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1983-02-09 第98回国会 参議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月九日(水曜日)    午前十時二十八分開会     ─────────────    委員異動  一月二十日     辞任         補欠選任      福田 宏一君     江島  淳君      柄谷 道一君     三治 重信君  一月二十二日     辞任         補欠選任      江島  淳君     福田 宏一君  一月二十四日     辞任         補欠選任      渋谷 邦彦君     黒柳  明君  一月二十八日     辞任         補欠選任     瀬谷 英行君     茜ケ久保重光君  二月一日     辞任         補欠選任      仲川 幸男君     板垣  正君      小西 博行君     伊藤 郁男君  二月二日     辞任         補欠選任      板垣  正君     仲川 幸男君      伊藤 郁男君     小西 博行君  二月八日     辞任         補欠選任      安武 洋子君     佐藤 昭夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  裕君                 杉山 令肇君                 内藤  健君                 降矢 敬雄君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君     委 員                大河原太一郎君                 岡部 三郎君                 河本嘉久蔵君                 竹内  潔君                 塚田十一郎君                 仲川 幸男君                 福田 宏一君                 森山 眞弓君                茜ケ久保重光君                 鈴木 和美君                 藤田  進君                 本岡 昭次君                 鶴岡  洋君                 佐藤 昭夫君                 小西 博行君                 森田 重郎君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君    政府委員        内閣官房長官  藤波 孝生君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        警察庁長官    三井  脩君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      大堀太千男君        警察庁警備局長  山田 英雄君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        文部大臣官房長  高石 邦男君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生省医務局長  大谷 藤郎君        厚生省薬務局長  持永 和見君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁次長    大嶋  孝君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        通商産業省機械        情報産業局産業        機械課長     熊野 英昭君        会計検査院事務        総局第一局長   佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第二局長   竹尾  勉君    参考人        公営企業金融公        庫総裁      首藤  堯君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る一月二十日、柄谷道一君が委員辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。  また、去る一月二十四日、渋谷邦彦君が委員辞任され、その補欠として黒柳明君が選任されました。  また、去る一月二十八日、瀬谷英行君が委員辞任され、その補欠として茜ケ久保重光君が選任されました。  また、昨八日、安武洋子君が委員辞任され、その補欠として佐藤昭夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は自治省警察庁及び公営企業金融公庫決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 まず、警察庁——国家公安委員長ですが、中川一郎代議士が衝撃的な自殺、余韻がまだ非常に残っているわけでありますけれども、中川一郎さんが死を選ばれた理由というのが必ずしも明らかになっていないようです。  まず警察庁に伺うのは、警察自殺ということを知っておられながら、なぜこの病死発表等を黙認をしたのだろうか。
  8. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) お答えをいたします。  警察といたしましては、当日の午前中から昼前後にかけまして検視をいたしまして、自殺であることを断定をいたしたわけでございます。その同じ時点におきまして、遺族関係者病死であるというような発表をいたしておりますが、警察は、一応法律上は自殺であるという断定をいたしておりますけれども、それをあえて公表するということは、この場合遺族の心情その他を考慮して避けたという状況でございます。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 検視には立ち会われたわけですね。それで、自殺ということを御存じになりながら黙っていたという話になるわけでありますが、これ一般民衆の場合はなかなかそうはなりませんでね、すぐ自殺自殺という形になるわけですが、情報が操作される、マスコミで言う情報操作とでも言いますかね、そういうふうにマスコミなどで言われているんですが、これには何か御意見がありますか。
  10. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 警察といたしましては、一般の方の場合におきましても、自殺につきましては積極的に公表するというようなことはいたしておりません。特に事情がある場合におきましては公表するというようなこともまれにはございますけれども、一般的にはプライバシーのことを考えまして公表しない、こういうことでございます。今回も大体そういった線に沿って態度をとった、こういうことでございます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 大変奇異に感ずるのは、その数日後には今度は急に自殺であると発表される、それも何か夜中の記者会見発表される、これもまあ非常に不思議なことだと思うんですが、この経緯というのは何かございますか。
  12. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 当日の経緯といたしましては、特に警察から積極的に発表したということではございません。新聞、マスコミ等取材がございまして、その取材に応じて状況について説明をした、こういう状況でございます。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 これから読み上げるのは毎日新聞の一月十三日付に寄せられた投書ですがね、この投書は私はある意味で庶民の声を代弁していると思うのであります。これに対して警察としていかなる見解をお持ちになるのか、お尋ねをしたいのですが、東京大田区の主婦吉井さんの投書です。   この正月、友人の父が関西の私鉄にひかれて死にました。遺書もなく、家人にはどうしても事故死としか思えないそうですが、警察自殺断定したそうです。このため私鉄からは損害賠償を請求されそうだとのことですし、家人は子供の結婚など将来のことを心配しております。   中川氏の死には、いろいろな事情があることは理解できますが、それでもなお、医師警察がとったごまかしの処置に納得がいきません。万民に対して公平厳正な処置をお願いします。 これは一つ警察不信の表明的な投書になっているわけですが、これについては御見解をお持ちですか。
  14. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 警察といたしましては、遺書が発見されない場合にそのケース自殺であるか、また事故死であるか、これを判定をするために検視を行って事態を明らかにするということでやっておるわけでございます。その場合の自殺事故死かの判定一つ基準でございますが、一つには遺体、死体状況、それから現場状況、それから関係者のいろいろな証言、それから生前のその当人の行動、そういったものをいろいろ総合的に判断をいたしまして事故死なり自殺なりという判定を下しておるわけでございます。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 私はこの事件、投書にある事故死のことですね、これはぜひ再度お調べ直しになるように要望いたしておきます。  そこで、中川一郎代議士の場合も松本幸男代議士の場合も自殺原因としてうつ病説が流れているわけですが、警察としてはこれは確認をされますか。
  16. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) その説は確認をいたしておりません。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 まあ中川さんの場合は十分に接触がありませんからあれですが、松本幸男さんの場合は、同僚でもありますし長い交際でもありますのでよくわかっているのですが、高血圧症であった。実は私はきょうここで高血圧症うつ病関係について行政上の問題は介在していないかという議論を一遍しておきたいと思ってこの問題を実は取り上げているんです。  警察庁自殺原因動機について、うつ病による自殺というのはこれは年間どれぐらいありますか。
  18. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 警察庁統計をとっておりますのは、原因動機別では病苦ということでとっておりますので、病苦の内訳でうつ病がどのくらいあるかという統計はわかりかねますので御了解いただきたいと思います。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 一九八二年でもいいですがね、お持ちになっている資料で結構ですけれども、年間自殺者数ですね、四十歳代、五十歳代、六十歳代、それの原因別自殺者数、いわゆる疾病に原因すると思われるいま言われる病苦ですね、その他と分けて、それはどういうふうになりますか。
  20. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) お答えいたします。  まだ昨年の統計ができておりませんので五十六年中の統計を申し上げます。  昭和五十六年中における自殺者は、これは未遂を含めてでございますが、二万四百三十四人でございます。うち少年自殺者が六百二十人でございます。総数では若干の減少をしております。  年齢別でございますが、六十五歳以上が全体の構成比の中では二三・五%を占め、次いで四十歳代が一九・五%、三十歳代が一七・九%ということでございます。  原因動機別に申し上げますと、病苦などが構成比では四三・八%ということで一番多いわけでございます。年代別のあれを見てみますと、六十五歳以上ではやはり病苦というものが最も多くて七六・八%を占めております。四十歳代はやはり病苦で三五・一%、三十歳代はアルコール症とか精神障害等が二六・四%、五十歳代は病苦等が四八・〇%ということでございます。  失礼いたしました。冒頭に私未遂を含むと申し上げましたが、未遂を除いた数字でございますので訂正をさしていただきます。  以上でございます。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省はお見えになっておると思うんですが、厚生省は、先ほど警察に質問いたしました自殺原因動機ですね、これでうつ病などというようなこと、これは薬害関係を後で問題にしますがね、調査をされていますか。
  22. 大谷藤郎

    政府委員大谷藤郎君) 自殺原因につきましては学問的にいろいろ行われておりますが、特に降圧剤等によります自殺原因につきましては、特段行政としては調査はいたしておりません。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 ということは高血圧症うつ病との併病について自殺原因としてはどこでもつかんでいない、政府のどの機関もつかんでいない、そういうふうに理解するんですが、これは大臣かな。
  24. 大谷藤郎

    政府委員大谷藤郎君) うつ病につきましては、私どもといたしましては精神衛生対策といたしまして一般的な施策でやっているわけでございます。しかし、御指摘のような高血圧に対します降圧剤によるうつ病というのは確かにあることはあるんでございますが、非常に例数が少ないというふうなことございまして、従来から余り実は注目しておらなかったわけでございますけれども、確かに先生指摘のように、たとえばうつ作用を起こすレセルピンが約三〇%くらい使われておるというふうな状況から考えますと、これからはやはりその問題についても十分に検討いたさなければならないというふうに考えます。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁警察自殺認定するのは、一般遺書有無が大きなファクターになると思うんですが、遺書がない場合、たとえばさっきの投書の方の場合などどのようにして自殺認定するのでしょう。たとえばその人がうつ病であったということは自殺認定の大きなファクターになるのではないでしょうかね。
  26. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 先ほどお答えをいたしましたとおり、遺書がない場合の自殺事故死認定基準でございますが、死体の現象、現場状況それから関係者のいろいろなお話、それと生前のいろんな行動、こういったものを総合的に判断をいたしまして、自殺事故死判定をするということにしておりますが、いまお話のありましたようなうつ病であったというような状況がこれが把握をされますと、やはり一つの大きなファクターになるんではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 そこで前提終わりまして本題に入るのですが、高血圧症うつ病とは実は私は深い関係にあるというふうに、今度ずっと勉強してみてそういうふうに非常に感ずるんですね。  厚生省、まず血圧降下剤降圧剤で抑うつ状態副作用として誘発するおそれのある薬剤は一体幾つあるんですか。
  28. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先生いま御指摘降圧剤の中で抑うつ状態を誘発するおそれのある医薬品でございますけれども、一番よく知られておりますのはラウオルフィア系製剤というものでございます。この中にはレセルピン、レシナミン、ラウオルフィアアルカロイドなど八つの成分が含まれております。が、またこのラウオルフィア系製剤以外の降圧剤でございますけれども、これにつきましてはメチルドパ、塩酸ヒドララジン等成分が知られております。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 同じく降圧剤で、使用上の注意として重篤なうつ状態が発生するおそれのあることを警告している薬剤、これはどうですか。
  30. 持永和見

    政府委員持永和見君) いま申し上げました医薬品の抑うつ状態に関します副作用につきましては、製品の添付文書使用上の注意などに記載をいたしまして、お医者さんの方にそういった情報を提供しておるところでございます。特にラウオルフィア系製剤、こういったものにつきましては、添付文書使用上の注意の項の中に特に警告事項を設けまして、重篤なうつ状態があらわれるというふうなことを記載しております。また、うつ病患者などへの投与禁忌とか、あるいはまれに自殺に至るような重篤な場合があるというようなことも記載をいたしまして、使用上の注意を喚起しているところでございます。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 そうですよね、私もこれ見て警告をもしているぐらいですよね。大日本製薬のエガリン、それから山之内製薬のサーピナ、台糖ファイザーのシンナロイド、日本スクイブのロートラックス、武田薬品発表のパラティン、三共のロンチル—R、それからあれは杏林のべハイド、田辺製薬のカンヒドニウムR—S、こういう薬品自殺を誘発するおそれがあるとされています。これは確認できるわけですね。
  32. 持永和見

    政府委員持永和見君) いま申し上げましたように、うつ病患者などへの投与禁忌でございますとか、あるいはまれには自殺に至るような重篤な場合があるというようなことで、そういった警告でございますので、患者状態に十分注意いたしまして、抑うつ症状があらわれた場合には投与注意してほしい、中止してほしいというような使用上の注意をいずれも記載しているところでございます。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、そこにちょっとお座りになりませんか、少し続けますから。降圧剤副作用としていま言われた自殺に至るような重篤なうつ病を引き起こすおそれのある薬品というのは幾つありますか。
  34. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先ほど申し上げましたところでございますけれども、ラウオルフィア系製剤として八成分がございます。これ以外の製剤降圧剤としては十成分ということになっております。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 同じく劇薬指定がある薬品ですね、降圧剤
  36. 持永和見

    政府委員持永和見君) いま申し上げました医薬品のうちで、特に急性毒性の強いものでございまして、たとえばレセルピン注射液、こういったものにつきましては薬事法の規定による劇薬指定を行っているところでございます。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 医師法によりますと、第二十三条では処方せん交付義務があるわけですが、これは患者に対しても交付義務が、義務づけられています。しかし、これは一般的にはただし書きでほとんど交付されていないという状態があるようであります。この点と先ほどのような危険のある医薬品についての取り扱いについて何らかの制限が行政的になされていますか。二つ一緒に答えていただけますか。
  38. 持永和見

    政府委員持永和見君) 降圧剤でございますけども、降圧剤は、先生も御承知のとおり、医療用医薬品でございますので、まずは一般的には薬店などでは売らない、あくまでお医者さんの処方せんに基づいて調剤をし交付する、こういうたてまえのものでございます。  また、いま申し上げましたように、特に急性毒性の強いものについては、劇薬指定をいたしまして、取り扱い上の注意を喚起しております。  また、先ほど申し上げましたように、いろいろと文書使用上の注意その他で十分ユーザー人たちへ、お医者さんでございますけども、お医者さの注意を喚起するといったような形で、いろいろと使用上の警告を発しているというところでございます。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 それで、現在のところ、これらの危険な副作用を持つ医薬品使用方法、これはいま言われたように注意を喚起をしているが、医師判断に全面的にゆだねられている、そういうことでしょうか。
  40. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先生指摘のとおりだと思います。患者さんの症状なり患者さの病状に応じまして、お医者さが薬を使っているということだと思います。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 そこで警察庁、これは一般論ですが、医師が不注意で、うつ状態があらわれているにもかかわらず投与を続けた場合、患者自殺した、この場合に医師の業務上の過失が問われることになりますか。いわゆるケースバイケースでしょうが、全くないとは言えないんじゃないかと思うんですね。いわゆる刑法二百十一条の関係ですね。
  42. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 一般的なお答えですけれども、いま厚生省の方からお答えがありましたように、医師一般的には患者症状に応じて、薬の副作用なり何なり、そういったことを十分承知した上で薬を投与しておる、こういうふうに理解をしておるわけでございます。したがいまして、それ以外の例外的なケースにつきましては、これはやはりケースバイケース、その状況に応じて事情を明らかにしていきたい、こういうことだろうと思います。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 これは広い意味での自殺関与ですね。いわゆる刑法の二百二条の関係というのはどうですか。
  44. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) やはり一般的には非常にむずかしいと思います。ケースバイケースで、いまお答えしましたように状況を十分に把握した上で判断をしていくべきもの、こういうふうに考えております。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、単に遺書有無だけで自殺か他殺かを判断するという観点だけからではなくて、その自殺者がある種の精神障害を持っていた場合には、別の観点からのアプローチが私は必要になってくるのではなかろうか、今後そういうような観点からの取り組みというのが必要だと思うんですがね。いかがでしょう。
  46. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 外形的、物理的に見まして明らかに自殺であるというような場合には余り問題はないと思いますが、いまの薬の服用によりましての自殺といったような、外形上からはなかなか判断がむずかしいといったようなケースにつきましては、いまお話がありましたように、過去の病歴であるとか、それから薬の服用状況であるとか、そういったことを幅広くいろいろと情報を収集いたしまして、その上で判断をしていくべきもの、こういうふうに考えております。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 その辺のところをおやりになりましたですかね。特に私は、全く親しかった松本代議士の場合、歴然とした病歴がありますね。そうすると、私が非常に疑っているのは、いわゆる薬害によるところの降圧剤からうつ病がきて、そして自殺のおそれを持つ者に対してなお降圧剤が使われる、こういうような状態、そこのところがやっぱり自殺要因としては、ファクターとしては、警察の側だってやっぱりもっとそこまで突っ込んだ調査というものが私は必要なんじゃないだろうかと思うんですがね。どうでしょう。
  48. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 松本議員の場合におきましては、これは外形上から見ましても現場状況から見ましても、また関係者のいろいろなお話からいたしましても明らかに自殺である、こういう断定をいたしたわけでございます。したがいまして、いまお話のありましたような特に薬の関係等につきましては、今回は調査をしていないという状況でございます。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 したがって私は、自殺をされなくても済む状態松本さんはあった。自殺まで追い込む要因というものに薬害があった。それと薬務行政やあるいは医療行政関係、こういうものがやっぱり指摘——これぐらい薬害が多くなって、恐らくこの中にたくさん薬を飲んでいらっしゃる方がいらっしゃるんでしょうけれども、薬害の問題がこれぐらい世間的に大きな問題になっているときに、やはり自殺ファクターとしての調査の中には、そこまで突っ込んだものが私はなかったならばいかぬのじゃないか。それはどうですか。
  50. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) やはり状況に応じてのことではないかというふうに考えるわけでございます。やはりどの程度まで突っ込んでいろいろと調査できるかというのは非常にむずかしい点がございます。また病気の場合におきますと、個人のプライバシーの問題というようなことがございまして、なかなか突っ込んだ調査がむずかしいという一面もございます。したがって一般的に申し上げますと、繰り返すようでございますが、明らかに外形上から見て自殺だというようなケースの場合におきましては、いままでは余り突っ込んだ調査をやっておりませんし、これからもなかなか突っ込んだ調査というのはむずかしいんではないか、ケースバイケースでこれからやっていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省副作用として精神障害を引き起こすおそれのある医薬品ですが、これは、単にいま言っている降圧剤だけではありません。たとえば、中川一郎さんが常時用いていらっしゃったと言われる睡眠薬、この睡眠鎮静剤も急性の錯乱状態を引き起こすことは明確ですね。そうすると、中川さんが自殺の前に睡眠薬を多用されたというような報道がずっとなされているわけですが、あるいはそれが原因であるかもしれない。そうすると、そこからも私は、薬害中川一郎さんの死という問題が浮かんでくるわけですね。その辺のことは、やっぱり今日的な社会的な状況の中で、ケースバイケースと言われますけれども、それぞれ個々のケースバイケースではなくて、一般的な社会的な要件として十分考えられるところではないだろうか。こういうことによって、私は、薬害に伴うところのうつ病の発生であるとか、それに伴うところの自殺とかいうような自殺人口というものはずっと減っていく、そういうような行政があってしかるべきではなかろうか、そう思うんですがね。
  52. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先生指摘のような実態というのは、確かに私ども深刻に考えていかなければならない問題だと思います。ただ、医薬品と申しますのは、一方では有効性の問題と安全性の問題という両方の立場がございまして、したがいまして、患者さんの年齢とか、こういった降圧剤におきましても既往歴などによりまして、個々の症例ごとに使う薬の最適な薬というのが決まってくるわけでございますが、その中に副作用を起こす薬も当然あり得るわけでございまして、こういった問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、使用上の注意その他において十分警告を発し、お医者さんが間違って不適正な使用をすることがないようにするということがわれわれの方の務めであるというふうに考えております。  また私どもといたしましては、こういった、先生指摘薬害その他の発生をできるだけ少なくするという行政をしなきゃならないことは当然のことでございます。その意味で、薬につきましては副作用モニター制度というのを設けておりまして、そういった副作用情報を私ども必要に応じてキャッチをいたしまして、把握いたしまして、整理をいたしまして、それによって企業に対しまして使用上の注意を改めさせるとか、あるいはいろいろな措置をとるというようなことをやっておるわけでございますが、こういった現在の社会的な状態でございます、先生のそういった御指摘もございますので、なお、この降圧剤、あるいはいま御指摘の睡眠剤、そういったものについて副作用情報制度というのを強化いたしまして、そういったことの徹底に努めてまいりたいというふうに考えております。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 警察はこの問題が最後ですが、中川一郎さんの自殺が隠せたのは、生きていると偽って救急車で運び出された。死体を救急車に乗せるということ、これは一般の場合にはしないでしょうし、法律との関係ではこれはどうなりますか、こういう特別扱いが起こるというのはどういうことになるのですかね。
  54. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) 救急車の運用につきましては消防庁の所管でございますが、私から関連して申し上げますと、特にこの中川氏の場合におきますと、当時の関係者の心情といたしましては、蘇生行為を行えばまだ蘇生する可能性があると、こういった希望をお持ちになったのではないか、こういうふうに思うわけでございます。したがって、そのとき到着をいたしました救急隊が、その関係者の御家族等の要望を受けて中川氏を病院に運んだ。これは特に法律に違反するということにはならないと思います。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 私は故人を決して冒涜する意味で論議をしようとは思っていませんからあれですが、いま同じ質問を、消防庁長官現場のこと何かわかっていますか。
  56. 大嶋孝

