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参考人(
前川春雄君)
景気の
現状は、私ども
停滞傾向が引き続き続いておるというふうに判断しております。一方、
物価の方は非常に安定しておりまして、先進国の中では一番安定しておるという状態でございます。そういう環境の中で、
景気にいい
影響があると思われる
施策をとることは当然であるというふうに思います。ただその結果、悪い
影響が出てくるのでは何にもならないわけでございまして、そういう点で金融政策の
運営も、その両者の比較考量の上に立って判断してまいらなければならないという
現状であろうと思います。
いま御指摘の
実質金利は、
物価が安定しておりますので、
金利水準が
実質的には高いのではないかという点は、最近の日本の
物価から言えば確かにそういうことは言えるであろうというふうに思います。ただ、
金利を下げてまいりますときに、
金利政策、公定歩合政策を私ども考えてまいりますときには、いろいろな要素を総合的に判断してまいらなければならないわけでございまするが、最近の状態から申しますると、一番の制約要因は
為替相場であろうというふうに思います。
為替相場につきましては、御案内のように、昨年は非常に大幅に変動をいたしました。それが
経済活動に悪い
影響があったというふうに思っておりますので、私どももそういう点からは相場を極力安定させていくということが必要であろうと思っております。
その際に、水準をどういうふうに考えるかということでございまするが、いまの
円相場は、とかく
円安の方に振れがちな状態であることは御承知のとおりでございます。ことしになりまして、二百三十円ぐらいのところがわりあい続いておるわけでございまするけれども、何か事がありますると、すぐ二百四十円ぐらいの
円安になってしまうということでございまして、非常に不安定であるというふうに思います。先ほど来、本
委員会で御議論になっておられまする原油
価格が
引き下げられたということは非常な朗報でございまするけれども、一方為替が
円安になってしまっては、原油
価格が
引き下げられた効果が日本の
国内経済に均てんしないということになりまするので、そういう意味から申しましても、
為替相場が
円安の方に振れないようにしてまいらなければいけないというふうに思っております。
そういう点で、公定歩合の操作ということが、この
為替相場にどういうふうに
影響するかという点につきましては、いろいろな要素がございまするので、なかなか一概には申せませんけれども、昨年来の
円安の背景の大きな要素、全部ではございませんけれども、大きな要素としては、内外
金利差があったというふうに思います。アメリカの
金利が高い、日本の
金利は安い、したがって、
金利差がございますると、どうしても資本が海外に流出するということになりまするので、
円安に働きがちだったというふうに思っております。そういう点から申しまして、公定歩合の
引き下げというのは、いまの海外の
金利を考えますると、内外
金利差をそれだけ広げるということになりまするので、それが
円相場を
円安の方に振れさせないように十分配慮してまいらなければいけないというふうに考えております。
為替相場市場、非常に不安定でございまして、なかなかその辺の見きわめは容易ではございませんけれども、私どもが
景気のためを配慮した
施策がかえって
円安に働き、それが日本の
経済全体のビジネスマインドなり
物価マインドに悪い
影響があるということでは、その大目的が達せられないわけでございまするので、そういう点は十分慎重に配慮してまいりたいというふうに考えております。