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1983-03-11 第98回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十一日(金曜日)    午前十時五十九分開会     ─────────────    委員の異動  三月十日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     中野 鉄造君      田渕 哲也君     井上  計君  三月十一日     辞任         補欠選任      宮澤  弘君     岩崎 純三君      立木  洋君     市川 正一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 岩崎 純三君                 大島 友治君                 大坪健一郎君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 山田  譲君                 吉田 正雄君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 塩出 啓典君                 中野 鉄造君                 市川 正一君                 沓脱タケ子君                 井上  計君                 前島英三郎君                 江田 五月君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        総理府賞勲局長  柳川 成顕君        総理府恩給局長  和田 善一君        青少年対策本部        次長       瀧澤 博三君        北方対策本部審        議官       橋本  豊君        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局経済部長  佐藤徳太郎君        警察庁刑事局保        安部長      大堀太千男君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁長官        官房総務審議官  門田 英郎君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        防衛施設庁労務        部長       木梨 一雄君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        科学技術庁研究        調整局長     加藤 泰丸君        国土庁長官官房        長        宮繁  護君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省入国管理        局長       田中 常雄君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省条約局長  栗山 尚一君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        国税庁次長    酒井 健三君        国税庁税部長  角 晨一郎君        国税庁調査査察        部長       大山 綱明君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省社会教育        局長       宮野 禮一君        厚生省公衆衛生        局長       三浦 大助君        厚生省社会局長  金田 一郎君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省援護局長  山本 純男君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省食品        流通局長     渡邉 文雄君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        通商産業大臣官        房審議官     斎藤 成雄君        通商産業省貿易        局長       福川 伸次君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        中小企業庁長官  神谷 和男君        運輸省海運局長  石月 昭二君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省自動車局        長        角田 達郎君        運輸省航空局長  松井 和治君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        郵政省電波監理        局長       田中眞三郎君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  永田 良雄君        建設省都市局長  加瀬 正蔵君        建設省道路局長  沓掛 哲男君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省財政局長  石原 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        大蔵省銀行局保        険部長      猪瀬 節雄君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより市川正一君の総括質疑を行います。市川君。
  3. 市川正一

    市川正一君 日本共産党は、いま中曽根内閣が進めている憲法よりも、また国会決議よりも安保条約、これに基づくところの対米誓約アメリカへの約束を優先させる、こういう危険な政治、これに対して良識あるすべての国民がこれを阻止するために立ち入がることを呼びかけています。そしてまた国民世論も、たとえばNHKの調査では、国民の七五%が日本はいまのままではアメリカのやる戦争に引き込まれるおそれがある、こういう危機感を訴えております。まさに広範な国民の間に不安と危惧が広がっております。私は、こうした国民世論を踏まえ総理質問をいたしたいのでありますが、質問に入る前に委員長にお伺いしたい。  開会がおくれたのでありますが、私が質問のために要求しておりました参考人出席理事会で認められなかったというように聞いておりますが、その理由を御説明願いたい。
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 参考人の問題につきましては、各党間でいろいろな意見が述べられましたが、平行線でございまして、議調わずと、こういうことで、共産党さんも審議をこれ以上延ばすわけにいかぬので審議には応ずるがということで御了承をいただいて、審議に入ったようなわけでございます。  それから、この問題は議院の国政調査権にもかかわる問題でございますので、継続して協議をしていく、こういうことでございます。
  5. 市川正一

    市川正一君 私はそれは納得できません。わが党は正々党々と審議をすること、これは私ども基本的立場です。しかしながら、議員の審議権に対する重大な侵害じゃないですか。私が参考人を要求して、ここで問題を解明する。私が提起いたしましたのは、いま深刻な社会問題になっている老人保健法の問題、老人医療費が有料になっただけではなしに、現に厚生省二つの基準によってお年寄りが病院から追い出される、締め出される、そしてお年寄りとその家族を含めて深刻な問題になっているときに、長年スペシャリストとして実際にこの問題に取り組み、そして実態をよく知っている参考人にここに出席願って、そして事実に基づいて具体的にただすつもりであったのが、どうしてそれが認められないのですか。いままで自民党自身も、たとえばこの予算総括委員会において参考人を呼んで玉置委員やってきたじゃないですかそれが自民党にとって、あるいは政府にとって都合の悪い参考人は拒否する、こういうことが前例とされるならば、都合の悪い質問も封鎖される、そういう結果になりかねぬと思うのです。委員長、どうお考えですか。
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) お答えいたします。  この問題は大変重要な問題でございますので、一時間余にわたっていろいろ討議を重ねた結果、議調わずと、こういうことで審議に入ったわけでございます。
  7. 市川正一

    市川正一君 私は断じて承服できませんので、きょうは予定しておりました老人保健法の問題については質問を留保いたします。そして、引き続き参考人の実現を要求するとともに、理事会において協議することを重ねて要求いたします。よろしゅうございますか。
  8. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 先ほど申し上げましたとおり、この問題は重要な問題でございますので、継続して各党間で協議をいたします。
  9. 市川正一

    市川正一君 それでは総理に御質問いたします。  総理ワシントン・ポスト紙でのインタビューで三つの目標について述べられました。その一つシーレーン問題でありますが、グアム東京台湾海峡―大阪、このシーレーン防衛をうたっております。いままで政府は一千海里防衛、こう言ってきておりましたが、それにはグアムは入っていたのですか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が申し上げましたのは、もしシーレーンを設ける場合には、台湾海峡方面一千海里以内、それからグアム方面一千海里以内、つまり方面を蓋然的に示したのでありまして、そのものというものに直接向けてという意味ではないわけであります。これは従来歴代内閣が検討してきたところであり、アメリカとも相談をいたしまして、その問題については今後両国でいろいろ研究すると、こういうことになっておるわけであります。
  11. 市川正一

    市川正一君 そうしますと、ここに地図がありますが、東京からグアムまでは約千三百海里です。そうしますと、いまのお答えではグアムは入っていない、一千里以内、グアムは入っていない、こういうふうに確認してよろしゅうございますね。
  12. 中曽根康弘

  13. 市川正一

    市川正一君 いや、これは総理が向こうで言われたことですから。
  14. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 従来からお答え申し上げさしていただいておりますように、わが国は周辺海に囲まれた国でございます。したがって、海洋防衛海洋交通の安全の確保ということはきわめて重大な問題と考えておりまして、この問題につきましては、周辺数百海里、もし航路帯を設けるとすれば一千海里程度と、こういうふうに答弁をいたしてまいっております。
  15. 市川正一

    市川正一君 これは総理ワシントン・ポストで語られたことなんですから、ですから、いいですか、グアムは入っていないわけですね。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 正確に申し上げますと、私がアメリカで申しましたのは、南東方面南西方面と、そういうことで申し上げたのでございます。方面を指示、明示したと、そういう意味でございます。距離その他の問題は専門的な問題で、私はどこが入るとか、どこを目的にするとかというようなことは一切言っておりません。以下は政府委員答弁いたさせます。
  17. 市川正一

    市川正一君 私が伺っているのは、方面であって、グアムは入っているのか入ってないのかということをお聞きしているわけですが、じゃいまのは入ってないということで理解していいのですね。あなたの発言に関してのことですから。
  18. 中曽根康弘

  19. 市川正一

    市川正一君 いやいや総理発言に関して聞いている。
  20. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 先ほども大臣からも御答弁がありましたが、わが方の防衛力整備目標のいわゆるめどといたしまして周辺数百海里、航路帯を設ける場合には千海里ということを申し上げております。なお、ちなみに申し上げれば、グアムまでは千三百三十マイルということでございます。
  21. 市川正一

    市川正一君 ここに文藝春秋の四月号、最近発売されたばかりです。この中に矢田次夫防衛庁統幕議長、今度退任いたしましたが、彼の現職時代の論文があります。この中に、「「シーレーン防衛」とは、「港から港につながる航路や、水道、港湾を通る船の安全を守ること」といったらいいでしょう。」すなわち「港から港」、それは総理ワシントン・ポストの表現をかりれば、東京からグアムという、こういうことじゃないですか。あなたはそういう理解なのですか。それともこれと違うのですか、どっちです。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 南東方面南西方面という方面を蓋然的に私は言明したのであります。そして、もしそれを設ける場合という条件つきで、しかもそれは千海里以内、だからそれでおのずから大体の見当はつくだろうと思います。しかし、いわゆるシーレーンという言葉意味は、一般的には海上交通路の防備という意味に使われておりまして、その中には、港湾あるいは海峡、あるいは一般海上における哨戒、あるいは船団をつくる場合の護衛、すべてを含められて海上交通擁護、保護、そういうような意味シーレーンという言葉が使われておるのでございます。
  23. 市川正一

    市川正一君 それでは再度確認いたしますが、昭和三十三年十月三十日、衆議院予算委員会において、時の岸総理が今澄委員に対する質問に答えて、グアム島を防衛の範囲にすることは憲法違反である、こういうふうに答弁をいたしております。この政府の見解はいまも変わりませんね。
  24. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) いま御指摘発言の詳細は存じておりませんが、少なくもグアム島というのはアメリカ領土でございまして、私ども自衛隊アメリカ領土を守ることは考えておりません。
  25. 市川正一

    市川正一君 いま、いみじくも答弁があったように、グアムには米軍南西太平洋における最大基地があります。結局、総理ワシントン・ポストにおける発言は、これを守ることと不可分に結びついている、日本列島を不沈空母にするという、バックファイアから守るというのも、結局その本土なるものは、この一つグアムじゃないですか。  一昨日、矢田部委員質問で、外国船防衛シーレーンの問題はいま持ち越しになっています。私はあの論議の真の日本政府のねらいは、このグアム米軍戦略物資輸送、これを守るためのものなんだ、そういうことがあなたの発言から出てくるんでありますが、その点どうですか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはとんでもない間違いでありまして、何かの妄想みたいに私にはとれます。私がはっきり申し上げましたのは、日本列島に侵入を許さない、そういう言葉を使っておるのでありまして、日本列島防衛日本列島の防空、それを申し上げておるので、人の国のことなんかを考えて言っているものじゃありません。
  27. 市川正一

    市川正一君 妄想という言葉は取り消しなさい。私は証拠を出しましょう。ここに資料を持ってきました。  現在、防衛庁官房長をやっておる佐々官房長、見えていますか。手を挙げてください。――彼が防衛庁人事教育局長をやっていたころに行った講演でありますが、その中でこう言っております。「したがって海上自衛隊の場合、主たる任務太平洋補給路、すなわち、日本沿岸数百カイリ、グアムから米戦略物資を運ぶための一〇〇〇カイリ、沖縄方向への一〇〇〇カイリを護衛するに足る四カ護衛隊群を持とう」云々と、こうなっているんですよ。防衛庁人事教育局長がこういう教育やっとるんです、講演やっとるんです。いまは官房長です。これ、どうですか、総理
  28. 佐々淳行

    政府委員佐々淳行君) お答えいたします。  私の講演を御引用いただいたようでございますが、そのコンテクストは、海上自衛隊防衛力整備目標、それについて言及をしたものと思われます。いま突然参りましたので、その前後の関係がよくわかりませんが、自衛隊の運用上の問題として四個護衛隊群をフルに稼働をいたしましても、いま申し上げたような周辺数百海里、あるいは航路帯を設ける場合は南西南東二本、千海里程度、それをやるのが精いっぱいであるということを申し上げたはずでございます。
  29. 市川正一

    市川正一君 あなた、もう一遍よう聞きなはれ。グアムから米戦略物資を運ぶための千海里、これを護衛するというふうに言っているじゃないですか。グアムからどうして日本への食糧や石油が来るんですか、総理グアムからどうして国民のための食糧が来るんですか。グアムから来るのはアメリカ戦略物資じゃないですか。これを護衛するために日本海上自衛隊任務がある、少なくともその重要な任務一つだということを言っているじゃないですか。これを私指摘しておく。  そこで、報道によりますと、明十二日から日米シーレーン共同研究が始まるらしいんですが、こういうアメリカ戦略物資輸送する艦船護衛もその対象になるのかどうか、お伺いしたい。
  30. 佐々淳行

    政府委員佐々淳行君) 私の発言についての御質問でございますので、まず私から答えさしていただきます。  グアムまでは千三百海里ございまして、おおむね千海里程度ということで、グアムあるいはフィリピンに向かって南東南西と、航路帯を設ける場合には二つ航路帯を設ける。その海上輸送目的日本有事の際でございますので、当然日本に来援をする米艦船日本に対するいろいろな物資、こういうものも含まれると思います。そのほか、周辺数百海里及びいま申し上げました二本の航路帯に関しましては、日本国民の生活のために必要な必需物資海上防衛も当然含まれると思います。
  31. 市川正一

    市川正一君 ちょっと話が変わってきたんですが、いまの答弁は、矢田部委員がおととい質問して、その問題については持ち越すということになっていたはずじゃないですか。それを彼は堂々と、総理にかわってかどうか知らぬけれども、そのアメリカ艦船護衛すると言うのですが、それでいいんですか。総理、どうなんですか、いまの答弁で。総理――いや、あなたですよ、あなたおとといやったじゃないですか。
  32. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 御指摘の点につきましての答弁をまずさしていただきますが、シーレーン防衛研究につきましては、日米間の事前の打ち合わせが済みましたので、十二日、すなわち明日に研究開始をしたいというふうに考えております。これが第一点でございます。  それから、ただいま官房長から答弁申し上げた趣旨は、あくまでもそのねらいは、航路帯を設ける場合には一千海里の防衛をするということを申し上げたわけでございまして、米艦をストレートに守るといった趣旨ではない。この問題については先般この委員会でも御指摘がありまして、いま研究をしているというところでございます。
  33. 市川正一

    市川正一君 そうしますと、くどいようですが、この佐々官房長の言う「グアムから米戦略物資を運ぶための一〇〇〇カイリを護衛するに足る」云々というのは、これはそうすると間違い、取り消すということですか。――いや、今度は佐々官房長に聞いている。言うたときに出てこないで……。
  34. 佐々淳行

    政府委員佐々淳行君) 誤りということではございませんで、研究課題の対象になろうかと。それから、先ほど申し上げましたように、日本の有事の際ということを私申し上げております。有事の際に、そういう航路帯千海里程度日本周辺海域数百海里にわたる防衛用の物資もございましょうし、民需用の物資もございましょう、これを何とか海上において防衛することができるような防衛力を整備をいたしたい。その海上自衛隊の整備の目標として申し上げておるのでございます。  なお、米艦船護衛の問題につきましては、先ほど防衛局長の御答弁がありましたように、これからの研究課題であるということで御了解をいただきたいと思います。
  35. 市川正一

    市川正一君 全く了解できません。言うことしどろもどろで、つじつま合わぬじゃないですか。  そうすると、私総理に伺いますが、いまたまたま整備という言葉が出ましたが、そうしますと一千海里シーレーン防衛、あるいはグアムまでの航路帯防衛、これはいまの防衛計画の大綱でできるんですか。
  36. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 能力といいますのは、何もこのシーレーン防衛に限りませんので、完全にできるか、すなわち一〇〇%できるかどうかというのを議論することは余り意味がないと思います。  私どもは、まず周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には干海里程度防衛力を持ちたいということが第一点。そうして、有事の際にはこういったシーレーン防衛の作戦というものを日米共同対処で行うことが前提の第二点でございます。それから第三点は、このシーレーン防衛というのは、先ほど来何回も御答弁申し上げているように、港湾防備から海峡防備、あるいは哨戒、船団護衛航路帯の哨戒といった各種の作戦の組み合わせによってその安全を図ろうと、こういうことでございまして、そういった能力を持つことがいわゆる抑止の意味として非常に大きなものがあろうと、こういうことで整備を進めているわけで、もし大綱の水準が達成されれば、現在の能力に比較しても相当能力が向上するであろうというふうに思います。
  37. 市川正一

    市川正一君 総理に伺いますが、いまの答弁を踏まえて、現在の大綱でできるというふうに総理としては認識なすっているんですか。
  38. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 大綱の水準が達成されるならば、防衛力、シーレーン防衛のための能力として意味のある能力が確保できるというふうに考えております。
  39. 市川正一

    市川正一君 少なくともワシントン・ポストでああいうふうに総理おっしゃった。それは現在の大綱であれがやれるということでおっしゃったのかどうか、それを聞いているんです。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が米国で申しましたのは、いまも申し上げましたように、日本列島防衛のためにやるんだと、日本防衛が中心で、その目的にのみ限ってやるんだと、アメリカグアムを守るとか、アメリカを守るとかいう考えでやっているんではないんだと、この点をまずはっきりしておきたいと思います。  市川さんはグアム島をいろいろ引き合いに出しておりまして、いかにもグアム島を守るような印象を国民の皆さんにテレビを通じて誤解を与えてはいけません。日本防衛は、われわれの防衛はあくまで日本列島日本の国そのもの、それを守るというところに限定されておるのでありますから、その点はまず御理解、御了解を願いたいと思っております。  それ以外の問題は技術的問題ですから、防衛庁答弁いたさせます。
  41. 市川正一

    市川正一君 技術じゃないんですよ。基本問題です。いまの大綱を、おっしゃった三つの目標をあれでやれるという認識でおられるのかどうかというのは、これはあなた技術問題じゃないですよ。
  42. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) いまの大綱をと、こうおっしゃいますけれども、私ども防衛力整備の計画は、防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く近づけたいと、これが私どもの努力でございます。そして、その防衛計画の大綱の水準に近づきますと、先ほど政府委員から答弁さしていただきましたように、相当効果的な海洋防衛もできるだろう、海上交通路の安全の確保ができるであろう、こう答弁をさしていただいているところでございます。
  43. 市川正一

    市川正一君 それでは総理にお伺いしますが、NHKのワシントン日高特派員というのがいます。彼のレポートが一月二十日のニュースセンター九時で放映されました。私ちょっとそのテープを起こしましたんですが、こう言っているんですよ。  中曽根総理のワシントンポスト発言の三つのことをやるには、F15戦闘機を三百五十機、P3Cを百五十機、艦艇を二百五十隻、弾薬の装備は三週間、この数は現在の防衛力増強計画の二、三倍に当たるわけだが、これを中曽根総理は約束した、こういうふうに国防総省が言っていると、こう伝えてきました。彼のそこの部分を読んでみますと、それはまあ中曽根総理大臣に聞いてみにゃわからぬ話ですけれども、国防総省はそう言って喜んでいる。  そこで国民に、また日高特派員にかわってお聞きしますが、これは事実ですか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) NHKの解説員が言ったことについて、私は一々責任を持つ必要はないと思っています。
  45. 市川正一

    市川正一君 私日高記者とは面識はありませんけれども、ここにも彼の著書を持ってまいりました。その中に彼の紹介がありますが、日本の特派員で初めてペンタゴンの記者クラブにデスクを持った人、こういうふうに紹介されておりますが、ペンタゴンの中に入って直接に取材をしている記者であります。  私率直にこの機会に申したいんでありますけれども総理はたびたびいままでの答弁を取り消したり、あるいは訂正したり、陳謝したり――私ここに一覧表を持ってまいりました。総理にちょっと見ていただきたいんですが、これはたとえば徴兵制の問題がそうです。あるいはまた不沈空母の問題もそうです。マスコミには、初めは全然言うとらぬいうて、後で勘違いだ、こうおっしゃる。あるいは国是の問題もそうであります。  そうしますと、いまお話があったけれども、もう一度伺いたい。こういうことはございませんでしたか。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何を伺いたいんですか。もう一回論点を明らかにしていただきたいと思うんです。
  47. 市川正一

    市川正一君 いまの三つのことを行うためには、日本が買おうとしている、たとえばF15戦闘機を三百五十機だとか、P3Cを百五十機だとか、第一線の艦艇を二百五十隻だとか、こういうふうにいまの二倍三倍の計画を持たなければならない、これをレーガンとの会談の中で、アメリカとの間であなたがお話をなすって約束をなすったというふうに彼は言っているわけです。その問題です。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その特派員の報道は間違いです。私は、その何百機とか船を何ぼとか、そんなことを約束したことは絶対ありません。私が言ってきましたのは、防衛計画の大綱の水準に達するようにできるだけ努力をしたいと、そういうことを申し上げてきたのであります。
  49. 市川正一

    市川正一君 そうしますと、いまの大綱の見直しとか、あるいはいま言ったような大量の装備は将来も行わない、こういうことをはっきりお約束願えますか。
  50. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 当委員会におきましても再々総理からの御答弁ございましたように、また総理から私に対しまして、防衛庁長官に対しての下命も、ただいま総理が御答弁のように、防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く到達するように、国の他の施策、あるいはそのときの経済情勢、あるいは許す限りの財政的な問題、これを十分勘案して防衛力の整備に努めると、こういうことを私は総理から下命いただいております。
  51. 市川正一

    市川正一君 くどいようですが、大綱の見直しをいまやるとか、あるいはいま申し上げたような数字は別としても、そういう大量の装備は将来行う計画はないと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。総理の指示を言ったんで、その指示の大もとの意見を聞きたいんですがね。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま防衛庁長官が申し上げたとおりの指示をして、まず大綱の水準に達することがわれわれの当面の目標であります。
  53. 市川正一

    市川正一君 私次に四海峡、これも後で三海峡になったようですが、完全に全面的に管理するという問題に入りたいと思いますが、宗谷海峡は北半分はソ連の領海でございますね。
  54. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 宗谷海峡におけるソ連の領海は十海里というふうに聞いております。
  55. 市川正一

    市川正一君 そうしますと、たとえ日本有事であっても、そこを完全に全面的に管理してソ連の潜水艦や艦船を通さない、こう総理おっしゃったのだけれども、これは能力的にも、また憲法上からもできないことですね。――いや、総理ワシントン・ポストでやったお話のことなんですよ。
  56. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず第一点は、これも先ほどのシーレーン防衛と同じでございますが、私ども海峡防備、通峡阻止と言ってますが、この作戦の中にも各種のことが考えられます。すなわち水上艦艇、潜水艦、航空機による通峡阻止がそれでございまして、必要があれば機雷を敷設することがあるだろう、しかし、機雷を敷設するということになりますと、国際海峡であれば沿岸国を含め第三国に対する影響が非常に大きいということから慎重に考えなければならない、こういうことは再三申し上げているとおりでございます。  そこで、ソ連の領海部分が残っている部分について、いわばしり抜けになった部分でそういった通峡阻止をやっても効果がないのではないかというふうな御指摘だろうと思いますが、この通峡阻止というのは、私どもが考えている作戦をいま言った累積効果によって期待しているということで、たとえば機雷をわが方の領海、公海についてまくということによって相手の行動というのは相当阻害されますし、そういう狭いところを通れば水上艦艇なり、航空機による捕捉もしやすくなるということから、いろいろな作戦の累積によって相手の行動を制約するということから、一部分わが方の作戦ができない分野があっても、私どもの考えている抑止効果、すなわち相手の潜水艦なりというものの減殺するための効果というのは十分期待できるというふうに思っております。
  57. 市川正一

    市川正一君 私伺っているのは、そういう技術論じゃなしに、総理が完全に全面的に管理してソ連の潜水艦や艦船を通さない、こういうふうに述べているわけですから、これはできることなんですかと、こういって聞いているんですよ。
  58. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はそういうふうには申しておらないんです。十分にコントロールする、そういう表現で申しておるんです。
  59. 市川正一

    市川正一君 また話がもとへ戻るんですが、管理というのはコントロールと同じことでしょう。十分にということと、完全に全面的という訳がこれがもうポピュラーです、いま。そうすると、あなた、完全に全面的にコントロールするということどう違うんですか、いまおっしゃったことと。
  60. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 委員長の御指名でございますので……
  61. 市川正一

    市川正一君 あなたはワシントン・ポストに話をしとらぬやないの。
  62. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私が総理が再々御答弁をなさっておられますことを踏まえまして、私の責任もこの海峡の問題についてございますので、私の理解していることをまず最初申し上げさしていただきたいと存じますが、総理がコントロールという言葉をお使いになっておられることは事実でございまして、私ども総理の御発言を理解さしていただくに当たりましては、私どもが従来から答弁をさしていただいておりますように、各般のいろいろな施策をもって通峡を阻止する、しかもその通峡を阻止することが必ずしも一〇〇%封鎖してしまわなきゃならぬとか、こういうことを答弁をさしていただいたことはございませんし、これにつきましては総理もそういうふうに重ねて何回も当委員会においても御発言、御答弁をなすっておいでになっているというふうに理解をいたしております。
  63. 市川正一

    市川正一君 ワシントン・ポストでしゃべったのはこの人やないんですよ。こちらなんですよ。だから、こちらにはっきりと日本語でどういうことなんやいうて聞いているんですよ。ちょっと言うてもらいたい。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本が侵略された場合には海峡を十分にコントロールする、そういうことを私は言っておるのでございまして、十分にコントロールという意味は人によっていろいろ解釈が違うと思いますが、いま市川さんがさきに申されたようなそういう完全無欠の形ではないんですね、コントロールという場合は。私は、だから必要な支配力を持つ、そういう意味ではないかと自分は感じております。しかし通峡阻止ということが、もし日本が侵略された場合に起こる場合には、大体専門家の話を聞いてみると、入ってくるいろいろな艦船そのほかの三割程度以上をある程度有効に打撃を与えれば、大体その限度で通峡阻止という一応の目的は達せられるんだというようなことを昔聞いたことがあります。だから完全無欠に入ってくるものを全部一〇〇%やっつけるというようなものではない、そういうことも聞いております。
  65. 市川正一

    市川正一君 そうしますと、宗谷海峡のソ連の領海は自衛隊は行動しないし、できない、これはおととい矢田部委員答弁なさいました。  そこで、続けて聞きますが、たとえばC130輸送機でソ連の領海に機雷をまいたり、あるいは日本のF15戦闘機がソ連の領空、これは宗谷海峡のソ連領海の領空部分も含みますが、そこへは行かないし、行けないということですね。
  66. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 自衛隊の行動は原則的にはあくまでもわが方の領海と公海、公空に限られる、こういうことでございます。
  67. 市川正一

    市川正一君 公空も。
  68. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 公海、公空に限られるということでございます。
  69. 市川正一

    市川正一君 そうすると、はっきり確認いたしておきます。ソ連の領海も領空も行けないと。  そこで、先ほど総理は完全に全面的に管理してというのは、十分にという意味だというふうにトーンダウンをなさいましたけれども、さらにこれも形容詞ということになるのかもしれませんが、そうじゃないんです。あなたがやろうとなすっていることは、日本が武力攻撃を受けた場合という仮定のもとに、いままでの政府見解や、あるいは憲法解釈まで次々と改悪してこられました。しかし、いま重要なことは、日本がどのような事態のもとで武力攻撃を受けることになるのかという点であります。アメリカの議会でも、これは御承知のように、米軍の首脳を含めて、米ソ戦争の中で日本が武力攻撃を受けるのであって、単独に日本が武力攻撃される可能性はないんだということを数々証言をいたしております。また防衛庁佐々官房長も、たびたび出しますが、ことに「國防」五十七年の十月号があります。この中で「日本が戦火に巻き込まれるとすれば、第三次世界大戦であって、日本とある他国だけの戦争はあり得ません。」、こういうふうに佐々官房長は言っておりますが、総理、こういう認識はこれは大体普通の認識じゃないんですか。
  70. 佐々淳行

    政府委員佐々淳行君) お答え申し上げます。  また私の論文を御引用いただきましたので、私から答えさしていただきますが、ある日突然日本にある国が襲いかかってくるというような事態はないであろう。今日、国連憲章のもとでは戦争という観念がなくなっておりますので、そういう意味では、日本が大きな国際紛争に一対一でいきなり巻き込まれるということは非常に考えにくいのではないだろうか、かように考えております。  しかしながら、現実に、国連憲章ができた後も、戦後至るところで武力紛争が発生しておりますので、そういう小規模限定的な紛争に独力で対処できるだけの自衛力は整備をし、日本が大きな惨害に巻き込まれるような第三次世界大戦は、アメリカとの日米安保条約によって抑止していく、これがわが国の基本的な防衛政策でございまして、そのことを説明したものでございます。
  71. 市川正一