    政府委員(大嶋孝君) 中川先生をどういう状態で救急車が運んだかということを詳しくは存じておりませんけれども、一般的には、死亡が確認された方につきましては救急隊は搬送をしないということになっております。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 国家公安委員長、これが最後ですが、大臣、いいですか、論議を聞いてもらったと思うんですが、私は、自殺を単に犯罪の有無の側面だけではなくて、薬害が大変問題になっている時代に即応した、そういうものとして調査をする、判断する、そういう方途が十分考えられるべきだと、こう思います。いかがですか。
  58. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 最近はなかなか、薬をお飲みになる方々も多くなってきたし、また薬も大変多種多様になってきておりますので、なかなかその判定がむずかしい問題だと思いますけれども、しかし、そういう関係も将来においては十分にその事態に応じて監察をしていかなきゃならぬものであろうと、こう思います。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば、資金集めで苦しかったんだろうとか、あるいは選挙が心配でこうなったんだろうかというような形で故人が冒涜されるような要因が並べ立てられる、そういうような不幸をなくするためにも、やっぱりもっと、そこまで突っ込んだ科学的な自殺ファクターについての調査の仕方というものは考えられて私はしかるべきだろう、そう実は思っているんです。  同じことは、きょうは触れませんでしたけれども、たとえば昭和四十二年の防衛庁の装備局長の予算編成時における自殺問題にしてみたって、あるいは前途のあった大蔵省の主計局主査の自殺問題にしたって、あるいはことしの予算編成期で通産省の課長の自殺問題にしたって、私は、突っ込んで考えてみると、それらの要因が一体なかったのだろうかということを思うんですよ。非常に有能な官僚のこれらの諸君の生命、未来を守るためにも、もっとそれに対応するような姿勢というものは行政上あってしかるべきだと、そういうように考えます。  さて、自治大臣、この第二臨調で地方自治について答申や部会報告が出されているわけですが、自治省に二、三の論点で冒頭質問しておきますが、私は、臨調の議論を新聞その他の報道を通じて見たり聞いたりしているわけですけれども、実のところ、地方自治というのは一体何か、あるいは地方自治の目指すべき方向とは一体何か、それらが臨調の議論ではともすればなおざりになっているのではないかという印象を非常に深くしているのであります。そこで、地方自治を促進をするという、そういう立場から、自治省はどういう見解をお持ちなのか、まあ確認意味で伺っておきますが、まず、補助金整理の問題です。  第三部会報告は、補助金等の整理合理化の基本的考え方などについてるる述べていますが、これは地方財政の立場からするならば、補助金と地方財政という観点がきわめて希薄であると、読む限りでは言わざるを得ません。地方財政、自治という立場からするならば、補助金は地方一般財源化の方向で合理化を図るということが基本的論点の一つに据えられなければならないはずでありますが、この第三部会報告はこの観点が非常に希薄であると思われるわけです。  大臣としては、まずいかなる御見解をお持ちですか。
  60. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 臨調の答申は、従来から地方分権の推進をしなければならない、あるいは府県あるいは市町村というものと国との職能、機能の分担、そしてそれに伴って、同じく地方財政のあり方というものに、私はその理念としては大変御理解がいままであったように思うんです。問題は、やはり具体的に、いよいよ問題を処理されるという場合に、その理念をやはり貫いたものにぜひひとつしていただきたいと、問題はそういう具体策にあると思います。それがいよいよ、臨調はことしの三月で一応終わるわけですが、それを前にして部会報告が出、そしてやがて答申になるのでございましょうが、ぜひ私は、そういう理念を具体化して貫いていただきたいと、こう思っておるところでございます。臨調が今度、この部会報告をどういうふうな答申にされるか、これを私どもはひとつ注目をしたいと、こう思っております。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 臨調の基本姿勢は、国の財政負担を軽減するために地方財政にしわ寄せするという傾向なんですよ。まあそういうふうに、なんですと言っていいかどうか、往々にしてそういうふうなところがうかがえますがね。その基本答申で地方財政計画を長期的な計画にすべきだという主張がありますね。これはどう考えているんですか。
  62. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 基本答申の中で国と地方の財源配分の見直しに関連いたしまして、地方財政計画の策定について単年度主義からある程度長期的な見地でこれを見直してはどうかと、そういう意味合いで具体的には前年度の剰余金というのをどう考えるのか、あるいは積立金というような要素を考えるのかどうかと、こういったことがちょっと示唆されたところがあります。現在地方財政計画におきましては、御案内のように府県市町村を通ずる純計の形で単年度の収支の状況を明らかにし、これに基づいて財源不足が見込まれる場合には必要な財政措置を講ずると、こういう形でずっときているわけであります。これに対して多年度の要素を取り込むということになりますと、現在の地方財政計画を根本的に立て方を変えなきゃいけない。その利害得失いろいろ問題があると思います。このような考え方が単に地方への財源措置を見直すといいましょうか、カットするというか、そういうふうな問題意識でこれを取り上げられるとすればこれは問題ではないかと。ある程度中長期的な形で中長期的な見地に立って地方財政を見るということはこれは必要であろうと思いますけれども、そのことは直ちに現在の地方財政計画の単年度方式を変更することにつながるべきではないと、このように考えております。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 さらに、この地方財政のしわ寄せとして、これは私の感覚ですが、地域振興整備公団あるいは雇用促進事業団などの特殊法人あるいは国立病院などへの自治体負担を求める提言ですね、第四部会報告でなされているわけですが、これは全く私は木に竹を接ぐような議論だと言わなきゃならぬのですが、自治省、特殊法人にせよ国立病院にせよ、これらは国の監督によって運営される機関であって、私は全く制度の基本を理解していない議論であると考えているんですが、この点はどうですか。
  64. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 第四部会報告の中に、特殊法人の一部についてその現在行っている事業が地域に受益するといいましょうか、地元がいろんな形で利益を受けていると、そういったことから一部地方団体が負担してもいいではないかという感じの表現がございます。この点につきましてはそれぞれの特殊法人等はそれぞれの経理に基づいて、言うなれば国の立場で必要な施設を設置し経営してきたものであります。ですから、その経営のあり方を考えるのであれば、あくまでもそれは国の立場で考えられるべきでありまして、直ちに地元負担ということになるべきではない。地元として必要があれば地元の立場で必要な施設をつくったでありましょうし、今後つくるでありましょうから、現在国の施設の経営がうまくいかないということで直ちにそれを地元に負担させるという発想そのものは、私どもとしては納得いたしかねると考えております。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 地方事務官問題に移りますが、あえてここで質問をするようなことではなくて、自明のことでありますけれども、権威ある臨調の部会報告がこれまでの議論の積み重ねを逆転して出されている以上、ここで自治省見解確認しておかねばなりません。特に一九七四年の国会決議の精神が一つも盛り込まれない。議会制民主主義の基本というものを、一体臨調というのは何を考えているんだろうかと思うんです。国会外のところで最高の議決機関が決めたことをひっくり返す。そういう報告を平然として出すというので、私は土光調査会などというものをこの一点にかけても全く信用ができないと思い始めているのですが、この地方事務官について、まず一九七四年五月十七日、五月二十八日衆参地方行政委員会、それから五月二十一日、五月三十一日衆参本会議における委員長報告、こういうものの内容、どういう決議がされたのか。第二に、一九七五年七月の第十六次地方制度調査会、地方行財政のあり方に関する答申では地方事務官はどのように扱われたのか、この二点を簡単に明らかにしてください。
  66. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 御案内のように、地方事務官問題、戦後数十年間末解決のまま経過しておるわけでありますが、その間各種審議会あるいは国会決議で地方事務官問題の解決についているんな提言がなされております。  まず御質問の国会決議に関して申し上げますと、昭和四十九年の五月、衆参地方行政委員会におきまして地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議という形でありますけれども、決議の内容は、「地方自治法附則第八条の職員については、」「昭和五十一年三月三十一日を目途として地方公務員とするよう努めること。」と、こういう内容になっておりますし、さらにその後も、昭和五十年の六月あるいは五十二年の五月、五十三年の四月、それぞれ「地方財政対策の強化に関する決議」の中身としまして同様な趣旨の決議がなされております。  それから地方制度調査会の関係で申し上げますと、まず昭和三十八年十二月に地方事務官制度の廃止の答申が出ておりますし、その後も昭和四十年の九月の答申におきまして、地方事務官の扱っております事務について都道府県に委託または都道府県の事務とすると、こういうところで地方事務官問題について地方団体の事務とすべしであると、こういう答申を行っておりますし、その後も昭和四十八年あるいは五十年、五十二年、この三回の答申におきましても地方事務官制度の廃止についての意見が出されておるところであります。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 大臣ね、まあ地方自治法附則八条なんというのは大臣、もう後藤田官房長官もじかに手がけた人ですから、よく御存じですからその姿勢はもちろん疑ってはいませんが、大臣に聞きたいのは、地方制度調査会という歴史の非常にある調査会、で、第二次臨時行政調査会というこの政府の諮問機関、ランクとしてはどっちが上だと思っているんですか。
  68. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) この問題は、まあ御存じのように地方自治法が終戦後二十三年ですか二十二年ですかに施行になりましてからの問題であるわけでございます。どう判断してもやはり地方自治というものの立場から言えば、地方事務官制度は速やかに解消をしていただくというのが本筋でございます。ただいま申し上げましたとおり、あるいは国会の地行委員会の附帯決議あるいは地方制度調査会などでも数次にわたりましてそういう御決議もあるわけでございます。地方自治の推進、地方分権の推進という立場を臨調が根本的にとられるとするならば、やはりこの問題は地方公務員化を筋としては当然にやっていただけるものと、こう実は私どもも考えていたのでございます。この臨調の部会報告は、それぞれ社会保険関係あるいは陸運関係あるいは職業安定関係と、こう分けて非常に具体的に報告が出ておりますだけに、私どももこれについては深刻に受けとめましてこの問題には対処をしていきたいと、こう思っておるところでございます。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 質問に答えられませんでしたが、いまの大臣の答弁でもはっきりしていますから再確認はいたしませんが、行政局長先ほど言われたように、この七五年七月の第十六次地方制度調査会答申に自治省の姿勢は基づくと、ここだけは確認できますね。
  70. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) そのとおりであります。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 現在この地方事務官が取り扱っている行政を国に引き上げることは、行政の円滑な執行を妨げ、しかも国、地方の財政をトータルに見た場合に、経費の増大につながるという私は危惧があるんですが、この点はいかがでしょうね。
  72. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 経費の増大という問題よりも、先ほど和田委員のおっしゃるような、いわゆる地方分権の立場からする事務配分の問題あるいは身分の取り扱いの問題、こういった問題が基本的な問題と思います。臨時行政調査会におきまして、昨年の基本答申において明確にいわゆる国と地方の機能分担論というものを打ち出しておられるわけでありまして、その具体化の第一の問題としてこの地方事務官の問題が取り扱われておるわけであるますけれども、私どもの感覚といたしましてはこの基本答申におきます機能分担、つまり住民の身近な事務については住民に身近な地方団体で行うべしと、こういう思想に沿った結論になっていないという感じを強く持っておりまして、まずその辺が第一の問題と考えております。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 この問題は、もう一つは労使関係という観点からも非常に大きな問題を含んでいるわけですが、圧倒的な地方事務官は地方移管を望んでいる、地方公務員となることを望んでいる。その点も含んで地方事務官問題にはしっかり対処をしていただきたい。これは要望をいたしておきます。  そこで、建国記念日審議会の委員であった舟橋聖一さんが建国記念日を政府の行事としないことを条件にして二月十一日に条件づきの賛成をされるわけですね。舟橋さんは、この日の制定が絶対に軍国主義、超国家主義、権力主義、全体主義等の工作に悪用されてはならないと述べられているわけです。私は、この舟橋さんの危惧はいまやみごとに現実のものとなりつつあると考えるわけです。自治大臣、この舟橋意見に対していかなる見解を表明されますか。
  74. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 建国記念日というものは国の方で一応祝日に決められているものでございまして、国民の祝日として国民がひとしくお休みをしてお祝いをするという日になっておるわけでございます。この今回の自治省が後援するという問題でございますが、これはきわめて事務的に処理をしたということでございまして、決して深い考え、深い意図を持ってやったものではないわけでございます。まあ総理府もあるいは文部省もすでに後援をしておるわけでございまして、従来から自治省が後援を御依頼を受けた場合に処理をしておる一種の処理のやり方にのっとって事務的に処理をしたものでございます。したがいまして、これによって具体的に何らかの自治省が措置に出るということはやっておりませんし、考えておりません。後援をするというそういうこと一事だけであるわけでございまして、いま申し上げたように事務的に処理をしたと、こういう考えでございます。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 大臣から総理府、文部省の話が出ましたが、私がさっき言った舟橋さんの意見ですね、これについて総理府、文部省は一体どういうふうに考えていますか。
  76. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 舟橋先生の審議会での御意見は先生のおっしゃったとおりでございまして、私どもも舟橋先生のお考えのとおりだと考えております。
  77. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 舟橋先生の御意見は一つの御意見だと思っているわけでございます。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 いま自治大臣からいろいろのお話があったんですが、ちょっと事務的に処理をされただけだ、深い意図はないと、これは事務的に処理をされた部分からのお答えをもらえばいいのかもしれませんが。どうも自治省が初めて民間団体が主催するこの建国記念日奉祝行事に後援団体として名を連ねる。これまでは後援してこなかった。ここでにわかに後援をする。これは何かやっぱり少しは理由がなけりゃならぬのじゃないですか。
  79. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 先ほど大臣からお答えを申し上げたところでございますが、この建国記念の日に当たりまして建国記念の日奉祝運営委員会というのがございます。従来から式典行事を行っておるわけでございますが、いままで総理府、文部省これが後援をしておられました。自治省につきましては、いままで特に後援をしてくれという申請はございませんでした。私どもの方がいろんな行事に後援をいたします場合には、これはやはり当該主催者側からの申請に基づいて後援名義の承認をするという形をとっておりますので、そういう意味でいままでそういう後援の申請の依頼がなかったということでいたしておりません。今回の場合、初めてそういった依頼があった。従来から総理府、文部省も後援をしておると、また国が決めた建国記念の日という行事の普及宣伝の目的等いろいろ考えまして後援名義の使用を承認をすると、こういう経緯でございます。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、民間団体主催の行事を後援する場合、幾つかの基準があると思うんですが、自治省はどういう基準をお持ちですか。
  81. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 自治省におきましていろいろな行事の後援をいたしておりますけれども、自治省所管行政の推進、普及、啓蒙あるいは国民の生活、教養の向上に寄与する行事につきまして、行事の主催者からの申請に基づきまして審査の上、その可否を決めております。具体的な基準自治省は特に設けておりませんが、具体的な基準につきましては総理府の取り扱い基準がございまして、この取り扱い基準を参考の基準として決めておるところでございます。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、総理府の基準は……。
  83. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 総理府の後援の基準でございますが、行事の内容につきましては、「総理府所管行政の推進、普及または啓蒙」「国民の生活、教養の向上に寄与する行事であること。」それからまた「行事等が広い地域を対象とするものであり、資金計画が十分なものであること。」とされております。ただ、「営利を目的とするもの」「政党色や宗教色のある行事」は除くこととしております。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 この建国記念の日奉祝式典ですね、これに対する後援の申請が昨年の十二月二十七日に出されましたね。それでことしの一月十三日に承認をされているわけです。その間にどういうような自治省、審査をしたのですか。
  85. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 御指摘のように十二月二十七日に会長名をもって申請がございました。申請の内容を、主催者側に来てもらいまして行事の内容をいろいろ聞きまして、その上で従来からの総理府、文部省もこれに対して後援をやっておるといったような事実等も勘案をし、これが自治省の後援名義の使用について特に差し支えはないという観点から、一月十三日に承認をしたと、こういういきさつでございます。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ矢野さん、昨年のこの奉祝式典の式次第がどんなものであったか具体的に御存じですか。
  87. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 本年申請をされておりますところの式次第の内容を中心に考えてまいりました。これは、行事の中身としては昨年のものとほぼ同じであると聞いておるところでございますが、その内容といたしましては、まず期日は二月十一日、会場は国立劇場——昨年の場合、場所が明治記念館であった。場所が異なっております。ことしは国立劇場。式典次第として「開会の辞」「国歌斉唱」「拝礼」「会長式辞」「委員長挨拶」「来賓挨拶」「参加者代表祝辞」「祝歌」「舞楽」「万歳三唱」「閉会の辞」こういったようなことで、ただ細かい細部につきましては、まだ細かい点は決まっていないと、こういうぐあいに承知をしております。昨年もおおむね同様の内容であったと考えています。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 いま言われたように拝礼というのが式次第の中にあるわけですが、これは何に対して拝礼をするのですか、あるいは昨年はしたのですか。これは自治省確認をされたんですか。
  89. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 昨年の場合には、この拝礼は神武天皇陵に対しての拝礼であったと聞いておるところでございます。ことしはその点ちょっとまだはっきりいたしておりません。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 さらにお尋ねしますが、この運営委員会の委員長である黛敏郎さんのあいさつの内容ですね、あるいは木下会長の式辞の内容、そこでこの人たちが何と言ったのかということは——昨年ですが、恐らく経過を、承認をされるに当たっては、後援団体になるに当たってはいろいろ調べられているんでしょうけれども、これは確認をされていますか。
  91. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 昨年にどういうあいさつをされ、あるいは祝辞があったということにつきましては、私どもの方も大ざっぱでございますが承知をいたしております。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 それはどんな内容でした。
  93. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 建国記念の日のいきさつ、由来と申しますか、歴史書に基づく記述等によりまして、どういうぐあいに日本が建国をされたのか、またその建国に当たった際の精神、そういったようなものを述べられ、これから日本国民全体が、こういった記念の日について建国の日をしのび国を愛する心を養うといったようなことを中心に述べられておったものと記憶いたしております。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 もう一点自治省確認しておきますがね、この運営委員会のメンバーを挙げることができますか。
  95. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 委員会の会長は木下一雄氏でございます。委員会のメンバーにつきましてはかなりの数の方がたくさんおられますが、一々お名前を申し上げるのはちょっと時間の点でいかがかと思いますので省略をさせていただきます。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 自治省、私の質問の通告が行ってから大体答弁資料をまとめられたという感じでありまして、以前にいろいろおたくに尋ねたときにはほとんど何も御存じなかったわけでして、答弁非常に苦しいんだろうと思うんですがね。大臣が率直に冒頭に答弁されましたように、事務的に処理を単にしたと、深くは考えていないし他意はないと、こういうところが自治省の恐らくやったところのあれだろうと思うんですがね。私は、総理府の承認基準というものとの照合においてやったと言われましたから、実は一番問題は、「営利を目的とするもの及び政党色や宗教色のある行事を除く。」、ここが問題なのでありまして、自治省ほどの人たちが昨年の式典の内容というものを実はつまびらかにしておれば、この基準に該当するから大臣やっぱり後援はまずいよということになるのが普通だっただろうと思うんです。よっぱど一生懸命に曲解すれば別ですよ。いまも歴史教科書に照らしてなんてありましたけれども、それは戦前の歴史教科書に照らして黛さんが物を言っているものまで、自治省官房長ともあろう人がそういう答弁をせざるを得ない、苦しさは理解できますよ。理解できますけど、それは私にとってはあなたの立場を理解するだけであって、内容について理解をすることはもう決してできない、そういうものです。したがって、この行事がまじめに総理府後援等の承認基準の要旨との照合において行われておったならば、後援の基準は満たしていない、こういうふうに言うことができます。まあ自治省を相手にして議論をしてもあれでありますから、そもそもこのもとになりました総理府、文部省いま少し聞かしてください。  文部省、拝礼という行為はこれ宗教的行為であるわけですが、これは仏教にありますかね。一般にどういう宗教で多く用いられる宗教的行為ですか、これは。
  97. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 詳しいことは私も学問的に申し上げるわけにはいきませんが、いろいろ国旗に向かって拝礼することもありますし、特定の神社仏閣に対して拝礼をするというようなこともありますので、その式典全体の中でどういう形でこの会が運営されることがより中正な形の運営であるかということは、今後十分考えていかなければならない問題であろうと思います。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 文部省官房長、昨年の式典で、この拝礼の際に先導役の小笠原清信さんという方がどういうふうに言われたか、何に対して拝礼と言われたのか、これはおわかりになっていましょうね。
  99. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 大ざっぱに知っておりますが、今回の申請に当たりましてはそういうことについては十分注意をいたしまして、宗教的な行事に偏らないようにということの留意事項をつけまして、文部省としては後援をしているわけでございます。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 そこのところは、しかし昨年十二月十三日付の「神社新報」によりますとね、ことしもまた「神武天皇の御遺徳を偲び拝礼を」行う予定であると明確に書いてあるわけです。この拝礼が神道による宗教的行為であることはもうきわめて明確でありますよ。昨年もそうだったわけですがね。
  101. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 一月十三日付で文部省が後援名義の使用の許可の回答をしているわけでありますが、その際には、今日まで行われた中で御指摘のような行事内容について宗教色、政治色、そういうものを出さないようにということを指導をしておりますし、また、いままでのような形式を改めるようにということを指導しておりますので、自主的にそういう方向での改善が漸次図られていくものだと思っております。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 図られていくと思っていると、私たちもそこのところを厳しく監視をしていきますがね、あなた方の行政指導がそこまで及ぶのでしょうから。  万歳三唱の発声を行った高澤信一郎さん、万歳三唱の前のあいさつでどういうふうに言われたか、この辺も調査されたでしょうね。
  103. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) そこは私、この場で詳しくは承知しておりません。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、そういうことを調査をされずにその承認基準に基づいて承認をするというのは、総理府どういうことです、これ。総理府は調査しているの、いまの質問。
  105. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 万歳三唱につきましては、天皇陛下万歳と三唱されたと聞いております。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 万歳三唱の前の発言。
  107. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 細かいことについては、私も詳しく把握をしておりません。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 私は、それだからいま明らかになったように、政府関係機関というのは一応は承認基準というものを用意をしたけれども、何のことはない、それとの照合においては何の調査も行われずに単に事務的に後援をしている、こういう形にいまなっているのじゃないですか。これだけ国民的論議がある問題について、少なくともあなた方は後援をされるわけですからね。これはいま答弁の中でもみんなそういう形でしょう。どれもこれもが具体的には何の調査も行われていない。これは自治大臣どうですか。大臣は、いや事務的に処理しただけだからと言われてしまっておるから、それ以上の答弁の仕方がないんでしょうけれどもね、こういう状態なんですよ。それを新大臣になられて、初めて自治省が無造作に受ける。総理府、文部省に右へならえをしただけである。ちょっとこれは幾ら何でもひど過ぎますよ。了解することはできませんね、これは。
  109. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 少なくも事は建国記念の日として国がとにかく決めた日、それを祝うという行事であるというその一つの大きな私は前提に立っていると思うんです。これは国民の一人としてあるいはまた団体としてお祝いになるのは私は一向差し支えのないことであろうと思うんです。  私の方が今回やることにいたしましたのも、そういうことが一つ大前提としてあり、また従来から政府としてであるかどうか、総理府と文部省がここ数年来もう御後援になってやってきていらっしゃるわけでございますので、私どもの方としては御依頼もございましたし、そういう考え、いま申されたような考え方で今回後援ということを従来の基準に、われわれ自治省として後援をしてきた一つの考え方に基づいてやるということにしたわけでありまして、これはまあ大筋として私は建国記念の日をお祝いするという純粋な気持ちでおやりになっているものと、こう理解をするわけであります。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 大臣の理解では間違っていましてね、そんな純粋なことにはなっていないんですよ。高澤さんの所属というのはどこですか。さっき言った高澤氏の所属というのはどこですか、どこに所属されている人ですか。
  111. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 文部省、わからぬのかね。
  112. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 私は承知しておりません。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 まあ一事が万事そんなものでしょう。さっきから論議聞いているとそういうことですよ、非常に迷惑な話ですよ。高澤さんは建国記念日——さっきのあいさつを言いますがね、建国記念日は紀元節祭でなければならないとあいさつをして万歳三唱の音頭をとっている。この紀元節祭というのは紛れもなく神道の宗教行事にほかなりません。文部省、そうじゃないですか。
  114. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 戦前の紀元節についてはそういう考え方ではございましょうけれども、今回の法律で決められました建国記念の日につきましては、そういう戦前の意識から脱却いたしまして、「建国をしのび、国を愛する心を養う。」という国家的な、国民的な観点から法律によって定められた祝日であるというふうに理解しているわけであります。したがいまして、そのこと自体、それを祝うこと自体はむしろ積極的に広く進められるべき行為であるというふうに基本的には思うわけであります。したがいまして、そのあり方について各界各層からの方々による奉祝運営委員会が設立されて行われるわけでございますから、それに対して、その趣旨は従来文部省の持っている後援基準に該当するということで後援をしたわけであります。ただ、その運営につきましては必ずしも完璧ではないというような御指摘もいろいろございますし、また私たち自身としてもそういう点については若干問題があるというようなことも考えまして、後援名義を行うに当たりましてそういうことのないように、特に宗教色、政治色、そういうものを絶対に出さない形でのこの式典の執行を図ってもらいたいということを今回は強くお願いをして後援したわけでございます。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 まあ、これは見てみればわかりますけれども、あなた方の行政指導がどれだけ徹底するかにかかりましょうが、昨年の式典は、以上私が事実関係を明らかにして言ったとおり、きわめて宗教色が強かった。さらに政党色ですね、これはまあ政治色と言いかえることができますが、これも一つの政治的イデオロギーに色濃く塗り上げられている式典であったと言わざるを得ません。昨年の式典において黛運営委員長がどういうふうに述べたかは、これは幾ら何でも調査されているんでしょうね。これは総理府はどうですか。
  116. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 新聞等で私も拝見をした程度でございますので、先生の方がよく御存じかと思っております。
  117. 和田静夫

