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1983-05-12 第98回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十一日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     成相 善十君  五月十二日     辞任         補欠選任      衛藤征士郎君     竹内  潔君      穐山  篤君     福間 知之君      丸谷 金保君     片山 甚市君      竹田 四郎君     吉田 正雄君      多田 省吾君     太田 淳夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                 上田  稔君                 衛藤征士郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 竹内  潔君                 塚田十一郎君                 成相 善十君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 片山 甚市君                 鈴木 和美君                 竹田 四郎君                 福間 知之君                 吉田 正雄君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        社会保障制度審        議会事務局長   新津 博典君        経済企画庁総合        計画局審議官   及川 昭伍君        科学技術庁長官        官房審議官    内田 勇夫君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        高倉  建君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       塚越 則男君        大蔵大臣官房審        議官       岡崎  洋君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   宍倉 宗夫君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  松尾 直良君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   古賀 章介君        厚生大臣官房会        計課長      坂本 龍彦君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   朝本 信明君        通商産業大臣官        房会計課長    鎌田 吉郎君        資源エネルギー        庁次長      川崎  弘君        資源エネルギー        庁公益事業部長  小川 邦夫君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        環境庁大気保全        局大気規制課長  加藤 三郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○電源開発促進税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十一日、藤田正明君が委員辞任され、その補欠として成相善十君が選任されました。     ─────────────
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 鈴木和美

    鈴木和美君 わざわざ総理大臣にお越しいただきまして、今回のASEAN訪問大変御苦労さまでございました。  早速でございますが、ASEAN訪問に関する基本的な質問は、別途わが党としても別な場で御質問することになっておりますけれども、財源確保法と若干の関連を有しておりますので、二、三点の問題について総理見解を聞いておきたいと思うんです。  まず、今回の訪問目的とその成果について総理みずからどのように評価されているのか、簡単で結構でございますが、御感想をお伺いしたいと思います。
  5. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回は国会開会中の重要なときにもかかわりませず、国会の御了承をいただきましてASEAN各国訪問することができましたことを厚くお礼申し上げる次第でございます。  精いっぱい一生懸命やってきたつもりでございますが、国民の御期待に対しましてなすところ少なく、じくじたるものを感じておる次第でございます。  私が参りました諸般の目的の中で一番大事に思いましたのは、ASEAN各国首脳部皆さんと直接お話をいたしまして、お互いに胸襟を開いた話し合いをいたしまして、まず相互の人間的信頼関係友情関係を結ぼう、それをまず第一に念願いたしまして、この目的はある程度達せられたのではないかと思っております。  それから国際関係の諸問題につきまして先方の御意見を取りました。特にベトナム問題に関するASEAN並びに各国の御意見を拝聴してまいった次第です。  それから南北問題、特に日本サミットに出席するに際しまして、いろいろ御助言、御忠告をいただきました。  さらに、二国問の問題につきまして、経済協力あるいは人材交流、あるいは中小企業やいわゆるプラントリノベーションという政策、あるいは無償経済協力等々について、ある程度具体的な話し合いをいたしてまいりました。  また、ASEAN全体といたしましても、科学技術交流をやろうということで、科学技術閣僚会議を年一回行うということで各国の御了承をいただきまして、これをどこでやるか、いつやるか、何を議題とするか等は、今後外交当局を通じて協議する、そういうことであります。  大体以上が会談の内容であると申し上げることができると思います。
  6. 鈴木和美

    鈴木和美君 訪問目的一つには、特に中曽根内閣が登場をいたしまして、これを契機に、東南アジア各国で高まってきたわが国軍事大国化懸念を解消させるというような目的もあったと思うんでございますが、その目的は十分達成されたと総理自身考えでしょうか。
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、私から会談の終わりごろに発言をいたしまして、わが国の従来の防衛政策を踏襲して行う、すなわち憲法のもとに非核三原則を守り、専守防衛を貫いて軍事大国にはならない。特に申し上げました中で、経済的に強くなったからといって軍事大国になるということはやりません。そういうことも申し上げ、いわゆる長距離爆撃機とかあるいは航空母艦とか、そのような攻撃的兵器は持つ意思もありませんし、もし侵略があった場合に、いわゆるシーレーンということも検討しておりますが、これもASEANには届かない、そういう範囲内の研究アメリカといたし、これからいたそうとしておるところであります等々のことを申し上げまして、完全に各国とも正式に御理解をいただきました。  以上でございます。
  8. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は総理訪問中のテレビ新聞などを拝見さしていただきました。いま総理は、日本軍事大国の問題について各首脳からそれぞれ御理解をいただいたというような御見解のようでございますが、新聞の大方の報道によりますと、たとえば私は興味を持って見ておったんですが、シンガポールのト・ナムセン氏などの見識者が代表的にこういうことを述べておるんですが、これについて総理はどう考えるかお聞きしたいと思うんです。  つまり、日本中曽根総理が、軍事大国にはならない、平和憲法を守る、そういうことを言うても、中曽根総理ASEAN訪問する直前に靖国神社を正式に参拝した、また自民党には改憲論者が非常に多いというような現実を踏まえたときに、総理のおっしゃっていることが多少矛盾した言動と言わざるを得ないのじゃないか、むしろ中曽根総理国内軍事強化論者改憲者グループを抑え込み、戦争の歴史を徹底的に反省するなら、われわれは今回の発言を信用しよう。  こういうような代表的な発言をされておるのでございますが、私が見る限りにおいては、総理発言平和憲法を守るという前提に立って、そこから軍事大国への道を歩まないというような御見解を示されたものだというように理解をしているんでございますが、その辺の見解についてお聞かせをいただきたいと思うんです。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 靖国神社例大祭に際しまして戦没者英霊――私の弟も合祀されておりますが、この戦没者英霊に対して、これを慰め、かつこれに対して感謝を申し上げる、そういう意味の参拝をしたのでございまして、別に他意があるわけではございません。  なお、シンガポール記者云々の御発言でございますけれども、私も過般の戦争に参加いたしまして、そのことを現地でも当時すでに痛感していたことでありますし、今回回りまして、なおまた痛感したことでございますけれども、日本が当時、いろいろ理由があったにせよ、平和に暮らしている第三国に対して侵入をして、そして非常に御迷惑をおかけし、痛手を与えた、何ら関係のない第三国皆さんにそういう御迷惑をおかけしたということは、これは深刻に重大にわれわれは反省しなければならぬ過ちであった、こう私は反省をした次第でございます。前からそれは私も戦争中から実感したことなのであります。何のかかわりもない平和に暮らしておる第三国の住民が、ほかの国の関係でこういうような影響を受けるということは、これは日本として本当に反省しなければならぬことなのであります。  また、外国と事を構えるということにいたしましても、平和憲法という反省の大きな事実がここに厳然としてありまして、日本の平和を維持しようという考えは、憲法もさることながら、国民感情においてこれは強く根を張っていることなのでございまして、そういう平和を維持するという点については、われわれはしかと心にとめておかなければならない。  ただ、自国防衛してそして平和を維持する、自国防衛、平和を維持するということについては、これは人々によっていろいろお考えが違うでありましょうが、自民党は、あくまで戦争を回避して日本戦場にしないために、ある程度抑止力を必要としている、そういう考えに立ちまして、自己の力の足らざるところは日米安全保障条約によってこれを補って自国防衛を全うする、そういう節度のある考えに立って行っておるのでありまして、この点は各国も十分理解していただいたところなのであります。
  10. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はいま防衛論争を直ちにここでやろうという気はございませんけれども、総理レーガン大統領と会われてお帰りになるときのいろんな問題、不沈空母問題や運命共同体や、アメリカとの関係においては、お帰りになるときに大変肩を怒らせて帰ってきたような感じがしないでもなかったのでありますが、今回ASEANをお回りになっているときには、全くそれとは対照的な、どちらが本当の中曽根総理かと日本国民がちょっと首をかしげるみたいな、やわらかいソフトな態度で回られたということを考えてみると、本当は国民がいま困惑しているというのが現状じゃないかと思うんです。  なぜかと申し上げますと、他方五十八年度予算ごらんになっても、日米安保条約を主体にしながら、相変らず軍事費だけはいわゆる聖域化しているような伸びを示しているというような状況の中では、専守防衛という言葉を使いながらも、周りから見たときには、日本戦争を否定し平和を守ったり軍事大国にはならないという発言と、現実日本国内で行われている政策の選択について大変疑問を持っているんじゃないかと思うんですが、そのことについての御見解を聞かしていただきたいと思うんです。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が実行しております政策は、これはアメリカでも申し上げましたが、鈴木内閣防衛政策を踏襲する、鈴木レーガン共同コミュニケを守る、日本国際約束あるいは共同声明というものを守るということを言明いたしまして、鈴木レーガン会談におきましては、防衛計画の大綱にできるだけ早く接近するように努力すると、そういうことを約束しておるのであり、それはまた日本がみずから存在をし、防衛を全うするために、日本のためにも必要なことなのでありまして、それを実行しているということなのであります。このことはアメリカでも申しましたし、日本へ帰ってきても申しておることでございまして、終始一貫していることでありまして、基本的には平和を守り、日本戦場にしないようにするために、アメリカと提携して節度のある抑止力を持ってそういう不測の事態を避けるというのが基本的にあるのでございまして、これは一貫した態度であると、ここで重ねて申し上げる次第なので「新聞テレビでいろいろ報道されましたが、あれは私の意に反して先走った報道が非常に多かったと迷惑しておる次第であります。
  12. 鈴木和美

    鈴木和美君 どうぞ日本国民が疑問を持たないような中曽根総理人物像というもの――いろんな角度から国民は見ているわけであります。総理大臣になってから政治日程憲法改正などというのはのせないというお話でございますが、私どもが見ている限りにおいては、自民党内の周りの環境が改憲大変拍車をかけているというようなこともありますので、どうぞその点は総理の卓越した政治力を発揮して、平和憲法を守りながら平和を持続するということに努力を重ねていただきたいと思うんです。  さて、その次の問題は、クアラルンプールで総理お話しなさった中で、二十一世紀を展望して、産業技術の移転や科学技術協力、そして人的交流を三本の柱にして、幅広い協力を進めていくということを言われました。その中での具体的な問題についてぜひ見解を聞きたいと思いますのは、今回の海外援助状況でございます。数字が的確かどうかしりませんけれども、各国々に今回お約束をなさった海外援助金額は、インドネシアの場合には若干経過が違うかもしれませんけれども六百七十五億、タイ六百七十四億、フィリピン六百五十億、マレーシア七百十億などと私は理解をしているんです。  いま、日本国内ごらんのとおり非常に財政困難な状況で、国民の福祉や文教が切り捨てられる、また受益者負担によってそれぞれ負担がふえるというような状況の中で大変苦しんでいるわけです。そういう中で今回総理大臣が出かけられていって、もちろん海外援助に関するその基本的な考え方また方向については反対ではございませんけれども、われわれの目から見ますと、余りにも大盤振る舞いが行われたんじゃないかというような感想を持っているわけです。行革を一生懸命やっても三千億程度しか上がらないというようなときに、総額約二千億に達するようなこの海外援助ということは、国民の目から見ると、どうもかっこいいやり方じゃないというように見ているのでございますが、国内経済の問題、国民生活の問題と海外協力援助の接点というようなことに関して、総理の何か特別の基準とか考え方があればぜひ聞かしていただきたいと思うんです。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 海外経済協力、特に発展途上国への問題は日本重要国策一つでございます。わが国軍事大国にはならない、そういう考えで、防衛費GNPの一%以内にとどめてきておる状態です。しかしフランスやドイツやイギリスのような、日本よりも経済的にさらに苦しんで、失業問題に悩んでおる国ですら、防衛費は大体三%から四%台のGNP比でございます。それから見ると、これだけ経済力を持ち、経済成長率三%台を維持していて、失業率も二・六とか二・七というような、相手国が八%台、九%台を持っているという状況から見ると、日本はほかの国から比べればまだまだうらやましがられている存在です。ただ問題は膨大な国債を持っておるという点が違います。これは国民のありがたい貯蓄精神によって支えられておるものでございます。  しかし、そういうような情勢のもとに、日本国際的役割りは、軍事力ではない、経済協力を中心にする協力関係である、そういういわば国の大方針を決めておりまして、すでに前内閣等におきましては、この経済協力を五年で倍増するということを公式に言明しておるわけです。いままでの経済協力の量を見ますと、はなはだ外国から見ればまだか細い状態であります。  そういう意味において、倍増するという約束は実行しなけりゃなりません。そういう意味におきましても、五十八年度予算において厳しい中で海外経済協力につきましては七%増、ほかの予算マイナスシーリングでございますが、経済協力については特に大蔵省の配慮をもらいまして七%増にしたというのは、そういう南に対する日本の立場を明らかにしているということからでございます。  そういう意味におきまして、ASEANはまた非常に重要な国でございます。大体日本経済協力の七割はアジアでありますけれども、その三割五分、経済協力全体の三割五分はASEANに向けておるわけであります。そういう従来の重点主義等にもかんがみまして、その程度経済協力を行うことはまずまず妥当であろう。そういう考えに立ちまして行いましたものでありまして、これは倍増をやろうという公約を実行する上からもこの程度は必要であると、そう考えてきたところでございます。
  14. 鈴木和美

    鈴木和美君 これは多少偏見があるかもしれませんけれども、今回の海外援助につきまして、ある見方から申し上げますと、貿易の収支がいよいよ黒字は入るというような状況の中で、サミットを控えて、日本状況などについて先進諸国からいろんな問題をまた提起されるんじゃないかというようなことを懸念し、配慮したために、先に東南アジアにそういう海外援助をやって、サミットの論議、風当たりを弱くするというような見方のためにやったんじゃないかというような、全く素朴な意見かもしれませんけれども、そういう見方もあります。  また同時に、二千億に及ぶというお金になっちゃったということは、政治的な解決を図った韓国の四十億ドルというものが、どうしても各国基準というか目安というか、そういうことに置かれて逐次拡大の方向に行ってしまったというような見方もされていますし、このことは、アフリカまた中南米でこれから問題になろうと思うのであります。韓国の四十億ドルがすべて基準になってエスカレートしてしまうというようなことがあるんじゃないかという懸念を持っているのでございますが、それに関する総理見解いかがでしょう。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経済協力と申しましても、無償援助、ただで差し上げるいわゆるグラントというものは、それほど多いものではございません。相当の大部分というものはいわゆる円借でございまして、お金を貸してあげるということでありまして、これは将来金利つきで返ってくるというものがほとんど大部分でございます。  韓国の場合は約四十億ドルでありますが、これは七年間を大体目途にその程度金額目途にする。公式に四十億ドルということを国会で正式に言明したことはございません。それを目途に、大体七年間で実現しようと、そういうプログラムを一応政府として腹構えとして持っておる。そういうことでございまして、年割りにいたしますとそれほど多額ではございません。確か本年度分で妥結したのは四百何十億円という金額でございます。  インドネシアの場合は六百七十五億円というんでございますか、これはたしか七%増でございますが、インドネシアは御存じのように、石油の値下げあるいはいままでの財政的な諸問題で、国際的にもみんなで手を差し伸べて協力し合っておる国でございまして、アジアにおける日本が、ヨーロッパの国ですらインドネシアを助けているという状態でございますから、日本が率先してある程度の御協力を申し上げるということは、アジアの近隣として多少行うべきことではないか。  各国におきましても、大体昨年の大同小異あるいは若干上回るという程度金額を円借として行ってきた。そのほかにグラントとして無償援助協力を、主として技術人材学術交流等の面において行ってきておるのでございまして、中身を点検いたしますれば、日本国策に沿っている行為であると考えていただけると思います。
  16. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つお聞きをしておきたいんでございますが、私余り東南アジア皆さんとそう深いつき合いはございませんし、住んだこともありませんから、必ずしも実感的にASEAN人たち感情というのはわからないんですが、日本国内でいろんな文献などを見る限りにおいて、日本東南アジア関係というものはもっと深くしなきゃならぬということは重々承知しているつもりであります。  しかし、いままでの東南アジア日本関係というのは、これは野村総合研究所の「経済研究」の中で書かれておるもの、大変興味深く読んでいるんですが、どちらかというと、ヨーロッパ日本を比べて、第一にこんなことが書いてあるんですね。   ヨーロッパは、東南アジアで、貿易、投資、金融のいわゆるモノ、カネの面で、日本に比し、そのシェアを近年著しく低下させている。しかし、逆に、ヨーロッパ人東南アジアでの活躍、現地人ヨーロッパでの教育、また東南アジア経済が大きく依存している国際商品取引及びその取引に関わるあらゆるサービス、情報など、いわゆるヒト、情報の面では、日本を一歩も二歩もリードしている。  こういうことが論評として書かれておるわけであります。  こういう見方、観測というものは、わが国の中でもいろんな場で議論をされていることも承知してます。そういう意味から、今回人的交流という面で三千五百人の人を招待するということが、恐らく総理の頭の中にもおありになって、人的交流の面を強く打ち出されたんじゃないかと私は推測するんですが、その辺の総理のお考え。  同時に今度は、そのことに対して、新聞論調などを全部いま見てみますと、そのこと自身は決して悪くはない。悪くはないけれども、日本の風土の中で、東南アジアの留学生などについて家を貸さないというんでしょうか、間貸しをさせないとか、それから嫌うとか、それから日本で幾ら勉強しても学位がとりにくいとか、それからヨーロッパと比べると現地日本の商社は、せっかく日本語を覚えながら日本の風土をよく理解した者を会社の人事のトップにしないとか、つまりマネージメントというんでしょうか、そういうクラスに入れることをしないとか、そういうことで結果として、せっかく招いたけれども、その受け入れ体制が悪いために、逆に反日感情を持たせて帰させるんじゃないだろうかというような、これは懸念ですけれども、そういう論評を新聞がなさっておるわけですね。  したがいまして、今回三千五百人の人を招待するというような目的の問題と、それの受け入れのための今後東南アジアに対する指導などについての考えがありますれば、お聞きをしたいと思うんです。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は非常に重要な問題を御指摘いただいたと思います。  歴史と伝統というものが物を言っておりまして、東南アジアの諸国はいままで関係のあった国国が非常に深く文化的にも根づいておりまして、一朝一夕に日本経済的に強くなりたからといって、それが変化できる問題ではございません。たとえば日本の大学は国際的に見ても、医学は相当高いレベルにありますが、日本の大学で国家試験を通って医者の資格を得ても、東南アジアの国に帰りまして、医師として正式に認めて開業できる国はほとんどありません。たしかどっかの国が東大と千葉大だけはそれを認めるということで、一般の大学は認めていない。弁護士にしても同様でございます。  そういうようなわけで、ケンブリッジとか、あるいはプリンストンとか、ハーバードとか、そういう欧米の学校から言えば、無条件に博士やら修士が認められている。これはやはり歴史と伝統の根深さというものから来ておりまして、それをわれわれはいま改善するために懸命の努力をしておるわけであります。  ようやく日本技術は認められてまいりましたが、この技術や繁栄を生んでいるもとは何であるかという社会制度あるいはいわゆるソフトの面にようやく目が注がれてきまして、シンガポールにおきましても、リー・クアンユー首相は日本に学べということを言って、最近は儒教という問題を研究し出した。ただし日本語はできませんから、アメリカから儒教の学者を呼んで、英語で儒教の勉強をしている。こういう実情でございます。  マレーシアへ行けば、現在のマハティール首相は、いわゆるルック・イースト・ポリシー、東方を見習え、そういう大転換をやりまして、英国との間で、あるいは英国に親愛感を持っている国民との間で摩擦が多少起きております。しかし、司首相は公式晩さん会におきまして、自分にはさまざまな障害があり、自分の党内にも反対の声があるけれども、自分は敢然としてこれをやるのだ、そういうことをはっきり明言いたしまして、非常にわれわれは感激したのであります。それだけにわれわれは責任があると、そう感じてきたのでございます。  一朝一夕にこの精神的な面や文化、社会の問題というものは進むものではございません。また経済の力の強さと道徳的価値というものは別なものがございます。そういう点は冷厳にわれわれはわれわれ自体を見つめなければならないところがありまして、そのことは、公式の演説でもそういうことを私は言ってきておるのでございます。  日本人が技術経済で強いので浮かれて、それが世界からそのまま評価されていると思うと、大間違いでありまして、内心的には、みんな精神文明を各国が持ち、道徳価値基準というものを持っておりまして、経済の強さとそれとは別であると考えなければならぬ面が多々あります。そういう点もよく踏まえまして、日本のこともよく理解していただき、いいところも悪いところも知っていただくということが大事である。そういう意味におきまして、人的交流ということを重視して、今回そのような措置をとった次第でございます。
  18. 鈴木和美

    鈴木和美君 以上で終わりますけれども、いずれまたわが党が別な場でお聞きする点がたくさんあると思います。  私の感じとしては、中曽根総理になられて、衆議院のダブル解散がないというような発言と同時に、最近いろんな発言がございまして、選挙も近いというようなところから見ると、アメリカから帰られたときの状況と、今回のASEAN訪問態度というものは、非常に選挙向けのポーズじゃないかというような印象もないわけではないのでございますが、いま私が多くの日本国民の心配をしている平和という問題についても、十分お気持ちの中に入れておいていただきたいと思うんです。  同時に、最後に申し上げました物、金という路線じゃなくて、本当に人と情報というようなことにおいて、東南アジアとの友好関係を結ぶようにぜひ御努力をいただくことをお願いを申し上げておきたいと思うんです。  さて、次の問題は、せっかくの機会でございますから、サラ金の問題について、総理見解を聞いておきたいと思うんです。  過般、警察庁は、全国の警察本部からの報告に基づいて進められていた凶悪事件及び心中事件の分析調査で、予想を上回るサラ金と犯罪の因果関係を明らかにしたのでありますが、総理はこのサラ金の実態ということに対して、社会的な面、また政治的な面、そういう面から見まして、どういう認識をお持ちになっているのか、まず最初にお聞きしたいと思うんです。
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) サラ金の問題につきましては、新聞紙面でも弊害の面が指摘されておりまして、われわれも心を痛めておった次第でございます。  しかし、今回議員立法によって成立を見ました法律は、必ずしも一〇〇%十分であるとは言いませんが、一歩前進であろうと思います。現在のような野放図に放置されている状態を少なくとも整理して、そして責任ある行動をそれらの業者にとらせるような機会がこれでできてきた。それから利子の率にいたしましても、段階的にこれを引き下げていって、いまのような高い利子をさらに引き下げる、そういう経過的な段階的な措置がとられておるわけでございます。  なおまた、サラ金業者の取り立てその他に関するいろいろな方法につきましても、政府の監督が及ぶようにこれでなってきていると、このように思います。  そういう面につきまして、一〇〇%満足なものではございませんが、事態を改善するためにより一歩前進したものとして私は受けとめておる次第でございます。
  20. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は残念ながら、サラ金地獄は従前よりも減少するというようには、いまのところ思えないんです。むしろ、サラ金業者は以前にも増して、いま総理お話しになったように、法的安定のもとで業者間の競争にあせっちゃって、暴利によってそのツケをサラ金消費者にしわ寄せしまして、ますます悲惨な状況というものがふえるんじゃないのかなということをいまでも危惧しているのであります。サラ金利用者は経済的弱者でありますから、無担保でも安易に借りられるというところからサラ金を利用する人たちが非常に多いと思うんですね。したがって、仮に四〇・〇〇四になったとしても、金利は確かに安くなったということがあったとしても、根本的にはサラ金返済が困難で、悲惨な結末を迎えることは避けがたいんじゃないのかな、そんなふうに基本的に私は思っているんです。  特に、生活が苦しいというようなことからサラ金利用に頼らざるを得ないような弱者に対しては、本来、政治的に保護を与えるべきだと思うんです。しかし、このような政策を充実することは非常にむずかしいことでありますから、それは今後私どももまた検討してまいりたいと思いますが、今回のサラ金の二法案というものが通りまして、それは確かにある面から見ますと、ないよりはあった方がいい、一歩ましであるということは評価できるかもしれません。けれども、私が申し上げましたように、サラ金業者の方から申し上げますと、法的な保護を受けているということから、取り立てがしやすいという面もまたなしとはしないと思うんです。  そこで、ぜひ総理見解をここでもう一度お尋ねしておきたいんですが、大蔵大臣からも再三御答弁をいただいていることでありますが、これから行政当局が指導なさる指導文書、政令、省令、そういうものについて早急に早く指導徹底してチェックを完全に行えるというようなことをしていただきたいと思うんですが、その件に関する御所見。もう一つは、早い時期に金利引き下げを早急に具体化した方がよろしいと私は思うのでありまして、そういう見解について賛成し、指示できるかどうか、総理見解をお尋ねしたいと思うんです。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) サラ金を受けようとする方々は、大部分はいわゆる庶民と言われる方方でございまして、若干の金融にも困って駆け込む、そういう方が多いと考えております。いわば社会的弱者と考えていいと思うのであります。それらの方々に対する消費者金融というものにつきましては、政府といたしましても、弱者保護という考えから特別関心を持たなければならないと思っております。したがいまして、この法案の実施につきましても、そういう点に格段の注意を払った方法を具体的にとるように、大蔵省に私からも指示いたしますし、また運用につきましてもそのように心がけてまいりたいと考えております。
  22. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つ、これはせっかく総理がおいでになっておりますので、大蔵大臣に一つだけここでちょっと関連してお尋ねしておきたいんですが、いま銀行からサラ金業界に融資されている金額が、明確な数字はまだ私は把握しておりませんけれども、二千四百十二億ぐらいに達しているんじゃないかと思うんですが、二年で四・五倍になったと言われているわけですね。  そこで大臣、いろいろ調べてみますと、銀行がサラ金業界にお金を貸すというときに、サラ金業界の貸付残高の総額が担保になって銀行が金を融資しているということが多く伝えられているわけですね。これが事実かどうかを尋ねたいことと、仮に事実だということだとしますと、片方で、サラ金二法で今回の強制取り立ての問題についていろんなチェックをしようということを他面ではやるんだけれども、片方ではその貸し倒れというものがないということを前提にして貸付残高を担保にするということは、ある面では強制取り立てを結果として認めているような状況にもなるわけですね、これは論理的に。それは非常に私は政治的にもおかしいし、指導の面でもおかしいと思うんですね。  そこで、これからの銀行指導に当たって、そういう貸付残高を担保にするというようなことをやらせないような、もう少し違った角度からの指導というものをしていただきたいと思うんですが、ここは大蔵大臣にちょっと御見解を尋ねておきたいと思うんです。
  23. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) 最初に事実関係を説明さしていただきます。  私どもが把握しております金融機関のいわゆるサラ金専業者に対する貸付金額は、五十七年九月末現在で二千四十二億円というふうに把握しております。  それから第二のお尋ねの、金融機関がサラ金専業者に金を貸す際に、担保としてサラ金業者が持っておる債務者に対する債権を担保に取っておるかということでございますけれども、そういう事例もございます。ただ、金融機関は、通常の融資の常識といたしまして、それで一〇〇%債権をカバーしようという気持ちで取っておるわけではございませんで、御承知のとおり、担保掛け目でございますとか、いろいろな配慮をしてそれを評価しておりまして、それで何が何でも債権を取り立てなければ貸し金が回収できないからという気持ちではございません。  サラ金業者の信用力全体等を考慮しながら融資をしておりますので、先生御心配のようなことはないと思いますけれども、今後、私どもの指導におきましても、万が一にもそういったような形で取り立てが法に基づく範囲外にわたるようなことのないように今後とも十分指導はしてまいりたいと思っております。
  24. 鈴木和美

    鈴木和美君 大臣に答弁していただく前にもう一つ尋ねておきますが、いま銀行からサラ金業界の方に融資している実態、実績ですね、いま大蔵省で調査なさっているというように聞いておるんですが、それはいつごろまでにでき上がるのか。それからもう一つは、これから行政指導を行う通達の原案はできて示されているのか。また、できていないというのであれば、いつできて、いつそういうことが施行に移されるのか、その時期ですね、事務的なことをまずお願いします。
  25. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) 現在、金融機関に対しまして貸し付けの実態を調査する作業を進めておりまして、遅くとも五月中には数字をまとめるような形で作業を進めております。  金融機関に対します通達につきましては、そういう数字等も踏まえながら、従来の考え方をより明確に示して指導を行っていきたいと思っておりまして、遅くとも六月中には通達が出し得るような形で作業を進めたいというふうに考えております。
  26. 鈴木和美

    鈴木和美君 総理大臣、いま事務当局からのお話があったと思うんです。大変な労力と御努力をいただくことになると思うんですが、日を追うごとにこの悲惨な状況というものがふえる状況にあるものですから、そう私は余裕を持って安閑としているわけにはいかないと思うんです。そういう意味では、ぜひ総理の方からも強く事務当局に方遺漏のないような指示をしていただきたいと思いますが、御見解いかがでしょう。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御趣旨に沿って措置いたします。
  28. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、次の問題は景気対策と不公平税制の問題についてお尋ね申し上げたいと思います。  まず最初は、先般前川日銀総裁は、最近になって為替レートが円高に向かい、高どまりしていた長期金利水準もやや低下するなど環境が好転していると見解を示されまして、公定歩合引き下げの機が近づいた、そういう意向を示されたと思うんです。  公定歩合政策は、もちろん日銀の専権的事項でありましょうから、日銀にお任せしておけばいいということになるかもしれませんけれども、経済諸活動に大きな影響を与えるという観点から見て、この公定歩合問題について総理の御所見を伺っておきたいと思うんです。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公定歩合の問題は、日本銀行総裁に任してありまして、私は一切介入もしないし、発言もしないということにしております。私は、日銀総裁に最初に就任後会いましたときに、物価の安定とそれから為替相場の安定に注意してください、この二つを中心にお考えになっていただいて、公定歩合を具体的にどうするかということは、全部あなたにお任せしてあることでありますから何にも申し上げません、あなたが最善と思うことをおやりなすってくださいと、そういうことを言ってあるのでありまして、これは厳守しております。
  30. 鈴木和美

    鈴木和美君 想定の問題で大変恐縮でございますが、いろんな人から御説明や御指導をいただいている中で、円高の傾向が進んできたし、アメリカの金利も下がっていくような傾向にある。  私は先般、IMFにお出かけになるときに大蔵大臣にお願いしたんです。口をそろえてアメリカの金利をとにかくみんなで下げろということをいまでもなおかつ主張してほしいということをお願い申し上げたんですが、その後いろんな報道や文献を見て、ある程度アメリカの金利も下がる傾向があるということから見て、日本経済についても多少明るさが見えてきたのかなと思うような状況なものですから、そういう状況の中で公定歩合という問題が恐らく待ち遠しいおみやげというか課題として非常に関心を持っていると思うんです。  ところが、いま総理の答弁からお聞きしますと、これはいつになるのかまだ明確ではないかもしれませんけれども、仮に公定歩合が引き下げられるということがあったとしても、その公定歩合の引き下げによってその効果を期待する、つまり景気刺激ということを考えたときに、これだけ国債が発行されておって、その国債の価格と金利と事業債の金利などを考えてみると、どうもせっかく公定歩合は引き下げたけれども、国債との関係において事業債の方が不振になっちゃって、結局はタイムラグが出るというんでしょうか、そんな傾向が出てくる関係で、経済刺激の効果が期待できないというような心配の面も私はなしとはしてないんですけれども、その辺について、大蔵大臣、どういう見解を持っておればよろしいんでございましょう。
  31. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに、仮にもし公定歩合の操作ということになりましたら、それは一般論として短期金利というものには直ちに影響をもたらすということは御承知のとおりであります。そのことは当然のこととして長期金利にも連動するというのが常識的に考えられますし、元来長期金利というものは双方の間で自由意思で決定されるべきものであるとしても、現実大量国債発行が一つの、まあ基準という表現はいささか適当ではないかもしれませんが、確かに一つの大きな役割りを果たしておる。  したがいまして、私どもは実態として考えることは、財政赤字を縮小する、全般的に言えば。すなわち、わが国の場合をとって申しますならば、公債発行額そのものを減していくということが、長期金利そのものに対する影響が一番大きいわけでございます。  しかしながら、今日諸般の状況から見ましたときに、私は、この公定歩合の操作、上げによらず下げによらず、それが長期金利等に全く影響を与えないほど固定化しておるというふうには思っておりません。
  32. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま大蔵大臣の答弁を聞いていますと、ちょっとどういうふうに理解していいかわからないんですが、国債が大量に発売されますから、どうしてもそのことが中心になりますね。だから、公定歩合を下げて短期の金利から長期にはね返したいという気持ちはわかるんだけれども、国債が出ている関係でなかなか連動しない。だから、原則から言えば、国債が減額されて少ない方がいいんだと。これは大臣、だれだってわかるじゃないですか、そのこと自身は。  しかし、そのことができない現在の状態の中で、景気刺激策として公定歩合を下げようかと言うてみても、なかなか時期的に国債をぱっと少なくするということができないから悩んでいるんであって、そこをどうするのかということをいま私は聞いているんです。
  33. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは原則的には、いま鈴木委員の御指摘というのは正確であると私も思います。ことほどさように、いわば金利政策に対しても国債の大量発行というものがあるしめ木の役割りを果たしております。それだけに私どもは、それをその都度弾力的に、あるいは国債そのものの商品の多様化、いろんな角度から、そのときの金融市場に見合った形でこれを消化することによって結局、公定歩合の操作等が長期金利に対しても影響を及ぼす大きな障害にならないような弾力的な国債管理政策と申しましょうか、これは当然のこととしてやっていかなきゃならぬ。しかしいわば選択の幅が確かに大量の国債消化の中で狭いものになっておるという印象は私もひとしくいたしております。
  34. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はそこのところをもう少し知恵を出していかないと、せっかく日本経済アメリカの金利問題、国際的な問題、いろんなのを見てようやく兆しが出始まったときに、そのことが障害になって足を引くというようなことがあっちゃいかぬものですから、ぜひ検討を煩わしておきたいと思うんです。  同時に、今度は総理にお尋ね申し上げますが、そういう公定歩合の引き下げということと同時に、現実にはまだ景気が冷え込んでおるという状態だと思うんです。先般も五十七年度の税収どのくらいかと言うても、税収見込みが下がってくるというような状況でございますので、景気対策としていろんなことをもっと早目に打ち出さなきゃならぬと思うんですが、一体政府が景気対策として考えている発動時期というものをいつごろに考えておけばいいんでございましょう。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四月の初旬に一連の景気対策を表明いたしましたが、それらは順を追うてできるものからどしどし実行していくと、こういう考え方に立っております。たとえばいわゆるデレギュレーションによる民間活動を活発化するというような問題につきましては、いろいろまた政府の内部において準備をしておるところでもございますし、そのほか住宅政策その他の面におきましてもいまいろいろ努力を開始しておるところでございます。  住宅のデレギュレーション等につきましては、これは地方都市あるいは公共団体に関係するところがございまして、統一地方選で区長さんや市会議員さんの選挙がありまして、その間は進むことができなかった情勢もありまして、四月の二十四日以降はそういう点につきましてもいろいろ機能を回復しつつありますので、そういう面でそろそろ動き出していると、こういうことでございます。
  36. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは関連して次の問題でございますが、よく総理、大蔵大臣が金科玉条のごとく増税なき財政再建という言葉が使われているんですが、非常に巨額な歳入欠陥を生じようという現下の状況の中で増税なき財政再建というのは、総理大臣、大蔵大臣、政治家としての良心に基づいて本当にできるとお考えですか。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは臨時行政調査会がその結論として指示していただいたものでございまして、われわれは万難を排してこれを実行するように心がけたいと思っておるところでございます。
  38. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 総理から御決意の表明があったとおりであります。
  39. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は中曽根総理の人柄を拝察さしていただきまして、もっと大胆に日本のかじ取りをなさる方だと思っておったんです。私はむずかしい経済的なお話みたいなものは得点じゃございませんから、専門家ではないんで、ただ動物的、物理的に考えてみても、素人的に考えてみても、六十五年までを展望しなから八カ年の計画をしながら、七年となんか言うてみたって、国債償還もこんな状況ですね。そう考えてみますと、とにかくだれが言うても同じことでしょう。歳出をカットするか、国債を発行するか、増税するか。  もっとわれわれが主張しているような、歳出カットの中で防衛費とかそういうものをどんと切るか、そうしなければ本当に財政再建、安定した民生を図るというか、そういうことはできないんじゃないのかなと思うんですよ。そこで増税なき財政再建という言葉を巧みに利用しちゃって、それでとにかくもう一回選挙でもやってから考えようかというような、どうもそういうポーズにしか見えないんですね。  本当に土光さんがそう言ったからというだけじゃなくて、土光さんの言ったことも、いいところはあなた方が摘み取ってみたり、悪いところは全然残してみたりしている内閣なんですから、土光さんのことだけじゃなくて、政治家、総理大臣、大蔵大臣として――私はいま増税しろということを言っているんじゃないですよ。しかし増税というものを本当に考えなければ一体どういうふうになるのかな、社会党の私でさえそういうことを考えるんですよ。ただ、私は、いざそうなったときに、論旨はこうであるべきだ、こうあって財源はこうという話はしますよ。けれども、あなた方が言うみたいな増収という言葉を使ってみたり、増税という言葉を使ってみたり、大蔵大臣の大型消費税は念頭にないとか、またいろいろなことを総理も言われるわけですね。あれやこれや考えてみると、どうもあなた方は二人とも腕を組んでうそつき漫才をやっているみたいな感じにしかならないんですよ。  正直に国民に大胆にそのことを訴えるべきだと思うんですが、もう一度御所見を伺いたいと思うんです。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建という理念を打ち出しましたゆえんは、臨時行政調査会におきまして、私も当時行管長官をしておりましたので、その議論の内容も存じておりますが、増税というものは、ややもすれば財政の肥大化を招き、経費の乱費を招く、現在の日本の行政機構等を見れば、まだまだ節減する余地もあるし、いろいろ工夫する余地もある、安易に増税を認めるようなことをするというと、そういうような方向に流れてしまう。そういう意味において臨時行政調査会はかんぬきを入れて、そして経費を節減し、臨調が答申している諸般の政策を実現しよう、そういう考えでやってくれていると、私はそう思っております。それはわれわれにはきついことであります。しかし国民皆さんにもそのことはよくお知りをいただきまして、一回はこの苦しい難所をくぐらなければ日本経済も行政の改革もできない、そういう御指針であると私は了解いたしまして、その指針を守るべく全力を尽くしてまいりたいと思っておるところでございます。
  41. 鈴木和美

