運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-02-10 第98回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月十日(木曜日)    午後一時二分開会     ─────────────    委員異動  一月十八日     辞任         補欠選任      赤桐  操君     青木 薪次君  一月二十一日     辞任         補欠選任      青木 薪次君     赤桐  操君  一月二十七日     辞任         補欠選任      赤桐  操君     鈴木 和美君  二月九日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     下田 京子君  二月十日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     関口 恵造君      藤田 正明君     宮澤  弘君      下田 京子君     近藤 忠孝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 穐山  篤君     委 員                 上田  稔君                 衛藤征士郎君                 河本嘉久蔵君                 鈴木 省吾君                 関口 恵造君                 塚田十一郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 宮澤  弘君                 鈴木 和美君                 桑名 義治君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 下田 京子君                 柄谷 道一君                 野末 陳平君    衆議院議員        大蔵委員長代理  大原 一三君        大蔵委員長代理  伊藤  茂君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   遠藤 政夫君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        国税庁次長    酒井 健三君        国税庁税部長  角 晨一郎君        国税庁間税部長  加茂 文治君        国税庁調査査察        部長       大山 綱明君        農林水産大臣官        房審議官     古谷  裕君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示監視課長  高場 俊光君        国税庁国税不服        審判所次長    西内  彬君        農林水産省食品        流通局野菜振興        課長       木村 春夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十七年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案衆議院提出) ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件) ○派遣委員の報告に関する件     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る一月二十七日、赤桐操君が委員辞任され、その補欠として鈴木和美君が、また、昨九日、近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として下田京子君が、また、本日、藤田正明君及び嶋崎均君が委員辞任され、その補欠として宮澤弘君及び関口恵造君がそれぞれ委員に選任されました。     ─────────────
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 昭和五十七年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案議題といたします。  まず、提出者衆議院大蔵委員長代理大原一三君から趣旨説明を聴取いたします。大原一三君。
  4. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) ただいま議題となりました昭和五十七年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案につきまして、提案趣旨及びその概要を御説明申し上げます。  この法律案は、二月八日、衆議院大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものであります。  御承知のとおり、政府は、昭和五十七年度におきまして米の生産抑制の徹底と水田利用再編成を図るため、稲作転換を行う者等に対し、奨励補助金交付することといたしておりますが、本案は、この補助金に係る所得税及び法人税について、その負担の軽減を図るため、おおむね次のような特例措置を講じようとするものであります。  すなわち、同補助金のうち個人交付を受けるものについては、これを一時所得とみなすとともに、農業生産法人交付を受けるものについては、交付を受けた後二年以内に固定資産の取得または改良に充てた場合には、圧縮記帳特例を認めることといたしております。  なお、本案による国税減収額は、昭和五十七年度において約十二億円と見積もられるのでありまして、衆議院大蔵委員会におきましては、本案提出を決定するに際しまして、内閣の意見を求めましたところ、稲作転換必要性に顧み、あえて反対しない旨の意見が開陳されました。  以上が、この法律案提案趣旨とその概要であります。  何とぞ速やかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  5. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 穐山篤

    穐山篤君 農水省にお伺いしますが、五十七年も五十六年も当奨励金が出ておったわけでありますが、昨年、五十七年度の交付実態をまず数字説明をいただきたいと思います。
  7. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 五十七年度の補助金額、これは補正後の予算でございますと三千六百十一億ということになってございますが、これを転作協力農家約三百十七万戸に配分するということになっております。
  8. 穐山篤

    穐山篤君 単純に計算をすれば、農家世帯当たり金額もわかるわけですけれども、当然農業規模がみんな違いますね。したがって、農家一戸当たり規模のところ、それから中規模のところ、大規模のところ、こういうところにはどのくらいの補助金交付されているんですか。
  9. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 五十六年度に転作等を実施しました農家につきまして、これは先ほど申し上げましたように約三百万戸あるわけでございますが、このうち一万四千戸を選定して昨年調査を実施したわけでございますが、この調査結果でございますと、私ども調査はいわゆる転作面積規模別にどういうふうな状況になっているかということで調査したわけでございますが、全体で、今回非課税の特例措置の適用を受けます五十万円以下の階層転作階層の約九七・五%が含まれておるというふうなことになっております。
  10. 穐山篤

    穐山篤君 最高ではどのくらいの補助金がいっているんですか。
  11. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 三百万円以上の奨励補助金交付された階層、これが〇・一五%ということでございます。
  12. 穐山篤

    穐山篤君 わかりました。  さて、水田再編計画、長い間継続をしているわけですが、これだけの補助金を、五十七年度は三千六百億ですか交付をして、農家の経済にどういうふうな程度のメリットを与えているのか、あるいは農業生産全体についてこの補助金というのが十分活用されていると評価をした方がいいのか、その点についての見解はいかがなものでしょう。
  13. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 奨励補助金の額につきましては、第二期対策発足させたときに決めたわけでございますが、そのときの考え方は、稲作経営稲作から移る転作経営、この収益性格差、これをある程度考えなければならないということと、もう一点は、転作定着化ということを図っていく、この二点で奨励補助金水準あるいはその仕組みを決めたわけでございますが、農家経営収支という点から見ますと、転作奨励金によりまして、いわゆる稲作をやめる部分の所得の減、これを相当部分補っているというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一点、収支の均衡ということだけではなくて、稲作から転作ということを契機にしまして、地域農業生産全体を振興するということも必要でございますし、そういうことで第二期対策におきましては、計画加算あるいは団地化加算というふうな奨励金の制度をとっておりますが、そういうものを活用しまして、地域ぐるみでの農業生産構造再編成を進めていくという契機はある程度出てきたのではないか。積極面はそういうふうに評価しているわけでございます。
  14. 穐山篤

    穐山篤君 次に、この補助金交付当たりまして、時期的な点で、私の地方とよその地方では違いがあるかもしれませんが、夏場査定をいたしますよね、減反についての査定。そのときにおおむね半分程度といいますか、一定金額補助金交付される。最終的に水田再編がきちっと決まり、それから収穫も終わった後で最終的に総額三千六百億円が交付されるわけですね。大体私の知っている範囲で言いますと、山梨県のような場合では精算は十二月になっているわけです。  そこで、農水として、補助金をどういう時期に、どういう考え方で逐次地方公共団体なりあるいはそれから農協に振り込んで、農家個人のところにどういうふうに補助金が手渡しになるのか。標準的なところで結構ですが、明らかにしてもらいたいと思います。
  15. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) いまお話ございましたように、いわゆる転作等をいたしますと、確認という行為を行うわけでございまして、これは夏場にやるわけでございますが、そこで確認できた段階基本額の二分の一の概算払いをするということでございます。  先生御承知のように、奨励補助金交付関係事務は、都道府県知事、それから知事から市町村長にお願いしておるわけでございますが、その交付関係手続、つまり現地確認がなされまして、具体的に奨励補助金個人的に幾らになるということがわかりました段階で、直ちに精算払いをするというふうな仕組みになっております。
  16. 穐山篤

    穐山篤君 一説に、金の交付はこれに基づいてやってもらうわけですが、この補助金が滞留しているという。たとえば地方公共団体一定の期間滞留する、それから市町村に滞留する、農協に滞留して、個人に来るときには十二月の年末ぎりぎりに来るわけですね。こういうことについてかつて私は決算委員会でも問題の提起をしたわけですが、そういう問題についてどういうふうに実態を掌握されているのか、あるいはそういう問題についてどういうふうに改善措置を図っているのか。その点いかがですか。
  17. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 奨励金交付手続は、都道府県—市町村のラインでお願いしているわけでございますが、具体的な補助金交付決定がなされましたその補助金交付、これは都道府県あるいは市町村財政を通らないで直接農業者交付される。つまり農協を通じて個人交付されることになっておりまして、私、農協段階で直ちに個人のふところにすぐ入らないというふうには承知しておりません。なぜかと申しますと、農協の口座に大体金が振り込まれて個人への支払いになるというふうな仕組みになっておりますので、そういうことでございます。
  18. 穐山篤

    穐山篤君 そこの点は、私が実際に調べたものといまのお答えでは大分違いがあります。そのことをいま時間の都合で多く申し上げることは避けたいと思いますけれども、この資金の運用についてできるだけ効率的に措置をするというのは当然なことだし、またそれが国民の声でもあろうと思うんです。その点はまた別の機会に明らかにしていきたいと思います。  さて、また五十九年度から第三期対策発足をすると聞いているわけです。先ほどお話がありましたが、転作定着化を図りたい、これが前提条件基本戦略になっているわけですが、この第三期を通して、実際に水田面積というものをどの程度規模にして、穀物の生産量をどのくらいにするのか、あるいはそれで言うところの食糧安全保障の問題について農林水産省としてはどういう見解をお持ちになっているのか。今後の減反政策ないしはいま申し上げました食糧の主食の確保という問題についての御見解を伺っておきたいと思うんです。
  19. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 昭和五十三年度に、今回の水田再編対策発足させたわけでございますが、その後昭和五十五年にいわゆる六十五年の農業関係見通しというものができたわけでございます。その見通しの枠内と申しますか、見通しというものを念頭に置きましてこの二期対策も続けてきたわけでございまして、どうしても米の消費が減少するということから、長期見通しにおきましては、将来六十五年時点で七十六万ヘクタールぐらいの水田転作が必要になるのではないかというふうな見通しでございまして、それに対応してこの水田をどういうふうに使うか。  基本的には、私ども現在進めております日本の国内で自給力を上げていく必要のある飼料作物、麦、大豆というふうなものを中心に進めておるわけでございますが、こういう基本的な枠組みというのは、昭和五十九年度発足の第三期対策でも貫いていきたいというふうに思っておるわけでございます。  ただ、具体的な面積になりますと、これは今後の米の需給動向なり、あるいは先ほどお触れになりました転作定着化状況がどうなっているかということもございますので、そういうものを見きわめまして、今後まとめてまいりたいというふうに考えております。
  20. 穐山篤

    穐山篤君 かつて、日本農地をどういうふうに考えるか、あるいは転作考えるかという議論があったわけですが、そのときに耕地面積というのは五百五十万ヘクタールを基準にする、そういう話を明らかにした時点があったわけですが、すでに五百五十万ヘクタールを基準にすると言ってはおりましたけれども昭和五十六年度の決算状況を見てみますと、五百四十三万ヘクタールまで下がっているわけですね。そこで、日本農業というものは将来どうなるだろうという不安と心配をみんなしているわけです。  きょうはその細かい議論をするつもりはありませんけれども、戦略的にどこまで日本農地を縮小するのか、あるいは水田というものをどこまで縮小する——結局、縮小して、耕地面積一定のところは広くして生産性を上げてコストを下げる、こういう理屈でありましょうけれども、どこまで第三次でやればこれで減反というのは終わりになるんだ、こういうものが明示をされませんと、農家全体も安心が持てないし、ましてや消費者の立場でも同じようなことが言えると思うんです。その点についてもう少し数字がおわかりになるならば明らかにしてもらいたいんです。
  21. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 農地面積五百五十五万ヘクタールという枠組みは、これはいまおっしゃいましたように、現在五百四十三万ではないかというお話はございましょうが、長期的な枠組みとしては、これは維持していくというふうに私ども考えております。  ただ、水田面積、これについてどうかということでございますが、現在の段階で、先ほど六十五年見通しのことを申し上げたわけでございますが、現在の米の消費あるいは単収の動向その他を考えますと、六十五年見通しにおきましては、水稲の作付面積が約二百万ヘクタールをちょっと切るような百九十六万ヘクタールという面積になるのではないかという見通しがあるわけでございまして、そういうものを念頭に置いて第三期対策考える必要があるのではないかというふうに思っております。
  22. 穐山篤

    穐山篤君 最後に農水並び大蔵省にお伺いしますが、農業問題についての臨調意見というものが出されております。なかんずくこの減反に関する奨励金のあり方についても指摘がされております。今回こういう法律共同提案によって出ておりますが、臨調答申をこの種の問題に当てはめる——臨調を最大限に尊重するという中曽根総理大臣の気持ちから考えてみて、これからどういうふうに農水省は対応しようとするのか、あるいは財政的な見地から大蔵省はどういうふうに対応するのか、その点をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  23. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 水田利用再編対策の進め方につきましては、私ども従来から奨励金に依存しない転作営農の確立ということを基本的な目標として進めてきたわけでございます。臨調答申の基本的な考え方も私どもとそう大幅に変わっているとは思っておらないわけでございます。  ただ、具体的にその奨励金依存からの早期脱却というふうなことになりますと、私ども現在の日本農業灌漑農業というふうな基本的な特質を持っているということから考えまして、また他の作物との収益性格差あるいは転作条件がどうなっているかというふうなことを考えますと、そう簡単にはいかないのではないか。ただ、やはり方向としてはこういう方向を目指すというのが私ども考え方でございますので、その具体的な考え方としましては、先ほど申し上げました昭和五十九年度からの第三期対策の中で具体的な考えをお示ししたいと思っております。
  24. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 米に関します予算の問題は、いわゆる三Kの一つとして節減合理化を強く求められているところでございます。臨調答申では、たとえば水田利用再編対策につきましても、「転作定着化需給を反映した米価の設定、転作作物生産性向上等により、転作奨励金依存からの早期脱却を図る。」と指摘されております。「このため、第三期対策においてこれを具体化する。」と言われておりますので、これは五十九年から始まる話でございますが、今後この趣旨を尊重して農水省十分相談をしてまいりたいと思っております。  また、食管全体についても、市場原理の導入、たとえば生産者米価についても生産抑制的に定めるとか、売買逆ざや早期に解消するとか、政府管理経費の縮減を図る等々の御指摘をいただいておりますので、これを尊重して今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  25. 多田省吾

    多田省吾君 本法案に関連しまして農水省にお伺いいたします。  まず初めに、水田利用再編対策の基本的な考え方と、それに伴う実施状況についてその実績を御報告いただきたいと思います。さらに、五十七年度の水田利用再編奨励補助金はどの程度交付される見込みか、また転作農家一戸当たりではどのくらいになりますか、簡明にお述べいただきたい。
  26. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 水田利用再編対策基本的考え方といたしましては、何と申しましても、まず米の生産計画的に調整するということが第一でございます。これは、この政策自体が米の過剰問題に端を発したということから来る必然的な要請であるわけでございます。  第二点としましては、需要の動向に応じた農業生産再編成、具体的に申しますと、自給力向上必要性の高い飼料作物大豆、麦というものを重点として他作物への転作を進めていくということでございまして、これを長期の事業としまして昭和五十三年度から進めておるわけでございまして、今後とも、過剰米の発生を防止し、かつ生産性向上によります定着性の高い転作営農を確立するという考えで進めてまいりたいと思っております。  それから昭和五十七年度の水田再編対策実施状況でございますが、面積的な面で申しますと、目標面積としましては、六十三万一千ヘクタールということでやったわけでございますが、実績といたしましては、一〇七%、約六十七万ヘクタールの転作等が行われたということでございます。地域ブロック別に見ますと、若干の差はございますが、各地域とも目標面積を上回っているというふうな状況でございます。  それから転作実施状況態様別に見ますと、前年度と面積が同様に据え置かれたということもございまして、大体同じような傾向をたどっているわけでございますが、ただ特徴的な点と申しましては、前年度に比べますと、転作が一万一千ヘクタールふえたのに対しまして、管理転作土地改良通年施行がそれぞれ若干の減となっておるというふうな状況でございます。  それから、これも先ほどちょっとお答え申し上げましたが、五十七年度の奨励補助金についての交付額、これは予算額としましては、現在三千六百十一億ということで、これを五十七年九月現在の交付対象農家数三百十七万戸で割りますと、十一万四千円という数字になっております。
  27. 多田省吾

    多田省吾君 次に、五十八年度の転作目標面積はどのように定めておりますか。またこの転作面積対策期間中は変更しないということでございましたが、実際は五十五年から五十八年まで毎年度変更されております。これは冷害等原因になっていると思いますが、計画変更の理由を御説明いただきたい。
  28. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 五十八年度の転作等目標面積につきましては、五十七年産米作況が直接的な原因となっておりまして、この作況が九六%ということでございます。昭和五十五、五十六年産米に引き続き、三年連続不作というふうなことになったわけでございますので、このため米の政府在庫水準が低下しまして、この点で若干の在庫積み増しを行う必要があるということがございます。こういうことを踏まえまして、五十八年度の面積につきましては、七万七千ヘクタールを減じまして六十万ヘクタールとしたということでございます。  具体的に申しますと、五十八年の十月末の政府持ち越し量が約十万トンぐらいに減少するということが見込まれるという状況でございましたので、来年、つまり昭和五十九年十月末の政府持ち越し量を約六十万程度にふやしておくということのためには、五十八年産米において四十五万程度在庫積み増しを行うことが必要になるわけでございまして、これに相当する面積が七万七千ヘクタール、これを第二期目標面積六十七万七千ヘクタールから引いた数字が六十万というふうになったわけでございます。  それから御指摘のように、第二期対策以降毎年面積を減らしているのではないかという御指摘がございました。これはお話しのように、五十五年度は相当の冷害がございまして、そういう冷害というものを考えまして転作円滑化のために講じた措置でございまして、この同じ状況は五十六年も続いたわけでございます。  五十七年産米関係、これも先ほど申し上げましたように、三年連続不作ということで、今回の措置もやはり米の作況が低下したということによるものと御理解いただきたいと思います。
  29. 多田省吾

    多田省吾君 それから転作の推進及び定着化のためには土地基盤整備等転作条件整備が不可欠であると思いますけれども、今後どのような計画整備を進める御予定か。  それからもう一点は、農業所得を高めるためには転作作物収穫量を高めるための技術改革努力が必要だと思いますが、この生産性向上について農水省はどのような努力をされておりますか。  この二点、簡明にひとつお答えいただきたい。
  30. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 御指摘のように、まさに水田利用再編対策を円滑に推進するためには土地基盤等条件整備が重要でございます。従来から各般の施策拡充強化を図ってきたところでございますが、今後におきましても、厳しい財政事情のもとでございますけれども、それぞれ努力してまいりたいと思います。  具体的にはその物的な条件整備ということがまずあるわけでございまして、これは特に排水改良ということが必要だと思います。この点につきましては、公共事業でも特別な事業を取り上げていくということとあわせまして、公共事業に乗らない規模の小さいものにつきましてもそれぞれ助成を行うとか、そういうことで対応しているわけでございます。  また、質的な面と申しますか、この転作を進めていくに当たりまして、物的な整備とあわせたいわゆる地域ぐるみの取り組み体制をどういうふうに進めていくかということが大事でございます。この点については集落ぐるみの転作の取り組みということを進めまして、地域での営農集団の結成というところまでいくような進んだ地域も出ておるわけでございますが、そういう方向を強めていきたいと思っております。  さらには、転作作物に対する普及組織を通じての技術指導ということを強めていく必要があろうということで努力しているところでございまして、特に転作作物については収量増等の技術指導を強めるというふうな御指摘に対しましては、まことにごもっともでございまして、大豆、麦等についてやはり収量を上げるとともに、品質のいいものをつくっていくというための技術的な指導、あるいは研究の強化ということが非常に大事なものと思っております。
  31. 多田省吾

