運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-03-24 第98回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      馬場  富君     中野 鉄造君      前島英三郎君     山田耕三郎君  三月二十四日     辞任         補欠選任      森山 眞弓君     石本  茂君      遠藤 政夫君     大城 眞順君      柄谷 道一君     藤井 恒男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長        目黒朝次郎君     理 事                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 対馬 孝且君                 渡部 通子君     委 員                 大城 眞順君                 大坪健一郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 本岡 昭次君                 中野 鉄造君                 沓脱タケ子君                 山田耕三郎君    国務大臣        労 働 大 臣  大野  明君    政府委員        労働大臣官房長  加藤  孝君        労働大臣官房審        議官       小粥 義朗君        労働省労政局長  関  英夫君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省労働基準        局安全衛生部長  林部  弘君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        増田 雅一君        労働省職業訓練        局長       北村 孝生君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        経済企画庁調整        局産業経済課長  菅野  剛君        大蔵大臣官房調        査企画課長    長富祐一郎君        文部大臣官房企        画室長      上野 保之君        建設省住宅局住        宅企画官     内藤  勲君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (労働省所管)     ─────────────
  2. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 社会労働委員会への委嘱質問でございますから、日本経済の現在の状況失業問題について、ちょっと労働省に御質問をさせていただきたいと思います。関連がありますから、経済企画庁建設省にもおいでをいただいておりますね。  労働力調査のやり方を少し直したそうですけれども、一月の完全失業率が二・七二と、どうも過去最高水準に達したようでございます。二月の数字はまだ出ていないと思いますけれども、この一月の非常に高い失業率をどう受けとめるかでわが国でもいろいろ問題が出ておるようでございます。雇用失業情勢はそう急速に悪化していないという議論もございますけれども数字から見る限りにおいてはどうも急速に悪くなったのではないかという感じもいたします。そこのところをどういうふうに御判断になっているか、まず労働省にちょっとお伺いをいたしたい。
  4. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 最近の雇用失業情勢認識でございますが、先生御案内のように、第二次石油危機後の世界的な不況が長引いておりますために、国内におきましても景気回復の足取りが非常に緩やかであるというようなことを背景に、雇用失業情勢も非常に厳しい状況が続いておるわけでございます。すなわち、昨年の四月に失業率も二・三%台に入りまして、その後二・四%程度失業率推移をいたしておりますし、私どもの方の有効求人倍率も、昨年の五月に〇・六倍を割りましてから〇・五八倍、〇・五九倍、〇・六倍程度推移をいたしておるわけでございます。  そこで、いまお尋ねのございました、ことしの一月の労働力調査によります完全失業率が二・七二%になったために、これをどう評価するか、認識するかの問題でございますが、この一月の労働力調査内容は、労働力人口就業者数雇用者数、それから失業者数、それらがいずれも大幅に増加をいたしておりまして、そういう意味では従来の傾向と乖離した一つ動きになっておるわけでございます。また、私どもの方の雇用をあらわします指標の、たとえば有効求人倍率とかあるいは毎月勤労統計、それから私ども出先職業安定機関からいろいろ雇用状況変化につきまして定期的に報告をとっておりますけれども、そういう報告を含めまして、私ども理解をいたしております雇用失業情勢は、先ほど来話をいたしておりますように非常に厳しい状況推移はいたしておりますけれども、ここ一、二カ月で急激に大幅に悪化したというような動きは必ずしもないわけでございまして、そういう意味では、現状雇用失業情勢につきましては厳しい状況で横ばいの状況が続いておるということでございます。  なお、二・七二%の失業率につきましては、総理府等とも今後ともその内容の分析を続けていくということといたしておるわけでございます。
  5. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 問題は、失業数字中身なんですね。それで、いま局長の御説明では、失業関係についての現実の職業安定機関の窓口の数字は悪いけれども従来の数字を横にはわせたものだ、こういう話でございます。アメリカとかヨーロッパ失業が大変ひどいようなんですけれどもアメリカヨーロッパ失業では、シニアシステムがありますから、どうしても若い人が失業対象になる。日本の場合には、むしろ年齢の高い層の方に失業が多いということが言われておりますけれども、その辺の事情はどうでございますか。  それから、朝日の論説なんかでも失業問題を取り上げましたときに、どっちかといえば、最近は主婦の層が大変求職活動をしておられて、その女性職業意識の高まりが失業関連で反映しておるのではないかという言い方もしておりましたけれども女性労働力化して就職戦線に出てこられるということは、ある意味では近代化でもありましょうけれども、ある意味では、家計の収支が苦しいから補助的収入を求めて労働市場に出てこられるという点もあろうかと思いますので、そういう問題なのか。あるいは、中高年中心として失業が実質的には厳しい形で蓄積されてきておるのか。そこら辺の判断をちょっとお聞きしたい。
  6. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) この一月の労働力調査失業率だけでなくて、ここのところの厳しい雇用失業情勢背景に、主婦中心に、女子方々職場への進出が大幅になってきておるということが大きな原因になっているというような、いろいろ指摘があることは私どもも承知をいたしておりますが、第二次石油危機後の、すなわち昭和五十五年後半以降徐々に悪化をしてきております現在の雇用失業情勢判断につきましては、女子職場進出がどういうふうに影響を与えているかという問題につきましては、中長期的に見まして、確かに女子方々労働力率がかなり上がってきておる、すなわち職場進出をしてきておられるということで、労働力人口もふえ、したがいまして失業者もふえてきておるということは事実としてございますけれども、五十六年なり五十七年、特に五十七年の失業情勢中身といたしましては、男子もかなり大幅な増加が続いておりますし、失業率も第一次石油危機以降では最高水準になっておりますこととか、また、中高年層失業率が五十四、五年ごろに比べてふえてきておる、男子世帯主層失業率もふえておるというようなことで、そういう面では、単に女子職場進出あるいは女子労働力比率が高まっておるというようなことだけといいますか、それが大きな原因とは必ずしも言えないかと思います。  また、産業事情を見ましても、最近は製造業中心に落ち込んでいるというようなこともございますし、雇用調整状況を見ますと、私どもの方のこの二月の調査では、ここのところ製造業では何らかの形で雇用調整を実施している事業所割合も三〇%を超えて少しずつ増加をしてきておるというような状況でございまして、その雇用調整内容は、まだ休業を大幅にやるとかあるいは離職者を出すというようなハードな雇用調整は非常に少ないわけでございますけれども、ともかく雇用調整を実施している事業所が徐々にではございますがふえてきておるというようなこと等も見まして、かなりいま厳しい状況推移しておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。     ─────────────
  7. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 委員異動について御報告いたします。  本日、遠藤政夫君が委員辞任され、その補欠として大城眞順君が選任されました。     ─────────────
  8. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 いまのお話なんですけれども、基本的な問題の認識として、最近景気が少しよくなるようで、失業率も徐々に直ると思いますがというような説明と、それから実質的に失業情勢はよくなっていない、だんだんきつくなっているという認識と並行しているようで、論理的に矛盾しているんですよね。どっちかということを考えなければならないんで、われわれは労働省に特に望みたいのは、日本国国民の生活に深いかかわりのある失業対策だから、いざというときに、いや、手は打てませんとか困りましたじゃ困るんですね、大臣。そこのところ、ちょっといまから認識を深めたいと思うんです。  諸外国では、一九七〇年ごろまではまだ日本と同じような状態だったんです。イギリスで二%台、アメリカで三から四%台で、失業率は低かったんです。十年前ですよ、それが。ところが、この十年間の間に石油ショックがありまして、経済構造との兼ね合いで石油ショックをもろにかぶったような工業国家からだんだんと失業が厳しくなってきて、失業率の急上昇が一九七〇年の後半から始まったわけでしょう。それで、現在ではヨーロッパ諸国は軒並みに失業率が一〇%を超えるようになったんじゃないか。アメリカもそうじゃないか。そしてヨーロッパの場合もアメリカの場合も、シニアシステムのために若い人の失業になって出てきておる。それからアメリカの場合は黒人失業になって特に出ておる。だからデトロイトのようなところでは、黒人若年層では半分ぐらいの人が失業しておる、こういう状態もあるといいますけれども、その辺の事情、多少かいつまんで、正確な認識のためにお教えいただきたい。
  9. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 諸外国雇用失業情勢わが国雇用失業情勢の比較でございますが、諸外国で、特に欧米諸国におきまして、一九七〇年当時には失業率が一から四%程度で比較的安定した失業率であったということは、いま先生が御指摘になられたとおりでございます。それが、ことしの一月の失業率で見ますと、アメリカが一〇・二%、イギリスが一二・八%、ドイツも一〇・二%で――ドイツの場合は西ドイツでございますが、西ドイツの場合は季節調整をいたしますと八・七%でございますけれども、まあそういうことで、一〇%あるいは一〇%前後の非常に高い失業率水準になってきております。特に若年層失業が非常に深刻でございまして、アメリカについて見ますと、昨年の十二月では二四・五%、それからイギリスでは、昨年の七月の数字でございますが二三・四%ということでございまして、四人に一人ぐらいの割合失業しているというような状態になっておるわけでございます。  こういう非常に高い失業原因につきましては、これも先生が御指摘になりましたような事情背景になっておるというふうに私どもも考えておりますけれども、まず一つには、第二次石油危機によります不況が世界的に非常に長引いておるということで、雇用需要自体低迷をいたしております。同時に、インフレ物価が非常に上がっているということで、欧米の各国でインフレ抑制のための景気引き締め策がとられてきておるということもございまして、これらが両方影響をいたしまして雇用が伸び悩んでいるというのが一つございます。  それから二番目には、わが国のような終身雇用慣行とは異なりまして、いまお話しのございました先任権制度とか、あるいはレイオフというような慣行のもとで、若年層中心失業者が発生しやすい雇用慣行にあるということがございます。それからもう一つ女子労働力率が上昇しておることとか、それから特に欧米の中でも、西ドイツでは最近、新規労働力労働市場への参加が非常に大幅になっておるというようなことも聞いておりますけれども、これらのいろんな原因が複合いたしまして非常に厳しい、失業率の高い状態になっておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  なお、アメリカ失業のうち、非白人の失業率は昨年の十二月現在では一八・八%というふうになっております。
  10. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 ですから、ヨーロッパアメリカと比較して日本が非常にある意味状況がいいという説明が多いんです。これを私ども安易に聞いているんですけれどもね。しかし、実際にそこのところに非常に大きな問題があるような気がするんですね。というのは、日本の場合は、労使関係がいわば企業別であることとか、あるいは年功序列、終身雇用システムがあるとか、こう言われていて、雇用がある意味で水ぶくれになっている。外国の場合は、若年労働者シニアシステムでどんどん切るから失業がすぐ出る。だから外国は出やすいと言うけれども世界経済実態先進工業国に対して大体同じに働いているんだから、恐らく、このままでいくとなかなかむずかしい経済状態じゃないか。  企画庁来ておられるとすれば、まず、そこをちょっとお聞きしたいんですけれども新聞やなんかの報道を総合しても、ヨーロッパアメリカ成長率のことしの見通しが悪い。特にヨーロッパはむしろ成長率を下方修正している。それから設備投資意欲が非常に衰えておって、失業率むしろ増大を見込んでおる。ベルギーなんかはもう失業が一五%になってきています。そういう情勢日本だって当然響いてくるはずです、世界市場が狭くなっているんだから。そうすると、経済実態は同じなんだけれども失業の現象の出方が違うということは、逆に言うと、こらえ切れなくなったときに日本で非常に激しくその問題があらわれてくるのではないか。たとえば若い人とか、女の方とか。これはベビーブームの段階的な差ですから。外国ではいまベビーブーム人たちが新しい労働力として出てきて失業している。日本はそれが一つ前に進んでいるからいいんだというようなことがあるけれども、実は日本のように低い失業率でも、五十五歳以上の中高年齢層失業率日本の方がアメリカより高いんですからね。いま見たアメリカ失業率は非常に高いんだけれども、しかし、五十五歳以上になると日本の方がむしろ高いんです。だから、そういう日本状態がある意味でいい、いいと安心していられるかどうか、そういう点もあるわけなんです。  そこで、まず経済企画庁にお伺いしたいんですけれども、ちょっと時間がなくなったから質問も簡単にしますから、説明も簡単にしていただきたいんですけれども国際金融上の問題等がいろいろあって、経済先行きは必ずしも楽観を許さないと私どもは思うんです。企画庁は、「昭和五十八年度の経済見通し」の中で、「我が国経済民間活動がその主体をなすものであること、また、殊に国際環境変化には予見し難い要素が多いことに鑑み、」見通しを立てましたけれども当てになりませんと書いている。当てになりませんと言うと語弊があるけれども、「これらの数字はある程度の幅をもって考えられるべきである。」と。これはことしの一月につくったやつですけれども、現在の状態から見て、この国際環境変化等の予見しがたい状況をどういうふうに、ネガティブに見られるか、ポジティブに見られるか。雇用に対して、ことしの中間から後半にかけて積極的に見て安心できるかどうか、お答えいただきたいんです。
  11. 菅野剛

    説明員菅野剛君) 国際経済情勢わが国経済に及ぼす影響、それから特に雇用情勢影響についてのお尋ねでございますけれども国際経済情勢の中で最近の一番大きな変化要因というのは原油価格引き下げということであろうかと存じます。  原油価格引き下げにつきましては、一般的に申しますれば、原油価格引き下げに伴って先進国経済、それから非産油発展途上国、これにとってはプラスの影響があるというふうに考えられるかと思います。わが国にとっての影響ということでございますけれども産油国に支払う石油輸入代金は減少する、これがひいては企業の収益の改善設備投資増加要因あるいは物価水準の低下を通じて実質購売力をふやしていくということがございまして、個人消費住宅投資にもいい影響を与えていくだろうということでございまして、最近のこうした原油価格引き下げ中心とします国際経済情勢変化というのはわが国経済にとってもいい影響を及ぼしてくるであろうというふうに考えておりまして、したがいまして、ひいてはその面では雇用に関してもいい影響があらわれてくるのではないかというふうに期待しているところでございます。
  12. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 きょうの新聞によると、海運造船合理化審議会造船対策部会できのう意見を取りまとめたそうですけれども、五十八年と五十九年については一万総トン以上の造船会社三十四社について操業短縮の勧告をしたと書いてある。それから、日経新聞設備投資動向調査というのが発表になっていますけれども、それによると、ことしの伸び率マイナスになっているもの、化学産業マイナス一六・八、石油マイナス二一・四、ガラス・土石がマイナス二五、非鉄金属マイナス一六、機械がマイナス一二、造船マイナス一九・六、輸送機器マイナス二五・三等々です。あと不動産とか海運とか倉庫とか、みんな二割以上の設備投資の減少の見込みです、去年に対して。こういう状況で、石油価格が五ドルないしちょっとそれより多いくらい下がった程度で、雇用のバランスがとれますか。雇用見込みがいいというふうに予測できますか。ひとつそこのところを教えてください。
  13. 菅野剛

    説明員菅野剛君) 御指摘のように、現在鉱工業生産等かなり低迷状態、一進一退の状況にある。これを反映して製造業中心として雇用需要には弱いものがあるということで、私どもといたしましても、現在の雇用情勢は非常に厳しい状況にあるというふうに見ておるところでございます。ただ、今後の動きにつきましては、内外の経済動きを見ますと、米国の景気が底入れしたというふうに見られていることもございますし、先ほど申し上げました原油価格引き下げの好影響ということがございますし、国内的に見ましても、物価安定傾向が続く上に在庫調整の進展が見られるということで、漸次明るい面が出てくるのではないかというふうに考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、そういった中でも産業ごとには非常に低迷している部門があって、それが雇用情勢にも厳しい影響を与えているという現状については、これは厳しい状況があるということは十分認識しておりまして、今後、こういった雇用情勢動きについては十分注意をして対処してまいる必要があるというふうに見ておるところでございます。
  14. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 民間設備投資動向と同時にもう一つ重要なのは民間住宅建設ですね。それで、住宅建設というのは雇用影響が非常に大きいんだと私は思うんですが、建設省はそれをどういうふうに判断しておられるかということ。  それから、民間設備投資民間会社景気先行き見通し等の上で立てられるものですから、私どもとしてもなかなか影響力を及ぼしがたい、景気対策もなかなかむずかしいけれども住宅建設については政府政策によって相当大きく動くと思うんです。住宅建設のネックが何なのか、特に住宅建設一般勤労者に強く及ぼしていくための施策について、建設省労働省でひとつ簡単に御説明いただきたい。
  15. 内藤勲

