○
参考人(
上田昭三君)
先生の御
質問は、先ほど申しましたような
サラ金弊害を防止するためにはどういった
内容の
規制法が必要であるのか、そして、それとの関連において現在
審議されている
規制法案の有効性はどうなのか、そういう御
趣旨の御
質問であったかと思います。それに対して
お答えを申し上げたいと思います。
サラ金の弊害は、先ほど申しましたように、大きく申しまして二つあるわけであります。まず、この暴利被害の
原因は、言うまでもなく、罰せられないのをよいことにしまして
サラ金業者が非常に高い
金利を取ることであります。本当にそれが非常に高いのかどうかという点はすぐ後で御
説明申し上げます。
次いで、弊害のもう
一つの暴力的な取り立てによる被害の
原因は、直接的にはこういう取り立て行為そのものと、それから借り主が悲惨な結果になることも承知の上で、ともかくもうかればよいということでなされるいわゆる過剰融資の二つであります。
消費者をこのように完全に食い物にするような冷酷非情な行為を同じ人間である
サラ金業者がなぜあえて行うのかと申しますれば、それは高利の融資で利益が大いに稼げるからであるものと私は考えております。こういうわけで、
サラ金の二大弊害の根本的な
原因は、結局のところ、高
金利を取っても罰せられないということをよいことにして、
サラ金業者がこの高利を飽くことなく取ったりあるいは取ろうとすることにあると見るわけであります。
さて、そのように見ます上は、
現実の
サラ金の
金利が大変な暴利を含む高利であるということを実証せねばならないと思います。
昭和五十六年末、一昨年末における全国
サラ金の加重平均
金利は約七〇%、年七〇%と推定されます。この七〇%という
金利がいかに暴利を含んだ非常に高い
金利であるかということをまず具体的に明らかにさしていただきたいと思います。
いつもよそでお話をしますときに申し上げていることでありますが、
金利というものはローンという商品の
一つの価格でございます。他のどの種の価格とも同様に、
金利という価格も、結局のところ、それはコストとそれから利益の二つの要素から構成されております。そこで、
サラ金専業といたしまして最小必要規模でありますところの従業員三人の
サラ金店が、ごく普通の努力で行い得るところの金額の融資について、その適正なコストと利益とを推定いたしまして合計いたしますと、どの規模の
サラ金業者にとっても低過ぎることのない
一つの
適正金利が出てくるものと思います。
こういうやり方で
昭和五十三年現在で算出しましたところの融資残高のうち、二十万円以内の部分についての
適正金利が、お手元の資料二ページの左側、表一「
サラ金の
適正金利の試算」のところの(イ)の欄に出ております。すなわち融資残高のうち二十万円以内の部分についての
適正金利は、縦の行(B)の貸出利率の右の方に出ております三六・五%と、こういう値が算出されたわけであります。
ちなみに、昨年五月七日に
衆議院の
大蔵委員会に
参考人として
出席されました全金連の会長の丸山さんは、この私の
適正金利の試算のコストの点につきまして次のようなことを発言されております。その部分だけをそのとおり申しますと、「大体
上田先生の論法は、集金に行くには自転車を使え、洋服は冬と夏一着ずつあればいい、靴だって一足でいいだろうというような計算」をしていると、そういう発言をなされております。
この私の試算のコストの出し方は、人件費につきましては、信用組合の従業員の
方々の平均給与を使っております。その他のコストにつきましては、四県の庶民金融業協会の
方々がお
つくりになりましたモデル
業者のコストを使っております。私はいま丸山さんが言われたような過酷なことを申し上げたわけでは決してございません。そうでないことは、私のその試算をいたしました論文を一目見ていただければよくわかることでありますので、非常に残念ではございますが、丸山さんは非常にいいかげんなことをこのとき言われたものと私は
感じたものであります。
もとに戻りまして、残高のうち二十万円を超える部分につきましての
適正金利は、その節に一四%と試算されたのであります。これがこの三六・五%に比べまして大変低いのは、御承知のとおり、大体
貸金業という業務は、一口当たりの貸出金額が大きくなりましても、ふえるコストというのは、借入資金の
