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1983-04-12 第98回国会 参議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)    午前十時十六分開会     ─────────────    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      伊藤 郁男君     栗林 卓司君  三月二十五日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     伊藤 郁男君  三月二十九日     辞任         補欠選任      伊藤 郁男君     柳澤 錬造君  三月三十日     辞任         補欠選任      大城 眞順君     藤田 正明君      初村滝一郎君     山本 富雄君      藤原 房雄君     和泉 照雄君      柳澤 錬造君     伊藤 郁男君  三月三十一日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     大城 眞順君      山本 富雄君     初村滝一郎君      和泉 照雄君     藤原 房雄君  四月十一日     辞任         補欠選任      田原 武雄君     桧垣徳太郎君      中村 禎二君     秦野  章君      藏内 修治君     板垣  正君  四月十二日     辞任         補欠選任      秦野  章君     宮澤  弘君      桧垣徳太郎君     福田 宏一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 岡部 三郎君                 高木 正明君                 瀬谷 英行君                 鶴岡  洋君     委 員                 板垣  正君                 大城 眞順君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 古賀雷四郎君                 初村滝一郎君                 福田 宏一君                 宮澤  弘君                 坂倉 藤吾君                 中野  明君                 藤原 房雄君                 下田 京子君                 伊藤 郁男君                 大石 武一君    国務大臣        農林水産大臣   金子 岩三君    政府委員        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        外務省北米局北        米第一課長    川島  裕君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○漁船損害等補償法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○水産業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十一日、田原武雄君、中村禎二君及び藏内修治君が委員辞任され、その補欠として桧垣徳太郎君、秦野章君及び板垣正君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  3. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。金子農林水産大臣
  4. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  漁船損害等補償制度は、昭和十二年の創設以来、漁船不慮事故による損害等てん補する漁船保険実施により、漁業経営の安定に重要な役割りを果たしてまいりました。さらに、昭和五十六年には、この制度一環として漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険本格実施することにより、他船との衝突その他の偶発的な事故により漁船船主がこうむる賠償責任等保険する制度を確立し、漁業経営の安定に一層の貢献をいたしました。  しかしながら、近年、漁場遠隔化漁船大型化等に伴って、積み荷の価額は高額化する傾向にあり、航海中の事故によるこれらの損害漁業経営に重大な影響を及ぼすようになってきておりまして、このような損害を適切に保険する制度の確立が強く要請されております。  政府におきましては、このような事情にかんがみ、昭和四十八年以降、漁船積荷保険臨時措置法に基づいて、漁船に積載した積み荷に関する保険事業を試験的に実施してきたところであります。今般、その実績等を踏まえ、本年十月から漁船損害等補償制度一環として漁船積荷保険を恒久的な制度として確立することとし、この法律案提出した次第であります。これにより、漁船損害等補償制度は、漁船に関する総合的な保険制度として整備されることとなると考えております。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、漁船損害等補償制度に新たに、漁船積み荷不慮事故による損害てん補する漁船積荷保険を追加することとしております。  第二に、漁船積荷保険は、漁船保険組合保険事業及び国の再保険事業により実施することとしております。  第三に、漁船保険組合漁船積荷保険引き受けは、漁船保険とあわせて行うこととしております。  第四に、漁船積荷保険保険料につきましては、漁業者負担の軽減を図るため、保険料の一部を国庫負担することといたしております。  第五に、漁船保険中央会が、当分の間、漁船積荷保険に関し、補完的に再保険事業を行うことができることとしております。  このほか、満期保険保険料算出方法改正等を行うこととしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。
  5. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。松浦水産庁長官
  6. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 漁船損害等補償法の一部 を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましてはすでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  まず、漁船積荷保険本格実施に関する規定について御説明申し上げます。  第一に、漁船積荷保険によっててん補される損害についてであります。漁船積荷保険は、漁船積み荷につき滅失、流失、損傷その他の事故により生じた損害てん補することとしております。  第二に、漁船積荷保険引き受け制限についてであります。漁船積荷保険引き受けにつきましては、漁船損害等補償制度漁船保険保険契約者による相互保険組合である漁船保険組合を基盤として成立しておりますことから、普通保険申込人があわせて申し込む場合等でなければ組合引き受けることができないこととしております。  第三に、漁船積荷保険実施機構についてであります。漁船積荷保険は、漁船保険組合が元受けを行い、政府が再保険を行うことといたしており、漁業者漁船保険組合との間に保険関係が成立したときは、これによって当該保険組合政府との間に組合保険責任の一部を再保険する再保険関係が当然成立することとしております。  第四に、保険料国庫負担についてであります。普通保険保険料の一部につき国庫負担をしている漁船に関し、漁船積荷保険が成立した場合には、漁船積荷保険についても新たに純保険料国庫負担を行うことといたしております。  第五に、漁船保険中央会補完保険事業についてであります。漁船積荷保険は、現在のところ加入隻数が十分多くないので、漁船保険組合の段階では十分に危険分散をすることができないおそれがあります。このため、当分の間、漁船保険中央会組合保険責任について補完保険事業実施できることとしております。  次に、他の保険仕組みの改善について御説明申し上げます。  第一は、満期保険保険料算出方法改正であります。満期保険保険料率のうち損害保険料に対応する部分については、従来は契約時点普通損害保険の純保険料を適用しておりましたが、これを毎年の保険料期間の開始時における普通損害保険の純保険料率を適用することといたしております。  第二は、漁船船主責任保険改正であります。船主責任制限法改正による責任限度額引き上げ等に伴い、漁船船主責任保険保険金額を引き上げることとしておりますが、この場合に衝突損害のうち船価を超過する部分については、これを一般損害てん補区分てん補できるよう法律規定を改めることとしております。  なお、このほか所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上をもちまして漁船損害等補償法の一部を改正する法律案提案理由補足説明を終わります。
  7. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 従来、この漁船関係保険の中で積み荷保険だけが試験実施のままになっておりまして、本格実施を早くやってもらいたいというのはそのたびに出ておったわけですね。それに関して、今回この損害等補償法の中に取り入れるということになりましたから、さらにこれに対して国の再保険、あるいはまた大変国財政事情が厳しい中で掛金に対する国庫負担等を含めて提起をされておるわけでありまして、その意味では大変前進をしたし、関係者の努力に敬意を表するわけであります。  ただ、前回この積み荷保険の期限が満了して延長をするときに、二百海里時代に伴う危険率変動ということが、これが問題になりまして、結果として本格実施にならなかったわけであります。したがって、その当時の情勢と今日の情勢、こういう立場から見て、この危険率変動に関する心配、あるいは危険率のみではなくって、いわゆる保険としての具体的な危険度の問題、これらに対する予測その他について一応今日までの試験実施期間中を通じてみて問題ない、こういうふうに判断をされたと思うんですが、その辺の認識はどうなってますか。
  9. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) ただいま先生おっしゃられましたように、この積み荷保険につきましては昭和四十八年に試験実施に踏み切ったわけでございますが、その後五年を経過いたしまして、昭和五十三年にこの試験実施をどうするかということで御検討をいただいたわけでございますが、当時は昭和五十二年三月の米国による二百海里漁業専管水域設定に伴いまして、ソ連あるいはアメリカ、さらには南方の諸国も含めまして非常に多くの国々が二百海里の設定を行いました。このために日本漁業にも大きな影響が出てまいりましたことは御承知のとおりでございます。このために漁船保険の設計上から申しましても、操業隻数変化いたしますために保険加入隻数がどうなるかという問題がございましたし、また事故内容変化いたしまして危険率影響を及ぼすのではないかという点が懸念されたところでございまして、かような非常に変動の大きい時代であるということから、昭和五十三年にはなお試験実施を続けるということで現在まで至ったわけでございます。  そこで、この十年の経過を経まして、現時点においてこの制度をどうするかということで非常に慎重な検討をいたしたわけでございますが、その後の経緯を見てみますると、確かに漁場が縮小し、あるいは漁獲割り当て量等が減少したという事態ではございますが、これによりまして操業隻数の総数あるいはトン数構成変化によりまして加入対象隻数変化した漁業種類も確かにあったわけでございます。しかしながら、各漁業種類とも保険加入隻数はさほど変化はしていなかったということ、それからまた保険金額あるいは加入率等も幸いにして安定的に推移してきているという事態でございました。また、事故の方も積み荷保険事故原因を精査してみますると、一番多いのは冷凍機故障が多くて、これが大体三一%でございます。それから、続いて座礁一五%、沈没一二%ということで、二百海里規制実施によりまして保険事故内容がさほど変化したというようには考えられなかったわけでございまして、当初予測したような大きな影響が見られないということから、今後においてもこのようなことによって運用上の問題が生ずることはないと判断いたしまして、今回本格実施に踏み切り、この法案を提出させていただいたという次第でございます。
  10. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そういたしますと、たとえば心配をされておったものがその後のこの補償制度に乗っかってまいりました立場から言えば余り関係がなかったと、こういうことになると思うんですがね。ただ、いま遠洋、あるいはイカなんかもそうですが、沖合い関係等いわゆる自主減船とのかかわりというものが、業界としてこの保険制度とのかかわりでどういうふうにとらえられておるんでしょうか。まだこれからさらに厳しい条件というのが、余り期待の持てるようなかっこうには浮かんでこないと思うんですね。そのまま推移をするんじゃないか。こうなってまいりますと、その辺との絡みといいますか、そこんところはどうですか。
  11. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに今後の日本水産業、特に遠洋沖合い漁業を考えてみますると、なお外国の二百海里の規制というものが強化される可能性がございますし、決して安定的であるということをここで申せるわけではないと思います。また、生産構造の再編成という観点から業界の方々の自主的な計画によりまして減船を推進し、このためにいろいろな財政資金等を設けまして漁業経営の安定に努めていかなければならないという事態があることも事実でございます。ただ、私どもの経験から申しますると、昭和五十二年、五十三年といったような非常に大きな漁業に 対する変動要因があった時代においてもこの程度の影響漁船保険にあったのみであったということを考えてみますると、まあある程度までの漸進的な変化というものはあろうと思いますけれども、あれに匹敵するような変化というものはそれほど起きることはないではないかというふうに考えられますし、また一方におきまして自主減船によって経営が安定し、また二百海里の規制につきましても政府外交政策等を展開いたしまして極力これを確保するということをやってまいりますればそのような変動要因を除去していくこともできるというふうに考えまして、将来につきましても本格実施ということに踏み切ってきた次第でございます。  かような観点から今後の問題、確かに先生おっしゃられるような問題ございますけれども、その状況を十分に見守りながら今後の制度というものを運用してまいりたいというように考えている次第でございます。
  12. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 わかるのですが、そうなりますと、たとえばこういうことは指摘ができませんか。たとえば積み荷保険加入率が非常に少ないわけです。加入率が少ないからいわゆる保険に対する影響が少なかった。仮にこれが加入率がふえてまいりますとその辺の影響というのは逆に相当はね返っておったというふうには考えられないのかどうか。言うならば、保険には入っていないけれども、本来保険加入しておるとすれば当然補償対象になっておったような事件というものがたくさんあったのじゃないのか、こういうことになりますが、その辺の数字は上がっていますか。
  13. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 数字としてきちんと分析をいたしているわけではございませんが、確かに現在の加入率が決して高い状態ではないということは事実でございます。  もしも加入率が非常に上がっていればあるいは影響があったのじゃないかというお考えをお述べになっておられるというふうに理解をするわけでございますけれども、私どももちろん今後とも国庫負担をつけまして相当加入率を高めていくということも考えているわけでございますが、やはり一つ小型の船が余り入っていないというところに大きな問題があるわけでございまして、さような面では二百海里の規制等によりますところの影響を受けやすいそういう漁船もございますけれども、さらに今後の期待をいたす特に中心的な部分はやはり小型と申しますか、零細な経営というところを中心にいたしまして加入制度を伸ばしていかなければならぬというふうに考えておりますので、さような影響は一部あるとは思いますけれども、全体としてはやはり今後の政策によって加入を伸ばしていけるというふうに考えている次第であります。
  14. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 加入を伸ばしていくというのは当然の仕組みなのですがね。伸ばしていったときの危険率というのはそのままでいいのかどうか、ここのところをきっちりやっぱり押さえておきたいと思うのです。私が申し上げるのは、いわゆる状況相当変化はしたけれども保険に対する影響は少なかった。保険に対する影響は少なかったということは、加入率が低かったから影響が少なかったというとらえ方ができるわけです。したがって、加入率相当増加をしておるとするならば状況変化に伴って相当損害補てんてん補というものが発生をしておったのじゃないだろうか、こういうふうに指摘をするわけです。したがって、それに対して一体どういう見解をお持ちなのだろうか。たとえばいま中小型の問題が出ましたが、仮に百トン以上の問題にいたしましても三七・六%の加入です。ということになりますと決して多い数字じゃないわけです。ここのところはどうだったのだろうか。たとえばソ連との関係、あるいは韓国との関係、北朝鮮との関係、こうしたところの問題点を含めまして一体どうなのだろうかというところを押さえてほしい。
  15. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに先生おっしゃいますように、この加入率が非常に高い水準を示しておりました場合には、あるいはこの二百海里の異常な大きな変動によりまして従来分析してまいりました動向とは違った動向があるいは出るかもしれません。しかし、そこは仮定の問題でございますから、たまたまこのような状態で従来までの経緯では大丈夫だったということを申し上げただけでございます。  したがいまして、今後さらに加入率を推進してまいりまして加入が上がってくる。しかし、一方で二百海里の規制等によりまして、さらにいろいろな影響漁業保険積み荷保険にも出てくるというような事態が起こりました場合には、当然それに対応したやはり損害率というものが出てまいりますので、料率の改定なり何なりによりまして整合性のある運用をしていくということが必要であろうというふうに思う次第でございます。
  16. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そこで、これはまあ基本的な問題として一点大臣お尋ねをしておきたいんですがね、大臣いいですか。  一つは、今日漁業環境を取り巻く状況というものは、これはもう前々から当委員会指摘をしておりますように、大変厳しい状況でいまだにそこから脱出ができないでおるわけですね。そういたしますと、これは漁業政策といいますか、水産政策全体をとらえてそれをどう好転をさしていくのかという対策が基本になければならぬわけです。そういう水産政策の中の具体的に保険分野で占める、いわゆる政策的位置づけというものが、これはまあ踏まえられて今回この改正案提出をされているとは思うんです。いわゆる政策保険という立場での位置づけと、その政策保険なるがゆえに具体的にそのことによっての効果というものがきちっと発揮をされなければならぬ、こういうふうに思うんです。そういたしますと、何かまだ政策保険としての位置づけにいくまでの内容というものは十分に検討されたんだろうかどうだろうか、こういうところが少し気になるんですね。それは水産庁の中にこの保険制度研究をしているひとつのいままでの経過、それは私も承知をしておりますけれども、少なくとも全体のいわゆる水産政策あるいは漁業政策という立場から踏まえて、この保険のあり方というのは一体これでいいんだろうか、ここのところについて今日現在として大臣はどういうふうに認識をされておられるのか、これちょっとお聞きをしたいんですが。
  17. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 御承知のとおり、日本漁船漁業石油の値上がりから大変経営に皆不安を抱くようになっております。  第二次オイルショックで物すごい石油の価格が高騰しましたので、自来、その後漁船漁業推移を見ますと、大変遠洋、特に燃油をたくさん消費しておる漁船漁業が、この燃油がコストの中に占める比率が物すごく大きくなりましたので、大変日本沖合い遠洋漁船漁業には、私は将来とも一抹の不安を持っておるのでございます。それがためには、やはりいわゆる動物たん白の二分の一は漁業資源で補給しておることを考えますと、日本食糧政策からして、国がもっと力を入れてこの漁業を守らなければならない。特に、いま触れましたソ日日ソばかりでなくして、日米関係にしましても、海外における二百海里以内を操業をしておる漁業状態は、特に条件としては年々悪くなっておる状態でございますから、いずれにしましても、日本漁業を守るためには、やはり政府ができるだけの助成、いわゆる農業政策に国が保護政策を積極的に取り組んでおることと同じような考え方で水産政策にも取り組むべきだと、このように考えております。  その一環として、いま積み荷保険制度が出ておるのでございますが、十年間研究期間を置いてその成案が得られたということで法制化しようとしておるのでございますが、いろいろ御指摘がございましたが、この制度自体でどれほど漁船漁業の、いわゆる漁業振興にプラスするだろうかというような疑問を持ってお尋ねになっておるようでございますが、その点は、やはりもっとこの制度を私は強化していかなければ、直ちに日本漁業振興に貢献するような、この性格のままでは成果を上げられないのではないか、このように考えて おります。  したがって、今度この提案されております積み荷保険制度を一応通していただきまして、後々はやはりこれからも熱心に検討を続けてまいりまして、改める時期が来ればまた改めていかなければならない、このように考えております。
  18. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 提案理由説明からいきますと、これで漁船にかかわる保険制度は一応完成をしたというふうな立場説明になっておるんですよね。だから、いままで研究してきて、大体研究してきたことについてはこれで全部卒業したから、だから後しばらくもうこれでないんだ、こういう認識だと困るものですから一つお尋ねをしたことと、もう一つは、いま大臣指摘をされていますように、燃油の高騰、漁価の低迷、二百海里時代という厳しい環境、これはいままでも何回かここでも論議をしていることなんですよね。  したがって、そういう状況の中で日本漁業を守るという立場から、抜本的な一つの組み合わせ、総合的なものというものが求められてきた。したがって、この保険制度改正についてもそういう基本的な漁業を生かしていく立場を踏まえて一番漁業者が求めること、同時にこの保険制度を活用することによって漁業がさらに健全化をされる、たくましさを持つという立場になっていかなければならぬわけですね。  そうしますと、何かまだいままでの流れで、確かに前進はしているけれども、今日の漁業の厳しさにぴったりきているのかどうかというと、まだまだ踏み切れない分野というのがずいぶんあったような感じがするわけですよ。  したがって、そこのところを大きくやっぱり踏み出しながら、国の財政事情環境も悪いですけれども、その中でやっぱり今日むしろ危機に瀕している漁船漁業全体の体制について力を注いでいく、こういう観点をぜひひとつ基本的に大臣としてきちっと持っておってもらいたいというふうに思うんです。よろしいでしょうかね。
  19. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 御指摘の点は十分私は理解をしております。  したがって、先ほども申し上げましたとおり、今後この漁船保険制度全般がこれでいいという一応のことは申しておりましても、やはりいろいろとこれからこれを実行して、仮に積み荷保険だけをとらえて考えてみましても、いろいろ私はやってみると手直しする問題が出てくる、このように考えております。  したがって、御指摘の趣旨を十分踏まえて積極的にひとつ取り組んでまいりたいと思います。
  20. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 まあ、いまの答弁で安心をして問題を提起をしていきたいと思うんですがね。  次に、積み荷保険加入隻数の問題、先ほども少し触れましたが、この加入隻数というのは、試験実施の出発以来ずっと年々ふえてはきているわけですね。ふえてはきておりますが、この制度の主眼というのは、今回の改正でも百トン以下にやっぱり主眼が置かれている。これは零細漁家を特に重視をしているという立場で私も賛成なんですが、問題はこの百トン未満が一三・九%という非常に低いわけでして、この低い原因というものは一体どこにあるのか。たとえば、入りにくい、加入しにくい条件というのは一体どこにあるのか。これについての水産庁としてのいわゆる原因調査、あるいはその結果分析、こういうものがどうされておるのか。そうしてその分析結果というものは今度の法改正にどう反映をされておるのか、ここのところをちょっと……。
  21. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに漁船積み荷保険加入状況は従来の試験期間中決して高いものではないと言わざるを得ないわけでございまして、加入隻数五十六年度で千八百四十隻でございます。積み荷保険の対象となっている漁船全体に対する加入率ということでは二〇・七%という状況であることも御承知のとおりでございます。  このように加入率が低い原因をいろいろ分析をいたしておるわけでございますが、この中にはやはり漁場が近くて操業日数が少ない、つまり、たとえば近海カツオのような場合には二、三日で操業が終わって帰港いたしますので、その間の危険が非常に小さいということでなかなか保険需要が起こらないという場合がございます。また、巻き網船でも日帰り操業している部分もかなりございます。それから沖底船でも一、二日くらいで航海終えて帰ってまいります。このような状態のものがございます。  それからまた、経営不振で加入実績に乏しいという状況のものもございます。たとえばイカ釣り船あるいはカツオ・マグロ船といったようなものがこれに該当すると思います。  それから事故が余りないといったものがございます。たとえば北洋のかごとか、あるいはサケ・マスはえ縄、サンマ棒受け網といったようなものがこれに該当すると思います。  このような幾つかの複合的な理由から現在の二〇・七%といったような加入率になっているわけでございますが、私どもとしましてはやはり特に零細な漁船というものが、保険料負担という観点から考えますると、やはり負担が非常に重いがためになかなか加入できないという問題があろうというふうに考えまして、非常に厳しい財政事情の折でございまして、この国庫負担をつけるということはなかなかむずかしかったわけでございますが、国庫負担を特にこの零細な企業がやっております漁船につきまして、その加入をふやしたいということで今回の改正の御提案をいたしている次第でございます。
  22. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうなりますと、いま長官の説明にありましたように短期で余り保険の価値を必要としない、しかし、いつ事故が起こるかわからない、特に海の場合は異常気象等の発生の関係等もありまして、たとえ一日の操業であっても本来なら保険制度があれば加入したい、こうなるんですね。たった一日の保険だったらこの制度でいいのかどうか、三日なら三日に相当するような保険制度というのは一体この仕組みの中にどう取り入れていくのか、これが私は漁業実態に即した保険制度だろうと思うんです。  そうなりますと今回の改正はまさにそこまで突っ込んだいわゆる論議あるいは改正の方法というものがなされておりませんね。これはやっぱり私は少し問題じゃないんだろうか、率直に言ってそんな感じがするんですよ。これからの検討材料ということにぜひしてもらわなきゃいかぬ、これが第一なんですがね。  いずれにいたしましても、この積み荷本格実施に伴いまして、これは水産庁としてもあるいは漁船保険中央会の仕事になるだろうと思うんですが、これやっぱり指導上の立場からいきましても、これからの加入促進といいますか、これは保険自体の維持の問題もありましょうし、それからそのことがやっぱり漁業者に与えるいい意味の影響、これもありますので、そういう方向をとらなきゃいけませんから、いわゆる加入促進計画、こうしたものが樹立をされておると思います。その辺はどういうふうになるんですか。  それからあわせてお聞きをしますが、たとえばそれぞれの漁業種類に伴って、先ほどの一日二日の問題じゃありませんけれども、漁業種類に伴ってその辺の加入のいわゆる一つの目標ですね、目安、この辺は促進計画と目標の設定の仕方とのかかわりは一体どうなっているんだろうか、これは説明がむずかしければ後でこういうふうにしていますよという資料等いただければそれはいいんですが。
