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1983-03-23 第98回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)    午前十時三十分開会     ─────────────    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  三月二十三日     辞任         補欠選任      谷川 寛三君     藤田 正明君      嶋崎  均君     鳩山威一郎君      小谷  守君     丸谷 金保君      三木 忠雄君     多田 省吾君      宮本 顕治君     近藤 忠孝君      柄谷 道一君     藤井 恒男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                 上田  稔君                 衛藤征士郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 塚田十一郎君                 鳩山威一郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 鈴木 和美君                 桑名 義治君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   遠藤 政夫君        大蔵大臣官房会        計課長      冨金原俊二君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        高倉  建君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       岩崎  隆君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  松尾 直良君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省理財局次        長        勝川 欣哉君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        国税庁次長    酒井 健三君        国税庁税部長  角 晨一郎君        国税庁間税部長  加茂 文治君        国税庁徴収部長  谷   始君        国税庁調査査察        部長       大山 綱明君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示監視課長  高場 俊光君        行政管理庁行政        管理局管理官   神澤 正藏君        建設省都市局公        園緑地課長    勝浦 康之君        日本専売公社総        裁        長岡  實君        日本専売公社総        務理事      岡島 和男君    参考人        国民金融公庫総        裁        田中  敬君        日本開発銀行総        裁        吉瀬 維哉君        日本輸出入銀行        総裁       大倉 真隆君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行)     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十二日、近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。  また、本日、谷川寛三君及び小谷守君が辞任され、その補欠として藤田正明君及び丸谷金保君が選任されました。     ─────────────
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 去る三月十五日、予算委員会から、三月二十三日及び二十四日の二日間、昭和五十八年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算中、大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  まず、大蔵大臣から説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和五十八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は五十兆三千七百九十六億三百万円となっております。このうち主な事項につきまして申し上げますと、租税及び印紙収入は三十二兆三千百五十億円、専売納付金は九千八百七十七億七千九百万円、雑収入は三兆六千四百七億六千万円、公債金は十三兆三千四百五十億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は十一兆六千五百六十二億五千三百万円となっております。  このうち主な事項につきまして申し上げますと、国債費は八兆千九百二十四億六千万円、政府出資は二千百五十五億円、予備費は三千五百億円、決算調整資金繰り入れは二兆二千五百二十四億九千三百万円となっております。  次に、当省所管の各特別会計歳入歳出予算につきまして申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入二百四億五千八百万円、歳出二百八億五千八百万円、差し引き四億円の歳出超過となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして申し上げます。  日本専売公社におきましては、収入二兆八千二百九十億九千八百万円、支出二兆八千八百三億五千七百万円、差し引き五百十二億五千九百万円の支出超過であり、専売納付金は九千八百二十七億六千七百万円を見込んでおります。  このほか、国民金融公庫等の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いをいたします。
  5. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 以上で説明の聴取は終わりました。  なお、ただいま大蔵大臣から要望がありましたように、別途提出されております詳細な説明書は、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  7. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査中、必要に応じ、国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行役職員参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認めます。  なお、人選等はこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  10. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 鈴木和美

    鈴木和美君 昨日、補助貨幣審議のときにも議論がありましたが、まず第一に確認をする意味でもう一度お尋ねしておきたいと思います。  臨調最終答申では、特別の資金保有を認められている特別会計に関し、資金保有額やその基準保有状況などを見直せということが求められておりますが、大蔵省特別会計などの資金保有あり方についてそれぞれ研究がなされていると思います。そこで、今後どの程度の財源を求めることができると考えておられるのか、また具体的に考えておられる項目があれば明らかにしていただきたいと思います。
  12. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 五十八年度予算におきましては、大変厳しい財政事情がございますとともに、五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的な支出もございまして、各特別会計あるいは特殊法人等協力を広く求めまして、前年度予算に比べますと、約二兆一千億円増という、かつてない税外収入確保を行ってまいったわけでございます。こういうようなことで五十八年度予算編成したわけでございます。  いま先生お尋ねの、それでは個々のものについてどういう検討を行っているか、あるいは今後それについてどう考えているかというお話でございますが、このような特別会計あるいは特殊法人については、個別にいろいろの事情がございます。  そういう中で積立金等を有しているものが幾つかあるわけでございますけれども、これを具体的に申し上げますと、積立金の中にはすでに出資融資等財源となっているもの、たとえば産投会計との関係輸開銀等がございますが、そういうものがございます。あるいは病院施設等固定資産にかかっているものもございます。厚生保険特別会計等でございます。また一般会計からの繰り入れを受けておりまして、積立金等が生じた場合には、これをこの特別会計歳入として繰り入れるというようなものもございます。これは国立病院特会等でございます。それから積立金等運用益をあらかじめ織り込んでおりまして、したがいましてそれが年金給付水準等に当然反映されているようなもの、国民年金特別会計といったように、積立金等もいろいろございまして、このような個別の事情を十分勘案して、そういう中から事業目的に支障を生じない範囲で今回税外収入確保したということでございます。  したがいまして、今後五十九年度以降につきましても、そういう中でできるだけ努力していきたいと思っております。
  13. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、まだ完全に固まったものがあるというわけではないというふうに理解してもいいわけですな。
  14. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今後検討して努力してまいりたい、そういうことでございます。
  15. 鈴木和美

    鈴木和美君 では、次に大蔵大臣にお尋ねするのですが、五十八年度予算衆議院を通過しまして、暫定予算を組むことなく成立する運びとなったと思うんです。  そこで、五十八年度予算税外収入増収を図っておりまして、きのうの議論ではございませんけれども、五十九年度予算編成というものは本当にきわめてむずかしいというふうに考えているわけです。そこで大臣は五十九年度予算を、これは言葉だけでも結構なんですが、どのような性格にしたいかというようなことについて考えていらっしゃる見解を明らかにしていただきたいと思うんです。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御説のとおり、大変予算編成に厳しい態度で臨まなきゃならぬと思っております。  いま御指摘がございましたように、まさにこの脱外収入増収策について、もろもろの角度から御協力をいただきまして、なおかつこれを五十六年度の穴埋めの繰り戻しというようなものもございましたので、この五十八年度予算編成をさしていただいたわけです。しかし五十九年度ともなりますれば、御意見にもございますし、また主計局からの答弁にもございましたように、この税外収入というものを大変大きく期待することはむずかしい状態にございます。とはいえ、安易に増税というようなものを念頭に置きましたならば、増税なき財政再建という基本理念にも反しますので、歳出全般にわたって一層徹底した見直し、抑制を行っていかなければならないというふうに考えておるところでございます。  そこで、どういう表現でこの五十九年度予算性格づけるかということになりますと、率直に言って、まだ言葉として整理されたものを持っておりません。むしろこのような国会の問答などを通じながら、私もそういうものを念頭に置き、また国民皆さん方の御協力をいただくためにも、わかりやすい言葉で表現することが可能であれば、そうやりたいなと、こう思っておりますが、いま直ちにこのような性格予算ですという適切な言葉も持っていないというのが現状認識であります。
  17. 鈴木和美

    鈴木和美君 昨日も臨調答申と税調の考え方について議論がございましたが、増税なき財政再建という言葉が、ややもすると定義が各様各様にとられて、非常にわかりいい言葉であるだけに誤解が生ずるような問題があると思うんです。増税なき財政再建という方針には必ずしも私は反対ではありません。むしろその重要性を認めています。しかしこの言葉が余りにも表面的に国民の共感を得やすいという点で、現在私ども考えているような方向に全体の行政改革の枠組みが進んでいるとは考えられませんので、その一つとして、増税なきという言葉から、本来課税されるべき大企業の所得が軽減され、また所得税制についても数々の不公平な税制が存在したまま放置されています。  そこで、増税なきという言葉としては、勤労性零細所得については増税すべきではないとしても、現行の法人税法資産家高優遇所得税制増税はむしろ考えるべきだと思うんです。そういう意味で、この増税なき財政再建というものの増税なきという言葉について、もう一度大蔵大臣見解を私はお尋ねしておきたいと思うんです。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 増税なき財政再建とは、行財政改革理念であるという認識は持っております。最終答申を読んでみますと、歳出構造見直しのためにはまさに糧道を断ってやれと、こういうような、役所で書く文章のような考え方からすれば、なじみの薄い一般的な強烈な言葉が使われておるわけであります。したがって、それをてことしてまずやっていくべきだという哲学がそこに示されておると思っております。  そこで、いまの御指摘にありましたように、増税なきという言葉が一人歩きをいたしますと、個々人にとって、あるいは個々それぞれの利益団体にとって、自分のところの税制というものはまさに現状よりも増税ということはないという一つ解釈が成り立つと思うのであります。不公平税制という言葉が、これも基準は使う人それぞれによって違うといたしましても、言ってみれば、租税特別措置でございますとか、そういうものすべて現状のものは固定化するという自己中心的解釈になりがちであるということは、私も、鈴木委員の御指摘とその考え方の土台が多少違っておりましても、同じような認識を持っておるものでございます。  したがって、また臨調答申にも示されておりますごとく、基本理念として、これを堅持しながら各種観点からの税制見直し必要性というものは、これまた指摘されておりますので、その結果としての一切の税負担の増加を全く否定していくというようなお考えが、全文を貫く考え方としては、必ずしも指摘されておるとは私も理解をいたしておりません。あくまでもてことし、あくまでも哲学とし、理念として堅持すべきである、この考えはありがたくちょうだいすべきものであるとは思っております。     ─────────────
  19. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま、三木忠雄君が委員辞任され、その補欠として多田省吾君が選任されました。     ─────────────
  20. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、税外収入に頼らなきゃならぬ現状の中で、自然増収も見込めない。また予定した税収も上がらないというようなことに現状があるわけでありますから、私は、この機会に税の不公平税制について若干の見解を述べながら、大臣の所見を伺いたいと思うんです。  俗称言われておりますように、税制に対する不公平感というものは、これに対する不信を発生させ、極端な場合には反税運動へとつながるおそれがあることもあります。今後多くの国民負担を求めねばならないとするなら、歳出見直しと並んでまず行うべきことは、この不公平感不信感納税者から払拭することが大切だと思うんです。幾らマクロの指標を持ち、国際比較視点から、日本租税負担率の低さを説明いたしましても、実際に支払う側の納税者負担増を納得させるものではないと思うんです。より重要なことは、身近にある税制上の不公平な事実を一つ一つ是正し、税制全体に対する信頼を得る必要があると思いますが、基本的な見解をここで大臣からお尋ねしたいと思います。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘のように、税負担の公平ということは、国民皆さん方納税協力をいただくために、これは欠くべからざる大前提であります。それは制度面執行面と両方に大きな問題があると認識をしております。御意見の中にもございましたように、国際比較等でもって日本の税率、租税負担率というものがこのように少ない、低いと仮に申しましても、納税者の側に立っては、隣人あるいは異業種とのそういう比較が先行するというのは、これは私は人の常であると思っております。  したがって、まずこの制度面で申しますと、いわゆる租税特別措置につきまして、昭和五十一年度以来、その主要項目のほとんどについて改善措置を講じてまいりました。さらに整理合理化を進める余地は、これ以上進めるということになると、かなり限られてきておる状況にはございますけれども、五十八年度におきましても、価格変動準備金廃止年度の繰り上げでございますとか、各種特別償却準備金についての縮減を行うことを御審議いただくようにお願いをしておるところであります。    〔委員長退席理事増岡康治君着席〕  今後とも、税負担公平確保観点から、社会経済情勢の変化に対応して、絶えず必要な見直しは行っていくという姿勢を維持し続けてまいらなければならないということが、制度面における基本的な認識であります。  いま一方、執行面公平確保の点につきましては、従来から青色申告の育成、あるいは納税等によりまして、納税環境の整備を初め税務調査充実等で、できる限り努力をいたしてまいりましたが、今後ともこれらにつきましては一層の努力を傾けていかなければならないと思っております。  なお、所得課税の適正な執行を担保するための税制上の措置等につきましては、去年六月、税制調査会に設けられました申告納税制度特別部会におきまして、納税者実情等を十分勘案しつつ具体的検討を進めておるところでございますので、今後、この税制調査会での審議状況を踏まえながらこれに適切に対処していかなければならない、このように考えております。
  22. 鈴木和美

    鈴木和美君 私、この大蔵委員会に所属して議論をした際に、税の問題に関する自分意見として述べたときに、渡辺大蔵大臣だったと思いますが、国民一般が税を納めたくないという感じにあるのか、納めなきゃならぬという感じにあるのかということを総体的に見たときに、いろんなデータを見ても、納めたくないというようなことは余りあらわれていないようですね、数字的には。けれども、それはどっちかというと、政府側調査資料に基づいたデータの方が非常に多いんですよ。  そこで私は、税に対して、まずその基本的な問題としてはっきりしておかなきゃならぬということは、まず国民の側から見たときに、政治あり方というものに対する信頼度というものがより深くなきゃならぬのじゃないか。仮に政治というものが、収賄であるとか、贈賄であるとか、黒い霧であるとか、五億円のロッキードであるとか、いろんなそういう問題が出ていると、政治そのものに対する不信一つ出てくる。そういうものは、税に対する抵抗というか、反税というか、そういう行動にあらわれることが一つあるんじゃないかと思うんです。  それからもう一つは、何に使われるんだ、自分の税が何に使われるかということについても大変関心を持っていると思うんです。この税に対して、いまもうすでに何回も議論されておりますけれども、つまり政策という面で、生活費が非常に切り詰められちゃって、防衛費だけが突出しているというようなやり方に対して、本当にいいんだろうか、こういうことから税の使われ方の問題についても大変関心を持っている。  同時に今度は、自分だけが取られているということや、格差と言った方がいいんでしょうか、そういうものに対する反感というようなものがある。三つ渾然となって私は存在しているんじゃないかと思うんです。  だから、そのためには、この三つに対して、政治に携わる一人一人として、国民納税意識に対するこたえ方、姿勢を明らかにしなきゃならぬ。私はそういうふうに思っているんですが、大蔵大臣見解はいかがでございましょう。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、三つの御指摘がございましたが、一つの問題は、いわゆる政治に対する信頼の問題であります。これこそまさに基本的なことであろうと思います。私どもお互い国会議席をちょうだいいたしましたならば、租税法定主義のたてまえから、唯一の立法機関でございますので、権限として、私ども租税法定主義のその法定に携わるわけでございます。それだけに、このことは最も基本的にお互いここに心がけていかなければならない課題であると考えております。  第二番目の何に使われておるか。言いかえれば、歳出に対する政策選択が、自分中心にして考えた場合、妥当か妥当でないか、こういう一つの判断があると思います。このことは人それぞれの立場によって、政策選択でございますから、異なる場合もあり得るかと思います。例示なさいました防衛費等を見ましても、昭和三十四年たまたま私が国会議席を得ました当時の予算規模で見てみますと、まさに総予算は四十倍になり、そして社会保障は八十倍に近く、防衛費は二十倍弱である。そういう見方からすれば、あるいは今年度の短期的な視点に立つ防衛費の六・五%増というのを必ずしも突出であると考えない人もおるかもしらぬ。しかしながら、単年度視点考えてみた場合は、一応プラス予算といたしましては、経済協力の七%、そして防衛費の六・五%、エネルギー対策の六・一%、社会福祉は〇・六%でございましたが、以下横ばいないし減額でございますので、その中に、自分から見た場合、政策選択に対する不満というものもあり得ることであると私も思います。  最後の三番目が、自分中心とした比較論でございます。隣の人と比べたりあるいは他業種と比べたり、そういう三つのものが渾然として一つ公平感というものを減殺しておるという要因であるということは、私も基本認識は少しも違っておるところであるとは思いません。  したがって、それらの三つの問題は、その衝に当たる者として、委員指摘のとおり、絶えず念頭にあるいは腹の底に置いて対応しなければならない基本的な考え方である。私は、その立場は異にいたしますとも、その基本認識の点においては変わった考え方を持つものではありません。
  24. 鈴木和美

    鈴木和美君 そこで、大臣も先ほどお話がありましたように、税の公平ということを論ずるときに、制度上の問題と執行上の問題と両面から議論しなきゃならぬだろうということの答弁がございましたが、私も基本的にそうだと思っています。    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕  そこで、制度上の問題について、若干の見解を述べながら意見をお尋ねしたいと思うんです。何が不公平税制であり、どう是正を要するのであるか、その範囲などについては大変な議論があるところだと思うんです。しかし、今日までの議論の中である方向を示唆されているものとして、五十二年十月に税制調査会が示した「今後の税制あり方についての答申」というものを私は興味深く見ました。つまり租税特別措置及び不公平税制として批判されていたいろいろな対象となっていたものを、税制調査会は次のように区分したんではないんでしょうか。  その一つは、「特定の政策目的に資するという租税政策上の配慮がなかったとすれば、税負担の公平その他の税制の基本的原則からは認め難いと考えられる実質的な意味での特別措置」、すなわちこれを「政策税制」と言う。  二つには、政策税制以外の制度、たとえば「法人受取配当の益金不算入制度や換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例等、特定の政策目的に資するというのではなく、法人税、所得税等の仕組みの問題としてとらえるべきもの」。  こう区分けをして、政策税制に属する各種の制度は、税負担の公平という税制の存在理念を否定するものでありますから、たとえば大幅な増収効果は期待できないとしても、財政再建のための増税を図ろうとすれば、私はまず最初にこれを原則として全廃すべきだと思うんです。そして再度福祉税制の確立という観点に立って、国民福祉の向上のためぜひとも必要だと思われるものに限って新たに立法化を図るべきだと考えているんですが、間違いでございましょうか。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和五十二年十月の御指摘の「今後の税制あり方についての答申」、これはまさにこの政策税制については、個々の実態に即しつつその整理合理化を図るべきであると指摘されております。したがって、政府といたしましても、政策税制につきまして積極的にその整理合理化を進めてきた結果、その主要な項目のほとんどについてそれぞれ改善措置が講ぜられたところでございます。  まず、政策税制整理合理化に当たっては、御提案のように、既存の措置を全廃して必要なものを新たに創設するという手法によってはおりません。しかし既存の政策税制につきましては、政策目的の意義の薄れたもの、これを廃止しますとともに、たとえ政策の緊要性は依然として継続していると認められる場合でも、政策目的と課税の公平とのバランスを考える際に、これまで以上に課税の公平を重視するという観点から、税制上の優遇の度合いを圧縮するという考え方に立って今日まで対応してまいりました。したがって、そういう考え方も、一応ナッシングにして新しくビルドをするという考え方と、基本的に違った考え方ではないではないかというふうにも考えておるわけであります。  このような整理合理化の結果、租税特別措置の減収額は、五十八年度全体で一兆一千五百五十億円でございますが、そのうちの八割はいわゆるマル優と住宅対策等個人向けのものでありまして、企業向けのものはおおむね二千六百億円程度でありまして、その大部分は、中小企業対策とそれから資源エネルギー対策、そういう重要な政策目的に資するということになっておりますので、中身についても御理解をいただきたいところでございます。  したがって、租税特別措置整理合理化をさらに進める余地はかなり限られてきておる状況にはございますけれども、今後とも税負担公平確保観点から、社会経済情勢の変化に対応して必要な見直しをしていく、絶えずそういう見直しをしていく対象としての考え方で対応していかなきゃならぬ課題であると、そのような基本認識に立っておるわけであります。
  26. 鈴木和美

    鈴木和美君 大臣、端的にお尋ねしますが、非常に答えにくいかもしれませんけれども、一般的に見た場合に、国民は税の問題について非常に負担感じているというようにおとりになりますか、負担感じていないんじゃないかというようにおとりになりますか。第二番目は、国民自分の納める税金に対して不公平であるというように思っていると見ていらっしゃいますか、不公平でないというように国民は見ていると思っていらっしゃいますか。どんな受け取り方でございましょうか。
  27. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 非常にむずかしい質問でございますが、国民、いわゆる人間はしょせん限りなき欲求を追求する動物でもございますし、考えようによれば、政治はまた無限の理想への挑戦とでも言うべきものでありましょう。したがって、負担感というものに対しては個々によって私は違うと思います。ただ、先ほど来御指摘がありましたが、とかく国際的眼でもってこれを見るという層は、私は現実少ないと思いますので、私はそのときどきの経済情勢の中でそれなりの負担感というものは感じておると思っております。  しかし、その負担感も、結局、第二点の御指摘になりました不公平感というものが存在した場合に、負担感をより一層感ずるものではないか。そうなれば、一体不公平感感じておるかどうかという御質問になるわけでございますが、それは自己中心的に諸般の環境の中でだれしもある種の不公平感感じておるんではないかという率直な認識を、私は、大蔵大臣という立場は別といたしまして、絶えず持っておる一人であります。
  28. 鈴木和美

