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1983-03-18 第98回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十八日(金曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第七号   昭和五十八年三月十八日    午前十時開議  第一 国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、故元議員上原正吉君に対し弔詞贈呈の件  一、昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案並び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 徳永正利

    議長徳永正利君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  大鷹淑子君から海外旅行のため十七日間の請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  よって、許可することに決しました。      ─────・─────
  4. 徳永正利

    議長徳永正利君) さき院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員上原正吉君は、去る十二日逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  つきましては、この際、院議をもって同君に対し弔詞を贈呈することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  同君に対する弔詞を朗読いたします。    〔総員起立〕  参議院はわが国民主政治発展のため力を尽くされ特に院議をもって永年の功労を表彰せられさき郵政委員長決算委員長の要職に就かれまた国務大臣としての重任にあたられました元議員正三位勲一等上原正吉君の長逝に対しつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます  弔詞贈呈方は、議長において取り計らいます。      ─────・─────
  6. 徳永正利

    議長徳永正利君) この際、日程に追加して、  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案並び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。竹下大蔵大臣。    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  まず、昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案について御説明申し上げます。  御承知のとおり、わが国財政事情は一段と厳しさを加えております。このような中で、特例公債依存体質からの脱却に努めるなど、財政対応力回復を図ることは、今後の財政運営の緊急かつ重要な課題であると考えております。このため、政府は、昭和五十八年度予算において、歳出歳入両面で徹底した見直しを行ったところであります。  まず、歳出につきましては、概算要求段階で画期的なマイナスシーリングを採用するとともに、その後の予算編成当たり、聖域を設けることなく徹底した削減を行いました。その結果、昭和五十八年度一般歳出規模は、昭和三十年度以来初めて前年度を下回りました。  他方歳入につきましても、厳しい財政事情にかんがみ、極力その見直しを行い、特別会計特殊法人からの一般会計納付等税外収入について格段の増収努力を払ったところであります。  しかしながら、これらの措置をもってしても、なお財源が不足するため、昭和五十八年度におきましては、特例公債発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等を停止せざるを得ない状況にあります。  本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債発行等昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保し、もって国民生活国民経済の安定に資するために必要な特別措置について定めるものであります。  すなわち、本法律案は、昭和五十八年度における特例公債発行及び国債費定率繰り入れ等の停止について定めるとともに、同年度における自動車損害賠償責任保険特別会計、あへん特別会計及び造幣局特別会計からの一般会計への繰り入れ並びに日本電信電話公社及び日本中央競馬会からの国庫納付特別措置について定めております。  以上、昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案趣旨について御説明申し上げましたが、政府といたしましては、今後とも財政改革という考え方に立って、歳出歳入構造の基本的な見直しを行うこととし、特例公債依存体質からの脱却に努めるなど、財政対応力回復を図ってまいる所存であります。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  租税特別措置につきましては、最近における社会経済情勢現下の厳しい財政事情に顧み、その整理合理化を行う一方、住宅建設中小企業設備投資促進等に資するため所要措置を講ずることとし、所要法改正を行うことといたしたところであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、企業関係租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来連年厳しい見直しを行ってきており、その整理合理化をさらに進める余地はかなり限られている状況にありますが、昭和五十八年度におきましても、価格変動準備金廃止年度の繰り上げを行うなど、特別償却制度及び準備金制度等整理合理化を行うことといたしております。また、登録免許税税率軽減措置につき ましても所要整理合理化を行うことといたしております。  第二に、住宅取得控除制度につきましては、住宅融資償還金等に係る控除率を七%から一八%に、その控除限度額を五万円から十五万円に引き上げる等その改善を図ることといたしております。なお、定額控除廃止することといたしております。  第三に、中小企業設備投資を促進するため、中小企業者等機械特別償却制度につきまして、二年限りの措置として、その対象となる機械及び装置の取得価額合計額のうち、過去五年間の平均投資額を超える部分については、百分の十四の償却割合にかえて百分の三十の償却割合を適用する特例措置を講ずることといたしております。  第四に、特定基礎素材産業構造改善に資するための措置として、特別償却制度現物出資の場合の課税特例欠損金繰越期間特例及び合併等に係る登録免許税課税特例を設けることといたしております。  第五に、自動車関係諸税につきましては、揮発油税及び地方道路税について税率特例措置適用期限を二年延長するほか、自動車重量税について、税率特例措置適用期限を二年延長するとともに、自動車検査証有効期間が三年とされる自動車に対する税率を設けることといたしております。  第六に、少額貯蓄等利用者カード制度につきましては、これを三年間適用しない措置を講ずることとし、また、利子配当所得源泉分離選択課税等特例措置について、その適用期限を三年延長することといたしております。  その他、地震防災応急対策用資産特別償却制度創設等を行うとともに、揮発油税及び地方道路税特定用途免税制度等適用期限の到来する租税特別措置について、実情に応じその適用期限を延長する等所要措置を講ずることといたしております。  次に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  さきに申し述べましたとおり、政府におきましては、昭和五十八年度予算編成に当たっては、歳出面において経費の徹底した節減合理化に努めるとともに、歳入面においても税外収入等につき極力見直しを行ったところであります。  その一環として、製造たばこ小売定価適正化を図り、あわせて財政収入確保に資するため、製造たばこ小売定価最高価格の引き上げを行うとともに、現下財政事情等にかんがみ昭和五十八年度及び昭和五十九年度における専売納付金納付特例措置を講じることとし、所要法改正を行うことといたしたところであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、製造たばこ小売定価を改定するため、その最高価格を、紙巻たばこについては十本当たり十円、パイプたばこについては十グラム当たり十円、葉巻たばこについては一本当たり十円、それぞれ引き上げることといたしております。  第二に、専売納付金納付特例措置を講じることとし、日本専売公社は、昭和五十八事業年度及び昭和五十九事業年度については、既定の専売納付金のほか、政令で定める日以降売り渡した製造たばこの本数に〇・三四円を乗じて得た額に相当する金額を、専売納付金として、国庫納付しなければならないことといたしております。  以上、昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)     ─────────────
  9. 徳永正利

    議長徳永正利君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。竹田四郎君。    〔竹田四郎登壇拍手
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました財源確保法案等について質問を行います。  ロンドンのOPEC臨時総会原油基準価格が五ドル値下げをされ、生産割り当て量適正稼働率より二割減の千七百五十万バレル・デーとなりました。原油価格はすぐれて政治価格であって、今日まではOPEC団結力によって高値を維持し続けてきたわけであります。しかし、今日、その団結力も崩れて、二十九ドルの基準価格も千七百五十万バレル・デーの制限的な生産量も守れるかどうか危ぶむ声が聞かれますし、専門家等の間でも、二十五ドルぐらい、あるいはそれ以下にまで下がるという観測もあります。政府、特に通産省経済企画庁はどのように見ているのか、お尋ねをいたします。  第一次、第二次石油ショック世界経済を沈滞化し、不況に追い込んだ重要な契機であったわけであります。低成長に追い込まれた国際経済、そしてまた日本経済は、この五ドルの価格引き下げ活性化への大きな刺激になると期待されます。そして、自由世界のGNPの一割を占めるに至った日本経済世界経済の動向に強く左右される立場にあるわけでありますので、今回の原油価格値下げには特に強い関心が持たれるところであります。  先進国産油国、非産油途上国等にどんな影響が出てくるのか。また、産油国オイルダラーが各国の各分野に投資されておりますが、たとえばサウジは日本国債を二兆七千億円も持っていると言われ、その他にもこれに匹敵する投機資金が入っていると言われております。もし産油国原油価格の低落による収入欠陥を埋めるために投資をやめたり、資金を引き上げたりするようなことがあれば、あるいは債務を抱えている国々が返済不能ということになれば、世界経済一大パニックに襲われる心配もあるし、またOECDの分析の警告もありますが、見通しとその対応をお尋ねいたします。  常識的には、五ドルの値下げで年間二兆円に近いお金が外国へ流れずに国内の投資や消費に回るわけでありますから、成長率を〇・二あるいは〇・三%引き上げるでありましょうから、本年度税収好影響を与えることになると考えられますが、税収の伸びはどのくらいになるか、お示しをいただきたいと思います。  逆に、税収減が予想されるものがあります。石油税はこのままでは予定の四千二百九十億円を約六百億円も下回ることになると思われます。石油税を引き上げるのかどうなのか、お尋ねをいたします。それとも、その分だけ代替エネルギー省エネルギー事業の推進を緩めることにならぬかと心配されますが、どのようなお考えか明らかにしていただきたいと思います。  また、通産省は、電気料金について値下げをするのかどうなのか、エネルギー需給見通し見直しについてもお尋ねをいたします。  