○
国務大臣(
竹下登君) 私に対する御
質問に
お答えを申し上げます。
まず、
原油価格の
引き下げそのものは
産油国の経常収支をある程度悪化させる、これは当然、富の移転でございますからそういうことになるわけであります。ただ、
産油国の対外資産の大部分を保有しております少数の湾岸諸国は、もともと石油収入に比して輸入額の少ない国でございますので、依然として黒字状態にあって直ちに対外資産を取り崩す必要はないのではないか、したがってその
影響は限られたものであろう、オイルマネー
の大幅な引き揚げはないであろうというふうに
考えられます。
次が、
国際金融危機につながるおそれはないかということでございますが、この下落に伴う
産油国の経常収支の悪化は、一方では、今度は石油輸入国の経常収支の
改善をもたらす。まさに富の移転でございますので、
国際金融市場に対する
影響はそれほど大きくないと
考えられます。
ただ、メキシコ等の産油債務累積国の経常収支を悪化させて、外貨
資金繰りを悪化させる要因の一つとなりましょうが、これは先般来IMFの協力を得まして、これら諸国において緊縮的な
財政金融が営まれつつあるなどの
対応が固められておりますので、
国際金融不安に直ちに結びつくというふうには
考えられません。
それから
税収の問題でございますが、この問題につきましては、とにかく単純な計算をいたしますと、いわゆる
石油税そのものの減収ということになりますと、これは為替レートにどのような
影響が出てくるか等不確定な要因がございますが、したがって確たることを申し上げる——しかし竹田委員御例示になりましたが、大体
考えておりますのが、一ドル
原油価格が下がった場合の
石油税収の減少見込み百二十億円と
考えますと、その五倍なら、六百億円とおっしゃった
数値そのものは根拠がある数字であると思います。
それから
税収がどの程度今度は増加するかという面の問題でございます。
これは、全般的には
企業部門の収益が
改善されるなどによりまして
税収面に
好影響を与えることが期待されます。しかし、まだ備蓄の
状況でございますとか、あるいは需給の
状況でございますとか、また効果の及ぶ時期、程度等さまざまであると
考えられます。一方、
産油国向けの輸出はそれだけまた減っていくというマイナス面も指摘される、こういうことでございます。さらに法人税の場合は決算期がさまざまであります。そういうことからいたしまして、いままだ予測して数字を申し上げるような段階ではない、事態の推移を十分に見きわめて把握しなければならないと思っております。
それから今回の
原油価格の
引き下げ問題について、
原油価格の今後の動向とか円レートの問題、それから需給動向等々内外にどういうふうに
対応するかというのがいささか不確定な要因がございますので、いわば
影響と、それに伴うところの減収額をカバーするための
税率を引き上げるというような
考え方については、書いてありますとおりに、
税制改正におきましても、「
石油税については、その使途を拡大して
代替エネルギー対象を含めることとし、
税率をある程度引き上げることが必要と
考えるが、
昭和五十五
年度においては、
原油価格の上昇等により相当な
石油税収が見込まれるところから
税率は現行のまま据え置くこととする」、そういう
答申が出されて、一応それが継続しておりますので、今後の問題でございます。
それから
エネルギー対策費をこれによって
削減するというようなことも、これまた
税収の動向を見きわめた段階で通産当局とも十分御相談すべきことでありまして、そういうことを初めから念頭に置いて
対応するという
考え方はございません。
それから次が「
増税なき
財政再建」、これは
総理からも御
答弁がございました。とにかく、このたびの本
答申を見ましても、これをてことすると同時に糧道を断つ、こういう言葉が使われております。まさにそれを体して
対応しなければならない哲学である、こういうふうに私どもは
考えております。
ただ、いろいろ議論がなされておりますが、私は、
臨時行政調査会はまず
歳出ということに対してさまざまのたとえば具体的な項目をもお示しいただきまして御
答申をいただいておりますが、いわゆる
歳入につきましてはその哲学そのものが提示されておるというふうに理解すべきである。とはいえ、だから
大型間接税はいいのだなどというような短絡的な
考えなどは持ってはいけないし、また検討したことも、指示を受けたことも、したこともございません。
それから
不公平税制の是正というようなことについても書かれてございます。
税負担の公平は、まさに納税協力を
確保するために不可欠の前提でございますので、
税負担の
公平確保の
観点から、絶えず
社会経済情勢の変化に
対応して今後とも必要な
見直しを絶えずやっていく、こういう姿勢でございます。
それから
社会保障負担の引き上げ等が示唆されております。
制度的には西欧諸国に比べて遜色のないものになっております。今後さらに高齢化社会の進展や年金
制度の成熟化等によって、現行
制度のままでも給付は増大し、これに伴って費用負担も急速に増加するものと
考えられます。したがって、これらの進展に
対応して、社会保障施策が長期的に安定して有効に機能するような給付の重点化でございますとか効率化でございますとか、そして費用負担についても、それぞれ
計画的に
適正化を図っていく必要があろうというふうに
考えておるわけでございます。
それから、いわゆる五十九
年度特例公債脱却にかわる新たなる
財政再建の
目標、これは
総理から詳しく
