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政府委員(福田勝一君) 昨年十一月発覚いたしました大阪府
警察における遊技機賭博の
取り締まりをめぐる
不祥事案につきましては、現職
警察官が業者に
取り締まり情報を漏らし賄賂を収受するという、およそ法の執行者としてあるまじき事案で、まことに遺憾であり、申しわけなく思っておる次第であります。大阪府
警察は今回の事案で
警察関係者九名と賭博遊技関係業者十五名を刑事
事件として検挙、送致し、
国家公安委員会、
警察庁及び大阪府
警察本部は去る一月二十日監督責任を含め関係
警察職員百二十名を処分いたしました。
お手元にお届けいたしております資料の別添資料をごらん賜りたいのでございますが、まずこの資料に基づきまして
不祥事案の
概要について御
説明を申し上げたいと思います。左側から御
説明をいたします。
元曽根崎
警察署巡査長清田高弘、三十八歳は、七業者から借用金二百五十万円を含めまして総額千三百五十五万円を収受しておるということでございます。
次、野仲篁でございますが、これは昨年三月三十一日にすでに退職いたしておりますが、この者は一業者から総額二百四十万円を収受いたしております。
次、元高石署警ら課の警部補井之上嘉章は一業者から総額三百四十二万円を収受いたしております。
それから元南署刑事課巡査長柏本恵庸、三十三歳でございますが、これは一業者から二十万円を収受しておる。
それから元西成
警察署巡査部長斉藤瀏、三十八歳、これは五業者から総額九十万円を収受しておるということでございます。
それから同じく元西成
警察署の巡査部長橋詰勝、三十九歳は、指名手配中の業者から二十万円を収受しておるということでございます。
次の元布施署の巡査部長古市忠光、三十五歳は、
事件に着手いたしました翌日の五十七年十一月二日に自殺をいたしておりますが、これは二業者から五百二十万円を収受しておるということでございます。
さらにあと二名、それぞれ一月二十日諭旨免職にいたしております亀村庫三警視、四十八歳は、賭博遊技機販売業者から中古自動車を、これは十五万円相当でございますが、
昭和五十六年一月から五十七年十月までの間借用したということでございます。
それから松原
警察署の警部坂本龍三郎、五十歳でございますが、これは賭博遊技機業者から飲食代名下に五万円を収受したということでございます。
以上、
警察関係者九名が収受した
金額は借用金等を含めまして二千六百七万円に達した次第でございます。
次に、懲戒処分の
状況でございますが、その次の別添資料の二に一覧表をつけさせていただいておりますが、
警察庁といたしましては本件捜査に着手して以来大阪府
警察と緊密な連絡をとり、事案の真相把握に努めてまいり、本年一月十三日には大阪府
警察に対する長官特命による監察を行い、事案の
概要、背景、問題点等について現地で詳細に
調査をいたした次第でございます。その結果を踏まえ、
地方警務官については
国家公安委員会が、大阪府
警察職員につきましては大阪府
警察本部長が
事件捜査及び監察
調査により規律違反が判明した
警察関係者並びにこれを監督すべき立場にあった者に対する監督責任を追及いたしまして、去る一月二十日、この資料にございますように百二十名の処分をいたしておるわけでございます。すでに先ほど
説明申し上げました懲戒免職等した者を含めますと、処分者の総数は百二十四名ということになるわけでございます。
次に、その次の表が別添三でございますが、
地方警務官関係の処分一覧表でございますが、
地方誓務官の関係につきましては、谷口大阪府警本部長に対する戒告を初め減給六名、
国家公安委員会厳重訓戒一名、本部長訓戒二名、
警察庁長官注意一名、計十一名の処分を行ったものでございます。
大阪府
警察職員につきましては、大阪府
警察本部長が規律違反が明らかとなった職員四十名に対し諭旨免職五名を含む厳しい処分を行いますとともに、かかる
不祥事案を引き起こした関係
警察職員を
