運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-04-19 第98回国会 参議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十九日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 久興君     理 事                 野呂田芳成君                 降矢 敬義君                 吉田 正雄君                 市川 正一君     委 員                 岩本 政光君                 大木  浩君                 川原新次郎君                 降矢 敬雄君                 松尾 官平君                 森山 眞弓君                 阿具根 登君                 村田 秀三君                 田代富士男君                 井上  計君    国務大臣        通商産業大臣   山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君    政府委員        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局経済部長  佐藤徳太郎君        経済企画庁調整        局審議官        兼内閣審議官   横溝 雅夫君        通商産業大臣官        房長       柴田 益男君        通商産業大臣官        房審議官     野々内 隆君        通商産業大臣官        房審議官     池田 徳三君        通商産業省産業        政策局長     小長 啓一君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        通商産業省生活        産業局長     黒田  真君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        中小企業庁長官  神谷 和男君        中小企業庁計画        部長       本郷 英一君        労働大臣官房審        議官       小粥 義朗君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        運輸省船舶局造        船課長      今村  宏君        労働省職業安定        局雇用政策課長  稲葉  哲君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 吉田正雄

    吉田正雄君 去る四月十二日の当委員会におきまして、現行特定不況産業安定臨時措置法について今日までの実施状況についてお尋ねをいたしたところでありますが、引き続いてお伺いをいたします。  改正法案の適用が予定をされている構造不況産業等において深刻な不況事態が生じていることはだれしも認めざるを得ないところでありますけれども、それら産業不況事態を打開することが当該企業にとってのみならず、国民経済の立場から見て必要であることも万人の認めるところだと思われます。この不況を克服し、事態を打開するためには、まず当該産業企業のいわゆる構造不況原因を徹底的に分析し、明らかにすることが先決であると思われます。その上に立って対策を講ずるということになりましょう。  そこで、先回もいろいろお聞きをいたしたわけでありますけれども、もう少し突っ込んで構造不況要因をどのように分析をされているのか、あるいはどのような理解に立たれておるのか、通産大臣経企庁長官にお伺いいたします。  いままでの論議の中では、衆議院論議等におきましてもいろいろ要因が挙げてあります。たとえば原材料エネルギー価格の上昇であるとかあるいは需要の低迷、これは景気の停滞とか、あるいは軽薄短小というふうな表現でも言われておりますけれども、あるいは輸入増大と、この輸入増大という場合にエネルギー内外価格差であるとか、あるいは開発輸入ということが言われておりますけれども開発輸入のほかに、あるいは海外投資増大による輸入というふうなことも当然考えられるわけであります。そのことがまた輸出の減退に連なるということになるわけですが、さらにまた過当競争体質と、これはまた過剰設備の問題も当然出てまいるわけですけれども、以上のようなことがいろいろ要因として挙げられてまいったと思うんですけれども、この要因のうち、政策的対応がなければ解消できないというものがあると思うんですが、それをどのようにお考えになっておるのかということです。たとえば原材料であるとかエネルギーコストというものについては、これは日本産業とか各企業努力をしてみても、これも海外からの輸入コストを引き下げるということにはならないわけでありますから、そういう点で、まず要因についてさらに突っ込んだ分析があればお聞かせを願い、また、政策的な対応の面で解消できるものはどういうものなのかということを当初にお尋ねをいたします。
  4. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 大体いまお挙げになったことに尽きるかと思いますが、その他の要因を強いて挙げるとすれば、強いてという表現はおかしいですが、法律で指定してあるものについて述べれば、たとえば化学肥料製造業というのがありますが、これは相当前になりますけれども海外への輸出の際は赤字が出るので、それを各社が共同してつくった会社赤字分をそこで一遍ためておいて、そして輸出の道を開こうという時代がありました。しかしながらその会社が結局は解散をすることになったのは、輸出産業としての肥料の地位が確立をしたということにおいて赤字プールの機関を置く必要がないという変化が途中でありました。しかしながら、一方において、例を挙げれば、インドネシアへの肥料プラント輸出のごとく、かつての巨大供給先であったところ、日本マーケットの中でみずからつくりたいという意欲が出てきたところに、しかも日本側がそれに対してプラントの協力をした。そうするとそこは当然生産国になって、単にインドネシアのみならず、その周辺のマーケットへの輸出国に転じた、そのようなことがあって肥料産業は果たして輸出産業たり得るのかという問題は相当前から提起されていたいわゆるブーメラン現象一つとして論議されてきたところでありますが、しかし現在の状況の中で、そのすでにやってしまったことを取り消そうたって無理でありますから、かといって肥料産業はやはり国内需要のためにはどうしても残しておかなければならない産業であることは間違いありませんし、将来これは展望でありますけれども、巨大なマーケットになり得る中国大陸肥料に対する需要等が出てくればという、そういう未来性もないではない。したがって国内生産を維持してもらわなければならない産業であり、同時にこれが再編成、活性化等によって適正なる生産を続けていくうちに新しい未来展望があり得るかもしれないという、またそういうことがあればということを考えながら残しておきたい産業である、残さなければならない産業である、そういうつもりで化学肥料については取り上げておるわけでありますが、しかしその他の理由については、もうすでにお挙げになりましたことに尽きておると思うわけでございまして、それに対する対応策は、個々に、あるいは電力あるいは国際競争力あるいは輸入増大あるいはその中の開発輸入あるいは資本輸出による相手国の立ち上がり、いろんな理由はもうお述べになったとおりでございまして、それに対応したいと願っての今回の法律であることは、理由をお挙げになりたとおりで大体尽きておると思います。
  5. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) ただいま吉田委員お尋ね構造不況原因と、これに対する政策対応につきましては、所管大臣でございます通産大臣が申されたことと私は全く同じ意見でございます。  原因につきましては三つばかり吉田委員も申されましたが、私もそのとおりだと思いますし、その政策的対応は、いま通産大臣が申されましたように、まさしくこの法案がこれらの原因対応するところの政策的な対応、こういうふうに考えております。
  6. 吉田正雄

    吉田正雄君 現行特安法によってどういう結果が出てきたのかということでありますけれども、五年間延長しなければならない、あるいは一部いろんな面で改正をしなければならぬというふうなことになっておるわけですけれども現行特安法の主目的というのは、要するに過剰設備処理ということに重点があったわけでありまして、抜本的なこの構造不況業種救済といいますか、構造改善には必ずしもならなかったと、だから五年間延長しなければならぬし、その他の面でいろいろ政策的なものがつけ加わってきておるということになろうかと思います。そこで、私は縦割り行政と言うとちょっと語弊があるかもわかりませんけれども、従来の狭い見方での対策では今後も同じような状況が続いていくんじゃないかというふうに思うわけですね。  そこで、私は経企庁長官お尋ねをいたしたいと思いますが、経済政策の面から一体この構造不況産業あるいはその構造不況産業不況状況というものをどう打開をしようという努力がなされてきたのか、あるいはそういう施策というものは余り考慮を払われなかったのかということだろうと思うんですが、その辺ひとつ率直にお聞かせを願いたいと思いますし、それからこの産業政策面から出された今回の法案というものと、それから経済政策というものをどういうふうにリンクをしていくのか、こういうものがないと私は総合的なこの構造不況産業救済あるいは対策あるいは本当の意味での体質改善はは連なっていかないんじゃないかというふうに思いますが、その辺の見解なりお考えをお伺いいたします。
  7. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 大変むずかしい御質問だと思います。非常に経済政策一般と申しますれば多分に包括的なものでございますし、雇用あるいはそれから所得の向上等を含むものでございますから、私はやはりそれとあわせてこのような何と申しますか、業種的な、マクロ的よりもむしろ部分的にはミクロ的という言葉があろうかと思いますが、私はこのようなやり方でまた経済政策全般を補う形での産業活性化、こういうことが必要かと思いますし、またこのような行き方日本経済ではもう過去から大変なれてきたまさしく日本的な行き方だと思います。いま縦割りというお話がございましたが、日本ぐらいまた縦社会で有名な国はございませんし、私はその心理状態に合ったところの政策はまさしく適切な効果を生むもの、こういうふうに考えております。
  8. 吉田正雄

    吉田正雄君 率直に言って、私は現行特安法では必ずしも特定不況産業に対する有効な対策にはならなかったということが結論じゃないかと思うんですね。  そこで、経企庁長官に要望いたしておきますけれども衆議院参考人を呼んでの各労働組合の代表からの意見の中にも、経済成長率との関係で失業率の問題というものがずいぶん論ぜられておったと思いますし、それから現行特安法はむしろ首切り法案ではなかったかというふうな意見も出されておるわけですね。したがって、私はやはり経済政策という面を抜きにしての真の不況対策というのはあり得ないでしょうし、またこの特定不況産業構造改善というものにもマクロの面ではやはり十分な対応ができないんじゃないかというふうに思っておりますので、この点については特に企画庁長官に今後経済政策立案段階において、こういう特定不況産業に対する、一項目設ける必要もないと思うのですけれども、そういう面を十分配慮してひとつ立案をしていただきたいと思うんです。  先般出されました政府不況対策というものを見ましても、どうもそれは当面の景気をどうするかというふうなことであって、抜本的な体質改善といいますか、構造改善というものを余り考慮したというか、突っ込んだものにはなっていないんじゃないかという感じがいたしますので、その点はまず要望いたしておきたいと思うんです。  それから次に、対策基本的な原則というものを一体どう考えたらいいのかということでお尋ねをいたしたいと思いますが、よく言われております甘えの構造であるとか、あるいは国際的な批判を浴びかねない保護政策では、一時的にしのぐことはできても、抜本的な解決にはなり得ないと思うんです。保護主義的な構造というものを極力排して自由な競争経済体制、言いかえれば開放経済体制市場体制の維持というものを原則として、その上に立って民間の積極的な、自主的、主体的な事業活動というものを促進し、それに基づく活性化を図ることが基本だと思うんです。したがって、産業政策行政は、いわゆる官僚統制でなく、その方向へ流れがスムーズにいくような条件や環境というものを整備をしていくと、また誘導していくというものでなければならぬというのが基本的な態度でなくちゃいけないんじゃないかというふうに思いますが、この点について、これは経企庁長官通産大臣見解をまずお尋ねいたしたいと思うんです。
  9. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) きのう通産大臣談話というものを発表いたしました。すでに報道等で御存じのことと思いますが、現在外国から日本に対して政策的な問題としての非難とか、あるいは批判とかいうものが特定国特定者という形ではなくとも一部いろいろ聞こえてくるわけであります。しかし、私たちはその声の中で先端産業的な日本が非常に進んだものに対する国家助成が手厚過ぎて、その国の力を利用して飛び上がった高さにおいて外国へ侵略してくるんだというような私どもから見れば反論せざるを得ないような問題と、いま一つは確かにこの構造不況業種というようなものに対する今回の法律等も取り上げたと思われるような発言等が、たとえば限界産業ですね、国が国策によって保護して、そして外国の正常な貿易というものの日本市場における活動を、活躍というものをある程度でとめようというような保護策を講じているという、大別するとそのような批判があると思うんであります。きのうの私の談話はそういうことに包括的に答えて、諸外国のやっているものはこういうものがあるではないか、日本日本なりのことをやるんだということを言ったわけでありますが、確かにアメリカ等でも聞こえておりますが、この構造不況業種というものはほっておけばそれで消えるもの、逆に言うと、その分野はアメリカの方で輸出でカバーしてやれるんだというような自信もあるんでございましょうが、そういうようなところまでは言わないにしても、私たちがとっている政策というものを、この法律を例に挙げたような感じ批判しているところについても、これは単に与野党の適当であるかどうかの議論、国民のそれに対する批判あるいは了解というようなもののほかに、外に向かっても私たち日本国はなぜこのような政策をとるのかという問題は意義づけをきちんとして、それならばやむを得ない、外国の干渉するところではないというだけの準備はしておかなければならないということを、ことに最近感じておるわけでございますので、いまのようなお考えについては、まず政策面から私はそのような配慮をしてまいったし、この法律もその配慮の上に立っておるし、あるいはOECDPAPの精神に沿った範囲のものであるということをきちんと対外的にも説明する必要があることを感じております。  なお、経企庁への直接のお尋ねがございますから、その点は私の方は省略をいたします。
  10. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 私はいま通産大臣が言われたこととほとんど大差はない答弁しか申し上げないことになるかと思いますけれども、いま吉田委員の御指摘方向がございました。そしてまた、いま通産大臣OECDPAP考え方も言われましたが、私は、このPAP考え方が世界的に是認されるならば、そのもとで行われている方法としていろいろの手法がこの範囲内である。アメリカから見ますれば、勝手に業種を取り上げて、双方協調、あるいは話し合いの場に持ってきて過剰設備廃棄を行っていくというようなやり方、私は、これはなかなか日本的な方法だと思うんですけれどもアメリカから見たらわかりにくい面があるというふうに見ているわけでございます。しかしながら、やはり、産業政策は、その時、その土地の土壌にもよるものでございますし、あるいは企業経営者のメンタリティーとか、あるいは政策官庁対応の仕方、これらの歴史あるいは伝統を通じてでき上がるものでございます。私は、この方向日本的なやり方としてこれまでも効果を上げてまいりましたし、またこういった方向効果も十分上げ得るものと、そしてまた、これはいま申しました市場メカニズムのできる限りの活用、この方向とも矛盾するものでもない、こういうように考えております。
  11. 吉田正雄

    吉田正雄君 経企庁長官はちょっとほかの用で退席されるようでありますので、退席前にお伺いをいたしたいと思うんですが、現行特安法に対する評価でありますけれども、率直に言って、国際競争力というものが強化をされたかどうか、この点についてお尋ねをいたします。後ほどまた通産大臣に対しては詳しくお尋ねをいたしたいと思っておりますが。  それから、同じく雇用の安定というものが現行特安法によって確保をされたというふうに、経企庁としてはどのように評価をされたのか。確保されたかどうか、この点について見解をお伺いをいたしたいと思います。
  12. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 経済政策目標は、いま吉田委員の御指摘のように、いかなるものでも雇用の安定をねらったものだと私は考えるものでございます。具体的な方法はともかくといたしまして、特安法がまず過剰設備廃棄目標として、そして企業基礎を強固にした。この点は、私は、過去の事例から見ましても一つ効果を上げたと、こういうふうに考えているところでございます。  それからまた、いま申しましたように、雇用の安定も、過当競争の結果企業が行き過ぎた結果に陥らないようにするためのその前提として、特安法によって過剰設備処理が協調的な方法でできたといたしますれば、私は、結果として雇用の安定にも役立ったと、こういうふうに考えるものでございます。
  13. 吉田正雄

    吉田正雄君 時間がありませんから経企庁長官とこれ以上論議といいますか、をやる時間もちょっとないようですが、結果としては、基礎素材産業では約四十万人の人が整理をされたということになっておって、これは衆議院論議段階でも、総評、同盟あるいは全民労協を問わず、そういう指摘が強くなされておりまして、そういう点では必ずしも雇用の安定には効果がなかったんじゃないかという評価なんですね。これは、いま大臣も、時間もありませんからこの程度で結構でございますので、御退席願って結構だと思います。  そこで、国際競争力とは一体何ぞやというむずかしい問題もあると思いますけれども通産当局としては、この国際競争力に関してどういうふうな評価を一体されたのか。この法の施行によって、具体的には、目標の中には国際競争力強化というふうなことは書いてなくて、雇用の安定とかあるいは中小企業の安定的な経営というふうなことであって、文字としては余り国際競争力強化というものは出ておりませんけれども、しかし現実には、企業の安定ということと国際競争力というものについては全く表裏一体をなしておるわけでありますから、そういう点ではどのような評価をされ、またどの点でやはりまだ不足をしておったのか、その辺をお聞かせ願いたいと思うんです。
  14. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生指摘現行特安法によります設備処理は、国際競争力強化を直接の目的とするものではないわけでございまして、経済合理性を喪失をいたしまして将来ともその回復が見込めない非経済的な部分についてこれを縮小するということを目的として行われたものであるわけでございますけれども、結果といたしまして高効率設備への生産集中とか、あるいは稼働率向上であるとか、あるいは固定費の軽減というようなものが図られることによりまして国際競争力強化につながったものもあるわけでございます。特安法指定業種におきましては、各業種とも計画的な設備処理実施をされたわけでございまして、需給ギャップの解消による稼働率向上とか経営状況改善が図られまして、目標年度に向けまして順調に基本計画目標を達成する路線に乗っておったのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。しかしながら、五十四年末から五十五年の初めにかけまして、第二次石油危機が勃発をいたしまして、それを契機といたしまして原油価格が三倍に上昇するというような異常事態があったわけでございまして、その結果といたしまして原材料エネルギーコストの大幅な急騰がございまして、基礎素材産業は再び深刻な構造問題に直面するに至ったということは先生先ほど御指摘のとおりでございます。したがいまして、この第二次オイルショックによりまして基礎素材産業が再び困難に逢着をしたわけでございますが、第二次石油危機がなかりせば順調な回復路線に乗って競争力強化にも役立っておったのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、新しい法律におきましては、その第二次石油危機によりまして構造的困難に陥っております業種につきまして、これをいかにして構造改善していくかということで取り組んでおるわけでございますけれども、私どもがその現行法の経験から見まして新しい法律において考えておりますことは、設備処理という縮小部分だけではなくて、むしろ、活性化設備投資であるとか、技術開発であるとか、あるいは事業集約化等を通じます活性化といいますか、いわゆる前進部分をあわせ行うことによりまして縮小活性化を車の両輪として進めていくという積極的な考え方を新しい法律においては取り入れておるわけでございます。
  15. 吉田正雄

    吉田正雄君 確かに、いまおっしゃるように、石油価格の値上げだけに原因があるということではいつまでたってもこれは抜本的な改革にはならないと思いますので、いまおっしゃったようないろんな新技術開発であるとか、多方面にわたる指導なり施策というものが必要だろう、その点は同感であります。しかし、基本的には単に国の政策に頼るということでなくて、企業みずからの自主的なやはり努力、切磋琢磨というものがなければ私はやはり何事においてもうまくいかないのじゃないかというふうに思っております。  そこで、繰り返し申し上げるようなのですが、この現行特安法で進んだというのは、とにかく設備処理だけは、この前の論議でも明らかになりましたように、目標の九十数%という高い達成率であった。しかし、雇用の安定という面で見ますというと、とにかく大変な合理化が行われたということはこれまたはっきりしているわけです。そこで、雇用の安定がなぜ確保されなかったのか。これはいろいろ原因があろうかと思うのです。一方で労働省所管離職者法案等もございますけれども、これもいままでの論議でもあったと思うのですが、雇用政策というものが産業政策に従属をしておったのじゃないかという指摘が、とりわけ労働界からは強く出されておるわけです。  そこで、通産当局としては雇用確保あるいは安定というものが一体この現行法によってなされたというふうに評価をされておるのかどうか、あるいは不十分であったと評価をされておるのか、お聞きをしたいと思うのです。
  16. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 現行特安法のもとにおきましては、これは先回の御質問のときにもお答えさしていただいたかと思いますが、法律指定時の段階におきましては従業員数は約二十四万人であったわけでございますが、現在時点におきまして、これ五十七年九月現在でございますが、十九万六千人ということでございまして、約四万三千人の雇用の減少ということになっておるわけでございます。  ただ、これも具体的に中身を割って見てみますと、全面的に解雇をされたという者の数は比較的少のうございまして、むしろ関連会社への再就職であるとかあるいは新規雇用の抑制であるとかあるいは関連中小企業への就職であるとかというような形でいろんな新規雇用への努力がなされておるわけでございます。  私どもはこの特安法における雇用の安定についての評価でございますが、もしこの特安法があの時点において存在しなかったならば雇用面におけるフリクションというのは大変なものになっておったのではないだろうか、むしろこの特安法が存在することによりまして雇用のなだらか調整が実現できたのではないかというふうな意味で私ども評価をしておるわけでございます。
  17. 吉田正雄

    吉田正雄君 その辺、通産当局評価の仕方とそれから労働界評価の仕方には大分異なった面があるのじゃないかと思います。  しかし、現実にはいずれにしても離職者が出たことはこれは事実であるわけです。この法案がなかったならばというものも仮定であるわけですから、そういう点で仮定の問題で比較できないわけですけれども、現実はとにかく出たということは事実でありますから、そこをどうもう少し確保できなかったのか、突っ込んだ分析が一体行われたのかどうか、もう一点お聞きをしたいと思います。  それから労働省お見えになっておると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、この特安法というものとそれから離職者法案との間に余り有機的な関係というものがなかったのじゃないか。特安法によって職を失った後この離職者法案でどう救済するか、対策を講ずるかということで後追いの政策であるということはこれは事実だろうと思うのです。そういう点で離職者法案の運用、あるいはこれは通産の方にも言えると思うのですけれども特安法の推進に当たって雇用問題で労働大臣との間に適宜協議が行われたのかどうなのか、これは今後の新特安法の運用に当たってもそこのところは非常に重要な私は問題だと思いますので、その点、今度は労働省の方では現行特安法案と離職者法案との関係で一体雇用確保の面でどのように評価をされておったのか、問題点はどこにあったというふうに理解をされているのかお尋ねをしたいと思います。
  18. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 産業政策雇用対策の関係で後追い的ではないかという御意見があることも私ども承知をいたしております。  後追いということが具体的にどういうことかという点はいろいろ見方があるかと思いますが、いま御指摘がありましたように、出てきた離職者対策だけに終始しているという見方がその一番大きな理由ではないかというふうに考えるんですが、実は現行の特定不況業種離職者臨時措置法の中にもあるんですけれども、従来の雇用対策は確かに出てきた離職者の再就職のめんどうを見るというところに主眼がございましたけれども現行法でも特安法による業種指定を受けたもの、それが特定不況業種離職者臨時措置法でも受けとめて不況業種の指定をしますと、いわゆる雇用調整助成金の業種指定につながってくるようなリンクをしております。したがって、単に出てきた離職者対策だけではなくて、できるだけ雇用を維持した形で雇用の安定を図るという意味の雇用調整助成金等の活用も現行制度の中ではあるわけでございますが、ただそれだけで果たして十分かということになるといろいろと私どもも問題点を感じるわけでございます。  その意味で、実は、今国会に出しております特定不況業種あるいは特定不況地域の雇用安定特別措置法では、さらに離職前訓練の実施であると、あるいは会社あっせんによる再就職であるといった面についての助成を充実して、できるだけ失業という状態を経ないで雇用の場に、雇用の安定を図られるように図っていきたいということで考えているわけでございまして、従来それなりの効果を上げてきたと思っておりますけれども、なお不十分な点はそういう形でさらに充実を図っていきたいというふうに考えております。
  19. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先ほど先生指摘特安法が施行されましてから、雇用がかなり急激に変化をしているんではないかという点についてのお答えの一環でございますけれども、私どもが一応通産省所管業種につきまして雇用の推移を調べた一表があるわけでございますが、その表の細かい数字はいまここで述べるのは省略をさしていただきますけれども、全般的に大勢観察をいたしますと、雇用調整はむしろこの法律施行前の五十一年、五十二年、五十三年がかなりピークというような感じになっておりまして、特安法の期間中はむしろ雇用調整はかなりなだらかなテンポで行われておるという数字が出ておるわけでございます。  したがいまして、この数字から見まして、私ども特安法というのは雇用のなだらか調整にかなり貢献したんではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほど御指摘の労働省との連携の関係でございますが、私どもは適時適切に労働省とは十分連携をとっておりまして、意見交換等を通じましていろんな対策考えておるわけでございますけれども、新特安法におきましては、その連携強化をさらに強化をいたしまして雇用の安定に万全を期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  20. 吉田正雄

    吉田正雄君 まあ法文上雇用の安定を図るとか、あるいは城下町法案等で新たなる雇用の創出というふうなことも言われておるわけですけれども、私は、特に中小企業の場合、よくベンチャービジネスというふうな言葉も使われますけれども中小企業段階が一番影響を受けるわけですね。そういうところに新たな新技術開発であるとか、あるいは能力開発企業を育てると言ってみても、そこまでとても、私は、中小企業というのは手が回らぬだろうと思うんですね。したがって私は、この新特安法あるいは城下町法案等で本当に雇用の安定と創出ということが期待できるんだろうかという点、非常に不安を持っておるんです。文字面ではいろいろ書かれておりますけれども、一体具体的にどういうふうにたとえば雇用を創出する手段というのがあるのか。これは、通産、労働省それぞれからお尋ねをしたいと思うんですね。この法案のここでは具体的にはこういう考え方があるんだというふうな面があったらお聞かせを願いたいと思うんです。  たとえば、先ほど労働省とも話し合いというふうなことがございましたけれども、私は、やっぱり構造改善基本計画を策定する段階で、事前に通産大臣と労働大臣がその計画の内容を判断して、果たして雇用の安定なり創出というものに役立つものなのかどうなのか、そういう協議というものを十分行えるのかどうなのか、法文上では、これ義務づけてはいないわけですね。何ら盛られていないわけですが、その辺についても、単に、今後はできるだけ運用上というふうなことでなくて、明確に離職者法案との関係もありますし、具体的にはどういうまた考え方をお持ちなのか、その辺もお聞かせ願いたいと思います。
  21. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 新しい法律におきましては、目的のところにもはっきり明示してございますけれども雇用の安定は最重点配慮事項ということになっておるわけでございまして、私どもといたしましても、雇用の安定につきまして、最大限の配慮をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。  それで、先生指摘の、じゃ、具体的にどんなことを考えておるのかということでございますが、先ほど山中大臣の御答弁にもございましたように、この法案立案過程で、私ども山中原則ということで取り組んだわけでございますが、その中の一つの項目に、縮小活性化というのがあるわけでございます。縮小と申しますのは、設備処理を通じます、合理的でない設備を廃棄していくということでございますし、活性化というのは、技術開発とか、あるいはその事業の集約化であるとか、あるいは活性化設備投資を通じまして当該業種活性化を図っていくということであるわけでございます。その活性化に関する部分と申しますのが、具体的には、新商品及び新技術開発ということにもつながるわけでございますし、それからさらに、製品分野の多様化等の高付加価値化のための設備投資ということにもつながってくるわけでございまして、その面におきまして私どもは、ある程度雇用の創出の機会というのがあるんではないかというふうに考えておるわけでございます。  さらに、本法におきましては、構造改善とあわせまして、必要な場合には事業転換も行うということを考えておるわけでございますが、事業転換を通じましても、新しい雇用の場の創出というのは可能なんではないかというふうに考えておるわけでございます。  さらに、本法案と並行して審議されております中小企業のいわゆる新城下町法や、あるいは労働省の新雇用安定法とも有機的な連携を確保することによりまして、新城下町法の新分野の開拓事業等を内容といたします振興対策や、あるいは企業誘致対策、新雇用安定法の職業訓練とか、あるいは再就職あっせん等の諸施策と相まちまして、雇用の安定に万全を期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  22. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 雇用対策それ自体で雇用の創出というのを得る手段というのは、実はむずかしいわけでございますが、今回の新法の関係では、いま通産省の方からもいろいろなお話がございましたけれども、いわゆる活性化投資といったものは大きな効果を上げられるようなことを私ども強く期待するわけでございますが、同時に、そうしたことが行われる場合に、事業内での職種転換といったことが従業員について行われるケースが出てまいるかと思います。そうしたものに対しては、従来は企業責任でそういう教育訓練をやっていたわけでございますけれども、昨年の四月から、生涯教育訓練促進給付金といった制度も新しく設けまして、事業内で行われますそうした教育訓練についての助成もやれるような仕組みにもいたしております。そうしたものを活用しまして、雇用創出にも少しでも役立てるようにしていきたいと思っております。  と同時に、引き続きの雇用は期待できないけれども、関連分野あるいは関連会社への新しい雇用の場が期待できる、そういうものを掘り起こして雇用の安定につなげていくという場合に、再就職のためのいろいろな助成であるとかいったようなことは、今回五十八年度以降の予算でも措置をいたしておりますので、そういうものを活用してやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  23. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの通産省の方の答弁なんですが、たとえば新技術の研究開発と、なるほど、企業体質の強化とか国際競争力強化という面では役立つと思うんですね。ところが、そのことが一面逆に合理化を促進していくという側面を持つこともこれは否定できないと思うんですね。その辺をどのように一体調整をされていくのかということなんですね。これはもう、新技術開発されれば、生産性の向上であるとか競争力強化ということで、省力化が当然そこに伴ってくるわけですね。そういう点で、構造改善基本計画の中でどうバランスをとり配慮をされていくのか。その辺が明確でありませんと、一見、新技術開発というのは非常にいいことなんですけれども、ところが、どうも雇用が忘れられがちになるという心配が出てまいりますが、その辺どうなんですか。
  24. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 新技術開発と、それからあるいは活性化設備投資という場合に、特に私どもが重点を置きたいと思っておりますのは、省エネルギー関係の技術開発であり、設備投資というのを重点に置こうと思っておるわけでありまして、その限りにおきましては、雇用政策との関係は十分両立できる形になると思いますし、それからまた、新商品、新技術開発の過程、たとえばアルミ製錬の場合、現行製錬法から新しい溶鉱炉法の製錬技術開発していくと。これにはまだこれから数年の時間は要するわけでございますけれども、そういう技術開発のための新しい雇用がふえるというような場面もございますので、全体といたしまして、活性化施策によりまして雇用機会の創出というのは期待できるんではないかと私ども考えておるわけでございます。
  25. 吉田正雄

    吉田正雄君 衆議院における化学エネルギー労協の久村さんの方からは、雇用の問題についてこういう意見が述べられておるわけですね。企業雇用を第一義的に考えて、もしその一定の職場で過員が出たとかいうふうな場合には、配置転換であるとか、あるいは出向であるとか、そういうふうなことをできるだけ企業努力でやっていくんだけれども、しかし、もしそれができない場合どうするのかということになったら、離職者法案の適用であるとか、あるいは城下町法案を生かして当該地域における雇用機会の創出を強く要請をしていくんだと、こういうことが述べられておるわけですね。  そこで私は、対象企業の中でも比較的大企業の場合には、配転であるとか、あるいはいろんな企業努力によってそれなりに吸収はできると思います。しかし、俗に言う川下の下請関連中小企業になってまいりますと、とても企業努力なんということにはならずに、もろに波をかぶるということにならざるを得ないと思うんですね。したがって、これは城下町法案とも有機的に結合させながら雇用確保を図っていくということは、言葉の上では簡単なんですけれども、現在、地域で一番経済的な不況を招いているというのは、いまこれから対象予定になっておる業種不況というものがその地域経済にも大きな影響を及ぼしておるということであるわけですから、そういう点で地域経済との関係あるいはこの城下町法案との関係ではどういうふうにこれから有機的にこれ運用されていこうとしているのかお聞かせ願いたいと思うんですね。
  26. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 私どもが具体的にその構造改善基本計画を策定する過程におきまして、新城下町法の所管でございます中小企業庁と十分連携を保つことは当然でございますし、それから雇用の安定の問題に関しましては、労働省と十分連絡、協議をしながら事態に対処してまいりたいというふうに考えております。
  27. 吉田正雄

    吉田正雄君 それから労働団体から出された強い意見としては、この法案の中であるいは法制上運用の面で労働者の意見というものの反映がこの程度では弱いんじゃないかという、こういう指摘がございます。  そこで、いままでの法作成の段階で、通産なり労働団体との間ではずいぶん意見も交換をされたと思うんですけれども、労働団体側としてはできるだけ文字面はとにかくとして、実質的な労使のやはり合意であるとかあるいはそれに近いそういうものでなければいけないんじゃないかということが強く言われておったと思うんですね。それから私は、これは通産のこの計画策定段階で各企業からその計画が出てくる段階でも、通産省としてもその面に十分配慮をした私は行政指導というものがなされるべきだと思うんですけれども、この辺、労働団体の不安というものを解消する具体的な手だてというものをどのようにお考えになっておりますか。
  28. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生先ほどお話しのように、この法案策定の過程におきまして、労働組合意見も十分聴取をさせていただいたつもりでございます。さらにこの法案基礎となりました産業構造審議会の基礎素材産業対策特別委員会というその審議の場があったわけでございますが、この審議の場にも労働組合の代表に御参加いただきまして熱心な討議をお願いをしたわけでございます。その結果としてまとめ上がってまいりましたのがこの新特安法ということでございますが、この特安法の中におきましては、先ほど御説明もさしていただきましたように、目的におきましては雇用の安定を最重点配慮事項ということで書き並べておるわけでございますが、具体的にじゃこの法律の中でどういうことが書かれておるかと申しますと、まず第三条のところでございますが、構造改善基本計画の策定に当たりまして、関係審議会を通じまして労働組合意見を聞くということがはっきり明示をされておるわけでございます。また運用の問題といたしまして、当然のことでございますけれども、関係審議会には必ず労働組合の代表に参加していただくことということを考えておるわけでございます。基本計画の内容そのものは、十分雇用の安定に配慮したものでなければならないということであるわけでございます。  次に、事業者が基本計画に従いまして、設備処理や事業提携などの構造改善を行う場合には、労働組合と協議をいたしまして雇用の安定のための措置を講ずるよう努めなければならないこととなっておるわけでございます。これは第十条第一項の規定ということでございます。  また、国が設備処理の共同行為の指示を出す場合やあるいはその事業者が作成いたしました事業提携計画の承認を行う場合には従業員の地位を不当に害するおそれがないことを主務大臣が十分確認をするということになっておるわけでございます。特に今回新たに設けられました事業提携計画の承認に当たりましては、事業者と労働組合との間で話し合いが十分行われているかどうかを確認するということになっておるわけでございます。これは第六条及び第八条の二に明示をされておるところでございます。  以上のように本法におきましては労働組合意見を十分反映できる仕組みになっておるわけでございまして、また雇用の安定につきまして関係の規定を整備しておるところでもあるわけでございます。したがいまして、今後ともさまざまな場で労働組合意見を十分に聞きまして、新法の運用に適切に反映をさせてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  29. 吉田正雄