    説明員内藤勲君) 住宅建設経済的に非常に大きな意味を持っているわけですが、最近の住宅建設は、この二、三年低迷ぎみでございます。その低迷ぎみ原因は、基本的には住宅価格国民住宅取得能力との乖離が広がっている、そういうことだろうと思っております。  したがいまして、建設省施策といたしましては、五十八年度予算編成及び税制改正などで住宅金融公庫個人住宅建設の無抽せん体制の維持、貸付限度額引き上げ、それから税制面では住宅取得控除の大幅な引き上げ、それから中古住宅関係での公庫の貸付対象拡大とか税制改正など行いまして中古住宅の流通を図り、それが住宅建設促進にもつながっていくだろう、そういうことを期待しております。
  16. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 労働省といたしまして、御存じのとおり、住宅の面では財形制度を通しまして住宅建設につきましても関与をいたしておるところでございますが、この財形制度につきましては、昨年財形持ち家個人融資制度について大幅な拡充を行ったわけでございますが、この制度が実際にスタートをいたしましたのは昨年の十月からでございます。  その内容につきましては、まず貸付限度額を大幅に引き上げまして千五百万円を二千万円にまで引き上げましたし、また、個人転貸につきましては、利子住宅金融公庫の場合と比べまして高いというようなハンディがありましたので、一般会計による利子補給制度を導入いたしまして、最初の二年間につきましては二%、次の三年間につきましてはそれぞれ一%の利子補給を行うということで貸付利率引き下げを行いまして、財形持ち家個人融資制度につきまして、勤労者のより借りやすいということの制度改善を図っております。  そのほかにも、さらに細部につきましては、先ほど建設省からも御説明がありました中古の問題につきまして制度改善を行ったわけでございますが、従来は耐火構造住宅だけでございましたけれども、その対象範囲を広げまして、簡易耐火構造や木造につきましても、財形持ち家個人融資制度につきまして対象範囲拡大を図って貸付条件を見直したところでございますが、今後とも、新しい制度につきましては昨年十月から発足したばかりでございますので、さらにPRに努めまして、利用の促進、活用の促進を図っていきたいというふうに考えております。
  17. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 ちょっと時間が足りなくなってしまいましたので、結論に、労働大臣に御質問をいたしたいと思います。  いまお聞き及びのように、私は、最近日本経済が非常に安定して、諸外国に比べても状況がよかったために、雇用対策についての御発言がちょっと弱かったんじゃないかと思うんです。それからもう一つは、不況対策関連して、局所的な雇用対策というのが政策の主眼であったと思うんです。しかし、世界的な同時不況は鎮静に向かっているという意見もありますけれども、非常にまだ少数意見ですけれども、大変危ないという意見も実はあるんです。そうなると、大量失業が発生したときに、日本のように、従来バッファーが多くて諸外国と違って簡単に失業が出にくい体質の場合には、経済的に非常に大きな影響が出てきて、失業もまた深刻になる可能性がある。そういう場合の対策はなかなかとりにくいので、実はそういう場合の基本的な対策についての準備をひとつお考えいただきたいということ。  それから、景気対策に対してもう少し積極的な御発言がいただきたい。特に、予算が通った後で景気対策を練り直すというお話でございます。景気対策は、やり方によりますと、いま為替が自由化しておりますから、日本の円高がたちまち円安に変じて、外国から非常に問題にされるような状態もあって、景気対策がなかなか積極的にとりにくい経済情勢でもあるわけなんです。しかしながら、景気対策の中に雇用を重視した景気対策というものをぜひ政策的に取り入れておいていただかないと、いざというときに大変困ることになる。特に、そういう場合には、いまお話が出ていました住宅対策に対してもう少し勤労者が手に入れやすいような住宅対策をお考えいただきたい。非常に政策的にはうまく出ているんですけれども、大変手続がめんどうくさくて、なかなか金が借りにくくて、銀行なんかに委託しておる場合は、銀行はもうそういう財形制度なんか使うよりもうちの金を借りてくださいと言うところが多いという話も聞いていますので、そういうことのないように、ひとつ景気対策の中にしっかりした具体的な雇用政策を入れていただくように労働大臣にお願いしたいと思うんです。
  18. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいま先生指摘のような点、多々見受けられるものもございます。確かに、欧米諸国に比べてわが国の今日の現況というものはまあまあいいじゃないかという楽観論があることも事実でございます。といって、労働省は別に手を抜いているわけではございません。今日まであらゆる形で、失業の予防であるとか雇用の確保であるとかということに鋭意努力をいたしてまいりましたけれども、しかしながら、日本を語る場合でも世界を語らなければならないというようなことが近年非常に多くなってきておる。また、その中身も非常に濃くなってきた。こういうものに対応して、いずれにいたしましても雇用対策というやつは景気の問題、経済の問題ございますから、企画庁その他の関係省庁とも連絡をとって、できる限りのことをいたしております。  ただ、労働大臣発言が少ないということでございますので、ひとつ先生の励ましの言葉と受け取って、これから大いに努力をしたいと考えております。特に住宅の問題、確かに政府関係の融資ということになると非常に手続がめんどうだ、そのために銀行が直接貸してあげるからということになれば、やはり借りる方も安易な方がいい、簡便な方がいいというのも当然の志向でございましょうから、これらの点もひとつ勉強さしていただいて、なるべく借りる方々が借りやすい方向、こういう方向に指導できるような体制をつくっていきたいと考えております。  いずれにいたしましても、非常に厳しい状態であり、また、先ほど経済企画庁からの話で、いろいろ明るい材料、これも確かにあると思います。しかしながら、アメリカ景気が多少よくなったからといって日本がすぐという影響力があるものでもなし、また、原油もバレル当たり五ドルも安くなったといって、それがすぐあした日本へ入ってきて、それがまたすぐ経済に反映するものでもなしということを考えますと、まだ先行き非常に厳しい時代を迎えますので、ひとつそれらを踏まえて、今後とも先生の御意向に沿うようにがんばっていく次第でございます。
  19. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 終わります。
  20. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 時間も三十分に限られておりますから、政府側の答弁もひとつ的をしぼって簡潔、明瞭に答えてもらいたいと思います。  まず、大臣雇用認識について、最悪の雇用事態を迎えていると私は認識をしているわけでありますが、大臣の姿勢を、お伺いしたいのでありますけれども、いまも出ましたが、この間八日の閣議で、総務長官の発表が百六十二万、二・七二%の失業率である、最悪の事態だと。これに対して労働大臣はそうではないという、何かどうもいちゃもんをつけたような新聞発表になっているのでありますが、この点ひとつ、時間がありませんから、端的でいいですから、そういう姿勢であるというなら問題だと思いますので、まず答弁を聞いてから御質問をしたいと思います。
  21. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいま先生指摘の閣議の模様でございますが、これは三月八日だったと思います。総理府総務長官から労働力調査報告がございました。そのときに、二・七二というような非常に高い率を承ったので、これは別にいちゃもんという意味ではございませんが、私どもやはり毎勤統計であるとか、求人倍率であるとか、あるいはまたその他の安定機関から受けている報告と余りにも、非常にかけ離れておる。これは数字が間違っているとか、あるいは調査の方法が悪いとかという意味じゃございませんで、労働省の知らない面でそういうことがあるとすれば、ひとつこれでもって勉強もしなきゃいかぬし、考え直さなきゃいかぬ、こういうことで、どういう形で調査をしたんだと。そうしたら、調査の方法は三万から四万にしたと。人数がふえるということは調査内容がより厳しくなったというふうに私、受けとめましたし、より正確になったというふうに受けとめたので、これは労働省がもたもたしちゃいかぬのじゃないかと。それからまた、地域も変えたというようなこともございますから、そういう点も、私ども中身を知りませんから、一応お聞きしたいなと。こういう気持ちから、本当に雇用動向というか、失業者方々のことを考えた上で質問をしたのであって、いちゃもんという感じではございませんでした。
  22. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま大臣から正確に報告されたようですから……。  新聞報道によれば、やっぱり総理府の調査に対して、いま大臣からもありましたが、三万が四万になるということは、これは精度が高いということですから。職安の調べというのは、御存じのとおり、一定の失業者が窓口へ行っても、全体地域の掌握にはなっていない。こういう点からいけば、私は精度としてはやっぱり総理府の広範囲な地域を調べていくということの基本認識に立たなければならない。そういう意味でお伺いしたということですから、その点はそういう認識でよろしゅうございますか、厳しい認識だということで。
  23. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 結構でございます。
  24. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そういう厳しい認識だということを受けとめているようでありますが、私はやっぱりこの問題で大事なことは、労働力調査という場合に、総理府でやった場合は十ブロックの地域の範囲ですね、仮に四万にしても。しかし、将来はやっぱり四十七都道府県全体の地域で、世論が反映される、労働力調査が反映される、こういう方向に私は改定すべきだと思うんですよ。むしろ、三万が四万はもちろんですけれども、十ブロックでなくて、地域全体が全体把握ができるように、そういう調査の方向にやっぱり改善をしてもらいたい、こう思っていますが、いかがなものですか、この点。
  25. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) いま先生指摘労働力調査、実は総理府統計局でやっておりますので、労働省として直接そのサンプルをふやすというわけにはまいりませんが、そうした御趣旨の点はまた総理府の方にも伝えまして、今後の研究課題とさしていただきたいと思います。
  26. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 まあそういう反映をして……。もちろん総理府のあれですから。  ただ、私が申し上げたいのは、きのうもここで派遣報告がございましたね、香川県と兵庫県の両県の調査報告がございましたけれども、北海道も含めていずれも言えることは、言うまでもなく素材産業失業率、それから出稼ぎ労働者の増大、不安定労働者というパート、臨時工、これがどんどんふえていっていますから、まあ認識は、いま大臣が厳しいということで対応していきたいと、こういうことですから、そのことはいま時間もありませんから多くは申しませんけれども。  ここではっきりしなきゃならぬことは、やっぱり大臣、先ほども大坪先生からございましたけれども、私は労働大臣という立場からいきますと、むしろ雇用対策を最重点に考える。これは所信表明にも雇用対策についてございましたけれども、そうであれば私はやっぱり何といってもいま話に出た、景気が落ち込んでいる、景気対策をせねばならぬ、この観点に立つとするならば、やっぱり内需拡大のための所得減税をやるべきであるとか、あるいは公共事業の前倒しなどの公共事業の問題、こういう閣議でのそういう姿勢が、僕はやっぱり労働大臣をいままで見まして、このことに一言も触れられていない。これはもちろん立法府と行政府は違いますけれども、それは議長見解で与野党合意したと言えばそれまでですけれども、むしろ僕は労働大臣の立場から、私の言いたいのは、ことしの春闘問題を通しても、あるいは所得減税でも、やっぱりそういう雇用創出のための意欲的な閣議での発言というものがあっていいんじゃないかと、こう大坪先生と同じ認識を持っているんです。  この点、私はそういう意味で具体的な例を出しました。今後こういう問題をもっと積極的にやっぱり、もちろんこれは中曽根内閣の閣僚の一員でありますけれども、そこらあたり、今後やっぱり景気浮揚とそれから内需拡大のための対策と、そして雇用対策の重点対策、もちろん後日、不況離職者臨時措置法、業種指定地域指定一元化法案出ますけれども、それだけで私は事足りるとは思いません。やっぱり先ほど言った不安定労働者が、これはもう北海道の場合でも出稼ぎが三十二万、これはパートや臨時工がふえてくる、逆に切り捨てられている、こういう問題が出ていますから、そういう意味でも労働大臣の先ほどの非常に厳しい認識であるとするならば、今後雇用対策を含めてどういう対策で臨まれるのか、この点大臣からひとつ考え方をお伺いしたいと思います。
  27. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいまのお話でございますが、労働大臣何にも閣内でやっておらぬじゃないかとおしかりを受けたわけでございます。私は、決してやっておらぬわけじゃございませんで、二月十二日に、私の地元でございましたが、記者会見をいたしまして、いずれにしても雇用問題は大変である。これがまた私が大臣に就任してからの一貫した姿勢でもあるし、この際ひとつ来年度の公共事業の前倒しであるとか、金融政策面からのてこ入れであるとかということは当然であるが、減税も必要であるということも発言いたしております。ただその場合に、金額的に幾らがいいとかということは申し上げません。ただ、景気浮揚に資するほどのものと、きちんと私は言っておるところでございます。そして、その記事が出た後に、二月の十四、五日だったと思いますが、衆議院の予算委員会、その日は労働大臣は出てこないでよろしいということになったのが、急に出てこいということでございまして、あのとき質問者の川俣健二郎先生と藤田高敏先生から、労働大臣何だ、かっこうのいいこと言ってと、こういうことでございました。地元だけサービスするのかと。そうじゃなく、よく新聞を読んでください、また昨日の答弁を見てくださいと言ったら、むしろ藤田先生がわかった、わかったということになったんですが、それくらい腐心はいたしているところでございます。  しかし、直接所管の大臣でもございませんから、経企庁であるとか、あるいはまた大蔵大臣であるとか、あるいはまたその関連の閣僚にいろいろお願いはいたしております。やはり雇用雇用と言っても、景気の回復なくして雇用だけひとり歩きというわけには参らないということは当然の理でございますから、その以前の問題としてやはりこの働く人たち失業の予防であるとか、再就職をするための促進というか、雇用機会の開発とか、こういう最大の努力をしつつ、また同時に、一方においてそういうような景気浮揚についてもいま誠心誠意努力をいたしておりますので、中曽根内閣はなかなか働く内閣と世に言われておりますけれども、それだけに予算委員会も九時半ごろから始まるということになると、九時からの閣議で本当にそれを論じている時間も現況ございませんが、まあ予算でも上がったら一生懸命やろう、こう思っております。
  28. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 一応大臣が非常に厳しい雇用認識だということは先ほど私の質問に答えていますから……。  私は、やっていないというのでなく、これからやるというのであれば、いままでもやってきたというのであれば、特にこの間の言うならば仲裁の完全実施をすると。大臣にこれは理事会で委員長から発言しましたね。これだって、いま聞きますと、もう三月末を目前に控えてもいまなおこの年度末手当の問題が未解決である。こういう問題は、やっぱり全体の消費拡大につながっていかないんじゃないかということも一つありますし、そういう意味で私言いたいのは、所得減税も公共事業ももちろんこれは総括的な対策になるわけでありまして、いま申し上げたこともございますけれども、含めてひとつこれから雇用創出のために、景気浮揚の一環としてのいま言った公共事業あるいは所得減税、あるいは公労協関係、人事院勧告等も含めて、ひとつ大臣としてあらゆる機会に雇用創出のために努力をしてもらうという基本姿勢はいかがですか、この点は。
  29. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) これは私としてもできる限りのことをさしていただこうと、こう考えております。
  30. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そういう大臣の前向きの姿勢でありますから了として、ひとつそれを積極的に今後実るように努力をしてもらいたいと特に申し上げておきます。  そこで、北炭夕張の対策につきまして、雇用対策問題で、実は労働省谷口安定局長あるいは審議官を通しまして閉山後の雇用対策についてそれなりの努力を払っていただきました。その点は私も多とするのでありますが、現実にいま閉山がされましてから、実は雇用保険がもう一部は切れている。まあ六月、八月で大体全部切れる、こういう状況で社会的問題になっているわけです。当時、当委員会で前の初村労働大臣は、まさに社会問題であるので、これは最優先の課題としてできるだけのことはしたいと、こういう基本姿勢を示されまして、現地に職業安定所の窓口を開設したり、あるいは相談員をふやしたりということで対応していただきました。  そこで、具体的に私はひとつお伺いしたいのでありますが、現在の再就職の状況、それから雇用保険の適用状況、これは時間がありませんから簡単でいいですから、事務方でひとつ答弁してください。
  31. 増田雅一