  23. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 先ほど御答弁申し上げまして、余り加入が進んでない漁種につきましてこういう原因があるということを申し上げたわけでございますが、これはさような事態がございまして、と申しますのは、たとえば二、三日しか操業日数がなくて帰港するのでそこで保険需要がなかなか起こらないということを申し上げたわけでございますが、私はやはりこれらの漁船につきましても当然その二、三日うちで、あるいは天候の急変によってしけで転覆するということが起こるかもしれません。それはやはりそういうことで実際上加入していただかなければ、漁業政策上これ が十分に活用されているということじゃないと私は思います。さような意味で各漁業の種類につきましてやはりきめ細かな加入の促進策というものが必要であろうというふうに思うわけでございますが、特に今回の法律改正でお願いをしたいと思っておりますのは、かような観点で常に漁業者が考えますのは、負担する保険料とそれから起こる可能性のある事故率というものとの均衡関係を常に考えていくんじゃないかというふうに思うわけでございます。さような面で特に中小の漁船はその負担が大きいと感じることが多いと考えますので、さような意味で私どもとしては今回、非常に厳しい財政事情のもとでございましたが、国庫負担をお願いしたということでございます。  今後の加入の促進でございますが、ただいま申されましたような今後の各漁業種類ごとの加入の実態あるいはその操業の実態ということにあわせまして、今回の法改正を機に漁船保険中央会とも十分相談をいたしまして、せっかくの国庫負担もつくところでございますし、また同時に、今回は普及宣伝活動のための特別の助成ということも実は考えておるわけでございます。この補助のやり方も通じまして、特に小型の層を中心にいたしまして加入率を促進していくということを考えておる次第でございます。ただ、将来いつに何隻ということになりますと、なかなかこれは計画が立ちがたいことでございますので、現在の段階では特に計画的に何隻までいくということは考えておらないわけでございますけれども、昭和五十八年度予算では私ども五十六年の加入実績千八百四十隻を二千二百十七隻までもっていきたいということで、当面この助成を通じまして加入の促進に当たっていきたいというふうに考えている次第であります。
  24. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 先ほども触れましたが、この改正でまあ漁船にかかわるところの保険制度は一応体系的に全部出そろったと、こういうことになるわけですが、総じてこの制度の特徴というのは、これは普通保険加入ということが、これが軸なんですね。それがなければほかの制度の選択ができない、こういう仕掛けになっているわけです。したがって、言いかえますと、加入条件が何といいますか限定をされている。普通保険に入らなければという前提があくまでもつくということになるわけです。そういたしますと、この漁業者が自分の経営実態に見合ってこの保険には入りたいというような個別の希望というものは当然あるわけですね。そうしましたときに、いわゆる船体、船主積み荷、これは総合的に個別に加入ができるという形というものは当然考えられていっていいんじゃないんだろうか。それは国庫補助の関係やらいろいろありますから、大変関係のところの調整はむずかしいだろうと思うんです、いまの状況は。しかし、私は少なくともこれが先ほど申し上げますように、政策保険であるとするならば、しかもそれぞれの保険種類によって別経理、別会計を持っているという形でやっていく、危険率もその保険に基づいて算定をしていくということになっていけば、これはそれぞれの保険が独立をし、それがなおかつ集まっているというそういう形にとらえていって、しかもその運営ができるようにしていく道というものを当然考えていっていいんじゃないだろうか、こう思うんですが、その辺はこれからの問題もありますけれども、どうお考えですか。
  25. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 漁船損害等補償制度につきましては、漁船保険保険契約書を組合員に出しております保険組合によって事業運営を行っているいわゆる総合保険の体系をとっているわけでございますが、今回の積み荷保険をこの制度の中に取り込む際に、先生おっしゃりましたようないわゆる個別の保険というものを自由に選択させるか、それとも一体化したかっこうで運用するかということがやはり非常に議論の中心になりまして、実は慎重に検討した点でございます。これは非常に考え方の分かれるところだろうというふうに思います。われわれとしては、積み荷保険漁船保険とは別個に加入することができることにして、積み荷保険だけの加入者にも組合員資格を認めるということも考えてみましたし、それからまた現在考えておりますような漁船保険保険契約者である組合員だけに加入を認めるという方向と、二つの方向について慎重に検討いたしました。業界の意見ももちろん十分に聞いてみたわけでございます。その検討の結果は、やはり漁業の実態から見まして、積み荷保険には加入する必要あるけれども、漁船保険には加入する必要はないというケースはちょっと考えられないんじゃないかということ、それからこのような状況のもとで積み荷保険だけの加入を認めるということにいたしますと、危険の大きい保険だけに掛けてくるといういわゆる逆選択と申しますか、そういう問題が起こりまして、この保険そのものを安定した料率で安定した運営をすることはできないという問題にやはりぶち当たった次第でございまして、さような角度から、もちろん先生のおっしゃられるようなアプローチと申しますか、そういう角度からの検討もいたしましたけれども、やはりこれは一体とした保険の方がよろしいんじゃないかということで、このような形にいたして御提案を申し上げた次第でございます。実は業界の方の意見も強い要望としまして、やっぱり一体として運営してほしいということを言ってこられましたこともあわせまして、私どももさような結論に達しましたので、保険事業健全化あるいは組合運営の円滑化という観点から、漁船保険保険契約者である組合員だけに積み荷保険加入できるという制度にして御提案を申し上げたということでございます。
  26. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 総合保険化という立場から物を考えていきますと、これは確かに漁業の場合、とりわけ船と積み荷、人、これは全部一体ですから、だからそれはもう総体のものが一つのところへまとまってというこれは大いに結構なんですよ。そういう物の考え方というのは当然なんですね。ところが、いま御承知のように幾つかのやっぱり損保関係の民間経営のそれぞれもあるわけですね。それとの組み合わせというのも当然これは漁業者から見れば考えられてくるわけなんです。それは確かに逆選択と言えばそうなんですが、どの保険に入っている方がより安心なのか、こういう観点なんですね、もうけるというんじゃなくて。どういう保険に入ることが自分たちにとってより安全なのか、これがまず第一の課題になってくる。そういたしますと、当然その中身が濃い方がいいのははっきりしておりますけれども、それはそれなりのやっぱり生活者ですから、いろんな意味での社会的な環境でのつながりが出てくる。単に国のやつが安いからそれがいいんじゃないかというふうには限定されないわけですね。  もう一つの問題は、組合員資格の問題で、組合運営上いろいろと問題が発生をしてくる可能性がある。ここの心配一つ押えなきゃならぬところだろうと思うんですね。そういう問題があるにいたしましても、私は今日の状況からいけば、これはやっぱり民間損保にあります船体保険加入している者、それと国のいわゆる普通保険とのかかわりというものを同等に置きかえて、じゃ、それならそれを一つの仕切りにして、ほかの積み荷保険なら積み荷保険、あるいは責任保険なら責任保険というものも当然選択をしていくということがあっていいんじゃなかろうか。ただ、一本化の方がやりやすいですよということだけで果たしていいんだろうか、どうだろうかというところが私は少し心配なんですね。これはこれからの情勢の中で運営をしていくのに当たって、もう少し柔軟的な認識を持って対応していく立場検討始めていいんじゃないんだろうかというふうに思うんですが、いまの御答弁でいくと、十分に検討してきたけれども、業界の方も含めてその方がよろしいということになったと、それはそれでわからぬでもないが、いかがなものでしょうか。
  27. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 先生おっしゃいますように、確かに民間の船体保険につけておられる方がおられまして、このような民間の保険加入しておられながら、一方でこの漁船保険の方に積み荷 保険をかけたいというような希望をお持ちになる方々がおられるということも事実だろうと思います。ただ、私どもの観点といたしましては、やはり漁船保険運用という面に責任を持っている立場でございますし、そういうことでございますと、やはり安定した保険についてはほかの方におかけになって、それで危険率の高い方は逆選択的にわが方の保険におかけになるということになりますと、やはり漁船保険全体の、何と申しますか、安定的な経営というのに責任を持っている私どもの立場から申しますと、そこはやはりこの保険を利用していただいて、ひとつ漁業経営というものを安定さしていただきたいという気持ちを持つのもこれは無理からぬことではないかというふうにお思いになると思います。業界の方も恐らくそういう事業の健全化、あるいは組合運営の面というものをお考えになってこのような強い要望をなすっておられるんじゃないかというふうに考えまして、さような立場も含めまして、実はそのような需要があることを知りながら実はこのような保険制度ということで御提案を申し上げたということでございます。もちろん、先ほど大臣がおっしゃられましたように、今後これで一〇〇%完全なものだということを申し上げているわけではないわけでございまして、今後のいろんな推移によりましてこの制度というものは当然検討を進めていかなきゃならないということは私どもよくわかっておる次第でございますが、現在の段階におきましてはこれがよろしいというふうに私どもは思いまして、そして御提案を申し上げ、これでお願いしたいということで御提案申し上げている次第であります。
  28. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私さっきぼやっと言ったわけでして、はっきり物を言ってないんですが、たとえば第二臨調のとき、これは行政改革問題、この中ではっきり指摘をされている、私はその指摘が必ずしも賛成じゃないんですが、ここで言われている一つの流れは、民間の活力を養成をするために、いわゆる官業のあり方というものは民間経営を圧迫をしてはならぬ、こういう一つの前提があるんですね。ある意味では、私、その筋はやっぱり生かしていかなきゃならない筋です。そういたしますと、これらの保険制度と民間損保とのかかわり等も重要な一つのポイントになるんですね。中身で競争をしようじゃないかという話とはちょっと違うわけですね、仕組みからいきますと。ですから、その辺も配慮をし、しかも漁業者の需要にこたえてやっぱりその制度の充実を図っていくべきである。しかも、総合保険的な観点というものは、これはやっぱりなくしてはいかぬ、ここはきちっと整理をしておかなきゃいかぬ。ただ、今日のたてまえからいきますと、先ほども触れましたが、別個のたとえば危険率をはじいておるわけです。積み荷積み荷船主船主、別個の危険率をはじいておる。したがって、別個の危険率をはじいているということは、そこから掛金率も、掛金も算出をされてくる、こういう仕組みになっておるわけですね。しかも、それぞれの分野に基づいて一体その運営がどうなっているか、結果的には解決して掌握をしておるわけです。そういたしますと、私は逆選択という立場で余り物を見るんじゃなくて、それぞれの、総合ではあるけれども、船体保険それから積み荷保険積み荷保険積み荷保険危険率も見、会計も独立をしているという立場からいけば、それは逆選択じゃなくって、そこのところの保険経営が余り過大な危険をしょわないでやっていけるように仕組まれておるもとがあるわけですから、それに乗っかっていくとすれば、何も普通保険に入ってなくたってこれをとることが逆選択だというきめつけにはしなくていいんじゃなかろうか、こう考えるんですがね。そこのところはぜひひとつもう少し幅を広げて物を見ておく必要があるんじゃないか。余りきっちりそれをやってしまいますと、先ほどの行革その他の流れからいっても、逆にこの制度が違う立場から脅かされることになりはしないのか、こういう危惧も若干あるものですから指摘をするんです。どうでしょうかね。
  29. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに今回の臨調、行革の流れの中で民営の事業というものをできるだけ伸長するというお考えがあることもよくわかっておりますし、また私どももそのような流れの中で今後の行政を行っていかなきゃならぬということもよく承知をしておるわけでございますが、また一方で官業と申しますか、このような政府がかかわる分野保険につきましてもこれを健全に運用するということがまた臨調として求められているところでございまして、この兼ね合いをどうするかということだろうと私は思う次第でございます。ただ、現在の段階では民間の保険とそれからこの漁船保険との間でまだまだ競合が生ずるほど大変な加入率になっているわけでもお互いにないわけでございまして、さような意味で私はお互いがお互いの保険を進めていくという段階でまだいいのではないかという感じはいたしておるわけでございます。特に、先ほどから申し上げておりますように、この保険につきましてはやはり確かに、逆選択というのは、個別の保険については一つ一つ損害率をきちんと算定いたしまして保険料も出して適正にいたしておるわけでございますから、その点は私ども先生のおっしゃられることもよくわかるわけでございますけれども、やはり総体の保険事業として、非常に加入率も高いことが期待できるし、また相当大きな保険金額にもなっているし、また安定した保険になっているところだけを民間の側に持っていってしまわれるということじゃ、これはなかなか官業の方が成り立たないということもございます。さような意味から実は今回このような改正でお願いをいたしたいということでございます。今後の保険事業全体の推移を見ながらさらに検討を加えなきゃならぬ問題であるということはわかっておりますけれども、現在の段階ではやはりこれがいまの考えとして一番いい方法ではないかということで御提案を申し上げた次第でございます。
  30. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 わかっておるようですが、加入率が低いから競合がない、これは当然でしょう。じゃ、これから高くしようというんですから、高くなってきたら競合起こりますよ。これが一つです。  それから、逆選択というのは、組み合わせの中で特にこれは特別よという目玉商品をつくったときには、その目玉だけをねらうというのが逆選択なんですよ。そういう目玉じゃないんです、この制度は。そういう意味からいきますと、逆選択という一般的に言われている質のものとちょっと違いますんで、ぜひそこのところは理解してもらいたいと思います。いいところ食いをするという、そのいいところ食いになるかならぬかという問題なんですよ。私は、いまの制度の中でいったら、どれを選択をして仮にとるにしましても、漁業者としてはそのことが必要だと、こういうことだけであって、それをたとえば水産庁立場から見てそれがいいところ食いだという指摘にはならない仕掛けになっているじゃないかと、ここのところを忘れてしまって、これも入ってほしいのにこれだけしか選択せぬというのは逆選択だ、こういうきめつけ方は私は間違いだと思いますよ。だから、そこのところをもう一遍論議し直してもらいたいと思う。  それから、次に移りますが、この漁船保険中央会補完保険制度、これが導入をされたわけですね。その中で「当分の間」という指摘があるんですが、この「当分の間」というのはどの程度のことを考えられておるのか。
  31. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 「当分の間」と法律規定をいたしましておりますが、この内容につきましては、私どもは組合段階で危険分散が十分できる加入が得られるまでというふうに考えております。
  32. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そういたしますと、補完保険がなぜ必要になったのか、普通国が再保険をするという話になれば補完保険というのは本来なら必要がないものじゃないんだろうかというふうな気がするんですが、これは再保険率そのものに問題があったのかどうか。これは九〇ですからね。九〇ということは私はそう問題はなかろうと思う んです。確かに要求は九五、水産庁としても要求をしたようですが、これは九〇に抑えられたという経緯があるようですけれども、しかしそれが低いからということでもないと思うんですが、この再保険がなぜ必要なのかという観点がちょっとやっぱりわからないんですがね。
  33. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 御案内のように今回の制度改正におきましては国が再保険責任を負うという制度改正にいたしておるわけでございまして、その場合の元受け責任保険である組合の責任とそれから国の責任の間は九〇%の再保ということになっております。これはかなり安全な再保率を見込んだということは言えると思うわけでございます。しかしながら、現在の各組合が元受けの保険事業を行います場合に、なお一〇%の元受けの部分でございましても、これはやはり危険がありまして、必ずしもその組合だけでこの責任をしょい切れるかと申しますと、なかなかむずかしい状況にあるというふうに考えております。と申しますのは、特に漁船保険の場合には一発事故が起きますと、その事故が非常に大きいと、事故率の推移を見ましても非常に変動の大きい年をとって見ますと、大概大きい船が一つ沈んでいると、それによって非常に事故率に影響を及ぼすといったような保険でございまして、その意味ではなかなか危険分散というものがむずかしい保険であるわけでございます。しかも、元受け保険組合というのはおおむね県単位でできておりますから、そこの中での事故分散ということはなかなか危険を伴う次第でございまして、さような意味からたとえ一〇%の部分であってもやはり補完再保が必要だということでこれを中央会に実施させるということを考えたわけでございます。
  34. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 これは前の法改正のときも論議をしましたが、いわゆる中央会の本来の任務といいますか、いわゆる指導機関という一面の性格、それから再保険業務が始まったわけでありまして、これ取り入れたときにも論議をしたわけですね。この辺は運営の立場から指摘をしたような矛盾点というのは発生をしなかったかどうか、さらに今後もこの辺はいいのかどうか。
  35. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 試験制度実施期間中は、再保険責任を中央会が負ってやってまいったわけでございますが、これはやはり今回の法改正におきましては再保険責任を国につなぐという方がより安定的な保険ができると、特にこのような非常に危険の大きい保険につきましては船体保険と同様にやはり危険分散というものは地域的な分散はもちろんのこと、また時系列的な分散ということも非常に必要でございまして、さような観点からは国が再保する方が安全であるということでこのような改正をいたしたわけでございますが、その場合に当然問われることは、中央会が本来の任務である指導機関としての役割りそれから再保険事業の両面性、これをどう調和するかということだったと思います。私どもとしましては、再保険責任を国に持っていく、これによって危険分散を図るということで保険設計の根幹をつくったわけでございますが、当然PIの再保険実施に際して常例検査等の規定も設けておりますから、私どもきちっとこれは中央会を指導いたしまして、このような問題につきまして将来とも問題が起こることのないように十分に指導してまいりたいというふうに考えている次第であります。
  36. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 次に、掛金の国庫補助の関係なんですが、これが普通保険の義務加入それから集団加入という一つの枠組み、それから上限百トン、これは具体的に根拠があるのかどうか。さらにまた、義務加入、集団加入というものの枠を何としてもこれ堅持しなきゃならぬものなのかどうなのか、ここのところはどうなんでしょうか。
  37. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 二つの御質問があったと思いますので、分けて御答弁申し上げますが、まず国庫補助を百トン未満ということにいたした理由でございますけれども、これはやはり保険料負担能力が小さい中小漁業者に対しましてその負担の軽減を図る、これが政府国庫負担についての基本的な考えでございまして、どなたにでも国庫の非常に貴重な税金を使って保険料を軽減するというわけにはまいらない、やはり保険加入したくても負担がなかなか大変で入れないという方々を救済するということで、百トン未満ということで決めたわけでございます。百トン以上の漁船につきましては、その通常の経営内容を考慮しますと、もちろんこのような時期においては非常に苦しい経営をなすっておられますので、よく百トン以上も負担をしてほしいという御意見もあろうかというふうに思うわけでございますが、しかしながら、やはりこれは別な政策経営内容を充実していって負担をしていくかということだろうと思うわけでございます。やはり漁船保険自体の保険の均衡とも考え合わせますと、やはり百トン未満の国庫補助ということにいたしたということでございます。  それから、第二点の義務加入あるいは集団加入との関連でございますが、恐らくお尋ねは、何も集団加入あるいは義務加入ということにリンクした形で国庫負担をつけなくてもいいかもしらない、たとえば任意加入でお入りになってこられる方々も国庫負担がついてもいいじゃないかということだろうと思います。  確かに今回の制度は、船体の保険、もちろん積み荷保険そのものは別に義務加入あるいは任意加入といったような制度を設けておらないわけでございますが、やはり船体と常にリンクしておりますために、船体保険の方に義務加入あるいは任意加入、集団加入という制度がありますと、それによって国庫負担が連動してくるという問題があるわけでございます。この点につきましては、やはり私どもは効率的に国庫負担も活用いたしまして、できるだけたくさん加入をしていただくということであれば、やはり集団的に加入してくださる方あるいは義務加入をしてみんなで入ろうという方に対しまして、優先的に国庫補助をつけるという方が加入の拡大にとって有効な国庫の補助金の使用の方法でありますし、さような角度から、任意加入国庫負担を取り入れるということになれば、逆にまた義務加入がおろそかになって、むしろその効果を減殺するという問題も考えられますので、やはりこれは義務加入、集団加入に中心的にこの国庫負担をつけていくということを考えた次第であります。
  38. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 ちょっとよくわからぬですね。一つの地域の中で具体的に加入者がうんとふえてくれば、それに伴ってそこの地域の、漁港の関係についてのいわゆる義務加入が要請をされてきますね。それから集団加入というのはまあこれは……。そうしますと、そこだけがたとえば国庫補助の対象になる、広げたいけれども、それがつぶれてしまうから広げられない、こういういまの筋合いですね。果たしてそうなんでしょうか。私はそうじゃないと思うんですね。むしろこれから加入促進を図っていこうという、そういう前提があるとするならば、仮に百トン未満の論議は別に置きましても、百トン未満でも、いま答弁がありましたように、任意で普通保険に入っている、任意で普通保険に入っているんなら、いまの考え方から言ってもその普通保険に入っている人を中心にこの保険制度があるというんなら、これはやっぱりその人についての掛金補助が出てきたっていいんじゃないんだろうか、そういうふうに思うんですがね、私の考え方間違いでしょうか。
  39. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) お言葉を返すようでございますけれども、国庫負担をつけることによって皆さん方がそれだけで加入をしたいというお気持ちを持っていただけるならば先生のお考え成り立つと思うわけでございます。それならば義務加入も集団加入も私は要らないんだろうと思うわけでございます。国庫負担だけでいいだろうと思いますけれども、やはりこの制度が従来から義務加入国庫負担を結びつけてまいりましたのは、やはり国庫負担をそのような形で活用することによって義務加入を促進する。それによって多くの人が入ってくれる、そういうことではないかと思うわけでございます。私も農業保険の経験もございますし、若いとき農業保険やったこともございま す。やはりその際に成り立っていることは、義務加入なりあるいは強制加入というものでやはりもたさないとなかなかこういう政策保険が必要な加入率を確保できないということは身をもって体験をしてまいりましたので、やはり国庫負担の方もこのような義務加入というものに伴って国庫負担をつけていくという考え方の方が加入の促進に当たり得るんだというふうに私は考える次第でございます。
  40. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 この義務加入問題は、これはもうこの前も私も論議をしたんですがね、制度の中に促進をしていく一つ立場は、義務加入制度等でやっぱり入っておってよかったなということが具体的に出てくる一つの前提、誘導としてはこれはまあ私は一時的にはあっていいと思うんです。しかし、将来までずっとこの義務加入制度というのが果たしていいんだろうかどうだろうかということになりますと、むしろ義務加入じゃなくって、やっぱりそれぞれが考えて義務加入的に受けとめて、そうしてみんなが入っていこうじゃないかという任意の形態で、結果としては義務加入に匹敵をするような体制がつくられていかなければならぬ、こう考えるんですよ。だからこれは道筋の話として意見が食い違うと思うんですがね、私は少なくとも今日法制度改正をしていくとすれば義務加入が減っていく、崩れてしまうというんじゃなくってむしろ促進をする方の立場からこの任意で普通保険に入っている者も取り入れていくような方向に努力をしていくべきじゃないんだろうか、こう考えるんですが、これはありましたら。
  41. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに先生のおっしゃることは、そういう言葉よくないかもしれませんが、理想はそうだと思います。みんな漁民の方々の自覚によりましてやはり保険をつけておかなきゃいかぬということであればそこで加入がふえてくる、これが本当の姿だろうということは私もよくわかる次第でございます。ただ、保険をつけるということは、将来の危険に対する現在の負担ということでございますので、なかなか人間の心理から申しまして、将来の危険に備えるということに向いていかないというところに義務加入なり集団加入なりという制度が必要であるというふうに考えられるわけでございまして、さような面から現段階におきましては、やはり義務加入制というものがどうしても必要である。そのためにはやはり国庫補助をこれに連動させるということが必要であるというふうに考えている次第でございます。
  42. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 時間が来ていますので、あと大分残ったんですが、実は一緒に聞きますからひとつ簡単にお答えいただきたいと思うんですが、積み荷試験実施中の剰余金の処分方針、これは一体どう考えるのか、これがまず一つです。  それから、この積み荷保険の場合の漁獲物と物保険の場合の保険責任のいわゆるどこから始まってどこまでやるのかというこういう観点について、これは特に漁獲物と仕込み品の関係等がありますのでこれは約款にかかわる問題だと思いますが、明確にやっぱりしていく方向というものをきっちりしないといかぬのじゃないのか。  それから三点目は、漁獲物の陸上危険に備えていく問題が前から問題になっておる。これは検討した結果どうなって、今後どうしようとしているのか。これは結論が出ていないとすれば方向性は一体どうなのかということが一つ問題になります。  それからさらに四点目は、この制度の安定した運営をやっていくためには何といたしましてもこの保険組合経営基盤がしっかりしなきゃいかぬと。この保険組合経営基盤をしっかりしていこうということになりますと、小さいから問題になるのだということですぐ合併の問題が出るのですね。ところが、小さくて負担にたえられないというようなところは合併をしてもらっちゃ逆に合併される方が困るという話にもなるわけです。
  43. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 坂倉君、時間が参っておりますので手短に願います。
  44. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 したがって、経営基盤強化をしていこうとすれば、これはただ合併だけじゃなくて合併ともう一つ本質的に経営基盤をどう強化をするかという観点が明確にならないといかぬと思うのですね。そこのところをぜひひとつ検討課題としても整理をしておいてもらいたい、こういうふうに思いますが。
  45. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) まず剰余金の問題でございますが、現在五十六年度末で九億一千八百万円の繰越剰余金がございます。これはやはり第一義的には本年九月末までで引き受けております、つまり五十九年の九月末まで責任期間がございますところの積荷保険試験実施契約、これの準備金に充てるものでございますが、さらに剰余が残る場合におきましては、組合の赤字補てんのほか運用益を積み荷保険の振興のために活用するということで中央会を指導しているところでございます。  次に保険責任の始期と終期でございますが、積み荷保険では漁船に積載中ということでございます。  それから三点の陸上危険でございますが、これは前々から根室の例の津波もございまして非常に問題になった点でございますが、陸上危険につきましてはやはり陸上における商品の物損というものが漁獲にもしもこれを認めるということになりますと、他の、ほかのいろいろな商品についてもこれは政策保険としてやっぱり組み込むことが出てくるということで、いろいろ話し合いはいたしましたけれどもまだ結論は出ておりません。今後ともこれ研究課題としてさらに検討いたしていくという次第でございます。  それから最後に、経営基盤の問題でございますが、経営基盤の弱い漁船保険組合につきましてはかねてから事務費の補助を行うことにいたしておりまして、特に昭和五十五年度からは新たに付加保険料率の適正化事業ということを行いましてできるだけ組合の格差是正ということを図っている次第でございます。今後ともこういうような体質強化のための施策というものは強化してまいりたいと、こう考えておりますが、一方組合合併につきましてはやはり先生おっしゃいますように非常にむずかしい問題山積しております。組合経営のあり方の一環としてこの点につきましては今後とも検討してまいりたいというふうに考えている次第であります。
  46. 中野明