    吉田正雄君 衆議院段階におきまして社会党の方から構造改善基本計画における雇用の安定を図るための措置をもう少し明確にすべきではないかということと、さらに基本計画策定の際、関係審議会は関連中小企業の団体、労働組合からも意見を聴取すべきではないかという二点についての修正案等も出したわけなんですが、これがどうも賛成が得られなくて修正案が通らなかったという点でまことに残念に思っているんですけれども、私は本当に通産当局があるいは事業者団体が雇用の安定について十分な配慮を払っていくんだ、これをむしろ最優先するというくらいな考え方でおいでになるということになるならば、修正案をむしろ通していただいた方がよかったんじゃないかというふうにも思いますが、簡単に修正案なかなか通せないということでありますならば、今後の運用面においていろいろ指摘をされてきたような不安であるとか、あるいはそれではまだ弱いではないか、拘束力がないじゃないか、単に意見を聞くという程度ではないかという、こういう面についてもう少し通産当局としてしっかりしたひとつ方針なり見解のもとに事業計画も策定をしていただきたいと思いますし、それから事業者団体から出される事業、たとえば提携計画等についても十分その際指導をやってもらうということがなければいけないと思うんですが、これ大臣からひとつ答弁をお聞きしたいと思うんです。
  30. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 衆議院の審議の経過等の話を前提にしての御質問でありますが、そのような審議の経過は確かに承知いたしておりますし、そのゆえにこそ附帯決議で改めてその点を念を押されたということでございますから、あとはいまお話しのようにこの法律を通していただきました後、通産省、私並びに事務当局がその計画を確認をし、承認をする際には、当然労使の問題、ことに労働組合のどのような形態においてどのような内容のあるいはどのような程度の了解が得られておるかは、国会の意思の反映として慎重なかつ周到な審査に当たりたい、そのように考えます。
  31. 吉田正雄

    吉田正雄君 この雇用問題についてはきょうはこの程度でやめたいと思うんですけれども大臣もう一つ十分配慮をしていただきたいと思いますのは、これは衆議院での参考人というのは、総評とか同盟とか全民労協のまさに中央団体を代表する人たちなんですね。しかし、この法案が作成される段階でのいろんな労働組合内部の意見等を見ますと、やはり川下の関連中小企業の労働者の意見というものが本当に十分今後反映をされていくのかどうか、その辺非常に不安に思っている方が多いんですね。そういう点で二十一日の日に本院におきましても参考人を呼んで聞くということになっておりまして、私どもとしてもできるだけ最も影響を受けると思われる中小関連企業の方から意見伺いたいと思っておりますが、その意見を聞いた上でまた通産当局に要望したいことはしたいと思っております。特に大臣、俗に言う、何と言うんですか、意見すら言えないというふうなそういうところに十分ひとつ目を向けたこれからの指導であってほしいというふうに思いますし、それから、労働省の方も私は積極的にやはり介入だとかなんとかということでなくて、通産省に対してはむしろ労働省側から積極的に特安法実施に当たってこういう面はどうなるだろうかとか、そういう計画が出てきた段階でやはり積極的に接触をしていくという、そういう姿勢というものを持ってもらいたいと思うんですよ。でき上がってしまってからまさにさっき言った後追いで、出た後の離職者をどうするかということでは非常に後退した姿勢といいますか、消極的な姿勢になるわけですから、出ないことがまず第一なわけでして、出た後の訓練さえやればいいじゃないかということでは、そういう場合も万やむを得ない場合があるいは出てくるかもわかりませんけれども、それは結果論としてはそうであっても、やはり事前の段階で十分通産当局と連絡をとりながら、私は少なくとも離職者の発生については最大限抑制というか、抑止を、防止をしていくということでやっていただきたいと思うんです。これはまた同時に通産当局にもお願いをしておきたいと思うんですが、その点いかがですか。
  32. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは法律にも第十条の第一項に「労働組合」、それに括弧書きがしてございます。普通は労働組合と協議してと書くのでありますが、ただいまおっしゃいましたような川下あるいは城下町等の周辺等の中小企業と関連がございますから、労働組合というほどのものはいないという場合のことを案じまして、括弧書きで「当該事業所において、労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者」括弧閉ずということで、法律の上にもそのような配慮をするんだということを明確にいたしております。当然私たちはその案をつくりまして、相談を受けました際には、それらの括弧書きのことも十分に念頭に置きながら対処するとともに、労働省との関係としては一応の受け皿を、労働省の方は不況という字をつけなければちょっとこの法律を受けたという形になりませんので、この法律は別な意味で不況という字を取っておりますが、そちらの方に対通産省段階一丁上がり、次、労働省ぽいというような、そういうようなつながりを決して考えてはおりませんで、やっぱり十分に私たちの中で、この人たちを最終的に解雇というような形でなくて、その地域とか事業の関連の分野とか、新しく形としてはでき上がる集約共同販売とか、そういう部門に転用はできないのかとかいうようなことでいろいろと相談も、通産省側の方の意見も述べながら、すぐに失業者を出すんだ、人員整理、賃金抑制、コストの低下というようなことから人を減らせばそれだけ安上がりじゃないかという考え方を持たないで、やはり日本の場合には、諸外国がある意味でうらやみ、ある意味で疑問に思っている労使協調の、大企業からもちろん小規模事業に至るまでの企業に対する忠誠心ということをよく言われておりますが、そこらのところが支えておる分野が非常に生産性の向上その他において大きなウエートを占めている、いわば日本のこれはなくしてはならない大切なものである。ならば当然雇用する側もその方の大切さを十分知っておって対応しなければならないという基本的な、日本的な美徳と私どもは思っておりますが、そこを美徳につけ込むというようなことがあってはならない、そういう気持ちで計画作成段階あるいは業界が自発的に計画をつくられる段階において、私どもは積極的な相談に乗っていくつもりでございます。
  33. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 雇用の安定が基本であることは申すまでもないことであります。私どもとしてもこの法律の運用に当たって、先ほど通産省事務当局からもお話ございましたように、構造改善計画の策定その他に関しまして、常に密接な連携をとってまいりたいというふうに考えております。
  34. 吉田正雄

    吉田正雄君 公正取引委員会お尋ねしますけれども、いま現行特安法に対する評価としては、法案を提出された通産当局としては、これはなかったならもうちょっと失業者がふえたんじゃないかというふうな見方もあるでしょうし、それから労働団体側としては、結果的にはこれは首切り促進法ではなかったかという率直な見解がこれはもうどの労働団体からも出されておるということであるわけです。そこで今度いままでの実績というのですか、五年間の経過を踏まえて五年間を延長し、内容も改正をしていくということになっておりますが、公正取引委員会といたしましては、現行特安法に対する一定のといいますか、それなりのやはり評価というものはなされておると思うんです。そうでなければ新特安法に対するまた公正取引委員会としての態度も出てこないと思われるわけですので、そういう点で公取委から見た特安法に対する評価ですね、これは雇用問題を除いて、たとえば、国際競争力の面でどうであったのかという点と、それから期間の延長ということが、改正も一部含まれておるわけですが、そういう二点から見ましてどのように評価をされておるのか、率直な御意見をお聞かせ願いたいと思うのです。
  35. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 現行の特安法でございますが、これは国際的な環境の変化、また、エネルギーコストの上昇その他の要因から過剰設備が発生してまいりました。その過剰設備処理をして不況から脱出をする、そういうことを目的とした法律であるというふうに承知しておるわけであります。そういう観点からいたしますと、たびたび通産省からもお答えがありましたように、現在の指示カルテル、その他のカルテルによって設備処理をしてまいったその実績は、一応当初の目標とされた処理量ほぼ達成しておるということは事実だと思います。ただ、その後昭和五十四年、五十五年にかけまして第二次の石油ショックが起こったために再び需給の不均衡、また、エネルギーコストその他の不適合ということが起こってまいって新たな過剰設備がまた発生をした。それで今回単に過剰設備処理をするということだけじゃなくて、新しく構造改善なり、活性化投資なり、新しい前向きの方向法案を拡張をして御審議をお願いをしておるということは通産省と同じように私どもも承知をしております。  そこでお尋ねは、一つは、現行の特安法のもとで設備処理を進めてまいったそのやり方効果的であったかどうかということに関連しておろうかと思います。去年の十一月の五日でございます、私どもの方でいろいろなことを研究を願っております京大の馬場先生、そのほかの学者の方々の御検討の結果を見ますと、やはり格納、休止というような設備処理方法がとられたために、設備処理として不徹底な面があるということとか、設備処理が各企業が一律の割合で行われたために限界企業が温存をされる、また、生産性の低い企業につきましても、高い企業につきましても、同じような設備処理が行われる、それがかえって本来企業が独自の判断で実施すべき対応をおくらせることになるんじゃないかということとか、設備処理を長期をかけて行いますために、設備の新増設制限ということがその反面で行われるわけでございますから、長期的に見て国際競争力を一層弱めることになるんじゃないかというような点が指摘をされておったわけであります。これらの点はいずれも私どもも事実だというふうに思いますけれども、やはり先ほど申し上げましたように、第二次の石油ショック後起こってまいりました基礎素材産業部門の不況を克服し、新しい方向に活力を発揮していく、創意工夫をこらして活力を発揮していく、そのためには、やはり設備処理に関する部分を延長をする必要があると思います。延長された後やはり指示カルテル制度の運用につきまして、先ほど申しておりましたような諸種のふぐあいが生じないように十分これから配慮すべき問題であろうというふうに思います。  もう一点のお尋ねは、特安法の延長が五年間やる必要があるかどうかということに関連しておったかと思うわけでございますけれども、第二次の石油ショックから発生しました困難を克服いたしますために、設備の処理をいたしますにつきましても、構造改善をいたしますにつきましても、やはり五年間というぐらいの期間を置くことが必要ではなかろうかというのが私ども考え方であります。そういう意味で必ずしも長過ぎるものではないと思いますが、ただし、実際に構造改善基本計画の中ですべての指定業種につきまして一律五年という期間を定める必要もまたこれないんではないか。そこで実態に応じて必要最小限の期間に限ると。あるものはたとえば三年とか、あるものは五年とか、それぞれの業種に応じた構造改善計画ならそれはあってもよいのではないかというふうに思いますが、その点につきましては、今後通商産業省と意見を調整する段階で、具体的に私ども見解とのすり合わせを図ってまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  36. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、特定産業範囲というものが前の現行法よりも拡大をされておるわけですけれども、たとえば一部の産業においてはこの対象に含めてもらわなくてもいいというふうな意見のところも実はあるというふうに私承っております。そこで、今回七業種に拡大をされた理由といったらいいんですか、根拠といったらいいんですかね、どういう分析に基づかれてこういうふうに七業種に拡大をされたのか、その点をまずお聞きをいたします。
  37. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 今回の法改正に当たりましては、構造的問題に直面しております基礎素材産業につきまして、緊急に対策を講ずる必要があるということからこの法律の作成に取り組んだわけでございますが、先ほども触れましたけれども、昨年来産業構造審議会の基礎素材産業特別小委員会におきまして具体的な検討が行われました。その結果も踏まえまして構造的困難に直面をし、かつ構造改善へ向けての意思が明らかなものになっておる業種といたしまして、七つの業種につきまして法定をしたということになっておるわけでございます。
  38. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでこの二条の第八号のところで政令指定によってそれをさらに拡大といいますか、できることになっているわけですけれども、この政令指定業種の要件はここへいろいろ述べてあるんですけれども、具体的には一体どういう内容になっているんですかね。たとえば括弧書きの部分等「その業種に属する事業者の製造する物品の生産費の相当部分原材料及びエネルギーの費用が占めるものに限る。」というふうなこと等も書いてあるわけですけれども、これらについては、「相当部分」というものはどういう程度なものなのか、そういうことがどうもはっきりしないんですけれども、要するに独禁法上の不況カルテルの内容よりも、というよりもそういうものと比較をしてどういうことになっていくのか、この辺をお尋ねしたいと思うんです。
  39. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 第二条第一項に特定産業が具体的に定められておるわけでございますが、先ほど申し述べました七つの法定候補業種も、そして八号に規定してございます政令候補業種の指定要件も中身は全く同じということでございます。そこで、政令指定の要件でございますが、この八号のところにも書いてございますけれども、第一に、第二次石油危機を契機とする著しい経済事情の変化によりと、第二に、生産能力の過剰と生産経営の規模または生産の方式の不適当が長期にわたり継続し、第三に、このため経営が長期にわたり不安定となっており、第四に、生産コストの相当部分原材料及びエネルギーコストが占める業種ということでございまして、ここが先生の御指摘の点でございますが、これがいわゆる基礎素材産業の定義ということになっておるわけでございまして、この「物品の生産費の相当部分」というのは二分の一ということを具体的には意味しておるわけでございまして、原材料及びエネルギーの費用が生産費の二分の一以上を占めるものを基礎素材産業ということで定義をしておるわけでございます。そして第五に、設備処理及び生産経営の規模または生産の方式の適正化により構造改善を推進する必要があると、その五つの要件に合致するものを政令による追加指定の要件として定めておるわけでございます。その政令で定めております追加指定の要件は、先ほど冒頭に触れましたけれども、法定七業種にも全部当てはまる要件ということになっておるわけでございます。
  40. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、特定七業種と同じ条件だということであれば、そこに指定があってもいいとも思われるんですが、それは政令にゆだねるということでありますから、どういう業種というものが想定をされるのか、何か現状でもございますか、それ。
  41. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 現時点では政令候補業種の予定は必ずしも明らかになっておりません。むしろわれわれは法律立案段階では、現時点において構造的困難に直面をし、しかも業界全体として構造改善の意欲十分という業種につきましては法定するべく努めたつもりでございます。したがいまして、現時点におきまして政令で追加指定いたします業種につきましては、必ずしも明らかでないというのが現状でございます。
  42. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、政令で定めるに当たってはやはり当該産業界と事前に十分連絡をとっておやりになるということだと思うんですが、その辺はどうなんですか。
  43. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) こちらの方から連絡をとるのではなくて、この法律ができまして、そして八号に政令で追加指定の道もございますが、一年半のうちに手を挙げていただかねばなりませんよということはわかるわけでありますから、その間にもし該当するような業界がありとして、その業界の中でこのままではとてもいかぬし、八号を読んでみると、自分たちの業界もぴったりだなと思うものがあって、そしてじゃ、それをどうするかという具体的な計画をつくって相談に来られた場合には政令で指定することがあり得るかもしれませんが、想像できるような業種については、業態も含めて、あるいは所轄官庁も含めて一応打診等もいたしてみましたが、そのようなものは出てきませんし、逆に前の法律では一応不況業種として対象にしていた造船業、こういうものも今回は基礎素材産業という八号の政令に関する内容をそのとおり当てはめてみますと、これはどうも基礎素材産業のうちには入らぬと、造船業の基礎素材は鉄だろうというふうなことになりまして、運輸省はそっちで引き続きやってくれませんかという話もありましたが、運輸省の持っている法律、運輸省の海運の再建、造船業に対する運輸省も手段を持っているわけでありますから、この構造不況業種に対する対策の中にはもうそろそろ卒業生で出ていってくれぬかということで外してあります。したがって結論から言いますと、私は現段階において、法案作成の途中において気のつきました業界等も含めて点検したんですが、手の挙がりそうなところはないと、しかも挙がらない理由もわかるというようなものが多うございまして、政令は念のために書いてあるだけのものに恐らく終わるであろうと想像しております。
  44. 吉田正雄

    吉田正雄君 私がそこのところを特にお聞きいたしておりますのは、先ほども申し上げましたように、この第二条における指定産業ですね、業種指定の中で、実はある業種について、いまここではどこの業種とは言いません、ちょっと支障が出ますから言いませんが、そこの関係者から聞いたところでは、うちの場合はもうこれ入れてもらわない方がかえっていいんじゃないかという、そういう意見も私聞いたんですよ。聞いたものですから、そうするとそこの業者なりあるいは労働団体と事前に一体どういう話が行われたのか、あるいは通産との間にどういうふうにこの話し合いが行われてここに入ってきたのかという点が若干やっぱり疑問なんですね。したがって、どうも納得してないのにここへ入っているじゃないかというふうな印象を受けたものですから、そうなると政令でもってこれは通産省が一方的にまたここのところをやった方がいいだろうということで、それは押しつけでないとしても通産から話が出されたら業界としてはなかなか断りづらいという、そういうことになっては困るんじゃないかというふうに思ってお聞きをしたのでありまして、いま大臣からお話がありましたように、いやこちらから言うんでなくて業界の方からぜひひとつここのところへ入れてくれという話になっていよいよレールに乗っかるんだという話であれば、これはまさに業界の自主性、主体性ということであって私ども心配しないんですが、そういうやはり話を聞いたものですから、私は念のためお聞きをいたしたということでございますが、そういうことでよろしゅうございますね、大臣
  45. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) おおむね想像はできます。それはこの法律の中にアウトサイダーの規制がない。それがあれば自分たちは手を挙げてもいいんだが、手を挙げたとしても、アウトサイダーを大臣が勧告もしくは排除命令その他を持っていてくれない限り、一匹オオカミにかき回されちゃ幾ら残りのものが全部努力をしてもそれは灰に帰する、あるいは画餅に帰する結果になるのでどうも気乗りがしないなあという業界があるいはあるのではないかと思いますが、その大臣のアウトサイダーに対する問題については後ほど御質問もあるんでありましょうから、当然あるでしょう。――ですから、それはここでは説明いたしませんで、いわゆるアウトサイダーに対する規制が伴っていないことに、業界の具体的な、あの会社はきっと抜ける、やるならやってみろと、おれは自分の社だけで切り抜けられると豪語している会社の名前も私は知っております。そこら辺のところがやっぱりまあ受ける業界から見れば画竜点睛を欠くのかなあ、しかし法律をつくる方から見れば、後ほど御答弁いたしますが、そういう強権的な法律にしないということでございますから、まあまあ滑り出してみてやっていけませんというところは、それは無理にこちらの方からおやりなさいと言うつもりはないということでございます。
  46. 吉田正雄

    吉田正雄君 いま私がお尋ねしたのは、確かにアウトサイダーと無関係ではないということはわかりますけれども、その面からお尋ねしたんでなくて――やめますわ、それはそれで。またアウトサイダーのことは後でお聞きいたしますので。  次に、構造改善基本計画についてお尋ねをいたします。  第三条の第二項では「目標」というものが書いてございます。この「目標」の内容というものがどうも必ずしも明確ではないような気がするんですが、二号以下並べてあるのが全部目標だというふうにおっしゃれば、それはそれなりに理解できるんですけれども、しかしいままでのこの法案実施状況を見ても、一体この変転する経済情勢のもとにあって構造改善目標というものがそんなに明確に設定をできるのかどうなのかという点を心配をするわけです。これは経済成長率一つをとっても政府の予想というものはみごとにというとこれは語弊がありますけれども、狂ってきたということもございまして、そういう点でこの「目標」の設定というものをどのように考えておいでになるのかということをお尋ねをいたしたいわけです。特に一律的な計画というのは私は非常に問題があるんじゃないかと思っておりますので、その件をお聞かせ願いたいと思います。
  47. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 構造改善目標でございますが、この措置の内容といたしましては、先ほどもるる御説明さしていただきましたように現行特安法設備処理という、その撤退の部分に加えまして事業の提携とか、あるいは活性化、設備投資とか技術開発とかいったような活性化部分を追加したわけでございます。  したがいまして、これらの措置をばらばらに実行するんではなくて、有機的な連携のもとに計画的に推進していきたいというのを私どもは頭に置いておるわけでございまして、したがいまして、それらの各措置が総合的に講ぜられることによりまして期待される効果を踏まえまして、目標年次におきまして当該特定産業がどのような産業になるべきかといったようなことを基本的な目標として記載することを考えておるわけでございまして、もっと具体的に申しますと、ここでは定量的なことは必ずしも記載をいたしませんで、むしろ定性的なものになるんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  48. 吉田正雄

    吉田正雄君 特に現行特安法も、それからこの改正法案ですね、産構法についても石油ショックというものを最大の理由に挙げてあるわけですね。そういたしますと、石油状況というのは御承知のようにきわめて流動的であります。これはもう通産大臣、一番その辺の事情は詳しく知っておいでになるわけですけれども、そういう点で予算委員会等でもこれからの石油情勢がどうなるのかという点については、観測としては二十五ドルとか、これは大臣が直接おっしゃったわけでもないんですが、いや、アメリカあたりでは二十ドルにまで下がるんじゃないかというふうなことも言われておりまして、とにかく非常に先行きについて明確な見通しというものが出てこないという中で、一番の原因であったこの石油情勢というものと、この目標というものを一体どうぴたっと合わせていくのか、あるいは逆に言えば合わせることが一体できるのかどうかという、そこが一番問題だろうと思うんです。これはあるにしたって何にしてもいろいろ狂ってきているわけですから、その点もう少しお聞かせ願いたいと思うんです。
  49. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) いま先生がお触れになりました過剰設備処理に関連いたしました需給の見通し、それから設備の処理率をどうするかといったような問題は、実はこの二号の中で具体的に書き並べることになっておるわけでございます。したがいまして、その一号におきます「目標年度における構造改善目標」といいますのは、先ほども申しましたように撤退と活性化を含めた総合的な構造改善対策というのを進めていく形になっておるものでございますので、その総合的な構造改善対策を進めるに当たりまして、その当該産業についてどういう姿を五年後あるいは三年後に想定をするのかということを定性的に分析をして目標として掲げたいというふうに考えておるわけでございます。
  50. 吉田正雄

    吉田正雄君 その計画策定の場合、いま第二号のところで設備処理の話が出ましたけれども、これは後ほどもお聞きしたいと思っておったんですけれども、いま話が出ましたからちょっとお尋ねをいたしますと、たとえば設備廃棄ですね、これは非常に問題があると思いますのは、一律廃棄という点については、いままでの経過からしましてもいろんな問題が出てきておることは御承知だろうと思うんです。というのは、各企業が持っておる設備の新旧、あるいは遊休設備ですね、あるいはある企業にとっては最新式のものしかない、もう古いものはないんだという、そういういろんな規模の面あるいは設備の内容の度合いですね、すぐれたもの、古いもの、新旧の度合。こういう点から考えまして、私は一律的な廃棄ということにこの目標の中でぴたっと持っていくということには非常に問題があるんじゃないかと思いますし、それからこれはここの委員会でしたか予算委員会だかでも論ぜられたと思うんですけれども、たとえば他の委員から出された話なんですが、住友だとか三井だとかそういう大企業開発輸入をするという場合等もあるわけでして、その場合にはグループとして全体としては利益を上げているということですから、設備廃棄をしても困らないという、こういう例もあるわけですね。だから、いろんな要素というものがこの設備廃棄については含まれておるわけですので、そういう点で、その辺はどういう方針、基準で臨まれるのか、これは後でお聞きしようと思ったんですが、いまちょっと出ましたのでお聞きをしたいと思うんです。
  51. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 過剰設備処理量であるとかあるいは処理の期間等、処理に関する基本的事項につきましては、関係審議会の意見を聞いた上で構造改善基本計画の中に定められることになっておるわけでございます。  設備処理量等の決定に当たりましては、将来の需要見通し、輸出入の動向、構造改善効果等を総合的に勘案することが必要でございますし、また処理方法等につきましては、産業全体の効率化、低コスト化に結びつくような処理方法、たとえば非効率設備、老朽設備から処理していく方法であるとか、共同生産とか生産の受委託といったような事業の集約化と有機的に連携をした処理実施をしていくといったようなことを考えていく必要があるんではないかと思っております。  設備処理は、このように基本計画に沿って業界の自主的努力によって行われるのが基本であるわけでございますけれども、自主的努力のみでは実効が上がらない場合には、主務大臣の指示に基づく共同行為により処理をされ、また業種の実態に応じまして調整金の授受であるとかグループによる処理も行われるということになっておるわけでございます。  そこで、先ほど先生が一律処理方式についてはどうかというお尋ねがあったわけでございますけれども、いま申し述べましたように、設備の処理実施につきましては、産業の実態に応じまして効率性に配慮した処理方式を採用する必要があるのではないかというふうに思っておるわけでございますが、産業の実態によりましては一律の処理方式によっても十分な効果が上がるものもあるんではないかというふうに考えられるわけでございまして、一律の処理方式が常に問題があるということでは必ずしもないんではないかというふうに思っておるわけでございます。現に、現行特安法指定業種で共同行為により設備処理を行った業種のうちでも、一律的方式によりまして各企業処理量の割り当てがなされました合繊の分野につきましては、その一律処理方式の結果といたしまして、順調に設備処理が進みましてかなりの稼働率改善が見られたというような実績もあるわけでございます。  しかし、先ほども触れましたけれども、今後の設備処理を進めるに当たりましては、特安法の施行の経験を十分に踏まえまして、産業の実態に応じた効率性に配慮した方式、具体的にはグループ化による処理あるいは調整金の授受の採用というようなことを具体的に考えていくこととしておるわけでございます。また、新しい法律のもとにおきましては、過剰設備処理と有機的連携を保ちながら、税、財政等の支援措置もあわせ考えておるわけでございまして、さらに事業の集約化、活性化、設備投資等も推進をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  開発輸入との関連でございますが、これは特にアルミとかの業種につきまして、海外の豊富低廉な資源等をわが国の資本、技術と組み合わせることによりまして、開発輸入を行うということは相手国経済発展への寄与にもつながるわけでございます。そういう意味で、積極的な海外事業展開を図っておる企業グループも見られるわけでございます。  これらの海外プロジェクトは、具体的には次のような意義があるのではないかと思うわけでございますが、その第一は経済協力、技術協力、産業協力を通じまして、わが国の国際貢献ということにつながる面があるんではないかということ。第二番目は、素原材料及び基礎素材の低廉かつ安定的な供給の確保につながる面があるのではないかということ。それから第三番目に、原材料コストの低減、つまり国産基礎素材とのミックスプライスによりまして価格安定が図れるといったような積極的なプラス面というのが期待できるわけでございます。  しかし、一方海外プロジェクトは、国内及び海外の需給動向というのを十分踏まえながら進めませんと、過剰生産になって国内にラッシュをするというふうなことも想定されるわけでございますし、一方資金量が大変膨大なものを要するということもございますし、投資期間が長い、リードタイムが長いというようなこともございますので、そういう面では企業経営上かなり慎重な配慮をいたしませんと、企業経営に大変な圧迫をもたらす面もあるわけでございます。したがいまして、今後の海外プロジェクトの推進に当たりましては、従前よりはより慎重な対応が必要なんではないかというふうに考えられるわけでございます。
  52. 吉田正雄

    吉田正雄君 これはちょっと私の意見になりますけれども、いまのこの海外プロジェクトの問題ですね。    〔委員長退席、理事降矢敬義君着席〕 よく国際分業論との関係で、若干混乱した意見もあるいは論議等も見られると思うのですが、とにかくわが国というのは資源もエネルギーもほとんど輸入をしているわけですから、そういう点ですべて自国で賄うことはできない、これは自明の理なんですね。そういう点で、海外経済協力であるとかいろんな面で海外開発、そして輸入ということも当然行われてくるというわけで、そのこと自体を全面的に私は否定することにはならないと思うわけですね。そこで、いま言った国内過剰生産との関係で、それをどう調整を図っていくのかということについては、まさに実態の分析というものを十分にやられて、慎重な取り組みということをぜひ行っていただきたいと思うんです。  それと関連して、いま過剰設備の一律処理というものは機械的には考えていないと、そういう産業もあるいはあっていいかもわからないがというふうなことをおっしゃったのですけれども、一律処理をやった場合、限界企業がまた残っていくという本当の意味での構造改善にならない。たまたま遊休であったというふうなことでそこだけ処理をして、この計画とはほとんどあまり無縁であったという状況が出てくる企業も出てくるのではないかと私は思いますので、その実態分析といまおっしゃっておるんですけれども、これは本当に十分ひとつ調査をやられた上での計画ということになりませんと、非常な不公正といったらいいんでしょうか、そういうものが出てきて、ますます企業間格差というものを拡大をしていく結果になりかねない。あるいはまた、逆にいうアウトサイダーの存在を許すというふうにもなりかねないと思いますから、その辺は十分慎重な配慮をもってひとつぜひやってもらいたいと思うのです。  特に、私は国民といいますか、消費者の立場から考えたとき、いま少し例も出されましたが、たとえば四十六年に鉄鋼の場合設備処理が行われた。ところが、その後需要増大をして、結局価格が引き上げられたというふうなこともありますので、現状だけでなくて将来の展望といいますか、そういうものともにらみ合わせながら、一たん処理をしてしまいますとこれは大変ですから、そういう点では一時的な遊休施設という、一時期封印などということが言われたこともありますけれども、これらとの併用によって構造改善事業が直ちに消費者の不利益になってはね返ってくるというふうな価格の引き上げというふうな事態を招かない、そういうやはり慎重な配慮というものが必要ではないかというふうに思いますが、その辺もう一度お聞かせ願いたいと思うんです。
  53. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) まさに先生の御指摘のとおりでございまして、私ども設備処理量の具体的な決定に当たりまして、将来の需要見通し、輸出入の動向、構造改善効果等を総合的に勘案をして進めていく必要があるんではないかと思っております。特に需要見通しの策定というのがきわめて重要なことになるんではないかと思っておりまして、私ども産業構造審議会におきます業種別部会等の場でよくその議論を積み重ねまして的確な需要見通しをいたしまして、それを踏まえて具体的な処理量の決定を進めてまいりたいというふうに考えております。
  54. 吉田正雄

    吉田正雄君 そこで指示カルテル制度についてちょっとお尋ねをいたしたいと思うんですが、これは業界によってあるいはその業界に所属する労働団体等によって指示カルテル制度、特にアウトサイダー規制についての考え方というものはいろいろ分かれているように見受けられます。そこでアウトサイダーの面だけにしぼってお考えをお伺いいたしたいと思いますけれども衆議院の、これは業界の代表でなくて労働団体だけの立場でお聞きをするんですけれども、同盟の高橋さんの意見としては、アウトサイダー規制については法規制や官僚統制は排除をして、行政指導による円滑な運用を図るべきではないかということを意見として述べられておるわけですね。その基本的な考え方としては、私も先ほどちょっと原則的な今後の対応ということで申し上げたと思うんですけれども、高橋さんもこの保護主義的な構造を極力排し、自由主義貿易の原則にのっとり開放市場体制を維持することに重点を置き、あくまでも民間の積極的な自主努力基本としていくべきだということを、これからの構造改善計画に当たってはこれが大事だということをおっしゃって、アウトサイダーについても、これは俗に言う官僚統制と見られるようなことがあってはいけないんじゃないかということをおっしゃっておるわけなんですね。この点について、これは公取にもお聞きをいたしたいと思うんですが、私自身の考えはここでは申し述べませんが、アウトサイダー規制についてどのようにお考えになっておるのか、お尋ねいたします。
  55. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この法律は既存の法律の延長と新しい部分とあるわけでありますが、私が新しく展開する方向としてまず第一に指示をいたしましたものは、あくまでも民間の活力、そして、その前提としては民間の甘えの構図というものは絶対に許さない、そういうことのない法律にすることが基本的な下敷きといいますか、大前提であるぞということをまず作業を開始するに当たって命じました。それを貫いてまいりますと、当然そこに大任のアウトサイダーに対する行為というものがあってはならないという結論がすでにあるということになります。  しかし逆に、今度は民間の方々が自分たちで計画をおつくりになって、そしてこういう新しい方向に自分たちは進みたいんだという場合に、どうしてもその中で、その事業者の中で変わった人というか、変わった人の率いる事業といいますか、どうしてもおれはおれの道を行くんだから強制もされる必要もないし、話し合いにも応じないという人が出る可能性があるし、また過去にもそういう例もある。そうすると法律の中でそれをもし相補うことができるとすれば、考えてもみましたが、いろいろ、たとえばその業界に所属する九〇%以上のシェアの人々が賛成した計画についてはみんなこれ残りの人も賛成しなければならないとか、しかしそういうことを言っても、じゃ何%が適正なのか、そういうこと自体が第一、業界の話し合いのときに、多数争いというようなことになって、事業計画の活性化、提携、前進という姿勢とおよそ次元の違ったところでごたごたが起こるのではないかというようなことも考えて、最終的に私自身が考えたあげくに決断しましたものは、これはあるいは一部の業種についてバケツの底に穴があいていることになるのかもしれない、実態上ですね。しかしながらそれを超えて民間の甘えの構図を排するという前提は、逆に言うと民間の活力をみずから求めてくる人に、私どもはわずかの御援助を申しましょうという、しかも期限つきの法律でありますから、これに対して大臣の指示、勧告権というものはアウトサイダーに対して行使しない方がよろしいという決断を私の責任においていたしました。このことの善悪、批判についてはそれはそれなりに甘んじて私としては受ける用意がございます。
  56. 高橋元