第二点、去る十四日、第二次臨時行政調査会最終答申を提出して解散いたしました。総理はかつて「行革三昧」とか、あるいは「行革と心中する」とか発言をしてまいりました。中曽根内閣の金看板にもなっており、「答申最大限尊重」を閣議決定いたしました。政府行革に対するふらつきを察知してか、土光会長は「増税なき財政再建」の基本方針を引き続き堅持し、大胆に歳出削減を求めることを強調し、「直間比率見直しも安易に大型間接税導入の口実にしないよう慎重な表現にした」と新聞は伝えております。  ところが、大蔵省筋答弁や見解は答申趣旨と大分違っているように思われます。対国民所得比租税負担率の枠が同じならば直間比率や税目には一切とらわれなくていいのだ、したがって所得減税と引きかえに間接税導入してもいいの だ、また、負担率数値が示されていないから適当な数値でよいのだと考えられているようでありますが、どんな数値考えているのか。たとえば、二三・七%なのか、あるいは七カ年計画にありましたところの二六・五%なのか、その他の数値か、この際明確にされたいのであります。  総理は、いわゆる「増税なき」をどのように解しているのか。たとえば、一兆円の所得税減税を行い、他方で一兆円の間接税導入しても、これは増税に当たらないし、安易な直間比率見直しにも当たらない、このようにお考えになっているのか、御答弁を願います。  大蔵大臣は、「最終的には税制の問題は権威のある政府税調があり、臨調答申はその骨子、哲学を示していると理解している」、あるいはまた小倉税調会長は、「増税なきなどというのは迷惑だ」、こう述べておりますが、総理もこれを是認していると判断してよいのか、お答えを願いたいのであります。  また、大蔵大臣は、「大型増税に入るが、中小型は増税に入らない」とも答弁されたようでありますが、どういう金額を基準にして区分されているのか、明確にされたいのであります。それが明らかにならなければ、臨調答申最大限に尊重するという閣議決定を行った意味はなく、臨調答申もまたほごに等しいということになるでありましょう。その意味でも、世上言われている大型間接税導入はしないことを明らかにしてほしいものであります。  さらに答申は、「税負担公平確保の観点を踏まえ、申告納税制度の基盤の強化、租税特別措置見直し等を推進すべし」としておりますが、不公平税制の是正や租税特別措置改正をどのように進めるのか。退職給与引当金繰入限度額適正化受取配当益金算入配当軽課制等についても改正すべきであろうと思われます。臨調はまた、「長期的には、租税負担社会保障負担とを合わせた全体としての対国民所得比負担率は現在の三五%程度より上昇せざるを得ない」としているのでありますが、これは社会保障負担をかなり大幅にふやすということを政府考えているのかどうなのか、御答弁を求めます。  第三の論点として、財政再建についてお尋ねいたします。  鈴木内閣では、「五十九年度特例国債ゼロ」を財政再建の大きな目標としてきました。鈴木内閣方針を継承したという中曽根内閣はこの方針をさらりと捨て去りました。臨調答申にも、特例公債依存からの脱却、中長期的に公債依存割合の縮小を述べておりますが、総理は、財政再建内容をどのように考え、また再建の目途、時期をどう考えているのか、この際明確にすべきであります。  鈴木内閣の「五十九年度特例国債ゼロ」は一つの努力目標、歯どめでありました。中曽根内閣はそういう財政再建計画を、たとえば歳入における国債依存割合を、その漸減計画を明示すべきであると思うのでありますが、いかがでしょうか。  さらに、国債整理基金への一般会計からの繰り入れを五十七年度、五十八年度と停止してきましたけれども、それ以降は一般会計からの滅債基金への繰り入れが可能になるのかどうなのか。できないとすれば、あと数年で償還財源はゼロになってしまい、減債基金制度有名無実となってしまいます。この際、減債基金制度の存続の必要性を問い直してみるべきではないか、御検討をいただきたいと思います。  次に、特例国債償還についてお尋ねいたします。  昭和六十年以降、特例債現金償還額は年々歳々幾何級数的に増加してまいります。一般会計から現金償還をするとなれば、大増税がない限り、要償還特例債の借りかえを行うか、それとも特例債を新規に発行して、その資金をもって現金償還をする、実質的には借りかえをすることになってしまうのであります。このことは、財政節度が失われ、とめどもなく国債に依存することとなり、日銀引き受けに頼らざるを得ず、破滅の道しかありません。対策を問います。  臨調歳出削減を徹底的にやれと言いますが、歳出削減だけでこの二年間どれだけ財政再建に役立ったでしょうか。誤った経済見通し国内消費不況、それに加えて国際的な不況による税収不足をカバーすることはできなかったのであります。むしろ臨調不況さえ呼び込んでしまったのであります。もちろん、過去のぜい肉を落とし、新しい時代のニーズにこたえるための行政改革は必要であり、実行しなければなりませんが、国際的な視野を忘れずに、まず速やかに国内景気回復を図り、税収をふやすことが財政再建を容易にすることと思います。  同時に、従来の財政制度改革することです。国の財政的な役割り景気調整所得の再分配機能を持つ小さな中央に縮小し、地方自治体財源を再配分して、住民福祉地域経済、教育など住民直結の大きな地方自治体財政にして資源配分機能を行うように機能分担を明確にしていくべきではないか。そうすれば住民のニーズにこたえることができるようになると考えます。御所見を伺いたいと思います。  第四に、所得税減税内容とその実施の時期を明示すべきであると思います。  各党代表間の折衝で、自民党二階堂幹事長から、景気回復に寄与する規模所得減税を五十八暦年内に実施するとの合意ができているわけであります。景気回復基調へ動こうとしつつあります。五月末には先進国サミットもあるわけでありますから、それまでに日本としても景気対策は当然打ち出さなければならないわけであります。減税内容、時期を本日ここで述べてほしいと思います。できないにいたしましても、発表できる目安だけでも明確にするように要請をいたします。  第五に、専売納付金についてであります。  益金からの国庫納付金割合について配分基準が不明確のために公社経営合理化責任分担も不明瞭だとして、つい数年前に納付金率法律で明らかにしたわけであります。今回の改正措置は前回の改正趣旨に逆行するものであり、値上げは厳しい国民生活に拍車をかけるもので、鈍化傾向売上額をさらに減らし、経営悪化に連ならないか。値上げはやめるべきではないか。また、昭和六十年度以降はもとの価格に戻すべきであって、そのまま国庫公社に帰属するというのはまことに不可解であります。  外国製たばこについても同じように値上げをするのかどうなのか。本年はこれについては関税を引き下げることになっているが、その分は差し引くのかどうなのか。場合によっては日米間貿易摩擦の新たな火種になる心配が全くないのかどうなのか、お尋ねをいたします。  第六点は、グリーンカード制適用延期についてであります。  昭和五十五年度竹下大蔵大臣のときに国会に提案されたもので、自民党だけの賛成多数で成立をさせたものであります。三年過ぎて、同じ竹下大蔵大臣が三年間の凍結、実際には廃止の提案をするとは無定見もはなはだしいと言わなければなりません。このために支出した莫大な経費もむだになってしまい、その責任はまことに重大と思います。どのように責任を感じ、どう果たされるのか、総理及び大蔵大臣お尋ねをいたします。  最後に、自動車賠償責任保険特会から一般会計への繰り入れの問題であります。  この制度は、賠償責任限度額が現在わずか二千万円の低額でありまして、賠償の用に役立っておりません。まずこれを大幅に引き上げることが先決でありまして、その上に余裕があれば有効活用するのもよいと思いますが、もともとは国民のお金であり、国が無利子で借り入れることは不当であると考えます。利子を付すべきであると思います。  また、今回、自家用乗用車新規車検有効期間が三年に延びたのにつれて、同時に強制徴収される自動車重量税も三年分前払いということになります。政府は、この税は道路を走行する権利創設税のようなものだと説明しておりますが、へ理屈だと思います。明らかに税金の前納でありますので、自賠責の保険料と同様に、相当の金利分を割り引いて徴収するのが今日の経済の常識であると存じます。大蔵大臣の御答弁を求めて、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 竹田議員の御質問お答えを申し上げます。  まず、原油価格引き下げ日本経済に対する影響対策でございますが、原油価格OPEC総会におきましてバレル五ドル下がることに決定しましたことは、日本経済にとりましては非常に朗報であると考えております。政府といたしましては、これが国際金融に及ぼす影響をよく注目しながら、この原油価格引き下げ日本景気回復のてこに活用したいと考えております。  原油価格引き下げは、たとえばガソリンや灯油の値段の低下を期待させますし、また企業における財務関係の結果に好影響をもたらすものと考えられるのでございます。総じて、物価、景気等わが国経済に対しましては好ましい影響を与えるものと考えており、また、これは最近とみに顕著に出てきました米国の景気回復をさらに一層確実なものにするものと思われますし、ECに対してもかなり好影響を及ぼすものと考えられます。そういうような事実を踏まえまして、この石油価格引き下げを、経済活動活発化を促し、実質所得の向上に役立たせるように、経済運営の上において配慮してまいりたいと考えております。  次に、臨調答申におきまする「増税なき財政再建」について御質問がございました。  この「増税なき財政再建」という意味は、安易に増税を念頭に置くことなく、制度、施策の根本的なところにまでさかのぼって行財政守備範囲を見直す等々、経費削減というものを中心に考えながら財政再建を行おう、こういう考えであると思います。この「増税なき財政再建」は行政改革を推進するてこといたしまして、この基本方針のもとに今後、制度、組織の改革に踏み込み、政策の根本的な見直しを行うよう提言しておりまして、私たちもこの線に沿って政策を進めてまいりたいと思っております。  「増税なき」という言葉の中に大型間接税導入考えていないのかということでございますが、大型間接税導入につきましては、具体的に検討していることもなく、また指示していることもございません。  また、財政再建につきまして新たな財政再建目標を掲げる方針があるかという御質問でございます。  前にも申し上げましたように、五十九年度特例公債脱却は困難になりましたと御説明申し上げました。しかし、財政対応力回復を図ることは依然として重要な課題であり、私は、財政改革という新しい観点に立ちまして、歳入歳出構造自体見直し、そして特例公債依存体質からの脱却、さらには公債依存度引き下げに引き続き努めてまいるつもりでございます。  ただ、何年ぐらいでやるかという御質問でございますが、これは大体五年から十年の間、どの程度にそれがおさまるかいま検討しているという状態でございます。中長期的な展望、指針というものをいま経済展望という名前におきまして検討していただいておりますが、これらとの整合性も考えながら今後検討を加えていくつもりでございます。  次に、特例公債に関する借りかえ問題について御質問をいただきました。  公債は国の債務でありまして、その償還を確実に行うべきことはわれわれの責任であると考えております。また、特例公債につきましては、従来から国会答弁あるいは法律上の規定に基づきまして、借りかえはしないという方針をとっておるということを申し上げてまいりましたが、この方針のもとに進む考え方でございます。  次に、社会福祉、産業政策等におきまして地方に分権したらどうであるかという御質問でございます。  国と地方の役割り分担を見直すに当たりましては、地方自治の尊重あるいは国、地方を通ずる行政の簡素合理化観点に立ちまして、行政の仕組みを弾力的、効率的なものに変えていく必要があります。特に、臨調答申を踏まえまして、地方団体の自主性、自律性を十分発揮できるよう、特に住民に身近な行政はその身近な地方公共団体において執行できるように今後とも配慮してまいりたいと思い、国と地方の役割り分担あるいは財源の調整等についても幅広く検討してまいるつもりであります。  なお、補助金の整理合理化財源、費用負担のあり方についても同じく検討してまいるつもりであります。  