託研究をしております館龍一郎教授を座長としました研究会があるわけでございますが、この研究会における検討資料として作成されたものでございます。一月に急激に失業率が増加したことにつきまして、その分析をいたしたわけでございますけれども、就業者数が、一月について申し上げさせていただきますと、前年同月比百十八万と大幅に増加しておりますけれども、このような大幅な就業者の増加を見れたということは、十年間では昭和四十八年と五十三年しかない。それから失業率増加は女子の寄与が大きい、女子の失業者が大きいということでございます。それから、女子の就業者数が大幅な増加を見まするとともに、労働力人口の大幅な増加が見られます。これは、全体として四十八年、五十二年、五十三年に見られた現象である。そこで、こういうことを統計に基づいてその検討資料が指摘しているわけでありますが、このような景気拡大期に女子の労働力人口が増加いたしまして、就業者数の大幅増加にもかかわらず失業者数も増加することがあるという現象の背景として女子の非労働力人口の分析をしたものでございます。これは、繰り返しますけれども、研究会の資料でございますので、大蔵省の公式見解でございませんし、大蔵省といたしまして労働統計について所管事項ではございませんものですから、これはそういうことで御理解いただきたいと思います。
  543. 大川清幸

    ○大川清幸君 ちょっと確認をいたしますけれども、いまの説明で、委託研究をしていただくための資料ですね。その委託研究をしていただくための資料をどこでつくったんですか。どこがつくったんですか。
  544. 吉田正輝

    政府委員吉田正輝君) 委託研究でございますから事務局がございます。その事務局のお世話は大蔵省がしておりますけれども、その事務局の構成の中には役所以外にも各銀行とか証券の総合研究所とか、そういうものが入っておるわけでございます。
  545. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは、もう少し景気の問題で聞いてまいりたいんですが、どっちにしても、当面の景気対策は早く立ててやっていただかなきゃ困るわけなんですが、そこで、アメリカ経済が仮に回復期に向かっていても、そのことで日本の輸出がすぐふえるという期待はできないでしょう。ですから、そうなってくると、その残っている期待は何かというと、この間から数日来論議になっているように、結局、原油価格の値下げですよね、一つの材料としては。これは値下がりをしたんですから、産油国には所得の移転がそれだけ低くなりますし、こちらの負担は軽くなるわけですから、好条件というか、日本経済環境が改善されることは明らかなんですが、これをどう結びつけていくかという論議というか、考え方、手法は非常に大事なところなんですが、これは論議が何回かあって私聞いていたんですけれども、時宜が悪いとも言えないので、こういうのは時間を置かずにすぱっとやってみて、多少の誤差はできたりいろいろあると思うんですけれども、これは日本経済の活性化に活用するという点では早く対応していただきたいと思うんです。仮に、いろいろな経済学者の説あるいは新聞社等の社説、そういう中にも、たとえば、今回の原油の値下がりで間接的に一兆六千億程度の減税をしたというか、それだけの経済効果というか、景気効果があるという試算も出ているぐらいですから、まるっきりその足がかり、手がかりにならないわけじゃない。そういう点から考えると、現状からして、石油価格の値下がりをチャンスに今後日本経済をどう持っていくか、それを見込んだ景気対策というものは早く立てるべきでしょう、どうですか。
  546. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) これまでよく国際収支の天井、あるいは物価の天井、あるいは資源の天井の中での石油の天井ということが言われましたが、その天井は、いずれも、いまなくなったと考えてもいいと、こういうふうに言われているところでございます。そういった意味で、私は、内需の拡大はこれまでに比べまして相当大きくできる余地ができた、こういうように考えているところでございます。しかし、財政政策あるいは金融政策に大変選択の幅が狭いことになっておりますから、いまおっしゃるように、私どもは原油の値下がりに相当の期待を持たざるを得ない、こういうように思っているところでございます。  ところが、御案内のように、石油並びにほとんどの石油製品の価格は、いわば自由経済日本でございますから、市場原理に任されているところでございます。しかし、すでに市場原理が有効に働きまして、ガソリンあるいは灯油については値下がりの傾向がございます。さらにまた、元売りの石油会社は値下げの方向も打ち出したところでございますが、私どもは、まず、この市場原理の貫徹と申しますか、その中での国民経済への浸透を十分に見守っていくことが大事ではないか、そうして企業にも家計にも、これによって収益力の増大あるいは家計の余裕、これをもたらすべきだと、こういうように考えておるところでございます。これが設備投資につながり、一方、また消費の増大につながる。もう一つは、市場原理によらない電力料金あるいはガス料金の問題が原価の値下がりに関連いたしまして大きく登場するわけでございます。これは、設備投資あるいは料金の引き下げ、この二つに絡むわけでございますが、これは、ひとつこれからの状況を十分見て、省エネ 態勢等を維持しながらやっていくということは、すでに通産大臣からもたびたびあらゆる角度からのお話があったところでございます。
  547. 大川清幸

