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1983-04-19 第98回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         増田  盛君     理 事                 安孫子藤吉君                 福田 宏一君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 前田 勲男君                 宮澤  弘君                 小山 一平君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        羽澄 光彦君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        警察庁警備局外        事課長      吉野  準君        外務省経済協力        局外務参事官   木幡 昭七君        大蔵省主税局国        際租税課長    河原 康之君        通商産業省通商        政策局米州大洋        州課長      堤  富男君    参考人        財団法人国際科        学技術博覧会協        会事務総長    伊原 義徳君     ─────────────   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正受諾について承認を求めるの件(内閣提出) ○領事関係に関するウィーン条約及び紛争義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正受諾について承認を求めるの件の審査のため、本日、財団法人国際科学技術博覧会協会事務総長伊原義徳君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 増田盛

    委員長増田盛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 増田盛

    委員長増田盛君) 千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正受諾について承認を求めるの件、領事関係に関するウィーン条約及び紛争義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件、以上七件を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 前回この領事関係に関するウィーン条約との関連という意味を含めて外交官特権の 問題をお伺いいたしたわけですが、フランスにおける外交官国外退去を求める件とその他それに報復的ないろいろな事件といいますかそういうものが各国で起こってきたわけですね。わが国でもつい最近レフチェンコ証言というものが大分新聞報道されたわけなのですが、このレフチェンコ証言、これもまたある意味で言うと外交官としての一つ活動のもとに行われたことでありますから、その点について幾つかいまから御質問したいと思うのですが、アメリカCIA、それとソビエトKGBあるいはモサドとかいろいろ情報機関というのがあるわけなのですが、今回のレフチェンコ証言内容を見てみますとアメリカCIA情報戦略一環というふうに私は受け取っているわけなのですが、その情報戦略一環として周到な情報操作が行われてきているのではないか。今回のレフチェンコ証言リーダーズダイジェスト誌を使っての巧妙な情報操作、これは対ソビエト宣伝戦一環としての目的を持つのではないか、こういうふうに私は解釈をいたしておるわけであります。ですから、対日政治工作の面とそれから対ソビエト宣伝戦二つ内容を盛り込んだものではないか、そして効果をねらったものではないか、こういうふうに考えておるわけなので、今回のそのレフチェンコ証言に関連して幾つか質問をさせていただきたいと思うのです。  そしてまず最初にこれは外務省にお尋ねするのですが、バロンという人が書いた「今日のKGB——隠された魔手」といいますかそういうふうな本が出ているわけなのですが、この本をもうすでにお読みになっておられますでしょうか。
  6. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) この本はまだ現在出版の準備中ということでございましてそれの要約版リーダーズダイジェストの五月号と六月号に二つに分けて出される、こういうことでございます。そのリーダーズダイジェスト版につきましては私ども報道その他を通じてある程度は承知しておりますが、このバロンのいまおっしゃいました「今日のKGB——隠された魔手」という本自体はまだ読む機会を与えられておりません。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとリーダーズダイジェストが発行されるという時点で初めて内容的に読まれると、内容を読まれると、こういうことになるのですね。  そこでジョンバロン記者に関してでありますけれども、この人がいろいろ前にも書いているわけですね。ですから大体おわかりじゃないかと思うのですが、この人が一体どういう人か御存じですか。
  8. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) ジョンバロン氏は、いまおっしゃいましたようにKGBについてすでにかなり有名になりました「KGB ソ連秘密警察の全貌」という本を一九七三年に出版しております。この日本語訳はたしかその翌年の七四年に出されたかと思っております。私も読んだことがございますが、そういう著作活動の中でも特にKGBについて関心を持ってそれを追求しておられる方であります。身分としてはアメリカ版リーダーズダイジェスト・ワシントン総局主任編集員という立場であるというふうに承知いたしております。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 私の知る範囲ではこの方はCIA系のライターであるというふうに聞いてはおるのですが、それは本当かどうかわかりません。しかし肩書からいきますと元の海軍情報部員なのですね。そしてリーダーズダイジェスト情報操作ではこれはある新聞の、日本新聞ですが、新聞記者の方を使ってまず名前を抜いて発表をしたと、そしてセンセーションを巻き起こしておくと、そしてさらにその後各紙が一斉に飛びついていったということになるわけなのですが、そのときにはすでにちゃんと名前を入れたものが印刷してでき上がっていたと。ですから、どうぞというわけでこれを皆さんにお配りしたというふうなことなのですね。そういう一つの流れを見てみますとどうもマスコミ操作をしたような感じを私は持っておるわけなのですが、その辺の事情はこれはなかなかおっしゃりにくいかもしれませんがどういうふうにお考えでしょうか。
  10. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 確かにいろいろこの過程において、最初に必ずしもはっきりした形でなくてだんだん内容が出てくるというふうなこと、これは何のことについてもありがちでございますがあるいはそういうふうにとられる、これはたとえばコマーシャリズムの観点からもそういうことが有効でもあり得るわけでございますし、私どもとして格別にそれについてどうであるという判断をする根拠と申しますか情報は持っておりません。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 いままでソ連からたくさんの人が亡命をしているわけなのですが、その亡命者のその後の動向を見ましてもたとえばベレンコといういわゆるミグの亡命事件がございましたですが、このベレンコにしてもそうなのですが、軍事機密ですとかあるいは政治機密を握っているような人の亡命、その場合はあとずっと見てみますと全然表面に出てこないのですね。今回のような取り扱い方をしていない。ですから恐らくアメリカCIAとしてはこれは完全に隠してしまうというやり方をとっていたと私は思うのですが、今回初めて大衆の面前に出てきたという感じであるわけなのです。ですからレフチェンコ証言というのが今回オープンにされたことは、これは全く宣伝効果以外にないのじゃないかというふうに私は考えておるわけなのですが、その点はどういうふうにお感じになっていますか。
  12. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) どうも先ほど申し上げましたように私どもとして格別の判断をする材料がないわけでございまして、申しわけございませんがそれ以上の御答弁はいたしかねるわけでございます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 今度の証言の中でエージェントという言葉が使われているのですね。エージェントとは一体何だろうかということになるのですが、その表現の仕方はいろいろあると思いますがこれが非常に重大な意味を持つ場合もあると思うのですね。外務省の中にもそういう人がいたのだというようなそういうことまで言われている。ソ連側に言わすと恐らく余り重要でない工作員だったかもしれません、ソ連側は黙っていますから、何も言いませんので。自分の国を捨てて亡命した人物ですからどこまで信用できるのかわからない、こういうふうなこともあろうと思います。  そして今回レフチェンコ証言名前が挙げられた方々がたくさんおられるわけなのですが、いろいろ聞いてみますと、レフチェンコとはほとんど面識のない人が非常に多いわけですね。そういう人がいただろうという程度しか御存じない方が非常に多いわけなので、儀礼的に会ったとかときどきソビエトあたりでも大使館でパーティーなどやりますからそういうところでちょこっと会ったとかあるいは仕事上で何かの折衝をやったとか、仕事といってもいわゆる国家機密とかそういうものと関係ない仕事で多少接触したことがあるとかそういう人がほとんどであろうと私は思うわけなのですね。  ですからある意味で言うと、レフチェンコ本人にとってみるとアメリカ亡命した以上自分を売り込まなきゃならない、そういうこともあると思うので、そういうことも恐らく含めてわれわれは見ていかなきゃならないのじゃないかというふうに思うわけなのですが、先ほど申し上げましたエージェントということですね、これは一体どういうふうに解釈したらいいのか、その点、外務省としての御意見をお伺いしたいのです。
  14. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) エージェントという言葉を辞書で引いてみますと第一義的には代理人、代行者、第二義的には行為者手先とかそういうふうなのが出てくるわけでございますが、レフチェンコの議会における証言などを見てみますとエージェントというのはかなり広い意味で使われているようでございまして、KGBが、彼が東京にいたころ二百人くらいのエージェントを使っておったという言い方をしておりますけれども、中には完全に金なり何なりで取り込まれて完全な手先工作員として動いていたというのもあるよう ですしあるいはより広い協力者という意味でのエージェントという言葉を使っておって、先日もたしか決算委員会官房長官からもお話がありましたけれどもレフチェンコあるいはソ連側レフチェンコ側なりの見ておる見方と働きかけというか受け身の立場に立った方との間で認識の相違ということもある場合もある、こういうことのようでございます。先ほど申し上げましたように大変広い意味で、協力者というほどの意味で使っているような場合もあるというふうに感じております。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 協力者といっても内容がいろいろありますから、ただいろんな交流文化交流とかそういうものに協力したというのでそれがエージェントであるというふうには限らないわけだから内容の問題だと私は思うのですね。けれども一般的にエージェントと言えばやはり工作目的のために手先になって働くという協力者のことを言うのじゃないか、こういうふうに私も思っておりますけれども、この問題はそういう内容を十分見ないできめつけますと、外務大臣も恐らく御意見としてそういうものをお持ちだと思いますが、たとえば政治レベル交流できない国との問題ですね、文化レベルでは交流できるからたとえば文化レベル交流は今後やっていきましょうというときにやはり接触をするわけですね。ところが接触をして、その内容が文化的な交流の話題が主体であったというにもかかわらずそれをエージェントと言われてしまうと文化交流もやれない、これはもうどうしようもない。そういうことになってしまうのでその辺、われわれとしても内容的にエージェントという問題との絡み合いというものを十分考えていかなきゃならないのじゃないか、こういうふうに思っておるわけなのです。  そしてまた何人か挙げられた、レフチェンコの言い分によればエージェントと称する人の中にナザールという暗号名外務省職員がいるということが言われておるわけなのですが、これは外務省情報が外に漏れるということに関連してまず暗号解読まで非常にプラスになったのだなんて言っていますけれども、私は最近そんな問題はナンセンスだと思うのですね。恐らく暗号解読なんていうのは乱数表を使ってやる以上何人それに取っかかってもそう簡単に解けるものではないし、解けることは解けてもたとえば十年もかかるとか何年もかかるというふうなものでそれを解いている間にどんどん変わっていきますから、恐らくそういうことは私はあり得ないのじゃないかと思うのですが、レフチェンコによれば在外公館からの通信文をコピーしたりしてKGBに渡していたと。本人が見たわけじゃないのでこれもどうも真偽のほどはわかりませんがこういうことを言っているのですが、それについて外務省として何かコメントがございますか。
  16. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) そういう暗号なり外務省秘扱いの文書が外に漏れておったかどうかということ、この点はまだ調査の段階でございますし確定するに至っておりませんのであくまで一般論でございますけれども暗号の強さといいますかこれを破ることのむずかしさということについては、私どもはこれはほとんど不可能というか困難であるというふうに認識いたしております。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 不可能だろうと私も思うのです。しかし彼としては暗号解読に対して最大の貢献をしたと言っておる。一体どういう貢献をしたのかわかりませんがそういうことを彼は言っておるわけなのですが、この種のことはやはり外務省内部の問題であると同時に、今度の一連のこのレフチェンコ証言といいますかそれをもとにした報道等も含めた一連のものに対しての大きな何といいますか裏づけの根拠になるのじゃないか、これは国内で起こっていることですから国内調査すればわかるわけですね。ですからそういう意味を含めてこれは外務省が責任を持って調査していただいてそういうことがなかった、私はそういうふうに信じますけれども、なかったらなかったと早く発表していただいた方がはっきりして決着がついていくのじゃないか、こういうふうに思うわけなのですが、コピーが外部に出るとかそんなようなことは外務省として確認できるのでしょうか。暗号解読というのは僕は余り可能性がないと思いますがいかがでしょうか。
  18. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 先ほど申し上げましたようにその辺を含めて現在調査中でございますのでお答えは御容赦いただきたいと思っております。われわれとしては秘密保持体制については万全を期してきたつもりでございますし今後とも一層の改善を図るつもりでございます。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 そこから先はいま調査中ということですからこれ以上申し上げませんが、できるだけ早く事実があるかないかという問題は調査していただいた方がいいのじゃないかと思うわけであります。  そこで、レフチェンコ関係したことはそのぐらいにいたしまして、その次にきょうの案件関係した問題を二、三質問さしていただきたいと思うのですが、まず最初国際科学技術博覧会、これは科学技術庁が担当かもしれませんが、この国際科学技術博覧会の現在これに対して参加を申し込んでいる状況ですね、これがもしかおわかりでしたらここで発表していただきたいのですが。
  20. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) お答え申し上げます。  現在までのところ科学技術博覧会に対して参加を申し越している国といたしましては、リビア、民主カンボジア、タイ、米、オーストラリア、フランス、イギリス、チリ、キューバ、ブルガリアの十カ国でございます。国際機関といたしましては東南アジア文部大臣機構国連訓練調査研修所国連開発計画世界観光機関の四機関がございます。  以上のとおりでございます。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとこれはまだ締め切っているわけじゃないですね。ですから今後その他の国も申し込んでくるのじゃないかと思いますが、たとえばさっきのレフチェンコの件もありましたけれどもソビエトあたり参加するというような意思表示はありましたか。
  22. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 私が承知しておる限りではソ連参加につきましては積極的な反応を示しているということを聞いております。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 せっかくやるわけですから、各国別政治体制関係なく参加してもらった方がいいのじゃないかとこういうふうに思っていまお聞きしたわけなのです。  そこで次に、今度は国際小麦協定に関連いたしまして、この協定そのものについては私の方は別に異論はないわけでありますけれども、これに関連していろんなことがまた国際的な問題として起こっていますのでそれをちょっとお伺いしたいと思いますがその一つエチオピアですね。このエチオピアが非常に干ばつに悩んていて食糧が不足をするということで西側の諸国、欧州共同体——EC等が中心となって食糧援助というものをやってきた。ところがどうもその援助した食糧というものがそのまま干ばつの地域、食糧が不足しているところに回っていかないで軍の倉庫にストックされていたりあるいは一部が武器購入の見返りに使われたというふうな報道があるわけなのですが、これについては何かもっとさらに詳しい情報がございますでしょうか。
  24. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) ただいまの件につきましては、事実関係といたしましてはエチオピア政府高官が英国に亡命してきた際に言明した事実として、エチオピアにあるアッサブ港でラベルを張りかえられてECから送られてきた食糧援助品ソ連またはエチオピア軍に渡っているということを発言したという三月二十七日のサンデー・タイムズの記事が日本新聞にも報道されたことがございますけれども、これにつきましてECとして早速この件について調査した結果そういう事実はないということを言っておりますし、それから世界食糧計画、この国際機関自体もその事実を否定しております。それでこのような援助が渡るときにはフィールドオフィサーといいますか現場に監督官がおりましてその状況を監視しておりますので、これが横流しされるような体制にはないと いうことが確認されておりますし、エチオピア政府自身もこれを公式に否定しているというのが調査結果でございます。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとこの報道は後で確認したところによるとそうでなかったということになるわけですね。それだったら非常にいいのですけれどもそういうことですね。
  26. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) そのとおりでございます。
  27. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、この食糧援助関係というのは今後も続けられていくわけですけれども、その援助した食糧がどこかへ行ってしまう、他の目的に使われるということがいままでなかったということであれば非常に大きな意味を持ってくるだろうと私は思っておるわけであります。  この国際小麦協定食糧援助規約等はこれは前にも一度この委員会で取り上げて毎年これはあるわけですから中身については問題ないと思うわけですが、そういった援助したものがどこかほかの目的に使われるということがないというふうなことで今後も進めて、またもしかこういうことがあればすぐ調査してやはり確認をしておく必要があるのじゃないかとこういうふうに思ったものですからいま質問さしていただいたわけであります。  それからさらに、これはいま交渉中ですから近い将来に恐らくこの結果が出てくるのだと思うのですが、いま漁業交渉日ソ間でやっておりますですね。これがやはりどうも前回交渉と比べると多少時間がかかりそうな様子と拝見をするわけなのですけれども現在の進捗状況はどういうふうになっておりますでしょうか。
  28. 田中義具

    政府委員田中義具君) 日ソサケ・マス漁業交渉は去る四月の十一日よりモスクワで開催されております。まず日本側は総漁獲量四万五千トン、その他の操業条件はほぼ昨年と同じとするように提案したのに対して、ソ連側は総漁獲量三万七千トン、その他漁獲尾数制限等操業条件を厳しくするとともに取り締まりについても日本の監視船五隻にソ連監督官を乗船させ共同取り締まりを行うこと、さらに漁業協力費の増額等を提案しております。現在もこれらの問題をめぐって鋭意交渉が行われている段階でございます。政府はまた本件交渉の早期妥結を促進するために松浦水産庁長官を十七日にソ連に派遣したところでございます。
  29. 松前達郎

    松前達郎君 これも毎年交渉が行われるわけですけれども、こういう交渉についてこれは単年度でずっとしょっちゅう交渉をしていくということがいままで続けられてきたわけですね。その辺がどうも政治的にいろいろな問題を絡んで交渉にそれが出てくるような気もしないわけじゃないので、これはどうですか一年ずつのものではなくて何年かの、たとえば三年とかそういうピリオドでもって交渉が行われるような内容に切りかえることができるものかどうか、その点はいかがでしょうか。
  30. 田中義具

    政府委員田中義具君) 協定の長期安定化につきましては、先般カメンツェフソ連漁業大臣が訪日した際にも金子農林水産大臣からそのような要請をされましたし、安倍外務大臣からも同じような要請をしておられます。それから今回の交渉の際にもこの長期化の必要性については日本側から日本立場を述べておりますが、現在までのところこの問題についてまだはっきりした見通しは立っていないのが現状でございます。
  31. 松前達郎

    松前達郎君 その点また今後チャンスがありましたらひとつ提案を何回も繰り返してやっていただきながら、毎年毎年頻度が多くなればなるほど利用される可能性もあるものですから、なるべくピリオドを長くできるようなそういう方向で話がまとまれば非常に結構だと思うのでその点ひとつ努力していただければと思います。  いろいろ国際問題、すべて関連を持って今日考えていかなければならないと私は思っておるのですけれども、非常に細かいことまで含めて考えてみますと大分情報とかあるいは活動といいますか、そういったようなものを含めてどうも絡み合いながらいろいろと流れてきておるものですから、漁業交渉もあるいはそういう意味が少しは含まれる可能性もあると。もちろんさっき申し上げたようなことも含めてやはりこれから全体的に見ていかなければならぬなという気がしてならないわけであります。外務省の方ではこれは当然十分そういうところは分析して対応されていると私は確信をいたしておるわけでありますけれども、とりわけ最近どうも米ソ間の問題というのが非常にぎくしゃくしてまいりましたし、日本もその間に挟まれながらたとえば日ソの問題、日米の問題、いろんな問題が出てきている。その中でどういうふうに今後外交を進めていったらいいのかという基本的な問題とはちょっと別ですけれども、外交戦略的な意味で非常にむずかしい時代になったのだと私は思っておるのです。  そこで大臣に最後にお伺いしたいのですが、日ソ間の問題で前から私申し上げておりましたけれどもたとえば文化交流ですね。これは一つのパイプとして——政治的には非常に厳しい状態ですから政治的なパイプというのはなかなかあかないかもしれません。大臣の方ではグロムイコ外相の訪日を要請されたということですけれども相手側からどうもそれに対していい返事がない。しかしそれはそれとして、文化交流の面であるいはそれに準じた面での交流ですね、このパイプだけはやはりあけておきませんと、何かそこまで詰まってしまいますとどうもますます日ソ関係というのはおかしくなっていくのじゃないか、こういうふうに思うわけです。たとえば米ソだってホットラインをまた新たに一つつくったわけですから米ソだってやってはいるわけですね。ですから、文化交流は今後積極的にやられるというお話を伺ったのですがその点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  32. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに日ソ間は大変厳しい状況にありますが、しかし何といいましてもソ連日本の隣国でありますし、一九五六年に日ソの国交が回復されまして以来今日まで着実に日ソ関係というのは積み上げられてきておるということもあるわけでございます。最近の国際情勢、日ソを取り巻く情勢は大変むずかしいものがありますが、しかし国交があるわけでありますしそういう中での対話といったものはこれはとだえさせてはならないと。そういう意味で政治対話をこれからも根気強く続けていかなければならぬ。対立点は対立点としてはっきりしながら政治対話もこれから続けていかなければならぬと思いますが、同時にそれ以外で経済交流、これは民間の経済交流等もすでに行われておるわけでありますし貿易等も伸びておりますから、こういう点もこれから進めるという必要もあると思いますし、特にいまお話しのような文化交流は、やはり日ソの友好のきずなといいますか真の友好というところまでいっていないということですが、しかし同時に友好関係を進めていく上においては文化交流の面に日ソ両国とも少し力を入れたらどうだろうかとこういうことは実は今回も話し合ったわけでありまして、ソ連側もこの文化交流については熱意を持っておるようでありますし、日本としてもこの点についてはこれからも積極的に取り組んでいく必要があるのじゃないか、私はそういうふうに思っております。おっしゃるように、やはり対話あるいは交流をいろいろな形で、できる形で進めていくということが非常に必要であろうと、こういうふうに判断をしております。したがってそういう意味文化交流にはこれからソ連とも相談をしながら取り組んでまいりたいと考えております。
  33. 松前達郎

    松前達郎君 終わります。
  34. 小山一平

    ○小山一平君 去る二月の下旬に、永野重雄日商会頭を団長とする二百名を超す貿易経済代表団が訪ソをいたしました。この経済代表団の訪ソについて外務大臣はどういうふうに評価されておりますか。
  35. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 先般永野ミッションがソ連を訪問いたしましてソ連から非常に歓迎を受けたわけであります。いろいろと今後の日ソの経済交流等につきましても話し合いが率直に行われたというふうに聞いておりますし私はそれなりの意義があったと思っておるわけであります。  ただ、基本的には日ソ間では領土問題を含めた政治的な対立という問題がありますしまた事経済に関しましてもやはり日本立場としては政経を分離して経済は経済だけでこれを進めるといういまの状況にはないというふうに判断をいたしておりまして、政経一体という立場、この基本を変えるわけにはいかないわけですが、しかし民間の経済の交流がこうした永野ミッションの訪ソによって進められるということはこれは日ソ関係の今後にとってはいいことじゃないかと、こういうふうに判断をいたしております。
  36. 小山一平

    ○小山一平君 その訪ソ代表団が出発する際外務省は、いま大臣のおっしゃるように政経不分離という立場からでしょういろいろ注文をつけたとか圧力をかけたとか報ぜられました。そしてこれに対して永野団長は、外務省の役人は頭が悪くてだめだと言ったとか今里顧問は、北風より太陽だ、硬直した政府の外交ではだめだとこう厳しく批判したとか伝えられました。  あの訪ソ団の出発の際の経緯、それからそういう何か意見の相違というようなものがあったようですが、その相違点というようなものは一体どういう点なのか。
  37. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 永野ミッションが訪ソに当たりまして外務省のあいさつを求められて欧亜局長があいさつしたわけですが、この内容はこれまでの日本ソ連に対する基本的な外交政策を述べただけで、あたりまえのことをあたりまえに言っただけのことであるとこういうふうに思うわけです。すなわち日ソ間にはやっぱり懸案の領土問題というのがある、また民間経済の交流ということは大変結構なことであるけれども日ソ間には同時にやはり今日の日ソのそうした領土問題等の基本問題が解決されていない状況において政経を分離して事を進めるというわけにはこれはまいりませんと、こういうことを言っただけの話で、そういままでと違ったことを言っているわけじゃないし日本の政府の基本的な立場を述べただけでありますから、私は経済界の方も大方これは認められたものとこういうふうに思っております。
  38. 小山一平

    ○小山一平君 そうすると新聞や雑誌のいま私が申し上げたような、この訪ソ団の重要な立場の人たちが外務省に対して腹を立てたとか厳しい批判をしたとかというようなことはないのですか。
  39. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは後で永野さんがお帰りになってミッション代表の方と私もお目にかかりましたしいろいろと事情も聞いたわけでございますが、別に外務省に対して、日本政府のそうした基本的な姿勢というものに対して反発をされるとかそういうことはありませんで、むしろそうした姿勢を踏まえてソ連で言うべきことはちゃんと言っていただいたというふうに私は判断をしております。そういう意味では今度の永野ミッションの訪ソというのは大変よかったのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  40. 小山一平