    多田省吾君 それから主食用以外の飼料米とか多用途米の実用化の見通しが立つならば、水田に畑作物を植える必要はなくなるわけでございまして、水稲を作付けて水田水田として利用する方が理にかなっているわけでございますが、ただ残念ながら非常に値段が低くなるというような隘路もございます。多用途米の実用化の見通しをどう考えていますか。
  32. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 多用途米と申しますと、いわゆるおせんべい等の加工用米とかあるいはアルコール用、さらにはえさ用というふうに非常に多岐にわたるのではないかと思いますが、いま御指導がございましたように、収益性の問題というのがこれは第一でございまして、その格差を縮小するためにはどうしても単収を上げていくということが必要でございます。  この点については農水省の試験研究機関でも研究の重点事項として進めているところでございますが、まだ具体的にすぐ実用化になるかどうかというのは、現在のところ試験研究実施中ということで、いつからということを申し上げられないわけでございますが、いずれにしましても、この問題は今後の米需給見通し、あるいは私どもが担当しております転作、さらには備蓄をどうするかということも絡んでくるわけでございます。現在、省内で関係者による検討会を持ちまして鋭意検討を進めているところでございます。
  33. 多田省吾

    多田省吾君 最後に、農水省と、それから大蔵省にもお尋ねしておきますが、先ほども御質問がございましたけれども、現在の第二期対策は五十八年度で終了することになっております。臨調指摘もございますけれども、第三期対策についてどのように考えておられるか、この一点をお尋ねして終わりたいと思います。
  34. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 第三期対策については、目標面積をどうするか、さらに奨励補助金をどうするか等の枠組みをこれから決める必要があるわでございまして、今後米の需給動向転作定着化状況等を見きわめながら、昭和五十九年度予算編成までの間に定めたいと考えておるわけでございます。その際には、先ほどもございました臨調の御指摘、あるいは昨年八月の農政審の報告の趣旨も踏まえまして十分に検討してまいりたいと思っております。
  35. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 第三期対策は五十九年度からでございますので、いま農水省からもお答えがありましたように、五十九年度予算編成のときまでに十分検討してまいりたいと思っております。
  36. 下田京子

    下田京子君 ただいま議題になっております水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案につきましては、まず御要望だけ申し上げておきたいと思うんです。これは稲作転換に伴う減税措置でございます。これは当然必要だ、引き続き継続をということをまず冒頭にお願いしておきます。  続いて、他の委員からもいろいろ御指摘になっておりますけれども、第三期以降の転作奨励金のあり方の問題です。財政審や臨調等が奨励金依存からの早期脱却ということで、つまりこの奨励金補助金のカットの方向を打ち出してきております。先ほど農水省の答弁ですと、そう簡単にはいかないけれども、具体的には第三期に入ってから検討ということでございますけれども、現に五十七年度で約十二億円相当分の減をしなければならない。こういう事態を考えて継続を強く私は要望しておきたいと思うんです。  ところで、関連してお伺いしたいのですけれども、最近の納税申告のあり方、税務調査のあり方等について社会的にも大問題になるようなことが出ております。これは御承知かと思うんですけれども、六年連続の減税の見送りということでもって国民は重税感で非常にあえいでおります。同時にその中で根拠のないクロヨン攻撃がなされております。そして業者、農民等についてのその税申告調査のあり方というのも目に余るものがあるんです。  具体的にお聞きします。私、昨日、宮城県の塩釜に参りました。そのときに訴えられた事案でございます。事は、宮城県塩釜市の鮮魚卸業中卸業を営む五十七歳の高橋三男さんという方からの訴えです。昨年の十月十九日に仙台国税局職員二名が前ぶれもなく高橋さん宅に参りました。身分証明書を見せまして税務調査で参ったことを告げられました。ところがその日御本人の高橋さんは入院中です。しかも喉頭がんの疑いでもってのどを手術して四日です。御家族の皆さんは寝ずの看病で交代でもう疲れ切っている。その中にあって、奥さんが事態の深刻さに驚きました。しかし主人でなければ経営とか経理の状況はわからない、私もすぐ病院に行かなきゃならない、看病に行かなきゃならないんだ、退院するまで待ってくれないかと、こう言われた。ところが、いや、本人はいなくたっていい、三十分ぐらいで終わる、こういうことを告げていろいろと調査に入られた。一万円札何枚か、千円札は幾らか、種類別のを全部出させた。書類も見た。二時間に及ぶ調査が一方的にやられて、連続四日、二名が見えた。四日後には一方的に修正申告書なるものを持ってきた。奥さんは見て驚いた。金額にしますと、何と一千百八十一万七千三百円。そういうもので、これは主人に相談しなければだめだと断られたにもかかわらず、いや、御主人が病気中なら本人に知らせない方が身のためですよ等々の暴言まで吐かれて、息子さんに一方的に署名捺印をさせた。そして課税をやらせてきたという事態であります。  大臣お見えでなくて政務次官ですけれど、これは法以前だ、人道的に見て一体どうなのかという点からひとつ御意見を聞きたいんです。  つまり明確にしたいことは、のどを手術して四日です。そのことは知っているわけです。本人には伝えておりません。十二月に入って退院して二日後そのことを知らされ、御本人はもう気が狂わんばかりです。説明も具体的にやられてないという状態です。御答弁ください、政務次官。
  37. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 政務次官の前に政府委員から。
  38. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 税務調査必要性については改めて申し上げませんけれども調査当たりましては、税法などに定められました手続に従いまして適正に行うようにかねてから注意をしておるところでございます。  御指摘の件に関連して申し上げますと、納税者の御本人が御不在の場合には、事業に従事しておられる家族の方に事業内容を伺うとか、本人がいらっしゃらないということで、家族の方から本人にかわって申告書が出されるということも、間々あるわけでごさいますけれども、私ども修正申告を強要するというようなことはいたしておらないつもりでございます。  いま御指摘の件につきましては、私どもも事実関係をよく調べまして適切に対処したいと、こう思っております。
  39. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) いま御指摘のありました件につきましては、具体的には事実関係を十分調査いたしたいと思いますが、御指摘のように税務調査は、高額の脱税だとか悪質なものとか、そういったものを情報や資料に基づいて行うわけでございます。ただ、そういう場合に、御本人がそういう瀕死の重病であるとか、そういう場合に行うのが適切であるかどうか、それはいろいろあると思います。そういう場合にもやらなきゃならぬ場合があるかもわかりません。しかし、まあ必ずしも適切でなかったかと思います。したがいまして、そういった点は十分配慮しながら適正な税務行政をやっていかなきゃならぬと、かように考えております。  この件につきましては、事実関係を十分調査いたしまして適正な処置をいたしたいと思います。
  40. 下田京子

    下田京子君 一言。  いまは政務次官から、必ずしも適切であったというふうには認められない点もお話ありました。これは五十一年税務運営方針等でも大蔵省自体が述べられております「社会通念上相当と認められる範囲」で、そしてなおかつ、これは七十二国会でも請願採択の際に確認されていることです。のどを手術している、瀕死の状態。そういう状況の中にあってやられたこと。これはまずその非を認めた上で御本人の納得いくようなことをやられてほしい。再度御要望して質問を終わります。
  41. 柄谷道一

    柄谷道一君 転作奨励金の支給実態につきましては、抽出調査を行っておられますが、〇・五ヘクタール未満が九三・四四%、二十五万円未満が九二・三一%と、きわめて零細な農家が大部分を占めているわけでございます。私は、転作というものが米の過剰生産を抑制するという目的だけにとどまらず、それは食糧自給率の向上とか農業近代化に寄与するものでなければ真の意味は持たないのではないかと、こう思うわけでございます。集団営農、生産性向上等について努力をしているというただいままでの御答弁がございましたが、なお十分の成果を上げているものとは評価できません。農水省の評価を率直にお伺いいたしたいと思います。
  42. 古谷裕

    政府委員古谷裕君) 御指摘のように、水田転作を進めるとともに、その定着を図っていくということで、その際には集団的な営農を進める体制、こういうものが必要だという御指摘、まことにごもっともでございまして、私どももこの転作奨励金の体系の中ではございますけれども、その計画転作あるいはその団地化というものを進めている、そういうものをてこにやっていこうという考え方でございまして、こういう方向は、ただ単に転作奨励金の世界のみでなくて、全体的な構造政策あるいは土地基盤整備ということとも絡むわけでございます。農水省全体として御指摘のような方向に進むべくさらに努力してまいりたいと思っております。
  43. 柄谷道一

    柄谷道一君 この転作という問題がわが国全体の農業政策の中に明確に位置づけられるように今後一層の努力を求めたい。  時間がございませんので、もう一問御質問いたしますが、都市近郊の施設野菜生産農家に対しまして、稲作等の面積当たり標準課税方式から収入金課税方式への移行を大蔵省は指導されていると聞きますが、そのとおりでございますか。
  44. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 大部分の農家につきましては、税務申告、いわゆる農業所得標準でやっておられるわけでございますけれども、従来この農業標準につきましては、面積基準にするいわゆる面積標準というものが主体になってやってきたわけでございますけれども、都市近郊の施設園芸作物などをとってみますと、出荷時期によりまして単価が動くとか、単位面積当たりの収益にも相当格差があるのが実情でございます。こういうものにつきましては、面積の標準でなくて、作物ごとの実際の収入金額基準としたいわゆる収入金課税の方が合理的であり、かつ実態に即すると考えられますので、これへの移行を近時進めておるところでございます。  もちろん、この移行に当たりましては、いままでの経緯等も踏まえまして、農業関係団体などの理解と協力を得ながら進めるというかっこうでやっております。
  45. 柄谷道一

    柄谷道一君 そのように努力されているという答弁でございますが、必ずしも関係農業者の理解と協力が十分に得られているとは考えられない節が多いと私は承知いたしております。この面積課税になじまない野菜農家等への課税について、農水省は一体これをどう評価されていらっしゃいますか。
  46. 木村春夫

    説明員(木村春夫君) お答え申し上げます。  都市近郊の施設野菜農家等に対します課税方式でございますね、果樹とか花卉あるいは養蚕等を含めまして、面積課税方式から、いま大蔵省の方から御答弁ございましたように、収入金方式に移行拡大するということにつきましては、大蔵省御当局の方でそういうことで進めていただいておるわけでございますけれども、こういった問題につきましては、納税当局と農業関係団体との十分な話し合いによりまして、双方納得の上で地域の実情に即して合理的な方式が決められるよう期待いたしておるところでございます。  なお、この課税方式の変更が、いわゆる農産物等の生産出荷の安定だとか、あるいは農業経営上に問題があれば、また農水省といたしましても納税当局とも十分話を進めてまいりたい、このように考えております。
  47. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後に、この問題につきまして、大蔵だけの立場ではなくて、農水省とも十分協議を進め、なお農業関係団体との十分の話し合いのもとに本施策が推進されますよう強く希望いたしまして、時間が参りましたので質問を終わります。
  48. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  49. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  51. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 次に、租税及び金融等に関する調査議題とし、財政及び金融等基本施策について、竹下大蔵大臣から所信を聴取いたします。竹下大蔵大臣。
  52. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 今後における財政金融政策につきましては、先般の財政演説において申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。  わが国経済は、国民生活安定の基本である物価がきわめて落ちついているとともに、毎年三%以上の成長を遂げ、現在も、個人消費に支えられた内需中心の成長に移行し、諸外国に比べて格段の実績を示しております。しかしながら、世界経済の回復のおくれから、輸出の減少が見られ、生産、出荷も伸び悩むなど、経済・社会構造の変化の中で厳しい対応が迫られている分野も見られます。このような状況に対応して、政府は、昨年、総合経済対策を決定し、その着実な実施に努めているところであります。  国内金融面では、金融緩和基調のもとで、昨年十二月以降二回にわたり長期金利の引き下げが実施されたところであり、今後の景気回復の明るい材料になるものと考えられます。  世界経済は、インフレの鎮静化などを背景に、徐々に回復するものと見られ、日本経済も内需を中心とした自律的な回復の道を歩んでいくものと期待しております。  今後とも、経済情勢を見守りつつ、適切な財政金融政策の運営を行ってまいる所存であります。  国際協調のもとで、調和のある対外経済関係を形成することは、自由貿易に多くを依存するわが国の安定と繁栄のための不可欠の条件であります。  政府は、一昨年以来二度にわたり、関税率の撤廃・引き下げ、輸入検査手続の改善等を内容とする市場開放対策を決定し、着実に実施してまいりました。  さらに、わが国の市場開放を一層推進するとの見地から、今回新たな対外経済対策を決定し、欧米の関心が強いたばこ、チョコレート、ビスケット等の関税率の思い切った引き下げ、輸入検査手続の一層の改善措置等を行うことといたしました。これらの措置が着実に実施され、自由貿易体制の維持強化に資することを強く期待するものであります。  債務累積問題に端を発する国際金融不安の問題につきましては、債務国、債権国、IMF等がそれぞれ適切に対応することによって、これを回避できるという共通の認識が形成されつつあります。また、今回の十カ国蔵相会議において、IMFの資金基盤の強化の問題につき大きな前進が見られましたことは、国際金融の安定に貢献するものと考えます。  次に財政改革について申し述べます。  わが国の国債残高は約百兆円に達し、経済全体が比較的良好な中で財政の困難が際立っております。  財政の立て直しは、単に財政赤字の解消にとどまるものではありません。それは社会・経済の進展に合わせ、歳出・歳入構造の見直しを行うことにより、新しい時代の要請に即した財政の対応力を回復する財政改革でなければなりません。  このためには、まず歳出面におきまして、現下の諸情勢と将来への展望を踏まえ、国、地方、企業や家庭の役割り分担など行財政の守備範囲を見直し、歳出の徹底した洗い直し、一層の合理化を行うことであります。また、歳入面におきましても、社会・経済構造の変化に対応して、歳入構造の合理化、適正化に努めるとともに、行政サービスの受益と負担のあり方という観点から、基本的見直しを行う必要があります。このような方針のもとに、特例公債依存体質からの脱却とさらには公債依存度の引き下げに努め、財政の対応力の回復を図ってまいる所存であります。  内外経済情勢は今後ともなおきわめて流動的なものと考えられ、財政改革への道は険しく容易ならざるものがあります。しかし、私は以上のような考えに立ち、国民の真の理解と協力を得つつ、財政改革を進めていく所存であります。  このような観点から、昭和五十八年度予算におきましては、まずもって前年度より一段と厳しい歳出の削減を図りました。  概算要求の段階におきましては、画期的なマイナスシーリングを採用し、各省庁に対して、所管予算の厳しい見直しを求めました。その後の予算編成当たりましては、聖域を設けることなく、並々ならぬ決意をもって徹底した歳出の削減を行いました。この結果、一般歳出の規模は三十二兆六千百九十五億円と、前年度を下回るものとなっておりますが、これは昭和三十年度以来のことであります。  補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、従来にも増して積極的に整理合理化を行うことといたしました。  また、食糧管理費の節減合理化、医療費の適正化、国鉄経営の合理化等を一層推進したところであります。  これらの結果、一般会計予算規模は、前年度当初予算に比べ、一・四%増の五十兆三千七百九十六億円となっております。国債整理基金への繰り戻し額を除いた、実質的な一般会計予算規模は、対前年度三・一%のマイナスとなっているのであります。  このように、昭和五十八年度予算は一段と厳しい財政事情のもとにありますが、その中にあって、中長期的観点から充実を図る必要があるものや真に恵まれない人々に対する施策等につきましては、特に配慮いたしました。  歳入面におきましては、きわめて厳しい財政事情にかんがみ、特別会計、特殊法人からの一般会計納付、たばこの小売定価の改定等を実施することにより、税外収入について格段の増収努力を行うこととしております。  また、最近の社会経済情勢にかんがみ、税負担の一層の公平化、適正化を図るとの観点から、租税特別措置の整理合理化等を推進することといたしました。一方、中小企業の基盤強化、住宅建設の促進等に資するため、所要の税制上の措置を講ずることとしております。  なお、税の執行につきましては、国民の信頼と協力を得て、今後とも一層適正、公平な税務行政を実施するよう努力してまいる所存であります。  公債につきましては、さきに申し述べました歳出歳入両面の努力により、その発行予定額を前年度補正後予算より一兆円減額し、十三兆三千四百五十億円といたしました。その内訳は、建設公債六兆三千六百五十億円、特例公債六兆九千八百億円となっております。この結果、公債依存度は、二六・五%となっております。  財政投融資計画につきましては、これまでになく厳しい原資事情にかんがみ、対象機関の事業内容や融資対象を厳しく見直し、真に緊要な事業に重点化を図ることにより、その規模を抑制する一方、民間資金の活用を図り、対象機関の円滑な事業執行の確保に配慮したところであります。  この結果、昭和五十八年度の財政投融資計画規模は、二十兆七千二十九億円となり、前年度当初計画に比べ二・〇%の増となっております。  以上、財政金融政策に関する私の所見の一端を申し述べました。  本国会に提出し御審議をお願いすることといたしております大蔵省関係法律案は、昭和五十八年度予算に関連するもの八件、その他一件、合計九件でありますが、このうち八件につきましては、本委員会において御審議をお願いすることになると存じます。それぞれの内容につきましては、逐次御説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第であります。
  53. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 以上で所信の聴取は終わりました。     ─────────────
  54. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま下田京子君が委員辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。     ─────────────
  55. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) これより大臣の所信に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  56. 穐山篤