    政府委員(増田雅一君) 北炭夕張新鉱の解雇者は二千四百四十六名でございましたが、そのうち二千七十七名が求職をされまして、現在までに六百八十六名が就職をされております。そのうち、石炭事業所へ就職された方が六百三名、その他の事業所が八十三名でございます。現在未就職者が千三百一名残っておられるわけでございます。  雇用保険の受給状況でございますが、この三月いっぱいで、これは所定給付日数九十日の方が二十七名ほど所定日数の給付を終えられます。来月、四月になりますと、百八十日分の所定給付日数の方が大部分切れることになります。それから、いま先生指摘のように、八月には二百四十日分の所定給付日数の方の大部分が切れることになりまして、以下、秋にかけまして三百日分、つまり五十五歳以上の高齢者の方の所定給付日数が切れるという状況でございます。
  32. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣、いまお聞きのとおり、いまなお千三百一名末就職の方がいるわけですね。それに対して、新会社というものをいま鋭意われわれも、これは大臣もお聞きになっておると思いますが、山中通産大臣にもこの間お会いしまして、これは予算委員会でも出ましたけれども、一応四月をめどにできるだけのことはしたい、こういうことを言っていますが、ともあれ、雇用保険が切れてしまって、炭鉱の特殊事情ということを労働省は一番認識をしておると思うのでありますが、実は、管財人との間の福祉施設の協定というのが四月末で切れるわけです。四月いっぱいで終わっちゃうわけです。そうしますとどういうことになるかといいますと、家賃、水道料、屎尿処理、これは五月一日から全部本人負担になるわけであります。そうしますと、どの程度になるかというと、大体二万四、五千円の負担増になるわけです。浴場も全部なくなっちゃうわけですから、炭鉱で言うと共同浴場ということになるわけですが、これを全部自分で持ち出さなきゃいけない、今度共同浴場をつくるために。こうなると、二万四、五千円の出費となると大変な負担になって、社会問題になることはもう明らかです、五月一日から。  そういう状態を踏まえまして私は、これ、雇用保険の切れてしまった場合には言うまでもなく炭鉱離職者臨時措置法に関連しまして、俗に言う黒い手帳ということになるわけでありますが、これでは一番何が問題かと私は申し上げますと、つまり黒い手帳でいった場合の前職賃金は四千百三十円なんですよ。ところが、現行の雇用保険を継続して基本手当を継続していきますと、六千六百七十円になるわけです。――大臣、このやりとりをちょっと聞いておいてもらいたいと思うんですよ。そうすると、このうちから二万五千円も払ったんでは、まさしく生活保護法以下なんですよ。いま、東京都の一級地の生活保護は何ぼになっていると思いますか。現在八十六万いっているんですよ、生活保護世帯で。大体いまの世帯数でいくと大体この方々になるんですけれども、これでいくと十一万足らずですよ。そうすると、十一万か十二万で、そのうち二万五千も三万も払ったんでは、もう生活できないと言うんだ。これは夕張市長からも、自治体からも、市議会の決議が上がっているんですけれども、こういう問題を踏まえまして私なりに検討をしてみましたが、これらの対策について、できるものとできないものを、この点はできます、この点は問題ですということを労働省としてはどうふうにお考えになっているか、この点ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  33. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 北炭夕張の問題につきましては、災害発生以後その後処理等につきまして、大臣を先頭に私どももできるだけの努力をいたしまして、関係の労働者の方々雇用の安定に努めてまいったつもりでございますし、また、やむを得ず離職をされる事態になったわけでございまして、この離職者対策につきましても、ただいま先生も御指摘ございましたけれども、労働本省、また道庁、出先にも対策本部を設けまして、最重点の一つとして省を挙げて取り組んでおるところでございます。  したがいまして、いま離職されて求職中の方々の対策につきましては、これも御指摘ございましたように、現在、所定給付日数がもう切れた方々が一部おられますが、雇用保険の失業給付を支給する一方で、いろんな形で職業相談を進めておるところでございまして、私どもとしましては、できるだけ本人の意向もくみながら希望に沿った就職のお世話ができるようなところに重点を置いて業務を進めてまいりたいということで考えておりまして、そのために、たとえば再就職するために必要な技能を身につけるための職業訓練の受講あっせんをいたしますとか、あるいは現地にそういう相談の体制をつくりまして、相談をするとかということを進めてきております。  そこで、お尋ね雇用保険の問題でございますけれども、いままでのこの炭鉱離職者方々に対します就職援護の体系自体が、離職後一定の期間雇用保険を支給する、雇用保険が切れた場合におきましても、なお離職から三年の間は就職促進手当を支給しながら対応していくという、こういう、ほかに比べましてはかなり手厚い対策でいままでずっと推移をいたしてきたわけでございまして、そういう仕組みの中では、たとえば雇用保険の中でございますと、再就職のために必要な訓練を受けるというようなことで、受給期間中に訓練校に入校するとか訓練の受講に入るという方々には訓練延長の制度とか、それからまた、四十五歳以上の方々で所定の要件を満たされる方々には個別延長の給付を行う、措置をとるというような仕組みもございますが、そういう仕組みを活用しながら、やはり最終的にはできるだけ本人の希望に沿った再就職を促進できるような対応をしていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。
  34. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 安定局長、考え方としては、私も現行法、雇用保険法を調べましたから。私の言いたいのは、いま答弁もありましたけれども、四十五歳以上の個別延長、これ、数を見ますと余り大した数になっていないね。個別延長というのは八人にしかなってないんだ、該当が。これは積極的に指導をしてもらって、やっぱり個別延長ということをひとつ考えてもらいたい。それから、いま出ました訓練延長、これ一年あるわけですね。これだって、本人の希望にもよりますけれども、二十人ですよ、はっきり申し上げて。これではやっぱり本当の地域社会への対策になっていないんじゃないか。地域がもう大変だという危機状態にあるということですから。  そこで私の言いたいのは、ここをひとつ検討してもらいたいということです。個別延長できるものは最大限やってもらう。それから訓練、これも訓練といったって岩見沢ですから、これとてもあなた、夕張から岩見沢まで行くには大変なことですからね。だから私はこれができないかというのは、夕張なら夕張市に訓練委託をさせる、夕張に訓練委託の講習をやらせる、その中で訓練延長ということを考えてもらいたい、これが私の考え方の一つです。それからもう一つの、これは広域延長がありますけれども、広域は法の精神からいきますと限られていますから、これはどこまで限界があるかは別ですけれども、検討してもらえないか。そこで私は、ここらあたりを弾力的にひとつ運用してもらいたい。現地も御指導願っていますけれども、それをやらないと非常に生活不安がつのって、これはオーバーな言い方でも何でもないのでありますが、恐らくこの問題では大変な、夕張で暴動が起きるんじゃないかという、治安維持の問題まで出てきているということを夕張市の市議会でも議論されているんです。だから、そういう問題があるものですから――それは優遇されているといったって、四千何がしで生活をせいと言ったって、さっき言った福祉施設の手当てがなきゃ別ですよ、福祉の関係でこれから二万五千円ないし三万円持ち出していくわけですから、そうなると大変なことになってしまう、生活保護法以下どころでなくなってしまうということもあるものですから、ここらあたりをひとつ考えてもらいたい。  それからもう一つは、これはもちろんこれから法案に関係するわけですが、つまり、不況離職者臨時措置法、これの業種指定、地域指定、これはまあ通産省との関係はもちろんございますけれども、ここらあたりを、地域指定ということになれば不況離職者臨時措置法の適用になるということもこれはあるわけでございまして、ともあれ私がいま申し上げたのは、一つは個別延長、それから訓練の関係で広域延長、これなかなかむずかしいけれども、訓練延長、こういう問題を地元で職業訓練委託をして、何とか開く道がないかということを私なりに本当に思い余って、これ検討して、そして法制局にも検討をさせましたが、そこらあたりはある程度可能ではないかという議論も、これ、法制局の参考意見ですよ、決して断定ではありませんけれども、また、各界の意見も私聞いてみました。そうすると、大体そういう問題ではできるだけ弾力的運用にということで、やっぱり給付を延長することは対策の面ではでき得るのではないかということもございますので、ここに的をしぼっていま申し上げているわけですけれども、こういう面をどういうふうに今後検討していただけるかということをひとつお伺いしたいと思います。
  35. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) いま先生の御指摘になりました雇用保険の給付の取り扱いの問題につきましては、夕張の離職者方々で、非常に深刻な状況にあります皆さん方はそういうこれから申し上げる事情はないかと思いますけれども、中には、たとえば給付の延長だけを目的とされまして、受給期間の終わりそうなころに訓練を希望されるとかいうようなこともあったりしまして、実は最近会計検査院からはむしろそういうものは適正にするようにというような指摘も受けておるような状況でございます。要は、やはり本人の意向等にも沿いました適確な再就職ができるということが問題でございますので、そういうことを前提に、やはりいまの仕組みはできるだけ活用をいたしまして、再就職につながるような努力が必要だろうかと存じます。たとえば、職業訓練にいたしましても、本当に離職者の個々の事情に応じましては、訓練校へ入校しての訓練だけではなくて、委託訓練というようなこともあるわけでございまして、そういうものは、現地なり、あるいは離職者方々のいろんな条件等も勘案しながら考えていかなきゃならぬことかと思います。  なお、これから御審議いただきます特定不況業種の指定の問題につきましては、この問題につきましては、せっかくの御指摘でございますけれども、実はこの法律自体が、現行法もそうですけれども、最近における経済事情の著しい変化によって、いろいろ影響が出てきているということで、それぞれ対策で、産炭地域につきましては産炭地振興法なり離職者法と、こういう体系で、こちらは最近のエネルギー問題あるいは国際経済問題等での対応ということで、体系も異なりまして、その辺の問題はむずかしいかと思いますが、要は、先ほど来申し上げておりますように、現行の仕組みをできるだけ活用いたしまして、再就職につなげられるような努力をしていきたいというふうに存じます。
  36. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 先ほど私、個別延長あるいは訓練延長、広域延長ということを申し上げましたが、いま局長から、現行法のあれで最大限のことをひとつやっていきたいという基本姿勢が出ましたから、理解します。  問題はね、私はここを認識してもらいたいんですよ。新会社をつくるということは、われわれの基本方針ですからね、これは、夕張市議会ももちろん議決をしているし、われわれ自体も安倍通産大臣とも約束をしているわけですから。そこなんですよ、大事なことは。これは会社をつくらないんじゃないんだ、つくるんだ、新会社を必ず実現させるんですよ。それだから、私はあえて言っているわけですよ。新会社に仮に行ったとしても、いま現在千三百一名でしょう。千三百一名の会社はできないんですよ。この前から申し上げているように、新会社が発足する四月にも検討結論を出すということになっているわけでありますが、仮に新会社ができたとしても、最大限できても五百です、これは前からのもう方針ですから。一切羽というのは――私、炭鉱マンだから言うわけでありますが、一切羽体制でスタートをするというのがこれの考え方ですから、一切羽というのは大体五百人ということなんですよ。それであと八百人これは余るわけですね。いますぐどうしたってこれは八百人ぐらいの再就職をしなきゃならぬ。  だから、安定局長、家にいて、遊んで金をもらうという人はいませんよ、これはもう。それはあなた、金もないのに夫婦げんかして、嫌な顔見て家にいるなんという労働者は一人もいない、これははっきり申し上げて。一刻も早く、雇用が安定できるように、また二度と再び倒産にならないように、閉山にならないようにというのが炭鉱労働者の願いでありまして、そういう意味で私は申し上げているわけですから、いま申し上げました個別延長あるいは訓練の委託を夕張でやる、これも検討してもらいたいが、それを最大限にやってもらう。それでやっぱり再就職の道を早く定着させてもらう。同時に、できるなら広域延長をひとつ検討してもらいたいと、こういうことを申し上げているわけでございます。  この点、時間もありませんけれども、いまの局長とのやりとりを聞きまして、大臣として、いま私が申し上げたこの夕張問題というのは、全国的な、あれだけテレビを騒がし、マスコミを騒がして、まさに社会的な、人道的課題であると当時の前労働大臣もおっしゃっていただいて、労務債の返済や雇用対策にできるだけのことは万全を期しますと、こういう当委員会での答弁がございます。会議録が残っております、私の質問に対しまして。だから、現労働大臣として、この前陳情を現地から申し上げていますけれども、いまのやりとりをお聞きになって、私が申し上げた点について、大臣としてこれからどういうふうに積極的に取り組んでいただけるかということをひとつお伺いしたいと思います。
  37. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 夕張の問題につきましては、局長が冒頭申し上げましたように、労働省といたしましても非常に深刻に、また、真剣に受けとめております。そのために、大臣を初め私どもはという発言ございましたが、そのとおりでございまして、また同時に、私が就任して間もなく、先生初めいろいろ御陳情も賜りましたので、その趣旨もよく理解はいたしております。  ただ、個々の中身につきましては、局長からも技術的な問題等々もございましたように、非常に難儀な点もございますけれども、ひとつ引き続き検討をして、できる限り努力をしていきたいと考えております。
  38. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それでは、いま、引き続き誠意をもって検討をして解決に当たりたいと、こういうことですから、その点を踏まえて、この問題について本当に責任ある立場でひとつ問題の解決に当たってもらいたいと、このことよろしゅうございますか。大臣もう一回ひとつ。
  39. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) はい、そういたす所存でございます。
  40. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 では、以上で終わります。
  41. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 時間の都合で、質問が午前と午後に分断されますので、質問内容を若干組みかえて質問しますので、御了解を賜りたいと思います。  初めに、昭和五十五年以来国会で、衆議院、参議院で論議されている神戸精糖の労働争議問題について、午前中伺っておきたいと思います。  昨年十一月十五日に全員解雇という事態が生まれ、それ以来兵庫県では非常に大きな社会問題となって、兵庫県会、神戸市議会でいろいろ論議をされておりますが、この問題について兵庫県から労働省に対して、問題解決について協力要請があったかどうか、まず、その点からお伺いしていきたいと思います。
  42. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 神戸精糖の問題につきましては、先生指摘のように、ついに全員解雇というような事態に立ち至ったわけでございまして、それまでもいろいろ経緯がございまして、私ども、地元の兵庫県とは、ここに至ります前から連絡をお互いに取り合って、いろいろと円満な解決に努力をいたしてきております。そういう意味で、私としては、特定の要望というふうな改まった形では聞いておりませんけれども、ともに同じ気持ちでいままで連絡を取り合って解決に努力してまいっておりますし、これからもやっていこうということで、お互いの意思は一致しておるものと考えておるところでございます。
  43. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いまの答弁は、労働省に対しては、特別にこの問題の解決についての要請がなかったというふうに理解していいんですか。
  44. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 大変私の答弁がまずかったと思いますが、兵庫県としても非常に努力はしているけれども、県段階だけでは必ずしも十分解決できないということで、私どもにもいろいろ話がすでに前からもございましたし、いまもございます。そういう意味では、お互いにともに取り組んでいこうということで、お互いの気持ちを一致させて今日まで来ておるということを申し上げたかったわけでございます。
  45. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 労働省としては、昨年の四月衆議院の社会労働委員会でこの問題が論議された際に、解決のために手伝うことがあれば手伝っていきたいというふうに努力も約束されましたし、また、その当時の初村労働大臣も円満な解決を願う見解を表明をされております。  労働組合並びにその問題解決を願う労働者は、こうした労働省なり労働大臣の積極的な解決への発言を非常にありがたく思い、それに力を得ていろいろ努力しましたけれども、先ほど言いましたように全員解雇という最悪の事態を迎えてしまいました。その後、一月二十八日に兵庫県地方労働委員会が、この問題に関して神戸精糖と丸紅に対して労働組合との間で交渉により問題の解決に努力するよう要望書が出されました。この要望書は昨日私労働省の方にも写しとして渡したはずでございます。  しかし、今日までこの地労委の要望にもかかわらず、神戸精糖も丸紅もこの交渉による解決という問題について全く無視をしている状態になっております。  このことについて私は、世界をまたにかけて商いをしている丸紅という商社、あるいは神戸精糖というこの企業の経営者に対して激しい怒りを覚えるわけでございますが、こうした状態を見るときに、地労委がこうした要望を出しても全く無視をしていくというふうなこういう経営者が存在をする、こういう状態はある意味では労働行政そのものが不在ではないかというふうな考えもできると、こう思います。  そういう意味で、労働省として丸紅あるいは神戸精糖両社に対し、地労委のあっせんというべき中身のこの要望を尊重して労働組合との間に交渉による早期に問題の解決を図れというふうな働きかけをいままでの経緯から言えばやっていただいても決して労使に対する行政の介入というふうなことにはならないと、このように思うんですが、いかがでございますか。
  46. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 私どもといたしましては、先生から御指摘ありましたように、この問題が衆議院の場でも取り上げられておりますし、また、いろいろな機会を通じまして国会の先生方からの御要望も直接聞いております。そういうことを背景としつつ地元の兵庫県あるいは農水省と連絡をとりながら、労使双方といままでに数次にわたり私どももお会いをしていろいろ事情を聞きながら紛争解決のための話し合いが促進されるように努めてきたところでございます。  現在、先生指摘のありましたように、地労委から不当労働行為事件の審査に先立ちまして、不当労働行為事件であるかどうか、あるいはまた、丸紅という直接の会社ではないところが使用者であるかどうかということはさておき、とにかくそういうことの前に労使で話し合っていただきたいという地労委会長の要望が出され、それを受けて直ちにまた兵庫県の労働部から地労委の要望の趣旨に沿って交渉を行うようにということを会社側に要請もしておるわけでございますが、それが現在のところまだ十分な効果をあらわしていないという現状にございます。そういうことで、私どもこれからも兵庫県なりあるいは農水省と十分連絡をとりながら何とか円満な解決に向けて話し合いが促進されるように引き続き努力をいたしていきたいと思います。  この問題の背景には、先生御承知のとおりに精糖業界の厳しい現状があり、会社経営の赤字がこれ以上拡大するといけないということで去年以来工場閉鎖をし、そしてついに全員解雇になってしまったと、こういう非常に厳しい背景がございます。それだけに、簡単に解決のできる問題ではない非常にむずかしい問題だと思いますが、どんな形をとっていくにせよ、やはり労使が不信感を持っておったんでは事態をますます悪くするわけでございますので、私は、過去のいきさつはいろいろありましょうが、その不信感を払拭して円満な話し合いによって事態の解決を図っていくように願っておりますし、これからも努力していきたい。それは労働行政として不当な介入とかいうようなことは避けなければならないことはもちろんでございますけれども、円満な話し合いを促進していくことはむしろ労働行政の務めであろうかと考えております。
  47. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 さらに、次のようなことも起こっています。  一人の社員が二月二十五日に退職しました。退職しましたというか、全員解雇になっているんだから解雇された者が退職するというのはおかしいんですが、退職金が規定の三分の二しか支払われていないというような状況もあって、全員解雇を認めず皆がんばっているという状況の中で、やはりいろんな事情で退職を実際にしようという人が出てきます。二月二十五日にある一人の社員が退職しました。そのときに会社は、こういう承諾書というふうなものを書かします。それはこういう中身です。「神戸精糖株式会社の工場閉鎖と全員解雇について、私は退職を承諾し、退職金等を受領したからには、以後一切異議を申し立てることはありません。以上」、そして住所、氏名、捺印。この承諾書を出さなければ退職金は支払わないと、こういうことを会社は言っております。三月二十二日に至るもまだ退職金は支払われていない。  この件について労働基準監督署は、労基法第二十三条によって退職金を支払いなさいという見解を会社に対して出したんですが、いまだにその問題についても具体的に何ら対応しないということも発生をしているんです。  私は、労働基準監督署がわざわざ見解を出すまでもなく、労働基準法第二十三条によって当然支払われなければならないものを、こういう一つの承諾書というふうなものに判を押させる、それがなければ出さないというこの会社の態度が、先ほど労働省の方も言われたように、労使円満なという、問題に対する会社側の姿勢を端的にあらわしていると、こう私は思っているんですが、これはどういうことなんですか。労働基準監督署の見解そのものに従わずに、この承諾書に判を押さないということでもって退職金を支払わぬという事態がこのまま続いていけばどうなるんですか。
  48. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) いま先生お話しのように、全員解雇の問題につきましては訴訟で争われているわけでございますが、中にはこの解雇を認めるという社員がいらっしゃいまして、それでこういう方につきましては請求がありますれば使用者は七日以内に支払わなければならぬということは、おっしゃいましたように労働基準法上決まっておるわけでございまして、監督機関からも会社に対しまして指導を行っておりますが、私聞きますところによりますと、ごく最近になりまして、いまおっしゃいました文書につきましても、どういう内容、表現にするかということでこの社員の方が組合の方にいわば委任をされておりましたが、組合の委任を受けた方と会社の間で文章表現につきましても合意がありましたようでございますので、このような情勢がありますれば、私どもは、問題は実質的に解決したわけでございますので、ごく近々に退職金も支払われることになるのではなかろうかというふうに思っております。
  49. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 何かおしまいの方が聞こえなかったんですが、円満にこの問題は解決をしているということなんですか。
  50. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 問題の文書につきましても、内容につきましては組合と会社との間で一致いたしましたので、私どもとしましては、この問題は実質的に解決しましたので、退職金の支払いもごく近々に円満に行われるのではないかというふうに思っております。
  51. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、近々払われるであろうといって、国会でこの問題を取り上げて払えるようになったからよかったななんというような、そんな論議をしているんじゃないんで、あたりまえのことをやらない丸紅という商社、あるいはまた、神戸精糖のやっている労働者に対する嫌がらせ、労働組合に対する、どういうんですか、前近代的な対応の一つの事例として申し上げたんですよ。  そこで、もう時間もありませんから、最後に労働大臣に私は一つの答えをいただいて、きょうはこの問題の質問はとりあえず終えておきたいと思うんです。  労働大臣も、この経緯についてはお聞きいただいておると思いますから、いまさらここでるる申し上げる必要はないと思います。しかし、丸紅というこの商社は、問題になっている神戸精糖そのものの運営は神戸精糖の鈴木社長に任せて関知はしないと、関係ないんだと言いながら、事実鈴木社長が精糖工業会から脱退するんだというふうな発言をするとあわててそうではないんだと脱退を否定したり、あるいはまた農水省との話し合いで神戸精糖のいままで持っていた砂糖のシェアの確保を図る。まあいわば砂糖をこれから精製していくという意思を一方でははっきり持っているわけなんです。  神戸精糖の方も、これといった業務もないのに管理職のみを全員再雇用していく。また、昨年九月、工場敷地の借地契約を更新をしている。こういうふうに、全員解雇あるいは閉鎖による内部整理ということと、一方ではこのように会社を再開して事業を再びこれから進めようとする、そうした動きが一方にあるわけです。したがって問題は、現在ある労働者を全員首を切り労働組合をぶっつぶして、そしてその後に新しい職員を採用して再びまた事業を始めようという、そういう意図が全般にわたって明らかになってきています。  こうした状況を見るときに、私は日本が世界の経済大国であり、自由貿易を基礎にこれから発展していこうといういまの貿易立国日本を標横しているこの状態の中で、このような前近代的な労働慣行、労働組合観しか持ち得ない商社あるいは企業の存在そのものは、私は日本の恥だと、このように思うんです。自由貿易という立場をとるということは、アメリカがいま盛んに日本に言っているように、公平に公正にフェアに競争しようじゃないかということで、いろんな問題を突きつけておりますが、その中にやはりこうした前近代的な労働組合観、あるいは労働者に対するべっ視、差別観、そうしたことを持つ経営者がいて、そのもとで生産される製品、それがアメリカに大量に流れ込んでくることについての疑問点、こうしたものがあるということも一つだと、私も最近アメリカに行ってあちらの労働者なり政府関係者との話の中で感じたわけでございます。  そういう意味で、労働行政の一環として、こうした前近代的な労使慣行しか持ち得ない、労働組合に対する考えしか持ち得ない企業、商社、こうしたものに対して、労働省として、また、その最高責任者である労働大臣として、日本労使関係というものをもっと近代的なものにしていくということに対しての指導性を発揮してもらわなければならない、こう思うわけですが、労働大臣のお考えをお聞きしてきょうのこの問題についての質問は終わっておきたいと思います。
