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1983-04-12 第98回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月三十日     辞任         補欠選任      宮澤  弘君     小林 国司君      立木  洋君     宮本 顕治君  三月三十一日     辞任         補欠選任      小林 国司君     宮澤  弘君      宮本 顕治君     立木  洋君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         増田  盛君     理 事                 安孫子藤吉君                 福田 宏一君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 小山 一平君                 田中寿美子君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        羽澄 光彦君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     松本 康子君        外務大臣官房調        査企画部長    岡崎 久彦君        外務大臣官房領        事移住部長    藤本 芳男君        農林水産省経済        局国際部国際企        画課長      野中 和雄君        農林水産省経済        局国際部貿易関        税課長      重田  勉君        食糧庁業務部輸        入課長      大神 延夫君        食糧庁業務部加        工食品課長    森元 光保君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正受諾について承認を求めるの件(内閣提出) ○領事関係に関するウィーン条約及び紛争義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正受諾について承認を求めるの件、領事関係に関するウィーン条約及び紛争義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件、以上七件を便宜一括して議題といたします。  趣旨説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 宮澤弘

    宮澤弘君 議題になっております領事関係に関するウィーン条約、この件と、それから軍縮、特に核軍縮に関する件、この二点について質疑をいたしたいと思います。  まず、領事関係に関するウィーン条約についてであります。  わが国の外国との領事関係は、二国間条約によるもの、これが現在三つの国との間で条約があるようでありますけれども、二国間条約によるもののほかは、これまで国際慣習法によって規律をされていた。ところで、いまここでこの条約締結するということでありますけれども、この条約昭和四十二年に効力を生じております。もう十五、六年たっておりますね。そこで、こんなに長い間この条約加盟をしなかったという理由をまず伺いたいと思います。
  4. 藤本芳男

    説明員藤本芳男君) 確かに御指摘のとおり十 数年経たわけでございますけれども領事関係に関します国際慣習と申しましょうか、非常に長い間、特にヨーロッパ諸国間の経験をもとにして積み上がってきたわけでございまして、そこには何十年という歴史があるわけでございます。私どもといたしましては、この国際慣習がどのぐらい定着しておるのかという点を見定めたかったということが一番基本的な考えでございまして、日本のいわば本来の意味領事関係というものが発達してまいりましたのはこの戦後であろうかと、こう思うわけでございます。そういたしますと、私ども経験は三十年と、こういうことでございます。したがいまして、わりあい流動的であった領事関係慣習というものが成文化されたわけでございますけれども、やはりこれがどのぐらい国際社会で受け入れられているかという点を見定めたいということが一番基本的にございます。  第二番目には、この二国間条約との関係という意味で、そこに決められております特権免除よりも広いものが想定されておると、この点を慎重に検討しておるということでございます。
  5. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう一点ですね、いままで国際慣習法規律をされていたわけですね。今度この条約で成文法に変わっていくわけですが、そうすると主にどういう点が変わってきますか。主な点、概略で結構ですから。
  6. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) このウィーン領事条約が、現在百三カ国の加盟国でいわば国際的に受け入れられた形になったわけでございますけれども、この条約に入りました結果、二国間条約との関係でややその特権免除で出入りが出てくるわけでございます。そういうことになりますと、二国間で条約を結んでいる国との間ではどちらかの条約を比べて広い方のを適用するという形になります。  それから、一般的な国につきましては、すでに国際慣行というものが大体このウィーン領事条約に沿ったものになってきているということもございましたので、実際上、この条約内容とそれほど差のない取り扱いをしてきておりましたので、今回の条約に入ったことによって取り扱いに大きな差が出てくるということはございません。ただ名誉領事の制度につきまして、従来わが国はこれについて特別な扱いをしていなかったわけでございますので、これはこのウィーン領事条約の中に定めております特権免除を認めるという形で今後扱っていくという点でやや差が出てくるかと思います。
  7. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に軍縮、特に核軍縮の問題について幾つか伺いたいと思います。  最近レーガン大統領が、核ミサイル迎撃防衛システムというのですか、これの研究開発に着手をするということを発表いたしました。  核ミサイル迎撃防衛システムというのが一体何なのかよくわかりませんけれども新聞等で見ますと、レーザー光線と衛星を結びつけたようなもの、こういうふうに書いてあります。システムとしては防衛戦略であるとはいうものの、こういうものを開発していく過程で軍拡がいよいよエスカレートしないか、こういう心配がありますし、何よりも宇宙まで軍拡競争に巻き込むという危険がありはしないか、こう思われるわけです。  ところで、外務大臣が今月初めにある新聞とのインタビューをしておいでになる。これを拝見いたしますと、外務大臣は、軍拡競争というのはもはや限界に来ているのじゃないか。そして、米ソ中心世界的に軍縮へ向かうタイミングに来ている。日本もその流れをとらえていかなければならない。こういうことを言っておいでになる。私も全く同感でございます。わが国世界唯一被爆国でありますし、したがって、特に核軍縮世界に訴える権利があるし、また義務もある、軍縮を先導する資格があると私は思っております。そういう立場から幾つか伺ってみたいと思います。  昨年、国連軍縮特別総会が開かれまして鈴木総理が行かれたわけでございますね。そして、鈴木総理総会演説をなさった中にこういうくだりがございます。  「国連の主宰の下における世界軍縮キャンペーンが実りあるものとなるよう我が国としても協力していく所存であります。また、私は、この特別総会機会に、原爆に関する我が国の貴重な資料国連に備え付けられ、広く世界人々の利用に供されて、新たな核軍縮努力への一助となることを希望いたします。また、国連軍縮フェローシップ計画の下で、次代を担う青年に広島長崎を訪れていただく機会が与えられるよう我が国として協力を行いたいと思います。」と、こういう演説をしておいでになります。  昨年の国連軍縮特別総会が失敗であったとか成果に乏しかったとかいろいろ議論はありますけれども、私は、昨年の総会の数少ない決定事項のうちで最も重要な事項は、いまのこの世界軍縮キャンペーンを推進するということではなかったかと思います。  そこで、鈴木総理もこういう演説をなさったわけでありますが、この演説に基づいて二つのことが決まったのであります。一つは、鈴木総理も述べておられますように、わが国の有する貴重な原爆被災資料、これを国連に備えつける、常設展示をするということが一つと、それからもう一つは、軍縮について専門的な知識を持つ人々を育成するための国連軍縮研修計画——フェローシップですか、これを継続拡大をしていって、特にこれらの参加者日本を訪問してもらう、参加者日本で受け入れる、こういうことが決まったわけであります。そこで、その二点についてまず伺いたいと思います。  まず、原爆被災資料国連常設展示についてです。これについての国連の全体計画といいますか全体予算といいますか、それと、それから各国拠出をしなければならないと思いますが、各国拠出状況。それからわが国のこれに対する予算措置。五十八年度の予算も先日国会を通過したわけであります。これについてまず伺いたいと思います。
  8. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  まず、軍縮キャンペーン関係予算についてでございます。昨年の第三十七回国連総会におきまして国連事務総長が報告を提出いたしました。その中で、一九八三年度の活動計画を実施するための予算といたしまして七十六万ドル、これを計上いたしております。この経費につきましては、加盟国、非政府団体個人等任意拠出及び国連通常予算によって賄うと、こういうことになっております。ただいままでのところ、このキャンペーンに対しまして幾つかの国から拠出が成約されております。その合計は米ドルに換算いたしまして約二百八十万ドルということになっております。わが国につきましてはこのキャンペーンに対しまして千二百三十五万円、約五万米ドル拠出することといたしまして、先日国会の御承認を得たところでございます。できるだけ早い機会わが国もこのキャンペーンに対して成約をいたしたい、かように考えております。  次に、お尋ねのございました原爆資料国連での備えつけの点でございます。この点につきましては、先ほど委員から御例示がございましたように、わが国鈴木総理の御発言に従いまして、その後国連事務局及び広島長崎両市連絡をとりながらその実現のために努力いたしております。具体的には展示資料目録、これを広島長崎の両市より入手いたしまして国連事務局に送付するなど、展示資料内容展示の場所、展示方法等の細目をただいまのところ固めているところでございます。
  9. 宮澤弘

    宮澤弘君 その常設展示の施設というのはいつごろオープンになる見込みですか。
  10. 門田省三

    政府委員門田省三君) ことしの秋ごろ展示を了して一般に公開されるようにということで努力いたしております。
  11. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に、軍縮フェローシップ計画参加者日本訪問の問題ですけれども、どういう人たちが何人ぐらい、いつごろ日本に来るのか。そして、また日本での滞在日程、大体のスケジュール等がおわかりでしたら教えていただきたいと思い ます。
  12. 門田省三

    政府委員門田省三君) 軍縮フェローシップは、第一回の軍縮特別総会の後に設立されました国連計画でございます。これには各国、なかんずく開発途上国からの将来なすところの大きい有為な人材、これを参加させるということでございまして、ただいままでのところ、毎年約二十名がこの計画に参加いたしております。御指摘がございましたように、昨年の軍縮特総におきまして、わが国はこのフェローシップ計画一環として、日本にも訪れていただくということを申しております。その結果、ことしからは二十名が二十五名ぐらいに増員になるというように私ども承知いたしております。  この計画は、六月末からまずジュネーブ軍縮委員会国際原子力機関IAEA等において順次研修を行いまして、その後九月後半に、一週間程度本邦を訪問するというふうに、ただいまのところ国連当局では計画をいたしている趣でございます。わが国での訪問研修を終えた後国連本部に参りまして、十一月末まで研修継続するということになっております。  わが国におきます計画の詳細につきましては、広島長崎の御当局を初め、国連事務局関係者との間で調整をいたしておるというところでございます。  なお、この参加者開発途上国からが多いということを申し述べましたが、従来の参加者状況を見ますと、約七割から八割が開発途上国からの参加者となっているということを申し添えます。
  13. 宮澤弘

    宮澤弘君 九月ですか、日本に来るといういまお話でしたが。そこで、広島長崎のむろん現地に行くと思いますけれども、その際に、いろいろ展示場資料を参観するということがありましょうが、私は、原爆被爆者と懇談をする機会をぜひ設定をされたいと思いますが、いかがでしょうか。
  14. 門田省三

    政府委員門田省三君) まことに貴重な御意見だと思います。現に、先ほど申しましたような広島長崎両市当局及び国連事務局との話し合いにおきましても、この点を実現するようにということで話が進められているように承っております。
  15. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう一つ予算措置をしておられると思いますが、ことしの予算はどのくらいですかということと、私は、これ、非常にいいことだと思いますので、来年度以降もぜひ継続をしていただきたい。その辺のお考えを伺いたい。
  16. 門田省三

    政府委員門田省三君) 本年度の本計画参加者本邦滞在に係る経費といたしまして、七百五十五万九千円計上いたしまして先日国会の御承認を得たところでございます。なおまた、せっかくの有意義な企画であるので、今後とも継続すべきではないかという御意見につきましては、私どももこの計画の意義が非常に大きいことを十分承知いたしております。関係の向き、特に国連事務局あるいはまた広島長崎の御当局とも十分御連絡、御協議いたしまして、その可能性について検討してまいりたいと、かように考えております。
  17. 宮澤弘

    宮澤弘君 大臣、いま政府委員との問答をお聞きいただいたと思いますが、核軍縮については、われわれの被爆の体験を通じて世界に訴えるということが私は最も有効だと思います。  先月末に、佐世保にエンタープライズが入港いたしましたときに、私はある新聞を見ておりましたらば、エンタープライズ乗組員が、長崎原爆資料展示場へ数百人行っているのですね。だれがこういう企画をしたか知りませんけれども、この企画自身大変サゼスティブ企画だと私は思います。  そこで、資料展示でありますとかフェローシップ参加者日本招致というのは大変じみなことではありますけれども、そういうじみなことの積み上げの上に世界核兵器廃絶の世論が高まっていくのだと私は思います。  そこで伺いますのは、ただいまお聞きのように、ことしから初めて日本フェローシップ人たちが来るわけですが、それを来年度以降も継続するということも含めまして、わが国がさらに核軍縮キャンペーンに積極的な役割りを営むべきだと思いますけれども、その辺についての所信を承りたいと思います。
  18. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにいまお話しのように、わが国世界唯一被爆国でありますし、原爆惨禍というものを、わが国民だけでなくて世界各国国民各層がこれを知るということが、これからの核軍縮を進める上において、また世界の平和を実現していく上において非常に重要であると思います。  確かに核は、一方において抑止力の面を持つわけでありますが、反面、核によるところの惨禍がいかに惨たんたるものであるかということが、これからの軍縮を実行する場合の決め手であろうと、こういうふうに思います。いま政府が行っております、また鈴木総理提案等中心にして、国連でも実行の計画が進められておるあらゆる施策につきましては、これを継続的にやるということがきわめて大事じゃないかと。ただ瞬間的にやるということじゃなくて、これは継続的にやるということがきわめて大事であろうと思います。政府としましても、この核軍縮は、日本が積極的にこれに取り組んでいくという姿勢世界に示すためにも、日本日本なりのやはり立場努力を重ねてまいりたいと、こういうふうに思います。
  19. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に、核軍縮、なかんずくいま問題になっておりますヨーロッパにおきます中距離核戦力削減交渉、これに関連をして二つ三つ伺いたいと思います。  核戦力制限交渉というのは、これまで日本はいわば他人事のように思っておりましたけれどもSS20の極東移転の問題が起こりましてからこれはどうも他人事ではない、みずからの問題であるというふうに国民一般も受け取ってきていると思います。そして政府は、基本的にはゼロオプション政策を支持しておいでになります。またレーガン大統領暫定案についても、総理外務大臣も高い評価を与えておいでになる。これはアジア立場を踏まえて、極東も含めたグローバルな観点立場INF制限交渉が行われるべきである、こういうお考え方が基本にあるわけでありますし、それは私は全く正しいと思います。しかし、幾らグローバル観点と申しましても、現在現実に行われておりますのは、ヨーロッパでの交渉だと思います。  現に、イギリスやアメリカ核ミサイル交渉の対象に入れるとか入れないとかいうようなことでもそれはあらわれておりますし、またアジア犠牲になるとか、アジアしわ寄せをされる——犠牲とかしわ寄せとかいう言葉は、結局、この交渉欧州が主でアジアというのは従であるという感が否めないと思います。ヨーロッパ自身もこれは自分の身、わが身が一番かわいいわけでありますから、どうしても自分自身を第一に考える、これはもうやむを得ないことだと思います。それから過日のグロムイコ発言でも、ソ連極東にある核戦力というのは西欧とは何ら関係がないのだと、こういう発言をいたしております。  言うまでもなくわが国アメリカの核の傘のもとにありますと同時に、非核三原則が国是だというデリケートな立場にありますし、また核保有国ではありませんから、大臣インタビューで言っておられますけれどもソ連に対して取引材料というものを持っていない。それはそのとおりでございますが、しかし、欧州だけの解決が急がれて、アジアが抜け落ちる危険というか、可能性があるのではないか。それからさらに進んで、欧州から極東SS20を持ってくるのが、これはもう反対だというばかりでなくて、極東におけるSS20、現に百八基でありますか、ある。これを削減すべきであるという要請もあるわけでありますので、そういうことから、アジア太平洋地域においても主体的に、つまりヨーロッパの反射的な効果でなくして、主体的にINF制限交渉が行われるべきではないかという議論が出ておりますですね。  そこで、それについて二、三承りたいと思いますが、きょうから日ソ事務レベル協議が行われるわけでありますけれども、その席で、このINF制限交渉に関してソ連側にどういう態度で臨み、どういう主張をなさるのであるか、まずそれから承りたいと思います。
  20. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 具体的にはまた局長から申し上げますが、ソ連からカーピッツァ次官が来ておりまして、日本外務省との間に高級事務レベル会談が実施されるわけでございます。私たちは、ちょうどいい機会でございますので、ソ連カーピッツァ次官を初めとする当局に対しまして、INF交渉に臨むに当たりましてのソビエトの方針とともに、わが国のこれに対する基本的な姿勢というものを明確に主張いたしまして、これはINF交渉米ソで管理が行われるわけでございますから、ソ連のこれに臨む姿勢というものに対して、場合によっては反省も求めなきゃならぬと思います。  また、日本に対する考え方等につきましても、これまでグロムイコ外務大臣は、このINF交渉についての、日本に関連していろいろと申し述べております。あるときは極東に配備し、あるいはまた極東に増強するかもしれないSS20は日本目標にするものではないと言い、またあるときは日本において、特に沖縄に巨大な核基地等がある、日本の周辺も核に満ちておる、そうしたソ連に対する包囲態勢をとっておる、それは日本がその一環を占めておる、そういうことでソ連としてもSS20を場合によっては増強してこれに対抗しなきゃならぬと。あるときは日本目標にし、あるときは日本目標でないと。こういうふうな発言もありますので、そうしたソ連の真意というものは一体どこにあるのか、そういうこともやはりはっきりとこの機会に論議をしなきゃならぬと思うわけでございますし、今後日本としてはあくまでもやはりグローバルな立場でこのINF交渉というのは進められるべきだと私は思うわけでございます。  そういう意味に立って、私たちアメリカのゼロオプション、同時にまた暫定提案というものを支持いたしておるわけであります。もちろんこのINF交渉について、ヨーロッパ自体が中距離核をこの秋以降配備するという立場において、最も大きなウエートを占めておることは事実でありますけれども、しかし、やはりグローバルな立場を無視して本当の意味での軍縮といいますか、核軍縮というのは、私は実効性は伴わないと、こういうふうに思っておりますし、特にヨーロッパだけが重視をされて、そしてその結果として極東がいわば犠牲になるというふうなことでは、これは日本立場からしても非常に納得できないことでありますから、今回の会談はまことにいい機会でありますから、そうした点を徹底的に論議してみなきゃならないと、こういうふうに思っております。  私は、あしたもまたカーピッツァ次官とも会うわけでございますが、私自身も、そうした日本の基本的な姿勢あるいはINF交渉に臨むソ連姿勢等につきましての話し合いを進めてみたいと思っております。
  21. 宮澤弘

    宮澤弘君 ソ連極東にあるSS20の撤廃というか、これをお求めになりますか。
  22. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは筋からいけば、いまヨーロッパにあるところのソ連SS20が削減をされるということになるならば、いま極東に現存するソ連SS20というものも同時に当然これは削減をされるべきものであろうと、こういうふうに私は考えております。したがってそういう立場で、ヨーロッパに参りますときもあるいはアメリカに対しましても、私は実はこの日本考え方をはっきりと申しておるわけでございます。
  23. 宮澤弘

    宮澤弘君 そういたしますと、もう一度くどいようでございますが、現にあるSS20の撤廃ということも頭に置いて話し合いをなさる、こういうことですか。
  24. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本立場としては、あくまでもゼロオプションというのが、これがまさに理想的な姿である。要するにSS20を初め、中距離核というものが全廃をされるということが、これが最もわれわれが希望するところでございますから、ヨーロッパにあるもの、あるいは極東にあるものを含めたゼロオプションの主張を、われわれは最終目標としてこれを強く訴えなければならないと、こういうふうに思います。しかし、現実的な問題としては、いまアメリカの中間提案というものが出ておりまして、暫定的なそうした提案に対してソ連は拒否しておりますが、これからこれに対してどういう姿勢で臨んでくるかということも、私たちとしては非常に重大な関心を持っているし、そういう中で日本立場だけははっきりしておかなきゃならぬと思います。
  25. 宮澤弘

    宮澤弘君 いろいろまだ伺いたいのですが、時間がなくなりましたので、最後に大臣一つ伺います。  結局、大臣も言われたように日本取引材料を持っていない。アジア太平洋地域における核戦力の削減、撤廃というような問題も結局は米ソ両大国の動向にかかっていると思います。そこで米ソ両国間で、アジア太平洋地域における中距離核戦力制限交渉が行われるように、日本が積極的に働きかけるべきではないか、日本が積極的な役割りを果たすべきではないかという議論がございますけれども、これについて大臣はどう思われるかということを伺いたいと思います。  時間がございませんのでもう一言だけ加えますと、実は、さっき申しました大臣新聞社とのインタビューの中でも、大臣は大変微妙な発言をしておいでになります。それは、日本核軍縮への提案を出すべき時期とは考えないかと、こういう質問に対して、世界的な状況を見れば日本が独自の動きをとれる可能性はあるし、一つ役割りを果たすべき時期かもしれない。まだ、それがどういうもので、何をとまで言えないがと、大変微妙な発言をしておいでになりますが、私が伺いたいのは、そういう米ソ両国が積極的にアジア太平洋地域中距離核戦力制限交渉を行う、そのために両国に日本が積極的に働きかける、こういうことについて大臣はどうお考えになるか。
  26. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本は、真に核が全廃されるということを、実効的に全廃されるということを心から念願いたしておりますし、そういう一つの段階としての特に最近のINF交渉が、何らかの形でまず成功するということをわれわれとしては非常に期待もしておるわけです。  ただ問題は、INF交渉というものが米ソのみによって行われるということで、これは確かに日本から見ましても、米ソ両国に対しては積極的に働きかけはしておりますが、みずからの何かイニシアチブがとれないという意味でのまどろっこしさというものはあります。これは日本だけじゃなくて、恐らくヨーロッパ諸国もそういう面については同じような考え方を持っておるのじゃないだろうか。  特に、ヨーロッパの諸国は、自分の国にパーシングIIであるとか巡航ミサイルそのものを配備するわけでございますから、やはりヨーロッパ諸国も、直接には参加できないという意味での同じようなまどろっこしさというものを持っておるのではないかとこう思うわけです。しかし現実的には、これはやはり米ソ両国によりましてこれまでの核の交渉というものは進めてこられたわけでありまして、INF交渉も、これによって具体的な実効ある措置を講じようということでございますから、いまの状況から見ますと、国際的な現実の姿から見ますと、やはり実効的な面を確保するといいますか、実効性あるものとするためには、やはり米ソ両国のINF交渉にまずゆだねるということしかいまのところは道はないのじゃないかと思うわけでございます。  しかしこれはやはり世界の情勢、特にヨーロッパ状況、あるいはまたこれからアジアにおけるいろいろな諸情勢を踏まえての日本の今後の考え方等も、これからの情勢判断等も見ながら、何らか役割りがあれば探求をしてみなきゃならぬと思 うわけです。現実の面においては、INF交渉米ソ両国によって行われるし、実効性はその米ソ両国によってのみしか求められないという現実の姿をわれわれは無視して、ただ何といいますか、日本だけあるいはヨーロッパだけが一方的な何か考え方を打ち上げたとしても、それがそのまま結びつくものではない。やはり客観情勢の変化というものもとらえながら、場合によってはそういう面に入っていく余地があるかどうか、われわれとしてはこれは見詰めていく必要があるのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  27. 宮澤弘

    宮澤弘君 終わります。
  28. 松前達郎

    ○松前達郎君 ただいま宮澤委員からいろいろと軍縮問題等を含めて質問があったわけでありますが、私もそれと関連して、これから二、三のことについてお伺いをいたしたいと思うのです。  まず最初は、対ソビエト外交の問題ですが、これは最近の傾向から見ると、だんだんとどうも突っ張り合いが激しくなるような傾向も持っているような気もするわけです。やはり、外交というものについて相当真剣に取り組んでいきませんと将来後悔をすることになりはしないか、こういう感じも持っておるわけであります。  そこで、まず最初に大臣にお伺いしたいのですが、グロムイコ第一副首相・外務大臣でありますけれども、沖縄に核があるという発言をされておるわけですね。沖縄の核基地発言についてわが国としてどういうふうな見解をお持ちなのか。非核三原則ということから核はないということで一貫しておるのか。それとも何か、ほかに核がないという証拠といいますか、そういうもので反論をされるのか、その辺ひとつ最初にお伺いしておきたいと思います。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 沖縄に核基地がないということは、これは名実ともに明白であると思うわけでありまして、御承知のように、沖縄の返還交渉に当たりまして、核つきか核抜きかということで政府の部内においても議論があったことは事実でありますが、結論的には、佐藤・ニクソン会談によりまして核抜き返還ということが決まったことは御承知のとおりでございます。同時にまた、非核三原則というのは日本が遵守をしている、そしてアメリカ政府も、安保条約、さらにその関連規定あるいは事前協議条項、これは誠実に遵守をするということをしばしば政府に対しても確認をいたしておるわけでございますから、ソ連グロムイコ外務大臣のそうした発言というものは全く事実にもとるものであると言わざるを得ないわけでございまして、私は、むしろこれは荒唐無稽なことではないかということを言っているわけでございます。  そうした日本立場というものは、早速私も在ソの高島大使に訓令を出しまして、高島大使がチーホノフ首相に面会した際に、この日本の非核三原則の立場、沖縄には核はあり得ないことであるということは明確にこれを申しておりまして、ソ連の訂正を実は求めておるわけでございます。
  30. 松前達郎

