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1983-04-13 第98回国会 参議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十三日(水曜日)    午前十時四十八分開会     ─────────────    委員異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     対馬 孝且君  三月二十六日     辞任         補欠選任      小西 博行君     田渕 哲也君  三月二十八日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     小西 博行君  三月三十日     辞任         補欠選任      福田 宏一君     中山 太郎君  三月三十一日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     福田 宏一君  四月一日     辞任         補欠選任      福田 宏一君     木村 睦男君      森山 眞弓君     植木 光教君      鶴岡  洋君     渋谷 邦彦君  四月二日     辞任         補欠選任      木村 睦男君     福田 宏一君      本岡 昭次君     山田  譲君  四月四日     辞任         補欠選任      植木 光教君     森山 眞弓君      渋谷 邦彦君     鶴岡  洋君  四月五日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     和田 静夫君      山田  譲君     本岡 昭次君  四月十二日     辞任         補欠選任      福田 宏一君     田原 武雄君  四月十三日     辞任         補欠選任      田原 武雄君     福田 宏一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  裕君                 杉山 令肇君                 内藤  健君                 降矢 敬雄君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君     委 員                大河原太一郎君                 岡部 三郎君                 河本嘉久蔵君                 高橋 圭三君                 竹内  潔君                 塚田十一郎君                 仲川 幸男君                 福岡日出麿君                 福田 宏一君                 森山 眞弓君                 鈴木 和美君                 本岡 昭次君                 鶴岡  洋君                 安武 洋子君                 小西 博行君                 三治 重信君                 中山 千夏君    国務大臣        労 働 大 臣  大野  明君    政府委員        労働大臣官房会        計課長      高橋 伸治君        労働省労政局長  関  英夫君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        労働省職業訓練        局長       北村 孝生君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        警察庁警備局警        備課長      國松 孝次君        経済企画庁調整        局産業経済課長  菅野  剛君        経済企画庁総合        計画局計画官   谷  弘一君        経済企画庁調査        局内国調査第一        課長       勝村 坦郎君        文部大臣官房企        画室長      上野 保之君        文部省初等中等        教育局職業教育        課長       阿部 憲司君        厚生省医務局指        導助成課長    柳沢健一郎君        厚生省社会局更        生課長      池堂 政満君        厚生省保険局医        療課長      寺松  尚君        労働省労働基準        局安全衛生部労        働衛生課長    福渡  靖君        建設大臣官房技        術調査室長    角田 直行君        会計検査院事務        総局第三局長   坂上 剛之君     ─────────────   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会します。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事和田静夫君を指名いたします。    ─────────────
  4. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は労働省決算について審査を行います。    ─────────────
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  7. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 まず、財形還元融資ですが、これはなかなかどうも進んでいないようであります。  まず財形貯蓄残高はどのくらいか。
  9. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) お答えいたします。  財形制度につきましては、これは四十六年から発足いたしたわけでございますが、五十七年の十二月末で見てみますと、これを実施している勤労者の数は千四百万、事業場数が百五十万で、貯蓄残高は約六兆五千億弱というふうになっております。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 こういう形で六兆五千億ですね。
  11. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 五十七年十二月末で細かい数字まで申し上げますと、六兆四千六百四十一億八千万円となっております。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 五千億弱でいわゆる還元融資が停滞をしているということは、せっかくの財形制度がどうも私は生かされていないのではないだろうかという感じがいたします。いわば宝の持ちぐされであるという感じがするわけでありまして、この点については、労働大臣あちらこちらで何か座談会に出ていらっしゃいますが、所見をお持ちですか。
  13. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま先生指摘のように、実際宝の持ちぐされというか、もっと融資制度につきましては昨年も利子補給、非常に財政厳しい中ではございましたが、行うということにいたしましたし、また先般も経済対策閣僚会議で、何といっても景気対策というものがございまして、そのときにもやはり住宅政策という問題の中で、私は現在の財形というものをもっと普及して、せっかくこれだけ六兆約五千億あるものを活用したいということで発言をいたし、またこれに対してこれからもあらゆる形で還元できるような制度、仕組みというものを考えたいということを意見を申し上げておいたところでございます。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 余り深い立ち入りはしたくはないと思っていますが、事務代行会社として財形住宅金融株式会社発足をいたしています。この会社をめぐっては労働大臣座談会等に出ていらっしゃいますからよく御存じだと思うんですが、私はよくこの会社を理解することができません。もちろん株式会社でありますから、それぞれがそれぞれの立場で動かれることについて、何もその意味で疑義を挟むものではありませんが、問題は労働省との関係であります。労働省株式会社形態のもののみに依拠をするという形でもって財形が動いてきている。そしてその結果がいま言われたような形の残高を生んでいる。公益法人等育成のための努力というものを労働大臣なぜやられなかったのか、何か御事情があったのか。その辺を明らかにしていただきたい。
  15. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先生の御質問でございますが、申すまでもなく、個人で財形転貸融資をやることが困難な事業主につきましては、福利厚生会社という方式、これがいま先生指摘財形住宅金融会社方式でございます。これと、もう一つ民間法人あるいは住宅協同組合による、事業主団体による融資という方式がございまして、私どもといたしましては、現在の財形の普及が困難だということで先ほど申しました利子補給もやったわけでございますが、もう一つ、手続上の問題が実は隘路としてあるわけでございまして、これは転貸でございますので、一回会社が借りて、それをまた労働者に貸しつける。しかも住宅でございますので非常に長期間にわたるということから、個々の事業主にとりましてはこの債権債務の処理というのが非常に事務としてはやはり厄介と申しますか、繁雑なところがございますし、しかも、これは事業主がやめましてからもまだ債権債務関係が引き続くということがございましてなかなか大変な面がございますので、私どもとしましては、事務の困難な点をどうして解決するかということで、この福利厚生会社方式及び事業主団体による方式に目をつけているところでございます。  そこで、その財形住宅金融株式会社でございますけれども、この会社が昨年でき上がったわけでございます。それで私どもとしましては、やはりその育成というものにつきましては率直なところ力を入れておるわけでございますが、その考え方はどういうことかというふうに申し上げてみますと、こういう事業を運営していくに当たりましては運営の基礎はやはり手数料の収入でございますが、これが余り高いとなかなか仕事がうまくできないということから、やはり低廉なものでなくてはいけないだろうと思いますが、そうしますと、かなりの数の事業主参加していただくということが必要でございますので、いわばスケールメリットを発揮する必要があるのではなかろうかと思います。こういう点から逆に申しますと、零細規模のものではこれは無理であろうという点が一つ問題点であろうかと思います。それからもう一つ先ほど申しましたように、住宅の金融でございますので長期間にわたってかなりの額の貸し付けが行われるということになりますと、働く人々が安心してこのようなものを利用するにつきましては、やはり確実な経営基礎がなくちゃいかぬ、また将来にわたって安定した経営をやることができる確固たる基盤がなくてはならないというふうに私ども考えておりますので、このような二つのポイントと申しますか、条件を満たすためにはおのずから限られたものになるというふうに考えておりまして、それで私どもとしましては、先ほど財形住宅金融株式会社がこのような条件にかなうというふうに考えまして、そういう点で応援をしているところでございますが、私どもといたしましては、何もこれに限ることはございませんで、いま申し上げましたような条件を満たすということであるならば、やはりそのような事業団体と申しますか、あるいは福利厚生会社と申しますか、そういうものにつきましても今後とも設立の余地があり、私どもとしては別に否定しているわけではございません。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 雑誌財形」八三年三月号なんですが、私永会長のインタビューではこの会社国策会社として規定しているわけですね。労働省としては、いま答弁がありまして、必ずしもこれにあれをしないという話でありますが、それは若干の経過があってそういう答弁になってくるわけでして。そもそも、非常に重点的にこの会社に注目をされておったという答弁がありましたが、国策会社と規定をしている、そういう認識ですか。
  17. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、かなり程度規模の大きいものでなくてはならぬということと、安定した基礎がなくちゃならぬということの二点を、常々この財形住宅金融株式会社にも強調しておりまして、そういうことを強調したことが、そのような国策会社というような表現になったんだろうと思いますが、私どもとしましては、本当に強調したいのは、以上申し上げた、先ほどから申し上げておる二点であるということでございます。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 私はとにかく、国策会社という意味をちょっと考えてみますと、この財形住宅金融株式会社一社のみに現実事務代行をやらせている。つまり民間法人としてはこの一社だけである、こういうことに、なっていることはなっているわけですね。
  19. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 現在のところ、このような仕事を行うものとして現実に存在しているものはこの会社だけでございます。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、この会社代表取締役会長松永正男さん、それから専務末永明さん、これは労働省の御出身でありますが、退官前の役職は何ですか。
  21. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 松永さんは元労働事務次官でございますし、それから末永さんは訓練局の――ちょっといま官名を忘れましたが、課長補佐であったかと存じます。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、代表取締役社長三沢千代治さんの経歴は。
  23. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) これはミサワホーム株式会社社長でございます。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 この会社顧問にはどんな方が名前を連ねていますか。
  25. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) ちょっと顧問名前は持ち合わせておりませんが。役員でよろしゅうございましょうか。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 役員でいいです。
  27. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 役員は、東海、第一勧銀、住友三和富士の各銀行から五名、そのほかに日本油脂等会社から三名で、八名の取締役がおります。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 松永さんは元労働事務次官、それから雇用促進事業団理事長建設業清酒製造業林業退職金共済組合理事長と、こういう経過をたどって取締役会長と。そこで専務末永さんですが、これは退官後どういうような職業役職につかれましたか。
  29. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 永大産業ミサワホーム二つ会社におきまして部長相当仕事をしておられたんではなかろうかというふうに記憶いたしております。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 末永さんは現労働事務次官の吉本さんと同期の入省で、永大産業の常務を三十九年から四十七年までやって、大阪ミサワホーム代表取締役社長を四十九年から五十六年までやられて、それでミサワホーム総合研究所参与を五十五年から五十七年六月までおやりになったと、こういう関係にあります。要するに、この会社というのは住宅産業プレハブメーカーとしてはミサワホーム一社によって独占されている、そういうことになります。そして、会長専務労働省の天下りである。その他にもいらっしゃる。この会社労働省ミサワホーム合作会社であると言ってよい。それは、会社が催した発足のときのホテルにおけるあのはでやかなというか、はでないわゆる出陣のひとつの行事を見てみてもよくわかる。労働省の上から中間までほとんどが参加をしてやっているというレセプション、そういうものをずっと見てみてもわかる。それで、これが一社独占ということになりますと、私はどんなに抗弁をされましても、六兆を超すところの大きな残高を持って、行政がその意味においては行き詰まりを来しているというような一面を考えながら一社独占ということを進めてくる。これはもう明確に行政が一民間企業を利する行為を働いてきた結果生んでいるところの財形の現状であると言って私は過言でないぐらいに思っているんです。その辺について労働大臣はいまの論議を聞かれながら、あなたもこの雑誌座談会お出ましになるときにはいろいろのレクチャーを受けてお出ましになっているんでありましょうから、どういう御認識をお持ちなのか、まず大臣答弁を聞きたい、私は。
  31. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 恐縮ですが、ちょっと事実関係につきもう少し触れさせていただければと存じますが、この株式会社は、もちろん株式は公開されておるわけでございまして、現在、いま資本金三億円でございますが、どういうところが株主になっておるかということを申し上げたいと存じます。厚木ナイロン、それから山陽国策、トーメン、日東紡、日本軽金属、ブリジストン、ソニー、日本油脂、東邦生命千代田生命、日本生命、三井生命、千代田火災海上、これらはいわば大手とも言うべき会社でございますが、そのほかに中小も入りまして二百十社でございます。最初資本金を出しましたときには三億円ということで予定いたしまして、これはこれらの株主が途中参加のものがかなりございまして、最初ミサワがこの資本金について出しておったわけでございますが、その後逐次肩がわりが進んでこういうような形になってきておりまして、この会社としましては、いろんなたくさんの会社が入ってくるまでの肩がわりということでミサワが持っておりまして、オープンのたてまえで、しかもそれを原則としてやっておりますし、私どもとしましてもミサワ色で塗りつぶされるということがあってはいけないということで、なるべくたくさんの会社が入るようにということでオープンシステムを常々強調してきたところでございますし、また代表取締役につきましても、先ほど申し上げましたように、東海、一勧、住友三和富士というような各銀行に入ってもらうということでミサワカラーを薄めたいというふうにしてやってきておるところでございます。
  32. 大野明

    国務大臣大野明君) いずれにいたしましても、いま局長から答弁いたしましたように、要件さえ満たせるということであれば、現在あるこの一社のみならず、今後とも設立に対しては何ら支障がないというふうに考えております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 さっき末永さんの経歴に触れましたが、永大からミサワに移られたのもこれはもうわれわれ記憶に新しいところで、永大が破産をしていく過程でもってミサワがこれを吸収するわけですから、そういうことで移っているのでしょうが、実際問題として、いま銀行名前幾つかお挙げになりましたが、たとえば全銀協は、現在全国一社としているが、ミサワホームとの密着度が強く、これではコマーシャルベースに乗りかねない、そういうふうに全銀協が批判をしている記事が御存じのとおり出ていますね。また、三月二十八日の日本経済新聞でありますが、これでは「財住金を利用するには出資義務を負い、かつ財住金まで地方企業が出かけて行かねばならない不便もある。そこで、静岡県の中小企業団体は今年一月、静岡財形事業協会設立財住金への」事務代行を始めた。これでは事務代行事務代行、いわゆる二重の代行機関が必要になってくる。こういうような点をいま労働省はあなた方の指導の中でやっているということになるんですが、この点は一体どういうふうに考えているんですか。
  34. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) まず第一点の問題で、全銀協のそのお話でございますが、私もそのようなことについては聞いております。それは私の記憶では去年の中ごろのお話ではなかろうかと思っておりますが、その後全銀協の方でも理解が進んできておるのではなかろうかというふうに私は想像いたしております。  それからまた、静岡ケースでございますけれども、これは静岡でもこのような代行のための組織をつくろうというようなお話がございまして、いろいろと検討されたわけでございますが、やはりその際に一つ問題になったのは、先ほどからお話ししておりますスケールメリットの問題でございまして、やはり広い範囲でやれば手数料も安くて済むという問題がございますので、そのようなことでお話をしました結果、それでは静岡県につきましてはこの組織が、いわば実質的には支店と申したらいいんでしょうか、そのような形で仕事をやろうというふうなことで業務提携になるというような経緯をたどったものでございます。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 この静岡県のケース財団法人。そうすると、財形住宅金融株式会社なるものが財団法人業務委託をするというような関係になるわけですね。これはどういうことですか。
  36. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先生の御質問趣旨、私あるいは正確に理解していないかもしれませんが、実情を申し上げてみますと、これは、この財団法人につきましては幾つかの仕事があるわけでございますが、その一つとしてこの財形住宅金融株式会社仕事について、いわばその委託を受けたというような形で業務提携をやっておるわけでございます。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 私が言っているのは、その財団法人株式会社から業務委託を受けるというのはどういうことなんですかということです。
  38. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) まだ私、先生の御質問の御趣旨がよくわからないんでございますけれども、この財形法におきましては事業主転貸業務肩がわりということで福利厚生会社による方式と、それからまたこの法人あるいは住宅協同組合による肩がわり方式という二つ方式が認められておりまして、そういう意味におきましては財形住宅金融株式会社株式会社という法形式はとっておりますけれども御存じのように、この財形法の省令を見ましても、原則としてその業務の半分以上はこの転貸仕事をやるというようなことをいわば条件といたしておるわけでございまして、そういう意味におきましては、この財形住宅金融株式会社仕事財形法の考え、あるいは趣旨にのっとった仕事をやっておるということでございますので、財形法としましては、何と申しますか、このような仕事をやる組織としていま申し上げたような二つのやり方を予定しておるわけでございますが、その二つ方式は、その趣旨におきましてはその転貸仕事を伸ばすということで共通しておるというふうに私理解いたしておりますので、このような方式をとるということは、私自身としましては財形法格別差し支えがないのではなかろうかというふうに存じます。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 私はここは非常に問題があると思いますからさらにここのところは自後少し論議をしていきます。  その静岡県の協会役員には労働省出身者は。
  40. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) ちょっといま手元に資料を持ち合わしておりませんので正確なことは御答弁いまこの場でできませんので、後ほどまた資料でお届けいたしたいと存じます。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 労働大臣、この話の最後にしますがね、私は福祉会社設立についていま申しましたように会社そのものに疑惑を持つというよりも、いままでの行政指導そのものにはかなり深い疑惑を持っています。法律違反の可能性もあると実は踏みまして、明確に独禁法の違反でありましたから、その指摘はこれまでの過程で労働省にもしてまいりました。態度はその意味では改まってきていると思いますが、まあきょうは時間がありませんから社労の委員会に引き継ぎますけれどもね、こういうような事務代行方式は私はやっぱりもっと再検討される必要があるのではなかろうかという感じを持ちますから、要望としてこれは述べておきたいと思いますが。
  42. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま先生指摘の点でございますが、いずれにいたしましても先ほど答弁いたしましたように、これ一つという意味ではございません。今後もその条件さえ満たせばということでございますので、先生がいまおっしゃるようなことはないと確信いたしております。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 大臣ね、そう言われたところで現実の問題としてはね、この一社しか指導してこなかったんですよ。そうして六兆五千億弱の言ってみりゃたまりがあるわけですよ。これはもうやっぱり行政上そごがあったわけですよ。ここのところはちゃんと踏まえてもらって、そうしていま言われるように今後の問題としては幾つかの問題のものをいわゆる行政指導をしていくというようなこと、いままであったことについては、これは事実関係明確なんですからね。
  44. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 私ども貯蓄残高は六兆五千億ということでございますが、融資が非常に低いということは、これは事実問題として当然認めなきゃならない厳粛な事実だと存じております。そういうことから利子補給制度も新設したわけでございますし、また手続上の困難を打開する方策、隘路を打開する方策としていま申し上げましたような財形住宅金融株式会社ということも考えまして、これは去年の夏に発足したわけでございますが、遅まきながらこれはその手続上の困難を打開するための方策についても手を染め始めたわけでございます。これがこういうことはどうして以前からやらなかったのかという御指摘がございましょうが、やはり何といっても金利が高いということが隘路でございまして、やはりこの手続上の問題に取り組むための前提としましては、金利を下げるということがどうしても必要な前提だったわけでございますので、これが去年の法律改正の際におきまして新しくできるようになりましたもんですから、それでこの手続上の問題に取り組むに至ったわけでございます。そこで財形住宅金融株式会社がまず最初会社として発足いたしましたが、今後の問題につきましては、先ほど大臣から答弁がございましたように、私の指摘いたしました二つのポイントと申しますか条件を満たすというようなものであれば、私どもとしましてもこれを、その存在を認めるということについては決してやぶさかではないつもりでございます。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 清掃工場の死亡事故が依然として後を絶ちません。労働省、昨年七月に清掃事業における労働安全衛生管理要綱を改正をされたわけですね。その後の死亡事故を具体的に挙げてください。
  46. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) いま先生から安全衛生管理要綱を改正して以来の死亡事故という御指摘でございましたんですが、これはまず去年、五十七年におきます事故を見てみますと、清掃事業でございますが、これでは死亡事故につきましてはごみ処理関係が八人、屎尿処理関係が六人、合計十四人でございます。そのうち特に硫化水素の中毒という死亡事故が多うございますが、それでとってみますと、そのうち三人を含めておるわけでございます。  それで安全衛生管理要綱が制定されまして以来というのはちょっといま調べていますのでお待ちいただけたらと存じます。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 ここは通告してあるんだから答弁すぐ出なきゃならぬわけですが、ちょっと時間がありませんからね、進めますが、そのうちに計算してもらえばいいです。  昨年十一月に死亡事故が起きた滋賀県の豊郷町一部事務組合、これは要綱がおりていなかった事実があるわけですね。これはせっかく要綱をつくっても役に立たないということになっているわけですよ。どういう見解をお持ちでしょう。
  48. 福渡靖