  52. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 当問題につきましては、いずれにいたしましても地元の兵庫県、また、関連の農水省等ともよく話し合いをするというたてまえのもとに行うべきものだと考えております。  労働省といたしたしても、当然これは労使間の話し合いというのがまず一番大切なことであり、基本でございます。そこで、やはり円満な解決をしていただく。ただ、先ほども局長が答弁いたしましたように、私どもあんまり深入りすれば介入したと言われますので、そこら辺はきちんと節度を持ちながらも最大の努力をするということだろうと思います。  また、前近代的ではないかというお話しでございましたが、私どももやはりこの刻々と変わる情勢に対応していろいろと問題点を解決しながら努力をいたしておるところでございますし、また同時に、私どもはそうして勤労者諸君の生活の向上に資するというのが務めでございますから、決しておろそかにしておるものではございません。御指摘の点等もこれからまた勉強をして、そうして努力をしていくということでございます。
  53. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  54. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) では速記を起こして。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午前十一時二十九分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  55. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  56. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 ILOの勧告の問題について、若干労働大臣お尋ねをしたいと思います。  五十七年度の人事院勧告の実施を見送った政府の措置について、公務員共闘がILOに提訴し、ILOが勧告をいたしました。まあその中身はいろいろな評価があるようですが、しかし、結論としては三つの中身があります。一つは、人勧のような仲裁調停制度の裁定は、完全かつ迅速に実施すべきだ、二番目に、人勧を尊重するという政府の保証に留意する、三番目に、政府の五十七年度人勧不実施を遺憾とし、今後は完全かつ迅速に実施すべきだ、こういう内容であったと思います。  人事院勧告の対象である国家公務員、地方公務員の賃金問題は、これは直接労働大臣の所管するところではありませんが、しかし、労働問題としてILOに提訴し、ILOが日本政府に対して勧告してきたことについて、労働大臣としてこれはしっかりと受けとめてもらわなければならぬと、このように思うんです。労働者の全般を見ていくための労働大臣だと、私はこのように思っておりますので、そういう意味労働大臣として、このILOの勧告をどのように受けとめておられるか聞かしていただきたいと思います。
  57. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 本年度の人事院勧告に関連いたしまして、関係労働組合がILOに申し立てを行った、そこで政府といたしましてもILOに対しまして、今回の実施を見送らざるを得なかったという点を、その経緯、背景等を十二分に話をいたし――いずれにいたしましても、危機的な国家財政、こういうようなことでやむを得なかった、というようなことでございます、そういうような点を理解していただいて、ILOの結社の自由委員会からの報告がございましたが、この点私どもは、政府の見解を十分そしゃくし、理解していただいたものと評価いたしております。  しかし、いずれにいたしましても、ILOは権威のある国際機関でございますから、その点の趣旨は十二分に私どもも今後とも理解して、これからの問題に対処する所存でございます。
  58. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 労働大臣、それは少し違うんじゃないですか。労働省からも行かれて、政府の立場を説明した、労働者側からも説明した。その結果として、私はいま、結社の自由委員会の報告というのを持っていますが、もちろん政府の立場そのものもこの中に盛り込まれておりますが、しかし、政府の立場が理解されたとして評価しているというふうな理解労働大臣がされたのでは私は困ると思うんですね。やはり労働大臣として、労働者の権利、そういうものがどのように守られたのかどうかという問題についての判断としてはもう少し厳格なものがなければ、いまのような形では、これは数千万の日本の労働者が泣くのじゃないかと思うんですがね。もう一度労働大臣のお考えを聞きたいと思います。
  59. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 報告の中にも、ストライキ権の制限であるとかというような点については、やはりそれの代償措置としては十二分に勘案すべきであるということも言われておりますので、私どもといたしましても、この原則の重要性というものは大いに認識して、そしてこれからも政府としても対処でき得るようにしていく所存であります。
  60. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 まず、労働大臣としては、この委員会の報告の中に述べられてあるように、労働者が基本的に持っている団体交渉権あるいはまたストライキ権、こうしたものが禁止された、その代償としての人事院勧告、それは公務員労働者の利益を保護するためにあるのであって、その勧告が十分に実施されなかったということについて遺憾であると言っているのはこれは至極あたりまえのことであって、これは政府が勧告を実施しなかったことについて評価など何一つしていないわけなんですよ。遺憾であると。できなかった、それはこれこれの事態だからという中での理解であってね。労働大臣としては、もっと厳密にILOの結社の自由委員会の報告についての理解をしてもらわなければ、私どもは安心して労働大臣のもとに労働行政を任すわけにはいかないんと思うんですがね。  私のいま述べている見解の方が間違っているんでしょうか。再度労働大臣お尋ねします。
  61. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 大臣のお答えの前に、多少の御説明をさしていただきたいと思います。  ILOの結社の自由委員会の報告が、いろいろの結論を経て、最後の段階で、勧告というところで、委員会は、この報告、全体及び特に以下に述べる結論を承認するように勧告すると言いまして、先生が最初に御指摘になりました三点を述べております。  第一点は、ILOが繰り返し従来言ってきた原則をまた今回もはっきりと指摘したものでございまして、最初に先生がお述べになりましたように、労働基本権に制約が加えられた場合における代償措置が一たん下されたときは、完全かつ迅速に実施されるべきであるというこの原則、これは従来ILOが繰り返し述べてきているわけでございますが、それをここでもう一度第一点で確認いたしております。  それから、第二点は、委員会としては、政府が人勧を尊重するという基本方針を堅持し、かつ、将来においては人勧を尊重するよう最善を尽くす意向であるという、そういう政府の見解を述べてきたわけでございますが、この政府の保証に留意するということを特に言っております。  それから第三点は、最初に先生指摘ございましたが、本年度について実施されなかったことを遺憾というか残念に思い、今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施され、団体交渉に関する労働組合権及びストライキ権に対し課せられた制限の代償措置を関係公務員に確保するようにとの強い希望を表明すると、こういうように言っておるわけでございまして、私どもこの点は、権威ある労働関係の国際機関の結論として、大臣答弁にもございましたが、権威ある国際機関の結論として十分に受けとめ、理解し、尊重していく考えでございます。
  62. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいま労政局長からるる話があったわけでございますけれども、私としても、やはりその基本的な問題については、先生おっしゃるように理解していないのじゃなくて、これはいずれにいたしましてももう本年度の国家的な財政危機のためにやむを得ずこうしたということをILOに対して十二分に話をした、そしていまのような結論が出てきた。これはもう当然尊重していくべき問題でございますから、特に、いまも申し上げましたように、これはILOというのは権威のある機関でございますから、ひとつ今後ともその趣旨は踏まえてやっていこうということであります。
  63. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いまもありましたように、いまに始まったことじゃありません、このことは。先ほど労働省も答弁があったように、仲裁裁定あるいは人事院勧告の持っている性格というものを繰り返しこの結社の自由委員会、ILO勧告ということで日本の案件についての結論が出されております。だからある新聞によると、先進国である日本が絶えず国内のこうした問題をILOに提訴しなければならないというのは恥ずかしいことではないかというふうな論調もあります。  そこで、もうこの点について深入りをする気はありませんが、それでは、今回、再びこのように公労協や公務員共闘が仲裁裁定あるいは人事院勧告が実施されないという事柄をめぐってILOに提訴しなければならなかったというこの事態自身についてはどう思われますか。
  64. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 人事院勧告に関します今回の決定の理由、やむを得ざる理由、そういうものはさておきまして、国内におきまして、組合側と政府側と、人事院勧告の取り扱いにつきましてその結論を出す前後におきまして十分な話し合いが行われ、でき得るならばこういった国際機関に持ち出すまでもなく問題が国内の話し合いによって円満に解決されることを私ども願っておりますし、そのような努力もしてきたつもりでございますが、今回のまことに異例の決定につきましては、関係組合は同盟系、総評系を問わず一致してILOに提訴せざるを得なかった、こういうまことに残念な事態になったわけでございます。  私どもとしては、今後、できるだけこういうものは国内で十分な話し合いをして、国際機関にまで問題を持ち込まずに解決できるように、労使間の話し合いに努力していきたいと考えております。
  65. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 八三年春闘がもう始まっておりますし、再びこの仲裁裁定、人勧問題についての論議が出てくるわけですが、いまも答弁がありましたように、ILOに対して人事院勧告とは一体何か、仲裁裁定とは一体何かといったようないつも原則的なことを問いたださなければならぬというふうなことが起こらないように、特に八二年の人事院勧告のこの問題については、本年度の春闘の中の要求の中にも当然出てくるということも考えられますし、ILOのこの勧告からすれば、その問題について政府が当然責任を持って今後もその実施について検討をしていくということについての責任を私は課していると思うんです。そういうふうな意味も込めて、八三年の春闘あるいは賃上げの問題について労働省としての考え方を聞かしていただいて次の問題に入りたい、このように思います。
  66. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 本年度、八三年の春闘、いままさに労使が話し合いに入ったところでございます。大変厳しい経済環境のもとで労使のそれこそ真剣な話し合いがいま始まったところでございます。  私といたしましては、民間におきます労使の話し合いによって決まります民間賃金について云々する立場にございませんが、いずれにしろ労使が真剣な話し合いで円満に妥結に至りますことを強く望んでおりますし、何か私どもでそういう環境整備でお手伝いできることがあれば、お手伝いすることにやぶさかではございません。  また、官公労関係につきましては、御指摘のように八二年の問題がいまだに三月のこの段階に来てもなお残っているわけでございます。また、国会では、与野党間でそのことが話し合いになっております。  そういうことも含めて、私ども国会の話し合いも十分見守りつつ、そして今後人事院勧告あるいは仲裁裁定、そういったものをめぐってILOで従来繰り返し指摘してきた原則、こういうものを政府として守りながら、紛争の円満な解決、こういうことに努め、労使関係の安定に努めていくこと、これが労働省の責任であるというふうに考えて今春闘に臨んでいきたいと思っております。
  67. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 大臣にも一言お願いしたいんです。  八三年の春闘と絡んで八二年度の人事院勧告が見送られたという問題は当然一緒になってこれから論議をされていくと思いますが、ILOの勧告という権威あるこの中身を十分労働大臣として踏まえてもらって政府としての対応をやっていただきたいという私は要望をするわけですが、労働大臣から一言いただいて次の質問に入ります。
  68. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 原則は十二分に踏まえてそうして臨んでいく所存でありますが、いわゆる八三年の春闘、これは労使間の話し合いによって決まることでございますので、私どもは介入する余地はございませんが、いずれにしてもいま入口に入ったところでございますので、これからの問題であろうかと思いますが、十分御趣旨は踏まえていきたいと思っております。
  69. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 次に、勤労者の生涯教育訓練の問題について若干お伺いします。  まず、大臣にお伺いしたいんですが、勤労者の生涯教育訓練の現状をどのように認識されているか、また、これに対する見解も承って具体的な問題に入っていきたいと思います。
  70. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 勤労者方々が、いずれにしてもその職業生涯において誇りを持ち、そしてまた生きがいを持ってやっていただくようにしたいというのが私の念願でもあります。そのためには段階的に、あるいはまた継続的に、職業訓練というものは大変大切なことであるということも十二分に認識いたしております。特に、昨年からは生涯職業訓練促進給付金制度等を創設いたしまして、この生涯訓練というものに対して十二分な対応をしていくために、鋭意いま努力をいたしておる次第であります。
  71. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いま私たちは、非常に変化の激しい社会、そして経済環境の中におります。特にこれは日本のみならず世界各国が産業構造の転換、そして急速な技術革新といった状況の中で、勤労者は職業生活上新たな知識、技術の習得が必要となってきています。しかし、わが国において公共職業訓練及び民間の認定職業訓練は、ともに企業のための技術習得訓練が主体になっている。企業のための訓練というのが主体になっていると見ます。そのことは、五十七年一月の事業内教育訓練実態調査、これは労働省の職業訓練局が行った調査です。この結果でも、計画性に乏しい教育訓練の現状というふうなことで指摘もされています。  予算を一つ見ましても、生涯職業訓練制度というふうなものがありますが、その実績はきわめて不十分な状態です。その中の、有給教育訓練休暇奨励給付金――舌をかみそうな名前なんですが、有給教育訓練休暇奨励給付金というものをずっと見てみますと、五十年に発足して以来、予算に対してその実績というものは非常に少ないわけで、当初は予算に対して一〇%、だんだんふえてきて現在では予算に対して三二%程度まで実績が上昇してきていますが、こうした勤労者、労働者の教育訓練、それを有給で行う、こうした事柄について、政府が実際に予算をとり、それを奨励しているにもかかわらず、このように実績が非常に上がらない、これはどういうところから来るのか、ひとつ簡潔に教えていただきたい。
  72. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 先生の御指摘のように、有給教育訓練休暇奨励給付金につきましては、五十年度から創設いたしまして、五十六年度までの実績は先生御存じのとおりでございます。  この制度は、実は五十七年度に制度改正を行ったところでございますが、五十六年度までは、事業主が労働協約または就業規則に基づきまして訓練休暇を付与する場合に支給することとしておった。それから、その対象となります教育訓練につきましては、公共職業訓練施設の行う職業訓練のみでなくて、高校とか大学とかあるいは高等専門学校の行う学校教育、あるいは各種学校等の行う教育であって、職業人としての資質の向上に資すると労働大臣が認められるものというようなことで、幅広くしておるわけでございます。  ただ、これにつきましては、企業の実情から申し上げますと、先ほど、五十七年一月の調査先生おっしゃられたわけでございますが、この調査によりましても、企業は、三十人以上の企業で八ハ%というものが何らかの形で教育訓練を行っております。したがいまして企業の教育訓練に対する熱意というものは高いわけでございますけれども先生が先ほどおっしゃられましたように、生涯教育訓練という、そういう形での体系的な訓練計画というものまではまだ至っていないと、こういう実情であろうかと思います。  そこで、そういう実情を踏まえまして、五十七年度からは先ほど申し上げました有給教育訓練休暇奨励給付金の制度を改正をいたしました。  一つは、労働者がその職業生涯において必要な時期に適切な訓練を受けるという、生涯訓練体制の一環としてこの給付制度を位置づけたわけでございます。したがいまして、事業主が生涯訓練の基本理念に立って事業内職業訓練計画を作成をいたしまして、その計画に基づきまして有給教育訓練休暇を付与する場合に支給をするということで、労働協約とか就業規則の定めというような要件をそういうふうに変えたのが第一点でございます。  それから、助成内容につきましても、従来は日額で、たとえば五十六年度におきましては千四百十円、中小企業で千八百八十円というような低額でございましたものを、五十七年度からは労働者に支払った賃金の四分の一、中小企業の場合は三分の一というふうに、賃金に比例するような形で額を引き上げました。  それから、受講奨励金というものにつきましても、従来は中高年に限っておりましたものを、五十七年度におきましては年齢制限を撤廃するというような内容の充実を図ったわけでございます。私ども、この有給教育訓練休暇につきまして企業になかなか普及しないということにつきましてはいろいろな事情があろうかと思いますけれども、いま申し上げましたような制度改善を図りまして、今後とも各企業に生涯訓練体制が確立されるように促進してまいりたいと考えております。
  73. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 九十四回国会の参議院の予算委員会で、私はいまの問題を取り上げて、労働省の方の答弁をいただいております。  そのときに私が提起しましたのは、いま労働省がとっている有給教育訓練休暇奨励給付金制度というものをてこにして、労働者の生涯教育という立場での自発的な教育活動を普及するということについて努力する、こういうことから一歩前進をしなさいということを申し上げました。それは、もうすでに御存じのとおり、ILOの条約、勧告の中にある有給教育休暇というものに踏み切ってはどうかということを言いました。  そのときに政府の方は、この有給教育休暇というものについて、勤労者の自己啓発意欲というものに基づく労働者の能力の開発に資するということで、趣旨において大変結構でございます、こういう答弁がありました。ただ、遺憾ながら現在のところ労働省が実施している有給教育訓練休暇奨励給付金制度というものの普及もまだ一割程度なので、これをさらに充実をして、そうした有給教育休暇というものに持っていきたいんだと、こういう答弁があったわけなんです。  いまの答弁との関連において、この有給教育休暇というものに近づけていく、この制度化にアプローチしていく、そうした関連でどういうふうなお考えが現在あるのか、そこのところをただしておきたいと思います。
  74. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 現在の有給教育訓練休暇奨励金の制度でございますが、この制度におきましても、労働者が自発的な意思で行きたいというようなものについて適用になるわけでございまして、先生のおっしゃる、有給教育休暇制度とおっしゃられるものがどういうものであるのかという点については、私やや能力不足でございまして、十分に理解できないところがあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、私どもはこの現在の制度改善によって、さらに普及を図ってまいった上で、実際に各企業の中で、労働者が自発的な意思でそういう自己啓発の機会を事業主から与えられるということが望ましいと、このように考えております。
  75. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 有給教育休暇の制度が十分理解できていないというようなことをあなたの口から聞くということは、私は大変だと思うんですがね。  ILOの百四十号条約というのは何ですか。
  76. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) ILOの百四十号条約に言う有給教育休暇制度につきましては、私の理解しておりますところでは、各国の実情に応じてしかるべくこれが行われるようにというふうな条文であったように、正確な条文はいま記憶をいたしておりませんが、そのように理解をいたしております。
  77. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それで、あなたが十分にそれが理解できていないという先ほどの答弁は、それはどういうことになるんですか。私が言った有給教育休暇というものに労働省として近づけていくことについてどうだと聞いたら、あなたはその答弁について、それは十分わからぬということはどういうことですか。
  78. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  79. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 速記を起こして。
  80. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 大変失礼いたしました。私の言葉が不十分で、先生のお言葉を十分に理解をいたしませんで申しわけございませんでした。  ILO百四十号条約の有給教育休暇制度につきましては、私どもの考えております現在の制度でこれに該当するというふうに考えておるところでございまして、私の先ほど申し上げた点は取り消させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  81. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は質問を通告したときに、五十六年の三月二十三日の予算委員会の議事録に基づいて質問しますということを言っておいたんだから、この議事録をあなたは知っているんでしょう。――先ほど私読んだでしょう。有給教育休暇というものについて、「趣旨において大変結構なものと考えております。」と、こういうふうにして肯定して、「したがいまして、これを法制化するということにつきましては、将来はまた検討課題でもあり得ようかと思いますが、目下のところはまだ時期尚早という感じを持っております。したがいまして、今後につきましては、」「奨励制度をさらに一層充実を図りまして」ということで、有給教育休暇という問題を目指しながらその法制化ということについても将来の検討課題というふうなことを考えているんだ、しかしまだ時期尚早というふうなとらえ方であったのを、いまあなたの答弁では、そういうものはよくわからない、検討課題でも何でもないんだというふうな答弁であったと思いますね。どうですか。ここから労働省は一歩後退したんですか。
  82. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  83. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 速記を起こして。
  84. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいまの点につきましては、まことに申しわけないと思います。再びこういうことがないようにいたしますので、ひとつ御理解賜りたいと思います。
  85. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) では、いまの件については政府側で再調査して、この時間内に答弁できるように早急に調べてください。  本岡委員、ちょっとだけ保留します。
  86. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その問題に関連して、文部省も答弁を次のようにしています。当時の田中文部大臣が、有給教育休暇については「文部省限りで対応できる問題ではございませんので、他省庁にもかかわります全般的な問題でございます。今後ともに関係省庁とも御相談をしながら、文部省といたしましても前向きに検討さしていただきます。」と、こういう答弁をしておる。  なぜこういうことが論議になったかというと、そのときに放送大学というものが設立されて、放送大学に勤労者が学ぶということについて、勤労者の学ぶ条件をつくってやらなければならないでしょう、そのためにはいままでのような企業の対応じゃなくて、放送大学は政府がつくったんだから、より広く国民勤労者に教育の機会を提供しようということでつくったものですから、そうすれば同時に、積極的に有給教育休暇というふうなものを制度化して、そして勤労者が放送大学の学生として学ぶ、そういうチャンスを広げてやれと、こういうところから論議になっていったわけなんです。だから文部大臣も、「文部省といたしましても前向きに検討さしていただきます。」と、「関係省庁とも御相談をしながら」と、こうなっているんです。  そこで文部省、二年たっているんですが、各省庁とどういう相談をして、どういうふうに現在なっているんですか、この問題は。
  87. 上野保之