    ○大川清幸君 余りはっきりしたあれがなくて、あれですな、石油価格が下がっていろいろなものに影響していく状況をずっと見るだけのお話みたいで、ちょっと頼りないんですが、まあ仕方ないですかね、いまのところは。  じゃ、次の問題を伺います。この石油の価格の問題も一つの大きな材料である、好材料であると私も思っているのですが、もう一つ、やっぱり景気対策経済対策の上で大きなファクターは公定歩合引き下げ問題であろうと思うんですよ。これは、私も、いまの経済状態から見て、公定歩合引き下げの方向がいいんだろうというふうに判断をしておりますが、ただし、これは慎重にやってもらいたいと思っているんです。  午前中の質疑の中で総理から金融政策あるいは金利政策については日銀総裁にお任せだという話があって、体制と仕組みからいってもそれでよろしいんだろうというふうに思っておりますが、しかし、最近のいろいろな政府考えている経済政策の中で聞こえてくる傾向を見ますと、やっぱり金利というか、金融政策にお任せとまで言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、ちょっと頼り過ぎの感じはあるのじゃないかなという気がするんです。  問題は、日銀総裁も慎重にやっていくようなお答えをけさほどしておりました。きょうは、夕方、土曜日で時間が遅いので、本当は日銀総裁に来ていただこうと思ったんですけれども、気の毒だから私の方でお呼びをしなかったんですが、金利問題で余り政府に聞いてもいい御答弁があるかどうかわかりませんけれども、余り金利、そっちに頼り過ぎ、重荷をかけるような考え方でやっていたのでは政府のやるべきことを忘れちゃうというか、お留守になる危険性があるから、これは気をつけてもらいたいと思うんです。  なぜ私が慎重にやってもらいたいかといいますと、いまの為替レートですね、これは御承知のように、大体二百三十円台から二百四十円の手前ぐらい、ボックス相場的な移動をしている、わりあい安定しているという解釈も見方によってはできるんですよ。ところが、そうじゃなくて、見ていますと、アメリカでちょこっと何かあるとぴりぴりっとこの範囲内で動くわけです。ここが私は非常に日本経済にとって問題だと思うんです。ですから、動きがわずか三円程度ですけれども、この動き方をよく見ていていただいて、アメリカ経済の動きあるいは状況というのを気をつけていただく必要があるのだろう、こういうふうに思います。したがって、そういう点では、金利政策で対応するにしても、アメリカ金利の動向がどうなるか、それからいまのアメリカ経済、インフレのおさまり方がどうなるか、本当に安定基調でしっかりするのだろうかというようなところをよく見ていただきたいと思っておるんですが、これは経企庁は、日本経済影響に重大なかかわりのある現在のアメリカ経済状況をどのように受け取っておられますか。
  548. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 金利の問題はむしろ大蔵大臣でございますので、いま大川委員が申されましたのは、金利問題に大きく影響を及ぼすところのアメリカ経済がどのようになるか、それをどのように受けとめておるかという観点からお答え申し上げたいと思います。  私は、アメリカはインフレ対策に成功したところだと思います。それは多分に金融政策、つまりマネタリズムに基づきまして貨幣の供給量を抑えてきたことによって成功したわけでございますが、それが大きく金利上昇を招いた。しかし、それが同時にまたアメリカの大きな財政赤字に支えられてこれがなかなか下がらないのが現状でないかと思っているところでございます。第八次の金利引き下げがいま行われていないのが、まあ大変皆様から期待されているようでございます。財政赤字が余りにも大きいために、二千億ドルの財政赤字、しかもまた貯蓄が大変少ない。つまりGNP比で四%ぐらいの貯蓄で、六・四%の財政赤字を招くために、各国から金を集めて、貯蓄を誘引して、それが長期金利の高い金利に支えられてきておる。これによって私どもが高い金利影響を受けているということではないかと思います。
  549. 大川清幸

    ○大川清幸君 いま長官もちょっと触れられたんですが、アメリカ財政赤字の現状というのはだんだんよくなる可能性は見えていますが、いわばルーズベルト時代の状況によく似ている面もかなりあるんですね。そういう点で、やっぱりしっかり把握をしておいてもらいたいと思うんですが、財政資金の民間からの調達で金利がこっちで見ているほど下がらないといいますか、下げ渋っている状況は、いまお話しのあったとおりです。したがって、アメリカ経済が拡大基調に入ったことで、そのことで早速アメリカ金利が幅に低下するなんということはいまの状況からいっても考えられませんよ。ですから、うっかりこちらで公定歩合引き下げなんかを、みんなムードがそうだし、与党の先生方もそうだし、政府の中にもそういう声があるし、野党の方もそれを望んでいる声が多いからといって、ぼこっと周囲の状況を見ないでやられるとえらいことになるんですね。そこで、日銀が最終的には公定歩合引き下げ等は判断なさるんでしょうけれども、ここのところ、やっぱりこちらの円高基調をうまく乗っけていくタイミングを見てやっていかないとまずいと思うんですけれども、大蔵大臣、この辺の判断はどうなさいますか。
  550. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 公定歩合操作は日銀の専権事項であるという前提の上に立ちまして、いまの御意見、私も全く否定する考えありません。為替レートの問題に特にしぼって議論を展開されたわけでございますが、やっぱり短期的には両国の金利差、中期的にはあるいはインフレ率あるいは相互の貿易収支の問題等々、長期的にはもろもろのファンダメンタルズ、こういうことになると思います。それで、いま金利差という問題が非常に微妙なぶれになって、いま三円とおっしゃいましても一%以上でございますから、そういうことでありますので、この為替の動きというものにつきましては、これは通貨当局としても大変関心を払っていなきゃならぬ問題であるというふうに理解しております。
  551. 大川清幸

    ○大川清幸君 これ慎重にお願いしたいと思うんです。  これやっぱり原油価格の引き下げの効果というのはいろんなところに実はもう出ておって、経企庁長官も十分御承知だと思うんですが、三月中の卸売物価なんかも〇・二%ぐらい下がってきているのはやっぱり効果が出ていると思う。それから、きのう、きょうにわたって東銀さんが発表した貿易収支の黒字の問題なんかも、これはやっぱり効果が出ているし、それから一方、大蔵省の発表した結果によっても、経常収支の見込みなんかも発表されているようですが、その結果から見てもやっぱり原油価格の引き下げの効果というのはそういうところへはっきり出てきていますよ。ですから、私は公定歩合引き下げ等の金融政策を慎重にタイミングを見てやってもらいたいと言いますのは、そうした効果が卸売物価その他にも出てきて、将来の見込みも一部ははっきりもう予測しているところもあるわけですから、そういう点から考えますと、一般消費物価とかあるいは経済全体にオイル価格の値下がり効果がもっと広範に出てくる、さっき説明もちょっと一部あったんですが。そういうことが必ずあるはずですから、あわててやらないこと。その間に、先ほどから論議になっておった公共事業の前倒しを早目に効果的にねらってやる。その上に、今度は油の価格の値下がり効果が全般的によく出てきたところでやる。しかも、アメリカとのレートの問題でも、あのときみたいに、あれはいつでしたか、前にやったときにえらい効果が帳消しになったようなことがありましたから、あんなばかなことにならないように、去年でしたか、あんなことにならないように対策をいまから考えて対応してもらいたい。 こう思っているんですが、いかがですか、考え方としては。
  552. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) いま御注意の方向で対策を検討していきたいと思います。
  553. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、ここで黒字減らしの問題についてちょっと御意見を伺っておきたいと思います。  これは大蔵省みずから発表した五十七年度の経常収支の黒字幅、これについても予想の七十億ドル程度というやつが九十億ドル程度になること、これは間違いありませんね、大蔵省の予測でも。それから、原油の輸入額等の推算をいろいろしている東京銀行あたりの発表によっても、五十七年度、五十八年度、経常収支あるいは基礎収支等でも大分大きくなりそうです。この予測については間違いありませんか。どうですか。
  554. 吉田正輝

