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1983-03-22 第98回国会 参議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十二日(火曜日)    午後零時三十五分開会     ─────────────    委員異動  二月十八日     辞任         補欠選任      熊谷  弘君     大石 武一君  二月二十一日     辞任         補欠選任      伊藤 郁男君     三治 重信君  二月二十二日     辞任         補欠選任      三治 重信君     伊藤 郁男君  二月二十三日     辞任         補欠選任      坂倉 藤吾君     山田  譲君  二月二十六日     辞任         補欠選任      山田  譲君     坂倉 藤吾君  三月十九日     辞任         補欠選任      伊藤 郁男君     田渕 哲也君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 岡部 三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 瀬谷 英行君                 鶴岡  洋君     委 員                 大城 眞順君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 田原 武雄君                 中村 禎二君                 初村滝一郎君                 川村 清一君                 村沢  牧君                 中野  明君                 藤原 房雄君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 大石 武一君    国務大臣        農林水産大臣   金子 岩三君    政府委員        農林水産政務次        官        鈴木 正一君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房総務審議官   関谷 俊作君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        農林水産省食品        流通局長     渡邉 文雄君        農林水産技術会        議事務局長    岸  國平君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        林野庁長官    秋山 智英君        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和五十八年度の農林水産行政基本施策に関する件) ○北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出) ○原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月十八日、熊谷弘君が委員辞任され、その補欠として大石武一君が選任されました。  また、三月十九日、伊藤郁男君が委員辞任され、その補欠として田渕哲也君が選任されました。     ─────────────
  3. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) まず、理事辞任についてお諮りいたします。  村沢牧君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事瀬谷英行君を指名いたします。     ─────────────
  6. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 農林水産政策に関する調査のうち、昭和五十八年度農林水産省関係施策に関する件を議題といたします。  農林水産大臣から所信を聴取いたします。金子農林水産大臣
  7. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 農林水産委員会の開催に当たりまして、私の所信一端を申し上げます。  今日、わが国経済社会を取り巻く諸情勢を見ると、世界経済は引き続き停滞傾向にあり、先進諸国における失業問題は戦後最悪の状況に立ち至っております。  また、国内面にあっては、物価は安定的に推移している反面、景気回復ははかばかしくなく、財政の大幅な不均衡は依然として解消されないなど、わが国経済社会はかつてない困難な時代に遭遇いたしております。  このような困難な状況の中で、今後わが国が安定した成長を維持しつつ経済社会発展国民生活の安定を図っていくためには、何といっても、国の基とも言うべき農林水産業の健全な発展を図ることが不可欠であります。  現在、わが国農林水産業をめぐる内外の諸情勢は、米を初めとする多くの農産物需給の緩和、土地利用型農業部門経営規模拡大停滞労働力高齢化等の諸問題に加え、行財政改革観点からの農林水産行政の一層の効率的な推進の要請、諸外国からの市場開放要求の強まり等きわめて厳しいものとなっております。まさに、わが国農林水産業は試練のときを迎えていると言っても 過言ではありません。  申すまでもなく、農林水産業は、国民生活にとって最も基礎的な物資である食糧安定供給を初め、活力ある健全な地域社会形成地域住民への就業の場の提供、国土自然環境保全などわが国経済社会の土台を支える重要な役割りを果たしております。  八〇年代の経済社会は、資源エネルギー制約の強まり、高齢化社会の到来、物質的豊かさより生活質的向上や生きがい、ゆとりを求める国民の志向の強まりなどが見込まれます。  この中で、再生可能な自然エネルギー利用し、また、自然の生態系と調和してこれを維持培養するという他産業には見られない農林水産業の特質は今後ますます重視されていくものと考えます。  しかも、今後の世界食糧需給展望を見ますと、中長期的には楽観を許さないものがあります。  このような状況のもとで一億一千万人を超える国民食糧を安定的に供給し、健康的で豊かな食生活を保障するためには、国内生産可能な農産物は極力国内で賄うという方針のもとに、総合的な食糧自給力を維持強化することが基本的に重要であります。  この場合、国民の広範な理解と支持を得るためにも、わが国制約された国土条件のもとで、可能な限り生産性向上を図ることを基本として、農林水産業役割りが着実かつ効率的に果たされることが肝要であります。  以上のような基本的考え方のもとに、昨年八月、農政審議会から行われた「「八〇年代の農政基本方向」の推進について」の報告を踏まえ、最近のわが国農林水産業を取り巻く厳しい情勢に対応した柔軟な発想により農林水産行政展開を図ってまいります。  以下、昭和五十八年度における主要な農林水産施策について申し上げます。  まず、農業振興につきまして申し上げます。  第一に、生産性向上重点を置き、農業構造改善農業基盤整備農業技術開発普及を図ることであります。  すなわち、構造改善につきましては、新たに昭和五十八年度から地域農業集団を広範に育成し、その活動を通じて、これまで十分進んでいなかった土地利用型農業経営規模拡大生産性向上を強力に推進いたします。また、山村、離島を含め、農村の多様な立地条件にきめ細かく配慮した新農業構造改善事業後期対策を発足させることとしております。  農業基盤整備につきましては、昭和五十八年度から昭和六十七年度までの十年間を計画期間とする第三次土地改良長期計画を策定することとし、農業農村の健全な発展のための基礎条件計画的整備を図ることとしております。  また、技術開発につきましては、生産性飛躍的向上を期するため、細胞融合核移植などの革新的技術を活用した技術開発試験研究体制整備などに重点を置くこととしております。また、新技術普及定着を図るため、普及事業の効果的、効率的な運営に努めるほか、統計情報整備を図ることとしております。  第二に、限られた国土資源のもとで需要の動向に応じて最も効果的に農業生産が行われるよう農業生産の再編成を進めることであります。  今後は、農業生産の再編成の面から見ても、生産性向上の面から見ても、土地利用型農業発展重点を置く必要があります。特に、稲作と大家畜生産は、わが国土地利用型農業の基軸をなすものであります。その生産性向上に積極的に取り組みつつ、着実にその発展を図ってまいりたいと考えております。  農業生産の再編成を進める上で最も重要な水田利用再編対策につきましては、昭和五十八年度の転作等目標面積を軽減し、六十万ヘクタールとしたところであります。昭和五十九年度から始まる第三期対策につきましては、第二期対策実施状況や米の需給事情転作定着化状況等を総合的に勘案して、昭和五十九年度の予算編成までの間においてその枠組みについて結論を得たいと考えております。  第三に、国民に健康的で豊かな食生活を保障することであります。  わが国食生活は、米を中心とし、栄養のバランスがとれた豊かな内容のものとなっており、欧米諸国とは異なる形態の、いわば「日本型食生活」ともいうべきものが形成されつつあります。この  「日本型食生活」は、健康の保持という面と国内生産との結びつきを持った食糧消費という面の両面において望ましいものであります。今後一層その定着を促進してまいりたいと考えております。  このため、「日本型食生活」を構成する主要食糧需給価格の安定を図ることを基本に、地域生産される農林水産物利用高度化食品加工流通部門効率化外食産業近代化を進めるなど食品生産から加工流通全般にわたり力を入れるほか、消費者に対する啓発活動などを推進することとしております。  以上申し上げました各般の施策のほか、世界食糧需給の安定に貢献するため、長期的観点に立って、開発途上地域における農業開発への協力を一層推進することとしております。  また、国土資源制約のあるわが国として輸入に依存せざるを得ないものについては、その安定的輸入確保を図るとともに、国内の不作や輸入障害事態に備えて備蓄の確保を図ることとしております。  このほか、金融制度充実農業災害補償制度の円滑な運営等を図ることとしております。  次に、林業振興につきまして申し上げます。  森林林業につきましては、木材需要減退等厳しい環境のもとで、これまで積極的に植林してきた林木の健全な育成安定供給、緑豊かな国土保全林業生産の場である山村発展を図ることを基本としてまいりたいと考えております。  このため、これまでの施策をさらに推進するほか、昭和五十八年度においては新しい取り組みを行い、森林資源整備林業振興を図ってまいりたいと考えております。  すなわち、緑資源確保について広く国民理解協力を求めつつ森林適正管理を総合的に推進するとともに、上流水源地帯における複層林形成林道網整備を有機的に結びつけ、水源涵養国土保全の機能にすぐれた森林の造成に努めることとしております。  また、国有林野事業につきましては、経営改善を強力に推進してまいりたいと考えております。  次に、水産業振興につきまして申し上げます。  水産業につきましては、諸外国による二百海里規制の強化、燃油価格の高水準での推移等による漁業経営の悪化、水産物需要低迷等厳しい事態に直面しております。  困難な状況にある漁業経営の立て直しのため、漁業生産構造再編整備等推進するほか、新たに昭和五十八年度から省エネルギー、低コストを実現する新しい漁業技術体系の確立を図るなどの施策を講じてまいりたいと考えております。  また、栽培漁業推進体制整備等による「つくり育てる漁業」の振興、粘り強い漁業外交展開を通ずる遠洋漁場確保、さらには水産物流通加工改善と多獲性魚を初めとする魚の消費拡大によって、水産業振興水産物安定供給に努めてまいりたいと考えております。  さらに、漁業協同組合事業範囲への任意共済事業の追加、漁船積み荷保険本格実施等を行ってまいりたいと考えております。  以上申し上げましたような農林水産業振興を図るためには、その基盤となる健全な地域社会かつくられることが不可欠であります。このため、農山漁村の総合的な環境整備推進等により、豊かで活力に満ちた農山漁村を建設するとともに、農林水産業生産基盤である農用地、森林等緑資源維持培養、漁港の整備漁場保全開発を図ってまいりたいと考えております。  これら農林水産施策推進するため、厳しい財政事情のもとで、農林水産予算につきましては、生産性の高い農林水産業の実現と農林水産物安定供給目標として、限られた財源の中で質的な 充実に努めることに重点を置き、厳しい中にも明るい展望が開けるよう必要な予算確保を図ったところであります。  また、施策展開に伴い必要となる法制整備につきましては、今後、当委員会の場におきましてよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  最後に、当面の最重要課題となっております農産物の市場開放問題につきまして申し上げます。  現在残されている輸入制限品目は、すべてわが国農業の基幹となるもの、地域振興上特に重要なものに限られ、自由化を行うことは困難な状況にあり、欧米諸国においても、農産物については種々の輸入制限措置を講じているのが実情であります。  私は、今後とも、わが国農業実情やこれまでの農産物市場開放措置について諸外国に十分説明し、その理解を得ながら、自由化要求に応ずることなく、慎重に対処してまいりたいと考えております。  以上、所信一端を申し上げましたが、私は農林水産業に携わる方々に明るい希望を持っていただけるようわが国農林水産業発展のため全力を傾けてまいる覚悟であります。  委員各位におかれましては、農林水産行政推進のため、今後とも一層の御支援、御協力を賜りますよう切にお願い申し上げる次第であります。
  8. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本件に対する質疑は後日に譲ります。     ─────────────
  9. 下条進一郎

  10. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法は、それぞれ北海道及び南九州の劣悪な自然的条件のもとにある畑作地域内の農業者に対し、農林漁業金融公庫が必要な資金貸し付けることにより農業経営の安定を図ることを目的とするものであります。  これら二法は、昭和三十四年あるいは昭和四十三年の制定以来、両畑作地域内の農業者営農改善に大きく貢献してまいりました。  これら二法により資金貸し付けを受けようとする農業者は、営農改善計画を立て、所要の資格認定を受けることとされており、その申請期限は、両法ともに、昭和五十八年三月三十一日とされております。しかしながら、両畑作地域内には、たび重なる災害発生等によりいまだ安定経営に達しない農業者が数多く存在すること、最近における農業をめぐる情勢にかんがみ、わが国の主要な畑作地帯である両畑作地域における農業経営を安定させる必要があること等から、引き続き本資金制度を継続する必要があります。  したがいまして、この二つの営農改善資金貸し付け資格認定申請期限をさらに五年間延長して、昭和六十三年三月三十一日までとし、関連土地基盤整備事業等の一層の推進と相まって両畑作地域における農業者経営の安定を図ってまいることとした次第であります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。
  11. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時四十二分開会
  12. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 川村清一

    川村清一君 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案に対して質問いたしますが、非常に法律名前が長いですから、略称、われわれは北海道の方をマル寒資金と称し、それから南九州の方をマル南あるいはマル南営農資金、こう言っておりますので、マル寒マル南というような、こういう名称で呼びますので、お許しをいただきたいと思います。  さて、このマル寒資金の方は、昭和三十四年に法制定がなされまして、それが三十九年に第一回の改正がなされ、四十一年に第二回の改正がなされ、そして、四十三年に第三回の改正がされまして、さらに四十八年に四回目の改正がなされまして、五十三年に五回目の改正、この改正法律案が現行の法律でありまして、これが五十八年の三月三十一日で期限切れになる。そこで、これからさらに五年間この法律の施行を延長する、いわば六回目の改正案がここに提案されたわけであります。それから、マル南の方は、昭和四十三年に法制定がなされまして、四十八年に改正がなされ、五十三年に二回目の改正がなされた。そして、今回また改正される、こういうことです。マル寒の方は、先ほど申し上げましたように昭和三十九年に改正されましたが、法制定は三十四年であります。マル南の方は四十三年から法律ができて施行されてきておる、こういうことであります。ですから、マル寒資金昭和三十四年に法制定されましてから、いま五十八年ですから二十四年間行われてきております。さらに、これが五年延長されますと、二十九年、大方三十年この法律が行われるということであります。  そこで、これは私は反対で申し上げておるわけではありませんが、先ほど申し上げましたように、北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法、これは臨時措置法。そうすると、最初法制定された場合は、昭和三十四年の四月一日から昭和三十九年の三月一日までで、この五年間これを実施するという目的時限立法としてこの法律ができたものと考えております。  ところが、これは延ばすことに反対しているわけではないですから、その点は間違えないで聞いていただきたいんですが、その法律が三十年もたってもまだ臨時措置法という法律では、この法律名称中身、運用というものがちょっとこれはマッチしないんじゃないかというような感じがするわけです。したがいまして、法律名称がこの中身とマッチするように名称を変えることができないものかどうか。臨時措置法が三十年も続いておるというのは、ちょっと奇異な感じがするわけですが、この点いかがなものですか。
  14. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、マル寒関係法制は六回目の延長であり、またマル南関係は三回目の延長になるわけでございます。私どもといたしましては、やはり延長期間中に対象農家に対する認定を行い、貸し付けがスムーズに行われるということを当初から標榜しているわけでございますが、やはり災害等特殊な自然条件影響等がございまして、御案内のように本制度対象となるべき農家がなお多数残る実情にあって、今回も延長をお願いしているわけでございます。  まあ、畑作営農全般についての法制がどうかという御議論もございますし、それからまた、マル寒マル南に限っても、これを臨時措置法ではなくて恒久法にしたらどうかという御議論一般にあることは私ども承知しておりますが、いわば地帯特殊性に着目いたしまして、あるいはまた農業特殊性に着目して、特別にその規模拡大なり経営条件改善を図るための、いわば特殊な地域 に限定してでの措置でございますから、他の幾つかの法制にもございますように、臨時措置法という形をとっているわけでございます。まあ、むしろこの期間内に目標が達成できるよう努力することが筋道ではないかと思っておりまして、一般法にすることについてはいささか全体との関連において問題があるのではないだろうかと思っております。
  15. 川村清一

    川村清一君 まあ、そういうお考えならそれで了解しますが、どうも法律名前内容とが一致しないということだけは、これはお認めいただけるものと思っております。なかなか法律名前を変えるのもこれは困難でありましょうから、そういうことで了解いたしますが。  次にお尋ねしたいのは、この六回目の今度の改正は全く単純延期で、内容がいささかも変わっていないわけですね。これもずっと表を見ますというと、たとえば貸付対象者あるいは経営改善目標、それから貸付条件といったようなものが改正ごとに変わっているわけですね、改善されているわけですね。たとえば制定当時の昭和三十四年のときには農業所得は三十万以下、それから改正の三十九年には農業所得四十万以下、次の四十一年のときには農業所得六十万以下、次の四十三年には農業所得七十万以下と、次の四十八年から五十三年までのときは農業所得中庸以下、これはちょっとわからないのですが、次の五十三年から五十八年のときも中庸以下と。  それから、経営改善目標でございますが、最初は四十万から五十万の所得、次は所得五十万から六十万、次が八十万、次のときが百十万から百三十万。その次が安定畑作経営所得水準として百八十万から二百十万ですか。次の五回目のときは数字が出ておりませんね。  それから、貸付対象範囲でございますが、最初土地改良建物施設、農機具であったのが、四十三年の改正のときから搾乳牛及び繁殖肉用雌牛を追加すると。次の改正では乳牛または肉用牛改正した。次には乳牛肉用牛または種豚の購入、それから果樹の植栽または育成、こういうものを追加しておりますね。  それから、貸付条件でございますが、これもたとえば利率でも土地改良五%、その他五・五%を四十三年の改正では土地改良四・五%、その他五%と変えてそれがずっときておると。  それから、貸付限度額でございますが、これは最初百万、次も百万、次が二百五十万、次が酪農は五百万、その他は三百万。これはマル寒で言っているんですからね、マル南ではなくてマル寒で言っているわけです。それから、次は酪農九百万、その他六百万、それから現行が酪農が千四百万、その他は九百万、こうなっておるんですが、今回の改正は全く単純延長というわけで中身改善が一つもないんでありますが、これは一体どういうわけですか。
  16. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 貸付限度額の引き上げの問題あるいは貸付条件改善等の問題について、各面から御議論があったことは事実でございます。  ただ、今日の状況を見ますと、今回法律延長をお願いしました趣旨というのも、災害その他の関係から当初予定した農家認定を受けることができないという状況がありまして、何とかそういった手を挙げている農家にこの制度金融の利益を均てんさせたいということに主要なねらいがあるわけでございます。最近までの実績を見てみますと、ただいま川村委員御指摘のように、改正の都度貸付条件改善とかあるいは限度額の引き上げ等を行ってきておりまして、私ども大観いたしますと制度としては十分特別措置として見る限度まで見てきているのではないだろうか。限度額等につきましても見てみますと、やはり最近の物価の安定状況ということやあるいはまた現に借り入れている農家の限度額との関係、そういった実績等を見ましても、大体いまの限度額で達成できるのではないだろうか。こういったことを考えまして、この法律延長自体についてはむしろ目的をおおむね達成したからいいではないかという議論もあったわけでございますが、先ほど申し上げたような事情を踏まえてぜひ延長はしたいということで主張をいたしまして、政府としての延長案をまとめたわけでございますが、条件の改定の問題とか限度額の問題等につきましては、先ほど申し上げましたような事情から今回は改善を見送っております。
  17. 川村清一

    川村清一君 そう言われてもちょっと納得いかないのですね。今回改正しますと、これ五年間ですからね。そうしますと、非常にいまは若干物価も安定しております。しかし、これがどう変わっていくか。決して生産資材といったようなものあるいは土地の購入代金といったようなものあるいは乳牛の購入代金といったもの、そういうものが全く安定しているものとは思わないわけですね。そうすると現在、これマル寒ですが、酪農が千四百万、その他が九百万と、これがこれから五年間このままいっていいものかどうか。そこで現地の方は何とかマル寒の方は酪農を二千三百万まで、その他は千五百万、それから現在マル南の方は酪農、乳用牛は九百万、その他は八百万でありますが、これを一律千五百万円に引き上げてほしいという強い要望があるわけでありますが、いま局長の言われたようなことで現行をこれで押し切っていくつもりか。どういうような変化が生じてもこれで押し切っていくつもりなのかどうか、その点をもう少しはっきりお答えいただきたい。
  18. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 貸付対象につきましては、累次の追加で内容を私ども充実しているのではないかと思っております。貸付利率、償還期間、据え置き等につきましては、いまの農業制度金融の中で最も優遇された部類になっておりますし、また、特にそのことで支障があるという実態ではないだろうと一般論としては思っております。限度額は御案内のように法定事項ではございません。そういう意味においては御指摘のように、経済事情の激変等がある場合においてどう考えるかという問題は、毎年毎年の予算の執行の問題としてはあり得ると思っておりますが、いまの経済状況を前提に置く限りにおいては、現に限度額満額を希望している農家というのは実は非常に低いわけでございます、実績というのは。まず問題はないのではないかと思っておりますが、当然経済状況の変化等に応じた検討ということはこれからも必要だろうと思っております。
  19. 川村清一