    鈴木和美君 総理大臣、それはもう耳にたこができるほど聞いているんですよ。それは国会中ですから私に別な答弁をするということはできないかもしれません、それは議員さんもたくさんおいでになるんですから。しかし、いいとか悪いとかということの論評をさておいて、こんな私みたいなピカピカの一年生の議員でも非常に大変だということを感じ取っているんですよ。ところが、皆さんの言い方が、国民にわかりにくい言葉で発言されているということは私は遺憾だと思うんですよ、そのことは。  そして片や、消費税というような問題は念頭に考えていないとおっしゃったその真意というものを私なりに分析すると、それならば、大平さんの時代にあの消費税制度がつぶれたというのは、なぜつぶれたんだ。なぜつぶれたかということと、もう一つあのことを提起しなきゃならなかった財政的な時期というものを考えたり、恐らく政治家の良心として、あのときやっておけばこんな困難はなかったのにと思っている方も何人かおいでだと思うんですよ。それをいま念頭にないとか、臨調で土光さんに何を言われたからということだけでは、私は政治家としては責任を負っていないと思うんです。  しからばお尋ねしますが、直間比率の見直しという言葉がよく出ますね。直間比率の見直しということは、これは増税とか増収とか、現行の自然増収を望めない段階においてのある面での大衆負担というものにつながることではないんですか。税調でこれからそれを検討しようということをおっしゃっておりますけれども、私はねらっていることは同じだと思うんですよ。ただ、言葉の使い方とか、わからない者にますます混乱させるみたいな言葉を使うわけであって、問題は、このままでは大変だということの認識は変わってないんじゃないですか。いかがですか。
  42. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 直間比率の見直しということは、確かに臨調の最終答申にも使われてある言葉でございます。そして税調の方におかれましてもそういう言葉が使われておりましたが、いろいろ整理をされた結果、直間比率とは、言ってみれば、結果として生ずるものであって、整理した言葉で言うならば、税体系の見直しと言うべきであろうということになっておるようでございます。  しかし、今日直間比率の見直しを具体的に検討していることもございませんし、また指示を受けたことも指示をしたこともございません。ただ、あらゆる予見を持たないで税制調査会でいろいろ御議論をいただく中において、すでに税体系の見直しは絶えず検討を進めなきゃいかぬという趣旨のことはおっしゃっておるわけでございますから、これからこの問題についてはいろいろ御検討があるであろう。私どもはいろんな議論が出てくるであろうというふうに予測しておりますが、いつも申し上げますように、税制調査会に対しては、あらかじめ予見を持ってこのような角度から御審議いただきたいと言うべきものではございませんが、そのようなことをいままでも、五十八年度税制に対しても今後の課題として指摘されておりますので、税体系の見直しとしてこれらの問題は御議論がいただける問題であろうというふうに思っておるところであります。
  43. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、中曽根総理が、また大蔵大臣が増税なき財政再建ということで、土光臨調との関係で御説明をすればするほど、結局、土光さんたちの、つまり財界と言った方がいいんでしょうか、そういう財界に都合の悪い増税が行われるものですから、抱き合わせで増税なき財政再建と言わないとかっこうがつかない。たとえば医師優遇税制についても土地税制についても、いろんな税の問題があります、準備金の問題、引当金の問題にしても。そういう問題が、つまり増税なき財政再建と言うて財界の方は逃げちゃって、そして結果として何とかしなきゃならぬ、大衆に負担をかけるというようなことのために使われているんじゃないのか。そういうふうに勘ぐりたくなるほど、この増税なき財政再建という言葉が国民に非常にわかりにくくなっているということは、もう一度指摘しなきゃならぬと思うんです。  だから、私たちかかねて主張しているように、直接税と間接税ということを考えたときには、何といっても間接税というものは直接税を補完する税体系なんですから、そういう意味では、直接税の中における不公平税制の是正ということを税調においても根本的に討議してもらうような手だてというんですか、道筋というか、そういうことを考えてやっていただきたいと思うんです。そうでない限り、財政再建に対して増税なき財政再建ただ一本やりの物の言い方としては、中曽根総理大臣や大蔵大臣の立場はわかりますけれども、私は政治家の一人としてどうも納得がいかないと考えるのでありますけれども、もう一回そこのところを答弁していただけませんか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 租税特別措置法につきましては、いままで累次見直してまいりましたが、今後も社会経済情勢等々も考えまして見直しを続けていくべきものであると考えております。  なお、増税なき財政再建につきましては、内閣としては全力をふるって一路邁進あるのみである、こう考えております。
  45. 鈴木和美

    鈴木和美君 まあ議事録に掲載されるからやむを得ないと思いますけれども、幾ら中曽根総理が邁進あるのみと言ってみたって、結果的には一年間で三千億ぐらいの金しか上がらぬのでしょう。もちろん機構改正みたいな、制度改正みたいな、そういうところまで考えれば別ですけれども、現実に歳出カットをやったが三千億しか上がらぬ。そういうような状況で邁進しますと言ってみたって、そんなら行政改革の問題で何年後にはどうなって、これほどうなってという、そういう試算書というものを出してくれるならいいですよ。ただそこで演説だけしておって、それで邁進するのみですと言ってみたって、結局はだらだらだらだらいって、結果は国民にしわ寄せされるというようなことじゃないかと思って、大変心配でございますので、その点はもう一回強調しておきたいと思うんです。  さて、時間がもうございませんけれども、次に予算編成方針とこの財確法の直接の問題についてお尋ねしますが、来年度予算編成に当たって、いま巷間伝えられているところによりますと、歳入不足がそれこそ要調整額を上回っちゃって、五兆円にもなるというような財政当局の見込みだと思うんです。こういうような状況の中で新たな財政再建目標の六十五年に赤字公債からの脱却は私はきわめて困難になるというふうに考えているんですが、総理の財政再建についての決意と、五十九年度予算編成に向けての対応についてお聞きを申し上げたいと思うんです。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、財政改革の問題でございます。この点につきましては、この予算編成後、予算御審議に当たりまして三つの試算的考え方というようなものをお示しいたしました。その後、経済審議会が活動を開始し始めまして、大体八年を目標にする長期の経済見通し、経済指針というものを策定しておる次第でございます。  これにはいろいろな山坂がございまして、鈴木さん御指摘のとおり、なかなかむずかしい峠があるわけでございます。昭和六十年から六十五年ぐらいにかけて、現在のものをそのまま引き写しに投影して機械的に伸ばしてまいりましても、国債費が年間十兆から、大きいときには十六、七兆ぐらいまで機械的に計算すれば伸びるというような数字も出ております。そういう中にあって、どういう経済展望、経済指針をつくるか、非常にいま経済審議会でも苦労しておるところでございます。それらの経済展望、経済指針を見つつ財政改革構想というものが中長期的に出てくるわけであります。それと整合性を持ちながらいま財政改革構想をつくりつつあるという状況でございますので、いまにわかに結論がましいことを申し上げる余裕はございません。  ただ、五十九年度予算につきましては、五十七年度の財政収入の状況はこの七月ごろ大体わかってまいります。それによりまして五十八年度のいわゆるげたと申しますか、ドライビングボードはわかってくるわけであります。それによりまして大体五十八年度の見通しが、ある段階における一応の見通しがまず出てまいります。そういうものを踏まえまして五十九年度というものを考えるという段取りになるわけでございますから、いま五十九年度を具体的にどうするかということは、通常国会の会期中なかなかむずかしい状態でございますので、いずれ適当な時期が来ましたら、そういう考え方も順を追って明らかにいたしたいと考えておる次第でございます。
  47. 鈴木和美

    鈴木和美君 いずれにしても、自然増収というのが非常に困難な状況であるわけで、私も大変問題があると思うんです。  そこで、これはちょっと先ほど落っことしちゃった問題なんですが、もう一回総理に行革の問題で聞きたいんです。  行革を進めても、先ほど私申し上げましたように、三千億円ぐらいしか上がらない。ところが、行革の宣伝というか、方針というものが先々流れているもんですから、そこへ加えて人事院勧告の凍結であるとか、恩給とか年金の物価スライドの停止というようなものが重なってきて、いわば行革のデフレ効果がこんなに景気を冷えさしちゃったというような論があるんですが、これに対してはどういう見解をお持ちになりますか。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、行革はデフレ原因にあらずして、中長期的に見れば景気上昇の原因であると、そういうふうに考えております。行革をやらないで経費がある程度膨脹した状態でいけば、いままでの情勢で見れば赤字公債あるいは公債に依存せざるを得ない。公債を大量に発行すれば、必然的に金利は高くならざるを得ない。あるいは、場合によってはクラウディングアウトも出ないとも限らない。そういう情勢が出てくれば、高金利は不景気の要因でございますから、そういう面から景気の足を引っ張るという面も考えられないことはないわけでございます。  そういうようないろんな面を考えてみますと、必ずしも行革が不況の要因であるとは考えない。むしろ経費を節減して、簡素、効率的な政府をつくって冗費をなくしていく。その方が身を引き締めて、そして将来にわたって景気をつくっていく。つまり、そのような厳しい措置をとるということは、円を強くする原因になってまいります。円を強くするということになれば、これはいま石油がたしか二百四十二円をベースにしていると思いますが、これが大体二百三十七円とか、あるいはきのうあたり二百三十円台まで下がってまいりましたが、これによって電力、ガス、あるいは諸産業の原料費に影響するところきわめて大です。これによって利潤率が高まってくれば経営に余裕が出てまいりまして、それはボーナスや何かにはね返ってまいりまして、それは景気高揚の大きなファクターになってまいります。ここで利子を下げるかあるいは円を強くするか、そういう選択の問題が出てくるわけで、もうそういうような情勢に日銀当局あたりは判断をめぐらしているんではないかと私は個人的に想像しております。結論はもちろん日銀がやることであると思っております。  したがいまして、行革がすぐ不景気につながるという考えは間違いであって、むしろ円を強くするという非常に大きなファクターがある。最近、企業の経営状態を見ますと、かなり内容は強くなってきております。それは原料費が安くなってきているという面がかなりあります。そういう面から見ましても、来年三月期は利潤率は九月期より上がるであろうと言われておりますが、そういうようないろんな面から見ましても、行革それ自体が不況要因であると断定することは皮相であると考えております。
  49. 鈴木和美

    鈴木和美君 時間がございませんので、そのことを深く議論する時間がないんですが、ただ総理、この行革というのは哲学だと思うんですね、ある意味では。そしてその哲学が国民に浸透する時期、つまりタイムですね、そのことと浸透する過程においておびえが生じちゃうと、そのおびえの回復を待つ時間帯というのが必要だと思うんですね。片や、そういう時期の中で、国債をこれだけ抱えながら景気刺激をやっていかなきゃならぬという政治選択もあるわけですね。ですから、そういう面から考えてみると、単なる哲学だけの強調でおびえさしておいて、そして全体が景気が冷え込むというやり方は、私はそれはちょっとどうかなあという気がするんです。それはあくまでも幅の問題でありますから、いずれこの問題についてもまた別の機会に議論さしていただきたいと思うんです。  最後にお尋ねしておきたいことは、五十八年度予算は特別対策分としての税外収入の確保を大きな特徴としてつくられているわけです。俗称かき集め予算ということで財政収支のつじつまを合わせたということに私は過ぎないと思うんです。そこで大変問題になってまいりました専売公社からの納付金の特例の問題や、電電公社からの臨時国庫納付金の特例を設けたことや、中央競馬会の問題や、それから自賠責の問題などなどがございまして、こういう問題については、単なる財政のつ じつま合わせということの観点からやられ、財政体質の弱体化を持続させるようなやり方に対しては私どもは反対なんです。  そこで、そういうことを考えて今後こういうような税外収入というか、特定の目的が置かれている特別会計のきちっとしたものについては余り手をつけてほしくない。また電電公社や専売公社のような問題については、臨調指摘ではございませんけれども、制度の問題や機構の問題がいま議論されようとしているわけですね。そのときに、金が余っているからというようなことで手をつけるというやり方は、将来の運営議論に対して大変誤解を与えるようなことが生じるんじゃないかと思うんです。そういう意味で本件に対しての見解をお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三公社、特に電電、専売等につきまして、いろいろ御協力を願いましたことは、大変恐縮に存じておるところでございます。本年度予算におきましては、財源調整の必要上まことにやむを得ず電電その他にも御協力を願いまして、国民皆さんに対する税負担というものをできるだけ避けるような配慮をいたしたわけでございます。この点につきまして、電電や専売の皆さんの御協力には非常に感謝しておるところでございます。  さりながら現在の国家財政の状況等を見、また諸外国との関係で租税負担率というものを見ておりますというと、かなり税外収入というものを考えざるを得ない。あるいは、将来の中期展望におきましては、民間活動を相当活発にさせて、そしてそれによって国家財政を潤させる。そういうような考え方も中長期の展望の中には考えざるを得ない、そういう情勢であると思います。要するに、これから行わるべき財政政策あるいは経済政策というものは、非常に複合的なものでございまして、単発的に単線軌道で物がやれるという状態ではないと思うのでございます。そういう意味におきまして、今回の御協力を感謝いたしますが、事態がそういう事態であるということも御了承いただきたいと思う次第でございます。
  51. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 きょうは財源確保法案の最後の審議で、中曽根総理の御出席をいただいたわけでございますが、まず最初にお尋ねいたしたいことは、鈴木内閣のもとでの五十九年度の赤字国債脱却という公約は実現不可能になったわけでありますが、その後を受けて中曽根内閣が発足してすでに半年にもなるわけでありますが、いわゆる財政再建への青写真というものがわれわれにははっきりわからない。増税なのか、あるいは歳出カットか、国債増発かと、こういう三つが歳入歳出のアンバランスを埋める方法であると言われてきておるわけでありますが、どういう青写真でこの財政再建に取り組むのか、総理自身のお考えをお尋ねしたいと思います。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的には、臨調答申を守っていく、そういうことが基本的にあり得ると思います。  それから五十八年度予算の編成につきましては、大蔵大臣の施政方針演説あるいは経済企画庁長官の施政方針演説及び私の施政方針演説で大体年度間の方針は御説明申し上げた次第です。  中長期の問題につきましては、経済審議会に、先ほど来申し上げましたように、いま諮問をしておりまして、その指針に吻合し、整合性を持った財政改革というものをつくり上げていただきまして、それによりまして中長期の財政政策を処理していこう。それには若干時間をいただきたいとお願い申し上げている次第でございます。
  53. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今度の財政改革を推進する上で問題になるのは、わが国経済の成長率がどうなるかと、こういう問題ではないかと思います。これは税収にも非常に関係してまいりますし、また雇用にも非常に関係がある。ある程度の成長が非常に望ましいわけでありますが、しかし過去のような高い成長は不可能でございます。最近、油の値下がり、あるいは米国経済の好況、こういうような状況もあるわけでございますが、総理としては、中期的に見て、どの程度の成長率を考えているのか、お尋ねをしたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 成長という考え方がこの際検討すべき問題ではないかというように私は考えております。  しかし、いままでの概念に基づいて申し上げますと、私は大体三%から五%程度、このワイダーバンドの範囲内で一応考えられるのではないかと考えております。  冒頭申し上げました成長という考えということでありますが、わが国の産業転換ということを見ますと、いわゆるハイテクノロジーの分野にどんどん進んでおりまして、いままでのような膨大な物量、バルキーなものを中心にする経済から、非常に知識集約的な新しい情報産業型に移行しつつあるわけであります。そうなりますというと、たとえば一トンの値段を考えてみましても、鉄なら九万円前後、自動車なら百万円前後。これが半導体やあるいは超LSIになりますと、一トン五億とか六億とかいうぐらいの値段になってまいりまして、重量では計算できない、あるいは物のかさでは計算できない、そういう時代になりつつあるわけであります。またそれが、日本経済発展途上国から前進すべき方向でもあると思います。  また、いわゆる第三次産業の時代に入ってまいりまして、国民総生産を見ますと、第三次産業の生産物の方が多くなりつつあります。しかし第三次産業と言われるものの中には、いままでの一次産業、二次産業と違った概念のものがかなり多く出てきておりまして、いままでのGNPの計算比率等におきましても、第三次産業の質的変化というものがどの程度取り入れられているかどうか、検討を要する部分もあると思うんです。この第三次産業の肥大化、質的変化という面について、これは経済企画庁あたりでも相当研究してもらわなきゃならぬ点があると実は思っておるのでございまして、そういう点において、新しい型の成長という概念を考えるときに入ったのではないかと思っております。
  55. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま中曽根総理から、今後の財政改革としてはいわゆる臨調を完全に実施するのみである、こういうようなお話でございました。われわれも当然、土光臨調の実現に向けて努力をしていかなければならないと思うわけでありますが、しかし臨調一般の感じといたしましては、非常に抽象的なあるいは概念的な方向は示されても、果たしてあれを実現するだけで財政改革ができるのか。これは財政改革の一つの一里塚ではあってもそれだけでは非常はむずかしいんではないか。私はそういう感じがするわけでありますが、行政管理庁長官でもあった総理として、そのあたりのお考えはどうですか。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申は、約二年にわたりまして非常に御努力を願い、いままでの審議会で類を見ないぐらいの時間と精力をかけてつくっていただいた貴重なものであると考えておりまして、われわれは重要な指針と受けとめて実行してまいりたいと思っております。
  57. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 高度成長のときにはかなりの自然増収がありまして、そういう時代は歳出の増を抑えるだけで財政再建もできたわけでありますが、現在では、五十六年度、五十七年度等見ても、税収というものが非常に下がってきておるわけであります。特に五十六年度などは、いわゆる租税収入のGNPに対する弾性値が、いままでは一・二と言われておりましたのが、五十六年度は一以下であったと、このように聞いておるわけであります。で、先般の大蔵省の財政の中期試算等では一・一と、このようにしておるわけでありますが、今後一・一も非常にむずかしいんではないか。特に最近は医師の第二薬局のような納税者のいわゆる納税回避行動が非常にあるんではないか。そのように思うわけでありますが、この点はついては大蔵省の御見解をお聞きしたいと思います。
  58. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 租税弾性値につきましては、ただいま委員が御指摘になりましたように、特に第一次オイルショック後、年次で言いますと昭和四十九年から五十六年の実績で、平均弾性値が一を下回る状況にございました。ただ、わが国の税体系から考えまして、中長期的に見まして、税の弾性値が一を下回るということはやや不自然な姿であると考えております。基本的には、この期間、第一次オイルショック、第二次オイルショックという事態がございまして、世界経済全般が大きな基調変化が生じまして、現在もまだその調整過程にあるということでございます。  ただ、ただいまも御指摘ございましたけれども、昭和五十六年度の弾性値は、実績で〇・六を少々上回る程度の非常に低い水準であったわけでございますが、昭和五十八年度のわれわれの税収見積もり、それから政府経済見通しどおりの名目成長が達成されるといたしますと、五十八年度の段階に入りまして、やっと弾性値一の水準をやや上回る水準になったわけでございます。  財政収支試算で私どもがお示しいたしました今後中長期的に弾性値一・一といいますものは、高度成長期のような一・四前後ということは期待できないといたしましても、現行の税体系のもとで経済が安定成長とはいえ、経済審議会の経過報告に出ております六前後の名目成長であるといたしますと、一・一そのものを想定するということは、必ずしも不自然ではないというふうに考えております。
  59. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 臨調の答申では、今後の一般会計の伸びは大体GNPの成長率以内におさめろと、このように言っておるわけであります。そのこと自体も非常に大変でありますが、一方、税収が非常に伸びない。そういうような現状から考えますと、かなりの歳出カットをしていかなければいけない、そういうような状況に追い込まれておるわけであります。来年度の予算編成においてこの名目成長率以下に抑えるという臨調答申は総理としては完全に守る決意であるのかどうか、この点どうでしょうか。
  60. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 数字やその他にわたる問題でございますから、大蔵大臣から御答弁申し上げます。
  61. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 臨調が基本として示されておる問題につきましては、私どもとしても予算編成に当たって大いに念頭にあるところでございます。ただ、予算でございますから、これからそれこそ編成作業を順を追って進めていくわけでございますので、いまあらかじめ一つの枠を限定するということについては、ここでしかと申し上げるというのは、むしろ適当ではないのではなかろうか。絶えず念頭に置いておくべき数値であるというように考えております。
  62. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣は当委員会で、来年度は五十八年度予算以上に厳しいシーリング枠を設けてやっていきたい、特に防衛費とかあるいは海外経済協力費というような問題についても聖域を設けないで効率的な運用を目指す、このように言っておるわけでありますが、中曽根総理の御見解を承っておきます。
  63. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまのお尋ねですが、私は平素申し上げておりますように、予算編成については、防衛費であれ海外経済協力費であれ、初めからこれを聖域として位置づけするということはしないということを申し上げておるところであります。総合的には、予算というのはそのときの経済情勢に応じまして、その時点におけるもろもろの諸施策との調和を図りながら、内閣一体の責任で決定すべきものであるわけでございます。編成作業の段階にあって初めから、防衛費経済協力費に限らず、これは聖域であるというような考え方は持たないでこれに対して取り組んでいけということは、私ども閣議で御発言申し上げまして、総理初め御了承をいただいて、制度、施策の根源にさかのぼって、とにかく各省庁でとりあえずは勉強してみると、こういうことになっておるという経過を御説明申し上げておきます。
  64. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今年度の予算を見ましても、たとえば本当の意味の歳出カットではなしに、中央競馬会からお金を持ってくるとか、電電公社の納付金を繰り上げるとか、あるいは国債の定率繰り入れを停止するとか、こういうようなことし一年限りの対策、税外収入、そういうもので歳入を図っておるわけでありますが、それでも現実に昨年当初予算に比べてかなり国債発行もふえておると、こういうような現状であります。  今後、この歳出カットというものをどうするか。大蔵大臣は制度、政策の根源にさかのぼってやるというようなお話でございますが、総理大臣として、今後の歳出カットについては特にこういうところをカットしていかなければならない、こういう姿勢でやっていきたいという、こういう何か具体的なお考えでもございますか、お伺いしたいと思います。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調ができましてから、おかげさまによりましてマイナス五%シーリング、それからゼロシーリング、それからマイナスシーリング、そういうようにみずから枠をはめまして歳出削減に努力してきたところでございます。五十九年度予算はさらに厳しい事態にあると私、考えておりまして、それらにつきましては、関係各省とも相談をし、自民党とも相談をいたしまして、聖域を設けることなく妥当な削減を行っていかなければならぬと考えております。
  66. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、不公平税制の是正ということが今日まで言われてきておるわけであります。将来、国民皆さんにいろんな意味での協力を求めるといたしましても、不公平税制の是正をやるということがその大前提であることは当然ではないかと思いますが、そこで、総理として、不公平税制というのはどういうものが不公平税制であると認識されておるのか。クロヨンとか、このようなことをいろいろ言われてきたわけでありますが、この不公平税制というのはいかなるものが不公平税制と理解しておるのか、これをお伺いしたいと思います。
  67. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは総理にお尋ねになりましても、また私どもにお尋ねになりましても、一般論で申します不公平税制という言葉の意味は、確かにこれは使う人によって異なりますので、必ずしもはっきりしていないというのが申し上げられる限界ではなかろうかと思っております。  ただ、代表的な例としては、いわば租税特別措置ということではなかろうか。この点につきましては、先ほどの質疑者への答弁にも総理からお答えがございましたが、特定の政策目的を実現するため、いわば税負担の公平を必要最小限度の範囲内において犠牲にするという性格のものであろうかと思うんでございます。それだけに税負担の公平確保の観点から申しますならば、いつまでとか、いつからとかいうことでなく、絶えず見直しを行って今日まで来たわけでございます。  これらは毎年御議論をいただきながら、なかんずく五十二年度以降諸種のこれらについての改廃の問題が議論され、議了していただいておるというような問題については、これからも一層絶えず見直していくという姿勢を堅持して対処すべきものであるというふうに考えておるところでございます。
  68. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 臨調の答申におきましても、納税環境の整備ということが言われ、当委員会でもいろいろ論議されたところでございますが、申告税制の見直しをやり、自営業に記帳義務を課することを検討していると、このように聞いておるわけでございますが、大蔵省としてはこういう方向を決定したのかどうか、この点をお伺いいたします。
  69. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま御指摘になりました納税環境の整備の問題でございますが、実はこれは政府の税制調査会の前回の中期答申から特に顕著に、今後の税制改正の一つの重要なテーマの一環として取り上げられたわけでございます。世上いろいろ議論がございまして、申告納税制度のもとで、特に給与所得者と事業所得者との間におきます所得の捕捉をめぐりましての不公平感、今後のわが国の税制を基本的に見直していく過程におきまして、この不公平感の是正というものを制度面からもう一度追求してみる必要があるということでございます。  したがって、昨年の六月に政府の税制調査会の中に申告納税制度の特別部会というものが設置されまして、東京大学の金子教授が部会長を引き受けられまして、ずっといま作業を続けていただいておるわけでございます。  この作業は、ただいま委員が御指摘になりましたように、申告納税制度の基本は、自分の帳簿なり記録に基づいて申告するというのが原点でございますので、帳簿、記録に基づく申告制度、それからそれを補完する意味におきまして、そういうことが十分達せられない場合の推計課税の問題、それから訴訟になりました場合の税務官庁と納税義務者の間の立証義務の配分の問題、さらには現在わが国の所得税では、所得計算をいたしまして税額のある人が申告義務を負うという、いわば所得基準の申告義務になっておるわけでございますけれども、諸外国の法制を見ますと、たとえば収入を基準にするとか、あるいは一定の外形的な基準で申告義務を課するとか、いろいろな試みが行われておりますので、そういった面も含めまして、申告納税制度全般の見直しの作業をいま続けておられるわけでございまして、私どもといたしましては、でき得れば、この秋ぐらいにも具体的な御結論をいただき、その御結論の結果を見て、制度化すべきものは制度化をする形でまた国会の方にお願いをするというふうな段取りでただいま作業が進行中でございます。
  70. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 不公平税制の一つとして長年言われてまいりました利子配当の分離課税制度、これを総合課税にするグリーンカード制度が、長年の経過を経て実現をしたわけでありますが、これがごらんのように反対でつぶれた。特に与党内にそういう強い反対があって、それで延期になって今後の検討課題になっておるわけでありますが、改革にはいろいろ抵抗もあるわけでありまして、その抵抗に負けるぐらいであれば、やらない方がいいんじゃないか、最初から。  そういう意味で、グリーンカード制も、これは内閣のリーダーシップの欠如が原因であって、われわれも非常に残念に思うわけでございますが、今後の行政改革にはそういう意味内閣の非常な決意とリーダーシップ、また与党内の意見もちゃんとまとめていくだけの毅然とした態度でなければならないと私は思うんでありますが、そういう点の総理の御決意を承っておきたいと思います。
  71. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 税制につきましては、いろいろ税制調査会並びに大蔵省におきまして技術的な検討も加えられていると思います。塩出委員の御議論を体しまして私たちも努力してみたいと思う次第でございます。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから当委員会でいつも問題になる点の一つは、税務職員の増加の問題でございます。これから国家の基盤をなすのは税収であり、国民協力なくして国家は成り立っていかない。そういう意味で税務職員が納税者の方々に接触していくということは、これは納税制度に理解を求め、公平な税制を実現する上に非常に大事なことじゃないかと思うんですね。現在、たしか法人税の実調率も約一〇%、個人の場合は四%ということは、十年に一回、個人では二十五年に一回しか実調ができない。そういう意味で税務職員の増加ということが論議されてきているわけであります。  こういうような定員も削減するという中で、税務職員だけふやすということは、これはむずかしいかもしれませんけれども、私はもっと国全体の配置転換等も考えて、これは大蔵大臣としてもなかなか言いにくい立場にはあると思うんですが、行政管理庁長官でもあった総理として、税務職員の増加ということはもっと前向きに考えるべきではないか。前の国会の答弁では、税務職員が増加すればそれだけ悪質な脱税も防げるし、結果的には税収増にもつながるというわけでありますが、そういう点の総理の御意見、御見解を承っておきたいと思います。
  73. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国税庁の職員が膨大な仕事を一定の限度の職員でいままで切りさばいてまいってきた努力には私は敬意を表しておる次第でございまして、行政管理庁長官のころからその努力を大いに多としておったところでございます。  定員の問題につきましても、内部調整をかなり加えまして、国税庁第一線の税務職員の問題については配慮を加えた次第でございます。今後も内部調整というやり方によりまして、第一線の税務職員の充実をますます期していきたいと考えておる次第でございます。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから今度は減税問題でございますが、景気浮揚に役立つ相当規模の大幅減税を必ずやると、こういう与野党の合意は総理は守ると言明しておるわけでありますが、われわれもそのように理解をしております。そこで財源をどうするのか、こういうような問題になってまいりますと、われわれにも、特にこうしろというそういう案もないわけでありますが、財源については総理としてはどのようにいまお考えでございますか。
  75. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはまさに大蔵省そのものの問題でございますので、私からお答えをさしていただきます。  与野党の合意がございます。したがって、今後税収動向を見きわめて、そしてこういうきょうのような問答を踏まえながら、財源問題をも含めて税制調査会で精力的に御検討を願う。したがいまして、四月二十五日に各党話し合いに基づいて自由民主党の幹事長から私の方へ――失礼いたしました。四月二十二日であったかと思いますが、税制調査会をできるだけ早く開くようにという御要請がありました。私といたしましては、税制調査会は総理大臣の諮問機関でございますので、内閣の方へ御連絡を申し上げまして、したがってお許しをいただいて、四月二十五日に本年度最初の税制調査会の総会が開催されたわけであります。  何よりも大事なことは、これは広く税制一般に対して御審議をお願いするわけでございますけれども、税制調査会におかれましては、その都度私どもが、国会における御論議、これを正確にお伝えし、それを議論の大きな土台ともしていただいているわけでございますので、まずはその段階におきます国会での各党合意の経過、そしてさらにはこの委員会での問答等をまさに詳細にお伝えをいたしたわけでございます。その結果、税制調査会は、所得税、住民税に関する部会を設置するということをお決めいただいたわけでございます。  ただ、税制調査会の審議もまさに始まったばかりでございますので、減税問題について本格的な御検討をいただけるのは、五十八年度税収の土台ともなります五十七年度税収が確定する七月ごろになるんではないかというふうに考えております。  したがって、財源を明示する段階にはないということに相なるわけでありますが、かねて各党で御協議もいただいておるようでございますけれども、かつては減税に関する小委員会が衆議院大蔵委員会に置かれておった。したがって、私ども政府の責任で処理すべき課題であるということは重重認識しておりますものの、言ってみれば、税制調査会と国会との論議を詳細にお伝えする一つの整理機関というような意味においても、各党のお話し合いいただけるような場ができないものであろうかというようなことも、それなりにわが党の方、自由民主党の方を通じていまお話ししつつあるというふうに私ども承っておるところでございますので、それらのことをもろもろ考えながら、財源について税制調査会で御議論をいただける。私どもはそれに対してあらゆる予見は持たないまでも、国会等の議論を正確にお伝えする役目を果たしていくという考え方で当たろうと思っておるところであります。
  76. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 実際、いまの経済状況から見て、なかなか景気浮揚に役立つ規模のそういう税収増があるということも非常にむずかしいのじゃないか、われわれもそのような気がするわけであります。そして過去のように、また、財源かないから減税ができなかったと、そういうようなことは今回は許されないんではないかと思います。六年間所得税の減税見送り、そういうようなことで総体的には勤労所得者には重税、増税に結果的にはなっておるわけであります。  そういう意味で、直間比率の是正とか、あるいは税負担のあり方の変更、そういうふうなことで、租税負担率の上昇を伴わない処置であるならば、これは税制調査会の一つ方向ではないか、こういう意見もあるやに聞いておるわけでありますが、減税のためには、そういう間接税あるいは法人税等のそういう増税をやってでもこの所得税減税をやる考えであるのかどうか。その点のお考えはどうですか。
  77. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは総理からも申されておりますごとく、各党の合意というもので、それにまた議長見解という裏づけがなされ、本院における予算審議の際に委員長見解というようなものでこれに裏づけがなされておるものでございますので、これは政府の責任においてやらなければならないことであるというふうに考えておるところでございます。  しかしながら、今度の各党のいろんな話し合いの過程からいたしまして、言ってみれば、課税最低限でありますとか、あるいは租税負担率でありますとか、そうした基本をも含めた検討をすべきであるということでございますので、そうなれば当然のこととして税制調査会の御審議をいただく、こういう手順で先ほど申し上げたような現段階に来ておるところであります。したがって、税制調査会におかれましても、かねていろいろな御議論の主張もございますので、いま塩出委員のおっしゃったような問題についても、これはいま例示なさいました二つが議論されますという意味で申し上げるわけではございませんが、議論の対象になり得る課題ではなかろうかというふうに私も思っておるということでございます。
  78. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは総理にお伺いしたいと思うわけでありますが、六月に参議院選もあり、また衆議院の解散もそう遠くはない。先ほど鈴木委員の質問に対しても総理は、増税なき財政再建を貫く、こういうような決意を述べられたわけでありますが、巷間伝えられるところによりますと、大平さんの例を考えても、増税等は選挙の争点にしたんでは選挙に勝てない、だから選挙をやって、その後でそういう案を出す、こういうようなお話も言われておるわけであります。  私は、今日までの率直に物を言う中曽根内閣の姿勢にはある種の好感を持っておるわけでありますが、そういう点から考えて、少なくとも財政再建をどのような手順でやっていくか。場合によってはこういう点の増税を国民にお願いしなければならない。こういうような点をもし将来やるのであるならば、これは選挙の争点としてはっきり国民協力を求めるべきではないか。それをうやむやにしたまま選挙後に抜き打ち的に増税をするという姿勢は許されないんではないか。このように思うわけですが、中曽根総理としてはどうお考えですか。
  79. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建という方針、指針はこれを守ってまいるということを重ねて申し上げましたが、今日も重ねてそれは申し上げるつもりでございます。  特に、いわゆる一般消費税というようなものにつきましては、私も非常に苦い経験がございまして、昭和二十三、四年のころ芦田内閣片山内閣のころでございましたけれども、これに似た取引高税というものをやりまして惨敗をいたしまして、これをやった芦田内閣の方も、それから社会党の方も激減をしたという、そういう苦い経験を持っております。そういうような経験も踏まえまして、国民にかかってくる消費税というような性格のものについては、よほど慎重でなければいかぬというのは身をもって体験しているところでもございます。  そういう面もありまして、増税なき財政再建ということを堅持していきたいということを前から申し上げましたが、その線に向かって努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、中曽根総理の今回のASEAN歴訪の件についてお尋ねをしたいと思います。  先ほどからいろいろ質問があって、総理のお考えもお聞きをしたわけですが、特に今回は人的交流に力を入れて、そしてASEAN各国から毎年七百五十人の青年を日本に招待する、国境を越えた信頼と友情をつくる、こういう政策は国家の安全保障にもつながる問題であり、われわれも非常に賛成であります。  そこで、特に今回総理ASEAN諸国を回られて日本への留学生等に大分会われたようであります。いままで日本に約一万近く来ている留学生が、日本から帰ってから、本当に日本理解者となるんではなしに、むしろ反日的になるんではないか、こういうふうなことが言われてきたわけでありますが、そういう点は今回どのように理解されたのか。このように日本へ招待する計画は推進するとともに、現在日本に来ておる留学生の人たちに対しても、そういう人たちが祖国へ帰って、日本の本当の理解者になるように、そういう留学生、特に私費留学生に対する施策も充実さしていかなければならないんではないか。このように思うわけでありますが、この点についての御意見を承っておきます。
  81. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ASEANへ参りまして、ある国で大学の学生男女と懇談をいたしました。私は中へ入っていっていろいろ皆さんと話しましたが、日本のことはわりあいに知っているようであり、また知らないところもあります。しかし私が非常に衝撃を受けましたのは、女子大学生がいわゆるセックスツアーというものを質問いたしまして、こういうことはやめてもらいたいという御注文がございました。私は非常に恐縮いたしまして、日本の観光業者、旅行業者についてはいま厳重な規制をやって、いやしくもそういうことを行うことがないようにわれわれは注意している、そういうことも言ったのでありますが、一国の総理大臣に対して、学生は率直であるとはいえ、そういう発言が出てくるということは、日本のためにはなはだ悲しむべきことでございまして、そういう点はわれわれは厳重に戒めていかなければならぬ。  先ほど申し上げましたように、各国首脳部に対しましても、日本経済的に強大であるということと道徳的は価値が高いということは別の問題なんだ、自分はそれを明らかに認識しているということを言ってまいりました。それも、民衆からそういう目で日本が見られているということを私が意識していたからでございます。そういういろいろな点について勉強させられる点があったと思います。  それからある国で留学生に集まってもらいまして、元留学生、戦前の留学生と戦後の留学生と集まってもらいまして、議員の皆さんと一緒に懇談をいたしました。そのときに、私は斎藤栄三郎参議院議員にバトンを渡しまして、いろいろ質問に答えてもらったんです。そのときに斎藤さんが、一体あなた方は日本に留学していたけれども、自分の子供をもう一回日本に留学さしたいと思うか、そう思う人は手を挙げてくれ、あるいはイギリスやアメリカに留学さしたいと思う人がいたら手を挙げてくれと、そう言いましたら、大体半々ぐらいでしたね。日本に留学していた方々が、自分の子供を日本に留学さしたいという人と、外国へ留学さしたいという人は半々ぐらいであった。手を挙げない人もありました。手を挙げない人は多分われわれ日本に好意的ではないと周りの人は言っておりました。しかしそういう結果が出たということは、われわれとしては反省しなけりゃならぬ大きなことがあるんです。  私は、その懇談会が終わった後、その留学生のそばへ行って、何が原因だったかということを聞いてみました。いろいろ原因のことも聞いてまいりましたけれども、しかしそういう点は、今後留学生や皆さんを御招待するについて、よほどわれわれが注意していかなけりゃならぬこともあるということを反省した次第なのであります。
  82. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ASEAN諸国における発言について、先ほど鈴木議員の質問に対して、関係のない第三国に侵入したことを反省しているというんですが、その意味は、総理訪問された国だけではなくて、日本軍が侵入したアジアのすべての国を指しておるんでしょうか。
  83. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当然のことであります。
  84. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そういたしますと、中国東北地方に侵略して満州国をつくった、そのこともこれは誤りだったと、こういう反省の上に立っておるわけですね。
  85. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もとよりそうであります。
  86. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、第二次世界大戦の戦争の性格についての認識をお聞きしたいんですが、これはいろいろな要素がある。一つはファシズムと民主主義の戦い、それからもう一つの面として帝国主義同士の衝突という側面がある。要するに、力で各国を抑えるという面では日本もその一方であった。こういう点はお認めになるでしょうか。
  87. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは人によっていろいろ歴史観はございまして、学者によっても、また内外において、千差万別でございますので、政府がここで統一見解みたいなことを申し上げるのは必ずしも正しくはないと思うのです。みんなおのおのの考え方をお持ちであると、そう思っております。  しかし、外国に対して多大の御迷惑をかけ、かつまた国際的には侵略行為である、そういう厳然たる批判を受けておる、こういう事実はわれわれは冷厳に認識していなければならないと思っております。
  88. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほどの答弁の中で、他国との関係で侵入をした、その他国というのは当然米国、英国などを指しておるわけでしょうね。そうだとすれば、それらの国との対立抗争ということで、必然的にそうなると思うんですが、この場ではその認識についてはお答えいただけないでしょうか。
  89. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる戦争に関するいろいろな原因、あるいはその他の問題につきましては、学者や、あるいはマルクス主義史観とか、あるいは民主主義史観とか、そういうものによりまして、いろいろ考えはあるわけでございまして、政府がどれこれと言うことは必ずしも適当でないと考えております。
  90. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、社会科学的な幾つかの評価の問題を言ったわけですけれども、それはお答えいただけないんで、大変残念であります。  そこで、もう一つは、ASEAN訪問の成果について、先走った報道に迷惑していると、こういう発言がございました。しかしこれは、総理みずからの不沈空母、三海峡封鎖、あるいは一千海里シーレーン防衛などの発言が、ASEAN諸国に危惧の念を起こさして、それに対する反応だったんじゃないか。要するに、総理みずからの言動がそういう報道などの一つの原因じゃないか、こう思うんですが、いかがですか。
  91. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の言葉の足らなかったことも反省しております。しかしまた私の意を適当に伝えてくれなかった面もありまして、そういう点は遺憾であると申し上げたわけであります。
  92. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、訪問して、そういう日本に対する軍事大国化への懸念――これは実際あったことは事実ですからね。それが払拭されたと、このようにお考えですか。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の訪問におきまして、いろいろ御説明申し上げまして御理解をいただいた、各地の新聞におきましても大体理解していただいた。そういうことは非常に喜びでありました。  しかし、民衆の奥底の中にあるものはうかがい知れないものもございます。われわれは、より深く注意深く、より節度を持って、謙虚に接しなければいかぬ、これは非常に重要なことである、私みずからそういう態度を持っていきたいと思っております。
  94. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その御認識は大変大事だと思うんですが、要するに面と向かっては言わなかったということで理解されたと言えば、ちょっと早過ぎるんじゃないかと思うんですね。現に、今回の場合には、経済援助を受ける側という面も相手国にありますから、面と向かってあからさまな批判というのは少なかったんじゃないかと、こう思うんです。  問題は、総理訪問国を離れてからの各国首脳やあるいは有力紙の反応ですね。たとえばこういうのがあります。これはインドネシアのムルデカという五日付の新聞です。「中曽根首相の目的は資源の確保だけでなく、日本の一部の軍拡主義者の要望を取り入れて、ASEAN諸国に日本軍国主義の基礎を作ろうとするものである」、こう批判したと。それからマルコス大統領は八日の記者会見で、「日本防衛力の増強は無制限に広げないようクギをさした」と。これは批判的な気持ちがあらわれておりますね。そして「東南アジア諸国の口に出さない感情は、日本戦争中に得ることに失敗したものを、経済支配によって成功しているというものだ」と。  こういうかなり厳しさを持った発言をしておるんですが、それらの要するに面と向かっての発言でなくて、その後のこういう発言などについては総理はどうお考えですか。
  95. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういういろいろな御発言もあり得るやに、当然想像いたしまして、先ほど申し上げましたように、深層心理の中にあるものをわれわれは洞察していかなければならぬ、そのように考えておるわけであります。
  96. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、訪問前にあったいろいろな危惧や懸念、それが払拭は決してされていないということはやっぱり事実じゃないんでしょうか。そういう点では、今回の訪問の成果というものを余り高く自画自賛することは適切でない。こう思うんですが、いかがですか。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は自画自賛したことはありません。より謙虚により注意深くいかなければならぬということを重ねて新聞記者の皆さんにも申し上げておる。ただ、少なくとも公式会談におきまして理解し、あるいは支持すると。また、ある国におきましては、それは当然のことであるとちょっと激励されるような印象のお言葉もございました。首脳会談で正式にそういうことが行われたということは、各国全部大体よく理解したということで、正式に発表されたということはいままでにないことではないかと思います。しかし民衆の奥底にあるものやそのほかにつきましては、いろいろ曲折したものや複雑なものもある。当然それはあり得ることでございまして、われわれはより謙虚により注意深くしていかなければならない、そう思ったわけです。  ただ、私が一番うれしいと思いましたのは、ロムロ外相にお会いしたときです。ロムロ外相は、パターン半島からマッカーサー元帥と一緒にオーストラリアへ退去された方であります。一番日本を批判しておった、ASEANを代表して言っておられた方でありますが、この方が、私と会いました際も、非常に虚心坦懐に理解を示していただきました。それから私が去った後も、外務省の報告によりますと、各国大使との会談におきまして非常にさっぱりとした理解ある発言をしていただいておりました。ロムロ外相がそういうことをおっしゃったということは、私としては非常にうれしいことであったように思います。
  98. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、アメリカへ行った場合と今回の場合とは同じ人かと思えるほどという批判もありますように、かなり違ったニュアンスが出ておったように見えるんですが、その場合に、平和憲法の立場に立ちそして軍事大国にはならない、こういう態度は繰り返し表明されたというんで、国内に帰ってきて、その立場を明確にそして大胆に打ち出してこそ、アジア諸国からの信頼が高まるんじゃないか、私はこう思うんです。  そこで先ほど来、防衛費、これは前回の大蔵委員会で大蔵大臣にお聞きしたんで、総理にお答えいただきたいんですが、先ほど来、これも聖域とは位置づけないというんですが、しかし五十九年度の予算を見てみますと、後年度負担だけで約九千億円、その点を織り込みますと、それだけで対前年五%増となることは明らかでして、これはふえること間違いないですね。どうしたってこれでは、予算面から見ましても、軍事大国化の道を進まざるを得ないというんですが、その辺について、単にまだ決まっていない、これから各省庁と交渉してということではなくて、総理としては、外国へずっと平和憲法の立場に立ち軍事大国にならないということを表明してきたんですから、その立場での一つの明確な内閣態度を打ち出すべきじゃないかと思うんですが、どうですか。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本防衛は、憲法の範囲内で非核三原則を守り、専守防衛を厳守して、個別的自衛権の範囲内において行う。われわれは航空母艦長距離爆撃機のような攻撃的兵器は持たない。たとえもし侵略が行われた場合に、シーレーンが設けられるという場合、いまアメリカと検討しておりますが、その場合でもASEANには届かない、グアムにも届かない、そういうようなことはいままではっきり言っていることでございまして、ここでもう一回確認しても結構でございます。
  100. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 さらに、核戦争の危機をアジアから一掃するということがきわめていままさに緊急の課題だと思うんです。アメリカの核兵器もそれからソ連の核兵器もアジアと極東から全部引き揚げると、こういういまの時宜にかなった、日本としての態度を明確にすべきことであるし、そのことがアジア諸国からの信頼を受けることだと私は思うんですね。  そこで問題は、総理からは恐らく非核三原則があるという答弁が返ってくると思うんですが、それは確かにつくらず、持たず、持ち込ませず――その持ち込ませずについては、これはもう確認せずで、実際持ち込んでいるんじゃないかという、こういう批判が実際あるわけです。これは自民党の議員さんに会いましても、政府はうそを言っている、アメリカの軍艦が入ってきて途中でおろしてくるはずないじゃないかと。これは名前を言ってもいいですが、森下泰議員なんか堂々と言ってますよね。恐らくそれが客観的事実だろうと思うんです。そういう批判がある以上、そういう懸念や疑いがある以上、ここで非核三原則を名実ともに日本列島の上に実現するというもっと明確な非核日本宣言をこの機会にすべきじゃないか、こう思うんですが、総理の御見解、決意はいかがですか。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは従来の内閣と同じように非核三原則を守ってまいるつもりでございます。
  102. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それに対する疑いが実際あり、毎回国会でも指摘されておる以上、アジア諸国を回ってきて、この機会に、アメリカに対しても、ソ連に対しても、明確な態度を打ち出すという点では時宜を得たことだと思うんですが、そういう御意思は全くございませんか。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは日米安保条約のもとにアメリカと提携しているのでありまして、戦争を起こさせないために抑止力の理論にも一部立っておるわけであります。もちろん外交活動とかそのほかいろいろな面もございますが、抑止力の面にも立っておる。その抑止力の中には核の傘というものも含まれている、広義においては含まれている。前から申し上げているとおりでございます。そういうような面から、アメリカとソ連の間におきまして、STARTあるいはINFの交渉が進展することをきわめて望ましいと考えて、それを期待しておる次第でございます。
  104. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは核の傘じゃなくて核の靴だと思うんですが、その議論は時間がかかりますのでやめますが、問題は、核の傘だといったって、非核三原則ということは、国内に核を持ち込ませないという、そういうことだと思うんですね。そしてそれが疑われている以上はこの機会に明確にすべきだと思うんですが、御意思がないので次に移ります。  先ほど直間比率の問題の質問がありまして、これは大蔵大臣の方から、直間比率というのは結果であって、税体系の見直しという意味である、こういうことだといいますと、直間比率の見直しというのは余り正確な議論でない、このように承るわけです。ところが総理自民党の参議院政策、いま検討中で、間もなく発表されると聞いてますが、その中の一つの項目に、直間比率の見直しなど税体系のあり方の検討を図る、一方では、所得減税については、これは財源のめどがないということで公約への盛り込みが見送られている、このように私は承知しております。このような公約、直間比率の見直しという公約を掲げて選挙に臨むんでしょうか。
  105. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまの問題につきましては、私どもそういう問題を直接まだ相談を受けたという段階にはございませんが、勉強はしておる言葉でございます。あの直間比率の問題と、それから税体系の見直しと、続けて読んでいただければある程度わかる話かなという印象を持っておる。まだ議論を詰めたわけじゃございません。それと、何回も申しておりますが、国民には税体系の見直しというよりも直間比率という方がなおわかりやすいという認識も現実にある。したがって、繰り返し繰り返し税体系の見直しという表現を私も意識しておりますけれども、書き方としては、 私もちょっと読んだ限りでございますが、こういう書き方もあるのかなと――まだ相談を受けたわけじゃございませんので、私見でございます。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 所得税収税の問題は、各党各派との合意の点もあり、所得税減税は実行いたします。
  107. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 竹下さんは自民党のいま役員でないんで、私がお聞きしたのは、総裁である総理にお聞きしたんですけれども、この問題は当然大型間接税などを含めて、直間比率といえばそういうことになると思うんですけれども、それが選挙が終わったら直間比率出したじゃないかということで、これはすぐさま選挙を終わったらば実施に移りやしないか、こういう懸念を持ちます。しかし、時間が参りましたので、そんなことをしたらば、それこそ、中曽根さんの先ほどの発言じゃありませんけれども、自民党は大量に議席を減らすということを申し上げて質問を終わります。
  108. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理は、就任以来しばしば国民にわかりやすい政治ということを強調されてまいりました。しかし私は、実態はそのお言葉とは裏腹に、破綻状態にある財政の危機をどのような施策で回避し、財政を再建するかという問題につきましては、国民総理の真意をはかりかね、全く不透明と受けとめているというのが実態ではないかと、こう認識しております。  私は、去る四月二日、予算委員会における経済財政問題の集中審議の中で、いわゆる消去法を用いまして政府の真意をただしました。その際の総理、大蔵大臣、経企庁長官の御答弁を要約してみますと、まず大蔵大臣は、特例公債の償還額は今後累増するが、国債は国の債務であり、国際に対する信頼を保つためにも現金で償還すべきであり、特例公債の借りかえは念頭になく、それを行うことは不見識の感を免れないと、これを否定されました。続いて大蔵大臣は、一時的緊急避難措置は回避し、既往の措置はできる限り早期に解消すべきであるという臨調の答申については、これを踏まえて今後対応していく決意である、緊急避難措置を繰り返さないことを決意として述べられました。さらに大蔵大臣は、行政改革によって歳出カットは大胆に行わなければならないが、法律に基づく自然増、公務員のベースアップ、国債費、地方交付税交付金等を考えると、約五兆円と言われる五十九年度の要調整額を歳出カットだけで埋めるということは非常にむずかしい、今後誇大広告は厳に慎しみたい、こう述べられました。  そして経企庁長官は、政府が五十八年度予算成立後に打ち出そうとしております、もうすでに打ち出しましたが、その総合経済対策は三・四%という既定の実質経済成長率確保するものであって、この経済成長率を上方修正することを可能にする条件を成熟させようとするものではないと、こうお答えになりました。  そして総理は、本日の委員会でも強調されておりますように、増税なき財政再建という臨調の本旨をあくまでも貫いて努力する、増税は不況を招き、あるいはそのこと自体が需要の喚起を阻害し、そして結局は財政の肥満、肥大化、乱費を招くという考え方には変わりがないと、こう述べられたわけでございます。  全部消去法によってまことに結構ずくめの回答が並びました。私は、この御回答では財政再建というきわめてむずかしい連立方程式を解くことはできないと思うのでございます。魔術には種がございます。しかしこの答弁には種がございません。このような結構ずくめの答弁で財政再建が果たせるなら、それは魔術ではなくして魔法であります。総理が常々言っておられます国民にわかりやすい政治という視点に立って、一体総理は財政再建をどのような方策で達成しようとしておられるのか、その基本的なお考えをお伺いいたします。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 柄谷さんからは何回もこの問題について精細な御質問をいただいておりますが、いままで申し上げましたように、臨調方針を尊重いたしまして、増税なき財政再建という筋をあくまで守ってまいるつもりであります。  最近は種なしスイカというのもございますから、財政につきましても懸命な努力をしてまいるつもりでございます。
  110. 柄谷道一