所得税減税について御質問がございました。  政府は、与野党の合意を尊重し、財政改革の基本的考えを踏まえつつ、減税実施のために真剣に検討を進めてまいる所存でございます。減税規模については、景気の動向、税収見通し等を踏まえ、税制調査会における審議等も必要でありまして、現段階で具体的に申し上げることができないことを御理解いただきたいと思います。いずれにせよ、与野党の合意を尊重し、努力してまいる所存でございます。  次に、専売納付金特例措置について御質問をいただきました。  たばこは、財政専売物資と位置づけられておりまして、財政の事情あるいは国民の負担の状況公社の経営状況等を勘案して小売定価を決定する性格のものであると心得ております。五十五年の納付金率法定の際の制度改正も、国の財政上の観点からの定価改定を禁じている趣旨のものではないと考えております。また、専売納付金特例措置は、公社の財務状況を十分勘案して、五十八年度及び五十九年度限りの措置として行うものでございまして、五十五年制度改正の基本を変更するものではございません。  次に、グリーンカード制について政府責任を問うという御質問でございました。  グリーンカード制は、昭和五十五年の第九十一国会政府提案として成立させていただいたものでございますが、その後この制度をめぐりましてさまざまな論議や経済的変化も生まれました。昨年八月、多数の議員の賛同のもとに、グリーンカード制度の五年延期法案が議員提案として提出された次第でございます。  この法案は昨年の十二月二十五日廃案となりましたが、その後の前後の状況からいたしまして、このグリーンカード制を円滑に実施できる状況にないと考えまして、税制調査会にお諮りをし、この際、政府提案によりグリーンカード制度を三年間凍結することとした次第でございます。しかし、これによっても、適正公平な利子配当課税の実現という政府基本方針はいささかも変わるものではございません。  残余の御質問は担当大臣から御答弁をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私に対する御質問お答えを申し上げます。  まず、原油価格引き下げそのものは産油国の経常収支をある程度悪化させる、これは当然、富の移転でございますからそういうことになるわけであります。ただ、産油国の対外資産の大部分を保有しております少数の湾岸諸国は、もともと石油収入に比して輸入額の少ない国でございますので、依然として黒字状態にあって直ちに対外資産を取り崩す必要はないのではないか、したがってその影響は限られたものであろう、オイルマネー の大幅な引き揚げはないであろうというふうに考えられます。  次が、国際金融危機につながるおそれはないかということでございますが、この下落に伴う産油国の経常収支の悪化は、一方では、今度は石油輸入国の経常収支の改善をもたらす。まさに富の移転でございますので、国際金融市場に対する影響はそれほど大きくないと考えられます。  ただ、メキシコ等の産油債務累積国の経常収支を悪化させて、外貨資金繰りを悪化させる要因の一つとなりましょうが、これは先般来IMFの協力を得まして、これら諸国において緊縮的な財政金融が営まれつつあるなどの対応が固められておりますので、国際金融不安に直ちに結びつくというふうには考えられません。  それから税収の問題でございますが、この問題につきましては、とにかく単純な計算をいたしますと、いわゆる石油税そのものの減収ということになりますと、これは為替レートにどのような影響が出てくるか等不確定な要因がございますが、したがって確たることを申し上げる——しかし竹田委員御例示になりましたが、大体考えておりますのが、一ドル原油価格が下がった場合の石油税収の減少見込み百二十億円と考えますと、その五倍なら、六百億円とおっしゃった数値そのものは根拠がある数字であると思います。  それから税収がどの程度今度は増加するかという面の問題でございます。  これは、全般的には企業部門の収益が改善されるなどによりまして税収面に好影響を与えることが期待されます。しかし、まだ備蓄の状況でございますとか、あるいは需給の状況でございますとか、また効果の及ぶ時期、程度等さまざまであると考えられます。一方、産油国向けの輸出はそれだけまた減っていくというマイナス面も指摘される、こういうことでございます。さらに法人税の場合は決算期がさまざまであります。そういうことからいたしまして、いままだ予測して数字を申し上げるような段階ではない、事態の推移を十分に見きわめて把握しなければならないと思っております。  それから今回の原油価格引き下げ問題について、原油価格の今後の動向とか円レートの問題、それから需給動向等々内外にどういうふうに対応するかというのがいささか不確定な要因がございますので、いわば影響と、それに伴うところの減収額をカバーするための税率を引き上げるというような考え方については、書いてありますとおりに、税制改正におきましても、「石油税については、その使途を拡大して代替エネルギー対象を含めることとし、税率をある程度引き上げることが必要と考えるが、昭和五十五年度においては、原油価格の上昇等により相当な石油税収が見込まれるところから税率は現行のまま据え置くこととする」、そういう答申が出されて、一応それが継続しておりますので、今後の問題でございます。  それからエネルギー対策費をこれによって削減するというようなことも、これまた税収の動向を見きわめた段階で通産当局とも十分御相談すべきことでありまして、そういうことを初めから念頭に置いて対応するという考え方はございません。  それから次が「増税なき財政再建」、これは総理からも御答弁がございました。とにかく、このたびの本答申を見ましても、これをてことすると同時に糧道を断つ、こういう言葉が使われております。まさにそれを体して対応しなければならない哲学である、こういうふうに私どもは考えております。  ただ、いろいろ議論がなされておりますが、私は、臨時行政調査会はまず歳出ということに対してさまざまのたとえば具体的な項目をもお示しいただきまして御答申をいただいておりますが、いわゆる歳入につきましてはその哲学そのものが提示されておるというふうに理解すべきである。とはいえ、だから大型間接税はいいのだなどというような短絡的な考えなどは持ってはいけないし、また検討したことも、指示を受けたことも、したこともございません。  それから不公平税制の是正というようなことについても書かれてございます。税負担の公平は、まさに納税協力を確保するために不可欠の前提でございますので、税負担公平確保観点から、絶えず社会経済情勢の変化に対応して今後とも必要な見直しを絶えずやっていく、こういう姿勢でございます。  それから社会保障負担の引き上げ等が示唆されております。制度的には西欧諸国に比べて遜色のないものになっております。今後さらに高齢化社会の進展や年金制度の成熟化等によって、現行制度のままでも給付は増大し、これに伴って費用負担も急速に増加するものと考えられます。したがって、これらの進展に対応して、社会保障施策が長期的に安定して有効に機能するような給付の重点化でございますとか効率化でございますとか、そして費用負担についても、それぞれ計画的に適正化を図っていく必要があろうというふうに考えておるわけでございます。  それから、いわゆる五十九年度特例公債脱却にかわる新たなる財政再建目標、これは総理から詳しくお答えがございました。さらに、借換債の問題につきましても総理からお答えがございました。  そして、定率繰り入れの問題でございますが、各年度の困難な財政事情にかんがみまして、また、国債整理基金資金繰り上公債の償還に支障のないところから五十七年及び五十八年の措置はとったわけでございますので、減債基金制度そのものを廃止する考えはございません。やはり基本的にはこれを維持していくべきであるというふうに考えております。五十九年度以降の取り扱いにつきましては、今後の財政事情国債整理基金状況等を勘案いたしまして、中長期的な視点を踏まえて検討すべき課題であると考えております。  中央政府地方自治体との役割り分担、これも総理からお答えがございました。  それから所得減税の時期、規模、また、製造たばこ小売定価改定の五十五年改正趣旨に反するではないかという質問総理からお答えがございました。この際、そのとおりでありますとお答えしておきます。  それから専売納付金特例措置を五十八年、五十九年両年度に限ることとしておるが、その理由いかん、これがありました。  今回の改定によりまして、公社にも一定割合の増収が見込まれることとなりますが、現時点における専売公社の損益見通しによりますならば、五十八年度及び五十九年度の二年間においては、この増収分を国に納付することとしても公社損益が赤字になることはないと見込まれるところから、二年間の特例措置として国への納付をお願いする、こういう考え方でございます。  それから、たばこの需要は減少傾向にあるという問題についてでございます。  今回の改定は、厳しい財政事情にかんがみて、前回の定価改定以降の物価の変動、財政専売物資としての性格等を勘案して、公社の理解と協力をいただいて行うものであります。定価改定によって一時的に需要が減少することはこれは避けられないと見込まれますが、公社の営業面の努力等によって、事業経営に大きな支障を生ずるということはないというふうに理解しております。  次に、外国たばこに関する問題でございました。  今国会で御審議をお願いしております五十八年度の関税改正法案が成立して関税が引き下げられる場合には、内外製品間の価格差が縮小することが予想されますが、外国メーカーとの購入価格交渉が終わっていない現時点で、小売定価がどうなるかを明確に申し上げることはできません。  今回の法案の成立は、外国たばこの価格も一本当たり一円引き上げられることとなりますが、今回の措置は、貿易摩擦にも十分配慮して、内外製 品とも原則として同額の引き上げとなるよう措置されておりますので、この定価改定によって内外製品間の競争条件には変化が生じないよういろいろな配慮をしておりますので、この点については諸外国からも十分理解してもらえるものであるというふうに考えております。  それからグリーンカードの適用延期問題、総理からお答えがございました。当時、提出者であったのが、私が大蔵大臣であり、今回の提案者もまた私でございます。そのことは、私なりに考えますれば、むしろ責任の所在をはっきりしたというふうに自分ではこれを考えております。  それから自賠責繰り入れを返すに際しての利子の問題でございます。  一般会計から繰り戻しに際し利子をつけないことにいたしましたのは、今回の財源対策においては、厳しい財政事情のもとで、五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的支出に対処するため、極力公債に頼らないで無利子資金確保するということで、広く特別会計等に協力をお願いしたところでございます。自賠責特会からの繰り入れもその一環でございます。一般的に、一般会計特別会計の間で行う繰り入れ、繰り戻し、これは国庫内部でのやりくりでございますので、利子を付さないのが原則であるというふうに考えております。それから累積運用益の一部を無利子で運用いたしましても自賠責特会の運用そのものに支障を来すものではないというような考慮をいたしましたので、これは御理解を賜りたいと思います。  それから車検期間三年物の税の問題でございます。  この点につきましては、自動車重量税税率は、現在、車検の有効期間が二年の自動車と一年の自動車に区分して定められておりますが、先般の道路運送車両法の改正によりまして、本年七月から自家用乗用車の新車新規車検有効期間が三年に延長されるため、今回新たに車検の有効期間が三年の自動車に対する税率を設けることとし、その税率は、現行において車検の有効期間が二年の自動車税率が一年のものの税率の二倍とされておることとの権衡を図るために、二年の自動車税率の一・五倍とすることにしたものでございます。  車検延長に伴いまして税率の割引制度導入すべきであるという御意見につきましては、自動車重量税が前払いであるとの理解に基づくものと思われますが、しかし自動車重量税は、昭和四十六年の創設時以来申し上げておりますように、自動車が車検を受け、または届け出を行うことによって走行可能になるという法的地位あるいは利益を受けることに着目して課税される一種の権利創設税でありますので、前払いという性格を有する税ではなく、割引制度というものをとる性格のものではないというふうに考えております。  大変長くなりましたが、以上で私のお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣塩崎潤君登壇拍手