    川村清一君 ただいまの局長の御答弁によって、貸付対象範囲については今後これに追加していくこともできるというような御答弁でありましたので、私はマル南南九州におきましてはやはり何といいましても生産とそれから需要流通、この辺が一貴していかなければ農家所得はなかなかふやすわけにいきませんので、需要の多い花卉、花木——花の木ですね、これをぜひ対象範囲に入れてほしいという要望があるわけでありますが、これに対していまの局長の御答弁では入り得る可能性があると、こう私は理解して構わないかどうか。  それから、貸付限度額でございますが、これは先ほど申し上げましたように、マル寒につきましては百万円から始まって二百五十万円に上がり、そして酪農五百万その他三百万に上がって、それから酪農九百万その他六百万まで上がって、それから酪農千四百万その他九百万まで上がったのですから、これからの五年間で経済の激動、それがないとは保証できないのでありまして、そういう経済的な変化があった場合にはこれは法定事項ではございませんので、いわゆる政府の考え方によってそれを変えることが可能なわけですから、そういう配慮があってしかるべきだと私は思うのですが、いかがでございますか。  それから、償還期限、うち据え置き期間といったようなものはこれはなかなかむずかしいことですから、これには触れませんが、ぜひ私は貸付対象範囲それから貸付限度額、こういうものにつきましては、将来十分その自然状況あるいは経済社会の変動に伴って必要度が生じた場合には善処してもらいたいということを強く要請したいのですが、いかがですか。
  20. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 貸付利率、償還期間等の問題については、御理解いただけたかと思っておりますが、貸付対象貸付限度額はなかなかいろいろな議論があることは私ども承知しております。  そこで、貸付対象として具体的に、特に南九州等で問題になっております花卉、花木の問題でございますが、これは、実は花卉、花木につきましては非常に植栽育成期間が短期で、いわば運転資金的な性格を持っているという本質がございまして、長期の制度金融にはなじまないということで実は原則として認めておりません。総合施設資金だけが特定の種類であって生産圃場で二年以上の期間栽培をすることを目的とするものだけを認めているという例があるにとどまっております。どういう実態のものが御要望があったかということをいろいろ伺ってみますと、やはりどうも育成期間の問題その他から考えまして、むしろ近代化資金の融資対象として処理されるのがしかるべきというものが多いのではなかろうかというふうに理解しております。  貸付限度額の問題は、いろいろ農業自体の事情もございますが、やはり全体の物価動向が物を言う世界でございまして、私先ほど申し上げましたように、今日の状況下では比較的物価が安定しており、また、過去の実績等でも限度額いっぱいを要望する農家の比率が非常に低いということから見まして、いまのところ必要かないのではないかと見ておりますが、これからの経済動向を見きわめて、必要があれば毎年毎年の予算において十分考えてまいりたいと思っております。
  21. 川村清一

    川村清一君 そういうことであれば了解いたします。  その次ですね、この貸付対象者の中に、昭和四十八年に改正されてから四回目の改正、五回目の改正から農業所得というものは中庸以下という、こういう表現で数字を出さないのですが、これはどういうわけですか。一体これは所得目標はないんですか。
  22. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 従来から地域におきます階層分化の基軸になっております。つまり何と申しますか、規模が拡大していく農家階層と縮小する階層との境界点というか境界的なゾーンにあります規模なり農業所得に相当する農家中庸農家として取り扱ってきているわけでございます。
  23. 川村清一

    川村清一君 どうもちょっとわかりませんな、こんな抽象的なことでは。しからば、その前の方は三十万以下とか四十万以下とか六十万以下とか七十万以下と、こう明確に書いておいて、そしてこの四十八年の改正から中庸以下、こういう言葉で表現しているのですが、数字はないですか。  それと関連して、貸付対象者中庸以下幾ら、所得中庸というのは半ばということでしょうが、たとえば二百万の所得者と一番低いところで五十万と仮にしますか、そうすると、その中間ということですか、それ以下、真ん中より以下ということですか。その時代、時代においてどのくらいの所得があれば経営がやっていけるか、そしてここに所得目標が当然出てくるわけですね。中庸以下とあっても安定畑作経営所得水準が百八十万から二百十万ですか、という数字が四十八年改正のときには出てきているわけですね。五十三年の改正のときには安定畑作経営所得水準というものは明示されていないわけです。そうすると、どのぐらいの程度のものを貸付対象とし、その者がその営農改善によってどれだけの所得を得られる、畑作経営所得水準がどのくらいか、その水準、所得目標というものが明確でなければ一体資金貸し付けても果たしてその農家がそこのところまで上がるかどうかこれはわからぬわけでしょう。もう少しこれは具体的に数字を出して言ってもらわないと困りますね。
  24. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御案内のように、昭和四十七年までは農業所得の具体的な基準を通達に規定しておったわけでございます。これは経済状況の変化のもとで必ずしも適当ではないということで、中庸程度の畑作経営業者の水準以下ということで基準を決めまして、具体的な基準は適宜実は出してきているわけでございます。北海道の例で申しますと、現在は三百万円程度以下ということになっております。なお、宮崎、鹿児島の場合は二百万以下ということになっております。  なお、これを今回の改正後どういうふうに持っていくかについては検討中でございますが、全体の所得の動きなり、先ほども申し上げましたようないわゆる規模拡大と規模縮小の分界点にございます農家所得なり規模等を想定いたしまして、ある程度は引き上げていくことになるだろうと思っております。大体私どもの感じとしては、まだ決まっておりませんが、北海道については大体四百八十万程度、南九州では二百五十万程度の水準が必要ではないかと思って検討を進めているところでございます。
  25. 川村清一

    川村清一君 それでは次にお尋ねしたいのは、今日まで二十四年間この法律を実施してきたわけですね。そこで、要するに、マル寒資金を融資するということは経営を安定させるということでありますから、この経営が安定するということは、ここに目標にした農業所得が得られるということでございます。そこで、今日まで長い間この法律を実施してまいりましたが、その結果、政府の方が目標とした所得というものを農家が得られるようになったかどうか、どの程度になったのかということについて追跡調査をされていると思いますから、この点ひとつ明らかにしていただきたい。
  26. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 経営改善効果でいわば目標をどの程度達成しているかということが具体的には問題だろうと思います。  まず北海道、これは酪農、肉牛、畑作あるいはそれらの複合経営によってそれぞれ相違がございますが、総じて申し上げますと、当初の目標を上回った者が四七・四%、おおむね目標を達した者が四五・五%で、九二・九%がおおむね目標を達成したという状況になっておりまして、達成困難な者が七・一%という数字になっております。  それから、宮崎、鹿児島の例で申し上げますと、若干宮崎と鹿児島で違いがございますが、総じて申し上げると、おおむね目標を上回った者、おおむね達成した者が、宮崎では九〇・一%、達成困難な者が九・九%、鹿児島では九〇・三%、達成困難な者が九・七%ということでございまして、総じて言うと、大体九割を上回る農家目標またはそれに近い水準で達成しているということが言えるのではないかと思うわけでございます。  なおこの調査は、前回改正時までのものの集計でございまして、今回改正時の集計調査につきましては、まだ調査が終わっておりませんので、若干数字が古くなることはお許し願いたいと思いますが、従来の例から見て、かなりの目標達成があると見ております。
  27. 川村清一

    川村清一君 マル寒マル南も九〇%以上目標を達成しているということになりますれば、これは大体効果があったものというふうに判断して差し支えないと思うわけで、その数字を聞いて私も一応安心したわけでございます。  その次にお尋ねしたいことは、これも表によって質問するわけですが、ここに「北海道寒冷地・南九州畑作営農改善資金の実績及び法延長後における認定計画戸数」という表がある。これはいただいた中にもこの表はあるわけでございます。  そこで、どうも私が腑に落ちない点がありますのでお聞きするわけでありますが、必ず認定計画戸数というものがあるわけですね。たとえば、三十四年から三十八年までは二万八千戸、三十九年—四十年は四千六百戸、四十一年—四十二年は三千百戸、四十三年—四十七年は一万二千五百戸、四十八年—五十二年は五千戸、これ合計五万三千二百戸。それから、五十三年—五十六年は四千戸、五十七年は千戸、合計五千戸。それから、三十四年から五十七年までで全部で五万八千二百戸。それからマル南の方につきましては、四十三年から今日までで認定計画戸数は四万八千戸。ところが、その計画達成率は非常に低いんですね。マル寒につきましては、認定戸数が二万二千八百四十二戸、したがって達成率は合計三九・二%。それからマル南につきましては、認定計画戸数は四万八千戸、 認定戸数は二万四千三百九十二戸、達成率は五〇・八%。これはまあ五〇%超していますが、どうしてこの認定計画戸数と認定戸数、せっかく計画立てても認定が実施できなかった——実施率は三九・二%あるいは五〇・八%、こういう低い率になったのか、その辺の理由を御説明いただきたい。
  28. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘の認定戸数の実施の比率は余り高くございません。マル寒で申し上げますと、達成率が大体四四%、南九州では三七%の達成率でございます。そのことが私ども今回、法の延長をお願いした一番大きな理由に実はなっているわけでございます。  なお、実績が計画戸数を下回りましたのは、一つはこの数年間に非常に災害が大きかったこと、それからもう一つは酪農、養豚、温州ミカンの計画生産がかなり進められたこと、それからもう一つはやはり基盤整備事業が全体の公共事業抑制の中でなかなか思うように進まなかったというふうな理由があると思います。  そういう意味で私ども、こういった自然的条件が一番大きなわけでございますから、計画認定がなかなか実績が低かったという事実をベースに置きまして、何とか五年の期間延長ということをお願いしているわけでございます。
  29. 川村清一

    川村清一君 どうも局長の答弁は私が聞いていることと違うんだな。  いや、それじゃさらにお尋ねしますが、このいただいた資料の下の方には「貸付計画額及び貸付決定額」という表があるわけですね。それで、これはお金の方なんですが、たとえば第二回目の改正した四十一年から四十二年までは、これは計画認定達成率は一〇四・八%、非常にこれは優秀なんですね。その年のこのマル寒の貸付計画額と貸付決定額の達成率は一二四・一%、これは最高なんですわ。こういう形になると非常に好ましいんですね。ところが今度は、これは計で言うわけでありますが、昭和三十四年から五十二年までのいわゆる制定から四回目の改正後までの計を見ますというと、認定計画達成率はここは非常に低くて、三八・八%なんです。ところが、この達成率に対して今度は貸付額の方はどうかというと、貸付額の方の達成率は六五・二%、この辺もちょっとわからないですね。どうして認定戸数が三八・八%なのに対して貸付金額の方の達成率は六五・二%、これはまあいろいろ事業の内容によって違いがあると思いますが、ちょっとこれ腑に落ちない。同じように、マル南の方もこのときの認定達成率は五五・五%なんです。ところが、金額の方の達成率は、貸付額の達成率は八一・二%なんですね、認定が五五・五%に対して金額は八一・二と。こういう点もちょっとどういうのかわからないです。  それから、全部の合計になりますが、認定計画戸数五万八千二百に対して二万二千八百四十二、達成率は三九・二、これはマル寒ですよ。それが今度は、金額の方へいきますというと、貸付計画額及び貸付決定額の方は六六・一。それからマル南ですが、合計のところで五〇・八%、これは認定の計画達成率、これが今度は金の貸付決定になりますと達成率が七三・〇%、つまり認定の方の達成率は非常に低いと、これに対して貸付金額の方のパーセンテージは非常に高い、この辺の理由が一つわからないんです。ですから局長、もし仮に五五・五%というもの——いや、これはマル寒の方で言いますか、マル寒の方で言って、認定の方が三八・八%に対して貸付金額の方の達成率は六五・二であると、同じときのマル南の方は認定の達成は五五・五に対して貸付額の方は八一・二達成しているということは、これはどうも私、素人の頭で考えてみると、もしも認定の方が一〇〇%いったとするならば、これは全然資金の枠がないということですな、こういうことになるでしょう。そういうことになりませんか。そういうふうな気がするんですが、この辺はどう説明されるんですか、説明してください。
  30. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 認定戸数の達成率と、それから貸付計画額の達成率に非常に乖離があると、貸付決定額の比率が非常に高いのはどういうわけかということでございますが、これは私ども実は当初の予定を出すときは平均的な貸付規模を想定いたしましてそれによって行っておりますが、実は年々物価上昇の中で貸付限度額の引き上げが行われてきておって、そういう意味においては計画額自体も変わってくる本質がある。そこを毎年毎年のことを数字の上で修正していないということと、それからもう一つはやはり認定された農家については非常に個別審査を行いまして、この資金につきましてはやはりかなり親切に克明に貸し付けを行っているということの結果だろうと理解しております。  そこで、予算なり資金枠の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、貸付限度額自体も経済状況に応じまして年々法律期間の途中においても改定をやっている例は過去においてもたくさんあるわけでございますし、予算規模等はこれは認定の実績なり計画の内容に即して計上することにしておりまして、当初の枠というもので必ずしも限定しないで、いわば年々の予算としてその実情を受けとめていくという形で処理をしているつもりでございます。  なお、年度末等において問題がある、不足がございますときは、公庫資金の中でのまた流用等も認めておりまして、そういう意味においては現に認定を受けて必要な資金については十分手当てをしてきたというふうに理解をしております。
  31. 川村清一

    川村清一君 それは一応の答弁として通るわけですが、こっちは悪意に解釈するわけじゃないですが、逆に考えていくと、どうして一体認定の達成率が低いのかと。それはやはり個々の、それに応じて資金枠をふやしてないから、どんどんどんどん認定してしまったなら資金枠がないでしょう、これ。ともかく数字は明確にしていくべきじゃないですか。五五・五%の認定達成率に対して貸付計画決定は八一・二%実施しているわけですから、これ一体認定が七〇%にふえたらもう原資ないじゃないですか。金がないじゃないですか。ですから、要するに貸付金額という枠で縛られるから認定してほしいやつもそれで抑えるというようなことになりませんか。これはあなたの言っていることを逆にこう言うわけだが、どうですか、それは。
  32. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 制度金融の貸し付けにつきましては、確かに御指摘のように枠がないのでスリップさせるとかあるいは圧縮していただくというケースがいままでもないわけではございません。しかし、私ども事実として申し上げますなら、マル寒マル南については、やはり認定を受けた者については計画に応じて、これはもう一度に認定貸し付けるわけじゃございませんので、何年度にも分けて貸し付けを行うわけでございますから、計画どおり貸し付けを実施してきたつもりでおります。この点につきましてはこれからもそういう御懸念のないように十分認定された計画に従って貸し付けが行われますよう、責任を持って指導したいと思っております。
  33. 川村清一

    川村清一君 認定申請が非常に低いということについてもう一回お答えください。
  34. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 認定申請が低いか高いかは実は年度によってかなり差がございます。私どもやっぱりいろいろ事情を解析してみますと、一つは、やはり北海道南九州もこの五年間かなり災害が続発して、再建なり規模拡大の意欲が農家自体に停滞した事情があったということが一つあるだろうと思います。それからもう一つは、先ほど申し上げましたように養豚とか温州ミカンとか成牛等についていわば計画生産をやっておりますので、いわば頭数の拡大とか規模拡大がなかなかできないと。そういう状況から逆に農家の方から出てこないという事情があるわけでございまして、そういう点では現に出てきたものを抑えるという形にはなっていないことは御理解を賜りたいと思います。
  35. 川村清一

    川村清一君 農家の方から営農計画、認定申請が出てこないということは、いわゆる営農計画が立たないということでしょうな。どうですか。それはいみじくもいま局長がおっしゃったように、わが南九州、鹿児島県あたりは一番主産はこれは 柑橘類でしょう。温州ミカンが六〇%くらいあるでしょう。それから肉用牛ですわ。北海道は酪農だ。さて酪農に希望を持てるか、それから南九州の方はそのミカンに希望を持てるか、肉用牛に希望を持てるか、一体何をやっていけば営農が成り立つのか、農家が何をやっていいかわからぬと、前途に希望を持てないといういまの農業の実態からなかなか営農改善資金を借りたいというそういう申請が出てこない。いわゆる営農方針が計画が立たないというのが実態じゃないでしょうか。
  36. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) この営農計画というのは私が申すまでもなく投資の前提になる計画でございます。ただいま川村委員御指摘のように、今日の状況のもとにおいていわば農家としても過剰投資については、償還できない投資については当然慎重な態度をとることは是非もないことでございまして、そういう意味においてはやはり需給実勢がなかなかむずかしい時期にある、それからあるいは災害等で経営自体が苦吟しているという状況のもとではやはり農家自体が計画の実施というものを見送る、ずれ込ますということになることは私避けられないことだろうと思っております。まあ南九州北海道あるいは北海道の畑作営農のあり方については各面にわたる施策を農水省としても重要課題として講じていかなければならないわけでございますが、当然ながら設備投資の問題についてはそういう状況にあることは御理解を賜りたいと思います。  そこで、私どもも実は何とかこれはもう一回五年延長いたしまして、状況を見て実需の回復を受けとめられる条件をつくっておかなければならぬというふうに悲願したわけでございまして、その点は御考察を賜りたいと思うわけでございます。
  37. 川村清一

    川村清一君 それじゃいまあなたのおっしゃった、これからそういうような事情をもって五年延長するんだと、それで年度別の認定計画戸数が出ていますわね。北海道寒冷地については四千七百戸、毎年九百四十戸ずつ、南九州につきましては一万戸、毎年二千戸ずつ計画立てておりますが、これは達成の自信ありますか、指導していく自信ありますか。
  38. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は、マル寒の四千七百戸の計画のうち七〇%がいままでの認定残のものでございます。つまり計画樹立を見送った農家の分が七割なんです。それから南九州について申しますと実は八八%の分がいままで計画の樹立を希望しながら農家として見送った農家の分でございます。そういう意味においてはまあ経済状況農業をめぐる状況の変化いかんにもよりますが、私どもいわば新しい要望というのは非常に少なくなりまして、いままでの要望したもので投資を見合わせている農家の分というものが今後五年間は集中的に出てくるだろうし、その意味では、私は実は今度は達成率はかなり高くなるのではないだろうかと見ているという具体的事情はございます。
  39. 川村清一

    川村清一君 それは少し甘いのじゃないですかな。ということはいまの農業を取り巻く国際的な状況というのは非常に厳しいですね。  そこで、先ほど大臣が所信表明されましたが、その中にも貿易摩擦問題に対処していま問題になっておる牛肉、オレンジの自由化あるいは枠拡大は簡単にやらぬとか、現在のIQ品目二十二種目、これの自由化というものに対しては断固としてやらないというようなことが述べられましたが、それは本気でそれをやっていただかないと、これは先ほど申しましたように南九州農家の方々は、まずオレンジがどんどん入ってこられたり輸入枠が拡大されたらミカン農家はこれはまいっちまいますわな。それから肉用牛も同じだ。北海道の酪農家なんていうものはまいってしまう。こういう状態ですが、そういうことにきちっとやってもらわなければこれはできないんです。こういう問題がはっきりしないからやはり農家はまず確信を持ってこういう営農改善をするというような希望に基づくところの改善計画が立たないから、いまるる私が言ってきたようなそういう状況になると思うんですが、大臣いかがですか、あなたさっきおっしゃったんだからこれはもう聞く必要もないんですが、ここに書かれているんですが、そのとおりおやりになりますね。これは前に亀岡農水大臣、それから田澤農水大臣お二人ともその点をはっきりとここで言明されておりますから心配ないと思いますが、金子大臣、あなたもそういうことは絶対せぬというふうにここで言明してください。
  40. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) いろいろ御高説を拝聴いたしました。ひとつ責任を持って日本の農業、特に北海道の条件の悪い地域農業を営んでいる方々の実態を把握しまして、よりよき政策を推進したいと思います。
  41. 川村清一

    川村清一君 局長ね、これは「日本農業新聞」ですが、これは南九州和牛王国鹿児島の実態を書いたものです。「自由化、不況で先行き不安」、「あえぐ食肉供給基地」というこういう見出しで、いま鹿児島の肉牛を飼育している農家が非常に不安な気持ちでいるということがここに書かれている。それからこっちの新聞は、これはマル寒に関係するんであって北海道の実態です。「今年こそ経営再建に芽を」、「乳価抑制、借金の重圧」、「十分搾れる政策示せ」と。これがなければこれは営農計画立たないんだよ。莫大な借金をしたって、これやられてしまったら、もう借金をしたその借金も返せないという状態になるわけですから、それはしっかりやってもらわなければならない。  そこで畜産局長さん、ひとつことしどういうことになるんですか、これは。酪農の方、乳価とそれから限度数量の方どうなるんですか。きょうはっきり言えなんと言ったって、あなた言わないことわかっていますが、それは畜産審議会が開かれて酪農部会に諮問されるまで絶対発表しませんから。新聞記者の方が早く国会議員より覚えちゃうんで、そういう点があっていつも文句が出るわけですが、この実態から、局長もいまの段階で話せるところだけ話してくださいよ。
  42. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 酪農関係の価格、これは保証価格なり基準価格なり安定指標価格を決めるわけでございますが、これと限度数量につきましては、いま先生おっしゃいましたように、今月の二十九日の日の審議会にかけて御判断をいただくわけでございますが、周辺の状況若干申し上げますと、酪農製品につきましては、生産者の方々がいろいろと計画的な生産に心がけていただきまして、その間需要も若干回復基調にございまして、昨年の春以降比較的乳製品も堅調な価格になっております。これは数年間安定指標価格をかなり下回る価格で推移しておりましたのがかなり堅調になってまいりまして、それだけ需要がついてきた、このことは大変喜ばしいことだと思っております。そういうことに絡みまして、昨年の価格決定の際に、畜産振興事業団が持っております乳製品が少し多うございますと、それが重圧となって価格がやわらかくなる、したがいまして、相当程度の畜産振興事業団の持っておりますバターないし脱粉を放出する計画で需給計画を立てたわけでございますが、先ほど申しましたような事情の中で、生乳換算で約三十万トン前後のものがほぼ計画しておりましたように市中に流れまして、現在の条件がつくられているわけでございます。したがいまして、私ども総体としての乳製品の需給は比較的良好になってきている、したがいまして、現段階では乳製品につきましては昨年まで比較的控え目におりました百九十三万トンという限度数量にはこだわらなくていい条件が出てきたのではないか。ただ、これはむやみに広げますれば、そのこと自身また乳製品の需給をやわらかくするわけでございますので、やはり需要が、価格とももちろん関係いたしますが、どの程度までついてくるかということを見きわめまして限度数量を定めなければならないと思っております。  そういう環境の中で生産自身を見ますと、御承知のように昨年の春大変供給不足と思われたわけでございますが、急遽その需給が比較的タイトになると思いまして、いわば駄牛淘汰とかあるいは全乳哺育といったような施策を改めまして、どちらかというと生産を増強する方に誘導いたしまし て、昨年の非常に天候も幸いをいたしまして、たとえば原料乳地帯北海道では、四月から一月までに対前年比六・五%という最近にない増産基調が定着をいたしております。それから経営をめぐります条件も、製品価格が比較的順調で、資材の主要部分でございます飼料が比較的安定している、よく交易条件と言いますが、それも好転をしているというような事情もございます。したがいましてそのような事情を十分勘案いたしまして価格を決定するような環境ではなかろうかと思っております。いずれにいたしましても、なお精査中でございますので、そのような周辺の数字等も見きわめました上で決定をするつもりでございます。
  43. 川村清一