    ○小山一平君 マスコミを通じて伝えられてきたものとは大分お答えが違うようですが、いろいろ言ってもこれ以上実際どうだったというようなことをここで解明するわけにいきませんからこれはこれといたしまして、いまアメリカの旗振りで実施をされている強硬な対ソ経済制裁というのは西欧諸国や日本にとりましてこれは大分無理があるのではないかというふうに私は思うのですよ。というのは、西欧諸国にしても日本にしても日ソ経済関係というのは長い年月積み重ねてきた相互依存的なものだと思うのですね。ですからこれに一方的に厳しく制裁を加えていくというところに無理がどうもあるように思えてなりません。たとえば一九七九年に日本ソ連との間に合意された電磁鋼板製造プラント輸出がフランスに持っていかれたといったような事例に見られるように、西欧工業先進国は日本と違った取り組みをして積極的に輸出を伸ばそうとして今日までずいぶん高度工業製品を輸出いたしまして貿易高を五〇%も伸ばしていくとこう言われておりますし、したがって日本のシェアは低下を招いておりますけれども、それでも日本も一定の伸びが続いております。その上、アメリカは穀物輸出を平気で続けているなんというのはまことに身勝手というふうに思いますね。一番アメリカの言いなりになって対ソ制裁措置に忠実なのは日本だというふうに思います。  確かにソ連は農業の不振、工業成長率の低下、アフガン問題、ポーランドの混乱等々あって東欧経済は不振をきわめておりますし、その上軍拡競争などもあってソ連は過重な負担に悩まされておりまして積極的に貿易を拡大して経済の立て直しを図ろうと苦心惨たんしていることはよくわかります。しかしながら西欧諸国にしても日本にしてもこれは相互補完的な性格がありますから、対ソ貿易がソ連にも利益をもたらすけれども西欧にとっても日本にとっても対ソ貿易はそれぞれ利益をもたらすという相互関係にあるわけですから、いまのような深刻な世界不況の中にあっては西欧にしても日本にしても対ソ貿易の拡大と発展を希望するということはこれは共通だと思います。特に西欧諸国はずいぶん弾力的に積極的な輸出を行っておりますし、このごろの訪ソ団などの意見でも、日本も大いに対ソ貿易を拡大したいとこう希望をしていることが明らかにされておりますけれども、こういう点についてどういうふうにお考えになられますか。
  41. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) どうしていまおっしゃるような事態になったかということの認識の問題ですが、これやはり一九七〇年代初頭のいわゆるデタント時代を通じてソ連が一貫して軍備増強を図ってきたと、さらにこのような軍事力を背景として第三世界に対する進出等世界各地においてその影響力の増大を図ってきたわけであります。これに対して米国が、かかるソ連の動きに対処するとの考え方に立ってみずからの国防力の増強に努めるとともに、対ソ経済交流についても従来以上に慎重に対処すべしとの姿勢を打ち出しておるわけでありまして、わが国としましてもソ連との経済関係に対処していくためには日ソ関係の全般的な状況及び国際情勢等を十分勘案して無原則な政経分離はとらないことといたしておりました。このような観点からアフガニスタンに対するソ連の軍事介入あるいはポーランドの情勢等に対する対ソ措置に共通の対応を行ってきた次第であります。ソ連に対応していくためにはやっぱり今後ともアメリカを含むところの西側諸国の結束と協調を維持しつつ具体的な対応を進めていくことが重要である、こういうふうに考えております。  去年は多少西側諸国の間にも足並みの乱れがあったわけでございますがその後一応足並みはそろってまいりました。われわれとしてもソ連のそうした膨張政策というものが改められるということを期待しながら今後とも対応してまいりたいと思います。同時にまた日ソ間は非常に厳しい状況にあるわけですが、しかし一面においては民間の経済交流の面は開いておりますしあるいは人的な交流の面もありますし、先ほどお答えをいたしましたような文化交流等の面についてはこれを進めていくという考え方で、いたずらにソ連と対決をするという考えは持っておりませんで、私たちは基本的には対立面もありますけれどしかしその中でできるだけそうした対話の機会というものはこれを拡大してまいりたいと、こういう努力は続けていきたいと、こういうふうに考えております。
  42. 小山一平

    ○小山一平君 このごろレーガン大統領は、ソ連に対してさらに貿易その他経済的社会的圧力を強化してソ連の経済と国力を弱体化して軍事費削減を余儀なくさせることによって米国の軍事力優位を確立しよう、こういう考え方に立った新政策を決定したと、こういうふうに伝えておりますね。しかしシュルツ国務長官は、経済制裁を含む米国の対ソ戦略というものは同盟国の足並みを乱すおそれがあるということでその新政策に反対を唱えているというふうなことも伝えております。この考え方はかつてトルーマン大統領がとったソ連封じ込め政策と軌を一にするものだと思うのですけれども、こういう力によって抑え込むという発想は私は平和の論理ではないと思います。これは力の論理であって、いままでもそうであったけれども、これでは対立と不信を激化して冷戦をますま す深刻にするだけできわめて危険な考え方だとこういうふうに思うのですが、政府はレーガン大統領が決定したと言われている新政策なるものといま申し上げたその発想についてどう思いますか、これは結構なことだと同調するお考えですか。
  43. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに米国が軍備の増強を進めておる、同時に西側と連携しながらソ連に対する経済措置を強化するという考えを持っておることはこれは事実であるわけですが、その前提となるのはあくまでもソ連のいわゆる膨張政策、特にアフガニスタンに対するああした不当な軍事介入といいますか軍事侵略あるいはまたポーランドに対するああした介入、そういうものがあった、その他アフリカ等に対するソ連の膨張政策等そういうものがあるということを前提にしたアメリカの動きであります。またそれに同調する西側諸国はその危惧がそういう結束となってあらわれたわけでありまして、日本としても米ソ間の緊張が緩和された形で世界の平和が確保されるということを非常に期待をするわけですが、こうしたソ連の行き過ぎた政治あるいは軍事的な膨張政策というものに対してはこれはやはり反省を求めなければならぬと、私はそういうふうに思うわけです。そういう意味で実は西側諸国が足並みをそろえてソ連に対する経済措置をとっておるわけでございまして、私は今日の東西関係を見ましても、こうした措置をとることは何としても前提がソ連の膨張政策にあるわけですから、これに反省を求めるという意味での措置としてはこれはやむを得ないことではないかと、こういうふうに考えております。
  44. 小山一平

    ○小山一平君 私もソ連の大国主義や人の顔を逆なでにするような無神経さについては納得のできないものを強く感じます。しかし緊張緩和を望んでいくという目標があるわけですから、それを実現していく方法として、おまえの方は膨張政策をとっているからわれわれの方はみんなで足並みをそろえてこれを締め上げて反省を求めるのだという発想では私はこの対立関係というものを緩和していくことは非常にむずかしいように思うのですよ。緊張緩和という目的を共通的に持っているとしたら、力で抑え込んで反省させるというやり方だけでいこうというレーガン大統領の考えに日本政府が全面的に協力していくというのは、外務大臣も言っているように対立をする考えはないと言ってみたところでこれは対立を深刻にするだけだと思うのですがそう思いませんか。
  45. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) それじゃこれをほっておいたら一体どうなるかということなのですね。やはりアフガニスタンに対する侵略なんかから見ましてソ連は全く体制の違う国にまで侵略をするというところに問題があって、このまま放置すればソ連の膨張政策は際限なく続いていくという恐怖感といいますか心配が、これは西側全体の国の中に起こってくるのは当然でありまして、これに対してはソ連の反省を求める、反省しない場合はある程度の、武力による制裁というのはできないわけですからやはり経済的な制裁措置というものを講ずるということは、ソ連の反省を求めて膨張政策をストップさせるためには私はやむを得ない措置ではないかと、こういうふうに思うわけです。そういう中にあってやはり大事なことは、西側の陣営がまとまってやるということであって結束をしてやるということではないかとこういうふうに思っておるわけで、ただ一方的にアメリカがやるところに同調するということじゃなくて、西側がそうしたソ連の反省を求めるために結束をしてこれに対処していくということが必要である。こういう点で日本も西側、いわゆる自由主義国家群の一員としてその責任の一端を担っておるわけでございまして、私はこれはそれなりの効果ソ連に対してあったと、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  46. 小山一平

    ○小山一平君 アメリカに全面的に西欧諸国も日本も同調しているようにおっしゃるけれどもアメリカが今度高度技術の対ソ流出規制を一層強化する目的で輸出管理法改正案を決定したと言われておりますね。それから、軍事力強化に結びつかないはずの先端技術分野の民生用の工業製品等、石油、天然ガス開発関連機材なども禁止をしていくということに同意してもらいたい、こういう提案をするというようなことが伝えられております。そういうことになると、去年アメリカが対ソ政策をある程度緩和したことによってシベリア開発協力問題が前進をするだろうと、それによって対ソ貿易も拡大するだろうと言われていたことが、今度はあべこべの方向に陥っていくのではないかというふうに思うのです。これに対して西欧諸国は強硬に反対をして同調しないだろうと伝えております。実際にはどうなのですかね、日本はこういうアメリカの禁輸強化の考え方というものに同調をしていくわけですか。
  47. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) わが国は何もアメリカにすべて同調するということではありませんで、アメリカの間違っておる点はこれを正していかなきゃならぬ、反対もするわけでありまして、特に輸出管理法の改正法案については私どもは問題があるとこういうふうに考えております。はっきりしない点もあるわけですが、伝えられるところによりますと、たとえば第一に現行法と同様に諸規則を在外の米系企業にも及ぼし得る規定ぶりとなっておりまして、運用いかんによってはこれは域外適用の問題が起こり得る。こういう点は日本としては認めるわけにはいかない。それから新たに違反企業に対する輸入規制を課し得ることとなっておる。こういうアメリカの方針に違反した場合は、そうした企業が外国であった場合はそれに対するアメリカへの輸入を規制しよう、こういうことになっておる、これも問題があると思います。さらに既存契約については原則尊重としつつも依然として規制対象となり得る可能性が残されておる、こういう点等は私はやはり問題があるのじゃないかというふうに認識をいたしておりまして、これらの点については今後ともアメリカに対してわれわれは主張すべきものは主張していかなきゃならぬ、こういうふうに存じております。
  48. 小山一平

    ○小山一平君 それからココムに対して、民生用工業製品、石油、天然ガス開発、こういうようなものも規制しようというふうな提案がなされるというふうに言われておりますが、こういう提案があったら反対をされるわけですか。
  49. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) この米国の輸出管理法改正案にはココムの機構及び機能の改善、強化等についてココムの合意を得るべく大統領が交渉を行う旨の記述があるわけでありますが、これはココム強化に向けての米国政府の姿勢を明確にあらわしたものと注目をいたしております。しかしこの輸出管理法改正案を受けて、米国はココムの場で種々の提案というものを行うことになるわけでありますが、私どもはこのココムの場での議論についてはこれは参加国の申し合わせがありまして発表できないということになっておりますけれども、先ほどから申し上げましたようなやはりいろいろと問題点がある。各国のいわば主権にまで及ぶというふうなことになれば、これはいろいろと議論をして日本立場もこの中に盛り込んでいかなければならない、こういうふうに考えております。これは日本だけじゃなくて恐らくヨーロッパ諸国も同じような考えを持っておるのじゃないかというふうに判断をいたしております。
  50. 小山一平

    ○小山一平君 そういたしますと、この先端技術分野にかかわる民生用の工業製品だとかあるいは石油や天然ガスの開発関連の機材だとか、具体的にこういう品目の輸出禁止をするというようなことはない、こういうふうに見ていいのですか。
  51. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  ココムでの討議は参加各国意見を持ち寄って同一の立場を決めるわけでございまして、各国が相談してどういう規制が適当かということを決めていくということと存じます。
  52. 小山一平

    ○小山一平君 私が具体的なものをここへ出して聞いているのに具体的なことをさっぱり言わないではぐらかすような答え方はいけないじゃないですか。具体的なことを言ったら具体的なものに対する対応でどうして率直に答えないのですか。
  53. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 先端技術のソ連への 輸出等につきましては、先ほどから申し上げましたようなソ連の膨張政策に対する反省を求めるという意味での経済措置の一環としてこれは非常に各国でも重要視いたしております。そういう中でもしアメリカの提案が行われるということになるならば、これはしかしアメリカだけで一方的に決められるものではありません、日本もあるいはまたヨーロッパ諸国も十分論議をしながらこの意見の一致の中でこれを決めていかなければならない、こういうふうに考えております。
  54. 小山一平

    ○小山一平君 どうも歯切れの悪い話で納得もしませんけれども先に進みます。  永野貿易経済代表団とバイバコフ議長との会談でソ連の第十二次五カ年計画というものの概要が示されたようです。そしてこれに対して日本としても中長期にわたる展望の上に立った今後の対ソ貿易の発展というようなことが期待されるというふうに言われておりますね。  私は、日本の対ソ貿易は相当額の輸出超過になっておりますから対ソ貿易の拡大を図るということになれば、輸入の方の拡大のできるような道が開けなければこれはむずかしいというふうに見ざるを得ないわけですけれども、それにはシベリア開発が重要な課題になってまいりますし、特にすでに政府資金を含めておおむね六百億円と言われるような巨額な資金が投入されている南ヤクート原料炭開発協力プロジェクト、それからサハリン大陸棚石油ガス開発プロジェクト、この促進を図るということが重要な課題になってくると思いますね。これが進んでいけば石炭だとか天然ガスだとか石油だとかこういうものの輸入が拡大してくる、その見返りに輸出も拡大できる、こういう構造になってくると思うのですけれども、このプロジェクトの今後の見通し、大分おくれているのですけれどもこの見通し、それから今後のシベリア開発全体についての取り組みの方針、考え方、こういうものをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 田中義具

    政府委員田中義具君) いま先生から御指摘のあった南ヤクート原料炭開発協力プロジェクトもそれからサハリン大陸棚石油ガス開発プロジェクトもともに一九七〇年代の半ばより実施してきているものでありまして、現在一応計画どおり進められていると承知しております。  南ヤクート炭の方につきましては、当初石炭の対日供給は一九八三年からだったのですが、二年ほど遅延しまして現状では一九八五年からは対日供給が開始される予定というふうに聞いております。  また、サハリン大陸棚石油ガス開発プロジェクトにつきましては、昨年、米国の石油ガス開発関連機材の対ソ輸出についての措置によって探鉱作業が一年ほどずれ込みましたけれども、昨年十一月にこの米国の対ソ措置が解除され、本年については予定どおり探鉱作業が実施できると承知しております。  これらの現在実施中のシベリア開発協力プロジェクトにつきましては、政府としては今後ともこれらのプロジェクトが円滑に実施されるように必要な対応を行っていく所存でございます。
  56. 小山一平

    ○小山一平君 そういたしますと、すでに実施中のプロジェクトはもとより、シベリア開発には積極的であるかどうか知らぬがとにかくこれを推進していくと、こういうお考えだというふうに了解していいですか。
  57. 田中義具

    政府委員田中義具君) ソ連とのこの種の経済協力プロジェクトにつきましては従来から互恵の見地に立って推進してきておりまして、ただ政府としては、先ほど大臣からも御説明がありましたように、政治、経済両方の分野を含めて全体としてとらえていくというような考え方に立っておりまして無原則な政経分離政策はとらないというような観点からこの問題についても取り組んでおります。そういうことで、このシベリア開発案件について実際に対処するに当たっては、このような基本的な立場を踏まえて具体的案件ごとにケース・バイ・ケースで慎重に対処する、検討していくというようなことで対応していく所存でございます。
  58. 小山一平

    ○小山一平君 それはそれでわかるのですがね。シベリア開発の事業というものが進捗していくことを望むのですか望まないのですか。
  59. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) ソ連がそういう十二次ですかの計画をもってこれを進めていく、そういう中で日本の協力を求めておるわけでありますし、われわれはやはり日ソ関係を進める意味においても協力すべき点は協力するにやぶさかでない。また民間も恐らくそういう考えだと思いますが、しかし問題は、日ソ間にあっては領土問題だとかいまのソ連のとっておる一連の膨張政策であるとか、特に最近は日本に対する非常に厳しいああしたINF等における措置というものがとられようという状況にあるわけでございまして、そうした問題もやっぱり考えなきゃならぬとこういうふうに思います。したがってわれわれは、民間の経済協力はこれはどんどん進んでいくだろうしまた民間はそういう非常に強い期待は持っておりますからそれはそれなりに結構だと思うのですが、政府が関与するたとえば公的信用供与等については、これはやっぱり政治経済、そうした情勢も踏まえながらケース・バイ・ケースで判断をすべきものである、こういうふうに実は思っておるわけであります。
  60. 小山一平

    ○小山一平君 どうも何か歯切れが悪いのですが、民間は大変シベリア開発あるいは貿易の拡大ということを望んで積極的な姿勢をとっておりますが、これはそれで大いにやってもらいたいということであれば、先ほど私がお尋ねしたアメリカの輸出管理法の改正問題だとかあるいはココムに対する新しい提案だとか、これは当然そういうことをやってもらったのでは困ると、こういう態度をとらざるを得ないのじゃないですか。
  61. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いや、その辺がやっぱり認識の相違といえば認識の相違かもしれませんが、民間の経済の交流とかあるいは民間が協力するのはこれは一向に差し支えないことでありますし大いにやってもらえばいいと思いますが、しかしいまソ連のとっておるところのああした膨張政策、これに対していわゆる西側の国としては、日本もその一国としてやはり一つの経済措置を講じておるわけですね、反省を求めるために。その一環としてココムの強化という問題が挙がっておりますしあるいはまた経済措置を今後さらにどうするかということもこれからの大きな議題になっておるわけですから、そうした面は十分対ソ関係においては踏まえてこれを進めなければならない、これは私は当然のことじゃないかと。民間もあるいは政府も、せっかくソ連が十二次計画をやっておるから無原則にこれに協力しろと言われても、それはいまの状況から言えばとうてい私は無理であろう、こういうふうに思います。ソ連は一方では、われわれが幾ら言っても領土問題は解決済みだというようなことを言い続けておりますし、それからまたああしたアフガニスタンに対する措置もなかなか改める様子がいまのところは見えないと。あるいは日本に対しては沖縄に核があるというふうなああいうふうなことを言ってSS20をシベリアに強化しようと、そういうふうに一方においては非常に日本に対して威圧をかけておる、そういう状況にあるわけです。これは日本だけの問題じゃなくて、西側としてもやはり一面においては政治のそうした面も踏まえながらソ連とは対処していかざるを得ないのが現実の姿であろう、こういうふうに思っております。日本はそれの一環としてこれを進めておるわけでありますから私は非常に筋の通った話だと、こういうふうに考えております。
  62. 小山一平

    ○小山一平君 外務大臣は西欧諸国と日本が本当に足並みをそろえて同じような態度で対ソ貿易に臨んでいるようなことをおっしゃるけれども、そうじゃないのじゃないですか。近年、フランスとか西ドイツ、英国、オーストリアなどがかなり政経分離的な政策を取り入れているのじゃないですか。そしてソ連に対して長期経済協力協定ども締結しているのじゃないですか。それによって大型のコンペンセーション取引というのが日本に比べるとかなり違いのあるような活発な形になって いるのじゃないですか。
  63. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに去年は、たとえばヤンブルグの開発をめぐりましてアメリカとヨーロッパの間で非常に足並みが乱れたといいますかむしろ対立状況に入ったことは事実でありますし、また日本のサハリンの石油、天然ガスの開発についてのプロジェクトについてもアメリカの規制措置によってこれを中止せざるを得ないというふうな事態になって、日本からもアメリカに対しましてはこれが解除を強く要請した経緯があるわけでありますが、しかしその後、アメリカさらにヨーロッパ、日本も含めた会議によりましてとにかくこの問題は足並みをそろえていこうということになりまして、アメリカも当初の非常に厳しい方針からいわば一歩後退した姿勢で西側が結束するという形をとったわけでございます。それは今日も続いておるわけであります。したがってあくまでも対ソ経済措置という場合は西側が足並みをそろえなきゃいかぬと。それにはいまさっきおっしゃるように、ヨーロッパのまたソ連に対する見方というのはアメリカとちょっと私は違うことは事実だと思います。ヨーロッパとソ連との間は政治的には非常に対立しておりますが、長い間の歴史的な経済的な関係あるいはまたその他の深い関係というものがありますから、やはりアメリカとは違った面があるわけですし、そういう面も含めた話し合いによるところの結束というものが大事であるということを私は強調しているわけですし、アメリカがやっているように全部それに従っていけということじゃないわけですね。ですから、そこら辺で合意といいますか、コンセンサスというものを求めるということが私は大事じゃないかと、そういう方向にいま進んでおると思いますし、またそういう方向で進めなければならないとこういう考えであります。
  64. 小山一平

    ○小山一平君 確かに西欧も日本アメリカとある程度同調した一体的な行動をとろうとやっているのですが、どうもヨーロッパの方はそうではあるけれどもかなり自主的に柔軟に対応しているように見えるのですよ。日本ばかりは全くアメリカと一体的で姿勢が非常にかたい。片一方のヨーロッパは柔軟で日本は非常にかたいと、こういうふうに見えるのですがいかがですか。
  65. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに昨年の段階ではヤンブルグをめぐっての措置等についてそういうことははっきり言えると思うわけですが、その後アメリカもその方針を改めたわけでございますし、そういう中でだんだんこういう問題というのはとにかくアメリカだけが一方で突き進んだってこれはできる問題ではありませんし、ヨーロッパの考え方それから日本の考え方、そういうものを十分お互いに論議してそういう中でコンセンサスを求めなきゃならぬというのが今日の事態ですから、そういう点では今後はアメリカ、ヨーロッパ、日本の話し合いの中でそういうコンセンサスというものはまとまっていくであろうしまたいかなければならないとこういうふうに考えておるわけです。
  66. 小山一平

    ○小山一平君 去年の十一月に緩和措置がとられたと、こういうことによって意思疎通ができたというのですけれども確かにそうだと思います。しかし今度の輸出管理法改正、ココムに対する新提案というふうになるとまた逆戻りをしようとこういうことでしょう。逆戻りするということになれば、せっかくある程度調整のできたものがまたこれ足並みを乱す要因になろうと思いますがどうですか。
  67. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは昨年のベルサイユ・サミットでも宣言されておるわけですが、「われわれは、われわれの政治上及び安全保障上の利益と合致した形でソ連及び東欧に対し、経済面において慎重かつ多様なアプローチを追求することに合意した」とそういうことで、「これは三つの主要な分野における行動を含む」ということで戦略物資の輸出の規制の問題であるとかあるいはOECDにおける情報の交換であるとかその他の輸出信用の制限そういった問題について合意をしておるわけなのですが、依然としていまの国際状況というのは、ソ連のアフガニスタンに対するそういう情勢というのも変わっておりませんし、ポーランドに対しても変わっておらないものですから、それに対してベルサイユ・サミットで合意したようなアメリカ日本、ヨーロッパという西側の経済措置というものは、これはやはり今後とも進めていかなきゃならぬというのはこれは全体的には基本の路線として、西側全体を通じた路線として残っておるわけなのですが、そういう中でこのベルサイユ・サミットの宣言を踏まえてこれからココムをどういう形で強化していくか、あるいはまたそういう中で先端技術の流出というのも非常に大きな問題になっておりますから、こういう問題をどう処理するかということはこれからの議論になるわけでありますが、そういう議論の中で、たとえばアメリカのいまの輸出管理法の改正というふうな問題はわれわれから見ましても相当域外制限といったものも含めた問題のある法案じゃないかと。ですからわれわれとしてはここで強いアメリカといえどもやはり改めるべきは改めてもらわなきゃならぬと思いますが、同時に基本的にはこれまでの情勢は変わってないわけですから、そういう中で西側は足並みをそろえて対ソの経済措置というものはこれを進めていかざるを得ないというのが私たちの基本的な考え方であります。
  68. 小山一平

    ○小山一平君 強硬な規制措置をある程度緩和した、これはやっぱりこれからも後退しないように日本政府としても努力すべきだと思うのですよ。これは強くそのことを求めておきます。  それから公的信用は一切認めないと、こういうことになっておりますが、財界ではこの公的信用にかかわって、すでに前例もあるわけですけれどもサプライヤーズクレジットによって積極的にやっていこうとこういうことが考えられているそうですが、政府はこういう財界の考え方に反対したり圧力をかけたりはしないですね。
  69. 田中義具

    政府委員田中義具君) サプライヤーズクレジットにつきましても、もしそれが公的な資金を使ってのサプライヤーズクレジットという場合には、日本政府の対ソ公的信用供与に関する政策に従いましてその都度その案件に応じてケース・バイ・ケースで慎重に検討するということで対処することになろうと思います。
  70. 小山一平