    柄谷道一君 本日の段階ではそのような御答弁の域を出ないとすれば、新経済計画も追ってでき上がってまいります。またマイナスシーリングという実態も夏ごろからは開始しなければなりません。  大蔵大臣、国民がわかりやすい財政再建方策、言葉ではなくて、その具体的プランはいつ出るんですか。
  111. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 財政改革の基本的な考え方については、中期試算の方で申し述べておるところでございますが、できるだけ審議の手がかりとして必要と思うようなことを歩み寄って中期試算を発表いたしましたが、これをさらに精度を高めていく努力というものは私どもも当然のこととしなきゃいかぬ。それを皆さん方のもとに提出するのは、さていつかということになりますと、経済審議会の議論も始まったばかりでございますが、これとの整合性も考えながら適当な時期――適当な時期と言いましても、来年度の予算の審議が済んでから出したんじゃ、これは何の意味もないことになりますので、そのようなことを念頭に置きながらお出しするような努力をしなきゃならぬと思っております。
  112. 柄谷道一

    柄谷道一君 くどいようでございますが、それは本年中、秋くらいまでを目標に努力されるという決意はございませんか。
  113. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 秋と申しましても、初秋と晩秋とございますけれども、大体委員の念頭に置かれておるようなのと、私が念頭に置いておるようなのと、そう相違はないじゃないかと思っております。
  114. 柄谷道一

    柄谷道一君 じゃ、私の考えと違いはないと、こう理解をいたしておきます。  そこで、総理にお伺いいたしますが、与野党代表者会議で減税問題に対する合意が成立をいたしました。その内容は、国民世論の動向にこたえ、景気浮揚に役立つ相当規模の所得税及び住民税を五十八年中に実施するという趣旨でございます。これは当初自民党幹事長が示されました五十八年度中という案を、わが党塚本書記長を中心とする野党各書記長の折衝の結果、これを五十八年中と改めたものでございます。しかし最近、税調の審議過程で五十九年一月実施という話が出たり、また四月六日の新聞報道によりますと、大蔵大臣が記者との一問一答で、予見は差し挟めないが、五十九年一月実施の可能性もあるとお答えになったと報道されております。このように、公党間の公約というものをはみ出す動きがあるということはきわめて遺憾でございます。  そこで、総理に再確認の意味でお尋ねいたしますが、与野党代表者会議における合意どおり、減税は実施されるものと確認してよろしゅうございますか。
  115. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、いま柄谷委員御指摘のとおり、所得税及び住民税の減税についての法律案を五十八年中に国会に提出するとの確約があったことは承知いたしておりますというふうに、予算委員会でも官房長官からお答えを申し上げたとおりでございますので、まさにそういうことは承知をいたしておるところであります。  ただ、税制調査会に対して、予見を持ったことは申しませんが、このような問答があったことを正確にお伝えしてあるという事実をもって御認識をいただきたいと思います。
  116. 柄谷道一

    柄谷道一君 五十八年中に法律案を提出する、それは手続でございます。実施の時期は五十八年中であるということが与野党代表者会議の合意であると、こうわれわれは踏まえておるわけです。その認識間違いございませんね。
  117. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そのような議論が行われておるということも正確にお伝えをいたしております。
  118. 柄谷道一

    柄谷道一君 それは議論が行われたというのじゃなくて、合意事項ではございませんか。
  119. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) それは私どもがここに正確に書いてあるとおりというものを合意事項と政府側としては断定すべきであろうかと思っております。したがって、そういうことが合意事項として理解されておるではあろうという意味も含めて正確にお伝えをしておるということであります。
  120. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理、いま私が申しましたのは、いやしくも与党幹事長の意思でございます。総裁として、私の認識間違いございませんね。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大蔵大臣の答弁のとおりであります。
  122. 柄谷道一

    柄谷道一君 それは幹事長の答弁どおりではないんですか。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府といたしまして、大蔵大臣の答弁を私が確認をいたしております。
  124. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは非常に微妙な問題でございまして、この問題につきましては、認識が違うとすれば、これは重大な問題でございますから、私は審議はとめるとは申しませんけれども、これは早急に再度与野党幹事長・書記長会議を持って、そのすでに行われた合意内容というものについて再確認する必要がある。その再確認されたものにつきましては、総理、お守りになりますね。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん、自民党も含めた各党、各派の合意を尊重はいたします。
  126. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、減税の財源でございます。多くの同僚議員からの質問もございましたが、私は、減税の財源は論理的には自然増収、新規増税、既存税目の増税、赤字国債の発行、予算執行面の節減による不用額、これしか道はないわけでございます。  大蔵大臣は、四月五日の記者会見で、景気動向は早い時期には予測するわけにはいかない、減税財源として自然増収のような不確定要因は当てにはできない、こう述べられた。次に、現実問題として、年度途中の追加増税措置は前例がなくむずかしいとも述べておられます。そうすれば、これは消去法で消しますと、自然増収や不用額にも大きな額を期待することは現実むずかしゅうございます。とすれば、私は当然のことながら、与野党幹事長・書記長会議の合意というものの重みというものは、総理、大蔵大臣も御認識されているわけですから、五十八年の減税は最終的には、財源の一部か全部かは別として、特例公債によらなければならないという帰着になると思うんですが、いかがですか。
  127. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そこのところが非常に注意しなきゃならぬ問題であろうと思うのであります。  今日までの経過の中におきまして、減税小委員会等でも、とにかくそれによるための特例公債の発行を財源に充てることはやめようという議論がなされておる。そしてまた一方、議論の過程でございますが、戻し税などはとらないということもなされたと言われる。そういたしますと、私はいま念頭に、とにかく赤字国債を財源として減税財源に充てるということは、いやしくもわれわれとしては持ってはいけないし、両院の委員会で、いま柄谷消去法でおっしゃったような議論が出たことも事実でございますので、それも正確に伝える中身の一つだな。いまの場合の経過からすれば、赤字国債をもって充てますなどという答弁をわれわれとしてできるはずのものでもないと思うのであります。     ─────────────
  128. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、穐山篤君、丸谷金保君が委員辞任され、その補欠として福間知之君、片山甚市君が選任されました。     ─────────────
  129. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理にお伺いいたしますが、五十八年一月十九日に経企庁が発表した五十七年経済の回顧と課題の中に、「財政再建を今後いかに進めていくかについての方向性が明確でないこともあって、将来に対する不透明感が払拭されていない」、「このことが民間の経済活動に対し一つの足枷となっていることは否めない」。これは政府が不透明であることを述べておられるわけですね。  九十八国会における経企庁長官の経済演説の中でも、「中長期の展望、指針を明らかにし、企業や家計の先行きの不透明感を払拭することは、現下の景気回復のためにも欠くことのできない条件であります」。不透明感を払拭しなければならぬことを強調されております。しかし、中曽根内閣が組閣以来約半年を経たいまも、冒頭私が質問をしたように、不透明感は払拭されておりません。  臨調最終答申でも、その中長期の計画を明らかにして国民理解や合意を得るように努力すべきであることが指摘されております。  いまや、この不透明感をいかにして払拭するか、財政再建に対する具体的な政府の決意とその施策を明示するかが国民が注目しているところであると思うのでございます。  ところが、総理は、計画という呼称を展望ないし指針に改める、そして何だか計画という言葉は社会主義的なにおいがある、こういうことを言っておられるわけでございますけれども、その考え方はいささか短絡的ではないだろうかと私は思います。  そこで、具体的に多くの質問を用意してきたんですが、時間が参りました。触れられませんけれども、私は速やかに中長期の計画を明示して、その明示した方針に沿うべく行政府が全力を傾注する、それなくして国民の政治に対する信頼を得ることはできないであろう、こう思うものでございますが、最後に総理の御決意を質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 柄谷さんから経済展望を早く示せ、基準点を明らかにせよ、そういう御質問をかねていただいておりますが、われわれもその線に沿って努力を継続し、さらに積極的にこれに取り組んでまいりたいと思っております。経済審議会にすでに諮問もしておりまして、経済審議会におきましても活動を開始しておるところでございますので、しばらく時間をおかし願いたいと思う次第でございます。
  131. 野末陳平

    ○野末陳平君 総理にお聞きしますけれども、今回の外遊、なかなかの成果があったように印象を持っておりますが、ASEAN諸国からのわが国に来る留学生が、日本で勉強して帰って親日家になってくれれば一番いいんですが、実は必ずしもそうではなくて、日本嫌いというか、日本に批判的になる。そういう留学生がいるようなんですね。ところが、アメリカや西ドイツなどで勉強してくると、そういうふうなことは全くないようなんですね。実は私も大学で教えているんですけれども、そこに来ている留学生たちからいろいろ聞くと、どうやら国によって多少は違うものの、そんな話が出るんです。  総理、今回学生あるいは日本から勉強して帰った人たちに会われたそうですが、どうでしたか、そんなことありましたですか。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは先ほども答弁しましたが、学生に会いましたときに、学生からいろいろ日本の質問がありました中に、女子大学生から日本のセックスツアーについて質問がありまして、こういうものは取り締まらなきゃというふうな質問もありました。また日本に滞在中皆さん方は不愉快なことがなかったか、そういう質問も私はいたしました。彼らは自分の感想を述べました。  また今度は、別の国で戦前の留学生と戦後の留学生に集まってもらいましていろいろ懇談をしましたときに、皆さんの息子を日本にもう一回留学させたいと思う人は手を挙げてください、そうある議員が質問いたしましたら、大体半々ぐらいです。もちろん、手を挙げない人もかなりおりました。イギリスやアメリカへ留学させたいという人と日本へ留学させたいという人が大体半々くらいです。あとは手を挙げない。そういう情勢でございました。  そういういろんな情勢を考えてみると、せっかく留学生にお越し願いましても、日本に対して不信感を持って帰すのでは、大変なことでありますので、この点は大いに改革しなければならぬと思っております。  なおまた、その際、斎藤参議院議員から、自分も大学で教えているけれども、各国に帰った留学生を日本の商社等が採用するという問題については、留学生諸君も実力をつけてもらわなきゃ困る、甘えてはいかぬ、そういうことも厳しく言われまして、その点は彼らもうなずいておりました。いろいろそういう有益な話があったと思います。
  133. 野末陳平

    ○野末陳平君 そのいまのお答え、さっきも質問のときにありましたですけれども、一つだけ、甘えちゃいけない、勉強して実力をというのはいいんですが、事実いろんな留学生がいますよ。いますけれども、恵まれている一部の者を除いては、非常に待遇が悪いといいますか、勉強するような環境に置かれてないんですね。これはお金だけで解決しちゃいけないことなんですが、    〔委員長退席、理事増岡康治君着席〕 しかし、そもそも非常に予算が少ないんで、もうちょっとお金を出してあげて、日本にいい印象を持ってもらわないとね。それはいま言ったような実力をつけるなんという以前の問題なんですね。  ですから、ここでお願いできることは、要するにもうちょっと留学生対策にお金を出して、快適にとは言わないけれども、いまは非常に待遇悪いですから、勉強できるように金がまず必要じゃないか。そんな気がするんですが、その点はいかがですか。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、留学生と研修生を比べますと、一目瞭然としておりまして、研修生は各会社、工場に配属されて、職長や何かが真剣によく教えてくれている。あるいは政府の電総研とか農業技術研究所に行っている人たちもまじめによく教えてくれている。非常にそれは感謝されておるようです。それに比べて留学生に対する措置というものは、ややもすればほっぽり出しという感がなきにしもあらずです。そういう点はこれから大いに検討を加えるポイントであると感じて帰ってまいりました。
  135. 野末陳平

    ○野末陳平君 事実、いまの研修と留学と分ければそのとおりですけれども、少なくも留学生は日本で勉強して向こうへ帰ってかなりの立場に立つ可能性があるわけですから、いい印象を持って帰るためには、われわれも考えるべき点がいろいろあるでしょうけれども、ひとつお金の面でまず最低の待遇ではないようにしてほしいと思いますから、お願いをしておきます。    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕  次は、先ほど総理大臣は昔の苦い経験を引き合いに出されまして、消費税のようなものはどうも好ましくないんだからということでしたけれども、消費税はよくないから反対で実現したくないと、こういうような意味なんでしょうか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ああいうタイプの税金は、国民皆さんの非常な抵抗を受けて好ましくない税金であると、そういうふうに自分は感じたことを率直に申し上げたわけです。
  137. 野末陳平

    ○野末陳平君 事実、いろいろな抵抗があったりして好ましくないなあと思います。ですからその率直な印象はいいんですが、しかし、そうではあっても、やらざるを得ないときが来たら仕方がないというようなこともあるわけです。だから抵抗があって好ましくないからやらせない、断じて許せないと、そういうところまで積極的なのかどうか、それがお聞きしたかったわけです。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般消質税には反対であります。
  139. 野末陳平

    ○野末陳平君 明快にお答えいただいたんで、ついでにそれでは似たようなものですけれども、EC型付加価値税なんという活字による桐想もあるわけですね。一般消費税反対であるとすると、じゃこのEC型付加価値税についてはいかがでしょうか。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体増税なき財政再建を考えておるのでありまして、そういうことを考えたことはございません。
  141. 野末陳平

    ○野末陳平君 たてまえとしてはそのとおりだと思います。ですけれども、増税なき財政再建は絶対にできるんだ、それを努力目標にしてというまではいいんですが、絶対にできるかどうかということになると、どうでしょうか、できると思っていない人の方が多いんではないか。そのくらいに心配なんですが、それは総理を御信頼申し上げて、絶対に増税なき財政再建ができるんでしょうかね。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは内閣として何回も言明しておりまして、われわれは全力をふるってその目的を達成したいと思っております。
  143. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうなれば、増税もないから、消費税も付加価値税もなくて一番安心なんですけれども、総理の、内閣の今後の助力を見守りたいと思います。  それから減税を実行いたしますと明言なさいましたので、これは減税を待望している国民が多いわけですからいいんですが、その時期は若干ずれてもこれはやむを得ないとは思うんですよ。ただ、景気浮揚を図るためにはどのくらいの規模かというところが気になるところでして、スズメの涙ほどの減税でもやったじゃないかと言われてもこれはうれしくもないだろう。  そこで、総理の頭の中には――大蔵大臣には何度もこの問題についてはお考えをお聞きしているわけですから、総理が実行いたしますとお答えになった以上、どのくらいの規模が頭にあるのか。あるいは、それは財源との兼ね合いで言えないが、どのくらいの規模だったらいいなあという希望を総理は持っておられるのか。その辺、個人的で結構ですけれども、お示し願えますか。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは大蔵大臣も私も申し上げておりますように、七月の五十七年度の歳入の確定等も見まして、また景気の需要、景気の動向その他等も見まして、じっくり構えて見当をつけるべき課題でありまして、現在、通常国会の段階におきまして言明することは差し控えたいと思います。
  145. 野末陳平

    ○野末陳平君 それだったら、大体どのくらいの規模の減税だったら景気が浮揚するのかという、一般論で結構ですけれども、そういうことは言えるですよね。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 景気の動向もいま微妙な段階にありますし、また円がどの程度の強さにいくかという点もまだ必ずしも確定的要素はございません。そういう意味におきまして、収入が確定する七月ごろまでに一体景気がどういうふうに国内外において動くか、あるいは円かどのような推移を今後たどるか、そういう非常に未知の条件が多過ぎます。そういう意味におきましてもう少し時間をかしていただかなければならぬと思う次第です。
  147. 野末陳平

    ○野末陳平君 もう一つ減税関係で、財源は明示できないというお答えで、これは当然そうだと思うんですが、ただ、柄谷委員からもありましたけれども、あれこれととうてい無理な財源もあるわけです。  そこで、一時新聞などでも伝えられて、衆議院の減税小委員会にも出たんですけれども、額から言えば小さい増税ですね、たとえば電話利用税だとか、運転免許税だとか。そういうような財源を求めてでも減税するというのは、どう考えても国民をほかにしているというか、だれも喜ぶ人はいないと思うんですね。もちろん、これはまだ話だったんですから、ここであれこれ言うんではありませんが、たとえば電話利用税というのを新規につくって、その財源でもってまた減税をしていくという、こんなことまともな政治家が考えるような案とは思えないけれども、現実に出ている。これは国民から見ると実にあほなような話ですね。  ですから、まさかそんなばかなことになるとは思いませんけれども、総理、仮にそんなことになったら、これはだめだと、そういう減税なぞ意味がないというお考えになると思うんですが、いかがですか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 野末さんの民衆を代表する声として謹んで拝聴しておきます。
  149. 野末陳平

    ○野末陳平君 ときどきうまいことを言われますんでね。  それで、減税は当然実行するとなっても、その財源によっては規模あるいは性格がずいぶん変わってくると思いますが、これは筋から言えば、歳出の大幅カットのようなもので賄うべきなんです。ただし、それが簡単にできるかどうかというところで今後いろいろと苦労があるだろうと思うんです。  で、先ほどから総理のおっしゃる増税なき財政再建です。臨調答申を守っていくという基本の立場なんですが、いろいろ苦労しても予算編成でそう簡単にはいかないんですよね。結局どこを削るかといって、削る優先順位なぞあるわけはないし、削られる方は反対するし、この際来年度の予算編成は、マイナスシーリングをもっと徹底して、たとえば向こう二年間なら二年間だけは全部一割カットを一律にするとか、思い切った手を打って、その間に制度の根源にさかのぼった改革を決めていくというように、総理の最高の指導力を発揮して大胆にやる、それ以外にもう手はないんじゃないか。頭ひねって、幾ら大蔵省があれやこれやっても、おのずから限界があって、それじゃまた同じ結果になるんじゃないか、来年度も今年度と。そう思うんですよ。  だから、総理が増税なき財政再建を断言なさる以上は、相当な大胆な指導力というものが必要とされるわけですから、そのために総理は何をやるんだというところがお聞きしたいんですね。何かお役人任せ、大蔵省任せでなく、私はということで――総理憲法とか防衛については個人的な見解を大胆に言われるわけですから、どうしても財政再建の決め手、総理考えの基本をお聞きしたいと思うんですが、時間が来ましたので、これを最後に、よろしく。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま貴重なお話を承りまして、かなり実際的な現実的な立場に立ったお話をいただきました。しかし、それも果たしてできるかできないか、七月以降の情勢を見ないと何とも申し上げるわけにはまいりません。しかし財政状況はきわめて厳しい状況にございまして、決して甘い事態ではございません。国民皆さん、政治家の皆さん、みんなが汗をかいてこのむずかしい時期を手を組んで乗り切っていただかなければできないという時期であると思いまして、諸般の点について目を配りまして最善を尽くしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  151. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  152. 赤桐操

    赤桐操君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  政府は、臨時異例の特例措置であると言いながら、昭和五十年度以来延々と今日に至るまで、財政法が禁止している赤字国債を発行し続けてまいりました。  鈴木内閣が公約として掲げてきた五十九年度に赤字国債依存から脱却するという財政再建計画は、私どもの指摘どおり、あえなく雲散霧消し、内閣退陣の最大のきっかけとなったのであります。  これを受けた中曽根新内閣の財政再建計画については、国民は一縷の期待を抱いていたのでありますが、本年度予算成立後一カ月余りを経た今日に至ってもなお、その方針をすら示し得ない状況にあります。  当然のこととして、本年度予算は、財政再建計画未策定の状況のもとで編成され、財政再建とは無縁の予算であり、防衛関係費、対外経済援助費等の国家安全保障関連費の突出と、国民生活関連経費の後退が目立つ内容となっております。  さらに、内容にわたって検討してみますと、自賠責特別会計からの繰り入れ及び電電公社からの納付金の特例にしろ、別途提案されている国民年金特別会計への繰り入れの削減にしろ、あるいは後年度において返済したり、あるいは将来の財源を先食いしたり、いずれも後年度負担をますます増加させるのみで、財政再建に逆行するものと言わざるを得ないのであります。  本年度末における赤字国債の累積残高四十七兆六千億円、公債全体では百十兆円にも及ぶ残高を抱え、公債の利払い費のみで本年度は七兆五千億円を超える巨額に達する破局的状況にありながら、一方で不公平税制を放置し、他方で後年度負担を増加させるなど、中曽根内閣に財政再建の意思があるのかどうかさえ危ぶまれるのであります。  五十八年度予算の重要な歳入法を構成している本法律案についての法形式についても、例年の赤字公債の発行とともに、異質の税外収入の増収策を図る措置を盛り込んでいるのに加えて、歳出に関する定率繰り入れの停止措置までを歳入に関するものと一括して提案するなど、大量の赤字公債発行の重要性を隠蔽する意図のあらわれとしか言いようがないのであります。  五十七年度に続いての国債費定率繰り入れの停止により、減債基金制度は両三年のうちに事実上崩壊して機能は完全に喪失してしまうのでありますが、今後政府はどのようにして国債に対する国民理解と信頼を担保しようというのでありましょうか。不幸にして質疑を通じて納得のいく答弁はついに得られなかったのであります。  自賠責再保険、あへん、造幣局の各特別会計からの繰入金、電電公社、中央競馬会からの納付金等をかき集めての税外収入の増収策は、いずれも財源あさり以外の何ものでもなく、これによって得られた金額相当分は、その分歳出削減の努力を怠ったことにほかなりません。  それだけではありません。臨調答申が指摘した特別会計並びに特殊法人についての抜本的見直しを経た上での一般会計への繰り入れや納付の措置ではなく、また受益者への還元策も何ら考慮が払われていないではありませんか。  しかも、特別会計と一般会計との貸し借りに当たっての付利についての原則すらあいまいなまま、その場しのぎのやりくりに追われているのが実態であります。  電電公社からの臨時納付金の先食い、中央競馬会の五十六年度に続いての特別納付金も、その存立の基盤である独立採算性を根底から否定する措置であると言わざるを得ません。  いまこそ特別会計制度、特殊法人全般について、そのあり方や経営について抜本的に見直すときであるにもかかわらず、これを放置したまま余裕のある特別会計、特殊法人をねらい撃ちするがごとき措置に対し、断固として反対せざるを得ません。  以上、本法律案に対する反対理由を述べてまいりましたが、本委員会の質疑を通じて明らかになったことは、財政再建に対する政府の姿勢は、依然として安易かつ消極的なまま終始するであろうということであります。このまま推移するならば、国民負担のみが過重となるだけでなく、財政再建はおろか、ついには破局に至るであろうことをここに強く警告をいたして、本法律案に対する私の反対討論を終わります。
  153. 増岡康治