    政府委員吉田正輝君) 私の担当ではございませんで国際金融局でございますが、けさ新聞にいろいろと出ております。公式に発表したかどうかはいま確認中でございますけれども、おおよそそのような方向と私自身は承知しております。
  555. 大川清幸

    ○大川清幸君 大体黒字がこのぐらい出そうです。民間機関でも予測しているのは、もう少し状況がいいぐらいの予測をしていますから、まず大蔵省の予測、これ間違いないのじゃないかと私は思うんです。  ところで、黒字減らしのことについては真剣に取り組まないと、また問題再燃しますし、いろいろ非難攻撃を受けると思いますが、この対策についてはどう考えておられますか。
  556. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は内需拡大がまず優先的に行われるべきだ、そういった意味で今度の経済対策も私は大きく期待していきたいと思うのでございます。原材料の輸入の多いわが国の経済の体質でございますから、輸入原油の原価が下がってまいりますと輸入代金がゆとりが出てくる。これをいきなり輸入で賄うことはなかなかできない。やはり輸入の拡大を期待するには内需の拡大、これでいくしかないと思うわけでございます。したがいまして、しばらく時間が私はかかろうかと思います。
  557. 大川清幸

    ○大川清幸君 どうも黒字減らしのことは内需の拡大だけで、あと対外的なことや貿易関係では何にも手を打ちませんか。
  558. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) いろいろと民間は、長期資本の投資、産業協力等によって、この経常収支の生まれました黒字はゆとりのある民間は恐らく資本の流出の形で日本の外貨を減らしていくかと思います。経済協力もその一つの方法かと思いますが、経済協力は何といっても財政が裏づけにならなきゃなりませんので、予算以上のことはできません。私は、産業協力あるいは長期資本の投資、こういった形での健全な資本の外国への投下を奨励していくべきだと考えております。
  559. 大川清幸

    ○大川清幸君 経済のいろんな手法を発動することもこれはいろいろ考えていただかないと、これすぐ起こりますよ、問題が。  そこで、これも新聞報道だからちょっと確認しておきますが、通産省で、産業政策批判ですか、海外からのいろんな批判のあることに対する反論、これ正式のものでございますか。それで、ねらいとそれから中身ですね。私は経済のいろんな手法を発動することも非常に大事だと思っている、黒字減らし、貿易摩擦を解消するについて。だけれども、そういうことと一緒に、はっきり言うべきことは言うし、認識をしてもらうためにアクションを起こした方がいいという私は内々考え方を持っているものですから、この性格とねらいについてちょっと聞いておきたいと思います。
  560. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 先ほど来ずっとやりとりを聞いていたわけでありますが、そういう輸出の拡大の摩擦の後始末は私のところに来るわけです。そして、汗水流してけんかしたり、どなったりしてやっていますが、経済の通常についても内需中心でいくという経済企画庁長官の話でしたからまあまあいいとして、結果的には企業というのはやはりチャンスと見たら出ていきますので、それで、まだ日本で実際に輸出もしていないディジタル・オーディオ・デスクでしたか、ああいうものの関税を音響機器の二倍に上げて、垣根をもうヨーロッパはつくっちゃっている。そういうやり方などもおかしいじゃないか、国民のニーズは考えていないのかというので、いまやりとりしていますけれども。  アメリカについては、それらしき物の言い方を背景にしながらブロックUSTR代表が来ましたけれども、そういうことは直接には言いませんでした。私の返事は、言ったら、それは内政干渉である、そしてアメリカ自身がやっている行為の一つ一つをまだ持っていますから取り上げて、そしてアメリカだって国家助成をいろいろやっているじゃないか、あるいは対外的にもやっているじゃないか、人様のことを言う前に自分のところしっかりしろと言うつもりでおりましたが、それは出ませんでしたけれども。  また、議会筋と会いました。この連中もそのようなことらしきこと、たとえば日本がこれから航空エンジン、ジェットエンジンの部門に乗り出していくらしい、やがてそれが完成するとアメリカの空の支配を脅かすというようなことを、議員ですから勝手なことを言いますからね。じゃ、あなたたちは、世界の国民総生産の一割を占める国がジェットエンジンを自国で開発できない国であるということを不思議だなと思いませんか、研究にアメリカやイギリスと一緒になって着手するのがなぜ悪い、自力でもやれますけれども、一緒にやるんですからというようなことでやりとりなどいたしまして、やっぱり言いたいことははっきり言っておりますが、いま部内でやっていますのは、それをアメリカが、たとえば研究開発投資などに軍事費を含めたりすると大変巨額な助成をしている実態とか、そういうものを調査さしておりまして、これは公式なものともまだ言い切れませんが、それを見て私が判断をして、アメリカにどのような対処でやるか、あるいはECも含めて世界に、日本はそんなに国家が産業を助成して外国を荒らし回っているのではないということを筋を通して述べていくために、いまちょっとした作業をやらしている段階でございます。
  561. 大川清幸

