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1983-03-23 第98回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)    午前十時三十三分開会     ─────────────    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      馬場  富君     中野 鉄造君  三月二十三日     辞任         補欠選任      森山 眞弓君     石本  茂君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 久興君     理 事                 野呂田芳成君                 降矢 敬義君                 吉田 正雄君                 市川 正一君     委 員                 岩本 政光君                 大木  浩君                 金丸 三郎君                 川原新次郎君                 楠  正俊君                 福岡日出麿君                 降矢 敬雄君                 松尾 官平君                 森山 眞弓君                 阿具根 登君                 村田 秀三君                 田代富士男君                 中野 鉄造君                 井上  計君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君    政府委員        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局長     妹尾  明君        公正取引委員会        事務局経済部長  佐藤徳太郎君        公正取引委員会        事務局取引部長  奥村 栄一君        公正取引委員会        事務局審査部長  伊従  寛君        経済企画政務次        官        辻  英雄君        経済企画庁長官        官房長      西垣  昭君        経済企画庁長官        官房会計課長   遠山 仁人君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁物価        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        通商産業省立地        公害局長     福原 元一君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        国土庁計画・調        整局総務課長   八木 国雄君        外務省アジア局        審議官      恩田  宗君        外務省経済協力        局政策課長    内田 勝久君        外務省経済協力        局技術協力第二        課長       黒川 祐次君        林野庁林政部林        産課長      三沢  毅君        資源エネルギー        庁公益事業部業        務課長      黒田 直樹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (経済計画等基本施策に関する件)  (昭和五十七年における公正取引委員会業務概略に関する件) ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管公正取引委員会経済企画庁))     ─────────────
  2. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、馬場富君が委員辞任され、その補欠として中野鉄造君が選任されました。     ─────────────
  3. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査議題といたします。  前回に引き続き、政府所信並びに説明を聴取いたします。  まず、経済計画等基本施策に関し、経済企画庁長官から所信を聴取いたします。塩崎経済企画庁長官
  4. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) わが国経済の当面する課題経済運営の基本的な考え方につきましては、さきの経済演説において明らかにしたところでありますが、当委員会が開催されるに当たりまして、重ねて所信の一端を申し述べたいと存じます。  わが国経済は、二度にわたる石油危機の後にも、欧米諸国に比べて、高く、安定的な成長を遂げ、失業率物価国際収支のいずれの点においても、際立って良好なパフォーマンスを示してまいりました。しかし、このようなわが国経済も、世界同時不況の影響を受け、輸出減少等により、景気回復は緩慢となり、経済現状は、厳しい状況にあります。  世界経済は、第二次石油危機後、その後遺症としての長期間にわたる激しいインフレに悩み、そのため、各国は、インフレ抑制に最重点を置いた政策努力を続けてまいりました。その結果、インフレはようやく鎮静化してきたのでありますが、反面、経済活動停滞を招き、戦後最高の失業率を生むに至りました。しかも、これを背景として、保護貿易主義が高まっているのであります。  また、発展途上国も、先進国経済停滞を反映して、輸出減少、一次産品価格低落等から経常収支が悪化し、債務累積の問題が顕在化するに至りました。  このような内外経済動向を考えますと、財政上の困難など、政策手段の選択の幅はきわめて狭いのでありますが、私は、五十八年度の経済運営に当たって、次の三つの柱を打ち立て、これを具体化してまいりたいと考えております。  その第一の柱は、国内民間需要中心とした経済の着実な成長実現を図ることであります。  内需中心経済の着実な成長は、いわゆる貿易摩擦問題の解決のためにも、また、現在の最重点課題である行財政改革を円滑に進め、雇用の安定を図るためにも肝要であります。  このため、まず第一に、昭和五十八年度予算においても、この点を配慮いたしました。すなわち、きわめて厳しい財政事情の折から、他の五十八年度本来の歳出項目全体の伸びがマイナスであるにもかかわらず、公共事業関係費については、前年度同額の予算額を確保し、その配分に当たっては、経済効果の高い事業重点を置くこととしております。  第二は、金利低下傾向のもとで、中小企業設備投資促進のための税制上の措置等施策推進することにより、民間投資の喚起を図ることであります。特に、マイクロエレクトロニクスバイオテクノロジー等先端技術投資促進に努め、産業構造の一層の知識集約化高度化を図り、経済生産性向上に役立てたいと考えるのであります。  第三は、税制上の住宅取得控除引き上げ等を図るほか、増改築住宅質的向上に対する国民のニーズを取り入れて、引き続き、住宅建設促進することであります。  第四は、基礎素材産業中小企業については、構造政策的な観点を取り入れながら、活性化経営安定化を図るため、実情に応じた対策を実施することであります。  このような政府の諸施策推進により、五十八年度のわが国経済は、実質で三・四%程度成長を達成するものと見込んでおります。  第二の柱は、わが国経済孤立化を避けて国際協調推進し、世界経済に貢献することであります。  戦後のわが国は、段階的に、貿易、資本の自由化を進め、自由貿易体制の仲間入りをしつつ、目覚ましい成長を遂げてまいりましたが、いまやわが国は、この自由貿易体制維持のため他国に積極的に働きかけねばならない立場に立ち至っております。  このような観点から、政府としては、一昨年末以来、わが国市場開放のための対策を講じてまいりました。さらに、今般、関税率の思い切った引き下げ、基準・認証制度等全面的検討、OTOの機能強化等の一層の市場開放措置集中豪雨的輸出の回避、産業協力推進等を決定いたしました。これらの措置は、最近の世界保護貿易主義的傾向を阻止するためにも、わが国みずからが率先してとったものであります。今後、関係各国に対して、わが国のこのような努力について理解を得るとともに、相互の認識のギャップをなくすよう一層の努力をしてまいる所存であります。  第三の柱は、物価安定基調維持することであります。  物価の安定なくして、ゆとりのある安定した福祉社会実現は期待できません。  現在、物価は、近年にない安定ぶりを示しております。また、為替相場は、一ころの円安が是正されており、石油価格も、現在、低下しております。こうした動きは、物価安定の見地から好ましいことであります。  政府としては、今後とも、物価動向に細心の注意を払いながら、機動的な政策運営に努めることにより、引き続き物価安定基調維持することとしております。この結果、五十八年度は、卸売物価が一・一%程度消費者物価が三・三%程度上昇率になるものと見込んでおります。  次に、中長期経済運営方向について申し上げます。  わが国経済社会は、現在、大きな転換期を迎えており、当面の諸課題を解決しながら、来るべき二十一世紀への備えを進めていくためには、これまで以上の長期的な視野に立って事態の変化に弾力的に対応し得るような経済社会の展望、経済運営の指針が求められております。  このため、新たに経済審議会に御検討をお願いしたところであり、今後、この検討の結果をよりどころとして、長期的な経済運営を行ってまいる所存であります。  以上、今後の経済運営課題方向について申し上げました。  外にあっては、五十年ぶり世界同時不況、内にあっては、未曽有財政困難の中で、景気回復を図っていくことは決して容易ではありません。しかし、長期にわたった米国の高金利も是正される方向にあり、世界経済は今後は次第に回復に向かうとの見方が一般的であります。このような事情を受けて、国内においても、円相場金利面で昨年とは違った明るい兆しがあらわれてまいりました。また、産油国による石油価格引き下げの問題につきましても、物価の安定、実質所得向上等により、わが国及び世界経済に好影響があるものと期待しております。そして何よりも、わが国経済は、当面する諸困難を克服していく旺盛な活力を有しているのであります。  本委員会皆様方の御理解と御協力を切にお願いいたします。
  5. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 次に、昭和五十七年における公正取引委員会業務概略について、公正取引委員会委員長から説明を聴取いたします。高橋公正取引委員会委員長
  6. 高橋元

    政府委員高橋元君) 昭和五十七年における公正取引委員会業務について、その概略を御説明申し上げます。  昨年のわが国経済は、内需は緩やかな回復方向を示しましたが、世界経済停滞もあり、依然として景気の足取りは力強さを欠いております。このような中で、民間活力が発揮されるような経済環境整備することがますます重要になっており、公正取引委員会といたしましては、公正かつ自由な競争維持促進によりわが国経済の健全な発展を図るべく、独占禁止政策の適正な運営に努めてまいったところであります。  特に昨年は、独占禁止法違反事件の効率的な審査に努めるとともに、不公正な取引方法明確化を図るなど予防行政推進いたしました。また、事業者創意工夫を生かすため政府規制制度等見直しを引き続き行ったほか、貿易摩擦問題に関連した各種の実態調査を開始するとともに、独占禁止政策国際的連携強化に努めました。  まず、独占禁止法運用状況についてでありますが、同法は、昭和二十二年に制定されて以来、昨年で三十五周年を迎えたところであり、この間、着実な運用に努めてまいったところであります。  昭和五十七年中に審査いたしました独占禁止法違反被疑事件は四百十九件であり、同年中に審査を終了した事件は二百八十八件であります。このうち、法律の規定に基づき違反行為排除等を勧告いたしましたものは十七件、法的措置をとるには至りませんでしたが警告を行いましたものは百五十二件であります。また、昨年における課徴金納付命令事件は四件であり、合計百十五名に対し、総額十一億八千五百四十四万円の課徴金納付を命じました。  次に、届け出受理等に関する業務でありますが、合併及び営業譲り受け等につきましては、昭和五十七年中に、それぞれ千五十件、八百十九件、合わせて千八百六十九件の届け出があり、所要審査を行いました。  事業者団体につきましては、昭和五十七年中に成立届等千三百四十四件の届け出がありました。また、事業者団体活動に関する事前の相談に対しましては、適切に回答を行うよう努めてまいりました。  国際契約等につきましては、昭和五十七年中に五千三百十三件の届け出があり、改良技術に関する制限競争品の取り扱いの制限等を含むものについては、これを是正するよう指導いたしました。なお、許認可等簡素合理化の一環として、届け出を必要とする国際契約等の種類を限定するための独禁法第六条の規定改正に伴い、国際契約等届け出規則改正を行いました。  独占的状態に対する措置に関する業務といたしましては、ガイドラインの別表掲載事業分野について見直しを行い、十三業種とし、これら業種について実態の把握及び関係企業動向監視に努めてまいりました。  価格同調的引き上げに関する報告の徴収につきましては、対象品目見直しを行い、六十一品目といたしました。昨年中に価格引き上げ理由報告を徴収したものは、乗用車一品目でありました。  独占禁止法上の不況カルテルは、中・低圧法ポリエチレン等品目について認可し、昭和五十七年末現在、二品目について実施中であります。なお、独占禁止法適用除外を受けている共同行為の数は、昭和五十七年末現在で四百八十一件となっておりますが、その大半は、中小企業関係のものであります。  次に、経済実態調査といたしましては、大規模小売業者経営実態調査生産集中度調査等を行ったほか、最近の貿易摩擦問題にかんがみ、総合商社事業活動実態調査輸入関連事業者団体調査等を開始いたしました。  流通分野につきましては、百貨店・大型スーパー家庭電器製品など十一業種について実態調査を行い、これらのうち、独占禁止法上問題のある行為につきましては、その是正に努めました。  また、不公正な取引方法に関しましては、その明確化を図り、予防効果を一層高める見地から、不公正な取引方法を指定している公正取引委員会告示、いわゆる一般指定を全部改正し、昭和五十七年九月一日から施行いたしました。  政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度につきましては、わが国経済における民間活力を生かし、経済効率性を高める見地から、前年に引き続き、政府規制が強く行われている十六業種中心調査を実施し、昭和五十七年八月、政府規制制度現状業種別問題点等を指摘した見解を公表いたしました。  国際関係業務といたしましては、OECD等国際機関における審議に積極的に参加し、また、アメリカ、EC、東南アジア諸国などの独占禁止当局との間で意見交換を行うなど、国際的な連携強化に努めました。  次に、下請代金支払遅延等防止法運用状況について申し上げます。  下請事業者保護を図るため、四件の勧告を行い、一千八十五件について支払い改善等措置を指導いたしました。また、親事業者及び親事業者団体に対して法遵守要請を行うなど法の周知徹底を図り、違反行為未然防止に努めました。  最後に、不当景品類及び不当表示防止法運用状況についてでありますが、同法は、昭和三十七年の制定以来、昨年で二十周年を迎えたところであり、国民生活の中に定着しているところであります。  昭和五十七年中に同法違反の疑いで調査した事件は二千四百八十四件であり、このうち、排除命令を行いましたものは十一件、警告により是正させましたものは八百三十三件であります。都道府県の行いました違反事件処理件数は、昨年一月から九月末までで四千八百七十二件となっており、今後とも、都道府県との協力を一層推進してまいる所存であります。  また、同法第三条または第四条第三号の規定に基づく告示につきましては、ゴム製履物及び合成樹脂製履物業における景品類提供制限する告示並びにおとり広告に関する告示制定いたしました。  事業者が自主的に規制するための公正競争規約につきましては、農業機械表示に関する規約など六件について認定し、昭和五十七年末現在における公正競争規約の総数は百件となっております。  以上、簡単でございますが、業務概略につきまして御説明申し上げました。今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げます。     ─────────────
  7. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 去る十五日、予算委員会から本日及び明二十四日の二日間、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち、公正取引委員会経済企画庁通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫について審査の委嘱がありました。  以上、御報告申し上げます。  次に、審査日程について御報告申し上げます。  理事会で協議いたしました結果、本二十三日は総理府所管のうち公正取引委員会経済企画庁、明二十四日は通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫について審査を行うことに決定いたしました。  昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち公正取引委員会経済企画庁議題といたします。  まず、経済企画庁長官から説明を求めます。塩崎経済企画庁長官
  8. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 昭和五十八年度の経済企画庁関係予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算額は、百十五億三千四百万円となっており、これは前年度補正後予算額に比べて六千八百万円の増額であります。  また、財政投融資計画につきましては、海外経済協力基金に係る分として、二千九百四億円を予定しております。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  第一に、新経済計画積極的推進等に必要な経費として、十二億五千二百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、新しい経済計画の策定とその推進を図るための経費として、五億九千五百万円、経済政策を機動的に運営するための経費として五千百万円、総合研究開発機構の行う総合的な研究開発推進するための経費として六億六百万円を計上しております。  第二に、内外経済動向調査、分析の充実に必要な経費として、十億二千七百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、内外経済動向調査、分析するための経費として一二億二百万円、世界経済モデル整備とその活用のほか、新国民経済計算体系整備等のための経費として、七億二千五百万円を計上しております。  第三に、物価対策国民生活安定政策推進に必要な経費として、五十六億一千百万円を計上しております。  この内訳の主なものは、物価の安定を図るための調整費等であり、生活関連物資の需給、価格動向調査監視物価に関する適確な情報の提供、その他各省庁の所管する物価対策を機動的に実施するための経費として、二十九億八千八百万円を計上しております。  また、国民生活政策体系検討等を進めるための経費として、三億二千七百万円、国民生活センター機能充実等消費者行政推進するための経費として、二十二億九千六百万円を計上しております。  第四に、経済協力等対外経済政策積極的展開を図るための調査検討等に必要な経費として、二億一千四百万円を計上しております。  これは主として、効果的な経済協力推進を図るための経費のほか、新たに計上した市場開放問題苦情処理に必要な経費であります。  最後に、海外経済協力基金でありますが、中期目標に沿って政府開発援助の拡充を図ることとし、そのため同基金事業規模として、五千九百十億円を予定しております。  この原資は、一般会計からの出資金が一千六百億円、資金運用部資金からの借入金が二千七百七十四億円、政府保証債が百三十億円、自己資金等が一千四百六億円となっております。このうち一般会計からの出資金は大蔵省に計上しております。  以上、五十八年度における経済企画庁関係予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議のほど、よろしくお願いいたします。
  9. 亀井久興

  10. 高橋元

    政府委員高橋元君) 昭和五十八年度の公正取 引委員会関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち、公正取引委員会予算額は、二十六億六千七百万円となっており、これは前年度予算額に比べて六千八百万円、二・六パーセントの増額となっております。  以下、その内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、独占禁止法施行経費として一億七千七百万円を計上しております。独占禁止法施行経費には、違反事件審査関係経費、不公正な取引方法に対する規制明確化等を図るための経費政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度見直しのための経費などが含まれております。  第二に、流通問題総合対策経費として千六百万円を計上しております。流通分野における競争阻害要因を明らかにし、所要措置を講ずるための経費であります。  第三に、国際関係事務処理経費として千六百万円を計上しております。わが国経済国際化、諸外国における独占禁止法制定強化に伴い、諸外国独占禁止法施行機関との連携促進を図るための経費であります。  第四に、下請代金支払遅延等防止法施行経費として千九百万円を計上しております。法運用強化啓蒙普及活動を積極的に行い、下請取引適正化推進するための経費であります。  第五に、不当景品類及び不当表示防止法施行経費として一億六千九百万円を計上しております。公正競争維持促進することによって、消費者保護を図るため、不当表示等に対する規制体制整備し、景品表示行政積極的推進を図るための経費であります。  最後に、その他人件費等予算として二十二億七千万円を計上しております。  以上、昭和五十八年度における公正取引委員会予算について、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
  11. 亀井久興

    委員長亀井久興君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 吉田正雄

    吉田正雄君 ただいま経企庁長官、それから公正取引委員会委員長からの所信表明業務報告、それから予算についての説明をいただいたわけであります。所信表明業務報告につきましては別途また御質問を申し上げる日があったと思いますので、その際に譲ります。  なお、きょう衆議院における法案審議等関係で何か公正取引委員長の方に出席要請があるようでありますから最初に公正取引委員長にお尋ねをいたします。  御承知のように、第一次石油ショック以後の世界経済、とりわけ、石油消費先進工業諸国におきましては、不況というものが長期、構造的になっているのは御承知のとおりだと思うのです。わが国ももちろん例外ではありません。経済財政、金融、産業のあらゆる分野で政府といたしましていろんな施策というものが講ぜられてまいっておりますけれども、必ずしも有効な効果が上がっておるかどうかという点については疑問がございます。そのことは端的に倒産件数がきわめて多くなっておるということと、それから先月発表されました例の一月における完全失業率の増大、こういうふうにもあらわれておると思うんですけれども、こういう点から考えまして、政府は従来から繰り返して民間活力を利用するとかあるいは自助活動というものを引き出すというふうなことが盛んに強調されてきておりますり確かに私はそのことが重要だと思います。市場メカニズムに基づく公正な競争原理の確立維持、これによって民間活力とかあるいは自助というものを引き出していくということは、自由主義経済というものを守るあるいは発展させるという立場に立っても私はきわめて重要ではないかというふうに思っているわけです。その大きな土台になってきたのが私は独占禁止法だと思うんです。  そこで三点ほどお尋ねをいたしたいのですけれども、第一点は、今日の経済的な困難、不況の一因というものがこの独禁法に関連をしているんじゃないかというふうな、独禁法の運用が厳しいんじゃないかというふうな意見も若干あるやに思っておりますけれども、果たして独禁法というものが今日の経済困難だとか不況というものの原因になっているのか、必ずしも私はそうじゃないというふうに思っておりますけれども、この点についてお伺いをいたしたいと思います。  時間がありませんから続いて申し上げますが、第二点といたしまして、欧米諸国において不況対策、あるいは産業対策も含まれると思いますけれども、そういう観点から独禁法を改正した国があるのかどうなのか、この点が第二点です。  第三点は、先ほども申し上げましたように、独禁法というのは自由主義経済を守り発展させるための基本法とも言うべきものではないかというふうに思います。したがって、一時しのぎの不況対策上の産業政策から独禁法をいじり回すべきではないというふうに思いますけれども、以上三点お伺いいたします。
  13. 高橋元