    説明員(福渡靖君) 御指摘のように滋賀県で事故が起きております。これは私どもの方の酸素欠乏症等防止規則を改正をいたしまして通知を出した後に起こった事故でございまして、私どもも非常に残念に思っておりますが、一応地方局に対して労働基準局長からの通知をし、そして地方基準局、滋賀の労働基準局ではこれを踏まえまして関係のところに文書で全部通知をしておりますし、また必要な説明会あるいは研修会等も実施をしております。そういうようなことをやりながらなお徹底しなかったということについては大変残念であったと、このように感じております。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 三名死亡者が出ましたことし一月の北海道標津町、この一部事務組合には昨年十二月に労働基準監督官が立ち入り調査をされているわけです。しかしその後また死亡事故が起きる、こういうことが発生しているわけですが、改善命令は出されたわけでしょうかね。
  50. 福渡靖

    説明員(福渡靖君) 昨年十二月に監督指導をした際にはそういう改善命令は出しておりませんが、一月に事故が発生をした後指示をしております。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 それは答弁は間違っている。
  52. 福渡靖

    説明員(福渡靖君) 北海道の標津町における事故につきましては、一月の八日に事故が発生をいたしまして釧路労働基準監督署の方から直ちに衛生専門官それから労働基準監督官を派遣をいたしております。調査は一月の九日に行われまして、その結果を踏まえ、また一月の十四日からさらに三日間をかけて調査を実施しておりますが、その結果については所要の措置をとるとともに法違反等の実態についても調査中でございます。いま先生指摘のように具体的にどのような措置をとったのかということになりますと、ちょっといま手持ちの資料がございませんので、具体的な指示については現在手持ちがございません。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 そうだから、前段でなぜ正確でない答弁をされるのですか。あなたの答弁は正確じゃありませんよ。改善命令などというのは、きょう、けさ現在まで出てませんよ。けさこちらは電話でもってちゃんと打ち合わせしておるんですから、そういうでたらめな答弁は許せない。
  54. 福渡靖

    説明員(福渡靖君) 改善命令については御指摘のように具体的に私どもの方も出していないと思いますが、事故の防止についての指導について行った、そういう意味で私が答弁申し上げたわけでございますので、趣旨が違っていた点についてはおわびを申し上げます。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、監督行政というのはこういうような形でもって機能をしない、機能をしないうちに次々と死亡事故が発生をする、こういう状態になっているわけですよ。ここのところはどういうふうにお考えですか。
  56. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 実は、この清掃業における事故につきましては、私も非常に憂慮いたしておるわけでございまして、昨年私が赴任しまして、そのときにちょうど安全管理要綱が新しくなりまして、これは関係の組合である自治労の皆様方とも相談いたしましてその内容をかなり詳細につくり上げたというふうに思っておりますし、またこれは自治省、それから厚生省とも相談いたしました。それで進めておりましたやさきに滋賀県で事故が発生いたしたわけでございます。私も自治労の方々と改正の問題についていろいろとお話をしておりました直後だったものですから、実は私も非常にショックを受けたわけでございまして、それで、さてこれはどこに原因があるだろうかということで中でもいろいろと議論したわけでございますが、やはりこれは小さな市町村でございまして、管理体制が非常に不十分であるという点があるのではなかろうかと思います。  ことに問題は、一部事務組合の場合であろうかと存じます。一部事務組合の場合には、一部事務組合の長の人は、これは各町村実は持ち回りになってしまいまして、その下に今度は現場がありまして、その持ち回りになっている市町村のトップの方と現場との間の連絡と申しますか、体制、つまり安全衛生に関する管理の体制が十分じゃないという点が一つのこういう一部事務組合における問題点一つではなかろうかと思います。こういう点をどうして改善するかということになりますと、なかなか実際問題としてむずかしいのでございますが、先ほどから衛生課長が申しておりますように、言葉としては周知徹底、PRということで簡単な言葉でございますけれども、これを実際にその責任者である長に、あるいはその企業の管理者に理解していただくということはなかなか大変でございますけれども、やはり私どもはいろんな会議をやります際とか、こういうときにはぜひその責任のある人に出席してもらわなくてはならぬと。  それから通牒を出します際にも、これは単に通牒を送りつけるというだけでは足りないのであって、やはりどんなような方式がいいかということで、基準局長の、地方の局長名前で直接の要請文を出すとか、いろんな工夫をそれなりにいたさなきゃならぬということで、一口に周知徹底と申しましても、そのような工夫はいたしておるわけでございます。  また、ことしの一月に地方の基準局長と、それから地方の労働所管部長との合同会議をやりましたが、これは基準局長だけではなくて、労働の担当部長さんもおいででございますので、私はこの問題を特に取り上げまして、その事故の重大性を訴えたわけでございますが、またその会合が終わったやさきに驚きましたことに今度は北海道の事故が起こったわけでございまして、私自身としても実は重ね重ねショックを受けたわけでございますが、やはり基本はPRの仕方にあるのではなかろうかというふうに思っておりますので、この私どものつくりました安全管理要綱、これは中身は私はかなり自信があると申しますと言い過ぎかもしれませんが、相当な水準をいっておるものではなかろうかと思いますが、問題はそれを実行することにあるわけでございまして、それをどのように実行に移すかということが非常にいま苦労をしているわけでございますけれども、このPRの仕方につきましてはさらに工夫するとともに、これはわれわれだけではなくて自治省、それから厚生省の強力なるバックアップも必要でございますので、関係省庁とも改めて相談して、どうしたらこの方針が実行に移せるかということでさらに工夫を重ねていきたいというふうに思っております。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 まあ要綱が末端になかなかおりていないし、おりない。それからいま言われたような一部事務組合などの場合には事情があることはよくわかります。普通の場合ならば、安全衛生委員会などがそれぞれの事業体ごとに、職場ごとにつくられながら協議が積み重ねられていきますから、そういう点でもなかなかむずかしい点がある。むずかしい点があるがゆえに、そこでいわゆる基準監督行政が生きなきゃならぬわけですから、とにかく監督行政がそういう意味では機能をしていない。  そこで私は、ずっとちょっと調べてみると、やっぱり一部事務組合であるとか、あるいは民間委託というところで事故が集中的に起こっているわけです。それらを考えますと、やっぱりいま答弁がありましたが、全国一斉にこれらのところの調査をすぐやるくらいのそういう構えを、あなた方の方の人的な条件ももちろんありますが、それを踏まえながら考えるわけですが、やるくらいの決意がなくてはいかぬのじゃないだろうかと、そう思いますがいかがですか。
  58. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) これは先生指摘のように、まあ一片の通達を出して事が終わるというものではございませんで、いつかも話を関係者の方々としておったわけでございますが、改めて通達を出さぬかと言われたわけでございますけれども、私は同じことを再度強調しても実は余り意味がないと思うので、さてどうしたらいいかということでさらに考えさしてくださいということを話しておったわけでございます。  先生の御指摘の一斉の調査ということでございますが、これはやはりこういうようなケースが起こりまして、各局も相当やはり問題意識は持ったと思いますが、これはかなり局ごとに事情の違いもあると思いますけれども、私どももひとつ局ごとの事情ももう一回調べ直しまして、先生の御指摘のようなこういう清掃業における状況はどうなっておるかと、そういうことを調べるということが必要なところにつきましては、おっしゃったようなことで考えてみたいというふうに思っております。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 まあ講習会などがずっとやられておることを知らないわけじゃありません。しかし、それだけじゃ十分に徹底をしないわけです。やっぱり要綱が周知徹底するような具体的な措置、そういうものを当然考えてしかるべきである。いま局長答弁がありましたが、大臣よろしいですか。
  60. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま局長から答弁いたしましたように、関係省庁の問題もあり、また労働省としてもPRの問題もあるということではございますが、いずれにしても事人命に関することでございますから、より一層の努力をいたすと同時に、またただ肩書きのみだけでなく、実際にそれを遂行してもらえるというような方々をより多く求めなきゃならぬというようなこともこれありだろうという感じもいたしますし、ここら辺いろいろ総合してやっていきたいと思っております。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 労働大臣、総理府の労働力調査の一月結果なんですが、三月八日の閣議であなたは労働省関係の有効求人倍率や毎月勤労統計の結果からかけ離れている、あるいは調査方式の変更に問題があると述べられ、そして労調の調査結果に疑問を呈せられたとこれは報道されたわけですが、予算委員会でも若干問題になっておりました。真意はどういうところにあったのですかね。
  62. 大野明

    国務大臣大野明君) 実際労働省のいろいろいま御指摘の有効求人倍率とか、あるいはまた毎勤統計とかというようなこと、また職業安定機関からの報告等を勘案して大変にかけ離れた数字がいきなり一月労働力調査で出てきた。どうもそこら辺にいろいろギャップがあるんではないかということは、その中身においても、完全失業率のいま問題でございますが、しかし、一方労働力人口あるいはまた雇用者数、就業者数等々を勘案していくとこれも大幅にふえておると、これはどういうことであろうかと言ったら、そこで実は調査の方法を変えましたと、四カ月かかって変えたということでございます。私どもといたしましてもそれが大きく影響しているんではないかという点を指摘したと、疑問を持ったと言ってもよろしゅうございますが。そこで、やはりこれは雇用問題というのは切実な問題でもありますから、もっとはっきりした指標というものが出てきて国民各位にも御理解賜った方がいいんではないかと、それにはそれらの疑問点の解明をしたいなということで、三月八日の閣議で申し上げたということでございます。そこで、二月もほぼ両者とも変わらないような横ばい状態だというような結果も出ておるところでございます。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 そのいまお触れになった二月の結果ですがね、二月の結果も二・七一%、こういう形で出たわけですよ。あのとき、労働省の三月八日の見解というのは、労働力調査の結果についてはいましばらくその推移を見守った上で評価する必要がある、こういう形だったわけですね。そうすると、この二月の結果を見て大臣はどういう判断をされているわけですかね。
  64. 大野明

    国務大臣大野明君) 二月の結果もいま申し上げましたように、一月と比べて横ばい状態で厳しいという認識のもとでございますが、いずれにしてもこういう統計、先ほど申し上げましたように総理府の方も四カ月がかりでやってきたことですから、私どももやはり数カ月の推移を見た上の判断の方が的確ではないかというふうに現在考えております。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 私は実はことしの調査方法の改定というのは、ある意味ではより実態を反映しているんだと思っているわけです。むしろ、従来の数値が失業率を過小に評価していたんじゃないだろうかと、そういうふうに思うんですが、その辺のところはどうなんですか。
  66. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 雇用失業情勢がいろんな指標にどうあらわれるかということにつきましては、いろんな背景も事情もあろうと思います。昨年の四月ですか、二・三%台に失業率がなりまして、その後昨年年内は二・四%前後の推移が、ことしに入りまして二・七二とか七一で〇・三上がったということでございますが、先ほど大臣が申し上げましたように、いま私どもの方の指標だけでなくて、定期的に職業安定機関からその地域の企業整備の状況とか離職者の発生状況、その他の情報をとっております。その情報なり報告等も徴してみる限りでは、そこで急激に変わっているというような結果がないということで、私どももただいま大臣が申し上げたような見解を持っておるわけでございますけれども、ただ現在の雇用失業情勢につきましては、景気の回復が非常におくれておりますので厳しい状況でございますし、先行きにつきましても若干世界経済の中で明るさも見られるような状況もございますけれども、まだなかなか楽観を許さないというような状況から、そういう先行きに対する事業主の企業マインドというようなこともございまして、非常に厳しい状況だと思いますが、同時にまた中期的な問題として就業構造、失業構造も変わってきておるというようなこともございますので、もうしばらく時間を、期間をとりまして分析、検討する必要があるんじゃなかろうかと存じます。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 私は、実は三月八日の見解というのは、少しやっぱり間違っていると言ったら言い過ぎかもしれませんが、おかしいと思っているのです。労働省の見解というのは有効求人倍率とそして労調の結果がかなり乖離していると、こう言っているわけですね。完全失業率と有効求人倍率の相関をとってみましたら、そうすると有効求人倍率が〇・六とか〇・七となりますと、有効求人倍率がそんなに低下しなくても完全夫業率は上昇しますよ。逆に求人倍率が一・三だとか一・四以上になりますと、そうすると求人倍率が上昇しても失業率は下がらない状態になりますよ。つまり失業率と求人倍率との相関は対数の私は曲線、ログの曲線をこう描く、そういうふうに少なくとも私のグラフはそう出たわけですね。そうすると失業率が二・四、五十七年十二月から二・七%に上昇しましても、この求人倍率は低下しないという現象はあり得るわけですよ。ここのところは私は間違ってないと思うのだが、どうでしょうか。
  68. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 雇用失業情勢をあらわします指標が、先ほど来話になっておりますような失業率の問題とかそれから労働力需給、求人と求職の関係というようなもの、その他もろもろございますが、いま御指摘のように失業者の数なり失業率であらわれるものと、それから求人求職のあるいは労働力需要供給の関係であらわれるものの間に、何といいますか、差が出てくるといいますか、そういうものは中期的に見ると出てくるところがあると思います。先ほど、ちょっと触れましたけれども、労働力需給が構造的に変化するとかあるいは労働市場が構造的に変化すると、たとえば最近進んでおりますように、サービス経済化が進んでまいりますと、第三次産業は労働異動率の高い産業でございまして、そこの就業者がふえるということですから労働異動する人が高まると。また女子の職場進出が増加してまいりますと、関連してパートタイマーなんかふえますと、パートタイマーの方々は従来から入離職率の激しい層であると、そういうようなこと。また若年層は若年層としてその時期の経済社会情勢に応じて職業の選好度等によって異動することも高いというようなこと。そういうようなもろもろの労働力需給の構造変化が進んでまいりますと、たとえば需要と供給が均衡した時点での失業率、すなわち需要不足に基づく失業ということでない失業もあるわけでございまして、そういう面での変化が出てくるということはあろうかと存じます。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 私はどうも大臣大臣を含んで労働省の雇用情勢の見方が甘過ぎるという感じが、予算委員会で大臣答弁を聞きながらもそう思っていたのですが、現在の雇用情勢をどう認識をするのだろう。私は景気循環による循環的なものなのかあるいは経済の構造変動による構造的なものなのか、これがいわば複合して困難なものにしているというふうに認識するのか、その辺はどうなんですか。私の認識の方がいいんですか、どっちか一方ですか。
  70. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) なかなか複雑な内容だと思いますが、一つ基本的にはやはり世界的な不況が長引いておりまして、それとの関連で景気回復の足取りが非常に緩やかであることに基づきまして需要が不足しているということ、そういう面での失業情勢の悪化というのが大きいかと思いますが、同時に先ほど来申し上げておりますように産業構造、就業構造の変化がございます。先ほど触れました事項のほかに、たとえば経済事情の変化に基づきまして構造的に不況に陥っている業種がふえてきておるとか、また高齢化社会が進んでいくとかあるいは技術革新、マイクロエレクトロニクスの技術を応用する技術革新等が進展するとか、そういうような面での構造的な問題も中期的には徐々に影響を与えてきておるし、今後もそういうことが非常に問題になるおそれがあるというふうに思っておるところでございまして、現時点では基本的には需要不足、景気回復の足取りが遅い需要不足に基づくところが大きいと思いますけれども、あわせて構造的なものが影響をしておりますし、その影響度合いは今後さらに強まることが懸念されるというような状況でなかろうかと存じます。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 現在の失業率に対する循環的な要因の寄与率ないしは寄与度ですね、これは企画庁、労働省それぞれ幾ら、どういうふうに踏んでいますか。
  72. 勝村坦郎

    説明員(勝村坦郎君) ただいま御質問の点でありますが、和田委員の御質問基礎は、私どもが昨年末に発表いたしました年間回顧と呼んでおります「日本経済の現況」、これの中に一応構造的な失業と循環的な失業をどう考えるかということを分析いたしておりますので、それを念頭に置かれての御質問かと思います。それでこの文章は、ちょっとお断りいたしておきますが、経済企画庁の調査局がつくりまして、実は経済白書等と違いましてほかの省庁との意見の調整は行っておりません。したがいまして、企画庁限りの見解というふうに御理解いただきたいと思います。  それで、それのお手持ちの百七十五ページ前後に御承知のように分析をいたしております。これは基本的な考え方といたしましては、労働力市場におきまして求人と求職がほぼ一致をするような状況、これを均衡失業率ないしは完全雇用失業率というふうに理解をいたしまして、それから現在の失業率というものがどの程度乖離をしているのかしていないのか、それによりまして構造的な要因、循環的な要因を一応分けてみようというふうに考えたわけであります。それで、この均衡失業率というもの自体がやはり三十年代から四十年代、五十年代を経まして徐々に上がってきているということはどうも否定できないんではないだろうか。したがいまして、労働力率の増加等に伴いまして失業率が構造的に上がっているということが、それである程度は言えるのではないだろうかということが一つの点であります。それからいま一つは、これは分析いたしました点では二・七というような失業率はまだ発表されておりませんで、昨年の二・四前後の段階でありますが、その二・四という当時の失業率には、やはりそういう構造変化だけでなくて循環的な要因によるものがある程度含まれているというふうに考えざるを得ないんではないだろうかと、この二点がこの分析のポイントであります。ただ、こういう分析の手法というのはきわめて統計処理上もそれから理論的にも問題がありまして、あくまで一つの分析の便法ということでやりましたわけで、私どももこれが何か絶対的な数字を示すというふうには考えておりませんが、一応昨年にいたしましたときでは、大体その均衡失業率というのが徐々に上がってきまして二%前後のところまで来ているのではないだろうか、そういうふうなことを記述いたしております。ただ、ことしの一月、二月の二・七という高い失業率、これをさらにデータとして入れまして分析をいたしますと、もうちょっと違った数字が出てくるのではないだろうかというふうに考えております。
  73. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 私どもの方といたしまして、現在の失業情勢あるいは失業者数、失業率に景気循環的なものと構造変化によるもの、どのような寄与度かというようなことについて具体的な数値までは詰めておりませんが、やはり先ほど申し上げましたように、五十五年後半以降景気が落ち込みまして回復がおくれ不況が長引いているというようなことから需要が落ち込んでいるということに加えて、構造的なものがかなり進行しているというような中身だろうと思いますけれども、これらの点につきましては、現在経済計画の再検討、見直しとあわせまして、私どもの方も雇用対策基本計画の見直し作業を雇用審議会にお願いをしていま審議されておるところでございますが、そういう中でこの失業の問題も重要な問題として検討をいたしておるところでございます。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと時間の配分を誤って時間がなくなりましたから、あとは常任委員会に譲りますけれども一つだけ尋ねておきたいのは、大蔵省の「ソフト化社会における雇用に関する一考察」というレポートがありますね。このレポートを見ますと、女性の失業者が大幅に増加しており、一月の失業率で言えば、〇・三%の上昇要因となっている、こういうふうになっているわけです。なぜ女性の失業が増加しているのか。この大蔵省のレポートは、家庭婦人の就労期待感が上昇したことにより、女子労働力人口が大幅に増加をしたが、それに見合う求人数の上昇がなかったために失業者が増加した、こう言っているわけです。  まず第一に、労働省と企画庁、この点はこういう形で認識をされますか、私は、この大蔵省レポートは女性の失業増を景気拡大期の現象ととらえているわけですね。とらえているのですよ。これも承服しかねる判断でありまして、確かに労働市場からすれば、景気拡大期には求人が増加して女性の就業意欲をそそるのですが、今回の場合、そういう観点からの説明で事足れりとすることができるかどうかということを考えてみますと、私は私の答えとしてはノーであります。労働省は、この失業者増加という指標だけでこういうような結論を導き出すことは、先ほど来もいろいろ答弁がありましたが、私は危険だと考えるんですけれども、二点目は、この辺をどうお考えになっているのか。  それから三点目は、これは企画庁ですか、女性の就業行動は世帯主の所得によって左右されます。正確には他の条件の一定のもとで夫の所得が高いほど妻の有業率が低くなるということだろうと思うんですが、そういうダグラス―有澤のいわゆる原則的な法則というのはいまも生きているというふうにお考えになりますか。
  75. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まず大蔵省が出されました「ソフト化社会における雇用に関する一考察」という資料でございますが、これは大蔵省というよりも、大蔵省の調査企画課でまとめられた資料だというふうに承知をいたしておりますが、その中で取り上げられております現在の失業率の高まりが女子の増加によるものが大きいということ、またそれは女子の失業者がふえるのは景気拡大期に見られるというような点についてでございますけれども、中期的に見まして、私どもも女子の労働市場への参加というものが増加しておりまして、そういうものが失業率を高くするのに一定の影響を与えているということはありますし、今後も出てくる可能性はあろうかというふうに存じますけれども、同時に、現在の失業状況あるいはこの一月、二月の失業率の高まりの中では、女子も非常に高くなっておるわけですけれども、男子の失業率も高くなっているというようなこともございますし、また女子の影響というのは、先ほど言いましたように、やはり中期的に見ればそうだろうと思いますが、この一、二カ月だけでそこまで規定できるかどうかは、なおもう少し分析する必要があろうというふうに存じますし、またこれが景気拡大期にそういう状況が出るかどうかということ、逆にいまが景気拡大期だというふうに指摘されているかどうかまではわかりませんけれども、現在のところはまだかなり厳しい状況でございますし、今後も世界経済その他との関連でわが国の経済等の先行きから見ましたら、かなりむずかしい情勢が続くのではなかろうかというふうに考え、これに対する対応をしなければならぬというふうに考えております。
  76. 勝村坦郎