    市川正一君 総理に伺いますが、いずれにしても、日本が戦禍に巻き込まれるとすれば、それは米ソ戦の中に日本が引き込まれる、こういう認識、そういういままた危険性があるという点ではいかがですか。
  72. 佐々淳行

  73. 市川正一

    市川正一君 いやいや、これは総理ですよ。いや、もうこれはいいんだ。あなたはこういうことを言うているということの紹介でいいので、もう聞いた、聞いた。時間がもったいない。
  74. 佐々淳行

    政府委員佐々淳行君) 私の論文の関係でございますので、私が責任を持ちましてお答えを申し上げますが、世界大戦争というものはあってはならないし、そういうことがないことを私ども祈念をいたしております。米ソの間に軍縮あるいは核抑止力が働いて、そういう惨害がないことを祈っておる。しかしながら、小さな軍事紛争が日本に関して起こるかもしれないから自衛力は整備しておかなければならない、かように考えております。
  75. 市川正一

    市川正一君 もう一度質問いたします。  今日の事態は、日本が単独で、ある特定の国と戦火を交えるというような事態よりも、そういうことではなしに、米ソ戦に日本が巻き込まれる。NHKの世論調査、私冒頭紹介いたしましたが、そういう状況が非常に現実的に危険性があるという認識はいかがですか。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 米ソ戦の可能性というのは私はそんなにあると思っていないのです。第三次大戦が起こるともそう思っていないのです。もう人類は大分勉強しまして、利口になってまいりまして、レーガン大統領でも、アンドロポフ書記長でも、戦争をいかに防止しようか、そういう意味で苦心惨たんをしていらっしゃる、そう私思います。米ソ戦とか第三次世界大戦が始まれば地球がぶっ壊れちゃう、そういう危険性があるのであって、それは全ソ連国民も、全アメリカ国民も知っておるし、地球上の人類がみんな知っておることでありまして、そんな愚劣なばかなことをやるはずはないと思うし、それを阻止するためにわれわれは努力しているのだということを申し上げたい。
  77. 市川正一

    市川正一君 ところが、事実はそれと逆に、日本アメリカの戦争のいわば加担をしていく危険な方向が進んでいる。  私、ここに大賀良平元海上幕僚長の海上封鎖についての次のような発言を持ってまいりました。  「その際宗谷海峡を北半分も含めて、この海峡全域をわが方の封鎖支配下におく作戦を実施することは、その背後にある基地の破壊等の攻勢作戦が必要であり、また多少ともその通行を阻害し支障を与えるにしても、その程度に応じ、それなりの米軍の攻勢作戦が必要となろう。」、こう彼は述べています。これは、アメリカの単独封鎖のときも一緒です。アメリカが単独で封鎖するとしても、当然その際、大賀氏が言っているように、ソ連基地をたたく、そのために、三沢にF16が配備されているのじゃありませんか。ことに米空軍が青森県三沢基地に新鋭戦闘機F16を配置することについて、防衛庁筋は、配備の戦術面での目的は、従来言われていた、有事の際のソ連、沿海州の攻撃よりは北方領土のソ連空軍基地攻撃にあるという見方を明らかにしたというふうに報道をしておりますが、そうなれば、当然相手国がその出撃基地に反撃をしてくる。、結局、海峡封鎖というのはアメリカ単独であれ、あるいはまた、こういう事態が予想されるというのは当然の帰着じゃないですか。どうですか。
  78. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 二点について答弁さしていただきますが、まずF16の三沢基地配備の問題でこざいますが、アメリカ側からわが方に申し入れられました要点は、極東における軍事バランスを回復したいということが一点。もう一つは、極東におきまするアメリカのプレゼンスを強化いたしたい、これが中心でございます。  それから、私が第二点としていまここで答弁さしていただきたいことは、私どもはあくまで紛争を未然に防ぐ、そのために抑止力として防衛力整備を行っておるわけでございます。その紛争につきましては、大きな形の紛争につきましては、日米安保条約がございます。この効率的な運用においてこれを阻止する、これを抑止する。しかしながら、わが方といたしましては、いかなる形の侵略が行われても、これに対しては未然に防止する努力をいたしますが、と同時に、侵略が万一生起した場合には、小規模限定侵略である限りにおいては、これを独力をもって排除する、こういう形で防衛力整備を続けておるわけでございます。
  79. 市川正一

    市川正一君 私が言っているのは、アメリカがそういう単独であれ、あるいは共同であれ、海峡封鎖ということをやる、そういうことに結局日本が基地を提供し、そして出撃基地を提供している。その反撃を受けるのは当然じゃないですか。  これは、二月二十二日に自民党の外交調査会が行われた。夏目参議院議員が、自民党の議員でありますが、海峡封鎖という言葉は、外交史上、宣戦布告に等しい意味を持つ、一国の総理が軽々に言うべきことではないと厳しく批判した、これは同調査会の空気を代弁したものだ、こう報道されております。そして、架空の想定で海峡封鎖論議をするのは国益上疑問だと政府に申し入れたと、こう伝えられておりますけれども自民党内にもこういう良識ある見解が強まっている。総理、こういう認識のもとに、おとついですか、海峡封鎖ということについては、誤解を与えたとすれば反省する。たしかそうでしたですね。そういうふうにおっしゃったけれども、いま海峡封鎖問題についてやってまいりましたが、そういう反省の上に立って、この問題について、完全かつ全面的、十分かどうか、これは別として、この問題についてはどうお考えですか、こういう自民党内の声に対しても。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党の内部においてそういう話があり、私のところへ抗議が来たということは聞いておりません。  自民党は、みずからの防衛政策を持っておるのでありまして、日本防衛計画の中には、有事の際に海峡をコントロールするということも当然入っておるのでありまして、万一日本が侵略された場合に、日本防衛を全うするために海峡をコントロールするということはあたりまえのことであり、かつ、日本防衛のために必要なことなのであります。そういうことをやるということが外国に対する宣戦布告であるというようなもしお考えがあるとすれば、それは思い過ぎのお考えである、私はそう思っておる。日本が自分の国を守るために、必要最小限のことをやるのは日本の国際法上の権利であります。そういう意味におきまして、必要なことは日本としてはやっていかなければならない、そういうことを言ったからといって、私のところへ党内から抗議が来るというようなことは全然ございません。また受けたこともございません。
  81. 市川正一

    市川正一君 これはある新聞の社説でありますが、こう論じております。「わが国本土が武力攻撃を受けているさなか、何を守るためのソ連艦隊封じ込め作戦なのか。また、そんなことが可能なのか。実は、虚構のうえに立った日本有事論なのである。実際には米戦略の一環でしかない」、これはある新聞の、一般新聞の社説であります。私これはまさに正論だと思うのです。米軍が行う海峡封鎖に対抗して相手国が米軍の出撃基地である日本の基地を攻撃する、そして日本の参戦、日本自衛隊の出動、こういうケースが現実の危険性として、あなたのアメリカでの発言、対米公約から強まってきているんです。私はその根源は安保条約だと思います。安保条約によって日本米軍に基地を提供し、そして米軍の出動を認める、まさにアメリカの戦略に深く巻き込まれている。ですから、日本の本当に生きる道は、安保条約をなくし、どこの国とも軍事同盟を結ばない非同盟中立の道を歩むことである。私はそのことを重ねてここで強く主張いたしたいと思うのでありますが、このことと関連して、私、今回アメリカの原子力空母エンタープライズが佐世保に入港し、本日、日米同時発表するというふうに新聞報道がありますが、これは事実なんですか。そして、日本政府は入港を了承したのですか。
  82. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど安保条約の話が出ましたけれども安保条約日本の平和と安定を図り、極東の平和に資するために日米間で結ばれた条約であります。日本が攻撃を受けたときはアメリカ防衛のために出動するということでありますから、ただ一方的に基地を提供するということじゃなくて、日本の平和と安全を図るための安保条約でございますし、これによって日本が戦争に巻き込まれる、こういうことじゃ決してありませんし、いまおっしゃることはわれわれと見解は根本的に違います。  それから、エンタープライズにつきましては、これはいずれアメリカから正式な通告があると思いますが、われわれとしても、このエンタープライズの日本への寄港については、これをその際は認めるという方針であります。
  83. 市川正一

    市川正一君 報道によりますと、エンタープライズや、あるいはミッドウェーなどの一機動部隊が、約二百個の核を積載しているというふうに言われています。いま、認める方針だと、こうおっしゃったけれども、このエンタープライズの核積載について確認をされたんですか。
  84. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本は御承知のように非核三原則という国是を持っております。そして、これはアメリカとしても十分承知をいたしておるわけでございます。さらに、安保条約によりまして事前協議の条項があります。核の持ち込みにつきましては、当然事前協議の対象になるわけでございますが、わが政府は一貫をして核の持ち込みについては一切これを認めないという方針を堅持しております。これまたアメリカも十分その間の日本の方針というものははっきり了承しておるわけでございますから、エンタープライズが核を持ち込む、そして事前協議の対象になった場合には、これはノーである。こういうことでございますから、そういうことはあり得ません。
  85. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩をいたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  86. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度総予算三案を議題とし、午前に引き続き市川正一君の質疑を行います。市川君。
  87. 市川正一

    市川正一君 午前中、外務大臣はエンタープライズ入港を了承するというふうに述べられました。引き続いて、さらにカール・ビンソンあるいはニュージャージー等々が入港を予定されております。また、日本海では日米の合同大演習が行われると言われております。重要なことは、これらすべてがアメリカがどこかで戦端を開けば、日本が攻撃されなくても日本がその側に立って戦争に参画していく、そういう仕掛けがこういう形で整えられつつあるという問題であります。  そこで私は、核の問題について引き続きお伺いしたいのでありますけれども総理衆議院で、非核三原則は国是であり、これを厳守することを表明なさいました。その非核三原則には、核積載艦の通過、寄港、いわゆるトランジットも含まれているというふうに確認してよろしゅうございますね。
  88. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そのとおりでございます。
  89. 市川正一

    市川正一君 総理もそのとおりでございますね。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣答弁のとおりです。
  91. 市川正一

    市川正一君 もう一点総理にお伺いいたしますが、総理は、武器輸出については、安保の効果的運用ということで、アメリカは外しましたが、非核三原則について同様の名目で通過や寄港、持ち込みにイエスというようなことは絶対にしない、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核三原則は国是として遵守してまいります。
  93. 市川正一

    市川正一君 政府は先般来、アメリカに対してこの非核三原則には通過、寄港、これも含まれておる、そして、事前協議の対象であるという申し入れを行うということを表明なさっておりますが、いつ、どういう形で申し入れられるのか、お伺いしたい。
  94. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 非核三原則というのはもちろん日本の国是でありますし、そのことはアメリカ政府もよく了承しております。同時にまた、核持ち込みについてはこれは事前協議の対象、その場合はすべて日本政府としてはノーである、これもしばしば政府は言明をいたしておりまして、これもまた同時に、アメリカ政府としても十分承知をいたしておるわけでございますから、いまさら日米間でそうした問題について再確認を求めるという必要はないわけであります。これは、安保条約を遵守するというのが条約上両国の義務でありますから当然でございますが、最近F16の三沢配置とか、あるいはまたエンタープライズの入港ということで、当委員会等におきましてもいろいろと問題とされておるわけでございますから、そうした国会の議論等も踏まえまして、日本の基本的な非核三原則を貫く、そして事前協議の対象になった場合はこれを認めるわけにはいかないという日本の立場を改めてアメリカ側に十分説明をして、アメリカの事前協議条項は遵守するというアメリカの再確認を求めたいと、こういうふうに考えておりまして……
  95. 市川正一

    市川正一君 それは文書ですか。
  96. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 来週でもこれを行いたいと考えております。
  97. 市川正一

    市川正一君 いまさら必要ないと、こうおっしゃっていたわけですが、私はこれまでも、政府は非核三原則に通過、寄港も含まれているというのはこれはもう自明のことだと言うだけで、たとえば今回衆議院予算委員会で、わが党の不破委員長が幾らお聞きしても、いや、その合意文書なり根拠をお示しにならぬ、いや、示せないんです。そうして日本政府がそのことを国会で言うているからアメリカが知らぬはずはないということの繰り返しだけなんですね。私は、今度来週に申し入れられるという外務大臣のお言葉でありますが、単に申し入れるだけでなしに、このことはきっちりアメリカ側から文書で回答をとって、そしてそれを国会にお示しを願いたい、そのことを要求します。いかがですか。
  98. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日米安保条約に基づいて深い信頼関係にあるわけですし、安保条約を遵守するというのが日米両国の義務でございます。これをずっと続けてきたことによって安保条約の今日効果的な運営が図られて、日本の平和と安全をわれわれは確保しておるわけでございますし、その核についての日本の立場と方針というものは、アメリカ政府もこれはもう十分以上に承知をいたしておることでございますから、日米間のこれまでの信頼関係からいきましても、私はあえてアメリカにこれを再確認を求める必要はないと、こういうふうに考えておったわけでありますが、議会でいろいろと議論も出たわけでございますので、また国民の感情もあるわけでございますから、日本の核政策についての日本の基本的な考え方をアメリカに説明をして、そしてアメリカに確認を求めたい、こういうふうに思っております。
  99. 市川正一

    市川正一君 文書ですか、口頭ですか。
  100. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はこれはいずれ発表いたしますが、話し合いは口頭で十分である、口頭で申し入れるわけでありますが、アメリカからこれに対してまた口頭で再確認を求めると、これについては発表を正式にいたす考えであります。
  101. 市川正一

    市川正一君 結局いままでと同じことなんです。申し入れたと、向こうは聞きおくということだけなんですよ。だから、この点はきっちりと文書で申し入れ、文書で回答をとると、そういう確認をされることを私は重ねて要求いたします。  私は、こういうふうにアメリカに対しては非常に言いなりというか、もう思いやり、ところが国民に対しては全く血も涙もない。私はそういう点で老人保健法の問題をきょうぜひやりたかったわけでありますが、冒頭申し上げたようなことなのでこれは保留いたしまして、中小企業の問題について関連質問をお許し願いたいと思います。
  102. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 沓脱タケ子君の関連質疑を許します。沓脱君。
  103. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 中小企業対策、官公需のあり方に関してお尋ねしたいと思います。  この問題をわが党が繰り返して取り上げておりますのは、中小企業の危機が大変深刻化しているからです。とりわけ私は大阪の出身ですが、残念なことに大阪では昨年度史上最高の中小企業の倒産が起こっております。地元でお話を聞きますと、もっと物が売れるようにしてほしい、とにかく仕事を欲しいというお声がそろって出てまいるわけでございます。その点で、政府が発注者であります官公需の優先発注、これを中小企業に振り向けるということが緊急課題になっています。いまのやり方はもっと本気で取り組んだならば中小企業に仕事が回せると思うわけでございます。  たとえばこれは郵政省の職員の制服でございますが、これはね、郵政省職員の制服なんです。  通産大臣にこの制服に関してお聞きをしたいのですが、いわゆる官公需法に基づく閣議決定では、中小企業に優先発注をするというものとして特定品目を九品目設けているのです。この特定品目の中にこの制服は入っておりますね。
  104. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 入っています。
  105. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 郵政省にお聞きしますが、五十六年度の制服類の発注先はどこですか。
  106. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) お答えをします。  郵政省全体では大企業から中小企業までたくさんの企業に発注をいたしておるわけでありますが、いま制服をお示しでの御質問でございますから外衣類のことと存じますが、外衣類につきましてもこれまた大小いろいろな企業に発注をしておりますけれども、重立った発注先を申し上げますと、日本毛織、東亜紡織、ユニチカ、鐘紡、東洋紡績、五社が重立った発注先でございます。
  107. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ電電公社と国鉄ですね、職員の制服、五十六年度どこへ発注していますか。
  108. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答えします。  数十件発注しておりますが、量的に主なところはユニチカ、東レ、東洋紡積、クラレ、帝人でございます。
  109. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 制服の主な発注先ということで拾ってみますと、東洋紡績、鐘紡、ユニチカ、帝人、日新実業といったようなところでございます。
  110. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いずれも大企業関係と契約をしています。明らかにこれは閣議決定に反していると思うわけです。大企業に発注しております制服類の契約総額というのは一年に百数十億に及んでいます。私は関係業界の中小企業者の皆さんに聞いてみますと、一件当たりの契約金額が億単位になると資金力の点で受注できないけれども、いま厚生省がやっているように、地方支分部局ごとに統一した仕様書で入札するというふうに分割発注してもらえれば、中小企業は十分こたえられると。制服を実際につくっているのは、大手メーカーじゃなくて、下請をしている中小企業者なんだからというお話でございます。  そこで、通産大臣にお聞きしますが、あなたは官公需法の六条で中小企業に発注しなさいと各省庁の長に要請する権限を持っていらっしゃるわけですが、こういった制服について中小企業に発注することを郵政大臣や国鉄総裁あるいは電電公社の総裁に要請をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  111. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 各省それぞれの事情もありましょうが、いま中小企業庁では、発注率の低下というものが財政その他の制約があって予算上低下をしないことがまず大事だと、確保しなさいということで、中小企業庁長官を長として各省の関係者に連絡会議を持つようにいたしております。私が直接指示いたしましたのは、他省の関係で大変僣越でありますが、法律に基づく中小企業受注官公需の問題でありますから、たとえば厚生省をよくやっておるという例に挙げられましたので私もそれは認めますが、たとえば、厚生省ならば国立病院のそれぞれの県ぐらいの広さですね――ぐらいの単位で地方発注しているかどうか、あるいは防衛施設庁の中央調達は相当駐屯地単位に地方におろしてあると思うが、それがどのように実行されているのか。ただし、制服については防衛庁の場合はちょっと地方ばらばら調達というわけにはいかないと私も想像ができます。さらに文部省の方にも、国立大学の病院の看護婦さんたちの被服その他の白衣ですね、そういうものも地方別に発注はできないのか、できているのか、そこらを確認をしなさい。個別の省庁名も明示して、まず事務段階でやっております。
  112. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 五十八年度から一挙に、一遍にとは言いませんが、前向きに仕事が出るようにしてもらいたいと思うんですが、郵政大臣とか電電、国鉄の総裁の御見解もお聞きをしておきたいんです。よろしいですか。
  113. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 沓脱委員ももう御承知のことと思いますが、郵政の制服につきましては、相当大量のものを規格、仕様を統一いたしまして統一的な購買をやっておる。あるいは分割購買のことも実は検討さしてみたのですが、地方郵政局、沖縄の管理事務所を含めて十二カ所でやるということになりますと大変なこれ手間がかかる――手間がといいますか、統一をとるだけでも大変なことになるわけでありますので、ちょっと分割購入ということは現段階では考えていないのでありますけれども、受注の側も一人一人の中小企業では、あるいは資金あるいはその他の事情でむずかしいことがあるかもしれませんけれども、中小企業協同組合等の団体受注というようなことができるかどうか、中小企業庁とも連絡をとって検討させたいと思っております。
  114. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答えします。  御趣旨に沿って、過去、順次中小企業への発注量をふやしておりまして、たとえば五十三年に一九・七%であったのが五十七年には三一%ちょっと超えるぐらいまでふやしつつあります。五十八年もまたふやすつもりでおります。
  115. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 被服全体としましては、何とか中小企業の方々にお願いをする量をふやそうという努力を今日までもしてまいりましたし、これからもやってまいりたいと思っております。ただ、制服ということになりますと、やっぱり全国同じものを着てないとぐあいが悪いということになりますのでなかなかむずかしいわけでございまして、しかし全体として国の方針がそういうことに向かっておるわけでございますから、通産省の御指導を得ていろいろ今後ともそういう方向で進めていきたいというふうに考えています。
  116. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 制服の例がその典型の一例なんですが、幾ら中小企業対策を閣議決定をしていただきましても、実行がこれでは仏をつくって魂入れずということになってしまうわけです。  そこで、総理にお聞きをしたいんですが、中小企業に優先発注することになっているこの特定品目の発注状況を洗い直して、一〇〇%中小企業に発注をさせるということ、それから同時に、十兆五千億に上る官公需全体についても見直して中小企業への発注率を高める、これを具体的な手だても確立をして徹底させるべきであるということを要請をしたいんですが、総理の御決意を伺いたいと思います。
  117. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 総理にそこまで命令をさせろといったって、それはそれぞれの省庁において、ことに制服類においては困難な点も私は認めてやらなきゃならないところがあると思うのです。しかし、問題は中小企業の受注率というものが三七・二でありますから、これを予算が大変厳しい環境にある、そのときに低下させないようにまずしなさい、そしてなるべくこの比率と金額は上昇するようにしなさいと申しておりますから、あえて総理に私は報告をいたします。総理からの命令を待ってやらなきゃならないほど行動力のない通産大臣ではございません。
  118. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ総理の御決意も聞きましょう。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は通産大臣を信頼いたしております。
  120. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後にちょっと厚生大臣にお聞きします。  わが党は優生保護法問題対策委員会をつくりました。私も医師の一人であり、優生保護法の改悪をめぐる情勢についてはとりわけ深い関心を持っております。厚生大臣はこの問題につきましては国民的コンセンサスを得るように努力をするといわれておりますが、ごもっともなことだと思っております。この問題は妊娠中絶の規制を強めれば解決するというふうな簡単な問題ではないわけであります。当然のこととして社会環境、それから教育、科学的医学的な検討、社会福祉、婦人労働等の総合的な検討の中で国民的合意が得られるように努力するべき課題だと考えます。逆に言いますと、コンセンサス、国民的なコンセンサスが得られない状態で見切り発車をしてはならないということだと思います。大臣まあ当然のことですが、御見解を伺いたいと思います。
  121. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 沓脱議員の御質問にお答えを申し上げます。  この問題は大変いま議論を呼んでいるところでございまして、実は私のところにもきょうの昼間御陳情がございまして、このぐらい厚い反対の署名を持ってこられました。厚生省でいままでいただいております反対の署名は五十数万枚と、こういうことでございます。一方生長の家の方では約七百万ぐらいのお話があるという話も聞いているわけであります。それから地方議会なんかでも実は改正をしてくれという決議をされたところが九十九市町村ございます。改正するなというところが五十市町村あります。いろいろと意見が分かれるところでございますから、私はこうした問題は基本的に国民的なコンセンサスが得られなければ私はできない話だろうと思うんです。  法律の一条を改正しまして問題が解決するものではないと思うものでありまして、性の問題というのは人間の基本的な問題である、これはその基本的な問題を考える場合には宗教なり倫理の問題までさかのぼっていろいろと議論も尽くしてみなければならない。そういったことでございますし、また現実の問題といたしましていろいろお話を聞きますと、性教育のあり方についてどうであろうか、それから母子の保健の問題はどうであろうか、それから本当に望まないところの子供ができたときに一体どうするのかとか、あるいは国際婦人年でいろいろお話がございます。そういったようなものを含めてやっぱり考えていかなければならない問題だろうと、こう思っているところでございまして、そういった意味で私は広い国民的なコンセンサスが必要ではないかということを申し上げているわけであります。衆議院予算委員会でもいろいろとお話がありました。私はそういったものを取りまとめましてやっぱりやっていかなければならない問題ではないかというふうに考えております。  ただ、申し上げますならば、やっぱり人間というものはだれも子供をつくりたいと思ったときに本当はつくりたいというのが人間の本性だろうと思うんですね。それを中絶をするというのはそれぞれの方々にそれぞれの御事情がある。それを簡単に機械をつくるとかなんとかという話とは私は違うのだろうと思うんです。そういったことはやっぱり人間の基本として私たちは考えていく必要があるだろう、そういったことを踏まえて広く国民的なコンセンサスを求めたい、こういうふうに考えているところでございます。
  122. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、大臣軽々には改正案などは出せないということでございますね。
  123. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 沓脱議員の御質問にお答え申し上げますが、軽々とおっしゃる意味がどういうことかということですが、私は先ほど御答弁申し上げましたようにいろいろな問題がございますから、いろいろな問題を十分考えてやっぱり国民的なコンセンサスを求めていくべきだろう、こういうふうに申し上げているところでございます。
  124. 市川正一

    市川正一君 次に、私は政治倫理の問題でありますが、田中元首相のあのいわゆるロッキード疑獄の問題についてわが党はその起訴の段階から首相の犯罪として重視し、その辞任を要求してきたところであります。  総理もロッキード問題での五党合意に基づく議長裁定は尊重する、こうお答えになっておる。ところがその一方で政治的道義的責任というような問題は御本人が判断すべき問題と、こうもお答えになっておる。しかし五十一年四月二十一日の衆参両院議長裁定は「国会は、ロッキード問題に関し、本件にかかわる政治的道義的責任の有無について調査する」、こう明記しております。したがって、ただ本人任せではなしに国会がこの問題を取り上げるのは私当然のことであると思います。ましてあの決議案の中でも指摘しておりますが、田中総理が反省するどころかますます金権政治をほしいままにしている。これに対しては自民党内部からも、たとえば安倍外務大臣も総裁選挙の中で厳しくこの体質を追及なすっていた。この心境はいまも変わらないと私は思うのでありますが、田中総理もかつてはロッキード裁判で、首相在任中の汚職容疑で逮捕、起訴されることは万死に値すると、こう述べていました。ところが、田中元首相本人はみじんも反省するどころか、今日いわゆる金権田中新金脈という形で金権政治腐敗を続けておるのであります。  私はその一つとして長岡ニュータウンをめぐる問題を取り上げたいのでありますが、資料をひとつお配り願いたいのであります。  建設省にまずお聞きしますが、長岡ニュータウン開発整備事業の概要はどのようになっておりましょうか。
  125. 加瀬正蔵

    政府委員(加瀬正蔵君) お答え申し上げます。  長岡ニュータウンは昭和五十年七月に新潟県及び長岡市より地域振興整備公団に対しまして事業の要請がございまして、同年十一月、国土庁長官及び建設大臣が事業認可を行ったところでございます。  本事業は、長岡市の将来の発展と計画的な土地利用を考慮いたしましてニュータウンを多様な都市機能を持った新市街地として整備するために、信濃川左岸で長岡駅の西方約十キロメートルにございます約千八十ヘクタールの事業区域で、概算事業費約一千億円をもちまして、人口四万人の住宅地、雇用機会を増大させるための流通業務等の用地、地域住民の利便と豊かな生活環境を保持するための公共施設用地、さらに利便施設用地及び公園緑地を開発整備しようとする計画でございます。
  126. 市川正一

    市川正一君 いま御説明があったような膨大な計画を進めたのは田中総理であります。御本人自身、昨年十一月二日の長岡市長選挙の応援の際に、「私が列島改造論の中で初めて法律、公団をつくった全国第一の工事」と言っておりますように、あの列島改造論の遺物であります。  たとえば計画ではニュータウンに四万人分の住宅用地をつくり、現在十八万人の長岡市を二十五万都市にする、こう打ち上げておりますが、それに見合った企業誘致のめどは立っておるのでしょうか。
  127. 加瀬正蔵

    政府委員(加瀬正蔵君) 公団が計画を立てるに当たりましては、これは当然のことでございますが、新潟県あるいは長岡市で将来人口の推計をしております。過去の人口の推移状況等を勘案しまして、昭和五十年の約十七万人が二十年後の七十年には二十五万人になると推計しまして、このうちニュータウンの中に四万人ほどを収容するということで県が計画を立てておりますが、必ずしも私ども過大なものとは考えておりません。
  128. 市川正一