    ○松前達郎君 先ほどもお話がございましたけれどもソ連側のいろいろな責任ある立場の人の発言の中に、日本に対する核の問題でニュアンスが違うわけですね。いろいろと取り上げ方というか発言内容が異なっているのが最近目立っておるわけですね。ですからどうもこういうことを全体的に見ますと、日本に対する理解というものが、特にいまの核発言等も含めて十分じゃないような気がしてならないわけですね。これもやはり、いままで外交上お互いに隔絶されたような形をとってきている、その中でなかなかコミュニケーションができないという面もあるのじゃないかと思いますけれども、この際、その点をひとつ日本側としてはっきりさしておく必要もあるのじゃないかと。  ですから、何といいますか、相互情報交流といいますか相互理解といいますか、そういうふうな面でもうちょっと外務省の方からも努力をしていただかないと、これは発言内容がそれぞれ違っているということから見て明らかですから、その点ひとつ今後努力をしていただきたいと思うわけなのです。非核三原則、核を持ち込ませないとかあるいは核兵器を持たないのだと。こういう非核国であるということについてそれを保証するものが、どうもはっきりしたものがないということから、恐らくソ連側は核を保有しているのではないかという疑義を持っているのじゃないか。あるいは外交上の発言かもしれません。  そういうこともあるわけでして、たとえばエンタープライズが佐世保に寄港する、こうなると母港化されるのじゃないかという疑義もあるし、あるいはこの前も申し上げましたように、ニュージャージーが入港してくるとなれば、やはりこれも核搭載可能であるということ、また、F16などの問題も、これは核を積載して爆撃行動に出られる能力を持つ飛行機ですから、当然積もうと思えばできるわけですね。そういう点を、どうもソビエト側がやはり突いているのじゃないかと私は思うのですね。ですからはっきり言えば、核の積載が比較的容易にできるということから見て、日本がその核攻撃基地能力を持ったというふうにソビエト側は解釈しているのじゃないか。核はないにしても、そういう能力がいつでも持てるということで非常に警戒をしているのじゃないか、そういうふうに私は思うので、その辺にどうもずれがあるというふうな感じがするのですが、その点はいかがでしょうか。
  31. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、ソ連日本のことは知り過ぎるぐらいに知っているのじゃないかと思うわけなのです。知っている上でああしたグロムイコ発言ということになっておるのだろうと思います。いまちょっとおっしゃいましたけれども、きわめて外交的な発言という面が相当強い。外交的といいますか、政略的といいますか、そういう発言が強いのじゃないかと。先ほど申し上げましたように、沖縄に巨大な核があるなんというようなことは、これは全く荒唐無稽のことであることは、ソ連自身もよく知っておると私は思うわけでございます。  また、日本のこれまでとってきた防衛政策、これからとろうとしておる防衛政策の基本というものがどういうものであるかと。日本は専守防衛でありますし、あるいは非核三原則を遵守しておるということ、そして攻撃的な兵器は、これは爆撃機にいたしましてもあるいは航空母艦にしても、戦艦にしても、そうした攻撃的兵器というものは持たないということも十分承知して私は言っているのじゃないかと思うわけでございますが、ちょうどいま次官同士の会談等も行われておるわけでございますから、その機会にわれわれとしても詳細に日本立場というものをソ連側に言って、ソ連側のそうした宣伝的な発言というものをやはり改めてもらわなければならないと、こういうふうに思うわけであります。
  32. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、先ほどからお話が出ておりますカーピッツァ外務次官が来ていろいろと協議をするということになって、あしたまでですか、協議が行われるわけなのですが、もうすでにその協議の前に大分大議論があったというふうなことが報道されておるわけですね。  それを拝見しますと、SS20というものが直接日本に向けられたものではないという、そういう発言があったようですね。それからさらに、日本が米国の対ソ戦略に加担するのでないならば日本には今後脅威を与えることはないという発言もあったようですし、またさらに、これはもう何回も前から出ている話ですが、核不使用協定というものを結ぼうではないかという、そういう発言もあったようでありますが、これはその辺を十分見てみますと、やはり日本自身はあるいは核は持っていないかもしれない、非核三原則でがっちりそれを日米間で守っているかもしれないけれども、しかし日本の中にある基地に存在する何といいますか、軍事力ですね、米側の軍事力というのは、これは核搭載可能であるということですから、恐らく私は、これは一日あればできてしまう話だと思います、核をもって攻撃することは。そういう点がどうもソビエト側に非常に脅威に受けとめられているのじゃないか。  その辺を少しわれわれとしても考えていきませんと、ただ日本が非核三原則だからというだけで、向こう側がそのとおりだということでさっと引っ込むとは私は思わないわけでございます。ですから、外務省の見方は報道されておりますが、SS20が日本向けになっていない、あるいはこれは米軍向けであるということであるとすれば、これが日米の分断をねらっているのだと。さらに核不使用については核保有国の責任であって、非核三原則を持つ日本の三原則遵守ということの条件となるものではないと、こういうふうな発言をされたというふうに報道をされておるわけなのですが、その一連の話し合いの中でのいわゆる安保条約に関連した部分ですね、これについてはどういうふうにお考えでしょうか。今後の折衝があると思いますので。
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) きょうから本格的に始まるわけですが、昨日は松永次官とカーピッツァ次官との間の会談も行われたわけでございます。その際の詳細を私は聞いておりませんが、いまおっしゃいますように、ソ連側から、この極東におけるソ連の核は日本に向けたものではないということの説明があったようであります。日本からは、グロムイコ発言日本に向いておるとかあるいは日本に向けられてないとかいろいろと発言が食い違っておるという点をただしたのに対して、カーピッツァ次官からは終始一貫して日本に向けられたものではないという発言があったようであります。  同時にまたいまおっしゃいましたように、日本が非核三原則を守るならば、ソ連は核の先制攻撃というものはしないということも発言があったようでございますが、これに対しては日本からはそれはおかしいじゃないかと、とにかく核保有国というのは先制攻撃をしないというのがやはり大原則であるし、そういう約束であるし、また、国連憲章の定めでもあるわけであります。非核三原則があるとかないとか、これを守れば先制攻撃をしないというふうなことは全く核保有国としての事理にたがったものだという、日本からも説明をしたそうですが、ソ連側はとにかくいずれにしても核の先制攻撃はしないということを言っておるのでございまして、これは同時にまた、アメリカとしても国連憲章を守る立場において、アメリカもしばしば核の先制攻撃はしない、こういうことを言っておるわけでございますから、そういう意味においてソ連が核の先制攻撃をしないということを明確に述べるということは、それなりにやはり極東の安定といいますか、平和のためには意味のあることではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  そういう状況の中にあって、きょうからいわゆる安保条約との関連の問題であるとか、あるいはまた米ソ極東における軍事力の問題であるとか、そういう点が論議されるのであろうと思いますが、日本としては先ほどから申し上げましたような日本のいわゆる外交政策、あるいはまた日本の防衛政策の基本、そしてまた安保条約の趣旨というものを明確にソ連側に説明をして、そして日ソ間の対立がいたずらに際立ってくる、こういうことのないように——隔たりは日ソ間にはずいぶんあるわけです。領土問題とか、あるいはまた世界情勢におけるポーランド問題あるいはアフガニスタン問題等、カンボジア問題等いろいろと米ソ間には基本的な隔たりはあるわけですが、こうした核の問題について、米ソだけじゃなくて、日ソ間がいたずらに神経質になって、そして特に対立関係が激化しないように、われわれとしては今回の会談を何とか意義のあるものに持っていかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  34. 松前達郎

    ○松前達郎君 せっかくの機会ですから、相互の理解の中で非常に誤解があるとすればそれは解いておく必要があると思うのですが、ソビエト側の考え方というものもやはりわれわれとして十分見ながら交渉していただきたいと思うので、たとえば先ほど大臣のお話にありました松永次官の会談の模様が新聞に出ておりましたけれども日本が国際紛争解決のための武力行使は憲法で禁止されている、これは当然な話、放棄をしているということですね。そしてさらに日本には一隻の空母も攻撃用爆撃機もないということなのですが、確かに日本としては持っていないかもしれませんが、だから誤解をやめてくれということをおっしゃった、発言されたということが報道されていますが、恐らくソビエト側にしますと、これは中曽根さんが、日本は不沈空母だと言っているわけですから、一隻もないと言ったってやはり基地を提供するということから言えばあるのと同然である、近代戦についてはそういうことで解釈していいのだと思うのですね。ですから、そういう意味でとっているのじゃないか。  たとえばさっき申し上げた三沢へのF16の配備の問題等も含めて、日本自身は持っていないかもしれないけれども日本が安保条約に基づいてアメリカ核戦力の基地となるという、そういうことについての危惧を持っているのだというふうに、私はソビエトがそういうふうに解釈しているのだと思うのです。ですから、不沈空母の言葉とか日米運命共同体ということまでもうすでに総理は言われているわけですから、そういう面でソビエト側としての解釈が、いまおっしゃったような日本側の解釈と違うのじゃないか、こういうふうに思うのですね。その辺が結局最終的な問題になるのじゃないかと思うのです。ですから、そういう点も十分話をしていただいて、この際はっきりした結論が出せれば出すように御努力をいただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  35. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本としても、日本の防衛という立場から安保条約の問題にも当然触れなきゃならない。安保条約はあくまでも日本の平和と安全を守るための条約でありまして、日本が攻撃を受けたときはアメリカがこれを支援するということが条約によって取り決められておるわけでございます。しかしあくまでも日本立場は、国際紛争は武力によって解決しないという立場でありますし、日本から他国に対して攻撃を行うということは憲法の条章等によってもはっきりこれは否定をいたしておる。同時にまた非核三原則、これは日米安保条約はありながら、われわれは、敗戦以来の今日までの日本の憲法を初めとするあらゆる政策の政治の基本として今後とも守り続けていくわけでございまして、これは日米間においても了解事項になっておるわけでございまして、ある外務大臣はかつて、非核三原則をまくらに討ち死にする、こういうことを言ったこともあるわけでございますが、日本としてはそのぐらいの覚悟で非核三原則というものを守っておるし、今後も守り続けていく。  こういう日本の平和国家としての今日まで進んできた道、今後とも進んでいく道を、私はソ連に対しては明確にこれを訴えて、そしてソ連側日本に対するいたずらなああした攻撃的な発言であるとか、そうした措置はやはり反省をし、これは改めてもらわなきゃならない。そうすることがこれからの日ソ間の真の友好関係を築いていく一つの礎にもつながっていくものである、私はそういうふうに考えておるわけであります。
  36. 松前達郎

    ○松前達郎君 それじゃいまの問題に関連してあと二つほどお伺いしておきたいのですが、これも新聞報道ですが、ソ連のアンドロポフ書記長が、一月ですが、西独社民党のフォーゲル氏と会談したときに、中距離核ミサイルSS20の極東への移転問題について言及をして、日本、中国といずれ話し合っていくのだという発言があったというふうな報道があるのですが、これは外務省の方でその情報は流されたのだと思うのですけれども、もしかこうだとすれば、話し合いが向こう側から言ってきた、あるいはこっちから話し合いの通報をする、——今回のいま行われようとしておる会談も恐らくそれに関連してくると思うので、これはどういうふうに取り扱っていかれるのか、この問題について。SS20の配備についての今後の日本、中国とソ連と話し合おうという発言があったことについてどういうふうに評価され、また、どういうふうに対応されるか。
  37. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほども答弁をいたしましたが、INF交渉は御承知のように米ソ間のみによって行われるわけでありますが、しかし、これの及ぼすところの影響というものは、単に米ソのみならずヨーロッパにおきましてもあるいはアジアについても非常に重要な影響を持つわけでございます。したがって、これは日本のみの問題ではありませんし、極東の国々の問題でもあります。そういう意味において日本としても、そうしたソ連の態度に対して極東の諸外国がどういうふうな反応を示しておるかと、あるいはどういう考えを持っているかということは知らなきゃなりませんし、また同時に、極東に対するいわば脅威につながっていくわけでございますから、これに対して場合によってはある意味において共同の主張をする必要もある、こういうふうな考えであります。  先般、二階堂特使が中国を訪問いたしました際も、このソ連SS20の極東配備につきましても意見の交換をいたしました。中国もやはり日本と同じような立場をとっておるわけでございますが、日本といたしましては、いま直ちに極東の諸外国と語り合ってどうするということではございませんが、日本と非常に深い関係にあるところのアメリカに対しまして、このINF交渉に対する日本の主張というものをアメリカを通じてINF交渉に反映してもらうように努力をいま続けておりますし、またアメリカからも、日本に対する詳細な打ち合わせ等が来ておることもこれは事実でございます。同時に、ソ連に対して日本が主張を続けてきておりますことは、これはまあ御案内のとおりでございます。
  38. 松前達郎

    ○松前達郎君 アジアにおける中距離核ミサイルの問題というのが、最近特別な問題として先ほどのお話のようにクローズアップされてきているわけですが、そうなりますと、日本だけじゃなくてやはり中国も意見があるだろうと思いますし、中国の今後の外交における役割りというのもこれも大きな役割りになってくるのじゃないかと思うのですね。ですから、いま大臣がおっしゃいましたけれども、中国とのいろいろ話し合いというものも進めていただく中で、アジア全体から核をどういうふうにしてどけていくかという問題、これについてひとつ取り組んでいく方がいいのじゃないかと私は思っておるわけなのです。  そこで、ソビエト側が再三申し入れというか提案をしてきている核不使用協定、これはまた今回も提案があったというふうに言われているわけなのですが、この内容は一体どういうものなのですか。これ、ちょっと御存じだったら説明していただきたいのですが。
  39. 田中義具

    政府委員田中義具君) 核不使用協定については、今回カーピッツァ次官が訪日した際に何か発言があったということではございませんが、ことしの初め、プラハでワルシャワ条約機構の首脳会議が開かれたときに、東側の方から、NATOとワルシャワ条約の間の武力不行使協定を結びたいというような提案が行われて、それについていろいろ東側が働きかけをしているということはございます。
  40. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、ソ連がいまわが国に対して核不使用協定を提案しているというその内容は、日ソ間の問題として受けとめているのですか。それとも全般的な問題として不使用協定というものを外務省として解釈されているのか、これ、恐らくただ不使用協定を提案したと思うのですよね。今後もすると思います。そうなると、内容がなくてただ不使用協定といってもさっぱり何かわからないわけなので、その辺をどういうふうに理解されているか、内容についてですね。それをちょっとお聞かせいただければと思います。
  41. 田中義具

    政府委員田中義具君) ソ連側は、一連の軍縮提案の一環として武力不行使協定を結びたいということは、これはもうかねてから言っていたことでございまして、具体的な形では先ほど申しましたように、たとえばプラハでの会合の際に提案するとかいうことを行っておりますが、一般的な考え方としてはそういうようなことも非常に有益ではないかということで、日本等との話し合いにおいて過去においてそのようなことを言及したことはございます。ただ武力を行使しないということは、お互いに行使しないということは、国連加盟国である以上国連憲章で約束していることでありますし、むしろ現在の問題というのは、国連憲章で決まっていることを確認するという問題よりも、それを実際に実効あるものにするための措置がいろいろ必要なわけでありまして、そういうことから中距離核ミサイル交渉その他核兵器を削減するための一連の交渉が行われているわけで、日本としても武力不行使を実際に実効あらしめるためのそういう軍縮交渉を、側面的に支持していくというようなのが現在の立場でございます。
  42. 松前達郎

    ○松前達郎君 ちょっと何だかさっぱりわからないのですけれども、ソビエト側が申し込んできた、提案をしたいまの核不使用の協定ですね。この提案というのは全然されていないのですか。それとももしかされたとすると、内容まで提示してされたのか、ただタイトルだけでこういうものを結んだらどうだろうかと提案したのか、それをお伺いしているのです。
  43. 門田省三

    政府委員門田省三君) お尋ねの核不使用の問題について、ソ連国連総会において提案をいたしております。  具体的な内容の詳細につきましては、もしお尋ねいただくのでございますれば、取り急ぎ調べてお答え申し上げたいと存じますが……
  44. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、いま日本に対して提案をしてきているという報道もあるわけです。先ほどの会議の中でも、カーピッツァ会談の中でも提案をしたということが言われているのです。それからさらに、こういう話は何回かもうあるわけです。それがいまの国連での一般的な協定一環としてやろうというのか、それとも日ソだけで極東の問題としてやろうとするのか、その辺、ソビエトの意向というのは一体どうなのかということ。もしか日本とソビエトだけだったら、内容がある程度提示されないとこれは対応できないわけです。その辺がどういうふうになっているのか、それをお伺いしているわけなのです。
  45. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はまだ次官から、そうした核不使用協定について今回ソ連から日本に提案があったということは聞いておりません。  ただ、さっき申し上げましたように、ソ連としては、日本が非核三原則を守るなら核の先制攻撃はしないということをきのう言ったということで、これに対して日本立場から反論したということは聞いておるわけでございます。核不使用協定、これは国連でもいろいろな角度から各国が提案をしておりまして、日本もこの論議にはもちろん参加しております。そういう中でやはり一番大事なことは実効性といいますか、そういうものがなければこれは意味のないことでございまして、現在の状況において核不使用協定が現実性を持って、実効性を持って決まっていくというふうには私は判断をしておりません。むしろ、いま現実に行われておるところのINF交渉を成功させるということがまず私は先決じゃないだろうかと、こういうふうに考えております。
  46. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういうふうに言われてしまうとそれっきりになってしまうのですけれども、報道だと、ソ連は核不使用を保証してそのような協定を結ぶ用意があるというふうに発言があったという意味なのですが、そうじゃないのですね、そうすると。
  47. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 具体的にそういう協定といったような形の——きのうはいわば表敬的なものですから、きょうから本格的に入っているわけですから、きょうの具体的な、実質的な会談を見ないと判断ができませんが、きのうの段階においてはそうした協定といった意味での提案ではなくて、ソ連としては、日本が非核三原則を守るなら核は使用しない、こういうふうなことを言ったということしか私は聞いておりません。きょうから実質的協議に入りますから、恐らくあるとすればそれはきょうからだろうと思います。
  48. 松前達郎

    ○松前達郎君 それではまた次回にこの問題を、 会談の進行を見ながらいろいろお尋ねしていきたいと思います。  さてそこで、最終的な問題として核軍縮という問題、先ほどもその問題がありましたけれども、この核軍縮に対して日本努力をしなければいけない、その発想の仕方から言うと、日本は核を持っていないからお互いに核を減らそうじゃないかと。交渉ができないのだと。これじゃ話にならないのですね。核を持たないというのは、核がわれわれにとって脅威であるというだけじゃなくて、世界のために、人類のためによくないからこれをとにかくなくそうじゃないかという思想で核軍縮をわれわれは進めていかなければならないのだ。技術論から言っての話よりも、もっと人道的な問題からとらえてやはり進行させなきゃいけない問題だと私は思うのですが、それに対する方策、やり方、どういうふうにして進めたらいいか。  先ほど、宮澤委員からは、たとえば日本が核の洗礼を受けた唯一の国であるから、これに対して外国にこの点の悲惨さを大いに理解させなきゃいけないということもおっしゃったけれども、これも非常に重要なことだと私は思います。  それと同時に、われわれが国際的な外交を通じての努力国連ももちろんその中に入るわけですが、そういう努力としてどういうふうにやったらいいか。まだそれ、どうやったらいいかわからないというのじゃ話にならないので、何かそういう希望なり何なり含めても構いませんから、大臣として案をお持ちですか。
  49. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 実際われわれとしては、理想として核兵器というものが地球上から全廃されるということが理想であると思いますし、このまま核の軍拡が進むということはまさに不毛の競争になってくるわけでございますので、どうしてもここに歯どめをかけなきゃならぬし、そして、むしろこれを全廃の方向へ引きずっていかなきゃならぬ、そういう世界的な世論というものを盛り上げていくのが私は日本一つの責任であろうと思います。  日本が核を持っていないという意味においては、現実的にたとえば核軍縮に当たってのいわゆるバーゲニングパワーといいますか、そういうものは持たないことは事実でありますが、反面、日本が核を持つだけの力を持ちながら持たないのだということがまた非常に重要な意味を持つ。また、世界の世論に訴える一つの大きな力にも私はなるのじゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。  そういう中で、去年も軍縮総会において、当時の鈴木総理から日本立場というものは明快にこれを主張いたしておりますし、われわれもそうした基本的な立場に立って、これから特に国連中心にこの論議を大いに高めてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。同時に、現実的な問題としては、当面の課題として、INF交渉については日米間の非常に緊密な関係の上に立って、われわれはアメリカを通じましてゼロオプションという方向へ、最終目標へ向かってのINF交渉が実現されるような努力を重ねてまいる。同時にまた、ヨーロッパ諸国とも緊密な連絡をとりながら、やはりヨーロッパだけの問題じゃなくてこれはソ連全土といいますか、グローバルな問題としてこの問題を取り上げるべきであるという立場から、ヨーロッパ諸国とも連携を緊密にしてまいりたい。また同時に、ソ連との間では、事務レベル会議を初めとして、その他の外交チャネルを通じまして、ソ連に対してもわれわれの主張を大きく反映をさしていく努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思います。
  50. 松前達郎

    ○松前達郎君 アジアがいま核戦略に巻き込まれつつあるのが私は現状だと思うのです。もちろんいまヨーロッパでもいろいろ大きな問題が出ているわけなのですが、われわれアジアの一員ですから、アジア一つ考えてみた場合に、やはり私は米ソを、これは核戦略の一番大きな戦力を持っている国ですから、米ソを孤立化させなきゃいけないと思っているのですね。そのためには、やはりアメリカアメリカ、ソビエトはソビエトから、それぞれのサテライトを含めて非核地帯ということにしてどんどんはがしていく。そして、彼ら二国を孤立させることによって、初めていわゆる制限交渉等も進展していくのじゃないか。これは、ヨーロッパのパーシングIIの問題で考えるとすぐわかることなのですけれども、そういうことから考えますと、やはりアジアにおける非核地帯という、核を持たない国をどんどんふやしていく。それから、お互いに話し合いする中でアジアを非核地帯にしていく。そういう活動を、日本がイニシアチブをとってやっていく必要があるのじゃないか、私はそう思っておるのです。  そのためには、やはり中国は核は持っていますから、これ、戦力としてどう評価されるかは別として、中国との話し合いなどもそういう面から進めていくべきじゃないか、こう思うのですけれども、これは私の考え方ですが、その点はいかがでしょうか。
  51. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、現実的にはむしろ米ソを激励して、INF交渉を成功に導くということが現実的なまず第一歩としての正しいあり方じゃないか、こういうふうに考えておるわけです。したがって、ヨーロッパとも連絡を緊密にしながら、先ほどから申し上げますように、アメリカに対しても、このINF交渉が成功するような日本立場からのいろいろの注文もつけておるわけでありますし、またアメリカレーガン大統領としても、核軍縮については相当な強い熱意を持っておる、私はこういうふうに判断もいたしております。  同時にまた、いまおっしゃいましたように日本被爆国である、惨たんたるああした現状というものを、やはり世界各国あるいはアジア諸国にも十分説明もし、あるいはその実情というものもひとつ知っていただいて、ともに世界全体の核の軍縮あるいはまた核の全廃ということに向かって世界の世論を高めていくということも、これまた大事なことであろうと思うわけでございます。これは時間がかかるかもしれませんけれど、日本としてのこれは年来の主張でございますから、あらゆる場においてこれを進めてまいる決意には変わりはないわけであります。
  52. 松前達郎