    穐山篤君 大蔵大臣、最近大変多忙ですが、健康には十分留意をしてもらいたいと思います。  最初に、日米関係の税金の問題について申し上げたいと思います。  いま大臣も、この所信表明の第二項で、国際協調というものを力説されたわけであります。これは当然のことだというふうに思います。しかし、よくよく考えてみますと、アメリカ、ECからは経済的な分野でなかんずく白い目で見られている。発展途上国の方からいいますと、日本は両足を欧米に向けてアジアにはほとんど顔を向けてもらえない、そういう意味で非常に厳しいところであります。  さてそこで、今月の五日、六日ごろ、日本の新聞で取り上げられました、トヨタ自動車、米国トヨタに対しまして、アメリカの国税庁から税金の調査が行われていると非常に騒がれたわけです。これは性格からいいますと、トヨタ一社に限らず、海外に出ておりますすべての企業に重大な影響を与えることにもなりますし、また日米の租税条約というもののあり方についても問われている、そういうふうに思うわけですね。  いままで日本は、ECでもアメリカでもそうでありますが、商品のダンピングをやっている、そういうことで相当強硬な注文、攻撃、非難というものがあったわけですが、今度は態度を一変して、そういうダンピングをやっているという話も全部棚上げにしているわけではありませんけれども、親会社が価格を不当に引き上げて小会社の利益を圧縮しているんじゃないか、そこでアメリカに対する納税が少ないというふうに、二つの面で厳しく追及をされているわけです。材料が手元に細かいのはありませんが、できればこの概況についてまず実態を明らかにしてもらう。  それから、いずれもっともっと時間が経過すれば、本問題についての全貌というものもわかるだろうというふうに思いますが、いまも私が指摘しましたように、日米の租税条約というものをわれわれ国会は批准、承認しているわけでありまして、税制の面ではどういうところに問題点があるのか、あるいはこれからどういう問題が発生する可能性があるか、いまから十分に準備しておく必要があると思うんです。その意味で、今回のトヨタ、米国トヨタの問題に関して考え方、実情を明らかにしてもらいたいと思います。
  57. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 米国司法省から資料提出の提訴を受けた問題でございまして、技術的な問題と、また穐山委員からこの事例の具体的な説明と、こういう御要求でございますので、事務当局からお答えを申し上げます。
  58. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) お答え申し上げます。  米国の税務当局によるトヨタ等自動車会社に対する調査は、かなり前から行われておりまして、具体的には五十三年ごろから行われていたわけでございます。その中で、米国への日本からの輸出価格、これがやや高きに過ぎて、そのために米国における米国トヨタの利益が圧縮されているのではないか、こういう疑念が米国の税務当局に出てきたようでございます。  そのため、米国税務当局は、何度かにわたりまして、米国トヨタ自動車に対しまして関連する資料の提出を求めておったのでございますが、応じられるものは応じてきたわけでございますが、中には企業の秘密に関するものもあるということで、必ずしも米国当局の満足のいく資料の提供を行っていなかったと、こういうふうに米国当局は評価をいたしたものと思われます。  そこで最終的に、先生ただいま御指摘のとおり、二月に至りまして、米国税務当局は、具体的にはロサンゼルス税務署でございますが、米国の司法当局に対しまして、米国トヨタ自動車及び日本のトヨタ自動車に対しまして、移転価格に関連いたします資料を提出するようにということで提訴が行われたものでございます。  私ども、かなり長い経緯がございますものですから、フォーマルにあるいはインフォーマルに、米国の課税当局とそれからトヨタ自動車等の間の仲立ちをいたしまして、そこまで資料を出すことは無理ではないかとか、この程度の資料は出してもいいのではないかとかいうような形でのアドバイスなどはしておったのでございますけれども、米国税務当局が十分な満足を得られる資料の提出がないということで今回のような事態になったわけでございます。  これはいわば米国国内法上の問題、基本的には米国国内法上の権限に基づく問題でございますので、第一義的には米国の内国歳入庁、それから米国におきますところの米国トヨタ自動車・納税者の間での争いということでございますので、私どもまず、その進展の状況を注意深く見守るということにいたしておりますが、移転価格一般の問題につきましては、従来からも政府間の話し合いも行っておりますので、随時、事態の進展に応じて私どもも情報の収集に努め、なおかつ当局間の話し合いも続けていきたいと、かように考えているところでございます。
  59. 穐山篤

    穐山篤君 私はいまも指摘をしましたが、自動車がやり玉に上がると、当然のことながらVTRも無関係ではない、その他各般の輸出商品について各社とも戦々恐々としているわけです。部分的に、IBMじゃありませんが、政治的な示談をして争いを大きくしたくないという、そういうものも中にはありますけれども、これはIBMとは性格の違う案件だというふうに私は理解をするわけです。したがって、各社の動向を十分に見守るということは、それは当然のことでしょうが、共通をする問題である、日米貿易摩擦上の共通の土俵の上に乗っかっている問題である。いまとりあえず部分的に問題が解決いたしたといたしましても、さらに将来、その根はずっと残る問題であります。  これはあえて皆さん方に申し上げなくてもおわかりのとおりでありますが、たとえば製造たばこ、アメリカたばこの販売の問題で関税率がずいぶん議論になりました。前回思い切って三五%まで下げて、もうこれ以上のことはアメリカからもそれほど注文はないでしょうと、そういう甘い観測のもとにがんばっていたわけですが、とどのつまりは、アメリカたばこの輸入の問題について、そのほかの分野でも相当強硬な提案を受けておりますが、関税率につきましても、同じように二〇%まで下げざるを得ない。アメリカはそういう長期的な展望、政略というものを持って話を進めているわけです。ですから、もう少し明確に態度を表明しないと、国は何をしているんだと、こういうことを指摘されてもこれはやむを得ないと思うんですね。  実際にはもっと進んでおって、国益上発表したくない、できないということがあるだろうと思いますが、しかしもう他の各社とも戦々恐々としているわけですね。価格の移転説というのは本来どういうものであるんだろうか、上積み税金というのは今後どういうふうになるんだろうか、現実にある分野では、機械の開発に関しまして、通産省の計画に基づいて研究費が出ておったり補助金が出ておったり、あるいはその他の分野で国の保護を受けていることが間々あるわけですね。そういうものをしばしばアメリカが指摘をしているわけです。ECも同じようなことを指摘をしているわけです。  ですから、何をこれから言われるかもわからないという状況の中の新しい問題ですね。いままではダンピングできゅうきゅうきゅうきゅう責められて、どうもこれがうまくいかないというと反転をして違う角度からの問題提起です。私は非常に心配をしているわけですが、もう少し考え方を明確にしておいてもらいたい。
  60. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 先ほどもお答え申し上げましたように、この問題は基本的には、米国の課税当局とそれから米国のトヨタ自動車、この所得が適正であるかどうかということからきている問題でございますものですから、そしてまたそういう観点からの提訴でございますものですから、余りそういった米国内の課税問題に深く入るのはいかがかという立場もございますけれども、従来から米国税務当局、国税庁ないしは大蔵省とは公式、非公式にいろんなパイプがございますので、そういったところを通じまして、日本の実情、考え方を十分理解していただくように努力はいたしているつもりでございますし、またこれからも努力をいたしたいと思っております。  なお、先生御指摘のVTRの問題がございましたけれども、ただいまのところそこについてまでの事態の発展はない、自動車だけにいまはとどまっておる。そういう点から言って、これは一つの純粋な課税上の問題にいまの段階ではとどまっているのではないかと私ども判断をいたしております。
  61. 穐山篤

    穐山篤君 そうしますと、大蔵省当局としては、日米の租税条約から考えてみて、今回のアメリカの提案というのは、平たい言葉で言えば、二重の課税であると、こういうふうに考えてアメリカの理解を求めるようにしたいと、こういう考え方でいいんですか。
  62. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 御指摘でございますけれども、まだ二重の課税をされたという段階には至っておるわけではございません。米国トヨタ自動車に対して資料の提供を求めた、具体的には日本の国内における生産価格であるとか、あるいは販売費であるとか、そういうデータの提供を求めている段階でございます。  それが、仮にでございますが、仮に提出されるということになりますと、それをもとに米国課税当局がどういうような判断をいたしますかというのは、これは第二段階の問題でございます。データを仮に日本が提供いたしましたとした場合に、そのデータが向こうの課税当局から見て納得のいくものである、納得のいく説明であると判断すれば、そこで課税の問題というのは発生してまいりません。そうしますと二重課税ということにもならないと思います。逆の判断を向こうの当局がいたしましたら、それは先生御指摘のような二重課税の問題になり得る問題でございます。  しかし、いまの段階では、データを求められているというその段階でございまして、まだ二重課税の段階まで至っておりません。そういったことではありますけれども、私どもとしては、先生御指摘のように、二重課税につながらないこともない、そういう問題だという認識を持っておりますので、事態を慎重に見守り、フォローをしていると、こういうことでございます。
  63. 穐山篤

    穐山篤君 まだ課税をされないわけですから、二重課税というふうに言ってしまうのは早計ではありますけれども、本来二重課税というものをお互いにしないということを原則にして、租税条約というものは締結され、承認されているわけですね。まあ言ってみますと、その範囲で、優遇措置とはいかないにしてみても、公平な措置をとろうじゃないかというのが本来の条約の趣旨だというふうに思うんです。  そこで、これから作業が進んでいったとして、米国内の課税、税制上の問題とはいえ、いま私も指摘をしましたし、また大蔵大臣からも国際協調という話があるわけですから、言うところの示談というふうな形では問題の解決にならない、またかえって悪い禍根を残すというふうに思うわけです。したがって、この問題について、われわれも重大な関心を持っておりますが、これに火がついていきますと、日本の業界、輸出産業に重大な影響が及ぶことは当然だし、ECも同じような考え方だろうと思うんです。  そこで、いままでダンピングしているということできゅうきゅうきゅうきゅうやられてきたのが、反転をして、こういう移転価格課税みたいなものになった政治的な背景というのはどういうふうにごらんになっているんですか。
  64. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) なかなかそこまで私ども、何か政治的なものがあってこうなったんであろうという評価を実はいたしておりませんし、現在でもそういう評価をするのが適当かどうかについて疑念を持っております。そういった背景というのは必ずしもないのではないかと、こんなふうに思っております。
  65. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは基本的には、先ほど来申し述べておりますように、米国の国内法における米国トヨタ対米国の司法当局ということに相なりますので、私どもこれが政治的背景に基づく動きであるという認定の仕方は、これは避けるべきではないか。まあ強いて申しますならば、そういうものがないことを期待しておる、あるいはそういう背景のないことを信じたい、こういうことではなかろうかと思います。
  66. 穐山篤

    穐山篤君 いまの問題は、十分注意して厳正な態度を明らかにして取り組んでいただきたいというふうに思います。  さて、本論の財政再建の問題ですが、大蔵大臣、きのうも総理大臣と土光臨調会長がお会いになったと一斉に新聞に報道されて、土光さんは増税なき財政再建を実現してほしいと力説をされました。中曽根総理大臣も確約をしたというふうに報道されております。  さて、衆議院予算委員会の論争を聞いてみておりましても、新聞、テレビを見る限り、国民の皆さん非常に不思議に事態を観測しているわけです。増税なき財政再建を理念として一生懸命にこれからも歳出削減に当たって努力をしますと片っ方で強調しながら、大蔵大臣の答弁になりますと、一般消費税というふうなものは、国会の決議があるからとても導入するわけにいかないが、たとえばECのような付加価値税のようなものならばどうかと思って勉強していると、こういうふうに報道されるわけですね。そうすると、一体的な政府として何が本心であるのか、本音であるのかということが全くわからぬわけです。戸惑いを国民は感じているわけです。  非常にむずかしい経済状況財政運営のときですから、すぱすぱ物が言えないことはよくわかりますが、企業を営んでいる者も、生活をしております国民も、政府が将来こういう考え方を持っているということを十分にのみ込んで財政再建に協力してくれと言うならば、考えてもみましょうという、そういう状況にあるわけですが、どちらが本音で、どちらがたてまえであるのかかいもく見当がつかないんです。まず、ここの部分について本当にどう考えているのか、しっかりした御答弁をいただきたいと思うんです。
  67. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 増税なき財政再建、これは行政改革のてこであるという土光臨調会長の御提言は、私はそのとおりだと思っております。そして将来もこれは堅持していかなければならない課題であると、そのようにしかと受けとめておるものであります。  そこで、いわゆる増税なき財政再建とは何かと、こういうことになりますと、臨調の第三次答申に一応示されておりますものをいろいろな角度から検討してみますと、「当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」と、こういうふうに一応このところが一番規範的な意義を持つではないかというふうに思っておるところであります。そこでまた、臨調答申の中におきましては、中長期にわたって歳入歳出の合理化をするための努力をしなければならぬと。さらには、当面所得税減税に対する要求が強い、それには客観的に直間比率等も含めて検討すべきだと。こういう大筋三つの流れがあると思うわけであります。したがって私どもは、当面もとよりこの「新たな措置を基本的にはとらない」という考え方に基づくべきであるというふうに思っております。  私が一般消費税という問題についていわゆる一般消費税(仮称)という言葉を昭和五十四年以来今日まで使わしていただいておることは、本院においても御決議をいただいたことがあるわけでありますが、要するに、あのときいわゆる一般消費税(仮称)という手法は国民の理解を得ることができなかった、だからこの手法を用いないで歳入歳出各般の努力をして財政再建をやれという御趣旨の御決議をいただいておる。したがってその御決議をいただく際に、私も本委員会においても参画さしていただきながら考えましたのは、いわゆる消費一般にかかる税制全部を否定したら、これは現行税制の中に消費税はございますし、言ってみれば、税体系上あるいは学問的にそのことは後世の為政者に、またあるいは結果として国民が選択するであろう後世の国民に対しても、選択の幅をそこで制限してしまうことになるという意味において一般消費税(仮称)という言葉にとどめていただいたわけであります。したがって学問的には消費一般にかかる税制を否定されたものではない。  これは御理解をいただいておるところでございますが、ECのいわゆる付加価値税の問題に触れてこれが報道されましたのは、質問者から、税制調査会というものに御検討をいただく場合には、このEC型の付加価値税というものも御検討していただく対象にあるかという趣旨の御質問がありました。私もしかとそのとき考えました、瞬間的ではございましたが。そもそもいわゆる一般消費税(仮称)を論ずるときに、まずEC型付加価値税というものがずいぶん議論された。しかしその中で、わが国の商慣習上なじまないものが、いわゆる仕送り状つきと申しますか、インボイスの導入がなじまないというところから、あのような手法による一般消費税というものが浮かび上がってきた。したがってEC型付加価値税というものも検討の対象になりませんという表現をすべきかどうかと考えてみました。  ところが、私どもが一般的に税制調査会というものにその都度諮問いたしますのは、財政改革をするためにはどいような税制がいいのか広く御検討くださいというだけが諮問事項であります。したがって、各界の権威のお集まりいただいた税制調査会というものに対して一つの枠をはめた諮問というものは、むしろ非礼に当たるではないかという意味において、学問的にEC型付加価値税というものも全く枠の外に置かれたものではないという趣旨で、きわめて私なりに、瞬間でございましたが、論理を整理いたしましてお答えを申し上げたわけでございます。しかし、報道を見ますと、何だかEC型付加価値税をいまから検討しているような記事が出ておりましたが、これは私どもその検討を命じたこともなければ、そのような作業が行われておるという事実も全くございません。  いま御指摘の、しかしながら、政府財政改革というものを国民に求めるならば、政府の将来にわたっての一つの展望なり考え方を示すべきではないか、このような御意見は、私もかねて傾聴すべき議論だと思っておるのであります。  したがってそれには、今度提出いたしました財政改革に対する基本的な考え方で、何はさておいて、まず——いままで御協力いただいて、確かにぜい肉落としもしてまいりました。五十五年度本院で説明いたしました当時の試算から見ますならば、およそ五十八年度に予定されておった予算総額は五十八兆にもなる、それが五十兆台にとどまっております。それも一つの御協力を得たいわゆる歳出削減の数字としてあらわれたものでありましょう。  しかし、それにとどまらず、なお本当にこれはあるいは個人なり企業なりに属するべきものではないか、あるいはこれは自治体に属するべきものではないか、あるいはこれは国に属するべきものではないかという、そういう歳出構造そのものにメスを入れて、まずはこれを第一義的に行っていくというのが、増税なき財政再建というものをてことして行財政改革を進めていけという土光会長の御趣旨に沿うのは、まずはその姿をもって事に当たらなければならぬ。そういう徹底的な見直し、検討を行って、なおかつ現在の水準をこれ以上落とすべきではないとか、あるいは新たなるこれの行政需要に沿わなければならないとかいう、いわば国権の最高機関たる国会等の問答を通じながら、そういう国民の選択があるとした場合、されば受益と負担はどういうふうに考えていくかということをもう一遍そこで見詰め直していく。そういう形の問答の中で、あくまでもてこは増税なき財政再建ということを底意に置いて対応していくというのが基本的な考え方であります。
  68. 穐山篤

