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1983-04-19 第98回国会 参議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十二日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     沓脱タケ子君  四月十八日     辞任         補欠選任      森下  泰君     鈴木 正一君      沓脱タケ子君     山中 郁子君      藤井 恒男君     小西 博行君  四月十九日     辞任         補欠選任      遠藤 政夫君     大城 眞順君      斎藤 十朗君     藤井 孝男君      鈴木 正一君     宮澤  弘君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長        目黒朝次郎君     理 事                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 対馬 孝且君                 渡部 通子君     委 員                 石本  茂君                 大城 眞順君                 大坪健一郎君                 佐々木 満君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 福島 茂夫君                 藤井 孝男君                 宮澤  弘君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中野 鉄造君                 山中 郁子君                 小西 博行君                 山田耕三郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  林  義郎君    政府委員        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生省公衆衛生        局長       三浦 大助君        厚生省援護局長  山本 純男君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     龍宝 惟男君        外務省アジア局        審議官      恩田  宗君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十八日、藤井恒男君、沓脱タケ子君及び森下泰君が委員辞任され、その補欠として小西博行君、山中郁子君及び鈴木正一君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  3. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明はすでに聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 対馬孝且

    対馬孝且君 この法案につきましては衆議院で一応行われておりますから、重複を避けまして新たな課題を中心にひとつ質問してみたい、こう思います。  まず、さき大戦が終結をしまして三十七年余りを経過した現在ですけれども、戦後生まれがもう半数以上を超えているわけでありますが、いまなおやっぱり大戦つめ跡が残っている、こう言わなければなりません。この間、援護行政は幾多の変遷を経て今日に至っておりますが、戦後どのような援護行政が特徴的に行われてきたか、時間もありませんから、ポイントだけひとつまずお伺いしたい、こう思います。
  5. 山本純男

    政府委員山本純男君) 要約して申し上げますと、戦後最初に手がけましたのは、六百六十余万人に及ぶ海外からの引揚者援護というものがスタートでございました。その後、昭和二十七年に講和条約が発効いたしまして、それから以降幾つかの重要な施策をやってまいりました。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法を制定いたしまして、年金給付の形で援護をいたしてまいりました。第二は、戦傷病者に対する援護でございまして、これは昭和三十八年以降医療保障等について施策を進めてまいりました。第三は、慰霊事業でございまして、昭和二十七年以来戦没者遺骨収集慰霊事業、そういうものを今日まで引き続き行ってまいりました。  また、これ以外に、三十八年以降は戦没者の妻、父母その他の方々に対しまして特別給付金を支給する事業をいたしております。また、昭和四十七年以降におきましては、日中国交回復に伴いまして新たに中国残留日本人帰国日本人残留孤児肉親調査、こういった事業を進めてまいっております。
  6. 対馬孝且

    対馬孝且君 まあ、六百数十万、戦後海外同胞引揚者を含めましていま御報告がございましたが、いまなお中国引揚者問題あるいは遺骨収集問題というのは相当、やっぱり数多くこれからやらなければならない問題がある、こういう認識をいたしておるわけでありますが、この点はいかがですか。
  7. 山本純男

    政府委員山本純男君) 仰せのとおりでございまして、引き揚げにつきましても私どもが把握しておりますだけでもまだ千数百名の未帰還者が残されておりますし、また、中国孤児その他これまで十分解明されておらなかった方々についての援護も今後とも必要でございます。遺骨収集その他もなお今後とも進める必要があるというふうに考えております。
  8. 対馬孝且

    対馬孝且君 まあ認識は一致しておりますから、後でまた具体的にその点は申し上げます。  まず、今回の臨調答申に対して、大臣の基本的な考え方をひとつお伺いしておきたいのでありますが、さき行政改革に関する答申で、いわゆる最終答申の中で、この「援護行政については、戦争犠牲者援護という業務性質上、その業務は将来減少していく性質のものである。」と、まあ一般論的に言っているわけでありますが、「援護局については、その業務が今後減少することから、その推移を見つつ他の部局との統合等を行うこととし、その際、福祉関係局再編合理化を検討する。」と指摘を行っています。これは臨調最終答申の中にあるのでありますが、まず第一に、最終答申の「内部部局再編合理化」のところで、厚生省関係では、第一に、「保健医療政策局」、「保健医療事業局」及び「生活衛生局」と、いずれも「仮称」ですが、「名称を改める。」、そしてその次に援護局統合福祉関係局再編合理化が出てきております。こういういきさつについてひとつ簡潔にお伺いしたい。  それから、臨調は各省が協力をするということが大前提になっておりますから、援護局統合ということについて厚生省も了承したとのことであると思うが、大臣としてのこの考え方についていかなる態度をお持ちかということを明確にしてもらいたい。
  9. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 臨調答申が出まして、政府としてはこれを最大限に尊重してまいりたい、こういうことでございますし、政府といたしましての行革大綱も五月二十日ぐらいにはまとめて出したいというのがいまの基本的な考え方でございます。  臨調としては、長年にわたりまして各方面からいろんな御意見を聞かれ、その上に立って実行可能な行政改革改革案を出したものというふうに承っておるところでございます。厚生省行政につきましても、組織のあり方その他について見直しを求めておられるところでございますし、厚生省といたしまして、また厚生大臣といたしまして、私もこの問題につきましては厳粛な気持ちで受けとめておるところでございます。  御指摘のありました援護局統廃合の問題でございますが、先生いま御指摘ございましたように、援護行政の戦後からの推移等を見まして、いろいろと変遷をたどってきておるわけでございます。やはりこの戦後のつめ跡というものの処理をうまくやっていかなければならないというのは厚生省の持っていますところの一つの大きな行政目的でもございますし、その仕事は、長期を考えれば、たとえば二十年、三十年と考えれば、このつめ跡は当然なくなってくるものだろうと、こう思うわけであります。しかし、当面いますぐになくなるかということになれば、私はノーだというふうに考えていいんだろうと、こう思います。それと、その業務推移を見た上で必要な時期に他の部局との統廃合を検討すべきであるというのが私は臨調答申だというふうに受けとめているわけでございまして、援護局の機構につきましては、答申趣旨を尊重しながら、戦争犠牲者に対する援護が確保されるように十分な配慮をして適切な対応を図ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  10. 対馬孝且

    対馬孝且君 確かに遺族年金あるいは障害年金遺族給与金等援護対象者は、かつて四十万人という、現在約十一万人に減少しております。遺骨収集も予算的に見て、昭和五十五年度をピークに漸次減少してきている、こういう現象はわかりますけれども、いま大臣は、認識的には長期的にという意味ですから理解をしますが、やっぱりこれから遺骨収集も年々困難な事情になってきていますわね、後で申し上げますが。それとやっぱり裁定事務ということが非常に複雑になってきている。  こういうことをかみ合わせて考えますと、むしろ援護局業務が、量的には減ってきていても質的には非常にだんだん困難な業務にならざるを得ない。ここを考えた場合に、後ほど申し上げる中国残留孤児の肉親捜しの業務ども非常に配慮が必要なことになってきているということをかみ合わして考えますと、やっぱりこうした状況は、援護局統合するという問題は、やっぱりこれは軽々に扱われるものではない。これは第一にやっぱり職員の士気にかかわる問題でもありますし、また、戦後のつめ跡がいまなお実際残っているという方々に対する温かい思いやりのある業務を遂行する、こういう考え方からいきましても、先ほど大臣からお答えございましたが、いま一度、この点はそういう認識に立って考えていいかどうかということを、ひとつ確認の意味でお伺いします。
  11. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 対馬委員指摘のとおり、援護行政というものは、戦後の諸問題の解決で量的にはだんだん減っていくということは私もあるんだろうと思います。しかし、それは昨今におけるところの遺骨収集の問題を見ましても、また、中国残留孤児の問題を見ましても、時がたてばたつほど質的には非常にむずかしくなってきているということはございます。だから、そういったようなことを踏まえまして、やはりこの戦後処理の問題について一生懸命やらなければ国民の期待にこたえられないと、こういうことだろうと思いますので、私も素直にその辺を受けとめてこの問題については対処していくべきものだろう、また、臨調答申も、そういったことまで否定しているものだとは考えていないところでございます。
  12. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣答えられましたが、少なくともそういう基本姿勢でこれから対処してもらいたいと、このことを強く申し上げておきます。  次に、海外戦没者遺骨収集事業について、たとえば戦後処理の終了していない問題として、異国の地に眠る海外戦没者遺骨収集事業についてお伺いしますけれども、太平洋戦争で命を失った日本人は三百十万とこう聞いております。そのうち海外戦没者の数はどの程度と推計されておりますか。この点の集計がございましたら明らかにしてもらいたいと思います。
  13. 山本純男

    政府委員山本純男君) 海外における戦没者遺骨収集につきましては、昭和二十七年十月二十三日、米国管理地域における戦没者遺骨送還慰霊等に関する件につきまして閣議了解が行われまして、それに基づきまして二十八年二月から実施してきた状況でございます。  数を概略で申し上げますと、海外戦没者概数は、沖縄、硫黄島を含めまして二百四十万人でございます。そのうちこれまで送還できました遺骨の数は百二十万四百六十柱ということになっておりまして、残る部分がまだ未送還ということでございます。
  14. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、異国の地に眠る数は二百四十万というお話がございました。私は、先ほど言った無言の帰国をされた方が約二十七万柱と、こういうふうに聞いておりますけれども、この点間違いございませんか。
  15. 山本純男

    政府委員山本純男君) 先ほど申し上げました百二十万柱のうち、政府派遣団収集送還いたしました数は御指摘のとおりの二十六万九千三百二十柱でございます。私が申し上げました数字には、これ以外に、復員なさった方々等からもたらされました遺骨九十三万余りを含めた数を申し上げたわけでございます。
  16. 対馬孝且

    対馬孝且君 それは、あれでしょう、三十年間の、たとえば同僚部隊が復員の際に持ち帰ったとか、遺族収集団とか、そういう全体の、いわゆる厚生省収集した遺骨あるいはそれぞれの同僚部隊とかあるいは行った方々とか、こういうものを総合しての百二十万柱と、こういう理解でいいでしょう。
  17. 山本純男

    政府委員山本純男君) そのとおりでございます。
  18. 対馬孝且

    対馬孝且君 わかりました。  そこで、先ほどもちょっと触れましたが、これは海外で戦没した人のまだ半分にすぎませんけれども、一番問題は、先ほども私申し上げましたけれども海外戦没者が最も多い中国ソ連地域でいまなお遺骨収集団の受け入れが認められていませんね。したがって、何度も収集団が行っているフィリピンでさえも治安上の問題でなかなか足が踏み入れられないと、こういうこともございますので、ここらあたり、今後どのような方針で対処されようとしているのか、これを明らかにしてもらいたいと思います。
  19. 山本純男