    鈴木和美君 昭和五十六年十月に総理府で、税金についての関心及び負担感、不公平感及び所得の申告などに関する意識実態調査が行われましたですね。その中で税金について関心を持つ者の分類として、非常に関心があると答えた人が二四%で、まあ関心があると答えた人が四七%。合わせますと、とにかく七一%の人が非常に税に対して関心を持っている。こういうことが明らかにこの総理府調査でも出ているわけですね。  次に、現在納めている税金の負担感についてという調査項目を見てみますと、全然負担感じていないと答えた人が三%、それから余り負担感じていないと答えた人が一八%、ある程度負担感じていると答えた人が五三%、非常に負担感じていると答えた人が二一%、わからないが五%ですね。つまり、こうやって見ますと、二一%と五三%、それから一八%を含めますと、非常に負担感を感じているという国民の声がこの調査によっても明らかに出ているんじゃないかと思うんです。  それから不公平の質問の項目を見てみますと、不公平があると思うと答えた人が三九%、ある程度はあると思うと答えた人が三四%、ないと思うと答えた人が七%、どちらとも言えないというのが一〇%。こう見てまいりますと、不公平と思っている人も七三%おる。これは政府が調べた税に対する国民現状認識だと思うんです。  そういうことから考えますと、もう少しこの税の問題に本格的に取り組んでいかないと、税外収入ばかり当て込んでおっても、これから先の財政の健全な再建ということを考えたとき、私は大変問題があると思うんです。したがって、税の仕組みもしくは納税意識、そういうものに対する国としての毅然たる態度とPRというものが、何としてもこれから私は必要だと思っているんですが、そのことに関する大臣の御所見はいかがでしょう。
  29. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も御指摘の理論はまず肯定した上でお答えをすることにいたします。  事実、私なりにいつも考えますのは、税の負担感というものが仮になかったといたしますと、今度はいわゆる政策選択、すなわち歳出の点に対しましてとかくイージーになりがちだというきらいがございます。したがって、負担感というものがあって初めて歳出に対する監視の眼というようなものが生ずるという意味におきましては、自分が納税しておるという意識そのものは、国全体の財政の立場から見ても、それなりに必要なことではないかというふうにも思うわけでございます。これはよく直接税と間接税の議論の中でなされる場合もございます。すなわち間接税制にすっかりなれ切った場合に、いわば痛税感を感じないままに物に対処していくということが、勢い執行面に対する監視の眼が薄らいでいくということになりはしないか、こういう議論もよくある一つ議論であると思っております。  私はその意味においては公平感という問題であろうかと思います。したがって、これにつきましては、その税の持って立つ意義、そしてそれぞれの執行面での仕組み等々について国民協力が得られるような体制と、そしてたゆまざる広報宣伝、PRと申しましょうか、そういうことに意を注いでいかなければならない課題であるというふうな認識を持っております。
  30. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま、負担感というものを持つことによって、使途というか、支出というか、政策選択というか、そういうことに関心が持たれるから、うらはらじゃないかというお答えがありましたが、大臣、こういう調査も出ていることはどうなりましょう。  いま非常に負担感を持っているということについて、税に関心を持つ人は何で関心を持つのか。これは総理府の調査ですね。その第一位は、自分負担する税金だから、自分が出すからだ、こう答えている人が五三%ですね。それからどういうものに使われるかということで、税金の使途ですね、これに対して関心を持つと答えた人が二五%です。それから税制、税体系などの仕組みに問題があると答えている人が一四%、それから税金の調査、実際の徴税の仕方などと答えた人が六%。  この数字は何をあらわしているかというと、多くの国民は、もちろんその政策選択、何に使われるんだろうかということも当然でしょうけれども自分のいま出している税金というものが、自分負担するわけですから、高いというか、そういう実感というものを持っていることを示しているんじゃないかと思うんです。これはいかがでしょう。
  31. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が申しました負担感——ある意味においては、負担感というのは、自分国民の義務として負担に応じておるという負担感、いま一つは痛税感とでも申しましょうか、税に対する痛みとでも申しましょうか、そういう考え方負担感の中にはあると思うんであります。  で、御指摘なさいましたとおり、自分が出すから、これはまさにある種のいい意味における痛税感というものではないかというふうに思います。その痛税感というものが全くない場合は、世界の中でもごく小国など、観光税でございますとか、自分が出すという範疇外から国家財政の歳入確保されるというところでは、ある種の使途に対する監視というものが少なくなっていくんじゃないか。こういうことを一般論として申し上げたわけでございます。だから、みずからが出すからということが大きな比重を占めておることは理解ができます。  しかし、それは使途の問題、仕組みの問題、そして徴税自身の執行の問題等についてもそれなりの関心が示されておりますように、そういう使途、仕組み、実調率、そういう全体の中から、負担感が義務感の方へ連動する形になった場合が最も好ましい姿ではなかろうかと、こういう感じがいたしております。
  32. 鈴木和美

    鈴木和美君 これからも制度上の問題のことは税調やその他でもまた議論されますし、当委員会などでも議論を続けていきたいと思いますが、時間がございませんので、次に執行面の問題に移らしていただきたいと思うんです。  国税庁にお尋ねいたしますが、不公平税制について、私も五十五年以来機会あるごとに当委員会で執行上の不公平の是正について意見を述べてきて、当局がそれに対応する積極的な姿勢を持っていただきたいということを申し上げてまいりました。税務執行を行っている人たちの現状について私の手元にこういうお話があったんですが、いまから述べるような状態、現状に対して、肯定なさいますか否定なさいますか、後から御意見をいただきたいと思うんです。  まず、税務に働いている職場の人たちからいろんな意見を聞くのですが、一つは慢性的要員の欠陥があると。それから二つ目には、事務量の激増によって大変苦しいと。三つ目は、円滑な執行を妨げるような要因が非常に増加しておって、環境の悪化が非常に問題にされているんですと。こういう話をよく聞きます。ちなみに、国税庁職員の方々の現状に対する世論調査でこういうことが出ているんですが、このことを肯定なさいましょうか。  まず、人員が仕事に追いつかないというように答えている人が、五十三年の三月のときには四一・五%だったんですが、五十六年四月には五八・九%にふえているんです。それから仕事がきつくなっているというように答えた人が、五十三年三月で四〇・六%、五十六年四月になりますと六一・三%と急激にふえているんです。そのほか、人事が不公平であるとか、立場が不明確であるとか、職場環境や設備がよくないとか、職場の雰囲気がおもしろくないとか、休暇が取りづらいとか、当局管理者が威圧的であるとか、安全、健康がなおざりにされているとか、公害にさらされているとかというような項目については、五十三年三月と五十六年四月を比べると、全部これが数字が低くなっているんですよ。数字が大きくなってるのは、人員が仕事に追いつかないという四一・五%が五八・九%になったということと、仕事がきつくなっているということに対して、四〇・六%が六一・三%になったということだけが特徴的にあらわれてる。  こういう現状に対して、国税庁は、職員を統括する、管轄する意味で、現状をどのように把握なさっているのか、まずお答えいただきたいと思います。
  33. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 税務の職場の実態についてのお尋ねでございますが、税務行政を取り巻く環境につきまして、昭和四十年度昭和五十六年度を計数的に比較して申し上げますと、この間に申告所得税の納税者は二百九十二万人から六百十七万人、二・一倍になっております。還付申告者は同じく九十一万人から五百十七万人、五・六倍に増加しております。また、法人の数で申しますと、八十四万から百八十二万と、二・二倍でございます。源泉徴収義務者は、この間百八十二万から五百三十一万、二・九倍、いずれも著しく増加をしております。さらに、課税実態の中身でございますけれども、取引の複雑、広域化が一層進展しております。  したがいまして、税務調査にかかる負担も増大をしておりまして、調査事務量というのも必然的にふえざるを得ないという状況でございます。この間の職員数の増加は千百四十六人ということでございます。  また、円滑な執行を妨げる要因についての御指摘もございましたが、いわゆる納税非協力活動の状況でございますが、かつてのような過激な行動は影をひそめておりますけれども各種の手段を用いた調査妨害というような事例も依然として見られるという現状でございます。  私どもの仕事は、申すまでもなく、課税の公平を確保して税務行政に対する信頼を高めていくということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、大変厳しい行財政事情のもとではございますけれども、要員の確保について関係方面の御理解を得ながらやってまいりますとともに、内部的にはアルバイトを極力活用していく、コンピューターの導入をできるだけ拡大していくというような合理化を図りまして、事務運営の効率化に努めておるところでございます。また、これだけ事務量がふえてまいりますと、職員負担ということが絶えず問題になるわけでございますが、職員負担が過重にならないように、また職場環境ができるだけ良好な状態で確保されるようにできるだけの努力をしておるというのが現状でございます。
  34. 鈴木和美

    鈴木和美君 国税庁にもう一つお尋ねしますが、職員の側からもう一つ意見が多いのは、経済の発展、拡大に伴いまして、企業の取引規模の大型化とか多様化とか取引の広域化というものを招いておりまして、税務調査に当たって非常に複雑性と困難性が増してきている。  こういう特徴的な意見と、もう一つは、税法はそれ一本で執行できず、各税とも共通税法、各税法を基本に、政令、施行規則、通達、そして特別措置法などの体系を理解するとともに、その他の一般法律までも承知していかないと、なかなかむずかしい税務調査に当たることができない。つまり職員の質の向上というものを求めていかないと、多くの国民に税務相談をされたときに受け答えができない。こういうような状況で、質的な変化というものが従前よりは増してきているというような説明でございますが、このことについては国税庁としても認められましょうか。
  35. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 先ほど申しましたが、課税対象の中身が大変複雑になっておるというところから、調査に当たりましても、複雑困難な事案が増加しておるということは事実でございます。また、税法を適用して税務執行をやってまいるわけでございますけれども、法律、政令、規則、通達、すべてを理解して当たるということは、私どもに課せられた当然のことではございますけれども、日々これ勉強に努めて仕事に当たっておるというのが現状でございます。
  36. 鈴木和美

    鈴木和美君 後ほど見解を述べます前に、具体的なことをもう一つお尋ねしますが、現在の、五十六年度の実績で結構ですが、実調率は申告所得税と法人税について何%ですか。
  37. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 五十六年度で申しますと、申告所得税は四・一%、法人税は一〇・四%でございます。
  38. 鈴木和美

    鈴木和美君 つまり、そういうことになりますと、単年度で見ますと、申告所得者の九六%、それから法人では九〇%が調査を受けないということになりますね、単純なこれは見方ですが。したがって、どのような申告をしても通ることになるということになりましょう。機械的な確率で言うんであれば、申告納税者は二十年に一回、それから法人は十年に一回しか調査されないということになりますから、このことが、先ほどから問題になっている、給与所得者と事業所得者との間の執行上の問題から生ずる新たな税の不公平感をもたらしているということになると思うんですが、見解はいかがですか。
  39. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) もう御承知だと思いますけれども、私どもの実地調査を行います場合には、内部的に各種の資料、情報を検討いたしまして、過少申告の疑いの高い納税者について実地調査をするという態勢でございます。したがいまして、実地調査に至らないで事後処理という簡易な処理で非違を是正するというものも別途ございます。  いずれにいたしましても、私どもは適正な申告を行っている納税者まで実地調査の対象にするわけではございませんので、二十年に一回とか十年に一回の頻度であるという御指摘ではございますけれども、質的に考えますと、私どもはもう少し中身の濃い調査をやっておるというふうに考えておるわけでございます。  それから申告水準の向上のためには、実地調査が柱になる仕事ではございますけれども、同時に税の正しい知識の啓蒙と申しますか、そういう意味での広報、指導、青色申告の育成、さらには地方税当局や関係団体との協力という面でも、申告水準の向上を図る施策を講じておるわけでございまして、それらを全部総合したところで私どもの施策を前進させておるというのが現状でございます。
  40. 鈴木和美

    鈴木和美君 言葉じりみたいで大変恐縮ですが、適正な納税をされている方は調査の対象にしない。つまり不正の人を対象にしているというお言葉と、水準の向上を求めているというお話があったんですが、適正な納税者であるという認定は、何をもって適正なる納税者というように認定なさるんですか。何をもって不正というようにみなされるんですか。
  41. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 端的に申しますと、先ほども申し上げましたが、各種の資料、情報から申告内容に疑問があるという方について実地調査を行っておるわけでございます。したがいまして、各種資料、情報がなく、ほかの納税者との比較においても特に問題がないというものについては、私どもは調査の対象として積極的には取り上げていないということでございます。したがいまして、適正な納税者という方は、私どもから見て、その調査ないしは事後処理の対象から除外されている方と、そういう御理解をしていただきたいと思います。
  42. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、不正であるか適正であるかということは、数字的とか、基準とか、法令とか、何かそういうものの的確なものはないんですか。つまり目の子算で、こいつはおかしいと思ったらおかしいし、これはいいと思ったらいいということになりますか、いまのお話でいくと。
  43. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) それは、実態判断の物差しといたしましては、各種租税法規を踏まえて判断をしておるわけでございます。
  44. 鈴木和美

    鈴木和美君 それはそうでしょう。法規によらないでやることはなおおかしいんであって、そんなことはあたりまえでしょう。その法規に照らしてみて、納税される額というものが、申告の額と言ってもいいですが、それが適正であるか適正でないかということは見なきゃわからぬでしょう、見なきゃ。おかしいというのと、適正というのと、どうやって分けるのですか。どうもその辺がわからぬのですがね。
  45. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 現在の実調率を前提にしてお答えを申し上げたわけでございます。  理想的にはすべての納税者の実態をお伺いして拝見するということが理想的かもしれませんけれども、現在の事務量を前提として申し上げますと、内部的に各種の情報ないしは他の納税者との比較において疑問のある方について調査しておるというのが現状でございまして、現状に即してお答えを申し上げました。
  46. 鈴木和美

    鈴木和美君 それじゃ別な角度から、五十六年度の法人税について、申告件数、つまり処理件数と言ってもいいのですが、それと実地調査の件数、そしてその割合は何%であったのか。実地調査のうち更正決定などの件数は何件ありましたか。更正決定した割合は何%ですか。申告漏れの所得は何%、どのぐらいになりますか。増差税額は本税と加算税を入れて何ぼになりますか。
  47. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 昭和五十六年度の法人税の事績でございますが、処理件数は百七十九万九千五百三十二件ということでございますが、そのうち実地調査をいたしましたのは十八万七千八百四十五件でございます。したがいまして、実調割合は一〇・四%でございます。  実地調査をいたしましたものの中で更正決定等をいたしました件数は、十五万三千百五十四件。  更正決定等の割合は八一・五%でございます。  申告漏れ所得額は九千八百三十七億円でございます。  増差税額は、本税、加算税合わせまして、三千三百三十九億円でございます。
  48. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つお尋ねしますが、そのときに調査、検査の従事人員は何人であったか、法人税の定員で結構です。それから一人当たりの増差所得額は何ぼであったか、同時に一人当たり増差税額は同ぼであったのか、ここも教えてください。
  49. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 調査従事人員は一万一千十六人でございます。  一人当たりの増差所得額、八千九百三十万円、一人当たりの増差税額は三千三十一万円でございます。
  50. 鈴木和美

    鈴木和美君 ただいまの数字が示すように、実調率が一〇・四%であるということからしますと、先ほど私が申し上げましたように、つまり法人においては九〇%が調査が十年に一回であるということになるわけです。したがいまして調査がされていないということですね。もちろん、いまのお話によりますと、これは悪質不正と思われるという人を選んだと言ってしまえばそれまでかもしれませんけれども、百七十八万件もある中で十八万七千件を全部調べてみた結果、更正決定の割合は八一・五%であるということでしょう。そうですね。  つまり、税務申告に及んでいるんだけれども、調査をしてみると、ちょっとおかしいと思われるものが八一・五%あるということでしょう、この数字が示していることは。同時に申告漏れの金額は九千億に及んでいる、税額においても約三千四百億ですよ。こういう現状になっているということは、先ほどの適正な納税というのと、不正な納税というものは、この数字が示すように、非常に粗っぽいあなたの答弁じゃないかと思うのですが、もう少しこの数字から見た実態を明らかにしていただけませんか。
  51. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 五十六年度の法人税の調査事績は、先ほども申し上げたとおりでございまして、私ども繰り返しになりますけれども各種の資料、情報を総合いたしまして、申告に問題がある納税者について重点的に調査をやっておるわけでございます。  したがいまして、現状では実調率は一〇・四%ということでございますけれども、この実調率をさらに拡大した場合にどのぐらいの調査事績、増差税額が出てくるかという点でございますけれども、私どもは非常に密度の濃いものを中心に調査をいたしておりますので、比例的にそういう事績がそのまま拡大していくというふうには考えられないわけでございますけれども、実調率を拡大いたしますと、他方、申告水準向上の波及効果と申しますか、そういう効果もかなり出てくるということは当然考えられるわけでございます。  したがいまして、私ども限られた事務量ではございますけれども、できるだけ調査、接触の割合を高めていくということを一つの重要な課題と考えておるわけでございます。
  52. 鈴木和美

    鈴木和美君 国税庁だけに言って申しわけないんですが、どうもあなたの答弁よくわからないんです。これを伸ばせればどうかということをいま質問しているわけじゃないんですよ。適正な納税者とそうでない納税者を分けて、おかしいと思われるものについて調査をやっているというさっき御説明だったんですよね。  私は、それは結果として言うことであって、もっと端的に言えば、人がいないから、本来実調をやらなきゃならぬのだけれども、やれないからそこだけを選んでいる、結果的にあらわれていることであって、それが基準じゃないんじゃないんですか。それから方針というものではないんじゃないんですか。やむを得ないからそういう結果になっているんだと私は思っているんです。だから、実調率から見てもこういう結果があらわれているんじゃないか。だからもっと端的に言えば、職員の数が少ないということに最大の原因があるというように国税庁は思っていらっしゃるんじゃないかと思って、私はあなたの応援部隊と思って一生懸命やっているんですわ。いかがですか。
  53. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 確かに実調率というのは、対象とわが方の職員の数、その両者で決まってくるわけでございます。  たとえば、法人税について先ほどから申しておりますが、昭和四十年の法人税の実調率は二二・八%でございました。それが五十六年には、先ほど申し上げましたように、一〇・四%まで低下しておるということでございます。先ほど法人数の増加状況を申し上げました。一方、職員はトータルで千百数十名の増加にとどまっておるということから、こういう現象になってきておるわけでございます。  私は、決してある物差しで実調の対象がきちんと出るというふうに申し上げたわけではないわけでございまして、考え方として、そういう考え方を持ちながら、実際は稼働量に見合った調査を行っておるということでございます。
  54. 鈴木和美

    鈴木和美君 これはどなたが適当かわかりませんが、ぜひ教えていただきたいんですが、ここにTKCという飯塚毅さんの会社の資料があるんです。私も勉強不足で大変申しわけないんですが、諸外国の例から見ますと、日本には、飯塚さんがおっしゃっていることには、「わが国には、納税有資格者の範囲を確定する法規は存在していない」、そのために個人の実調率というものは、実調というか、それはもう少し大切にすべきじゃないかという意見を述べられているんです。同時に西ドイツとアメリカの例を出されて、「西ドイツでは、法人個人を問わず、必ず三年に一回は所得の実地調査が実施されている」、こう断言されておられますね。それには収税官の数が圧倒的に違うんだと、こういうことを述べられているわけです。  それで、「西ドイツは西ベルリンを含めて総人口が約六千万人。大体日本の半分とみて良いでしょう」。日本の国税職員は大体五万三千人前後。「西ドイツの税務官吏は、実数で日本の約三・三倍、人口比からみると六・六倍ということ」になっておって、非常に犠牲平等の原則と税法学で言う課税正義の原則が貫かれている、こういうふうに飯塚さんは述べていらっしゃるんですが、このことについて大蔵省は事実をお認めになりましょうか。
  55. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) いまお引きになりました飯塚さんの論文を私は具体的に拝見しておりませんが、推測するところによりますと、納税義務者の範囲がはっきりしておるというのは、要するに申告あるいは賦課課税の国もあるわけでございますが、申告する場合の義務の範囲が、日本の場合は所得税法の百二十条で、めいめいの人が計算をした結果、納付すべき税額が出てきた場合には税務署に申告しなければならない、こういうふうになっておるんです。いま西ドイツの例を引かれましたが、西ドイツにいたしましても、アメリカの場合、フランスの場合でございますと、もっと外形的な基準で、たとえば別荘を持っている人は必ず、所得があろうとなかろうと、申告しなければならないとか、その申告義務の範囲が、日本より諸外国の場合かなり広いという事実はございます。  これは先ほど大蔵大臣の御答弁にもございましたように、いま税制調査会の中で特別部会を設けていただきまして、ここでわが国の申告納税制度のあり方について基本的な勉強をいましてもらっているわけでございますが、何といいましても、申告所得税というのはめいめいの人が自分でつけた記録でもって申告する、そこがまずきちんとしてないとだめなわけでございます。同時に、申告の義務の範囲をいまの日本のままの状況でいいのかどうか。  それから先ほど来国税庁が答弁申し上げておりますように、税務職員が懸命に仕事をしておりましても、人力の限界がございますので、率直に言って、全納税者について完璧な調査とか把握というのはできない現状にあるわけでございますが、その場合に、たとえば税務職員がいろいろ調査なり事前調査をする場合の資料がもう少し大量に入ってくるような仕組みを考える必要があるのではないか、こういう面についてもいろいろ勉強してもらっているわけでございます。  ただ、御理解を願いたいのは、そういう税の制度、執行面を通じての公平という問題につきましては、必ずそれに随伴いたしまして、新たな義務とか負担納税者とか一般の皆様に受忍していただかなければならないわけでございますね。たとえば、いままで税務署に提出しなくてもよいような資料を義務として提出してくださいという、一つ負担がかかってくるわけでございます。  したがいまして、この税の公平の問題というのは、その裏側として必ず、納税義務者なり世間一般の方々にそれだけの負担お願いするという面を伴いますので、この両方の面から、国民全体と申しますか、納税者全体の御理解を得て、制度面でも日本所得税がもっと公平なものになるように私どもは努めていかなければならないとは考えているわけでございます。  なお、いまの西独の税務職員が日本の税務職員の三・何倍であるかどうかというのは、ちょっと私、手元に資料がございませんので、御答弁できないのは申しわけないと思っております。
  56. 鈴木和美

    鈴木和美君 梅澤さんのお話は、ちょっと先を見越しちゃってのお話のようですけれども、私が言いたいことは、税の公平ということを一番最後にはもちろん述べますけれども、いま実調というものが、実地調査が、日本の場合には、適正な納税、つまり不公平感が生じているものをなくすために行われる実調というものの位置づけがもっと高くなきゃいかぬのじゃないのか、余りにも低いんじゃないかということを私は懸念として感じているんですよ。結果として、人とか何とかというのは後で結構なんですよ。つまり実調というものが非常に大切なんじゃないかと思うということだけ見解の統一がしたいんですよ。その手だてをどうするかということは別問題として、実調というのはいまの日本の適正な納税を促すという意味では大切なんだということはお認めいただけるか、意見は一致できましょうか。
  57. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 御指摘の実地調査はきわめて重要であるということは、私どもといたしましても、全く共通した認識でございます。できるだけ実調の機会を高めるようにいろいろな手だてを講じておるということは、先ほどお答え申し上げたとおりでございまして、その方針は今後とも引き続いて堅持していきたいと思っておるわけでございます。
  58. 鈴木和美