    ○小山一平君 最初に申し上げたように、大臣は余り経済界と外務省の考え方や意見に相違はなかったと言うけれども、どうも財界の希望するようなことを政府としていろいろチェックを厳しくすると、こういうようなことが私はあるように思うのです。ですからこれはぜひ、外務省のお役人は頭が悪くてだめだの硬直していてちょっと問題にならないなどと言われぬようなふうにやってもらいたいというふうに希望しておきます。  それからこのごろの日ソの事務レベル協議でも、北方領土問題にしてもSS20の問題にしても平行線のままで終わりましたけれども、私はいまのような日ソ関係が冷却状況にある限りでは、これはなかなかむずかしい問題だと思うのですけれども、この日本ソ連の相互不信やそれからこういう冷却状況というのは、日本ソ連との関係というよりもむしろ米ソの対立というものがあってそこが根源になって日ソ関係というものをこういう形にしていると思うのですね。ですから米ソの緊張緩和をどうやって進めていくかということがこれは日本にとってもきわめて重大な課題だと思うのですけれども日本も米ソの緊張緩和ということを望むならばそれを可能にしていくためのかなりの役割りを演じるぐらいのことがあってもしかるべきだと思うのですがどうですか。
  71. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるように、日ソ間には領土問題あるいはまたアフガニスタン問題といった基本的な対立問題はありますけれども、しかし特に最近の事務レベル会談等でも明らかになっていますけれども、やはり米ソ関係が非常に厳しくなったということが、日ソ関係をしてそういう根本問題がある上にさらに厳しくしているという面は私は否めないと思います。  というのは、日ソ事務レベル会談においてもカ ーピッツァ次官の攻撃というものはもっぱらアメリカに注がれておったわけでございます。それほどいま米ソ関係というのはなかなか容易な事態ではないと思うわけですが、しかし私はやはり米国もあるいはソ連もいわゆる世界の超大国としての責任というものは十分踏まえておるとこういうふうに思いますし、そのためのINF交渉等がこれから行われるわけでございますから、われわれとしてはこのINF交渉が何とか実りあるものになることを期待いたしておりますし、米国もあるいはソ連も、いまのソ連は非常に厳しい姿勢を示しておりますがしかしINF交渉はこれは続けていくと、何とかこれが実りあるものにしたいというそういう気持ちは持っております、アメリカも同じですから。ですから現在は対立が非常に厳しくなっておりますけれども、いよいよテーブルについて始まれば何とか実りのある方向へ議論が進んでいく可能性はあるしまたINF交渉がまとまりあるいはSTART等がまとまっていくということでなければ、これはいたずらに米ソ間の亀裂というのが激しくなってそして軍拡路線にお互いが走り始めたら世界は最も不幸になることでありますから、日本もそういう中にあって、もちろん日本は自由国家群の一員でありますしそういう立場を踏まえながら、アメリカに対しても強くこのINF交渉がまとまることを求めながら、さらにまたソビエトに対しても対話を通じて世界の平和のためにソ連が努力することをわれわれは求め続けて、米ソ両国のそうした軍縮交渉がまとまるようにこれは日本なりの努力はこれからも続けてまいらなきゃならぬと、こういうふうに思います。
  72. 小山一平

    ○小山一平君 確かにソ連も身勝手で納得のいかないことがたくさんありますが、しかしレーガン大統領もこれもちょっと常軌を逸したような硬直したタカ派的な姿勢で、アメリカにだって反省すべき点は私はあるはずだと思うのですよ。それだからこそアメリカ国内においても反核の運動が広まったりあるいは軍事費削減の市民運動が高まったりしているわけでしょう。そうしてまた西ヨーロッパの同盟国の間でもかなりアメリカの政策に対して緊張緩和を求める方向で率直な発言や行動があるわけですから、日本だけはアメリカさんのおっしゃるとおりごもっともごもっとも、このように見えるわけです。そうじゃないとおっしゃるでしょうが見えるわけです。ですから、私は日本としても緊張緩和、特に米ソ間の超大国間の緊張緩和を求めるという立場で、言うべきことはひとつ遠慮なく自主的に判断をしてやっていただきたい、こういうことを申し上げて終わります。
  73. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) おっしゃるとおり日本もやはり平和国家として生きておりますし、今後とも平和外交を積極的に推進して世界の平和に貢献をするという立場でありますし、そういう意味でこの米ソが十分テーブルについて、そうして何とか今日の緊張した事態が緩和されるように努力を重ねていかなきゃならぬと思うわけでございます。  ただ私、全体的に見てやはりどうしても納得できないのは、確かにアメリカに対するいま御批判もありました。ソ連も同じようなことを言っておりましたが、現在の世界の情勢を見るとソ連の行き過ぎた軍拡といいますか軍事力増強、これはSS20のヨーロッパあるいは極東に対する配備の状況を見てもはっきりしておるわけでありまして、そういう点はやはり非常に問題がある。膨張政策を改めるあるいは軍備増強について何らかの制限措置を加えていくということになれば、アメリカはレーガン大統領も日米首脳会談でも軍縮については相当強い決意を表明しておりますから、私はレーガン大統領もそうした軍縮に対しての熱意というものは強く持っているのじゃないかとこういうふうに思うわけですが、日本日本なりに努力を重ねてまいりたいと思います。
  74. 増田盛

    委員長増田盛君) 午前の質疑はこの程度とし、十二時四十分まで休憩いたします。    午前十一時三十八分休憩      ─────・─────    午後零時四十三分開会
  75. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  76. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに、過般行われました日ソ事務レベル協議における会談の問題点は何であったか、今後この種の会談を継続的に持つことによって多少は懸案の問題の解決の糸口が探れるかどうかという点についてまず最初にお伺いをさしていただきたいと思います。
  77. 田中義具

    政府委員田中義具君) 先般行われました日ソ事務レベル協議につきましては、日本側からは日ソ平和条約締結問題、グロムイコ外務大臣訪日問題等を提起しました後に、INF交渉に関してソ連側がレーガン米大統領の暫定案を受け入れない旨述べていることは遺憾である、またSS20の極東配備に関するグロムイコ発言は遺憾であり、沖縄の核基地化といったようないわれのない理由に基づいてSS20の追加配備を正当化することは同意できないというようなことを述べてわが国の立場を明らかにしました。これに対してソ連側は、カーピッツァ次官は、ソ連日ソ関係発展のために善隣協力条約一連の提案をしている、SS20は日本に向けられたものではなく、特定のいかなる国に向けたものではないというふうに述べて米国の政策を激しく非難し、これにこたえるというような態度をとりました。このような点が今回の定期協議の際一番問題となった点でございます。
  78. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 田中さんね、いま言われたことは新聞報道よりも余りに概活的過ぎませんか。その程度ならわれわれも了承しているのです。平和の問題、グロムイコの訪日の問題等々、先般来私がこのINF問題を通じて日本の対応というものをここで質疑を通して申し上げました。やはりこうした交渉というのは軽視できない非常に重要性を持ったそういう場でありますので、もっとソビエトの反応というものは一体何であったのか、それから問題点は一体今後どういう点に残されるのか。これは安倍さんに聞いた方がいいかな。
  79. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 今回の事務レベル会談は、私もいまの東西関係日ソ関係の厳しい中で非常に注目をしてこれ見たのですが、ソ連側は、全体的にはトーンとしては何かやはり抑えぎみといいますかね、日本との間の何らかの改善策を探求したいという感じは出ておりました。しかしいまの領土問題あるいはまた国際情勢の認識、あるいはまたINF交渉さらに極東におけるソ連の措置、そうした問題等についてはこれは基本的にやはり日本の考えとは対立をしたわけであります。その中で非常に目立ったのは、アメリカに対する攻撃が実に浮き上がっておった、というよりはまさに激しい、何といいますか、いわばののしると言ってもいいぐらいの言葉アメリカを攻撃しておったというのが非常に私は印象として残ったわけなのです。  御承知のように、領土問題はこれは日本と完全に対立しておりますし、それから問題のこのグロムイコ発言で沖縄に巨大な核基地がある、こういうことを言ったので私はすぐ反発したのですが、こうした問題についての話し合いでは、私から、沖縄に巨大な核基地があるというようなことはこれは訂正してもらいたいとこういう話もしたですが、これには触れないで、むしろ日本周辺にアメリカの大変な核が充満をしているのでそれに対してソ連はやむを得ず極東にSS20の増強等のそういう措置を行わざるを得ないのだと、こういうことを言っておりました。そして目標は日本じゃないのだと、日本は目標にしてないのだと。グロムイコさんの発言では、ある場合においては日本が目標だと言い、ある場合においては日本は目標でないということを言っておりましたが、今回は日本が目標ではないということをはっきり言ったのは、私はソ連の公式な発言ですから非常に注目したわけでございますが、同時にその事務レベルの交渉で、また私のときの会談でもそうでしたが、 日本が非核三原則を守るならソ連が核不使用協定日本と結んでもいいとこういうような発言がありました。これは、ソ連としては何らかの感触を得るというふうに思っておったかもしれませんが、日本立場から言いますと、核を持っておるソ連が核を使わないということはこれはもうあたりまえのことであって、日本に非核三原則があるとかないとかいうことじゃなくて、やはり核を持っている国の責任において使わないということが当然のことであって、そういう中で核不使用協定というのはちょっと問題があるのじゃないかと、それは応ずるわけにはいかないということを言ったわけでございまして、そういう点が私は印象として残ったわけであります。  INF交渉については大変米ソ間で対立しておりますが、私の受けた感じとしてはINF交渉を投げるということではなくて、これはやはり厳しく対立しながらテーブルに着いてこれを進めていこうという感じは十分見受けられたというふうに私は見たわけであります。大体印象としてはそういうことです。
  80. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま印象を通じての御答弁があったわけですが、要は、特に当面の重要課題としてはINFの交渉の推移というものがどうなるのかということでありますが、交渉のテーブルに着く用意は捨てていないということは、近い将来何らかの形で解決する方向へ向かうというそういう御判断であったのでしょうか。
  81. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) この辺のところは大変見通しとしてはむずかしいのですが、ソ連もいまのアメリカのゼロ・ゼロオプションは拒否しておりますし、それからさらにアメリカがヨーロッパ、日本とも打ち合わせた結果、相当これは具体性のある方針として打ち出した中間提案も拒否するということですし、またアメリカもアンドロポフ提案を拒否しておりますから、いまのところでは全く合意点がないということです。しかしアメリカも積極的にこれを進めようという考えですし、ソ連のグロムイコ外相の記者会見あるいはカーピッツァとの間の会談等を通じまして、ソ連もやはりアメリカとの間では交渉を続けるという意欲は持っておるようですから、これからどういう具体的な話になるか、これ見ておらないとわかりませんが、私は可能性はあるのじゃないかと。ただヨーロッパなんかでもそういう意見があるのですが、本当にINF交渉が妥結するには、アメリカがヨーロッパにおけるいわゆるパーシングIIであるとか巡航ミサイルであるとか、そういうものの配備を終えなきゃ真の交渉は始まらないのじゃないか、こういうことを言う人もあるわけですが、われわれとしてはそういうことになる前に妥結することを期待しておるわけなのです。
  82. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 昨日ですか、ソ連の駐米大使館のイサコフという公使参事官がCBSのインタビューに臨んで発言された内容がすでに報道されているわけでありますが、一つの報復的な考え方というのでしょうか、現状はいま安倍さん述べられたように平行線をたどってかみ合わないという状況が進んでおるわけでありまして、そうすると、欧州においてもアメリカにおいてもしびれを切らしてパーシングIIや巡航ミサイルの配備を恐らく強行するのじゃないかという、そのこともうかがえるわけですね。そういうことを恐らく考慮した上での発言だろうと思うのですが、中米を基地としていわゆるアメリカ本土を臨む中距離ミサイルの配備をするのだと。われわれにとってみれば、いままさしく軍縮ではなくして軍拡の方向へまさにまた拍車がかけられていくような——せっかくカーピッツァがいろいろなことを言っているが、一体ソ連の考え方というものの分析は、どうすればいま述べられたような方向へ行くのかなあと、非常にいろんな問題や要素が重なり合って一向に解決の方向へめどがつかないのじゃないだろうかという、そういうおそれを抱くわけですけれども、この一両日来のいろいろな変化を通じて、安倍さんとしては、いまのカーピッツァの会見後におけるまたその情勢変化というものについてどんなふうに御判断なさっていらっしゃいますか。
  83. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) ソ連の態度は、これいろいろとプロパガンダもあるでしょうし、なかなか真意のほどはわれわれもはかり知れないところがありますけれども、しかしヨーロッパにパーシングIIとかあるいは巡航ミサイルが予定どおり配置されるということがソ連にとって一番こわいことじゃないかと思うのですね。脅威だろうと思うわけです。ですから、それを何とか阻止するというためのいろいろな政略的な発言等もやっておるわけなのですが、これが完全に配備されるというようなことになれば、ソ連としてもこのまま放置するわけにはいかぬということで私はINF交渉一つの妥結の方向へ進むのじゃないだろうかと。それはアメリカだってそうですが、ソ連だってこのまま軍拡が進んでいくということは不毛の戦いである、争いであるということはよく知っておるわけでありますし、経済的にも相当問題が出てきておりますから、私は両国ともその辺のところは、一つの限度といいますか限界というものを知って交渉して妥結の方向に行くのじゃないだろうかと。特に中米なんかに中距離ミサイルが配備されるということになれば、いまのヨーロッパとかあるいは極東に配備されている中距離ミサイルはアメリカのワシントンには届かないわけですから、今度中米に配備されればストレートにワシントンに届くことになりますし、やはりアメリカにとっても、そういうふうな状況というものをそのまま放置するというわけにはいかないという感じも出てくるだろうと思います。これがおどかしであるか本当にやるのかわれわれもこれは判断できませんけれども。  そんなことでどんどんエスカレートしましたらこれは世界のために不幸ですから、私はカーピッツァ次官にも言ったのですけれども、あなたはものすごくアメリカを攻撃しておる、アメリカが侵略者である、先制攻撃するのはアメリカがするのだと言い切っておるけれども、しかしアメリカだって先制攻撃するということを言ってない、あなただって先制攻撃しないということなら戦争は起こらないことになるのだし、お互いにお互いを非難するということで、米ソ両国がだんだん熱くなっていくというのはわれわれが外から見ると大変危険な徴候だ、米ソがぶつかることは米ソ両国の問題じゃなくて世界の不幸になることだし、だから何としても頭を冷やして交渉をやってくださいということを強く言ったわけなのですけれどもね。米ソもその辺のところはわかっているだろう、私はそういうふうに判断しておるわけです。楽観的かもしれませんけれどもそういうふうに思います。私は、ことしが軍拡に向かうか軍縮に向かうかの岐路に立った年じゃないかというふうな感じすら持つわけで、非常に重要なことしの一年であるというような感じがいたします。
  84. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 重ねて確認をしておきたいのですが、いま述べられた主張というものは率直、簡明、直截に恐らく述べられたと思うのですね。いま印象としてというお答えなのですけれども、ということは彼らからまともにわれわれの主張、要請に対する答えはなかったということでございましょうか。
  85. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) まともといいますか、たとえば日本の問題については、沖縄の核の問題等についてはまともな返事がなかったわけなのですね。  それからINF交渉については、私は発言から見まして、交渉を否定するというふうな、アメリカが全然話にならないと、相手にならないと、だからもう交渉なんかする必要はないと、こういうふうな印象は受けなかったわけです。非常にアメリカを攻撃しながら、一方ではやはりそうした軍縮を望んでおると、INFの交渉も望んでおると、こういう感じは率直に言って受けたわけです。
  86. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 グロムイコの訪日の要請等についてもいろいろ述べられたわけですね。来れないという問題点は一体どこにあるというふうにお感じになりましたか。
  87. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) カーピッツァさんが 来てこのむずかしい時期に日ソ間で率直に話し合いを二日にわたってこれだけ長くやったと。対立点も明らかになったけれども、しかしこれからも日ソ間で対話は促進していこうと、政治対話も促進していこうとこういうことも合意したわけで、それはそれなりに私は非常に有意義じゃなかったかと。だから、グロムイコさんがおいでになって、私はやっぱり会って話をするということでお互いの立場がわかるし、それがまた友好への一歩につながっていくわけだから、会って話をするということは大事だからぜひとも今回は日本においでをいただきたいということをグロムイコさんに伝えてほしいということを言ったわけです。カーピッツァさんはそれは伝えましょうと、おっしゃることは十分伝えましょうと、ただ自分判断では、なかなかいま時期が熟していないような感じがいたしますと、こういうことを言っておりました。ですから拒否ではないのです。拒否じゃなくて伝えますということを言っているわけです。伝えた後にグロムイコさんのそれに対する回答といったものも出てくる可能性は十分あると思いますが、カーピッツァさんが目の前で拒否したということじゃなくて、これは伝えましょうと言ったことで、ただ状況が、グロムイコさんがこちらへ来る状況としては適していないのじゃないかというふうな彼の印象を言ったまでであります。
  88. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 外相レベルの会議がなかなか進まないということになれば、いまおっしゃったように、今後は日ソ双方においていわゆる事務レベル協議というものが継続的に行われると、この次は日本外務省の方々がモスクワへ行ってまた継続的に話をするというふうな点は了承されているわけですね。
  89. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは当然既定の路線として、毎回モスクワあるいは東京でやるということはこれはもう確立しております。
  90. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 INF交渉についてもう一つ。  一月早々に安倍さんが訪欧されました。その際に提言をされていらっしゃいますね、政治対話をこれから積極的に行っていこうと。それを受けて今月末から五月にかけてですか、まずフランスとイギリスとの間に政治対話が、これも事務レベルでもって持たれるというそういう段階までこぎつけたようでございますが、恐らく話し合いの最大の焦点はやはりいま問題になっておりますINF問題であろうと。  それで、われわれが単純にというかいままでのいろんな新聞報道等を通じまして、またここの委員会において御答弁をいただいたそういう話というものを整理して考えてみますと、ヨーロッパにおいてはむしろ反核運動という、いわゆる草の根運動が非常に盛んであると。国民世論に逆らうこともいかがなものであろうかというような配慮が最近イギリスやフランスにおいても高まっている。そうすると、ソ連のいわゆるSS20の極東配備については容認せざるを得ないのじゃないかというような空気も当然生まれてきはしまいかということになると、その辺で果たして今後そういう話し合いというものを通じて日本の主張というものが通るか通らないかという、また新しい一つの障害が前面に立ちはだかってくるような心配はないのかどうか。もう差し迫った問題でありますので、恐らく政府としても当然そういうことを十分に踏まえながらその対応というものを用意して臨まれるに違いないとこう思うのですけれども、差し迫った問題でこれはもう当然日本側が大いなる主張を展開できる一つのチャンスを与えられるわけでございますので、その辺はいまどういうふうに取り組んでいらっしゃいますでしょうか。
  91. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) まさに私はこれからのヨーロッパの政治対話の焦点はINF交渉であろうとこういうふうに思うわけで、私がことしの初めにヨーロッパを訪問したときも各国首脳に日本立場を申し述べまして、各国首脳も日本立場は理解すると。そしてINF交渉というのはグローバルな立場でやらなければならぬということについては完全に合意を得たわけで、その後の各国首脳の発言等を見ますと、このグローバルの線は変わっていないと。アメリカはもちろん非常に強い決意を持っておると。ところがソ連は、これはもうグロムイコ記者会見にもありますように、ヨーロッパはヨーロッパだと、極東は極東だというふうに分けて考えておるわけなんですね。そこでいまお話の点は、ヨーロッパはああした反核運動等も盛んになってきているそういう中で、ヨーロッパ自体が、だんだんとヨーロッパはヨーロッパだけで解決していこうという方向へいくのじゃないかと、こういう心配も出てこざるを得ないという御見解でもあろうと思うわけですが、私もその辺、やはり問題は確かにあるのじゃないかと思うわけです。というのは、ヨーロッパは、とにかく各核基地を自分の国につくるわけですから大変な危険を冒してやるわけですね。それも安全保障という立場で、反核運動の盛り上がる中であえてその国の安全保障を確保するためにはパーシングII等の核基地を持たなければならぬという大変な決断を指導者がするわけですから、そういうことをヨーロッパはしていると。そういう中で日本は非核三原則というものがありましてそういうことはできないと。そういう状況の中で日本がグローバル、グローバルと言ったって、日本はもっと何か代償があるのかとこういうことになるわけですね。それは一つの空気として多少あることはこれは事実だと思うわけです。しかしやはり私は、そういう話になればヨーロッパの首脳とも話したいと思うのですが、SS20なんというのは非常に移動が簡単ですから、極東へ移してヨーロッパだけは解決した。ヨーロッパで削減した分を極東に移したと一安心したところで、極東に移ったのがいつまたヨーロッパに移動するかわからぬわけですから、そうしたSS20、中距離核ミサイルのそういう意味での軍縮というのはソ連全土といいますか、グローバルな立場でこれは解決をし、縮減をしていかなければならないのだと。むしろヨーロッパはヨーロッパあるいはアジアはアジアということで解決しようとすれば、まさにソ連の思うつぼに入るのじゃないだろうかというふうに私は思っておりまして、そういう点については率直な意見も交換したいと思います。肝心の交渉相手であるアメリカはそれはもう百も承知であろうと、こういうふうに考えております。     ─────────────
  92. 増田盛

    委員長増田盛君) 質疑中ですが、ちょっと中断願います。  御紹介申し上げます。  本院議長の招請により来日中のブルガリア人民議会トドロフ議長御一行がただいまお見えになりましたので、皆様方御起立の上、敬意を表していただきたいと存じます。    〔総員起立、拍手〕     ─────────────
  93. 増田盛