    政府委員山本純男君) 中国について申し上げますと、さき大戦中国で死没なさいました方々は約七十一万名おられたわけでございますが、このうち東北地区——旧満州でございますが、ここで約二十五万名、また雲南地区での約四千名の方々遺骨につきましては、その大部分が未収集であるのが現状でございます。  これらの死没者方々の御遺骨を調査し、または収集をするということは、私どもとしても長年の懸案であるわけでございますが、やはり過ぎ去りました戦争をめぐりまして、中国のサイドの国民感情その他にもなかなかむずかしい問題がございますので、こういうものにも十分配慮しながら今後とも問題の解決について中国との間の協議その他をやってまいりたいというふうに考えております。
  20. 対馬孝且

    対馬孝且君 これ、中国だけじゃなくてソ連地域もあるわけでしょう。それからフィリピンの問題だって、これ、フィリピンの国の治安上の問題からいって、なかなか全部収集したということは断定できないのじゃないですか。いま、中国のことはわかりました、後ほど申し上げますけれども、ここらあたりも含めてどういうふうに考えているのか、これを明らかにしてください。
  21. 山本純男

    政府委員山本純男君) では次に、ソ連について申し上げますと、ソ連との間では、三十一年十月に国交回復いたしましてから協議交渉を続けておるわけでございますが、なかなか外交交渉の面では難色が示されておりまして、進捗がございません。昭和五十四年にも若干の感触がございまして、それを足がかりに五十五年、五十六年、五十七年と再三ソ連政府に対して申し入れを行っているところでございますが、今日に至るまでまだ合意ができないでいるのが状況でございます。  数を申し上げますと、ソ連地域での死没者概数は五万五千名ということでございますが、そのうち私どもソ連側からの通告で承知しておりますところでは、墓地二十六カ所に三千九百五十七柱の遺骨が埋葬されておるということでございますが、これにつきましてはそのうち二十一カ所につきまして墓参が実現しただけでございまして、遺骨収集については実現されておりません。  また、フィリピンその他南方の島々につきましても、これまでわかりやすい地域につきましてはおおむね収集がはかどっておるわけでございますが、やはり御指摘のように、ジャングルでございますとか山の奥でありますとか、さらには地下ごうを構築してその中で戦死された方々が、地下ごうが埋まってしまったために見つからないというふうなものにつきましては大変困難をきわめておりますが、いまなお戦友の方々あるいは在外公館等から遺骨がそこに存在することが非常に確かであるという情報は次々寄せられておる実情ございまして、そういう情報に基づきまして毎年計画的に、なお残された遺骨収集に努めておる状況でございます。
  22. 対馬孝且

    対馬孝且君 まあこれは、いまお答えありましたが、厚生省だけの問題でなくて、外交上の問題、外務省にも来ていただいておりますので、後ほどこれに関連してお伺いしたいと思います。  いずれにしましてもいま言ったように、中国では七十一万、ソビエトでは五万五千、わかっただけの数字でそれだけございますけれども、まだまだたくさんあると思います。いずれにしましても、これらの問題をこれからもひとつ、外交ルートはもちろんでありますけれども厚生省外務省と、国を挙げての全体的なやっぱり対応ということが必要ではないか、こういうふうに考えておりますので、ここらあたり、大臣にひとつお伺いしたいと思いますが。
  23. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先ほど援護局長から御答弁申し上げましたように、まだいろんなところに遺骨が残っておるし、いまもっていろいろな形での通報がございますということでありますから、やはり国民感情を踏まえるならばこの遺骨が早く収集される、あるべきところへ帰ってくるということが私は望ましいのだろうと、こう思っております。一層の努力を傾けなければならないと思います。  この遺骨の問題というのは、一つには向こうとの宗教的な考え方の違いがございましたり、文化的な物の考え方の違いがございますから、やはり相手方に御納得をいただいて持って帰るということをやらなければならないと思うんです。また、戦禍のあったところでございますから、何で日本だけどうするんだと、こういうふうなことになりましてもやっぱりいけませんから、その辺は外交ルートを通じまして十分に相手方交渉し、相手方の御納得をいただいてやっていくことが私は必要なことではないだろうか、こういうふうに考えているものでございます。
  24. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣からお答えございましたけれども、そこらあたり、ただ一応の処理をするということよりももっと積極的に、国全体の問題として、政府全体としての対応をやっぱり迫られている、ただ単に厚生省だけの問題ではないと、このことをひとつ受けとめてこれから対処してもらいたいと、これを強く申し上げておきます。  それから次に、衆議院の段階でも議論されたようでありますけれども、この間私新聞を見まして、これはトラック諸島の付近の海底に沈んだ日本船内遺骨アメリカ人のダイバーらによって記念撮影に使われている、何か一種の観光資源になっているという報道新聞で見ました。私も戦争に二年八カ月行っております。沖縄へ行っていますからね。沖縄へ行って、たまたま幸いにして生き残っただけですから、本当は玉砕している一人でありますけれども、このままでは海に散った人たちの魂が浮かばれないのではないか。私はあの新聞を見まして非常に、亡くなった方に思いをいたした場合に、これはやっぱり大変重大な課題であると。これは少なくとも観光資源などというものではないんだという点で、かつて神国丸一万二十トンに乗っていて九死に一生を得た野々山敏夫さんも言っておりますけれども、これはやっぱり国の遺骨収集の対策、またこれからの国を挙げての対応というものが当然必要ではないかと、こういう切実な訴えをしています。援護局の話もちょっと載っておりますけれども、この点大臣どのようにお考えになってこれから対応されようとしているのか、お伺いしたいと思います。
  25. 山本純男

    政府委員山本純男君) 御指摘のとおり、私ども大変心を痛めている問題でございます。トラック島の沈没艦船遺骨収集につきましては、これまで部分的に了解がとれましたものだけが実施できてきた状況でございまして、御記憶かと思いますが、四十八年には潜水艦伊一六九号についてだけ交渉が成立いたして、そこからその潜水艦遺骨だけが収集できたわけでございます。  その後、交渉いたしましてもなかなか進展がございません。ことにそういう新聞報道もございまして、本年に入りまして外務省に私どもからもお願いをいたしまして、外務省からはこの春以降現地の総領事館に政府交渉をまた一段とするようにというふうな指示をしていただいておるということを私ども伺っております。
  26. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、どうですか。
  27. 林義郎

    国務大臣林義郎君) この遺骨の問題、衆議院委員会でもお話が出ましたし、私も新聞記事を見まして非常に残念なことだと思っておるし、日本人気持ちとしてやっぱり遺骨観光資源になったりなんかしているというのは、本当に死んだ方の魂も浮かばれないだろうという気持ち先生の御指摘のとおり私も全く同感なんです。何とか早くやらなくちゃならないということでございますし、外務省にもお願いして、二月十五日なり三月十七日にそれぞれ指令を出していただいて、向こうとの折衝をやっていただいているところであります。  先ほど申しましたように、日本人というのは遺骨を非常に大切にする国民である。ところが、どうもこういった地域方々は、同じ宗教を持っていないものですから、宗教的な違いも一つあるのかなということを考えておりますが、やはりそこは日本人国民感情を十分に向こう側理解をしていただいてできるだけ早くこの問題が解決できるように一層の努力をしていかなければならない問題のように考えております。
  28. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣から一層の努力をするということですから、今後単に遺骨収集団を派遣しても四十年近くを経過していて、数多く収集できるわけではないと思いますけれども、あの南方ジャングル地帯の問題だとか、非常に危険が伴う問題もございますけれども、いま大臣も言われましたように、遺族気持ち立場に立って、国民感情ということを推しはかりながらひとつ最善の努力をしていただく。戦後処理の結末はついていない、こういう基本姿勢に立ってひとつ対処してもらいたいと、このことを申し上げておきます。  次に、戦後処理問題につきまして総理府にちょっとお伺いしたいのでありますが、実は、戦後処理問題懇談会というのが昨年の六月三十日に発足しましたね。総務長官私的諮問機関ということで戦後処理問題懇談会ということで発足されているのでありますが、今日、一体どういうテーマでどういう議論がなされているのか、まずこれをお聞きしたいと思います。
  29. 龍宝惟男

    説明員龍宝惟男君) 先生お話しのとおり、戦後処理問題をどのように考えるべきかということを公正な立場で御検討いただきますために、民間の七名の有識者の方々にお集まりをいただきまして、戦後処理問題懇談会というのを開催させていただいております。  懇談会は、おおむね月一回程度のペースでこれまで六回開催をされてきておりますけれども、第一回目の会合でこの懇談会の運営をどのようにすればいいかということについて委員先生方から御議論もちょうだいいたしておりまして、この問題は大変むずかしい問題であるので、行政面でこれまで一体どういうふうな施策が講ぜられてきたかということをまず十分ヒヤリングをして、そういう勉強の上に立って検討をし、あるいは論議を進めていこうというふうなことが決まりまして、現在関係各省庁から、ただいまお話しのありました援護行政の経緯であるとか、あるいは恩給の欠格者の問題、シベリアの強制抑留者の問題、在外財産の補償の問題等々につきまして、それぞれこれまで政府が講じてきた施策等についてのヒヤリングを行っている、こういう段階でございます。
  30. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、検討をする幾つかの課題、三点ほど挙げられましたけれども、国内でも空襲で亡くなった人の遺族への弔慰金をどうするかという問題、あるいはまた障害をこうむった人をどうするか。また、新聞あるいは国会でも話題になりましたけれども、台湾の元日本兵に対する補償問題、こういう幾つかの問題もありますね、まだ課題には上がっておりませんけれども。しかし、これらをどういうふうに問題を進めていこうとしているのか。あるいは立法問題にもなり得る問題でもございますけれども政府・与党の責任であると思いますけれども、これらの課題を含めてどう対処されるのか、これをひとつお伺いしますす。
  31. 龍宝惟男

