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柄谷道一君 私は、民社党・
国民連合を代表して、ただいま
議題となっております
昭和五十八年度の
財政運営に必要な
財源の
確保を図るための
特別措置に関する
法律案に対し、反対の討論を行います。
わが国の
経済は、
昭和五十六年度以降不況が深刻化し、実質
経済成長率は三%台の低迷を続けております。これは世界不況の余波による側面もあるとはいえ、
政府が所得減税の実施や公共投資の拡大などの積極的
経済、財政対策を怠ったばかりでなく、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことなど、
政策の対応を誤ったことに起因しており、私がしばしば指摘してきたように明らかに
政策不況と言わなければなりません。
この
政策不況は、
政府が五十九年度赤字国債脱却の方針に固執する余り、財政が本来持つべき景気調整機能を全く無視した
財政運営をとり続けてきた結果と言うべきであり、かかる事態をもたらした
政府の責任はきわめて重大であります。不況の際に
財源がないからといって増税を行い、公共投資の抑制を続けていては、不況は一層強まり、結果的には税収が減って、かえって赤字国債は拡大するのであります。与野党が合意した景気回復に役立つ相当規模の大幅減税を速やかに実施するとともに、公共投資などの
政府支出を補正し、これを名目
経済成長率以上に伸ばす
財政運営を講ずることが、
わが国経済の発展と財政再建に寄与し、国際
経済摩擦緩和のために必要であることを深く認識し、
政府がいまからでも積極的な
経済、
財政運営への転換を図るよう強く求めるものであります。
政府はこれまであらゆる場において「財政再建」という用語を用いてまいりました。竹下大蔵大臣も昨年十二月の財政演説の中で、いまや財政再建についての
国民の世論は盛り上がっている、今日ほど財政再建が幅広い
国民の支持を得ていることはかつてなく、心強い限りである、と述べられているのであります。また、
政府が最大限に尊重することを明言している臨調答申においても、一貫して「財政再建」の用語を用いております。
しかるに、大蔵大臣は今
国会における審議の中で、
国民に対する何らの説明もないまま、「財政再建」という言葉を避け、「財政改革」という用語に意識的にすりかえようとしていることは、全く
理解に苦しむところであります。
政府は、これまでの経緯や臨調答申を踏まえ、用語を「財政再建」に統一し、今後とも財政再建を貫き通すべきであり、言葉をかえて責任を回避したり、
国民の目をそらすようなこそくな手段はとうてい許されるものでないことを強く警告するものであります。
政府は、臨調の最終答申が指摘しているように、五十八年度において徹底的な歳出構造の見直しや不公正税制の是正に着手しないままに、国債費の定率繰り入れ等の停止や自賠責特別会計からの
一般会計への繰り入れなどの財政
技術的操作によって表面的な帳じり合わせをしようとしております。このような一時的ないわば緊急避難的な措置は問題の先送りにすぎず、財政体質改善の見地からは何の
意味もないばかりか、むしろ財政の実態を
国民の目から覆い隠すという
意味できわめて問題であり、とうてい容認できません。
わが党は、
政府が制度の根本的改革につながらない、いわば実質的赤字国債とも言うべき緊急避難的措置を今後一切行わず、既往の措置は速やかに解消することを強く求めます。また、
政府がいまだ明らかにしていない赤字国債脱却目標年度の設定と財政再建計画並びに中長期にわたる
経済計画を早急に決定し、もって企業や家計の先行きについての不透明感を払拭することにより、
わが国経済の発展と
国民生活の安定を図るよう要求するものであります。
最後に、緊急避難的な措置の
一つである自賠貴特別会計からの
一般会計への繰り入れについて申し述べます。そもそも自賠責保険は、交通事故の被害者救済のために創設され、その運用益は将来の収支改善、交通事故防止対策等に活用すべきものであり、またこの保険の単年度収支が五十三年度以降毎年赤字を続けている現状に照らしても、
政府が法の
目的や実情を無視し、四千万人を超える自動車ユーザーの反対を押し切って、運用益の半分を取り崩して十年間無利子で貸し付けを行うという措置を強行することはきわめて遺憾であり、
政府に対し猛省を促すものであります。
なお、以上申し述べた観点から、本法案第四条第二項による
一般会計からの自賠責特別会計への繰り戻しについては、大蔵、運輸両大臣間の覚書にかかわらず、速やかな償還の実施と完了を図るとともに、繰り戻し完了前における安易な保険料の引き上げは決して行わないよう
政府に強く求め、私の討論を終わります。