  13. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 竹田議員お答え申し上げます。  石油価格の低下は、先ほど総理から申されましたとおり、基本的には石油輸入国にとって交易条件の改善に伴う実質所得の増加をもたらしまして、ひいて世界経済好影響を及ぼすものと判断いたします。  まず、先進国経済でございますが、約三百十億ドルと見られますところの石油輸入代金の支払いの減少によって実質所得が増加すると見られております。OECDは、これを一年目には〇・四五%、二年目には〇・六%程度の増加と推計しております。次に、非産油発展途上国経済は石油代金支払い減から国際収支が改善し、債務累積の問題も緩和すると言われております。一方、産油国経済は約三百四十億ドルの石油代金の収入が減少するものと見込まれ、あるいは開発プロジェクトの見直しオイルダラーの引き揚げ等の影響が見られ、債務累積の問題にも影響がある、この点については注目しなければならないと考えております。  次に、わが国経済に対する影響でありますが、石油輸入国として一五%程度の石油価格の低下は、現在の省エネルギー状況のもとでは、わが国産油国に支払う石油輸入代金約六十五億ドル減少するものと見込まれまして、そうして産業に対してはコストの低下から企業収益の改善があると見られます。GNP増大の要因であることは言うまでもございませんが、企画庁のモデルでは、一年目には〇・三五%、二年目には〇・九%と一応推測されております。今回の石油価格の低下の問題は、今後とも省エネルギー体制、代替エネルギー開発体制を維持しながら、経済活性のために、経済の上に生かしてまいりたいと存じます。  お尋ね国際金融上の懸念の問題につきましては、大蔵大臣と同意見でございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  14. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私に対する質問でしたのに、総理、大蔵、いま経企庁長官は代替エネルギー計画も変えないという通産省政策までちゃんと述べてくれましたので、私の方はもう残された問題はわずかでありますが、ここで皆さんに、あるいは国民の皆さんにも訴えておきたいことは、私たちは、かつて第一次石油ショックということで、みっともない話でありますが、いろいろな買い占めとか大騒ぎをいたしました。  現在、私たちが対処しなければならぬのは、確かにOPECの国々が一応カルテルの崩壊を免れるための妥協をした。しかし、それは複雑なものであって、イランは価格についてなおはっきりしない。サウジアラビアは数量について調整国という立場で存在しておる。北海油田も価格差の問題がまた揺らぎ始める。引き金は北海油田だったわけであります。そういうことがいわゆる先様の事情であるということです。  そして、いま日本に来ている油がすぐに五ドル安くなるわけではないので、いま向こうにあるのをこれから幾らで買って持って帰ってこれるか。そしていま備蓄その他タンカー輸送も含めて、国内に、日本の手にあるもの、いまの値段から言えば高値です。それとまぜながら、そして最終的に五ドル安いもので買い付けて持ってこれたとして、それが全般的に行き渡るのは三カ月ぐらいの日数を要する問題である。したがって、そういうことを考えながらじっくりとこの問題は取り組んでまいる必要があるのではないかと考えておるわけであります。  しかしながら、御質問の中にありました長期……(「上げるときは船の上にあるのに上げたじゃないか」と呼ぶ者あり)だから、上がったとき下がったときいろいろあるわけですが、今回の下がり方も、それは二ドルのものが三十四ドルに上がった、それから五ドル下がったわけですから、そこのところを冷静に分析して対応しませんと誤ったことになりますので、たとえば長期エネルギー需給見通し等については、これはやはり長期的なものですからもう見直し作業に入らせております。  しかし、電気料金の御質問が一つ出されましたけれども、電気料金もそうでありますし、ガス料金もそうでありましょうし、あるいは石油の問題は、総理から答えられましたとおり、現在でもすでに乱売合戦が末端で起こっていて、石油業界というものはいまでも大変な状態にあって、値下げをした後はどうなるのかという問題、こういう問題等を踏まえなければなりませんので、全般の長期的に見たメリットというものは何を目標に、仮にこれを使うといえば利用し、それによって活気を与えるとすれば国民全般にその恩典が、私たちが努力してもらったものじゃない、向こうが勝手に決められたもので、結果ありがたいことでありますから、これを心から押しいただいて、国民みんなが幸せになるような経済政策の展開というものをやりたいというのが私の考えでございます。(拍手)     ─────────────
  15. 徳永正利

    議長徳永正利君) 桑名義治君。    〔桑名義治君登壇拍手
  16. 桑名義治

    ○桑名義治君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりております昭和五十八年度財源確保法案以下三法案につきまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。  中曽根内閣が組閣されて四カ月足らず、この間の総理の一連の発言内容は、国民に軍拡、憲法改正、そしてまた国民福祉の後退というまことに憂うべき危険なかつ暗い社会へのイメージを与え、今後わが国はこれに向けてひた走ることになるのではないかという不安を抱かせているのであります。  事実、新内閣による最初の予算である五十八年度予算は、防衛費の六・五%増を中心に、国家安全保障関連費を突出させている一方で、社会保障関係費や文教関係費あるいは地方財政関係費等の国民生活に直接関係のある経費は、軒並み実質マイナス予算が組まれているではありませんか。  さらに、重大な問題は、政策運営の失敗によって、五十六年においては戦後初めての赤字決算、続く五十七年度には六兆円余の税収欠陥が生ずるに及んで、鈴木内閣が公約してきた五十九年度赤字財政脱却目標とする財政再建計画はあえなくも崩壊してしまったのであります。  これを受けた中曽根内閣が提出する五十八年度予算は、新しい財政再建計画のもとにその第一歩を踏み出すものであることを国民は期待していたはずであります。ところが、政府の提出した「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」によりますと、どのような手法によっていつまでに赤字公債依存の財政から脱却しようというのか、具体性のある内容は何一つ示されておりませんが、脱却の時期と手法をお示し願いたい。  また、これまで国会に提出されてきた「財政の中期展望」も「中期試算」と名を変えて提出され、三年ないし七年後に赤字公債をゼロとするならば、それぞれ増税または歳出削減によって調整しなければならない金額は幾らになるという、あたかも民間研究機関による試算のごときものを政府の名において提出しているにすぎないのであります。また、予算提出時に新しい再建計画が間に合わなかったからといって、そのまま放置されていいものではありません。いつまでに提出するのか、明確にしていただきたい。  さらに、新しい財政再建計画を策定するに当たっては、これまでの計画がなぜ崩壊したのか、その原因が究明、分析され、その反省に立って作成されたものでなければなりません。原因分析はすでに財政当局において行われていると思われます。あわせてこれをお伺いいたします。  次に、五十八年度予算の特色の一つは、税外収入依存の予算であるということであります。五十兆円余の歳出を賄うのに税収は三十二兆円余しか期待できない。そこで、十八兆円の歳入不足を補うには公債の発行税外収入に依存せざるを得ないが、消化面から制約の大きい公債は十三兆円台にとどめ、残りを税外収入の増収に頼ろうとしたもので、五十八年度に臨時にかき集めた金額は二兆一千五百億円に上る巨額なものであります。  議題財源確保法案、たばこ値上げ法案は、赤字国債発行とともに、特別会計政府関係機関等からの税外収入かき集めのための法案であり、これらが臨調最終答申にある特別会計政府関係機関、特殊法人についての抜本的見直しを通じて吐き出させた税外収入ではなく、単に当面の財源調達の手段としてとられた措置であることははなはだ問題ではありませんか。このことについて御答弁願いたい。  また、財源確保法案においては、赤字公債の発行国債償還のための国債費定率繰り入れを停止する措置、そして特別会計や電電公社等からの税外収入増収策が一括して一本の法案として提出されていることであります。同じく財源調達の手段であるとはいえ、異質の内容を持つ措置を一括して提案することについては、五十六年度財源確保法に際しても問題とされたところであります。ところが今回は、歳出削減の手段である定率繰り入れ停止の措置までを、歳入確保ないし増収策の内容を持つものに無理やりに盛り込んでいるではありませんか。  特に、国債費定率繰り入れ停止の措置は本年度に引き続いてとられるものであり、国民の公債政策に対する信頼を辛うじてつなぎとめてきた減債基金制度について、これを根幹から揺るがすものとして無視できない重大な問題をはらんでいるからであります。異質の内容を持つ措置を、そして重要な問題を抱えている定率繰り入れ停止措置をなぜ単独法案として提出しなかったのか、大蔵大臣答弁を求めます。  二年続きの繰り入れ停止措置により、これまで国債整理基金の余裕金が底をつくと見込まれていた時期が六十二年度から六十一年度へと早まり、このため四年後の六十二年度には現金償還しなければならない金額をそっくりそのまま予算計上しなければならないことになるわけで、その金額は、元本償還額約五兆円、利子支払い費約十兆円、合計して十五兆円に達することになります。これで政府は、国民に安心して国債を買ってくれというキャンペーンができますか。市中消化の原則は守れますか。  現行財政法五条ただし書きで認められている国債日銀引き受けが発動され、終戦直後の悪夢として国民の脳裏に刻み込まれている財政インフレが現実のものとなることはないと保証できますか。また、これまでの財特法、そして今回の財確法案に明記されている赤字公債の借りかえは断じて行わないと確約できるのか、総理大蔵大臣の明確な答弁を求めます。    〔議長退席、副議長着席〕  次に、たばこ値上げについてであります。  政府の今回の値上げ理由として、たばこ定価の適正化を図るとしておりますが、その実体は、三千五百万人の喫煙者の負担増を求めることにより、税外収入としての専売納付金の増収をねらいとする目先の財源あさりそのものにほかなりません。五十三年度以降の減税見送りによって実質的な増税を強いる一方で、五十五年度の前回値上げから三年を経ずしてさらに値上げを行うことは、たとえ、たばこが嗜好品であるとはいえ許されることではありません。  また、臨調は、一昨年の第一次答申で工場の統廃合などによる合理化を、さらに昨年七月の基本答申においては、専売公社の特殊会社化、民営化を打ち出しているところであります。嫌煙権運動の高まり、対外摩擦の広がりなど、たばこ事業はいま新たな変革を迫られているのでありますが、臨調答申尊重の立場をとると言われる中曽根内閣は、今後どのようにして臨調答申を生かし、たばこ事業を改革していこうというのか。値上げ考える前に、国民の前にこれを明らかにすべきではありませんか。明確な答弁を求めます。  最後に、税制についてであります。  政府提出の財政の中期試算によりますと、赤字財政脱却の時期を三年後の六十一年度とすると、五十九年度の要調整額は約六兆円、最も遅い時期、七年後の六十五年度としても四兆七千億円に達するものと見込まれております。五十九年度にはもはや今回のような税外収入の増収に期待をかけることはできません。だとすると、歳出削減増税しか残された手段はないのでありますが、果たして五十九年度において四兆円ないし六兆円の歳出削減ができると考えておられるのかどうか、お伺いしたい。  