    委員長増田盛君) それでは質疑を再開いたします。
  94. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、総理及び外務大臣の外交日程がメジロ押しという中で今月末からASEAN訪問を皮切りにお出かけになるわけでありますが、さて、そこでせっかくお出かけになる際に十分配慮していただきたいという問題が当然ございます。かつて歴代の総理大臣がASEAN地域を訪問され、それぞれ日本側の考え方というものを提言なさった。提言されましたけれども、果たしてそれがどういうふうに具体的に進捗しているのであろうか。近くは鈴木前総理が人づくり、農業開発ということを目玉商品としてASEAN地域に対してお約束をして来られた。それも果たして軌道に乗っているのかどうなのか。何といってもやはり一番大きな問題は、経済協力のあり方について日本に対する要望とうらはらに、日本にせっかく要請してはいるけれども、その要請になかなかこたえてくれないというそういう不信感というものがありはしまいかというようなことを心配する一面がございます。  さてそこで、そういう問題を含めて今回ASEANを訪ねられる際に経済協力というものが当然主体になるのであろうというふうに思うわけでありますけれども、すでに外務省としても方針なり 臨むに当たっての基本的な考え方というものをお決めになっていらっしゃるだろう。総理は何かきのうかおとといですか記者会見の際に、向こうの要請に応じながらその要請にできるだけおこたえしたいという大変抽象的なこういう言い回しで述べられていらっしゃったようでございますが、すでに今年初めには韓国に対して、マレーシアに対して円借款を約束されていらっしゃる。恐らく同じようなレベルの要求というものは当然なされるに違いないということも考えなくちゃならぬでありましょうし、もう一つ、やはりいつもこの委員会でも問題にされる市場開放を一体どうしてくれるのだという問題等、ASEAN地域としては差し迫った現実問題として当然日本に対する要請というものは考えられる。その辺を整理されて歴代の総理がASEANを訪れ、約束されたことがいま具体的にどう成果が上がっているのか、それに連動しながら今回非常に重要な役割りがおありになると思います。いま申し上げたような問題を含めてどのようにお考えになっていらっしゃるか、まずその点からお伺いをしておきたいというふうに思います。
  95. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 日本はもちろんアジアの一国ですし、そういう立場においてやはり東南アジア諸国とは相互理解を進めていかなきゃならぬ。同時にまた日本がこれだけの経済力を持っておるわけですから、そうした責任にこたえて経済協力を積極的に行うということは当然であろうと思うわけです。そういう立場に立って歴代の総理大臣もまずASEANを組閣早々歴訪するということでいろいろとその間に約束もいたしております。相互信頼も進んでおります。そしてその約束はプロジェクトという形でそれぞれ育っておりまして、この点については東南アジア諸国も日本のそうした努力を非常に評価しておると言っても過言でないと思うわけでございます。今回の中曽根内閣もアジア外交を重視する、特にASEAN外交に重点を置くという立場から今回総理大臣の訪問ということになったわけでございますが、その基本的な立場は隣国であるところのASEAN諸国の首脳との相互理解、信頼関係を進めていくということであろうと思いますが、同時に懸案になっております経済協力があるわけでございます。これは毎年毎年年次ベースで無償供与とかあるいはまた円借款とかを行っておるわけでございます。日本の場合は経済協力の七割は東南アジアに集中しておる、こういうことでございますし、今回の訪問に当たりましてもそうした年次ベースの経済協力、八二年度あるいは八三年度、そういう分について具体的に話を進めまして解決をしたいと。東南アジア、ASEAN諸国の要望も十分踏まえてこれに応ずるような努力をしたいと。ただ日本も財政的に苦しいわけですから、一〇〇%ということはなかなかむずかしい面もありますが、できるだけやはりこれら諸国の要請にこたえなきゃならない、こういうふうに思っております。  また市場開放についてもこれは日本もこれまで累次市場開放対策を進めております。これは欧米諸国だけじゃなくてアジア諸国に対してもこの市場開放対策というものはメリットが出てきておるわけでございますから、そういう点等も十分説明をして理解を求める。同時にまた日本の外交の基本方針、これは相互理解の中で外交の基本方針あるいは防衛の基本方針というものも総理から十分各国の首脳に説明をして、各国日本に対する理解を高めていく、こういうことが必要であろうと考えております。
  96. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 少々視点を変えまして、いまASEANの問題に焦点をしぼって申し上げているわけですが、先般来私が申し上げているように、日本は国際経済協力というものは非常に重視しなければならない。ただ非常に窮屈な財政状態から果たしてそういう御要望に直ちに即応できるということがなかなかむずかしい。たとえば、きょうせっかくブルガリアの方々がお見えになっています。この東ヨーロッパにつきましても実はいままで非常に疎遠であった。しかしいままでの伝統的な経過を考えてみた場合に非常に友好的な、日本に対して非常にまた信頼の強い国柄だというふうに私は理解をしているわけです。先般、やはり東ヨーロッパのある大使の方からも、私直接お目にかかって大変強く要望されたことは何とか積極的に経済協力を進めてもらえないかと、またわが国から生産される物についても買い取っていただけないかというようなそういう御要望がありました。これは恐らくバルカン半島一帯における東ヨーロッパの諸国共通した一つの考え方に立つのではなかろうか。私は、そういった国々というものがソ連の衛星国家であるというかかわり合いの中で、やはり日ソのいま冷え込んだそういう状態の回復のためにも何らかの手だてを講じていくことによって新しい道が開けるのではないだろうかという、その発想に基づいてこの問題をいま提起しているわけです。その点については、今後ブルガリア、ルーマニア等々に外務大臣としてももし機会があればいらっしゃるなりして、またそういう地域とも友好のきずなを固めていくということも、これは経済協力を通じて大変必要なことじゃないかと、ちょっといま視点を変えて申し上げましたけれども、その点について御答弁をいただければと思います。
  97. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 東欧諸国との関係につきましては、これは現在の国際情勢の中で東西関係が非常に厳しいと、こういう情勢は念頭に置かなきゃならぬと思いますが、しかし東欧諸国との関係を進める、友好関係を進めるということは私は必要であると。特に東欧諸国の国情であるとかあるいは政策であるとか、そういうものも十分検討しながら友好関係を進めていくということは必要であろうと思います。私はいま東欧諸国と日本との関係は非常に安定しておると実は思っております。要人の交流も比較的行われておるわけであります。日本から行く分が少しとだえておるということは言えるかもしれませんが、しかし比較的要人の往来というものも頻繁でありますし、経済関係も非常に密接な経済関係にはないわけですが、しかし貿易なんかも着実に伸びる可能性は私はあるのじゃないだろうかと思うわけでございます。あるいは文化的な面の交流もあるわけでございますし、私はこの関係を大切にしてそしてこれを伸ばしていかなきゃならぬとこういうふうに思っておりますし、私もブルガリアであるとかあるいはハンガリー、ルーマニア等の諸国からも要請を受けております。したがって、機会を見て御訪問をしたい。この点については外交チャンネル等を通じましてこれからも協議をしてまいりたいと、こういうふうに思うわけであります。
  98. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃられたとおり、東ヨーロッパ諸国との関係強化といいますかせっかくここまで友好的な雰囲気のもとにつながってきた、これを拡大する方向へぜひ御努力をいただきたいなとこのように思います。  もう一遍視点をまたもとへ戻しまして、ASEAN訪問についてもう一つ気がかりな問題は、日本の防衛力の増強についての受ける印象というものがさまざまな受けとめ方をしているのではなかろうかというふうに思いますし、この辺についての説得という、総理の発言をかりて申し上げれば何とか理解を求めたい、こういうふうに発言をされているようでございます。しかし、いままでASEAN地域からいろいろと上がってくるといいますか、反響といいますか、それを新聞等の報道を通じて見る限りは相当の危惧感を持っているということはやはり否定できないのではなかろうか。随行される安倍さんとしても、当然いろんな視点から今日までの経緯を踏まえて日本の現状というものを十分納得し得るそういう説明を考えていらっしゃると思いますが、その点について最後に伺って私の質問を終わりにしたいと思います。
  99. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 東南アジアの諸国の中の一部から日本の防衛力についてあるいは今日の防衛力の実態等について危惧の念が出ていることは事実でありますが、しかし私は、やはりそうした諸国が日本の防衛力の実態あるいは日本の防衛の基本方針というものを知っていただけばそう いう危惧は霧消をしてしまうというふうに確信を持っておるわけであります。日本御存じのように憲法によって専守防衛でありますし、したがって最小限の国の防衛力は持ちますけれども、しかし航空母艦だとか戦艦だとか爆撃機というようなものは持たないわけでありますから、この点は外に出るという考えは毛頭ないということははっきりするわけでありますしあるいは非核三原則は厳守していく。日本は核兵器を持てるだけの力は持っておりますけれども、これは絶対に持たないということを非核三原則という面でプリンシプルできちっといたしておるわけでございますし、そういう日本の防衛の基本方針あるいは防衛力の実態というものをASEAN諸国にも説明をいたしまして日本が何ら脅威を与えるものではない、今後とも永久に脅威を与える存在にはならないということを徹底してまいりたいとこういうふうに思うわけです。
  100. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 国際博覧会条約の問題につきまして大臣がこの国際博覧会条約の提案理由の説明をなさいました。読んでみますと、「我が国がこの改正受諾することは、国際博覧会を通ずる国際協力に資するとともに、昭和六十年に我が国で開催される国際科学技術博覧会の成功のために各国の積極的な協力を得ていく上で重要かつ有意義であると考えられます。よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。」と、このように大臣は述べられております。私がきょうこの問題を取り上げるのは、あくまでも科学万博が大成功裏に終わるようにすべての作業がスムーズにいきますようにということを念頭に置きまして、きょうは国際科学技術博覧会協会の伊原事務総長にお忙しいところおいでをいただいたわけでございますが、昨年の四月二十日、当委員会国際科学技術博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案の審議をしてちょうど満一年となっております。来年、五十九年の少なくとも十二月には会場、出展物等々が完備されまして、そして六十年の一月からは調整、整備、試験というふうなことが行われて開会の運びにならなきゃならないと考えるわけでありますが、そういう問題につきまして気がかりな点が若干ありますので、この問題点を取り上げてお考え等を伺いたいと思います。  一昨年、百六十一カ国、五十四機関に対する招請を発出しまして、午前中の答弁にもありましたけれども十カ国、四国際機関が正式に表明していると言われておりますが、その他の参加出展国の見通しはどうなのか。参加がおくれればおくれるほど開催計画作業の日程も大きく左右されてくると思います。この点につきまして出展国が出そろって初めて開催工事計画というものが明確になるのじゃないかと思います。こう考えていきますと、あとの出展国がどういうふうな実情に今後なっていこうとしているのか、どれだけの国、どれだけの機関参加しようとされているのか、この点が第一点でございます。  それから第二点としては、出展物の規模によりましては大、中、小といろいろな出展物があると思います。大きければ大きいほど長期的、小さいものは短期的、あるいは一カ所で協会側がまとめたものの中に出展をしてもらう国、そういうものも考えられますが、実質的に言うならば一年半ぐらいしかないと私は思うのです。そうしますと、諸外国の出展作業の施工というものも独自でやらなきゃならないものについてはこれは相当なプッシュをしなければならないのじゃないかとも思います。こういうことを考えていきますと、どういうふうな考えのもとに行おうとしているのか。  それからもう一点としては、開発途上国の参加促進措置といいますか、経済援助の問題だとかそういったような国々に対する施策がどういうふうに合議され、行われているか、その点について。  それからもう一つは、会場の各種工事作業の整備状態がいまどうなっているのか現場を見ておりませんのでわかりませんが、この現場視察も当然行っていかなければならないと思いますがこの辺の予定があるかどうか。あるいはその会場でまず問題になってくるのは通路とか上下水道、特に電気の使用量というものは膨大なものになると思うわけでありますが、こういう電気施設の関係がどんなふうになっているのか。あるいは会場周辺の整備が予定どおり行われてきているのかどうか。四カ所ある入口を含めて交通体系というものがどういうふうに整備されて今日まできているのか、あるいは自動車置き場等の問題がどうなのか、こういう整備工事の基礎段階の状態はもう当然終わって実務段階で何%の進捗をしているのか、そういった点もお話を願いたいと思います。  第四番目としては、「科学万博ニュース」のナンバー十一にあります「協会メモ」として記載されている点でありますが、この問題についても要点だけ、重要な点だけ説明を願えればありがたいと思いますが。  また、私の申し上げたいことは、各省関係の実務者と開催に向けての総合体制化を中心にした打ち合わせがどのように行われてきておるか、開催期日が迫れば迫るほどこれは頻繁に行われなければならないと思います。その連絡が密であれば密であるだけその開催に支障がないというふうに思います。前回、ちょうど一年前は各省の責任者、実務者の方々に全部来ていただきましてそれぞれの立場一つ一つお伺いしてきたわけでありますが、きょうは時間の関係等もありますので、そういう方々をお呼びすることができないので、大臣に、これから協会側あるいは担当の科学技術庁関係あるいは外務省のPRの状態、どのような参加国になっていくか、そういういろんな問題がいま提起されてくると思います。それらをよく聞いていただいておいて、閣議の席上においてこういうことが要請されたというようなこと等をしていただきたい、こう私は思っているわけです。
  101. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いまのお答えの詳細につきましては政府委員から、また参考人から答弁をさしていただきますが、この科学万博をこれはどうしても成功させなきゃならぬ、こういうふうに思いまして、政府としてもいま全力を挙げておるわけでありまして、対外関係もミッション等を送りながら要請を続けております。残念ながら参加国がまだ少ない、あるいはまた参加国際機関もまだまだ少ないという点でありますが、これはさらに今後とも努力は進めたい。あるいはまた参加される国についてもいろいろと便宜を計らうということも、これはやはり参加を積極的に誘致できるゆえんにもつながっていくわけですから、そうした点もいまいろいろと検討もし準備もいたしておるわけでありますが、いずれにいたしましてもこれは政府全体の努力で今後成功させるために全力を尽くしてまいる決意でございます。
  102. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) 御質問の点のうち、各国及び国際機関参加見通しの点と、それから開発途上国の参加を容易にするために具体的にどういう措置を検討しているか、その二点につきまして私の方からお答え申し上げたいと思います。  最初参加見通しの点でございます。これまでに正式に参加を回答してきておりますのは、アメリカ、リビア、民主カンボジア、タイ、フランス、イギリス、豪州、チリ、キューバ、それにブルガリアで、御指摘のとおり十カ国でございます。  国際機関といたしましては、UNITAR——国連訓練調査研修所、SEAMEO——東南アジア文部大臣機構、UNDP——国連開発計画、WTO——世界観光機関の四つでございますが、さらに可能性のあるところ、あるいは参加の意向を示唆しあるいは参加が有望と目されているもの、これは公式にはまだ回答がないわけでございますが、実際そうではないかと思われる国といたしましては、米州からはカナダ、アルゼンチン、ブラジルと、それからアジア太平洋地域といたしましては、中国、韓国、フィリピン、インド、スリランカ、ニュージーランド、フィジーなどでございまして、ソ連、東欧圏からは、ソ連、東独、チェコなど、また中近東、アフリカの地域といたしましてはイランなどが程度の差こそあれ積極的な反応を示していただいているわけでございます。  国際機関といたしましては、国連本部、EC ——欧州共同体、OECD——経済協力開発機構でございます。ユネスコ——国連教育科学文化機関、インテルサット、これは国際電気通信衛星機構でございます。インマルサット、これは国際海事衛星機構でございます。こういったところの参加に期待が持てるというふうに考えている次第でございます。
  103. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうしますと、いまのところ見込み、見通しの国は合計すると何カ国ですか。それから機関の方は何機関ぐらいになりますか、いまのを合計してみると。
  104. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  参加を回答したものが十カ国、それから参加の意向を示唆または有望ではないかというふうな積極的反応を示している国が十四カ国、それから国際機関につきましては、正式に言ってきているのが四機関、それから参加が期待されるものがさらに六つの機関ということでございます。
  105. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうしますと、大分当初の招請とは違ってくるわけですね。この辺も一応含んでおかなければならないと思いますが、それらの国についてはどんなふうに進められようとするのか、あるいはこの辺で打ち切るのはいつごろにしたらいいのか、その辺のことも伺っておきたいと思うのですが。
  106. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) 今後もいろんな機会を通じまして、これまでもミッションの派遣とか要人の往来の機会ということもとらえまして申し入れをやってきたわけでございますが、今後ともあらゆる機会をとらえまして参加各国及び国際機関参加を慫慂していきたいというふうに考えているわけでございます。
  107. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 見込みはどうなのですか。さっきから言っておったのは見込みがどうなのか。
  108. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) 見込みと申し上げましても、結局いままでのような努力を通じて、いままでのところでは先ほど申し上げました以上の積極的反応はまだ見られていないわけでございますが、今後さらに努力を続けたいと考えているというふうに申し上げるしかないと思います。
  109. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 発展途上国のその問題はどうなっていますか。
  110. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) 発展途上国の問題につきましては、従来から参加を慫慂した過程において経費の軽減について協力の話が出てきているわけでございまして、できるだけこういう諸国の参加を得て科学万博がより充実したものになるようにということで、どういうふうにそういう要望に応じることができるかということを従来検討してきているわけでございますが、公式参加国間の待遇の平等という一つの国際万博についての伝統的な考え方がございますのでそれとの関連はございますが、どういうふうな対応が考えられるかということで現在関係各省と科学万博協会の間で鋭意検討を進めておりますが、具体的な案としましては、たとえば展示用スペースの賃貸料を軽減するとか、各種の提供されるサービスに関連した経費を軽減するといったようなことについてどういうことが実際問題として考えられるかといったよううなところを検討しているところでございます。  いずれにしましてもこの問題については、さらに参加国政府の代表者会議といったような場を通じまして関係者の具体的な要望、希望というものも伺いながら具体的に検討していきたいと考えておるわけでございます。
  111. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間がありませんから次へ進んでまいりますが、事務総長の方から。
  112. 伊原義徳

    参考人伊原義徳君) 国際博覧会会事務総長伊原でございます。  博覧会の準備状況につきましては昨年の四月にこの場で御説明の機会をいただきまして、その後の進捗状況を簡単に御報告申し上げたいと思います。  まず、会場建設につきまして、これは「人間・居住・環境と科学技術」と、こういうテーマでもございますので、会場及びその周辺の自然環境をできるだけ保ちながら博覧会にふさわしい会場計画をつくる、こういう考え方で昨年六月に会場計画基本設計というものを決定させていただきました。七月には国内出展者の敷地の割り当てを完了いたしました。現在、これは敷地が幾つかのブロックに分かれておりますので、そのブロックごとにブロック計画協議会というものを設けておりまして現在までに延べ二十数回の調整、打ち合わせを行っております。また、そのブロック間の調整を含めまして全体的な調整の場として会場計画連絡調整会議を近く第三回目を開く、こういうことになっております。また出展者の出展内容についての会議、これもすでに六回開かれております。  会場建設につきましては、昨年八月から着手いたしました造成工事が現在ほぼ完了いたしておりまして、なお、これは住宅・都市整備公団にお願いして包括的に仕事を進めていただいておるわけでございます。整地工事が大体完了いたしまして、現在、電力、ガス、電話、上下水道、こういったものについて、いわゆるインフラストラクチュアの関係工事を進めておるところでございます。御指摘の電力につきましては、東京電力に委託をいたしまして十分余力のある変電施設を設ける、こういうことになっております。外国展示館あるいは協会の管理棟につきましては、今年夏過ぎには着工の予定でございます。  先生御指摘のとおり、外国の出展が決まることとのすり合わせの問題がございますので、私どもといたしましては、すでに参加の決定された主要国につきましてはわが方から担当者を派遣し、あるいは先方から専門家の来日を仰ぎましてどのような建物にするか、この建物は博覧会協会の責任で外国館はつくることになっておりますが、具体的なすり合わせをどんどん始めるということになっております。それから比較的おくれて参加される国の可能性もございますが、そういう国に対しましては、博覧会協会で基本的な、何と申しますか基本モジュールに基づく建物をある程度建てておきましてそこに出展物の展示をお願いする、そういうふうな考え方で両建てで進みたい、こう考えておるのでございます。  次に輸送関係、交通対策でございますが、一昨年、五十六年十一月に第一次関連事業四千二百十三億円を御決定いただき、さらに五十八年一月には第二次関連事業を御決定いただきましたので、道路、下水を初めといたしまして関連事業の方針を政府としてお立ていただいたわけでございます。その枠内で輸送対策について、これは運輸省を初め建設省その他関係省庁の大変な御尽力によりまして着々整備されつつあるわけでございますが、たとえば鉄道輸送につきましては国鉄常磐線の取手以遠の輸送力の増強、なお国鉄といたしましては通勤輸送改善計画との関連もあるようでございますが大変な御尽力をいただきまして、たとえば中距離電車の十二両編成を十五両編成にするとかあるいはピーク時間帯におきましてかなりの数の列車の増発をお願いできるとか、いろいろ観客の輸送のために、いまの国鉄の厳しい財政事情と承知いたしておりますけれども大変な御尽力をいただいております。なお、博覧会のために特に臨時駅を設けていただくことになりまして近くこの工事に着工していただく、こういうことになっております。  次に道路につきましては、常磐自動車道あるいは周辺道路の整備がこれは建設省、茨城県等の御尽力によりまして進んでおるわけでございますが、たとえば常磐自動車道につきましては谷田部のインターチェンジでは能力が十分でございませんので、さらに東の方に仮出口を設けるというふうなことも御決定をいただいております。  駐車場につきましては場内だけでは不足いたしますので、場内の駐車場はもっぱら遠距離バス用といたしまして、マイカー用の駐車場は会場周辺に設けるということで茨城県及び地元谷田部町の御協力をいただきましてほぼその用地の確保ということが大体見当がついてきた、こういうことでございますので今後至急この工事に取りかかりたい、こう考えております。  また、先ほど申し上げました臨時駅から会場までの観客の輸送、いわゆる二次輸送でございます が、これはいろいろの考え方がございましたが、結論といたしましてバス輸送による、こういうことにいたしました。どのような車をどういうふうに運転するかということにつきまして、これは運輸省の御指導をいただきながら日本バス協会を中心とするバス業界と本格的な協議に入っております。なお、臨時駅から会場までのバスの車種といたしまして、まだ日本では一般的に用いられておりませんが、欧米で一般的に運行されております連節バスというのがございます。これは一台でかなり大量の輸送ができるものでございますので、これを導入するという方向で検討をしておるところでございます。  大体以上であります。
  113. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私の伺った問題でまだ御答弁をしていただかない点があるのですが、開会をする間には各省間あるいは関係者間、それらの方々がかなり頻繁な会合を持つようにして打ち合わせをやりながら進めていかなければならない。これは協会も含めてでありますが、さらに外務省等も含めてやらなければならない点、今度は諸外国の出展国との会合、そういったようなものも詰めていかなければならないのじゃないか、こう思って伺ったわけなのですが、これに対するまだお話がございません。
  114. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはやはり政府全体として成功させなければならないプロジェクトでありますから、今後とも関係省庁間の連絡は密接にとりまして成功する方向で努力を重ねていきたいと思います。  なお、外国からの参加国が少ないわけでありましてこれも私は頭を痛めております。私も通産大臣のときから外国に出張するたびに外国の政府には強く要請しているのですが、返事はいいのですけれどもなかなか腰が上がらないと。これはやはり最近の経済情勢ですね、各国とも経済が悪いというところでなかなか腰が上がらないというところにあります。そういう点では特に開発途上国等については相当便宜を図ると、いま事務総長とか政府委員が申しましたように、やはり便宜を図っていくということが大事じゃないかと思っております。その点等も十分留意して関係省庁とも連絡をとりたいとこういうふうに思っております。
  115. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大臣に私が御要請しようと思ったことを大臣の方から言われましたのですが、ASEAN諸国へ行かれたりなんかしまして、サミットとはまた別の問題ですけれども、お茶を飲みながらでも食堂で御飯を食べながらでもそういうふうな科学万博のことのアピールをぜひひとつ、やっていらっしゃるとは思いますけれども、さらにこれは私は強く求めておきたいいと思うのです。  それから各省間の、いま事務総長の方から大分進んでいるといういい話がございますが、私はいい話は余り聞きたくないので、困っている話はどんなところにあるのかという、ここのところはちょっと言いづらいのだけれども言わなければならないということを私は忌憚なく言っていただく方が、きょうの私がこの問題を取り上げた一つのポイントになるわけでありますから、この辺のこともお含みをおいてやっていただければ非常に大成功に終わっていくのじゃないかというふうに考えたがゆえにあえてこの問題を、昨年、ちょうど満一年になりますが取り上げまして、また取り上げているということは、もう来年はこういうふうな機会はありませんし、またもう一つ、先ほどそれらの現場視察、どういうふうな実態になっているかということはこれは外務委員会でも委員長に私からもお願いをしたいわけですが、会場視察なんかもお考えになっていただければと思うのですが、この辺のことなんかもどんなふうな計画を立てられておるのか、その辺のお話もなかったようですからどういう計画があるか、その点もひとつ御答弁願いたいと思います。
  116. 伊原義徳

    参考人伊原義徳君) 先生御指摘の問題の一つといたしまして、困っておるという表現は適当でないかもしれませんがやや問題がございますのは、現在博覧会の知名度が必ずしも一〇〇%ではないということがございます。したがいまして、博覧会協会といたしましては関係省庁の御支援のもとにさらにこの知名度を上げるという努力をいたさなければいけないわけでございます。幸い四月一日には、皇太子殿下を国際科学技術博覧会の名誉総裁に御推戴申し上げるということがお願いできたわけでございますし、さらに昨日は総理大臣が会場を御視察になった、先週は通産大臣も御視察になった。いろいろ知名の方々、これは外国の元首なども含めましてそういう方々に御視察においでいただくということは大変知名度を上げる上に有効でございます。したがいまして、今後ぜひこの外務委員会の諸先生を初め国会の御関係の方々の御視察がございますればさらに知名度が上がると、こういうことにもなるかと思うわけでございます。  現在、促進議員連盟というものが博覧会に関係して設けられておりますが、促進議員連盟におきましてもできるだけ早く最近の現地の状況を御視察いただきたいということで、その具体的な日程をこれから詰めさせていただくと、こういうことになっております。
  117. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大臣、お聞きのとおりでございまして、私は昨年もこの問題をうんと取り上げていたのです。見ればすぐわかるという、航空機を使ったらこう、あるいは国内では国鉄を使ったらどうというそのパンフレット、何といいますか、字を読むのを少なくして絵を多くした、写真を多くしたそういうパンフをつくって、それをもってアピールするようにということも要請をしていたわけなのですが、いま事務総長が一番悩んでおられる問題はそこにあると思うのです。これはわが国が最も科学に優秀な、すぐれた国であるということのアピールと同時に、日本の工業力、技術力というものを非常に高揚して示すことにもなるわけでありますし、いずれにしましてもこの万博が大成功に終わるようにするために、皆さんと一緒になりましてこれを進めていかなければならないと思っております。  時間がもうちょっとありますのでほかのことをお伺いしますが、ベオグラードで六月開催されていく予定であります国連貿易開発会議に備えまして、七十七カ国のグループの閣僚級の会議がブエノスアイレスで行われて、その宣言が出ておりました。この点につきましては時間がありませんので、宣言の全文なんかもそれぞれ伺いたいのですけれども時間が来ておりますので、一次産品とか通商、通貨、金融各分野で先進国側との共同政策が必要であると言われております。また、宣言は友好な対話に向けて先進国側が指導性を、提案を示すよう期待を表明していると、この宣言に対するわが国を初め先進国側の対応が迫られるものと私は考えておるわけですが、わが国としてはこの宣言をどのように受けとめられておりますか。また、この宣言の内容についてはサミット等で主要なテーマになってくるのじゃないかとこの辺も私はこう考えられるわけですが、この点、大臣にお伺いをしておきたいと思うのです。
  118. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 世界経済が一九三〇年代以来の最大の危機的状況にあり、この危機が解決されなければ世界の平和と安定に甚大な影響が及ぶというこの七十七カ国グループ宣言の認識につきましては、世界経済の再活性化が現在の最大の課題と考えるわが国の有する認識と同じと考えております。わが国はかかる認識に立ちまして、ウイリアムズバーグ・サミットにおきましても世界経済の再活性化に向けてその国際的な地位にふさわしい十分な貢献を行っていきたいと考えております。  また特に南北問題につきましては、サミットにおきましてもわが国の積極的な姿勢を表明するとともに、六月に御存じのように第六回の国連貿易開発会議いわゆるUNCTADが行われます。この総会におきましても積極的な姿勢で対処してまいりたいと考えております。
  119. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 南北問題で少し触れたいと思いましたのですが時間がございませんのでこの程度できょうは私やめますが、この次、また機会を見て南北問題について質問したいと思います。  終わります。
  120. 木島則夫