    説明員(勝村坦郎君) ただいまの景気循環と失業率の関係並びに女子の失業との関係につきましてお答え申し上げますが、大蔵省が申しておりますように、景気の回復期に多少失業率が上昇する可能性があるということは、従来のデータから申しましてある局面ではあり得た現象かと思います。これは雇用の指標がある程度ラグを持ちまして動くということが影響しているかと思うわけであります。ただ、大蔵省が主張しておりますように、五十二年、五十三年の失業率の上昇が景気回復の中で行われたと、現在の失業率の上昇も景気回復の一つの派生的な現象である、こういう解釈は私どもは非常に無理があるのではないだろうかと思っております。  一応データをちょっと調べてみますと、女子の失業率が非常に上がりましたのは五十二年中なんですが、五十二年というのはこれは景気回復の年ではありませんで、景気調整の年であります。景気後退の年であります。男子の失業率は確かに五十三年に入りましてからかなり上昇いたしました。これは確かにラグ現象として説明できるものではないかというふうには考えております。ただ、五十三年にはその他の雇用指標がいずれも好転します中で男子の失業率がなお上昇を続けた、こういう状況でありましたので、これはラグ現象として説明できるかもしれませんが、現在の失業率の上昇を景気回復期におけるラグとして説明することは、私どもは不可能であろうというふうに考えております。  それから、女子の失業率並びに労働力率につきましても、これも構造的な要因と循環的な要因が相まじっておりまして、実際に女子の労働力率が上昇し出しましたのは大体五十一年の後半ぐらいからというふうに私どもは観察しております。これはやはり第一次石油ショック後のデフレ現象、その中での、先生指摘のような世帯主の所得の低迷、こういうものを背景にした上昇分というのがある程度あったと思います。ただ、五十年代の初めの上昇は、基本的にはやはり家事の軽減とか、あるいは女子におきます、何といいますか学歴の全般的な向上と、そういうようなことを背景にしました構造的な労働力率の上昇というのが同時に起こっていただろうというふうに考えます。  それから、最近におきましても女子の労働力率の上昇がかなり起こっておりますし、それから総理府の家計調査などで見ましても、昨年までの一年ぐらいは妻の収入の伸びというのがちょっと異常なくらいふえていたわけであります。これはやはり、世帯としての所得の伸びが鈍いときの所得補てん的な要因がかなり左右していたのではないだろうか、こういうふうに理解をいたしております。
  77. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、一月十九日の決算委員会で、民間精神病院の経営者の問題について厚生省にただしました。きょうは、わが国の精神医療の八割を超える民間精神病院の職員の皆さんの労働条件のひどいことに驚きまして、このまま放置すると精神医療の改善充実という問題について重大な影響を与えると考え、この領域の労働の問題を取り上げることにいたしました。  川崎市高津区下野毛九百四十六番地に多摩川病院という内科、小児科、精神科、神経科で、主として精神科の患者さん三百二十名が入院されている病院があります。職員は百七名です。五十六年三月一日に病院の土地、建物が立花商事に渡り、開設者も初鹿野誠彦医師となり、同月後半に熊谷秀男顧問が就任をしてくるのです。  この熊谷顧問は、労働者の間では争議屋として知られているようです。私の知る限りでは、いままでも板橋中央病院、上板橋病院、第一出版、東京電波など五つの事業所でこの組合つぶしを行っており、現在は東京電波の社長という肩書きを持つ方のようです。そしてこの熊谷顧問は労務担当として就任をして、同病院の組合員の前で三つの約束をします。一つは労使協調、第二は経営のガラス張り、第三に処分や解雇は出さない、こういうことを約束をするんです。しかし、その後の経過を見ると、これが真っ赤なうそであるということがわかります。  昭和五十七年七月二十日、仕事がないということを理由に磯田由美子さん、九月十四日に患者さんと喫茶店に行ったということで倉田健治さん、同じく九月十六日に経営者に反抗したということで里山千鶴さん、そしてことしに入って一月二十日に新年会の費用がかかり過ぎたということで山岸真理子さん、次々と理由にならない理由で不当な解雇が続いていっています。そして解雇された方々は神奈川県地方労働委員会あるいはまた横浜地裁へとその身分保全、救済の訴えを起こしておられます。  いま私が言いましたような多摩川病院の労働問題について労働省は若干でも御承知でしょうか。
  78. 関英夫

    政府委員(関英夫君) ただいま先生からお話のございました多摩川病院の解雇問題その他をめぐります労使間の争いにつきましては、先生お話の最後にございましたように、不当労働行為というようなことで神奈川県の地労委に、あるいはまた地位保全の仮処分というような形で裁判所にそれぞれ事件が出されており、神奈川県労政事務所あるいは労政課に組合の方からいろいろお話もございますので、それを通じて私どももその辺の事情について報告を受けておるところでございます。
  79. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは話がしやすいと思います。しかし、そのように地労委なり裁判所に対していろいろ訴えていること以外にたくさんの問題があります。経営者としてまことに問題があるということが次々と起こっています。きょうは初めてこの問題を取り上げますので、ひとつ正しい認識をしてもらわなければならないと思いますから、少し時間がかかりますけれどもいま起こっている具体的な問題を次々と並べまして、大臣にもひとつ十分な認識をいただきたいとこのように思います。  昨年の春闘でも地方労働委員会の調停を受けています。ここで賃上げも妥結するのですが、妥結をしても一方的に賃上げを四月にさかのぼるという、遡及を拒否をする。あるいはまた六月十三日にストライキをしてそれを回避したのに、組合員の就労を拒否して一方的に賃金をカットする。また七月にも同じことが起こっている。また、六月二十一日に組合の執行委員長、書記長の配転を強行する。七月二十七日、組合員である里山さんに就業規則にない自宅待機処分。八月十日にも副執行委員長に対し同様処分を強行して三〇%の賃金カット。八月五日に、昭和五十六年二月二十八日付前経営者との確認をしておるその確認書を一方的に破棄通告をする。八月十七日に里山さんに対して、答えをしなければ懲戒解雇をする、という退職勧告をやって、地労委に実効確保の措置申し立てを行いました。二十六日付で解雇留保の勧告が出て、そしてこれを尊重するという回答にもかかわらず、九月十三日に解雇通知をする。再度里山さんが申し立て解雇留保の問題について地労委に訴える。地労委は解雇留保の再勧告を行う。しかし、最終的に十六日に解雇を強行する。それでまた、この里山さんとかあるいは倉田さんの解雇については、予告期間も予告手当もないという無法なことをやっている。それから八月二十日には三月十日に現在の経営者と組合が結んだ事前協議に関する確約書を一方的に破棄通告をしてくる。十一月十七日に、年末一時金が、年間一時金協定があるにもかかわらず、支給するか否かを含めて白紙に戻すというふうな通告。十一月二十一日に、勤労看護学生の通学保障、賃金が八〇%、奨学金が三万、身分は正職員ということになっている、この協定及び学生個人との契約も一方的に破棄。同日及びことし一月二十一日に、組合員である三人の主任、副主任の理由抜きの降格。十二月十一日支給の年末一時金で協定違反の差別査定。ことしの一月二十一日、組合員が入っている寮の強制退去通告。このように次々と問題が発生をして、多摩川病院に働いている皆さんには平和な一日はほとんどなかったというふうな感じを私は持ちます。そればかりでなく、この熊谷顧問自身、昨年の八月、河野執行委員、それからことし一月二十五日長田執行委員長、同じく二月二日倉田書記長の三人に対して首を締めるというふうな暴行も繰り返しているという話も聞いております。  どうも大変な労務管理が行われているようで、こうしたことがすべて事実であるとすれば、私は現在労働基準法に基づいて保障されている労働者の基本的な権利なり活動なりというものがすべてこう圧殺されている状況は、とても許せることでない、こう思うんですが、大臣、いまずっと私が一通り述べましたことについて率直な感想でよろしいから一言お願いしたいと思います。
  80. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま先生いろいろ具体的に日付を追ってるるお話ございました点、耳を傾けておったのでございますが、このようなことが行われておるというようなこと、非常に私も驚いておりますけれども、いずれにしても現在神奈川県の労働委員会において審理を進めておるという具体的な事例でございますので、そのことについて私がいまどうもお答えするというわけにもまいらぬと思っております。
  81. 本岡昭次

    本岡昭次君 驚いたということで結構でございます。  そこで警察の方にお伺いいたしますが、先ほど最後に言いました熊谷顧問の首締めなどの暴行によって負傷したのは組合員であります、私の手元に全治七日間とかいうふうな診断書がありますけれども。にもかかわらず経営者の方がこの組合員を告訴して、神奈川県警の高津警察署に再三呼び出しを行い、そして一、二回呼び出しに応じて行かれたということなんですが、これはどういうことになっているんですか、警察の方ひとつ説明してください。
  82. 國松孝次

    説明員國松孝次君) お答えいたします。  この多摩川病院の労使の間の紛争をめぐります事件につきましては、私どもの方の立場といたしますと、告訴があれば、告訴というものがございました場合には捜査しなければならないという義務もございまして、その病院の関係者からの告訴に基づいて現在、双方のいろんな関係者の言い分を聞いておるというのが実情でございます。  本件事案は、多摩川病院の管理課長ほかの者から出ました告訴状によりますと、事案三つございまして、一つは本年二月二日午後四時十分ごろに、同病院の敷地内において同病院の管理課長である告訴人が、被告訴人になるわけでありますが、元同病院の職員に左右上腕部を強度に引っ張られ、右わき下腹部を殴打され、全治五日間の上腕部挫傷の傷害を受けたというのが一つ。それから、同じくこの管理課長なる者が二月四日午前九時二十分ごろ、別の被告訴人であります元同病院の職員に胸を突き飛ばされるなどして全治三週間、顔面挫傷、頸椎捻挫の傷害を受けたと。またもう一件ございまして、二月二日午後四時十五分ごろに、これは別の病院の職員、補助看護士でありますが、この者が告訴人になっているわけでありますが、その者が被告訴人であるまたこれ別の准看護士に地面にたたきつけられて転倒し、さらに正面腹部を足げりにされて全治一週間の腹部打撲症、肘部――ひじでありますけれども、挫傷の傷害を受けた。この三つにつきまして告訴が高津警察署に出ております。したがいまして私どもの方は、この告訴事件の処理という形で現場の検証をいたしましたし、告訴されておる者、あるいは告訴をしてきた者などから現在事情を聴取して捜査をしておるというのが現状でございます。
  83. 本岡昭次

    本岡昭次君 はい、わかりました。  いまここでその問題を深く立ち入る時間もありませんし、問題はその背景となるところを明らかにしていくことが大事だと思いますから、その問題はこれから多摩川病院問題を追っていく中で随時聞いていきたいと思います。  いろいろの問題をここでお聞きしたいんですが、時間の関係もありますので、きょうは磯田由美子さんの不当解雇の問題に限って伺ってまいります。  昭和五十七年七月十五日に解雇通告を突然なされて、首を切られるということになります。そしてそのときの理由が「当病院の運営上の方針変更に依り、今後貴殿にお願いする業務がなくなりますので、昭和五十七年七月二十日付を以って貴殿とのパートタイマーとしての雇傭契約を解除します。」という解雇通告があるわけで、そしてこれを持ってきた内藤経理課長というのも、何の説明もなく机の上にその解雇通告を置いて立ち去ってしまうというふうなやり方をやっております。それでその後、組合の方が横浜地方裁判所にこの磯田さんの地位保全等の仮処分を申請した過程の中で、本当の解雇理由というものが具体的に判明をしたんです。その地裁の決定の文書よりそのまま解雇の理由を御紹介いたします。  「昭和五六年六月の医療費改定の際、臨床心理、神経心理の検査は医師が自ら検査分析を行う場合にのみ保険診療報酬の点数として算定できることになり、被申請人は昭和五七年六月ころそのことに気がついた。」被申請人というのは、これは病院の経営側です。これによれば、申請人の担当した――これは磯田さんですね、磯田さんの担当した心理検査では保険診療報酬の請求ができないことになり、申請人を心理検査担当者として勤務させる意味がなくなった、これが解雇理由であるわけなんですね。もしこれがその理由であるならば――いや、これはもう理由なんですね、裁判所ではっきり言っているんですから。それでは、多摩川病院においていろんな人が働いていると思いますが、それが一つ一つ診療報酬請求のできる仕事であるとは限らないわけで、診療報酬請求のできるお医者さんなり職員もおればそうでない人もたくさんおられるわけで、これは全体としてその病院の職員という構成になるわけです。これはどこの病院でも同じことなんですが、厚生省には後ほどこの中身について尋ねてまいりますが、労働省としてこのようなことが裁判所の中で堂々と申し述べられてそして解雇されるというふうなことがあっていいのかどうか、これははっきりひとつ言っていただきたいと思います。
  84. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 労働基準法におきましては、これは先生御存じのように、解雇をする場合には労働基準法の二十条の定めによって解雇するということで予告の手続があるわけでございますが、これはいわば手続規定でございまして、解雇が有効であるか無効であるかという問題につきましては、実は現在先生がおっしゃいましたように横浜地裁において争われておるわけでございまして、こういう見地から言いましても私どもとしましてこの問題につきましては直接タッチするわけにもいかないわけでございますが、労働基準法の問題としましてはいわば解雇につきまして手続の規定を置いておるわけでございまして、解雇の有効、無効ということについてはこれは直接これを判定するような立場にはございませんので、この点につきましては裁判所の判断をまちたいというふうに思っておるわけでございます。
  85. 本岡昭次

    本岡昭次君 裁判所の判断をまつというそのことだけで、労働省として現在労働者がこういう理由で解雇されていることについて何ら見解も出せないと、こういうことなんですか。労働省としていま労働基準法の問題も出されましたけれども、一般的な見解も出せないんですか。
  86. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 労働基準法上どういう問題があるかということになりますと、ただいまのような考え方でございまして、有効、無効を判定するということになりますと、これは裁判所にいま現在争われている以上は、この問題は裁判所で判断していただくということにならざるを得ないのではなかろうかというふうに思います。
  87. 本岡昭次

    本岡昭次君 労働省がそういう立場をとるからこういうことが起こるんだと私は思うんですがね。これは時間をかけて社労の方でまたいろいろ追及さしていただきます。  そこで、厚生省にお伺いしますけれども、裁判所の佐賀裁判官は昭和五十七年十二月二十七日の決定で、「申請人がパートタイムの従業員であることを考慮に入れてもなお本件解雇につき被申請人の就業規則八条三号に該当する事由があると言うことはできないから本件解雇は無効である。」というふうにはっきり言い切っているんですよ。無効であると言い切っているんですよ。労働省の官僚が何かわかったようなわからぬようなことを言うよりも、はっきり無効だとなっているんですよ。私もこれは無効だと思いますよ。  そこで厚生省にお尋ねしますが、直接解雇の理由になった五十六年六月の医療費改定の際に、臨床心理、神経心理の検査、これは医者みずからが検査を行う場合にのみ保険診療報酬として点数を算定できる、だからこの臨床心理士というものが要らなくなったというふうな、この多摩川病院のようなことがそれでは五十六年六月を契機にして起こっているのですかどうですか、全国的に。
  88. 寺松尚

    説明員寺松尚君) いまの先生の御質問につきましてお答えを申し上げたいと存じます。  臨床心理、神経心理の検査につきましての改定は、直近のものが御指摘のとおり昭和五十六年六月でございます。その検査の点数を改定いたしました目的は、それらの検査の適正化を図るために行ったわけでございます。  なお、その六月以降いま先生指摘のような臨床心理士の解雇問題等が全国的に発生しておるというようなことについては、私ども承知しておりません。
  89. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで、臨床心理士ということで病院に勤務している人は全国で何人ぐらいいるんですか。
  90. 柳沢健一郎

    説明員柳沢健一郎君) 御指摘の臨床心理士についての全国の数でございますけれども、臨床心理士につきましては現在医療職種としては法制化されてございませんので、したがいまして病院報告と厚生省の方でその数を把握する報告の中にも上がってまいらない、したがいまして厚生省といたしましてはその実態を把握していない、その数の実態を把握していないというのがそれが実情でございます。  しかし、御参考までに申し上げますと、社団法人の日本精神病院協会というところで、昭和五十六年七月に全国の精神病院にアンケート調査をいたしております。その結果、六百十九の病院から回答がございまして、その調査結果から見ますると二百七十五の病院に臨床心理士と呼ばれる方が存在しておられるわけでございます。そのアンケート調査での総数は四百五十一人ということになるわけでございまして、したがいまして一病院当たりの臨床検査士の数ということになりますと〇・七人と、精神病院においてそのような数になろうかと存じます。
  91. 本岡昭次

    本岡昭次君 いま一つ厚生省に参考のためにお伺いしておきますが、この多摩川病院というのは三百床の病床を持っているんですが、この程度の規模の病院で診療心理士を置いている病院はどのくらいあるんですか。
  92. 柳沢健一郎

    説明員柳沢健一郎君) これも先ほどの日本精神病院協会の調査でございますけれども、二百七十五病院のうち三百床以上の規模の病院は百三病院ございまして、その病院において二百二人の臨床検査士が現在就業しておられるというそういう報告でございます。
  93. 本岡昭次