    鈴木和美君 大臣にお尋ねしますが、先ほど国税庁からわざわざ五十六年度の法人税の実態を数字的に挙げていただきました。いまも実調というものは非常に大切であるというお答えをいただいたと私は思っているんですが、そこで機械的な計算で大変恐縮なんですが、いまの五十六年度の法人税だけを見ても、約百八十万件数に対して更正決定が八一・五%ですから、そうして増差税額は加算税まで入れて約三千三百億です。  これを検査している従事員、いま法人税定員一万一千十六人というように国税庁はおっしゃいましたが、私が国税の職員の人たちと話をしている限りにおいては、これの約六割なんですね、法人に従事している人たちは。約六千から六千五百だと私は思うんですよ。そうしますと、六千五百人の人が一人当たり増差税額を見てみますと、五千百万ぐらい、稼いでいるという言葉は適当じゃありませんけれども、適正な税を相談の結果納めてもらっているという実数ですね。したがいまして、たとえば私はいま、このことを全部計数的に引き直して、何人ふえたから、実調が仮に三〇%になったから、この金額が直ちにその金額どおりになるというようには必ずしも思われませんけれども、現在のように法人において家族で御飯食べても経費で落としている。  この前びっくりしたんですよ。私の近くのガソリンスタンドに行ったら、若い坊主が父ちゃんに電話しているわけですよ。社長さんですな。会社のカードでガソリンを入れてもいいんじゃないか、それでやります、こうなっている。それが結局経費で落ちている形になるんでしょう。  つまり、そういうことを勤労者のサラリーマンが見ると、腹立って腹立ってならぬのですな。もちろん中小企業の経営状態ということに対しては私も深刻に考えますよ。けれども、適正な納税ということから見ると、ちょっと首をひねるような問題があるわけですね。  そこで、私は税外収入で今度の整理資金も取り崩して一兆一千億出さなければならぬというような状況の中で、いま税務職員をすぐふやしたからといってすぐ使えるとは思いませんよ。それは三年、五年かかることだって当然です。しかし三年、五年の経済状態を展望したときに、加速度的に高度成長で幾らふえるというわけじゃないんですから、もう少し国民の納税というものに対することをしっかり考えなければならぬと思うんですよ。  そういう意味では、たとえば全く機械的ですけれども、一〇%の実調を三〇%に上げる、二〇%増加させるといっただけでも、もう六千億や一兆は上がっちゃうんですね。そういうようなことをもう少し、抜本的に納税の公平という面から見ても、考えるべきだと思うんですが、大臣見解いかがですか。
  59. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘のように、実調率を高めていく、これはもちろんそれなりの増収効果は期待できるというふうに私も思います。しかし、円滑な租税収入確保するためには、原則的に原点に返りますならば、納税者のすべてが申告納税制度の意義をまず認識して、適正な申告と納税を自主的に行うということが、もちろん基本的には肝要なことでございます。したがって、そのためには納税道義の高揚でございますとか、あるいは先ほど来、税調にも部会を設けたというお話をいたしてお願いしたというお話をしておりましたが、納税環境の整備とか、そういうものに努めてまいらなければならない。基本的にはそういう認識を持っております。  実調率の拡大によりまして、もとより先生も御指摘のように、比例的にいわゆる増差税額が出るというものではございませんにしても、いわゆる牽制的効果というものは私もあると思います。しかし基本的にはなかなか、さればといえ、いまの厳しい事情下において定員増というようなことも、なかなかむずかしい実態でございますので、機械化でございますとか、あるいは質的向上等々、諸般の事情を勘案しながら対応していくべき課題であるというふうに考えております。
  60. 鈴木和美

    鈴木和美君 まず、私がいままで述べてきたことに対して、行管庁の見解も聞きたいと思うんですが、いま大臣、最終的にそういうお話がありましたけれども、私は大臣見解をもう一度お尋ねします。  私の意見としては、確かに総定員法の問題があったり、行革の問題があったりして、人員という問題をストレートに議論することは大変むずかしいとか、それからそぐわないとか、そういうようなことがあるかもしれません。けれども、つまり税収というものの不足が今日こういう状態にあることの事情にかんがみ、また実調というものの位置づけを考え、それから公平ということを考えれば、私は行管や総定員法の機械的な人員の割り振りとは問題が違うと思うんですね。同じ行革の中でもただ一律何%というようなやり方は本当に困るんですね。  大臣も、五十年に大臣になられたときに、私と団体交渉やったときに、あなた全部認められたんじゃないですか、そのことを。それで、ここへ来るとおかしなことを言うようなことではいかぬと思うんですよ。見解一つにしていただきたいと思うんですよ。  そこで、機械化をやったって、それから質的向上をやってみたって、みんな限界があるわけですよ。いまの国税庁の現在を見れば、私はもう限界に来ているという判断です。そういう意味で、この国税の仕事に対する現状の見方に対して行管庁はどういうように思っているのか、行管庁の見解も聞かしてください。
  61. 神澤正藏

    説明員神澤正藏君) お答えいたします。  いま本委員会でいろいろ御質問、それから大蔵省の方のお答えがありましたように、税務行政というのは重要性がますます増大してきているところでございまして、私ども行政管理庁といたしましても、その点は十分認識いたしまして定員の査定に当たっているところでございます。この点は五十七年度、それからいま御審議をいただいております五十八年度予算におきまして、国家公務員の総定員が五十六年度が百一名の減員、五十七年度が四百三十四名の減、五十八年度、いま御審議いただいている予算では千六百九十五人の人員削減と、こういった厳しい中で、国税庁の定員につきましては、四百三十八名から五百名台というぐあいに、むしろ総員を拡大してきている。こういったことで全体の定員事情の中でございますので、必ずしもこれが満点をいただけるとは思いませんが、そういった努力をいたしておりますので、その点を御賢察いただきたいと思います。
  62. 鈴木和美

    鈴木和美君 御賢察いただけません。  とにかく私が本件に絡んで五十五年からずっとタッチしているんですけれども、一番ガンは行管庁ですわ、一番あなたの方がガン。なぜかというと、大蔵省に物言うときには、大蔵省から手本を示さなければ、どこにも何にも言えないじゃないですかと、これ一点張りじゃないですか。その次悪いのは大蔵省主計局だ。仲間のことでよく知っていながら、あなた方とにかく、ぶつぶつばったばったやるわけですよ。渡辺大臣のときに私はそのことを申し上げた。そうしたら渡辺大臣は何とおっしゃったですか。大蔵官僚というのは頭がよ過ぎると言うんですね。大臣選択の幅なんか何にもなくて、整合性でぴしゃっと詰めて持ってくる、だから何にも言えなくなっちゃうと言うんだ。こういうお話ですよ。しかし、現状はだれもがこれを理解しているんですよ。ただ、こういう場で議論するからなかなか議論できないということは私も認めますよ。けれども、もう少し深刻な財政の状況歳入が非常に大きな欠陥を持っているというような状況や、不公平税制が非常に蔓延するような今日の中では、もう少し不公平税制執行面について考えるという政治的な選択が私は必要だと思うんですよ。そういう意味で申し上げているわけです。  ついでにもう一つ申し上げますから、ぜひこれも考慮していただきたいんです。いま税務職員の年齢構成別の状態というのは、大変危機的な状態になっているわけですね。非常に年齢が高くなって、もう間もなくやめていくという人がたくさんおいでなんですよ。ベテラン職員と言った方がいいかもしれません。新規採用がないから、この人たちがどっとやめていったときに、日本の税務執行というのは一体どうなるのかということを大変私は心配するんですよ。そういう意味で、現在の税務職場の現状は、新規採用が少なくて年齢別構成のアンバラが非常にありまして、将来の業務執行に大きな悪影響を及ぼすものと思います。  ですから、私は次の理由から、つまり、一つ、要員不足が致命的な状況にある上、財政経済状況の変動への対応をすべて税務行政に帰着されるということは遺憾だ。二つ目、国税の職務は高度の専門知識技術を基本とした技術職であり、長い間の修練によって養われた技能を必要とする技能職であることを理解してほしいんです。同時に、三つ目に、さらに個々職員一人一人の意欲、士気の高揚によって、複雑困難、大型事業の処理を適切にこなし、公正な税務執行に努めている状態というものを認めなきゃならぬ。しかも、こうした高度専門的知識、技術旺盛な意欲、士気、使命感は特に職場の中高年層職員によって確保されているという実態ですね。また、職場の半数以上が四十五歳以上の年齢層で占められておるというような状況にかんがみて、中高年齢層の職員の処遇の対策や、同時に新規採用を行って将来に備えるということが、私は税務職員の構成の状況から見て心配なものですから、こういう意見を持っていますので、見解をいただきたいと思います。
  63. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、私どもの職員の構成が非常に二極化している。特に中高年層の職員の比率が高い。五十歳以上の職員が現在では一万四千人余りで、全体の二八%を占めておりますし、それから四十歳代の職員が五千三百人ほどおりまして、全体の職員の約一一%を占めておる。したがいまして、トータルとして、四十歳以上の職員が約四割弱の比重を占めているわけです。特に、問題となりますのは、五十歳以上のこの二八%の比率の職員がこれから十年たたないうちに職場を去っていくということで、現在こういうような中高年の職員というものが非常に豊富な知識と深い経験を持って、私どもの職場の中核となって税務行政を何とか円滑に運営するように懸命に努力しているわけでございます。  したがいまして、私どもは将来の私どもの職場の年齢構成を安定化させるために何かいい方法はないか。たとえば採用の職員を平準化していくというようなことも一つでございましょうし、それからできるだけ資質の高い職員、税務専門官、専門職のような職員をふやすことに努めるとか、さらに職場の中で男女を問わず研修をもっと充実していくというようなことに努めていかなければならないというふうに思っております。  先生御指摘のように、私どもも事務の運営の効率化、合理化、機械化にはできるだけの努力をしてきておりますが、御指摘のようにそういう努力もかなり限界に近いような状況かと思います。もちろん今後もそういうような努力を重ねてまいりますが、私どもの仕事は、物を製作する、プロダクションというようなことではなくて、資質の高い職員の手作業というものがどうしても比重の高い職場でございますので、今後とも関係方面の御理解を得まして、職員の増強に一層努めて、公平な税務執行努力してまいりたいと考えております。
  64. 鈴木和美

    鈴木和美君 それじゃ最後ですが、大臣お願い申し上げたいんです。  先ほども申し上げましたように、私は税務職員をふやすという問題は、税務署天国をつくろうなんという気持ちもさらさらございませんし、中小企業をいじめるなんというようなことも考えているわけではございませんし、大きい政策選択としては、とにかく歳入欠陥がこれだけの状態にある、それから経済の見通し、そういうものを見たり、不公平税制の感が非常にいま蔓延しているというようなときに、これを直さなきゃならぬというような観点で取り上げているということを誤解しないでほしいと思うんです。同時に、いまお答えがありましたように、私は税務の職場はもう極度、限界に来ているという認識です。  それから不満を述べておきます。私は渡辺大蔵大臣のときにもお願いしたんですが、先ほど竹下大臣からもお話があったんですが、私が具体的にこういう提唱をしたら、わかりましたということになっておるんですが、何ら改善されていません。一つは、適正な納税を行うために、申告の方法や税の仕組みなどについて、連続して公的な報道機関を利用して、テレビで国民にいろんなことを教える、こういうことをぜひやってくれということをお願いしました。それから税務署の建物というか、税務署が逐次改築はされていますけれども、とにかく役所みたいな暗いところで、だれも税務署へなんか税金を納めに行きたがらないですよ。そういう意味であの建物を明るくしてくれということも述べた。それから税務職員の目つきが悪いからだれも行きたがらない。(笑声)もう少し目つきがいいようにしてくれ。入ってくると、こら、おまえ、ごまかす気か、というようなことになっているので、そういう接遇訓練などについてもやってほしい。それから納税相談に行ったら女性がおって、コーヒーの一杯ぐらい出してくれるというような、それぐらいのことがあってもいいじゃないか、コストを見るとそのぐらいのことはできるはずだということを渡辺大臣に私は申し上げて、そのことはわかりましたということになっているんですが、何ら改善の実績が見られません。そういう意味で、年々本件について各党の皆さんにも附帯決議をお願いしているんですが、附帯決議も五回同じような附帯決議になったら、何の附帯決議かわからぬのです。そういうことをまじめに、まともに考えているものですから、最後大蔵大臣見解を伺って質問を終わります。
  65. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、鈴木委員の御質問が、基本的に中小企業いじめとか、そういう立場に立っていらっしゃらないことは、私も問答を通じながら理解をいたしております。もっと別の角度から、財政再建とか、あるいは負担感、不公平感、そういう角度からの質疑の展開であったと理解をいたしております。  そこで最後の御提案でございますが、私も実は総定員法をつくるときにかなり情熱を燃やした一人でありました。そしてその後いろいろ法律で総定員法に穴をあけるというときには、一つ一つ抵抗を感じながら今日に至っております。いつも考えながらも、税務職員を総定員法の枠の外に置くということに踏み切るだけの私は勇気はありません。それなりの苦心をしてつくった総定員法というものを頭の中で大事にしておるわけであります。  しかし、それは別の議論でございますが、いまおっしゃいましたように、いわゆる意欲、士気、使命感、そういうものをますます助長していくためにも、御提案のような趣旨は私は当を得た御提案だと思っております。  で、公的機関を使うというふうになりますと、政府広報の番組、いろんな細々とした方法がとられております。それがもっと人口に膾炙された端的な番組に浮かび上がってくるというのが、それは好ましいことだとは思います。が、私どもの政府広報の場においても、それを言の葉に上せることによってそれなりの意義は高めていかなければならないと思っております。  それから建物の暗いことと目つきの悪いこととは、鈴木委員は、これは専売とはいえ、大蔵省の職員に対して数々のめんどう見を今日までしていただいたわけでございますが、鈴木委員の眼のように税務署の職員の眼がみんな明るい眼をしておるような感じがいたしておりますので、提案の趣旨はしかと拳々服膺しなければならない課題であると認識をいたしております。
  66. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から再開することとし、休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時四分開会
  67. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、柄谷道一君が委員辞任され、その補欠として藤井恒男君が選任されました。     ─────────────
  68. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  69. 増岡康治

    増岡康治君 目下のわれわれ一番の関心は、景気問題と臨調答申をどう受けるかということが、われわれ大蔵委員会としても非常に関連があるように思っておるわけでございます。けさ通りました造幣特会もしかりでございまして、五十六年、七年と大きな歳入欠陥が出てまいりまして、結局そういうものを処理するということでございますけれども、この問題は見通しの問題でございまして、景気問題がどうも不透明で思うようにいかなかった。こういうようなことで、最近の景気の現状は非常に変動が激しく動いております。そういう意味で、財政当局としての景気の現状について整理してお答えいただければありがたいと思っておるわけでございます。  まず、先日の国民所得統計速報、いわゆるQEでございますけれども、ちょうど十月—十二月期の実質GNP成長率が〇・四%でございまして、第一・四半期、第二・四半期に比べまして、伸び率が鈍化しておるということが出ております。しかしながら反面、この十月から十二月の期間のGNPの内容を見ますと、政府在庫の減少などが計算上マイナス要因となっておる。また景気の実態に最も近いと考えられます民間の内需がむしろ堅調と言える数字も出ております。また一方、よく言われますように、失業率が一月では二・七二になった。こういうことで失業率が大幅に上昇しておる。消費の伸びも鈍化しておる。こういうことも出ております。いろいろとQEの内容を見ましてもいろんな見方があるように思えております。さまざまな見方の中で、政府、ことに財政当局といたしますれば、この現状をどういうように把握されて、認識されておるかということをひとつ御答弁願いたいと思っております。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 七—九から十—十二にかけての問題の中で、いま御指摘のとおりな状態が数字の上で出ております。実質成長率は〇・四。そこで、われわれが若干の安心をしておりますのは、〇・四になりました結果、五十七年度のGNPの実質見込み三・一%、五十七年度予算での下方修正、補正予算審議の際に下方修正した昨年暮れの、十二月二十五日でございましたか、その三・一%は、言ってみれば、仮に一—三月若干マイナス要因があったとしても、それを達成できるという見込みがついたということは結構なことだと思っております。しかし、この内訳を見てまいりますと、個人消費と住宅建設が堅調な伸びを示して、民間内需として見れば、これがGNPを一%押し上げる、さらに政府部門は、政府管理米の減少、公約在庫がGNPを〇・三%引き下げる要因となっておることもございまして、全体としてGNPを〇・七%引き下げる要因となっております。総じて見ますと、近年の高い伸びの結果、高水準にあります設備投資が伸び悩みの気配を見せていることなどから、国内需要の回復力は盛り上がりにはなお欠けておると見えますものの、GNPの姿としては政府部門の減少を国内民需部門の増加によって支えて、成長はこれを維持したという形になっております。  ただ、幾らか私もこの数字を見ながら気になっておりますのは、七—九の前回のQEのときに〇・六になっておったのが、今度は上方修正されて七—九が〇・九になって、そして十—十二が〇・四になって、その端境のところが一体どうなっておるものかということが、にわかに判断ができないところでございますけれども、ある意味においては公共事業の前倒し効果というのが出た、それの反作用で下期のその効果が減殺されておるというようなこともあるんじゃないか。もう一つ確かめなきゃなりませんが、幸いと申しましょうか、とにかく五十七年度の補正予算審議の際に下方修正してお示しした実質見込み三・一%は達成できる、こういうことが一つの好ましいことではないかと、こういう感じでございます。
  71. 増岡康治

    増岡康治君 いずれにいたしましても、下方修正されたというものの、この経済成長率の三・一は完全にいけるというお話でございまして、まことに結構なことだと思っておるわけでございます。  次に、御承知の、何度も議論に出ました、OPEC総会の原油の一五%に当たる五ドルの値下げというものは、一兆六千億ぐらいの所得移転と言われておりますが、現在におきまして、タイムラグがあるにいたしましても、この原油の値下げというものが物価やあるいは企業収益によい影響を与えるだろう、その結果、基本的には日本経済に対しても好ましいというのが一般のわれわれの常識といいますか、こういうことが考えられるわけでございますけれども、この点について三点ほどお答えをいただきたいと思っています。  その第一は、円レートがこのところむしろ円安になっているようでございますし、昨日も大臣はこの問題にお触れになりましたけれども、この円相場がどのように影響されるものであろうかという問類が第一点でございます。  それから景気全般にどういう影響をするのであろうか、これが二番目でございます。  三番目といたしまして、こういう原油値下げの結果、税収について見ました場合に増加するのか、税は名目の物価にかかりますものですから、あるいは逆に減るんではなかろうか、いろんな要素が考えられます。総じまして、どういうぐあいに財政当局はお考えであろうかということについてお答えをいただきたいと思います。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 第一番の為替相場でございますが、きのうの寄りつきが二百四十一円台になったとき、あらっと思いましたが、きょうはいまのところ二百三十九円四十銭でしたか、二百三十九円台で推移しておるということでございます。が、総じてこの十一月、まあ新内閣ができたからという意味じゃございませんが、それ以来円高基調というふうに改善されてきておりますので、それそのものは私はいいことだというふうに思っております。  ただ、基本的には、米国金利の下げ渋りというようなことから、ドルが堅調であるということは言えると思うわけです。よく言われる有事に強いドルという言葉もございますので、石油価格の下落の問題は、ある意味においてそれなりの動乱というふうに理解すれば、ドルが強いということもなるほどなあと、こういう感じがしないわけではございません。  しかしながら、この問題につきましては、何がどうすれば為替相場にいい影響が出るか、こういうことになると結局、各国それぞれのいわゆるファンダメンタルズというやつの集積が相場となってあらわれてくるのでございますので、なかなかむずかしい問題でありますが、ヨーロッパの通貨事情も一応落ちつきますので、私は堅調な推移を期待しておると、こういう感じでございます。  景気全般の問題につきましては、私は円高基調というものは当然のこととして、いわゆる物価、卸売物価、消費者物価をも含め、これに好影響をもたらすことでございますので、内需の拡大等からいたしまして、いい影響を与えるものであると思っております。  それから三番目の原油価格の引き下げの税収に関する問題でございますが、従価税でございます石油税なんというのは、確かに量は徐々に節約が浸透しておりますだけに減りますから、価格が下がれば税収も下がってくる、これは当然の帰結であろうと思っております。全体的な問題におきましては、いま在庫しております——まだ安い油は日本へ着いておるわけじゃございませんので、在庫とか船積み中とか、そういうものはすべて前の値段だということになりますと、当然市場価格というのはニーズによって左右されますので、会社そのものはある時期は大変に在庫の評価がえだけでも損をする、こういうことでございますから、トタで法人税の増収に結びつく要因には必ずしもなりません。したがって、いささか中長期にこの問題は見なければならぬ問題でございますけれども、石油に頼る日本の国でございますので、経済全体には総じて好影響を与えて、税収等も中長期に見れば悪い影響になるというふうには思えません。  ただ、非常に短期的に、直ちにメリットが生じてくるという状態にないということは、わが国の産業構造上やむを得ぬことかなというふうにも考えております。
  73. 増岡康治