    ○松前達郎君 いま私が申し上げたのは、これはヨーロッパにおいても、たとえばソビエトの衛星国ですね、ここの責任ある指導者の一部の人もこういうことを言っているわけですから、やはりこういった非核地帯の問題ですね、こういうことも含めて考えていっていいのじゃないか。  INF交渉というのはこれは現実の問題かもしれませんが、現実であればあるほど、フランスとかその他の国の核ミサイルまで含まれて考えられるようになってきているので、非常に遠い道かもしれませんけれども、その両面作戦でいかなきゃならない。私は米ソを孤立させてしまえば、彼らはもうどうしようもなくなると思うのです、核についてですね。そういうこともひとつ配慮しながら、いわゆる平和戦略を練っていく必要があるのじゃないか、こういうふうに私は考えておるわけです。  たとえば、アメリカの核の傘の中に日本がいるということをよく言われるのですが、ICBMに関しては、私は問題はそう複雑じゃなくなってきたと思うのです。これは主に米ソの問題ですね。ところが、いまINFで問題になっているのは中距離核ミサイルですから、こうなりますとやはり極東もこの戦略の中に入ってくるわけなので、これからわれわれとしても注意深く対応しなければならない部面がたくさんあるというふうに思うので、その点は十分お考えでしょうから、非核三原則を守るということを前提にして、これらの核戦略が極東において拡大しないようにひとつ御尽力いただければと、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、核の問題はこのくらいにいたしまして、条約その他についてもお伺いしたいのですけれども、この次もございますので、いま一つの問題、これはちょっと内容が違うのですけれども、国際交流あるいは国際的な援助、この問題につい てお伺いしておきたいのですが、アジアが重要だと私はさっきから申し上げたのですけれども、発展途上国、これに対するわが国協力事業というのがたくさんあると思うのです。いままでずっと見ていますと、経済的に、とにかくお金で勝負しようというのが多過ぎると私申し上げたのですがね。  たとえば貿易を裏に考えた供与、こういう問題が非常に多いのじゃないかと。エコノミックアニマルと言われてフィリピンの大統領も訂正したという話が、いわゆる日本の供与に対する問題は経済的だというふうに訂正されたようですが、やはりまだそれは消えていないというのは、すべて何でも金さえありゃ解決できるという考え方が、どうも日本の経済協力の基本になっていると彼らは受け取っているので、その点が非常に残念なのです。  私、前の委員会で申し上げたのだと思いますが、やはりこういう協力体制の中に教育の交流、いわゆる発展途上国が発展するための基本的な問題として、たとえば工業的に発展するのであればその裏づけになる技術教育が必要である、こういうことになりますから、ただ品物とか、それからプラントを出してもそれを動かす能力がない、さらにそれを拡大する、あるいは発展させる能力がない。そこに能力がないというのはなぜかと言えば、いわゆる工業教育というものがその国で行われていない。非常にレベルが低い。ですから、これをやはりわれわれとしては援助の対象にしていく必要があるのじゃないかと思うのですけれども、私、これ聞いたところによりますと、たとえば国際技術振興協会というのがあるのだというふうに伺っているのです。これがアジアの、ASEANだと思いますが、その国々での工業教育に必要な教科書、これを現地の言葉で、母国語でもって印刷をして供給をする、こういう事業をやっておられると私聞いているのです。昭和四十二年から十五年間にわたってこの協会がいろいろな出版をされてきた。私もその本を見ました。りっぱな本ができておるわけですが、その中の主なものは工学図書であり、教科書です。ところがことしの予算を見ますとこれがゼロ査定になっているのですね。  私が考えるとどうも逆行じゃないかという気がしてしようがないのですが、最も必要な援助であろうと私が考えている教育援助、これがゼロ査定になってしまっているということについて、ことしゼロですからいまからどうのこうのというわけにいかないかもしれませんが、これについて、今後やはりこういう問題は慎重に扱ってもらいたい、こういうふうに思うものですからお尋ねしたいのですが、これ、現状どうなのでしょうか。
  53. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御指摘のとおり、人づくり援助につきましては、近年私どもも重点を置きまして努力をいたしておるところでございますが、ただいま御指摘のございました国際技術振興協会につきましては、実は補助金の整理という一般的な問題がございまして、私どもも同協会がやっております事業は大変有益ないい事業であるというふうに認めておるわけでございますけれども、いかんせん残念ながらどうしても補助金の団体の整理という事情から、まことにやむを得ず涙をのんでこれに対する補助金をゼロにせざるを得なかったと、こういうことでございます。ただ、こういう事業は今後とも国際協力事業団その他を通じてぜひともまた続けていきたいと、こういうふうに考えております。
  54. 松前達郎

    ○松前達郎君 たかだか二千七百万円程度だと伺っているのですけれども、それで一生懸命やっておられるのですから、その点十分今後配慮していただいて、財政が非常に苦しいというのもわかりますけれども、その点をひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思うのです。  それからもう一つですが、いまの領事関係に関するウィーン条約に関連すると思いますけれども、外交特権と一言でよく言いますけれども、外交官特権ですかね、こういうふうなことで、外交官特権をいいことにして情報活動を行うということがあるのですね。これは新聞でも前に出ました。フランスでソビエトの外交官が四十七名追放されたとか、あるいはイギリスもそういうことが行われたとか、いろいろと最近この問題が起きておるわけですが、外交官特権というのは一体一言で言うとどういうことに解釈していいのですか。
  55. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) お答え申し上げます。  外交官特権につきましては、派遣国を代表して接受国において一般的な政治交渉等に当たるということで、いわば接受国そのものと同じ立場をということで、かなり厚い特権免除を与えているというのは事実でございます。ただその任務につきましては、「派遣国を代表すること。」等といろいろ挙げられておりますけれども、その中で特に、「接受国における諸事情をすべての適法な手段によって確認し、かつ、これらについて派遣国の政府に報告すること。」というようなことが三条の一項の(d)に決められておりますし、さらに四十一条におきまして、「特権及び免除を害することなく、接受国の法令を尊重することは、特権及び免除を享有するすべての者の義務である。それらの者は、また、接受国の国内問題に介入しない義務を有する。」ということを言っておりまして、さらに、「使節団の公館は、この条約、一般国際法の他の規則又は派遣国と接受国との間で効力を有する特別の合意により定める使節団の任務と両立しない方法で使用してはならない。」ということも明確に決められているわけでございます。  そういうことで、特権免除を与えられておりますけれども、これを乱用しないための規定というものも外交関係条約には明確に盛り込まれているという状況でございます。
  56. 松前達郎

    ○松前達郎君 それだから、やはり駐在している当該国に対する情報収集活動というものについて、スパイ活動と言ってもいいかもしれません、そういうことについて問題が出てくるわけですね。この辺がどうも明確じゃない。決められていてもなかなか一つ一つをやっている余裕がないということもあるかもしれませんが。  細かい話ですけれども、たとえば外交官特権を利用して、その辺の駐車していけないところに青ナンバーが幾らでも駐車してあるというのは、こういうのはどうなのですか。
  57. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 当然のことながら、外交官特権の中には、そのような駐車違反をしてもいいというようなことまでは含まれていないわけで、これは各国の事情によってかなり警察の実際的な取り扱いは違いますけれども、違反は違反として、やはりこれに対して刑事罰を科すわけにはいきませんけれども、行政措置に帰さしめるということは各国ともやっているわけでございますし、わが国においてもそれはやれる状況になっております。
  58. 松前達郎

    ○松前達郎君 これは細かい問題ですけれども、私も外国へ行きますと、日本の外交官が、われわれは特権があるからここにとめておいてもいいのだとか、そういうことをおっしゃる人もいるものですから、これは別にここで問題にすることではないと思いますが、いずれにしても情報活動というものに対して相当各国センシティブになっていますから、その辺に十分気をつけて活動をしていただく必要があろうと思う。  なぜそういうことを申し上げるかと言いますと、たとえば今度外務省で情報関係の部署ができましたですね。それとの関連で、やはりこれから情報収集を行うというのであれば、少なくとも外交上の公の情報というものは、これは幾らでも集めてもいいと思うのですが、ところが、やはり相手の国に被害を及ぼすというか、そういう情報まで集めますと、さっきの話じゃないのですがスパイ活動として追放される。これは余り名誉のあることではない。私がなぜそんなことを言うかというと、情報活動をすることについては結構なのですが、その情報活動というのが、いわゆる軍事的な情報とかそういうものまで及ぶとこれはまた違う意味を持ってくるのです。  かつて戦時中の情報関係の部署がありました。そういうことまでやるとなると大変なことだとい うので、この前も申し上げたのですが、くぎを刺しておくわけじゃありませんけれども、特に外交官特権との関連においてでも、その辺は十分気をつけておいていただきたい、こういうつもりでいま質問申し上げたわけです。ですから、これには御返答は要りませんけれども、その辺も今後注意をしていただきたい。これを要望いたしまして、時間が来ましたので私の質問を終わらしていただきます。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 安倍外務大臣、いま外交課題は山積しております。それで、いま私の前のお二人の委員が取り上げられました平和とか軍縮の問題について私も大変深い関心を持っておりまして、毎回、もっと日本軍縮に関して積極的な行動をとってもいいのではないかということをいつも申し上げているわけなのですけれども、実はきょうは婦人週間中です。四月十日から一週間は婦人週間ということなのですね。なぜ婦人週間と言うかといいますと、一九四六年、昭和二十一年の四月の十日に、日本の女性は歴史上初めて投票権を使った、それを記念いたしまして一週間を婦人週間としているわけでございます。したがいまして、私はきょうは婦人の問題だけにしぼってお尋ねしたいと思います。ことに、当面の課題でありますところの婦人差別撤廃条約の批准に向けての取り組みを中心にお伺いしたいと思っているわけなのです。  私は、安倍外務大臣と余りおつき合いがないものですから、どういう女性観を持っていらっしゃるかよくわからないのですね。それで、一九七五年、昭和五十年に国際婦人年が持たれ、それから十年間、つまり一九八五年、昭和六十年までが国連婦人の十年の運動期間でございます。そしてこれが展開されてきて、ことしは一九八三年でございますからあと二年この十年の運動は残って、最終段階に来つつあるわけなのですね。どうも男の方たちは、女のことは女でというふうに分けて考えていらっしゃいますけれども、これは全世界的な運動、ちょうど国連環境年だとかあるいは障害者年だとか児童年だとか、国連が提唱し全世界的な運動をやっている、その中でも国連婦人の十年の運動というのは大変熱心に、もう全世界の女性たちが取り組んでいる運動なのでございますね。  それで、八〇年代は女性の時代だと言われておりますので、これは有権者としても大変大事な相手でありますけれども、私どもが見ますところ、この国連婦人の十年運動のモットーとして掲げられております平等、発展、平和。平等というのは男女平等です。発展というのは英語で、インテグレーション・イン・デベロプメントですから、発展とか開発の中に完全に女性が参加するということだと思います。発展だけじゃわかりにくいですけれども。それから平和は世界平和ですね。この三つを一番中心のテーマとして、それを目標国連が音頭を取ったということになっていますけれども国連といっても別に抽象的に国連が音頭を取ったのではなくて、国連が成立した一九四六年、経済社会理事会の中に婦人の地位委員会というのが設けられまして、そこで世界各国委員国が集まって毎年のように世界の婦人の状況を検討して、そしてどうしても国際婦人年が必要であり、そして国連婦人の十年運動が必要だという結論に達してこういうものが設けられている。前回にも申し上げましたように、世界じゅうに女性の問題は非常に複雑にたくさんあって、なかなか平等ということも十分に実現されておらないし、それから発展と言われている社会の開発や発展の中になかなか全面参加というふうにはなっておらないわけなのですね。  私どもは、この運動と取り組むために、国会の中にも国連婦人の十年推進議員連盟というのをつくっております。もう二百五人くらい参加していらっしゃいます。大臣も御存じでしょうけれども国会の中には女性の議員は衆参二十五人しかおりません。ですから、この二百五人の中には全部各党の男性が入っていらっしゃる。各党の女性問題に理解のある議員が入っていらっしゃる。外務大臣はまだ入っていらっしゃいませんが、ぜひ入っていただきたいと思います。  外務大臣は、日本の女性が世界的に見てどのくらいの地位にあるか、大変すぐれて進んでいるというふうに思っていらっしゃるか、それとも中ぐらいか、あるいはおくれているとお思いになっていますか、その御認識を伺いたいと思う。
  60. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本の婦人は、戦前は社会的にも差別が非常にあったというふうに思いますが、戦後の新しい憲法、敗戦とともに新しい憲法、それによりましていわゆる婦人解放といいますか、わが国の制度その他社会的にも非常に進んできておりまして、その後の日本の経済社会の発展とともに、私は婦人の地位というものは漸次高まってまいったと思います。そして現在では、私は、世界の水準以上の線に婦人の社会的地位というものは確保されておると、こういうふうに考えております。
  61. 田中寿美子

    田中寿美子君 世界の水準と申しましても、先進国と途上国とに分けますと、それぞれ大変問題が違います。日本はOECDのメンバーでもある先進国なのですが、その先進国の中で経済大国である日本の中でも、私たちは部分的には突出したものができている。これは大臣もおっしゃいましたように、憲法が主になって、戦後、日本の法律はみんな平等の原則に変えられたわけですから、法制上は高い地位になっていると思います。現実に制度、慣習に残っている古さというのは、これはちょっと先進国の中では私は劣等国ではないかと思っているわけなのです。だから、日本という北側の先進国の中の途上国、第三世界と女たちを呼んでもいいかと思うような状況にあるわけですね。  先般もOECDだったと思いますけれども日本の製造工業に働く女性の平均賃金は四七、八%、男性に比べて半分以下だということが発表されました。国内の統計で全産業をとっても五十数%。ですから、賃金においてもそういう格差がありますし、それからそれ以外の社会参加という点では、これは最近私はフランスの閣僚のリストをいただいたのですけれども、四人も女性の閣僚が出ていらっしゃる。そういう国はたくさんある。しかし、日本にはそういう兆しもない。その他公職における進出の仕方も、私は大変まだまだ問題があると思いますね。ですから、国連婦人の十年運動の中で中心的な問題は、婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約というものを日本が批准する義務があるということについては、大臣も御認識でしょうか、どうでしょうか。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 婦人差別撤廃条約の批准はしなきゃならぬと考えております。そのために現在、政府の中でもいろいろと整備をいたしておるわけでありますが、役所間の調整といいますか、そういうものがまだ十分まとまっていないというふうに聞いておりますけれども、いずれにしても近い将来、批准に向けて政府の統一した方針を打ち出していかなきゃならないと、こういうふうに思います。
  63. 田中寿美子

    田中寿美子君 婦人差別撤廃条約というのは、長年にわたって国連の中の婦人の地位委員会が世界じゅうの婦人の状況を検討してまいりまして、たしか一九六七年だったと思いますけれども、婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する宣言を発しているわけです。その宣言が基礎になって、今回この国連婦人の十年の間に条約にするという運動になったわけです。ですから、これは世界じゅうの各国の婦人たちの討論の結果つくり上げられた大変包括的な条約なのです。それで、七九年の末に国連総会で採択された。もちろん日本もそれに賛成の手を挙げました。それから、国連婦人の十年の中間年、八〇年ですね、コペンハーゲンで開かれた中間年世界会議で各国が署名しましたとき日本政府は署名を大分渋っていたけれども、婦人たちの要望が大変強かった、そして私たちのただ一人の女性の大使であるデンマークの高橋大使が政府代表として署名をしたわけです。ですから、採択もし署名もしている。あとはこれを国会承認して批准するというところまで持っていく段階が最後に残っているわけでございます。 ですから、八五年の最後の世界会議がケニアで開かれるまでには、日本という先進国の中の先進国、技術において世界一と言われているような国が批准をしていないということでは大変問題ですので、それまでには必ず批准をするように持っていくという御決意はありますでしょうね。
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいまおっしゃるように、一九八五年世界会議が開かれるわけでありますが、これが婦人の十年の見直しと評価を行うとともに、一九八五年以降の婦人問題への取り組みについての方向づけを行うことになると見られておるわけでございます。したがって、わが国としてもこうした重要な世界会議が実りあるものになるためにも、やはり八五年までには婦人差別撤廃条約の批准はどうしてもしなきゃならぬという決意を持って、政府は取り組んでおるわけであります。
  65. 田中寿美子

    田中寿美子君 この前の署名のときにいろいろとためらったのと違いまして、もう署名もしているわけですから、今度は批准は必ずするということは外務大臣もおっしゃっていますから、そのとおりだろうと思います。  この差別撤廃条約の前文には、国連憲章から世界人権宣言、国際人権規約、そしてさっき言いました差別撤廃の宣言などの文章を引用してありまして、それらに基づいて締結をするという、こういう趣旨に異論のあるはずはないのですけれども、批准に当たって幾つかの問題点がある。これは国内法の改正とか、あるいは制度やら、本当は慣習まで変えることをこの条約には申し合わせていますけれども慣習を変えるということは非常に時間のかかることですからなかなか簡単ではありません。法律ができてもなかなか平等というものが実現されていない。日本の憲法ができてからもう三十五、六年もたっていても、実際にはそうなっていないということから考えますとなかなか大変ですけれども、しかし、国内法でどうしても整備していかなければならないポイントがあると思います。それを批准のために調整をしていらっしゃる——これは最初外務省の方に伺いたいと思いますが、幾つの点で、何と何をやっていらっしゃるかということを説明していただきたいと思います。
  66. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  この条約は、締約国に対しまして婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃を目指して必要な措置をとるようにというふうに求めております。わが国におきましては、特に国籍、教育、雇用、労働、社会保障等の分野におきまして男女平等の原則を確保する必要がございます。このために国内法制等を整備することが必要であると考えておりまして、現在具体的な整備内容につきまして、関係各省庁と鋭意検討を進めているというところでございます。  以上でございます。
  67. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう少し具体的に。  それで、たとえば九条の国籍法については法制審議会がすでに答申をされた。そして法務省は、これをいつごろ法案として提案、つまり国籍法を男女両系主義にして、そしてこれまで女性が国際結婚の際に、日本国籍を持っていても子供に日本国籍を継承させることができなかったわけですから、それができるように変える案ができつつあるというふうに伝えられておりますけれども、これはいつごろ出そうですか。
  68. 門田省三

    政府委員門田省三君) ことしの夏以降の国会に所要の法案を提出されるというふうに了解いたしております。
  69. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは十条の教育のところですね、この十条の(b)項で問題になっておりますところの「同一の教育課程、同一の試験、同一の水準の資格を有する」云々とありますが、この「同一の教育課程」というので問題になっておりますのは、高等学校における女子に対する家庭科の必須の要求、これに対して男子にはこれがない。女子のみに家庭科を要求している。  高等学校学習指導要領によりますと、「家庭一般」というのは、「すべての女子に履習させるものとし、その単位数は、四単位を下らないようにすること。」というふうになっておりますね。これはその当時、条約を採択された後からずっとここのところが問題になっていて説明を伺いますと、「同一の教育課程」の「同一」というのはザ・セームであってイコールじゃないのですね。このことについてはどういうふうに批准ができるように進みつつありますでしょうか。
  70. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいまお尋ねのございました点につきましては、学習指導要領で高等学校におきますところの家庭科の履修科目、これをどうするかということでございます。  この条約は、先にも申し上げましたように、男女間の差別をなくするということ、これが貫かれた目的であるというふうに私どもは理解しております。したがいまして、ただいまの状態につきましては、果たしてこの条約の趣旨にかなうものであるのかどうか、この点を十分検討する必要があると考えております。ただいまのところ、文部省関係当局とこの点について検討をいたしておるところでございます。
  71. 田中寿美子

    田中寿美子君 文部省がなかなか賛成しないということは、もうみんなが知っていることなのですね。  それで、家庭科を男性も履修していいのでありませんか、外務大臣どう思いますか。これからの家庭というのは、差別撤廃条約中心的な精神でもあります、男女が家庭も社会も役割りをともに担おうではないかということですね。ですから、家庭科の内容ももっと変えて、男女が一緒にやってもいいようなものにする必要があると思いますけれども、女だけにここのところを限っていることは、これは考え直さなきゃいけないと私は思うのですよね、いかがですか。男の人が奥さんに逃げられたりあるいは亡くなられたりした後自立できないのですよ。家庭のことができなかったら、途方に暮れるということもありますからね。原則論としてはいかがですか。
  72. 門田省三

    政府委員門田省三君) 条約は、ただいま委員がおっしゃられましたような男女間の平等ということを明らかにうたっているところでございます。私どもも、そのような観点から高校におきますところの家庭科の履修の問題につきましても、男女間に差別があってはならないというふうに考えております。
  73. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務省を余り責め立てても、実際、本体の文部省の方が大変手ごわいので簡単ではないと思いますけれども、でもこれはぜひよく話し合って、このままでうまいぐあいに通り抜けて批准ができるような、技術の上手な日本の役人の方々のようなことをしないようにしていただきたいと思っております。  それでは次に、十一条の雇用の分野における差別の撤廃の問題ですが、これでは(b)項の「同一の雇用機会についての権利」ですね。この問題も私ども長い間手がけてきているわけなのですけれども、男女の同一賃金の法律は労働基準法の中にありますけれども、雇用の機会における不平等というのはいっぱいまだ存在している。だから、それを平等にしなければならないという意味で、どうしても男女の雇用平等法という法律が必要だと思うのですよね。それで、そのために政府の側も、労働省婦人少年局が中心になってこの問題と取り組んでいられると思います。私の方も、もう一九七六年ごろから男女雇用平等法案をつくりまして、最近もこの国会に提案をいたしましたけれども、ほかの野党も準備をしていらっしゃるわけです。政府の方からなかなか出てきそうもない。  婦人少年局長がお見えになっていますので、その進捗状況をお伺いしたいのですが、男女平等問題の専門家会議が設置されて平等問題について検討されて、その報告が出ましたですね。雇用における平等についての判断基準の考え方についてというのを出された。そして現在、婦人少年問題審議会でこれを基本として研究していらっしゃると思うのですけれども、婦人少年問題審議会では、雇用の平等についてどういうふうに進めていらっしゃいますでしょうか。それからそれに対する婦 人少年局の、あるいは労働省の対応などを御説明願いたいと思います。
  74. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 現在、先生のお尋ねのように、婦人少年問題審議会でこの問題を検討いたしておりますが、雇用における男女平等の判断基準の考え方について示された御見解を踏まえて検討が進められております。そしてどの程度進んでいるかというお尋ねでございますが、先ほど外務大臣の方からもお答えがございましたように、これをぜひ批准したいという観点からの検討をお願いしているわけでございますので、国連婦人の十年、後半期行動プログラムの中の最重点課題として取り組んでいただいているわけでございます。  内容につきましては、雇用における男女平等を確保するために新たな立法措置が必要かどうか。また、現行、すでに婦人労働に関しましてはいろいろな規定がございますが、男女別の規定があるわけでございますが、それが現行のままでよいかどうか。それからまた母性保護、母性休暇というものは、たしかこの前外務委員会で先生からお尋ねがございましたように、四条の関係で、これは条約と抵触するものではないということも申し上げたわけでございますが、母性保護及び母性休暇の範囲はどこまでかということも含めまして、審議会で現在検討中でございます。
  75. 田中寿美子