    説明員龍宝惟男君) いわゆる戦後処理問題というふうに申します場合に、一体どの程度の範囲でこれを考えていくのかということにつきましてはいろいろな考え方がございますけれども、一応戦後処理問題一般というふうなことでこれまでの考え方の経緯を申し述べますと、さき大戦ではすべての国民が、程度の差はございますけれども、生命、身体、財産上いろんな意味での損害をこうむった、これは国民の一人一人の方々に受けとめていただかなければならないという、そういうふうな面も持っておりまして、ただ、もちろん政府といたしましては、その間、国の特別の施策が必要と思われる方々に対しましてはいろいろな施策なり助成なりの措置を講じてまいってきたところでございます。政府といたしましては、先ほどお話しのありました遺骨収集等まだ継続していく施策もございますけれども、新しいものといたしましては、昭和四十二年に引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律、これの制定をいたしました際に、一応戦後処理に関する問題は終結したというふうに考えてまいったわけでございます。  しかしながら、その後、先ほど申し上げました三つの問題等、各方面から戦後処理に関する非常に強い御要望がありますので、もう一度ここで戦後処理問題懇を開催して、この問題をどう考えるべきかということを御検討いただこうということでございます。  懇談会では、先ほど申し上げましたとおり、いま三つの問題を中心にヒヤリングを進めております。この三つの問題以外にどういうふうな問題を取り上げていくかということは、これはまさに委員先生方に決めていただくべき事柄でございまして、私ども立場でいろいろと申し上げることは必ずしも適当でないんですけれども、戦後処理問題と申しますと大変広いし、また、限りのない問題になってまいりますので、やはりこの三つの問題、それからそれに直接関連のある問題というふうなことで論議を重ねていただきまして結論をいただくんではないかというふうに考えております。  政府といたしましては、結論をいただきましたら、懇談会の御論議を尊重し、かつ、そこから得られました検討結果を踏まえて対応策を考えてまいりたい、このように考えております。
  32. 対馬孝且

    対馬孝且君 これ、在外財産の補償、シベリアの戦後抑留者の補償、恩給の欠格者、こういう問題だって、いろいろいまあなたが答弁されましたけれども、実際問題としてこれ新聞報道などを見ますと、国としては、どうもやっぱり一貫して、財政上の問題を基本にして戦後処理は全部終わったということで一応の幕を引こうとした経緯があるわけでありますが、やっぱりかなり自民党さんの問題提起、あるいは世論的な問題等もこれありまして、結果的にこの戦後処理問題懇談会ということを発足をせざるを得なかった。この中に私はちょっとやっぱり本音が出ていると思うんですけれども、渡辺大蔵大臣が、はっきり新聞報道の中で出ているのは、いや、問題は金だ、予算上の問題なんだというようなことをずいぶん言って、当時の渡辺大蔵大臣の言葉をかりれば、これは全体をやるとしたら総額で一兆円ぐらいかかるというような話をして、何か取り組むのではなしに後ろ向きの姿勢になっている。こういうことでは、せっかくつくった戦後処理問題懇談会というのが前に行って取り組むんではなくてむしろ後ろ向き、財政上これはできないんだという、そういう方向になっていったら大変なことになるんじゃないか、こういう懸念を持つ一人です。  そこらあたりは、そうではなしに、やっぱり戦後処理問題という範囲はもちろん広範囲にわたっていますけれども、最低、あるいはどこからどこまでという問題はあるけれども、現実に具体的にいま出ている問題が、中国孤児の問題にしても、シベリア抑留の問題にしても、在外財産の補償の問題にしてもあるんですから、これは何か財政が基本になって議論されるという進み方はやっぱり本末転倒しているんじゃないか、こういう感を深くするのでありますが、この点、どういうふうに受けとめていますか。
  33. 龍宝惟男

    説明員龍宝惟男君) 戦後処理問題について何らかの措置ということになった場合に、もちろん財政上の問題というものがあることは事実でございますが、私どもといたしましては、あくまでも民間の有識者の方々にお集まりをいただきました趣旨は、公正な立場からこの問題を新しい目で検討していただいて御結論をいただこう、こういうことでございますので、政府といたしましてはその結論を待ちまして、それを踏まえて対応策を決めていきたい、このように考えております。
  34. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま申し上げましたように、何か財政上の問題ということを盾に問題を進めるのではなくて、やっぱり実際に具体的な補償の問題にしても抑留の問題にしてもあるいは遺骨の問題にしても、本当に民族の悲願としてやっぱり解決さるべきだということを基本に据えて行うべきだ。ただ難問題であるから引き延ばせばいいという式のものでなしに、そこらあたりひとつ、もちろん懇談会の結論を待ってということですけれども、結論をむしろ最優先に尊重してそして解決に当たると、この考え方を総理府としてお持ちかどうか、これ、はっきり確認しておきます。
  35. 龍宝惟男

    説明員龍宝惟男君) 私どもといたしましては、処理懇から結論をいただきましたら、その間の論議を尊重いたしまして、また、検討結果を踏まえて対応策を考えてまいりたい、このように考えております。
  36. 対馬孝且

    対馬孝且君 本当はきょう総務長官に来てもらってと思ったけれども、時間的な都合がつかなかったからこれは割きましたけれども、それだけひとつ対処するように強く申し上げておきます。  それから、旧軍関係の恩給審査事務処理状況の問題について厚生省にお伺いしたいのでありますが、私も地方へ帰りますと、非常に、旧軍関係の恩給の審査の事務処理がさっぱり進まない、一体どうなっているんだということがずいぶんうるさく言われるわけです。したがってこれはやっぱり、厚生省あるいは県段階で、現在実際に未決の手持ちの件数がどの程度あるのか、これをひとつはっきりお示し願いたいと、こう思います。
  37. 山本純男

    政府委員山本純男君) 御指摘の、軍人恩給関係の審査の事務、事務と申しますのは、内容といたしましては、一時恩給一時金、それから六十歳以上の者に対する加算年の金額計算いわゆる加算改定、これが主たる内容でございます。その現在未処理の件数を申し上げますと、厚生省で未処理になっておりますものが八万三千二百件、都道府県の段階にありましてまだ上がってまいりませんのが一万二千二百件、合わせまして九万五千四百件ということになっております。
  38. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま聞いただけでも気が遠くなるような数字で、やっぱりこれ、審査して検討している間に亡くなっていく人もかなり多いんですよ。これは切実に僕は聞かされている。出してから三年も五年もなって、その間にこの世を去っていく。これではやっぱり戦争の犠牲になった方々としては報われないと思うんだな、僕は。これは私は実際に自分自身が手をかけてやったこともございますけれども、あなた方、もう少しその辺の作業の滞留を解消していくということを具体的に考えないと、私が聞いているだけでも、審査しているうちに、出してから亡くなった方三人いますよ、審査の結論を見ないうちに。この人は本当に気の毒なんだな。こういう問題について、いま聞くと、九万五千件いまなお残っているという話の内訳があったけれども、ここらあたり、具体的にどういうふうにこれから見通しをつけて作業をしていこうとするのか。この点、はっきりひとつ示してくださいよ。
  39. 山本純男

    政府委員山本純男君) 事務が停滞いたして、請求者の方々に大変御迷惑をかけておる点は深く反省いたしております。従来のペースでまいりますとまだ二、三年の期間を要するような量の仕事が未処理になっておるわけでございますが、そういう状況を私ども深く心にとめまして、これを一日も早く解決できるように、とても三年までは待ち切れないという方々でございますので、ひとつ少しでも、何カ月でもこれが早く終了するように、事務をスピードアップして進めてまいりたいというふうに考えております。
  40. 対馬孝且

    対馬孝且君 スピードアップすると言ったって、いまの現状のままではどうにもスピードアップはできないんじゃないの。たとえばコンピューター時代を迎えているし、人的な問題ももちろんあると思いますけれども、やっぱりただスピードアップしていきますとか、何とか早めたいという気持ちだけ言ったって、これは気持ちだけの話であって、具体的にどういうふうにしたらたとえば三年が一年に早まるかとか、あるいはやる場合にも高年齢者の、特に病弱者の方々の扱いを先行するとか、やっぱり何らかの手だてを講じなきゃ、これは僕はどうにもならぬと思うんですよ。ただいつもの国会答弁と同じに、できるだけスピードを速くしてできるだけスムーズにということを言ったってしようがないんじゃないですか。もっと具体的に、それじゃスピードを上げるためにどういう具体策があるのか、こういうものをひとつ出してくださいよ。これはずいぶん私も聞かれるんだけれども、本当にわれわれの責任だと思っているんです、率直に申し上げて。この点どうですか。
  41. 山本純男

    政府委員山本純男君) 具体的というその細かい事務の進め方まで私のところでいま申し上げる準備がないわけでございますけれども先生、例としてコンピューターというようなことをおっしゃいましたけれども、たとえば、業務の一部の中で外に委託できるものは委託をする、その他業務を促進する方法がございまして、昨年来いろいろ担当の方では業務の促進の検討を行っております。これ、もしあれでございましたら、後日、やや具体的な促進の腹づもりにつきましては、また別途ひとつ御説明をさしていただきたいと思います。今日はちょっと用意ございませんので、抽象的なことで恐縮でございますが、実際にこれをスピードアップするように作業を進めておることは事実でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  42. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 委員長からも申しますが、それでは局長、堂々めぐりをしてもしようがないから、具体的なやつができたら、この国会中に社労の委員会対馬委員に提示すると、抽象論ではなくて具体論を。そうしましょう。具体案が出たらこの委員会に提示してもらうと。私も軍隊に四年半行っていますからね。軍恩の関係、全体の皆さんに大分関係ありますから。
  43. 山本純男

    政府委員山本純男君) 委員長指摘のとおり、対馬先生にまず御説明をいたしまして、その結果、必要でございましたら必要な資料を委員会に御提出するようにいたします。
  44. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) では、お願いします。
  45. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、委員長の取り計らいで、そういう具体案を提示をするということですから、間違いなく今国会中にひとつ提出をしてもらいたい、これで了承します。  大臣、いま聞かれるとおり、この問題は、まあいま具体案を出すということですからそれで一応了としますけれども、戦後三十七年経過しましたけれども、戦後はまだ終わっていないということですよ、いまやりとりを聞いておわかりのとおりでね。毎国会、戦傷病者戦没者遺族等援護法に対する衆参両院における附帯決議を出しているんですよ。これ定例なんだよ、実際問題として。後ほどわが党及び野党共同提案で修正案等を出しますけれども政府もこれは一般戦災者国家補償の精神で手を差し伸べる必要があり、それでなくてはいつまでたっても戦後は終わらぬのではないか、こういう懸念を持つものであります。したがって、残された一般戦災者の援護を考えるとき、先ほども申し上げましたけれども援護局業務を縮小されるというようなことのないように、その使命を持ってひとつやってもらいたい。特に援護行政の推進は、いまのやりとりをお聞きのとおり、やっぱりきわめて重大な国家的重要課題である、こういうことで推進をしてもらいたいということで大臣にひとつお伺いしますが、いかがですか。
  46. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 一般戦災者に対してどうするかという問題につきましては、先ほど総理府の方からも御答弁がありましたし、私も同じ考え方を持っておるわけでございますから、この場合にあえて繰り返すことはいたしません。  ただ、援護局の仕事につきましては、冒頭、先生からのお話しにもございましたように、戦後の問題の処理がいろいろとまだ残っておる、量的にはだんだん少なくなってきておるけれども、質的にはむずかしくなる、しかし、そういったことをまださらにやっていかなければならない、こういう形で援護局の仕事というものはまだまだ当分続いていくだろう、こう思っておりますし、そういった意味で、いま御指摘のありましたような事務処理体制を進めていくというようなことにつきましても十分配慮してやってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  47. 対馬孝且