    市川正一君 一千億以上の巨費を投入しながら、実態は私も見てまいりましたが、ペンペングサがはびこるのは確実であります。  第二に私問題にしたいのは、この国費のむだ遣いによる大規模開発がいわゆる田中系企業の食い物になっているということであります。いま資料をお配りいたしましたが、発注工事一覧表を見ますと四〇%が田中系企業に発注されております。建設省関係に至っては一〇〇%であります。この資料の上の段の横の表であります。まさに長岡ニュータウン工事を田中系企業が食い物にしているという実態でありますが、むだをなくすというかねて御主張の強い総理、あなたはこういう実態をどうお考えになりましょうか。
  129. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) ただいま先生の方からいただいた資料を拝見いたしますと、地元中小企業を中心として、これは先生方が何系何系と言われれば別でございますけれども、地元の中小業者にうまく配分したなあと私は考えておるわけでございます。四〇%といいますと、建設省の場合は直轄でも地元中小に仕事の場合、約四五%ぐらい発注いたしておりますから、何系というような色をつけて見られますと、そういう御批判にもなるかと思いますけれども、地元の業者に仕事が比較的行ったのだ、こういうふうに解釈していただければ御理解いただけるのじゃないかと思います。
  130. 市川正一

    市川正一君 何系の一例を挙げますれば、たとえばここに出ております長鉄工業、この筆頭株主は田中元首相であります。そういうふうに、いわば田中ファミリーの一連の企業であります。いまここで上段の方はこれは表向きの数字でありますが、下段の方に見ていただきますように、結局実態はいわゆる一括下請になっております。その数字ここにございますように、ニュータウンで申しますと、一番最後でありますが、約四六%が田中系企業に出ている、この実態については建設省に伺いますが、間違いございませんか。
  131. 加瀬正蔵

    政府委員(加瀬正蔵君) この表にございます数字でございますが、受注額の欄を拝見いたしますと、受注額の元請が受けている金額につきましては、これは当初請負で最終請負額と違っておりますので、最終請負額はちょっと多くなるかと思います。下請額の方は、下から二番目の企業につきましては若干私どもの掌握している数字と違っておりますが、その他はおおむね合致しております。
  132. 市川正一

    市川正一君 私どもこれは長鉄及び中越の工事経歴書から抜いたものであります。したがって、こういうことになりますと、建設省に重ねてお伺いしますが、一括下請の疑いが出てくるのでありますがいかがでしょうか。
  133. 永田良雄

    政府委員(永田良雄君) お答えいたします。  その元請の金額と、それから下請に出した金額の比率だけをもって一括下請というふうに判断するのは危険かと思います。やはり工事の種類とかあるいは規模とか、そういったものを総合的に勘案しまして、それが一括下請かどうかというのを判断すべきかと思います。たとえば材料を元請が支給する場合と支給しない場合とがございますが、支給する場合は下請に出す比率はかなり低くなりますが、材料は下請持ちというかっこうになれば下請に出す比率は高くなる、こういうことであろうかと思います。
  134. 市川正一

    市川正一君 実態、調べてくれますか。
  135. 永田良雄

    政府委員(永田良雄君) 調べてみます。
  136. 市川正一

    市川正一君 私どもは一括下請の疑いがある、こう思いますので、いまお答えになったようにお調べ願って、またお聞かせ願いたいと思います。  私は、それだけではなしに、この長鉄工業は先ほど申しましたように田中総理が筆頭株主でありますが、脱税の疑いもあるわけであります。同社は税務署調査の結果で、五十四、五十五年度とも申告が漏れているとして修正申告をさせられております、一部新聞にも報道が出ましたけれども。ところが、五十六年度も新たに税金をごまかしている疑いがあります。長鉄工業が新潟県に提出した経営内容の書類、五十六年度分ここに手元にございますが、これを見ますと完成工事高四十七億三千万円、完成工事原価四十一億九千万円、完成工事総利益五億三千万円、これは五十五年度の完成工事高三十九億五千万円と比べて二〇%も売り上げを伸ばしております。ところが所得額は逆に前年よりも減って一億七百万円というふうに三九%減であります。つまり売り上げは二〇%伸びているのに所得は三九%減っている、これはどうしてもおかしいのでありますがいかがでしょうか、国税の方。
  137. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘になりました五十六年十一月期の申告所得でございますが、先生のお手元にございますのと私どもの手元にございますのと若干違います。中身について申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが……
  138. 市川正一

    市川正一君 そんなに変わりませんか。
  139. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) かなり違っております。  大変恐縮でございますが、先生のお持ちの資料はあるいは建設業法による届け出というものでお拾いになったものかと存ずるのでございますが、これは事業税だけが掲示されるという場合もございましたりするものでございますから、あるいはそういった関係で違っているのではないかというふうに思います。  いずれにいたしましても、私ども国会でいろいろ御指摘をいただきました事項等につきまして十分に念査をいたしまして調査を行うなどして適正な処理をいたすことといたしております。
  140. 市川正一

    市川正一君 じゃ、調べてくれますか。徹底的に調べてくれますか、調査
  141. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) はい。いろいろ各方面からのデータを集めまして適正に処理をいたしたい、こういうふうに思っております。
  142. 市川正一

    市川正一君 いろいろそういう疑惑が出ております。ですから、私は建設省、国税庁にそれぞれ厳正な調査を重ねて要望したいと思います。大臣ひとつよろしくお願いします。  私、時間が参りましたので、最後に総理にお考えを伺いたいのですが、中国残留孤児の問題でありますが、孤児の皆さんは明十二日に肉親捜しを終えて離日されるのでありますが、この問題、改めて私侵略戦争の悲惨さ、そして孤児の皆さんがその犠牲者であるということを痛感いたしておりますが、総理はこの問題どういうふうにお考えでございましようか。
  143. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 市川議員の御質問にお答えを申し上げます。  中国残留の孤児の問題は三十七年の前にさかのぼる話でございますし、私たちとしても本当に胸の痛むような思いのする問題であることは先生も全く御同感であろうと、こう思うわけであります。  一九七二年の九月二十七日に日中共同声明が発せられまして、その中にも日本国民は中国に対して心からおわびを申し上げるというような文章があります。以来いろいろな方々の御協力によりまして中国孤児の問題がやっと軌道に乗りまして、今回も四十五人の方々をお受けしたわけであります。やはり長い間孤児として苦労された方々のお気持ちを察しますと、私も会館にお伺いしたときにごあいさつをして、私の話を聞いておられる方が涙ぐんでおられるわけですね。私も本当にごあいさつを申し上げながら胸のつかえてくるような思いがいたしました。一昨日お別れのパーティーを私の方の援護局長の主催でやりました。私も一人一人の方々にごあいさつをいたしました。本当に私は日本人全部が善意をもってこの問題の解決に当たらなければならない。まだまだ残っておられる方もありますが、そうした日本人の善意、国民全体の善意ということを私は中国の方々にお伝えをする一つの大きな手段ではないだろうかと考えておりますし、日中友好ということを前提にしてこの問題の解決を図ってまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。
  144. 市川正一

    市川正一君 ところが、これまで二回の孤児の皆さんに対しては民間の善意の方々の寄附金から、見舞金というかあるいはおみやげ代ということで一人二十万円が渡されておりました。ところが、今回は半分の十万円しか渡っていない。善意の民間の寄附金が千八百万円もあるのに、四十五人に十万円、四百五十万円しか渡っていない。どうしてこういう不当なことをするのかということで孤児の皆さんが納得をしてない、こういうふうに聞いておりますが、どうなんですか。
  145. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 市川議員の御質問にお答え申し上げます。  先ほど来申しましているように、これは日本国民全体の善意の問題で解決をしなければならない。新聞、テレビ、大変に御報道をいただきまして、孤児の肉親を深そう、こういうことで努力をしていただいておりまして、その成果もございまして御指摘のような千八百万円という金額が集まっておることは事実でございます。  そこで、二十万円をということが昨日の新聞に出ておりましたが、実は孤児の来日につきましては、われわれといたしましては、その旅費なりそれから日本での滞在、またせっかく日本に来られたのでありますから、東京なり京都なりというものも見てもらいたいということで、言うならば日本に来られた間の費用につきましては、本当の小遣い銭ぐらいしかかからないようなことで処遇をしておるわけであります。また、お帰りになるときもおみやげも要るだろう、こういうことでございます。確かに御指摘のように昨年二十万円というお話を出しましてことし十万円と、こういうことになりましたが、実は去年渡しましたときに、中国にその後いろいろと行かれた、黒竜江省その他のところに行かれた方々もおられまして、少し多過ぎるのだと、こういうふうな話であります。  日本では二十万円といいますと、いま平均勤労者所得月額二十七万円ぐらいでございますから、そう大きな金額ではないというふうにお考えかもしれませんが、実はこれはそのまま持って帰りますと、中国では大変なことになるわけでございまして、約二年分ぐらいの所得に大体なるわけであります。中国が大体月収五十元から六十元と、こういうことになります。実はそんなものを持って帰って、日本で言いますと、ちょっといまの日本のことで考えると、比較しますと、七百万円ぐらいのものになるわけですね。それを持って帰られたときに、いろいろとほかの方からの問題も出てくるという話もございますし、おみやげ代であるとか、せんべつであるとか激励という形で民間の方々から善意でいただいた金で、われわれの方でお預かりした金であります。お預かりしますときには、これは孤児の方々に直接これはこの人に上げてくださいと、こういうふうな話のときにはそれはそういうふうにしておりますが、一般的にやってもらいたいと、こういうふうな形で集まった金でございますから、私の方で考えておりますのは、やはりそういった民間の善意をやっぱり無にしてはならないということで、先ほど言ったような話の金額でお渡しをしたわけであります。  実は、新聞に出ておりますように、ちょっと問題がありましたが、その後孤児の方々ともお話をいたしまして、現在孤児の方々の代表の方々には大体こういった形で御納得をいただいているというのが実情でございます。もうそろそろきようのテレビ見ますと帰り支度をすると、こういうことでございますが、私はまだ残された時間でもいいから、ぜひ肉親の方があらわれて、一人でもそういった関係ができますように心から祈っているのが現状でございます。
  146. 市川正一

    市川正一君 私は、民間の善意というものはやはり逆だと思うのです。  総理にお伺いしたいのですが、私どものところへも寄附をなすった方から、厚生省のああいうやり方に抗議の電話が入っております。私は、少なくともその善意にこたえて前回の二十万程度は渡すのが当然じゃないか、そしてまた国としても資金面でしかるべき責任を持つのが当然じゃないか、こういうふうに思うんですが、いいかでしょうか。
  147. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 市川議員の御質問にお答えを申し上げます。  お説のようなお話は私の方でも聞いております。聞いておりますが、この話を続けていくときには中国の全体のこともやっぱり考えていかなければならないと、こう思いますし、それから孤児の方々にお渡しをするわけでございますから、孤児の方々の御納得のいくということがやっぱり必要なことだろうと、こう思います。私は日本人の善意でございますから、余り金額の問題について……
  148. 市川正一

    市川正一君 政府はそれで何を出したのか。
  149. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 政府の方は――金額の問題については余り問題を荒立てることは、この善意を白々しいものにさせることを私は非常に恐れているわけであります。  政府の方は、向こうからの旅費、それから日本に滞在中の経費、それから先ほど申しましたいろいろなところへ行く費用、日本の国内の費用、それから日本から北京に帰るわけでありますけれども、北京に帰ってからの向こうの旅費と、そういったものは全部政府の方が支出をしておるわけでございまして、金が余るではないかと言いますけれども、これからもいろいろと御両親に対するいろいろな対策の話もありますし、そのほかいろいろなことをやっていかなければならない話でございますから、いまお預かりしている金は孤児センターができましたならばそちらの方へ持っていってやりたい。私といたしましては、この問題は金でどうだこうだというような話よりは、やはり日本政府の善意、また日本国民の寄せた善意というものをいかにこの孤児の方々に、また中国の一般の方々にお伝えするかということが一番大切なことではないかと思って一生懸命努力をしているところでございます。
  150. 市川正一

    市川正一君 総理のお答えがないようですから、私は老人保健法の問題の質問を留保して、きょうはこれで終わらせていただきます。(拍手)
  151. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 市川君の残余の質疑は保留をいたします。     ─────────────
  152. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、井上計君の総括質疑を行います。井上君。
  153. 井上計

    井上計君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に御質問をいたします。なお、質問を通告していない大臣の方、たしか四人おられると思いますので、お忙しいようでしたら御退席をいただいても結構であります。  最初に、具体的な質問に入る前に総理にお伺いいたしたいと思います。  現在、わが国の置かれておる状況、経済環境は戦後最悪の状態にあると、このように私認識をいたしております。さらに、五十数年前、すなわち昭和の初めころのいわば大不況、あの恐慌の時代にまさに似てきておるのではなかろうか、こういう認識もいたしておるわけでありますが、長引く不況のために中小企業の倒産は激増いたしておりますし、失業者は増加をし、そのために民間経済は全く萎縮をいたしまして、さらには財政破綻の危機、あるいは産業界の活力の減退、そうして国際的な孤立感の深まり、貿易摩擦の激化、何を考えましてもすべての面で行き詰まっておる、こういう認識をいたしておるわけであります。その上、政治倫理の乱れもありますし、さらに公務員の使命感の欠如、道義の退廃、そうして教育の荒廃、家庭の乱れ、自分たちの国を愛するという精神の欠如、まことに多くの苦悩を抱えておる、このように考えておるわけでありますが、いまこそ勇断をもってこのようないわば問題の解決に当たらなければ二十一世紀の明るい展望はなし得ませんが、そこで、現在ほど政治の責任の重大なときはないと、このように考えます。  総理は長年抱いておられました大志をついに遂げられまして内閣総理大臣に御就任をされました。御就任後三カ月を経過したわけでありますが、今日どのようにお考えでありますか。ひとつ日本丸の進路につきましての総理のお考えをまず冒頭お伺いをいたしたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 井上議員御指摘のように非常に厳しい環境にもあり、また国内の諸問題も非常に重要な問題を包蔵している時代に入っておると深く認識しております。国際関係及び国内関係、それぞれやる仕事がありますが、一言で言えば国際関係も国内関係も歴史的な大きな転換期にいま来つつあるという感じがいたしております。  経済的には、世界に石油危機を二度経験いたしまして、戦後ないような長期間にわたる不況というものが世界同時不況という形で襲ってきて、それに対する見通しもまだ必ずしも明るいものではございません。また、東西関係につきましても緊張緩和の徴候は見られません。ポーランドやあるいはアフガニスタンの問題も未解決の状態でございます。  また、国内的な問題を見ますと、戦後三十数年たちまして、非常に輝かしい戦後の歴史を築くとともに、また戦後の影が一挙に噴き出してきているという問題がございます。最近の青少年の不良あるいは暴力行為というようなものは、この三十年間の蓄積のうみでもあるとも考えられるのでございます。また、教育の問題のみならず経済的な問題につきましても、あるいは国民的コンセンサスを獲得していくという諸般の問題につきましても必ずしも十分な状況であるとは申しておりません。  そういう時期にたまたま遭遇いたしまして、私といたしましては微力を尽くして、まず国際的には、ややもすれば孤立化せんとしている日本を孤立させないように、そして、ややもすれば日本に対する諸般の誤解がある中に、フェアプレーの日本、フェアな日本という印象を極力早く回復していかなければならぬ、こういうふうに片方では思っておるところです。国内的には、政治倫理の問題を初め、教育の問題あるいは経済の問題、諸般の問題につきましてこれを処理するとともに、やはり新しい時代を展望する、希望を回復するということが大事であると思っております。  行政改革、財政改革をやりますのも、やはりそれぞれ日本の政治機構あるいは経済力に対応力を回復して未来に挑戦できるような力を蓄積できる体系にいま方向転換をしていこうとしている問題でございますし、地方の問題にいたしましても、明るく豊かな地域社会を建設するという点について地方の皆さんとも御相談申し上げて、それぞれの地域に応じた具体的なプロジェクトなりプランを出していただいて、中央、地方相ともに手を携えて明るい地方を築いていくということをやっていかなきゃならぬと思っています。  そういう諸般の問題につきまして目を配りながら、非力ではございますが懸命の努力を尽くしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  155. 井上計

    井上計君 総理の明快なお答えをいただきまして大変心強く感じます。  ただそこで、総理が御就任直後であったと思いますけれども、所信表明演説の中で言われました勇気をもってタブーに挑戦をする、この決意をひとついま一度お聞かせをいただきたいと、こう思います。
  156. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国際的にも非常にむずかしい問題が山積しておりますし、国内的にも諸般の困難が横たわっておる、こういう時代におきましては政治がその困難に正面から立ち向かっていく、挑戦するという勇気のある政治でなければ乗り切れないと思っておりました。そういう考えに立ちまして、自分たちでできるだけのことをこの世代のうちにやっておこう、やれるところまでやり抜いて進もう、そういう気持ちで外交案件あるいは内政案件について一つ一つ食いついてそして解決していく、そういう考え方でやっていきたい、その中にはタブーというものがあってはならぬ、いままでややもすれば諸般の問題についてさわってはならぬというものがなきにしもあらずでありました。そのために国民の皆さんの相当の部分の中にフラストレーションがたまっているところもございますし、国際的に誤解を受けるという面もまた醸成されてきた面があります。そういう意味におきまして、タブーを設けないで、そして勇敢に、あらゆる問題について自由に挑戦していくという国民の気風をつくり、政治も実戦してまいりたいと思っておる次第でございます。
  157. 井上計

    井上計君 タブーを設けないで勇敢に勇気をもって前進をしていくという御決意を改めて伺いまして、非常に心強く感じます。そこで私もあえてタブーに挑戦をする、このような気持ちで以下具体的な質問をいたしたい、かように考えます。  まず、現在一番大きな問題、社会問題は、何といいましても教育の問題であろう、こう思います。連日のように新聞、テレビで報道されておりますように、教育の荒廃、特に中学生の集団暴力、教師に対する暴力、校内暴力等につきましては、もう常識ではいささか判断できないような、理解ができないような事件、事態が多く発生をいたしております。このようなことを考えますと、現状では国の将来に対して重大な危機感を持つわけでありますが、このようになった原因はどこにあるのか、文部大臣からひとつお伺いをいたしたいと思います。
  158. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お答えいたします。  いわゆる校内暴力であるとか青少年の非行であるとか、いろいろ御心配していただきまして本当にありがとうございます。いま教育の荒廃という、これはよく世間でも使われる言葉でありますが、私はその言葉は余り好まないのです、こう言うとおしかりを受けるかもしれませんが。御存じのとおり、いまは小中学校の児童生徒が千七百万人近く学校教育を受けておるわけでありますが、それらの者の教育が全部荒廃しておるというように受け取られると、これはまさに日本国のゆゆしい問題でありますが、そこまではいっておらない。いいところもあるわけでございます。ただ、こういうことは前からちょいちょいありまして、皆心配をし、文部省といわずあるいは法務省といわず各方面でいろいろな対策を講じてきておったわけでありますが、いま井上さんお話しのとおり、最近の状況、特に横浜の外部に対するああいうあるまじき行為、あるいは学校の先生が教え子を刺すという事態にまでなった、その後も連日のように新聞その他の報道で特に中学生なんかの暴力行為が報道される、まさに私も非常に心配しておりまして、いまおっしゃるように、こういうことであっては将来のわが国が非常に心配される、当然でございます。  ただ、この原因はどうだと。これはいろいろ分析してみるとたくさんあると思いますが、私は、これは全部の児童生徒がそういうわけではないのでございますから、まず第一にその本人といいますか、そういう非行を行う子供の素質に大きな関係がある、そういう素質を持っておる者をやはりしつけ、育て、教育をするのが家庭でありますから、家庭にも問題があると。さらに、そういう家庭を前提にして、これを制度として学校をつくって莫大な経費をかけてやっておるわけでございますから、学校の教育に最大の原因がある、かように考えております、教育のあり方に。  それから、社会風潮といいますか、特に経済が急激に発展、いろんな情報その他社会環境が子供に対しては、一々申し上げませんけれども、きわめて誘惑的にできている。あるいはマスコミ、あるいは何といいますか、雑誌その他もありますけれども、テレビ、映画その他ありますが、そういうものがすべて総合的といいましょうか、こんがらがって大きな原因をなして、まだまだ未熟な子供を非行に走らしておる、こういうことではなかろうかというふうに分析をし、個々の対策を講じ、また全般的な対策も考えなきゃならないと、かようなことをいまやっておるわけでございます。
  159. 井上計

    井上計君 文部大臣がいま言われました、教育の荒廃という言葉は好まぬと、それほど荒廃をしていないという御認識のようでありますが、後でまたお伺いいたします。ただ、原因としては学校だけの問題ではなくって、家庭の責任もあるであろう、あるいは社会風潮にもあるであろうと、こういうことでありますが、あえてこれは否定いたしません。  ただそこで、後の質問の前に警察庁に伺いますけれども、少年犯罪が年々激増いたしておると、このように聞いておりますけれども、警察庁はどのように実態を把握しておられるか、できればいろいろ数字等、資料等についてひとつ御説明を願います。
  160. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) お答えいたします。  少年非行の実態でございますが、ここ数年来著しい増加を続けてまいりましたが、昨年中の刑法犯少年の補導人員は十九万一千九百三十人、前年比七千二十八人、三・八%の増加でございます。昨年はその増加率がやや鈍化をしたという傾向が見られます。しかし、戦後最悪の状態は依然として続いておることは事実でございまして、内容的には中学生の非行が著しく増加をしておる、あるいは校内暴力事件の多発、傷害、恐喝などの粗暴事犯の増加、さらにはシンナー、覚せい剤等の薬物乱用少年の増加といった特徴が見られるところでございます。
  161. 井上計

    井上計君 警察庁いま一度伺いますけれども、校内暴力事件の状況等につきましての御調査があると思いますが、お聞かせをいただきたいと思います。
  162. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 校内暴力事件について申し上げますが、昨年警察が把握をいたしました校内暴力事件は全体で千九百六十一件でございます。そのうち中学生の事件が千八百五十一件、全体の九四・四%を占めております。また、校内暴力事件のうち、特に問題の多い教師に対する暴力事件は八百四十三件発生をいたしております。そのうち中学生によるものが八百二十五件、これは全体の九七・九%でございます。  最近における中学校の校内暴力事件の特徴的な傾向を申し上げますと、校内暴力事件のすべてが公立の中学校であるということでございます。それから、校内暴力事件を引き起こした生徒の大半がいわゆる落ちこぼれ層と言われる生徒であるということ、それから校内暴力事件を引き起こした生徒の多くは放任家庭に育っておるという事情があること、それから番長グループによる事件が多く、また背後に暴走族などの校外の粗暴集団とのつながりがあって校内暴力を悪質化させておる、そういった事例も見られると、こういうような状況が見られます。
  163. 井上計

    井上計君 いま数字を伺いまして、まことに憂慮にたえないというふうな気がいたしますが、文部省はどのような数字を把握しておられますか、お伺いいたします。
  164. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 文部省におきましては、非行の全体的な数字につきましては警察庁の数字を使わしていただいておりますが、特に校内暴力、対教師暴力等につきましては、都道府県教育委員会等から聴取をいたしまして、これは一つの事例として、私どもがこれを克服いたしましたケースを詳細に分析いたしまして、各都道府県に参考例として流したものでございますけれども、そのための各府県から聴取いたしました数字はそれほど多くはございませんけれども、かなり質のいろいろな内容を含んだものを把握いたしておりまして、それを分析をして一つの資料にまとめて配ったわけでございます。  今後の対応といたしましては、やはり各都道府県が実際に数字をつかんで、警察の数字とは別に私どもとしても把握をする必要があるということで、きのうの緊急の都道府県教育長の会議におきまして、校内暴力行為、これを対教師暴力、生徒間暴力、器物破損というふうに分けまして、詳細に調べて報告するように求めておるところでございます。
  165. 井上計

    井上計君 現在はまだ的確な数字はつかんでいないと、こういうことですね。
  166. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) はい。
  167. 井上計

    井上計君 警察庁の先ほどお聞きしました数字よりさらに多くの数字が実際にはあるんではなかろうかと、このように言われております。いま的確な数字をつかんでいないということでありますから、また数字ができましたらお伺いをいたします。  そこで文部大臣、先ほど警察庁お話がありましたけれども、私立には皆無であって公立のみにこのような校内暴力が発生しておると、こういうお話がありました。これについてはどうお考えですか。
  168. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私は就任間もなく、率直に申し上げて文部行政は素人でございますから、個々の校内暴力、あるいは特に低学年の――昔は高校あたりの非行が多かったのですけれども、だんだん低学年、いま中学校が中心になっております、先ほど来の。非常にこれが、私はよけいなことですけれども、前に法務省を担当したことがあるものですから、これを非常に注目しておるわけなんですけれども、そこで文部行政は素人でありますが、文部省に来ましてから、専門家の集団でありますから、いろんな校内暴力、あるいは少年非行に対する戦前からの調査を命じておるわけで、なかなかわからぬかもしれませんけれども。その際に一つの項目を出しましたのは、公立学校と私立学校とのこういう非行、校内暴力等の実情、もし差があるとすればその原因、こういうことをいま調査を命じておるわけでございますが、私の見たところでは、いわゆる私立学校には余り聞かないわけでございます。まだ調査の結果を見ておるわけじゃありませんけれども、従来の経験からして。これは全部を私がつまびらかにしておるわけではありませんけれども、いわゆる私立学校というものは一つの校風を持っている。その校風に従って非常に規律といいましょうか、指導といいましょうか、厳格とは言いませんけれども、正しい、何といいますか、育て方、しつけをしておる。それに反すれば直ちに退学を命ずる。いろいろな手に負えないのは懲罰を加える。いわゆる指導が適切に行われておる。と同時に、全部が全部じゃありませんけれども、私立学校はエリート学校とかいう特殊な学校がわりあいに多うございますから、そういうところに行っておる子供はそこを退学させられちゃ困るという危惧もあるんじゃないかと思いますが、学校の指導に従うと。  よけいなことでございますが、私の郷里でございますけれども一つの学校が非常に厳格に指導しておると。千何百名の生徒がおりますけれども、そこの学校の制服、制帽で通学をしておりますが、いま高校になっておりますけれども、男女共学でありますけれども、私が非常に、まあよい悪いは人によって感じが違うかもしれませんが、登校の際は全部校門で最敬礼をして校内に入ると、校庭に入ると。また、学校が終わりますと、下校のときにも全部学校の校舎の方を向いて回れ右をして、脱帽をしておじぎをして帰ると。これがいいとか悪いとかそれは見解が違うかもしれませんけれども、そこまで礼儀正しく教えておる学校もあるんです。私は、そういう点が非常に違うんじゃないかと、こういうふうな感じを持っておることを申し上げておきます。
  169. 井上計