    政府委員高橋元君) 今日の日本経済が置かれております困難な状況の原因が、その一つが独禁法に起因しているのではないかという意見を、極端な御意見だと思いますけれども、私どもも耳にいたすこともあるわけでございますが、私どもはそういうふうに考えていないわけでございます。  経済成長がかつてのような高い成長率を追えなくなってまいりまして、いわゆる低成長下に移ってまいりました場合に、従来、売り手市場と、一言で言えばそういうことでありました経済状況から買い手市場と申しますんですか、そういう経済情勢に移りつつある、その中で企業の欲しいままの結合、または私的な独占、不公正な取引方法というものを排除をしてまいりまして、それによって経済活力ある自由な体制と企業者の創意工夫に基づく経済発展というものを期していくためには、独禁法がなければならないわけでございまして、低成長下になればなるほど企業が合理化によって減量経営に努めて不況を打開して、将来への活力を求めていくということが必要であろうと思います。  民間活力維持して、これを生かして経済の効率を高めるためには、独占禁止法に基づく自由な市場経済、それのメリットを最大限に発揮していくという必要があるというふうに思いまして、独禁法が自由でかつ公正な競争を擁護するために経済不況に陥ったという御意見は当を得ていないものというふうに信ずるわけでございます。  それから第二番目に、しからば欧米で不況対策として独禁法規を緩めている例があるかというお尋ねでございますが、現在三十九カ国独禁法を持っておる国があるわけでございます。これは先進国が二十一カ国、発展途上国十八カ国、合計三十九ということでございますけれども、それらの国について調査をいたしてみておりますけれども、いずれの国をとりましても不況対策という観点から独禁法を緩めているということは全く認められないわけであります。  石油危機以来、十年にわたる経済の困難ということは世界共通でございますけれども、その中にありまして物価の安定を維持しかつ経済活力を増していくために、いわゆるスタグフレーションから脱却するために競争法規の強化を図っておるというのがヨーロッパの現状でございますし、アメリカにおきましても、伝えられておるほどレーガン政権下でシャーマン法なりクレートン法なり連邦取引委員会法の運用が緩められているという事実はないわけでございまして、むしろ民間競争を自由にしていき、政府規制部門を逐次緩和することによって経済活力を発揮して経済の再活性化を図るということに世界全体の気持ちがまとまりつつあると申して過言でないというふうに存じます。  第三点のお尋ねは、一時しのぎの目的で独禁法に手を触れるべきでないと思うがどうかということだと存じますが、まさに御指摘のとおりであろうというふうに思います。  たとえば、独禁法は公正な競争方法というものの維持を図る目的を持っておるわけでございますが、その一面だけ取り出してみましても、不況になってまいりますと、経済がとかく不公正な取引方法、他人を排除し、また優越的地位を乱用をして公正な競争を排除していく、制限をしていきたがるという傾きがございます。現にそういう動きが強くなってきているという面も見受けられるわけでございますが、公正で自由な競争というルールにのっとって、各企業が適切に事業活動を行っていくことが必要でございます。  引き続き、私どもといたしましては、公正で自由な競争を通じて公正な取引の実現に向かって努力をしていきたいというふうに考えております。
  14. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは次に、経済企画庁長官にお尋ねをいたします。  参議院の総括質問が始まりましてから、私も経済財政関係に関しましてはきわめて素人でありますので、大変勉強をさせていただきました。  ただ、私の印象なんですけれども、各委員の質問に対しまして、必ずしも政府側から明確な、あるいは具体的な答弁というものが得られなかったんではないのか、そういう点では何か隔靴掻痒の感じを抱いたのは私一人ではないんじゃないかというふうに思っております。  なお、これはマスコミ等世上の、つい先日もうわさという言葉をちょっと使って問題も出たようですけれども、うわさは確かに流れているようでありますけれども、経済企画庁というのは優秀なスタッフをそろえた、まさに日本の経済のかじ取り役としてきわめて重要な任務を背負った官庁ではないか、私はこういうふうに思っております。  ところが、最近、経企庁はどうも精彩がないんじゃないかとか、民間活力ではありませんけれども、いまどうも経企庁には活力がないんじゃないか、自信を喪失をしているんじゃないかというふうな、まさにこれはうわさですね、こういうものが流れておるようです。そういうことでは困るわけですね。  予算委員会では、きのうの公述人の中にも、私は尊敬をする塩崎経企庁長官の理論には全く賛成でございましてというふうな方もございまして、そういう点で私は、今日の日本の経済というものが低迷をしておるという一つの大きな原因といたしまして、余りにも財政主導ということがあったんじゃないか。  五十八年度予算編成におきましても、たとえば経企庁が、景気回復所信表明ですか、ここにも書いてありますように、公共事業であるとか、いろいろなことが述べてあるんですけれども、そういう経企庁の、要求と言ったらいいんですかね、考え方というものが必ずしも五十八年度予算に反映をされなかったんじゃないかというふうに思っているわけですね。  さらに、これは新聞報道ですけれども、新しい今後の経済政策の策定というふうなことで中曽根総理から何かまた注文がついたといいますか、そういうことが出たというふうなことも言われております。  そういうことで、私は、やはり経済企画庁として、従来の実態、その精密な分析、そして確固たる将来の見通しというものを持っていただいて、そういうものをひとつ勇気と確信を持って今後の日本経済に政策として盛り込んでいただきたい、こういうことを当初に申し上げまして、幾つかお尋ねをいたしたいというふうに思います。  総括論議の際にも、日本経済現状をどう見るのか、将来の見通しというものをどういうふうにつけるのかということが繰り返し論議になったわけです。そこで、どなたも異論がなかったと思いますのは、今後の世界経済あるいは日本経済景気動向に関してはアメリカの景気というものが非常に大きく影響してくるんだろうという点では、ほぼ意見が一致しているんではないかというふうに思います。  そこで、一昨日アメリカ商務省が発表した、ことし一月から三月までの第一・四半期の、これはまあ暫定的な数字ですが、GNPの実質伸び率というものが前期比四%の大幅な伸びを示したと、これは二年ぶりの急成長だと、こういう報道がされております。これに対する評価、まあおとといの話ですから、まだ分析はされておらないかどうかわかりませんが、しかしアメリカ経済は上向いてきておるということは昨今言われておりますので、この一昨日の米商務省の発表をどういうふうにまず分析をされたのかされないのか、お聞かせ願いたい。
  15. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 数字の詳細な分析は政府委員からしていただきたいと思いますけれども、私はいま吉田委員のおっしゃいますように、アメリカもまさしく回復過程に入って、これからだんだんと日本に対してもいい影響をもたらすと、こういうふうに見ておるわけでございます。御承知のように、レーガン政権の執拗なインフレ対策は成功してまいったと。そして、三%台のインフレ率になってきた。いよいよこれから経済の拡大政策によって失業を吸収していく方向に向かう。しかし日本への影響は、御案内のように自動車が輸出規制をされておりますような関係がありまして、輸出によって日本が景気回復するということは、影響をもたらすということはなかなかむずかしい面もございましょう。しかし、昨今新聞紙上にありますように、企業の中にはアメリカからだんだんと引き合いがふえてきた、在庫を穴埋めするような引き合いがふえてきたようなことから考えてみますと、この面からもいい影響があると思いますし、私はアメリカの金利もいずれは低下の傾向に向かうに違いない。まあ日本はアメリカの金利の影響を受けて、そして円安の不安をおそれて、現在公定歩合その他について非常に慎重でございます。円高の傾向の定着、さらにまた金利の低下も私は考えられるところであります。こういう方面から、五十八年度の経済については、私は世界経済の影響を受けて三年間も低迷しました今日でございますから、いい影響がアメリカの回復に伴って生じてくるということはもう当然のことだと、こういうふうに考えております。
  16. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの予想ですと、先行きよくなっていくんじゃないかというふうにおっしゃったわけですが、しかしまだそんなに楽観できないんではないかと、まだ暫定的な数字であって、修正ということが過去も行われてきておると、あるいはいまおっしゃった金利の強含みの問題とか、場合によってはもっと金利引き下げる必要があるんじゃないかとか、いろんな意見もあると思うんです。  そこで、経企庁の見通しとしては、多くの景気予測では、ことし下半期からアメリカの景気回復というものが大体見通せるんじゃないか。そういう点では楽観論が非常に多い感じがするんですけれども、石油値下げというのが今回出たわけですが、果たして楽観どおり上向いていくのかどうなのか、また日本経済に及ぼす影響、効果というものが果たしてそのとおりにいくのかどうなのか。  ここで、特に私は長官にお尋ねいたしたいと思いますのは、経済成長率というものはまあここ二、三年特に見通しよりも実績は下回ってきておるわけですね。本年度の場合も、昨年もずいぶん、二回も修正されたんです。ことしは一応三・四%という見通しになっておりますが、民間の各機関を見ますというと、大体二、三%というところに集中をいたしておると思うんですね。そういう点から見まして、今後これからのアメリカ景気動向が本当に上向いていくのかどうなのか、それと日本経済に果たしてそれがどの程度プラスになってはね返ってくるのか。この実質経済成長率三・四%というものの中には、そういう影響、動向というものが織り込み済みなのかどうなのか、それが単に期待感に終わるのかどうなのか、こういう点お聞きいたしますし、もしアメリカの景気回復がはかばかしくなかったとしたら、これはまたどういう影響が日本経済に出てくるのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  17. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) アメリカの経済動向についていま詳細な御質問がございましたが、これはひとつ調査局長から簡単に御説明をさせていただいて、それがどのように日本に影響するかというふうなことについては私からまた後でお答え申し上げたいと思います。
  18. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) 御質問にもございましたように、アメリカ商務省はこの一—三月期のいわばフラッシュというような形におきます速報の前の段階というような予測を発表いたしました。それは年率で前期比四%の増、なお八二年の十—十二月期の速報値を少し上方修正いたしましてマイナス一・一%、こうやったわけでございまして、これらを通じて言えますることは、主として物価が下がって金利低下傾向であるということを受けまして、たとえば自動車の販売あるいは住宅の建設着工戸数というものがかなりふえてきている。そしてもう一つは、在庫調整が年末からことしにかけて非常に進んでおるというような事実に基づいておると思います。  それでは、アメリカの政府は、八三年年平均で一・四%、そして十—十二月期対前年比で三・一%と、こう当初見積もったわけでございますが、今日の状況では、いろいろのニュースが伝えるところでは、もう少し上方を見てもいいんではないか、あるいは四とか五というような数字が示唆されているようでございます。果たしてこのとおりいくのかどうかということが御質問だろうと思いますが、まず、いい要素といたしますと、先ほど申し上げましたような消費関連の要素、在庫調整が進んでいるということ、そして物価が一ころの一三%台から三%台ここずっと続いておるというようなこと、さらに先ほどの消費関連を受けまして、生産が昨年の十二月から一、二と三カ月連続プラスに転じておるというような点があろうと思いますが、やはり懸念材料といたしますと、御質問の中にもございましたように、金利動向がどうなるかということでございまして、先行きは先ほど大臣がお答えいたしましたような形になると思いますが、目下のところはなお下げ渋っておるというのがどうなるかということでございますし、その根底にありますものが、一つの大きな赤字というものがこれからの資金需要にどう働くかということかと思いますけれども、さらにそのほかに設備投資がなおまだ余りはかばかしい数字ではないようでございます。ただ、きのう商務省あたりの言っておりますことは、設備投資につきましても、いままでよりは多少上方に修正をしたような発言ではないかと思いますけれども、この辺が問題かと思いますが、やはりいま出ております消費住宅等の動向、さらにここへきて石油の基準原油価格の値下がりといったようなものの及ぼす影響のプラス面というものを考慮いたしますと、多少の出入りといいますか上下はもちろん避けられないとは思いますが、基調といたしますと、アメリカ政府が言っているようなものを素直に認めて、そういう方向に期待してよろしいのではないかというふうに思っておる次第でございます。
  19. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 現状は以上のとおりでございますが、今回、見通しの策定に当たりまして、世界経済全体は年後半以降上向いていくんではないかというふうに想定していたわけでございます。OECDの十二月の経済見通しによりますと、OECD諸国上半期は一力四分の三の成長でございますが、下半期二力四分の三%の成長というふうに見ているわけでございます。一方アメリカにつきましては、アメリカ政府は、ただいま御説明申し上げましたとおり一・四%の成長でございますが、OECDの見通しによりますと二%程度ということでございまして、いずれにいたしましても、世界経済全体は下半期以降緩やかに回復していくのではないかと私どもも想定しておったわけでございます。ただ、何分にも石油価格がかなり大幅に引き下げになりまして、その影響が今後下半期以降想定されるわけでございますので、今後、石油価格動向あるいは金利動向、不確定な要因はございますけれども、世界経済全体としてはプラスに働いていくというふうに考えております。  ただ、私どもそういった想定でございますが、ただいま大臣から申し上げましたとおり、輸出に対する影響という面で見ますと、必ずしもそのために輸出が大幅に伸びると見ておりませんで、IMFベースでございますが、輸出は三・七%程度の伸びというふうに想定しているわけでございます。
  20. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 以上のような見通しのもとに、五十八年度は三・四%という成長率を策定してこの実現努力をすることにしておるわけでございます。いま、このような前提が崩れた場合、アメリカがもしもできなかったというような場合はどうなるかというお話がございました。それは程度いかんにまずよろうかと思います。しかし全体としてアメリカの回復は私は順調にいくものだと、これがよほど狂った場合には——実は五十七年度の経済成長率五・二%を三・四%にまず第一に修正いたしましたのは、五十六年の秋以降の世界経済が急に悪くなった影響を受けた、そのことを考慮いたしまして修正されたわけでございますから、私はこんなことにならぬと思いますけれども、そんなことにならないように努力しなければならぬと思いますが、そういうことを恐れるだけでございます。
  21. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは要望になると思うんですけれども、いま上向いてきておるという中で、私は、日本経済に対してどの要素というものが一番大きな影響を及ぼしてくるのか。ただ、数字の上で仮に一・四とか、OECDで二%程度とか、あるいは年間を通じてはもっと上向いて四%近くなってくるんじゃないかとか、いろんな説明があったんですけれども、私は、大統領選挙を控えまして、政治的な観点から財政的なてこ入れとかそういうものによって一時的な景気回復というふうなことがもし何らかの形で行われておるとすると、そういうものが直ちに日本経済に私ははね返ってくるとは考えられないわけですね。そういう点で私は、やっぱり分析というのは十分厳密にやっていただいて、今後の方向をより確かなものにしていただきたいということを、これは強く要望しておきたいと思うのです。  そこで、全体としては、いま当初に世界的な動向というのをお尋ねしたんですが、今度は、国内的にひとつながめた場合、一体わが国不況の要因というのはどういうものなのか。最近盛んに産業部門のソフト化であるとかサービス化とか、いろんな言葉も出てきておりますけれども、この構造的要因というものと循環的な要因というものがあると思うのです。  そこでまず個々具体的に聞いてまいりますが、順序は不同になりますけれども、このソフト化、サービス化という点で、かつて経企庁の長期展望委員会というのが二〇〇〇年の予測というものを行っておりまして、八〇年からの二十年間に就業者の数というものが大体七百万人から八百万人ぐらい増加をするであろう。しかし、それらの数字にさらにプラスアルファをして、狭義のサービス部門等でこれらの増加人口というものは吸収できるんじゃないかというふうな予測をされておるわけです。確かに、就業者数とか所得の第三次産業に占めるウエート、特に八〇年の場合のGNPに占める割合というのが五八・八%だそうでありますけれども、このソフト化の進行ということは、これは欧米でも進んでいるわけですね。ところが、欧米の場合は、ソフト化が進んでも、当初あるいは吸収したかもわからないんですけれども、いまや非常にやはり高率の失業率になっておるわけですね。そういう点で、このソフト化とかサービス化というものについて経企庁としてはどういうふうに考えておいでになるのかお聞かせ願いたいと思うんです。
  22. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) いま御質問ございました点でございますが、経済審議会長期展望委員会で、二十一世紀を踏まえて、「二〇〇〇年の日本」という一つの報告を出しておるわけでございますが、その中で指摘してございます点は、いま御質問にございましたように、今後約八百万人ぐ らいの労働人口がふえる中で、どのような産業にそれが就業していくかという一つの予測をいたしておるわけでございます。その中で、そのほとんどの部分が御指摘のように第三次産業、特にその中のサービス産業で吸収されるであろうというようなことを指摘してございます。われわれがすでに過去の実績をとらえましても、最近の雇用増加の相当部分はサービス業分野でふえておるわけでございます。  今後もそういう方向に進むであろうと思っておるわけでございますが、実は、本当に正直申しまして、この第三次産業分野の分析というものがわれわれ非常にまだウイークで、正直申しましてウイークでございます。この点は、今後さらに新しい展望の中でも検討をさしていただきたいと思っておりますが、現段階で考えられます新しい情報化、サービス化というようなもの、あるいは事業所に対するサービスとか、あるいは対家庭サービスとか、今後、技術革新の進展に伴いまして従来のサービス業以上に新しく発展する分野も考えられるわけでございまして、そういう分野で新しい雇用吸収を図っていくことが考えられるのではないかとわれわれは思っておるわけでございます。さらに引き続いて勉強を進めてまいりたいと思っております。
  23. 吉田正雄

    吉田正雄君 そこで、ことし一月の失業率が二・七二%、百六十二万人という、いままでの労働力調査の歴史の上では過去最高の失業率というものを示しておるわけですけれども、閣議の段階では、調査方法がまずかったんじゃないかとか、そういう異論が出たということを聞いておりますけれども、少なくとも統計学をやった人から見れば調査のやり方がまずいということにはならないと思うんですね。私も、どういう調査方法になったのかと思ってちょっと聞いてみたんですけれども、昨年の十月からことし一月にかけて、従来は三万世帯だったものを四万世帯にふやした、それから、抽出方式も五十年の国勢調査基準から五十五年のものに変えたんだということであるわけですから、これは別段統計の手法として特に変わったという内容でもないと思うんですね。ところが、どうも方法がおかしいというふうなことで、これは統一地方選とか参院選を控えて、確かに失業率がふえたということでは困るわけですから、そういう点で、もう少し数字をうまく何とかせいという気持ちはわからぬわけでもないんですけれども、私が聞くところによりますと、この出てきた数字の処理の仕方をもうちょっと正直にやったならば、三%超えるんじゃないかということも言われているわけですね。これは、例の人勧が出る際の統計のやり方というのは三種類ありますけれども、その方式のどれがいいかということはあります。しかし、同じ母集団の処理の仕方によっては、数字は確かに変えれば変えられるということがあるんです。そういう点では、厳密に一定のものにして統計というものはやっていかないと、その都度その都度基準を変えたり、切るところを変えたりしたんでは、これは狂った数字が出てくるわけです。  しかし、私は、少なくとも今回の調査というのは、むしろ実勢をある程度正直にあらわした数字じゃないかと思っているんですが、この点について、経企庁はどういうふうに評価をされておるのか。また、この失業率がこのように今回高くなった理由というものは、原因というのはどこにあるというふうに分析をされておるでしょうか。
  24. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) いま吉田委員から閣議のお話が出ましたので、詳しい数字は政府委員から御説明させていただきたいと思いますけれども、閣議でそのような、何と申しますか、この数値はおかしいから、これを別な方法でやれというような話が出たのではございません。  それで、いま吉田委員の方が私よりもずっと統計の御専門のようでございますが、いまのような三万から四万に変えるということ、これ自体一つの私は進歩であり、また統計の方法としては、より確実性の高い方法であることは認めるわけであります。しかし、これまでは三万という数値でずっと失業率を発表してまいりまして、二・四%というふうなことで、私どもは耳にたこができるほど入って、またこれを世界各国に宣伝してまいっていたわけでございます。  ところが、今度の数値は、確かにいまのような範囲を広げる確実性を求める統計であった。しかし、その内容を見ましても、雇用者数もふえ、有効求人倍率も一定であるのに、失業率だけがふえていったところにどういうことを意味するのか。これはもう少し、何といいますか、統計の、私は、連続性という言葉で言ったらいいのかもしれません。この方法でやるんなら、この方法をずっと連続してやっていくことが必要でないかと。そして初めてこれに対して適正なる判断ができるのではないかという点が第一点だったわけです。第二点は、それじゃ三万から四万を、いままでの過去をさかのぼってやってみて、これも検証することができないかというようなことを言いましたが、これはなかなかむずかしいことでございます。  したがいまして、私どもは、各般の調査でこれを検算しながら、しばらく、何と申しますか、新しい手法によりますところの失業率の統計を継続していって、それから判断することが適当ではないか、こんなことを申し上げただけでございまして、これを人為的に改ざんしろとか、そんな、また統計上の理論に反するようなことは、閣議でございますから、絶対にございません。
  25. 吉田正雄