    増岡康治君 全般的には好影響が多いだろう、ただ税収については中長期的な判断であるけれどもマイナスはないだろう、こういうようなことのようでございました。  したがって、私どもが、この石油の価格の低下というものをチャンスに、いい方向へこれを導いていくというのがこれからの経済運営ではないかと思っております。  わが国は世界経済の一割を占めるという、先進国の中でも非常に強い経済力を持っているだけに、日本の動きというものがうまくいけば世界の経済にも大きく寄与する、こういうようなことを考えるわけでございまして、いままでは第一次、第二次オイルショックは大変なマイナス面でございましたけれども、今度は逆の現象が生じた。第一次、第二次オイルショックを日本ほどきれいに乗り越えたところはないとわれわれは自信を持っておるわけでございますが、これからはその逆の問題が出てくるわけでございまして、これをうまくつかんで、これをきっかけにしてあらゆる対策をこれに付加していけば、またいろんないい面があるんではなかろうか、大変ないい時期だ、天恵という言葉がございましたけれども、そういうことを考えるわけでございます。  したがって、世界及びわが国の経済がこのような状況であります現在、石油価格の下落が持っております経済的効果を最大限に引き出しまして、世界及びわが国経済の景気回復と、世界経済の活性化に役立っていくということになろうかと思っております。  この際、第一に、この石油価格の低下によってもたらされる交易条件改善の効果が、広くわが国経済の各分野に及ぶよう配慮しなければいけないと思います。仮にタイムラグがあるにいたしましても、原油の輸入価格が低下したものの、製品価格がそれに対応して何も下がらないということになりますと、価格低下の効果は経済全般に波及し得ないということにもなります。  したがって、政府としては、これらの製品価格が据え置きになるとか、あるいは実質的に原油価格の低下の効果を波及するのを阻害するような政策措置は、とらないよう努力すべきであろうと思うわけでございますが、この点の御見解を伺いたいと思います。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは原油価格が下がりますと、一つ心配なことは、産油国に対する輸出が減ると思わなければならない。その辺はマイナス要因でありましょう。しかし総じては御趣旨のとおりでございます。  そこで問題は、わが国経済にとって企業収益の改善、それからそれが設備投資にもよい影響を与える、物価水準の安定に寄与して個人消費によい影響を与えるということになります。ここのところが幾らか政策選択になるでございましょうが、もちろん消費者に原油価格の低下したメリットを料金とかそういう問題で還元する方法、それから企業全体として見た場合、企業収益の改善によって増収につながって、それがいわゆる財政の立場を通して国民に還元される方法、それから企業収益に改善されたものを設備投資に振り向けることによって経済の活性化につなげていく方法、これがあると思います。だが、基本的に消費者に還元されるものに逆行する方策をとるべきではありませんし、その企業収益の改善によって寄与する設備投資とか、そういう問題については、まさに政策選択としても適切を期さなければならない重大なポイントであるというふうに理解しております。
  75. 増岡康治

    増岡康治君 その問題と、二番目には、先ほども大臣が触れられましたけれども、円相場の安定化の問題だと思います。欧州各国でもフラン等の問題をうまくマルクと処理されたようでございますけれども、そういう態勢の中で各国が協調態勢を一層強化いたしまして、この為替相場の安定へこの際、石油の価格の下がったということとあわせまして、この安定化の方向へいきますと、世界の経済がまことにいいんではなかろうかと思うわけでございます。  また第三には、先ほども申し上げましたように、石油価格が下がったこのチャンスに、補完的といいますか、これにあわせて景気対策を打ち出そうという政府の心構えの片りんを先般来の報道でわれわれ見受けるわけでございます。よく言われますように、中小企業も、千三百三十三ですか、二月に倒産があったとか、いろんな低迷感が漂っていることは事実でございますので、この際、こういうときに、いろんな考え得るものを同時に政府の方で適時実行していただければ、景気の回復に役立つのではなかろうかと思っておるわけでございます。  この中で一番私どもが期待しておりますのは、これは日銀の問題とはいえ、公定歩合の問題でございます。一昨年十二月に、五・五%に引き下げられて以来、一年以上にわたって据え置きをなされておるという問題がございまして、もうそろそろ〇・五%ぐらい引き下げるんではなかろうかと、新聞紙上等で見受けられる今日でございまして、大蔵の立場から言いましても、この為替相場の問題と絡みますけれども、公定歩合の引き下げを含む思い切った政策措置をとってほしい、これは与野党問わず、そういう問題ではなかろうかと思っておりますが、この点いかがでございましょうか。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに原油価格の下落という問題が、相対的にはわが国経済に、また先進国に対していい影響を与える。そこで景気対策ということがひとつ考えられるわけでございますが、いわば第一次石油ショックというものが強烈であればあっただけに、今度は引き上げが引き下げの方へ行った場合に、心理的にそれの影響を過大評価するようなことも、またいささか慎まなきゃいかぬ問題ではないか、こういう感じも持っております。  しかし、景気対策の中で金融対策の持つ意義はきわめて重要でございますので、総じて言えば、金融政策を適時、適切、弾力的にという言葉になるわけでございますが、日銀の専管事項でございますだけに、そういう言葉になるわけでございますけれども、そういう立場を離れまして、金融政策の運営そのものを一般論として申し上げるならば、景気や金融動向、内外金利差、それからいわゆる為替レートの状況等を見守って、適切かつ機動的に対処されるべきものであるというふうに、一般論として考えておると言うにとどめさしていただきます。
  77. 増岡康治

    増岡康治君 過大評価の問題、確かによくわかるわけでございますが、もう一つまたこの問題に関連しましていつも出てくるのが、景気対策として公共事業等の扱い方でございます。  幸いに昨年の暮れ、補正予算でゼロ国債というものを思い切ってやっていただいたのが、ちょうどいま端境期に、四月五月にこれが効果的に効く、非常にいいことをされた、私どもはこういう気がしておるわけでございますけれども、これは五十八年度の先食いじゃないか、こういうような話も出ておりますだけに、この公共事業というものに対する国民の期待感というものは、この数年来の伸び悩みからくる問題と、国民一般が私的消費財よりは公的な消費財を、だんだん二十一世紀に向かって期待をしておるという問題があるわけでございます。これはいろいろ議論はございましょう。財政当局は百兆円に近い国債残高に心をとらえられておるという現状でございまして、よく私は知っておりますけれども、やはりこれは国民的期待というものがございます。こういうものをあわせて考えていただけないものか、こういう問題があるわけでございます。  皆さん、大臣は特に専門家でございますけれども、建設産業の景気浮揚に対する波及効果というものは思ったより大きい。いまごろ余りないじゃないかという議論がございますけれども、心情的な意味まで加えて、沖縄から北海道まで日本国民が潤ってくる。こういう感じを私からも、これはお願いでございますけれども、申し上げておかなければいけないと思っておるわけでございます。  以上、まだ通産その他に対しても景気対策の問題、いろいろありますけれども、これで一応景気対策の問題については終わりますが、どうか財政当局におかれましても、一番最後のかなめを握っていらっしゃるだけに格段の御配慮を願いたい、これはお願いでございます。  それから臨調問題につきましては、長らく御議論を聞いておりました。いずれにいたしましても、財政再建から財政改革へと一つの踏み出しをなさっておられる。臨調答申というものは、これを行政改革てこにしようということで、われわれも理解しておりますし、しばしばの大臣の答弁からわかっておるわけでございますが、ここで私が申し上げたいのは、五十六年、五十七年、五十八年とずっときて、第一次答申からずっと今日まできておるわけでございますが、その都度大蔵当局は相当苦労して歳出カット等をやられたはずでございます。これが案外評価されてないかなという気が私はするんです。各項目において臨調とよくタイアップして、実は五十八年度予算についても、最終答申とよく整合性を持ちながら、処理したものと処理されないものとがよくわかるわけでございます。  ひとつ具体的に、五十八年度予算について、財政当局が臨調答申のこの辺はやったぞ、この辺はまだ残っているんだという例を挙げて、政府委員からで結構でございますけれども、おっしゃっていただきたいと思います。
  78. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 臨調からいただきました答申につきましては、いま委員お話しのように、五十七年、五十八年度予算におきまして、極力その実現を図るように努めてまいったわけでございます。  特に、五十八年度予算におきましては、具体的に申しますと、たとえば社会保障についてでございますけれども、医療費適正化対策の強力な推進、あるいは国民健康保険助成費や社会保険事務費の国庫負担の合理化等を行うことといたしております。また、文教につきましては、私学の経常費助成の総額の縮減等の措置を講じておるところでございます。このほかにつきましても、食糧管理費の節減合理化、国鉄経営の合理化等の一層の推進、さらに補助金等につきましても積極的な整理合理化を行い、また国家公務員の定数の縮減等につきましても、臨調答申をできるだけ取り入れてやっておるわけでございます。  これが一応取り入れた方でございますけれども、また五十八年度予算で実現を見なかったものもございますが、そういうものにつきましても、たとえば改善のための具体的手順を定めるということをやっております。たとえば育英奨学事業の外部資金の導入等についてでございます。それから、さらに具体的期限を目途に検討するための場を設けるということもやっております。これはたとえば児童扶養手当等の見直しなどでございます。  このように臨調の御意見につきましては、ほとんどの事項につきまして、何らかの形で具体的措置が講じられているということでございます。
  79. 増岡康治

    増岡康治君 最後に、大臣にお聞きしたいのでございますけれども、いよいよ財政再建というようなことを背景にして、いわゆる税制は構造改革をせにゃいけないのだと、こういうことがことしに入りまして特にお話があるわけでございまして、大臣の財政改革への御決意とあわせまして、六月になりますとシーリング問題が出てきますので、五十九年度予算のシーリングについての御所見を伺いまして、質問を終わります。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる財政改革に対する基本的な考え方というものは、両院の予算委員会に御審議をいただく手がかりとしてお出ししたわけでありますが、要は、五十八年度予算に対するいわゆる聖域なしという態度でこれに臨みまして、そして今後は歳出面におきましては、まさに糧道を断ってこれに対応をしろという臨調の基本的理念も踏まえながら、今度は現行の制度、施策の淵源にまでさかのぼって、これは個人または企業の責任に属する問題ではないか、あるいはこれは自治体の問題ではないか、あるいはこれこそまさに国自身の受け持つべき分野ではないかと、そういうような分野調整に至るまでの歳出構造に対する切り込み方が必要であるということを述べておるわけであります。  したがって、そういう基本的考え方に基づいて、さて五十九年度予算編成に際してのまずはシーリングの問題でございますが、このシーリングにつきましては、各省庁内部におきましてまずいろいろな御検討を願っていかなきゃならぬ問題であります。その段階でいろんな取捨選択を行っていただかなきゃならぬ問題であるわけでございますが、そういう意味からしても、いわゆるシーリングは、まだ言葉考えておりませんが、大変な厳しいものをお示しして対応していかなければならぬではなかろうかと、こういうような基本的な考え方を持っております。
  81. 増岡康治

    増岡康治君 ありがとうございました。
  82. 多田省吾

    多田省吾君 私は最初に、臨調最終答申、第五次答申が提出されましたことに対しまして、その対応につきまして大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  政府は十八日の閣議におきまして、臨調答申を最大限に尊重する旨、その対処方針、政府声明を発表いたしました。また中曽根総理は、今国会の後半を行革国会とも名づけてその決意を表明しておりますが、大蔵大臣としてこ臨調最終答申、第五次答申に対しましてどう受けとめておられるか、まず御所見をお伺いしたいと思います。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは最終答申をいただきました。この二年間、まさにこの間看板がおろされたわけでございますが、委員各位が熱心に、真摯に審議を重ねられた御努力に対して心から敬意を表しておるところでございます。  いわば最終答申でございますから、まさに締めくくりということで、行政組織、現業・特殊法人、補助金、予算、財投など幅広い内容となっております。行財政の役割りを見直して、そして簡易にして効率的な行政を実現することは現下の急務であって、今回の答申は貴重な提言であると、まず受けとめております。  今回の答申については、行政管理庁を中心といたしまして、これから所要の検討を行って具体的にその進め方を決めていくこととなりますが、大蔵省といたしましては、従来から臨調答申を尊重しながら、既存の行財政のあらゆる分野にわたって聖域なき見直し、これを行うことによりまして、合理化、効率化に努めてきたところでございますが、まさに総まとめとしての御答申をいただきましたので、このような姿勢行財政改革の推進に一層努めてまいる決意でございます。
  84. 多田省吾

    多田省吾君 政府は、この対処方針と声明におきまして、大綱立案の方針は示しておりますけれども、その時期については示しておりません。ただ、中曽根総理は、臨調委員、部会長との昼食会で策定まで二カ月以上かかるだろうと、非常に漠然とした話をされております。また各方面の意見を聴取しつつという表現も使っておりますが、もう各省庁ではすでに総論賛成、各論反対を表面化させております。これはもう関係者の抵抗の逃げ道を与えているものというようにも受け取れますが、本当に二カ月間で策定ができるのかどうか。  また、総合企画会議を総理府において総合企画機能の強化を図るとしておりますけれども、当初の総合企画庁構想が大変大幅に後退したわけでございます。こういう点ももっと強力な実行体制でいくべきだと思います。本来これは総理やあるいは行管長官に御質問すべき問題かとは存じますが、実力大臣である大蔵大臣にも一言お答えをいただきたいと思います。
  85. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 実力は別といたしまして、政府の一員でございますので、この三月十八日の閣議で答申を最大限に尊重し、逐次所要の改革を実施に移す、この旨決定したところでございます。  そこで、これから行管庁を中心に政府部内でいろいろ答申内容を精査して具体化の方策の検討、立案を行うわけでございます。  が、何分にも指摘は広範にわたっておりますので、この私自身も大蔵省関係の部内を一読するのがやっとというような実態でございます。したがって、これから大蔵省としても、政府部内の一員として、この取りまとめには積極的に取り組んでいかなきゃならぬというふうに考えております。だからじんぜん日を費やすということは許されないことだと思っております。  それから総合企画会議でございます。この総合企画機能の強化を担保して、内閣総理大臣が長期的総合的観点から政策運営の基本を決定するに資するために、この総合企画会議を設けるべきである旨の指摘でございました。私もきょうたまたま臨調関係者の方と朝食会を行いまして、まず、そういう総合企画会議、これを八条機関にするとか、あるいは総理の私的諮問機関にするとか、いろんな議論があると思いますが、それができることによって、後それがどういうふうに展開していくか。私は、まずつくることそのものに意義があるというふうにこれを理解して、きょうそういう議論をいたしてきたところでございます。  大蔵省は、いわば政策の総合調整機関、こういう形で今日までも位置づけをみずからもいたしておりましたので、諸計画の策定の場を通じて、今後一層総合的な政策執行のための協力をしなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  86. 多田省吾

    多田省吾君 若干内容に入りますが、十五兆円にも及ぶ補助金の削減につきましては、われわれはもっと第二臨調に強い削減の方向を望んだのでございますが、残念ながら中途半端に終わったような感じを受けます。  しかしながら、一応は補助金の総額抑制ということを訴えておりますけれども財政再建、財政改革ですか、そのお立場から、大蔵省としては、今後どのくらいの補助金の抑制幅というものを検討していかれるおつもりか、お伺いしたい。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいつも申しますように、補助金アバウト十五兆円として、法律に基づく補助金が約八割、それから地方自治体を通じて出るという意味におけるくくり方をしますと、これがまた八割、それから文教、社会保障、公共事業、この三つをとってみますと、これがまた全体の八割。そこで一つ一つについて精査して、目標値が何兆円でございますということを申し上げることはむずかしい問題であると思っております。  したがって、今度臨調答申で、たしか三十三項目でございましたか、具体的な指摘もしていただいております。それはおおむね財政制度審議会からいただいた報告と一致するものが多うございますので、公的部門の分野に属する施策のあり方と、そして国と地方の間の費用負担あり方、こういうものを見直すという見地から、整理合理化について具体的な検討をこれから進めてまいりたい。すなわち現行の制度、施策ができた根源にまでさかのぼってそれを精査していこうという考え方でございますので、いま幾らをどうする、こういうことを申し上げる段階には、残念ながら、まだございません。
  88. 多田省吾

    多田省吾君 いま国民の皆さんが一番心配していることは、第二臨調が第五次答申をもって解散したということで、もう行政改革は終わったという流れになることを心配しているわけです。  行革はこれから始まるわけでありますが、行革推進委員会の人選に当たっても、われわれは非常に後退しているんじゃないかという考えに立たざるを得ない。特に、増税なき財政再建を基本方針として進められてまいりました第二次臨調の意義から見ましても、私は大蔵省の責任は非常に重大だと思います。  しかるに、さきの衆議院大蔵委員会及び参議院の本会議におきまして、竹下大蔵大臣は、臨調答申解釈は必ずしも増税を否定したものではないんだと、こういう御答弁を行って、いわゆる独自解釈をされておりますけれども、その根拠をまずお伺いしておきます。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 最初のポスト臨調につきましては、まだ法律を提出して御審議をいただく段階に至っておりませんが、近日中にこのポスト臨調の法律案は成案を得て御審議を煩わす運びにしたい、このように考えております。  それから増税なき財政再建、こういう問題についての考え方でございます。私は、まず臨調答申全体の流れを見ますと、確かに歳出削減に非常に基本が置かれておると思っております。その際は安易に増税ということを念頭においてはいけない。とにかく糧道を断ってこれに向かって初めて実行ができる、こういう文章そのものが書かれてあるわけであります。したがって、まさに守備範囲を見直す、そして施策の根本にまでさかのぼる、こういう対応の仕方でいかなきゃならぬと思っております。  増税なき財政再建というものは、そのように位置づけをしたといたしますと、そこで全体の中で歳入の点に触れられておりますのは、およそ三カ所ぐらいあるわけです。「増税なき財政再建とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している」。  そうして一方、「税制については、税負担公平確保観点を踏まえ、申告納税制度の適正な運営のための基盤の強化、租税特別措置見直し等を推進するとともに、所得税制における課税最低限及び税率構造並びに直接税と間接税の比率等について検討する」、こう述べられておるわけでございますので、税制見直しというものの必要性というのはそれなりに指摘をされておるわけでございます。  そこで、その意味においては、税制を見直せば何らかの負担増というものもあり得るわけでございますから、いわば一切の負担増を否定しておるというふうには読めないではないかということを申し上げたわけであります。  そうして一方、この増税なき財政再建について税制調査会等でおっしゃっておりますのは、基本理念は全く一緒だ、ただ増税なきという言葉そのものが、自分個人あるいは一つ利益団体等が現行の税制の中で受けておるものをすべて変化がないという前提に立った場合、俗に言われる不公平税制とか租税特別措置とか、そういうことすら手がつけられないようになったらいけない、こういう表現はなすっておりますものの、基本的には臨調の御答申と税調のそれぞれの答申に大きな乖離はないというふうに私は考えております。
  90. 多田省吾

    多田省吾君 先般、永野日商会頭が、第二臨調最終答申増税なき財政再建の内容について大型間接税導入を明確に否定されていると会合で演説されたわけでございますが、これは国民全般のとらえ方でもあり、われわれの考え方でもあると思いますけれども大蔵大臣のこれについての御所感をお伺いいたします。
  91. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私も、要するに大型間接税ということになりますと、大型とはどこまでの範囲か、中型はどこまでか、小型はどこまでかということになりますと、これは基準等から言うと、なかなか問題の多い言葉でございます。  が、しかしながら、私ども一般的に考えますのは、かつて国会決議が昭和五十四年に行われたその際、いわゆる一般消費税(仮称)というような手法はとらないで、幅広く税制の問題は考えるべきだ、こういう御指摘をいただいておりますので、大型間接税の導入について具体的に検討しておることもなければ、また指示したこともございません。  ただ、幅広く消費等に着目した間接税をすべて否定するということになりますと、私は税制理論あるいは学問的にもそういうことは適当でないというふうに思っておるわけでございます。  したがって、やっぱり財政改革を図るために歳入歳出構造見直しを行うということがまずもって必要でございますので、受益者も、そして負担するものもまた国民でございますので、究極的には国民の合意と選択によるべきものであるというふうな理解の上に立っておりますが、少なくとも大型間接税というものを検討したことも今日ないということだけは明確にお答えしておくべきであろうと思っております。
  92. 多田省吾

    多田省吾君 臨調答申の中には、「財政再建の第一段階ともいうべき特例公債依存体質からの脱却という課題でさえ、その達成には今後格段の努力を要すると考えられる」と、このようにあります。本委員会でも大蔵大臣は、赤字国債依存体質の脱却の目標というものを五年から七年とおっしゃっておりましたが、この前十八日の参議院本会議では中曽根総理は、五年から十年の間をめどにしたいと、大分後退された考えを示しているわけでございますが、大蔵大臣と総理の考え方に大きな相違があるように思いますが、どうですか。
  93. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この五十八年度予算、今日御審議いただいておるさなかでございますが、それを御審議いただくに当たりまして、これは矢野書記長からのかねての御主張で、とにかく手がかり足がかりとなるものを作成すべきであるということで、いわゆる中期試算というものをお出ししたわけです。中期試算ということになりますと、三年、五年、七年ということを一つの目標年度に置きまして、赤字国債からの脱却の年度を仮にここに置いたならば財政はこのような姿になります、こういう仮定の数値を置いて御提出を申し上げたわけです。  そこで、私に聞かれますと、七、五、三だけを出しておりますものが、それを過ぎた年次に目標を設定するということは、これは適当でないと思いまして、それに出しております最高年次の七年、そしてその次の年次の五年というようなことを申し上げたわけであります。  ただ、中曽根総理の御答弁というのは、事ほどさように国際経済が流動的であるから、確たる指標というものを設けて、それがむしろ既定概念になって、その中へ日本経済自身が圧縮されていくという形よりも、もっともっと伸び伸びとしたガイドライン等を設けて、それに努力をしていくべきだという考え方からすれば、数年というのが一般的に五年から十年と、こう言われたんであって、私はお出しした中期試算に基づけば五—七というようなところが適当ではないかと申しましたので、そこに大きな乖離があるとは思っておりません。  私自身は、私の責任においてお出しした中期試算というものが前提にありますし、総理はもっとグローバルな物の考え方の上に立った御表現であって、それが大きく乖離しておるということでは必ずしもないと御理解をいただきたいと思います。
  94. 多田省吾