金利と、それから貸し倒れ損失の二つのみでありまして、それらは、全体として言いますれば、わずかなものでございますので、小口に比べて大口の貸し出しをしましても、コストはほとんどふえず、ふえるのは利息収入のみということになります。そういう
関係でコストそのものについて言いますれば、大口の融資の場合非常に少なくてよいということで一四%という、そういった低い
数字が出てきたわけであります。
さて、こういう試算
金利三六・五%の
水準に対しまして、私の試算に対しまして
サラ金業界はその後全く反論をしてきておりません。もちろん何やかんやと不平めいたことはあちこちで言われておりますけれ
ども、客観的な資料を添えての反論というものはいまだに
一つもございませんでした。
ところで、実はこの五十三年の推計以来今日までの間にインフレによる
営業コストの上昇がございます。また一方では一口座当たりの平均融資残高や生産性が上昇しております。そこで、先ほどの五十三年の推計値の基礎の上にいま申しましたような変化を加味いたしまして、一昨年末現在で試算し直しました結果が、この同じ表の(ロ)の欄に出ております。そこに示されておりますとおり、五十六年末の試算の
適正金利は、融資残高のうち二十五万円以下の部分につきましては、
〔
委員長退席、理事増岡康治君着席〕
年三〇・九%、五十三年当時の
適正金利より五%余りも低下していることがわかったわけであります。
なお、この試算値は一口座当たりの平均融資残高や生産性の伸びの最も低い従業員三人という最小規模の
サラ金業者についてのものでありますので、融資残高や生産性の伸びの非常に大きい大手
業者につきましては、
適正金利はさらに一層低下しているものと思われるわけであります。
ところで、
先生方の中には、新しく試算をしたのはよいけれ
ども、年三〇・九%というのは余りにも低過ぎはしまいかと思われる方があるのではないかと思います。そこで、そうでないことの傍証といたしまして示しましたのが、この同じ二ページの右の表二の「
サラ金の実際の
金利、
適正金利その他の
金利の比較」というところであります。この比較をわかりやすくしますために、三十万円を借りた場合の当初の
金利で比較いたしますと、私の試算
金利では、この表の(A)(B)(C)の(C)の「報告者試算
適正金利」のこの列の一番右端の括弧の中に書いてございますように、三十万円の場合は二五・三%という
金利になります。それに対しまして、そのすぐ下の(D)の欄の米国の
上限金利は、括弧内に書いてございますように、二二・七%ということになります。
その他の外国ではどうかということをついでに見てみますと、同じ表の一番下の(
参考)というところに書いてございます西ドイツの
上限金利、それは金額によりまして一四%から二五%の範囲内、フランスの
上限金利は一五・八%から一九・五%の範囲内ということになっております。いずれも科罰
金利でございます。なお、資料の都合でそれぞれ一九七九年六月、または一九七八年十月現在のものであります。
こういった諸外国の
金利と比べてみますと、私の先ほど申しました試算
金利は低過ぎるどころか、むしろ高目でさえあることが御理解いただけると思います。
しかし、こういうことを申しますと、
サラ金業者はよくこのように言い返します。基礎条件の異なった外国の
金利は比較の対象にならないというわけであります。そこで、私はそういう
質問がありますと、では小口ローンに関して一体どういう基礎条件がそういった諸外国と
日本と違うのか、あれば言ってほしいといつも言うわけでありますが、いつも答えは返ってまいりません。
それはそれといたしまして、もう
一つの比較をいたしますと、同じ表の(E)の欄に
日本の大手信販会社、これは具体的にはライフという会社でございますが、その
金利が示されておりまして、この会社は、
サラ金と同じ手軽さの融資、即時融資を、融資額が五万円でも二七・六%という
金利で
現実に行っているわけであります。こういうことはこのライフだけじゃございませんで、他の大手信販各社とも同じようなことであります。
また、ここには掲げておりませんが、
先生方御承知のとおり、最近、小口金融
業界に大型流通
業者が続々進出しておりますが、それらが設定しておりますところの
金利も年二八%前後という