    吉田正雄君 それからこの不況の問題ですね、特に個人消費内需拡大という観点から、賃金の問題、伸びの問題も当然出てまいっておりますけれども、昨年はたしか四・五%程度で、三十三年以来最低であったということが言われておるわけです。  そこで、この内需の拡大ということで、特にその中心をなすものとして、所信表明といいますか、今後の経済政策の中にも書かれておると思うんですけれども、個人消費の拡大と公共事業の関連、特に個人住宅がいま伸び悩んでおるということが言われておるわけですね。賃金センターですか、金子所長の話によりますと、やっぱりことしは五・五%程度は必要だというふうなことが言われたり、きのうの一般質疑における公述人の意見としては、景気回復内需を拡大していくというためには、賃上げというものはやはり七%程度必要ではないかというふうな、これは意見ですがね、出ておるわけです。それと同時に、公共事業も、従来の在来型の公共事業のあり方では、もうそう景気回復には余り効果がないんじゃないかと、短期的にはそういうことがあってもいいけれども、もうマンネリ化したああいう公共事業のあり方では問題であって、むしろ地方分権型の公共事業に拡大をしていくべきではないかと。地方分権型と言っても、これをどうとらえるかということはあると思うのですけれども、これは結局生活関連の公共事業というふうに言いかえても私はいいんじゃないかと思うんですけれども、そういう点で、ここにも述べられております個人消費の拡大、内需の拡大、さらに公共事業のあり方等については経企庁としてはどのように考えておいでになるのか。文章では、とにかく公共事業重点を置きますと。きょう初めてこれはいただいたわけですから、改めてゆっくりお聞きをいたしますが、きょう聞かせていただいた段階ですので、私もどう質問していいかわからないのですが、ここに書いてありますように、「公共事業関係費については、前年度同額の予算額を確保し、その配分に当たっては、経済効果の高い事業重点を置く」と、こうなって、言葉の上には確かに経済効果の高いものに置くということはいいことなんですけれども、一体その中身というのが何なのかというものが余りはっきりしないということでありますし、前年同額の確保では、物価上昇率分が実質マイナスになっていくわけですから、そういう点で、こういうもので果たして効果的に一体行えるのかどうなのかという点で、もう少し具体的な中身を聞かしてもらいたいと思うんです。
  26. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 吉田委員からまず最初にお話がございましたが、まず、企画庁は元気がなくなってきたということ、これは私の性格にも多分に関係することでございまして、私が元気がないせいもあるんですけれども、全般的に元気がなくなりましたのは、高度成長時代、あるいは昨今の不況対策としての財政金融政策を多分に活用できた時代と違って、やはり財政が大変不如意になってきた。財政赤字の解消、そして赤字国債の解消、これが金利の低下を含めての大きな問題になっておるだけに、これまで財政金融政策を活用して有効需要の拡大を図ってきたわが国経済にとっては大変厳しいことになった。このことが、私の性格と並んで、いま吉田委員が指摘された点ではないかと思うんでございます。  しかし私どもは、何としても財政再建は、いま申しましたように、再建して、かつてのように、財政も伸び伸びと公共投資等に使えるような状態を一刻も早く実現したいと、また実現すべきであるということを考えているわけでございます。  私は、公共投資の方が所得税減税よりも有効需要の拡大が高いという通説、これを私はまだ信じているものでございます。しかしながら、ケインズ流の考え方はもうアメリカではだめなんだと言っておられますし、いや、サプライサイダーとか、それからマネタリズムと言っておりますけれども、私は、社会資本の整備のおくれた今日、そしてまた貯蓄の多い日本では、やはり公共投資をまだまだ活用しなければいけない経済状態だと考え、企画庁の皆さん方も過去の実績から考えているところでございます。  それなら、六兆六千五百五十四億というのが四年間横ばいというのは残念なことではないかと申しますが、経済協力費や防衛費等に比べて、一般の歳出がとにかくマイナスシーリングのときにゼロであったということが一つ褒められてもいいんではないかということが一つでございます。  それからもう一つは、いまおっしゃったように、物価が上がっておるから実質的なマイナスだというお話がございました。そのとおりでございます。そこで、これまでもやってまいりましたが、ひとつ御案内のように土地に投資を少なくするようなやり方で、一割でも土地代を節約するならば完全に事業費に回って、雇用面においても大きな、あるいは資材の購入等を通じての在庫あるいは設備投資にもいい影響が来るではないかということで、ひとつこんな面を引き続きやっていくことを考えておることが第二でございます。  その他生産性の高い、金のかからない、たとえば都市の再開発、これらの面をひとつ第三の問題として民間の資金を活用しながら公共投資の一つの方法として考えていく。これは土地も要らないわけでございますから、こんなような点をひとつ考えていくべきである。きょうも都市再開発がやはり民間の方々が一番サポートしておる公共投資の項目であるというアンケートの結果がある新聞に出ておったようでございますが、こんな点に重点を置きたいと考えております。  それから第四には、もう吉田委員御案内のように、去年大変御苦労いただきまして、十二月二十五日には二兆七百億円の公共投資を中心とする、住宅もございましたが、含めての補正予算、それが成立いたしました。それはひとつ五十八年度の公共投資のいわば前倒し的な要素もございまするけれども、そんな点を勘案するならば、私は公共投資によってやはり経済成長を図っていくという考え方はこれまでのとおり続けられていると、こういうふうに考えておるものでございます。
  27. 吉田正雄

    吉田正雄君 分権的なものについてのいま御回答はなかったんですが、ただ長官、公共事業が確かに景気に対して有効なものであるということはこれ否定する人は少ないと思うんですね。ただ、建設業関係に関する中小企業に倒産がきわめて多いという現実をじゃまた一体どういうふうに把握をしていくのかということも出てまいりますので、その辺は今後倒産防止という観点からももう少し御検討をいただきたいというふうに思っているわけです。  そこで、いま景気については所得減税よりも公共事業の方がいいというふうなお話がございましたけれども、最近また潜在成長力というものをどう評価するかと、どう見ていくかという問題が出てまいってきておりまして、たしか短期的には、当面の有効需要というものをどう拡大していくかという観点では公共事業とかいろんなものがあると思うんですね。ところが、第二次石油ショックで五%から三%に下がってきたという——なぜ下がったかと、いろいろ原因があるわけですけれども、そういう点で考えますと、長期的な潜在成長力というものはやっぱり個人消費であるとかあるいは技術革新とかいろんなものが入ってくると思いますけれども、その際やはり見逃してならないものに私は所得減税というものが当然あると思うんですね。ただ、この所得減税と言う場合、私どもはやっぱり区別しなきゃいかぬと思いますのは、物価調整分に見合うものは純然たる私は所得減税とみなすべきではないんじゃないかというふうに思うんですね。そういう点で、この所得減税に対する経済政策上の観点からの経企庁の方針なり考え方というものは一体どういうふうにお持ちなんですか。公共投資ばっかり重点では、私はいま言った潜在成長力という点からしてちょっとそこのところは軽視をされているんじゃないかという感じがするんですが。
  28. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) いま私が、公共投資の方が所得減税よりも何と申しますか景気刺激効果、成長効果が大きいと申しましたのは、これは私の意見じゃございません。企画庁がもうたびたびと皆様方の御質問に答えて、一兆円所得税減税をするならばGNP効果は〇・二%ぐらいである、公共投資ならば〇・五%ぐらいであるというようなことを発表してきたその一般的な考え方を、考え方と申しますか、企画庁の発表をこれを申し上げたつもりで、私ごとき者がそんな評価をするだけの力はない。これはもう定説であろうと思う。それは、つまり所得税減税ということは、所得というものは消費と貯蓄に分かれるわけでございますから、減税ということは一部は消費に回りますが、一部は貯蓄に回る。やはり刺激的な効果は消費にある。ところが、公共投資はまさしく全部が消費に回ると考えていい。そこに経済効果の違いがあるという、経済の何といいますか初歩的な理論を申し上げたに過ぎないわけでございます。  そこで、所得減税の御質問が出ましたが、これは私はいまおっしゃったように現状においても確かに所得税減税は五年間も行われてなかった。物価の上昇があり、その間賃金の上昇がある。ところが累進税率の関係で賃金の上昇以上に所得税がふえていく。これはいろいろサラリーマンの方々に何と申しますか、社会的ないらいらと申しますか、不満を与えていることも、いろいろ原因があるようでございますけれども事実だと思いますし、かつてもう毎年毎年自然増収があれば必ず減税が唯一の前提というふうに言われるぐらい行われてきたことを考えてみますと、私は所得税減税は大きな国民の期待だと思って、私どもも今回の与野党の合意の国会の申し合わせは何としても最大限に尊重して努力をしてこれを実現しなければならないと思っているところでございます。  しかし、問題は財源いかんだと。さて、そこで財源いかんによってはこの経済効果も相殺される要素があり、あるいは吉田委員を初め皆様方、大型間接税、これを財源にするならば消費にまともにぶつかることならこれは全く、一兆円減税して一兆円のまた間接税ならば相殺以上のむしろマイナス効果を持つんではないかと御心配がおありなんでしょうか、皆さん反対されるし、私も企画庁という経済的な観点から、税制論は別として心配するものですから、この財源はよほど慎重に考えてひとつ所得税の減税を、消費及び貯蓄に及ぼす良好な観点を考えて進めていくべきである、こんなふうに考えているところでございます。
  29. 吉田正雄

    吉田正雄君 私が特に所得減税を強調するのは、昨年十一月に産業構造審議会の資金部会が五十八年度投資計画を発表しているんですけれども、十三業種のうち製造業がマイナスになっているわけですね。全産業で三%のプラス、こういうふうになっているわけです。つまり大企業の設備 投資というものが下方修正をされているわけですけれども、この設備投資の内容というのは省エネとか省力化の方向に向かっておるということなんですね。何で製造業の方の投資が少なくなったかと言えば、要するに生産を上げても購買力がないということですから、これは売れない物をつくるなんというのはこれは経済原則に反しますので、そういう点でいま言った設備投資の方向というものもそういう方向に向いてきておるというふうに思うんですね。その点からも私は所得減税というのはやはり経済政策の重要な一環として取り上げるべき問題じゃないかというふうに思うんですが、その点はいまお話がありましたからそれでいいんですけれども、いま言った設備投資のいまの状況というのはどういうふうになっているでしょうか。
  30. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) 設備投資につきましての国民所得統計速報によりますと、十—十二月期は五期ぶりにマイナス〇・二、これは前年同期比でございますが、という数字を示しております。政府が毎月報告をいたしております月例経済報告の中では、いま言いました全般的設備投資の中でも大企業につきましては見直しの動きはあるけれども、比較的底がたいのではないかと、こう言っておりましたですが、最近発表されますアンケートその他の調査によりますと、たとえば日本銀行が二月に行いました短観、いわゆる短観によりますと主要企業の全産業で五十七年度は三・七%、そして五十八年度計画はマイナス二・三%というふうな形、五十七年度実績につきましても若干下方修正になっておりますし、五十八年度は先ほど言いましたようなマイナスになっておるということで、まあかなり水準は——五十三年の後半以降続いておりまして、水準はかなり高いと思いますけれども、底がたかった大企業につきましても少し頭打ちの傾向が見られるのではないかというふうに今月の月例では報告いたしております。  次に中小企業等について見ますと、短観の数字は五十七年度が中堅企業がマイナス三・四、中小企業がマイナス一一・五、それから五十八年度計画は、これはこの段階ではかなり変わるものですからその数字そのままは受け取れないと思いますけれども、中堅でマイナス一九・一、中小企業でマイナス二五・二ということで弱くなっております。ただ、大蔵省が発表いたしました法人企業統計季報によってみますと、昨年の十—十二月期でございますけれども、資本金十億円以上——これはまあ大企業でございますが、これは全産業でマイナス〇・六、これはいずれも前年同期比で申し上げておりますが、中堅と申しますか一億円以上から十億円未満——これは資本金でございますが、それは七・四のプラス、そして一千万以上一億円未満——中小企業を代表するとして考えてよろしいと思いますが、全体のマイナス四・五、製造業はそのうちマイナス一五・九、非製造業は一・七ということになっております。  ここで要約して申し上げますと、中小企業につきましては非製造業はまだ若干のプラス、いろいろの要因があろうと思いますけれども、リースその他におきましてプラスになっておるという面がありますが、製造業につきましては停滞が続いておると、こういうふうに考えております。
  31. 吉田正雄

    吉田正雄君 時間の関係もありますから、あとこの経済的な見通し等についてもう一、二点お聞きをいたしますけれども、経済運営の三本柱という点に関連をしてもうちょっと経企庁の考え方を聞かせていただきたいと思うんですが、当初に申し上げましたように、もうちょっと経企庁もはっきりと物を言っていいんじゃないかという感じがしますし、それから調整官庁としての私は機能も持ってると思うんですね。  十一日の日に通産大臣が総合的な経済活性化対策ということで八項目を、これはまあ八項目指示したんでなくて、事務当局に施策というものを検討せいということで、事務当局として民間設備投資の活性化など八項目を掲げておるわけですね。そこで、この通産省の計画なり施策というものと経企庁のこれからの経済運営の三本柱がどう整合性を持っているのか、通産省が一方的に決めてどんどんどんどんまたやっていくということでもこれまた逆に混乱が生ずる場合だって考えられるんですね。具体的な内容はよくわかりませんが、項目を見ただけでもいろいろ問題がある項目があるようですね。たとえば素材——まあ不況産業ですね、素材基礎産業の改善をどうするかというふうな項目もあるわけですから、そういう点で通産がいま打ち出しております対策八項目について経企庁としてはこれからどういうふうに折衝と言ったらいいんですかね、どういう見通しのもとに政策の整合性を求めていかれるのかお聞かせ願いたい。
  32. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) いま、御案内のように、内閣では、予算が成立いたしますれば、予算編成後生じました新しい事実、たとえば原油価格の低下等を考慮いたしました、新しい経済運営方向を打ち出そうとしているわけでございます。私は、そのために各省、これはもう企画庁だけじゃありません、すべておのおの所管はございまするけれども、所管に関する政策を打ち立てる役所でございます。その各省庁調整をしながら、新しい経済運営方向を打ち出そうとしておるわけでございます。その中の一つに、私は通産大臣も考えられる、これは全部じゃありません、八項目について通産省の事務当局にも検討しろという御宿題を出されたんだと、こういうふうに見ております。これらは大変結構なことでございまして、私どもはその成果はもう十分に吸収して、その新しい政策の中に織り込みたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
  33. 吉田正雄

    吉田正雄君 非常に結構なことだという言葉がございましたけれども、項目だけ見ておれば確かに問題点があって、そしてそれをどう解決するかということになると思うんですけれども、一例だけ取り上げて経企庁の見解をお聞きいたしたいと思いますのは、特に構造的問題を抱えておる基礎素材産業対策という点に関しまして、私はなぜこの基礎素材産業というものが構造的不況業種になったのかという点の認識ですが、私なりの認識では、これはエネルギー多消費産業だと思うんですね。したがって、単に過剰施設を処理するだとか、あるいは企業の合併だとか、そういうことだけでは抜本的な私は解決は図れないだろうと。やはりエネルギー政策との関連で解決というものを図っていかないと、それは先ほどもちょっと申し上げましたように、独禁法との関係が出てきたり、そういうことで逆に摩擦が生ずるだけじゃないかと、一時しのぎの結果になるんじゃないかというふうに思っているんですね。  特にアルミであるとかいろんなエネルギー多消費産業があります。主として電力になってくるわけですけれども。ところが、その点について従来政府の政策の中には、エネルギー政策上その点の位置づけ、対策、政策というものが明確でなかったというふうに私は思っております。たとえばアルミ産業等からは盛んに電力料金の値下げ等の問題も出てきておったんですが、そういう問題については未解決のまま今日来たということもあるわけですね。そういうことで、私はいま細かいことはお聞きいたしませんが、基本的にエネルギー政策、まあ当然それに価格という問題が入ってくるわけですね。それとの関連なしに解決はできないんじゃないかと思っているんですが、その点はいかがでしょうか。
  34. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 私も、予算委員会吉田先生がいろいろこのような問題について通産省に御質問をされている中で、勉強をさしていただいたわけでございます。おっしゃるように、確かにエネルギー多消費産業のあり方は大変問題でございます。軽薄短小と言われるような昨今の産業構造的な方向から見て、私は大変問題だと思っているところでございます。しかも、またおっしゃったように、やはりまだまだエネルギーの消費と申しますかは必ず節約をして、省エネ的な政策あるいは代替エネルギーの開発政策は堅持しなければならないと思いますので、いまおっしゃったような点は、アルミ産業をどうするか、これらの根本問題と関連して私は電力料金などは決めないと、確かに大きな悔いを残すおそれがあることはもう当然だと思っておるのでございます。全般的にこのような基礎産業、素材産業はエネルギーの面から苦境になりましたけれども、そこで、再活性化するためにあのような手法と申しますか日本的なひとつ協調をして、再活性化のために設備の廃棄を行っていくようなやり方で新しく再編成していく、また産業構造の中で一つの位置づけをしていくという方向は、私はこれは現在においてやむを得ないと申しますか、日本的にこれまでなれた手法だと思いますので、そういう方向でやっぱり活性化を図っていくべきであるということには賛成でございます。
  35. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、原油値下げによる影響についてお伺いいたします。  経企庁の方からも、十四日ですか十五日にこの影響についてという見解も発表されております。そこで、端的にお聞きをいたしてまいりますが、先般は五ドル値下げということになりましたが、アメリカあたりではさらにこれは二十七ドルあるいは二十五ドルくらいまで下がっていくんじゃないかというふうなことも取りざたをされておりますが、経企庁としては、今後さらにこの値下げというものが引き続き、まあここ二カ月とか三カ月とかということじゃないんですが、そういう方向に向かっていく、アメリカのように二十五ドルくらいまでいくんじゃないかというふうな見方はされておるんですか、どうですか。
  36. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 公式の見解として将来値下げがあるというようなことを申すと、またいまの経済に大変な混乱を来し、また思惑が出たりするとこれはもう大変な責任問題にもなろうかと思いますので、私は今後どうなるかということ、しかも具体的な金額はどうなるかというようなことは控えさせていただきたいと思います。しかし、二十九ドルというのは一つの好ましい線である。しかし、世界各国ともどうももう少し下がるのではないか、イギリスは北海原油がもうまた二度目の値下げを考えているというようなことが盛んに言われておりますので、そんな点は十分考えながら経済運営を行っていく必要があるであろう。たとえば債務累積国の問題等いろいろ障壁もございますから、こんなような方向を十分頭に置いて経済運営を行っていくべきであろうと、この点だけ申し上げさせていただきたいと思います。
  37. 吉田正雄

    吉田正雄君 世界景気回復に向かうであろうという楽観的な見方というのが、世界各国、あるいは特に日本国内においては各省庁の見方も大体そういう方向で一致をしておるようです。ところが、これもOECDの第三部会、経済、通貨、金融問題等を検討する部会なんですが、この第三部会の分析レポート、これは私詳しく読んでおりませんが、新聞報道程度のものしか知らないんですけれども、これによりますというと、値下げ幅というものを二五%八ドルくらい下がって二十六ドルということを仮定にしての分析であるようですけれども、ここではそんなに楽観的な内容にはなっていないわけですね。そういう点で、私はどうもそういう観測というんですかね、十分な分析もしないですぐぱっといきそうだという、このことがまた非常に危険性を伴うんじゃないかと思いますので、経企庁の今日までの分析とOECDの第三部会のレポートの分析、これは大分違っていると思うんでして、これをどういうふうに評価をされているのか、お聞きしたいと思います。
  38. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 私ども石油価格低下の影響につきましては、先ほど大臣から申し上げましたとおりに、おおむね私どもが開発いたしました世界経済モデル中心にして分析したものでございます。一方、OECDが第三作業部会で提出した資料は幾つかのケースに分けておりまして、そのケースいかんによっては問題がありますということでございますが、非常に悪影響があるというケースはどちらかと申しますと前提が、いろいろ問題がございまして、したがいまして世界経済全体に対する影響という面では、OECDはむしろ先進工業国——先ほど調査局長から御紹介申し上げましたように、石油価格低下によりましてプラスになるという評価でございます。したがいまして、いろんな見方、前提の置き方によって影響の出方も違うということかと思いますが、総じて見ますと、世界経済の条件が整いますれば全体としてプラスになるという評価かと思います。
  39. 吉田正雄