    多田省吾君 総理のグローバルな考え方、それから大蔵大臣の中期試算的な考え方が、食い違っているということは事実でございますから、私は大変問題だと思うわけです。  最後に、臨調答申は、「増税なき財政再建の基本方針を引き続き堅持し」とはっきり述べられておりますので、大蔵大臣がしばしばおっしゃっているように、大型間接税は考えていないけれども、中型、小型までとか、あるいは新たな税目を一切否定しているとは考えられないとか、増税なきというのは哲学であるというようなことにおし下げてしまって、どうも政府が最大限臨調答申は尊重するということを発表されているのとは、大分趣が違うように思いますので、最後には国民的合意とおっしゃいましたけれども、この国民的合意そのものも、増税なき財政再建をきわめて厳しく守っていくということにあるんじゃないかと、このように思いますので、その点を強く申し上げて、次に税収見通し、所得税減税、景気対策等について若干質問いたします。  昨日から税収見通しについてはしばしば同じような質問がございますので、私もなるべく簡明に質問をしたいと思います。  昭和五十六年度の税収は、決算段階で二兆八千七百九十億円の不足を生じ、実に補正後予算の九%にも上る莫大なものでございました。そして五十七年度は、五十六年度の税収欠陥の影響を受けまして、補正予算編成の段階で六兆一千四百六十億円という史上最大の減額修正を行ったわけです。ところが、昨日からの御答弁でも、大蔵省の三月期決算法人の聞き取り調査から得た結果から見ますと、全体の税収でさらに三千億円を超えるような不足という見通しであるようでございます。  で、このように税収の見積もりと実績が食い違いまして不足を生ずるようになったのは、昭和五十五年度からでございまして、昭和五十五年度にも決算で二千七百六十三億円の税収欠陥が生じております。五十七年度税収不足が生じますと、三年続きということになるわけでありますけれども、このような見積もりと実績において大きな差違、しかも傾向として同じ方向、不足する状態が続いているというのは一体どこに原因があるのか、簡明にお答え願いたいと思います。
  95. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) いま委員が御指摘になりましたように、五十五年度は決算では、補正後で減額が生じておるんでございますけれども、実は当初では決算は増額になっています。つまり途中で補正で増額いたしまして、それが少し決算段階で下回ったということでございます。五十六年、五十七年につきましては、ただいま御指摘のように大幅な補正減を計上したわけでございます。  特に、五十六年、五十七年について見ますると、税目で法人税、所得税がこの補正減額の八割を占めておるということでもわかりますように、基調としての実体経済の急激な変化ということが根本的な原因であろうと考えられるわけでございます。つまり、第二次オイルショック後の調整過程、世界同時不況という形であらわれましたのが、五十六年、五十七年の経済でございますので、基本的にはそういうことでございます。  ただ、私ども税収見積もりをいたします立場としては、そういう実体経済の動きに即応して的確な見積もりもしなければならないという責務を負っているわけでございますので、この両年度の実績と見積もりの乖離の事情をよく点検いたしまして、これを教訓として、特に法人税の見積もりの精度を上げる努力をしなければならないと考えておるわけでございます。基本的には実体経済の基調の変化ということではございますけれども、今後とも法人税を中心に的確な情報を収集して、適正な見積もりの精度を上げるように今後とも努力したいと考えております。
  96. 多田省吾

    多田省吾君 五十七年度の税収が三千億円を超えて不足を生ずるというようなお話でございますが、たとえば補正後四千億円とか五千億円という不足を生じたとすれば、歳出の不用額をもって充てましても、これをカバーすることはできないと思われるわけでございます。  その場合、仮定でございますが、その決算処理は、五十六年度に引き続いて、決算調整資金を通じて国債整理基金からの借り入れに依存すると、こういうような姿になるのですか。
  97. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五十七年度の税収見積もりでございますが、これは昨日でございますか、当委員会で大蔵大臣から答弁申し上げましたように、三月期の確定申告、それから法人税の三月決算の税収の規模が判明いたしませんので、現段階で計数的に幾ら不足するかとか、あるいは幾ら余剰が出るかということを申し上げる段階にはないわけでございますけれども、先般の日銀の短観等の基調を見ましても、なかなか楽観は許されない、予断を許されない状況にございます。  したがいまして、昨日も大蔵大臣が答弁されておりますように、たとえ不足額が生じるとしても、誤差一%の範囲内にとどまることを私ども事務当局も切に期待しておるわけでございます。ということでございますので、現段階で、五十七年度歳入不足額が幾ら出るからどういう決算処理をするかということについての具体的なお答えをする段階ではないということでございます。いずれにいたしましても、決算は法令に基づいて的確に対処するということでございます。
  98. 多田省吾

    多田省吾君 五十七年度の税収不足はもう避けられないような姿でございますが、そうしますと、五十七年度税収見込みを計算基礎としております五十八年度の税収も、また予算を下回ることになるのではないかと思われます。ところが、一方、原油値下がりの影響による企業収益の増加で生ずる税収増というものも私は考えられると思いますが、その差し引きで五十八年度自然増収が期待できるのかどうか、その辺お伺いしたい。
  99. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五十七年度の税収、これは決算ベースでございますが、見積もりよりも仮に低下いたしました場合、当然のこととしてそれが土台になりますから、五十八年度の税収に影響を及ぼすということは、御指摘のとおりでございますが、先ほど来申し上げておりますように、五十七年度の税収が現段階で計数的に確実に下回るとかいうことを申し上げる段階でございませんで、感触としてそういうことを私ども申し上げておるわけでございます。この点をまずお含み願いたいと思うわけでございます。  五十八年度の税収につきましては、そういうことでございますので、現在御審議を願っております三十二兆三千百五十億円の税収見積もり、トータルの税収見積もりにつきまして、現段階で私どもこれを修正すべき材料を持っていないわけでございます。  なお、五十八年度の税収の足取りが一体どうなるかということは、先ほど来この委員会でも御議論になっておりますように、今後原油の動向、それから世界経済の動向等で、当然実体経済がどういう展開をしてまいるかということに左右されるわけでございまして、恐らく五十七年度の決算が確定いたしますこの七月以降の段階で、五十八年度の税収が一体どうなるかということが、さらに具体的な展望が開けてくるかと思いますけれども、現時点で、ただいま予算で提案申し上げております見積もり額が下回るとか、あるいはこれより自然増収が生じるとか、あるいは生じないとかいう議論をするのは、ちょっとまだ早いのではないかということでございます。
  100. 多田省吾

    多田省吾君 最近問題になっております昭和五十八年度所得税減税につきまして、一部では、大蔵省の方針として、昭和五十九年の一月から実施するというような報道もなされているわけでございますが、一月—三月分だけに所得税減税をとどめるとしますと、政府の言う景気浮揚に役立つ相当規模の大幅減税ということには絶対なり得ない、このように思います。そういう意味で、われわれは一兆円以上の所得税減税を要求しておりますけれども、この五十八年度減税をなす場合にも、五十八年度中に実施すればいい、五十九年の一月から三月までの実施期間でもいいというような消極的な姿では、国民の強く望む所得税減税にはなり得ないし、景気浮揚に役立つような相当規模の減税にもなり得ないと思いますが、この点は大蔵大臣としてどのようにお考えになっておりますか。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 所得税減税は五十九年一月一日実施という報道があったということでございますが、大蔵省としてそのようなことを決めた事実は全くございません。  所得税減税の問題につきましては、国会の場でも繰り返し御答弁申し上げておりますように、与野党の合意、これを尊重して、そして与野党の合意の中には景気に役立つ財源を求めてこれを行え、こう言われております。したがって、財政改革の基本的な考え方を踏まえながら、真剣にこれから検討を進めていかなきゃならぬ。  ただ、先ほど来も御議論いただきましたように、税収動向についての見きわめというものはまだ困難でございます。したがって、それをまず固めまして、そして国会の御議論等を正確に税制調査会にもお伝えして、税制調査会において御検討をいただいて、そこで時期等が明示できる段階になっていく。こういうことでございますので、またもう一つ予算審議中の段階なので、そういう時期等を明示する段階ではない。与野党の合意を踏まえて真剣に検討すべき課題であるという課題認識だけは十分に持っておるつもりであります。     ─────────────
  102. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま、宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。     ─────────────
  103. 多田省吾

    多田省吾君 五十八年度予算の基礎となる経済見通しについてお伺いしますけれども予算編成時の原油価格及び対米為替レートは幾らだということで税収見積もり等を行ったのですか。
  104. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 端的に申しますと、石油税の税収見積もりには、御承知のとおり、石油の供給量、原油価格、為替レート等が当然前提になるわけでございます。その場合の為替レートは、政府の経済見通しで前提とされておる当時の実勢レートを仮置きして計算をいたしております。それから原油価格並びに供給量につきましては、通商産業省の原油の需給見通し等を参考にしまして税収見積もりをいたしております。
  105. 多田省吾

    多田省吾君 それでは具体的に、原油はそのとき何ドル、為替レートは二百五十何円と、はっきりお答えいただきたい。
  106. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 税収をはじきました前提となります原油価格は、バレル三十五ドルでございます。円レートは二百五十五円。
  107. 多田省吾

    多田省吾君 三十五ドルとしますと、あれですか、六ドル値下がりということが考えられますが、その実質経済成長率の押し上げ効果につきまして、通産省は〇・二%、それから経済企画庁は〇・三五%と見ておりますけれども大蔵省はどの程度の効果があると見ておられるのか。
  108. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 原油価格の値下がりによる経済成長率がどの程度になるかということでございますが、先ほども大臣がお答え申しましたとおり、石油価格の低下によりまして、たとえば輸出が減少する部分もございます。中近東諸国に対する輸出が減少する部分とか、そういうことがございますけれども、全体として眺めましたときには、確かに中近東諸国等に対しまする所得移転が下がるわけでございますから、経済成長率を押し上げるということには間違いないというふうに考えております。  その経路といたしましては、たとえば原料コストの低下を通じまして企業収益の改善に寄与する、それが設備投資によい影響を与えるということが第一点でございます。それから物価がますます安定いたしますでしょうから、個人消費等にもよい影響を与えるということもございます。  総じて見れば、押し上げることは間違いないということでございますけれども、これによりまして世界経済も変動いたします。世界経済も、恐らくインフレが抑えられるということで、金利低下等で全体の世界経済、内外経済も変わってまいると思いますけれども、    〔委員長退席理事増岡康治君着席〕 それが実際に具体的にどういうふうに物価に影響を及ぼしていくか、それからたとえば先ほど設備投資というようなことを申し上げましたけれども、企業それぞれによって対応が違ってくる、収益が上がると思えば設備投資もいたしますでしょうし、上がらないと思えば設備投資もしないとか、いろいろの具体的な度合い、やり方、あるいは波及の度合い等、不確定な要素がございますので、どの程度数字として成長率を引き上げるかについて、計量的に正確には把握することはできないというふうに考えております。  先生御指摘のとおり、たとえば経済企画庁などはモデルを動かしますると、その場合には、その世界経済モデルを動かしたときには、実質GNPへの影響は、たとえば一年目に〇・三五%増加する、二年目は〇・九三%増加するということを、モデル上では出ておりますけれども、実体経済といたしましてどのように出ますかは、計量的に把握しないと計量的に正確には把握できないというふうに私ども考えております。
  109. 多田省吾

    多田省吾君 いまお答えになりましたが、通産省では最初の年は〇・二%程度だろうなんて言っておりますけれども、通産省の考え方と、経済企画庁がモデルから計算した〇・三五%という考え方大蔵省はどっちが適当だと考えておりますか。
  110. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) それは通産省のモデルのつくり方あるいは仮定の置き方等、それぞれの要因があろうかと思います。私ども正確には比べたことはございませんけれども、先ほど申し上げましたように、実体経済の動き方にかなり影響されるところがございますので、経企庁のモデルと通産省のモデルのどちらが正しいかということを大蔵省として申し上げることは、そういうことでございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  111. 多田省吾

    多田省吾君 原油の値下げとか、あるいは対米為替レートの円高基調とか、アメリカ経済の回復とか、わが国経済への中期的なメリットとなる要因はありますけれども、当面の景気対策というものは相当真剣な態度で検討すべきだと思います。  特に、一月の失業率は二・七二%、百六十二万人の完全失業者と最悪の事態になっておりますし、また労働省の労働経済動向調査(二月一日)によりますと、労働時間の短縮や採用手控えなどの雇用調整を予定している事業所は、製造業では三〇%を超える、卸・小売業でも二〇%前後となっております。これはそのほかいろいろな要素がありますけれども、    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕 とにかく大変な状態でございます。特に公共事業は四年連続して伸び率ゼロ、今年度のような前期前倒し程度を仮に予算成立後行ったとしても、景気浮揚への効果は余り期待できない。  そういうわけで、公定歩合の引き下げというものが考えられるわけでございますけれども、これも円相場の推移を見てというような御答弁があったわけでございます。しかし西ドイツなんかは、米国金利の動向にもかかわらず、国内の景気対策を最優先に考えまして公定歩合の引き下げを断行したわけです。日銀は公定歩合引き下げについて、これが円安誘導であるというような海外からの批判を恐れて公定歩合引き下げに慎重過ぎる態度をとっているようでございますが、内需拡大策としての金利の引き下げこそが、先進諸国のわが国への強い要求でもあるのではないかと思われますけれども大蔵大臣はこの点どのように考えておられますか。
  112. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 意見を交えた御質問でございますが、私は、一つ幸いな情勢としますと、五十七年度の三・一%の実質成長率は確保できる、こういうことが一つあります。  そこで、失業率の問題でございますが、これは私も一遍申し上げてみたかったことは、確かに急激な伸びでございます。聞いてみると、いままでのサンプルを三万から四万にしたと、こういうことがございます。それで地域別ないろんな要素があるいは出てきたんじゃないか、こういう意見もございます。  ただ、私どもは、この高水準が——要するにいまの日本の失業率というのは、働きたい希望者、手を挙げた人を全部希望者として、そして手を挙げながらいま働いていない人を失業者と、こういう見方をするわけでございますが、その手を挙げる就業者数そのものも高い伸びを示しております。したがって、雇用情勢が急速に悪化したというふうには必ずしも見られないと思うんであります。世界の中ではずば抜けて低い失業率でございますけれども、だからいいというもんじゃなく、われわれもこれに対してもっと分析を正確にしていかなきゃならぬ問題であるというふうに思っておるところでございます。  それからいたしまして、景気問題についてのかねて御主張なすっております公共事業、特にかねて御主張なすっておりますのは、用地費率の少ないところにやれということを党の基本的施策として御主張になっています。これは私も考えてみて、たとえば二十兆あるとして一%、仮に用地費率の少ない総合的な傾向が出たとすれば、これは二千億ですから相当なもんだ。そういうようなことで、今後の執行に当たってはかねての御主張をわれわれも考えてきておりますが、なお一層加えなきゃならぬ課題じゃないかな、こういうことを、率直に言って、思っておるところでございます。これはいずれにしても五十八年度予算の通過後検討に入ることでございますが、そのような感じを持っているということを申し上げてみたいと思っております。  それからもう一つ、西ドイツの公定歩合の問題でございますが、私も率直に申しまして、ヨーロッパのいわゆるEMS、ヨーロッパの中の通貨問題のフランスフランとドイツマルクとの間の切り上げ切り下げ、この議論が、ある意味において、米国の金利とは別の意味において、公定歩合の引き下げということを誘導した一つの背景じゃないかなという見方もあるわけでございます。しかしながら、総体的に景気対策といえば、金融政策の弾力的な運用ということが大きな柱であることは事実でございますので、これは日銀の所管事項ではございますが、景気、金融動向、内外金利関係、いわゆる為替レートの状況等を見ながら適切な機動的な対処をされるものではないかというふうに期待しておるというという答弁にとどめさしていただきます。
  113. 多田省吾

    多田省吾君 失業率は、就業人口の増大ということもありましょうけれども、アメリカなんかでも日本の何倍かの就業人口の増加がありながら、甘んじて一〇・八%あるいは一〇・二%の失業率に対して挑戦するという姿をとっているわけでございますので、いろいろな計算上の問題も若干あろうと思われますが、やはり大変な不景気だ、また失業率の増加だということは、政府としても強く受けとめていただきたいと思うわけでございます。  最後になりますが、大蔵省の所管でもございましょうから、筑波研究学園都市移転跡地の利用状況についてお伺いしたいと思います。  この対象になっている主要跡地につきましては二十九カ所ありますが、これらの跡地利用の今日までの経過について簡明に御報告願いたいと思います。
  114. 勝川欣哉

    政府委員(勝川欣哉君) 筑波移転跡地の利用につきましては、これまで国有財産中央審議会におきまして主要跡地二十九カ所のうち二十八カ所につきまして、公園、小、中、高等学校、周辺都市整備用地、国の機関等の施設用地に充てる旨の答申がなされております。この中央審議会の答申を得た二十八カ所の跡地のうち、すでに四カ所については完全に売り払い等の処分を終了しており、残り二十四カ所のうち十二カ所については、その緊急度に応じて逐次処分を行ってきております。処分が行われておりません跡地十二カ所のうち、国が利用を予定しております一カ所を除いた残り十一カ所につきましては、地元等から具体的な申請があればいつでも処分できる態勢にあります。
  115. 多田省吾

    多田省吾君 これは二十八カ所中四カ所が完全に処理を終わっていると。払い下げが完了しない要因というものはいろいろありましょうけれども、それぞれ面積が広いことと関東近辺の地価の高いことが、大きな原因ではないかと私ども考えております。跡地の払い下げに対する優遇措置はなされておりますか。
  116. 勝川欣哉

    政府委員(勝川欣哉君) 筑波移転事業につきましては、多額の移転経費を要しておりますので、移転に要しまして、その跡地の処分代金を移転経費の一部に充てている、このことを前提として実施されておりますので、国有財産中央審議会の御答申をいただきまして、移転経費を要した一般国有地の処分条件、すなわち原則として処分する面積の二分の一を時価売り払いとし、残り二分の一の面積につきまして、法律に定められました、たとえば公園では無償貸し付け、学校では五割減額売り払い等の優遇措置を適用して運営しておる次第でございます。
  117. 多田省吾

    多田省吾君 建設省にお伺いしますが、国有財産中央審議会では、その跡地利用の基本方針の中で、「跡地は筑波移転の趣旨にかんがみ、過密解消のため、都市の防災性の向上や生活環境の改善のために活用することを基本とする。従って、空地を確保するために公園、緑地、避難広場等への転用を主眼としつつ」云々と跡地転用を推進する旨述べておりますけれども、これらの転用状況について簡明に御報告いただきたいと思います。
  118. 勝浦康之

    説明員(勝浦康之君) お答えいたします。  筑波移転跡地の計画につきましては、現在、先ほど御説明ありましたように、跡地二十八カ所の利用計画の大綱が国有財産中央審議会において答申されております。建設省としましても、その中で特に公園等につきまして、その二十八カ所のうち十八カ所で公園の建設を決められているわけでございますが、これらのうち現在七カ所につきましては、すでに公園事業に着手しておるところでございます。また、五十八年度につきましては、さらに四カ所について事業を着手する予定にしておりまして、現在、各事業主体がその推進に努力しておるところでございます。
  119. 多田省吾

    多田省吾君 特に、この中で一番大きな面積を占めているのが千葉県千葉市の畜産試験場跡地だと思いますが、五十五万九千平米もありますけれども、ここにおける現在の払い下げ状況と最終払い下げ計画はどうなっておりますか。
  120. 勝川欣哉

    政府委員(勝川欣哉君) 御指摘の千葉市青葉町の元畜産試験場跡地につきましては、昭和五十五年五月十九日の国有財産中央審議会におきまして、公園、小学校校庭拡張用地、周辺都市整備事業用地等として利用する旨の基本的な利用計画に関する答申が出されております。これに基づきまして、五十七年五月二十六日の国有財産関東地方審議会の審議を経まして、まず千葉市に対しまして〇・二ヘクタールを小学校拡張用地として、それから住宅・都市整備公団に対しまして九・八ヘクタールを周辺都市整備事業用地として処分しております。また公園用地五十・三ヘクタールにつきましては、すでに千葉県に対しまして九・二ヘクタールを処分しまして、明年度には八・五ヘクタールを処分する予定でありまして、残り三十二・六ヘクタールにつきましては、逐次計画的に処分する予定でありまして、未処分の土地につきましては、五十八年四月から暫定的に管理委託という形式で地元に御利用をいただくように考えております。
  121. 多田省吾

    多田省吾君 これだけ広大な土地ですから、最終までにはいろいろ大変なこともあると思いますが、千葉県とか地元住民の方々も何とか早く完成したいということでがんばっているものと思います。  先ほど報告もありましたように、現在、総合公園用地を四段階に分けて払い下げ計画を進めておられるようでございます。ところが、何といっても単価がかなり高いことでもあり、五十七年度はもう完了しておりまして、五十八年度はいま八・五ヘクタールを考えていると言っておりますけれども、これが削られないかというような心配もしておられるようでございます。あとの二回については、まだはっきりしためどが立っていないようでございます。  こういう財政状況ですので、いつ国の補助が外されるかという心配もあるわけでございますが、こういうことは絶対ないと確約できるかどうか。これを確約していただきたいと思います。  また、いきさつを見ますと、この土地は大正五年七月に、政府が財政上の都合で敷地を買収することができないでいたところに、千葉県も財政が逼迫してはいましたけれども、畜産試験場を誘致すれば、将来地域にも還元されるだろうということで、県がみずから地主に当時の金で十万一千八百円で買い求めて国に無償で譲渡したといういきさつもあります。したがって、国は本来ならば県に無償で払い下げるべきところでありますけれども、筑波学園移転に伴う経費について確保しなければならないというのが至上命令であるところから、県も了解したと聞いております。  したがって、このような経緯から見ましても、補助事業の採択等におきましては、誠意ある態度で私は臨んでいただきたいし、千葉市もいま現在七十六万を突破いたしまして、大変な大都会になっているわけでございますから、こういった総合公園の必要性というものは、住民の立場から言っても非常に大事なことだと思います。そういう意味で、先ほど申しましたように、国庫補助を、三分の一補助でありますけれども、これを将来にわたって保証すべきである。また、そのほか、県のいろいろな公園建設について大蔵省も十分な援助をすべきであると、このように考えますが、最後にその点をお聞きしたい。
  122. 勝浦康之

    説明員(勝浦康之君) 私ども現在筑波移転跡地の利用計画につきましては、先ほど申し上げましたように、国有財産中央審議会において答申されました利用計画の大綱に沿いまして整備を進められることにしております。この中で公園化されることとなりました区域につきましては、現在事業主体となる地方公共団体と事業の調整を図りつつ、私どもとしても、その事業化について今後とも積極的に努力していきたいというふうに考えておるところでございます。
  123. 多田省吾