    穐山篤君 相当時間をかけて釈明をしているということは、腹の中にはいろんなことを考えておるというふうに見ざるを得ぬわけなんですが、増税なき財政再建、あるいは五十九年度までの赤字国債依存体質の脱却——後段の五十九年度までの脱却というのはすでに公約を放棄してA、B、Cという中期展望の中に示されています。ですから、そこの部分は国民に対する公約は放棄したと、こういうふうにだれでも理解をして、それに対する評価というものはまた別にしなきゃならぬ。  さて、増税なき財政再建で徹底した経費の見直し、それから最近急に話が出てまいりましたのは直間比率の見直し、そういう話が逐次出てよく土壌をつくり上げているというふうに見ざるを得ぬわけです。  さて、そこで、経費の徹底的な削減、見直しと、臨調もそのことを言っておりますが、たとえば庁費を切り詰めるという話もありますが、ボリュームの面から言えば、せいぜい一千億円程度というようなものが限界ではないかと思う。出張なり超勤手当も圧縮をしましょう。これも限界ですね。それから制度がなくなって必然的に必要な経費が要らなくなるというものも当然ありますし、緊急度の低いものについては逐次繰り延べをする。これもごく常識的なことです。  さて、そうやって全部整理整とんしますと、残る経費の徹底的な見直し、削減ということになりますと、それは何かと言えば、どの政策を選択するかという問題になる。どの政策を選択してウエートをどこに置きますか、重点をどこに置きますかということにならざるを得ぬわけですね、経費の節減という場合には。単に事務的な経費の節減でなくして、全部それは政策目的を持っている費用についての選択をしなければならなくなるわけです。ですから、抽象論で小さい政府をつくるとか経費を節約するというのは、これは演説の材料になったにしましても、大蔵委員会の話には全然なじまないと思うのです。  その意味で、大蔵大臣、政策の選択というのをどういうふうに経費の節減の分野では考えているのか、あるいは考えようとしているのか。増税なき財政再建をやるわけですから、自然増収がたくさんあれば別ですが、そうでないとするならば、切る方を英断をもって切る。切るということは政策の選択。切るということに具体的に発展をしなければ、これは大蔵委員会としては値打ちのある話ではないと思うのですが、その点はどうですか。
  69. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 庁費とかそういう問題もございました。俗にちりも積もれば山となるということもございますので、そういう点についておさおさ怠りがあってはならぬ。それもそのように考えております。  いまの穐山委員の御意見というものは、それはそれなりにして、さらに政策選択の重点をどこに置くかということであろうと思うのであります。この問題につきましては、いわゆる歳出構造というものの見直しを行うという言葉の中にある程度包含されると思うのでありますが、この構造ということになりますと、されば何を基準としてその構造の見直しに入っていくかということもいろいろ考えてみました。が、結局今日のところ、臨調等で御指摘のありました、数え方はいろいろございますが、九十点ばかりの意見については、それなりの措置はいたしましたが、まだ財政審あるいは臨調、そういうもので指摘されておる問題点というものは、これからの予算編成上の大きな手がかりになるものである。そしてもう一つは、やはり国会の論議だと思うのです。その国会の与野党通じての問答の中に政策選択の方向というものがおのずから示されるべきものではないか。  で、国政全般を扱う内閣総理大臣の施政方針演説というものの中には、それはそれぞれの政策の重点事項が描かれておるわけでありますが、国庫大臣あるいは財政担当の大臣として申し上げますならば、それらの趣旨に沿って、そして臨調財政審、そしてやっぱり最高の意見として国会の問答、そういうようなものの中から構造改革というものを進めていく基準点を見出すべきものではないかというふうに考えております。
  70. 穐山篤

    穐山篤君 先日「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」というものが明示されまして、一つの目安としてA、B、Cという試算が発表になりました。画廊に絵を張ってどの絵がおもしろいかというような話と違いまして、政治ですから、どれを買い上げるか、どれを選択するかということにならざるを得ない。どういう前提条件を置こうとも、このA、B、Cでいきますと、要調整額が非常にショッキングな高い数字になっていますね。これは多少の景気浮揚で要調整額に必要な自然増収が出るものとは絶対に思うわけにはいかないわけです。ですから、要調整額を何とか生み出すためにいろんな工夫がされますけれども、しかし単純な経費の節約だけでできるものでもないということは明らかであります。ですから、物理的に言いますと、この要調整額をつくり上げるためには思い切った政策がとられなければできない。これもごく抽象論から言えばそのとおりであるし、それを逃げるわけにはいかない、私はこういうふうに思うわけです。  そこで、先ほど大臣は新聞の発表が少し先走っているというふうに言いましたけれども、相当の要調整額を生み出すために単純な増税では埋まらないということも当然だし、長期的に大きな税が入ってくるためには大きな制度の改正にならざるを得ぬ。これはだれか考えてもそういうふうになると思うんです。  そこで、学問的に研究するというふうなお話ですが、学者ならばそれは結構でしょうけれども、政治家としては評論をしたり学問で勉強をしておったんでは遅いんですね。また大蔵大臣もそのことも十分承知して、いま地ならしをしているというふうに見ざるを得ないと思うわけです。  すでに私、いろんなところを歩いてみまして、一般消費税とEC型付加価値税とどう違うんですかというような質問をあちこちで受けるわけですよ。それだけ国民の気持ちは政府の主張の方にもう寄りかかっているという感じがしてならないと思うわけでありまして、くどくお伺いをするようですが、あくまでもその種の一般消費税になるか、EC型になるか、あるいは韓国型になるか、あるいはキューバ型になるかは全然別にいたしましても、そういうものでなくて、別なもので、別な万法でというのは、経費の節減だとか、直間比率だというところに当面最重点を置いて財政の再建に当たると、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  71. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 基本的には、いま最後に結論的に申された穐山委員考え方と一致しております。
  72. 穐山篤

    穐山篤君 そうしますと、私、長々と問題を申し上げましたが、ウエートとしては、政策の選択の問題につきましては、国民全体の意見なり国会の審議なり、いろんな手順というものがあって合意を得なきゃならぬ。当然その政策の選択というのは、どれを優先するかしないかということでも大きく論争になる。  そこで、いまのお話を静かに聞いておりますと、直間比率の見直しというところにきわめて重要なウエートを置いてきたなと、こういうふうに私は理解をするわけですが、その点はどうでしょうか。
  73. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私は、直間比率というものは、率直に申しまして、最初から先見性を持って直間比率は何対何ぼがいいと言うべき性格のものではないと思うんであります。既存の税制というものが存在し、結果として景気の変動とか経済情勢の推移とかによって最終的にあらわれてくるのが直間比率というものではないか。しかしながら、その直間比率に対していろいろな角度から検討された場合に、日本の現行の姿を見れば、いささか直接税比重が高いではないかと、こういうような議論が数あるわけであります。  ところが、私が昭和五十四年、五十五年の大蔵大臣でありました当時は、直間比率の見直しとは即いわゆる一般消費税(仮称)につながるではないかと、こういう環境にあった。  その点について今日勉強することは、その環境が熟したかなというような印象を持っております。  その後ずっと見てみましても、たとえば昭和五十五年の十一月七日の税制調査会の中期答申を見れば、「課税ベースの広い間接税に着目する必要があろう。」とか、あるいはそれがまた五十六年になってまいりますと、これは「所得税負担のあり方や間接税のあり方等、中期答申で検討課題とされている基本的な諸問題について、その後の国民各界各層における議論を考慮しなから、取り組んで」いけとか、あるいは最も近い五十七年の十二月二十三日のもので見てみましても、この「税負担、税体系のあり方について幅広く検討する必要がある」とか、そういうふうに答申をいただいておる。一方、臨調答申を見ましても、「中長期的観点に立って税負担水準及び税収構造の在り方を検討」しろとか、そして同時に「現行の直接税、間接税の比率等税制上問題のある重要課題につき検討すべきである。」とかいうふうに、一応われわれから見ると、お願いしておる法律に基づく調査会とか、そういうところでの意見というものが、それを検討の課題にすべきである、こういう御答申をいただいておる。その意味において勉強をすべき環境はできておると、こういうふうに私は申し上げておるんであります。  そしてまた、本院あるいは衆議院におきまして、委員会等の議論の中にも直間比率というものを勉強すべきだということ、またグリーンカードが成立した場合の議論の中にもそれはありましたし、またこれは当分延期すべきであるという議論の中でもまたこの直間比率というものは議論されておる。そうすると直間比率というものは、あらかじめ先見性を持ってやるものではないが、結果として、今日出ておるこの比率というものを考えながら、やっぱりこれは勉強すべき大きな課題だというふうに理解して勉強しなきゃならぬなと、こう思っておるところであります。
  74. 穐山篤

    穐山篤君 もう時間がありませんから具体的なことについて二、三お伺いします。  政府側は、今回歳入に関します法案を八つほど提起してあります。実は、昨年私ども一兆円減税を要求した際に、社会党初め野党が財源はここにあるじゃないか、こういうものの取り崩しなり、こういうものの見直しをやるならば一兆円の減税は実現ができる、こうやって提案をしたうちの相当部分に今度政府は食いついて、表現は適当ではありませんか、身ぐるみあちこちのものをはいできて四兆何千億という税外収入というものをつくり上げた。私どもとしてはまことに遺憾の至りだというふうに思います。  そのことについては別途大蔵委員会でやりますが、このグリーンカードの三年延期に関連して、御案内のように、マル優制度の見直しないしは廃止、必然的にこれが増収、増税を意味するというふうに宣伝され始めてまいりました。これにつきましての大蔵大臣の真意がどこにあるのか。予算委員会の討論ではまだはっきりしない。これも国民が大変関心を持っているわけです。このマル優制度のあり方について目下どういう学問的な研究をされているのか、その点をひとつお伺いをしたいと思うんです。
  75. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) グリーンカード問題につきましては、一言私から答弁をする前に発言さしていただくといたしますならば、これは私が大蔵大臣でありました当時御提案を申し上げて、そして両院の賛成を得て通過さしたものである。それをまたたまたま私が同じ大蔵大臣になりまして、今度はそれを凍結する法律案を出す。これに対して、私自身責任を感じております。したがって、その責任とは、言ってみれば、その後いろいろな客観的事情というものの動きを予見できなかったと言えば、私自身の責任である。さようしからば、私自身の責任で政府提案の形で凍結法案も出すべきであると、こういう考え方に立ったわけです。そして、その凍結期間中におきまして、されば利子配当課税の問題を抜本的にどうするかという御検討を、これも税制調査会でお願いをしようと、そういうことになっておるわけです。  そうなりますと、私はただいま、まずマル優制度を廃止すべきであるという考え方念頭にあるわけではございません。ただ、その場合においても、マル優制度の問題は御検討いただくらち外に置きますとかいう諮問の仕方というものは、法律で定められた審議会に対しては非礼に当たるではないか。だから、その意味において、それらの議論というものも御検討していただければ、いただける内容の中には入っておるというふうに申し上げたわけでありまして、私自身いまマル優制度の全廃というようなものを念頭に置いて発言したものではない。あくまでもこの税制調査会の自由な御議論の外にこれはわざわざ置くという考え方のないことだけを申し上げたわけでごさいます。
  76. 穐山篤

    穐山篤君 非常に慎重な物の言い方ですね。中曽根総理大臣がよく使っております、政治日程にはないと。本当に政治日程にないのかと言って尋ねてみますと、その土俵の外に置くものでもないというふうな返事と似たようなもんですね。まあ、きょうのところはそれ以上出ないのかもしれませんけれども、しかし国民全体が非常に注目しております。具体的に三百万円では不足だ、五百万円にしてくれ、シルバーの場合には一千万円にしてほしいという別の要求も現にあるわけですね。  じゃ最後に国債の問題です。  国債の償還の問題ですが、御案内のように、百兆円を超える四条公債、特例公債というものが出ました。そのうち四十兆円を超える特例公債と非常に、借金も身上のうちだと言えばそれまでのことかもしれませんが、この返済は結局は国民が何らかの形で負担をしなければならぬ、こういうことになるわけです。  私は前回、臨時国会でありましたか、大蔵大臣に昭和五十年からの税制の改正あるいは歳入委員会としてのいろんな法案の審議をして、過去五、六年間の実績というものを御紹介しました。その結果、財政構造を強くするような提案というのは全くなかった、後年度に財政負担を行うようなものばかりがたくさん残ってしまったと、そういうことを具体的に指摘をしたわけです。そして、憲法が示しておったり、財政法が示している健全財政、民主的な財政の確立という問題について私は厳しく指摘をしたわけです。  そのうちの一つの分野として特例公債を挙げざるを得ないと思うんですが、巷間これの借りかえというふうなことも言われ始めております。財政が厳しいことは十分わかりますが、財政法というものを堅持して、健全財政、民主的な財政制度を確立しようとわれわれが考えた場合には、この特例公債の借りかえというふうなことは言語道断だというふうに思うんです。昭和四十年に、福田大蔵大臣のときに、千九百七十何億かの臨時異例の特例公債を三拝九拝して、今後はもうありません、絶対やりませんと、こうまで言ったものが、いま特例公債が慢性化しているわけです。もうなし山崩し的に財政法が崩れているわけですが、もっとそれを決定的に破壊してしまうのは特例公債を借りかえるというふうな事態が発生するならば、もはや日本財政法というのは抹消されたものと全く同じ性格になるものと私は思うわけです。  その意味で、巷間伝えられておりますこの特例公債の借りかえの問題について、大蔵大臣の所信、決意というものをお伺いをしたいと思うんです。
  77. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 確かにいま委員指摘のように、四十年度発行された公債、これは私も内閣官房副長官を当時しておりましたが、昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律というもので、いわゆる四条公債なのか、特例公債なのか、いずれにも区分できないという性格のものでございますが、当時の議論の中心は、確かに公債政策としていわば後年度にツケを回すことか、そうして財政インフレをもたらさないか、その歯どめがいかにあるか、それが中心の議論であって、三拝九拝して通していただいたという記憶が私にもございます。  したがって、やっぱり公債というものの信用度というものの維持というものは、最終的に期限の来たものはとにかくお持ちのお方に現金でお返しします。これが一番信用度を確保すべきポイントでありまして、それを行う方針はもとより貫かなければならないし、当然のことであります。  そこで、いまおっしゃった、言ってみれば、その償還するための財源としての借りかえ、あるいは乗りかえ、あるいは新しく償還のための財源としての赤字国債の発行と、こういうものをやったら、まさに財政法の示すところの健全性そのものを否定するではないか、こういう御意見でございます。確かにそのとおりであります。したがって、私どもとしては、特例法につきましても、いまだに一年ごとに御審議をいただいておる。当分の間というようなことでなしに、一年ごとに御審議をいただいておるというものも、いかにこの特例公債というものがそういう性格のものであるということを示すためにも、これは一年ごとに両院の御審議をいただくべきものであるという認識の上に立つと同時に、まずはとにかく特例公債をいかにして減していくか、こういうことに着目して今日までの財政運営をやっております。  ところが、五十四年はたまたま民間様の努力によって自然増収に恵まれ、結果として一兆八千億の減額をすることもできた。五十五年度予算も、とにかく初めに一兆円の減額ありきということでお願いすることができた。しかも、余り評判よくありませんでしたが、最終的に四百八十四億円の剰余金が出て、ラーメン減税もやれたということから見ると、さま変わりでございますが、今度の予算編成に当たっても、まず国債を当初予算に比して一兆円減らそうというのが一つの国債政策に対する厳粛なわれわれの態度の目標値であったということではなかろうかと思うんであります。  したがって、この借りかえを行うか否か。いま借りかえを念頭に置いてこれを発行したらとめどもなくこれは広がるものでございますだけに、私はこれの償還期が参りました際、一応大きな償還期が来るのはまだ四年先でございますけれども、それまでの間に、この償還問題については、それこそ国会の問答等を通じながら中長期的にこれは合意を得ていかなきゃいかぬ問題である、現在、特例公債の借りかえなり乗りかえを行う考えはない、こういうふうに申し上げておきます。
  78. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 与党でありますのに非常に貴重な時間をちょうだいして恐縮でありますが、最初に国税庁に伺います。  初めに参考に聞いておきますが、ある年次に更正決定——これはもちろん増額の更正決定を意味しておるんですが、その場合に、その増額された税収というものはいつの年次の収入になるのか。
  79. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) それはその更正処分をした年次の歳入になっておるわけでございます。
  80. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そうすると、その更正決定に異議があってその結末がまだ出ていなくとも、更正決定があるとその年次の税収に入るわけですね。
  81. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 徴収決定額といたしましては、その更正をした年度になりますけれども、実際に歳入がございませんと、それは実際に収入した年度の歳入になる、こう理解をいたしております。
  82. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 今度は逆に、その同じ更正ですが、いわゆる減額更正と私は言うんですけれども、そういうものがあったときには、その減額された部分はいつの年度の減収になりますか。
  83. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) それはその減額更正をした年度でございます。
  84. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 それはやった日には関係ありませんか。三月末で年度が切りかえになりますが、会計閉鎖期というのが五月末まであるということで、その間の関係はどうですか。
  85. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 五月三十一日までに更正をしたものは、その出納整理期間の属します前の年度の所属でございます。
  86. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そうすると、昭和五十四年の五月十一日に減額更正が行われると、それは何年のあれになるか。
  87. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 五十四年分でございます。
  88. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 ちょっと、委員部の方だれか、これを一部大臣に、一部直税部長に。(資料配付)  恐らく国税庁では御存じになっておると思うのですが、私がある事件を調査しておったら、たまたまこういう書類にぶつかった。これは他の委員の方の御参考までに概略私から説明申し上げますが、これは、滋賀県の大津税務署長が、いま申し上げた五十四年五月十一日に、四十九年分の所得税の更正として、ある人物に対して更正決定の通知を出された。二人おりまして、これは一つの土地を二人が二分の一ずつ共有しておったのを売ったので、二人ほぼ同額の減額更正になったんですが、二百五十万、二人で約五百万の減額更正になったんです。その文書の上に書いてある説明によりますと、「あなたは大津市瀬田大江町字管池七百二十山林千三百二十二平方メートルの共有持分二分の一について大津市土地開発公社へ譲渡したとして、昭和四十九年分の所得税の申告(昭和五十年三月十四日申告)をされましたが、調査の結果その事実が認められないので、譲渡所得を取消します。」と、こうあるんでございます。  これはどう考えても私には納得がいかないんです。まず第一に、本人からの申し出がなくて、税務署側から自発的に減額をしてくるということは非常に異例だということ。しかも減額更正のもとになった所得申告は、これは四十九年分の申告ですから、当然五十年の三月十四日に本人から申告が出ているわけです、これこれの土地を売りました、これだけの金をもらいました、税金をお納めしますと。本人が納得して出したものが、四年もたって税務署側から、あなたの申告したのが間違っているから税金を返しますよというのが、この文書だと私は実は理解しているんですよ。こういうことが一体あり得るものか。  そこで、まず最初に、国税庁側のこれに対する御解釈、御所見を伺います。
  89. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 一般論で申し上げて恐縮でございますけれども、ある納税者の方が申告した所得につきまして、税務署、税務当局で調査をいたしましたところ、その所得が実はほかの人に帰属するということが明らかになりましたときには、その当該ほかの人と申しますか、その人に課税するとともに、先に出されておりました申告は減額更正をするということになろうかと思います。
  90. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 これは一般論でお尋ねしているんでないんで、具体的な問題でお尋ねをしておるんですから、考えてください。本人が、四十九年に確かに私が土地を売りました、これだけの金をもらいました、ですからして申告しますといって本人が出しているんだ。税務署がそれを調べて、何の根拠であなたの申告が間違っているということが出てくるのか。普通の状態では出てこない。何かが私はあると思うんです。その辺のお調べがついておるのかどうか。
  91. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) お示しの更正通知書は、確かに譲渡所得の減少を主たる原因とする減額更正の通知でございますが、この記載内容を私どもなりに読んでみますと、本件は、現在京都地方裁判所に係属中の、土地の譲渡取引による所得の帰属をめぐる課税処分取り消し訴訟の原処分と関連があるように思われるわけでございます。  ここにお二人の更正通知があるわけでございますが、お二人が申告された所得について調査いたしました結果、その所得は現在訴訟中の原告に帰属すると税務当局では判断いたしまして、そのいま原告になっておられます方に課税をいたしますとともに、二人の申告を減額したと、こういうことでございます。
  92. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そういうことがあり得ますかね。本人が、私の土地でございました、私が売りました、所得がありました、申告して税を納めますと言っているのに、これは大津税務署、さらには近畿の大阪国税局当局が、何を根拠にこれを否認して、いまはからずも直税部長はほかに本当は所得者があるんだと言われたが、本人が是認しているのにどこにほかの所得者があるという推定が成り立ちますか。  そこまでおっしゃれば私はもう一つ資料をお目にかけたい。これを大臣に。(資料配布)私はそこまではきょうは申し上げるつもりではなかったんですが、ここにいま私が大臣と直税部長に出しました資料がある。  先ほど部長が言ったある男、その人に向かって、これもちょっと常識で考えられないんですが、四十九年にこの男も所得申告をしているのに、四年たって五十三年の三月、しかも十五日過ぎればもう処理できない事態になって、突然に更正決定をしてきた。当然、だからその男は異議の申請を出しました、三月二十三日。そうしたらば、五十三年の九月十一日に大津税務署が異議の申請は理由ないから棄却しますと。自分の方で調べたらば、更正決定は三億七千万ぐらいだったが、本当は三億九千万あなたの所得があるのだという結論を出してきたんです。その計算を示した書類の中にはからずも現在出した二人が載っているんです。  更正決定の異議決定の書類では、大津税務署は、一人の男が全部他の人間の名前をかりている、したがって、この人間の名前もかりて公社と取引をしたり、税務署も要するに名前をかりて納めたんだという考え方でしょう。公社に売りました総額が六億三千四百八十八万四千円でした。  これだけの土地を取得するのに、取得原価が二億四千四百四十五万七千九百五十八円だから、差し引き三億九千万。更正決定した三億七千万はまだ足りなかったと。  これがいま申し上げた書類、これが五十三年の十一月に異議の決定を出す。異議の申し立てをした人間のおまえの考え方は間違いだからと出した。五十三年の十一月ですよ。五十四年になって恐らく大津税務署が、自分の手元にある書類ですから、自分の手元に四十九年の所得として申告されていたこの二つの書類を見つけた。本人らのものでないと思っているものを本人らが申告して税金を納めているから、これはえらいことだというのでこれを取り消していったのでないかと私は想像する。  何か違う考え方があるなら御説明なさい。
  93. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) いま現在訴訟の原告になっておられる方でございますけれども、五十三年の三月二十三日に異議申し立てをされまして、異議申し立てに対する決定は同年の十一月の二十四日に行われておるわけでございます。
  94. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 それはいま私が申し上げた。五十三年の十一月に、私の方の計算はこうで、更正決定は三億七千万で出したけれども、本当はあなたの脱税所得は三億九千万ですよという書類を出したんです。これを出してみたら、五十四年になって、自分の税務署に申告してある四十九年の申告を見たらば、ここではある一人の人間の所得申告だと思ったのが、本人らが堂々と自分の名前で自分の所得だとして申告しておったから、これは重複して説明になららかちお取り消しになったのと違いますか。どうですか。
  95. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) この点につきましては、先ほど説明をいたしましたけれども、現在訴訟の原告になっておられる方の所得と認定をいたしましたので、前のお二人の方の申告は重複するという関係になりますので、また実態的にその原告の方に帰属すると当局が判断をいたしましたので取り消しをしたわけでございます。
  96. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 もちろんいま御指摘のように、これは京都地方裁判所で裁判になっておりますから、結論はそこで出ますが、私がここでお尋ねをしておるのは、本人の申告ですよと。本人の申告が、しかも四十九年にあるのに、どうしてこういう異議決定だのが出てくるのか。二つの書類の重要さが違うでしょう。これはどこまでも大津税務署がお調べになったというだけのこと。いま時間があれば、私がこの中のでたらめさをもっと指摘すれば、委員の方はよくおわかりになるけれども、そんなことはしないでも、本人らが、自分で土地を持っておりましたのを売りました、所得がありました、税金を納めましたと言っているのに、何の根拠で一体、大津税務署なりがそれを否認して、本人の主張を否認してそういう主張をされるのか。おかしいじゃないですか。税務当局の態度について私は疑義を持ちますよと言っている。常識で考えられないことでしょう。
  97. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 具体的な中身につきましては、現在訴訟係属中でございますので差し控えますけれども所得税について一般に考えますと、累進税率をとっておる関係もございまして、一つの所得について真実の所得者以外の人が申告をするというケースも間々あり得るわけでございます。私ども所得がだれに帰属するかというのを調査のポイントとして調べておるわけでございまして、本件の場合に減額更正、もう一つ新しい課税ということも、その具体的な内容については言及いたしませんけれども、一般のケースから見れば、そういう点に着目した調査というのはあり得ることであるということでございます。
  98. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 私は、常識を持って仕事をおやりになっておれば、こういうことはあり得ない、それが私の常識です。そんなばかげたことあるわけないじゃないですか。  しかもこの書類は、四十九年から大津税務署さんが自分の手元にお持ちになっている。しかも五十三年に、あるこの人物から、それは私の所得ではございませんといって異議の申請が出たときに、決定を出されるまで八ケ月ありました。この間に大津税務署が、ここに書いてある問題の人たちを一人一人皆呼んだそうです。残念ながら全部の人は誘いには応じなかった。二人だけは、私どもは自分の土地を売ったので金をもらったんだからと。あとはどういうぐあいに説得されたか、一応金はもらっておりませんという答弁をその調査のときにやられたようです。それでこういう書類になってこういう結果になったんですが、その中から、後になって調べてみたら、自分の税務署へ申告が出ているというものがあった。これはよくお調べになってみれば、ほとんど全部大津税務署管内の人ですから、申告は全部出ているはずですよ。  こんな間違いが出るわけがないんだ。もう時間ないが、この後、結局異議の申請もノー。今度は、仕方ないから、不服審判所へ審判願を出しましたと。所得は四十九年、更正決定をするまで三年、異議の申請をして異議決定が来るまで八カ月、不服審判所へ出して何と三年半かかった。そうして不服審判所が三年半調べた結果、また全部ノーです、今日まで。  私は、これの問題をちょっと調べて、実は不服審判所というもののあり方に疑義を持っておるんです。その審判の実情についてちょっとお尋ねします。  いま、一年に不服審判所へかかる件数はどれくらいありますか。
  99. 西内彬