    ○増岡康治君 私は、自由民主党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、賛成の意を表明いたします。  先般成立を見ました昭和五十八年度予算は、わが国経済の着実な発展と国民生活の安定向上を図るため、財政再建を強力に推進することが緊急かつ重要な政策課題であるとの考え方に基づいて、歳出、歳入の両面にわたる厳しい見直しを行うことによって編成されたものであります。  本法律案は、この五十八年度予算と一体不可分の重要な財源確保のための授権法案でありまして、現下の国の財政状況から見まして、これに盛られている内容は、いずれも必要にしてやむを得ない措置であると考えます。  まず第一に、特例公債の発行についてであります。  本年度における財政収支の見通しは、政府の努力にもかかわらず、なお引き続いて特例公債に依存せざるを得ない状況にありますが、五十七年度補正予算に比べて三千二百九十億円を圧縮し、公債全体では一兆円の減額に努めているところであります。  第二は、国債費定率繰り入れ等の停止についてであります。  この措置は、繰り入れを行うことによる特例公債の一層の増額を避けるためのもので、現下の非常事態においては、まことにやむを得ない措置であると考えます。  このような措置をとりましても、現状において公債の償還に支障はなく、政府が減債制度を維持していく方針を堅持していることからしても、国債に対する国民理解と信頼は確保し得るものと信じます。  第三は、自賠責再保険以下の特別会計及び各機関からの一般会計への繰り入れや納付についてであります。  本年度におきましては、きわめて厳しい財源事情に加えて、五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的支出に対処する必要から、税外収入において特段の増収措置が講じられておりますが、本法律案一般会計への繰り入れや納付の措置はその一環であり、いずれも本年度限りの特別措置であります。以上の措置は、各特別会計及び特殊法人等の事業の遂行や経営に支障が生じない範囲で、かつ利用者等への配慮をも加えてとられるものであり、やむを得ないものと考えます。  今後、政府におかれましては、国民の合意を得て、財政改革が着実に実現されるよう、これまで以上に財政収支の改善に尽力されるよう切望いたしまして、本法律案に対する私の賛成討論を終わります。
  154. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  反対する理由の第一点は、政府みずからが公約した五十九年度赤字国債からの脱却ということを完全に破綻させたばかりでなく、今後の財政再建の目標年度すら明示していないことであります。  政府は、増税なき財政再建を旗印に五十九年度赤字国債脱却を公約し、マイナスシーリング等で歳出の削減を進めてまいりました。しかしながら、その内容は、文教、社会保障等の福祉の後退は明らかであり、同時に所得税減税の見送りによる実質増税により、国民に大幅な負担増を強いております。それにもかかわらず、財政再建に関する政府公約を破綻さしたことはきわめて遺憾であります。また、政府は破綻した財政再建策にかわる今後の財政再建の方策をいまだ明確にしておらず、国民の将来に対する生活の不安感をいたずらに増長させ、民間経済を萎縮さしていることはとうてい容認できるものではありません。  反対する理由の第二は、政府が不公平税制の温存、防衛費の異常突出など、歳入歳出面にわたる不合理の是正を放置し、赤字国債の増発を行おうとしていることであります。  政府は、五十八年度に赤字国債を六兆九千八百億円も発行しようとしておりますが、特例公債の公債残高だけで四十七兆六千億円にも上り、公債依存体質なますます深める結果となっております。しかも、政府は、赤字国債を発行する前に当然すべき不公平税制の是正を放置しているのが実情であります。すなわち、政府みずからが提案、成立さしたグリーンカード制度を、みずからの手で事実上の廃止に追い込んでいることが何よりのあかしであります。歳出面においても、五十八年度の一般歳出をマイナス三・一%に抑え込み、特に国民生活を圧迫すべく、福祉関係予算を大幅に後退させながら、防衛費のみ聖域をつくり、他の主要経費と比較し圧倒的に伸ばす異常突出をさせております。こうした政府の偏向的姿勢は断じて納得できるものではありません。  次に、反対する第三の理由として、本質的な財政健全化の問題等を避け、つじつま合わせの財源あさりに終始していることであります。  わが国の財政が大量の国債発行残高を抱え危機に瀕しているいま、徹底的な歳出構造の見直しをしないまま、二年連続して国債整理基金特別会計への繰り入れを停止することは、財政の硬直化を助長するだけであります。また、自動車損害賠償責任再保険特別会計からの一般会計への繰り入れや、特別会計や特殊法人などからの一般会計の納付も、特別会計や特殊法人のこれまでの経緯、国民生活への還元を考慮せずに、財政の御都合主義のみを押しつけたものであります。このような措置は、財政の実態を覆い隠すのみで、財政の根本的な改革とはほど遠いものであり、認めがたいのであります。  以上申し上げて、私の反対討論といたします。
  155. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表し、昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に反対の討論を行います。  反対の理由は、第一に、本法案が、政府自身がつくり出した財政破綻のツケを国民に肩がわりさせようとしていることであります。  政府自民党は、その責任を省みることも、施策の転換も行わず、本案に端的に見られるように、国債増発、国民の財産の食いつぶしなどを進め、財政破綻と国民犠牲を強めようとしており、断じて認められません。  第二は、本案が軍拡、大企業奉仕の反国民的な昭和五十八年度予算財源を保証するためのものであることであります。  国民には臨調行革による生活関連予算の切り捨てを進める一方、軍事費の伸びが二年連続大突出となることなど、財界の戦略に沿った総合安保のための予算は大幅に積み増しされ、大企業への補助金等も手厚く措置されております。かかる予算を裏打ちするための本案はとうてい容認できません。  第三は、本案が当面の糊塗策であり、かつ財政の運営に一層のゆがみと困難をもたらすものであるという点であります。  赤字国債七兆円を含む十三兆円を超える国債発行が、その消化面での問題とともに、国債残高をふくらませ、年々十兆円にも及ぶ元利払いを必然化し財政危機を強めること、ひいてはこれが福祉切り捨て、大増税となって国民にはね返ってくることは必至であります。二年連続の定率繰り入れ停止も、国債償還財源の枯渇を早め、減債制度の崩壊を導く暴挙にほかなりません。  自賠責特会積立金の無利子での借り上げは、本来契約者に還元すべきもので、制度の趣旨に反するものであります。  あへん特会、造幣局特会からの繰り入れは、その動機と使途に問題があり、賛成できません。  電電公社積立金国庫納付の前倒しも、本来利用者国民に還元すべきものであります。  中央競馬会の国庫納付は、求められている制度、運営の見直しを放置し、ゆがみを助長するものにほかなりません。  以上指摘したように、本法案は認めがたい施策の寄せ集めであります。このような財政運営をやめ、国民生活優先の財政再建、民主的行革を目指すための政策の根本的な転換こそが必要となっていることを強調し、反対討論を終わります。
  156. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の討論を行います。  わが国経済は、昭和五十六年度以降不況が深刻化し、実質経済成長率は三%台の低迷を続けております。これは世界不況の余波による側面もあるとはいえ、政府が所得減税の実施や公共投資の拡大などの積極的経済、財政対策を怠ったばかりでなく、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことなど、政策の対応を誤ったことに起因しており、私がしばしば指摘してきたように明らかに政策不況と言わなければなりません。  この政策不況は、政府が五十九年度赤字国債脱却の方針に固執する余り、財政が本来持つべき景気調整機能を全く無視した財政運営をとり続けてきた結果と言うべきであり、かかる事態をもたらした政府の責任はきわめて重大であります。不況の際に財源がないからといって増税を行い、公共投資の抑制を続けていては、不況は一層強まり、結果的には税収が減って、かえって赤字国債は拡大するのであります。与野党が合意した景気回復に役立つ相当規模の大幅減税を速やかに実施するとともに、公共投資などの政府支出を補正し、これを名目経済成長率以上に伸ばす財政運営を講ずることが、わが国経済の発展と財政再建に寄与し、国際経済摩擦緩和のために必要であることを深く認識し、政府がいまからでも積極的な経済財政運営への転換を図るよう強く求めるものであります。  政府はこれまであらゆる場において「財政再建」という用語を用いてまいりました。竹下大蔵大臣も昨年十二月の財政演説の中で、いまや財政再建についての国民の世論は盛り上がっている、今日ほど財政再建が幅広い国民の支持を得ていることはかつてなく、心強い限りである、と述べられているのであります。また、政府が最大限に尊重することを明言している臨調答申においても、一貫して「財政再建」の用語を用いております。  しかるに、大蔵大臣は今国会における審議の中で、国民に対する何らの説明もないまま、「財政再建」という言葉を避け、「財政改革」という用語に意識的にすりかえようとしていることは、全く理解に苦しむところであります。政府は、これまでの経緯や臨調答申を踏まえ、用語を「財政再建」に統一し、今後とも財政再建を貫き通すべきであり、言葉をかえて責任を回避したり、国民の目をそらすようなこそくな手段はとうてい許されるものでないことを強く警告するものであります。  政府は、臨調の最終答申が指摘しているように、五十八年度において徹底的な歳出構造の見直しや不公正税制の是正に着手しないままに、国債費の定率繰り入れ等の停止や自賠責特別会計からの一般会計への繰り入れなどの財政技術的操作によって表面的な帳じり合わせをしようとしております。このような一時的ないわば緊急避難的な措置は問題の先送りにすぎず、財政体質改善の見地からは何の意味もないばかりか、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味できわめて問題であり、とうてい容認できません。  わが党は、政府が制度の根本的改革につながらない、いわば実質的赤字国債とも言うべき緊急避難的措置を今後一切行わず、既往の措置は速やかに解消することを強く求めます。また、政府がいまだ明らかにしていない赤字国債脱却目標年度の設定と財政再建計画並びに中長期にわたる経済計画を早急に決定し、もって企業や家計の先行きについての不透明感を払拭することにより、わが国経済の発展と国民生活の安定を図るよう要求するものであります。  最後に、緊急避難的な措置の一つである自賠貴特別会計からの一般会計への繰り入れについて申し述べます。そもそも自賠責保険は、交通事故の被害者救済のために創設され、その運用益は将来の収支改善、交通事故防止対策等に活用すべきものであり、またこの保険の単年度収支が五十三年度以降毎年赤字を続けている現状に照らしても、政府が法の目的や実情を無視し、四千万人を超える自動車ユーザーの反対を押し切って、運用益の半分を取り崩して十年間無利子で貸し付けを行うという措置を強行することはきわめて遺憾であり、政府に対し猛省を促すものであります。  なお、以上申し述べた観点から、本法案第四条第二項による一般会計からの自賠責特別会計への繰り戻しについては、大蔵、運輸両大臣間の覚書にかかわらず、速やかな償還の実施と完了を図るとともに、繰り戻し完了前における安易な保険料の引き上げは決して行わないよう政府に強く求め、私の討論を終わります。
  157. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  158. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  大河原太一郎君から発言を求められておりますので、これを許します。大河原太一郎君。
  159. 大河原太一郎

    大河原太一郎君 私は、ただいま可決されました昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、現下の厳しい財政事情にかんがみ、次の事項について十分配慮すべきである。  一、財政再建に対する具体的方策に関する考え方については、今後における経済運営の指針についての検討を踏まえ、昭和五十九年度予算編成に際して、これを明らかにし、もつて国民理解協力確保できるよう努めること。  二、財政再建の推進に当たつては、歳出・歳入全般にわたる財政構造の合理化、適正化に努め、特例公債依存の財政から速やかに脱却できるよう全力をつくすとともに、建設公債についても、今後の経済・財政事情に即して慎重に対処し、あわせて公債発行額及び公債依存度等に関する簡明な指標によって公債発行についての歯どめが掛けられるよう検討すること。  三、予算編成に当たっては、財政再建の方針に即して施策の優先順位を厳しく判断し、歳出の削減・抑制、補助金等の抜本的洗い直しを進めるとともに、いたずらに後年度負担の累増を招くことのないよう、厳正に対処すること。  四、財源対策としては、中長期にわたる展望に基づいて対応を図り、臨時的な税外収入に安易に依存することのないよう留意するとともに、負担の公平化について一層努力すること。  五、現行の減債基金制度については、今後とも堅持するよう努めるとともに、満期到来の公債が保有者に対して確実に償還されるよう所要の償還財源確保し、もって公債に対する国民の信頼の保持に万全を期すること。  六、今後建設公債の借換えも本格化することに備え、金融・資本市場の動向を踏まえた市中消化の円滑化のための発行条件の弾力化等適切な国債管理政策に関する方針を確立するよう努めること。  七、自動車損害賠償責任再保険特別会計に滞溜している運用益について、保険契約者への還元のための具体的方策を速やかに検討すること。   また、今回の繰入金相当額の一般会計から同特別会計への繰戻しについては、国の財政事情、同特別会計の収支状況を踏まえ、できる限り早期に、かつ適切に行うよう努めるとともに、安易な保険料の引上げは行わないよう努めること。  八、高度情報化社会における電気通信事業の重要性にかんがみ、日本電信電話公社の適切な事業運営に支障をきたすことのないよう留意すること。   右決議する。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  160. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいま大河原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  161. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 多数と認めます。よって、大河原君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。竹下大蔵大臣。
  162. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。
  163. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) なお、審査報告書の作成は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後二時十五分まで休憩いたします。    午後一時十五分休憩      ─────・─────    午後二時十七分開会
  165. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  電源開発促進税法の一部を改正する法律案国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  これより両案の質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  166. 赤桐操

    赤桐操君 私がまずお伺いしたいと思いますのは、一昨年厚生年金保険及び船員保険その他共済組合等への国庫負担繰り入れの特例措置に関する法案の審議が行われました。この法案が提出されるに至るまでいろいろの経過があったと思いますが、これについて、まず厚生省の方から御説明を承りたいと思います。
  167. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先生のいまおっしゃいました行革関連特例法でございますけれども、この法案は昭和五十六年の七月十日におきますところの臨時行政調査会の第一次答申の中におきまして、厚生年金保険等の公的年金に対する国庫負担について、当面負担率を下げる等その削減を図るという趣旨を直接受けた形で立案されたものでございまして、昭和五十六年八月二十八日、社会保険審議会並びに社会保障制度審議会に諮問されまして、同年九月十七日、社会保険審議会から答申がございました。さらに翌十八日には社会保障制度審議会から答申を受けまして、九月二十四日、行革関連特例法案として第九十五回の臨時国会に提出したものでございます。
  168. 赤桐操

    赤桐操君 そういたしますと、今回のこの平準化の法案については、現在まで当然法律で定められている繰り入れるべき国庫負担について、後年度に繰り延べをするという点では、一昨年手当てをしたただいまの厚生年金等の国庫負担繰り入れの特別措置と、その趣旨は同じものであると、こういうふうに私は理解するんですが、この点いかがですか。
  169. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 技術的にぎりぎり詰めてまいりますと、いま委員おっしゃいましたようにきわめて近いものかと思います。  ただ、前回の行革特例法案と今回のいま御審議いただいております法律案との基本的な違いというのがございます。どこがどう違うかといいますと、今回の法律案は純粋に繰り入れ技術的なものに集中しておるわけでございます。御承知のように、これから昭和六十四年まで毎年毎年その負担額が減ってまいりまして、六十五年以降また負担額が上がっていくという奇妙なかっこうになっておりますものを、中長期的になだらかな形で負担をしていこうという、そういう繰り入れ技術の問題に集中してございます。前回の行革特例法案は、先ほど厚生省の方から御答弁ございましたように、当面年金の負担率を引き下げるというところに重点があって、それを受けた形になっておったわけでございます。  でございますから、前回の行革特例法案のところはなかなか議論のあるところでございました。と申しますのは、負担率を引き下げるということは、負担率そのものを下げちゃいまして、繰り入れ率を下げるのと違う扱いの法案を出すということも考えられるわけでございます、純粋技術的な問題ではございませんから。でございますが、いろいろ法案を議論していく過程におきまして、御承知のように、結果的に言いますと、繰り入れの特例という形で今回のと同じような整理にはなっていると思いますが、それに至るまでの過程におきまして、多分に純粋技術的なもの以上のものといいますか、がございました関係上、その辺のところが今回の場合と前回の場合と話が違っておる、こういうことでございます。
  170. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろ説明をなされておりますが、今回の措置も国庫負担について後年度に繰り延べするということであるし、前回の措置も同じことになっているわけですね。国民の目から見てそういう差があるように感ぜられますか、この問題について。私は、そういうようには国民の目に映らないし、私どもの立場からしてもさような考え方にならない、こういうように思うんですが、厚生省の考え方はいかがですか。
  171. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先ほども御答弁申しましたように、負担率を下げる等その削減を図るという臨調の答申を受けた形で立案されたものでございます。したがいまして、制度審には諮問すべきかどうかということを判断する時点におきましては、国庫負担制度との関連におきまして措置の性格についての議論が生じておったということでございます。そういう意味から慎重を期するために諮問したものでございますので、今回の場合にはそういうことがないということからその諮問をしないということが妥当ではないかというふうに思うわけでございます。
  172. 赤桐操

    赤桐操君 私は、残念ながらそういう御説明は納得できないんであります。前回の場合におけるところの措置については、これまたかなりの高額なものが後に残されておって、五十九年度に赤字脱却の後においてはその措置をするというたてまえになっておるようでありますが、この三年間で、この考え方も実は、率直に言って、できないことになっていると思います。こういう状況の中で再びこの問題が出てきているんでありますが、厚生年金保険の国庫負担の繰り入れの特例については社会保障制度審議会へ諮問をされている、そして答申を受けているのに、このような措置を実施するについては制度審議会に今回は諮問をしなかった、こういうようになっているんですが、その理由は前回の場合と違う、こう言っているんですね。たとえば具体的に言ってどういうように違ってくるんですか。これから措置していかなければならない社会保障制度上の問題として考えたときにどういうように違いが出てくるんですか。
  173. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 将来の社会保障制度の取り扱い上どういう違いが出てくるかというお尋ねでございますが、先ほど主計局の次長から御答弁申し上げましたように、性格的にはかなり似ている制度ではございますけれども、片方は国庫負担率そのものを臨調の答申を受けて暫定的に削減するという形になっておりますのに対して、今回の国民年金法に関するものは国庫負担率は据え置きまして、それに対する国庫負担の繰り入れを平準化するという形でございますし、さらに六十四年度までは国庫負担額が減少し以後増加するものを、なだらかに平準化するという金額を各年度ごとに今回御提案申し上げております法律で明定していただく、さらにその間の運用収入の減少額につきましてもこれを補てんしてまいるという形でございますので、もちろん厚生年金につきましても何ら不安はないわけでございますけれども、国民年金につきましては、一層明確な形で繰り入れの特例法案という形でこれが定められている、こういうふうに解釈をいたしている次第でございます。
  174. 赤桐操

    赤桐操君 それでは制度審議会の方に伺いたいと思いますが、制度審としてはどのような考え方でこれを受けとめられておりますか。
  175. 新津博典

    政府委員(新津博典君) ただいまそれぞれ御答弁がございましたように、最初の厚生年金保険法にかかわります国庫負担の特例措置につきましては、私どもが諮問を受けます段階で、厚生年金法本法の国庫負担規定の特例を定めるんではないか、あるいは臨調の答申との関係から言えば、財政再建中だけ実際に減額されてしまうんではないかというようなはっきりしない面がございまして、そういう段階で諮問を受けたわけでございます。その後審議会の審議の過程で質疑応答等を通じまして、先ほども主計局次長から答弁がございましたように、繰り入れの一時的な繰り延べである、一般会計から特別会計への繰り入れの一時的な繰り延べである、後で当然返すし利子も見るということで、最終的には法案が決まったわけでございますが、繰り返しの答弁になりますけれども、今回の国民年金法にかかわりまする繰り入れの特例法案につきましては、最初から特別会計法の特例法であるという性格が明確でございまして、特別会計法にかかわる特例法であるという性格であれば、従来、社会保障制度審議会では、特別会計の関係の法令は諮問を受けない、あるいは審議をしていないという長い間の慣習がございますもので、そういう説明で、正式な諮問がないことについては一応了承したという経緯でございます。
  176. 赤桐操

    赤桐操君 国庫負担の問題というのは、国民年金法の八十五条で決まっているものですね。少なくとも本来ならこの八十五条で、国が負うべきものについての特例措置としてこれは法案化されるべきものであったと思うんです、こういう形で出るとしても。ところが、今回は会計法上の扱いとしてこれは出されてきている。純粋な意味で本当に会計法上の扱いだけでこれは遂げることができるものであるかどうか。また国民の立場から見ていて、こうしたものが重なってくる場合においては一層不安が出てくる。  老後におけるところの所得保障という問題は、私は大変大きな問題だと思う。そうしたものについて、国民皆さんに疑問を持たせないような、そういう形をとりながらいくとするならば、当然これは単なる会計法上の取り扱いではなくて、国民年金法の八十五条の問題の特例扱いとしてなさるべきものであったと私は考えるんです。そうでなければ、社会保障制度のこうした全体の中における操作でありますから、たとえば厚生省全体の社会保障関係予算にこれはかかわってくる問題でありますし、そういう将来のことを考えるというと、また日本の現在の財政状況等を考えてみるときに、これは国民の立場にするならば、非常に大きな不安を持つものでありますので、そういう意味合いからするならば、当然国民年金法の特例措置として扱い、したがってこれは社会保障制度審議会等において慎重に論議を重ねた上で法案としてここに提出さるべきものであったと私は考えるんですが、この点についていかがですか。
  177. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 先ほど来御説明してございますように、これは国民年金法の八十五条の方をいじりませんで、特別会計法の特例にいたしているわけでございます。  で、委員おっしゃるのには、国民年金法本法の方を直します方が物の筋だし、それから国民の信頼が得られるのではなかろうかと、こういう御指摘かと存じますが、本法の方をさわりますとどういうことになるかといいますと、負担そのものもそれだけしなくていいという、本質的に負担のよって立つ基盤というものがなくなるわけでございます。  いま私どもがお願いしてございますのは、負担はするという基盤は残って、足はそこの大地についておりまして、ただ、ついてるんだけれども、一時その負担の入れ方を変える、こういう考え方でございますから、どちらかと申しますれば、本法をいじりました方がそれぞれの年金財政そのものにとっては影響が格段に大きいわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、そういった年金財政に与える影響を少なくするという観点から、本法の方はさわりませんで繰入規定だけを直していく。そういたしまして、一時的に本法で予定します負担額と繰入額との間に差ができる額をきちんと法律で明定いたしまして、そこのところの入れ方につきましてはだれも疑いのないようにきちんとしておく。  そういうことによりまして、この年金会計といいますか、年金財政に対する国民の皆様方の信頼感をきちんとしておきたい。こういうのが趣旨でございますので、よろしく御理解のほどを賜りたいと存じます。
  178. 赤桐操

    赤桐操君 いずれにしましても、当面の実際の処置については非常に似通っているという答弁が出ておりますが、私はそのとおりだと思うんです。それだけにまた、国民の側から見れば、非常に不安感を持つ、そういうしろものだと思います。しかも、前回の場合には三年に限っている。今回は五十八年から六十三年まで、この六年間。しかも、あとの繰り入れていく期間も全部入れると十五年間に及んでくる。こうなってまいりますると、これだけの長期間にわたって国の方から入れていくものが減額されてくるということになるならば、これは私は大変大きな問題だと思うんです。  で、仮に繰入減に伴う運用収入等を見ましても、これはかなり大きなものになるし、しかもこれは七十二年度以降に入れるんだと、こう言っているわけですね。そうすると、当然これは社会保障制度全体の問題の中の一つになってくるわけなんで、社会保障制度審議会でも尽くすべきは尽くし、そしてまた疑問の持たれるような問題については論議を重ねた中で扱われるべきものであったと、こういうように考えるわけでございます。  特にまた、前回の社会保障制度審議会の答申等を見まするというと、少なくともこの問題、この減額処置については、このような措置については、「応急異例のものとはいえ、長期的な財政の安定と制度に対する国民の信頼が不可欠である年金制度にとっては軽々になさるべきことではない」と、こう言い切っておるんです。要するに、国民の側から見て非常な不安な、不信感を持つようなそうした措置については軽々に扱うべきではないと、こう言っておるわけなんであって、そういう点から見るとするならば、当然この措置はついては、私は単なる経理上の扱いという形だけで済ませられる問題ではないと、こういうように考えるんですが、厚生省の考えはいかがですか。
  179. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 委員が御指摘のような社会保障制度審議会の御意見もございますが、年金制度本体に対する国庫負担率については、厚生年金と同様にいたしまして、これに触れることなく繰り入れについて特例措置を設けるという形で、将来はこれを補てんしていくということでありますから、社会保障制度、特に年金制度全体は厚生省の年金局及び私ども保険庁年金保険部でお預かりをしているわけでございますけれども、そういう立場から見まして、これが国民に不安を与えるようなものではないというふうに存じております。むしろ法律ではっきりここを決めていただくことによって、制度の将来にわたる安定が確保されるのではないかと、かように存じている次第でございます。
  180. 赤桐操

    赤桐操君 一つ伺いたいと思いますが、前回の厚生年金の場合においては、繰り延べ措置によって生ずる金額ほどのくらいになりますか。
  181. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 財政再建特例期間中、国庫負担額の四分の一をめどといたしまして繰り延べをするわけでございますが、    〔委員長退席、理事増岡康治君着席〕 もちろん受給者の数等によって変動はございますが、三年間の総計は約七千億程度と見込んでおります。
  182. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、今回の場合においては、大蔵省から出されておる状況からいたしましても、一兆二千二百九十億と大変大きなものになっておるんですね。全体から比較いたしまするならば、この運用収入というのは明らかにされておりませんが、どのくらいになるものですか、一定の利率を前提として。
  183. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 運用収入は幾らぐらいになるかはっきりしたことはわからないわけでございます。わからないと申し上げますのは、二つの要素が不確定でございます。一つは、毎年の金利水準が一体どのくらいになるだろうかということがわからないということです。それからもう一つは、いま委員おっしゃいましたように、各年の減算額、それから加算額というのは、これははっきりわかっておるわけでございますけれども、今後年金額の改定がございますときには、この減算額、加算額それぞれスライドすることにしておりますので、そのスライド率がわからないということでわからないわけであります。  しかしいま別表にお出ししてある数字を基礎といたしまして、たとえば利回りを六%なら六%ということで仮定をいたして計算をしてみますと約一兆円ぐらい、それから七・三%ということで計算をしてみますと一兆四千億円程度と、こういうような、大体の感じとしては、そんなような数字になろうかと思います。
  184. 赤桐操

    赤桐操君 私は大変大きなものだと思うんですね、この運用益というのは。これを七十二年以降返していくということになるんでしょう。
  185. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) おっしゃるとおりでございまして、七十二年度以降平準化の趣旨にのっとり返していくわけでございます。  平準化の趣旨にのっとりと申しますのは、この法案が、先ほど来申し上げておりますように、黙ってこの法案なしといたしますと、一般会計から特別会計へ繰り入れる金額がU型に一遍減りましてから上がってまいるわけでございますが、それを年率にいたしまして三%程度というなだらかな形でいくように繰り入れていけばよろしいように、この加算額、減算額を設定してあるわけでございます。そういたしますと、これがこういうふうに伸びてまいりますと、七十二年で交差するわけでございます。交差するときに三%の線に沿った形でその差額分を利息で、利息といいますか、いまの運用収入の金額に相当する分を埋めていくという形にいたしますと、五、六年で大体それが埋まっていくという形になるのではないか。金額的には、先ほど申し上げましたように、全部終わってみませんと運用収入の額が確定いたしませんけれども、おおむねそんなような感じではなかろうかと思います。
  186. 赤桐操

    赤桐操君 いずれにしても、前回の場合でいけば七千億、今回でいくと一兆二千億、しかも運用収益がこの一兆二千億に匹敵する、ないしはこれを超えるものであるということはなってくるわけでありまして、これはそう簡単な内容ではないわけであります。運用収益の方の返済の内容はここには出ておりませんから、これはこれからいろいろ出てくるだろうと思いますが、こういう形をとらないで積立金が資金運用部で運営されていくということになるならば、この運用収益はそのままついていくことになるわけですね。基本的には積立金に入っていくことになる、こういう状態になる。それがいま言ったような形でもって先に延ばされることになるわけでありますから、これは国民の側にしてみても大きな問題であろうと思うんです。  大体、社会保障制度審議会というものがせっかくあるんですから、そういうところで少なくとも老後の所得保障の問題に関する問題でありますから、当然素直にそこにかけて、そういった実態も明らかにして、国民の前に納得をいただくよるな形をとってこの法案の審議に入るべきだったと、私はこのことを再度指摘せざるを得ないのであります。  最近の年金をめぐる国民の目というのは非常に厳しくなってきていると思います。昨年の九月七日、八日の朝日新聞の世論調査、ここにもかなり詳細なものが出ておりますが、この内容でまいりますというと、高齢者は一斉に年金に頼っておる。若い人たちの方は、これは若さというものがあるかどうか知りませんが、年金に頼るよりもみずからの自己の財産を中心に考え、貯蓄やそうしたものに比重を置いているようでありますが、年配者になってくると、これはもう挙げてそういう年金というものに頼らざるを得ないわけであります。  この朝日新聞の論調、世論調査等の内容から見ましても、私はかなりこうした問題について考えさせられるものがあるんでありますが、若い人たちほど年金というものに対する関心がなくなってきている。これは高齢化社会に向かっていくに当たって大変重大な問題だと思うんでありますが、これは社会保障に対する政府のこうした姿勢、真実を話しかけ、実態を明らかにしながら、この制度を困難であってもつくり上げていこうというそういう真剣な政府の姿勢が欠けている面に起因しているのじゃないだろうか。こう考えますが、厚生省の判断はどのように受けとめておられますか。
  187. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先生いまお述べになりました朝日新聞の調査結果もそうでございますけれども、先般私どもが実施いたしました二十一世紀の年金に関する有識者調査というものにおきましても、老後の生活設計における公的年金の役割りについての問いに対しまして、公的年金を基礎とし、これに企業年金や個人貯蓄等の自助努力を組み合わせて老後に備えるべきであるという意見が九〇%を占めておったわけでございます。  そのほか国民生活実態調査の結果におきましても、高齢者世帯の所得に年金、恩給が占める割合というものは、年々増加をしているといることでございます。  高齢化社会の到来に備えまして、老後の生活に占める公的年金制度の役割りというものはますます重要になりつつある。年金に対する国民の期待というものはますます高まってきておる。また政府といたしましても、これに対して十分な対応努力をいたしておるというふうに考えております。
  188. 赤桐操

    赤桐操君 さらに、大蔵省の方から提示されている財政収支試算の状況を見るといると、昭和百年ですか、ここにおいては六十六兆円ということになっているようです、積立金が。これは大変順調にこういうように積み立てられていくようにここには出ておるのでありますが、果たしてこんなぐあいにうまくいくもんですかぬ。この数字のように大変順調な積み立てが、将来展望として国民皆さん方に示して、このとおりできますと、こう言い切れる状況にあるのかどうなのか、この点ひとつ伺っておきたいと思います。
  189. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 今後の財政の状況につきましては、当委員会でもすでに十分御議論いただいておりますように、大変むずかしい状況というのが相当長く続くんじゃなかろうかということが想定されるわけでございます。単年度、単年度の財政収支の状況を計算いたしましても、なかなかむずかしゅうございますし、かてて加えて、国債費を中心としました当然増といいますか、決まり切ったような歳出の増加というのが、相当先を見渡しましても、かなり毎年ふえていく。そういう中にありまして、いまこの法案のように、昭和六十三年まで、先ほど御指摘にありましたように、毎年三千億ないし五百億ぐらいでございますが、累計いたしますと一兆一千億程度お金をあるべき額から減額いたしまして、その後六十五年から七十二年までこれを加算して埋め合わしていく、こういう設計でございますが、それぞれの年度の金額と申しますのは、加算する方で一千億ないし二千億。  この負担額といいますのは、国庫負担額全体といたしまして、先ほども申し上げましたように、前年度に対しまして大体三%ぐらいの増加。三%ぐらいの増加額といいますのは、これも多い少ないのいろいろな御議論はあると思いますけれども、今後の経済成長を考えましたときに、三ないし四%程度は、経済成長というのは見込めるんではないかというような御議論も定説的にはあるわけでございますから、そう無理な数字ではないと私ども考えてございます。  で、そういった厳しい状況の中で、まあまあできるという見込みをつけました形でこのスキームができているわけでございます。なかなか毎年毎年の財政運営は厳しく、またつらいことも多いと思いますけれども、私どもはここで法律案をお認めいただけますれば、ここにございますようなスキームを前提といたしまして財政の健全化に向かってなお一層努力してまいりたいと存じております。
  190. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろ大蔵省の方からは予算委員会等にも毎年各種試算が出されてきております。それは政府自体として総合的なものをまとめて、相当の分析の中からつくり上げられた試算であったと思うんですね。しかし、それでもなかなかうまくいかないんですよ、正直申し上げて。この間の予算委員会ではついにA案、B案、C案など出ましたけれども、どれなんだと言って詰め寄っても明らかにされないで終わったんです。展望のないままに予算審議が終了したわけでありますが、そういうような状況の中で、大蔵省から出されているこの内容を見てみますと、これもこんなにまできれいに大変バラ色の年金財政を国民皆さんに期待さしてしまっていいんだろうか、こんなふうな疑問を実は私は持ったわけなんです。  それでいまお伺いしたわけでありますが、要するに、私は数字をつくり上げるのは簡単だと思いますよ。そして、こういう状態になるから、いま政府の方から国が負担すべきものを先に繰り延べても心配ありませんと、こういう立論のために一つの仮定として出す。そういう方法は考えられますが、果たしてこれが国民皆さん方に示して納得していただいてしまってよろしいような将来展望を持つものであるかどうか。この点、私は非常に疑問を持っておりますが、もう一度ひとつ明確に御答弁願いたいと思います。
  191. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 年金につきましては、先ほど来御議論がございますように、国民皆さんから社会保険という形で保険料をいただいて積み立てておりまして、積み立てた金額以上のものを実際問題としてお払いするような形になっておるわけでございます。そういう制度はきちんとしていなければならない。将来的にも不安があってはならない、安定したものでなくてはならないということでございますからして、これはきちんとした出入りの計算をいたしておりまして、将来とも年金財政に不安のないような形にいたしているわけでございます。  別途、先生あるいはそういう意味で御指摘になっていらっしゃるんじゃないかと思いますけれども、その年金財政以外に国の財政というのがある。国の財政というのも、先ほど来お話がございましたように、大変むずかしい状況というのがここのところ続いておる。そうして財政収支試算というのをつくっておりますけれども、毎年毎年の姿というのは、要調整額というのはかなりの姿で出ております。要調整額が出ておりますからして、各年各年の財政運営をしていく場合には、その要調整額を何らかの形でつぶしていきませんと予算にならないという形での苦しみというのがあるわけでございますけれども、それは当然のことでございますけれども、きちんとした形で毎年毎年解決していかなければ、国の財政そのものが崩壊するということはあり得ないわけでございます。片一方、年金の財政というものも安定してもらって、同時にまたそういうことを頭に置きながら国の財政というのも毎年きちんとした形で処理していく。これはもう全く当然なことかと存じます。
  192. 赤桐操

    赤桐操君 次に、スライドの問題で伺っておきたいと思いますが、四十八年度以来スライド制が導入されてきております。物価の上昇に従って年金額の支給をスライドさせていくというものでありますが、従来五%に満たなくても実施をされてきた。しかし五十八年度においては、これは二・七%、五%に至らなかったということでついに年金額の改定が見送られておる、こういう状況にございます。五十九年度の見通しはどんなふうになりますかな、厚生省。
  193. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) いま先生おっしゃいましたように、五十八年度の年金の物価スライドはいま先生がお述べになりましたような理由その他によりまして見送られたわけでございます。  五十七年度の物価上昇率は二・四%と確定をいたしたわけでございますが、来年度におきましては、これを合わせまして五%を超えることになれば当然物価スライドを行う、自動改定を行うということになるわけでございます。
  194. 赤桐操