    ○中野明君 きょうは漁船損害等補償法改正でございますが、本題に入る前に非常に厳しくなっておりますわが国の水産業に大変な影響を与えそうないわゆる日米漁業問題でございますが、伝えられるところによりますと、アメリカ政府は、この四日に商業捕鯨の全面禁止に対するわが国の異議申し立て、これに対して不満だということで、外務省と水産庁に対してアメリカの二百海里の水域内の本年二回目の対日漁獲割り当てを当初予定の二十八万六千トンから十八万三千トン、約三五ですか六ですかの削減、残りは満足な解決が得られるまで留保する、このように通告してきたというふうに伝えられておるんですが、外務省ちょっとこの事実説明をしていただきたいんですが、どういうふうなことを言ってきておるんですか。
  47. 川島裕

    説明員(川島裕君) 四月四日付の口上書をもちまして、在京米大使館より四月分の漁獲割り当てを正式通報した次第でございます。その際に米国政府は、わが国が昨年の十一月に行った国際捕鯨委員会年次会議の商業捕鯨全面禁止決定に対する異議申し立てを理由といたしまして、約十万トンの割り当てを留保、割り当てをしないということを行った次第でございます。この留保は、その四月の通常割り当て分、これは大体年間割り当て総量の二五%が来ることになっておりますけれども、それの約三五%、つまり年間割り当て総量にいたしますと約九%に相当する次第でございます。この留保につきまして米側は、わが国がいまの異議申し立てについて満足すべき解決策を講ずれば改めて割り当てると、こういうふうにしております。
  48. 中野明