    説明員(上野保之君) 文部省としましては、従来から勤労者あるいはそういう社会人への大学教育の機会を拡大する、いわゆる大学教育に就学することを非常に容易にするというような観点から、先生いま御指摘になられましたような放送大学を創設しまして、六十年から学生を受け入れる準備を鋭意いま進めておる途中でございます。  そのほかに、文部省側としましては、そういうことで受け入れを容易にするというようなことから、既存大学につきましては社会人への開放というようなことで、入学に特別の社会人への枠を設けまして、優先的にそういう社会人を有名大学に入れるというような枠を設けておりますし、さらには夜間大学なんかに設置基準上の弾力化を、柔軟化を講じまして、大学によって昼夜制といいますか、都合のいいときに、昼間でも、また夜でも、時間をずらして聞けるような、そういうようなコースを設けております。  また、通信制の大学につきましてはスクーリングに際しまして……
  88. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そんなことを質問しているんじゃないよ。
  89. 上野保之

    説明員(上野保之君) 勤労者が出席しやすいようにというようなことで、文部省としまして、毎年企業雇用者あてに、大学局長名あるいは学長名で、スクーリングに参加させてくれという依頼の文書等を出さしていただいております。  先生の御指摘制度化の話でございますが、これは労働省の方から先ほどいろいろお答えもございましたが、私どもといたしましては、労働省とも以前から相談してきておりますが、いろいろ制度上も問題があるというように聞いております。
  90. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それは答弁になっていないじゃないですか。私は、田中文部大臣がこういう答弁を二年前にしたので、その後どうなりましたかと尋ねているんだから、有給教育休暇という問題について各省庁とこう相談をしました、しかしその結果はこういう現在の状況ですというものをそのまま答えてもらったらいいんです。スクーリングだとか通信教育の問題は、それは別の問題じゃないか。この文部大臣の、「前向きに検討さしていただきます。」ということについてどうなったかということを私は尋ねている。
  91. 上野保之

    説明員(上野保之君) 労働省ともこれは相談さしていただきまして、文部省としては、労働省から先ほどお答えありましたように、そういう給付制度といいますか、奨励給付金制度ということで充実していかれるということを私の方聞いておりますし、文部省としましてはそういうことで受け入れ側を非常にやりやすくする、それから企業に対してもそういうスクーリング等に出しやすくするということで、局長名の通知等を出すというような方途で対応してきております。
  92. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 何もやっていないのなら何もやっていないと言えばいいじゃないですか。こういうのを大臣答弁というんです。そのときそのときに言い抜けて、私はいま田中文部大臣に文部大臣としての責任の議論をしようにも、文部大臣としてはもういないということでね。国会答弁がこんないいかげんなことで済むのなら――大野労働大臣に対してこういうことを言うのは失礼かもしれませんが、まさにこういうことになれば大臣答弁でしょう。そのときに前向きに検討さしてもらいますと言って、二年たっても三年たっても何もしない。こういうことで一つ一つの物事が進んでいくというこの無責任、どうしても私はがまんがならぬのですよ。もう少し大臣の答弁というのは責任ある答弁をしてもらわなければ困りますよね。私は、一たん口火を切ったことは最後まで、国会議員である以上とことんまでそのことを追及していきたいと、こう思ってやっているんですが、そのときそのときの言い逃れをやられたんじゃ、とてもたまらぬ。まあこれは次に、文部省に関係のあるところで私はやらしていただきますがね。
  93. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) それでは、国務大臣大野大臣委員長から。  労働省関係のある事項でいま言ったような予算委員会の答弁の問題について、労働省、文部省とも明確な答弁がないということは、非常に委員長として遺憾だと思います。したがって、きょうは時間がありませんから、三十一日の委員会、労働大臣の所信に対する質疑の冒頭に、本岡委員質問について、大臣答弁のその後の経過について、労働省と文部省、責任を持って冒頭に答弁できるように委員長として要請しますが、国務大臣としていかがですか。
  94. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいまの御答弁に対して御不満だということ、これは私も経緯をよく知っていればいいんですが、私自身よく知らない点もございますことは事実でございます。その点もよく勉強をして、三十一日の参議院社労委員会の冒頭において、いま委員長の言われたことを踏まえて御答弁をさしていただくということはお約束申し上げます。
  95. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) では、いいですね。
  96. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) はい。
  97. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは、残りました時間、育児休業制度の問題について、若干質問をいたしておきます。  いま、現場で働く婦人がわが国経済社会に果たす役割りが非常に大きいということは労働大臣認識しておられると思います。女子の被雇用者数が五十六年現在で千三百九十一万人、昭和三十五年の約一・九倍に達していますし、全被雇用者の三分の一が婦人労働者という状況になっています。また、有配偶者が勤労婦人全体の約三分の二を占めて、乳幼児を持ちながら働く婦人も増加してきております。そういう意味で、働く婦人にとって出産、育児というものが大きな問題になっており、このために育児休業制度というものが注目を集めております。  私は、育児というのは基本的に、自分でするのか保育所に預けるのかというのは、これは親の意思でやればいいと思いますし、その親がどちらを選択するかというときに、どちらも選択できる条件をこれは政府がつくっておけばいい、これが基本だと思います。しかし問題はそこから一歩進めて、子育てというものは親の責任ということから、次代を担う人間を育成するんだという国家的、社会的な一つの責任という問題に到達したときに、福祉という事柄が結びついて育児休業というふうなものが社会的に認知されていくと、私はこう思っているわけなんですが、そういう意味で、労働大臣、まあ私も男なんですが、お互いに育児休業制度というものの認識をまず一致させておきたいんですが、いかがでございますか。
  98. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) いま御指摘のように、乳幼児を育てながらも働く勤労婦人が近年大変に増加したことは私も承知いたしております。そういう子を育てるために休業した勤労婦人がまた復職できるということは大切なことでありますし、またそれは、その勤労婦人の福祉の向上と同時に、やはりいま御質問のあった子供を保育園とかそういうところへやるべきかどうかというような話、これはいずれにしても、なるべくなら親が育ててあげることが一番親切であり、また子供のためであるし、また国家的な意味も大きいものと思っております。  そこで、いずれにしても勤労婦人福祉法というものの中に、企業に対してこの育児休業というものを、努力義務というものを課しておるわけです。労働省としても、いまその普及促進に相努めておりまするが、法制化の問題ということになってくると、これはいわゆる雇用の男女平等、機会均等というようなことで、婦人少年問題審議会においていま御審議、御検討をいただいておりますので、その結果を待って法的整備をするというようなものに対して検討を加えていこう、こういうふうに考えております。  ただ、まあお互いに男だという話がございましたから、どうもそこから先、女性というものの育て方の感覚とか、そういうことになると婦人局長にやってもらうよりしようがないとは思いますが。
  99. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、私がお互いに男だと言ったのは、子育てというものについて男も責任を持たなければならぬ、それは親としての責任の段階から子育てというのは、やはり次代の国をと、こう考えたときの国家責任、社会責任、そういう意味から育児という問題は考えていかなければならぬだろうと、こういう意味で言ったので、性の対立を持ち込む気は何もないので、そこは誤解のないようにしてもらいたい。  そこで、具体的に聞きますが、現在の育児休業制度というものが、国家公務員、地方公務員であるところの女子教員とか看護婦、保母、これには昭和五十年に法制化されておりますが、そのほかは、いま大臣も言われたように、勤労婦人福祉法に基づいて行政指導で進められている、こういうことなんですが、その普及の状況は現在どのようになっておりますか。
  100. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お尋ねの育児休業の普及状況でございますが、この点につきましては労働省が、女子保護実施状況調査という調査の中で調べております。昭和五十六年には三十人以上の常用労働者を雇用する事業所対象といたしまして、一四・三%が育児休業制度を実施しております。
  101. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 五十三年度が六・六%、それから五十一年度は六・三%というこの割合を見ますと、五十六年度の一四・三%というのは飛躍的にこれは拡大したと思うんですが、それはどういうところに理由がありますか。
  102. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これは、実は調査対象がこの二年の間で変わりまして、新しい方の調査対象の中には、教育、つまり学校でございますが、先ほど先生がおっしゃいました教職員というのは法律で必ず実施するようになっております。それが対象になりましたのでふえたというふうに理解をいたしております。
  103. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 ということはこの一四・三%の中に公立学校の教職員が入っているという意味ですか。
  104. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 御指摘のとおりでございます。
  105. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 しかし、教職員あるいは看護婦さん、保母さん等の実施は、これは五十年から制度化されて、その計数は当然統計上五十一年あるいは五十三年にも出てこなければならなかったのではないんですか。
  106. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 確かに法律上実施されたわけでございますが、調査対象を選びますときにその事業が入っていなかったわけでございます。それではやはりそういうところには普及が進んでいるはずなので調査対象に含める方が適当かと存じまして、五十六年の調査からそれが対象に入ったわけでございます。したがいまして、直接前の調査と比べて飛躍的にふえたというようなことを言うのは正確ではないと思いますので、私はあえてそういうふうに申し上げなかった次第でございます。
  107. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、この統計はまずいですね。私はいまその統計を持っておりますがね。しかし、それだったやはり統計の意味をなさないわけで、育児休業制度実施事業所割合とこうなっておりますから、当然、いままで制度化されていない勤労婦人福祉法ですか、その十一条でしたかね、それに基づく事業所をずっと書いていって、公的な分は当然制度化されているんですからね、これは普及ということじゃなくて、その制度を活用している婦人教職員が、あるいはまた看護婦さんなり保母さんがどれほどふえたかという統計の仕方をやらなければ、これでは誤解を招くんではありませんか。統計のやり方を変えるか、あるいはもっと注をつけるかして正確にひとつ私たちが判断できるようにしていただきたいですね。
  108. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) おっしゃるとおりだと思いますので、注などをつけて、もう少し誤解を招かないようにいたしたいと思います。
  109. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、公務員関係制度化された以外を除くとどういうことになるんですか、この一四・三は。
  110. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 一四・三がどうなるかということを、ちょっといま計算をし直さないとわかりませんが、先ほど申し上げましたのは、大きな産業分類で申しますとサービス業の中に入ります。そして、サービス業の五十六年の普及率が四二・九%と大変高いわけでございます。それ以外の、たとえば製造業などで見ますと五・二%、卸、小売業で見ますと四・六%、金融、保険業が三・四%、運輸、通信業がやや高くて一二・一%、産業別に言うとそういうことになっております。
  111. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは再度尋ねますが、そうすると、五十六年度もやはり五十三年のときと同じように六%程度と、公務員関係を除けば六%程度というふうに理解していいんですか。
  112. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 産業別に申し上げた数字は正確だと思います。
  113. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは、普及ということについてどうなんですか。労働省も努力されていると思うんですが、最近の民間企業の育児休業制度普及ということについて、実績はどんどん上がっていると、こう考えておられるのか。一生懸命やるけれどもなかなか実績は上がらないと、こういう判断に立っておられるのか。どちらですか。
  114. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 一生懸命やっておりますが、なかなか普及はそれほど進んでいない、それでも、わずかながらは進んでいると、こういうふうに思っております。
  115. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それで、五十八年度は具体的にどういうふうにその普及をし、育児休業制度というものを実施させる企業増加させようとされているんですか。
  116. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) まず、育児休業制度普及指導員というのを五十五年度から置いておりますが、その指導員の数をふやしてまいりました。これは地方にございます婦人少年室において、その育児休業制度内容などを、企業へ行って、これはどういうものである、いいものだからぜひ採用してほしい、こういう話をして歩いているわけでございますが、これが婦人少年室の数で申しますと最初の年は七室、翌五十六年十室、五十七年十五室、来年度は、もし予算が認められますと二十室ということになるわけでございます。まず一つはそういう人間を置いて普及に努める。それからこの制度を導入した企業に対してはわずかではございますが奨励金的なものを出すということもいたしております。その額が余り十分でないので、これをもう少しふやすということも五十八年度の予算では要求をさせていただいております。  以上でございます。
  117. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いまおっしゃったような程度のことではなかなか普及はしない、こう思うんですね。だから昨年も、私、議事録を読ましていただきますと、各党がそれぞれ皆育児休業の法制化というものに踏み切るべきだという質問を展開されておられたんですが、その問題について、これからの検討事項だという程度に終わっているんですが、今年度、この育児休業の法制化問題について最終的に結論を出して、できるだけ早い時期の国会にこれを提出する、そこ踏み切っていく、そういう対応を労働省がやらなければ、いまのような形での普及ではなかなか広がらないし、最初労働大臣と私と確認したような婦人の労働、そして婦人が働きながら子供を産み、育てる、そして父親も一緒になって育児に当たる、そうした問題についての対応が、民間企業へのいまのような普及のやり方ではとても間に合わないのじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  118. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 各党がお出しになっておられる育児休業制度法案等につきましては、いろいろと勉強させていただいております。そして、それも含めまして育児休業の法制化につきまして、先ほど大臣も申し上げましたが、現在婦人少年問題審議会で鋭意検討中でございますので、その結果、そう遠い将来でなく御検討の結果が出てまいるというふうに期待をいたしております。
  119. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その検討の結果はいつごろ出るのですか。
  120. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これは、実は男女平等の方の課題がございまして、それもあわせて審議会に検討をお願いいたしております。  この男女平等の方の方策についての問題は、先生も御承知と思いますが、婦人の差別の撤廃条約の批准ということと密接に関係をいたしております。そして、これは婦人の十年の後期重点目標の中の重要課題でございます。後期重点目標は、婦人の十年、つまり昭和六十年が一つのめどでございます。したがいまして、これらを含めて検討をお願いいたしております審議会はそれに間に合うということが大きな目標になっているわけでございます。
  121. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 もう時間が参りましたので、最後にひとつ労働大臣に、育児休業制度の法制化についての決意を再度お伺いして、質問を終わりたいと思います。  労働省が非常に積極的にこの問題について検討をしておられることについては私は敬意を表しますし、ぜひとも法制化に早く踏み切っていただきたいと思うものです。ただ、企業側の代表である日経連が、五十六年の九月の常任理事会において法制化の反対の決議をして政府に申し入れているというふうな事柄が一方にあるので、むずかしい問題が出てきていると私は思います。しかし、労働省の婦人少年局の調査、「昭和五十七年度育児休業制度実態調査結果報告」、私、これをずっと全部見ました。そこの結論のところに、「育児休業制度に対する意見」ということで、企業における育児休業制度に対する意見のまとめとして、多くの企業で育児休業制度はよい制度であるので今後とも続けていきたいと積極的に評価しておる、そして今後の取り組みとしては、就業規則で明文化したいとか、育児休業期間を一年まで延長したいとか、いろんな積極的な御提言がある。もちろん反対する意見もありますけれども、この結論としては、積極的に評価しているという事柄が強く出ているのを見て、私は非常に意を強くしたのです。日経連という組織で反対をしていても、実際にそれを実施している企業では、その有効性というものについての評価がある。したがって、こうしたところにひとつ勇気を持って、育児休業はいまの時代の要請であるということで労働大臣に踏み切っていただきたいと、こう思うのです。  同時に、いま社会問題になっている青少年非行の問題、中学生の校内暴力、対教師暴力等々でいろいろそのための審議会ができたり、懇談会ができたり、各政党がそれに対する対策を発表したりして大変な状況になっております。しかしこれは、翻って見れば、中学生になった段階での子供の非行とかさまざまな荒れた状態を問題にする前に、その子供が生まれた時点からどのように育ってきたかということを長期にわたって押さえていかなければこれはどうにもならないわけで、そういう意味では子供が生まれて育つ乳幼児という時代をどのように過ごしてきたかということは、ある意味では決定的な、子供の将来の性格を決めていくと、このように思うんですね。  そういう意味で、この育児休業制度というものは、私も初めに言いましたように、働く婦人の権利とか、あるいは福祉とかといった問題と同時に、時代を背負っていく子供たちがどのような人間に育つのかという、そういう将来の問題に目を向けて、青少年非行というものを少なくしていく、校内暴力というようなものを根絶していくという幅広い問題を論議していく中の一つに、こうした子供たちが生まれて、そして育っていく過程の中でのきめ細かい対応を政府がやっていかなければならないのじゃないか、こう思うんです。その中の一つに、やはりこの育児休業制度というふうなものがきちっと根づいて、そして子供が健全に育つ環境をつくっていくという問題をいまこそ提起すべきではないか、こう私は今日の問題との関連で思います。  労働大臣のこの法制化に向けてのひとつ強い決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  122. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 育児休業制度、これはもう冒頭申し上げましたように、労働省としてもいまその普及促進に大いに努力をいたしておるところでございます。  将来のその法制化に向けての決意というお話でございますが、先ほども申し上げましたように、審議会でいま検討を進めていただいておるところでございますし、また同時に、日経連の問題等もございましたが、審議会には経営者側の委員も入っておりますから、そこの結論というものはいずれにしてもあらゆるものを包含した結果でございますから、その上で私どもは考えていくということでございますけれども、私個人といたしましても、これは非常に国家的見地から見てもいま非行少年の話もございましたが、特に大切なことだ。特に、子供の知能というものは三歳くらいまでで固まると言われるようなときですから、特に乳幼児というものに対しては私どもも大いに考えなきゃならぬ。それに伴ってこういう問題も十二分に考えていくということを私からはっきりと申し上げておきます。
  123. 中野鉄造