    説明員(西内彬君) サラリーマン減税闘争が九千件ございまして、そのほかにそういう係争事件でないものが年間二千二、三百でございます。
  100. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 審判所へ提訴になったもので、審判の結果、なるほど本人の言うとおりだと、幾らか本人の言い分が聞き届けられたものがどれくらいありますか、その中に。
  101. 西内彬

    説明員(西内彬君) お答えいたします。  審判所は、御存じのとおり、四十五年に発足をいたしまして、五十六年度で十二年を迎えるわけでございますが、その中で、全体の裁決件数を一〇〇%といたしますと、請求人の主張を一部または全部認めましたものは四一%に上ります。
  102. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そうすると、五九%は審判所に出したが何のあれもなかった、ノーで全部否決されたと。こういうことですな。
  103. 西内彬

    説明員(西内彬君) 御指摘の解釈も可能かと存じますが、その中で、五九%の中の一四%は期限等によりまして却下になるものでございます。
  104. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 私は、最近になってこの不服審判所という言葉がまずかったんじゃないかと実はしみじみ考えています。国税庁、末端の税務署なり国税局がある個人に課税の決定をされますね。これはお上の決定ですよ、不服があったらば申し出なさい、検討してみてあげますというのが、これが不服審判所の底にある考え方ではないでしょうかね。
  105. 西内彬

    説明員(西内彬君) 原処分につきまして不服があれば、とにかく第三者的機関として救済に当たるという考えでございまして、申請がございましたら、とにかく請求人の言い分というのをよく聞いて、争点を整理しまして、十分に調査を行うということで独立して仕事をしております。決して、何か不服があれば、言ってくれば何とかするという態度ではございません。
  106. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 国税不服審判所の基礎になっている法律、これは国税通則法の七十八条ですが、「国税不服審判所は、国税に関する法律に基づく処分についての審査請求に対する裁決を行なう機関とする。」と書いてある。そうすると、これは処分を受けた者の方から、この点不服でございますと言ったところしか審査しませんか。
  107. 西内彬

    説明員(西内彬君) 総額主義的な審査の仕方というものにつきましてもできないわけではございませんが、不服審判所設立のときにおきまして国会の附帯決議等をいただきまして、総額主義的に偏することなく、争点主義的に重点を置いて審査事務を行うようにということでございますので、原処分を行いましたものと、それから請求人の申し立てとの相違でございます争点というものを主眼といたしまして、これを中心に解明をしております。  以上でございます。
  108. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そうすると、やっぱり原側として、本人が、ここが不服でございます。ここが不服でございますと言った点だけを審判所は審判してくれるということでいいですか、そう解して。
  109. 西内彬

    説明員(西内彬君) 争点主義的運営と申しますのは、新しい脱税事実の発見を事として調査、審理に当たるという意味ではございませんので、これは、そういうふうに救済を主眼として運営を行うという意味でございます。
  110. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 新しい脱税事実まではもちろん調査はされないのかもしらぬが、現在行われている処分に、まあ不服と言えば不服でしょうけれども、それは国民の側から言えば、税務署の、徴税当局の処理が間違ってるんだから公正な目でこれを見直してくださいという、そういう意味の判断はしませんか。
  111. 西内彬

    説明員(西内彬君) 請求人の主張は十分に聴取をいたしまして、当然その点につきまして深い調査、審理を行いますから、当然先生が申されたような調査なり審理をいたすわけでございます。
  112. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 もう時間でありますので、この際はこれくらいで打ち切りますが、先ほど申し上げたように、この減額更正が五十四年の歳入の欠陥になっておるということですから、そうすると、いま五十四年の決算は当院の決算委員会にかかっております。近く審議になります。これがはっきりしないと決算の承認、不承認の結論を出しかねると私自身は思っております。  ところが、国民の側から言うのは、申告してから三年間、突然に更正決定をしてきて、それから異議の申し立てをして八カ月間、今度不服審判をして三年半、ついこの間審判の結論が出て、仕方なしにこれはいま地方裁判所、民事裁判にかかってるんです。この結論が出るまでこの減額更正が果たして正しいものかどうかわからぬなら、国会が五十四年の決算の承認をしていいものなのかどうか決めかねているんですよ、本当は。  まあしかし、時間でありますので、私の質問はこれで終わります。
  113. 多田省吾

    多田省吾君 私は、大蔵大臣にまずマル優廃止論について若干お尋ねいたします。  このたびわが党は、グリーンカードの三年凍結については、不公平税制を正す手段が他にない以上、絶体に反対であるという主張を続けてきたわけでございますが、このたび租税特別措置法改正案で政府・自民党はグリーンカード制の三年凍結を図っております。大変残念なことでございます。またそれに関連しまして、大蔵大臣は今月八日の衆議院予算委員会で、いわゆるマル優制度について廃止を含めて検討すると発言されたと聞いております。先ほどの質問に対しては、政府税調の検討の対象からは外せと言わないだけだと、こういうような御答弁があったと思いますが、私は、言葉のニュアンスの違いこそあれ、同じことを言っているんじゃないかと、このように思います。  私は、この発言の背景には、貯蓄の奨励とか零細預貯金の保護という現行非課税制度の役割りは終わったという認識があるのか。それとも非課税制度を悪用して脱税している者が多いので、これを締め出そうということなのか。この発言の真意というものをお伺いしておきたいと思います。
  114. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いま多田委員おっしゃいましたように、政府税調というものはあらかじめ問題をしぼるとか、あるいは例外を設けるとかいう形で諮問を申し上げる筋のものでない、そういう立場に立ってマル優制度についてはらち外に置かない問題でございます、こういうふうに答えたところでございます。  ただ、このマル優問題の一般論として言えます問題につきましては、いま多田委員が御指摘になりましたもろもろの議論があるというようなことは、これは私も、報道関係、雑誌、論文等で知らないわけではございませんけれども、いまその点について私どもが研究した、検討したという段階でございませんので、それに対する大蔵大臣としての見解を述べることは適当な時期ではないというふうに考えております。    〔委員長退席、理事大河原太一郎君着席〕
  115. 多田省吾

    多田省吾君 私は、今月八日の衆議院の予算委員会の質疑の途中において、わが党の正木政審会長の、グリーンカード三年凍結は反対であるという立場から、もしや大蔵省ではマル優廃止論まで考えているのではないかという質問に対して、大蔵大臣の答弁は、いわゆるマル優制度の廃止を含めて検討するという立場にあったのではないか。政府税調の検討の対象からは外さないというような趣旨の答弁をいまなさっておりますが、結局同じことを言っているのに違いないと、私はこう思わざるを得ないわけです。  いままで、政府税調に対しましても、いま御答弁なさったようなことは代々の大蔵大臣はまだ言ってなかったわけです。それを踏み越えて大蔵大臣が、政府税調の検討の対象からマル優廃止論も外さないんだと、このようにおっしゃった真意というものは、私は一般論だけでは済まされないと思うんですが、もう一度お答えいただきたい。
  116. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは衆議院予算委員会におきまして、税制調査会等でいろいろ御審議いただく問題でございますということに対して、正木委員から、その際マル優制度の廃止問題も議論されるのか、こういう質問に対しましてお答えをしたわけでございまして、そもそも税制調査会というようなものは、まさに非常に広範な諮問方法、諮問形式をとるわけでございます。  一例でございますが、この前の諮問の内容を読み上げさしていただきますと、「国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」を諮問すると、こういう大変大きな角度から御検討いただく問題でありますので、しぼりにかけるとか、らち外をつくるとかということは適当でないというふうに申し上げたわけでございますので、真意がそこにあるということを御理解をいただきたいと思います。
  117. 多田省吾

    多田省吾君 わが党は、昭和五十八年度予算に対するわが党の基本的態度、この中にもマル優制度については存続を強く要望してきたところでございます。また、ある新聞社の世論調査の結果によりましても、マル優廃止には絶対反対だと、こういう国民的な意見が非常に強いのでございます。マル優廃止もやむを得ない、あるいはマル優を廃止してもよろしいというような考えをお持ちの方は非常に少ないわけです。  私は端的にお尋ねをいたしますが、大蔵大臣としてはどうなんですか。このマル優廃止論に賛成なんですか、反対なんですか。
  118. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱりマル優制度というものは、これができた歴史的過程というものもございますし、そしてまた今日、多田委員も御指摘になりましたが、貯蓄奨励というような一つの物の考え方は、現在の事象に合わないとかというふうなものでは私もないと思うのでございます。それなりの効果は機能しておるというふうに思います。  それから問題点が種々指摘されておりますが、いま私はマル優問題について、これは廃止すべきものであるとか、そういうような意見を持っておるものではございません。
  119. 多田省吾

    多田省吾君 まあ、大蔵大臣はそうおっしゃりなながら、政府税調の検討の対象からは外さないとおっしゃっている以上、反面、マル優廃止論を示唆しているようにも受け取れるわけですね。ですから、私はもっと率直に、マル優廃止を望まないんなら、マル優廃止は反対だ、マル優は存続すべきであると、このようにお答えがあるべきだと思いますが、どうでしょうか。
  120. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 広範な意味において税制調査会で御検討いただくということになれば、予断を与えることは慎むべきではないか。ただ私は、多田委員の御指摘の御意見等について理解は十分持っておるつもりであります。
  121. 多田省吾

    多田省吾君 大蔵省は、先ほど私が述べましたように、非課税制度を悪用して脱税している者が多いんではないかというお考えがあるのかどうか。この制度を悪用していると思われるいわゆるアングラマネーなるものが、前の委員会では三十兆円ほどあるだろうというような主税局長の御答弁もありましたけれども、あるいは五十兆円に及ぶという説もありますけれども、これはどの程度考えておられるんですか。
  122. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) アングラマネーといいますときに、いろいろな態様があるわけでございまして、よく例に引かれますのは、たとえば麻薬とか、売春とか、いわゆる非合法な行為に基づく金の流れと、もう一つは、そういう非合法な行為ではないのでありますけれども、税務当局といいますか、課税権のらち外で流れているという意味での、広い意味でのアングラマネーという規定の仕方もございます。  前者の場合につきましては、たとえばわが国とアメリカとを比べました場合に、いわゆる法的秩序というような面から見ました場合に、常識として、先進国の中でわが国がそういう非合法なという意味でのアングラマネーが非常に大きい分野を占めているということは、常識的に非常に考えにくいわけでございますが、一方税務当局の捕捉という面でこれを逃れているいわゆる経済取引なり所得というのは一体どれぐらいあるのかということは、率直に言いまして、非常に把握のむずかしい問題でございます。もちろん学者の中にはいろんなマクロデータをお持ちになりまして、たとえばGNPの一割とかあるいは一割強とか、いろいろ議論がされているわけでございますけれども大蔵省なり税務当局といたしまして、計量的にGNPの何%ぐらいがアングラマネーであるということを申し上げる自信もございませんし、その判断の手がかりになるものもない、むしろそういうことがはっきりわかれば捕捉されている問題でございますので、その点は御理解を賜りたいと思います。
  123. 多田省吾