    赤桐操君 次に、先ほど老後の所得保障の問題で申し上げてきましたけれども、分類してみれば公的年金が一つありますね。それからあと企業年金が大きなところではあります。その他退職一時金、あるいは個人の勤めている間の、現役時代の貯蓄、こうしたものが大体老後の対策になるであろうと思います。  そこで、大企業、中小企業いろいろございますが、特に非常に大きな問題になるのは、中小企業の中で働いている勤労者の老後の問題だろうと思いますが、大企業に働く場合の状態中小企業に働いてきた者と、それぞれ老後を迎えることは同じなんでありますが、この差は一体どういうようになるか。老後の所得保障についての分析なり見方があるならばひとつ示していただきたいと思います。
  195. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先生おっしゃいましたように、退職一時金でありますとか、それから企業年金などにつきましては、一般的には企業間格差というものがあることは否定できないと思います。しかしながら、公的年金制度について言いますれば、たとえば厚生年金について言いますと、定額部分と報酬比例部分があるわけでございますが、この構成によりまして所得格差というものが薄められておる。所得再配分効果というものがその仕組みの中に埋め込まれておるということでございますので、公的年金制度について見ますれば、これはその所得格差というものがそのまま反映しないということが言えようかと思います。
  196. 赤桐操

    赤桐操君 具体的な御答弁でなくて大変不満でありますが、一応先に進みましょう。  いずれにしても、今回のこの繰り延べの措置については、これはもとをただせば、ことしの予算の中で、ゼロシーリングのもとで社会保障予算財源の捻出についてどうするかという問題から発生したと思いますね。そしてその補てん策としてこういう形をとったことは間違いないんでありますが、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  197. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 厚生省全体の予算枠が、国全体の財政事情が非常に厳しい中で大変苦しかったことは事実でございます。それからただいまの御提案申し上げております特例法によりまして、六十四年まで減少し、以後増加する国庫負担国民年金に対する国庫負担平準化するということによりまして、五十八年度以降につきまして厚生省予算の枠がその分利益を受けるということも事実でございます。  しかしながら、これが当初からシーリングとの関連で設定をしているということは必ずしも当たらない。と申しますのは、国民年金特有のそういう財政負担の波を平準化するということに着目をいたしまして、こういう特例措置を考えるということで大蔵省と合意したわけでございまして、その結果として、確かに先生おっしゃるように、厚生省全体の予算がある程度ゆとりが生じたということも事実でございます。
  198. 赤桐操

    赤桐操君 予算編成当時の状況を私も聞いておりますが、八月末の概算要求の段階では国民年金の中の福祉勘定、大体全額一般会計負担されておる。そのうち大きなウエートを占める老齢福祉年金については受給者数が将来漸減をしていく。そうした形の中で、二十八年後にはほとんど支給対象が減ってしまうという状況の中で、二十八年間について所要財源平準化考えたというように私は理解しているんですよ。したがって、その二十八年間の前半で不足財源を資金運用部から借り入れよう、そうして後半では資金運用部の金を返していこう、こういう考え方で厚生省の方は物の考え方をまとめて、概算要求なり折衝が始まったと思うんです。ところが、予算編成の段階で、これは認められなかったという経過になって、結果的にいろいろな措置がとられておるわけですけれども、この認められなかった理由は何だったのか。この点ひとつ明らかにしてくれませんか。
  199. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 昭和五十八年度の概算要求、これは五十七年八月末に行ったわけでございますが、そのときに福祉年金の受給者の減少という事実に着目をいたしまして、資金運用部からの借り入れという要求を行ったことは事実でございます。しかしながら、折衝過程におきまして、この福祉年金勘定といいますのは全額一般会計負担でございまして、独自の財源を有していないというところから、このような勘定が借入金を行うということはできない。すなわち、仮に償還財源一般会計に仰ぎながら借り入れを行うということにいたしますと、健全財政の原則に反する、財政法第四条の規定の趣旨にも反するという大蔵省の主張があったわけでございます。  そこで両省協議いたしまして、国民年金特別会計への国庫負担金の繰り入れが、全体として老齢福祉年金等のために、今後昭和六十四年度までは減少し、その後は増加していくという不規則な姿になっていることに着目いたしまして、これを平準化する措置を講ずると、こういう形にしたわけでございます。
  200. 赤桐操

    赤桐操君 まあ、大体国民年金勘定に積み立て金があるからこういう形をとったと思うんですけれども、国民年金の特別会計の余裕金というのは、これはどこへ積み立てられているんですか。
  201. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 資金運用部に積み立てをいたしております。
  202. 赤桐操

    赤桐操君 百兆円に及ぶところの資金運用部資金の一部となっているわけですね。そういうことでしょう。だから私は、いまのような考え方というのはまことに不可思議だと思うんですよ。それで、仮に繰り延べの措置ということについて、将来繰り入れ段階のことを考えてみましても、これは結局ひもつきの項目になってくるわけであって、当然これは財政の硬直化という形に結びついてくる、その要因となってくることは間違いないと思う。そういう意味で少なくとも私たちは考えるんでありますが、この点についてはどのように考えますか。
  203. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) その財政の硬直化ということが、なかなか意味がむずかしいと思いますけれども、先生おっしゃっておられるのは、六十五年度以降通常の計算をいたしました結果出てまいります負担額に何ぼかの金額を加算することになる。これが将来の財政を拘束することになるのではないかというお尋ねかと存じますが、それはそのとおりかと思います。そのとおりだと思いますが、六十四年までは逆にそれでは財政は楽になるんだと、こういうことにもなりますし、それから先ほど来申し上げてございますように、確かに加算されることになるわけでございますけれども、六十五年度以降も毎年度の伸び率は、全体として三%の伸びというところで設計ができておりますから、全体の姿からいたしますと、決して無理のないものになっておる。そういう意味では硬直化をさせる要因ではない。こういうことになろうかと思います。
  204. 赤桐操

    赤桐操君 厚生年金保険のこの間行われました繰り延べ、七千億円余になっておると言われておりますが、この返還についてもどんなふうにこれから具体化されるかはまだ明らかにされておりませんね。いろいろな案があるようですけれども、これでやるという形が出てきてない。またこれからの財政再建の見通しもついてない。思うようにはいっていない。こういう中で繰り入れをする段階での各年度の予算編成で繰り入れ額をどのようにしていくかということは、大変大きな私は問題だと思うんですね。そういう意味で他の経費を結果的に圧迫するような形になるのではないかということを言いたいわけですよ、率直に言って。  財政運営上、これから予算編成が毎年行われていく。そうした中で結局こうした固定したものをつくり上げていくことになるので、結果的には社会保障全体の予算も抑えていくことになる。厚生予算も抑えることになる。こういうことになりゃしないのか。果たしてその点は別枠で確保されるのかどうなのか、予算全体に。このために他の諸経費を抑えるということにならないように、これは全然別個の、別枠で考えますということに将来もなっていくのかどうなのか。なるほど繰り入れていく額は明記されておりますよ、ずっと毎年毎年。しかし、その額というものは、全体の予算編成の中で別枠で厚生予算の中で考えられるのかどうなのか。この辺は非常に微妙なものがあるんじゃないですか。いかがですか、この点は。
  205. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) いま御質問の別枠というようなお話でございますけれども、毎年の予算をどういうふうにして編成していくかということとの関係があろうかと思います。ここ数年来、厳しい財政事情を踏まえまして、夏の段階で厳しいシーリング枠というのをつくるということで、その枠というのが、いままさに先生おっしゃっておりますように、問題になるわけでございますけれども、私どもとしては、ここ数年の間で財政支出を基本的に見直しいたしまして、国として支出すべき財政の分野というものをもう一遍基本的に見直して確定してまいりたい、そして財政の再建を一日も、一年も早くやってまいりたい、こういうふうに思っておりますので、これが返していくといいますか、整理がつきます六十年代後半ぐらいまでも、いまと同じような姿になっているのかどうかということについては、確たることは申し上げられない。むしろ、いまよりも少しやわらかな姿でできるような形に工夫をしたい、本当を申しますれば、そういう気持ちでございます。  でございますからして、いまのままの姿でどうなるかということについてのお答えというのは、定かにしかねるわけでございますが、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、ここで後、加算してまいります金額というものがそれほど極端に大きな金額でない。全体の中としては無理のない姿で設計ができておりますので、御懸念のようなことはあるまいと思っております。
  206. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと、お伺いしたいと思うんですが、国庫負担の繰入額かこういう形で当面は減少する、これは大変楽になる、こういう御説明であります。それは昭和六十四年度までの国の財政に対して負担軽減になることになるわけでありまして、これはいま次長の御説明を聞くまでもなく当然だろうと思います。  問題は昭和六十五年度以降、今度負担が増加してくることになります。その場合、二十七日の衆議院の大蔵委員会ですか、大蔵大臣が発言されたようでありますが、新たに作成される新経済計画の最終年度である昭和六十五年度に合わせて、特例公債の脱却年次も大体この辺に目標を置くというように発言されたと思いますが、その点はいかがなんですか。
  207. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 新たなる経済の中期展望とでも申しますか、それがそういうことになりますと、私ども、財政の中期展望をこれから検討していくに当たって大いに念頭に置くべきところであろう。私も確定的に、それがまた特例公債脱却年度に一致するようにいたしますということは、まだ申せる段階でないと思いましたので、その辺は明確な答えは実は欠いておるかとも思うんであります。  それは当然のことといたしまして、経済の中期展望、そこの中に果たす財政の役割り、そういうものが絡んだ議論になると思うのであります。したがって、きちんとその時点を取り上げて、それにイコール特例公債の脱却年度ということをいま確定するのは、なお早いんじゃないかと思いましたので、明確には申し上げませんでしたが、大いに念頭に置いてこれからの検討を進めていくべき課題であるというふうな認識は持っております。
  208. 赤桐操

    赤桐操君 予算委員会ではずいぶんその辺のところをお尋ねしたはずなんですけれども、大蔵大臣からはついにそのお話は出なかったんですね。この前の予算の場合もそうであったんです。予算編成が終わって、成立した二日後に、歳入欠陥が二兆円を超えるだろうということが明らかにされている。  私は、本来は予算委員会の中でもっとそういうことを煮詰めて、政府が明らかにすべきだと思うんですよ。そして、本当にそれじゃ大体六十五年度ということで赤字公債は脱却できるのか、六十四年度中で脱却して、    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕 六十五年度からは正常な状態に入れるのかということになれば、また予算編成の中における論議も変わった形になってきたと思うんですね。ついにそれは明らかにされなかったんですよ。それがこの間の、二十七日ですか、衆議院大蔵委員会では、大体いまのような発言がなされているということであります。  これは、もしそういうような形になってくるならば、その点は具体的に昭和六十五年度を目標として策定すべきじゃないかと思うんです。どういう形でどうなっていくかということについての計画設定を明らかにしていくべきだと私は思うんですが、この点はいかがですか。
  209. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 赤桐委員おっしゃる意味は私、理解できます。  あの当時も、言ってみれば、ア・フュー・イヤーズでは短過ぎるし、セブラル・イヤーズということになれば五―七というものが考えられるということは出しておりました。  ただ、新たなる要素が出たというのは、経済審議会では六十五年度を目標として策定してみようかというような合意に達せられたという新たな事実が出ますと、私どもとしては、経済運営の中に果たすべき財政の役割りというものもありますが、それと整合性を持った形でこれから検討は進めてみなきゃいかぬなと。  ただ、いまだに確定できないのは、その年度と特例公債の脱却の年度が一体一致するかどうか。こういうことになりますと、まだ明確にお答えできるような段階ではない。  ただ、経済展望をそれをめどにやろうやというようなことをお決めいただいたということになれば、それは念頭に置いてこれから検討すべき課題ではあろうというふうに考えております。
  210. 赤桐操

    赤桐操君 最後に一つ。  時間でありますからこれで終わりにいたしたいと思いますが、大体これは六十五年から繰り入れが始まるわけでしょう。そうすると、いまの話のとおりで固まったと仮定しますね。そうすると、六十五年からは今度はもう赤字国債に頼らないでいくということになるわけですね。しかし現実には繰り入れを始めなきゃならぬことになる。そのときの状態で、収支の財政状況によると思いますけれども、再びまたそういう特例公債に頼らなければならない事態が発生するおそれがあるのではないだろうか。こうなってくるというと、この示されておるところの法律案はついて果たして信頼してわれわれが賛成することができるだろうか。こういう問題が出てくるんですよ、率直に申し上げて。政府が出しておりますから、国が法案として出しているから間違いないと言い切れないものがそこに出てくるのではないだろうか、こうなるわけなんです。  したがって、先ほどから、この種の問題は、社会保障費全体に影響を与えるものである以上は、そしてまた国の財政状況そのものから大きな影響を受ける筋合いのものである以上は、これは総合的な角度から論議すべきものではないか、社会保障制度審議会で論議すべきそういう議題であったんじゃないか。そして同時に、そういう観点から慎重な論議が重ねられて賛否が問われるべきではなかろうか。こういうように私はさっきから問題提起をしているわけであって、この問題、この法律の提案については基本的に私は賛成いたしかねます。  以上、私の考え方を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  211. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はただいまから、与えられた時間、ただいま議題となっております電源開発促進税の税率引き上げを中心にして質問してまいりたいと思います。  私もいろんな税について今日まで大蔵委員としていろんな勉強はしてまいったところでありますが、電源開発促進税なるものを初めて勉強した関係などもございまして、多少道は外れる質問があるかもしれませんので、御容赦をいただきたいと思うんです。  大変恐縮ですが、教えてもらうという立場に立ちまして、電源開発促進税が創設されました昭和四十九年度当時から現在まで本税がどのような沿革をたどってきたかについて、まず御説明をいただきたいと思うんです。
  212. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) お答え申し上げます。  電源開発促進税、これはただいま先生御指摘いただきましたように、昭和四十九年度に創設いたしました。この四十九年度に創設されました背景には、ちょうど四十年代の後半からでございますが、電源立地、これが地元の調整難といったようなことがございまして難航いたしました。一方、当時電力の需要というのは着実に伸びておりましたので、このまま進みますと近い将来電力需給が逼迫するおそれがあると、こういうふうなことが懸念されたわけでございます。したがって、これを背景といたしまして、電源立地対策は単に電力会社に任せるだけでなくて国も推進する必要があるということで、電源開発促進税というのを創設して、それに基づきまして、電源立地促進対策経費はこの中から出して電源立地を促進していく。特に、この電源立地の円滑化というのは、直接的には電力事業者の受益になりますものですから、販売電力量に応じて目的税として創設したというのが当初の経緯でございます。  次いで、昭和五十三年から、御承知のイラン革命というのがございまして、その結果、第二次石油危機が勃発しましたのは御承知のとおりでございます。このときには、五十四年にちょうど東京サミットというのがございまして、石油輸入量を頭打ちにする、上限を設けるということで、相当な騒ぎになりましたんですが、これをきっかけにいたしまして、電力発電における石油への依存度をできるだけ引き下げることにしなければいけないと、これが喫緊の課題になったわけでございます。  そういうことで、当初このころまでは、大体発電電力の七五%以上が石油によって発電されておったわけでございますが、むしろ電源を多様化いたしまして、この石油依存度を下げていく、そういう形で電力の安定供給を図りたいということで、電源多様化勘定というのが五十五年度から創設されました。そして、その当時、実は千キロワットアワー八十五円というのが四十九年度創設当時の税率でございましたけれども、五十五年度からは千キロワットアワー三日円という現行の税率に変わったわけでございます。そしてこの多様化勘定では原子力であるとか、水力であるとか、地熱であるとか、あるいはそれ以外の新エネルギー、つまり電気をそれによっておこす新エネルギーのRアンドDであるとか、そういったものに重点的に金を出していくということにしたわけでございます。
  213. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまお尋ねしますと、いわゆる目的税として創設されたというように理解してよろしゅうございましょうか。
  214. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) そのとおりでございます。
  215. 鈴木和美

    鈴木和美君 税の神様の梅澤主税局長にお尋ねしますが、このような目的税として創設されたような税というのはどのぐらいあるものですか。
  216. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま資源エネルギー庁の方から御説明がありましたように、電源開発促進税は目的税でございます。いわゆる税法の形で固有の目的税というのは、このほかに二つございまして、地方道路税、それから特別とん税というのがございます。そのほか、常々特定財源という関連で議論されます揮発油税、それから石油ガス税等は、税法上は固有の意味での目的税じゃございませんで、特別の法律でもって当分の間臨時的に特定の目的に充てる、使途が特定されておるという意味で、その限りにおいては目的税的なものでございますけれども、税制上でいう目的税というのは、この電源開発促進税を含めまして三本でございます、国税では。
  217. 鈴木和美

    鈴木和美君 素人的な発想ですが、電力の問題は、産業の開発とか民生の安定とかというような、国として非常に大きい国民生活の安定を期するための要素が多いと思うんですね。そういうようなものをあえて目的税としなければならなかったその理由というのがまだよくわからないんですが、当時の設立のときからなぜ目的税にしたのかということについては、どういうふうに理解すればいいんでしょう。
  218. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 創設時は、実はこれはいろいろな経緯がございまして、四十八年の暮れに第一次オイルショックというのが突発いたしまして、草々の間に緊急の措置としてこの税が制定されたもので、当時税制調査会の議を経てないということでいろいろ議論になった税でございますけれども、一つの物の考え方の参考といたしまして、先ほどの説明にもありましたように、五十五年の税制改正のときに電源多様化勘定というところにまで使途を拡大いたしまして税率の引き上げをお願いしたわけでございますが、そのときに税制調査会で御議論をいただいておりまして、そのときの答申にこういうふうに指摘をされております。  一般的に目的税は好ましくないということは言われておるわけでございます。特にエネルギー対策というのが国の緊急な政策課題であるとすれば、それこそ一般財源の中から優先的に充当すべきであるという考え方も成り立ち得る。しかし、現在の財政事情から見て、一般財源が非常に窮屈である。かたがた、先ほど説明にもございましたように、この使途が電力供給業者と直接の受益関係にあるという観点に着目すれば、現下の財政事情のもとでそういう受益関係に論拠を求めて目的税として設定するということも当然考え得る。  それからもう一つ、その副次的な効果といたしまして、これは第二次オイルショック、第一次オイルショックを通じました議論でございますけれども、今後エネルギーの大半、しかも輸入に依存しておりますわが国の石油事情から申しますれば、なるべく石油を節約し、資源の有効利用を図るという観点が必要である。その場合に石油の利用につきましてある種の税負担を求めるということは、資源の節約なり、有効利用の目的にも役立つ。  そういう論拠に立てば、一般論としては目的税は好ましくないけれども、この電源開発促進税等のような場合についてはこれを目的税として構成することもやむを得ないということだろうと思います。
  219. 鈴木和美

    鈴木和美君 ある意味では、直接消費者が使う電気料金の値上げというんでしょうか、そういうことのために目的税にして、電力会社に税を課して、それから取り上げるというシステムですね。ということは、逆な言い方をすると、電力会社に対して税は上げてもらうんだけれども、そのときに一般消費者から取る電気料金を値上げしやすいようにするためにわざわざ目的税にした、言葉をかえて言うならば大企業奉仕だというようなことになる。こういうようは理解されるようなためにも目的税にしたんじゃないのかというようなことをよく聞くんですけれども、そういう見識は間違いだと思いますか。
  220. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 確かに目的税でございますが、実はこれは外税になっておりません。つまり電気事業者が直接の受益者として電気事業者の経理の中から支払うという形になっております。  ただ、将来仮に改定でもあった場合に、これをどう織り込むのかどうかという問題につきましては、電気料金というのは原価主義で計算することになっておりますので、その要素として考慮すべき問題だとは思いますが、ただ、一般的に申しまして、全体の料金に占める比率というのは非常に小そうございます。したがって、これによってたとえば料金改定の口実を与えるというふうなことは私はあり得ないと考えております。  それからもう一つ申し上げたいことは、確かにこういう形で電源立地の円滑化を進める、あるいは電源の多様化を進めるということによりまして、中長期的には電気料金というのを安定させる効果が出てくるということになっておりますので、また事実そういう効果が上がりつつありますので、私は先生御指摘のような形で、この税が電気料金値上げの口実に使われるということはないと考えております。
  221. 鈴木和美

    鈴木和美君 また後ほどその点は私も意見を述べたいと思うんですが、三百円を四百四十五円にするということの大蔵省としての法案提出の形式もさることながら、問題は百四十五円もどうして上げなきゃならぬのか。つまり使い方と言うた方がいいんでしょうか、それが問題になるわけだと思いますので、ここで電源立地対策や電源多様化対策などについてどういうように目的税として取られたお金がこれから使われていくのかということを、簡単で結構ですから、御説明いただきたいと思うんです。
  222. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) それでは立地勘定の方から御説明いたしたいと思います。  立地勘定の方は、これは先ほどもちょっと御説明いたしましたように、発電用施設の設置の円滑化に資するための財政上の措置ということでございまして、具体的に申し上げますと、電源立地地域におきます公共用の施設、これの整備であるとか、電源立地促進のための特別対策事業、これに充当するために地方公共団体等に交付金が出されております。  もう一つは、これは電源立地地域におきます安全対策、これを推進するために、たとえば原子力発電施設の安全性の実証のための試験であるとか、環境審査等のための調査費用、こういったものに充てられております。  それから多様化勘定の方でございますが、大ざっぱに申しまして、この多様化勘定は、一つ方向といたしましては、まず石炭と原子力とLNG、これを主要な柱といたしまして、これを水力とか地熱とか、あるいは太陽の光等の新エネルギー、これで補完することによって電源多様化を促進しようというのが基本的な方向でございます。  具体的な中身といたしましては、第一に供給確保のために水力の開発、特に中小の水力に開発補助を出す。それから日本の国産のエネルギーでございます地熱の開発の促進助成を行う。これが一つのグループでございます。  それから導入促進対策ということで、特に石炭火力、いま私どもが重点を置いて進めておりますのは、沖縄県に石川火力という石炭火力を建設中でございますが、こういう石炭火力の建設推進。それからアルミ対策の一環といたしまして、アルミ産業が持っております幾つかの重油専焼火力の石炭転換に補助を出す。こういう形の事業を第二の柱としてやっております。  それから第三番目は技術開発でございます。これには石炭エネルギーの技術、それから太陽エネルギーの技術、地熱エネルギーの技術等々がございますけれども、現在特に太陽エネルギーの中の太陽光発電であるとか、あるいは燃料電池であるとか、この辺を重点的にやっております。  それから第四番目の柱が原子力でございます。これは現在すでに実用化されております軽水炉、これの改良、標準化というのを推進するとともに、核燃料サイクル確立のための濃縮であるとか、再処理関係技術、それからバックエンド関係技術、この辺も助成をいたしております。  それからもう一つは、新型の炉といたしまして、高速増殖炉、FBRでございますとかATR、こういったものの開発、これを対象にいたしております。
  223. 鈴木和美

    鈴木和美君 私も、先般私の部屋で、おたくの優秀な人にいろんな御説明をいただきまして、ある程度頭に入れたつもりだったんですが、どうもここのところがよくわからないんですが、電源立地促進対策交付金というものと、電源立地特別交付金というんですか、こちらの備考欄をずっと読んでみて、それはそうかなと思うんですが、どうも読めば読むほど同じよるなものじゃないかなというように思われるんですが、これはどういうふうに違うんですか。
  224. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) その電源立地対策交付金、これは四十九年度に制度が創設されましたときに、最初から出てきたものでございます。その後、五十六年に施策の拡充というのが行われまして、三つの交付金ができたわけでございます。具体的に申しますと、原子力発電施設等周辺地域交付金、電力移出県等交付金、それからもう一つ水力発電施設周辺地域交付金、この三つのものがその後できまして、これは要するに原子力を中心といたしまして、発電施設の設置の円滑推進を図るために、緊急の施策としてこういうものが設けられたということでございます。
  225. 鈴木和美

    鈴木和美君 こういうふうに理解してよろしゅうございますか。電源立地促進対策交付金というものは、その予定されるところの地元に対してお願い料であるとか、それからだまし料とか、それから何というんでしょう、もみ手料というか、そういう補助金みたいなものであると、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  226. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 実は、電源開発、これはたとえば原子力で申しますと、投資規模は三千億とか四千億とか、非常に巨額なものになります。したがって、こうした大きな投資を長期間かかって工事をやっていきますと、いろんな形での影響というのを地元の産業経済あるいは社会に与えるわけでございますが、一方においてこの電源開発、実は雇用促進効果という面におきまして、工事している間はよろしゅうございますが、工事が終わるとあんまり雇用促進にも役立たない。そういうふうなこともございまして、電源立地の推進にとっては地元調整難ということがその背景にございます。  したがって、私どもといたしましては、この電源立地と地元の振興とを両方うまく調和させる、そして電源の円滑な推進を図っていくということで設けた制度でございまして、決して、何と申しますか、適当に出すというんじゃなくて、出す対象も、たとえば公共用施設ならばどういうものであるかという対象もあらかじめきちんと決めておりますし、さらに実際に金を交付する前には、整備計画というのを県に地元の意見を聞いてつくってもらいまして、それに基づいて資金も交付していくというふうな形をとっております。
  227. 鈴木和美

    鈴木和美君 しつこいようですが、ここの備考欄を読んでみますと、「発電用施設の周辺地域における公共用施設の整備に必要な事業費に充てる」となっていますね。つまり「公共用施設の整備」という「公共用施設」というものは、どういうものを羅列しているんですか。
  228. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) まず法律に書いてございますのが道路、港湾、漁港、都市公園、水道、それから政令等にも細かく書いてございますが、通信施設、スポーツ、レクリエーション施設、環境衛生施設、教育文化施設等々になっております。
  229. 鈴木和美

    鈴木和美君 だから、そういうものにお金を出すということは、ある意味では、水源地に発電所やいろんなものを設けるために、地域産業とか自然環境の破壊とか、いろんな地域社会の秩序が壊れるとか、そういうものがあるから、お願い料としたり、もみ手料として出すんじゃないかと私は尋ねたんですが、間違いですか。
  230. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) そのお願い、もみ手料という意味で私どもは考えておるんじゃございませんで、電源地域の振興とそれから電源そのものの円滑な推進、その両者の調和を図るために、つまり地元の理解協力を求めて円滑な電源地区の推進を進めていく、そのためにこの助成を行っているというふうに私どもは認識いたしております。
  231. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵大臣にお尋ねしますが、いまのお話を聞いておりまして、私が申し述べた、つまりお願い料とか、だまし料というものじゃないんだ、むしろ積極的にその地域の経済とか環境破壊とかというようなことに関連するから、むしろこれは重要なものであるという御答弁だと思うんです。ところが、そういうものであるとするならば、五十七年度と五十八年度の予算を見ますと、ここで十五億三千八百万円でしょうか、これは切られていますね。ということは、行革とか補助金とか、そういうような今日の経済、財政状況の中で、そのことは余りそう必要ないんじゃないかという意味で十五億切られたんじゃないのかなと私は短絡的に見たんですが、大臣、これはどんなことでしょう。
  232. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 使途はいま通産省から御説明のあったとおりでございますが、その交付金が前年度に対しまして十五億減っておりますのは、立地の進捗状況に合わせて積算をしているわけでございまして、行政改革的な観点から削ったというふうなものではございません。  それから一言つけ加えさせていただきますと、五十七年度にはこの電源開発促進税が、立地勘定で申しますと、四百七億円の収入が見込まれたんでございますが、五十八年度は税率の引き上げがございませんと電力消費量の伸び悩みから四百一億しか見込めない。おまけに前年度剰余金が五十七年度の三百一億円から五十八年度は百二十三億に減ってしまうということで、歳入全体は五十七年度に比べて二六・六%減ってしまうことになってしまいます。  そこで、歳出の方は立地が進んでいるものについては法律で決まった手当てをしなければなりませんので、その他の委託費その他はできるだけ切り詰めまして、歳出全体としては十四億削っているわけでございますが、それでもどうしてもつじつまの合わない百七十七億という不足分につきまして、今回税率の引き上げをお願いをしているわけでございます。
  233. 鈴木和美

    鈴木和美君 ただいままでの説明に関連しますが、五十八年の三月の五日の日経の新聞に福島県のことが書いてあるんですが、福島県が非常に電源の供給県であって全国第二位である、そういう意味で電源地域として福島県が振興法を議員立法を目指してつくりたいというようなことが報じられているんですが、このことは承知されておりましょうか。
  234. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 御指摘の新聞報道とほぼ同内容のものにつきまして、福島県からも聞いておりますが、御指摘のように電源地域振興特別措置法というようなものをつくったらどうかという提言でございます。その基本は、電源地域の産業基盤の整備だとか、生活環境の整備というものを総合的かつ広域的にやっていく必要がある、そのためにいろんな施策を動員していくんだという基本の考え方のもとに具体的な数値を盛り込んでおると、こういうことと承知いたしております。  私どもといたしましては、その基本的な考え方、できる限り広域的、総合的にというこの電源立地対策の進め方については、私どもの電源三法に基づく施策におきましても、基本的にその観点を踏まえて施策の拡充等にも努めてまいったところでございますし、引き続きそういった制度の運用におきまして、そういった観点を十分踏まえてやってまいりたいと考えております。
  235. 鈴木和美

    鈴木和美君 ただいま福島県のそういう振興法の制定を望んでいるということと、先ほどから御説明をいただいております電源立地促進対策交付金及び電源立地特別交付金というこの現在ある勘定科目と申しましょうか、そういうものがあるのに改めてこういうものをつくってくれという主張ですね。これはドッキングはできないんですか。
  236. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 福島県のおつくりになっていらっしゃいますこの特別措置法の考え方、これは福島県の方から聞いておりますその説明によりますと、電源地域の産業の振興であるとか雇用の確保、それを図るためにより広域的な見地から、たとえばインフラストラクチュア等を整備してほしい、そういうふうな中身になっております。  私どものこの電源地域、こちらの方は、この三法と申しますのは、何と言いましても、電源地域における電源開発の推進、これが主たる目的でございまして、それの円滑化のために地元とのいろんな形での共存共栄を図っていく、そのための各種の財政措置に対して助成を行うという考え方でございます。  したがいまして、ちょっとそのニュアンスの置き場所が違うかとは思いますけれども、ただいま公益部長の方が申し上げましたように、私どもといたしましては、現在の電源三法の諸制度の効果的な活用によりまして、福島県がお考えになっていらっしゃるようなこともやっていけるんじゃないか、そういうことで効果的な運用ということを福島県等のニーズを踏まえつつ考えてまいりたいということでございます。
  237. 鈴木和美

    鈴木和美君 話はわかりましたけれども、そうすると、福島県が考えているようなものをつくるというよりは、そういう考え方を踏襲して、いま三法ですか、その中で何とかやっていけるという考えですか。それとも福島県のこういうような発想について通産省というか、あなた方の方は賛成であるということなんですか。どっちですか。
  238. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) この電源地域の振興のために福島県が提案されておるような特別措置法、果たしてこれを制定することが最も適当であるかどうか、こういう点につきましては、私どもとして引き続き慎重に検討させていただきたい、そういうふうに考えております。
  239. 鈴木和美

    鈴木和美君 私も福島県生まれなものですから、慎重に検討するんじゃなくて、積極的に検討していただきたいと思っています。  それから次の問題に移りますが、今後わが国の長期エネルギー需給見通しによりますと、五十五年度実績で、原子力は千五百七十万キロワット、それから六十五年には四千六百万キロワットに引き上げる計画となっておりますね。これを実現するためには今後原子力発電をハイスピードで建設することが必要だと、そういうふうに述べられていると思うんです。  いつも議論になると思うんですが、御承知のように、原子力発電に対する国民の不安が高まっておる中で、設置予定の地元の反発も予想されますし、計画どおり原発設置を進めることはかなり私はむずかしいと思うんです。そこで、政府国民生活の安定確保の上から原発の安全性に万全を期すことがまずもって優先されなければならないと思うんです。残念ながら私が見ている限りにおいては、放射能漏れの事故や放射線被曝事故が起きているのでありまして、はなはだ遺憾だと思うんです。  そこで、原発と国民生活の安全について通産省並びにエネルギー庁はどのような認識を持っておられるか、またアメリカのスリーマイル島で起きた大規模な原発事故を教訓として、かかる事態がわが国で発生しないためにどのような対策をとってこられているのかを明らかにしてもらいたいと思います。
  240. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) ただいま先生御指摘のとおり、原子力発電の設置について私ども長期計画としてなお立地の推進を進めていく必要があると考えておりますが、その場合におきまして、ただいま御指摘のように、安全の確保というものが第一義的に重要であるということは私どももつとに考え、施策の実施に努めてきておるところでございますが、基本的なフレームといたしましては、御案内のように、原子炉等規制法に基づきまして通産役は施設の設置許可につきまして安全審査を厳格に実施しておりますし、ただ通産省の安全審査にとどまらず、原子力安全委員会のダブルチェックを安全について行うことになっております。さらには、電気事業法に基づきまして施設の使用前検査、定期検査というものも実施しておりますし、保守、保安、管理体制につきましても、保安規程の認可等の措置で規制を厳格に行っておることによって安全性に万全を期しておるわけでございます。  そして、ただいま御指摘のように、スリーマイルアイランドの事件、これは非常に重要な教訓を私どもに与えておるわけでございまして、私どもといたしましては、五十四年三月に起こりましたこの事故の後まずやりましたことは、原子力安全委員会と通産省、資源エネルギー庁におきまして原子力発電所の管理体制を運転をとめて再点検をする、加圧水型原子力発電所の安で解析を行うというようなことをして、わが国の場合の原子力発電は本当に安全かどうか、これを十分確認をした上で運転再開をしておる、こういう措置をまずとったわけでございます。  さらには、原子力安全委員会のもとに米国原子力発電所事故調査特別委員会というものを設けまして、その特別委員会で非常に包括的な検討をした結果、数多くの改善指摘事項、基準審査から設計から運転管理、さらには防災安全研究の隅々にわたっての改善事項が指摘されまして、それの具体的実施に入っておるところでございます。  特にその中で、通産省として実施しておるスリーマイルの教訓として特に強化してきておる点、三つばかり申し上げますと一つは運転管理専門官。国の運転管理専門官を発電所に常駐させるということを実施いたしまして、常時発電所の運転につきまして監視をしておりますし、万一の事故の場合にも、緊急連絡として、本省とのホットラインで連絡体制を確保するということで、そういった対応の万全を期しておるということが一つ。  もう一つは緊急時連絡網の整備。これは国と県、県と市町村というところでの緊急時連絡網の整備をファックスだとかあるいは専用回線だとかいうものな確立いたしまして、そういった緊急時の対応について防災の面で万全を期すという体制もとっております。もとより科学技術庁におかれましても、救急医療体制等々という呼応した措置もとっておると承知しております。  それから三番目には運転責任者のオパレーションの面のミスがあったというのがあの事件でも言われたわけで、そういった運転員の資質向上ということも非常に重要である。そういうことから、私どもといたしましては、運転の特に責任者に対する資格認定制度を設けまして、資格のある者が必ず運転現場にいるという体制を確立する。  こういうような多角的な安全対策をスリーマイル以後特に実施いたしまして、より安全な原子力発電という体制の確立に努めておるところでございます。
  241. 鈴木和美

    鈴木和美君 もちろんそういう対策は当然なされていると思います。しかし、現在対策をとられているあなた方から言えば、万全の対策をとっていると言わざるを得ないと思うのですが、必ずしも私は万全というふうには思えません。  そこで、いまあなたがおっしゃったことは、それを予算的な裏打ちから見るとそういうことになっているんでしょうか。  たとえば「電源開発促進対策特別会計電源立地勘定予算案の概要」というのをいただいているんですが、これをどういうふうに理解したらいいんでしょう。  十一ページの歳出の方の面を見ますと、原子力発電安全対策等交付金というのと、それからもう一つは原子力発電安全対策等委託費というのがありますね。この二つの関連を見ますと、後から述べた方は△になってますね。ということから見ると、素人的な見方で恐縦ですが、口では安全は十分やられているということをおっしゃっておりますけれども、お金の裏打ちの面から見るとそうはなってないんじゃないのかなというように私はいま見たんです。  もちろん、原子力発電に関する基本的な考え方は私どもとしては反対でございます。しかし、現にある原子力発電所についての安全というようなことを考えてみると、もう少し万全の対策がお金の面でもとられなきゃならぬのじゃないかなと思うんですが、この点はいかがでございましょう。
  242. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) ただいまの予算項目につきまして補足いたしますと、原子力発電安全対策等交付金、これは微増しておるわけでございます。その下の安全対策等委託費は若干十億ばかり減っておる。御指摘のとおりでございます。  ただ、これはこの予算項目を軽視する、ほかと比較して抑えるということでは決してございませんで、たとえば上で申しますと、放射線監視施設の設直の計画がございまして、それが一段落つきますと次のものに移るという形で、プロジェクトごとの積み上げでやっております。そのときどきのプロジェクトの重なりぐあいによってふえたり減ったりということで、必ずしも予算の項目上の軽視ということではございませんで、その発電安全対策等委託費は、いろいろな実証試験プロジェクトが幾つか重なっておりまして、それもそれぞれのプロジェクトの実施スケジュールで一段落つくものが重なったりすることが予算の減ということになっております。決してそういうことではございませんで、今後も重要なプロジェクトが入ることになりまするとまた予算はふえる。そういうプロジェクト単位の積み上げでやっておりまして、今後とも強化項目の安全対策関係項目について十分重視してまいりたいと考えております。
  243. 鈴木和美

