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1983-01-20 第98回国会 参議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年一月二十日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  裕君                 杉山 令肇君                 内藤  健君                 降矢 敬雄君                 和田 静夫君     委 員                 岡部 三郎君                 河本嘉久蔵君                 竹内  潔君                 仲川 幸男君                 福岡日出麿君                 福田 宏一君                 森山 眞弓君                 鈴木 和美君                 藤田  進君                 渋谷 邦彦君                 鶴岡  洋君                 安武 洋子君                 柄谷 道一君                 小西 博行君                 中山 千夏君                 森田 重郎君    国務大臣        運 輸 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        職員局長     金井 八郎君        総理府人事局長  藤井 良二君        大蔵政務次官   遠藤 政夫君        大蔵省主計局次        長兼内閣審議官  宍倉 宗夫君        国税庁次長    酒井 健三君        文部政務次官   大塚 雄司君        文部大臣官房長  高石 邦男君        農林水産政務次        官        鈴木 正一君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        通商産業政務次        官        前田 勲男君        通商産業大臣官        房長       柴田 益男君        通商産業省産業        政策局長     小長 啓一君        運輸大臣官房長  犬井 圭介君        運輸大臣官房会        計課長      大塚 秀夫君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省自動車局        長        角田 達郎君        運輸省航空局長  松井 和治君        郵政政務次官   戸井田三郎君        郵政大臣官房長  澤田 茂生君        建設政務次官   中村喜四郎君        建設大臣官房長  豊蔵  一君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        臨時行政調査会        事務局主任調査        員        吉田 俊一君        行政管理庁行政        監察局監察官   北村 圀夫君        外務省中南米局        審議官      山口 達男君        大蔵省銀行局保        険部長      猪瀬 節雄君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        自治大臣官房審        議官       津田  正君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        会計検査院事務        総長       藤井健太郎君        会計検査院事務        総局第三局長   坂上 剛之君        会計検査院事務        総局第五局長   中村  清君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  昨一月十九日、三治重信君及び黒柳明君が委員を辞任され、その補欠として柄谷道一君及び渋谷邦彦君が選任されました。     ─────────────
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は、運輸省及び日本国有鉄道決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 実はこの一月八日の朝日新聞を読んで非常にびっくりしたわけですが、見出しは、「官僚OBの新人「指定席」確保に狂奔 出身省庁バックに業者も駆り出す」こういうふうになっているわけです。  この記事の中で、各省皆さんは、正直というか、あるいはふてくされているのか、法律なんか どうでもいいと思っていらっしゃるのかしらぬけれども現役高級官僚皆さんが驚くほど率直にOB選挙運動について述べられています。自治省郵政省は、この八日の記事ではすこぶる冷ややかですし、ある意味では非常に深謀のある発言をされている、こういうことになっているわけであります。  そこで、この問題からまず運輸大臣以下と若干の見解をただしたいのでありますが、前提といたしまして、まず自治省お尋ねをいたしますが、公職選挙法第百三十六条の「公務員等地位利用による選挙運動禁止」、これをどう解釈をするのか、明確にここでは準備行為禁止をされていると思いますが、いかがですか。
  8. 岩田脩

    説明員岩田脩君) お答えを申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、公職選挙法の上では、公務員選挙運動につきまして他の一般の方とは違う規制が加えられているわけでございまして、ただいまお触れになりました百三十六条の二は、公務員がその地位を利用して選挙運動をすることを禁止する規定でございます。ただいま先生のお話がありましたように、この規定はただ単にその地位を利用して選挙運動をすることを禁止するだけではなくて、その第二項で、同じ地位利用ではありますけれども、いわゆる選挙運動に類似した行為といいますか、準備的な行為につきましても同じように地位を利用してこれを行うことを禁止している規定でございます。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、いま仮に、ある省のある局長がその省の所管する業界に対して某候補後援会入会を依頼する場合、百三十六条違反の疑いがあるということになりますが、そうでしょう。
  10. 岩田脩

    説明員岩田脩君) ただいまの御設例でございますけれども、「地位を利用して」というのは、公務員のその職務上の権限といいますか、職務執行といいますか、それと当該選挙運動とが結びついている場合、というように一般的に言われております。一つの御設例ではございましたけれども、そういったものの個々のやり方、内容、相手方との関係といったような具体的な判断が必要でございますので、ただいまの御設例をもって当たるとか当たらないとかいう判定は御容赦をいただきたい。一般的に申し上げまして、そういう行動と職務が結びついている場合、というように御理解をいただきとうございます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 同様のケースとして——簡単な答弁で結構です、この辺は、わかっていますから。どっちみちあなた、自治六法の解説、全部出ているんだから、素人をごまかすような答弁してもらっても困るんで、簡単でいいですよ。——同様のケースとして、某候補後援会ではなくて、某立候補予定者が所属する政党入党を依頼するケース地位利用で、これ、いかがです。
  12. 岩田脩

    説明員岩田脩君) 地位利用に関しましては、百三十六条の二第二項の第三号に、その他位を利用して、第一項に規定するいわゆる後援団体を結成し、その結成の準備に関与し、それから後援団体構成員となることを勧誘し、もしくはこれらの行為を援助し、云々というように書いてございます。これはいわゆる後援団体、つまり立候補する人または公職にある人を支持し推薦することを本来の目的または主たる目的とする団体でございますので、すべての、いまおっしゃるように、政党というように言われると、これにストレートに当たるとはちょっと思えません。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 これはもう一つ、これは仮定の話ですからあれですが、たとえば地方自治体の首長が命を発して、総務部長人事課長などを通して職員に対して某候補後援会入会を勧誘する、こういう場合はどうなります。
  14. 岩田脩

    説明員岩田脩君) 地方公共団体首長もただいまの地位利用による選挙運動禁止されておる公務員の中に入りますから、その意味ではこの規定の適用を受けることにはなりますけれども、ただいまお話がございました行為首長としての職務執行に結びついておるかどうかという判定になろうかと思います。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 人事院総裁、お忙しいところ恐縮ですが、国家公務員法第百二条ですね、「政治的行為制限」、種々これは論議のあるところでありますけれども猿払事件下級審から最高裁までの判決など変化があったところですが、ともあれ判例はあります。最高裁判例はあるわけですが、国の政策決定に密着した職場を担当する高級官僚所管業界対象入党運動を進める、こういう場合には、これは明確に同条違反の容疑が私は濃いと思うのですが、これはいかがですか。
  16. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) お答えをいたします。  いまお挙げになりました公務員法の百二条の規定でございますが、これは御承知でありますように、公務員というものは、厳正に政治的中立性を守って行政を公正に執行しなきゃならぬ、そういう本来的な職務がございます。そういうところから公務員については、全体の奉仕者であって一部の奉仕者でないという憲法上の規定もございます。これを精神的に受けまして、公務員法においては公務員たる者はやはり偏ったことをやってはいけないと、いわんや地位を利用していろいろ政治活動を行うようなことになっては本人のためにもならないし、行政の公正を確保することにもならないというところから、厳重にこれをチェックするというために規定を置いておるわけでございます。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 したがってもうすでにお触れになりましたが、憲法十五条にも違反をする、また職員服務の宣誓に関する政令ですね、これにも違反する、こう確認しておいてよろしいですね。
  18. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) そういう事実がございますれば当然これに該当いたします。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 はっきりいたしました。  そこで人事院総裁、これら諸法規の違反というのは一般にはどういう処分の対象になりましょうか。
  20. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 政治的行為制限違反につきましては百二条にいろいろ掲げてございますが、その中核をなすものが百二条の一項でございます。この一項については、御承知のように罰則がございます。それともう一つ、これに違反する行為がございますれば、当然職員服務違反ということになりますので、懲戒対象になってくるということに相なります。したがって、刑罰とそれから懲戒行政罰という両方の対象になるわけでございます。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 ありがとうございました。  そこで運輸大臣、おたく松本港湾局長、この人によりますと、吉村局長党員獲得運動は大成果を上げていると、こういうことになるわけです。そこで十万人以上超えたと言われているんですがね、大臣御存じですか。
  22. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 松本局長はよく知っていますけれども、そういう事実はいま初めて聞きました。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 港湾局長港湾だけでなく陸海空挙げてやったおかげだと、確かに建設関係の尽力はありがたかったとコメントをしておるわけです。これは知らないというふうに大臣言われると、今度は自分の都下は何やっているかってなことに、もう知らぬということになりますからね、この辺はどうですか。
  24. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 一月八日のですか、私も新聞を拝見しました。各省のいろんな話が出ておりますが、運輸省から退職者の一人がことしの春の選挙に出るという話は聞いておりましたが、こういうふうな動きを松本君がやっておるとは承知しておりません。私は、国家公務員というものの大事な、いま申されたような義務は尊重してやっていくというふうに考えておりますし、もしそんなことがあるならいまから先も注意してまいりたいと、こう思っております。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 通産省矢野さんの党員集め状況、これは把握していますか。
  26. 前田勲男

    政府委員前田勲男君) 全く把握いたしておりません。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 おたく野々内審議官という人は、機会あるごとに矢野さんのイメージアップを 吹き込む、そしてそれは私の仕事であると、ここまで断言されているわけですね。審議官は日常的な仕事はそっちのけで、この六、七月に向かって私の仕事として矢野さんというOBイメージアップに努める、その入党運動に熱を上げている、後援会勧誘運動に熱を上げている、いわゆる政治行為政治活動に熱を上げている、選挙準備行為に熱を上げている。それは私の仕事である、こういうことにいまなっているわけです。こういう事態はどうお思いになりますか。
  28. 前田勲男

    政府委員前田勲男君) 私の承知いたします範囲は、野々内審議官は日常の仕事イメージアップ等されている事実はございません。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 この野々内審議官というのは政府委員でしょうか。
  30. 柴田益男

    政府委員柴田益男君) 野々内審議官は現在政府委員ではございません。  ただいまの政務次官の御答弁を補足させていただきますが、野々内審議官広報担当もやっておりまして、広報の方がいろいろ出入りするわけでございますが、一般論として選挙にはイメージアップが重要である、そういうふうに話をしたということと承知しております。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 もし答弁、ずっと記事を否定されて逃がれていくんなら、私は最後に提案をいたしますけれども、この調査のための小委員会決算委員会で設けて、厳しくこれを取材された方々参考人として来てもらって事実関係をみんな明らかにする、そういうつもりできょうやっていますから、余りチャランポランな答弁官房長、されたら困る。広報関係仕事をやっていて、通産省広報関係仕事の中に、通産省OBのいわゆる参議院全国区の選挙に向かっての広報も織りまぜていく、それは私の仕事である、こんなことは許せるわけはないでしょう。  文部省ね、文部省はスタートが非常におくれて大変なんだと述懐をされていて、お願い成果が上がってきていると、こういうことになっているわけですね。そうすると、おたく澤田審議官というのは各方面を回ってお願いをしていると、こう明確にされているわけです。その各方面を回って柳川さんをお願いをされているという各方面というのは、これはいわゆる職務との関係を知りたいものですから、どういうところでしょう。
  32. 大塚雄司

    政府委員大塚雄司君) お答えいたします。  この真偽について澤田審議官に私から直接ただしました。この新聞記事にありますように、各方面を回って柳川さんの件を依頼したという事実はないとはっきり申しております。ただ会合などで人から聞かれた場合に、柳川さんの人柄について、仕えたことがあるので、大変りっぱな方だというような答えをしたことはしばしばあるようであります。しかも党員増に結びついてくれるかというようなコメントにつきましては、本人は一切いたしたことはないと明確に申しておりまして、たまたま党員の増について話があったときに、ああそうですかというような返事をした覚えはある。このことが私がただしました本人の報告でございます。私は澤田審議官にはそのようなことはないと信じておりますが、もしも仮にそのようなことがあるとすれば大変遺憾なことであると思いますので、今後十分注意をして対処をしてまいりたい、かように考えております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 農水ですがね。これは林野庁指導部長鈴木さんという方が、これまで農水省関係では必ず二人を国会に送り込んでこられた——これは事実関係。ぜひその伝統を守りたいということで、省を挙げてお願いをすると、こういうことになっているわけですね。そこで関係業界部長地位をかけてお願いをするということはどういうことなんでしょう。
  34. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  この記事が出ました直後、直ちに鈴木指導部長においでをいただきまして、この間の事情を確かめたわけでございますが、この八日の二、三日前に、新聞から取材を受けた際に、自分の気持ち、つまり林野庁でいろいろ長い間苦労をともにしてきたその先輩がぜひ当選してもらいたいと、そういう願望を述べたということだけでございまして、それ以上のことはないというように私ども聞いておりますので、本人には誤解を招くような言辞は一切するべきではないし、今後そういうことは一切するなというように私の方から厳重に注意をしてございます。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 建設省ですが、建設省としてはもちろん業界お願いをする、こういう幹部発言になっているわけです。ということは、建設省としてどういう方法でどういう業界に対してお願いをするということなんですか。
  36. 豊蔵一

    政府委員豊蔵一君) 私どもといたしましては、私どもの役所の出身の方が二人ばかり現役参議院議員でいらっしゃるわけでございますが、その方々選挙運動等につきましては直接関与いたしておりません。  なお、新聞紙上で見ましたときに「ある幹部」というふうに書いてございましたが、私ども取材を受けたことございませんし、また私の存じております範囲でこの幹部という方がどなたかが把握できておりません。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 郵政省ね、一月十七日の新年会、特定郵便局長一千名以上お集まりになったそうですが、実際問題としてはこれは郵政省出身予定候補者の総決起集会的な色彩があったと、こう言われています。そこの内容のことは別問題といたしまして、そこで陣野龍志と言われる関東郵政監察局長ががんばりましょうという形でもって、乾杯音頭その他激励のあいさつなどという行為国家公務員としてやられるということですね。これはもうまさに事前準備行為は明確なわけですが、どういうふうに把握されているんですか。
  38. 澤田茂生

    政府委員澤田茂生君) 一月のその会合については私詳細を存じませんのでお答えをしかねるわけでございますが、恒例の新年の集まりというようなことではないかと思いますし、いまお話がございました陣野龍志、これは地方監察局長をいたしております。そういう意味乾杯なり何なりの音頭というものは恒例的にあるいはとる、そしてそういう中でどういう発言をしたかは私も存じませんが、新年についての、年頭に当たっての音頭というものをあるいはとったのかなあと、こういうふうに感じるわけでございます。詳細存じませんのでちょっとそれ以上お答えをしかねるということでございます。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 澤田さんね、八日の記事で言ってみれば、あなたの答弁取材に応ずる態度というのは一番背景にある法律を考えながら、官僚として大変りっぱな談話を発表されているわけです。あなたが一番実はある意味ではこすいなあと、こう思っているんですけれどもね。したがって、あなたいま知らないと言われたから、岡野さんに関することについてがんばれという音頭をとっているわけですから、そこのところを明確に調査をして後ほど報告してください。よろしいですか。
  40. 澤田茂生

    政府委員澤田茂生君) 事実については調べてみたいと思っております。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 これは、きょう自治大臣は来ていただかなかったんですが、いつかの機会にあれですが、建設省の方はよくおわかりのとおり、山本自治大臣建設事務次官をおやめになって昭和三十八年の十一月二十一日の総選挙に立候補されたときに、御存じのとおり建設省官房長、そのもとにいる課長補佐、お二人が業界との関係において事件を起こされ、そして河野建設大臣であったからあれだけの力を持っておったからすぐやめさせる、こういう形になって官房長それから関係二人がやめちゃったわけですね、官房長含んで二人やめた。これはずっと最高裁までいった。最高裁までいって、先ほど人事院総裁から明確な答弁があったように、法に照らして有罪ということになった、こういう形ですね。そしてその二回目の改選期には山本国家公安委員長は落選をする。生々しく私たちの記憶に残っているところであり、今度一連の官房長がいろいろ隠蔽をされていっても、こういう事実関係というものが明らかになってくれば、かつて山本国家公安委員長が歩まれた道と同じような形のことが想像ができるというこ とを私は考えながら、少し論議を進めたいんですが、自治省お尋ねをいたしますけれども、この記事の中で実は大手の建設会社社長コメントがあるわけです。これはかなりおもしろいと思うんですが、「夏ごろに吉村陣営に頼まれた。」、いわゆる運輸省に頼まれた。「いま二陣営からきている。これまでの選挙なら票を出すのだから、ある程度、やったふりも通用した。しかし、一度に何百人もの党員提供は本当は困る。おがみ倒して名前を提出させ、カネは裏からつける。それは使途不明金でおとすのだから、たまらない。新全国区というのはやめてもらいたい」ものだと、こういう談話があるんですね、コメントが。  そこで、ここで出てくる使途不明金なんですが、私は予算委員会大蔵委員会で長い間使途不明金論争というのは専門的な論争をやってきましたけれども政治資金規正法との関係でこれはどうなりますかね。第二十二条の制限額を超過しているとすれば、これはもう明らかに違反であると思うんですが、いかがですか。
  42. 岩田脩

    説明員岩田脩君) まず第一の前提としては、おっしゃる会社支出ですが、それがどういう性格のものであるかということになってくると思います。だれに対してその会社支出をしたのか、その性格は何かということになると思いますけれども、まあそれぞれの会社政治献金をするときにその献金の枠に規制があることは御指摘のとおりでございます。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 国税庁ですが、ちまたでは政治献金限度額を超えますと使途不明金で落とすという、そういう経理の処理といいますか、これは横行していると言われているわけです。そうした処理が横行していることを裏づけるものが、この会社社長コメントだろうと思うんですがね。この点についてはどういう認識をお持ちなんですか。
  44. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  私ども国税当局は使途不明金の解明というものについては特段の努力をしておりまして、税法では真実の所得者に課税するというのが本来の趣旨でございますから特段の努力をいたしておりますが、いかんせん私どもの能力も限られておりまして、使途不明金の解明が必ずしも十分に行われていない。五十六年度では使途不明金で使途が判明したのはようやく六十億円でございますけれども、その中にどの程度の政治献金が含まれているのか明確に把握できない状況でございます。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 言われたとおり、おたくからもらった資料によっても、五十六年度の使途不明金支出金額は三百八十七億円ですね。で、これは資本金一億円以上の会社ですが、そういう巨額な金額に上る。奇妙なことだと私は思っているんですけれども、税務調査によって計算してみるといま言われた数字わずか一五・五%ですね、六十億。こういう状態なんですね。こういう程度にしかわからないというのは一体どういうことですか。
  46. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  御指摘のように私ども五十六事務年度につきまして約四千二百社につきまして、これは調査課所管法人、資本金一億円以上の大きい法人について調査をしたわけですが、そのうち約九百四十六社について三百八十七億円というものの使途不明金が判明したわけでございますけれども、そのうちこの解明ができた、どういうようなことに使っているのか必ずしも支出先までは明らかにしてもらえなかったわけですが、それで解明できたのが六十億でございました。私どもこの税務調査が任意調査を基本といたしておりまして、納税者、法人に対して使途の解明を求めましても自己否認をしている金額が相当ございまして、調査をいたしましてもなかなか解明ができない。さればといって、令状を取って強制的に調査をするということもみだりにはいたしかねるような状況でございまして、なかなか税務調査だけで使途不明金の実態を明確に解明するということは困難な現状でございます。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 私は、一般的に使途不明金は非合法な、いわゆる裏金だ、こういうふうに言われているわけですから、いまのような答弁で済ますわけには実はいかぬと思っているんです。いまも言われましたように、税務調査だけでどうもこれ以上突っ込んだことができないということになると、何かほかに突っ込んで調べてみればこういう成果が上がるという手法をお考えですか。
  48. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 使途不明金の場合でございますと、どうしても会社の方はいろいろの事情で使途を明らかにしたくない、しがたいという事情でございまして、法人サイドでは使途不明金でございますので、損金性を否認されるわけで、法人税を支払うということになるわけでございまして、ところが先生御承知おきのように、外国においてはそういうものに対しては特別の課税をするとか、そういうような制度もございます。わが国においていま直ちにそういう制度がとり得るかどうかいろいろ問題点もあろうかと思いますが、やはり執行当局といたしましては、そういうような制度的な検討も進めていただく必要があるんじゃなかろうかというふうに思っております。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 その制度的な検討は私も必要だと思うんです。そこで、ただきょうの課題の問題で言えば、政治献金が幾らだろうということについて全然わからぬという答弁は、これまた私は納得できないんですよ。なぜならば、現場の税務調査では、六十億にしても、その六十億については——わかった六十億ですよ、わかった六十億については使途がちゃんとわかってきているわけですけれども、それは守秘義務だというようなことでもって言わないということじゃないでしょうな、これは。そこのところを私は考えてみると、もう一遍、あなたの答弁善意に解釈して、本当にわからぬのだとしたら、結局、集計時に意識的に政治献金をその他の項目に入れてしまう、こういうような形の処理がなされていると思うんですね。この辺の資料というのはあなた出してくれますか。
  50. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  五十六事務年度につきまして把握しました使途不明金三百八十七億円のうち、一五・五%に当たる六十億円につきまして一応その使途を把握しているわけでございますが、必ずしも相手先までは把握できない状況でございます。  その使途の六十億円のうち、十八億円がリベートとか手数料、それから十二億円が交際費、それから残りの三十億円がその他でございまして、その他には総会屋対策費であるとか、労働組合対策費とか、あるいは役員のやみ給与、さらには御指摘政治献金も含まれているというふうに考えておりますが、三十億円のうち一体どの程度が政治献金をしたとこの法人の方が言っているかという点につきましては、必ずしも明確な数字は把握しておりませんが、約三分の一弱が政治献金ではなかろうかというふうに思っております。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 わかりました。そこのところ明らかになってきましたから、別途そこの論議は詰めます。  そこで、この使途不明金を税法上はどういうように処理されていますか、その税法上の根拠。
  52. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  使途不明金処理でございますが、私ども法人税の基本通達で、法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭で、その使途が明らかでないものは損金の額に算入しないという取り扱いを行っております。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 したがって、たとえば五百万円の政治献金の場合は法人税率五〇%とすれば一千万円、こういうような形の支出になるということになるわけですが、この最高裁判例では違法支出の損金性は否定されているわけですね。この違法性の認定ですが、どういう根拠によってなされましょうかね。
  54. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  税法上の取り扱いでは違法の支出であっても支出支出であるということで、損金として認めるという取り扱いになっております。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと、そこでいま次長に耳打ちした人よ、四十三年十一月十三日の最高裁の大法廷の東光商事の所得審査決定取消請求事件、この判例ちょっと言ってみな。
  56. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 申しわけございませんけれども、ちょっと手元にございませんので。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 それはまあ別途の機会にやりますがね、それはちょっといまの答弁は私は納得をしておきません。つまり税務当局の実務の処理としては、使途不明金は全体としてきわめて違法性が高いという解釈に立って執行しているということでしょう。使途不明金に含まれる政治献金についてこれまた違法性はきわめて高い、そういうふうに言えませんか。ここは自治省ですか。自治省でしょうな。
  58. 岩田脩

    説明員岩田脩君) 使途不明金のことについて余り詳しく存じておりませんので、あるいは見当違いなお答えを申し上げるかもしれませんが、お許しをいただきとう存じます。  政治資金の方といたしましては、どこから幾ら入ってきたかという、その入ってきた後の報告、その公表が問題でございまして、その支出、たとえばいまの例で申しますと、会社支出をなさるわけですが、その支出会社の経理の上でどのように経理しておるかということとは、直接の結びつきはないのではないかというようにお話を伺っておって思ったわけでございます。恐らく、それは税法上の問題なのではあるまいかというように存じます。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、この問題あれしますがね。  さっき次長御答弁になりましたように、私はこの使途不明金に対する処理というのは、あなた同様に諸外国に比べて甘いという印象をかねがねずっと持ってきたわけであります。したがって、おたく関係者などともそういう論議をずっとしたのでありますが、フランスやイギリスのような罰則を私は考えるべきであろう。あなたも先ほど、もう少し制度的な改変を必要とするのではないかと言われましたから、その辺のことはもっとひざを交えて事務的に詰めていくというようなことで、われわれが立法するなら立法するというようなことをしてもいいと思うんですが、提案をしてもいいと思うんですが、そうしなかったら私は使途不明金はなくならないと思うんですよ。税務調査、もう言われたとおり非常に限界があるわけですから、私は大蔵大臣にはもう、たとえば財務局で人が余るのなら国税へ回してもっとというような話を何遍もしてきましたけれども、本当の行政機構改革なんてそういう視点に立ったものでなきゃならぬ、土光調査会なんというのは全然そんなものにこたえようとしてないんだから、その意味で話にならぬわけですけれども、われわれが言っている、言ってみりゃもっと民主的な行政機構改革という視点を持つべきだと、こう思っていて、あの答申なんか、ちょっと脱線しますが、本当に土光調査会じゃなくて蛇行調査会じゃないかと、じぐざぐじぐざぐして、あっちこっち矛盾ばかりの答申——まあまだ報告の段階ですが、それぐらいに思っていますけれども、立法上の改善が必要であると思う。ここまでのことは先ほど来あなたとの間では合意ができた。  そこで、ちょっとここを突っ込んでみて、たとえばフランスのように加算税に加えて支出先の所得税負担分も加えて課すというぐらいのことをしなければ、私は意図的、悪質な使途不明金というのはそうたやすくはなくならぬと思っているのですが、どの辺ぐらいまで考えていますか。たとえば英国のように五十ポンドぐらいというような形のものなんですか。フランス方式ぐらいのところまで突っ込んで考えてもいいんですか。ここで具体的にどうこうしようという話じゃありませんけれども、方向としては何かどの辺まで考えているんですか。
  60. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 先ほど申し上げましたように、重課措置を講ずるというような案につきましては制度上、技術上のいろいろ問題が少なくないんじゃなかろうかと思いまして、そしてまたこれは担当といたしまして私ども執行の立場でございます。制度の方は主税局が担当しておりまして、いま私が執行の立場から何がしかの重課措置の創設というのを執行の立場としては求めたいということを申し上げまして、一体どの程度の重課がわが国にとって適当なのかというのはちょっと申し上げかねる状況でございます。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 委員会をのぞいて、ひとつ後からおたくの方も知恵出してくださいよ。私の方も考えていることを率直にぶつけて、そして合意ができていけばそれは大蔵から、政府から提案してもらうのが一番いいわけですから、そういう形にもっていった方がこれはいいだろうと思うんですね。大臣外遊中ですからあれですが、やっぱりこれだけ財政不如意のときに、もっとそんなところを真剣に考えるということが必要なんだろうと思うんですよ。  自治省さっき答弁ありましたが、せっかくの答弁ですが、私はあなたの答弁を肯定するわけにはいきません。そこで、こうしてみましょうや、これ。使途不明金に含まれる政治献金というのは、税務処理上違法性の高いものとして扱われている、そういうふうに解釈されるわけでありますから、これについてどうです、あなたの方では調査できますか。調査するぐらいのことを一遍どうですか、約束できますか。これは私の要望です。
  62. 岩田脩

    説明員岩田脩君) せっかくのお話でございますが、政治資金に関しましては私どもはそれぞれの団体、政治家から御報告を受けたものを公表するということを基本にしておりまして、その内容につきましてみずから手を出して調査をするという立場にございません。ましてやいまお話がありますように、その政治献金のもとが当該提出したものにおいて、寄附をしたものにおいていかに経理をしておるかということの調査お話でございますので、ちょっとそういったようなところまでは私どもの制度の本来から言って受け持つ分野ではないということで御理解をいただきとうございます。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 自治省の立場そのものはわからぬわけじゃありませんが、これはそれじゃ使途不明金そのものの今後の問題について国税当局などと煮詰めた後、もう少し発想してみたいと思います。  そこで、いろいろ先ほどおしなべた答弁各省からいただきました。きょうは運輸の決算でありますから運輸大臣お見えで、まあ代表される形になるので恐縮でございますが、運輸、通産、文部、農水それぞれに尋ねますけれども、最後に運輸大臣から大臣の答弁を閣僚として承るということにして、先ほど来ずっと言ってきたコメント憲法国家公務員法、公選法違反を示唆するものであります。  そこで、各省それぞれ官房長あるいは政務次官ですか、ここの場合は、どういうふうに対処されますか、そこのところを明快にそれぞれの政務次官から承っておきます。——文部政務次官は先ほど対処をされることについては述べられましたからいいとしまして、その他はどういうふうに対処されるか言っておらぬわけですね。
  64. 鈴木正一