    多田省吾君 私は、先ほど申しましたように、本来少額貯蓄者を保護する目的でつくられたマル優制度は絶対廃止すべきではない、このように主張したものでございますが、またいわゆるアングラマネー締め出し策を講じなければならないとして最適な施策がグリーンカードの実施だったわけでございます。これを今度は三年凍結したということは全く理解できないわけでございますが、このグリーンカードを廃止するというのであれば、何らかの補完政策が必要だと思いますが、それはどう考えておりますか。
  124. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま委員指摘のように、五十八年度の税制改正におきまして、租税特別措置法をもちまして、五十五年の所得税改正で一応国会の御承認を得ましたいわゆるグリーンカード制度を三年間いわば凍結させていただく内容の御審議をお願いしているわけでございますが、この政府案を行うに際しまして、実は先月、一月でございますが、政府の税制調査会にもお諮りいたしまして、政府の税制調査会では、諸般の事情からやむを得ないだろう、三年間凍結はやむを得ないだろうということで、いわば御承認を願ったわけでございますが、そのときに、仮に今回の法案を国会で御承認をいただきますれば、早急に税制調査会の中に特別部会のようなものを設けていただきまして、今後の利子配当の適正な課税のあり方について早急に検討に着手していただくということでございます。  同時に、この法案が閣議決定されました段階で、大蔵大臣がわざわざ閣議で発言を求められまして、この法案をお願いするに当たりましても、利子配当の適正な課税という政府の従来の方針はいささかも後退するものではないという決意も述べていただいておるわけでございますので、今後、現在の非課税貯蓄制度のあり方、それから利子配当課税全般のあり方につきまして税制調査会で御検討いただくわけでございますので、私どもといたしましては、その税制調査会の御検討の結果を注意深く見守ってまいりまして、御結論をいただきますればそれを尊重して、また新しい制度なり何なりをお願いするということになろうかと思われます。
  125. 多田省吾

    多田省吾君 もう一点は、大型間接税として、いわゆる欧州型付加価値税導入を大蔵大臣はさきの衆議院予算委員会で示唆しているわけでございますけれども、私はこれも非常に納得がいかないわけでございます。昭和五十四年の十二月二十一日に、衆議院、参議院の本会議におきまして財政再建に関する決議というものを行いました。いわゆる一般消費税(仮称)によらないとはっきり言っているわけです。  大蔵省はどうも、この「仮称」というものを昭和五十三年十二月に一般消費税大綱として示したものに限定しまして、そしてこれ以外はやっていいんだ、たとえば欧州型付加価値税というものはこのいわゆる一般消費税には当たらないのだ、こういう考え方で大蔵大臣が答弁なさったように思うわけでございます。  私は、財政再建に関する衆議院、参議院の本会議におけるこの決議を見ますと、このいわゆる一般消費税も欧州型付加価値税も同じような性格を持っているし、結論的にはやはり消費者に負担が全部かぶさってくる、あるいは景気が低迷するというふうなことにおいては同じではないかと思うんです。むしろこの欧州型付加価値税というものは、この一般消費税の一種にすぎないのではないか。そうしますと、私は、この国会決議がある以上、欧州型付加価値税といえども、決議に違反してこれを導入するということは、国会決議違反ではないか、このように思うわけでございます。  また、この財政再建に関する決議を見ますと、「一般消費税(仮称)によらず、まず行政改革による経費の節減、歳出の節減合理化、税負担公平の確保、既存税制の見直し等を抜本的に推進することにより財源の充実を図るべきであり、今後、景気の維持、雇用の確保に十分留意しつつ」云々、このようにあるわけでございますが、この歳出の節減合理化とか、税負担公平の確保とか、こういったものがまだ徹底的になされていないわけです。その上にこういった欧州型付加価値税を導入してもよろしいというようなニュアンスの御答弁をなさることは国会決議違反ではないか、このように思うわけです。いかがお考えですか。
  126. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 多田委員の御指摘というものも、私が一番最初質問を受けた場合に、瞬間的にどうお答えしようか苦慮した点をおつきになったということでありまして、率直にそのとおりであります。これはいわゆる一般消費税(仮称)ということを私なりに当時しばしば固執しましたのは、消費一般にかかる税制というものは今日もたくさん存在しておる。それ全部が否定されるような文章になったら、為政者としても、また選択をするであろう後世の納税者に対しても済まぬという気持ちから、そのような主張をたびたび繰り返しておったわけであります。  ところが、いま御指摘のように、当時考えられたいわゆる一般消費税(仮称)というものは、確かにその審議の過程においてヨーロッパ型付加価値税というようなものから、手続上の問題として、インボイスを取り去ったというような形のものでありますだけに、私もどのようなお答えをすべきかということを一瞬考えました。が、しかし、結局私どもが広く税制の問題についてあるべき姿を税制調査会に、諮問申し上げておるとすれば、やはりそれらをらち外に置くということは非礼ではないか、こういう意味において、検討のらち外に置かないという意味においてお答えをしたわけであります。  したがって、私は国会決議の重みというものは、私もきょう幸いにいたしまして永年勤続二十五年の表彰を受けてここへ来たわけでありますが、その重みをしかと感じておりますので、そこのところの議論多田委員にもあるいは御理解がいただけることではないかなあというような感じでお答えをいたしたわけであります。
  127. 多田省吾

    多田省吾君 どうもよくわかりませんね。EC型付加価値税といいますと、メーカーから卸業者、小売業を経て最終消費者に渡るまでのそれぞれの段階で新たに付加された価値を課税標準とする税の仕組みということが一般論でございますね。一般消費税の場合は、いま大蔵大臣おっしゃったように、日本型にそれを改めて、こういった義務化はしてないわけでございまして、そのほかに年間売上高二千万円超の事業者に限るとしてあるわけですね。こういった内容を見てみますと、私は、国会決議で一般消費税はいかぬと決議されているわけでございますから、場合によってはそれ以上に消費者に負担がかかると思われるような、あるいは中小企業者に負担がかかると思われるようなEC型付加価値税というものは当然やるべきではない、行ってはいけないと、このように考えているわけでございます。    〔理事大河原太一郎君退席、委員長着席〕  しかし、大蔵大臣は、先ほどのマル優制度と同じように、政府税調に手かせ足かせをすべきではないというような論法であたかもそれを認めるような方向で示唆なさっているわけですよ。予断を与えないとおっしゃっていますが、予断を与えていらっしゃるわけですよ。ですから、これはもう大型間接税導入を大蔵大臣初め中曽根総理大臣も図っているんじゃないかというんで、それを心配されて、同じ閣内の塩崎経企庁長官が、この大型間接税導入問題に対しても消極的な発言をされたじゃありませんか。大型間接税、いわゆる欧州型付加価値税のようなものが導入される、五十九年度あたりから導入されるおそれというものを心配して経企庁長官も反対の立場をお述べになっているわけです。ですから私は、政府税調に諮るのに手かせ足かせはしないという言葉の裏には、このマル優制度も廃止の方向で、またEC型付加価値税も検討の対象にという、そういういわゆる予断を与えているんじゃないかと、このように私は思うわけですが、どうですか。
  128. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これもう一つ大事なことがございますのは、きょう本院においていま多田委員と私と質疑応答を繰り返しておる、そういう問題、そしてなかんずく国会決議、これらは予断を与える与えないの問題とは別として、貴重な参考として税制調査会へまず御提示申し上げるわけなんです。したがって、税制調査会の審議に当たって、そういう国会決議とかというようなものの存在しておるということは、十分御認識いただいて御審議をいただくわけでございますので、国権の最高機関たる国会の論議は一応御提示申し上げるわけでございますから、それを政府のサイドから一つの手かせ足かせを、いま適切な表現でございますが、与える形において御提示すべきものではないではないかというような考え方でございます。  ただ、でも国民は信頼しないじゃないかとおっしゃれば、これは大蔵大臣竹下登の言葉が下手なのか、自由民主党が信頼されてないのか、それは別といたしまして、そのことをとかく申し上げるつもりはございませんが、やはり私どもは貴重な意見を問答の中でいただいておるようなものは御提示申し上げる。しかし、政府考えとして、手かせ足かせというものを課すということは避けるべきではないかなと、こういう考え方でございます。
  129. 多田省吾

    多田省吾君 じゃ大蔵大臣はいまも、衆議院の予算委員会でおっしゃったように、国会決議のいわゆる一般消費税の範疇にはEC型付加価値税は入らないと、このように考えているんですか。
  130. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは決議に「国民の理解を得られなかった」というその「得られなかったもの」は何かと、こう言えば、いわゆる一般消費税(仮称)であると、こういうことになると思いますので、いわば生い立ちとか性格とか分類とかしたら、非常に近いものじゃないかという御指摘、私もこれを否定する考えは全くございませんが、基本的に全く同じものであるという考え方には立たないということであります。
  131. 多田省吾

    多田省吾君 ですから私は、大蔵大臣は、「いわゆる一般消費税(仮称)は、その仕組み、構造等につき十分国民の理解を得られなかった」、この一般消費税とこのEC型付加価値税は同じものではないといまもはっきりおっしゃったわけです。それを政府税調には手かせ足かせしないとおっしゃっているんですから、私はニュアンスとしまして、いまも大蔵大臣は、この昭和五十三年十二月に大蔵省が一般消費税大綱として示した一般消費税とは違った形のEC型付加価値税であるならば、それを導入したとしても国会決議に反するものではないと、このようにお考えなんじゃないですか、はっきり言って。
  132. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは厳密に言いますと、国民の理解が得られるか得られないか、こういう問題にまでさかのぼってくるわけでございますけれども、私自身のあえて意見を申し上げますならば、そういう決議の重みというものは、これは権威ある調査会であればあるほど、十分御認識いただいて御検討いただける問題であろうというふうに一般的には考えていいんじゃないかなというふうに思っております。
  133. 多田省吾

    多田省吾君 私は、大蔵大臣のお考えには絶対反対でございまして、この一般消費税は導入すべきではないという国会決議、したがって私はそれと同じような性格を持つ、またある場合にはそれ以上に悪いものになるとも思われるEC型付加価値税は導入すべきではない、私は強くそう思います。  これは意見の相違でございますが、先ほど申しましたように、大型間接税導入問題について大蔵大臣やまた総理大臣が前向きの答弁を繰り返しておりますので、塩崎経企庁長官が、景気の面からも、経済運営の立場から見ても、安易な大型間接税導入は適当でないと、こういう見解を述べているわけでございますが、これはどう考えますか。
  134. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) この塩崎国務大臣の記者会見における発言というのは、私は一つの御見識であると思っております。いわゆる消費税というものが、いま不況時において消費を刺激しなければならない立場にあれば、それに逆行するものではないか、だからいま適切でないという一つの御見識ではないかというふうに思っております。ただ、これは別に閣内で対立したとかいうことではなく、塩崎国務大臣その人がまさに税の専門家でございますので、あの人としての見識を申し述べられたというふうに私は思っております。  そうして、いわゆる大型間接税、これがまた非常に定義のしにくい問題でありまして、いまいろんな角度で定義をしてみますと、結局幅広い消費を対象にして、そしてかなり高額の税収が見込み得るものというような定義になるのかな。そうすれば、いまこれをあえて定義づければそういうものになるのかなということであって、いまこれを導入しようという意思が私の念頭にあるというものでは全くございません。
  135. 多田省吾

    多田省吾君 大蔵大臣は、衆議院の予算委員会で直間比率の問題、直接税と間接税の比率についても真剣な検討を加える時期が熟していると、このように御答弁なさったわけでありますが、私はいまの臨調が一部そういう考えに毒されているのではないかと非常に心配しているわけでございまして、最終答申にはそんなことは書いてもらいたくないわけでございますが、先ほども申しましたように、歳出の節減合理化とか、あるいは税負担公平の確保とか、国会決議にあるようなものをもっと徹底的にやることによって増税なき財政再建というものを推進すべきであって、こういった直間比率の真剣な検討なんということをおっしゃると、やっぱり大型間接税導入に積極的だ、あるいは行政改革も結局何もできなくなってしまう。そういう方向に進むことは明らかでございますから、こういうことはいまおっしゃらない方がいいんじゃないかと思いますが、どうですか。
  136. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) この直間比率の見直しについて環境が熟したと。これは私はいろいろ工夫して物を言ったわけでございますが、されば、なぜそういう環境にあるかと申しますと、私ども昭和五十四年、五十五年予算審議中、直間比率の見直しと言えば、トタでいわゆる一般消費税(仮称)ではないか、こう言われた。ところが、その後五十五年の十一月の中間答申、それから五十六年の答申、五十七年の答申というものをちょうだいいたしてみますと、確かにその文言につきましても、やはりそのような文言がそれぞれ書かれておるわけであります。  そうして、一方、この臨調におかれましても、増税なき財政再建、これはあくまでもてことしてやれとおっしゃっているのは御承知のとおりでございますが、しかしいろんな点からこれまた検討すべき課題であるというふうにもおっしゃっておるわけでございます。  したがいまして、そういうことを考えてみますと、やっぱり勉強するという環境は熟してきておるんではないか。事実、最近私どもがいろいろな会合に出かけましても、直接税重点を御志向になる方は、直接税というものは税の痛みを知るだけに、それだけにまた歳出に対しても厳しい眼を注ぐようになる。あるいはこの間接税の場合は、そういう比較的痛み少なくて取れるものもある。そうすれば勢い歳出に対する厳しい眼も薄らぎがちだというような御議論もありますので、そうして重税感からすれば間接税の方が少ないではないか。こういういろいろな議論があるという意味において、勉強すべきところに来たなというふうには確かに私も思います。  しかし、そのことがこの大型間接税に結びつけられるとすれば、やはり私どもに対する信頼がないのか、もっともっとこういう国会の中のお互いの気持ちを吐露した問答の中に、最終的には現行税制あるいは現行の制度、現行の政策というものはすべて国民の選択の集積がそこに存在しておるわけでございますだけに、私はこういう問答の中にいろいろ勉強していく環境ができつつあるではないか。こういう認識に立っておりますので、決してトタで大型間接税につながるもので考えておるわけではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  137. 多田省吾

    多田省吾君 私は、直間比率だけの問題じゃなくて、この前の本会議あるいは衆議院の予算委員会等を通じて、総理、大蔵大臣が一定の流れとして、どうも財政再建ということも、財政改革なんてやってみたり、それからそれに応じたように臨調の部会報告も直間比率なんていう問題を持ち出してみたり、どうもお互いに連携しながら大型消費税へという進行があるように感ぜられてならないわけでございます。行革あるいは歳出の節減合理化とか不公平税制の是正とか、こういったはっきりした方向臨調の土光会長だって打ち出しているわけですから、やはりその方針でいくべきではないか、このように強く思うわけであります。  それから政府は策定作業を進めていたいわゆる新経済五カ年計画を断念して、今度は新しく経済長期指針というものを作成するんだということですね。  私は、本会議でも質問しましたけれども、どうも新五ケ年経済計画というものが、昭和五十八年から六十二年度までの五ケ年間で赤字公債の発行をゼロにするのは無理であるという考え方から、この計画を断念して経済長期指針とかというものに切りかえたのではないかと思われますけれども、真意はどうなんですか。
  138. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 経済運営の中長期計画につきましては、昨年の七月以来経済審議会で策定作業が進められてきたところでございますが、とにかくわが国の経済社会の将来について非常に流動的な要素が多い、そうしてその方向を規定するということは困難である。これはまさに私どもが五十七年度予算をお通しいただきましたときに、いろんな議論をいたしましたが、六兆一千億もの歳入欠陥が出るという前提の議論は当時でもなかなか出なかった。しかし、事ほどさように国際経済等が不透明な状態でございますので、自由主義経済というものの基本にさかのぼって見れば見るほど、やっぱり時代の変化に柔軟かつ弾力的に対応する必要というものがいまあるんではないか。そこで先般、総理から、経済審議会におきまして、五ケ年という期間を超えた長期的視野で、わが国経済社会の展望と経済運営の指針をお示しいただくように新たに経済審議会へお願いをされたところであるというふうに承知しておるわけでございます。  したがって、私どもといたしましても、私の立場になれば、今度は財政の問題に移ってくるわけでございますけれども、その審議の推移等をも眺めながら、私どもも中長期的な視点に立っての展望というものも可能な限り明らかにしていかなければならない課題である。すなわち、五年間では、とてもむずかしいから延ばしたんだろうというような考えではなく、基本的に自由主義経済の原点に立って眺めたとき、それこそ中長期のそういう展望なり指針なりというのが国民の皆さん方にとってもお示しするに必要なものではないかという考えに立っておるわけであります。
  139. 多田省吾

    多田省吾君 それでは端的にお伺いしますけれども、大蔵大臣はどうですか、昭和六十二年度で赤字公債の発行をゼロにするということは可能だと思っておりますか、どうですか。
  140. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは私も非常に悩んでおるところであります。三年、五年、七年というような、いわば試算ではございますが、予算審議の手がかりにしていただきたいというので御提案申し上げた。  ところで、私も五年とか七年とか出してみると、どういうことかなと。私がかつて沖縄返還交渉等にお供しましたときに、ア・フュー・イアーズ、こういうのを議論したことがあります。これを一晩かかって議論して両三年以内という訳語にした。それに比べれば、この数年ということはセベラルイアーズでありまして、そうするとセベラルイアーズという場合は五、六年とか六、七年とかはあり得るが、五—七年というのはどうかなとも思いながら、いまお答えできる限界としては数年で、強いて多田委員がおまえの頭の中にある数年とは何ぞやとおっしゃれば、まあ五—七年ということかなと。それで、これからの作業を通じて逐次明らかにしていく努力をしなければならぬ、このように考えております。
  141. 多田省吾

    多田省吾君 三年というのは完全に消えちゃって、五—七年というふうにお答えになったわけです。  政府財政再建と表現してきましたけれども、今回は財政改革という用語に変更した。また財政の中期展望も財政の中期試算ということでいまおっしゃったA、B、C試案に置きかえております。  私は、五十八年度予算の審議にとって最も必要な、いつまでに赤字国債をゼロにするのかとか、それからはっきり明示した財政の中期展望というものは予算審議の最中に私は示すべきではないかとはっきり思うわけです。ところが、どうも参議院選挙終わってから出そうじゃないかというような雰囲気があるようでありますけれども、この予算が通るまでにどうして出せないのですか。
  142. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) そこが大変むつかしい問題でありまして、五十九年の赤字特例公債脱却という目標はすでにだめになったではないか、そのとおりであります。きわめて困難になりましたと、こういう御答弁を申し上げておりました、臨時国会中は。が、この常会になりまして、いわゆる中期試算というもので、たとえ推計とはいえ、将来に対する一つの指針が出た限りにおいては、数字の示すところ、まさにこれはできなくなりました、明言する結果になったわけであります。したがって、事ほどさように国際経済社会等が不透明なときに一つの目標を提示してそれができなかった場合、ある意味における政治不信というものにもつながるではないか。そういうことになると、やっぱりこういう中長期の展望というのは余り規範的に物を固定すべきではない。  そこでセベラルイヤーズというお話をしたわけでございますが、一方、経済審議会の審議も進むであろう。私どももいろいろな検討を続けていかなければならぬ。そして国民の皆さん方も、なるほどなあというようなある種の合意を、こうした問答を通じながら、踏まえて策定していくというのが本当に正直なあるべき姿ではないだろうか。特例公債のようなものを後年度の納税者にツケを回すというのは、これは私どもにも子もあれば孫もある、そういうことに対する物すごい精神的苛責を感ずるというのは、お互い共通しておりますだけに、いいかげんにそこのところをやろうという考えは全くございません。
  143. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、大蔵大臣としては、あれでしょう、こういった財政の中期展望を出さないともおっしゃっていないわけですよ。様子を見てとおっしゃっている。ですから、参議院選後であるならば、また本年中であるならば出したいという意向はあるんでしょう。どうですか。
  144. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) できるだけ合意を得られるようなものを速やかに出したい。それがしかし、おまえ予算審議中に出せと、仮におっしゃったとすれば、それをお出しするだけの自信はございません。  で、選挙を一つの切れ目にするというものについては、まあいかがかと思うのでありますが、できるだけ信憑性のあるものを、国民の理解と協力を得やすいものを、こうした問答を重ねながら出していきたい、この考え方はいま御指摘のとおりでございます。
  145. 多田省吾