水準でございます。
サラ金とほとんど同じ手軽なローンを信販や流通
業者はこういう低い
金利でやっているのでありますから、それとほぼ同じ高さの私の試算
適正金利を低過ぎるとは
サラ金業者はよもや言うまいと私は思っております。
以上によりまして、私が新規に試算いたしました
適正金利は、少なくとも低過ぎるものではないということがおわかりいただけたのではないかと思うわけであります。
そこで、いよいよ、この
適正金利と比較することによりまして、
サラ金の
現実の
金利がいかにひどい暴利を含んだ高
金利であるかということをこの表二によってまた見てみます。この場合も、融資額三十万円のときの当初
金利に比較いたしますと、それの
適正金利の二五・三%に比べまして、
サラ金の当時の全国平均
金利は七〇%でございますので、何と四五%ほ
ども高いということになります。また
金利を引き下げたと言われる大手
業者の
金利は四七・四五%、一部の
業者は約四二%であります。大手は四七・四五%でございます。したがいまして、
適正金利に比べまして大手の場合でも二二%も高い。大変むちゃな
金利を借り主から取っているということになるわけであります。
適正金利を超える暴利の部分は、その
業者の一口当たりの融資額がすべて二十五万円以下で、したがって
適正金利が三〇・九%の場合でも、収入
金利七〇%のうち三分の一の二三%がそういった不当な
金利部分に当たるということになります。そして、この生産性の非常に高い大手
業者の場合では、収入
金利四七・四五%のうち三分の一強の一七、八%もが不当な
金利として稼がれているということが十分に考えられるわけであります。
具体的にいかに暴利が稼がれておるか、それが明確に資料に出ております。大手の場合についてみますと、資料の五ページ表五をごらんいただきたいのであります。「
銀行との対比における大手
サラ金四社の収益
状況」という表でございます。これに示されておりますように、
業界最大手の武富士は、昨年一年間で、経常利益百八十九億九千万円を上げております。プロミスは百六十六億一千万円、アコムは九十六億三千万円、レイクは百三億五千万円という経常利益の総額を上げております。これが大変な暴利を含んだものであるということは、先ほどの御
説明から御推察いただけるのではないかと思います。
別の角度からその点を見てみますと、たとえば上の方に全国
銀行のうちの都市
銀行の経常利益が幾つか出ております。預金額でナンバーワンの第一勧業
銀行の、これは昨年九月までの一年間の経常利益額でありますが、七百二十四億五千万円、あと第十位の大和
銀行が百九十六億円、少し飛びまして、十二位の埼玉
銀行が百八十一億円、十三位の北海道拓殖
銀行が百七十三億二千万円。大手
銀行、都市
銀行の下位行に対しましては、こういった大手
サラ金業者はそれらの経常利益額を上回るものを上げているということであります。
また、地方
銀行のナンバーワンであります横浜
銀行の同じ期間における経常利益は百五十三億、ナンバーツーの北陸
銀行は百十五億。この辺に比べますと、武富士、プロミスあたりははるかに多い利益を上げているわけであります。
私は大阪に居住いたしております。その大阪に泉州
銀行、それから池田
銀行といった地方
銀行がございます。私の住んでいるところと同じ
銀行を別に取り上げたわけじゃないんですが、ちょうどこの二つの
銀行の従業員数がそれぞれ千五百名で、プロミスとかアコムの従業員数とほぼ等しいわけでございまして、そういう観点から、四十三位、四十四位にランクされておりますこの二行を取り上げたわけであります。こういった
銀行の同じ期間における従業員一人当たりの経常利益は、泉州
銀行九十八万円、それから池田
銀行百十二万円というのが、これら二行の従業員一人当たりの経常利益でございます。
それに対して、大手四社の従業員一人当たりの経常利益がその下に列挙されております。比較しやすくいたしますために、泉州
銀行、池田
銀行の従業員一人当たりの経常利益額の平均を一といたしまして、
サラ金が一体何倍の利益を上げているか、それを示しましたのが一番右の列の
数字でございます。武富士の場合九・二倍、プロミスの場合九・九倍、アコムは六・四倍、レイクは六・五倍というまことに途方もない非常に大きな利益が上げられているわけであります。もちろん、正当な