    対馬孝且君 ぜひ、いま大臣お答えになったとおりこれから促進をし、また、実施されるように、強く要望を申し上げておきます。  それでは次に、中国の残留孤児の問題につきまして、まず、訪日調査の基本認識が一致しているかどうかということでお伺いしたいのでありますが、さきに実施されました三回目の訪日調査によりますと、来日した四十五人の孤児のうち二十二名が劇的な対面を果たしたということは記憶に新しいことでございますが、なお調査中の者が、私の調べによりますと、五十八年三月十二日現在八百二十一人という状況である。五十八年度予算では、厚生大臣努力をされまして、訪日調査の枠がさらに拡大されたということになっていますけれども、六十人掛ける三回ですから百八十名ですよね、これ。したがって、増員されていることはわかりますけれども、仮に現在公式ルートを通じて調査を申し入れてきた者だけでも、このペースでずっといくと五年ちょっとかかるんじゃないんですか。したがって、関係者はだんだん高齢になってきているし、それから証拠の確度の低下等考えるまでもないわけでありますが、本問題の解決を短期集中的に、何らかの対策が必要ではないか。これ、私のところにも手紙の来たのもありますけれども、こういう問題等も踏まえて、特に訪日調査の今後の方向について大臣の基本的な認識をまずお伺いしたいと思います。
  48. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 中国孤児の問題につきましては、戦後の時代に大変苦難な目に遭われた方でありますし、肉親を思う気持ちというものは人一倍なものがあるということを、私も今回の孤児の来日の場合にいろいろ接しまして、本当に身をもって感じたところでございます。また、日本におけるところの親族の心情や立場などというものも十分考えてこの問題を進めていかなければならない、こう思っているところであります。  御指摘のように、時間がかかるから早くやれという気持ちは、全く私もそのとおりだと思いますが、やはり受け入れの体制、それからまた、いろんな手続をしていくこと、実際に三十何年も別れているわけでありますから、きのうきょう会って別れたという人とは違って、なかなかむずかしい問題もありますし、十分に意を尽くしてやらなければならないものがあるように思います。同時に、帰国をした後の定着化対策、その他というものにつきましても万全の措置を講じなければ、せっかく日本に帰って肉親にめぐり会えたけれども、後、どうにもならないという形になりましてもいかぬだろう、こう思いますし、さらには、中国側との話し合いもございますので、そういった点を踏まえまして、できるだけ早くすべての中国残留孤児が目的を達成できるようにこれからも努力をいたしたい、私はこういうふうに考えているところでございます。
  49. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、いずれにしましても先ほど申し上げたように、百八十名ずつ行ったにしましても、現在上がっているだけで五年かかるわけですね、どういったって。だから、そこを早急に進めるようにしたいという答弁ですから、ひとつもう少し進めて、次の問題として、訪日調査について日中両政府の事務協議により五十八年度引き続き実施する線で原則的に合意されたと、これは間違いないと思うんですが、そうなりますと、来年度以降の本調査の実施の見通し、これをまず聞かしてもらいたいということと、先ほど申しましたように、早める早めるとこう抽象的なことを言ってもしようがないんで、ある程度やっぱり年次計画というものも策定をする必要があるんじゃないか、こういう点もあわせてひとつお伺いしたい。どうですか、この点。
  50. 山本純男

    政府委員山本純男君) 御指摘のとおり、この問題は大変急がなければならない面があると私ども理解しておりますし、この点につきましては、この春、事務レベルで中国政府の職員との間で協議をいたしました際にも、中国側もやはり同様の理解でございまして、日本における肉親の方のみならず、中国における養父母その他身内の方々についても老齢化の時期が参っておりまして、基本的にこれはなるべく促進すべきであるという点では意見は一致いたしたわけでございますが、しかしながら具体的な進め方という点になりますと、これはなかなか外交交渉を経なければならない点にむずかしさがございまして、基本的な認識は一致したのでございますけれども、たとえば五十八年度百八十人という訪日調査の予算を私ども計上いたしておるわけでございますが、これにつきましても原則の合意だけでございまして、それを具体的に何回に分けて何名ずつ訪日させるかという点になりますと、これは実はただいま在外公館を通して現に折衝が始まっておるというまだ段階でございます。そういうところから、いま、具体的な運びがなかなか思うに任せない点もあるわけでございます。  そこで、将来の進め方でございますが、一つは、先ほど八百十六名の方が身元不明という御指摘ございましたけれども、この中にはすでに一度訪日調査をいたしましたが身元がわからなかった方が数十名含まれておりまして、概数で申しますと約七百五十名ぐらいの方がまだ日本の土を一度も踏んだことがないという方が現におられる。私どもとしては、まずその七百五十名ほどの方々にとにかく一度日本の土を踏んでいただく、それが一番の優先的な課題ではないかと考えておりまして、これを百八十人ずつでやってまいりますと御指摘のように四年もかかってしまうわけでございまして、まあ少しでもこれを促進したいと思うわけでございますが、具体的な計画を立てるということになりますと、これはむしろ外交交渉を前提に決めるべきことなだけに、私どもが一方的に計画を立ててしまいますのはかえって交渉面で感情的にもなりかねないと思いますので、その辺はなるべく促進するということで今後とも中国政府との間で鋭意交渉を続けるということにいたしたいと思います。  また、これ以外に、調査の方法につきましては、現地、東北地区におきます事情調査というものが必ずしも行き届いていなかったということを私どもいろいろ感じておるわけでございまして、この点につきまして行政機関の職員あるいは報道関係の方から協力のお申し出があったりいたしますので、ひとつ現地での調査をもう少し進めたいということも中国政府との間で交渉をいたしておるのでございますが、これにつきましては、現段階では中国側が大変消極的でございまして、できれば現地における調査は全部中国政府、中央、地方の政府に任してくれという段階でございます。これは今後ともひとつなるべく私どもそれにお手伝いできるような状況になれるよう交渉をなお進めていきたいというふうに考えております。
  51. 対馬孝且

    対馬孝且君 いまありましたけれども、もちろん相手側の事情はあるだろうけれども、もう少し突っ込んだ事務協議の中でも計画的、統一的な案を策定すると、そういうやっぱり姿勢を持つべきだと思うんだけれども、まあいまあなたも認めているから次の質問はやめますけれども、大体、ほとんど実態調査というのは進んでいないんじゃないですか、いまこの東北地区なんかの関係からいきますと。  そういう問題を含めて、いま外務省来ておりますから、これ、昨年の三月十日の予算委員会で、外務省のアジア局長が質問者にこう答えているんですね。特に、いま援護局長もお認めになったように、中国東北地区の調査がまだ相当数進んでいない。まあ一万あるいは二万を超える数に上るのではないかという御指摘がありまして、総領事館をつくる必要があるのではないか、こういう質問に対しまして、外務省のアジア局長は、総領事館を追加する場合には中国東北部、もしやる場合には中国東北部を一番優先してひとつ進めてまいりたいと、こういう答弁に相なっているんですが、旧満州地区ですね、東北地区、この問題について、その後どういう検討が進んでいるのか、これをひとつ外務省からお聞かせしてもらいたいと思います。
  52. 恩田宗

    説明員(恩田宗君) 東北地方は、先生指摘のとおり多くの残留孤児が居住していて、わが国とは非常に関係の深い地域でございますので、わが国としてはこの地方に総領事館を設置することが望ましいというふうには考えております。もちろん、総領事館の設置につきましては予算の制約でございますとか、それからそのほかの国における総領事館設置との優先順位の問題もございまして、五十八年度予算要求におきましては、ジェッダに総領事館を設置するということでお認めをお願いしたところでございますが、私どもとしては、五十九年度、これ以降においてほかの国との勘案、それから予算上の問題等を勘案いたしまして前向きに検討していきたいというふうに考えております。
  53. 対馬孝且

    対馬孝且君 前向きはいいけれども、去年の予算委員会だから、もう一年経過しているわけだから、ある程度具体化されていいんじゃないかということが考えられますが、この点、前向きに検討したいということだから、ぜひこれを早急にやってもらいたい。そうしないとなかなか進まない、先ほども言われているように。  そこで、これも厚生省にお伺いするんですけれども、総領事館ができるまでの間厚生省の現地事務所をつくるというようなことを考えたっていいんじゃないか、現地出張所みたいなものを。そういうことでとりあえず総領事館ができるまでの間の調査の促進を速めていくということも一つの方法ではないかと、こう考えるんですが、どうですか、この点。
  54. 山本純男

    政府委員山本純男君) 中国政府との交渉関係では、私どもとしては、現在北京の公館を経由して鋭意やっていただいておるつもりでございますけれども、やはり現地の状況について、もう少し私どもとしても孤児の身元を明らかにできるようないろいろ資料その他を手に入れたいという気持ちは十分ございます。これを現地事務所というような公の形でできるかどうかは、また外務省その他等の御意見も聞かなければいけないことかと思いますけれども先ほど申しましたように、私どもの担当の者が現地に参りまして調査活動そのものをやるということは大変むずかしいようでございますので、現地の中国側の政府の調査活動に何らか協力をし、貢献をするということは可能性があるのではないかと考えておりまして、ひとつ、なるべくそういうことを実現する形で事態を進展さしていきたい。それがまた、さらに領事館をつくっていただける、あるいは私どもの事務所が開設できるということになれば一層望ましいことでございますけれども状況から言いましてなかなか急速な実現はむずかしいかのように承知しておりますので、それ以外の方法でございましても、結果として現地のいろいろな資料が私どもとして把握できますような方向で一層努力をしていきたいというふうに考えております。
  55. 対馬孝且

    対馬孝且君 一層努力するということだけれども、申し上げなければならぬのは、公開調査の実施の実態を見ても、公開調査の実施状況というのは、昭和五十年三月以降、五十六年の一月まで九回実施されていますね。しかしこれ、二百三十五人の身元が判明しているということで、最近二年間以上実際に調査は行っていないんじゃないですか。つまり、十回目の調査というのは、実施見通しは一体どういうふうになるのか、こういう点から私は申し上げているのであって、どうもそこらあたりが、やっているやっていると言ったって、九回目はやったけれども、十回目はまだ見通しも立っていないんじゃないか。  それから、外務省にも強く申し上げておきたいけれども、予算上の制約があるということはわかるけれども、やっぱりこれだけの問題ですからね、中国の旧満州ですね、東北地区を最優先に措置をするというアジア局長の答弁なんだから、少なくとももう一年経過しているので、具体的にある程度めどをやっぱり示してもらいたい。今国会中にめどを明らかにできるようにひとつ促進をしてもらいたい。両方に申し上げます。
  56. 山本純男