    多田省吾君 最後にお尋ねしますが、大蔵大臣は赤字国債ゼロの年度を五—七年とおっしゃいましたけれども、私が先ほど六十二年中にできるのかとお聞きしましたら、それは御答弁なさらないというのは、五も消えて六、七年、早くても六、七年ということじゃないんですか。どうですか。
  146. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 言葉としては、僕も六、七年の方がまあいいような気もするんでございますが、今度まあ七、五、三で出した。この間あるところでは五—八年という言葉もありました。そうなるとこれはリャン、ウー、パーと、こういう呼び方もあるし、ですが、先生、私どもいまの段階で、多田委員、もう五年は無理ですよ、六、七年ですよと言うだけのふまじめさはない、やっぱり五—七年というところで御理解をいただきたいというふうに思います。
  147. 多田省吾

    多田省吾君 いや、私は五年で無理じゃないかなんて言っているつもりはないんです。もう絶対これは早くすべきだと私どもは言っているんです。  それから、時間もありませんが、最後に所得税減税ですね。私どもは一兆円程度所得税減税は五十八年度においては当然やるべきだ、本当は五十七年度中にもうやっていただきたいわけです。景気回復の面からも、不公平税制の是正という面からも、また国民生活を守る点からも、これは当然行うべきでございまして、私はやらない理由は全然わからない。本会議でも申し上げましたけれども、不公平税制の是正だってできるわけです、財源だってつくれるわけですからね。どうも総理も五十八年度は無理だというようなことをおっしゃっているそうでございますが、私は、大蔵大臣はこの際少なくとも五十八年度中においては一兆円程度所得税減税はあらゆる面から考えて行うべきだ、このように思います。自民党の内部からもそういう声が強く出ているのは御存じのとおりです。どうですか、やるつもりはありませんか。
  148. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) まあ、ここのところが大変つらい問題でございまして、総理からもたびたび多田委員の御質問に対しても本会議で答えましたように、そういう要望が強いことは十分承知しております。しかし今日のわが国のいわゆる歳出に占める租税の割合でありますとか、あるいは所得に対する割合でありますとか、国際的に見たら確かに低い。そうして、いま一つ、税制調査会においてもやむを得ないだろうという意見が大勢を占めた。そして一方、しかしながら国権の最高機関たるハウスの中でいろいろな話し合いが行われた。私も当時幹事長代理でございましたので、幹事長・書記長会談に私が自由民主党を代表して出かけております。そして議長あっせん文というものもつくって、そのもとに小委員会もつくられた。が、結局、その小委員会も財源ということについて合意を得ないままこれがなくなったというか、結論を得るに至らなかった、中間報告に終わったというようなことを考えますと、いま財源ということについて確たる自信が持てない。  したがって、税制調査会の答申に書いてありますように、五十九年度以降それこそこの直間比率等々すべての問題を広範囲に検討して、その要望の強いことを認識しながら検討すべきであるという御趣旨に沿って今日に至っておるということでございますので、私から、多田さん、わかりました、減税やりますと言う自信も環境もないと、残念ながらそういうお答えをせざるを得ないということであります。
  149. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 持ち時間がわずか十五分ですので、端的な御答弁をお願いしたいと思うんです。  先ほど議論が集中しておりますいわゆる一般消費税(仮称)ですね、これについては大蔵省としては今後採用しないというぐあいに断言できるわけですね。
  150. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 国会の決議がありますので、その手法は財政再建のためにはとらない、こういうことになっております。
  151. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうしますと、いま議論がありました一般消費税(仮称)とEC型付加価値税との違いはどこにあるのかということですが、大蔵大臣の頭にある一般消費税(仮称)というのは、たとえば輸入の段階、製造の段階、それから卸・小売の段階、それぞれの価格に対して一定率を掛けて、それからいままでに引かれた税金を差し引いたものが課税になると、こういうことですね。それがその仕組みだということ、それは間違いないんですね。
  152. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 大筋としてそのとおりであります。
  153. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、先ほど来答弁としてEC型付加価値税とどう違うのかと言われましたね。それで答弁に苦慮している。そうだと思うんですよ。実際中身は全く同じで、違う点と言えば、先ほども問題になったとおりインボイス、それが違うだけだ。  もう一つは、EC型付加価値税の場合には、逆に利益がなくても取引があれば課税される。そういう点では納税者や関係者によけいな負担を加えるものですね。となりますと、国民がノーだと言つたのは、また国会がノーだと言ったのは、そういう形のもので国民に負担かけちゃいかぬと。となりますと、よけいに負担がかかるんですから、国会の決議よりももっと広がったものを大臣は別なものだ、国会で決議したものじゃないと、こういうぐあいに聞こえてしまうんです。  だから、余り答弁に苦慮されないためには。本当のことを言われた方がよろしいんじゃないかと思うし、余り苦慮しますと、最近体によくないわけですので、ひとつすっきりするためにもひとつきっぱりとその理解をそのままに言われた方がよろしいんじゃないかと思うんですが。
  154. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) とっさに聞かれた場合に、確かにどう答えるべきか瞬間苦慮したことは事実であります。しかし一方、院の決議がある、国民の理解を得られなかったと。  厳密に言えば、あの場合の手法として考えたのは一般消費税である。一方、法律に基づく権威ある税制調査会がある。が、そこに対しては、いわゆるしぼりをかけたり手かせ足かせをかけたりすべきでない。というと、厳密な意味において手かせ足かせの部類に入るのかなあという判断をして、とっさの場合苦慮しながらお答えしたわけであります。  したがって、私も整理をしてみますが、手かせ足かせの一つの問題点にはなるような気がしますので、権威ある税調に対しても、国会決議があるということ等はもちろん御報告をしてあることですが、それを特に抽出して例外であるという形で申し上げるべき問題ではないじゃないかと、こういう感じがしております。
  155. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに、税調に対して非礼になるので、手かせ足かせにならないようにというのが苦慮されるところだと。  これは中身としては同じものだ、あるいはむしろEC型の方が国民に対する負担などは多い。だから国会の決議をさらにいわば上回る中身であるという御認識はあるんでしょうね。賢明な大臣だからそれはそうだと思うんですが。
  156. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) その認識も手かせ足かせの一つになるんじゃないかな。  ただ、私どもあれが議論された過程を知っておりますからまさにそれが念頭にあっていろいろ議論されたこともよく知っております。しかし、それは評価としてはいろいろな評価ができるんでありましょうから、いま委員の御指摘と私のこの考え方が必ずしも一致するとは私は考えません。やっぱり権威あるものに対する姿勢としては、しぼり、らち外に置くべきではないんじゃないかという感じでございます。
  157. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まあいまの話ですと、大臣が税調に対して一定見解をこの問題に対して示すのが非礼になるし、やるべきじゃないという答弁だと思うんですね。しかし、中身、さっき私が説明したような問題のことは、これはもう客観的事実でして、もうそれ以上勉強するといったって勉強する余地もないようなものです、この点に関しては。  問題は、私は、税調に対する非礼と国会に対する非礼以上のことをいまやろうとしているんじゃないかと思うんです。苦慮するのは、税調に対して非礼になって苦しい、国会に対しても決議を破ってしまって苦しい。そうすると両方ハムレットのようなものですね。そういう場合どちらを選ぶか、どちらの非札を捨てるのか。となれば、やっぱり国民主権のもとでは、国会に対する非礼はしてはならない。そうじゃないんでしょうか。
  158. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは国会の決議に対しては非礼などというようなものではない。
  159. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もっともっと高いものですね。
  160. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) もっともっと、まあ山よりも高く海よりも深いというものであろう。私も二十五年の体験によってそのように感じております。
  161. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それをあえてやるかもしれぬということで、私はこれはきわめて重要な問題だということを指摘して次の質問に移ります。  大臣の財政演説及びきょうの所信表明演説の中でこう言っています。「日本経済も、内需を中心とした自律的な回復の道を歩んでいくものと期待しております」と。この期待できる根拠は何でしょうか。  片や、経企庁長官の経済演説では、「財政困難の中で、景気の回復を図っていくことは決して容易ではありません」、こういう指摘もある中で、期待できる根拠は何か、自信がおありなのかどうか。
  162. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私は諸般の情勢を総合的に勘案いたしまして、「内需を中心とした自律的な回復の道を歩んでいくものと期待しております。」と、御指摘のとおり申し上げたわけでございます。  そこで、それの材料は何かあるかと言われますと、一つは最もホットな問題としては、あるいは石油価格の下落の動きということが言えるかとも思います。ただこの問題は、また別の意味において国際金融の中でいろんなトラブルを起こす要素ももとよりあると思っております。  大体考えますと、在庫調整がやや進んできた。  それからもう一つは、円安の是正ということじゃないかな。私は前回就任いたしましたときに、二百四十二円で就任して、やめるときに二百十九円二十銭でやめまして、これは私にとっては大変なプライド、エンプティープライドでございますけれども、であった。今度また二百二十七円まで円高に来ましたときは、これでもって円高基調は定着したんじゃないかな。ここでまたひそかなるエンプティープライドを持とうと思ったわけでありますが、きょうは二百三十六円で推移しておるようでございます。そういうような行き過ぎた円安の是正というものはやっぱり一つのポイントになるんじゃないかな。  そうして、もう一つは、ここ数カ月来の金利の低下、そしてもう一つの基調は、何としても世界で一番物価が安定しておる、それもずば抜けて安定しておる、国民の賢明さに深く敬意を表するほど安定しておる。  こういうのが数えられる要素ではないかなというふうに考えております。
  163. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 きょうはその問題を議論する時間はありませんが、ただ、日本経済上でき論の根拠となるべき事実は、いまむしろそれが逆に日本の不況の原因になろうとしているんじゃないかと思います。また世界経済というのもむしろ回復が八四年にずれ込もうとしておる。こういうような状況で、決して私は楽観を許さないし、逆に第二次減量経営というような問題もありましすね。第一次のときには中小企業が大体吸収したけれども、いまはその余力もないというような点で、私はいまの大臣の楽観的な期待は大変むずかしいんじゃなかろうかと思いますけれども、時間の関係で次にいきたいと思います。これは今後議論していきたいと思います。  それからもう一つの問題は、グリーンカード、総合課税実施のグリーンカードの関係です。総合課税実施のためにつくられた朝霞のADPセンターがグリーンカードの実施凍結によってあいてしまった。そこで、いま全国税務署総合オンライン計画のコンピューターセンターとして転用されることになったということですね。そこで、何をここでやろうとしているのか。個人、法人の納税実績や資産、滞納状況などをコンピューター管理しまして、いわば個別台帳をつくるんだろうと、こう思うんですね。その概要を簡単に言っていただけませんか。
  164. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 先生御承知おきのように、私ども国税事務の電算化というのはかなりおくれているのが現状でございまして、簡単に現状を申し上げますと、東京、大阪、名古屋という都市局の税務署二百十一署を主体にバッチで運営をやっておる。あと地方局の二百九十署ほどは全然電算化されていない。私どもそういう状況を一日も早く取り戻すために総合オンラインシステムというのを試験してまいりました。  そこでやっておりますのは、現在一般税務職員が手作業でやっております申告所得税法人税及び源泉所得税の内部事務、簡単に申しますと、たとえば確定申告書に住所とか氏名を打ち込むとか、集計をするとか、統計をつくるとか、それからあとこれらの税の債権管理事務、督促状の発送とか、そういうものをやっておるわけです。  今度朝霞のセンターを利用いたしまして、こういうようなオンラインの仕事を地方局にやろうというようなことを目的といたしております。
  165. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 質問をまとめて言います。  そうすると番号がつくんでしょうね、納税者の。これは納税者番号ということで国民背番号制につながらないかどうか。  それからもう一つは、グリーンカードはいま延期になったけれども、ここでこれだけの設備をやっちゃったら、もうグリーンカードは永久にやめちゃうんじゃないか、こういう心配というか意見がありますね。その点はどうか。  しかし、もしもまた同じ建物の中にグリーンカードの設備を設けるとしますと、いまやろうとしているのと一体になりますと、それこそ所得だけじゃなくて、個人の資産全部が大蔵省の管理するところになるというふうなことになりはしないかどうか。  この三点について端的にお答えいただきたいと思います。
  166. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 番号につきましては、これは私どもの内部の整理番号というようなものはあるいは必要かと思いますが、一連の全国的な統一的な番号ということは考えておりません。ただ単なる内部の整理番号というのはあるいは必要になってこようかと思います。  それから、もしもグリンカード制度を実施するということが決まりますれば、そのために必要なコンピューターセンターにつきましては、今後の朝霞センターの実際の利用状況とか、あるいはコンピューターのハード面での進歩の状況、そういうものを十分見きわめまして、必要があれば、新たな予算措置を含めまして、万全の措置を講じてまいる考えでございます。  それから総合オンラインシステムは、現在のところ、そういうような課税に関係のある資料を、申告書の内容等を中心にして、インプットして省力化を図っていくということでございまして、私どもとしては、このシステムはオンラインのシステムと、それからグリーンカードのシステム、これは別個の目的で開発されたものでございまして、対象者とか対象の業務内容も全く違うものでございますから、これが結合して一体化するということは考えられないんじゃないかというふうに思っておりますので、御懸念のような、そういうものの結合によって納税者番号云々というようなことにはなりがたいというふうに考えております。
  167. 柄谷道一

    柄谷道一君 第九十七臨時国会、第九十八通常国会、それぞれ大蔵大臣は財政に関する演説をしていらっしゃいます。ところが、私が読み取りますと、九十七臨時国会では、「日本経済がその最大の弱点である財政赤字を率先して克服し」云々と、こう強調されているわけですね。第九十八通常国会では、「単に財政赤字の解消にとどまるものでは」ないということで、「財政改革」という表現を使われているわけでございます。  これは私なりの受けとめ方が間違っておるかどうかお聞きしたいんですが、一つは九十七臨時国会の表現では、赤字国債依存からの脱出の時期というものが非常に強調され、そこに力点が置かれているように受けとめられる。したがって、それをそらす必要があるんではないかというお心と、財政改革の中には歳入構造の見直しということを含んでおられるわけでありますから、赤字を解消、克服するためには、歳入構造、すなわち増税ということもその念頭にある。こういったお考えが、わずか二カ月しか置かない両国会における大臣方針の違いとなってあらわれてきたのではないかと、こう私は受けとめざるを得ないわけですが、私の認識は間違いでございますか。
  168. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 二カ月間、確かに私ども、その後の本委員会等における議論におきましても、要するに、今後の問題については五十八年度予算編成を通じながら財政改革というものの方向を模索したいと、こういうことを申し上げておったわけであります。したがって、五十八年度予算というものの編成過程を通じながら、単なる赤字克服ということではなく、本当に歳入歳出ともどもにそのよって来た経緯、根幹にまでさかのぼって、これに改革のメスを入れにゃいかぬという認識に基づいて新たに財政改革ということを申し上げて、基本的考え方というものを申し上げているわけであります。  したがって、その念頭に増税があるか、あるいは増収とでも申しましょうか、これにつきましては、私は、行財政の改革は増税を念頭に置くべきでないという基本的な考え方をまず持って対応すべきである。したがって、増税ということを念頭に置いて対応するんじゃなく、増税ということは念頭に置くことなく、まず歳出構造と歳入の合理化、適正化というものに眼を集中すべきである、こういう考え方であります。
  169. 柄谷道一

    柄谷道一君 非常に優等生的答弁であるわけですが、端的に伺いますけれども、九十七臨時国会のときは大臣就任間もない時期で、いささか五十八年度の財政改革という視点まで思慮をめぐらせることができなかったと、こう理解していいんですか。
  170. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 実は行財政改革という言葉はございました。が、私が就任に際して組閣本部に呼び込まれたときに、財政改革については責任を持ちなさい、行政改革についてはあなたはその方針に従いますか、二つの条件が入閣の条件であったと思うんであります。  で、謹んでお受けいたしますと申し上げまして、さて財政改革とはというので私なりにいろいろ苦慮してきました。確かに従来赤字公債の脱却ということが財政再建の余りにもターゲットとして出過ぎて、したがって本質を失ったんではないかという感じも私もないでもなかった。だが帰するところは、言ってみれば、財政の持つ対応力の回復でございますから、そういうところから種々議論の結果、私は財政改革というもので演説も申し上げ、きょうもそういう視点に立ってお答えも申し上げておる。若干の戸惑いがあったかとおっしゃれば、そのとおりだとあえて申し上げるべきだと思います。
  171. 柄谷道一