    田中寿美子君 婦人少年局の中に、これに対応するための男女平等法制化準備室というのを設けられましたですね。そうしますとそこでは、いま婦人少年問題審議会で検討をしているそのような法制度についての事務局的な仕事をしていらっしゃると思うのですが、そういうことですか。
  76. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
  77. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、労働基準法研究会の報告の中で、男女平等法が必要だという考え方を出されておりましたですね。そして、いまの法制化準備室ですから、法制化のためにどういうふうなことが望ましいかということを検討していらっしゃると思うのですが、その中で、雇用平等法というものがあることが望ましい——私はなければならないと思っておりますけれども、ということをお考えかどうか。そして先進諸国ですね、OECDに加盟しているような国々の中で、男女雇用平等法を持っている国々のことについて、どういう国があって、どういうふうなことを規定しているというふうなことの説明をしていただきたいのですけれども
  78. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) OECD諸国の中で二十四カ国加盟がございますが、そのうちの主な先進諸国につきましては、私どもがすでに把握をいたしております。その十六カ国につきましてはすでに雇用平等法がある。内容もある程度、先ほど御指摘の準備室で把握をいたしております。ただ、あと多少わかりかねている点もございますので、なお残りの六カ国につきましては引き続き調査をいたしたいというふうに考えております。その国々ではまだあるのかないのかよくわかっておりません。
  79. 田中寿美子

    田中寿美子君 大臣ね、日本はいまEC諸国ともいろいろ貿易摩擦の問題を起こしているわけですね。その際に、日本の労働条件に関していつも指摘されるわけです。労働時間の問題だとか、それから週休二日制の問題だとか、それから年次有給休暇の本格的なとり方が日本ではできていませんね。欧米諸国はみんな、三週間ないし四週間ぶっ続けに夏の間の有給休暇がとれるという制度を持っている。そういうものも持っていないという日本の労働条件は、しばしば貿易摩擦の問題のときに指摘されるわけでございますね。それで、日本で女性が雇用において平等な扱いを受けていないということもこれは指摘される問題の一つだと思います。そういう意味でも、どうしても男女雇用を平等にするための法律及び制度が必要だと思っているわけなのですね。ですから、その辺を外務大臣は十分認識していただきたい。女の問題で片づけてしまわないようにしていただきたいと思うのでございます。  それでは、婦人少年局長にもう一つお伺いしますけれども、男女の雇用を平等にするためには、雇用だけじゃない、すべての面で男女が本当に平等に社会参加をするためには、いろいろの側面からこれを援助する制度がまだ大変必要だと。というのは、女性がどうしても家事や育児をしょい込みやすい。共働きの場合ですら女性の方がたくさんの重荷をしょうわけでございます。そういう意味で、ヨーロッパの諸国では育児休業法などというものが相当につくられておりますね。ILOの百五十六号条約及び百六十五号勧告でも、やっぱり家族的責任を持つ男女労働者の機会均等及び平等待遇に関する条約というふうに、家族的責任というのは女だけが持つのじゃなくて男女労働者が持たなければいけない。その人たちが家族的責任を持ちながら職場でもきちんと働けるのには、それを可能にさせるいろいろの手だてが必要だと、そういう意味で育児休業法が採用されている国が幾つかある。それで、おたくで持っていらっしゃる男女平等法制化準備室、そこではやはり育児休業の法案についても検討していらっしゃるというふうに伺っておりましたけれどもそうでしょうか。
  80. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 準備室におきまして、育児休業制度につきまして検討いたしております。諸外国の実情などを研究いたしております。そして、先ほど申し上げました審議会に、育児休業制度につきましてもあわせて御検討をお願いしているところでございます。  また先生がおっしゃいましたような、家庭に対する男女の共同責任というような点につきましては、本年の婦人週間の重点といたしまして二つを挙げているわけでございますが、女性がより政策決定、方針決定に参加できるように、男性が家庭に対してより関心と責任を持つようにというこの二つを重点に挙げているわけでございまして、そういう機会をとらえて、また婦人週間以外にも、年間を通じましてそういう方針で私どもキャンペーンを展開しているところでございます。
  81. 田中寿美子

    田中寿美子君 育児休業法につきましては、亡くなられた早川崇先生が非常に熱心にヨーロッパ各国を回っていらっしゃって、御報告を私ども伺いました。  それで、国によっては有給でなかったり、国によっては社会保障で所得の保障をしたりいろいろなやり方をしているけれども、育児というものが女だけのことじゃないと、産むときから女だけでは産めないのですから、生まれてから後の育児の問題についても家族的責任として男性もともにこれを分け合うべきではないか。だから育児休業は男がとってもよいというのがいまや常識となっているわけですね。男女どちらがとってもよろしい。いま外務大臣は首をかしげられておるのですけれども、これはわれわれの党の中の男性でも、その話をすると、何だ、男が子守りをするのかというふうに同じ反応をなさるのですが、してもいいのじゃないですか。だけれども、実際スウェーデンみたいに育児休業が非常に発達しているところだって、事実上は女性がとる場合が多いです。出産休暇は女がとらなければいけませんけれども、その後の休業については男性ももっと自分の子供と接触し、家族というものが自分の本当に身近なものになるようにするということは、人間形成の上においては大事なことだろうと思いますので、そういう意味で、いまでは男女どちらがとってもよいという法律をつくっている国が大部分であるわけなのです。そういうようなことも踏まえて、男女雇用平等法がぜひ八五年の最終年までにはつくられて、そして差別撤廃条約がきちんと批准できて、そして八五年の世界の会議に出ていけるようにしていただきたいということを私は強く要望申し上げ、法制定の準備を急いでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、これは国連局の方に伺いましょうか。  差別撤廃条約はもうすでに発効しているわけですね。それで発効いたしますと、これで婦人に対する差別の撤廃に関する委員会というのを設置す ることになっておりまして、現在二十三カ国ですか、できていると思うのですね。十七条でそういうふうになっているのですが、この国際的な委員会の任務なのですが、「条約の実施についてもたらされた進歩を検討するために」ということに目的はなっているのですが、しかしこれ、どういう形で検討するのか。つまりほかの場合のように、もしこの条約加盟国の中で条約に違反するようなはなはだしい事例があった場合にこれを提訴したりすることができるのかどうか、その仕組みはどうなっておりますか。
  82. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいまのお尋ねに関しまして、まずこの婦人差別撤廃委員会という場は、そのような問題が生じたときにその是非を争うという場所ではございません。この条約の趣旨に果たして合致するか否かというふうな事例が生じた場合の救済措置といたしましては、いわゆる仲裁に諮るということでございます。その仲裁は紛争解決条約にのっとりまして、つまり第二十九条でございますが、この紛争が生じた場合には仲裁にまず付されます。仲裁が成立しない、うまく進まない場合には国際司法裁判所に紛争を付託するということになっております。
  83. 田中寿美子

    田中寿美子君 仲裁というのはどこで、この委員会でですか、婦人に対する差別の撤廃に関する委員会がそういう権限を持っているのですか。
  84. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私から御答弁申し上げます。  条約の二十九条の仲裁は、御指摘委員会とは別でございまして、紛争が起きましたときに紛争当事国間でどういう人を仲裁人に選んで仲裁をするかということは、その紛争当事国間の合意によるというのが二十九条の趣旨だろうと思います。したがいまして、御指摘委員会は、いま申し上げました条約の解釈とか実施につきましての紛争とは全く別の組織でございます。
  85. 田中寿美子

    田中寿美子君 提訴するとなったら、国際司法裁判所に提訴するということですね。それはわかりました。  それで次に、国連婦人の十年の最終年を八五年、昭和六十年に迎えるその前の年、つまり来年ですね、準備会議としてアジア地域会議が東京で開かれることになるのはもうほとんど決まったようなものだと思いますが、ESCAPで正式決定はこれからされるのだと思いますけれども、そのアジア地域会議の性格というか、それからどういうテーマでどういうふうに議論をするようになっているのか御説明を願いたいと思います。
  86. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいま先生から御指摘がございましたように、今月下旬にバンコクで開催されます第三十九回ESCAP総会におきまして、わが代表団から、お示しのございました準備会議を一九八四年三月の適当な時期に日本で開催したいという意向を表明することになっております。私どもの見通しとしましては、このようなわが国の申し出はESCAPメンバーによって欣然受諾されるというふうに考えております。この準備委員会は、来る世界会議のための地域的な準備委員会でございます。具体的な議題につきましては、追って、日本における開催が決まった後、ESCAP事務当局国連関係当局とも十分協議の上案をつくりまして、政府代表の方に示してまいる、かように考えております。
  87. 田中寿美子

    田中寿美子君 これはあくまでも国連婦人の十年の世界会議の準備会議ですから、国連婦人の十年の世界会議で討論される問題と異なるはずはないと思われますから、全体として十年運動が取り上げている問題をさらにそれぞれの地域性を持ってやられるのだろうと思いますが、そこで、外務大臣も今度ASEAN諸国を訪問されるわけなのですけれどもアジアの発展途上国がたくさんやって来る。日本アジアの一員だけれども、非常に先進国グループであるわけなのですね。そういう意味で、問題の所在も大分違っておりますし感覚も違っていると思うのですね。そういう点への配慮ということはこれはぜひしてほしい。その場合に私は、これはどなたに言っていいかと思うのですけれども、もっと一般の日本の婦人運動をやっている人たち、あるいは婦人全般の中からの意見が反映するようにしてもらいたいわけなのです。世界会議でももちろん、政府代表を任命するときに、第一回目は藤田たき先生がメキシコ会議に行かれましたけれども、第二回目は高橋さん、その政府代表団がほとんど各省の役人で占められているというような状況なのですね。これは人材の面でというか言葉の面などの問題がありますけれども、いま民間の中にもそういう人たちがたくさん出てきておりますので、もっと民間人を加えてほしいということを一つ要望申し上げたい。ですから、政府代表の中に必ず民間の代表を加えてほしいということはいかがでしょうか。
  88. 門田省三

    政府委員門田省三君) わが国の代表団の構成、それからまたこの会議にどのように臨むかという基本的な考え方、これにつきましては、関係省庁間で十分協議の上決定することになるのでございますが、その際にはわが国の民間各方面、特に婦人問題について造詣の深い、また経験の豊かな有識者の御意見、これはもう十分承りまして、これを反映させていくということで考えたいと思っております。
  89. 田中寿美子

    田中寿美子君 私まだ足が悪くないときに、国際婦人年の後、国連婦人の十年運動の状況などをヨーロッパアメリカに、——主にヨーロッパですが、調べに行ったことがありましたけれども、もともとこの受け皿というものが民間の婦人団体を網羅してできているところで婦人委員会を設置したりなんかして、そこでどう対応するかというようなことも決め、そこがその国を代表する政府代表も決めるというようなことをやっている国々がたくさんあったわけですが、どうも日本国連関係の会議はほとんど役所の方ばっかりが行くというくせが長い間ついているわけですね。国連が戦後新しく出発しましたときにすぐにNGOの制度を設置している、ことに経済社会理事会の中へですね。それで、非政府の団体の意見を十分吸収しなければいけない。そこで、国連にNGOとして登録している団体がたくさんあって、それらの団体は各会議にオブザーバーとして出席するようになっているわけですけれども、NGOの活用というか、それをもっと各会議ともやらなくちゃいけない。特に、この国連婦人の十年運動というのは一般の婦人が運動をしなければ何にもならないわけです。ですからそういう点で、民間から正式代表の中に入れることと、それからNGOが十分にオブザーバーとして出られるようにすること。それから、東京で開かれるのですから民間の人たちもオブザーバーとして、別に発言権がなくても参加したいだろうと思うのですね。そのようなことに関しては、総理府の婦人問題担当室長が来ていられますけれども、何かそういう話し合いはできておりますか。
  90. 松本康子

    説明員(松本康子君) このESCAPの会合につきまして、具体的にそのようなお話はまだ進んでいないところでございますけれども、私どもといたしましては、世界行動計画におきまして民間レベルの活動の重要性が指摘されておりますし、私ども世界行動計画などを国内に取り入れるというために施策を進めているところでございますから、いま御指摘のような点につきまして関係省庁、民間方面とも十分に連絡をとってまいりたいと考えております。
  91. 田中寿美子

    田中寿美子君 今度ESCAPで正式決定してからのことになるかと思いますけれども国連婦人の十年を促進するための四十八婦人団体の連絡会がありますね。ああいうところなどにも十分来年の会議の趣旨ややり方なども説明し、またそういうところの意見も聞いてほしい、あれ以外にもたくさん婦人の団体もありますから。それをできるだけ開かれた会議にしていただきたいということを申し上げたいと思います。  コペンハーゲンで中間年世界会議が開かれたときに大分民間人が行きまして、民間人の婦人会議が持たれたわけなのですけれども政府代表と全く別々で、忙しかったかもしれませんけれども政府代表は、日本から行った民間の婦人たちが参加している集会に顔も見せていただけなかったと いうことを聞いております。やっぱりこういうことがありませんように、前もってぜひ一般の婦人たち意見を聞いたり、それから説明もしたり、この問題についてほとんどまだ知っておりませんですからね、ですから、何か政府が主体の会議というふうに考えないでいただきたいということを私は要望申し上げておきたいのでございます。  それからもう一つは、これはアジアで、アジアの国が主体になってやってくるわけで、それ以外の国も来るかもしれませんけれども、十分その点を検討して、アジアの婦人たちの持っている問題というのは非常に複雑で大変ですよね。日本の企業が進出して、低賃金で搾取しているというような問題も出てくるかもしれないし、それから、例の観光ツアーの問題もあるし、先日開かれました国際消費者団体の会合などでも、日本のような先進諸国、すなわちいわゆる北の国々から輸出している薬品や食品で危害をこうむっているというような問題も出てくるわけですから、十分そういう問題の研究は、これは民間の団体でもこれからやることだろうと思いますけれども、心していただきたいと思います。  では最後に、ESCAPの会合、来年のアジア地域会合を含めて、国連婦人の十年の運動に日本政府が使っている予算と申しますか、費用ですね、これについての御説明をいただきたいと思います。
  92. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  まず、NGOと民間団体の御意向を十分酌み取るようにという御指摘につきましては、私ども従来ともそういうことで努力してまいっているということでございます。  ちなみに、このたびESCAPにおいてわが方が提案いたしますところの準備会議の日本への招致という問題につきましても、NGO団体の皆様からの強い御要望もございまして、それにおこたえする意味においても、政府として努力してまいったところでございます。  なお、明年この準備委員会を日本に招致するに当たっての予算といたしましては、二千六百万円を計上いたしまして、先日国会で御承認を賜っているところでございます。
  93. 田中寿美子

    田中寿美子君 国連婦人の十年全体に対して拠出金をしておりますね。これは百万ドルだったと思いますけれども、これはもう全部拠出してしまったのでしょうか。
  94. 門田省三

    政府委員門田省三君) 婦人の十年基金に対しまして、合計いたしまして百三十万ドル拠出いたしております。
  95. 田中寿美子

    田中寿美子君 それも、拠出はまだ八五年までに順次全部拠出していく……
  96. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいま御報告申し上げました百三十万ドルという金額は、八二年までにすでに拠出した額の総計でございます。
  97. 田中寿美子

    田中寿美子君 日本はお金はわりあいに出すわけなのです。ぜひ、今度の最終目標八五年に差別撤廃条約が批准できるような法体制を整備していただきたいということと、それから、そういうお金が十分生きるような使い方をしていただきたいということを要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  98. 増田盛

    委員長増田盛君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ─────・─────    午後一時二十一分開会
  99. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  100. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 過日、予算委員会の集中審議の際にも若干触れさしていただきました核軍縮の問題、午前中にもこの問題を中心としたやりとりがございました。少しく私もこれに触れさしていただきたい、こう思います。  確かに現況を見た場合に、ぎすぎすというよりもきわめて先鋭的な対立が激化しているというような方向へ米ソ関係が向きつつあるのではないだろうか。先ほどの御答弁の中にも、それは一つは政略的な意味もあるかもしれないというような含みのある御答弁もあったようであります。ただわれわれとしては、そういうような判断に立つことが好ましいかどうかは別問題として、やはりやり切れないというきわめてむなしい思いをするわけであります。先ほど安倍さんは、このゼロオプションについて、何とかそれが実現の方向へということをしきりにおっしゃっておられる。確かにわれわれとしてもそうあってもらいたいという願望はございます。けれども、現実的には余りにもかけ離れたお互いの関係というものが、一体歩み寄りというものが考えられるのだろうかという疑問がぬぐい切れない。そういうような状況の中でグロムイコ発言等もあり、一体その真意は何であろうかという、外務省当局はもとよりでしょうけれども、われわれとしてもその真意というものをはかりかねるというこういう現実ではなかろうかというふうに思えてならないわけであります。  双方が、なかなか積極的な解決へ向かっての糸口すら見出せないというふうな暗礁に乗り上げたという、いみじくも現在ジュネーブの軍縮委員会でアメリカの首席代表のニッツにしてもロウニーにいたしましても、今月の初めですか、アメリカへ帰りましてアメリカの上院の外交委員会で証言をしておりますね。先行きの見通しが非常に暗いと、協定が結ばれるということは不可能に近いのじゃないかというような印象を受ける、そういう報告が実はなされているわけであります。そうすると、米側としても、当初の年内交渉成立の上協定が結ばれるというこういうスケジュールも全く空中分解するおそれがないではない。  一方、先般シュルツが日本へ参りましたときに、安倍さんとの間にいろいろな話し合いがなされた。その話の中を、伝えられる報道を通じて見ましても、非常にアメリカの強い姿勢というものがうかがわれる。やはりバランスというものを前提に考えない限り、いわゆるSS20の撤去問題なんというのはナンセンスだと言わぬばかりのそういう主張であったように記憶しているわけであります。  こうなると、一体日本政府としてはどういう立場をとるのが一番賢明なのか。先ほど来からゼロオプションの実現の方向へ向かっての、特にアメリカを通じてこれからも絶えず忍耐強く交渉を続けていくのだ、それはわかるのですけれども、果たしてそれだけでいいのかなあという不安感というものが、絶望感というものがぬぐい切れないというそういう今日までの経過があることは、いまあえて私が申し上げずとも安倍さん御自身は十分にその点を受けとめていらっしゃるのではないか。そういう大変厳しい状況の中で、なおかつ先ほど来から御答弁があったような方向に立つのか、それとも改めてこの軍縮というものを見直して、日本のこれから取り組むべき姿勢というものをもう一遍考え直す必要があるのか、いまやはり曲がり角に来ているような感じがしないでもない。その辺をどう整理して政府としては今後の対応を考えられるおつもりなのか、まず、その辺からお伺いしてまいりたいというふうに思います。
  101. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 軍縮、特に核軍縮ということに対しては、日本としても終始一貫して非常な強い関心を持っておりますし、これに対して日本立場国連等においても主張しておるわけですが、現実問題としてこれがどういうふうに進展するかということになりますと、いまのINF交渉をやはり実質的に妥結をするということが核軍縮への一歩ということになると思います、これはSTARTのまた交渉にも響いてくるわけですから。当面、やっぱりINF交渉にしぼってわれわれは注目しておるわけです。  グロムイコ発言でわれわれがちょっと気になりますのは、一つは英仏の中距離ミサイルといいますかを無視してこの交渉には入れないというような面がありますね、こういうことを言っている。それからもう一つ、グローバルということに対して否定的といいますか、ヨーロッパヨーロッパ だ、アジアアジアだと、こういうふうな考え方を言っているようですね。その辺が、これからわれわれが特に極東の問題を考えますときに、日本としては非常にこれらに注目せざるを得ないわけなので、私たちとしてはやはりあくまでもグローバルな形でINF交渉が進んでいくということでなければならないと、こういうふうに思っております。そのために日本として働きかけることは、やっぱりアメリカにしっかりしてもらって、アメリカがそうしたグローバルという一つのプリンシプルを持ってこのINF交渉を成功に導くということであろう、こういうふうに思いますし、またソ連もやはり柔軟な姿勢INF交渉を妥結させるという立場で、日本等に対するいわば政略的とも言える一方的なああいう主張を方向転換してもらわなければならない、こういうふうに思っております。  当面は、やはりこのINF交渉というものがわれわれにとってはこれからの核軍縮、これから世界全体の軍縮へ進むかどうかの一つの大きな目安といいますかになるということで注目しておるわけなのですが、一部ヨーロッパ等では、すでにいまおっしゃるように、ヨーロッパにおけるパーシグIIであるとかあるいは巡航ミサイルとかそういうものは配備をしてしまわないと本格的なINF交渉はスタートしないのじゃないかというふうな声もあるわけなのですね。いま配備計画中だという中でINF交渉をやれと言っても、これはなかなか現実的に具体的に成功というのはむずかしいのじゃないか。だから、むしろ配備することによってそれからスタートを切るのだというふうな声もヨーロッパの一部で挙がっているように思うわけですが、われわれとしてはそういう配備が行われる以前にやはり米ソ間のINF交渉一つの現実的な削減の方途というものが導き出されるということを期待いたして、それに対してわれわれもできるだけのことはやっていかなきゃならぬと考えております。
  102. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにおっしゃることは正しいと僕は思うのですよね。そうあってもらいたいというのがわれわれの願望であるわけですが、先ほど少しく私も触れましたように、シュルツの発言というものはアメリカ政府を代表する発言である。やはりいまおっしゃった中にもありましたように、パーシングIIにしても巡航ミサイルにしても配備をすると。配備をした。そしてそのバランスの上に立って初めてINF交渉というものが成立するであろうと。そうでなければナンセンスだと言わんばかりの主張というものは、これは非常に危険が伴うのじゃないかということを実は恐れるわけですね。  当初、このINF交渉が始まった際にレーガンのいわゆるゼロオプションが出され、そして暫定案が出されたわけです。これは全くもう一蹴されるというこういう状況。いわゆるゼロオプション、ただ衣がえしただけの話じゃないかと。現実にはほど遠いというようなソ連側の主張これあり、もうそれが対立したまま今日に来ている。実際問題としてソ連の言い方というものは、先ほどちょっとお触れになりましたように、英仏が所有している百六十二基のミサイルですか、これもやはり考え方の中に入れなければ同等の削減というものには、制限というものには応じられないと。そこで初めて交渉というものが成り立つのではないかという、こういうソビエト側の考え方については安倍さんとしてはどんなふうに受けとめていらっしゃいますか。
  103. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、アンドロポフ提案でもそういう提案がなされておるわけですね。やはり、英仏の核というものを基準にしてソ連SS20の削減というものを考えないと。だから、新しく配備するパーシングIIとか巡航ミサイルを基準にしてSS20を削減するということでは意味をなさないというふうなことをアンドロポフ提案のときから明快に打ち出しておるわけですが、私も英仏の核というものがソ連の言っているようなSS20に対するものかということになりますと、私の判断ではこれはそういう対象にすべきものじゃないのじゃないかと。あのSS20に対するものはパーシングIIであるとか巡航ミサイルと、こういうふうに判断はいたしておるわけですが、ソ連の基本的ないまの立場というものはどうも改める意思が、意向がないようでございます。グロムイコ発言日本に対しては相当厳しいことを言っておりますが、しかし、全体のトーンを見ますと相当ソ連としては抑制的じゃないかという判断をしているわけです。ですから、レーガン大統領の暫定提案というものは拒否しておりますけれど、しかし、INF交渉自体はここでやめてしまおうということじゃなくて、これにはやはり取り組んでいこうという姿勢があの中にはにじんでいるような感じがして、全体的には非常に攻撃的なものじゃない、むしろ抑制的なものだと。そして、INF交渉に取り組んでいくという姿勢は、あの中の全体のトーンとしては見えるというふうに見ておりまして、これから休暇が終わってからですね、ですから、会談というのが、一つの大きなわれわれとして注目しておる会談になるわけであります。
  104. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど来触れておりますように、非常に暗礁に乗り上げている。なかなか先行きの見通しが立たない。しかし、米ソといえども何とか成立の方向へぜひ持っていかなければならないというそういう気持ちはまだ残っているのではあるまいかというふうに感じられるわけですね。しかし、なかなかそれが言い出せない。その一つの妥協点として、これから予測される一つの問題としてこの一部制限交渉、一部制限というようなことが表面化してくる可能性というものについてはどんなふうに分析されておりますか。そういうことはあり得ないというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。それはあり得るというふうにお考えなのか。
  105. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの一部制限交渉というのは、どういうあれかちょっと私も理解しにくいのですが、INF交渉の中での中身というものは、これはいろいろと変化があるのじゃないかと思いますね、これから。ただ、ゼロオプションだとかアンドロポフ提案だとか、あるいはまたレーガン大統領の暫定提案とか、そういうもの以外にかなり交渉としては選択の余地というものが私は出てくるかもしれないと、こういうふうに思っておりますけれど、いまのところ余く判断は推測がつかない状況です。
  106. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これは、決してヨーロッパだけの問題じゃないことは言うまでもありません。特に極東地域に配備されている、全部であれは三百五十一基の中で百八基あるのですね、SS20は。それが日本あるいは中国、韓国を向いているという、これは大変われわれとしては不愉快きわまりない、深刻に受けとめなきゃならぬという、こういうことになろうかというふうに思うのでありますが、将来、こういういろんなことが想定される中で、仮説の上に立っていろいろ議論するということはいかがなものかというふうに思うわけでありますが、ヨーロッパである程度の交渉が成立した、それでまとまった、制限交渉に応じた。その場合に、極東に配備されているやつをまたヨーロッパへ移すなんという危険性というものがあり得るのではないだろうかというような問題も、これからいろいろと関連しながら考えていく必要があるのではないか。すでに安倍さん御自身が予算委員会等において表明されておりますように、確かに北方四島初めソ連の軍事力の強化というものは、これはひとしくあるいは常識的に認識せざるを得ない時点に来ているわけでありまして、これは決してアジア全体の平和という上から考えてみますと、これほど好ましくない環境はないわけでありますけれども、これからの変化がある中でそういったことが考えられるかどうか。仮説ですからね、これは何とも言えない話でございますけれども。そうすると、ヨーロッパにおいてもそういうことがあり得るのじゃないかというその危険な受けとめ方を持っていますと、なかなかこの交渉もうまく前進しないという背景が出てくるのじゃないかという感じがしないではないわけですけれ どもね。
  107. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もかねてから言っておるわけですが、SS20というのは非常に移動可能ですから、ですから、ヨーロッパにあるSS20も極東に移せますし、場合によっては極東にあるSS20もいつでもヨーロッパに移る可能性も出てくるわけですから、それだけにやはりグローバルというのは意味があるのじゃないかというふうに思っておりますし、この辺はヨーロッパ諸国もよくわかっておりますから、ヨーロッパ諸国もグローバルというものの形を支持しておるわけですが、これからどういう方向へ、いずれにしてもINF交渉というのが始まることは間違いないわけですから、どういう方向へこれは展開をしていくものか。やはり全体的な国際情勢等もありましょうし、また米ソの国際戦略というか、そういうものももちろん前提になるわけでしょうが、全体的に国際世論としてINF交渉というものを成功させろと、やはり核の軍縮を実行すべきであるという世論が高まっておる今日でありますから、私は、この世論がさらに大きく高まっていけば米ソINF交渉にやはり真剣に臨んでいくということにならざるを得ないと思いますし、わが国としてもそういう方向へ持っていくようにわが国なりの努力は続けていかなければならないと考えております。
  108. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにそれは大変必要なことだと思います。いまはわれわれとしてももう手をこまねく以外にないのじゃないかという、そういう感じが強く働くわけであります。  しかし、やはり常に言われておりますように、被爆国である日本としては、むしろ先頭に立って世界世論の喚起というものは、先ほど午前中にもありましたように、むしろ米ソを孤立化させるという方向へ持っていく唯一の有力な手段ではないか。  さてそこで、世論の喚起という、国連の場をかりてやる場合もありましょう、あるいはNGOの活動を通じてやる場合もありましょう。しかし、先般も私が御指摘申し上げましたように、昨年の第二回世界軍縮特別総会が終わった後一体どうなってしまっておるのだろう、こういう状況がぬぐい切れない。しかし、外務省としてもそれは当然捨てておけない問題であるはずでございますし、鈴木総理の所信を表明された演説内容、あれを具体的にどう進めるかという問題についてもさっぱりくさびが打ち込まれていかない。あれを具体化することの方がよほど大きな効果を——直ちにということは無理にいたしましても、一つの展望が開ける、そういう方向へ道を開くことになるのではないかなというふうに感じるのです。ただ抽象的に概念的に世論を喚起する、それは確かにわかるのですけれども、具体的にどういうふうに世論を喚起するか。それは時間もかかることでしょう。その短時間の間に、重立った国々でもいいでしょう、浸透させ、お互いに共通したそういう願望の中で核廃絶を進めていくという、具体論というものはいまお持ちになっていらっしゃるのかどうなのか。
  109. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、午前中にも国連局長から答弁いたしましたように、たとえば国連で、いわゆる広島長崎原爆惨禍を訴える展示会場を設けるとか、あるいはまた、世界各国から広島とか長崎に有力な人を呼んで実際に原爆惨禍というものを具体的に知ってもらうとか、そういう具体的な方向は確実に進んでおると、こういうふうに思っておるわけですが、それだけではもちろん十分とは言えないでしょう。ですから、日本としても今後軍縮の場において、軍縮委員会とかあるいはまた軍縮総会等の場において積極的にやはり努力を、日本立場を表明し続けていくということがもちろん必要であろうと思うわけでありますし、また、日本世界各国との交流の中でそうした軍縮問題、あるいはまた原爆の実際の惨禍といったような問題を具体的にやはり訴えるということが今後とも必要な措置であろうと、こういうふうに思います。
  110. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 言葉じりをつかまえて、というのは大変失礼な言い方なのですけれども、いまおっしゃっていただいていることは一つ目標であって、果たして具体的なスケジュールというものがもうすでに組み込まれて、たとえばいまおっしゃったわずかな問題でも結構です、それを、たとえばこの一年の目標の間にはこういうふうにやる、あるいは五年先にこういうふうにやるというように、短期中期のそういうビジョンを立てながら進めるということも、それはやはり具体的な方途としてきわめて必要ではあるまいか。恐らくそこまですでに組み込まれた計画をお持ちになっていらっしゃるだろうとは僕は思いますけれども、それで十分であると言えないことは確かにおっしゃるとおりだと思います。われわれとしてあとう限り、やはりこれは単に政府だから、野党だからどうこうというのじゃなくて、総意をやはりそこに結集して道を開いていかなければならないというふうに考えられますので、やはりそれをこれからも絶えず進めていっていただきたい。  さてそこで、午前中も話がありましたが、いま訪日しておりますカーピッツァ外務次官、午前中に、相当激論が交わされたということが伝えられております。もう安倍さんはその報告は受けられておりますか。
  111. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、午前中の論議につきましてはまだ聞いておりません。
  112. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 どなたか聞いていらっしゃる方いますか。
  113. 田中義具