    ○中野明君 水産庁は、このことはどうお聞きになっていますか。
  49. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 全く同じことを聞いております。米大使館のアイバーソン水産官が同様の趣旨をわが方に通報してまいった次第でございます。
  50. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、米水域内での対日漁獲割り当て、これは昨年から三回に分けて通告をしてくる方式となっておるようですが、本年は一月に約半分の五十七万四千トンが決定されていたわけですが、残りは四月と七月それぞれ四分の一ずつ割り当てられる、こういうことでありますが、米側の通告がこれ事実とすれば七月の割り当ては大変厳しいことになってくる、このように考えられるわけです。米国のこの意図ですね、アメリカ側の意図、これはどう受けとめられておるんですか。そしてまた、これに対して農林水産省としてはこれどう対処されるんですか。その辺大臣からもちょっと御見解をお聞きしておきたいんです。
  51. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 大臣のお答えの前に、経過をお話し申し上げます。  今回の対日漁獲割り当ての削減措置は、米側もわが国の捕鯨問題に対する対応を不満としてこれを行ったものであるということでございまして、実は中野委員もよく御承知のように、去年も同様な留保を行ってまいったわけでございますが、去年の場合にはまだ洋上買い付けの問題とリンクをしてまいった次第でございまして、さような意味ではいろいろな対応があり得たわけでございます。したがいまして、去年は最後は全部これを返すということでやってまいったわけでございますが、今回はその原因が捕鯨問題にございますだけに、なかなか対処ぶりがむずかしいということは事実でございます。まだ七月にIWCの総会もあるわけでございますから、さようなこともあわせて考えてみますると、七月割り当てにおいても米側がさらに厳しい措置をとってくるということも考えられるわけでございまして、なかなかこの問題の対処はよほど慎重に、また先方に強く申し込まなきゃならぬ問題であるというふうに考えておる次第でございます。  しかし、私どもとしましては、今回の捕鯨問題は、あくまでもこれは捕鯨問題でございまして、対日割り当ての問題とは別個の問題であるということが基本的な主張でございまして、また私どもは、現時点において何らIWCの条約に違反をしているような行為はいたしておらないわけでございますので、異議申し立て権は当然条約上も認められている権利でございます。そしてまた一方で、われわれはいろいろな形でアメリカとの協力関係というものを結んでいるわけでございますから、さような意味合いを十分に米側に説得して話をするということで、実は私も、四月の八日に在日米大使館のピース公使に私のところに来てもらいまして、さような趣旨を十分に先方に話しし、その理解と協力を求めるということで話をいたしているところでございます。
  52. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) ただいま経過は長官から申し上げましたが、捕鯨禁止に異議を申し立てるときから私どもはいろいろ相談にあずかりましたが、やはり日本の伝統漁業の捕鯨をなくするということは大変な問題であります。捕鯨のために地域経済を今日まで維持してきておる経済的な問題、あるいは捕鯨関係のいわゆる就労関係の問題、そういうことを考えますと、やはり異議の申し立てを当然すべきだということで踏み切らした、私も責任を感じておるわけでございます。  その場合、しっぺ返しに二百海里内のいわゆる漁業に、アメリカから対抗手段が出るんじゃないかというような大変憂慮をしながら捕鯨問題の異議を申し立ててきたのでございますが、大変心配しておりましたけれども、一応年間の割り当てについてはアメリカも余り捕鯨にかかわった関連で抵抗をすることもなくスムーズにいったのでございますが、今日このように一応十万トンですか、これを保留されたということでありまして、これは留保されておるのでありまして、やはりアメリカ側に説得を続けてこの留保されたものをひとつもともとどおり回復していくべきだということで盛んに水産庁では働いておるところでございます。
  53. 中野明

