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国務大臣(
山中貞則君) 確かに先ほど、ECの問題も全部片づけたのが、またすぐ関税引き上げというようなことで、これは目下交渉中でありまして、
見通しは悪くないと思っておりますが、鉄鋼問題等についても、アメリカの方でさらに今度は根拠を違えて、
日本側の不公正な企業に対する圧力といいますか、援助の結果、アメリカの鉄鋼業界はこうなったんだというような、別な
理由でまた訴えているようであります。私は、大変このことは不幸なことであって、アメリカは確かに一国だけで生産から消費まで、世界一高い国民所得を持った国でありますからね、成り立ち得るんですね、理論的に。だから、そうそうたる大会社の社長でもFOBとは何だと知らなかった社長がおるというぐらいで、そういうことを
考えてみると、
日本と正反対の国がアメリカだと。そのアメリカが
日本に対して大変エクセントリックといいますか、何かそういう感情を持つに至ったと。しかしこれは私
たち日本の方も、余り
日本だけがやられている、アメリカの言うように、ブラフをかけられ続けているというふうに受けとめるべきじゃないんで、じゃ、アメリカとECとの間はどんなトラブルがあるんだというのを拾って見たら、大変な物すごい大げんかをしていますよね。たとえばエジプトにはアメリカが国庫補助をつけて小麦を売ったというのはいい例でありますが、ほかのものについてもCE、各国の中でもそうですが、ことにEC対アメリカというのは
日本以上に激しい
経済摩擦をやっているわけです。
それで、
日本人の頭を私は切りかえたいと思うんです。
日本というのは、向こうの言うおどせばおどすほど下がるという、
日本を屈服させるにはおどし続けなければならないという国じゃなくて、
日本は
日本の主張すべき道がある、そして
日本はすぐれている点はすぐれている、あるいは穀物輸入は
最大のアメリカに依存している点は感謝もし、向こうもそれは評価してもらわなけりゃならぬ、そういう態度で、これからは国際社会で
日本だけが被害者であるような妄想を抱かないこと、私は逆転の発想を持てということを事務局に言ってるんですが、それはたとえばアメリカでローカルコンテンツ法案が全会一致通ったと、今度もまた上程されたと、非常に騒ぐわけですね。じゃ、ローカルコンテンツ法案が通過して大統領がサインをしたときにそれは
日本が大変困る。しかし、アメリカの国民は困らないのかというのを計算してみろといったら、計算してみたら失業率への貢献から始まって、自動車の部品その他も含めてみても、アメリカの
経済が、国民自身もローカルコンテンツ法案は、高い物を買わされることになるとかいろいろあって、これは結局は
マイナスじゃないかという、私どもはそういう作業をしたんだと。だから、幾ばくならずして、アメリカの中でもUSTRの方が議会に対して、そんなことをやったらアメリカの国民、アメリカの国家
経済自体が
マイナスになるんだと、こう言っているんですね。ですから、ローカルコンテンツ法案をやりたいならやりたまえというような姿勢もときには私はとった方がいいんじゃないか。
したがって、
日本のこれからの
経済外交というものは、面を上げて一歩も引かない、言うべきことは言う、そして向こうの誤りは指摘するということの方が、やってみてその結果は意外と率直に渡り合ったことによって、急転直下解決ということがあるように思います。したがって、いまおっしゃるような方向で、今後も
日本が
経済摩擦で外国から取り上げられる場合は、
日本がそれだけ優秀なんだと。その優秀な点で、たとえばアメリカの失業率千二百万は大変だろうな、ヨーロッパも千二百万と言っているが大変だろうな、
日本に当てはめてみたら六百万じゃないかと、そういう配慮は心の中で持ちながら、しかし、それは
日本の責任ではない。アメリカ自身がそれに対して、ヨーロッパ自身がそれに対して
日本に対応できる活力を付与する
努力をすべきである。その
努力のために
日本の進んだものが協力してほしいというなら、われわれは幾らでも現地に企業が行っても加勢しましょうと、そういう態度で交渉してみたいと思います。みんなは、そんなことを言っているとけがするぞという人もおりますが、発想の転換ということを一遍やってみないと、受け身、受け身ではいかぬ、そのように
考えます。