    ○大川清幸君 これ先ほど申し上げたんですが、経済のいろいろな手法を発動するほかに、いま通産大臣から御説明があったんですが、やはりアメリカ、EC諸国いろいろ誤解があったり、誤認識があると思うんですね。これらを解消することは非常に大事な手法だろうというふうに思います。これから円満なやはり国際経済社会での経済活動を日本が持続しながら生きていく上には大変大事な問題で、これは何もこのことに限りませんけれども、そうした努力もふだん外交ルートを通じたりしておやりになっているんでしょうが、先ほどもちょっと黒字が五十七年、五十八年出そうですし、五十九年を展望しても、場合によると、これやっぱりふえていく傾向がまだあるかもしれませんから、黒字減らしの手法とそれから貿易摩擦の解消の点では、こうした経済活動ばかりでなくて、側面からのやっぱり日本の立場を理解してもらう努力というのは十分してもらいたい、こう思うんですね。この点は、総理、いかがですか。
  562. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いろんな手法でお互いがお互いの立場を知り合う。たとえばこの間のアメリカ議員団一行に対しては、一国のみで自由主義経済が確立できるのは世界でアメリカだけですよ。原材料もありますし、あるいはまた世界一高い富の質を誇る二億を超えるマーケットを持っているから、巨大生産、巨大供給、巨大消費が一国だけでローテーションの組める国はあなたたちだけなんですよ。しかし、日本は資源ゼロで、そしてこれだけの繁栄を後退させるわけにいかぬ。ということは、いままで歩いてきた一本道、平和な手段で原材料を買ってきて、そして高い付加価値をつけて皆さんを含めて買ってもらうという、そういう道しか日本にはないんです。自転車を踏んでいるのと同じで、それをとめろと言われたら倒れざるを得ない。しかし、それがあなたたちの国に日本が失業を輸出しているというような感じでおられるならば、私たちはそうではないと言える けれども、しかしアメリカが千二百万、ECが千二百万という失業者であること、そのことを日本に当てはめると六百万の失業者になる。そこらの痛みは政治的にも民生的にも私たちもよく理解をしてあげなければならぬと思っております。というふうにお互いの国を知り合う。そういうことを話をすると、なるほど、そういうふうに日本をいままで説明してくれた者がいなかった、その意味ではわかったと言ってくれますね。  だから、これから私は、外交官がもちろんプロの活動をやってくれるわけですが、私ども全体も含めて閣僚の努力、あるいは事務レベルの絶えざる意見の交換、そしてできれば与野党、これはもうほとんど外国に対して一緒に行かれるようですが、そのような機会にもやはり指導者、政府の方もですが、やっぱり議員同士のお互いの知り合い、ある場合においてはその国民と日本の議員が触れ合っていくという、そういうようなチャンスをアメリカなどはやっていますですね。やっぱり日本に来てどこに行くんだと言ったら、こういう目的でどこに行くんだとかというような、やっぱり相手の国の中の民衆の姿をとらえようとしているようですね。ですから、私たち日本の国会議員も、やはりそういう方向でお互いが最初はののしり合いなどしたってかえっていいと思うんですが、そういうことでお互いが知り合っていくことは大変必要だなということを、経済摩擦を解決するたびにそう思って反省の糧としておるわけでございます。
  563. 大川清幸

    ○大川清幸君 総理、いかがですか。
  564. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 山中通産大臣が申したとおりであると思います。  日本が立脚しているこの立場、貿易国家として生きていかなければならない宿命、そういう点を踏まえまして、しかも経済摩擦を解消していくという国際的な調和、非常にむずかしいことであります。ブレーキかけ過ぎると倒れてしまうし、ブレーキかけないというとスピードが出過ぎる。その調節は、やはり国民の皆さんによく事態を認識していただいて、政府がやらんとすることに非常な御理解をいただくと、そういうことは非常に大事ではないかと思っております。
  565. 大川清幸

    ○大川清幸君 次に、五十七年度税収不足、ちょっとやろうと思いましたが、時間がなくなってきましたので、財政再建問題でちょっとお伺いをいたしますが、先ほどもちょっと初めのところで論議をしたんですが、いわゆる経済展望が作成をされますと、この中身がどうなるかはまた先のことだからお答えがないのかというような心配もあるんですが、この中長期経済指標というのが一応明示されることになるでしょう、作成されれば。そうしますと、財政の中期試算、いただいたやつは、それにならってつくり直すことになると考えていいですか。
  566. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 提出申し上げました中期試算というのは、いろいろな仮定の上に立って、等率等差で組み立てたものでございます。したがって、経済審議会等で出てくるものとの整合性というのは、これは必ずしもないわけであります。  したがって、いずれ五十九年度予算を御審議いただく際には、さらに工夫して、それに類するものを提出しなきゃならぬと、それまでに十分検討をさしていただくべきものだと。だから、いま予算審議の手がかりとして御提出申し上げたそのもの自体がそれによって変更されるという性格のものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  567. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、財政再建の目標とする赤字公債というか、特例債の依存体質脱却、これの一番かぎになるのは中期試算の中のA、B、C案三ケース。これは、先日大蔵委員会で大蔵大臣が五年、七年、ということは、すなわちB、Cのケースですね、程度かなというような御答弁をなさったように聞いておるんですが、これはやはり、そうすると財政再建は、いろいろ経済展望等ができるこれからの課題は残っておるにせよ、大体七年くらいの範囲でやっぱり行おうということはほぼ決めていらっしゃるというふうに受け取ってよろしいですか。
  568. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは決めておるわけではございません。ただ、この種の試算をお出ししますのは、やっぱり先進国のいろいろな調査をしましても、七年ぐらいが限度だというので、七年、五年、三年というものに等率等差でもって当てはめてみたわけであります。しかしながら、この数年というのは、総理は五年から十年と、こう言っていらっしゃいますが、あの中で提示したものとして見れば、お出ししている試算で見れば、七とか五とかというものが対象になるというふうに申し上げたわけでございます。
  569. 大川清幸