    吉田正雄君 これはまた今後の実際の動き等を見ないとどういうふうにはね返ってくるのかということはあくまでも推測の段階だろうと思いますから、この程度でやめます。  次に、同じきょうの大臣所信表明の中で、国際協調とか経済協力とかということがここに出ております。これは前の政策の中にも出ておるわけですけれども、そこでお尋ねをいたしますが、経済協力、特に政府経済協力の目的というものについて、私は従来若干疑問を持ってきておるのですね。疑問を持ってきておると申しますのは、政府経済援助が、たとえば開発途上国等の政権の腐敗につながるとか、あるいはそのときの軍事政権のてこ入れというものに回される、あるいは経済協力の目的から外れた軍事費に回されていくというふうなことが従来も言われてきたわけです。そういう点で、私は経済協力の目的というものをきちっとやっていく必要があると思うのですけれども、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますでしょうか。
  40. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 私は、経済協力わが国にとって防衛費以上に世界の平和に協力し、そして発展途上国に対してはその生活水準を上げ、経済発展せしめる大きな原動力になるものだと、こういうふうに思って高く評価して、これは大きく進めなければならないと思っているところでございます。特に、国際収支が昨今のように非常に好調になってきて、経常収支では六十億ドル、七十億ドル、また九十億ドルというふうに増加の傾向がある、今度の原油値下げでは六十五億ドルも輸入代金が節約になるといわれることを考えますと、何としてもこれは、この金を私は発展途上国経済援助の形で協力するのが当然だと考えておるところでございます。こういうことによって、貿易摩擦とかあるいは市場開放問題に対する風当たりの強さ、こんなような問題がなくなるとこういうふうに考えておるところでございます。  御指摘の、時の政権の支えになる、あるいは軍事政権まで支えたことになるではないかというお話、この点も確かに重要な要素でございまするけれども、やはりそれは副次的な効果でありまして、ねらいはその発展途上国国民に対する援助——軍事政権に対する援助でございません。そういうふうな考え方で貫いて、一貫して考えるべきではないか、こんなふうに思います。
  41. 吉田正雄

    吉田正雄君 大臣が当初おっしゃったように、特に開発途上国とか発展途上国ですね、こういう点で国民生活の水準をアップしていくんだと。特に、第三世界と呼ばれるところの民衆の生活というのは非常に悲惨なわけですから、食糧の援助であるとかあるいは生活関連事業の開発、こういう点に力点を置かれるということは当然だと思うのですね。  そういう点で、私総合安保という考え方で、援助することによって日本がいかに資源を獲得するかという、余りそこに力点を置いた海外援助ということになると、これはやっぱり日本主体の援助という考え方なんでこれはまずいんじゃないかと思うのですね。欧米諸国では非政府組織を通じての援助が大体六%から一二%くらいになっておるというふうに聞いておるわけです。そのことによって、国民政府開発援助に対する理解というものを、認識というものをさらに深めていく結果になるんではないか、少なくとも私は現在の日本国民は海外経済協力という言葉だけは知っておりますし、部分的にはいろんな人たちが行っているということを通じて個々にはある程度承知をいたしておると思いますけれども、全体像というものは余りつかんでないし、その資金の使われ方が果たして妥当であるのかどうなのか、そういう点では十分知らされていない、また論議をする場も余りないというふうに思うんですね。したがって、この非政府組織を通じて諸外国がやっておるようにわが国でもそういう点でもう少し考えたらどうかということなんですが、その点はいかがでしょう。
  42. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 赤十字その他非政府組織というような組織が確かに有効な経済援助のまた一つの媒体とも考えられます。いま六%から一二%というお話ございましたが、私どもそのような方向がありとすればひとつこれは研究課題だと思って研究をさせていただきたいと思います。
  43. 吉田正雄

    吉田正雄君 この海外経済協力については大蔵省、外務省がほとんど予算の面でも最大だと思いますし、通産あり、経企ありということですけれども、私はむしろ経企庁というのが一番経済的な面では調整を図っていく必要があるんじゃないかというふうに思うんですね。特に、相手国のニーズであるとか、あるいは政策面での検討とか、あるいは評価活動、これは案外外務省というのはやり得ないと思うんですね。余り相手の立場をそんたくし過ぎるといいますかね、そこまで口出しはできないということがあると思うんで、一たん行った金の使い道についての追跡、分析、調査、適切にその金が使われているかどうかということの調査活動がどうも不十分だという感じがいたしてなりません。そういう点で評価活動などはむしろ外務省任せでなくて経企庁あたりで十分やっていく必要があるんじゃないか。そういう点で先ほどの予算まだよく見ておりませんが、そういう点で予算は十分なのかどうかという点もお聞きをいたしたいと思います。
  44. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 吉田委員、大変私ども所管のODAを中心といたします経済協力に御激励をいただいて大変感謝にたえないところであります。先ほど申し上げましたように、これまでは防衛費が六・五%であっても経済協力費は七%というような伸びを各省してまいりました。しかし、それでももう引く手あまたで、やはり各国とも発展途上国は日本に口をそろえてまだまだ経済協力をしてくれという要望が絶えないわけでございます。そして、額も大きくしてくれという要求が絶えないところでございます。五十六年にODAの倍増計画を立てているところでございます。これを達成するためには一三・六%ずつ毎年予算が伸びないといけないという大変むずかしい、いまから考えてみますと、これは企画庁長官としての責任を感ずるばかりか、果たしてこのむずかしい財政状態でできるかどうか心配がいっぱいでございます。しかし、これは皆さん方からいずれもそのような御激励をいただいておりますので、企画庁としては全力を挙げてやっていきたいと思います。  そしていま企画庁の役割りのお話がございました。企画庁が中心的な役割りを演ずるということはもう私も当然のことでございます。縦社会の日本でなかなか各省の中で、しかも人数の少ない、しかも財政の大蔵省のように金を握ってない役所でございます。そして外務省のように情報をすぐ握るようなところと違って大変苦労しておるようでございます。幸いにこれがいままで中心的な役割りを演じております。そしてまた各省との間の人事の交流というような形を通じてでも調整を図ることができておりますので、このような点につきましては吉田委員言われる方向でひとつ企画庁としては大いに努力したいと考えております。
  45. 吉田正雄

    吉田正雄君 私は、国際経済協力について要望しておきたいと思いますのは、当初申し上げましたように、その援助が本当に相手国の単に政権てこ入れとか軍事費の増大に使われるなどということになったんでは、これは私はもう大反対でございまして、そうではなくてあくまでも特に貧困国の生活基盤の拡充とか、そういう本当に民衆にとって必要なもの、そういうものに重点を置いていくことが必要だと思いますし、そのための金の使い道については十分に私は計画どおりに実施をされたのか、事前の大体そのプロジェクトについても私は十分チェックしていく必要があると思うんですね。そうでなくて、単に倍増計画だということで金さえふやせばいいということでは私は問題だと思うんですね。対韓経済協力援助でもあれだけやっぱりもめた内容というのは、それが軍事費に回されるんじゃないか、単なる軍事政権のてこ入れじゃないかとかっての日韓の黒い霧と言われましたけれども、ああいう事態になってはこれはもうとても国民は賛成できる立場にはないわけですね。そういう点で本来の経済協力の目的、そしてそのあり方に従った経済援助ということで大いに努力をしていただきたい。そうであれば私どももこれはまた積極的に支援をいたしたいと、こういうふうに思っております。最後に長官の一言を。
  46. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 全くごもっともでございますし、私どもは一つ一つのプロジェクトの内容を十分審査いたしまして、軍事政権の維持というようなものというようなことはもう絶対に私ども認識したこともございませんけれども、やはり平和利用、つまり、特にインフラの拡充等を通じて民生の発展に一つ一つのプロジェクトについて吟味して決定しているわけでございます。ただ問題は、一三・六%というのは倍増の目標でございますし、いまでも大変引く手あまたでございます。もうことしぐらいからでももう少し欲しいぐらいでございます。またひとつ御鞭撻、御援助をお願いしたいと思います。
  47. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ─────・─────    午後一時十七分開会
  48. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  49. 田代富士男

    田代富士男君 私は最初に景気対策の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、経企庁長官が三月の八日でございますか、これまで思い切った対策を打ち出さずにきたけれども、景気重視型の経済運営推進する方針を固められたということで、具体的な策といたしまして、一つには五十八年度の公共事業について、五十七年度と同様、上期に七五%を集中契約する、またこれに伴いまして地方自治体にも単独事業の上期集中契約を要請する、それから公定歩合の早期引き下げによりまして金利水準の全面的低下を促して、住宅建設民間設備投資を刺激する、こういうことが固まりつつあると。これらの対策を実行することによりまして、悪化する景気情勢を打開しようとしていらっしゃいますが、これらの施策は本当に実現可能であるかどうか、これらの施策によって景気回復はどの程度可能であるのか、また一時的な景気回復になって、長期的な景気回復は無理ではないかという考えがありますけれども、景気対策に対する長官のお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。
  50. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 私どもは五十八年度の経済見通し、成長率は三・四%と考えておりまして、この達成には努力を払う必要がある、そしてまた達成は可能と、こんなふうに考えておるところでございます。しかしながら、なかなか現在でも厳しい情勢であることは御案内のとおりでございます。先般発表いたしましたところの五十七年十月—十二月の国民所得統計速報によりますと、十—十二月の実質成長率は〇・四%、こんなような数値が出ておるわけでございます。しかしながら、幸いに四月—六月の第一・四半期は一・九%、七—九の第二・四半期は〇・九%という高目でございましたので、私どもは見通しどおり、まあこれは修正後でございますが、三・一%の成長率はまあまあ達成できるんではないかと、こんなふうに見ているところでございますが、いま申しましたように大変厳しい要素がございます。輸出の面あるいは設備投資の面について厳しい要素がある。しかし、一方あの発表にもありましたように、消費支出等、住宅投資が一月大変好調でございました。二月もいいというような情報もあるわけでございますが、こんなような喜びも悲しみもと申しますか、いろいろの明暗の要素をひとつ考えまして、やはりひとつ三・四%の成長率は確実に達成する必要がある。しかも、いま申しましたように一・九%、〇・九%という上半期の成長率が示しておりますように、やはり前年と同じように公共投資も前倒しをして、前年と同じような成長の、何と申しますか、タイプを実現する方が適当である。御案内のように、その後は原油価格引き下げとかあるいは金利引き下げ傾向等も影響されると思いますし、一般的に下期に回復はだんだんと堅調になってまいると見込まれますので、やはり前倒しをする必要がある。さらにまた、ドイツはもう四、五日前に一%の公定歩合の引き下げが行われましたが、やはりどうも日本のいまの経済成長、それからまた経済の実勢から見て金利が高い。ひとつ金利はぜひとも下げるべきである。この二つともいま本当にできるかというようなお話でございましたが、私は毎年毎年公共投資を前倒しをやってきておる実績から見て、五十二、五十三、五十六、五十七、いずれも前倒しをいたしておる。大体上期では六五%というのが普通の率でございますが、これを七〇を超す程度のことは可能であるということはこれまでの実績で言える。そしてまた、成長率を上期に高めることができたということも実績でございます。私は、この点は可能であると思います。  それから、地方財政が苦しいからという御心配もございまするけれども、この点の資金もいろいろと金融も緩和したような状況でございます。私は地方団体の前倒しに対する受け入れ体制も毎年行ってきておりますから十分できる、こういうふうに考えております。  さらにまた、ことしにおいて違っております要素は、昨年の十二月二十五日に成立させていただきました二兆七百億円の公共投資を中心といたします補正予算が成立いたしました。そのうちで公共投資が事業費で四千億円ばかりございますので、これは一つの前倒し的なものであろうかと思います。こんな点もどのように経済に影響を及ぼしているかを見て、ひとつ前倒しの率を決めるというようなことを考えながら、いまの公共投資、さらにまた金利の問題は何らかの形で実現できると思いますし、可能である、こんなふうに考えているところでございます。
  51. 田代富士男

    田代富士男君 いま長官がいろいろな立場から御説明いただきましたが、大蔵省の立場を私は新聞報道等でも見ておりますけれども、大蔵省としては上期に集中しても果たして景気浮揚効果は疑問であると、こういうようなお考えでありますし、上期への繰り上げ実施をするとまた補正予算で下期追加が必至になるが、それは財政上無理であると、こういう難色を示していらっしゃるわけでございまして、この点大蔵省としてどうなのか。  また、金利引き下げについてただいまも御説明がありましたが、政府はことし一月に検討されましたけれども、内外金利差や円相場の不安定などから見送ったわけでありまして、いまでもその情勢は変わってないのではないかと思うわけでございます。いま十二時のニュースでございますか、後藤田官房長官等も公定歩合の引き下げの問題等については日銀で決めることであるけれども、円の相場の安定が必要であるし、相場を見なければならないというような御発言等もございます。その情勢は余り変わりがないのではないかと思うわけなんですが、しかし財界や通産省などを中心引き下げの声が強まっているのが現状ではないかと思うし、景気は一月の完全失業率が二・七二%と、これは御承知のとおりに、統計史上最悪の事態となっている厳しい実情ではないかと思うわけでございまして、いま長官が申されたこの程度景気対策では、景気対策はむずかしいのではないかと思うんですが、大蔵省としてどう考えられるのか。  また、政府はこの三月中に景気総合対策を打ち出すことを検討しているということを聞きましたけれども、これは事実であるのか。また、後藤田長官の談話をいまお聞きいたしましたところが、予算成立直後にと、こういうようなことも考えられたけれども、景気対策は五月にずれ込むのではないかというような談話の発表等もあっておりますけれども、これもあわせて御答弁いただきたいと思います。
  52. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) いまお尋ねがどうも大蔵省かと思いまして、どなたか来ておられるかと思いましたら私に対して御質問のようでございますので、私の立場でお答え申し上げたいと思います。  大蔵省、確かに財政事情が決してよくはない。五十七年度についても六兆一千億円も歳入の下方修正をしたにもかかわらずまだ五十七年度の実績は大変心配であるというような竹下大蔵大臣のお話が新聞等に出ているわけでございまして、大変慎重な態度をとるのはまた当然のことであろうかと思います。さらにまた、しかし二兆七百億円の補正予算状況、私が申し上げましたが、これも十分加味すればそんなに急いでやらなくてもいいんではないかという話も出ていることも私は当然のことだと思います。しかし、ただいま国民所得統計速報のお話を申し上げましたが、あのような前倒しの効果を通じて初めて三・一%の成長率が達成できたという傾向、さらにまた私は下期には回復過程がよりはっきりとしてくるであろうということ、こんな点を考えますと、確かに上期前倒しをしても下期財源が続かなければだめじゃないかというお話がありますけれども、それはまた毎年やってきた実績を考えてみますと、やはり同じようなことを繰り返すことは可能ではないか。しかもまた、下期には民間需要も相当活発になってくるということを考えますれば、私は公共投資との関係を調整することも可能であるし、また租税の自然増収ができる限り早く入ってくることの方が私は望ましいと考えることも大蔵省の立場として考えていただけるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。  さらにまた金利の問題、これも御承知のように、円安を人為的につくり上げているというような非難を恐れての日本銀行の政策態度だと、こんなふうに思うわけでございます。私はドイツについても同じようなことが言えたと思うんでございますが、ドイツはドイツとして一つの行き方をして金利を下げていったわけでございます。日本銀行もいまの経済状態が大変厳しくて、さらにまたいまの状況では民間設備投資もそう簡単に起こらないことを知っておりますので、これはやはりいろいろの円安という非難も考えながら、この公定歩合の引き下げを通じての金利引き下げの問題は何らかの形で実現できる、こういうふうに見ているところでございます。  時期はなかなか明確には言えないことだと思いますが、そういった点を十分考えていただけると、こういうふうに思っているところでございます。  そこで、後藤田長官のお話が出ましたが、私もテレビでそのようなお話を聞いたのでございますが、詳細の打ち合わせをしておりません。どんな点が御心配であったか私にはわかりませんが、しかし、このような予算成立後の景気対策は必要であるという認識は持って、第一回の会合も、官房長官自身が座長になってやられた経緯もございますので、私は、恐らくこの根本的な認識は変わらない、ただ、時期は、いろいろ考えられて申しただけではないかと、こういうふうに思っております。
  53. 田代富士男

    田代富士男君 いま、速報を中心に御答弁いただきましたけれども、もう一度この国民所得統計によりましてお尋ねをしたいと思いますが、経済企画庁の三月十七日の国民所得統計によりますと、昨年十月から十二月期の実質成長率を示す実質国民総生産の伸び率は、前期比の〇・四%、年率換算で一・八%と、このようになっておりますけれども、成長テンポは、昨年四月から六月期の年率八・二%、七月から九月期の同三・八%、期を追って大幅に低下をしてきております。これは御承知のとおりだと思いますが、景気は一段と厳しい局面を迎えております。こういう立場から、 いまも御説明をいただきましたけれども、もう一度五十八年度の経済見通しについて伺いたいと思いますが、どうでしょうか。
  54. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 確かに、現段階、厳しい情勢にございますけれども、大臣から申し上げましたとおり、まず、国際環境を見ますと、世界経済、OECDの見通しで見ましても、上半期一カ四分の三%の成長、下半期二力四分の三%の成長ということでございまして、アメリカがこのところ回復の傾向を示しておりますし、ヨーロッパも西ドイツがこのところ一応底を打ったのではないかというふうに見られるわけでございます。全体といたしまして、世界経済石油価格引き下げもございまして、今後下期以降回復を見せるんではないかというふうに見られます。  他方、国内経済の面で見ますと、引き続き物価が安定しているという状況にございますし、さらに、おくれておりました在庫調整も、かなり進展を見せているというプラス面がございます。加えまして、石油価格の低下というのがプラスに働いてくるというふうに見られるわけでございます。他方、現状では、世界経済の影響もございますが、輸出がなお弱含みであるとか、あるいは中小企業中心といたしまして、設備投資が頭打ちの傾向を見せている。いままで堅調でございました大企業にも見直しの動きがあるといったマイナス要因もございますが、総じて見ますと、わが国経済、プラス、マイナスの要因の中で、下期以降緩やかに回復していくのではないかと。また、三・四%の成長を確実にするために、政府としても政策的な対応を検討する必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  55. 田代富士男