    川村清一君 この乳価とか限度数量の問題につきましては、あるいはまた肉牛の価格等につきましては、これは今後まだ議論する機会があると思いますのでやりますが、いずれにいたしましても、いまマル寒にしろマル南にしろ、認定を申請する、そのためには営農計画ができなければならないので、営農計画を立てるためには、やはりこれをやっていったらやっていけるという自信がなければやれないんですね。せっかく北海道のような酪農をつくったと。現在一戸四十二頭、乳牛四十二頭持っていますね、北海道の酪農は。これはもうECと同じになったわけですね。ところがECの方は、これは何百年の歴史を持っていまのこういう酪農構造をつくった。ところが日本の場合は、北海道の場合は、わずか三十年、三十年の間にECに並ぶこういう形をつくったわけですから、それですから多大な投資をしているわけですよね。その投資の返済、ECの方は何百年という歴史を持っているわけですから、もう借金の重圧から解放されているわけですね。ところが北海道の酪農民は借金の重圧のもとにあって、にっちもさっちも動かないという情勢ですよ。何とかこの借金の重圧から解放されたい、そのためにはやはり政府価格政策というものをしっかりやってもらわなければならない。  ところが乳価は、昨年わずか五十銭上がったけれども、そんなものは上がらないと同じで、実質的には五年間これはもう据え置きですから、それで六年目、ことしもまた据え置きなんというようなこと。そしてまた今度は潜在生産力はずいぶんあるんですよ。この生産力を抑えちゃう。農業所得を上げれ、それで生産コストを下げると言ってあなた方の方は指導しながらも、今度は、しぼれる乳の量というものはもっとあるわけだ、あるわけだけれども、抑えられてしまう、自主生産調整というようなかっこうで。ですから、やっぱりそれだけの潜在力を持っているんですから、持っているその力を全部搾乳できるようなこういうかっこうにしていかなければどうにもならぬ。そういうようなことによってやっぱり希望が持てますよ。  ミカンだってそうですよ。ミカンは絶対にアメリカから入ってこないのだ、外圧はないのだ、十分やれるのだという希望持てば、どんどん僕はやれると思う。肉牛も同じですよ。せっかくマル寒なりマル南資金融通の法律をつくっていただいて、あるいは北海道南九州以外の府県の方々は、何で北海道と九州だけそんな優遇するんだと、北海道の酪農なんというものは大したものでないかと。あれまでいったのになお優遇するのかなんというようなことを言う者もたしかあると思うんですよ。あると思いますが、実態はそうでないということ。これは局長もおわかりのように、釧路とか根室とか天北あたりのあの大酪農地帯に行くというと、それはもう何十町歩の青草の牧草地に、そこに牛が何十頭とおって、そして草をはんでおる。それから赤い屋根の見る限りサイロや家があって、もう一幅の絵になっておる。北海道の酪農はいいなあと、こうみんな感心すると思うんですね。東京あたりから行った人はおれもこういうところで暮らしたいなあなんと思う人もいるかもしれぬ。ところが、その中身に入ったら大変だ、中身に入ったら。多いので億を数える借金をしょい、平均して二千三百万ぐらい借金をしょっているんですからね。ですからその借金を早く返させるようなそういうあれをつくってやらなければならない。そのためには乳価だとか限度数量とかその他いろんな政策をしっかり考えてもらいたいと、こう私は思うんです。  それから、これは畑作営農ですから、畑作にとって一番大事なのはやっぱり基盤整備ですね。この基盤整備一体どういうことをやっているんですか、北海道に対しましては、あるいは南九州に対しましては。ちょっと構造改善局長からお答えください。
  44. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 基盤整備事業につきましては、いわゆる畑地帯対象にしました国営事業以外に、圃場整備、農道の整備等、畑については従来に比べて逐次実績を上げながら事業を実施してきていることは事実でございます。  私ども、これからの問題といたしましては、一つはやはり水源の不足に対してどういうふうに対応するかということをそれぞれの立地に応じて事業を準備していくことが一つ。それからもう一つは、やはり機械化農業なり生産物の出荷にふさわしいような圃場条件の整備をどう考えていくかということが基本になるだろうと思います。従来からも畑地帯基盤整備事業の比率については国の予算の中に占める比率というのを高めてきているわけでございますが、今後ともやはり長期計画等においても高いウエートを持って評価しておりまして、そのための努力を続けてまいりたいと思っております。
  45. 川村清一

    川村清一君 いまのマル寒資金マル南資金関連して基盤整備の問題についてお尋ねするんですが、基盤整備土地改良の事業なんというものは、とてもじゃないけれども容易に個人の力でできるものではないんですから、やっぱりこれは公共事業としてどんどんやっていただかねばならない。しかしながら、何といいましても、最近は畑作にも相当力を入れてやっていただいておりますが、やはり単収収益の多い水田に対する基盤整備事業は畑作よりも相当ウエートが高いんではないか。まあ最近は変わってまいりましたが、そういうことで歴史的に推移してきているのではないかと思うんです。そこで、畑作営農を振興するとするならば、もっと畑作に基盤整備なりそういうような土地改良予算をつけてやってもらわなければ困る。  そこで、これも後からまた質問に出てくることですが、先ほど大臣は、「農業基盤整備につきましては、昭和五十八年度から昭和六十七年度までの十年間を計画期間とする第三次土地改良長期計画を策定することとし、」と、こう申されておるんですね。ですから、これは畑作振興の上において土地改良というのは一番大事なものですから、これにもっともっと力を入れていただきたいということを私は最後に申し上げまして、私のこの質問は終わらしていただきます。
  46. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 川村先生の御主張はよく理解できましたので、ひとつ積極的に取り組んでいきたいと思います。
  47. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案、この法律案につきまして若干の御質問を申し上げたいと思います。  いままさしく乳価、それから肉の価格決定の大事なときでもございますから、その問題を外してこの論議はないんだろうと思いますが、まあ後日そういう問題についてもお話しする機会もありますので、この法律に沿った問題、また若干それに付随する問題について御質問をするわけでございますが、最初に、大臣の所信の中にもございますが、大臣の所信は、農業に対する認識というのは私どもとそう変わらないと思います。しかしながら、これの施策ということになりますと、ところどころ問題があろうかと思います。  そういうことから、最初この法律は、北海道の寒冷な地域、そこにこの畑作を振興するためにはほかの地域とは違ったこういう悪条件を克服するための資金制度が大事だろう、また南九州につき ましても、土壌等非常に劣悪な状況の中にあってその営農のためには必要だということで、こういうことから言いますと、先ほど局長の話にもありましたように、農業としましては非常にきめ細かな政策の一つであったろうと思うんでありますが、三十年近い今日までのこの法律の果たしてきた役割りというのはそれなりに評価してよろしいだろうと思うんですが、農林省といたしましては、また大臣といたしましてはこの法律についてどのような評価をいたしておるのか、まずその点についてお伺いしておきたいと思います。
  48. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まさに御指摘のようにこのマル寒法、さらにその後できましたマル南法というのは、それぞれ特殊な立地条件地帯における従来不利とされた畑作営農の規模拡大なり経営改善に非常に大きな役割りを果たしてきたと思っております。  特に、規模拡大を進めて生産性向上を図っていくという場合、それを農業生産の増大の中で考えていくとすれば、やはり中庸程度の農家というものに意欲を与え、生産改善の努力の指針を与えていくということが非常に必要なことであり、また同時に、優遇された制度金融を通じて、やはり自分で経営を立てて経営努力を講じていくプログラムをつくってそれに資金援助をしていく、必要な経営技術指導をしていくという意味でこの制度は私ども非常に大事な役割りを果たしてきたというふうに見ているわけでございます。
  49. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 まあ、いまの問題についてはまた後ほどお話するといたしまして、この制度そのものにつきましても、先ほど同僚委員からもお話ございましたが、やはり社会経済情勢の大きな変化の中でありますから、先を余り急ぐようなことはどうかと思うんでありますが、しかし第一次、第二次のオイルショック、こういうものも、この前の五十三年のときの第四回目の改正のときには、第一次オイルショックのああいう状況もくぐり抜けてきたわけでありますから、そういうこと等も勘案いたしまして附帯決議がつけられておりました。その附帯決議の中にありますのは、先ほどもお話ございましたが、これから五年延長するということでありますから、現時点でということじゃなくて、やっぱり先を見通した、そして現在この畑作がどういう現状にあるのかということと、これから五年どう推移するのかというこういうことの中からやはり限度額とか、またその目標なり、こういう問題については考えていかなきゃならないだろうと思います。  私も五十三年のこの法律改正のときに中川農林大臣にも質問したわけでありますが、確かに当時としましては、五十三年の時点では目いっぱい限度額については改正をしたんだということであります。しかしこのたびは単純に期間延長ということで、先ほどのお話では現状としてはこれが、こういう現在の畑作の状況というのは限度額を上げるような状況にないようなお話でございましたけれども、五年前のこういう附帯決議もあり、今日また単純延長という結論を出されるに至りましては、いろいろなことを御検討なさって御決断なさったことだろうと思うんでありますけれども、この五年間の推移とまた今後の見通し等、そしてまた先ほどもちょっと局長の答弁にありましたけれども、今後の推移を見ながら、この問題については法律事項ではないからということでございますが、そういうこと等もあわせて、もう少し、ひとつお述べいただきたいと思います。
  50. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 貸付条件につきましては、御案内のように、利率が年五%、据え置き期間中は四・五%、償還期限は、据え置き期間八年を含めて二十五年以内ということでございまして、制度金融として最も優遇した制度になっております。過去の実績を見ましても、大体償還期間は平均十二・七年程度、据え置き期間は平均二年程度になっておりまして、私ども、過去の実績等から見ても現行制度でも十分対応できるものと考えております。  限度額は、私申すまでもなく、法定事項ではございません。ただ、従来の実績を見ますと、五十三年から仮に五十六年までの実績を見ますと、貸付適格認定をした農家の貸付金額で、いわゆる限度額いっぱいの農家はどのくらいあるかということを見ますと、非常に低い比率でございまして、もう大部分は大体限度額の半分程度あるいは六割程度の高さのところで賄われているという実態があります。今日のように、物価状況等が安定している状況のもとでは、私、具体的には限度額の引き上げは特に必要がないものと見ておりますが、何と申しましても、過去の例にもございますように、そのときそのときの物価情勢その他、経済情勢に応じて限度額というのは対応しなければならない側面もございますので、この点につきましては今後の動向を見きわめて、来年度予算において十分判断してまいりたいと思っております。
  51. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 そこで、今日までの畑作の現状、特に北海道におきまする畑作、そしてまた中心であります酪農を見ますと、三十年代ごろから酪農が非常に振興され、多頭飼育、規模拡大ということに非常に重点を置いて、三十年代、四十年代には大きな発展を遂げたわけですね。そういう規模拡大、そしてまた足腰の強いということでいろいろな政策がなされたわけでありますが、このマル寒法は、それなりのその一翼を担ったことは間違いないんだろうと思いますけれども、いま北海道の酪農民が突き当たっている問題は、必ずしも多頭飼育、そして大規模酪農というものが、大臣も先ほど所信表明でお話しておりましたが、農業のもう至上命令といいますか、営農の安定、それは規模拡大にあると言わんばかりのお話でありますけれども、これが、限度数量、四年前、五年前定められたということで、もう拡大生産は一つの峠に突き当たる、そういうことから、そして一頭当たりの乳量や投資額等を見ますと、都府県と北海道との比較からすると、当然北海道のあの大規模な多頭飼育というものが決して有利な条件ではないということがいま一つの大きな壁にぶつかっている、このように私どもは認識するわけでありますが、そういうことから言いますと、中庸程度のものがさらにまたこの酪農が安定する条件のもとに引き上げる、引き上げたものがそこからどう安定的な営農に持っていくのか、こういう政策というのは非常に大事なことで、中庸から上げることは当然必要なことでありますが、その上の方のものに対しての施策というのは、そういう点ではここ経済情勢の大きな変化がありましたから、いままでの政策が全部無に帰したということを私は言っているんじゃないんですけれども、こういう大きいことはいいことだということで進んでまいりましたものが、一つの大きな壁にぶつかっておる、そういう中で、やはりこの問題についての対策、こういうものを考えなきゃならぬだろうと思います。  先ほど、この貸し付け状況等を見ましても、また今後の見込み数、いろいろ計画を立てているようでありますが、時代によってこの資金需要が、達成率が非常に高いところと低いところ、それはそのときの経済情勢や、畑作、酪農経営の実態等はそれを如実にあらわしているものだと思いますが、やはり五十年代に入ってからは非常に達成率が落ちている。これはやはり大きくしても、中庸から上に上がっても決して営農が安定するものじゃないんだ、そしてまた限度数量百九十三万トンということで抑えられた、こういう施策が一つの営農意欲というものを減退させるもとになったのではないか。ですから、先ほどから局長いろいろおっしゃっておりましたが、営農計画とか、そういうものにもちろん絡むわけでありますけれども、この法律法律としての役割りはあり、また今日まで果たしてきた役割りは私ども、それはそれなりに評価をいたしますが、中庸以上になったものを引き上げる、中庸からさらにまた基盤を確立しよう、こういう農家に対する施策がどうも手薄になっているという感じがしてならない。そして、いま悩んでいる方々は、いまお話ありましたように、もう大きくなった人たちが行き詰まっている。こういうことから、この法律からちょっと離れるかもしれませんけれども、この酪農畑作 ——畑作と言いましても酪農が中心だと思いますが、階層別に見ますと、大きいところに対する手当てというものが非常に重要になっていると思いますけれども、いかがお考えでしょう。
  52. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 酪農についてお答えをいたしますが、御指摘のように、酪農が非常に急速に拡大しましたとき、特に生産量を急速に伸ばしました五十年代の前半におきましては、たとえば北海道は二年間連続、一年間に一〇%以上生産を伸ばすというような時期がございました。そういう時期の前に設備投資をなさいましたような方々は大変順調な発展をしたわけでございますが、人間の胃袋は一定でございまして、牛乳の消費もほかと違いまして伸びてはおるわけでございますが、たとえば生乳で申しましてもそういう二けたの伸びということになりますと、どうしても需給の問題が出てまいりまして、御指摘のような計画生産等をやらざるを得なかったわけでございます。したがいまして、私ども、いろんな数字を見ておりましても、五十五年とか五十六年につきましては、数字が大変悪く出てまいっておりまして、生産は抑えられ、しかもいろんな投資しましたものの返済等が重なったわけでございますが、その後、生産者も要するに需要に見合った生産ということで大変な努力をしていただきまして、大体五十七年度からすべての指標が順調な方に変わってきております。それは、生産が若干伸ばせるという形、それから資材費その他が大変条件がよくなった。ただ、その場合に、いま御指摘がありましたように、特に後半の時期に多額の何と申しますか、設備投資をなさった方々はやはりその借入金の償還ということが大変な負担になったわけでございます。  したがいまして、その負債の実態というものを十分調査いたしました上で、特にその負債の中でも生産的なもの以外のものも相当ございますが、その辺につきましても、単に高い金利を安い金利に乗りかえるというだけではなくて、経営内容につき、いろいろと検討していただく。また、農協等につきましてもいろんな努力をしていただくということで、御承知のように、五十五年、五十六年につきまして約三百億円の負債整理資金貸し付けと、それに伴う営農指導をしていただいたわけでございます。  御承知のように、酪農家の中でも四十数%の方々は、そういう負債問題を特に問題としなくてもいい比較的安定した階層でございますが、その下にありますどちらかというと投資の時期が若干遅かった方、拡大の時期が遅かった方々につきましては、この負債整理資金貸し付けによりまして事業を好転さしてきていると考えております。このことは今後におきましても、十分その成果を見きわめまして負債整理資金の効果がさらに発現いたしますように努力するつもりでございます。
  53. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私も北海道の方々といろいろお話ししたり、またいろいろ常日ごろ承っておるわけです。農家をやってたわけではありませんから詳しいことはわかりませんが、訴えられることは負債整理の大きな重圧のもとにあるということでありまして、それは入植当時、既存といいますか、そこでもともと農家のある程度の基盤があってなさって規模が順次拡大したという方と、新酪農のようなまるまる借金のような形で入った方と、いろんな形態がありますから一概には論ずるわけにいかないと思いますが、戸数だけでこれは論ずるわけにいかない。やっぱり階層別に、そして政府の一つの指針のもとに規模拡大の方向で進んできたわけでありますから、いまの局長のお話ですと比較的遅くスタートした方がどうしても負債の重圧に大変苦しんでいるんじゃないかというお話ですが、私は思うんですが、国の経済計画というやつも中長期にわたって経済計画立てますけれども、やっぱりオイルショックや何か大きな問題にぶつかりますとその数値を見直すということがありますね。加工業と違って農業の場合には非常に転換が容易じゃございませんし、生き物が相手だということで、こういう劣悪な条件の中で農作業で当初の計画をさらにまた変更するということは、国というこんな大きなものでも大変ですけれども、農業ならばなおさら、なおさらというか農業もこれまた大変なことです。ですから当初、規模拡大のために立てられた営農計画というやつは経済変動で、個々の農家に光を当ててみますと、それはもう大変なことですね。ところが、私ども皆さんといろんなこういう委員会等で個々にお話し合いしましても、全体的な数字の中で出てくるデータがある程度遅いということもあるんでしょうけれども、地元で悲鳴を上げているにもかかわらず数値的に見ますとそれでもないような感覚でお考えになっていらっしゃる。農水省というのは本当に農家の立場に立って物を見る立場なのか。お役所ですから全体のバランスも考えなきゃなりませんけれども、やっぱり一生懸命政策の方向性の中で努力していらっしゃる農家の方々の立場に立って適切な施策をしてあげるのが農水省の役割りの一つだろうと思うんですけれども、どうもそこにずれがあるように感じてならないんですね。いま局長のお話でも負債については負債整理資金という制度が五十六年度できまして、六十年まで三百億ということですが、今回十勝の方や根釧、天北、いろんな方々とお話ししましたけれども、やはり出てくる話は負債整理のためにもっと対策を講じていただきたい、中庸の方々、その人はその人なりのまた一つの要望もありますけれども、そこから一つまた上へ上がった段階で大きくなったために身動きができないという農家が非常に多い。これは戸数的に言うとそれは酪農全体の中ではそんな数ではないのかもしれませんけれども、政策にのっとって大きくなった農家の方々ほど、ですから国の政策にのっとって一生懸命やった人ほどそういう状況にあるというこんな感じがしてならない。そういうことからこの資金の妥当する方ももちろんいらっしゃるだろうと思います。限度数量までいっぱいいっぱいお願いする人は少ないんだということですが、それはもう一軒一軒の営農の実態に応じて融資の計画を立てて融資を願うわけでありますから、みんながみんな限度いっぱいまでをお借りするわけでは決してないだろうと思います。やはり中には、現状の中からどうしてもここまでという方々もいらっしゃる、限度数量を上げたからといって全部そこまでいっぱい借りる人がたくさん出てくるということじゃ決してないと思うんですけれども、こういうことから言いまして、やっぱりある一つの幅を持たせることも大事なことだろうと思いますし、それから、この法律とは別に、やっぱり負債のための対策、負債整理資金が五十六年から発足したということでそれなりにやっておりますということじゃなくて、もっと大きくなった、そしていまやECをしのぐ状況になったこれらの方々が希望の持てるような、今日までは規模を拡大すれば何とかなるんだということでやってきましたけど、もうそれではならない時代になった、それならば、その時代に即応した施策が必要だと思うんですけれども、その問題についてぜひひとつ農水省でも真剣にお取り組みいただきたいと思います。いまあるんだということじゃなくて、この負債整理資金、今後どういうように運用し、また拡大しようとしていらっしゃるのか、まあ財政とかいろんなことがあるかもしれませんが、現状認識と今後の問題について、まず今後のお考えをひとつお聞きしておきたいと思うんですが。
  54. 石川弘

