○
国務大臣(
中曽根康弘君) 鶴岡議員の御
質問にお答えを申し上げます。
まず、五十六
年度の
税収不足の
原因はいかんという御
質問でございましたが、先ほども御
答弁申し上げましたように、
世界経済の
停滞による輸出の減少、生産活動の萎縮、あるいはアメリカの高金利、
日本の
円安、あるいは
物価の安定、こういうようなところから
税収が
不足したと
考えております。今後は、この体験を生かしまして、
税収見積もりの精度を上げるように努力してまいりたいと思います。
増税なき
財政再建、現実はこれから遠ざかっているのではないかという御
質問でございますが、ともかく
財政状態が非常に厳しいことであることは御承知のとおりでございますが、
財政の対応力の回復を図るべく
歳出歳入の抜本的な
見直しを行いまして、経費の節減等を行い、そしてその上に立ってできるだけ早期に特例
公債依存からの脱出を図り、また
公債依存度の引き下げに
最大限の努力を傾注してまいりたいと思っております。
新鋭の話が出ましたけれども、いまのように
歳出歳入の抜本的
削減を行って、しかも
臨時行政調査会の
答申の線に沿ってこれからも行政を進めてまいりたいということを
考えておるのでございまして、御指摘のような大型
間接税の
導入等につきましては、具体的に
検討もしておりませんし、指示もしておりません。
財政再建の具体的な方策、手順を示せということでございますが、当面は
歳出歳入構造の徹底的な
見直しから起こしますが、長期的に見まするというと、ともかく
昭和六十年から六十五年ぐらいにかけまして、いまのままの推移で機械的に計算して並行移動させてやりますと、国債費だけでも十兆から十五兆を超すぐらい年間の支出が一応
予想されます。
そういうような
事態をどういうふうに乗り切っていくかということは、慎重に
検討しなければならぬ重大な問題が前途に包蔵されておるわけでございまして、そのために、まず経済
計画につきまして、先般、経済
審議会に諮問いたしまして、八年を目途とする
経済展望をつくっていただくことにいま
審議が進められております。それに相応して
財政計画というものが出てくると思います。そのような経済と
財政を一体して整合性のとれた
計画を長期的につくってまいりたいと思っておる
情勢でスタートしたところでございますので、その
内容につきましてただいま申し上げる
段階でないことは遺憾でございます。
経済
審議会に諮問している
考え方はどういう
内容のものかということでございますが、いままでのいわゆる経済
計画に対しまして、より弾力性に富む、より長期的な、そしてより何度も
見直しが可能であるようないわゆるローリング性を持った
内容にしていただきたい。それから高齢化社会に対応し、また新しい情報時代に対応するような、新しい社会に対応し得るような経済
政策でもなければならない。そういう意味におきまして、たとえばGNPという概念につきましても、いままでの量的な
考え方から離れて、質的な考慮を取り入れる余地が非常に出てきていると思います。
たとえば一トンの値段につきましても、鉄ならば約九万円、自動車ならば百万円、ICならば、あるいは超LSIならば五億円ぐらいするということでございます。ですから、必ずしも量によるものではない、質が非常に重要な時代になってきておりますし、情報の価値というものも
経済運営上非常に重要な使命を帯びてくる
段階になっております。そういう意味におきまして、この新しい時代に対応し得るような新しい型の経済
政策あるいは経済長期展望というものを加味してお
考え願いたいと念願しておるところでございまして、経済
審議会の
答申をお待ちしたいと思っております。
次に、外交防衛論争から内政に転換したのかという御
質問でございますが、私が
総理大臣を拝命したときにおきましては、国際
関係の調整が急務でございまして、アメリカ及びECとの経済問題、あるいは安全保障問題、あるいは韓国その他の周辺との
関係、そういう意味におきまして、まず当面のこの国際
関係の調整を行う必要がある、いわば緊急避難的な性格を持っていると自分は
考えまして、外交活動に力を入れた次第でございます。
しかし、一応小康状態を呈するに至りまして、一段落したと
考えまして、いよいよ本格的な内政に入ってきたわけでございます。内政の中心は行革であり、あるいは景気回復であり、あるいは教育、学校暴力の問題等でございまして、御高承のとおりでございます。今後もこの内外両方面を見詰めまして適切な
政策を実行してまいりたいと思っております。
行革に対する
基本姿勢等について御
質問がございましたが、行革は現下の最重要
政治課題であると心得ております。すでに
臨時行政調査会も
答申をいただきまして