    政府委員(高橋元君) たとえば昭和六年の重要産業統制法でございますとか、それから戦時中の統制立法でありますとアウトサイダー規制というのはあったわけでございますけれども、今回の法案また五十三年の現行法の制定のときにもアウトサイダー規制をやったらどうかという御議論があったことは、これは承知いたしておりますが、私ども考えで申し上げますと、企業の設備投資というのは、資源を将来と現在に分けるわけでございますから、一番各企業にとりましても、経済にとりましても、基本的に重要なことである、これは企業の自己責任でまさに判断すべきことであるというのが第一でございます。仮にアウトサイダー規制を取り入れて、自主的な努力をする際に、一般と違った動きをする人があるからそれを排除すべきだということになれば、どうしてもそこで行われますことは、何と申しますか、アウトサイダーについては一律的な取り扱いをしていくということにならざるを得ない。先ほどもお答え申し上げましたように、一律的な扱いから出てまいります活力の不十分さということが残ってくるんではあろうというふうに思います。五十三年の法制定の際にも、私どもはアウトサイダー規制をやるべきでないという意見を持ってまいったわけでございますが、今回の案では私どもの方に御協議がありました段階からすでにアウトサイダー規制についての事項は、いまも通産大臣からお答えがありましたように落ちていたわけでございまして、いずれにしてもアウトサイダー規制、アウトサイダーによる設備の新増設に関する勧告制度を設けることには問題があるというのが私ども考えであります。
  57. 吉田正雄

    吉田正雄君 いま通産大臣が決断をもって法上これは規制をしないということを明言をされたわけでありまして、私もその決断はすばらしい決断じゃないかと思っております。  ただ、中小企業等においては有力な企業がそういうアウトサイダーと見られるような状況、行為というものを行うということについて非常に影響を受ける面も出てくることは、これは否定できないと思うんですね。その際には、やはりあくまでも行政指導で通産省としてはおやりになるというふうに私大臣のお考えを受けとめたわけですが、その辺規制をすべきだという意見も一部にはあるんですね、これは。これも、同じ労働界の中でも全民労協の代表の皆さんの意見の中では、やはりアウトサイダーについては、まとまっての過剰設備処理を実効あらしめるためには、限局的な意味での規制は必要じゃないかというふうにお述べになっていますね。しかし、結論としては法規制はしないということでありますが、具体的な行政指導ではどのようなことをお考えになっているのか、また行政指導でどのような効果が上がるというふうにお考えになっておりますでしょうか。
  58. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 基本姿勢は、あくまでも業界が自発的におやりください、その中でまとまらなければ仕方がないじゃありませんかというのが表面の姿勢でございます。また法律でもございます。しかし特殊な業界にあっては、他の人々は零細であるのにある企業のみが、自分は勝手にやれるからあなたたちだけでおやりなさい、私は知らぬという態度をとる業界が予想されることも事実でありますから、その場合には、その残りの零細な人たちはかわいそうじゃないか、計画を作成して持ってあがれないじゃないかという現実が出てくると思うんです。その場合には、その業界の実態にもよります、あるいはその製造される物品の国民生活に与える影響もありますが、公取の方にそれがその業界における寡占度を高めるための行為の一つとして見て判断してもらえるかどうかも、これはこっそり相談もしてみたいと思いますが、いろんなそういう手だてはあると思いますが、まあ話し合いでございますから、通産大臣室に企業の社長なり責任者おいでください、どういう御計画でどういう御心境で、そしてほかの同業種は全部つぶれてもいいというようなエゴイズムでございますかと、そういうようなこと等を私が直接承ることがあり得ることは、これは法律違反ではないと私は思っております。いわゆる官僚統制というような考え方へいくものでなくて、官権の介入というよりむしろ日本産業全体を責任を持っている大臣の地位にある者が直接その企業の責任者に対して御意見を承りたい、それが強圧的な態度でないとするならば、そのこと自体が通産大臣に呼ばれて、自分たち会社のことについて業界の中における考え方を聞かれたということは相当な大きな影響が結果的にはあるだろう。かといって、それでも、何をぬかすかという態度であれば、これは何をかいわんやというのが現在提出した法律の前提になっておるわけでございます。
  59. 吉田正雄

    吉田正雄君 先ほど設備処理の問題で一点だけ聞き落としましたのでお尋ねをいたしますが、先ほどは消費者の利益という観点も忘れてはならぬということで申し上げたんですけれども、たとえば、地域にそういう指定産業がある、ところがその特定企業しかその地域にはないという場合、その設備廃棄というふうなことでそれが対象になってくると、いろんな基準はあるでしょうけれども、古いものからやるとかいろんなものがあると思うんですけれども、いずれにしてもその地域ではその企業しかないというときに、地域的なそういう配慮というものも当然加えられませんと、直ちにそこで失業の問題、地域経済への重大な影響ということが出てまいりますので、設備処理に当たって地域性というものも十分考慮をされるべきだと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  60. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) この法律の五十六条に「都道府県知事は、構造改善基本計画に従って行われる設備の処理、事業提携その他の措置が当該都道府県における地域経済に著しい悪影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認められるときは、主務大臣に対し、意見を申し出ることができる。」という規定があるわけでございますが、こういう規定が入っておる趣旨からいたしましても、地域経済に重大な影響を及ぼすような設備処理あるいは事業提携につきましては、実際の計画策定の段階におきまして十分配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  61. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に事業提携計画についてお尋ねをいたします。  最初に、通産省と公正取引委員会との協議制度についてであります。これは、この前もお尋ねしたとき、まあこれは実力者である山中通産大臣の意向によって公取がどうも後退をしたんじゃないかとか、いろんなことも言われたこともありましたけれども、そういうことでなくて、私は、事前に、あるいは基本計画策定の段階、あるいは計画が実行に移された後においても、私はやはり、この法案の趣旨というのは、あくまでも独禁法そのものの適用除外にはなっておりませんし、それから、独禁法自体というものが、まさに、先ほど来お話のありました、競争秩序の維持をやりながら企業の競争能力というものを確保していくという原点を踏まえておるというふうに思いますので、その面からも、事前に協議をする、そういうことにならないように、独禁法違反というふうな事態が出てこないようにという点での協議については、私は、これは一つの進歩した方式ではないかというふうに思っておるわけです。そこで、この第十二条の四項から九項まで、この事業提携計画についての通産、公取の協議制度についてるる述べてあるわけですが、私は、この協議に当たって、次の三点だけはやっぱり十分留意をしていくべきだろう、その上に立って協議を行うべきだと思っておるんですが、まず一つは、ただいま申し上げましたように、この競争秩序の維持と企業の競争能力の確保ということはきちっと踏まえていかなければならぬだろうと思いますし、二つ目は、この競争制限、国の市場介入というものと不況対策ということがごっちゃになったり混同されたりしていったんではぐあいが悪いんじゃないかということで、そこもきちっとけじめをつけていく必要があるんじゃないかということと、三つ目は、事業提携と独占禁止法との関係で、これも、あくまでも独禁法というものは現にあるわけでございますから、そういう点では、独禁法をあくまでも守るという立場に立ちながら、運用面とか解釈面で法に触れない範囲において円滑的な運用ということなら、これは話はわかるわけですから、そういう三つのものをきちんと踏まえた中で、私は、当然、協議が行われていかなければならないんじゃないかというふうに思うわけです。  そこで、企業間において合併等の企業集中を含めて事業提携を行うということは、それが市場支配力の形成につながらないという限りは、これはもう各企業が自主的に判断して行うということは、従来もあったわけですし、そのことを否定をすることにはならないというふうに思うわけです。つまり、事業提携をいかに進めるかはそれぞれの企業が自主的に判断するということが、現代の経済社会における基本原則だろうと思うんですね。問題は、そのことを通じて、それぞれの市場が形成をされるわけでありますけれども、この各種の企業の行う結合行為あるいは事業提携に対して、競争を維持をするということから独禁法というものが一定の枠というものを設けているわけでありますから、そういう点で、一定の産業について、企業合併等を含む事業提携について、主務大臣構造改善基本計画を定め、それを実現するために個々の事業提携計画の承認、それに対して優遇措置を講ずるということになりますと、その産業に対する市場形成、市場構造について国が計画をつくり、その実現を図るということになって、誘導とか行政指導という枠を超えて、国が市場構造について介入をしていくという、こういうことになったんではこれは困るわけなんですね。困ると思うんです。で、そういうことのないやはり協議制度、この法案の運用でなければいけないというふうに基本的に思うわけです。当初にこのことについてお考えをお聞きして個々具体的にお尋ねをしたいと思うんですが、いま私が述べたことについてはいかがでしょう。
  62. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は外から見ておりましたときに、独禁法を持つ公正取引委員会と通産省とは犬猿の間柄であるというふうに世間が見ておる、またそれらしき徴候もないではないという形で見ていたわけでありますが、私が責任者になりました以上は、私の望むところは、生きている経済と申しますか、現実の産業を所管している通産省というものと、それから公取委員長が使われました言葉で、交通整理とおっしゃったんですが、やはり産業活動に対するある意味の監督法規というものを持っている公取というものは、対立すべきものでなくて、むしろ理解し合って両立することが日本経済の真の発展に資するんだと、そういう気持ちでおりましたので、まず初めに、今回の新しい、延長にかかわらざる部分は、独禁法適用の除外としないという基本原則を踏まえ、すなわち独禁法の定めの範囲内で行うということがそこに出てくるわけでありますが、それからいま、高橋委員長の御答弁にもありましたごとく、公収に相談に来られたときには大臣の指示勧告権というのは入っていなかったと、初めから協議にも持っていっていないわけでありますから。これは独禁法の立場を配慮しながら、実際の、実態の産業の責任を負っている役所とそれを監督していく公正取引委員会というものがそこでうまく話し合いができると。決して私の力でもって公正取引委員会を押しまくったというふうなことでなくって、むしろ現行独禁法に深く携わっておりました私が大臣となったことによって、新しい評価さるべき一つの、今後みんながこういう方法でいけばいいんだなあ、産業政策目標も達成でき、独禁法の趣旨にも違反しないんだなあという一つのモデルをつくりたいという気持ちがありました。したがって、ただいまの御質問の中で、その点を評価するという言葉をいただきましたこと、私は大変うれしく思います。これはやはり今後こういう方向でよりよき前進への話し合いということが持たれることが、日本未来の発展に貢献するのではないかと考えております。  この間答弁いたしましたときも、今後は公正取引委員会委員長もこの席にぜひ一緒に呼んでいただいて御質問を願いたいということを私の方からお願いをしたぐらい、通産省だけが物を言っていたんじゃおかしいんで、独禁法の所管である公正取引委員会委員長が私と並んでともに答弁する、そしてそれが双方合意のもとの新しい産業政策のスキームというものができ上がったということを評価してもらうならば、今後私は日本の将来を、産業界を展望するに当たっていろいろな問題が起こってくるでありましょうが、このことが一つのよき前例と申しましょうか、一つの指標となって、そちらの方向で解決できるように努力していかれるように、新しいスキームを組んで、そしてこれが日本産業活性化に、将来全体の問題としても大きく一つのモデルになり得るということでつくり上げたつもりでございます。  その意味で、ともすれば産業政策と両立しにくいと言われていましたような独禁法というものを、やはり独禁法の趣旨というものを考えながら産業政策を運用していくということが、わが国の将来において必要である。すでに外国においては、たとえばアメリカなどにおいても、前世紀にできた法律でありますから百年以上の歴史を持つアメリカと、戦後、原始独禁法といって押しつけられた感じでつくったものから変転して、三回の改正を経て今回の日本の風土にほぼ適したと思われる内容の独禁法というものは、それなりによくよい意味で見直していかなければならぬ、私はそう思います。  ただ、私の意見は自民党の中では少数意見も少数意見山中一人じゃないかと言われるぐらいの少数意見であった経過はございます。しかし、私は確信を持って、未来へ進む日本産業は、アメリカに出た日本産業はよくそれを知っていると思います。アメリカ企業らしい企業で独禁法専門の弁護士を抱えていない企業があったら、それはもう業界の笑い物になる。したがって、アメリカの場合は、いろんな事業を新規に展開するにしても、日本産業等と合併等するにしても、すべて独禁法ということを念頭に置いてやっております。そのことがアメリカ産業を衰退せしめたかといえば、私はアメリカの百年を超える反トラスト法というものによってアメリカ産業が衰退していったという原因に数えることはどうしてもできません。やはり将来は日本産業も、いいとこ悪いとこありますが、少なくともアンチトラストという問題については、公正取引委員会といつでも話し合いのできる体制を持って、むしろ協力をしてもらって前進するということになっていく方が世界の大勢に日本が向かうべき道である。大変大上段な話をいたしましたが、法律としてはいままで例のなかったユニークな法律として受けとめていただきたいと考えます。
  63. 吉田正雄

    吉田正雄君 いま大臣が、あくまでもこれは独禁法というのは守っていくと、そういう枠内でまた運用の妙を発揮していきたいということもおっしゃったと思うんです。そこで、法制定時の大臣がずっとこれは在任をされていくということになればその心配もないと思うんですけれども、この前の質疑の際、大臣は、私が在任中は絶対大丈夫だと、私は独禁法というものを三年間ですか、もう独禁法制定にもかかわってきて熟知をしておるというふうなこともおっしゃっておりますので、その点私は、山中通産大臣在任中に、独禁法との競合問題だとか、あるいは違反の問題ということが起きてくる心配はいたしておりませんけれども、しかし法律というものは一たんできますと、関係者がそこからおいでにならなくなったときにひとり歩きするという心配がございますので、そういう点で以下幾つかお尋ねをいたします。  十二条四項では、主務大臣は第八条の二第一項の承認申請、すなわち事業者からの事業提携計画の承認申請を受理したとき、必要があると認めるときは、申請書の写しを公取委に送付するものとする、となっておるわけでありますけれども、その必要があると認める判断というのは何を基準にして行われるのかということが一つと、それから、少しでも問題があると思われる事業提携については、一方的な判断でなく、必ず公正取引委員会に送付をすべきだというふうに思いますが、この四項に関しての以上二点の質問、いかがでしょうか。
  64. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) その前に、十二条の一項を見てください。「主務大臣は、第五条第一項の規定による指示をしようとするときは、公正取引委員会の同意を得なければならない。」となっているんです。協議しなければならないじゃないです、同意を得なければならない。したがって、独禁法の範囲内と独禁当局が、公正取引委員会が認めたものが実現していくということが大前提でございますから、あとの手続の問題等はまず主務大臣として、独禁法にこの内容ではとても公取へ協議に持っていけない内容であるからやり直せとか、そういうことなどはもう現にやっておりますから、そして私の在任中はと言いましたけれども、この手を挙げる期間が一年半ですからね、大体一年ぐらい手を挙げないで残りの、私がいなくなってからかもしれない、いなくなるかもしれない半年後、一年後をねらって独禁法違反の提携その他の計画をつくって出そうと、そういうふうな業界は余りないんじゃないかと思っていますから、その点は御心配のないようにお願いします。
  65. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) いま大臣が第十二条一項でお触れになりましたのは、これは設備処理に関する指示の同意ということでございますが、御質問の第四項のところの「必要があると認めるときは」でございますが、われわれといたしましては、実は当初の案の作成の段階では、すべての案件を公正取引委員会に送付をいたしまして、意見交換をした後、独禁法の観点から見て問題があるかないかということをやるというスキームを考えたらどうかというのも、一応案としては検討したわけでございます。ただ、政府案を作成している過程で、いわゆる税制上の特別措置だけを受けることを目的としたものであって、そもそも独禁法上は全く問題がないというような案件までも公正取引委員会に送付をすることはいかがかなということもございまして、したがいまして独禁法上問題となる可能性のある案件を送付をいたしまして意見交換をすれば必要にして十分ではないだろうかというふうに考えたわけでございまして、そういう意味で、必要に応じという文言になっておるわけでございます。    〔理事降矢敬義君退席、委員長着席〕 その必要に応じというのは、もちろん主務大臣が判断をするわけでございますけれども、後で独禁法上問題になるようなことになっては困るわけでございますから、私どもが具体的に判断をする過程で、独禁法上これは問題がありそうだ、独禁法とのかかわりがありそうだというような案件につきましては、すべて十分事前に御相談をするということでございますので、実際上、独禁法上その後問題が出てくるというようなことにはならないというふうに考えておるわけでございます。
  66. 吉田正雄

    吉田正雄君 公正取引委員会としては、いまの第四項にかかわりまして、事前に仮に通知がなかったと。しかし、主務大臣が承認した後に独禁法上その事業提携に問題が生じたということでは、せっかくの協議制度が生かされないことになるわけです。公正取引委員会として当然通知があるべきだ、あるいは事前協議があるべきだと思われる内容といいますか、こういうものは当然やっていただきたいというふうな、そういうものをどのようにお考えになっておりますでしょうか。
  67. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 産政局長から先ほどお答えがありましたように、たとえば全くその事業の、何と申しますか、税制の適用だけで、つまり活性化投資のために必要な事業の承認であるというようなものを除きまして、事業の譲渡なり、合併なり、その他の提携関係が具体的にあるような場合には、通産省からもお答えになりましたように、御協議があるようでございます。私どももそういうふうにぜひお願いをしたいというふうに思いますのと、もう一つは、こういう活性化のための事業提携でございますから、非常に各業界ないし企業としても急がれる場合が多いであろうかと思います。そういう意味で、前広にスムーズに協議が行われ、調整が進められることを期待しておるわけでございます。
  68. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、第六項では、公正取引委員会は、通知のあった通産大臣の承認しようとする事業の提携計画について、通産大臣に必要な意見を述べるものとすることになっておりますが、公正取引委員会意見というものについては、あくまでも独禁法との照合結果に基づいて厳正になされるべきだと思うんですが、この点はいかがですか。
  69. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほどその三つの基本的な前提というのをお示しございました。私の理解しておりますところでは、一つは競争の重要性、つまり競争能力なり競争の秩序なりを保っていくべきだということ。二つ目は、競争制限ないし市場介入と市場対策との間で混同をしないでけじめをはっきりすべきだということ。三つ目は、事業提携と独禁法の関係につきましては、独禁法の基本的な趣旨を動かすべきでなくて、それが法律上許される範囲での運用であるべきだというお示しだったというふうに思います。私はそのように考えておりますし、その六項に基づきます公正取引委員会意見も、さような独禁法の基本的な精神の中で判断して行われるべきだというふうに承知しておる次第でございます。
  70. 吉田正雄

    吉田正雄君 通産大臣にお聞きいたしますが、これ、まあ事務当局でもいいんですけれども、いまの六項に関して、公正取引委員会から事業提携計画に、仮に問題があるというふうな指摘がされた場合ですね、今度は事業者から出されてきた事業計画ですね、それを変更するようにという指示を、指示というか、行政指導というか、そういうものを事業者に対して行うというふうなことが当然なされると思うんです。もしその指示に必ずしも従わないという場合には、当然それは承認されないということになると思うんですが、その点いかがですか。
  71. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生指摘のとおりでございまして、私どもは公取の方から出てくる意見で、独禁法違反となるかどうか、違反であるという場合には、じゃ違反にならないためにはどういうふうに計画を変更すればいいのかということでまた意見交換をいたしまして、その旨を業界にも伝えまして、業界がそれに従って計画を変更してくるということでございましたら承認ということになるわけでございますが、変更できないということでございましたらそれは承認しないということになるわけでございます。
  72. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に第七項ですが、事業提携計画は承認をされたけれどもその後の行為につき、独禁法違反と思われる事実が出たとき、公正取引委員会は、主務大臣にその旨通知することになっておりますけれども、それは単にそういう事実の指摘だけなのか、さらに意見も付してやるということになるのか、本来であれば、この段階でも独禁法上の排除措置といいますか、公取委員会が適当な措置をとることもできると、そのことも排除はしてないというふうに法文上は当然理解をされると思うんですけれども、この点について公取委員会としてはどのようにお考えになっておりますか。
  73. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはいま御解釈のとおりでございまして、計画の承認が実行に移された結果、その途中で公正取引委員会が独禁法上の立場から見て寡占とか、あるいは価格の上方硬直とか、あるいは使用者、ユーザー、消費者に対して打撃を与えておるというようなことを判断された場合には、連絡がありますれば、当然その連絡に従って直させる、私どもの方でも行政的に直させる、承認した計画であってもですね。それが直らないときには、独禁法は排除しておりませんから、計画に基づいてやられているものであっても独禁法そのものが働くということで、独禁法を何ら制約していないということであります。
  74. 高橋元

    政府委員(高橋元君) たとえば計画を承認をしましたときに、輸入が相当ありました。外国と国産品との競争があるものですから、競争制限的でないという認識のもとに承認をした場合、代替品があるとして、代替品があるために競争制限の程度が著しくないという認定をいたした場合、それから事業者が相当複数あるという認識でありました場合に、事業者が仕事をやめてしまったというような場合には、承認後の事情の変化によって、事業提携計画に基づく各企業の行為というものの独禁法違反が起こってまいります。その場合に私どもの方は、主務大臣に対して、承認後の経済的事情の変化に即して事業提携計画そのものをまた見直していただくようにお願いをするわけでございまして、先ほどお尋ねがありましたような趣旨でこの規定を運用していくことでございますし、またそれに当たりましては、通商産業省との間につきましては、いま大臣から御答弁があったとおり進むものというふうに思っておるわけでございます。
  75. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、第九項でありますけれども、いま大臣が御答弁になりましたから、これはあえてお聞きしなくてもいいと思うんですが、第七項による公取委の通知を通産大臣が受けた場合に、第八条の三第二項に規定する措置、つまり事業提携計画の変更指示あるいは取り消しの措置をするものとするということになっておるわけでありますが、これについては、いま大臣は、そういうことが出たらこれは当然指導もするが、従わなければこれはもう当然取り消すと。あるいは独禁法の適用は排除になっていないから、これは当然その段階で独禁法の適用もあるだろうというふうにおっしゃったんですが、これは当然私は厳正に対処されるべきだと思うんですが、この点いかがですか。
  76. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、先ほど公正取引委員長もおっしゃいましたように、輸入量の減少であるとか、あるいは競争者が廃業したとか、あるいは代替品の代替程度が変化をしたとかといったような経済事情の変化によりまして新しい事態が生じまして、しかも公正取引委員会と十分意見交換をして、その結果としてやはり何らかの変更が必要であるということになりますと、当然八条の三の二項が適用になるわけでございまして、事業提携計画の変更を指示し、またはその承認を取り消すというのが主務大臣の行為として行われるわけでございます。
  77. 吉田正雄

    吉田正雄君 この点については、もう一点だけ通産大臣と、それから特に独禁法というのは公正取引委員会の主管の法律であるわけですから、そういう点では公正取引委員会の御見解もお聞かせ願いたいと思うんですが、この事業提携について、今度の新しい法案ですね、この産構法は、協議制度はあくまでも独禁法上、事前にも事後にも違反が生じないように配慮したものであって、公正取引委員会法律で言うところの同意権とかを認めた制度ではないんじゃないかと、厳密な意味での法制上は。それから、あるいはまた公正取引委員会と主務大臣との相互の協議権、法律上言う協議権というものを認めたものでもないと。したがって公正取引委員会が最終的には自主的判断で違反行為に対応はできるんだと。これは先ほどの答弁でもはっきりしていると思うんですけれども、こういうふうに当然理解できると思うんですが、そういうことでよろしゅうございますか。
  78. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 事業提携計画につきましては、先ほど来、通商産業省からお答えのありますように、独占禁止法の適用は排除されておりませんので、したがいまして同意とか協議とかいう形ではないわけでございます。あくまで事実上、いままで日本を引っ張ってきた基礎素材産業というものの不況をどうやって解決していけば日本経済の将来が開けるかという観点から、産業政策と私どもの方の競争政策の調整を図りますためのスキームでございますから、そこは行政上の意思の円滑を図るということに御理解をいただきたいというふうに思いますが、法的に申しますれば、事業提携計画につきましては、独占禁止法の規定が生きておるということでございます。したがいまして、お尋ねのございますように、これは同意権であるとか、協議権であるとかいうふうに理解すべきでないというのは、お尋ねのとおりであると理解しております。
  79. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ─────・─────    午後一時三十三分開会
  80. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を再会いたします。  特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 吉田正雄

    吉田正雄君 午前中の質疑で独禁法との関係についていろいろお尋ねをいたしましたが、引き続いて産業政策と競争政策という面でお尋ねをいたします。  通産大臣が定めたこの構造改善基本計画に従って個々の事業提携が行われた場合、一定の取引分野における競争の実質的な制限にそれがつながらなくても、業界全体として集約化のための合意が形成をされ、それが具体化されて市場構造が変質をしてくるという場合が当然考えられるわけです。  そこで、公正取引委員会お尋ねをいたしますけれども、この現行合併審査基準はどうなっておるのか、それから同調的値上げの理由報告徴収の市場構造要件というものがどうなっておるのかお尋ねをいたします。
  82. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 年間千件を超す合併がございまして、合併の場合には公正取引委員会に届け出をするわけでございます。したがいまして、その合併を一カ月以内に審査をするという場合の審査の簡便に資しますために、昭和五十五年に「会社の合併等の審査に関する事務処理基準」という、これは事務局長の通達でございますが、つくりまして、企業の方々の便宜に資しておるということでございますが、その内容をかいつまんで申し上げますと、五十億円未満の資産を持った会社の合併は、これはもう簡易の手続でよろしいということにいたしまして、それを超えます場合に、合併後またはいずれか一社が二五%以上である場合、またはトップの企業で一五%以上のシェアを持っている場合、またはトップと二、三位の格差が非常に大きい場合、その他の場合を決めましてそれらの基準に該当する場合には重点審査をするということにしておるわけであります。重点審査の中身は、水平合併の場合にはただいま申し上げた合併後の会社のシェア――市場占拠率でございます。それから市場における競争の状況、たとえば当該市場の競争の状況、それから関連市場の競争の状況、それから合併する会社の総合的な事業能力、当該市場の性格及び環境、こういう点を勘案いたしまして総合的に判断をしていくというのが現在の合併基準でございます。  したがいまして、よく誤解があるわけでございますが、二五%を超えましたシェアを持つ合併であるからというそれだけでだめということではございませんで、往々にして破産といいますか、非常に経理状態の悪い会社を存続させるための合併、いわゆるフェーリソグ要件と言っておりますが、そういう場合には合併を二五%超えたものについても認めておるという例がございます。  それからもう一つお尋ねの同調的引き上げでございますが、同調的引き上げの場合には、通常言っております市場とやや定義は異にしますが、一定の、上から三社で七〇%を超えるシェアを持っておる場合、かつ供給総額が三百億円を超えている場合という場合に同調的引き上げの報告を徴収をするということになっておるわけでございます。
  83. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの御答弁の中で合併審査基準では、合併後一社二五%というシェアが一定の基準になっておるけれども、それだけでということにはならないと、業績不振等、そういうこともお述べになったようですけれども、しかし、その合併によって寡占的な市場構造ということになった場合、果たしてその事業提携について認められるのかどうなのか、じゃ一体その事業不振というときにどこまでいったらいいのかという、こういう問題がまた出てくるんじゃないかと思いますが、その辺はどのようにお考えになっておりますか。
  84. 高橋元

    政府委員(高橋元君) いまの例として、フェーリングの場合、つまり破産寸前の会社が合併される場合には、シェアに必ずしもこだわらない例があると申し上げましたのは、そういう企業は実際上市場において余り大きな力を持っていないわけでございます。したがいまして、市場支配的な力が形成される危険性が非常に薄いということで、フエーリングの合併につきましては、これは日本だけではなくて、かなり厳格な合併規制をやっておりますアメリカでもそういう合併を認めておるということでございますが、ただいまお尋ねのございますように、二五%のシェアにこだわらないとしても、高度に寡占的な状態をつくり出すことになるような合併につきましては、現在の合併基準では総合的に判断をした場合のケース・バイ・ケースの問題でございますけれども、容認されないというのが原則であろうというふうに思います。
  85. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは通産省に次にお尋ねしますけれども、いまお聞きをいたしました合併審査基準について、公取としての一定の基準、判断というものがいま示されたと思いますけれども、事前の事業提携計画承認の段階、あるいはまた承認後の行為等において、いま申し上げたような点について、通産省としてももちろん公取との間の協議等もあるかと思いますが、示された判断についてはやはり厳正に守っていくべきだと思うんですが、その点はいかがですか。
  86. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはもう原則をいま公取の委員長が述べられたとおり、私たちも何ら異存はございません。でありますから、具体的に、ある業種において当初三つのグループに編成したいというところがありまして、最初にまとまったところをAグループとしますと、そこのところが、私たちはこのようにまとまったので、公正取引委員会にもごあいさつがてら御報告に伺いたいということがありました、実際上。しかし、私は、ただいま申された事務局長通達の二五%の問題は別として、これは若干の弾力性ありますが、しかし、同調値上げ等の三者七〇%、あるいは寡占体制の七五%等の法定事項があります。したがって、それらの問題について、あなたたちの構想ではいま公取に行かれない方がよろしいと、私の方でやりますから待っておってくれと言ったんですが、聞かずにひょこひょこ行かれて、結果はそのままじゃ無理だという感触を得て、結局A、B、CグループがA、B、C、Dグループという組みかえというものが行われて、いま私どものところに上がってきておるわけでございますが、それが一つの例で示しますように、私自身を含めて事務当局も独禁法の定めている、法律に法定されたもの並びに基準としている物差し等についての配慮は、事前に十分にそれを周知かつまた指導をしつつ、公取に無用の御心配を煩わさないような配慮をして持っていって、そして専門的な立場から見ていただくということで、そういう態度を現実にとっておりますので、ただいまお述べになったことを私たちは十分念頭に置いてやっておるという証明を申し上げたわけでございます。
  87. 吉田正雄