    政府委員山本純男君) 御指摘のとおり、訪日調査という事業を始めましてからは公開調査をやっておりません。訪日の決まりました六十名なり、今回で言いますと四十五名なり、訪日される方についてはこれを報道機関の御協力を得まして情報を広くお知らせするということをやっておるわけでございます。今回、これまでの調査その他で身元がわかっておりません、先ほど申し上げました八百十六名の方々につきましては、これを、写真と私どもが持っております資料を登載いたしました冊子をまとめまして、省ことに三分冊にまとめたわけでございますが、これを全国の都道府県市区町村に配付をいたして一般の閲覧に供するということをいたしました。また同時に、これを民間のボランティア団体、それから元開拓団の関係方々がつくっておられます団体等がございますが、そういう団体の中で御協力を得られるところにはこの冊子を差し上げまして御協力をお願いしているところでございます。
  57. 恩田宗

    説明員(恩田宗君) 昨年の参議院の予算委員会でアジア局長よりお答えいたしました趣旨は、実は、現在中国には、北京の大使館以外に広州と上海、二つ総領事館がございます。もし中国において総領事館を追加するということになった場合は、東北地方の瀋陽あたりが一番優先順位が高いのではないかと考えておりますと、こういうことでございます。  両国の間ではお互いに相互主義をとっておりまして、総領事館を同じ数だけ設置することになっております。もし中国に追加する場合は私どもとしては瀋陽が優先順位が高いというふうに考えておりますが、外務省全体として在外公館をどこにどれだけ設置するかという問題についてはいろいろな考慮がございます。一度にたくさんの総領事館をつくるというわけにもまいりませんので、今後外務省として検討をいたしまして、いろいろな考慮を払った上で決めていかせていただきたい、こういうふうに考えております。
  58. 対馬孝且

    対馬孝且君 あと一問で終わります。  したがって、大臣いまお聞きのとおりで、これはもちろん外務省の問題でもありますけれども厚生大臣という立場で、非常にやっぱり調査がおくれているというよりもむしろ進めなきゃならない立場にあるし、これまで森下厚生大臣時代にも、昨年来日しましたときに涙ながらに森下厚生大臣も訴え続けておりましたけれども国民に向かって、積極的にこれをひとつやっていくという気持ちを示されていますけれども、いまお聞きのとおりなんで、大臣最後に、これを積極的に進める決意のほどをひとつ明らかにしてもらいたい、こう思います。
  59. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 中国残留孤児の問題は、戦後の大変痛ましい私はつめ跡だと思いますし、この問題をできるだけ早く解決をしなければならないのは日本政府としても当然考えていかなければならない話だろうと思います。と同時に、中国との関係でございますから、日中友好という観点、日中共同声明の中にありますところの精神に基づきまして私たちはこの問題をとり進めていかなければならない。いろんな公開調査の話であるとか、総領事館をどうするとかいろんな問題ありますが、基本的にはできるだけ早く私は考えていかなければならない、これがやっぱり人道主義の立場に立つわが国の立場だろう、こういうふうに思っているところでございます。
  60. 対馬孝且

    対馬孝且君 終わります。
  61. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今年度は恩給等の支給額が据え置かれたことから、援護も、年金額の引き上げというものが行われない。給付金の関係の法律改正がそこでその柱となってまいりますが、この際、この問題に関連して若干お尋ねいたします。  現在、体系としては、戦没者等の妻に対するもの、それから戦没者等の遺族に対するもの、戦傷病者等の妻に対するもの、戦没者の父母等に対するもの、こういう四つの法律からできていると思いますが、これらの方々に対するその支給額は何を根拠にどのように決められておりますか。
  62. 山本純男

    政府委員山本純男君) 援護法におきます年金額の決め方と申しますのは、基本的には公務員の給与というものを中心にいたしまして、その他経済、社会その他のもろもろの状況を勘案して決めるというふうになっておるわけでございます。それがたまたま類似の制度として恩給法という制度がございまして、従来からこの恩給法と私どもの法律との間では歩調をそろえて給付の水準を決めるということをいたしてきております。
  63. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 現在の受給者は、それぞれ法律別にどのくらいの推計人数になっておりますか。  それと、その受給者の平均年齢はいかがですか。
  64. 山本純男

    政府委員山本純男君) 給付の種類別に受給者の数を申し上げますと、遺族年金等受給者が昭和五十七年度につきましては十一万二千九百三十三人というふうに見ております。また、戦没者の妻に対する特別給付金は対象者三十六万件、また、戦傷病者等の妻に対する特別給付金は対象者十三万件、戦没者の父母等に対する特別給付金は七千件、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金は百三十四万件というふうに見ております。  また、対象者の平均年齢は、特別給付金について申し上げますと、戦没者の妻の場合六十六歳、戦傷病者等の妻につきましては、これは私ども年齢を把握しておりません。戦没者の父母の場合には八十四歳、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の受給者の年齢については、私ども把握しておりません。
  65. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうしますと、それぞれの制度の受給資格が法制定時よりおくれて発生し、継続された時点で受給資格が発生するようないわゆる後発の受給者についてどのような給付額で支給されておりますか。
  66. 山本純男

    政府委員山本純男君) これは、一つには戦傷病者の方が亡くなられたために新しく戦没者遺族という立場になられた方の場合、それからまた、そういうもとになります遺族年金等の給付要件が拡大されました結果、新しく戦没者遺族という立場になられたという場合、そういう方々について、もとになる給付の時期とはおくれまして特別給付金の支給が始まるわけでございますが、その場合にはこれまで数回給付金を支給してまいったわけでございますが、その第一回の金額から始めていただくということが原則になっております。
  67. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 すなわち後発の受給者は、支給の時期はおくれているけれども、先発の受給者から支給を始める、こういうことなんですね。たとえば戦没者等の妻に対する給付金を例にとりますと、三十八年支給の二十万円を三十八年から四十八年の間に公務傷病等で死亡し、受給資格の発生した者に支給する、こういった形式をとっておるわけですけれども、こういう給付の方法をとる理由はどういうところにあるんですか。
  68. 山本純男

    政府委員山本純男君) この給付金の性格が、遺族年金を受けるような立場の方が夫なり子供さんなりを亡くされたと、そういう非常にお気の毒な状況に着目をいたしまして、これをお慰めするという趣旨でございます。したがって、年金その他のようにある要件のもとに継続的に支給される給付金というものとは性格が違っておるというふうに私ども考えておりまして、そういう意味からは、ある意味では継続ということを何回かやってまいりまして、今回また継続をお願いしておるわけでございますが、これは初めから当然に継続する定期給付ではないわけでございまして、私どもとしてその都度必要があるという場合にお願いをいたしますし、また、国会の場でもその都度御審議をいただいてお決めいただいてきた状況でございます。そういうところから、同じ立場になられた方の場合には、当初昭和三十八年に特別給付金という制度が設けられましたときの状況をその方にも適用をいたす、その後また同じ立場の方が継続になった場合には、十年なり五年なりの償還期間が終わりました段階で、それをまたそれに準じて継続をいたすということで進めてまいったわけでございます。
  69. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この受給者の先発者と後発者とこうあるわけですけれども、その後発受給者の平均年齢、そういったようなものを考え、またおくれて受給が始まる、そういうようなこと等から勘案しまして、この間の貨幣価値の低下、そういったようなことを考えますと、後発者にも先発者に支給されていると同額の額を支給してもよいのではないかと、こういう考えも出てくるわけですが、その点はいかがでしょうか。  それと二点目には、次期予算要求の段階には、この点を十分考慮していただけますか。いかがですか。
  70. 山本純男

    政府委員山本純男君) 仰せのような状況を私どもお話を伺うことがございまして、あるいはそういう状況には私ども耳を傾けなければいけないかというあれもございますけれども、しかし、一方ではやはりこの制度、昭和三十八年以来すでに二十年間にわたって運営をしてまいりまして、これをいまからたてまえを改めますと大変むずかしい問題が出てまいりまして、極端に言いますと、この給付金という制度の性格を見直さなければいけないというような基本問題にもなるものでございますし、かつ、その問題につきましては、ちょっと古くはなりましたけれども昭和四十八年でございましたか、妻に対する給付金の第二回目の継続が決められたときでございますが、そのときにも一度、有識者の方々にもかなり御議論をいただきました結果、やはり今日のような制度でいくということが決まったいきさつもございます。これを変えるということは大変むずかしいのでございますが、しかし先生のような御意見も一つの御意見であるというふうに受けとめまして、これが次回継続するかどうかということは、これはまた大変大きな問題として、次の、今回お願いしております給付金の償還が終わりますのが、妻でございますと十年、父母でございますと五年先でございまして、いまからこれを私ども云々する立場にないと思うのでございますが、そういう御意見もひとつ私ども十分勉強させていただきたいと思っております。
  71. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では次に、中国残留日本人孤児の問題に関連して若干お尋ねいたします。  まず、この問題に対する大臣の基本的認識先ほどから数回お尋ねがあっておりましたけれども、過去三回の訪日調査を終えた現時点での大臣の所感、並びに今後の方策について、お聞かせいただきたいと思います。
  72. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 中国残留孤児の問題は、私は、戦後、直後のときの問題として、同胞が大変な苦しみを受けられたということを、戦後三十八年たっていまの段階になりまして、こうした事態を迎えるということに対して、本当に涙なくしては語れないものだろうと、こう思います。そうしたことからいたしまして、基本的には、残っておられる方がまだまだ多くおられるわけでありますから、この方々ができるだけ早くその希望が達成できるようにしなければならないと、こう思っているところでございます。  ただ、長い間中国におられたわけでございますし、また、現実に中国におられる方でございますから、日中国交回復の基本的な精神に基づいて、わが国は中国国民に対して深く戦争のことについて反省すると、こういう基本的な考え方に基づいて話を進めていかなければならないものだろうと思います。これは単に私は日本政府としてということでなくて、日本国民全般としてやっぱり考えていかなければならないことでありますし、政府のいろんな仕事のみならず、関連するところのボランティアの諸団体、あるいは報道機関の方々にも大変に御協力をいただいているところでありますし、そうした国民的な立場に立ってこの問題を進めていくことが必要ではないかと、こういうふうに思っているところでございます。
  73. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いま大臣の御答弁にありましたようなその意味からも、今回設立いたしました中国残留孤児援護基金の設立というものは非常に私ども喜ばしいものだと思っておりますが、この基金の概要についてお聞かせいただきたいと思います。
  74. 山本純男