審議を終了いたしました。この第五次
答申につきましては、三月十八日の閣議において
最大限尊重の
基本方針をまず決めたところでございます。
そこで、今後の改革の手順、
内容、いわゆるスケジュール等につきまして、新しいいわゆる新行革大綱の策定をいま急いでおりまして、五月の中下旬までにこれを策定し、閣議決定まで持っていきたいと
考えておるところでございます。
景気回復の
見通しについて御
質問がございました。
最近の状況を見ますと、アメリカの景気は上昇に転じたと言われ、ヨーロッパにおきましても、一部を除きましては、やや動意が見られる状態になってきております。
わが国の経済におきましても、
物価の安定、あるいは在庫調整のある
程度の進展、それから石油価格の低落傾向等々の明るい面も見られます。それと同時に、
物価の安定ということが非常に大きな強みになっておりまして、今後は国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を図りたいと思っております。
現状で
世界経済が推移し、
わが国の在庫調整が進んでまいりますれば、下半期におきましては薄れ日が差す状態になってくると
考えておりますが、問題はアメリカの
財政赤字であります。これがいまアメリカ
国会において
審議されておる
予算の
内容において、どの
程度のアメリカに
財政赤字が出てくるか、その結果アメリカの金利の
情勢がどういうふうに動くか、これが
世界経済を動かす非常に大きな要因になっておりまして、まだこれは不安定な流動的な
情勢にございます。それから不況のために石油価格がさらに下落する、もしそういう
段階が出てまいりますと、これも
世界経済に対しては、たび重なる下落でございますから、かなりマイナス要因に働く危険性がございますし、
発展途上国の債務問題等も出かねまじきことがあるかもしれません。
そういうような点におきまして、景気の前途は、国際与件を
考えますと、必ずしも手放しで安心してはならない、そういう
情勢にあると
考えて、周到な手配をしていきたいと思います。ただし、五十八
年度の経済成長三・四%
程度は、現状で推移すれば実現可能であると
考えております。
次に、公共事業の前倒しだけでなく、ほかに
施策はないかという御
質問でございます。
政策は、本年四月五日の経済対策閣僚
会議におきまして、行
財政改革の
精神を踏まえつつ、内需を中心とした息の長い安定成長を図るために、八項目の当面の課題、三項目の今後の取り組むべき課題等に関する「今後の経済対策について」という
政策を決定いたしました。
当面の課題としては、公共事業の前倒し執行のほか、金融
政策の機動的な運営、住宅建設の促進、
中小企業対策等の諸
施策を推進すると同時に、大幅な規制の緩和を行いまして民需、民間投資を誘発しよう、これらにつきまして今後努力してまいりたいと思います。
次に、牛肉、オレンジ等の農産物の輸入問題について御
質問がございました。
牛肉、柑橘類につきましては、目下ワシントンにおきまして日米間の専門家が協議中でございます。
わが国といたしましては、一面において国際間の友好
関係を維持するという考慮も非常に重要でございますが、一面においては、
わが国における食糧の安定供給という重要な問題もございます。したがいまして、
わが国の農業の健全な発展と調和のとれた形で行われるということが非常に重要であると
考えまして、この国際
関係との調整を適切に
段階的に進めていくのが正しいと思っております。
いわゆるガット提訴につきましては、米側から、
わが国の農産物残存輸入制限についてガット上問題があって、そのガット上の協議を提起する可能性もある旨が表明されました。
わが国におきましては、日米協議等におきまして、
わが国の農業の実情、これまでの市場開放
措置等を十分に
説明いたしまして、
理解を求めたいと
考えております。
最後に、
会計検査院法の
改正について御言及がございました。
この
会計検査院法の
改正につきましては、先ほど来申し上げましたように、
政府関係金融機関の
融資先に対する立入調査等の
改正を行うことは、
自由主義経済体制下におきまして公権力の過剰介入を起こすのではないかという議論もございます。また、
政策金融の円滑な遂行とのかかわり合い等もございまして、これは慎重を要するとも
考えており、いまの
段階では
法改正を提案するのは困難であります。しかし、事実上、
会計検査院に
協力いたすように、
政府関係金融機関に対しましては、
会計検査院の
検査等に十分
協力の徹底を図るようにいたしたいと思っております。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇、
拍手〕