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参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君
通訳)
委員長及び御参会の皆様、
在日米国商工会議所、通称ACCJを代表いたしまして、本日はこの場で国際
貿易に
関連する現在の問題、なかんずく
日本と
アメリカの間の
貿易問題について
米国が抱いております懸念につきお話し申し上げる機会をいただきましたことを感謝申し上げます。
ACCJは、
日本で仕事をし、そして生活をしております五百の
米国企業及び千二百の個人メンバーを擁する組織であります。ACCJは、私
ども二国間の
貿易問題に対しお互いに受け入れることのできる解決策を積極的に模索しております。そして、本日はこの場で
皆様方に私
どもの見解を表明できる機会をいただきましたことを歓迎するものであります。
国際経済摩擦に関する
連合審査会が、本日の議事を通してこれらの
貿易問題に対し直接関心を表明されていることを大変うれしく思います。
皆様方の御参画及び御支援が
日本側でとらねばならないと考えております行動、
措置にとってきわめて肝要なものであると考えております。
ACCJの設立目的の基本的なものは、
米国と
日本の間の
貿易及び商業関係を
改善するということであります。この役割りを果たすに当たって、私
どもは、
日米双方の
政府、実
業界そして労働界の
方々に、私
ども実
業界からの
立場から見た
貿易関係の問題につき、いろいろと説明しようと
努力しております。問題の原因等につき私
どもは率直な
意見を述べるべく努めてまいりましたし、またこういった問題の解決策につきましてもわれわれの
意見、提案を提起をしてまいりました。本日、この場で私
どものそれぞれの苦情を長々と申し上げるつもりはございません。むしろ
米国の実
業界の
立場から現在の情勢をどのように見ているか申し上げ、そして
米国、
日本双方が現在の
状況を
改善するためにとらねばならない迅速な
措置の必要性を強調したいと思います。
現在の
自由貿易の慣行から得る利益を今後とも守っていくために、
米国及び
日本は、
ガット体制を
維持し
改善していくために力を合わせていかなければいけません。昨年末の
ガット閣僚
会議が示しましたように、この課題は相当な難問であります。容易ならざる課題ではありますが、しかし二国とも
世界貿易の自由化から大き裨益してきた
国々であり、それを考えれば
米国及び
日本は保護
貿易主義への後退と、
ガット体制の弱体化を避けるべく先頭に立っていかなければいけません。
米国と
日本はまた
発展途上国と
貿易をし、そして彼らの
発展を進めるべく
協力をしていかなければいけません。これらの
国々が私
ども二国に偉大なる繁栄をもたらしてくれた
自由貿易体制の便益、利益を享受するようにすることは、私
ども二国の相互の最善の利益にもかなうものであります。それにかわる、代替的な道というのは、私
どもの考えでは、過去三十年間にわたって私
どもが達成してきたすべてを失うということであります。もしそのようなことになれば
自由貿易を促進するような体制を再び私
どもは築き得るのかどうか疑わしいと思います。
米国と
日本の間の二国間関係は
世界の中でも最も重要な二カ国間関係であるとしばしば言われます。過去三十年間にわたって二国の間で
貿易が劇的に
増大したことによって、
世界貿易に前例のないほど大きな相互依存の状態が私
ども二国の間に生まれてきたのであります。たとえば
米国と
日本は、自由
世界の
貿易の中で、エネルギー
関連製品、食糧及びその他
農産物、原材料、そして完成品及び
技術の取引は実はこの
世界全体の三分の一ほどまで占めるに至っているのであります。このような相互依存の関係が、日増しに
増大する摩擦をある
程度もたらしたとしても、決して驚くには当たらないと思います。工業が
発展し、そして積極的に
競争し合う
二つの
経済の間で交流が行われれば、このような摩擦が起こるのは当然の帰結でありますが、しかし現時点で私
どもは、現在のこのような摩擦が果たして米日関係の根幹を揺るがしかねないような、手に負えない次元にまで
発展しているのかいないのか、注意深く気を配っていかなければいけないと思います。
もちろん方程式には二辺があるわけですが、
開放的な
市場体制の中で生存し、そして
競争し続けていくためには、
アメリカはいままでおくれをとってきた多くの基幹
産業部門における
競争力を再確立するべくすべての
努力を払っていかなければいけないと思います。
現在は