    田代富士男君 政府の五十八年度の経済見通しでは、五十八年度のGNP実質経済成長率を、いまも御説明のとおりに、三・四%としていらっしゃいますが、十七日の国民所得統計からは、三%台はきわめて困難ではないかと、こう受けとられるようなことになっておるわけでございますが、三・四%の成長を引っ張る最大の要素といたしまして、いまさきも長官もちょっとお触れになっていらっしゃいましたが、民間最終消費支出を七・四%増と計算されておりますけれども、十七日の速報の、十月から十二月期の実績というものは一・五%となっておるわけでございます。年の後半から景気回復するという話がされておりますけれども、それはアメリカの景気等を頼みとするところでありまして、たとえ後半の景気回復するとしても、民間最終消費支出プラス七・四%というのは現実性がないのではないかと思いますけれども、五十八年度の経済見通しと民間消費支出の関係性から見て、これいかがなものであろうかと思うんですが、この点どうでございましょうか。
  56. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 五十八年度の経済見通しは、ただいま先生から御指摘ございましたように、民間消費支出につきましては、名目で七・四、実質で三・九%と見ているところでございます。  民間消費支出を規定いたします要因といたしましては、申し上げるまでもなく、一つには物価動向がございますし、第二には可処分所得の動き、第三には消費性向がどう動いていくかといったことによって決まるかと考えられます。  ところで、第一の物価動向でございますけれども、現状で見ますと、特に石油価格引き下げ等々もございまして、物価はかなり安定的に推移するのではないかと私ども見ているところでございます。  また第二に、可処分所得の動きでございますけれども、何分にも景気回復していきます中で、生産、収益面でも回復していくのではないかというふうに見ているわけでございまして、一人当たり雇用者所得にいたしますと、おおむね五・二%程度の伸びになるのではないかというふうに考えております。一方、雇用者の増加が一・三%程度ございますので、雇用者所得としては六・六%程度の増加が期待されるのではないかというふうに想定しているわけでございます。そうした中で、可処分所得全体としても順調な伸びを示すであろうというふうに見ているわけでございます。他方、消費者物価が引き続き落ちついておるという中で、消費者のマインドも向上するのではないかということでございまして、消費性向も来年度は、今年度よりわずかではございますが、回復するというふうに想定されるかと思います。  したがいまして、それらの諸要因を勘案いたしますと、名目にいたしまして七・四、実質にいたしますと三・九%程度の個人消費の伸びは可能ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  57. 田代富士男

    田代富士男君 これはここで論議していても、結果がどう出るかわかりませんけれども、ひとつ努力をしてもらうことを期待する以外にないわけでございます。がんばっていただきたいと思います。  次に、原油値下げの問題に移りたいと思いますが、御承知のとおりに、すでに北海原油価格は一バレル三十ドル五十セントに値下げ提案している。英石油公社は、石油業界内の再値下げの圧力を受けまして、今回の、御承知のとおりに、OPEC諸国の五ドル引き下げに続いて、月末にも二十九ドル五十セントから三十ドルの再値下げの価格を提案する動きが出ておるわけでございまして、世界の原油価格というものは二十九ドル台に平準化しつつあるわけであります。  しかし、今回決定を見ましたOPECの基準価格というものは、消費国にとりましては割り高感が強いわけでございます。そういう立場から、在庫の取り崩しで対応すると見られるわけであります。そういう立場から、消費者の在庫取り崩しが一巡をいたしますころに、いまも経企庁から話がありますとおりに、世界景気回復の兆しを強めるであろうと言われることしの夏ごろまでに、原油はさらに値下がりを続けて、大体二十六ドルあるいは二十七ドルぐらいで底を迎えると見ている人がおるわけでございますが、こういう原油の値下げの今後の問題についてどう考えていらっしゃるのか。また、どの程度下がるかによりまして、いまも数字だけでこういう問題を論議しておりますけれども、こういう経営運営も違ってくると思いますが、この点に対しまして、原油値下げの問題等を含んでどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。
  58. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 何と申しますか、二十九ドルへの原油の値下げは、もう一般的に私ども大いに歓迎する、世界経済のみならず、日本経済に大変良好な影響を与える大きな朗報だと考えているところでございます。しかし、いま田代委員御指摘のように第二次引き下げが行われるのではないかというようなことは盛んに各方面で言われておりますし、きょうのどこかの新聞でございましたが、アメリカの学者の説として、世界不況ならばまた下げるであろうというような予測も出ておるわけでございます。これは先ほど吉田委員も申されましたが、企画庁がこれは幾らになるというようなこと、また再値下げの方向確実であるというようなことを言いますと、また経済に混乱が生じてまいりますので、私どもは公式的にはどうなるかというようなことはこれは避けるべきだと思うんでございます。しかし、いまのような各方面の論調、さらにまた、いま北海原油のお話が出ましたが、これまでの油種間の価格のバランス、これら等から見て北海石油についてはもう近いうちに油種間のバランスをとるために、つまりアラビアン・ライトとのバランスですね、考えて下げるといううわさは盛んに出ておる。こんなようなことはひとつ、私ども政策官庁、経済官庁でございまして、十分念頭に置いてその及ぼす影響等について考えていかなければならないと、こういうふうに考えております。
  59. 田代富士男

    田代富士男君 では次に、原油価格引き下げの影響の問題についてちょっとお尋ねしたいと思いますが、経企庁はOPECが原油価格を一バレル当たり五ドル引き下げたことについて世界経済と日本経済にこういう影響を及ぼすとの予測を十五日発表されましたが、具体的なわが国への影響 につきましては、原油輸入代金が御承知のとおりに六十五億ドル減少世界貿易の拡大による輸出増も加わりまして国際収支は大幅に改善すると、このように言われておりますし、GNPは一年目、ということは五十八年度に当たるわけでございますが、これが〇・三五%、二年目、これは五十九年度〇・九三%拡大する。物価面では卸売物価指数二・一%、消費者物価指数が一・一%引き下げ、こういうようなことが十五日に発表されたわけでございますが、これに対しまして通産省では五十八年度の実質成長率を〇・二%、五十九年度は〇・五%の上昇と、このように報道されているわけでございまして、通産省の見方と経企庁の見方とちょっと違った点がありますけれども、十五日発表されたこういうような国内経済への影響についての試算の根拠はどのようにしておやりになったのか、お聞かせいただきたいと思います。
  60. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 去る三月十五日でございますが、企画庁から発表したもの、内容につきましてはただいま先生から御指摘のとおりでございます。私どもの算出の根拠でございますが、私ども経済企画庁で開発いたしました世界経済モデルをベースにして試算したものでございます。世界経済モデルは、サミット七カ国にオーストラリア、韓国を加えました国別モデルに加えまして六地域のモデルをつくったものでございまして、そのモデルをベースにいたしまして計算した結果でございます。通産省の内容は違ったモデルで計算いたしました結果〇・二ということになっておりますが、その他の機関で計算した数値も多少私どものものと違っておりますけれども、いずれにいたしましてもとりました期間等によって異なってくるということかと思います。  世界経済モデルでは一九七八年までの数字をとっておりますので、ほかのモデルと数字が違っておりますけれども、いずれにいたしましても石油価格引き下げわが国経済にとって、実質成長にとってプラスになるという点については同じ方向にあるんではないかと考えております。
  61. 田代富士男

    田代富士男君 今回のOPECの五ドル引き下げにつきまして、わが国経済界、ことに構造不況にある素材産業では一様に歓迎しているところであるわけでございまして、たとえば石油化学業界では原料ナフサの価格が低下すると。アルミでは五ドルの値下げで、アルミの製錬コストが一トン二万五千円ほど低下すると。電力では年間五千億円もの発電コスト削減になる。鉄鋼では年間四百五十万キロリッターも使用しているのでかなりの負担軽減になるとしておりまして、マイナス面もあるけれども、いま申し上げましたようなプラスの効果が大きいというのが常識的になっているのではないかと思いますが、このプラス要因をわが国景気にどのように利していくのが妥当であるとお考えになっていらっしゃるのか。今後のわが国経済運営にどう方向づけをされようとしていらっしゃるのか。これ、原油価格引き下げ国内の製造コストへの影響に関連いたしまして大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  62. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) いま田代委員御指摘のように、私どもは所得移転と申しますか、六十五億ドルを、約二百四十円といたしますと一兆五千六百億円ばかりの金額になるわけでございますが、とにかく一兆六千億円に近い所得が産油国から非産油国の代表でございますわが国に戻ってくる、こういうふうに私どもは考え、これを国民経済全般の中に実現するような方策を講じたいと考えるわけでございます。  一兆五千億円ばかりを三千三百万世帯で割ってみますと一世帯当たり大体五万円ばかりの所得が何らかの形で追加されてくると考え、一兆五千億円を二百八十兆円のGNPで割りますとやっぱりこれも〇・五%ぐらいの所得増加になるということがマクロ的には言えるかと思います。  そこで、これがどのように実現されるかと言いますと、いま田代委員が御指摘になりました、まず石油製品という、多分に市場原理、市場メカニズムで価格政府が全く介入しないものから成っておりますところの商品、その価格の低下になってくる。そしてこれは家計あるいは企業のコストにはね返ってくるかと思います。このウエートは相当高目だと思いますが、そういうふうになるものがあるわけでございます。  それからもう一つは、政府が介入いたしますものといたしましては電気料金とガス料金とでございます。これは独占会社、公益会社ということで、その料金については政府が介入できるようなことになっていることは日本だけじゃありません、どこの国でもやっておりますが、これをどのように持っていくかということでございます。  電力会社について申しますれば、先ほどお話しのように一バレル一ドルで約千億、つまり五ドルでは五千億円のコストが下がることになるわけでございます。これを電力料金に反映させるか、もう一つは、かつて二百七十円ばらまきのようなことをしてすぐまた値段を上げたこと等を考えますと、むしろいま電力会社が考えているところの省エネ投資あるいは代替エネルギー開発投資的なものに持っていくのがいいかどうか、それからこれまでおくれた修繕費等の、よって会社の再生産維持のために使うか、こんな問題があると思っているところでございます。これらもこれからだんだんと安い価格が入ってくることでございまして、調べてみますと電力会社はまだ一銭も安い原油を仕入れておりません。これからの問題でございます。したがいまして、政府が介入いたします電力料金につきましては、会社の経理状況、さらにまた私は会社の水力、原子力等の他のエネルギー原の使用状況、これらを勘案して慎重に決めるべきだと、こういうふうに思っております。いずれにしても、しかし私どもはどんなに石油が下がってもやはり中東情勢等を考えてみますと、将来はやはり変動があるということを頭に考えて、依然として省エネ態勢、代替エネルギー態勢は維持していく——これはまあ市場原理に任せない政府自体が決定すべき問題だと考え、そういう前提で、慎重な態度でこれを国民経済の中に一兆五千億ばかりの効果を生むような努力をしていきたいと思っておるところでございます。
  63. 田代富士男

    田代富士男君 問題を次に移しますが、私の質問時間も限られておりますもんですから、私もまとめて質問をいたしますから、答弁の方もまことに申しわけございませんですが要領よくお願いをしたいと思いますが、テクノポリス構想についてお尋ねをいたします。  まあ、新時代に対応いたしまして、高度の技術を地方に蓄積させるために、産業、学術、住宅が一体になった都市づくりをするために、御承知のとおりにテクノポリス構想が考えられておるようでございますが、まず通産省よりこの構想の概要説明していただけないでしょうか。
  64. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 最近エレクトロニクスとか、メカトロニクスとか、あるいはバイオインダストリーとか、新しい技術革新の波が押し寄せてきつつあるわけでございますが、私どもはこの技術革新の進展に即応いたしまして、地域が先端技術産業に先導された工業技術発展の基盤を整えると、そういうことによりまして地域経済の自立発展を図るという構想のもとに現在考えておりますのがテクノポリス構想でございまして、そのための政策手段といたしましては、先端技術の開発及び利用の促進を中核とする地域工業の育成、それから立地条件の有効活用、及び効率的整備等によりまして先端技術産業の導入の促進と、こういったものを基本的な方向といたして考えております。私どもは、このテクノポリス構想の意義といたしまして、まず地域経済の自立化のための拠点づくり、それから次に技術立国の促進、三番目に地域の主体的な地域開発と申しますか、地元を主体とした地域開発、この三点に意義を見出しております。
  65. 田代富士男

    田代富士男君 電子部品だとか、電子応用装置、医薬品などの先端技術産業は、関東の内陸やあるいは東北への立地比率が高く、地方経済発展の核になっていくということが期待されておるわけでございますが、しかしこれまでのところ、地方都市へは工場進出というものが中心となっておりまして、こういう研究開発など頭脳部分は依然として東京や大阪など大都市に集中する傾向があるわけでございまして、情報中枢機能としての大都市の役割りは従来にも増して重要になっていることは否定できない現状ではないかと思うわけでございます。こうした実情にありまして、本当のテクノポリス形成などが果たしてあり得ると断言できるか、まず政府のお考えを聞きたいことが第一点でございます。  それから工場再配置のばらつきがあります。これは御承知のとおり、全国各地の工業団地の分譲状況についてもこれが明確でございまして、地区別の分譲あるいは未分譲、またはこういうようなことが前年実績と比較してどうなってるのか、中でも北海道や北東北、北陸、四国などの地域で売れ行き不振が目立っていると、こういうことは、国土の均衡ある発展を考える上でこのような状態を放置するわけにはいかないけれども、政府としてどのように取り組んでいくのかという、この問題点が第二点でございます。  第三点は、これとまた反対のようなことでございますが、大都市圏で工場立地の巻き返しが起きております。それは御承知のとおりに、工場等制限法の規則によりまして工場流出の影響でかえって都市活力が減退をいたしまして、大都市地域の工場空洞化現象が目立ち始めた実情を背景に、国土庁といたしましては同法施行令を一部改正いたしまして、規制緩和に踏み切ろうとされたわけでございますが、しかし、これについて工場の分散はまだ不十分とする地方自治体から不満の声が表明されたと伝えられております。そういう意味から、知識集約産業、情報産業といった先端技術、非公害型の都市型工業をこれから地方に展開していくべきだという意見も高まっているわけでございますが、その中でどのように調整していくのか、基本的方向さえもまだ定まっていないというわが国の立地行政に不安があるわけでございますが、こういうところが指摘されておりますけれども、この三点につきましてあわせて御答弁いただきたいと思います。
  66. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 最初の第一点でございますが、私どもが工場立地センター等に委託いたしまして調査いたしました結果によりますと、地方に研究施設、研究部門を現在持っている、生産工場に附帯いたしまして研究施設を持っているという工場は九十八ございます。それから持ってないという工場が八十一ということで、持っているという工場の方が多うございます。それから、今後持ちたいと思うかと、地方にある工場の方に附帯する研究所を持ちたいという計画があるかないかという質問に対しまして、計画を持っているという工場が九十三、持っていないという工場が七十と、これもやはり工場に附帯した研究施設を持ちたいという企業の方が多いという結果が出ております。  また、最近のよく言われますUターン現象、これを数字で見てみますと、いわゆる東京、大阪、名古屋、三大都市圏から地方へ移住いたします人口と、それから地方から三大都市圏へ入ってまいります人口が、これが五十年前後を境といたしまして三大都市圏から地方へ出ていく人口の方がふえております。こういう実態を踏まえまして、いわゆるUターン思想の定着が着実に進みつつあるということを私どもは認識しております。  さらに、地方におきますいわゆる新制大学の充実に伴いまして、地方の新制大学を卒業した、特に工学部、理学部を卒業しました学生が、本来は地元で就職をしたいのに、地元に就職をする場所がないということによってやむを得ず東京、大阪、名古屋、三大都市圏へ出てこなければならないというような現実もございまして、私どもといたしましては特に近年いわゆる情報機能の発達、交通機能の発達というようなこと、さらには産学問の交流体制の整備というようなことを勘案いたしますと、地域における研究開発の必要な諸条件というものは整備されつつあると考えておりまして、加えまして、申し上げました地方への定住条件の向上、これらを反映いたしまして、研究者もそういう整った環境のもとに、移住が求められるならば喜んで地方へ行くということも十分考えられるということ等をあわせまして、私どもはいわゆるテクノポリス構想、これの実現は可能であると、このように考えております。  それから、二番目の御質問でございますが、北海道あるいは北東北の工業団地の分譲率が他に比べて低いではないかという御質問でございますが、これはいわゆる石油ショックを契機といたしましてわが国全体の経済が沈滞いたしましたころは確かに立地動向は、単に北海道あるいは北東北等はもちろんでございますが、全国的に地方への立地が減少いたしましたが、逐次これも回復いたしまして、五十年以降五十二、三年を境といたしまして、現在横ばいの状況にございます。しかしながら、先生御指摘のように、北海道、北東北の工業団地の分譲率が他に比べて低いということも、これもまあ事実でございます。このような未分譲地の取り扱いにつきましては、基本的にはその事業主体である都道府県とかあるいはその他の事業主体がございますが、それぞれの事業主体の企業誘致努力というところに期待するところが大きいわけでございますが、通産省といたしましても、工業再配置政策の一環といたしまして、工業再配置促進費補助金等これを有効に活用いたしまして、自治体等の企業誘致活動を指導してまいりたいと考えております。  つけ加えさせていただきますと、昨年来、工業開発指導協議会、これは各都道府県の知事さん方の会でございますが、沖縄県知事さんを会長といたしまして青森県知事さんを副会長ということで企業誘致の情報交換の協議会をお持ちでございますが、さらに国際投資交流推進協議会というのが昨年の十二月にできまして、今度の四月に九州の各県がアメリカへ外資系企業の誘致に出かけるということでございますが、さらに北陸、東北の各県においてもこのような動きがあると聞いております。通産省といたしましては、このような運動も大いに応援してまいりたい、このように考えております。
  67. 田代富士男

    田代富士男君 最後に、もう時間がありませんから……。  いまテクノポリス構想は、新産業都市、また工業整備特別地域の二の舞になりはしないかという問題点でございます。それから、新産、工特に続く四十四年の新全総では、新幹線、高速道路、大規模工業基地による地域開発構想が華々しく打ち上げられました。しかし、それも結果的には人口と産業の大都市集中に拍車をかけるだけに終わったわけでございまして、こうした国主導型の地域開発のツケについて放置したままでは済まされない。いかなる解決策を講じようとされているのか、この点をお願いしたいと思います。  また、このような問題に対する反省を踏まえて、新規開発構想にどう反映させていくお考えであるのか。従来の開発構想は、陳情型開発構想と酷評する声もありますけれども、従来の開発政策を再考すべきときに来ているのではないかと思いますが、あわせて御答弁をいただきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  68. 福原元一

    政府委員(福原元一君) 私どものテクノポリス構想は、先ほどお話し申し上げましたとおりに、地域が主体となって開発を進めていくというのが基本でございまして、まず国がインフラを整備してそこへ企業を誘致するという発想等は変えまして、地域がみずから環境を整備しそこへ企業を誘致する、あるいは地場産業を先端技術産業化するという努力に対しまして、国が何らかのインセンティブを与えようというのがテクノポリス構想でございます。  従来の地域開発は陳情型ではないかということでございますが、私どもはそういうことを避けまして、あくまでも地域の自主的な努力、その結果を待ちましてテクノポリス地域の指定というものを進めてまいりたいと、このように考えております。
  69. 八木国雄

    説明員(八木国雄君) 先生御指摘の新全総は、昭和四十四年に閣議決定されておりますが、これにつきましては、交通通信ネットワークあるいは大規模工業基地建設等をかなり国主導型で進めていこうといった構想が中心になっているわけでございます。ただ、それ以降起こりました第一次石油ショックあるいは環境、公害問題、こういったことが重視をされまして、昭和五十二年に現在の第三次全国総合開発計画というものに移行をいたしております、それを三全総と言っておりますが、におきましては、いわゆる人口と産業の大都市集中を抑制しよう、あるいは地方を振興しようということをねらいまして、また地域産業等々、あるいは地域の居住環境といったものを統合的に整備をしていく、その手法もできるだけ地域の自主性あるいは自発性を生かした地域主導型の地域開発を目指そうという形に変わってまいっております。  先ほど御指摘の各種の大型プロジェクトというものにつきましては、これを定住構想の一環として改めて位置づけをしていこう。あるいはこの大型プロジェクトの着工順位といいましょうか、あるいは優先順位あるいは選択といったものも、改めてその中で位置づけをされ、行われていくというわけでございます。  なお、現在三全総のフォローアップ作業を実施中でございますけれども、そういった最近の情勢かなり変わってきております。産業構造あるいは人口動向あるいは地方におけるいろんな各種の変化といったものも織り込みまして刺激をしてまいりたい。あるいは国土庁として四全総——仮称でございますけれども、いずれ検討してまいることになるかと思います。そういったことの中で、経済社会情勢の変化や地域の実情を考慮した中で、改めて大型プロジェクト等の位置づけも検討してまいるということになろうかと思います。  以上でございます。
  70. 市川正一