    本岡昭次君 先ほど解雇無効だというこの地位保全と仮処分申請に対する決定を下した横浜地方裁判所の決定文書の中には、「三百床台の精神科の病院で心理検査等を担当する臨床心理士を置く病院は昭和五十五年現在六六%に上る。」、こういうふうにここには書いてあります。だから臨床心理士という、法制化されていないにしろ精神病院の中での位置づけというものは、それなりに精神科病院の中で高い位置を占めているというふうに判断ができると、こう思うんですね。  さらに新しい問題を申してみますが、この磯田さんの不当解雇によって起こっている多摩川病院の診療内容の低下ということも、この裁判の中では言及をしています。五十六年の三月から五十七年の七月までの心理検査は八百十件で、一カ月平均四十八件行われているんです。それが磯田さんが解雇された後、十一月十一日まで、つまり七月からですから約四カ月、この間心理検査がどのぐらい行われたか。私は驚きますが、たった七件なんですよ、たった七件にとどまっているんです。これは明らかにこの病院の医療の質の低下がそこで起こった。病院の医療の質の低下は、そこに入院している患者の受ける医療の質の低下なんです。そしてまた、逆の意味で、患者からすれば磯田さんというのが、この同病院の医療について、特に臨床心理、神経心理という、こういう問題について、患者さんにとって本当に必要な人間であったということを、私はこれを証明しておると、このように思うんですね。だから、先ほど労働省の方から、労働基準法に照らせばその手続が云々とか、それは裁判所が判断するんでしょうとかいうふうな血も涙もないことじゃなくて、普通の人間であれば、この起こっている問題が果たして正しいのかどうかということについての一つの判断はできると、私はこう思うんですね。厚生省、労働省、いま私が言いました診療内容の低下から出てくるこの解雇問題についての感想をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  94. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 私、いま先生指摘いただきましたことをお聞きしておりましたんでございますが、この臨床心理士の必要性につきましては、おっしゃいますとおり、精神医療の患者の医療の中におきましては非常に重要な検査であろうかと存じます。ただ、いま件数が減ったといいますことが、その臨床心理士の方がいなくなったからかどうかということにつきましては、私どもお答えをするわけにはいかない立場なのではないかと存じます。医療の必要性から検査をやるという御判断は、治療されます医師が一切行うものではないかと存じます。  ただ、それから先生の御指摘の中でございましたことを申すといたしますれば、病院の中におきましては診療報酬の点数化を図っていない職種というものも、御指摘のとおり、たとえば事務部門の職員というようなものも点数化しているわけではございません。そういう事実はございます。
  95. 本岡昭次

    本岡昭次君 裁判所の方もこの地位保全等の仮処分申請の問題についてははっきりと解雇は無効だということを、こう言っているんですよ。ところが、病院側はその問題を受け入れずに、今度は民事訴訟法第七百四十六条に基づく起訴命令を裁判所に今度は要請をして、本訴で争うというところへいくんですね。それで本訴で争うと言うんです。私はどうもわからぬのですよ。ここで労働省に言っても、それは裁判所の本訴の中で決着をつけてもらわなしようがないじゃないですかという答えが返ってくると思います。しかし私は、この精神病治療医療の質の問題を考え、また明らかにいま裁判所が一つの決定を下している段階において、病院側は本訴を取り下げて解雇そのものを改めるべきです、採用をするべきだということで、この問題を解決していかなければ、次々と裁判、裁判、裁判と、それで労働省の側もいま言ったように裁判でしか私たちはどうにもできない、こういうふうなことで、地労委があっても、地方労働委員会も何の力も持ち得ない。そして、裁判所で仮処分の決定が出てもそれも何の力も持ち得ない。そして、労働者は首を切られて生活に事欠く。しかも病院の医療の質の低下を来す。こういうことに対して労働省として何ら見解もこうした場で出せないということは、私は非常に悲しいことだ、こう思うんですがね。いま無効の決定が出て、それでもなお病院側が本訴に持ち込んでいくという、そうした状況についても労働省は何らコメントする立場にない、このようにおっしゃいますか。
  96. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) まことに申しわけございませんが、仮処分で決定が出まして、その次に本訴ということで、労使間でその有効、無効が争われておるということになりますれば、私どもの方から裁判所が決めるべき事柄につきまして、労働省としてはこう思うというふうにそれに先がけて公式に考えを述べるというわけにはこれはまいらないということではなかろうかと存じます。
  97. 本岡昭次

    本岡昭次君 この裁判に持ち込まれるまでに和解の話も何遍も出て、しかもその間には、これは神奈川県の問題ですから神奈川県のいろんな立場からの行政指導もあったと思うんですが、次々そういうものがつぶされていって、結局裁判に行ってしまっているんですよ。きょうはもう時間がありませんから、最後に私の要請をして、きょうはこの問題はこの程度にとどめておきます。  私が多摩川病院という一病院の問題を、この国会で取り上げた問題をいま一度私は明らかにしておきます。労働省の頭のかたい皆さんももう少し柔軟に考えてください。  いま精神医療というのは本当に多くの問題を抱えておるんです。その最大の問題は、これはもう前日本医師会会長の武見太郎氏がいみじくも言っているんですが、精神病院経営者は牧畜管理業者だと、こう批判をせざるを得ないような状態にあるんですよ。だから、こういう状態から患者の人権を守って人間的な触れ合いの中で、この精神医療を開放的な中でどう進めるかということがいまの精神医療の中の最大の問題なんです。非常に前近代的な中での病院経営、労務管理が行われているんです。だから、精神病院で働く労働者も、それでは精神病患者として入院している人と同じような形で人権が迫害されているんではどうにもならないわけで、私は、そこで働く労働者の権利が守られているのか、あるいは劣悪な待遇や劣悪な労働条件というものが少しでも改善されていくという状況の中で、精神医療そのものがよくなっていく、そういうことについての社会的な関心をここで盛り上げなければどうにもならない、こう思うんです。だから労働省が、それは厚生省の問題だということじゃなくって、そこに働いている労働者のその置かれている状況についていま少し認識を新たにして、今後強力な労働省のバックアップを私は要請をしていきたい、このように最後に申し上げて質問を終わりたいと思います。大野労働大臣、何か私の申し上げましたことについて御感想でもあればいただいて、終わります。
  98. 大野明

    国務大臣大野明君) いずれにいたしましても、医療の中身についてはこれは厚生省ということになるでしょうが、そこに働く方々の労使関係、これはまあ何も精神病院ということでなく、当然私どもの役目でございますから、一生懸命やっていきたいということはもう言うまでもございません。ただ、労働省としてもすべての点に手ぐすね引いてやるとかなんとかいう点について、これは裁判の問題なんかそういうわけにもまいりませんし、と同時に精神薄弱者の方々に対しましてのたとえば雇用問題なんかはできる限り努力をし、またその成果も上がりつつあるというようなことで、決してそれを置き去りにしているものでもございませんので、どうかその点の御認識をいただくと同時に、いま先生からいろいろ御質問あった点につきましても、私ども、これから、その中身等も初めて聞いた点もございますので、踏まえて、また健全な労使関係を築くように努力をいたす所存でございます。
  99. 本岡昭次

    本岡昭次君 労働大臣、いまも健全な労使慣行とおっしゃいましたが、そういうことについて温かいひとつ配慮を賜りたい。また、これから具体的に私も社労というところを通して、また要請をしたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは次に、労働者の有給教育休暇制度の問題について若干お伺いをいたします。  先日の社労委員会において、私の質問労働省の方の答弁がかみ合わずに、委員長質問を留保したわけですが、決算委員会で――ちょっと委員会が違って申しわけないんですが、その留保された問題についてここで解決をしておきたい、このように私は考えますので、有給教育休暇制度についての労働省の現在の基本的な認識、それをひとつお願いをいたします。
  100. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 有給教育休暇制度は、その趣旨において大変有意義なものであるという考え方に立っております。ただ、有給教育訓練休暇の法制化の問題につきましては、現在、有給教育訓練休暇の普及率が一割に満たない状況であるというようなこと、また労使のコンセンサスも形成されていないというのが実情でございます。したがいまして、これを与えることを義務づけるような法制化をすることにつきましては、なお今後の普及状況、労使の動向などを見ながら研究をしなければならないと考えております。  有給教育訓練休暇の普及の問題が一番大事な問題になるかと思いますが、この問題につきましては五十七年度から有給教育訓練休暇奨励給付金制度の大幅な改善を図りまして、一層の促進を図ることとしたところでございますので、今後ともこの制度の積極的な普及と活用を通じまして有給教育訓練休暇が日本の社会に広く普及、定着するように、さらに一層努力してまいる所存でございます。
  101. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまのお話の中で、ちょっと用語の整理をしていただきたいんです。私ははっきりとILO百四十号条約に言う有給教育休暇というふうに言っているんですが、あなたのいまの答弁の中で有給教育訓練休暇と、こうずっと一貫しておっしゃっているんですが、有給教育訓練休暇というのと有給教育休暇というのは同じなんですか。違うんですか、これ。
  102. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 失礼をいたしました。 有給教育休暇の法制化の問題という意味で有給教育訓練休暇と申し上げましたので、訂正をさしていただきたいと思います。一緒の意味で申し上げたつもりでございます。
  103. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、同じ意味で言ってもらっては困るんですよね。有給教育訓練休暇というのは企業が労働者に対する訓練ということになってくるわけで、有給教育休暇というのはこれはそこにはっきりと教育というものにウエートがあって、教育及び訓練と、こうなってくるんですよね。だから、やはり現在の労働省が進めておられるのは明らかに有給教育訓練なんですよね。だけれども、いま私がこの間から質問をしておりますのは有給教育休暇ということで、労働者の自発的な立場、労働者の立場に立つ教育の機会をどう得ていくか、それに対してそれを制度的にどう保障するか、その教育の中にはもちろん自分が労働者として、職業人として得たいという職業的な訓練あるいは技術の習得というものがあってもいいし、大学あるいは高等学校へ行って必要な学問を身につけるということがあってもいいと、こういうことで、これを混同しないようにひとつ整理をしてこれから論議をしていただきたいと、こう思います。  そこで文部省ですが、文部省もかつて元田中文部大臣がこの問題についての私の質問に対して非常に前向きな答弁をしていただいております。文部省だけで有給教育休暇制度の問題についてはやれないから、各関係省庁と十分協議をして前向きにこの問題について検討していきたい、こういうことであったのですが、その後その答弁が具体的にどのような手だてとなってあらわれているのか、ここでちょっと教えてください。
  104. 上野保之

    説明員(上野保之君) この問題は内容的には労働省で取り扱われるべき問題でございまして、文部省としましては、そういうことで先般といいますか、五十六年の三月二十三日に先生の御質問等もございまして、労働省と一応相談いたしまして、その結果としまして、労働省では現在有給教育訓練休暇奨励給付金制度というものがございますが、この制度を充実する、普及するという方向で対処するということで、私ども文部省といたしましてもその方向を、普及等を見守りたいということで、その後は特に制度化ということに、法制化ということについては協議といいますか、要請等具体的にはしておりません。
  105. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、いま時代の要請として教育と労働というものの関係を非常に大切にしなければならぬときが来たと思っておりますので、文部省、そんなへっぴり腰じゃなくて、やはり労働者に教育の機会をどう与えていくのかという問題について、いま少ししっかりとかかわっていかなければ、生涯教育なんてのは、こんな理念なんてものはまさに絵にかいたもちになるということをここで強い私からの要請をしておきます。  そこで、労働省にお伺いしますが、ILOの百四十号に言う有給教育休暇というこの条約については一九七四年に採択されて、すでにイギリス、フランス、西ドイツを初め十八カ国が批准をしているんですが、わが国がこのILO百四十号条約を批准するに当たってどこに問題があるのか、ひとつ具体的に言ってください。
  106. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) ILO第百四十号条約の有給教育休暇の対象といたしましては、まずあらゆる段階での訓練と、それから一般教育、社会教育及び市民教育、それに労働組合教育というものが含まれておるわけでございますが、この条約を批准できない大きな問題の一つは、労働組合教育に関する問題でございます。わが国の労働組合法におきましては、第七条第三号で「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を不当労働行為として禁止しております。有給、すなわち使用者の負担で労働組合が労働組合教育を行うことを目的とするこの労働組合教育については、現行法と抵触するという問題があるというふうに考えております。
  107. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ、それはいままでも争われてきた一つの解釈の問題だと思うんですが、この場で私もひとつ反論をしておきたいと思います。  使用者が経理上の援助を組合に与える行為はこれは不当労働行為、干渉になるんだと、便宜供与ということなんですが、しかし、経理上の援助を与えるというそのことに問題があるんじゃなくて、経理上の利益を与えてその組合を支配するという、いわば経営者が労使対等じゃなくて、組合を支配下に置くために経理上の援助を与える、だから、そのことは不当労働行為になるんだと。これが一つの私は筋としてあるんじゃないかと思うんですね。この考え方は正しいんですか、間違ってるんですか。
  108. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 労働組合という労働者の団体が、使用者から独立の団体として自主的に健全な発展、成長を遂げていくということが望ましいわけで、労働組合法においてもそういうことを実現しようということでいろいろ規定が設けられているわけでございますが、使用者が労働組合の運営に対して経理上の援助を与えることは、その使用者の主観的な意図、それが支配、介入のためにとか、あるいは逆に労働組合のさらに健全な発展のためにとか、いろんな主観的意図があろうかと思いますが、主観的な意図にかかわらず、一般的に労働組合の自主性を損なうおそれが強いと。経理上の援助を与えることは、主観的意図というものは確かにいろいろあるわけで、本当に問題なのは不当な支配、介入であり、支配下に置こうとする意図を持っての経理上の援助が問題だという先生の御趣旨はよくわかるわけでございますが、一般的に主観的な意図いかんを問わず、やっぱり組合の健全な発展を阻害するおそれが多いというふうに考えられるわけでございまして、そういう考えのもとに、わが国の労働組合法においては、団体交渉のときの賃金というようなごく例外を除きまして、使用者の主観的意図にかかわらず、これを不当労働行為として規定しているものというふうに私は解釈いたしておるところでございます。
  109. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう時間が来ましたので、最後に労働大臣にお伺いをして終わります。  確かに有給教育休暇に関する条約の必要な施策というものの中の一、二、三と三項目ある、三項目目に労働組合教育ということがある。だから、そのことが障害になってこの有給教育休暇に関する問題について、先進諸国がほとんど批准をしているのに日本が批准できないということは、どうも私は納得できないんです。特に私はやっぱり大野労働大臣にお考えいただきたいのは、これから高齢者社会になってまいります。高齢者の、高齢者というよりも中高齢者の雇用問題というのは非常に重要な問題になってくる。中高齢者の働く場所がないというのは、技術革新の日進月歩の中で、結局自分の持っている力そのものが現在の雇用要件と合わないというところの中で、やはり働きたくとも働けないという状況になってくるわけで、それは一企業の中の、企業の要請に応じていたんでは、そこの企業がだめになればもうだめになるわけで、広くこれから労働者がみずからの自発的な意思において日進月歩進んでいく科学技術のいろんな諸問題について幅広く労働者としての力を得ていく、そしてまた人間としての資質、教養も高めていく、そうした質の高い労働者をどうつくっていくのかという問題が私は中高齢者の問題にあるし、青少年非行の問題についても、中学校を卒業してそして働く、しかしやがてはまた高等学校というところに必要に応じて戻れる、また高等学校を卒業して働く、必要に応じてまた大学のところに戻れる、そうしたことがあって初めて受験教育というあの地獄的な状態も解消されていくし、労働と教育というものが一体になって進んでいく。しかし、それがいまできない社会の情勢にあるわけですよね。企業の要請に応じてではいけるけれども、個人の要請ではいけない。だからいま私は高齢者社会を迎える段階に当たり、また青少年非行の問題を見、また貿易摩擦と言われる中にあって、日本の労働者がより質の高いものにしていって、そしてアメリカやヨーロッパと対等に競争していく、そういう力を、ただの働きバチだということじゃないんだという問題をはっきり示していく意味でも、私は普及ができていないからということじゃなくて、労働省が先進的に十五年、二十年先を見通してこうした問題についての大胆なやっぱり検討をしていくべきではないかということを痛切に思うんですが、ひとつ労働大臣いかがでございましょうか。
  110. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま先生指摘の点につきましては私も同感でございます。先ほど局長から答弁ございましたが、いずれにしてもこの批准の問題というようなことになってまいりますと、国内法の問題、まあ抵触するというようなところからの検討を進めなければ、ただやるやると言うだけにすぎないので、ここら辺も踏まえて、現在の社会構造の変化に対応し、また、将来のわが国のあり方というようなものも眺めつつやらなければならない問題であります。有給教育制度というものは、これはまあ生涯教育あるいは生涯訓練の一環として大変にその意義は大きいということは十二分に認識いたしておりますので、今後前向きに検討したいと考えております。
  111. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時五十分まで休憩いたします。    午後零時四十九分休憩      ─────・─────    午後一時五十三分開会
  112. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題とし、労働省決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  113. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 労働省に身障者の採用についてお尋ねをいたしますが、先日新聞で、労働省が全盲の採用をせられたという記事を見て、大変朝のお茶がおいしかったわけですが、私、労働省へ参りますと、あのエレベーターの中に、実は身障者がエレベーターの運転をいたしております。大変、自分の職場を得たという感じのあの態度に感銘をいたしておりまして、この問題について、ひとつ労働省からお答えをいただきましょうか。
  114. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) いま御指摘のございました労働省の庁舎のエレベーターガールの件でございますが、労働省が入っております大手町合同庁舎の一号館には六基のエレベーターの運行業務につきまして、庁舎の清掃業務とあわせまして日国サービス株式会社という会社委託をいたしております。そういう意味では、あそこでエレベーターの運行の仕事をされております方は労働省の職員ではございませんが、この日国サービス株式会社が身障者は七名をもって運行をいたしておるわけでございます。  ただ、この身障者の雇用につきましては、労働省からこの会社に対しまして身体障害者を採用し、就業をしてもらうように勧奨、指導をいたしたわけでございまして、昭和四十三年の十一月から逐次エレベーターの運行要員として身体障害者を常用雇用として採用され、雇用しておられるわけでございまして、昭和五十六年九月から、いまの体制、七人の体制になっておるわけでございます。
  115. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 ちょっとお尋ねが悪かったと思うんですが、私がお尋ねしたのは、労働省が身障者の採用についての、あらゆる労働省の指導下におるものについてのお考え方はいかがでございましょうかというお尋ねでございます。申し上げたのは、そういうことを大変労働省がきめ細かくやっておることに敬意をあらわした言い方だったのを、それをお答えになったようでございますが、本質をお話しを願いたいとこう思います。
  116. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 身障者の雇用促進の行政のことということでございますか。
  117. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 そうです。
  118. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 身体障害者あるいは心身障害者の方々の雇用促進の問題、非常に雇用対策の中でも重要な仕事でございまして、五十三年から施行されました改正身体障害者雇用促進法におきましては、雇用率を法定義務とし、また法定義務に達しない企業で三百人を超える企業からは納付金を徴収する。それらをもとに雇用率を達成しているところに調整金を支払うとか、あるいは雇用促進の助成をするとか、そういうような雇用率制度を軸にいたしまして雇用促進に努めてきたわけでございますが、その後、国際障害者年等を契機といたしまして、心身障害者の雇用の問題につきましても、非常に事業主の方、その他関係者、国民の意識が高まっておりまして、この雇用失業情勢の厳しい中で、その後かなり雇用状況は進んでおるのが現状でございます。  結局、現状で一番問題は、やはり重度の障害者の方々の雇用の問題でございまして、そういうような状況を背景に、昨年三月総理府を中心に決められました障害者対策に関する長期計画の中におきまして、重度の障害者に対する対策を基本として、その他障害者の特性とか種類に応じたきめ細かな対策を講ずるという方針のもとに、現在、たとえばサリドマイドで両上肢を失われている方々に対する特別な就職援助の事業とか、あるいは今後進めようといたしております、一般的にはすぐ普通の企業で就業するのが困難な重度の方々につきまして、地方公共団体の参加もいただきました第三セクター方式による身障者の雇用企業を育成するとか、あるいは総合的なリハビリテーションの施設を整備していくとか、そういういろんな施策を進めておるところでございます。
  119. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 身障者の雇用というのは健常者なり、正常な一般社会、企業、役所も含めてですが、そういうものの私は責任であり義務だと思うのです。  いまの法定というお話がございましたが、法定ぎりぎりいっぱいは最小限度のものを見きわめておるのですから、政府内、政府に関連をいたしております、また政府の力が及びますあらゆるところについても十分労働省として配慮をしなければならないのではなかろうか。  もう一つは企業の問題ですが、企業からそれを十分に法定だけ雇い入れることができないから、それは金銭で清算をするんだというこの問題については、いささかいまの社会にはそぐわない話だと思いますね。この点あたりのこれからの労働省の指導が私は大変大事なことになるのではないであろうか。そのことが身障者が十分な職場を得られるかどうかにも影響をしてくると思います。  重度の問題については、私もいささかそれらの団体とも関係がありますから、おっしゃるようなことも十分わかるんですが、そこへ行くまでの過程にまだまだたくさんの問題があると思いますが、できましたらちょっと早走りで結構でございます、時間もございませんが、現在の政府内の各省の状態、そして企業の全体的なあらましの状態がわかればちょっとお聞かせを題いたい。
  120. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいま先生指摘になりましたように、身障者の雇用の問題につきましては国とか地方公共団体あるいは特殊法人、こういう公的な機関が率先垂範すべきだということが一つございます。したがいまして、こういう公的機関につきましては、この雇用率制度を内容とする改正法が施行されましてからあらゆる場で、たとえば政務次官会議等で発議していただいて、身障者を雇い入れる申し合わせをして各省進めていただくとか、あるいは雇用率を達成していない各省につきましては個別に労働省から要請をするとか、そういうようないろんな活動を進めまして、いまのところ国の機関としては非現業の場合も現業の場合もそれぞれ一・九%と一・八%の雇用率は達成しておる状況でございます。  ただ、地方公共団体の中にごく一部でございますけれども、特に学校の先生がおられます教育委員会等で、なかなか雇用率達成がむずかしいという都道府県、それから市町村で一部達成していないところがございますが、こういうところにつきましては、同じく個別に各県職業安定課等から要請をいたしましてかなり改善を見ておりますけれども、今後ともそういう未達成のところからは採用の計画というものを出していただいておりますので、それをもとに個別指導をいたしたいと思います。  それから、民間の雇用率の状況でございますが、一番新しいのでは、毎年六月に調査をいたしておりますので、昨年の六月の調査で法定雇用率一・五%に対しまして全体では一・二二%でございます。そういうことで、まだ未達成企業も五割程度ございますので、これらにつきましても、先ほど言いました雇用率の達成を軸といたしまして具体的な指導をいたしておるわけでございますけれども、従来雇用のおくれておりました大企業とかあるいは業種で金融、保険とか、そういうような規模別で大きいところ、あるいは業種別におくれているところも最近非常に取り組みが強くなってこられまして、まあまだ雇用率までには問題ありますけれどもかなり雇い入れが進んでいるというような状況でございます。
  121. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 厚生省もこの問題大いにかかわりがあるので、身体障害者雇用対策事業について、ごく簡単で結構ですが、お答え願いたい。
  122. 池堂政満