    中野鉄造君 まず、大蔵省にお尋ねいたしますが、わが国雇用情勢が今日横ばい状態とか、あるいはじわじわと悪化していると、そういう諸説があるわけですけれども、一方、今日欧米の先進諸国では、いまや賃金か雇用か二者択一の問題が現実の日程に上りつつあるわけですけれどもわが国においても、戦後の高度成長のおかげで、今日まではこの二者択一の関係に立つというようなことはほとんどございませんでした。しかし、労働生産性の上昇率と賃金の上昇率との乖離が今後もずっと持続されるとするならば、これはかつては経済の優等生と呼ばれたあの西ドイツの今日の状況の轍を踏むときがやってくるのではないか、このように懸念するわけですが、いかがですか。
  124. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) 先生よく御承知のとおり、労働市場状況等、西ドイツ日本とは、いろいろ違っているところもございますし、幸いに日本の場合には外人労働者という問題も抱えていないということで、西ドイツのような状況になるかどうかについてはにわかに即断しにくいんじゃないかと考えております。
  125. 中野鉄造

    中野鉄造君 ところで、五十八年度の実質経済成長率の予測を前年度に対して三・四%と言われておりますが、税収も三年連続で落ち込んでいる、こういうことが確実視されております中で、景気の浮揚、向上というものはこれはもう依然として望み薄という状況にあるわけでして、倒産件数も民間調査機関の調査によりましても、二月の倒産が千三百三十五件、また前年度同月比で四・七%ふえた、あるいは一月に引き続き二カ月連続で前年同月比を上回る状態であると、こういうようなことが続いておるわけですけれども、端的に言って今後の見通し、そしてまたこういうことになった原因をどういうところにあると見られていますか。
  126. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) 大変にむずかしい御質問でございますが、いろいろな背景があろうかと思います。  一つは、私どもの方でお願いしております先生方の研究会でございますが、そちらの方では第三次産業のシェアが非常に大きくなりまして、サービス業が全体の三割、これは卸小売業を入れてでございますが。それに対しまして、四十五年と比べて第二次産業のシェアがダウンしている。そういうような状況も大きく影響していようかと考えております。
  127. 中野鉄造

    中野鉄造君 それで、今後の見通しについていかがですか。
  128. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) 今後の労働力情勢見通しでございますが、今般失業率が非常に高い数字が出たということについては大変に懸念いたしましていろいろ検討いたしておりますが、今後の状況につきましては、各業種ごとの雇用情勢というものを全体としてにらみながら、なおかつその中におけるミスマッチの状況というものを注意していかなきゃいけないというふうに考えております。
  129. 中野鉄造

    中野鉄造君 お昼のニュースでは、大蔵大臣がまた今度公定歩合の引き下げというものを前向きに検討すると、そういうような報道がなされておりましたけれども、こういうことがまた今後の労働界、あるいは直接景気影響してくるのは、もうきわめて近い将来ですか、まだまだ先のことですか。
  130. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) 公定歩合につきましては、景気に及ぼす影響から金利水準全体が引き下がることは大変望ましいことであるというふうに考えておりますが、ただ、現在日本経済力もかなり大きくなっているということもございまして、欧米から日本経済政策について非常に注目されている、あるいは円為替等が非常に大きく左右するということで、かつてのように日本国内の状況だけを判断して金利水準、公定歩合を含めて日本銀行もなかなか動きにくい状況にあるということで、日本銀行も公定歩合については大変に苦労しておるというふうに拝察いたしております。
  131. 中野鉄造

    中野鉄造君 いずれにしても、早急に明るい見通しが立つというようなことは望めないと私も思います。そういう中で、当分の間こうした失業問題というようなこともよくて横ばいというようなことに落ちつくのじゃないかと思います。  この間総理府統計局で発表されました例の労働力調査でいろいろと物議が醸されました。そこでこれについてお尋ねいたしますけれども、いろいろな前後のニュース、新聞報道あたりを見ておりましても、大蔵省で言われる失業者というものと通産省で言われる失業者、また、労働省で考えている失業者とはというその定義というものに、若干の違いというかそういうものがあるように思えて仕方がないんですが、まず経企庁、どういうようにこの点は思われますか。失業者の定義と申しましょうか、これはいかがですか。
  132. 菅野剛

    説明員菅野剛君) 完全失業者の定義でございますけれども、働く意思を持っているにもかかわらず、それで求職活動をしているにもかかわらず就業できないという状況が、一般的に言って完全失業者の定義であろうというふうに思います。
  133. 中野鉄造

    中野鉄造君 重ねてお尋ねしますが、企画庁、いまの職を求めているということなんですが、その中には、たとえば現在ある一定の職についてはいる、だけれども、何といいましょうか、もっとよりよいところに勤めたいというようなところで、職を探すために職安あたりに行っている、そういったような者も含まれるんですか。
  134. 菅野剛

    説明員菅野剛君) お話しのとおりに、現在働いていても、求職をしているという場合には失業者の定義の中に入ります。
  135. 中野鉄造

    中野鉄造君 では次に、大蔵省お願いします……。
  136. 菅野剛

    説明員菅野剛君) 失礼いたしました。訂正さしていただきます。  現在働いていなくて求職中であるという者が完全失業者の定義に入るわけでございまして、現在働いているという状況でございますれば、これは失業者の範疇に入らないということでございます。
  137. 中野鉄造

    中野鉄造君 大蔵省、いかがですか。
  138. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) 定義については食い違いはないと考えておりますが、現に働く意思を持って仕事を探している、あるいは、かつて探したその結果を待っている、それで就業していない状態失業者と言うと理解いたしております。
  139. 中野鉄造

    中野鉄造君 労働省、お願いします。
  140. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 失業者の定義は、これはわが国の場合一本でございまして、各省で違うはずのものではないと思います。ただ、雇用失業情勢を見ます場合は、労働力調査によります失業率も非常に重要な問題でございますが、その他有効求人倍率とか毎月勤労統計とか、その他たとえば雇用保険の受給者の状況とか、いろいろな指標もある。ただ失業者の問題は一つだろうかと存じます。
  141. 中野鉄造

    中野鉄造君 そこで、いろいろなこういう統計的な基礎の算出の方法で問題になってくるのが、やはり女性の労働者というようなことになろうかと思いますが、この場合、一家の主婦方々がパートあたりに一回出られる、そしていろいろな家事の都合等でそれをおやめになる、それは失業になりますか。
  142. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) この労働力調査失業率は総理府の方で所管いたしておりますので、私も細かいところまでは存じませんけれども失業者の定義としては、毎月末日を含む一週間に、就業が可能で求職活動しているにもかかわらず、収入を伴う仕事に一時間以上就業し得なかった十五歳以上の人ということになっておりまして、何と申しますか、学生のアルバイトのようなものは入らないかと思いますけれども、短時間であっても毎日勤務しようとか、そういうものを求めて仕事がないというような方はあるいは入るのではなかろうかと思いますけれども、ちょっとこの労働力調査失業者の具体的な中身の詳しいところを存じておりません。
  143. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) いま労働省から御説明なさったとおりであると思いますが、先生お尋ねの点に関してお答えさしていただきます。  女性でパートで働いておられて、それで職を失われた、その場合に、なお就職の意思を持って求職活動をしておられれば失業者になりますし、就職の意思を失われて家庭にお戻りになられたら、これは失業者の統計からは外されるということになろうかと考えております。
  144. 中野鉄造

    中野鉄造君 企画庁。
  145. 菅野剛

    説明員菅野剛君) お尋ねの点につきましては、ただいま大蔵省の方から説明されたとおりであろうかと存じます。
  146. 中野鉄造

    中野鉄造君 その再就職の意思をお持ちであるかどうかということはどこで判定しますか。
  147. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) 労働力調査は、いまサンプルは四万でございますか、その中で相手にお尋ねいたしまして、あなたは働く意思をなおお持ちかどうかということについては、相手の意思によるわけでございます。
  148. 中野鉄造

    中野鉄造君 先ほど労働省から、今回の労働力調査についてはこれは総理府でやってこうだから云々という御答弁がありましたけれども、そこでお尋ねいたしますが、大臣、あの当時いろいろと先ほども申しましたように物議を醸したようでしたが、いまはすっきりとあの総理府の労働力調査に納得をされていますか。
  149. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 三月八日の閣議で、総理府から労働力調査の御報告がございましたことは御指摘のとおりでございます。その際、私がいろいろと質問をしたと言うべきでありますが、それは先ほども局長から御答弁申し上げましたように、どうも私どもの統計と非常に隔たりがある、これはひとつ勉強しなきゃいけない面があるのではないかということで質問をしたというような形でございますが、いずれにしても、御承知のとおり、総理府も新しい統計のとり方をしたというような点もございましたので、その点、あるいはいままでの統計とどういうふうに――労働力調査の中でですよ、こういう結果が生じてきたんだろう、また、ひいてはそれが私どもの方とずいぶんかけ離れた問題になってきたんだろうということで、これは総理府の統計局でございますけれども、いまいろいろとわが方と検討を進めている、ここら辺に問題点があるかもしれぬ、私どもの方はこうだし、あなた方の方はこうということで、いま検討をしておりますから、もうちょっと時間をいただきたいと思います。
  150. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) ちょっと補足させていただきますと、検討を進めておるという中身は、総理府の労働力調査につきましても、雇用失業情勢をどう判断するかというのは、先ほどもちょっと触れましたように、この労働力調査のほかにも有効求人倍率とか毎月勤労統計とかいろいろありますので、そういう全体で総合的に勘案する必要があるだろうということと、それから、それぞれの調査につきましても一月だけで傾向を見れるかどうかという問題もございますから、これは総理府の方としても一月の調査の結果に関連しましては今後もう少し、数カ月ぐらいの動きを見なければ、いまの傾向としての雇用失業情勢を正確に把握できないというようなこともありまして、そういうことも兼ねて、今後少し分析していかなきゃならぬというふうに思っているわけでございます。
  151. 中野鉄造

