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最高裁判所長官代理者(
栗原平八郎君) お答え申し上げます。
最初の
裁判官の問題は、本来は人事局所管でございますので、便宜私が家庭
裁判所の実務を経験した者の一人として申し上げたいと思います。
裁判官の心境として、人それぞれこういう
事件を担当したいという好みがあるわけでございます。一般的な
傾向からしますれば、若い人はどちらかといいますと、民事の
裁判をやりたいという、そういう志向が強いのではないかと思います。つまり、
裁判官というのは法律を専攻する、法律を学び、そして法律を生かし得るような、そういう職場につきたいというようなことで
裁判官になった人が多いわけでございます。かつて家庭
裁判所が創設されました当時におきましては、少年審判所その他で少年保護等に関与しておられましたような方々が多く家庭
裁判所に勤務し、言うならば少年保護に一生をかけようというような方がおられたわけでございますが、戦後の今日の修習制度のもとにおきましては、なかなかそのような人が得がたいということはまさしく事実であろうと思います。しかし、現に自分が家庭
裁判所勤務を命ぜられた
裁判官一人一人は、その仕事についての生きがいを感じなければ、あのようなめんどうな仕事は私はできないというように確信いたしておるものでございます。
それから、
調査官の問題を御指摘ございましたが、それは
裁判官によりましては、あるいは早く
事件をやれというようなことを指示される
裁判官が全くないかどうか、私はそれは全くないというようなことまでも申し上げかねるわけでございますけれ
ども、申し上げるまでもなく、家庭
裁判所の
使命とするところは、家庭の平和、あるいは少年の健全な育成を図るために、訴訟手続によらない、私
どもの言葉で言えば社会化された手続で個別的な
処遇を実現するということを
使命としておるわけでございます。そのためには、単に事実があるかどうかということだけではなくして、その事実の背景にあります問題点を
関係諸科学の知識を活用してそれを見きわめ、それに適応した
処遇を加えるということに、家庭
裁判所の持っております
処遇のあり方があるわけでございます。そういう
意味では、どの
事件につきましても、
調査官に
調査命令がおり、少年
事件につきましてはどの
事件についても
調査官に
調査命令がおりるというのが原則になっておるのもそういう趣旨でございます。
しかし、
事件はいろいろ多様でございます。非常に問題のある
事件もあれば、問題のない
事件もあるわけでございます。問題のない
事件につきまして、つまり昨今非常に
事件がふえておるということでございますが、その多くは年少少年のいわゆる軽微な
事件が多いわけでございます。この種の
事件につきまして、必ずしも詳しい、つまり少年の成育歴からさかのぼり、家族
関係まで全部
調査しなければ、当該少年が一過性の非行であるかどうかということを見きわめ得ないようなものではないわけでございます。そういう力のない
調査官を私
どもは養成しておらないわけでございます。したがいまして、そういう必要性がないだけでなく、そのような少年につきましては、むしろ早期に治療する、なるべく迅速に
処遇を出してやるということの方がむしろ望ましい。また、
裁判官の
立場からいたしますれば、そのような軽微な
事件につきまして
調査をする、
調査の
内容としては、少年のみならず家族
関係のプライバシーに触れるような事柄についても
調査をするわけでございます。そのような軽微な
事件について詳しい
調査をするということが、少年なり家族の人権とのかかわりにおいて、果たして相当かどうかという判断は、
裁判官として場合によってはせざるを得ない場合もあることを御了解いただきたいというように思います。
ですから、私
どもが考えておりますのは、軽微な
事件につきましては軽微な
事件にふさわしい
調査を、問題のある
事件につきましては問題のある
調査を、詳しい
調査、そのえり分けをどうするかということでございますが、昨今ではむしろ経験の浅い者が問題があるかないかということを、ただ
事件の非行名だけを見て選別するのではなくして、熟達した、言うならば主任
調査官等がそれに当たって問題があるかないかを選別しまして、それに応じてきめ細かい
調査を行うということが相当であろうというように考えておりますし、恐らく全国の家庭
裁判所もそのような線で
事件処理をしてくれておるものと
理解しておるわけでございます。
以上でございます。