お答えがございました。さらに、借換債の問題につきましても
総理から
お答えがございました。
そして、定率
繰り入れの問題でございますが、各
年度の困難な
財政事情にかんがみまして、また、
国債整理基金の
資金繰り上公債の
償還に支障のないところから五十七年及び五十八年の
措置はとったわけでございますので、
減債基金制度そのものを
廃止する
考えはございません。やはり基本的にはこれを維持していくべきであるというふうに
考えております。五十九
年度以降の取り扱いにつきましては、今後の
財政事情、
国債整理基金の
状況等を勘案いたしまして、中長期的な視点を踏まえて検討すべき
課題であると
考えております。
中央政府と
地方自治体との
役割り分担、これも
総理から
お答えがございました。
それから
所得減税の時期、
規模、また、
製造たばこ小売定価改定の五十五年
改正の
趣旨に反するではないかという
質問も
総理から
お答えがございました。この際、そのとおりでありますと
お答えしておきます。
それから
専売納付金の
特例措置を五十八年、五十九年両
年度に限ることとしておるが、その理由いかん、これがありました。
今回の改定によりまして、
公社にも一定
割合の増収が見込まれることとなりますが、現時点における専売
公社の損益
見通しによりますならば、五十八
年度及び五十九
年度の二年間においては、この増収分を国に
納付することとしても
公社損益が赤字になることはないと見込まれるところから、二年間の
特例措置として国への
納付をお願いする、こういう
考え方でございます。
それから、たばこの需要は減少傾向にあるという問題についてでございます。
今回の改定は、厳しい
財政事情にかんがみて、前回の定価改定以降の物価の変動、
財政専売物資としての性格等を勘案して、
公社の理解と協力をいただいて行うものであります。定価改定によって一時的に需要が減少することはこれは避けられないと見込まれますが、
公社の営業面の努力等によって、事業経営に大きな支障を生ずるということはないというふうに理解しております。
次に、
外国たばこに関する問題でございました。
今
国会で御審議をお願いしております五十八
年度の関税
改正法案が成立して関税が
引き下げられる場合には、内外製品間の
価格差が縮小することが予想されますが、
外国メーカーとの購入
価格交渉が終わっていない現時点で、
小売定価がどうなるかを明確に申し上げることはできません。
今回の法案の成立は、
外国たばこの
価格も一本
当たり一円引き上げられることとなりますが、今回の
措置は、貿易摩擦にも十分配慮して、内外製
品とも原則として同額の引き上げとなるよう
措置されておりますので、この定価改定によって内外製品間の競争条件には変化が生じないよういろいろな配慮をしておりますので、この点については諸
外国からも十分理解してもらえるものであるというふうに
考えております。
それからグリーンカードの
適用延期問題、
総理から
お答えがございました。当時、
提出者であったのが、私が
大蔵大臣であり、今回の提案者もまた私でございます。そのことは、私なりに
考えますれば、むしろ
責任の所在をはっきりしたというふうに自分ではこれを
考えております。
それから自賠責
繰り入れを返すに際しての
利子の問題でございます。
一般会計から繰り戻しに際し
利子をつけないことにいたしましたのは、今回の
財源対策においては、厳しい
財政事情のもとで、五十六
年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的支出に対処するため、極力公債に頼らないで無
利子の
資金を
確保するということで、広く
特別会計等に協力をお願いしたところでございます。自賠責特会からの
繰り入れもその一環でございます。一般的に、
一般会計と
特別会計の間で行う
繰り入れ、繰り戻し、これは
国庫内部でのやりくりでございますので、
利子を付さないのが原則であるというふうに
考えております。それから累積運用益の一部を無
利子で運用いたしましても自賠責特会の運用そのものに支障を来すものではないというような考慮をいたしましたので、これは御理解を賜りたいと思います。
それから車検期間三年物の税の問題でございます。
この点につきましては、
自動車重量税の
税率は、現在、車検の
有効期間が二年の
自動車と一年の
自動車に区分して定められておりますが、先般の
道路運送車両法の
改正によりまして、本年七月から
自家用乗用車の新車
新規車検の
有効期間が三年に延長されるため、今回新たに車検の
有効期間が三年の
自動車に対する
税率を設けることとし、その
税率は、現行において車検の
有効期間が二年の
自動車の
税率が一年のものの
税率の二倍とされておることとの権衡を図るために、二年の
自動車税率の一・五倍とすることにしたものでございます。
車検延長に伴いまして
税率の割引
制度を
導入すべきであるという御意見につきましては、
自動車重量税が前払いであるとの理解に基づくものと思われますが、しかし
自動車重量税は、
昭和四十六年の創設時以来申し上げておりますように、
自動車が車検を受け、または届け出を行うことによって走行可能になるという法的地位あるいは利益を受けることに着目して
課税される一種の
権利創設税でありますので、前払いという性格を有する税ではなく、割引
制度というものをとる性格のものではないというふうに
考えております。
大変長くなりましたが、以上で私の
お答えを終わります。(
拍手)
〔
国務大臣塩崎潤君
登壇、
拍手〕