    鈴木和美君 窪田次長にお尋ねしますが、いま通産省の説明によれば、プロジェクトの計画の積み上げであるから、いわゆる削った、びびったというようなもんじゃないという御説明ですね。  でも、安全ということをもう少し重要視するというんであれば、上の項目の方は八千七百万のプラスで、下の方は十億のマイナスですね。だから、仮に意図的に削ったというわけじゃないということはいまよくわかりました。しかし、もう少し積極的な対策をとられるべきじゃないのかなと思うんですが、財政当局から見た感じはいかがでしょう。
  244. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) いま通産省から御説明がありましたように、一つ一つ積み上げてやっているわけでございますが、先ほども申しましたように、この増税をお願いする時期でございますので、上の交付金のように基準がございまして、立地が進めば交付せざるを得ないものはなかなか節減がしにくいわけでございますので、委託費というのは、事柄は安全でございますが、委託費につきましては、一休みできるものはできるだけ先に延ばしていただく。この増税をお願いする時期でございますので、延ばせるものは先に延ばしていただく。こういうことで査定をいたしたわけでございます。
  245. 鈴木和美

    鈴木和美君 それではわが党も大変関心を持っております電源多様化対策として、水力、火力、原子力のほかに、太陽、地熱など、つまり石油代替エネルギーの開発が進められておりますが、費用と効果の面から採算がとれるようなものがあるのかどうか、現状を明らかにしていただきたいと思います。
  246. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) この費用対効果、これを何でとらえるかという問題ございますけれども、石油代替電源と石油電源との間の経済性比較、そういう形でとらえてみますと、まず石油火力の電源、石油火力での発電コストは、私どもがモデル計算いたしますと、五十七年度運転開始ベースで約二十円でございます。それに対しまして、以下、原子力十二円、石炭火力十五円、LNGが十九日、それから水力が二十円、地熱が二十円、いずれも一キロワットアワー当たりの単価でございます。  こういうふうに見ますと、たとえば一般水力あるいは地熱といったところは石油火力と同じ値段じゃないか、経済性の点ではいかがかという御指摘もあろうかと思いますが、実はこの二つは、いずれも日本の本当の国産エネルギーと言えるものでございます。もう一つは、実は水力も地熱も運転費というのがほとんどかかりません。大半が資本費でございまして、一たんつくりますと、あとは償却が進むにつれまして発電原価は低減していくというふうなこともございます。したがって、これらを総合的に評価いたしますと、水力であるとか地熱であるとかも、LNGとか原子力、石炭とあわせまして進めていくべきで、つまり石油火力に比較しましても、おおむね経済的にすぐれているものではないかと、そういうふうに考えております。  それからもう一つ、もっと進んだ新エネルギーというのはどうかというのがございます。たとえば太陽のエネルギー。私どもも、太陽であるとか、風力であるとか、こういった自然エネルギーについても一生懸命いまRアンドDを進めさしておるわけでございますけれども、なかなかそのエネルギーの密度が低いとか、あるいは現在では大変なコスト高であるというのが現状でございます。  しかし、その中でたとえば太陽光発電というものにつきましては、現在これが経済性が非常に高いというわけにはいかないんですが、これまでの開発成果であるとか、あるいは諸外国研究成果、この辺を照らし合わせてみまして、それからまたかなりマスプロダクションがきくということもありまして、将来的には、中長期的には経済性を確保し得る可能性があるんじゃないか。そういうことで重点的に今後とも研究開発を進めてまいりたいと、そういうふうに考えております。
  247. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまのお話によりますと、まだ実用化というか、その段階までには到達しない、でも研究開発は続けていかなきゃならぬと、そういう状況であるというように承ってよろしゅうございますか。
  248. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 少なくともこの太陽光発電、私が最後に御説明申し上げましたものについては、まだそういった意味経済性を判断する、予測することは困難ではございますけれども、先ほど申しましたようないろんな要因を考慮いたしますと、中長期的に見ますと、経済性を確保し得る可能性は相当あるんじゃないかというふうにわれわれは考えております。
  249. 鈴木和美

    鈴木和美君 四月十三日の毎日新聞をちょっと見せてもらったんですが、その中でも書いてあるようです。日本の代替エネルギー開発は技術的にいま開発途上にあるわけでありますから、重点をしぼらないでずっと研究していこうというような意味で、特殊法人の新エネルギー総合開発機構yというところを中軸機関としてたくさんのテーマが採用されてきたわけですね。このような開発方針についてのテーマが余り多過ぎるので、取捨選択の必要性があるというようなことを指摘されておるわけですね。  そこで通産省は、これまでの開発方式を軌道修正して、代替エネルギーの開発を重点方式とするというように方針変更がされたというように報道されているんでございますが、代替エネルギー対策についてのこれからの対策ということについて、もう一度御説明をしていただけないでしょうか。
  250. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) この毎日新聞報道でございますけれども、ここに出ておりますのは、いま先生御指摘のとおり、いわゆるNEDOがいろんな形で委託事業として実施しているもの、あるいは補助でやっているものということで、代替エネルギーの中でもかなり新エネルギーという分野のものが中心でございますが、まずそちらの方から御説明させていただきます。  この新エネルギーのRアンドDは、実は第二次石油危機以降、つまり昭和五十五年度以降に本格化したものが大半でございます。したがって、これまで概して研究開発というのが初期的な段階にありました。大変初期的な段階にある場合には、なるべく広範囲にいろんな技術の開発というのを考えてみよう、種を育ててみようという考え方で進めてまいりましたけれども、最近のように少しずつそれが発展してまいりますと、今度は技術的あるいは経済的フィージビリティーも大分明確化してまいります。先ほどちょっと申し上げました太陽光発電のようなケースでございますけれども、したがって、こうなると次は、いわゆる何でも手をかけてやるということから、もちろんそういった可能性、技術開発の広範な可能性というのは否定はできませんけれども、それに留意しつつも、逆にステージアップに際しまして、節目節目にアセスメントと申しますか、評価を行って、そうしてそのプロジェクトをしぼっていくということが必要でございます。  実は、そこに出ておりますことは、私どもが考えておるのは、軌道修正ということではございませんで、むしろステージアップに備えてプロジェクトを効率的重点的に進めていきたい、そういうことで考えておるところでございまして、軌道修正というよりも、そういう段階に来たんだというふうに御理解いただきたいと思います。  それから代エネ一般ということになりますと、先ほどちょっと御説明申しましたように、既存の制度を活用いたしまして、中小の水力開発であるとか、地熱であるとか、あるいは沖縄の石炭火力、その他アルミ対策用の石炭火力への転換であるとか、太陽光発電とか燃料電池とか、そういったところを心心に進めてまいりたいというふうに考えております。
  251. 鈴木和美

    鈴木和美君 私が指摘したいことは、何か全体を流れている感じとして、原子力の発電にすべてが頼るというか、そこに重点が置かれて、その他の開発については、どうもコストの面で引き合わないというだけの結論からテーマがしぼり込まれちゃって、単なる効率性というようなところだけに重点が置かれて研究のテーマがしぼられたというような感じがしないでもないんですが、そういう私の見方は誤りでしょうか。
  252. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 実は、いま申し上げました状況でございまして、昨年の八月から、総合エネ調の石油代替エネルギー部会、それから産技審、産業技術審議会でございますが、ここの新エネルギー技術開発部会、ここの合同部会というのができておりまして、ここでいろいろと勉強をしていただきました。その中の報告でも、先ほどもちょっと触れましたように、技術開発の広範な可能性を否定しちゃいかぬぞ、だからそこには十分留意して、さらにそのステージアップしていく場合の節目節目の評価をやれということでございまして、われわれも先生御指摘のような形で、原子力の方に金が要るからこっちをしぼるんだというふうな形では一切やっておりませんで、むしろプロジェクトを何本か進めておりました中から非常に実るようなものが出てきますと、それを今度は、何と申しますか、昔の小規模プラントからパイロットプラントに移すとか、あるいは実証プラントに移すとか、そういうふうな形で重点的に進めていくということでございまして、決して先生御指摘のような感じで考えているものではございません。
  253. 鈴木和美

    鈴木和美君 関連しまして、石炭のこの液化問題でございますが、日本アメリカ、ドイツの共同プロジェクトチームによるこの計画が五十六年に中止されたということで、その後各国とも独自に開発が進んでいるというように聞いておるんですが、その現状、アメリカとかドイツの石炭液化の現状についてはどういうことになっていましょうか。簡単で結構ですから、御説明いただけませんか。
  254. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) まずアメリカでございますが、アメリカは現在三グループがその石炭液化のRアンドDを進めております。このアメリカの三グループの名前だけ言いますと、EDSというものとSRC1、Hコールと三つございますけれども、この研究は、すでにパイロットプラントによる研究は終了しておりまして、ややプロジェクトによって差はございますけれども、商業化の機の熟するのに備えて体制を整えているというふうな段階でございます。したがって液化技術の開発から撤退の気配はございません。  それから西ドイツの方はプロジェクトが二つございます。こちらの方は、いま二つともパイロットプラントによります運転研究が進められておりまして、八〇年代の後半に大型のデモンストレーションプラント、つまり実証プラントを建設する方向で検討中である、そういうふうに聞いております。
  255. 鈴木和美

    鈴木和美君 ついでですが、わが国状況の見通しはどういうことになりましょう。
  256. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 現在わが国は、これは二つ、歴青炭系と褐炭系と両方ございますけれども、歴青炭系の技術といたしましては、サンシャイン計画によって三方式、それから国際共同開発のEDSの一方式を推進しております。それから褐炭系の技術といたしましては、褐炭液化技術というのをオーストラリアで推進しております。  ただ現在、こういうふうにたくさんやっておりますのは、たとえばこの歴青炭系の三枝術、この三つの方式はいずれも〇・一トン・パー・デーなり二・四トン・パー・デーというような非常に小規模なプラントで、これも運転研究中でございます。  今後といたしましては、五十九年度以降に、たとえば歴青炭系につきましては一本化いたしまして、大型のパイロットプラントによる研究ということで進みたいと考えておりまして、現在、エネルギー調査会の石油代替部会、産業技術審議会新エネルギー開発部会、これの合同の委員会におきまして研究の進め方について審議中でございます。
  257. 鈴木和美

    鈴木和美君 まだ非常にむずかしい状況だと思うんですが、見通しとして、それが実用化時代に入るということはまだまだ先の見通しであるというように見ざるを得ないんでしょうか。
  258. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 確かに、これが石油にコスト的に太刀打ちし得るものになるかどうか、いまの時点で予測することは非常に困難でございますけれども、この石炭液化という技術は、石油に直接代替する液体燃料を大量に安定的に供給し得る、しかも原料である石炭は国際的に見ても非常に豊富であるということもございますので、われわれとしては、この石炭液化のための技術開発、今後とも引き続き強力に推進してまいりたいというふうに考えております。
  259. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、ちょっと話題を変えますが、三百円を四百四十五円にした法案改正が提出されたということでございますが、百四十五円値上げをするということは、恐らく何年かを見通した電力の総合需給の関係を押さえた上で、百四十五円ぐらい上げれば大体大丈夫だというような計算が行われて提案されたと思うんですが、電力の総合需給関係とこの料金との相関関係について御説明をいただきたいと思うんです。
  260. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 税収を見通す場合の前提といたしまして、電力の需要の伸びをどういうふうに見るかということでございますが、これは従来、昨年の四月に電気事業審議会需給部会で中長期見通しを電力需要について出しておりましたものとは、非常に現下の情勢から言いまして、需要の伸びが落ちておるという実態にございまして、そういった現時点における電力需要の伸びの鈍化ということを織り込みまして、具体的に申しますと、GNPの伸びでまいりますと、昨年の四月の見通し時点では、年率GNPが五%伸びるという見通しを前提に電力需要をはじいておりまして、したがって電力需要の伸びも年率で四%台で伸びるという見込みを立てておりましたけれども、それが御案内のような経済実態の変化がございまして、経済成長率につきましても、経済審議会の経過報告でも言われておりますように、GNP伸び率は三%ないし四%程度、高目に見ても四%程度の年率と言われております。  そういった四%というものを前提にいたしまして、電力需要の伸びをはじきました結果、五十八年度はすでに経済見通し、単年度で出ておりますが、これに合わした計算をして、伸び率三・六%の伸びを出しましたが、以後の中長期的な伸びは年率三・三%の伸び、電力需要の伸びでございますが、そういう伸びを前提にいたしまして、それに税収率を掛けて歳入歳出突き合わした結果の差を増税という形でお願いしている、こういうことでございます。
  261. 鈴木和美

    鈴木和美君 百四十五円値上げをすれば、電力会社からまた上げてもらうということをしないということからいうと、何年もちますか。
  262. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 大体私どもは、五年はこの歳出、それから今回お願い申し上げております増税によって収支がバランスできるというふうに考えております。
  263. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、総合エネルギー調査会でいろんな検討をしておったときには、大体十年を展望しながらいろいろな電力の需給が議論されておったということを聞いておるんですが、皆さん方の方も百四十五円の値上げはそこを基礎にして、またそこを資料にしながら、土台にしながらはじかれたというように私は聞いておるんですが、十年じゃなくて、五年と変更になるんでございましょうか。
  264. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 総合エネルギー調査会のエネルギー需給見通し、これは現在、昨年つくりました見通しの改定をお願いしているところでございます。もしその御指摘の点が十年の収支の見通しということでございますと、これはいまの点とはちょっと違った感じになろうかと思いますけれども、私どもが考えておりますのは、大体五年程度はこれでもつんじゃなかろうかというふうに思っております。
  265. 鈴木和美

    鈴木和美君 私も余り専門的に検討したわけじゃないんですが、いろいろお聞きをしている中でそういうお話を聞いたものですから、いま五年ということがちょっと意外に思ったんです。しかし、率直な感想を述べさせてもらうと、百四十五円の値上げについてのあなた方の基礎の算定というものは非常にあやふやで、大まかで、大ざっぱでということを指摘せざるを得ません。だから、逆な言い方をしますと、五年過ぎるとまた値上げになるということを意味しているというふうに理解していいんですか。
  266. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 先ほど申しました、これでどの程度もつかという点につきましては、現在の電力需要見通しであるとか、現行の施策体系、これを前提として、私ども大体そのぐらいもてるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。  で、前回、特に多様化勘定を五十五年かに創設をお願いいたしまして、その後こういう形になった最大の原因は、何といいましても石油価格、つまりエネルギー価格の上昇に伴います国際的な不況の長期化、そういったことが電力需要の見通しを大幅に狂わせたわけでございますが、今回は、先ほど公益部長も御説明いたしましたように、需要の見通し等は相当かために私どもとしては前提として策定をやったつもりでございます。したがって、この需要の見通しであるとか施策体系等の諸前提が大きく変動しないという限り、そういう条件のもとでは、このめどで、大体一応のめどといたしましては、六十二年度を念頭において賄っていけるんじゃないかというふうに考えております。
  267. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つの問題点は、先ほど御質問した中での関連事項ですが、結局この電発税の納付義務者は電力会社ということになっておるんでありますが、本税の最終負担ということを考えてみると、どうしても電気料金の算定基礎の一部にこれがなるわけですから、最終は消費者がこれを負担しなきゃならぬということに私はなると思うんです。いま直ちに電気料金を上げるか上げないかということは別にしても、何としてもこれは電力会社の値上げを申請する場合のコスト算定基礎ということになるんじゃないのかなと思うんですが、そういうふうに考えていいですか。
  268. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 御案内のように電促税の納税義務者は一般電気事業者である。そういう意味ではまずは電気事業者負担である。ただ、御指摘のように、仮に将来電気料金の改定が行われる場合に、コストとしてこの税負担分が入るか入らないかの点につきましては、電気料金の算定の仕方が原価主義、コストを踏まえて料金を決めるということでございまして、この税負担もそのコストの構成要素の一つには確かになるわけでございますから、仮に将来料金改定が行われる場合には、そこに含まれる可能性があるわけでございます。しかし、それまでの間は一般電気事業者が最終的にも負担しておる状態が続くと、こういうことでございます。
  269. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の調べによると、東京電力の場合ですが、一般家庭用の電気料金は一キロワット約二十八日七十四銭と言われておりますね。本改正案の一キロッワットの税率引き上げはわずか十五銭か十六銭でございます。そこで電力業界がただいまの税が上げられたということをもって直ちに電気料金を上げるというようなことにはならぬと思うんですよ。つまり便乗値上げというようなことにはならぬと思うので、そこのところはきつくはっきりしていてほしいと思うんです。  そういうことに関する見解と、もう一つは、他方ではOPECの大幅な原油価格引き下げがありまして、むしろ電力消費者にその分を返せ、もっと行政指導をしっかりしてほしいというようなことが叫ばれておるわけです。そういう意味から申し上げまして、行政当局のこれから電力会社に対する行政指導なるものがどういうふうに行われるのか、その点の見解を聞きたいと思うんです。
  270. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) まず最初の御質問でございますけれども、確かに御指摘のような数字、私ども確認しておるわけでございます。またそのウエートにつきまして、私どもの計算によりましても、全社平均の総括原価で言いましても、この税負担は原価のうちの〇・六五%、平年度でございますが、その程度負担ということで、御指摘のようにそのウエートは非常に少ないというふうに考えます。したがって、この税の税率の引き上げが電気料金の便乗値上げにつながるということは考えられないと私どもも考えております。  それから第二のOPECによる原油引き下げに伴って電気料金の引き下げ指導いかん、こういう御質問につきましては、実は確かに原油が引き下げられれば、その分燃料としての重油、原油等のコスト分が電力の収支上減になるであろうことは確かでございますけれども、ただその影響のあらわれ方、これはいつ具体的に電力の収支計算上その引き下げ効果が出てくるか、それがどれだけ続くかという問題だとか、それから他方電力におきましては資本費の、いま設備投資を進めておりますが、その資本費の増高というものも非常に大きなものになっております。そういった資本費その他のコスト増要因というものも十分他方で考えなければならない。また為替変動、それから電力特有の事情として水力の出水率、水の出方が非常にまた電力収支に影響する。そういった諸要素が電力収支にとって不透明でございますので、いまここで原油の引き下げだけを取り上げてすぐに結論をどうのこうのというよりは、こういった原油の影響のあらわれ方、その他のコスト諸要因の動向等今後の推移を十分見守って慎重に検討さしていただきたいと考えております。  ただ、基本的には電力料金というものは長期安定というものが非常に大事なポイントであるということで、そういった将来いろんな動向を見きわめて検討する段階におきましても、そういった長期安定ということは十分踏まえながら判断をすることとしてまいりたいと考えております。     ─────────────
  271. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 委員の移動について御報告いたします。  ただいま多田省吾君が委員辞任され、その補欠として太田淳夫君が選任されました。     ─────────────
  272. 鈴木和美

    鈴木和美君 最後の質問になるかもしれませんが、エネルギー関係の特別会計予算の歳入の大宗を占める税収は、電源開発促進税と石油税と原重油関税があるわけでありますが、五十八年度においてOPECの原油価格引き下げ及び最近の省エネルギーの定着化により、これら税収が予算額を下回るというように見込まれるんですが、主税、関税当局のこの見通しについてお聞きしたいと思うんです。
  273. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 石油税の問題でございますが、御指摘のとおり、石油税は従価税でございますので、原油価格、つまり石油の引き取り価格が下がりますと当然税収に影響がございます。五十八年度石油税の税収見積もり四千二百九十億円でございますが、為替レートとか輸入量にも関係するわけでございますけれども、大まかに申し上げましてバレル当たり一ドル原油価格が下がりますと、おおむね満年度で百二十億円減収になるということでございます。  ただ、五十八年度の税収が今後どうなるかということは、先ほど申しましたように、レートの問題とか輸入量の問題、それからいつの時点ぐらいから税収にあらわれてまいりますか、これはタイムラグがございますので、現段階でまだ金額的にどれぐらい減収になるであろうということを申し上げる段階にはないわけでございます。
  274. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、本法律案は、いままでお聞きをしてまいりましたように、ある意味では百四十五円の改正というものが、結果として国民大衆に、消費者にしわ寄せがいく可能性がどうも多分にあるという見通しと、それから原子力発電に力を注ぐような行政指導が強い、並びにどうも大企業優先の保護の感じがするというような面から見まして、私はこの法案については賛成ができない態度でございます。  そこで、最終として大蔵大臣に、私どもの懸念であるこの法案改正によって便乗値上げが行われるというようなことのないような行政指導をしっかりしていただきたいということについて大蔵大臣から見解をお尋ねいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  275. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これがたとえば電気料金というような問題、直ちに改定の環境にあると思うわけじゃございませんが、しかしながら、これらの問題については、また環境から言いますれば、原油価格引き下げは、別の意味において利益を中長期的に見てもたらすであろうという問題もいろいろございます。  したがって、そもそも鈴木委員も御窓見の中でも申されておりましたように、目的税としての性格を持って今日きているわけです。本来、目的税は、税制全体から言えば決して好ましいものだとは思いません。しかし政策の重要性からしてこのような措置が今日できておる。そして、それそのものが今日まで機能してきております段階において、なお一層の政策の充実をもたらすために今度改正ということに相なったわけでございますので、それが安易に消費者に影響のある便乗値上げ等につながるようなことに対しては、私どもも協議を受ける立場として厳正に対処することは当然のことであろうと思っております。
  276. 桑名義治

    ○桑名義治君 まず最初に、国民年金の特別会計の国庫負担金の繰り入れの平準化の問題についてお尋ねしたいと思いますが、まず今回のいわゆる平準化措置を行う理由について伺いたいと思います。  一般会計が苦しいという財政事情から財政負担の削減を図るということが表に出てきているというふうに思うわけでございますが、この理由をまずお伺いをしておきたいと思います。
  277. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 今回の法案を提出いたしました理由は、国民年金特別会計の性格上、今後昭和六十四年までは一般会計から国民年金特別会計へ繰り入れます国庫負担金が順次減少し、その後昭和六十五年以降これが増大するという、非常に不規則な形になっておりますので、これを中長期的観点から、昭和五十八年度以降大体年三%の伸びで国庫負担を入れていけばよろしいようにということにすることが理由でございます。  いま委員御指摘のように、財政的には大変にいまの一般会計状況は悪いわけでございまして、その財政事情を反映してこういった法案が出されているのではないか、こういうお尋ねでございますが、そのことは確かに私ども全然関係がないとは申し上げるつもりはございませんが、先ほども申し上げましたように、五十八年度の予算を組みます際に、昨年の夏に厚生省もいろいろシーリングの中に財政枠をとどめるために御苦心をなさった一つの結果であることは事実でございます。  そういった意味で、現下の厳しい財政事情が今回の法案をお出しするきっかけになったことは、私どもも否定するつもりはございませんけれども、しかしこの法案そのものは、冒頭申し上げましたように、中長期的に見まして、一般会計からの特別会計への負担をなだらかなものにするというところが最大の主眼でございますので、その意味で私どもとしては、単にやりくりの措置ということだけでとらえられてはいささか残念だと、こういう気持ちがあるわけでございます。
  278. 桑名義治

    ○桑名義治君 そういうふうに言われますけれども、こういう現在のような財政事情でなければ、この平準化の措置というものは恐らく行われなかったのじゃないか、そういうふうに私は思います。財政負担の軽減ということを表に立て言われることは大変に残念だという御発言ではございますけれども、客観的に見た場合は、そこに最大の重点が置かれている、私はこういうふうに思わざるを得ないと思います。  そこで、今回の措置は国民年金の国庫負担金の繰り延べ、いわゆる先送りであります。まさに臨調の最終答申でも指摘されておりますけれども、制度の根本的改革につながらない一時的なやりくりのための措置、これはやるべきではないというこの答申の中身に反しているのじゃないか、こういうふうに思わざるを得ないわけであります。後年度の負担の先送りはかえって今後の財政運営の重荷になってくる。こういうふうにも考えられるわけでございますけれども、財政当局としてはその点についてはどういうようにお考えになっておられますか。
  279. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) この法案によりますと、昭和六十三年度まではいまある姿の負担額よりも減少し、六十五年度以降はそれぞれの年度におきましてあるべき負担額よりも若干増額した形での繰り入れがあるわけでございますから、将来の財政運営の重荷になるのではないかというのは、昭和六十五年以降の問題としては確かにそういった面があるかと思いますが、しかし昭和六十三年までの間におきましては、その分だけ荷が軽くなるということもございます。  臨調が言っておりますのは、制度の根本的改革につながらない一時的なやりくりのための措置については極力回避しろ、こういうことをおっしゃっておるわけでございまして、私どもとしては、いま申し上げましたように、これは一時的に五十八年度の負担をたとえば七十二年度にふいっと回したということではございません。先ほども申し上げましたように、五十八年度からたとえば六十三年度までのこの期間につきましては減少する。それから六十五年度以降の期間については増加するといった形、しかもその増加するといいましても、その増加率は年率にいたしまして三%ということで設計しておる。その三%というのは何かと言いますと、ほうっておきましても三%近く、二・数%伸びることになるんですけれども、それと同時に、将来の国民経済というものが実質的にも三ないし四%程度は伸びるだろうという、これは経済審議会の方の予測もございますので、それを踏まえたところで設計がなされているということでございますので、単なる一時的なやりくりという臨調がおっしゃっているそのこととは、いささか違う趣きがあるものと思っております。
  280. 桑名義治

    ○桑名義治君 その答弁も、先ほどから私、黙って聞いていたわけでございますけれども、今回の五十八年度の予算編成について要調整額をどういうふうにして埋めるか、この問題につきましては、こういう手法があらゆる面に行われていることは事実ですね。だから、そういう立場から見た場合には、先ほどからいろいろと説明をなさっておられますが、それはこういう施策をやった後に理由づけというのはどうでもできるわけでございましてね。ところが、一連の予算編成の段階のいままでの姿というものを当委員会においていろいろと議論をし、詰めていったその経過から眺めてみますと、その流れの一環であるにしかすぎない、こういうふうに私は見なければならないんじゃないか、またそう見えるということを特に強調しておきたいと、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、年金制度は、先ほども議論になっておりましたが、長期的に安定した運営というものが求められているものであります。国民の信頼が必要不可欠でございますし、年金制度の危機というものが最近は非常に叫ばれているわけでございます。私たちもいろいろな方々とお会いする機会は多いわけでございますけれども、われわれが掛けているいまの年金は将来払えられなくなるのではないかと、こういう端的な質問が非常に多いんです。完全に安心して年金を掛けているという方々は本当にごくわずかじゃないかと思うんですよ。一抹の何らかの不安を持ちながら現在は年金を見詰めているのが国民の本当の姿ではなかろうか、こういうふうに私は言っても過言ではないと思います。  そういった立場から考えてみますと、今回のこういった措置というものが年金制度に対する国民のいわゆる既得権やあるいは期待感というものを損なうのではなかろうか。そしてまた不安感を助長することにつながるのではなかろうか。こういうふうにも危惧しているわけでございますが、その点についてはどういうふうにお考えになられますか。
  281. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) いま委員御指摘のように、現下の年金制度につきましては、大変に問題があることは事実だと思います。その問題は、いま委員御指摘のように、年金制度の実態そのものに問題があるわけでございます。大まかに申せば、年金制度そのものの仕組みが負担と給付との間の関係がアンバランスになっておる。これはもう計算の問題でございますから、だれか見ても計算をすればもう明らかでございまして、あと何年かすれば、二十一世紀そこそこに入ったぐらいで各年金制度が計算が合わなくなる。これはもう火を見るよりも明らかな状態であることは事実でございます。  しかし、それを直していかなければならないということは、実態面に触れてのお話でございまして、早急にこの辺のところは、すでに五十八年度としては共済年金を手がけ、それから五十九年度以降、民間の年金、共済の年金というような形で、そこのところはきちんとしていかなきゃいかぬというところまで来ているわけでございますから、いまお出ししております法案はそういう実態面には触れませんで、実態面は実態面でそのままにしておくということは、これは確かに宿題としてはあるわけでございますが、そこのところに触れませんで、単に会計技術処理の問題として実態的な負担を、実態面負担、総額としては動かさないで年々の繰り入れをどうするか、こういうやり方をしている。単に技術的な問題というのはそういう意味でございます。したがいまして、委員がおっしゃっております実態面の国民の不安感を助長するのじゃないかということはそういうわけではなく、全くその実態面からは中立な形でこの方向ができているわけでございます。  でございますから、おっしゃるような実態面の不安感をなくすというようなことにつきましては、実態面の措置というのが確かに要るわけでございまして、それは五十八年度に共済年金から今後御審議いただきたいと存じておりますけれども、それを手始めにいたしまして、今後の年金改革というのは数年間あるいは十年近くかかるかもしれませんが、その間はおきまして、長期安定いたしました国民の皆様の信頼できる年金というのを全制度にわたりまして構築していかなければならない問題と思っております。
  282. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御答弁のように、確かに実態面についてはさわっていないわけですよね。だけれども、実態面から見た場合には、あなたもいま否定なさらなかったように、将来に対する大きな改革をやっていかなきゃならない面があるということは、これはもうどうしても否定できないわけですが、国民皆さん方の考え方は、そういうことを一つの基礎にしながらこういう処置をとられたことは、さらにそういう不安感というものを助長するのではないかと、こういうことを私は申し上げておるわけです。  いずれにしましても、今回のこの平準化措置がとられたことによって、国民年金特別会計において減少する運用収入に相当する金額、これはこの表で見てもわかりますけれども、七十二年以降返済することになっているわけでございますが、返済期限並びに返済計画についての具体的な方法をお知らせ願いたいと思います。
  283. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) この運用収入相当額につきまして返済計画、返済期限ということでございますが、    〔委員長退席、理事増岡康治君着席〕 先ほど申し上げましたように、その運用収入の、何と申しますか、減少額そのものの金額が現時点では確定できないわけでございます。これは金利水準の変動という要素と今後の年金額の改定、スライドの問題でございますが、これがいかが相なるかということにつきまして、わからないものですから、これは昭和七十二年度になりますと事後的に確定できるわけでございます。したがいまして、現在その期限及び計画については実際問題つくりようがないというのが事実でございます。  ただ、私どもとしては、この法案にございますように、この平準化の趣旨にのっとって七十二年度から返していく、こういうことでございますから、七十二年度以降も年率にいたしまして三%程度の伸びというものを想定いたします。そういたしますと、この制度がない場合黙って放置しておきましたときの国庫負担額の伸びというのが二%をちょっと超える程度でございますから、その間の差が出てくるということが一つ。  それからこの繰入額を七十二年度までしていくわけでございますけれども、そのしていく根っこの額が落ちますことによりましてその差が出てまいりますので、それを埋めてまいりますと、先ほども申し上げましたが、金額的にその全体の入れるべき合計額がはっきりいたさない。一兆円から一兆四、五千億の間だと思いますが、その金を埋めていくのには五、六年で埋めていかれるのではなかろうかと、こんなようなふうに考えております。
  284. 桑名義治

    ○桑名義治君 確かに金額が確定できないことは、その御説明はわかるわけでございます。いまの御答弁にございましたけれども、大体五年から六年のペースで返していくと、こういうふうに確認しておいてよろしゅうございますか。
  285. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 大体そんなようなことが目安かと存じます。
  286. 桑名義治

    ○桑名義治君 次にお尋ねしたいことは、年金積立金は全額が資金運用部に預託されて、郵便貯金等とともに総合運用されているわけでございますが、今後の高齢化社会を迎えるに当たりまして、最近再び議論の的になっているのがいわゆる年金積立金の自主運用論でございます。国民年金、厚生年金の年金積立金は、昭和五十七年度末で約四十兆円に達する見込みでございます。厚生省の試算によりますと、自主運用によって、控え目に見ても〇・五%の利回りアップが可能である、これだけで年間約二千億円の保険料の負担が軽減されると言われているわけでございます。  そこで、まず厚生省にお伺いしたいのは、厚生省としては八月までに自主運用の具体的な青写真を仕上げる予定であるというような報道がございますが、具体的な案はどういうふうなことになっているのか。その一応の日安なりあるいは計画をお示し願いたいと思います。
  287. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先ほども先生おっしゃいましたように、本格的な高齢化社会を迎えます二十一世紀におきましても、長期的に安定した年金制度を確立する必要がある。あくまでも年金制度は国民の信頼の上に立っていかなければならないわけであります。  そういう観点から、私どもは昭和五十九年度を目途に厚生年金と国民年金の両制度にわたりまして、全面的な見直しの作業を行っておりまして、社会保険審議会並びに国民年金審議会に御審議を願っておるところでございます。  年金積立金の管理、運用問題というのは、年金制度の改革の中の一つの重要なテーマでございます。制度改革の一環といたしまして現在鋭意御審議を願っておるところでございますので、法案を作成いたしますときまでに厚生省としての考え方を固めてまいりたいというふうに考えております。
  288. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、いまの御答弁によりますと、まだ大体アウトラインもでき上がってないということでございますか。
  289. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 審議会でいろいろ御審議を願っている最中でございます。その御結論をちょうだいしてから私どもとしての考え方を固めたいということでございます。
  290. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、厚生省の考え方としては、先ほど私が申し上げましたように、いわゆる自主運用をしたいという姿勢そのものは変更はないわけですか。
  291. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) これからの年金制度の改革と申しますのは、二十一世紀におきまして人口構成が非常にピークを迎えますときにおきましても長期的に安定した制度にしなければならないということは、いま申し上げたとおりでございます。そういたしますと、給付水準の見遺しとそれの適正化というものを図っていかなければということになるわけでございます。それとともに、負担につきましても、その負担増をお願いするというようなことにもなるわけでございます。そういうような観点から見ますれば、年金積立金の運用問題というものにつきましては、負担問題と切り離せない問題でございますから、有利な運用その他の方策を講ずる必要があるのではないかというような考え方を持っております。
  292. 桑名義治