    政府委員鈴木正一君) 先ほどいろいろお尋ねがございました。なお、私どもも十分御本人等からも事情を聴取するなりいたしまして、要は国家公務員法あるいは公選法、そしてまた憲法等に規定されておる公務員としての政治的行為、それから選挙運動、そういうものが禁止されておる行為部分にいささかなりとも関与するようなことのないように、将来ともに官庁の綱紀粛正等については厳に戒めるように配慮をしてまいりたいと存じます。
  65. 前田勲男

    政府委員前田勲男君) 和田先生の御指摘を踏まえまして、国家公務員法及び人事院規則あるいは公職選挙法上の規定を守りまして、厳正に政治的中立を守り、行政の公正化を図りまして、地位利用等ないように省内に指示をしたいと考えております。
  66. 中村喜四郎

    政府委員中村喜四郎君) 先ほど官房長の方からもお答えを申し上げましたが、私どもは御指摘をいただくような点はなかったと信じておりますが、しかし、せっかくの御指摘でございますので十分調査をいたしまして、もしそういうような部分がございましたならば、今後十分綱紀の粛正等も含めまして検討し、対処したいと考えておりま す。
  67. 戸井田三郎

    政府委員戸井田三郎君) 先ほど官房長お答えいたしましたのが私ども知り得た範囲だと思いますが、いずれにしても、公務員というものは国民に疑惑を招かないように注意をしていくべきだと思いますので、事実をよく調べて、そういうことがないようにしていきたいと思っております。
  68. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先ほどもお答えいたしましたが、松本港湾局長が政治的行動をやったということは考えておりませんが、御指摘の点などを踏まえまして誤解の生じないように十分に注意してまいりたいと、こう思っております。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 内閣官房副長官が総理と一緒にアメリカに行っていらっしゃるものですからお見え願えなかったのですが、昨年の十二月九日に、内閣閣第一七五号という各省に対するところの通達が出ていまして、これは公務員の綱紀粛正に関するものであります。そのもとになっているのが内閣閣第二〇八号、昭和四十三年十二月三日の官房長官から出た「官庁綱紀の粛正について」という文書であります。この中にも明確に「公私の別を明らかにし、職務上利害関係のある業者等との接触に当たつては、」「疑惑を招くような行為は厳に慎しむこと。」などというようなことが明記されていることはおわかりのとおりであります。  そこで、かわりに人事局長お見えですがね、いままでずっと指摘してきたことが事実であるとすれば、高級官僚の綱紀というのは千々に乱れている、この一片の通達なんか全然守られていない、こういう状態にいまなっている。私は行政改革というのはまさにここから手をつけなきゃならぬと思うんですが、OB選挙応援が私の仕事だなどと言って平気でいる、これは何をかいわんやであります。したがって、もとは官房長官通達でありますからね、ひとつ答弁を願って、内閣それ自体のものとして厳格にきょうの私の指摘を受けとめる、そういうことを求めたいのでありますが、追求はずっと進んでいくにしましても、いかがですか。
  70. 藤井良二

    政府委員藤井良二君) お答え申し上げます。  公務員の綱紀粛正につきましては、従来から政府の重要な課題として取り組んできているところでございまして、いやしくも職員職務を怠ったりあるいは違法な選挙活動を行っているような疑惑を招くような行動は厳に慎むべきものと考えております。特に昨年四月におきまして事務次官会議において内閣官房長官より各事務次官に対して特にこの点指示を行っておるところでございますけれども、今後ともあらゆる機会をとらえて綱紀の粛正等厳正にその徹底を図ってまいりたい、かように考えております。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 現行法によれば性格が若干違いますがね、会計検査院にちょっと、私はこれからの院法改正問題などとの絡みもずっと頭の中に描きながら、この機会に問うておいてみたいのでありますが、関連業界各省との間に後援会入会要請やら入党要請やらというようなことに関連して不明朗な事態が発生しています、また発生をする可能性が十分に存在をしています。したがって、財政の執行状況についてこういうような観点からも検査をされるような、これは制度改変が必要でありますが、これは知恵はお互い出すとして、そういうようなことは頭に描かれますか。
  72. 藤井健太郎

    説明員藤井健太郎君) お答えいたします。  先生御案内のとおり、会計検査院は収入支出等の会計経理の適否を検査することを職務といたしております。先生いままでの御指摘のような事態が原因となりまして、国等の契約内容について瑕疵があることが発見された場合には、この当該瑕疵ある会計経理を不適正なものとして指摘することがあるわけでございますけれども、いまのところ、最後に先生おっしゃいましたような大きな観点からは、いまの法律上は非常にむずかしい点があるんじゃないかというふうに考えられます。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 いま私は現行法では何もやれると言っているわけではありませんのですが、やっぱりこういう側面も、これから院法改正どう進むかわかりませんけれどもね、一つの趣旨としては盛り込むようなことができる可能性が、ある意味じゃあるんじゃないだろうかというふうに思って、私もいま確固たる結論を持っているわけじゃありませんが、お互いそういう認識をこの機会に持ち合いたいと、こう思うんです。  そこで私、決算委員長お願いがありますがね、先ほど来官房長が、たとえば農林の官房長もそうですが、いたけだかに事実関係はなかったというようなことを前提にして、最終的には大臣、次官の答弁でさらに調査をされてということにいまなっています。私はこの機会にこの決算委員会に、後ほど理事会で協議をすればいいと思うのですが、この問題に対する高級公務員職務執行に関する調査委員会、そういうものをぜひおつくり願いたい、こういうふうに思います。
  74. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 後刻理事会で協議の上決定していきたいと思います。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 一九八三年度、昭和五十八年度予算の政府案が策定をされました。二十四日からの再開国会がどうなるか、衆議院の議運がこれからどうするかで午後の様子を見なきゃわかりませんが、予算案全体としては私たちはとうてい容認しがたい問題点をたくさん含んでいます。  そこで、これは決算でありますから過去にさかのぼって新年度予算案との関係における経過的なものについて若干の質問をきょうやりたいと思っています。過去の当然財政支出を振り返りながらであります。  まずその第一は、関西新空港であります。  関西新空港問題では、当初運輸省が要求をしていた調査費というのは実施設計調査費となっていたわけですね。これはおたくからもらったあれでも明らかです。ところが実際についた予算というのは着工準備調査費、こういうふうになっているわけですね。この両者の違いというのは一体どこにあるのか、まず大臣。
  76. 松井和治

    政府委員(松井和治君) お答え申し上げます。  今回の政府予算案におきまして、関西国際空港着工準備調査費という新しい費目が立目されることになりました。これは大阪湾の泉州沖に設置いたします関西国際空港の着工を前提といたしまして、そのための準備を進めるための経費でございまして、その中身は護岸とかあるいは埋め立てとか、空港の諸施設の設計などを行う経費、これが従来実施設計調査費という、これは予算上の科目ではございませんが、実施設計調査費という名前で呼ばれておりましたような内容のものを含んでおりまして、そのほかになおまだ結論が出ておりません将来の事業主体のあり方というようなものの調査を含めまして、これまでの一般調査費とは別の科目を設置すると、こういうことが決まった次第でございます。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 運輸省の概算要求の際に、実施設計調査費として三十八億円を要求された。何かきのうおたく政府委員は三十二億円と言われましたが、調べてみるとやっぱり三十八億円の要求のようですね、これ。主として基本的設計のための調査費でしょう、これ。三十八億円の内訳というのはどういうことになりますか。
  78. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私ども予算要求、五十八年度予算の要求といたしましては一般調査費として八億円、それから実施設計調査費として三十八億円という要求をしたわけでございます。  一般調査費の八億円は、これは継続して行うべき自然条件等の調査費でございます。これは要求どおり認められたわけでございます。実施設計調査費の三十八億円は、先ほどお答え申し上げましたように護岸でございますとか、埋め立て、空港諸施設等の設計等の経費あるいは土砂採取地の調査というようなものが含まれておるわけでございまして、これが先ほど申しましたように予算科目上新しい着工準備調査費という科目で三十二億円、合計一般調査費と合わせまして四十億円という予算案をつくったと、こういう次第でございます。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 いや、それで私の聞いているのは、埋め立て地域の設計調査費を幾ら要求した。その三十八億の内訳というのはいま出ませんか。
  80. 松井和治

    政府委員(松井和治君) まず三十八億円の概要でございますが、護岸と埋め立ての設計調査といたしまして十三億円。それから土砂採取運搬調査といたしまして十八億円、空港施設の設計調査といたしまして一億三千万円、アクセス施設設計調査といたしまして一億円、施工管理システム設計調査として四億七千万円、合計三十八億円でございます。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 これは運輸省は泉州沖と決定した上での要求であるということになりますかな、要求としては。
  82. 松井和治

    政府委員(松井和治君) これは先生御案内のように、二度にわたります航空審議会の答申で綿密な各種候補地の比較検討を行いました結果、泉州沖が妥当であるという結論を得ておりまして、私どもその審議会の結論を尊重するという立場を従来からとっております。したがいまして、当然のことながら泉州仲につくる関西国際空港を前提とした予算というふうに御理解願いたいと思います。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 もう少し進んでからまたもとに戻りますが、いわゆるさっき言われた一般調査費の方なんですが、これは八億円ついたわけですね。この八億円は運輸省の資料によりますと、「固定観測施設で気象、海象の観測等を継続して行う」とありますね。おたくからこれはいただいたんですが。これは五十三年一月からの継続調査ですね。この気象海象調査に対して五十七年以前というのは大体三億から四億ですね。ここのところも何かきのう三十二億なんて言われたんだけれども、とにかくそこはいいわ。これはなぜ八億円にはね上がったんですか。理由は同じことなんで、なぜ八億円にはね上がったんですか。
  84. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 御指摘のように、自然条件の調査は継続して行うべきものでございまして、データの積み重ねが必要でございますが、来年度は先ほど申しました気象海象等の観測を引き続き行いますほか、水質の調査あるいは管理計画調査、漁業調査というようなものが新しく含まれておりますので、例年よりは金額は多くなっておると、こういうことでございます。
  85. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、そうしますとここに書いてある土質の調査だとか、埋め立ての工法の調査だとか、あるいは土砂運搬計画調査、あるいは空港施設の計画調査などについては五十七年度で完了する見込みだと理解していいんでしょうな、ここのところは。いわゆるこの種の基本調査が完了したので、実施設計調査を要求したと、こういうことになりますか。
  86. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど申しましたように、自然条件等の調査は、これは継続して行う必要がありますので、五十八年度も一般調査費という項目で要求をしたわけでございます。そのほか、五十七年度予算で御指摘の土質等の調査をいたしました。これは五十六年、五十七年をかけて毎年二十五本ないし三十本のボーリングを行いまして、土質の詳細な調査を行い、また現在行いつつあるわけでございますが、そういう意味での基本的な調査というものは、五十七年度予算をもってほぼ終了するというふうに考えられるわけでございますが、したがって御指摘のように五十八年度はそこから一歩新しく踏み込んだ、いよいよ着工準備のための設計に取りかかる経費がその内容の主体になっておるわけでございます。
  87. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと検査院に伺いますが、これまでの一般調査費の状況について把握されていると思うんですが、これまでの調査について指摘するところは何もなかったですかね。
  88. 坂上剛之

    説明員(坂上剛之君) お答えいたします。  調査費は先生御指摘のとおり多年にわたって支出されておりまして、私ども実地検査の際に調査費については十分に見ております。現場において口頭で注意することはございましたが、特に検査報告において指摘するという事態はございませんでした。
  89. 和田静夫

    和田静夫君 実際についた予算は着工準備調査費である。ところが、実施設計調査費とどこが違うかというのは先ほど説明ありましたけれども、着工準備調査費の性格、具体的内容、またそれぞれに幾らついたのかということはどうなんですか、ここは。
  90. 松井和治

    政府委員(松井和治君) ただいまのお尋ねでございますが、着工準備調査費の具体的な内容につきましては、予算の成立を待ちまして財政当局と協議しながら最終的に確定していくということでございますが、先ほど申しましたような護岸、埋め立て等の構造物の基本的な設計というようなものが含まれる、あるいは事業主体のあり方等についての調査というようなものが含まれるということは、大筋において財政当局との間で合意を見ておるわけでございますが、そのどういう項目にそのうちの幾らの金額を割り振るかということにつきましては、予算成立後、財政当局と十分御協議をして決めてまいりたいというふうに考えております。
  91. 和田静夫

    和田静夫君 主計局に同じ質問ですが。
  92. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) ただいま運輸省から御答弁申し上げたとおりと承知しております。
  93. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、答弁がそのままで、全部そのままかというのはちょっとあれですが、主計局なんですがね、泉州沖に建設することを確定してこの予算をつけた、それはそうなんですか。
  94. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 泉州沖に空港をつくるという前提調査を行うということでこれをつけております。
  95. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、調査の結果財政負担が耐えがたいということが明らかになったらどうされますかな。
  96. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) この着工準備調査費は、先ほども運輸省の方から御説明ございましたように、泉州沖に空港をつくるという、そういう前提、それからいわゆる実施設計調査費に相当するものは入っているわけでございますけれども、その実施設計調査費と言わないで着工準備調査費と、こう申し上げておりますのは、直ちに着工につながるものではないという理解でございます。事業主体でございますとか、採算性でございますとか、負担のあり方でございますとか、そういったものも同時にこれから調査をしていくということでございます。
  97. 和田静夫

    和田静夫君 いや、それだから私が言ったように財政が耐えられなくなったと言ったらどうするんですか。
  98. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) ですから、いま私申し上げましたように、そうなりますかなりませんかということでございますが、それは調査をしてみての上の判断と存じます。
  99. 和田静夫

    和田静夫君 私、実は運輸は全く素人でございますからあれですが、今回初めてこの問題、おたくからいろいろもらって、大蔵からも運輸省からももらって、ずっと検討してみましたが、どうも運輸省準備不足のまま見切り発車をするのではないかという危惧を持ちます、大臣。過去の会議録どもずっと当たってみましたが、私はこれまでの議論でも肝心なところがどうも明らかになっていないという印象を受けるわけです。  たとえば総工費でありますが、関西新空港をつくられるに当たって、この関連のアクセス、それから環境整備あるいは漁業補償など、全部ひっくるめて、きのう通告してありますが、一体幾らかかるのか。一説には六兆五千億と言われたり、あるいは七兆と言われたり六兆九千億と言われたり、まちまちなんですが、ともあれ六、七兆円かかるんだろうと思われますね。こういう数字は運輸省確認をされているわけですか、大臣。
  100. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 関西国際空港の建設工事費につきまして、五十七年の一月から、昨年の一月からでございますが、財政当局と私どもとの間で、いわゆる事務協議と称しておりますが、詳細な詰めを行ってきたわけでございます。それと同時に、先ほどお尋ねのございました、五十六年度予算でボーリングを行いました結果が判明をしてきた。その結果は、当初予測しておりましたよりも大変良好な結果が得られまして、そういうものも含めました上で工費の見直しをいたしまして、しかも私ども財政事情の非常に厳しい折でご ざいますので、当初から全体の計画を一遍に進めるということではなしに、段階を追って、当初は滑走路一本だけの第一期工事を進める、こういうことで五段階に分けて計画を進める予定にいたしております。  その第一期の工事、この工費でございますが、当初一兆円を超すというふうに見積もられておったわけでございますが、先ほど申しましたような調査の結果等もわかってまいりまして、一兆円をかなり下回るということがはっきりいたしてまいりました。この中に、当然のことながら先ほどおっしゃいました漁業補償の関係の経費も含めて計算をしておるわけでございます。  また、アクセス等の費用につきまして、ただいま先生六兆円云々というようなお話がございましたが、確かに一部でそういうようなことが言われたことはございますけれども、私どもが積み上げて六兆円かかるというようなことを申し上げたことは一回もございません。その六兆円云々ということを言われる方のお話を伺ってみますと、空港が泉州沖に仮にできなくても、当然のことながらつくる予定がある近畿自動車道の和歌山線の経費を空港のための経費としてカウントするとか、いろんな空港と直接関係のないといいますか、空港ができなくてもつくる道路の計画等の経費を全部盛り込んで計算をされてるように私ども伺うわけでございまして、本来空港をつくるために必要な取りつけ道路でございますとか、あるいは南海電鉄なり国鉄なりの取りつけの部分の経費、これは空港がなければ必要がない金でございますので、これは当然カウントすべきであると思いますけれども、それ以外の一般的な道路予算等も含めた金額を挙げまして、それをもって非常に多額の金がかかるというのはいささか当を外れた批判ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
  101. 和田静夫

    和田静夫君 いや、そうだからどうだというんですか。総工費幾らかかるんですか。
  102. 松井和治

    政府委員(松井和治君) ただいま申し上げましたように、私どもは当面第一期工事を考えておりますので、一兆円をかなり下回る金額、八千億円台になるんではなかろうかというふうに考えておりますが、これは先ほども申し上げましたとおり、五十八年度予算を含めまして、なお詳細に財政当局との間で協議を続けてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  103. 和田静夫

    和田静夫君 いや、私が聞いているのは、協議は協議でよろしいが、その一期、二期と分けずに、でき上がるときの総工費というのはどのくらいのことを考えているのかと聞いているの。
  104. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先生のお尋ねが、先ほど申し上げました第五期までを含めた全体の計画というお尋ねであるといたしますならば、当初一兆八千億円程度というふうに考えておりましたが、これは先ほど申し上げましたような形で、その一兆八千億円まではかからない、これを下回るものになろうかと考えております。
  105. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、具体的に漁業補償は幾らかかるんですか。
  106. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 当該地点は、漁業権が設定されておる地域じゃございませんで、いわゆる許可漁業が行われておる地域でございます。当然漁業補償は必要になろうかと思いますが、まだ補償交渉にも入っていない現在でもございますし、金額を申し上げることは御容赦願いたいと思います。
  107. 和田静夫

    和田静夫君 その辺の金額を申すことはできなくて、総額は非常に安くなるというのはさっぱりわからぬけれども、それじゃどういうふうにこれから折衝を進めるんですか。
  108. 松井和治

    政府委員(松井和治君) これは当然公共用地の取得のための損失補償基準がございますし、こういうものに基づきまして漁業補償をこれから進めていくということになろうかと思います。
  109. 和田静夫

    和田静夫君 個々について幾ら出すというのを、前もって手のうち見せたら話にならぬということは、われわれだってわからぬわけじゃありませんけれども運輸省、責任を持ってこの計画を進めているのですから、私はやっぱり正確なトータルの試算というものは示されてしかるべきではなかろうかというふうに考えるんですね。着工のゴーサインが出てから主計の側と相談をいたしまして調べ、結論を出していきますという姿勢というのは、どうもわからぬのですね。いろいろ論議の議事録読んでみてもその辺がさっぱりわからぬのですが、これは主計、どうです。
  110. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 先ほど申し上げましたように、私どもは直ちに着工につながるものではないと、こういうことを申し上げたつもりでございます。  なお、事業主体、採算性、負担のあり方など、先ほど議論に出ておりました地域整備の問題も含めまして、これから詰めなきゃならない面があるわけでございます。同時並行的にこれから運輸省と十分協議をしてまいりたい、このように思っております。
  111. 和田静夫

    和田静夫君 自治省、地元の自治体の負担率、これ、幾らですか。
  112. 津田正

    説明員(津田正君) 関西新空港の地元負担率等については、まだ決定を見ているものではございません。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと済みません、もう一遍。
  114. 津田正

    説明員(津田正君) 新しい関西国際空港の建設費の地元負担という問題については、まだ決定を見たものはございません。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 地元自治体の財政状況をちょっと説明してください。
  116. 津田正

    説明員(津田正君) 地元関係団体をどの範囲にするかという問題はございますが、私なりに申し上げますと、まず大阪府でございますが、いずれも五十五年度の決算状況で見ますと、実質収支では赤字団体でございます。それから市町村で申しますと、和泉市、泉佐野市、それから泉南市、これらの団体が若干の赤字を生じております。そのほかの団体につきましてはどうやら実質収支上は黒字になっております。
  117. 和田静夫

    和田静夫君 数字はいただきましたから——そういう状態ですね。  そこで、もう一遍くどいようですが、自治省お尋ねしますが、そういうような財政事情において、たとえばうわさされるような形で五%地元自治体の財政が負担をするということになると、自治体の財政がもう逼迫をされて悪化をさせる、こういうふうに私は判断をいたしますが、いかがですか。
  118. 津田正

    説明員(津田正君) 関西国際空港、新しい空港の建設費についての地元負担のルールというものはないわけでございますが、私ども、原則論といたしますと、この種の空港は既存の第一種空港と同様に国の責任において、また負担において実施さるべきものと、こういうふうに考えておりますし、また実際論としましても先ほど申しました地方団体の厳しい地方財政事情というようなものからも困難ではないかと、かように考えております。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 私も関西新空港はいわゆる第一種空港、一〇〇%国の負担、こういうような形——財政的な面から言ってだけですよ、いうふうに、いまの自治省答弁のようなことであろうと考えます。地元のこれは財政事情、非常に悪いわけですから、ここのところは大蔵の主計、あるいは運輸省、いまの論議というのは十分に聞いてもらわなきゃならぬ。  そこで主計局、神戸方式案の存在というのを御存じでしょうか。
  120. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 神戸市案というものがあることは聞いてはおりますが、運輸省の方から正式のものとして承ったことはございません。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 昭和五十七年十二月十八日、運輸大臣——長谷川さんにおなりになってからですが、長谷川運輸大臣あてに神戸市長宮崎辰雄から出ていますね、文書。これは大臣、お読みになっていますか。関西国際空港建設にかかる疑義について。
  122. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私ども承知いたしておりません。  兵庫県から神戸のポートアイランドの沖に地方空港をつくりたいという御要望は承っております。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 そうですか、これは公文書ですからね。「神戸市企整第五三七号 昭和五十七年十二月十八日 神戸市長宮崎辰雄 運輸大臣長谷川峻殿 関西国際空港建設にかかる疑義について」こんな文書、行ってないと言うんですか。
  124. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私どもは現在私どもの計画しております泉州沖案について兵庫県との間で意見の交換を進めておるわけでございますが、その際、兵庫県側から地元の兵庫県内の各自治体から寄せられた疑問点について照会があったという事実はございますけれども、ただいま先生お話の神戸市長名での疑義の提出というのは私ども承知いたしておりません。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 この時点で、この日でしたかな、この前後、NHKのニュースで私は見たんですが、神戸市長がじかじか運輸省を訪問しているじゃないですか。ニュースに映った運輸省というのは、あれはどこか別のところにそれじゃ映画のセットみたいにつくってやったんですか。そうして、おまけにあなた方はこれについて歯牙にもかけなかったと言われているわけだ。じゃあなた、そんな答弁じゃだめだから担当で会った人にちょっと聞いてみなさいよ。
  126. 松井和治