    ○中野明君 先ほど長官も述べられましたように、非常にこれ全然中身の違うことで大変な難問を浴びせられたわけですが、アメリカの意図は結局この捕鯨の異議を取り下げるというようなところにあるんじゃないかと思うのですが、そんなわけにもこれいくものでもありませんし、よほど筋を通して粘り強く説得もしていただいて、この理解をしてもらわないと、これ大変な問題だろうと思いますので、その辺はひとつさきの長官の答弁、大体私も了解いたしますが、ぜひこれ何でもかんでもこちらにしわ寄せがくるような、そういうことでは困りますので、筋だけは通していただきたい、このように要望しておきます。  それでは本題に入りたいと思いますが、先ほど同僚の坂倉委員から詳細にわたって御質問がありましたので、極力重複を避けてお尋ねをしたいと思います。  まず、この五十五年に水産庁が設置した漁船保険制度研究会、これの答申で、漁船積荷保険及び漁船船主責任保険について、両保険とも、着実に成果を上げてきており、本格実施に必要な資料もおおむね収集できた、このため、五十六年九月に漁船船主責任保険試験実施の期限が到来するのを機に両保険とも本格実施に移行させる、このように返事が来ておるわけです。意見が出されているわけなんですが、この漁船船主責任保険については五十六年十月から本格実施になりました。  ところが、この積み荷保険については、「試験実施の期限が到来するのを機に両保険とも」と、こうなっていたにかかわらず、今回まで本格実施への移行を待たなければならなかった。これはどういう理由によるものでしょうかね。ちょっと……。
  54. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 漁船積荷保険は、当初本格実施のための資料収集を最低五年ということで判断いたしまして、昭和四十八年から実施をしたわけでございますが、その期限である五十三年に先生おっしゃられますように、もう五年間の試験実施ということでさらに本格実施の時期を延ばしたわけでございます。これはその期限でございます五十三年の当時に、積荷保険の主たる対象となりましたところの遠洋あるいは沖合い漁業につきましては、各国の相次ぐ二百海里の設定によりまして相当日本漁業影響があるのではないかというふうに想定された事態が生じたわけでございまして、減船あるいは漁場の転換、航海日数の変化操業日数の強化といったような操業形態の変化を余儀なくされるという状況にあったわけでございます。このような操業形態の変化が起こりますると、保険設計の基礎的データになりますところの漁業種類別の加入隻数危険率損害率等に大きな変化をもたらすということが予想されましたので、これを延ばしていただくという手続をとらしていただいたわけでございますが、今回は、先ほど坂倉委員に御答弁申し上げましたように、そのようなデータから見ましても本格実施に踏み切ってもいいという判断をいたしまして、このような御提案を申し上げている次第でございます。
  55. 中野明

    ○中野明君 それでこの理由はわかったんですが、先ほど坂倉委員もおっしゃっておりましたが、この漁船積荷保険、これは試験実施の五十六年度で本制度の対象漁船が約八千九百九隻ですね、それに対して加入状況は千八百四十で全体の二割にしかすぎません。この数年この状況は続いておるんですが、なぜ加入者がふえないのか、その原因、理由をどう把握されているんですか。ちょっとその辺もう一度お聞きしておきたいと思います。
  56. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 先ほどもお答え申しましたように、昭和五十六年の加入隻数が千八百四十隻、加入率が二〇・七%という状況でございます。このような加入率の低い原因は幾つかございますが、一つ加入対象となっております漁業種類の中に、たとえば近海のカツオ、これは二、三日間の操業日数でございます。まき網も小さなものは 日帰り操業いたしておりますし、それから沖合い底びきも一日の操業で帰ってくるものがございます。このような漁場が近くて操業期間が短いということになりますと、なかなか保険需要が起こらないという問題がございます。それからまた、経営不振で加入実績が乏しいというものにイカ釣りあるいはカツオ、マグロといったようなものがあると思います。それから、事故が余り起こらないので保険の需要が喚起されないという種類としまして、北洋かごあるいはサケ・マスはえなわ、サンマ、棒受け網といったようなものがあるというふうに考えております。
  57. 中野明

    ○中野明君 それで、今回は保険料の一部国庫負担とともに本事業の普及宣伝、これを行うということで五十八年度の予算に約三百四十万ですかを漁船保険振興事業費補助金、こういうふうに計上されているんですが、普及宣伝を実施するということですが、これ本当に効果が期待できるんだろうかという心配もちょっとしているんですが、どういう普及宣伝をお考えになっているんですか。
  58. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の法律改正によりまして、私どもとしましては、この財政事情が非常に厳しい中におきましてようやくいわゆる保険料に対する国庫負担が実現させていただけるということになったわけでございますけれども、かような基本的な中小零細の漁業者に対しましての保険料の軽減という対策を一方に持っているわけでございます。このような対策を契機といたしまして、業界一丸となって普及宣伝に当たっていただいて、そして加入率を伸ばしてできるだけ保険の設計を設計どおりにひとつ安定的に運営してもらいたいという気持ちを持っておりまして、かような意味合いから三百四十万の漁船保険中央会の行う普及宣伝事業に対する経費の一部補助というものをお願いをいたしたわけでございます。この内容は、説明会の開催に必要な経費、あるいは加入推進指導のための旅費、宣伝用パンフレット、ポスターの作製費というようなものが内容になっておりますが、もちろんこれは呼び水でございまして、このような経費を元にしましてひとつ業界一体になりまして加入の拡大に当たっていただきたいというふうに考えているわけでございまして、業界の方も今回の法律改正を契機にぜひ加入率の促進を図るために非常に大きな努力を払いたいという気持ちを持っておられるわけでございますから、このような補助金を中心にしまして、業界が大いに奮闘していただいて、加入率を上げていただきたいということを期待しているわけでございます。
  59. 中野明

    ○中野明君 いま長官のお話でも、趣旨は大体わかるんですが、こういう、これを一つの呼び水にして結局業界が本気で取り組まなければ話にならぬことで、金額はわずかなんですが、これ呼び水ということなんでしょうけれども、私非常に心配しますのは、こういう普及宣伝という、これは予算さえつけておけばそれで宣伝したんだと、努力したんだというそういう感じになってもらっては困るんでありまして、たとえば、ほかの例でございますけれども、お米の消費拡大ということについても食糧庁が予算を組んで、そして全国の市町村ですね、それから都道府県にも出しているんですけれども、どうも私、全部で十二億ぐらいになっておったと思うんですが、果たしてこれが本当に有効に使われてお米の消費拡大になっているかというと、非常に私疑問を持っている一人なんです。というのは、小さな町村で十五万か二十万かぐらい来るらしいんですが、非常に有効に使っているところはそれなりの効果を出しているようですけれども、何だか交付金で米の消費拡大や言うてきたと、きたけれども、予算が来たのはもう年度末、十二月ごろで、あるいは十月ごろ来たりして、それじゃもうしようがないから、もうどうしようもないんで、握り飯でもつくって運動会やっているからそこへでも持っていっておけと、そういうようなことになっているんです、現場では。人口が百五十万もあるような大きなところでたった六十万とか、それではもう結局、心配するのは、確かに予算をつけてお米の消費拡大の宣伝をしておりますという大義名分はそれで立っていると思うんですが、実際にそれが有効に消費拡大に使われているかというと、そうでもないんですね、現場へ行ってみますと。だからその辺を思いますと、いまの長官の答弁非常に私わかるんですが、せっかくこういうものを貴重な財源の中からお取りになっているわけですからよほど、これを一つの呼び水にしてどこまで組合なり業界が本腰を入れてこの加入拡大なりこの保険制度そのものを、国庫負担ができたんですから、そういうことについての普及宣伝をやるかということ、これがかっちりいかないと、何だか今後拡大できなかったときの理由に、ふえなかった理由に、ちゃんと普及宣伝費もつけてやっておるんですけどというその理由だけにこれだけつけているんじゃもうばかみたいなものだ、そういう気がするものですからあえて申し上げているんですが、もう一度、これせっかく予算を厳しい中からこうやってお取りになっているわけですから、しっかりしたことで、それが何かうやむやで進んでしまわないように、そういう対策をお願いしたいと思います。御答弁をお願いしたいと思います。
  60. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 先生おっしゃられますことまことにごもっともでございまして、単にこのような補助金を出しただけで事終われりということでは決してよくないということは、そのとおりでございます。私どもとしましては、この金額三百四十万円ぐらいでございますが、実は先ほど坂倉先生にも御答弁申し上げましたんですが、剰余金が相当中央会にたまっておりまして、もちろんこれはほかにも充てなければならないものでございますが、その運用によりましてこれを団体それ自身の普及活動費ということにも使ってまいりたいということも考えておるわけでございます。さような面で業界が自分の財源というものを持ちまして、この普及宣伝に当たっていくということも考えているわけでございます。何はともあれ、今回の改正、非常に画期的な改正でございますから、この改正を機に業界の方も一体となって加入促進に当たりたいという気持ちはかねがね私どもの方に申してきておられますので、そのお力を十分に活用していただきまして、私どもも十分に指導いたしまして、単におざなりに終わらせないということで加入の促進に当たってまいりたいというふうに考える次第でございます。
  61. 中野明