    政府委員田中義具君) きょうの午前中は、アジア問題について話が行われたということ以上にはまだ詳しいことは承知しておりません。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは、アジア問題はわかるのですが、アジア問題の何をやったか、項目ぐらいおわかりになりませんか。
  115. 田中義具

    政府委員田中義具君) アジア問題、項目としてはたとえば中ソ問題とか、朝鮮半島の問題とかいうような問題について討議されております。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これ以上伺わないことにしましょう。先ほどの昼のニュースで、北方領土の問題だとか、当然グロムイコ発言という問題について、これからもというのですから、午前中もこれからも激論が交わされるようであると。当然でしょう。  それでグロムイコ発言というのは、これから何とか日ソの平和的な友好の道を開こうというわれわれとしての考え方に、水をかけるような発言であったろうと思うのですね。きわめて残念なことだと思うのですよ。言うなれば恫喝外交じゃないか。われわれが常にそういうがけっ縁にいるのかもしれません、あるいは。しかし、安倍さん御自身も一貫して述べられておりますように、言うべきは言って、日本立場というものを理解させるためにこれからも取り組んでいくのだと。ただ、なかなか僕らにもわかりかねる点がございまして、非常に理解に苦しむということでありますが、この問題ができたときにすでに高島大使に訓令を発して、チーホノフ首相との間において厳重に抗議の申し入れが行われた。反応については何も出ていないのですよ。どんな反応があったのか、それが間違いだと認めたのか。間違いだと認めるわけにはいかないでしょうね、向こうもプライドがあるでしょうから。その受けとめ方は、日本の真意、誠意というものが本当にわかってくれたのか、ただ聞き置くという状況であったのか。とするならば、これからどうしなければならぬのかという問題が残されますね。言うなれば、僕らもこういう公の立場で余りすぐ伝わるようなことを、言いにくいことを言いたくないのですよ、はっきり言うと。そういう屈辱的なことを言われますと、やはりわれわれとしてはただすべきものはただしてもらいたいというふうに言わざるを得ませんね。その辺の経過ということと、それから、その後の対応について、どういうふうにお取り組みになったのかお聞かせをいただければ大変ありがたいと思います。
  117. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) グロムイコ外務大臣の記者会見で日本に関する部分があって、特にその中で沖縄が巨大な核基地になっておるという内 容でありまして、私たちは全くの荒唐無稽な話でびっくりしたわけです。びっくりしただけじゃ済まないので、ソ連に対してこういう事実無根なことはやはりはっきりさせなければならぬと、そういうふうに思いまして、もちろん記者会見等において国民の皆さんに対して日本立場、沖縄に核がないという当然過ぎるほど当然のことでありますが、その日本の明確な立場を述べるとともに、ソ連に対しましては、高島大使を通じましてチーホノフ首相に日本に対するそうした発言は全く事実無根であるということを強く申し入れたわけでありまして、これはソ連の最高責任者に申し入れたわけでありますから、それなりの日本立場というものを天下にはっきりさしたということになると思います。  私は、ちょうど今回の高級事務レベル会議というのはいい機会でありますから、そうした日本立場というものを具体的に詳細にやはりソ連側に説明をする必要があると、こういうことで、恐らくきょうあしたにかけてその点についての立場を詳しく述べておると思うわけでございます。  きのうの松永次官との会談を聞いてみますと、とにかくソ連側政府を代表してカーピッツァ次官が来ておりますが、その口から少なくとも極東におけるソ連の核兵器というのは日本に向けられたものじゃない、日本目標としたものじゃないと、こういうことをはっきり言っております。ですから、これまでグロムイコ外相の発言というのは、一方においては日本に向けたものであると、あるときは日本に向けたものじゃないと、こういうことを言っておりますが、その点についてはソ連の統一した一つの方向といいますか、それが今回の会談ではっきりしたのじゃないかと思っておるわけでございます。それ以外の点はこれからの詰めていかなければならぬ課題であると思います。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それも大変聞きようによってはおかしな話でして、そうでなければ何も撤去した方がいいはずでございますからね。日本に向けているものではない、中国に向けられたものでない、韓国に向けられたものでないということになれば、一体どこに向けているのだろうと。まさか北極の方に向けているわけでもございませんでしょうし、どう考えてもその辺はきわめてわかりにくい向こうの主張であろうかと。これをただすことも一つの方法であろうということが一つ。  それから、先ほどもお話の中にございましたグロムイコ外相の発言として、非核三原則が厳守されるならば何らかの保障措置をとることにやぶさかではないと。それには核の先制攻撃をしないというような問題もあるのでしょうけれども、その核の先制攻撃ということよりも、ただきわめて抽象的な表現で、これはどういう話で、あるいは文書によって示されたのかどうかわかりませんけれども、何らかの保障措置をとると。核の先制攻撃ということでも結構でしょう。これもただ向こうは言いっぱなし、聞きっぱなしということで、その保障自体についても本当に保障され得るものなのかどうなのか。これは非核三原則を厳守していることは間違いないですよ、事実でございますからね。それをあえてそういう発言をしなければならない、非常に含みのあるそういう言い方という背景には、これもまあしばしば行きつ戻りつをした議論の中にございますように、F16の問題にせよあるいは原子力潜水艦の問題にしろ、あるいはミッドウェー、あるいはエンプラの問題にしろ、みんな核搭載が可能であるというそういう認識の上に立って、それはしょっちゅう佐世保なり横須賀あたりに入っているのじゃないか、あるいは三沢あたりに常駐しているのじゃないか、それは非核三原則というものが崩れているのじゃないか、まあ恐らくそういう発想であろうと思うのです。けれども、われわれは非核三原則ということでそれを国是とし、またそれを主張もし、断じてないと、沖縄に核なんということはこれはナンセンスだと、こういういままでの経過があるわけですけれども、ただもう一遍冷静に考えてみた場合に、ソ連という国も、ただ何にもよりどころがない、根拠がない、そういう点を通じて、ただおどかしみたいなことをやるのかな、またここに新しい疑問が一つ出るのですよね。絶えずそれの繰り返しが続いているみたいな感じがしないではないのですけれども、安倍さんとしてその辺をどういうふうに分析なさっていますか。
  119. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まさにその疑問といいますか疑惑というのが、私はソ連がねらっているところじゃないかと思うのですね。あの沖縄に巨大な核基地があるとグロムイコさんが言ったと、そしたら日本政府は真っ向からこれを否定した。しかし、そんなこと言ったってソ連があれだけ明快に言った以上は何かあるのじゃないかという、やはり国民の中にも疑問とか疑惑が出てくるのじゃないか、そういうところにソ連一つの政略的なねらいが私はあるのじゃないかと、こういうふうに思われてならないわけなのでしてね。要するに、沖縄に核の基地がないということは、これはもう全くはっきりしているわけなのですから、それをあえて具体的に言うというのは、何か政府国民との間といいますか、あるいはまたアメリカ日本との間といいますか、そういう中にくさびを打とうというふうなにおいすら私は感じざるを得ないわけでありまして、われわれとしてはあくまでもそういう中で毅然としてやはり非核三原則を遵守しているのだと。それは安保条約においてアメリカもこれを確認しておるということであるし、あるいはまた沖縄に核がないということも明白な事実でありますから、とにかく、ソ道の当局と話し合うときは事あるごとにこれを明らかにしていかなければならない。そうして、そうした疑問とか疑惑が出てこないように持っていかなければならないと、こういうふうに考えておるわけなのです。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、恐らくソビエトはさらに反論するだろうと思うのですよね。というのは、日本には核がない、核がないと言っていると。それは僕らも確信しますよ。けれども検証の措置だとかチェックする機能というものは全くないじゃないかと。ただ、ないないと、こう言っているだけであると。いま戦術的に考えてみた場合に、核を搭載しているというのは常識ではないかと、軍事的に見れば。そう考えるのが向こうのやはり通念というよりも、一般的な受けとめ方として日本政府が言っているのは違うのだと。実際アメリカの艦艇にしても持っていることはこれは常識としてあたりまえだと。だから、そんなふうな見方をしているとも考えられませんか。
  121. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 恐らく世界の常識からすれば、現在のこうした国際情勢の中で、非核三原則というようなものを貫いているのは日本だけだと思うのです。ですから、そういう中でソ連が、これだけの日本が大国になっている、同時に日米間で安保条約を持っている、ですからソ連からすれば、非核三原則なんていうようなことを言っているけれど、自分たちは疑問を持っていると、これくらいのことは恐らく考えると思うわけなのですが、それが具体的に沖縄に核基地なんていうようなことをあえて向こうの最高責任者の一人が口に出すということは、これは私はまさに何かをねらったためにする議論じゃないかと。私たちからすると、全く事実無根のことをあえて口に出すというところにわれわれは非常に何か政略的なものを感じざるを得ないわけなのです。
  122. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういった背景の中で、御存じのとおり、ことしの夏に予定されているソビエトのタイフーン型ミサイル搭載原子力潜水艦、これが極東に配備されるというようなことが伝えられているようであります。これはもう世界で最大規模と言われていますね、三万トンクラスと言われていますから。それで八千数百キロ飛ばすミサイルが搭載できると。そういうふうなことを考えますと、ソビエトが言っているのは、あながち政略的なそういう意図を持っているものとばかり受けとめられないのじゃないかという感じが、これは実際に配備してみなければわかりません。これも配備しないかもしれない。けれども、もっぱらのいろいろな情報によれば、新聞が伝える情報によれ ば、それは恐らくことしの夏に極東に配備されるはずである。あるいはまたミンスクみたいなクラスの空母が配備されないとも限らない。こうなってきますと、一体どうなるのだろうというそういうことも含めて、せっかくの機会ですから、外務次官カーピッツァにやはり強力に言うべきことは言い、またなごやかに話する場合にはなごやかに話をしながら、少しでも日本の真意というものを、十二分にということは不可能にしても、ある程度理解を強めてもらう。幾つも問題があると思うのですね。もう絶好のチャンスだと思うのです。本来ならば安倍さんがグロムイコに直接会っていただいて、それで思い切り議論をしていただくことが一番望ましいのかもしれませんけれども、なかなかそうはいかない。グロムイコさんは今度わが国に来る番であるということで、もう一歩も譲らないみたいなそういう状況でございますが、私は時と場合によっては勇断を持って、機会が、チャンスがあればむしろお出かけになって、こうした問題を総合的にじっくり時間をかけてお話しし合うのも、解決にならないかもしれないが、しかし一つの足がかりをつけることになりはしまいかというふうに思いますけれども、それは依然として今度はグロムイコさんが来る番だと、だから行くわけにいかぬのだという姿勢はお崩しになりませんか。
  123. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやはり国としての立場がありますし、ソ連との間には定期の外相会談を持っているわけですから、そして当然グロムイコさんに来てもらわなければならない番ですし、ですから私は、またそういうことに対してわれわれも心からこれを受け入れたいというふうに考えているわけです。東京でやるかモスクワでやるか、そうグロムイコさんもこだわることはないのじゃないかと、こういうふうに思っております。いずれにしても今度の高級事務レベル会談でも、グロムイコ外相の訪日問題というのは、いわゆる定期外相会談というのは重要な議題一つにもなっておりますので、事務レベルの会談でも詰めていくと思います。まあ私もカーピッツァさんとの会談でもこの問題はいずれにしても持ち出さなきゃならぬと、こういうふうに思っております。カーピッツァ次官も、きょうから実質的な討議をやろうということを言っているそうですから、時間をかけて、きょう、あしたゆっくりやろうというふうに考えております。
  124. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題についてのひとつの締めくくりとして、これからどんなふうに推移するのかということは予断を許さないわけでありましょうけれども、まあその国々にはそれぞれの経済力があり、また資源というものの制限がありますので、われわれとしてはこれがのべつ幕なしに拡大されるということはもちろん避けなければなりませんけれども、そういう側面を考えてみた場合に、これからも急速に、依然として国力の許す限り、ソビエトもアメリカも血道を上げてさらに拡大する方向へ行く可能性が強いのか、あるいは現状維持でもっていまINFであるとかSTARTの交渉にまちながら、現状維持にとどめるのか、あるいは削減の方向へ向かうのか、そういう問題が必ず近い将来に起こってこなければならないし、まあ交渉がまとまればこれは一番いい話なのですけれども、一方においてはいま申し上げたように経済力の問題、資源の問題等々いろいろあるわけですから、こういったことでまた外務省としても、五年先、十年先あるいは二十年先、二十一世紀を展望してのビジョンというものを、そういう面にかかわる一つの展望というものをお持ちになっておられたならばお聞かせをいただければ大変ありがたいと思います。
  125. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 世界の情勢を見ましても、また世界の世論を判断いたしましても、私はやはりこれ以上ずるずると核の軍拡が続くということは許されない状況に来つつあるのじゃないか、こういうふうに思っております。これはアメリカもあるいはソ連も、十分その辺のところは知っておるのではないだろうかと思います。したがって、いろいろと相互間には論点の違いもありますし、主張の違いもあるわけですが、このINF交渉というのは可能性としては絶望的ではなくて、むしろまとまる可能性は含んでおるのじゃないか。  特にこれは時間の問題もあると思いますが、いよいよ秋以降、ヨーロッパアメリカが配備する中距離核の実施が具体化されるというふうなことになれば、むしろ交渉がまとまる方向へ動いていくのじゃないだろうか。問題はやはり、ソビエトというよりは私は西側の陣営にも一つの問題があると思います。やはり、西側の足並みが乱れるというふうなことになれば非常にむずかしい状況になってくると思いますが、西側が結束をするということで米ソINF交渉を支持していくということになれば、まとまる可能性というのが相当出てくるのじゃないだろうか。日本もそういう中で、とにかくこれがまたヨーロッパの中距離核も、パーシングIIとか巡航ミサイルも配備される、それではまたソ連がさらにその上に何か強化をしていく、またそれに対してさらに西側も対抗上核を拡大するというふうなことになれば、これはもうずるずる行っちゃうわけでありますし、それがやっぱり世界の不幸になるわけです。これは両国にとりましても、経済は両国ともいいわけじゃないわけですから、負担も大きくなってくるわけですし、全くこれは世界にとって無意味なことですから、私は、全体的に見てすでに世界において核は、充満しているとは言いませんけれども、地球を破滅するぐらいの核が両陣営にあるわけですから、これ以上のことはやるべきじゃないし、またそういう空気はこれから漸次高まってくるだろう、こういうふうに思っております。その点については、私は可能性は十分あるのじゃないかというふうな判断をしております。
  126. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、少々条約の問題に移らせていただきたいと思うのです。何せ条約七件というのですから、大変なことなのでございますね。それをわずか二十分そこそこでやろうというわけですから、これはまさに超人的な事柄であろうと。大体問題点をしぼって、これから若干お伺いをさしていただきたいというふうに思います。  最初に、小麦協定にかかわる問題から入りたいと思います。農水省の方お見えでございますか。——すでに申し上げてございますように、昭和五十六年度の決算報告で、会計検査院から指摘された事実がございますでしょう。その中身について御説明をいただきたいと思います。簡単で結構、僕もこれは持っているのですから、集約して特に問題点ということについて。
  127. 森元光保

    説明員(森元光保君) 先般、会計検査院から御指摘のありました内容につきまして説明をいたしますと、三十四年から麦につきまして、外麦でございますが、バラ値引き措置というのをやっておりまして、これにつきましては、いわゆるバラ値引き措置をするために六百円の売り渡し価格につきまして値引きをしておったわけでございますが、すでにサイロ建設等もかなり進んできて、したがってバラ流通も九四、五%進捗をしているということで六百円の値引きをする必要がないのではないかというような御指摘でございました。
  128. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 年間四十億だそうですね、六百円の値引きをすることによって。三十四年からでありますと大変な金額に——もちろん、当初の金額と最近の金額では違うかもしれません。三十四年の時点ではどのぐちいだったのですか。年間でいいですから。
  129. 森元光保

    説明員(森元光保君) 三十四年につきましてはバラ値引きをトン二百円やっておりまして、バラ値引きの売却数量が三十六万二千トンでございます。
  130. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうすると、三十四年以来金額は若干の違いがある、最近では六百円ということでありますけれども、三十四年からすでに二十三、四年経過しておるわけですから相当の金額に実は上るわけ。その値引きされたものについては、値引きのものは消費者の手に渡るという仕組みになったのですか。
  131. 森元光保

    説明員(森元光保君) 値引きをいたしまして、 これを各企業はサイロの建設とか、あるいは企業の施設の整備等に使うということで実施をしておったわけでございますが、四十一年からは製粉振興会というのが発足いたしまして製粉振興会にバラ値引きをした金額の一部を積み立ていたしまして、これを各それぞれの製粉企業がサイロの建設とか、あるいは流通の近代化のための必要な施設等に対して使うという形でもって活用をしてきたという経過がございます。
  132. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはわからぬわけじゃないのです、その施設の整備だとかサイロの建設だとか。けれども、二十何年間もの間やらなければそれが充足されなかったのかという素人的な発想ですけれども、非常に理解に苦しむわけ。その辺、一体どんなふうになっちゃっているのかなという、したがって、会計検査院からも指摘を受けたのであろうというふうに思えてならないわけですよね。
  133. 森元光保