米国経済が回復に向かいつつある兆しが見えております。インフレはコントロールされ、そして金利は低下してまいりました。
失業も頭打ちとなり、今後下がってくるでありましょう。
アメリカは、その全
世界的な責任及び利害からいって、自由質易そして
開放的な
市場を育てていくに当たって指導的な役割りを果たしていかなければいけないのであります。
日本にとっては課題はより複雑なものがあるでしょう。
日本はさらにその
市場開放の過程を迅速化して、それによって
アメリカ市場で
日本の企業が得ているのと同じような
市場参入の容易さを、
日本市場でも
アメリカの企業に与えるようにしていかなければいけないと思います。
日本人は閉鎖社会の中で孤立し、そして保護を得ることを望んでいるんだというような観念を変えるべく
努力をしていかなければいけません。そして、
日本の人々がより国際的な物の見方ができるように奨励していく
努力もなされなければいけないと思います。特に
日本の
政府、官僚体制は、このような見方を変えて、より実際的な見解を持っていくことによって、
日本とその他の
貿易パートナーとの間に存在する
貿易摩擦を軽減、払拭するべく
努力をしていかなければいけないものと思います。
一九四八年以来のそのユニークな歴史的背景に基づいて、ACCJの
立場から、現在の
貿易摩擦の原因となっている要素について私
どもの見解を申し述べてみたいと思います。
今日
日本におきましては、
関税及び
輸入割り当てを軽減し、そして金融的な
規制を緩和し、また非
関税障壁を撤廃する
措置がとられ始めておりますが、しかし私
ども、高度
経済成長期においては、外に対して門戸が相当部分閉ざされていたということを忘れることはできないのであります。私
どもは、
日本の門戸が
開放されたのは、
日本国内の
産業が余りにも強力に成長してしまった後であり、その段階では、
外国企業にとりまして、
日本国内市場が余り魅力のないものになっていた時点のことであったと思っております。
日本におきましては、包括的な行政手続及び
規制の体制が長年にわたって存在してまいりました。もちろんこういった手続の中には、
国内産業を保護するため、外貨準備を節約するために、あるいはその他のいろいろな
理由によって導入されてきたものがあるわけであります。しかし、その根源が何であるにせよ、ことに
保護主義の時代に育った官僚体制によってこのような行政手続及び
規制が運用される場合には、
輸入を抑制する効果を持ってきたのであります。
広く公表されてまいりました自由化
措置は、多くの場合実質を伴わぬ形だけのものでありました。あるいは余りにも少なく、遅きに失したものでもあり、そして根本原因に対処することなく問題を解決することをねらった官僚の戦術でもあったと思います。
日本が
輸出で成功をおさめてきた部門は、
自動車、鉄鋼あるいは民生用電子機器といった主要
産業部門に集中してきております。
アメリカの場合には、このような
産業部門こそ現在財務的に苦しい
状況にあり、そして高い
失業率に苦しんでいる
産業であります。このような
失業の大部分は、
日本からの
輸入が余りなくても、あるいは全くなくても当然存在したものでありましょう。しかしながら、余りにも多くの人々が職を失っているということによって引き起こされている現在の窮状は、
米国議会に対しまして攻撃する対象を見出さねばならないような圧力を、政治的な強い圧力を加えるに至っております。そして残念なことに、今日その対象——ターゲットと申しますのは
日本となる傾向が強いのです。
私がいま申し上げましたようなこういった観念は、単に法令、法を制定することによって消えるものではないと思います。こういったことは歴史的な事実なのだという純粋な確信を人々は持ってしまっているからです。そして建設的な、目に見える
措置をとり、そしてそれにより結果を実証することによってのみこのような観念は払拭することができる、あるいは最小限に抑える、ないしはコントロールすることができるものだと思います。
農産物貿易は大変センシティブな国家の問題であると思います。そして
ガットの場でも、また私
どもの二国間関係におきましても長年にわたって問題として存在してまいりました。確かに先進工業国のほとんどが、農業部門に対しましては、
国内の政治的配慮から特別の扱いを与えてきたことは認識するものであります。しかし
国内的な、厳密に
国内的な性質の政策と考えているものが、国際
貿易にどれだけの影響を持ち得るのか、私
どもはしばしば見過ごしてきたのではないでしょうか。
ACCJとしましては、いままで特定の
農産物、たとえば柑橘であるとか