また、三月十四日の臨調最終答申では、「増税なき財政再建」を堅持すべきことが強調されているのでありますが、臨調答申の「増税なき」の定義はまことにあいまいかつ不明瞭であります。「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない」という官僚の作文は、いかようにも解釈できるものであり、所得税を減税するかわりに付加価値税を導入 するなどの詭弁を弄する国会発言がこれまでにも何回か行われているのであります。この際、総理大蔵大臣は、将来増税の必要があると考えているならば、その時期と方法を国民に明確に訴え、国民の選択にゆだねるべきではないでしょうか。  政府は、五十三年度以降六年間も所得税減税を見送り、このため給与所得者を中心に所得税負担は激増、国民生活抑圧の大きな原因となっております。公明党は、消費支出を維持し、内需振興を図る意味においても所得税減税必要性を主張し続けてまいりましたが、事実、政府減税を放置して以来、景気は一向に明るさを見せず、これを反映して税収欠陥も拡大してきたではありませんか。いまこそ所得税減税による個人消費支出拡大を通じて景気の振興を図るべきではありませんか。  経済企画庁の一月の報告によると、財政赤字の約四割は不況によるものであり、当面必要なことは景気のてこ入れであると主張されております。経企庁長官の所得税減税必要性についての見解、そして原油価格引き下げわが国経済への影響等についての見通し、新経済計画策定の時期についての答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 桑名議員の御質問お答えを申し上げます。  まず第一は、赤字公債依存の財政体質からいつ脱却するかということでございます。  今後、財政改革との考え方に立ちまして、いままでは財政再建と言っておりましたが、財政改革という考えに立ちまして、歳出歳入構造合理化等を適正に行い、特例公債依存体質からの脱却と、さらに公債依存度引き下げということに努力してまいるつもりでございます。  その時期につきましては、経済の将来展望の検討や経済情勢等を勘案して今後具体的に検討してまいるものでございます。大体五年から十年の間をめどにいま策定しているところでございますが、特に経済指針ないし経済展望というものを企画庁を中心につくっていただいておりまして、その経済展望あるいは経済指針との整合性の上に立った財政計画をつくる必要がございます。そういう意味におきまして、五年ないし十年の間を目途にいま策定していただいているということでございます。  次に、財政再建計画について御質問をいただきましたが、これは先ほど申し上げましたような考えに立ちまして、社会経済情勢を踏まえつつ今後検討していくということでございます。  次に、五十九年度赤字公債脱却目標が達成困難になった原因は何であるかということでございますが、これは特に第二次石油危機を契機に世界経済が停滞をいたし、予想を超えるような税収伸び率の鈍化が起こりまして、こういうような財政を取り巻く環境が急激に変化しました結果、五十九年度特例公債依存体質からの脱却ということがむずかしくなったのでございます。  それから臨調答申特別会計特殊法人の抜本的見直しの提言があるが、五十八年度においてはこの税外収入増収措置を講じているのは問題ではないかという御質問でございます。  五十八年度におきましては、非常に厳しい財政事情のもとに、五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的な支出がございました。これに対処し、かつ、できる限り公債発行額の縮減を図る必要があったのでございます。このために特別会計特殊法人への支出を含む歳出全般にわたって厳しい見直し合理化を行い、一般歳出を前年度同額以下に抑制するとともに、特別会計及び特殊法人等に幅広く協力を求めて税外収入の大幅な増収確保を図ったものでございます。なお、臨調答申におきましても、特別の資金保有額が一定の合理的な限度を超える等の特別会計や相当多額の利益剰余金等を有している特殊法人からは納付を求めるよう提言されておる次第なのでございます。  次に、市中消化が困難になった場合に日銀引き受けを行わないと確約できるかという御質問でございます。  今後とも国債の消化に当たりましては、市中消化の原則を維持しつつ、日銀引き受けの方法によることなく、円滑な消化に努めてまいる所存でございます。  次に、赤字公債の借りかえの問題について御質問がございました。  公債は国の債務であり、その償還を確実に行うべきことは当然でございます。また、特例公債につきましては、従来から国会答弁あるいは法律上の規定によって借りかえをしないという方針をとっておるところでございます。  次に、専売公社改革問題について御質問がございました。  専売公社の経営形態の改革につきましては、昭和五十七年九月二十四日に決定されたいわゆる行革大綱によって対処しております。現在、政府・与党の内部におきまして公社形態の改革問題について鋭意検討中でございます。  なお、葉たばこ耕作の取り扱いや小売人の扱い等、関係方面と十分調整を図ることが必要でございまして、目下鋭意作業をしておるところでございます。  「増税なき財政再建」について御質問がございました。  今後は財政改革考えに立ちまして、歳出歳入構造合理化適正化を維持していくべきものと考えております。その際には、安易に増税を念頭に置くことなく、徹底して削減を行ってまいりたいと思っておる次第でございます。  所得税減税と抱き合わせに大型間接税導入の意図があるのかという御質問でございますが、大型間接税導入につきましては、具体的に検討もしているわけでなく、指示もしておりません。  次に、所得税減税によって景気回復を図るべきでないかという御質問でございます。  財政困難な事情ではありますけれども、政府といたしましては、与野党の合意を尊重して、財政改革の基本的考え方を踏まえつつ、減税実施のため真剣に検討を進めてまいる所存でございます。  なお、与野党の合意は財源確保も含めてなされておりまして、特例公債をもって充てるべきでないことは当然でございますが、今後、財源問題につきましては、経済状況税収動向も見きわめ、国会における御論議も踏まえ、税制調査会にも御検討を願う等、精力的に努力してまいる所存でございます。  残余の質問は担当大臣から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私に対する御質問に対してお答えをいたします。  赤字公債依存の財政体質からの脱却の時期、これは総理からお答えがございました。  次に、財政再建計画をいつ提出するかという問題につきましては、先般来、財政改革に対する基本的な考え方、そういうものをお示し申し上げておるわけでございます。したがって、より具体的な改革の方向というものは、やはり経済の将来展望の検討や経済社会情勢をも踏まえながら、その都度できるだけ進んだものをお示し申し上げるということになろうかと思います。  それから内容の異なる財源確保のための措置を財確法として一本の法律とした理由は何か、こういう御意見を交えての御質問であります。  五十八年度財源確保法案は、五十八年度における特例公債発行国債費定率繰り入れの停止、自賠責再保険特別会計からの繰り入れ等の各種税外収入確保措置内容としておるということが一点、基本的にございます。  そこで、それらの考え方を踏まえまして一本の法律とした理由といたしましては、まず、いずれも財政運営に必要な財源確保するための措置であって、立法の動機、趣旨、これを同じくしておる。それから二番目には、いずれも基本となる制度に恒久改正を加えるものでなく、五十八年度特別措置としての立法、こういう点で法律の性格を同じくしておる。それから相互関連の問題がございます。すなわち、一つには、税外収入確保等により、それだけ特例公債発行額が縮減できるということ。それからいま一つは、税外収入確保は、広い意味国庫内部における繰り入れ及び納付に関する措置であるという点で一致しておる、こういうことでございますので御理解を賜りたいと思うわけであります。  それから減債制度に対する問題でございます。  五十七、八年度の定率繰り入れの停止は、まさに各年度の困難な財政事情にかんがみて、国債整理基金資金繰り上公債の償還に支障のないということから行うものでありますので、減債制度そのものを廃止するものではもちろんございません。  国債の個人消化というものは、今後とも国民の信頼を確保しながら進めていく課題でございます。  それから日銀引き受けの問題等については総理から御答弁がございました。あくまでも市中消化の原則でございます。  借換債も再三お答えいたしておりますとおりでございまして、従来からしないという方針をとってきております。今後の問題は、本当に中長期な立場から幅広く検討しなければならない問題である。  なお、中期試算で示された要調整額の歳出カットだけでやれるか、こういう御質問でございます。  いわゆる一定の仮定のもとに複数の試算を行っておるわけでありますので、等率、等差ということでありますから、いわば財政運営を進めていく上での手がかりというつもりでお示ししたわけでありますので、毎年度歳入歳出のギャップをどうするかということは、経済事情なり具体的な財政事情を踏まえて、一方また特例公債の減額はどうするかということで、予算編成の過程でその都度検討を進めていくべき課題であるというふうに考えております。  基本的には、まず特例公債依存体質から脱却して、さらには公債依存度引き下げに努めるという基本的考え方でもって臨まなければならない課題である、かように心得ております。(拍手)    〔国務大臣塩崎潤君登壇拍手
  19. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 桑名議員お答え申し上げたいと思います。  まず第一は、景気振興の観点から所得税減税を推進してはどうかというお尋ねでございます。  確かに、所得税減税は、それだけをとってみますれば、可処分所得の伸びを通じまして個人消費を押し上げ、貯蓄を増加する効果があると考えます。しかしながら、財政再建がきわめて緊要な折からでございます。減税を実施するためには何らかの財政的な対応が必要となるのでございまして、所得税減税景気全体への効果を論ずることは財政対応を離れては困難でございますので、これらの点を十分見守りながら、所得税減税の行方を注目していきたいと考えております。  第二は、原油価格引き下げ経済的な影響でございます。  先ほど御答弁いたしましたように、今回の一五%程度の石油価格の低下は、国際収支の面、企業収益の面、家計における消費の面、いずれも好影響をもたらすと考えておりまして、企画庁のモデルでは、一年目は〇・三五%、二年目は〇・九三%の増加があるものと推測いたしておるところでございます。  第三は、新しい経済計画の策定時期の問題でございます。  経済計画につきましては、これまでその計数等が拘束的、固定的に時に考えられ過ぎまして、経済の実情と乖離することがしばしばございました。このような観点から、中曽根総理の御指示に基づきまして、本年一月十三日の経済審議会におきまして、より長期、より弾力的、より柔軟という観点からわが国経済社会を展望し、経済運営の指針を示していただくように新たにお願いしたところでございます。  その具体的なスケジュールにつきましては、今後の審議状況、特に新しい構想をどのように取り入れるか、このような問題を慎重に御検討をお願いして、経済審議会委員の任期でございますところの四月を一応のめどにいたしまして、慎重に策定していただきたいとお願いしているところでございます。(拍手)     ─────────────
  20. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 近藤忠孝君。    〔近藤忠孝君登壇拍手