理由に基づきまして上げられたものであるならば、いかに高い利益が上げられても、それはもちろんよいわけであります。しかし、そうでないところに実は問題があるわけであります。
なお、このように申しますと、
参考人の言っているのは、それは大手
業者だけの特異なケースではないのか、中小規模、零細
業者はそんなにもうかっていないのではないかと言われるのではないかと思います。そこで、典型的な零細
業者の
一つであります、仮名でございますが、一番下に出ておりますコーリンを取り上げます。これは従業員が、下の注のところに出ておりますように、対象期間中平均五・五人で、融資残高は一億六千三百万円という、まあ典型的な零細
業者の
一つであります。これにしましても、従業員一人当たり四百五十五万円で、どの地方
銀行よりもはるかに多い金額の利益を上げているわけであります。
そして、こういう暴利の結果の被害の規模が、五十六年度で、全体といたしまして、九千億円に達するものと思われます。普通にはとうていできないような過剰融資や非常に強引な取り立てを進んで
業者に行わしめておりますのは、私の考えますところでは、
サラ金業者独特の大変な強欲さと、それからこのような暴利が
現実に稼げるからであると思います。
そこで、こういうことの結果として発生しておりますところの
サラ金被害を防止いたしますためには、かかる暴利の生まれる高利を課すことができないように
法律で
規制いたしまして、問題の発生の根源を断つことが非常に重要であることがおわかりいただけるのではないかと思います。
サラ金諸悪の根源は高
金利にあり、
サラ金規制の眼目はこの
金利規制にあるとよく言われますのは、まさにこういう
理由からであろうと思います。
もちろん、この過剰融資そのものを、また強引な取り立てそのものを
法律で厳しく
規制いたしまして、被害、弊害の発生の防止に万全を期さねばならないことは申すまでもございませんが、ここではこの
金利の点を中心に、では有効な
規制をするために必要な
金利規制はどういうものかということを申しまして、そしてその後、現在
審議中の
法案における
金利規制はどう評価されるべきかという点のお話にこれから移りたいと思います。
まず、具体的にどういう
内容の
金利規制が必要なのか、研究者の立場から、全く中立的に客観的に分析
検討いたしまして出てきました結果の要点を示しましたものが、資料五ページの表六、「自民党
法案と必要な
法規制の
内容」でございます。その右側の「必要な
内容」のところでございます。
何にいたしましても、違反した場合には厳しい刑罰の科される
規制でなければならぬことは、申すまでもありませんが、それ以外に
金利規制をする上に第一に重要なことは、
上限金利の
規制の
方法であります。一般にその
方法としてありますのは、現行の
出資法におけるような融資総額に対して一律に
上限金利を
規定する、年一〇九・五%以上取ったら刑罰に処するという、そういう
規定の仕方と、それから次には、現行の
利息制限法におきますような、最初の融資
元本額の大きさに応じて段階
金利を決めるというやり方でございます。もう
一つは、米国などで一般に用いられておりますところの残高別
上限金利制というものでございまして、たとえば三十万円の総融資残高のうち二十万円を超える部分には年一四%、二十万円以下の部分には年三〇%の
上限金利をそれぞれ別個に課すというやり方でございます。こういう三つの
規制方法があるわけであります。
さきにちょっと申しましたように、一件当たりの融資額がふえましても、コストはさほど増加いたしません。そういう特徴が金融業にはございます。そこで
業者は、借り主にできるだけ多くの借金をさせて楽に利益をふやそうとするわけでありますが、こういう
業者の過剰融資行為に効果的にストップをかけ得る
金利規制の
方法は、先ほど申しました三つのもののうち最後の残高別
上限金利制度だけであると思われます。暴利を稼げないようにし、同時に過剰融資を抑止することが最も重要な目的であります
サラ金の
金利規制の場合は、その
規制方法といたしましては、当然にこの残高別
規制方法がとられるべきではないかと思います。
そして、この
方法の採用は何らむずかしいことはございません。いまから七十年も昔に米国でこういった