    説明員(森元光保君) 三十四年当時におきましては、バラの売却率が約二割程度でございまして、あとは御案内のように袋で詰めまして、そしてそれで流通をさしていたという形になっております。したがいまして、袋詰め等の経費が、これは政府経費になりますが、そういった経費がかなりかかるということでこれをできるだけバラ流通にいたしましてそういった経費を節減したいというのがこの事業のそもそものスタートで、ねらいでございまして、その後だんだんバラ施設いわゆるサイロ建設等が進捗をいたしまして、バラでの販売率がふえてまいりました。そういうことで、現時点におきましては大体九六%程度バラで売却をしておるというような状況にございます。
  134. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても先ほどお答えになりましたように、もうすべて整備されたような、完全とはいかないまでもほとんど整備された状況にあるわけでしょう。そうする、とわざわざ年間四十億の値引きをしなければならぬという理由にはならなくなっちゃう。もうすでに値引きをしないという方向に決定をされて実施に取り組まれたわけですか。
  135. 森元光保

    説明員(森元光保君) 先般の麦価改定、二月に行われておりますけれども、その際に、輸入麦につきましては相当の部分がバラ流通になってきているということで当初の目的はおおむね達成をされたというふうに考えております。したがいまして、本年二月の麦価改定時におきましてトン当たり六百円値引きをしていたものを二百五十円にするということで削減をいたしました。今後におきましてもこの二百五十円につきましては麦類の流通の合理化、特に最近国内麦がふえてきておりますので、そういったことも考えまして今後可及的速やかにこれを廃止するという所存でございます。
  136. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 わからぬではないけれども、何となく腑に落ちないのです。依然として二百五十円の値引きが残されているということになると、可及的速やかにということは一体いつごろを目途にして全面廃止に持っていかれる方針なのか、その点はどうなっていますか。
  137. 森元光保

    説明員(森元光保君) ただいまも申し上げましたように、現在、非常に内麦につきましての生産がふえてきているということもございますし、それから地方の港湾におきましてのサイロ建設がまだおくれているというような点もございますので、そういったものの整備の状況等を見きわめながらできるだけ早い時期にこれを廃止するという考え方でございます。
  138. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 せっかく会計検査院からも指摘があったことでありますし、その値引きされたものが果たして適正にいま申し上げているような方面に使われていたのかどうなのか、これは厳重に当然チェックされているのだろうと僕は思いますけれども、しかし外部から見た場合それはわからないわけだね、どうなっちゃっているのだろうと。ですから、それは価格にいろいろ影響が出てくることも当然考えられるという、そういう面で消費者の立場考えますと決して好ましい仕組みではないのではないかと。やはりある一定というか、体制ができた以上はこれを廃止する方向へ持っていくのが当然であろうという点をただしたかったためにわざわざきょうお出かけをいただきました。それはその方向でぜひ取り組んでくださいよ、それでないとやっぱり問題を残すことになりますから。
  139. 森元光保

    説明員(森元光保君) ただいま申し上げましたように、二百五十円につきましては今後の麦の流通の合理化を推進してまいらないといけないわけでございますが、そういったことを考えまして、ただいまも申し上げましたように可及的速やかにこれを廃止していく所存でございますので御理解をいただきたいと思います。
  140. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、食糧増産援助についてお尋ねをしたいわけでございます。これも小麦協定及び食糧援助の一環としてお伺いする問題であります。  いろいろと外務省が窓口になりまして、今日まで発展途上国に対する積極的なお取り組みをされてきたことは私も十分理解ができるわけでありますけれども、ただやはりちょっとひっかかる問題があるなという実は感じがしてなりません。そこで、概括的で結構でございますので、現在行われている食糧援助の仕組みについて簡単で結構ですからおっしゃってくれませんか。
  141. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 食糧増産援助でございますか、それとも食糧援助でございますか。
  142. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 増産援助。
  143. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 増産でございますね。  食糧増産援助の概要でございますが、日本の基本的な考え方は、食糧援助そのものはもちろん必要でございますが、これは緊急の問題ということで、基本的にはやはり開発途上国の食糧不足の問題は自助努力というものによって食糧生産の増大により解決されるべきであるという基本的な考え方に立ちまして、自助努力を支援するためにただいま肥料、農薬、農業機械等を食糧増産援助として出しておるわけでございます。この援助は、昭和四十三年度から五十一年度までは食糧援助の枠内で行ってまいりましたが、五十二年度からは新たに食糧増産援助という新しい予算をつくりまして、このもとで実施しております。この援助を施するに当たりましては、発展途上国の要請に基づきまして食糧増産プロジェクトの内容等を検討いたしまして供与額を決定いたしておりますが、予算額は五十六年度二百六十億円、五十七年度二百九十億円、こういうことになっております。なお援助の対象国には、いずれかと申しますと所得水準の低い国ということを原則として対象といたしております。  以上でございます。
  144. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 増産援助で非常に目立ちますのが、肥料が大きな分野を占めるみたいに見受けます。その他いまおっしゃったように農薬であるとかあるいは農業機械。ただ、でき得べくんば無償供与というような形ができれば非常にいいのではないかなという、それにもいろいろと限度がありましょうけれども。  先般も政府開発援助の一環として私が申し上げたわけでありますが、こういった問題、特に水、医薬、医療保健、食糧、エネルギーというのは発展途上国においてはもう必須の要素でありますので、その中でも、特に申すまでもないわけでありますが、依然として恒常的な飢餓状態に置かれているのが数億ある。それは確かに食糧そのものでもって援助する場合もありましょうけれども、これにも限界がある。どうしてもやっぱり自助努力を通じてその国で穀物の生産ができるという方向へ持っていかなくちゃならぬということで、食糧増産援助計画というものが組み込まれてそれを現実に実施されていると、こうなろうと思うのですが、残念なことに日本から差し上げるところの、たとえば肥料に例をとりましても非常に高いということで、特にバングラデシュだとかネパールあたりで敬遠される、買いたくないということになったのじゃ何のための増産援助なのかなという、これは最後にまた安倍さんにもお伺いしなければならぬ政治的な判断をどうしても要求されますので、その辺はいかがなものでしょうか。
  145. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御指摘のとおりでございます。わが国が食糧増産援助で使っております肥料は、実は輸入原料に依存いたしておりますので、自国産の原料を使っております欧米諸国の物に比べますとかなり高くなっておるわけでございます。いま肥料産業の合理化推進ということによりまして徐々には下がっておりますけれども、まだ高いというのは事実でございます。私ども、発展途上国に対しまして食糧増産援助の一環といたしまして肥料を提供いたしますときには、業界の実情、生産コストの合理化等いろいろ相談いたしまして、できる限り安くするというふうには努力をいたしております。  ただ、五十七年度におきまして、先生ただいま御指摘のとおり、バングラデシュとかネパールから食糧増産援助の要請がございまして、援助はいたしましたけれども肥料は入っておりません。
  146. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういうわけでして、確かに外務省からいただいた資料を拝見するまでもなく、米国あるいはヨーロッパと比較をした場合、たとえばアンモニア、尿素は、アメリカヨーロッパの方が三分の一日本より安い。あるいは四分の一、四分の三。全然太刀打ちができない。どこだってやっぱり安い物を買いたいということは当然でありますので、そういったひもつき援助というふうな感じを受けるようなやり方がいいのか、それとも先ほどちょっと私触れましたように、無償供与というような形がとれないものか。やはり喜んでいただいて、日本に対する評価の高まりというものが、さらに強い結びつきがそこに生まれて新しい一つの展開ができるということを期待するならば、どうしても、それは少々苦しいけれどもやる必要があるのではないのかという感じがしてならないわけですけれども、その辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  147. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 私、申し落としましたけれども、ただいま私どもがいたしております食糧増産援助はすべて無償でございます。
  148. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは食糧援助でございましょう。
  149. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 食糧増産援助も無償でございます。
  150. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 全部無償ですか。
  151. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 全部無償でございます。
  152. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただ、無償資金供与をやって、その受けた資金でもって日本の肥料会社から買うという仕組みにはなっていませんか。そうなると、いま肥料会社は不況産業ですから、これはどうしてもコストの高いものを外へ出さなくちゃならぬという、こういうことにならざるを得ませんね。そういったところでひもつきみたいなものが生まれやしまいかという心配が出てくるわけですね。そうじゃなくて、全部がいまおっしゃったように無償供与と、こういうことで出ているならばこれは心配ないのです。
  153. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 御指摘のとおりです。  私どもの無償資金協力というのは、お金を向こうの政府にあげまして、それで物を買ってもらうという仕組みになっておりますので、ただいま日本では、肥料は、御案内のとおり特定不況産業安定臨時措置法というものによりまして指定されております。そういうことで日本の肥料は外国の肥料に比べますと高いわけでございますから、向こうの政府から買う場合にはより高い物を買うと、ただ日本から無償でもらった金で高い物を買う、こういうことになるわけですね。
  154. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 安倍さん、やりとりお聞きのとおりでございます。  買う方にしてみればありがた迷惑ということになっちゃう。無償資金をもらうのはありがたいと。品物を買うのはちょっと待ってくれと。むしろ安いアメリカヨーロッパから買った方がいいと。これでは、日本が一生懸命食糧増産援助をやっているはずなのだけれども、少しもありがたがられないというそういう評価を受けてしまうことをおそれます。  前に通産大臣もお務めになったお立場でございますので、そういう現状というものをよく御存じおきいただいていると思いますけれども、やはりいま食糧増産計画というものは、これは何物にもかえがたい優先事項であろうと思うのですね、発展途上国にとってみれば。しかし、そういうような隘路があるということになれば、これはせっかくの援助も水泡に帰してしまうというおそれなきにしもあらず。そういう点についてはどうしても政治的な配慮というものが必要になってきますので、どんなふうにおやりになったらいいのか、どういまそれを決断してこれから取り組もうとされているのか、いまやりとりをお聞きになった上でお答えいただいても結構でございます。もともと御抱負をお持ちになっていればそれでも結構でございます。
  155. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 経済協力は、御承知のように人道的な立場という面もありますし、あるいはまあ両国間の相互理解、相互協力をさらに進めるといった面に基づくものもあるわけでございまして、そういう面から日本としては積極的に経済協力しておる。特に、国際的に日本が経済大国と言われる力を持ってきたわけですから、私は国際責任という面からも経済協力は積極的に取り組んでいかなきゃならぬと思います。  その経済協力の中で無償、有償あるわけでございますから、無償協力につきましては、比較的力の弱い国々に対しまして優先をしてこの無償供与をいたしております。  特に、食糧援助協力等は、向こうの農業、食糧生産を拡大していくということでやっておるわけでありまして、これは全体的に見まして非常に相手の国は喜ぶわけですね、特に食糧援助協力はですね。食糧援助協力の場合は、いまの肥料なんかはもちろん日本から送るわけでありますが、多少世界的には価格の高いものであっても何としても無償でありますから、これは非常に喜んでいただいておるわけです。全体的にこれでもって相手の国が、何か日本が余っているから一緒に食糧援助の中の一環として、いわば不況産業の救済というようなことでやっているというふうには私はとっていないと思いますね、多少高いという面はありますけれども。しかし、これは日本が、やはり人道的あるいは相互協力という面での国際責任を果たすという一環で取り組んだ協力でありますから、各国ともこの点については非常に評価をしておる、私はそういうふうに判断をしておるわけなのですが、しかし、国際価格に見合うように日本としてもそれは努力をしなきゃならぬことは当然であると思っております。
  156. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後のくだりのところで一応了解をいたしたいと思います。  やはり、バングラデシュやネパールが断ったという事例もあるわけですから、断られないようなそういう取り組みというものが当然のことながら必要であろうと、このように思えてなりません。  あと残された時間が三分と少々しかありませんので、次は領事条約、これはちょっと条文のところを個条書き的に僕が申し上げますので、これはやはり政府委員の方にお願いする以外ないだろうと思います。  まず第一点は、第二十条、「領事機関の職員の数」とありますね。「合理的かつ正常と認める範囲」とは一体どういう範囲なのか、どういう数値を言つのか、これが一点。  第二十三条、「ペルソナ・ノン・グラータであると宣言された者」とは一体どういう種類の人を指すのか。  第四十一条、「重大な犯罪」とは、もちろんそれは殺人だとか何かに入るのだろうと思いますけれども、そのほかに考えられるものは。  第四十三条、「裁判権からの免除」の項で、「民事訴訟については、適用しない。」という問題がありますが、よく交通事故の問題があるのです。それに関連してお答えをいただきたい。  以上四点です。
  157. 藤本芳男

    説明員藤本芳男君) 最初の二十条と二十三条についてだけお答えいたします。あとの点は条約局の参事官の方からお答えいたします。  二十条の「合理的かつ正常と認める範囲」とい うことは、この基準につきましては規定があるわけではございませんけれども、機能面と行政需要の量というこの二つの点から一応基準が考えられはしないか。  機能面というのはどういうことかと申しますと、領事関係での特権免除を与えるという目的そのものが、領事任務が能率的かつ安定的に遂行されるということがございますので、この点があれば、これは合理的、安定的、能率的に遂行される状態、それに足る人数あるいはそれを超える必要のない人数という判断が出てこようかと思います。それから、行政需要の量につきましては、在留の邦人が多い少ない、あるいは入港する船舶の数が多いか少ないかという点がございます。  それから第二十三条、「ペルソナ・ノン・グラータ」でございますが、これは好ましからざる人物というふうに私ども日本語で言っておりまして、接受国、領事機関を接受いたします国に対して敵対的な言動を弄したりあるいは犯罪行為あるいはスパイ行為、こういう好ましくない行動をし、あるいはするおそれがある人物ということでございます。
  158. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) それでは私の方から、四十一条、四十三条についてお答え申し上げます。  四十一条では、重大な犯罪の場合について拘禁されるということが書いてございますけれども、この「重大な犯罪」というものをどのような客観的基準を設けようかということにつきましては、国際法委員会の場で議論をされたわけでございますけれども、結局各国の法制が違うということで、これは「重大な犯罪」という定義でそのままとめておこうということになった経緯がございます。それで二国間条約等でも「重大な犯罪」ということで規定しておる場合もあるわけでございますけれども、これはやはり各国の法制によって違うということで、一義的に各国の判断に任されておるということでございます。  そこで、わが国の法制でこれをどのような形で判断しようかという点につきましては、一応、緊急逮捕をなし得る法定刑が長期三年以上の犯罪ということで解釈しようという方向でただいま検討中でございまして、多分そのような結論になるだろうと思います。同様な解釈は、日英領事条約の場においても行われておりますので、大体その辺が妥当な線ではないかと思っております。  それから、さらにお尋ねの四十三条の件でございますけれども、四十三条には、確かに領事任務遂行に当たって行った行為についての司法当局または行政当局の裁判権に服さないということが書いてありまして、その二項の(b)におきまして車両、船舶、航空機により引き起こされた事故による損害について第三者の提起する民事訴訟についてはこれは適用しないと書いてございます。これはまさに交通事故があったような場合に、刑事管轄権は別でございますけれども、民事訴訟についてはこれに服さしめるということを目的とした条項でございます。  さらに、交通損害につきましては、五十六条という規定がございまして、「領事機関の構成員は、車両、船舶又は航空機の使用から生ずる第三者の損害に対する保険について接受国の法令により課される義務を負う。」ということになっておりまして、そういう意味では保険についても十分に手当てをするようにということが決められておりますので、この両面から、領事官が起こす交通事故については条約上十分な配慮がなされておる、こういうことになっております。
  159. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 終わります。
  160. 木島則夫

    ○木島則夫君 最初に、条約とそれから協定について少しお話を聞いて、その後軍縮の問題あるいはサミットなど懸案の外交問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず、国際博覧会条約改正について聞きたいのですが、今回の国際博覧会条約改正というものは、フランスが革命二百年を記念するパリ万国博覧会を一九八九年に、アメリカとスペインがコロンブス新大陸発見五百年を記念するシカゴ・セビリア万国博覧会を一九九二年に開催をしたいということから規約の改正が行われた、私はこういうふうに、規約の規制を緩和しようというものがそのねらいのように聞いております。  しかしその国際博覧会条約がつくられましたのは、この国際博覧会をやたらにやったり、また無秩序にこれを運営する弊害を除去するために開催頻度等を規制することに眼目があったはずであって、その後の改正で規制が一部緩和されたことはあったと言いながら、全体としての流れはやっぱり規制強化の方向をたどってきたのじゃないかというふうに受けとめています。  このことから考えますと、今回の改正によって例外的とは言いながら開催間隔を、何と言うかな、制限なく短縮できるようにすることは条約の精神を矢わさせることになっていきはしないか。つまり各国の事情、事情と、わかりますよ、わかりますよでやっていったら、こういう条約というものはあってなきがごときものになっていきはしないかという心配をしているのだけれど、この点どうですか。
  161. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  条約のこれまでの基本的な考え方、方向というものはまさに委員指摘のとおりだったと私どもも受けとめております。ただ、今回の改正の背景は若干特殊なケースでございまして、フランス、それから米国及びスペインにとっては非常に特別な意味合いを持つ行事ということでございまして、関係国としてはみんなこれを何とか認めたいというふうに考えて今回の改正になったわけでございますが、御指摘の、こういうことでは本来の趣旨に反することにこれからなっていくのではないかという点につきましては、二点申し上げたいと思うわけでございます。  第一点は、こういう例外規定の適用というものは三分の二以上の特別多数決で議決するということにいたしまして、例外規定が安易に利用されないように、条約の基本的な精神を損わないようにという配慮を加えたということが第一点でございます。  それから第二点は、実質的な点でございますが、まず、いままで私どもの承知している限りでは、一九九二年以降に、一般博覧会の開催計画というものは当面承知しておりません。  いずれにいたしましても、こういう一般博となりますと、開催国にとっても大変財政負担が多いわけでございます。参加国についてもその点は同様でございますので、こういう今回のような事態がしばしば起こってくるということはないであろうというふうに予想しているわけでございます。
  162. 木島則夫

    ○木島則夫君 国際科学技術博覧会が昭和六十年に筑波研究学園都市で開催をされる。現在、英、米、仏など九カ国、四つの国際機関が参加の意思を表明している、こういうふうに受け取っております。この博覧会は「人間・居住・環境と科学技術」をテーマにしておって、人間の生活環境の改善を考える上でも、また、発展途上国の都市計画ですか、それに厳しい自然環境の克服などのための技術協力あるいは技術移転、こういうものに寄与する上でも、発展途上国からの積極的な参加はもう絶対に欠かせない条件であるというふうに私は考えておりますが、発展途上国の参加の見通しはどのようになっているのか。また、政府は発展途上国の積極的参加を得るためにどんな努力をされるか、しているか。あわせてソ連、中国の参加はどうなっているのか、この辺についても承りたい。
  163. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  まず、開発途上国の参加の問題でございます。ただいま御指摘の点は私どもも全く同様に考えているわけでございまして、できるだけ多くの開発途上国が参加してくれることが望ましいと考えているわけでございます。それで現在までのところ、いままでいろいろ参加のために努力してまいりました結果、開発途上国といたしましては、タイ、民主カンボジア、チリ、キューバ、リビアという五つの開発途上国が原則として参加するつもりであるという意向を表明してきております。  どういう努力をしているかということでございますが、一つは、開発途上国に対して数回にわたりまして参加を奨励するミッションを派遣しております。それからもう一つは、閣僚等要人の往復がある機会、これはこちらからの訪問、それから先方からの来訪というような機会をとらえて働きかけを行っております。それから、やはり何といたしましても、開発途上国といたしましては経済状態が苦しいだけに、参加経費の軽減が非常に重要であるということを言っておりますので、参加所要経費を軽減するためにできる限りのことを考えようということで、最近いろいろ検討を行っているところでございます。ただ、この点につきましては、原則論でございますが、科学万博の一般規則で公式参加国間の無差別待遇ということを言っておりますので、開発途上国に無制限に経費軽減のための措置を講じるというわけにも必ずしもいかないわけでございますが、できる限りその所要経費を軽減するということで、いろんな経費の項目につきまして手当てができないかということで検討を加えております。そういたしまして、検討を加えているこの参加促進措置の問題につきましては、今後開催することになります政府代表者会議等の場において、さらに具体的に煮詰めていきたいというふうに考えているわけでございまして、こういう施策を通じて開発途上国が多数参加してくれれば大変いいことであるというふうに考えているわけでございます。
  164. 木島則夫

    ○木島則夫君 もう一つ質問したのだけど、ソ連と中国ね。
  165. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) 申しわけございません。ソ連と中国の参加の問題でございます。  ソ連につきましては、昨年七月に井川政府代表が訪ソいたしました際、先方の商工会議所とか科学アカデミー展示委員会の幹部と会談いたしまして働きかけを行っております。それから、先般永野日商会頭が訪ソされた際にもこの問題を取り上げていただいております。そういうことでございまして、私どもといたしましては、ソ連は積極的な反応を示しており、近々正式に参加回答が寄せられるのではないかと期待しているわけでございます。  次に中国についてでございますが、これも本年の二月に政府代表、それから科学万博協会の江戸副会長等のミッションが中国に参りまして関係官と話しまして参加を慫慂したわけでございます。その際の先方の反応は、積極的かつ真剣に検討しますということでございまして、これも近々正式に参加回答があるものと期待しております。  以上でございます。
  166. 木島則夫

    ○木島則夫君 せっかくの機会ですから、やはりこういうものを十分にうまく利用してPRをして日本というものを理解させる、そういうよすがにしていただきたいというふうに思いますし、そういうことを通じてお互いに仲よくやっていけるようなそういう場の設定にもひとつこれから御努力をいただきたいというふうに思います。  次に、領事条約に関するウィーン条約ですが、本条約昭和四十二年に発効していて、したがって、わが国が本条約の加入に踏み切るのに発効後十六年もかかっているわけですけれど、どうしてこんなにかかっているのかということが一つ、その事情ですね。  それから、いままで加入を見合わせてきた理由の一つに、本条約の定める特権免除には従来国際慣習法として認められていたものに比べて過大なものが含まれていることが挙げられているわけだけれど、具体的にはどういった点が問題になったのか。また、こういった点については条約加入後は本条約によることになるわけだが、その点全く問題はないのかというのが第一点です。どうでしょう。
  167. 藤本芳男