  21. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表いたしまして、財源確保法案等の三案について総理並びに関係大臣に質問いたします。  昭和五十八年度予算の基本的内容は、総理の不沈空母発言、三海峡封鎖、一千海里航路帯防衛などに見られるような、日本をアメリカの世界戦略の前線基地にするための軍備増強と、大企業に対する補助金、海外協力費、エネルギー対策費などを増額し、これを聖域化するものであり、本法案はその歳入面の裏づけとなるものであって、断じて容認できません。  本法案は、内部留保の積み増しで余裕のある大 企業への課税強化はすべて見送り、巨額の国債を引き続き発行するとともに、勤労国民に対しては実質増税など弱者負担にその財源を求めているものであります。  そこで第一に、緊急の国民課題である減税問題についてお尋ねします。  この六年間連続して所得減税が見送られた結果、五十二年以降の六年間で、サラリーマン家庭を例にとると、収入は四割程度しかふえていないにもかかわらず、税負担は三倍近くにはね上がり、しかも低所得者ほど大きい負担増となっています。福祉、教育、中小企業対策費の削減や人勧凍結を行ったのに加え、このように財源の負担を国民に求めて、どうして国民消費購買力がふえますか。消費不況が進み、税収欠陥は一層増大するだけではありませんか。総理並びに関係大臣の答弁を求めます。  わが党は、すでに軍事費や大企業向け支出の大幅削減財源とし、一兆円減税を初め福祉拡充などを内容とする予算組み替え案を提案し、その実現を求めております。政府自民党の、財源も、時期も、規模も示さないあいまいな減税回答では国民はとうてい納得いたしません。わが党を除いた減税の合意が結局は実現せず、政府国民をだましてきたことにいま新たな怒りがわいています。財源などを具体的に示した明快な答弁を求めるものであります。  第二に、たばこの値上げも大衆の負担増による財源探しではありませんか。撤回を強く求めます。  第三に、不公平税制の温存についてであります。  本法案では、わが党が主張してきた株式の時価発行プレミアム課税、使途不明金に対する課税強化、退職給与引当金の見直しなどについては何ら手をつけておりません。財源不足の今日、これをあえて放置したのはなぜか。  次に、電力会社のために核燃料再処理準備金、アルミ会社などに特別償却制度など、大企業向けには新たな減税措置を設けたのはなぜか。また、コンピューター会社のための電子計算機買い戻し損失準備金、航空会社のための特別償却制度などを適用期限が切れているにもかかわらず延長する理由は何か、大蔵大臣答弁を求めます。総理、これらが大企業優遇ではないと言えるのか、答弁を求めます。  「増税なき財政再建」の看板の実体が、大企業に対しては「増税なき減税」、国民に対しては「減税なき増税」というのでは国民は納得いたしません。総理並びに大蔵大臣不公平税制の徹底した見直しをすべきではありませんか。  不公平税制の温存という点では、グリーンカード凍結とともに、五十九年から実施が決まっていた利子配当の総合課税への移行が何の代替措置もなく見送られたことも重要であります。これは勤労国民の重い税負担に比べてきわめて不公平な措置になりますが、総理はどう考えますか。  竹下大蔵大臣は衆議院本会議答弁で、今回の凍結の理由として、総合課税移行を前にして、金、ゼロクーポンへの資金のシフトが起こったこと、これら関係者による理解や協力が得られなかったことを挙げています。これら関係者とは、巨額の脱税資金や裏金を操る大資産家や政治家のことだと思いますが、彼らが不利になるようなことに理解や協力をするはずがありません。したがって永久に総合課税はできないことになりませんか。  わが党は、グリーンカード制導入の際、この制度が個人のプライバシーを侵害するおそれがある一方、高額所得者の名寄せが確保されていない欠陥などを指摘し、その導入には反対しつつ、利子配当の総合課税には賛成し、そのための接近策として、利子配当所得への課税をさしあたり五〇%に引き上げ、名寄せを徹底させることを具体的に提案しましたが、この必要性がますます高まっているのではありませんか。  以上、大蔵大臣答弁を求めます。  第四に、約七兆円の赤字国債発行についてでありますが、この額には大変な粉飾があります。国債整理基金への定率繰り入れを二年連続中止して一兆四千億円を浮かしたほか、自賠責特別会計などからかき集めた総額四兆七千億円を超える巨額の税外収入を捻出するなど、一回しか通用しない手品の数々を編み出しています。これらの手品がなければ赤字国債発行は優に十兆円を超えたでありましょう。政府は今年度予算国債を一兆円減額したと言っていますが、実態はこのように粉飾にすぎないではありませんか。大蔵大臣答弁を求めます。  このような巨額の国債発行の結果、国債償還額は昭和六十年度には十兆円を上回り、国債償還財源は六十一年には早くも底をつきますが、その際に、赤字国債の借りかえはもとより、国債発行困難を理由に、日銀引き受け資金運用部を通じての事実上の日銀引き受けは将来にわたってやらないと断言できますか。  本年二月、国会に提出された「財政の中期試算」と「国債整理基金資金繰り状況についての仮定計算」によれば、一般会計予算の負担が最も大ぎくなるCケースの場合、毎年十九兆七千三百億円もの国債費が必要となり、昭和六十年以降の十年間の国債費は合計百七十兆円にも達しますが、そのような元利払いを続けてもなお昭和七十一年末で百三十七兆円もの国債残高になるという、まさにサラ金状態であります。政府は、右の仮定計算を示しただけで、返済のための明確なプログラムを示しておりません。どう返済するのか、大蔵大臣は具体的な計画を示すべきではありませんか。  最後に、増税の問題であります。  竹下大蔵大臣は、直間比率の是正を積極的に主張し、予算委員会においても臨調最終答申大型間接税導入を否定していないと答弁するなど、大型間接税導入に強い熱意を持っているようであります。そもそも直間比率なる概念は形式的かつあいまいなものであり、したがってその是正といっても何の政策意味がないではありませんか。もし政府がEC型付加価値税を念頭に置いているとするならば、導入時のECと現在の日本では全く事情が異なることを強張しておかなければなりません。  ECでは戦後早くから各国で売上税が導入されており、付加価値税はこのかわりに導入されたのではありませんか。それでもインフレなど経済への悪影響が少なからず出ています。政府はこのようなローロッパの経験からどういう教訓を得ているのですか。また、大型間接税課税ベースを消費に求めるものですが、消費不況の現状において、わが国消費抑制的な税制を採用することは もってのほかだと経企庁長官は考えませんか。  また、竹下大蔵大臣は、どういう増税をやるかは権威ある政府税調が決めることだと言っていますが、一体政府税調は一般消費税の導入を否定した国会決議よりも権威があるとでも考えているのですか。総理並びに大蔵大臣答弁を求めます。  私は、政府国会決議を尊重し、財政民主主義を貫くことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 近藤議員の御質問お答えをいたします。  まず、所得税減税の問題でございますが、所得税減税につきましては与野党の合意が成立をいたしました。財政事情困難な時期ではございますが、政府としては与野党の合意を尊重し、財政改革の基本的な考え方を踏まえつつ、減税実施のため真剣に検討を進めてまいるつもりでおります。  次に、たばこの値上げについて御質問がありまして、撤回せよという御質問でございました。  五十八年度予算においては、きわめて厳しい財政状況にかんがみまして、歳出面において経費の徹底した節減合理化を進める一方、歳入面においても税外収入等についてこれを見直したわけでございます。  その一環として、たばこの小売価格につきましても、前回改定以降の物価変動、たばこの財政専売物資としての性格等を勘案して、負担の適正化を図る見地から関係改正法案を提出した次第でございます。  次に、租税特別措置等につきまして御質問がございました。  御指摘の各項目についてのお答え大蔵大臣にいたさせますが、いずれもそれぞれ理由のあるものでありまして、これらを一概に大企業優遇の措置であると考えることはいかがかと思います。  次に、利子配当の総合課税への移行を見送ったのは、これは国民の重い税金に比較して不公平ではないかという御質問でございますが、今回、諸般の情勢にかんがみまして、グリーンカード制の適用を三年延期することを提案しておりますが、適正公平な利子配当課税を実現するという政府基本方針にはいささかも変わりがございません。今後における利子配当課税の適正なあり方につきましては、早い機会に、国会での御議論を踏まえ、その上で改めて税制調査会で検討をしていただくことといたしたいと思います。  政府税調答申国会決議の関係について御質問がございました。  大型間接税導入については、検討していることも、指示していることもないのは、すでに申し上げたとおりでございます。そして、五十四年十二月の国会決議において「一般消費税」と指摘されましたいわゆる一般消費税を導入する考えは持っておりません。  残余の質問は関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お答えをいたします。  まず、所得税関係については総理からお答えがございました。  たばこの値上げの問題について、値上げは撤回すべきではないか、こういう御提案でございましたが、まさに厳しい財政事情にかんがみまして、税外収入確保の一環として、たばこについても、前回定価改定以降の物価変動等を勘案し、負担の適正化を図る観点から定価改定を実施することとしたものでございますので、値上げを撤回する意思はございません。  それから、それぞれの税目についての御批判がございました。そもそも不公平税制、この言葉の意味は使う人によってかなり違います。租税特別措置につきましては、今後とも税負担公平確保観点から、社会経済情勢の変化に対応して必要な見直しを行っていくわけでございます。  まず、その一つであります株式の時価発行に伴うプレミアムは株主が拠出した資本そのものであり、したがって、法人税は法人の稼得した所得に対して課税することとしております。株主が拠出した資本に対しては課税しない性格のものでございますので、これに課税することは適当ではないというふうに考えております。  次に、使途不明金についてでございますが、重課措置を講ずべきであるとの御提案については、使途不明金の範囲をどのように定めるかなど、制度上、技術上問題が少なからずございます。これらを含めて研究してまいりたいというふうに考えております。  それから退職給与引当金は、この問題につきましては私が前回大蔵大臣のときにお願いしたことがございますが、法人税の課税所得を合理的に計算するためのものでございますので、今後引き続き検討する課題であると心得ております。  それから、もろもろの使用済み核燃料再処理準備金とか基礎素材産業対策促進税制等々についての御質疑でありました。社会経済情勢の変化に対応して必要最小限の新規措置を講じようとする、これはまさに政策的なものでございますので、大企業優遇税制という批判は、私どもとはまさに見解を異にする、こういうところでございます。  それから電子計算機買い戻し損失準備金、航空機の特別償却等々、政策目的の重要性に顧みまして税制上の特別措置を引き続き講ずることとすることが適当である、こういう考え方に至ったわけであります。  それから利子配当課税の問題、グリーンカードの問題でございます。  総理からもたびたびお答えがあっておりますが、適正公平な利子配当課税を実現するという政府基本方針にはいささかも変わりないところでございます。  それからグリーンカード制度の適用を三年延期して、その間、利子配当課税制度全体を現行のままにしておいて、そして種々御検討いただく問題でございますので、直ちに源泉分離税率を五〇%引き上げるという考え方はございません。  非課税貯蓄の名寄せ等の問題につきましては、事務量の許す範囲内で効果的にこれは実施していかなければならないと思っております。  それから国債を一兆円減額したと言うが、もろもろの税外収入でもって粉飾したではないかと、こういう御意見を交えての御発言でございました。  五十六年度決算不足の補てんの繰り戻しという五十八年度限りの臨時的な支出に対処する必要があったもろもろの措置でございますので、粉飾決算という評価は当たらないと思っております。  それから特例公債の借りかえ、これはもちろん 従来からの方針を今日までとっております。将来の公債償還の問題につきましては、中長期的な視点に立って幅広く検討をしていかなければならない問題である。  日銀引き受けなどはせず、市中消化の原則、これを堅持していくのは当然のことでございます。  それから赤字国債発行についてのいわゆるプログラムを具体的に示せと、こういう御指摘でございます。  まず、五十八年度予算を編成して御審議いただいております。これで合理化に努めたわけでございますが、今後ともこれをさらに進めていって、そして各般の事情を聞きながらこれに対応していきたいということでございます。  それから直間比率の問題、総理からもお答えがございました。いわゆる直間比率というのは、これは分母、分子ともに、そのときどきの経済状態の変化によって変わってまいります性格のものでありますので、あらかじめアプリオリに決めるべきものではございません。むしろ税体系という言葉でもって言った方が正確かなというふうにも思っておりますが、いまいろいろな御指摘をいただいておりますが、政府といたしまして、いまこれに対して検討を開始したとか、指示を受けたとか、そういうことはございません。  それからEC型付加価値税の問題等についての御意見を交えての御質問でありましたが、やっぱり国の歴史、国民性、国際情勢、そしてその時点での経済社会事情を背景に、各国固有の観点からそれぞれ国民が行った選択の終結というものがそれぞれの制度でございますので、それについてはまたいろいろな長所、短所があることも事実でございます。  それから国会決議、これが重要なものであるということは十分承知いたしておるところでございます。税制調査会は、権威あるという表現を使いましたが、権威のないものではないというふうにお答えしておきます。(拍手)    〔国務大臣塩崎潤君登壇拍手
