○安武洋子君 八十五条に基づく労基署の決定と言いますのは、その
審査内容にも私は重大な問題があると思います。九名が業務外とされた理由、これが申請者に説明されておりますけれ
ども、それは端的に申しますと、労働省が頸肩腕障害の労災認定の
基準としていわゆる五十八号通達を出しておられますが、これに基づいて申請者の発症前の六カ月の業務量を申請者らの出勤日数、それと職場の同僚の平均出勤日数などと比較して判断したところ、業務の過重が認められない、こういうのが最大の理由になっております。本来労基法施行規則の三十五条別紙に列挙されている本件のような疾病の場合、これは、当然、医学的にも業務との因果
関係の確立が考えられるとされているものだけに、法定補償制度のこの目的から見ましても、
関係業務に従事していて、そうして疾病の発症の事実が証明されさえすれば、使用者などが逆にこれは業務と
関係がないことを証明しない限り、私は労災認定するのが当然だと思います。ところが労働省が認定
基準としております五十九条の通達、これは運用上業務に起因した疾病であっても、通達にいう業務量などの
基準数値を満たしているかどうか、こういうことで業務上と業務外のふるい分けをして、これが
基準になっております。私は法の精神をゆがめるきわめて問題の多いものと言わざるを得ないと思います。
きょうは大変残念ながら時間がないので、この問題は全体を論議するわけにはまいりませんけれ
ども、本件に照らして申しますと、九名が業務の過重性が認められなかったと言いますけれ
ども、他の人と比較しなくても、これは公社が交換業務で過去に多数の頸肩腕罹病者を出してきた、こういう業務の過重な職場であったということは厳然たる事実でございます。この中で、当人たちが公社の指定病院においても頸肩腕症候群という診断をされている。そうして要健康管理者として現在も治療している、これもまた歴然たる事実でございます。こういう全体的な視野が私は不十分である。各人の業務の過重性をどういうふうなことでとらえたのかという点について申しますと、通達では、発症直前の三カ月程度の業務量を見て、他の労働者に比べおおむね一〇%以上多い場合、または一カ月のうち十日程度非常に業務量の多い日があった場合、これを業務過重と判断をしております。では、公社で労働者の個人の業務量をあらわす数値があるのかどうか。出勤日数とか、労働時間とか、取り扱いの通話数ぐらい、これは出ると思います。でもその作業の
内容とか、通話の繁雑さとか、そういうことの違いというのまでは私は数値にあらわし切れないのではないか。たとえば、数値が出たとしても、労働者全体がぎりぎりの過密な作業を要求されるというふうな職場だからこそ、頸肩腕障害者が発生してきたという職場です。また、他の人に比べて一〇%も業務量が突出するというふうなことが、こういうぎりぎりの職場で考えられるか、私は考えられないと思います。まして労働
基準監督署が重要な判断資料としたと述べている出勤日数、これはとりわけ労働者が同僚たちと比べて一〇%もふえるということはあり得ないと言っても差し支えないと思います。こういうふうに大変現実との間に乖離を感じるわけですね。こういうふうにして見てみままと、通達の問題点は別にしましても、通達の数値を絶対視して、それを機械的に当てはめて
審査に当たる、こういうことではなくて、やはり個々の患者の具体的な罹病の経過、それから該当する職場の
実態、こういうものをよく
調査してやるべきだ、私はこういうことを十分に
調査する必要性があるというふうに思います。本件の
調査も含めましてぜひこのような観点に立っていただきとうございます。そうして結論が業務上と業務外、この二つしかないわけです。あいまいなものはないわけですから、
一定の業務との因果
関係、これが認められれば救済をするという方向で
審査をして決定をするべきではなかろうか。いかがでございましょうか。こういう立場にお立ち願い、こういう方向で
審査をし、決定をしていただけますでしょうか、お伺いいたします。