    多田省吾君 最後に私は、国債の消化問題について二、三質問しておきたいと思います。  国債の流通価格は、国債整理基金の買いオペ発動等もありまして、比較的落ちついておりますけれども、国債の引受シンジケート団の大宗である銀行、特に都銀、地銀においては、預金増加の伸びが鈍化しておりますために、国債引き受けの重圧はきわめて厳しい状況にございます。その結果、銀行としては、資金繰りの悪化を避けるため、債券の売却が非常に激増しております。換金売りの状況がございますが、そうした中で、四月一日から国債の銀行窓販が行われることになるのでありますけれども、一般投資家が購入した国債が購入した直後に損が出るような状況をもたらすおそれはないのかどうか、その辺まずお伺いしておきたい。
  124. 水野繁

    政府委員(水野繁君) お答え申し上げます。  国債等の窓口販売、いわゆる窓口販売でございますけれども、これは国債は先生がおっしゃるとおり価格変動商品でございます。銀行がこれから扱いまして途中で換金を行う場合には、あるいは価格が高い場合も、それから低い場合も両方ございます。四月からこれを取り扱うことになりますので、投資者にそういうものであることを十分説明して勧誘するよう銀行に求めているところでございます。
  125. 多田省吾

    多田省吾君 国債の市中消化を円滑に進めるための方策として、証券取引審議会基本問題委員会は五十二年に公募入札制度を提唱し、日本経済調査協議会では五十三年に、国債の発行条件の自由化のために、シ団引受方式を廃止して公募入札方式への全面的移行をすべきであると、このような提言を行っているわけでございます。しかしながら、私はシ団引受方式というものは現実問題としては維持していかなければならない、このように考えておりますが、大蔵大臣見解はいかがでございますか。
  126. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御案内のとおり、いま御指摘のとおり、五十三年度に中期利付国債の公募入札方式による発行を開始いたしまして、その後これは逐次発行額は増大しております。しかしながら、十年利付国債につきましては、わが国の金融構造あるいは公社債市場の現状から見ますと、長期資金を潤沢に保有する投資家層がまだ十分発達していないということ、それから長期であるために応札条件についての見通しを得ることがなかなか容易でないこと等、この公募入札が円滑に行われるための環境が未熟である、いまだ熟していないというふうにでも申しましょうか、したがって資金需要の状況、金融の長期的見通し等を勘案しながら、発行条件や毎月の発行額などをシ団と協議して設定する現在のシ団引受方式、これがやっぱり適当である。これは委員意見とほぼ一致しております。
  127. 多田省吾

    多田省吾君 いま都銀のように資金量のシェアが低下しておりまして、反面、信託とか相銀とか信金、生保のように逆の業態もあるわけでございまして、現在の引受シェアの妥当性というものが欠けている面が目につくわけでございます。市中消化を円滑に進める上でその是正が必要だと思いますけれども、これはどう考えておりますか。
  128. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 四十年にいまの引受シ団の方式が決まりまして、その後、御承知のように、四十四年、四十七年、それから五十一年と変わってまいっておりますが、その後五十一年度以降引受シェアは変わっていないわけでございます。したがって御指摘のような現象が出てきております。  この問題は、関係者の中でもいろんな議論があるわけでございまして、私どもも、当然のことながら、円滑安定消化という観点から関心を持っておるわけでございますが、四月から長期国債の窓販の実施も始まるわけでございますし、そこいらの情勢を見ながら関係者との間で意見交換はしつつございますが、もうしばし情勢を見たいというような段階でございます。
  129. 多田省吾

    多田省吾君 最後に、大臣のお答えもございましたけれども、将来はなるべくこの公募入札の方向でいかなければならないと思いますし、その点から考えますと、その条件を整えていかなければならない。このたびの信用金庫の国債窓口販売につきましては、信用金庫法では既発債売買が除外されているということで、公募入札方式ではなくて、シンジケート団方式にするということで、信用金庫での窓口販売をやるというふうに大蔵省で発表されたようでございますが、将来は条件を整えて公募入札方式にだんだんいかなければならないのでございますから、信金の方もこれは改正していかなければならない、こういう方向に進むべきではございませんか。その点はどう考えておりますか。
  130. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 先生おっしゃるとおりでございます。
  131. 穐山篤

    ○穐山篤君 最初、二月の十日当委員会で大蔵委員長から問題の提起をした酒類の免許販売、あるいは不当廉売といいますか、その問題についてこの際けじめをつけておきたいと思うわけです。  それは大蔵委員会が、国政調査権をもちまして、静岡、愛知県方面を視察したわけですが、その際に、いわゆる東駒という酒屋さんが出張販売をやっている、あるいは値段の面でも不当廉売をしている、こういう実情が把握をされたわけです。現地の業者並びに財政当局としましても、非常に取り扱いに苦慮しているということが明らかになりましたので、当委員会としては、大蔵委員長の方から問題の解決についての要望を申し上げてあったわけです。その際、大蔵省からは、酒税法あるいは酒団法その他に基づいて行われております問題は、よくない、そういう意味で善処するというふうに確約をいただいておりました。  ところが、実は、その後現地におきまして、中身は省略しますが、非常にトラブルが起きております。また、それも日を追うに従いましてエスカレートしておりまして、大蔵委員長個人のことはあったにいたしましても、当大蔵委員会としましては、国政調査権というもののあり方にも触れる問題であります。  そこで、まず酒類の無免許販売、それから当東駒は巨額の酒税を滞納している会社でありますが、これらについてどういうふうに措置をされるのか、いままでどういう措置をしてきてどういう反応があったのか。その反応がいい方に向いているならば、これはある意味では時間が解決すると思っているわけですが、日を追うに従って不祥事がエスカレートしているということにつきましては、まことに遺憾のきわみであります。なぜ改善についての要望が十分徹底していないのか。まずその点について大蔵省の方の考え方をお伺いをしておきたいと思うのであります。
  132. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) 酒類販売業免許制度は、国税収入の重要な地位を占める酒税を安定的に確保するためにとられておるものでございまして、また国民の保健衛生、未成年者の飲酒防止、交通事故防止対策、さらには社会秩序の維持等にも貢献をしている制度でございます。したがいまして、酒類の無免許販売につきましては厳正に取り締まる所存でございます。また酒税の滞納につきましても厳正な態度で臨んでおりまして、今後ともこの方針に変わりはございません。
  133. 穐山篤

    ○穐山篤君 前回もそういう態度表明であったわけです。前回委員長は、現にそういう事態が発生しているので、速やかに対応してほしいということもつけ加えているわけですね。したがって、毅然たる態度というのは結構なことなんですが、具体的にどういうふうに業者に対して措置をされているのか、あるいは国税当局としてどういうふうに滞納の問題について対応しているのか、そのことを私はお伺いしているわけです。
  134. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) 先般の御質問以来、この会社に対しましては、無免許販売を勧誘しているような方式は厳に戒めるべきだということで警告を発しておるわけでございます。  また、種々の角度から調査をいたしておるわけでございまして、現在、目下そういう状況でいろんな状況証拠を把握中でございます。
  135. 穐山篤

    ○穐山篤君 歯切れがちょっと悪いですね。  それで、きょうはこれが本命というわけではありませんけれども、相当の資料が現場で配られておる。これは前二月の十日の委員会でもお示しをしているわけです。この対応が十分でないために、あういう手法があるならばおれもやってみよう、そういうことになるのは必然であります。  われわれとすれば、少なくともそういうことがあってはならない。酒税法、酒団法というものをこの際堅持するという立場であるだけに、もっと厳しい対応をしてもらわなきゃ困ると思うんです。いつまでに少なくとも行政指導監督官庁として節目をつける、こういう目標がないと、これまた当委員会としては、言いっぱなしで問題を後に残してしまうというおそれなしとしないんです。その意味でもう少し明確にお答えをいただきたいと思う。
  136. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) 実は、具体的な事件の話でございますのでちょっとお答えにくい点もございますが、鋭意この問題に取り組んでおりまして、近いうちに何らかの結論と申しますか、行動と申しますか、そういうことを行いたいというふうに思っております。
  137. 穐山篤

    ○穐山篤君 それで、お調べになったと思いますけれども、通常、米はトン当たり三十万円である、古々米のくずで出す場合にはトン当たり三万円、十分の一の価格であると。一説によりますと、くず米で酒をつくっている、だから値段が安いんです、しかし十分に工夫して品質は悪くございません、というふうなことも宣伝しているわけでありますが、その製造の工程についてお調べになったことはありますか。いかがです。
  138. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) ございます。
  139. 穐山篤

    ○穐山篤君 その結果はどういうふうな工程で醸造されておったんですか。
  140. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) いわゆる米粉糖化液というものがかなり使用されているというような事情はございます。
  141. 穐山篤

    ○穐山篤君 これは酒税法といいますか、酒類製造の規定に定められている範囲内の工程におさまっているんですか。その点いかがです。
  142. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) これは酒税法ではございませんで、実は私ども、通達によりまして、白米の使用数量の一〇%から一五%程度に米粉糖化液を抑えるというような指導をいたしておりますが、そういうような指導で行っておるわけでございます。
  143. 穐山篤

    ○穐山篤君 またその点細かくは別に議論をしたいと思いますが、どうも適切な答弁ではない、実情を十分に掌握しているお答えではないと私は見るわけですが、そのことはまた別に議論をします。  しかし、当初お話のありましたように、当委員会が調査権を持ちまして提起した問題でありますので、姿勢を変えることなくして近々のうちに問題の解決に当たってもらうと、そのことは確認をしておきたいというふうに思うんです。  それからもう一つは、前回も配られたわけでありますが、「十本買えば八本オマケ」というふうなチラシ、それを材料にしてかなり手広く商売をやっているわけですが、この不当廉売というものを野放しにしておきますと、酒税の確保あるいは業界の秩序という意味から言いましても、非常に問題があると思うんです。  そこで、まず国税庁側に、この不当廉売、安売りという問題についての見解並びに対応について先にお伺いをしておきます。
  144. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) 酒類の販売価格は、御高承のように、現在自由価格となっておりまして、製造及び流通の各段階ごとに各企業が自由に決定できることとなっております。しかしながら、販売価格が原価割れである場合には独占禁止法上の不当廉売という問題もございます。当庁といたしましては、酒税の保全及び不健全経営の防止という観点から調査及び指導を行っているところでございます。
  145. 穐山篤

    ○穐山篤君 そこで、公正取引委員会にお伺いしますが、当然これは不当景品類及び不当表示防止法に抵触するものであるというふうに考えますが、これについてどういうふうな見解をお持ちであるのか、あるいは排除についてどういう態度を表明されるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  146. 高場俊光

    説明員(高場俊光君) いまお話がありましたように、おまけという形で安売りをしているわけでございますが、「十本買えば八本オマケ」というような言い方は、まさに景品であると認識される言い方でございますので、景品表示法の規制を受けるわけでございます。  本件の場合にはその制限を超えておりますので、改善させなければいけないと考えております。昨年来から指導しているところでございまして、しばらくは見られなかったわけでございますが、最近になって再びこのような表示が見受けられますので、そのような状況に至った経緯など鋭意調査中でございます。
  147. 穐山篤

    ○穐山篤君 大蔵大臣、いまやりとりをしたような実情であります。この酒類の免許販売というふうなものにつきましても、臨調でわざわざ答申をしているわけですね。  そこで、事務当局から細かいことは十分お伺いをしてもらうとして、われわれが問題にしているものは何であるかということは十分につかんでいただいたと思うんです。そこで大蔵大臣の善処方をこの際厳しく要望しておきたいと思うんです。
  148. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も最初ここでごあいさつをしましたときに、いわゆるハウスの持つ国政調査権の範囲において調査された問題提起でございますので、その趣旨を十分踏まえて対応すべきものであるというふうに認識をいたしております。
  149. 穐山篤

    ○穐山篤君 酒の問題は以上で終わります。  その次に政策金融の問題についてお伺いをしますが、きょうは三人の参考人の方においでをいただいております。輸出入銀行、それから開発銀行、国民金融公庫。委嘱審査ですから全部の公庫の皆さんにと思いましたけれども、共通している問題がありますので、三名にお願いをしたいと思うのであります。  この政策金融についての資料は、五十八年度分が一つ提示をされております。それからあとは五十六年度の決算の状況から問題を掌握する以外に方法がないわけでありますが、逐次お伺いをしていきますのでお願いをしたいと思います。  輸出入銀行につきましては、五十六年度の貸し付けあるいは回収額、貸付残高、いずれもごく常識的な線にとどまっているというふうな感じをしております。ただ、御案内のように、銀行の性格から考えてみまして、国内経済、国際的な背景というものを十分に考慮しなければならぬと思うんですが、特にこの五十七年、八年、今年度ですね、どういう点に注目して事業経営をなされようとしているのか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  150. 大倉真隆

    参考人(大倉真隆君) 私どもかねてから、日本輸出入銀行の業務につきまして、三本柱ということを申しておりまして、一つはプラント輸出でございます。二番目には資源エネルギーの安定的な開発輸入でございます。三番目には海外投資、海外事業の促進でございます。  いずれも穐山委員よく御承知のことばかりでございますので、多言を要しないと存じますが、プラント輸出は相手国に対しましてそれなりに雇用の機会を与え、あるいは技術の移転ができるということで、相手国からも喜ばれておりますし、また資源エネルギーの安定的な開発輸入というのは、これからの日本が生きていくためにどうしても必要なことでございまするし、さらには海外投資、海外事業も、国際的な環境のもとで日本が諸外国と連携し、外国で生産事業の拠点を持って外国に雇用の機会をつくり技術の移転をしていくという意味で、これからの日本が国際社会で生きていくために非常に大事な仕事であるというふうに私ども考えておりまして、ただいま御審議をいただいております五十八年度予算におきましても、引き続きまして、この三つの重要な柱につきまして円滑な金融をいたしてお役に立ちたいというふうに考えているわけでございます。     ─────────────
  151. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま嶋崎均君が委員辞任され、その補欠として鳩山威一郎君が選任されました。     ─────────────
  152. 穐山篤

    ○穐山篤君 三つの重要な事業目標というのをお持ちなんですが、海外に駐在所というんですか、駐在員というんですか、を置いて幅広く現地の実態を掌握する、情報の収集に当たるというふうなことをやられているわけです。そういう中から、日本が外国に対する金融援助といいますか、こういうものについての特別な報告といいますか、海外の駐在員からの特別な注文というのはございませんか、その点ひとつお伺いします。
  153. 大倉真隆

    参考人(大倉真隆君) あるいは御質問の趣旨を若干誤解しているかもしれませんですが、駐在員は現在十五カ国に置いております。それぞれ所在地国におきます、また管轄しておりますその周辺諸国におきまする経済、金融情勢を常時フォローさせまして、相手国あるいは周辺諸国でどういう需要があるのかということを的確にフォローさせるようにいたしております。  日本輸出入銀行といたしましては、歴史的には、日本から物が出ていく、あるいは日本の会社が事業をやるという場合の金融がいわば中心でございまして、その点は現在も変わっておりませんけれども、いろいろと周辺の国際的な環境の変化もございまするし、場合によりましては、必ずしも日本からの直接の輸出に関係はなくても、術語で申しますいわゆるアンタイドでも、場合によって、相手国の政府なり金融機関に金融をつけるという道も近来開かれております。  事業の主体は、依然として先ほど申し上げました日本からの海外投資、あるいは日本への輸入、日本からの輸出でございますけれども、いま穐山委員のおっしゃいますように、環境の変化に的確に順応していけますように、またこれから日本が生きていく上で本当に役に立ちますように、相手国からのいろいろな資金需要というものは常に正確に間違いなくフォローさせていきたいというふうに考えております。
  154. 穐山篤

    ○穐山篤君 さてそこで、この貸し付けの所要資金の原資でありますが、言うまでもなく、一つは貸した金の回収金である、それから一つは借入金が一兆円近い金になるわけです。それからあと産投会計がごくわずかですけれどもある。大体この三つでなっているわけですが、この輸出入銀行の今日的な状況から考えてみまして、年間の予算規模といいますか、事業規模といいますか、財政的な規模はどの程度が適切であるのか、実務を十分やられております総裁の感じで結構ですから、ひとつお願いをしたいと思います。
  155. 大倉真隆

    参考人(大倉真隆君) 御高承のとおり、ただいま御審議をいただいております五十八年度予算の背景となっております事業計画におきましては、一兆三千四百五十億円という貸付規模を予定さしていただいております。これは五十七年度の、現年度の当初の計画に比べますと約一五%増ということで、財政事情が非常に厳しい中で、財政当局から私どもの担当しております仕事の重要性を十分御理解をいただきまして、これだけの貸付規模を賄うに足る原資の計画も立てていただいているわけでございます。  原資につきまして御指摘がございましたが、おっしゃいますとおり、圧倒的に大きな部分は資金運用部資金の借り入れでございます。そのほかに、かなり長い歴史を経てきておりますので、過去の貸し付けの回収金というものももちろんございます。それから御指摘のとおり産投会計からの出資も累年いただいております。  ただ、五十七年度には、年度途中で当初の予想をかなり上回ります資金需要がございましたものですから、年度の途中で財政当局にお願いいたしまして、財投資金の千七百億円の追加をしていただきまして、さらには需要者でございます輸出関連企業の御理解を得ながら、私どもからの融資の比率を若干下げまして、それに加えて日本輸出入銀行としての独自の調達も考えてみる時期ではないかということで、これは生まれて初めてなんでございますが、法律上許されております外国で起債をするということもやらしていただきました。  おかげさまで、本年の一月、二月、スイス市場で一億フランの公募債と一億五千万スイスフランの私募債を出しまして、いずれも非常にいい条件で歓迎してもらえました。無事に起債を終わりましたんですが、五十八年度につきましても、先ほど申し上げましたように、財政当局の御理解を得て運用部資金を配賦していただきまするほかに、できますならば、市場の条件にもよりますけれども、円にいたしまして六百億円程度は外国市場での調達も考えてみたいというふうに考えております。  御質問の最後にございました、貸付規模として一体どれくらいが適正かということは、なかなか一義的に決めることはむずかしいかと存じますが、私どもなりに営業各部から、実態的な資金需要を関連企業から聞き取りまして、五十七年度のように、年度の途中で資金が足りなくなって、私どものお得意先にいろいろ無理を頼み、迷惑をかけるということがないようにというつもりで、五十八年度はこれだけの貸付規模を受けさしていただけますれば、何とか予想されます資金需要には適確に応じていけるんではないかと、そのように考えております。
  156. 穐山篤

    ○穐山篤君 どうもありがとうございました。  共通する問題は後ほどまたお願いをしたいと思いますが、次は日本開発銀行であります。  資料を一々読むことはないと思いますが、五十六年度の決算でいきますと、純利益五百三十八億円が出た。こういうことは政策金融にしては珍しいことではありますが、二百四十三億円の国庫納付が行われたという状況にあるわけです。  ここで、開発銀行につきましては、国内貸し付け、いろんな方面にいま出ておりますから、どれがどうというふうに申し上げることはなかなかむずかしいと思います。ただ、私、気になりますのは、開発銀行の借入金の残高は五兆円あるわけですね。五兆一千四十二億円あるわけですが、資金運用部のお金と石特会計のお金に集中しているわけですね。将来、資金運用部の金の運用の問題について、いずれ大蔵省見解も聞かなきゃならぬと思いますが、開発銀行はもう少し融資について整理をした方がいいのではないかなというふうに考えますが、その点が一つ。  それからもう一つ、エネルギー関係に対します融資が非常に大きいわけですね。たとえば東京電力が残高が六千億ぐらいあるんでしょうか。その他電力関係だけでも一兆円を超えると見るわけであります。  そこで、ちょっと性格の違う質問でありますが、原油の価格がバレル二十九ドルに相なる。そこで国内では電力料金の値下げという意見が片方に出ている。片方では安定的な基盤の充実のためにその金を振り当てたいと、こういう二つの議論があるわけですが、実際に電力会社に大量の融資をしております開発銀行の総裁として、その辺についてどういう御感想をお持ちなのか。その点二つお伺いしたいと思うんです。
  157. 吉瀬維哉

    参考人(吉瀬維哉君) まさに穐山委員御質問のとおりでございまして、開発銀行としても、五十八年度は一兆一千三百四十億という融資規模を持っておりますけれども、できるだけ重点化していくという方針で数年前から進んできているわけでございます。  いま御指摘のとおり、エネルギー関係で約四割、そのほかに公害防止とか、そういうものに含まれているエネルギー関連を含めますと、約六割がエネルギーの方にいっております。  近時、原油の価格が若干低下しているというような状況はございますけれども、私どもとしては、長期的な見地から、こういうときにこそ日本のエネルギー基盤の充実を図っていくべきではないか、こういうぐあいに考えているわけでございます。  確かに、電力に対する融資は、相当当行において膨大なものになっておりますが、これは相当長期を要するプロジェクトに対しまして融資しているのが大部分でございまして、たとえば残された水力の開発とか、あるいは原子力関係のプロジェクト、こういうものに出しているわけでございます。原子力関係のプロジェクトなどは、プランニングから実際の稼働に至るまで十年を要するというような長期的な計画でございますので、私どもといたしましては、良質な政府資金を、時の金融状況の繁閑に関係なく、安定的に供給できるという体制が大事かと思っています。しかし、私どもといたしましては、エネルギーといえども、その融資の中身につきましては、できるだけこれが効率よく融資できるようにいつも研究を続けていかなければならないかと思います。  なお、融資の重点化につきましてもう一言、二言、つけ加えさせていただきますと、日本の産業の構造が先端産業に徐々にシフトしていくというようなことが、日本の産業構造の高度化にきわめて重要なものかと思いまして、国産技術の振興、技術振興というものに対しまして、やや力を入れてきているわけでございます。本年、原資の事情がございまして、仮に全体の融資規模は二%の伸びでございますけれども、技術関係あるいはエネルギー関係は四%を超える伸びで、若干そこら辺に重点シフトを移したということでございます。  またもう一つ、いま国会で御審議を賜っております基礎素材産業の活性化の問題でございますが、このためには基礎素材産業がいろいろ新しい合理化投資を行うとか、あるいは新しい分野に進出するというようなものに備えまして、開発銀行のその他枠の中で百五十億円を計上しておりまして、これが有効に活用されることを期待している次第でございます。
  158. 穐山篤