    政府委員山本純男君) 本年四月一日、財団法人中国残留孤児援護基金が設立されたわけでございます。その概要について御説明申し上げます。  基本的には、この問題が政府だけで進めていける性質のものではございませんので、広く民間の力をかりなければ進められない面が多々ございます。そういう意味では、将来に向かいましては非常に多目的に、政府で手の届かないところには大いに活躍をしてくれることを期待しておる団体でございます。  現在のところの概要を申し上げますと、まず一番大きな仕事は、先ごろ日中両国間で事務レベルで原則合意のできました、中国に残されました養父母その他日本帰国された孤児の方々の身内の方々に対する生活費の関連、これが一番当面の大きな課題でございます。もう一つの大きな課題は、日本に帰ってみえました帰国された方々の生活援護をめぐる事業でございます。このためには、この秋から中国帰国孤児定着促進センターというものを設置すべく、ただいま建設に取りかかるところでございまして、ここに三十世帯百人ぐらいの方々にお入りいただきまして、必要があれば四カ月交代で年三回回転をする。平年度にいたしますと百世帯ほどの方々の定着促進事業を進めたいというふうに考えております。この関係の経費は、そこに入所なさいます方々の生活費、お世話をします職員の人件費、その他合わせまして、本年度、昭和五十八年度は六カ月分八千三百万円の全額を国が委託費の形で負担をするということにいたしております。五十九年度以降は平年度といたしまして一億三千万ぐらいになるかというふうに考えております。  これ以外に、先ほど申し上げました扶養費の関係では、政府がその半額を持つわけでございますが、残る半額につきましてはなるべく孤児本人の方に負担がかからないようにしたいと私ども希望いたしておりますので、募金を進めていただきまして、ひとつそういうものはこの財団の方から、本人負担が残らないところまで援助をしてもらえるところまでぜひ活躍をしてもらいたいというふうに希望いたしております。
  75. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 やはりこの問題の焦点となるのは養父母等に対する扶養の問題であろうと思います。  そこで、いまおっしゃった半分は政府で持つ、あとの半分は基金でと、こういうことになりますが、具体的な扶養費の額については両国間の今後の協議によって決定されるということでありますが、現在どのような腹案をもっておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  76. 山本純男

    政府委員山本純男君) これはやはり原則合意でございますので、詰めた話になっていないわけではございますが、やはり原則の合意をいたしますに当たりましては、およそそういうものの規模がわかりませんとこれは原則論も議論できませんので、大体の、ある程度の幅を持った水準というものは十分協議をいたしました。  そのとき私どもが頭に置いて議論をいたしておりましたのは、一人当たりの生活費が標準的には月に二十五元ぐらいであろうと。ただそれは、農村であればそれよりは当然安い金額になるであろうし、大都会の場合にはあるいは少し高くなるかもしれないということを前提にいたしまして、ただやはり孤児の方々の現在住んでおられます状況その他を見ますと、都市、大都市、中都市、その他農村、それぞれ適宜なバランスのとれた分布で住んでおられるようでございますので、大体その標準的な金額で腹づもりをいたしますと大きな間違いにはならないであろうということになりまして、そういたしますと、あとは今後帰ってみえる予定の八百人余り方々が一体一世帯当たり平均的には何名ぐらいの扶養家族を中国に残してこられるのであろうか。あるいはまた、すでに帰国された方の中にやはりそういう扶養費がまだ決着がついていないために当事者の間でもめておると申しますか、合意ができていない件があればこれまた放置はできませんので、私どもとしてもある程度お世話をしなきゃいけないという状況もございますから、そういうものを平均的に考えまして大体の人数から見ますと、総額で言いますと多分五億円——前後に幅がございますけれども、というのがいまのところ一応腹づもりに持っておる金額でございます。  それを具体的には今後どういう形で肉親調査が進められるか、またその結果に基づきまして永住帰国をされる方が、いろいろ後始末その他もございまして身元がわかって来年帰ってくるという方は少ないわけでございまして、いずれも何年かたってから帰られるわけでございますから、およそ七、八年から十年ぐらいにわたって帰ってみえるのではないかというような感じで私どももいろいろな準備を進めているわけでございます。
  77. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうしますと、これはどういう形で支払われることになりますか。たとえば一時払いとかあるいは終身年金のような、そういう形になるものでしょうか。
  78. 山本純男

    政府委員山本純男君) これは全くこれからの交渉にゆだねておるわけでございますが、ただ事柄の性質から申しますと、何分にも国境を隔てた事業でございまして、これはちょうど日本の国内で定期金給付をいたしますと地方自治体その他を煩わしましてずいぶんとむずかしい事務が出てきたりしておるのを私ども見聞きいたしておりますので、こういうものが果たして国際間で実施できるかどうか、大変むずかしいことかと思います。どちらかと申しますと、一時払いという形で進めることができれば私どもとしては大変仕事がやりやすいと思っておりますので、今後の交渉はそういう方向で進めていただきたいということを外務省を通してお願いはいたしております。
  79. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 先ほど援護基金では、十億円の寄附金を見込み、過去三回の訪日調査の際に国民の皆さん方から寄せられた義援金六千万円のほかに財界を初め国民各層に寄附を呼びかけると、こうしておりますけれども、所要の金額が集まる見通しといいましょうか、その時期はいつごろと見込んでおられますか。
  80. 山本純男

    政府委員山本純男君) 金額につきましては、私ども一応十億円ということを目標にこの財団には募金を進めてもらいたいというふうに考えておりますし、また、その相当部分が企業体からの御寄附を期待しなければいけないと思っておりますが、そういう場合にはやはりこの寄附金が指定寄附金という扱いになりませんと、なかなか思うに任せた募金が進まないのではないかということで、現在政府部内でお願いいたしまして、この寄附金が指定寄附の扱いを受けるよう、実現するように努力をしておるところでございます。その結果十億円の寄附が全額集まるかどうかは大変むずかしい問題でございまして、従来から私どももこういうたぐいの事業にかかわりますとなかなか目標の十割達成ということは経験がないわけでございますが、ただ、この問題につきましては日本全国的に非常に御同情を、御支援をいただいてきた経緯がございますので、この募金につきましても、そういう国民の広い御好意を期待できるのではないかというふうに、これは期待でございますが、期待しております。  ぜひそうなってほしいと思いますが、ただその中で先ほど申し上げましたように、扶養費にかかわる部分は、これは十億円の全額が集まる必要は必ずしもないわけでございますが、一方では政府の手が届きませんために民間に依存しなければならない局面が多々ございまして、そういうところではこの財団にもぜひなるべく豊かな財源を持っていい事業をやってもらいたいと期待しておりますので、そういう意味からもこの募金の目標がぜひ一〇〇%達成されるよう私どももできる限りの支援をしていきたいというふうに考えております。
  81. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 先ほども申しましたように、この扶養費の半分は政府が援助する、こうなっておりますが、五十八年度ではこれを帰還手当等の流用によって賄うと、こうなっておるようですけれども、これで支障はないのか。  また、来年度以降は当然政府援助分として一般会計にこれは計上すべきではないかと思いますが、この辺の認識はいかがでしょうか。
  82. 山本純男

    政府委員山本純男君) 実際に扶養費を支払うまでのプロセスを簡単に申し上げますと、まず第一段に身元判明ということが前提になりまして、その次に中国国内における扶養親族等との話し合いその他、そういう立つ鳥跡を濁さないための手続その他、これがかなり重要な問題として次の段階ございます。そういう中から最後の段階で両国政府間で永住帰国の取り決めをいたしまして帰国をしていただく。その結果、ある年度に帰国された方の扶養費につきましては、恐らくその年度の終末にそれを取りまとめまして送金につなげるという運びになろうかと考えております。  そういうところから、これをあらかじめ何年度何件ということを確定いたしますのは大変むずかしゅうございまして、私ども腰だめ的に本年もある程度の金額は必要であろうと思っておりますが、これはちょっと性格が違うかもしれませんけれども、帰還手当という予算の中である程度流用をすればそれで充当できるという見通しは持っておりますが、万一これで不足いたします場合には、また政府部内で十分協議をいたしまして、財源手当ができないために帰国が阻まれるというようなことにはならないようにこれはいたします。
  83. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 予算に計上しますか。
  84. 山本純男

    政府委員山本純男君) どうも失礼いたしました。  そういう状況でございますので、これが軌道に乗りまして、毎年度何名ぐらいは、何家族ぐらいは永住帰国をされる、その中で現地に残留して扶養を要する親族が大体このぐらいという見通しがある程度実績をもって固まってまいりましたら、これは私ども当然にそういう予算を要求し、計上いたすことになると思いますが、ちょっと五十九年度についてそれができるとは思いませんので、恐らく五十九年度もややそういう表にあらわれにくい形でやっていかざるを得ないのではないか。まあ六十年度ぐらいからは実績も出てまいるかと思いますので、そのころに向かってひとつそういう点十分検討をさしていただきたいと思います。
  85. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、根本的に日本中国との違いなんですが、中国では親の扶養というものが法律によって義務づけられている。そういうようなことから、核家族化が進んでいるわが国とは全く違った社会が構成されておるわけでして、したがって、その養父母は当然に老後の扶養を期待しておりますし、孫の存在を生きがいとしているような人たち中国では多いと思うのです。  こうした状況下で孤児が帰国すると、当然ながらそこにはいろいろな摩擦が生じてくる。また、帰国後の孤児の生活設計といっても非常に厳しいものがありまして、いろいろな悲劇が報道されているのも事実でありますし、こういうことから考えますと、これらの悲劇を救うためにも、今後里帰り方式というようなものもひとつ検討課題として考えたらいかがかと思うのです。円満帰国ということが可能であればそれにこしたことはありませんけれども帰国必ずしも最上ではないという面から、帰国のほかに里帰り方式を加えるという、そういう選択権をふやすということはいかがなものでしょうか。
  86. 山本純男

    政府委員山本純男君) それは、一つは永住帰国にかえて里帰りという御意見も承っておりますし、また、それ以外に、短期間の訪日調査にかえて里帰りスタイルの、やや長期といいましても数カ月にわたるような調査をという声、そんなものをいろいろ伺っております。  ただ、私どもといたしましては、いまのところは先ほど挙げました孤児の方々の調査の問題でございますが、まだ八百人足らずの、日本の土を踏んでいない方がおられるわけでございますので、現在のところは、やはり一度も日本の土を踏んだことのない方々にぜひ一度日本に来ていただくということを重点にしたいと考えておりますので、またそれ以外に里帰りその他枠を広げていくという課題は、その問題にめどがついてからひとつ力を入れていくということにせざるを得ないのではないかと考えております。  ことに、里帰りというものも、これも際限なく、それこそ毎年のようにお帰りいただく旅費、滞在費というわけにもしょせんまいりませんので、これはいまのところは原則一回ということでやってきておりますけれども、これを二回にできるかどうか、その他ほかへの波及もございまして大変むずかしいのでございますが、御要望の強いことは十分承知いたしております。もし、政府でむずかしければ、また民間の力をおかりして、そういうことを進めるというようなことも含めまして、研究課題にさしていただきたいと思います。
  87. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それに関連しましてちょっとお尋ねしますが、たとえば過去の肉親捜しで肉親であるということが確認されて、そして、その感激も新たに非常に劇的な対面をなさった。ところが、だんだん日ごとにその感激も薄れて、いよいよ現実の問題として肉親として自分の家族の戸籍にそれを迎え入れるという段になると、いろいろなそこに打算が絡んできまして、問題が起こってきているんじゃないかと思うのですが、そういう場合に、肉親の戸籍に入れてもらえない、入れてはもらえないが、しかし当人は日本人として日本の国籍を取りたい、こういうような場合はどういうことになるのですか。
  88. 山本純男