    中野鉄造君 先ほどお尋ねいたしましたように、パートの人たちのそういういろいろな状況があると思いますが、そういうことといい、また、失業者というものに対する明確な各省の一致した統一的な定義といったようなものも含めて、ひとつ今後協議を進めていただきたいと思うんです。  これ、ちょっとお尋ねしますけれども、今度の総理府が発表した完全失業率が二・七二%、こういったようなことに対して大蔵省が、失業者の増大と景気回復には時間的なずれがあり、失業率が上昇するときは景気がすでに回復過程に入っていることが多い、こういう見解をおっしゃいましたね。それから、それに対して今度は企画庁では、失業率以外の雇用指標が悪化している中でそういう認識に立つには無理がある、こういう反論が出ておりますが、ひとつまず大蔵省の方から、このことについて補足をしていただきたいと思うんですが。
  152. 長富祐一郎

    説明員長富祐一郎君) 今回の失業率二・七二%と非常に高い数字が出ましたことにつきましては、私ども非常に衝撃を受けまして、中身について直ちに、いかがであろうかということを検討もしたわけでございます。  ただいま、新聞報道された点についてのお尋ねであろうと思いますが、私ども最近、ここ数年来日本も含めまして先進諸国の社会経済構造が非常に変化をいたしてきている。先ほど申し上げましたとおり、第三次産業の比重が非常に高まっているとか、いろんな点がございまして、これはやはり雇用影響を与えている点もあるのではないかという点も含めまして、学者に研究会をお願いいたしまして研究を続けているところでございます。その研究会の下にプロジェクトチームがございまして、いろいろ先生方の御指示によって資料をつくっておりまして、新聞に報じられたわけでございますが、その資料の中身を拝見したところ、失業率は非常に高くなっておりますが就業者数全体が非常に伸びている。昨年の十二月で、一年前と比べて百万人ふえているし、ことしの一月で百十八万人ふえている。この就業者が非常にふえているという状況は、過去十年間を見ますと、五十四年二回、五十三年二回あるいは四十八年三回というような状況でございまして、いま経済がなかなか厳しい折に、そういう五十三、四年のような五%以上の成長をしていたときと同じような現象が出ているのは一体いかがなものであろうか。しかも、失業率が高まっているのはいかがに理解すべきなのであろうかというようなことがそのプロジェクトチームで検討をされておりまして、その中身といたしまして、女性労働力異動に非常に注目を払われているわけでございます。  そこで、詳細にわたりまして恐縮でございますが、女性について見ますと、女性の就業者がたとえば四十九年に五十万人減少いたしているわけでございます。ところが、先ほど先生が御指摘になられましたとおり、女性というのは、この場合にその五十万人みんなが失業者増加になるかというと、実は、労働力人口の方も四十八万人に減ってしまっておる。これはみんな家庭に戻ってしまって非労働力化する、こう言われるようでございますが、家庭の非労働力人口が九十五万人と非常に多くなっている。そのために、その分だけ失業率が、実際には悪いにもかかわらず、それほど悪いという数字に出てきていないということがこの資料の中で述べられているわけでございます。  今回の場合は、逆に非労働力人口女性ですとネットで十二万人減少しています。家庭におられた方々が参加意欲を持たれて就業活動をされまして、就業者がことしの一月に、一年前に比べて女性ですと五十九万人ふえているにもかかわらず、労働力人口が七十六万人ふえているというところがかなり影響しているのではないかという分析をいたしておりまして、注意深く、興味を持って拝見したわけでございます。
  153. 中野鉄造

    中野鉄造君 これは、短絡的な見方だろうと思いますが、新聞報道等によれば、大蔵省では、いまの状況景気拡大期とよく似ている、そういったようなことで、言葉をかえると高失業率というのはいわば好況の兆しだといったようなふうにも聞こえるような報道がなされたわけですけれども、企画庁はそれに対して、そういうような解釈をするにはきわめて無理があると、こういうお話も載っておりました。企画庁の方ではどういうように見ておられますか。
  154. 菅野剛

    説明員菅野剛君) 最近の雇用情勢につきましては、景気の停滞状況を反映いたしまして、引き続き厳しい状況にあるというふうに基本的には見ておるわけでございます。先ほど先生が御指摘になられましたこの一月の労働力調査の結果による失業率季節調整値で二・七二%、完全失業率でございますけれども、基本的にはこういうことを反映しているものというふうに考えております。  ただ、この労働力調査の一月の結果につきましては、先ほど労働省の方からもお話しがございましたけれども、他の労働関係の統計の動きと必ずしも同じような動きではないという事情一つございます。それからまた、この労働力調査自体、昨年の十月から調査のサンプルを入れかえをやっておりまして、それで数をふやしておるというような事情がございます。したがいまして、この労働力調査動きを昨年の十月からことしの一月について見てみますと、失業者数がこの一月に非常に大幅にふえているということでありますけれども、他方、同じその労働力調査の中で調査されます就業者数でございますとか、それから雇用者数でございますとか、これも失業者数と同様にかなり大幅な伸びを示しているわけでございます。  これまでの経済動きとこういった労働関係の指標の動き関係から申しますと、これまでですと、完全失業者数が非常にふえるときには就業者数の伸びは低い、あるいは雇用者数の伸びは低い。つまり、労働に対する需要が弱まって、その結果失業者数がふえるという動きが見られたわけでございますけれども、そういう動きに照らしてみますと、今回の労働力調査、昨年十月以降の動きというのは必ずしも説明が容易にしにくいという動きを示しているわけでございます。したがいまして、これがその調査のそういったやり方の変更に伴うものか、あるいは実態的な変化を反映したものであるかという点につきましては、労働力統計調査の今後の動き、それから調査サンプルを入れかえたことによる変更等について、もう少し、吟味する必要があるのではないかというふうに考えております。
  155. 中野鉄造

    中野鉄造君 私が申し上げるまでもなく、労働省としてもこういった状況に対する総合対策というものは お考えになっているとは思いますが、ひとつ鋭意御検討をお願いしたいと思います。  次に、ME導入についてお伺いいたしますけれどもわが国では、世界全体の七割強という六万七千五百台近くのMEが設置されているわけです。にもかかわらず、今日まで余りこれといった労使の摩擦というものはありませんが、その理由というのは、やはり端的に言って、わが国では企業終身雇用というものが定着しておる、さらには、労組においても外国と異なって職能別組織ではなくて企業別組織である、こういうところが大きく原因していることじゃないかと思うんですけれども、しかし、今後将来において、このMEがさらにどのように発展していくかということは、これは私どもなかなか予測はつかないんですが、この点について、この予測ですね、労働省あたりではどういうように見ておられるのか、それが第一点。  もう一つは、このME導入によって浮いた労働力を活用する分野をどこに求めようとされるのか。労働時間の短縮による、いわゆるワークシェアリングで解決可能かどうか。ここらのところをお尋ねしたいと思います。
  156. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 最近、わが国産業界におきまして、産業用ロボットとか、オフィスオートメーションとか、マイクロエレクトロニクスの技術を応用いたしました技術革新が急速に進んでおるということは御指摘のとおりでございます。また、この技術革新の急速な進展の中で、いままでのところは雇用にそれほど深刻な影響が出ていないというところもお話しのありましたとおりでございまして、ちょっと触れさしていただきますと、幾つかの理由があろうかと思いますが、一つはやはりそういうマイクロエレクトロニクス関連分野におきます生産が比較的順調で、雇用も堅調であったというのが総体的にございますが、同時に、このマイクロエレクトロニクスが導入されます職場で余剰労働力が生じた場合に、教育訓練をして配置転換をしながら円滑に進めておるということ、それから、いままでの導入が概して技能労働力が不足している職種とか、あるいは悪環境作業とかいうような面でなかなか人を集められないような部面に導入されてきたようなこと、それからマイクロエレクトロニクスの導入がいままでは比較的単体としての導入であったわけでございまして、逆に言いますと、システムとしての導入が少なかった、ほとんどなかったというようなことだろうかと存じます。  今後の見通しでございますけれども、やはり産業経済の発展に伴いまして、いろんな面での生産性を上げていくとか、あるいは国際競争の中で企業経営をしていくというような面から考えますと、やはりこのマイクロエレクトロニクス等を中心とする技術革新はかなり進んでいく可能性もございますし、また同時に、今後の経済情勢を見ますと、なかなか一時のような大きな経済拡大が期待できないし、労働力の需要供給両面でいろんな変化が出てきておりますので、そういう面から今後においてはやはり雇用への影響というものはかなり私どもも慎重に見守っていかなきゃならぬと思っておるわけでございます。  そういう観点から、すでに今年度、正確に言いますと一昨年あたりから、こういう技術革新に伴いまして雇用にどういう影響が出てくるかというようなことを調査研究を進めておるわけでございますが、特に最近では、その量的な影響、質的な影響のほかに、中小企業にどういう影響があるかとか、あるいは国際経済の面で先進国との関係、あるいは発展途上国との関係でどういう問題があるかとかいうようなことも調査をいたしているところでございまして、そういうような調査を進めながら、結局この技術革新によります問題について関係者が十分理解して取り組んでいっていただくような方法を進めていくことによりまして技術革新等の摩擦を少なくするとか、あるいはそれによります成果を経済の発展とか福祉の増進に回すようにするとか、そういうような観点から対応していく必要があるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  157. 中野鉄造

    中野鉄造君 もう時間がなくなってしまいましたので、タクシー乗務員の件についてお尋ねしたかったんですが、ちょっとこれはもう時間がありませんので次の質問に行きます。  去る十九日の予算委員会の一般質疑で、私はシロアリ駆除剤として使われている有機塩素系のクロルデンの取り扱いについて質問をいたしました。  御承知のように、この有機塩素系の殺虫剤であるDDTやディルドリンといったようなものが使用禁止になってからもう十年ばかりたちます。しかし、この同じ有機塩素系のクロルデンは、殺虫剤としては禁止されておりながらも、シロアリ防除剤としてはこれがいま野放し状態でそのまま使われているわけなんですね。それで、そのために、私はもう十数人の業者の人たちといろいろお話しをしたんですけれども、はやっているシロアリ駆除の業者であれば、それこそ一年のうちに二件や三件の顧客とのトラブルは必ずありますと、こういうような返事でした。しかも、これが非常に低資本で、しかも認可制でも何でもありませんし、いつからでもだれでもできるというような、こういう野放し状態であるために、非常に事故が続出しているという状況でございまして、このクロルデンの薬害と申しますか、こういうものについて、私ここに愛媛大学の立川教授のいろんな分析表も持っておりますが、これによって貧血を起こすとか、あるいは目に支障を来たすだとか、いろいろな実際の問題も出ているわけでして、これは近くこの分析表は学会でも発表されることになっておるそうです。  ところで、このクロルデンの薬剤を散布するということが、建設省では、住宅金融公庫からお金を借りる場合には、シロアリ駆除をしなくちゃいけないとこれを義務づけられて、それが条件で金融公庫からお金が出ると、こういうふうな仕組みになっておりますし、厚生省は厚生省で、シロアリ駆除というものに対してはそれは認めるけれども、普通の殺虫剤としては認めないと、こういうことになっておりますし、労働省では、これはもう労働衛生という面から、そういうようなもの、作業員、従事者に対しての監督指導、行政指導というものがなされているかということを私、ずっと調査してみましたけれども、そういうものは余り見当たりません。しかし、いろいろな学術的な分析調査結果によって見ましても、シロアリ駆除をやった家に住んでいる人と、あるいはその防除に直接従事している従業員と、そして何でもない一般人たちとの血液中のその濃度というものは、歴然としてそこにあらわれているわけなんですね。  そういったようなことからしても、やはり労働省としても、労働衛生の行政の一環として、やっぱりこれは今後見直していくべきじゃないかと、こう思うわけです。厚生省でも、いまのところ毒物でもない、劇物でもない、そういうように指定はされていませんけれども、今後は毒物としてこれを前向きに検討していこうと、こういうような御答弁もこの間あったばかりですけれども、これについて、労働省ではどのようにお考えですか。
  158. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 前回先生からいろいろと御指摘がございましたが、いまお話しございましたように、クロルデン自体の毒性という点につきましては、直ちに重篤な障害が出るというような事例がいままでございませんので、非常にその意味では規制が特別行われていたわけではございません。  それから、御指摘のように、私どもといたしましても、作業を行っております業者に対しての行政指導は必ずしも十分ではございませんので、当面の考え方といたしましては、駆除業者に対して行政指導の徹底につきまして、関係省庁と打ち合わせをいたしまして指導してまいりたいというのが現在の考え方でございます。
  159. 中野鉄造