    ○大川清幸君 どうも、そうすると中期試算というものは、初めの総括のときもちょっと御質問申し上げて、何のためにお出しになったのかなという感じだけしか私持てなかったんですがね。  これは総理、もう時間がないので細かいことまでやりませんが、こちらの方の試算でも、このC案でやっても、先ほどもどなたかちょっと触れておりましたが、要調整額は、五十九年度、六十年度、六十一年度でやっぱり八千億円、一兆円あるいは九千八百億円等になるんですよ。しかも前に、ツケ回しとかなんとかと言うと、山口さん嫌われるんですけれども、平準化やなんかで支払いが決まっているものを計算するとえらいことになるんです。ですから、七年ですか十年ですかというふうに言ったときには、総理は七年か十年かはっきりおっしゃらなかったんですが、長期的に、弾力的にというのは、よく聞いていると、長く、ゆっくりと、いいかげんにというふうにも聞こえたりしちゃうんですけれどもね。そこのところはこの要調整額の扱い等を見ても、大変困難だと思うんですが、七年にするかどうかもはっきりしないということだと、予算委員会に試算出されたのも、本当に、何というか、怒りたくなるぐらい失礼な話だと思うんですが、これはきちんとなさいませんか。予算案と一緒に出された資料なんですよ、どうなんです。
  570. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 財政の収支試算、それから中期展望、なお現実的なものを出さないかという国会の御要請に基づいて、すり合わせをしながら精いっぱいその仮定、等率等差に基づいて出したわけですね。これはまさに私ども予算編成に当たっての一つの手がかりであり、また御審議いただく上での手がかりでございますので、努力質――あえて賞とは申しませんが、そういう努力に対する評価をお願いして、ますます議論を重ねながら、なお、いつも言われます、財政再建計画とまではいかないまでも、それに近いものを出していけという、努力しろという、その線には沿って、精いっぱいの努力をした結果でございますことを御理解をいただきたいと思います。
  571. 大川清幸

    ○大川清幸君 まあ、努力賞ですな、よくやったでしょうまでいきませんね、やっぱり。  それで、ちょっと時間がなくなったので、御通告をしてある問題で、産業振興政策に関連して、工業再配置の問題と、それからテクノポリス構想について二、三質問をいたしたいと思うんですが、時間がないので、ひとつ――資料をお配りしてください。    〔資料配付〕
  572. 大川清幸

    ○大川清幸君 これはテクノポリスの方まで時間がないので入れるかどうかわかりませんが、私が心配しておるのは、工業再配置のせっかくのこの政策がいろいろ問題があることは御承知だと思うんです。ちょっとすると同じ失敗を繰り返す危険性もあるんじゃないかという私、心配をしておりますので、その点で工業再配置の状況の問題から伺ってまいりたいと思います。  最初に、工業再配置の計画の概要と現状はどうなっているか、御報告できますか。
  573. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 現在の工業再配置計画は五十二年七月に策定いたしまして、六十年を目標としたもので現在実施しております。  その後、マクロの経済あるいは産業構造等の変化等、相次いでおりますので、五十六年度から見直しに入っております。五十六年の十二月に立地公害局長の私的諮問機関といたしまして工業再配 置基本問題懇談会をつくっていただきまして、昨年の十月、その御提言をいただいたところでございます。今後、その御提言を尊重しつつ、見直し作業に入ってまいりたい、このように考えております。
  574. 大川清幸

    ○大川清幸君 それはわかっているんです。  そこで、この計画の実施された状況がわかれば、報告をちょっとしていただきたいんですが、資料ありませんか。
  575. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 工業再配置計画の概要と現状を比較して申し上げます。  計画の方は当初、経済フレームといたしまして経済成長率を年率五・七ないし六・三%と設定いたしましたが、五十一年から五十六年の実際の成長率は四・五%でございます。これをベースにいたしまして、工場移転につきましては、昭和六十年において移転促進地域の工場敷地面積を四十九年に比して三割程度減らせるという目標に対しまして、五十五年現在で東京、大阪、名古屋、これらの地域で全体で約二二%減少しております。  次に、誘導地域での新増設の目標でございます。五十一年から六十年の累積で、全国の新増設の七割程度を誘導地域で行うということに対しまして、五十一年から五十六年度累積で六六・七%……
  576. 大川清幸

    ○大川清幸君 誘導地域は。
  577. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 誘導されたものは六六・七%……
  578. 大川清幸

    ○大川清幸君 全体でね。
  579. 福原元一

    政府委員(福原元一君) はい。  これを出荷額で見ますと、移転促進地域の出荷額のウエートが二三%を一一%に六十年にしようという目標は、これは五十五年で二〇・七%にとどまっております。誘導地域におきましては二四%を三〇%にする目標が二四・五%にとどまっているという現状でございます。
  580. 大川清幸

    ○大川清幸君 白地地域の実績は持ってない。
  581. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 白地は、昭和四十九年五三%を昭和六十年五九%にしようというのに対しまして五四・八%でございます。
  582. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、これは素人考えで見ますと、誘導地域の二四・五、それですから、五十五年度実績のポイントで言うと誘導地域の方が〇・五増にしかならないんですな、通算で計算すると。白地地域の方が一・八ふえるというか、いま御報告願ったんでも五四・八ですから高いんですよ。ですから誘導地域の方がパーセンテージが高くなるように政策は持っていくべきものなんでしょう、違うんですか、どうなんです。
  583. 福原元一