    政府委員(石川弘君) その農家状況把握につきましては、御承知のように単にわが方の統計的な手法の情報だけではございませんで、特に北海道の場合、負債整理の場合は特に道庁等のいろんな調査も使わせていただきまして、私どもも極力関係者とお会いをいたしまして、何と申しますか生の情報を極力いただくように努力はしているつもりでございます。  負債整理資金につきましては、五十六年度に発足いたします際に、ほぼ三百億円程度の資金需要を見込んで発足をいたしたわけでございます。しかし、この資金につきましては、五十六年度及び五十七年度でほぼ三百億の枠を消化をいたしております。この資金を発足させます際に、農家の経 営が真に改善できるように極力実態に応じた貸し付けをやるということを決めておりまして、現在その後の農家経営状況をさらに関係者とも精査をいたしております。真に必要なものがございますれば、さらに枠を追加する予定でございます。
  55. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 枠を追加する予定ということですが、現状としては、いろんな実態調査の中で、どういう手順で、どういうことになりますか。
  56. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 関係者の意向、それから道庁等の意向を聴取いたしておりまして、どれくらいのさらに追加貸し付けが必要かを調査をいたしております。  一般的条件を申しますと、先ほど申しましたように、五十六年を底にいたしまして、五十七年につきましては若干上向きの傾向もございますので、この辺のことも頭に置きながら実態をよく調査をいたしたいと思っております。
  57. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この法律に戻りますが、この達成率のことでありますけれども、五十七年が非常に落ち込んでいるという、これには五十三年から五十六年は四八・三%、五十七年二七・九%、これは見込みですか、こういう非常に達成率が非常に低いということは、限度数量で抑え込まれ、意欲的に規模拡大をしておったけれども、その希望も夢もなくなって、大きくなっても負債を背負うだけだということで投資意欲を減退させた数字がこういうところにあらわれているのではないかというふうに、それも一つの要因ではないかというふうに、これは経済変動もありましたから、そのことだけとは言い切れないかもしれませんが、私どもはそうも考えておるわけですけど、どうでしょう。
  58. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘の点でございますが、北海道の五千戸、南九州の一万二千戸の当初の計画戸数に比べますと、現実の認定実績というのは四割程度という数字でございます。これは実は、御指摘のように、酪農とかさらに養豚、温州ミカン等でも、計画生産需給調整を行っているという経済実態もありますが、もう一つは五十三年以降五十六年にかけまして、南九州北海道、かなり災害が多かったという事情も手伝っているのではないかと思います。私ども、やはりそういった実態を受けとめまして、一方においては、条件整備のため、土地改良事業の進捗等について努力いたしますと同時に、やはりこの法案の延長でもお願いしておりますように、こういった状況で、今日の状況で、ある程度金融措置を受けて規模拡大をしたい農家というものの希望が後に送られているという実態を受けとめて、新しい延長法のもとでそういった実情は受けとめていかなければならないと思っております。
  59. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 せっかく前回、五十三年、種豚の購入資金とかまた果樹——種豚はその前ですか、それから果樹の栽培の育成ですね、いろんな、北海道でも果樹に対しましても非常に関心を持って、新しい動きもあるようでありますけれども、しかし、当初のこの計画から見ますと非常に思惑どおりにいかなかったという、これは那辺にあるか、どのようにお考えですか。
  60. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) マル寒資金につきましては、前回の改正で果樹の植栽育成資金が追加されたわけでございますが、御指摘のように実績はございません。  これは、北海道の果樹の主体は、私申すまでもなく、リンゴと加工用のブドウでございます。リンゴにつきましては、腐乱病の異常発生等により栽培面積が大幅に減少するという状況があったことが一番大きな理由だったんではないだろうか。これらの減少要因も鎮静化してきておりまして、植栽面積も安定化の兆しを見せておりますので、新しい延長法のもとにおいてはその機運が出てくるものと実は期待しております。ブドウにつきましては、実は対象町村が数カ町村でございますが、たとえば富良野町とか池田町等が市町村独自で非常に手厚い助成措置を講じておられまして、この助成措置の利益が均てんしておりまして、なかなか具体的には、制度金融であるマル寒資金の事由にならないというどうやら個別的な事情があるようでございます。これからどういうふうに地元の状況が変わってくるかわかりませんので、私ども、これからの成り行きは十分見て、実情は受けとめてまいりたいと思っております。
  61. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから、前回の附帯決議の中にも畑作のことについてもちょっと触れておりますが、畑作というのは輪作体系というものがちゃんと確立しておりまして、輸入等でもし一つでも輪作の体系が崩れますと、大変なことになるわけであります。  そういうことから、畑作振興に対しましては、合理的な輪作体系の確立に努めるべきであるという、こういうことが附帯決議の中の一項目の中にあるわけでありますが、さっきもちょっとお話ございましたけれども、基盤整備と、それから地力維持、それから合理的な輪作体系、特に十勝地方におきましてのいろんなお話の中では、今後の輸入外圧、こういうものに対する非常に危惧の念もあったようでありますけれども、雑穀、豆類を初めといたしまして畑作振興に対しての、一つ一つお聞きする時間もございませんが、総括的にひとつ十勝地方の主産地であります畑作、そしてまた雑穀、豆類のことについての今後の振興策について、対応について、現在の農水省のお考えをひとつお尋ねいたしたいと思います。
  62. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 普通畑作の場合には、いまお話がございました基盤整備でありますとか、あるいは経営規模の問題があるわけでございますが、普通畑作に特徴的な問題といたしまして輪作経営という問題があるわけでございます。  北海道の場合で申しますと、大体小麦、豆類、芋類、それからてん菜、それに青刈りトウモロコシといったものが大体六万ヘクタール前後という姿になっておりまして、それから地域別、経営別に見ますと多少問題があるところもございますが、全体を概括的に眺めてみますならば、かなりいい姿になってきておるという感じがするわけでございます。そういう輪作の合理性を貫徹するためにおきましては、一つはその作物別の生産技術というのが大体同じようなレベルで向上していくという条件と、それから作物別の収益性というものが余り大きな格差がないという二つの条件の設定が必要であるというふうに考えておるわけでございます。そういう点から見ましても、長年の努力が実りまして、北海道の普通畑作の経営の姿というのは、まあまあいい方向に向かってきておるという感じを私どもは持っております。しかしながら、今後まだ残されている問題が多いわけでございまして、基盤整備推進を初めといたしまして、諸制度の適切な運用並びに生産関係の諸施策、特に技術水準の向上というふうなことを中心にいたしまして、またただいま御審議いただいておりますような各種の制度融資、さらには補助政策なども活用いたしまして生産対策の全きを期してまいりたいと思っております。  また、お話がございましたような基幹的な作物についての自由化というふうなことは、先ほど大臣からもお述べいたしましたように、全く考えていないと、こういうことで対処してまいるつもりでございます。
  63. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 農政審議会の報告なんかでも、「八〇年代の農政基本方向」といいますか、こういうことでいろいろ言われておるわけでありますが、今日まで、これはこの法律から離れた話になるのかもしれませんが、今日までこの規模拡大に専念をしてきた日本の酪農もやはりこれは一つの転機を迎えなければならないときにきた。ならば、今後のこの酪農の進むべき方向というのはどうあるべきなのかということが大事なことになるだろうと思うんであります。これは日本全体の酪農または北海道の酪農というようにおしなべて論ずると非常に差異もありますが、しかし、全体的にも農家戸数が非常に減ってまいりまして、そして一戸当たりの頭数が非常にふえてきたことは、この数年の間、十年、十五年、二十年の間に非常に変化があったと。まあ、さっきお話がありましたが、日本の酪農がもう非常に急速に近代化した。そういう急速な近代化の中にはいろんなひずみがあるのは当然であり、これは鉱工業におきまして は公害という問題を惹起したわけでありますが、酪農におきましてもこれは鉱工業における企業に当たります一戸一戸の農家に大きな負債という重荷を背負わせることになったと、こう思うんですね。  過日、根室の方といろいろなお話をしましたら、ヨーロッパとの比較をいたしましても、ECの九カ国は成牛飼育頭数十三・九という、根室、根釧の方はもう三十九・六というんですから大変なことです。耕地面積もECでは、十六・五ヘクタール、四十ヘクタールというのが平均だということですから、確かに一頭当たりの乳量も四千百四十、ECが。根釧では五千百三十四ということですから、まことに一戸当たりの現状というのはもう格段に大きくなっておる。こういう規模の拡大という政策はそれなりの一つの頂点に達したと言わなければなりませんが、いま言ったように、私は生産コストということでは一つの大きな壁にぶつかっている、こういうことがこのデータを見ますとはっきりしておるわけでありますが、最近の農家の借入金と貯蓄額の関係の悪化の現状、これはいろいろデータにもありますが、これちょっとお述べいただきたいと思います。どうでしょう。
  64. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 借入金もふえておりますが、資産も実はふえているわけでございます。五十五、五十六これは先ほど申しましたように、どちらかと申しますと条件が悪くなってくるプロセスでございまして、五十七年は若干よくなると思いますが、これは北海道の単一経営で申しますと借入金が五十五年で二千三百三十六万円、それに対しまして資産額は四千七百四十四万円、預貯金は四百十一万円、それから五十六年が負債額で二千六百五十九万円、資産額が五千百十九万円、預貯金が五百二万円というのが私どもの手持ちの数字でございます。
  65. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いま局長がいみじくもおっしゃった資産がふえているということですね。これは確かに資産というか投資資本、そういうことから言うと鉱工業、加工工業のように数年で大きな生産力を上げることのできる企業と違いまして、この酪農のように生き物を飼い、そしてまた施設をつくってもすぐそれに伴う生産性を上げるということは鉱工業に比べますと大変な差のあるものですね。金融制度もいろんな制度があるわけなんですけれども、とかくに役所的な発想からしますと、全体的な中小企業対策やいろんな諸制度の中で二十年以上の施策制度がないとか二十五年以上のものがないとか、そういうことでほかとのバランスの中で金融制度がとかくに考えられている。いま投下したものは、資産がふえたとは言いながら即それはその方のものとして、投下した資本としてそれがいまそれだけの価値を生み出し得るものかもしれませんが、しかしそれは大きな借金の上に成り立ったものであって、そしてここ数年の経済変動やまた天候異変とかこういういろんな経済変動だけじゃなくてそれにプラス自然条件、こういうむずかしい条件が加味されるわけでありますから、こういうことから言いますと、農業というのはほかの産業と同じような据え置き期間とかまた償還期間ということだけでほかとの横並びで物を考えておる限りにおいてはこれはなかなか安定したものにはならないのではないか。それが急速な一つの発展を遂げたそれなりの資産形成ができたとしましても、それがかえって別な負債という面で大きな重荷を背負わせる現状になっている。やはりこれは諸外国の現状を見ましても、やっぱり二十年なり三十年なり六十年、中川さんが初めて議員になったときは九十年なんて言ったそうですけれども、議事録を見ましたら出ておりましたが、やはりそれは長期の、二世代、三世代の上に立ってやれるような、そういうものもやっぱり一つは考えていかなきゃならぬし、やはりほかの制度と横並びで物を見ているところに無理があるのじゃないか。そういうことで、ぜひひとつ現在の規模拡大の政策にのっとってきた大規模な農家の方々が大変ないま負債の重荷の中で、乳価も上がらぬ、限度数量も抑えられるという苦しい中で悪戦苦闘しておるという、これに対する施策、先ほど負債整理資金、考えましょうということでありますが、これは積極的なひとつ対策を講じていただきたいということともう一つは、営農指導に結びつく金融というものをぜひお考えいただきたい。これは金融事業、総合農協では金融事業とか購買事業、販売事業、指導事業、いろいろあるわけですけれども、それぞればらばらにやっているところに、——ここには一軒の農家があって、この農家がどう営農を安定させるかということが目的なわけなんですが、農協としては三つも四つもそれぞれの部門でこれに関与しておる。もうこれ以上投資するとその農家は立ち行かない状況の中にありながら別な事業ではそれにまた投資をさせられる。それから、これはもう機会あるごとにお話ししておるわけですけれども、畜産経営とか営農全体の総合的なコンサルタントといいますか、そういう指導体制というのをもう少し強力にいたしませんと、粗収入で二千万も三千万もというと、もう町だと一人の経理マンがいて、そしてもういろんな経理状況というものを絶えず把握しながら物事をやっているんじゃないでしょうか。生き物を百頭近くも飼って、そして何百ヘクタールというそういう営農をやっている方々は、それに対して指導の手を差し延べるためにこそ農協が大きな力を発揮しなきゃならぬ。こういうことで、やっぱり営農指導、総合的なコンサルタント、こういうことにぜひひとつ農水省もこの指導体制強化ということに重きを置きませんと、いままでと同じように、最近は物価も安定しまして農機具も安定したようでありますとか、そういうことだけで解決することではないだろうと思うのです。この点ひとつ、力強く今後指導体制、いままでもそれなりの施策はやっておりますけれども、ぜひこの問題に力を入れていっていただきたい、こう思うんですが、いかがでしょう。
  66. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 最初の融資条件でございますが、御承知のように相当の援助をしました上に、さらに今度の負債整理資金でございますと、特認の場合三・五%、償還期限二十年でございます。これはかなりの制度資金で長く借りておりましたものをさらに借りかえるということでございますんで、現在考えられる最も優遇された条件ではなかろうか。私ども決して他の金融とのバランスというようなこともありますけれども、いまの経営改善の中でこういう資金であれば何とか再建ができるということで考えた最も有利条件ではなかろうかと思っております。  それから指導の面でございますが、御指摘のとおりでございまして、私ども今回の資金の貸しつけに当たりまして、これは酪農だけではございませんで、肉牛の負債整理資金につきましても同様に考えておりますが、やはり単に農協が金を貸すとかあるいは資材を売るとか、あるいは生活費をめんどう見る、そういうことがばらばらに行われます結果、非常にその資金の管理それから営農の指導のあり方、あるいは生活指導といった面、そういうところに抜けた点がございまして、今回の場合は大変その点に力を置いた指導あるいは実行をやっているつもりでございます。現地の方々にお会いしましても、それは組合においても非常に厳しい指導をいたしまして、生活費のあり方まで今回はチェックをする、こういう標準的な家庭ならこれぐらいの家計費でやってくれというところまで積極的に取り組んでいるということを聞いておりまして、そういう意味では御指摘のような点をぬかりなくやっていきたいと思っております。
  67. 下田京子

    ○下田京子君 略称マル寒マル南資金措置法案ということで、まずお尋ねしたい点は、すでにもう議論がされておりますけれども、今日における畑作、畜産等をめぐる情勢、大変厳しゅうございます。そういう中にあって積極的な投資の意欲ということも減退しております。ですから、本来的に言えば、生産費を償う適正な価格を保証していくとか、あるいは農産物輸入を規制して国内の増産を努めていく、こういうことが大事だと思うんです。同時に、本資金をお借りになった農家が本当に経営改善に役に立つようにしていく、こういう点からいきますと、やはり今回単純延長で あったという点で、他の委員からも御指摘がございましたけれども、せめて貸付限度額の引き上げということがあってしかるべきではなかったかなと思うんです。  さっき局長は、今後経済状況等を考えて来年度等も勘案していきたい、こういうお話で、すでに今後の方向は出されておりますが、ただ御答弁の中でいままでの限度額で大体達成できたんではないかというお話もございましたので、若干認識がどうかなと思うんであえて申し上げたいわけなんですけれども、すでにこれは皆さんも御承知だと思いますけれども、北海道では酪農主体が一千四百万、その他の経営九百万、それぞれそれを二千三百万あるいは一千五百万に上げてくれと。それからまた、南九州の方では酪農肉牛等を含めて九百万、その他の経営八百万、一律それを千五百万円にと、要望出ているわけですね。  で、これがいかに妥当なのかということでちょっと御紹介申し上げたいんですけれども、北海道庁にお伺いいたしましていろいろ詳しくお聞きしてまいりました。そうしましたところ、新たな営農方式例ということで酪農につきまして現況、目標とを決めまして具体的に試算したわけなんですよ。そういう中で、マル寒資金対象事業として約二千五百万円強必要だと。それに融資率特認の〇・九を掛けますと約二千三百万必要なんだということで、もう具体的に根拠も示されております。それからもう一つ、農家経済調査の酪農の平均借入金を見てみますと、すでに五十六年度で二千四百万円強になっているわけです。  そういう点から見て、これは当然必要なことである。もう現に来年度等考えていきたいということだけれども、当然これはやられるべきであるという御認識の上に立って対応していただきたいということなんです。
  68. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) いま酪農の規模拡大のための資金需要をどう受けとめるかということは、酪農をめぐる諸般のむずかしい情勢のもとで、なかなか流動的な点があり、したがって農家自体も状況を見きわめている動きがあることは事実だと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、従来の融資限度額でも、限度枠いっぱいを借りている農家の比率というのは非常に低いわけでございまして、大部分が大体限度枠の六割か七割ぐらいのところまででカバーされているという事実があることは御理解を賜りたいと思います。限度額の問題は、先ほども申し上げましたように法定事項ではございません。やはり経済状況の変化を十分受けとめて、真に必要があるものであれば私ども弾力的に対応するのがやはり行政として必要なことだと思っておりますので、さらに今後の事態を注視したいと思います。
  69. 下田京子

    ○下田京子君 もちろん限度額を引き上げたといって、限度額いっぱいの資金を借入農家の家族労働条件だとかあるいは経営状況を無視して行うということを言っているわけではございませんで、おやりになるということですからぜひお願いをしたいわけですが、同時にこの点で、道庁では機械の導入などに当たりまして、たとえば中古なんかも活用できるような方向を考えてもいいんじゃないかというふうなことも言われておりますので、そういったことも含めてぜひ検討いただきたいと思うんです。
  70. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 中古の機械を補助対象あるいは制度融資の対象にすることは国会でも前々から御議論のあった問題でございまして、私どももいろいろ詰めております。  率直に申しまして、一つは、機械につきましてはなかなか中古市場ができ上がってない、そういう意味においては客観的な評価というふうな問題がありまして、事務的、技術的にむずかしい点があって、私どもできるだけ前向きに、検査院、行政管理庁等の意向も聞きまして取り組みたいと思いますが、なかなかそういう技術的に認定上むずかしい点がある点は、従来折衝しました経緯からあることは御賢察いただきたいと思います。
  71. 下田京子

    ○下田京子君 技術的なむずかしさがあるけれども、前向きに検討ということなので、過剰投資問題につながらないという点でもぜひ考えてほしいと思います。  それから次に、大きな二番目では、負債問題でお尋ねしたいわけですけれども、北海道農業にとってやはり大きな問題は負債問題だと思うんです。ゴールなき規模拡大だとかということをずいぶん言われてまいりました。あるいは急激な設備投資ということも行われる一方で乳価は据え置かれ、また生産調整ということで十分にしぼれない、そういうことでなかなか単年度収支も容易でない、赤字だ、償還金の支払いもできないということは私が言うまでもなく御承知だと思うんです。  そういう中にあって政府が五十六年度から五カ年計画で酪農負債対策を実施してきたわけですけれども、その枠ですね。すでにもう当初の三百億円を消化しちゃっているんですね、二年間で。なので、これはぜひ融資枠を拡大してほしい。で、負債対策をさらに実効あるものにしてほしいという点で、これは畜産局長になりますでしょうか、お尋ねしたいわけです。
  72. 石川弘

    政府委員(石川弘君) すでに三百億の貸し付けを行っておりまして、その後の借入農家経営状況その他につきまして、関係者、道庁等を通じて精査中でございます。先ほど申しましたように、五十六年度を底にいたしまして、若干上向いてはまいっておりますものの、その状況にはいろいろ問題があろうかと思いますが、精査の上で必要があれば増額をするつもりでございます。
  73. 下田京子

    ○下田京子君 必要があれば増額をということですが、もう五年計画が二年でなくなっちゃっているんですから、これは必要だということか前提なので、そのことを置いて検討してほしいと思います。  次に、酪農肉用牛経営だけじゃなくて、北海道の場合には水稲農家経営も大変深刻であるのは御承知かと思うんです。減反の方も五割に上るという状況ですし、また、他作物に転換するということで新たな投資も余儀なくされている。こういう中で、五十五年、五十六年と連続的に冷災害もあった。農水省の農家経済調査結果でも、北海道の稲作農家の場合、農家経済余剰がどうなのかということを見ますと、大変厳しくなっているんですね。五十二年度では百三十八万六千円だったものが、五十三年が百四万三千円、五十四年が九十三万五千円、五十五年に十二万二千円、五十六年がマイナス四十二万四千円ということで低下して、ついに五十六年、いま言ったようにマイナスという状態になっているわけです。ですから、稲作農家にも負債対策をしてほしいという声が非常に強まっていること御存じだと思うんですが、そういう点で北海道の実態について御承知でしょうか。
  74. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 農家の形態別に見ました農家経済調査によりますと、いま御指摘ありましたように、稲作就業農家経営状況は、五十五年が御承知のように作況指数八一という大冷害でございますし、引き続きまして、五十六年も作況が八七ということで悪うございましたので、稲作経営所得の面から見ましてかなり悪くなっているわけです。そこでまた負債整理を要する状況かどうかということに相なりますと、確かに負債額も、五十四年度末の約六百八十七万円から、五十五年度末には七百十九万円ということで増加をいたしておりますが、一方貯蓄額は約一千百万円、これは五十四年度末に比べまして五十五年度末の方が若干ふえている、こういう状況にございます。  また、融資の内容を見てみましても、制度融資とその他が大体半分半分という状況でございまして、国が低利の金をつくってお貸ししているものが半分ぐらい占めている、こういう状況でございますので、酪農なんかに見られますような貯蓄と負債の割合が非常に大きく乖離しておる、こういう状況にもございませんし、全般的に眺めて申しますならば、負債整理という状況ではないというふうに考えております。もちろん転作のために必要な資金等については十分御活用いただくように配慮いたしたいと存じます。
  75. 下田京子