    井上計君 私立学校にはそれぞれ校風があると、その校風が非常に秩序、規律を守るというふうなことになって、私立にはこのような非行、暴力がほとんど皆無に等しいと、しかし、公立はというと、逆に言うと公立には全くないからこういうふうな事件が多く発生をする、こういうふうな御答弁であったと思います。  そこで、文部大臣にいま一度お尋ねいたしますけれども、私どもは、学校の先生、すなわち教師というのは聖職である、聖職に携わっておる勤労者、これが私は教師であると、こういう認識を持っておりますけれども、ところが、やはり教師は労働者であるという声が非常に強い。労働者であるから、いわばむしろ生徒に使われるし、生徒の機嫌をとる、こういうふうなことが多くあるのではなかろうかと思います。すなわち教師の考え方、使命感、これらがやはり公立の学校のいわばそのような事件、暴力行為、これらが頻発しておる大きな理由ではなかろうかと思いますが、文部大臣、いかがでしょうか。
  170. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 教師がいわゆる労働者であるか聖職者であるかということは、最近は余りそういう議論は聞きませんけれども、従来からいろいろ論議された問題であります。  私は、まあ聖職者という――聖職なんと言うと昔のことを考えておるんだという意見もありますが、聖職者という言葉がどうであるこうであるとかいうよりも、人間はだれでも私は労働者と言えば労働者であり、われわれは朝から晩まで重労働をやっておる。それにはまあ肉体労働もありましょうし、あるいはいわゆる精神労働もあるわけです。人類は、生物は働くようにできておるんですからこれは当然のことであります。ただ、その働く場所がいかなる場所で働くかというだけのことであります。あるいは自動車工場で働く者もあるし、いわゆる教育という場で働く者もあるし、あるいは売り場で働く者もあるということだけの違いでありまして、全部人間は生命を保つために働くということになっておるという意味では労働者である。  ただし、私は聖職者という言葉を使うか使わないかは別といたしまして、そういう人間を育てる職場、しかも生まれてからまあ十五、六といいましょうか、中学校を卒業するまでぐらいが人間として育てる一番大切な時期だと思います。その育てる仕事というものは私はすばらしい仕事だと。人間の生命を保ち、しかもいろんな教育を施し、生きる道を授ける、そして社会連帯の中でよい社会、よい国をつくり、よい世界人となる、こういう人間をつくる労働といいましょうか、これくらい私は崇高と、ほかのものがいかぬとは言いませんけれども、崇高な使命はないと思います。問題は、その使命感に徹するか徹しないかの差であると、これだけのことだと思います。
  171. 井上計

    井上計君 文部大臣の御見解、私全く同感であります。やはり大事な、しかも、これから未来永劫、平和と自由の日本を建設をする大事な子供、大事な少年を教育するわけでありますから私は聖職である。したがって、その聖職に従事する人の使命感というものをもっとひとつ持っていただきたい、期待をいたしたいと、こう思います。  ところが、お互いその職場で働く場合には、まずそれぞれのどのような職場におきましても、服装等についての一つのけじめというものがあると思います。ところが、聞くところによりますと、公立の小学校、中学校の先生の服装、教師の服装は全く乱れ切っておると、このように聞いておりますが、文部大臣、いかがですか。
  172. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いや、先生方の私現場よく見ておりませんから、服装がどういうふうに乱れておるかはよく存じておりませんので、事務当局から説明させることにいたします。
  173. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 公立の学校の教員の服装につきましては、私ども調査をしたことはございませんけれども、いろいろ機会に学校等を視察いたしますと、トレーニングウエアを着ている教師もございますし、また背広を着ている教師もございますし、学校によりましてかなりの差があると思います。一概に全部乱れているというふうには思いませんが、学校なり地域によりましてはかなりの差がございまして、それぞれやはりそういう服装につきましては都道府県の教育委員会なり、市町村の教育委員会がある程度いろいろと指導をしなければならぬという地域もあるかと存じます。
  174. 井上計

    井上計君 お互いに服装が乱れておればついやはり心も乱れると、こう思います。先生の服装が全く乱れておって、生徒に服装を正しくしろとか、あるいは髪の毛が長いとかどうとかって言ったって、これは生徒が聞かないのは当然だと、こう思います。やはり私はかなり大きな現在の教育の荒廃、この原因は教師にも一つあると、こういうふうに考えております。  そこで、日教組の中央委員会、先日八日にあったようでありますが、槙枝日教組委員長は、教育の荒廃の原因、責任はすべて文教政策にあると、このように発言をしておられるのでありますが、これについて文部大臣はどのような受けとめ方をしておられますか。
  175. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私が文部省をいま担当しておりますから、文部省が十分満足でございますというおこがましいことは申し上げません。しかし、私が見ておりますところ、これは文部省がやりますことは申し上げるまでもなく国会で決められた方式によって、国民の代表によって決められた方式によってやっておるわけでございますから、そんなにこの方式でやっておる教育というものが、それが原因で荒廃するとはちょっと考えられないわけでございますが、十分満足であるかどうかと言われると、そこまでおこがましいことは申し上げられない、かような次第でありますけれども、私はさっきいろいろなことを申し上げましたが、やはり学校の教師というものは、その子供を預かって、先ほど申し上げましたようなすばらしい社会人、すばらしい日本人、すばらしい世界人に育てるということが職責でございますから、仮にもそういうものでないものが相当いま心配されるように出ておるというのは、これは別にそこに全責任を負わせるという意味じゃありませんけれども、学校の荒廃ということが原因じゃないかと、かように考えております。
  176. 井上計

    井上計君 まだこれに関連した問題、後にもまた御質問いたします。  ただ私は、全部悪いことばっかり最近報道が多いようでありますが、ところが、大変中学校の問題でいい実はニュースも知ったわけであります。  総理府総務長官の地元でありますが、愛知県の小牧市の味岡中学校というところ、実は非行少年かなりいたようでありますが、三年生の生徒が自発的にこの寒い中朝早くから学校に集まりまして、近くの駅に制服姿であらわれて、竹ぼうきやちり取りを手にプラットホームや線路の周辺、駅舎構内のたばこの吸い殻、ガムの吐き捨て、これらをきれいに拾って大変市民から喜ばれておる、こういうふうな新聞報道が先日ありました。これらの内容を見ますと、やはり学校の先生が大変いい指導をしておられる。もう一つは、愛知県のやはり名古屋市の北区の楠中学校というところでありますが、ここに突っ張りグループがおったと。実は卒業式が危ぶまれておったけれども、五人の突っ張りグループ、この生徒に対して先生がもうまことによく指導された。ときには銭湯に一緒に行って裸になっていろいろと話し合いをした。その結果、大変実はいい方向に進んで、両校ともさわやかな卒業式が迎えられるであろうと、こういう記事があります。総務長官の地元のことでありますが、総務長官、どうお考えですか。
  177. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいま井上先生から、近ごろ非行少年と申しますか、少年の非行が世間を心配さしておると、これに対する対策を政府国民も一体になって考えていかなくちゃならないと、そういうときに、ある地域においては見習わねばならない実に善良な行いがなされておるということをお話しいただき、それは特に私の選挙区と申しますか、住んでおりまする近くの学校を例にとってお話ししていただきまして、こんな幸せなことはございません。心から感謝しております。このことは私も早速選挙区の方に帰って、先生からこのようないい例を国会で取り上げていただいた、がんばれと。そしてまた、これが広く世間でこのようなことが行われるように手本にしていきたいと思います。まことにありがとうございました。
  178. 井上計

    井上計君 いや、総務長官にお礼を言われて大変恐縮です。ただ私は、やはり総務長官も青少年問題の対策担当であるわけでありますから、こういういいことはできるだけやはり宣伝してもらって褒めてもらう、これがまた非行、暴力をなくす一つの大きな方法になるのではなかろうかと、こういう意味で申し上げたわけであります。  そこで、これは総理にお伺いするわけでありますが、去る一月二十八日であります、衆議院の本会議におきまして、わが党の春日一幸代議士が代表質問の中で、教育憲章制定の必要性を提言を申し上げました。これに対し総理は、教育の基本理念については憲法及び教育基本法に示されており、したがって、教育憲章を制定することは国民的合意が必要であるので慎重に対処する必要があると、このように答弁をされております。しかし総理、ぜひお考えをいただきたいのは、確かに憲法、あるいは教育基本法に示されてはおりますけれども、しかし現在のようなこのような事件が多く発生をし、こういう大きな問題になっておる、こういうことであります。共産主義国であるソ連、あるいは中国におきましても、児童憲章と言っておるようでありますが、わが国の戦前の教育勅語に似たようなものが実はあるというふうに聞いておりますが、したがって、やはりぜひ総理にお考えをいただくべきであろうと、こう考えますが、いかがでありましょうか。総理、それから文部大臣にもお尋ねをいたします。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 衆議院におきまして、民社党の春日顧問からそのような御提言を承りました。教育を憂えての御発言であると深く敬意を表した次第でございます。しかし、私もいま申し上げましたように、この問題については前から深く憂慮しておった一人でございますが、政府の一員といたしまして、そのような憲章について考えてみた場合に、どうも官制でやったり、政府の方から、上からお下げ渡しみたいな感じでやることは、非常にこれは避けなければならない。むしろ国民の皆様方から盛り上がってきて、そしてみんなで一致して、民間の声としてそういうものが自然にできてくるという形が一番望ましいのではないか。たとえば、教師の仲間、あるいはPTAの皆さん、あるいは地域社会の皆さん、そういう民間の力が自然にこう、何と申しますか、政府やあるいは地方公共団体の手が入ったという、そういう形でなくして、何かの形によって民間の力が結集して、そのようなものができてくればいいんじゃないかなあと、そういう気がいたしておるのでございます。しかし、そういう意味において春日さんの御提言は一つの御見識でございまして、いい示唆をいただいたと思っております。これらの問題は文部省あるいは中教審、あるいは青少年問題対策、諸般のところでひとつ検討していただきたいと思っております。
  180. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 井上さん御存じのとおり、いまも総理からもお話がありましたが、わが国の教育は、教育基本法に定められておりますけれども憲法の精神によって教育をすると、こういうふうになっております。私はそのことは非常にすばらしいことだと思っておるんです。いまの憲法にも、御承知のとおり、すばらしい原則がたくさん、国をつくっていくのに、また国民生活の基準としてすばらしいことが書いてあります。それに従ってやるんだという、この教育基本法が同じく昭和二十二年にできておりますけれども、すばらしいことだと思って、それによってやってもう三十何年たっておるんですが、それにもかかわらず、いま心配されておるような状態が起こっておる。これはどこかにおかしなところがある、私は常にそう思っております。たとえば、よけいなことでございますけれども、教育基本法もいろいろありますが、第二条教育の方針で、自発的精神を養うということ、これは当然なことであります。自他の敬愛と協力、これも人間として一番大切なことであります。それから文化の創造と発展に貢献する、そういう人間をつくるんだと書いてある。これが徹底しておれば、自他の敬愛と協力ということが徹底しておれば、先生を殴ったり、学校をたたき破ったりするようなことはないわけでございますが、そこにそういうことがある。だから、私は憲法の精神でよろしいと。よけいなことでございますけれども憲法十三条に、自由であるとか、あるいはいわゆる基本的人権がたくさん書いてあります。この意味を本当に教えてもらっておるんだろうかということを文部省内でもみんな聞くんですけれども、教科書を見てみますけれども、なるほど憲法に書いてあるようなことは、自由が大切だ、どうのこうのと書いてあります。書いてありますけれども、もう少し小・中学校の子供にわかるように、いま例を出されましたけれども、教育勅語なんといったら、すぐまた古いのが古いことを考えておるという批判がありますけれども、ああいう教育勅語に書いてあるようなわかりやすい言葉で何かあった方が、子供たちには物事がわかるのじゃないかと、こういう気がしております。でありますから、皆さんの方で教育憲章というようなお話がありますけれども、ただ問題は、いま総理からも言われましたように、いま主権在民、民主主義の社会でございますから、従来のやはりこれでいくんだ、こういうふうにしなさいということは必ずしも効果がない。問題は、どういう形式、どういう方法でそういうすばらしい教え方の標本を示すかということだと思いますが、私は私のもう個人的な考えを言いますと、本当はこれは国民代表の集まりである国会で、こういうふうな子供にわかりやすい教育憲章をつくれないかということでまとまれば、これが最高だと思いますが、そう簡単なものじゃない。慎重に考えたいと思います。
  181. 井上計

    井上計君 時間がありませんので次の問題に移りますが、ただ総理がお話しになりましたように、国民的な合意、これを得るために、ぜひひとつ総理も、文部大臣もこれから一層御努力をいただきたい、これは要望をしておきます。  そこで、文部大臣に伺いますけれども、このような本御存じでありますか。
  182. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) このような本と言われまして、その小さな本でございますから、多分先日送ってきました森本さんという方の日教組に関する本だと思いますが、先日送っていただきましたけれども、何しろ朝から晩まで重労働でございますから、まだ中身を詳細に拝見するいとまがなくて、ばらぱらっと見ただけでございます。
  183. 井上計

    井上計君 朝から晩までの重労働お察しいたしますけれども、どうかひとつ予算委員会が終わったらじっくりとひとつごらんをいただきたいと思います。  この本は、「日教組、組合員に贈る言葉」、サブタイトルとして、「正しい教員組合運動のために」、こういう本でありますが、実は私もこの本を見ましてまことに驚いております。実は慄然としているというふうなのが本心であるわけであります。この本の内容は教育大学の名誉教授であります福田先生が責任を持って推薦をしておられます。私が入手いたしました日教組の今年度の運動方針等々と全く同じ記事内容でありますから、これは信頼できると、こういう本であろうと、こう思っております。  そこでお伺いをいたしますけれども、日教組の機関紙に連載をしていますところの日教組の運動方針でありますけれども、私は、この日教組の運動方針、あるいはまた救援規定というふうなもの等がありますけれども、このような救援規定というものがあるということ、あるいは日教組の運動方針等については文部大臣は承知をしておられますかどうかお伺いいたします。
  184. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 残念ながら細かくは存じておりません。もし細かいことが必要でありますれば局長からお答えいたさせますが、大体、平和教育をするということ、それから個人の尊厳、自由、こういうもので指導する、そういうことが書いてありますが、全体の流れを見ますると、結局社会主義社会をつくるための子供をつくると、こういうふうになっていると思います。
  185. 井上計

    井上計君 総理はお忙しいですから、もちろん日教組の運動方針詳しく御存じないと思いますが、いま文部大臣が、究極の目的は社会主義社会を建設することにあるというふうな御答弁ありましたが、総理いかがですか、どうお考えですか。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が記憶しているところによりますれば、いま文部大臣が申されたような基調で運動方針が貫かれていると思いますが、やや政治的な領域に踏み込み過ぎていると、たとえば臨調、行革阻止でしたか、粉砕でしたか、あるいは中教審教育対決というような言葉があったと思います。行政改革というのは法律に基づきましていま国民的支援の中に行われ、土光さんも八十幾つかの御老齢にもかかわらず必死の努力をなすってくださっているところで、全国民が支援していると私は思います。それに対して教師の組合がいまのような表現でこれを粉砕するというようなことは、果たしていかがであろうかと、国民の意思に沿っているであろうか、あるいは地方公務員としての職責に忠実であるであろうか、地方公務員法との関係で違反していないであろうか。あるいは中教審文教反動対決というような、反動化したと言っておるんでございましょうけれども、中教審のやり方が反動化しているとは私は思っておりませんし、国民の多数は支持しているんではないかと私は思います。そういうような政治的な性格を持ったスローガンが、教師の組合の中から出てくるということは果たしていかがであろうか、地方公務員法やそういう法的、公務員の職分等から見ても適当な表現であろうか、非常に私は疑問に思っておるわけでございます。そういう言葉が一日も早く消え去って、そして先生としてPTAや生徒から尊敬される先生になっていただいたら一番いいんだと、そういう先生はうんといらっしゃると思います。ただ一部の組合のはね上がりの方々は、そういう表現をお持ちになるのかもしれませんが、しかし、組合の運動方針にそういうことが書いてあるということは私はどうかと思っております。
  187. 井上計

    井上計君 時間があればこの問題だけでもたっぷり一時間くらいは、実は資料を持っておるわけでありますが、時間がありませんので大変残念ですけれども、いま総理からお答えをいただきましたそのようなもう全く内容であると、もっともっと過激な文章があります。大会スローガンにいたしましてもいろいろありますけれども、「憲法改悪、軍事大国化に反対し、日米安保条約廃棄・非武装中立・非核三原則を堅持」、このようなことがあります。そうして「反独占・反自民・反ファッショの統一戦線を構築し、八三年政治決戦に勝利しよう。」「国民犠牲の「行政改革」に反対し、」云々と、まるでこれでは現体制破壊の実は運動方針、スローガンであると、こう考えます。これがわかっておるのに、なぜ文部省はこれらについての善処をされていないのか、これをひとつ文部大臣、お伺いいたします。
  188. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 御存じのとおりにいわゆる日教組――教職員組合は、各地方公務員として教職員として組合をつくっている。それが全国連合として日教組ということになっておりますが、これは残念ながら、日本の法制というのは、これでいいんだろうと思って国会でできているんですから、直接この組合を指導するとかという立場にないわけでございます。問題は、学校の教師として教育基本法その他に触れる場合に、これを指導するということはできますけれども、直接指導するわけにはまいらない。ただ問題は、いま申し上げましたように、地方の教育委員会等にそういうことをお願いして、何とか先生らしい先生の職責を果たしてもらうようにということを間接的に助言、指導すると、こういうことでございます。
  189. 井上計

    井上計君 どうも文部大臣のお話聞いていると、なぜそんなに遠慮されるのであろうか、明らかに違反行為があるのにかかわらず、なぜ遠慮されるのであろうか、このような不満を禁じ得ません。これだけ申し上げておきます。  そこでもう一つ、日教組の予算の中に救援資金特別会計予算というのがあります。一九八二年度すなわち昨年度でありますが、日教組の総予算は二百十八億八千九百万何がしであります。そのうち大部分の百七十五億六千七百万円は救援資金特別会計予算と、こう計上されております。救援資金とは何ぞや、大部分は違法スト等によって、違法行為によって処罰された場合、あるいは逮捕された場合、あるいは懲戒免職になった場合等々に対する実は救援資金であります。このようないわば違法行為を起こすことを前提とした予算を組んでおる、それに対してもなお文部省は何らの勧告も指導も実はできないんですか。
  190. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 日教組がただいまお挙げになりましたようなストライキの参加者、あるいはそれに伴う処分者につきまして、これは当然給与は減額されるわけでございますから、その減額を補てんするために組合費の中から一定の救援資金を設けているということは御指摘のとおりでございまして、私どもよく承知をしております。ただ、これは日教組という一つの団体の内部の取り決めでございまして、私どもとしては、それによりまして個々の、公務員たるところの教員が違法行為を行うというふうなことにつきましては、都道府県教育委員会等を指導いたしまして、従来から厳しい措置をとってまいっているわけでこざいますけれども、この事柄自体につきまして、文部省が日教組という団体に対しまして、この内部運営の問題についてとやかく言うということは、いまの法制上はできない仕組みになっているわけでございます。
  191. 井上計

    井上計君 お答えを伺うと、ますますじれったいな、こんなことで果たして教育の荒廃が立て直しができるのか、大切な子供の教育が進めていけるのか、こういう危惧感をさらに強めるということを一つ申し上げておきます。  そこで、文部省は四十九年の三月でありますが、先ほど文部大臣のお答えの中にありましたけれども、「日教組が社会主義革命に参加している団体と自ら規定していると受け取られる資料」というものを出しておられます。私はこの中をずっと見まして感じますことは、先ほども申し上げましたけれども、この今年度の運動方針と全く変わっておりません。したがいまして、依然として日教組はこのような考え方、このようなやはりイデオロギーを持って教育現声におるということを、私は大変懸念をいたしておりますので、今後ともひとつ十分これらのことにつきましては、これは文部大臣だけではありません、総理大臣、皆さん方の毅然たる態度でひとつこれからの指導をお願いをいたしたい。時間がありませんのでこの問題等については以上で終わります。  そこでもう一つ、今度は若干関連をするので警察庁に伺うわけでありますが、国会周辺のデモは禁じられていると、このように聞いておりますけれども、どうでしょうか。
  192. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) お答えいたします。  国会周辺の集団行動につきましては、東京都公安条例による許可が必要でございまして、集団示威運動の申請が出ました場合には、東京都公安委員会におきましてケース・バイ・ケースで許可、不許可を検討いたすということになっております。
  193. 井上計

    井上計君 ちょっとよくお答えわからないのですが、周辺のデモはそうすると申請があれば許可することもあるわけですか。もうちょっと明確にお願いいたします。
  194. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) すべて公安委員会においてケース・バイ・ケースに判断されるわけでございますが、ただ、お尋ねのことに関連して申し上げますれば、請願のために国会周辺、議員面会所前を集団行動で参りたいという申請につきましては、請願が平穏に行われるべきことは憲法の規定からも明らかでございます。そうした観点から、集団行進ということで申請が行われ、東京都公安委員会において許可がされておるわけでこざいます。
  195. 井上計

    井上計君 じゃ、もう一つ伺います。  とすれば、いまちょっと御答弁の中にありましたが、議員面会所、国会周辺でマイクを使って大声を上げ、あるいはプラカード、旗ざおを持って気勢を上げている行為というのは、じゃ違法だと、このように考えてよろしいんですか。
  196. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) お答えいたします。  集団行進ということになりますと、東京都公安条例の定義、規定からいたしますと、これはこれまでの裁判例でも明らかにされておるわけでございますが、示威を伴わない集団行動であるというふうに考えられております。したがいまして、いまお尋ねにございましたように、シュプレヒコールなどの示威にわたる行為が、その請願のための集団行進において行われますれば、それは無許可の示威運動ということになるわけでございまして……
  197. 井上計

    井上計君 つまり違法だということですね。
  198. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 現場においてそうした違法な行動が行われました場合には、警察官においてその都度警告をし是正を求めておるということでございます。
  199. 井上計

    井上計君 違法であろうと思う。したがって、よく私ども見るわけでありますが、出動している警察官が盛んに注意をいたしておりますけれども、ほとんどの人が全く聞いておりません。ところが、それだけではなくて違法行為を行っておる、すなわち示威運動――議員面会所において一部の国会議員の人たちがその人たちと一緒になって気勢を上げておる、これも明らかに私は違法行為であろうと、こう思います。  国会は法律をつくる立法府でございます。みずから法律をつくる者がそのようなやはり法秩序を破るということについては私は反省をすべきであろうと思います。どのような小さな法律、秩序でありましょうとも、やはりこれを守ることが私は政治倫理のまず最前提だと思いますが、総理、いかがでしょう。
  200. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お説のとおりであると思います。
  201. 井上計

    井上計君 このような違法行為がはっきりしたわけでありますから、今後十分ひとつ対処していただくように、これは国家公安委員長ですか、どなたの担当か知りませんけれども、特に要望をいたしておきます。  次に、北方四島の返還運動につきましてお伺いをいたします。  まず最初に、現在の北方四島返還運動の状況、さらには予算等につきまして、これは担当が総務長官であられると思いますのでお伺いをいたします。
  202. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいまお尋ねの総理府には北方領土問題を担当しておる北方対策本部がございますが、そのところにおいて五十八年度お尋ねの予算額は十三億三千八百万円で、前年度の補正後予算に比べ七億五千八百万円の増となっております。予算内容について詳しく御説明申し上げる御要求があれば当局からお願いしたいと思います。
  203. 井上計

    井上計君 財政が非常に窮屈の中でも多くの予算を計上しておられるわけでありますから、私は北方四島返還運動については、これをぜひ今後とも強力に進めなくちゃなりません。それについてひとついろいろとお伺いをいたしたいと思います。  外務省にお伺いをいたします。  日ソ中立条約をソ連が一方的に破棄通告をいたしました。そうして一方的な宣戦布告を日本に行ったわけであります。それによって生じた満州での悲劇、あるいは樺太、あるいは千島列島、北方四島へのソ連の侵入、占領の日にち、また、それらの場所で起きた悲劇、これらのことにつきましてできる限りのひとつ御説明を外務省にお願いをいたします。
  204. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) まず、第一にお尋ねの日ソ中立条約の廃棄の時期でございますが、この条約は昭和十六年――一九四一年の四月二十五日に発効しております。これを廃棄通告してまいりましたのは昭和二十年――一九四五年の四月五日でございます。この条約は当初の有効期間五年、一年の予告で廃棄されるということになっておりますので、条約がまだ有効期間中にソ連側から一方的に廃案を通告してきた。条約に従ってソ連側が廃棄を通告してきたということでございます。しかしながら、ソ連が日本側に宣戦を布告してまいりましたのは昭和二十年八月八日でございます。この時点におきましては、この日ソ中立条約はいまもって有効であって、有効期限の切れる半年以上も前に実力をもってこの条約の違反行為を行ったということでございます。  ソ連側の戦闘行為は、八月八日の翌日八月九日から満州――当時の満州でございます、それから樺太、北千島において開始されております。満州におきましては大体八月九日から戦闘が開始され、十八日に関東軍総司令部による停戦、武装解除の命令が行われております。しかしながら、その後も間欠的に戦闘行為が続けられ、大体八月の末ごろまで満州地域においては戦闘状態が続いていたというふうに認識しております。  この間、日本側の日本軍の死亡者は大体二万五千名ないし六千名という推定数でございます。民間の犠牲者につきましては、これは厚生省引揚援護局の資料でございますが、邦人の死亡総数は約十七万名、そのうちの約十三万名は昭和二十年から二十一年の越冬期――冬の間に亡くなられたというふうに推定されております。  千島――シュムシュ島からウルップ島まででございますが、この千島に対する攻撃は、昭和二十年の八月十八日ソ連軍がシュムシュ島を攻撃開始したことによって始まっております。大体八月の二十九日までに千島全島がソ連軍によって占領されたと。引き続きまして北方四島、択捉、国後、歯舞、色丹でございますが、この地域は九月一日前後から三日の間に占領されたということになっております。戦闘行為が現実に行われましたのはシュムシュ島だけでございます。また、南樺太におきましては昭和二十年の八月十一日にソ連の攻撃が開始され、同八月二十八日に南樺太の日本軍の武装解除が行われたということになっております。千島、南樺太方面での戦闘開始から武装解除までの期間における日本軍の死亡者は約二千五百名と推定されております。
  205. 井上計

    井上計君 民間人は。
  206. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 民間人の死傷者については、ただいま手元に資料を持ち合わせておりません。調査の上別途御報告させていただきます。
  207. 井上計

    井上計君 満州からシベリアに抑留された邦人の数、またシベリアで亡くなったであろうと思われる方々の推定数わかりませんか。
  208. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 大変申しわけございませんが、ただいま資料を調べておりますので、判明次第御報告させていただきます。
  209. 井上計

    井上計君 いま外務省の御答弁をいただきました。そこで改めて感じますことは、わが国がポツダム宣言を受諾した日は八月の十四日であります。終戦の詔勅が出たのは八月の十五日であります。といたしますと、ソ連が行った先ほどのお答えの行為等々の大半は国際法違反であろうと、こう考えますが、外務省いかがですか。
  210. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日ソ中立条約をまだ期限が切れる前に一方的に破棄をして、そして数カ月足らずのうちに一方的にまた宣戦布告をし、侵入したと、こういうことでありますから、もう完全に国際法違反であることは間違いはございません。
  211. 井上計

    井上計君 総理、私はなぜこのようなわかり切ったことと言うと、大変なにですが、伺ったかと言いますと、現在国民の中のかなりの人たちがこういうことを言っておるのです。日本はソ連と戦争して負けたのではないか。負けた日本が、戦争に勝って占領しておるソ連に対して、北方四島を返せと言うのはおかしいではないか。そんなことを言うから、ソ連がよけい怒っておかしくなるのだ。だから日本の平和が脅かされるのだ。だから北方四島の返還なんて言わぬ方がいいではないかと、こういう声が事実あるのです。総理どうお考えですか。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いきさつはいま井上議員が御発言になり、外務省が説明をし、外務大臣が答えたとおりのいきさつで占領が行われておると、これは不法占領であります。そういう意味におきまして、国民の皆様方にもよく御認識をお願いし、わが領土としてあくまでこれは確保していかなければならぬものであると考えております。
  213. 井上計