方法が採用せられて、今日に至っているわけでございまして、わが国においてそれを採用することに何ら困難があるとは思えないのであります。
そういう
規制方法をとりまして、その上で非常に重要なことは、では残高別の
上限金利をそれぞれ何%にするかということであります。要するに、それぞれの
金利において暴利が発生しないように定めることが必要なわけであります。この点につきましては、まことに手前みそでございますが、たとえば融資残高のうち二十五万円までの部分に対しては年三〇・九%、二十五万円を超える部分に対しましては一四%の高さに
上限金利を定めることが必要であると思われるのであります。
さて、以上のような必要にして実行可能な
金利規制の
方法及び
上限金利の
水準が
現実にございますのに、自民党
法案における
金利規制の
内容は、これは失礼な言い方かもしれませんが、一研究者の目から見ますれば、大変多くの問題がございまして、効果といたしましては、気休めのような効果しか期待できないのではないかと思うのであります。なぜそういうことを言うのか、そのわけを以下で簡単に申し上げたいと思います。
まず、自民党
法案におきますところの
金利規制の
方法は、融資総額に対して一律に同じ
上限金利を課す
方法がとられております。そしてその
上限金利は最終的に年四〇・〇〇四%になるように決められております。この
規制方法は、そこでの
上限金利が、どのような大口の融資をいたしましても、暴利が生まれないような、たとえば一五%というような十分低い
水準に決められているのなら、こういう
規制方法でもまだよいのでありますが、そうではなしに、ごく小口の融資の採算、たとえば一万円とか二万円とかいった小口の融資の採算が合うようなかなり高い
水準に合わせて
上限金利が定められている、こういう場合には、この種の
金利規制の
方法は、
業者に過剰融資をどんどんやりなさいと奨励するのと同じような効果を持っております。
なぜかと申しますと、たとえば五万円という非常に小口の融資が採算に乗るようにということで、
法案の作成者が
上限金利を四〇%に決められたといたします。このときに、一口四十万円という大口の融資を行いますと、コストはわずかしか増加いたしませんのに、利息収入は八倍に増加するわけであります。それゆえに
業者は常に借り主の希望額よりもできるだけ多く貸そうとするようになるからであります。
次に、自民党案における
上限金利の高さは、最終で四〇・〇〇四%となっております。これは先ほ
どもちょっと申しましたように、総額五万円ぐらいまでの非常に小さな融資に対しましては適正と言えるかもしれません。しかし現在、中小の
サラ金業者におきましてさえ、一口当たりの当初融資額は、これは一昨年末現在で平均二十万円に達しております。そこでの
適正金利は、前に申しましたように、三〇・九%でございます。それゆえに、
上限金利が自民党の四〇%のもとでは過剰融資をしなくてもかなりの暴利が稼げることになります。しかし現在の
営業金利の七〇%よりは収入が減少いたします。そこで、
サラ金の
業者のことでありますから、利益が前よりも少なくならないようにするために、融資額を押し売り的に大口化し、この結果、暴利の稼得が依然続きまして、過剰融資が、この
法案が成立いたしまして施行されましても、一層進行するように考えられるのであります。
以上、自民党
法案は
サラ金被害をなくすのに余り有効でないとする
理由を私なりに申し上げたわけであります。
いま申しましたことのいい証拠が
一つございます。すなわち近年、武富士などの大手の
サラ金業者は、
金利を従来の七三%あるいは五四・七五%から四七・四五%あるいは四一・九七五%にそれぞれ引き下げております。ところが、一口当たりの平均融資残高が、これらの
業者において、五十四年度末に比べまして、三年後の昨年度末にどれだけ大きくなっているかと申しますと、武富士が十六万円から三十四万円と二倍強に、プロミスが十九万円から三十八万円とちょうど二倍にと、大変な大口融資を実行しておりまして、そして相変わらずの巨額の利益を稼いでいるわけであります。したがいまして、自民党
法案によりますところの四〇・〇〇四%が実現いたしましても、現にその
金利で大変な暴利を稼いでいる
業者があるわけでございますから、そして一層大口融資を行っているわけでありますから、決して
