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政府委員(
角道謙一君) 自給率の問題につきまして御
説明申し上げます。
御
指摘のように、
日本の風土、立地条件等から見まして、米が土地
生産性におきましては一番高いということは御
指摘のとおりかと
考えております。ただ、国民の食生活が非常に変わってきておりまして、米についての消費動向も年々減ってきております。一時、戦前あたりは、たとえば年間一人百五十キロというものがあったわけでございますが、あるいは戦後におきましても百二十キロ台の食糧消費の時代がございましたが、最近では八十キロを割り、さらに私
ども、将来の
見通しといたしますと六十キロ台、六十数キロというような
見通しになってまいります。
この間、確かに人口増加等によります消費の増大も見込めますけれ
ども、米全体の消費として見ますと、やはり先行き縮小せざるを得ないというように私
ども見ておりまして、
農政審議会等にいろいろ御
検討いただきまして、
昭和六十五年度におきます
農産物の
需給見通しを立てておりますが、大体六十五年度におきまして米はおおむね一千万トン
程度というような規模に大体需要が落ちつくのではないかというように見ているわけでございます。
ところが、
現状におきましては、米の
生産力自体はやはり千三百八十万トン、千四百万トン近い
生産量がございます。これをこのまま
生産してまいりますと、やはり米の
需給上大きなインバランスを生じますし、過去におきましても私
ども過剰米の
処理に二度余り大きな財政負担をしながらやってきておるわけでございますし、第二回目の過剰につきましてはおおむね五十八年度で
処理を終わると思いますが、やはりこの米につきまして需要を
拡大していくということは必要かと
考えております。
そこで、物別の自給についてどうかという
お話でございますが、私
どもの自給率の非常に低いものは、小麦であるとか大豆であるとか、先ほど御
指摘ございました家畜のえさ用の穀物でございます。ただ、小麦につきましては、
日本産の小麦というのはグルテンの含有量、あるいはその性質から見ましてパン用にはなかなか適しないということがございまして、やはり古来から
日本人の食生活になじんでおりますめん用、
日本のめん用のものが一番いいんではないかということで、私
ども現在、将来の自給力の目標といたしましては、小麦につきましては
国内で需要される
日本めん用のもの、これは完全自給という方向で現在
考えておりまして、六十五年度に大体その一〇〇%
日本めん用の自給を達成するという方向に努力をしておるわけでございます。
また、大豆につきましては、
日本の場合にはまだ
生産力が非常に低うございまして、平均的に見ましても十アール当たり二百キロ水準まではなかなかいかないというようなこともございますし、また
日本の大豆の場合には豆腐というような特殊な用途に使われるものが適しておりますけれ
ども、西洋の大豆としては必ずしも適性があるかどうかという点にはまだまだ問題がございます。そういう
意味で、現在の
生産力水準等から見まして、私
ども大豆につきましては一挙に食用のものを自給することは非常に困難でございますし、また外国との値段の格差も非常に大きいということもございますので、六十五年度におきましては豆腐などの食用の大豆の大体六割
程度が自給の目標であるというふうに
考えております。
そのほか野菜、果実、牛乳、乳製品等につきましては、おおむね
国内で自給できるように、ただ一部やはり嗜好の違いもございますので、完全自給というふうにはなかなかまいらないかもしれませんが、おおむね九割とかあるいは野菜につきましては一〇〇%、そういうような方向で私
ども考えております。
将来、
牛肉等につきましては、まだ
国内の
生産力もそれほど伸びませんので、六十五年度におきましてもせいぜい七一、二%という
程度の目標になろうかと思います。あと、豚肉、鶏肉、鶏卵等につきましては、現在の
生産力水準等から見ましても、六十五年度におきましておおむね完全自給ができるというように品目別に
考えております。
総じて申し上げまして、米以外の土地
利用型の作物、特に穀物でございますが、これにつきましては御
指摘のように自給率も非常に低うございますので、今後ともその面につきましては十分な努力をしていきたいと
考えております。
そこで、もう
一つの問題といたしまして、水田についてこれだけの大きな
生産力があるわけであるから、これを生かしたらどうかと。特に、家畜用のえさとして穀物を外国からほとんど全量を輸入している
現状から見て、米もえさ用に転換をしたらどうかというような議論もここ数年来ございまして、部内におきましても私
ども、このえさ用の米と、あるいはこのほか原材料用の米であるとかアルコールとか、そういう他用途に米を使えないかどうかということにつきましてもいろいろ
検討を進めております。
ただ、一番の難点は、現在米につきまして食管制度がございますし、これによりましてまた
政府が買い入れをしておりますが、大体トン当たり三十万円ぐらいで
政府が買い入れをしております。反面、
一つの例といたしましてえさでございますが、米に見合う現在入れておりますトウモロコシ、マイロというのはトン当たり四万円弱、また仮にアルコールに転化する場合の原料価格としましても大体四万円前後と。せいぜい原材料に使いますせんべいその他工業用のものでございますが、これでせいぜい十二、三万というように、現在の
政府買い入れ価格と非常に差があり過ぎる点がございます。そこで、それを全部国が買い上げて、そういう方向に転換することも現在の財政事情、あるいは物の品質等からいたしましていいかどうかということは問題がございます。
米というのは、小麦等に比べましても国際的に見て非常に高い商品でございます。そういうこともございまして、私
どもえさ用の問題につきましては現在転作をいろいろ進めております。明年から第三期に入ります。転作につきましてはいろいろ御議論もございますし、また転作の定着というものにつきましても、いろいろ農家の方々、特に湿田地帯の方々については転作の定着化等について問題もあるということも
承知しておりますので、第三期の段階におきまして米をどのように他用途に使えるかどうか。将来、私
どもやはり七十六万ヘクタール
程度まで
昭和六十五年度には転作を伸ばさなきゃいかぬというように
考えておりますが、五十八年度におきましてはこれを六十万ヘクタールに縮小いたしております。これを第三期、明年度以降どうするかという際に、あわせましてこのえさ用を含めた他用途米についてどうするか、それから
備蓄の
問題等もあわせて
考えたいということでございます。
なお、えさ用の米につきましてはもう一点問題がございまして、やはり収量が大体現在は十アール当たりで五百キロ水準でございます。これはやはり収量として相当
程度伸びる。これが仮に一トンとか二トンのようにたくさんとれるようなことになればいいわけでございますが、現在の研究段階におきましては、十数年先におきましても全国平均でも恐らく七百五十キロ水準、このようになるまでが
一つの研究のテンポではないかというように
考えておりますし、またそういう
品種をいろいろ
検討もいたしておりますが、外国のいまイタリー産のアルボリオとか、あるいは密陽という
品種もございますから、これにつきましても、
日本におきましては脱粒をしやすいとか、あるいは耐冷性、耐病性というものにおきましていろいろ
技術的な問題もございます。
そういうことと先ほど申し上げました食糧管理法によります米の管理の問題、こういう問題もございまして、まだ結論は得ておりませんけれ
ども、私
どもは第三期
対策の確定の段階までに何らかの方向を見出したいというふうに
考えております。