    政府委員山本純男君) 大変むずかしい問題がいま現に起こっておることは、私どもも伺っております。しかしながら、これはある意味では法律でもって定められるべき事項でございまして、個人の感情その他で左右できる性質のものではございませんので、これはたとえば本人の方が家庭裁判所に持ち出しまして戸籍を編製するということはできるわけでございますが、ただ何分にもそういう肉親が離れ離れになりまして四十年という歳月がたってしまいますと、かたい法律論といたしまして、家族関係を法律で強行するということになりますと、これは大変むずかしい問題が起こるように聞いております。  これは親族すべてが合意の上でありますと——科学的に血液型が合わないというような、裁判所としても受け入れかねるという件は時にあるようでございますが、通常、親族の方が合意なさいますと、これは円満におさまってきているという状況でございますが、親族の方がこれは肉親ではないのではないかという立場をおとりになりますと、裁判所としてもこれを強行して親族関係を法律上決めてしまうというにはよほどの証拠がなければできないわけでございまして、何分にも四十年もの日月が経過いたしますと、時に摩擦的な現象になってくるということはあろうかと思います。  私どもといたしましては、昨年度来身元が判明しない場合でありましても永住帰国の道を開くということから予算も計上して準備をいたしておりまして、まだ具体例はございませんけれども中国側にもその希望がございますから、五十八年度にはその制度が実際に動くことを期待しておるわけですが、どうしても御親族の協力が得られないために、法律上の身元が確定しないという件につきましては、これは事実上身元が不明なわけでございますから、御希望があれば、身元のわからないままの永住帰国の扱いということでお世話をしなきゃいかぬ案件ではないかと思っております。
  89. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうすると、ちょっと確認の意味でお聞きしますけれども、肉親であるというようなことがついにわからなかった。けれども、当人が私はもともと日本人だと、だから今後日本の国籍に入りたい、こう言ったときにはそれは認めると、こういうことですか。
  90. 山本純男

    政府委員山本純男君) 幾つか分けて申し上げますと、まず御本人が日本人であるかどうかという点はこれはまた大変むずかしい問題ではございますが、中国政府がかなり綿密な調査をすでに実施してくれておりますので、私どもとしては原則としてその調査の結果を信頼申し上げるということでやってまいりたいと思っております。  そういうことでございまして、そうなりますと、身元がわからない場合の日本の国籍というのは、これは法務省の方になるのでございますが、たしか帰化という手続をとるということになろうかと思います。これにつきましては原則ではなかなか時間のかかるむずかしい手続のようでございますが、中国孤児につきましてはその点について御配慮をいただくようにお願いをしているところでございまして、通常の場合よりも速やかに進めていただけるようになっておると理解しております。
  91. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 終わります。
  92. 小西博行

    小西博行君 きょうは三十分という非常に短い時間でございますので、大久野島の毒ガスの問題と、時間がございましたら原爆関係の質問をさしていただきたいというふうに思います。  まず第一点でございますけれども、広島県の大久野島というのがございます。ここの毒ガスの障害者の対策に対する現在までの経緯を詳しく教えていただきたいと思います。
  93. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 大久野島の毒ガス障害者対策の現状ということでございますが、私どもの救済の対象になっておりますのは、旧令の非共済組合員の方の学徒動員の方、あるいはまた女子挺身隊員、こういう方々を対象に救済措置を行っておるわけでございまして、こういう非組合員の方々の毒ガス障害者対策につきましては、初め広島県が単独事業として昭和三十六年から健康診断を行ってまいっておりますが、四十八年度から医療費がついております。四十九年度から健康管理手当の支給を行ったと、こういう経緯があるわけでございますが、この毒ガス障害者の救済につきましては、国の責任において実施すべきではないかと、こういう考え方に基づきまして、昭和四十九年度から国の制度として厚生省が広島県に委託してこの事業を行っておるわけでございます。  この事業は、旧令の共済組合員の一般障害者に対する措置に準じて行っておりまして、これまで、健康診断の実施あるいは医療費の自己負担分の負担、それから健康管理手当、保健手当、こういうものの支給をいままで行ってまいっておりますが、昭和五十八年度の十月から新しく介護手当、それから家族の介護手当の制度を設けておりまして、毒ガス障害者対策の強化を図ったということでございまして、この今年度からの介護手当等の新設によりまして、厚生省関係の障害者に対する救済措置は旧令の共済組合員の一般障害者に対する措置と全く同様となったわけでございまして、今後ともこういう人たちの救済措置は力を入れてやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  94. 小西博行

    小西博行君 「毒ガス障害者に対する措置」という、こういう図表がございまして、これを見てみますと、「認定患者」というのがございますね。一般障害者からさらに療養を要する者という意味で認定患者。これを見ますと、その金額が、特別手当というものが七万五千三百円でしょうか、このように非常に大きな金額が出ておりまして、これがいわゆる動員学徒に対する措置とは大幅に異なっているわけですね。なぜこういう認定患者制度というものができたのか。後でお聞きしますけれども、同じように動員学徒の中にもやはりそういう問題がありはしないかなと、こういうことを思いますので、このできた経緯をお聞きしたいと思います。
  95. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) この認定患者の制度につきましては、大蔵省の方で旧令の共済組合員に対する救済措置として実施しているわけでございまして、私どもの方で救済措置をとっております学徒動員その他の方々に対しましては、この方々の多くがもう毒ガスの製造をやめた後で島に入ったという方々と、それから風船爆弾のようなものの紙張りをしておったということで、直接毒ガスの製造にはタッチしていなかったということがございまして、この認定患者のような典型的な症状のある方と申しますか、そういう症状を持った方が私どもの方で扱っておりますこの対象者の中におらないということでございます。これは私どもも非常に注意をして見ておるのですが、また広島大学の医学部等ともときどきお話し合いをしておるわけでございますが、現在の時点では、非共済組合員の方々の中にはこの認定患者に相当するような方々は見当たらないということでございまして、もしこういう方が見当たれば、それはまた大蔵省の方とも御相談申し上げまして何らかの措置をとらなきゃいかぬわけでございますけれども、たまたま先ほど申し上げましたように、直接ガスの製造にタッチしていなかったためにこういうひどい症状の方がいらっしゃらないと、こういうことでございます。
  96. 小西博行

    小西博行君 この認定患者を指定する場合には、審査会があるんでしょう。審査会の中でこの人は認定患者にすべきだということで決められているというふうに聞いているんですが、現実にその基準というんでしょうか、審査基準、この辺は非常にあいまいだというふうに私も聞いているんですよね。だから、これは恐らく何人かのお医者さんあたりが集まって審査会というものをつくっているんじゃないかというふうに想像しているわけですが、その辺はどうなんでしょうか。
  97. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) これにつきましては、毒ガス障害者医療認定審査会というのがございまして、いま、広島大学の医学部の西本先生が中心になって健康診断その他のめんどうを見ていただいておるわけでございまして、私ども、この先生方の御意見に頼るしかないわけでございますが、現在のところ、この認定患者に相当するような方々はいないと、こういうことになっておるわけでございます。
  98. 小西博行

    小西博行君 非常にその基準があいまいなんですよね。現実に私どもにいろいろ陳情で来られる学徒動員の方の中にも相当悪い方がいらっしゃるということを聞くわけですね。ところが、その基準がどうも、健康診断というのがございますけれども、そういうものである程度決められるというんですけれども、たとえば気管支炎なんかの場合は昼間の暖かいときにはわりあい出にくい、ところが夜お休みになるときあたりがひどいんですよと、こういうような実はお話しがございまして、その辺のところがどうも、もう一度詳しく診断していただきたいなと、こういうふうに私は思っておるわけですがね。これはむしろ厚生省の方でしょうか。そういう実際の実態調査といいますか、もっと詳しく調べる必要があるんじゃないかと、このように思いますが。
  99. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 私どもの方では、毎年西本先生の方にもいろいろ御相談をしておるわけでございまして、もしそういう方がいらっしゃるとやはり救済しなければいかぬものですから、私どもはもう非常にこの辺は神経を使って、広島県の方とも連絡をとっておるわけでございます。もし今後そういう方がいらっしゃれば大蔵省の方とも相談しなければいけませんし、現在のところはいないという広島大学の医学部の先生方の御意見ですので、いまそれを信じておるわけでございます。
  100. 小西博行

    小西博行君 これは、学徒動員の方はずいぶんいろいろな施策がおくれていますよね。年数をこう比較してみますと、一般の勤労者というのは非常に早い段階からいろいろな手当だとかついておりますけれども、学徒動員の方はこの五十八年十月からですか、この介護手当あるいは保健手当とか、こういうものがついておりますが、なぜこんなにおくれたのだろうかなと、この辺私は不思議なんですが、その辺の経緯はどうなんでしょうか。
  101. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) これもかなり前からのいきさつがございまして、先ほど申し上げましたように、特に毒ガスの製造に従事していなかったということもあると思いますが、ただ私どもの方も、何とかして大蔵省でやっております旧令の組合員の一般障害者並みに早く救済措置を合わせたいということで努力しておったところ、今年度の十月からやっとこの旧令の組合員の一般障害者並みの施策ができたということでございますので、私どももいろいろいままで努力してきたのですが若干テンポがおくれておったということもございますが、今後ともひとつ大蔵省の方とも相談しまして一層その強化を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  102. 小西博行

