○国務大臣(竹下登君) 今後における
財政金融政策につきましては、先般の
財政演説において申し述べたところでありますが、本
委員会において重ねて所信の一端を申し述べ、
委員各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。
わが国経済は、国民生活安定の基本である物価がきわめて落ちついているとともに、毎年三%以上の成長を遂げ、現在も、
個人消費に支えられた内需中心の成長に移行し、諸外国に比べて格段の
実績を示しております。しかしながら、世界経済の回復のおくれから、輸出の減少が見られ、
生産、出荷も伸び悩むなど、経済・社会構造の変化の中で厳しい対応が迫られている分野も見られます。このような
状況に対応して、
政府は、昨年、総合経済
対策を決定し、その着実な実施に努めているところであります。
国内金融面では、金融緩和基調のもとで、昨年十二月以降二回にわたり
長期金利の引き下げが実施されたところであり、今後の景気回復の明るい材料になるものと
考えられます。
世界経済は、インフレの鎮静化などを背景に、徐々に回復するものと見られ、
日本経済も内需を中心とした自律的な回復の道を歩んでいくものと期待しております。
今後とも、経済情勢を見守りつつ、適切な
財政金融政策の運営を行ってまいる所存であります。
国際協調のもとで、調和のある対外経済
関係を形成することは、自由貿易に多くを依存するわが国の安定と繁栄のための不可欠の条件であります。
政府は、一昨年以来二度にわたり、関税率の撤廃・引き下げ、輸入検査
手続の改善等を内容とする市場開放
対策を決定し、着実に実施してまいりました。
さらに、わが国の市場開放を一層推進するとの見地から、今回新たな対外経済
対策を決定し、欧米の関心が強いたばこ、チョコレート、ビスケット等の関税率の思い切った引き下げ、輸入検査
手続の一層の
改善措置等を行うことといたしました。これらの
措置が着実に実施され、自由貿易体制の維持強化に資することを強く期待するものであります。
債務累積問題に端を発する国際金融不安の問題につきましては、債務国、債権国、IMF等がそれぞれ適切に対応することによって、これを回避できるという共通の認識が形成されつつあります。また、今回の十カ国蔵相会議において、IMFの資金基盤の強化の問題につき大きな前進が見られましたことは、国際金融の安定に貢献するものと
考えます。
次に
財政改革について申し述べます。
わが国の国債残高は約百兆円に達し、経済全体が比較的良好な中で
財政の困難が際立っております。
財政の立て直しは、単に
財政赤字の解消にとどまるものではありません。それは社会・経済の進展に合わせ、歳出・歳入構造の見直しを行うことにより、新しい時代の要請に即した
財政の対応力を回復する
財政改革でなければなりません。
このためには、まず歳出面におきまして、現下の諸情勢と将来への展望を踏まえ、国、
地方、企業や家庭の役割り分担など行
財政の守備範囲を見直し、歳出の徹底した洗い直し、一層の合理化を行うことであります。また、歳入面におきましても、社会・経済構造の変化に対応して、歳入構造の合理化、適正化に努めるとともに、行政サービスの受益と負担のあり方という観点から、基本的見直しを行う必要があります。このような方針のもとに、
特例公債依存体質からの脱却とさらには公債依存度の引き下げに努め、
財政の対応力の回復を図ってまいる所存であります。
内外経済情勢は今後ともなおきわめて流動的なものと
考えられ、
財政改革への道は険しく容易ならざるものがあります。しかし、私は以上のような
考えに立ち、国民の真の理解と協力を得つつ、
財政改革を進めていく所存であります。
このような観点から、
昭和五十八年度
予算におきましては、まずもって前年度より一段と厳しい歳出の削減を図りました。
概算要求の
段階におきましては、画期的なマイナスシーリングを採用し、各省庁に対して、所管
予算の厳しい見直しを求めました。その後の
予算編成に
当たりましては、聖域を設けることなく、並々ならぬ決意をもって徹底した歳出の削減を行いました。この結果、一般歳出の
規模は三十二兆六千百九十五億円と、前年度を下回るものとなっておりますが、これは
昭和三十年度以来のことであります。
補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、従来にも増して積極的に整理合理化を行うことといたしました。
また、
食糧管理費の
節減合理化、医療費の適正化、国鉄
経営の合理化等を一層推進したところであります。
これらの結果、一般会計
予算規模は、前年度当初
予算に比べ、一・四%増の五十兆三千七百九十六億円となっております。国債整理基金への繰り戻し額を除いた、実質的な一般会計
予算規模は、対前年度三・一%のマイナスとなっているのであります。
このように、
昭和五十八年度
予算は一段と厳しい
財政事情のもとにありますが、その中にあって、中
長期的観点から充実を図る必要があるものや真に恵まれない人々に対する
施策等につきましては、特に配慮いたしました。
歳入面におきましては、きわめて厳しい
財政事情にかんがみ、特別会計、特殊法人からの一般会計納付、たばこの小売定価の改定等を実施することにより、税外収入について格段の増収
努力を行うこととしております。
また、最近の社会経済情勢にかんがみ、税負担の一層の公平化、適正化を図るとの観点から、租税特別
措置の整理合理化等を推進することといたしました。一方、中小企業の基盤強化、住宅建設の促進等に資するため、所要の税制上の
措置を講ずることとしております。
なお、税の執行につきましては、国民の信頼と協力を得て、今後とも一層適正、公平な税務行政を実施するよう
努力してまいる所存であります。
公債につきましては、さきに申し述べました歳出歳入両面の
努力により、その発行予定額を前年度補正後
予算より一兆円減額し、十三兆三千四百五十億円といたしました。その内訳は、建設公債六兆三千六百五十億円、
特例公債六兆九千八百億円となっております。この結果、公債依存度は、二六・五%となっております。
財政投融資
計画につきましては、これまでになく厳しい原資事情にかんがみ、対象機関の事業内容や融資対象を厳しく見直し、真に緊要な事業に重点化を図ることにより、その
規模を抑制する一方、民間資金の活用を図り、対象機関の円滑な事業執行の確保に配慮したところであります。
この結果、
昭和五十八年度の
財政投融資
計画の
規模は、二十兆七千二十九億円となり、前年度当初
計画に比べ二・〇%の増となっております。
以上、
財政金融政策に関する私の所見の一端を申し述べました。
本国会に
提出し御審議をお願いすることといたしております
大蔵省関係の
法律案は、
昭和五十八年度
予算に関連するもの八件、その他一件、合計九件でありますが、このうち八件につきましては、本
委員会において御審議をお願いすることになると存じます。それぞれの内容につきましては、逐次御
説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第であります。