    井上計君 総務長官、先ほど十三億三千八百万円という、今年度予算というお話がありました。もっとこういうことをPRしないと、いま申し上げたように、国民はいまのような不法にソ連に占領されておるということを知らない人が相当いるわけです。どうお考えですか。
  214. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 井上先生にお答えさせていただきます。  先ほど私が先生にお答としたことについてのまた適切な御注意を賜りまして感謝でございます。今後十分注意して、政府には広報室等もありますから、徹底してそのことは国民の理解の得られるようにいたしたいと思います。  そこで、いまも先生からお話のございました北方領土の返還を要求するのは間違っておるという声がどこかで聞かれるけれども、どう思うかということのお尋ねがあって、また総理からもお答えがございましたが、これを取り扱っておりまする北方領土関係の私どもは、総理からお話のありましたように、わが国固有の領土であるいわゆる北方、歯舞、色丹、国後、択捉ですね、この領土の返還をソ連に要求することは、これは歴史的な経緯から見ても、国際的諸取り決めに照らしても、わが国の正当な主張であると信じております。  政府は、このような基本的な認識のもとに従来から粘り強く対ソ外交交渉を続けているが、これを支える最大の力は何といっても国民の一致した世論であり、幸い国民もこれを支持し、今日一日も早く北方領土の返還を求める国民は大きな高まりを見せておりまするが、今後一層国民一人一人がわれわれのこの主張を正しく理解し、返還要求運動に積極的に参加できるよう、政府としても、いま御指摘のありましたように、関係民間団体と一体となって、密接な連携を図っていく啓蒙運動を続けていきたいと思っております。  以上お答えさせていただきます。
  215. 井上計

    井上計君 北方四島返還は、これはもう日本の正当なというか、当然の主張でございます。これは当然であります。ただ、私が申し上げましたのは、そうであるけれども、そのようなことを知らない国民が非常にふえておる、このことを懸念をして申し上げておるわけであります。  そこで、文部大臣に伺います。  小学校、中学校、高校の教科書の中に――いま外務大臣からもお答えがありました、ソ連のすべてが国際法違反である。そうして、外務省の政府委員からもお答えがありましたけれども、ソ連のあの八月の日ソ中立条約の廃棄通告以降すべてが違法である。そして、数多くの邦人があるいはソ連の不法な行動によって、満州で、樺太で、あるいは千島で亡くなっておる。そのような記述が教科書の中にあるかどうか御存じですか。
  216. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほども申し上げましたように、まだ教科書全部見るいとまがありませんので、よく全部見てこうだというお答えはできません。そういう点は後でまた必要であれば事務当局からお答えさせますが、私が二、三見ましたところでは、北方領土四島の問題があって、これは言葉は多少違いますけれども、ソ連に対して日本が返還を要求しておるという記述はありますけれども、かくかくしかじかでソ連から先ほどのような違法不当な戦争行為で取られておるんだという趣旨のことはほとんど書いてないと思います。
  217. 井上計

    井上計君 ぜひ、文部大臣もお忙しいでしょうがお読みいただきたいと思いますが、政府委員、このことについてお答えいただければと思いますが、どうですか。
  218. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 二つのお尋ねかと存じますが、一つは、昭和二十年のソ連の満州などへの侵入につきまして、これが日ソ中立条約を破棄して行われたものであり、ヤルタ協定による密約に基づくものであったこと、これにつきましては、この間の歴史的な経緯を理解する上に非常に重要な事実でございますので、歴史教科書の検定におきましては、このことについて適切な記述を行うように求めているところでございます。この結果、中学校の社会科、歴史の教科書におきましては、ソ連の満州など――満州あるいは南樺太、千島と書いているものもございますけれども、満州などへの侵入が日ソ中立条約を破棄して行われたものであること、ヤルタ協定による密約に基づくものであることにつきましては、ほとんどすべてにわたりまして記述をされているところでございます。  それから、もう一点は北方領土の問題でございますが、これは地理の教科書におきまして地理の指導書というものがございますが、その中におきまして未解決の領土問題に対しわが国が正当に主張している立場に基づきその要点を的確に理解させるという一項を入れてございまして、その観点から適切な記述が行われるよう、教科書の記述におきましては検定においてこのような点を求めているわけでございますが、歴史、公民の教科書におきましては、これが現代のわが国をめぐる国際関係において、国民的課題としてきわめて重要なものであることにかんがみまして、そのような記述を求めているところでございます。したがいまして、中学校の社会科、地理、歴史、公民の教科書におきましては、すべて北方領土がわが国固有の領土でありソ連に対してその返還を要求しているということが、すべての教科書にわたりまして記述されているところでございます。
  219. 井上計

    井上計君 北方四島がわが国固有の領土であるからソ連に対して要求をしておるというのは、中学校以上大体出ております。しかし小学校の教科書の中には全く北方領土の記述がないというものもあるわけであります。それから、先ほど私がお伺いし、また申し上げているように、いわばソ連の国際法違反によるところの行為、このようなことは全く記述がないわけであります。  私はあえて申し上げたのは、いわば教科書にそのような正しい記述がなぜなされていないのか。これでは、先ほどから申し上げておりますけれども、総務長官幾ら国民の北方四島返還について合意を得るために云々と言われましたけれども、学校で教えないのですから国民の合意が得られるはずはありません。文部大臣どうお考えでしょう、この教科書記述について。
  220. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 井上さん御存じのとおりに、わが国の教科書は昔と違いまして、国定教科書――国がつくるわけじゃございません。ただ、私的につくったものを客観性を保たせるという意味で、御承知のとおり法律に従って検定ということをやっておるわけでございますが、私もその教科書を見まして、検定はやっておるのに事実が非常に明白でないじゃないかということを申し上げておるのでございまして、検定基準というものについては先ほど初中局長から申し上げましたように書いてあるわけでございますけれども、これを強制することのできない日本の検定制度にやや問題があるんじゃないかと、こういうことを考えておるわけで、今後指導したいと思います。
  221. 井上計

    井上計君 文部大臣、いまそれを修正することができないところに問題がある、こういうふうに私はお聞きしたんですが、そうなんですか。
  222. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) その前に、先ほどお話のございました小学校の記述でございますけれども、これは小学校の課程におきまして北方領土の問題のような時事的な問題をどの程度記述させるかという問題につきましては、これは中学校のように的確にその教科書におきまして記述するというところまでは求めていないのでございまして、発達段階に応じてそれは教えるということになっておりますので、その結果ばらつきがございますけれども、教科書によりましては北方領土の問題をかなり書き込んでいるものもございますし、またあるいは地図というところで北方領土の問題を明確にしているというものもございまして、若干の精粗はございますが、ある程度触れているという点でございます。  それから、いまお尋ねの点はちょっと私聞き漏らしておりましたので、あるいはお尋ねの趣旨を取り違えるといけませんが、教科書の検定は、一度検定を行いましたものはこれは教科書として使う義務を生じるわけでございまして、それがさらに三年後、義務教育の教科書でございますと三年後に改めて改訂検定を求めるというふうな道が開かれておりまして、その際に著者が諸種の観点からこういう点を改めるということがございますれば、文部省におきましてはそれを検定基準に従って検定を行うというような仕組みになっているわけでございまして、一度できたものを文部大臣が修正を求めるとか、そういうような制度にはなっていないのでございます。
  223. 井上計

    井上計君 とすると、著者の方から間違っておるから修正したいという申し出がなければ実は修正ができない、こういういまお答えですね。そうなんですか。総理どうお考えですか。これだけ明らかに間違っておるのに、それを著者の方から申し出がなければ直せぬ、それで正しい教育ができるとお思いですか。
  224. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 事柄が明白に間違っていることがわかるものでございますれば、それは正誤訂正という簡便な手続によりまして直すという方法がございますけれども、一度検定調査審議会の議を経まして文部大臣が検定を行ったというものにつきましては、これはそれが文部大臣が教科書に与えました公認のものでございますから、やはり三年後に著者なり発行者が問題を検討いたしまして、この点についてはこういう見地から改善をするというような改訂の検定の申し入れがあった場合に、文部大臣としてはそれに検定基準に照らして対応するということでございます。
  225. 井上計

    井上計君 聞けば聞くほど実はわからぬようになりました。もう時間がありませんし、この問題を突っ込んでおると精神衛生上悪いと思いますから、この辺でやめます。  ただ、はっきり申し上げておきますけれども、仮にも文部大臣があるいは文部省が、あるいはこの国会のこの場で明らかに違っておるということが正確にやっぱり認められたものであっても、著者の申し出がなければ修正できないということであるなら、日本の文教政策全くないと、こう思いますが、文部大臣どうですか。
  226. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 教科書は、先ほども申し上げましたように、学校教育法によりまして文部省の検定でやるということになっております。そして検定基準というのをつくっておりますが、その検定基準に従って各教科書会社が、著者、書く人がそれに基準に従ってやるわけでございます。全然客観的に間違ったことを書いておりますと、修正意見というものをつけて、修正をしなければ教科書として検定を通過しないということになる。しかし全然間違っている、そういう意見もある、学者によっては意見がいろいろありますから、その意見が完全に間違っておるということでないと、まあここら辺を修正したらどうですかという意見を付して、なおかつ自分の意見を、これだから直す必要ないという主張でありますと、それを直すという制度にはなっておりません。  ただ、いま先生が御指摘の問題は、私はけさも実は教科書問題で事務当局と話したんですけれども、こういうことではおかしいじゃないかということを話しておるわけでございますが、いわゆる修正意見をつけるかどうかという問題でございますから、こういう点は今後検討をしたい、かように考えております。
  227. 井上計

    井上計君 残念ですが、時間がありません。また別の機会にこの問題はもっと詰めて質疑を行いたいと思います。  ただ、文部大臣、仮にも教科書の検定がいまのようなことであって、将来を担う子供に対する正しい教育ができるとはとうてい思えないわけです。私は、昨年、中国、韓国の抗議によって教科書問題が大きな政治問題になりました。それから考えても私どもはやはり日本の過去の正しい状態、悪いことは悪い、いいことはいい、困ったことは困ったと、こういうふうなことを正しく後世に伝えるためにも、この問題についてはぜひともひとつ勇気をふるってお考えをいただきたい。要望をしておきます。時間がだんだんなくなりますので、余りこれにこれ以上入れませんので残念でありますが。  次に、行政改革並びに財政再建についてお伺いをいたします。総理行政管理庁長官当時、行政改革に政治生命をかけると言われました。また先ほどの所信表明におきましても「最重要課題の一つ」である、このようにして取り組むと、こういう御決意がありましたけれども、その御決意を改めていま一度承って、質問を進めてまいりたいと思います。
  228. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政改革につきましては、かねて申し上げますとおり、中曽根内閣がしょっておる最大の責任課題であると、そういうふうに考えておりまして、いよいよ近く臨時行政調査会も最終段階を迎えまして、いわゆる第五次答申、最終答申をお出しいただく予定になっております。その前に、すでに三公社五現業の改革とか、あるいは国鉄に関する諸般の対策とかやっておるところであり、また御提案もいただいておるところでこざいますが、いよいよ最終答申をいただきましたら、これを全面的に党、内閣挙げて検討いたしまして、そして臨調答申の考え方をいままでと同じように最大限に尊重して実行していきたいと、私は念願しておるのでございます。  いよいよ行政改革も一番大事な本番になってきたと思っております。その前駆をなすものは、ただいま国会に提案されております国鉄監理委員会設置法でございますし、また年金問題の改革について近く法律案を提出する用意を整えておるところでございますが、とりあえず、出ている国鉄監理委員会設置法は、今議会是が非でもこれを成立さしていきたいと念願をいたしております。民社党の皆様方の御協力を心からまたお願いしておるところでございます。
  229. 井上計

    井上計君 行政改革につきまして、私は各種の詳細な資料を実は持ち合わしております。といいますのは、当委員会並びに内閣委員会で、私は五十三年来生糸検査所の問題、あるいは食糧事務所の問題等々につきましてしばしば発言をし、また善処を求めてまいりました。その後の状況いかがかと、こう考えまして、先般、横浜あるいは神戸の生糸検査所、それから二、三の食糧事務所等を実は調査をしてまいりました。調査をした結果を申し上げますと、確かに形は計画どおり削減が進んでおるかに見えますけれども、配置転換等考えますと、こんなことでは、失礼な言い方でありますが、見せかけ行革ではなかろうかと、こう思える節が多々あるわけであります。私は、それらの点につきまして十二分にひとつお考えをいただかなければ、いま総理の御決意がありましたけれども、果たして進むであろうか、こういう危惧をいたしておるわけであります。これにつきまして、行管庁長官はどういうふうな対処をされますか、ひとつ御決意を承ります。
  230. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 行政改革の問題は、総理からただいまお話のございましたように、将来を展望しての国民的な重要課題であるというわけで、私ども真剣に取り組んでおるつもりでございます。  さらにまた、昨年の第三次答申に基づきましては、五十八年度の予算編成に当たりまして、できるだけの補助金の削減をするとか、あるいは国家公務員の定員を削減するとか、そういうふうな仕事も十分いたしておるつもりでございます。  三公社五現業、年金等の問題につきましては、すでに国会に提案したものもあり、いま準備中のものもある。ただいま総理からお話がありましたとおりでございます。  そこで、いまお尋ねのありました食糧事務所の点でございますが、五十五年度末までに、従来ありました食糧事務所の出張所三千二十一、この出張所は全部廃止いたしてございます。さらにまた、食糧事務所の定員につきましても、四十二年度末には二万八千人の定員がございましたが、五十七年度末には一万八千七百五十三人、約一万人現実問題として定員を減らしていると、こういうことでございまして、個別的にごらんになりますればいろいろ御不満の点もあろうかと思いますが、臨調の答申等の趣旨に沿いまして、誠意をもって、全力を尽くして努力をいたしておるつもりでございますし、今後ともそのつもりでございます。
  231. 井上計

    井上計君 私は、いま行管庁長官のお答えに反発する資料いっぱいあるんです。時間がありませんから残念ですが、また別の機会に譲ります。ただ、数字の上だけでは確かに進んでおるようでありますが、実態は進んでいないということをこれはあえて断言をしておきます。  それからもう一つは、確かに食糧事務所等の定員は減った、減った人が実は何をやっているか、どこへ行って何をやっているかということでありますが、それらについても、私はあえて申し上げますが、かなりむだが多いと、こう思います。それから農水省には統計情報事務所というのがありますが、統計情報事務所がやっておる調査、それから食糧事務所がやっておる調査等々が非常に重複しておる、まともにはもっともっと合理化されるという面がたくさんあります。これらにつきましても、十分ひとつ、行管庁もさらに農水省もひとつ調査をされて善処をしていただきたいと、こう思います。  そこで、配置転換についてお伺いいたします。何と言いましても、やはり行政整理を進める中で一番大きな障害は配置転換問題だと、こう聞いております。第六十一回国会、すなわち昭和四十四年五月の十五日に、参議院、当院の内閣委員会におきまして総定法を審議しますときに附帯決議がなされております。その附帯決議の中に、「本法律案審議の過程において政府の言明せるとおり、公務員の出血整理、本人の意に反する配置転換を行なわない」、こういうのがありますが、これがいまでもどうも金科玉条的な実はいき方をしておると、こう感じますけれども、行管庁長官、どうお考えでしょうか。
  232. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先ほど、統計調査等について重複しているじゃないかといったお尋ねがございましたが、十分その点は調査をいたしまして、さようなことのないように今後努めてまいりたいと思います。  それから、省庁間の異動、配置転換の問題でございますが、国家公務員の総定員法が通りますときの附帯決議のあることは私も十分承知をいたしております。附帯決議の問題でございますから、これは政府としてはできるだけ尊重するというたてまえをとらざるを得ないと思いますが、これを無視してやるというわけにもこれ政府はいかぬわけでございます。要は、皆さん方の理解、協力を得るということがやっぱり一番大事なことでございまして、省庁間の配置転換につきましては、実は農水省の職員が一番対象になっておりまして、今日まで登記所だとか、公共職業安定所、そういうところに転換されている方が多いわけですが、そういう方々については、その意に反してといったふうな強制的なことよりも、やっぱり本人の理解を得るということが先だと思って全力を尽くしておるわけでございます。その決議につきましては、これは国会の御判断なさることでございますが、私どもは、その決議がある以上はそれを十分尊重しながら、しかもまた行政改革の必要性を十分訴えて、理解を得て転換していただくというふうに努力をしていきたいと、こんなふうに考えております。
  233. 井上計

    井上計君 何も、私は人員整理をびしびしやりなさいということを言うんじゃありません。ただ、この決議を、いつまでもこういう状態であれば、省庁間における配置転換というものはほとんど進まぬであろう、それでは幾ら臨調の答申を、総理がこれに従って行政改革を推進すると言われてもなかなか進まぬであろう、こういう懸念を持っております。これを申し上げておきます。  次に移ります。補助金の実はむだというのがずいぶんと言われております。実は、補助金のむだを私どもにおいていろんな調査をいたしてまいりましたが、どこの自治体でも実は遠慮してどこも話してくれません。なぜ遠慮するのかと聞くと、どうもやはり明らかにすると後で何か大変差しさわりがあると、こういうことであります。  そこでひとつ、これは新聞に報道されましたからわかりましたが、現地へ実は派遣をして見てまいりましたが、山形県の実は例であります。もう御承知だと思います。文部省の公民館、労働省の働く婦人の家、厚生省の身体障害者福祉センター、それから老人福祉センターの複合施設、したがって各省からの補助金をもらった結果、図書室と事務室が四つずつ、しかも現在利用されているのはそのうち一つだけ、本棚は空っぽというふうなむだがあるわけですね。こういうふうなものがどう考えてもわからぬ、こう思います。こんなむだをなくさないで、私は行政改革、財政改革は不可能だと、こう思いますが、行管庁長官、どうお考えですか。
  234. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) いまの具体的な問題は別といたしまして、補助金というのはそれぞれの行政目的に従って行われておるわけであるわけでございますが、類似した補助金といったふうなものはできるだけ統合していくということが私は筋だと思います。具体的な問題は別といたしまして、類似の補助金はこれを整理していくとか、統合していくとか、こういう方向で行くべきものであると。これは財政当局もその点は十分御理解しているのではないかと、かように考えております。
  235. 井上計

    井上計君 大蔵大臣、どうお考えですか。
  236. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 補助金というものはそれなりに重要な機能を担うものであります、ただ、それはいろいろな国民のニーズにこたえた歴史的所産としてあるわけでございますが、いま御指摘のような点は私どもも事情を知っておる点もいま例示なさいましたがございます。したがって、本来あるべき姿というものはいま齋藤行管庁長官からお答えがあったとおりであると、財政当局としてもそういう観点から対応すべきものであるというふうに考えております。
  237. 井上計

    井上計君 次に、予算項目でまことに零細な予算が多く見受けられます。これらのやはり整理、統合、合理化をやることも当然必要であろうと、こう思います。全部の予算項目見たわけじゃありません。たまたまエネルギー関係予算を実は先般見て驚いたんでありますが、北海道開発庁、文部省、運輸省、環境庁、農水省、厚生省、外務省、内閣総理大臣官房、建設というふうに、いろいろとずっと分かれておりまして、中にはわずかに二百万円、三百万円、五百万円というふうな、そういう零細なものがずっと各省にばらまかれております、エネルギー関係予算で。これらのものを統合すればもっと効率よくむだが省けると思うんですが、これはエネルギー関係だけ拾い出したわけでありますが、いいかがしよう、担当の科学技術庁長官、何かお感じになったことありませんか。
  238. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) 御指摘いただきまして、結局井上先生御指摘になっておられますのは、いわゆる財政の効率的、むだを排して、二重投資はいけませんよと、こういう御提示でございます。われわれの科学技術の面で、これは財政当局のいわゆる問題でございますけれども、たまたま科学技術庁と、こうおっしゃいましたので私から答弁さしていただきますが、まず、いま齋藤行管庁長官、それから大蔵大臣から御答弁がありました。各費目、各研究項目とらえてみますれば、それぞれにおのおの行政目的を持ったものと、こういうふうにわれわれはとらえているわけであります。この点は御理解いただきたいと思います。しからば、二重になっていないか、むだがないかと、こうなりまするというと、いわゆる研究開発につきましては当庁が調整機能を持っておるわけであります。まず第一には各省庁からいろんな問題が出てまいります。これについての経費見積方針の調整をまず行うと、これが当庁の機能の一つになっておるわけであります。二重を、むだを排すると、こういうことであります。次には、これは総合的に国家としてどうしてもやらなきゃならぬじゃないか、こういう問題のいわゆる研究開発項目が出てくるわけであります。これも井上先生おっしゃるとおりであります。各省庁ばらばらでいい、こうなりまするというと、これにはたとえばライフサイエンス、材料研究技術あるいは極限科学技術、こういう問題になりまするというと、これはやはり当庁、産、学、官一体のやはり受け皿をつくって、そうして効率的、むだのない研究開発をやらなきゃならないと、こうなりますから、それには科学技術庁にいわゆる振興調整費の費目を設けてこの制度は確立されていると。それでもまだ足らぬだろうと、まだ交通整理はできてないと、こういうこと、これはもう基盤的共通的な国家として非常に重要な問題。これにつきましては私の方は国の直轄の研究機関、あるいは法人、これでこの衝に当たらすと、こういうことで一応調整、交通整理、むだを排し、二重にならないと、こういう措置は講じておるつもりでございますけれども井上先生おっしゃいますように、それから行管庁長官、大蔵大臣もおっしゃいましたとおりに、われわれの調整機能を十分に果たすようなそういう目でもって、そういう頭でもって今後に対処いたしたいと、こういうことで御理解願いたいと思います。
  239. 井上計

    井上計君 私は、いま科学技術庁長官お答えがありましたが、このようないわば零細な二百万、三百万、五百万いうふうな、いわばこういうばらまき予算が非常に多いと、これを整理すればもっともっと節約もできるし、さらに機能を発揮して合理化できると、こう思います。大蔵大臣も、それから行管庁長官も大いにひとつ心していただきたいと要望をしておきます。  そのほかにもこの財政のむだ等につきまして幾つか質問用意いたしておりましたが、時間がありませんのでまた別の機会に譲ります。  それから一つ、これは大蔵省にお伺いしたいと思いますが、財政再建に名をかりて、まあ意地悪い言い方をしますと、国の予算案の帳じり合わせだろうと思いますが、ツケを他に転嫁しているというふうなものが幾つかあるというふうにも感じられます。その一つ、五十八年度予算案に自動車損害賠償責任再保険特別会計から累積運用益の約二分の一、二千五百六十億円を一般会計に繰り入れになっておりますけれども、これは明らかに当制度の趣旨を逸脱したものである、このように感じます。しかも一般会計への繰り入れが無利子貸し付け、三年間据え置き、七年間の分割返済、これでは保険契約者の利益を著しく阻害をするものではなかろうかと、こう思います。そこで、特別会計がこういうふうなことになっておりますけれども、もし万一、一般会計へ繰り入れをしたことによって特別会計の収支が悪化した場合、あるいは単年度ベースの収支が悪化した場合には、これらを理由にして保険料の引き上げということになるおそれがあると、このように感じますが、保険料率の引き上げについては大蔵省どうお考えでありますか。  それからついでに、これは運輸省の所管だと伺っておりますが、現在二千万円が限度額であります。この二千万円の限度額の枠の拡大についてはどうお考えでありますか、お伺いをいたします。
  240. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 自賠責の保険の収支でございますが、現在悪化の傾向にございますことは先生御指摘のとおりでございまして、これは昭和四十四年に現在の料率が改定されたわけでございますが、その後現在に至るまで十四年間料率が据え置かれております。その間におきまして、支払い限度額が五百万から現在の二千万にと三回にわたって引き上げられております。また同時に、査定単価とも申しますべき支払い基準が二年に一遍の割合で引き上げられてきているというような事情が一つあるわけでございますが、さらに最近、大変不幸なことでございますが、自動車事故が増加の傾向にございます。こういった事情によりまして、私ども専門的にポリシー・イヤー・ベイシスと申しますが、単年度で見ますと保険収支が赤字になってきておるのでございますが、幸いなことに過去の累積いたしましたいわゆる累計の収支残がまだ黒字が見込まれておるわけでございますので、今後支払い限度額の改定といったような大幅な支払い増加をもたらすような要因というものがございません限り、いま保険料率を引き上げなければならないという状況にはないと思っております。
  241. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) 自賠責保険の保険金の限度額につきまして御説明いたしますが、保険金の限度額につきましては前回の改定が五十三年の七月にございまして、その後約四年以上経過しているわけでございますので、その改定を求める声が非常に強くなっております。そこで、私どもといたしましては裁判等における賠償水準、それから物価、賃金等の動向、それからそのほかの損害賠償制度の推移、そういったような動向を踏まえて検討してまいりたいというふうに考えております。
  242. 井上計

    井上計君 とすると、いま何ですか、限度額の引き上げを考えておると、こういうお答えですか。それを確認したいんです。
  243. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) 限度額の引き上げを考えておるということではございませんで、限度額の改定について検討をしておる、それで検討をした結果引き上げの必要があるかどうか、あるいは引き上げるとしてどの程度の引き上げになるか、そういうようなことを総体的にただいま検討しておると、こういうことでございます。
  244. 井上計

    井上計君 引き上げの必要がないかもわからぬということですか。
  245. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) はい。
  246. 井上計

    井上計君 わかりました。  まだまだあるんですが、国鉄総裁、大変お待たせしました。総裁にお伺いいたします。  私は、五十三年、五十四年、五十五年と三年間続いて高木総裁に大変失礼と思えるほど苦言を呈してまいりました。再びきょう幾つかお尋ねいたしたいと思いますが、私これも三年前に総裁に申し上げましたが、国鉄職員の服装服務規程の違反行為、最近また目立ってまいりましたが、いかがですか。  それから、ついでに申し上げます、時間がありませんから。  それから、国労、動労に対して昭和五十年のあのスト権スト、あのときの損害賠償二百二億円というものを請求訴訟を起こしておられますけれども、すでに三年前、間もなく解決をするというお答えをいただいておりますが、現在どのような状況になっておりますか。この二つをお伺いをいたします。
  247. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 服装の問題は、お客様に対するサービスといいますか、そういうことを非常に重要な仕事としておるわれわれにとって重要な問題でございます。いま最近になってそういう点で乱れがあるという御指摘でございますけれども、大変恥ずかしいことではございますが、以前に比べれば少しずつはよくなっておると私は考えていますけれども、まだまだ非常に問題が多い。特に、お客様に接触する機会の多い職員が、つまり気持ちよく列車、電車を御利用いただくべくサービスをしなければならないポストに置かれております人間が、いろいろ労働問題についてのアピールを内容とするような腕章をつけるとか、ワッペンを用いるということがなかなか、減ってはおりますけれども、なくならぬということでございまして……
  248. 井上計