    説明員池堂政満君) お答えいたしたいと思います。  実は身体障害者の雇用対策の推進を図るということにつきましては、これは身体障害者自身の自立なりあるいは社会参加を促進するためにきわめて重要な役割りを果たすということは、これは論をまたないところでございます。  したがいまして、私ども厚生省におきましても従来からこの問題に取り組んでいるわけでございますが、実は雇用の可能な障害者に対しましては、これは労働行政の分野で対応していただいているわけでございますが、なお、そのほかに実は雇用のできない障害者、この方々に対する待遇につきましては、これは福祉分野におきまして当然働く場を確保する必要があろうということでもって、たとえば授産施設であるとかあるいは視力障害者に対する三療の関係の訓練であるとか、こういうこと等の推進によって現在その働く場の確保を図ってきているという状況でございます。  なおまた、今後の取り組みでございますが、先ほど労働省の方からも御説明がございましたように、昨年三月、政府におきましては今後における障害者対策の長期計画を作成したわけでございますが、その中でも先ほど御説明がありましたように、その基本的方向が示されております。  したがいまして、それらの趣旨を踏まえつつ、総理府あるいは労働省と連携を密にしながら、さらにその推進に取り組んでまいりたい、かように考えております。  以上でございます。
  123. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 この問題の最後に大臣にひとつお尋ねをし、お願いをいたしておきたいと思うんですが、昨年一月に、「国際障害者年を契機とする心身障害者雇用対策の今後の在り方について」の身体障害者雇用審議会から意見書が出されたと思うんですが、そこの中に雇用対策に当たっては、「すべての障害者が健常者とともに一般企業においてごく自然に働けるような状態を造り出すことを目指す」べきであるという、これすらっと読みますと、読み過ごしてしまうような字句なんですけれども、私が先ほど言ったエレベーターの中の従業員が非常に所を得たというこの物の考え方が、これからの身障者の就職に大変大事なことだと思うんですよ。  大臣ね、特殊学校の校長の一人が卒業生の就職のために何キロも離れたところの会社社長さんを訪問しまして、そこで雇ってくれるであろうということで行きましたら、感激をいたしまして、わしの秘書の助手を務めるのに一人、もう一人雇ってやろうと言って二人の人が就職ができることになった。これは一例でございますけれども、私は役所方の障害者対策というものを、非常にむずかしいと思いますけれども、やはりその意味では大変今度の労働省の盲人採用も大変いまの意味で大事であろうと思うわけであります。全体の労働省仕事の中の大きな分野としてのこの障害者就労対策に、大臣も御就任以来愛情政治家と言われる大臣でございますが、ひとつ大臣就任の間に少し血の通う政策を見せていただきたいとお願いをいたしまして、大臣の御感想を承りたいと思います。
  124. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま労働省に対しましてお褒めをいただき心から感謝いたしております。  ただ、労働省といたしましても先般の盲人採用あるいはまたエレベーターガールの問題等もございますが、これに満足しているものでなく、非常にむずかしい問題も多々あるこの障害者の方々の雇用でございますので、この啓蒙するということは大切であると同時に、そして理解を一人でも二人でもより多くの方にいただくようにまずがんばらなきゃいかぬということを考えております。  特に、身障者の方々の長期計画という中にもいま御指摘のような点ございまして、それはさらっと読めばさらっと読めるのか、深刻に、真剣に考えればこれはまた大問題だということがわかるというようなこともございまして、そこをさらっと読まないできちんと読んでそうして対策を練るということになろうかと思いますが、いずれにしてもその採用する企業者に対しての啓蒙度がまだまだという感じがいたしますので、本当に身障者の方々がやはり社会に出てりっぱに働けるというような環境づくりにいそしみたいと思っております。
  125. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 それでは、第二の問題で、ちょうど就職戦線が一段落をつけたところでございますが、実は今年度の就職の状態をお聞きをしたいと思っておりましたら、時間が大変なくなっていくようでございますから、高等学校の就職ということにしぼってここでお尋ねをいたしたいと思うのですが、高等学校の求人申し込みの期日、それから推薦の開始、選考の期日というのが、求人申し込み七月一日、推薦開始九月二十一日、選考が十月一日、そして大学が十一月一日と、こういうことになっておるんです。  ここで問題になりますのは二つあるんです。一つは、七月一日から求人申し込み、推薦開始をやっておりますと、ちょうどそこ夏休みにかかってくるわけなのです。これは現場からもかなり強い要望があると思うんですが、この点について何か労働省の方でお考えがございましたらお聞かせをまず願いたいと思います。
  126. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 新規の高等学校卒業者の就職問題についてでございますが、新規高等学校卒業者に対します求人につきましては、かつては求人の受理確認等は比較的早い時期に行われておりまして、たとえば五十一、二年度で見ますと、安定所における受理確認が六月一日、それから学校への提示が六月二十日となっておったわけでございますけれども、こういうやり方を背景に、早期求人申し込みによります早期選考とか、あるいは余りにも早い求人申し込みでございますので、その後求人取り消しがあるとか、特にひどい場合は採用内定の取り消しとかというような問題も起きましたために、そういう問題を防止するために、五十三年度以降につきましては求人の受理確認を七月一日、いま先生指摘になりましたように求人の受理確認を七月一日、それから学校への提示を七月十五日ということに繰り下げたところでございます。この求人の受理日を再び繰り上げることにつきましては、こういう厳しい雇用失業情勢のもとで適正な採用計画の作成が妨げられるとか、ひいては求人取り消しとか、採用取り消しというような問題が起きてもいけませんし、また大学卒業者を対象とする自主協定も二年目にありますので、それへの心理的な影響というようなこともあわせ考えますと、私どもとしても慎重に検討をすべき問題だろうと考えております。  ただ、御指摘にありましたように、特に学校への提示の七月十五日ということにつきましては、学校が期末試験とか夏休みにかかってまいりますので、せっかく求人情報を学校へ提示しましても学生に求人情報が提供されないというようなことも考えられますので、この点については若干改善をする必要があるというような考え方から、今後この七月十五日を七月十日まで繰り上げることによりまして、夏休み以前に必要な求人情報が就職希望の学生に提供できるように、ひいては就職機会の拡大を図ることができるようにいたしたいということで現在考えておるところでございます。
  127. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 私があえて就職の実情のお尋ねを省きましたのは、実は就職の率というのは実際はパーセントで言ってもなかなかそれは把握できないので、その中に含んでおります質の問題なのでございますから、そういう意味ではいま申し上げたようなことがその質の問題に関係をしてまいりますから、ひとつ十分御配慮をいただかなければならないと思うのでございますが、そこで、文部省が来ておいでになると思いますが、就職、一連の問題につきましてちょうど一片づけ片づいたところでございますから、いろいろ問題がございましたり、いま私が質問をした問題についても御意見がありましたら、文部省からお聞かせを願いたい。
  128. 阿部憲司

    説明員(阿部憲司君) 文部省といたしましては、先生がただいま御指摘になりましたもろもろの問題点につきまして、労働省と十分協議を重ねながら対処してまいりたいと、かように考えております。
  129. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 大臣にひとつこのことをお考えを願いたいと思うことがございますが、いまちょっと局長からの説明の中にもございました大学の就職協定の不参加をいたしましてこれで二年目に入ってきたわけでございます。まず就職戦線というのは、実は大臣御承知のように買い手市場でいまございまして、売り手というのは大変弱いわけでございますので、そこでいきさつはいろいろ、労働省が三者協定から撤退したもののいきさつは私はあると思うのですけれども、伝えられる正論――正規なものでないかもしれませんが、伝えられると、なかなか言うことを聞かないからおまえたちで勝手にやってみるというようないささかのものも流れたんではないかという気持ちさえするわけで、撤退をいたしました。そして一年を過ぎまして、先日から労働省にお聞きをしますと、あれでよかった、大変いいことで、両方が自主的によくやってくれたと、こうおっしゃるんですよ。おっしゃるんですけれども、いっぱい実はこれ新聞記事――大臣、これ何だったらお渡ししてもいいほど、それがどういうふうで悪いかということが書いてある、まあ次元が違いますが。そういうことでございまして、いま私が最初に申し上げた買い手市場である、そして高等学校なり大学なりというのはあれは集団でございませんので、あの中身を割りますと、一人一人の受験者であって、そして一つの大学はそれをまとめておるのみでございます。そこに強いものと弱いものとのバランスの中で、どうも労働省が聞いておるのは使用者側、採用者側の御意見を聞いておるようですが、そしてあれでりっぱにやれておると言うんですが、弱い方の意見は、文部省も含めまして、文部省からも何か書類が行っていると思うのですけれども、また、この職業高等学校、特に高等学校がそのことで、私がここで申し上げるのはなぜかというと、大学の協定が破れますと、それは十月一日から高等学校がやっておるんですよ。大学は十一月一日からだと言うんですけれども、十月一日から学校訪問をさすんですよ。ここに問題が、いまの就職戦線に弱い高等学校の就職をする生徒たちにしわ寄せが行っている。大学自体の問題にも問題がもちろんないではございません。  それで、二年目が来てるんですが、ひとつ今年一年タイミングを合わして考えていただいて、私はやはり労働省が、これほど大切な問題に撤退はないと思う。いろいろなことがありましたでしょう。自主的にやれと言うんなら労働省が全部自主的にやらしたらいいんですから、日本の労働行政自主的にやったらいいんですから。割り込んで、軍配を持たないかぬところはやはり労働省が軍配を持つべきではないか、私はこう言い続けておるんですが、なかなかそういうふうになりにくいようですが、まあことしスタートをして本年度に入りました。来年度の問題がくるまでにしっくりとひとつ内部でも――私はこれいきさつやそういうものの体面や、そういうものじゃないと思います。まして日本の大学の就職戦線がかかり、それにかかわります高等学校の生徒たちの一番弱いところにしわ寄せが来ているこの状態でございますから、大臣、ひとつお考えおきを願いたい。特にこれは三者協定の中には労働省が一枚入って、使用者と就職をする方の側と、その中に労働省の労働行政というものが入るべきだと、まあ私はこういうことを考えておりますので、御意見を承りたい。――こいつはひとつ大臣にいただきたいものでございますが、まあ局長から。
  130. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ちょっと事務的に説明だけ私の方からさしていただきたいと思います。  就職協定から労働省が撤退いたしましたことはもう先生、一番よく御存じのことで、申し上げるまでもないと思いますが、確かに高校卒の人たちと大卒の人たちとの競合というのは、もしこの就職協定が守られないと出てくる問題でございまして、その問題は一つあろうかと思いますが、まあ大卒者の就職問題につきましては、労働省も手をやいて下がったというよりも、やはり従来のように労働省が加わった遵守委員会でやっていきます場合に、どうも通報も一部に限られ、それで出された通報についても十分調査ができないために、結局まじめにこの協定を守っております企業とか学生が逆に正直者がばかを見るような不利益に陥るというようなことで、このまま続けると行政の公平性が失われるという観点から撤退をいたしたわけでございまして、その後の状況は、先ほど指摘もございましたが、まあ私どもも企業側の分析だけでなくて、従来労働省へ学生その他から直接通報等が行われておりましたことも、これはまあ相対的な問題でございますが、前年に比べると少なくなっているということで、前年よりは落ちつきが見られたのではなかろうかと思っておるわけでございます。そういうことを背景に、五十八年度の大学卒の就職につきましては、昨年の十二月十五日の雇用対策協議会、それから就職問題懇談会においても、従来どおり十月一日以降訪問開始、十一月以降選考開始ということで、自主的な申し合わせで進められることになっておるわけでございまして、私どももこの問題、基本的にはやはり学卒者を採用される企業の方あるいは学校なり就職しようとする学生、当事者が自分のものだということで取り組んでもらわないと、結局規制だけしてもかえって見えないところでいろんな弊害が出てくるというようなこともありまして、やはりみずからのものとしてやっていただくという必要があろうかと存じまして、当面こういうものを見守ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  131. 大野明

    国務大臣大野明君) 就職協定につきましては、いまも局長から答弁ございましたが、いずれにしても産業界、主として大学側との自主的なということで、それを遵守できなかったときにどうなるんだろうという御心配をされておられるわけでございますが、私どももこれを先生指摘のようにやろうと思いますと調査をしなければならないし、調査をするためにはそのための権限もございませんしというようなことをいろいろ考えていきますと、やはりこれはやるんなら抜本的にやらざるを得ないんではないか。こういうような体制づくりをしなければ、なかなか現況では、先生のお気持ちはわかりますが、むずかしいと考えております。  私も、昨年からせがれが就職したもんで、いろいろその状況等を知っておりますけれども、いずれにしても五十八年度のことももうすでに昨年十二月に決まっておるということでございますから、その推移を現況は見守らざるを得ないと思っております。
  132. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 そういうお答えであろうとも思っておりますが、基本的には弱い方と強い方とがやっておるということを頭に置いておいていただかないと、これ対等で両方が話ししておるということではございませんし、正常に行われておるというこのことにも、まあ一つ一つ例を挙げれば際限ございませんが、たくさんあるということもひとついろいろ御調査をいただいて、今後の問題点として残しておいていただきたい、こうお願いをいたしておきます。  最後に、労働災害の問題についてでございますが、建設の労働災害に限ってお尋ねをいたしたいと思います。  時間もなるべくと思いますので、現在の労働災害に対しまする労働省のいまの取り組み方をごく簡単にお答えを願いたいと思います。
  133. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 労働災害の取り組みにつきましては、私ども実は今年度から新しい災害防止計画をつくりまして、それでその目標の第一に、災害の件数につきましては前の計画に比べて三〇%減少するということを目標にいたしまして取り組んでいるところでございます。実はこれまで余りこのような具体的な数字の目標を挙げたことはなかったわけでございますけれども、最近やや長期的に見ますと災害は減少傾向にございますけれども、しかしながらややこの減少傾向にブレーキがかかっているような状況が見られますので、この際、決意を新たに取り組む必要があるということから、こういうようなことを第一番に置きまして新しい計画をつくっておるわけでございます。  建設業でございますが、建設業について見てみますと、これは先生御存じのように、建設業における死亡災害は全産業の四割を占める、それからまた、休業四日以上の災害で見てみますとほぼ三分の一ということで、実はなかなかウエートが高いわけでございます。この建設業におきましても、最近の関係者の御努力が実っておりまして、全産業の減り方に比べれば建設業の災害の減り方はさらに多いわけでございますけれども、しかしながらいま申しましたようにかなりウエートが高うございますので、私どもとしましてはいま申し上げました新しい災害防止計画におきまして、屋外型の産業、これは建設業が一番大きなウエートを点めているわけでございますが、その産業におきます災害の防止につきましては、重点的に、しかもいろんな工夫を出しながら新しい対策も含めましてやっていきたいというような決意で取り組んでいるところでございます。
  134. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 ちょっとしぼってお尋ねをいたしたいと思うのですが、労働災害の悲惨なことはもうここで私が長々申し上げるまでもないと思います。一連の流れの労働災害の損害補償、損保と言っておりますが、損保の問題で問題点一つございますので、この点を労働省で十分今後御審議をいただいて、本日お答えをいただけないかもしれないと思っておりますが、というのは、よく自動車事故との比較がございまして、死亡に限定して物を考えてみますと、昔は一時金でございまして、その一時金が一時金ではなかなか遺族がということで年金になりまして、ところがその年金はそれで大変ありがたい、ところが一時金は三百万円だということになる。これは掛金との関係もございますので、一概に物事を推し進められないと思うんですが、その三百万円、大黒柱が死んで三百万円というのでは、ちょっといまの貨幣価値、心情、そのあたりではこれでは解決をしにくい、こういうことから実際問題としてはこれに上乗せをすることになっておるわけですが、任意で上乗せをしておるわけですが、また上乗せをしておきませんと、中小企業いま弱いので、指で押してもつぶれそうなときに、そこから一つの大きな災害を出しますと倒産の引き金どころじゃない、即倒産につながります。そういうことから任意の保険を掛けるようにしておりますが、この指導も十分建設省と労働省でしていただいておるようですが、これ建設省で後お答えを願いたいのですが、工事費の中に積算を十分入れてあるのかどうなのか、このことも建設省の方からお答えを願いたいと思うんです。  そこで、労働省がそれで御指導をいただいておる三百万円というのは、あれは法律でないので労働省の中で御判断がつくようでございます。いまの金で三百万では一家の支柱を失ったときの金額というのでちょっと納得がいかないんですよ。いかないから結局企業が出さなきゃならぬ。そこで訴訟が起こる。現在訴訟が起こっていることなど、それの最高額もお尋ねしたいんですけれども、もうそういう中でいまの損保が行われておりますので、その件についての労働省の考え方をちょっとお聞かせ願い、またそれの上積みをするとすれば上積みの積算という問題については建設省の方からお答えを願いたい。
  135. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 実はいま先生の御指摘のありました三百万円と申しますのは、遺族に特別に支給されるお金でございますけれども、私ども特別支給金と言っておりますが、これは一時金として出るわけでございますけれども、いま先生お話がありましたように、実は本体は年金のわけでございます。現在年金が本体でございますけれども、この年金が本体になります前は、実は一時金制度だったわけでございますが、一時金ということになりますと、実は目の前に現金があるということから、計画的に使わずに一時的に使ってしまうとか、あるいは多額の金ですので関係者が集まって取りっこになってしまうということで、痛ましいような事例も出てきておりますので、私どもとしましては、やはりその遺族の生涯を見ていくためには年金という方式がよろしいというふうに考えまして、一時金の制度を年金に切りかえたわけでございます。一体年金が仮に計算をしてみて、一時金として考えてみた場合にどのくらいになるか、これは計算方式いろいろとあるだろうと思います。しかしながら、私ども非常にラフに計算してみますと、現在の労災の方式でやってみますと、一時金に換算すれば五千万円ぐらいにも上るのではなかろうかというぐらいの実は多額のお金になっているわけでございます。そのほかにいま先生の御指摘の特別支給金三百万円があるわけでございますが、これをさらに上げるということになりますと、実は本体の年金が支給されているわけでございますので、なかなかむずかしいということがわれわれとしては言わざるを得ないわけでございます。ただ、死亡の際に特にお金が要るという方につきましては、先生御存じだと思いますけれども、千日分前払いをするという制度がございますから、これも非常に荒っぽい計算方式でやってみますと、遺族年金と特別支給金を合わせますと、大体特にお金の要る方には一千万円ぐらいは前払いというような形でやることができるわけでございまして、一家の大黒柱が亡くなったという場合の一時のお金の必要を満たすためには、こういう方式もとっていただけるわけでございまして、私どもとしましては、このような年金につきまして、さらに特別に出している特別支給金を上積みするということはなかなかむずかしい問題ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  136. 角田直行