    和田静夫君 私の方がよく御存じでは困るんであってね、そんな無責任な態度でもって文部省、総理府——あなた方が後援しておったから自治省右へならえしたと言っているんですから、あなた方がしっかり調べておって、そして、いわゆる法の精神と異なるものが行われているならば後援しないということになれば自治省は右へならえしなかった、こう言っているんですよ。それはあなた方の責任たるや非常に重大なわけですわな。それはあなた、総理府、そんなことじゃ困りますよ。あなたのところはちゃんとこれ、さっき読んだのは——しかも、あなたは意識的に、「但し」がもっと前にあるのを一番最後にひょっとつけ加えたようにして小さい声になってそこだけ読んだんですがね、私が問題にしようと思ったところを。衆議院予算委員会に提出をした資料なんですよ。これは、この基準というのは皆さんがしっから守らなきゃならぬ筋合いのものでしょう。ところが、あなたの方が、質問者の方がよく知っているでしょうなんというような答弁じゃ、これはとても納得するわけにはいきませんよ。
  118. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 式典の関係者がいろいろと発言をなさったということがあろうかと思いますが、個人的な意見を発表するということは私どもの立場としては差し支えないものと考えているわけでございまして、特に決議等、そういうことが行われているわけでもございませんので、特に問題はないものと考えている次第でございます。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 内容を知らずによくそういう答弁できるね。
  120. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 私も昨年は現在の職責におりませんでしたものですから、新聞等で拝見をしたことで申し上げた次第でございます。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 余りにもひど過ぎてね、これはあなた決算委員会を侮辱しているんじゃないかと思うぐらいですよ。しかも私は、質問の通告してないのなら別ですよ、この問題についての一切について質問をすると、ちゃんと質問の通告してあるわけですからね。あなた方の方から質問のあったことに対してはちゃんと答えているわけだから。
  122. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 黛運営委員長が八紘一宇等の発言があったということを聞いております。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 その八紘一宇とは「友愛と協調の精神によって天下を統一し、世界的規模における家族国家を建設しようというものであり」云々と、まあその後続くんですが、こう言っているんですよ。その言っていることをあなた方は知っているわけだ。知っていてもここの部分についてはほおかぶりでもって後援をする。したがって自治省も右へならえをする、こんなふざけたことが起こっているんですよ。  さらに黛さんは、「私どもの祖先は自来二千六百有余年、この理想に基づき、万世一系の皇室を中心として営々と国づくりに励んでまいりました。」、明確に皇国史観に基づく歴史観を述べています。さらにまた、憲法問題を一切の先入観を取り払って論ずべきである、それは八紘一宇の精神に立ち返って考えるべきだと述べています。このあいさつの政治的立場はもはや明瞭ですよ。これは自治大臣どういう見解をお持ちになりますか、いま私が申し上げたことについて。
  124. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) まあそれぞれの個人的な意見も私は相当あるんだろうと思うんです、それはそれぞれの人がそれぞれの考え方を持っておられて、まあ発言はされるわけでございましょうから。その全体として国民の祝日——先ほどの文部省の御答弁のように、祝日として決められておるその日を祝うという純粋な気持ちでやっておるものと、こう理解するわけでございまして、一人一人のお考えでおっしゃることはそれぞれのお考えなので、それをまあ一々——一々と言っては失礼かもしれませんが、そこまで何をおっしゃいますかまでは、なかなか私は伺いもできないところであろうと思うんです。全体の空気として、全体のやり方として大局的な判断をするほかなかろう、こう思うのでございまして、いまいろいろおっしゃられたことは承っておくということでございます。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣、私は一般論としてそのことを答弁の内容について否定をしようと思わないんですが、少なくとも政府が後援をされた、自治省にすればこれは初めて後援をされたわけですよ。その後援をするに当たっては、総理府が出しているところの承認の基準がある。その承認の基準に抵触をする内容になっているものについていまのような答弁で済ますわけにはいかぬ。そういうことなんですよ。ここのところは、それはさっき文部省いろいろこれから、ことしは改まるだろうと言ったが、官房長、改まるですかな、この式典。明確に改まりますね。来年の決算委員会、同じような論議にならないという保証がありますか。
  126. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 黛先生の立場で先生の御意見をこの式典のときにお述べになったことは、事後私たちはいま伝えられるような内容のものであったことを承知しているわけでございます。  ただ、後援の名義を出すに当たりまして、来賓の方々がどういう発言をし、どういう祝辞を述べるかということを、事前に一々チェックするということは不可能であります。したがいまして、後援名義を出す際には、その会の責任者である委員長が、どういう趣旨、目的で述べるかというところがポイントであります。したがいまして、木下委員長はいまおっしゃったような形じゃなくて、もう少し広い次元で、特に問題のあるような式辞を述べられているとは思っておりません。まあそういうようなことでございまして、今後来賓に来られる方々がことしまたどういうような発言をされるかについて、後援者である文部省に責任を持てと、こう言われてもなかなかそこは責任の持てる問題ではありません。ただ、運営に当たりましては、先ほど申し上げましたように、できるだけ政治色ないしは宗教色というものを抜いて、公平な形で運営してほしいということを申し入れておりますので、そういうようなことが実効が上がることを願っているわけであります、強制力を伴うものではありませんので。ただ文部省としてはそういうことを強く期待をしているということでございます。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 いや、そうだから、あなたはそういうことを言っているけれども、委員長ですからね、この人は、黛さんは。あなた、この会の趣旨をちゃんと徹底をする委員長ですよ。こういう行為があったにもかかわらず、今年度はここの部分については何の注意も与えずに後援をする。来賓にあなたがすりかえてもらっちゃ困りますよ。それは、どういう来賓の方がどういうあいさつをされるかは自由でしょうけれども、あなたが後援をした、そのいわゆる行政の責任ある立場からこういうことが起こっておることについては、これはいかぬと言うのがあたりまえじゃないですか。そういうような趣旨のいわゆる式典であるのならば、私の方は後援することができませんと言うのがあたりまえじゃありませんか。
  128. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 式典の目的、性格等は正式に会を代表する会長が式辞を述べるわけでございます。そこで、黛委員長は、委員長あいさつということで述べられ、その他の来賓がいろんな形で祝辞を述べる、こういう形になっているわけでございます。  したがいまして、会を主催した最高の責任者は会長の式辞にあるというふうに判断しているわけでございます。したがいまして、その式辞において、祝日として定められた建国記念の日についての趣旨を広く国民に徹底させるというような内容でございますので、委員長一つ一つの発言、祝辞の一つ一つの発言をとらえてとやかく申し上げることはできない、こういうことを申し上げているわけでございます。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 私はあなたの発言もこれから問題にするんだから、答弁をでたらめなことを言っているとあれですよ。  そんなことを言うのなら、会長式辞の前に拝礼がありますよ。拝礼は神道的な行事としてちゃんとある、式次第がある、式典次第がある。その式典次第があることに対して、黙って後援するんじゃないですか、あなた方は。会長あいさつの前にある。そこでもうすでにこの会の性格が決まっちゃうじゃないですか、式典の性格が決まっているじゃないですか。
  130. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 後援名義、年間千二、三百文部省でも出しているわけでございますが、その内容についてはその基本的な趣旨、目的、それが後援名義の基準に合致するかどうかということで一般的に承認を与えているわけであります。新聞社でいろんな美術展とかいろんなことをやったりする場合もそうでございます。したがいまして、一つ一つの式典がどういうふうに行われるかというのを完全無欠にチェックするということは、なかなか一般的な後援名義を出す際にはむずかしいわけであります。そこで、この運営委員会で行われる式典の全体的な流れというものは、先ほど申し上げました後援基準に該当するということで許可をしているわけでございますので、一つ一つの内容についていろんな見解の分かれる点もございましょうけれども、大勢としては基本的に後援に値すると、そして今後なお宗教色、政治色についてはそれをできるだけ除去するようにということを指導しているということでございます。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 あなたがいま言われた答弁なら後援しなければいいじゃないですか。そこまで全然タッチすることはできないし、見ることもできない、考えることもできない、承認基準に照らして、照合して考えることもできませんと、そんなことなら後援しなければいいんですよ。私はあなた方の後援のいわゆる行為を問題にしているんですからね。そうでしょう。後援するにふさわしからざる式典になっているから問題にしているんですよ。勝手にどこででもおやりになることについてまで問題にしているわけじゃないですからね。
  132. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) いろいろ申し上げておりますが、結果的にはそれについての考え方に差異があるということかと思うわけでございまして、文部省としては後援に値するとして後援をしているわけでございます。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 あなたは、その基準であるところのいわゆる「政党色や宗教色のある行事を除く。」というところが基準なんでしょう、承認の。何ですか、その考え方に相違があるというのは。宗教行為じゃないと言っているの、あなたは。
  134. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) その会の運営について、一つ一つの流れとかそういうものについて、世間一般で特定の立場に偏っているとか、特定の宗教的な色合いが出るという非難もございますので、そういうことをできるだけ除去して公平な立場でやってほしいと、こういう立場で申し上げているわけであります。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 そんならやるのを見てから、ことしは後援を手控えておくと。あなた方の行事を見てから、われわれの承認基準と合うかどうかということでもって来年に向かって考えましょうとか、普通なら慎重であるべきあなた方がどうしてこういうことになるんですか。総理府どうですか。
  136. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 私どもがこの式典を後援いたしておりますのは、文部省の方からも申し上げましたが、それと全く同じでございまして、この式典が建国記念の日の趣旨、「建国をしのび、国を愛する心を養う」という趣旨で行われるということで、私どもは後援をしておるのでございます。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 答弁になっていないんだよ。とにかくあなた方は、全く責任が持てるような態度でもって後援をしなかったことだけは、この論議で明らかになりました。これはいち早くもう一遍再検討をあなた方はする、そういう必要がありますよ。再検討されますか、総理府は。  たとえばいま私が申し上げたような事実があるわけだ。それと同時に事実を照合しながら再検討する。再検討しなけりゃ文部省が言うように注文をつける。注文つけた上でそれが守られないということになりゃどうするんですか、再検討するということになるんでしょう、それは。
  138. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) いろいろ式典の中身について、式典の関係者等が個人的な意見を発表されたということがございます。それにつきましては私どもも、先ほど申し上げましたように、式典において決議等の特段のことが行われてないということで特に問題はないと考えているのでございますが、国会等でいろいろ問題、質疑等がございましたし、また新聞等でもいろいろ取り上げたことは間違いのない事実でございますので、主催者に対しましては、誤解を招くことのないよう、建国記念の日の趣旨に従ってこの式典を行うよう従来からも申し入れておりましたが、今回もそれについては強く申し入れておりますし、今後もそのつもりでやっていきたいと思っております。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 その上に立ってこれ、自治省ね、いま両方のあれでいろいろ厳しく申し入れられるそうです。その上に立ってもなお式典の趣旨が、言ってみれば宗教色を帯びる、政治色を帯びる、こういうような承認基準との照合においてひっかかる状態になった場合には再考される、結論は別として再考される、そういうふうに理解しておいてよろしいですか。
  140. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) この式典の全体的な趣旨というものにかんがみまして、両省庁とともに私どもも後援をしたわけでございますが、もとより後援をしたことでございますので、実際の行事が行われました場合にまた十分報告を聴取してまいりたい、その上に立って考えてまいりたいと、このように存じておる次第でございます。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 やられた後再考する、来年に向かってというのではもうだめなんで、私は強くいまから行政指導、さっきから文部省、何遍も官房長言っているわけですから、これからするというのですから、そこのところをしっかりわきまえてもらいたい。  ところで、文部省の官房長、あなたは一月三十一日、日本キリスト教協議会などが式典後援の取りやめを申し入れた際に、八紘一宇は平和主義のシンボルだ、そういう形であなた答えましたな。八紘一宇の解釈を言ってみれば認めた事実がありますよ。これは幾らでも、もしあなたがここで否定するのなら、それこそこの間の選挙の問題と二つ絡めて、あなたのいわゆる調査をもっと深めなきゃならぬが。それは証言者がいるわけですが、これは明快に答弁してください。いわゆる八紘一宇は平和主義のシンボルである、これはまた黛委員長が去年言っていることにも通ずるわけだ。
  142. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 確かにそういう陳情の方が見えまして、私が直接それにお答えしたわけではございませんが、少なくとも文部省の側としてそういう趣旨にとれるような答弁をしたことは事実でございます。ただ、八紘一宇という言葉自体については、言葉の意味合いというのは、何も一つの、世界を一つの家とするということで使われて、その意味がそういう本来の意味でございまして、ただ戦前にそれが特定の方向に結びつけられて使われたという事実は私も承知しているわけであります。したがって、純粋の言葉だけのやりとりで議論いたしますと、何もそれは特に問題になるような言葉ではないということでございます。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 国語の時間に解釈の論議しているんじゃないんですよ、あなた。そういうとぼけたことを言って。自治大臣どうですか、いま言っていることはもう認めたんですがね。八紘一宇は平和主義のシンボル、政府はそういう解釈をされますか。
  144. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 私もいま初めて聞くことで、私がここでいま文部省のことであれこれ意見を言うのもいかがかと思いますので、私の意見は差し控えさせていただきたいと思います。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 これはとにかく許せない。本来なら、決算委員会でなければ委員会をとめてもっとぎゅうぎゅう話をするんですが、これ決算委員会ですから。  文部省、周知のように、昨年夏に教科書問題が燃え上がったわけですね。中国、韓国政府などに政府はどういうような釈明をしたんですか。
  146. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 政府は、釈明をしたということではなくして、近隣の友好関係をより深く進める観点で、教科書の検定に当たってはそういう角度からの、方向での責任を持った是正をすると、こういうことを申し上げたわけでございます。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 要するに、戦前の日本がアジアの国々を侵略して、いわゆる多大な迷惑をかけた、多くの無事の民を殺し、家を焼き、婦人を犯した、そういうような行為を反省するというものであったんでしょう、端的に言えば。
  148. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 教科書問題は、もう少しいろいろ正確に申し上げないと誤解を受ける言葉でございまして、一つは侵略とか進出という言葉から端を発しておりまして、それからいろんな論議が伝えられているわけでございまして、これは日中、日韓の問題にいたしましても、戦争を通じて相手の国に多大の迷惑をかけたということは、政府の共同コミュニケでもその旨を明らかにしているわけでございます。したがいまして、教科書でもそういう内容は教えているわけであります。  ただ、いろんな事件について侵略であるか進出であるかという言葉遣いについて取り上げられておって、そしてそれがそういうことについての評価が基本的にないような受け取り方がされているような点があるとすれば問題であるということで、教科書の今後の作成、検定に当たりましては、十分そういうことの近隣諸国との友好関係が損なわれないように配慮しながら、教科書の検定に当たりたいと、こういうことが一応の事件の決着でございます。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 外務省、じゃ同じ質問をしますがね。
  150. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 昨年の八月に官房長官の談話が発表されておりまして、これがわが政府の考えでございます。  その官房長官談話の第一項におきまして、「日本政府及び日本国民は、過去において、我が国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚」する、ということを述べまして、さらに日韓共同コミュニケ、それから日中共同声明に触れまして、この認識は現在においてもいささかも変化はないということを述べております。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 その上に立って八紘一宇という言葉ですがね、侵略の精神的スローガンにほかならなかったわけでしょう。いみじくも黛さんが言っていますように、世界的規模における家族国家を建設する、そういう美名のもとにアジアを侵した、八紘一宇はそういうような歴史的な性格を持った言葉ですよ、文部省そうでしょうそれは。
  152. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 黛委員長が使った言葉の中で、八紘一宇という言葉を使っていますが、これはそういう戦前の、いま御指摘のような意識ではなくして、同氏は、平和主義の理念、日本が世界平和のためにできるだけの貢献をなすべきであるというような形でそういう言葉を引用されておりまして、戦前の軍国主義を鼓吹するという角度で八紘一宇を使って式辞を述べたというふうには理解していないわけでございます。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 いわゆる皇国史観に基づいて物を言っておって、のらりくらり答弁して、こっちは時間がなくなりますからあれですがね、どっちみち引き続いてこれは党としてそれぞれの委員会でもって明確にさせますけれども、そういうでたらめな答弁は許せません。  文部省にさらに続けて聞きますがね。第五期国定修身教科書の初等科修身の三、国民学校五年生用には、十七に四方の海という節がありました。八紘一宇の精神は大東亜戦争にあらわれている、明確にしていますよ。これは初等科修身三だけではないんですよ。初等科修身四にも、初等科地理にも、戦前の国定教科書をひもとくならどこでも、ずっと私ここに持っていますが、八紘一宇の精神に基づいて大東亜建設を行うのである、大東亜戦争はまさに世界的規模における家族国家を建設するために行う戦争なのである、明確になっているじゃないですか、これ。その言葉ですよ、黛委員長の言葉というのは。そして、それを受けてあなたは、平和主義のシンボルだと、文部省はそういうふうにキリスト教者には答えているわけだ。全部一貫しているんですよ。これはもう、とてもじゃないが平和主義のシンボルなどと言えるしろものではない。そんなふざけた答弁は本当に困るよ。こういう決算委員会を侮辱した答弁を繰り返すということは許せない、これは。これは委員長、文部省の官房長を適当な処断をしてもらいたい、強く求めますよ。
  154. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 理事会で協議したいと思います。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 主催者があいさつの中で皇国史観をうたう、侵略戦争の精神的支柱を美化する、さらには憲法改正問題にまで言及する、これが何で政治的でないんですか。もし政治的でないと言うことができるのならば、これは答えてください、総理府。
  156. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 私どもは、後援の基準といたしましては先ほど申し上げましたように政党色、宗教色のある行事を除くということでございまして、昨年の式典、ことしの申請等を見ましてそれに当たらないのではないかと判断をしたわけでございます。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 あなたね、一八八九年二月十一日は何の日ですか。
  158. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) ちょっとわかりかねます。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 これは、二月十一日は御存じのとおり紀元節の日であると同時に、大日本帝国憲法の発布の日であるわけでしょう。したがって、明治憲法を賛美する人々にとってはもう一つの記念日なんですよ。事実、これは昨年のパレードの写真ですが、参加団体は自主憲法の制定をスローガンにしているばかりじゃない。そこのところはまだあれとしても、明治憲法復元、改正をスローガンにしていますよ、ちゃんと。これは政治的でないということにならぬでしょうね。自治省これはどうですか。
  160. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) そのパレードの件につきましてはよく承知いたしておりません。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 もうとにかく一事が万事でありまして、承認の基準も、ただ衆議院予算委員会を黙らせるために承認基準を出しただけなんだ、あなた方。承認基準は全然守られていない、こういう状態なんですよ。  少し法の趣旨に基づいた論議に返りますが、明治憲法には地方自治の規定がありましたか、どうですか。この明治憲法下の地方自治制度は人民自治と団体自治の二つの観念に基づいていましたか、どうですか。
  162. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 明治憲法には地方自治に関する規定は特に置かれていなかったと記憶いたします。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 一八八八年に市町村制が制定されたわけですが、その際の上諭には「隣保団結ノ旧慣ヲ存重シテ益之ヲ拡張シ」とあるわけですが、この「隣保団結ノ旧慣」というのはどんなものですか、これは。これは行政局長かな。
  164. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 「隣保団結ノ旧慣」、よく私も承知しておりませんけれども、考えてみますに、それまでの明治以前のわが国の地域におけるところの、お互いに相互扶助協力をし隣近所助け合うといったようなしきたりといったようなものを指しておると考えるのでございます。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 要するに、戦前の地方自治制度は官治主義、中央集権主義に貫かれていて、近代的な自治、地方分権主義の原則がありませんでした。近代的な地方自治の原則は現憲法において初めて確立をされた、これはもう常識、通説であります。であるならば、自治省は、その参加団体が明治憲法の理念を高揚して、そして明治憲法復元、改正をスローガンにしている式典、これを後援することはできないと思うんですね。これは自治省は自己否定をなさるということに私はなると思うんです。ここのところの見解を承りたい。
  166. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 建国記念の日そのものが、これは戦前の紀元節をそのまま復活したものではなくて、全く別な考え方から国民の祝日として法律をもって定められ、その趣旨とするところが「建国をしのび、国を愛する心を養う」ということでございまして、これが国民生活というものの中に密着することはこれは望ましいことであろうかと存じます。そういう観点から、私どもの方といたしましても、このことそのものが別に地方自治の精神に反するとは考えていないところでございます。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 まあ少しずれた答弁を巧みにされましたからあれですけれども、明治憲法を復元をするということになれば、いわゆる地方自治の本旨というものを損なうということになるわけですから、その意味であなた方が自己矛盾に陥るのではないか、こういうふうに言ったんです。この式典は、私が事実を挙げて示したように、あらゆる角度から見て自治省の後援すべきものではありません。  この式典は、冒頭述べた舟橋さんが危惧されたように、軍国主義、超国家主義等々あからさまに表明している。そういう工作に悪用をされていることだけは明らかであり、したがって後援は取り消すべきであります。総理府の後援基準に反することは明確でありますから、これは総理府は答弁ができなかったわけですから、その辺のところはやっぱり取り消しを要請をします。  文部省についても同じことで、この場限りの答弁で逃げる、そういうようなことは許せません。したがって、あなたの場合は、行政指導をぐっと強めていってそんな色彩をなくする努力をすると言っているんだから、そこのところは式典が行われるまでにそういう指導をして、それでもきょうの論議の趣旨にそぐわない結果になっていけば再考して取り消す、これはもう当然だと思う。意見として述べておきます。  もう一つだけ言っておきますが、総理府、一体どういうような事実があれば政治的、宗教的行為なのか、何か例示できますか。
  168. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) ただいま例示ということをお話しでございましたが、ちょっと頭に浮かぶものがございませんので、やはりそのときそのときの申請に基づいて審査をするということしかないのではないかと思っております。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 私は意見を述べた後ですから自治省をさらに深追いはしませんが、奉祝式典の内容が政治的、宗教的であって、しかも反地方自治的であるということが確認されれば、これは後援団体からおりることもあり得る、これは当然のことでしょうね、そういうことが確認されれば。仮定の問題には答弁しないと言われればそれまでだけれども。
  170. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 後援は申請に基づいて行ってきておるところでございますので、もとより個別の中身を総合的に判断をして決めるべき問題でございます。一般的なお答えでございますが、お許しをいただきたいと存じます。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 神社本庁などが自治省の後援を得たことに非常に勇気づけられまして、地方自治体が地方の奉祝行事に協賛しやすくなったと期待しているそうです。まさか後援を勧めるそういう通達などを、これはもう大臣冒頭に言われましたが、それ以上のことはやりませんと言われていますから恐らく出されないと思うのですが、地方自治体に指導することはよもやありませんでしょうね、これは。
  172. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 地方自治体がそれぞれこういった種類の行事に対して後援をするかしないか、これは地方自治体が自主的、自律的に判断をすべきものであると考えております。私どもの方からそのようなことを地方団体に指導し、指示する考え方は持っておりません。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 けさの朝日の投書には「国立劇場には似合わぬ式典としまして投書があります。そして、「とすれば、十七年前に三十七億円を投じた国立劇場の目的も、その辺にあるはずだろうから、政治、宗教色を帯びた儀式を場内で行うことに強く反対せざるをえない。」、東京都の雨宮さんという人が言っています。この声にはどういうふうにこたえられるか。そして、国立劇場を使うと言われているんですが、国立劇場は行事の中に雅楽が入っているから、雅楽が入っているからと言って何か逃げているようですね。集会の本来の目的ではなくて、雅楽はこれは見てみればわかるんだ、一種のアトラクションですよ、アトラクション。どんな集会でも伝統芸能が式次第に入っていれば許可する、こういうことに国立劇場の場合なりますか。文部省から。
  174. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 国立劇場法によりますと第十九条で、「国立劇場は、前項の業務を行なうほか、」というのは伝統芸能関係ですが、「前項第一号の劇場施設を一般の利用に供することができる。」ということで、そうした伝統芸能行事以外にも一般的に広く公益性があるものについては利用を認めるということで、現に教育功労者であるとか叙勲の伝達式であるとかそういう場合に使っているわけであります。したがいまして、今回の行事につきましても国立劇場に申請がありましていろいろ検討した結果、この使用規程に該当するということで使用許可をしたと聞いております。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば第七条では「特定の宗教若しくは政党を支持し、又はこれに反対することを目的とする催しのための使用であるとき。」これはもうできないとか、まあたくさんありますよ。「使用の目的が国立劇場の設立の目的に違反すると認められるとき。」まあたくさんあるわけですよ。私は、先ほど来論議をしてきたとおりの性格を持っているこれというのは、やっぱり使用根拠を持ち得ない。きょう論議で明らかになったように使用根拠を持ち得ないと思う。政治的、宗教的であることはもう明確であります。使用規程の六条第一項ですね、主催者が国、公共団体であること、第二に芸能に関する公的式典であることが条件である、第二項は伝統芸能の普及と理解に役立つ講演会などであること、こうなっていますね。当てはまらぬのじゃないかね、これ。
  176. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 先ほど申し上げましたように、国立劇場法自体で一般的に施設を利用させることができるという法律上の根拠がありまして、それを具体的に運用する場合の使用規程というのが国立劇場施設使用規程で設けられているわけであります。この項につきましては、第六条の第一号、「国、公共団体等の主催による芸能に関する公的式典等である」ということに該当するとして使用許可を与えたというふうに聞いております。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 それだから、その芸能にどこが関係あるんですか。
  178. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) これは芸能というよりも最後の「等」であるということ、国、地方公共団体の主催によるもろもろの行事等が含まれているということで、従来、教育功労者であるとか叙勲の伝達式であるとか、芸能に関係のないような行事にも使用を与えてきているわけでございます。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 各号の条件の一に該当するもの、いま使用規程の六条を言われました。しかしながら、その前に七条でさっき言ったとおり、特定の宗教問題であるとかあるいは政治的行事であるとか、そういうようなことの賛成、反対をするなどというものは使わせないことになっているのでしょう。どちらを優先的に考えるか。それから、また奉祝式典が芸能に関連しているという「等」の中に入るなどということは、とても解釈上読めませんが、あなた方は法律をいつも厳しく解釈する人が、こういうときになると幅広く解釈するのだが。
  180. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 第七条で御指摘のように特定の宗教、政党を支持しまたはこれに反対するというようなものにはもちろん貸していないわけでございまして、先ほど来論議がありましたように、各界各層の方々がお集まりになって法律で定められた祝日としてその趣旨を広く普及させるというような行事であるということから、これが特定の宗教ないしは政党を支持するというものでないということで、それぞれの省庁も後援を出しておりますし、そういうことの行事であるということを認定して、国立劇場はこの使用の許可を与えたと考えられるわけでございます。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 大変あなた方は恣意的なことを言っています。これは許すわけにはいきません、認めるわけにいきません。  警察庁、この問題の最後になりますがね、昨年の二月十一日にキリスト教者が紀元節に反対する集会を山手教会——東京の渋谷ですが、開いた際に右翼が集会妨害に押しかけた。外で爆竹を鳴らした。それだけではなくて集会場に乱入しようとした。その際、警官が多数配置されていたのですがね、手をこまねいて見ていたと言われるわけです。私は、ことしも同じようなことが繰り返されるということが予想されます。これはきちっとやっぱり警備をされることが必要だと思うんですが、昨年の経験にちなんでどういうふうにお考えになっていますか。
  182. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) まず、お答えしておきたいと思いますのは、いま御指摘の右翼に対する取り締まりの基本でございますが、もとより警察、不偏不党の立場でございます。いかなる立場からするものでありましても、違法行為は看過しないということで厳正な取り締まりをやっておるわけでございまして、右翼につきましても全く同様でございます。ちなみに昨年は、右翼事件として四百五十九件、六百八十三人を検挙いたしております。件数、人数とも戦後最高の数でございますが、厳正な取り締まりを行っていることを御理解いただきたいと思います。  御指摘の昨年の二月十一日の事件でございますが、これは当日大行社という右翼団体が百二、三十人、二十台の車両で都内一円を建国記念の日奉祝の街頭宣伝を行っておりまして、渋谷駅前のハチ公前で午後三時二十分ごろ統一行動を終了しまして流れ解散になったわけですが、その一部の五台の車両の者、二十八人が乗っておりましたが、三時二十五分ごろ山手教会で開かれております集会に、その山手教会前に乗りつけまして、数人の者が下車して二回にわたって正面入り口階段を駆け上がって入り口のドアに手をかけるあるいは足げりする、またそのうちの一人の者が爆竹を階段に投げつけたりしたということがあったわけでございます。これにつきましては、手をこまねいていたということはございません。追尾しておりましたし、付近で警戒中の警察官が急遽制服部隊に連絡しまして、階段から右翼のメンバーを制服部隊によって排除する、あるいは爆竹を即座に踏み消すというような措置をとりまして、五分間で右翼のメンバーの者を現場から排除、隔離したわけでございます。当日集会主催者の方に具体的な被害について問い合わせたわけでございますが、被害はなかったというお答えであったというふうに承知しております。  ことしも建国記念日には建国記念の日に反対する集会も全国的に数多く持たれます。また他方、右翼も、これまた全国的に建国記念の日奉祝行事というものを数多く予定しております。いろいろなところで紛争というものも危惧されますので、警察庁といたしましては、全国都道府県警察に対しまして右翼、極左、虞犯動向のある者の動向把握に努めるよう、また所要の部隊を所要の場所に警戒配備して不法事案の未然防止を図るように、そして違法事案が起きましたときには厳正に対処するよう指示いたしておるところでございます。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 金大中さんの問題に入りますので、関係のないところはもう結構です。  金大中さんの事情聴取について、前提条件云々の話があるわけですが、それは一応おくとしまして、その問題一応決着がつけば事情聴取をしたいという意向はあるわけでしょうか。
  184. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) おおよそ犯罪捜査で被害者から事情聴取するといいますのは捜査の第一歩でありまして、また捜査の常道でもあるわけでございます。したがいまして、金大中氏の逮捕、監禁、略取誘拐事件につきましては、目下警視庁において特別捜査本部を設置して捜査を継続しておるところでございます。できれば金大中氏からの事情聴取は行いたいと考えております。
  185. 和田静夫