    ○下田京子君 借入金、預貯金の話はそういうことですけれども、農水省自体が調査された「農家経済調査報告」で農家経済の余剰がマイナスに転じているということは大変な事態なんだということなんですよ。ですから、必要でないという御認識は私は誤りだと思います。  しかも、さらに申し上げますと、実はこれは道庁が五十七年度に自作農維持資金経営再建整備資金需要調査を水稲農家で行ったわけなんです。元利償還できない、つまり酪農で言えばD層に当たる稲作農家が一千三百三十四戸ございます。それからいわゆるB、C層が三百四十七戸、そして資金需要額が合わせて八十九億、うちD層が六十八億で、B、C層が二十一億。これに対して北海道の場合には自作農維持資金の手当てが約六十億なんです。ここだけでも現にもう三十億不足。水稲農家だけ見ても事態が明らかなんです。そういう事態を考えたときに、いまのような御認識なら私はあえて申し上げますけれども——これは道によくお聞きになってみてください。いまのような状態、つかんでいますか、いかがですか。
  76. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 単年度の経済余剰のプラス・マイナスという問題は、いわば単位年度の赤字、黒字という問題でございますから、さまざまな気象条件等が重なりましてこういう事態になるということは大変残念なことでありますが、これは事実としては認めざるを得ないわけでございます。  ただ、そのことが負債整理を要するような状況かどうかという問題は、単位年度の余剰の問題ではなくていわば長年にわたる累積の資産の状況というものから見まして判断する問題でございますから、確かに五十五年、五十六年は非常に悪かったわけでございますが、昨年は御承知のように非常に作柄もよろしゅうございましたし、多少持ち直しの傾向もあるわけでございます。そういう意味で、直ちに負債整理の必要ありという事態とは考えておらないわけでございます。
  77. 下田京子

    ○下田京子君 私がいま具体的に申し上げました自作農維持資金の中の再建整備のことだけでも水稲農家に限って調査したらこうですよと、現況を知っていますかということをお尋ねしたんですが、お答えがなかったので、時間もないからあえて申し上げませんが、お願いしたい点は二点です。  一つは、いまのようなことで、若干食い違いもございますが、水稲農家につきましても酪農負債対策と同じように本格的な負債の実態調査を行ってほしい、これが一つです。  それから二つ目には、当面、経営再建整備資金、五十八年度枠で二百三十億円、前年比わずか伸びておりますけれども、非常にこれは希望が強いんです。そういうこともありますので、それで対応できるようにしてほしいということをお願いします。
  78. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 自作農維持資金の問題でございます。ことしは自作農維持資金は二百三十五億円の貸付枠を五十八年は予定しております。前年対比わずかというお話でございますが、一五%増ということにしておりまして、全体の予算制約の中では特段の配慮を払ったつもりでおります。  御指摘のように、全国的に見ますと、連年の冷害で稲作関係の負債整理資金需要がふえていることは事実です。ただ、北海道は逆に言うと五十七年はしたがって稲作関係は減ってきているという形のようでございます。私ども、後ろ向きの資金ではございますが、真に厳しい経営事情からの資金需要でございますので、できるだけ冷静に実態を把握してこれを受けとめていく必要があると思っておりますので、この問題の積極的な実需に応じた運用については今後とも努力してまいりたいと思っております。
  79. 下田京子

    ○下田京子君 もう一点の貸し付けの方なんですが、一五%伸ばしたんだからわずかじゃないよということなんですが、数字的に見ればそうも言えますけれども、実を言いますとこれは大変全国各地から、北海道はもちろんですが、希望が多いのは局長も御承知だと思うんですよ。実はこの前、千葉の方が私のところへ見えまして何とかしてくれと言うんですよ、うちのところはたった十件しか認められていないと言うんですね。福島県でもある方が何とかこの負債の問題をやれないかと言ったら、そんなものあったのかというぐらいにとっくの昔に終わっちゃったという話も出ているんです。ですからそれはさらに枠の拡大という点で努力をしてほしい。これは要望しておきます。  次に、これは経済局長になるかと思うんですけれども、いまのお話のように、マル寒マル南資金はもとより自作農維持資金など、非常に農業金融制度改善あるいは拡充という点がいま望まれている時期であると思うんです。ところが、三月十四日臨調が行いました最終答申を見ますと、農林漁業金融公庫につきまして、「利子補給金の抑制の見地から、農林漁業近代化と体質強化に留意しつつ、融資の重点化及び貸出利率を含む貸付条件の見直しを行う。」、こういう指摘をされているわけなんです。つまり利子補給金を抑制せよという至上命題みたいなものですね。  こういう形になっていきますと大変困難になってくると思うんです。ですから直ちに、農林漁業団体で構成しております農林水産関係行政改革問題検討委員会、ここでは、農林漁業者の負担をふやして政策金融の縮小を図るということは時代逆行じゃないか、こういうことで意見も申し上げ、また陳情もなされているのは御承知だと思うんです。それだけに、臨調については最大限尊重し、また閣議決定もなされていることは知っておりますけれども、農水省としてあいまいな態度は許されないというふうに思うわけなので、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  80. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  確かに臨時行政調査会の答申の中では「利子補給金の抑制の見地から、」という文言は含まれておりますが、同時に「農林漁業近代化と体質強化に留意しつつ、」やれというふうにもお書きになっておられますので、私どもとしては、「利子補給金の抑制の見地から、」という文言はございますが、農林漁業金融公庫農政上果たしておる重要な役割りと両立しないようなことを臨調の名のもとに強いられるという事態になるというものではないというふうに私どもは思っております。  それなら、その「利子補給金抑制の見地から、」云々などというのはよけいなことだというふうにお感じになるかもしれませんが、五十八年度予算で公庫の補給金としてたしか千三百を超える要求を提出せざるを得ないというような事態でございますので、無関心でおられるという金額でもございませんので、そのことに臨調が言及をなさったということも、まあ特に目くじらを立てるという筋合いのものではあるまいというふうに思っております。
  81. 下田京子

    ○下田京子君 簡単に言えば、臨調はそういうことを言っているけれども、これは農林漁業金融公庫の性格からいって目くじら立てるほどではないという理解で臨みたいというお話ですが、大臣、最後にお聞きしたいんです。  公庫法の第一条「目的」にも以下明記されているわけです。「農林漁業金融公庫は、農林漁業者に対し、農林漁業生産力の維持増進に必要な長期且つ低利の資金で、農林中央金庫その他一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通する」、こういう趣旨でございますので、そこをしっかり踏まえまして、農業特殊性を踏まえて公庫法の目的に沿った資金の対応をしてほしい。とすれば、公庫資金の利率の引き上げなど、こういう改悪は絶対しないという態度で大臣としては臨んでほしいわけですが、その決意をお聞かせください。
  82. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) ちょっとその前に簡単に経過だけ御説明さしていただきますが、公庫法一条は臨時行政調査会からも決して御批判の対象になっておりませんので、その点だけ一言申し上げておきます。
  83. 下田京子

    ○下田京子君 大臣ひとつ、大臣の一言で終わります。
  84. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 御趣旨を尊重して努力 いたします。
  85. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  87. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  川村君から発言を求められておりますので、これを許します。川村君。
  88. 川村清一

    川村清一君 私は、ただいま可決されました北海道寒冷地畑営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案に対    する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、劣悪な自然条件下にある北海道及び南九州畑作農業振興を図るため、土地基盤整備等各般の施策を一層推進するとともに、次の事項の実現に努めるべきである。  一、土地利用型農業生産性向上農政の重要な課題とされている現状にかんがみ、長期的な展望に基づいた畑作農業振興のための基本施策について、その総合的な実施に努めること。  二、畑作営農の安定を図るため、地力の維持増進、合理的な輪作体系の確立に努めること。  三、本法に基づく資金貸付条件については、今善するよう努力するとともに、営農指導体制を強化すること。  四、北海道及び南九州等遠隔地の農産物流通改善に資するための諸施策を引き続き実施すること。   右決議する。  以上でございます。
  89. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいま川村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  90. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、川村君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金子農林水産大臣
  91. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、今後とも北海道及び南九州の畑作振興に努力をいたしたいと存じます。
  92. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  94. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。金子農林水産大臣
  95. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び改正内容を御説明申し上げます。  この臨時措置法は、北洋における外国政府による漁業水域の設定等に伴う水産加工原料の供給事情の著しい変化にかんがみ、これに即応して行われる水産加工施設改良等に必要な長期かつ低利の資金貸し付けを行うことを目的として、昭和五十二年に制定されたものであります。  自来、国民に対する食用水産加工品の安定的供給の確保を図る見地から、この臨時措置法に基づき、国民金融公庫、中小企業金融公庫及び農林漁業金融公庫から貸し付けが行われ、水産加工原料のスケトウダラ等北洋魚種から他の魚種への転換、食用利用度の低いイワシ等多獲性魚の食用加工が促進されてきたところであります。  この臨時措置法は、本年三月三十一日限りでその効力を失うこととされておりますが、最近における水産加工原料の供給事情を見ますと、漁業水域の設定等により大幅に減少した北洋魚種の生産量は、ここ数年ようやく下げどまりの傾向を示しているものの、今後、各国の漁業規制の強化により、従来の生産量の確保が困難となることも懸念されております。  一方、わが国近海で漁獲されるイワシ等多獲性魚生産量は、今後とも高水準で推移することが見込まれ、その食用加工を促進することは、食用水産加工品の安定的供給の確保を図る上で、ますます重要になってきております。  このような水産加工原料の供給事情にかんがみ、引き続き水産加工施設改良等に必要な資金貸し付けを行うこととするため、この臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十二年度末までとすることとした次第であります。  以上が、この法律案提案理由及び改正内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いをいたします。
  96. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) これより、質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  97. 川村清一

    川村清一君 本法律案は、実は昭和五十二年十一月二十四日、参議院本委員会において可決決定したわけでございます。そのときは農林大臣は鈴木善幸さん、水産庁の長官は岡安さんでございまして、実はもうあした会期が終わるという日に突如として委員会提案されまして相当問題になった法案でありますので、非常に私には記憶が深いものがあるわけでございます。  それで、いろいろ質疑いたしますが、この法律案名称は、当初政府が立案したときは北洋漁業関連水産加工業設備改善資金融通措置法案という こういう名称であったわけでございますが、国会提出のときに名称が変わりまして現在のような法律名前になったわけであります。  そこで、私はなぜ変わったのかということを当時の鈴木善幸農林大臣に質問申し上げましたら、鈴木さんの御答弁では、これは北洋漁業だけでなくて、いわゆる北洋となると日ソ関係でございますが、日ソ、それからアメリカ関係でございますが、将来朝鮮民主主義人民共和国、これは八月から二百海里もう設定しておりましたし、それから南太平洋フォーラム諸国も三月末までに二百海里を設定すると、さらに今後韓国や中国等も二百海里を設定するといったようなことになった場合も、それに対応する意味におきまして北洋という文字を取って現在のような法案になったと、こういうことであります。  したがいまして、日米、日ソ関係だけでなくいわゆる北洋だけでなく諸外国との関連が深くなってきておるわけでございます。  そこでまず第一に大臣にお尋ねしたいことは、大臣の所信表明にもちょっと触れられておりましたが、国際漁業というものは非常にいま厳しい情勢になっておることは御案内のとおりであります。幸い日ソ漁業協定ができましていまのところ毎年安定したようなかっこうで協定が行われておると、漁獲量も毎年七十五万トンと、ソ日協定では向こうの方は六十五万トンといったようなところで推移しております。ただ、アメリカはきわめてこれは厳しいと、そしていろいろな法律をつくったりしまして、日本に対しては余り厳しいこともないようでございますが、それでも入漁料その他をうんと上げるとか、あるいは漁獲量を減らすとか、洋上の買い付け数量をふやしてくるとかといったようなことをやってきておるわけでございます。そのほか、将来を考えてみますというと非常に国際漁業関係というのはむずかしくなってくるんではないかということが考えられるわけであります。  そこで、まずお聞きしたいことは、この法律を五年間単純延長されるわけでありますが、一体その根拠は何なのかと、それから今後において、こういう国際状況が厳しい中において原材料加工対策をどうしていくかと、単に、先ほどは執拗に粘り強くこの対策いわゆる漁業外交を進めていくといったようなお話がありましたが、いまの段階でどういう見解を持って対処しようとしておるのか、まずお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  98. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 確かに日本の水産業をめぐる情勢非常に厳しいものがございまして、特に二百海里の漁業の規制はますますその厳しさを増しているというのがその現状であろうというふうに思うわけでございます。この法案を制定していただきました際は、いわゆる二百海里がまさに創設され、わが国に急激にこの波が来た時期でございまして、その時期を何とか乗り越えるということから、一つは、この北洋の関係によりまして大きく打撃を受けますところの水産加工業者に対しまして特に原材料の転換あるいは製品の転換ということをやっていただくためにその資金を融通しようということが一つの目的であり、それからまたもう一つは、このようなきわめて外国二百海里内の漁獲というものがむずかしくなった時期におきまして、やはり日本の周辺水域でもってその漁獲量を上げることができますところの多獲性大衆魚、これを高度に利用していこうということが必要な時代になってきたという認識からこれに対する資金を融通していく、この二つが大きな法律目的であったと思うわけでございます。  ただいまのお尋ねで、その後の状況によってこれについての今回提案をした趣旨は何であるかというお尋ねでございますが、私ども今回この法案を御提出申し上げましてさらに五年間の延長をお願いいたした理由は、このような当初の提案をいたしましたときの事情と現在の状況とを見てみますると、確かに二百海里の問題につきましては当初のような非常に大きな急激な影響というものが一応避けられた形になっておりますけれども、なお現状においても各水域において不安定な状況が続いておるわけでございまして、いつまたこのような事態を迎えるかわからないというような事情にございますし、また同時に、多獲性大衆魚の利用につきましてはさらにこれを進めていかなきゃならぬという事情にございますので、そのようなことからこの法案につきましての目的とその理由というものは依然として継続しているものというふうに考えまして、さらに五カ年間の延長をお願いいたしまして、この施設資金の融通ということをこの法律に基づいてやらしていただきたいと思ったからでございます。
  99. 川村清一

    川村清一君 法案の内容につきましてはこれからいろいろ質疑したいと思うわけでありますが、いま日本漁業関連しておるいわゆる外国との関係における大きな問題幾つかありますが、沿岸漁民にとりましてあるいはまた中小漁業にとりまして大事な問題としては一つは、この韓国の二百海里の問題、これは時間があれば深くお尋ねしますし、もしきょうできなければあすの委嘱審査のときにいろいろ議論してみたいと思うんでありますが、いま北海道から日本海沿岸の漁民に一番大きな心配を与えている、悩みになっているものは、朝鮮民主主義人民共和国、これをいわゆる北鮮と言わしていただきますが、北朝鮮の二百海里の問題であろうと私は思うんです。長官すでに御承知だと思いますが、日本海マスはもう出漁しておりますか。
  100. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 日本海のマスはすでに出漁いたしております。
  101. 川村清一

    川村清一君 恐らくいまは富山県か新潟県沖で操業しているんじゃないかと思いますが、やがてこれはどうしても朝鮮の二百海里に入っていかなければならないそういう漁業なんですが、これは御承知ですね。
  102. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 流し網及びはえ縄のサケ・マスの漁業につきましては、この北朝鮮の水域に入ると想定される時期は四月の中旬から五月の上旬というふうに考えております。この時期に主漁場形成されるというふうに判断しております。
  103. 川村清一

    川村清一君 去年かおととしですね、日本の海上自衛隊、アメリカの海軍等が日本海で演習やったと、あのときに日本海のマス漁業のはえ縄を切断されたとかあるいは流し網に損害を与えたということで大きな騒ぎになりましたが、その前にやっぱり四月の中旬から北朝鮮の二百海里の中に入っていかなきゃならない、操業しなければならない。ところが、いまのままでは入れますか。
  104. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 現状のままでは入ることができない状況にあります。
  105. 川村清一

    川村清一君 それは昨年の六月の末をもって日朝の漁業協定が廃棄され失効したことによるわけでありますね。
  106. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) そのとおりでございまして、昨年の六月末をもちまして北朝鮮との間にございました民間の合意が期限切れになったためにこの水域へ入れなくなったという状況がございます。
  107. 川村清一

    川村清一君 すでにもうこの漁業は開始されておると、北海道の道南の渡島、檜山、あるいは後志、このあたりから相当の船が出ております。それから日本海の府県の方も、青森県から新潟県、富山県あたりからも相当の船が出ている。それで、乗組員の雇用を結んで相当の資金をかけて操業しているわけでありますが、四月中旬その北朝鮮の二百海里へ入っていくことができないとすればこれは大変な問題でありまして、へたに入っていったら、みんなこれは協定がないわけですから全部拿捕されて処分されるといったようなことになるわけで、これがいまは北海道の道南の漁業者あるいは後志管内の漁業者、同じく日本海の府県の方の方々も非常な心配をしてやっているわけでありますが、こういう情勢に対して水産庁はどういう対応をなされようとしておりますか。
  108. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいま先生おっしゃいますように、北朝鮮との民間協定の期限が切れましてすでに一年近くがたとうとしておるわけでございますが、この間にイカあるいはべニズワイといったような漁業にも影響がございましたけれども、一番やはり影響が出てくると考えておりましたのがこのサケ・マスのはえ縄の漁業と流し網の漁業でございました。私どもも何とかこれまでにこの解決がつかないものかということで期待をいたしており、また後ほど申し上げますようないろいろな側面からの援助もいたしておったわけでございますけれども、残念なことに今日まで解決のめどが立たないという状況でございます。私どもとしても非常に心配をいたしているというところでございます。  ところが、先生も御案内のように、われわれとしては政府間の交渉ができないと。何ゆえなれば、国交のない国でございますので、私ども自身が飛んでいってピョンヤンで交渉するわけにいかないという状況でございますので、何とかこれを日朝友好議員連盟の先生方あるいは日朝漁業協議会等の民間の団体が力を尽くしていただきまして、こ の協定をまた結んでいただくということにしていただけないかということでいろいろとお願いもし、また側面からの御援助もいたしてまいったわけでございますけれども、この方々も非常に努力をしてくださったわけでございますが、残念ながら現時点におきましてはまだこの話し合いの糸口がつかめないという現状でございまして、私どもといたしましては何とか今後ともこれらの方々と連携をとりまして、一日も早くこの民間の交渉が開始できるようにしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  109. 川村清一

    川村清一君 この海域に出漁してサケの流し網やマスの流し網あるいははえ縄をやっている船の総数はどのくらいありますか。
  110. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 許可隻数で申し上げますと、流し網が百二十五隻、これは恐らく全船出漁を希望すると思います。それから、はえ縄の方が二百五十九隻ありますが、約百二十隻が操業を希望するものというふうに考えております。
  111. 川村清一

    川村清一君 長官がいまおっしゃっているように、国交のない国の協定ですから民間協定ですが、この民間協定ができたそのいきさつ等は御存じですね、言うまでもなく。これは全く協定のない両国、これが七七年に二百海里を日本も引いた、向こうも引いたということから入れなくなりましたものですから、それで糸口としましては、日本社会党と朝鮮の労働党の間にはパイプがあったものですから、そこから話し合いがちょっとついて、そして日朝議連ですね。日朝議連の会長さんは久野忠治さんですね。それから幹事長がわが党の米田東吾衆議院議員ですね。非常に日朝議連の久野さんも努力されまして、そしていまお話がありましたように、日朝漁業協議会というものをつくりまして、その会長は石川県の漁連の会長さんですが、それでその日朝漁業協議会とそれから向こうの政府との間に協定ができた。しかも、その協定は日ソ漁業協定のような協定ではないわけですね。日本の漁船がその北朝鮮の二百海里の中に入って漁労する。それはどの魚をどれだけとってもよいといった漁獲量も魚種の差別もなければ、自由にとってくれということ。こんな協定というのは余りないんですが、向こうが日本の二百海里に入ってきて何をとるといったような、こういうことでもない。全く向こうの好意的な関係で協定が結ばれたわけであります。  さて、これが七七年以来ずっと続いてきた。一年ごとに協定の延長などをやってきた。ところが、昨年の六月三十日をもってこの協定は廃棄されて失効してしまった。そして、現在に至るもいまのような状態で、どうにもならないという状態ですが、そうかといって、これができなければ一体どういうことになるのか。私どもずいぶんこれは北海道で陳情を受けているんですが、もちろん水産庁に対してもいろいろ来ていると思うんですが、どうにもならないでこれは済むんでしょうかな。一体なぜこういうことになったかということ、それは何によってなったのか、責任はどこにあるのかということは、私はここで言うことは避けますが、長官、それは御存じですね。
  112. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) その間の事情については、水産庁としても状況についてはよく承知をしているつもりでございます。
  113. 川村清一

    川村清一君 四月の十五日前後ということになるともう一カ月もないんですが、そうなっても協定が結ばれない、そしていまマス流し網やはえ縄をやっておる船はその中へ入っていって操業できないと、こういう事態が、いわゆる最悪の事態ができた場合に一体どうなされますか。ただ傍観するだけですか。いや、だれかやってくれ、民間なんだから民間で何とかやってくれで済むんでしょうか。それが今度は続いていって、夏、秋になりますというとイカ漁がありますね。イカ漁も全然できなくなるわけでありますが、どうしますか。
  114. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 本件につきましては、実は現状を申し上げますると、かつてこの協定が切れてしまったということの原因になりました問題につきましては、私どもずいぶん関係方面に足も運びましたし、話もいたしまして、国会での御答弁でお聞きになっておられるように、先方との交渉を再開することにつきましては漁業の事情というものも十分に勘案しようという考え方に政府の意見は一致しているというふうに考えるわけでございます。何とかしてこの際に交渉の糸口が開かれるということがございますれば、この問題は一挙に進んでまいるところでございまして、私どもは現在先方の返事を待っているという状況であることは先生もよく御承知のとおりでございます。  私どもといたしましては、万が一どうなるということよりも、何とかこの問題につきまして一日も早く糸口が開かれ、問題の解決をしたいと、その方針で臨んでいきたいというふうに考えているわけでございます。
  115. 川村清一