    ○市川正一君 政府は十九日に経済関係閣僚懇談会、これは政調会長も出席されたようですが、そこでもって景気対策の具体的内容について協議したとこう伝えられています。その中で、不況克服のかなめになっている個人消費の拡大、これはもう長官も共通の認識だと思いますのであえてここで論議は省きますが、この個人消費の拡大に当たっての対策でどういう手を打とうとなすっているのか。報道によりますと所得税減税の実施も入っているようでありますが、そういうことを含めてどう具体化されるのか、まずお伺いいたします。
  71. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 市川委員御指摘のように、十九日に私ども閣僚の一部の経済関係に最も密接な関係のある方々が集まられまして、予算成立後の情勢に応じまして三・四%という経済成長の見通しを確実に達成するという目標のもとで論議をいろいろいたしました。各種規制の緩和とか公共投資の前倒しとか御案内のとおりでございますが、その中で、やはり国会で大変な皆様方が御苦労されました与野党間の申し合わせでございますところの所得税減税については、ひとつ財源確保の努力もしながら大きな柱として研究すべきではないかという話題は出たことはもちろんでございます。しかし、これをどのようにするかということはまだ全くすべての景気対策を含めて決まっておりません。
  72. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、一方では所得税減税は政府もお約束なすっている。今日、私あえてデータを申し上げますならば、勤労者世帯の実収入に対する可処分所得の比率が五十三年の八九・六%から五十七年前半の八四・七%と、この五年間で実に五%も落ち込んでいるということの一事を見ても、所得税減税が緊急課題になっているという点は長官もかねて御指摘なすっているところだと思うのですね。ところが、十九日のときには項目としては報道されている、これは事実ですね。ところが一方で、大蔵大臣あたりは大型間接税の導入と抱き合わせで、言い方は悪いけれども、やっていくんだという示唆をなすっておるのですが、長官のお立場は一体どうなんですか。
  73. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) よくその御質問を私も受けるのです。私は企画庁長官でございますから、大蔵大臣所管の税制論について、税制として直接税から間接税にとか、あるいは所得税の身がわり財源としての大型間接税とかいうような純粋税制論の見地あるいは財政論の見地からは意見は申し上げない方がいい。ただ、私の経済的な考え方と申しますか、経企庁の関係する経済の面から見ますと、二つばかりの点でさて所得税減税の効果を相殺するどころかそれ以上のマイナス効果が出るんではないか、一つは所得税の減税の効果は消費の刺激のみならず貯蓄の増加という形であらわれる、所得というのは消費と貯蓄に分れるわけです。ところが、大型間接税は消費そのものに直撃していく、消費抑制の効果がある。さて、私はむしろ大型間接税と同額の減税をするような場合には、減税と増税を組み合わせるならばむしろマイナスの景気効果を生むんではなかろうか、ことに体力の弱って三年間も不景気なときに、さて大型間接税の効果はどうであろうかという点が第一点であります。  第二点は、よく私はひらめきますのは、いま世界消費を抑え、輸入を抑え輸出促進しておったらもう何と申しますか、一九三〇年来の世界恐慌になるんではないかと、こんなふうに言われるぐらいいま大変深刻な状況だと思います。ところが、アメリカではよく大型間接税といいますか、付加価値税というものはヨーロッパにあってはこれは輸出奨励のための税制と考える、そんなふうにアメリカでとられたならばこれまた貿易摩擦の点から大変な影響があるんではないかと、こんなこともよく思いつくわけでございます。元大蔵大臣の坊先生などはそんなような話を、付加価値税の研究にアメリカへ参りましたら、まず真っ先に財政当局から浴びせられたというようなことを言われますので、私はこういう経済的な観点からいまどうかということを申し上げているので、財政論、税制論はまたこれは別の観点から申し上げなければならないと思っております。
  74. 市川正一

    ○市川正一君 私はやっぱり政治と経済というのは不可分のものですから、そんなに器用に長官のように分けられへんと思うんですね。景気対策、そして経済論的に言っても私はやっぱり国民生活を豊かにし、景気を、大いに活力を持たすという点ではまさに間接話法でおっしゃったけれども、大型間接税というのが相殺効果があり、むしろマイナス効果だという認識はこれはノーマルな認識だと、私はそう思いますよ。  そこで、減税のための財源というのはいわゆる不公平税制の面だけではなしに、たとえば大企業に対する補助金等々不要不急の出費を削減することによってもできると思うんですが、私はこの機会に一歩立ち入ってぜひ長官の認識を伺いたいんでありますが、防衛費ですね、軍事費の削減、たとえば当面、正面装備費あるいは米軍への思いやり予算、日米共同演習の経費等々を中心にして私どもの試算によれば一兆一千億円の削減は可能であると、こう思います。しかも、これは世界的にそういう傾向、特にアメリカをとってみれば、御承知のようにいまアメリカの連邦議会の中では軍事費削減要求が起こっております。そして、三月一日には全米知事会議ですね、ここでもって軍事予算の大幅削減を求める決議が圧倒的多数で議決されています。これにはレーガン大統領の与党である共和党知事も加わっていることも周知のところです。今日、軍事費支出が経済成長を阻害し、雇用を悪化させ、そして財政赤字をふやしていると、こういう認識からいろいろの積極的措置をとろうという私、認識はケインズ理論をいまも信奉なすっていると午前中おっしゃっていましたけれども、私はケインズ理論の立場には立ちませんが、しかし軍縮による軍事費の削減が景気対策あるいは財政危機の克服のためにも、平和と安全のためにも、国民生活を守るためにも避けて通れない課題になっておると、こう思うんですが、この機会に長官の認識、見解を承りたいと思います。
  75. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) いまの御指摘の全面的な軍縮の推進によって浮いた金を民生の安定あるいは発展途上国に対する援助等に使うということの意味、そしてまた経済の大きな成長に役立つということはもう中曽根内閣のみならず、その前の鈴木総理が国連で軍縮のための演説をされた中に明らかになっているところでございます。中曽根内閣でも有効なる軍縮の推進は最も重要なる目標であるということを施政方針演説に総理みずから言っておられるところでございます。しかし、現在の防衛費の問題、これとまた別の角度の問題でございます。やはりみずからの国はみずから守ること等のために現在の防衛費はこれまた別の角度でいま必要なものとして計上されているわけでございまして、私はこの問題と経済成長あるいは経済援助というような問題とはまた別の問題であると、こういうふうに考えております。
  76. 市川正一

    ○市川正一君 また別もの論になるんですね。だから私はやっぱりいまの政治と経済を本当に直視した場合に打つべき手はこれにはないと思うんですよ。軍事費には手をつけない、また所得税減税をえさにして大型間接税は導入する、もしそういうことになればですよ。これでは景気はますます悪くなる一方だということは長官がもう一番よく御存じのはずです。さらに重大なのは、この経済関係閣僚懇談会で、報道するところによると、各種規制緩和による民間活力の利用というのが入っております。総理は、土地や工場立地に関する規制を緩和して民間企業が活動しやすいようにする、こう述べたと報じられているんです。具体的には何を検討しようとしているんですか。ひとつ教えてもらいたい。
  77. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 各種規制の緩和、これは私は大変重要な問題であると思っておりますし、これから研究して具体的に案を策定していくものだと思っております。常に規制はその時代の必要に応じて生まれてくるわけでございます。しかし、その時代の推移もあるわけでございますから、現状に照らして果たしてこれが適当であるかどうか常に検証をし、そして時代の進歩に合うように持っていくべきだと思います。たとえば調整区域におけるところの開発基準等についていろいろの御意見があるようでございますが、これらは都市計画のあり方等を考えながら見るべきであるということがよく言われておりますが、これは一例でございます。全くまだ具体的な施策については決まっておりません。これから幅広く、また奥深く、そしてまた単に経済成長観点からのみ規制を私は緩和すべきではないと、別な角度の政策目的、これも重要なものですからそれはもう十分考えていくべきであると思っております。
  78. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、時代の推移がどうあろうと、たとえば人の命だとか人間の健康だとか、こういう非常にプリンシプルなものはこれは守らなければならぬと思うんですが、たとえば安全対策の基準だとか、それから環境問題に関する基準だとか、こういうことについてはこれはまさかお触れにならぬとは思うんですが、念のためにひとつ確認しておきたいと思います。
  79. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) まだ具体的に何ら論議も進んでおりませんので申し上げにくいわけでございますが、もう絶対必要な面はこれは触れてはいけない、これはもう当然のことだと思っております。
  80. 市川正一

    ○市川正一君 しかと確認いたしますが、最近、たとえば安全対策の手抜きなどがコンビナート企業などで散見いたされます。また国民生活に危険を及ぼすようなあるいは公害規制とか、そういうふうなことを緩めるような動きも見られます。ですから私はかつての日本列島改造のようなああいう乱開発を繰り返すものではないんだと、基本的立場というのはそういうものだということをひとつ長官の口からしっかり伺いたいんでありますが、いかがでしょう。
  81. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 具体的な問題について申し上げることがまだできないような段階でございますのでこの点は避けたいと思いますが、とにかく時代の推移はあっても絶対に残すべき目標というものはあるわけでございます。これがどの程度になるかという程度の問題もあろうかと思います。これはもう慎重にその政策効果をはかりにかけながらいくべき問題だと考えております。
  82. 市川正一

    ○市川正一君 私は重ねて景気対策に名をかりた火事泥的なことはやらぬように、その点はしっかりひとつ確認いたしたいと思います。  次に、経済協力問題で伺いたいのでありますが、午前中も同僚の吉田議員からもこの問題が出されましたが、国民生活関連予算が大きく切り込まれている中で、防衛費と並んで経済協力費は大きく増加しております。本来、この目的は、午前中長官もお答えになったように、開発途上国の経済発展や民生安定に役立てるということでありますが、実態はそのうたい文句とは反対に、たとえば今回の韓国に対する四十億ドルのあの援助約束が示しておりますように、結局アメリカの世界戦略に応じたてこ入れとかあるいは紛争周辺国援助という事実上の軍事援助、あるいはまた、わが国の巨大商社が中心になって仕組むプロジェクトと結びついた大企業の海外進出の促進費になっている、こう言わざるを得ぬのであります。  そこで、私このことに関連して、巨大商社の企業活動のあり方と政府の対応について重大な疑惑があるので、この際ただしたいのでありますが、まず林野庁に伺いますが、一九八〇年、八一年のフィリピンの通関統計による日本への丸太の輸出数量とわが国の通関統計によるフィリピンからの輸入数量は、大きな差があると思うんですが、いかがですか。
  83. 三沢毅

    説明員(三沢毅君) 林野庁といたしましては、わが国の大蔵省貿易統計に基づきまして、フィリピン材の輸入量を把握しているところでございます。日本側もフィリピン側も、数量の食い違いについては、フィリピン側の事情がわからないので、確たることは申し上げられません。
  84. 市川正一

    ○市川正一君 そこで、外務省に聞きますけれども、去年の四月にフィリピン政府が公電をもってこの食い違いについて調査団を派遣したいと言ってきたはずでありますが、どう対応なさいましたか。
  85. 恩田宗

    説明員(恩田宗君) 昨年四月、フィリピン政府よりわが方のマニラにある大使館を通じまして、対日の丸太輸出に関するデータを収集する等の目的を持ってわが国に係官を派遣したい、こういう要望が出てまいりまして、わが国の意向についてどうであろうか、こういう打診がございました。これに対して、わが方よりは、係官が来日するのであれば、関係省庁より公表済みの統計資料等の提供など、しかるべく対応する用意があるという旨回答してございます。なお、その後フィリピン側からは、この問題についてはその後何らの要請がなく、また係官等の派遣についても申し入れがない、こういう状況でございます。
  86. 市川正一

    ○市川正一君 外務省、何か恩田さんがあるんですって。いいところであなたすうっと消えるんだけれども、しょうがない。あとはもう林野庁相手にけんかしておくから、後でよく聞いておいてください。  林野庁、ちょっと伺いますが、いまあなたの話だと、しかとわからぬというのだけれども、要するに違いがあることははっきりしているのでしょう。どうなんですか。
  87. 三沢毅

    説明員(三沢毅君) 私どもはフィリピンの事情について正確に調査しておりませんので、やはり確たることは申し上げられませんと、こうお答えをしたところでございますけれども、私どもの方は、国内で大蔵の貿易統計を使ってしっかり押さえております。しかし、伝え聞くところによれば、フィリピンがライセンスを与えた数量とかなりの差異があるという風評については聞いております。
  88. 市川正一

    ○市川正一君 風評でなしに、国会で私は聞いているんだから、ちゃんと調べてくるのが当然じゃないですか。先ほども公電が来たということは、外務省が確認しているわけですね。そして、そういう公電が来た、食い違いについて、調査するのがあたりまえだし、その結果はどうだったかということを私はいまここで報告を求めているのだから、それはちゃんと言いなさい。
  89. 三沢毅

    説明員(三沢毅君) わが方といたしましては、貿易統計の数字をすでに公表されておるわけでございますから、これについてはちゃんとつかんでおります。
  90. 市川正一

    ○市川正一君 どのぐらい違うのですか、比率でもいいわ。
  91. 三沢毅

    説明員(三沢毅君) いろいろこれは向こう側の数字がどの程度ということはちゃんと公表されてないものですから私どももそれを知り得る立場にないわけでございますので、しっかりしたお答えをいたしかねるわけでございます。
  92. 市川正一

    ○市川正一君 こんな、いたしかねるとか、確たるとか、そんな無責任なことではどないもならぬな。違っていることは違うんでしょう。それだけでいいわ、それなら。
  93. 三沢毅

    説明員(三沢毅君) フィリピンからもそういう申し入れがございまして、調査に来たいと、こういうふうに申してきたわけでございますので、明らかに違っております。
  94. 市川正一

    ○市川正一君 違っている。そこで聞きますが林野庁、外務省は逃げてしもうたから、あなた気の毒だけれども、ちょっと。フィリピン政府は、いま森林保護と、それから丸太を加工して付加価値の高いものとして輸出して外貨収入をふやすという目的で、丸太の輸出についてはこれまで規制措置をとってきたと思うんですが、間違いないですか。
  95. 三沢毅

    説明員(三沢毅君) おっしゃるとおり、間違いございません。フィリピンでは優良材の減少が目立っているため、これまで丸太輸出禁止ということでたびたび変更されるなど制度的な面での丸太輸出規制には最も厳しいものが見られたところでございます。五十七年にも丸太輸出を禁止する政策が発表されております。しかし、現在、全面的な輸出禁止は実態としては行われていないというふうに承知いたしております。
  96. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、木材のそういう輸出規制をしている国が、フィリピンが、公電をもって、そして輸出数量の食い違いについて調査団を派遣したいと、こういう打診を言うてきたわけでしょう。そうしたら、外務省もあなたのところもしかとわからぬ、こちらの用意はあるけれどもといって、事実上何も積極的手は打ってないんですよ、調べてもらわぬと。これでは私外交問題に発展するおそれが十分にあると思うんですよ。そういう深刻な問題だとは思いませんか。これは外務省おらんのでしょうがない、あなた。
  97. 三沢毅

    説明員(三沢毅君) 先ほども外務省からお答えがあったとおりでございますけれども、私どもといたしましても、国内でわかることについては公表済みの資料等提供してしかるべき対応をする、こういうふうに考えておりましたところ、そういう趣旨の返電も外務省の方からもされたようでございますけれども、それに対してその後フィリピン側から具体的な動きがなく今日に至っているというのが実態というふうに承知いたしております。
  98. 市川正一

    ○市川正一君 長官もよく聞いておいていただきたいんですが、私、これ重大なやっぱり外交問題に発展するおそれがある。しかも、私どもの調査では、フィリピンの木材ブローカーの密輸出に日本の巨大商社が明らかに手をかしている疑いがあるんです。名前はここでは申しませんが複数です。これらの巨大商社がフィリピン木材の輸出規制措置を十分に承知しておると、またそれが密輸出であることも十分承知しておる、その上で輸入してるんです。しかし、じかにフィリピンから輸出したんでは共犯者になるんで、契約とか、あるいは決裁をこういう商社の香港支店を通じて、そしてフィリピンのブローカーと取引をする、そういう形を整えて持ってくる、こういうからくりなんです。で、私はその結果フィリピンの方は政府の森林保護政策を内部から崩されている、それに日本の商社が手をかしている、また、木材工業の発展も阻害される、外貨も入ってこぬということでフィリピン政府がこれをきわめて重視するのは私当然やと思う。  ところで伺いますが、日本はフィリピンに有償、無償の林業経済協力をしていると思いますが、いかがですか。
  99. 黒川祐次

    説明員(黒川祐次君) フィリピンの森林開発に対するわが国経済協力といたしましては、現在ルソン島中部のパンタバンガン地域において植林及び森林保全にかかわる技術の開発、改良並びにフィリピンの技術者の訓練を目的とした技術協力を実施中でございまして、これまでに同プロジェクトの施設整備に対する無償資金協力も行っております。またミンダナオ島においても本邦民間企業の行う試験的造林事業三件に対する融資及び技術協力も行っております。
  100. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りましたので、私最後に結びの質問として長官にお願いしたいわけですが、いま外務省がいろいろ申しましたが、わが国のこの木材輸入についてはSEA LPAという東南アジアの木材生産者連合というのがございます。そこの会議などにおいて、乱伐のために東南アジアの森林をはげ山にしてしまうという強い対日批判もありまして、そして林業協力には日本政府もいろいろと手を打ってきたところであります。いまその一端が外務省から出てきました。  ところが、たとえば先ほど申しました幾つかの商社、私はあえて名前を言うならば日商岩井、三井物産、伊藤忠、こういう連中が先ほどのようなからくりでそして不当な企業行動をやっておる。そしてフィリピン政府に大きな損害、打撃を与えるとともに、途上国の経済発展に寄与するというわが国本来の経済協力の立場、午前中長官がおっしゃった、こういうことにも反する重大な問題をあえて侵しておる。私は徹底的にこれは調査し、厳しい規制を加える必要があると思うのでありますが、経済協力の所管大臣である塩崎長官の御答弁を最後に承って質問を終わりたいと思います。
  101. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 私も、相手国内経済活動に対してそれは当然そこの国の法律を守るべき義務はどんな人でもあると思いますし、そういう違反があることはもう私どもも十分監視していかなけりゃならぬと思います。  一方、経済協力はやはり、いま外務省からお話がありましたように、フィリピン経済、そしてフィリピン国民のための植林事業協力でございまして、これは依然として私は重要なものであると考えております。
  102. 市川正一

    ○市川正一君 じゃ、これは一遍よく調べて必要な措置をとっていただきたい。お願いします。じゃ、終わります。
  103. 井上計

    ○井上計君 午前中の質問でも関連して出ておりますけれども、改めて経企庁長官にお伺いいたしますが、五十八年度の実質三・四%、名目五・六%という成長率、目標値は減税による、まあ大型減税、いろいろと言われておりますが、与野党幸いにして合意をしております。まだ金額あるいは時期、方法等については明らかでありませんけれども、この減税によるGNPへの乗数効果等について、これは織り込み済みですかどうですか。まずお伺いします。
  104. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 減税は、当初目標を立てる際には織り込んでおりません。
  105. 井上計

    ○井上計君 といたしますと、減税による効果、私どもの試算ではGNPへの乗数効果は大体〇・一五、せいぜい〇・二%程度、このように試算をしておりますけれども、その効果と、それから特にこのところの石油価格の値下がり等によるこの影響、効果、これらについては全く今後の問題としてこの成長率がさらに高まるであろう、上がるであろうと、こういうふうにお考えですか。
  106. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 所得税減税につきましては、これはもう財源いかんによって、先ほど来お話がありますように、大型間接税ではむしろマイナスになるかもしれない、となることがありますので一概には言えないと思います。  それから第二に、原油の問題でございますが、原油も弱含みであるということは考えておりましたけれども、何ドル下がってどのようになるかということは見込んでおりませんので、三・四%に対してはプラスの要因であることは間違いございません。そしていろいろの要素を考えて考えなきゃならない点であろうと思います。そしてまた、時期も問題になろうかと思います。
  107. 井上計