    和田静夫君 外務省、田英夫議員が金大中氏から託された日本政府への要請、私は新聞報道でしか知りませんが、二度にわたる政治決着について説明を受けたい、日本政府が全斗煥政権に対し事件の真相を発表するように働きかけてほしいという二点であった。まあ別の報道によれば、「金東雲元在日韓国大使館員の指紋という確証がありながら決着に応じたのはなぜか」という項目がありますが、一、二これが含まれるとして、それらの点であったわけですか。
  186. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 田英夫議員が訪米なさいまして金大中氏と面談されまして、お帰りになりまして安倍外務大臣に面会いたしました。田議員が金大中氏の考えとしてお述べになりましたことは次の二点だったと承知しております。  一つは、金大中氏は、二度にわたる政治決着の際、日本政府より同氏に対し何ら連絡も説明もなかったことを遺憾としているということでございます。  それから第二点は、金大中氏としては、現在の全斗煥政権は金大中氏事件に直接の責任はないのであるから、韓国政府が事件の真相を発表するよう日本政府から要求してほしいという趣旨の希望を持っているという二点であったと了解しております。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 外務省はこれをダイレクトに金大中さんには確認をされたわけですか。
  188. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 金大中氏とは直接の連絡はとっておりません。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 もし外務省が金氏に接触する場合、どういうような外交的手続が必要でしょうか。
  190. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 現段階におきましては、先ほど警察当局からも御説明ございましたように警察と捜査当局が事情聴取をできればしたいという御意向がありますので、その御意向を受けまして、米国政府に対しましてその意向を伝えて米国政府見解を聞いておるところでございます。したがいまして、現段階におきまして直接金大中氏と日本政府あるいは出先機関が接触をするということは現段階では考えておりません。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 これも報道によりますと、外務省の首脳は、「日韓両国の政治決着について金氏に説明する必要はない」。「採取された金東雲元在日韓国大使館員の指紋の問題も含めて政治決着しており、改めてこの問題を韓国側に提起することはできない」。それから三つ目に、国家間で決着した問題であり、政権が変わったからといって決着そのものが変わったわけではないということで、三条件はのめないとしたと言われるんですが、そうですか。
  192. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 田先生の伝言に対しましては安倍外務大臣から検討するということでございまして、その結果の最終的な意見を述べておるわけではございません。したがいまして、政府としての正式な態度があるわけではございませんけれども、ただいま先生指摘の点につきましては、第一点につきましては、いわゆる外交決着は日本国とそれから韓国政府との最高首脳の間で、その両国の関係、全般の大局的見地から行われたものでございまして、最も高度の政治判断で行われたものでございまして、日本政府が金大中氏に陳謝を行うというような性質のものではないというふうに考えております。  それから、第二点につきましては、同じく外交決着は日本政府と韓国政府との間の了解でございまして、政権が変わったという事実はこれに影響を与えるものではないというふうに考えております。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 私の見るところ、金氏の要求と政府見解とが私はずれているんじゃないかと思うのですけれども、外務大臣がこれから検討されるというならまたそれを待ちますが、意識的に要求してもいないことを要求したとしてこれを拒否する、そういう印象がいろいろの報道を読んでいると強いのですね。金氏というのは政治決着を見直すように要求したのですか。
  194. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) そういう要求ではないというふうに了解いたしております。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 金氏の要求というのは私はだれが見てもあたりまえのことだと思うのですよ。事件の被害者がその事件に関することについて説明を受けることを要求するのは当然のことだろう。  警察庁、ちょっとこの問題ですが、一般論ですが、任意の事情聴取をする場合に、被疑者ではなくて被害者に対して事情聴取をする場合に、捜査上伏せなければならないことはもちろん別でありますが、ある程度の事件の説明一般論としてはやっぱりされるわけでしょう。
  196. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 被害者から事情聴取します場合には、犯罪の被害を受けた立場、これは犯罪捜査に大変貴重でございますから、そうした被害状況のすべてについて捜査に協力していただくという立場から事情を伺うわけでございます。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 私は、日本政府は金大中さんに対して単に説明するだけでなくて、さっき陳謝する必要はないと言いましたが、別に陳謝しろなんという意味ではなくて、釈明する義務というのは外務省は私は当然あるんじゃないかと思うのです。というのは、金大中氏にもいわゆる外交保護権ですね、これは適用されていましたよね。つまり日本政府は金氏を保護、扶助する義務があったわけでしょう。
  198. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 外交保護権という言葉はいささか本件に関しまして必ずしも正確ではないと思いますけれども、一般の外国人が日本におきまして与えられると同様な保護が当然与えられるということは期待されていたと思います。それで金大中氏の場合におきましては、その保護は通常の保護を与えられていたというふうに考えております。
  199. 和田静夫