    政府委員(松井和治君) ちょっと、大変失礼いたしました。その日付は昨年の十二月とおっしゃった……
  127. 和田静夫

    和田静夫君 十二月十八日。
  128. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 十二月十八日に神戸市長が私どものところを訪問されたという事実はございません。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 いや、十二月十八日に訪問したんじゃないんだよ。文書の日付は十二月十八日だと。
  130. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、神戸市長名での文書というものは私どもいただいておりません。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃそこのところは事実関係明らかにしましょう、これは。明確に渡っていますよ。とにかく歯牙にもかけなかったと、こう言われているんだから。私はどっちを賛成するという立場じゃありませんよ。ただこの問題については少なくとも地元の三県、それから神戸というのは政令都市ですから、あなた県、県と言っているけれども、県のいわゆる権限の及ばざるところのものを政令都市は持っているわけですからね。政令都市である神戸だとか大阪だという市の意見を何にも聞く姿勢を持ってないというのは、運輸大臣、これどういうわけですか。
  132. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私が運輸大臣になってからは神戸市長の訪問は受けておりません。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 そういう意味じゃありません。いわゆる県だから県だからと言われるけれども、政令都市はそこに存在をしているわけです、関西に。政令都市の意見も聞かないという態度というのは、運輸大臣、これは一般論として解せないでしょうと言っているの、私は。
  134. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は、運輸省一つ行政機関、同時に各府県、そういう政令都市も一つ行政機関ですから、時に意見の対立、賛成できないことがありましても話は聞くことにしております。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 それはあなたもう当然だと思うんだ、大臣の答弁の方が。  私はそこで、それじゃいわゆる兵庫県を通じて出されているところの疑義ですね。そういうものについての一つ一つの、何と言うか、あなた方の見解この機会に承りましょう。
  136. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 兵庫県側から昨年の、ちょっと日付ははっきり覚えておりませんが、二回にわたりまして私どもの御協議申し上げております案に対する疑義というものが提出されまして、それに対して私ども詳細なお答えをいたしました。大きく分けまして問題点は二つあろうかと思います。  一つは、兵庫県側の言い分として関西の新空港の計画に対してイエス・ノーを言う段階で、現伊丹空港の存廃を明らかにすべきであるという点が第一点であります。この点につきましては、私どもすでに国会においてもしばしば御答弁申し上げておる次第でございますけれども、とりあえず滑走路一本の新空港をつくるわけでございますが、その段階で、伊丹の空港の存廃について、地元の公共団体の意向を十分しんしゃくしながらその存廃について決定をするというお約束を各方面に対していたしておるわけでございまして、私どもその考え方に変わりはございませんということをお答え申し上げた次第でございます。  第二点は、兵庫県側は、国際空港ではない地方空港としての神戸空港というものをポートアイランド沖につくりたいと、こういう希望をお持ちでございまして、それについての私どもの見解がただされておるわけでございますけれども、私ども、まだ何ら調査も行われておりませんし、地元の意向もわかっておりません空港計画を現段階で云々するというわけにはまいりませんということをお答えをいたしておる次第でございます。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと角度を変えますが、これまでの間ずっと大蔵省というのは公共投資の景気波及効果、あるいは乗数効果、そういうものを高度成長期よりも低く見積ってきたわけですね、見込んできた、そういうように思われますが、それはそれでいいですな。
  138. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 一般論としてのお尋ねだと思いますが、公共投資をたとえば同じ一単位投資する場合におきましても、一単位がすべての状況のもとにおきまして同じ効果が出てくるというわけじゃございませんもんですから、状況の変化によりましてその効果もおのずから違ってくる。そういった意味で、先生おっしゃるように、かつての時代と今日、現在では多少その効果が違ってきてはいるだろうということは考えております。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、日本経済の潜在的成長力をどう判断するかというのは、これは運輸省の資料の中にありますから、ここのところ非常におもしろいんですがね。十年、二十年の見通しは、運輸大臣、これはともかくといたしまして、具体的に何%にするかということの予測についてもこれはいろいろあるでしょう。実は鈴木内閣と私たちの論議では、委員長もそうですが、私たちの数字の方が合っていて結果的には鈴木内閣そのために見通しを誤まって行き詰まったと私は見てますから、私たちの見方の方が正しかったと思っているんですけれども、おおよそどういうイメージこれ主計局お持ちですかね。
  140. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 恐縮ですが、御質問の御趣旨がよくわかりませんので、もう一度、恐縮ですが。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 日本経済のいわゆる潜在的成長力。
  142. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 大変にむずかしい御議論でございまして、これにつきましてはいろいろな議論がございまして、定かにいま私ここで何%ぐらいだということを申し上げるのは差し控えさしていただきたいと存じます。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 あなたらしくないことを言っているな。あなた、ここのところを言ってくれなけりゃ、関西空港どういうふうに判断するかというのはひとつ出てこないわけですよ。これはGNPだとかもういっぱい並べてあるわけですから、運輸省の資料というのは。そこで、あなたの方と食い違っているし、通産どうですか、いまの同じ質問。
  144. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 潜在成長力の議論というのは大変むずかしい議論でございまして、通産省といたしましてはそれなりの一応の勉強はしておるわけでございます。昨年発表いたしました資料では、私どもは、わが国の高い貯蓄率とかあるいはエレクトロニクス等の最近の技術革新の進展のぐあいとか、あるいは日本の経済社会におきます柔軟な適応力というような点を考えますと、ある程度の高さの潜在成長力はあるんではないかということで、具体的には五%ぐらいは可能なんじ ゃないだろうかという数字を試算したことはございます。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 それは、通産省はっきりしたんだから、大蔵省。通産省はちゃんと発表した数字を言ったんだから、あなたのところも発表した数字ぐらい言いなさいよ。
  146. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 私直接発表したというその責任者じゃございませんもんですから、発表をしたという、その発表のしぶりというのも事実よく承知しておりません。したがいまして数字を申し上げるのは差し控えさしていただきたいと存じます。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 役人ならしょうがないから、やっぱり大臣代理者の登場の時間です。
  148. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 潜在成長力をどれくらいに見るかということ、大変むずかしい問題でございます。通産省は経済官庁としていろいろな試算をされておるだろうと思いますが、これは大蔵省として一体どれくらいの数字が適当かという、それの勉強はしておりますけれども、ここでお答え申し上げるような段階では私はないと考えております。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 もうとっくにあんたお役人卒業されて、いま次官なんですから、もう少しあれしたらどうですかね。大蔵は大体三%ぐらいと言われていますけれども、具体的な数字はともかくとしまして、私も潜在成長力というのはかなり低下していると思うんです。思うんですが、私は大蔵省とは違いましてね、成長率の下方屈折が生じたからといっても、現在の失業水準が完全雇用で今後のこの失業も賃金が柔軟であるから深刻ではないというような、そういう前提的な考え方にくみすることはどうしてもできません。まあ一九三〇年台になぞらえられて、アメリカや私もECずっと調査で回ってきましたしあれですが、ずっと見てきましたけれども、これはもう国際協力関係といいますか、世界的同時不況が進行しているわけでありますから、日本が優良児だ、優良児だと言っておったところで、西ドイツが優良児、優良児と言っておりながらああいう状態になったと同じ形で、影響受けないという保証ないわけですから、そういう意味でも失業問題は今後深刻になるだろうということを実はある意味では深刻に考えるわけです。その対策として景気刺激策、特にこの大規模プロジェクトによるような公共投資、私は余り有効ではないのではないだろうかというふうに考えているわけですけれどもね。この問題はきょうの主題ではありませんから、それ以上立ち入ろうとは思いませんがね。公共投資のこの乗数効果が落ちてきている、そういう中で、しかも財政危機で首が回らない、回らないと政府が言われる。補助貨幣積立金を取り崩してみたり、きょう後から問題にします自賠責からも繰り入れたりという状況下で、一体大プロジェクトを実行する余裕というのがあるのだろうかどうかという基本的な論理の問題なんですが、ここは大蔵省どういうふうにお考えになっているんですか。
  150. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 先生おっしゃるように厳しい財政状況でございます。したがいまして、大規模プロジェクトを国費をもって実行していく力というのがほとんどないに等しいということは言えると思います。でございますからして、たとえばこの関西空港につきましても事業の採算性でございますとか事業主体でございますとか今後に残された問題はあるわけでございます。あるわけでございますが、同時にまた実施設計調査費と普通言われております内容に入りますいろいろな具体的な設計等も、並行してやっていこうというのが今度の着工準備費の趣旨でございます。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 参考のためですが、運輸省、この計画実施による投資乗数効果、雇用乗数効果、どういうふうにはじかれましたか。
  152. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私どもちょっとその数字をいま持ち合わせておりませんので、恐縮でございますが、お答えしかねるわけでございます。  ちょっと先ほどの先生の御質問に対する一つお答えを申し上げたいと思いますのは、私どもこの関西新空港の計画を進めてまいりますのは、空港整備特別会計という特別会計で処理をするわけでございます。現在特別会計の規模が約二千五百億でございますが、そのうちの四割近くに当たります約一千億の金が環境対策に投じられておるわけでございます。そのまた大部分が大阪の現伊丹空港の周辺に投じられておるわけでございますが、おかげさまで環境対策も着々と進みつつございまして、これが五十八年度に一般空港についてはほぼ完了をいたします。大阪、福岡、名古屋という残された三空港につきましても、できるだけその時期を過ぎて速やかな時点で環境対策を完了させたいと実は考えておるわけでございます。したがいまして、昭和六十年度あるいは六十一年度の予算からはその環境対策費というものが現在の一千億の規模が恐らく半分ぐらいに減るだろうというふうに考えられます。そういたしますと、現在の歳入構造が全く変わらない、全く伸びないと仮定いたしましても、その五百億という金はいわば関西の新空港に投じられる余裕が出てまいります。その金を、先ほど申しましたように、全額国費ということではなくて、成田でやっておりますような八割とか七割五分というようなものを借入金に頼って、その二割なり二割五分というようなものを空港整備特別会計から出資をするということにいたしますと。先ほど来申しましたように、環境対策費で減ります三百億、四百億の金が、それを二割に相当する事業費に換算いたしますと、千五百億とかあるいは二千億近くの工事ができる、こういう計算になるわけでございまして、もちろんそれだからいいんだということを申し上げるつもりはございませんけれども、空港整備特別会計という受益者負担で成り立っておる特別会計でございますので、私どもできるだけ工夫をしながら工費の節減には努めていきたい、あるいは工程の工夫をして安上がりにつくような計画をさらに進めていきたいと考えておりますけれども、そのような意味一般会計に多大の御迷惑をかけるというような性格のものではないということだけお答えをさせていただきたいと思います。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 後段の方はあなたの姿勢、あなた方の姿勢というのはよくわかりますがね。前段というのはちょっとよく聞けなかったんですが、計算全然してないと言われたんですか。
  154. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 厳密な計算いたしておりません。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 私はやっぱりもっと、していないと言ったところで、あなたのところからもらった資料ではGNPがどうだとかああだとかという形の、ちゃんと資料があるじゃないですか。あんたのところからもらったんだよ、これ。全然やらずにやったんですか、これ。そういうものを基礎にするというだけであって、こういうものをちゃんと乗数効果などを見るというようなことは考えるけれども、現実にはおれの方は計算しないんだということになるわけだが、そういうこと。
  156. 松井和治

    政府委員(松井和治君) ただいまのお尋ねは雇用の誘発効果というようなお尋ねだと思いますが、これは実は民間団体でいろいろと計算をしてもらっておる結果は私ども受けておりますけれども、私どもとして直接調査をしたということはないということを申し上げたわけでございます。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 わかりました。  そこでね、運輸省、神戸市案について検討してないと、市案そのものを知らないと、こう言われておるわけだけれども、兵庫県が運輸省に伝えている、神戸市案を、ということですね。そこで、十二月に坂井知事が行った。昨年の六月段階では市長が小坂運輸大臣と会ってる。市案ね。だから文書は、長谷川大臣になられてからの文書というのは、知事を通じて、知事が十二月に口頭か何かでもって伝えた。市長自身は前任者である小坂運輸大臣に疑義についてちゃんとただしているということがいま確認をしましたから明らかになりました。そうすると、内容全然知らないというのは、これどういうことだろうな。
  158. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど先生おっしゃいましたように、昨年の六月に神戸市長が小坂運輸大臣、前運輸大臣のところにお見えになったこと は事実でございまして、そのときに一枚の紙にポートアイランドの地図とその先に島の形をした図面をもってこられたことは事実でございますが、その際泉州沖空港の建設に取りかかるのが先決であるから、神戸沖の案については泉州沖が軌道に乗った段階で私どもとしても検討させていただきたいということで、その際その神戸市長のお持ちになった紙はお返しをいたしました。その時点で私どもは神戸市の案というものは承知してなかったわけでございます。ところが、先ほど申しましたように、その後兵庫県との協議が進んでまいります段階で、兵庫県側からポートアイランド沖約四キロのところにこれだけの規模の空港の島をつくりたいというお話を承っておりますけれども、その具体的な滑走路の方位がどちらを向いて、何度の方向を向いて、面積としてこのような形状のものであるというような詳細な図面をちょうだいしたわけではございませんし、私どもとしてはあくまでもポートアイランド沖約四キロのところに地方空港をつくりたいといういわば構想についてお伺いをしておるという段階でございます。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 それでは衆議院議員石井一さんの関西新国際空港の提案については御存じですね。
  160. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 承知いたしております。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 衆議院議員石井さんの提案ならば全部承知していて、政令都市の提案ならばお返しをするという姿勢は、これは大臣ね、さっき大臣から答弁いただきましたから今後改まっていくんでしょうけれどもさ、これはとても自治を尊重する立場に立つわれわれとしては、どっちが賛成だか反対抜きにして、こういう運輸省の姿勢は許すわけにいきません。しかもそれは政令都市ですからね。これはもう運輸省、ちょっとその辺の態度というのは今後明確に改めてもらわなきゃ困る。これはきつく注文しておきますよ。  そこで、それじゃたとえば石井さんの案でいきましょう。これとあなた方が言われているところのものの総額の総工費というのを比べてみるとどうなるんですか。
  162. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私いま石井先生の御提案になった案の詳細な数字、実は記憶をいたしておりませんが、実は私どもの部内での検討の結果でございますけれども、実は神戸沖について詳細な地盤調査がなされたわけではございませんが、一般的な調査の結果といたしましては泉州沖におきますよりも神戸沖の方が第一粘土層と言われる何と申しますか、水深十八メートル程度のところに存在する層でございますけれども、これが大変厚い地盤でございまして、つまり地盤改良しなければならない層の厚さが神戸沖の方がはるかに厚いということははっきりいたしております。しかるに、その石井先生の御提案の詳細な計算根拠というものは示されておりませんけれども、伝えられるところによりますと、その地盤改良費というようなものの計算が大変不十分であるというふうに、私ども専門家の検討結果として聞いておるわけでございまして、もしも私どもが仮に神戸沖に空港の島を建設すると仮定して私どもなりの計算をいたしてみますと、泉州沖と同じ面積のものをつくる限りにおいては、神戸沖に建設する方が高くつくという結果が出ております。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 そういう結果が出ているということになると、いわゆる再試算をされたということになりますね。そうすると、主計局はそういう再試算をされたわけですかな。
  164. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 私の方は運輸省から正式に提出されました案につきまして検討をしていくという立場でございますので、私の方といたしましていまお尋ねの神戸沖の問題につきましては特に検討をいたしてございません。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 これやりとりがかみ合わないとあれですから、私はそれじゃここで提案しましょう。神戸市案を受け取りにならなかったというのでありますから、私はここに写しを持っておりますからね、したがって、この写しを資料としてこの委員会に正式に提示をいたします。そしてそれを決算委員会として運輸省にお渡しをいたします。それをあなた方は再試算してください。そういう結果がどうなるかという形でもって、後ほど別の機会にここの論議はもう一遍深めさせていただきます。委員長よろしいですか。
  166. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 理事会で協議して御趣旨に沿うようにしたいと思います。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 そこで運輸大臣、これは漠たる話になりますが、石井さんの私案では若干お答えがありましたが、神戸市の市案であれやってみましても、たとえば神戸の場合は七千五百億ぐらいで上がると、こう言っているわけです。ここのところは再試算されてしかるべきだと思うのでありますが、少なくとももう私はこういう対案がありますからね。自治体、しかも権威ある自治体の対案があるわけですから、こういう対案についてはやっぱり十分検討をされる、そしてそういう検討の上に立っていま進められている泉州沖の問題についてゴーサインが出ていく、これは常道だろうと思うんですが、そういうふうに理解していてよろしいですか。
  168. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) お答えいたします、私の関係した範囲を。  十二月の十八日でしたか、兵庫県の知事が参りました。その際は大阪並びに和歌山県が十年間にわたって運輸省が百四十億もかけた泉州沖、これの三点セットについてのそれぞれ掘り返した話があって、兵庫県の知事からも三点セットについて御理解をいただいて、そして関西新国際空港をぜひ推進したい、こういう私は希望を申し上げたわけです。兵庫県の知事は、関西に新国際空港を置くことは賛成ですと。これが第一前提でした。しかし、泉州沖ということはなかなか明言されませんでした。その中に神戸沖に埋め立てをひとつ許可してもらいたいと、埋め立てを。それはひとつ島をつくりたいと。私の前ではそこに空港という話もはっきりはいたしませんでした。そして兵庫県全体に、但馬の方にもなかなか列車が通りません、国電が通らないということからすると、兵庫県とすれば地方空港というものを少しよけいつくりたい、こういう中の一つとしてその埋め立てをときには空港にしたいという話でありました。そこで、御要望はそれならば地方空港でございますねと。いま私たちの欲しているものは新国際空港。日本は二十四時間オープンしている空港は一つもございません。そしてGNPが少なくなったとかいろんなこと言われますけれども、各国から、いま三十数カ国から日本に国際線の乗り入れがあるわけですが、これを御承知のように伊丹の騒音対策に年間六百億かけているようなかっこう、あるいはまた成田の問題等々がございますために、どうしても新国際空港が必要だということは、これはもう国民全部がおわかりいただいておることですから、ぜひともこの泉州沖の新国際空港に御賛成してもらいたい、こういう熱願が全部御理解いただいたのでしょう、異例中の異例です、着工準備費ということで今度予算を計上していただき皆さんの御審議をいただくと。そういう中において将来これを安上がりにどうしていくかと。一生懸命やってみますというと、地盤が非常によかったために工事費が少なくて済むじゃなかろうかとか、あるいは一遍に大きなものをつくらないで、航空局長が言いますように一本滑走路をつくり、そしてだんだん延ばすというふうな方法もあるじゃなかろうかということなどでプッシングをしているところでありまして、それぞれの自治体のお話などは何でも聞きますけれども、いますぐに神戸沖に空港をつくると、それは地方空港であろうと、それは全然まだ海流の調査も湖の調査も住民のいろんな話も何もない、ただそれだけの話の中にそれを許可するとかしないとかいうことは行政上もこれはむずかしいことであるからという態度をとりつつ、この新国際空港の四十億円の着工準備費というものによって、皆さんの御議論のあるように安くして安全で早くこれが開港できるようなプッシングを省を挙げてやっているところを御理解いただきたいと、こう思います。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 後で再試算の問題は提起をしますからそれとしまして、この石井さんのやつでちょ っとだけ聞いておきたいんですが、完成後の経営がうまくいくのだろうかという疑義を持たれまして、第二期工事時点で千五百七十九億円の赤字が生ずる、その後雪だるま式にこれはふえていく、こういうふうに試算をされていますね。この点はどうなんですか。
  170. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど御答弁申し上げましたように、昨年一月以来、財政当局との間でいろんな前提を置きながら、多数の前提の組み合わせによって幾通りもの採算の論議をしてまいりました。先ほど申し上げましたように、工費の節減も可能になるという見通しもついてまいりまして、現在の成田並みの料金を取ってどういう採算になるだろうかというような計算を幾通りもいたしました。先ほど来先生が御指摘の、成長率をもう少し低めに見たらどうなるかというようなケースも計算をいたしておりますが、私どもの、現在運輸省として考えておりますところによれば、そういうようなかなり低めの成長率になったと仮定いたしましても、一応採算は十分に合うという結論になっておるわけでございます。  なお、今後国の経済全体の見通し等がさらにまた明らかになってまいりますならば、私どもとしてそれが見直しの必要があるというような結果が出ますならば、さらに見直しを行うつもりでございますけれども、現在私どもの検討結果では、石井先生の御懸念になるような、将来破滅状態になるというようなことにはならないという確信を持っておる次第でございます。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、私は計算の根拠を示してもらいたいと思うんですが、基礎となる数字、計算式、おたくのですよ、たとえば航空需要予測もはっきりしないものの一つなんですね。はっきりしていると言われるのかもしれません。運輸省の説明資料によりますと、あなた方からもらった限りにおいては、需要算出の基礎に実質GNPを置いているわけですね。昭和八十五年度までのGNPの成長率は、これは何%と置かれたわけですか。
  172. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 当初私どもが計算をいたしました際の成長率の見通しは、昭和六十年度までは六%であり、それから五年刻みに四・九、三・四、二・二というふうに逐次落ちていくというような予測をいたしたわけでございます。これは、第三次の全国総合開発計画の成長率を採用したということなんでございますけれども、先ほど申しましたように、その後財政当局との間でさらに成長率が変わった場合にはどうなるのか、その場合、そういう低成長率になった場合に採算を合わせるためには計画をどういうふうに修正したらいいのかというような、種々の論議をしたわけでございまして、幾通りもの計算をしたわけでございまして、先ほど申しましたのは、そのうちの一つの例を申し上げたわけでございますけれども、そういうことで、成長率につきましてもたくさんのケースを想定いたしておりますので、どれによるということを確定したわけではございません。したがって、今後、先ほど申しましたように長期の見通し等がさらに明らかになりました段階で、なお必要があれば再計算をいたしたいというふうに考えております。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 基礎となる数字、計算式を資料としてください。これは、たとえば六十五年度以降GNPに対する弾性値を用いられているんですね。これも数字を挙げてもらいたいと思うんです。いまも言われたとおり、三全総のときの数字がずっと使われている、私があなた方からもらった簡単な資料を見る限りにおいて。そこのところ私に誤解があるといかぬから。幾通りもあると言うんならば、その幾通りもあるのをみんな私見させてもらいますから、資料として出してくれますか。
  174. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 実は、これは先ほど申しましたように、財政当局との間で現在もなお継続して御協議申し上げている資料でございまして、まだ前提を、これでやるんだということを決めたわけでもございませんし、先ほど来申しましたように、今後の国の成長率の見通し等がさらにまた明らかになる段階が来ようかと思いますので、先ほど申しましたように、その際またさらに見直しも行う予定でございますので、現段階での中間的な検討結果についての資料の提出はひとつお許しを願いたいと思っております。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 そういう不都合な話がありますか。これは、国会が審査権をかけて、しかも私は、運輸問題については冒頭にも言っているように素人ですよ。言ってみれば、初めて勉強させてもらいましたよ。それは、あなた方の資料に基づいて。そうすると、あなたの答弁は、いろいろなものがある、こう言うんだよ。いろいろなものがあるのを見せてもらって勉強するのがあたりまえじゃないですか。そうして、これをどうするかという予算審議にちゃんとかかわっていくのがわれわれの役割りですよ。そんなふざけた答弁がありますか。資料を出してくださいよ。ここのところが明らかにならずにこの論議は進まないんですよ。ふざけてるよ、あなた。
  176. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど申しましたように、私どもの中間的な検討結果ではございますけれども、また、先ほど来申しましたように、前提条件を幾つも置いておりますために、大変たくさんのケースが想定されておるわけでございます。その辺のところを資料としてどういう形で御提出できるか、ちょっと検討さしていただきますが、私どものただいままでの検討結果ということで、御理解を、御了解を願うという前提で提出をさせていただきたいと思います。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 もちろんその前提はわれわれはわきまえて言っているわけですからね。私は、かなり過大なGNPの成長率の予測だと思って、いままでの資料では驚いているんですよ。したがっていま申し上げたようなことを言ったんです。通常、弾性値というのは成長率が落ちれば落ちると考えられるわけだけれども、その辺も明らかでないし、というようなこともありましてね。大蔵省どうです、このGNPの問題。——まあ、これは後で資料をもらってからもう一遍やり直しましょうか。——そうしましょう。  それからもう一つは、新経済社会七カ年計画、これはもう見直されると中曽根総理のお話でありますから、これはもう変わっていくんですがね。現実から乖離して政府の経済成長率も下方に修正されたりする。ですが、航空需要は新たな経済計画のもとで再計算されるのが私は妥当だと、大臣、考えるんですよね。そうしますと、収支の見通しもそうしなかったら出てこないわけですから。つくってみて、赤字が出ました、税金でめんどう見てくれませんかというんじゃこれは非常に困るわけでね。航空需要、収支見通しというものについても、これ幾つか、いままでの答弁を類推しますとあるのでしょうから、ここのところも資料として提示をしていただけますか。
  178. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど申しましたように、まだ残念ながら確定する段階に至ってないという御了解のもとで、私どもの勉強の途中経過についてどのようなかっこうで御提出できるか、ちょっと検討さしていただきたいと思います。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 先ほど大臣から三点セットのお話がありましたから、この問題で最後にしますが、兵庫県がまだ未回答であるというわけですが、ここの理由もそれぞれあるわけでしょう。これは、昭和五十一年九月二十日の「関西国際空港の計画に係る調査の実施方針について」の中で、関係府県——大阪府、兵庫県及び和歌山県の合意を得て決定するという形であるわけでありますから、こういう地元の合意というものをほごにすることのないように、このことだけは申し上げておきたい、きょうのこの機会に申し上げておきたい、そういうふうに考えます。以下の問題については、ずっと動いているところの資料に基づいて、次の機会——どうもきょうの運輸省決算、これで終わらないということになりますけれども、次の機会に継続的に論議をするということにいたしたいと思います。  国鉄総裁、非常に長い時間お持たせをいたしましたが、この一月二十七日に青函トンネルの先進 導抗貫通式が行われるということになったようでありますが、まずはめでたい、おめでとうと言いたいところですが、ちょっとそういうふうにいかないで、青函トンネルが完成したとしてもどこに一体メリットがあるのだろうか。けさの日経などもいろいろ報道をしているのでありますが、どうもかいもく見当が、いろいろ読むとつかなくなってくるわけです。総裁は、一月六日付の交通新聞で、あなたもメリットについてはどうもよくおわかりになっていないのではないかと読み取れる節があるわけですが、細川隆元さんとの対談の中で青函トンネルに関していろいろなことをおっしゃっていますが、それはよく覚えてらっしゃるわけでしょうね。
  180. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 青函トンネルは、ただ鉄道サイドだけの問題としてではなしに、北海道におけるもろもろの、何といいますか、経済社会生活の安定というようなことが一つと、もう一つは、ずいぶん前のことにはなりますが、台風の際に連絡船が転覆をいたしました。大変大ぜいのお客様の死亡事故を招いたといったような事情から始められた事業であることは御承知のとおりでございます。そこにトンネルができますことは、一つは、日本のトンネル技術と申しますか、そういうものの成果でございまして、大いに胸を張ることができるものと考えておりますし、また北海道の経済をいろんな意味で変えることになると思うわけでございまして、そういう角度では十分にメリットがあるということは明らかでございますが、半面この事業に着手いたしました当時とは様子がすっかり変わりまして、旅客で申しますと、東京と北海道間の旅客流動の九五%ないしそれ以上が、飛行機に依存するようになりましたし、貨物輸送につきましてもかなりの程度国鉄の鉄道で運ぶということが少なくなってまいりましたので、非常に意味があるとしましても、反面、経営的には事業開始当時に予測したような姿にはならないということになってまいりました。経営費、運営費を賄うのがうまくいって精いっぱいということでございまして、資本費負担をとうてい持ち切れないという状況になっております。ただ、そのことは、実はこのトンネルをつくりますための負担をどういう形にするのかということが決まらないままで今日に至っておるわけでございます。私どもといたしましては、このトンネルが、非常に、国土開発的な意味から言いましても、また安全の見地からしましても、重要な意義があるものであれば、他のすべての鉄道路線のように、全部私どもが金利を払ってまでやる事業としては必ずしもふさわしくないんではないかというふうに考えているわけでございまして、トンネルの意味ということは十分認めているわけでございますが、それにはやはりこの建設費の負担関係について一日も早くあるべき姿をお示しいただきたいということを政府に強く機会あるごとにお願いをいたしておる次第でございます。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 どうも、あの新春対談を読んでみて、二つ非常に大きな問題点があると思ったのですがね。一つは、誤った見通しの計画を立てておいて、その責任をほおかむりしている点なんです。年間八百億円の赤字が出てくる。これは赤字ローカル線を廃止して浮いた分を上回る大赤字になるでしょう。その責任は一体どこにあるのかというやつですね。これはほおかむりして、有事の際の安定剤なのだというあなたの論理になると、税金でこの赤字を負担してくださいというお言葉になっているわけですけれども、これはどこから出てくるんだろうという気がいたします。九百億から九百五十億と、きょうの日経の記事はそういう数字を出してましたけれども、赤字。三十年間続く、と。ここんところはどうなんですか。
  182. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 資本費の方は、よく言われておりますように、大体年八百億円ぐらいになるかと思います。もしこれは鉄建公団の方で金利負担をすべて行うと。ごく一部古い時代には出資とかそういうものもあったわけでございますが、最近ではほとんど借入金でやっておるという前提で借料計算をしますと、八百億円ぐらいのものを借料として支払わなければならぬということで、その数字には余り大きな動きはないと思います。今度、毎年の運営費はどうなるかということでございますが、実は、まことに申しわけないんですが、現在、まだ、あのトンネルをどういうふうに使うか、旅客輸送を在来線の形でやることは大体決まっておるわけでございますが、貨物をどう輸送するかということがまだなかなか決められないでおりますし、貨物輸送の場合に、船で輸送する場合とトンネルを使って輸送する場合で、サービスは明らかによくなりますけれども、コストとしてどういうことになるかということにつきましては、実は、私ども、いま全国的に貨物輸送計画を大規模に立て直そうと考えておりまして、少しきつい言葉で表現いたしますと、貨物輸送から鉄道はある程度撤退というところまでいかないと、国鉄経営がうまく行きそうもないという問題がありますので、トンネルだけの問題でなしに、わが国鉄の貨物輸送全体のあり方をいま真剣に検討しておるところでありますために、このトンネルで貨物輸送した場合の収支がどうなるかということは、いま計算しましてもまたこれ架空のものになってしまう危険があるものでございますから、余り詰めた計算をいましておりません。しかし、いずれにしましても、船で運ぶ場合と鉄道で運ぶ場合と比べまして、運営費が非常に安くなるということにはまずならないであろう。経費としては余り変わらないであろう。そこで問題は、収入がこのトンネルができればふえるかどうか、つまり利用客がふえるかどうかということでございますけれども、これは、何とも、いわゆる北海道新幹線が全く手つかずでございますし、また、いつになったらそれに手をつけるかがはっきりしませんので、まずまず運営費はよりいい方向、現在と比べて運営費赤字が減る方向にはなかなか向かないということではなかろうかということでございまして、それらを考えますとやはり八百億円の資本費負担プラスアルファの負担になっていく危険があるという現状でございます。  なお、責任論を御指摘になりましたが、その点は、国鉄といたしましては十分反省しなければならぬのではございますけれども、しかし、二十年前の状態と今日とでは、飛行機による輸送の状態というのは全く変貌をいたしたわけでございまして、そのときに予測しました旅客流動の予測数値に誤りがあったということについては、私どもの先の見通しがついていなかったという点を国民の皆様の前におわび申し上げなければならぬわけでございますけれども、しかし、それはその当時の知恵としては、何か偽りのことを言ったとか、ばかに過大に見込んだということではなかったんではないかということで、その辺を御寛恕をいただきたいと存じます。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 二つ目の問題点は、青函トンネルの主題と私は離れると思うけれども、これは冗談なら冗談なんですが、外国が攻め込んでくることを想定して鉄道の路線を建設していくということになっておりますね、あなたのお話は。国鉄は有事退避を目的に青函トンネルをつくっていく、そういうことを述べられている。どう見たってそういうふうに読めますね。陸続きになることによって北海道民に対する安定剤と。しかし、私は予算委員会の理事として北海道を回ったときに、自由民主党の堂垣内知事だってあるいは稚内の市長だってみんな迷惑な話だと。仮想敵国を設けていろいろのことを話してもらうのでというのは、むしろそういうような状態がなくなることこそ精神的安定剤だと、こういうふうに言われているんですが、この鉄道は軍事戦略上の重要な拠点であるから津軽海峡でも封鎖すればというようなことになっていったらどうなるんだろう。中曽根さんのきのうの「ワシントン・ポスト」の話じゃありませんが、やってみる、そうするととまってしまうのが必定じゃないだろうかと。北海道の人々の精神安定剤というこの論議、どうも国鉄総裁、しかも高木さんともあろう人が仮想敵国を描きながら、こういう発想でいらっしゃるんですか、これ。いや、あなた方の周辺で青函トンネルは何だかんだ という冗談まがいの話があることはいろいろ昔から聞いていますよ。しかし、少なくとも細川隆元さんと高木文雄さんとの新春の放談ではなくて対談ですからね。そこで明確に記事になりますと、これはもうわれわれ触れざるを得ませんので、どういう見解なんですか、これは。
  184. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私は国鉄の総裁の立場で申しますと、やはり御指摘のように経済的に引き合わないものを、言葉は悪いんですけれども、無理に引き受けさせられるということについては大変困ると思っておるわけでございまして、つまりそこで何ぼかの赤字が出るということになりますと、その分をほかの線区で稼ぎ出さなければならぬということになるわけでございますので、それは現実的に大変困ると。そこでわれわれとしては、やはりこれが非常に意義があるものであれば、旅客収入によってこの投資を回収するのではなくて別の形で、いわゆる公共的負担をお願いをせざるを得ないという立場でございます。たまたま私は以前、御存じのように大蔵省におりました関係もございまして、このトンネルを始めるか始めないかという当時に多少かかわり合いがありました。その当時の議論等を思い出しながらその対談をやったわけでございまして、私はしかし、この種の仕事についてその建設費を利用者の負担でなしに国民全体の負担としてお願いをするということは、そうひどく的外れな主張をしていることだとは考えていないわけでございます。
  185. 和田静夫