    説明員(角田直行君) 建設関係の積算に関しまして御説明させていただきます。  労働災害が起きましたときの事業主側の負担で行う被災者や遺族の救済指置といたしましては三つあるわけでございまして、その一つは、ただいま労働省からありました労働者災害補償保険法に基づく補償と、それから法定外に事業主が任意に加入しております共済制度としての労災保険の補償金と、それからさらに事業主が任意に個々の事故に対しまして負担する補償金というふうなことになるわけでございますが、そこで建設省が行います建設工事の積算でどう考えておるかということでございますが、一つ目の労災保険料につきましては法定額そのものを計上するというふうにいたしておりまして、二つ目と三つ目のもの、つまり法定外の労災保険料や事業主の補償金につきましては、これは多数の既往工事についての実績、実態調査をいたしまして、その実績の平均値を計上しておるわけでございます。この平均値というところにいろいろ御議論があろうかと思いますが、私どもは実勢価格主義ということでおりますので、そのような形になるわけでございます。なお、これからも事柄の重要性にかんがみまして、的確に積算に反映するように努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  137. 仲川幸男

    ○仲川幸男君 最後に大臣にお尋ねをして終わりたいと思いますが、本来、労働災害の質問をいたしますものの本体は予防措置、防災措置の問題をきょうは実は中心にしてお尋ねをいたしたいと思っておったわけでございますが、時間も大分来たようでございますから、大臣御承知のように労働災害による災害、そういうことで特に死亡、一、二級、三級ぐらいまでの大変な重い負傷でその一家がいかに悲惨かということ御承知のとおりでございますので、何としてもこれは防ぐことに重点を置かなければならないのではないであろうか。予算のこともお尋ねをいたしたいんですが、まことにこのことに対しては労働省の予算の中では私は大変少ない予算しか組まれてないのではないか。その点お答えも要りませんが、私たちは一つの災害を防ぐためにもっともっと努力をしていかなきゃならないのではないだろうか。千に余る労働災害が起きておるわけでございますから、ひとつ災害防止の運動を十分に展開をしていただきまして、このことに重心、重点を置いていただいたらと思うんです。大企業は別といたしましても、中小企業は先ほども申し上げましたようにそのことで倒産の引き金になったり、倒産をいたしたりしておるので、倒産の件数の中を分析をしてもそのことが大変多くあるわけでございます。どうかひとつ真剣に取り組んでいただくようにお願いをいたしたいと思いますし、自主的にそのことに気をつけるように、それぞれの関係者が気をつけるようにも御指導を願わなきゃならないと思いますが、大臣のお考えを承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  138. 大野明

    国務大臣大野明君) いずれにいたしましても、失業にしろ医療にしろ予防が大切だと同様、労災も予防ということに力点を置いて行政を行わなきゃならぬということは言うまでもございません。  大企業よりも中小企業の方が残念ながらどうも労働災害の発生率が非常に高いという現況でございますので、今日もその監督というものについても中小企業を重点にやってはおります。しかしながら、労働災害がゼロになるということは、これはもうあり得ないと言うとおかしいですけれども、なかなか大変なことである。その間において、なるべくそういうことが起こらないように努力するのが私どもの役目でございまして、先ほど局長から答弁ございましたように、本年度三〇%という目標を掲げて、鋭意努力をいたしております。  特に先生、建災防の支部長として十年もおやりになり、また会社もおやりになっておるということで御関心が深いやにお見受けしますが、私も代議士になります前、しがない土建屋をやってまいりまして、やはりそのような災害事故のために相当苦労した経験もございますので、特にこれらにつきましても、私のやっていた当時とは違って、いまはもうずいぶん改善もされてはおりますが、しかしながらいまだしの感じもございます。  そこで、いずれにしても安全衛生融資というようなことをやっておりまして、中小企業の方々に細かい配慮と、きめ細かくやろうということで、百七十億程度の予算ではございますが、現行行っております。また、これを、いま先生の御指摘の点を踏まえながら、より充実するように努力をいたしていく所存でございます。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、きょうは雇用失業情勢の悪化とその対応策につきまして二、三質問さしていただきたいと思っております。  最近の労働力調査によりましても、完全失業率の問題につきまして午前中も同僚議員の方から質問ございましたが、いろいろと議論もあるところでありますが、きょうはちょっと質問の方角を変えて質問をやり直したいと思っております。  先日の、一日の閣議で報告されました、いわゆる労働力調査によりますと、二月の完全失業率が二・七一%、一月の同調査によりますと二・七二%でございますから、非常に最悪の状態になっているわけであります。また、有効求人倍率も、一月が〇・六倍、二月は〇・五九倍ですから、一月を上回るというか、下回っているわけです。こういうような情勢から見まして、非常に雇用情勢大変厳しい状態にあるわけであります。それと同時に、最近の経済状態非常にまた厳しい状態が続いております。  御存じのとおり、企業の倒産件数も、民間の信用調査機関の発表によりますと、この三月千六百六十八件の倒産がありまして、前年同月比一〇・三%の増加となっております。また、今後の倒産の見通しとか、そういうふうな情勢も、倒産は今後高水準を続けていく、こういうふうな見通しが出されております。  こういうふうな情勢から、今後の雇用状態というのは非常に厳しい状態になるんではないか、こういうのは今後どういうふうに推移していくのか、そういう点について労働省としてどういうふうにお考えなのか、初めにお伺いしておきたいと思います。
  140. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 最近の雇用失業情勢と今後の見通し及びこれに対する対応の問題でございますが、もう御案内のように、世界的な不況が長引いておりますために、わが国の景気回復が緩やかであるというようなことから、雇用失業情勢も悪化をいたしておるわけでございまして、いま御指摘ありましたように、失業率、失業者数あるいは有効求人倍率も悪い状況で推移をいたしてきておるわけでございます。  そこで、今後の動向についてでございますけれども、こういう悪い情勢を背景に、政府といたしましても、やはり景気回復を図り、需要をできるだけ拡大するというような観点から、来年度の予算のもとになります経済見通しなり経済運営の基本的態度というような内容のものにつきましても、成長率を三・四%ということで、今年度見通しよりも〇・三%上回った見通しを持ち、そのためのいろんな施策を進める、さらには最近また新しく景気対策も講じるというようなことを通じまして、できるだけ雇用の需要の確保に努めますとともに、ただまあだんだん需要を起こす経済運営の手段も内外の情勢からむずかしくなっておりますために、雇用対策に対する、雇用改善のための期待も大きいと思われますが、そういう意味で、私どもといたしましても、雇用対策面におきましては、一つは失業の予防ということがまず重点になりますが、雇用調整助成金を機動的に業種指定をし運用をする。たとえば、昨年の十月時点で業種が二百四十八でございましたか、最近は二百七十を超えているような業種指定をいたしておりますし、そういうものを有効に活用する。  それから二番目は、離職者の就職促進を進めるということで、雇用開発助成金というものがございますが、こういうものを十分活用して、特に就職困難な方々を中心に雇用の開発なり雇用の促進を図る。  それからもう一つは、構造的な不況に陥っております業種なり、あるいはその集積する地域の雇用の改善のために施策を充実する。  こういうような施策を中心といたしまして雇用対策を進めることによりまして、若干、世界経済も明るさも見えてきているようなところもございますから、そういうものを背景に今後は少しずつ雇用の改善、雇用情勢の改善が進んでいくのではなかろうかというふうに見ておるわけでございます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 実際問題として、局長いまおっしゃっていますが、雇用情勢の改善がなかなか進まないわけですね。  これは総理府の資料によりましても、完全失業者数も――これ、調査の実態がいろいろやり方が違ってどうのこうのという話もありますけれども、そこら辺の議論は別にしまして、実際問題としてやっぱり雇用、完全失業率という、この率一つを見ても、戦後――私の手元にある資料昭和四十五年からしか載っていませんが、相当最悪の状態にあるわけですね。  それからもう一つは最近の、局長も世界同時不況ということをおっしゃいましたが、確かにそのとおりだと思うんです。そういうふうな状況のもとにありまして、しかも国内経済も非常に低迷を続けているわけですね。そういうような中にありまして、労働省としては完全失業者の増大という問題をどういうふうに掌握していらっしゃるかということが一つと、それからもう一つは、完全失業者ではなくてもいわゆる不安定雇用労働者というのがありますね。いわゆるパートとか港湾労働者とか山林労働者とか日雇いとか、あるいは臨時のパートとか季節労働者、それから家内労働者ってありますね。そういうようないわゆる不安定な雇用労働者という方々、これはどの程度いらっしゃるのか、こういう方々のいわゆる雇用の安定という問題について、労働省としてはどういうふうにその実態を掌握していらっしゃるのか、多少数字の面も含めておっしゃっていただければと思うんです。
  142. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まず完全失業者で、いま失業情勢をどう把握するかということにつきましては、一つは当然労働力調査に基づきます失業者数なり失業率の問題、失業率の内容でございます。同時に労働力需給という観点からは、求人なり求職、それの関係の求人倍率というもの、さらには雇用の動きとして毎月勤労統計という調査によります指標もございますし、また失業の動きにつきましては私どもの方の職業安定所に雇用保険の給付を受けに来られます受給者の動き、そういうようなものがございます。そういうものをもとにどう判断するかということ。同時に私どもこういう雇用失業情勢の厳しいときは定期的に地方の職業安定機関から管内の企業整備の状況なりあるいはそれに基づきます雇用の動きというものの報告をとっておりますので、そういうものでも補完しながら雇用失業情勢の把握をいたしておるわけでございまして、その認識につきましては、まあ昨年後半が大体二・四%台の失業率で推移いたしておりましたのがことしに入りまして二・七二とか二・七一%になりましたことにつきましては、なお数カ月動きを見て分析する必要があるというふうな判断ではございますけれども、労働力需給の状況なりその他の状況から見て、かなり厳しい情勢が続いておりますし、今後もこの雇用の問題については楽観を許さないというふうに認識をいたしておるわけでございます。  それから御指摘のございました不安定雇用とか雇用の不安定な労働者の方々の問題でございますが、そのままたとえばパートの方とか季節労働者の方とかあるいは臨時、日雇いの方々が当てはまるかどうかというような問題はございます。と申しますのは、パートの労働者の方々につきましては、需要側の問題もありますけれども、供給側としてやはりそういう短時間の勤務を希望するという労働者の方々も出ておられるというようなこともございますので、すべてが雇用が不安定かどうかというような点は問題がありますけれども一つには、やはり私ども十分注意しなければなりませんのは、企業の方でこういう景気の情勢が悪いと、パートとか臨時で対応しようというような傾向も出てくることは事実でございますので、たとえばパートでございますと、もうこれも御案内のことと思いますが、労働力調査で週三十五時間未満の雇用者の方々は全体の雇用者の約一割、女子の方の場合は女子の雇用者の方々の二割というような状況で、かなりふえてきておりますけれども、そういう方々につきましては、やはり労働条件その他雇用関係で問題が出ないような事業主に対する指導、それから需給を円滑に調整するというようなことをしていくことが必要だと思いますし、季節労働者とか臨時、日雇いの求人、一雇用の面から見ますと、そういう方々に対する求人は減少をいたしておりますので、求職者の方々にどういうふうに対応するかということにつきましては、関係職業安定機関にも指導を徹底いたしまして、求人開拓をするとか、そういう具体的な実情に応じて対応するようにいたしておるところでございます。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから今回の労働力調査の実態の問題につきまして、これは先ほどもちょっと議論ございましたが、先ほど局長もおっしゃいましたが、昨年は二・三%とか二・四%できて、ことし二・七一、七二というふうになったと。相当違うわけですね。この労働省資料によると、結局いま局長もおっしゃいましたが、労働省としては職業安定機関からとか、あるいは雇用関係機関からの指標や動向、そういうようなものを見て判断をされるわけでしょうけれども労働省資料によると、「従来とは異った傾向が見受けられる。これは、求人、求職等他の雇用関係諸指標の動向や、職業安定機関からの情報とかなり乖離したものである。」と、こういうように、これはあなたの方の資料ですがね。要するに労働省としては、こんなに悪くないと、要するに従来の昨年の十二月、十一月当時の率とほとんど変わらないんじゃないかと、そういうふうに判断をしていらっしゃるのか、当時よりずいぶん悪くなってきているんじゃないかと、そういうふうな判断なのか、そこら辺のところはどうなんですか。
  144. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まず、雇用失業情勢についての認識でございますけれども、私どもは昨年後半の大体二・四%程度の失業率を内容とする失業情勢につきましては、やはり先ほど来申し上げております世界的な不況が長引いていることを背景にいたします国内景気の低迷というものによる厳しい雇用失業情勢ということで受けとめてきておったわけでございます。  そこで、ことしに入りまして二・七%台になっておる失業率についてどうかという点につきましては、たとえば求人倍率とか、あるいは私どもが地方の職業安定機関から得ている報告等では、ここ一、二カ月で急に大幅に悪化したというような状況がございませんので、一方この労働力調査自体も、調査の対象を拡大されるとか、あるいは調査対象を四カ月の間で変更されたというような調査方法の変更等もございましたので、その辺は労働省だけでなくて企画庁や総理府も含めて関係省庁で引き続き分析する必要があると。こういう情勢につきましては、労働力調査だけでなくていろんな指標で総合的に分析評価する必要があると同時に、単に一カ月とか二カ月というよりも数カ月の動きで評価する必要があるだろうということで関係省庁で意見の一致を見まして、現在分析をいたしているところでございます。いずれにしましても非常に厳しいという状況の認識でございますが、こういう状況でございますので、今後の動向につきましてはやはり注意深く見守っていかなきゃならぬと、そういうことを考えておるわけでございます。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはいずれにしても雇用失業情勢、やっぱり大変厳しいという認識でなければいけないと思うし、そういう認識で対応していかないといけないと私は思うんですね。  そこで、これは総理府の今回の調査ですけれども、これは先ほどから何回も御答弁の中にもありますけれども、その対象規模を三万世帯から四万世帯に拡大したと、それで総理府の資料によりますと、精度が高くなって云々ということでずいぶん書いてあるわけですが、それは別にしまして、これは局長、実際問題として雇用の安定確保というふうな点からいきますと、やっぱり地域別というかあるいは業種別あるいは都道府県別に詳細にこの実態がわかつた方がいいわけですね。そういうふうな面からいきますと、今回の総理府の調査によりますと、何か全国を十のブロックに分けてその実態が掌握できるようになっているそうでございますが、これは要するに、そういうふうな意味でいけば、都道府県別の実態掌握というのがやっぱり一番必要であろうと私は思うんですけれども、こういう問題については、予算措置等も含めて労働省としてはこれはどういうふうにお考えなのか一遍聞いておきたいと思います。
  146. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 雇用失業情勢の分析につきまして、産業別とかあるいは地域別に分析するというようなことは非常に大切なことだと思っておりまして、私どもも求人、求職の動きとか雇用保険の動きとか、そういうものにつきましては、これは業務統計を通じてでございますので、できるだけそういう地域別、業種別にも分析し、雇用失業情勢を評価するという方針できておるわけでございますが、労働力調査の今回の改正で標本規模が拡大されたとか地域データを得るような目的でなされたという点は、やはり労働力の事情なり失業情勢を把握する上で非常に重要なことであろうというふうに思っておるわけでございます。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 確かに最近は社会面を見ましても、この失業という問題あるいは労働環境の整備という問題あるいはパートのいわゆる首切りといいますか、そういうような問題等がずいぶん新聞に出ておりまして、きょうはこの問題を質問するに当たりまして、先日、これは四月四日付の朝日新聞ですけれども二つ同じ新聞に投書が載っておりまして、ちょっと一遍読んでみたいと思うんですが、一つは「暗い労働環境 抜本策が必要」という船橋市の会社員の方の投書であります。   石油ショック以降、社会は一変したようで、最近はその危機も真に迫る思いである。相変わらずの就職難、失業率二%台、人員削減・出向、倒産等々、労働現場をとりまくニュースは暗く、問題は山積している。   そのうえ、コンピューター、ロボットの時代に入りつつあり、いよいよ人間不要時代到来の感がある。働きたくても働けない社会、運よく働けても他人を排斥しながらの労働。殺伐な未来社会しか見えないようだ。政府あげて労働のありようを確立してゆかねばならない。早くしないと犠牲者が多くなるばかりだ。社会不安も絶頂に達し、アメリカ直輸入の犯罪王国にもなりかねない。   憲法でも労働を強く保障しているはずである。総評をはじめ労働組合は、賃上げ闘争で低率アップに譲歩するくらいなら、職につきたくても就けない者の立場を本気で考え、何らかの行為に出ることが必要である。「働く意味」を国民みんなで考えるべきときである。 というのが一つです。  それからもう一つは、「いつ実現するパート救済策」、これは成田市の主婦の方ですが、   突然いい渡された解雇であった。ただぼうぜんと、店主の口から出る決まり切った文句が、私に人間の失格者のようならく印を押しているように感じた。私は、流れ出る涙をぬぐおうともせずに自転車に飛び乗り、その小さな店が、店主の言葉通り左前になることを念じていた。   パートタイマー、この労働を切り売りする弱い立場の人々に、救済の手は、いつになったらさしのべられるのだろうか。雇い主側の一方的な主張のみが通るこの世界に、横の連帯はないのだろうか。   寒空の下、アパートに戻ると、税金の申告用紙が配達されていた。役所のぬくぬくとした職場で働いている者に、この寂しさ、切なさが果たしてわかるのだろうか。行革は、断固として実施してもらいたい。痛みは、みんなでわかち合うべきものだ。 こういう投書です。  こういう投書を読みまして、これはもう本当に私たち切実に感じましたし、何とかしなきゃならないといま思っているわけでありますが、政府は、四月六日に、新聞報道によりますと、当面の景気対策というのを決定いたしておりますね。これによりますと、雇用改善という問題も何カ所か出てくるようでありますが、具体的に雇用改善という問題にどういうふうに取り組んでいらっしゃるのかというのが一つ。それから、今回の当面の景気対策は、昨年十月に決定された総合経済対策というのがありましたね。あの昨年十月の総合経済対策とどのような点でどういうふうに違うのか、また今回のいわゆる当面の景気対策というのはどういうふうに改善をされているのか、あわせて説明願いたいと思います。
  148. 菅野剛