    川村清一君 昨年の十二月の臨時国会におきまして、わが党の米田代議士が衆議院本会議で代表質問に立ちました。そして、この問題について中曽根総理大臣の意見をただしたわけでございます。非常に中曽根総理大臣の答弁がよかったといいますか、これによって向こうの政府も大分様子が変わったようでございました。そして、この一月の初めに、米田代議士とそれからわが党の漁民部長をやっておる石田君というのが二人で参りまして、その糸口をつけるために行ったんですが、たまたまそのときに中曽根総理大臣が韓国へ行きまして、そして韓国の全斗煥大統領と会見しいろいろお話をし、そして四十億ドルの借款をしたといったような外交上の問題なんですが、これが向こうを非常に刺激して、せっかく向こうの態度も軟化してよい方向に向いてきたのが、俄然変わってしまったと、こういう経過があるわけですが、この問題は一水産庁長——松浦水産庁長官は一生懸命御心配なされ御苦労されても、とても水産庁の長官で解決できる問題ではないわけですね。やはり日本の政府の態度、外務大臣なり総理大臣の。そこで、これはやはり国務大臣でいらっしゃる金子農林水産大臣にお尋ねしなければならないんですが、大臣は私なんかと違って、漁業の全く専門家で、自分が漁業経営されている方でもありますから十分御認識いただいておるのでありますが、一体この問題どうしようとお思いになりますか、大臣のひとつ御所見を聞きたいんです。
  116. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) いろいろ御意見が出ましたが、関係の漁業者には大変不幸なことで、御迷惑をかけておると思いますが、国交のない国であって非常に複雑、いわゆる日本政府の、いわゆる公式な発言そのものによっていろいろ差しさわりが出てこういう事情が起こるのでございます。そういうことで、それぞれのルートでできるだけ昨年の六月の続きを今後継続させたいということで、私どもも長官が中心になって全力を挙げて、あの手この手で東奔西走をしておるところでございますが、非常に見通しは明るくないということです。一層ひとつ努力を続けていきたいと、このように考えております。
  117. 川村清一

    川村清一君 一生懸命努力を続けられることは、本当にこれはやってもらわなければなりませんけれども、見通しはきわめて明るくないというような御発言でございます。  それで、もしこれがだめだと、もう協定が結ばれないというようなことになれば、先ほども言ったように、この春のマスだけでなくて、夏以降のイカ漁業もできないということになりますれば、私は北海道人ですから北海道のことばかり言っていますが、恐らく青森、秋田から山形、そして新潟、富山というふうに、日本海で漁業をやっている方は大変困るんじゃないか、それでいよいよだめだということになれば、恐らくはこういう方々からも、相当の投資をして、準備して出漁しているわけですから、相当の損害が大きいわけです。損害賠償要求なんということも、これは起きるか起こらないかわからぬけれども、起きてくるんでないかというような、そういう気がするんですが、こういうのが起きた場合どうしますか。
  118. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 昨年のイ力釣り漁業、及びべニズワイの漁業につきましては私どもも非常に心配をいたしまして、その結果がどうであるかということは常に現地の方々にお話を伺ってきた わけでございます。不幸にしてこの水域にはついに入ることができませんでしたけれども、一つは魚価がかなりよかったということと、それから魚群の形成がわりあいこの水域を外れてもいいところがあったというようなことから、漁獲金額の面で見ますると、その影響が私どものところにぜひ損害賠償をしてくれというようなことでおいでになるほどではなかったように聞いております。なお調査は続けていきたいと思います。しかしながら、今後の問題といたしまして、はえ縄、流し網の問題につきましては、これは魚群の形成がどこで行われるか、これは全くわからないわけでございまして、さような意味でこの問題が非常に深刻な問題になる可能性があるということは私ども十分に承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、まず第一に私ども考えておりますことは、何とかこの水域に入れるような、そういうことをまだ期間もございますので、最後に残された期間を何とかこの協定の実現に向けてやっていきたいという気持ちで、大臣もそのような御答弁をなすったんだろうというふうに思うわけでございます。
  119. 川村清一

    川村清一君 昨年のイカはそういうことだったということで、それは結構でしたが、イカの魚動がわりあい二百海里から離れておったということで、大した損害もなかったということ、それは結構ですが、しかしマスはそういうわけにいきませんな。マスはそういうわけにいきません。これは一生懸命努力してやろうと言っているその努力もわかりますし、長官の決意もわかります。しかし不幸にしてそれができなかったら、私が心配しているようなことが必ず起きると思うのです。起きた場合にそれに対応しなければならないでしょう。どうしますかということを私は聞いているんです。どうですか。
  120. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) この漁業が今回このようなことでどうしても入れないという事態になった場合に、これに対してどう対応するかというお問い合わせであろうというふうに思うわけでございますが、この点につきましては、やはり民間の協定でございますので、政府がかつて政府間の交渉でやった、その結果どうなったというような問題とは若干性質を異にしているんじゃないかというふうに思うわけでございます。その点でどのような措置がとれるかということにつきましては、今後検討しなきゃいかぬというふうに考えるわけでございますが、まずとにかくどのような事態が起こるかということを十分に調査し、また見きわめまして、その上で所要の措置を検討したいというふうに考えているわけでございます。
  121. 川村清一

    川村清一君 これは非常にいま重大な発言でございまして、これは民間の協定であることは間違いない。民間が話し合って決めたことなんです。あるものをだめにしたのはだれかということなんです。これは政府でしょう。それを否定されますか。これがだめになったのは、いわゆる日本政府の朝鮮民主主義人民共和国に対する外交的なやり方がこれをつくったということは、これは否定できないでしょう。どうですか、これ否定されますか。私の言っていること、間違いありますか。
  122. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) この御質問、非常にむずかしい御質問でございまして、もちろん外交的な関係からこのような事態が生じたということはございますけれども、やはり外交関係は外交関係としての物の考え方なり何なりがあって、そういう措置をとらざるを得なかったという事情もあると思うのでございます。これは水産庁がお答え申す性質の話ではございませんが、さような関係全体を含めまして、政府としてどのようなこれについての責任をとらなければならないかということは、またちょっと別の問題じゃないかというふうに考えるわけでございます。そのような御答弁でお許しをいただきたいと思います。
  123. 川村清一

    川村清一君 水産庁長官の権限ではとても解決のできる問題ではないと私は思うのです。だから国務大臣である農林水産大臣にお尋ねしているんでありまして、やはり金子農水大臣はこれに一番心配していただかなければならない政府のこれは閣僚でございますから、やはり外務大臣なりあるいは中曽根総理大臣に話していただいて、一番大きな原因は中曽根総理大臣がことしの一月訪韓して、そして四十億ドルの借款をやったとかあるいはまたさきに行いました米韓の大規模な軍事演習といったようなものがやっぱり影響しているんでありますから、これとこれと比べたらこっちの方が大事だからこれはだめだと言ってこれを見捨ててしまうならこれは別だ。見捨ててしまうなら日本海の沿岸の漁師の方が何と言おうと、そんなことよりもこれは国の大事であるということで一応見捨てるというなら、はかりにかけて、こっちの方が重いんだからこれは切るというふうに、まあ総理大臣の決断によってそうなされるならこれはまた仕方ないでしょう。しかし私は私の立場においてやはりそういう漁業従事者——漁師の方々の生活を守るとか、あるいは日本の漁業を守るとか、食糧たん白を守るとか、こういうやはり国民生活の上から考えてどうしても実現したい、こう思っています。この点ひとつ非常に大事な問題ですから、大臣から一言お考えを、あなたの所感を聞かしていただきたいと思うんです。
  124. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 大変適切な御指摘をいただいておりますが、この問題は国際問題でありますし、大変重大な問題でございまして、最悪の場合、農水大臣はどういう対処をするかという御質問がありましても、このようにしましょうということはなかなかお答えしにくい問題でございますので、御指摘の点は十分踏まえて取り組んでおりますので、どうか最悪の事態が起こらないように、全力を挙げて努力を続けていきますということをひとつ御了承願いたいと思います。
  125. 川村清一

    川村清一君 まあ、これ以上この問題やっても解決する問題じゃないですから、ひとつ私の気持ちは十分ここでお話し申し上げましたので、善処していただきたいと思うんです。これは本当に四月十五日過ぎてもこういう状態であれば相当大きな騒ぎになりますから、この点を十分考えて対応していただきたいと思います。  それから、この法案の中身に入りますが、時間も余りないので簡単にいたしますが、この法律は言うまでもなく、五十二年に二百海里を引いた。その前に、五十一年にはアメリカがこの二百海里の法律、これをつくった。それから、五十二年の三月にはソ連も二百海里を引いた。そこで、そのときには鈴木農林水産大臣が大変御苦労されたわけです。それをバックアップするために、衆参両院から代表も行っていろいろやったんでありますが、その中の一人として私もモスクワに一週間ぐらいおって、鈴木さんの仕事が成功するように陰ながらいろいろ動いたんですが、そういうようなことから、まず北洋の漁獲高がうんと減った。その減った一番中心は何かというと、これはスケソウですね。このスケソウは大体ソ連の二百海里の中から八十万トンぐらい日本の国がとってきておった。北海道で言うと、釧路あたりに六十万トンぐらいスケソウが揚がったわけです。したがって、そのスケソウを材料にしていろいろ加工する、特にすり身ですが、すり身加工加工企業が釧路で百以上もあったんじゃないでしょうか。それがついに日ソの漁業協定で三十万トンになり、現在は二十九万トンと、こういうようなかっこうでうんと減ってしまった。それで、そのすり身を原料にして練り製品をつくる。たとえば、かまぼこやなんかは材料がなくて大変だということで、そこで日本政府としましては、スケソウのすり身にかわるいわゆる多獲魚を使いたいということで、イワシとか、あるいはサバがスケソウにかわるような味にならないかというようなことから、加工企業の施設を変えていく、その変えていくための金融措置としてこの法律をつくったわけで、加工業に対する融資の道は、それまでは中小企業金融公庫と国民金融公庫と二つだったんですが、新たに農林漁業金融公庫の金を融資するというためにこの法律ができたことは御承知のとおりなんでありますが、その後、このすり身の様子が大分変わってきた。スケソウダラの様子が大分変わってきた。スケソウダラを原料とするすり身は、二百海里に 入った五十二年から五十三年にかけてはめちゃくちゃに値段が高くなってきた。それで国民消費者がそれに対して反発した。それから五十五年になりまして、御承知のように過酸化水素の使用禁止といったようなこと、そして製品の価格が上がったといったようなことから、需要が五十五年以降ずうっと減って、現在も停滞ぎみであるということ、これは御承知のとおりであります。  そこで、すり身の当面の需給は非常に緩和の状況にあると思うんです。北洋における状況が最近厳しい。原材料の加工対策は強力になされていかなければならないのはこれ当然であります。たとえば、いま日ソの協定によって二十九万トンとなっているが、これが必ずしも永久に二十九万トンとも言えないわけですから、これがもっと減ることも予想される。それから、アメリカ二百海里水域におけるいまのスケソウの漁獲高というものもずっと減るかもしらない。したがって、この加工対策ということは十分考えなければいけないけれども、肝心の需要の方がさっぱりこれは伸びないんですね。したがって、現在政府としましてはすり身の需要に対する見通しをどう持っているのか。それから、原材料をいまこのスケソウにかえて、そうしてイワシやサバに転換させる、こういう政策をとってきたんだが、この政策、そしてこの法律の運用ですね、これが現在どんなふうになっているのか、その後どうなってきているかというようなことについて、かいつまんで簡単に説明願いたいんです。
  126. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) まず、すり身の需給に対してお話をいたします前に、練り製品の需給関係について若干最近の情勢を御説明した方がよろしいかと思いますので、それから始めさせていただきますが、練り製品の生産量は五十一年が百十四万トンございまして、これが二百海里問題を契機にしまして原材料が相当減少いたしまして、御案内のように先ほど御指摘ございましたが、製品の価格の値上げが行われた。特にかまぼこその他の練り製品が非常に上がったということから、かえって需要を低下させたということは事実でございます。五十五年には九十一万トンになったという状況でございました。ところが、最近実はこの需要停滞傾向に対しまして、逆に需要が増加している状況が出てきております。現実の数字といたしましては、五十六年が九十五万トンに実は回復してきております。これは何かと申しますと、一つは、いわゆる食生活の洋風化あるいは多様化、簡便化といったような消費者のニーズに合わないような製品が主力でございましたが、それが業界の非常な努力によりまして、やはりすり身を使った練り製品につきましても新しいニーズに対応したような製品が大分出てきております。たとえば一番よく言われておりますのが、カニ棒と言われておるカニ足風のかまぼこ、これは非常に需要が増してきておりまして、輸出もふえているというような状況でございます。それから、ホタテ風のかまぼこといったようなものも相当出てきておりまして、かなりの開発が行われております。  それから、一つは、この練り製品関係が非常に需要が落ちました原因は、いわゆる魚肉ソーセージというものが、本当のソーセージと申してはまずいんでありますけれども、いわゆる肉類を使ったソーセージに押されたという傾向がございましたけれども、これも大分盛り返してきております。さようなことから五十六年が九十五万トンに回復いたしまして、五十七年は引き続いてこの需要は増加していると見た方がよろしいと思います。  さようなことから、すり身の需給関係について考えてみますると、現在の原料のスケソウダラにつきましては約三十六万トン、これは陸上すり身で十八万トン、洋上すり身十八万トンという実績でございますが、確かに二百海里の前の生産水準に比べますと、かなりこれが量としては低下し、かつ価格も大幅上昇という傾向がございます。ただ、今後の状態を考えてみますると、ただいま申し上げましたように、供給面では最近ある程度まで安定した供給が行われているのに、需要の面が先ほど申しましたような練り製品の需要の落ち込みから、一時的な過剰状態というのが生じているというふうに考えられるわけでございますけれども、昨今の練り製品の需要は、先ほど申しましたような形で相当に回復をしてきているという状況でございますので、さような意味からはこの需給関係がかなり最近の時点では安定ないしは好転と申していいような状況になってきているというのが現状でございます。そこで、問題は今後の練り製品需要がさらに強気の方向に行くということになりますると、むしろスケソウのすり身だけでは足らないということになろうかというふうに考えられますので、今後はもちろん北洋関係の外交交渉を十分に展開いたしまして、北洋のすり身というものを確保するということが第一でございますが、そのほかに多獲性魚——イワシ、サバといったようないわゆる前浜資源のすり身化ということを行いまして、これによってすり身の需給の安定を図っていかなきゃならぬというふうに考えるわけでございます。特に、多獲性魚等につきましての前浜資源の活用につきましては、やはり相当程度北洋のすり身の減少、特にソ連を中心にしましたスケソウの生産量の減少に対応してかなり業界の方々がこの資金等も使いながらその生産を増していったところでございまして、このような努力を今後とも続けていくべきであるというふうに考えている次第であります。
  127. 川村清一

    川村清一君 そういう議論になりますと、この法律制定目的は何であったのかということなんですね。これはスケソウ生産がうんと減ってしまったと、そこでそれにかわる多獲魚の食料品としての加工、そのためにこういう法律をつくったんであって、それじゃこの法律ができてから多獲魚であるところのイワシだとかサバだとかサンマだとかといった、こういう魚の食品加工ということにはこれはふえていっているんですか、どういうことになっているんですか。前と同じですか。とすれば、この法律はさっぱり意味がなかったということですね。いただいた資料を見るというと五十六年におけるイワシ、サバのすり身生産はわずか千六百七十四トンにすぎない。一方、スケソウダラのすり身は陸上だけで十六万トン、こういうことです。そこで、あの法律制定のときにいろいろ議論になったイワシやサバのすり身技術開発はどうなっているのか。もうスケソウはなくなったんだからそれにかわるイワシ、サバ、これをどうすり身にしていく技術、においをとるとか、色をとるとか、油をとるとかといった技術開発はどうなっているのか。それからスケソウダラすり身の需給というものがこれは現在のところ心配がないといったような情勢の変化、したがって、五十二年にこの法律をつくったころの情勢と現在の情勢は大分変わっておったと。その当時心配しておったことが現実の問題として出てきてないということですね。こういう点はどうするのか。これはわれわれこの法律をつくった責任者として、何なんだろうということになるんですね。それで、あなたの方からいただいた資料を見ますというと、たとえばイワシの生鮮向けは五十六年でわずか八万トン、加工向けが六十九万トン、合わせて七十七万トン、そしてイワシの非食用向けが二百五十七万トン、割合にすると、生鮮向けが三%、加工向けが二〇%、そしてそこの小計で二三%、そして食べるものでない、つまりえさ用ですね、これはハマチのえさだとか、あるいは家畜のえきだとか、その方向に七七%いっている、ちっともこの法律をつくったときにいろいろ議論したことが何も、今の状況はあの時分の状況と大分違っている、心配ない状況ですか、どうですか。
  128. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) まず第一に申し上げたいことは、この法律が五年前にできましたときの状況と比べまして、その法律の第一の目的でございますところの北洋におけるわが国の漁船の活動というものが非常に不安定な状態に陥りまして、原料転換を水産加工業者にお願いをしたという事情が将来起こるか起こらないかという問題が一つございます。この点につきましては私ども確かにその後の外交交渉によりまして北洋の水域につきましては、ソ連に関しましては七十五万トン、それ からアメリカにつきましては百四十万トンのクォータを依然としてがんばって確保しているという状況でございまして、さような意味から申せば、ある程度の安定という状況は実現したわけでございますけれども、しかしながら、一方におきましてこのような状態が今後とも持続してこの法律が要らないという状態ではないと思うのでございます。と申しますのは、対米関係を見ましてもやはり外国漁船を締め出そうというような、そしてアメリカの水産業というものを独自の力で振興しようといったような考え方は非常に強いわけであります。また、対ソ関係につきましても決して完全に安定したということは言えないわけでございまして、さような意味から北洋の原料確保という面において、将来外交交渉その他を通じましてできるだけ避けていくということではございますが、万一の事態というものも想定しておかなければならぬという状況だと思います。  それから第二に、多獲性大衆魚の問題でございますが、この点につきましての高度利用につきましては、従来からいろいろな試験等を行ってまいりまして、かなりの実用化に向かってその開発が進んでいるわけでございます。ただいま先生、食用向けの多獲性大衆魚、特にイワシを例にとっておっしゃられたと思うわけでございますが、それほど進んでないじゃないかとおっしゃいますわけでございますけれども、しかしながら実は昭和五十一年に生鮮向けと加工向けで、食用に向けられたイワシの量というのが五十三万トンございました。五十六年は二十万トン余ふえまして七十七万トンに実はふえているわけでございます。ところが、五十一年の当時は、つまり二百海里の前でございますけれども、イワシの総漁獲量が百三十九万トンしかなかったわけでございます。分母の方が小さかったから非食用向けの率というものが非常に低く見えたわけでございますけれども、五十六年は実にイワシの漁獲量は三百三十四万トンというぐあいにふえてまいりまして、このために食用向けを相当ふやしましたけれども、分母の方も大きくなったということから率としては依然として非食用向けが七七%という状態でございまして、さようなことから一見食用向けに十分多獲性大衆魚が回ってないように見えるわけでございますけれども、この間の技術開発の努力あるいはこのような加工施設資金の優遇等を通じましてイワシの利用というものは食用向けにかなり伸びている、こういうことでございますので、さように御理解いただきたいと思います。
  129. 川村清一