    和田静夫君 いや、しかし、結果的には主権が侵された形でああいうことになったんですが、通常の保護が与えられていた——通常の保護、扶助が与えられていたならばああいうことになるぬのじゃないですか。いわゆる必要な保護、扶助を与えられなかった、何者かによって拉致された。つまり日本政府は、言葉の使い方は悪いですが、外交保護権を行使できなかった。これは当然韓国政府と本人に対して釈明の義務を持つ、こういうことになるんじゃないですかね。そうでなかったら、われわれはたとえばパスポートで〇〇は「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、」云々と何のために書いてあるんだろう。
  200. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 金大中氏が日本におりました当時、金大中氏の身辺保護につきまして一般の外国人に払われるべきと同様な意味におきまして、相当な義務と責任は果たされなかったというふうに考えることはできないと思います。
  201. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、何かちゃんと特別にあそこであのときやっていらっしゃったんですか。私も論議したことがありますからあれですが、どういうことですか、いま言われることは。一般よりも非常にちゃんとしっかりやりましたと。そうすると、ああいう事態が起こったのは、しっかりやっていなかった警察の方が悪いから起こっちゃったんだと、そんなこと。
  202. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま先生のおっしゃったような意味ではございませんで、通常の外国人に対して日本政府が身辺保護につきまして与える相当な義務というものは果たしておったということでございます。
  203. 和田静夫

    和田静夫君 もう時間もなくなりましたから具体的に聞かなきゃわかりませんが、警察はこの問題をどうとらえていますか、いまの質問、同じことですが。
  204. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 一般論で申し上げれば、ある人が犯罪の被害に遭ったから、その被害に遭わないように事前にいろいろな注意をすべきであったということにはならないと思うわけでございます。具体的なケースで金氏の場合申し上げますと、警察が、金氏が当時来日してから銀座の第一ホテルに宿泊しているという情報を得ましたが、同ホテルに確認しましたところ、すでに立ち去っており所在が不明でありました。なお、金氏及びその周辺から金氏の身辺を保護するということの要請は具体的には当時なされていなかったわけでございます。
  205. 和田静夫

    和田静夫君 それから、外務省のさっきの答弁というのは、通常人以上にちゃんと保護しておったというのはよくわからないんだけれども、もう時間がありませんからあれですが、後で説明するならしてください。私は事件の真相を明らかにするように韓国政府に要求してくれという金氏の要請、これも筋が通ったものだと言わなきゃならぬと思うんですがね。警察は金東雲を犯人と断定した経過がございますね。また、劉永福さんでしたか、横浜領事館員の車が犯行に使われた、その容疑が濃かった。ところが、その捜査は暗礁に乗り上げてしまった。その理由というのは端的に言ったらどんなことでしょうね。
  206. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 金大中事件につきましては、ただいまお話がございましたように、金東雲——連行グループの犯人の一人を割り出しておりますし、連行するに使用した疑いのある車両も割り出しておるわけですが、その後現在も捜査を継続してはおりますが、何分年月も経過して捜査資料も乏しくなってきておることは事実でございます。ただ、この捜査がなかなか進展しないということにつきまして一番大きな原因は、私どもはこの事件が外国人がらみのいわば国際特殊事件であるということにあるのではないかと思っております。つまり被害者も、現場に居合わした参考人も、重要な関係者すべてが国内にいないわけでございます。こうした国際的な規模を持っているという点が、そういう事件の性質そのものがなかなか捜査の進展がないという現状に影響しているのではないかと考えております。
  207. 和田静夫

    和田静夫君 この捜査のネックが韓国政府の出方といいますか、姿勢にあったと受けとめられませんか。
  208. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 確かにいろいろな国際的な協力も求めておったわけでございますが、四十九年の八月十四日には韓国側において捜査を中止するという通知が来ております。そういうことにありますように、日本のわが国の警察の捜査に対する協力は得られていないという事実はございます。
  209. 和田静夫

    和田静夫君 一九七四年七月二十四日に公表されたいわゆる韓国政府の口上書ですね、警視庁は口上書の内容は遺憾である、そういうふうに記者会見されました。いかなる意味でこれは遺憾であったんでしょう。その辺、長官非常に詳しいんじゃないですか。
  210. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 当時、警視庁の当局がどういう発言をしたかは私も承知しておりませんが、ただいま申し上げましたように、警察としましては犯人の連行グループの一人金東雲を割り出しております。そういう捜査の状況からいたしますれば、捜査を中止したという韓国当局の判断というものは食い違うものがあるということは感じておるわけでございます。
  211. 和田静夫

    和田静夫君 大体四十九年の警察白書などにも、いま答弁の同趣旨のことがずっと述べられていますが、やっぱりこれ以上捜査を進めるに当たってはやっぱり韓国政府の協力なり、それから一面やろうとされている金大中氏の事情聴取なりが必要である、そういうことになるわけですね。これができなければ、警察の仕事は終わらないと、こういうふうに認識しておいてよろしいですか。
  212. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) ただいま金大中氏の事情聴取以外にも、既存の捜査資料を再検討するいろいろな補充捜査もございます。地道な捜査を続けておりますし、今後とも続けたいと考えております。
  213. 和田静夫

    和田静夫君 国家公安委員長、一言でいいんですが、いま論議をしてきましたが、金さんのアメリカでの一連の発言について当然重大な関心はお持ち。そこに新たないわゆる捜査上の局面の展開の可能性がある、こういうふうにお考えになっていましょうか。
  214. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 警察といたしましては、捜査は継続をしておるわけでございまして、被害者である金大中氏から事情聴取をしたいという気持ちには変わりないわけでございますけれども、しかし全体として政府がこのことをどう進めていくかという枠の中で、警察も従来から考えておる捜査を進めてぜひいきたいと、こういうことでございます。関係の省庁とも連絡を緊密にしながら、警察の所期の目的にひとつ進んでいきたいと、こう思っておるわけであります。
  215. 和田静夫

    和田静夫君 外務省ね、刑事事件の成り行きによっては政治的問題としても再度適正な処置をする、これは福田内閣総理大臣でしたか、明確に答弁されていますね。そういう政府の方針というのはいわゆる変わってない、いわゆる政治決着をつけ直すという方針というのは変わっていないわけですね。
  216. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 第一次及び第二次のいわゆる外交決着の方針は変わっておりません。
  217. 和田静夫

    和田静夫君 外務省ね、ちょっと私が非常に矛盾があると思っているのは、刑事事件の捜査の進展によっては、国家間の政治決着を見直す必要があることを一方では認めながら、片方では捜査を進めるために、政治決着について当事者に説明することを拒む、阻むというかね。これはだれが見てもそうですね。いわゆる捜査を進めるつもりは、外務省には警察に協力する姿勢がない——そんなことない。
  218. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま先生指摘の点で、金大中氏との接触を拒むという趣旨の御指摘がございましたけれども、先ほど御答弁申し上げましたとおり、現段階におきましては、捜査当局の御意向を受けまして米国政府に対しまして金大中氏から任意の事情聴取したいというまず第一歩の行動をとっておるわけでございますので、それから先のことにつきましては現段階で論評を差し控えさしていただきたいという趣旨でございまして、将来にわたりまして日本政府は金大中氏と一切交渉を持たないと、そういう意味ではございません。
  219. 和田静夫

    和田静夫君 実は、金大中氏事件があいまいな形で政治決着をしたことによって、KCIAあるいは最近はKNSPですか、国家安全企画部の捜査員がどうも大手を振って捜査活動を行っているのではないかと思われる節がいろいろ訴えの中にあります。その一例でありますが、在日韓国人の孫裕烱さんという事件がありまして、孫さんの事件の場合は、奥さんの上申書を私は持っていますが、この上申書によりますと、八一年四月、KCIA、これは恐らくKNSPなんだろうと思うんですが、——の人、黄という人物が大阪で証拠収集活動をしたとされています。また一九八一年五月一日付の国家安全企画部の押収調書によりますと、日本での捜査活動がなければ入手できないと思われるような押収した物件が記載されていると言われています。警察庁はこの事実というのは御存じなんでしょうか。
  220. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 外国の捜査機関がわが国の了解なくわが国内において捜査活動をしているという事実は承知しておりません。
  221. 和田静夫

    和田静夫君 ここに持っているのは孫さんの奥さんが大阪弁護士会と同弁護士会の人権擁護委員会あてに出した文書であります。この奥さんはもちろん日本でお生まれになった方であります。これによりますと、八一年四月三十日、KCIAの黄と名のる人物が孫さんの古いパスポートを押収したということになっています。もしこれが事実だとすれば、再び韓国の政府機関が日本の主権侵害を行っているということになるのではありませんか。新たな主権の侵害が行われているということにこの上申書を読めばなるんですがね、いかがでしょう。
  222. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) いま御質問でその上申書なるものを初めて伺うわけですが、その孫夫人が犯罪被害に遭っておれとすれば、被害届も出されている見合いだろうと思いますが、現在までその種の被害届が出されているとは聞いておりません。事実を把握しておりませんので何ともお答えのしようがございません。
  223. 和田静夫

    和田静夫君 外務省、お持ちですよね。
  224. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 入手しております。
  225. 和田静夫

    和田静夫君 外務省は入手されているんで、これはぜひ警察庁の方少しお調べになって、同じ政府部内のことですから。  一般に外国の捜査機関が日本の国内において捜査活動をする場合に、どういう手続が必要でしょうか。また、その場合に捜査はどのように行われますか。たとえば日本の捜査官が付き添うというようなことがあると思われるのですが、そういうことでしょうか。これは全く一般論です。
  226. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 一般論といたしまして、外国の捜査官がその公権力の行使の一環として任意の、たとえば事情聴取等の活動を行う場合におきましては、日本と申しますか、相手国政府の了解とそれから当人の同意を必要とするということでございます。
  227. 和田静夫

    和田静夫君 そういうような要請というのが韓国政府並びに韓国の捜査機関からなされたことはありましょうか、このことでは。
  228. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 私の記憶している範囲ではございません。
  229. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますといよいよもってこの事件というのは主権侵害の疑いが私は強いということになると思うんです。一九八一年五月一日付の押収調書では、この奥さんを通じて入手した古いパスポートのほかに、暗号表あるいは乱数表などを押収されたということになっているわけですがね。これはもちろん押収調書をごらんになっていないんでしょうからおわかりにならぬでしょうが、この押収の調書というのは、非常に奇妙なことに、五月一日付でありながら八一年五月孫氏の夫人が云々と、まことにつじつまの合わない文章になっているんですね。ともあれ私は警察庁、外務省に要求しますが、ぜひこの一連のもの、上申書、押収の調書、これらを何らかの方法で入手をされまして、この事実経過について調査をされることを要求をいたしたいと思いますが、いかがでしょう。
  230. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま先生が申されました公権力の行使という言葉でございますが、公権力の行使と申しますのは、一般的に申しまして、ある国家機関がその国の法令に定める権限に基づいて行う命令的、強制的ないし権力的な性格を持った職権行為である、職務行為であるというふうに了解しております。そのような行為がいやしくも日本国内で行われるということは大変に重大な問題でございまして、それが行われるということかどうかということについては、相当それが明白と申しますか——という事態でない限り、韓国のみならず諸外国に対しまして軽々に提起すべき問題ではないというのが国際通念でございます。したがいまして、その通念に従いまして、かつ本件の事案も検討さしていただきまして捜査当局と十分協議していきたいと思います。
  231. 和田静夫