    ○木島則夫君 前回委員会では協定あるいは条約についての質疑の機会がございましたので、きょうは一般国際情勢についてお聞きをしたいと思います。  レフチェンコ問題についてまず聞きたいのです。これが事実であるのかあるいは言われるところのアメリカ側の謀略なのかどうか、この辺に関してはこれからの調査を待ってこういう事実が私はわかってくるのだろうと思います。これがもし事実とするならば日本の国家の存立にかかわる大変大事な問題でございますから、きちっと事実関係だけは明らかにしてもらいたい、こう私は考えております。警察庁の方おいでになっていますね。——この問題に対する警察庁の基本姿勢についてまず聞きたい。
  121. 吉野準

    説明員(吉野準君) 三月に警察庁の係官をアメリカへ派遣いたしましてレフチェンコ元少佐と面談いたしまして、彼のみならずKGB日本における活動につきまして詳細聴取してまいりましたが、その中にコード名ナザールという外務省の職員が機密をKGBに流しておったというくだりがございました。ただ問題は、ナザールなる男がどういう人間であるかということでございますが、実はレフチェンコ元少佐自身も伝聞に基づく話でございまして彼自身が直接扱ったケースじゃないということと、それから彼自身の推測に基づく部分が相当あるわけでございます。そういうことでございましてこの当該職員を特定することは必ずしも容易ではないわけでございます。ただおっしゃるように大変事柄は重大でございますので私どもとしましてもこれはぜひ真相を究明すべきだという考えを持っておりまして、外務省当局と連絡を密にしながら現在調査中ということでございます。
  122. 木島則夫

    ○木島則夫君 確かにあなたがおっしゃるようにその伝聞の部分が相当あるようですし、また時効の壁というものも調査を進めていく上でなかなかむずかしいということはわかるのでありますけれど、もう一回伺いたいのだけれど、そのナザールという名の外務省職員協力者はほぼ特定されたというのはこれは事実かどうか、そのことについて伺います。
  123. 吉野準

    説明員(吉野準君) 先ほど申し上げましたが、現在鋭意調査中でございまして、この調査の中身につきまして現在どの程度進んでいるかということを申し上げますと今後の調査にも影響が及ぶ点もございますので、この点は御容赦いただきたいと思います。
  124. 木島則夫

    ○木島則夫君 お立場はよくわかりますが、それじゃその調査の中に外務省通信文を流していたということも当然対象として考えているのかどうか、その辺はいかがですか。
  125. 吉野準

    説明員(吉野準君) やはり問題の核心は通信文を流したというところにあるわけでございます。これが重大な核心でございますのでこの点が究明の中心になろうかと思います。
  126. 木島則夫

    ○木島則夫君 心証は。
  127. 吉野準

    説明員(吉野準君) 現在鋭意調査中としか申し上げられないのは大変残念でございますが、現在のところその程度で御勘弁いただきたいと思います。
  128. 木島則夫

    ○木島則夫君 いずれにいたしましても私が冒頭申し上げたように、これが事実とするならば日本国の国家の存立にかかわる大変大事な問題であると、この認識はあなたとても同じであろうと思いますね。私もそういう考え方を持っております。  それでは大体いつごろまでに結論というかこういうものをお出しになるのか。それがもし近い将来に出ないということであるならば、中間報告的なものは当然おやりになってしかるべきだと思います。これはもう一段上の法務省にお伺いするのが当然であろうと思いますけれど、その辺の考え方はむしろこれは外務省に私はお尋ねをしたいのでありますけれどいかがですか。
  129. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 先ほど警察庁の方から御説明がございましたように、このレフチェンコの議会における証言あるいは今後著作物その他の形で明らかにされていきますでありましょう内容につきましてはいろんな種類のものがあると思うのです。その中には本人が確かに接触していたという部分もございますし、直接関与していた部分でございますね、そのほかにもまた伝聞その他に基づく部分もあるわけでございます。この外務省員にかかわる部分につきましては、これはとにかく伝聞に基づく内容もかなり漠然としたものしか私ども警察の方から承っておりませんので、いまのところなかなかこれは慎重に調査をせざるを得ないと、やはり個人の名誉にもかかわることでございますし、省員の士気にもかかわることでございますので。おっしゃいましたような、もし事実とすれば事の重大性ということ、これは私ども認識しております。外務省というのは機密をあずかる役所としてその点については重大な認識は持っておりますけれども、ただいま申し上げましたような考慮もまた私官房を預かる者として常に痛切に感じておるところでございまして慎重に調査中ということでございます。ただもし何らか発表ということができます段階になりますればもちろん発表いたしますが、軽々に中間発表とかというふうな形でできるものかどうかという点についてはちょっと何ともいまお答えしかねるわけでございます。
  130. 木島則夫

    ○木島則夫君 私もまだ事実関係が定かではない段階でこれ以上細かいことに言及をするのはどうかと思いますけれど、やっぱりこの国会という院に関係した部分の発言、証言どもございますので、その辺は私は国会開会中に何らかの中間報告的なものもあってしかるべきではないだろうかと。これが全く外務省の方がそういうものに関係がないというのであれば、これはもうそれにこしたことはないわけですけれど、外務大臣、その辺はいかがお考えですか。国会も五月で終わるわけでございますね。
  131. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはいま官房長が答弁いたしましたように本当ならもう大変由々しいことだ、国家の前途にもかかわる問題だと私は思います。したがって、私は官房長に対しまして外務省として徹底的に調査をするように指示をいたしました。その指示に基づきましていま官房長を中心に調査をいたしておりますが、目下まさに調査中でありまして、どういうふうな方向で発表できるようになるか今後調査を進めてみなきゃわからない。ですから、これはやはり慎重に徹底的にやらなきゃなりませんから時間を切られてもちょっと困るわけでありますが、もちろん国会中にその調査結果が明らかになればこれは報告をさしていただきたいと思います。
  132. 木島則夫

    ○木島則夫君 一つお尋ねをしたいのでありますけれど、外務省在外公館からの通信というものはどんなような方法で打電をされているのか。この重要性の段階というのは確かにあると思いますね。その段階によってこれが分類をされてこれが恐らく暗号化されるのかどうか素人の私にはわかりません。こうした質問自体がその秘密、機密に触れるかもしれません。その辺を御勘案の上教えていただければありがたい。
  133. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) まず物理的な施設の方から申し上げますと、外務本省とすべての大使館及び主要な総領事館との間には電信専用回線というものを持っておるわけでございまして、これはいわばチャーターしておるわけでございます。二十四時間いつでも使えるということでございます。それからそのほかの公館、総領事館、領事館などとの間では、一般加入のテレックスによって通信を行っております。ごく一部の非常に不便なところの公館では電信局経由というのもまだ少し残っております。これが物理的な通信のシステムでございます。そのほかにもファックス信、これは大きな公館でありますとか代表部など、そういう通信量の多いところではファクシミリによる連絡もいたしております。  以上が物理的な施設の方でございますが、内容につきましてはこれはいま御理解を初めからいただいておりますように、そのこと自身私どもとして余り詳細に立ち入るのは差し控えたいのでござ いますけれども、もちろんその内容によりまして平、秘、極秘というふうな区分に分かれて、それに応じた対応によって通信をしておるということでございます。機密性の高いものについてはもちろん暗号を使って暗号に組んだ上通信しておると、こういうことでございます。
  134. 木島則夫

    ○木島則夫君 ナザールというものをいま特定はいたしません。このナザールに限らず、外務省のルールといたしましていま言われた極秘、秘、平、このマル秘扱い以上のものが外部に漏れればこれは国家公務員法の守秘義務違反というふうになると思うのですがこの点と、仮にそのマル秘以下の平文の内容のものを流していたという場合にはこれはどうなるのか。これは一般論としてお伺いをいたします。
  135. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 一般論ということでございますので一般論としてお答え申し上げますと、仮に国家公務員が国家公務員法第百条第一項に言う職務上知ることのできた秘密というものを漏らした場合には同条違反としてこれは処罰されると、こういうことでございます。  その秘指定がない、内容秘扱いになっていない文書についてはどうかということでございますけれども、その内容が職務上知ることのできた秘密に該当しないということでありますれば、これは国家公務員が他人に知らせたからといって、先ほど申し上げました国家公務員法百条第一項の違反にはならないわけでございまして、そういった意味での処罰の対象にはならないわけでございます。といって、外務省においてそういう文書であってもみだりに必要もないのに他人に渡すとか漏らすとかということについてはおのずからルールがあるわけでございまして、仮にそういったものに違反する場合には、これは外務省内部の規律の問題として処置するということになろうかと存じます。
  136. 木島則夫

    ○木島則夫君 警察庁の方にはこれ一問伺って結構でございます。  どうなるのでしょうか、非常に長く時間を要するようなむずかしい調査なのか、あるいは意外に時間をそうかけなくても今国会中にわかるというような感触のものなのでしょうか。どんなものでございましょうか。
  137. 吉野準

    説明員(吉野準君) 先ほども一部お答え申し上げましたけれども、そもそもの情報のもとは伝聞に基づくものである。本人が扱った——本人と申しますのはレフチェンコ元少佐でございますけれども自分が直接ハンドルしたケースではないと。それから、その中には一部人定に関して彼の推測に基づく部分もございます。したがいまして先ほど申し上げましたけれどもこの特定ですね、ナザールはだれであるかという特定は必ずしも容易ではないという点が一つの大きな壁になっております。ただ、といって手をこまねいておるというには事柄が余りにも重大でございますので努力はいたしますが、率直に申し上げて、ごく短期間に割り出せるということは必ずしもいまこの場で断言いたしかねると思います。
  138. 木島則夫

    ○木島則夫君 どうもありがとうございました。  外務省にお伺いいたします。この問題はこれからの調査によらなければわからないわけでございますけれど、外務省としてはこのことを契機に、外務省の省内だけでも機密保護体制の強化を進めるというようなことを考えているようでございますけれど、具体的にはどんな点についてどういうふうに行っていくのだろうかちょっと聞かせていただきたいのですが。
  139. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 先ほども申し上げましたように、一方では先日来ここの委員会でも御議論になりましたように開かれた外務省という要請があるわけでございます。これは国民一般に外交をよく理解していただく、また一般からの情報を吸い上げながら、それを反映させながら外交を進めていくということでございます。しかし他方、国の機密を預かる役所として秘密の保全ということについては万全の措置をとっていかないといけないわけでございますし、私どもも今日までそれなりの努力はしてきたつもりでございます。しかし、今後やはりこういうことを契機に一層の——これはその事実があったとかなかったとかということは別にいたしまして、こういったことを契機に一層機密保全について対策を強化すべきであろうというふうに考えております。  内容のどういうことを考えているのだということになりますと、やはりこれは私どものいわば手のうちでございますので、余り詳細は差し控えさせていただきたいと思うのでございますけれども、常識的なことを申しましても、秘文書の複写の制限だとか、あるいは秘密関係、機密保持にかかわる関係スタッフの強化とかに予算の増額だとか、その他秘文書を含む文書の取り扱いに関する規則の一層の明確化だとかそういうこともございます。それから、たとえば最近のようにコピアーが普及してまいりますと大変文書そのものをまたコピーしてということが非常に起こり得るわけでございます。そういう点で、たとえばコピー不能の文書とかコピーすれば色が変わってしまう紙とか、いまのはごく一例でございますが、そういったいろいろな技術的な面についても研究を進めないといけないと思っております。  また、基本的にはやはりこれは省員の意識の向上ということが重要でございますので、そういった物理的な手段とともに、先ほど来申し上げておりますような外務省の責任の重さということを十分徹底いたしまして、意識の向上に努めるということも重要な課題だと思っております。
  140. 木島則夫

    ○木島則夫君 リーダーズダイジェスト誌で述べられておりますレフチェンコ証言の中にはいろんなことを言っておりますね。その中に、日本には防諜法も国家機密保護法もない、外国スパイやその協力者をのさばらせることであって民主国家の根本原則にももとると、こんなようなことも表現されております。どうなのでしょうか。私ども一般には日本はスパイ天国であるというふうな受け取り方をしている。大臣はそういうふうにお考えですか。日本がスパイ天国なのかどうか、これはどんなふうにお受け取りになっていますか。
  141. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはやっぱり見方の問題でしょうがね、ある意味においては日本には防諜法もありませんし機密保護法もないですからね、ですからそれだけ自由に情報が入手できる。しかし日本にあるところの情報というのがどれだけ値打ちのあるものかどうか、それだけの機密がいま日本にあるかどうかということも、一つのこれは判断の問題なのですけれど、いずれにしても情報の入手は他の国に比べると非常に容易じゃないかと私はそういうふうに思いますね。そういう意味において、それだけスパイ天国と言われるほどの国であるかどうかは、これはスパイが密集するほどの秘密があるということなのでしょうけれど、それだけのものがあるかどうかということはこれはなかなかわれわれ判断できない問題もありますですね。
  142. 木島則夫

    ○木島則夫君 確かに大臣が言われるように何も外務省、政府の内部のものだけが秘密ではなくて、企業の先端技術だってこれは大変な秘密に値するものだろうと私は思いますね。ですからどれが秘密でどれが秘密でないというような特定もできないし、いま大臣がおっしゃったようないろんな見方もあろうと思いますけれど、そこでフランス、イギリス等でスパイ活動の容疑でソビエト外交官や通信社職員などを追放した。日本においてもソ連のいわゆるスパイ活動がもし目に余るような場合には——場合にはというふうにつけます、場合には同様の措置をとることもあり得るという、そういうことは将来あり得ますでしょうかどうなのでしょうか。
  143. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) ただいま大変慎重に御質問になりましたが、やはり特定の国名を挙げて目に余るような場合とおっしゃいましたので、特定の国についての御質問ですとちょっと非常にしにくいのでございますけれども、仮に外国の一般的に外交官ないし通信社の職員を含む一般外国人がいわゆるスパイ行為を行った場合いかなる措置をとり得るかということでございますけれども外交官の場合ですと、たとえばわが国の国内法違 反に該当する場合でも、外交官として国際法上身体の不可侵、裁判権からの免除というものを享受しているわけでございますので、わが国の国内法に基づいてこれを処罰するあるいは刑に服せしめるということはできないわけでございますが、これはもう御承知のことでございますけれども、ペルソナ・ノン・グラータ、好ましくない、好ましからざる人物として派遣国に対してその召還を請求する、こういうことはできるわけでございます。そういう請求を受けた国は義務として召還しなければならない。これが国際法上のルールでございます。  次に、一般外国人の場合はわが国の国内法に基づいて処置し得るわけでございますから、ケースによって処罰し得る場合もございますし、あるいはそれに至らなくても国外への退去というものを強制する、こういうことはできるということでございます。
  144. 木島則夫

    ○木島則夫君 私はいまある国を特定して質問をしてしまいましたけれど、特定をしないで、もしも目に余るようなことをする国の外交官あるいは通信社の職員などがいた場合にはそれ相当の措置もとり得る可能性がある、こういうふうに理解してよろしゅうございますか、どうでしょう。
  145. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) まさにそのとおりでございまして、一般的にそういうことがあればただいま私が申し上げましたようなことができるわけでございます。
  146. 木島則夫

    ○木島則夫君 この段階でこういう議論を進めるのは不謹慎かもしれませんけれど、私どもの考え方としましては、そのスパイ防止法にいたしましても機密保護法の制定というようなものにつきましても、これは人権に絡み、表現の自由とも非常に密接な関係があるからこれは慎重の上にも慎重を期さなきゃいけないというような考え方を私どもはとっております。この段階でこの種の議論を進めることがいいかどうかは別といたしましてどうなのでしょうか、外務省としては、外務省だけではなく一般国民も規制するようなこの種の事件の発生を防止するための機密保護法の制定というものを頭のどこかに置いているのかどうか、その制定を求めることは考えていないかどうか、念のために伺っておきたい。
  147. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 外務省としては、これは先ほど官房長が御答弁いたしましたように、機密の保護というものについては今後ともいろいろと措置を進めていかなきゃならない。これは外務省にはそれなりの機密があるわけでございますし、それを守っていくのが外務省の役割りでありますから、これを守るためのやはりできるだけの措置は強化をしていかなきゃならぬと思いますが、しかしいま言われましたような、それじゃ機密保護法とかあるいはスパイ防止法ということになるとこれは外務省だけの問題ではないわけでありまして、この点についてはいろいろな角度からの意見があります。日本がスパイ天国だからそして国家としての機密もそれなりにあるわけですから、これを守るためにはそうした法律を制定すべきであるという考え方もありますし、日本の場合は非常に民主的な国でありますし、そういう中でおのずから自制といいますか、そういう意識の向上とかそういうことによってむしろ機密を守るという方向へ国民の意識を向上する方がこれは民主国家としての行き方としてはあるべき姿じゃないか、こういう声もありまして非常に否定的な立場ですが、やはり機密保護法とかスパイ防止法ということになりますと、いまおっしゃいますようにこれは私は慎重の上にも慎重にこれらは検討しなきゃならぬとこういうふうに思います。いま外務省立場から、それじゃ機密保護法、スパイ防止法を制定すべきであるとかそういうような立場にはないわけであります。もっと高い立場で、全体的にいまの国家の体制というものを踏まえて判断をしなきゃならぬとこういうふうに思うわけでございます。こうした事件だけでまだ調査中でありますし、これでもってどうだこうだというのは早計に過ぎるのじゃないか。これまでもこれに類した事件はありましたけれど、いまこういう事件があったからといってこれでもってそうした法制の問題まで論議するのは私はちょっと早計に過ぎるような感じがいたします。
  148. 木島則夫

    ○木島則夫君 レフチェンコ事件については、この種の事件が事実だとするならば大変な問題でございますからこれは今後きちっとやはり調査をされる、そのことは再度申し上げさせていただきたいというふうに思います。何かこのことについて外務大臣、ございますか。——よろしゅうございますか。  それでは、日ソ関係について同僚委員からいろいろお話がありましたけれど、結局のところ、日ソ事務レベル協議での日本ソ連との話し合いというものはことごとくと言っていいくらい平行線をたどって対立に終わって問題は持ち越しになってしまったというふうに私は受け取っております。問題は、何というかこういった冷え切った状況を何か打開する糸口というものが一体あるのかどうか、それは何によって行われなければならないのかということになると思いますけれど、外務大臣、その辺はどういうふうな感触というか将来を展望されておりますか。
  149. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに今回の事務レベルの協議では、これはほとんどの問題が平行線といいますか対立に終わったわけであります。ただ、対話を重ねたというところが非常に意義があったと私は思います。こういう対話を重ねるということが、私はこれからの日ソ関係というものを考える場合にまた意義があるのじゃないかと思っておるわけでありまして、国際情勢もいろいろ動いてくるでしょうしあるいはまた日ソ関係もそういう中で今後とも動いていくわけでしょうから、こうした対話を重ねあるいはパイプをそれぞれ継続していくということが今後の日ソ関係を進めていく上においては大事なことじゃないかとこういうふうに私は思うわけです。
  150. 木島則夫

    ○木島則夫君 対話が必要だということは私もそのとおりだろうと思います。対話をした結果が今回は対立になった、これを対決に持っていったら大臣、大変ですね。だから、そのほぐす糸口というものは那辺にあるのだろうかとわれわれは心配をいたします。いかがでございますか。
  151. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) それは日ソ関係について言えば、やはり基本的な問題を俎上に上せて話し合うということがまず第一に大事だと思いますね。ですからたとえば率直に言いますと、領土問題ですね、これはやはり田中・ブレジネフ会談でもあるいはその前の国交正常化の際も、この領土問題というのは一応留保ということになって両国が確認しているわけですから、そうした線にまでやはりソ連がこれを認める、これが私は自然であろうと思います。そういうことをやることによって私は大きく日ソ関係というのは変身をすると思いますし、また同時に、いま領土問題とともに存在しているソ連のいわゆるアフガニスタンへの侵略であるとか、あるいはポーランドへの介入であるとか、そうしたいわゆるソ連の膨張政策といいますかそういうところにソ連の反省の情勢が出てくれば、これまた日ソ関係の改善にも大きく寄与するのじゃないだろうか、こういうふうに思います。そういう基本的な問題の前進がない限りは、なかなかいまの日ソ関係を大きく改善することは不可能だ。しかし、対話を進めるとかあるいは人的交流、あるいは文化の交流とか民間の経済の交流とか、そういうものを今後とも進めていくことがそうした限られた中での日ソの改善にもある程度つながっていくだろうと、私はこういうふうに思っております。その点は努力をしなきゃならぬと考えております。
  152. 木島則夫

    ○木島則夫君 ことしの一月の欧州の歴訪で日欧政治対話の強化を提唱されましたですね、外務大臣が。それを受けて日欧、日英協議が行われると聞いております。ここでの最大の課題は、何といってもINF交渉だろうと私は思います。SS20をどうするか欧州は欧州なりの考えがある。日本はグローバルな立場に立ってこの問題の解決を図る。しかし、欧州は反核運動などもあってある程度妥協をせざるを得ないというようなことになり ますとどうなんでしょうか、日本日本の言い分を通そうとすれば欧州は欧州なりのやっぱり言い分があるだろう。そこで、日欧の間に何か抜き差しならない溝が入り込むようなことも可能性として考えられるし、またその後の話を煮詰めていきますと、だから日本は安全保障、もうちょっと防衛の努力をおまえさん自身でしなさいよという話にもなりかねない、その辺は大臣、どういうふうにお見通しでございますか。
  153. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いまの時点では、日本、欧州、アメリカのINF交渉についての考え方は一致しております。これはグローバルでやらなきゃならぬということで一致をいたしておるわけでありますが、ソ連は御承知のように、欧州は欧州あるいはまたアジアはアジアということで分けて考えております。そういう中で、確かに欧州では一方においては反核運動がある、一方においてはやはりパーシングIIとかあるいはまた巡航ミサイルのこの秋以降の配備を決定しなきゃならぬ、こういう状況にもあるわけでございます。そういう中で、いろいろと欧州の中でも思惑というのはあるわけでございますが、私はやはり西側全体がこういう問題については一本になって対処していかなきゃならぬと思うわけでございます。その点では今後とも日欧の政治対話というものは特に必要になってきた、日本立場も十分ヨーロッパに伝えなきゃならぬ、こういうふうに思います。  そういう中で、やはり何としても焦点はアメリカ交渉するのはアメリカソ連ですから、アメリカがしっかりしていわゆるグローバルな立場というものを崩さないでこれに臨んでいくということになれば、この問題は米ソ間でグローバルという形で解決の道は生まれてくるのじゃないだろうかと私はこういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  154. 木島則夫

    ○木島則夫君 ちょっと理屈っぽくなって恐縮ですけれど、こういった協議は何に基づいて行われるのか、こういう協議には何か法的、制度的な根拠というものは必要はないのですか。
  155. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これ別に法的というあれはないわけで、結局定期外相会談だとかあるいはお互いの事務レベルの協議だとか、両国間で合意をすればこれできるわけであります。これまでも外交の慣例あるいは常識としてそうしたことをずっと続けておるわけでありますし、今後とも両国の話し合いはそれぞれできておりますから、これをもとに積極的にひとつ取り組んでまいりたいと思います。
  156. 木島則夫

    ○木島則夫君 必要であるならば安全保障の問題に関して日中と日韓等が協議を行うことはこれは法的、制度的には問題ないのだろうと思うのですけれど、これはどうなのでしょうか。
  157. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 意見の交換といいますか、世界情勢の判断とかあるいはそういう中に臨むそれぞれの国の安全保障に対する考え方、自分の国の安全保障に対する考え方、そういうものについての意見の交換というものはこれまでもやっておるわけでありますしあるいは当然やらなきゃならぬ。特にINFといったような問題については、そういう情報の交換というものもそれぞれの国の安全保障あるいは世界の安全保障というものにつながっていくわけですから、そういう情報の交換といったものは私はすることが今日の時代においては必要じゃないだろうかと考えております。
  158. 木島則夫