    ○桑名義治君 言いはくいでしょうから、奥歯に物の挟まったような言い方でございますけれども、いずれにしましても、自主運営ということを強く厚生省が打ち出す、あるいは郵政省から郵便貯金について自主運営をしたいという、こういうそれぞれの省庁の非常は強い意向があることを私も存じているわけでございますが、そういったところから考えてみますと、いまから先の年金を一本化してどういうふうに運営していくかという問題は非常に大きな問題でもございますが、それぞれの自主運営という姿勢が表に強く出てきた場合には、これは財投全体をもう一遍見直していかなきゃならないというような大きな問題に突き当たっていくわけでございます。  そこで、最近の政府の姿勢から考えますと、公的年金制度を長期的に安定させる観点から、給付水準の引き下げ、保険料アップなど国民負担を強いる形での抜本的な見直しも予想されるわけでございます。国民負担軽減という点では、自主運用ということは一応考慮されるというふうに思われるわけでございますけれども、財政当局としてはどういうふうにお考えになっておられるのか。  また、年金の積立金、あるいは郵便貯金の自主運用論というものは、先ほど申し上げましたように、これは財政投融資の見直しにも及ぶ重大な問題でございます。そこで、昭和五十九年度の財投融資計画策定に当たっての大蔵省見解をまず伺っておきたいと、こういうように思います。
  293. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 五十八年度で申し上げてみますと、国と地方と財投機関というようなものにどういうふうな資金配分をやるか。かつては財投機関に八割ぐらいいっていたわけですが、五十八年度の場合には六割ぐらいしか回り得ないわけです。国の国債と特別会計、地方は交付税と地方債とそれから公営公庫でございます。で、四十八機関いま財投機関ございますが、四千億の増の範囲でやっておる。五十八年度に始まったわけでなくて、昨今どうしてもそういうような傾向にいかざるを得なくなってきております。  さはさりながら、そのときどきの経済社会情勢に応じまして資金の重点配分をやらなければならない。ことしの場合で申しますと、住宅とかそれから資源エネルギー、道路、経済協力でございますね、こういうようなものに重点配分をしておるわけです。別途自己資金調達というようなことを強化するために外債を、前年二千億でございましたが、ことしは四千億にしておるとか、そういうようなことを考えております。  で、五十九年度でございますけれども、当然来年度のことはいまから想定できませんけれども、五十八年度に出てきた基本的な線というのは引き続いていくだろうと思います。国の方は国債だけでなくて特別会計もなかなかやりくり大変なわけです。公共団体の方も交付税特会残高もずいぶん大きいわけでございます。こういうのに重点配分せざるを得ない。重要な国民生活経済の分野に対してはプライオリティーを念査いたしましてできるだけ重点配分をやっていかなければならない。そんなようなふうに思っております。
  294. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、財投については非常に厳しい局面に現在立たされておることは、いま御説明のとおりでございますが、いずれにしましても、そうしますと、五十八年度に引き続きまして、五十九年度の予算編成におきましては、これは社会保障制度やあるいは教科書無償配付制度などの現行の制度、施策にどれだけメスを入れるか、ここら辺がどうも焦点になりそうな気がするわけでございます。  そこで特別児童扶養手当の見直し、それから国民健康保険を中心にしました医療保険助成の見直し、あるいはまた母子世帯を対象に支給される全額国庫負担の児童手当の財源の一部の都道府県による肩がわりなどについて、大蔵省は検討に入っているとも言われているわけでございますけれども、防衛費の大幅な伸びを認める一方で、国民の生活に密着した福祉関係予算の削減、あるいは社会福祉制度の改悪ということは、これはどうしてもわれわれとしては容認できないわけでございますが、来年度の、五十九年度の予算編成の問題について、いまごろおまえ何言ってんだと、こういう気持ちがあるかもしれませんが、しかし私は、こういった危惧が単なる危惧であればいいけれども、しかし先ほどからのいろいろな御議論の中、御答弁の中で、こういうことはやはり危惧し、ここで多少論議をしておく必要があるんじゃないか。こういうふうにも思うわけでございますが、この点についての大蔵大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  295. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私は、来年度予算のことでございますから、いま議論すべきでないなどという考えはありません。議論していただいて結構だと思っております。  で、いま桑名委員がいろいろ御指摘なさいました問題は、確かにかつての財政制度審議会、それから臨調でもおおむね指摘されておる問題であろうと思っております。  したがって、私どもとして、これらの問題について当然目をつむってそのままいくという性質のものではなかろう。必要な制度につきまして、地策、制度の根源にさかのぼり――またいま一部地方負担の問題もございました。これらの問題が指摘されておることについてはやはり念査していかなきゃならぬ問題であろう。このことにつきましては、私はよく言われる防衛費突出、あるいは文教、社会保障がそれによって被害を受ける、こういう議論もございますけれども、私も先般、二十五年前の予算といろいろ比較してみますと、社会保障七十倍、防衛費はまだ十八・八倍でございますか、それだからいいというわけじゃございませんけれども、そういう総合的な問題の中に、これはいま御指摘なすった問題のみならず防衛費も含めて、やはり制度、施策の根源にさかのぼって勉強していかなきゃならぬ問題だ。直ちにすでに勉強を始めておるという意味で言ったわけじゃございませんけれども、それを所管省にまたお願いして勉強してもらう課題ではなかろうかというふうな認識をいたしております。
  296. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、財政的に非常に厳しい状況にある、あるいはまた近年における社会保障費あるいは防衛費の伸び、そういうものを比較した場合には、いま大臣の言われたような一つの論理は成り立つんじゃないかとも思います。思いますけれども、既存の一つのこういう制度ができ上がる、社会保障制度というものができ上がる。その中で国民は生きてきたわけです。言いかえれば一つの既得権でもあるし、それが一つ基準になっていま国民生活というものは成り立っている、ここを見落としてはならない、私はこういうふうにも思うわけです。しかも、この中でもいま申し上げましたように、母子世帯の問題やあるいはまた特別児童扶養手当の問題、こういう問題は社会的弱者に対する施策でございます。それと同時に、最近の状況と社会情勢というもの、あるいは経済情勢というものが、非常に厳しい状況の中に再び落ち込んできているということも見逃せない社会現象の一つであろうと思います。確かに高度経済成長期がもう終わりまして、いまから先は低成長期に入ってくるわけでございますから、そういう一つの社会の切れ目の中には必ずその狭間の中で苦しむ者がいる、その苦しむその制度というものは、私たちが目を据えていくことが政治ではなかろうか、こういうふうにも思うわけでございまして、そういった立場で、現在の財政事情が非常に厳しい中、それでこういうことを申し上げているわけでございますが、この点についてのまた大臣の御答弁を願っておきたいと思います。
  297. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のように、現存しておる国民が既得権、そしてあるいは年金等で申しますならば期待権とでも申しましょうか、そういうものがお互いのそれぞれの暮らしの仕組みの中にもう入っておるという認識は私は間違っていないと思います。  私どもそういう厳しい財政の中で政策選択をしていく場合、いま一つ考えなきゃいかぬ問題は、それが行政の中でどのように生かされておるかということも一つの問題ではなかろうか。これは一例でございますけれども、たとえば生活保護の施策一つをとってみますと、ある県は千人当たり四十・一人であり、ある県は千人当たり四人である、それぞれの事情はあろうかと思いますが、一般的に見て、行政の中のひずみというものがありはしないかなというある種の疑問も感じてくるかもしらぬ、そういうものに対する念査の必要も私はあろうと思うんであります。そして、それら暮らしの中の仕組みの中へ入っていった既存の制度が本当の意味で生かされていく、乏しい財政の中でそういう方法についてはいろいろな角度から検討して、国自身のまさに責任の範囲内において対応すべきものであるのか、あるいは自治体の分野にもこれに対応していただけるものがありはしないか、あるいはこれは自己責任なり、または企業の自助努力の中で解決すべきものであるではないかとか、いろいろな問題を考えながら制度、施策の根源にさかのぼりつつも、暮らしの仕細みの中に、あるいは既得権として、あるいは期待権としてあるものに対して大きな衝撃を与えない形の中で、これを合意と理解を得ながら、対応、解決していかなきゃならない大変複雑な苦しい環境の中にわれわれ自身が置かれているんじゃないかというふうな認識は私も十分いたしておるつもりでございます。
  298. 桑名義治

    ○桑名義治君 厚生省にお尋ねしたいのですが、五十八年度予算では年金福祉関係の諸給付が物価スライドは凍結され、支給額が法定されているものは据え置きとなっているわけでございますが、その影響を受けている数はどの程度となっているのか。またそのような措置をとった理由についても伺っておきたいんです。
  299. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 五十八年度予算において、拠出年金スライド規定があるものにつきましてスライドを見送ったわけでございますが、どれだけ受給者がいるかというお尋ねでございます。  厚生年金保険につきましては、五百六十三万五千人、船員保険については十万五千人、拠出制国民年金については七百五十九万八千人、合計いたしまして一千三百三十三万八千人でございます。  それから理由についてのお尋ねでございますが、これは法律の規定上五%を超えたときにはという規定になっておりまして、過去に五%を超えない場合においても物価スライドを実施したこともございますが、今回は五十七年度の物価上昇率が二・四%と確定をいたしたわけでございまして、かつまた恩給等を含め、あらゆる年金について引き上げを行わないということに相なりましたので、この分は次年度に送る、こういう形になったわけでございます。
  300. 桑名義治

    ○桑名義治君 こういった人たちの家計は、受給額に対する依存度というものが非常に高いわけでございます。年金のスライド制実施については、四十八年に物価スライド制が導入されて以来、消費者物価上昇率が五%を超えない場合でも、受給者の生活を圧迫しないという配慮から特例法を提案してスライド制を実施してきた、それはいまの御答弁にもあったとおりでございますが、今回の場合に、こういう物価スライド制の特例法があるにもかかわらず一応見送ったということは、主にどういう理由があったわけでございますか。
  301. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) いまの政府委員の答弁と一部重複いたしますけれども、昭和五十八年度の年金の物価スライドを見送りました理由としては、政府側が何回も御答弁申し上げておるところでございますけれども、人事院勧告が凍結されるという厳しい財政事情のもとにあるということ、恩給、共済年金の改善も見送られるということになっておる、最近の物価の傾向が非常に安定しておる、五十七年度の物価上昇率が実績で二・四%でございます。こういうような諸事情を勘案すれば、これを見送ることもやむを得ないという判断に立ったわけでございます。
  302. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほども申し上げましたように、こういった方々は年金に依存している依存度が非常に問いわけでございますので、そういった意味からは非常に残念な事柄であったと思います。そこで現在高齢者世帯、男が六十五歳以上、女性が六十歳以上の世帯で公約年金のみに依存して生活をなさっている世帯は大体どの程度というように把握されておられますか。
  303. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 昭和五十七年の国民生活実態調査の結果によりますと、先生の現在おっしゃいました男子六十五歳以上、女子六十歳以上の高齢者世帯におきましては、その九二・三%が年金または恩給を受けております。御質問の年金、恩給だけで生活しております世帯は三二・八%ということになっております。
  304. 桑名義治

    ○桑名義治君 確かに、厚生省の国民生活実態調査によりますと、公的年金のみで生活していらっしゃる方が三二・八%、総所得の六〇%以上を公的年金による高齢者世帯が五二・六%、大体半分ということになっているわけでございますが、こう見ますと、高齢者の三分の一がまるまる年金に依存して生活をされているわけでございます。その割合は前年度の二六・五%から三二・八%へと六・三%も増加しているのが実態でございますが、厚生省の生活実態調査のこれらの数字そのものは、本年度の年金額の据え置きがいかに高齢者の世帯に打撃を与えたかを物語っているのではないか、こういうふうに思うわけでございます。この点については厚生省はどういう認識をなさっておられますか。
  305. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 老後の所得保障におきますところの公的年金制度の果たします役割りというものはますます重要性を増してきておると思います。それとともにまた公的年金に対する期待もきわめて大きいということも事実でございます。  しかしながら、今回は先ほど申し上げましたような、物価動向が非常に落ちついておるというようなことでありますとか、厳しい財政事情にかんがみまして、改定を見送った次第でございますので、何とか御理解を賜りたいというふうに考えております。
  306. 桑名義治

    ○桑名義治君 実際に生活なさっている方は、いわゆる財政事情なんていうことはないわけですよね。それを目当てにして生活をなさっているわけでございますので、そこら辺も今後は大いに考えていかなきゃならない点だろうと思います。  次に、衆議院で本年度予算が審議された際に、本年度中に相当規模の所得減税を実施すると。きょうも総理ははっきりと明言をされたわけでございますが、この減税が実施をされた場合、年金の据え置きについては当然見直しがあってしかるべきだと、こういうふうに思いますが、財政当局あるいは厚生省当局の見解を伺っておきたいと思います。  そこで、これらの受給者のうち、多くの者が一応所得税を納税するほどの所得を得ていない、こういうふうに思われるわけでございますが、もし減税が実施されてもその恩典には浴さないというのでは不公平の感もあるわけでございます。  それで、年金額の見直しについて、両省はどういうふうにお考えになっておられるのか、あわせて伺っておきたいと思います。
  307. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 所得税の減税問題につきましては、税制調査会で検討が開始されておりますが、福祉年金を初めとしまして、年金の改定につきましては、先ほど来厚生省の方から御答弁申し上げておりますような事情で、ことしは見送っております。  年金の給付水準と減税との関係で、減税をやれば年金の給付水準も上げなきゃおかしくないかという御質問の御趣旨かと存じますけれども、私どもといたしましては、両者直接の関連はない、減税問題と関連して年金を改定するということは考えてございません。  なお、無拠出制の福祉年金について、たびたび同様なことで問題になるわけでございます。いま委員のおっしゃったのもその御趣旨かと存じますけれども、減税が片方ある。それで無拠出制の老人の福祉年金がいま月で二万五千百円でございますが、これだけもらっている方は税そのものを納めておりませんから、減税の恩典に浴さないではないかといえば、そのとおりだと思いますけれども、しかし先ほども申し上げましたように、年金の給付水準と減税との直接の関係はない。  それから、もしも福祉年金について何かさわるというような話になりますと、今度は拠出制年金全体にも影響が出てくる。御承知のように拠出制年金の低い方の方と、それから無拠出制の福祉年金との間の差は、月額にして二百円程度しか差がないわけでございますから、そこのところが全体の拠出制年金の給付体系に影響が及んでくるというようなことでございますので、いま税制調査会で御検討になっておる結論がどうなるかはわかりませんけれども、どういうふうになりましても年金の給付水準の方は本年度はいじるつもりはない、こういうことでございます。
  308. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) いまの大蔵省の御答弁と重複するかと思いますけれども、年金受給者の中には課税世帯もございますれば、非課税世帯もあるわけでございます。直ちに減税と年金額の改定とが結びつくものではないというふうに考えております。
  309. 桑名義治

    ○桑名義治君 確かに皆さんのおっしゃるとおりに、年金と所得減税というものは直接的な関係が私もないと思います。ないとは思いますけれども、それを承知の上で私は質問を申し上げておるわけです。  しかしながら、無拠出と拠出と、福祉年金の場合には、これは一つの問題点が出てくる、こういうふうに大蔵省当局は御答弁なさったわけでございますが、税調がどういうふうな結論を出すかということをお待ちになっているようでございますが、大蔵省としてはどういうふうにお考えになりますか。
  310. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) ちょっと御質問の御趣旨をはっきり受けとめ得なかったかもしれませんが、私どもとしては、年金の方につきましては、年金は年金それ自体の理由に基づいて物を考えてまいりたい。減税は減税として、これは別途――両方一緒くたじゃなくて、減税は減税の理論、年金は年金の理論ということで物を考えてまいりたいと思っております。
  311. 桑名義治

    ○桑名義治君 それはよくわかるわけです。それは私も先ほどから申し上げているように、減税は減税の理論、それから年金は年金の理論で、これは別個に考えなきゃならない、これは直接な因果関係はないんだということは理解しているわけでございます。その立場に立って、こういう減税措置がとられた場合にはこういう年金者の立場をどういうふうに理解をし、どういうふうに対処していくべきだとお考えになっていらっしゃいますかということをお聞きしているわけです。
  312. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 重ねて申し上げますが、減税問題についてある結論が出たということがありましても、それはそれ、これはこれの話でございますから、そういうことがあるからといって年金の問題をどうこうということで、それで考えるということはない、考える必要がない、こういうことでございます。
  313. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、弱者に対する考え方というものをもう一遍見直していかなきゃならぬし、それと同時に、年金そのものをもう一遍見直していかなきゃならないのじゃないか、こういうふうに思います。  こういうふうな問題が起こってきたときに、いつも狭間に置かれてしまうのがこういう年金生活者であるということは、これは否定できない事実であろうと思うんです。制度上は確かに関係はないと思います。制度上は関係はないけれども、しかし片や減税措置によって一定の利益を得る。ところが、年金生活者については、スライドをしないときには一緒にしないけれども、減税措置がとられたときには、今度は逆に据え置かれてしまう、こういうふうな形にならざるを得ないと、こういうふうにも思うわけでございます。  次に、五十九年度に年金制度の改革が予定されていると、こういうふうに聞いておるわけでございますが、その検討状況をまず伺いたいと思います。  また、改革が実施された場合、本措置への影響も避けられないのではないかとも思うわけでございますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  314. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 検討状況につきまして御答弁を申し上げたいと思うわけでありますが、五十九年度におきまして、厚生年金保険と国民年金の制度改正を行うべく現在準備を進めておるところでございます。具体的には社会保険審議会並びに国民年金審議会におきまして御審議をお願いしております。また広く各階有識者の御意見を得ますために、有識者調査というものを先般実施いたしまして、一応取りまとめをいたしたところでございます。    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕  これからの予定でございますけれども、これらの関係審議会並びに有識者調査の結果などを踏まえまして具体的な改革案を作成いたしたい、次期通常国会に法案を提出いたしたいということでございます。
  315. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 年金の改革についての現段階の話は、いま厚生省からお話しがあったとおりでございます。  年金の改革が現実にどういう姿になるかというのは、まだいまのところでは申し上げがたい状況でございます。  ただ、今回の措置と申しますのは、主として老齢福祉年金受給者がこれからはふえない、だんだんだんだん絶対数としては少なくなっていくということが最大の原因でこういう不規則な形になっていくわけであります。老齢福祉年金の制度をやめちゃうという実に乱暴なことをしない限りは、この制度的な基礎というのは相変らずずっと続くわけでございます。でございますから、その基盤に立った形で物を考えてまいりますと、平準化措置の基盤というのは相変らず残っていくわけでございます。  ただ、具体的に年金改革というものがどうなるかの次第でございますけれども、その改革の具体案の次第いかんによっては、多少影響をこうむるということもあり得るかもしれないと思っております。そのときにはいまの御説明申し上げております趣旨を踏まえまして、制度的に多少手直しをするようなことがあるかもしれません。あるときには趣旨は踏まえた形で考えてまいりたいと思っております。
  316. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間の関係もございますので次の電源開発促進税法の問題に移っていきたいと思います。  電源開発促進税の創設は、これは先ほどからいろいろと議論が出ておりますように、四十九年度税制改正の際に、税制調査会に諮問せずに実施されたといういきさつがございます。当時の福田大蔵大臣は、税調に諮問なしで創設したのは異例中の異例で今後は慎みたいと、こういうふうに答弁をされているわけでございます。なぜ諮問しなかったのか。当時の背景とさらにこのような税収の使途が特定されている目的税についての大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  317. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 大臣の御答弁の前に、四十九年制度創設時に税制調査会にお諮りしなかったということで、当委員会で御議論があったことは御指摘のとおりでございます。当時の議事録を引用させていただきますと、福田大蔵大臣はただいま御指摘になりましたように、「税制調査会に御意見を聞かなければならないというたてまえのものでありまするが、そのいとまがなく、政府独自で決定した」、「正式の税調にこれを付議しなかったということにつきましては、これは異例中の異例であります。そう心得まして今後は慎みたい、かように考えております。」という答弁をされております。  これは先ほど来の論議の経過にもございましたように、四十年代後半に入りまして電源立地対策の政策問題というのが非常に大きな問題になっておったわけでございますが、たまたま四十八年暮れの突発的な原油価格の引き上げという事態が引き金になりまして、実は草々の間にこの制度の立案が行われた。そういう意味で税制調査会に諮問するいとまがなかったという経緯をただいまの議事録を引用しながら説明したわけでございます。  そういう経緯でもございますので、自後昭和五十五年度の使途の拡大に伴います税率引き上げの際と、それからただいま五十八年度の改正でお願いをしております税率の引き上げに際しましては、いずれも税制調査会に付議いたしまして答申をいただき、その結果に基づきまして御提案を申し上げているところでございます。  後半の問題につきましては大臣から御答弁があると思います。
  318. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいまの主税局長からお答え申し上げましたとおり、私はあのとき、昭和四十六年のいわゆるドルショック、そしてそれに対してやっと内需の拡大等によってそれを脱出したかの感を抱きつつあるところへ、四十八年暮れぼかっときたのがいわゆる第一次石油ショックでございました。その際そういう環境の中にこの電源の多様化問題等々がまさに急激に議論される環境にあって、この制度がただいま主税局長からお話し申し上げましたような税調抜きという形で創設されたことは、いまお答えいたしましたとおりでございます。  元来、私も目的税というものは一般的には好ましいものではないと思っております。確かに国の歳出は本来すべての財政需要を全体的にまた統一的に考えて、政策の重要性に従って適正かつ効率的にこれを配分させることが原則であるということを思いますならば、税収を自動的に特定の歳出に振り向ける目的税は、一般論として必ずしも好ましいものではないというふうに考えております。  で、そういう環境の中にできたという歴史的経過もあろうかと思うのでありますが、まああのときを考えてみますと、それこそ電源立地対策それから電源の多様化対策、これは相当な今後資金が要るという認識にお互い立ちました。そういう意味におきまして、これらの対策の受益者が一般電気事業者と限定されるということからいたしまして、その受益者に応分の負担を求めるということにしたことでございますので、私はああいうような場合において目的税を設けるということには合理性がないというふうには考えません。それなりの合理性はあったというふうに思っております。  しかし、それなりに私ども考えなきゃいけませんのは、とかくこれが増収措置をとります際に、イージーに流れやすい傾向にこの種のものはございますので、それには十分心していかなきゃならぬ課題であるというふうに認識をいたしております。
  319. 桑名義治

    ○桑名義治君 今回、税率を千キロワット当たり三百円から四百四十五円、四八・三%の引き上げ幅になっているわけでございますが、まずこの理由をお尋ねをしておきたいと思います。さらにこの改正がどの程度の長期的視点に立ったものと言えるのか。特に電源多様化勘定につきましては、三年目で増税をしなければならなかった理由はどこにあるのかお伺いしたいと思います。
  320. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) まず最初の点でございますけれども、キロワット当たり十四銭五厘増税をお願いしているわけでございます。それは一つは、立地勘定の方で七銭五厘、それから多様化勘定の方で七銭というふうに増税をお願いしているわけでございますが、まずその立地勘定の方から申し上げますと、立地勘定につきましては、四十九年度創設以降八銭五厘ということでずっと続いておりました。ところが、五十六年度に電源立地特別交付金といった制度を新規の交付金制度として創設いたしました。そういうことによって支出の方が電源立地が進むにつれてふえてまいりましたのに加えまして、剰余金が急減をいたしました。前年度の剰余金の受入額は、五十七年度は約三百億でございますが、五十八年度は百二十三億ということになっております。したがって、歳出を前年度比二%減に抑えまして、なお歳入が百七十七億不足するというのが五十八年のこの立地勘定の収支でございます。  また、中長期的に見てまいりますと、この剰余金というのがこれ以降は全くなくなってしまいますが、したがって、歳入の方は税収の方で賄う必要があるわけでございますが、他方、歳出の方は相当数の原子力発電所が建設中あるいは建設準備段階に到達している、そのために立地対策交付金が増加してまいります。あるいはそれ以外の特別交付金等も自然増してくるということがございます。このために五十九年度以降は年間約四百億円ぐらいの歳入不足が毎年出るんじゃなかろうか。したがって、五十八―六十二年度五年間を累計いたしますと、約千七百億円程度の歳入不足というのが見込まれる事態と相なっております。  一方、多様化勘定の方でございますが、五十八年度について見ますと、結論として申しまして、百六十五億の不足が出るわけでございますが、実はこの五十八年度の中で大きな項目というのが沖縄対策ということで、石川市に電発によって石炭火力が建設されておりますが、これが本格化する。それからアルミ対策といたしまして共同火力の石炭転換が進む。これがすべて工事の本格化する時期を迎えておるということに加えまして、新型転換実証炉の建設等の政策事情が生じております。したがって、歳出の重点的効率的な推進ということから見直しも徹底的に行いましたけれども、ただいま申し上げました数字が出たわけでございます。中長期的にまいりますと、この歳出需要の方は年々ふえてまいりますが、歳入の方は電力需要の伸び悩みから電発収入ということの大幅な伸びが期待できないということがございまして、大体年々三百億ないし四百億円弱の歳入不足が必至の状況でございます。こちらの方は五年間で約千六百億円程度の歳入不足というふうな事態に相なっております。  そういうことで税率の増税をお願いしているわけでございますが、第二の点の特に多様化勘定についてはなぜ創設後わずか三年で改定を必要とするになったかという点につきましては、実は先ほどもちょっと申しましたけれども、景気の停滞、それから産業構造の変化、省エネルギーの進展、こういうことによりまして電力需要の伸びが非常に伸び悩んできておりますが、当時創設時に見通しておりました税収と比較いたしまして、当面五年間というところをとってみましても、実は千六百億円ほど税収の不足が見込まれるという形になっております。したがって歳出の方は実は創設当時に見込みましたものよりもほとんどふくらんでないというのが実態でございます。
  321. 桑名義治

    ○桑名義治君 常にこの特別会計について言われている事柄は、歳出内容を見ますと、年々拡大して歯どめがないんじゃないかというふうに言われているわけでございます。電源多様化対策についても、テーマを厳選して重点的にあるいは効率的に努めるべきではないかと、こういう意見が非常に強いわけでございますが、その点についてはどういうふうに考えられておられますか。
  322. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 先生御指摘のとおり、私どもも今回は、こういう財政事情が厳しいということもございまして、非常にテーマの厳選に努めたところでございます。ちょっと立地勘定、多様化勘定、それぞれについて申し上げますと、立地勘定の方は、御承知のとおり、これはあらかじめ単価等が決まっております。したがって私どもの方は電力施設計画、そういったものをベースにいたしまして積み上げて厳しい計算をやりました。それから立地勘定の各政策項目につきましては、新たな制度の拡充というものは必要やむを得ざるもの以外は非常に慎重にやってきたということでございます。  それから多様化勘定の方につきましては、先ほどもちょっと申しましたように、非常に工事が本格化いたします石炭火力の導入なり転換の費用であるとか、中小水力の開発費の補助、それから技術開発につきましては太陽光発電、燃料電池といった実用化が近いと有望視されているもの、それから重要な意義を持ちますFBRあるいは核燃料サイクル関係技術研究と、こういったところに重点を置いて歳出をつくったつもりでございます。今後とも一層の重点化、効率化には努めてまいりたい。  ただし、あわせまして、もちろん安全性のための研究開発なり、その対策というものは十分にやってまいりたいというふうに考えております。
  323. 桑名義治

    ○桑名義治君 また常に問題になっているのは、電源立地勘定の大部分を占めているのがいわゆる電源立地促進対策交付金ですね。この問題に対して先ほども議論になっておったわけでございますけれども、ばらまき行政じゃないか、あるいはまたもう少し地域振興に役立つような運用をすべきではないか。こういうことがよく言われているわけでございますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  324. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 電源立地促進対策交付金の交付の根本の目的が地域住民の福祉の向上を図る、それによって電源立地への地域住民の理解協力を得るということを目的にしておるわけで、それを具体的にその実効を上げるように、また無制限に広がらないようにやっておるかということでございますが、まず仕組みにつきましては、これは全く任意に市町村がやりたいものをランダムに出せばそれを対象にするという仕組みはとっておりませんで、まず都道府県、県が関係市町村の意見を聞きまして整備計画の案をつくります。整備計画につきまして関係官庁、中央の国の承認を求める。これは通産大臣ばかりではなくて公共施設関係の事業官庁も当然関与しますが、こういった国の承認を得て、その上で実施をするということで客観的なものが対象として拾われる。  じゃ、どういうものが拾われるかということでございますが、公共用施設と言っておりますが、その公共用施設というものは法律及び政令で十五項目、具体的にたとえば道路とか港湾とか水道とか、あるいはスポーツ、レクリエーション施設、環境衛生施設等々十五項目について列挙されておりまして、この範囲内で最も地元のニーズの高いものを県が小心になり地元市町村に相談してプライオリティーの高いものから選ぶと、こういう仕組みになっております。  その場合に、スタート段階から実は議論が出て、もう少し地元のニーズにこたえた有効な形にする意味で産業振興にかかる施設を対象にすべきではないか、たとえば農漁業振興のための施設といったようなものも対象にすべきではないかと、こういう議論もありまして、それも制度上対象にするようなことにして、先ほど申し上げた十五項目の中にはそれも対象にされておる。こういうふうに運用上、地元のニーズに最も的確にこたえるような対象が選ばれるように対象のメニューは広げる。しかし、その選定の仕組みは、先ほど申し上げましたように、客観的なものが選ばれるよう慎重な仕組みを整備計画という形をもって行っておるということでございます。
  325. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどもちょっと議論になっておったわけでございますけれども、いわゆる電源立地勘定の中の一と二ですね。これはどういうふうに違うんですかね。もう一遍説明してくれませんか。電源立地促進対策交付金と電源立地特別交付金、この差を明確にちょっとお尋ねしたいんですがね。    〔委員長退席、理事大河原太一郎君着席〕
  326. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 大きく分類いたしますと、電源立地促進対策交付金と電源立地特別交付金、それと水力発電施設周辺地域交付金というふうにあるわけでございます。それぞれ特徴というか、その内容を申し上げますと、立地促進対策交付金につきましては、住民福祉のための公共施設の整備という観点から整備計画に基づいて実施されておるものでございます。  で、電源立地特別交付金というものは二つございますけれども、一つは原子力発電施設等周辺地域交付金、もう一つは電力移出県等交付金、この二つを含めた特別交付金は産業振興、具体的には企業の導入とか、あるいは地場産業の近代化とか、そういったものをできる限り進めるために、近代化のための企業導入促進のための調査を進めるとか、あるいは地場産業の高度化近代化のための諸事業を行うとか、そういう企業の導入、産業振興と産業近代化というものを進めることを特別交付金の対象、使途としております。  それから水力発電施設周辺地域交付金は、水力というまず特殊地点を対象にするということが対象の限定になるわけでございますが、こういった水力発電施設がつくられたことによって周辺地域に非常に影響があらわれる、影響を緩和するための事業に対する交付金となっております。たとえば水力発電でダムがつくられてある地域が減水する。水が従来とうとうと流れておったものがダムの発電所の設置によって減水、水が減る区間が出てまいります。そういったことによってたとえば排水、利水にいろんな意味の影響を受けるとか、そういった影響緩和のための諸事業を行うのにこの水力発電施設周辺地域交付金を使う。こういうふうにそれぞれ目的を持って創設されたものでございます。  なお、促進対策交付金は制度当初からつくられたものでございますが、特別交付金、水力発電施設周辺地域交付金は五十六年度新たに創設されたものでございます。
  327. 桑名義治

    ○桑名義治君 中身についてはわかったんですが、大体一本柱を立てとけばいいような気がしてしようがないわけですがね。わざわざ複雑にしているような気がするわけでございます。いずれにしましても、中身はもう少し使途をしぼる必要があるんではなかろうかというような気がしてならないわけです。  たとえば二番の場合に、産業振興あるいは近代化の問題、これにしましても、大体原発のできるところは企業なんてありませんわな。水産、農林関係に大体主に交付されるお金のような気がするわけですね。そうすると、この近代化という問題がどういうふうにつながっていくのか、その問題が非常にわかりにくい点がある。いずれにしましても、これ全体を含めてもう少し重点的に整理していく必要があるんじゃなかろうか、こういう気がします。  次にお尋ねしておきたい問題は、原油価格というものが非常に下落しました。そのために、いま全体的に先進国でも石油代替エネルギーの開発に向けての意欲が減退したのではないか、こういうふうにも言われているわけでございます。またそういう懸念がある。こういうふうに私は思うわけでございますが、この点について通産省はどういうふうな考え方をお持ちですか。
  328. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) ただいま先生御指摘のとおり、原油価格の下落という問題が、代替エネルギーの導入ないしは開発に対してむしろそれをちゅうちょさせるような動きに結びつかないか、そういう懸念があることは事実でございます。ただ、先般IEAにおきましていろいろな議論が行われた際においても、各国が認識において一致しましたところは、中長期的に見ますと石油というのは需給が逼迫化する、これは避けられないんじゃないかと。また短期的に見ましても、在庫の動向であるとか中東の情勢等非常に不安定な要素もございまして、石油の見方というのは非常に流動的だと。したがって、代替エネルギーの開発、導入という点については、従来どおり力を入れていく必要があるというふうな認識の一致を見たわけでございます。  私ども通産省といたしましても、特に日本はエネルギーの供給構造が脆弱であるということもございますので、今後とも代替エネルギーの開発、導入を中心にいたしましたエネルギー政策の推進に一層の努力を図ってまいりたい、かように考えております。
  329. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまお話がございましたが、IEAでは石油の需給の緩和は一時的な現象であろうというふうな見解を述べられているわけでございますが、また一面的に中東経済研ですか、中東経済研が警告しておりますが、第三次石油危機が三年後にも発生するんではなかろうか、こういうふうな意見が述べられておるわけでございます。このことにつきましてはどういうふうな見解をお持ちですか。
  330. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 中東研の資料、私も実は目を通しておりますけれども、これは幾つかの要素を前提といたしましてモデル計算をしたもののようでございます。ただ、一般的に申しまして、国際的なたとえばIEAの事務当局の見通し、あるいはそれ以外幾つかのたとえば国際的なエネルギー調査機関であるとかメジャー等もやっておりますけれども、一般的な見方は、石油の需給なり価格はやや安定するんじゃないかという方向の方が、数から言えば多いんじゃないかと思います。しかし、本当に私どももまだまだこの石油の先行きが非常に不透明なところでございますので、そういった意味においては十分注視してまいりたいと、そういうふうに考えております。
  331. 桑名義治

    ○桑名義治君 とにかく第三次石油危機という問題は、これはショックというふうに置きかえた場合に、余り安くなり過ぎても、急激に安くなり過ぎても金融不安がまた起こってくる、    〔理事大河原太一郎君退席、委員長着席〕 また大きくはね上がってくるとまた大変な不況を招来するというような事柄で、これは非常に注意深く今後とも見守っていかなければならないし、判断を誤ってはならない重大な問題であろう、こういうふうに思うわけでございます。  そういった立場から、資源エネルギー庁は総合エネルギー調査会に基本政策分科会、これを新設して今後のエネルギー政策の総点検を開始した、こういうふうに聞いているわけでございますが、これまでの活動と今後のスケジュールがきちっと立てておられるならばお聞かせ願いたいと思います。
  332. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 実は総合エネルギー調査会、この四月六日から審議が開始されております。  このように総合エネルギー政策についてもう一回見直していただくということになりました背景は、先ほども御説明したようなところが非常に大きいわけでございますが、ただこの中におきまして、特に私どもが主要な検討課題としてお願いしておりますのが、第一に、先ほど申し上げました今後のエネルギー需要、これがどういうふうな形で推移していくであろうか、長期のエネルギー需給見通しでございます。当然、その前提といたしましては、石油価格を初めといたしまして、エネルギー価格がどういうふうに推移していくかということもいろいろ検討をお願いすることになろうかと思います。  第二は、日本のエネルギーコストは、国際的に見ましても高い部類になっております。したがってこれをいかに低減を図っていくか、これが第二点でございます。  それから第三点は、実はこれまでの総合エネルギー政策、脱石油ということで石油依存度の低減を進めてまいったわけでございますが、今後ともこれをどのようなテンポで進めていくべきだろうか。  それから第四点は、情勢の変化に耐え得る強靱なエネルギー産業をどうして確立したらいいか。  こういう点を主要な検討課題といたしまして、いま御審議をお願いしているわけでございますが、大体の今後の検討スケジュールというところでは、これは経済審議会におきます長期経済計画の検討の進捗状況等の要素を勘案する必要がございますけれども、大体夏ごろまでには一つのめどをつけたい、取りまとめを行っていきたい、そういうふうに考えております。
  333. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間がもう少しでございますので、もう一問お尋ねして終わりたいと思います。  いずれにしましても、原油の価格値下げによりまして産油国の収入が非常に下落をしているということで、サウジアラビアなどペルシャ湾岸の産油国の一部が在外資産を取り崩す傾向が生じている。また、特にサウジアラビアは、五十五年四月以降、わが国の国債を継続して買い入れ、保有残高が二兆七千億に達しているが、本年二月以降、国債購入はとまっている、こういうふうに言われているわけでございますが、これが事実かどうか、またメキシコ、ナイジェリアなどの巨額な対外債務を抱える国の金融不安が再燃する危険があるのではないか、こういうふうに言われているわけでございますが、こういった問題に対して大蔵省はどういうふうに見ておられるのか、お聞きをしておきたいと思います。
  334. 大場智満

    政府委員(大場智満君) まず最初の御質問でございますが、産油国の石油収入の減少による資産の取り崩し問題でございますが、私ども見ておりますと、この産油国、特に中東の産油国を二つに分けて見てみますと、つまりローアブソーバー諸国、クウェートとかサウジアラビア等々の非常に人口が少なくて収入の多い国、それからハイアブソーバー諸国、これはイラン、イラクあるいはリビアとか、人口が比較的多い国でございますが、この二つに分けて見てみますと、非常に大きな違いがございます。  昨年末のユーロ市場への預金で見てみますと、クウェートあるいはサウジ等ローアブソーバー諸国の預金は約七百億ドルでございまして、これは一年前の十二月に比べまして三十億ドル減少しただけでございます。七百三十億ドルの預金が七百億ドルに減ったという状況でございます。それからューロ市場からの借入金が九十億ドル前後で、ほぼ横ばいでございます。  ところが、ハイアブソーバー諸国、イラン、イラク、リビア等でございますけれども、これは著しく預金が減っておりまして、一昨年末に三百九十億ドルあった預金が昨年末では二百九十億ドルに、約百億ドル落ち込んでおります。それから借り入れの方も、昨年末の借り入れが百五十億ドルでございまして、その一年前に比べますと、この借入金額が十億ドルふえている、こういう状況でございます。  ですから、クウェート、サウジ等のローアプソーバー諸国は、その資産の取り崩しは比較的軽微である、非常に大変なのはハイアブソーバー諸国ではないか、こういう感じで見ております。  それからわが国への問題でございますけれども、一―三月の国際収支統計で見てみますと、一―三月の株式の購入でございますが、これは産油国だけではございませんで、ニューヨークとかロンドンからの購入も含まれているわけでございますが、株式の購入超過が大体十八億ドルぐらいでございます。債券の方は約十二億ドルでございまして、合わせてこの一―三月に三十億ドルの取得超過といいますか、売りよりも買いの方が多いという状況になっております。ただ、債券につきましては、三月がほぼとんとんになっております。  そういう株式と債券との入りくりはございますけれども、流入超過というか、取得超過は続いているという状況にございます。これは全体として見るので、国別にはなかなかこの正確な数字はとり得ないのでございますけれども、そういう状況でございます。  それから第二の御質問の累積債務国の問題でございますが、私どもはことしに関する限りは一応峠を越したという判断をしております。  ただ、これはメキシコを例に挙げましても、メキシコのことしの経常収支の赤字は、私どもは約四十億ドルと見ているわけでございます。ブラジルは八十億ドルぐらいの赤字かなと見ているんですが、これが来年少しでも減るような傾向になりますと、それだけファイナンス、金融といいますか、われわれが貸さなければならない金額が減るわけでございますので、非常に好ましい姿になっていくと思うんですが、まだ来年の経常収支の赤字が、私はいまの四十億ドルとか八十億ドルの水準よりも減ることを期待しているわけでございますけれども、まだ来年どのぐらい減るかというところまで私どもは推計できないという状況でございます。しかし、ことしに関する限り峠は越したというふうに見ております。
  335. 桑名義治