    川村清一君 もう時間がないですからこれ一問でやめますが、長官、いただいたこの資料で明確なんですが、政令一号資金と政令二号資金があるわけですね。それで、一号資金の方はどんどん、どんどん資金需要が減って——いや、これは北海道の資料ですから全国的にはわかりませんが、北海道では一号資金の方は五十六年では一件です。わずか五百万です。それに反しまして、二号資金の方はどんどん、どんどんふえていっているということで、五十六年では北海道では六件、そして一億二千五百四十万円と、一号資金と二号資金の比率は、需要は二号資金の方がうんと多くなってきているというのがこれ現実の問題でしょう。私はこの法律は要らないなんということは言っているんでない。要らないとは言ってないけれども、この制定当時と情勢が大分変わってきておるということ。ですから、ある意味において見直しが必要じゃないかということを私は言いたいわけですね。それから、二号資金がふえていっていることは結構なんであって、これはこれでいけばいいんです。ただ、水産加工というものはこれは大事でありまして、これはやっぱり水産は漁獲と需要、そしてそれが安定的に安く消費者に渡るような、こういうやっぱり流通経路、そういう構造にならなければならぬですね。そこで、水産加工というのはいわゆる漁獲というものの最大の需要者なんですね。水産加工が栄えるということはある一面漁獲したものがどんどん売れていくわけですから、それを生産する漁民にとっては大した助けになるわけですから、これはどうしてもやらなければならない。これはそうなんです。ただし、ぜひやってもらいたいことは、これは施設のための資金なんですね、施設のための。ところが、水産加工を企業としてやっていくためにはこれは施設だけではいかぬのです、施設だけでは。運転する資金がなければこれはいかぬのですよ。運転資金の融資の道もこれは考えていかなければならないし、もう一つは、水産加工企業というのはこれはまあとにかく中小零細企業が多いですわな。これは大手も日水とか大洋とかというようなことになれば別ですが、大体は本当に中小零細企業が多いですね、加工は。したがって、これが小さいのがぼつぼつこうやっておったらなかなかいかぬから、これをいかにして協業化するかと。水産加工協同組合のようなものをつくるとか、あるいはまた、協業化して、そして相当な規模でやっていくような、そういうことが私は必要ではないかと思うんです。そして、いわゆる一号よりも二号がふえてきたという実態は、このいまのいう、「原材料の供給事情の変化に即応して」というこの問題、つくったときのそのときとは大分様相が変わっているわけなんです、いわゆる一般的になってきた、一般的に。一般的な法律、この法律はこれでいいけれども、もっとこれを見直してもっと一般的なものに重点を置いた法律をつくるように検討されたらどうかと私は思うんですが。  それから、最後ですからもう一点言わしていただきますが、原材料が足りない足りないといったようなことでいたずらに輸入品をどんどんふやすということは避けてもらう。日本の船が漁獲してくることはうんといいんですが、しかし、足りない足りないというわけでそして輸入する。たとえばスケソウなんかは、これは非自由品目ですね。これを輸入してくるというようなことになりますれば国内生産者に対して相当影響を与えますから、こんな点は十分気をつけてもらいたいと私は思うんです。これらはちょっとまとめて数点お尋ねしましたが、これに対する長官の答弁を聞きまして、私の時間なくなりましたからこれで質問をやめます。
  130. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 先生おっしゃいますように、この水産加工業というのは日本の漁獲量の約六割をこれで賄ってくれる非常に重要な産業でございまして、この加工業によりまして生産者と消費者との間が結びついている、いわば生産加工は車の両輪のごときものであるというふうに私ども思っているわけでございます。  そこで、具体的な個々のお尋ねでございますが、まず、一号資金と二号資金の関係でございますけれども、一号資金、確かに最近の状況を見てみましても、トータルで貸付額四十七億という状況でございます。これに対しまして、全国ベースでいわゆる多獲性魚の有効利用という部分が二百十一億ということでずっと二号資金にシフトしているということは事実でございます。これを私考えまするに、やはり一号資金というのは緊急避難と申しますか、非常に急速に二百海里がやってまいりましたときに、これに何とかして原料の面で対応していくということで転換を加工業者にお願いしたということから出てまいりました資金でございまして、さような意味でこの事情というものが若干変わってきていることは事実でございますが、しかし、将来を考えますると、いつまたこういうことが起こるかわからないという意味で、この資金というものはやはり残しておかなければならぬ資金であると、先生もそうお考えだろうと思います。ただ、やはり資金の面の需要ということを考えますと、多獲性大衆魚をどうやって有効利用するかということが非常に重要な今後の課題であることは事実でございまして、この方面の資金というものにやはり重点を志向していくということが当面の大きな課題であろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、第二のお尋ねの、施設資金だけではなくて、いわゆる運転資金も見るべきではないかということでございますが、従来までこれに対応いたしました運転資金は、施設資金の中の一道三県に対します国際規制資金に対応した運転資金だけ を従来まで見てきたわけでございますが、昭和五十八年度予算で現在御審議をお願いいたしておりますところの予算の中に、水産加工経営改善強化資金というものがございます。この資金は、百四十億の枠を設定いたしまして、各都道府県に特別会計をつくっていただきまして、そこに国から一定のお金を出しまして利子補給をやっていただくという考え方でございまして、これは実は国際規制資金のみならず、多獲性魚の有効利用ということのために緊急に必要な運転資金もめんどう見るという考え方に立っております。この予算が幸いにして通過をさしていただきますれば、このような運転資金の拡充を含めまして対応策がとれるということに相なるわけでございます。  それから第三点といたしまして、一般法にしてはどうかということでございますが、これはこの法律ができましたときに、先生、御審議になられました非常に重要なメンバーの一人でいらっしゃいますので、よく御存じだと思うわけでございますが、何分にも水産加工業はほとんどが中小零細企業でございますので、いわゆる中小企業基本法から出てまいりますところの中小企業を対象とする政策的金融措置ということが基本にございまして、しかしながらその上に二百海里の体制への移行ということから生じた緊急の問題、それからもう一つは多獲性大衆魚というものをできるだけ国民に安定したたん白供給源として供給するという非常に高い高度な食糧政策という観点から、この中小企業の金融を越えた金融を先般の五年前につくっていただいたという状況でございます。したがって、この事情は現在も余り変わりはないわけでございまして、そのような意味で、一般中小企業政策との整合性といったような問題が依然として出てまいりますので、今回も延長でお願いしたということでございます。しかしながら私どもとしましては、二百海里の体制というものが決して安定している状態ではないということはよく承知しておりますし、また、多獲性大衆魚の利用というものも一朝一夕で築き上げられるものではないというふうに考えておりますので、今後このような制度につきましては、十分にいまお話のありましたことも頭に置きまして今後の対応策を考えていくというふうにわれわれとして考えておる次第でございます。
  131. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案、この法律につきまして、二百海里ということで、それ以前から漁業問題についてはいろいろなことがあったわけでありますが、降ってわいたわけではないのかもしれませんが、こういう規制を受けることになりまして、そういう中で漁業を取り巻く非常にむずかしい環境の中で、加工に関する、今日まで日本人の食生活に非常に重要な位置を占めておりましたすり身加工を中心といたしましてこの対策措置がとられたわけでありますが、率直に言って、この前に暫定的な措置がとられ、この法律ができましてから五年間の期限をもちまして、政策転換措置とそれからイワシ、サバ等の多獲性魚加工ということでこのための設備資金、二つの目的のためにこれが設けられたわけでありますが、先ほどもいろいろ答弁がございましたけれども、この法律ができましてからまた諸情勢もいろいろ変わったようでありまして、当時の深刻な論議を経てこの法律制定があったわけでありますが、その後、資金の実績を見ますと、当初の融資計画から見て、いずれも融資の実績は、当初の五十三年、五十四年、この当時はそれなりのものは資金需要があったようでありますけれども、計画が達成されましたけれども、五十五年以降、最近ややさま変わりがしているような感じがするんですけれども、まだこれは五十七年の実績が出ておりませんからあれですけれども、現状とそれから最近の動向、これ資金需要のことに関してちょっと御説明いただきたいと思います。
  132. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) この加工施設資金につきましての最近の貸し付けに対します需要、特にその特徴ということを申し上げたいわけでございますが、まず第一に資金内容から申しますると、先ほど川村委員からのお尋ねもございましたように、一号資金と言われている部分、つまり国際規制に関連する資金の方はどちらかと申しますと資金がそれほど多く出ていかないという状況でございまして約四十七億、こういったような水準でございます。ところが、これに対しまして二号資金、つまり多獲性大衆魚の高度利用という面での資金の伸びは非常に大きゅうございまして、この資金面の需要が非常に強い状況になっておるわけでございます。  それから、なおただいまお話がございましたように、この貸し付けの計画に対しまして実際に貸し付けた実績というものが動向としてどうなっているかということでございますけれども、確かに当初の計画は五カ年間で約三百億程度の資金需要を見込んだということでございます。四年間の実績を見てみますと、年によって変動はありますけれどもほぼ計画どおりの融資がなされているということが言えると思います。しかし問題は、多分御指摘になりました五十五年度以降の計画に対して融資の実行が少なくなっているんじゃないかということだと思います。この点につきましては、実は本資金の導入時におきまして、このときは非常に厳しい状況が続いたものでございますから、五十三、五十四、この両年に計画を上回る融資が行われたわけでございまして、さようなことで最初に非常に飛ばしたと申しますか、非常に実績が上がったという状況があることが一つございます。  いま一つは、最近はサバ等の原料魚の価格が非常に高い状態が続いておりまして、資金繰りの面からなかなか業者の方々が施設を導入できないという方々がございまして、さような意味から若干最近における実績が前に比べますと下がっているという状況になっております。しかしながら、今後のことを考えてまいりますると、さらにこの多獲性大衆魚の利用あるいは国際規制の問題等も依然として問題が続いておるわけでございますから、この資金需要という面については私どもは決して弱くなるということはないであろうというふうに考えておる次第であります。
  133. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 最近の日本の国の総漁獲量、一千万トンを上回るわけでありますが、その中のイワシは三百三十三万トンですか。これは去年は非常に多かったんですが、まあ非常に多いということは結構なことですが、私も前にも長官にも申し上げましたが、やはり多獲性魚のもっと一般家庭の食ぜんに上るような対策、これも水産庁でいろいろやっておるようでありますが、最近の住宅事情とか食生活の変化とかいろんなことがございますから、そう簡単にはいかないのかもしれませんが、イワシがずっと漁獲が伸びておるということは、これはそれなりにイワシのたくさんとれる環境ができたということなんでしょうし、これから急激に落ちるということは予想し得ないことだろうと。それなりに食ぜんに上るような施策に対して、もっとPRを初めとしまして流通機構、こういう問題についても今日も御努力いただいておりますが、さらにひとつまた御努力いただきたいということと、やっぱりこれさっきの資金需要を見ましても、お話を聞きましても二号資金、まあちょっと少ないようでありますが、やっぱり加工技術開発それから製品の普及、こういうものが相伴いませんと当然需要というのはそう伸びるわけじゃありませんし、また最近欧米化しました食生活が、やはり日本食というものが見直されるというような方向にまた非常に変わりつつあるという、こういうことも考え合わせますと、加工技術開発や製品の普及宣伝というのは一体どこまで進んでいるのか。まあ一時期スケソウのすり身が非常に窮迫を告げるということになりますと、多獲性魚ということでぐんとそっちの方に引っ張られるわけですが、ちょっと需要が見通しつきますとまず次は手が抜かれる。しかし、このデータを見ますと、イワシがもう総漁獲量の三割近いこういう状況になりますと、やっぱり恒久的に加工技術開発や、 私どもはもっともっとこういうものが身近にあるような加工流通すべての面でこれは対策を考えていかなければならない大事な問題じゃないかということを痛感するわけであります。たくさんとれましたから食用にするパーセントは低いということでありますけれども、これからもそう急激に減るわけじゃない多獲性魚、特にイワシ等を中心としましての現在の加工技術開発の現状、そしてまた、今後の水産庁としての取り組みや資金需要等、そう大幅に急にふえるわけはないのかもしれませんが、今後これに対してどういうふうに政策を進めていこうとしていらっしゃるのか、その辺のことについてお尋ねしたいと思います。
  134. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) イワシの生産につきましては漁獲量は非常に伸びておりまして、昭和五十六年で三百三十四万トンの台に達したわけでございます。今後の漁況、海況等も想定をいたしますと、急速にこれが、漁獲量が低下するといったような状態はまずここ数年間はないのじゃないかというふうに考えられます。その意味では非常に安定した資源であるというふうに考えられるわけであります。そこで、これが高度の利用を図っていくということが非常に重要であるわけでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、食用向けは絶対数値としては伸びておりますものの、やはり漁獲量が非常に急速に伸びましたので、非食用向けの率が上がっているといったような状況でございます。そのような意味ではぜひこの有効利用をさらに促進していくということが必要な段階であるというふうに考えているわけでございます。そこで、まず私ども困っておりますところの多獲性の赤身の魚の高度利用技術研究開発の事業でございますが、これはかなり水産庁としましても力を入れまして、各都道府県あるいは大学、それからまた自分のところの研究所、さらにいろいろな団体あるいは会社等に委託をいたしまして研究を進めているわけでございますが、大きく申しまして四つございます。一つは基礎研究でございまして、イワシ、サバのたん白の特性を生かしまして、その鮮度と肉質を保持する方法はどういう方法があるだろうか。また血合いの肉などを利用する方法はどういう方法があるだろうかということで研究をいたしておりまして、基礎研究の成果といたしましては冷凍すり身化、冷凍フィッシュブロック化、マリンビーフの製造技術といったようなことで、かなりの開発を行い、その指導をしているところであります。  それから、第二の大きな項目は、冷凍すり身化でございます。いわゆるイワシ、サバの、原料といたしますところの冷凍すり身の量産技術というものを確立するということでございます。これはすでにかなり技術的には確立をいたしております。特に赤身が多く、油が多いこのイワシのすり身を、イワシを使いましてすり身をつくります際にはいろいろな機械を使いまして、この脂肪を取って、そしてすり身らしいイワシのすり身をつくっていくということが非常に重要でございます。これはすでに長崎県の水産加工業協同組合、それから八戸の水産加工業協同組合連合会の加工場において現実にイワシのすり身化が行われ、その生産が行われているところまできております。  それから、その次は冷凍フィッシュブロック化ということで、これは落とし身のブロック化、それかフィーレブロックの製造技術でございます。これもいろいろと問題がございますのは、イワシの場合にはどうしてもぱさぱさした肉質の性格を持っておりますので、これを粘着性を持ってうまくブロックをつくっていくにはどうしたらいいかという技術開発をいたしておりまして、これは一応完成の域に達しております。  それから第四点として研究をいたしておりますのが処理機械の開発でございます。これは高速自動フィーレマシーンあるいは熱水式の剥離装置の開発といったようなことでございまして、これもかなり細かく申し上げると非常に興味のある課題でございますが、機械的にフィーレをつくるということがかなりの程度で進んでおりまして、非常に高度な技術開発されているという状況でございます。  このような技術開発が現実のまた素材の生産あるいは加工品の生産に向かっていくということが非常に重要であるわけでございますが、大きく申して、これも三つの用途があると思います。  その一つは、新しい素材をつくるということでございます。これはすり身であるとか、先ほど申しましたフィッシュブロックあるいはマリンビーフのような畜肉様の組織化素材、こういったものをつくっていくということが一つでございます。  それから第二は、新しい素材を用いた加工品をつくっていくということでございまして、これはいわゆる練り製品、一般にはくろぼこという、かまぼこのかわりにくろぼこと言われておりますが、そういったもの、あるいは魚そうめん、魚めんといいますか、そういう魚のたん白質でつくりましためん類、あるいは冷凍食品、これはイワシのコロッケとかフライといったようなものが開発されておりますが、それからまたハンバーク、薫製といったようなものが新しい素材を用いた加工品ということで相当にこれはつくられておる状況になってきております。  それから、その他の加工品としましては、冷凍のレトルトフライあるいはサバのなまり節といったものがございまして、ぜひ一度試食をしていただきたいと思うわけでございますが、非常にいいものができております。県の状況を見ましても、宮城県でたとえばイワシのボールの缶詰、それから魚めんといったものがかなりの程度いいものができておりますし、それから茨城県ではイワシ、サバのレトルト加工した、特にカレー粉を入れた相当学校給食なんかにも使えるレトルトフライができております。それから千葉県のサーディンミート、それから埼玉県のイワシのそうめん、東京都のイワシ、サバの練り製品、あるいは長崎県のイワシ、サバの冷凍すり身、フィッシュブロックといったようなものはかなりの程度まで進んだものができているということでございまして、いま少しの努力によりまして、また普及によりまして、これが相当普及できるような状態までくるものというふうに考えておる次第であります。
  135. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 本当に、いま一端をお聞かせいただいたわけでありますが、何かよだれの出るような研究がずいぶん進んでおるようでありますが、しかし私ども、手にとるとかまた口にするとかという機会がないということを考えますと、それは基礎的なまたある段階でのことであって、まだ一般的な食卓に乗るようなところまでは行ってないのではないかと思います。それは今後のPRといいますか、製品化というか、そういう段階を経なければならないだろうと思います。とにかく、これだけ日本の総漁獲量の三割以上を占めるという大変な量が、しかも今後安定的にというようなお話もございましたが、ぜひひとつこれが食ぜんに上るような、そしてまた大衆的にこれが利用されるような製品と、またそのPRにひとつ努力していただきたいものだと思います。  先ほどちょっとお話がございましたが、漁業者と消費者を結ぶ加工業者というのは非常に大事な位置にあるわけですが、ほかの加工業と違って水産加工業というのは、通産省といいますか、そういうところとはまた所管が違うんでありましょうが、水産加工業を規定した法律というのはこの臨時措置法これだけですね。そういう点で、農水省としましては水産加工業をより振興するというたてまえの上から水産加工振興法ですか、臨時的な対策ということじゃなくて、やっぱりもっと水産加工業に対して振興策を規定する法律、業者の中には基本法のようなものもつくってもらいたいというようなお話がありますけれども、これはいままでどちらかというと、農水省とそれから通産省の谷間のような立場にあったわけでありますけれども、農水省としては、やっぱりこれは力を入れていかなければならない業種であるという位置づけを明確にして、何らかの法的な措置をとる必要があるのではないかと痛感いたしておるんですが、これはどうでしょう。
  136. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいま先生おっしゃい ますように、水産加工業というのは水産物の主要な需要先でもございますし、また、国民にたん白食料をニーズに合った形で供給し得る産業ということで私どもも非常に重要な産業であるというふうに考えておるわけでございます。  その場合に、この法体系ということを考えてみますると、このような施設資金を融通する法律、あるいはもう一つ非常に重要な柱となっておりますのは水産業の協同組合法でございます。これはやはり加工の業者につきましても適用になる法律でございまして、このような法体系というものを持ちまして水産加工振興に努めているわけでございますが、やはりこれからの政策というものを考えてまいりますると、原料供給の事情に即応した施設の改良、これが一つ非常に重要でございますし、また、拠点整備事業等を通じまして産地における加工処理体制の整備といったようなことも非常に重要になってまいります。さらに、水産加工経営の安定ということのための価格安定の措置、あるいは消費者のニーズに対応した加工食品開発普及といったような非常に多面にわたる対策というものが講ぜられまして、これを総合的に推進するということによりまして加工業というものは伸びていくんではないかというふうに考えるわけでございます。  なお、これを網羅した法律というものをどのようにしたらいいかということのお尋ねでございますけれども、やはり私どもとしましては、これらの個別の法律というものによりましてその政策の実態、制度内容というものを拡充していくということがまず先決であって、それに向かって予算制度というものを充実していくということにまず当面全力を挙げるべきじゃないかというふうに考えておりまして、目下のところ、基本法といったような考え方というのは持っていないところでございます。今後の各国の漁業規制の動向、あるいは近海における多獲性魚種等の生産状況、あるいは食糧に対する消費者ニーズの変化といったような趨勢を見ながら慎重に検討すべき課題であるというふうに考えておる次第であります。
  137. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いまも長官からお話ありましたように、非常に水産加工業としましては重要な国民食糧一端を担う立場にあるわけでありますが、法的には、いまお話ありましたように二、三の法律——法律の多い少ないということじゃ決してないですけれども、もっといろんな対応策を講ずべき大事な業種であるということでは間違いないだろうと思います。今後の国民食生活の大きな変化の中でどういうようにこれがまた変わってまいりますか、また国際情勢の変化の中でぜひひとつこれは頭の中に入れていただき、また今後の課題にして取り組んでいただきたいものだと思います。  何といいましても、この加工業というのは原料があって加工ができるわけですが、この原料の問題につきましては、五十二年以来二百海里、これで一つの大きな波をかぶりまして、いま鎮静化したとはいいながら、まだまだいろんな問題を抱えているわけであります。これは特に国内の問題ではなくて、相手のあることでありまして、それなりに今日大変な御努力をいただきながら、非常に先々心細い思いをしなければならないところ、また、今後非常に心を痛めながら見守らなきゃならないこと、国によりましていろんな状況があるようであります。日ソ、日米、この問題についても今後の推移については非常に危惧を抱くものであります。  それと、北海道の襟裳以西の海域については、ここは国内のスケソウがとれるわけですが、これは、去年の暮れからことしにかけまして韓国漁船がモミジコをとったあとのがらを投げ捨てるということで、相当量、韓国漁船のことについてはいままでも当委員会でもいろいろ取り上げてまいりましたし、去年の暮れからことしにかけましては、そういうことで、三陸なんかでも一部ではスケソウがいままでになくとれるようになったという地域もあったり、二百海里規制後それぞれの地域でいろいろな変化があったわけでありますが、この襟裳以西の海域の問題については漁業資源という上からいきましてもこれは非常に重大な問題で、これは一月に中曽根総理が韓国を訪問して新しい時代を画するというふうに報道されておりますが、その後いろいろな問題があったようであります。長官も今月の十日ですか、いらっしゃったようですが、実際これはいままでは暫定的な合意事項で進められているわけですけれども、やはり韓国の漁民、今日までもこの委員会でもずいぶん論議になりましたけれども、少しきちっとした形にできないのかということが問題でありましたが、率直にひとつ長官、現地に行かれまして交渉なさったわけでありますが、私どもは報道機関を通じてしか聞いておりませんので、その間のことについて、韓国の問題、そのことと、それから今後の日ソ関係、日米関係、こういう、相手のあることでありますが、日本の国のすり身の加工のもとになります原料を確保すべき、そして相手のある大事な問題でありますので、特に韓国のこと、そしてそれに伴いまして、また日ソ、日米、これらのことについてのひとつ最近の情勢、また今後の交渉の日本側としての態度、また経緯等ひとつあわせて御説明いただきたいと思います。
  138. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) まず韓国漁船の問題につきましてお答えを申し上げます。  先生御指摘のように、この北海道の周辺の水域におきましては、昭和五十五年の十月に前長官の今村長官の時代にいわゆる自主規制の約束ができまして、その後今日まで推移をしてまいったわけでございますが、昨年の暮れからことしの初めにかけまして期間禁止水域に韓国漁船が入るとか、あるいは禁止水域に入っているとかという違法な操業が起こりました。また定時に船の位置を通報してくることが決められておったわけでありますが、これを励行しないとか、あるいは漁具の通報を受信しないといったような事態が起こりました。北海道の漁民の方々を中心にいたしまして非常に強い御陳情もあり、非難の声が起こったわけでございます。また西日本の水域におきましても、これは日韓の漁業協定に基づきますところの合意書に書いてございます底びきの禁止ラインの中では韓国漁船が操業しないという約束になっておりますが、これも非常に頻繁に破られておりまして、この水域における漁業者の方々非常に御苦労なさるという状況になってまいったわけでございます。そこで、大臣の御命令によりまして私、三月の十日から十二日までソウルに参りました。先方の水産庁長でございますところの金庁長とお話し合いをいたしてまいった次第でございます。  このことにつきましては、まず北海道周辺水域の問題から御説明を申し上げますが、先方もこの水域につきまして、長い間いろいろな問題があり、五十五年からはようやくこの合意書が、合意ができまして安定的な関係ができたことは今後とも続けていきたいと、話し合いによって問題を解決していきたいということを申しておったわけでございますが、私どもといたしましては、このような水域におきまして違法な操業が行われると、約束の違反が行われるということにつきましては厳重に抗議をするということを申しますと同時に、特に北海道、それからまた西日本の水域の方々、沿岸漁業者の方々が非常に強い非難の声とともに二百海里の適用を韓国に対してしてほしいということを強く要望しておられたということは先方にはっきりと申してきたわけでございます。  そこで、私どもとしましてはこのような抗議と同時に、またこのような韓国漁船の操業をこのままにしておったら不測の事態が起こる、大変な事態が起こるということも先方に申しまして、これが是正を求めたわけでございますが、これに対しまして韓国の側といたしましては、操業秩序を守らせるということで一層これを徹底いたしますということから、一つは韓国の指導船、これは取り締まり船でございますが、この取り締まり船を早急に北海道周辺水域によこすということを約束をしてまいったわけでございます。実は本日電報が入りまして、この約束に基づきまして先方は三月二十一日からムグンファ九十一号、千三百四十ト ンの監視船でございますが、これを北海道の襟裳以西及び武蔵堆漁場に派遣をするということを言ってまいっておりまして、先方もこれを誠実に守っているという状況でございます。  それからまた、第二点として申しましたのは、違反船の船長等に対しまして再研修を行って協定を十分守らせるということを言ってまいってきたわけでございますが、これも本日電報がございまして、北海道沖の出漁船の船長及び一等航海士に対しまして毎航海出漁前に日韓合意事項の教育を実施するということを言ってまいってきております。このようなことで、取り締まりの徹底を図るということを先方が申してきた次第でございます。  なお、これに加えまして、先方が実務者協議を通じまして、どのようにしたら最も取り締まりを効果的に行えるかということを相互に協議しようということを申してまいっております。  それから、第二のお尋ねの今後の期限切れに対してどうするかという問題でございますが、私ども本年十月末に期限切れを迎えるこの北海道及び済州島周辺の水域に関します操業の自主規制、これにつきましてはまず資源問題を議論してほしい。特に武蔵堆の水域におきましては非常に資源が枯渇して、わが方のタラはえ縄漁業は係船の状態になっているということも先方によく申しまして、まず資源問題を加害者を入れて議論してほしい、それからまた操業上のトラブルを防止するためにはどうしたらいいかということを実務者間で会議をしてほしいと。それから今後どうしようかということを話し合おうではないかということにいたしてまいりました。実はその最初の実務者会議を四月の下旬を目途に開くということに約束して帰ってまいった次第でございます。  このほか北海道の沿岸漁民の方々が非常に強くおっしゃっておられました漁具被害の処理の推進につきましては、両国政府が民間団体を強力に指導するという約束をしてまいった次第でございます。  なお、西日本の水域につきましては、これも私どもその操業の非常に秩序が乱れている状態を指摘してきたわけでございますが、先方は監視船をできるだけ常時派遣するということで監視体制を強化するということと、監視船同士の通報措置でございますが、通信方法を実はこの半年かかって詰めてまいったわけでございますけれども、ようやくこれが私の参りましたときに合意に達しまして、四月の十五日からこの新しい通信方法によって監視船同士の話し合いをいたしました。それで効果的な取り締まりをするということで合意をいたしてまいった次第でございます。  このようなことで、かなり韓国側も、少なくとも行政庁は前向きにこの問題に取り組みたいという姿勢を示しておりますので、今後十分に先方と協議をいたしまして、できるだけ効果的な取り締まりの方法及び資源状況を安定的に確保できるような、そういった今後の取り組みをやっていかなきゃいかぬというふうに考えて、努力をいたしたいというふうに思っている次第であります。  なお、第三点のお尋ねの日米の関係、日ソの関係を簡単に御説明を申し上げますが、日米の漁業関係につきましては、米国はいわゆる自国の水産業発展させるということのためにフェーズアウトということを外国船についてはやりたいという動きが非常に活発になってきておりまして、私どもこれが対応策に非常に苦慮をいたしているところでございます。それからまた、これも当委員会で御説明申し上げましたが、フィッシュ・アンド・チップス・ポリシーという言い方を先方はしているわけでありますけれども、要するに漁獲量が欲しい場合にはチップを出しなさいということだろうと思うわけでありますが、対米協力ということでいろいろな面での協力をやることによって、それに応じて漁獲割り当てを行うという法律内容になっておりまして、そのようなことから非常にこの面ではむずかしい漁業交渉が展開を予想されるわけであります。また入漁料につきましても、まだ決まっておりませんけれども、相当の引き上げを先方が通報してまいっておりまして、こちらがこれに対応しているという状況でございます。  さらに加えまして、実はこのような非常にむずかしい状況の中で、私ども一月の漁獲割り当ては五十七万五千トンという量を確保したわけでございますけれども、問題は四月、それから七月の割り当てがどうなるかということが非常に気になっておりまして、特に気になりますのは、捕鯨問題がこれに絡んできておりまして、捕鯨問題でございます、捕鯨問題がこれに絡んできておりまして、先般クロンミラー大使及びバーン・ノア長官が日本に参って私が応対をいたしたわけでございますが、その際においてもやはり捕鯨問題を非常に強く取り上げておるわけでありまして、さようなことから特に米国の国内において四月の割り当てにこの捕鯨問題が影響してこないかどうかということが非常に気になっている点でございます。  また日ソの関係におきましても、先般日ソ、ソ日の漁業交渉を行った際におきまして、ソ連側は引き続き日本水域において規制の緩和を求めてきておりまして、これに応じなければソ連水域における対日の割り当て量を大幅に削減するということを言ってきております。先般参りましたカメンツェフ大臣が最初に取り上げました問題もこの問題でございました。またこの四月にサケ・マス交渉が行われますが、従来までの交渉の経緯あるいはカメンツェフ大臣が訪日した際に、サケ・マス漁船を含む日本漁船の違反を相当強く指摘してきたということからも、必ずしも交渉はたんたんとしたものではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。  このようなことで日米、日ソともに決して楽な交渉が予想されるわけではないわけでございますが、対米関係につきましては、わが国は二百海里水域内におきまして伝統的な漁獲実績を持っておるわけでありまして、百四十万トン近い漁獲量をいまでも確保してきておるわけであります。また、日米関係の一般関係というものも決してこれを、友好的な関係を崩してはいけないというふうに先方にも思ってもらわなきゃいかぬと思いますし、わが方も同様でございます。またわれわれは、フィッシュ・アンド・チップス・ポリシーの面におきましてはスケソウダラの洋上買い付けということも実施しておりますし、またアメリカの水産物の五〇%はわれわれが買っているという一大市場であるということも事実でございます。かような点をアメリカ側にも十分に評価をしてもらわなきゃならぬというふうに考えておるわけでございまして、このような関係を十分先方に説明いたしまして、特にわが国漁業に影響のない範囲内において可能な協力はやっていくんだという姿勢をとりながらこの漁場確保に努めていくということが必要だろうと思います。  それから対ソ関係でございますが、これは先月カメンツェフ漁業大臣が……
  139. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 時間が来ておりますので手短にお願いいたします。
  140. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 漁業大臣がおいでになりました。金子大臣との間で日ソの漁業関係について話し合いをしていただきました。両大臣間で日ソ漁業協力関係を安定的に持っていこうと大変有意義な交渉をしていただいた次第でございます。さような大臣間の非常に貴重なお話し合いの実績を生かしまして今後の日ソの関係を安定的に持っていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  141. 下田京子