    ○木島則夫君 極東におけるソ連の核戦力の増強につきまして日中あるいは日韓で協議をすることは考えておりませんでしょうか。
  159. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) それぞれの国の極東情勢に対する認識を話し合うということはこれは当然これまでもやっておりますし、今後もやるべきことであろうと思います。話としては当然出る議題であると思うわけであります。しかし、これでもってお互いに協議をしてそして安全保障について共同の歩調をとるとかあるいは共同の行動をとるというふうなことは、これは日本立場としてはしないということであります。
  160. 木島則夫

    ○木島則夫君 それでは、日本の産業政策批判が非常に高まってきております、この問題に話題を変えていきたいと思いますが、最近アメリカにおいてわが国の産業政策についての批判が強まっております。これはどういう条件のもとでどういう理由によってこういうものが出てきたのだろうか、簡潔で結構ですから触れていただきたい。
  161. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは去年ぐらいからアメリカでもあるいはヨーロッパでも出始めております。特に最近では相当アメリカの議会筋だとかあるいは政府の一部でも強くこれが出てくるようになっておるわけでありますが、これはやはり最近のアメリカやあるいはヨーロッパの経済の不況、そうした中で日本の輸出が出超という形で伸びておる、特に先端技術等でアメリカやあるいはヨーロッパ等が追い抜かれる、こういう状況にある中で日本の産業政策の批判というものに結びついてきたということでありまして、これは私たちから言いますと全く誤解の面が多いし、あるいはまた日本の産業政策あるいは産業調整政策というものに対する十分な認識に欠けての批判というものが多いように受け取られるわけであります。
  162. 木島則夫

    ○木島則夫君 通産省の方おいでになりますか。——通産省の方に伺いたいのだけれど、具体的にはどういうところを批判しているのか、それはどういう理由によるのか、簡潔で結構ですからちょっと聞かしていただきたい。
  163. 堤富男

    説明員(堤富男君) いま外務大臣の方からお答えがございましたようにかなり向こうも誤解に基づいている面がございますが、基本的に批判をしている根拠になっておりますのは、過去における産業政策が特定の産業に集中しその結果その産業が非常に輸出産業としていわば競争力を蓄えてそれが非常に不公正な貿易への影響を与えていると、それがいわばガット上の問題になり得るかどうかということが向こうでの批判の一番簡単に申し上げた根拠だろうと思います。
  164. 木島則夫

    ○木島則夫君 アメリカの議会にもアメリカ産業育成法案が提出をされているというふうに聞いておりますけれど、その数はどのくらいあるのか、内容は大別するとどんなものに分けられるのか、またその中でわが国を対象としたものはどういうものなのか、これも簡単で結構です。
  165. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  まず、現在米国の議会に出ている産業育成法案の数でございますが、実は通商関連の法案がたくさん出ておりまして、厳密に言うとどれがただいま御指摘のありました産業育成法案になるかという数え方の問題もあるわけでございますが、産業育成に関連のある法案ということで申しますと主要なものだけでも十本ぐらいはあるというふうに考えております。例示的に申しますと、包括的な産業政策の誘導を図るフロリオ法案とかあるいは科学技術の教育振興に重点を置いた幾つかの法案とかそれから通商産業を統括して所管する官庁を設置すべきであるというような法案がございまして、非常に大ざっぱに申し上げましていまの大体三つのグループに分かれるのではないかと思われるわけでございます。  それで第三に、その中でわが国を対象としたものがあるかという御質問でございますが、この中の幾つかは、日本という言葉を明示しているかどうかは別といたしまして、わが国を念頭に置いたものが幾つかあるというふうに考えられるわけでして、たとえば最初に申し上げましたフロリオ法案の場合、フロリオ議員がこの法案につきまして、アメリカの企業に対してアメリカの政府から日本と同じような重点産業の育成策を支援させるということがこの法案の目的一つであるということを言っているわけでありまして、ここなどを見ましても明らかに日本を頭に置いているということが言えると考えます。
  166. 木島則夫

    ○木島則夫君 先ほど外務省からもまた通産省からも誤解に基づくものが多いのだというお話がありましたけれど、そうならばこういった批判に対しては当然反論をする、反論書等をまとめられたと聞いておりますけれど、その内容、政府の考え方というのははっきりしましたか。これは通産省 が答えた方がいいのかな、どちらでも結構です。
  167. 堤富男

    説明員(堤富男君) 昨日記者会見におきまして、最近の米国動向をやや懸念いたしましてわれわれの産業政策についての考え方をまとめました。非常にかいつまんで申し上げますと、産業政策というのは名前と形は違うけれどもどこの国にもあるのではないか。それから、日本の産業政策というのはほかの国と比較しても決して非常に重い、お金をたくさん使ったものではなくてむしろ逆なのじゃないだろうか。それからもう一つは、これがガットに違反するという考え方もときどき出ておるのですが、こういうこともないのじゃないでしょうかということを、産業政策についての考え方を述べつつ、むしろ最近アメリカの方で出ておりますこれに対する批判の裏側にある考え方についてやや懸念の表明をしております。  それは第一に、こういうわずかな制度の差を理由にいわば輸入制限ができるということになりますと、これは保護主義を非常に助長するということになりますので保護主義への懸念、それから研究開発資金等につきましてのいわば相手国からの批判ということになりますと、研究開発をこれから進めるというのに支障があるのではないかというようなこともありまして懸念の表明をしておるわけでございます。最後の部分が、いわば今後どうしたらいいだろうかという問題につきまして、むしろ技術格差というのはときどきできるものでしょうから、それが貿易の摩擦につながるようなときにはむしろポジティブにお互いに協力し合う、技術を移転し合う、あるいは企業が両国で交流するというようなことを通じて拡大的に問題を解決する方がよろしいのじゃないでしょうかという点をまとめてやったわけでございます。ただ、基本的にはこれは反論という形ではなくて、基本的な考え方の取りまとめということでございます。
  168. 木島則夫

    ○木島則夫君 この問題に関する最後は、こうしてアメリカの対日批判というものがこれまでの市場開放要求から産業政策批判に移ってというか広がってきたということであるならば、これに対する新たな対応というものも、いま通産省の方がおっしゃったようにただ反論というものだけではなくて、やっぱり相手に対する説得、理解、こういう対応というものがこれから迫られてくると思いますね。これは通産省と外務省の両方に伺いたいのですけどいかがですか。いま一部はあなたがおっしゃってくれたけれど、どうですか。
  169. 堤富男

    説明員(堤富男君) これは確かに誤解に基づく面も非常に多いわけでございますしその影響するところは非常に大きいと思いますので、通産省としても今後この考え方をなるべく広く知っていただく。ただ広く知っていただく場合にも、当然外務省の外国における広報活動もぜひ活用さしていただきたいということで、きのうも私の方からその辺をお願いしたばかりのところでございます。
  170. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは貿易で結局国際競争力が日本が非常に強い、アメリカやヨーロッパが物によっては非常に弱いですね。特に新しい技術等についてはそういう面が非常に顕著に出ておるわけで、結局日本が独得の産業政策をして補助金でもって特定の産業を国が保護する、そしてその間、外国からの輸入についてはこれを規制する、そういうふうな措置をとって、力がついたところで一斉に外国に対して集中豪雨的な輸出を強行してそして打ちかってしまう、こういうふうなやっぱり考えが基本的にあるわけですね。  これははるか昔には多少そうした補助金政策とかやっておった。最近ではそういうことはしてないのです。それは外国に比べて日本の補助金なんというのは非常に少ないわけですから、ですから最近の日本の産業政策というのはそういうものじゃ決してないわけですね。あるいは今度の不況カルテルなんかにも産業政策の一環として目をつけているようですが、これも日本が外国からの輸入を規制するという立場じゃなくて、やはり不況産業に対してこれを何とか救うための対策を国内的に講じておるということで、何ら対外的な意味はないわけなのですが、そういうことに対する誤解が非常に大きいですし、何か日本の産業政策がえらく巨大な形で国が介入してそして外国に対して強く出てきておると。  ですからこの問題は、ヨーロッパでも二十三条協議等でもそうした流通機構から産業政策に至ってまで批判が出ておりますしアメリカはまた特に去年ぐらいから産業政策に的をしぼってきておりますから、これはやはり大きくならないうちに十分諸外国に対して日本のいまとっておるところの産業政策の実態というものを詳細に説明して理解を求めなきゃならぬと思いますし、また私は十分これは理解が求められると、こういうふうに思っております。やはりこれ政府一体となって努力をしていきたい。日本も市場開放をどんどん進めてまいりまして、余り外国から非難されるものはなくなってしまった。農産物の一部を除いては、関税にしてもその他非関税障壁についても、全く欧米並みあるいはそれ以上になってきているわけですから、そうすると結局産業政策というところに向けてくるわけですよ。これは意識的に向けてくる面もありますので、その点は十分われわれも踏まえながら、ひとつこれからの日本政府として最大の努力をして外国の理解を求めてまいりたい、こういうふうに思います。
  171. 木島則夫

    ○木島則夫君 最後に、中越国境紛争が拡大しておりますね。この現状と見通しについて。
  172. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) お答えいたします。  中越国境は昨年来比較的平静な事態が続いておりましたが、本年三月に入りましてかなり激しい動きが出てまいりました。  具体的には、三月二十四日には北京放送が、ベトナムは雲南省正面で攻撃を始めたということを初めて非難を開始いたしました。それで四月十日に至りますと中国外務省はベトナムに対しまして抗議の口上書を提出いたしまして、その中で、ベトナムの武力挑発は三月だけで七十回以上にわたった、中国側に十四名の死傷者が出たということを述べております。これに対しまして四月十二日に至りますとベトナム外務省は中国に抗議の口上書を送っておりまして、中国は三月二十四日から三十一日までの一週間だけでも二十五回にわたってベトナムへの武力挑発、領土侵犯を行ったというふうに述べております。さらに四月の十六日には広西チワン地区から、また十七日に至りますと雲南省からそれぞれ中国軍はベトナム陣地に向けて砲撃を行ったということを新華社が発表しております。他方ハノイ放送によりますと、ベトナム政府は、中国側が中越国境地帯のランソン、カオバン、ハトエン三省で砲撃の後部隊を越境させた、侵犯行為を行ったという発表を行っております。  以上が現在までの事実関係でございます。
  173. 木島則夫

    ○木島則夫君 ベトナムのカンボジア攻勢に対する中国の牽制であるとかいろいろ見方がありますけれど、外務省としてはこの進展と申しますかこの辺をどういうふうに情勢判断をされておりますか。
  174. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) この中越国境におきます武力衝突が、明らかにタイ・カンボジア国境の動きに連動しておるということはほぼ間違いないと存じます。  御存じのとおり本年三月下旬以降、特にベトナム軍のカンボジアに対する攻撃、タイ・カ国境における攻撃がきわめて増加されまして、連隊規模でございますが、約五、六千人のベトナム軍が攻撃を開始いたしまして、シアヌークビル等に大規模な攻撃をかけてきたわけでございます。それでタイの国境二キロぐらいに進出したということでございますがこの動きと、それから中越国境の動きとは明らかに連動しておると思います。ただしどういうふうに連動しているかにつきましては、中国側とそれからベトナム側と全く逆と申しますか、解釈がございます。  本月の十七日の人民日報では、ベトナム側は中越国境での挑発行動を行うことによって国際社会の視線をカンボジア国境から中越国境の方にそらせようとしているのだということを人民日報は言っております。他方、同日付のベトナムのニャン ザンは、そのとおりに読みますと、中国側はタイ・カ国境地帯でのポル・ポト残党支援が惨めな失敗をした、その報復措置として中国側が中越国境で攻勢をかけているのだと、こう主張しております。両者とも一致しておりますのは、タイ・カンボジア国境の動きと連動があるということでございますが、その解釈は全く相反しているということでございます。  今後の見通しでございますけれども、これにつきましてはもちろん確たることは申し得ないわけでございますけれども一つの要素といたしまして、タイ・カンボジア国境は通年大体四月いっぱいで雨季が参ります。遅いときでも大体五月中旬までには雨季に入りまして大規模な戦闘は不可能になるということでございまして、いわゆる乾季攻勢は大体今月いっぱい、あるいは遅くとも五月の中旬にはおさまるというのが例年でございます。したがいまして、ことしもそういう要素が働きますれば、それが連動しておる中越におきましても何らかそういう鎮静化というものが図られてくるのではないかということが一つ考えられます。
  175. 木島則夫

    ○木島則夫君 結構です。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 最初夏目局長にお尋ねしたいのですが、きのうの決算委員会での発言ですね、新聞で見たのですが非常に重大な発言ではないかというふうに私感じたので、ひとつその本意を確かめておきたいというふうに思ってお越しいただきました。  それは、核を積載した米艦船との共同対処があり得るということあるいは核を積載した艦船の護衛ということもあるというのですが、その意味について、きのう述べられた発言がどういうことだったのか、またその意味がどういうものなのか、ちょっと最初に御説明いただきたいと思います。
  177. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 昨日の参議院の決算委員会における私の答弁の趣旨は、いわゆる安保条約の五条事態において、核装備をしていることも予想し得るところの米軍部隊とわが国がわが国に対する武力攻撃を排除するために共同対処することはあり得るのではないかということでございます。そしてまた、そうした相手国から攻撃を受けている米艦艇の装備のいかんにかかわらず、自衛隊がわが国を防衛するための共同対処行動の一環としてその米軍の艦艇を守ることはあり得るのではないかということを申し上げたわけでございまして、この答弁の趣旨は、先般の予算委員会において再三御答弁申し上げているような、米艦艇を護衛し得る、その米艦艇は共同対処をしておって、わが国を防衛するために行動しておるときにはわが国の個別的自衛権の範囲内の行動として米艦艇を守り得るということの一環として申し上げ、それが核装備をしているかもしれないものであっても、わが国の自衛隊の行動の法的な立場というものは変わりがないのではないかということを申し上げたつもりでございます。
  178. 立木洋

    ○立木洋君 これは前回の予算委員会で私がお尋ねしたときの答弁の域から見ますとさらに一歩危険な発言になっているのではないかという気がするのですがね。これは、核装備しているかもしれないということを明確に想定した上で、そして共同対処があるし守ることもあるということになりますと、そうすると核を使用した戦闘に加わる可能性というのが起こってくるということも当然あり得るのじゃないですか。
  179. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) わが国が防衛の基本的な柱として日米安保体制を基軸にしているということは御理解いただけると思いますが、その際わが国が、アメリカの核の脅威についてはアメリカの核抑止力に依存しているということもしばしば申し上げております。また一方、非核三原則を国是としてとっておるということも申し上げておって、このアメリカの核抑止力に依存することと非核三原則ということは全く矛盾しないのではないかというふうに思っております。そしてその際、防衛のために日本の周辺を行動する第七艦隊が、たとえば第七艦隊というのが有事の際に核を持つであろうということも全く否定できない、予想することも考えられるというふうなことになりますと、これはアメリカの核抑止力というものを構成することからいってそのことはまたあたりまえだと私は思います。ただし、これが先般の予算委員会で申し上げたのは、あくまでも今回のシーレーン研究の一環として、私どもが日米双方で協議しようということは、核戦争というものは対象にしないということはまたこれ申し上げているわけですが、米艦艇を守るということは決して核戦争を前提としたということではなくて、そういうことが理論的にあり得るということを申し上げたわけでございまして、この先般の予算委員会における答弁と昨日の決算委員会における答弁との間に私は矛盾したとは思っておりません。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 予算委員会での答弁はちょっとそれをおいておいて、いま御説明いただいた先ほどのいわゆる共同対処があり得る、あるいは守ることがあり得るということ、これは理論上そういうことがあり得るというふうに述べられたと言いますけれども、結局核を積んでおるということが想定される船との共同対処ですからね。そうすると、核を使用した戦闘に加わるということも可能性としてはあるのじゃないですか。否定できないのじゃないですか。絶対そういうことはないと言えますか。
  181. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 私が申し上げたい趣旨は、従来これもしばしば申し上げているように、核を装備しているかいないかということについてははっきり言わないというのはアメリカの方針でございます。したがって、私が申し上げているのはあくまでも核を装備しているということをきめつけた上でのお話ではなくて、装備し得る能力を持った部隊、すなわち持っているかもしれないということを申し上げていることが第一点でございます。  それからまた第二点は、アメリカがそうした核を持っていることがいわゆる抑止につながる、アメリカの核抑止力の重要な一環であるというふうな認識があるわけでございます。そういったものを踏まえて申し上げているわけでございまして、決して核を対象とした、核戦争を前提としたもので申し上げているのではないということでございます。
  182. 立木洋

    ○立木洋君 だから、私も核戦争を前提としているということをきめつけないで聞きますよ。そうなる可能性もあるのじゃないか。否定できますか。絶対ないと言えるかどうか、その点だけ。
  183. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) これはもうしばしば御答弁申し上げておりますが、自衛隊は通常兵器による在来型の戦争を前提としている。核についてはもっぱらアメリカの抑止力に依存しているということでございます。したがって、アメリカの核の兵器の一番重要な役割り、機能というのは抑止機能であって、それが使われることを前提としたものではないというふうに理解しておりますし、また核兵器の実態から見て当然そういうものであろうというふうに認識しております。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 この問題を聞いても、それは核を使用する戦闘に加わる可能性はございますなんてこういう答弁をしたら大変なことになりますからね。だけれど、そういう危険な状態にあるということをあなたが否定しなかったということは、そういう危険な状態にあるということを承知の上で核を積載する艦船と共同対処があり得るということを述べたということはきわめて重要だということを指摘しておきたいと思います。  次の質問ですけれどもね。これはシーレーン防衛の問題に関してこの間お尋ねしたことにまたなるのですが、前は、つまり核を積載しておる船ということに限定しなかった。だけれど今度は核が積載されておるということがほぼあり得ると、第七艦隊というのは。これの護衛ということが問題になったのですね。そして、あの場合には護衛するというのはいろいろな場合があり得る、千差万別だということになった。そうすると、核が積載されているかもしれないということが想定される船、それは千差万別でどういうふうに護衛するかということもあり得るわけだけれども、これは当 然シーレーンの研究の対象になっているわけじゃないですか。核を積載しているということを限定はしないけれども、核が積載されているかもしれないという船の防衛についてはシーレーン防衛では研究するのじゃないですか。
  185. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず第一点申し上げるのは、米艦の護衛というのは、とかく何か船団の護衛のようにアメリカのたとえば七艦隊をエスコートしていくというふうなものをもし前提としてお考えであればそういうことでなくて、先般予算委員会で累次申し上げていることは、あくまでもわが国を防衛するために行動している米艦艇が相手国から攻撃を受けたというときに共同対処をしているわけですから、その米艦艇を守ることはこれまたわが国を防衛するために必要な限度内であるということ、もちろんその大前提として、わが国は個別的自衛権の範囲内で行動しているという網がかぶっているわけですが、そういうことを申し上げているわけでございまして、あくまでも米艦艇の護衛というのは何か整々と最初からそういうものを予想したということではないわけです。  一方、日米防衛協力のシーレーンの研究というのはそのガイドラインにあるとおり、あくまでもわが国に対して武力攻撃があった際に日本アメリカがいかにして有効に共同対処できるかということを研究するわけでございまして、アメリカがどういう装備を持っているかということによって必ずしも規制されるものではないというふうに思っております。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 この点も前回のあれとやっぱり異なってきているのは、つまり核が積載されているかされていないかということはその考慮にないと。だから積載されているかもしれないけれどもそれの防衛ということをどうするかということ、いわゆる守るということが研究されるわけですから、だから事実やっぱり研究の対象になっていくという危険性があるということも指摘しておきたいと思うのです。  それからもう一点、これはアメリカの艦船がいろいろ荷物を輸送するというふうなことを守ることがあり得るということになったわけですが、だから、公海上では核を積載していることが想定される艦船をも防衛できる、守ることがあり得る。だが領海に入ってきた途端にはもうそれは護衛の対象にはならないと、核が積んであれば。だからそこからはもう帰ってくれと、あなたはここからはうちの領海ですからもうだめですよというふうな、そんな単純なことになるのでしょうかね。これは非核三原則の、あなたがきょう最初に述べた内容というのは突き詰めていくと、事実上有事の際に大変な状態のもとで起こり得るアメリカが核を積んでいるかもしれない、事実積んでおるだろうと想定される船を防衛するということが公海上で、一歩領海に入るといまは有事であるけれどもおたくはお帰りくださいということになるのかどうなのか。こんな矛盾した話はないので、非核三原則を事実上なし崩しに破る結果になる発言とみなさざるを得ないのですが、この点はどうなのですか。
  187. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず第一点は、これも一般論として申し上げますが、アメリカの核を積んでいる船がわが国の領海に入ることというのは論理的にないのではないか。ということは、事前協議の対象であり事前協議をされた場合にノーと言う、こういうわが国の基本的な方針があるわけでございますから、そういうことはない。したがって、いま御議論されているようなことが起こり得る可能性がないというふうに私ども認識しております。  第二点は、先ほども申し上げたとおり米艦の護衛という言葉が非常に誤解を与えるのですが、たとえば第七艦隊を整々と護衛をしてきて領海に入るところでもって別れる、こういうふうなものを念頭に置いておられるということであればそういうことではなくて、あくまでもアメリカの艦艇がわが国に対して武力攻撃を行っている国から攻撃をされたときにそれを救出あるいは守ることができるか、こういう議論をされておるわけですが、そこのところはちょっと意味が違うのではないかというふうに思っております。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 もう一遍、いま局長の言うのは全くおかしいのでね。いわゆる戦闘状態になっているわけでしょう、有事の際ですからね。有事の際で核が積載されているということがほぼ認定できる、確定できる、そういう船であっても公海上では共同対処ができる、また攻撃された場合に自衛艦がそれを守ることもあり得る、こういうわけでしょう。そうするとそれから戦闘が展開されている状況のもとで、一歩領海に入ると事前協議をかけてくるのですか。そのときになったらおたくはだめですよ、帰ってくださいということになるのですか。有事なのです、事態は。そういうことがあり得るのじゃないか、実際に。三原則が破られて領海上にまで入ってくることだってあり得るのじゃないか、作戦している状況のもとで。簡単でいいです、ないならない、あるならあると。
  189. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) そういう仮定の事態というものを念頭に置いて議論するといろいろな御議論があるのはこれまた理解はできますけれどもアメリカはわが国の非核三原則ということを十分認識した上で行動しておるわけでございます。そういった前提を置いて考えた場合に、いま御指摘のようなことが一体あり得るのかどうかということは、私ども、そういう事態を前提として議論することが果たして現実的かどうかということがなかなかわからないわけでございまして、そういう御心配は、アメリカも十分承知しているということからしてないのではないかというふうに思っております。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 つまり夏目局長がきのう発言された内容、きょう最初に述べた内容というのは、日本が事実上いわゆる核を使用する戦闘に加わるきわめて危険性がある、そういう可能性をはらむ発言である。同時にこの問題については非核三原則が事実上ないがしろにされて、有事の際には核が日本に持ち込まれる危険性をも含む発言である。実際上は、そうしたことというのは核が積載されているかいないかにかかわりなくそういう研究が常時行われている、実際にはきわめて危険なものである。前回の予算委員会で歯どめを強く求めた内容から逸脱をしておるということだけを私は指摘して、次の機会にこの問題はよくまた議論したいと思います。きょうは結構ですから。  この問題と関連して大臣に一言お尋ねをしておきたいのですけれども、いまの問題の直接的な続きではありませんけれども日本が非核三原則を堅持している、これはもう繰り返し明確にされているわけですね。つまり非核三原則を堅持しているのだから日本については寄港も通過も含めて一切核の持ち込みは認めない、こういう立場をとっていると。だとするならば、こうした日本がとっている立場というのは国際的に理解されているというふうにお考えなのか、まだ理解されるのが十分ではないというふうに考えていますか。いかがでしょうか、日本のこうした立場は。
  191. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 非核三原則なんて持っている国は世界じゅう日本だけだと思いますね。したがって、日本が非核三原則を内外に明らかにしているわけですから、これは自分の国とのことを考えますとどうだろうかと思う国もあるかと思いますが、しかし日本がそういう非核三原則というものを明快にしているということは、私はやはり各国とも大体これは認めているのじゃないかと思いますね。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 日本がそういうことを主張しているということは知っていると。しかし、そういう主張をしていることを忠実に守っているというふうに理解されているというふうにお考えでしょうか。
  193. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) それは日本国が国家の名誉にかけて言っておるわけですからそれなりに理解されていると思いますよ。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 これ非常に大切なのですがね。この間グロムイコ外相が日本に、嘉手納に核兵器があると言ったことについて直ちに中曽根総理が反論しましたね、外務大臣もそうですけれども日本 には核がない、そんなばかなことがあるかという反論をされた。この総理の発言については国際的にはどういう反響があったでしょうか。なるほど中曽根さんが言ったのは正当だと言ったのか、いや、それはおかしいじゃないかと言ったのか。その反響の状態を外務省としてはどうつかんでおられましょうか。
  195. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 国際的な反響といって具体的にその反響を私は入手しておりませんが、しかしグロムイコ発言が世界に報ぜられたし、日本の総理大臣の発言も世界に報ぜられたということであろうと思いますし、日本に、沖縄に核がないということはこれは明白なのですから、私はだんだんとこの点は国際的にも理解されていくと思います。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 中曽根総理が発言したその直後にラジオフランスは、日本には核兵器は存在しないとの日本政府の反論は、国際問題や世界の軍事事情に通じる者には矛盾に満ちた根拠を欠くものであると放送しています。またル・マタン紙は、核兵器は日本の領土内にないという東京の公式の否定にもかかわらず、こうした言明はだれをも納得させていないと書いています。ル・モンド紙は、そう言うならば、日本政府首脳はワシントンと共謀して日本国民にうそをつき続け、国民をだましてきたことになると書いています。オランダのブロンク氏は、日本はアジアにおいてアメリカの核兵器の貯蔵庫になっている、これが欧州から見た軍事的な常識である、というふうにも書いてあります。これは何も、私が挙げたのは各国の共産党の新聞じゃないのですよ。こういうことがヨーロッパの一般的な、極東の日本の非核三原則を述べておる立場に対しての理解だということについては大臣、どう考えますか。
  197. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはやはり何とかの浅知恵と言いますけれども、いまの国際常識からしてフランスなんか核を持っておるわけですから、これは力の原理からいって当然だと言って持っているわけですから、これだけの強大な日本がないはずはないというふうな感じを一部では持っているかもしれませんけれども、この崇高な非核三原則というのは日本だけのものですし、私はこれはだんだんと理解をされておると。自分の国の尺度でよその国のことを判断するというのは間違いだと思いますね。
  198. 立木洋