    井上計君 最近またふえていますよ。
  249. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) こういうシーズンというのは、つまり毎年三月から四月にかけてはそういう労働運動のシーズンになりますので、いつもふえてくるわけでございます。それについては粘り強く指導をすると同時に、日ごろの教育を充実することによって、一人一人の職員の自覚を高めていくという以外にないと考えております。今日の段階では実はかなり労使間が、何といいますか、激しいかっこうになっておりますので、それがいまお触れになりましたように、現象として表立ってくる心配がありますので、特に現場を通じましていま強い指導をさしております。いつも同じような答弁を繰り返すのは大変私自身心苦しいわけでございますけれども、しかし、大分、御存じのように、臨時行政調査会の御指摘もあり、政府の御方針もはっきり示されました。職場の立て直しをやっておりますので、その中の一つの重要項目として考えております。御激励といいますか、御指摘のもとに一段とこれも進めてまいりたいと思います。  それから、賠償訴訟の問題でございますが、これは昭和五十一年の六月に第一回の口頭弁論がございました。今日まで二十七回の弁論が法廷で行われております。大きな問題は、いわゆるスト権の禁止が憲法に違反するかどうかという公労法十七条をめぐる問題でございまして、これらについては出されるべき議論はすべて出尽くしておるということでございまして、私どもとしては、過去において最高裁の判例も確立しておるわけでございますので、これは争点にはなり得ないということで、主張を繰り返しております。この問題はやや法廷の審議では峠を越したかというふうに思っております。  第二は、列車がとまりましたことと、それからあの時点でのストとの因果関係の問題でございまして、いわゆる関係者間の特殊用語で運行可能論という言葉を使っておりますが、運行可能論を繰り返しておりますと際限がないことになりますので、私どもといたしましては、運行可能論とはまた別個に事実関係についての証拠調べに入りますように、再三裁判所にお願いをいたしております。現在のところ、裁判所はことしの五月十八日、次回でございますが、そこから証拠調べを行おうという御決定をいただいております。  いずれにいたしましても、余りにも時間がかかっておることは御指摘のとおりでございますので、本件に私どもとしては自信を持って賠償請求をしておるわけでございますから、この訴訟に勝つために必要にして十分の証拠調べを求めまして、早期に結審を得たいというふうに思っておるわけでございます。大変時間がかかっておりますことについておわび申し上げますが、同時に、この案件は損害賠償訴訟案件として非常に特異な事例でございますので、絶対に間違いが起こらぬといいますか、勝訴を得るようにがんばっておるということも、時間がかかっている一つの理由であることをお含みいただきたいと存じます。
  250. 井上計

    井上計君 訴訟のことについてはわかりました。しかし、余りにも時間がかかり過ぎております。  それから、いま国鉄総裁はワッペン等については大分よくなっているというお話であります。最近特にふえております。しかも最近のワッペンは政治決戦勝利、国鉄解体行革反対という大きなワッペンであります。先ほど総理は、いま一番大きな行革の目玉は、中心は何といっても国鉄の再建である、こういうお話がありました。今国会すでに再建に関する法案が提出されておりますが、果たしてこれで、このような国労の人たちの考え方、態度で国鉄の再建可能かどうか、監督官庁である運輸大臣にひとつお聞きいたします。
  251. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 国鉄再建は本当に大事な問題でございます。そのときにはやはり国鉄の働く諸君が、しっかり自分たちがやっている姿勢、それに対して国民が理解をし、また政府もそれを理解するという姿勢をとってもらうためにも、つまらぬワッペンとか、イデオロギー闘争などというものはやめていくことが一番大事なことだろう、こう思っております。  それからさらに、ただいま国鉄総裁からも二百二億の訴訟の話がありましたが、国鉄の方で運行可能論に対して反論をすることもいいですが、一日も早く裁判所の指揮に従って、即刻解決することを私の方は期待しております。
  252. 井上計

    井上計君 次に、これはもう同僚議員、あるいは先輩方、あるいは大臣にも御無礼な申し出、提案、質問になろうかと思いますが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。  私は行政改革を進めていくためには、まず国会議員みずからが率先をしなくてはいけない、かように考えております。特にいま、相当前から問題になっており、私も本委員会で何回か提案をいたしておりますけれども、年金等の問題であります。先ほど共済組合等の年金法についての改正を云々ということでありましたが、私はまず国家公務員並びに地方公務員の共済組合の年金の支給、あるいは恩給等の一時停止、この法律改正をすべきであろうということをかねがね提案をいたしておりますが、その理由をひとつ、時間がありませんから簡単に申し上げます。  まず、それらの年金あるいは恩給等の有資格者が国及び国に準ずるところからさらに給料を受けておられる、そういう方は相当の数であります。特に、公社、公団、特殊法人等には相当の人数の方がおられます。調査によりますと、大体、七十三法人、四百五十七名の役員中、官僚OBが三百五十九名、七八・六%という数字が出ております。これらの方々は、あえて申し上げますと共済組合の年金と、それから公社、公団、特殊法人の給料とを両方お受けになっておるということであります。  それから、国会議員の中、現在国会議員は欠員を除きますと七百五十一名でありますけれども、七百五十一名のうち二百十九名の方が何らかの形でそういうものを受けとっておられるわけであります。国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、公共企業体共済年金、文官恩給、地方議員年金、これらのものを受け取っておられます方が大体二百十九名あります。七百五十名中でありますから、実に二五%ということになりましょうか。そういう数字になるわけであります。  さらに、御無礼でありますが、お座りいただいておりますところの各大臣総理を初め二十一名おられるわけでありますが、この中で年金を受給されておられる方、推定でありますけれども、国家公務員共済年金受給者が七名おられます。文官恩給が一名、地方議会議員年金受給者が一名、合計九名おられます。私は、まずそれらの方々が率先をしていただく、そういうふうな態度を示していただかなければ、国民に行政改革、財政再建という協力を求めてもなかなか進まぬではなかろうか、こう考えておりますが、総理いかがでしょうか。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題はなかなかむずかしい問題点が包蔵されていると思います。公務員でいらした方々が議員におなりになる、あるいは公務員でいた方々がまた公社や特殊法人に行く。公務員在職中のいろいろな勤労に対する正当な報酬として掛金をすでに掛けてきている、そういう点も考慮いたしますと、あながち受給を辞退すべきものと一概に決めるわけにもいかぬと思います。おのおの年金や、あるいは恩給の方の規定によりまして所得制限等もありまして、一定額以上になる場合には全額もらえないで半分しかもらえないとか、そういうようないろいろな制限措置も講じておるところでございます。そういうような枠の中でこの問題は運用されておるのでありまして、一概に辞退すべきものと決めるのはいかがかと思います。  しかし、公平の理論とか、あるいは公務員ないし特に議員になった場合に、国民の方でどういうふうに考えているか等々の点は、これはまた一面考えてみなければならぬ点であると思いまして、これらの点については考えてみたい、検討してみたいと思うところでございます。
  254. 井上計

    井上計君 むずかしい問題はよくわかっております。ただ、しかし私は、むずかしいからあえて避けて通るというふうなことでは、この際行政改革、財政再建は進まぬ、こう思います。  なお、確かに一部は掛けておられたわけでありますから、御本人の分もありますから大変むずかしい問題でありますけれども、しかし、国家公務員共済組合連合会の今井先生ですか、あの方の答申に、そのような場合には停止をすべきであるという答申がすでに数年前出ております。これもひとつまた御参照いただきまして、ぜひこれは総理、お考えをいただく必要があろう、こう思います。  時間がありませんから次へ参ります。  山中通産大臣にお伺いいたします。  去る五日、衆議院予算委員会で、わが国は未来永劫殺人手段である武器を輸出しない、これは私はこの件に政治生命をかける、こう言われました。私はこの新聞報道を見て大変驚いたわけであります。あたかも山中永久内閣が出現したのか、こういう印象を実は受けたわけでありますが、ただ八日に政府の統一見解が出され、それによって修正されておりますけれども、現在の通産大臣のお考えをまず承ります。
  255. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 政治家としての私の信念は終生変わりません。魂魄この世にとどまりたいという気持ちまで持っております。しかし、それは通産大臣としての立場から言えば、個人の見解でもって中曽根内閣全体の決定について逆らおうというんならば、それは辞任するしかありません。しかし、中曽根総理大臣に対する私の三十年来の友情というものは、それを中曽根内閣に限定してほしいという総理直接の御懇請を受けた場合に、いや自分の信念だからといって中曽根内閣そのものを危殆に陥れるような状態に私は立場としてございません。したがって、中曽根内閣の間は、結論は武器は出さないということにおいて一致するわけでありますから、それに私は従ったということでございます。
  256. 井上計

    井上計君 いまの山中通産大臣のお答え、お考えにつきまして総理、どうお考えでありますか。
  257. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 山中通産大臣の政治家としてのお考えは、それはそれなりにまた評価さるべき点もあるかもしれません。政治家はおのおの自分の政治的信念というものをお持ちでございましょうし、また持たなければならぬわけでございます。山中通産大臣が過般の大戦に参加いたしまして、いろいろ苦しい体験を味わい、戦争の悲惨さを見、そういうような情勢から見て、そういうような政治信念を持たれたということはまたりっぱなことであると思います。しかし、国政全般という面から見ますと、個人のその信念だけで突き通すわけにいかない諸般の問題が出てくるわけであります。  私は、山中通産大臣と話しまして、君の信念はよくわかるけれども、しかし自分の内閣というものを考えてみた場合に、自分に協力をしてほしい、中曽根内閣である間は輸出はやらないようにしようと。しかし、ほかの内閣まで私が縛る権限はない。あるいは、未来永劫自民党の党議を一中曽根が縛るわけにはいかぬ。客観情勢によっていろいろな問題も将来起こり得る可能性はあると思う。平和憲法の理念や、あるいは日米安保条約に示されている国連憲章尊重、あるいは平和維持を行うという理念はあくまでこれは貫いていかなければならぬ、これは基本原則である。しかしながら、具体的な運用の問題になるとさまざまな問題も将来起こり得る。そういう意味において、一内閣総理大臣、あるいは一自民党総裁という過渡期を受け持つべき者が、永久に自民党の党議を縛ったり、将来の内閣を縛ったりすることは、これは慎まなければならぬ、そういう意味において中曽根内閣という限定をつけたわけでございます。
  258. 井上計

    井上計君 この問題については、もう少しまた別の機会に詰めたいと思います。通産大臣のお気持ちについては理解をいたしておきます。  そこで、山中通産大臣にお伺いいたしますが、通産大臣が言われる武器とは何でありますか、その定義をお聞かせをいただきたいと思います。
  259. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは輸出貿易管理令にも人を殺傷するものとしてきちんとその名称、内容まで明記されております。しかし、概念的に言えば、人を殺傷することを目的としてそれが作成されたもの。しかもそれが単なる包丁とか、現代刀匠がつくる日本刀とか、そういうようなものではなくて、あるいは猟師の人やスポーツのためにつくられるショットガンとか、そういうもの等は別にして、これは明らかに人を殺すためにつくられたもの、これをもし軍隊が使えばそれは武器であり、戦争というのは、武器を持った軍人たるものがそれを国際戦略、国際間の戦術に使用すれば、それはすなわち戦争という形になる。だから私は、概念的に言うと、武器というものはそのものによって人を殺傷する目的のためにつくられたもの、そういうことに一応概念上申し上げておきます。
  260. 井上計

    井上計君 武器輸出三原則についての輸出非該当国があると思います、三原則からいきますとね。まあ、武器という概念についてはいま通産大臣から承りましてわかりました。  そこで、国内治安維持用の小火器、これはどうお考えですか。国内治安維持用の小火器、たとえて言うと、拳銃だとか小さな小銃がありますね、しかもそれは国内治安維持用に使うんだと。
  261. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答え申し上げます。  ただいま先生からお尋ねのございましたのは、小さいという意味でございますか。治安……
  262. 井上計

    井上計君 小さな火器、ピストルだとか、あるいは小さなものがありますね、国内治安用の。
  263. 志賀学

    政府委員(志賀学君) 小さな火器。はい、承知しました。  ただいま大臣からお答え申し上げましたように、武器につきまして三原則あるいは政府統一方針で規制をやっているわけでございますけれども、その場合に、概念的にはただいま大臣から申し上げましたように、輸出貿易管理令の別表の第一の一九七項から二〇五項までに掲げられるものでございまして、その中で、軍隊が使用するもので直接戦闘の用に供されるもの、これを武器として政府統一方針あるいは武器輸出三原則の対象として規制をやっているわけでございます。  そこで、私どもそのような概念的な考え方をどのように具体的に適用しているかということをあわせて申し上げますと、私どもの考え方といたしましては、その貨物が、たとえば先生のいまのお尋ねでございますと小火器でございますね、そういったものがその形状あるいは性状、性能あるいは構造、そういった客観的な諸要素から見て、客観的に武器に該当するかどうか。すなわち、軍隊が使用するもので直接戦闘の用に供されるものであるかどうか。そういう客観的な要素から判断されるかどうか、そういう観点からチェックをしているわけでございます。
  264. 井上計

    井上計君 どうも私が頭が悪い、よくわからないんです。ただ、申し上げておきますと、国内治安用のそのようなものは、私は、先ほど通産大臣がお話しになりました武器という概念とは若干違うなと、こういう感じがいたします。もう時間がありません。それだけ申し上げておきます。  そこで、国鉄総裁にお伺いいたします。  ある新聞によって実は承知したわけでありますけれども、青函連絡船の津軽丸が払い下げをされたようでありますが、これについての経緯あるいは価格その他、ひとつお知らせをいただきます。
  265. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 青函連絡船の津軽丸は、昭和三十九年の三月に建造いたしまして、十八年間にわたって青函航路で就航してまいりましたが、最近全体としてお客、貨物の輸送量が減ってまいりましたので、青函連絡船の船を減らすということが一つと、このように大変津軽丸自体は古い船になったということで、昨年の三月に廃船をいたしまして、売却をすることにいたしたわけでございます。  結果として昨年の十二月二十四日、これまで何回も入札を繰り返しましたが応札者が予定価格に達しないということで売却が実現しなかったわけでございますが、昨年の十二月二十四日、東京都在住の大久保さんという方が出されました札が予定価格を上回りまして、その方が落札をされまして、本年の一月十四日に所有権の移転登記を大久保さんにいたしたわけでございます。  売却の価格は八千三百五十八万五千円でございました。従来、三回目までの入札におきましてはもう少し高い価格で売却をしたいということで予定価格をつくっておりましたけれども、何回公開入札をしましても落札に至りませんので、若干調整をいたしまして、四回目、五回目というときには同じ価格で予定価格をつくったわけでございますが、その結果いまの金額で落札をしたという経緯でございます。
  266. 井上計

    井上計君 当初予定価格は幾らですか。
  267. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 予定価格は、実はこれ、規則の上で、落札後においても明らかにしないたてまえになっておりますので申し上げにくいんですが、大体これよりは一千万円余り高かっただろうかと思っております。
  268. 井上計

    井上計君 かなり安い、実はスクラップに近い価格だというふうなことを聞いていますけれども、そうじゃないんですか。
  269. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) この使わなくなりましたものの価格の立て方は非常に技術的にむずかしいわけでございまして、私どものルールでは部外精通者に鑑定をお願いをいたして価格を決めたわけでございます。本件につきましては、社団法人日本海事検定協会の北海道支部に鑑定を依頼いたしまして、予定価格の算定の基礎といたしました。  なお、スクラップ価格にすれば幾らかということはなかなかむずかしいわけでございますが、この八千万円よりは、スクラップ価格という見地からだけで考えれば、もう少し低い水準になるというふうに報告を受けております。
  270. 井上計

    井上計君 五千三百十九トンの青函連絡船、昭和三十九年就航ですからまだまだ使える船でありますが、これが八千万幾らというのは大変安いな、スクラップ価格に近いなという、まあそのようなことを聞きます。  ところが、その船が、新聞報道ではありますけれども、北朝鮮に売却をされるというふうなことのようにも聞いておりますが、これについて通産省、運輸省御承知であればお聞かせをいただきます。
  271. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答え申し上げます。  ただいま高木総裁からお話がございましたように、青函連絡船に使っておりました津軽丸が払い下げられたわけでございますけれども、その津軽丸につきまして私どもの方に三月四日付で輸出承認申請が行われておりまして、現在審査中でございます。
  272. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) お答え申し上げます。  日本人または日本法人がその所有する船舶を外国人に譲渡いたします場合は、海上運送法第四十四条の二という条項に基づきまして、運輸大臣の許可を受けることになっております。運輸大臣はその場合に、「その許可によって船腹の供給が需要に対し著しく不足にならず、且つ、海運の振興に著しく支障を及ぼすことにならない限り、これを許可しなければならない。」ということになっておりまして、それに基づきまして先月の、二月の二十三日にこれを許可いたしております。
  273. 井上計

    井上計君 防衛庁に伺います。  実はこの青函連絡船は軍事用に転用ができると、こういうふうなことも聞いておりますけれども防衛庁はどのような見解をお持ちでしょうか。
  274. 志賀学

    政府委員(志賀学君) とりあえず私どもの承知していることをお答え申し上げますと、現在私どもが承知しているところでは、津軽丸は函館ドックで塗装、点検中であるというふうに聞いております。私どもが承知している限りでは、単純な塗装、点検ということでございまして、本来の津軽丸の持っている貨客船と申しましょうか、そういう性格を変えるものでないというふうに承知しております。
  275. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) そういうことを聞いたこともございませんし、考えたこともございません。
  276. 井上計

    井上計君 恐らく私は軍用に転用ではなかろうと思います。ただ、兵員輸送用にはそのまま使えるそうであります。したがいまして、これが兵員輸送用に使うということになりました場合に、今後この輸出については問題が後を引くのではなかろうかと思います。逆にまた、これが認められるのなら、現在禁止されているものについてかなり輸出が認められるものが今後ともできてくるであろうと、こういうふうな理解をしておきます。時間がありませんので、このことについてはこれで終わります。  時間が大変なくなりましたので急いで参りたいと思いますが、実用通信衛星につきまして、先般衆議院予算委員会でわが党の塚本書記長がお尋ねをいたしました。そのときに、これは硫黄島につきましては自衛隊が使う、すなわち平和利用でないと、こういうふうな大変情けない、誤った御答弁があったやに聞いておりますけれども、これらのことにつきましてはどのように話がその後進んでおりますか。まず科学技術庁長官、お伺いをいたします。次いで郵政大臣にもお伺いをいたします。
  277. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) いま井上先生御指摘のとおり、塚本書記長さんから御指摘がございました。そこで、それに対し総理は検討するという御回答をなされました。これを受けましてわれわれは早速対応をいたしました。目下各省庁間で進行中のときに、またいま井上先生から御指摘をいただいたわけであります。非常に恐縮をいたしております。  そこで、井上先生のいま御指摘のこれを十分に念頭に置いて各省庁間で検討をいたしますから御了解願いたいと思います。
  278. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) ただいま科学技術庁長官からの答弁がございましたように、政府内部で見解の統一を図るため検討を続けておるところでございます。検討結果を待ちまして郵政省としても対処をいたしたいというふうに考えております。
  279. 井上計

    井上計君 科学技術庁長官から大変前向きの御回答をいただきましてやや安心をいたしました。硫黄島にいる人たちが待ち望んでおりますので、ぜひともひとつ総理の先般の御答弁を体していただきましていい結果を早く出していただきますように要望をしておきます。  私、実は中小企業問題等につきましてきょう多く質問をするつもりで予定いたしておりましたが、他の問題で時間が経過してなくなりました。  そこで、一括してお尋ねをいたしたいと思いますけれども、まず中小企業が大変いま倒産激増、不況の中で困っております。総理大臣は第一次オイルショックの前後でありましたが、通産大臣として中小企業を所管をしておられました。当時私は全国中小企業団体中央会の大会で、総理大臣の中小企業に対する愛情といいますか、中小企業を大事にしなければ日本はよくならぬと、こういうふうな御発言を聞いて大変うれしく感じた記憶があります。現在でもそのようにお感じになっておると思いますが、事実、中小企業に従事をし、中小企業によって生活をしておる人は家族を入れますと総人口の約六五%近く、七千万人程度がいるわけでありますから、中小企業がますます悪くなれば日本の産業界、日本の経済界、さらに日本の社会福祉は実は低下をしていくという私は認識を、理解をしております。  そこで、景気回復のためにいろんなことについてのお尋ねを、経企庁長官、通産大臣、大蔵大臣にしたいと思いましたが、また次回に譲ります。  そこで、投資減税の問題、それから承継税制といわれておりますが。
  280. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 井上君、時間が参りました。
  281. 井上計

    井上計君 五十八年度確かに約束どおりしていただきましたけれども、承継税制とは言えません、あれは。ただ、相続税の一部を若干手直し。しかも一部は局長通達による手直しというふうなことでありますから、これはとてもそういうことは言えません。  それから、塩崎経企庁長官は、すでに独禁法はいまの景気回復のために必要ないというような御発言をされたと聞いておりますけれども、私はせっかく公正取引委員長お見えいただいておりますのに恐縮でありましたが、独禁法をいま見直す時期に来ておると考えます。昭和二十二、三年ごろ物の欠乏したときにつくられた法律が、あり余って過剰で困っておる、過剰のために過当競争がある時代にそのままの運用ではいかがであろうか。経企庁長官は公取委員会は中小企業をいじめておるというふうな思い切った発言をされておりますが、これらについてもお考えをいただきたいとこう思います。  それから、機械の設備の耐用年数の短縮であります。アメリカ、イギリス、ドイツ等と比べまして日本の耐用年数非常に高くなっております。ぜひこれについても大蔵省、通産省同時にお考えをいただきまして、これからもひとつ大いに中小企業の育成、発展のためにぜひ御協力をいただきたいとこう思います。  以上をもって質問を終わります。(拍手)
  282. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で井上計君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  283. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、木村睦男君の総括質疑を行います。木村君。
  284. 木村睦男

    ○木村睦男君 まず総理にお伺いしたいと思いますが、終戦直後に吉田内閣ができましてから四十年近くわが党内閣で戦後の日本政治の責任を負ってまいりました。  若干振り返ってみますというと、二十六年にサンフランシスコ条約の調印並びに日米安保条約がそこで締結をされました。サンフランシスコ条約につきましても、全面講和かどうかということで非常な議論沸騰した中で、吉田総理が踏み切って全面講和でなしに単独講和をとられた。この英断から始まりまして、その後安保条約によりまして日本の平和は今日まで維持された。これにつきましても、当時は安保条約を締結すればあすの日でも日本は戦争に巻き込まれるというふうな一部野党の反対があり、国民の一部にもそういうふうな宣伝といいますか、そういう話に乗って非常に安保条約に対する反対運動があり、さらに岸内閣のときの再改定のときにはついに犠牲者まで出、また総理大臣みずからもけがをされたというふうな事態があったわけでございます。  その後日韓条約、これも当時非常に議論になりまして、強行採決といったようなかっこうで日韓条約も締結し、さらに待望でありました沖縄返還、これも核つきか核抜きかというふうなことで大変議論がございました。続いて小笠原の返還、さらには日中の国交正常化、こういう大きな事柄が、歴史に残る事柄がたくさんあったわけでございます。  それらの事態それぞれについて考えてみますというと、あるときには野党の大変な反対、反撃を受け、あるときには協力を得て、そして日本の政治を今日までこうして責任をとってまいり、その間、経済的にはオイルショックもありました。あるいは高度経済成長もありました。そういう経過を経まして今日日本の繁栄というものは、経済力というものは先進国の第一等の地位を占めるに至った。こういう陰には、やはり良い間の経済の負担のために多くの借金をした。百兆円に及ぶ借金を抱えて、いまそのツケをどうやって返したらよろしいかというふうなことで行政改革もやり、財政再建にも苦慮いたしておる、そういうことでございますが、ともかくこうした難局の中で、総理はわが党の単独内閣としては第十二代目の総理に就任されたわけでございます。  さらに、二十一世紀に向かって日本がどういうふうに発展していき、展開していくかということでございますが、まあわが党が依然として日本の政治の責任を引き受けなければならないだろうということがわれわれの見方であり、また決意でもあるわけでございますが、そういう二十一世紀を迎えて、この非常にむずかしい事態の中で、総理日本丸の船長としてどういうふうに、日本をどの方向に持っていくかということについて、ざっくばらんな御意見、信念をひとつ聞かしていただきたいと思います。臨時国会あるいは本国会の予算委員会においてもこういう問題についていろいろ質問に答えておられますけれども、総括をする意味におきまして、総理の心境、信念、政治の取り組み方、日本をどういう方向に持っていくかということについて御所見を承りたいと思います。
  285. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま木村先生御指摘のように、戦後三十数年の間には幾多の歴史的変遷がございました。私はしかし、今日の世界情勢や日本の国内情勢等考えてみた場合に、明らかに歴史的転換点に立っていると自覚をしております。七〇年代におきまして不確実性の時代とか、あるいは歴史の曲がり角に来ているとかよく言われましたけれども、ある意味においてはもう曲がってきている、もう転換点、カーブを切ってきている。そういう段階に入ってきて、不確実性という霧は次第に消えてきて、問題点がここへはっきり出てきた。不確実性と言われた時代あるいは不透明と言われた時代は、何が問題で出てくるかわからないという時代であったと思うんです。いまや問題点はわりあいはっきり国内、国際、ともに出てきた、そういうように思います。    〔委員長退席、理事長谷川信君着席〕 そういう意味におきまして明らかに転換期に差しかかっており、かつまたそういう意味において過去の日本の政治の総決算期に当たってきておるというふうにも心構えとしては考えられるのであります。  一言で申し上げますならば、国際的にはいままで日本はさまざまな努力をしてまいりましたが、最近の情勢から見ると、ややもすれば世界的に孤立する危険性が出てきた。経済的に非常に強大な国に成長したがゆえに、片方においてはこれを危惧する声も出てきたし、またこれを羨望する声も世界的にも出てきておる。こういうような国際環境の中でどうしてこれを調和し、調整して、日本をさらに新しい発展時代に国際的に迎えていくかという大事な局面に差しかかっていると思っております。そういう意味で、私は世界に開かれた日本ということでいきましょうと皆さんにお訴え申し上げたわけです。  国内的にはまたいろいろな経験をしてまいりましたが、戦後、国民の皆さんが戦前と比べてみて非常に明らかにりっぱないい時代が来たと謳歌しておりまして、さらに大きな経済成長を踏まえまして、終戦直後仰望した文化の時代とかあるいは福祉国家という理念が現実に手の届くところへ来て、しかもそれをある程度実践して、そのような国になりつつある。そういう、終戦直後われわれがすきっ腹を抱えて仰望して、むなしく言っていた言葉が、いま現実のものになってきたと言えます。しかし、その結果がどういうことであるかと言えば、ややもすればわれわれの本来の理想でないような感じのものも出てきた。いわゆるばらまき福祉ということもありましょうし、あるいは自由というところからは少年の非行や学校教育の問題がかなりこういうふうに出てきておりますし、国内経済においても停滞の時代に入ってきているということでございます。そういう意味において、国内的にも転換点に来ておるし、新しい二十一世紀に向かって、ここで方向をある程度決めて、国民皆さんで力を合わせていくコンセンサスをつくる時代になった。たまたまそれが行政改革の時代になり、財政改革の時代と符合してきている、こういうことであると思うのであります。  中曽根内閣は、たまたまそういう歴史的転換期に成立いたしまして、その仕事を背負わされている宿命を持ってきていると思うのであります。したがいまして、国際的な問題については、経済的摩擦について最大限の努力をして世界に窓を開くようにし、調和ある日本にしようと思い、安全保障面におきましても、一番大事なパートナーであるアメリカとの間を調整して、これまた摩擦を防ぐ努力を行う、そういうことも実はやったと思っておるのでございます。しかし、吉田さんが安保条約あるいは平和条約をやりましたときに、安保をやったら戦争になると言われましたが、今日私たちがこの安保条約を効率化しよう、いざというときには最大限に有効に発揮できるようにわれわれ自体もまた努力すべきところは努力しておこうと、こういうわれわれの善意が国民の皆さんに十分必ずしもそのとおり受け取られないで、かつての吉田さんのときと同じように、安保をやったら戦争になるというような一部の宣伝に乗ぜられているというところもある。われわれの努力不足をうらむのであります。しかし、われわれがやっていることは正しいことであり、この道を通じて日本の安全と平和は確保される、こう確信してやっておるところでございます。また、行政改革にいたしましても、また財政改革にいたしましても、いよいよ本番の段階に入りまして、国民の皆様方の合意を求めて、そして全力をふるってこの歴史的責任を果たしてまいりたい、こう考えておるところであります。  まことに非力でございますけれども、誠心誠意、自分の力のあらん限りを尽くして努力してみたいと思いますので、よろしく御指導をお願い申し上げる次第でございます。
  286. 木村睦男