    和田静夫君 いや、そこのところはよくわかっているんですよ。私が言った、言ってみれば軍事目的的な発想でもっての談話になっていますよ。談話というか、話になっていますよね。あの細川さんでさえ、それは高い安定剤だなあなんと言ってやじっていますよな。ここのところは、あなたのもし精神構造がこれであるのならば問題だと。そこの答弁はぐらかされちゃ困るんですよ、頭のいい人はすぐそういうことをやるから。そこのところきちっと答えてください。
  186. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いや、どういう説明の仕方をするにせよ、私はこのトンネルの建設費は旅客の負担でなしに納税者の負担で処理していただくことを主張してもおかしくないんじゃないかと考えているわけでございまして、それはなぜかといえば、一つの表現の仕方としてはそういう精神安定剤的な役割りがあるんだからということを言いたいというふうに考えております。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 いや、後段のところはもうお聞きしないまでもわかっていますけれども、問題はその前提になる前段のところで、いま言葉をはぐらかして述べられない外国から攻め寄せられても云々というところで、仮想敵国としてあなたはそれじゃ何かを想定をされてこういう言い方をされたわけですか。青函トンネルというのは、あなたが大蔵省で関与したときからあなたの発想の中にはそういうものがあったということですか、そうなれば。
  188. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いや、その仮想敵国というのは大変ちょっと困るんですけれども、いずれにしても北海道の防衛というのは日本の防衛上非常に問題がある地点であることは間違いないわけでございますし、その場合に四面海に囲まれているという点で、つまり陸続きでないという点でウイークポイントを持っているということは、これは防衛問題としてはいわば常識ではないかと思うわけでございまして、そのことに、まあ言わずもがなであったかもしれませんけれども、そういう前提の、何といいますか、私の頭の隅にそういう考え方があることは事実でございます。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 いわゆる仮想敵国は、それじゃあなたの頭の中にあるその事実の仮想敵国というのはどこですか。
  190. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いや、仮想敵国ということを頭に置いての議論ではなしに、日本の防衛全体としてどう考えるかという場合に、北海道に問題があるということはこれは事実でございまして、私がどこが仮想敵国だというのは、ここで申し上げるのは適当でないんじゃないかというふうに思います。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 そこが非常に迷惑な話であるということは、予算委員会でわれわれが出て行った——われわれというのは院で行ったんですからね。院で行ったときに北海道の知事なり当該市長たちがたくさん異口同音に述べていることであって、それは国鉄総裁が青函トンネルの赤字問題の前提にそういうことをやはり頭に置かれながら、軍事利用目的などというようなことまで含んで頭に置かれながら、さらに話を進められていくということについては、これは厳しく私はその立場について責任を問いたい。そのことだけを申し上げておきます。  そこで、最後の自賠責ですが、運輸大臣に伺いますが、自賠責の特別会計から二千五百六十億円が税外収入に充てられるわけですが、これは運用益から繰り入れると理解していいわけですか。
  192. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) いま先生から御指摘のございました二千五百六十億、これは自賠責特会から一般会計へ繰り入れるという表現を形式上とっておりますけれども、これは後日、一般会計から自賠特会の方に繰り戻さなければならないというようなことにしておりまして、実質的には貸し付けであるというふうにしておるわけでございます。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 自賠責運用益の性格でもう一遍これ、あれしておきたいんですが、自賠責審議会答申の将来の保険収支の改善に資するための財源留保としてとっておくというやつですね、あなたとの間ですかな、僕は何遍も、あるいは運輸省とも大蔵省とも確認をして、あなた方の考え方というのは確認してきているんですが、これは生きているわけですか。
  194. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 自賠責保険審議会のこの運用益につきましての御答申は、四十四年、それから四十八年、五十三年、三回にわたりましてなされておりまして、将来の収支の改善のための財源として留保しておくほか、救急医療体制の整備、交通事故防止対策等に活用すべきであると、こういうような御答申をいただいております。今回の一般会計の繰り入れの措置は、実質的には貸し付けでございまして、その資金は将来にわたって保険契約者の利益のために活用するということはできるわけでございますので、自賠責保険審議会の答申の趣旨に反するものではないというふうに私ども理解しております。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 そこのところが私がきょう問題にしようと思ったところなんで、私はそうなっていくんじゃないかというような発想を持ちながら、ずっと論議を実はしてきたわけです。そうしたらもういよいよもって審議会の答申をどうも横に置いておいて、私が危惧をしておったような形のことにずっとなってくる。これは私がいつもずっと指摘を何回もしてきたように、われわれの主張のところに使われていくというような形になれば話はまた別ですが、そこのところは頑固にあなた方は防波堤を大蔵の側は引くわけだ。渡辺前大蔵大臣私に約束したけれども、一向にあれ進まぬと。もう一年もほっぽらかされているんだけれども、そういうことになっているんだが、そこのところは後から言うとして、これは私だけじゃなくて、衆参両院の論議というのは御承知のとおりあるのですが、今回の税外収入への繰り入れというのは運用益の六割ぐらいになるでしょう。そうすると大幅な運用益の繰り入れなんですね。そこで、いま局長が言われたような形の答弁ではどうもいかぬです。私は政策上の転換があったんじゃないか、そういうふうに思ったからきょう取り上げているんですが、これは銀行局と両方で、まず銀行局、答弁……。
  196. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 今回の自賠責特会からの運用益の一般会計への繰り入れ措置でございますが、運用益の六割といいますか、約半分でございます。  それで、先ほど自動車局長から御答弁ございましたように、非常に厳しい財政事情でございますので自賠責特会にたまっております運用益の半分を一般会計に繰り入れますが、自賠責特別会計におきましては当該繰入金相当額を資産として一般 会計繰り入れということで資産に残してございます。でございますから、一種の運用ということになるわけでございまして、要すれば流出でない、社内留保みたいな話でございます。したがいまして、基本的にはいままで御答弁申し上げてまいりました自賠責審議会の答申の方向でやっていくということには変わりがないわけであります。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 時間もないわけですから局長いいです、大体同じことを言われているような気もしますけれども。  しかし、たとえば借り入れというような表現であったら案外私の疑問わかなかったのかもしれぬのですが、繰り入れとこうなっているものだからそこのところで、さっきから後ほど返すんだと、こういうことを言われていますけれども、どうも政策が転換を——基本において答申はそのまま生かしていますと、しかしながら運用政策という意味においては転換をいたしましたと、いままで。そういうことでしょうな、いまの答弁、簡単に言ってみれば、政策運用とでも言いますか。
  198. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 私申し上げておりますのは、基本的には変わっておらないと申し上げたわけでありますが、確かに自賠責審議会の答申の中には一般会計へ繰り入れたらどうかということ書いてございませんから、はっきり書いてないことは事実でございますから、その意味においては変わったと言えば変わったかもしれません。ですが、基本的には変わっておらないということを申し上げておるわけです。
  199. 和田静夫

    和田静夫君 そうだから、やっぱり私が言ったとおりそこの部分はちょっと変わったのだ。  これは強制保険であって、ノーロス・ノープロフィットの原則です、利益が生じた場合は被保険者に還元されなければならないというそこの原則というのは、言われたとおり変わってないということ。
  200. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) そのとおりで変わってないわけであります。ノーロス・ノープロフィットはそれぞれの、何と申しましょうか、保険期間でございますね、保険料をお払いして二年間やるわけでございますが、その期間でノーロス・ノープロフィット、これは変わってないわけであります。  いま問題になっております運用益というのはノーロス・ノープロフィットの原則の外の話になるわけです。
  201. 和田静夫

    和田静夫君 したがって、将来の財源のバッファーとして残しておくということは以前ほどシビアではなくなってきた。ですかな、そうなると。そこのところもそうでもないわけか。
  202. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) それも従来と同じことだと思います。
  203. 和田静夫

    和田静夫君 それでは民間の方の運用益はこれは同様ですか。
  204. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 民間につきましても運用益が発生いたしますことは先生御指摘のとおりでございますが、民間の運用益につきましてもその運用につきましては将来の保険収支の改善のため留保するというのを基本としながら、先ほど御答弁にありましたような一部を救急医療体制の整備あるいは交通事故の防止等のために効率的に使用するという原則において変わりはございません。また、ノーロス・ノープロフィットも同じでございます。
  205. 和田静夫

    和田静夫君 局長ね、この事故の減少傾向——また最近ちょっと上がってるようですがね、バイクなんかのあれで上がってるようですが、しかしながら減少傾向というのはずっと安定的にこう進んでるというふうな見方でしょうかな、いま。
  206. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) いま先生おっしゃいましたように、二、三年前までは交通事故というのはわりあい低位に安定してきているような状況でございますが、最近バイク等の事故もふえたような関係で、事故は少し増加の傾向にあるというふうに私ども理解しております。
  207. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、従来からこの自動車事故対策の補助として運用益から補助金が出されていたわけですが、これは自賠責保険の性格からくるものである、というふうに理解しておくんですか。
  208. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 自賠責保険と申しますのは、私から御説明するまでもなく、保険金の支払いが少なければ少ないほど収支がよくなってまいるわけでございまして、事故が減ってまいりますれば収支はよくなりますし、事故率が保険料率等を算定した時点に比べましてふえてまいれば収支が悪化していくと、こういうふうに考えております。
  209. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、仮にこの交通事故率が、いままあ減少してきてまた上がってますからあれですが、運用益の使途にはおのずから節度といいますかな、そういうものがあるべきだと、こう理解をしなきゃならぬと思うんですが、たとえ財政がパンクしている状態であっても私は税外収入などという形で使うことはできぬのじゃないだろうか、できないのではないだろうか、これが自賠責法の性格から出てくる私はコロラリーじゃないだろうかというふうに思うんですがね。そういう理解の方が私は正しいと思うけども局長どうなの、これ。
  210. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 確かに先生おっしゃいましたように、私どもの自賠責特会から生じます運用益、これは保険契約者からいただいております保険料の運用から生じているものでございますから、そこから出てまいります運用益というものにつきましては、私どもといたしましても基本的には保険契約者の利益のために還元すべきものであるというふうに考えております。ただ、先ほど大蔵省の主計局の次長からお話ございましたように、五十八年度の財政状況が非常に厳しい状況でございます。そういうような状況一つと、それからもう一つは、そういうような厳しい状況に対応して運用益から運用益の約半分、二分の一を実質的にはお貸しすると、こういうことを緊急異例の措置として私どもとしても了承したわけでございますが、これは実質的には貸し付けでございます。先ほど御説明ございましたように資産上も、貸借対照表上資産として計上し、それから損益計算書の上におきましても損失としては計上しないという形をとっておりますので、後日これが自賠特会の方に返還された時点で保険契約者の方に活用すると、還元すると、こういう措置はとれると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  211. 和田静夫

    和田静夫君 何かきょうは解釈やらそんなところが全くあなた方と私と立場が逆になったような感じで薄気味悪いんですがね。私の方が何か非常にドグマ的なことを言ってるようにだんだん落ち込んでいってるんだけれども、しかし私は、自賠責運用益はこの自賠責の保険理論からして、これはもう何といっても税外収入として使うことは絶対的に認められない。これを税外収入として使うことは、この自賠責保険の原則を私は全面的に覆す。これはもう認めるわけにはいきませんよ。しかも、自賠責審議会に諮らずにやってるんですよ。いつもあなた方、審議会の答申がこうだこうだということを理屈にしておりながら、これはもう全然諮らずにやってるんですよ。財政当局が勝手に使うということはこれは言語道断ですよ。  私はこれは運輸省ね、この措置、これからも恒常的にずっとやっていくつもり。恒常的にやっていくつもり、これ。当面の財政事情その他のことがあるものだから、まあ大臣の政治的な判断だとか何だとかということになった所産のものかね。どうな、ここは。
  212. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私が運輸省に来まして、予算編成のときに、和田委員がおっしゃるようなことで、運輸事務当局、自動車局はこの問題について、立法の精神等々で非常に大蔵省との話し合いで異見を立てていることを知っておりました。そういうことからでしょう、総理大臣から私に直接話がありまして、来年度の予算は大変むずかしい、三兆円、六兆円、九兆円というふうに税収が不足するところ、予算をつくるためにどうしても自賠責、総理の口から二千五百六十億、一時お貸しを願いたい、こういう話でありました。私 は、事務当局の苦心を知っておりましたから、国務大臣としては、来年度の予算編成上大事なことでありますから、御賛成いたしましょう、しかし、それは貸し付けであり、お返し願うということ、そして運用に支障がないというふうなことだけはしっかりしていただきたいと、こう申し上げたことでありまして、こういう機会に皆さん方からこうした質問応答を通じて、むずかしい時代というものと、この自賠責関係の将来の大事な確保についての御質問あるいは御推進いただくことは非常にありがたいことだと思います。また、私が国務大臣としてこれに賛成したこの財政不如意のときの予算編成にとった私の態度というものも御理解いただきたいと、こう思います。
  213. 和田静夫

    和田静夫君 借り入れの条件というのはこれはどうなっているんですか。
  214. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) これは三年据え置きで、以後七年で償還していただくと、こういうことになっております。
  215. 和田静夫

    和田静夫君 最後ですが、私はこういうような方法による、大臣の精神的ないろいろのお話、悩みなどというのはわからぬわけじゃないんですがね。私は、こういうような方法による財政のつじつま合わせは実は許しがたいと思うんですよ。この問題についてはまた後日ゆっくりやりますが、あと一つだけ尋ねておきたいのは、損保会社の運用益の使用について、私はかねてからたくさんの論議をさせていただきました。自治体病院、いわゆる公立病院にも補助をすべきであると。救急医療の先端に立って非常な苦労をしているわけだ。そうすると、あなた方はすぐ、いや交付税で見ているったって、交付税なんというのは自治体固有の財源で、そんなもの見ているなんということにならぬわけで、そこのところもまあ、きょうはそこの論議をしようと思いませんが、補助すべきだと思う。そうすると、一昨年の行革特別委員会で、当時の渡辺大蔵大臣は、私に明確に検討を約束されたんですよ。政務次官ね、その後、その年の暮れの新年度の予算の論議、予算のいわゆる仕事をやられる段階でも、大蔵大臣とお会いをしていろいろとこのことで話し合ったことがありますが、しかし検討を約束されたままになっているわけです。ずっと経過してきているわけですが、その後どうなったのかということと、また、今回新しいいまのようないろいろの状況を迎えて今後どうされるのか、これはひとつ大蔵大臣の答弁を受けての答弁をここで求めるんですから、遠藤次官いかがですか。
  216. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 一昨年の行政改革に関する特別委員会におきまして、先生から御指摘のような御質問がございました。これに対しまして、そのときも大蔵大臣から御答弁申し上げたんでございますが、いわゆる公立病院、地方自治体の病院は、まあ言うなれば地方自治体が、バックアップをしている、これに対しまして日赤等の病院につきましては、その活動のかなりの部分を民間の善意あるいは寄附というものに頼っておるところでございますので、まあ民間の運用益の支出としましては、もっぱらそういった民間の寄附に頼っておるところに向けるのが適当ではなかろうかというのが一つ理由としてあったわけでございます。  それから、先生御指摘のように、地方自治体の病院が交通事故の救急医療体制の面において大変大きな役割りを果たしておりますことは、これもう申すまでもございません。したがいまして、こういった病院につきましても、救急医療体制の整備が充実いたしますことは大変望ましいことだと私どもも思っております。ただ、限られた資金の効率的な運用という角度からこれを見ました場合に、自治体病院は何といっても数が非常に多うございまして、先生御承知のように、全国で四千以上の病院がございます。こういった病院につきまして、その限られた資金を公平に、かつ適正に対象病院を選定していくということはきわめて困難でございまして、結果としては、小口で非常に薄くというようなことになりかねない。そうなりますと、救急医療体制の整備という面から見ますと、必ずしも効率的とは言いかねるわけでございまして、その点、日赤は全国に九十九の病院を展開しておりまして、全国的な規模で救急医療活動をやっておりますので、限られた資金をこういったところに集中的に投下するということの方がいわゆる効率的運用という面からは適当ではなかろうかというような判断をいたしておるわけでございます。  さらに、今後の動向でございますが、現在、保険収支の方向が悪化の方向にございます。したがいまして、この運用益はいままでも制限的に支出してきておるわけでございますが、これからは一層いわゆる社外流出といいますか、そういったものを抑える方向で、できるだけ将来の保険収支の改善のための財源として留保していきたい、そういった方向から考えますならば、ここでさらに新規に新しいその補助対象というものを広げるのはきわめて困難であるというようなことになるわけでございますので、何分とも御了承賜りたいと思います。
  217. 和田静夫

    和田静夫君 とにかく了承するわけにはいかないので、なお大蔵当局とずっとこれは懸案の問題として話を進めていく、受けて立ってくれますね、次官。
  218. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) この問題については、和田先生からの御指摘に対して前大蔵大臣が検討するとお答えになったということも承知いたしております。いま政府委員からお答えいたしましたように、民間損保会社の運用益の多寡、もちろんこれは収支状況とその運用益の多寡、こういったことの関連において、この運用益を日赤と民間病院以外に公立病院まで拡大しろということについては、検討に値する問題だということでお答えされたんだろうと私は思っております。  したがいまして、いまお答えいたしましたように、収支状況も必ずしも良好でない、したがって運用益についても限度がある、こういう状態の中で公立病院にまで拡大することにつきましては、日赤等の民間病院が公立病院あるいは民間の寄附によって支えられている、そういうところに重点的にいままでは運用をしておったわけでございますが、そういった公立病院についてやることが果たしてこの五十三年の自賠責審議会の答申の趣旨に沿うことになるのかどうか、沿えるような公正、効率的な運用ができるかどうか、そういった点大変問題があろうかと、こういうことで検討はいたしましても、なかなかそこの実現に向かって具体的に一歩踏み出すことはきわめて困難な問題であろうかと、こういうことでございますが、今後の問題として私ども勉強さしていただきたいと思います。
  219. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  220. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題とし、運輸省及び日本国有鉄道決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  221. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、昭和五十六年の一月二十日、ちょうどいまから二年前に当決算委員会で自動車運送業界の秩序確立と道路運送法等の抜本改正問題について質問をいたしました。その後二年を経過したわけでございますけれども、事態は改善の方向に向かっているというよりも、むしろエネルギー、環境などの制限、特に最近における経済成長の鈍化、こういった要因が折り重なりまして過当競争が激化しておる。業界の秩序が非常に乱れてきておる。特にトラック業界では許可運賃が全面的に値崩れをしておる。そしてそのことが経営を圧迫いたしまして、交通労働者の労働諸条件に大きな影響を与えつつある。これが実態であり、むしろ事態は悪循環を繰り返しているのではないかとすら思うわけでございます。  そこで、まず運輸大臣に、貨物輸送業界、特にトラック輸送関係の実態についてどういう御認識を現在お持ちなのか、まずお伺いいたします。
  222. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私も、地方におりましてはトラック協会などの会合にも出席しておりますし、大臣になりましてからも現場を視察し、休養施設等々も拝見しておるわけであります。  おっしゃるとおり、トラック運送事業というものに一番大事なことは輸送秩序の確立でございます。運輸省も従来ともにこれをやってまいりましたが、改善はしておりますものの、特にまた本年度からはトラック協会の輸送秩序改善指導員に対する陸運局長命を発しまして、業務の委嘱制度を発足させるなど措置を構じているところであります。  しかし一方、おっしゃるように、最近の貨物輸送需要の低迷などから、遺憾ながら一部には先生のおっしゃるようなこと、そういう中においては名義貸しとかあるいはまた過積載等、運賃のダンピング等々が行われていることも耳にいたしますので、こうした問題、事実は承知しておりますので、これが是正と申しますか、改善に一層の努力をしなきゃならぬのじゃないかというふうに考えているものです。
  223. 柄谷道一

    柄谷道一君 二年前の私の質問が一つの契機になりまして、いわゆるトラックGメンの補助員制度がとられるなど、運輸省で努力されていることは評価するわけでございますけれども、私は事態はそういった取り締まり強化という事態だけで対応できるものではない。むしろいま本質的な問題が問われている時期に来ているんではないかと、こう思うわけでございます。  そこで、私が前回質問しました後、五十六年の七月六日に運輸政策審議会が「試練のなかに明日への布石を」、こう副題をつけました総合的交通政策の基本方向を大臣に対して答申をいたしております。非常に長い答申でございますけれども、その中で、交通部門における事業規制のあり方について、一つは、「交通サービスの安定的かつ効率的な供給を確保するためには、各交通機関ごとに強弱の差はあるが、何らかの形で参入規制、引受供給義務、運賃規制等の事業規制を行うことが必要である」、こう片方で指摘しつつ、他方、時代の変遷に伴い不要となった規制が行われていないかどうかについて、行革等、政策課題の達成と企業の活力発揮という視点からこれを見直す必要がある。必要なものは残していくんだ。その必要だというものの基本は、秩序維持のために必要な事業規制は残していく。しかし、時代と非常にかけ離れた事業規制というものは緩和していく。これが答申の精神であろうと私は読み取るわけでございます。  この答申を受けておられます運輸大臣としては、いま私が申し上げたことが現在の運輸省の基本方針となっておると、こう理解してよろしゅうございますか。
  224. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 柄谷委員のおっしゃたように、そういうお話の基礎でもございますし、まさに、また五十六年七月の運政審の答申において指摘されましたように、交通部門における事業規制のあり方、これでございますが、それに沿うて、その方針をいまもなお尊重してまいりたい、こう思っています。
  225. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣は、いま御答弁でその基本方針を肯定されたわけでございますが、ところが翌年の五十七年八月十七日に公正取引委員会が、これに対する見解を発表いたしております。その見解の中には、トラック運送業について、現行の参入規制、すなわち事業の免許制の簡素化及び緩和、価格規制の自由化という方向で検討すべきだという見解を発表しておるわけでございます。  とするならば、もちろん公正取引委員会が競争政策の促進という立場からこういうことを書かれるというその立場は立場として理解できますけれども、いま大臣が肯定された運輸省の方針とこの公取委の見解というものは、私は、基本的認識において相当の立場の差があると、こう理解せざるを得ません。私は、この参入規制、運賃規制という事業規制というものについてまで、無定見かつ安易にこれを緩和しあるいは自由化するということになれば、現在それでなくても乱れている業界秩序というものが、一層過当競争を激化さして秩序を乱し、究極的には悪貨が良貨を駆逐するという結果すら招来するのではないかと憂うる者の一人でございます。  そこでこの際、公政は呼んでおりませんので大臣に確認したいわけでございますが、運輸大臣はこの輸送秩序を確立して、安定的、効率的供給を確保するための必要な事業規制は今後もこれを存続すると、こういうお考えと確認してよろしゅうございますか。
  226. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まあ公取は公取のお立場もあるでしょうけれども、これは何でも完全自由競争という線だろうと思うんです。そうしますというと、そのとおりでありますと、いまの時代に過当競争が行われて、まさに物によっては破滅に瀕する問題もたくさん出てくると思いますので、私たちはやっぱり秩序あるそういう輸送体系を整えるということに対して、ずっとそのまま邁進してまいりたいと、こう思っております。
  227. 柄谷道一

    柄谷道一君 次は、行政管理庁に御質問したいと思います。  行政管理庁は、陸上貨物輸送に関する制度と事業運営上の実態についてかなり広範囲行政監察を行われました。そして、その結果を五十七年の十一月に勧告書という形で発表されております。私はこの行管庁の認識をまず問いたいわけでございますが、この勧告書を通読いたしますと、戦後間もない前期、いわゆる昭和二十六年に制定された通運事業法ないしは道路運送法等が、その後陸上貨物事業を取り巻く大きな環境の変化によって実情にそぐわなくなってきておる。たとえば、需給調整が全く機能していない、自家用と営業用の境界が不明確で絶えず違法運送行為が行われている、許可運賃が適正に収受されない構造的な問題がある。こういった実態に目をつけられて、法の目的である道路運送事業の適正な運営及び公正な競争の確保、秩序の確立と業界の総合的な発展などの法第一条の目的が十分に機能していないという認識に立ってこの勧告を出されたものと、こう理解するんですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  228. 北村圀夫

    説明員(北村圀夫君) お答えいたします。  先生の御指摘のとおり、行政管理庁が昨年十一月二十四日運輸省に勧告いたしました陸上貨物の輸送事業に関する行政監察では、道路運送法の目的でございます輸送秩序の確立等が十分機能していない面があるというふうにしております。  この点の原因でございますけれども、御承知のように現行の道路運送法は戦後間もない昭和二十六年に制定されたものでございまして、その後の産業、輸送構造の変化等によりまして輸送需要が多様化、高度化いたしました結果、現行の事業規制と事業活動の実態とが乖離しておるというふうに考えております。
  229. 柄谷道一

    柄谷道一君 私もそのような認識は全く同感でございます。  そこで、その勧告書ではその前文の中に、いま御答弁がございましたように、現行の事業規制は事業活動の実態と乖離していることから見直しが必要である。こういう点を指摘しながら、今度は具体的改善の指摘ということになりますと、区域トラックの事業区域の単位拡大、業務範囲の制約及び規制のあり方の検討、宅配便の別建て運賃制度設定の示唆、及び通運事業の免許種別の統合というこの四点を取り上げているにしかすぎないわけでございます。  私は、これをずっと読みますと、前文ではきわめて壮烈と言ってはどうかしりませんけれども、問題の根幹というものに対する見直しを求めながら、具体的指摘事項という点では現行法の運用で対応できるような問題しか挙げてないわけですね。恐らくこれは運輸省の担当官は安堵の胸をなでおろされた勧告ではないかと、こう思うわけでございます。  そこでもう一度確認いたしますけれども、この 四点は当面の改善点であって、これだけやれば事足れりというんではなくて、やはり本当のねらいは法の全般的かつ抜本的な見直しを求めているものと、そうでなければこの前文はおかしいということになるんですが、そう理解していいんですか。
  230. 北村圀夫

    説明員(北村圀夫君) お答えいたします。  先生の御指摘のとおり、トラック運送事業に関する勧告につきましては、事業区域の拡大、一般区域限定事業に関する事業活動の制約の除去、そして宅配便の運賃のあり方の検討ということについて指摘しております。  当庁の調査結果では、これらの点につきまして現行規制が改善されました場合には、輸送効率の制約が除去されることになりまして、輸送需要に即応した効率的な事業活動が行えると、そのように考えております。
  231. 柄谷道一

    柄谷道一君 ということは、前文では、法の目的が十分機能しないような実態だと。その原因は、昭和二十六年、非常に時代が古い時代ですね。いわゆる輸送体系そのものが現在と比較にならない時代につくった法律が実態と乖離しているんではないかということを指摘しながら、いまの御答弁ですと、四点だけを改善すれば現行法をもってして新しい時代に対応できると、こうお考えなんですか。
  232. 北村圀夫