牛肉等、そういった特定の産品に余りにも多くの注意が集中され、その一方でより大きな全体的な問題は看過され、無視される傾向があったのではないかと思います。私
どもの考えでは、いまや新たな、そして建設的な
農産物問題に対するアプローチが
要求されていると思います。
国内的な及び国際的な観点から、農業政策及び農業
関連規制の全体を見てみる必要があり、そしてそれによってお互いに受け入れることのできる
農産物部門の一般的ガイドラインあるいは目標をつくり上げ、実行していくことを考えねばなりません。
このようなより視野の広いアプローチをとることによって、
米国、
日本双方ともそれぞれの社会政治的なあるいは安全保障上の関心事を十分考慮に入れていくことができるようになると思います。そしてしかもその上で、国際的な
貿易に対するこのような農業政策のマイナスの影響を最小限に抑えるような政策の修正も行えるようになると考えます。
農産物問題に関するこのような新しいアプローチがとられるに至るまでは、私
どもは不必要な重圧をこの全体的な二国間関係の中で抱えながら戦っていかなければいけないと思います。
投資の分野におきましては、私
どもACCJ自身が行いました
米国製造業の対日
投資に関する調査も含めまして、いろんな調査が、
貿易の流れの中で、直接の外資
投資も重要な要素なのであることを示してまいりました。このことを念頭に置きつつ、また
投資がもたらし得る政治的及び
経済的な利益も考慮に入れて、
日本と
アメリカの間の
投資の流れを十分に自由化し、促進していかなければいけないと思います。
一九八〇年に改正され、そして施行されました
外国為替管理法は、その改正自体正しい方向への建設的な第一歩であったと思いますし、ことに製造部門での
投資にとりまして大きな
改善をもたらしたと思います。とは言え、顕著な障害が残っており、ことに多くのサービス業部門におきましては、
外国からの参入を抑制する要素が残っていると思います。
外国為替管理法はそれを施行する方向によっていまだに非常に大きないら立ちの要素となり得るものを抱えていると思います。
日本の企業は、ことに
米国におきまして相当のマーケットシェアを築き上げた場合には、その
投資を行うことを奨励されるべきであろうと思います。
日本企業はわずかの例外を除き、このような対米直接
投資につきましては後ろ向きの
姿勢を示してまいりました。このような直接
投資を行わないという、みずからが
アメリカで築き上げたマーケットシェアに後ろ盾を与えるような直接
投資を行わないということが、
経済、政治的にどのような影響を起こしているのか、
日本企業は十分把握していないということが、現在の
米国議会におきます
相互主義法案であるとか、あるいは
ローカルコンテント法案といったようなものに対する
要求を引き起こしている一因にもなっているのであります。
サービス部門は、そもそもこのサービス部門という言葉があらわす範囲がきわめて広いがために対処しにくい問題分野であります。サービスと私
どもが言う場合には、通常、経営コンサルタントから航空企業まで、あるいは公認会計士、コンピューターシステム、外食
産業、そして運輸部門等を網羅しております。このようなサービス部門のそれぞれの活動が、
日本におきましては何らかの特別な問題を抱えています。
米国の航空企業はすべて私企業、民間企業でありますが、それに対し、
日本航空は三五%
日本政府所有の企業であります。繰り返し
政府間での交渉が行われてきたにもかかわらず、
日米間で相互に乗り入れのできる路線について、
米国側企業は
日本航空と対等の扱いは与えられていないのであります。
また、海運業につきましては、ハイキューブコンテナ——容量の大きいコンテナの利用であるとか、あるいはコンテナのアベイラビリティー——利用可能性を
最大化するためにコンテナを配置するということにつきましても
制限を受けております。
さらに、
日本の船会社の場合には、
米国におきましてみずからの貨物の配送を確実にするために、みずからのトラック輸送会社を運営することはできますが、
米国企業は
日本においてこのようなことを許されておりません。
ACCJのメンバーとなっております銀行業の代表たちは、
日本において完全な金融自由化への良好な進捗が達成されてきていると考えております。新しい
外国為替管理法が成立し、施行に移されたということは、一九七九年のACCJの
貿易白書の中にしるしました苦情の源の多くを取り除くことになったのであります。これは
日本におきまして官僚体制の一部が、
日本への外資
投資あるいはその他の
日本への
外国の金融業の参入を妨げるのに利用してきた古い、あるいは時代のおくれた陳腐化した
法律を変更したよい例ではないかと思います。
サービ