    吉田正雄君 いままでの通産大臣あるいは公取委員長のお話を聞いて、独禁法との関係は心配ないというふうに思われます。  そこでもうちょっとお尋ねをいたしますが、通産と公取との間に覚書というものが取り交わされておるわけですね。私も全部もらっておりませんからわかりませんけれども、まあ「特定産業における合併等事業提携の審査に関する基準の骨子」というような、この前ちょっとお聞きをしたわけですけれども、もし、現行独禁法上の枠内でやっていくということと、それから事前の協議、あるいはまあ事後でもそうですが、協議制というものがうまく運用されてきちっとしていくというふうになれば、あえて覚書というふうなものは取り交わす必要もないんじゃないかという感じがいたしますけれども、覚書を取り交わさなければならなかったような背景なり事情というものがおありだったのかどうなのか、それは双方からお聞きをしたいと思うんです。
  88. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生指摘の覚書でございますが、二月十四日付で私どもの事務次官の杉山と、それから公正取引委員会事務局長妹尾さんとの間で覚書が締結をされております。内容は二つの点でございまして、第一は新法の運用及びそれに伴う独禁法に基づく権限の行使に当たっては、相互に連絡を密にし協調して行うこととし、本法及び独禁法の適正かつ円滑な運用を推進していくこととするというのが、第一の内容の骨子でございます。  それから第二でございますが、本法の対象となる基礎素材産業につきましては、企業経営が著しく不安定となっているわけでございますし、また、輸入品とか代替品との激しい競争にさらされているといったような特殊の事情もあることにかんがみまして、これら産業にかかわる合併等事業提携にかかわる独禁法の運用の方針について公正取引委員会が審査基準をつくられまして、本法成立後直ちにこれを公表するという趣旨が覚書の内容になっておるわけでございます。  したがいまして、特段何か秘密的なことを言ってるわけではございませんで、むしろ立法過程において実現いたしました公正取引委員会と主務省でございます通産大臣との間の相互理解に基づきます具体的な折衝の精神をこの本法の運用に当たりましても尊重し、かつそれを実行してまいりたいというのが一の趣旨でございますし、それから二の趣旨は、合併の判断基準につきまして公正取引委員会が本法が施行された後できるだけ速やかにそれが公表されるということを約束したということでございますので、特に目新しい内容にはなってないわけでございます。
  89. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 内容はいま通産省からお話のあったとおりでございます。  それで、そのバックグラウンドについて、何か特別のことがあったのかというお尋ねでございますが、第一項目は、御審議をいただいております法案の中の十二条の四項から九項までという相互調整のスキームをつくりましたにつきまして、その運用をなお一層密接な連絡をとりながら進めていきたいという、運用上の問題を、精神、基本趣旨をそこに盛りたというのが第一項でございますし、第二点は、実は私どもは先ほど申し上げました五十五年の合併審査基準以外に、小売業の合併の審査基準というのを五十六年につくっております。これはデパート、スーパー等ローカルな市場を持っております、そういうものの合併については特別の審査基準を出しておるわけでございますが、特定産業につきましても、まあいま小長局長からお話のあったような特別の事情が、幾つかの特殊な事情がございますし、また、合併提携等によって再生を図られる場合に、どういう場合の合併事業提携が認められるかということを事前にお示しをしておきました方が、自後の方針をお立てになるにも便利であろうということで、進んで私どもの方はそういう特定産業についての合併審査基準をつくりたいという気持ちを持っておりました。たまたま調整中の法案の要綱の中で、法案が成立した暁にそういう合併審査基準をつくって公表すること、という一項目がございましたが、そういうふうに運用上当委員会の方で法案の成立を見た暁には合併基準を出すというならば、その法案の要綱に盛られて当時おりました合併基準の公表の規定は要らないなということを両方で意見が一致いたしまして、その点を覚書に盛り込んだというのがその背景でございます。
  90. 吉田正雄

    吉田正雄君 合併等の事業提携のところで、「合併等」ですが、これは私も骨子しかわかりませんでしてね「詳しいところがわかりません。したがってお尋ねをするんですが、この「合併等」に当たって、「特定産業に属する事業を行う会社の合併等の審査については、特定産業の実態にかんがみ、一般的基準によるほか、次によるものとする。」ということで、「特に考慮する事項」であるとか、それから「市場占拠率との関係」、あるいは二としては「合併等以外の事業提携」、こういうふうなのがあるわけですけれども、ここで言ってる「一般的基準」というのは何を指してるんですか、これ。
  91. 高橋元

    政府委員(高橋元君) これは、小売業は今回特定産業じゃございませんので、五十五年の合併ガイドラインのことを指しております。
  92. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、「合併等以外の事業提携」でありますけれども、この内容、まあ「骨子」を見ますと非常に抽象的な表現であって、わかりづらいわけですけれども、これはあれですか、さらに合併よりも緩い取り扱いにしていこうというふうなことなんでしょうか。具体的にはどんなことをお考えになっているのか。
  93. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 通産省からもお答えあると思いますが、実は事業提携と申しますのは、御審議いただいております法律にありますように、「生産、販売、購入、保管若しくは運送の共同化、生産品種の専門化」というものも含めまして、合併とそれから営業の譲り受けというハードな、まあいわばかたい結合とやわらかい結合の二つを含んでおるわけであります。  「合併等」と書きましたのは、かたい結合でございますところの合併と事業の譲り受けを規制しておるわけでございますし、それ以外の比較的やわらかい結合につきましては一時的な関係であるとか、部分的な結合でございますとか、そういうことで、それぞれの結合の程度に応じて市場支配的な地位に関する判断もそれぞれケース・バイ・ケースにやっていくという趣旨で「合併等以外の事業提携」という項目を別に立てたということでございますから、それぞれ結合しますその結合のやり方に応じて考えていきたいというのが二項を立てた趣旨でございます。
  94. 吉田正雄

    吉田正雄君 先ほど通産省の方からも、詳細はこの法案が制定された後、さらに詳しい内容について、業者の合意の内容を詳しくしたものを出すんだというふうなこともちょっとおっしゃっておるわけですけれども、特定産業向けに詳しいガイドラインと言ったらいいんですか、そういうものをいつごろまでに作成をされる予定になっていますか。
  95. 高橋元

    政府委員(高橋元君) これは法案の成立を待っていたしたいというふうに考えております。
  96. 吉田正雄

    吉田正雄君 法案の制定を待ってということなんですけれども、もう現にいろいろな動きというものが出ておると思うんですよね。したがって、たとえば半月以内とか、一週間以内とか、あるいは一カ月以内とか、おおよそのめどというものがあるんじゃないかと思うんですけれども、もう少しそこのところ、ガイドラインの想定をされる内容と時期、こういうものについてお聞かせ願いたいと思います。
  97. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 骨子につきましては、まあ恐らく資料としてごらんいただいておると思いますが、「特定産業における合併等事業提携の審査に関する基準の骨子」という形で、これはたしか通商産業省の杉山次官が新聞にこういう話をしておられます。それによって骨子はもうすでに関係の方で承知の方も多いと思うわけでありますが、それをさらに私どもの方の委員会が了承を得て事務局長通達の形にいたします際には、もう少し条文的な表現になるわけです。ここに書いてあります事柄がもうちょっと法律的な表現に直ってくるというふうに御承知いただいてよろしいと思いますし、そういう趣旨で私は法案の成立後、これを世の心に決めて出したいと申し上げているわけでございます。私ども政府でございますから、法律の成立を見ます前に行政上の基準を出すということについては差し控えればならぬということも考慮の中にあるわけでございます。
  98. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、共販会社のことについてお尋ねいたします。  確かに企業というのはそれぞれ企業秘密とかいろんなものを持っておりますから、合併は困難だと、やりたくないと。しかし、共販会社を設立して販売窓口を一本にするということによって、実質的なシェアの拡大とか、あるいは販売価格の統一性といいますか、そういうものを考えていくという事態も出てくるんじゃないかと思うんですね。私どもが一番心配いたしますのは、共販会社をつくることによってコストがダウンしないで、むしろ上がっていくんじゃないかという心配ですね、これが一つあるわけです。あるいは共販会社同士での話し合い、いわゆるやみカルテル、こういうことが行われる心配というものも否定できないんじゃないかと思うんですね。これは昨年からことしにかけて報道されたんですけれども、たとえば塩ビ業界において、共販で危機打開ということはいいんですけれども、そうでなくて、まさに価格の引き上げということが行われたという、こういう事実は御存じだと思いますけれども、これについてはどのようにお考えになっていますか。
  99. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 塩ビでございますけれども、昨年、十七会社を四グループにいたしまして、それぞれのグループごとに塩ビの共販会社の設立をするということで、これは事業の譲り受けの許可ということで私どもの方で承認をいたしたわけでございます。その際に、御懸念のように、十七あります会社がそれぞれ競争して定まっております価格が、四つになったために価格が上がるということになりますとそれは問題であるということで、グループ間の協調的行動をやらない、そういうふうにグループ化したからといって製品の輸入を妨害するような行為はやらない、交錯輸送を解消して流通経費の低減を図る、また、その実施状況については定期的に私どもの方の委員会に報告してもらって、独禁法上の問題が生じないように事前に予防するというような、そういう条件を付して承認をしたわけであります。したがいまして、いろいろ新聞に書かれたこともあったわけでございますけれども、こういう共販会社を通じてカルテル的な価格の引き上げというものは起こっておらないというふうに私ども考えております。
  100. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは委員長、価格の引き上げ的なものは起こってないんじゃないかというふうな答弁だったと思いますけれども、私はこれは公正取引委員会としてもう少し厳正に対処する必要があるんじゃないかと思うわけです。実際は昨年の秋、値上げが行われているわけでしょう。これは行われておりますよね。しかもその際、その値上げを認めなければこれは出荷はしないという、どこまで露骨に言ったかは別にしまして、そういう圧力というものもかかっておるということを聞いているわけですよ。これはそういう点で、公取がこれを認めた、しかし認めた後の状況というのは必ずしもそうなっていないじゃないか。先ほどるるお聞きいたしましたように、まさにやみカルテルの形成である、あるいは同調的値上げだということははっきりしているんじゃないかと思うんですよね。その辺、事実をよく調べられたんですか。
  101. 佐藤徳太郎

    政府委員佐藤徳太郎君) 昨年の秋、先生お話しのような状況についての記事が新聞等で出ましたわけでございます。それで私どもは、塩ビの共販につきまして、先ほど委員長が御答弁いたしましたような条件を付しまして御認可をしているところでございますので、早速、新聞の記事等にこういうことが出ているけれどもどうであるかということで、共販対象会社及びその主な取引先まで含めまして、一般的な事情についてお話を承ったわけでございますが、お話しのように少しおくれてでございますが価格の引き上げがございましたんですが、カルテル的な行為による価格の引き上げとは認められなかったわけでございます。しかしながら、誤解を招くことのないようにということで十分注意をしており、その後も監視を続けておる次第でございます。
  102. 吉田正雄

    吉田正雄君 一応公取が十分調査をされてそういう結論を出されたということですから、それはまあそれといたしまして、しかし、そういう疑いの目といいますか、疑惑を完全に否定し去るということでも私は実態はないと思うんですよね。そういう点で私は同調的値上げというものが競争制限にやっぱりなるんじゃないかというふうに思いますので、そういう事実が明確になった場合は、先ほどの論議を通じても明らかなように、これは当然そういうものについては取り消すということでなければいけないし、また、そういう厳正な姿勢がなければ、一たん承認を取りつけてしまえばあとは少しぐらい独禁法違反のようなことをやっても、またすれすれなことをやっても何とか言いくるめられるんじゃないかという、非常に安易な経営というものがそこに出てくるんじゃないか。結局泣くのはユーザーであり一般消費者なんでして、そういう点では私は公取として厳正にやはり今後監視もし、対処をしていく必要もあるというふうに思うんですが、この点いかがですか。
  103. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほどちょっと御答弁の中で落としましたんですが、塩ビの共販の場合でも定期的に報告をいただいておるんですが、定期的な報告その他によりまして経済事情の変化によって独禁法上の問題が生じた場合、その場合には是正のための指導に従うと、こういう条件であります。合併にいたしましても事業の譲り受けにいたしましても、契約そのものによって永続的な効果が生ずるわけでございますから、競争制限的にならないように事前に十分指導はいたすわけであります。また、認定に当たっては慎重を期するわけでありますが、その後の状況の変化により、またはその当事者の行動によって競争制限的になった場合には共販体制の見直しに応ずると、こういう約束をとって共販の設立を認めておるわけでございまして、その点は今後とも御懸念のないように、ただいま御指摘いただいたような問題が起こりませんように十二分に気をつけてまいりたいというふうに考えます。
  104. 吉田正雄

    吉田正雄君 通産にお尋ねをいたしますけれども、これは一例として、塩ビ業界にとってはいろいろ例を挙げられたことが大変迷惑かどうかわかりませんが、しかし、こういうことが報道されているということは火のないところに煙は立たぬということでして、やっぱり疑惑ということは否定し去ることはできないと思うんです。  そこで、今後の合併等に当たって言われるような不当な値上げとかあるいは一斉値上げ、こういう状況が出てきたときには、これはやはり通産当局として、主務官庁として厳正な態度で臨むべきではないかと。もちろん、場合によっては事業計画の内容の変更を命ずるとかあるいは悪質な場合には当然これは承認を取り消すというふうなことになろうかと思うんですけれども、今後の通産当局のそういう姿勢についてお伺いして、きょうは時間がまいりましたから質問をこれで終わります。
  105. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) ただいま先生指摘のようにこの第十二条第九項の規定にございますように、私どもは事業提携計画が適切なものでなくなったという場合には、事業提携計画の変更とか取り消しを命ずるという形で厳正に対処してまいりたいと考えております。
  106. 田代富士男

    田代富士男君 最初に山中通産大臣お尋ねをしたいと思いますが、去る四月の十六日中曽根総理から指示のありました対日産業政策批判に対する対策としての反論を発表されたことについてお尋ねしたいと思いますが、対日批判産業政策に及んだ背景なりまた理由についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、また、このことをどう受けとめていらっしゃるのか、発表された内容を知った上でこのことをあえてお尋ねいたします。
  107. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これ実は厄介なんでして、アメリカ政府が言っているのか、議会のだれかが私と会ったときに言ったこともあれば、あるいはアメリカで言ったこともある。政府なのか産業界なのか、議会なのか、もう一つ相手にして物を言う場合に定まっていないんですが、しかし至るところでその産業政策批判が展開される。ひどいのでは半導体メーカーのモトローラという会社などはワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズに十五回の意見広告、自分の見解日本政策産業保護政策の上に乗っかってきたんだという、そういうのを連載しているわけですね。一方ECの関係では、ガットに提訴した何項目かの中に日本産業政策というものに対して触れている点がある。このままほうっておきますと、アメリカとECともに両方、ECとの間にもアメリカは問題があるんですが、日本政策は国がめんどうを見て育てて、ある日突然怪物が踊り出してきて、われわれの市場に殴り込んできて失業を生じさせる、そういうようなふうに小が大になってはいけない。またそれは事実誤認あるいは牽強付会あるいは遠い昭和三十年代の初めごろの時期にはそういうことらしきこともやっていたというようなことなども全部引っくるめて、いかにも日本産業はいまでも輸出補助金をもらってわれわれを苦しめるんだと言わんばかりのこと等の現象がいろいろあるものですから、そこでモトローラ社というのは半導体メーカーですから、民間のやっていることであるけれどもアメリカの常識では、ある新聞にあるものを指さして意見広告が出た場合に、指さされたものは必ずその新聞紙上で、同じスペースぐらいらしいですが、そうではないならないという反論をするのが常識らしいんですが、日本は十五回ぶったたいても何にも言わぬわけですね。そこでこれもじゃ日本は認めたなとか弁解できないんだなとか、事実そのとおりなんだなというふうに新聞を読む読者の国民の立場でまた見られても、これまたすそ野の広がりということになりますから、そこでこっちの方は経団連あたりにお願いを直接いたしましたが、反論を同じ新聞に、同じ回数は必要ありませんが、同じスペースぐらいでお願いしたい、いわゆる日本産業政策というものはそれらのアンフェアな、しかも外国に隠れて国が補助金と等しいようなめんどうを見てやっているんだというようなことは誤解であると。ついでにアメリカからヨーロッパから、それぞれの国でもこういうことをおやりになっていらっしゃるでしょうと、これはあなたたちのやっていらっしゃることをそのままお示しするだけであって、事実だけです、その事実に比べて日本のとっている政策はもっと手薄なものですというようなことなどを添えまして、一応政府としても何らかの、あるいは政府段階でもどのレベルかという問題がありますが、外務省もありましょうが、実際上は実務の関係で通産省であろうというようなことで、二週間ほど文章その他は準備しておったんですが、その表現の仕方、それから基本的な特定の国を相手にするかしないかも含めて、スタンスを、どんなスタンスで出ていくかという、物を申し上げるかというそういうことをやっておりまして、総理が土曜日、私どもの現在ここにおります小長局長を呼ばれまして、相当長時間耳を傾けていただいて、通産大臣の方にひとつなるべく早くこれはやった方がよろしいという指示がございました。そこで私も早くという総理の指示、しかもなるべく日本の姿勢を明らかに示すものでなければならぬというその指示、それを踏まえて、なおかつ通産省は個々の問題についてのUSTRとのトラブルとかあるいは先般のオートバイみたいな問題等、種々雑多な問題に直面いたしておりますので、アメリカ政府日本を理解してくれる立場の人々も中にはおられるわけでありますから、それらの人々にひいきの引き倒しになる、日本側はおまえさんたちが味方していることでほいほいじゃないかという、味方をしてくれるというか、理解者をかえって苦しめるようなこともしてはいけないということでいろいろなことを並べ立てましたけれども、時期についてはいま総理のそろそろそういう時期ではないかという御指示、内容についてはいま申しましたようなことの比較も含めて、日本はそのようなことをやっていない、フェアにやっておるんだということと、第三点は特定の国を相手にし、特定の物資を挙げて論争を挑もうということではない、いわゆる通産大臣の抗議声明とかいうものでもない。でありますから、世界に向かって日本は公正な貿易を産業政策として行った上でやっておるんですということをまず知ってもらおうということでやりまして、あと各種の方法がいろいろありますけれども、いろんな手段を考えておりますが、そういうものも引き続いてやっていきたいと、またこれに対して日本通産大臣談話に対する反響というものが全くないはずはありませんので、これがどういうことになるのかも見きわめて必要ならば次の行動に移りたいと思っております。
  108. 田代富士男

    田代富士男君 いま重ねてお聞きいたしましたけれども、反論の内容というものは妥当なものであると私も理解をいたします。しかし、いまも通産大臣申されましたとおりに、特定国への名指しを避けられて、これはどこへ物申していいかわからないということもわからないわけじゃありませんけれども、避けられておる。これは外交上のこともあって当然そういうことをおやりになったかと思いますけれども、また通産大臣の声明というわけにもいかないという何となく歯切れの悪いそういうことでございまして、内容の徹底という問題からするならば、これは問題が残るんではないかと思うんです。そういう立場から、今度は各国に具体的にどのように理解を求めていくかというここらあたりも大事じゃないかと思うんです。この点どうでしょうか。
  109. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) おっしゃるとおりで、ここらの文章そのものは一見日本がいままで至るところで述べてきたことと変わりはない、それの集大成ということでありますから、あるいは逆に日本側というのはこれほど言ってもまだわからないのかというそういうふうにとる者もおるかもしれません。しかし、中には自分が日本産業政策について誤った自分の国の意見による行動について、それを解決の方向で理解させようと努めておられる当事者もありますと、これは私は個々に接触しているわけでありますから、それらの人たちを当惑させることもできないということでこういうことにしたんですが、近くベルギーでまた日、米、カナダ、ECを中心として貿易相会議がございます。これ連休に入ってすぐでございますが、それからIEA、OECDの会議がありまして、その後さらに今度は通貨と産業担当大臣のみの会議がまた予定されております。そこらの国際会議がちょうどタイムリーであり、絶好のチャンスでございますから、それぞれの国に対してそれぞれの物件名も今度は挙げることができるわけでありますから、そういう場所を通じてこれは表に出る出ないの問題もありましょうが、積極的に今度は行動に出るというのも間もなく、今月末から出れるわけでありますから、この反響も踏まえながら次は行動に移してみるというつもりでおります。
  110. 田代富士男

    田代富士男君 いま御説明がありましたことは、いままで通産省としてもやってきておいでになったことを総括的に申されたように私は受けとめるわけでございますが、通産大臣もいま、いままでの日本のいろいろなことに対する事実誤認もはなはだしいということをいま申していらっしゃったとおりに、実態はそうであったかと思いますけれども、誤解による批判を現実には防ぐことができなかった、現実には。そういう批判が出ているということは、防ぐことができなかった、これは認めざるを得ないと思うんです。そういう意味におきまして、いままでたびたび話し合いをしてきたけれども日本の実情というもののPR不足の面もあったのではなかろうかと、これは反省しなくちゃならない点じゃないかと思うわけなんです。いま貿易大臣の会議とか国際会議に出ていくと、そういうわけでいまから国際会議を通じて積極的な行動に月末から出ていくということでございますが、この種の誤解に基づく非難を未然に防止するためにこれはやっていくべきじゃないかと思いますけれども、端的に言いましてこういう国際会議を通じまして、大臣はどのように対処しようとされるのか、これをちょっと具体的にここらあたりお聞かせいただきたいと思います。
  111. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) こういうような会議になりますと、いろいろいままでやってきた延長線上で、逆に相手方の不信を指摘して、日本側からは日本どころの騒ぎじゃないじゃないか、君の国はこういうことをやっているんじゃないかということを私としては言える立場にあります。したがって、それと日本産業政策の誤った批判、攻撃というものは全く言う資格がない、君たちの方こそ姿勢を直してこいというようなやりとりに恐らくなるだろうと思うので、そのことはしかし相手の国民レベルには見えていかないと思うんですね。合意に達したらそれで、いろいろ議論をしたけれども結局両者合意に達したというようなことで終わってしまうおそれがありますから、いままでそういう経験もありましたし、したがって、今後考えています問題等を述べますと、たとえば日本におります外国のプレスの皆さんに対する説明、これはすでにもう着手しております。それから場合によっては記者クラブに私なりだれかなりが、通産省の者が出向いて行って講演するというよりこの反論に対して質疑応答を受けるというようなことで、向こうの新聞にそれが掲載されることが一つ効果になるのかもしれない、さっきのモトローラ社の意見広告とは別に。しかし恐らくきのうの私の談話についても載せているだろうと思いますが、なかなか感覚がいろいろありまして黙殺してしまう新聞もある。したがって、これいまのところそこまでは考えていませんでしたが、ある人の助言もあって、アメリカでは意外とローカル紙というものが身近に読まれるのでいまアメリカでは日本に対する誤解が、日本の弁明がないから、ローカルの庶民の段階にまで日本という国はそういう国かというふうに見られていくおそれがあるので、ローカル紙にもそういう意見記事を載せるように努力したらどうかということで、早速在外公館を煩わしてそういう方向へも英文のものを配ろうかと思っております。あるいは雑誌のキャンペーン広告の掲載とか、あるいは米国にこちらが行きまして、有力者や専門家等を、こちらからも行き、向こうでも集まってもらってシンポジウムをやることもあるいはソフトな行き方でありますが、相互理解という面では役に立つのではなかろうか、あるいは日本に来られた有力者については直接いろいろ説明もしていますが、今度はこういうふうにまとまったもので差し上げて英文にして説明を、さらに持って帰られるような説明にしたい。あるいは私どものMITIジャーナルという一応英文出版物がありますのでそういうものに載せてみたり、あるいはアメリカの有力紙等を選んでそこに論理的な説明を加えてみたり、あるいはアメリカで非常に発達しております有線テレビ網、これの中の通産省が契約を、ことしの四月から放送を始めた番組がございますので、日本紹介番組ではありますが、もっと産業政策というようなものも普通の家庭の有線テレビジョンの、これは選択ですから、切られちゃったらおしまいですが、しかし、十人のうち一人聞いていても見ていても、やっぱり目で見る場合と目で見て耳で聞く場合、視聴覚というものの入り込み方、非常に的確に入るものですから、時に誤解も的確に入るわけですから、こういうようなたくさんのことを考えながら、まず第一弾として通産大臣談話という形で出てみたということでございまして、これは相当やっぱり息長くやりませんと、まだ教科書に日本人はちょんまげに日本刀を差している教科書があったりする国もあれば、あるいは日本人を、日本を相手にした映画であって音楽、服装は中国の服装をしているとか、私たちの日常のそういう伝統とかなんとかというもの、そういうもの等に根差した誤解もやっぱりあるでしょう。そうすると、広く言えば、民衆レベルの相互理解、あるいは国会も衆参両院議員、与党、野党に変わりなくいろんなルートの人たち、いろんな会合に行っては、お互いにただの議論ばかりじゃなくて、日本という国をちょっと説明するから聞いてくれませんかというふうな、そういうふうな会合をやれば、私どもは議員外交というようなものもあり得るのではないかなというふうなことも考えておりますが、これはよけいなことかもしれませんけれども、第一弾としてのきのうは声明、談話であったということだけお答え申し上げておきます。
  112. 田代富士男

    田代富士男君 いま、通産大臣が、この問題については息の長い闘いになっていくんではないかということでございますが、私もそのように思います。批判があるならば正当な反論を繰り返していく、これは当然のことじゃないかと思うわけでございますけれども、現実には日本の貿易というものは、大幅の出超という厳然たる事実がありますから、この厳然たる事実がある限り、こういう問題はいつもふりかかってくる問題ではないかと。そういうことから考えるならば、これは息の長い闘いであるけれども、やはり日本の貿易のあり方という問題もここにおいて基本的に考えていかなくてはならない問題までいかなければ、根本的な解決にはならないと思うけれども、そこまで通産省として検討すべきじゃないかと思いますが、この点どうでございましょうか。
  113. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 全く仰せのとおりで、これ根気強く、時には、私は性格がこんな性格ですから、何をこのやろうという、ぶんなぐってやりたいようなこともあるんですけれども、まあまあしかし、じゃ、日本がそんなことをして、一国ずつ敵に回してしまって、そして経済的に孤立した国家になった場合は、原材料ももらえず、したがって付加価値をつけて売る品物もなし、という国になったら島国としてわれわれは国民生活をどんどんどんどん後退させていかなくちゃならない。そういうことに日本を置くようなことを日本自身が始めることは愚の骨頂でありますから、政治家としては当然ながらそこに腹わたが煮えくり返るような気持ちがしていても、そこはやっぱり抑えて、話し合いで、それはむちゃなことはもうそろそろおやめになったらどうですかというようなことをやりながら、できれば摩擦が起こったことはむしろ幸いと受けとめて、そのことを片づけるときに日本をよく知らしめて、完全なる理解のもとにそれを一つずつ片づけていくという手段をとっていくべきときに来ているのではなかろうか。おっしゃるとおりのつもりで私どもも息長くやりながら一つ一つを解決するときに、ただ表面を糊塗するのではなくて、日本のことはよくわかったと、じゃここで、アメリカもわかったと言うんなら、ヨーロッパもわかったと言うんなら、合意しようではないかという意味の、後に残らない、尾を引かない合意というものをこれから求めていかなければならない、そのように考えます。
  114. 田代富士男

    田代富士男君 この問題、いま大臣が、摩擦が起こったことを幸いと思えと。災い転じて福としていくという、昔から日本で言われた言葉で言うならばそういうことじゃないかと思いますが、こういう問題が起こったことを理解させながら、その一つ一つを解決しながら日本を理解させていく。その問題だけで糊塗するのではないということでございます。そういう意味で、月末から国際会議に出られるわけなんですが、一つずつやってきていただきたいと思います。  それで、報道によりますれば、OECDの専門委員会である工業政策委員会におきまして、御承知のとおりに、半導体産業及び宇宙産業について各国の育成策を詳細に調査検討することが決められたようでありますけれども、わが国の産業政策についての問題が日米間にとどまらずこのような多国間協議の場に持ち込まれることでアメリカあるいはヨーロッパ各国から集中砲火を浴びるおそれもあるわけで、懸念されることでございます。それと同時に、ブロック・アメリカの通商代表部の代表などは、この産業育成についてガットで話し合ったらどうかと言ったとも伝えられておるわけなんです。これは、本当にそういうことを言ったのかどうかということは定かでないけれども、報道でそういうことが伝えられているわけなんです。いま言うような、このような一連の動きがあるわけなんですが、こういう動きをいかに受けとめられておるのか。特に、OECDの場では半導体技術の対ソ流出防止などの名目でわが国に規制の網をかぶせてくる可能性も予想されるわけでございまして、こういうことから、通産省はいかに対処していくのか、ここらあたりお聞かせいただきたいと思います。
  115. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) OECDの方も、去年からの問題で、別段、日本産業政策を取り上げてやるための会ではございませんで、みんなで協力して、いま言われた対ソ的なものも含んでいると思いますが、とにかく、OECD加盟国の活力でもってお互いに共同研究していこうじゃないかということでありますから、これは大した問題ではないのですが、一方、アメリカとの間にも、そういうような科学技術面については二国間でお互いが協議をしていこうという、いい方の分野もまたそれなりに進んでおります。一方、ブロックさんを取り上げて言うのもおかしいですが、そういうふうな言動もあり、あるいは先ほど申しましたECのガット提訴の中の何項目かに日本産業政策というものが明らかに指摘されておる条項がある。こういうようなことも一方ではありますが、しかし一方では、日本との間に、それはそれ、この問題はこの問題として、日本側の言い分に耳を傾けようではないかという人の中にブロックさんもおるということでありますから、ブロックさんが話をされた場所によって、どのようなつもりで発言されたのかの意味も背景がわかり、あるいは実際には、日米のあるケースの摩擦については相当な強力な業界の反対を抑え、議会に出て堂々と、たとえば、ローカルコンテント法案というものはやってはならないし、保護貿易主義にみずから走るものであるという、公的に議会に対して政府を代表して激しい口調で述べるだけの人でもあり、ですから、これからそういういろいろな立場の人々と、いろいろな国の人々と会う話でありますから、基本は、先ほど申しましたとおり、そういう国際機関で、たとえばガットで日本の保護貿易主義の点だけを取り上げて、アメリカとECとが一緒になって日本を共同のいけにえの羊にするようなことがあってはならない。しかし、私はそれはないと思う。ということは、アメリカとECの間においても、産業政策において、日本アメリカ以上に激しいけんかをやっておるわけですから、アメリカがなぜエジプトに輸出補助金つきの小麦を売ったかというその一事をとってみても、けんかのらちが明かずに、ECは引かず、アメリカもしゃくにさわってじゃ自分もやるぞという、いわゆる悪い方への報復措置の一つなんですね。そういうことがありますから、余り日本だけがいじめられているんだという自意識、自虐意識というものは持たないでもいいと私は思います。日本日本、そうしてECはECでの中をばらせば、ヤマタノオロチならぬトマタノオロチで、それぞれ、お互いに垣根を隔て、けんかして、イタリアからブドウ酒を運べばフランスの農民が国境で待ち構えてトラックごと全部ひっくり返してぶち割ってしまうとか、ドイツとフランスとが農産物でどうしているとか、ベンツがフランスの国境に規制を破って突入するためにひしめいておるとか、いろいろなことがあるわけですから、その中で、日本もそろそろ国際性を持ってうまく立ち回ると言えばずるいんでしょうが、そうじゃなくて、日本だけがやられているんだという、そういう感じじゃなくって、日本に言うのなら、君と君との間はそれはどうなんだ、その理屈は日本に対して言える理屈かというような多角的に多方面に、日本もヤマタノオロチの国ですからヤマタぐらいは頭を持って、これからまだ南半球のことも考えなきゃいけませんし、あるいはアメリカ、南米あるいはアフリカ、そういうことなども念頭に置いていく日本になりたい、ならなければ経済的に堂々たる足取りで歩いていく日本という姿は築けない。いまが非常に正念場だと私は思っております。だから、私が適任かどうかちょっと疑問なのですけれども、一応山中流にやってまいります。
  116. 田代富士男