    ○中野明君 余剰金のことはまた後ほどちょっとお聞きしておきたいと思うんですが、階層別の加入率で確かに百トン未満というのが一三・九%、このように低いのが実情であります。制度改正によって百トン未満の漁船積み荷保険保険料国庫負担が導入をされる、こういうことで、この階層の加入率が高まるというふうに一応考えられるわけですが、果たして補助が導入されただけで加入はそんなに思うように進むんだろうかという心配をしておるわけであります。その点について全体の加入状況の変遷なんかを考えてみますと、加入率の拡大の見通しが果たしてこれうまくいくんだろうかということで、いまの宣伝の問題とも関連するんですが、今後とも本制度を安定して運営していかなきゃなりません。そういうゆえにおいて、水産庁の方針、見解をお聞きしておきたいと思います。
  62. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 業態別にいろいろな加入率が低い原因というものがあることは先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、私ども考えておりますのは、業態別にそのような原因がございましても、これに対応する対策というものが必要だろうというふうに考えます。その一番大きな問題は、何と申しましても中小の漁業者がその負担というものを考えてみますると、やはり将来の危険に対していまこれだけの負担をするということの意味があるかどうかということを問題になさってなかなか加入なすっていただけないということであろうというふうに考えまして、特に中小の漁業者を対象にいたしました国庫負担制度というものを設けたわけでございます。  そのようなことから申しますと、この時期にこの国庫負担をつけたということは非常に大きな意 味があるわけでございまして、金額の多少と申しますよりも、まさにそういう姿勢でひとつ加入をふやしていただきたいということがわれわれの考えの基礎にあるわけでございまして、これと業界との一致した努力によりまして加入率をふやしていくということが今後必要であるというふうに考えておるわけでございます。計画と申しましても、一定の目標を業態別に示してここまでということはなかなかむずかしい次第でございますので、その年次別とかあるいは長期の計画といったようなところまでを完全に私ども持っているわけではございませんが、少なくとも五十八年度の目標といたしましては五十六年度の加入実績千八百四十隻を二千二百十七隻まではふやしたいということで指導をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  63. 中野明

    ○中野明君 それで坂倉委員指摘しておられましたが、民間との関係なんですが、加入状況が二割にすぎない。そのことで昭和四十八年から五十六年までの損害率ですね、これを見てみますと六三・五%ですか、そうですね、六三・五%。これに対して、同種の民間の漁獲物保険では一〇八・九%、非常に格差があるんです。これが実態のようですね。これはどういうことが原因であるとお考えになっているんですか。その辺ちょっと説明してください。
  64. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに、民間の損害保険会社におきましても漁船積荷保険とほぼ同様のいわゆる漁獲物保険というのがあることは事実でございます。この積み荷保険というのは、非常に危険率変動が大きいものであるということは従来の経験からわかっておるわけでございますが、船体保険を民保に入れている件につきましては、引き受けは行っておりますけれども、船体保険漁船保険に入っている場合なかなかこの引き受けに積極的でないというような事情もあるようでございます。そのようなことから、数字上いろいろそういう事態が起こっているんじゃないかというふうに考えられるわけでございます。
  65. 中野明

    ○中野明君 それから、加入状況は先ほど来申し上げているように二割で、民間との格差といった問題のほかに、諸外国の水域でわが国漁船操業条件というのはまだ安定しているとは言いがたいですが、今後も規制が強化されるということは当然考えられるわけです。  で、価格は少し下がりかけといっても燃油というものの大きな問題があります。このために経営不振になっておるということで、遠洋のカツオ、マグロ漁業を初め減船を進めております。この漁船積荷保険の対象隻数が減少していること。さらには一般的に船齢が古くなっております。危険率が高いと見られておるわけですが、これらの事実を考えますと、今後積み荷保険制度というものを安定的に運営できるかどうか非常に厳しい面もあるんではないかと思いますが、この点は水産庁どう考えておられますか、見通し等お話しいただきたい。
  66. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに今後の日本漁業経営、特に沖合い遠洋状態を考えてみますると、必ずしも海外の二百海里の規制がこれでとまるというわけでもございませんし、その内容にいろいろな将来の不安、不安定といったような問題があることは事実でございます。しかしながら、私どもといたしましては、今回の改正に踏み切りまして本格実施をいたすわけでございますが、しかし五十二年、五十三年といったような非常に大きな変動、これによります保険経営への影響というような事態というものは、これは起こることは余りないんじゃないかということが考えられますので、今後加入の増進というものに努めてまいりまして、経営の安定を図ってまいりますればこの保険が円滑に運用できるというふうに考えたわけでございます。  それから、いま一つ船齢の老齢化の問題。確かにこの問題がございまして、特に危険率とそれから船齢との関係を調べてみますると、確かに船齢の高い船ほど危険率が高いという実態が計数上も上がってまいります。さような意味で、今後そのような船体の老齢化に伴って、それに適応するような料率というものを設定するということも検討すべきではないかというふうに考えております。さような意味で、いろんな漁船の態様に応じました適正な料率の設定といったようなことも、今後の検討課題として十分研究実施していかなきゃならぬというふうに考えておる次第でございます。
  67. 中野明

    ○中野明君 それからもう一つ。先ほども問題になっておりましたが、本保険制度てん補範囲について漁獲物の陸上の危険、荷揚げ後の漁獲物が津波で流れたとかいうような例も過去にはありましたが、これらを考えたときに、保険の対象に陸上もしてくれという要望は非常に強くあると思いますが、これは民間はちゃんとやっているようですが、この制度に取り入れられなかった理由ですね。また、先ほども検討課題だとおっしゃっておりましたが、今後これを陸上も含めるお考えがあるんですか、その辺をお聞かせいただきたい。
  68. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) この陸上危険の問題につきましては、非常に古くからある問題であることはよく承知しておりまして、特に根室沖の津波がございましたときに陸上で漁獲物が非常な損傷滅失を生じまして、このためにこの分野についてもてん補責任の中に入れてほしいという御要望があることは私ども十分承知しておるわけでございます。いろいろな折衝を長いこと続けてきているわけでございますが、なかなか陸上における商品の物損につきまして、これを政策保険に取り込むかどうかということにつきましては、漁獲物にこれを認めますと他のいろいろな商品についてもこれを認めざるを得ないという問題がございまして、なかなか政策保険の対象にしがたいということでいままでデッドロックに乗り上げてきているというのが実態でございます。今回につきましても、幸いに試験実施中の事故の実績につきましては陸上の事故がなかったということもございまして、今回制度化は見送った経緯があるわけでございますが、今後とも先ほど御答弁申し上げましたように研究をいたしまして、これに対応してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  69. 中野明

    ○中野明君 これは、やはり民間との関係もありましょうけれども、こういう要望が強くありますのでぜひ前向きで検討してもらいたいと思っております。  それから、これもまた出ておりましたが、試験実施期間中の黒字ですね、四つの組合は支払い準備金に不足を生じているということのようですが、保険中央会には約九億円の支払い準備金が蓄積されておるようです。今回の改正で国が再保険者となった場合にこの漁船保険中央会の約九億一千八百万ですか、の処理が問題になると思うんですが、試験実施から本格実施に移行する際に、この四つの保険組合の赤字部分、これについてどうするんかということと関係部内における検討も考慮して措置することが必要であると思っておりますが、この指導方針ですね、水産庁の、また保険組合の中には損害率が毎年一〇〇%を超えて恒常的に赤字が出ている組合もあるというふうに聞いておりますが、このような保険組合の場合補完保険事業があったとしても赤字の発生が続くんではないかと心配されます。これについてどういうふうに対応策を考えておられるのか、この二点お尋ねいたします。
  70. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 試験実施によりまして漁船保険中央会に生じた繰り越しの剰余金が五十六年度末で九億一千八百万円ございます。これはもちろん第一次的には本年九月末まで引き受けまして、翌五十九年九月末まで責任期間が残っております積み荷保険試験実施契約の準備金に充てる、これは当然のことでございます。しかし、これでさらに剰余が残るということが考えられますので、その剰余が残ります場合には先ほどおっしゃられました組合の不足金の処理、それからまた運用によりまして今後積み荷保険の振興のためにこれを活用するといったようなことで現在漁船保険中央会の方でいろいろと案を考えていただいているところでございますので、そのような方向 に沿って私ども指導してまいるつもりでございます。もちろんこれは中央会がまずお考えをいただいてどのような方向で行くかということを私どもの方に話していただくということが第一でございますが、そのような御意向もいろいろと伺っておりますので十分に連絡をとり、また指導をしながらこれに対応してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  第二に、このような各組合経営状況を見てまいりますと、やはり現在不足金を出している組合もございますし、これからまた事故の発生の対応いかんによりましては当然これはその組合の責任というものがございますので将来ともこの責任を果たせるかどうか、あるいは不足金が出るという組合も生じてくるものと考えられます。ですから、この問題は長期的な問題として当然対応しなけりゃならない問題でございますが、今回の積み荷保険をつくりました際も政府の再保険ということも考えましたし、また一割の元受け保険の分につきましては補完責任ということも考えまして中央会のプールということも考えたわけでございまして、さような面でいろいろとこの元受けの保険責任を負う組合経営の実態に応じましてこの経営健全化していくという方策を考えてもらわなきゃならぬと思っております。基本的にはやはり純保険料につきましては料率を適正に常に損害率に合うような形で設定し、運用していくということだろうと思いますし、また付加保険料の分につきましてはやはり組合の格差がかなりございますので、このような付加保険料の格差に応じまして、また非常に苦しい組合には適当な助成をしていくという従来の方針を続けていくということが組合健全化対策になっていくというふうに考えるわけでございますが、なお合併の問題といったようなこともございますが、これはなかなかむずかしい問題でございますので、これは検討課題にしていただきたいというふうに思う次第でございます。
  71. 中野明

    ○中野明君 いま合併のこともお話に出たんですが、これは区域は都道府県の区域としないこともできると、このようになっております。ですから、こういう弱小の組合は合併の道が開かれているということになっておりますが、この合併のことについてはいまちょっとお話が出たんですが、どういうふうにお考えになっていますか。積極的に推進しようとしておられるんですか、どうでしょうか。
  72. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 組合は現在のところ多くの組合が県段階でございますけれども、その区域を必ずしもそこで限定していることはないわけでございまして、当然合併というようなことも考えられるわけでございますが、実際問題としてなかなか、合併をいたします場合にはやはり合併される組合と、する方の組合との間の利害関係というのは当然いろいろな対立関係もあるわけでございまして、なかなかこれを一律に合併を促進していくということはむずかしい問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては先ほどから申し上げておりますように個別の現在ある組合を、いろいろな格差がございますけれども、その格差を是正していきながらおのおの健全な組合に持っていくということを第一にするということで考えておるわけでございますけれども、また合併の問題も全くこれは考えないというわけではございませんで、将来の問題としてどのような可能性があれば一体合併が可能になるかというようなことも研究をいたしまして今後の課題にしてまいりたいというふうに申し上げている次第でございます。
  73. 中野明

    ○中野明君 じゃ最後に、今回の法改正は補助金の見直しなどで行政改革を推進している中に非常に国庫負担の導入等努力されていることは評価するのにやぶさかでございません。しかしながら、今後ますますそういう面で財政上の制約を受けてまいります。だから漁業経営の安定のために非常にこれ大変な時代を迎えておるわけなんですが、これに対する水産庁の厳しい財政下における漁業経営安定のための基本的な考えですね、それから今回の改正で一応、大臣趣旨説明にもありましたように、損害等補償制度が一応完成されたということでございますが、制度の上では完成を見たですけれども個々の中身については質疑の中に出てまいりましたようにまだまだ検討もしていただかなきゃならぬ、中身も充実してもらわなきゃならぬということもございますので、これをもって事成れりということではないと思います。その点のお考え、二点を最後にお聞きして終わりたいと思います。
  74. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 大変有益な御指摘をいただきまして……。  新保険制度のこれで一応取りまとめが終ったような私の考え方を述べておりますけれども、やはりいろいろ御指摘いただいた点を個々に検討していきますと、これからも手直しは出てくるんじゃないでしょうか、と思います。ただ、漁船漁業の振興を図るためにはこの漁船保険制度が有益な手段である、したがってここには相当国がやっぱり助成をし、めんどうを見るべきであるというのが私の基本的な考え方でございますので、今後一層ひとつこれの強化に努めてまいりたいと思います。
  75. 下田京子

    ○下田京子君 今回積み荷保険本格実施ということになりまして漁船保険制度も一応体系的なものになってきたと思うんですが、幾つかの改善点について、現行でなされている問題について私はお聞きしたいと思います。  最初にやっぱり保険料の引き下げ、これはいろいろ考えられてしかるべきじゃないか。  具体的な点でお尋ねいたしますと、長官のところにもお手元に資料があると思うんで、これ時間もございませんから見ていただきたいんですけれども、国の再保険が最高——まあ九五もありますけれども特別に、九〇%やられている北海道の南後志と青森をちょっと見ていただきたいんです。これを見ますと、北海道の南後志の場合には青森県に比べまして保険料率が三・一九ということで青森の一・七五に比べて倍近いというふうな事態、それから一方、危険率も非常に高くて、損害率が年々保険料の支払いもふえていまして、五十二年に一一九%、五十三年に一六四、五十四年が一一六、五十五年一四〇%と高くなっているんですね。こういう状態になってきますと大変組合経営が不安定だと思うんですよ。これを何とかやっぱり補助なんかで考えていくべきじゃないかと思うんですけれども、いかがなものでしょうか。
  76. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 私もこの資料を見せていただきまして、ちょっと驚いたわけでございますが、この南後志の保険組合では、沿岸、沖合い漁業を主として引き受けているんだろうと思いますけれども、この漁船の船質構成を見ますると、やはり木船の率が高いということから危険率が高くなっているんじゃないかというふうに考えます。これによってやはり純保険料率も他の組合に比べまして高くなっているのだと思います。ただ、これにもかかわりませず損害率が一〇〇%を超えているわけでありますが、この組合はどうも実態を調べてみますると、このような損害を付加保険料率でカバーしているらしいということでございまして、このような組合経営は決して適当な、安定的な経営ではないというふうに私は思います。したがいまして、危険率に見合った純保険料率設定して付加保険料率を引き下げるということがやはり正しい方向ではないかというふうに考えるわけでございます。
  77. 下田京子