    ○木村睦男君 国際的に一つの曲がり角に来ておる、確かにそうでございます。特に国際的には、世界の平和、これが一番大きな問題であることはもう言うまでもございません。それは、ひいては安保体制をどうしていくか、あるいは、ここまで経済大国になった日本がどの程度アメリカに協力しながら連帯感を強めて世界の平和を保っていくかというところにあると思います。  総理昭和四十五年に第三次佐藤内閣で防衛庁長官になられまして、いま非常にわかりやすい専守防衛というのは、たしか総理が当時つくられた言葉だと思いますが、その専守防衛という考え方が、最近総理防衛についていろいろアメリカに行き、あるいは韓国で発言されたことが誤って解されまして、いまの総理は専守防衛じゃなくて、攻撃的に移りつつあるんではないかというふうな批判があり、この問題について、当委員会等の野党の議員の質問等を聞いておりましても、そういう点を非常に強く主張をされ、また総理答弁を求められておるわけでございますが、たびたびそういう問題についても答弁されておりますけれども、当時からの専守防衛という総理の信念は確として変わらないということをひとつはっきりと承っておきたいと思います。
  287. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁長官のときに、専守防衛ということを申し上げました。これは一貫していまも変わっておりません。日本防衛は、いまの憲法のもとに専守防衛の姿勢をもって、そして非核三原則を守り、軍事大国にならない、そういう基本原則を守っていくべきものであると、またその道を歩んでおるものなのでございます。  ただ、最近の情勢を見まして、先ほど北方領土の問題で井上さんの御発言がございましたが、時代がたってきますと、北方領土をソ連が不法占拠しているということは忘れがちになってきているという御指摘がございました。それとやや似たようなことで、だんだん時代がたってまいりますと、日本防衛は自分でやらなくても何とかなるんじゃないかと、そういうような間違った誤解が生まれつつあるような気もいたします。安保条約というものがございまして、それが目に見えないところで偉大な力を発揮しているということも忘れがちになってきていると思うのです。歴史の現実というものは冷厳なものでありまして、そういう大事なところを忘れると必ずしっぺ返しを受けるものだとわれわれは思っております。  そういう点におきましても、歴史の公理であると、あたりまえの原則であると言われる、自分の国は自分で守るということ、それから、日本憲法のもとにそれをいかに有効にしていくかということになると、自分の国は自分で守ると、憲法のもとにそれを実行すると、しかし足りないところはこれは友好国と提携して守ると、それはアメリカであるとわれわれは選択いたしまして、そして日米安保条約を結んだと、そうしていざというときには自分で自分の国を守りつつ、足らざるところはアメリカの力を協力として受ける、その中には戦争を起こさないという大事な目的があるわけであります。そういう覚悟とそういう体系ができておれば、手をかけることはないであろう、むだなことはしないであろう、そういう意味において戦争を防止していると、この目に見えない大きな苦労と実績というものを国民の皆様方によく知っていただく必要はあると思うのであります。そういうような仕組みをもっていまの平和が維持されているということを国民の皆様に知っていただくと同時に、自分の国は自分で守るという原則と、それから、いざというときにはアメリカが一〇〇%日本を守るということを実際まじめに実行してもらうということと、その二つがしっかりしているときにおいて初めて日本の侵略は防げるし、外国は日本に手をかけるようなことはやらなくなる、そういうことで存立しておるわけなのでございます。  私はそういう意味において、それがぼやけてきたと、最近。だから、アメリカ側においても、果たして日本は自分で自分の国を守るのかと、そういう面からアメリカ議会においても上院が満場一致で日本防衛について決議をする、これは余分なことです、われわれ日本から見たら。人によってはこれは内政干渉だという御発言もございました。しかし、いろいろないままでの経緯があって、アメリカ議会がそういう決議をしてきたという背景をよく考えなければいけない。アメリカ議会というものは、アメリカ国民の代表であります。そういう意味において、この国際関係を重視し、日本の安全を確保していく上について非常に重要な機能を果たしている安保条約に曇りが出てきてはいかぬと、それにはまずみずから自分の国を守るということをはっきり鮮明にして、その上に立って、アメリカと提携しているこの安保条約を最大限に、いざというときには効果を発揮するようにいつも機能を新しく、強くするように、この関係を維持していくということが政治家の責任であると考えておるわけです。そのやり方が日本にとっては一番安上がりの、国民に税金その他で迷惑をかけない一番安上がりの、しかも安全確保ができる方法である。これは過去二十数年、安保条約を維持してきた実績でわかっておることであり、これだけの経済繁栄と社会福祉が進んだ背景にこれがあるということも国民の皆さんはわかっていただけると思うのであります。  そういう実績の上に、その延長線でこれをさらに有効に機能させていこうというのが私の考えている政策でございますので、人の国を攻撃しようとか、新しくいままでの道を変えようとかというものでは絶対ございません。その点はよく御理解をいただきたいと思っておるのでございます。
  288. 木村睦男

    ○木村睦男君 いま総理の言われましたことは、自由民主党としてもそのとおりの考え方に立っておるわけでございます。  ところで、一番いま当委員会等で問題になっておりますのは、このゼロシーリングに近い五十八年度予算の中で、ただ一つ防衛費だけが六・五%、突出しておるんだということが盛んに言われております。八日の日のNHKのニュース解説でございましたか、この問題を解説をして図示しておりましたが、五十八年度の予算、一般予算、こうありまして、ただ一つそれから突出しておるのが六・五%の防衛費だと、こういうことを言っておりましたが、実はほかにも防衛賛同等以上に突出をしておる予算があるはずでございますが、故意か偶然か、そういうことを一般国民に知ってもらいたい事柄が正確に伝えられていないという残念なことでございますが、この点、主計局長に伺いますけれども、同じような突出をしておる予算がどの程度含まれておるか、御説明を願いたいと思います。
  289. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 伸び率で申し上げまして、一番高い伸び率を示しましたのが経済協力費でございます、七・〇。それから、防衛関係費が六・五、エネルギー対策費が六・一と、こういうふうになっております。
  290. 木村睦男

    ○木村睦男君 さらに、前年度予算に比べますと六・五%、なるほどそれだけ見れば非常に突出しておるようでございますが、これは対前年度の比較でございまして、一体日本防衛費がどの程度多いのか少ないのかということは、やはり自由先進諸国あるいは社会福祉のかなり進んでおる国等と比較してみなければいけないと思います。そういう意味で伺いたいのですが、たとえば国民一人当たりの防衛費が一体そういう国ではどうなっておるか。あるいはGNPに対しては、いま日本では一%超すか超さないかで大変議論されておりますが、それらの国はどうなっておるか。またその年の総予算の中で、わが国のは五・数%でございますが、それらの国ではどうなっておるか、参考のために、これはどこですか、防衛庁、教えていただきたいと思うんです。
  291. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  防衛費あるいは国防費の国際比較を行います場合に、一般的には御指摘国民総生産とか、あるいは国家予算に対します防衛費の比率というものによりまして国際比較がよく行われるわけでございます。こういった国際比較の資料といたしましては、通常イギリスの国際戦略研究所で出しております「ミリタリー・バランス」というものが使われておるわけでございまして、この最新の資料でございます一九八二年―八三年版、これによりまして一九八一年度の主要国の状況を申し上げてみますと、まず、国民総生産に対します国防費の割合、いわゆる対GNP比でございますが、これは毎年度の国民総生産の中で国の防衛のためにどれぐらいの割合の資源を配分しているかということを示す指数でございまして、その資料によりますとアメリカが六・一%、西ドイツが四・三%、イギリスが五・四%、フランスが四・一%ということでございまして、欧米の主要国が四ないし六%程度の資源配分を行っておるという状況でございます。これに対しまして日本は、その一九八一年度で見ますと〇・九%という水準になっておるわけでございます。  それから次に、国家予算の中に占めます国防費の割合、シェアでございますけれども、これも同じ資料の一九八一年度の数字で申し上げますと、アメリカが二五・三%、西ドイツが二八・二%、イギリスが一二・一%、フランスが二〇・七%ということになっておるのに対しまして、日本の場合は五・一%ということになっておるわけでございます。  それからなお、御指摘のございました国民一人当たりの国防費ということでございますが、これも出所はただいまのイギリスの国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス」でございますけれども、一九八一年度の数字で比較して申し上げますと、これは便宜上、円に換算をいたして申し上げますが、日本が一人当たり約二万円というのに対しまして、アメリカは十八万円ということで九倍のレベルにございますし、西ドイツは十一万円、イギリスが十万円、フランスが十万円ということで、これら三国は日本の約五倍というような水準になっておるということを御報告申し上げたいと思います。
  292. 木村睦男

    ○木村睦男君 いま説明がありましたように、日本防衛費というものはやはり先進諸国に比べると全く、はっきり言うと問題にならぬほど少ない。しかし、国民の皆さんはそういう方面のことは余り御存じない。  せんだって朝日新聞がこういう問題で世論調査をいたしました。それを見ますというと、防衛費が対前年六・五%、大変ふえておるが、これはいいと思うかどうかというアンケートをとっておりまして、その回答で、防衛費が多過ぎるという回答をしたのがたしか六五、六%だったと思います。いま説明がありましたように、同じ経済力あるいは日本よりいま劣っておる経済状態の国ですら、GNPにおいてもあるいは予算に対するシェアの問題でも、あるいは国民一人当たりの国防費、そういういずれを見ましても日本の四倍、五倍ということなんです。ですから、こういうことを政府もひとつ大いに宣伝をして、そうして国民に、現在の予算からはなるほど対前年から見ると突出しておるけれども、こういう状況ですよということをもっとPRすべきじゃないかと思うんです。  大体こういうアンケートをとる場合には、そういう予備知識を一応与えておいてとらなければ、そんなこと教えないで、ただ昨年に比べてこれだけふえたからどうかと言えば、だれだってそれは多過ぎるなと言うのはあたりまえ。そうすると、国民一般はなるほどそうかなと、こう思って、なかなか正しいことを理解してもらえない。しかもこの調査あたりを見ますというと、わずか三千人足らずの人を対象にして調べてそういうパーセントが出た。それをわが社の調査によればというのならまだいいのですが、その結果をもって国民はとくる。国民は六五%が防衛費が多過ぎると、こういう意見だと、こういうふうな記事にどうしてもなってきますから、その点でひとつPRを担当しておらるる、これは総務長官ですか、こういう問題についてひとつどういうふうに今後していくか御意見を承りたいと思います。
  293. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 政府広報、特に防衛関係につきましては、総理府にもございまするし、それから防衛庁も国防白書を発行するなどして、わが方にも予算はいただいてございます。今後御指摘のことにつきまして、総理府とも十分連絡をとりながらいたしますが、私は防衛庁長官といたしまして国の安全を確保しなきゃならないのだ。こういう役目を持っておりますが、どうしても私どもといたしましては、現在私どもがやっております努力は、これはあくまで抑止のために使う問題でございます。そういう意味で、西側諸国の、特に最近のこれだけむずかしい各国財政事情の中で、それぞれの国がそれぞれの問題を抱えながら、それぞれ独立を確保するためにお互いに努力し合ってきておるのでございまして、わが国としても、国際社会の一員としてわが国の独立を確保するためには、国民の皆様方の御理解と御支援をさらに一層いただきながら、防衛力整備については、そのときどきの財政事情、経済事情、国の施策、こういったものを国民の皆様方に御理解いただくように努力を続けたいと存じます。
  294. 木村睦男

    ○木村睦男君 政府も広報宣伝費を相当持っておるわけですから、しかもいろいろの点で世論調査的なものをやっておらるるはずでございます。どうぞこういう問題については、そういう全体のことを調査の対象になる人に教えた上で、公平な判断ができるような状況において調査をやるということを政府においてもひとつ今後心がけていただきたいと注文をつけておきます。  次に、防衛費の突出問題等に関連いたしまして、よく予算委員会あるいは本会議等で軍事国家あるいは軍事大国ということがいろいろと議論になっておるわけでございます。ことに憲法改正論議の際には必ずこの議論が出る。私はいまの憲法は見直すべきであるという立場に立っておりますが、そういうことを言えば、憲法改正即軍事国家だ、あるいは日本を軍事大国に持っていくのだという議論が出ます。また、しばしば総理に対する質疑の中でも軍事国家、軍事大国という言葉がやりとりあるわけでございますが、私じっと聞いておりますと、軍事国家とか軍事大国とかというものの解釈が、それぞれ勝手に自分なりの解釈をして、その物差しで質問をする。答える政府の方は政府の方として、政府の考え方に立った軍事国家という観念で答弁をされる。しかし両方の軍事国家なるものの考え方は必ずしも同じ考え方ではない。そこらにいろいろ問題があるわけでございます。私は軍事国家あるいは軍国主義、こういう言葉、いまの日本憲法なり、あるいは常識から考えましていろんなカテゴリーがあると思うわけでございますが、念のために私の考えたことを申し上げますと、一番、何といいますか、小さいところからいきますというと、いまの憲法では一応第九条で戦力を持つことを禁止してありますので、いやしくも国の独立、安全のために多少でも軍備を持てばこれは軍事国家だということに一応なる。これは社会党は非武装を唱えておりますから、社会党の立場から言うと、軍備のために百円投じてもこれは憲法違反であると同時に軍事国家だということが言えるかもしれません。それからその次は、国の予算に比較して、その中に占める防衛費がどのくらいかということで、その国の経済力、財力、そういったものに比較していわば常識以上に防衛費が多いという場合に、軍事国家あるいは軍国国家という観念になるかもしれません。またさらには、防衛費をもって備えるところの兵器というものがきわめて攻撃的な積極的な兵器を装備するという段階になると、これはまさしく軍国主義であり、軍事大国である、こういうふうになるかもしれません。さらに、積極的に他国を侵略し攻撃をするという意図で軍備を持てば、これはもう紛れもなく軍事大国であり、軍国主義であると、こういうふうになるわけでこざいますが、総理にお伺いしたいのですが、一体総理が軍事国家である、あるいは軍事国家ではないんだとおっしゃっておられる限界はどういうところをもっておっしゃっておられるか、ひとつはっきりさしておいてもらいたいと思うんです。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは国の性質によりまして一概に客観的に言うことは非常にむずかしいと思うんです。たとえばスーパーパワーと言われているソ連あるいはアメリカ、特にソ連のような場合にはGNPの一四、五%ぐらい、ほとんど軍事費に使っているであろうと言われております。ところが、国民生活の方はどうであるかと言えば、かなり窮迫しているやに言われております。日本でも、ちょうど先生も御存じのように、太平洋戦争前の昭和十三、四年から十六年ぐらいの軍事費を見ますと、あれはGNPのやっぱり一五%ぐらいいっておったと。それを三、四年続けていたあの戦争前の日本というのはもう綿織物もなくなるとかずいぶん物資が欠乏してきて、そして総動員体制をつくるような情勢で、非常に窮乏が激しくなってまいってきておりました。そういうようなことをソ連の場合十年近くやったということになれば、国民生活は相当これは窮迫に入っているんではないかと予想されます。実態はどうであるかわかりませんが、最近のソ連から帰ってきた人の話を聞くと、経済的には非常に苦しい状態にあるやに聞かれておる。特に、その上に食糧は不作で、三年も続けて不作だということが伝えられておる。にもかかわらず、あれだけのICBMを持ち、あるいはSS20百基以上も展開しているという情勢を見ると、これはアンバランスの国ではないかと言われます。  じゃあ、一方アメリカはどうであるかと言えば、アメリカも相当な予算の中における赤字が出てきております。約千八百億ドルとか二千億ドルの赤字が出てきておると言われておる。そういう赤字の中にあれだけ大きな軍事力を持っているという面を見ると、これはまた軍事国家なのかなあと言われるでしょう。しかし、アメリカの人にしてみれば、それだけ苦しい中に平和を維持するためにやむを得ずやっておるんだ、相手があれだけ軍備を大きく持っている以上、平和を維持するために犠牲になってやっておるんだという、そういう意識でおやりになっていると思います。  そういうような面を見ますと、やっぱりどれが軍事国家であり、どれが平和国家であるというようなことはなかなか第三者、わきに見ている者は判定しにくいところがあると私は思います。しかし、事日本に関する限りは、これは世界じゅうから平和国家であると認められる資格があると思います。それはいまの憲法のもとにいまのような非常に節度のある、そして国力国情に応じた小型の防衛力によって、しかも性能のいいものを備えながら自衛を全うしていこうという努力をしている国、海外派兵は行わないとか、さまざまな主権に対する自己拘束を持っておる国、これは世界的にも認めておるところでございましょう。  しかし、それだけに今度は自分だけで完全に守り切れないというところがあるものですから、人の国の御厄介にならなきゃならぬ。安保条約を結んで今度はアメリカの御厄介にならなきゃならぬ。しかし、侵略されるよりはいいと。われわれは自由主義の理念を共通にして、そして経済的にも膨大な経済量で相互依存関係をやっておる、そういう国であって、そういう意味からもアメリカと提携することを国民は望んでいる。そういうことで自由民主党も安保条約を維持し、そしていままで国が繁栄してきているという実績を残しているわけでございます。しかし、攻撃する方は、じゃあおまえたちはアメリカのサーバントみたいじゃないかと共産党の方々はそういうふうに攻撃をされます。人によって、ですからみんな千差万別で考えは違うと思いますが、しかし日本国民の大多数の皆様方はこの道がいいと選択なすって、そしてわれわれを支持していただいてきて、それは成功していると思いますし、また国際的に見ても日本がそういう平和を愛好する平和国家であるということは、これはもう保証されていると思うのでございます。私はこの道はいい道であるとそう思っておりまして、この道を逸脱しないようにみんなで努力していきたいと思っておるところでございます。
  296. 木村睦男

    ○木村睦男君 いまいろいろ問題になっておりますのは、GNPの一%を超えるか超えないかということがずうっと最近議論になっております。    〔理事長谷川信君退席、委員長着席〕 野党の方は一%を超えそうだと、今後防衛力強化のために。これはもう軍事国家に行くんだと、いやそうじゃないんだということがずうっと繰り返されておりますが、一体その一%という目安はどうやってできたのか。あるいは、一%を多少でも仮に超したとすれば、それをもって軍事国家になるんだと軍国国家になるんだということになるのかどうか、その辺の考え方をこの問題について最後に総理からお聞きしたいと思います。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一%という数字に科学的根拠があったとは思いません。いままで何次防何次防ということで努力してまいりまして、私のときに四次防というのをやりましたが、それ以後は基盤防衛力という概念に変えまして、そして日本防衛を全うするためにその基盤をつくっておくと、そういう考えに立って三木内閣の当座、この当面一%を超えないようにする。たしかあのときに当面という言葉を使ったと思うんです。当面ということはさしあたりという意味であります。それは国民経済全般を見、GNPの成長度を見、その他全般を見て、また社会福祉その他とのバランスも見て当面一%を超えないように努力するという目標値をつくったと思うのですが、しかしそれは一%というものが科学的根拠があって決めたものであるとは思いません。しかし、それは政治の自己抑制、努力目標としてつくられてきておるので、私はその目標をつくり、その努力をしてきたことは正しかったと思いますし、われわれもそれを守っていきたいと、できるだけ最大限努力しつつ守っていきたいと、そう思っておるわけでございます。
  298. 木村睦男

    ○木村睦男君 いまいろいろと総理から御答弁がございましたが、われわれももとより同じような考え方に立っております。ただ、こういうことをもう少し政府としては国民にはっきりわかるようにひとつPRすることをぜひとも努力をしていただきたいことを要望しておきます。  次に、先ほどもいろいろ話が出ておりましたが、教育問題、学校暴力、そういった問題について私からも政府の考え方、対処の仕方を質問したいと思います。  いま全国の公立高校、中学、卒業式が行われつつありますが、新聞を見ますというと、この卒業式が非常に心配で、卒業式に対して警察にいろいろと警官の派遣等を要請をしておるということが出ておりますが、一体その昨年の卒業式にはどの程度警官の要請をし、今回は警官の要請をすでにしておる学校――中学に限定してもらっていいですが、どの程度あるか、そういうことをお聞きしたいと思います。
  299. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 先生いま御指摘の卒業式、特に中学校の卒業式に対してどれだけ要請があるかという数字につきまして、いま申しわけございませんが手元にございませんので後ほど御報告をしたいと思います。
  300. 木村睦男

    ○木村睦男君 この間、私が新聞で見たところによりますと、これは一例ですが、大阪府下では公立中学校四百二十三校の卒業式が行われる学校のうち約百校が地元警察に卒業式の警戒のため出動要請をしておるという記事が載っております。ですから大体四分の一ぐらいは要請をしておる。われわれ考えまして、卒業式の日に警察官に入ってもらわなければ卒業式ができないというふうなことは全く想像ができない。このように現在の学校の中の秩序は乱れてき、また社会一般の空気も非常に悪くなっておるんだということにあきれるわけでございます。  そこで、最近いろいろと悲しむべき少年の非行問題が出ております。浮浪者をいじめて死に至らしめる、あるいは生徒の暴力を恐れて先生が生徒にけがをさすとか、いろんなことが出ております。そういうことの対策として最近文部省ではこういった問題に関する懇談会を開催していろいろ専門家の意見を聞かれたということですが、この懇談会で出た意見等参考になることがあればひとつ教えてもらいたいと思います。
  301. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) お話の懇談会と申しますのは「最近の学校における問題行動に関する懇談会」でございまして、ただいま先生御指摘の横浜市の中学生によります浮浪者殺傷事件、町田市の中学校におきます先生が生徒を刺傷するというふうな事件等にかんがみまして、急遽学識経験者十六名ほど集まっていただきましていろいろと多面的な角度から御議論をいただいたわけでございますが、その過程におきましてはいろいろな議論がございましたけれども、三回ほどやりまして去る三月八日に提言という形で意見をまとめていただいたわけでございます。  その提言の内容は、一つは学校につきましては特に教師の生徒指導に当たる体制と申しますか、一致協力の体制が必要である、そのために学校の努力すべき観点を示してチェックすべきであるというふうな御意見が出たわけでございます。  それから問題行動、問題を抱える学校に対しましては、重点的に教育委員会が指導助言すべきである、なるべく早く問題が起こったら、すぐに重点的に指導的な面と管理的な面とを含めまして、総合的な重点的な指導をする必要がある、これが第二点でございます。  それから問題行動を起こす子供に対する指導、これは言うまでもございませんが、個々の子供に対しては丁寧に一人一人指導をする必要があるけれども、全力を尽くして、しかもなお学校における教育が十分できない、他の子供の教育に影響があるというふうな場合には、法に定める出席停止等の措置がございますから、そういうようなものを活用するようなことも考えたらどうかというふうな指摘が第三でございます。  それから第四は、学校はともすれば閉鎖的な傾向がございまして問題の解決をおくらせるということがあるわけでございますけれども、このような校内暴力等に対しましてはできるだけ早く関係の機関と連絡をとりまして早期に対応するということが必要である、これが第四でございます。  そのほか長期的な問題といたしましては、これは学校の学習指導の問題でございますけれども、わかりやすい授業を展開する必要がある、そのために現在の教育ではいろいろと準備を整えまして、子供が努力をしないでもやれるような授業のシステムが行われているけれども、そうではなくて、苦しんで学習させる、解決に努力をして、努力をした後の喜びが得られるような、そういういわば疲れさせる学習のようなものを考えたらどうかとか、あるいは中学校になりますとかなり能力、適性に差が出てまいりまして、それにふさわしいような学習指導と申しますか、あるいは興味とか関心に沿いましたクラブ活動とか、そういうふうなものを、多様な学習指導の方法をとる必要があるのではなかろうかというのが長期的に取り組むべき事項の第一点でございます。  それから、やはりその問題行動を起こす子供に対しましては、善悪のけじめでございますとか日常の生活習慣、あいさつでございますとか、いろんな基本的な生活態度がまだできていないような者が非常に多い、そういう点から学校におきましても学校教育活動全体を通じましてそのような基本的な習慣なり生活様式を身につけさせるための指導を強化する、特に道徳教育というのが、これは昭和三十三年に一週一時間の特設の時間がございましてそのような機会があるわけでございますけれども、現在行われている道徳教育の実態が必ずしも十分に成果を上げていないんではなかろうかと、そういう点から道徳教育の充実を図る必要がある、これが第二点でございます。  それから第三点が教師の資質向上でございますが、これは一般に教師の資質向上が言われておりますけれども、当面このような非行あるいは校内暴力等に対応するために教員養成課程におきますところのカリキュラムの中に教育相談でございますとか、あるいはカウンセリングとか、そういう専門的なカリキュラムを組み込む必要がある、現職教育におきましても教育相談なり非行対策とか、そういうものを具体的に指導する必要があるというふうなことが指摘をされているわけでございます。  それから第四点が高校入試のあり方につきまして、やはり現在の高校入試の傾向を見ますと、進路を選ぶ場合の子供自身あるいは父兄の考え方が必ずしも子供の能力、適性に合ったものになっていない。そういう観点の進路指導でございますとか、あるいは偏差値による進路の指導の仕方、そのようなものにつきまして全体として高校入試については十分な検討をして適切な改善を図る必要があるというふうなことでございます。  そのほか家庭に関しましても、社会に関しましても、マスメディアに関しましてもいろいろと貴重な提言がなされているところでございます。
  302. 木村睦男