    田代富士男君 今回の国際会議出席につきましては、大いに期待をいたしますが、期間が異例なくらいに長過ぎる懸念もあるわけなのですけれども、いまおっしゃったことが立ち消えにならないようにひとつよろしくお願いをしたいと思います。  引き続いて法案の質問に入りたいと思いますが、午前中からも質疑が行われておりましたが、基礎素材産業の窮状というものはさまざまな角度から論じられておりまして、全産業に占める基礎素材産業の重要性と、疲弊し切った業界の現況から、政府の手で救済をしていかなければならない、私はこのように思います。このような立場から一貫して質問をしてまいりますからよろしくお願いしたいと思います。  今回の特安法改正にあっては、政府として一番留意された点は何であるのか、端的にお答えいただきたいことと、提案理由書の補足の説明を見ましたが、その中に「特定不況産業安定臨時措置法の施行の経験」と、このように書かれてありますけれども、その「経験」というのはいかなる経験を指すのか、その経験が今回の法案にどのように生かされてあるのか、お答えいただきたいと思います。
  117. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず一番念頭に置いたという御質問だったでしょうか、一番重点を置いたという、どの意味でも同じでありますが、まず、本来ならば五年で切れた法律をこの際、そこは延長ですが、新しい展開をさせながら新法として五年間だけやろうということですから、これにはまず、いままで全部そうであったとは言いませんが、日本産業界あるいはわれわれ政府側も甘かったのかもしれませんが、もたれ合いといいますか、あるいは民間の甘えの構造政府に何とか泣き込めば助けてくれるというその姿勢は絶対に認めない。今回の法律の延長あるいはプラスした新法の部分がありますから、甘えの構造は許さないし業界の甘えを認めるということは絶対にしないということが最も大きな基本的な第一の指示事項といいましょうか、それでなければ法律を新しくつくって延長はしないというぐらいのかたい決意でありましたし、第二の点はあくまでも計画そのものも含めて、民間自体がみずからの自主努力、活力あるいは未来展望を開きたいという熱意、そういうものを受けとめることである、そういうものを引き出す、そうでなければこの法律にのれないという内容の法律にしたい。第三点は、間々言われておる独禁法との問題で、いままでの既存の法律は適用除外となっておりますが、そこらが本当に独禁当局と合意されたものであったかどうかについては、いまになってみれば国会の各党の賛否のさまを見ても私は問題はやはりあったのだろうと思います。  相なるべくは産業実態主管庁のつくる法律、これが日本産業未来展望し、そっちの新しい未来へ足取りを向けさせ、活性化させ、企業も従業員も、あるいはそれによって国民の所得も高めていくという日本のただ一つの道を行くための所管省である通産省の経済実態に対するあり方、そして、それを法律にする場合と、公正な競争を保持させつつ、企業の活力を自由競争ということでもって伸び伸びとやらせていこうという立場の、いわゆる産業法に対して監督法みたいな立場の独禁法との間で、初めから法律をつくるときから議論のない法律にしたい、両法が産業政策から見てもこれで可能であり、独禁法から見てもその範囲ならば、役に立つならば、独禁法というものは範囲内としてそれについて何にも言いませんよという、そういう話し合いができるような法律はできないもんだろうか。もしそれができれば、私はいままでの既存の法律、ことに経済法にとって、独禁法と接触するような法律にとって、いままでになかったユニークな法律になって、しかもそれが真の発展を生むもとになると考えたことが第二の重点であります。  あといろいろありますが、まずお答えを申し上げておきます。
  118. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 次に、先生御質問の、現行法の経験ということにつきましてお答えをさしていただきたいと思います。  これまでの特安法の施行の経験から言いますと、三つの点が指摘できるんではないかと思います。  第一は、基礎素材産業活性化を図っていくためには、従来の過剰設備処理に加えまして、事業の集約化や、原材料エネルギーコストの低減のための設備投資などの対策を同時に行っていく必要があるということ、これが第一点でございます。  第二点といたしましては、今後とも各業種の実態に応じまして、効率性に配慮した設備の処理を引き続き実施していくべきものであること、これが第二点でございます。  第三点は、設備処理とあわせて行う設備の新増設の制限の規定の運用に当たりましては、活性化投資を積極的に推進する必要がある点について従来以上の配慮をする必要がある、以上三点が現行法の経験ということでございます。  したがいまして、今回の法案におきましては、従来の設備処理に加えまして、事業提携、原材料エネルギーコスト低減のための設備投資、技術開発等の促進のための措置を新たに設けまして、総合的な対策を講ずることによって基礎素材産業活性化を図っていこうということにしておるわけでございます。
  119. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、一つだけお尋ねしたいんですが、今回の、いま通産大臣からもお話がありましたとおりに、まあ産業政策の立場からも、独禁法の立場からも、どちらから見てもすばらしいものをつくり上げようということでつくり上げたというこの法律でございます。しかし、この法律の対象から造船関係が除かれているわけなんですね。まあそういう意味で造船の不況原因は何であったのか、まず第一点。  第二点は、これまで造船関係にどういう対応を講じられてきたのか、効果はどのように出たのか、第二点。  それから第三点は、今回造船関係が外された理由は何であるのか、この点お答えいただきたいと思います。
  120. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 当初法案作成に取りかかりましたときには、造船業も一応入れて議論をしたわけでありますが、しかし、今回のとらえる視点が基礎素材産業、それの不況を何とかしようということでありますから、同じような不況であっても造船業は基礎素材産業とは確定しがたいのではないか。造船の基礎素材は鉄じゃないかというような議論などをいたしましてね、運輸省の方はできれば残しておいてほしいんだと、不況は余り変わってないんだというようないろんな環境の説明がありましたが、それはそれとして、やはり今回ははっきりと基礎素材産業分野に限るということにした方がすっきりとしていいということで、造船業の方は運輸省の方でそれぞれにまた持っていらっしゃる法律なり、行政措置で、それぞれの対応ができるのではないかと私どもは思いまして、運輸省もわかったと、今回のそういうような特徴を基礎素材にしぼられるならば、造船業の不況対策は運輸省でやりましょうと、こういうことでございましたんで、それ以上どういうことをするのかというのは、今度は運輸省にお任せをするわけでありますが、造船業の不況は、海運の不況ということから当然造船が減ったということでありましょうし、現在も受注済みのものが非常に少なくて、どうも日本の造船業界は不況が相当深刻化しておることは私もわかっておりますが、しかしそれは、海運の実態というものが変わってまいりまして、大型タンカーで運んでいた石油がたんだんスピードを落として持ってこなければならなくなったり、あるいはむしろ大型タンカーの需要が、そうでない方向、中型といいましょうか、そっちの方向需要がふえてきたとか、あるいは国際的にその傾向は普遍的なものになったとか、あるいは外国の専用船が、それぞれLNGとか、LPGとか、穀物とか、自動車とか、それぞれの分野で専用船がふえていくことに伴って、日本の造船業も多様化を迫られている中で、いろいろの国が、自国船でもって運ぶという国もあれば、あるいはそういうものがほかの国でもつくれるようになったということ。したがって、市場が小さくなったわけではないけれども対応が、日本の造船業界一国だけではなくて、よそでも対応できるところが出てきたと。たとえば、韓国の造船所あたりの活況というのは、日本のわびしさに比べて、隣の国としてどうしてこれだけ違うんだというくらい、原因はもう申しませんが、そういうことを考えると、日本の造船業というものは、やはりここで造船業自体も考えられ、世界の大勢にこれからどう造船業が対応すべきかという問題は運輸省にお任せをしたいと、こういうことで今回は外したわけでございまして、トラブルではございませんが、できれば残してほしい、じゃ、それは今回はどうだということで、結局は両者気持ちよく、運輸省も引き取っていただいたといういきさつがありまして、法律からは落ちております。  その他の問題については局長より答弁いたさせます。
  121. 今村宏

    説明員(今村宏君) ただいま先生御質問のまず第一の、当時の造船不況原因はどうかということでございますけれども、御承知のとおりに、造船業は世界の経済とか、海上荷動き量の変動に大きく左右される産業でございまして、四十八年の第一次オイルショックを契機としまして、世界的な荷動きの減退、低迷に加えまして、その後円相場の上昇とか、発展途上国の台頭とかということがございまして、五十三年当時のわが国造船業は、大幅な需給の不均衡に直面しまして、それが長期的に継続したいわゆる構造不況になったわけでございます。  それが原因でございまして、第二番目の、これまでの造船不況対策、それからその効果はどうかという御質問でございますけれども、当時の不況に対処するために、設備処理、それから需要の創出、それから操業の調整等一連の造船不況対策が講じられたわけでございます。特にこのうち、設備処理につきましては、総トン数が五千トン以上の船舶を建造できる、いわゆる特定船舶製造業に関しましては、特安法に基づく安定基本計画が五十三年の十一月に策定されまして、五十四年度末までに、当時の能力の約三五%に相当する三百四十万トン程度の設備を基数単位で処理することになりました。結果といたしましては、その目標をやや上回りまして、約三七%の処理が達成されまして、三百六十万トンの建造設備が処理されたわけでございます。それで、設備処理、それから、ただいま申し上げました需要創出、それから操業調整等の不況対策効果的に展開されまして、それから、その当時から海運市況が一時的に好転に向かいます。そのようなことから、わが国造船業というのは、その後徐々に回復に向かってまいったわけでございます。  ただ、その後の状況は、この第二次石油危機を契機としまして、世界経済が停滞したり、省エネルギーが進展いたしまして、海上荷動き量が油を中心としまして減りましたりしておりまして、五十六年度の後半からは受注が冷え込んでいるのは事実でございます。海造審――運輸大臣の諮問機関でございます海運造船合理化審議会の需要見通しによりますと、わが国造船業における外航船の建造量はこれからしばらく減少しまして、昭和六十年ごろには約三百二十万トンぐらいの竣工ベースでございますが、なるのかと、その後また上昇するという見込みになっております。  それで、ただいま御質問のありました、今回の法案に法定業種とされてない理由といたしましては、ただいま御説明のありましたように、基礎素材産業でございませんし、それに加えまして、設備処理については、すでに先ほど申しましたように、大幅な処理実施いたしておりまして、それから事業提携等につきましては、今後の進むべき方向として、事業者間で認識はございますけれども、現段階ではまだ実体的な検討が行われておりません。そのようなことから法定業種としてないわけでございます。  なお、わが国造船業は、今後建造需要が低迷いたしますが、これに加えまして、国際的な造船動向というものも少ない受注の中で競うわけでございますので、いろいろと厳しさを増すというふうに考えられるわけでございますけれども、去る三月に、海運造船合理化審議会でいろいろ御審議いただきましたその御意見をちょうだいいたしておりまして、今後は、各種の法律の運用その他によりまして、造船業の経営安定化措置等所要の対策を講じていきたいというふうに考えているところでございます。
  122. 田代富士男

    田代富士男君 どうもありがとうございました。  それで今回は、いま通産大臣から言われたとおりに、基礎素材産業の分野に限るということでこの法律をつくったということでございますが、それで、この不況業種七種類ですか、この業種不況原因は、いま造船関係の原因はわかりましたが、これに分離したことも理解しましたし、そういう立場から、この不況業種不況原因を端的に御説明いただきたいと思います。
  123. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 基礎素材産業業種を中心といたします基礎素材産業が直面しておりますのは、三つの構造的問題があるわけでございます。  第一は、原材料エネルギーコストの上昇ということでございまして、二度の石油危機を通じまして、原材料エネルギー多消費型産業でございます基礎素材産業におきまして、製造コストが著しく上昇をしたというのが第一の問題でございます。  第二の問題は、需要の低迷ということでございまして、各基礎素材産業需要は、第二次石油危機の影響が本格化いたしました昭和五十五年後半以降、景気の全般的な不振の中で特に低迷を続けたわけでございます。  第三は、過当競争の激化ということでございまして、基礎素材産業が持つ過当競争体質が、需要低迷が続く中で顕在化あるいは激化をいたしまして、その結果といたしまして市況が低迷したという、その三つの構造要因を抱えておりますのが基礎素材産業、特に七業種ということになるわけでございます。
  124. 田代富士男

    田代富士男君 五十三年の特安法の立法時におきましては、過剰設備廃棄だけがうたわれておりましたけれども、今回はこれに追加いたしまして、さっきからお話のありましたとおりに、集約化と活性化がうたわれておりますけれども、今回集約化、活性化が特に強調された理由は何であるか。  また私は、五十三年の時点で、さっきも、この法案の取り扱いに当たって政府も甘い一面があったと、民間もそういうもたれの一面があったというようなお話もありましたけれども、その点を指摘するわけではありませんけれども、この五十三年の時点で、業種ごとの不況原因をもっと深く追及をし検討をしていたならば、その時点でこの集約化、活性化を行い得たのではないかと思うんですけれども、この点あわせてお答えいただきたいと思います。どうですか。
  125. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 現行特安法は、第一次石油危機原因といたしまして発生いたしました過剰設備処理ということに対策の重点をしぼったわけでございまして、その結果といたしまして設備処理は順調に進展をいたしまして、設備処理目標は二三%、達成率は九五%というふうなことで一応の成果を上げたと私ども考えておるわけでございます。ただ、不幸にして第二次石油危機が勃発をいたしまして、この効果が減殺をされたということも否めない事実なわけでございます。  ただ、さらに強調したいことは、第二次石油危機を契機といたしまして、新たな構造的な変化というのが基礎素材産業に生じてきたんではないかと思うわけでございます。それは先ほども触れました設備過剰問題が発生したということに加えまして、すでに一社一プラント体制になっておる企業というのが大分多うございまして、単純な設備処理だけでは事態の解決にならない、何か別のことが必要である。つまり個別企業ごとの対応では限界があるということが明らかになってきたわけでございます。それはその面からグループ化等によります事業の集約化の必要性というのが出てくるわけでございます。  それから第三は、国際競争力の低下によりまして輸入増大輸出の減少が生じてきておる業種も見られるわけでございまして、そういう業種につきましては、国際競争力回復強化のためのコスト低減対策が必要になっておる。以上のようなことが第二次石油ショック以後の新たな事態として指摘されるわけでございます。  したがいまして、私どもはこの法律案の作成に当たりまして、先ほど山中大臣からも指摘がございましたように、撤退と活性化ということを並行して同時に推進をするというその考え方に立ちまして、設備処理だけではなくて、技術開発活性化設備投資あるいは事業の集約化というような前向き対策を並行して進めるという考え方を採用したわけでございます。
  126. 田代富士男

    田代富士男君 いま局長からもお話がありましたとおりに、撤退と活性化ということで前向きの体制で取り組んだのがこの法律であるということはよく理解をできますけれども、それで活性化の基準の問題についてお尋ねをしたいと思いますけれども、今回通産省がとろうとしていらっしゃる政策では、将来とも回復の見込みのない部分縮小とともに、今後回復される部分活性化ということがうたわれておるわけでございますけれども、この活性化については各素材産業ごとに事情も異なっておりますし、一様にはいかないと思うわけなんです。どういう方法でこれを持っていこうとされるのか、素材産業ごとに考え方を示していただきたいと思います。  また、残された活性化される部分について、競争力をつけるということはこれは至難なわざではないかという、こういう心配する面もありますけれども、このこともあわせてお答えいただきたいと思います。
  127. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 各業種につきまして、活性化考え方につきまして簡単に申し上げたいと思います。  まず石油化学の場合でございますが、この活性化のためにはコストの低減、それから高付加価値化あるいはまた過当競争の是正というふうな点で力を尽くしていく必要があると思うんでございますが、そのためには原燃料コストの低減のための設備投資、これはいわゆる活性化投資が必要になりますし、また生産コスト低減のためには集約化を進める必要がある、あるいはまた将来、中長期の先を見込みまして研究開発等も必要である、さらには、もちろんその前提といたしまして過剰設備処理をしていく、大体こういうふうな考え方で石油化学の場合考えているわけでございます。  それから、こういうふうにして石油化学の場合につきまして、将来競争力の点はどうなんだというふうなお尋ねでございますが、競争力につきましては石油化学につきましては、次のように考えております。  よく言われますように、非常に安い天然ガス保有国の石油化学はコストが非常に安いわけでございまして、これにつきましてはなかなか競争するのがむずかしいという面があることは確かでございます。ただ、天然ガスにつきましては、量的に申しますと世界の需要を賄うわけにはいきませんので、そういう意味では天然ガスだけで世界の需要が満たされるということはございません。したがいまして、ヨーロッパ等はもちろんわが国と同じようにナフサを主としておりますので、そういう意味で私どもはたとえばヨーロッパとは対抗していかなければならないというのを一つのめどにしております。  それからもう一つは天然ガスの場合には量的にも十分でないほかに、物によってはできないものがございます。エチレンにつきましてはもちろんできますけれども、プロピレンとかあるいはいわゆるBTXというのがございますが、そういったものにつきましてはできない性質のものでございまして、したがいまして日本の石油化学といたしましてはエチレンの部分ではできるだけ合理化をいたしまして、せめてヨーロッパ並みの力をつけていく、そして波打ち際でできるだけ防いでいく力をつける。それからプロピレン以降のものにつきましてはこれはいわゆる天然ガスからはできてこないものでございますが、そこに高付加価値化も含めまして日本の特色を見出していく、そういうふうな考え方で波打ち際でエチレン的なものは防ぎながら、片や高付加価値化等特性を生かしながら生き延びていく、こういうふうな考え方になろうかと思っております。  それからアルミにつきましては、御承知のようなことで大変苦境に立っておりますが、現在の苦境は電力等エネルギーが非常に高騰していることのほかに、循環的にも世界的な非常に不況に見舞われておりまして、特に深刻性が加重されているわけでございます。  最近アメリカ等を初めといたしまして、世界のアルミ市況はかなり持ち直しておりまして、昨年一時はトン当たり千ドルを切ったのでございますが、この一月ぐらいから急上昇いたしまして、現在では千三百ないし千四百ドルというふうなところに来ておりまして、こういったことでかなり状況はそういった意味では好転しているのでございますが、今後は一層の合理化をいたすとともに、金利負担の軽減とかあるいは資産の売却とか、ないしはまた親会社からのいろいろな支援等、グループも含めまして自主的努力もいたしまして、できるだけ身軽にしていくことも含めましてこの生き延び方を考えていきたい。  わが国にも御承知のように水力あるいは石炭に頼っているアルミ会社もございますし、そういった有利な点は当然生かさなければなりません。さらにまた現在油を石炭に転換するために政府も助成措置を講じておりますが、こういったことをすることによりまして最小限度の国内におけるアルミ製錬はわれわれとしてもキープしていきたいというふうに考えているわけでございます。  それからあと簡単に申し上げますと、たとえば化学肥料でございますが、化学肥料につきましては伝統的に非常に輸出があったんでございますが、最近ではとうていこの面に期待することはできませんので、私どもといたしましては輸入に対する競争力を波打ち際でつけまして、内需は基盤を置いた産業として縮小しながら、内需を基盤とした産業として生き延びていかざるを得ないというふうに考えております。そのためには高能率設備への生産の集約化とか、設備の処理、あるいは原料転換等に対する活性化投資等を行っていきたいというふうに考えております。  それから電炉でございますが、電炉につきましてはスクラップの予熱装置等のまだ省エネ設備の導入の可能性も残されておりますので、そういう設備活性化投資を進めるとともに、片や企業の提携と集約化を進めていかざるを得ないというふうに考えております。  最後に、最後と申しますか、もう一ついわゆる合金鉄、フェロアロイの関係がございますが、これにつきましては何といいましてもやはり省エネルギーの推進のための設備投資、それから電力につきましては需給調整契約の活用等によりましてできるだけ電力の価格の低減化を図っていく、あるいはまた電力原単位の低減のための高効率の電気炉を導入するとか、さらにはまた水力発電でなお若干手を尽くす点もございますので、そういった点に助成をいたしております。そういういろいろな手を尽くしながら、かつ中長期的には新製錬法につきまして研究開発を進めるべく私どもも助成措置を講じつつあるわけでございます。  以上、私の所管しております業種につきまして一応申し上げた次第でございます。
  128. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 合成繊維製造業について申し上げますと、現在設備が競争相手国に比べて大変老朽化し、陳腐化しているというような状況が見受けられます。これは近隣の韓国、台湾等に比べても大変年をとっていると申しますか、設備がすでに古くなっているというような状況が明らかでございます。したがいまして、今後やはり新鋭化するということが最も多く求められるわけでございまして、しかもその過程では、やはり企業間、工場間で得意なものに集中していくというようなことが必要だろうと思っております。この辺はたとえばアメリカと比べますと、一つの工場当たりの能力が日本の合成繊維の場合、平均的に申しましてアメリカの半分ぐらいの規模であるということがございますし、またヨーロッパに比べても八割程度ということで、どうもスケール的に問題があるんじゃないだろうか。  したがいまして、老朽化、陳腐化した設備を新しいものに取りかえていく過程で、生産の集約化というようなものを図ることによってコストを切り下げると申しますか、活性化を図るということが可能ではないかと考えているわけでございます。  それから洋紙、板紙関連につきましては、これは原材料エネルギーコスト面における国際的な競争関係で大変劣位にあるわけでございまして、この分野でも現在の過剰設備処理する過程で事業の集約化による効率的な生産体制をつくり上げるということが軸になろうかと思います。そして同時に、やはり技術開発をさらに進めるということで、現在各種の技術開発プロジェクトに従事して、コスト切り下げをねらう新技術開発に鋭意努力しておるということがございます。当然新しい設備投資の過程では、省エネルギーあるいは省原料、――原料をより少なく使う、あるいは日本の場合、すでに相当進んでおりますが、競争力のある原料としての故紙の利用率をさらに高めていくというような見地からの設備投資等々を通じて、私ども十分活性化できる、産業が自立基盤を確立できるんだというふうに確信しておるわけでございます。
  129. 田代富士男

    田代富士男君 いま七つの素材産業の問題点を御説明いただきましたけれども、本当にこれをやっていくには大変なことだと思いますし、この七つの素材産業以外にも今後の問題として残されている問題がかなりあるのではないかと思うわけなんです。それは御承知のとおりに、わが国の特徴ともなっております資源エネルギー海外依存度が非常に高いわけでございます。そういう立場から、今後問題となる産業はどの分野であると通産省で見ていらっしゃるのか。もうこれで終わりというわけにはいかないと思うわけなんです。そういう意味で予測をされているのはどういうものがあるのか。それは政令によって取り込まれるものと考えてもよいのか。あるいは政令指定の期限というのは五十九年末となっておりまして、期間的にもどうであろうかと、この点を心配しているわけでございますけれども、このこともあわせてお答えいただきたいと思います。
  130. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 基礎素材産業対策につきましては、昨年の夏以来、産業構造審議会の中で特別な委員会をつくりまして具体的な対策の検討を進めてまいったわけでございますが、その過程から具体的にこの新法の対象になるべき業種につきましてはいろいろ議論をしておったわけでございます。  具体的な考え方といたしましては、構造的困難に直面をしておりまして、緊急に対策を講ずる必要がある基礎素材産業であって、しかもその業界に構造改善へ向けての意思が明らかなものというのをピックアップいたしますと、いま説明をいたしました法定七業種ということになるわけでございます。  もちろん、いま先ほど先生の御指摘のように追加して、その要件に合致をいたしまして、しかもその業界に構造改善の意思があるものにつきましては、追加して指定できる道は開かれておるわけでございますが、いまのように緊急――現時点までで考えますと、法定七業種以外に政令の追加対象になるような業種につきましては、必ずしも想定されてないといいますか、明らかでないというのが現状でございます。  もちろん、先ほども申しましたように、そういう要件に合致し、そういう意思がある業種につきましては、追加して候補業種として指定することはできるわけでございます。  それから、一年半の問題でございますが、現行法は一年ということでございます。一年半というのが長いのか短いのかという議論は、立案過程ではいろいろやったわけでございますが、全体といたしまして、この法律の期間は五年ということでございますので、構造改善自体に必要な期間も何年か、少なくとも三年ぐらいは用意しておかなきゃいかぬことを考えますと、一年半の政令追加指定期間というのは妥当なんではないかというふうに考えております。
  131. 田代富士男

    田代富士男君 いま御説明がありましたとおりに、構造改善の意思のある企業から手始めたということでございます。  それで、今回法改正で対象とされるこの基礎素材産業の現状について若干問題点があるんじゃないかと思うわけなんです。    〔委員長退席、降矢敬義君着席〕  そのまず第一番目は、各設備の法定耐用年数はどうなっているかという問題点がまず第一でございます。  第二番目には、各設備の償却の実態というものはどうなっているのか。  第三番目には、すでに耐用年数を過ぎたものが相当あるのではないか。たとえば化学繊維等の設備は六〇%からまあ多く見た場合九〇%が耐用年数をすでに経過しているというようなことも言われているわけなんですが、そういう中で現在も操業中のものもあるのではないかと思うんですが、実情はどうなっているのか。  この三点について、お答えいただきたいと思います。
  132. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 法定耐用年数と、それから現実の設備の経過年数でございますが、たとえばアルミの場合で申しますと、法定耐用年数十二年に対しまして、経過年数は十年八カ月ということになっております。  それから電炉の場合が、法定耐用年数十四年に対しまして、経過年数十一年二カ月でございます。  それから石油化学の関係は、法定耐用年数以上に経過しているものが大変多くなっておりますが、たとえばエチレンにつき申しますと、法定耐用年数が九年、それに対しまして経過年数が十二年八カ月となっております。  以下、ポリエチレン等につきましても、ほぼ同様なふうに、経過年数の方が法定耐用年数を超えている状況になっております。  なお、もちろんこれらの設備につきましては、年数は相当たっておりますが、その途中におきまして追加投資といいますかいろいろな投資はしておりますから、したがいまして償却済み率といたしましては、たとえばアルミの場合で申しますと、償却済み率は五一%ということになっておりますし、石油化学等につきましては、物によってちょっと違いますが、五〇%、六〇%あるいは七〇%台のもの、いろいろ品種によってございますが、そういうふうな償却の状況になっております。
  133. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまも御説明がありましたとおりに、法定耐用年数を経過年数がかなり上回っている面が多分にあるわけなんですが、操業の安全性やあるいは効率性の上からこの現状は問題があるのではないかと私は思うわけでございます。特に安全性という立場から、石油化学あるいはアルミ製錬、電炉についてはどうなのか。    〔理事降矢敬義君退席、委員長着席〕 それで私は、石油化学の問題等につきましては今日までたびたび事故が起きた現場にも行っておりますし、だから、この問題点が安全性という立場から大変じゃないかと思いますけれども、そこらあたりはどうでしょうか。
  134. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 安令性につきましては、設備の保守点検とかあるいは作業員の教育訓練等につきましてはもちろん十分やっておりますし、それからまた、先ほどもちょっと申し上げましたが、必要な投資は途中の段階部分的に行うというふうなことも含めまして、安全性につきましては、私どももそうでございますが、企業におきましても十分注意をして操業をしているという状況でございます。  それから効率性の点でございますが、効率性につきましては、設備、品種によりまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、いろいろばらつきがあるというふうなことは事実でございまして、かなり古いものもございます。また、そういった面から言いますと、国際競争力上の点で必ずしも十分でないというふうに思われる点があるわけでございまして、そういうことにかんがみまして、今回この新法ができますれば、税制あるいは金融等の支援措置と相まちましてその辺を十分支援し、かつ強力なものにしていく必要があるだろうというふうに考えております。
  135. 田代富士男

    田代富士男君 石油化学はどうですか。
  136. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) ただいまの点は石油化学を中心に申し上げたわけでございますが、石油化学につきましては、先ほど申しましたように経過年数は非常にたっております。ただ、必要なやはり部分的な改造とかそういった点はやっておるわけでございます。したがいまして、そういう努力はしてきているわけでございますが、それにしましても、やはり御指摘のように効率性の点につきましてはこのままではやはりいけないだろう、今後はたとえば生産の集約化等によりまして、効率的でないところをやめて、効率的な設備に集約する必要があるわけでございますが、そういった集約すべき設備につきましては、活性化投資を通じましてより省エネルギー的な、より効率的なものにしていくという必要があると考えております。  なお、安全性につきましては、先ほど申しましたように、これはもう最も重視すべき点でございますので、今後とも十分それに注意していくということは当然でございます。
  137. 田代富士男

    田代富士男君 では次に、過剰設備廃棄の問題についてでございますけれども現行法では業種によっては一律廃棄のものもありましたけれども、そのために生産性の最も低い企業限界産業と通称言われておりますけれども、そのような限界企業の温存にそのことがなりまして、生産性の上からも問題が残ったという指摘も今日までされていることは御承知のとおりだと思います。しかし、どんなに小さい企業あるいは古い設備の企業といっても、これまでそれぞれの業界に貢献してきたことも事実でありまして、そこで、過剰設備廃棄の仕方によりましては、一律あるいはその企業全部といういろいろなやり方があるかと思いますけれども、むずかしい問題が起きることも考えられるわけなんですが、この手法と、果たしてどこまでやれるのか、通産省としてお考えになっていらっしゃるのか、そこらあたりを過剰設備廃棄の問題につきましてお答えいただきたいと思います。
  138. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 設備処理実施に当たりましては、産業の実態に応じまして効率的な配慮をいたしました処理方式を採用していく必要があることは当然でございます。ただ、産業の実態によりましては、一律の処理方式によっても十分な効果が上がったものもありまして、一律の処理方式が常に問題があるということではないのではないかと私どもは思っておるわけでございます。  また、具体的な設備処理実施に当たりましては、すでに一社一プラント体制になっておる業界も多いわけでございますし、一社一プラント体制となった企業が多く存在している業界というのも多いわけでございますし、それからコンビナート内における連産品関係を考慮する必要がある産業分野もあるわけでございます。また、大企業中小企業が併存しておる分野というのもあるわけでございますから、そういうそれぞれの業種の実態に応じまして、生産の受委託であるとかあるいは効率設備への生産集中といったような事業の集約化の考え方もあわせ考えていく必要があるのではないだろうか。そういう場合にも中小企業には十分の配慮を払っていく必要があろうというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、構造改善基本計画の策定やあるいは設備処理の共同行為の指示を行うに当たりましては、関係審議会が主たる事業者団体及び労働組合意見を聴取する過程で、業界の実情を十分に把握していきたいと考えておる次第でございます。これを通じまして雇用の安定につきましても十分な配慮をいたしまして、中小企業との関係におきましても不必要な摩擦が生じないようにしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  139. 田代富士男

    田代富士男君 設備の処理と新増設に関しまして、一部業界のアウトサイダーに関しまして、いろいろな議論があるわけでございますが、アウトサイダーの規制にどう取り組まれるのか、これをまずお尋ねしたいと思います。  ちなみに中小企業団体法では御承知のとおりに、商工組合の事業につきましては、商工組合の強制加入ないし規制命令が規定されておるわけでございまして、これによって構造改善効果を保持しておりますけれども基礎素材産業界についてはどうなのか、これもあわせましてお答えいただきたいと思います。一部業界のアウトサイダーと申し上げましたけれども、これは御承知のとおり、平電炉関係のことでございますけれども、その点につきましてもお答えいただきたいと思います。
  140. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ここのところは法案の作成過程の最終段階で、私自身が決断をしたものでございます。本来、業界自体で構造改善計画を持っていらっしゃいということの法律でございますが、持っていこうにも、いま平電炉とはっきりおっしゃいましたので、答えにくいところもありますが、どうもあの会社が――あの会社にしておきます――あの会社が、自分は参加しない、自分の会社は自分たちでやっていけるので、構造不況とは思っておらぬというようなことを言い放つ、そうすると、その他の同じ業界の人たちは、あの会社がアウトサイダーの一匹オオカミで暴れてもらっていたのではわれわれどんなに共同してみんなで額を寄せ合ってつくった再活性化なり、立ち上がるための自助努力の計画をつくってみても、これはしょせんぬかにくぎといいますか、画餅に帰してしまうことは明らかである、そういう業界がなしとしない、御指摘のとおりであります。そこでしからば中小企業の組織とはまた違いますので、この業界について、法律に、通産大臣のアウトサイダーに対する規制、あるいは勧告あるいは指示権というようなものを法律に盛り込むか盛り込まないかずいぶん考えました。これは独禁法との話し合いでできる法律がつくれるかどうかの問題と同じくらいの次元のものとして考えたんでありますが、やはりこの際は甘えの構造は認めない、そしてもたれ合いというか、もたれてきてもそれはだめだというのが前提であることを考えると、そのような体質の業界というものは、一匹オオカミを生んだ業界ということでありまして、そのような業界まで救済するために、法律大臣の指示、勧告、命令権というものは盛り込むべきではない。やはり最初の決めた姿勢というものが貫かれる、業界の自主性、活力というものが最後まで保たれる法律を九九%実行できたとしても、大臣の命令権、指示権、勧告権というようなものを盛り込んだことによってこの法律はがらりと性格は変わってしまう。でありますから、行政指導という言葉はどこまで指すのかわかりませんが、このような法律をつくりました行政官庁の責任者である、そして国務大臣である、そして通産大臣である私の、日本産業考え、そしてこれらの業界の未来考え、そしてほうっておけばつぶれるさというような態度はとれないという姿勢であるならば、そこに通常の行政指導ではない、そのような業界のある事業主に対して、通産大臣室にお越しを願って、そしてなぜそういう態度をとられるのかについて懇切丁寧に御主張を伺い、そして私の意見も述べて合意点が得られる努力をするということをやれば、法律にそういうことを明示しなくともおおむねの目的は達成できるのではなかろうか。通産大臣に面と向かって要らざるおせっかいだと言う者があれば、それはあっぱれと言うしかありませんが、しかし産業社会もわれわれの一般社会の常識と同じでありまして、わがままだけで世の中を自分一人よければよしと言って渡っていく人間は、政界でも一般の人間社会においても、一時はそれがまかり通ったにしても、そうはいかないものであるということは常識でございますから、社長は通産大臣室に呼ばれたぞということで、そんなもの相手にするな、なんだ通産大臣なんてということにはなかなかならないのじゃないかと思っておりますので、そういうことをやるとは言っておりませんが、この法律ではやらないたてまえで業界で自発的にやってください、一匹オオカミだと言われる人がおるならば、アウトサイダーとしてそれは自分自身のお責任でございますが、そのことがほかの同業の方々を御迷惑に陥れることはよろしいんですかという問いかけにとどめてあるということで、ここでちょっととどめておきたいと思います。
  141. 田代富士男