    ○下田京子君 純保険料を上げて付加保険料を下げる、そういう手法もありますけれども、結果としてはね、漁業者負担を負うということになっちゃうと思うんですよ。私はそれを聞いたのではなくて、国がいま特別会計なんかでも一応事業をやっているわけですから、さっきの大臣の御答弁にもございましたが、国はやっぱりこの保険制度というものを大事にしながら、やれるところでは大いに補助をやっていきたい、こう言っているわけですよ。  申し上げますと、特別会計の方を見ていきますと、利益金がいまどのくらいになっているか、五 十五年で九十八億八千万円になっていますね。五十六年には百二十九億四千万円とふえているわけですよ。ところが、ただいま言われました漁船の付加保険料の問題ですけれども、国がやっている適正化のための補助金というのはわずかに対前年比で五十八年度の予算は四百万円ふえただけでしょう。ですから、もっと補助すべきじゃないかというのが一点なんです。
  78. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 特別会計の剰余金は、将来異常事故が発生いたしました場合の準備金として積み立てておくことにされておるわけでございまして、これが増加したからといって直ちに漁業者に還元できないという事情は先生よく御承知のとおりだろうと思います。ただ、かねてからこの運用益につきましては、漁船保険事業の健全な発達を図るということで、この運用益から補助事業をやっていることは事実でございまして、五十八年度には従来からの事業にも加えまして、漁船事故防止のための事業というものも予算化したところでございます。  私どもとしましては、各組合経営健全化のために、今後とも必要な予算額の確保というものはこの面からも図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  79. 下田京子

    ○下田京子君 やらないということでなくて積極的に考えているということですから、そういうことで対応を図ってほしいと、南後志の場合なども含めまして、ということを申し上げておきます。  さらに、国の再保険の割合を九五%まで引き上げるということも可能ではないかと思うんです。私の方で聞いたら、組合の方が要望されていると。でも、水産庁の方でお尋ねに出したら、すぐとは言ってないという、行き違いも若干あるようですが、いずれにしても、ある、なかったは別にいたしましても、これは漁船損害等補償法の施行令の附則の十九項を基準にしまして、農水大臣漁船保険事業の収支の安定を図るため必要があると認めるときには特定の危険区域を設定して、九五%まで引き上げることができると、こうなっておりまして、告示にいま八組合なんかが指定されているんです。一定のトン数も基準がございます。問題は、皆さん方がそれを選択できるような形で、御要望もよく承って、いまの危険区分の指定を拡大するなり基準を見直すなり、そういうことで九五%までの国の再保険見られるような措置を運用で図っていただきたい、検討してほしいということです。
  80. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに現在の漁船損害等補償法の範囲内におきまして、九五%の再保険割合というものが設定できるということは事実でございます。ただ、私ども考えますに、組合がそれを要望しているとか要望していないとかということを離れまして、やはり組合の補助率を下げたからといって必ずしもそれが収支のバランスというものに直ちに好影響があるかどうかということはこれはまた別だろうと思います。つまり、少ない、割合が割合だけにやはり同じような赤字が出てくる。ですから、基本的には先ほど申しましたような経営健全化方策ということをとってもらうということが必要であるというふうに思うわけでございますが、私どもとしましては、いまそのような補助率の問題も出てまいっておりますので、そのような措置も含めまして組合経営健全化の方途について検討することにいたしたいというふうに考えています。
  81. 下田京子

    ○下田京子君 私の提起についての検討も含めてということですからぜひやってほしいわけです。いろんなことを手だて考えていきませんと、政策保険ということですからね。単純に見ていくなら民間にでも任せればいいということになっちゃうんですよ。そこのところをきちっと押さえて検討いただきたいと思います。  次に、いままでのお話は非常に危険率の高いところですが、一方安定した経営組合に対してしかるべき措置としてあるのが剰余金の還元の問題、つまり無事戻しの問題だと思うんです。これを見ますと、元受け組合の累積剰余金が五十四年度で百六十五億八千万円、五十五年が二百二億九千万円と一二二%も伸びております。ところが、実際に無事戻しをやられたところは、五十五年で十二組合しかなかったと思います。ですから、こういう点で、やはり具体的に、なぜこうなのかという点を調査いただいて、法律規定され、また施行規則の第十九条の中にはその基準も明記されているわけです。問題は、組合が何を基準にしてそれをやったらいいかという統一した経営の見通しというか、方針がないわけです。ですから、やはり水産庁として実態調査した上で、統一した経営の指針をつくって、いままでのように単に口頭でおやりなさいと言うだけじゃいけませんので、具体的に対応してほしい、こういうわけです。
  82. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 無事戻しの制度というのは確かに掛け捨てを防止いたしまして掛け捨て感をなくすということから加入の促進を図る一つの大きな有効な手段だと思っています。ただ、この無事戻しの財源というのはあくまでも保険組合の剰余金でございます。したがいまして、この剰余金は、第一には将来の異常事故の発生に備える準備金として積み立てておくべきであるというふうに規定されておるわけでありますが、必要な準備金を積んだ後にさらに剰余がある場合には定款の定めるところにより組合員に対して分配を行うことができるということは百八条で決まっているわけでございます。この組合員に対します分配につきましては、均等割りあるいは利用分量割りといったようないろいろな方法が考えられるわけでありますが、今制度では、従来からの無事故船に対する分配、すなわち無事戻しで行うということで指導してきているところでございまして、このような無事戻しにつきましては、組合の準備金の蓄積が進んだことに伴いましてこれを実施する組合も増加してきているところでございます。  そこで、先生お尋ねの無事戻しをどのようにどのぐらいやるかということについてある程度まで基準をつくったらどうかということでございますけれども、この点につきましては、実は組合がどのくらいの準備金を持っているかということに非常にかかわっておりまして、準備金がどのぐらいだったらどのぐらいの無事戻しができるか、そういうことをかなり、いろいろな状況に応じてひとつ検討しまして、それである程度までの基準というものをつくっていかなきゃならぬというふうに考えているわけであります。すでに、私どもとしましては、無事戻し対策というものの強化ということを考えておりますので、この検討一環として、われわれとしても今後このような基準をどう考えていくかということを詰めて考えてみたいというふうに思っておる次第でございます。
  83. 下田京子

    ○下田京子君 詰めてやっていただきたいと思いますよ。  念のために言いますけれども、純財産がどんどんふえているわけですけれども、かといって保険料金を下げるということはできないわけですよ。ですから、無事戻しという制度をやっぱり活用させる。当然必要な準備金というのもこれも大事ですけれども、もう統一した経営の指針がないためにばらばらにやられているというのはお認めなわけなので重ねて申し上げておきます。  それからもう一つ損害基準の問題なんですけれども、これ漁船の救助の際の基準の見直しですね。これも具体的に申し上げますと、いただいた資料によりますと、漁船に救助された場合の救助報酬基準というのがございますよね。これが最近のは五十七年につくったものが基準になっているわけですが、その前はいつかというと五十五年ですよね。その際のことを見ますと、五十五年三月以前の分は一日分について四十五万一千円しか見られてない、これは三百五十トンから五百トン未満の場合ですけれども。ところが五十七年の基準になりますと九十九万一千円と倍以上になっているわけです。余りにも格差があるわけですね。こういう点で、一つは、つまり五十五年の三月三十一日以前、三月時点の人は四十五万一千円しかもらえなくて、四月以降は九十九万一千円ですから、大変な矛盾になるわけです。問題はここに何があるかというと、一定——やっぱり余り間を置 かないで見直しをする、こういうことが必要でないか。もう一つは、実態に合わせた見直しをやるべきじゃないか。それからもう一つは、サルベージ会社なんか民間に救助を頼んだ際と僚船が救助に行った場合との差なんかも出てますので、そういった点を総合的に判断して、迅速かつ実態に合った見直しを図っていただきたい。
  84. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 漁船保険における救助費はサルベージ会社に請け負わせるような場合には競争入札によっておりますのでこれはまた別でございますが、僚船が救助した場合にはやはり救助報酬と資材の実費というものを補てんするということで救助報酬というものを決めておるわけであります。これにつきましてはやはり燃料代が高騰しておりますし、漁業経営の経費もいろいろ増加しておりますので、先生おっしゃいましたように五十七年に大幅引き上げをやったわけでありますが、やはりこれは漁業の実態に見合って適切に常に設定していくということが必要であると思いますので、そのような方針で今後とも対処してまいります。
  85. 下田京子