    ○井上計君 長官は、就任直後の記者会見、これは新聞報道でありますが、公共事業によって内需を拡大すべきであると強く主張をしておられたと、こう思います。その後またそういうふうなお説をときどき伺っておるわけでありますけれども、現在の、特に中小企業の倒産の激増、あるいは失業率の、先ほども失業率の問題等について吉田委員からもいろいろと質疑がありましたが、失業率のいわば増大等々から考えると四%台、しかもそれは四・五%程度成長率がなければ、なかなかそのような問題については解決困難であろうと、このように考えておりますが、それについてどうお考えでしょうか。
  108. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 現在、三年間ばかり三%台の成長で、大変、私は国民皆様方はやっぱり三%台では不況感が強い、こんなような印象を受けるわけでございます。低成長時代に入ったといっても、やはりもう少し高い成長の方が望ましいという空気が非常に見受けられます。それから、アメリカがあれだけ苦しんできて、一九八三年は一・四%だが八四年以降は四%台の成長があると言われる。  こんなことを考えてみますと、いまの程度成長でいいかどうか、これからよほど検討しなければならない私どもの中期経済計画の大きな目標だと考えております。
  109. 井上計

    ○井上計君 そこで、いずれにしても減税だけでは私はそれほど大きな成長率を高める要因にはならぬであろうと。何といってもやっぱり公共事業投資をさらに拡大をして、内需の拡大というようなことがやはり緊急の課題であろうと、こう考えます。  そこで、関連するわけでありますが、すでに新聞等でも言われておりますけれども、五ドル程度石油価格の値下がりによって大体二兆円程度わが国支出減に効果あるであろう。そのうち電力会社のそれによる節減といいますか、約五千億円程度であると、こう言われておるわけでありますが、いま論議としては、それによって電力料金あるいは電気料金を値下げしろという説と、これは今後の長期的なエネルギー対策のために、それらのものはその方面に使うべきだという議論と、これは両論あるわけですね。  そこで、これは私見でありますけれども、私は、やはり公共事業投資を拡大をするという方向にいくためにも、それらの電力会社が現在かなり、設備投資について非常に規制をしておりますので、その方向に回すことの方がやはり内需拡大に大きく効果があるんではなかろうか。若干の電気料金を下げるよりもさらにその方が効果があるんではなかろうかと、こう考えますけれども、長官、御見解はどうでしょうか。
  110. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 私も、いま井上委員御指摘のように電力会社の省エネ投資、代替エネルギー開発投資、これらの投資が予定されておる。これが継続される方がやはり経済全般に対しては、つまり経済刺激的な効果はあるであろう、こういうふうに考えております。  ただ、昨今電力需要の低迷等から見てこのような投資が果たして行わるべきかどうか、電力会社の中においてもいろいろ論議があるようでございます。これは今後の石油の輸入状況等を見ながら慎重に決定すべき問題だと考えております。
  111. 井上計

    ○井上計君 先ほどもいわば減税財源に対して大型消費税等の導入は逆な面が出るというこれは御説がありました。これは長官は以前から、特に中小企業関係の団体等でよく御一緒させていただいてもう長官の御持論よくわかっておりますから私は安心しておりますけれども、しかし、やはり依然として大型消費税の導入についての論議が、あるいは計画があるように私どもうかがえるんですね。  だから、これはぜひ長官への要望でありますけれども、景気対策の面から見ても、また長官の従来の御持論から見ても、大型消費税については絶対導入すべきでない。  それから、大型消費税、もし云々ということであるならば、これはやはり国民の選択に任すべきでありますから、次の国政選挙で国民に信を問う。このことは、ひとつ閣内で強く主張をしていただきたい。これは要望しておきます。  お考えでも聞かせていただきます。
  112. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 大型消費税については、野党の方々から大変激励をいつも受けているようなわけでございます。私は元大蔵省の主税局長で、ここに隣におられる公正取引委員会委員長にも勉強をさせていただいたものでございますし、大型間接税の主張者は、たまたまこの公正取引委員長でございます。なかなか言いにくいところでございますけれども、私は税制論としても、さらにまたいまの経済状況から見ても、付加価値税式な大型間接税は導入すべきではない、このことは個人としても強く主張しているわけでございます。
  113. 井上計

    ○井上計君 公正取引委員長がおられるところではっきりと言っていただいたことでかなり安心をいたしました。  そこで長官、先ほど長官の所信表明のごあいさつの中に、「第四は、基礎素材産業中小企業については、構造政策的な観点を取り入れながら、活性化経営安定化を図るため、実情に応じた対策を実施する」云々ということがあります。基礎素材産業についての構造政策的なということについては、これは大体理解できます。そこで、中小企業についての構造政策的な観点というのは、特にこれは何をうたっておられるのでしょうか。
  114. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 御案内のように中小企業の問題は数多いわけでございますが、構造的には私は多数の、そしてまた零細な中小企業者が過当競争にあえいでいる、こういうふうに考えるのでございます。そのために共同化の推進とか、あるいは商店街の共同施設とか、こういったことに力を置いてまいったわけでございます。大企業に負けないような、いろいろ構造的な施設を考える、それがひとつ設備投資の投資減税、こんなような問題につながると、こういうことを意味しているつもりでございます。
  115. 井上計

    ○井上計君 投資減税等につきましては、きょうはもう時間もありませんし、これは別の機会にまたいろいろと質問したいと思っております。  そこで長官に伺いますけれども、一月の二十日に金沢で長官講演をされておりますね、そのときに、「公取委の姿勢は、中小企業者いじめになっており、問題がある。独禁法も、日本社会の体質になじまないので改正すべきだ」、こういうようなひとつ発言をしておられますし、新聞報道がどの程度長官の発言を忠実に報道したかどうか知りませんけれども、この中で、「現行の独禁法は、協調を美徳とする日本社会の体質に合わない。憲法と同じでタブー視する声があるが、運用の緩和はもちろん、景気浮揚からも、改正すべきだ」という、新聞報道によりますとこういう御発言をされたということになっておりますけれども、きょう現在のお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  116. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) これもまた高橋委員長が隣におられるので大変言いにくいんですけれども、私はこのような発言の内容は少し正確ではないと思いますが、独禁法につきましては、私は、きわめて重要な法律であって、戦後の日本の発展を大きくもたらしたものは農地法あるいは財産税あるいは経済集中排除、そしてこの独禁法、このような効果は強く認め、独禁法の存在は確かに日本に必要だと思う、こういうようにまず前提に考えるわけです。それはしかし多分に大企業に対して必要であって、中小企業にはまだまだ考えなさい、こんな点が多いんではないかということでございます。  まず第一には、私は問題点といたしまして、とにかくこれはもう哲学が日本人とアメリカ人とで根本的に違っておる。つまり集団主義的に物を考えてみんなと一緒にやっていくということが美徳であると考えておる日本人、それと個人個人で物事を判断して決定することが美徳である、人と相談していくことが、共謀ということ自体が罪になるようなアングロサクソンの考え方とこれは根本的に違っておる。私どもは戦前まで独禁法を持たなくて重要産業統制法でカルテルとかトラストでむしろ不況を乗り切るようなことをやってきて、独禁法のマインドがないだけにこの独禁法というものがなかなか日本に定着してないんじゃないかということが第一点でございます。とにかくすごろくでもアメリカにあっては独禁法の話が出る、日本にはそんな話がない。  第二点は、中小企業の問題でございますが、大企業は数が少ないから簡単に不況カルテルとかそういったルートに乗って、突き進んでいったら法律上のカルテルがもうたくさんある。これはもうアメリカよりはるかに多い国において、中小企業だけが数が多くて、そしてなかなか共同歩調がとりにくい。不況カルテルのルールに乗っていったらいいんじゃないかと言っても、不況カルテルでまとまらない。じゃ、たまたままとまっていくといったらどんな場合かというと、大変不当廉売があるもんですから、たまらないから相寄って、不当廉売を防止しようというわけで共同歩調をとると、課徴金を含むところの独禁法の犠牲に、犠牲といいますか、適用になるということが見られるわけでございます。私は公正取引委員会中小企業に愛されて、大企業の私的独占あるいはカルテルによる中小企業者いじめ、あるいは優越的地位とかという問題をやっていただいたら、公正取引委員会中小企業に大変喜ばれるんだが、残念なところ、いまのところは公正取引委員会中小企業にとってこわいところ、こんなふうに見られるところをひとつ法律的に根本的に運用の面において考えていくべきではないかと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  117. 井上計

    ○井上計君 もう長官がそこまでお考えいただいておること、大変心強く思いますし、すべて同感でありまして、同感というと大変御無礼なんですが、ですから私がいま言うことを全部長官がおっしゃっていただきましたから、これ以上もう長官にお聞きする必要ないわけであります。  そこで、まあお隣におられまして大変お聞きづらかったか知りませんけれども、公取委員長にお伺いしたいと思います。時間がありませんからもう細かい点省きます。ずばりひとつ要点だけお伺いします。委員長はこういうふうな積算資料あるいは物価指標よく御存じなわけですね。これらの積算資料、物価指標等については、各官公庁がみんな会員になり、あるいは大企業等が会員になって、このような経済調査会等から毎月のいろいろな市場調査をしたものを全部克明に出している。そこでこれについて、この積算によって大体すべての発注の予定価格が算出されておる、あるいは会計検査院においても、これらの積算によって適正に落札されておる、あるいは物品購入がされておるかということをこれによって算定をする非常に権威のあるものですから、これは私はこれが重要視されることは当然だと、こう思います。  そこで、委員長にお伺いいたしますけれども、大企業においては若干それはいま長官おっしゃったようにこれは数も少ないし、それぞれエキスパートを抱えておりますから余り問題ありませんけれども、中小企業団体はこのようないわば、これは私も大分やったことがありますけれども、全く頭が痛くなりますよね。幾ら電算機使ってもそう簡単に計算できるものじゃありません。個々のやっぱり中小企業者がなかなかこれに基づいて的確な積算をするということは事実上不可能に近いです。だからどうしても団体がこれらのものをやはり指導する。中小企業団体のやっぱり一番大きないまの時点での使命というのは、何といっても組合員の経営の安定、改善であろうと思うんです。ところが、これを積算をして、積算する方法の指導は構わないわけですけれども、積算を指導する以上やっぱり答えを出さなくちゃいけませんよね。答えを発表すると独禁法違反の疑いがあるということで、従来やはり公取から大変おとがめをいただいておるわけですね。だからいま長官言われた公取というのは中小企業に対しては大変こわいところだと。事実、本当にいま中小企業に言わすと、一番こわいところはどこかというと、警察でも税務署でもないんです。公取ですよ、一番。これが委員長は先ほど一時的な現象で独禁法を見直すべきでないとか、あるいはいろんなお話がありました。私は別に独禁法をこの際根本的には直ちに改正とは言いませんけれども、少なくとも運用見直していかなければ、物の不足したいわゆる欠乏時代につくられた独禁法が現在でも一人歩きしているような感じがしてならないわけですね。いま大きく経済環境すべてがさま変わりしておる中で、私は少なくとも中小企業に対する独禁法については、運用についてはひとつこの際お考えいただかないと、このいま低成長の中で中小企業の倒産、それからいわばやむを得ずという形の中での赤字受注、ダンピング競争が後を絶たない。それによってますます経済界が混乱をするんではなかろうかと、こういう懸念が多分にしますけれども、公取委員長どうお考えでありましょうか。
  118. 高橋元

    政府委員高橋元君) 特に中小企業の場合はそうでございますが、事業者団体が構成事業者事業経営について経営指導を行っていただく、これは業界全体のためにも、構成事業者事業の改善合理化のためにも役に立つと、これはもう先生御承知のとおりだと思います。  そこで、かねて各委員会委員から御質問があることでございますけれども、事業者団体活動と独禁法の関係でございますが、なかなかわかりにくい面もございますので、まず理解していただかなければ独占禁止法に触れて、いまもお話にありますように、公取というのはこわいところだという実際あってはならない誤解も招いていくわけでございますから、独禁法をなるべく理解していただけるようなフォーミュラと申しますか、ガイドラインと申しますか、そういうものをつくっておるわけでございます。五十四年、四年ぐらい前でございますが、事業者団体のガイドラインというものをつくりまして、これはよく御案内のことと思いますが、その中で、たとえば、価格設定に役立つ資料の提供は原則として違反にならないということをお示ししておるわけでございます。事業者団体が構成事業者に対して、経営指導の一環として、標準的な費用項目を掲げた積算方法をつくる、これを構成事業者に示すと。それを経営の指導の一環としてそれをやっていかれるということは、拘束的なものでなくて、統一的な価格設定につながるものでない限り特に問題はない。これはかねて当委員会の見解として申し上げているとおりであります。事業者が、それじゃ、いまの御質問のように積算価格を出す場合に、自分の判断でいまお示しになったような積算資料を使われまして、そこではじいて価格をお出しになる、これはもうそれ自身全く問題はないわけであります。ただ、事業者団体がこれこれの本屋の出したこういう積算資料を使ってやりなさいよというところまで指導なさるのは、それはいささか行き過ぎではないのかなという考え方でありまして、特定の刊行物の単価を用いることを決めると、事業者団体がお決めになる、こういうことになりますと、独禁法上問題が生ずる余地がございます。そこで、なかなか——価格を団体が決めて、構成事業者をバインドするということの違法性ということは御理解いただけると思うわけです。その中で、私どもとしては積算方式を統一して事業者団体が構成事業者に示すと、そこまでは合法的にやっていただいてもちろん差し支えないということを申し上げております。で、業界の指針としてそういうものが使われることを期待もしておるわけですけれども、特定の積算資料によるところまではなかなか踏み切れないというのが実情でございます。
  119. 井上計

    ○井上計君 いま委員長、ガイドラインを示しておるというお話であります。実は五十二年の十月であったと思いますが、私予算委員会で前の橋口委員長就任直後でありましたが、このことを申し上げて、ガイドラインを示すというお約束いただいて、二年たった五十四年にお示しいただいたと、こういうことです。その内容はわかります。 しかし、いま委員長おっしゃったように、特定の積算方法を示してやることについてはよろしくないと、こういうことですね。まあ、私は特定とは言わない。このように明らかに、各官庁、予定価格等を積算する場合に使っておる、これに基づいてこれをつくり、計算方法を指導し、出た答えを発表することもよろしくないということであれば私はいささかどうであろうかと、こう申し上げておるわけですね。だから、実際には出先で、これを、答えを、こういうこの計算は何ページのこういうふうな適用条項を使って、こうやってこうなると、こういう計算してこういう答えが出ますよということを発表するとやはり違反だと言われるわけですね。それを私申し上げているわけなんだ。これを守れということじゃないんです。こういうものはこういう計算でやってこうなるとこういう答えになりますよと、したがって自分ところの原価を見つめなさいと、こういう指導までいけないというのはどうであろうかと、こういうことなんですね。まあこれは時間がありませんから、またよくいろいろと御指導いただきながら私も提案もしたいし、またお話も個別にしたいと思っておりますけれども、いずれにしても、先ほど塩崎長官おっしゃっていただいたように、やはりいま、言えばもう物があり余って、そうしてお互いが何とか若干でも利益を得るためにどうするかというふうなことで大変苦しい状態に全部がおる中で、あり余っておるためにやっぱりやむを得ず競争する。で、競争するのは、不本意であるけれども、競争のためにやむを得ずまた赤字あるいは出血というふうなことをあえてやって実は転落の道をたどっておるという業者がますますふえつつある中で、やはり全体から考えて、そのような業者の経営改善指導、安定指導のためにはある程度許されるべき限度というものをひとつ挙げていただきたい。それは決して独禁法本来の目的であるところの消費者に対する大きなマイナスであるとか、あるいは日本経済全体の安定、発展を損なうとかというものとは全く違うであろうと、こういう考え方でおりますので、今後ともひとつ公取委員長、ぜひまたお考えをいただきたいと、こう思います。  それからもう一つ、それに関連いたしますけれども、中小企業団体法あるいは協同組合法等によって適用除外というのがあります。しかし、料金の問題については事実上これは適用除外ないわけですね。やはり団体法の精神からいき、あるいは協同組合法の精神からいきましても、やはりそのような、いわば大変乱売による過当競争激化しておる、そのためにその業種、団体、すべてが非常に危機に陥っておるというふうなときには、まあカルテルを結んで云々と言われますが、実際にカルテルを申請して三月も半年もかかるという中では、もうこれはどうにもならぬというふうな業種もあるわけですから、やはりそこは臨機応変的な処置によってそのような適用除外も時に認める、緩和するというふうなことも必要ではなかろうかと、こう考えますので、ひとつこの点もぜひ御検討をいただきたい。まあお答えいただければ結構でありますが。
  120. 高橋元

    政府委員高橋元君) 私、昨年の九月にいまの仕事を仰せつかりまして、前任の委員長から井上委員との間の中小企業対策についてのお話を重要な問題として引き継いだわけでございます。    〔委員長退席、理事野呂田芳成君着席〕 いまいろいろお示しございましたので、私どもといたしましてもまあ現下の中小企業経営の困難性ということも念頭に置きまして、さらに研究をいたしてみたいというふうに考えております。
  121. 井上計

    ○井上計君 どうも、よろしく。  終わります。
  122. 大木浩

    ○大木浩君 本日は塩崎大臣と高橋委員長と、まあ同じ大蔵省御出身の先輩後輩でお並びでございますけれども、どうも先ほどから見ておりますと、お二人お並びだとどうもなかなか答えにくいという点が多いようでございますし、たまたま高橋委員長の方は衆議院の方の日程もおありのようでございますから、比較的質問の数も少ないので、委員長の方の関連を先にさせていただきたいと思います。  公正取引委員会、先ほどの委員長の方の御説明の中にも「我が国経済国際化、諸外国における独占禁止法制定強化に伴い」云々ということで、まあ「諸外国独占禁止法施行機関との連携促進」というふうなことに努めておるんだというようなことで、ここに予算が計上してございます。まあ何か、千六百万円という数字が出ておりますんで、千六百万円じゃどの程度のお仕事ができるのか必ずしも明らかでございませんけれども、こういった国際化の時代だということでの御認識は全くそのとおりだと思いますので、具体的にどういうお仕事をどういう展望でこれから、あるいは現在しておられるのか、若干御説明いただきたいと思います。
  123. 高橋元

    政府委員高橋元君) いまもお話ございますように、経済活動国際化ということはますます進んでまいります。そこで、なかなか一国だけで対処できない競争制限の問題というのが登場してまいりまして、独禁法の分野で国際協力の重要性ということが強調されて久しく時間がたつわけでございます。そこで、私どもの公取委員会といたしましても、OECDなりUNCTADなり、そういった国際機関の会議に職員なり委員なりを派遣をいたしまして積極的に参加しておるわけでございまして、その成果を独禁法の運用に生かしておるというところでございますが、いまお尋ねのございました個別の国ないし機関との間のいろいろな仕事と進めぶりということで若干補足さしていただきますと、日米の間では昭和五十二年から毎年定期協議をやっておりまして、回を重ねて昨年の夏で六回になります。たとえば日米の輸出カルテルの取り扱いでございますとか、合併の事前届け出制度アメリカ側でどうなっておるか、日本の独禁法の改正はどうなっておるか、集中と合併の問題について日本、アメリカの考え方はどうかと、垂直的取引制限や不公正取引についてはどういうふうにお互いに考えるかと、こういう意見交換をやっておるわけでございます。日独の間でも昭和五十三年以来、これは連年または隔年にやっておりまして四回、日本とECの間では一年置きに、五十五年以来三回、回数を重ねてきております。そういうふうに、お互いの独禁当局の間で相互に関心のある問題について意見と情報の交換をやっておるというのが第一点でございます。  それから第二点といたしましては、アジア、大洋州の諸国十二カ国、韓国、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ、インド、パキスタン、スリランカ、オーストラリア、ニュージーランド及び日本、この十二カ国は、その中には固有の独禁法制を持たない国もございますけれども、共通に独占禁止政策ないし反トラスト政策についての関心を持ち続けておりますので、いまの十二カ国の中の独占禁止政策の先進国という立場から、アジア、大洋州の独占禁止政策情報センターというのをつくりまして、私どもの中にその事務局があるわけでございますが、年次報告、その他の資料の収集、配付ということを初めとして情報の交換をやる、またその意見の交換をやるということをやっております。なお、一昨年はたしかマレーシア、シンガポール、インドネシアというようなところ、それから昨年度は韓国、インドと、それぞれの間で独禁当局相互間で、私どもとの間で意見の交換をやるということもやっております。韓国に対しましては、公正取引委員会に当たる公正取引庁というのがありますが、そこの職員にこちらに来てもらって研修をいたしますとか、こちらから向こうへ参りまして仕事の進め方について指導をいたしますとか、そういう技術協力もやっておるわけでございます。  そのような形で、各欧米の国、またアジア、大洋州の国との間で独禁政策の運用についての意見交換、技術協力、情報の交換ということをやっておるのが現実でございまして、先ほどお話のございました予算もそういうふうに使ってまいっておる次第でございます。
  124. 大木浩