    小西博行君 先ほど、学徒動員の方は余り、障害が軽いからこの認定制度といいますか、認定患者に指定されていないと、こういうふうにおっしゃったのですが、もしそういう患者の中に、これは確かに悪いというような審査会の結果が出れば、どうなんでしょうか、やはり厚生省の中にも学徒動員中心にこの認定患者制度という、こういうものを設けるのでしょうか、どうでしょうか。もしそういうことがあった場合。
  103. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) いま厚生省の方では、医療費として千十七名の方々のお世話をしておるわけでございますが、この方々は慢性気管支炎に気道がん、それから疾病の範囲を広げまして心臓病とかあるいは消化器疾患、皮膚疾患、こういうものにも広げて見ておるわけでございますが、こういう認定患者に相当するような方は現在はいないわけでございますけれども、もしそういう方がいるということになりますれば、これは大蔵省の方の旧令の組合員に対する対策といろいろ合わせなければいかぬ面もございますので、またその時点で考えたいと思っておりますが、私ども、これは何回も広島大学の方とも御相談の末、現在はそういう方はいないと、こういうことであるわけでございます。
  104. 小西博行

    小西博行君 いまの千十七人というのは、学徒動員の方ですか。千九百四十三名の中で千十七人がかかっていると、そういう意味ですか。
  105. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 私ども厚生省でこの救済措置の対象になっておりますのは全部で千九百四十三人おるわけでございまして、そのうちのいま医療費として見ている方々が千十七名ということでございます。
  106. 小西博行

    小西博行君 私は、どうもこの省庁が違っておりまして、大蔵省の方と厚生省というこういう形になっておりまして、私はどう考えてもこれは一本化してかっちりとした形をとればいいのになと、こう思ったんですがね。いろいろ省庁の方にもお聞きしたんですが、いや、それはもう省庁は別ですからとてもじゃないけれども一つになりませんというような御回答をいただいておるのですけれども、これはどうなんでしょうか厚生大臣、今後何か一本化してすっきりできないものでしょうかね。将来の方向ですが。
  107. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お話を聞いておりまして、同じ原因で同じ病気になったら同じ取り扱いをするというのは私は原則だろうと思います。ただこれは、やはりその毒ガス工場で働いておられた方というものは、直接に害を受けておられるわけですからそれは非常に明らかである。したがって、いろいろなところについての手当てをそれに基づいてしていくということが私は考えられることだろうと思いますし、学徒動員の方々は、働く期間もそんなになかった、直接毒ガスの製造その他のものについては従事していなかったと、こういうふうな話でございますから、やはりそこは一応違うのではないかということで、原因と結果でこう違えているのだろうと、こう思うんです。別に役所が大蔵省の所管だからどうだ、厚生省の所管だからどうだという話ではなくて、そういうふうに私は理解をしているところであります。  御指摘のように、同じような症状が出てくれば、恐らく同じような原因があったのだろうという推定はつくだろうと思いますから、もしそういった推定がつけば、私はやはり同じような取り扱いをしていくということにするのが筋だろうと思います。ただ、どういうことになるかというのは、私も素人でございますし、やはりその辺はお医者様の御判断、特に専門医の方々の御判断にまたれるということでございまして、先ほど局長から御答弁申し上げていますように、広島大学の先生方とも常に御相談をしているわけでございますから、その結果に基づいてやるべきことではないかと、こういうふうに考えているところでこざいます。     ─────────────
  108. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 委員異動について御報告いたします。  本日、遠藤政夫君、斎藤十郎君及び鈴木正一君が委員辞任され、その補欠として大城眞順君、藤井孝男君及び宮澤弘君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  109. 小西博行

    小西博行君 人数を見てみますと、旧令の方は二千四百四十六でしょう。そして先ほどの学徒動員の方が千九百四十三という、数字的には非常に接近しているわけですね。というのは、これは、たとえば認定患者なんかで特に重症の方はもう亡くなっておられるとか、そういうことでこういう数字の結果が出ているんでしょうか。非常に似通った数字が出ているんですよ。学徒動員も非常に人数が多いということをあらわしていると思うんですよ。どうなんでしょう。
  110. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 現在認定患者の方が五百三十七名、それから旧令の組合員で一般障害者の方が千九百三十名。それから私ども厚生省で措置しております学徒動員の方々、この方が千九百四十三名でございますけれども、これは学徒動員、女子挺身隊員、それから終戦後その処理で島に入った方々もかなりおるということで、かなり人数が多いのではないかと思っております。
  111. 小西博行

    小西博行君 とにかく、この実態調査が、さっき広島大学の先生とおっしゃったんですけれども、現実にいろいろ調べてみますと、ちゃんとした資料というのは余りないんですね。どの程度の患者が何人だというのはほとんどないんですよね。ですから、私は、同じ実態調査をやるのだったら相当詳しく一遍やっていただきたいなと。これは原爆の関係も全く同じだと思うんです。  原爆関係に移りますけれども、原爆関係もどうもいままでの調査は、四十年、五十年というふうに調査を進めておるわけですが、これはどうなんでしょうか。被爆者の実態調査というのは六十年度にはやるというようにお考えなんでしょうか、どうでしょうか。これは先ほどの大久野島も同じだと思うのですが、そういう実態調査を早い段階でやらないと、もう戦後ずいぶん時間がたっておりますから、そういう意味で、原爆の方も含めて実態調査をどのようにこれからやっていこうと考えていらっしゃるのか、これをお聞きしたいと思います。
  112. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 原爆の方の被爆者実態調査につきましては、いままで、四十年と五十年に二回やっておりまして、被爆者対策を実施するためのいろいろな概要というものは私ども大体つかんでおるつもりですが、これから、たとえば昭和六十年に実態調査をやるということになりますと、すでにもう四十年を経過している問題でございますので、果たして本当に正確につかめるかどうか、こういう技術的な問題もございますので、現在、これから実態調査をやるということは考えておらないわけでございます。  大久野鳥の毒ガスの方の調査につきましては、これは私ども頻繁に広島大学とも連絡をとっておりますので、そういう救済すべき方が漏れないような措置はこれからも努力をしてやっていきたいと考えております。
  113. 小西博行

    小西博行君 この質問で終わりたいと思いますけれども、大久野島は現実は、やはりいろいろな人に会ってみますと、かなり年齢的にも四十代といいますか、あるいは五十代そういう方がいらっしゃるわけですけれども、こういう方の実態をできるだけ早く調べていただきたい。そうしないと、これは患者そのものも非常に困っておりましたし、細かいことを言うようですけれども、実際、健診をやりますね、これが日にちが決まっておりまして、勤めの関係でなかなか行けないので、何かいい方法はないでしょうかというようなこともこれは実際大きな問題だそうなんです。  そういう何か細かい行政ができればいいなと、こういうように思いますので、その点を最後に大臣の方からお答えをいただきたいのですが、具体的なそういう細かい方法を考慮していただきたいということを申し上げて終わりたいと思います。
  114. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先生御地元でございますし、やはりこれは広島に限られた話でもございますから、いろいろな仕事はやはり広島県当局ともお話しをした方が、いろいろな細かな話もあるだろうと思いますから、いいだろうと思います。また、広島大学の方の先生ともいろいろ相談をいたしましてやってみたいと、こういうふうに考えております。
  115. 小西博行

    小西博行君 終わります。
  116. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 御異議ないと認めます。  本案に対し、対馬君及び村上君から委員長の手元に修正案が提出されております。両修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、両修正案を議題とし、順次趣旨説明を聴取いたします。対馬君。
  118. 対馬孝且

    対馬孝且君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び無党派クラブを代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、 一、第一項症の障害年金の額、現行三百九十五万五千円を四百十四万九千円とする等障害年金、障害一時金及び遺族年金遺族給与金の額を、四・九%を基準として、それぞれ引き上げること。 二、勤務関連の重症者が平病死した場合の遺族年金の額、現行二十五万九千円を三十六万円とし、これに伴い平病死及び併発死に係る遺族年金及び遺族給与金の額を、それぞれ引き上げること。 三、右一、二の施行は公布の日からとし、昭和五十八年四月一日から適用すること。 四、原案のうち、戦没者等の妻に対する特別給付金の再継続及び戦没者の父母等に対する特別給付金の再々継続の規定は、昭和五十八年四月一日から施行することとなっておりますが、本年四月一日がすでに経過しておりますので、これを公布の日から施行することに改め、昭和五十八年四月一日にさかのぼって適用すること。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  119. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 村上君。
  120. 村上正邦

    ○村上正邦君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。  修正の要旨は、原案のうち、戦没者等の妻に対する特別給付金の再継続及び戦没者の父母等に対する特別給付金の再々継続の規定は、昭和五十八年四月一日から施行することとなっておりますが、本年四月一日がすでに経過しておりますので、これを公布の日から施行することに改め、昭和五十八年四月一日にさかのぼって適用しようとするものであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  121. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 対馬君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。林厚生大臣
  122. 林義郎

    国務大臣林義郎君) ただいまの日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、無党派クラブ提出の修正案については、政府としては反対でございます。
  123. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  本案について、対馬君及び村上君からそれぞれ修正案が提出されており、これら両修正案には一部共通する部分もございますが、便宜、各修正案ごとに採決いたします。  まず、対馬君提出の修正案を問題に供します。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  124. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 少数と認めます。よって、対馬君提出の修正案は否決されました。  次に、村上君提出の修正案を問題に供します。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  125. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、村上君の提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。  修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  126. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は、全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  この際、渡部君から発言を求められておりますので、これを許します。渡部君。
  127. 渡部通子

    ○渡部通子君 私は、ただいま可決されました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び無党派クラブ各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、速やかに格段の努力を払うべきである。  一、一般戦災者に対し、戦時災害によって身体に障害を受けた者及び死亡した者に関する援護の検討を目途としてその実態調査を実施すること。  二、戦没者遺族等の老齢化の現状及び生活の実態にかんがみ、国民の生活水準の向上等にみあって、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。  三、給付改善の実施時期については、従来の経緯を踏まえ、適切な措置を講ずること。  四、戦没者遺族等の老齢化の現状にかんがみ、海外旧戦域における遺骨収集慰霊巡拝等について、更に積極的に推進すること。  五、生存未帰還者の調査については、引き続き関係方面との連絡を密にし、調査及び帰還の促進に万全を期すること。  六、中国残留日本人孤児の肉親調査を今後とも積極的に推進するとともに、帰国を希望する孤児の受入れについて、関係省庁及び地方自治体が一体となって必要な措置を講ずること。    また、中国からの引揚者が一日も早く日本社会に復帰できるよう、中国帰国孤児定着促進センターの運営の充実強化を図る等その対策に遺憾なきを期すること。  七、かつて日本国籍を有していた旧軍人軍属等に係る戦後処理のなお未解決な諸問題については、人道的な見地に立ち、早急に、関係各省が一体となって必要な措置を講ずるよう検討すること。  八、法律の内容について必要な広報等に努める等更にその周知徹底を図るとともに、相談体制の強化、裁定等の事務の迅速化に更に努めること。   右議決する。  以上でございます。
  128. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいま渡部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  129. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、渡部君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、林厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。林厚生大臣
  130. 林義郎

    国務大臣林義郎君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。
  131. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四分散会