規制効果が出てこないということが私はそれから言えるのではないかと思うわけであります。
要するに、申しますと、
サラ金被害を防止するための
金利規制は、暴利を稼げないようにするもの、そしてまた、それによって過剰融資への要因をなくす効果を持つものでなければならないわけでありますが、こういう効果は、自民党の
規制法案のように、一律の
上限金利規制方式で、しかもその
上限金利が年四〇%という
金利規制内容では、その
規制効果は出てこないのではないかと考えざるを得ないわけであります。
ところで、以上の私の自民党
法案に対しますところの評価は、四〇%の
上限金利が五、六年後に確実に実施されるものとした場合のそれでございます。こういう条件のもとでも効果的にはそういうふうにしか評価できないのであります。
〔理事増岡康治君退席、
委員長着席〕
しかし、この
法案はさきに、
衆議院に提出される直前になりまして、四〇%の実施の時期を全くあいまいなものにする
内容に突然改められまして、さらに附帯決議におきましては、四〇%を実施しないときの後始末の仕方まで書かれているのであります。こういう条件のもとでは、本
金利規制案に対する評価は最低をさらに下回らざるを得ないということになるものと思われます。
その上、もう
一つ重大な問題がございます。現在の
法案の
規制金利水準は、五十五、六年ごろの
サラ金営業の
実態を基礎にしてお考えになったのではないかと思われるのであります。実は、さきに申しましたように、その後融資額の大口化が一層進行いたしております。その一端は、たとえばこの配付さしていただきました資料の三ページの図の二に棒グラフで示してございます。余り時間をとってはなりませんので、図の
説明は省略さしていただきます。
このように、とにかくその後融資額の大口化が非常に進行しておりますところから、もともと私の考えではございますが、緩やか過ぎた自民党
法案の
上限金利が、いまや全く
意味のないほど緩やか過ぎるものになってしまったということであります。この
意味からも、この一年における
サラ金営業の
実態の大きな変化という
意味からも、この
法案の
内容は根本的に再
検討されねばならないのではないかと私は考えるわけであります。もしこのまま成立してしまいますと、
規制効果はないばかりか、悪質
サラ金擁護法、いや悪質
サラ金奨励法というようなことになってしまうのではないかと思います。
ところで、先ほど来、厳しい
金利規制の必要なことはわかるんだけれ
ども、一挙にそれをすることは余りにも問題が多過ぎるというような
趣旨の御発言がございました。私は決してそうであるとは思いません。もし現在の高
金利が正当な
理由に基づくものでありますれば、そしてなおかつ、ともかく高過ぎるからそれを低くしなければいけないということで引き下げるという場合には、それはできるだけそういった混乱を避けるために漸進的に引き下げていくということは確かに私は必要であろうかと思いますが、しかしながら、現在の
サラ金の非常に高い
金利は決してそういった妥当な
理由に基づいて高くなっているのではございません。暴利、冗費によって高くなっている。それを一挙に取り去ることがなぜいけないのか、私は非常にその点疑問に感ずるわけであります。
いまから七十年前、年二〇〇%あるいは一〇〇%というような非常に越高
金利が横行いたしておりましたアメリカにおきまして、一九一〇年代にニュージャージー州などを含む十州で一挙に
上限金利年三六・五%、金額によってはもっと低いものにするという、そういう小口金融の
規制法が制定、実施されているわけであります。それからいまや七十年たっているわけであります。文明国の
一つと言われる
日本におきまして、せめてその程度の
金利規制を含む
サラ金規制法がもし制定されないといたしましたら、私は非常に国際的にも恥ずかしいことになるのではないかと思っているわけであります。あらゆる
意味から申しまして、
法案の
内容の根本的な見直しがなされるべきであるということをここでもう一度強調さしていただきたいと思います。
どうも大変長々と申しまして失礼いたしました。以上でございます。
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