    説明員(北村圀夫君) 現行の事業規制が事業の効率的な運用ということで支障になっている点の除去、そうすることによりまして事業の効率的な運営が確保されることが重要だと考えております。
  233. 柄谷道一

    柄谷道一君 それ以上の法改正の問題は、この指摘に基づいて運輸省の姿勢というものにゆだねてある、こういうことですか。
  234. 北村圀夫

    説明員(北村圀夫君) お答えいたします。  トラック運送事業分野の事柄につきましては、事業区域の拡大あるいは事業活動の制約になっている事項の除去等によりまして、事業活動の効率化を確保する必要があるわけでございますが、当面、現行の法令の運用面での改善がかなり図られるものではないかというふうに理解しております。
  235. 柄谷道一

    柄谷道一君 いまの御答弁で、私はこの四点は当面の改善点である、——いま当面という言葉を使われましたね、この改善をやればある程度の問題の解決にはなるであろう、そういうお気持ちでの勧告だと、こう受けとめておきます。いいですね。  そこで、今度は臨調にお伺いするわけですが、交通労連では昨年の六月二十九日と十月二十六日の二回にわたりまして臨調に対して具体的提言を行っております。その内容は、要約しますならば、無定見な事業規制の緩和、自由化というものは輸送秩序というものを破壊し混乱させる危険があるからこれはもちろん反対である、しかし現行の道路運送法等は実態から遊離しているんではないか、そしてもっと端的に言えば形骸化している感すらある、そこで有効にして最小限の適正な事業法へ大改革すべきである。こういう視点に立ちまして、法の精神と実態の矛盾、旅客法と貨物法の分離、営業用と自家用の判定基準の矛盾とその是正、自家用輸送の位置づけとその適正化、事業者資格の強化、免許更新制の導入、事業区分の再検討、新規免許発給基準の明確化、用車の法的位置づけ、二段階免許制度への改革、運賃制度の改善、運賃管理機構の創設、そして運送取扱事業の適正化など、私はきわめてこれは建設的な提言であると評価しているものでございますけれども、十三の問題点とこれに対する基本姿勢というものを提示しておるわけです。  私は臨調の検討結果というものに非常に高い期待をかけておったわけでございますが、昨年十二月二十八日の臨調第三部会の報告を見ますと、これははなはだ失礼でございますけれども、行管庁の勧告書から一歩も出てないわけですね。文章によりましては全く同じ表現を使っておられるわけでございます。この点非常にいささかがっかりしたわけでございますけれども、臨調として法の抜本見直しという問題について検討が加えられたのかどうか、そして具体的この十三の提言というものについて真剣なメスが加えられたのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  236. 吉田俊一

    説明員(吉田俊一君) 今回の許認可の整理合理化の検討に当たりましては、御指摘の交通労連ほか各方面から相当数の意見が寄せられております。それらを参考にして審議を進めたわけですが、特に、いま御指摘ございませんでしたが、十月二十六日の指摘ですが、これはかなり個別具体的、しかも内容が業務の実態を踏まえた具体的な提言でございましたので、これにつきましては運輸省にその個別事項を直接事務的ヒヤリングいたしております。その結果、報告の中では「当面」という言葉を使っております。もちろん監察の結果それから交通労連等の意見を踏まえて当面こうすべきであると。十月時点では約四十近くにわたる個別具体的な指摘ございましたけれども、その中から中身としては事業計画の変更認可、軽微なものについてまで認可しておるという具体的指摘でございますので、それらについてはたとえば運行経路の変更、それから営業所の位置の変更等で軽微なものは届け制に移行するなど見直せという当面の指摘をしてございます。ただ、これはたとえば(2)事項でございまして、それ以外の事項につきましても事務的には運輸省に対して改善方を申し入れてございまして、ここで触れてない事項についても今後運輸省において規制緩和の方向で検討されていくことを期待しているわけでございます。  それから抜本的見直しでございますが、部会報告ではあり方論と当面改革すべき個別事項に分けてございますが、その中で免許区分、免許の基準、それから運賃制度等、規制内容について全般的な見直しを行い、そして規制のあり方について総合的に検討する必要があるという一般的方向づけの指摘はしているわけでございます。  以上でございます。
  237. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、大臣ですね、いままで行管及び臨調の方に対して質問したんですけれども、両者が一致しておるのは、当面こういうことは改善しなさいよと指摘はしておりますけれども、しかし、陸上貨物輸送の事業規制というもの及び法律の構成全般というものが、戦後間もない時期につくられたこの法律というものが実態と乖離しているのではないかという認識については完全に一致しておると思うんです。私は二年前の質問の際もこれを指摘したんです。そのときの大臣答弁は、外国の実態、法制等も参考にしながら十分に検討したいというのが答弁だったんですね。ところが、その後の運輸省の姿勢は二年前の答弁から後退いたしまして、概して運用で対処できるという姿勢に変わっているのではないかと、こう思うわけでございます。私は、運輸省が今日の時代に適合した新しい道路運送の哲学というものを確立すべき時期であろう、それに対してちゅうちょするということは、はなはだ失礼でございますけれども運輸省に新時代に対応しようという積極的な意欲、姿勢がないということか、もしくは政策立案能力がないということを告白するに等しいと、こう思うんです。大臣、この法律の抜本見直しというものについて検討を少なくともすべきだと、その時期だと思うんですが、いかがですか。
  238. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいま行政管理庁、それから臨調の方から御答弁ございまして、私ども行政管理庁、それから臨調の第三部会の報告でございます、これはまだ調査会の答申になっておりませんが、その御指摘につきましては、先生がいまおっしゃられたと同じような認識を持っておるわけでございまして、具体的に指摘された行管庁からは三項目、それから臨調の第三部会の調査会への報告にはそれにプラスいたしまして事業計画の変更認可等のうち軽微なものについては届け出制に移行するようなことを考える、こういうような御指摘がございます。この具体的な御指摘につきましては、これは直ちにできるだけ早くこれに対応措置を講じていく必要があろうというふうに考えておりますし、それだけではございません ので、先ほど臨調の事務局の方からもお話ございましたように、今後事業規制のあり方、運賃制度の規制内容、全般的な見直しを行いというような一般的な御指摘も受けているわけでございまして、当面の、私ども先ほど申しましたような何項目かのほかに、今後やはり時代に即応した輸送行政をやるあるいは運送業界の発展を図るというために、今後の課題としてやはり道路運送法のいろいろな規制について見直しをする必要があるということは考えております。
  239. 柄谷道一

    柄谷道一君 「年をへし糸のみだれのくるしさに」という歌がありますけれども、もうほころびたものをこう薬を張ったり、つくろい物をするだけで、果たしてこれだけ大きな物流の変化というものに対応できるのかどうか、これは私ははなはだ疑問だと思うのですよ。こんなことばっかり言っておってもしようがありませんから、具体的な矛盾について二、三点質問しますけれども、大臣、ごっつん免許というお言葉を御存じですか。
  240. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 知っています。
  241. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、御存じのように、これも矛盾なんですね。  いま貨物輸送における新規免許、これは実績主義によります。したがって、ある程度白トラの実績がないと、実績がないということで新しい免許が取れないのですね。ところが実績主義に基づいて白トラ時代の実績を査定し、その実績を認めて新規免許を与える、片やね。しかし、その実績は違法営業行為ですから、これはまことにけしからぬということで片手でごつんとげんこつを入れる、これがいまの免許制度の実態でしょう。私は免許を与えるときにもう一つの手でごっつんということでげんこつを与えて罰則を科す、こういうこれほど矛盾したシステムというものはないと思うのだけれども、これがまかり通っている。とすれば、私はこの免許制度自体についてもこれを見直して、公正な免許の発給基準というものを確立しなければならぬ。そうしなければこの矛盾は解消できないと思うのですが、いかがですか。
  242. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) いわゆるごつん免許というような表現で言われております処分、これは確かに違法行為に対する行政処分を行いながらトラック運送事業の免許を与える、こういう事例は確かにございます。ただ、その実績がなければ道路運送法上の免許を与えないというような仕方はしておりませんで、需給関係につきましては予定されている貨物輸送需要がどのくらいあるかどうか、これについて審査を行っておりまして、営業類似行為の実績がないと一切免許しないというようなやり方はとっておりません。  先生おっしゃいますように、ごつん免許の事例はございますけれども、輸送行為の実績がないと免許しないというようなやり方はとっておらないわけでございまして、この点は御理解をいただきたいと思います。
  243. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は事実問題をここで争ってこんな事例がある、こんな事例がある、僕は出せば幾らでも資料を持っていますよ。しかしそんなことで争おうと思いませんけれども、私は新大臣を試す意味でごっつん免許を御存じかと言ったら知っておられる、こういうわけですね。大臣非常に御勉強なさっていると私は感服するんだけれども、その大臣就任間もない長谷川さんが御存じなほど、このごっつん免許という制度は現存しているわけですよ。だが、いま局長の言われるのはたてまえであって、実態はごっつん免許というのは相当あるということは否定されないと思うんですね。これはやはり発給基準の見直しというものがいま必要だということをあらわすものだという点は了解されますね。
  244. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 道路運送法上のトラックの免許につきまして、免許をどういう基準で与えるか、これにつきましてはもう御案内のように、道路運送法上で要件を規定しております。  それからさらに、細部にわたりましては各陸運局長が免許の運送法上の以外の、あるいはそれをかみ砕いた基準というものを公示しているわけでございまして、それに基づいて、トラックならトラックの免許をしておるわけでございます。  それで、ただいまお話しになっておられますように、白トラの違法行為がなければ免許しないというやり方は少なくともとっておらないわけでございまして、違法行為があって実績があった場合であっても、これは需給の関係その他で免許する場合が確かにございます。しかし、そういう行為、実績がなければ免許しない、こういうやり方はとっておらないわけでございまして、免許基準に従って正しく、私どもは運用がなされている、こういうふうに考えておるところでございます。
  245. 柄谷道一

    柄谷道一君 この問題ばかりやっておってもしょうがないから、もう一点それではほかの問題を出してみましょう。  これは次は運賃ですね。私は、許可運賃というものは遵守されなければ制度としての意味はない、こう思うんです。ところが、経済成長の鈍化、それから物流量というものが伸びが鈍化したということによって、最近、過当競争が非常に激しくなった。これはもう局長大臣御存じのとおりですね。その結果、たとえば路線トラックの場合、五十七年度の改定運賃はもちろん、五十五年の改定運賃も守られていない。いま一般的に通用して営業されておるのは、何と五十三年度改定運賃というものが大体中心になって営業行為が行われている、それが常識だとさえ言われ出しているんですね。私は、これはまことに許可運賃制度の本質がもうすでにここで大きく崩れてきておるということを物語っていると思うんです。  そうすると、何のための事業規制かと。いわゆる事業規制の本質がこの問題でも問われることになるわけですね。  そこで、たとえばこういう問題を解決しようとすればいろんな配慮が必要だろうと思うんです。たとえば制度そのものの公正なあり方は何かという根本的な検討とあわせまして、繁雑な手続を簡素化する。たとえば速達料金制度などサービス水準というものの差が反映されるような制度というものに対して、確立のための検討を加えていく。また、共同一貫輸送における運賃制度というものを整備する。さらには、諸外国では運賃共同管理機構というものもあるんですね。こういう事態ももっとメスを入れて、過当競争を排除するためのいわゆる制度の創設ということにまで足を踏み入れてみる必要がある。私は、ただ守れ守れと言っても、物量の伸びが鈍化して、しかも一万五千と言われる業者がひしめいて激しい競争をしている中で、このまま放置すれば私は道路運送法の根幹すら揺さぶるような問題に発展していく可能性を多分に含んでおる、その徴候がすでにあらわれていると思うんですね。  こういうことがいまどうなっているか。交通労働者の労働時間の延長という形になってはね返ってきておる。交通労働者については、他の産業が——去年の夏と冬の一時金ですね、月数で多少下がった産業はあっても、金額面では維持ないしはふえておるんですけれども、交通労働者の場合、この金額面においてもダウンしているでしょう。そういうところにはね返ってきておると思うんです。  運賃制度について、どうです大臣、これ本当に真剣にお考えになるお気持ちはありませんか。
  246. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいま御指摘の認可運賃の収受、この問題はトラック業界にとって非常に大きな問題だと私ども思っております。  ただいま先生が御指摘になりましたように、認可運賃が一〇〇%収受されているかというと、私どもとしてもそういうような状況ではないと思います。  確かに、運賃のダンピングというような事例につきましても耳にしておるところでございますが、これをどうやって正していくか、こういう点につきましては私どももいろいろな努力はしているわけでございますが、なかなかむずかしい問題があるのではなかろうかと思っております。  ただいま御指摘にございました運賃の手続の簡素化の問題、これは私ども経済企画庁と協議し、できるだけ簡素化する方向でトラック業者の御負 担にならないような方向での事務手続をやっておりますが、国の物価政策との関連もこれあり、ある程度の手順は踏んでいかなければ認可までいかないわけでございます。  それから、サービス水準の問題、サービス水準に見合った運賃を設定しなければ、当然それの違反というのが御指摘のようにあるわけでございまして、この点につきましても別建て運賃を必要に応じてつくっていくとか、そういうようなことで努力はしております。しかし、さらにこの問題につきましても、いまお示しのあったような御提案につきましては真剣にこれから検討していかなければならないと思っております。  それから、運賃共同管理機構の創設のお話がございましたが、私ども調査によりましても、たしかこれは西独であったと思いますが、西独で運賃共同管理機構のような機能を果たしておる組織がございます。これはそれぞれの国情によって違うと思いますが、西独では確かに運送人が発荷主から着荷主までの荷物をどういうふうに運送したか、一々運送をした書類を機構の方に提出して、機構の方では膨大なそういった書類のチェックをして、それで取り過ぎであるか、取り不足であるか、そういうようなチェックをしているという事例は確かにございます。  ただ、わが国の場合に直ちにこれを適用することがいいかどうか、これは相当膨大な経費とそれから人員がかかります。私どもの調べでも、西独の共同管理機構の本体だけでも約九百人程度の人員を擁していると聞いておりますし、この共同管理機構以外にも共同管理機構の委託を受けてそれを手助けしているという別の組織があるようでございますので、これをトータルいたしますれば、ちょっと私どもで予想がつかないような人員と経費がそこに使われておる、こういうような状況のようでもございます。  したがいまして、直ちにそういうような制度導入というのは私どもとしては困難ではなかろうかと思っておりますけれども、認可運賃の収受というのは本当に大事な問題でございますので、事業者あるいは労働組合の方々、いままでいろいろな努力はしてまいりましたが、今後もさらに努力を続けていかなければならないというふうに私ども考えておる次第でございます。
  247. 柄谷道一

    柄谷道一君 冒頭に大臣が述べられましたように、必要な事業規制は残していく、それでなければ業界の秩序は保たれない。じゃ、必要な事業規制で何を残すべきかということになれば、一つは適正な参入規制の問題、一つは適正な運賃の規制の問題、この二つが二本柱なんですね。ところが、私、いまの質問で挙げましたように、時間の関係から具体的事例は別の機会にまた大臣ともお話ししたいと思いますが、その肝心な参入規制でもまだ問題はある。それから運賃というものはもう許可運賃の実態そのものが遊離する状態があらわれてきておる。となると、この法の目的というものはこの二つをとっただけでも、いまもう大きな壁にぶち当たっておるということは明らかなんです。これをやはり突破して改善していくというのがぼくは運輸省の役割りでなければならぬ、こう思うんですね。  そこで、そのほかにもたとえば白トラ、白バス、白タク問題、これも私は何回か指摘した問題でございますけれども、最近このレンタ、リース制度のほかに用車制度が慣行化してきておるとも受けとめられるわけでございます。ところが、これは海運業界で行われている船舶の所有と運航の分離という形態が逐次陸上にもあらわれてきておるということをこれは意味するものだと思うんですね。ところが、現行法では用車制度というものについて何らの位置づけもされていない、したがって、現行法でも全く対応できない、こういう問題もありますね。さらに、自家用、営業用の区分の問題につきましても、現在は自己か他人かという需要の対象と、自家用の有償運送の禁止という判定が基準になりましてこの区分が行われているわけですけれども、貨物の場合には売買問題というものがこれに絡んでまいりますから、概念の矛盾というものが生じておる。これはもう自動車局長よく御存じの実態だろうと思うんですね。たとえばこのためには、主たる業務が運送なのかその他のものであるのかという主業務基準に改めるということがより妥当ではないかという説がいま非常に強いわけですね。また、現行法では自家用運送も対象になっているわけですから、野放しの実態を改めて所有手段のほかに運用のチェック機能というものの充実ということが必要ではないか。これもよく叫ばれている指摘点でございます。さらに大型バスや大型トラックというものが個人の資格で簡単に所有できるということ自体が、一体輸送秩序との間にどういう関連を持ってきておるのか、こういう点に対してもメスを入れなければならない。また、運転免許さえ持っていればいい、二種免許さえ持っていればそれでいいんだというんではなくて、やはり営業運送上の資格要件というものについてもさらに整備する必要があるんではないかなど、私は現在の営業類似行為というものをただ取り締まるだけでは解決されない。臭い物には元を断てという言葉がありますけれども、やはりその根源にさかのぼっての検討、そしてその検討結果に基づく適切な運輸省の体制づくりというものがなければこの問題は解決できない。これは二年たっても改善されてないんですから、御努力はわかりますよ。そんな現状にある、こう思うんですね。その点大臣、自動車局長、専門的なことはいいですけれども、お考えとして私の考えに同調されませんか。
  248. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先ほど柄谷委員がおっしゃったように、「年をへし糸のみだれのくるしさに衣のたてはほころびにけり」、これは安倍の貞任が義家に追っかけられたときです。何さま昭和二十六年道路運送法ということでございますから、全般的にそれから以降の日本というのはどれだけ自動車、車が発達したかということでございますし、また日本の今日の経済発展が物流の効果にあることも事実でございます。そういう中に幾多の矛盾、幾多の変化、抵触するものがあることもこれは当然わかることです。それをただ一遍にすぱすぱと切るようなわけに、人間の経済行為ですから切るわけにいかぬというところに苦心の存するところも御理解をいただけるところと思います。そして問題は、私たちも選挙区におれば、やっぱりさっきのごっつん免許じゃありませんけれども、そういう実例にぶつかって陳情を受けることもある。そんなことで多少の問題はわかっておりますが、そういうものをどういうふうに一刀両断にやれるかどうかということだけはこれは御理解いただきながら、こうした場合においてのあるいは実情の御報告の中に、運輸行政としてどうスムーズに御期待に沿い、物流環境をよくやり、いままでの原則が守られつつやっていくかということについて、十二分にひとつ慎重ながらやってまいりたいと、こう思っております。
  249. 柄谷道一