  24. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 近藤議員お答え申し上げます。  御質問は、いずれも所得税減税消費購買力との関係の問題でございました。  まず第一に、所得税減税の見送りは、減税なき場合におきまして、いわゆる所得税の累進税率の構造から可処分所得の伸びが少なくなり、消費購買力の伸びが低くなることは当然のことでございます。しかしながら、所得税減税の問題は、現在の財政事情のもとでは減税財源を抜きにしてその経済効果も語ることはできないと思います。  たとえば、いま御指摘の大型間接税がその減税財源である場合には、確かに直接税に比べまして貯蓄じゃなくして消費そのものでございますので、消費抑制の効果が働くことは当然でございます。しかしながら、いま総理大蔵大臣も言われましたように、大型間接税につきましては全く検討もしていないということでございますので、この経済効果等についての論議はいまその段階ではないと考えます。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  25. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 柄谷道一君。    〔柄谷道一君登壇拍手
  26. 柄谷道一

    ○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました大蔵関係三法案について、総理並びに関係各大臣の御所見をただします。  まず、五十八年度財源確保法案についてお伺いいたします。  最近のわが国経済の長期に及ぶ景気低迷は、世界不況の余波という側面があるとはいえ、政府政策運営の拙劣さが必然的にもたらした政策不況と言うべきであります。すなわち、政府は、わが党が再三にわたって提唱した「積極的経済政策の展開」という主張を無視し続け、「五十九年度赤字国債脱却」という方針に固執して長期的展望を欠き、財政が持つべき景気調整機能を全く無視した財政運営をとり続けてきたことがそれであります。われわれが要求した所得税や中小企業投資減税、公共投資の拡大と効率的な運用などの積極的な景気対策を講じなかったばかりか、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことが起因して、財政赤字、機械歳出削減、低成長税収不足財政赤字拡大という悪循環をもたらした政府責任はまさに重大であると言わなければなりません。  「経済はジリ貧、財政はドカ貧」となった原因について、政府は、第二次石油危機の影響世界経済の停滞に責任を転嫁していますが、それらの影響のほかに、政府経済財政政策の失敗を率直に認め、これを改めて、行政改革景気回復の両立を図る計画的かつ実行可能な財政再建を推進することが、財政の帳じり合わせとも言うべき財確法案以上に重要であると考えるが、総理の明快な答弁を求めたい。  また、それに関連して、政府は、衆議院段階の審議において、「景気浮揚に役立つ相当規模減税実施」を約束されたが、全野党や労働組合、日本商工会議所の要求、日経新聞を初めとする各紙の社説、日本経済研究センター、経済社会政策研究会等の提言や、三月二日の衆議院予算委員会でのわが党の岡田議員質問に対する経企庁長官の答弁等々から見ても、景気浮揚に役立つ減税とは、少なくとも一兆円を下回らない規模のものでなければならないと考えますが、総理大蔵大臣並びに経企庁長官は、この減税実施の約束の内容をどのように理解しているのか、率直にその考え方を述べてもらいたい。  さらに具体的に質問するが、社会資本の整備充実と景気回復を図るには、五十八年度公共事業の大幅な上期前倒しと下期の追加措置が必要と考えられるが、政府の見解はどうか。臨調最終答申に盛り込まれている「増税なき財政再建」の基本方針は今後とも貫き通すのか。また、「増税なき」という定義や直間比率見直し大型間接税導入に関する政府の統一的見解と、その景気と物価に与える影響をどのように考えているのか。赤字国債脱却目標時期はいつにするのか。仮に現在それが定かでない場合は、いつ国民の前に明らかにするのか。新たな経済計画はいつ、いかなる形で公にするのか。今後は「計画」という名を冠しないのか。もしそうであるとすれば、その理由はなぜか。  以上の四点について、総理及び関係大臣の所信をあわせて承りたい。  わが国財政は大量の国債残高を抱え、憂慮すべき状態に立ち至っているにもかかわらず、政府は、臨調からの指摘のごとく、来年度徹底的な歳 出構造の見直しに十分着手しないままに、特例国債発行のほか、国債費の定率繰り入れの停止、自賠責特会や特殊法人からの一般会計への繰り入れ、さらに別途補助貨幣回収準備資金の取り崩しを行うなど、財政技術的操作によって予算のつじつまを合わそうとしていると受けとめざるを得ません。  その結果、租税外収入は五十九年度約二兆円減収になると見通されるが、このような、制度の抜本的改革につながらない一時的な、しかも緊急避難的措置によって糊塗することは問題の先送りであり、財政体質改善の見地からは何の意味もないばかりか、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味できわめて問題であると指摘するものであります。総理の見解を求めるとともに、今後こうした措置は一切行わず、既往の措置は早急に解消することを確約できるのかどうか、大蔵大臣の御所見をお伺いしたい。  同時に、緊急避難的な措置の一つである自賠責特会からの一般会計への繰り入れについてでありますが、自賠責保険の収支が五十三年度以降、毎年赤字計上を続けている現状に照らし、運用益の半分に当たる二千五百六十億円を取り崩し、十年間も無利子で貸し付ける余裕など全くないと言わなければなりません。政府は、四千万人を超える自動車ユーザーの反対を押し切ってもこの措置を強行する方針なのか、また、その場合はあくまでも無利子貸し付けとするのか、さらに保険料の引き上げは本当に行わないのか。大蔵、運輸両大臣の明快な答弁をいただきたい。  次に、租税特別措置法改正案についてお伺いします。  政府は、今回、個人事業者の土地の評価減額及び同族法人企業の株式評価の改善を図ろうとしておりますが、これはかねてから中小企業の承継税制確立を提唱してきたわが党として評価するにやぶさかではありません。しかし、今回の改正では、個人事業者の土地の評価減額率が二〇%引き上げられるにすぎず、また株式の評価についても継承企業の理念からする抜本的な改正ということはできません。今後速やかに事業用財産の生前一括贈与制度及び相続税の納税猶予制度導入などを行うべきだと考えますが、総理並びに大蔵、通産両大臣の考えを明らかにしていただきたい。  また、今回の中小企業に対する投資減税は、年間投資額の少ない中小企業設備投資を誘発する効果はきわめて乏しいものと断ぜざるを得ませんが、中小企業の近代化、高度化を促進するとともに、景気回復を実効あらしめるため、投資促進税制をさらに拡充する用意はないか。あわせて、化学工業原料の安定確保のための原料非課税原則の実現などの特定基礎素材産業対策促進税制の充実及び減価償却の法定耐用年数の見直しについても両大臣の見解を求めたい。  最後に、たばこ定価法及び専売公社法の改正案について質問します。  今回の値上げのように安易に国民に負担を強いる前に、政府は専売公社合理化、効率化についてどれだけの努力をされたのでありましょうか。これまでの臨調答申公社の特殊会社化、民営化、要員の縮減などの改革案を示したにもかかわらず、政府公社経営の抜本的合理化にほとんど着手しなかったばかりか、臨調答申最大限尊重の公約に反して、政府行革大綱に専売公社の具体的改革手順を盛り込まなかったことはきわめて遺憾というほかはありません。行革に不退転の決意で取り組むという中曽根総理のリーダーシップがいま問われているのであります。臨調答申どおり専売公社改革を実行する決意があるのか、また、その具体的改革手順をいつまでに決定するのか、総理並びに大蔵大臣の所見を求めて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 柄谷議員の御質問お答えをいたします。  行革景気回復の両立を図る計画的かつ実行可能な政策展開が必要ではないかという御質問でございます。この点は全く私も同感でございます。  昭和五十八年度経済運営当たりましては、国内の民間需要を中心とした景気の着実な回復を図るべく努力してきておるところでございます。このため、引き続き機動的な政策運営に努めまして、民間の活力が最大限に発揮できるように環境づくりを行いたいと思っております。このような観点から、経済の動向を注目しながら金融政策をまず適切にかつ機動的に運営してまいりたいと思います。  次に、中小企業設備投資促進のための税制上の措置等の施策を推進することによりまして、民間投資を喚起したいと思います。なお、住宅建設につきましても金融、税制上の措置改善に努めたところであり、さらに素材産業の活性化や、中小企業の経営の安定化を図るためのきめ細かい対策も推進してきたところでございます。  次に、景気浮揚に役立つ相当規模減税とはどのくらいの規模かという御質問でございます。  政府としては、減税につきましては与野党の合意を尊重して、財政改革の基本的な考え方を踏まえつつ、減税実施のため真剣に検討をしてまいる所存でございます。その規模につきましては、経済の趨勢、税収の動向等を見きわめまして、さらに税制調査会における審議等も必要であり、現段階で具体的に規模を申し上げることができないのを遺憾に思います。いずれにせよ、与野党の合意を尊重し、今後とも努力してまいるつもりでございます。  さらに、景気回復のために公共事業の上期前倒し、下期の手当てが必要ではないか、そういう御質問でございます。  現在の景気状況は確かに盛り上がりを欠いているという状況でございますが、しかし最近の状況では、物価の安定基調、在庫調整の進展、さらに石油価格の低落傾向、あるいはアメリカ景気の底入れ、回復、こういう明るい面もありまして、経済動向を慎重に見守る必要があると思います。いずれにせよ、経済の現況についてどういうふうに対応するかという点については、予算の成立を待ちまして、そして経済情勢の推移を見つつ景気対策について検討を指示したいと、そのように考えております。  次に、増税なき財政再建方針を貫くかという御質問でございますが、これは貫く考えでございます。いわゆる大型間接税導入という問題については、これは指示もしておりませんし、検討もしていないという状況でございます。  赤字国債脱却の時期はいつであるかという御質問でございます。  脱却のめどを五年から十年の間というふうに一 応置いて検討していただいております。  経済計画につきまして、これは五カ年計画をさらに長期的に、より弾力的に改定してほしいということで、いわゆる中長期の展望あるいは指針というものをいまつくっていただいておりますが、これと整合性をもって財政計画もつくっていくべきであると考えております。  