    田代富士男君 では、とどめてとおっしゃるなら私もここでとどめておきます。  しかしやはりこういうことは全体の活性化を図ろうと努力しているときにこういうことは許されないと思いますから、とどめると同時に、やはりいつでも対応できる体制だけはとっておいていただきたいと思います。  次に、活性化投資の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、活性化投資について特別償却制度を創設されたそうですけれども、その初年度の償却率が一八%と、こういう数字になっておるわけでございますが、御承知のとおりに省エネ投資についての償却率が初年度三〇%になっているわけでございまして、これと比べますと数字の上でははるかに低いわけでございます。また一八%にされた理由というのは何か理由があったのかお答えいただきたいと思います。
  142. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 基礎素材産業活性化を図っていくためには、内外環境の構造変化に適切に対応した生産体系を構築するための活性化設備投資の促進が必要であることは申すまでもないことでございます。このような設備投資というのは、本来は企業の自助努力によって行われるべきものと思うわけでございますが、現下の状況では企業努力の限界を超えるものでもあるわけでございますし、活性化投資を早急かつ円滑に行わせる必要があるということも考えまして、税に詳しい山中大臣の御尽力、御指導もございまして、現下の厳しい財政状況の中で限られた財源を最大限に活用するものといたしまして、本活性化特償制度が創設されたという経緯になっておるわけでございます。基礎素材産業に属する企業が、積極的にこの制度を利用して、活発な活性化設備投資を行っていきますれば、産業構造改善が図られることが期待されるわけでございまして、私どもといたしましては当面その効果を見守ってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  143. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはそこだけ、田代さん、比較しないで、政策目的ということで今回やりました比較でも、いまおっしゃったのは中小企業設備投資促進税制のことだと思いますが、その前にはエネルギー全体に対する税額控除も含めた制度も去年やりました。こういうように政策によってその都度変えてまいりますが、この場合の償却は、企業範囲とすれば中小企業ではない、関連産業はありますが、これはやはり大企業のものが大部分であります。そういう場合に中小企業の設備投資促進税制と比べてそれよりか低いとか、高いとかという議論ではなくて、この問題は構造不況業種に対して、基礎素材産業に対する特別なめんどうを見るから立ち上がって来なさいと、つえを一本渡すわけですから、そのものだけにすがっていこうという中小企業の場合と、また中小企業中小企業以外の大きい企業との差も当然なければならないと考えまして、最終的に私の判断で、そのように、バランスは率だけ見ますととれませんが、政策のニュアンスをくっきりと出すという意味で決定をしたわけでございます。
  144. 田代富士男

    田代富士男君 いま大臣から私の質問に対しまして、大企業中小企業の比較論の上から一律に数字を見てもらってはちょっと困ると、やはり全般的に見ていただきたいという、確かにそういう面はあると思うんです。そこで私が申し上げたいことは、そのように比較して見てもらっては困るとおっしゃると同様に、いまさっき私七つの業種不況原因は何なのかということを聞きました。そのときに、七つの業種というものの内容というものは、それぞれこの異なったことで活性化を図り、集約化を図ろうという、そういう一律の問題じゃないわけなんです、七つの業種というものは。そうしますと、いま私申し上げましたとおりに、この活性化の投資については、特別償却制度が一八%と、このように七つの業種というのが同じであるならば一八%一律ということは言えますけれども、いま山中通産大臣がおっしゃるとおりに、これはほかの、いま申し上げましたような省エネ投資と違うんだという、そういうことを配慮したというならばやはりある程度七つのそれぞれの素材産業ごとに、まあ平均一八%とするのもよいけれども、ある程度の違いがあってしかるべきではなかろうかと、私はこのように一律に一八%とされたのはいかがなものだろうか。ちょっと耳にしたところによれば、通産省としてはこの省エネ投資と同じように三〇%というような通産省のお考えがあったやにお聞きしておりますけれども、予算面で一八%というふうに、結果がこういう結果になっているわけなんですが、だからそこらあたりどうなんですか。そこまで配慮されたのか、もう一つ配慮すべきじゃないでしょうか。もう法律で決まったんだから、いまさらできないと言われれば身もないわけなんですけれども、この点どうですか。
  145. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私どもの言い分を大蔵省が通して、そのまま編成権を持っておりますから、予算にしてくれれば、たとえば中小企業投資促進税制の原案は、税額控除一〇%、そして特別償却――要求は四〇%というと、そのための金が減税じゃありませんが、充てる財源が入るべかりしものを落とすわけですから、二千六百億を大蔵省には要るわけですね。それを大蔵省のふところを知っている私として、普通の通産大臣よりもよく大蔵省のふところぐあいを知っている私として、そういう金をこっちへよこせとなかなか言えませんから、そうするとやはり最終的に税額控除は、じゃあきらめようというような妥協もいたしましたし、償却率も若干落としましたが、その並びでもってこちらの不況産業の方、構造不況の方も償却は大企業であるということで、もとの案よりか遠慮しております。しかし田代さん先ほど指摘された耐用年数はどうなっているか、償却の実態はどうかというお話があったでしょう。この点は七つの業種全体共通とは言えませんが、いずれもしかし陳腐化し、もしくは陳腐化の一歩手前に来ている。耐用年数は償却に当然なるわけでありますから、この耐用年数に対する考え方をそろそろ日本は基幹産業について考えてまいりませんと、アメリカあたりはいち早くアメリカ産業の衰退の原因は何だと、それはやはり陳腐化であった。安易な状態になっていたのは償却耐用年数の問題もあったということで、一挙に五年で初年度一括償却とか、そういうような思い切ったことをやってアメリカ経済活性化を図ろうとしております。これを人ごとだと思って見ておりますと、先ほどの石油化学とかそういうもの等がすでに償却を超えている、償却年数を超えて操業されているという実態は、陳腐化そして産業の衰退、そして外国の攻勢に屈服するという道を日本がいまや歩きかけておる、私はそう思うんです。そこで大蔵大臣にどうだろう、日本産業が諸外国に悪き前例を見ないでもないが、耐用年数の問題を本格的に取り組もうと思うがどうだと、ただし相当金を食うわなと言いましたら、それはもうとてもじゃないが、財政の余裕のあるときにしてくださいと、おっしゃるとおりとてつもない金を食いますからということで、いまのところ折衝を始めたというところにまでいっておりませんが、その入口で私も大変な金が要るなということは考えております。しかし一方、私たちの民族の産業もまた次の世代というものがあるわけですから、次の世代のための産業ということを考えると、みすみす耐用年数をいじらず償却をほっておいて、そして陳腐化して気がついたときには、工場機械はあるけれども、それはもう諸外国に比べて全然相手にされないお粗末なもので、日本産業は一挙に衰退、転落していくという状態にならないうちに手を打っておく必要はあるなと、この点は財源の問題も関係がありますが、真剣に産業政策当局としてよく考えて対処したいと思っております。
  146. 田代富士男

    田代富士男君 七つの業種ばらばらは、一八%統一はどうなんですか。
  147. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 確かに先生指摘のように業種によって多少の差はあるわけでございますけれども原材料エネルギーコストの上昇、国内需要の低迷、過当競争の激化という三つの構造要因は七つの業種に共通をしておるわけでございます。したがいまして、対策につきましても、そういう共通の構造的困難に直面しております基礎素材産業対策ということの一環といたしまして、活生化設備投資を推進しようという制度でございますから、特殊法律業種ごとに異なるものにするというのは、やはり適当ではないんではないかというふうに考えております。
  148. 田代富士男

    田代富士男君 それはおかしいですよ。原因は三つとおっしゃったでしょう。しかし、いま大臣が耐用年数の問題もこういう本当にいままでにないこういう発展的な御意見を述べていらっしゃるんだから、そこまで検討をしていただくものであるならば、それはその三つの上から出しているんだと言うけれども、素材産業別々の違いがあるんですから、この法律は決まってしまったんだからいまさら動かせられないというそれはわかりますよ。しかし、今後これは検討する余地があると思うんです。この点大臣いかがでしょうか。今後検討する余地があると思うんです。いかがでしょう。
  149. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ちょっと返事が遅かったんですが、いまここで法律をお願いしていて、そしておっしゃることはわかりますから、そのことが肯綮に当たる御意見であっても、今後考えると言いましても、これ五年間の時限立法でございますし、そしてこの条件で手を上げる期間は政令で一年半ですから、そうのんびりしていては御趣旨はわかっても間に合わぬということでありますので、この際は、条件がむしろ同じであることによって、各指定業種がそれを前提としての作業を一日も早く開始できるように、そしてこれをまた再々延長なんということをするようなことではこの法律その自体が役に立たないということを意味しますので、再々延長もないんだということになりますれば、当然産業界はそれぞれの計算方法なり対応というものは、やはり日本産業というものは日本人のすばらしさというものが凝集した産業でございまして、私は日本人の知能というものは、このような客観的にまずい条件のもとに置かれた産業であっても、それを切り抜ける知恵は出すんじゃないかと。したがって、いろいろ理解できる点はございますが、まずはこの法律でもって渾身の力を振りしぼってごらんなさいと、条件は一緒ですよということで出発させたいと思います。
  150. 田代富士男

    田代富士男君 これはこれ以上詰めようとしても詰まらない問題だと思いますけれども、これは検討する余地があったと私は記憶にとどめておきます。  次に、今回の石油値下げによりまして電力の値下げが行われるならば、値下げが石油関連にも及んでくるわけでございます。そういたしますと、電力の多消費型の基礎素材産業にも、それなりによい影響を与えるのではないかと思うわけなんですが、その中でも電力消費型のアルミニウムやフェロアロイなどについてはどのように取り組まれるのか、これもちょっと検討すべき道があるのではないかと思いますが、これは一律と言わずに検討する余地はあると思うんです。どうでしょう。
  151. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 卸売物価にもそろそろ産油国の値下げの日本到着は係る低下傾向が少しですが見え始めましたので、これからいよいよ産業政策にそれを取り入れていくわけでありますが、まず第一に、電力に対して石油会社はどう対応するのか、四〇%ぐらいしかいま石油の占めるエネルギー分野のシェアは電力会社にはない時代になってはおりますが、なおかつ大きな要素の一つでありますから、石油業界がその恩典をどのようにしてまず電力の燃料として供給するのかという問題に取り組む必要がありますので、先般石油業界はガソリンと灯油について値下げを発表いたしましたですね。しかし、なぜか、というのは、いまごろがそろそろその時期になっているのか知りませんが、そのときは電力用C重油あるいは工業用の、産業用のものですね、それと、産業とはちょっと言えないにしても、漁業用のA重油、こういうもの等も値下げをすべきではなかったのか。漁業用A重油と簡単に言いますが、魚をとるにはいまや油を積んで沖に出なければならぬ。油を積んで沖に出て、持って帰った魚を、高いコストの油を、高い燃料をコストとして転嫁して魚が売れるかというとなかなかそういかない。そうすると、漁業とは何ぞやという疑問にぶち当たっているのが日本の漁民だと思うんです。海に出て魚をとって帰ってきたらそのたびに損をするという、それならそれは職業じゃないと私は思うんです。したがって、そのような状況で、政府は融資などでしのいでおりますが、さしあたりはC重油、漁業用に限ってもA重油、そういうようなところは、なぜ石油業界はそろそろ値下げの動きに出ないのかということを、それを調査するようにいま事務当局に命じてございます。ここらから、何しろ油を安くしませんと、電力料金はどっかでか安くなったらしいが自分のところに届く燃料は安くなっていないんでは、これは電力会社にとっても酷な話でありますから、そこらのところから逐次やはり産業の正常なる環境の中で、正常に作動していく第一歩として石油がだんだん安い石油が入り始めたならば、高いものがあったことはわかってますから、それから逐次、最終的には五ドル値下げ原油になるんでありましょうから、そこらのタイムラグ等いま計算もさしておりますが、そういうもので石油会社が動き出す、それを受けた電力がそのメリットを受けて、それをどうするかという問題の順序になろうかと考えます。
  152. 田代富士男

    田代富士男君 次に質問を移りますが、今回の改正におきまして、大きな問題になったのは、午前中も質疑が繰り返されましたけれども、独禁政策産業政策の対立と調整にあったのではないかと思うわけでございます。  そこで私は、この独禁政策に関する基本的な問題をちょっと伺うと同時に、改正案の内容についてお尋ねをしたいと思いますが、まあ独禁政策海外主要国におきましては普及して十分定着をしていると考えるわけでございます。そういう立場からまず今回の問題もあわして考えてみたいと思いますけれども、わが国においては競争政策ないし独禁法は定着をしたと考えたいんですが、諸外国に比べますとまだその定着度の点についてはちょっと考える面もあるのではないかと思うわけでございますが、ここらあたりも公取委員長来ていただいておりますから、忌憚のない意見を述べていただきたいと思うわけでございます。  そして現在、最近低成長経済下では規制緩和の方向で独占禁止法を改正すべきだという、こういう意見が出ていることは御存じだと思います。その意見とまた反対に、一方では低成長時代だからこそ独禁政策が重要になってくるという、こういう見方もあるわけなんです。この見方は非常に公取と通産省とこれ対立した関係じゃなしに、調整していかなくちゃならない関係でありますから、こういう問題を通じまして公取委員長並びに通産大臣からお答えいただきたいと思います。
  153. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 世界の大勢でございますけれども、ただいまもお話がありましたように、先進国と申しますか、自由主義体制にあります先進国はほとんど独禁法を持っておるほかに、最近の傾向といたしまして、発展途上国も独占禁止法の制定をかなり積極的に行っております。三年前の一九八〇年に制限的商慣行に関する国連の理事会規則というのができまして勧告されましてから、なおさら発展途上国での独占禁止法親の制定ということはふえてまいるような形勢にございます。  なぜこういうことになったかと申しますと、やはり先進国におけるスタグフレーション、物価の値上がり、経済の寡占化と、こういった問題に対しては経済に活力を与える、そのために企業の創意工夫を生かして競争によって経済の効率を保とうと、こういう考え方が出てまいったことが一番大きいというふうに思います。  低成長に移ってまいりますと、まあ競争が非常に激しくなって、いわゆる過当競争と言われておる状態が蔓延をしてきますので、この際競争を制限した方が経済の安定のためにいいんじゃないかという意見が出てくることは確かに事実でございます、お話のとおりでございますけれども。しかしながら、世界全体を見渡しておりまして、不況になったから独禁政策を緩和する、競争政策の例外をつくる、こういう発想をしておる国はきわめてまれだというふうに思います。不況の中でやはり物価を安定させ経済の発展を図っていくために、やはり競争政策は競争政策として守り抜かなければならぬという気持ちが強いというふうに私ども思っておりますし、OECDでも制限的商慣行を排除していこうという動きが非常に強いわけであります。  よく私申しますことですが、独占禁止法と申しますか、反トラスト法といいますのは経済の交通のルールみたいなもので、したがって、不況になってまいりまして、いま、何と申しますか、経済が小さくなって企業の行動が激しくなりますと、それだけ交通違反が起こりやすくなってくる。そういうときこそルールを守ることが大事であるというふうに思いますし、片っ方で国民経済活性化、活力の維持、物価の安定ということが必要であれば、それだけ経済の効率化を高めていかなければならない。そのために競争が大事であるという考え方をとっておる次第でございます。  事実、日本の独占禁止法は昭和二十二年に制定されましてから三十六年たつわけでございますが、その間三回の改正を経ておりまして、したがって、かなり日本経済的な風土に定着したものになっておるというふうに思っております。また、どこの国でもほとんどの国で戦後独占禁止法期に入ったわけでございまして、日本だけが占領の落とし子として出てきたものでもございませんし、仮に二十三年以降のこの問題をとりましても、二十八年の改正ということでかなり日本の風土に適したものになってきておる。今後は、そういう経済のルールを経済界の方々にのみ込んでいただいて、そのよき理解を得ながら運用に努めてまいるというのが、私どもの仕事であるというのが、ただいまの考えでございます。
  154. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 日本の独占禁止法は、世界で最も完備された法体系のもとに整えられた法律であると思います。しかし、それが社会にいま定着しておるかと言われますと、最も定着していないと、実は私は委員長とは別に感じておる点があります。  それは、たとえばアメリカは今度日本のトヨタとGMがアメリカでわずかな規模であっても合弁で車をつくろうという合意はできても、アメリカの方ではフォード社がそれに対して異議を唱えた。その根拠として一八九六年のシャーマン法違反、要するに前世紀の末のシャーマン法違反が一つ、それから次はまあ一九〇〇年に入ってすぐですけれども、一九〇〇年代に入って冒頭にできたクレートン法に違反している、この二つを違反の事由として、それぞれの条件に当てはめて反論をしておるところを見ますと、非常に歴史が長く、そしてそれが判例の積み重ね的なものによって社会一般に当然のこととして、アンチトラスト法というものがある社会に自分たちはいるという考え方のもとに、企業をつくり運営をしております。ですから、向こうの方はちっともアンチトラスト法に対する苦情はない。むしろそのことは一流の企業でアンチトラスト法事門の弁護士を雇っていない企業はないというのがアメリカです。  しかし、法律上はアメリカの方はどうもどこまでこれ可能と読んだらいいのかどうか。日本のように昔法匪と言われた人がつくったものほど体裁が整ってないわけですね。日本の場合は、これは委員長はでき上がった法律を運営しているときに委員長に就任したんで、それは大変楽にやっていると思いますが、これをいまの法律につくるまでの苦労は私がしたんであって、だから自民党の中で賛成者は一人もなし、もちろんその当時の――当時のに重点を置いておきますが、通産省も反対、財界は総力を挙げて反対、その中で生まれたものを彼はいただいてやっているわけですから比較的感じないと思うんですが、しかし実感としては、絶えず財界とか、与党の私どもの仲間の中から、独禁法を今度は改正をもう一遍やろうと、理由はいろいろありましょうけれども、いまのままじゃいかぬという声が絶えず起こるということは、日本ではまだ定着しておらない、合意が完全には得られておらないという点がある。この点は委員長も少し足元をよく気をつけて運営されぬと思わざる事態に発展するおそれがありますから、公正なる運用のほどを切にお願いを申し上げる次第でございます。
  155. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまうんちくのある御答弁をいただいたわけでございますが、今回の改正案をまとめるにつきましては、産業政策の立場から、また独禁法の立場から、通産省また公取委員会の両者の間においていろいろのやりとりがあったかと思うんです。  そこで、その幾つかの問題についてお尋ねをいたしますけれども、今回とられようとしている基礎素材産業政策OECDの積極的調整政策PAPのガイドラインで示している考え方との調整問題でありますけれども、まずPAPのガイドラインを説明をしていただきたい、また、今回の改正内容がこのPAPのガイドラインにどのように沿ったものであるのか、これもあわせて御説明いただきたいと思います。
  156. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生指摘PAPのガイドラインでございますが、これは昭和五十三年六月にOECD閣僚理事会で採択されましたPAPの一般方針というのと、昨年の五月に同じく閣僚理事会で採択をされましたPAP声明というものの中に明らかにされておる積極的調整政策、つまりポジティブ・アジャストメント・ポリシーの考え方を指しておるわけでございます。  それで、PAP考え方の背景といたしましては、各国が競争力の低下した産業について、輸入制限といったような保護主義的な措置をとってまいりますと、中長期的に非効率的な企業を温存することとなりますし、その結果といたしまして生産性を低め、インフレ体質を助長いたしまして、さらには他国の保護主義的対応を惹起しかねないという、その認識が背景にあったわけでございます。  そこでPAPでは、構造的問題を抱え、調整を要する産業につきましては過剰設備の漸進的廃棄による縮小と新規投資や技術開発による活性化との両面からなる産業調整が必要であるということを指摘しておるわけでございます。その意味で、このような産業調整は積極的調整政策というふうに呼ばれておるわけでございます。  さらに、かかる積極的産業調整は、開放市場体制のもとで、限られた期間の中で進められるべきことが強調されておるわけでございます。  以上がPAP考え方でございますが、そこで新法の考え方でございますけれども、これは先ほどもちょっと触れさしていただきましたように、山中原則ということをベースにいたしまして立法に当たったわけでございます。  それで、山中原則の中には縮小活性化考え方がまさにうたわれておるわけでございますし、業界の自主的な努力、甘えの構造は許さないということも明示されておるわけでございますし、開放経済体制を前提といたしまして、時限的な措置であるということも明言されておるわけでございます。  そういう考え方を踏まえまして立案作業に取り組んだわけでございまして、その考え方は全部この新法に生かされておるわけでございます。つまり、縮小活性化考え方は、先ほども申しましたように、設備処理と事業提携等の活性化施策とが車の両輪として採用されておるということ、対策の時限性につきましては、五年間の時限立法であるということ、業界の自主性を尊重するという点につきましては、候補業種を具体的に、法律に基づきます業種とするためには、業界の申し出を前提としておるということ、さらに業界の自主的な努力の規定が第四条に明示されておるといったようなことから、業界の自主性を前提とした考え方というのは出ておるわけでございますし、またこの法律には出ておりませんけれども輸入制限は行わないで、開放市場体制というのを前提としてこの措置はとるということも当然の前提として考えておるわけでございます。  したがいまして、新法はPAPに決めておりますガイドラインの方向に全く合致した政策でございまして、どこへ出て説明をしても問題になることはないというふうに確信をしておるものでございます。
  157. 田代富士男

    田代富士男君 私の質問時間が間もなく参るようでございますから、まとめて御質問をしたいと思いますけれども改正法案の第十二条には事業提携計画についての調整条項が新たに設けられましたけれども、この規定の基本的な考え方をお聞きしたいと思いますし、それとあわせまして、運用上の問題として、主務大臣と公取との調整の結果、事実上の適用除外となる危惧はないのかというこの問題でございます。それとまた、公取と主務大臣意見が一致しない場合はどうするのか。  これは通産大臣、公取委員長両者からお答えいただきたいと思います。
  158. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この問題は、私が最初に申しましたように、一番最初に何を重点に作業を始めたかという問題に、独禁法というものとの整合性ということに努力をした、すなわち独禁法適用除外としない、独禁法の許容範囲内において産業政策を展開するということでやっておるわけでありますから、したがって結論から申しますと、公正取引委員会通産当局とが対立をして、対立をした形のままで、解決を見ないで一方的な行為に踏み切るとかいうことはあり得ない仕組みになっております。  一応それだけお答えしておきます。
  159. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 通産大臣からただいまお答えのありましたとおりでございまして、法律的には事業提携に関しては独禁法の適用が除外されていないわけでございます。  しからば運用上、事実上骨抜きになっておるんではないかというお尋ねでございますけれども、その点は第四項から第九項までの規定によりまして、随時意見の交換をしながら調整を図って、円滑に実施していくわけでございますから、恐らく現実には十分話し合いが行われて、意見の不一致ということは生じないというふうに思っておるわけでございます。
  160. 田代富士男

    田代富士男君 集約化のガイドラインについてお尋ねをいたしますけれども、昭和五十五年の合併に関する審査基準では、市場シェアが二五%以下になっておりますけれども、この目安から見まして、今回のガイドラインも二五%と考えてよいのか、また現在、作業はどこまで進んでいるのか、また公表の時期はいつごろになるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  161. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 昭和五十五年のいわゆる合併ガイドライン、この場合には合併後のシェアが二五%以上になる、そういう場合には原則として重点審査にいたしますと。  重点審査の場合の基準といたしましては、一つはそのシェフ、市場占拠率、それからもう一つは市場の状況、それから関連いたしました市場の状況、その合併しようとする会社の総合的な事業能力、それらを総合勘架して合併の適否を判定をいたすという構成をとっておるわけであります。  したがいまして、二五%を超えたという合併であれば即それが否定されるという性質のものではないわけでございますが、今回ガイドラインを公表いたします趣旨は、こういう特定基礎素材産業不況につきましては、業界全体が特別の経営困難の状況にある、その他特殊の事情もございますので、したがいましてそういうわかりやすいガイドラインを特別につくろうということであります。  その時期はいつかというお尋ねでございますが、法律の成立を見ました暁には、できるだけ早くやりたいというふうに考えております。
  162. 田代富士男

    田代富士男君 次に、適用除外の見直しの問題についてお尋ねをしたいと思いますけれども、わが国では主務官庁の行う産業政策のために政府規制を制度化したり、独禁法の適用除外を定めた法律が多数ありますけれども、御存じのとおりすでに相当の年月を経ているものもありまして、現時点において見直しを図るべきものではないかと思うんですけれども、この点に対するお考えをお聞きしたいと思いますし、それと同様に、公取といたしまして適用除外の見直し作業がどのようになっているのか、その成果を具体的にするつもりはないのか、ここらあたりあわせてお聞きをしたいと思います。
  163. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 全体の産業を効率化して経済全体を活性化を図っていくということは、日本はとっても重要な課題であります。そのために制定後すでに年を経て、実際上の必要性が那辺にありやという点について見直すことの可能な政府規制制度、または独禁法の適用除外制度というものがあるわけでございますから、昭和五十四年でございましたか、OECD政府規制と独禁法の適用除外制度の見直しを行うべきであるという勧告等もございましたのを契機といたしまして二年ぐらいの間この政府規制制度について勉強いたしてまいって、その結果を昨年の八月に公表をいたしたわけであります。それは政府規制制度の見直しについて十六の業種を挙げまして、それぞれの業種についての規制の緩和や手続の簡素化等の適当な措置を講ずる必要があるのではないかという問題提起であったわけであります。で、行政管理庁それから過般の臨時行政調査会それぞれでやはり――私ども考え方をとってと申したら僣越でありますが、同じように政府規制制度の問題点というものを御認識になってそれぞれ行政監察をおやりになるとか、臨調の報告の中に書いてあるということがございます。中期、長期的な問題でもありますし、所管省との間の調整についてまだまだいろいろ時間をかけてやっていかなけりゃならないというふうに思っておりますけれども外国でもかなり政府規制制度につきましては、経済の効率化のために重要な問題として認識されて、アメリカ、イギリス初めかなりでレギュレーションというものも進んでおるわけでございますから、わが国としても政府を挙げてそういう検討を進めていただくように希望をいたしておる次第でございます。
  164. 田代富士男

    田代富士男君 時間が参りましたから、私城下町法案質疑をしたいと思いましたけれども、時間がありませんからまとめて一問だけ御質問したいと思いますけれども、五十三年十一月に法が施行されて以来のこの実施状況がどうなっているのか、まあ御承知のとおりに、多数の中小企業者の経営がなお不安定というのが現状ではないかと思いまして、現行法効果というものをどのように見ているのかお尋ねしたいと思います。  それからこの産地法との関係、運用についてお尋ねしますが、それは報道によりますと改正法と産地法とは連動されるということが言われておるわけでございますが、個別の法律の連動という点がいまひとつ明確でありません。そこで、中小企業庁として具体的にどのように法律を運用していかれるのか、あわせて時間がありませんからその点だけお尋ねをいたします。  造船の関係で運輸省残っていただいておりましたけれども、ここで割愛いたします。申しわけございません。
  165. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 現行法効果でございますが、具体的には御承知のように特定不況地域といたしまして四十七地域五十一市町村、並びに関連市町村といたしまして九十六関連市町村が指定をされておりますし、また法律に基づく認定中小企業者は五千件以上に及んでおり、緊急融資も約四百三十億、あるいは信用補完措置も百九十億円といったような実績が上がっておるわけでございますが、これらの数字から、あるいは法律の運用を通じて具体的にしからば、具体的と申しますか、本質的にどのような効果が上がっているのかと、こういう御指摘に対しましては基本的にはやはり第一次オイルショックの急激なインパクトから来る当該地域に対しての底割れ的な状況は緊急融資等で防ぐことができたと、本来それによりまして新しい企業誘致とか、あるいは城主様に擬せられておる特定事業所が立ち直っていくということを期待しておったわけでございますし、現実にこの法律が五十三年に施行されましてから五十四年あるいは五十五年の一時期まで経済環境も比較的恵まれまして、たとえばこれらの地域の有効求人倍率の状況等を見ましても逐次状況改善しておったわけでございますが、御承知のように五十五年からいわゆる第二次ショックのかげり現象が出てまいりまして、第二次オイルショックの影響としての構造不況業種問題は、先ほど来御議論のようにさらに問題が大きくなってきた。したがいまして、各地域の状況というのは改善という状況ではなくして、ますます悪くなってきておると、こういう状況でございますので、この状況対応して新しく本法を拡充し、延長をお願いをしておる、こういう次第でございます。  さらに、今度の新しい法律では振興対策が加えられるが、これは産地法のいろいろな振興事業と連動して運用されるのではないかと一部報道されておりますが、この両法の関係は一言で申し上げれば城主様のような構造不況業種があって、その影響、それが傾いたためにその地域全体が、中小企業がダメージを受けている場合は本法の指摘を受けるわけでございますが、そういう特定事業所がなくても、産地の中小企業、あるいは中小企業が産地を形成しておって、その産地を形成しておる業種が何らかの状況経済的な悪影響を受けて非常に大きなインパクトを受けておる場合には産地法の指定でその中小企業自身の振興のため、あるいは進路変換のための努力を産地法で助成をいたしておるわけでございます。  したがいまして、振興事業という観点だけとらえますと似ておるようでございますが、対象になるもの――事業者、あるいは原因といったものは全く異なっておるわけでございまして、したがいまして、法律としてはねらい、あるいはそのもたらそうと思う効果も異なっておるわけでございますが、しかし、産地の中でも、産地ではあるが、同時にそこに城主様のような大企業がおり、そこが問題を起こしておると、そういう地域は産地法でも指定されますし、本法でもダブって指定されることがあるわけでございます。そのような場合には通常、関連城下町法で指定されるような、あるいは認定を受けるような中小企業が行う振興事業と、あるいは産地を形成しておる中小企業が行う振興事業というのはほとんど違っておるわけでございますが、中には同一地域でございますので同じような振興事業をやろうというものもまれに出てくるかもしれません。その場合には違った法律の振興事業であるからといって、同じような目的のものにダブって国としていろいろ助成を与えるということはいろいろ問題もあるかもしれませんので、その辺の調整は行うことは考えておりますが、基本的には城下町法の振興事業は城下町法の振興事業、産地法の振興事業は産地法の振興事業、こういう考え方で進めてまいるつもりでございます。
  166. 市川正一

    ○市川正一君 本日は法案そのものに即してお伺いしたいんでありますが、最初に特安法改正案について質問いたします。  まず業種指定の問題でありますけれども、午前中吉田委員からも質問がありました。法律の第二条第一項第一号から七号まで具体的に業種を指定し、そして第八号でこれから約一年半の間に追加して業種指定ができる仕組みになっております。この第八号の規定は「生産費の相当部分原材料及びエネルギーの費用が占める」業種を限定しておりますが、しかし、「設備の生産能力が著しく過剰」であるとか、あるいは「経営の著しい不安定」などということになりますと、そういう条件に適合する業種はほかにもあるんじゃないかと思うんですが、そういう業種があるのかないのか、またあればどういう業種が挙げられるのか、その点をまずお聞きしたいんでございますけれども
  167. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 基礎素材産業につきましては、先ほど系御説明申し上げておりますように、原材料エネルギーコストの上昇ということと、需要の低迷というのと、過当競争の激化という三つの構造的問題に直面をしておるという業種でございまして、しかもその産業国民経済における重要性にかんがみまして、緊急的に対応考えようということで本法が考えられておるわけでございます。したがいまして、当面この政令の追加対象として考えておりますのも、私ども基礎素材産業の中でもう限定をしておるわけでございます。先ほど先生のおっしゃいました過剰設備があるとか生産方式が古くなっておるとかという、そこだけに着目をいたしますといろんな業種考えられるかと思いますけれども、ここでは基礎素材産業に限定をして考えておるということをまず御理解をいただきたいと思います。  それから、昨年の夏以来、産業構造審議会の中で具体的な業種の議論もやってきたわけでございます。したがって、現下の局面におきまして構造要因を抱えておりまして、しかも業界にも盛り上がりのある業種につきましては七つの業種ということで現実に法定をしたわけでございます。もちろん、八号ということで追加指定の道は残しておるわけでございますけれども、現実考えられるところでは追加候補業種というのは必ずしも明らかになってないという現状でございます。
  168. 市川正一

    ○市川正一君 その明らかになってないということは、事実上、いわば予想されない、想定されない、そういう理解でいいんですか。
  169. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) これは、経済は生き物でございまして、業種の方の働きもいろいろあると思いますので、一年半のこれからの余裕期間もあるわけでございますから、いまこの時点で一切ないということは断言できませんけれども、少なくともいままでの議論の経過を踏まえて考えますと、この時点において具体的に追加候補業種として考えられるものはまだ念頭にはございませんということでございます。
  170. 市川正一

    ○市川正一君 やはり経済の実態、そしてまたそれぞれの楽界の実態をよく一番責任を持ってつかんでいらっしゃるはずの通産省がそうおっしゃっていると。さっき大臣は念のために書いておいたんやと、まるで盲腸条項みたいなことをおっしゃったんですが、そうするとわからぬのは事実上使わない規定、事実上そういうものはいま想定してないという規定をなぜ置いているのか、そこがわからぬのですが、私はこの規定は、そんなら要らぬのやないか。どうです。
  171. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) そこは私どもは必ずしもそうは思っておりません。現行特安法の運用におきましても、これは実は追加候補業種の期間は一年だったわけでございますが、一年経過した時点で実はこの法律の対象になりたいという企業業種が現実にあった事例もあるわけでございます。それはもちろん具体的に法律をつくった段階では想定はしてなかったわけでございます。したがって、経済の実態というのは非常に流動的でございまして、生き物でございますので、私どもはこの弾力条項によりまして、現実に弾力的に対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  172. 市川正一