    説明員(菅野剛君) 去る四月五日に経済対策閣僚会議におきまして「今後の経済対策について」というものを決定いたしたわけでございます。  で、「今後の経済対策について」の中で、雇用対策についてでございますが、この中で、雇用対策の推進といたしまして、不況業種、不況地域の雇用安定対策や失業の予防、求職者の再就職促進等の対策を掲げているところでございます。これは当面いたします雇用情勢が先ほどから先生指摘のように依然として厳しい状況で推移していることにかんがみまして、前回の昨年十月の総合経済対策に掲げられた諸施策をさらに強力に推進することを眼目といたしておるところでございます。特に不況業種、不況地域の対策につきましては、その充実強化を図るための所要の法律案が現在国会において御審議をいただいているところでございますけれども、その成立を受けての施策が盛り込まれているというところでございます。  また、この経済対策の全体についてでございますけれども、今回の経済対策は、盛り上がりに欠けます景気局面に配意いたしまして、また一方石油価格の低下、先進国経済の先行きに一部新しい兆しが開きつつあるということを考慮いたしまして、五十八年度の経済見通しの達成を確実なものとして、安定的な経済成長路線への定着を図ろうということをねらいといたしているところでございます。  このため、全般的な対策といたしましては、金融政策の機動的な運営、公共事業等の前倒し執行、住宅建設の促進、中小企業対策等の諸施策を推進いたしますとともに、規制緩和等による民間投資の促進の一項を特に設けておりまして、民間の活力によって経済の活性化を図ることを重視しているというところでございます。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まあ余り議論しておりますと時間がございませんので、議論はしませんが、明るい兆しが少しでも見えてきてればもう少し世の中も変わってくるんじゃないかと思うんですけれども、最近はもう本当にそういう兆しが全く見えないんでみんな難儀しているんですわ、実際問題ね。  総理の諮問機関であります経済審議会というのがことしの一月十三日に首相官邸で開かれたそうですね。そこで六十三年度の完全失業率を二%程度を目標にする、目安にする、そういう新経済計画の中間報告というのを了承したというふうに新聞にも報道されておりますが、これは今後どういうふうな手続で具体的な計画として出てくるのでしょうかね。  この問題、実は現行の新経済社会七カ年計画では六十年度に一・七%程度以下と、こういうふうになっていたわけでありますが、今回の中間報告は大分そういう点からいきますと後退をしておるわけです。こういう点を考えてみまして、最近の厳しい雇用情勢のもとにあって、これは労働省としてもやっぱり思い切った抜本的な施策というのが必要になってくるわけでありますが、まず事務局の方からお答えをいただいて、最後に大臣からこの問題についてどういうふうに労働省として取り組むかということを御答弁いただきたいと思います。
  150. 谷弘一

    説明員(谷弘一君) いまの御質問の点につきましては、経済審議会の中間経過を取りまとめた報告が今年の一月に出されまして、その中で労働力需給の一応の目安といたしまして、昭和六十二年度における完全失業率を二%とし、適度な経済成長を通じて雇用機会の拡大を図りつつ、経済社会の変化に対応した各般の構造政策を積極的に推進していくこととしているということで、構造政策という点も非常に大きなポイントの政策課題として出ておるわけでございますが、これにつきまして、その後新しい経済計画を、今後、本年の一月に総理からの御諮問がございまして、経済社会の変化に柔軟に対応できるものとするために、五年を超えた中長期的な視点からわが国経済社会の展望と政策運営の指針を示すようにという御要請がございまして、現在、これを受けまして、先生の御指摘になりました経過報告も踏まえまして検討を深めているというところでございまして、雇用政策あるいはその目安となります完全失業の数字等につきましても、現在一層の検討、事態の新しい動き等も踏まえながらお願いをしておるという次第でございます。
  151. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 大臣から御答弁あります前に私からちょっとお答えしておきたいと存じますが、先ほど指摘になりました経済審議会の審議経過報告の中で、失業率が二%程度を目安とするということの御指摘ございましたが、この経過報告自体も、「計画の課題とねらい」の1で、「経済運営の基本的課題」の中では、「適度な成長の下での完全雇用の達成と物価の安定等」ということで、やはり完全雇用の達成ということは課題の基本的な一つとして取り上げるということになっておりますし、私ども、労働行政の立場からもこれは非常に重要な点だと認識をいたしております。  そこで、完全雇用の場合の失業率をどう見るかというような問題につきましては、短期的には、いまのように雇用需要の不足によります失業増加というようなこともございますが、中長期的に見た場合は、たとえばサービス経済化が進展いたしますと、そういう産業では労働異動率が高いとか、あるいは産業構造の転換で不況業種が出てまいりますと失業者がふえておりますし、供給の側から見ましても、女子等の職場進出が活発になりまして、関連してパートタイマーがふえますと、もともと入・離職率の高い層でございますし、そういう構造的な変化等もございますので、私どもやはり基本的には、失業率を考える場合は需要と供給がバランスをしている状態の中で、需要不足による失業をなくするというようなことを目標にすべきだろうと思いますが、そういう状況の失業率がどうかということが議論になるわけでございまして、私どもの方の場合は、雇用対策基本計画をやはり経済計画の見直しとあわせて見直しておりますが、そういう中で十分議論し、審議をしていく内容だと存じておるわけでございます。
  152. 大野明

    国務大臣大野明君) いずれにいたしましても、現況なかなか世界経済も不況ということで、わが国経済の回復、景気等も芳しくないという中にあって、いずれにしても、この新経済五カ年計画等々いろいろございますが、何と申しますか、そういう産業構造が大変近年変わってきた、それに伴って雇用構造というか、こういうようなものも変わってきた。しかも、いま局長答弁いたしましたように、高齢化の問題、あるいはまた婦人層の問題、それにまた技術革新の問題等もこれありまして、非常にその対応が多様化してきたという点もあるかと存じますが、いずれにしても、雇用の確保、安定につきましては今日も鋭意努力をいたしておりますが、やはり経済の回復ということをまず考えませんことには、雇用だけ先走りというわけにもまいりませんので、いまその景気対策、即またこれが雇用に資するということで努力をいたし、政府といたしましても、先般も閣僚会議を行ったりして鋭意努力をいたしております。この成果が、すぐあす、あさってあらわれるというわけにもまいりませんけれども、いずれにしても、近い将来もう少し国民が、先ほどの新聞の記事ではございませんけれども、暗い気持ちで過ごすことのないようにしたいと考えておるところでございます。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、最近いろいろと問題になってきておりますいわゆる労働者の派遣事業の問題についてお伺いをしたいと思います。  これは大分前から問題になっていることではございますけれども、特に最近、経済活動の複雑、多様化や労働市場の変化に伴いまして、労働者を第三者に使用させることを事業目的としたいわゆる人材派遣会社というのが急速にふえてきているわけであります。もうすでに御存じのとおり、具体的にはタイピストとかキーパンチャーあるいは秘書などの事務処理ですね。そのほかサービスあるいは警備、ビルメンテナンスあるいはコンピューターなどの情報処理等、いろいろ分野はたくさんあるわけでありますが、こういうような問題は特に何回か問題になっております。  特に問題としては、もう御存じのとおり、現行の職業安定法四十四条、四十五条によりまして、労働者の供給事業は、労働組合の行うもののほかは禁止されているわけであります。そのため、かねてから労働者派遣事業の法的な位置づけが問題となってきているわけであります。また、人材派遣会社と派遣される労働者、派遣先の企業の三者間で雇用労働条件や労使関係をめぐり、最近はトラブルも出てきつつあります。そういうふうな意味で、労働省としてこの問題についてその実態をどういうふうに掌握していらっしゃるのか、初めにお伺いをしたいと思います。
  154. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいま先生指摘のありましたとおり、近年、経済社会活動が高度化、多様化いたしておりますので、これに伴いまして労働力の需要供給双方におきます変化を背景に、ビルメンテナンス業とか警備業、情報処理サービス業、事務処理サービス業に代表される分野におきまして、他社に業務を発注して処理するといういわゆる業務処理請負事業というようなものが急速に増加をしておるわけでございます。  この実態につきましては、私ども昭和五十四年に雇用管理調査の中で調査をいたしたわけでございますが、事務処理とか情報処理等の要するに業務の一部を他社に委託し、その委託等により自社内で他社労働者が就労している企業は一五・六%となっておりまして、これを規模別に見ますと、五千人以上の企業では自社内で他社労働者が就労している割合が非常に高くて七五・四%、以下千人から五千人未満では六〇・五%、三百人から千人未満では三八・四%となっておるわけでございます。また、産業別では、電気・ガス・水道業、企業保険業、サービス業が多くなっております。さらに、自社内で就労している他社労働者の職種を見ますと、清掃員というのが三九・六%で最も多い、次いで警備員が二四・四%、そのほかキーパンチャーとか販売員、電話交換手、タイピスト等の職種が多くなっている、こういう状況でございます。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ただいまの資料も私の手元にもありますけれども、これはいまは調査産業の合計でおっしゃってますけれども、たとえば五千人以上で、たとえば警備員の場合はいま合計では局長二四・四%とおっしゃいましたが、五千人以上の企業では五四・一%、半分以上ですね。そのほか清掃員の場合も調査産業合計では三九・六%とおっしゃいましたが、五千人以上では七四・三%、非常にこれ高くなっております。そこで非常に問題も多いわけですし、またこういう何といいますか、会社といいましょうか、そういうようなものがたくさんできてきておりまして、最近ではもう何といいますか、一般的になってきているわけですね。そこでこの問題につきましては、これは行政管理庁が昭和五十三年の七月に行政監察をやりまして、これは労働省にもその勧告をしているわけですね。五十三年七月に民営職業紹介事業等の指導監督に関する行政監察結果に基づく勧告を出しているわけでありますが、その中にも、今後の労働者の労働条件の確保、それから雇用の安定など、労働者の利益が十分確保されることを前提として適切に対処する方策を確立するよう、これはもちろん前後の文章は多少抜いて申し上げましたが、そういうふうにその当時からこの問題についてのいわゆる対応を労働省にも求めているわけでありますが、それ以来これは大体正味五年たっていますね、もう。労働省としてこの問題について実際問題として具体的にどういうふうに取り組んでいらっしゃるのか、お伺いしておきたいと思います。
  156. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいま御指摘のございましたとおり、労働者派遣事業、こちらでは業務処理請負事業というふうに呼んでおられますけれども業務処理請負事業につきまして、行政管理庁から勧告が出されまして、指導、規制のあり方について検討する必要があるという旨の指摘が行われたわけでございます。そこで労働省といたしましてはこれを受けまして、同時にまた先ほど言いましたようないろんな社会経済活動の変化等もございますので、そういうことも考えながら五十三年十月に労働力需給の現状と問題点を検討するとともに、今後の経済活動や労働市場の動向に対処し、的確な労働力需給の調整を図るための有効なシステムとその法制のあり方について検討するということで、学識経験者から成ります労働力需給システム研究会というものを発足させたわけでございます。その後、同研究会におきましては十三回にわたる検討が行われまして、昭和五十五年四月に「今後の労働力需給システムのあり方についての提言」という名前の提言が提出されたわけでございますが、その中におきましては、労働者派遣事業につきましては労働者保護の観点から必要な規制措置を講じつつ、制度的に確立していく必要があるということが一つと、また、そのため今後さらに関係労使も含めて各方面の意見を聞き検討すべきであるという、大要二点を骨子とする提言がなされたわけでございます。これを受けまして、五十五年五月に、学識経験者だけでなくて、これに労使の代表にも御参加をいただきまして、労働者派遣事業問題調査会というものを発足させまして、いわゆる労働者派遣事業について、労働者保護等のための必要な規制を加えつつ制度化する場合の具体的な問題点について調査検討をお願いをしてきたところでございますが、一昨年の時点から労働側の方で意見が一致しないというような事情もございまして、現在その調整で時間がたっておるということで、まだ結論を得るに至っていないところでごございます。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まず一つは、私の手元にもその資料があるわけでありますが、五十三年十月に職業安定局長の諮問機関として労働力需給システム研究会というのをつくったということですね。それで、その委員のお名前もここに私の手元にもございますけれども、そして、先ほど局長がおっしゃいましたように、「派遣労働者の労働条件、雇用環境の向上を図る観点から一定の公的規制を加えた上で労働者派遣事業を労働力需給システムの一つとして制度的に確立していく必要がある。」、こういうふうな意味の提言があったわけですね。これを受けて、いま局長からお話ございましたように、労働者派遣事業問題調査会というのが設置されて、それで、私の手元の資料によりますと、五十五年五月から五十六年六月まで合計十二回にわたって審議が持たれたと、こうなっております。実際問題として、なぜこれ問題が進まないんですか、どういう点に問題があるのか、これは要するに問題はどういう点にあるかということはわかってはいるわけだ、私は。わかってはおりますが、しかし具体的には、これはもう事態はどんどん進んでいるわけです、現実には。それで、こういう問題をいつまでもストップさせておくわけにはいかぬわけです。そういうような意味で、やっぱりこれ何らかの改善措置を図らないといけないし、一致しなきゃ一致するようにしないといけないし、どういう点に問題点があるのか、一遍そこら辺のところをお聞かせいただきたいと思うし、また、もう一つは、私たち立法府ですからいつもそう思うんですけれども、こういうふうな審議会とか、いわゆる調査会とかこういうふうなもののいわゆる法的な位置づけ、これはどうなっているのか、そういう点もやっぱり明確にしていただかぬと、そこら辺のところやっぱり議論をしている時間がございませんから、そこら辺のところはおいて、これは内閣委員会かどこかできちっとやることにして、これはやっぱり、いずれにしてもどういうふうになっているのか、これからどういうふうにしていくつもりなのか、一遍ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  158. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 行政管理庁の報告等にもございましたけれども労働者派遣事業とか業務処理請負事業というものが、現行法制の中では労働者供給事業の禁止に抵触するというような問題が起き得る可能性があるわけでございまして、ただ労働者供給事業というものは、たとえば中間搾取とか、そういう前近代的な労働関係を排除するという目的でつくられておりますけれども、その後社会の情勢も変わっているというようなことから、この派遣事業につきましても、そういう社会の多様化なり高度化から需要も出てきておるというようなことを考えますと、やはりそういう情勢に応じた労働力需給のあり方というものを進めていく必要があるわけでございますが、何しろそういう労働者供給事業を含む既存の労働力需給システムにかかわることでございまして、主として労働組合の中で意見の不一致があるわけでございます。そこで、この調査会といたしましては、やはりこういう制度を新しく進める場合は、やはり関係者のコンセンサスの形成ということが必要でございますので、そういう観点から進めてきておるわけでございますけれども先ほど言いましたように、労働側内部の十分な合意がされておりませんために、いま調査会を中断してそのための努力が行われておるわけでございますが、残念ながらかなり時間がたっておりますので、労働省としましては、できるだけ早期に意思統一が図られて調査会が再開できることを期待しておりまして、そのためにいろんな意味関係の労使の方々にも接触をしながら、いろんな合意形成のための努力をしておるというのが現状でございます。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは、初めの労働力需給システム研究会の会長でありました高梨さんの法律時報ですかによる論文によりますと、提言について「私としては、事実誤認にもとづく反論や法律としての論理的整合性を離れた反論や政策手段の有効性を無視した反論は、できる限り避けてもらいたいと念じている。」と。要するにこれは、「論理的整合性を離れた反論や政策手段の有効性を無視した反論は、できる限り避けてもらいたい」と、要するに、感情的ないわゆる反論はやめてもらいたいということでしょうね、これ。それで、「労働者派遣事業の活動が事実として先行し、幅広く定着してきている実情をふまえるならば、労働者保護の観点を見失なわずに、この事業を適正に運用させるためには、いかなる公的規制措置が必要かという建設的討論が起こることを期待したい」、こういうふうに書いてありますし、やっぱり現行法に多少の不備があるんじゃないかという観点から、「現行職安法で労働組合を除くほか禁止している「労働者供給事業」と、同法施行規則四条一項で定める「請負事業」との境界が曖昧であることにも原因があるが、「労働者派遣事業」は、この両者の境界領域にあるとみなされる存在として、事業活動を拡張してきているからである。」という問題点指摘があります。そういう点からして、これはどうしてもこの問題をきちっと解決していただかないと、これはもう現実の問題としてこの問題は多方面にわたってこの事業はどんどん拡大をされているわけであります。したがって、この問題をいつまでも法的にあいまいにしておくということは、これはもういろんな問題や事故が起きてしまってからでは遅いわけでありまして、この問題は、やっぱりそういうような意味で、ぜひこれは大臣が先頭に立ってこの問題の解決にやっぱり当たっていただきたいと思うわけであります。  また、さきの労働力需給システム研究会の提言の中でも指摘しておりますように、「労働者派遣事業においては、その時々の企業の需要に応じてその企業の下で業務処理を行うという性格から①派遣労働者の雇用が不安定になり易いこと、②使用者としての責任の所在が不明確となりがちであり、労働基準法等の適用関係が必ずしもはっきりしないものがあること、 ③社会、労働保険の適用が進まない恐れもあること、 等労働者保護の観点から検討すべき課題も少なくない。」と、そういうふうにしているわけであります。  そこで、具体的に四点だけきょうはお伺いしておきたいと思います。  一つは、最近始められたパートタイマー雇い入れ通知書というものの発行というのがありますが、これは具体的にどういうふうに進んでおりますか、この点が一つです。それから人材派遣会社における年次有給休暇の制度というのは大体具体的にどういうふうになっているのか、この点もちょっとお伺いしたい。それから三番目に、労働安全衛生法上の、六十六条一項のいわゆる健康診断の問題ですね、これはどういうふうに運用されていらっしゃるかどうか。それから四番目に、雇用保険の適用はあるのかどうか。この四点について現状はどういうふうになっているのか、お伺いしておきたいと思います。
  160. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) この先生の御指摘の雇い入れ通知書のパートタイマーについて、こういう制度を取り入れるということをことしの四月から始めたわけでございますが、現在これを対象として取り上げておりますのは大都市地域でございまして、主として商業・サービス業等の第三次産業を中心に取り上げているわけでございます。  そこで、先生の御質問になっておられます人材派遣と申しますか、こういうようなところの業種についてこのパートタイマーの雇い入れ通知書を一体どういうふうに考えておるのかという点が先生の御質問の御趣旨ではなかろうかというふうに私受け取ったわけでございますけれども、この雇い入れ通知書は文字どおり雇い入れの際の労働条件を明確にするという見地から行っているものでございまして、このような事業に雇い入れられるときに初めてこの労働条件の雇い入れ通知書がその意味を持ってくるわけでございます。ところが実際には、このような方々の労働条件というものはどうなるかということになりますと、これは派遣先において実際に決まっていくというようなことになってまいるのではなかろうかというふうに思われます。ところで、雇い入れ通知書には賃金の問題とかあるいは労働時間の問題とか、こういうものは詳細に書かれておりますが、これは実は派遣先においてこういうものが決まってくるというふうになってまいるわけでございますので、このような場合にはこれは雇い入れと別個の問題になるというふうに考えざるを得ないわけでございますので、雇い入れ通知書をこのようなタイプの事業に適用するということはむずかしいのではなかろうかというふうに思われるわけでございます。  それからその次に、年休及び健康診断の問題でございますけれども、年次有給休暇、それから健康診断につきましては、これは法律上それぞれどのような場合に年休を与えるかというような条件がはっきり決まっておるわけでございまして、たとえば年次有給休暇を見ますと、「一年間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して」与えると、あるいは健康診断につきましては常時使用する労働者について与えるということになっておるわけでございまして、私どもとしましては派遣元の事業主は所定の要件、いま申しましたような年次有給休暇の要件、あるいは健康診断につきましては常時使用する者についてというような条件を満たしておる場合には、これらの条文に基づいて実施しなければいけないわけでございまして、私どもといたしましてはこのようなことを念頭に置きながら今後とも指導に当たってまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  161. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 最後に、これは大臣からもお答えいただきたいと思いますが、この労働者派遣事業という問題ですね、非常に新しい問題でございますし、非常に範囲も広がっておりますし、また国民の要望も強いわけです。そういうふうな意味で、この事業制度化にはこれは結局は職安法の改正かあるいは新法をつくる必要があると私は思います。そこで、そういうような意味で、これはどうしても厚生省とか労働省とかあるいは通産省、そういうようなところと関係省庁と連携をとってこれはきちっと対応していかなければいけないと私は思いますね。それでやっぱりそのリーダーシップを握るのは労働省なんですから、大臣のやっぱり積極的な対応をお願いしたいと、こう思います。これが一つです。  もう一つは、これは職安法の改正にしてもあるいは新法をつくるにしても新しい法律をつくるということはもう大変なことでありまして、その点はよくわかります。したがいまして、いずれにしても、この労働者派遣事業というのを、社会の要望にこたえてきちんと労働力の需給システムの一つの位置づけとしてこれをきちっとしていくためには、法制化まであるいは制度化まで時間がかかるとするならば、いわゆるこの派遣労働者の雇用の安定あるいは労働条件の確保、そういうような問題をきちっとしていくために、人材派遣会社のたとえば管理基準といいますかね、あるいはガイドライン、そういうようなものをきちっとする必要が私はあると思いますが、その二点を一遍御答弁をいただいて、私の質問は終わりにしたいと思います。
  162. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まず、後段で御質問ございました法律改正なり新法制定まで時間がかかるので、当面管理基準のようなものを設けて、あるいはガイドラインのようなものを設けて運用したらどうかということでございます。  先ほど来お答えいたしておりますように、五十五年以降検討していただいております調査会がいま中断しているようなことでございますが、私どもも、これから関係労使の方々にも十分コンセンサスを得られるような働きかけを強めてまいりたいということで、また調査会の審議が再開されて適切な結論が出ることを期待いたしておるわけでございますが、それまでの間の問題といたしましては、やはりいま御指摘のございましたような、雇用関係が不明確にならないようにとかあるいは労働者の保護に欠けないようにというようなことにつきましては、やはり法令に基づいた形で指導を進めていかなければならぬと思っておりますし、そういう問題につきましては、やはり業務処理請負事業の処理に当たっては受注範囲を明確にした請負契約により作業の完成について請負事業主としての責任をはっきり負うとか、あるいは個々の労働者に対しても使用者としての責任を果たすとか、そういうような点につきまして請負事業としての適正な業務の実施ができるような指導は引き続き進めていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。  なお、法律の改正なり新法の制定につきましては、これも先ほどお答えしましたことと関連いたしますけれども、やはり現在の調査会の審議をできるだけ早く進めていただきまして、結論が得られましたらそれをもとに必要な措置を講じるということで考えておるわけでございます。
  163. 大野明