次に、新経済計画決定の時期、あるいは計画という名前をなぜつけないかという御質問でございます。  新しい経済計画につきましては、昨年諮問して以来、経済審議会で策定されてまいりましたが、非常に流動的要素も多く、かつ弾力的に対処していく必要があるために、先般の経済審議会におきまして、五年という期間を超えた長期的視野でわが国経済社会の展望と運営の指針をつくっていただくようにお願いをしたところでございます。  計画という名前をわりあいに敬遠しているという意味は、これは日本のようなこういう貿易、輸入輸出に依存する国におきましては、資源が十分あってアウタルキーができるような国の計画性をもって行うことはできもしないし、また不適当な点があるわけでございます。特に、為替の相場やあるいは石油の値段に日本国民経済は非常に影響されますけれども、そういう意味において、より弾力的な、そして見直しを常に行っていくような発想でこれを考えていただきたいというのが真意でございます。  次に、五十八年度は緊急避難的に税外収入の増収措置で切り抜けたとしても、五十九年度税外収入は相当な減収になるが、財政運営をどうするかという御質問でございます。  五十八年度におきましては、五十六年度の決算不足の補てんのための国債整理基金から繰り入れた二兆二千五百億円を返さなければならないという臨時的支出があるために、このように大幅の税外収入考えた次第でございます。五十九年度にはこのような決算不足補てん繰り戻しという臨時の支出もなくなりますが、しかし財政状況はかなり苦しいということを覚悟しなければならぬと思っております。いずれにいたしましても、財政改革という考えに立ちまして、歳出歳入構造見直しを徹底的に行いまして、臨調の線に沿って合理化をやっていきたいと思っております。  次に、中小企業の承継税制について御質問がございました。  中小企業の相続税につきましては、中小企業の事業用財産は農地と事情が異なるので、農地同機の特別措置はむずかしいと思います。しかし、昭和五十八年度税制改正におきましては、厳しい財政状況の中でも、取引相場のない株式の評価の改善合理化を行うとともに、個人事業者の事業用宅地の課税特例措置を講ずる等をいたしまして、円滑な事業承継に配意した次第でございます。  専売公社改革等について御質問がございましたが、これは臨調答申の線を最大限に尊重いたしまして、改革を推進してまいるつもりでございます。いま政府・与党の内部におきまして、その公社形態の改革について鋭意検討中でございます。  なお、葉たばこ耕作の取り扱いや小売人の扱い等につきましては、関係方面と十分な調整を図ることが必要であり、目下鋭意作業中でございます。  残余の御質問は担当大臣から答弁いたさせます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  28. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる減税問題、それから公共事業の上期前倒し等の問題等については、総理から正確にお答えがございました。  直間比率見直しの問題と、見直しの結果生ずる租税負担率の問題、こういう御意見を交えての御指摘がございましたが、直間比率見直しを具体的に検討しておるということも、指示を受けたことも、したこともない。やはり直間比率というものは、あらかじめアプリオリに決めるべきものではございません。したがって、その意味におきましては、税体系の見直しとでも言った方が本当は適当かなと思ってもみておりますが、税体系とまた税負担水準とは、概念的には別の問題ではないかという認識であります。  それから次に、赤字公債脱却目標時期の問題等々の御質問に対しては総理からお答えがございました。  いわゆる財政体質の改善につながらない緊急避難的措置である税外収入の増収措置、こういう前提のもとの御批判を交えた御質問でございましたが、総理からお答えもございましたように、まさに臨時的な支出に対処する必要等から臨時、特別に確保したというふうに御理解をいただきたいと思っております。したがって、五十九年度以降におきましても税外収入確保には努力はいたします。しかし。率直に申しまして、五十八年度のような大幅な増収ということは考えられないというふうに思っております。  それから自賠責の問題につきましても、臨時的支出に充てるということでお願いをしたものでございます。したがいまして、この問題につきましては、自賠責特会の運用に支障を来すものではないということ、そして国庫内部でのやりくりには利子を付さないというのが原則であるということ等々を御理解いただきたいと思っております。  それから自賠責の保険料引き上げの問題につきましては、単年度収支で見ますとすでに赤字ではございますが、収支残累計はなお若干の黒字が見込まれております。したがって、今後、保険金支払い限度額の引き上げ、または自動車事故の急増等による大幅な保険金支出増加の要因が生じない限り、いま直ちに料率の引き上げを必要とする状況にはないというふうに理解をいたしておるところでございます。  中小企業承継税制の問題。やはり中小企業の事業用財産につきましては、農地と同様の事情にはないということを御理解を賜りたいと思う次第でございます。  次に、中小企業投資減税でございますが、現行制度に工夫をこらした精いっぱいの配慮というふうに御理解をいただきたいと思うところでございます。  それから、たばこ値上げという安易に国民に負担を強いる前に、専売公社合理化、効率化、そしてまた臨調答申どおり改革、これに取り組め、こういう御鞭撻を含めた御指摘でございますが、専売公社の経営自体につきましても、葉たばこの減反、葉たばこ購入価格の抑制等によって過剰在庫の合理化に努めますとともに、定員の縮減、工場の統廃合等、経営の合理化措置を鋭意推進しているところでありますし、また、今後いわゆる臨調 答申に基づく公社改革問題につきましては、葉たばこ耕作の取り扱い、小売人の扱い、いろいろ慎重な判断が必要な問題もございます。また、税制のあり方等、事務的、技術的にも複雑な問題がございます。しかし、関係方面と十分調整を図って鋭意努力をしてまいりたい、このように考えております。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣塩崎潤君登壇拍手
  29. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 柄谷議員の御質問お答えいたします。  第一点は、所得税減税内容規模等についてどのように理解しているかという問題でございます。  この点につきましては、総理からも大蔵大臣からも御答弁がございました。私もまたその規模等につきましては数量的には申し上げられないと思うのでございますが、せっかく減税するわけでございます。景気浮揚に役立つような減税規模が望ましいと考えているところでございます。  第二点は、公共事業の前倒しの問題でございます。  これも詳しい御答弁総理からもございましたが、私どもは五十六年、五十七年度も前倒しをいたしたところでございます。その年度とどのように現在の経済状態が違うか、このような検討をいたしておりまして、ただいまお話しのように総理の指示をお待ちしているところでございます。  第三点は、大型間接税経済効果の問題でございます。  この問題につきましても、総理大臣も大蔵大臣も具体的な検討にも入っていないということでございますので、具体的な経済効果等につきましては論議の段階ではないと考えるところでございます。  第四点は、新しい構想の経済計画の問題でございます。  これも詳しい御答弁がございました。経済計画が与えましたこれまでの非常に拘束的なあるいは固定的な考え方から、より長期、より柔軟な取り組み方のもとで、経済審議会の委員の方々の任期を一応の目標に策定時期を考えていきたい、このように考えているところでございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣長谷川峻君登壇拍手
  30. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 柄谷議員お答えいたします。  自賠責特会からの一般会計繰り入れのことについては、先ほど竹下大蔵大臣から大体の御答弁がありました。私の方といたしますと、五十八年度予算編成に当たって、一般会計のきわめて苦しい財政事情にかんがみまして、自賠責保険の収支状況と運用益の保険契約者への利益還元等も考慮した上で、昭和五十八年度限りの臨時異例の措置として、三年据え置き後、七年間に分割して返還されるということを条件に、自賠責特会の累積運用益の約二分の一を一般会計繰り入れたものでありまして、先ほどの大蔵大臣の御答弁とあわせて御理解をいただきたい、こう思います。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  31. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 中小企業の承継税制、相続問題、生前一括贈与、こういう問題は総理から御答弁されたとおりでございます。  中小企業投資促進税制については、大蔵大臣が精いっぱいやりましたという表現を使いましたが、そのとおりだったろうと思います。私どもの方も、できれば対象も、建物あるいはリース、そういうところまで広げたかったし、税額控除も取り込みたかったのですが、何しろそれを全部やりますと、二千六百億の大蔵省は財源を調達しなければならないという大きなものでありますので、精いっぱいやったと言われる大蔵省の立場を私は理解し、しかしながら、その講じた措置の中で投資促進が行われるもの、その効果は約一千一百億に及ぶというふうに思っておりますので、積極的に中小企業の方々の投資意欲の促進に資したい、そのように考えております。  それから特定基礎素材産業に対する原料非課税の問題でございますが、これは多分国産ナフサの問題でございましょう。輸入ナフサ非課税も続けていっておりますから、これは通産省予算の仕組みのやりくりで、国産ナフサも輸入ナフサ同様、原料非課税の結果を同様にするようにいま措置いたしております。  それから減価償却、耐用年数等の問題は、確かにこれが陳腐化していきますと、アメリカの鉄鋼なり自動車なりがあのように急速に力を失ったのはよくわれわれが学ばなければならない姿でありまして、やはり日進月歩に近い産業の態様の変化に伴ってこれは考え直していってあげなければならない問題でありますが、大蔵大臣に減価償却あるいは耐用年数短縮というのは金を食うだろうなと言ったら、それをいま持ち出さぬでくださいという話でございますが、しかし、わが国産業が陳腐化して国際場裏から脱落するというようなことの絶対にないような是正だけは、必要なものはしていかなければならぬ、そのように考えます。(拍手
  32. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  33. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 日程第一 国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。公職選挙法改正に関する特別委員長福岡日出麿君。     ━━━━━━━━━━━━━    〔福岡日出麿君登壇拍手
  34. 福岡日出麿

    ○福岡日出麿君 ただいま議題となりました法律案は、国会議員選挙等の執行について、国が負担する経費で地方公共団体に交付するものの現行基準額を最近における賃金及び物価の変動等の状況に応じ実情に即するよう改めることを主な内容とするものであります。  委員会におきまして採決いたしましたところ、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  35. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) これより採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  36. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 総員起立と認めます。  よって、本案は全会一致をもって可決されました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会