    説明員藤本芳男君) ただいまお尋ねの二点のうち、最初の点についてまずお答え申し上げます。  十六年という年月は大変長いわけでございますけれども、この条約が予想しております特権免除の範囲は、日本が当事国であります二国間条約のものよりも範囲が広いということと、それから、国際慣習法そのものがわりあいもやもやしたものでよくわからない面があったという点とこの二つがございましたので、かなりの時間を使って見てきた、こういうことでございます。もちろん、国際慣習法そのものが何十年もかかってでき上がったしろものであるということは御承知のとおりでございますけれどもわが国領事関係、いわば純粋な意味での領事関係に入ったのはここ三十年でございまして、やはり十年ぐらいは様子を見た、こういうことでございます。  それでは、第二の点につきましては参事官から……。
  168. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) お尋ねの第二点の慣習法と現在の条約との差異がどうかという点だったと思うのでございますが、この点に関しまして、若干経緯的な御説明をさしていただきたいと思うのでございますが、ウィーン領事条約を採択いたします際に、国際慣習法というものは必ずしも明確じゃなかったという事態がございます。二つの立場の差はございまして、たとえばイギリスとかアメリカとか、伝統的な考え方を持つ国はむしろ外交関係については非常に重い特権を設ける必要があるけれども、しかし領事については、派遣国の国民を接受国において保護するのが主として領事の任務であるので、特に条約等で決める場合を除いては特権免除は要らないのではないかという極端な議論もあったわけでございます。そういうことで、特権免除はできるだけ制限したいという考えが一方にございまして、他方共産圏等は、領事官であっても派遣国から派遣されるうちは役人であるので、外交官と同じ特権にすべきだという強い主張をしたわけでございます。共産圏の方としましては、自由主義圏の中において自分たち特権免除をかなり重く認めさせることによって活動を保護しようという思惑があったようでございますけれども、そういうことでウィーン領事条約採択の際に、この原案につきまして両方の面からかなり争いがありまして、結局、妥協の産物として現在のウィーン領事条約ができているわけでございます。  そういうことで、そういう経緯を踏まえていまの領事条約を見てみますと、若干の点につきまして、たとえば日米、日英等、伝統的な考え方から結ばれております条約よりも広い特権を認めている例がございます。  典型的な例を一つ御紹介申し上げますと、たとえば公館の不可侵の例でございます。日米等では、公館の不可侵につきましては一般的に館長の同意が必要とされる、ある場合にはいいということのほかに、火災等、緊急事態の場合はいいということ、それに加えて外務大臣の同意があるとき、あるいは正式の令状があるときには入ってもいいということになっていたわけでございます。それで、外交関係条約の場合には、館長の同意がなければ入れないというふうに、非常に厳格になっているわけでございます。  それで、このウィーン領事条約はその中間をとりまして、館長の同意がある場合のほかに、緊急事態については同意があるものとみなすということにしているという意味では、より広い特権を認めているわけでございます。  それから、公文書の不可侵につきましても、ウィーン領事条約は、いずれのとき、場所においても公文書は不可侵であるということにしておりますけれども、日米、日英の領事条約におきましては、公館内に保管されている文書にのみこの不可侵を認めており、そういう見地から公文書についてはほかの文書等とこれを別に分けて保管しなければならないというふうに厳密に規定しているわけでございます。  例示すればそのようなところがございますので、こういう経緯を踏まえまして、日米、日英とウィーン領事条約との差があったということで、日本としては伝統的な立場をとっていたものですから、そのようなものがどちらに落ちつくかという帰趨を見つめたかった、こういう経緯がございます。
  169. 木島則夫

    ○木島則夫君 いまのお答えの中にも多少含まれていることなのですけれど、わが国は、日米、日英、それに日ソの三つの領事条約締結していて、このうちソ連ウィーン条約には入っていませんから、二国間条約との競合問題は起こらないわけですけれど、日米、日英の両条約については、本条約の七十三条ですか、これによりますと本条約によって影響を受けないこととなっているわけです。それじゃ、わが国と米、英二国との間の領事関係というものは本条約によるのか、それともその二国間の条約によるのか、もし双方が適用されるとするならば、それぞれが定める特権免除に相違があった場合、いずれによることになるのか。またこの点について日本だけじゃなくて、米国、英国の考え方はどうなのか。簡潔で結構ですから教えていただきたい。
  170. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先生御指摘のように、二国間条約としては三つあるわけでございますけれども、御指摘のように、ソ連ウィーン領事条約特権が狭過ぎるということで入っていないという点がございますので、ソ連とは日ソ領事条約のみに従って規律をしていくということになります。  米国と英国につきましては、両方ともこの条約に入っておりまして、先生御指摘のような条項もございますので、米国、英国との領事条約ウィーン領事条約との適用関係というのは個々の問題について問題になるわけでございますけれども、この条約特権免除を付与することを決めておりますけれども、その条約に決めている以上の特権を与えてはいけないということまで書いていないわけでございます。  そういうことで、この両条約の趣旨を見てみまして、比べてみまして、特定の特権免除で広い方を適用するということにしていけば問題がないだろうということで解決を図ることにしておりまして、この件につきましてはアメリカ、イギリスとも基本的には合意を見ております。
  171. 木島則夫

    ○木島則夫君 それじゃ次に、国際小麦協定についてお聞きをいたします。  一九七一年の小麦貿易協定、貿易規約はいわば国際商品協定の根幹とも言うべきいわゆる経済条項を欠いているわけでございます。そのためにこれまでこの規約を六回にわたって延長をする、その一方で、経済条項を盛り込んだ新たな規約の作成交渉が行われてきた。しかし、いまだに合意が得られていない。今回さらに三年間延長することになったわけですが、新たな規約の成立の見通しはどうでしょうかね、その辺から聞きたいのですけれど。
  172. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  結論を先に申しますと、見通しは非常に暗いといいますか、少なくとも明るくないという感じがいたします。  これまでの交渉の経過を見ましても、基本的なところについて合意が成立しておりませんし、特にアメリカとかカナダといった主要輸出国が、この食糧安全保障は、第一義的に各国それぞれがやらなければいけない問題である、それからその備蓄につきましても、各国自分の必要とする範囲で適正な在庫を持つべきであるという立場で終始しておりますためにまとまりませんでしたし、こういう態度が変わらなければ、つまり、特に生産国側が積極的でなければ交渉会議を再開してもうまくいかない、新協定の成立の見通しも必ずしも明るくないというふうに判断されるわけでございます。
  173. 木島則夫

    ○木島則夫君 アメリカではここ数年豊作が続いて、穀物の在庫が非常にふえる傾向を示している一方で、穀物価格が下落をして農家収入に打撃を与えているとも聞いております。このため、アメリカ政府はことしの穀物の作付面積を三分の一削減するという、これは史上最大の減反に乗り出すことを明らかにしたわけであります。このうち、小麦の作付面積の削減幅は三五%と言われておりますけれど、もしこれが実施をされ生産削減が成功いたしますと、小麦相場は急上昇することが予想される。小麦の輸入量の五八%をアメリカに依存をしているわが国にとりましては、これは深刻な影響が出てくることは当然でございます。政府は今回のアメリカの減反計画をどのように受けとめているかというのが第一点。  また、将来あり得るかもしれない小麦の供給不足に備えて、この際アメリカから供給量確保の約束を取りつけておく必要があるのじゃないだろうか、これが第二点。いかがでしょうか。
  174. 野中和雄

    説明員(野中和雄君) お答え申し上げます。  今般、米国の農務省は八三年産の穀物の減反計画への参加申し込み状況を発表したわけでございますが、これによりますと、先生御指摘のとおり、小麦につきましては減反申し込み面積は三千二百万エーカーということでございまして、作付基準面積九千百万エーカーに対しまして三五%の削減ということになっているわけでございます。この削減面積がどの程度生産の減少に結びつくかどうかということにつきましては、今後の農家の対応であるとか、あるいは気象状況でございますとか、そういう点にいろいろ左右されるわけではございますけれども、削減面積、削減率が三五%ということでございますので、かなりの生産減少を招く可能性もあるわけではございます。  世界需給への影響ということになりますと、しかしアメリカ以外の国がどう対応するかというようなことも考慮しなければならないわけでございますけれども、米国の生産というのが世界需給の中に占める比重が非常に大きいわけでございますので、これだけ減反になりますと、全体としてこれまで過剰基調で最近推移してまいりました世界の穀物需給というものをある程度引き締めるような効果があるというふうに考えております。
  175. 大神延夫

    説明員(大神延夫君) お答えいたします。  ただいま先生から、小麦の供給量確保について約束を取りつけてはどうかという御質問でございましたが、ただいま御説明申し上げましたように、今回米国農務省がいわゆるPIK計画、現物支払いによる削減計画をとったわけでございますが、そこで面積の削減率は、ただいま前の答弁者が御説明しましたとおり、小麦につきましては約三五%になっております。しかしながら、この削減が行われる場合には、農家としては当然生産量の低いようなところから削減をしていくであろうというところから、今回の計画のもとで米国農務省が小麦の需給見通しを発表しております。これによりますと、面積の削減率は先ほど先生も御指摘のとおり三五%になりますが、ただ生産量では、一九八二—八三の米国の小麦年度の生産が七千六百万トンでございますが、このPIK計画をいたしましても八三—八四小麦年度の生産は六千二百万トンということで、面積は三五%減になりますが、収量では二〇%減程度であるというふうに見通しているわけでございます。  さらに、米国農務省が今回の計画に基づいて輸出はどうなるかと、こういう見通しをやはり出しておりますが、これによりますと、一九八二—八三小麦年度ではアメリカの輸出は四千二百万トン、小麦でございますが。これに対しまして八三—八四小麦年度におきましてもほぼ同量の四千百万トンというものを計画しております。つまり、ほとんど輸出については減を見込んでいないということでございます。さらに期末在庫について見ますと、前年度は四千三百万トンでございましたが、このPIKを実施いたしましてもこの期末在庫は三千九百万トンで、これも若干の減であるということでございます。  したがいまして、いままでの御説明を要約いたしますと、米国はこのPIKを実施いたしましても前年とほぼ同量の輸出を計画しているわけでございますし、また在庫水準も依然としてここ数年来の中でもかなり高い水準にございます。したがいまして、当面米国からの供給不足といった事態は起こり得ないのではないかと考えております。したがいまして、さしあたり供給量確保ということでこの際約束を取りつけるというようなことは必要ではないのではないかと判断しております。
  176. 木島則夫

    ○木島則夫君 次に、千九百八十三年の国際コーヒー協定についてお聞きをしたい。  国際コーヒー協定は輸出割り当て制度によってコーヒーの需給と、そして価格の安定を図ろうというものであって、現在この制度が発動をされて需給の調整が図られていると、これが実態だと思います。今回の新協定の作成交渉では生産国の間の輸出割り当てをどういう基準によって配分するかということをめぐって非常に何というか難航したということでありますけれど、実態はどうだったのかということ。そして、現行の協定ではその基本輸出割り当ては過去の一定期間の輸出実績を基礎として算定することとしているのに対し、本協定では単にその理事会が決定するとしているだけで算定の基準を明記をしておりません。これはどういう事情によるのか。もしその理由が、算定の基準について生産国の間で合意に達することができなかったからだとするならば、今後理事会で基本輸出割り当ての設定をめぐって難航することもあるのではないかと思いますけれど、これはどんなものでしょうか。
  177. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  最初の輸出割り当てについての生産国間の問題でございますが、これは基本的には各生産国が自国に有利な配分方法を主張した、それでなかなか妥協しようとしなかったということでございますが、特に今次協定作成交渉過程におきましては、その間に一九七五年のブラジルの霜の害というのがございまして、それでそのブラジルの生産量が非常に減ったということがございます。その霜の害があった年を入れるとか入れないと、そういうことによって計算の基準がまた非常に変わってくるというような事情がありまして、そういうことでまた生産国の間での意見の調整がむずかしかったということでございます。基本的には最大の生産国であるブラジルと、それに次ぐ生産国であり、かつその生産量がどんどんふえているコロンビアの間でなかなか合意が成立しなかったと、これが輸出割り当ての配分基準について交渉が難航した理由でございます。  それから、第二点の基本輸出割り当ての問題でございますが、これも御指摘のとおり、輸出国間の調整が最終段階まで調わなかったためにこの算定基準について合意に達することができなかったということでございますが、今後ともそういうことではまとまらないのではないかという問題があるのじゃないかという御指摘でございます。今回の交渉で合意できなかったわけでございますから、今後のこの設定についての協議においても当然難航すると思われるわけでございます。これは理事会において協議して決定するわけでございますが、そういうことで非常にむずかしい問題を持ち越したままになっているとは思いますけれども、同時に、現在コーヒーは生産過剰傾向にあるわけでございます。輸出国側としても、輸出割り当てを継続していかなければ価格安定が非常にむずかしいという問題がございます。それからコーヒー協定は、最終的には加盟国協力して妥協して結論を出して有効に実施していくという傾向がございますので、そういう点を総合いたしますと、確かに問題を持ち越しておりますけれども、理事会でこの問題を討議すれば恐らく何とか合意が得られるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  178. 木島則夫

    ○木島則夫君 協定の最後はジュート協定ですね。  まずジュート協定は、ほかの商品協定がいわゆる経済条項として緩衝在庫であるとか、また輸出割り当て等の価格安定制度を持っているのに対して、研究及び開発、市場の拡充及び費用の削減という三つの事業を実施することによってジュート輸出国の輸出収入の安定を図る仕組みになっている。そうですね。協定作成交渉の過程では価格安定制度として緩衝在庫の設置が検討されたと聞いておりますけれど、これは非常にむずかしかった。それが実現できなかったのはどういう事情によるのか。  この事業中心ジュート協定というものは、UNCTADの「一次産品総合計画」で言うところの「その他の措置」を中心に構成された最初の商品協定であるけれども、このように価格安定制度を欠いた「その他の措置」中心協定でもジュートの価格と供給の安定を図る上で十分実効が上がると期待できるものかどうか。協定三十条は、ジュートの供給、価格安定化問題に関して引き続き検討することを規定しておりますけれど、いずれはこの価格安定制度を導入する必要があると考えられているのか、その辺の事情もあわせてお聞きをしたいものであります。
  179. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  まず、緩衝在庫の設置ということで話が円滑に進まなかったという事情でございますが、これは消費国ないし輸入国側、それから生産国ないし輸出国側、双方において問題があったということでございます。基本的に生産国側は、緩衝在庫ができればその方が価格安定に役立つということでそれを望んだということはございますが、消費国側は主として緩衝在庫を運営する上での技術的な問題、これは特にジュートの原料とそれからジュート製品と両方入っているわけでございますが、これを原料だけにするか、製品も含めるか、そうするとどういうことになるかとか、あるいは変質の問題をどうするかと、そういう技術的な点に問題があるということを消費国側では指摘しておりました。それから、生産国側は資金の負担を特に問題にしたわけでございます。輸出国はバングラデシュとかネパールとかこういう後発開発途上国中心なわけでございまして、資金の負担が困難であるということを問題にしたわけでございます。さらに突っ込んで申しますと、これは若干私見にわたりますが、消費国側から見ますと、ジュートというのは価格もどちらかといえば低下傾向にあり、紙とか化合繊の代替品との競争で非常に苦しくて生産がずっと低減している品目でございまして、生産が低減して競争力がなくなっているものをバッファーストックをやれば問題が解決するかというと必ずしもそうでないわけでして、むしろ競争力をつけるとか新しい販路を見つける方が早いということで、まじめに考えても緩衝在庫が一番いいかどうかという問題意識があったと思います。  それから、資金負担の輸出国側の問題でございますが、これは後発開発途上国中心、だから何とかすべきではないかという考え方もあり得ると思いますが、商品協定というのは基本的に産消ないし輸出、輸入ということで平等と申しますか、費用を折半し合って投票権も半分に分け合って両者の協力でやっていくということでございますので、それを生産国が、そういう国が多いからといって経費は全部輸入国で持つというのはやはりおかしな原則ということになりますので、消費国としては受けられない。そうなると生産国としてはそんなに金が持てないということが基本的な問題であったというふうに考えられるわけでございます。それで御指摘のとおり協定三十条で価格安定化措置について引き続き検討することになっているわけでございますが、基本的にそういう問題があると存じます。  こういう協定で価格安定に役立つかというのが第二の御指摘の点でございますが、先ほど申し上げましたような点からしますと、このジュートについてはこういう協定で非常にその目的を達成できるのではないかという感じがいたします。いま御指摘のありました研究開発、市場の拡充、費用の削減という事業がうまくできれば、ジュート製品の生産国にとって非常に役立つわけでございます。しかも、そのほか情報の取りまとめとそれから価格、供給の安定化の問題を含む重要問題についての討議、検討ということも行うことになっているわけでございまして、そういうことでこのジュート協定の目的、任務全体としてとらえますと、長期的に見たジュートの価格の安定を図る上でも重要な役割りを果たし得るのではないかと考えるわけでございます。  それで、最後に三十条の点に戻りまして、それじゃ日本はどう考えるのだということでございますが、先ほど申し上げましたような考えからいたしますと、ジュートについてはこういう協定とい うのが一つの健全かつ効果的な行き方ではないかと考えられるわけでございまして、わが国といたしましては、この三十条における討議には当然参加するということになると思いますが、いまのところの判断、感触といたしましては、こういう緩衝在庫制度を導入することは考えなくていいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  180. 木島則夫

    ○木島則夫君 それじゃ、このジュート協定の最後から二番目の質問なのですけれど、ジュート協定は、事業を行うための特別勘定の財源に一次産品共通基金の第二勘定からの融資または贈与を予定をしておるけれど、共通基金はまだその発足の目途が立っておりません。そこで、この共通基金設立協定発効の問題は、本年六月のUNCTAD総会中心テーマの一つになると思うものでありますが、わが国はいかように対応する所存か、その前提として共通基金設立協定の発効の見通しはどうかということにもなると思います。いかがですか。
  181. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいま委員仰せのとおりに、この一次産品共通基金の問題は、来る第六回UNCTADにおきます一次産品問題の討議における一つの大きな柱になるというふうに見ております。この基金の発効の見通しについてでございますけれども、御案内のとおりに、この基金が発効するためには批准国の数が九十カ国以上、また総資本総額の三分の二以上の額を有する国による批准が行われる必要があるということになっております。しかるに、三月三日現在の時点におきましては、批准をいたした国の数は四十二、また拠出資本の合計額につきましては、わずかに三二%に達する国が批准をしているということでございまして、所定の基準をかなり下回っていると申さざるを得ないと思います。わが国は、一次産品共通基金というものが非常に重要な要素である、途上国の一次産品価格安定のために重要な役割りを演ずるという認識のもとに、この基金協定が採択されるに至る過程におきましても、非常に積極的な協力をいたしております。また、この協定受諾に当たりましては、一昨年の六月にいち早くこれを批准している第五番目の国であったわけでございます。このような観点から、来るUNCTADにおきましても、何とか早い時点でこの共通基金が発足するように積極的に努力をいたしたいと存じております。  なお、従来におきましても、昨年及び一昨年の国連総会におきまして、共通基金の発効を促進するための決議をわが国が提案いたしまして、各国に訴えている、この決議案は採択されているわけでございます。
  182. 木島則夫

    ○木島則夫君 ジュートの最後の質問です。  ジュート生産国ですね、この輸出国の大部分はアジア諸国であって、特にバングラデシュ、ネパールの両国はジュートの生産に大きく依存をしていると、これはもう御承知のとおりです。わが国アジア地域内の先進国として単にその協定に参加をするにとどまらず、特別勘定に拠出をする等の面で積極的に協力をしていくべきであるというふうに考えるのですけれど、どんなものでしょうか。最後にそのことを聞いて協定の質問を終わります。
  183. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  確かに特別勘定に対して、これは任意拠出でございますが、協定成立、発効すれば考えなければならない問題だと思います。しかし、現在のところまだその協定が発効した後どういう事業活動を行うことになるか、つまり、特別勘定の対象となる事業の内容がはっきりしておりません。それから、ほかの主要加盟国がどういう態度をとるか。日本だけで支えるわけにもいかないと思いますので、ほかの国がどういう態度をとるか。それから、金融機関からの資金調達というものがどういうふうに見通されるか、そういういろんな関連する点も十分に見きわめ、総合して検討していく必要があると、こういうふうに考えております。
  184. 木島則夫

    ○木島則夫君 中距離核戦力の問題については、当委員会でも午前中から論議の対象になっておりますけれど、この中距離核戦力をどう考えるか、わが国でも非常に深刻な問題になってきているということです。核戦力をめぐる欧州極東とでは明らかな相違があろうかと思います。欧州では、英仏両国が独自の核戦力を持っているとは言いながら、やっぱり米ソを頂点とする対立関係中心になっている、これは紛れもない事実であろうと思います。これに対して極東では、米ソのほかに中国にも独自の核戦力があって三極的な対立関係にある。情勢はむしろ、これは私見でございますけれど、欧州よりももっと複雑だという見方を私はいたしております。  そこで第一に、極東地域における米、中、ソの戦域核兵器の現状をどう把握しているか、この点から伺います。
  185. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 中距離核ミサイルにつきましては、ソ連極東地域にSS20を約百基配備しております。また中国は、ソ連の中距離核ミサイルの射程に匹敵するミサイル約二千キロ以上のものを計算いたしましたけれども、単弾頭ミサイルといたしましてT2及びT3を約六十基保有している模様でございます。米国はこの種の地上配備中距離核ミサイルは保有しておりません。
  186. 木島則夫

    ○木島則夫君 いまお話がありましたような現状は、ヨーロッパにおける米、ソ、英、仏の戦域核兵器のバランスと比較してどのような意味があるか、どう評価をするか、これは次の質問です。
  187. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 欧州極東とではいろいろ条件が異なっておりまして、特に一つは地理的条件でございまして、ソ連の首都から離れているという地理的条件がございます。それからもう一つは、通常兵器のバランスがもともと異なっているという条件がございます。それから中国というものをどう位置づけるかという問題がございまして、きわめて複雑でございますので、一概に比較するのは困難と存じております。
  188. 木島則夫

    ○木島則夫君 微妙なことはよくわかるのですけれど、もうちょっと具体的に何かありませんか。
  189. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) いま申し上げましたことをもう少し敷衍いたしますと、地理的な問題といたしましては、極東の太平洋付近における中距離戦域核というものはモスコーまで届かないわけでございます。その点が、フランスやドイツにおける中距離核がモスコーに届くという点とこれは全く異なるわけでございます。  それからもう一つは、中国というものをこれをいかように考えるか。これはむしろ政治的な判断の問題でございます。  それからさらに基本的なことといたしまして、通常兵器のバランスが、これは戦後三十年間一貫しまして、ヨーロッパ戦線におきましてはソ連の地上兵力が圧倒的に強いということが前提になっておりまして、それに対抗するにはアメリカの、対抗すると申しますよりも、それを抑止するにはアメリカ核戦力というのが基本的な条件になっております。ところが、極東におきましては必ずしもそういう状況は存在しておりませんで、その場合に中距離核の持つ意義も違ってくるということでございます。
  190. 木島則夫

    ○木島則夫君 一つ伺いたいのですけれど、中国の核兵力というものをどういうふうに判断するのですか。いま政治的判断というふうな言葉があったけれど、中国をどういうふうに見ますか。
  191. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 中国の戦略と申しますのは、伝統的にこれは報復力としてのきわめて限定された核戦力とそれから人民戦争との結合であると考えられています。
  192. 木島則夫

    ○木島則夫君 大体わかりました。  さてその次に、これは今朝来からも話題になっておりますけれど、レーガン大統領中距離核戦力米ソ同水準にすることを提案したけれど、グロムイコソ連外相はこれを拒否した。理由としては三つほど挙げております。それはここでは申し上げない。また、その日本に関する言及は、一体真意がどこに存在するのかもわからないというか、はかりがたいような言及をしているわけでございます。重複するかもしれないけれど、外務大臣は、特に日本に言及した部分について、きのうから開かれております日ソ事務レベル協議でのい ろいるの発言ですね、カーピッツァ次官発言ども踏まえてこれをどう分析なさるか、まずこの辺を聞かせていただきたいと思います。
  193. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) カーピッツァ外務次官との実質的討議がいま始まったばかりでありまして、もっと詳細に聞かないと最終的な判断というのはちょっとできかねるわけなのですが、アメリカレーガン大統領の提案を断わったというのは、これはグロムイコ外務大臣が説明したとおりでありますし、グローバルな立場は認めないということでしょうし、やはり英仏の核を勘定に入れないINF交渉はあり得ないというそういうことなのだろうと思いますが、日本に対する発言というのは、これは私どもは高島駐ソ大使からチーホノフ首相に対しても抗議をいたしておりますように、日本には核は存在しない。特に沖縄に巨大な核があると、そういう点から極東に中距離核をソ連が増大しようということは本末転倒じゃないか、事実無根の現象をとらえて、それをSS20の増強の一つ議論にしようということは間違っているということは、これは今度の論議ではっきりさせなければならない問題点だと、こういうふうに思っております。  ソ連がどういうことでああいうふうな発言をしたのか。私は、あの実質的討議が始まる前の段階においては、ソ連は相当政略的な意味があるのじゃないか。日本の世論分断といいますか、あるいはまた日米関係の分裂と、そういうものをねらった発言であるというふうなとらえ方をしておるわけです。そうでもとらえないと、これは現実を無視した議論ですから、そういうふうに考えておるわけです。
  194. 木島則夫