    柄谷道一君 検討されるというお言葉をいただいただけでも一歩前進なんですが、これ通産省にも運輸省にも流通対策本部というのがあるでしょう。これ考えてみると、通産のは消流主体の流通対策であり、運輸省は物流主体の流通対策なんだと、これあえて言えばそう分けられると思うんですけれども、これは十九世紀時代の発想ですよ。私はいまやもう消物一体の時代ですよね、これ。こういうことになると、私は省別に検討しているものを通産的視点、運輸省的視点というものが一体になっての新しい時代における物流対策というものの検討の場というものも必要になってくる。  時間がありませんので、これ大臣にお伺いするんですけれども、私は労働大臣時代の手腕というものを非常に評価する者の一人なんですが、いま運輸省には輸送秩序確立労使懇談会、これは五十七年に発足しまして、年一回か二回運営されておるようですね。政労使会議、これは五十五年に発足して、これは年一回の開催。それから物流政策懇談会、これは政労使構成。いろんな懇談会やら何やらあるんですけれども、ぼくはこれはいまの大臣の意欲に比べて十分に機能しているとは思えないわけです、関係者には失礼かもしれませんけ れども。それは一夜明ければ問題解決というずばりの解決はできないことは私もよく知っております。しかし、少なくとも新しい時代に対応して法体系全体を見直し、事業規制のあり方についてメスを入れ、そういう検討の場づくりぐらいはいましていかないと、糊塗的な対策では私は問題を一層混乱させ、問題を一層深部に押しやる結果になると思うんです。私は名称その他は大臣の御手腕に期待申し上げますけれども、私は繊維産業の出身ですね。繊維は何回か産業の危機を乗り切ってまいりましたよ。それは公益・政・労・使四者構成で深く産業政策を検討し、具体的な検索を行ってきた。そのことを通産省の大きな政策の根幹としてこれを取り入れてきた。そのことに対して四者が相共同してその危機を突破してきた。その事例は長谷川先生もよく御存じのところでございます。運輸大臣になられたんですから、ひとつ四者構成の機関でもつくって、介在するもろもろの問題について意欲的に取り組んでいこう、これだけのひとつ意欲をお漏らしいただきたい。そのことを求めまして私の質問を終わりたいと思います。
  250. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) こういう複雑になった行政機構でございますし、それだけにまた総合行政というのは必要だろうと思うんです。おっしゃるように、あなたが繊維関係で四者構成、その場合は自分の身を切られるつらさを耐えたものもあるわけです。そういうことからしますというと、いま私的懇談会か知りませんけれども、それぞれわが省の中に官公労なりあるいはそういう会合を持っているわけでございますから、そういう意見等々、いままでどんなことが行われておるか、私もフォローいたしまして、総合行政の立場からやはりみんなと御相談をする機会というものも考えなきゃならぬのじゃないかな、こういうふうな気持ちを持っていることを表明いたしまして答弁といたします。
  251. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 航空行政全般についてお尋ねを申し上げたいと思います。  昨今の世界全般の不況と申しますか、こうした状況に活性化の道を与える手段としても、この輸送手段の持つ役割りというものは非常に大きいかと存じます。年々歳々その期待もふくらんでくるわけでございますが、とりわけこの航空機による輸送というものは年々歳々発展の度を加えております。午前中も同僚委員の質問の中で大阪の新国際空港の設置をめぐるやりとりがございました。そうした問題は私どもの現在居住する愛知県においても大変熱心な要請がございます。  まず最初に、そうした航空行政の基本的な問題として、現状における日本の空港というものはこれで十分足り得るのかどうなのか、そして、もし足りないとするならば将来どうしなければならないのか、それから外国航空会社との乗り入れをどうしなきゃならぬかという大変基本的な問題がございます。まずそうした問題の前提になるべきこの日本の現在の空港整備という問題、果たして十分であるかどうか。また将来展望を考えてみた場合に、運輸省としてどういう展望に立ちながらビジョンを描いておられるのか。またさらに、日本が世界への路線を確保するために抜本的な改革というものが当然必要になってくるでしょうし、そのためには国と国との交渉というものも当然これから積極的に間断なく推進されて、その成果をおさめていかなければならない等々の問題があろうかと思います。こうした、この基本的な問題について現状でいいとはお考えになってらっしゃらないと思うんですね。ならば、将来の日本の航空業界というものはどうあるべきか。当然行政の立場にある運輸省としてはそれなりの今後の指導というものも続けていかなければならない。そうした面についてまず所信を伺っておきたいと思います。
  252. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先生ただいま御質問いただきましたように、わが国の空港の数は、現在公共用ということで使われております飛行場の数七十七ございます。このうち定期航空の就航していない空港が幾つかあるわけでございますが、島の、離島の空港も含めて七十七ということでございまして、この数は最近、ここ五年間余りではほとんどふえてない状況でございます。もちろん昭和四十年代の初めごろまでさかのぼりますと、その当時空港は五十二ございました。それから見ますと二十五ばかりの空港がふえたわけでございますが、私どもといたしまして、現在のこの七十七の空港の分布を見、またその能力を見た場合に、御指摘のように決して十分なものとは考えておりません。  まずその第一点は、日本の航空の特性でございますけれども、日本の航空路というのはすべてが東京、大阪中心でございまして、どうしてもこの二つの大きな拠点と地方とを結ぶ路線というのが最も各地の要望の強い路線でございます。しかるに、御承知のように、羽田空港と現伊丹空港につきましては騒音の問題、あるいは羽田の場合にはもはや管制の限界に近づいておるというようなことがございまして増便ができないような状態でございます。そういう意味で、まず第一の問題といたしまして、首都圏と近畿圏の空港の整備というものを緊急の課題として取り上げていかなければいけないという問題がございます。  第二に、現在七十七空港があると申し上げましたが、そのうちでジェット機が飛び得る空港は現状では三十二でございます。今年度末で二つふえまして三十四になりますけれども、まだ半分に至っていないわけでございます。そこで、将来の航空機の機種の変化を考えますと、プロペラ機がリタイアして小型ジェット機に移り変わっていくという趨勢はかなりはっきりいたしておりますので、現在まだジェット機の飛び得ない空港については、小型のジェット機が飛び得るぎりぎりの限度といたしまして、滑走路を二千メートルまで拡張するという要請がございます。現に、十八余りの空港についてジェット化を進めておりますけれども、このジェット化の要請にこたえまして、各地の空港の滑走路の延長なり、あるいは場所を移して新空港を建設するというような要請にこたえていくという必要性がございます。これが第二点でございます。  そういうようなことで空港を今後整備してまいるわけでございますが、なおかつ現状におきましては高速交通の恩恵に浴さない地域が日本の各地に残されております。そういうところに鉄道を引きあるいは高速道路を引くということに比べますと、空港をつくるということの方がはるかに経済的であるということもございますので、将来、これは航空輸送需要によりますけれども、現在残された空白地帯に空港をつくっていくというのも、一つの長期的な課題ではないだろうかというふうに考えております。  第四に、先ほど申しましたように、わが国は大変多くの離島を抱えております。離島につきましてかなり空港の整備が進んでおりますけれども、なおかっかなりの人口を擁しながら空港のない離島がまだ幾つか残されております。こういうようなところに、ごく小型の航空機でもいいから離発着できる空港をつくるというのも、これからの一つ仕事ではないだろうかというふうに考えております。  以上が空港についての比較的短期ないしは長期のビジョンまで含めたお話を申し上げたわけでございますが、そのようなことで空港が整備されますと、当然のことながら航空機がふえてまいります。また、航空の輸送需要は現在低迷しておりますけれども、長期的にはまだまだ伸びると予測されますし、そのような場合、機数がふえてまいる航空機を安全にかつ効率的にさばかなければならない。こういうことから、現在日本の各地の航空路を従来の古い保安施設から新しい近代的な保安施設に取りかえて、VORという新しい航空保安施設をつなぐ形での航空路の再編成あるいは複線化を図っております。このような傾向は、今後の機数の増加に応じてなお必要性は高まってくると思いますので、できるだけ早く全国的なVOR航空路の設定、そうして主要な路線の複線化というようなことを進めまして、航空保安施設の充実に努めていきたい。  なお、航空保安施設につきましては、大変技術が日進月歩で進んでおりますので、諸外国の研究調査等とも連携をとりまして、新しい次の世代の航空保安施設の調査開発にも努めていきたいというふうに考えておるような次第でございます。  そのようなことで、第三に、そういう航空機を使いましてこれを行います企業の問題でございますけれども、現在御承知のように定期は大きい会社が三つと、あと地域的な輸送を受け持つ会社が別に二つございまして、国内は五社で賄われておるわけでございますけれども、それぞれの企業がなお一層経営の効率化を図りまして、体質の改善に努めていき、良質なサービス、安全なサービスの提供に努めていけるような、そういう体質づくりを今後進めていく必要がある、以上のように考えておる次第でございます。  空港から始まりまして企業までかけ足の御答弁になりましたけれども、大体以上のようなことを考えて今後の航空行政を進めていきたいというふうに考えております。
  253. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 日本列島というのは山岳列島でございまして、きわめて平地面積の少ない、もう実際問題としては空港の場合飽和状態になっているのではないかなという、そういう心配がございます。いま御答弁がありましたように、たとえばYS11からジェット化へという、そういう問題も時代の要請に従って当然進めていかなければならぬ問題。しかし、そうなると空港自体相当面積を必要とするわけでありましょう。こうなってくると、今後、いまおっしゃられた中期、長期のビジョンに立って、果たしてそういったことの整備の可能性というものが考えられるのかなという、素人的な発想でございますけれども、そういう疑問が一つ出てくるわけです。整備する以上はそれなりの地域の住民あるいは国民の要請ということと相まって、当然拡幅もしなきゃならぬ、延長もしなきゃならぬという問題を含めた、それから騒音公害という、こういった問題の配慮も当然考えていかなきゃならぬというような問題が必然的に出てまいります。ですから、果たしてその問題が十分に整備されていくことが可能なのかなという一つ疑問。  それからもう一つは、やはり日本ではきわめて国際空港が少な過ぎるんじゃないかという感じがいたします。アメリカの例とはこれちょっと比較にならぬと思うんです。アメリカは国土が広過ぎますから、日本からの乗り入れも七つ以上ですか、いまアメリカに対しては。ただ、日本に対しては、いま東京とそれから大阪と那覇、この三つしか外国の航空機の乗り入れが認められていない。こういう状況をかんがみますと、この余地がむしろまだ残されていはしまいかなという感じがするわけです。しかし、それでもいま申し上げたように、もう少ない平地面積ではこれは絶望に近い。そうすると、海岸を埋め立ててそこに新しい大阪のような、堺のような新しい工法によって空港をつくる以外ないんではないだろうか、そういう感じがいたします。  そういうようなことを念頭に置きながら、外国のお客さんに対しても利便を図るということになった場合、成田というのはきわめて不便なんですよね。利用した人たちは痛切に感じているわけです。できるだけ都市部にすぐ入れるという、そういうところが一番望ましいかと存じますけれども、いずれにしても、もういま内陸部の空港というものはこれは考えられないと。ただ、大きな地域からいけば北海道に一つ、あるいは東京はすでにございますから中部地域に一つ、関西、あるいは九州、こんなところが最大公約数として新しい国際空港の設備というものも当然必要になってきはしまいか。それも一挙にという、いま硬直した財政下の中でそれを進めるというのは漫画みたいなことでございまして、とうてい不可能でございましょう。  しかし、もうすでに名古屋の場合は何回か知事を通して運輸省に対して要請がなされてきたわけです。オリンピックの誘致が失敗したために日の目を見なかったという経過がございます。そういった点についても、つい先ごろ——いま愛知県は知事選挙をやっておりますけれども、前の知事の時代に、つい最近も長谷川さんにお会いをして、そして強力な要請をいたしたと、しかし大分後ろ向きになったと、その答えは。がっかりしちゃったわけですよ。先ほど長谷川さんが大変前向きなお話をなさっているわけです、やはり新国際空港の方へ重点を置いた今後の取り組みというものが非常に必要ではないかと、日本のこれからの経済発展を考えた場合。それとちょっと矛盾しはしないかなという、先ほど答弁を伺っているうちに感じたわけです。  こういったこともあわせて、政治判断として、これはもうやはり大臣でなければ、こういったことをこうするというような方向——まあ大変失礼ですけれども、大臣になられてまだ一カ月そこそこですから、いまいろいろと検討なされている段階で、明確にお伺いはできないかもしれませんけれども、しかしそれなりの抱負というものは当然お持ちになっていらっしゃるんじゃないか。いま申し上げたようなそれらのことを含めて、将来、日本の空港と航空業界はどうあるべきか。先ほど航空局長のいろんな具体的なそういうお話がございましたが、それを含めて、政府としてはこうしていきたいという、それをお聞かせいただきたいわけです。
  254. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私が先ほど関西新国際空港に対して申し上げたことと、また名古屋については違うというお話がありましたが、私は十数年もかかって、百四、五十億の調査費を使って関西にひとつ国際空港をつくろうと。それは、日本は二十四時間空港を一つも持っていない、こんな国でありますから、その国民的願望がようやくにして着工準備費というものがとれた、これを一つのきっかけにして二十四時間空港、それをまた皆さん方から御声援して質問していただく、これがまた一つの世の中に対するPRにもなる、こう思っているわけです。  名古屋の話は、先だって仲谷知事が来まして聞きました、陳情は。私は、渋谷さんだから率直に申し上げますけれども、片っ方に埋め立てして、そして採算性でさえもいま大蔵省に言われ、皆さんの中にも採算が合うか合わぬかと言われている。そのときに、名古屋にはいま一つ飛行場がある、これはまだ余裕もあるらしい、そのときにもう一つ、御要望でもあるけれども、島を一つつくってそういう飛行場は、リップサービスはいいけれども、さっとそっちに話として乗っていくことは、これはちょっとまずいんじゃないかということ、そういう印象がときに後ろ向きというふうに言われたことだろうと思いますが、実際の気持ちといたしますと、とにかく関西新空港がここまで手がついたときに、地元で話があるからといって名古屋の沖合いの方にもう一つの国際空港はどうだろうかな、こういう気持ちもお察しいただきたい、こう思います。
  255. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま伺っていますと、決して将来はまんざらでもないと。遠い将来か近い将来かわかりませんけれども、やはり日本の将来の方向を考えてみた場合に、そういう輸送手段の整備ということの一環として、空港整備も当然二十四時間の空港があってほしいという、これはだれしもが願うことだと思うんですね。  しかし、客観的な条件がそれをいままで許しませんでした、内陸空港が多過ぎたために。しかし、やはりその点も含めて、将来展望に立ったこれからの強力な推進、実現というものが当然必要ではなかろうか、その判断に立っていただいて、いまこういう情勢だからなかなかさっとこういう、採算が合わないからということじゃない、あるいは将来に至って採算が合うかもしれない等等、いろんな問題がございまして、中京財界と一口に言われておりますけれども、強力な支援があることを実は私、伺っています。細かくは聞いておりませんけれども、非常に乗り気であると。何とかこの勢いの芽を摘まないように、一挙に実現の方向へ持っていってもらえばなというのが、愛知を中心としたあの辺の、岐阜県にしても三重県 にしてもそういう御要望が非常に強いわけですね。これも十分御考慮の中に入れていただいて、今後の対応策の一環としてぜひお取り上げをいただければなと、願望を込めて申し上げておきたいというふうに思うわけでございます。  これは何も地元だけの問題じゃない。先ほど申し上げたように、北海道も私、必要だと思っているんですよ。九州も、しょっちゅう相乗りができるような、そういう国際空港の整備というものが当然必要であろう。やはり外から来るお客様が実にその利便を感じられると、非常に快適な旅行ができるというような印象を与えてお帰しすることも、これは日本のために大変結構なことではなかろうか、素人的な考え方かもしれませんけれども、常々そんなことを考えておりますがゆえに、その点に触れさしていただいたわけでございます。  さて、そうした問題を念頭に置きながら、日本の現在の航空業界というと大手は三社、先ほどの航空局長の言われるとおり。それから地域的な航空会社としては二社と、こういうことになっております。いろんな資料を中心にして考えてみたりいろんな方々お話を聞いておりますと、まあ壮絶なこの業界における対立が厳し過ぎて果たして利用者のための航空会社なのかというような印象を深める場合がございますね。まあ航空権益というのは申すまでもなく利用者全体、国民全体の共有財産でありますから、常に視点をそこに注ぎながら今後の利用者の利便をどう一体図っていくのか、これはまあいろんなものを含めてのことでございますけれども、現状においてこのまま推移するとするならば、日本の航空業界というのは世界の航空業界から立ちおくれてしまうんじゃないかという印象を強く受けるわけでございますけれども、この点についてはどんなふうに行政当局としてはお考えになっていらっしゃるのか。
  256. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先生御指摘のように、現在航空三社は昨年の一月以来需要が低迷しておりますために、いずれも厳しい経営状況にございます。そういうことで各社とも本来こういう時期に体質改善のための努力をするということと、それから業界の協調を図って、お互い悪い意味の競争ではなくて、航空需要の喚起に努めるという時期であるというふうに私ども考えて、常々三社に対しまして足を引っ張り合うようなことをするなということで指導をしておるわけでございますが、残念ながら末端に来まして、ある程度先生の御指摘のような競争会社間における悪い意味の競争が起こっているという話も、私ども時折耳にするわけでございます。これは決していいことではございませんし、私どもとしては今後とも先生の御指摘のように、あくまでも利用者のためということを念頭から離さないように、各社それぞれ協調し、かつこういう厳しい状況のもとでこそ、その経営の改善に努める絶好のチャンスじゃないだろうかということを考えております。そういう方向で今後とも各社を指導してまいりたいというふうに考えております。
  257. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そこで、一口に航空憲法と言われている四十五年の閣議了解、それから四十七年の大臣通達、これは果たして着実にまた誠実に守られているんであろうかなと、これは部外者が見た場合でもそういう疑念を抱かざるを得ない。なかなかあれよくできていると僕思うんですよ、あの閣議了解も大臣通達も。しかしながら、それが遵守されているならば、いま局長がおっしゃったように共存共栄のできる方向へお互いにその足りないところを補い合って、もっと新しい発展というものが航空業界においてもとられたんではあるまいかという印象がぬぐい切れないんですけれども、その点はどうなってましょうか。
  258. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 四十五年の閣議了解、四十七年の大臣通達ができまして、そこにはいろいろなことが書かれておるわけでございますが、まず第一に今後の航空機材の大型化、ジェット化を推進するという一つの方向が書かれております。これは先ほど申しましたように、それを受け入れるべき空港の整備ということで私どもも努力をし、各社もそれぞれ新鋭のジェット機の投入に努めまして逐次実施してきておるわけでございますが、なおかつ先ほど申しましたようにジェット化空港の数がまだまだ十分でないという意味におきましては四五・四七の線が完全な意味で達成されているという状態にはまだほど遠いかと思います。しかしながら、着実にこれは進められておるというふうに私どもは考えております。  それから第二番の問題といたしまして、東亜国内航空に将来幹線にジェット機をもって参入することを認めるという条項がございます。これにつきまして五十六年から幹線への参入を始めまして、昨年その増便を、私どもこの空港の事情の悪いときではございましたけれども、かなりの無理をして東京の発着枠を捻出いたしまして、これを東亜国内に与えることによりまして幹線の増便を図ってまいったわけでございます。  それから第三点といたしまして、主なローカル線をダブルトラック化しろということが定められております。この点につきましては実は主な路線と申しますのはどうしても先ほど申しましたように、東京、大阪が起点あるいは終点になるような路線になるわけでございますけれども、羽田の能力が成田ができますまでの間はもうとてもふやすような状態ではなかったわけでございます。そこで、成田が開港いたしまして、五十三年に国際線が成田に移った、そのあいた枠を利用いたしまして五十三年に大幅なダブルトラック路線を開設を認めたわけでございまして、現在ダブルトラック路線は九路線に上っておるわけでございます。ただ、これまた残念ながら本来のダブルトラックというのは両者がほとんど同一の便数ぐらいで競争し合うというのが本来の姿だと思っておりますが、残念ながら現在の空港状態のもとでは新しく参入した企業の方はわずかに一便、あるいはせいぜい二便ぐらいしか運航できないというようなことで、本来のダブルトラックの機能が十分に生かされていないといううらみがございます。この点は御指摘のとおりでございまして、私どもとしてその解消に努めたいと思っておるんですが、さっき申しましたような空港の増便がままならないということでございますので、これは空港の整備に全力を上げるしかないということで、現在進めておるところでございます。  第四点といたしまして、全日空の近距離国際チャーターへの進出を認めるという条項がございます。この点につきましては四十六年から東南アジア向けのチャーターを認め、それから昨年の日米の暫定合意に基づきまして、従来全日空が飛べなかったグアム、サイパンへのチャーターというものも認めることにいたしたわけでございまして、これまた一応の四五・四七に定められました方針の実現が図られておるというふうに考えております。  第五番目に国際貨物輸送需要に対応し得る航空貨物体制の検討ということで、これは明確な方針が明示されているわけではございません。この航空貨物の問題につきましては現在日本航空が一社でやっておるわけでございます。御承知のように、これまた昨年の二月以来非常な不振でございまして、全般的に全世界の航空貨物の伸びがとまったというか、むしろマイナス成長に転じたということもございまして、これも今後の貨物体制のあり方というものにつきましては、なおもう少しそういう航空輸送需要の将来の見通しというものとの兼ね合いで、さらに検討が必要ではなかろうかというふうに考えております。  このようなことで大要以上五点ほどこの四五・四七で定められております条項のその後の実施状況について御報告申し上げたわけでございます。  なお不十分だという御指摘は確かに先ほど私申しましたように、幾つかの点において御指摘を甘受するわけでございますけれども、何分にも東京、大阪の空港の事情の悪さということが、これを思ったほどスムーズに進められないという非常に大きな原因になっておりますので、私どもとしては東京と大阪の両空港の整備というものに当面全力を上げてまいりたいというふうに考えており ます。
  259. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まさしくいまおっしゃられたとおりであろうという認識は私も同様でございます。許認可によって営まれる産業ということになると、どうしても規制もある反面に過保護になっちゃって、各会社の自助努力といいますか、これがだんだん停滞してきて、そして思わぬ安全性の問題についても不覚をとっちゃうと、こういうようなことが連動して起こるような危険性がいま内在しているんではあるまいかということを考えますと、この四五・四七の精神に盛られたような方向へは必ずしも円滑な営みがされていない。もっと何といいますか、できる限り競争原理が働くようなそういうような方向へ、許認可産業である以上は強力にある程度は運輸省としても介入しながら、ある程度方向づけが決まりそうな段階までこちらがある程度カバーしてあげなきゃならぬという——本来はこういう会社経営なんというものについて行政が余り介入することは好ましいとは思いません。けれども、余りに壮烈でもって、冒頭に申し上げたように、果たして利用者のために航空会社なら航空会社がそれなりの努力をしつつ、努めて安全とサービス向上に努めているのかどうなのかというのはきわめて疑わしい、そういうことになりかねないわけです。現状はまさにそうではないだろうかというふうに思えてなりませんけれども、したがって、いま増便や空港整備の問題ちょっと後に触れますけれども、この辺もっと、後発の企業がやはり相当苦しんでいる。また全日空は全日空として、国際線がなかなか定期便として持てない、そういううらみがある。それから日航は日航として、以遠権がなかなか認められないために距離を延ばすことができないといういろんな悪条件を抱えているわけですね。この辺をやはり行政でもって整理をし、一応の位置づけをしながら、将来こういう展望に立ってやるから、もっと国内においてはお互いに共存共栄ができるような方向に足並みをそろえて、協調しながら経営の上で努力をしたらどうかというようなアドバイスがあって当然しかるべきだと思いますけれども、そうでなければ、もっと強烈に各社に対して運輸省としての意見を開陳し、改善する必要があるんではないだろうか、こう思うんですけれども、その辺余り行き過ぎになりますかね。
  260. 松井和治

    政府委員(松井和治君) ただいま御指摘いただきましたように、実は私どもも全くただいまの先生の御指摘のとおり、こういう時期に各社がうまく協調し、かつ利用著の利便の増進に資するような方向で努力をしてくれることを望んでおり、また私どもとして会社を指導しておるつもりではございますけれども、先ほど申しましたように競争原理をより働かせるための一番いい方法は、後発企業を新しく先発企業の路線に参加せしめて、先ほど申しましたダブルトラックという二社競争の路線をつくっていくというのが一番筋道であろうかと思っておるわけでございますけれども、先ほどの答弁の繰り返しになりますが、空港条件が余りに悪過ぎるために、ダブルトラックは実現できたけれども後発企業に便数をさらにふやすことができないような状態が実を言いますと現状でございます。そうなりますと、たとえば先発企業が五便飛ばしております路線に、後発企業が一便入ったということになりましても、実は余りいい意味の競争がそこで実現するというわけにはなかなかまいらない。むしろ一便ぐらいだったら、入らない方がいいというような評価すらあり得るわけでございまして、本来そういうところが五便対四便というような程度のダブルトラックになることが望ましいというふうに考えておりますが、それを現在の空港の制限のもとでやろうといたしますと、先発企業の減便を無理やりさせるというようなことがない限りは実現できない。しかし、これは国の行政の立場といたしまして、すでにそこで先発企業が路線の開拓に努めて数便の運営を行っているものを無理無理減便させるというのは、これは私はいささか行き過ぎではないだろうかというふうに考えておりまして、本来需要の伸びに従いまして後発企業に新しい便数をふやしていく、先発企業の便数は抑えておいて後発企業の便数をふやしていくというのが本来の進め方であろうというふうに考えておるわけでございまして、これは最近の空港事情のもとで大変むずかしい問題でございますが、それでもごくわずかではございますが、ここ数年でそのような方向の増便を行った事例が全くないわけではございません。しかしながら、何度も繰り返すようでございますけれども、空港の状況から言いますと、それが先生御指摘のようなもっと思い切った競争原理を働かせるための増便というのは、現時点では残念ながら不可能だということが現状でございます。
  261. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それは私も十分承知をしているつもりです。羽田はもう飽和状態をはるかに超えていると思いますね。こういう状況の中で増便を図るというのは、それは事故につながるという危険性が裏表になっております。ですから端的に考えれば、羽田なら羽田が離着陸の機数というものは総枠で決まっていると思うんですね。その総枠でもって決まっているところで、各社うまいぐあいに調整しながら配分されれば一番望ましいと思いますけれども、いまおっしゃるとおりそれぞれの社の権益にかかわる問題でもございましょう、減便するということになると、大変なまた問題を醸しかねない、非常にむずかしい要素をはらんでいることも事実でございましょうけれども一つの解消の道として、たとえば日本航空が何で一社だけで国際線を飛ばなきゃならぬのかと。航空法にはそういうことは限定されていませんね。ですから私は全日空あたりも競争原理に基づいてやらせることも一つの手だてではないかと。アメリカの航空会社いま何社入っていますか、こっちへ。たしか僕の記憶では四社入っているわけです。いまネックになっているのが一社、これが入ってくると五社になるわけですよね。たしか四社入っているわけです。ですから別にアメリカと対抗意識を持ってそうするというのじゃなくて、日本が先ほど私申し上げたように、これからいろいろな経済交流の上で、あるいは経済の活性化を図る上からも、輸送手段というものは非常に重要性を帯びてくる。その一翼を航空機が担うということになれば、やはり日本は日本として今後の方向性というものを明確にして私はいいんじゃないか、なぜ日航一社だけに限定しなければならないのかという、これは不思議があるんです。  日航には日航ね、みなバランスをとってうまく言わないと、各社にみんな影響がありますからね。日航はまた日航の場合で、やはり以遠権を認められるような方向へ。アメリカの以遠権というのはいまこれはもう大きな障壁になっているわけですから、これは何とかならぬのかということで、今日までもう相当長年月を費やしても、なおかつそれがらちが明かない。けれどもこれはアメリカにしても、何とかその辺の日本の実情というものを理解をさせながら以遠権というものを認めさせて、もっと日本航空としても生きる道というものを開いてあげないと、日本航空にも言い分が僕はあるだろうと思うんです。そしてかつまたある程度地域を限定してもいいと思うんですね、全日空は全日空として。不定期としては、チャーター便としてはグアムとサイパンにいま飛んでいるようですけれども、これもやっぱり定期化するとか。そして余力が出てくるわけですから、その分をこの国内航空の中でうまくバランスをとっていけるような方向が考えられないのかなというふうに思えてならないんですけれども、それはどんなふうに交通整理をしたらよろしゅうございますか。
  262. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 御指摘のように、わが国では国際定期路線の経営は日航一社に限定をいたしております。これは国と国との航空協定によりまして、お互いが航空権益を交換し合いまして、その航空権益を維持拡大していくために、私どもとしてはいわば国力を一社に集中する形で航空運送事業の経営に当たらせるという方針でこれまで進んできたわけでございます。確かにアメリカは数社が日本に乗り入れをしてきておりまして、この四月からは新たにユナイテッド航空の乗 り入れが行われることに予定されておるわけでございます。  ただ、先生も御指摘のように、アメリカとわが国とでは非常に国情に相違がございまして、先ほど日本の空港は七十七と申し上げましたが、アメリカの公共用の飛行場は六千九百を超えております。百倍に近い空港を持っており、また航空会社もそれぞれあの広大な日本の二十五倍の面積の国のそれぞれの地点を根拠にしておる航空会社でございまして、日本の場合のように東京と大阪だけを持っていれば、いわば日本全体が押さえられるというような国とは国情に大きな相違がございます。むしろ日本と国力、国情の点で相似しておりますのは、ヨーロッパの国々ではないだろうかというふうに考えておりますが、ヨーロッパの国では、御承知のように、やはり日本と同様にと申しますか、むしろ日本がヨーロッパに範をとっておるわけでございますけれども、それぞれ国際線の主力会社を一社——ドイツであればルフトハンザ、フランスであればエアフランスというような会社を中心にいたしまして、そこに国力を集中する形をとっております。フランスは、別の会社がございますけれども、これは旧植民地のところだけをやる航空会社を持っておりますけれども、主としてエアフランス一社に集中しておるというようなことでございまして、確かに国際航空路線を経営する会社のあり方として、今後どのような方向が望ましいかということについては、なお検討の余地が全くないとは申しませんけれども、私どもといたしましては、いま直ちに、しかもこのように航空輸送需要が全世界的に低迷しておるような時期に、航空運送事業の経営主体をふやすというのはむしろ適切ではないんじゃないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  263. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かに、いまヨーロッパの例をお話しになりましたけれども、それは私もよく認識できます。ただ、私は先ほどたとえばということで申し上げたんですが、全日空の場合は地域を限定してもいいと言うんです。何も日航と競合する必要は毛頭ないわけですからね。そこで新しい活路を開いて、できるだけ会社全体の経営もそれで十分成り立っていくということが基本に置かれましょう、当然。それでサービスの上でも向上するんではないだろうか、安全性の上でも、そういうような地域を飛ぶようになれば、それなりの配慮というものが当然なされていくであろう。ということを総合して考えますと、それは近い将来においてぜひその道を開いていくのがこれからの日本の航空業界としてのありようではなかろうかなと。そうでないと窒息してしまうような感じがしてならないんですね、こんな狭いところを三社が競り合って、ひしめき合って飛んでいるわけですから。これ以上便数もふやすことはできないということになると、それじゃ将来、いま三社あるやつを二社に統合しなきゃならぬのかという問題もあるいは出てくるかもしれない。もちろん昭和三十年から四十年にかけてですか、いろんな航空会社があって、それでいろんな変遷を経ながら今日統合されて現在の三社になったという歴史も私、一応心得ております。しかし、やはり経営がまずくなってまいれば、当然いろんな点に予測される、事故の発生というものにもつながっていくであろう、いろんなことが心配されますので、いま手を打っておけばそういう先行きのきわめて不安定な航空業界というものが、十二分に立て直しがきくような道を歩ましていくこともできるんではないだろうか。そういうことを案ずるがゆえに、あえていまそのことを、きわめて唐突な言い方かもしれませんけれども、道を開く一環として必要ではないか。それは確かに以遠権の問題は航空協定の、なかなかデッドロックに乗り上げたまま現在に至っているわけですから、非常にこれからも時間もかかるでしょう。こちらの思うようなわけにはいかないだろうと思うんです。私たちが南米あたりを旅行いたしますと、やはり日航がここまで飛んできてくれればなあという感じが、印象が非常に強烈にあるわけですよ。飛べない。いまはサンパウロまでしか行ってないわけでしょう。しかも利用者が非常に多い、ペルーにしても、メキシコにしても、ブラジルにしても、アルゼンチンにしても。だから、ここに日本の航空会社がそこまで行ってくれるということになれば、それは日本国民も、またそちらに住んでいる日系はもとより、またそれぞれの国々の人たちも大変な利便を感ずるんではないだろうかということを考えますがゆえに、この辺はこれからも何とかしてその突破口を開くための——これは外務省との連動した問題がありますので、強力に運輸省としてもそのお立場から進めていただきたい。  それから、私はいま希望的な意見として申し上げたことは、やはり近い将来全日空としても、会社としても強い要請があるみたいですよ、私いろいろと調べてみますと。できれば国際線乗り入れというものを何とか実現の方向へ持っていってもらいたいと。しかし、もう火花を散らすようにこんなふうになっちゃっている。片方はもう日航一つでいいんだと、いろんな協定を結ぶとき、あるいはいろんな運賃の取り決めをやるときには国益というものに連動してくるために、それは一社の体制の方がきわめてやりやすいんだと、決して独占的なそういう行き方はしないというようなことを、それぞれやはり立場がおありになりますので、そういう言い分を続けている限りは、いつまでたったってそれは暗礁に乗り上げたままで解決する糸口は全く見られないというふうに思えてならないわけです。先ほど松井局長が、それは国内においてももう逐次ジェット化の方向へ空港も整備していかなきゃならぬと、こういうふうなことをおっしゃっている。そうなると、もうそれでなくたっていま大変窮屈な状況の中で、日本の生き延びる道というものはもう世界しかありませんよ、どうしても、考えようによりましては。だからそれを十分ここで、専門家なんですから、お考えおきいただく必要が私はあるんではないだろうかと、くどいようですけれども、さらに重ねて私は申し上げておきたい。  それから、こうした問題に関連して、先ほどダブルトラッキングの問題も出ました、そういったところにも問題なしとしません、はっきり申し上げて。それよりも何よりもわれわれがよく離島の方々から要請を受ける問題の一つとして、いま離島間において飛ぶのは採算が合わないということで、いま停止状況のところがございますでしょう。非常に要求が強い。しかし、考えようによっては夏場であるとか人が大ぜいそういう離島にレジャーを楽しむために行くと、そのためにはどうしても航空機の利用というものが必要になってくる。通常においてはしょっちゅう往復する人は余りいないんで、乗る人も少ないというような見方も成り立つであろうと思うけれども、いま生活に直接かかわっていますからね、離島の方々は。それは鹿児島から種子島みたいなところだとそういうことは考えられるかもしれない。しかし、ああいう奄美大島にしても、種子島にしても、あるいは東北方面のいろんな離島がありますよ。そういう方々というのは大体東京だとか大阪においでになっている方が大ぜいいらっしゃるわけですよ。どうしても大阪を起点としあるいは東京を起点としてそういう離島へいらっしゃる方が非常に多いんじゃないかと思うんですね。その場合に結局採算が合わないということでいま離島間の問題というのは非常に困窮しているということを伺っております。場合によっては第三セクター方式でそっちの方へ委譲して新しい一つの運営を図らざるを得ないような、そういう趨勢にもなっているというふうに伺っております。この点については当局として今後円滑な運営を期待し、そしてまた地域の人たちの生活を守る上から、どうあることが一番望ましいか、こういった点についてはどのようにいま判断をされ、これから臨まれようとされているのか、この点についてもあわせてお伺いしておきたいと思います。
  264. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 離島住民にとりまして航空路が生活上不可欠のものになっておるというのは御指摘のとおりでございまして、船があるからいいじゃないかというような時代ではなくなっ てきておるという認識を私どもも持っております。そういうことで離島の空港の整備につきましてもこれまで力を入れてまいりまして、五年前に比較いたしますと空港の数も、わずかでございますけれどもふえておりますし、路線の数も、割ばかりふえたわけでございます。お客さんも現在では五年前の二百二十万人から三百十万人というところまで増加をしてきております。しかしながら、御指摘のように離島の場合には、かなり季節的な変動が大きいというようなこと、また非常に閑散期には需要が大変激減するというようなことがございまして、おおむね採算上はよくない路線ということになるわけでございます。そういうことから、私どもといたしまして何とか離島民の足の維持のために、離島航空路に対する助成策ということをいろいろとこれまでとってまいりました。非常に短い距離で離発着できる航空機を購入するときの購入費に対する補助金の交付でございますとか、あるいは離島民の運賃を少しでも軽減するために離島に関する航空路の通行税の半額減免でございますとか、あるいは離島路線について離島路線を就航する航空機の着陸料あるいは航行援助施設利用料といったようなものの減免というようなこともいたしておるわけでございまして、何とかこの離島の航空路の維持のために、今後も力を尽くしていきたいというふうに考えておるわけでございますが、先生御指摘の一部の離島におきまして、これまでの定期としてのサービスが維持できないというようなことから、これをかなり定期に近い形ではありますけれども、事業の種別としては不定期の形に切りかえようという動きのある地域もございます。これはもちろん地域住民の十分な御納得が得られなければ、そういう方向には進むべきではないと思いますが、しかしながら地域の住民の方もそういう方向でもいいから航空路の維持にぜひとも努めてほしいというようなことで、かなり検討が進んでおる地域がございます。そういうようなことで、これはまだ今後の検討課題でございますが、場合によって第三セクター方式というようなことで、その地域を主体とする新しい航空会社に運営させるということも、離島航空路の維持のための一つの方策ではないだろうかというふうに私ども考えております。  と申しますのは、現在御承知の沖縄地域を主体としております南西航空、これも県民の非常に強い支持を受けまして、南西航空としては、こういう御時世ではございますけれども、経営はほかの航空会社が非常に苦しんでおる中で、南西航空というのは比較的良好な経営をいたしております。また同じように離島を抱えております長崎県の長崎航空という、これは定期会社ではございませんけれども、先ほど申しましたかなり定期に近い形の不定期の航空路を運営しておりまして、これまた一応の成績を上げておるという実績がございます。  そういう意味で、やはり一つの地域を単位とする航空会社が、その地域住民の方の支持が得られるならば、そこにかなりいい結果を生むというような実例もございますので、先ほど申しましたような第三セクター方式による新しい経営主体というようなことも十分検討に値するんではないだろうか。これは地域住民の方、また都道府県の方々とも今後十分相談をいたしまして、それで経営の成り立つ見込みがあり、また住民に対するサービスがそれで維持できるという見通しがつくならば、そういう方向に移行することも今後考えていくべきではないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  265. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま南西航空の例をお出しになってお述べになったわけですが、確かにいろんな、石垣あるいは宮古島等々の離島を抱えておる沖縄としては、大変利用度が高いということは十分わかります。しかし、利用度が高いと申しますけれども、それに要する費用、燃料費を初め公租公課の負担というものを考えてみると、日本国内における航空会社の場合とそんな極端に違うのかなあと。いまは大変実績を上げておられる。それは実績確かに上がっておるかもしれません、利用度が多いということになりますと。そうすると、ほかの地域——種子島だとか奄美大島だとか屋久島だとか、あるいはいまお話しになった長崎を中心とする五島方面ですね、どうしてそこが違いが出てくるのかなあと。それは必ずしも地域住民のそういう強烈な協力があるないによってすべてが決まるのかなあという、私まだ依然として疑問が解けないんですけれどもね。それで、たしか南西もYSを使って飛ばしているはずだと思いますし、こちらの種子島方面についてもYSを飛ばしている。条件的には決して変わってないということを考えますと、その辺は一体どうなるのかということですね。
  266. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど南西航空が県民の強い支持を得ておるということを申し上げましたのは、実例といたしまして、実は年度はちょっと失念いたしましたが、実は日本の航空運賃というのは、昭和五十五年に運賃改定を行いますまで約五年間は運賃改定しないで、ジェット化、大型化による生産性の向上で諸経費の高騰を吸収しておったわけでございますが、南西航空は実はその時点で非常にこのままでは経営が立ち行かぬということで、南西航空だけ運賃の値上げをしたということがございます。その際、先ほど申しましたように、県民の方が、とにかく自分たちの県の交通手段である南西航空を守ろうということで、その運賃改定が非常に円滑に進められました。その後南西航空はりっぱに立ち直り、かつ那覇と石垣、那覇と宮古の間では小型のジェット機を飛ばすところまで成長したわけでございまして、現在737を飛ばしておりますが、これも非常に会社の経営に寄与しておるわけでございます。  したがって、奄美大島との間では若干そこに就航路線の質なりあるいは使用機材なりの面で相違があるかと思いますけれども、いずれにいたしましても、地域住民の非常に強い支持がそこに働いておるということは事実でございますし、また、長崎航空がうまくいっておると申しますのは、これは先ほど申しましたように小型の航空機を使っておりまして、経費が大型の航空機に比べて少ないということのほかに、これまた住民の方々の御了解がなきゃできないわけですが、通常の定期航空の運賃率に比べますとかなり高い運賃率を設定いたしました。そのために経営が一応軌道に乗っておると、こういうことでございます。したがって、今後の離島における航空路の経営の一つの参考になるんではないだろうかというふうに考えて、私ども今後の奄美地区の離島航空路の経営問題について、先ほど申しましたように地元の方々といまお話をしておるという段階でございます。
  267. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま答弁された中に経営の健全化を図る一環として運賃の問題が出てきました。いまそれに私も触れさしていただこうと思ったんですがね。昨年たしか一月の時点で国内三社の運賃値上げがありましたね。その以前にもあって、相次いで二年足らずの間に二回たしか運賃値上げがあったということを記憶しております。運賃値上げさえやれば経営が正常化するというようなことが、もしこれからもまかり通るということになりますと、私は国鉄の二の舞いを踏むんじゃないかというそういう危険性を感じますね。  なぜそこまで運賃値上げをせざるを得なかったのか。確かにドル安という背景もあったんでしょう、燃費も大変高くなったという問題もございますから。しかし、しょっちゅう運賃値上げに依存しなければ体質改善ができない、したがってサービスも低下するというのでは、何もかも全部利用者にかぶさってくる。それはいま申し上げたような地域ですと待ったなしですわれ、船を利用するなんという時代じゃないですから。何でもかんでもとにかくもう航空機を利用せざるを得ない。それほど世の中忙しくなってますから。  それじゃ、地域が若干違った奄美だとか、いま種子島の例を出して申し上げているわけですけれども、ここらあたりはじゃ全然条件的に違うのかと言えば、同じ条件だと思うんですね。にもかかわらず、そういう中で、特に航空三社の中では東亜国内航空がこの離島間の路線を持っている割合 というのは非常に多い。どうしても赤字が出る。幹線路線を持たないということからそれがバランスがどうしてもとれない。欠損した分は全部そのまま赤字に転嫁されていく。まあ現状においてはどうかわかりません、私は最近の実情調べておりませんから。また同時に、全日空といえども、つい先ごろのNHKのテレビ報道によれば、各社の昨年一年でございましたか収益率について数字が出ておったようです。日本航空もダウンしている。全日空もダウンしている。数字の上では東亜国内航空は若干いいかもしれないけれども、累積赤字がものすごく多い。それを早く解消するためにはいまの状態でいいはずは絶対ない。離島間の問題がある。ダブルトラッキングの問題がある。そういうことをずっと整理していきますと、一番最初に私が申し上げたような、原点に立ち戻っていまの航空行政全体をもう一遍見直していかなければ経営の健全化あるいは利用者に対するサービスの向上というものは図れないんではないかという問題と、常にいろんな問題の危険が伴っていくような、大変厳しい航空機の運営というものがなされていくおそれが出てきやしまいかということを心配するんですが、その点は、これからの先行きについて当然、指導監督をされている航空局としてどんなふうにごらんになっているのかという問題ですね。それをぜひお聞かせをいただきたいと思うんです。
  268. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 昨年、東亜国内航空の経営が非常に悪化をいたしました際に、私どもといたしまして、ただいま先生御指摘の累積の赤字対策が一つと、それから今後の東亜国内に対する増収策、それからさらに、不採算部門の切り捨てというような方策を考えるべきではないか。もちろん、その前提として会社が最大限の自助努力をすることは、これはもう当然のことでございますけれども、そういう会社の努力を前提といたしまして、役所側としてもできる限りの応援をしようということで、実は昨年東亜国内対策をとったわけでございまして、具体的に申し上げますと、増収策の一つといたしまして、先ほどちょっと触れましたが、幹線への増便を認める。この際には、先ほど非常にむずかしいということを申し上げた先発二社の協力を得まして、先発二社がいわば自発的に減便を行うかっこうで東亜に増便を認めるというような形での策をとったわけでございます。  それから、先ほどお話し申し上げました奄美路線というものが東亜国内の足を引っ張っている一つの理由でございますので、これも先ほど申しましたような形での新しい対策を、現在これはまだ進行中でございますが、検討しておる。  それから、もう一つ東亜国内の経営が他社に比べて悪かった一つの原因と申しますのは、これは東亜国内の責任ではないわけでございますが、東亜国内の経営しております路線の相手空港のジェット化がおくれたという事実がございます。そのために全日空の方がジェット化率が非常に高くなりまして、ジェット化が進んだところが経営にかなり寄与した面がございますが、東亜の方はYSしか飛ばせられない路線がかなり残ったということでございますが、これまた最近私ども努力をいたしましてジェット化を進めました旭川でございますとか、あるいは現在進めております花巻、徳島、女満別、こういったような比較的近々ジェット化が図られる路線はすべて東亜国内の就航しておる空港でございますので、そういう意味で東亜国内の路線の、いままでジェットが飛べなかったという制約が今後逐次解消していくであろうというようなことも、今後東亜の経営に寄与していくんではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  そういうようなことで、今後とも東亜国内の経営問題について、私どもとして、会社の努力を要請しながら行政としてなし得ることについてはできる限りの努力をしていきたいというふうに考えております。
  269. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま御指摘がありました空港というものは、大体ローカル線なんですよね。ローカル線というのは非常に増収が図りにくいという欠陥がございますようです。しかし、いろいろ政府当局としてもいろんな配慮から幹線への乗り入れというものを努力してくださったようです。あとは航空三社で話し合ってそこを合理的に進める以外はないであろうというふうに思いますけれども、やはりそこらあたりに基本的な問題があるんではないだろうか。一方、現状においても、その離島線において赤字は出すけれども、幹線でもってカバーできると、こういう場合もあろうかと存じますね。そしてまた同時に、いまおっしゃられたジェット化に伴う空港整備によって、また乗客も多く運べるだろうという、この利点は将来展望として明るい兆しとして歓迎されると私は思います。いずれにせよ、こうしたぎくしゃくした航空行政というものを通じて、何とか前向きにみんながそれぞれ立ち行くような方向へぜひ取り組んでいただきたいなということを申し上げておきたいと思うんです。  それから、いま恐らく、これも私詳しいことはわからないんですけれども、公租公課の負担率というのは意外と非常に高いんじゃないかという問題がありまして、結局最終的には利用者が全部かぶるかっこうになるわけですね、運賃にそれが含まれているみたいですから。どうしてもこれは低く割合をするというような方向がとれないのかどうなのか。これは一般論しかなれないと思う、あと限られた時間が残り少ないものですから。この点どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  270. 松井和治