    国務大臣大野明君) 現況の規制措置だけではなかなか実態に対して対応できないということはございますので、これはひとついま局長からも申し上げましたように、ガイドラインというかそれよりも指導監督を強めていくということは当然であると同時に、職安法の改正とかそういう法制化の問題になりますと時間等もかかることはある程度御理解いただくといたしまして、私も関係省庁等と連携を保ちつつ先頭に立ってひとつこれは大いにやらなきゃいかぬと、    〔委員長退席、理事降矢敬雄君着席〕 そういうところに働く労働者諸君の雇用の安定あるいはまた何というか安心して働けるということが最も大切だろうと思いますから、そのようなことに全力を尽くしたいと思っております。
  164. 安武洋子

    ○安武洋子君 まず、大企業の雇用の問題についてお伺いをいたします。  私ども八〇年の六月に日立製作所の神奈川工場の問題につきまして調査を御要求申し上げました。それは日立製作所神奈川工場では日立電子サービス、日神電子株式会社、NBC、それから日立コンピュータエンジニアリング株式会社、こういうところから労働者の供給を受けているという問題でございます。これらの会社は労務提供を目的とした会社でございまして、労務提供をされた労働者というのは日立製作所の職員と全く同じように働いている。そして日立製作所の社員の指導監督を受けているという問題でございます。労供は明らかに職安法の四十四条により禁止をされております。それでございますけれども、非常に巧妙なやり方で労働者の供給が行われていると、こういうことは事実に基づいて指摘をいたしまして調査を要求いたしました。その結果どういうふうになっておりますか、お伺いをいたします。
  165. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 日立製作所の神奈川工場に関連いたします問題でございますけれども、御質問がございましたように、日立製作所神奈川工場におきまして株式会社日神電子、株式会社小泉製作所等に対しまして電子計算機部品組み立て作業等を業務委託をしておられるわけでございます。下請会社はこの請負事業を遂行するために自社の雇用する労働者を日立製作所神奈川工場において作業に従事をさせておるわけでございます。この請負事業職業安定法四十四条の関係についてでございますけれども、これは調査をいたしましたが、その結果、派遣される労働者の中に管理責任者が定められまして業務上の指揮監督を行っておりますし、社会保険の加入は下請の会社においてなされておるということ、作業場所においても独立した区画が定められているというようなところから見まして、職業安定法四十四条に禁止している労働者供給事業には該当しないというふうに考えておるわけでございますが、    〔理事降矢敬雄君退席、委員長着席〕 ただ、五十五年の十一月には関連の事業所に対しまして数点の指導を行っておるわけですが、たとえば元請企業と下請企業との社員の明確化のために名札等による区分の表示を明確にするとか、あるいは工場内作業室の貸与について明確に契約書を作成するとか、あるいは下請企業分のタイムレコーダーを明確にするとともに出勤管理についても明確にするとか、作業場の配置区分を明確に表示し、指揮監督者を常駐させるとか、こういうような指導はいたしてきたわけでございます。
  166. 安武洋子

    ○安武洋子君 独立した区画が定められていたというふうに御答弁がございました。ここに私、一つの図を持ってまいりましたけれども、これは設計部の図でございます。(図表を示す)確かに、おっしゃるように派遣された社員というのは一つの区画――エリアが定めてございます。これがNBCのエリアになっております。ここにおる、これは一応「a」といたしましたけれども、この「a」の人は、なるほどこのエリアがあって、ここに机がございますが、この四人というのは、すべていま私がこう指しますように、「a」「a」「a」「a」ですが、こういうふうに第一グループのところに配置をされております。それから、ここは日神のエリアでございます、この赤いところは。この日神の社員たちというのは、こういうふうに第二グループあるいはKP設計グループ、こういうふうになっております。それから、この「b」というのは、これは日立コンピュータエンジニアリングの会社のエリアでございます。エリアは確かにこういうふうにございますが、個々の派遣された人たちは、このピンクの色で塗ってあるというふうに、各日立製作所株式会社の人たちと同じところにこういうふうに行っている。すなわち、机は二つあるわけです。それで日常的には、いま申し上げたように開発第一グループとか開発グループなど、こういうところで各部門の主任技師の管理のもとで仕事をいたしております。派遣会社のこの区画の中には、日神電子の課長の席、これは空席でございますけれども、そういう机までも設けているというふうなことをいたしております。そして、ここに私、時間管理表をこういうふうに持ってきておりますけれども、この時間管理表は日立の社員が確認し、これを管理をいたしております。  そして一応、なるほど御指導なさったということで、派遣会社労働者の区画をつくり、それから一応こういうふうにして、外から見ると、なるほど派遣会社労働者がいかにもその派遣会社の労務管理を受けているというふうな形はつくっておりますけれども、これは指揮監督をするというのは、これは職安法の規則の第四条第一項の二号というふうなことで、やはり指揮監督というのはこういう形にしておかなければいけないということで、そういう形はとりながらも実態というのはそうではない。これは法違反を免れる巧妙な手段だというふうに私は思うわけです。もう一度御調査なさる必要があるのではありませんでしょうか。
  167. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 先ほど答弁申し上げましたように、神奈川県の職業安定課等を通じまして調査をし、指導をしてきておるわけでございますけれども、どういう実態か、さらに法違反はないかということについては十分調査をいたして適切な処置をしたいと思います。
  168. 安武洋子

    ○安武洋子君 ここに私は日神電子の女子パートの募集のビラを持ってきているわけでございます。――これでございます。この所在地を見てみますと、これは「日立製作所神奈川工場構内」になっております。そして勤務場所も同じでございます。それから問い合わせ先の電話番号、これは日立製作所の神奈川工場の代表電話とここの代表電話とが全く一緒でございます。それからもう一つの、ここにもう一つ持ってきておりますけれども、日立コンピュータエンジニアリング株式会社、この募集要綱、それからあるいはこういう会社案内、これ見てみますと、これは所在地がまた一緒でございます、日立製作所神奈川工場。それで、就業場所もその構内。そして、電話もまたこの代表電話が日立製作所の神奈川工場の代表電話と一緒。三つの会社の代表電話が全くぴったり一致をして〇四六三―八八―一三一一(代表)、こういうことになります。役員も日立の役員が兼任をいたしております。どう見ましても、これはソフトウエア開発のための労務提供を行っている。いまの法に抵触するのではなかろうかということが言えるわけです。ですから、いま御調査ということでございますので、その調査結果を待ちますけれども、しかし私どもが一たん指摘した、そうするとこういうふうなやり方をなさって、やはり法に抵触しないようにしようとしているというふうなことではなかろうかと思うんです。もう一度お伺いいたしますが、厳重な御調査お願いできますでしょうか。
  169. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 請負事業ですから、その元請の事業所の中で働くということ自体はあろうかと思いますけれども、法令に違反しているかどうかにつきましては十分調査をいたします。
  170. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま私が申し上げたように、外面からごらんになると確かにこういうふうにエリアも設けているとかというふうに外面は十分つくろってあるわけです。でも、真実をちゃんと御調査をいただきたい。私どもはこういうふうに、だれがどこに行っているか、まあこれ名前は伏せますけれども、そういう点までもしっかりとつかんでいるわけです。  まあ大臣にお伺いをしておきたいと思うんですけれども、こういうふうに関連会社設立いたしまして、労働者を集めて労働者を供給する。本社の労働者と同じように同一のところで仕事をさせるという、そういうことを故意に擬装した――これ職安法にも出てまいりますけれども、故意に擬装したとしか思われないようなやり方、法違反を犯しているというふうな、そう思われるというふうなやり方というのは、これは日立に限ったことではございません。いま大企業では一般的にこういうことが行われている、先ほどからもこれが論議になっておりましたけれども。私は、これでは大企業の直接雇用というのは減少してあたりまえだと思うんです。そして、大企業はパートとかあるいは労務提供、こういう形で雇用を調整するというふうな大変安易な雇用姿勢で、前近代的な労働力供給とは違った形ではありますけれども、やはりこのしわ寄せというのは労働者に与えているということをよく見ていただかないといけないと思うんです。労働者の雇用を大変不安定にいたしております。そして、大企業は使用者としての責任を大変不明確にしている。そして、全体のここに働く労働者の労働条件を押し下げるというふうなことにもなってしまっていると思うんです。ですから、労働者の労働権をやはり守るという立場に立って雇用の安定をも図っていくということが、これ本当に大切なことです。だから、こういうふうな巧妙なやり方というふうなところにやはりちゃんとメスを入れて、労働者の保護の立場に立って私はこういう問題を検討していただきたい、こう思いますが、大臣の御答弁をお伺いいたします。
  171. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ちょっと私から。  まあ、私ども職業安定行政なり労働行政、基本的にやはり労働者の雇用の安定という観点から行政を進めていくということでございますが、ただ、経営のやり方につきましてはいろんな情勢の中でいろんなやり方でおやりになられる場合がありますわけで、それに一々介入するというところまではできませんけれども、御指摘のありましたような点が法令に違反するかどうかというような点で、もし違反すれば、それはぜひ是正をしなきゃならぬということでございますので、そういう観点に立ちまして指導をしてまいりたいと存じます。
  172. 大野明

    国務大臣大野明君) いずれにいたしましても、法的に問題があるかないかということは、まあたとえばこの問題に限って言えば、これはもう一度調査するということでございますけれども、まあそういうような実態があるかないか私もよく存じ上げませんが、何としてでもそれは働く方々の雇用の安定に資するということは当然でありますから、今後ともその点は留意していきたいと思っております。
  173. 安武洋子

    ○安武洋子君 ぜひ労働者の雇用の安定という立場をしっかり踏まえておやりいただきたいということを要望いたしまして、次に、婦人に対する職業訓練の充実強化についてお伺いをしてまいります。  婦人に対する職業訓練の充実につきましては、これは「国連婦人の十年」の「国内行動計画」の中でも、あらゆる分野への婦人の参加の促進のための一つの主要な柱になっております。そこで「国内行動計画」の後期重点目標の中でもとりわけ家事、育児などで長期間社会活動を離れていた、そういうことで再就職を希望する婦人に対しましては訓練などの就職援助を充実するため、訓練科目の充実とかあるいは施設の整備、就業援助施設の活用、こういうことを重点目標として求めております。「国連婦人の十年」の最終年があと二年でございます。この「国連婦人の十年」の最終年を二年後に控えまして、労働省としても行動計画達成に向けて施策の推進に努められてきたというふうに思いますけれども、いままでどういうふうな推進状況だったのかということを御説明お願いをいたします。
  174. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 先生の御指摘のように、最近の婦人の職場進出は目覚ましいものがございまして、今後さらに拡大するということが予想されております。このような婦人の就業状況の変化に伴いまして、婦人の意識も専門的な知識、技能を身につけたいというふうに高まってきているというふうに私ども考えております。そういう状況を踏まえまして、職業訓練の部門では婦人に適した訓練科を増設する、あるいは既設の訓練科を婦人に適した訓練科へ転換していくというようなことをいたしまして、婦人の入校を積極的に推進してまいりました。  職業訓練校への入校率を申し上げますと、「国内行動計画」の初年度の昭和四十九年度に、養成訓練に約七%、能力再開発訓練の約三五%が婦人でございましたけれども昭和五十六年度では入校率が上昇しておりまして、養成訓練につきましては約一二%、それから能力再開発訓練につきましては約三九%というふうに率が高まり、また実人員についてもその率と同様に高まっているわけでございまして、まあ私どもいろいろ具体的な個々の訓練校についての、地域のニーズに合致したものであるかどうかということについてはなお今後も努力をしていかなければならないと思いますけれども、全体としては成果を上げているというふうに考えております。
  175. 安武洋子

    ○安武洋子君 全体として成果を上げているというふうな御答弁で御努力のほどはわかります。しかし、「国内行動計画」の後期重点目標にも掲げられておりますように、一定期間家庭に入っていた、そしてそういう婦人が就業を希望するというふうなケースは、いまの経済状況を反映いたしまして非常にふえているわけです。それはパート労働者の増加にもあらわれていると思います。総理府の就業構造基本調査の結果を見てみましても、五十二年、五十四年の婦人の就業希望というのは八百五十万人から八百六十万人、こういう数字に上っておりますね。したがって、訓練校とか就職援助施設の技術講習、これは婦人にとってはかっこうの場になるわけなんです。  兵庫県の実態を見てみますと、神戸市にある兵庫県立婦人高等職業訓練校、ここの場合も五十六年度が定員が二百名でございます。これに対しまして四百四十八名の応募でございます。二・二四倍ですね。そして、五十七年度には二百二十名の定員に対しまして五百五十名の応募でございます。二・五倍です。ほかの訓練校に比べましても非常に狭い門であるというふうに思います。また、婦人の就業援助施設でも、兵庫県の場合ですが、技術講習受講希望者、これが恒常的に定員の二倍に上っております。つまり、婦人の希望に対しまして受け入れる態勢というのがまだまだ大きく立ちおくれているということをこの数字が示しているというふうに思います。  労働省とか地方公共団体でも一定の努力をなさってはおられますけれども、たとえば婦人専修の職業訓練校は全国八カ所だけのまま推移をしてきております。婦人の就業援助施設につきましては、内職センターを改組して、全国五十二カ所になっておりますけれども、未設置県、これが五県残っております。あるところでも県内にたった一カ所。広大な地域の中にたった一カ所ですから、広い地域のニーズにもなかなかこたえられもいたしませんし、なかなかそこに入るということも至難のわざでございます。科目とか定員をふやしたりとか、あるいは移動講習をなさったりとかいうふうにされようとしても、結局は予算の制約がございますからなかなか希望にこたえられないというのが偽らざる実態でございます。  労働省の婦人就業援助施設関係の予算を見てみますと、内職センターからの移行もございまして、五十四年は約二億円です。これが五十五年には三億五百六十万円、それから五十六年は四億五千七百六十万円、五十七年は五億九千五百九十二万円、こういうふうにふえてきております。ところが五十八年になりましたら、臨調行革による補助金の削減が始まりまして、このあおりを受けまして、五億四千八十二万円と約一〇%もカットをされているんです。やっと全国的に施設の改組を終えまして、これから内容的にも充実しよう、こういうやさきの補助金の減額でございます。  一方では、不思議なことに、これは政府みずからが閣議で行動計画の重点目標としてこのことを掲げているわけです。しかも総理大臣が本部長というふうな企画推進本部までも設けて達成を図るというふうにしながら、いま一方では、そういう充実が本当に求められているという実情もありますし、そういうことを政府はちゃんと閣議決定もしている、総理が先頭に立ってやられる、こういうことをやられておりながら、一方では予算を削減する、全く矛盾をするということをやられているわけです。これでは本当に目標を推進する気があるのかどうかと疑わざるを得ないわけでございます。労働省としては、訓練施設など現在婦人の就労希望の実態、こういうことから見ましても、行動計画の目標から見ましても、まだまだ立ちおくれているということを承知していただかなければならないと思うんです。ですから、施設とか科目の充実、あるいはニーズに即した機動的な運用、これを可能にするというふうな運営の基準の改善ですね、そういうためにも予算的な裏づけの確保、これに私はどうしても努めていただかなければならないと、こういう要請を労働大臣にいたしとうございますが、大臣いかがでございましょうか、婦人問題の基本でございます御答弁をお願いいたします。
  176. 大野明

    国務大臣大野明君) 御指摘の点は、今日確かに御婦人の方々の就業意欲というものは高まっておる、その実態を踏まえればもう少し予算があった方がいいのは当然でありますから、私も補助金整理というやつはことしは行革の問題もあって、頭から一律やった点もあるというようなこともありまして、もう少し認識を政府部内で持たせるようにするのが私の役目だと、こういうふうに考えてこれから努力しようと、こう思っています。
  177. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もないようですから、労働省決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会