指導監督すべき立場にありました各級幹部六十九名の監督責任を同時に追及し処分したわけでございます。
次に、別添資料の四をごらん賜りたいのでございますが、規律違反者のうち今回諭旨免職といたしました者についきましては、先ほど申し上げました亀村庫三、坂本龍三郎のほかに羽曳野
警察署の副署長、警視川島大典、五十四歳でございますが、栄転祝い、タクシー代として十万円を受領したこと、それから都島
警察署警部補東久、三十四歳は、賭博遊技機業者からゴルフ及び酒食のもてなしを受けたということでございます。また、茨木
警察署の巡査長清藤時夫、三十六歳は、パチンコ店経営者であるとか賭博遊技機業者から十数回にわたって酒食のもてなしを受けたほか、タクシー代として現金一、二万円を三、四回受け取っておるということによりまして、それぞれ諭旨免職処分としたものでございます。
これらは
犯罪として立件するには至りませんでしたが、業者との限度を超えた交際であり、規律違反の内容から
警察に引き続き勤務させることが適当でないと判断いたしまして、懲戒免職処分に次いで厳しい諭旨免職処分とした次第でございます。
また、減給以下の処分を受けた者は、さきに
説明いたしました
不祥事案を引き起こした
警察関係者とともに業者と飲食するなどの規律違反事実が判明したので、その責任の度合いに応じてそれぞれ処分したものでございます。
次に、
不祥事案の原因、動機及び背景につきまして御
説明申し上げます。
犯行の原因、動機でございますが、まず第一に、収賄いたしました
警察関係者らに関しましては、その
中心的
役割りを果たしました野仲篁でございますが、これは昨年三月退職いたしておりますが、彼は大阪府下八尾
警察署保安係在勤時の
昭和五十三年ごろから管内の対象業者から酒食のもてなしを受けまして、韓国クラブを経営する韓国人女性と情交関係を持つなど遊興がかさみ、
不祥事案に手を染め、かつて八尾
警察署に勤務しておりました者など、しかも株の取引で大きな損失を出したりあるいは女性関係が乱れている者など私生活上問題があった
警察関係者を次々と業者に紹介し、黒い交際に引きずり込んでいったということでございます。
背景といたしましては、大阪府警におきましては従来から遊技機賭博事案の
取り締まりを重点項目に取り上げてまいったのでございますが、ここ二年の間に急速に賭博遊技機が府下一円の喫茶店に置かれるようになったのでございます。これに対しまして、この種事案に的確に対応するための
体制づくりが必ずしも十分とられなかったということもございまして、一部業者のみしか検挙できず、検挙を免れようとした一部悪徳業者の跳梁を許すということになったものでございます。
本案をめぐる問題点といたしまして考えられますことは、まず第一に、警視クラスの幹部職員を含めまして業者と不明朗な交際をするなど、一部ながら規律の緩みないしは職業倫理感覚の欠如があったと指摘されてもやむを得ない面もございます。また
不祥事案を長期にわたって把握することができなかったことは、平素における幹部の
指導監督や職員の身上把握が不
徹底であったということでございます。
次に、昨年十一月一日、巡査長清田高弘を逮捕する以前の段階におきましても、清田を初め野仲篁、柏本恵庸ら今回の
不祥事案に関連した
警察関係者についての風評あるいは上申書等事前に事案解明の端緒ともなるべき情報や徴候がありましたにもかかわらず、所轄
警察署及び府警本部監察室
等において事案の解明に努めたのではございますけれども、結果的に今回明らかになりました事実関係を把握するに至らなかったということでございまして、事案の真相解明がおくれるというようなこともあったわけでございます。
今後の
対策といたしまして、今回の事案は日夜黙々と
治安維持等平穏な
国民生活の
確保に当たっている第一線
警察官を裏切るものでございますし、それら
警察官の心情を思うと大変残念であり、また常日ごろ
信頼をお寄せいただいている
国民の皆様にも大変申しわけないものでございます。
警察庁といたしましては、本来廉潔であるべき