    ○木村睦男君 私もいまの提言を見ましたけれども、私の感じから言いますと、そういう事件が起こった善後の措置をどうするかというふうなことが主になっていまして、こういうものの起こった原因はどこにあるかというところを深く突っ込んだ提言がないのを非常に残念に思ったわけでございます。  生徒の側においても教師の側においても、もっと精神的な面で改善あるいは改良、指導、そういう必要があるのじゃないか、そういう点をもう少し突っ込んでこういう懇談会あたりでやってもらわないと、いたずらに善後措置等ばかりが表に出るようでは私は改善は望まれぬのじゃないか、こう思います。  ことに教師の質でございますが、これは先ほど井上議員からもいろいろございましたが、こういうことがあるのですね、一月の二十七日の週刊新潮に、公立学校の偏行教育の現場というのでいろんな編集をしておりますが、その中で、随筆家の江國滋という人ですか、この娘さんがかつて小学校の上級生だったころの体験談を娘さんから聞いて、書いております。それにはこういうことがあるんですね。非常に露骨な思想教育に関する言葉が多いんだと。「たとえば、選挙の前になると、子供たちに向って、〝まだ自民党に投票するバカがいる。だから政治家がつけ上って、総理大臣なんかが悪いことをして大儲けする。家に帰ったら、お父さんお母さんに、そんなバカな投票をしないよう伝えなさい〟」、こういうことを言っておる。それから、「〝先生も明日はストに行く。ストっていうのは働く者の権利なんだから、みんなも自分で働くようになったら、うんとストをやりなさい〟」、ほかにいろいろありますが、こういうふうなことを生徒に教室で教えておる。先ほどの井上議員の話じゃございませんが、こういうことが改まらないとやはり教育はよくならぬ、かように思うわけでございますが、こういう問題について、どういうふうに今後文部省としては対処されるか。先ほどもありましたが、いまもう一度文部大臣から御所見を承りたいと思います。
  303. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 木村さんからいろいろ御指摘を受けておりますが、私もふつつかながらいまの状態はきわめて憂うべき状態である、かような認識を持って、いろいろなことを進めようと考えておるわけでございます。先ほど局長から御説明申し上げましたものは、まさにいまおっしゃるように善後策と申しますか、当面のさしあたり緊急に進められ得るもの、こういう観点からのことを相談をしてもらったわけでございまして、いまの状態を根本的に改めるということはきわめてむずかしい、時間のかかることだと、かように考えておるわけでございます。    〔委員長退席、嶋崎均君着席〕  そこで私は、こういう事態を見まして、先般でございますが、こういう懇談会をやる前に、専門家の集団でありますから文部省のそれぞれの担当の人に集まってもらって、私は素人でございますけれども、こういう点をぜひ早急に検討を始めてくれ、こういう指摘をしております。御参考までに、もしお知恵がありましたらかりるために申し上げておきます。  まず第一番目に校内暴力。校内暴力といいましても、いわゆる校内暴力、青少年の暴力問題は、児童間の暴力の問題がある。それから教師に対する暴力、あるいは外に対する暴力、こういうふうに分析をされている。これの発生の歴史、歴史といいますとやや大げさでございますが、過去わかる範囲の歴史、どういう経過をずっと今日まで傾向がたどってきておるかということ。  第二は、それの統計があったらぜひよく詳細に調べてもらいたい。  第三は、戦前にどういう事情であったか。戦前というのは、これは戦争前といいますと昭和初年ごろになりますから、日本の場合は。いわゆる終戦前後、終戦を起点にして、終戦前のそういう学校の生徒の暴力その他の問題がどういうふうになっておったか。それからもしいわゆる終戦前と後が非常に違いがあれば、その相違の原因を分析すること。  それから第五は、非行の原因、これもいろいろありますけれども、まずその当人、子供の素質がどういうことでそういうふうな非行の方に走ったか。それから家庭、どういう家庭、どういう状況からそういう非行に走る子供ができたか。もう一つは、いまお話がありましたけれども、教師の面においてどういう点が指摘されるか、それを分析すること。もう一つは、大きく言いまして、いわゆる現代の社会環境、これが大きく影響しておると思います。そういうものの原因の分析、調査、検討。  それから第六といたしまして、いままでももちろんこういう事態がなかったわけじゃありません、こういう極端なものは最近の状況でございますけれども、過去においても文部省はいろいろなことを対策を講じております。いろいろなことを講じておりますが、そこで、過去における対策とその効果の分析。  それから七として、こういう状況をずっと分析しまして、第七として、どういう対策を講ずるか。これには、いまの当面のやるべきこと、いろいろあると思いますが、それを、一応私が挙げましたのは、制度的な問題があるんじゃないか。これは非常に大問題で簡単なものじゃありませんけれども、こういうことを言うと文部省の皆さんは嫌うんですけれども、しかし、この際限本的にやっぱり考えることは考えておく必要があるという意味で、たとえば六三三四制の問題がいろいろ批判される部面もありますから、これがどういう関係にあるか。それから、いまの受験のあり方、あるいは偏差値であるとか、あるいは輪切りであるとか、いろいろ嫌な言葉で言われておりますが、塾であるとか、試験の、受験戦争とか言われておりますようなこういう問題がどうあるか、制度的な問題。それからもう一つは、個別的な対策を検討する。そして社会全体の総合的な対策ということ。これは文部省や、学校だけで、家庭だけで解決できない。いまの社会は、私は、社会全体が、いま御指摘もありましたけれども、おかしくなっておるという認識を持っております。  それから第八として、先ほどもちょっと出ましたが、公立と私立の関係がどういう状態になっているか。もし差があれば、どこに差があるのか、こういうことを周到に分析しませんと総合的な対策というものはできないであろうと私は見ておりますので、こういう点は今後とも引き続いて検討を続け、もし根本的に改める対策があればそれも進めなけりゃならない、かような観点からやっておるということを御理解いただきたいと思います。
  304. 木村睦男

    ○木村睦男君 瀬戸山文部大臣は、教育等につきまして、ことに精神面におきまして非常に深い考えをお持ちの方で、尊敬申し上げておるのですが、どうぞ瀬戸山文部大臣の間に教育の改善刷新、ひとつ具体的に進めていただきたいことを期待をいたしておきます。  なお、いまお話の中に六三三制の見直し、ちょっとお触れになりましたが、私も同感でございまして、ちょうど中学の三年といいますと、お互いにそのころを思い出しますと、非常に反抗期なんですね。昔は五年、四年ありましたから、上級生がおってちゃんとうまく抑えてくれ、指導をしてくれた。いまは一番その反抗盛りが最上級生ですから、やはりこういう点は問題があると思います。十分御検討いただきたいと思います。  それから、学校内のことではございませんが、少年の非行、またその年齢がだんだん低年齢層化になっておるという点で三つほど伺いたいわけでございます。それぞれのところで御答弁いただきたいと思います。  最近、人権を尊重するということで、十八歳の体躯堂々たる、酒も飲めばたばこも吸うといった一人前の者が犯罪をやっても、新聞の記事を見ると「少年」と出るわけです。しかも、名前を書かないで「少年A」、「少年B」、私はこのくらい若い者を甘やかしておることはないと思うんです。いろんな理由があってこういうとり方をしておるんでございましょうが、これはやはり私は考えるべきじゃないかと、こう思いますが、どう考えられますか。  それから、この少年法あるいは刑法、犯罪を犯した場合の適用法律でございますが、こういうものの適用の年齢、対象となる年齢等につきましても、私はいまのままではどうも、だんだん下へ下へとこういう非行がおりてきておる、こういう点から考えますと、見直す時期ではなかろうかと、このように思うわけでございます。  それから最後に、このように低年齢層化してきた原因は一体どういうところにあるだろうかということでございます。この三点について、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。
  305. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) お答えさせていただきますが、ただいま先生は、最近の少年非行は低年齢化しておる傾向があるがどういうように思うかと、こういうお尋ねでございますが、非行の原因、背景は、先ほど来文部大臣からいろいろお話しいただいておりますように、非常に複雑、多岐多様でありまして、一、二のものに帰することではない。また、低年齢化の原因についても定説があるとは言えない状況でございます。最近の非行の増加については、御承知のように、家庭、学校、地域社会、それぞれの問題が複雑に絡み合っておるものと思われ、今日の青少年は、一般的に考えて忍耐力と申しますか、耐えるという気持ちに欠ける傾向があり、また青少年を指導すべき大人が青少年に適切な注意をするということも少なくなっておるということも、これは考えなくてはならぬと思います。特に、思春期にある中学生、いまの先生の御意見にもありましたように、中学生は心身の発達がアンバランスになりがちであり、家庭生活、学業等で困難な状況に置かれた場合、何かをきっかけにして非行に陥る可能性があるものではないかと、こう私は考えております。そこで、先ほど先生からお教えいただきましたように、総理府におきましては、文部省、取り締まりの警察庁、その他の関係省庁と十分連絡をとりまして、現在の非行防止策についてはどうするか、そうして今後どのように対応をしていくかと、こういうことを、私どもは連絡調整の役所でございますので、各省お集まりいただきましていろいろ対策を考えて、やれるものからやる、根本的にそういう対策を考えていかなくちゃならぬ。こういうように、先ほど文部大臣がおっしゃいましたように、対策を立てて進めております。  先ほど井上先生から御指摘のございました私の方の二つの学校を大変お褒めをいただいたんですが、これも、二つの学校には青少年の非行防止についての大変ないい遠因があるのです。私はこういう場で申し上げることはどうかと思いますけれども率直に申し上げますると、これは学校教育も大事でありますし、家庭教育も大事でありますし、社会もその気になって大事な青年の育成に努めてもらわなくちゃならない。そこでいまお褒めになりました二つの学校は、一つは、校長先生や教頭先生、先生方と子供たちが一緒になって川をきれいにしようという運動をやっている。小川でございますけれども、われわれがいいところに住むと同じように魚にもきれいな川にすませようじゃないか。魚もきれいな川にすめるようにというんで一生懸命になって水をきれいにする運動を、日曜日なんか子供たちが全部出てやるんです。そうしますると、みんな同じように出てくるようになりまして、先ほどあんなようなお褒めをいただけるようないい学校になったんです。  それからもう一つの学校は、これはどういうことをやっておるかと申しますると、たばこの吸い殻なんかを拾うといいますか、ことは地域婦人会が非常に熱心なところなんです。小牧と申しますけれども、味岡の学校の例が出ましたが、ここの地域婦人会が非常に熱心で、自分の子供であると同時に大事な世間の子供である、大事な子供だ、みんなして子供に注意しようというので、いままでは余り人様の子供には目をくれないようなお母さんの方々が、自分の子供のように地域の子供たちに注意を払ってくれる、地域の婦人が青年の非行防止ということについて基本的に考えていこうというようなふうになってまいりまして、そういうぐあいでございますから、学校も大事でございますが、家庭も、社会も、ひとつ一緒になっていい子供になるような努力を払っていかなくちゃいかぬ、こういうことで私どもは基本的な考え方をしております。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕  最後に、先ほど先生から御指摘政府のとっておる施策について、もう少しPRの仕方と申しまするか、広報活動は一貫したやり方をしろ、こういう御指摘でございますので、もちろんいま防衛庁長官のおっしゃいますように、各省庁が、それぞれの施策を宣伝せられる広報費は持っておられます。それぞれやっておられまするけれども、いま御指摘のように、もう少し一貫してやれるように、私どもも数日前でございましたか、各省の担当の方にお集まりいただきまして、効果のあるような広報活動をやらしていただくことを決めて進めておるということも申し上げて御答弁にさせていただきます。
  306. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) いま木村さんのお話の問題は、刑法とか、少年法とか、そういう法律の問題をいまさしあたって変えなければ対応できないという問題じゃないんじゃなかろうか。実は、中曽根内閣も少年非行でしっかりやらにゃいかぬという声がかかって、私どもいろいろ検討してみた。私も、第一線の少年院とか、少年刑務所とか、少年鑑別所とか、私どもの領域のものがあるんですよ。これはかなり悪い方ですよ、こういうところに入ってくるんだから。入ってくる外側にまだいっぱいいるんですけれども、かなり悪い方だけれども、この実態を見るとある程度見当がつくと思うんですけれども、これを見ますと、やっぱり少年法を改正するとか、刑法を改正するとかというよりも、いまある、なぜそういうふうになってきたかという分析の問題、社会的な、人間的な、そういうものをいま少し一生懸命やって、そこから先の問題だというふうに考えます。  大体、私もいろいろ現場を見て感じたんですけれども、そこの先生とか技術者の人たちの意見なんかも聞いてみましても、やっぱり、結局、ごみみたいに集まっているけれども、よく見ればごみじゃなくて、普通だったらいい子になるんだろうと思う。結局は周りがよくなくなった。親もしっかりしなくなっちゃった。感じからいきますと、いまのちょうどその年齢の親の問題、それから学校の先生の問題、もちろんその他環境の問題がありますけれども、どうも、そこらの問題を具体的に集約し、いろいろな形で集めて世の中に知らしめるという、そういう関係がわれわれも少し足らなかったと思うんですよ。私どものそういう収容所に全国でいま五千人くらい入っておりますけれども、少年院とか、そういうところへいま現に入っているそういう連中の中から教材が見出せる。世の中が反省し、世の中が、親が、先生が、やっぱりそこがまずかったかと言われるような材料も出るのではなかろうかということで、いませっかくやっておりますので、まあ一応のお答えにさしていただきます。
  307. 木村睦男

    ○木村睦男君 それなりにわかりますけれども、いま少年少年といいましても、知能でも体力でももう大人あるいは大人以上になっていますからぬ。ですから、少年ということで簡単に処理するというふうな、こういう風潮もありますし、また、制度面もややそういう傾向があるような気がしますので、引き続きひとつ御検討はしていただきたいと思います。  それからその次に、孤児の問題ですが、これも市川議員からいろいろ御質疑がございましたので重複を避けてお尋ねいたしたいと思いますが、今回四十五名帰ってきて、辛い二十名は身寄りがわかったということで大変われわれも喜んでおります。まあ昨年ちょっとこれがとだえまして、いろいろ問題があったわけでございますが、その後、今回こうして来れるようになったので、あらゆる問題は解決したのであろうと思いますが、何かこれから日本政府としてやはり処理していかなければならないような問題を預かっておられるのかどうか、それを聞かしていただきたいと思います。
  308. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 木村議員の御質問にお答え申し上げます。  木村先生はたしか大連一中の御卒業だと承っておりますし、特にこの問題については御関心をお持ちだと、こう思っております。  中国側は、孤児問題解決にいろいろ問題がございましたので、中国政府といたしまして、一時帰国者が意思を変更して日本に永住することになることで向こうの家族と分離をするときにどうするか、別れるときにどうするかという問題、及び日本に帰ってきた場合に、中国に残されたその養父母の扶養問題の解決を中国から言ってきたわけでございます。これらの問題の解決につきましては、日中両国政府協議を続けてきましたが、本年一月、日中事務レベルの協議において、養父母等の扶養費については政府援助及び民間の寄附金により賄うことで原則的な合意が得られ、具体的な方法につきましては今後外交ルートを通じて協議することになり、そういったことの結果、今日、今回の訪日調査が実現したものでございます。一時帰国者の意思変更の問題につきましては、これらの者が一たん中国に戻って家族と相談の上、改めて日本に永住帰国すべきである点で双方の意見の一致を見たところでありますし、その具体的な方法につきましては今後協議をしていくと、こういうことに相なっております。  以上によりまして今回の中国孤児四十五人が来まして、先生御指摘のように二十人の方々が肉親がわかったと、こういうことでございます。
  309. 木村睦男

    ○木村睦男君 そうしますと、養父母に対しては、民間の拠金の中から養父母に渡すということですが、そうすると、民間の拠金ですから年によって多い少ないはございますが、当然その影響を受けて、ことしはこのぐらいだったけれども来年はもっと減ったとかふえたとか、非常に波動性があるわけですね。  それからもう一つ、まだ親を探してあげなければならないいわゆる残留孤児ですね、大体どのくらいおって、その中でおおむね日本に連れてくれば両親が見つかり得るのではないかという可能性のある人はどのぐらいおるか。これを教えていただきたいと思います。
  310. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 木村議員の御質問にお答えを申し上げます。  まず最初の、寄附金が集まったと、こういうことでございますが、これは今回、先ほどもちょっとお話ししました千八百万円以上も集まりましたし、これは個人の方に、直接この人に渡してくれと、こういうふうな形でのお話がございます。それはもうその方に必ずお渡しをするということでやっておりますが、私の方でお預かりしておりますのは、一般的に、中国孤児に配分するほか中国孤児対策全般に活用させていただきますと、こういうことでお預かりをさしていただいておるわけでございまして、その点は御了解をいただきたいと思います。  次に、どのくらいの孤児が残っているかと、こういうことでございますが、調査依頼がありましたものが千四百五十一人でございまして、これまで身元が判明している者が六百二十八人ございます。残りが八百二十三人と、こういうことになるわけでございます。いままで訪日しまして調査をいたしましたのが、第一回が来日いたしまして二十七人、第二回が六十人参りまして四十五人、今回は四十五人参りまして二十人と、こういうことでございますから、引き続いてこういうふうな形の孤児を日本にお招きをするという形でやりましても、なかなか調査をするのが非常にむずかしいということで、大体いままでのようなペースで、まあ来られた方の半分が身元その他が判明するということではないだろうか。これはあくまでも推測でございまして、そういうことでございますが、私どもは、調査依頼のありました方がすべてやっぱりわかってもらうということが必要なことではないか。できるだけ御希望をかなえてあげるために一生懸命これからも努力をするつもりでございます。
  311. 木村睦男

    ○木村睦男君 今回のように日本に来まして短期間滞在する孤児の人たちの処遇の問題で、実は今回は黒竜江省から来たわけでございます。岡山にもハルピン会というのがございまして、これは今回だけではなくて、毎年暮れ等には街頭に立って募金をしておるわけです。私もこの間、岡山で街頭に立って一緒に募金しましたが、一日四時間ぐらい約一週間やりまして、五十万円ぐらい金がたまったわけです。それで、代表の人が、一行が京都に来るからというので京都へ持っていったわけですね。これを厚生省にお願いして孤児の人に均等して分けてもらうというので持っていったわけです。それで、孤児の人たちが汽車で着いてホームからずっとおりてくるところへ待っておったわけですが、厚生省の引率者が、民間の人はあっちへ行けこっちへ行けと、民間の人はそばに寄っちゃいかぬというふうなやり方をして連れていったわけです。非常に感じを悪くしまして、何のためにわれわれが自発的にこういう苦労をしたのかと。同じハルビンで子供を殺し、捨ててきた人たちですからね。せめて孤児と話がしたいと、こういうこともあって行っておるんですが、民間の人はのきなさいと、こう言われるのでね、非常に憤慨しておりましたので、今後ひとつこういうことのないように御参考に申し上げておきたいと思います。  それから、昨年この委員会で私、当時の箕輪郵政大臣質問をしまして、その前に、その日に閣議でもって、わざわざ孤児を大ぜい連れてくることも大変だから、民放のテレビ会社に協力を求めて、現地に行ってビデオを撮って、そしてこっちでやった方がむしろ能率が上がるのではないか、そういう協力を求めると、こういうことで協力を求められたということを聞いて非常に私は喜んだんですが、この問題はその後どういうふうになっていますか。郵政大臣か厚生大臣か、ひとつ教えていただきたい。
  312. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 木村議員の御質問にお答え申し上げます。  御質問にお答え申し上げる前に、いま、京都でせっかく孤児に会おうと思ったのにというお話がございまして、実は孤児というものが大変に混雑の中でやるわけでございまして、交通整理をするか何かのことでやったんでしょう。私は、もしも先生からのお申し込みがあれば、そういった機会というものはぜひ静粛な中でつくってみたらどうだろうかなと、私はこう考えておるところでございます。  それから、テレビの話でございますが、実は、いまお話がございましたように、民放が向こうへ行って撮ったらどうだろうかと、こういうふうなお話でございます。実は、これはやっぱり向こうへ行っていろいろな取材をするわけでございますから、中国政府ともお話し合いをしてやらなければいけない話でございましょうから、そういった話、御要望がある、また、中国側の方の御了解を得られるならば、私はそういった形でお話をしていったらどうだろうかなと、こう思っておるところでございます。またそのときには、当然のことながら郵政省の方にもお願いし、また民放の方々にも御協力をお願いをすることになろうかと考えております。
  313. 木村睦男

    ○木村睦男君 これ、非常にむずかしいということはわかりますけれどもね、まだ八百人前後おるわけですから、一年に五、六十人では、みんなお父さん、お母さんはもう死んじゃうですからね。養父母の方も死にますから。できるだけ早くやるためにも、この方法が何とか実現するようにひとつ御努力をいただきたいと思います。  それから、すでに日本人ということがわかり、親戚なり親が見つかってこちらに定住をしておる人たちがどういうふうな状況のもとに生活をしておるか、概略のことをお聞きしたいし、それに加えて一番問題は住宅なんですね。私も二、三頼まれるものですから、都営住宅であるとか、あるいは郊外の各市の住宅等安いところをいろいろ手紙を出して頼むんですが、なかなかどうもうまくいかないんですね。私が手紙出しても返事一つ当局の方はくれませんし――市の方ですよ、厚生省ではありません。どうも本人の方へも何も連絡がないというふうなことが何回かあったわけでございます。こういう点も、まあアフターケアと言えばおかしいですけれども、十分ひとつ意を用いてやっていただきますようにお願いをいたしたいと思うのですが、何かありましたら教えていただきたい。
  314. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 木村議員の御質問にお答え申し上げます。  木村先生、大変熱心にいろいろとやっていただきましたことを私も心から感謝、御礼を申し上げる次第でございます。  日本に永住することになった人々の生活状況につきましては、厚生省が五十七年五月に行いました孤児の生活実態調査によりますと、帰国時はほとんどの世帯が生活保護を受けたような状態でございますが、二、三年を経過すると日本の社会生活にもなれ、また日常会話程度日本語をマスターし、修了するなどして、ほぼ三分の二の世帯が生活保護から脱却しているということでございます。  日本に永住帰国した孤児等が定着先におきまして一日も早く自立して、安定した社会生活を営めるようにするため、これまでも早期定着化のための援護施策の強化に努めてきたところでありますが、五十八年度におきましては、中国帰国孤児定着促進センターを設置いたしまして、孤児等の帰国時に四カ月間集中的に日本語教育を含めた生活指導を行う等援護の充実を図ってまいる所存でございます。  住宅の問題でございますが、先生御指摘のような問題が私はあると思います。従来から公営住宅の優先入居につきまして、建設省を通じまして各部道府県に対し特段の配慮をお願いしていただくよう協力を求めているところでありまして、御指摘もございますから改めてこういったところにもお願いを申し上げ、今後ともこれらの永住しようという方々の置かれているところの状況を把握して、遺憾のないように努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  315. 木村睦男

    ○木村睦男君 次に、建設大臣。――運輸大臣関係あると思いますが、本四架橋のことでちょっと伺いたいと思います。  これは、昭和六十二年、岡山―香川県の橋が完成するということで、現在鋭意進めてもらっております。五十八年度の予算も、非常に厳しい中で六十二年完成がほぼ可能であると思われる程度予算を組んでいただいて、非常にわれわれもほっとしておるところでございますが、財政事情はさらに来年、再来年決してよくなるとは思いません。しかし、こういう大きなプロジェクト、相当困難を冒してやるわけでございますが、やはり景気刺激の一助にもなることでございますし、これは非常に画期的な大きな、政府としても国家としても大きな事柄でございます。また、関係する中国、四国両地方とも、六十二年完成ということについては、非常な希望、期待を持っておるわけでございますから、どうぞこの期待を裏切らないように、来年、再来年もあることでございますし、ぜひ予定どおり完成できるようにひとつ御努力をいただきたい。御決意のほどを承りたいと思います。
  316. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 児島―坂出ルートにつきましては、現在、海峡部の主要橋梁の下部工事を全面的に進めておるわけでございます。一部の上部工につきましても製作に着手するなど、工事の最盛期を迎えておるわけでございます。また陸上部につきましても、全線にわたりまして地元の協議、用地買収を進めるとともに、トンネル、長大高架橋等、工程のかなめになる重要な工事を現在進めております。  建設省といたしましては、昭和六十二年度の完成を目途といたしまして鋭意工事を進めておる次第でございます。
  317. 木村睦男

    ○木村睦男君 ぜひひとつお願いをいたしたいと思います。あと四年でございますから、大臣は次々へと引き継いでいただいてぜひやっていただきたいと思います。  それから、最後になりましたが、この前の臨時国会で岩動委員から質問があり、また衆議院でも石井議員からも質問がこざいましたが、例のレフチェンコ問題でございます。そのときに、その後アメリカとも接触をとっていくと、こういうふうなお約束がございましたが、その後何か詳細なことがわかったでしょうか、ひとつ伺いたいと思います。
  318. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) レフチェンコの日本における工作の具体的内容については、アメリカに対して要請をしております、知らしてもらうように。ところが、なかなかまだアメリカから返事がないという状況で、そのうちにもう一回ぐらい催促をしてみようかと、こういうふうに思っております。
  319. 木村睦男

    ○木村睦男君 まだ詳細なことはわからぬようですが、近く何か向こうで本も出る、こういうことでございますし、また「現代」に石井議員が向こうへ行っていろいろ調べたのも載っておりますので、現状大体わかりましたが、その後また進展の模様によっては後日伺いたいと思っています。  これに関連して、これはもういまから四年ほど前の話なんですが、私がいろいろ疑問に思う点は、日本の国内においてこういったスパイ行為、これはどこでもあることなんですけれども、そこでこのレフチェンコという人物が、KGBの大尉ですか、少佐ですか、情報をとる訓練を、いわばスパイの訓練を受けて日本に来たんですが、入るときにある雑誌社の特派員という資格で入ってきておるようでございます。  出入国管理の問題になりますけれども日本の出入国管理はかなり厳重で、むしろ非常にむずかしいというふうにすらわれわれ聞いておりますが、簡単に身元を擬装して入るということが、こういうことを見て、案外できるんじゃなかろうか、どこか欠陥があるのではなかろうかという感じかいたします。  ことに日本でいろいろ活動しておるこういったスパイ行為といいますか、情報収集行為といいますか、そういう者はまだまだおると思うのですが、そういう者について実情というものをどの程度把握しておられるか。また、出入国のときに、注意人物かどうかというふうなことは、その地元の、向こうの国の日本の大使館等で一応調べる、そういうふうなことは特殊な場合以外はできないのか。あるいはあらかじめマークしておる国というふうなところでは相当詳細に調べておられるのではないかと思うけれども、そういう点がどういうふうに従来なっておるか。そういうことを承りたいと思います。
  320. 田中常雄

    政府委員田中常雄君) お答えいたします。  外国人の入国につきましては、在外公館における査証申請に際してのチェックと、わが国に到着した場合の上陸申請時のチェックと、二段構えで行っております。  外国人の出入国は、出入国管理及び難民認定法に基づきまして、入国前に査証の申請を行わせまして、入国しようとする人物及び入国目的についてまず審査をいたします。さらに、わが国に到着した際に上陸の申請を行い、旅券、査証の有効性や入国目的、滞在目的を審査し、上陸拒否事由に該当しないか否かについて検討することにしております。  レフチェンコにつきましては、ノーボエ・プレーミャ誌の記者として日本において取材活動を行いたいという入国申請がございましたので、上陸を許可した次第でございます。  先生の御指摘のように、入国審査は今後とも一層厳重にしていきたいと思いますが、いずれの国の国民であれ、入国しようとする人物あるいは入国目的のいかんによっては、入国を拒否し、阻止することは当然のことでございますので、法務省といたしましても、今後寛厳ところを得た入国審査を一層やりたいと考えております。また、外務省等関係機関とも十分相談いたしまして連絡を密にいたしたい、こう考えている次第でございます。
  321. 木村睦男

    ○木村睦男君 向こうを出るときに当然ビザの発給を受けるわけですが、そういうときに注意人物かどうかわからなければ別ですが、大体当てがつくのだろうと思うのだが、そういう場合に向こうの大使館等で十分に調査するというふうなことはやれないものですかね。
  322. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 相手がソ連ですし、二億人もおりますし、なかなか大使館なんかで調査はできないと思います。
  323. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 木村君、ちょうど時間が参りました。
  324. 木村睦男

    ○木村睦男君 それでは、最後に一つだけお聞きして終わります。  実は、これはちょっと新聞で見たのですが、昨年の十二月末に、奥多摩町の付近で、ロシア語でもってスビダーニエ、これは落ち合うとか、落ち合おうとかいう言葉なんだそうですが、そういう言葉が総二十一センチ、横三十六センチくらいなきれに書いたやつがその辺に落ちておった。たまたまその地域は、昔から過激派が集まったりあるいは武装訓練をしたりというふうな場所なんでございますが、そういうところでそういうようなきれが落ちておったということでちょっと問題に取り上げておりました。きのうちょっと言っておきましたが、何かわかりましたですか。その結果を聞いて、私の質問を終わります。
  325. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) お尋ねの赤いきれにロシア語が書いてあったというものが発見されたという事実は、警察は承知しておりません。  ただ、調べてみますと、二月の二十日に勝共連合の機関紙の思想新聞の記者が警視庁の青梅署の奥多摩派出所を訪れまして、奥多摩の山道にロシア文字の入った旗のような赤いきれが落ちていたということを友人から聞いたが警察は知らないかというふうに尋ねてきたことはあるようであります。しかし、警察としてはそうした事実を一切承知してないわけであります。
  326. 木村睦男

    ○木村睦男君 写真が載っておったけど……。
  327. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 機関紙を拝見しますと、その写真も私、拝見しましたが、私どもの専門的判断からいたしますと、何とも承知してないことですから判断しかねますが、KGBが秘密活動にそのような赤いきれにロシア語を書いて使用するというようなことはあり得ないことだろうと思っております。
  328. 木村睦男

    ○木村睦男君 終わります。
  329. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で木村睦男君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十七分散会