    ○立木洋君 この間予算委員会で私が大臣に質問したときに、まだ十分に国民にも懸念があるとするならば、その懸念を払拭するために努力するのはいかがかと言ったら中曽根総理が、それは同感でありますと、努力をしましょうと、こういうふうに答弁された。そういう国民や国際的にもまだ核が日本に持ち込まれているのじゃないかという疑惑と言うか何と言うか、私は疑惑というのは括弧をつけて言いますけれども、それをなくすために大臣、今後どういうふうに努力していきますか。
  199. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはとにかく非核三原則を守っているわけで、実際ないわけですからね。努力するもしないもこれはないということを、われわれもまた非核三原則を今後とも明らかにして、これを堅持していくという日本立場を内外により鮮明にすれば私はそれでいいのじゃないかと思いますね。
  200. 立木洋

    ○立木洋君 しかしこの非核三原則を守る、核兵器がないと一方で言いながら、一方では核兵器を積載することが可能なと言いますよね、エンタープライズの日本の寄港を認めたり、核攻撃のF16が三沢に配備されたり、それだけじゃなくて昨日の決算委員会質疑では、いま夏目局長が言ったように、アメリカの核積載がされているということが想定される場合でも共同対処や守ることがあり得ると。それからF16ですかこれについては、韓国にあるF16との共同作戦ですか、こういうことも考えられると。こういうことというのは非核三原則を守るということとまるっきり反対、逆行する。現実の態度としてはそういうことを国際的にはどんどん広げて、一方では守る守ると言いながら一方では守っていません、いませんというふうな態度を現実に示している結果になっているというふうにお考えになりませんか。
  201. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) アメリカが核を搭載することの可能な軍艦を持っておることは間違いないし、そうした船が日本にも寄港していることは事実でありますけれども、しかしアメリカは、一方においては安保条約その関連規定をきちっと守ると、事前協議体制を守るという、これは日本アメリカとのかたい約束ですから、信頼関係に基づいた条約、それに基づいた約束ですから、これは日米間の信頼関係から言えば一点の疑いの余地もない、こういうふうに判断をしているわけです。
  202. 立木洋

    ○立木洋君 これはいままでと同じようにやっぱり堂々めぐりになると思いますけれども、少なくとも非核三原則を本当に守ると言うならば、その守るということを実際の行動の上でも明確に示すべきだと。そういうふうな事態に逆行するような態度をどんどんとって、先ほどのように、核積載可能艦とも共同対処があり得るし、護衛もあり得るしというようなことがだんだん拡大されていって、事実上危険ないわゆる標的にされるということになったらこれは大変なことですからね。いわゆる国際的にも信頼されないで、核がない、ない言っているけれども、実際に核があるかもしれぬといって、実際に戦争になったときにそういう核戦争に巻き込まれるような事態になるということはまっぴらごめんですから、日本の国民は。だからこういうことがないように今後きちっとしていただかないと困ると。これは大変重大な問題ですからそのことを述べておいて、次に中米の問題をちょっとお尋ねしたいのです。  最近ニカラグアとホンジュラスとの国境を越えたいろいろな衝突の問題が報じられたり、それからエルサルバドルでの内戦の拡大あるいはグアテマラでの動向というふうな問題がいろいろ問題にされていますが、この中米の情勢を基本的に言ってどういうふうに認識されているのか、簡単で結構ですがひとつお答えいただきたいのです。
  203. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) 中米地域におきましては、エルサルバドルのゲリラ活動、ニカラグアの反政府勢力の活動、またグアテマラのゲリラ活動等、政治的に不安定な情勢が見られると考えております。そしてわが方といたしましては、かねてよりこの地方の不安定の根本的な原因は同地域に内在する経済開発のおくれとか、社会的不公平の存在にあると、このように考えております。かかる状況に加えまして、各国の利害関係が複雑に絡み合っているということが情勢を一層困難かつ不安定なものとしているというのが中米情勢の特徴であろうと、こういうふうに思います。
  204. 立木洋

    ○立木洋君 最近の報道を見てみますと、この中米地域に対するアメリカの介入というのがきわめて進展していると。いわゆる軍事予算のそういう援助がどんどん増額されるだとか、自国内でいわゆる軍人を訓練しているだとか、あるいはすでにホンジュラスですか、あの落下傘の空輸作戦が二月に演習がされたら、三月にはそれがニカラグアに事実上空輸作戦として旧ソモサ軍が降下してそこに侵攻する、つまり戦闘が開始されるというふうな事態が起こっているだとか、そういうふうなことが大変問題にされている。アメリカ国内でもそういうふうな事実に基づく指摘というのがなされているわけですが、このアメリカの介入ということについてどういうふうにお考えでしょうか。
  205. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) われわれが一番その際判断の基準になるといいますか、尺度とすべきものは、たとえばボーランド修正案というのがございまして、アメリカはニカラグアの政府をオーバースローと言っておりますが転覆させるために、あるいはニカラグアとホンジュラスの国境において軍事的な紛争を惹起するような方向で援助のために設けられた資金を使ってはいけないと、こういうボーランド修正案というのがあるわけであります。それで、最近のいろんな新聞記者会見とかその他のオケージョンにおきまして、アメリカの政府は大統領を初めといたしまして、ボーランドの修正案自体には何も違反していないと、アメリカの方は何もニカラグアの政府を転覆しようとしているわけではないし、ニカラグアとホンジュラスの戦争を惹起するような方向でのことは何もしていないと。ただ、ニカラグアがエルサルバドルにあります反政府分子というものに対して軍事援助を行っているので、それを禁止するための措置を行っているというふうに説明しております。その禁止するためにいかなる形の行動ないし措置をとったのかということに対しましては、そういうことは討議さるべきでないということでアメリカの政府の責任者は言っておりますので、われわれとしてもいかなる形での行動、措置が行われているかということは確認し得ないところでございますが、少なくともアメリカ政府の意図としては、そういうことでニカラグアからエルサルバドルのゲリラに対して行われているその軍事援助というものを禁ずるための措置であって、ニカラグア政府を転覆しようとか、あるいはニカラグアとホンジュラスの戦争を惹起するようなことをねらったものではないと、このように理解しております。
  206. 立木洋

    ○立木洋君 大臣ね、いまお聞きのように、ボーランドという下院の情報委員会委員長が修正案を出して、いわゆるニカラグアの政府を転覆するようなことをやってはならないということを去年の十二月下院で可決されているのですね。このボーランド委員長というのは、いわゆるニカラグアの事態の秘密的な内容を知り得る、報告を受ける立場の人なのですよ。ところがこの人が、最近下院で可決されたこの内容アメリカ政府は違反しているということを公然と記者に発表しましたね。それで、こういうような、それが違反するかどうか別として、ニカラグアがみずからの道を切り開いていく政府を持っているのに対して、いわゆるホンジュラス軍なんかと結託をして、あるいは旧ソモサ軍なんかを使って軍事的に政府を転覆するような行動に参加する、こういうふうなことは日本政府としても、やはりアメリカはそういうことは間違っているというふうにお考えになるのじゃないですか。アメリカのやっていることは正しいというふうにお考えなのか。
  207. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは中米の非常に複雑な情勢の中でいろいろの問題が起こっておると思いますが、日本としてはやはり地域的なイニシアチブによって問題が解決されるということを歓迎いたすわけでありますし、そうした立場に立って中米問題が和平への方向をたどっていくことを心から念願をしている、こういうことでございます。
  208. 立木洋

    ○立木洋君 その和平を念願しているというのはそれはまさに結構だと思うのですね。ただ、八一年の八月に、フランスとメキシコが話し合いで解決すべきだということを提案したときもアメリカは拒否したのですね。それから去年の九月、メキシコとベネズエラが話し合いによってこういう戦闘、武力的な行動をやめるべきだと、話し合いによって解決しなさいということを提案したときもこれまた拒否しているのですよ。最近四カ国がやっぱり話し合いで解決すべきだという問題提起をしていますね。御承知のように三月の下旬、国連の安保理でいろいろ議論されたときにそれぞれの国がアメリカの行動に対して批判的な見解を述べて、やっぱり話し合いで解決すべきだと、戦闘を直ちに中止しなさいと、こういうふうな提起をされているわけですね。だから一連のそういうことから見ますと、いまアメリカのとっている立場というのは、いろいろな国からそういう軍事的な介入、行動、干渉というのはやめるべきだということが言われて、話し合いで解決すべきであるという方向が出されてきているので、日本政府としても積極的にアメリカに対して、軍事的な行動でやるべきではなくて、話し合いで解決すべきではないかということを、いわゆる積極的な友好関係にあるわけですから、だから積極的にそういう提起をされるというお考えはありませんか。
  209. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いずれにしてもなかなか中米情勢というのは複雑であると思います。そういう中で、中米が経済的にも非常におくれておると、社会的にもいろいろと問題が生じておるとこういうことで、やはり私は民主的な自主的な政府というものが中米にできるということが一番正しいことじゃないかと、こういうふうに思います。そういう方向で日本政府としても外交的にはいろんな角度から努力はしていかなければならないと、こういうふうに思います。
  210. 立木洋

    ○立木洋君 少なくともそういうアメリカの中米での軍事的な介入に協力するというふうな姿勢ではなくて、いま述べたような話し合いによって解決するという方向で積極的に努力していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  次に、若干前回残しました協定の問題でお尋ねしたいと思うので、最初に小麦協定の問題ですが、小麦の貿易規約、これにはいわゆる経済条項がないということで、先般の同僚議員の質問に対しても、これが今日までいろいろ話し合いがなされてきているのだけれども、いわゆるそういう改正に至るまでにはなっていないという説明がありました。アメリカやカナダなどがそういうふうなことで反対をしているというふうなことが言われたのですが、簡単で結構ですが、アメリカが反対しておる理由、端的に何でしょうか。
  211. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  一番大きいのは、現状では小麦について国際的な備蓄をつくるよりも自由貿易体制を基本としたかっこうで対処していった方がいいのではないかというふうに現在のアメリカ政府が考えております。自由貿易体制を基本とした形でやっていくのが食糧の安全保障を達成する一番いい方策ではないかというふうに考えているということがございまして、そういう観点からむしろ国際備蓄よりも輸出国、輸入国の双方が適切な、自分が適当と思う在庫を持っていく、それが一番いいのではないかという考え方でございます。さらに備蓄には金が要るからそれはむしろ備蓄よりも生産の方に回した方がいいと、これが基本的な考え方でございます。
  212. 立木洋

    ○立木洋君 今度は食糧援助規約の方ですが、援助委員会でいろいろな国から要請があったような場合に、いわゆるどこの国にどれだけ援助するというふうなことが決められるのか、何かの基準に基づいて決められるのか、あるいはそういう援助の額だとか対象だとかというのはそれぞれの援助を行う国が自主的に決めるのか、その点はどうなっているのでしょう。これも簡単で結構です。
  213. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 食糧援助規約に基づきまして援助を決定するに当たりましては、食糧援助規約第三条に加盟国がのっとるべき基準を定めてございます。正確に申しますと食糧援助のための指針及び基準というものがございまして、数点ございます、簡単に申し上げます。  まず、受益国の開発目的に合致したものであること。第二点が、長期的かつ計画的に実施されるべきであること。第三点が、所得の低い食糧不足国への供与を優先すること。第四点、開発途上国、特に後進開発途上国あるいは最貧国等に対して無償で供与すべきこと。最後に開発途上の食糧生産国からの買い付けを配慮することというふうになっております。  そしてもう一点、先生お尋ねの食糧援助委員会に対して援助要請があった場合にどうなるのかということでございますが、これはむしろ委員会におきましては、その援助要請を受理することに関する規定は実はございませんで、それぞれ二国間ベースでの具体的な要請に基づいて決定をしているというのが実情と承知いたしております。
  214. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカの最近の援助している内容をこう見てみたのですが、国際機関を通じての援助ということについては、何というか余り重視してないというふうな傾向を見受けるのですが、これはどうなのでしょうか。そうなのか違うのか、それだけで結構です。
  215. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 食糧援助以外の一般的なアメリカ援助の傾向としては、そういう傾向も見られるということは言われておりますが、事食糧援助に関しましては、この食糧援助規約におき ましては、多数国間の機関を通じて行う援助とともに、二国間の援助の形式ということも認められておりますので、それら双方を考えてやっているものと了解いたしております。
  216. 立木洋

    ○立木洋君 ここ三年間の動向を見てみますと、ニカラグアに対してのアメリカ食糧援助、つまり小麦の援助というのがゼロになりましたね。それからエルサルバドルに対する援助が八〇年に比べて八一年が五倍になり、八一年に比べて八二年がさらに五倍にふえるという傾向になっていますが、これはつまりきわめて政治的な援助というふうになっているのじゃないかと見るのですが、そうかそうでないかだけで結構です。
  217. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) 先生のおっしゃったとおりニカラグアの援助は打ち切られ、エルサルバドルの援助はふえております。それでニカラグアのものを打ち切ったのはニカラグアがエルサルバドルを援助しているからだという理由であります。それからエルサルバドルをふやしておるのは、民主政体の確立を援助するからだと、こういうことになっております。
  218. 立木洋

    ○立木洋君 いま私がいろいろお尋ねしたというのは、つまりアメリカの最近のあれを見てみますと、小麦や小麦粉の援助内容というのは大体全世界で行っておる援助額の五六%をアメリカが占めておるのですね。それから小麦に関する加工品の場合ですと、大体アメリカが行っておる援助というのは世界で行っておる援助の一〇〇%を占めておる。それから粗粒穀物の場合を見てみますと、加工品も含めてアメリカが行っておる援助というのは約七〇%を占めておる。いわゆる食糧援助の中でアメリカが絶対的な多数、絶対的な比重を占めていることになっているのですね。これが全部二国間でやるのです。国際的な機関を通じてやるというのはアメリカは余り好まない。それから先ほど言った貿易規約において商品協定ができてきちっとやられるというふうなことについても好まないということは、これはアメリカが再々述べている食糧を戦略物資として使うという目途があるからであって、事実上こういうことをこういう機関を通じて行われるということがカムフラージュされているというふうに指摘せざるを得ないと思うのです。だからこの問題については、アメリカ食糧を戦略物資として事実上利用されるきわめて危険なものがあるということを、この点については指摘しておきたいと思うのです。  それから最後に、もう時間がありませんので一点だけあれしておきますけれども、二重課税の問題で事実上回避されたという場合、二重課税回避租税条約、これが実際に締結されているのが三十四カ国だと。三十四カ国であと締結されていないわけですね、ほかの国々とは。そういうような条約が結ばれていない国々との間では一体どういうふうになっているのかということを一点お尋ねしたいのと、それからもう一点は、事実上これは租税条約でいわゆる収入として税収入が事実上あるのが、二重課税回避という租税条約の結果全体的にはどれだけの減収になっているのか。その二点だけちょっと述べていただきたい。
  219. 河原康之

    説明員(河原康之君) 三十四カ国と租税条約を結んでおりますが、それ以外の国で課税された場合においても、わが国の外国税額控除制度によりまして一定の限度まで税額控除ができるということになっております。そこで、全体としての外国税額控除の額といいますのは、国税庁が最近公表しました五十六年分の「会社標本調査結果報告」というのがございまして、この中で全体の額が三千六百七十一億円ということになっております。それで、租税条約の減収額とそれからこの外国税額控除の全体の額というのは直接は結びつきませんで、租税条約においては課税権の調整ということが行われておりますから、増収になったり減収になったりする部分が出てきております。したがって、ある租税条約について減収額を積算するというのは非常にむずかしい作業で、私どもは全体の租税条約締結による減収額というものは把握しておらないわけでございます。
  220. 立木洋

    ○立木洋君 これはこの間外務省を通じて聞いた資料というのは全然違うのですか、これは。でたらめの資料を報告したのですか。そんな事前に聞いたことをいいかげんに報告されてもらったら困るのですよ。
  221. 河原康之

    説明員(河原康之君) 資料として差し上げた外国税額控除の総額といいますのは、法人が外国で税金が課せられた場合に日本の法人税から控除する額でございます。その控除する額について統計がございますのでそれを御報告を申し上げたと、こういうことでございます。
  222. 立木洋

    ○立木洋君 じゃその内容を言ってください。
  223. 河原康之

    説明員(河原康之君) そこでその内容を見てみますと、全体は三千六百七十一億円になっておりますが、これを資本金階級別に見ますと、百億円以上の法人の分というのが三千二百五十八億円ということになっておりまして、まあ大半を占めておるということでございます。
  224. 立木洋