経済、サービス業への重点の移行は、変貌を遂げる
世界貿易におきまして重要な進展の
一つではないかと思います。私
ども二国の間におきましては、
米国と
日本の間での自由な、そして二方向の流れがサービス部門で行われるようなオープンな体制を確保していかなければいけないと考えております。サービス部門は、必ずや今後の将来におきまして、私
ども双方にとり大きなチャレンジとなってくるものと思います。
私
どもACCJとしては、
アメリカのビジネスマンに懸念を抱かせてきたような
貿易、そして
投資上の問題に対処しようと
日本政府が最近
努力を示してこられたことに心強く思っております。
一月に発表されました第三次
貿易パッケージ、
市場開放パッケージは、ことにわれわれとして歓迎できるものがありました。と申しますのも、この
市場開放パッケージは、ことに
日本独自の基準、そして検査手続を設定してきた
法律の改正ないしは撤廃を含んでいるからであります。さらに、OTO諮問
会議を設置されたということは、
日本政府が
貿易障壁を緩和しようということを真摯に考えていることの証左でもあると思います。
そのほかにも
関税を軽減し、
外国製たばこのための
販売店数を
開放化する、そして医療品、医薬品及び家電製品等についての
外国での試験データも受け入れるという
措置を決定されたことも、
アメリカの実
業界が長年にわたって求めてきた積極的なステップであると思います。
また、ACCJは、昨年十二月二十一日に経団連が
外国企業の
日本市場への参入を実質的に妨げてきた
日本政府のいろいろな
規制あるいは承認手続に見られるような時代錯誤的な
考え方、
姿勢を抜本的に変えることを呼びかけた勧告案を見て大変心強く思うものであります。
ここで、私はACCJとして、中曽根総理大臣がみずから直接米日間の
貿易問題解決に対して関心を示しておられることに感謝を申し上げたいと思います。
日本がさらにその
経済を
開放していくのだということを保証され、そして迅速かつ果敢な第三次
市場開放パッケージの実行を呼びかけられたということをうれしく思っております。このことは私にとって非常に大きな意味を持つものです。また、総理がこのようなことを
実施していくためには、必要な法改正等を達成するために、
日本の国会の支持も必要であることを私
どもは認識しております。その意味で、ぜひこのような重要な分野におきます
皆様方の御支援をお願い申し上げたいと思います。
将来に目を転じると、私
どもACCJのメンバーとして非常に大きな関心を抱いておりますのは、このような建設的な問題解決へのスタートをできるだけ迅速に、さらに効果的にフォローアップしていただくということであると思います。時間は限られております。そして
米国その他の
国々におきます保護
貿易主義的な圧力は今後とも
増大していくでありましょう。今後
貿易自由化の新たなパッケージを
日本がどれだけ迅速に
実施できるか否かが将来の
日本に対する
貿易パートナーがとる
措置、そして国際
貿易体制を現在の形で今後とも
維持できるか否かを決定する大きな要因となると思います。
日本がこのような新しい
貿易措置の
実施に当たって、今後数カ月の間に実質的な進捗を実証することができれば、
日本と
アメリカの間の
経済関係を
改善することに関心を持っているすべての者がより楽に息をすることができるようになると考えております。このような
日本のとる
措置は、
日本自身の
最大の国益にもかなうものでありますし、また偉大な
経済国としての責任でもあろうと思います。
今後、
市場開放パッケージの
実施への
努力が進められるに従って、国会が世論の
理解を構築し、そして緊急に必要とされ、有意義なこういった変革の必要性を
日本の官僚体制にも
理解させる、説得していくということにおいて国会が重要な役割りを果たしていかれることも認識しております。
今後多くのことがまだなされなければいけませんが、しかし
皆様方の御
理解と御支援によって成功がおさめられるであろうことにつき私は楽観的な気持ちを抱いております。
ここの場で私は
委員長そして
皆様方にお約束申し上げたいと思います。
皆様方がこのような重要な問題に対し、解決策を探求されていく過程におきまして、私の個人的な
立場からも、またACCJのメンバー全体を代表いたしましても、可能な限りの御支援を申し上げることをお約束申し上げます。
どうも与えられました時間十五分間の枠を超えまして申しわけなく思います。私自身、個人的にこの課題につきましては非常に強い熱意を抱いておりますので、時として時間の枠内にみずからの発言をおさめ得ないことも発生する次第であります。ありがとうございました。(拍手)