    ○穐山篤君 共通問題を除きましては、ありがとうございました。  それから国民金融公庫の総裁にお伺いをしますが、五十六年度の決算で事業を見てみますと、経営改善貸し付けにつきましては、ほぼ申し込みに見合う貸し付けが行われている。それから特別貸し付けにつきましては、申し込みに対しまして多少少ない。一般貸し付けにつきましては、申し込み金額の約六〇%程度ということで、経営改善の貸し付けの場合には、商工会議所あるいは指導員の特別な詮議がありますので、資力、信用から言ってみてそういうことになると思いますが、総じて一般貸し付けの面を見ますと、事業計画と実際の実績ですね、大分乖離があるような感じがしてならないと思うんです。この点についての原因はどういうふうに掌握をされているのか。あるいは、これから五十八年度予算が成立して、あと実行計画を立てる場合に配慮をしなければならぬ問題点というふうなことについてどういうふうにお考えなのか。その点をお伺いしたいと思うんです。
  159. 田中敬

    参考人(田中敬君) 委員がただいま御指摘になりました五十六年度の決算の数字でございますが、いま私ここに手元に持っておりませんが、私の理解では、一般貸し付けのうちの普通貸し付け、これが国民金融公庫の貸し付けの大宗をなしているものでございますが、この貸し付けにつきましては、五十六年度も当初の計画額を達成いたしておりますし、現に進行中の五十七年度の計画におきましても当初計画額を達成し得る、達成するという見込みが立っております。  私の方の決算上で当初計画を達成し得ませんでした五十六年度の実績と申しますのは、一つは経営改善貸し付けもそうでございますが、五十七年度におきましても、経営改善貸し付けにつきましては、相当額の余剰が出る見込みでございます。それから特別貸し付け、これは御承知のように、合理化でございますとか安全対策、省エネ、いろんなものがございますが、これが今回の不況を原因といたしまして伸びておりません。  そういう関係で、特別貸し付け、経営改善貸し付けを中心といたしまして若干資金需要が落ちておりますが、一般貸し付けにつきましては当初計画が達成できる、それほどの資金需要があるのが現状でございます。  五十八年度におきましても、この一般貸し付け分につきましては、本年度の当初計画に比べまして、二・七%増の約二兆八千百七十億円という金額を予定いたしております。特に公庫全体、本年度の規模に比べまして、三・二%増の三兆五百億円の貸し付け規模を五十八年度に予定しておりますので、こういう金融情勢のもとではございますけれども、中小企業につきまして、特に私どもが対象としております小企業につきまして、民融機関、民間の金融機関から融資を受けがたい非常に零細な小企業が多うございますので、この方面に対する政策金融としての質的あるいは量的な補完というために、この三兆五百億の規模があれば、ある程度目的は達し得るものというふうに考えております。
  160. 穐山篤

    ○穐山篤君 国民金融公庫の場合には、恩給を担保として百五十万円以内の貸し付けができる、あるいは進学につきましても、所得を見ながらでしょうが、五十万円以内の融資ができる。この点は非常にありがたい措置だというふうに思うんですが、過去の実績を見てみますと、いずれも、申込者に対して一〇〇%近い融資になっているわけですね。  そこで、中小企業一般の人の意見とするならば、町の金融機関に小口の金を借りるとなかなか敷居が高い。それからサラ金では後問題が非常に残る。したがって、ごく軽い担保で国民金融公庫から金を貸してほしい。これはどこに行きましても共通の意見なんですね。そういう問題について公庫として何か研究をされたことがございましょうか。その点をお伺いします。
  161. 田中敬

    参考人(田中敬君) 御指摘のとおりに、ただいま国民金融公庫は、先ほど御説明申し上げました一般の普通貸し付け、これは事業計画を持っておられる方の生業資金、事業資金の貸し付けを主体といたしております。そのほかに、いわゆる消費金融の分野といたしまして、ただいま御指摘のありました恩給担保、あるいは記名国債担保によります貸し付け並びに進学ローンと称します進学資金貸し付けを行っております。  一般的な消費金融を政府関係機関で取り扱うかどうかという問題につきましては、私どもも従前からいろいろ検討をしてまいっておりますけれども、この消費金融につきましては、その対象をどこにしぼるかということが非常にむずかしい問題であると思っております。ただいまのように進学資金というような将来の教育の投資効果を持つようなものというものでございますれば、ある意味の融資効果はございますけれども、単なる消費金融ということになりますと際限がなくなる。しかもわれわれがお貸ししております金の原資と申しますのは、御承知のように、郵便貯金であり、国民年金である運用部資金でございますので、この資金の効率的な有効な活用という点から考えまして、どこまで消費金融を伸ばし得るかということにつきましては、私自身まだ疑問を持っておる段階でございます。
  162. 穐山篤

    ○穐山篤君 それでは、共通をする問題について、専門の皆さんですから少し知恵をいただきたいと思うんです。  臨調答申の中に、政策金融の金利の問題について一応の指摘がされているわけですね。もちろん低利のものもあります。高利と言っちゃ語弊がありますけれども、七%、八%程度のものもあるわけですが、この金利体系について、お三方に何か御意見がありましたならばひとつお出しをいただきたいというふうに思うんです。  それからもう一つは、いずれも財投から資金を借入をしたり、資金運用部資金から借りたり、あるいは石特会計から借りたり、そういう金額の方がボリュームが大きいわけですね。回収金を原資に充てるというにはまだ多少歴史が浅いというふうなこともあるわけですが、おいおいみずからの体質強化ということをしなければ、国のお金を当てにすることはできなかろうというふうに思うわけですが、その問題についての御見解をひとつお伺いをしておきたいと思うんです。  それからもう一つは、これは実績予算を調べてもそうでありますが、日本の市町村に全部公庫が存在をするわけでありませんので、結局、業務の委託を相互に行うということにならざるを得ぬと思うのです。ところが、調べてみますと、委託業務の支払い手数料というものが何千億円というふうになるわけです。これは事務的にある意味ではやむを得ないと思いますが、もう少し効率的な金融を考えてみた場合に、ある一定の部分は冗費ではないか。私どもはこういうふうに思うわけですが、その点について専門的に何かうまい知恵がないものでしょうか。共通をした問題、以上三つについてひとつお伺いをしたいと思うんです。
  163. 吉瀬維哉

    参考人(吉瀬維哉君) 穐山委員が御指摘のとおり、開発銀行は運用部から大宗を借り入れまして、その他外債発行、去年は八百六十億円ほどスイスマーケットを中心に発行したわけでございますが、こういうものを中心に貸し付けを展開しておるわけでございます。幸いにいたしましてと申しますか、借り入れ原資よりも貸し付けの金利の方が若干有利に組み立てられておりまして、そういう点で毎年多少の額を国庫に納付しているということでございまして、開発銀行が創設以来国庫に納付した金額は四千二百億円に及んでいるわけでございます。  しかし御指摘の点は、金利の全体の骨組みをどう考えるかという点だと思いますが、開発銀行の基準金利はプライムレートと連動しておりまして、大体これを中心に組み立てられておりまして、政策の色彩の多寡によりましてそれを開いております。私どもといたしましては、政策金融機関でございますから、もし政策的に非常に強い、公共度の高いというようなものがございましたら、できるだけ有利な条件でお貸ししたいことはもちろんでございますが、開銀法全体に、全体として収益がペイするような形の金利体系を法の体系で要求されているわけでございまして、その中におきまして工夫をこらしていきたいと思います。  たとえば工夫の一例といたしましては、都市開発などは非常に懐妊期間が長い。当初においてはなかなかペイしないというものにつきましては、当初の金利を若干低めるというような傾斜金利等も導入しておりますし、今後もそういう工夫をこらしていきたい。また、五十八年度に新しく認められました過疎地域におきまして若干特利が認められております。こういう種類のものも私どもきめ細かに配慮してまいりたいと思います。  なお、八百六十億円ほどの外債発行でございますが、幸いにいたしまして、スイスマーケットの状況がよかったというようなことと、開発銀行債、長年の発行実績がございますので、スイスマーケット及びフランクフルトのマーケット等を中心に出したわけでございますが、全体の外債借入金利はむしろ運用部からの調達金利八・五を下回る、七%を切るというような有利な条件で調達できております。しかしこの外債発行も、いまの資金運用部の資金状況でございますと、五十八年度も約千億程度の外債発行を継続せざるを得ないというような状況でございますが、何分にもスイスマーケットの広さも狭うございますし、どういう形の工夫をこらしていくかということをいま考究中でございます。  なお、こういう種類の資金の運用に伴う一つの収益が出ておりますけれども、開発銀行の一つの企業体としての体質強化というものにつきましては、私どもいろいろな工夫をこらしていきたいと思います。貸付事務それから回収事務等、事務管理全般にわたりまして、政策金融機関でございますので、いろいろ政府全体からの法的な規制もございますけれども、できるだけこういうものを簡素化してまいりましてコストの節減に努めてまいりたいと思います。  資金調達の関係の有利な展開と、それからじみな努力でございますが、いろんな運営経費の節減というようなもので開発銀行の体質を強化してまいりたい、こう思っている次第でございます。
  164. 大倉真隆

    参考人(大倉真隆君) 日本輸出入銀行につきましては、御高承のとおり、基準金利的なものの定めはございません。業務方法書で金融種類別で下限と上限を決めて、その範囲内でケース・バイ・ケースで弾力的に運用するという仕組みになっておりまして、これは法律上、銀行全体としまして収支相償でなければならない、つまり赤字を出すような貸し付けはやってはいけないということが法律的にはっきり書いてございまして、そういう基本原則を踏まえながら、ただいま申し上げましたような実際の適用金利を決めてまいる。その意味では、特殊法人に自主的な判断の余地をできるだけ残すべきであるという臨調答申の中にあります考え方一つの流れには適合できるという仕組みになっておるように私は考えております。  ただ具体的には、先ほど申し上げました三本柱に即して申し上げますと、プラント輸出につきましては、実は国際的な先進国同士の競争の問題がこざいまして、これは御承知の、OECDで輸出信用をつける場合には、お互いにこういう条件を守ろうではないかというガイドラインというものができておりますものですから、私ども、実際の運用につきましては、輸出金融、プラント輸出金融につきましては、そのガイドライン金利を守っていくということで現在は運用いたしております。  で、資源、エネルギー関係は非常に長期にわたる案件がございまして、また実際に収益を生むまでにかなりの期間があるというものもございますので、そういうものにつきましては、個別に十分金融判断を加えまして、協調融資銀行などとも、ある程度合成金利のでき上がり方を考えながら、そのケースに適応できるような合理的な金利を適用してまいりたい。したがって結果的には、これまた本当にケース・バイ・ケースで決めてまいるという弾力性を持たしていただいております。  今後とも、仕組みとしましては、やはりこういう仕組みで運用させていただくのが私どもの銀行の性格からしますと一番適当である、あるいはありがたいやり方ではないかというふうに考えておるわけでございます。  御質問の最後の部分は、実は私どもの銀行と申しますよりは、国民金融公庫の方からお答えするのが適当かと思います。
  165. 田中敬

    参考人(田中敬君) 臨調答申にも、私ども国民金融公庫につきまして、収支相償の原則を守って、これ以上政府からの財政援助を受けることのないように努めるという趣旨の御答申をいただいております。委員がわが公庫の決算をごらんになっていただきますとわかりますとおり、国民金融公庫昭和五十二年度から単年度赤字を発生させております。昭和五十二年度に五百四十七億円、滞貸償却引当金がございましたものが、五十二年度以降の単年度赤字の累積によりまして、ついに昭和五十八年度には滞貸償却引当金全額取り崩してもなお赤字が出るということで、政府から約七十五億円弱の補給金をいただくという補給金公庫になったわけでございます。  この赤字の原因と申しますのは、先ほど基準金利のお話がございましたが、国民金融公庫につきましては、中小企業対策ということで、通常の基準金利よりも、ここのところ、常に中小企業金融としての低金利政策ということで、プライムレートの〇・二が、下が国民金融公庫の現在の基準金利になっておる、こういう意味で、貸し出しの基準金利が非常に低い。かつまた、先ほどお話のありました恩給担保貸付とか、あるいは災害貸付というような貸付金利につきましては、運用部資金からの借り入れの原資コストよりも低い金利でお貸ししている、こういうものの残高が大体全体の貸し付けの四・五%弱になっております。こういうことで公庫の収支の足を引っ張る要因がたくさんございます。  基本的な問題は、従前、昭和四十年代におきましては、運用部からの借り入れました資金コストと、それから私どもが貸し出します基準金利とのいわゆる利ざやと申しますか、その差が約一・五%程度ございました。これが近時に至りまして漸次低下をいたしまして、一番ひどい年、昭和五十四年度、五十五年度には、その利ざやが〇・六%になってしまった。この〇・六%の利ざやということでございますと、どうしても必要経費、人件費を含みました必要経費すら賄い得ないことは理の当然でございます。  現在、この利ざやが〇・九%ということになっておりますが、私どもは基本的には私どもの公庫の企業努力、コスト意識に目覚めた効率化という努力は当然いたすべきでございますが、こういう外生要因によりまして、いわゆる利ざやが非常に小さいということから、赤字の発生要因になっております。このことにつきましては、今後、私どもの経営努力をいたしますとともに、この利ざやの問題をどういうふうにするか、財政当局その他関係方面にもお願いして、いろいろ対策を考えさせていただきたいというふうに考えております。  それから代理業務、いわゆる委託業務が膨大になって、多額の委託手数料を払っておるのは浪費ではないかという趣旨の御質問でございました。御質問の中に一千億という数字があったと存じますが、現在、当国民金融公庫が委託手数料として支払っておりますのは、五十七年度におきまして約百億円強、百二億円程度でございます。私どもの貸し付けの中で委託代理店を通します貸付が大体現在一五%程度、それで委託手数料が百億円程度になっております。御指摘のとおりに、委託手数料と申しますのは、私どもの収支の相当圧迫要因にもなりますので、余りこの委託業務をふやさないように、ほどほど一五%程度を限界点として運営してまいりたい。そうして、そういうコストの低減を図ってまいりたいというふうに考えております。
  166. 穐山篤

    ○穐山篤君 三公庫の総裁の皆さんにはありがとうございました。  ただ、いま最後に、国民金融公庫の場合には受託業務で手数料が百億入ってくる、それから払う方が百二億、大体いい線でいっているわけですが、住宅金融公庫その他ずっと詰めてみると、一千億を優に毎年超えるわけですよね。これは物理的な問題には違いありませんけれども、もう少し効率的な方法を考えた方がいいんじゃないかというふうに考えたところです。もちろん、これについては後で大蔵大臣の方からもお話を承りたいと思うんです。
  167. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 三人の参考人の方々、御苦労さまでございました。お引き取りいただいて結構でございます。
  168. 穐山篤

    ○穐山篤君 次に、国有地財産の管理その他について全般的に明らかにしてもらおうと思っていましたが、時間の都合がありますので、そこの部分はまた後日に譲らしてもらいます。  そこで具体的なことについてお伺いをします。それは靖国神社の土地の問題であります。この靖国神社は、目下文部省の所管になっており、管轄が文部省、実際に監督に当たっているのは東京都である。そういう宗教法人であるわけです。国有地を適切に管理する、そういう見地から、非常に古い話で恐縮でありますが、お伺いをしたいと思うんです。  靖国神社、現在は、いま申し上げたように、宗教法人靖国神社の土地に登記がしてございます。しかしその登記をする以前は国有地であったというふうに思うんです。私の資料によりますと、昭和二十八年に譲与になっているわけですが、この譲与の背景、あるいは手続、根拠の法律というふうなものは何であったのか、その点をまずお伺いしておきたいと思うんです。
  169. 勝川欣哉

    政府委員(勝川欣哉君) 確かに靖国神社に対しましては、昭和二十七年十一月十五日に境内地を神社に対しまして譲与しておりますが、それは昭和二十二年に制定されました社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律という法律に基づきまして処分しております。
  170. 穐山篤

    ○穐山篤君 昭和二十七年十一月十五日に譲与して登記がしてありますのは、場所によって違いがありますが、昭和二十八年十二月二十五日になっているわけですね。  そこで、細かいことはいずれこれから何回となくお伺いしますが、国有地ですね、かつての国有地、現在の国有地でもいいんですが、そういうものの処理につきましては、少なくとも国の財産、国民の財産であるだけに、納得のいくような処理の仕方をしなければならぬというふうに思うわけです。最近は大蔵省設置法の十七条でしたか、これで特別な審議会がありますから、そういう手続を踏んでいるわけですが、この靖国神社の譲与については、いまお話がありました手続だけでは国民的なコンセンサスを得ることはむずかしい、私はこういうふうに思うわけです。  言いかえてみますと、憲法二十条なり、憲法八十九条で厳しくその点を禁止しているわけですね。今日ではそういうことがどなたにも政教分離という意味で十分理解がされますが、昭和二十八年、七年当時でありますと、朝鮮戦争の直後でありまして、国民的な感情というものも非常に複雑であったと思うんです。その意味では、靖国神社などのかつて国有地であったものの譲与について今日改めて見直しする必要があろう、こういうふうに考えますが、その点いかがですか。
  171. 勝川欣哉

    政府委員(勝川欣哉君) 先ほど述べました法律は、まさに先生御指摘の点をいわば清算するために、あるいは回避するために戦前制定された法律であります。やや沿革的なことになりますが、実は明治政府が誕生する前に社寺の所有でありました境内の土地は、その大部分が明治四年のいわゆる社寺領上知令とか、六年以降に行われました地租改正条令に基づく土地の官民所有区分によりまして、国有になりまして、そういうふうな経緯を踏まえまして、国有地として社寺等に無償で貸してきたものであります。  ところが、戦後お話の日本国憲法ができまして、そのままで存置しますと、お話のように、二十条ないし八十九条に違反することになる。したがって、何とか清算する必要がある。しかし従来の沿革によって社寺に与えられました永久無償使用権をただで取り上げるとなりますと、それは元来社寺の所有であったものをただで没収するということになりまして、今度は別個の憲法二十九条にあります財産権の保障の規定に反するという問題が生じまして、またそういうことによって宗教活動の根拠を奪って、逆に国が宗教上の活動の自由を保障するという憲法の精神に反するのではないかという問題が生じまして、いわばもとの所有者である社寺に無償で返すというふうな趣旨でこの法律は設けられまして、同時に設けられました政令でできました社寺境内地処分審査会という審査の会を経まして処分を行った次第であります。  したがいまして、この法律は、日本国憲法を制定しました第九十二回帝国議会、これは同一の構成員でありますが、その同じ議会で先ほど述べました法律が両院とも全会一致で可決されておりますし、またこれを受けまして、昭和三十三年十二月二十四日の最高裁判所の大法廷でも、これは違憲ではないというふうな判決をなされている次第でございます。
  172. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は二通りの立場から申し上げているわけですが、一つは、国民の財産、国有財産のあり方という問題であります。それから二つ目は憲法上の問題です。  もちろん憲法上の問題については別の舞台で争わなければならぬと思いますけれども、元別格官幣社あるいは官幣大社というものは全国的にかなり広い土地を擁しているわけですね。そういうことを踏まえてみまして、私は召し上げるとかなんとかということよりも、昭和二十八年に措置をした問題について、国民のかつての共有の財産のあり方という意味見直しをする必要があるんじゃないか。過去に昭和二十二年の法律で処分したから、もうこれは何ら手をつける必要がないというふうに言い切るには問題が残っているのではないか。こういうふうに考えてあえて問題の提起をしたわけであります。  なお、この土地の中には東京都の所有の部分もあります。それから個人が持っておったものを宅地として処理しておる部分もあるわけでありまして、そういう意味から言いますと整合性に欠ける問題点ありと、こういうふうに考えたところです。  あらかじめ詳しい質問の要旨をお渡ししてありませんでしたので、具体的な議論にかみ合わないのは残念でありますけれども、これらについて問題があるということをきょうは国有地財産の管理という意味で申し上げておきたいと思うんです。別の機会にもう一度過去にさかのぼって具体的な議論お願いをしたいというふうに思います。  その次は、最近新聞にも数多く出ているわけですが、日本も先進国の一つでありますので、発展途上国に技術の援助あるいは財政的な援助でかなり金融上の債権をたくさん持っているわけであります。そこで、今日日本が発展途上国に融資をしております残高、特にアルゼンチンのように、あるいはメキシコのように、問題点のある国の融資残高というふうなものはどの程度になっておるのか、その点をあらかじめお伺いしたいと思います。
  173. 大場智満

    政府委員(大場智満君) まず、わが国の民間銀行の貸し付けでございますが、昨年の六月末現在で見てみますと、一年超の貸し付けが、これはドル建ての貸しつけ、円建ての貸しつけを含めまして、約五百五十億ドルに達しております。なお、そのほか短期の貸し付けが三百七十億ドルぐらいあるというのが現状でございます。  このうちのかなりの部分が開発途上国向けでございますが、いま御指摘の、問題国と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、たとえば過去にリスケジュールとかあるいはリファイナンス等が行われた国に対する貸し付けということから見てみますと、中南米諸国を中心としましたそういう国々に対する貸し付けは、三百億ドル近くに達しているのではないかというふうに考えております。
  174. 穐山篤