    ○桑名義治君 終わります。
  336. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に、電源開発促進税法についてお伺いいたします。  国民年金特別会計についても質問する予定ですが、時間の関係で電源開発の方を優先しますので、ほとんど質問がなくなるか、あるいは若干かということですので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。  まず、電源開発促進税法の仕組みですが、まず支出が決まりましたね。それで足りなくなったらばその財源考えて税率を上げる、大体こういう仕組みになっておるわけですね。
  337. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 歳出を見積もり、もとより歳入の見積もりと照らし合わせまして、必要な最小限の歳出につきまして歳入不足の場合には所要の手当てをするということで、今次、歳入部分の不足分について増税をお願いする次第でございます。
  338. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、どのように使われるかが問題なんですが、大臣、先ほど目的税は一般に好ましくないというぐあいに言われたわけですね。  それで、自動的に特定の財源に充てる、そのことが受け取る側にはどのように受けとめられているか、大臣、どのように御認識になっているか。端的に言いますと、わかりやすく言うと、貴重な金だから大切に使おうというような状況にあるのか、それとも財源はふんだんにあるし、足りなくなれば税率を動かせばいいんだから大いに使ってやろうという、こんなぐあいに受けとめられておるのか。大臣、どのように思いますか。
  339. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 目的税というものの性格上、間々御指摘のような傾向が生ずる可能性がないというわけじゃございませんが、今日この関係を見ておりますと、私は非常にシビアに対応しておられるというふうに見て、どんぶり勘定で勝手にやっちゃえというような感じは全くないというふうに受け取めております。
  340. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 果たしてそうかどうかですね、私はこれを実証したいと思うんですね。  まず最初に電源立地勘定の方のお金ですが、具体的に考える上で原発銀座と言われる福井県でどうであるかということでまずお伺いしたいのは、その福井県に対する交付実績、それを御報告いただきたいと思います。
  341. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 福井県への地方交付金の交付、五十七年度、交付決定額で申し上げますと、電源立地促進対策交付金は五十一億四千万、それから原子力発電施設等周辺地域交付金は七億九百万、それから電力力移出県等交付金は六億円ちょうど、それから水力発電施設周辺地域交付金は六千百万、以上の内容となっております。
  342. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほどこういう金を交付する理由について質問があったわけですね。なかなか明快な答弁じゃないんですが、迷惑料なのか、場合によると命の値段なのか、命の危険にさらされるからそれに対する値段としてそういう金を払うのか、この点はどうなんですか。
  343. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) まず、命という言葉は安全という意味合いで理解させていただきますと、私ども原子力発電立地につきましては、安全第一ということから、ここでは繰り返しませんが、安全審査のメカニズム、安全のための諸監督を非常に厳車にやっておりまして、安全をまず万全を期するという観点で、立地につきましても、立地後の運転管理につきましても厳重に対処しているところでございます。そういうわけで、決して安全の犠牲の代償という観点での地方交付金という考え方は全くとっていないわけでございます。  それから迷惑料という概念のものかどうか、必ずしも私どもそういう概念づけ、言葉づけではなくて、先ほど次長からも申し上げましたように、電源立地というものは非常に大規模な形で行われて、地元への経済的生活、民生的貢献は比較的少ない。言いかえれば諸経済効果が少ないということから、地元の住民の福祉の向上というものに何らかの形で寄与することをあわせ行わなければ、こういった電源立地が地元の住民の理解協力を得られないという観点から、こういう地方交付金を設けておるということでございます。
  344. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この勘定からいま言った金が出ているほかに、電力会社から地元対策としての金が出ていると思うんですね。これは御報告いただいたのでこちらで言ってしまいますが、全国で百九十三億円、福州県で二十二億円余というぐあいに聞いてよろしいですな。
  345. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 私どもが新聞報道等によって入手しております情報によりますと、御指摘の数字と同じ数字になろうかと思っております。
  346. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、これは地元対策としてはこれ一体として考えるべきだと思うんですね、会社からも出ている、そしてこういう勘定からも出る。  そこで、こういう話があるんです。大臣よくお聞きいただきたいんですが、これは高木孝一さんという敦賀市長が、近くできることが計画されている石川県志賀町へ行きまして、大いに原発を売り込む講演をしたんですね。こう言われた。敦賀には高校が二つしかない、しかし知事もつくってくれない、「敦賀につくってもらえないということになると、……私立の両校をつくらねばならない……と相当の金もいる。そうなると、原電なり、動燃なりにお願いするということで……、もう、うそのような、上からぼたもちが落ちてきたんてな話です、それは本当なんです。」、だからここへ持ってきなさいと、このようにすすめておるわけです。  さらに、これは同じようなことで、女子短大をつくるお金も約二十四、五億かかるけれども、これも「関電、動燃、日本原電、こうしたところにお願いしよう」と。  それからさらにお宮の寄付も出るんですね。この市長の話ですが、そういったことでどんどん金が出てくるんでこう言っています。「それに調子づきましてね、北陸一の気比神宮、これをひとつ六億円で修復したいと……、あす、北電へ行きまして、『火力発電所をつくらしてやるので一億円だけ寄付してくれ』」と言ったら、わかりましたと。さらに「動燃、原電の二つをまわりまして一億づつそりゃあもう、『わかりました』ということで、いただいて帰ったんです。笑い話のようですが、こうして寄付してもらうわけなんです。……私は本当に信念をもっているんです」。要するに、こうやってもらってくることに信念を持っているという人です。これはたまたま会社から引き出すお金なんです。  ということは、会社からこれだけの金が実際地元対策として出るんです。また出せる余地があるんです。それに加えて、こういうような税制度まで設けて立地対策をする必要が本当にあるんだろうか、まずこの市長の発言を見ましてそういう疑問を感じたんですが、どうでしょうか。
  347. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) まず交付金と協力金の関係、それから協力金そのものについてという順でお答えさせていただきます。  交付金につきましては、これはあくまで先ほど来申し上げておりますような国の見地から、原子力発電の立地促進というものが必要で、その立地促進のための地域住氏福祉の向上を図ることによって、地域住民の理解協力を得ると、こういう国の観点から国の予算制度に基づいて交付をするという形で行っておるわけでございます。  これに対しまして協力金は、民間企業としても、電力会社が自主的に行っておるものでございますが、この場合に、電力会社と地域との関係は、また電力会社、地域ともども共存共栄という関係にいかなければならないということで、どうしても地域と電力会社が直接対話をする中で、その共存共栄の形として協力金という形のものが行われておることは承知しておるところでございます。ただ、そういうことで地域との共存共栄という観点から電力会社がそういう協力金を交付するということを、一概に悪いとなかなかきめつけることはできないんではないかと考えております。  ただ、その場合にも、協力金というものが何ら歯どめが全くないということでいいかというと、それはおのずから制約というものがあるべきで、私どもといたしましては、社会通念上妥当と見られるような内容、使い方の協力金であること、それから交付される場合の態様といたしましても、電力会社内部の経理上の処理も、あるいは会社と地方公共団体との授受の手続などは、あくまで厳正明確に行われるということであるべきだと考えておりまして、私どもとしては、できる限りそういう形で行われるよう指導してまいりましたし、今後もそういう方向で指導してまいりたいと考えております。
  348. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは出す側の理屈の問題であって、もらう側は金には変わりないわけですからね、金に色がついているわけじゃないんだから。それは同じことだし、大体こんな感覚でもらったんですね。  いま、一定の基準でしっかり払っておると言われたし、大臣もそういう御認識をお持ちのようですけれども、必ずしもそうではないんですね。ということは、もうちょっと全体を大きく見まして、この電源立地勘定だけじゃなくて、国全体の予算の面から見てみますとこういう問題があるんです。  大変生々しい話なんですが、これは「もんじゅ」の公開ヒヤリングのときのことのようです。やはりこの高木市長がしゃべっているんですね。「ゼスチャー的に反対してみた。当時、科学技術庁長百の仲川一郎さんが、とるものもとらずに私のところへやって来た。私は中川さんに、『そんなのんきな顔をして、もう敦賀にできるんだ、というような甘い考えでは承服できないんだ、ここで何とかもう一つ、私にたいするミヤゲをくれなきゃあ、承服できないんだ』と言ったところが……。……いろいろな口約束をしましたけれども、まず、いろんな国際会議ができるような研修会場、そこで世界の原子力発電というものを討議し研究してゆく国際会議場を約束しました」。これは別の勘定でしょうね。  その後に自殺したんですけれども、こう言っています。「この間の総裁選挙のときには、私は敦賀の票千六百票を肩にかついで行ったんです。『中川さん、票を持って来たよ』といって、二千票しかない自民党敦賀の票のうちから千六百票を集めて、私は届けたんです。……田中角榮さんから、私のところへ電話があって、『高木くん、今度は中曽根を頼むよ』『今度はだめですよ。』……『ま、しかたないな』といって電話を切った」というんですね。  私はこのやりとりを見ていまして、原発をこのように利用しまして、まさに国の金を引き出してくる。しかも、そのときに党利党略だけじゃなくて、派利派略まで絡んでおって、たまたま中川さんは死んでしまったし、国際会議場は実現しなかったかもしれぬけれども、全体的に見まして、一つはこの勘定、それから電力会社から出るお金、さらにそのほかの 一般財源からもこうやって出てくる。要するに地元の方はこの市長のような考えで、ともかくも、つくった、それに便乗してどんどん物をつくれ、このような考えが基本にあるんじゃないかと思うんです。  それで、さらに全部引用した上で大臣の見解を伺います。これは全部しゃべったのをテープにとりまして、そして敦賀市民に全戸配布して、全然反応もないんですから、これは事実なんですね。これから読み上げることも事実であります。こう言っております。  「更に私は、この味を覚えまして」――ここが肝心なんですね。「敦賀の第二新港をつくろうと計画しました。去年からその工事に着工しましたが、その背後に火力発電所をつくりたいという計画を」電力会社に話したというんです。こんなことが全部「電源三法の金の対象になります。……短大はたつわ、高校はたつわ、五十億円かける運動公園はできるわ、火葬場も公園化……、まったく、たなぼた式の町づくりができるんではなかろうか。やっぱりみなさんにおすすめしたいんです」。こうやって新しくできることを勧めておるんですよ。  この市長さんは、五十年後、百年後に奇形児や白血病があるかもしれぬけれども、いまもらった方が得ですと、こういう考えなんです。私は、政治家というのは五十年、百年後に責任を持つべきだと思うんですけれども、そんなことじゃなくて、現実この電源三法の、そして国のお金も、また電力会社のお金もこんな形で引き出して、得だ得だとこんなぐあいに言われている実態、大臣どう思いますか。
  349. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 高木市長さんという方、私も、県議会議長等をしていらっしゃった方でございますので、よく存じております。市長の地位につかれて以来、その地域の発展のための高木構想みたいなのを私も承ったことがございます。その中には確かに国際会議場的なものもございましたし、これはどこの地域にも言えることでございますが、原発等々やってきたものの、地域住民の必ずしも雇用の場にならない。そうすれば、高等学校にいたしましても、あるいは短期大学等にいたしましても、少なくとも初級、中級の技術者がそこに雇用の場を得るような、すなわちそこに住む住民の直接の雇用の場としてそれらが活用されることが好ましいと、きわめて理路整然たる論理でございまして、なかなかこれはりっぱな見識だと思って私は聞いておりました。  したがって、いま近藤委員の方から意見を交えて御朗読になりましたものについては、一面、近藤委員のおっしゃったような感覚で物に対応しておる印象を与えたかもしらぬなあと思います。が、しかし、それが別に全戸へ配られても何の反応がないということは、無視されたんじゃないかなという感じもまた受けております。
  350. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは決して市民が無視しませんでした。この間の市長選挙では、高木さんと、あとはわが党だけしか応援しない全くの新人、三十歳代の候補でしたけれども、高木さんが二万一千四百七十四票、わが陣営は一万六千九十九票、四二%をとりまして、市民は決して無視しなかったです。  確かに大臣の前で恐らくそのときには理路整然と言ったと思うんです。ただ、中身はどうもそうでないんですよね。表向き言うときには、午前中の中曽根さんの話じゃありませんけれども、ASEAN諸国も腹とどうも違うかもしれぬというようなニュアンスもありますけれども、この市長さんも違うんです。  さらに、まだあるんですね。こう言っておるんです。「一昨年の四月でございましたが、敦賀一号炉からでたコバルト60が排水口のホンダワラに付着した」。そのとき私すぐ行ったんですけれども、「マスコミが大さわぎをした」。ちょうど「ワカメの採取時期でもあったんですが、ワカメもまったく売れなかった。まあ、困ったことだ、うれしいことだ」。困ったことの次にすぐうれしいことだというんです。「結局、売れないのには困ったけれども、ワカメの採取業者やさかな屋さんにいたしましても、これはしめたと、こういうことなんですね。売れなきゃあ、しめた」、「とにもかくにも倉庫に入れよ」というので入れまして、「それからが、いよいよ原電にたいする補償交渉でございます。……私は、さかな屋さんでも民宿でも、百円損した人は、百五十円もらいなさい、五十円は慰謝料としてもらいなさいと……。ところが、出てくるわ、出てくるわ、百円損して五百円も欲しいという連中が、どんどん、どんどんきたわけです。去年の事故で大きな損をしたとか、困ったとかいう人は一人もおりません。率直に言うなれば、まあ、一年に一回ぐらいはあんな事故があればいいけどなあ、というのが敦賀の現状で」あります。  私はこういうことを見ますと、大臣が考えるのと全然違う。ということは、これが特定財源で金がある、要するにそこへ行けばもらえるという、こんな甘えの構造になっておる。それがこういう一つ発言にたっているんじゃなかろうか。これからつくる、大変心配している志賀町へ――これは嶋崎先生の方の選挙区ですけれども、行って勧めてきたわけですからね、やっぱり本心しゃべっているわけですよ。私は、これは大臣が考えるような実態ではないんではないかということで、もう一度大臣の見解を受けたいと思います。
  351. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) いまの御指摘の敦賀市長の発言でございますけれども、その内容を私ども詳細には承知しておりませんけれども、その伝えられている発言、これが事実といたしますと、やはり発電所の所在自治体の市長としては適切な発言ではなかったというように考えざるを得ないと思います。  ただ、われわれの方といたしましては、今後とも原子力発電につきましては、特にでございますが、安全性の確保に最優先を置いて、そして発電所の立地を進めていきたいと考えておりますし、御指摘のような点につきましていろいろと御批判を受けることのないように、特に電源立地勘定の交付金の交付につきましては、効率的にそしてまた公正な使用がなされるように今後とも努力を重ねてまいりたい、そういうふうに考えております。
  352. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 実は、私は決して地元へ金をやっちゃいかぬというわけではなくて、これは命の代償とか、将来、この市長も言っているとおり、五十年後百年後に奇形児ができるかどうかわからぬというような心配もありますし、それから放射能廃棄物の処理とか廃炉の残骸が残るとかね、実は大変な被害を与えるわけですよ。それはそれなりの対応策が必要ですし、また元来そいつは電力会社自身がやるべきことではなかろうかという点で、これは大臣に求めますけれども、こんな事例もある以上、こういう税制のあり方、また実際の交付のあり方、これはもう一鹿しっかりと見直して、本当の補償的な角度からの金を出すとか、もう一度その辺はきちっと見直すべきじゃなかろうか、こう思うんですが、いかがですか。
  353. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 命の代償というといささか私もその言葉をそのままちょうだいするわけにはまいりませんが、いわゆる安全性の確保ということであろうと思います。  いま一つの問題は、いわゆる地域社会づくりというようなところにある種の理想を求めて、それを一つの中心とした町づくりというものがお互いの理解協力の中にできていくということは、むしろほのぼのとした幸せなふるさとが将来できるんじゃないかなというような気もいたします。ただ、甘えとかたかりとか、そういう精神は持ってはならぬとおっしゃるその指摘はちょうだいいたします。     ─────────────
  354. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま竹田四郎君及び衛藤征四郎君が委員辞任され、その補欠として吉田正雄君及び竹内潔君が選任されました。     ─────────────
  355. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、もう一つの方の、電源多様化勘定の方の石炭火力建設等の補助、これが六十九億もふえまして約四倍増ですね。これは先ほど言った沖縄県に石川火力発電所をつくるのが大きなウエートを占めていますか。
  356. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 御指摘のとおりでございまして、非常にふえている中身は、第一は、沖縄県に沖縄県対策として石川火力発電所を、これは十五万六千キロワット、二基でございますが設置する。第二は、これはアルミ対策といたしまして、富山、滑川の共同火力、いま重油専焼でございますが、これを石炭火力に転換する、これが大きな項目を占めております。
  357. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 環境庁に伺います。簡単でいいんですけれども、確認の意味で。  環境庁の本格的四年がかりの調査とは別に、石炭転換などの実態調査の報告書をいただきました。それによりますと、窒素酸化物などを見ましても、新設施設でも、重油などよりも石炭火力ないしは石灰を燃やした方が多い。おおむね重油の方が百ppm以下であるのに対して石灰の方は百五十三ppmと、大変多いわけですね。そういう状況があるのは正確かどうか。そして、いま全体的には大変石炭転換の状況が起きているんだろうということ。  それからもう一つは、この石川火力発電についても、これは環境対策が、沖縄とはいえ、周囲が海だとはいえ、大変そういう面が必要だと思うんですが、その点はいかがですか。簡単に願います。
  358. 加藤三郎

    説明員加藤三郎君) 先生御指摘の私ども行い託した調査の内容でございますが、ごく簡単に申し上げますと、昭和五十四年四月以降に石炭転換等がすでに行われ、または計画が確定しております全国の二百十七施設について調査をしたわけでございますが、お尋ねの窒素酸化物の排出量は、施設の種類によって異なることもございますが、新設も含めて全体としてどのくらいの量になるかと見ますと、石炭利用拡大前に比べて約一・五倍ぐらいに増加するというふうに見ております。  それから石炭転換につきましては、これは急速にいま現在行われているところでございまして、私ども環境庁といたしましても、環境保全の観点から重大な関心を持ってこれを見守っているところでございます。  それから石川火力につきましても、先生の御指摘のように、沖縄であっても、できる限りの対策を講じていただきたい旨通産省の方にもお願いをいたしておるところでございます。
  359. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、最後に通産省の方ですが、全体としてはかなり大きなお金をかけるわけですが、これは単なる先ほど言ったような周辺対策、ああいう問題も含んでいるような、そういうお金だけじゃなくて、環境、本当に沖縄県民の命や健康を守るというんであれば、やはり石炭火力というのは問題があるんですね。きょうは私指摘する時間がありませんけれども、水銀の除去方法もまだ発見されていないし、相当出るという、こういう状況もありますので、そういう方にも十分な対策の費用用をかけるべきだと思うんですが、どうですか。
  360. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) そういう意味におきまして、実は石炭火力に関する環境保全関連予算、多様化勘定でも幾つか項目がございます。一、二御紹介いたしますと、乾式の脱硫技術実証試験の委託費を十一億ほど五十八年度取ってございます。それから高性能の集じん技術の実証試験委委託、これも五億ほどございます。あとアッシュセンターの関係の問題、それからばい煙処理技術の実証試験、この辺も多様化勘定から実施すべく予算を組んでいるところでございます。  御指摘のように、石炭火力というのは、代替エネルギー対策の一環として非常に重要なところでございますけれども、一方において、その環境に与える影響等も十分われわれ留意してこの石炭火力の開発を進めてまいりたいと、そういうふうに考えております。
  361. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来たので終わります。
  362. 柄谷道一

    柄谷道一君 まず、国民年金への国庫負担金平準化法につきまして御質問をいたします。  この法案につきまして一月六日付の日経新聞は「奇策」と評しました。一日七日付の読売新聞は「手品」と評しております。私は、今回の措置は国庫負担の一部先送りであり、後代への負担のツケ回しという視点におきましては、さきの財源確保法の場合と同じ発想に基づくものではないかと思います。またこの措置は、臨調最終答申でも厳しく指摘されている、一般会計の一部を特別会計や財政投融資等に振りかえるようなやりくりに当たるものではないかと、こう思うわけでございます。  私は、大蔵大臣としては、小手先の奇策を弄せずに、財源不足に真っ正面から取り組み、財政再建の本質的な解決を目指すというのが基本的姿勢でなければならないと思いますが、御所見はいかがでございますか。
  363. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 柄谷委員の基本的なお考え方は私も異論を挟みません、同感でございます。しかしながら、このたびの負担の問題、いわゆる平準化の問題が手品とか奇策とかいう評価は必ずしも適切でないと、その点を除けば考え方は同感であります。
  364. 柄谷道一

    柄谷道一君 マスコミが奇策であり手品であると評する根拠は、私はこういうところにあると思うのでございます。社会補償関係費が九兆一千三百九十七億五千万円、対前年度比〇・六%増と確定いたしました昨年十二月三十日の夜、そのできばえが記者団から林厚生大臣に問われたわけでございます。そのときに厚生大臣は、及第点の上の方に入っており、厳しい財政状況下ではめり張りのきいた配慮ある予算である、九十点はつけたいと、こう述べたと報ぜられております。  私は、その根拠は、当然増が約五十億円といわれる社会補償予算のうち約千八百億円を医療費抑制などの見直し合理化で賄いまして、残り三千百八十億円につきましては老齢福祉年金の国庫負担増を一部先送りして、国民年金特別会計から借り入れるという措置で切り抜け、名目上は〇・六%増ということにとどまったけれども、実質では四・〇%の伸びを椎保した、それを手品であり奇策とマスコミは評しているのだと私は思います。これは厚生省が知恵者であったのか、大蔵省が知恵者であったのかは別といたしまして、私は、五十八年度はこのような策によりまして一時しのぎができるとしても、同じ手が再々使えるわけではございませんから、今後老齢化社会の接近というこの事態の中で、問題を糊塗して、ただ予算上のやりくりをするというような手法は決して好ましい姿ではない、こう思うわけでございます。  そこで、厚生省にお伺いいたしますけれども、今回の措置を正しいことだと思っておられるのか、万やむを得ざる措置として採用したと認識されておるのか、率直に御所見をお伺いいたしたい。
  365. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 今回の平準化の措置でございますが、お話しのように、大変厳しい財政事情のもとで、厚生省の予算をどうするかという中で、一つの案といたしまして、老齢福祉年金の受給者が今後次第に減ってくるという事実に着目いたしまして、これに必要な費用を当面は資金運用部からの借り入れで賄い、将来はこれを返還していくということを概算要求の時点で考え大蔵省に要求をしたわけでございます。  ところが、予算の具体的な構成という折衝段階におきまして、実際に財源のない福祉年金勘定におきまして借り入れができるかどうかというところが、技術的あるいは財政法上の問題から疑念なしとしないということで、同氏年金特別会計全体の中で、昭和六十四年度までは国庫負担額が減少しその後ふえていくという波をなだらかにすることにいたしたいという形で、大蔵省と合意を見たわけでございます。  そういう意味におきまして、今回の平準化措置を正しいと思っているか、万やむを得ざると思っているか率直に答えろ――なかなか胸を張ってこれは正しいというふうにお答えするのも心苦しいわけでございまして、実際に利益を予算上受けているわけでございますので、そういう関係においてはやむを得ない面があろうかと思います。  しかしながら、国民年金全体としては、一時的な繰入金の繰り延べという形で財政に影響を与えないということで私どもも納得をいたしておりまして、国民皆さんにも御了解が得られるというふうに信じておる次第でございます。
  366. 柄谷道一

    柄谷道一君 こればかりやっておれませんが、いまの答弁を、胸を張って正しいとは言い切れないけれども、大蔵省と厚生省合作の知恵による所産であると、このように私は率直に受けとめておきたいと思います。しかしこういう便法がいつまでも繰り返されるということは、かえってわが国の社会保障の前途に問題を残すだけであるということだけは指摘いたしておきたい。  そこで次に、年金資金の運用について御質問をいたします。  臨調の最終答申には、「公共的な性格を有する資金をできるだけ有効かつ整合的に配分するためには、統合運用の現状は維持されるべきである」と、こう記載されております。大蔵省は、この方針に対して、全面的に同感の意を持たれるのは私は当然だと思いますので、あえて大蔵省見解は問いません。  そこで、厚生省に今度お伺いするんですが、年金積立金は、このところ厚生年金を中心にいたしまして毎年約四兆円ベースで増加をしておりまして、五十七年度末には約四十兆円に達するであろうと思われます。ところが、この積立金は全額が資金運用部に預託されまして、財投資金として運用されておりますけれども、その預託金利は年七・三%でございます。これは各種金利と比べまして、たとえば十年物の国債の金利でも七・七%、既発債の金利はこれよりも高いわけでございますから、運用利子としては低位に置かれていることは現実の姿であろうと思います。  そこで、他の同僚委員も指摘されましたが、仮に債券運用等によりまして年〇・五%有利な運用が実現するとすれば、それだけで約二千億円の利子を増収することができる、これはもう計算上明らかに出るわけでございます。  この高齢化社会進行に伴いまして、年金財政は今後ますます窮乏化することは避けられません。そういう展望の中でこの積立金――しかもこれは全く保険者と被保険者の拠出金でございます。郵便貯金のような場合は、預金者みずからがどこの有利な金融機関に金を預けるかという選択の自由を持っておりますが、この年金に関しましては、国民皆年金下、いわゆる強制して保険料が取られるわけでございまして、有利運用に対して保険者、被保険者の選択が行われない金でございます。そこで今後、いつの時期か保険料のアップというものは必然的に生じてくるであろう。その場合、積立金の有利運用という視点を欠いて保険常に保険者のアップを求めるという措置をとりましても、これはなかなか保険者、被保険者の納得、同意を得ることはむずかしいであろうと私は思うんでございますが、この点に対する厚生省の御見解をお伺いします。
  367. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先ほども御答弁いたしましたように、昭和五十九年度に厚生年金並びに国民年金の制度改正を行うべく現在準備を進めておるわけでありますけれども、その際、成熟化いたしました段階におきましても、長期的に安定した年金制度をつくりますためには、どういたしましても、給付水準の見直しないしは適正化というものは避けられない事態でございます。それとともに保険料の負担増というものも国民にお願いをしなければならないということも、これは避けられない事態ではないかというふうに思うわけであります。  この場合、年金財政に資するために、年金積立金の有利運用、その他の方策によりまして、被保険者の保険料の負担増を緩和するということの努力なしには、五十九年度の制度改正につきまして、国民の合意を得ることはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えております。
  368. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、この年金積立金の運用に関しまして、一つは、私も議員になるまで相当長い間社会保険審議会の委員をいたしておりましたが、その社会保険審議会は従来一貫して、もうすでにこれは二十年になると思いますけれども、自主運用の答申を、これは公益を含めて全会一致で、厚生大臣に答申し続けております。  第二には、共済組合年金は約十五兆円の積立金が現在ございますが、この運用は自主運用が原則でございまして、財投への協力は積立金の三割程度でございます。残り七割は有利運用ないしは組合員に対する福祉運用に充てられておる。同じ年金であって、公務員の場合は自主運用が原則であり、民間の場合は低利の統合運用を強いられておる。これは明らかに一つの官民格差と言うべきではないか。  第三に、厚生省が五月二日に公表いたしました二十一世紀初頭の年金制度のあり方を尋ねる目的で実施しましたいわゆる有識者アンケート調査、これの結果でも、年金積立金の有利運用と福祉運用のバランスをとった運用が強く求められているという事実、これは国民の世論でございます。  第四に、私は三月二十三日、社労委員会でこの問題を厚生大臣にただしました。その際、厚生大臣は、五十九年度には国民年金と厚生年金の見直しを進めようと考えているが、年金問題を考えるには将来一元化を図らなければならないし、給付水準の適正化を図る一方で、保険料の負担増をお願いせざるを得ない、年金積立金の有利運用をほっておいて負担増をお願いしても国民の納得を得ることは困難であろう、今年八月ころまでに出される社会保険審議会の年金制度全般の改正案を踏まえて厚生省の態度を決したいと。  私は、以上四つの点を時間の関係から指摘したわけでございますけれども、積立金の有利運用と福祉運用を図れということは、まさに時の流れというべきではないかと思うわけでございまして、これは将来展望、いわゆる高齢化社会の到来という将来展望と高い次元から、積立金の運用にメスを入れるべき時期に来ているんではないか、こう私は思います。  そこで、厚生省は、しかしさはさりながら、全額を自主運用と言っても、これはなかなか財投の本質を揺るがすことにもなりかねない。そういう点も配慮して、たとえば年金積立金だけで特別勘定を設けて有利に運用するとか、積立金の一部について大蔵省と相談しながら別に運用するとか、さらに総理府の資金運用審議会に積立金の拠出者である労使双方の代表が全く含まれていないが、これも加えて、その意見もそんたくしつつ運用を図っていくとか、こういう現実的かつ柔軟な方向を検討されていると伝えられているわけでございます。そのとおりと解してよろしゅうございますか。
  369. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 年金積立金の管理、運用問題につきましては、いろいろな御意見、方策というものがあろうかと思うわけでございます。しかし年金積立金の管理、運用のあり方というのは、負担のあり方に密接に関連するものでありまして、それから年金制度改正の中での重要なテーマであることは間違いない事実でございます。  そこで、先ほど来申し上げておりますように、関係審議会の意見をちょうだいしながら、できるだけ早い時期にと申しますか、年金制度の改正案を策定する時期までにこの問題についての厚生省としての結論をまとめたいというふうに考えております。先生の言われました柔軟な姿勢云々につきましては、これは現在まだ厚生省は意見を固めておらないというのが率直なところでございます。
  370. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵大臣にお伺いいたします。私の持論は質問の中で申し上げたとおりでございますが、臨調の最終答申では、統合運用というものを答申する傍らで、「資金運用部を通じた資金の運用においては公共性の観点も重要であるが、原資の性格からくる要請にかんがみ、これまで以上に有利な運用にも配意する」、こう答申しているわけですね。そこで、この年金積立金の有利運用、福祉運用の点については、私は予断することは避けたいと思いますけれども、関係審議会は強くこれを求める答申を出してくる。これは従来の経過からして私はそれはもう当然だろうと思うんですね。そこで、そういう答申がなされれば、当然厚生省はこの答申を尊重して一つの案をつくられるであろう。それが五十九年の年金改正の一つの大きな柱になってくるであろう。それで大蔵省との折衝が始まるわけですね。そのとき、よし認めてやるということを大臣がいまおっしゃることはむずかしいと思いますけれども、厚生大臣と虚心坦懐にこの年金問題の将来を踏まえた真剣な検討を行って対応するということだけは、本日お約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  371. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 資金運用部資金法は、まさに国の責任において集めたものを確実、有利、そして公共性と三つの柱で今日まで運用してきておるわけでございます。  したがって、これに対していま審議会のお話がございましたが、いわゆる年金政策の中における年金勘定から見た見方、あるいはいま一方郵政審議会もございますが、郵政審議会等からごらんになった見方からすれば、必ずしも今日まで財政当局はそれぞれが一致した答申をいただいたようなことはございません。それぞれその立場に立って、いささか異なった答申をいただいてきたという事実は、この問題に限らず、数々ございます。したがって、予断をもって言うわけにはまいりませんのは、いわば大臣折衝という段階にまで上がってくる問題であるのか。今年度も郵政省との間では大臣折衝マターに率直になりました。が、それはその時点でないと解決できない問題であって、それ以前に国会等の議論を承りながら、おのずから両者の調整ができていくという場合もあるでございましょうので、一概に大臣折衝に臨んで虚心坦懐に話し合って決めるべき課題でありますというお答えは、この時点ではできないではなかろうかと思っております。  しかし、臨調答申で一元化運用という大筋を御答申いただいておりますが、いま柄谷委員がおっしゃいましたとおり、公共性の観点も重要であるが、原資の性格から来る要請と、これについて有利運用にも配慮しながら公共的な運用を行うという趣旨については、私どもも臨調答申を最大限に尊重するという立場から十分受け答えをし、議論をしなければならない課題であるという認識は十分に持っております。
  372. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、破綻状態にある財政をいかにして再建するか、これもまさしく大きな国家課題でございます。しかし到来する高齢化社会に対応して年金制度と国民負担をどう調整するか、これもまた大きな国家課題であることは当然であろうと思うのでございます。これは私の意見でございますけれども、私はその意味において、郵便貯金の大臣折衝以上に高度の政治判断をこれは要する問題であろうと、こう思っておりますので、ただいま大臣答弁、そのまま満足はいたしませんけれども、十分この問題に対する誤りのない選択を政府においてとられることを要望いたしておきたいと思います。  時間がもう余りなくなりましたので、電発促進税法関係でございますが、私はいろいろの委員から御指摘がありましたように、いわゆる甘え、たかり的な便乗行為というものは厳に慎まなければならないということにつきましては全く同感でございます。その意味で諸交付金、補助金、委託費等の適正かつ効率的な使用というものを条件として、本法案に賛成いたしたいと思うわけでございますが、時間がございませんので、一点だけお伺いいたしておきます。  私は、OPECの原油基準価格が一バレル三十四ドルから二十九ドルへと五ドル値下げされましたことによりまして、日本経済に新しい局面がいま展開しつつあると思うのでございます。五十八年度のわが国の原油等の輸入代金の支払い減少額は約一兆七千億ないし一兆八千億程度になると私は見ております。また九電力全体でも約五千億円程度の収支改善が行われる、こう推定されます。  そこで私は、この原油値下げによる収益増を経済並びに国民生活の安定に役立てるために、通産省、大蔵省としては、景気回復効果の高い設備投資への積極的活用、新たな設備投資の追加、一時的な電力料金の引き下げではなくて、料金の長期安定化に資するための諸対策の実施等にこれを重点的に振り向けると同時に、代替エネルギー、新エネルギーの開発に全力を尽くして、この原油値下がりの時期こそわが国のエネルギー対策の将来に対する基盤を確立する絶好のチャンスとしてこれを活用するという姿勢がなければならない、こう思うわけでございます。  本問題に対する通産省及び大蔵大臣の所信を求めまして、時間が参りましたので、質問はずいぶん通告しておりましたが、私の質問を終わりたいと思います。
  373. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 先ほどの原油価格の引き下げが電力会社のコストにどういう影響を持ってくるかという点について、先生から御指摘いただきましたように、確かに燃料費では、もし現在の五ドルの引き下げというのがそのまま一年間続くという前提を置きますと、約五千億円の燃料費の減少というものが出てまいります。しかしながら他方、その電力会社の収支にとりましては、たとえば人件費でございますとか、修繕費、資本費等確実なコスト上昇要因もございます。  それからただいま前提としてと申し上げましたように、この五ドルの引き下げの価格がどの程度の期間続くのか、あるいは為替レートや出水率の動向という不確定の要因もございます。したがって、今回の原油価格の引き下げが直ちに電力会社の収支の好転に結びつくか否か、なお不透明なところがあろうかと思います。  したがいまして、電気料金の取り扱いにつきましては、今後このような諸要因の動向、これを見きわめまして慎重に判断していく必要があると考えるところでございますが、昨今の電力会社の経理状況、これらの動向を踏まえますと、基本的には長期的な料金水準の安定を図ることによって、この原油価格の低下のもたらす効果を国民経済に反映させることが適当だと考えられます。  なお、その設備投資につきましては、当面の景気対策といたしまして、繰り上げ発注及びその効率化投資の促進を図るべく、先般の四月五日の経済対策閣僚会議で決定いたしました経済対策の中にも盛り込まれたところでございます。これは電力設備投資というのが、最近でもというよりも、最近特に大きなウエートを占めていることにかんがみまして、これは従来からもその景気対策上の効果に配慮していろいろ考えてきたところでございますが、それと同様の趣旨に基づいてこういう措置をとらしていただいたわけでございます。  それから最後におっしゃいましたように、確かに原油価格の引き下げあるいは油の需給の一時的な緩和ということはございますけれども、一方におきまして、代替エネルギーの導入開発、これは相当長いリードタイムもかかります。中長期的には石油は需給が逼迫化するというのは、大体内外一致した見方でございますので、私どもは代替エネルギーの導入開発、さらには省エネルギーの推進といったところに今後とも施策の重点を置いて進めてまいりたいと思います。  ただその場合に、御指摘のように、電源立地勘定の交付金の運用の仕方であるとか、あるいは電源多様化勘定の各種の助成金の運用の仕方につきまして、効率的かつ重点的、そしてむだのない運用に心がけてまいりたい、さように存じております。
  374. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 基本的には、柄谷委員意見を交えた御質問、それから正確に所管省である通産省のお答えで尽きると私も思っております。長期の安定的料金の問題、それから設備投資、これは先般、四月五日の経済対策会議においても決めた項目であります。なお、代替エネルギー開発に関する意欲がせっかくここまで熟した今日、その需給が一時的に緩んだという事実において、片時もこれがダウンするようなことは厳に戒めなければならないという考え方も同感であります。
  375. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案の討論に入ります。  別に御発言もないようですから、直ちに両案の採決に入ります。  まず、電源開発促進税法の一部を改正する法律案の採決に入ります。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  376. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案の採決に入ります。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  377. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  378. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十七分散会