    和田静夫君 委員長ね、私は最後に一言ですがね、しさいにずっとこの関係のものを検討してみましたよ。特に上申書は御本人の署名捺印もあるものでありますから、これは主権侵害の容疑が明確に浮かび上がってきています。よって、いまのような要請を私は申し上げたわけであります。日本の政府としては、今日までもしばしばこの在日韓国人政治犯の人権問題に重大な関心をお払いになってきたわけですから、この孫氏の事件というのは、これは私の見解で言えば主権侵害の疑いが非常に強いわけでありますから、どうぞその辺を注視をして、いま御答弁にあった趣旨に基づいて警察庁の側も対応していただきたい、そう思いますが、よろしいでしょうか。
  232. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) いまお尋ねの上申書をめぐる事実関係について、具体的な犯罪行為があるということであれば、その事実はきわめていきたいと、かように考えております。
  233. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ─────・─────    午後二時一分開会
  234. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題とし、自治省警察庁及び公営企業金融公庫決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  235. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 最近は特に警察官の犯罪といいましょうか、あるいは警察ぐるみとも言ってもいいような犯罪が続いておりますが、きょうは初めに警察庁長官並びに国家公安委員長である自治大臣に、最近の大阪府警の例の賭博機汚職事件を初め、最近続発いたしておりますこういう事件に対するお考えを、初め所信というような形で警察庁長官並びに国家公安委員長から承っておきたいと思います。
  236. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 大阪におきます警察官の不祥事案は、本来警察が取り締まるべき職責を有しておるわけでございますが、これに背き、国民の信頼を裏切るものでありまして、まことに残念でございます。過去に警察官の非行がありましても、たまたま一部の人間が、あるいは個人的に間違った行為をしたという場合が大部分でございますけれども、今回の場合はもうちょっと大ぜいの人間がある程度連携をとって犯したと、こういう意味で、これは重大な警察規律上の問題であると深刻に受けとめておる次第でございます。  これに対する対策といたしましては、今回これから初めてということではございませんが、警察における規律をしっかり維持するというのはわれわれの日ごろ平素から努めるべき重要な任務でございます。そういう意味で平素から努めておることでございますけれども、これを契機として一層真剣にこの問題に取り組み、規律を確立し、国民の信頼を回復したいと考えておるわけでございます。  具体的には、まず第一に、個々の警察職員が自分の職責、任務をしっかり腹に入れるということが第一でございます。第二に、上司、同僚等が部下、同僚に対して間違った行動に出ることのないように平素から厳しく指導する、あるいは温かく助言をするというようなことが大切だと思います。また、幹部は規律の重要性、警察職務の重大性を身をもって部下に示すということが大事でございます。最後に、なおかつ起こってくる警察官の非行については、厳しくこれを信賞必罰の精神でもって処理をするということであろうと思うわけでございまして、こういう趣旨を盛り込んだ通達を処分を行ったと同時に発出をして、全国警察がこれを実践するようにいたしておるところでございます。
  237. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) わが国の治安は諸外国に比べていいということを言われておりますが、これにはいろいろ原因というのか、理由があると思いますけれども、やはりその一つには、二十万以上のわが国の警察官が私は真剣に治安維持のために取り組んでいてくれるということが一つ大きな理由でもあろうと思います。そういうまじめに職務と取り組んでおる警察官の気持ちを思うと、私は今回の事件はまことに遺憾であると思います。規律ということは私は警察の組織としてはこれが生命だと思うんです。規律が緩んだら警察はこれは台なしであります。それだけに今回の事件は大きな一つの反省といたしまして、一層ただいまの長官の御答弁のように部内を引き締めて、国民の警察に対する信頼を回復し、日本の治安維持のために努力をしてもらいたいと、こういう気持ちでおるわけでございます。
  238. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、ただいま公安委員長並びに長官の方からお話ございましたように、大部分の警官は善良であって、またその治安維持の面からも世界的にりっぱな治安維持に努めていらっしゃると私は思います。しかし、今回の事件等を考えてみますと、先ほど長官おっしゃいましたように非常に大量の処分を出しました。一月二十日に発表されました処分の内容を見ますと百二十人にも及んでおりますね。それで、やっぱりこれ考えてみますと、一番の問題は、私は、先ほど規律という問題を大臣長官おっしゃいましたが、やっぱり業界との癒着という問題が非常に大きな問題になってきているわけであります。そういうふうな意味で非常に業界との癒着、これはやっぱりどうしても明確にし、きちっと断ち切っていかなければいけない問題であろうと思います。そういうふうな意味で、私はきょうは多少あれしまして、最近問題になっております例のパチスロというやつについて、これはちょっと具体的に幾つかお伺いしてみたいと思います。  特に最近、昨日もこの業界の顧問をやっていたということで官房長官が責められたわけでございますが、その問題はさておきまして、きょうはそれに関連をいたしまして幾つかお伺いしてみたいと思います。特に最近九州や関西方面を初め、東京まで最近このパチンコ型スロットマシンというのが流行してきているようであります。私が聞いているところでは、このパチスロは客が自由に機械を操作して楽しむというものではなく、賭博性が非常に高いということで——この新聞報道等による資料しか私の手元にはないわけでございますが、そういうふうないろんな資料によりますと、千葉、岐阜、福井、和歌山、滋賀の五つの県警では、いわゆるパチンコ店への設置申請を却下されたように報道されております。また秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、それから富山、以上の七つの県では警察が申請を留保したり、保留したりして営業は行われていないように聞いております。こういうふうなパチスロに対しまして、いわゆる十二の県警が賭博性が高いということで慎重な態度をとっているようでありますが、この問題最近非常にいろいろなところで報道されているわけでございますが、警察庁はこの問題についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、初めにお伺いしておきたいと思います。
  239. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) お答え申し上げます。  いわゆるパチスロというものが賭博性が高いのではないかという点、さらに各県警によって取り扱いが違うのではないかという御指摘かと思いますので、まず、賭博性の観点から御説明をさしていただきたいと思います。いわゆるパチスロと申しますのは、風俗営業の遊技場の許可対象遊技機として都道府県公安委員会において許可となっております回胴式——これは胴が回ると書きますが、回胴式遊技機の中の一つのタイプを指しておる言葉でございます。この回胴式遊技機とは、外見上ゲームセンターなどに設置をしてありますスロットマシンと類似をしておる形をしておりますものから、スロットマシンの機械自体はこれは偶然性だけに頼るものであるのに対しまして、この許可対象にしております回胴式遊技機と申しますのは、パチンコの遊技機と同じようにある程度の技術介入が得られる構造機能、すなわち著しく射幸心をそそるおそれのないようなものを許可をしておるわけでございます。その機種の中で、パチンコ遊技機と形状が非常に似ておるものを業者間ではパチンコ型スロットマシン、略してパチスロと、こう呼んでおるものでありまして、正式な名前ではございません。この技術介入性の余地を高からしめるために、許可に当たりましては著しく射幸心をそそるおそれのないようにドラムが回転をする速度であるとか、一定の要件をつけて承認をしておるものでございます。  なお、これは昨年の十月末現在では、いわゆるパチスロ型と申します回胴式の遊技機は、三十三都道府県の遊技場に約五万台設置をされております。幾つかの県で不許可にしておるではないかということにつきましてお答えを申し上げますが、現在未設置の県は十三県でございますが、いずれも申請を却下したという実態ではございませんで、申請がないという状態でございます。  詳しく申し上げますと、事前の相談を受けた段階でその機種自体が技術介入性の全くないようなもの、あるいは著しく射幸心の高い、同じパチスロの中でもそういったふぐあいな機種であったというようなことでそれを指摘をしたところ、まだ正規の許可申請がないものが一県ございます。それから事前の相談がありましたけれども、正規の許可申請がまだないものが三県ございます。それから、事前の相談の段階で一定の機種について法に適合するというふうに認めておりましたが、その後、正規の許可申請がないというところが五県、それから事前の相談がありまして、現在審査中のところが三県、それから事前の相談も全くないところが一県、こういうような状況でございます。  以上でございます。
  240. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまのお話ですと、いわゆる十月未現在で三十三府県、五万台が申請があって、そして稼働しているということですね。いまあなたは十三県が申請がないということで、私が申し上げました千葉、岐阜、福井、和歌山、滋賀、この五県警の中で和歌山はどうなっていますか。
  241. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) これは一番最初に申し上げました事前相談の段階で、相談のありました機種がパチスロの中でも技術介入性の少ないものでありまして、不適合機種であるということで、その旨を指摘をいたしましたところ、その後、正規の許可申請のない県でございます。
  242. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、要するに私の新聞による資料でございますけれども、やっぱり賭博機と紛らわしいパチスロを認可すべきではないといって申請を却下した県に当たるわけですね。これはそういうことですか。
  243. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 申請を却下したわけではございません。いわゆるパチスロと言われておる機種の中でも、先ほど申し上げましたように、許可をするに当たりましては、技術介入性の余地等一定の要件に合致したもののみを許可をしておりますので、和歌山県の場合は事前に御相談があった際に、それは公安委員会が他県で許可をしておるような技術介入性の余地のあるものではなかったということで、事前の相談の段階で申し上げた、その後正規の申請がない、したがって申請を却下したという事案ではございません。
  244. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、三十三府県のいわゆる認可した遊技機ですね、回胴式遊技機、いわゆる著しく射幸心をあおらないものですね、あなたがさっきおっしゃった分ですが、これは、要するに警察の認可したとおりのものが現在は設置されて実際運営されているわけですか。
  245. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) この機械は、最近は電子部品を使用しておる機種が多うございまして、そのため、昨年の秋でございましたが、電子部品を公安委員会が許可をした後に勝手に交換をいたしまして、メダルの出る、入賞の組み合わせの確率などを自由に調整をできる機種に変えて営業をしておるという実態が見られました。これは著しく射幸心をそそるということで、この違法機種の除去につきまして全国の警察にも指示をいたしました。また、取り締まり措置も指示をしたわけでございます。  対象になりました機種は約十二機種、約四万台でございました。これは昨年中に除去等の措置を講ずることとなっておりますので、現在この種の機種はなくなっておるものと考えております。
  246. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、この新聞報道にあるこういうふうな報道の仕方は間違いであるということですか。結局、警察としてはいまこの問題になっているこういうふうな機種は、いわゆるすべてについて認可する方針であるということですな、結局は。そういうことですか。
  247. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 一定の要件に合致することにつきましては認可をするということでございます。
  248. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その一定の要件というのはどういうふうな要件ですか。もうちょっとわかりやすく、これはまあ一遍、口で言ってもわからないかもわかりませんが、一遍口で言っていただいて、後で資料としていただきたいと思います。一遍説明してみてください。
  249. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) なかなか口で御説明するのはむずかしいわけでございますけれども、回胴式のこうした遊技機は、真ん中にドラムが三本ありましてそれが回転をするわけであります。そのドラムの一分間の回転速度、あるいは回転を持続をする時間というものを、現在八十回転以下、一分間以上持続をするということが一つ。それから、そのドラムをお客さんが、遊技をする人が停止ボタンを押して停止をさせるわけでありますが、その停止をする停止の仕方が直ちに停止をする構造であること。それから、ドラムにはいろいろと数字とか絵柄が表示をされておりますが、その数でありますとか、大きさあるいは色彩といったものについて条件をつけております。それから、入賞をして組み合わせ——つまり当たりということでメダルが出てまいりますが、その組み合わせの確立であるとか、出玉率といったものを自由に調整をしたりしないように、つまり、後で変造できないような構造であるというようなこと。それから、一回の遊技で入賞得点の限度、まあパチンコにたとえますと、たくさん玉が出てくるというその玉の出る限度、メダルの出る限度を十五枚にするといったような基準でございます。
  250. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 限度は何ぼですって。
  251. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 十五枚でございます。
  252. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまあなたがおっしゃった一分間に八十回転以上とか、一分間以上は回転を続けているとか、停止が直ちにするとか、当たりが自由に調整できないようにするとか、限度が十五枚以上にならないようにするとか、これは全国の都道府県の警察にはもうきちっと徹底していますか。
  253. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 同一の要件でやるように指導をしております。
  254. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは私が聞いたところによりますと、実際はこれこういうふうになってないらしいですな、全部。あなたの言うこれ一つでも欠格があったらだめなんですな。一つぐらいいいんですか、どうなんですか。
  255. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) これは、許可をする場合に、こういった要件に合うかどうかということでその機種について許可をしておりますので、先ほども申し上げましたように、第一線で昨年の秋そういった変造をしておる機種が発見をされて、取り締まりあるいは回収方を措置をしたところであります。したがって、この要件自体については総合的に判断をしておるわけでございます。
  256. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は、これは昨年の十一月に、静岡の県警が県下で賄博性の高いものに改造された機械が大量に出回っているということで、これを、新機種の許可を認めない方針を打ち出しているようでありますが、これはそういう問題と絡んで非常に問題だと思うんですが、風俗営業等取締法第一条の、いまあなたがおっしゃった回胴式遊技機というのは第一条の第七号に相当するわけでございますか。
  257. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) そのとおりであります。
  258. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、そこのところはもうそれで一応きょうは、私は現実にこのパチスロというのはどんなものか具体的に見たことがないんです。したがって、これ自分で質問しておりましても実感がわきませんので、近々一遍見学に行ってこようとは思ってますが、その上でもう一回これはがっちり質問さしていただきたいと思いますし、非常に問題が多いようであります。しかも、警察としてはこれだけの問題のあるものでもまだ全部認可してない都道府県は私はその十三の、私が先ほど申し上げましたのは十二の都道府県ですが、それなりの良識があって却下なりなんなりしておるんだろうと思っておりましたら、あなたの説明を聞いておりますとそうじゃなくて、いわゆる違法なものだから認可しなかったんであって、いわゆる三十三の都道府県と同じようなものが申請あれば認可をすると、そういうふうなお考えのようですが、しかし問題があることにはこれ間違いないと私は思うんですけれども、そういう点についてはどうお考えなんですか。
  259. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) この機種はどうも外国で賭博に使用をされておりますスロットマシンと非常に類似をしておるために、賭博機ではないかという誤解があるように思っておりますが、先ほど申し上げましたように許可に当たりましては換金をして、つまりお金にかえて賭博行為を行わないようにすることは当然でありますが、機械自体についても著しく射幸心をそそるおそれのないように要件を定めて許可をしておるところであります。したがいまして、未設置の県について積極的に設置を認めてやれというような指導をするつもりはございません。それはそれぞれの公安委員会が判断をするわけでございます。公安委員会が判断をするに当たっては、こういう基準でということを示しておるにすぎないわけでございます。しかし、先ほどお答え申し上げたように、公安委員会がせっかく要件に合うものということで許可をいたしましても、許可後に改造をされる、変造をされるというような事態が昨年秋発見をいたしたわけでございます。今後ともそういった違法な遊技機が設置されないように一層強力な取り締まりを実施する考えであります。
  260. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あなたのおっしゃっているそれからいきますと、実際は違法な遊技機が相当出回っているというんですね。先ほどあなたは一回で限度十五枚とおっしゃいましたけれども、実際はもう十五枚なんというものじゃないと。いわゆるあなたがおっしゃった、先ほど当たりというふうな、これが出てまいりますと、実際にはもう千枚以上が出るようになっておると、そういうふうな話を聞いておるわけです。そういうような機械が多いと言うんですよ。だから、こういうふうなのがはやっておるんだというんですよ。あなたが言うような、いわゆる回転も八十回転以上で一分間以上回っていて、それで直ちに停止して、そして当たりが自由調整できないような装置になっていて、一回で十五枚以上出ないと、そんなんだったらそれは確かにいまの流行みたいにならないと私は思うんですよね。現在これは、こんなにブームになってきたのはやっぱり違法の——大阪の賭博事件じゃございませんけれども、そういうふうな傾向があるから流行しているんだと私は思うんですね。そこら辺のところはやっぱりきちっとしていただきたいと私は思います。  次に通産省にお伺いいたしますが、日本電動式遊技機工業協同組合、これは先般から問題になっている協同組合でございますが、この協同組合の設立目的、それから役職員名、それからどういう団体あるいはどういう業者が加盟しているのか、その概要について一遍説明していただきたいと思います。
  261. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) お尋ねの日本電動式遊技機工業協同組合の目的につきましては、この組合の定款第一条に目的が定めてございます。これによりますと、当該組合は、組合員の相互扶助の精神に基づき、組合員のために必要な共同事業を行い、もって組合員の自主的な経済活動を促進し、かつ、その経済的地位の向上を図ることを目的としております。  次に事業でございますけれども、事業につきましては定款の第七条に定めてございます。これはたくさんございますけれど、典型的なものを申し上げますと、組合員の取り扱う電動式遊技機の部品、附属品及び附帯設備の共同購買及びあっせん、あるいは組合員の取り扱う電動式遊技機の共同検査、共同宣伝等の事業、あるいは組合員の事業に関する経営、技術の改善向上あるいは組合事業に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供等々が事業として定めてございます。  組合員数は現在二十社でございます。  役員は、理事長以下理事が八名、幹事が一名となっております。理事のうち員外者、つまりこの組合員でない方が常勤二名でございます。それから職員は事務局長以下八名というふうに承知をしております。——名前も必要でございますか。
  262. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうぞ。
  263. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) 組合員は二十社にわたりますので氏名は省略をさせていただきます。  役員は、理事長が吉武辰雄氏、副理事長が二人おられまして、角野博光氏、中山利迪氏、専務理事が柿内正憲氏、それ以外の平理事が四名でございますけれど、山脇道令氏、古田収二氏、武田勇吉氏、野口三次氏、監事が浜野準一氏でございます。職員は事務局長以下八名でございますけれど、主な職員ということで、事務局長が田所修氏、事務局次長が伊藤正泰氏、技術部長が石川郁夫氏、大阪事務所長が宮川崎治氏ということでございます。
  264. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この組合員数が全部で二十社らしいですから、決算報告はこれは通産省に出ておりますね。
  265. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) 本協同組合は東京通産局で認可をしておりますので、東京通産局の方に提出されております。
  266. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その決算書によりますと、いわゆるいま出ておりますのは昭和五十六年度ですか、五十七年度が出ておりますか、どちらが出ていますか。
  267. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) 五十六年度でございます。
  268. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 五十六年度の全収入はお幾らですか。
  269. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) 五十六年度は五十六年の四月一日から五十七年三月三十一日を期間としておりますけれど、この期間におきます収益の合計、損益計算書上の収益の合計は八千四百六十四万四千二百五十九円となっております。
  270. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、役職員のいわゆる給与ですね、これはどういうふうになっていますか。
  271. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) 損益計算書上の費用の部に計上してございますけれど、その中に、一般管理費の中に役員報酬として千六百万円、それから給料手当、これは職員の給料手当等に当たるものでございますけれど、三千二百五十五万九千百七十九円と計上してございます。
  272. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、これはわかるかどうかわわかりませんが、理事長並びに専務理事の給料はお幾らですか。
  273. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) 役員報酬千六百万円が理事長及び専務理事の常勤役員としてのお二人の給与に充てられているものと思います。
  274. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この千六百万円の中身は、理事長と専務理事の給料と見ていいわけですか。そのほかの理事の皆さんの分はどうです。
  275. 熊野英昭