    中野鉄造君 先ほども申しましたように、とにかくこれは九州あたりでは暴力団の資金源にもこれがなっているわけです。低資本でだれでもできるというところから、これをいろいろな人がやるわけなんです。そうして、まじめに働いているシロアリ駆除業者がいろいろな面で圧迫を受けるというようなことになっておりますので、まず、この駆除剤の主役であるクロルデンを毒物指定、そしてまたその取り扱いについても、行政上の厳しい規制、指導をやっていくということがまじめな業者を守っていくということにもなるのではないかと、こう思うわけです。  とにかく、国民人たちがささやかな、いろいろな夢を託してやっとつくり上げたマイホーム、まあ家の健康ということも大事でしょうけれども、人の健康というものはさらに大事であるわけですので、ひとつそこに住む人、それを取り扱う業者、そういったような人のためにも、ひとつせっかく前向きの御検討をお願いしたいと、こう思いますが、大臣、最後に一言。お願いいたします。
  160. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 私どもから、まず現状、考え方について説明さしていただきたいと思います。  先生のおっしゃいますように、健康障害を防ぐということは非常に大切なことでございまして、そういう意味から従来まで把握した事例はございませんけれども、しかしながら、先般予算委員会でも申し上げましたように、私どもといたしましては、このクロルデンの有害性と申しますか、あるいは健康障害を及ぼすかどうかということについて、いまいろんな情報を集めている最中でございますし、今後とも、また新しい情報があれば、さらにこのようなものに基づきまして、私どもとしましてもどういう対策をとるかということを検討をしていかなきゃならぬと思います。  一方、現在のところといたしましては、やはり先ほど安全衛生部長が申しましたように、関係のシロアリ駆除業の業者の方々に対しましては、このクロルデンの毒性を薄めると申しますか、そういうような毒性から守るといいますか、そういうような意味で、たとえば実際に作業に当たって保護具をつけるとか、あるいは濃度を必要以上に高めないとか、こういうような指導はいたしておるところでございますし、また、今後ともそういう点については注意いたしてまいりたいというふうに思っております。
  161. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 短時間でございますので、簡潔にお聞きをしていきたいと思っておりますが、すでに問題になっておりますように今日の日本経済大変深刻な不況の中で、雇用失業問題への対応というのは国民生活を守る上できわめて重要な課題になっておりまして、労働省の対応がいよいよ問われているというところでございます。きょうは大変短い時間でございますから、ずいぶん急激にふえておるという問題、そして非常に問題が多いとして当委員会でも予算委員会でもたびたび問題になっております女子パートタイム労働者にしぼってお伺いをしたいと思います。  それで、パートタイム労働者というのは一体何人いるのかという問題ですが、まあいろいろな数字がございますけれども、総理府の昭和五十五年労働力調査によりますと、週の労働時間三十五時間未満の者が二百六十五万人で女子雇用者全体の一九・三%。今日では女子パートの労働者がわが国産業の大きな担い手になっている、そして今後も増加をしていくということが明らかでございます。  そこで、パートタイム労働者にはずいぶん問題が多うございます。たとえば昭和五十七年五月の行管庁の、「パートタイム労働者等の労働条件の確保に関する実態調査結果報告書」というのを見てまいりますと、ずいぶん重要な指摘がされています。これはその四ページですけれども、時間がかかりますから問題点だけを申し上げますが、①は、最低賃金に満たない例が二十九事業場ある。②には、労働時間六時間を超える場合は、少なくとも四十五分間の休憩時間を、また、一年以上勤務し、全労働日の八割以上出勤した場合には、年間六日間の有給休暇を与えなければならないけれども、これは休憩時間あるいは有給休暇というのが、休憩時間が法定どおりとなっていない例が二十六事業場及び有給休暇がないという例が三百八十三事業場で、五六・三%ということで、一般の常用労働者と比較して大変不利な取り扱いがなされている。⑤の項目には、定期健康診断を実施していないというのが二一・二%ある。それから⑦の項には、就業規則を作成していないのが四百十四事業場で六〇・九%というふうに、大変重要な指摘がなされております。そして労働白書によりましても、大変重要な指摘だと思いますことは、これは賃金についてですが、「労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」によれば、平均賃上げ率は、五十三年以降パートタイム労働者の方が一般労働者を下回っている」という指摘がございます。  こういうことで、大変重要な指摘がすでに労働省あるいは行管庁からなされておりますけれども、今後こういう点についてどのように対応していかれるのか、基本点だけまず最初に簡潔にお伺いをしたい。
  162. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先生からいま御指摘のありましたように、パートにつきましていろんな問題がございますが、私ども、まず基本にあるものとしまして、パートについて、そもそも労働基準法の適用を受ける労働者であるのかどうかという点についても、かなり認識が甘いのではなかろうかという点がございます。そしてまた、具体的に賃金なりあるいは労働時間なりあるいは就業規則の問題なり、そういう点につきましてもいろいろとトラブルが出てきておるということで、先ほどのような調査結果が出てまいっているのではなかろうかと思います。  私どもといたしましては、まずパートといえどももちろん労働基準法の適用があるんだということをはっきりしなければいけない、それからまた、そういうことから就業規則の整備で労働条件を明確化することが基本ではなかろうか、それからまた、そのほかにもやはり採用の際に労働条件が明確になっていることが必要ではなかろうかということで、今年度から雇い入れ通知書という様式をつくりまして、この普及を図っていくという新しい方針をとっているところでございます。
  163. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いろいろ御努力をなさっていることは私どももよく存じておりますが、たとえば「婦人パートタイマーのしおり」というのを労働者に渡しておられますね。これはそれなりに結構なことだと思うんですが、せっかくここまで労働者の啓蒙をやっていただくということであれば、もうちょっと工夫をしてもらったらどうかという、これは御要望なんですがね。  たとえば、私ちょっと見ても三カ所気になったのは、一つは「労働時間」の項で、「労働時間は、一日について八時間、一週間について四十八時間をこえないことが原則となっています。なお、一定規模以下の商業、サービス業等については、暫定的に九時間労働制が認められています。」と書いてある。それで、いま問題になっているのはそのことではなくて、たとえば残業に対してのあるいは休日出勤に対しての割り増し給がもらえるんですよと、つけられるんですよということが一つ書かれていたら大変親切だと思うんですね。  あるいは「年次有給休暇」の項ですが、「パートタイマーにも労働基準法による年次有給休暇が与えられます。」と書いてあるのだけれども、一年以上勤務をすれば六日以上は法律によって与えられますとか、その辺のことを一般国民は必ずしも十分承知していないわけですね。それから「賃金」の場合にも、「パートタイマーにも最低賃金が適用されます。」と書いてある。そこまではいいんですが、最低賃金、地域最賃がどうなっているのか、これはまた知らないんですね。そういう点では、東京、大阪、名古屋、福岡、というような代表的なところの例示みたいなものがあれば、一人一人の労働者、一人一人の婦人が自分のもらっている時間給が最低賃金以上なのか以下なのかというあたりも判断がつくので、そういった点は少し工夫をしてもらえないものだろうかなと思いますが、いかがですか。
  164. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生のまことに示唆に富んだ御指摘でございますが、この「しおり」と申しますのは、やはりできるだけ大ぜいの方たちに見ていただきたい。したがいまして部数を多くするためには余りたくさんのことが書けないという制限がございます。しかしながら、ただいま御指摘の中で、ほんの二行書けば書けるというようなものも確かにございますと思いますので、今後もできるだけ多くの方に役立つようなものにしてまいりたいというふうに思います。  ただ、最低賃金のところが、東京、福岡その他先生のおっしゃった場所だけでなくて、これを全国の方たちに配るものでございますから、そういう点につきましてうまくいくかどうかというようなこともよく勉強いたしまして、なお一層役に立つものをつくりたいというふうに考えております。
  165. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは、そこまでやっておられるのだから、少し工夫をしてほしいなということの御要望でございます。  次に行きますが、すでに各地で行われております、パート一一〇番という御相談がやられていますね。私、ちょっと本を忘れてきましたけれども、この相談でも一番多いのは賃金に関する相談なんですよ。労働省調査でも、最も多いのはやっぱり賃金に対する不満ですね。これは五十四年の「性・仕事に対する各種満足度別パート労働者の割合」、これは労働省の第三次産業雇用実態調査ですね。これによりましても、女子の不満というのが、給与については三二・七%の方々が言っておられました。こういうふうに賃金の不満というのは非常に多いですね。パート一一〇番の事例を持ってくるはずだったのを忘れてきたのですけれども、それにはどういうふうに書いてあるかというと、三年間勤めているけれども少しも給料が上がらない、あるいは七年かかってやっと十円上がったとか、あるいはボーナスがもらえない、ボーナスをもらったけれどもわずか一万円だ、何とかならないだろうかといったような御相談というのが非常に多いわけです。  そこで、これに対しても労働省は、五十六年の九月二十四日に職安局長通達で、「パートの「時間当たりの賃金は、当該事業所に勤務する同職種、同作業、同経験で、勤務時間帯が同じ一般従業員の時間当たり賃金と比べて低い額でないこと」という通達を出しておりますね。これは大変結構だと思うんですね。現状ではパートの時間給というのは一般の婦人労働者の時間給の半分以下ですからね。五十五年のパートの平均というのは四百九十二円です。一般女子労働者の時間給の平均が千十四円ですからね。こういう状況なので、この職安局長通達というのはきわめて重要だと思うんですけれども、この趣旨の徹底というのを具体的にはどういうふうにお進めになられるか。これはパートで働く女子の労働者にとっては非常に大事な点だと思いますので、お伺いをしたいと思います。
  166. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) ただいま御指摘のありました通達等の関係方面への徹底でございますが、まず、これは私どもの方の出先の機関に通達をいたしておるわけでございまして、パート労働者につきます就職あっせんを担当いたしております職業安定機関におきまして、個別にあるいは団体等を通じて周知徹底を図ることだと思いますし、特に、最近はパートバンクを大都市等を中心に設置いたしておりますが、パートバンクにおきましては就職あっせんのための情報提供ということだけではなくて、いろいろ御指摘ありますような労務管理面、労働条件面での問題、立ちおくれ等もございますから、そういうところには職業相談員と同時に労務管理も指導できるような相談員も配置いたしておりますので、そういうところにおきましても通達の趣旨等を踏まえまして、できるだけ近代的なパートタイマーのあっせんができるような指導をいたしておるところでございます。
  167. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それから最賃制、さっきの「しおり」には、「最低賃金が適用されます。」というふうに書かれているんですが、これも大事なんですね。いま最賃以下の労働者もおるわけですから。しかし、それ以上にいまの局長通達というものの徹底がきわめて大事ですね。これは最賃といま局長のおっしゃる賃金の格差というのはかなり違うと思いますのでね、時間がありませんから細かいことは申し上げられませんが。そういう点で段階的に考えておられるのかと思いますけれども、まず最賃制、最低賃金以下の労働者をまずなくする、その後は一般労働者との格差のないように指導していくと、そういうお考えなのかと思いますけれども、私は最賃よりもいま局長通達の徹底の方がきわめて大事だなと思いますが、その点はどうなんですか。
  168. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) パートタイマーの労働関係の問題につきましては、職業紹介面につきましては職業安定局の担当ということで、いま御指摘になりましたような一般的な業務取扱要領というようなもので、いろんな事項を記載した内容で指導をするような通達を出しておるわけでございます。  どれを重点にやるかどうかというようなことにつきましては、私どもの方としては、そういう職業紹介の過程でいろんな問題が出ないようにということで、ここに盛りましたものをどれを先にとか、どれを重点にということではなくて、一般的に指導をいたしておるという状況だと存じます。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは大分格差がありますよ、実際には。だから、局長通達を徹底させていくということが最も望ましいと思うわけです。  しかし、現行では最低賃金を下回るという労働者もいることですから、まず、最低賃金以下の時間給の労働者をなくする、それでさらに局長通達を徹底させて引き上げていくということであれば、それはそれとして理解しやすいですよ。しかし、片方では一般労働者と同じ条件であれば同等でいいんですよという指導がされているわ、一方では最低賃金が適用されますというのでは、ちょっと受け取りにくい点がある。労働者としてもわからないでしょう。どっちが本当やということになりますね。現場では、どっちが本当やということになるんですよ。その辺はどういうふうに理解したらよろしいか。
  170. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生の御指摘、あるいは私が誤解しているのかもしれませんが、この「賃金」のところで、「パートタイマーにも最低賃金が適用されます。」と。最低賃金でございますから、それより下回ることはいかぬということでございまして、それより上の賃金は一向差し支えないわけだと思います。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこで、これやりとりしていると時間がなくなるので、いずれにしても、貸金問題というのはパートタイマーにとっての一つの重要な課題だという点を申し上げておきたいと思います。労働省が何もやっていないと言っているんじゃないんですよ。やっておられるのをもっと徹底してほしいなということですよ。  それからもう一つ。次に、パートタイム労働者の問題で重要な課題というのは、やっぱり常用化の問題ではないかと思うんですね。というのは、常用労働者に転換をさせるという問題が非常に重要だと思うんですが、これも行政管理庁調査の中の「問題点及び所見」というのを見ますと、これも大変重要な指摘がなされています。みんな読みますと長いことかかるんですけれども、   パートタイム労働者と称している企業の定義をみると、短時間労働あるいは臨時的作業に従事する者としているが、実際の労働時間をみると一日七時間以上となっている例が三百九十四事業場(五七・九%)においてみられ、また職務内容をみると、一般生産・販売等の現場作業に従事している者が調査した事業場のパートタイム労働者一万九千七百七十四人のうち一万八千六百二十九人(九四・二%)を占めており、これらパートタイム労働者の役割は一般の常用労働者と変わらないものとなっている。   雇用期間は事業主とパートタイム労働者との間で取り交わされた労働契約によると、二か月間、四か月間等、短期間のものが多数を占めているが、実際の雇用期間をみると、一年間を超えている者が一万二千四百七十六人(六三・一%)を占めており、そのほとんどは、契約期間終了後直ちに再契約する方式が取られている。 というのが行管庁の御指摘でございます。労働時間、労働内容あるいはその役割りというのが一般の常用労働者と変わらないのが六割以上もおるというわけですね。あるいはこの調査では九四・二%を占めている。一年以上の勤務者が六三・一%だということになっているわけです。  そこで、こういう実態ということが行管庁から指摘されているということは、私は労働省の対応がこの面においては必ずしも十分ではなかったのではないかというふうに思いますが、その点はどうですか。  時間がありませんから続けて申し上げておきますが、労働白書ではこういうふうに言っているんですね。一般社員・正社員への変更希望について、――もう端的なところだけ言いますが、「一般社員・正社員に変わりたいとする者も一七%おり、」「一般社員・正社員に変わりたいとする理由としては、「身分が安定しているから」「給与が高いから」」ということを言っておられる。それで、一般社員・正社員への変更希望の有無はいろいろあるが、「電機労連、商業労連、チェーン労協の三労働組合が行った女子パートタイム労働者の意識調査によると、一般社員になりたいとする者は、電機労連調査では六〇%と多く、チェーン労協調査では三六%、商業労連調査では二三%」というふうになっております。  ですから、これは大変大事なところだと思うわけで、今後のパート労働者の身分の安定化、常用化というものを今後の検討課題の一つにしていくことが必要ではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  172. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) パートタイムの労働者の労働条件、雇用の安定等が重要なことであるということは申し上げるまでもないことと存じますが、パートタイムを取り巻くいろんな条件、その他、意識、先生の御指摘の点も含めまして、現在プロジェクトチームにおいて、労働省では総合的に研究をするということを始めております。このプロジェクトチームの中で、いろんな面を総合的に検討いたしたいと、勉強を続けているところでございます。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、労働省が御検討になっているというそのプロジェクトチームですね、これが本当に実効を上げていくというためには、労働省の姿勢というのは、私はきわめて重要だなと思うわけです。といいますのは、五十五年のこれは労働白書ですが、こういう分析をしているんです。大変大事な分析をしているなと思って拝見をしたんですが、「石油危機後について五十四年の「雇用管理調査」によってみると、「人件費が割安となるため」とする企業が三三%と最も多く、とくに卸売・小売業では四〇%を上回っている。」と。そしていろいろ業種別に書かれておるんですが、「石油危機後には「生産量の増減に応じて雇用量調整が容易であるため」とする企業が二九%、とくに製造業では三八%と高い。このように需要側の考えは、高度成長期は労働力不足に対処するため、石油危機後は経費の軽減のため、あるいは雇用調整の容易さのためとする企業が多い。」という御指摘、これは労働白書に書かれているわけでございます。したがって、御指摘になっておられるように、企業側はむしろ安上がりの労働力、それから、わりあいに首の切りやすいというのですか、調整のききやすいというところに魅力が出てきているということを分析されているわけです。  この点は非常に大事だなと思いますのは、日経連の労働問題研究委員報告、これは五十八年の一月ですが、これによりますと、「パートタイマーの活用」という項目がありまして、「近年、雇用の場へのいわゆるパートタイマー、アルバイトなど非正規従業員の進出が著しい。」と。それで、「五〇三万人に達する。」というふうに述べられておられますが、その項目の中に、「企業の側にも」「正規従業員よりもこのような労働力を活用したほうが、より効率的である分野が存在する。」、そして、「パートタイマーなどの雇用、それを取り巻く労使関係については、今後の検討にまたなければならない問題が多い。そしてその検討方向は、雇用機会の増大、こうした新しい型の労働力の有効活用に向けられるべきであろう。」というふうなことが述べられております。  そこで私は、総合的なプロジェクトチームを本当に実効あらしめるために、労働省の姿勢というのはきわめて大事だというのはその点だと思うんですね。労働省の任務というのは、第一義的に、労働者の労働条件の向上にあるということになれば、やはり基本的な重点として安上がりの労働力確保という、こういう姿勢に迎合するという立場、そういう立場でのプロジェクトチームでの御検討であってはならないのではないかというふうに思いますが、これは御異存はないと思いますが、念のために御見解を伺っておきたい。
  174. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) パートタイマーにつきましてプロジェクトチームを組んでやっておるわけでございますが、その視点は、そういう特定の視点で問題を整理するということではなくて、たとえばそこで働く人の視点、あるいはまたパートを使う人の視点、それからまた、諸外国のパートがどうなっておるかという現状についてからのいろいろな視点、いろいろな観点から、それについて多角的に検討あるいは意見交換をしておると、こういうことでございまして、何か特定の方向に向けて検討しておるということではございませんので、よろしく御理解賜りたいと存じます。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは、労働省の役割りから言うて、労働者の労働条件の向上のために対策をプロジェクトチームで検討して、前向きに前進させていくというのは当然のことなんですけれども、やっぱり雇用者側の御意見というのはありますので、念のために申し上げたわけでございますので、労働省の本旨にもとらないように鋭意御努力を賜りたいと思います。  時間がありませんので、最後に一つ申し上げておきますが、これはちょっと問題を変えますが、二月二日の毎日新聞の共同通信記事として出ていたんですが、これは、「日本”不名誉な1位” 男女の賃金格差が最大」という記事が出ているのですね。これも本当だろうなと思うのです。それで、その本当だろうなと思ったのは、一九八〇年の「婦人労働の実情」ですね、それによりますとやっぱり五三・八%、男子を一〇〇にしての平均賃金ですね。八一年が五三・三だから、それが諸外国と比べて格差最高と、不名誉な第一位というふうに言われているわけでございます。そういう状態というのがわが国の婦人労働者の置かれている今日の位置の象徴的なあらわれではないかと私は思うわけです。  それで、少し意見を申し上げておきたいと思ったんですが、時間がありませんので言えないので、端的に申し上げておきたいと思うんですが、大臣、私そこでちょっと考えてほしいと思いますのは、いままで申し上げてきたように、婦人労働者の実態というのはこういうことなんですが、よくよく御承知のように、いま全雇用労働者の三分の一以上というのは婦人労働者で、重要な経済活動の役割りを担っているわけですね。これを、しかも賃金格差は世界一だなんていうことが言われるというふうな情けない状態というのをどうしても直さなければならない。改善しなきゃならない。それのために有効な方法というのは、やっぱり雇用における男女平等法を法制化するということが一つの重要な柱ではないかと思うんですが、その点についての御見解を伺っておきたい。
  176. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいまの御指摘の点につきましては、現在審議会で御検討を願っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、二年後になるわけですか、国連婦人の十年の最終の年になるわけですが、それまでにその審議会の検討結果も出るでしょうし、それを見ながら法的な整備をしていこうということでございまして、私ども当然、男女の雇用の機会の均等であるとか、あるいはまた待遇の平等であるとか、こういう点は十二分に理解いたしておりますけれども、いずれにいたしましても、いま御審議中だということで、その検討結果というものを待っておるところです。
  177. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がないんだけれども、検討中ですというふうに言われると困りますのは、差別撤廃条約、さっき局長もおっしゃっていましたけれども、差別撤廃条約の批准までに時間がないわけですね。もう再来年でしょう。だから、その点ではやっぱり具体化をして言っているんだということの前向きなお話でなければ、労働省何しているんだということになりますよ、その点では。ちょっと、大臣理解が少し弱いのではないかという心配をいたします。その点はもう一度伺っておきたいのです。  賃金だけではなくて、雇用管理の分野におきましてもいろんな問題があるということは、すでに労働省が御調査で明らかになっていますね。時間がないからきょうは言えませんが、ちゃんと「女子労働者の雇用管理に関する調査」なんというような非常にりっぱな調査どもしておられるので、そういった点をも含めて改善をしていくためにはどうしても法的措置、同時にまた行政指導の強化、そういった点がきわめて大事だと思うのですが、もう一遍大臣、明確にお答えをしていただきたいと思います。
  178. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 単に検討中ということではございませんで、国連婦人の十年ということを十分頭に置き、かつ、条約の批准のための条件整備ということも踏まえた上での検討でございますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  179. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣、間違いないですね。
  180. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 私が舌足らずで、いま局長が答弁したのと同様でございまして、私も就任早々フェミニストだとちゃんと言っておりますから、男女平等ということについて十二分に前向きにやっていくつもりであります。
  181. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 以上で労働省所管に対する質疑は終了いたしました。  これにて、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管、労働省所管、医療金融公庫及び環境衛生金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会