    政府委員(福原元一君) ただいま御説明申し上げましたように、昭和五十一年から五十六年までの新増設のうち約三分の二が誘導地域内の立地ということになっておりますが、一方、移転促進地域における工場の敷地面積は昭和五十年以来約二割減っているということも申し上げましたが、総じて見ますと、新増設の面から見ますと、工場の地方分散は一応進んでいるとは申し上げられますが、工業出荷額について移転促進地域のシェアは横ばいにある、あるいは若干ふえているではないかというのが先生の御指摘だと思いますが、私どもはこれは都市部におきましていわゆる加工組み立て産業、これが非常に最近高い出荷額の伸びを示しております。コンピューターの組み立てであるとかファッション産業であるとか印刷業、これは非常に都市部に集中しておりまして、これらが非常に高い出荷額を示しておるというふうに考えております。したがいまして、工業出荷額から見た工場の地方分散というのは現在では想定した程度には進展していないということは御指摘のとおりだと思います。  しかしながら、私どもは技術先端産業、これらの加工産業というものが輸送コストも低いというようなことによって、これから試験研究機能を充実させる、あるいは人材の育成というようなものを図っていったならば、地方へも十分分散できるというふうに考えております。
  584. 大川清幸

    ○大川清幸君 これからも推進をしていかなきゃならない仕事だと思うんですが、実際には行管庁で五十五年一月から三月まで工業再配置計画がどうなっているか、これは法制定されてからこの事業がどうなっているかの調査をなさったはずですが、この状況、結果については御報告していただけますか。
  585. 中庄二

    政府委員(中庄二君) 簡単にお答え申し上げます。  工業再配置の全般を見ました場合に、受け皿と申しますかそちらの方の準備は相当進んでおりますが、実態面がなかなか進行していない、工場移転の方が進行していないということから、勧告でございますが、工業再配置計画の見直し問題、あるいは誘導地域の再検討、それから具体的な手段になりますが、工業団地の造成に係るいろんな補助金等、利子補給等がございますが、こういうものの重点化ということの勧告をいたした次第でございます。
  586. 大川清幸

    ○大川清幸君 これは、行管庁で実態調査をやって、団地の造成等はかなりふえているんですが、実態は分譲とか、それから工場が建つ段階になると状況がよくないので、後から時間の範囲内で細かい問題を取り上げてお聞きをしたいと思っておりますが、こうした状況がうまくいかないことについては掌握されていますか。これは行管庁の所管じゃないんですね。実績がどうかということは通産省かな。
  587. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 工業団地の分譲状況で申し上げますと、昭和五十六年の九月三十日現在で全国の工業団地の総面積は約七万二千ヘクタール。そのうち分譲済みの面積が四万九千ヘクタールということで、分譲率約六八%ということになっております。
  588. 大川清幸

    ○大川清幸君 いま分譲の最後の数字。
  589. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 分譲済みの面積が約四万九千ヘクタール。
  590. 大川清幸

    ○大川清幸君 それは全体ですね。古いのも全部入れてね、昔からのやつ。
  591. 福原元一

    政府委員(福原元一君) そうでございます。
  592. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、この政策を進めるについて、特別誘導地域というのを指定なさったんですが、この特別誘導地域についての、何というんでしょうな、指定なさった根拠といいますかね、考え方はどういうことだったんでしょう。
  593. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 特別誘導地域につきましては、特に工業再配置法に規定してあるところではございませんで、工業再配置促進費補助金の中で規則として規定されておりますが、これは工業再配置促進法の誘導地域のうち、特に工業の導入を促進すべき地域として北海道、青森、岩手、鹿児島等の遠隔十二道県並びに誘導地域内の特定不況地域等を特に工業の導入を促進すべき地域として指定いたしておるわけでございます。
  594. 大川清幸

    ○大川清幸君 いわば優先順位でもつけて特に力を入れてやっていきたい地域という意味で指定をなさったように思うんです。時間がありませんし、一々これを、調査の結果を全部やっているわけにいきませんから、お手元にお配りをいたしました資料の中から二、三お伺いをしていきます。  その二ページを見ていただきますと、私ども三月の半ばから月末までずっと調査をいたしまして、その調査結果を粗々まとめたものでございまして、指定地域はそこに書いてあるとおりでございます。(1)のところで、(イ)ですが、纎維産地とか鉱山地域とか電源所在市町村、これが(2)の一番上のところにある(イ)(ロ)(ハ)の(イ)で共通しています。それから鹿児島県を集中的に調べてみました。それが(ロ)です。それから「団地造成はしていないが、工場立地法に基づき、工場適地や農村地域工業導入地区として、一定地区を指定して現状のまま企業誘致をしている市町村」、これが(ハ)でございます。  これは見ていただくとわかりますように、団地面積、それから分譲済み面積というのがあります。これが(イ)の場合は五〇・七%、それから(ロ)の場合は七〇%で分譲の状況はいいんですね。ところが、工場が建っていない。分譲しながら工場が建っていない、そういうようなものを見てみますと、そこに書いてありますようにパーセンテージ で見ると、(イ)の場合は四五・四、(ロ)の場合は三八・八、(ハ)の場合は二九・七、大変悪いんですよ。この悪い状況について把握なさっていますか。
  595. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 先生おっしゃいましたいわゆる纎維産地、鉱山地域、産炭地域等々の分類につきましての数字は持ち合わせございませんが、特別誘導地域につきまして最近の実績は件数においては大体横ばい、面積におきまして増加の傾向をたどりつつある、このように私どもは見ております。  たとえば件数で見ますと、遠隔十二道県につきまして、昭和五十二年三百四十九件の立地件数でございました。昭和五十六年、六百七件、面積で五十二年が三百三十四万平方メートルでございましたのが、五十六年は七百八十四万五千平方メートル、そのように増加をしております。
  596. 大川清幸

    ○大川清幸君 増加はしているけれど、立地率悪いでしょう、工場なんかの。そこまでは把握しませんか。
  597. 福原元一

    政府委員(福原元一君) これは、立地率は、私どもは、先ほどマクロで六八%と申し上げましたが、逐年、率としても上昇はしておるところでございます。
  598. 大川清幸