    説明員(熊野英昭君) お二人のものだと承知をしております。
  276. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それで次に、これは今度は警察庁の方にお伺いをいたしますが、理事長と専務理事で年間の給与が千六百万円だそうであります。大変な高給をもらっているわけでございますが、この理事長の新聞社のインタビューが新聞に報道されました。これはちょっと私は、これは長官も聞いてもらいたいわけですございますが、警察庁自身がこういうふうに日ごろから考えていらっしゃるわけでしょう。——わけかどうかわかりませんが、この理事長さんは、前高知県警の本部長さん、警視庁の防犯部長さんであったと、こういうふうに報道されておりますが、これは事実でございますか。
  277. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 事実でございます。
  278. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 警視庁の中でも最高の地位にあった人のこの新聞社のインタビューでございますが、これによりますと、「この業界は警察から五十二年に許可を受けているが、いつも締めつけておかないと、枠を逸脱する恐れがあり、組合の理事長にすわってくれと頼まれた。大衆娯楽を健全に発達させるという意味で引き受けた。ほかの協同組合とは違って風俗営業法の枠をはめられており、これを逸脱しては組合の存立にかかわる。私の役割は警察の意向を徹底させることだ」と、こういうふうに理事長に就任した理由をお答えになっておりますが、これは、こういうような趣旨のことを聞いてますか。
  279. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 直接これに関連をして、当人から直接的に聞いたということではございませんが、業界の健全指導ということを自分は一つの仕事として仕事をやっておるということを聞いたことがございます。
  280. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはそれでいいと思っていらっしゃるわけですか。
  281. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) この組合は先ほど説明ございましたように、中小企業等協同組合法に基づく協同結合として設置をされたものでありますし、組合員のための必要な共同事業を行うと、そのことによって組合員の自主的な経済活動を促進をすると、あるいは経済的な地位の向上を図るということが定款にも書いてあります。また定款によりますと、組合員の資格は風俗営業の許可対象遊技機となっております電動式遊技機の製造を行う事業者ということであるようであります。また設立趣意書を拝見いたしましたところ、やはりそこにも、先ほど理事長の談話ということで御紹介のあったと同じような趣旨で、組合員に対し適法な遊技機が製造されるよう健全指導を行っておるというようなことの趣旨が書いてあるということを聞いております。したがいまして、このような組合が健全指導を目的としている限り、警察の行う行政指導に活用することができるわけでありますし、その組合の役員に警察のOBが就任しておるということ自体、組合員に対する指導の一層の促進を期待をしておるところでございます。
  282. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはいまあなたは何げなくおっしゃっているかもしりませんが、あなたのお考えとこの吉武さんのお考えは全く一緒ですな。結局、長官考えてもらいたんです、じっくり。これはやっぱり非常に大きな問題だと私は思うんですよ。なぜ問題かといいますと、現実の問題として、この五十七年の十一月にも静岡県警が県下で、賭博性の高いものということで、改造された機械が多数出回っているということで、いわゆる新機種の変更、許可更新を認めない方針を打ち出したのを初め、現実に先ほどあなた、和歌山県警に申請があって、それは違う機械だということで申請を受け付けなかったわけですね。現実にそういう申請に来た人たちまで——いわゆるまじめな人たちでしょう、きっと。警察に持っていって、これはどうでしょうかつて聞いてるわけですな。そこまでその機械は出回ってきてる。しかも、そういう機械が、こういう業界を指導するに当たって、その許認可権を握ってるいわゆるもとの警察の官僚、最高幹部がそういうところへいくということ自体、非常に大きな問題があるんじゃないか。  もう一つは、これは要するに、しかも新聞報道しかわかりませんが、先般私は通産省の皆さんに確認をしたんですが、新聞報道のとおり、理事長、専務理事を初め、事務職の職員の中にもたくさん警察官僚の方がいらっしゃった、これは事実であります。そうしますと、結局こういうふうな風俗営業の、先ほどあなたに確認をいたしました風俗営業、第一条には、「次の各号の一に該当する営業をいう。」ということで、第一号から第七号まであるわけですな。先ほど私言いました、今回のこの機械は第七号に当たるわけであります。そうしますと、第一号はキャバレーとかそのほかでありますし、第二号は待合とか料理店でありますし、第三号はナイトクラブ、第四号はダンスホール、第五号が喫茶店、まあそういうふうにずっとこうあるわけですね。そういうふうなところは全部これ、いわゆる非常にむずかしい業界である、違反するおそれのある業界である、だから警察の意向を徹底させるためにこの理事長は就職したというんですな、これ。ということは、逆に言えば、こういう業界に対する指導というのは警察のOBがそういうところへいかなければ指導できないのか——そういうことになってきますね。もっと逆に言うと、あなた方の天下り先はそういうところばつかりか。ばっかりと言うわけにいかないかもしりませんが、そういうことを是認することになりますね。そしてまた、この大阪で起きたいわゆるこの賭博、いわゆる警官の皆さん方の、先ほど私は一番初めに申し上げましたが、賭博ゲーム機汚職事件と同じような根っこがそこにあるんじゃないか。そういうふうな指導を、そういう人たちが天下っていくと、天下っていく根拠は、本当は大目に見てもらおう、ちょっとぐらい問題があっても見逃してもらおうという、このあれがあるっていうのは、もうありありとしてるじゃないですか。そういうふうな意味では、この問題に対する取り組みというのがまだまだ私は甘過ぎると。同じ仲間だから、もう少し何とかしたい、何とか大目に見たいというあなた方の考え方というのが、すべて今回のこのいわゆるパチスロの問題の中にも出てきてるんじゃないですか。  私は一番初めにこの問題について警察庁長官と自治大臣にお伺いしました。そのときに警察庁長官もおっしゃいました、いわゆる警察官の個々の任務をきちっと徹底させるということ、あるいは同僚や部下がそういうような道に入ろうとしたときにきちっと助言をすること、あるいはその幹部、特にこの幹部については規律が生命だとおっしゃった。そういうふうな点からいきますと、これは規律が生命どころか、いわゆる悪の温床になる可能性すらあるんじゃないですか。そういうふうな意味では、こんなことをいいかげんに見逃していたらもうどうしようもないですよ。私はね、必ずこの問題はほうっておくとだんだん根っこは広がっていく、だんだん問題が大きくなっていく、そして気がついたときにはもうどうしようもなくなってしまってる。この問題について現職の警官が全くかかわっていないなんということが言えますか、いま。そういうふうなことすら考えられるわけです。こういうことを憶測で申し上げては申しわけありませんが、非常に私は大きな問題をはらんでおる。特に大阪でこの賭博機汚職事件というのがあった後でありますので、特に全国的な広がりを見せてまいりましたこの問題については、特に私は警察庁長官並びに自治大臣、これ深刻に受けとめてこの問題に取り組んでいただきたい、そのことを申し上げておきたいと思いますし、長官並びに国家公安委員長としてのこの問題についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  283. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 警察といたしましては、違法行為があればこれは断固取り締まらなきゃならない、こういう立場でございます。その場合に、ただいまお話しのこの協同組合は業者が自主的につくった組合であり、しかもまたその組合が、先ほどお話ありました定款にもありますように、その企業が健全に成長するということを目標としておるものというように理解するわけでありまして、適法な活動をするということで許可になったと、こう思うわけであります。その業界がどういう幹部を選べばその業界が健全に適法に発展していくかということで選んだのが警察のOBであったと、こういうことでありまして、私たちとしては、警察のOBがそこに就職、就任しようがしまいが、だれであっても違法なことは違法として取り締まるわけでありまして、警察のOBが、先ほどお話がありましたように、また設立趣意書にもございますように、健全な企業の発展を趣旨として設立したということでございますので、その趣旨に沿うように業界が発展するように私たちとしては希望いたしますし、違法があれば取り締まると、また違法を起こさないように行政指導も十分やっていきたいと、こういうふうに考える次第でございます。
  284. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 協同組合というものは、先ほどの通産省からの説明のように、私は中小企業が共同して業界の改善のためにやるというそういう施策の一環でありますから、協同組合は私はいいものであろうと思うんです。そこで、いまのお話のような役員に警察関係の者がなっておるということでございます。これは警察官もやはり退職後どこかに就職をしなきゃならないというそういうことも一つはあるわけであります。これ天下りということでございますけれども、一つのそういう職業を選択される中でたまたまこういうことに私はなったんではないかと思うんです。しかし、それにいたしましても、ただいまの長官の答弁申し上げましたように、警察が厳正な執行をしなければならないということに支障が起こるようなことはこれは困るということでありまして、そういう立場で警察側は今後に処していきたいものだと、こう思うわけであります。
  285. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、長官、あなたの答弁はどうも納得できないんですよ。何でかと言いますと、この組合の定款とか、それは組合そのものについてはいま大臣もおっしゃいましたが、私はそのとおりだと思います。しかしながら、現実の問題として、静岡県警で摘発したこの遊技機にしましても、この組合員二十社の中から違反のいわゆる遊技機をつくっているところも現実に出ておるわけですな、現実に。そういうふうな実情とかあるいはいろんな問題が起きている根底を見てみますと、やっぱり国民の目から見ればあるいはこういう遊技機、悪質な賭博性の非常に高い、あるいは射幸心を非常にあおる、いわゆるパチスロによって生活を破壊されたり苦しんでいる人も現実にいるわけですな。そちらの人たちの立場というものもやっぱりもう少し考えてもらいたいと思うし、またもう一つは、私たちの目から見ても、これだけの警察の官僚が天下って——天下ってといっても天下りでないかもしれませんがね、就職して、そしてその組合の発展をやるということ、組合そのものの発展はいいでしょう。しかしながら、疑惑の目で見られるということはこれはやむを得ないですな。そういう点があるというのも事実ですよ、現実の問題としてね。したがって、業界あるいは業者との癒着という問題はもう少し明確にする必要があると、そういう疑惑を持たれるようなことはすべきではないと、そこら辺のところは明確にする必要があると私は思うのですけれどもね。私は何も全部悪い、どうのこうのというわけではありませんけれども、やはりみんなが見て、どこから考えてもなるほどというふうな解決の方法でないと、それはみんな納得しないと私は思うんですよ。もう一遍、もう一回長官の御答弁をいただいておきたいと思います。
  286. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 警察といたしましては、違法行為があれば取り締まってその行為を是正するということでございますが、その前段といたしまして、違法行為のないように行政指導も及ぶ限りこれに努める、こういうことでございますので、そういう趣旨から警察の姿勢あるいは取り締まりに疑惑を生じないように努めてまいるという考え方で対処してまいりたいと思います。
  287. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 警察庁結構です。  次に、先般の熊本県の知事選の立候補者の妨害事件というのがありました。この問題についてお伺いをいたします。  これは、現実には非常に大変重要な問題であり、大変な事件だと私たちはこういうふうにとっております。したがって、この問題はこれはちょっとやそっと議論しても済まないぐらい大変な問題を含んでおりますので、きょう短い時間では決着つくかどうかわかりませんが、新聞やいろんなものから取材して得たものが私の手元にありますが、まず当局の方からいままでのいきさつについて御説明いただきましょうか。
  288. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 熊本県知事選挙の立候補届のときの概略について、ごくかいつまんで御説明を申し上げたいと思います。  ただ、最初に申し上げたいんでございますが、このことについては関係者の間にいろんな意見がございまして、ことに事実関係について意見が一致していない部分がございます。私の立場としては、熊本県の選挙管理委員会からの一応の報告を受けていますので、その線に従ってお話をしてみたいと思います。  御承知のとおり、一月の十三日の午後五時が立候補の締め切りでございました。その日の四時五十六分ごろだったというのでございますけれども、地方課の入り口から中原さんとおっしゃる方が駆け込むようにして入っていらっしゃって、そして選挙長のもとに駆け寄られた。選挙管理委員会の方としては、もう立候補も締め切り間近でございましたので、入口から選挙長のところまで真っすぐ見通せるようにして、その間には人が入らないように配慮をしておいた。ところが、中原さんが選挙長のところに茶色い封筒を持って近づいてこられたわけでありますけれども、それを選挙長に提出する前に何人かの方によって抱きとめられて、そして御自身がその封筒を持ったままで地方課の外へ連れ出された。この間二十秒程度であって、選挙管理委員会の方は全く予想のされない、実力で阻止されるなどという全く予想されない事態が起こったために、いわばあれよあれよという間であって、それに対しての対処ができなかった。外へ出られてから中原さんは廊下で、それからその後隣の管財課に入るといったようないきさつがあったのですけれども、その後もう一度地方課においでになった。地方課においでになったときはもう四時五十九分ごろになっておった。そして書記長つまり地方課長ですが、の横にこられて届け出書類は届きましたねと、こういうお話があった。書記長は届いておりませんという話をした。そうこうしているうちに五時のチャイムが鳴って、中原氏はこれは選挙妨害であると、こうおっしゃって、五時二分ごろ、これから記者会見をするからと言って記者会見に臨まれたと、こういうことでございます。  選挙管理委員会の方の話では、中原さんがおいでになる前に中原さんを実力で阻止するというようなことが推察されるような徴候みたいなものは全然実はなかった。また、中原さんを抱きとめられた方たちも中原さんを追って後から入ってきた方たちであって、まあ確かに地方課の中に関係の役員の方が一人おられたけれども、この方は七十歳ぐらいの方でもあるし、社会的身分のある方でもあるし、その方が地方課長と話しておったことはあるけれども、それを通じてもそういった阻止が予想できるような状態ではなく、したがって、これに対処できなかった。こういう説明をしております。
  289. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、これは非常にもう大変な問題だと思うんですよ、これはね。  そこで、事実関係が幾つかありますし、いろんな問題点幾つかありますが、幾つか確認をしておきたいと思います。質問の前提として確認をしておきたいと思います。  一つは、熊本地方法務局に知事選の供託金百万円が午後三時ごろ納入されたと聞いておりますが、これは事実ですね。
  290. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) このことは直接は実は存じません。といいますのは、その供託証明書みたいなものが選挙管理委員会に提出されたわけではありませんので。ただ、経由して聞いている話では、供託はあったというふうに聞いております。
  291. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 僕はそんな無責任なことはないと思うんですよ。自治省が、これだけの重大事件であって、しかも責任ある人がやっぱり現地へ行って、具体的に事実を調べてくるべきじゃないですか。  それじゃ、この選管届け出するとき、いつも事前審査というのをやりますね。この事前審査を、熊本県庁の選管の井崎孝徳主任書記に届け出書類を点検してもらう。これは午後三時半にやってもらったって聞いてますが、これは事実ですか。
  292. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 御説明が長くなると思って省略しましたけれども、その日三時過ぎに庁内から井崎書記が呼ばれまして、出かけたところ、庁内のその部屋に中原氏がおりまして、そこで関係書類を見せて、これで記載事項は正しいかということを言ったそうであります。井崎氏がその相談に乗ったというのは事実でございます。  なお、事前審査というのは法律上の手続でございませんで、一種のサービス手続であることは御承知のとおりでございます。
  293. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 事前審査が法律上の手続でないということはちゃんとわかってます、そんなことは。わかっているけれども、実際問題として、選挙のときそういうことをやるじゃないですか。やっぱり締め切り時間がありますからね。また、受け付けのときに順番の問題やなんかありますから、恒例になっているじゃないですか。事前にこの書類が合っているかどうか、不足するものがないかどうか、そんなことは常識じゃないですか。したがって、この供託金があったかなかったかということなんかも、あなたは一番選挙の責任者じゃないですか。そんなことぐらいちゃんとわからないようでどうするんですか、本当に。すぐ調べなさい。すぐ調べてもらいなさい、すぐ、そんなこと。
  294. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) そのとき、井崎氏が相談を受けたときに供託証書がなかったとは言っておりませんから、あったと思います。
  295. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だから、そういうふうな、なかったとは言ってないからなんて、そんなばかなこと……。そういうふうなふざけた考え方はいけませんね。もっとやっぱりこういうような問題は本気で取り組んでもらいたい。したがって、私は幾つかこれから問題点を指摘します。  まず一番初めに、これは非常に大事な問題なんですが、立候補の自由という問題があります。これは私たちがいままで何回かこの参議院でも議論をしてまいりました。この立候補の自由なくして公正な選挙というのはあり得ないわけでしょう。これはわかりますね。したがって、この立候補の自由というのは、私たちがこの間の全国区制の議論の中でもずいぶんやりましたように、これは憲法第十五条第一項の保障する重要な基本的人権であるということは、これは最高裁の判決、昭和四十三年十二月四日にも示されているわけでありまして、今回のケースはまさにその立候補の自由というその自由の侵害、が、いわゆる公正な選挙を執行する立場にある選挙長の目の前で行われたということです。よそと違うんですよ。公正な選挙をやらなきゃならない選挙長の目の前でこういうことが行われたということ。しかも、それが締め切りの直前とはいえ、期限内に立候補しようという人が来ているわけです。しかも、うわさであれ何であれ、知っているわけです、みんな。そうでしょう。しかも、その人が暴力行為によってそれを阻止されたわけです。それを目の前で見ているわけですよ、あなた方は。それを選管の皆さんが傍観しているなんというのは一体どういうことなんですか。日本は法治国家でしょう。しかも、そういうふうな姿が新聞やテレビでぴしっととらえられているんですよ。しかもあなた方は、その中原氏が立候補の意思が明白であり、またその権利が妨害されたということは明確なんです。だから、これは私は選挙の公正が明らかに損なわれたことになる。したがって、選管としては妨害が起きた時点でそこで時間を停止するなり、あるいは当然受理をやり直すなり何なり、そういう何らかの処置をすべきなんです。しかし、法律的には時間停止の前例がなかったから、選管としてはとっさの判断ができなかった、そういうことも聞いているわけです。聞いているけれども、少なくとも締め切り直前に受理した後、書類審査のために締め切り時間が過ぎたときは有効としているという事例が現実にあるわけですね。あなたも知っているでしょう。したがって、その場合は締め切り時間を過ぎたとはしない、こういう先例もあるわけです。したがって、そういうふうな同様の考え方もできるわけです。何らかの処理ができるわけでしょう。そういうふうな意味では、私は完全にこの基本的人権がいわゆる剥奪されておる。そして選管は知らぬ顔をしておる。しかも、よそと違うんです。選挙長の目の前です。立候補しようとする人が堂々と届けに来て、そして届け出できるような体制にするのは選管の責任じゃないですか。それを、供託金も知らないとか、いま時分そんなこと言っているようじゃ、一体自治省何やっているんですか、本当に。  自治大臣、大問題ですよ、本当に。選挙部長が供託金の届け出もわからないような状態じゃどうしようもないじゃないですか。いま日本国憲法の中で一番大事なのは、基本的人権をどう守るかということでしょう。その基本的人権が、役所の外で破られたのと違うんです、役所の中で破られたんです。しかも、それをきちっと保護してやらなければならない選挙長の目の前です。しかも、それが日本全国テレビで映されている。この問題について一体どう考えているんですか、あなた。一遍答弁もらいたい。
  296. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) いまのお話のように、民主主義の中で選挙というのは一番大事なことでございます。その中で、いまのお話のように立候補の自由ということは私はきわめて重要な問題だと、そういう認識では全く同様でございます。  そこで、いまいろいろお話がございました。選管はやはり選管として独立の機関でありますから、その機関がそういう措置をされた。そこで、そういう措置をされた結果、この法治国家の中で救済の手段がいろいろあるかということなんです。そこで御本人もそういう救済の手段もお考えになって、候補者としての地位確認を求める仮処分申請が本人から熊本地裁に出され、それがまた却下をされて、続いて福岡高裁にさらに抗告をされたが、それも棄却され、さらに最高裁まで持ってこられ特別抗告をされましたが、それも却下されたということになっております。そういう手段では救済ができなかったということでございます。  私どもといたしましては、この事案はやはり立候補の自由を阻害したということについては、私はこれは問題点がある。そこで、警察側といたしましても、この問題は取り上げたわけでございまして、後ほど刑事局長から御説明をあるかと思います。その点は確かに自由を阻害した、その点については確たる私は措置をしなきゃならないと、こう思ったわけでございます。  そういうことでございまして、今後御本人がどういうふうにおやりになるか私も存じませんが、しかしいずれにせよ最後はやはり裁判に訴えられて、この選挙の無効の訴えであろうと思いますが、そういうことによってひとつ法治国としての救済手段に訴えられるということになるのではないかと私は思っておるわけでございます。  自治省といたしましては、選管でどういうことをやったかということについては、これはただいま選挙部長から御説明したようなことでございますが、将来への選挙事務の取り扱い上には、今後ともひとつ検討資料として勉強をさしていただきたいと、こうは思っております。
  297. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣、私は、大臣もそういうふうにおっしゃっておりますけれども、まず一つは、やっぱりこれはこの問題、重大な問題と心得て、裁判の決着いろいろありますね。しかしながら、いま選挙部長一番先におっしゃったように、事実関係が食い違っておると言うとるわけね。こんなことぐらいはやっぱり本省からきちっと責任者が行って、どういうことがあったんだと、これはやっぱりきちっと確認する必要がありますよね、まず第一として。そんなこともきちっとしなくて、私はこの問題は処理できない、そう思いますよ。この問題は後で答弁いただきましょう。  これ二番目の問題として、公選法八十六条は、立候補者は告示日とその翌日の二日間のうちに文書を選挙長に届け出ることを規定しているわけであります。選挙長もこの事件当日——これは読売新聞ですが、一月十五日に載っておりますが、事件当日、いわゆる選挙長も届け出の書類を受け付けるつもりで座っていたと、こう述べているわけですね。しかも選管内でその雰囲気はテレビ、新聞社、マスコミ関係者は事前にその不穏な空気を察知して、カメラを準備して決定的瞬間をおさめ報道しているわけ、現実の問題として。選管だけがああいうような事態を予測できなかったとして、その混乱の責任を回避できるかどうか、私はそれは責任は回避できないと思うんです。選管だけが少なくともそういうふうな状況を事前に察知できる状態にあった、選管がですよ。しかも選挙長はその届け出の書類を受け付けるつもりで待機していたわけですね。しかも選管内に受け付けるに十分な平静な状態をつくる管理上の責任という問題がありますね。当然私はそうだろうと思います。それだけのことはきちっとなきゃいかぬわけでしょう。  それと、これは時間の関係がありますからもう一ついきますが、それからこれは、私は先ほども一番初めに言いましたが、この届け出の中原氏は、事件当日、別の場所で届け出書類の事前審査、いわゆる事前審査です。あなたは供託書がなかったとは言ってなかったからあったんでしょうと言うんですから、ちゃんとそろってたわけです。書類はそろってたというのはあなたも認めているわけだ、間接的にね。それで、時間内に選挙長の机の上に封筒を提出したのは事実なんですよ。新聞報道によると置いたと言うんですよ、やっぱり。それをまあすぐ取っていったと言うけれども、置いた時点でもう選挙長は受け付けましたでええわけや。何が入っていたかわからないなんて、そんなばかなことはないでしょう。それは難癖でありまして、私はそれは裁判ではもう選管があれは受け付けませんでしたと決着つけた後だから、それは裁判ではもう全部却下をしましたけれども、少なくとも選挙長の机の上にその届け出の書類が入った封筒を本人が持ってきて、駆けつけてきているわけだから、どういう事態になったにしてもその書類がその選挙長の机の上へ投げ出された時点で、これはもう選挙長としてはそれを受け取るだけのあれはあったわけですよ。あなたは非常に何秒——二十秒か十五秒かと先ほど言いましたが、そのくらいの間でそういうふうな紛争があった。  また、選挙長の談話がこれはふるっているわけですよ。「封筒は見たが、中身が選挙に関する書類であったかどうか、手も触れていないし、わからない。受理した、と言えるわけがない」と、こういうふうに言うておるわけですよ。これ自体がこれは、選挙長は一体何のためにこんなことをしているのや、何のためにそこへ座っておるわけですか。こういうこと自体がやっぱり非常に無理があるんじゃないですか。そういうところは、本当にこれはもうけしからぬと私は思うんですよ。少なくともその日は立候補の書類を持ってくる日でしょう。ほかの書類を持ってくる日と違うわけや、これ。中に何が入っているかということはわかっているわけや。あなたも認めたように事前審査も済んでおるわけや。これは選挙長の不作為ですよ、不作為の行為によって選管の、いわゆる管理上の不手際によって、今回の事件が結局起きてしまった。それはもちろん後ではこれは選管は何ら手落ちがないとか、時間切れだから無効だと、こんなことを言っておりますが、こういうふうな言い分というのは全く私は一方的じゃないか、こう思いますが、以上の二点について御答弁いただきたい。
  298. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 最初のお話は、選挙長として執務場所をどの程度静ひつに保たなければならなかったかという問題であろうと思います。  私どもが聞いております限りでは、県の選挙管理委員会はもちろんもう一人立候補をする人が来るであろうという話は知っておったわけですし、また各報道機関もだれかが来るということ、中原さんが見えるだろうということを期待して集まっておられた、それはそのとおりでありますけれども、選挙管理委員会としてはまさか実力で抱き去られるというようなことは考えていなかった。それを予期しなかったために、入り口から選挙長のところまではたやすく近づけるようにしておいたけれども、それ以上の実力妨害を阻止するだけの手はずはとっておらなかったわけでございます。結局このことが選挙長が果たさなければならないだけの責任を果たさないことになったかどうか、そういう客観的な認識やら情勢から、これから先議論される部分だろうというように思っております。もちろん私どもといたしましても、そういうように抱き去られたということは大変残念に思っておる、これは恐らく県の選挙管理委員会としても同じだろうと思います。  それから第二に、提出があったのかなかったのかということをめぐる御議論がございましたけれども、これはまさにおっしゃるとおりでございまして、県の選挙管理委員会からは選挙長は受け取っていないというように選挙長は判断をした、受け取っていないのですという報告を受けましたけれども、これまたまさにこれから先その事実関係をめぐって争われる部分であろうというように思っております。そういうような事実関係の食い違いがありますので、どちらがどうだということを私どもの方の手前で申し上げるわけにもまいりません。先ほど大臣からお話がありましたように、こういったことは今後の手続を待って明らかにされていくことであろうというように思っております。  われわれとしては、そういったものを踏まえながら、今後の選挙の管理、執行に遺憾なきように努力をしてまいりたいというように思っているところでございます。
  299. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは現実の問題として選管の見方が甘かったわけですよ。あなたも認めているわけですよ、まさか拉致されるとは思ってなかった。まさかと思った事件が起きたわけですからね。だから、それは要するに選管の判断が甘かったわけですよ、それだけ情勢判断がちゃんとできなかったわけですね。そういうミスは完全にあるわけですよ、実際問題としてね。  そこで、公選法の中には中原さんのような場合のケースを選挙期間中に救済する方法が実際問題としてないようですね。また、民事訴訟法の仮処分申請に頼らざるを得ないということもあるわけですけれども、県選管委員長を相手に候補者としての地位確認を求める仮処分を申請したわけでありますけれども、先ほどお話しございましたように、熊本地裁は一月二十四日に、選挙の争いは公選法に基づき選挙終了後に選挙無効の訴えで争うべきものとして抗告を却下したと。福岡高裁は同月二十七日、最高裁も二月五日、地裁の判断を支持して抗告を却下した。確かに公選法には選挙の効力に関する異議の申し出、審査の申し立て、訴訟ができると明示されておりますけれども、いずれも選挙終了後の救済措置であります。裁判が長引き、四年後新たな選挙が始まれば、訴える利益なしと却下されるケースが実際問題として多いわけです。真の救済となり得る場合が非常に少ない、これが実情ですね。  そこで、これはもう皆さんも御存じだと思いますが、熊本大学の竹内さんという教授は、公職の地位確認のための仮処分を求めるというのは確かに前例がない、公選法にも規定がない、事例の性質上かような決定もやむを得ないだろうとしながらも、裁判所が余り形式的、法技術的な論理をもって立候補の自由という国民の権利の救済の道を閉ざすとすれば、国民にとって裁判とは全くむなしいものであり、裁判所が基本的人権の実効性を確保するための実践的意欲を欠いていると裁判所の批判をしている、裁判所の判断に不満を示しているわけであります。  今回のケースも、あくまでも異常なケースでありますけれども、裁判所が立候補届の有効性、県選管の対応の是非、法の不備等に関し新たな判断を示されてしかるべきであったと私は思います。実際問題として、それもなされていない以上、何らかの救済措置なりルールを確立しなきゃならない。そういうふうな意味で非常に重要な問題が後に残されたわけであります。  そこで、今度は警察庁にお伺いいたしますが、先ほど大臣もおっしゃっておりましたが、これは公選法二百二十五条の選挙の自由妨害罪で取り調べをやっていらっしゃると思いますが、この問題についてはどういうふうになっているのか、これをお伺いしたいと思うんです。
  300. 金澤昭雄