    ○穐山篤君 IMFその他、いろんな国際的な金融機関がありますので、そういう意味では、そういう機関を十分に活用してやるということになるだろうと思いますが、それにしましても不安なしとしない。  そういう意味で最近、特定海外債権引当勘定への繰り入れ基準等に関する留意事項というものが発せられまして、一応対応を考えたわけだと思うんですね。これは時間がありませんから中身を一々申し上げるまでもないと思いますが、ある意味では私はこれはやむを得ない措置だろうなというふうに思います。  ただ、その場合に、それぞれの金融機関にしてみますと、これが有税であるのか無税であるのかということも、まあ悩みの種といいますか、問題にせざるを得ぬところではないかなというふうに思いますが、その点はどういうふうに、この引当金といいますか、積立金といいますか、をなさろうと考えられているんですか。
  175. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま御質問のございました海外の特定債権の引当金でございますが、税制上の問題といたしましては、御案内のとおり、現在、財産の繰入率で損金処理ができる引当金といたしまして、貸し倒れ引当金がございます。現在の累積限度額が千分の三でございます。いま問題になっておりますこの特定の海外債権について、これは税務計算上の問題でございますが、課税所得を計算する上で損金に扱うべきかどうかというのは、私どもはいろいろ問題があるのではないかと考えているわけでございます。  一つは、いまの貸し倒れ引当金の中で、税制上の問題として対処できるものであるのかないのかという点等がございました。それから本来特定の債権の貸し倒れ損失という問題でございますと、むしろ債権償却、実際に貸し倒れ損失が出ました場合に、当然これは課税計算上損金に算入するわけでございますから、そういうもので対処すべき問題ではないかという問題もございます。  それからいま問題になっておりますそのカントリーリスクという、その危険度というものを一体どういうふうに税制上見るべきかどうかという問題もございます。ただ、諸外国におきましても、この問題いろいろ起こっておりまして、それぞれの国でいろんな対応があるようでございますので、私ども現時点でこれを税制上貸し倒れ損失の損金に算入されるべき問題であるというふうには考えておりませんけれども、そういう諸外国の扱い等も参考にしながら、今後検討していきたいということでございます。
  176. 穐山篤

    ○穐山篤君 それから政府借款でもそうでありますし、民間金融機関、生命会社の融資でもそうでありますが、相手国で平価の切り下げ、デノミというふうな事態が起きることを想定して、あらかじめ借款なり融資をするときの契約書にそういう条項が通常は書かれるものだというふうに思います。しかし、まあ相手国の信用にもかかわることですから、そういう契約が結ばれていない契約書も多々あると思うんですね。ところが、最近アルゼンチンですか、切り下げが行われる、それからヨーロッパ域内におきましても若干の調整が行われる。こういうことについて円建ての場合には問題は少ないんでしょうけれども、ドル建ての場合には当然問題になると思うんですね。この点はどういうふうに現実的には処理されることになるんでしょうか、ちょっとお伺いします。
  177. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 御指摘の問題でございますが、わが国の対外貸し付けにつきましては、ほとんどがドル建ての貸し付け、御指摘のようにドル建ての貸し付けが多いわけでございます。ただ一部円建ての貸し付けがございます。  ドル建ての貸し付けの場合には、相手国にとってみますと、相手国の通貨が切り下がった場合には、たとえばアルゼンチンならアルゼンチン、ブラジルならブラジルの通貨建ての契約でございますと、為替リスクの問題が生じるわけでございますけれども、仮に日本の銀行がドル建ての貸し付けで行っております場合には、一億ドル貸したものは返済のときも一億ドルということでございまして、為替リスクはないということになるわけでございます。  したがいまして、余りそういうケースはないと思うんですけれども、現地通貨建ての貸し付けが行われております場合には、必ずこれは為替リスクにさらされるわけでございます。その場合には、恐らくその場合のリスクをどちらが負担するかという条項がまず間違いなくついていると思います。  以上でございます。
  178. 穐山篤

    ○穐山篤君 先ほどもお伺いしましたように、日本も対外的には、援助と言っちゃ語弊がありますけれども、かなり債権を持っているわけですね。当然これは民間ベース、政府レベル両方合わしてでありますが、これから焦げつきというふうなことがないことを祈りたいわけですけれども、そういう場面が逐次拡大していく可能性があるんじゃないかと思うんですね。これは原油価格の低下の問題であるとか、あるいは共通したスタグフレーションであるとか、いろんなことが混在しているわけですが、この予防措置としてはどういうふうなことをお考えでしょうか。
  179. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 予防措置という観点から考えますと、民間銀行についての御指摘かと思いますが、主として民間銀行についての御質疑かと思うんでございますけれども、私どもは、たとえばメキシコ、ブラジル等の国に対しましては、民間銀行は貸し続けてもらわなければいけないというふうに考えております。しかし、貸し続けるということと、貸し続ける日本の銀行の経営の安定とは両立さしていかなければいけない。そういう二つの相矛盾した要請にこたえなければいけないのではないか。  そういうことで私どもがいま銀行を指導しておりますのは、一つには、ドル建ての貸し付けを続ける場合には、もしそのドル建ての貸し付けが一年超の長い貸し付けであるならば、借り入れの方も長い借り入れでお願いしたいという方針でございます。たとえば三年超の貸し付けがあります場合に、その一五%は必ず三年超の借り入れで手当てしておいてください、あるいは一年超の貸し付けがある場合には、その一年超の貸し付けの四五%は一年超の借り入れで賄っていただきたいと、このような指導をしておりまして、経営の安定といいますか、金融の安定を図っているわけでございまして、こういった措置を中心にしまして、貸し続けるという要請と日本の銀行の経営の健全性という要請とを両立させようというふうに考えているわけでございます。
  180. 穐山篤

    ○穐山篤君 時間がなくなりました。たくさん問題はあるわけですが、二つだけにしぼって申し上げます。  先日、十八日の日に竹田委員が本会議で質問をしました。財政再建の到達目標と時期、そのことについて、先ほども多田委員の質問に御答弁があったわけですが、中曽根総理はこういうふうに言われております。中長期計画と整合性を十分に考えたい、そういう前提条件がつきましたが、五ないし十年間という目標で検討すると、こういうふうに言われているわけです。  そこでお伺いをしますのは、いきなり財政再建が五年、十年でぱっとできるわけではないわけですね。手順からいいますと、特例公債依存の体質がまずなくなる、そして建設国債を含めて可能な限り縮小を図りながら財政再建を行うと、こういうことになるわけです。そうなりますと、大蔵省が提供しました中期展望のA、B、Cのどれを目標にしてこれから国会では審議しなければならぬのか、あるいは国民の目はA、B、Cのどれを目標にしながらこれから生活していくのかということが当然論議の的になると思うんです。そのことについて総理大臣答弁と大蔵省の計画というものの整合性をひとつ明らかにしてもらいたい。  それから午前中もありましたし、大臣も答弁しておりますように、まず歳出カットと、こういうふうに言われているわけですが、歳出カットを実績で各省庁別に調べてみましても、不用額を含めて三千億円程度であります。言ってみますと税収の一%ぐらいですよね。思い切った歳出カットということになりますと、政策選択になります。場合によりますと法律の改正を伴うわけです。前回、例の年金に対します国の助成金のカットというものもあったわけですけれども、こういうふうな手法を用いざるを得ない。そういうことに相なるわけですね。そこで大蔵省、政府としては、歳出カットについて、ごく普通の省庁の節約ではもうほとんど問題にならぬわけですから、今度は政策の問題、国民の生活なり産業の問題に手をつけざるを得ないわけですね。そのことを国民全体がまた注目しているわけです。そのことについて、いま直ちに優先順位はつけられないにいたしましても、物の考え方、原理というものはあってしかるべきだと、こう思います。  二つについて質問して終わりたいと思います。
  181. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 第一の問題でございますが、たびたび国会でお答えしておる点は、五十八年度予算編成、そして今後の財政改革を進めていく上の手がかりといたしまして、基本的な考え方を申し述べ、それと一緒に中期試算を提出いたしたわけであります。その中期試算は、後年度負担推計の仮定の上に立って、三年、五年、七年というもので等率等差ということでお示しをいたしたわけであります。したがって、それがすべて絶対であるというものでないということをるる御説明しながら、御参考に供しておるわけのものであります。  そこで、手順として、いま特例公債からの脱却、そして公債全体の依存率を引き下げていく、これはおっしゃるとおりでございます。  総理が申しておりますのは、いわゆる経済展望ということについて、五年なり十年なりの中長期のガイドラインというものを設けてもらうように経済審議会にお願いしたところだ、そうなれば、それとある意味において一体である財政の果たすべき役割りというようなものが並行的に議論されていくであろう、そうなれば、それの脱却年度というものも中長期の範囲内に入る考え方で作業を今後進めていくべきものであるという、一般論としてのお話をされておるわけであります。  私どもといたしましては、数年という言葉は使っておりますものの、お示しし得る限界とすれば、七年までが限界じゃなかろうかというので、中期試算をお出しいたしましたので、数年という言葉がこの中期試算の中で当てはまる数値ととれば、それは五とか七とかというものになりましょうというお答えをしておるところであります。  したがって、一体目標年次をいつに置くかということは、これからわれわれが国会の論議等も聞きながら慎重に検討を進めていかなければならない課題である。五十九年脱却というものが、諸般の事情、国際情勢の不透明等から、これはギブアップしなければならなかった。ギブアップするということは、非常にいろいろな問題はございましょうとも、一つ政治不信にもつながらないとも限らないということになれば、なおのこと確たる数字を申し上げるには慎重であらねばならぬということから、今後の重大な検討課題としてこれを受けとめておるわけであります。  それから次の歳出カットの問題でございますが、これは同感でございます。いわゆる政策選択の問題であろう。そして、先ほどもお話し申し上げておりましたが、法律に基づくものだけでくくってみましても、およそ八〇%がその範疇に入るわけでございますので、この現行の施策水準をそのままというわけにはまいりませんので、その根源にさかのぼって、そして負担すべき分野等を検討をしながら、受益者も国民であるし、負担する者もまた国民であるという考え方に基づきまして、法律改正をも含めた、根源にさかのぼったこの政策選択をやっていかなきゃならぬ課題である、こういうふうに私どもも心に決めておるわけであります。
  182. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 私は専売公社、あるいは大蔵省に、輸入たばこ、たばこと言いましても紙巻たばこでございますが、この取り扱いの問題につきましてただしておきたいことがございます。それですから、竹下大蔵大臣、大変お疲れでございましょうから、どうかお外しいただいて結構でございます。  と申しますのは、関税の問題、関税率の引き下げの問題がありまして、これは関税定率法の審議がいずれあるだろう、あるいはたばこの定価法の改正の問題がありますが、恐らく年度末ぎりぎりになって、恐らく与党質問の時間はないんじゃないかというので、これもしかし一般的な問題ですから、この際ただしておきたい、こう思うわけであります。  たばこの関税の問題を振り返ってみますと、これは五十五年から九〇%という関税率を設定した。このときにそんな高関税を課していいのかということを、私はずいぶん不安を抱いてそのような意見を申し上げた記憶がありますが、しかしこれは決定したことだからということであったわけであります。その後、翌年三五%に下げ、今般二〇%に下げる、こういうことになったわけでありまして、正確には一〇%、千本当たり三百四十二円と、こういうことに一応の決着を見た。そしてたばこの問題は、日本のたばこの扱いはひどいではないかという非難が猛烈に上がった、ちょうどこの九〇%の関税率を設定したころと軌を同じゅうしてそういう非難が強く上がったことも、これも御承知のとおりであります。そういう経緯を経て三段跳びで実質二〇%まで下げることになったわけであります。その間の取り扱いにつきましても、私はいろいろ申し上げたい点はありますが、与党でありますから、それは申し上げません。  しかし、そういうことになりまして、本来五%関税率を下げますと、小売価格は十円下げられる。こういうことですから、一五%下げれば三〇円下げられる。こういうことになるわけであります。ところが、外国のたばこの扱いはいろいろ問題が多い。それらについては、値上げの要因も非常にたくさんあるんだということがあります。その一つは、輸入する際のたばこの輸入の仕方、ドル建てを円建てにかえて輸入しているという問題と、それから標準的な輸出価格よりはるかに低い価格で買っておること、この二つの点について質問いたしたいわけであります。  そういう次第でありますから、何もここで政府を追及するつもりで言っているんではありませんで、問題自身が大変むずかしいということで、私ども一緒に考えていきたいという意味で質問をしているわけです。  さて、後段の方、日本が特にアメリカのたばこ、標準的なたばこをどういう価格で買ってきたかということを調べてみますと、かつてはアメリカの標準的な輸出価格に近い価格で専売公社は輸入しておった。ところが、それが最近はだんだんそれを離れてきたということになっておるわけであります。アメリカ側のコストといいますか、インフレによって庫出し価格がどんどん上がりつつあったということと相関しておる。それとともに、日本の関税が高いということで、日本にこれ以上標準的な価格で売ったならば、日本の外国たばこはどんどん値を高くしていかなければならない。こういう悩みを外国の輸出業者の方は持ったに違いないわけで、そういう意味で標準価格と公社が実際契約して買っている価格の開きが最近は相当開いてきたんではないか。この点につきまして、その事実関係について、公社側の説明をいただきたいと思います。
  183. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) ただいま先生おっしゃいましたように、アメリカの標準輸出価格というのがございます。標準輸出価格というのは、これは税抜きでございますから、まず庫出し価格というのがもとにございまして、それから連邦税を引いたものが標準輸出価格ということになっておるわけでございます。ここまでは公表されておりまして、その標準輸出価格から、いま御指摘ございましたように、何ぼか引いたものが、公社の実際の取引価格になっておるというのが事実でございます。  それで、標準輸出価格は年々上がっておりまして、たとえば一番新しい五十八年度で申しますと、これは十九ドル八十ということになっております。五十七年度は、その前の年でございますが、十七ドル八十ということになっておるわけでございますが、公社の契約価格は、これは個別の取引価格ということで、対外的な公表はしないということでございますものですから、感じだけを申し上げさせていただきますと、その十七ドル八十から数ドル引いた価格になっておるということでございます。  これはどうしてそうなっているかと申しますと、ただいまお話にもございましたように、公社の輸入価格を上げますと小売価格がどんどん上がるということは、アメリカ側もよく承知しているものでございますから、それでもってこの価格をそれほど上げないようにしてきたというのが取引の実態であると、こういうことでございます。
  184. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 ただいまの専売制度と言えば、これは輸入から、製造、販売まで一切公社の権限でやっておりますが、しかし国際的な観点から見ると、外国品の取り扱いは正常なやり方でなきゃいけないというのが常識だろうと思います。これから専売制度をどうするかという問題が絡んでくるわけですけれども、輸入品の扱いについては、どうも別会社で扱わせようという方向に臨調答申もなっておるし、私どももそういう方向に行くことは仕方ないだろうと思っております。そういう意味で、公社の輸入の仕方というものは通常の貿易のルールというものにのっとって輸入されてしかるべきだ。そしてそうなった場合には、輸入品が公社の製品と日本の市場において公正なる競争をすると、こういう事態に当然ならなきゃならない。  そういう方向にわれわれも努力をしなきゃならないと思いますが、そうなった場合にこの輸入価格をどうするかという点は、これは非常に大事な問題であろうと思うわけです。今度関税が仮に一五%下げた場合に、小売価格はそのまま下げるのか、あるいは公社がもっと適正な価格に近づいて輸入してやるのか、私は相当これは大切な問題だと思うので、それに対する公社の考えを聞きたいと思います。
  185. 長岡實

    説明員(長岡實君) 五十八年度の輸入品たばこの国内における小売価格の問題でございますが、これは鳩山委員御承知のように、一定の算式によって計算が出てまいりますけれども、そのもとになりますのは、やはり公社の輸入価格と申しますか、そういったようなものが前提になるわけでございます。この点についてまだ外国メーカーとの最終的な詰めが行われておりませんので、いまのところはっきりとしたお答えはいたしかねますけれども、私どもが内々得ている感触では、関税が引き下げられたならば、その引き下げの効果をフルに小売価格の引き下げに反映させたいというのが、先方の意向のようでございまして、私どももその先方の出方を待って結論を出したいというふうに考えております。
  186. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 この標準価格との開き方が、ほんのわずか開いているというのであればこれはいいんですけれども、いま数ドルと言いましたか、これは恐らく比率にいたしますと三〇%くらいになるんじゃないか、私の計算ではそうなります。三割も安く買うということは、これは仮にこの関税率を二〇%にするとか、あるいは何%にしても、三〇%も値引きをするというようなことが行われるということは、これは関税を幾らにしたらいいかということ、これは全く判断できなくなってしまうわけです。  関税率については日本もアメリカも同じ関税率にした。ですから、専売公社のたばこは、アメリカに輸出するときでも、向こうへ行けば同じ関税を課せられるわけで、じゃ専売公社は三〇%も値引きして売れますか。それは私はできないと思うんです。そういう意味で、この問題はやはりもっと真剣に研究しなきゃいけないんじゃなかろうか、そういう意味で申し上げておるわけです。  もう一つは小売人の手数料の問題もあるわけですね。かつて、日本のたばこは八・五%しか手数料を出さないのはけしからぬじゃないか、差別待遇していると先方は言っていたわけですから、これもいつかは一〇%の小売手数料を払わなきゃいけない。これも将来の懸案であろうと思います。そういうことでこの三〇%も値引きをしているというのはいかがなものであろうか。そして先方は、日本の輸入者は専売公社だ、たばこについては絶対的な権限を持った役所だ、そこの役所がこの価格しか買ってくれないんだということで安く売る、こういうことを先方から言えば言うんじゃなかろうか。アメリカの国は、ダンピングと言えば非常にうるさい、財務省は大変うるさいので、かつて鉄鋼のダンピング問題、それからカラーテレビの問題があった。  関税局長さんお見えですが、カラーテレビのダンピング問題は現在どうなっているんですか。ひとつお伺いします。
  187. 松尾直良

    政府委員(松尾直良君) 申しわけございませんが、現状どうかちょっと正確に承知しておりません。
  188. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 時間が余すところなくなってしまったのでありますけれども、私は、専売公社としては、正当な価格で輸入すると、こういうことを相当強くお考えいただかないといけないんじゃないかと思います。この問題は円建てで買っておるという問題と相関連するので、もう時間もないから、ドル建て、円建ての問題に移らしてもらいます。  私は、日本の輸出はなるべく円建てでする方が好ましいし、輸入はドル建てでする方が好ましいと思います。本来そういうことが自然な姿である。と申すのは、為替レートが変わることによって、ドル建てで輸入していれば、円が強くなれば輸入の促進に動きます。それから輸出の場合は逆な方向に動くわけですから、外国の方から見れば、円建てで輸出するというのは非常な為替リスクを負うわけであり、また日本が円建てで買っておれば円が幾ら強くなってもその価格は下がらない。そういうことで、為替の変動というのは、これは貿易を調節する作用を持つべきものなんですから、そういう意味で、私は外国のたばこを買うときはドルで先方の価格で買いなさい、それが私は正当だと思いますが、なぜ円建て契約になってしまったのか。これは二年前からだと聞いておりますが、その経緯をちょっと説明してください。
  189. 長岡實

    説明員(長岡實君) 五十五年度まではドル建てでございまして、五十六年度の輸入品から、アメリカのメーカーとの話し合いの結果、円建てになったわけでございます。円建ての場合は、私どもとしては、その輸入価格と国内における小売価格との関係が非常にはっきりして有利な点もございますけれども、私が聞いておりますところでは、アメリカ側の意向が相当強く反映いたしましてドル建てから円建てに変わったと聞いております。  しからばアメリカ側がどういう考え方で円建てを希望したのかということでございますが、これはどうもはっきりはいたしませんが、当時円高が非常に進んでおりまして、ちょうどこの円建てに決めたころでいきますと、二百円をちょっと上回るぐらいだったと記憶いたしておりますが、今後も円高が進むのではないか、そうすればドルの手取りがふえて有利になるのではないかというふうに見て、円建てになったというふうに推察されるわけでございます。
  190. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 いまの総裁の答弁は、推察という言葉がありましたから推察の域を出ないわけですけれども、私の聞いている話は必ずしもそうでもないです。  ですから、もしドル建てでやった場合には、為替が変動するごとに日本の国内の外国たばこの価格がしょっちゅう動く。そうなれば消費者に非常に迷惑がかかるからそれは困る。こういうことでそうしょっちゅう売り値を動かされたんじゃ困る。専売公社が大蔵省と協議して、これは告示して価格を決めるんですね。ですから、意地悪されれば、しょっちゅう値段を動かして外国たばこが売れないように、計算機なんかは使えないと、こういうふうに持っていこうと思えばできる。そういうことをやられたんじゃたまらない。だから、円建てにしておけば同じ価格で自動販売機でも使えると。  いろんなことがあって、両方の言い分が違うわけなんだけれども、しかし私は適正な価格で輸入をするという場合に、円で契約してたんじゃ適正な価格であるかどうかはわかりませんね。ですから、どうしても私はドル建てに直して、しかもそんなに先方に毎月毎月価格が変わるなんという心配を起こさせないで、六カ月くらいの間の平均価格で、余りひどく動いたら直すと、こういうことであれば、先方も安心してドル建てで輸出をするに違いない。ほかの国の輸出も、六カ月単位でいろいろ精算をしているというようなことも言っております。そういう意味ですから、先方の希望で、先方がもうけたいからそういうことをしているというふうに解釈するのは、ちょっと一方的な面があるんで、そういう意味でこれも検討していただきたい。  いまの三〇%も安く買っておるということと、それから円建てで買っておること、この二点については私が先方の人の話を聞いた感触では、これはいずれも先方は何とかしなきゃならないというふうに考えているようです。  さっき申し上げたダンピングという話は、日本の国内でもそういう不公正取引という範囲があるわけですから、市場を支配しようとするダンピングというものは不公正なんだというのが普通の見解だと私は思っております。原価を割って売ればダンピングだとかいうことではなくして、適正な利潤も加えたところで、しかも一般よりもはるかに安く、アメリカの国内で売る庫出し価格よりも、あるいは諸外国どこへ出す価格よりも、日本には三割も安く売るということは、これは正常なことではない。アメリカ人はすぐわれわれに対して、日本はアンフェアだアンフェアだと言うんです。ですから私は、何でもフェアな取引ということを主張するアメリカの人は、こういうことをきわめてよくわかって、それは直さなきゃいけないと、こういうことを言っております。  そういう意味ですから、これは四月一日から新しい価格になるわけですけれども、すぐにはこの問題解決できなくても、これは一年がかりでもこの問題に取り組んで、なるべく早い機会にこの二つの点は直すように、私は専売公社並びに大蔵省の幹部の方に希望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  191. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十五分散会