    柄谷道一君 若干の戸惑いが、両国会における赤字国債率先解消から財政改革へ移った苦悩のあるところだと、こういうことだと思うんです。  そこで大臣は、それにしても、できるだけ早く特例公債依存体質からの脱却を図りたい、こう絶えず述べておらるわけです。ところが、一月二十九日に大蔵省が発表されました財政中期試算は、A、B、C三つのケースを示しただけで、どのケースを今後の財政運営の目標にするかということには触れられていないわけでございます。  私は、鈴木内閣の公約でございました五十九年度赤字国債脱却が不可能になったとすれば、当然これにかわる新たな目標年度を設定する必要が生まれてくるであろう。そこで、いままでの答弁では三年は無理。Aのケースが消えちゃったわけですね。あとは五—七年、B、Cが残っておる、これはいろいろ検討したい、こういうふうに受けとめられるわけでございます。しかし私は、本年の遅くても夏ごろまでにそのめどを設定しなければ、五十九年度予算編成財政再建を反映させるということがむずかしくなってくるんではないか。先へ先へと問題は先送りされていくということを憂うるわけでございます。  そこで、この運営目標ですね、これは来年度予算編成は新しい目標年度というものに基づいて、それを基本として編成するというお考えがおありかどうか、この点をお伺いします。
  172. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは御指摘のとおりでありまして、私もかくありたいと思っております。  で、確かに、たとえば臨調の部会報告の中に、財政の機動性、弾力性の回復には六十年代を通じて努力が必要であるという旨述べられておるわけであります。しかし、六十年代といいますと、私はいま五十八歳でございますが、七十になるまでかかってもいいかというような安易な受けとめ方をすべきじゃない。それから、いみじくも御指摘いただいたように、じゃ、二、三年かというと確たる自信がないというところから、先ほど来本当に非礼に当たる言葉も使いましたが、セブラルイヤーズというようなことを考えてみた、そうすると五—七年かなと。しかし、いつまでもその五—七年で柄谷さんにお許しいただけるとは私自身も思わない。それじゃおまえ何月何日、およそ何月までに出せるかとおっしゃると、はい、出せます、もし出せなかったらそれこそ政治責任も生ずるというと、一方、経済審議会の審議の様子も見守りながら、できるだけ早い機会にという答弁が、今日の段階では限界かなというふうに考えております、正直に申し上げますと。
  173. 柄谷道一

    柄谷道一君 政治責任を問う気持ちはございませんが、なるべく早くというのは、努力目標としてはことしの夏ごろを目標にがんばってみたいと、こういうふうに受けとめていいですか。
  174. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) この間来少しずつ打診してみておりますと、経済審議会の方の作業もまだめどが必ずしもいつごろとはつかないというと、夏ごろまでにというだけの自信はいまのところありません、率直に申しまして。
  175. 柄谷道一

    柄谷道一君 押し問答をしておってもしょうがないので、これはおくれますと、財政改革をどんどんどんどん先送りさしていく結果になる。少なくとも五十九年度の予算編成するに当たっては、そうしたおおむねの運営目標というものを設定して、それを目指す第一段階としての予算が来年編成されるというのが、一番われわれが譲歩した場合の年度であろうと、こういうふうに思いますので、これは意見として申し上げておきます。  そこで次に、大蔵大臣は二月七日の衆議院予算委員会で、大型間接税導入の方向を示唆されたわけですね。ところが、二月八日、翌日に経企庁長官は、大型間接税については、景気への影響というものを考えて、どちらかというと否定的な見解を述べられた。同じ日に大蔵大臣は、予算委員会で、マル優廃止の方向を示唆された。ところが、翌日の九日、後藤田官房長官の記者会見の内容を新聞で見ますと、いかなる増税も考えていない、またマル優廃止の決定はないと、いわゆる大蔵大臣の方向を示唆されたことを否定されているわけですね。  私は、それぞれ主観に基づいて大臣が述べられるということは、これはあったとしても、これはおよそわれわれからして閣内の意見が統一されていないとしか受けとめられないわけでございます。今後、この当委員会は九つの重要な歳入関係の案件が検討されるわけですが、私はここで統一見解を示せ、内閣としてのこの問題に対する統一見解を示してほしい、それでなければ質問をとめるというようなことはしません。しませんけれども、少なくとも次にこの大蔵委員会が開かれるときには、内閣としての統一見解が示されるべきである。そうでなければ、いろんな憶測に基づいて本委員会の重要な審議をわれわれが進めるということが非常にむずかしい。こう思いますけれども、大臣、統一見解を示すお約束はいただけますか。
  176. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 塩崎国務大臣が、不況時における消費を対象にした税制は適当でないと言われた、これも一つの見識だと私も思っております。  ただ、私が大型間接税を示唆したということは、私の言葉が悪かったのか、示唆と受けとめた方があるいは間違いであるのか。これに対して私、幸い、きょうなんかも、そういう問答の中で非常に平静心で物を言わしていただいて、大変ありがたい場を提供してもらった。マル優問題もしかりであります。  これは税調の外に置くべきでないという話をしたのが、マル優廃止を示唆と、こう出ていくわけです。やっぱり言葉は選ばなければならぬなと思っておるわけです。  そこで、後藤田官房長官は、そういう若干散見するいろいろな記事等に対して、思い余ってという表現は適切じゃございませんが、この際適正なコメントをすべきだと思って会見をしたというふうに私も理解しております。  そこで、政府の統一見解として出しますか、いま御意見を交えた御要望については、正直なものを私なりに部内で検討して差し上げてみたいと思っております。
  177. 柄谷道一

    柄谷道一君 受け取った方が悪いかもしれぬというお言葉ですが、新聞にこれだけ書かれますと、国民は迷っちゃうことは明らかなわけですから、これはひとつ大臣から、閣内の意見を代表する見解を次回の委員会にお示しをいただきたい。  そこで次に、臨調の基本答申ですが、これは全体としての租税負担率、対国民所得比でございますが、その上昇をもたらすような税制上の新たな措置は基本的にとらない、いわゆる租税負担率という歯どめを置いて、その中における直間比率の見直しというものを答申しておるのが臨調基本答申であろうと思うんですね。  そこで、大臣、五十九年度、来年度この歯どめを超える意図はないとここで御確約願えますか。
  178. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは私もいろいろ読みながら判断に若干の戸惑いを感じておりますのは、租税負担率というものは分母分子で景気等によってどちらも変化していくということになると、現行租税負担率とは何ぞや。一度は経済社会七カ年計画の二十六カ二分の一なんというものも念頭に置いて計算してもみたのでございますが、それが定かにこれだというものはなかなか確定するのはむずかしい。しかし、いまおっしゃた趣旨、当面そうしろと御答申をいただいているんですから、これはやはり遵守すべきことだというふうに考えております。
  179. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは大蔵官僚の一部が、増税なき財政再建という基本答申はいわゆるスローガンであって、厳密な目標ではないということを言っておられることも耳にするんでございますが、これはまさに言語道断と言うべきでございまして、内閣は臨調答申の尊重という基本があるわけですから、ただいまの大臣のお言葉を信じておきたい。  最後に一点お伺いしますが、中小企業の事業承継税制の問題ですね。これについては一歩前進が図られておることは率直に評価いたしますが、しかしこの方法によりましても十分ではないと思うんですね。たとえば小会社については株式評価が相当改善されることは改善されますけれども、しかしとりわけ地価の高い都市部においては、これによっても相続税負担はなお重い状態が続くことは、これは明らかでございます。  なお、私たちはかねて、農地の相続税制と同様の配慮がここに加えられてしかるべきではないか、具体的にこの問題に対して問題を提起いたしております。ここで、時間が参りましたので、一点だけお伺いしますが、今回の措置は当面の階段を一歩上っただけであって、このことをもって承継税制のすべてが解決されたものとは考えていない、こういう明確な御答弁を求めて質問を終わります。
  180. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは農業基本法等に基づいて考えましたときに、いわゆる農業並みということには論理的なむつかしさがあるというふうに思っております。したがって、種々議論して税制調査会等の御答申もいただき、今回決定したもので御審議をいただくことになっておるものが現状における工夫の所産である。将来の問題は、そういう意見が出たということは当然税制調査会にも報告するわけですが、いささか税制調査会に対しての予見の範囲内に入るかと思いますので、その辺は差し控えさしていただきたい。
  181. 野末陳平

    ○野末陳平君 ここ数日、付加価値税とかマル優の廃止のようなことが突然のように話題になっています。きょうも大臣はマル優という言葉をお使いになりますが、その場合に、大臣の頭の中にあるマル優は、民間の金融機関のいわゆる非課税貯蓄の例のマル優だけなのか、それとも郵貯の三百万の非課税、それから国債の特別マル優も含めた上の言葉遣いだったのか、ちょっとその辺を確かめておきたいんですが。
  182. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 御指摘のとおり、いわゆるマル優制度というような問題で申し上げましたのは、利子配当課税制度のあり方の一つとして申し上げたわけでございますので、やはり税制調査会の問題として取り上げていただくという場合においては、どのような方向で御検討いただくかについては、郵便貯金はどうです、いわゆる一般マル優はどうですというようなものをあえて規定づけないでおいた方がいいんじゃないか、全体をインクルードしたものとして考えていただけるんじゃないだろうかなというふうに思っております。
  183. 野末陳平

    ○野末陳平君 つまり、そうすると、一般的な貯蓄全体、非課税制度みたいな受け取り方でいいですか。
  184. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やはり全体としての御議論をいただくということであろうと思います。
  185. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうすると、非課税制度とは違うんだけれども、生命保険の毎年の所得控除の、例の五万円で頭打ちのがありますけれども、これは今後このままでいいのかどうかというのがいまのマル優のテーマとは別に考えられるんですね。というのは、最近生保も貯蓄型とか節税型とかいろいろ商品がたくさん出てきましたね。そうなると、一方でマル優廃止などというようなテーマを調に諮る場合に、この生保の問題をほうっておくとバランスを欠くことにもなりかねない。これを外に置くべきなのか、これは置くべきでないというのか、その辺は大臣の頭の中にはございましたか。
  186. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱり国会での議論を踏まえてその上で改めて、この法律が通りましてから、グリーンカード問題、制度について出てきた課題でございますので、したがって、国会での御議論を踏まえて、その上で改めて税制調査会で検討していただくということでございますので、どのような問題を取り上げていただくのか、どのような方向で御検討いただくかについては、私どもの方からはやはり言うべきではないじゃないかなというふうに考えております。
  187. 野末陳平

    ○野末陳平君 先ほどのお答えで、大臣自身はマル優はそれなりに機能しているというようなことをおっしゃっていましたけれども、機能しているんだったら、いまそれを廃止をも含めて税調に諮るという必然性は余りないような、乏しいような気もするわけですよ。率直に言いまして、私個人はマル優は廃止を含めて検討すべきだと思いますが、機能しているんだったら何で税調に諮るんだということを改めて聞きたいわけです。なぜいまこれを税調に諮る気になったのか、その辺の動機がわかりませんね。
  188. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは租税特別措置全体は常に見直すべきものでございまして、利子配当の見直しというものもまさにその一環であるということでございますから、特に質問に答えて申しましたのは、マル優は外に置くのかという質問に対して、そういうものではございませんと答えたわけです。  それから私が機能しておりますと申しましたのは、マル優制度というものが、貯蓄奨励というものの意義に、ある種の責務を果たしておるという認識を持っておるということを言っただけで、その欠点とか、いろいろな問題も全く知らないといわけじゃございません。
  189. 野末陳平

    ○野末陳平君 それではそのマル優廃止云々のところをちょっと離れまして、もちろん関連はあるのですけれども、国債の特別マル優ですね。これについては国債の発行その他償還問題が非常にこれからむずかしくなってくるという前提で質問するのですけれども、国債の特別マル優というのは、むしろ今後枠を拡大しなければならないようなことだってあると思うのですね。  そこで、国債の特別マル優ですが、これについては、大臣、今後どういうようなあり方が望ましいというふうにお考えになっているか、ちょっと意見をお聞かせ願いたいと思うのです。
  190. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 国債の問題につきまして、私どもいろんなところでいろんな議論を行われる場合に、いわば多様化をする中で、いわゆる特別マル優の特別マル優をつくったらいいじゃないかという議論をする人もありましたり、いろいろしておりますが、結局は租税特別措置の一環でございますので、やはりこの問題につきましても、常に特別措置は見直すという姿勢だけは持ち続けていなければならぬ問題でありますので、全く別の時点考えておる問題とは言えないんじゃないかなと思います。
  191. 野末陳平

    ○野末陳平君 ちょっとよくわからないのですがね。
  192. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま大臣の御答弁のあったとおりでございまして、租税特別措置というのは、いわば政策税制と申しますか、税制を通じましていろんな政策を追求していくという政策手段でございます。  野末委員御質問のいわゆる特別マル優、国債の問題でございますが、この国債管理政策なり消化政策と税制とを具体的にどういうふうに結びつけて今後考えていくかという御設問だろうと思うわけでございます。率直に申しまして、現段階大蔵省部内で——これは理財局が主管しておる問題でございます、国債管理政策は。今後の国債管理政策と税制との結びつきをどういうふうに具体的に展開していくかという議論は、まだそこまで熟した議論は部内ではいたしておりません。  ただし、今後の国債管理政策を考えます場合に、必要な場合、税制もその一つの手段として出動し得る、しなければならないということは、理論的には当然考えられるわけでございますが、現段階で具体的な方向づけなり結論を持っているということではございません。
  193. 野末陳平

    ○野末陳平君 この問題は、まだ大臣個人がいろんな意見をおっしゃれるという段階ではないわけですから、余り聞いてもしょうがないのですが、仮定の話で一つだけ大臣のお考えを聞きたいと思います。  仮に、さっき言ったように、マル優の廃止ということがあり得てもやむを得ない。それはもちろん国民の選択ですから、非常なる反発があれば当然できません。だけれども財政再建のいろんな角度からの検討の結果、もちろん歳出削減を中心とした行政改革というのを第一義に置きますけれども、いずれは検討せざるを得ないテーマだろうと思いますね。付加価値税の問題も同じだと思います。だけれども、このマル優の廃止の場合は、結果的にお金の流れが相当変わっちゃって予測もつかないような事態も起きるかもしれない。そこがひとつなかなか考えてもわからないんですよ。  そこで、大臣、これは仮の話にお答えにくいかもしれませんが、マル優が廃止されたら金の流れというのはどういうふうに変わるんだろうか。その辺のこと、それを全然考えずにおっしゃっているとも思えませんから、それだけをお聞きして質問をやめましょう。
  194. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これはマル優の廃止の場合の金の流れということを、仮に私が私の乏しい知識の中で持っておったとしても、いまの議論と結びつけてお答えするというのは、まさにマル優廃止そのものを示唆したとか、そういうふうなことにもなりかねませんので、差し控えさしていただきたいと思います。
  195. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 本委員会は、先月、委員派遣を行いましたが、特に静岡市において納税協力団体と意見交換を行った際、清酒の不当廉売問題が提起され、関係業界からその規制を強く求められました。また税務当局からも、その対策に大変苦慮しているという現場の生の声をお聞きいたしまして、私ども与野党を通じて、これは非常に重要な問題であり、何らかの対策を早急に講ずる必要があると痛感いたしました。  それは現地で東駒問題と言われておりまして、酒類免許制度を全く無視した販売行為で、米粉使用による劣悪商品を正当な清酒として極端に安売りするかのように宣伝し、全国各地で露天販売などを行うことにより、業界のルールを乱している問題であります。  委員のお手元にお配りいたしましたように、「十本買えば八本オマケ」というような、消費者の購買意欲を不当にかきたて、かつ欺くチラシを配布し、露店に一時的に店開きし、はがきによる予約注文等により、不当廉売をしているのであります。  このような行為を放置しておきますと、酒税法や酒団法に基づいて、免許制度の上に成り立っている清酒生産及び販売業界の秩序が乱され、酒税の保全はもとより、国民の健康管理という面からも重大な支障を来すことは否めません。  そこで、この問題についての国税当局の見解対策についてお伺いいたします。  このような不当廉売をする業者は、一方で酒税を滞納しながら、販売行為を続けており、販売免許は憲法違反とまで広言しているのであります。このような実態国税当局は一体どのように対応されているのか、またどのように対応しようとしているのか、お伺いいたします。  おとり広告で、あたかも一般品と同じであるがごとく宣伝し、しかも消費者の苦情も受けつけないような露店販売的な行為を放置しておくことは、国民酒とまでいわれる清酒全体の評価を不当に低下させることにもなり、さらに業界の値引き競争をあおることにもなります。さらに、「十本につき八本オマケ」などという過大景品は、不当景品類及び不当表示防止法の規定にも違反するのではないかと思います。国税当局並びに公正取引委員会当局はどのように考えておられるのか、またこのような悪質行為を規制するためには法改正の必要があると考えるかどうかお伺いいたします。  以上、関係当局にお伺いいたしましたが、このような不当廉売行為は、税収の確保、業界の秩序維持、国民の健康管理の立場からも、一日も看過できない問題であると思います。関係当局におきましても、その善処方について早急に取り組んでいただくことを強く要望いたします。
  196. 加茂文治

    政府委員(加茂文治君) 酒類の無免許販売につきましては、従来から厳正に取り締まっておりまして、また酒税の滞納につきましても厳正な態度で臨んでおりまして、今後ともこの方針に変わりはございません。  酒類販売業免許制度は国税収入の重要な地位を占める酒税の安定的な確保を図ることからとられておる制度でございまして、国民の保健衛生、未成年者の飲酒防止、交通安全対策、さらには社会秩序維持等にも貢献をしておる制度でございます。ただいま御指摘ございましたようなチラシが配布されておることは承知いたしております。これが実行されます場合には酒類の無免許販売に該当するおそれがあると考えております。  具体的な対応といたしましては、「免許のないあなたも酒が売れる」等無免許販売を勧誘するようなチラシでありますので、法秩序の維持及び犯罪の未然防止の観点から広告主側にこのような広告をやめるように警告を行っております。  また、免許制度の趣旨並びに酒類を販売するに当たっては酒類販売業免許を必要とすることを一般に周知させるための文書を作成配布しまして、無免許販売防止の啓発に努めております。  酒類の販売価格が原価割れである場合には独占禁止法上の不当廉売という問題もあります。当庁といたしましては、酒税保全及び不健全経営の防止の観点から調査及び指導を行ってきておるところでございます。  以上でございます。
  197. 高場俊光

    説明員(高場俊光君) ただいま御指摘のありました事項のうち、「十本買えば八本オマケ」というような表示による販売方法があったわけでございますが、これは景品と認識され、景品表示法の制限を超えておりますので、改善させなければならないものと考えております。  このような考え方から、昨年、改善方を事業者に対して指導したところでございますが、最近になってまた再びただいま配付されたような不適当な表示が見られるようになりましたので、現在調査中でございます。
  198. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 以上で大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  199. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、派遣委員の報告に関する件についてお諮りいたします。  先般、当委員会が行いました租税及び金融等に関する実情調査のための委員派遣につきましては、派遣報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時七分散会