    政府委員金澤昭雄君) お答えをいたします。  この事案につきましては、事案発生と同時に、公職選挙法にあります自由妨害罪ということで、被疑者の取り調べなど、所要の捜査を行いまして、一月の二十二日に被疑者五名を熊本地検の方に送致をいたしております。
  301. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣、最後にこの問題で私終わりたいと思いますが、やっぱり自治省としましてもこんな事例は、これは前代未聞だと思うんですね、こういう事件が起きましたのは。そういうふうな意味で非常に大事な問題であると思います。当然熊本県の選管からの報告もあると私思います。しかしながら自治省としましても、選挙を所管する主管省としましても、この問題については、やっぱりしかるべき人が現地へ赴いて具体的なきちっと調査なり何なりをしておく必要があると思います。そういう点も含めて最後に大臣のこの問題についての御所信をお伺いして終わりたいと思います。
  302. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) この事案は確かに珍しい、めったに起こらない事案だと思うんです。選管の措置についてはいまいろいろお話がございましたが、将来の選管事務を取り扱う上で重要な参考資料と、こういうことで今後に処していきたいと、こう思っております。
  303. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 やっぱり大臣、現地へだれかやってもらいたいね。その点大臣もうちょっとしかと一遍答弁しておいていただきたい。
  304. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) これはいまお話しのように、裁判所が仮処分を最高裁まで上げたということもございます。御本人はたしかさらに裁判で争うんだということもおっしゃっておりますので、これはいずれ選管の方からも御報告があるだろうと思います。したがいまして、そういう処置でひとつ今後やらしていただきたいと思っております。
  305. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう終わりますけれども、大臣そんな、それは地元から報告を上げるなんという、それだけじゃ私はとても、そんな軽々しい問題じゃないんじゃないですか。これはやっぱり選挙部長が何にも知らないじゃしようがないじゃないですか。もうちょっとやっぱり本気で取り組んでいただきたいと思いますね。ただ報告が上がってそれで済むという問題じゃないでしょう。もう一回。
  306. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) しかし強制的にこれを今後直ちに救済するという道はもう閉ざされておると思うんですね。したがってやはり裁判所に御決定を願うということしか残っていないと、救済の道はそれだけではないかと、こう思うんです。われわれの方としては、将来の選挙管理事務上の重要な参考だと、こう考えるわけでございまして、そういう立場でまた議論はやらしていただきたいと思っております。
  307. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、違うね。大臣違うよ。選挙の参考なんてそんな、参考にするのはあたりまえですけれども、そんなもんじゃないでしょう。自治省のやっぱり責任というのがありますよ。これは裁判は裁判です。だけれども、事実関係調査というのは自治省としてちゃんとやるべきじゃないかということです。自治省としてこの問題について責任を全く感じてないような言い方は困りますよ。やっぱりこういう問題を起こしたということはこれは重大な問題だと。これからの参考にするなんというもんじゃないでしょう。日本国民が全部見ておる前で基本的人権が剥奪される、いわゆる侵害される現場を国民は見せつけられているわけですよ。立候補しようとする者ができなかったわけでしょう。その問題について自治大臣としてはこれはまことに申しわけないと、こんな不祥事を起こして本当にこれはどうしようもないと、何とか二度とこういうような事件が起きないようにするために、われわれとしては本気でこの問題を研究し、二度と起きないように本気で取り組まなくちゃいかぬと、そのくらいの決意がないとどうするんですか。それだけの反省は全く見られませんね。そのくらいの決意と反省がないといかぬのじゃないですか。もう一回。
  308. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 選挙管理事務というのは、これは御存じのように独立して選挙管理委員会がおやりになっておるわけでございます。われわれが自治省といえどもそれに立ち入る場合はないわけでございます。そこで、これはやはり熊本県選挙管理委員会というものが——委員会のメンバーは、これは知事が議会の承認を得て任命されておるものだと思いますが、そういう厳として熊本選挙管理委員会がおやりになったことである。しかしおっしゃるように結果的には立候補の自由が奪われたということもあるわけで、その奪った者については、これは警察処置はいま申し上げたように検察庁に立件して送ったと。これは私はまことに重大な問題だと思うから、だから検察としての処置は当然にやらなければならない。  選管事務の運営につきましては、これは全国の選管としても、私は非常に重大な関心をお話しのように持ったと思うんですよ。しかし持ちましたが、私どもの方が現地に乗り込んで何か選管の事務について、独立しておやりになっておるんでございますから、それをかれこれ言うような立場で現在調査をするということは、私は、いまの場合は御本人がまだ裁判所に訴えると、こうおっしゃっておられるわけでございますし、そういう重大な反省はいたしておりまするものの、自治省の立場としてはいまのようで、ひとつ報告を待って、将来選管事務の大きなひとつわれわれの反省の資料にしていきたいとこう思っておるわけでございます。
  309. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まず、京都市が一月の十八日、委員会審議抜きで強行可決した古都保存協力税条例、この問題について質問をいたします。  この税の内容についてはさまざまな意見があるところでありますが、それはさておくとして、御承知の今回の京都市の強引な条例可決にはマスコミも強い批判を浴びせているところであります。たとえば地元の京都新聞、地方自治のルール無視であり、政治常識にもとる行為だと、毎日新聞、強行突破に社寺側はもちろん、市民の間でも強い批判、朝日新聞、こういう形で成立をすることは余りにも異常である、というこれらの例を引くまでもありません。このため市条例で特別徴収義務者とされておる寺院三十六のうち三十四までが、京都市長は古都保存協力税の新設に関する一切の行為をしてはならないという裁判にまで持ち込んでいる。現に全国の観光客の皆さん方がこれらお寺を訪れますと、その門前に京都市関係者の立ち入りお断りという立て看板を立てて、驚かせておるという実情でありますが、こうした異常な事態というのは、昭和三十一年の文化観光施設税が創設をされたときにも、三十九年の文化保護特別税を延長した当時にもこういった事態はなかった。特に三十九年の延長の際、大きな紛争の収拾として、当時の市長と仏教会との間で覚書が交換をされて、その内容は御存じのとおり、今後二度とこの種の税は復活をしないというその覚書が全くほごにされて、今回こういう形で出てきておることが一層反対を激しくしておるわけであります。  そこで、自治省にお尋ねをいたしますが、そもそもこうした市長村法定外普通税、これを制定をするときには特別徴収義務者の同意を得るよう、たとえばすでにこれと似たような税として、栃木県の日光市、岩手県の平泉市、宮城県の松島市、こういったところでは徴収義務者の同意を得るよう自治省は指導をしてきておるところだと思うわけでありますが、事実自治体からの申請に当たってはそういった同意書を添付して出されてきておるというふうに承知をしておるんですが、間違いありませんね。
  310. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 法定外普通税を円滑に運用をしてまいりますためには、特別徴収の方法による税でありますときには、特別徴収義務者の理解と協力を得ることが望ましいわけでございますので、そういった種類の税をつくりますときには、予想される特別徴収義務者とよく相談をし、協議をするように指導をいたしているところでございますが、最終的に同意書を必要な添付書類とは考えておりません。いただいているときもございますけれども、それがなければならないものという扱いにはなっていないわけでございます。
  311. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや、自治省としてそれを、同意書の添付を必要条件というふうに考えているかどうかという問いじゃなくて、事実同意書がとられて申請が出されてきておるという事実そうなっていますねという質問です。
  312. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 御指摘の場合等につきましては、同意書が出てきている場合の方が、一緒に添付されている場合の方が多いと思います。
  313. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ところで、今回のこの京都市の本件の場合でありますが、この特別徴収義務者、三十六寺社でありますけれども、そのうちこの本税に同意を示しておるのは幾つぐらいあると把握をされておりますか。
  314. 関根則之

    政府委員(関根則之君) まだ現段階では申請書が出てきておりませんので、そういった関係の詳しい事情について私どもとしては承知をいたしておりません。しかし、いろいろの方面からいろんな話を伺っておりますが、状況としては相当多くの寺院が反対をしておるというふうに承っております。
  315. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大臣、いまのやりとりでも御理解をいただいたと思うんですけれども、三十六寺院の、寺社の特別徴収義務者、このうち裁判に持ち込む、それに連名をしておるのが三十四あるわけです。いまの段階で同意を示しておるのは二つしかないと、こういう状況で果たして税を制定をしてもスムーズに実施をされるのか、税収が入ってくるのかと、こういう点での見通しは、大いにそういう見通しが立たぬというふうに言えると思うんですが、いまのそういう状況のままでは国として認可する際の前提条件、基礎条件を欠いていると。多少反対しておるところがあるという程度じゃない。三十六のうち二つしかいまのところまだ同意を示してないということでは、そもそもそういう前提条件、基礎条件を欠いてるというふうに考えたらいいんでしょうね。
  316. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 条例の内容を正確には把握しておりませんけれども、税金の徴収の方法として特別徴収の方法によるということを考えているようでございます。その際、特別徴収義務者として考えておる人たちの大部分がそれに反対をし、協力をせぬと言っているような状態では、なかなか円滑な税の運用が期待できないんではないかというふうに私どもは考えております。ただしかし、法律の要件というのは、御承知のとおり、税源があるのかどうか、またそれに見合う財政需要があるのかどうかということが法定要件として書いてございまして、それらに該当する場合には自治大臣としては許可をしなければならないと、こういう構成をとっておるわけでございまして、直ちにいまのような状況で絶対に許可ができないのかどうかということを、その面から一概に申し上げることはできないと、こう考えております。
  317. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大臣、先日、一月の二十四日だったと思いますけれども、私も大臣にお会いをして、この問題でいろいろ意見交換もお願いをしたところですけれども、その際に大臣としては、とにかく地元で、京都市当局と寺社の側で話をつけるということが何といったって肝心だというふうに強調されておったところでありますが、まさにそのとおりだと思うんです。これはかつて昭和三十一年七月十日付でありますが、さっき挙げました京都市の観光施設税問題、そのときに自治省の次長通知という形で京都市長あての通知が出されておるその第五項に「社寺側の納得が得られるよう事前に充分協議懇談を尽すこと。」と、こういう通知が出されておるわけですけれども、これもいわば行政の立場として当然のことだろうと思うんです。ところが、事態は全く逆に進んでいると。話し合いを打ち切って強引に提案可決をされてしまって、大臣が希望されておること、期待をされておるその方向と逆に進んでいると、こういう姿になってるわけでありまして、問題が単に京都市自治体独自の問題ということでなく、観光客が全国から集まる、こういう点では全国に影響を与える問題でもありますから、国として大臣として京都市当局が仏教会初め社寺側と引き続き話し合いを尽くすと、こういう方向でのひとつ適切な指導を一層強めていただく必要があるだろうというふうに思うんでありますが、大臣どうでしょう。
  318. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) この問題は先般来いろいろお話を承ってきたわけでございますが、私は市側とお寺さんの方と両方から陳情を受け、さらにこの間は先生方のところからお話を承ったわけでございますが、何せ京都というところは私はお寺さんは大事の大事のお相手じゃないかと、こう思うんです。そこで、私はどうぞひとつ京都というところは大変昔から江戸に対して、東京に対して独立、自尊の気持ちが非常に強いところだと伺っておるから、ぜひひとつ京都でお話し合いをしていただいて、お江戸に持ち込まないようにしてくださいと、こういうことを申し上げたようなわけでございます。その後、私どもの方にも市側からもお話がないようでございまして、私はお話し合いが進みつつあるのかなとも思っておりましたが、しかし一方、裁判に訴えられてもおりますので、なかなか難航をしておるのかなと、こういう感じがございます。ただ、私はその際も申し上げたんですが、これは一つはやはり京都市民の皆様方がどうお考えになっておるかということが一つ大きな私は問題点であろうと、市民の皆様方がどうお考えになっているのかと。市議会はこれはすでにこの条例を議決したということに、多数決で議決をしたということになっております。私どもの方といたしましては、私どもの立場を申し上げれば、やはり市議会が市の提案になるその条例案を市議会が公に議決をなすったという事実は、将来にわたってこれからの問題でございますけれども、やはりそれはそれなりに受けとめなければならぬのじゃないかという気持ちは私にはあるわけでございますが、しかしまだ、いま仰せのように、どうぞお話し合いをなすって京でひとつ解決するめどをつけていただきたいなという気持ちにはいまのところ変わりはありません。
  319. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう一言申しておきますけれども、とにかく委員会審議を行わないまま、抜きのまま本会議で可決をしたという異例な形ですけれども、そういう京都市市議会本会議で可決をしたとは言え、余りにやり方が異常ですから、ということで四月から会計年度が始まる昭和五十八年度の予算案にこの税収について計上ができないと、こういう形になっておるということもこれ恐らく御承知のところだと思うんですけれども、したがって、そういう状況でどうやってこの問題の解決を図るかと、この点を考えてみたって、どうしたって十分な話し合いを最後とことんまで尽くすと、意見の一致を図ると、こういうことにならない限り事はスムーズにいかぬことは明らかですね。ですから、そういった点で話し合いを尽くす、このことのためのひとつぜひ適切、強力な指導を国としてやってもらいたいということを、重ねて大臣に申しておきたいと思うんですけれども、どうでしょう。
  320. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 税の運営を円滑にやってまいりますためには、特別徴収義務者の協力があることが望ましいわけでございますので、十分関係者の間で協議を進めるよう指導しているところでございますし、これからもそういう指導をしていきたいと思います。
  321. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは次に、午前中も議論がありました建国記念の日奉祝式典、これを本年から自治省が後援をすることに決定をしたその問題について質問をいたします。  和田委員に対する自治大臣の答弁によりますと、総理府、文部省も後援をしてきたところであるので自治省として事務的に決めた、他意はない、こういう冒頭答弁でありましたけれども、しかし、外務省は、運営委員会の方から後援の申請が出たけれどもその後援を断ってきた、こういうことは承知の上での自治大臣の答弁ですか。いや、自治大臣……
  322. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 奉祝運営委員会の方から私どもの方に申請ございました。同時に外務省に対しても申請があったということを承知をいたしております。なお外務省としては最終的には後援をしないということをお決めになったということも承知をいたしております。
  323. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうしますと、ますますあの自治大臣答弁はいただけないということになるわけでありますけれども、いただいております資料……(「佐藤君、大臣に答弁さしてよ」と呼ぶ者あり)
  324. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 外務省は外務省のお考えもあろうと思いますが、私どもの方といたしましては午前中に申し上げたような気持ちで後援をするということに決めた次第でございます。
  325. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、この自治省の方からいただいておる文書によりますと、「建国記念の日奉祝式典に対する後援について」とその「取扱いについて」という文書があるわけでありますけれども、その中で「自治省所管行政の推進、普及又は啓蒙並びに国民の生活、教養の向上に寄与する行事について行事の主催者からの申請に基づき、審査のうえその可否を決定する。」と。「国民の生活、教養の向上」、こういう表現はどこの省庁の後援取扱規程にもあるわけでありますけれども、問題は「自治省所管行政の推進、普及又は啓蒙」、これに寄与をすると。しからば建国記念の日の式典、これを後援することがなぜ「自治省所管行政の推進、普及又は啓蒙」に役立つんですか。御説明ください。
  326. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) いま御指摘になりましたような自治省が後援をするに当たっての取り扱いの考え方の文書でございますが、自治省所管行政そのものずばりの推進、普及に当たりますものについては、これは当然でございます。さらにより広く「国民の生活、教養の向上に寄与する行事」ということになりますと、自治省の仕事として国民生活にかかわりのありますことにつきましては、これは大変幅広く取り上げておるところでございます。建国記念の日につきましてもこれが法律で定められました、政府としてもこういう日を制定したといういきさつ並びにその目的にかんがみまして、またそれが国民の生活の中に現実に一つの祝日、休日として定着をしておるという点から考えまして、自治省として後援をする場合における関係を律する理由になり得ると考えております。
  327. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 建国記念の日、その祝典を自治省が後援をすることが自治省所管行政の推進、普及、啓蒙に役立つという、それで、あなたのいまの答弁で説明になっていると思いますか。  午前中の答弁で、地方自治体の後援については自治体の自主性に任せる、こういうふうにしておったわけでありますが、しかし、実際に地方自治体の指導、助言の立場にある自治省がこの式典を後援するということ自体が、一体どういう影響を自治体に及ぼすのかという問題だと思うんです。そういう指導する立場の自治省が後援を決定するということは、事実上地方自治体の自主性に任すと言いながら、実際は自治体に後援を促進せいという作用を与えるということは明らかじゃありませんか。本当に地方自治体の自主性を尊重するというのであれば、自治省が後援をすべきではない。そうしてこそ本当に自治体の自主性が保障されるというふうに——これは大臣、ほかの人いいです、大臣どうですか。
  328. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 午前中にも申し上げましたように、建国記念日というのは、国の祝日としてお決めになって、国民がそのお祝いをするという日に決められておるものでございますから、私は、お祝いをするということについては差し支えないもの、当然にやっていいものだと、こう思います。そこで国民が建国の日を国民の祝日として受けとめて、日本の国というものの建国ということに思いをはせられるという——これはいろいろお考えはあると思いますけれども、ともかくもそれぞれのお考えによって考えていただくという日が、建国記念の日であろうと思うんです。  そこで、自治省といたしましては、これは御依頼も一つはございましたし、従来から自治省が後援をしておるというものにもいろいろあるわけでございまして、そういう国の記念日であるということ、そしてまた、総理府あるいは文部省も御後援になっておるわけでございますし、また従来から閣僚も出席をしておるし、またお出になっておる政党もあるわけでございます。そういうことをいろいろ考え合わせまして、自治省としましては、地方にこれをどうこう申し上げるということはもちろん考えておりませんが、自治省としてそういう考え方で今回の後援を決めたと、こういうことでございます。
  329. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 自治体に対してどうこうということを考えていないというふうに言われても、結果としてそういうことになるんじゃないかということを言っているわけでありますけれども、もう残り時間少ないのであれですが、政府の言う後援基準、すなわち宗教色、政党色があってはならぬというこの基準にも反するんじゃないかということは、午前中もいろいろ指摘をされ、私も角度を変えて申し上げたいことがいろいろあるんでありますが、時間ありませんし、藤波官房副長官においでを願ったのでありますので、最後の問題にしぼってお尋ねをしますが、ことしのこの式典をめぐって中曽根総理が、本当は出席をしようかと、こういう意向もあった。しかしブロック米通商代表との昼食会が入るとか、そういうようなことのためこれを取りやめる、そして祝電にかえるということになったという報道でありますが、ここをめぐる問題について藤波副長官を中心にいろいろ検討されてきたということでありますが、もしも日程の都合がつけば、総理としては出席をしたいという意向であったということでありますか。
  330. 藤波孝生

    政府委員(藤波孝生君) すでに御論議のあったところかと思いますし、ただいまも自治大臣からお話がありましたように、建国記念の日は法律で定められた国民の祝日でございます。その祝日を意義あらしめるために行われる式典でございますので、従来も総理府などが後援をしてきておりまして、奉祝運営委員会から、ぜひ総理に出席をするようにという強い御要請がございました。しかし、日程をいろいろ検討をいたしましたところ、四極の通商会議、これはもうのっぴきならぬ会議でございますので、ちょうど同じ時間にそちらに出席をすることになりますので、出席をしないことに決めた次第でございます。
  331. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まだちょっと私の問いにきちっと答えられていないわけでありますけれども、最後に一問お尋ねをしますが、総理のこの式典出席をめぐる問題については、昨年の三月の予算委員会で鈴木前総理がこういう答弁をしておられます。「総理大臣という立場になりますと、国で主催をするという意味合いに通ずるようなこと、それへ向かって進めておるという形をあらわす」ものであるので、したがってということで式典への出席を否定をされる、こういう答弁をされておるわけでありますけれども、ところで、中曽根内閣の成立以来、中曽根総理は、憲法・防衛問題を初め、次々と従来の内閣の国会答弁、これを反動的方向にエスカレートをさせる、こういう問題で、非常に国会でも議論を呼んでおりますし、国民が不安を表明をしておるというところの問題でありますが、この建国記念の日式典をめぐって、勝共連合や生長の家などが、そういう各種右翼団体によるこの式典が、天皇元首化、憲法改悪、靖国神社の国家護持、こういった方向への宣伝、扇動の場になっておるということはまがうべくもないと思うんでありますけれども、こういうものに政府が後援をしたり首相を初め閣僚が出席をするということは、明らかに憲法の民主的条項をじゅうりんをするものではないかということを強く指摘をせざるを得ないわけです。  それで、お尋ねをします……
  332. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 佐藤君、時間が来ておりますので、結論を。
  333. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 はい、終わります。  で、お尋ねをしますのは、さっき言いました一つは、ことし、本来総理は出席したかった、しかし外国とのそういう会合があるので祝電にかえたんだ、本来は出席したかったということかどうか。いや、そうじゃないというんであれば、来年に向けては一体総理はどうするのか、今後とも出席をしないということなのか、その点、副長官はどういうふうに一体、総理の考え方を把握をしておるのか、どう考えておるかということを最後にひとつお答え願いたいと思います。
  334. 藤波孝生

    政府委員(藤波孝生君) 国民の祝日、法律で定められた祝日でございますので、そういった日を奉祝をするという式典、会合、行事などにはできる限りいろいろな機会に内閣総理大臣が出席をすることがいい、そして、国民各界各層の皆さんとともに祝日を祝福し合うという機会を持つことはいいことだ、こんなふうに基本的にはまず思っておりますが、総理が出たいからどうだということではなくて、日程を検討いたしましたところ、四極通商会議というのが早くから、アメリカのブロック通商代表が十日に来て十二日に帰るというような日程が固まってきておりましたので、そのために出席できないということが非常に明確でございましたのでお断りを申し上げた次第でございます。  明年からのことにつきましては、また来年のいろいろなそのときの情勢によることかと、こんなふうに考えます。内閣総理大臣——いまの中曽根内閣が来年まで続いているかどうかわかりませんが、したがいまして、来年出席するか欠席するかというようなことについては、いまここで申し上げることは御遠慮申し上げたいと思うわけでございます。来年のまた情勢によって決める、こういうことでございます。
  335. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 反動的思考のあらわれですな。  終わります。
  336. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もないようですから、自治省警察庁及び公営企業金融公庫決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明十日午前十一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会