    ○下田京子君 最後に、先ほども他の委員から御指摘がございましたけれども、今回の米側が二百海里内の漁業の割り当ての問題の削減のことなんですけれども、これは長官と大臣に御答弁いただきたいわけですが、何が問題かということを、問題点を明確にしてほしいんですよ。  一つは、捕鯨に対する米側のやはり考え方ですね。科学的な根拠を無視して一方的にやっぱり出してきているというふうな点が非常に大きいと思うんです。それに対してやはりわが国が異議を申し立てしたというのを明確にしていかなければならないと思うんです。それが一点。  それからもう一つは、昨年末に日米の漁業協定を締結いたしましたね、アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本政府とアメリカ合衆国政府との間の協定、この第五条のところなんですけれども、これずいぶんあのときも私、質問で議論したんですが、これを持ってくることが予想されると思うんですよ。第五条の中で、「合衆国の法律で定められた諸要素をその決定の基礎とする。」と、こうなっておりますね。その中に幾つかの項目がありまして、どうも第八項で、「合衆国政府が適当とみなすその他の事項」というふうなことを理由にしてやってくると。これをのみますと何でも米側が出したものはということで認められちゃうわけです。そういうこともあるので非常に問題でございますから、いま言った二点等をきちっと踏まえた上で今後も対応いただきたい。まず長官に御答弁いただいて、最後に大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  86. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の四月割り当てに当たりまして、米側といたしましては二五%、二十八万六千トンの割り当てのうちで九%留保して十八万三千トンの割り当てをしてきたということは事実でございます。先方の理由は、昨年の国際捕鯨委員会における一定期間経過後の捕鯨禁止決定、つまりモラトリアムでありますが、これにつきましてわが国が行った異議申し立てに対しまして米国内で反捕鯨勢力がございまして、これが非常に強い不満を持っておりますために、その圧力下で今後捕鯨問題につき何らかの進展が見られなければこの留保というものをそのまま継続する、何らかの進展が見られれば逆にこれをお返しします、こういう態度に出てきたということは事実でございます。  そしてまた、この適用の条項と申しますのはやはりアメリカの二百海里法の中にございますただいまのバスケットアイテムという事柄、それを根拠にしているということも事実でございます。と申しますのは、マグナソン・パックウッド法というものは、われわれは何らいまことしの捕鯨につきまして違反行為をやっているわけじゃありません、条約に従って捕鯨を行っているわけでありますから、パックウッド・マグナソンはかけられないわけであります。したがいまして、いまのバスケットアイテムというところで恐らくこのような措置をとってきたものというふうに考える次第であります。  そこで、先ほども御答弁申しましたように、私どもとしましては基本的にこれは漁獲割り当てと捕鯨問題とは別であるということを強調しますと同時に、今後とも十分に捕鯨の問題についてはいろいろとアメリカと話し合いをしようじゃないかという話をしている、またいろんな協力関係というものもアメリカとの間に結ばれているということを強調いたしまして、とにかくこの留保分をできるだけ早く返してくれということを先方に言っているわけでございまして、先般四月の八日にもピース公使に対しまして私直接にこのことは申した次第でございます。今後ともなおアメリカとの間は続けて話し合いいたしまして、この問題について解決をしていきたいというふうに、最大限の努力を払いたいというふうに考えている次第でございます。
  87. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 日本漁業権益を守るために粘り強く強い姿勢で取り組んでまいります。     ─────────────
  88. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 委員異動について御報告いたします。  本日、桧垣徳太郎君及び秦野章君が委員辞任され、その補欠として福田宏一君及び宮澤弘君が選任されました。     ─────────────
  89. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 最初に基本的な問題ですけれども、お伺いをしておきたいものがありますが、これは四十八年に臨時措置法として成立して、五年間の試験期間と、当初はそうなっておったわけですが、それがさらに五年間延長、継続されまして、ようやく本格的な制度として施行されるようになるわけですが、この十年間このように本格実施まで延びてきた、その理由をまずお伺いをしたいと思います。
  90. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) この制度昭和四十八年に試験実施ということで法律をつくりましてそれに踏み切らしていただいた次第でございますが、その後五年たちまして昭和五十三年にこれを本格化するかどうかということが議論になったわけでございます。ところが、この当時は昭和五十二年から非常に大きなうねりとなってまいりましたいわゆる二百海里の問題が生じてまいりまして、米ソ、そのほか日本が入域している諸国におきましてこのような非常に大きな操業についての変動が起こり得る、そういう事態が生じたわけでございます。  そこで、その際にお諮りをいたしまして、今後これを本格的に実施できるかどうかということを御検討いただいたわけでございますが、その際の私どもの考え方といたしましては、やはり加入率なりあるいは損害率といったような非常に重要な保険の設計のもとになります事項にこれが影響があるのではないかというふうに考えまして、なお試験実施を続けさしていただきたいということでさらに五カ年間の試験実施を続けさしていただいたわけでございます。  しかし、今回はそのような十年間の経過、中でも二百海里の実施後の経過状況も見まして、本格実施に踏み切り得るというふうに考えましたので、このような御提案を申し上げたということでございます。
  91. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 理由はある程度わかったんですが、先ほど来からのいろいろ御論議を聞いておりますと、結局この保険制度が本格的に実施された場合、果たしてこの制度が安定的に運用をされていくだろうか、こういう不安を皆さんお持ちになっておられるように思うわけですね。いままでの加入率が二〇%、それから各国の二百海里漁業規制がさらに進んでいく可能性が予測をされる。したがって、わが国の漁業操業率というんですか、それが落ちていくだろう、こういう予測もあるし、さらにカツオ、マグロの減船の問題ももちろんある。そういうことと同時に、船の年齢そのものが非常に古くなってきている。したがって危険率が高まるであろうと、こういうようなさまざまな条件と予測の中で、果たしてこれが本格的に 実施された場合に安定的な運営ができるだろうか、こういう不安が大変あると思うんですね。その辺のところの見通しというんですか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  92. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに今後の漁業経営動向、特に生産再編対策というものを進めていき、あるいは二百海里の規制というものがこれからも強まってくるという状況を考えますると、この保険制度というものを安定的に運用するということにつきまして、御懸念あるいは御不安があるということは私は否定できないところであると思います。  もちろん、このような事態を回避するために基本的な施策につきましてのあらゆる努力は傾注すべきであるというふうに思っておるわけでございますが、しかしながら、同時に、過去十年間の経験におきましても、あのような五十二、五十三年の非常に厳しい事態におきましても何とかこの漁船のこの積み荷保険制度運用できてきたということを考えますると、これは将来とも何とか運用ができるのではないかということで本格実施に踏み切った次第であります。  しかし、このような先生御指摘のような危険分散が十分できるかといったような問題につきましてはなお懸念がございましたので、今回の本格実施に当たりましては、この法案に書いてございますように、まず第一は保険料国庫負担を行うことによりまして加入を増大させ安定させる、加入の安定を図っていくということを一つ大きな眼目として新たに入れております。  それからまた、本格実施に当たりましては、従来は中央会が再保険の責任者でございましたが、今回は国が再保険者になるということによりまして事業の運営を国がみずから中に入ってやっていくということで安定さしていただく。  それから第三に、組合の固有責任の分につきましても漁船保険の中央会が補完保険責任を負うということにいたしまして、なお一〇%の元受け保険の責任分につきましても全国的プールをするという、三つの大きな試験実施のときには入っていないそういう制度を仕組んだわけでございます。  したがいまして、これによりましてさらに補強された積み荷保険制度によって適確なまた安定した運営ができるというふうに考えておる次第であります。  それからまた、船齢が古くなるに従って危険率が増すではないかと、確かに御指摘のとおりでございますので、私どもは本格実施後におきましては保険料漁船の船齢割引制という制度を導入するということを考えておりまして、これによりまして危険に見合いました適正な保険料を算定してまいりたいというふうに考えている次第であります。
  93. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 いま長官の御説明のように、三つの大きな制度を仕組んで不安のないように、安定的に運用をしていくんだと、こう言われますけれども、そこの中で、国が再保険者となったために損害査定などがきわめて画一的に行われる、あるいは査定の期間がずっと長くなっちゃってという、そういう能率の面で不安を持たれているわけですが、その点について、その不安に対してどのように対処されていくのかということが一点と、それからもう一つの問題で、漁船保険中央会が当分の間補完的再保険事業を行うことができるとしていると、こういうんですが、当分の間というのは一体どの程度の期間なのか、その点二点だけお伺いしておきます。
  94. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) やはりこの漁船保険といったような保険の中、特に積み荷保険につきましては、やはり危険分散というのはできるだけ広い地域で分散する。つまり、国の地域で分散するということも必要でありますが、さらに、長期間の収支均衡といういわば時系列による分散ということも非常に重要であるというふうに考えられますので、さような意味で、国といった非常に、最も安定的な組織というものがこの再保険の責任者になるということが適当であると考えまして、本格実施後は国が再保険者になるということをこの制度で取り入れたわけでございますが、確かに一面におきまして、国の事業になりますととかくお役所仕事になりまして運用が画一的、形式的に流れやすいということで御懸念がある、また事務処理も非常に繁雑な手続になりまして、そのために批判が起こるということにつきましては、私どもも十分にこれは心しなければならない問題であるというふうに考えておる次第でございます。とりわけ水産業におきましては、漁業種類ごとに事情は大きく異なっておりますし、また時々刻々漁業の実態というのは変化してまいるわけでありますから、これに対応するようなそういう保険制度運用というものが必要でございまして、このような観点から漁業実態に即したきめ細かい事業運営になりますように、お役所仕事になりませんように十分気をつけて再保険責任の仕事をやってまいりたいというふうに考えております。  二点目でございますが、この補完保険を中央会が実施する当分の間ということは、先ほどもお答え申し上げましたが、組合段階で危険分散の十分できる加入が得られるまでは補完責任を続けるというつもりでございます。
  95. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 最後になりましたけれども、試験実施期間中に五十三の漁船保険組合ができて、その中で四十一の保険組合ですね、事業を実施していると。ところが、この中で赤字を生じている組合、しかもそれもきわめて恒常的な赤字と、それを生じている組合があるんだということ。それは数は少ないでしょうが、その赤字組合を、この剰余金九億円で本格的に移行するときにそれは赤字も埋めてやるんだ、こういう長官のお話がありました。しかし問題は、たった一隻の船しか保険に入っていないと、それで事業をやっているんだと、こういうところは、これはやっぱり先ほどからもお話があったように、どうしたってこれは合併を進めて、この保険事業に支障を生じないような方向というものが、これは積極的に進めていかなきゃならぬと思うんですが、先ほどの長官のお話だと、さまざまな理由があってなかなか合併する方とされる方ではいろいろ問題があるんだと、こう言うのですが、そんなものを乗り越えて、こういうやっぱり合併をしていく必要があるのではないか、こういうように思うんですが、その点の御見解をお伺いして終わりたいと思います。
  96. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 確かに現在の各元受け責任を持っております組合経営状況を見ますると、不足金が相当累積している組合があることは事実でございまして、当面、先ほど申しました繰越剰余金の使い方の中でもこの不足金の対策というものを考えてまいらなければならないというふうに考えておるわけでございますが、やはり問題は恒常的な問題としてこれをどう考えるかということでございまして、第一次的には、私どもは従来のいろいろな指導、補助事業を通じまして、付加保険料なりあるいは純保険料なりを適正に設定し、また同時に付加保険料についてもいろいろな、余り高い付加保険料を取っている組合に対してはいろいろな助成もやっていくというようなことで、個々の組合経営というものを健全化するということを考えているわけでございます。  ただ、御指摘のように非常に長い目で見ますると、合併といったような問題も決しておろそかにできない問題でございますので、これはいろいろ先ほどから申し上げているような事情がございまして一挙にこれ踏み込むにはなかなかむずかしいかと思いますが、どのような基礎条件になればできるのかといったようなところから十分に検討いたしまして、将来の課題としてこれ詰めさしていただくというふうに考えている次第でございます。
  97. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  漁船損害等補償法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  99. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  坂倉君から発言を求められておりますので、これを許します。坂倉君。
  100. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私は、ただいま可決されました漁船損害等補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     漁船損害等補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   漁船損害等補償制度は、漁船積荷保険本格実施に伴い、漁船に関する総合的保険制度として整備され、その漁業経営の安定に果たすべき役割は、一層大きなものになろうとしている。   よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。  一、漁船損害等補償制度が、厳しい情勢下にある漁業経営の安定対策として、より有効にその機能を発揮し得るよう、今後においても、その内容の充実に努めること。  二、国が、漁船積荷再保険事業実施するに当たっては、保険契約、損害査定等が、画一的、形式的にならないよう、また、保険金支払いが、迅速になされるよう、漁業経営の実態に即した弾力的運用を図ること。  三、試験実施期間中における漁船積荷保険事業の実績にかんがみ、純保険料率の引下げに努めるとともに、一層の加入の拡大を図ること。    また、漁船保険中央会に積み立てられた支払準備金については、漁船積荷保険事業の円滑な運営と健全な発展のために使用すること。  四、漁船損害等補償制度の安定的な運営を確保し、付加保険料率の引下げを図るため、経営基盤のぜい弱な漁船保険組合の格差是正のための補助事業の活用と併せて、合併等の推進についても検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  101. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいま坂倉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  102. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、坂倉提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金子農林水産大臣
  103. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  104. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  106. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。金子農林水産大臣
  107. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 水産業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  水産業協同組合制度は、漁民及び水産加工業者の自主的な協同組織の発達を促進し、漁民及び水産加工業者の経済的地位の向上と水産業の生産力の増進を図ることを目的として、昭和二十四年に発足いたしました。以来、水産業協同組合は、わが国経済及び水産業の歩みとともに発展し、活発な活動を展開してきたところであります。  しかしながら、近年における水産業をめぐる諸情勢は、二百海里体制の定着、燃油価格の高水準の推移等きわめて厳しいものがあります。これら諸情勢変化に対応するとともに、国民生活に不可欠な水産物の供給を確保していくため、水産資源の維持培養、漁業経営の維持安定等のための諸施策を強力に推進しているところでありますが、これとあわせて、水産業協同組合の機能を拡充強化し、その健全な発達を図ることが緊要となっております。  こうした状況に対処するため、共済事業制度の整備改善を図り、水産業協同組合の系統組織により、共済事業を組織的に推進することができるようにするとともに、内国為替取引に係る員外利用制限の緩和、内部監査体制の充実等を図ることとし、この法律案提案することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、漁業協同組合及び水産加工業協同組合の事業の種類に、組合員の共済に関する事業を追加するとともに、新たに、共済水産業協同組合連合会を設立することができることとしております。  また、これに関連し、水産業協同組合共済会に関する規定を削除し、現に存する水産業協同組合共済会は、共済水産業協同組合連合会に組織変更できるようにすることとしております。  第二に、信用事業を行う漁業協同組合等の内国為替取引について、員外利用制限を受けずに行うことができることとしております。  第三に、会員の監査の事業を行う漁業協同組合連合会及び水産加工業協同組合連合会は、監査規程を定めるとともに、監査事業には、所定の資格を有する者を従事させなければならないこととしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  108. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。松浦水産庁長官
  109. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 水産業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一に、組合員等に関する共済事業制度の整備改善についてであります。  従来、共済に関する事業は、全国を地区とする水産業協同組合共済会の事業として実施されてきたところでありますが、近年、漁業協同組合及び水産加工業協同組合において、事業の実施体制が整備されてきたことに伴い、農業協同組合と同様に、組合員に出資をさせる漁業協同組合及び水産加工業協同組合の事業とすることとしております。  これに伴い、漁業協同組合及び水産加工業協同組合の行う共済事業につき、共済規程の設定、責任準備金の積み立て等について、所要の規定を設けることとしております。  次に、漁業協同組合、水産加工業協同組合等は、共済水産業協同組合連合会を設立することができるものとしております。この共済水産業協同組合連合会は、当該連合会を直接または間接に構成する者の共済に関する事業を行うことができるものとしております。なお、この制度は、農業協同組合における制度に準じたものであります。  第二に、信用事業を行う漁業協同組合等が、内国為替取引について、員外利用制限を受けずに行うことができるものとすることであります。  近年における内国為替取引の取扱量の増大等にかんがみ、漁業協同組合等が、その迅速かつ円滑な処理を行うことができるようにするものであります。  なお、農業協同組合につきましては、昨年の農業協同組合法の改正により、同様の措置を講じているところであります。  第三に、漁業協同組合連合会及び水産加工業協同組合連合会の行う監査事業の整備改善を行うことであります。  近年、水産業協同組合の事業が拡大し、また、多様化が進んできていることから、これに対処して、その事業が一層適正に行われるように、系統組織における内部監査体制の整備を図ろうとするものであります。  まず、漁業協同組合連合会及び水産加工業協同組合連合会が、会員たる水産業協同組合の監査の事業を行おうとするときは、監査規程を定めることとしております。この監査規程には、監査の要領及びその実施の方法並びに監査事業に従事する者の服務に関する事項を記載しなければならないものとしております。また、監査事業には、省令で定める資格を有する者である役員または職員を従事させなければならないものとしております。  なお、このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上をもちまして、水産業協同組合法の一部を改正する法律案提案理由補足説明を終わります。
  110. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十分散会