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政府委員(松尾直良君)
わが国の
関税政策、ただいま大臣からお答えしましたように、沿革的には、保護
関税の機能を生かすということと財政
関税であったかと思うのであります。
それで、今日なおこの
関税が税である以上、財政的な意義が全く失われているわけではないのでありますが、重点は保護機能の方に大きく寄っておるということは御
指摘のとおりかと思いますが、そういう中で、戦後の
わが国の
関税政策というものをいま振り返ってみますと、非常な高
関税からスタートして、
わが国の産業が競争力をつけるのに応じてこの保護の水準を次第に切り下げてきた。
関税というものは保護
関税でありますが、同時に消費者利益というものも
関税政策を
考えるに当たりましては無視できないわけでございまして、いたずらに高
関税を張ることによって消費者の利益を害するということは、
関税当局としてとるべき態度ではないのではないか。したがいまして、貿易自由化の進展、それに伴いまして国内産業が力をつけてくるに応じまして、累次にわたって
関税の引き下げ措置をとってきたわけでございます。
もちろん、その過程におきまして、特定の品目に限って、いろいろな競争条件が変わったことによって逆に
関税を引き上げるという措置もとってきておるわけでございますが、大きな流れといたしましては、御
指摘のとおり、
関税引き下げの歴史であったかと思いますし、また今回御提案しておりますのも引き下げ
方向のみであるわけでございます。
関税というものは、内外
経済の接点に立つという点から言いますと、消費者利益というのは、やはりできるだけ安くいい商品を手に入れるということが消費者利益でありまして、
関税当局が余りに過保護に陥ることは、これは国内の消費者の利益を侵害することになりかねないわけでございますので、国内産業の実情に沿いながら、できるだけ
関税水準を下げていくことによって
国民経済全体にプラスになるというのが基本的な理念ではなかろうかと思っております。
それから第二に、変動相場制のもとでの
関税政策はどうあるべきかという大変むずかしいお尋ねでございます。
これは為替相場がフロートするようになりましてから、いろいろなところでも
議論されておりますし、私
どももいろいろな学者先生等にも御勉強願ったりしておるわけでございますが、一般的に言えますことは、
関税というのは、為替相場に比べますと、より中長期的な
あり方と申しますか、中長期的にしかも個々の商品ごとに個別に機能していくわけでございます。これに対しまして為替相場の方は、これは全部一律に同じような
影響を受け、しかもその変動は非常に短い期間に変動するという特性を備えておるのではなかろうか。一般的にはこのように言えるのではないかと思うんであります。
極端な
議論をされる学者の中には、為替相場がフロートしたんだから、もう
関税というものはゼロでもいいんだ、
関税ゼロで、その中で
影響を受けた場合には、緊急
関税なり、そういった特殊な
関税を発動することによって保護すればいいではないかというような、極端な
議論もございますけれ
ども、私
ども、個々の産業、個々の産品というものに着目をいたしまして、あるべき保護水準というものを決めていくのが
関税政策であり、それが非常に短期間の為替相場の変動を受けざるを得ないということは、これは否定できないし、また遮断できないわけでございますけれ
ども、
考え方としては、そういう
考え方で政策運営をいたしておるつもりでございます。