    ○大川清幸君 それはもう少し正確に説明してもらわぬと。うんと古い昔の、何か戦前のまであるんだよ。新しい、最近四、五年のところできちんとやってください、悪いはずだから。どうです。
  599. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 特別誘導地域につきましての数字、ただいま持ち合わせございませんが、誘導地域だけにつきましては五十五年九月現在で四七・七%でございます。
  600. 大川清幸

    ○大川清幸君 これは誘導地域の特別誘導地域もうまくいっていないんですよ。うまくいっていないことを私は非難したりいじめようと思っていないんです。これせっかく始めたんだから、問題点をきちんとした上でしっかりやることはやるし、縮めるところは縮めてもらいたいんです、基本的な考えは。  テクノポリスも、通産大臣はこの間、十九全部やると言ったのをやっぱり考え直すと言ったのは一つのこれは見識だろうと私も思っているんですよ。やれるところはきちんとやって、効果を上げてもらいたいと、こう思っているんで、その点は誤解しないように。何かもうつるし上げられるからはっきりしたことは言わないというんじゃなくて、ちゃんと教えてくださいよ。問題をはっきりした上で問題を解決していくという考え方でこれ取り組んでもらいたいわけ。もったいないですよ、金つぎ込んで。  それで、二ページの(3)を見てください。見ていただけばわかるように、これワーストファイブ。ずっと各地方の事務所に連絡をとって実態を全部調べました。こういう状況ですから、担当局の方はこれ一回見て現地と照らし合わせて、よく指導してくださいよ。  それから、造成をしていながら分譲ゼロのところなんか(4)のところにずっと書いてあります。この状況について何か聞いていることや知っていることがありましたら、ちょっと報告してください。知らなきゃ知らないで結構です。
  601. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 個々につきましては私も十分には存じませんが、未分譲面積と工場未立地面積、この辺の実態がどうなっているか。まだ造成されてなければこれは当然まだ分譲は始まっていないわけでございます。その辺のところをチェックしてみたいと思っております。
  602. 大川清幸

    ○大川清幸君 これは失礼ですが、答弁の仕方が悪いんだかマイクの調子が悪いんだかよくわからないんだけれども、もう少しはっきりしてくれませんか。  じゃ、もう時間が迫ってきましたから、三ページを見てください。これはずっと見ていただきますと、(イ)の部分、分譲したにかかわらず現時点で工場が進出してない、団地としてはゼロ。これ、鹿児島県の大根占町、それから岡山県の相原町、それから工場の進出のめどが立たないから漁協に貸しちゃって五年間賃貸ししているんですよ、島根県の鹿島町。これ問題だと思うんですけれども、これ問題だって、これを持っている地方公共団体を責めてみてもしょうがないと思う、制度的に問題があるんだから。こういうものを一回ちゃんと取り上げて分析してみてください。  何か問題点で気がついたことがあったら言ってみてくれませんか。
  603. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 大川さん、ずいぶん意地悪いな、私が答弁することを知って鹿児島県だけそんなこと言って。僕が大臣になる前から調べていたんですか。
  604. 大川清幸

    ○大川清幸君 前からちょっと。
  605. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ああそうですか。じゃ、もう作為的でないと思って答弁いたします。  これは、日本経済成長期の末期にそのような法律をつくって、多分分散と地方誘導効果が出るものと思った法律だと思うんですが、その直後に第一次石油ショックに襲われて、五十年以降地方に出ていく企業というのはよほどのことがない限り、少々のインセンティブを与えてやっても出ていこうとしなくなったことが、それが実態になっていると思います。  したがって、問題は二つありますが、一つはそのようなやってきたことを惰性でやっていかないで、私たち自身がもう一遍洗い直してみる――法律の考え方とその組み立てをです。それから、地方自治体の方では、造成したまま利子その他も含めて処分できずに困っていらっしゃる。財政的な問題にさえなっているであろう、そういうところに対してどのような御指導ができるか。それとテクノポリスにもしたがって心配があると言われるわけでありますが、これは実はないところに平地をつくっていらっしゃいという構想で、先ほど言った背景によって一応挫折している段階だと思うのです。  しかし、今度のテクノポリスの方は、いつかお話ししましたように、政府の何の誘導策も促進策もなくって先端産業が飛行場の近くに立地しているのが、結果的に日本国地図を見てみるとわかる。しかし、その結果をほうっておく手はない。そこで、地域にもその先端産業が――これは企業がうんと言わないと困るのですが、ただ企業から飛行場へ行って、飛行場から本社とか、飛行場から成田、海外というだけの工場じゃ雇用貢献だけですから、このせっかくの先端技術を地域の技術と攪拌してもらって、そしてそこで新しい先端工業技術をその地域がそれぞれの特色を持ってつくっていくかどうか、これが問題で、つくる意欲があって、そしてその努力がなされて、知事がその工場に行って、本社に行って、ぜひ地元のこういう産業とドッキングしてみてくださいとか、いろんな努力をすると思うのですね。そういうことを前提にしてやりますから、今回の場合はむしろ出るものは先に出ている。したがって、それを厳選しながら、地方のそれに対する努力する姿勢があればそれを逐次厳選しながらも指定していく。しかし、十九地域全部やりますと言ったら、もうその意欲が途端に、何年目かには来るのだなということになってしまって、全然薄れていったので、そこで十九地域全部はやりません、厳選しますと、また、新たに条件と意欲を備えたところが手を挙げればそれも認めますよということを方針を変換したわけであります。  そういうふうにお取りいただきたい。
  606. 大川清幸