    ○下田京子君 まず、お尋ねしたい点なんですけれども、今回の場合には単純な期限延長ということでやっぱりなされているわけですが、本格的な二百海里体制の移行とそれから水産加工品の原料がなかなか確保しにくい。さっきのお話ですとだんだん需要は回復ぎみになってきていると、供給の方も安定しているんだ、こういう話でございましたが、それでもなおかつ水産業界というのは約七割が従業員十人未満と、これは五十四年調査ですから最近またどういうふうになっているか若干の変化はあると思うんですが、個人経営だし、また資本金百万以下というのが六割ということで大 変小さなところが多いわけですね。さらにまた消費不況ということもあったりして、北海道、宮城県の両県だけでも加工業者がどのぐらい倒産したかということを聞いていただきましたところが、新聞報道等で公表された部分だけでも五十五年度に二十八件、五十六年は二十八件、五十七年途中で十九件と、こういう実態です。ひっそりと何か個人でお店を畳まれたところも多々あるんではないかというふうなことなんですけれども、こういう水産加工業界の言ってみれば実態ですね、どのように認識されているのか。
  142. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 水産加工業界は、従業員の規模九人以下のものが六九%、年間売上高一億円未満のものが七七%ということで、その規模がきわめて零細であるという認識は持っております。また、経営に占める原料魚購入費の割合が五〇%以上の経営体が実に七二%を占めるという状況でございまして、これは原料魚の価格の変化が経営にじかに及んでくるというそういう業態であるというふうに考えるわけでございます。かようなことから一般的に経営環境の変化への対応の弱い体質を持っている業界というふうに判断をいたしております。
  143. 下田京子

    ○下田京子君 としますと、本法の延長と、そしてまたその資金の活用をより効率的に実効あるものにさせていくということで先ほども他の委員からもいろいろ御指摘がございましたが、それとあわせて今度従来の水産加工経営安定資金の融通措置にかえまして新たに多獲性魚等の有効利用を含めて名前を変えて水産加工経営改善強化資金の融通措置というものを講ずることになったと思うのです。ところが、五十七年三月末まで実施されます経営安定資金の融資条件に比較いたしまして、融資の枠あるいは金利そしてまた償還期間などが大変後退しているというふうに見られるわけです。いま言ったような大変弱いそういう業界に対して新たに講ずる資金がこのような形で後退されたということはどのように御説明されるんでしょう。
  144. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいま水産加工経営安定資金と今回五十八年から実施をしようということでお願い申しております水産加工経営改善強化資金の間に後者が後退したんじゃないかということでございますけれども、実は利率あるいは期間の点について国際規制関連資金につきましては確かに若干の後退をいたしておりますけれども、もっと大きな面において大きな前進が図られているということをひとつお見逃しいただきたくないと思うわけであります。それは従来まではこの資金というのは国際規制の関連のために経営が維持できなくなったという資金を運転資金を見るということでございましたが、それに限られておったわけでございますけれども、五十八年からの強化資金は、多獲性魚等低利用の魚を新製品を開発する場合の運転資金、それから多獲性魚等の有効利用の促進を図るための資金、従来までなかった資金につきまして運転資金を新たに創設するということで、その面では大きな面的拡大をしたそういう資金であるというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。確かに先ほど申しましたように北洋漁業関連の部分につきましては金利等が四%から五%になったわけでございますけれども、これはやはり漁業経営安定資金が実は五%でございます。さような面とそれからまた非常に緊急避難的な国際規制の問題が起こったそういう時点とは若干情勢も変わってきておりますので、むしろ資金の効果的な活用ということからこの部分につきましては金利及び償還期間を若干強化したということはあるわけでございますが、他面におきまして先ほどのような広範な面的な拡大を行いまして運転資金を相当広範な業者に対して貸し出しができるような制度にしたというのが実態でございます。
  145. 下田京子

    ○下田京子君 ただ、額の枠の面で言いますと百五十億でしたね。それが百四十億になってそれを分けたということですよね。国際規制経営安定資金の方が九十億になっておりまして、それからまた多獲性魚の低利用の新製品開発資金とそれからまた有効利用の促進資金とあわせて五十億、こういうことになっているわけで、確かに効果的活用という点で新たなものを含めたということは理解できるわけなんですけれども、やはり金利や期間などが後退しているというのは事実でございますだけに、いまの業界の実態から見て大変業界の皆さん方からも、いやむしろ後退したんだというふうなお声もありました。しかし一方では、従来の経営安定資金ですと、これは各年度ごとに実施されておりまして、いつ切られるかということで不安がられておりました。今回は基金もつくるということで予算措置ではあるけれども、今回の法延長とあわせて毎年ある一定期間見ていこうというふうなお話になっているとも聞くんですが、その辺はどうなんでしょうか。
  146. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 実はこの経営安定資金の方は百五十億の枠がございましたけれども、実績は五十六年で六十七億しか出なかったわけであります。これは実はこのような国際規制の関連ということでございますから、対象県も一道三県に限られておりました。そこで、今回はこの枠を十分に生かして、しかもより広範な貸付先を認めようということで、実は多獲性魚の有効利用ということを図るための資金に面的に拡大をいたしたわけであります。  少なくとも現在この施設資金の面で多獲性魚の高度利用をする県は、貸し出しの対象が二十三県に及んでおりますから、非常に広範にこれは貸し出せるということになったと思うわけでございます。  それからなお、将来どうなるかということでございますけれども、これはただいまも御説明いたしましたように、今年度以降におきましてもこれは当然客観的な必要性が存在する限り存続するように引き続き努力していこうというふうに考えておりますが、何分にも予算というのは単年度の措置でございますので、明確なお約束をここでするというわけにはまいりませんけれども、この資金の性格が特別会計を都道府県につくって、それで貸し付けているという、貸し付けに対して利子補給をしていくということでございますので、さような点はわれわれが考えているということを申し上げればわれわれの気持ちは御理解していただけるというふうに思う次第でございます。
  147. 下田京子

    ○下田京子君 気持ちは理解いたしました。特別会計ですから、これは単年度主義で予算措置だからやむを得ぬが、そういう方向でやりたいということで、これはもう大蔵との予算折衝等々になってくるわけですが、ぜひやってほしいと思います。  ところで、この資金の融通に当たりまして認定条件をどうしていくかということだと思うのです。いま聞きますと実施要領の作成中だと。もちろん法が通ってからということになるわけでしょうけれども、お話の中にも借りられやすいように、有効な利用ということを何度かお話しになっております。  そこで、さっきお話しになりましたこの経安資金の方ですね、なぜ年々下がってきているかというと、これは下げるように仕組んできているわけですよね、実施要領を見れば。つまり五十七年度のあの経安資金の実施要領を見れば、三つの条件すべて満たさなければなりませんよと、こうなっているわけです。その三つの条件は何かと言えば、まず最初の五十二年のときの緊急的に二百八十億、それ借りた人じゃなきゃだめだと、こうなるわけですよね。これが一つでしょう、あれこれありますが。それから二つ目の問題は、五十六年、前年度にあって五十一年時点から比べてということでもって、その国際関連の原料魚は幾らかという数字まで限定しているわけですよ。そうなったら借りられないんです。あたりまえなんです、これは。そういうことですから、いつも私、北海道も、それから宮城だとかそのほか青森なんかも歩いていて、特に塩釜なんかから強く要望されていたのは、この国際規制関連経営安定資金のここの性格をどう読み取るかというところの、それでいろいろ議論があった、借りたくても借りられないんだと。しかも、この三つの条件に加えまして、新たに また県別によって、市町村別によってまたいろいろつけてくるわけですよ。それで、実際に借りようと思っても今度はお金を貸さないというふうな銀行との対応が出てくるわけですね。ですから、借りられなかったのは当然なんです。そういうことを考えて、今度この国際規制関連経営安定資金の九十億の枠の方も、それから多獲性魚の二点にわたる五十億の方も、実際につくって活用できないということがないように、借りられやすいそういう実施要領をつくられますように期待したいわけです。
  148. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 確かに実績が落ちてまいりました面につきましては、いろいろその運用の問題あろうかと思いますけれども、やはり基本的にはこのような二百海里の規制というものが非常にきつく来たときのその状態というものとは若干事情が違ってきたということはあったと思います。  そこで、今後の問題でございますけれども、改善強化資金、せっかく現在これをつくりましてこれを運用していきたいということで予算審議もお願いしているわけでございますから、これができました場合にはいろいろ要綱等を制定していくわけでございますけれども、現在御審議いただいております本法案に基づきますところの施設資金との関連も十分考えまして、それからまた、地域の指定あるいは対象魚種等の諸条件につきまして、各地域水産加工業の実態も十分に勘案いたしまして、また各地域水産加工業への振興に資するように、効率的かつ弾力的な融通が行われるよう措置する考えでございます。
  149. 下田京子

    ○下田京子君 効率よく弾力的運用ということで、大変抽象的でありますけれども、そういうお言葉の中身が具体化されますようにこれは対応してほしい。  あわせて、この加工関係の状況につきましては七年に一回しか経営調査をされてないということがいろいろお話を聞く中でわかってきたわけなんです。これはやっぱり問題だと思うんですね。そういうことでございますだけに、いろんな融資措置とあわせまして、単年度ごとにやっぱりこういう水産加工関係の経営の実態把握に努めていく必要があるんではないかと思うんです。
  150. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) いわゆる水産加工経営実態調査は御指摘のように七年に一回ということで、五十四年、これが最新時点で、最も加工業に対する影響も大きかった時点でございますので調査を実施したという状況でございます。このほかにも加工関係につきましては、農林水産省の「水産物流通統計年報」、あるいは「工業統計表」といった通産省関係の統計表もございまして、これによりまして実態把握に努めているわけでございますが、確かに詳細な統計ということになりますと必ずしも十分ではないと言わざるを得ないと思います。  したがいまして、このような大きな実態調査をやるということはなかなかこれはむずかしい面もございますけれども、またいろいろと工夫をいたしまして、できるだけ水産加工業経営がその時点その時点の経営の実態をとらえられるように工夫してみたいと思っております。
  151. 下田京子

    ○下田京子君 個別問題になるわけですけれども、塩釜の水産加工団地の問題、これは当委員会でも委員長を含めて訪れた際にいろいろと御要望が出ておりまして、水産庁も御承知のことと思うんです。  四十七年度以来百二十二の工場が移転して操業を行ってまいりましたけれども、五十二年の二百海里の影響をもろに受けまして、いろんなことで対応してきましたがなおかついま大変だということで、いろいろあるけれども、とにかくいま行われております、五十五年から始まりました流通施設整備ですね、拠点整備事業、こういうことも含めた対応をお願いしたい、こういうことですけれども、一言お答えいただきたいと思うんです。
  152. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) この塩釜水産加工団地につきましては、松島湾の水質保全ということを図るために、四十二年に塩釜市に散在する水産加工業者を一カ所へ集めるという措置をとりまして加工廃水を共同処理するというところから始まったわけでございますが、何分にも二百海里の規制が強化されたこと、それから加工業の経営が非常にむずかしくなったということのために維持費の負担金等が上がりましてなかなかこれの支払いにも大変だということで、実は私も去年ここに行ってまいりまして実情をよく伺ってまいりました。状況は私も知っているつもりでございます。  特に塩釜は北洋の海域を主漁場にする遠洋底びきの漁業基地でございますし、この基地というものをどうしても守っていかなきゃならぬということは水産庁も考えているわけでございまして、ただいまお話のございました水産加工経営改善強化資金水産物流通加工拠点総合整備事業等の適切な運用によりまして、まずとにかくお入りになっている加工業者の体質を強化していくということが一番重要であると思いますから、さような点を考えまして、塩釜水産加工団地が効率的に運営され団地内の加工業者の経営改善が行われるように配慮してまいりたいと思います。
  153. 下田京子

    ○下田京子君 最後に一言大臣にお聞きしたいわけですが、実は農林予算全体でも対前年比でマイナス二・五と落ち込んでいる。だけれども、特にいまお話になってまいりました水産加工関係の流通加工対策予算、これは落ち込みが著しいんですよ。いまお話になりました塩釜など含めまして、全国で非常に希望の強い水産物流通加工拠点総合整備事業、これ五十五年に出発して七年計画で総額六百六億でやったんですけれども、その五十五年度当初で三十五億四千九百万の予算がついて、後どんどん落ち込んじゃいまして、五十八年度予算ではその当時に比べて何と半分なんですよ。これじゃ当初の計画もうとてもじゃないけれども達成できないというふうなことになりまして重大だと思うんですが、そういう点についてどのようにお考えなのか、それからまた今後どう対応されるのかお聞かせください。
  154. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) よく事情を承りまして、ひとつ善処したいと思います。
  155. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  157. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  川村君から発言を求められておりますので、これを許します。川村君。
  158. 川村清一

    川村清一君 私は、ただいま可決されました原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   水産加工業は、我が国における重要な食料産業として、国民食生活の安定に大きく貢献してきた。しかし、その現状は、諸外国漁業規制の強化による加工原料魚の供給の不安定化、ね り製品を始めとする水産加工食品需要低迷等厳しい情勢下にあり、その克服が、緊急の課題となっている。   よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に遺憾なきを期すべきである。  一、水産加工業の脆弱な経営基盤の強化及び国民食生活の安定を図る見地から、本融資制度を含め、水産加工業振興に努めること。  二、本融資制度については、多獲性大衆魚の食用加工の実態等に即し、貸付対象地域の見直し等その適切な運用を図ること。    また、本資金と水産加工経営改善強化資金との関連性にも十分留意して、両資金の融資に必要な万全の措置を講ずること。  三、水産加工業経営の体質強化のため、共同化、協業化の推進、協同組合の経営基盤及び組織力の強化を図るとともに、積極的に水産加工業経営の実態把握に努めること。  四、我が国の地先沖合で漁獲される多獲性大衆魚の食用向け利用の増大を図るため、加工技術開発、製品の普及に努めること。  五、原材料を含む水産物輸入については、経営基盤の脆弱な沿岸、中小漁業者が犠牲となることのないよう対処すること。  右決議する。  以上でございます。
  159. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいま川村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  160. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、川村君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金子農林水産大臣
  161. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  162. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会