    ○立木洋君 時間が来ましたから……。
  225. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私は安倍外務大臣にまず質問したいのですけれども、私はずいぶん長い間自民党にいたわけですね。いまでも派閥というものはありますか。
  226. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは外務大臣として答弁するのはどうかと思いますが、自民党の政治家として答弁させていただくならば、派閥はございます。
  227. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あなたは福田派ですね。
  228. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) そのとおりであります。
  229. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私は、福田さんの最近言われたことで非常に感心しておることがあるのです。それは、彼が私と同じようなことを言い出したわけなのです。それはどういうことかというと、いまの世界の軍拡傾向というものは何としても歯どめをかけなきゃいかぬと。この軍拡に歯どめをかけないと非常に危険である、いつ戦争が起こるかわからぬし、戦争は核戦争になるおそれがある。しかも、いまのように軍事費が無際限に増大していったら財政的に破綻するだけじゃなくて世界が経済的に破滅すると。何としてもこの軍拡に歯どめをかけて軍縮をしなきゃいかぬということを言われていますね。これに対してどう考えておられますか。
  230. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) もちろん私は福田元総理が発言をされておるということも承知しておりますが、福田元総理の発言は別としても、やはり軍縮というのは世界の中でどうしてもこれはもう実行しなきゃならないと。そうすれば、このままの状況で進めば一体世界がどうなるかという不安を感ぜざるを得ないわけです。
  231. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 世界にもいろんな軍縮の動きもあるし、軍縮を目指す役所、国際組織もありますしいろいろあるわけですね。アメリカにも軍縮局なんというものもありますね。日本にも軍縮課というのがある。国連でもしょっちゅう軍縮の問題をやっているわけですが、何といっても軍縮をやろうと思うと国連のそういう機能を相当充実しなきゃならぬでしょうね。  私はいつでも思うのだけれども、国連の機能というのは非常に大事で充実しなきゃならないものが多い。今度のきょう出ている法律でも国連の組織に属するものが、果たされなきゃならぬ条約もたくさんありますね。ですから国連組織というものをどうしても充実し、それこそ近ごろのはやり言葉で言えば活性化していかなきゃいかぬわけですね。ところが非常に予算が少ないと私は思っていますが、外務大臣はどういうふうに考えられますか。
  232. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 予算については日本は最も負担はしておると誇ってもいいのじゃないかと思いますが、全体的に見てやはり国連の力というのが、予算問題は別にして多少低下しているような気が私はするわけです。軍縮問題等については国連がもっと力をつけると。それにはやっぱり各国がもっと協力しなきゃならぬ面もあると思いますが、予算だけの問題ではないと思うわけですけれどもそう思います。
  233. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 国連は二年予算ですかね、二年 予算で十数億ドルですね、正確にわかりませんが、国連の全予算というものは十数億ドルで、この十数億ドルというのはトライデント型潜水艦の一隻分にも当たらぬということを言われていますが、そういう状況は世界のサミットなんかで論議して、そしてもっとふやす方向にいかなきゃしようがないでしょう。幾ら議論しても、原子力潜水艦の一隻分にも満たぬというようなお金を二年分で使っておるという話も聞いたし、予算はよくわからぬけれども大変少ないですね。これは何とかしなきゃしようがないと思いますが、外務大臣はどう考えられますか。
  234. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 国連についての負担、国連の予算の負担は日本はもう優等生中の優等生であって、むしろ諸外国がもっと協力すべきであると私はそういうふうに思いますね。そういう上でやっぱり全体的に予算を考えていくと。
  235. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 だから日本の外交も相当いろんな積極的な主張をしてもいいのだし、日本は国連に相当お金を出したって破産するわけではないし、まだいま日本の出しているお金というものはF15の大体三機分か四機分しか出してないでしょう。二億ドルちょっとでしょう。だからそんなものはもっとふやすつもりで、国連予算をふやせということも、軍縮に関連して積極的にサミットでもどの会議でもこれは主張したらどうですか。どう考えられますか。
  236. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 日本の場合は、国連の中では先ほども申し上げましたように予算については一番負担をしているわけですよね。まさに優等生中の優等生であると思うのですね。ですから、本当に国連が力をつけてくるにはやはり国連をみんなで盛り立てると。それは日本だけが幾ら盛り立てたってどうにもなるものじゃありませんので、やはり負担割りに応じたお金を国連にそれぞれの国が責任を持って出していくということが私はまず基本じゃないかと、大事なことじゃないかと思います。
  237. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あなたは軍縮をしなきゃいかぬと言っておられる。何といってもその主たる機関は国連ですから国連を強化しなきゃならぬ。国連を強化するという一般的なことに対しては、日本外務大臣日本の外交としてただ日本の国連予算のことだけ言わないで、とにかく何とかして強化したいという意思は持っておられますか。
  238. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはやはり国連の力といいますか、威信というものをもう少し高めるということについて、日本ももちろんそうですが、各国がもっと積極的に協力をすべきじゃないだろうかと。国連はやはり世界各国の加盟国によって構成されているわけですし、そうした加盟国が威信を高めるためのお互いの協力をする、その中にあって日本が国連強化のための努力を積極的に進めるということは私もこれは賛成です。
  239. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 日本はいろいろアメリカに言われて軍拡もやっていますね。軍備増強もやって、それで国民総生産の一%を超えるとか超えぬとか、こういうことを言っているわけです。そういうことは政府がやると、こう言っている。非常に具体的に言っているわけだけれども、それらよりもっとずっと安い平和を維持する機能の国連を充実するということのために外国を見渡す必要はないのじゃないか。日本がもっとしっかり先頭に立ってやるくらいの意思を持ったらどうなのですか、日本の外交というものは。
  240. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) やはり外交を進める場合においても、日本日本なりの最小限の自衛力というのは私は持たなきゃならぬと、こういうふうに思いますよ。そうしてまた現在GNPの一%というのは、世界の中の比率から言いますと日本の軍備の総生産に対する比率というのは最も低いわけですし、その余力というものは経済協力だとかあるいは国連に対する協力とか、そうした世界平和のために私はむしろ日本は積極的に協力をしておると、こう言っても過言ではないと思いますね。
  241. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 世界平和がきちっとあれば何も自衛力をふやさなくたっていいわけだし、だんだん減らしていっていいわけだ。つまり、この自衛力などを漸減していくということは自民党のやっぱり一つの方針ですよ。福田さんなんかも賛成の方針だし、前鈴木総理もそういう方針で、大体ふやすのが目的じゃなくて減らすのが目的で、減らすためには国際的な平和の環境をつくらなきゃいかぬ、こういうことです。何も軍備をふやすということは決していいことじゃないのだから。仕方がない、これは仕方がない事情の中の悪ですよ、現在においては。だからそういうことをよく認識して、そしてそういうことがなくて済むような外交的努力というのをやっぱりやらなきゃ、これは日本外務大臣としてはおかしいのじゃないの。
  242. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに日本は平和国家ですし、平和外交を積極的に進めるというのは日本の基本的な立場です。しかし、そういう中にあって自衛力については最小限のものを持つということも日本のこれは基本的な立場ですから、いまの日本の自衛力程度でもってこれで世界に脅威を与えるわけでもありませんし、隣国に脅威を与えるわけでもないし、また同時にいまの世界の現実の姿というものは、日本が裸になったからといって世界が一挙に平和になるわけじゃありませんし、残念ながら力の均衡によって東西の平和も保たれている、こういう現実の面もあるということですから、これを無視することは私はできない、こういうふうに思います。
  243. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そういうことを無視するとは言ってないのですよ。私らも適当な自衛力があった方がいいと思う。つまり護身のための短刀みたいに、人は傷つけないけれどもどうしても変なやつがやってきたらそれはやっぱりやった方がいいだろうからそれに応ずる力というものは持った方がいい。ただ、そういう護身のための短刀となるとどのくらいの長さが必要かということはこれは非常にあれなんだが、やっぱり防衛力に対するそういう具体的な検討を本当はなされていません、日本政府としては。  これも非常に問題なのだけれども、その問題はしばらくおいて、護身用の短刀を使わないでもいいような世界の状況をつくっていくというのは、これは日本の外交の任務なのだから、だから護身用の短刀のことはしばらく言わないで、その護身用の短刀を使わないでいいようなそういう国際的な条件をつくっていけると思いますね。それはあなたの派閥の親分のおっしゃることを実行していけばいいわけであって、そういうことに対してやっぱり一つの具体的な方針と熱意というものを持たぬと、これは何事も進まぬわね。短刀の寸法を伸ばす方は、あっちからこづかれ、こっちからこづかれして伸ばしていくけれども、それはそれとして、もっとそういうものが要らぬ条件をつくるということがこれは外交の主要な任務ですからね。これはしっかりやってくださいよ、本当言って。
  244. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは核にしても護身用の短刀にしても使ったらおしまいですから、使わないようにする。いわゆる抑止力といいますか、それでもっていまの平和というのは維持されているのですから、使ったらおしまいで、使わないようにしなきゃならぬし、そのために日本としても平和外交を進めなきゃならぬ、これはもう積極的にやっていかなきゃならぬ。日本がそういう面では一番世界に対して発言権を私は持っていると思います。
  245. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私は、日本がそういうことを言い得る資格というのは、一つはやっぱり第二次大戦を最後まで戦って、核戦争を経験して、そして核戦争の結果、戦闘員のみならず非戦闘員における悲惨というものはどのくらいのものであるかということはよく経験していますわね。  それから、ジョン・フォスター・ダレスが広島へ行って、原爆もいいじゃないか、ころっと一遍に全部死ねるのだからという発言をしたという話があるけれども、しかしそれはダレスさんという情報の専門家が情報を十分知らなかったことであって、本当はもう大変な苦労をして死んでいる、みんな死んだのはね。見たことありますか外務大 臣、その広島の原爆の資料館を。
  246. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) ダレスさんがそういうことを言ったというのは私も聞いておりませんが、それは真実かどうか定かでないですが、私は資料館はもちろん何回か見ております。
  247. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 これはころっと死ねるものじゃなくて、それこそ薄皮がむけちゃって非常に苦しんで死ぬ人、あるいはウジがわいてもう痛くて痛くてしようがないと訴えながら死ぬ人、それから十日過ぎになるといわゆる原爆症で、これも相当やっぱり内臓の損傷で苦しんで死ぬ人、そういう人は非常に多かったわけですよね。ですから私ども本当言うと、原爆というものは案外簡単に死ねていいじゃないかとダレスじゃないけれども思ったこともあるけれども、実際は非常にこれは苦しい死に方をする。  そういう死に方をする者が戦闘員ならいいけれども、非戦闘員、女、子供、赤ん坊、老人、これがそういう苦しい死に方をするのですから、これは日本人だけじゃなくて、人間ならばどこの国の人でもそんな苦しい死に方をさしたくないというのが私は日本人のやっぱり相当部分の真剣な考えだと思いますよ。ですから戦争に対する拒否観念というものは私は日本の国民は相当強いと思う。  この前、中曽根総理が自民党の嶋崎君ですかに対して言った言葉、なかなかいいことを言っていると私は思うね。とにかくどうもちょっと軽率だと。つまり日本の庶民の間の平和に対する望みというものはこれはもう岩盤のように強いものだということを彼は言っているわね。そのとおりだと思いますね。そういうものを背景にして平和憲法というものとそれから非核三原則がちゃんとできている。  あなたはさっき同僚議員の質問に対して非核三原則は守られているということを何度か言いました。あなた、非核三原則は本当に守られていると思いますか。
  248. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) ダレスさんの発言を何回も引用されましたけれども、私はダレスさんはそんなことを言わないと思いますね。原爆がいいんだ、ころっと死ねるからと、そんなことを言ったとは私は信じられません。  それから非核三原則の問題はこれは日本の国是で、歴代内閣がこれを言明しそれを実行して今日に至っておりますから、私は日本国外務大臣としてこれは信じておりますし、また国是としてこれを守っていかなきゃならないという確信を持っております。
  249. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あなたはダレスさんのことをばかに弁解するけれども本当に言っているんだよ、これは。そんなよけいなことを弁解する必要ないですよ、日本外務大臣が。
  250. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いや、おかしい。
  251. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 おかしくも何ともない。それはあなただって最初行ったときはそう思うかもしらぬからね。
  252. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いや、思わない。
  253. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あるいは外国人で、だれだってそれは原爆というのは、本当に簡単に死ぬのなら死にたい人間もあるかもしらぬし、ダレスがそう言ったって別に悪いことじゃないのです。しかしそれは情報が足りなかったということを言うのだ。もっと情報をちゃんと知っていればそう言うことはなかったろうということを言っている。  それで、非核三原則というものが守られていると思いますか。
  254. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはもう言うまでもありません、守られております。
  255. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あなたはダレスさんを弁解するけれども、また同時に非核三原則が守られているということをばかに熱心に弁護する。私はしかし、これは守られていないと言ったところでなかなか調べようがないのだから、守られていると私は思った方が本当はいいと思っているのですよ。それはどんな法律だって守らないやつはいるのだからね。  しかしどんなに法律を守らないやつがいても、守らないで泥棒するやつがいてもやっぱり刑法は必要なので、非核三原則は、そういう意味日本に原爆を持ってくるという犯罪を犯しちゃいかぬといういわば一つの法律のようなものだね。そういうふうに思いますか。
  256. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはむしろ法律以上のもの、非核三原則というのは国是ですから。日本はとにかくこれを守っていく、それで今後とも守り続けるということを内外に宣明しておる。まさにある意味においては悲壮な覚悟で言っているわけですよね。これは日本の国家としての世界の平和を念願している国民の願望をここに集中したものだ、象徴したものだ、ああした原爆のような惨状を二度と受けたくないというのがこれはもう日本国民すべての私は悲願だと思いますね。
  257. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 非核三原則がもし守られていなかったとしたらどうします、日本外務大臣として。責任を感じますか。
  258. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いや、とにかく守られておるのですから。非核三原則は儼乎として存在しておりますし貫かれておるわけですから、これは確信を持っております。
  259. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 その確信は非常にりっぱだと思うけれども、また確信を持っていいと思うけれども、しかし確信だけじゃ守られない場合もあるね、それは。非核三原則がそんなに民族にとって重要ならば、それが守られるためのやっぱり十分な手段、方法、保障というものも考えなきゃいかぬわね。そういうことを考えたことありますか。
  260. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはもう完全な保障があるわけですね。とにかく日本は原爆をつくるだけの力は持っていますけれどもこれは一切つくらないわけですから。非核三原則が守られないということになればアメリカの核が入るということしかないわけですからね。その日米間においてはいわゆる安保条約というのがありますし、そして核については事前協議の対象になるわけです、核の持ち込みは。その核の持ち込みに対しては日本はノーということははっきりしておるわけでありますし、アメリカもそうした日米間の事前協議あるいは安保条約、そういうものはきちっと守りますと、誠実に遵守しますと、同盟関係にあるこのアメリカが、信頼関係にあるアメリカがはっきりと約束しているわけですから、これはもう問題はない。
  261. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 数年前のライシャワー発言をどう思いますか。
  262. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはライシャワーさんがどういう立場で言われたのか私も当時のことは十分承知しておりませんけれども、しかし日本政府が当時から説明しておりますように、はっきりと明快に答えておりますように、日本としてはそうした核が入ったというようなことは一切あり得ないし、それを裏づけるようにアメリカ政府も、日米間のそうした事前協議の条項、安保条約はきちっと守っておりますということをアメリカ政府の責任において言っておるわけですから、これで十分だと私は思います。
  263. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 核が日本に入るといろんな意味で非常に危険であるとか日本の国民感情から言って許されないとか、いろんなことを根拠にしてあなたはさっきからもう絶対そういうことはないと、こう言っているのだと思います。それはそのとおりですね。しかし、ライシャワー発言のようなものもあるし、そう確信すればするほど外務大臣としては、外交当局としては、そういう非核三原則が事実上破られない努力というものをやっぱりする必要があるのじゃないですか、どうですか。
  264. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは条約を日米間で結んでおりますし、条約を守るというのはこれは条約を結んだ当事国の責任と義務ですから、そしてアメリカも誠実にこの条約を遵守しますと言っています。また日本も安保条約を遵守するという立場に立つわけでありますから、この辺についてはきわめて私は明快であるとこういうふうに思います。同時に、最近私もマンスフィールド大使に会いまして、そして日本の非核三原則の立場を明らかにいたしまして、アメリカ政府もこれに対 して、マンスフィールドさんも日本のこの安保条約並びに関連規定さらに事前協議の条項は誠実に遵守しますということを再確認しておりますから、もうそれ以上のことはないと私は思います。
  265. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私もアメリカが非核三原則を破って核が入っているという言い方は必ずしも賛成じゃないです、本当は。そうすると既成事実を言葉でつくっちゃうようなものだからね、そうでしょう。だから賛成じゃない。しかしまた、ひとつのいろいろな約束があるからそれで安心なのだというだけでもまた国民は不安心なのだから、そこはやっぱり中間に道があるのじゃないかね、実際ね。あるあるというそれも困るけれども、しかしあるかもしれないと、あっちゃ困るという対策をやっぱり政府としては考えないと。たとえばもし核が何らかの形であるとすれば、外務大臣がこういうことを言えばやはり辞職しなければならぬですよ。そのくらいのつもりで言わなければいかぬね、まじめに。いいかげんな問題じゃないのだ、日本の外交問題というのは。  その問題は一応いいですが、私はここで鈴木前首相がアメリカの軍縮会議に出られて帰られたとき質問したのです。あなたがとにかく勇気を持って憲法を守ると。——憲法を改正するという意見も自民党の中に相当にあるからね。現憲法を守る、それから非核三原則を守るということを何度も言われているけれどもあなたは鈴木内閣の都合で言うのか、つまり鈴木内閣がいろいろな攻撃を受けちゃ困るから言い逃れのための都合で言うのか、鈴木内閣が過ぎちまったら憲法擁護も非核三原則もどうでもいいのか、そういうつもりで言うのか、それとも政治家としての信念で言うのかということを鈴木さんに聞いたところが、彼はなかなかりっぱですわ、あなたが通産大臣をしていたときの総理大臣だね。政治家としての信念で守るとこういうことを言っていた。あなたは憲法を守る、非核三原則を守る、それは言葉だけじゃなくて実際に守るのか。それはあなたが中曽根内閣の外務大臣として言うのじゃなく政治家としての信念で言っているのですね。
  266. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 自民党の中に憲法調査会というのがありまして、ここで憲法問題について論議していることは事実ですし、また御承知のように、自民党は党の綱領で自主憲法の制定ということを掲げておる政党なのですね。そういう党によってこの内閣は成立しているわけですが、中曽根内閣においては現憲法は守るのだということを言っておるわけです。私もその閣僚の一人として現憲法を守るということははっきり申し上げます。
  267. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私は、あなたが閣僚としての立場から言っているのか政治家としての信念として言っているのか聞いているのですよ。
  268. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 私は閣僚として答弁しているわけですから、閣僚として守るということを申し上げるだけです。
  269. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あなたは政治家としての信念で言っているのじゃないということだね。しかし憲法問題のようなそういう重大なこと、非核三原則のような重大なことをただ閣僚として言って、政治家としての信念じゃないなんということは言えるのかね、これは。私は不思議と思うよ。
  270. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 私は内閣の閣僚としてこの場におるわけですし閣僚としての責任において発言をしているわけですから、いまの私の答弁はそのとおりで結構じゃないかと思います。
  271. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 本来なら、こういう重要問題で閣僚としては言えるけれども政治家としては言えぬなんという立場のときは、実際を言うと自民党の政治家がいまいいかげんなところだと思うけれども、それは閣僚になるべきじゃないです、実際は。閣僚になっておいて、それで君、閣僚として言っているのだ、政治家としての信念として言っているのじゃないなんということはおかしいや、政治家として。どうなのですか。あなたはわれわれから見れば若い政治家だから少ししかるみたいなことを言うけれどもおかしいですよ、それは。
  272. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) ちっともおかしくないと思いますね。私はここへ外務大臣として出席しているわけですから、中曽根内閣の閣僚としては憲法を守りますということで十分じゃないかと思います。
  273. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 もう一度言いますがね、憲法を守るとか守らぬとかという問題は非常に大きな重大な問題です、その一人の政治家にとって。非核三原則もそうですよ。そういう基本的な問題で自分の政治家としての良心から言うと反対なら私は閣僚になることがおかしいのじゃないかということを言っているのですよ。これはあなた答えなくてもいいですからね、私の意見ですから聞いておいてください。そういうへらへらした逃げ方をしちゃいけませんよ、若い政治家が。本当は幾らだって外務大臣候補者はいるのだから。とにかく自分の信念に従わない内閣ならやめたらいい。へらへらしちゃいけないね。いま日本の外交というのはへらへらした態度で通るようなときじゃないですよ。この問題はひとつ置いて。  それでは、いろいろ問題はありますけれども、最近の米中関係についてあなたはどう考えられますか。
  274. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) さっきの憲法の話ですが、私はちっともへらへらしていないですよ。私は閣僚として責任を持ってちゃんと言っているわけですから。ちっともへらへらしていない、私は堂々たる答弁であると思っております。  それから米中関係については、残念ながらいまぎくしゃくしていると言わざるを得ないと思っております。しかし、この米中がこれまで積み上げてきた一つ関係をここで一挙に崩そうというふうなそういう感じといいますか、そういう考えは両国は持ってないと。ですから今後また好転をする可能性は十分あるというふうに見ております。
  275. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 カーター政権とレーガン政権との少し違うところは、何かつまらぬことで中国を刺激しているようなところがありますね。たとえば今度の女子庭球選手の事件だとかそれから湖広鉄道の債権の裁判の問題とか、それからアジア開銀の問題とか、つまらぬところで中国を刺激しているように見える。あなた方はアメリカの政治家にもしばしば外交的な立場から会うわけですね。私はやっぱり中国と日本との関係は非常に大事であると思う。中国の動き方によっては、たとえば日本の防衛力なんということになるとまるっきり防衛力の量が、本当のつもりなら違ってきちゃう。ですから安全という上から言っても非常に大事だし、それから将来の日本の経済、生活という問題が非常に大事です。私はしばしば中国へ行きますが、確かに彼らが子々孫々友好と言っているけれどもこれはある程度まで本気で言っているのですね。ある程度までというとおかしいけど相当本気で考えている人がある。そういう中国ですから、安保条約日本は軍事同盟をアメリカと結んでいるとか結べないとか、それは細かい議論はしないけど、とにかく占領の実態をそのままずうっと受け継いでアメリカときわめて密接な関係にあることはこれは間違いない。そういう国と中国と悪くなるということは非常に困るのですから、中国をよく知っている日本人がアメリカに対して一定の忠言をするということは必要だと思うけれどもどう思いますか。
  276. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは米国とそれから中国との問題でして、中国には中国なりの主張がありますしまたアメリカにはアメリカなりのやはり主張というのがあって、そこにこうしたぎくしゃくの問題というのが起こっておると私は思うわけでありますが、先ほどから申し上げますように米中両国ともこうした問題でいままでの積み上げたものを壊してしまおうという考えは私はないと思っておりますから、いまは一時的にぎくしゃくしておりますが必ず私は好転をするものだと、こういうふうに判断しております。
  277. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 非常に楽観しておられる。私も楽観していますけれどね。ただ見ていると、どうもアメリカの方がつまらぬことで壊すようなことをやっていますよね。これはやっぱり日本としては、日米関係からいっても日中関係からいっても ちょっとまずいぞということは言ってもいいのじゃないの。そういうことは言えないのですか、日本の外交は。
  278. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 米中関係が健全に発展をするということは、これはやはり世界の平和のためにも好ましいことでありますから、そういう立場日本も米中関係の修復といいますかね、あるいは回復というものを期待し、その点については米中両国に対しても日本立場を言っておるわけです。
  279. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 最後に金大中の問題にちょっと触れますが、御承知のとおり金大中は懲役刑で刑務所にいたのですが、アメリカの力でしょう、とにかくアメリカに現在行っています。それで、私らもそのうちに彼と一度会いたいと思っているのだけれども、彼はやっぱり明らかな主権侵害事件に対する日本政府の取り扱いに不満を持っていますね。その後の、つまり金大中の釈放された後の問題に対しても不満を持っている。それで日本国民は、あの主権侵害事件というものをやはり何とかしなきゃいかぬとずっと思ってきたわけですね。それで、主権侵害のそういう国際的な犯罪を修復するというのが原状回復ということだけれども、この原状回復をしなければならぬ、原状回復のために何らかの手段を日本の政府はとらなきゃいかぬと私は思いますけれども、どう思われますか。
  280. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 金大中事件については、これは政治決着、外交決着はしておるわけなのです。問題はいま刑事事件としての捜査という段階が残っておりますが、この点については、金大中さんもアメリカで自由な身になられましたので、捜査当局としても捜査を続けたい、事情聴取等もしたいということで外務省を通じまして、いま何といってもアメリカにおられるわけですから、米国政府を通じましていろいろといま交渉しておる、こういう段階です。
  281. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 政治決着あるいは外交決着、しかし政治決着のときはまだ主権侵害というのを非常に問題にしていたのですよ、実際は。外交決着という段階になってあれは済んだというのだけれども、あれも指紋の問題が済んだので、実際に主権侵害を修復するということは私は残っていたと思いますよ、私はずっとこれは関係しているけれども。しかし、いま主権侵害を修復する原状回復というのはある意味で非常に簡単なのです、実際言いますと。それはすでに韓国から出ちゃっているから。彼がどこへでも行ける旅券、日本にも来れる旅券をもし所持していれば、私なら私が日本に招待するだけでもう原状回復ができている。それは法律的にもはっきりした原状回復であるし、それからある意味では金大中に対するやっぱり道義的負い目が日本の政府にはありますよ。とにかく連れていかれて、本来西ドイツとか何とかでやったところを見るとやっぱりちゃんと原状回復を主張して身柄を返しているのだけれども、それをしなかったから十年近く獄中にいたというそういう事実があります。そういうことに対して金大中、金大中の身内、それから韓国の中の相当な——やっぱりいまの政権、いまの体制を支持している人ばかりじゃないですからね。そういう人たちが金大中に対するそういう点からの関心と日本に対する不信というものを持っています。だから私は、もっと素直に日本に対する不信を解消するために何らかのはっきりした原状回復の手段を考えられてやったらどうかとこう思いますね。
  282. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) まず原状回復の点でございますけれども、先生御存じのとおり、これまでのわが国の捜査結果によりますと、韓国によるわが国の主権侵害の事実というものは断定するには至っていないということでございます。したがいまして、わが国の主権侵害について韓国の責任を追及するという立場にないわけでございますから、かかる責任を解除するというその解除措置の一つとしての原状回復ということを、韓国政府にわが国政府として要求する立場にないということでございまして、原状回復ということを法的な意味ではわれわれとしては要求する立場にないということでございます。  ただしこれとは別といたしまして、先生御指摘の、金大中さんがアメリカに行ったのだから日本に来てはどうかということがあるかと思います。それにつきましては、金大中さんの旅券はアメリカのみということになっておるようでございます。これは韓国政府の内部の問題でございます。金大中さんの現在の韓国における地位と申しますのは国内法上の刑の執行停止中という身分でございますし、そういう事情もありまして、どういう旅券を金大中さんに発給するかということは韓国政府内部の問題というふうに了解しております。したがいまして、さらに今後の問題といたしまして金大中さんが来日を希望するのか、韓国政府がどういう意向を持つのか、それは先方の問題というふうにわれわれは了解しております。
  283. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 時間が参りましたから一言だけ質問しますが、たとえば民間で韓国政府にいろいろ説得して、韓国政府が出しておる金大中に対する旅券をもっと日本に来られるものにするというような努力をすることはあなたどう思われますか。
  284. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 民間の御尽力と申しますか、いろいろ考えによって御活動なさるということについて、特段外務省あるいは日本政府としての見解というものは存在しないと思いますけれども、政府といたしましては先ほど申し上げましたように、韓国政府が一定の身分すなわち国内法上の刑の執行停止中の身分である金大中さんに対していかなる旅券を発給するかということは、あくまで韓国政府内部の問題であるというふうに了解しておりますので、これに対しまして特段の働きを行うということは現在のところでは考えておりません。
  285. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 とにかく金大中事件というものは主権侵害の事実がないということはこれは客観的には言えないことでしてね、実際言うと。これを言うのは日本の政府くらいなものであって、言えないですね。だから、将来朝鮮半島全体とつき合わなきゃいかぬし、それから韓国内のいわゆる民主勢力というものの中には反日感情を相当持ち、それから金大中事件に対するいろんな日本政府の措置に非常に不満を感じているそういうのもいるのですから、やっぱりこういうことはきちっと解決する方法、つまり彼らの感情の中に入っているもやもやをなくす方法を考える方が、私は日本の政治としては、日本の外交としてはどうか知らぬけれども、政治としては賢明であるということを申し上げて私の質問を打ち切ります。
  286. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で七件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  287. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  288. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  289. 増田盛

    委員長増田盛君) 多数と認めます。よって、 本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正受諾について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  290. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、領事関係に関するウィーン条約及び紛争義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  291. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  292. 増田盛

    委員長増田盛君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  293. 増田盛

    委員長増田盛君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、七件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  294. 増田盛

    委員長増田盛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  295. 増田盛

    委員長増田盛君) 千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件、以上二件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣
  296. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) ただいま議題となりました千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この議定書は、船舶による海洋汚染の防止及び規制の増進を図ることを目的として昭和五十三年二月にロンドンで作成されたものであり、いまだ効力発生に至っていない千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約を所要の修正及び追加をした上で実施することを定めております。  わが国がこの議定書締結することは、海洋環境の保全及びそのための国際協力の促進に資するものと認められます。  なお、千九百七十三年の条約附属書Iについては国際海事機関海洋環境保護委員会が同委員会の作成した改正案の実施を勧告しており、また、同条約附属書IIについては同委員会がその改正案を作成し同条約附属書Iについてと同様の勧告をすることが予定されていることにかんがみ、わが国としては、その勧告するところによりこれらの附属書を実施することとしております。  よって、ここに、この議定書を所要の留保を付して締結することについて御承認を求める次第であります。  次に、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、商船における乗組員の安全、社会保障、居住施設等に関する国際的な最低基準を定めることにより船舶の安全を確保し、乗組員の労働条件の改善を図ることを目的としており、昭和五十一年十月に国際労働機関の第六十二回総会で採択されたものであります。わが国の商船は、船員法等の関係法令によりこの条約に規定される最低基準を充足するものでありますが、世界有数の海運国であるわが国がこの条約締結することは、船舶における最低基準の実現のための国際協力に寄与する観点から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  297. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会