    ○大木浩君 いまのお話は、国際会議の出席とかあるいは外国政府との一般的な意見の交換ないしは情報の交換というようなことだと思うんですが、私ども新聞などで見ておりますと、最近の日本の経済活動に伴っての日本の独占禁止法あるいは外国独占禁止法、たとえばアメリカとの例の自動車の百六十八万台でしたかの自主規制についても向こうの方でそういった面からの問題をクリアしなきゃいかぬのじゃないかというような問題があると。あるいは、ただいま日本からいろいろ海外投資をしておりまして、たとえばアメリカへ自動車工場をつくるというような場合にもそういった問題があり得るというようなことでございますが、こういった点については公取の方でどの程度に関与といいますか、直接にはこれは民間の話し合いでございましょうけれども、どの程度にフォローしておられるか、あるいは今後どういうふうにこういう問題について、全く民間にやらせるということか、もう少しウォッチしましていろいろ検討されるのか、その辺のお考えを伺いたいと思います。
  125. 高橋元

    政府委員高橋元君) 問題は三つあろうかと思います。  一つは貿易摩擦でございますけれども、貿易摩擦に対して私どもの方の委員会といたしましても積極的に取り組んできておるわけでございます。たとえば輸入関連事件につきましては審査重点的にやります。それから、輸入カルテルというようなものがあるといたしますと、それによって外国製品の国内参入が阻害されるわけでございますから、そういう面に着目をいたしまして独占禁止法違反事件として適正に審査をするということをやっております。日本の市場が閉鎖的であるとか、代理店制度があってそのために国内消費財の輸入円滑化が進まないとか、企業集団があって系列内取引が輸入を阻害しておりますとか、いろいろな誤解または苦情がございます。そういうことにこたえまして、流通機構の調査を進めておりますとか、企業集団の調査をするというような形でやりますのが第一のグループでございます。  それから、第二のグループは、日本の企業がアメリカやECなどへ出て行きまして事業活動を営むときに独禁法違反に問われるケース、例があります。外国の独禁法にひっかかるかどうかという問題は外国独禁当局が判断する、これはもう本来そうでございますけれども、したがいまして公取がその手続にくちばしを入れるといいますか、関与するということはできないわけでございますが、違反に問われた企業から外国の独禁法制とか、運用についての問い合わせを受けた場合には、できる限り詳細に回答し、指導しておるわけでございます。私どもの事務局は比較的小世帯でございますけれども、外国にそのためにアタッシェも三人ばかり置きまして、そういう企業にいろいろな外国の独禁法制に触れないような指導をいたしておるわけでございます。外国の独禁法違反事件が起きました場合にそのフォローアップをやりますとか、海外の独禁法の制度及び運用の実情の調査とか、先ほども御説明申し上げました二国間の独禁当局の意見交換ということで海外の独禁政策の情報収集に努めておりまして、日本の企業が海外の独禁法に触れないように問題を理解してもらい、PRもしておるというのが第二のグループでございます。  それから、第三のグループは、たとえば先般のトヨタとGMの提携のようなものでございますが、輸出の自主規制が行われる場合に、これが外国の独禁法違反にかからないように、これは日本の政府、それから企業、それから外国政府、それぞれについて理解を求めていく必要があると思うわけでございますけれども、輸出の自主規制の必要があるということは理解できるわけですが、そのやり方によりましてやはり外国の独禁法にひっかかってくるというケースもございます。そこで、貿管令なり輸取法と、そういう正規の法律制度に基づく国際契約なり、その実施ということが望ましいことは言うまでもないわけでございまして、そういう点につきましても関係の省庁と、いやしくも外国法に抵触するようなケースが起こらないように指導するよう協力をしておるということでございます。
  126. 大木浩

    ○大木浩君 公取、どうぞもう結構ですから。
  127. 野呂田芳成

    ○理事(野呂田芳成君) どうぞ。
  128. 大木浩

    ○大木浩君 それでは、今度は経企庁の方へお願いいたしますが、午前中からいろいろと御質問ございまして、最近のいろいろアメリカにおける景気回復、あるいは石油の値下がりの問題、あるいは最近またヨーロッパの方で通貨の調整というような新しいいろいろな動きがあるわけでございます。私どもいまいただいておる五十八年度予算、あるいは経企庁の方でおつくりになっておりますその背景をなすと申しますか、いろいろな経済的な見通しというようなもの、もちろんできるだけアップ・ツー・デートなものをおつくりになっておるとは思いますけれども、やはりずうっとある程度時間をかけての積み上げ作業の結果としての予算であろうと、こういうふうに思うわけでございますけれども、ただいま申し上げましたアメリカを中心とする景気の多少の回復傾向と申しますか、あるいは石油の値下がり、その他新しいこの数カ月のいろいろな動きがあるわけでございますけれども、長官、どうでしょうか、これは現在できておる予算をどうするということではありませんけれども、その運営ないしは今後の日本経済全体の動きにつきまして、そういった新しい動きをどういうふうに今後の予算の執行ないしは日本の経済政策の実施においてお考えになっておるか、その辺を一応総論的に伺いたいと思います。
  129. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 今回の三・四%という昭和五十八年度の経済成長の見通しは、アメリカを中心とする世界経済回復過程が順調と申しますか、進んでいくという前提でつくり上げたものでございます。したがいまして、御指摘のようにアメリカ経済回復が変な形になりますとまた大きな影響があるわけでございますが、私の見るところ、幸いにいたしましてインフレ対策は成功して、これからアメリカも恐らく金利の低下等を通じて経済の拡大政策の方向に進んで、失業率の低下に進むんではないか、こんなふうに見ているわけでございます。その上にまた私どもは円高の傾向——円高の傾向が加わっていることは御案内のとおりでございます。しかしまた、昨今は原油一バレル五ドル低下という朗報が参りました。これらの要素を考え、考慮に入れまして、予算成立後は新しい景気対策に乗り出そう、その中には金利低下、所得税の減税、いろいろございましたが、そういう方向予算運用中心として景気対策を考えているわけでございます。新しくこれを補正予算になるのかというような問題になりますと、これはよほど経済の、何と申しますか、動きが変わってくる、成長率が三・四%をよほど上回るような場合でないと私は考えられないと思いますが、いまのところは三・四%の成長をより確実にするためにアメリカの景気回復、原油の低下等を織り込んで予算の執行を中心として考えていきたいと思っておるところでございます。
  130. 大木浩

    ○大木浩君 通産省おられますか。  いまの石油の値下がりが一つの新しい要素だということでございますが、ちょっと通産省もしおられたらお伺いしたいのですけれども、先ほどから五千億円ですか、電気、ガス企業がそれだけ負担が少なくなるとか、あるいは日本全体として幾らでしたか、非常に負担がなくなるというようなお話なのですが、これはどういう計算をしておられるのか、現実にどういう姿になっているのか。つまり、一体これは、たしか本会議で通産大臣からもお話があったと思うのですけれども、現実にそういった安い石油が入ってくるというのはある程度タイムラグもあるでございましょうし、それから現実に五ドルなら五ドルというものがそのまま日本の輸入の石油に全部ひっかかるのか、その辺はどういう計算か、ないしはどういう実態であるか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  131. 黒田直樹

    説明員(黒田直樹君) ただいまの原油の五ドル値下げに伴います電力会社の費用減少額、燃料コストの減少額の問題でございますが、実のところ、ただいま先生御指摘ございましたように、実 際に電力会社が購入する石油関係の製品、これがどういうタイムラグをもって実際に価格にきいてくるのかということは正確に把握することは現在の段階では困難な状況にあります。  それから、為替レートがどういう状況で今後推移するかという問題もございますし、電力会社の燃料消費計画というものがどのぐらいになるかと、こういう点も現在の段階では不透明な要因になっているわけでございます。  巷間一ドルで約一千億円と言われておりますのは、石油及びそれにスライドして価格が決定されるLNGにつきまして大体電力会社が年間使用した実績あるいは今年度使用するであろう計画量、これに基づきまして、為替レートを二百四十円なりあるいは二百三十五円なりと一定の仮定を置いて機械的に計算しますと、一ドルで約一千億円と。したがいまして、五ドルで五千億円という計算が出てくるわけでございます。  ただ、これはいま申し上げましたように、五ドル値下がりの状態が一年間続いた場合に、年間で、しかもタイムラグなしに電力会社の価格に反映され、かつそれが持続した場合の話でございますので、ある意味で最大限五千億円というような機械的な計算ができるかと存ずる次第であります。
  132. 大木浩

    ○大木浩君 いま御説明もいただきましたので、これは計算自体がまだこれからもうちょっと確認しないといけないといういろんな要素があると思いますし、それから、先ほど井上委員のお話もありましたけれども、仮にそういった負担が少なくなってもそれをどういうふうに使うかということについては、すでに塩崎大臣からもお答えをいただいているようなものでございますので、私もそういうようなことで必ずしもすぐ目先の石油の値段が安くなったからといってそれが電力料金なり何なりにはね返らせるのがいいかどうかというようなことは慎重に御検討いただかなければならないだろうというふうに私も感じておるわけでございます。  ちょっとまた今度話題変えさせていただきますけれども、経企庁は例の海外経済協力基金を御所管でございますし、また、経済協力政策全般についても総合調整ということで非常に大きな御責任を負っておられるわけでございます。最近の私は日本の経済協力というのはある程度前進はしておるんでしょうけれども、どうも日本の立場として少しそれを前進というか、必ずしも前進とさえ言い切れるかどうか怪しいんじゃないか。経済協力の中にもいろいろいいやつと悪いやつとあるというような御意見の方もありますけれども、私はそういう細かい点は別として、やはり日本の経済協力というものは、日本の国際的な責任分担ということの中でいろいろございまして、それはもちろん防衛力もあるし、それから貿易の方でもっと市場の開放というようなこともあるわけですけれども、これはまあそれぞれにいろんな意味合いでそう簡単に増大できるものではないということになれば、やはり私は一番力を入れなきゃならぬのは経済協力の拡大ということではないかと思うんですが、それにしてはどうもまだまだ日本の経済協力努力あるいは実績というものが余り十分に伸びていないだろうと思うんですけれども、たしか鈴木内閣のころから、あれは経済協力ですか、あるいはODAですか、倍増計画というようなことも言われておりましたが、あれの一応実績について、これは、外務省か、経企庁ですか、ひとつちょっと御説明をいただきたいと思います。
  133. 内田勝久

    説明員(内田勝久君) わが国のODAの実績についてのお尋ねでございます。  ODAの実績は暦年ドルベースで計算をしておりますんですが、暦年八二年の実績はまだ現在私ども内部で計算中でございまして、御紹介できません。大変申しわけございません。  八一年度、これがちょうどいま先生御指摘の新中期目標の第一年目に当たるわけでございますが、そのときの実績で見ますると、ODAの実績総額は三十一億七千万ドルでございまして、残念ながら対前年比で四・一%の減となっております。この結果といたしまして、ODAの対GNP比も前年の〇・三二%から〇・二八%に低下いたしました。その一番大きな理由は、二国間の方のODAは実際一五・三%と順調に伸びたのでございますけれども、国際機関に向けての出資、拠出によるODAが三二・三%減となったのが大きな理由でございます。  以上でございます。
  134. 大木浩

    ○大木浩君 日本の方だけの理由ではないというような面もあると思いますけれども、やはりいま私申し上げましたように、いろんなことを考えても経済協力の方の努力というのはもっとふやさなきゃいかぬという感じがするわけでございますけれども、大臣にお伺いしたいんですけれども、これからそういったものを本当に政府の政策としてどういうところに重点を置いて経済協力をさらに広げようというお考えでございますか。ひとつ、特に資金が非常にきついというときに、どういう考え方で、私、実は昨年のこの商工委員会でも、たとえば、たとえばでございますけれども、経済協力債というようなものを考えてみたらどうかというようなこと申し上げたんですけれども、大蔵省が初めから、いやとてもこんなときに、どういう名前であろうが、どういう目的であろうが国債をふやすなどということはとうてい問題外だというお話がございました。もちろん私、その点はよくわかっておるんですけれども、何か新しいアプローチを考えないとなかなか経済協力というものが本当にふえないんじゃないか。それからまた、実施の面でもいろいろもっと工夫する必要があるんじゃないかと思いますけれども、そういったことにつきましてひとつ大臣としての総括的な御意見を伺いたいと思います。
  135. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 経済協力で私どもが最も願望するものは大木委員御指摘のように、金額をもう少しふやしていただきたい。いまのままではとうてい発展途上国に対する経済援助としては十分ではない。五十六年に倍増の目標を立てたんでございますが、これまでは幸いに皆様方のお力で防衛費の増加率よりも、いつの年度をとっても経済協力費の増加率の方が上回っておりました。ことし防衛費が突出なんて言われながらも、防衛費は六・五%でありながら経済協力費は七%、大変皆様方の御支援を得てふえておるわけでございます。  まず第一に、それでも元の金額は小さい、おっしゃるとおりだと思います。  それからもう一つは、倍増計画の目標では七%ぐらいのことではとうてい目標を達成できませんので、一三・六%の目標を達成しなきゃならぬ、こういう計算になるわけでございます。そうなりますと、ますます厳しくなりそうな今後の財政状況から見て、果たしてこれが達成できるかという疑問を皆さん方いつも私に提供されて、私も大変困るんでございます。これは何としても、企画庁長官として、もう与野党挙げての御支援を得てこれは実現しなけりゃならぬと思っております。  もう数量さえ達成できれば——各国から来るところの経済協力要請は本当に無限といってもいいぐらいでございますし、私どもは貿易摩擦、これだけ経常収支がよくて、日本は稼ぐばかりじゃないかというようなことを緩和する最も大きな私は緩和剤だと思っております。これをひとつ達成しなきゃならぬと思います。  いま協力債のお話が出ましたが、いま財投の利子のつく、支払い金利の要る金でコストが高くなって赤字になって大抵またおしかりを受けて、この赤字を何とか埋めてもらわなければ協力費がやっていけない、こんなふうに言われて、大変私も申しわけなく思うんでございます。やっぱり無利子の一般会計からの出資、これが一番ありがたいことでございます。これがだんだん減ってきて、財投からの金であるがために資金コストが高くなって、貸付金利が安いための逆ざやで赤字になってきた。かつての出資がもうだんだんと相対的にウエートが下がってきた、こういうことでございます。無利子の金を生むようなことを、特段のひとつ皆様方のまた御援助でがんばっていきたいと思います。
  136. 大木浩

    ○大木浩君 これはちょっと違った課題になりますけれども、最近の国際経済の中で先端技術の開発ということで、これは協力の面と競合の面とあると思うんですけれども、経企庁の方でもいろいろ研究機関もお持ちでございますけれども、私その先端技術の開発について、これはどこが責任を持つのかよくわからないんですけれども、いろいろな関連した官庁があるということで、たとえば私、経企庁の方の所管でございます例の総合研究開発機構などというところはそういったものはおやりになっているのかなっていないのかもつまびらかにいたしませんけれども、いずれにいたしましても、もうちょっと全体に、日本の先端技術の開発ということを総合的に見ていただいて、どこにプライオリティーがあるかというようなことを御検討いただくためには、やっぱり経企庁あたりにもひとつ広い立場から見ていただいたらいいんじゃないかと思うんですが、その点について何かお考えございましたら伺いたいと思います。
  137. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) 大変御心配の趣でございます。縦社会でなかなか総合的に開発を進めていくというのはむずかしいことでございますが、科学技術会議等があるようでございますので、それらを中心として、御指摘のような方向で何としても先端技術、このような開発は世界的にも進めていかなければならないことはもちろんでございますので、ひとつ努力していきたいと思います。
  138. 大木浩

    ○大木浩君 もう一つ、これも経企庁の方のお仕事になっていると思いますけれども、例の貿易摩擦との関連でオンブズマン制度と申しますか、OTOですか、OTOができてすでに機能しておるはずなんですが、どうも必ずしもそれが機能しておるかしていないか、あるいはしておるということについてPRが十分行われておるかということになると、ちょっと心もとない感じがするわけでございます。  先日も私ちょっと、ここにありますが、ニューズウイークのこれ一カ月ぐらい前のですが、これにもちょっと書いてありましたが、せっかく総理が片一方では大いに市場開放ということを言っておるのに、どうも実際に下へおりてきて官僚機構の方になると、いろいろとまってしまう。これ私はここに書いてあることが正確かどうかわかりません。しかし、少なくともこういう記事を書かれるということはやっぱりPRが十分にいっていないんじゃないかということも感ずるわけでございますし、各官庁がばらばらにやっておったんではいかぬということでOTOということで、経企庁が主管してこれはやっておられる。ところが、それがなかなか動かないんで、また一つ監視機関で今度はだれですか、牛場さんだか盛田さんだか何か監視チームをつくって監視する。本来各省がやっていることをOTOが監視して、それをまた監視しなければいかぬようなこういうことではどうも余り十分に動いているんじゃないんじゃないかという心配を持つわけでございますが、この点につきましてひとつ長官、実情をお調べかたがた今後の対策をよろしくお願いしたいと思います。
  139. 塩崎潤

    国務大臣塩崎潤君) いまOTOの機能が完全に機能しておるかどうか、御質問ございました。貿易摩擦、市場開放の問題は最もいま私どもにとって頭の痛い問題でございます。しかし、そのわりに国会で議論がないことはこれぐらい議論のない問題はないぐらいでございまして、企画庁長官の所管外でも私にいろいろ御質問があるぐらいですが、所管のこの問題について議論がないことは大変不思議なような気がするわけでございます。  こんなようなことでは、やっぱり担当官も、さらにまた、民間の方々、OTOの顧問の方々も諮問会議の方も、私はやっぱり政治的なバックのもとに仕事がしやすいと思いますので、もう少しこのような議論をしていただきたいぐらいと思うわけでございます。  国民はやっぱりすべてナショナリストかもしれません。しかし、何としてもこの苦情処理の問題を含めても、市場開放の問題は大きくこれは解決しなければ、日本が窮境に陥る問題でございます。  そういった意味でOTOも大変意欲的に、OTOというむずかしい、何というふうに言えばいいんでしょうか、苦情処理機関というんでしょうか、スウェーデンのオンブズマンとかいう名前にならってつくったと言われるわけでございます。それだけにまだまだ溶け込んでないのかもしれません。大変意欲を持ってやってきまして、この報告によりますれば、九十九件のうち八十七件の苦情処理をしたが、この半分以上の苦情については改善措置の導入または誤解の解消により輸入の促進的処理が行われたというような報告があるわけでございますから、おっしゃるように本当に世間にこれがどのような活躍をしているか、そうして国会でもしっかりやれというような御激励もやっと大木委員にしていただいた程度で後がないぐらい、私はこれは私どももキャンペーンの努力が足りないかと思いますが、やはりこの最大のむずかしい問題を乗り切る意味でOTOの諮問会議の方々はもちろんでございます。私どもは各省ともども、何といいますか、認識のギャップがあるというような大変むずかしい問題でトラブルが生じているような状況であります。いまこんなことが早くも消えるような努力を、OTOだけではありません、国内内需喚起という今後の経済成長のあり方とも関連して輸出依存ではないんだというような方向を打ち立てながら、この問題を解決していかなければ、とうてい解決できない。輸出依存の形、経済政策では私は摩擦が大きくなる一方だと思うんでございます。
  140. 野呂田芳成

    ○理事(野呂田芳成君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時二十八分散会