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説明員(渡辺伸君) 最初の御
質問についてお答え申し上げます。
原油の流出は二月の末ないし三月の初めから始まったようでございます。それで、私
ども外務省といたしましても、そのころから最近に至るまで毎日大量の公電等で現地の公館から報告を受けております。
御
指摘のイランのノールーズ油田からの原油の流出でございますけれ
ども、確定的なところは確認されていないんでございますけれ
ども、少なくて毎日一千バレル、——一バレル百五十九リットルでございますけれ
ども、少なくて一千バレル、
それから多い見積もりでは七千バレルぐらいの石油がいまだに流出し続けていると言われております。それで、かつこの流出した油は、海流に乗りまして、風の向き等の
影響を受けて大体一日約十キロの速度で移動しているというふうに言われております。現在の流出範囲は四十平方キロメートルにも及んでいるということで、御
指摘のとおり非常に大きな
汚染事故に発展しつつございます。
この流出の原因でございますけれ
ども、これはイラン当局の発表によりますと、イラク軍の爆撃によって油田が破壊されて、そのために油田から油が流出し始めたということでございますが、もう
一つの可能性といたしまして、海底油田でございますけれ
ども、その海底油田から陸上にパイプラインが引かれているわけでございますが、そのパイプラインが腐食した、あるいは船か何かで引っかけてそのパイプラインに損傷を与えたと、その
影響もあり得るのではないかということも言われております。
それで、現在ペルシャ湾にありますサウジアラビア、クウェートあるいはアラブ首長国連邦といった国々は早期警戒警報システムをとりまして、何とかその
汚染事故の防止に努めているところでございます。それで、これら諸国は雨量が非常に少ないところでございますので、海水を真水にして使う、海水淡水化と言われておりますけれ
ども、海水淡水化によって水をつくっているわけでございますが、これに非常に大きな
影響を与える、それから漁業資源への
影響も非常に大きいということで、この
影響を非常に深刻に受けとめております。
現在、国内的にいろんな
措置がとられるほかに、国際的にもたとえばペルシャ湾海洋
環境保全機構というものがございまして、その機構を中心に何とかこの防止策を国際的に手当てしようということで動きが進んでおりまして、具体的にはこれはまだ必ずしも確定はしていないんでございますけれ
ども、来月二日にクウェートでこの機構の緊急会議を開催して、
対策を協議するというふうなことも伝えられております。
それから、
先生の御
質問の第二点でございますけれ
ども、つまり破壊された油井が修復されても戦争のためにもう一度破壊されてまた同じようなことが生ずるんじゃないかという点でございますが、まさしく御
指摘のとおりの点はございます。ただ
一つ、これもまだ未確認情報でございますけれ
ども、イランと戦争をしておりますイラクがこの
地域での作戦を停止するというような
態度を表明したというようなことも伝えられておりまして、私
どもも情勢の推移を見守っているところでございます。
基本的には、イランとイラクが戦争をしている、そしてその戦争が海上
地域にも及んでいる、したがってイランとイラクの戦争が停戦に至ることが大前提でございますけれ
ども、両国とも非常に複雑な利害
関係がございまして、なかなか一気に停戦までにはこぎつけ得ないという
状況でございます。したがいまして、全面的な停戦は無理といたしましても、せめてこの
汚染事故をこれ以上拡大しないために、限定的な停戦でも成立してくれれば非常に国際的にもいいことであろうと、われわれはそういう
方向での問題の一時的な
解決を願っているところでございます。