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国務大臣(
竹下登君)
一つ言えますことは、
わが国経済は個人消費に支えられて、要するに物価が安定しておるということでございますが、内需中心に着実な成長を示しておって、その
一つの根拠とでも申しますのは、五十七年度、何回か下方修正してではございますけれ
ども、三・一%、これはどういう角度から見ても確実に達成し得たというふうに言えるんじゃないかと思うんでございます。そうは言っても、
世界経済の回復のおくれから、輸出はいまおっしゃいましたように一進一退という
状態でございます。したがって、それぞれの企業別に見ました場合に、あるいは産業別に見ました場合に、大変厳しい
対応が迫まられておる分野、これは確かにございます。したがって、そういう私
ども大蔵省の
見方と最近言われておりますのは、数字的な積み上げよりも、出先の財務局長
会議等でいろいろ
意見聴取をいたしますと、これ以上悪くならないだろうなと、こういう空気はある。これ以上悪くならないだろうなというのをどういうふうに実際
表現すべきかということは、人によって違うと思うんですが、そういう
認識にまでは来たんじゃないか。
したがって、一応お示し申し上げているのは、五十八年は三・四%の
実質成長を
確保しようと。そういうことになりますと、この三・四というようなものが、われわれ
高度経済成長になれておる者から見ますと、好景気とかいう
認識は全く実際ないわけでございます。しかし、こういう
状態の中で
日本だけが少なくとも三%台の成長を保ってきた。そうすると、三・四%というようなものは、過去の経験に
対応するわれわれの体質からすれば、大変好況だという
感じはしないまでも、これがあたりまえだという
一つの意識を持つようにならなければならないという
考え方を持っておって、そこでそれをより確実にするための方策は何だということから、先般の四月四日に本院で予算を議了していただいた翌日、いわゆる経済
対策閣僚
会議を開いて経済
対策を決めたわけでございます。
あの問題、当面講ずべきこと、そして検討に付すべきこと、二色に分かれておりますが、これらは
財政がこれに
対応していくだけの力は、率直に言って、ございませんが、民間活力を誘導することによって
対応していくならば、三・四%をより確実ならしめるという
意味において効果が上がってくるんじゃなかろうか。したがって、これから考えなきゃいかぬことは物価の安定、これの基調を持続いたしまして、それから米国経済の景気の底入れと、こういうことが最近言われております。しかし、それにしても三%台の話でございま
すから、これまたかつてのような
認識を持ってはいけません。
しかし、とはいえ、もう一方、念頭に置いていかなきゃならぬのは、それが結果として輸出に寄与した場合の貿易摩擦という問題もございましょう。そういうことに配慮もしながら
対応していかなきゃならぬわけでございますが、総じて米国経済の景気の底入れ、そしてもう
一つは何と言っても
石油価格の引き下げ、それから一進一退とでも申しましょうか、ボックス相場というようなところで、いま二百三十六、七円のところへはりついておりますが、私
どもが就任したころは六十円でございましたから、そういう円安是正
傾向の定着とでも申しましょうか、そういうことから見ますと、いまの経済
対策の効果と相まっていけば、五十八年度政府見通しの三・四%をより確かなものにしていけるんじゃないか。そういう
考え方で、少し話が長くなりましたが、
対応していきたいと思っております。
ただ、もう
一つ、
世界経済の牽引車になれという
議論は、よくエコノミストの
議論としては出ますが、いざ
先進国の責任者の
会議になりますと、その
議論はいまは余り出ません。それよりも、みずからの国の
インフレを
鎮静化さして、持続的な成長
路線をまずみずからがとることに
努力する。特定の国にその
役割りを押しつけることはいまの国際経済情勢の中では望む方が無理だ。小国は別でございますけれ
ども、そんな
感じがしておりますので、私は牽引車論はそう出ないんじゃないかと思っております。