    政府委員(松井和治君) まず初めに、公租公課という言葉は、非常に何か昔の悪代官が税金を取り上げるようなイメージを与えるわけでございますが、これは先生御承知のように、着陸料等の形で航空会社から国が徴収する料金でございますが、これは空港整備特別会計の歳入に入りまして、空港の整備費のほか環境対策費あるいは安全対策費に使われるわけでございます。つまり、私鉄で言えば会社がみずから負担しなければいけないような経費を、航空会社の場合には国がかわって空港整備する、あるいは環境対策をしてあげる、あるいは航空保安施設を設ける経費を国が支弁する、こういうための対価として取っておるわけでございまして、現在航空会社のコストの約二二%に及んでおります。確かに、五十年当時は一四%程度でございましたので、それに比べますと、この着陸料等の比重が高くなっていることは事実でございます。しかし、先ほど来申し上げておりますように、ここのところ急速に地方空港のジェット化なり、あるいは大阪空港を中心とした環境対策費が急増しておりますので、そういうものに使うための経費として五十年代当初数回の値上げをして今日に至ったわけでございますが、昨今の経営状況を見まして、私どもといたしましては、最近三年間は一切この着陸料等の値上げをしないというような形で据え置いておりますし、また先ほど来お答え申し上げましたように、離島路線についてはこれは離島航空路の維持という観点から特に減免の措置をとるというようなことをやっておるような次第でございます。したがいまして、空港整備の必要性あるいは環境対策の必要性というものがなくなるわけではございませんので、やはりそれなりに航空会社にその対価としての負担はお願いせざるを得ないというふうに考えておる次第でございます。
  271. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これは各社の言い分、また行政当局としての判断というものは、ある場合においては食い違う場合があるかもしれません。しかし、三社共通と言ってもいいのかもしれませんけれども、言い分は、これを何とかしてもらうことによってもっとサービス向上に向けられるであろうと。それは運賃という問題にかかわり合いを持ってくるんじゃないかというふうに思います。そういう強い要請があることは正式なあるいは要求として運輸省あたりに出されているかどうかは私は存じません。けれども、そういうような状況であるということを考えれば、それは回り回ってやはり利用者としても、ぜひそういう方向をとっても らえば、低運賃でもってきわめて快適にいろんなところへ用が足せるなと、こういうことになりましょうな。その点は将来にわたって、いまいろんなことをおっしゃられたことはよく理解できるんですけれども、もう大体整備されつつあるような状況をかんがみると、もうその辺から逐次もう少しそのパーセンテージを下げても十分やっていけるんではないのかなという感じがするんです。これは感じですから、細かく試算をした上でいま申し上げている問題ではございません。感じで申し上げているんですが、将来の方向として、そんなふうな行き方できますかね。
  272. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 冒頭申し上げましたように、私どもといたしまして当面重要施策として抱えておりますのが羽田の沖合い展開事業と関西新空港の建設でございまして、この二大空港の整備というものが非常にいわば金がかかるわけでございますが、ただし逆に言えば環境対策費がこれから少しずつ減ってくるという要素とかみ合いまして、今後進めていきたいと思っておるわけでございますが、そういう二大プロジェクトを持っております関係上、いま直ちにこの着陸料等を下げるということはなかなかむずかしいと思いますが、この二大空港の整備が進みますと、それから後、地方空港の整備はもちろん残りますけれども、現在地方空港をつくりますのには大体三百億程度で一つの空港ができるわけでございます。そういうようなことで、二大空港の整備を進める期間に比べますと、かなり歳出減が見込まれるんではないだろうかという感じがいたしているわけでございますが、その時点において、そういう着陸料等をどうするかという問題はまた次の問題ではございますが、当面はその着陸料等の減免というのは私どもの特別会計の経理状況から言いまして、せっかくの御提案でございますが、私どもとしてはいま当面これを下げるというのはむずかしいというふうに考えております。
  273. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 きょう細かいデータもたくさん持って逐一やろうと思ったんですが、余りにもそれでは航空行政一般にわたれないうらみがありましたので、大ざっぱな言い方でお尋ねをいたしました。しかし、いまやりとりをお聞きになってくださいまして、四五・四七のいわゆる航空憲法と言われているものが必ずしも適正に運営されてない、こういう問題が一つあるという、いまやりとりをお聞きになってもおわかりいただけると思うんです。まだまだ不十分な点があるということが一つ。それから、今後日本の航空業界がやはり世界へ道を新たに開く必要があるということ。それからもう一つは、そのためには国内航空を含めた空港整備という問題、大変むずかしい条件の中でこれをやるということは厳しいかもしれません。しかし、これも今後の日本経済の発展に寄与するという側面を持っているとするならば、どうしてもこれは積極的に、具体的に、それが中期であろうと長期であろうとその展望に立って、これを強力に推し進めていかなければならぬという宿命的な問題があるのではなかろうかという問題。また同時に、今後安全性の高い、二度と昨年のような事故が起きないような方向に持っていくためには、それは会社自体のこれからの取り組む経営方針というものに大きくあずからなければならないかもしれません。けれども、やはり送検されたり、逮捕されるなんという事態が起こってきますと、これはもう社員の意欲というものは相当減退するのじゃないかという、二度とこういうことを起こしてはならぬことはあたりまえなんですけれども、しかしそういう中で、やはり行政当局としてももっと手厳しい行政指導というものが行われてしかるべきではないか等々の、まだいろんな問題が前面に横たわっているわけです。これを一挙にということは大変現状としてはむずかしいこと十分心得ておりますけれども、日本の将来発展を考えた場合に、ぜひこれを積極的に推し進めていってもらいたいなということについて総括的に長谷川さんの御答弁を伺って、ちょうど時間でございますので、私の質問を終わりにいたします。
  274. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ナショナルキャリアとしての日本航空に対する御期待、これは、同様国会議員として海外旅行している者は一様に期待しているところであります。でありますからして、国会議員の声援などによって、ビヨンドニューヨーク、ニューヨークに日本の飛行機が入っていった。あれ以来、日本航空が世界において四番目ぐらいの実績を上げられた。そして、幹線で働いた金でああいう国際路線を運営してきたということでございましょう。  さらにまた、全日空、これは国内をやっておりましたが、企業努力で追いつけ、追い趣せという形で真剣にやっていることは皆さん承知のとおり。  東亜国内航空、いろんな会社が合併等々の話があった後であの会社が生まれて、そしてこれも悪戦苦闘、本当によくやっておりまして、四十五年の、ただいまの航空憲法というもののときから幹線にまで入れてもらったり、あるいはダブルトラッキングをやったりして、三社が厳しい厳しい競争をやりながらも、私はそれぞれ大事な役割りをしている、こう思っております。  そうしてまた、御案内のように、二十四時間空港がないことは同様のお互いの心配の種でございますから、これに対して御推進していただく姿、こういう中に公租公課の問題等々もございますが、私も、地方の空港を歩いてみまして、一体ここにこの会社が一社だけ一日三便、四便来ているんだが、その会社のお客さんを運んでいるんだが、それに一体政府は何をやっているんだろう、どんな手伝いをしているんだろうということを感じることあるんです。そうしますと、三十四、五人のコントロールタワーとか、国家公務員が全部加勢しているんですね。こういうことなども国会議員として感じますと、なるほど、三社のために国もこのとおりやっているんだという自信を持ちつつ、いまのような特別会計の中にやっぱり空港をりっぱにすることによって労働ファクターが出てくる。それが地方の人々の利便にもなるというふうなことで、総合的なことを感じつつ、そしてまた、航空憲法にのっとって全日空でもグアムやらサイパンにまずまずチャーター便を出してくる、こういうふうなことで、一発に推進はできないものの、スピーディーに日本の航空界というものが世界の中に、アメリカじゃ破産する会社たくさんございますし、パンアメリカンなんというのはもうほとんどかっこう悪くなったという話なども聞きますというと、こういう自由競争の時代だから、役所の指導そのものが果たして私は全部いいとは思いませんけれども、そういうものをわかりつつ、役所としても最大限度の努力をしつつ、ともどもにやってきている中に日本の国際航空企業、国内航空企業が伸びていく、そういうものもまた時折皆さん方に御推進なり、また御指導いただいて、大きな形においての前進を図ってまいりたい。一発に何もかもできませんけれども、私もあなたと同じような認識を持ちつつ、この航空問題に対してはしかも慎重に、つまらぬ誤解を、どこの会社の何か利益代表だというふうなことのないような姿においてやってまいりたい、こう思っております。     ─────────────
  275. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、松井航空局長より発言を求められております。これを許します。
  276. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 午前中の和田静夫議員の御質問に対する私の答弁の中で、昨年十二月十八日付の神戸市長より運輸大臣あての文書について、私は受けつけた覚えがないという御答弁を申し上げました。  役所に帰りまして調査をいたしましたところ、本年一月十一日付で郵送されて官房文書課の方でこれを受理していたという事実がわかりました。  まことに私、全く受けつけてないというような答弁を申し上げましたのは誤りでございましたので、ここで謹んで訂正をさせていただきたいと思います。     ─────────────
  277. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、空港周辺の騒音被害対策として行われております民家防音工事についてお伺いをいたします。  民家防音工事に投じられております工事費は、五十六年度を見てみますと全国で約五百八十億円を超えております。この工事費は、国と地方公共団体によって支出をされておりますものだけに、適正な工事価格が確保されるように努めるべきで、いやしくもむだ遣いがあってはならないというふうに思います。  ところが、大阪空港周辺の民防用の防音アルミサッシの建具でございますが、この価格が一般の建材に比較しまして非常に高いというふうなことで調査をいたしましたけれども、大変驚くべき結果が出ました。  私ども調査では、一般住宅用のサッシより五〇%高いと言われておりますビル用のサッシの価格でございますが、このビル用のサッシの価格に比べまして何と六倍前後も高く取り引きをされている実態が判明いたしました。たとえば、民防用アルミサッシ二枚引き違い窓の大阪空港整備機構のAB工法用の標準単価、これは現在の単価を言いますと入札に差し支えがあってはいけませんので、大差のない五十五年度の単価で申し上げます。ちょうどここに持ってきておりますが、これと、それから一般建材の標準価格表に掲載されておりますものの中で、一般では一番堅牢だと思われておりますビル用のレディーメードのアルミサッシ引き違い枠六ミリ幅の単価を比べてみます。そういたしますと、これが一般用でこちらが防音用ですが、この値段で比べますと、ビル用は〇・九六平米が九千二百円、民防用は一平米未満で五万七千三百円で六・二倍になっております。ビル用の一・六五平米が一万八百円、民防用では一・六平米で七万三千百二十円で六・八倍でございます。もう一つビル用の二・五五平米、これは一万四千六百円が民防用では二・六平米で九万三千三百四十円で六・四倍でございます。それから、ビル用の三・二四平米で一万七千八百円が民防用になりますと三・二平米で十万二千八十円で五・七倍と、いずれも六倍前後も民防用が高くなっているという、こういう現実がございます。  大阪空港周辺整備機構がこのような標準価格でサッシを扱っていることを、補助金を出しておられる運輸省承知をなさっておられるんでしょうか。承知をなさっておられるということになりますと、いま言ったような民防用の単価というのは間違いないと思いますけれども、間違いございませんね。
  278. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私ども民家の防音工事に使用いたします主要機材につきまして、その性能について国側で基準をつくっております。具体的な事務は御指摘のように大阪の国際空港周辺整備機構に委託をしておるわけでございますが、民家防音工事に使います窓枠工事用のサッシが一般家庭用に対して高いということは事実でございます。これは、一般の普及用のアルミサッシの通常の値でございますが、遮音効果で申しますと約十八デシベルというようなことが言われておりますが、民家の防音工事に使いますのは、これはもちろん航空機の騒音を遮断するために行う工事でございますので、私どもの基準で、C工法の場合には二十五デシベル以上の遮音効果がなければいけない、AB工法の場合にはより空港に近いわけでございますので、二十八デシベル以上の遮音効果がなければいけない、こういうような性能を高める基準をつくっておるというのが一般の窓枠サッシに比べて高い一つの理由でございます。  それから、もう一つの理由といたしまして……。
  279. 安武洋子

    ○安武洋子君 値段を知っているかということを、単価を知っているか。知っていたら単価は違いないでしょうということを聞いているんですよ。
  280. 松井和治

    政府委員(松井和治君) ちょっと五十五年の単価と言われましたので、私正確に数字は把握しておりませんが、先ほど先生がおっしゃいました一般用に比べて六倍高いというようなお話ございました。それは事実でございます。  もう一つ理由がございますので、簡単に申し上げますと、新築の家屋でございますと、これレディーメードの窓枠を使うのですが、民家の防音工事というのは既存の建物について、一軒一軒違うわけでございますし、それが遮音効果を確実に発揮させるために一々寸法をとり、設計を行って、それから発注をする、いわゆるオーダーメードであるという点が一つの理由だと思っております。
  281. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は伊丹市でAB工法用のサッシの現物を見てまいりました。枠の太さなどはビル用と大差のないものでございます。議員会館の窓枠の方が太いくらいでございます。ただ、違いといたしましては、ビル用はレディーメード、そして民防用はいまおっしゃったようなオーダーメードということで、常識的にはオーダーメードですと二倍ほど高くなるというのが、これが常識です。機密性を保持するためというふうなことで、特殊な引きつけ機構のハンドル、レバーハンドルが使われておりますけれども、その分高くなるのは当然といたしましても、これとて本体の枠より附属品の方が高いということは考えられません。ですから、もうせいぜいいかに考えても三倍程度というのが、これが常識の範囲内ではないかというふうに思います。私は専門家にもいろいろ意見を聞きまして調べてきました。ところが、みんなびっくりしているわけです。民防用に限ってなぜこのような常識外れに高いのか。六倍があたりまえだというふうなことを言われましたけれども、とても業界の常識の枠を外れております。どういうことなんでしょうか。
  282. 松井和治

    政府委員(松井和治君) ただいま六倍と申し上げましたのは、私ども調査によりますと、一般用に普及型——普及型と申しますか、先生のおっしゃるビル用じゃない一般の家庭で使われる普及型に比べて、約六倍程度、ビル型のものに比べて三割増し程度というような調査をいたしております。先ほど申し上げましたように、これは主としてレディーメードであるかオーダーメードであるかということと、それから遮音性能の相違というところからくるものと思いますが、御指摘のように、これは補助金を出す事業でございますので、いたずらに高いものを買うということが、もしあってはいけませんので、私どもとしても、なおこの大阪の周辺整備機構を通じまして、さらに調査を行ってみたいというふうに考えております。
  283. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、ここに持ってきておりますのは、これは一般建材標準単価表で、明らかにレディーメードのアルミサッシ——ビル用でございます。ここに一般住宅用も持ってきておりますけれども一般住宅用ははるかに安い。ですから、私が先ほどお断り申し上げたように、私が申し上げた価格というのは、これはアルミサッシのビル用でございます。このビル用と、いま大阪機構が出しております単価と比べると六倍になるじゃないかというふうなことを私は申し上げているんです。私は常識的に、いろいろ専門家に聞きましたけれども、附属品、この引きつけのハンドルという、こういうものは別にいたしまして、サッシの値段というのは、普通使われるアルミの量と比例をしているのが通常だ、こういうふうに聞いております。違いますか。
  284. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私も専門家でないものでございますので、はっきりしたお答えができないのは申しわけございませんけれども、当然アルミの量なり、あるいはこれは素人考えでございますが、ガラスの質なり厚さなりというようなものが影響するんではないだろうか。それから、もちろん先生のおっしゃった附属品等についても相違があれば、これが価格の相違につながってくるんではないかというふうに考えております。
  285. 安武洋子

    ○安武洋子君 ガラスは別になっております。この単価というのは、これは明らかにアルミサッシの枠だけの問題。レディーメードに比しまして、セミレディーメードというのは二割増し、オーダーは約二倍というのがサッシ界の常識でございます。ですから、いまおっしゃいました附属品といいましても、附属品でそんなにかかるわけござい ません。だから、おたくのおっしゃるのは全然つじつまが合わない。私は明らかにビル用と、そしてサッシだけを比べている。ガラスは別になっております。もう一度お答えください。
  286. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私ども調査をいたしましたところによりますと、一般普及用のものについてはガラスの厚さは三ミリ、民防用のものは五ミリを使っておりまして、先ほど申しました価格の比較、一般用の普及に比べてAB工法用の、一番私どもとして遮音効果の高いものが約六倍、C工法に使います遮音効果の若干落ちるものについては約四倍というような数値になっておりますので、私は、ガラスの厚さも含めた価格の比較というふうに理解をいたしております。
  287. 安武洋子

    ○安武洋子君 そんなでたらめ言ってもらったら困ります。ここのところに書いてあるのは、ガラスは別というふうにはっきりなっているんです。ですから、ガラスの厚さなんていうものを問題にしているわけではありません。枠だけの問題ですからね。いまのお答えは明らかに間違いです。私はおかしいと思うんです。一般建材の場合はメーカーから一次店ないしは二次店を経由してそれぞれのマージンが含まれる、そういう価格になる。ところが、民防用というのはメーカーとの直接契約で中間マージンが含まれていない価格になる、こういうことですから、一般建材の場合の方が高くなるというふうに常識的には考えられるわけです。ところがアルミのサッシの枠だけ、枠だけの値段ですよ、これが明らかに六倍になる。おっしゃるようにそれはオーダーします。しかし、オーダーしたところで附属品が多少別であったとしても、幾ら考えても三倍までにおさまらないといけないのが六倍にもなるというのは明らかにおかしいじゃありませんか。
  288. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 私ども大阪の周辺整備機構で聞きましたところ、この単価の設定につきましては、複数のメーカーから見積書を取り寄せまして、その最も安いものにさらに一定の倍率、一以下の倍率を掛けまして単価を設定しておるというふうに聞いておったわけでございますが、私もただいまの先生の御指摘に対し明確な数字をもってお答えできないのはまことに残念なんでございますので、早速周辺整備機構に私ども調査をさせることにいたしたいというふうに考えております。
  289. 安武洋子