警察官がみずからの欲望を満たすために法を破り、悪に加担し、かかる事態を招いたことを真摯に反省いたしますとともに、今後このような事案の絶無を期するため、昨年十一日八日の全国本部長会議、十一月十九日の全国防犯保安担当部長会議において、人事管理の
改善、教養の
充実に努め、規律の振粛について厳しく指示いたしておるわけでございます。
また、士気高揚
推進委員会という私どもの監察に関連いたします委員会がございますが、これを二回開催いたし、さらに管区
警察局の監察官会議を開催いたしまして、任用、配置、身上監督、個別
指導、再就職等人事管理の
改善、監察機能の
強化、
警察学校及び職場における教養の
充実等について検討
推進を図るとともに、先ほど申し述べましたように、一月十三日には大阪府
警察に対する長官特命による特別監察を実施いたしまして、その結果を踏まえて、一月二十四日付で各都道府県
警察に対しまして人事管理の
徹底、監察機能の
強化、教養の
徹底、さらに防犯保安部門の体質
強化を骨子とする「
警察職員の規律の振粛について」と題する次長通達を発出するとともに、同日の管区
警察局長会議で詳しく具体的に指示をさしていただき、
対策の
推進を図っているところでございます。
この通達を受けまして、各都道府県
警察等はそれぞれの
実情に応じまして具体的な諸
対策の
推進を図っておりますが、
警察庁におきましては今後とも必要に応じさらに具体的な
指導を行い、
不祥事案の再発防止に万全を期してまいる
所存でございます。
一方、大阪府
警察におきましても、今回の
不祥事案を契機に、昨年十一月二十五日、本部長を長とする特別
対策委員会を設置いたしまして、各級幹部の姿勢の
確立等信賞必罰の
徹底、防犯
警察の
強化、監察
体制の
充実、身上把握の
徹底、人事の刷新、教養の
推進などの諸
対策を
推進するとともに、大阪府
警察全職員が襟を正し決意を新たにしてそれぞれの職務にひたむきに取り組むことにより府民の
期待にこたえるべく努めている次第でございます。
本事案の
調査の過程におきまして、退職した幹部
警察官についての疑惑や、あるいは南
警察署長のいわゆる千社札問題等が取りざたされてまいったのでございますが、その処置について簡単に御
説明申し上げたいと思います。
退職した幹部
警察官等にも疑惑があるやに取りざたされたことから、その真相解明を図るべく
所要の
調査を行い、関係者より事情聴取等も行ったのでございますが、
犯罪として立件するには至らず、また退職後でございまして、結果的に内部職員に対する処分であるところの懲戒処分等は行うことができないという一面もあったわけでございます。
なお、こういった退職幹部あるいは現職のその他の幹部等につきまして、先ほど来
説明しております清田高弘等が、率直に言いまして、事実無根のようなことをずいぶんマスコミ関係あるいはその他に流しておったということもございます。これらはほとんどが事実無根の問題を清田高弘があれこれ宣伝をしておったというような向きもあるわけでございます。
次に、前国会でも御指摘がございました加地南
警察署長の千社札問題についてでございますが、同人は昨年六月ごろ、すでに御承知のことと存ずるのでございますが、「南町奉行加地」と印刷いたしました幅一・五センチ、長さ五センチ大のいわゆる千社札用のシールを作成いたしまして、酒席の座興として使用したものでございます。「信用失墜行為の禁止」に当たる不謹慎な行動と認められるわけでございまして、今回の
不祥事案に関連した部下職員に対する監督責任にこの点の規律違反を加味いたしまして、国家
公務員としては最も厳しい一カ月百分の二十の減給処分にいたした次第でございます。
今回の事案を単に大阪府警の問題とすることなく、全国
警察の問題として厳しく受けとめまして謙虚に反省し、襟を正すとともに、日常の
警察活動をさらに積極的に
推進することにより
国民の
信頼を一日も早く回復するよう全力を尽くしてまいる
所存でございますので、よろしくお願いする次第でございます。
以上。
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