    ○市川正一君 論理的にはそういうことは言い得ても、実態的にはそれはない、こうおっしゃっているわけです。そうすると、あえてこの規定を置いたとするのは何か別の目的があるんじゃないか、こう思いたくなるんですね。  今回の法改正では、指定業種の呼び方を特定不況産業を特定産業というふうに改められたわけですが、これはいままでの本法案の審議の中でも、当該業種や地域の人々からは不況という呼び名がよくないというような指摘もあって削ったんやと、こうお答えになっているんですが、果たしてしかく単純なのかと。不況の文字を削除した結果、法律の条文を読んでみますと、不況で倒産しそうな企業救済するための対策という従来のイメージから、政府が特別に振興したいと思う産業あるいは業種をこの法律を契機に特別の対策実施し得る内容とも受け取られる要素があるわけですが、私はこの際はっきりお答え願いたいんですが、政府としてはそういうことは考えておらぬ、当面の不況対策として実施するためのものであり、運用を広げることは考えておらぬということを、念のためにひとつ明言しておいていただきたいと思います。
  173. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) この新法の第二条第一項第八号にその追加政令指定の要件が細かく書き並べてあるわけでございますが、現行特安法の指定の要件は、過剰設備の存在というのと経営の不安定というような要件があったわけでございますが、それにさらに加えまして、新たに生産経営の規模または生産方式の不適当であるとか、あるいは石油危機の影響による原材料エネルギーコスト上昇が構造的困難の要因になっておるというような要件が加重をされておるわけでございまして、現行特安法の運用よりも指定要件は厳しくなっているような状況でございます。しかも、冒頭申し上げましたように、対象業種基礎素材産業に限定をされるわけでございまして、私ども不況という名のもとにこれをずるずると幅広く運用しようなんということは毛頭考えてないわけでございます。
  174. 市川正一

    ○市川正一君 大臣、念のために、そうでございますか。
  175. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 前にお話をしていたらお許し願いたいと思うんですが、この作業をやっております間に、いま言ったようなことでどうも手を挙げてきそうにない。しかし、たとえば国際砂糖協定があっても、それは投機的なあるいはまた東西冷戦的な要素などがあって絶えず糖価が日本では変動する砂糖業界ですよね。さらに、そのことによって北海道のビート、沖縄のキビ、そういうものにも相当大きな影響が出る砂糖業界というのは一体何を考えているんだろう、こういう法律にどうして手を挙げないんだろうというので、一度ならず農水省に対して、砂糖業界はこの法律のもとで明らかな過剰設備がありますしね、溶糖能力は一八〇%あるといわれている。したがって、全部赤字でもって出血操業、販売をやっているという、ばかばかしい、消費者にとってはかえっていいことかもしれませんが、そういう気はないのかねということを聞かしたんですが、どうもまとまる自信がないのか、あるいは国内で糖価安定法という法律があって、まあまあ何とかいけると思っているのか、返事なしというような感じでここまで来ました。したがって私としては、もうこれは見込みないな、この法律には自分たちでもその意思はないなと見ております。しかし本当に一年半の間に、農水省もひっくるめて、生産者の問題まで関係してくるわけですから、消費者ももちろん関係ありますし、そういう意味で真剣に検討をして、この法律の前提条件を満たすようなもので持ってきたならば、これはあるいは対象になるかならないかをもう一遍内容次第によっては検討しなければなりませんが、まあ五分五分という感じじゃなかろうか。しかし目下のところは持ってこようと言いませんので対象にしてはおりませんし、検討もしておりませんが、まあまあ可能性とすれば私の考え範囲ではそこらぐらいのところはちょっと一応検討してみたという点はありますが、何にも追加を一年半しないことがわかっていてなぜ政令条項を書くんだと言われますと、それは確かにそうでしょうが、この政令を定めるものとしての条件がずっと書いてございまして、これは逆に一、二、三、四、五、六、七という指定業種の性格をあらわしたものである、それは法律のそういうあらわし方のいかんでございますけれども、しかし一年半の間でこの条件のもとに手を挙げる人がおったらというやっぱり余裕を上げておきませんと、私たちはそう考えておりません、それは視野が狭いとかあるいはお上から物を見た目という、いろんな目の違いがあるでしょう。しかし、いまのたうち回って苦しんでいると思われる産業の中で、この法律の趣旨、内容、目的に沿う産業は、もし仮に手を挙げて、なるほど私たちが見落としていたということが神ならぬ身のないとは言えないと思う。そういう意味で、政令にゆだねる条項が一年半存在はいたしますが、いずれにしても期限は五年で切れるわけでありますから、この政令条項を書いたことが法律としておかしいということにはならないんで、むしろ御理解を願いたいという気持ちでございます。
  176. 市川正一

    ○市川正一君 いま大臣も言われた期間の問題ですが、昭和六十三年の六月三十日で廃止することになっておるわけですが、先ほど大臣は、もし再延長するようなことになるならば、それは役に立たなかったということなんだから、だから再々延長はないんだと、こう断言なさっていた。私から言わせると、すでにこの法律は破綻し、それが今回の延長なんだと、私はそういう認識に立っております。しかしながら、念のためにお伺いするが、五年たってまた経済的な事情が変わったというふうな理由で再度延長されるということはございませんですか。
  177. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、私ども国会並びに政府が世界の経済情勢をどこまで的確に見通せるのかという問題に対する答えに係るだろうと思うんですね。今回の石油五ドル値下げも、それで済むのか、あるいはそれであったら何年ぐらい続くのかの見きわめは非常に大切なことだと思っています。しかし、目下のところ、それの自信のある人は――上余り予言者もこのごろは当たらないものだからいなくなってきたんですけれども、大変むずかしいことである。でありますから、この法律を――その証拠には既存の法律を五年間延長するじゃないかという御反論があると思いますが、これは先ほど局長が申しましたように、まさか二回目の石油によるアタックというものをわれわれが受けようとは思っていなかったことで、その第二次の危機といるものを乗り越えられなかったというところで、このままほっぽり出したらこれとてもじゃないということで、日本からその指定された産業が消えていくことを指をくわえて見ていいのか。そうすると、供給は外国の手に握られて、そして、われわれがいかなる相互安全保障といっても、日本にかつて存在した企業の製造に係った物品が、相手国の売り手市場として日本マーケットで一方的な値段をつけられて、数量も向こうの言われる数量しか買えないという状態に国家を置くわけにいかぬということで延長に踏み切りたわけでありますから、そして、今回は第三次石油ショックが来るか来ないかという議論が確かにあります。これを安易は五ドル値下げを受けとめて放漫な経済に移ろうとすれば、われわれがみずから産油国のカルテルの機能を復活させることを手伝うことになりますから、私たちは全部、自由主義経済圏なりあるいはOECDなりあるいはOPEC以外の先進工業国なりというものは英知をしぼって、場合によっては私は産消対話――もうOPECのカルテル能力も四〇%ぐらいまで力が衰えておりますから、こういうときに産消対話、すなわち日本のような消費一点張りの国というものが行って、向こうも苦しいんでしょうから、お互いが慰め合って、それがよき結果を与えるならばそれがいいんじゃなかろうかということで、私、総理の御依頼といいますか、代理で行ってこいという御命令もございましたので、産油国の一部にもパリから時間を見て訪問して、それぞれ石油相を中心に会ってきたいと思いますが、そこらのところでまた違った感触を私も得て帰ることができるかもしれませんが、要するに総力を挙げて見通しは、努力したいと思いますが、この法律は少なくともこの種の形で五年たった後も延ばすことがあり得るべしというようなことになったら、これは産業界、この指定業種もたらんとした対応しかないでしょうし、また、政令指定も一年半あって、一年五カ月目ぐらいに手を挙げてくるようなものも出るかもしれない。ですから、私はこの法律の再々延長ということはなし、一年半の政令で待っておる期間もそれを延長することはないと、したがって、はっきり申し上げておいて、民間も自分たちの活力と言いながらも、そこらのところにも甘えるすぎが出てくるといけませんので、再々延長はいたしませんと、政令指定期間の、手を挙げる期間の延長もいたしませんと、これで終わりでございますということを明確にしておきたいと考えます。
  178. 市川正一

    ○市川正一君 じゃあ、中身でお聞きしたいんですが、まず、過剰設備の問題であります。  指定業種の持っている設備が過剰であるかどうか、その判断はやはり慎重でなければならぬと思います。現在ある過剰設備と言われているものも、当該業種景気循環の中で当面過剰の状態になっているのか、それとも中長期的に見て過剰であるのか、これはやはり判断が私は必要だと思います。で、設備投資やその償却の進め方は、需給の動向を見ながら、当該業種のいわば事業主がみずからの責任で実施すべきもの、言いかえれば経営努力にすぐれて属する問題だと、こう私は思います。  そこで、通産省は何を基準に、どういう方法でその設備が処理さるべき過剰設備であると、こう判断なさるのか、そこを簡潔にちょっとお伺いしたいと思います。
  179. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 過剰設備の発生というのが、個別企業経営者の経常判断の問題あるいは循環的要因ということから生じておる場合には、これはもう当然民間の自主的な努力によって対応されるべきものと考えておるわけでございます。ただまあ本法の対象として考えております基礎素材産業につきましては、先ほども申しましたように原材料エネルギーコストの上昇、需要の低迷とか過当競争の激化という、その構造要因というところから問題が起こっておるわけでございますので、そういう構造的問題にどう対処するかということで、過剰設備の問題というのも構造的問題として出ておるわけでございます。  そこで、具体的にどうしていくかということでございますが、私どもは、構造改善基本計画の策定の段階におきまして、過剰設備処理の量とかあるいは期間等を決めていくわけでございますが、その際には将来の需要見通し、構造改善効果開発輸入の動向等を総合的に勘案をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。特に、先生指摘のように、需給見通しの検討というのが大変重要なテーマになろうと思うわけでございますが、そういう場合にも、ユーザー業界の参加も得まして、まあ十分適切なその需給見通しを判断していきたいというふうに思っておるわけでございます。そして、それを踏まえまして生産能力を算定するに当たりましては、将来の需給変動に対して弾力性を欠くことがないように、適正稼働率を勘案いたしまして、十分な供給余力を維持できるような形にしておきたいというふうに考えておるわけでございまして、したがって、いやしくもその設備処理によりまして需給の逼迫を招いたり、あるいはその価格上昇を招くということのないように配慮してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。そして、万が一にも需給の逼迫とかあるいは価格の上昇といったようなことが出てくる場合には、構造改善基本計画の変更等によりまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  180. 市川正一

    ○市川正一君 いまの問題なんですが、たとえば産構審の提言などを拝見しますと、「基礎素材産業の製品は一般に汎用品であり、製品差別化の余地が小さいこと、装置産業であり、規模の利益を確保するため常に増産圧力が働きやすい」、こう指摘している。こういういわば事情を背景に特に高度成長期に設備投資競争が非常に激烈にやられておる、そういったもののとがといいますか矛盾がいま表面化している、私はそう思うんであります。ですから、需要が低迷すると設備を縮小し、回復するとこれまた増設、こういう競争を何回も繰り返している。言うならば無政府的にそういうことがやられておる。ですから、私ども衆議院の審議でも石油化学業界の過剰設備の実態を指摘いたし、先ほど田代委員とのやりとりもございました。たとえば法定償却年数九年をはるかに超えたものまで、たとえば現に二十三年も経過したものまで、午前中、修理して云々ということもございましたけれども、本来ならばもう償却しておくべきものまで過剰設備に数え上げて、そして措置の対象にしようとしておる。これは過剰というよりも、いま言ったような無計画的な無政府的ないわば設備投資ですね。そして、不況になるとそのけつを他に転嫁していくというような、いわば企業なりあるいは企業グループの責任というものをこれはやっぱり不問に付したままで対応していくというのは国民的な納得を私は得られないと思うんですが、こういう点ではどういうふうに認識なさっているんですか。
  181. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生指摘のように、単なる景気循環的な要因に基づいて過剰設備が発生しておるというような場合には、当然民間の自主的な努力によって自己責任の原則のもとにそれは対応されてしかるべきものであるというふうに考えておるわけでございますが、何度も御説明させていただきましたように、今回の措置というのは、二度にわたる石油危機という企業の自己責任の範囲を超えた異常な事態のもとにおきまして構造的困難に直面しているものを具体的に考えていこうということでございますので、そこは区別して考えていく必要があるんではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、具体的にこの法律に基づく措置を講ずる場合でも、事業者の自主的な努力というのが当然前提にはなっておるわけでございますけれども、その自主的な努力をもってしては円滑な処理実施されない場合に、初めて政府がその後から出ていくという形になるわけでございます。設備処理に係ります支援措置に関しましても、設備処理に伴って必要不可欠となる退職金等に係ります債務保証や、あるいはその設備廃棄によって生じます除却損に係る欠損金の繰越控除といったような、必要最小限の措置に限定をしておるわけでございます。
  182. 市川正一

    ○市川正一君 私はこういう業種業界をつぶせと言うんじゃなしに、本当に国民的立場からいえば発展させにゃならぬ。しかし、それにはやっぱり私はいま政府なりがおとりになっている道ではそうならないと思うんですけれども、たとえば石油化学をとってみても、いま石油危機のお話がございましたけれども、その第一次、第二次石油危機の後も、たとえば年産三十万トン前後の大規模なエチレンセンターの増設などがやられているわけですね。そしていまでもやっぱり一方では不況を声高に叫ぶ中で、他方では製品品質の高付加価値化のための投資もやっているわけです。そういう企業あるいは企業グループの実態とその責任を明確にして、そして自主努力を前提とするという、大臣が盛んにここのところは強調なすっていますけれども、しかし私はこの改正法案を見る限りにおいてはそうはなっていないんじゃないかという意識を持っています。  もう一つは、たとえば海外進出の問題もそれでありますが、国内過剰設備を抱えながら、石油化学はたとえばシンガポールやサウジアラビアなどに大規模な投資を実施しておる。そしてアルミ業界もインドネシア、ブラジルなど七カ国に膨大な投資を実施しております。日本側の引き取り分だけでも七十万トンを超えるものになっている。こうして国内の設備過剰にこれはもう拍車をかける役割りをしていると思う。ですから、海外投資のメリットはたっぷりと受け取りながら、国内では過剰になったものは国でめんどう見てくれというのは、ちょっと私虫がよすぎるんじゃないかとこう思うのですが、どうですか。
  183. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 海外投資につきましては、いま御指摘ございましたように、アルミあるいは石油化学につきまして行われておることは事実でございます。たとえば、アルミについて申しますと、石油ショックの後ごろから海外における資源の豊富な、あるいはまた安くできるところというところを目指してかなりの投資が行われまして、いまお話がございましたように七件ほどプロジェクトが行われたわけでございます。それから、石油化学につきましても、シンガポールなりあるいはサウジでプロジェクトが存在することは事実でございます。  こういった海外プロジェクトにつきましては、経済協力でございますとかあるいは豊かな、低廉な資源を求める。日本には資源がございませんので、そういったものとかいろいろな見地があるわけでございまして、そういった点から、あるいは国際協力の観点、あるいはまた安定供給をすべく資源のない日本として資源国へ出ていく、こういうことで行われているわけでございます。  したがいまして、そういった投資がもとで輸入がふえたというふうなことではないと私どもは思っておるわけでございまして、輸入が非常に激増いたしましたのは、たとえばアルミで申し上げますと、石油ショック、特に第二次石油ショック以降の電力コストが非常に上がりまして、国際的にコスト的な競争力がなくなってきた。そのために、御承知のように百五、六十万トンあった設備を百十万トンにし、さらにはまた七十万トン体制ということでやってきたわけでございますが、現状は三十万トン程度の年率の生産量になっている。これはコストが非常に国際的に高い、しかもこれがエネルギーの外部からの革命的な上昇によって起こっているものでございます。  開発輸入につきましては、たとえばアルミで申し上げますと、現在五十六年度で三十万トン程度開発輸入が入ってきておりますが、現在では需要約百五、六十万トンの中で百万トンを超す輸入が入ってきておるわけでございます、国内生産が三十万トンでございますから。その中には、先ほど申しました七つのプロジェクトのうちで六つがすでに稼働しておりますので、そこから三十万トン程度入ってきております。あとはたとえば長期契約によるものとか、あるいはスポットによりましていろいろなところから入ってきておりますから、全体としては国内生産よりもはるかに入ってきておるわけでございます。  この理由といたしますのは、開発したため入ってきたというよりは、開発輸入のほかに、スポットあるいはまた通常の長期契約による輸入の方がむしろ多いわけでございます。その理由というのは、やはり日本におきましてエネルギーショックによりましてコストが非常に高くなってしまった、競争力がなくなってしまったというところに理由があるわけでございまして、これは石油化学においてもまた同じでございまして、石油化学におきましては、石油が非常に高くなった、ナフサが非常に高くなった、そのために資源国で安いエタン系のガスを利用したものからどうしても競争力がなくなってきた。石油化学の場合は従来はむしろ輸出国であったわけでございますが、輸入が非常にふえてきまして、あるときにはもう入超になり、あるいはまた円安、円高等の関係によりまして、短期的には少しずつ状況が違うわけでございますが、非常に輸入の傾向が強くなってきている、こういうふうな状況にあるわけでございます。  したがいまして、この開発問題につきましては、資源のない日本といたしましてどういうふうにこれを対処していくかという問題、それからまたちょっと違った観点でございますが、経済協力というような観点からどう対処していくかというふうな点を踏まえましてやっていく必要があるだろう。今後といたしましては、もちろん片方で構造改善国内で進めるわけでございますから、この構造改善状況を踏まえまして、これにインパクトができるだけこないように将来の問題としては考えていかなければいけないだろうというふうに思っているわけでございます。
  184. 市川正一

    ○市川正一君 私は、やっぱり将来の問題じゃなしに、現実にそういう開発輸入、そして企業海外に進出していることのあふりと言いますかね、そういう問題についてきちんと国内における体制といいますか、そういうものも確立をしていくという指導をやっぱりなさらないと、向こうへ行って、資材も安い、労賃も安い、そういうところでいわばぼろもうけしといて、そして国内の方は不況やいうて、けつを持ってきよるということではならぬと私は思うんです。  次に、特定産業信用基金についてお伺いしたいと思うのでありますが、まず基金の運用状況についてお伺いしたいのであります。指定業種別あるいは企業規模別の口数、金額などをまずお聞かせ願いたいのでございます。
  185. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 特定不況産業信用基金の利用状況でございますが、債務保証の総額は二百三十二億円でございます。多少業種に割って御説明をいたしますと、アンモニア、尿素の関係が二十七億円、合繊が三十億円、梳毛が十二億円、段ボール原紙が二十一億円、造船が百四十二億円ということでございます。
  186. 市川正一

    ○市川正一君 基金が発足して、これまでに債務保証に関して代位弁済をなさった例はございますか。
  187. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 代位弁済の例はございません。
  188. 市川正一

    ○市川正一君 私、指定業種のうち、先ほどお話があったように基金を全く利用してないところもあるし、また代位弁済もないと。設備の処理は各業種ともほぼ当初目標どおり進めて、大体九五%ですか、進んでおるという。しかし、利用されなかったということは、これは何か特別に理由があるのかどうか、非常にこの点不可解なんですが、どうでしょう。
  189. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 基金の利用が、先生指摘のように、確かに業種によりばらつきがあるのは事実でございます。  その理由として私どもは二つばかり考えているのでございますが、その第一は、制度の趣旨から見まして、企業の自助努力やグループによる努力のみでは信用力が十分でない企業に対して信用補完を行うというのが本基金の趣旨であるわけでございますが、業種によっては自助努力だけで対応できたものもあったということが第一点でございます。  それから第二点は、本制度の対象は設備処理に伴う退職金及び担保解除資金ということに限定をされておるわけでございますが、業種によりましては過剰人員を配転だとかあるいは出向等の形態で処理をいたしまして、解雇が極力回避をされる対応がなされたというのも事実でございます。それからまた、除却損の発生からやむを得ず設備処理の形態として休止がとられたものもあったということもございまして、対象業種の置かれた状況に差があったということが言えるわけでございまして、以上二点から、業種によりばらつきがあった、そういう結果になったのではないかと私どもは判断をしておるわけでございます。
  190. 市川正一

    ○市川正一君 いま御説明のように、大部分のところがいわば自助努力で賄っていくと、あるいは同じ企業グループの中でやりくりしてきたということでありますが、またそういう余力というか、力があったということにもなるわけで、それはまあ事のよしあしは別として。ですから、私はこういう基金の利用状況からいっても、この際基金を廃止するか、ないしは大まかに縮小する余地があるのじゃないかというふうに思うんですが、この点はどうでしょうか。
  191. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 私どもはむしろ縮小という方向ではなくて、この基金を新しい構造改善施策の中でもっとより有効に活用する方法はないかという方向で検討し、一つの結論を得たわけでございます。
  192. 市川正一

    ○市川正一君 その一つの結論とかかわるのかもしれませんけれども、今回の改正で長期信用銀行への低利預金を活用する制度が発足するわけですが、この仕組みのいわばねらいについてひとつ伺いたい。
  193. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生いま御指摘の興長銀の金融債引受措置による低利融資制度というのが新しい制度でございますが、本制度は資金運用部が長期信用銀行三行の発行する金融債を引き受けまして、その資金を原資といたしまして長期信用三行が企業へ融資をしようというものでございます。その際、基金が有しております資金の一部を通常より低い金利で長期信用銀行三行へ預金することによりまして、それとの見合いで長期信用銀行三行から企業への貸付金利を引き下げることとしたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、本融資制度の対象といたしましては、設備の処理に伴い必要となります退職金を具体的に考えておるわけでございます。
  194. 市川正一

    ○市川正一君 貸出金利が何%ぐらい引き下げられるんですか。それとまた、引き下げ後の金利は何%になるんですか。
  195. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 融資条件といたしましては、金利は短期プライムレートプラス〇・五%というのを頭に置いております。融資比率は八〇%以内ということで、償還期間三年ということでございますが、現行の融資条件に比べますと約一・三%程度引き下げることができるんではないかというふうに考えております。
  196. 市川正一

    ○市川正一君 私はそれはいろいろ多いのにこしたことはないわけですけれども、しかし、ずっとこの経過をお聞きすると、結局基金の資金が余って、ある意味ではたまる一方だと、そこでその活用の仕方を考えようということで一つの制度に到達したと、こうおっしゃるわけです。私は特定産業に対するこういう至れり尽くせりの対策はそれとしてあり得ても、もしそういうことをえらい親切にやらはるんやったら、私はやっぱりいま深刻な状態にある中小企業、あるいはまた今度のこういう不況産業のいろいろなあふりを食らう中小企業、そのいわば金融制度の改善に回すというようなことはどうでしょうか。
  197. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先生冒頭御指摘のように、確かにこの基金の運用というか実績にばらつきがあったことは事実でございますけれども、今回の第二次石油危機以降の状況考えますと、私ども構造的困難に直面しております業種の実態というのは一段と深刻化しておる状況になっておるんではないかと思いまして、むしろその基金の利用というのは今後かなりふえてくるんじゃないかというのを実は想定をしておるわけでございます。  それからさらに先生指摘の、これは大企業向けの云々ということではございませんで、この基礎素材産業に属します企業、法定七業種に属する企業につきましてはあまねく均てんを受けるわけでございまして、現実に利用する企業というのは中堅企業を中心としたものが多くなってくるんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  198. 市川正一

    ○市川正一君 後で中小企業問題はそういうこととも関連して、神谷さんもお見えですからお聞きしたいと思っていますが、話を前へ進めさせていただきますと、次は共同行為の指示についてでありますが、第五条の第一項で、事業者の自主的努力だけでは設備処理が進まないときには、主務大臣――通産大臣が共同行為の実施を指示できることになっていますが、その時期はいつになるんでしょうか。たとえば一定期間業界の、いわば様子といいますか、努力を見てからになるのか、あるいは基本計画ができたらすぐにということになるんでしょうか。
  199. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) これはまあこれからの問題といたしましては、いろいろ業界の実態に応じて違ってくる面はあろうかと思いますが、過去の特安法時代の運用を見てまいりますと、安定基本計画が告示をされた日が同時に指示カルテルの告示日であった例が多いわけでございます。これは実は自主努力というのは当然の法律上の前提となっておるわけでございますけれども、この設備処理に伴いまして、調整金の授受というようなことがいろいろ企業内で話し合いをされておるわけでございますが、そういうものが具体的に実効を上げるためには、やはりその指示カルテルが同時に発動されることが必要であるということで、業界の自主的な努力というのが安定基本計画の前の段階で具体的には進行しているわけでございますが、形といたしましては、安定基本計画と指示カルテルの告示の日が同日付になっておるという運用になっておるわけでございます。
  200. 市川正一

    ○市川正一君 同時発表ということになりますと、事実上それほど時間をかけずに指示するということになるように思われるんでありますが、そうなりますと、事業者は結局処理のための自主的努力をする、何というか、時間もなくて、政府の指示のままに処理するということになるおそれを私感じるんです。  これでは私、山中原則として特に強調されておる民間の自主性の尊重、つまり産業界の甘えの構造を許すことなく、その自助努力を最大限に発揮させるということに相ならぬのではないか。やはり私は、安易に政府の指示カルテルに依存する体質を助長することになるんじゃないかという懸念を持つんでありますが、この点はどうでしょうか。
  201. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) これからの法律の運用に当たりましては、私ども構造改善基本計画の策定前から、前広に事業者の自主努力を十分見きわめまして対応していきたいというふうに思っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、構造改善計画そのものはきわめて緊急を要する課題なわけでございます。いつまでもだらだらとやっておるという感じになりますと、五年の期間というのはすぐ経過をしてしまうわけでございますので、そういう緊急性というのを念頭に置きますと、まさに構造改善基本計画の策定前の段階から、前広に事業者の自主努力を求めていくということが必要なんではないかというふうに考えておりまして、そういう意味で、自助努力を前提としながら、構造改善基本計画実施に、実現に努めてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  202. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ちょっと私の表現がまずかったのかしれませんが、今度法律を延長し、新しくつけ加えてやる場合については、あくまでも民間の自主努力というものが前提で、いわゆるお上からという意味の大臣なり主務官庁というものが押しつけるものではない。これはいまおっしゃった部分は、既存の独禁法の指定を排除して、指示カルテルをやる場合についての半面の与えられた権限でございますから、今度のつけ加えました、いわば新しい部分ですね、これはもう独禁法を排除しておりませんので、この条項は働かないというふうにお考えいただいて受け取り願えれば、最初の私の言ったことと実際は変わらないということをおわかり願えると思うんですが、ということだと思います。
  203. 市川正一

    ○市川正一君 じゃ、それとも関連してお聞きしますが、第十二条の第四項で、事業提携計画について、必要と認めたときは写しを公取委員会に送ることになっておりますが、そうしますと、独禁法のこのレールに乗せる入り口で主務大臣の権限で選択することになるわけですが、公取委員長にお伺いしたいんですが、仮に主務大臣が独禁法上の違反なしと、こう判断されたものが公取の判断では疑いありと、こう思われた場合にはどうなさいます。
  204. 高橋元

    政府委員(高橋元君) この「必要があると認めるとき」という言葉でございますけれども、たびたび通商産業省からお答えがありますように、これはたとえば必要がない場合、つまり送付しなくて済む場合と申しますのは、税制上の特典を受けるだけ、たとえば活性化投資という認定を受けるためだけ、そういう場合の構造改善計画であるように承知してます。  としますと、ほとんどの場合に送付があるわけでございまして、事業提携そのものが内容となりますような計画につきましては、すべて申請書の段階から公取委員会の方との連絡は緊密に行われる、こういうふうに承知しておるわけであります。したがって、お尋ねのように、必要がないと認めて主務省から御送付がなくて、実はその計画が認定になってしまったということは起こり得ないというのが私の考えでございます。
  205. 市川正一

    ○市川正一君 起こり得ないって、必要があると認めたときに写しを送るわけでしょう。ところが、必要がないと認めたけれども、しかし後で公取の方で検討してみると、独禁法の違反の疑いがあるとこれはなった場合にどうなさるのかと、そんなことないと言ってしまったら話になりません。
  206. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはここの法律の大変微妙なうまい組み合わせがスキームとしてできているわけでありまして、これでもし、じゃ通産大臣が――私の場合は大丈夫ですよ、しかし一年半、まだおるかどうかわかりませんから……
  207. 市川正一

    ○市川正一君 固有名詞は入れておりませんから、大臣と言っていますから。
  208. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 未知数として言う場合、仮に通知しないで、協議も行われないで通産大臣がその計画を実施をさせたという場合において、独禁法を排除していませんので、独禁当局がみずから独禁法に照らして、協議はなかったし、意見も申し入れる機会もしたがって与えられなかったけれども、しかし行われているものは明らかにここのところが独禁法に触れると言えば、今度は通産行政に関係なく独禁法が独自で働いていきますから、そのブレーキは独禁法に預けてあるということでございます。
  209. 市川正一

    ○市川正一君 そういうふうに高橋委員長、ちゃんと言いなさい、あなたはそれだけの責任と権限を持っているんだから。大臣の方がさき――苦労の仕方が違うみたいなお話だったけれども、遠慮せぬとそれをきちんと言ってほしかったわけですよ。  私、十分事前に協議するということもありますけれども、経団連が独禁法の改正、私から言わせば改悪ですが、これをいろいろ言い出してきているわけですね。この規定をてこにして独禁法の規制緩和を図るというようなことも伝えられております。先般の衆議院商工委員会で、経団連の代表の河合参考人がこう言っておられるんですね。「独禁法の除外例でなしに、新しいスキームで進んで、さらにそれがもっと大幅な弾力的な見直しにつながっていくということを期待しておる次第でございます。」というふうに、公然と意見を述べております。  それで、このことについては先刻来山中通産大臣はきっぱりとした所信を表明されておりますが、私はこれは政府としての明確な態度である、こういうふうにきっちりと確認をさしていただきたいんですが、いかがでしょう。
  210. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) その明確な態度で法律をお願いしているわけでございます。
  211. 市川正一

    ○市川正一君 公取委員長、いかがですか。
  212. 高橋元

    政府委員(高橋元君) いま通産大臣から仰せられたとおりなんですけれども、まあそういうような御意見が経団連から出されておりますことは衆議院の会議録等で承知をしておるわけであります。  独禁法が自由経済体制の根幹を定めるものであり、公正かつ自由な競争を促進していく、それが日本経済を健全に運営していくために不可欠である、これはもうたびたび申し上げたことでございます。とりわけ低成長はなってまいりますと、経済の活力を維持する、物価の安定、消費者の保護、経済活性化、いずれをとりましても独禁法の秩序というものが必要になってまいるわけでございまして、市場メカニズムにのっとって企業が自主的な判断や創意工夫によって活発な活動を行っていくということが重要になることは申すまでもありません。ましてまた、経済行為の公正性ということに対する要請も高くなってくるわけでございます。そういうことで、今後とも独禁法について一層国民の御理解を得られるように努力するとともに、いま通産大臣からもお答えのありましたように、政府全体としてこのような決意で臨みたいというふうに考えております。
  213. 市川正一

    ○市川正一君 公取委員長お引き取り願って、長い間ありがとうございました。ひとつしっかりがんばってください。  次に、優遇措置について聞きたいんですが、第九条で資金の確保の規定があるんでありますが、この利用状況はいかがでしょうか。
  214. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 利用状況とおっしゃいましたけれども、これは現行特安法のもとにおけるでよろしゅうございますね。
  215. 市川正一

    ○市川正一君 そうでございます。いままでの……。
  216. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 現行特安法におきます税、財投の支援措置の実績でございますが、まず税の関係でございますが、現行法のもとにおきましては、いわゆる構造不況産業に対象を限定した、新法のもとにおきます基礎素材産業対策税制というような形の税制措置は存在しておりません。  それから財投関係でございますが、財投関係では、特定不況産業から他の業種へ事業転換をするための設備投資に対しまして開銀融資と設備処理に伴い必要となる退職金に対する長期信用銀行三行からの融資制度、これは先ほど述べた資金運用部による金融債引き受けの措置でございますが、その二つがあったわけでございます。  これらの制度の利用実績は、開銀融資については五十七年度までの融資推薦実績は約二十九億円ということでございますし、長期信用銀行三行からの融資については五十四年度約九十億円ということでございます。
  217. 市川正一