    ○大川清幸君 大体これをどうするかについても、一部いま大臣からもお答えがあったんで、今後のやっぱりフォローアップをちゃんとしていただく。それから事務的にも、技術的にも余り細かいことまで通産省の方で全部見ていっていくというのは大変だろうと思うんですが、やはりこういう実情、答えがはっきりしてきてみますと、チェックする問題点、チェックポイントみたいなものが幾つかはっきりするし、共通点が出てくるんじゃないかというふうに思いますし、いま大臣がおっしゃったように、小さな市町村の、財政規模の小さいところで土地は抱えたわどうにもならないわって、これ一般会計から持ち出してもう頭痛の種のところもあるわけですから、地元の住民サービスもろくすっぽそっちの方ができないというよ うなことになるんで、この辺のフォローアップの体制については十分慎重に、これ今後対応していただけるかどうか、この辺のお考えをちょっと聞かしていただきたいと思うんです。
  607. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 大川さんの政党でさえもそれだけの調査ができるんですから、わが組織としては誇る通産省の組織でもう一遍洗い直しまして、現状を踏まえて、それからこのままの法律でこのままやっていっていいのかも踏まえて検討しますし、それまでの間は半年に一遍ぐらいずつその地域への工場立地の現状と、それらの市町村が抱えている問題点について都道府県知事等にもお願いをして通産省に報告していただくようなシステムを検討してみたいと考えます。
  608. 大川清幸

    ○大川清幸君 ぜひそのようにお願いしたいと思います。  三ページの(ハ)ですとか、福岡県の方城町ですか、不況のために企業が倒産して雇用ゼロと、それから山形県の酒田市の住金ですか、住友金属もあれつぶれちゃった、結局電力料金高くって。そういうようなこともありますし、それから、十年間着手してからもでき上がらない団地なんというのもありますし、これはもうどうにか方向変えるなり何なり検討した方がいいと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。  鹿児島県のは偶然うちの方の職員があちらの方を調べた資料でございまして、参考のために差し上げておきますが、ごらんになればわかりますように、全県下で四百五十八・五ヘクタールで七七%の分譲が済んでおりますが、実際に工場が進出したのが三八・八%にすぎませんし、雇用は五千二百四十八人、これ五ページ目になりますか、そっくりこれ鹿児島のちょうど調べた資料でございます。後で参考にしていただければ幸いです。  ところで、公共事業の前倒し等も大プロジェクト等で対応していただくのが大変景気浮揚のためには必要だと思うんですが、いまの工場の再配置を行っている状況を見ますと、地方公共団体の財政力ではなかなか公共関連施設なんかの社会資本投資ができないようなところもあったり、いろいろある。これは補助金も特別誘導地域なんかについては対応して出ていますが、五千円が七千円ぐらいになったんじゃ、ちゃちなと言っちゃ悪いけれども財政力のない市町村はどうにもならぬです、これは。企業が行きやすい効果が出る地域については公共事業の前倒しの中でも効果があるもので、技術的、法律的、あるいはその他の会計技術上できるところがあれば、ねらい撃ちでやってあげるというようなことをすればこういう事業はいままでより進むと思うんですが、いかがですか。どうでしょう。
  609. 永田良雄

    政府委員(永田良雄君) お答えいたします。  工業再配置促進法による特別誘導地域等について公共事業を優先的にうまくやったらどうか、こういうお話でございます。私どもは特別誘導地域における工業団地の建設に関連する下水道とか、道路とか、そういう公共事業につきましては、工業団地の造成の進度、それから工場誘致の度合いに応じまして地方自治体の長と十分協議をいたしてつけておりまして、今後ともできるだけ工業団地がうまくいくように地方自治体の長と相談してやっていきたい、かように思っております。
  610. 大川清幸

    ○大川清幸君 よく相談してやってもらいたいんですが、効果のないところはちゃんと地元の都道府県あるいは市町村と相談をしてこれは打ち切るなり、もっと別の有効な方向へ活用するなりということまで考えた上でこれ指導してくれませんか、どうですか。
  611. 永田良雄

    政府委員(永田良雄君) ただいまの御質問の点も十分踏まえて対応をしていくつもりでございます。
  612. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間がなくなりましたからテクノポリス構想についてはいま通産大臣からもちょっとお話があったので、一点だけ念のためにお伺いをしておきたいと思います。というのは、この事業を進めるについては関係省庁間の協力と理解が大変必要だと思うんです。共管体制というのは一応できているように新聞で報道がありました。関係大臣のお考えについて違う点なんかないでしょうね、念のため。
  613. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 法案そのものについて違う点はなかったんですが、自分も共管大臣にしてほしいという、これ自分もじゃなくて、役所がそれぞれ言いまして、じゃテクノポリスに何をもって貢献するのか、要するに手みやげのない役所で縄張り意識だけのやつは採用しませんでした。もう大体みんな手みやげを持って参加して共管をしようということになっております。
  614. 大川清幸

    ○大川清幸君 共管関係ができるのは建設、農水、国土、通産中心ですが、この省庁ですか。
  615. 福原元一

    政府委員(福原元一君) おっしゃるとおりでございます。
  616. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうすると大蔵、自治、運輸で、運輸大臣は御健康のあれ――大蔵、自治も関係はありますね。どうでしょう。
  617. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはいわゆるテクノポリス法案の主務大臣、共管大臣ではございません。ただ、私どもの方といたしましては、この法案作成に当たりまして地域の自主性の努力を主体として進められると聞いておりますので、建設的な立場からこれの協議に参加をさしていただいたと、こういう実情でございます。
  618. 大川清幸

    ○大川清幸君 最後に、それではこれは実際に実施していく出先の問題でひとつ私心配がありまして、各地で格差がいろいろあるんですが、沖縄開発の場合……
  619. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 大川君、時間が参りました。
  620. 大川清幸

    ○大川清幸君 はい。  沖縄開発の場合は何か総合開発事務所みたいなものを設けたんですが、そんなものは必要かどうか、この財政の事情のときに、問題ですが、何かそうした調整を、各省庁の間の行き違いを調整をするような仕組みみたいなものは考えた方がよろしいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  621. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まだ法案を提出したばかりでございますから、その運営についてはただいまの御意見を参考にさしていただきます。
  622. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間が来ましたから。
  623. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で大川清幸君の質疑は終了いたしました。  明後日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会