    ○安武洋子君 どちらにしても大変おかしい。  それで、少し角度を変えた質問をいたしますけれども、大阪空港では今年度からC工法の民防工事が実施をされます。ここで使用されるサッシといいますのは従来から羽田空港の周辺で使われておりますC工法のサッシ、これと基本的な相違がありますか。
  290. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 羽田で使われているものと同じというふうに理解しております。
  291. 安武洋子

    ○安武洋子君 私ども調査では、五十七年度のC工法のサッシの標準単価、これは羽田では二枚引き違いの窓用で一平米未満の最も割り高な平米当たりの単価というのが三万七千四百円なんです。これが大阪機構の標準単価になりますと平米当たり四万五千八百円となるんです。大阪の方が割り高になっている、こういう実態がございます。同じ大きさのビル用のサッシがもう一つつくれるというふうな、平米当たり八千四百円の差が出ているわけなんです。こういう点しっかり調べていただかないといけないと思うんです。一般建材の価格とかそれから一般の防音サッシ、こういう価格などから見てみましても、私は常識的な妥当な価格というのをやはり見積もらせなければならない、メーカーの言いなりをうのみにするというのは当を得ないと思うんです。そうすれば民防工事の事業量もふやせるというふうに思います。整備機構任せにしないで、助成を代行させている運輸省としましても、私はきちんとこういうところを指導していただかなければならない。これ一つとりましてもまたまたおかしいことが出てくるわけなんです。いかがでしょうか。
  292. 松井和治

    政府委員(松井和治君) いずれにいたしましても、先ほど仰せられました東京と大阪との差ということ一つをとりましても、私ども十分お答えできないのはまことに残念でございますので、大至急調査をさせていただきたいと思います。
  293. 安武洋子

    ○安武洋子君 民防工事といいますのは、五十六年度で全国で五百八十億円使われております。サッシは大体その工事量の三分の一程度に当たるというふうに私は調べて思いました。こういう金額ということになりますと、年間約二百億、これが仮に二割高くなっているというふうなことになりますと年間四十億、まあ三割なら年間六十億という、こういう利益がサッシメーカーにころがり込む、こういうことになります。とりわけ大阪の整備機構の場合なんですけれども、これは羽田などとはちょっと違うわけです。といいますのは、施工と設計が分離発注されまして、サッシの指定というのはサッシ業者とそれから直接代金の決済を行う施工業者、工務店ですね、こういう形ではないんです。設計段階でもう行われてしまうというふうなことで、おたくの方でメーカーを指定なさっておられます。豊和工業とか神鋼建材とか不二サッシとか、こういう数社の指定メーカーがあるわけですけれども、しかし競争原理が全然働かない。こういうことで実態的にはサッシ業界の共同受注、内部でたらい回しをしていく。今回は豊和工業で、その次は不二サッシだというふうに受注先をたらい回しに決めているような実態があると思います。この点でサッシメーカーは大変もうけるということについて安泰なわけですね。工務店などが自由にメーカーの指定を私は行えるように改めるべきだと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  294. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 御指摘のように大阪の周辺整備機構のやり方を調査いたしましたところ、先生御指摘のように工務店が発注するという形をとらずに、その前の設計事務所段階でサッシの選択を行っておるという事実は御指摘のとおりでございます。  これはほかの空港と違いまして、先生もよく御存じの大阪の場合には大変対象が多くて、しかもそれをできるだけ早急にやらなければいけないという要請がございますので、そのようなやり方をとっておるというふうに大阪機構は言っておりまして、工務店からサッシの選択をさせ、それから工事に取りかかるということになると、どうしても工事がおくれるんだということを申しておりますので、いままでそのようなやり方をとっておるというふうに聞いておりますが、なおその辺につきまして改善の余地があるかどうか、これも先ほどの宿題に含めまして私ども検討させていただきたいと思います。
  295. 安武洋子

    ○安武洋子君 しかし、いままで羽田ではそういう方式で行われてきている。そしてお知らせというふうなことでこの民防工事を受ける住民の側に配ってあるところには工務店と契約を結びなさいと。ですから、住民の意見を十分聞いて住民がこのサッシということを希望すればそれが届くというふうな仕組みになっているということになれば、明らかにこういうやり方を許しておくということの方がおかしいんじゃありませんか、いかがですか。
  296. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 大阪におきましても、たとえばクーラーの選定を住民の方にしていただいてそれを使うというようなことは変わりがないわけでございますが、サッシの場合について特に御希望があれば別でございますが、私ども聞いております限りでは、サッシについて特にこのサッシという御希望をなさる方というのはきわめて少なくて、希望のない場合には設計事務所の方に任せるというやり方をとっておるというふうに聞いております。
  297. 安武洋子

    ○安武洋子君 空調機なら一般の人はわかりますけれども、たてまえがやはり住民の希望を聞いてということになっておりますから、住民は工務店に任せるわけです。だから、その住民の意向を代行する工務店がサッシを選ぶということはやはりやるべきだと。クーラーの方ができてサッシの方ができない、サッシは急ぐからたらい回しにしてよろしいということにはならないと思うんです。 こういうことになればあくまでもサッシ業界が安泰にもうけられる、こういうことになるんじゃありませんか。やはりそこに競争原理は働かないですよ。こういうやり方は羽田にならって私は改めるべきだ、このことを強く申し上げますが、いかがですか。
  298. 松井和治

    政府委員(松井和治君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、先ほどの価格の点も含めまして大阪周辺整備機構の実態につきまして早急に調査をいたしたいと思います。
  299. 安武洋子

    ○安武洋子君 会計検査院お越しでございましょうか。まあ突然で申しわけありませんが、先ほどから論議をお聞きいただいたと思います。そこで会計検査院に私はお願いいたしとうございます。年間五百億を超えます国費を使った民防工事で助成が行われているわけです。形の上では施主に当たる騒音被害者がサッシを発注した、こういうことになっております。しかし、実態的にはいま申しましたように全く別な、だれも手の届かないところで標準価格が決められてどんどん発注をされている、これが実態でございます。価格も先ほど私が申しましたように六倍というふうな値段で、常識的に考えても三倍ぐらいの間におさまらなければおかしいんじゃないかというふうな異常な高値でございます。私どもから見れば大変異常でございますが、いままでこのような状態で発注が行われてきたというふうなことは、私は国費の使い道に疑義があるんではなかろうかというふうな思いを持つわけです。そこで検査権限をお持ちの検査院として補助金の適正かつ効率的な運用という立場から、新幹線とかそれから基地周辺とか全国たくさん防音工事がなされております。こういうところも含めまして調査に乗り出していただいて、いま私が申し上げました点が明らかになるように御検討をひとつお願いしたい、こういうことでお願い申し上げますが、いかがでございましょうか。
  300. 坂上剛之

    説明員(坂上剛之君) 先生からきょうこういうお話が出るというので私担当の者に聞きましたんでございますが、従来この面に対する調査というのが余り行き届かなかったようでございます。先ほど来のお話を聞きまして、発注の形態それから流通問題、価格面を含め、他の防音工事の面もよく調査するようにというふうに、きょう指示したところでございまして、先生のお話を体しましてこれから十分に検討いたしたい、こういうふうに思っております。
  301. 安武洋子

    ○安武洋子君 最後に大臣、先ほどからの私の話をお聞きいただいたと思います。大臣は初耳であったかとも思いますけれども、こういう点をやはり私ははっきりさせて、年間五百億ですか、これる超えるような国費を使っているわけですから、こういう点を厳重に明らかにしてただしていかなければならない、こう思いますが、大臣の御所見を伺いまして私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  302. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 民間の防音対策、おっしゃるとおりいま運輸省は一千億ぐらい出しているわけです。その間に大阪は五百億とも言われ六百億とも言われる。そしてその間のいまの事情、私も初耳でございます。大事な国民の税金でもありますし、また防音対策は一生懸命早くやらなきゃならぬ、それぞれの生活にかかわることでございますから一生懸命やらなきゃならぬと、この両面からしましても、いまのような問題は改めて調査をして国民の税金がむだ使いにならないようにやってみたい、こう思っております。
  303. 中山千夏

    ○中山千夏君 最初に第二パナマ運河計画についてお尋ねします。  五十八年度の予算で第二パナマ運河計画の調査費がついたというふうに聞いておるんですけれども、これちょっと内容を確認したいんですが、お願いいたします。
  304. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 第二パナマ運河、これに対しては五千二百万予算が計上されております。
  305. 中山千夏

    ○中山千夏君 五千二百万の内訳といいますか、ちょっと詳しいことお願いします。
  306. 西村康雄

    説明員(西村康雄君) ただいま大臣が五千二百万円という予算を申し上げましたが、これは現在、パナマ運河の代替案につきましてこれからどういうフィージビリティースタディーをしようかということで、新しいパナマ運河に関します準備委員会というのが現在アメリカ、パナマ、日本の三国で構成しておりますが、この準備委員会でこれからフィージビリティースタディーの考え方、計画を立てるということになっているわけですが、その計画を立てるにつきまして、日本側としていろいろな意見を取りまとめるというための調査の費用でございまして、これに出席する経費あるいはそのための具体的な資料の収集というのを行うための費用でございます。
  307. 中山千夏

    ○中山千夏君 こういう調査は大抵委託をして行うというふうに聞いているんですけれども、どういうところに委託して、もう少し具体的に、どういう調査をするのかということを教えてください。
  308. 西村康雄

    説明員(西村康雄君) 現在、これから具体的な調査をどのようにするかということでございますが、調査運輸省が直接やる部分とそれから調査委託をするというところがございます。調査委託につきましては、このようなスタディーを従来から行っているようなコンサルタントのようなところへ委託するということになりますが、とりあえずは、まず関係のところでどのようなデータを持っているか、それから具体的な事項につきますと、これから、海運、経済に対してパナマ運河がいろんな形で現在どういうふうに影響を持っているかという実態の把握と、それからある程度の予測、こういう運河をつくればこういう便宜が出る、世界の経済がどうなるだろうということについての概要の大枠についての情報を集めまして、それからもう一方、パナマ運河のFSを、フィージビリティースタディーをやっていく場合に、具体的にどういう事項について調査をする必要があるかということの、事項について、そしてまた、そのような事項はどのようなことを検討していかなきゃいけないか、調査するについては。そういうことをこれから勉強しようということでございます。
  309. 中山千夏

    ○中山千夏君 新聞なんかで読んで、いろいろ報道がすでにされていまして、読んで知ったことなんですけれども、もう五十四年くらいから財界はパナマ高官の申し出を受けてすでに調査を開始して、そして、ある報道では五洋建設というところが計画案をつくるところまでいっているんですね。それから、アメリカでも独自の調査が完了しているというふうに聞いています。そういう調査、いわば第一段階の調査というのは現実にもうでき上がっている状態があるわけですよね。それの上にさらに積み重ねた調査を今度の調査費でやっていくということなのか、またそれとは別に独自なところから始めるということなのか、どっちの形になるんでしょうか。
  310. 西村康雄

    説明員(西村康雄君) まずアメリカでこれまで調査があるということは、これはかなり古いわけで、一九六四年から七〇年までアメリカのアンダーソン委員会調査をしたということがございます。これはしかし特定のところということよりも、むしろ太平洋と大西洋をつなぐ可能性について非常に広範な地域について概要の調査をしたということがございます。  それから、いま民間でやったということでございますが、これは具体的な調査というよりは、一つの案としてこういうものが考えられるという程度のことをスケッチをしたというように御理解いただければいいと思います。
  311. 中山千夏

    ○中山千夏君 こういうものに、いよいよ調査にお金を使って乗り出すという場合には、それなりの見通しというものがおありになるんだろうと思うんですけれども、このプロジェクトの見通しをどんなふうに立てておられるんでしょうか。たとえば総額どのくらいかかるかとか、いまさっき話したちまたでの話は出ていますけれども、そちらではどういうふうにお考えですか。
  312. 西村康雄

    説明員(西村康雄君) アメリカ、パナマ、日本 三国でいまこれからやろうとしますのは、具体的にどういう運河を掘ろうかというような話にはまだ全く至っていないわけでございます。たとえば現在の運河をそのまま拡張するとか、あるいはもう一本平行の同じようなものをつくって、いま複線の往復やっていますが、三線で交流するとかいうのもございますし、先ほど申し上げた民間が考えたような新しいパナマ運河を掘るというようなこともあろうかと思いますが、いずれにせよ、まだどのようなものをどうするかというプロジェクトそのものも、具体的に決めていくというのは、これからフィージビリティースタディーに入りますと、具体的にどういう運河を掘るのがいいかというのを、その中で比較検討するということになるわけでございまして、プロジェクトの概略の見通しというのはまだ先のことでございます。
  313. 中山千夏

    ○中山千夏君 確かにたてまえといいますか、形としてはそういうことになるのかもしれませんけれども、世の中現実に動いていくところをたどっていきますと、とてもそんなに、これから第一歩で何も考えられないところへ集まってやるというような形ではなくて、すでに財界も日本でもアメリカでも動き出して、それから政府も動き出している。それからアンダーソン委員会の報告にしましても、もちろん大変大部なものだというふうには聞いておりますけれども、最終的にはいま日本の民間で言われているような第二パナマ運河の計画のところへだんだんしぼられていって、そういう報告が出ているというわけですよね。そうしますと、何となく一つ調査結果だとかそういうものがもうすでに積み重なったところへまた一から始めるということでは、これは二重にまたお金を——それは出どころは違うわけでしょうけれども、二重にお金を全体的な国の問題としては使っていくようなことにはなりはしないかという気がしますし、全く、これおっしゃるように全然白紙のところから始めるんだというような認識ですと、余りにも現実と食い違いがあり過ぎてこれから大変なんじゃないかという気がしますね。もちろん、そんなことはないと、白紙だとおっしゃるのは、物事の順番上そういうふうにおっしゃるんだろうと思いますけれども、当然これ、報道なんかで言われているところでは約二百億ドル、ちょっと私なんか想像もつかないようなお金がかかって、十年とか十五年とかかかってやることになるだろうということが言われています。そうなりますと、どんなふうになるのかちょっと私も見当がつかないんですけれども、その負担を、たとえば日本がどのくらいお金としては負担をするのか、あるいはどのくらい工事というんですか、を日本が請け負うことができるのか、そのあたりはわからないわけですけれども、当然そういう仕事についている財界の人たちは、その受注をかち取るために、それだけ大きなプロジェクトですから一生懸命になるというのは無理ないと思うんですね。もうすでに日本の財界がアメリカの前大統領補佐官のリチャード・アレン氏という方に年間三十万ドルとかいう報酬を出して、そして米議会に対する根回しをする。そういうことをやるんだということも報道に出ていました。そういうことについては大臣は御存じでいらっしゃいましたか。御意見をちょっとお伺いしたいんですが。
  314. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 第二パナマ運河は大西洋と太平洋をつなぐわけでしょう。ですから、船が大西洋から太平洋に、太平洋から大西洋に非常に短く、私ども知っている限りにおいては日本は貿易国ですから、アメリカの東海岸の方あるいはまた日本から非常に物資が輸送されて活用をされている。しかし、最近の船は非常に大型になっているからこれは通れない問題、あるいはまた船の底が深くなって下の方がついてくるというふうなこと、国際的にそれがわかっているものだから、長い間パナマ運河の改修ということは話題になっておったことは存じ上げております。そしてまた、大平内閣時代にパナマの大統領が日本に来て、大平総理大臣にこういう問題があるからと言って要請していることも当時から私は知っておりますが、そうしたときに日本としても、パナマあるいはアメリカ、そういう国々ともどもに、研究開発というか、そういう勉強会をやろうじゃないかという話が出まして、これは日本の技術もなかなか盛んなものがありますし、また、大きなプロジェクトで世界に貢献するものがあるならばということで、今度の予算に、概算要求にお願いしたところが、先ほど申し上げたとおり五千二百万ほどついたと、こういうふうな経過でございまして、いまから先の問題は、アレンさんがどう出るか、アレンさんというのはたしか日本に非常に関係の深かった人でありますが、アレンさんがどういう立場をとっているか、そこまでは私は存じませんが、そんなところが私のいま知っている範囲でございます。
  315. 中山千夏

    ○中山千夏君 そういうことが報道されているんですが、私はちょっと読んでびっくりした。何でもなくあたりまえみたいに報道されていたんですけれども、そういうふうに大きな企画に関してやっぱり財界が一生懸命になるのは当然だろうと。そのときに、外国の高官といいますか、力のある——高官ではいまはないのかもしれませんが、力のある人に対してお金を払って根回しをしていく。それで、リチャード・アレンさんという方は、いまおっしゃったように日本の財界と非常に関係が深いというような、そこのところの疑惑もあって補佐官から身をお引きになるというようなことがあったようですね。そういう方と関係をつけて何とか仕事を取るようにやっていこうというような動きというのは、どうなんですか、これからこういう計画を進めていく上で。
  316. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) それは私の方のその調査費とは直接関係はございませんがね。日本の企業がアメリカにおいてもたくさん進出しております、鉄鋼であれ自動車販売であれ。こういうところは、よく国情、向こうの法律がわからぬものですから、どこの商社でもどこの会社でも向こうではそれぞれの弁護士などを現地で雇って、ときには余り雇い過ぎて報酬がダブっていって大変なことであるという批判さえ出ているくらいでございます。そういうふうにして外国で代理人を立てて交渉するということは一般普通なやり方でございます。この際にアレンさんの立場がどういうふうなかっこうになっているか存じ上げませんが、代理人をつくるということは私は悪いことじゃないと、こう思っております。
  317. 中山千夏

    ○中山千夏君 それから、きのうのレーガン大統領との会談での中曽根首相の姿勢などを見ていますと、非常に何か危ないものを私なんか感じるわけなんです。  一つ例を挙げれば、これは報道ですけれども、日本を不沈空母のようにしてソ連のバックファイアを食いとめるなんということをおっしゃったと。これはやっぱり感覚として、軍縮、平和というものを求めている日本の国民の世論からすると大分感覚が外れているんじゃないか、何か政府は西側の軍事同盟体制にがっちり食い込もうとしているんじゃないかという危惧を抱いてしまうわけですね。  そういうところでこの第二パナマ運河計画というものを見ますと、最初におっしゃいましたアメリカのアンダーソン委員会報告、もちろん昔のものですけれども、これはやっぱり第二パナマ運河をつくるということについていろいろ考えているわけです。これは軍事的な効果にすごく重点を置いているんですね。それで、運河の方式だとか規模なんかも、大型空母の航行が可能かどうかといったような観点からちゃんと検討しているわけなんです。アメリカ政府は、これを受けてこの計画に乗り出してきているわけですよね。運輸省の経済年次報告などを拝見しますと、その第二パナマ運河計画について軍事には一切もちろん触れておられません。だけれども運輸省がどういうふうに考えていても、結果としてアメリカのリーダーシップのもとにこれが進行したとしますと、結果的にアメリカとNATOの西側安保に加担することになってしまうと思うんですね。こういう点については大臣はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  318. 山口達男

    説明員(山口達男君) パナマ運河がどういうステータスにあるかということを申し上げますが、現在のパナマ運河は、アメリカとパナマの一九七七年の中立条約というのがございまして、その中立条約に従いますと、平時、戦時を問わず、すべての国の船舶、これは軍艦も含むわけでございますけれども、平等、無差別の原則のもとに運河は公開されるということが定められております。それから、この条約によりまして今後パナマに建設されることのある運河に対しましてもこの中立的な制度は適用されることになっております。したがいまして、将来何らかの大きな運河が建設されることになりましても、どの国の船も通れるという原則は貫かれるものと解釈いたしております。  私ども三国政府間で現在行っております現行運河にかわるべきものの代替案の調査準備検討と申しますものは、本来、現在の運河が二十一世紀初頭には通航能力が限界に来るということがほぼ見通されるわけでございますので、それにかわるべき案が何かいいかという見地から行っているものでございまして、いまわが国は当然運河の大きな主要利用国でございます。それからまた貿易面でも非常なシェアを占めている国でございますので、こういう見地からこの準備委員会の作業にいま協力しているわけでございまして、この計画によってアメリカとの軍事協力というようなことを意図しているものではございません。
  319. 中山千夏

    ○中山千夏君 これは外務省にちょっとお尋ねしたいんですけれども、パナマでは八二年の六月三十日にロヨ政権というのがかわりましたね。それで、ロヨ・パナマ大統領という方は、さっき大臣のお話にもありましたけれども、日本にいらっしゃいまして、たしか八〇年、そして当時の首相である大平さんと第二パナマ運河に関してもお話をなさった。そのときの当時の記者会見で、そのロヨ大統領は第二パナマも現運河同様、中立性を守るという発言をしていらっしゃるんですね。今度政権がかわってから、何かそういう発言があったのか、あるいは感触としてはそういう決意をいまの政権が持っているのかどうか、これをひとつ伺いたい、その辺御存じでしたら、その辺を把握していらっしゃるかどうか。  それからもう一つですね、こういう海外まで出ていってやる仕事、プロジェクトというのは、その国の国情をよく見通してかからないと非常に危険だということもあると思うんですね。前にマレーシアのテメンゴールダムというところで日本人の宿舎がゲリラに襲撃されるというような事件がありました。そういうこともありますので、そこの国がどうであるか。たしかロヨ政権が倒れたときに、非常に軍部の圧力が強くて倒れたというようなことも聞いておりますし、その辺ちょっと大丈夫なのかなという感じもあるんですね。  外務省では、以上の二つについてどういうふうにつかんでいらっしゃるか。
  320. 山口達男

    説明員(山口達男君) 先生お尋ねの第一点に関しましては、確かに大平総理時代に来日いたしましたロヨ大統領は、昨年政変によって政権交代いたしまして、後任のエスプレーリア大統領がいまただいま政府のヘッドになっております。  ただ、パナマ運河の中立の制度そのものはアメリカとパナマの間の中立条約そのものに規定されておりますし、この条約は政権の交代いかんを問わず、継続して存続しておるわけでございますから、中立の制度が変わることはないと存じます。また、中立条約の議定書というのがございまして、これを第三国の加入に開放しております。したがいまして、現在までに約二十カ国がこの中立議定書に加入いたしまして、このパナマ運河の中立の制度を認めると、それで自国船舶にもその規則を守らせるという趣旨の議定書に入っておりますので、すでに中立の制度というものは国際的に認知されたものになっておりまして、パナマの政権交代によって影響されないと、かように考えておるわけでございます。  第二点につきましては、先生御指摘の点、まことにごもっともでございまして、国民感情と申しますか、その国民の利益がどこにあるかというところを常に配慮しながら、国際的なプロジェクトを進めなければならないということはそのとおりでございます。パナマ運河につきましても、何しろ国土を横断するような大プロジェクトでございますので、いろいろな意見もあるわけでございまして、パナマの指導者も行く行くは、最終的ないかなる運河の形がいいかを国民投票にかけて決める必要があるのではないかということも言われております。アメリカも日本も、当然のことながら、パナマの国民感情なりあるいは国益なりという立場に十分配慮して、この問題を進めてまいりたいと思っております。
  321. 中山千夏

    ○中山千夏君 お金の問題に今度なるんですけれども、こういう計画にかかわりますと、たとえば後年度負担みたいなものが出てきて、そういうものが増してきて、財政にだんだん負担がかかりはしないかと、そういう心配を私は持つんですよね。それで緊縮財政がこれから続くらしいだけに、国民に負担が響きはしないかと、先の心配かもしれませんけれども、そういう心配を持つんですが、この辺はいかがでしょうか。
  322. 西村康雄

    説明員(西村康雄君) 実際に第二パナマ運河問題というのがこれからどのように推移するか、先ほど申しましたまず準備委員会でいろいろなフィージビリティースタディーの検討に入るわけですが、このフィージビリティースタディーの中で実際にどんなつくり方をしたらいいかという建設の仕方、建設主体あるいは費用の負担、費用の償還というような問題もあわせて検討されるわけでございますが、実際にこれは各国ともどういうふうに負担したらいいか、どういうふうに建設したらいいかというのは共通の利害の問題でございますので、当然そういう点については各国の経済事情にも即して慎重に検討されるわけです。実際にそれが償還しやすいような形で、特別な会社をつくって金を借りてやるというようなことも考えられるでしょうし、どういうふうに各国政府が援助するかということも、まさにそういうことをこれから各国が相談して決めていくという段階に入るわけでございまして、わが国はわが国として、わが国の財政というものをやはり念頭に置きまして、わが国の協力できる範囲で国際的な協力と、わが国の世界における地位も考えながら、その能力の範囲で協力していくという姿勢を貫いていくということになろうかと思います。
  323. 中山千夏

    ○中山千夏君 次に、ちょっと国鉄の広報についてお伺いしたいと思います。  これ「政府広報」というふうに、今度私がきょうちょっと取り上げたい広告はなっていますので、総理府に伺った方がいいのかな。こういう「一日も早く国鉄再建を」という、こういう広告がありまして、私は政府の意見広告というものには大体ちょっと異論があるという立場をいつも申し上げてきているんですが、これはかなり異論があるのでちょっと聞かせていただきたいと思います。  まず第一に、政府は、「非常事態を宣言し、再建に向けて十項目の緊急対策を進めています。」というので、ここへ五つだけ項目が挙がっているんですね。これはどうも昭和五十七年九月二十四日の閣議決定からとったものです。どうしてこれ五つしか出ていないのか。そして順番は、これはあまり関係ないのかもしれませんけれども、順番も必ずしもここの順番ではない。この広告に載っかっているのは一、六、二、五、四という順番で載っかっています。そしてこれかなり余白もありますし、十書くぐらい簡単なことじゃないかと私は思うんですね。それとやはりこう読んでみましても、「職場における悪慣行の是正」、「無料パスの廃止」、「新規採用の停止」なんというんでとっても簡単に十項目が書かれている。もっと親切に説明しても、もうちょっとこの漫画小っちゃくして親切に説明してもちっとも困らないんじゃないか。これはやっぱりすごくイメージ広告で、国民は知らなくても、政府に協力だけしてくれればいいんですよと言っている見本みたいな広告だと私にはどうしても思えるんです。そうじゃなくて、何かこの五項目をこういう形に閣議決定の十項目から五つだけ選んで、五項目をこういう形に載せ なければならない理由があったのか、その理由は国民にとっての利益になる理由なのかどうか、そこがすごく問題だと私は思うので、ちょっと御意見伺いたいんです。
  324. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 中身の話ですので私の方から御説明させていただきますが、政府決定を九月に行いました緊急対策十項目、おっしゃいますように、これ臨調で取り上げました項目十一項目を一項目だけ束ねまして、その順番でこれ書いてございますんですが、この広報にいたしますときにいろいろ議論をいたしました。いまおっしゃいますように全部網羅したらどうかというような議論もございました。しかし、PR効果としてはわりに余白があって要点だけでPRした方がいいんではないかという考え方もございまして、いろいろ議論した末に、やはりこの十項目のうちにまず国鉄自体が取り組むべきものが、これ御案内のように五つほどございます。それから国鉄の内部だけの問題でなくて、やはり運輸省なり国民全般が理解なり御協力をいただきたいと思うものがまた五つございます。職場規律だとかあるいはいわゆる職員の無料パスとかあるいは新規採用の停止とかという国鉄プロパーの話というのをまず取り上げ、それもなるべく着手した、実施着手した時点が早いものを選んだわけでございまして、あるいは赤字ローカル線、あるいは貨物というような問題については、これは国民生活に非常に関係ある全般的な話であり、しかも特にローカル線というような問題は現在非常にホットな話でありますんで、そういう意味合いから選んだわけでありますが、たとえば設備投資の問題とか、その他ほかに割愛したものもありますんですけれども、やはり重点的に特に国民の関心が深い職場規律の問題だとか、あるいはローカル線等関係の深いものを特出して書いたと、こういうのが経緯でございます。
  325. 中山千夏

    ○中山千夏君 もう時間かないのでこれでやめますが、私は、いまおっしゃったまさにPR効果をねらうために国民に正しく誠実によく知らせるというところを犠牲にしたところがものすごく問題で、広報のむだ遣いだということをわかっていただきたいんです。終わります。
  326. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もないようですから、運輸省及び日本国有鉄道決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会