    ○市川正一君 今回の改正された後の資金需要について見通しはどう立てておりますか。
  218. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 今回の新しい法律に基づきます支援措置といたしましては、まず税制上の措置は先ほども申しましたように基礎素材産業対策の税制ということで幾つかの柱が立ったわけでございます。  まず第一は、省原料設備など、構造改善に資する特定の設備についての特別償却制度ということでございまして、初年度一八%の償却率になっておるわけでございます。  二番目が事業提携に伴い現物出資により取得した株式についての圧縮記帳の特例というのが認められております。  そして三番目に事業提携に伴う合併、現物出資、営業譲渡等に係る登記に対する登録免許税の税率の軽減ということで、これはおおむね約三割程度の軽減を考えておるわけでございます。  それから第四といたしまして、事業提携に伴う現物出資、営業譲渡により取得する不動産に対します不動産収得税の軽減ということで、六分の一程度の軽減措置がとられることになっております。  それから第五といたしまして、過剰設備廃棄により生ずる損失に係る欠損金の繰り越し期間の特例ということで、通則は五年でございますが、これを十年に延長する特例が認められておるわけでございます。  それから減税の見込み額でございますけれども、これは必ずしも正確な計算はできておりませんけれども、大蔵省の試算によりますと特別償却制度による減収額は初年度十億円、平年度二十億円程度となるのではないかと考えられております。  それから財政投融資の関係の支援措置でございますけれども、それにつきましては、まず基礎素材産業活性化設備投資に対する低利融資ということで、日本開発銀行に百五十億円の資金が認められております。  それから基礎素材産業設備処理に伴い必要となります運転資金についての低利融資制度の創設ということで、これは先ほど先生指摘の点でございますが、金融債引き受け措置によりまして百億円の低利融資の道が開かれておるわけでございます。そしてさらに、特定産業信用基金の活用ということでございまして、債務保証の対象範囲を担保解除資金、退職金、設備処理資金等に拡充するとともに、再保証率の引き下げ等、保証条件の改善が図られることになっておるわけでございます。
  219. 市川正一

    ○市川正一君 これは私お聞きしたのは、資金需要の話をしたんですが、すうっと税制までやってくれたので、途中でとめるわけにいかぬので、まあよろしいわ。懇切丁寧におっしゃっていただいて、お聞きする前に答えてしまわれたのでちょっとなんですが、いまおっしゃったようなほんまに至れり尽くせりの優遇措置なんですよ。私は言いたいんだけれども国民には課税最低限度額六年間据え置きだし、そういう中でいまのようなことをやられるというのはどうもやっぱり解せぬわけであります。  引き続いて私雇用対策についてお聞きしたいんであります。主務大臣構造改善基本計画をつくられる際に、第三条の第五項で労働者の雇用の安定に十分な考慮を払うということになっております。また共同行為を実施する際には第六条四号で、また事業提携計画の承認に際しては第八条の二第三項第四号でそれぞれ従業員の地位を不当に害するものでないことを定められております。この三つの条文は事態の推移から見ますと、段階と局面が違うといいますか、タイムラグが出てくると思うんですが、したがって規定される内容も異なると思うんですが、そこでそれぞれの規定の具体的な内容ですね。つまりこの規定の内容がただ抽象的なことに終わるんじゃなしに、やっぱり労働者の雇用を実際に安定させる、保障する、そういうための具体的な歯どめになる内容でなければならぬと思うんですが、それぞれの段階、いま申しました第三条の基本計画を定める主務大臣として、第五条の共同行為を指示する主務大臣として、第八条の事業提携計画を承認される主務大臣としてそこらのところを少しお聞きしたいんです。
  220. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 全体といたしましてこの法律基本的な考え方に関係してくるわけでございますが、冒頭にも申し上げさしていただきましたように、この法律は一方において縮小を図り、一方において活性化を図っていくということでございまして、その活性化部分の中には新商品、新技術開発とか、あるいは活性化設備投資であるとか、あるいは事業の集約化を推進しようということを考えておるわけでございまして、そういう意味では現行法よりもより雇用の安定に配慮しておると。つまり、そういう形での新雇用機会というのができてくる可能性がより高いという面があるわけでございまして、雇用に対する配慮というのは前向きに配慮されておるということがまず言えるんではないかと思うわけでございます。  それから、先生指摘の八条の二の「事業提携計画の承認」あたりのところにございます「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」というような規定があるわけでございますが、この点の具体的な運用でございますけれども、私どもは一雇用の具体的な問題については、これは労使間の話し合いが前提ということになるわけでございまして、労使間の話し合いが十分に行われているかどうかを確認する規定というふうにこの規定を位置づけておるわけでございます。つまり、具体的に個々の企業の個別の雇用者の具体的なケースにまで法律的に主務大臣が介入をするというようなことではございませんで、むしろ全体といたしまして労使の間で雇用の安定についての話し合いが十分行われているかどうかということを確認をするということに意味があるわけでございます。じゃあ労使が具体的な話し合いの中でどういうことを実際やられるかということになりますと、これは過去の例なんかから見ますと、いきなり失業者を出すという形ではなくて、企業の中において配置転換であるとか、あるいは職業訓練を施すことによりまして他の職種への転換を図っていくとか、あるいはその関連中小企業であるとか関連企業への転換を図るとか、そういうような具体的な、失業にならないかっこうでの雇用安定の措置というのがその労使の間で具体的にとられておるかどうかという辺を確認するという意味になるわけでございます。  それから、先ほどお触れになりました十条の「雇用の安定等」のところでございますが、これはまさにいま申しました、労使が雇用の問題について具体的に話し合いをして、「雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という努力義務規定ということになるわけでございまして、その十条の努力義務の規定が実際に生かされておるかどうかということを、事業提携の承認等に当たりまして従業員の地位を不当に害するものでないかどうかというようなことでの確認規定の中で、主務大臣としては十分そのチェックをしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  221. 市川正一

    ○市川正一君 それでは、現行の特安法指定業種別の従業員の削減数ですね、なんぼ減ったんかひとつ聞かしていただきたい。
  222. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 通産省所管の十三業種では、従業員数は五十二年末の段階で二十四万人ということであったわけでございますが、五十七年十月の段階で二十万人ということでございますので、約四万人、一八%の減少ということになっておるわけでございます。このような従業員の減少というのは、すべてが失業ということにつながったわけではないわけでございまして、定年退職による自然減に加えまして、関連会社への出向であるとか、あるいは加工組み立て産業等他産業への就職あっせんというようなことによりまして極力失業の防止が図られてきたというふうに私どもは判断をしておるわけでございます。たとえば化学肥料なんかの業界について見ますと、従業員数の減少の大半は他部門への配置転換ということで占められておるわけでございますし、またアルミやフェロシリコンといったような業種につきましては、他企業への出向と他部門への配置転換というようなことが具体的に行われておるわけでございます。  大まかに申しまして、そんなところでございます。
  223. 市川正一

    ○市川正一君 ですから、私は結局これが、特安法が人減らし法であったという評価もあながち間違いでないというふうに思うんですが、今回の改正案による指定業種からの離職者はどれぐらいになるか、お見通しはどうですか。
  224. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 候補七業種につきましての離職者数というのは、先生おっしゃったのは今後でございますね。
  225. 市川正一

    ○市川正一君 これから。これがもし通ればですよ。
  226. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) これはまだ私ども全く推計できておりません。と申しますのも、この法案考え方でございます活性化施策によりまして、できるだけ雇用機会を創出することによりまして、企業内における職種転換であるとか、あるいは関連企業への出向であるとかいうような形でもって雇用のなだらか調整をやっていきたいというのを私ども基本的に考えておりますので、現時点におきまして失業の発生数というのは予測はしておりません。
  227. 市川正一

    ○市川正一君 労働省にお伺いしますけれども、現行の特安法のもとでの当該業種雇用対策はその効果を上げているのかどうか、評価をお伺いしたいんです。
  228. 稲葉哲

    説明員(稲葉哲君) 現行の特安法によります離職者対策も含めまして労働省で所管しております特定不況業種離職者臨時措置法によります施策を講じております。ただ「私どもの所管しております法律特安法の対象業種以外にもかなりの業種含んでおりますので、先生の御質問の特安法関係に限っての数字ということでもって私ども把握しておりませんので、あるいはその点でもってお許しをいただきたいと思いますけれども、現行特定不況業種離職者臨時措置法に基づきまして過去五年間の施行経験ございますけれども、その間にいわゆる求職手帳の発給件数が約十万六千でございました。この手帳を受けました者につきましては、その手帳の有効期間でございます三年以内に約六六%の者が再就職しているという効果を上げているわけでございます。これを御質問の特安法対象業種に限ってどうかということでございますが、その点につきましては、手帳の発給件数では約六万件でございますが、その発給された特安法対象業種についての離職者についてだけの就職状況というのは、先ほど申し上げましたとおり、それに限っての把握はいたしておりません。
  229. 市川正一

    ○市川正一君 それじゃ通産省にお伺いしたいんですが、指定業種離職者が現在どうなっているか実態調査をなすってますか。もしなすっていたら、その内容をお聞かせ願いたい。
  230. 小長啓一

    政府委員小長啓一君) 先ほど総括的に五十二年末から五十七年十月までの時点におきまして約四万人の従業員の減少があったということをマクロ的に申し上げたわけでございますが、これをさらに業種別に割って御説明をいたしますと、平電炉で五千百人、アルミニウムで三千三百人、合繊四業種の合計で一万二千六百人、アンモニアで二百三十人、尿素で百三十人、湿式燐酸で五十人、綿紡で一万九百人、梳毛で七千七百人、フェロシリコンで五百人、段ボール原紙で三千人というようなことになっておるわけでございまして、総数で見ますと約四万人ということでございます。一八%の減少ということになっておるわけでございます。ただ減少は、先ほども申しましたように、これ全部が失業につながったということではございませんで、企業内における配置転換であるとか、あるいはその関連企業への出向、あるいは加工組み立て業種への再就職というような形で再就職されている部分もかなりあるということをぜひ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  231. 市川正一

    ○市川正一君 だから、数字はさっき四万人と聞きました。それがどないなってんのやという追跡調査というか、フォローしておるのかどうか。小長さんは皆うまいこといってるというようなお話なんだけれども、果たしてそうなのかということを聞いてるわけです。私は、労働省はなるほどそれはこういう特安法による離職者だけを扱っているわけじゃないですから、対象としているわけじゃないから、全体を見てはるわけですけれども、しかし労働省の資料によると、たとえば特定不況地域別の雇用、失業状況というのが出ております。これで常用有効求人倍率を拝見しますと、平均〇・三七ですね。全国平均が〇・五四で、全国平均よりもはるかに低いですね。私はここにも示されているように、やはりこういうこの府県別、また市町村別に大体こう出ておりますけれども、ここは特別にそういう問題をやっぱり抱えていると、だから私は労働省としてもこういう政府が特別の対策をとっている業種なんですから無関心であっていいということじゃなしに、やっぱりぜひ一度実態調査をしていただきたいと思うんですがね、いかがでしょうか。
  232. 稲葉哲

    説明員(稲葉哲君) 先生いま御指摘ございました地域別の有効求人倍率、これは私ども所管しておりますもう一つ法律で現行の特定不況地域離職者臨時措置法というのがございまして、そちらの方では有効求人倍率のいかんによりまして地域の指定をするという制度になっております。  御質問の特定不況業種の方につきましてその帰趨がどうなっているかということでございますが、先ほど申し上げましたように、私どもの方の業種、ここでもって指定の対象にいたしております約四十の業種がございますけれども、それについての状況については現在把握中でございます。
  233. 市川正一

    ○市川正一君 ぜひその結果が出ましたらお教え願いたいですが、よろしくお願いします。
  234. 稲葉哲

    説明員(稲葉哲君) 承知いたしました。
  235. 市川正一

    ○市川正一君 通産省の方も小長さん、四十万がうまいこと何かどこかへすっと行っているようなお話なんたけれどもね、私はやっぱりみずからの所管の法律でそうなっているわけですから、やっぱり実情をぜひお調べも願って、そして今度の改正に当たっていままでの効果がどうだったのか、そして現状がどうなっているのかということをぜひお調べになってこれまたお教え願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  236. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 私どももきわめて体系的なフォローアップではございませんが、若干の追跡調査らしきものをしてみました。先ほどの当省所管関係四万人の中で比較的人数が多い業種として綿紡で約一万九百人というような数字が上げられております。これをこの期間の在籍者で見ますと、実に八割、九千人ほどが女子の減少という形で把握できるわけでございます。御案内のように、紡績業におきましては、若年の女子労働力に依存するということが多いわけでございまして、そういう場合には大体中学を卒業して四年間ほど働いて、その間定時制の学校へ通いながら四年後にやめていくというようなことが一つのパターンになっているかと思うわけでございますから、したがいまして一万九百人減っているんだけれども、そのうちの九千人ぐらいは女子であるということになりますと、こういう方々はいわば自然のローテーションの中で消えていったといいますか、おやめになったと。他方、もし隆々としておりますならば、それの後継ぎというものが次々に採用されて雇用が維持されていたということが考えられるわけですが、実際問題としては新規採用を抑制したと、あるいはむしろ雇用難のために抑制せざるを得なかったというようなこともあるいはあるかもしれないというふうに考えられるわけでございます。  また合成繊維一万二千数百人という数字がございます。これは実は関連の合成繊維四品種やっております企業全体の減少の数字のようでございまして、私ども四品種の工場からどのぐらい減ったかということで調べてみますと、約八千人が減っておるわけでございます。これは純減でございます。ただ、これもまたいろいろ調べてみますと、その期間に約四千人新しい人たちが入って一万一千人ぐらいが退職をするというふうにそこでは相当動いている形があるわけでございますから、その一万一千人の離職者のうちの相当部分は、四千五百人によって補充された人たちというものは多分定年に達して退職をされた方々ではないだろうかというふうにも考えられるわけでございます。また、社内の配置転換が千二百人とか子会社への出向が三千人とか、そういう形で非常に急激な形での大量の解雇というようなものが発生したというケースは私ども承知しておりません。その後のそれぞれがどこに就職しているかということになりますとなかなか把握が困難でございますが、一応その人数を、中身を分析いたしますとそのような結果が出ておるようでございます。
  237. 市川正一

    ○市川正一君 一度通産省と労働省の方で少し横の連携もとっていただいてお願いしたいと思います。というのは、この後ちょっとお伺いする、先ほど労働省からもお話ございました雇用安定法ですね、これは事実上改正特安法とそれから改正城下町法、この雇用関係の受け皿になる法律だと私は思うんですが、本来社労の方で議論はあると思うんですけれども、この第六条の第四項を拝見しますと、公共職業安定所長は特定不況業種事業主の作成した再就職援助等計画が雇用の安定を図る上で適当であるかどうかを認定することになっていますね。そこで、認定する際の判断の基準といいますか、どこまでさかのぼって判断をすることになるのか、それをちょっとお伺いしておきたい。つまり、人員削減計画そのものまでさかのぼっていわば検討されるのか。もしそうだとすれば、その削減計画が特安法による認定を受けた事業提携計画によるものであったり、あるいは共同行為の指示を受けたものであった場合など、その相互の関連がどうなのか、あるいはそこまでさかのぼらずに人員削減は所要の前提として、たとえば訓練のやり方だとか、あるいは技術的、実務的な問題についてだけ是非を判断するのか、そこらのちょっと考え方ですね、お聞きしておきたいと思います。
  238. 稲葉哲

    説明員(稲葉哲君) 労働省が現在提案しております特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法案でございますけれども、これは御指摘の再就職等援助計画の件につきましては、現行の特定不況業種離職者臨時措置法と同様の考え方をとっております。つまり、特定不況業種に関しまして再就職援助等計画の制度を設けることとしているその理由でございますけれども、私ども法律では離職者対策だけではなくて失業の予防対策法律の中に盛っているわけでございます。そういう関係もございまして再就職等援助計画を出す場合というのは必ずしも離職者を出す場合に限らず、企業の中でもって配転あるいは出向、訓練等をやる場合にも出せるというかっこうになっております。そこで、この特定不況業種事業主が事業規模の縮小等に伴いまして雇用調整を実施する場合、その雇用する労働者の雇用の安定に十分配慮して行われるということをこの再就職援助等計画の第一の目的ということにいたしておりますが、事業所におきましてどのような方法によってどの程度の雇用調整を行うことが必要であり、あるいは可能であるかを判断できるのは本来事業所についてのいろいろな事情について精通いたしております労使の方々であろうというふうに考えているわけでございます。したがって、再就職援助等計画につきましては、事業主が労働組合意見を聞きまして、その社会的な責任を自覚しながら作成すべきものであるというふうに本来考えております。したがいまして、この計画につきまして、公共職業安定所長が行います認定は雇用調整の規模とか内容等に関します適否を判断するということに主眼を置いているわけではございませんで、第一義的には労働者の雇用の安定に配慮するという、その事業主の努力を把握する、そしてこれを奨励しようというところにございまして、したがって安定所長といたしましては、その計画の内容が明らかに実現不可能な内容であるとか、あるいは事業主の責務が明らかに欠如しているというような場合等についてのみその内容の変更を求めるというような考え方でもって対応するということにいたしているわけでございます。
  239. 市川正一

    ○市川正一君 規模、内容について主眼ではないとおっしゃるけれども、実際には労働者に非常に不利にいろいろの計画が押しつけられる、強行されるというケースが多いわけでありますから、やはり労働省としてはそういう問題についてしかるべき公正な、いまおっしゃった事業主の社会的責任を果たすように御指導をいただきたいと思います。  もう一つ伺いしますけれども雇用安定法の第九条の第二項では、「再就職援助等計画の認定を受けた特定不況業種事業主について特別の配慮をする」ことになっておりますが、認定を受けない事業主との違いはどういうことになるんでしょうか。
  240. 稲葉哲

    説明員(稲葉哲君) 認定を受けました事業主につきましては、新しい法律によりまして二つの助成措置を考えております。  一つは、やむを得ず解雇するというようなことになった場合、その解雇される者の、離職する者の離職後の再就職をより容易にするために事業主の責任において訓練を行う。その場合の助成が一つでございます。  それからもう一つの助成は、失業を経ることなく再就職できるように事業主が他の事業所への就職をあっせんするということを容易にするためにその労働者を受け取る側の事業主に助成をする。  この二つの制度を考えておるわけでございます。
  241. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、当該事業主が経営悪化のために十分な再就職援助等の計画が立てられない、その認定が受けられない場合には、その事業者から解雇される労働者に結果的に不利が生まれる可能性があるということが想定されますので、これを防止する対策をやはり精力的に積極的にとるべきだというふうにいまの御答弁と関連して要請したいと思いますが、いかがですか。
  242. 稲葉哲

    説明員(稲葉哲君) 新法案におきましては、現行の離職者臨時措置法と同様に、特定不況業種事業主が倒産等によりましてやむを得ない理由によりまして再就職援助計画の認定を受けることができなかったような場合につきましては、特にその手帳を発給できるよう措置するということにいたしております。またさらに、特定不況業種の実態にかんがみまして、特定不況業種指定の日以前にすでに関連下請事業主等からは離職者が出てしまったというような場合も考えられますので、新しい法律におきましては、一定期間さかのぼってそういう関連下請事業主からの離職者については手帳を発給できるというような新しい制度を設けているところでございます。
  243. 市川正一

    ○市川正一君 労働省ありがとうございました。お引き取り願って結構でございます。  最後に山中大臣にお伺いしますが、以上雇用問題でいろいろやりとりをいたしました。主務大臣として、この問題に関して当該産業に附属する企業が、やはり第一義的に雇用に責任を持つべきである、安易に国の施策にいわば依存するとかということではなしに、たとえば必要な研修などは給料を保障するとか、こういう面での企業としてのいわば自主的努力ですね、これを最大限にやはり追求するという立場で臨むべきであると、こう思うんですが、大臣いかがでしょうか。
  244. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 企業あっての従業員であり、また労働者があってこその企業であります。したがって、今回このような構造不況業種について国が施策の手を伸べようという決意をしましたのをほっておくと、アルミで例がありましたように、百二十万トンが七十万トンになり、七十万トンが五十万トンになり、三十万トンまで落ち込んでいく。そのままほっておけば、産業そのものも、あるいは雇用主、従業員もともに職を失うことになるのは必然的であります。したがって、私どもはもうこの段階で支えてあげることによって、いわばほっておくと一層失業あるいは壊滅という状態になることをまず防ぐ。さらに、再建活力化へいきます場合に、いろんな集約化あるいは共同順売とか、いろんなこと等をやっていく、新しい分野へも展開するわけでありますから、そこらの方をよく考えながら、最大限の事業計画のもとに、この計画によって直接の失業者がそのまま労働省に渡される、労働省所管の方へほうり出されるというような形にならないような再建計画というものに重点を置いて考えていきたいと思います。あくまでもこの構造不況業種は食いとめて、そして再活性化して、そして歩いていってもほしいということでありますから、そこに失業者を死屍累々として企業のみが一人栄えるという形をとらせることは本来の目的基本を失うものというふうに考えておりますので、御注意の点は十分戒心しながら進めていきたいと考えます。
  245. 市川正一

    ○市川正一君 では、次に、いわゆる城下町法の改正案についてお伺いいたします。  中小企業の深刻な事態はもう私からあえて申すまでもない状況でありますが、その状況は、本法の指定地域の中小企業が特にいわゆる城下町であるという特殊な事情が加わって一層深刻な事態を招いている、こう思います。したがって、本法の改正に当たっては、こうした地域の実情を踏まえて施策の内容をさらに充実させる必要があると考えるんでありますが、構造改善基本計画を定める場合に、関連の中小企業経営の安定について十分な考慮が払われるべきであるということが定められております。この趣旨は、共同行為の内容についても事業提携計画を作成する場合においても、関連事業者の利益を不当に害するおそれがあってはならないということだと思うんですが、特にこの関連中小企業、関連の下請企業について、それぞれの計画でどういう具体的配慮をなされるのか、その内容を、ひとつお考えをお伺いしたい。
  246. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 具体的に業種を所管いたします部局並びに産業政策局とよく連携をとりながら進めてまいる必要があろうかと思いますが、私ども中小企業を所管する者といたしましては、基本的にやはり事業の縮小、その他関連中小企業に影響を与えるようないわゆる構造不況業種体質改善につきましては、一般的にたとえば下請の振興基準等で自分が受けるインパクトをいたずらに増幅して関連企業に及ぼさないようにというような基本的な考え方に立っていろいろな行政指導をいたしておりますが、こういう点を十分踏まえて基本的な計画についての審査をしていただくように望むところでございますし、一般的なこのような議論だけではなくして、具体的にはおのおのの構造不況事業所があります都道府県、市町村等で具体的な問題に基づいてまたいろいろな意見もあるかと思いますし、関連した中小企業者から直接われわれに意見が寄せられることもあるかと思いますので、そういう場合にはやはり中小企業のお立場というものを配慮しながら関係局とよく相談してまいりたいと、このように考えております。
  247. 市川正一

    ○市川正一君 これからやるのだからそれはそういうことなのかしらぬけれども中小企業庁長官としては何やら人ごとみたいな話ですな、これは。何でこんなことを聞くかというと、たとえば住友の企業城下町である新居浜をいろいろと様子を調べたんですけれども、あそこでは住友化学工業のエチレンプラント、これをとめたり、それから住友アルミの磯浦工場を閉鎖したりという事態がある。これらの工場と関連していた下請中小企業は地元で仕事が全然ないんです。一部の一次下請、その中には住友のほかの工場とかあるいは海外の仕事をもらっているところもごく一部にはありますけれども、二次。三次に至ってはそういう配慮が全然行き届かぬのですよ。事実上ほうり出されておるのです。だから、こういう事態は、私は新居浜だけではないと思うんです。全国的に起こっていると思うんですが、二次、三次の下請、ここの対策はこういう場合に神谷さんどうしようと思っているんですか。リアリズムでひとつ話してください。
  248. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 非常にリアリズムで申し上げますと、御指摘の問題というのは非常にむずかしい問題だと思います。確かに二次下請、三次下請という系列で、物が、仕事が流れてまいります。その場合でも、たとえば第一次下請というのは親企業と非常に関連が密接でございます。さらに親企業あるいは構造不況事業所がいろいろな縮小計画を立てたり、場合によったら店を閉じたりする場合にも、他の自分の関連企業等との関係でいろいろな世話をするような苦心をするということが実際上よく見られることでございますし、われわれもそのようなことを常に要請をしておるわけでございます。また地元もそういう要請をしておるわけでございますけれども、二次下請と言いながら実態的に親企業との実質的下請的な関係にある場合には、これはやはり親企業としてもそれなりの配慮をすべき社会的な責任もございますし、またそのように配慮してもらうよう要請せねばなりませんけれども、全く第一次下請あるいは第二次下請の裁量によって契約上も事実上もまたそれが関連企業関係となっている場合に、どこまで果たしてその配慮が及ぶかというのは非常にむずかしい問題でございますが、われわれといたしましては、やはり当該地域に与える影響というのをできるだけ少なくしてもらうという基本的な原則、これでやはりまず地域に与えるインパクトというのを最小限にしていただくよう、いろいろな計画を樹立する際あるいは具体的な事業所に関しての問題が起き上がった際には、そのような配慮並びに措置を要請するつもりでございますし、さらに不幸にしてある程度のインパクトを受けざるを得ない場合には、やはり一次下請以外の二次下請、三次下請に関連いたしましても、われわれの中でできる下請あっせん事業の強化でございますとか、あるいは関連市町村によるいろいろないわゆる発注の配慮といったようなものを通じながら、企業城下町法全般の効果、並びに各地域地域における効果を総合しながらインパクトを軽減し、あるいはこの法律で今度ねらっております新しい方向への意欲を導き出すような努力をしていきたい、このように考えております。
  249. 市川正一

    ○市川正一君 今回の改正で、新分野開拓事業等の助成措置がとられることになりましたですね。これは私、非常に大事だと思うんですが、いまおっしゃったように、親企業、ここがそういう末端の下請中小企業に対して、配慮という言葉が使われておりますけれども、文字どおりやはり責任を持って社会的あるいは地域的責任を果たしていくと、こういうことが今度の精神だと思うんですが、そういう強力な行政指導を私なさるべきだと思うし、神谷さんに期待するところ大なんですが、ひとつどうですか。
  250. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 基本的に前向きの振興事業を行います際には、やはりその地域の中で特に構造不況事業所に関連しておる関連中小企業というのはいろいろな業種のものもございますから、その点むずかしさはございますが、やはり一定の事業所に関連していたという共通性もございますので、それらの共通性をできるだけ引き出しながら、やはり異業種の中でも具体的に協力し得るような一つ目標あるいは課題というものを引っ張り出しまして、それについてできるだけ自分たちの従来蓄積していた経営資源を拡大していくという意味で、新分野と申しましても全く全然別の月とスッポンのようなものを考え出すということではなくして、自分たち活動余地あるいは経営能力資源を拡張していくという意味での新分野開拓事業についての努力を期待しておるわけでございますが、その際基本は、やはりそれに参画し、あるいは組合等を結成して、それに取り組む中小企業自身の自主的な努力というものがベースでございますけれども、国あるいは地方公共団体もこれに最大限の助成あるいは場合によったら指導、援助等もいたしたいと思っております。それ以外に、もちろん親企業構造不況事業所等につきましても、できるだけ技術面その他、あるいは経験面、さらには取引関係面等でお手伝いあるいは助成ができる分野があれば、あるいはそういうものを見出して、極力そういうものを側面的――側面的と申しますのは、親企業が一緒になって助成を受けないという意味で側面的と申し上げておるわけでございますが、気持ちとしてはむしろ御自分の問題としてという気持ちを期待いたしますが、側面的な援助、協力というものもぜひわれわれとしては期待したいと考えております。具体的にどういうものに取り組んでいくのかという問題を踏まえながら、都道府県の責任者等と相談しながら、要すれば関係原局とも連絡をとりつつ親企業に対しての指導も行っていきたいと考えております。現に、たとえば造船関連の下請等で造船会社等の技術的協力も得ながら自分たち自身の経営的な能力を引き上げていこうというような計画を持っておる地域もある、このように聞いております。あるいは下請企業と他の独立の中堅企業が一緒になってやっていこうというような計画もあると聞いております。したがいまして、それらの創意工夫をベースにしながら、やはり関係者は全力を上げてこれをサポートしていくことが必要だと思いますし、そのように指導していきたいと考えております。
  251. 市川正一

    ○市川正一君 中小企業、特に不況地域では金融問題も切実ですが、やっぱり仕事の問題が一番深刻なんですね。いま不況地域法でも下請取引の広域あっせんが行われておりますけれども、私が見聞しているところでは必ずしも十分な効果を発揮していない。これもまた新居浜の例でありますけれども、あそこは四国通産局の管内ですが、ここで中国通産局管内の山口県の仕事のあっせんがあった。それはその努力は多とするんですけれども、しかし零細な下請企業について地理的には瀬戸内海を渡って、そして仕事をやるといういろいろとハンディキャップがあってなかなか恒常的に仕事をするのは大変だという声も聞きます。私はそういう点で、仕事を確保するためにこういう広域あっせんも、きめ細かい指導といいますか、こういうことはもうぜひ対策としてやっていただきたいというふうに思うわけです。  私ここに持ってきましたのは、今度いただきました中小企業庁の城下町法の解説です。この中に、十一項目の現行法でも実施できる対策があり、そして改正法によってこれから六項目やると、合計十七項目の対策が明記されている。これらの対策の利用状況、そしてまたこれからの利用の見通しについて調査なりあるいは試算をなすっておられるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  252. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 先ほど田代委員に御説明させていただいたものと一部重複するかもしれませんが、まず全体を申し上げますと、現行法でのいろいろな対策の実績といたしましては、緊急融資が約四百三十億、それから信用補完措置の特例が百九十億円でございます。これは先ほど答弁をさせていただいたとおりでございます。下請取引のあっせんが四千百六件、設備近代化資金の返済猶予約六千万円、さらに企業誘致に関連しての、五十六年度末までの数字しかございませんので企業誘致はちょっと古うございますが約二百三十件、これは他の工業出荷額等の比率から見ますと、他の地域より若干やはり比率の高い立地状況にはなっておりますが、全般的に企業立地が低迷いたしておりますので余り高い伸びになっておりません。これに関連いたしまして、工業再配置促進費補助金十四億五千万円、減価償却の特例十一億円、特定資産の買いかえの特例約一億円の利用が行われております。  さらに、新しく設けられました振興資金、特に中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫の振興貸し付けの利用状況はどうなるか、さらには、新しく振興のためにわれわれが用意いたしております補助金あるいは振興対策のための信用補完措置がどうなるかと、こういう点につきましては、これは正直申し上げまして、われわれといたしましては、関連地域の中小企業の方々が大いにこの振興制度を利用し、積極的に振興計画を樹立し、このようないろいろな施策を活用していただきたいと、こう考えておるわけでございまして、具体的には、たとえば中小公庫では千百九十六億円のその他貸付枠、特別の貸付枠の内数としてこの振興貸し付けを考えておりますし、国民金融公庫も千六百億の内数に考えておるわけでございますので、基本的にはこの枠内、この中の一部と、こういうことになるわけでございますが、これが五年間でどれだけ使われることになるかは、まだわれわれとしては想定いたしておりません。  ただ、貸付限度枠から見ましても、たとえば経営安定資金は中小公庫は三千億の別枠でございますが、振興貸し付けは三億円の別枠でございますので、そのままいままで運転資金を借りに来た者が全部借りに来たならば、先ほど御紹介した数字、約四百数十億の十倍になるわけですが、設備投資をそんなに全部が行うということも考えられません。したがいまして、これよりかなり下回る数字になると思います。ただ、用意した枠が足りないぐらい皆さん活用していただけることを期待しておるところでございます。むしろ枠が足りなくなって困るような事態にわれわれがなるように期待をいたしております。
  253. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りましたので。だからこそ、小長さんにさっき言うたように、そこはもう足らぬで困っておる、あなたのところは余って困っておると、そこはやっぱり大臣の指導のもとでちゃんとやってほしいと思うんですが。私、中小企業の問題について城下町法案に即して申し述べました。  最後に、実は政府が、中小企業関係者がいろいろ施策を利用しやすいように、「中小企業施策のあらまし」というのを出しておられます。これを拝見しますと、不況地域対策の項がここに、百五十一ページにありますけれども、第3節ですが、わずか六行しかないんですね。そして、「当該地域の中小企業に対する診断・指導を実施することとしています。」ということなんです。私は、もっと内容を、この中身も充実さしてほしいというふうに思います。そういう要望も含めて、私は最後に大臣に、中小企業の深刻な事態の打開ですね、所信をお伺いして、質問を終わります。
  254. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 確かにページ数、字数等からいきますと、そういう御指摘があるかもしれませんが、しかしこれは法律が新しく装いを新たにした後の表現ではございませんで、五十八年度版等についてはもっと親切に、かつ法改正をした趣旨がよく中小企業の皆さんに御理解できるような表現に、スペースが少なければ、それは当然ながら多くなることになるでしょうが、親切な、実態に即した掲載ということにいたしたいと思います。
  255. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会