    ○木島則夫君 どうですか、さっき私ちょっと言及したのですけれど、きのうから始まった日ソ事務レベル協議でのカーピッツァ次官発言などをもう一つその中に入れて、グロムイコ発言のバックグラウンド、そういうようなものの中で進展はございませんか。
  195. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま実質的な論議をしていますから、それを十分われわれ検討してみて最終的な判断はしたいと思っておりますが、カーピッツァ次官も、とにかく日本に向けるものじゃない、極東における核は日本に向けるものじゃないということはずっと終始一貫して言い続けておりますが、それじゃあのグロムイコ発言の背景というのは一体どういうところにあるのか、そういう点をもっと話を聞いて判断したいと思うのですね。
  196. 木島則夫

    ○木島則夫君 極東SS20の撤去の問題については、これも議論をされてきているところですけれど、一つ確認をさしていただきたいのですがね。政府は、ソ連SS20の新たな移動のみに抗議をしてその撤去を求めているのか。さらに、現在百基ですか百八基ですか、と言われているすでに配備されている分も撤去するように求めているのか、これは確認の意味で伺いたい。
  197. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、われわれはアメリカのゼロオプションを支持しておるわけでして、そのゼロオプションというのは、御承知のように中距離核の全廃ということを目標にしておりますから、その限りにおいてはもちろん欧州SS20のみならず極東におけるSS20の全廃も当然含まれなければならない、こういう考えであります。
  198. 木島則夫

    ○木島則夫君 SS20以外に、これは数ははっきりとわかっておりませんけれど、数十基あると言われているSS4ですかSS5、こういうものについても同様に撤去を求めていくのか。また、バックファイアとかあるいはバジャー、こういうものの中距離爆撃機ですね、核搭載、こういうものについての認識はどうなのでしょうか、具体的に伺います。
  199. 門田省三

    政府委員門田省三君) この点につきましては、先ほど来大臣の御答弁の中で、ただいまジュネーブで行われておりますINF交渉、これをわが国は注意深く見守る、なかんずくアメリカが提案しておりますゼロオプションあるいは最近新たに提案されました中間的案、これを全面的に支持するということでございます。  このジュネーブでのINF交渉の対象は、御案内のとおりに地上発射ミサイルでございまして、ただいまのところ、いわゆる爆撃機、これは対象になっておりません。そのようなことでございますので、お尋ねのございましたバックファイアあるいはバジャー、こういったものは当面問題の対象にならない、かように考えます。  なお、御指摘のございましたSS4あるいは5、これはジュネーブにおきましても交渉の対象になっているものでございます。したがって、これは念頭に置かれるべきものであろう、かように考えます。
  200. 木島則夫

    ○木島則夫君 抗議をして撤去を求めるだけでソ連がこれに応ずるとはとても私は考えられない。そうあってほしいのでありますけれど、なかなか現実の問題としては非常にむずかしいということになります。  そこで、いろいろ先ほども宮澤先生からの御提言もございまして、日本世界唯一被爆国としての立場から、国連でさまざまな訴えを起こし国際的な世論の喚起を図る、あるいは国連における軍縮委員会、軍縮総会、こういうところで積極的な活動をする、そういった平和戦略、これはもう当然なくてはならないのでありますけれど、それだけではなかなか現実的な解決というものはむずかしい。いろんなことを総合的にやらなければならないというふうに思うわけです。  ソ連が現在の態度をもし変えないのならば、これは日本アメリカ協力をして、何らかの対抗措置を講ずるというこの決意と裏づけを持ってソ連削減交渉の場に着かせることなくしては、SS20等の撤去の可能性はあり得ないと私は思う。外務大臣、どういうふうにお考えですか。
  201. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、軍縮を実現していくためには、絶えず総合的な努力というのが必要であろうと思います。その一環として、日本努力もこれを傾注していかなきゃならぬと思いますが、当面、やはりINF交渉を成功させることが、私はこれからの核軍縮へ向かっての一つの引き金になっていくのじゃないかというふうに判断をしております。  したがって、INF交渉の成功のために日本がどういう努力をしていくか。しかし、何といいましても直接の交渉はこれは米ソでやるわけでありますから、日本としては、現在の立場から見ればこれはやはりアメリカを強力に支持していく、ヨーロッパとともにアメリカを強力に支持していって、アメリカソ連との交渉において強い立場INF交渉が成功するようにアメリカ自身が力を発揮していくということが必要じゃないか。私たちはいまアメリカのゼロオプション、そして暫定提案を支持しているわけですから、アメリカにその点を踏まえて積極的に取り組んでもらいたいと、こういうふうに思うわけです。
  202. 木島則夫

    ○木島則夫君 政府としては、要求があればミサイル戦艦ニュージャージーとか、空母カール・ビンソンの寄港を認めることを決めて、また、第七艦隊の艦船に対する巡航ミサイルの配備計画に異を唱えないということは、アメリカの対抗措置を認めていることでもあるわけですね。したがって、事実上は、日米が協力をしてその対抗措置を講じつつ、これをバックに一方でと言った方がいいでしょうね、これをバックに一方で力のバランスというものを保ちながら、さっき言ったように交渉の場に着かせるというような方法は、これは非常に現実的な問題として起こりつつあるわけですね。こういう行き方に対して外務大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  203. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまアメリカから、カール・ビンソンであるとかニュージャージーの寄港は全く求めてきておらないといいますか、そういう連絡も通報も全くないわけですから、果たしてアメリカがこれを実行しようとしているのかどうかわれわれはわかりませんが、しかし、少なくともそうした通報があった場合においては、日本としては安保条約のたてまえがあるわけですし、その関連規定等も踏まえながらこれに対処し ていくというのが、これが日米安保体制の上からいけば筋であろうとこういうふうに思っておるわけですが、これが直接INF交渉にどう響くかということになりますと、ちょっと判断ができかねる問題で、あくまでも日本立場から言えばこれは日米安保体制、そのもとにおける安保条約、そういうものを踏まえてこれは対処していくべきものであると、こういうふうに考えておるわけです。
  204. 木島則夫

    ○木島則夫君 ちょっと先のことになりますけれど、五月の末にサミットがアメリカでありますね。政府は、このサミットにおいてヨーロッパ諸国、特に西欧諸国に対してもSS20の極東移動を阻止して、グローバルな削減を行うように共同して行動するように強く求めるべきだと私は思いますが、当然こういうことも議題の中に入るのでしょうね。
  205. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これまでになく日本は、アメリカ並びにヨーロッパに対しましては、INF交渉においてやはりグローバルな立場交渉すべきである、あるいはまた極東犠牲になるようなことはこれは困るのだということを強く言っておりました。アメリカは十分に日本立場はわかっております。ヨーロッパも理解をいたしておるわけでありますが、今後INF交渉がどういうふうな形で進展を見るか推測が困難でありますが、やはりサミットの段階においてもこの問題が依然として大きな課題としてあるならば、サミットは経済問題が中心ということですが、しかし世界の首脳が集まるのですから、これは当然首脳間において話し合われることは私はあたりまえのことじゃないかと。そういう中で日本日本立場というものを、いい機会でございますから、これはアメリカヨーロッパの首脳にも申し述べるということもこれはあり得ることであろうと、こういうふうに思っております。議題として取り上げるということは、これは経済サミットでありますから別問題として、政治問題はいずれにしても論議されるわけですから、その中の一つの大きな問題点になる可能性は私は十分あると見ております。
  206. 木島則夫

    ○木島則夫君 レーガン大統領が、このサミットに先立って各国首脳との事前会談を提唱しております。一部実現をするというような報道もなされておりますけれど、日本の対応はどうなるのですか。
  207. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) レーガン大統領がサミット参加国の首脳と個別に会談をするということは、私は一部の報道としては聞いておりますし、また、コール首相はレーガン大統領との会見の日程等もすでに決まったように承っておりますが、その他の首脳との個別会談についてはまだ承知しておりませんし、まだ日本の場合も具体的に話が出ていないと、こういうふうに聞いております。
  208. 木島則夫

    ○木島則夫君 いまの段階でおっしゃりにくいかもしれませんけれど、外務大臣としてはどうですか。事前会談というものはやっぱり必要だというふうにお考えですか。
  209. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日程が大変しぼられておりますから、私がいまここでそういうことが具体的にあるかないかということを申し上げる段階まで至ってないのですが、しかし日米間の首脳会談は、チャンスを見て行われることが私はやはり大事なことだと、こういうふうに思います。そういうことが実現できるかどうかは日程上の問題はあるとしても、日米首脳会談は、これだけの同盟関係にあるわけですから、そのチャンスがあればしばしば行われるということは必要だと思います。
  210. 木島則夫

    ○木島則夫君 日程上非常に困難ではあるけれど、チャンスがあればといういまの御発言、私もそうだと思いますね。  いまここでさんざん議論されている中距離戦域核の問題ですね。やっぱりこれ一つとっても大変ですし、これからの米ソ関係というものを考えていった場合、極東の平和というものを考えていった場合に、これはそういうお話し合いの場があった方が私はいいというふうに考えております。いまのお話で大体わかりました。  ほとんど時間がございませんので、このサミット関係について、最近の報道にございました点をちょっと確かめさしていただきたいのでありますけれど、政府は、このサミットにおいて世界公共投資基金ですか、というものの創設と、これをもとにした世界的規模での公共事業の実施を提言すると聞いておりますけれど、この辺はどうなのかということと、こういったことについて、もしやるとするならば、具体的にどのような事業を行っていくのか。果たして先進国の協力が得られるものであるかどうか、この辺はどんなふうに受け取っておられますか。
  211. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) どうせサミットではマクロ経済の回復といいますか、経済の振興のためのいろいろな議論が行われることになると思いますけれども、しかし、そうした世界公共事業推進の基金というようなものをいま日本政府が打ち出すというふうな構想については、まだ何にも政府の部内では論議されたこともありませんし、私も聞いておりません。
  212. 木島則夫

    ○木島則夫君 最後に、ちょっとベトナムの戦況と申しますかについて伺いたいのですけれど、ベトナムの民主カンボジアに対する攻勢がタイ領内にも波及をして、タイを初めとするASEAN諸国の不安も増大をしているというのが最近の状況です。これを外務省としてはどう認識をし、日本がこれにどう対応というか、ASEAN諸国に対する日本の対応ですかね、こういうものについては外務省としてどんな見解をお持ちでございますか。
  213. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先生御指摘のとおりに、ベトナム軍がカンボジアに侵攻し、さらに最近は、新聞報道でもございますが、タイの領土を侵しております。これに対しまして日本政府は、一貫して理由のいかんを問わず、他国の領土を侵すということはこれはとうてい容認できない、ベトナムのカンボジア侵攻はもちろんのこと、いわんやタイ侵攻ということに、タイの国境を侵すということになりますと、これは重大な問題でございますので、したがいまして、政府は一貫してASEAN支持と申しますか、ベトナムに対して撤兵を期待する、要求する、こういう態度で一貫しております。ごく最近の例で申し上げますと、たまたま北ベトナムの外務次官が日本を訪問いたしましたので、その際、安倍外務大臣から日本政府の強い関心を表明するとともに、こういったカンボジア、あまつさえタイの国境を侵すというようなことはこれは慎んでほしいという趣旨のことを、外務大臣から直接ベトナムの外務次官に申し入れたと、こういうことでございます。
  214. 木島則夫

    ○木島則夫君 最後に、そういう一貫した日本の主張を申し入れる、これが現在のところの対応措置ですか、もっと具体的なことを何かお考えですか。
  215. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 直接のお答えになるかどうか存じませんが、先ほどの御指摘の、ベトナム軍のタイ国境を侵すということの結果新たな難民が出てまいりましたし、また戦闘の結果、負傷者その他も出てまいっております。その方々に対する人道的立場からするところの援助、これは今後とも大いに従来どおり続けてまいる方針でございますし、それからかたがたベトナムに対しましては、これは隔靴掻痒の感がございますが、特に、平和憲法のもとにおける日本の外交的努力というものには、もちろん実力行使は伴うということはこれは絶対ございませんので、やはり誠実なる外交努力を、手を変え品を変えして、話し合いによって何とかベトナムの翻意を促すという真摯な努力を今後とも続けていくというのが当面の政府考え方でございます。
  216. 木島則夫

    ○木島則夫君 安倍外務大臣ね、こういった情勢はやっぱりアジアにおける非常に憂慮すべき状態だと思いますね。大臣として、この日本がやはりアジアの中での平和戦略を推進されていくというお立場から、ASEAN諸国に対する働きかけとか、そういうことはお考えになっておりますか。
  217. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ASEAN諸国とはいろいろと連絡をとっておりますし、私も先般ビルマに参りましたときに、タイのシティ外務大臣ともカンボジア問題を中心にして主として話し合ったわけです。今度の総理のASEAN訪問についてもやはりこのカンボジア問題が一つの大きな議題になると思っております。われわれは、いま局長が申し上げましたように、基本的にはいまのベトナムがカンボジアに侵入しているということですから、これを撤兵してカンボジアに本当の自主独立の政権ができるための一つの大きい眼目として日本も今後とも努力を続けていかなきゃならぬ、そういう意味でASEANとも連絡をとりながら、またASEANもいまの三派を支持しておりますが、その点についてもわれわれ十分理解も示しておりますし、同時にまた広範な外交の一環としてベトナムの外務次官も日本に呼んだわけであります。そうした話し合い等も通じまして日本立場を明らかにいたしまして、そしてインドシナ半島が一日も早く平和になっていくようにいろいろと努力を今後とも重ねてまいりたい、このように思っております。
  218. 木島則夫

    ○木島則夫君 ありがとうございました。
  219. 立木洋

    立木洋君 大臣総理のASEAN訪問について若干お尋ねしたいと思うのですが、中曽根内閣になって最初に韓国を訪問し、次いでアメリカを訪問して、今回、第三回目のASEAN訪問ということですが、中曽根内閣のつまり外交的な方針、政策という観点から、このASEAN訪問というのをどういうふうに位置づけておられるのか、まずその点からお聞きしたいと思います。
  220. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはりこれは日本の歴代内閣の立場でありまして、外交の基本方針でありますが、日本アジアの一国でありますし、特に近いASEANとの関係はこれを密接に保っていく、友好親善関係を積極的に進めていくということが、日本世界の平和に貢献する一つ役割りを果たすことになるのだという立場で今日までやってまいりました。したがって、経済協力等につきましては、世界全体に対しての中で七割を東南アジア諸国にいたしておる、こういうことで非常に重点を置いた外交をとっておる、こういうことであります。
  221. 立木洋

    立木洋君 いまも若干お話が出ましたけれども、ASEAN五カ国並びにブルネイを訪問されて、いわゆる準備は進行されているだろうと思うのですが、どういうテーマで話し合いなさるのか、あるいはまた特別に解決する議題があるのかどうなのか。そういうテーマ、議題という点についてはどのようになっておるのか、もしかよろしかったら御説明いただきたいと思うのですが。
  222. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり首脳の訪問でございますから、基本的にはいまも私が申し上げましたような、日本の東南アジアに対する外交の姿勢といいますか、そういう基本的な姿勢を説明するとともに、世界情勢の問題であるとかあるいはカンボジアの問題であるとか、あるいはまた二国間の経済協力の問題、そういったものもこれは話し合いの中には出てくるのじゃないかと思いますが、基本的にはやはり日本とASEANとの関係をより高く信頼関係を高めていこうというのがその目標であります。
  223. 立木洋

    立木洋君 いろいろ新聞紙上等で問題にされていますけれども、たとえば日本の私たち、いわゆるですが、防衛力の増強問題等々の説明だとか、日本の安全保障に関する考え方だとか、こういうふうな問題についても説明をするというふうなお考えがあるのかどうなのか。  それからもう一つは、つまり、ASEAN諸国を訪問した後に日本として特別な何か見解を総理が表明するような、そういうふうなお考えがあるのかどうなのか、その点はいかがですか。
  224. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本の外交政策の基本であるとか防衛政策の基本については、私はASEANの諸国の首脳も大体理解をしておられると思いますが、しかし最近の極東情勢等にも絡んで、必要とあれば当然これは話し合いの中に出てくるであろうと思いますし、また、日本の平和外交あるいは日本の外交、防衛の姿勢とか方針というものがもし誤解されるようなことがあったら、これからのASEANとの信頼関係にも傷がつくわけですから、そういう点があるとするならばこれはやはりきちっと説明をしておく必要がある、こういうふうに思います。最終的にはクアラルンプールで、これは最後の訪問国ですが、締めくくりの演説といいますか声明といいますか、そういうものを出す予定にいたしております。
  225. 立木洋

    立木洋君 八十二年度のASEAN諸国との貿易の状態を見てみますと、輸出輸入とも前年度比それぞれマイナスになっていますよね。そういう点で、ASEAN諸国の中では、日本は欧米向けの貿易という点では努力をされるけれどもというふうなことで、貿易問題に関する若干不満といいますか、そういう意見がASEAN諸国にあるやに聞いていますが、この点に対してはどういうふうに対応されていくのでしょうか。
  226. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 貿易問題は、これはしょっちゅう日本とASEAN諸国の間でも話し合ってきておるわけでございますし、日本もこれまで市場開放をずっと続けております。この点はただ欧米諸国に対してのみではなくて、ASEAN諸国に対してもそれなりの私はメリットが出てきておると、こういうふうに思っておるわけでありますが、今後ともこうした市場開放の努力は続けていく。同時にまた両国の貿易関係、その拡大均衡の方向へ努力していこうということではいろいろと話し合いはすることになると、こういうふうに考えています。
  227. 立木洋

    立木洋君 それから農林省の方、来ていただいていると思うのですがね。——新聞の報道によりますと、ASEAN五カ国の市場開放要求がなされているということで、品目を見てみますとほとんど農水産関係のものですね。これは日本の国内の生産と競合しないのもあるかもしれませんけれども幾つか競合する内容のものもあると。こういうASEAN諸国の農水産物の市場開放要求について、いわゆる農林水産省としてはどういうふうにお考えになっていますか。
  228. 重田勉

    説明員(重田勉君) お答えいたします。  わが国のASEANからの農林水産物の輸入額は、一九八二年で見ますと約四十億ドルございまして、これはすでにアメリカに次いで輸入額の多い貿易相手国になっております。一方、わが国とASEAN諸国との地理的な関係を見ますと非常に近いところにございますし、また自然的にも同じアジアのモンスーン地帯に属するということでございまして、農林水産物におきましても非常に競合する面が多いわけでございます。しかしながらASEANとの関係もございますので、わが国が昨年来実施してまいりました一連の市場開放策におきましては、たとえばパイナップル缶詰の輸入制限の緩和ですとかあるいはヤシ油、バナナの関税引き下げといったASEAN諸国の要望につきましても、できるだけの配慮をしてきたところでございます。  なお、ASEAN諸国から現在も引き続き関心を示されている産品もまだいろいろあるわけでございますが、このほとんどのものにつきましては国内農林水産業の関係で、その対応が非常にむずかしいものばかりでございます。
  229. 立木洋

    立木洋君 大臣、いまお聞きのような内容で、ASEAN諸国との関係を友好的に進めていくという政府の方針は、それはそれとして理解できないわけじゃもちろんありませんけれども、ただ、競合しているそういう農水産物をいままでもいろいろと拡大してきている経緯もあるわけですから、よく慎重にやっぱり検討される必要があるのだろうと思うのですね。それで、国内的な生産の面でいろいろと問題が生じるような事態になってもいけないので、この点では通産大臣当時にいろいろ考えられた経緯もあるでしょうけれども、その点はやっぱり慎重にしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  230. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま農林省から答弁しましたように、わが国も昨年以来ずっと市場開放を続けてまいりまして、それは相当やはりAS EAN諸国には裨益をしておると私は考えております。さらに日本もいままた認証だとかあるいはまた輸入手続等の改善措置、法的な改正も含めてやっておるわけですから、こうした日本努力というのは世界に対して努力しているわけでありまして、ASEAN諸国にも理解をしてもらいたいと、こういうふうに思います。日本の場合もやはりできるものとできないものがありまして、できるものは積極的にやらなきゃならぬと思いますけれども、なかなか日本のいまの現状から見て、いま直ちにというむずかしい問題については、やはりそれなりに理解を求めていきたい。全体的には東京ラウンドなんかの線に沿ってはこれ、確実にやってきているわけですから、そういう意味では責任を果たしておるということも知っていただかなきゃならぬと、こういうふうに思います。
  231. 立木洋

    立木洋君 一月に訪米されたとき、東南アジアの安全保障にかかわるような問題に関してアメリカ側から何かの話があったのか、あるいはまたそういう問題について意見の交換をなさったようなことがあったのか、いかがでしょうか。
  232. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん、アジアの情勢についてはいろいろと意見の交換をしたことは事実でありますが、具体的に詳細に申し上げる立場にないわけですけれども、たとえば中ソの問題とかあるいはカンボジアの問題とか、そういう問題はもちろんいろいろと意見の交換ということがあったことは事実であります。
  233. 立木洋

    立木洋君 大臣はすでに御承知だろうと思いますけれども、ここ数年来、やはりアメリカの指導者の方々がASEAN諸国を訪問して軍事的な協力関係を強める、合同演習なんかもいろいろやりたいというふうなことが積極的に提起されたりしておりますね。昨年の十一月も国防長官がASEAN諸国を訪問されて、これからのASEAN諸国との協力関係を積極的に強めていきたい、こういうことが指摘されています。  それから同時に、八四年度のアメリカの国防報告及び八四年度のアメリカの軍事情勢報告の中でもはっきり指摘されていますが、アメリカとしては、「フィリピンおよびタイとの長期防衛関係継続させる一方、米国は他の東南アジア国連合(インドネシア、マレーシア、シンガポール)の軍事力強化をも求めていく。」ということが明記されていますし、こういうことを重視している目標としてはその一つに、「われわれにとって」、つまりアメリカにとって「不可欠なシーレーンとこの地域における米国の権益の安全を維持すること、」というふうなことが述べられていますが、こういう問題にかかわる話し合いというのはなかったのでしょうか。
  234. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまお話しのような話し合いはもちろんありませんでした。アメリカの独自の問題でしょうから、そういう意味発言はなかったと存じます。
  235. 立木洋

    立木洋君 東南アジア諸国を、こういうふうに軍事的な協力関係を強化していくという点について、日本政府としてはどういうふうにお考えでしょうか。それは結構だというのかあるいは困るというのか、あるいはそういうことには干渉しないでアメリカのやることをそのまま見守っておるということなのか、こういう動きというのについては日本政府としてはどういうふうに考えておられるでしょうか。
  236. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) われわれは、ASEAN諸国が安定をする、平和であるということが一番望ましいわけでありますし、そういう中でASEAN諸国がみずからの努力をされていることは高く評価しておるわけでございますが、アメリカがこれに対してどういう姿勢で臨んでいるかということは、これはもちろんアメリカの問題であると思いますが、基本的にはそれがやっぱりASEANの諸国の平和と安定に結びつくということでなければならないと考えます。
  237. 立木洋

    立木洋君 いまは橋本さんは関係ないですけれども、たとえば外務省局長さんなんかが講演したのをいろいろ見ますと、西側の一員ということは、外務省としては当然そういうことを主張されていますけれども、西側の一員という観点からこのA SEAN諸国、これを、中東からの石油を輸送するそういう周辺国家として、この地域での安全ということをそういう見地からも重視するということが求められているということを前任のアジア局長は述べているのですね。こういうふうな見地というのは大臣どうでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか。いま木内さんがおいでにならないから。
  238. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 恐らくその当時のアジア局長が申し上げた意味はこういうことだったと思います。  つまり、日本が中近東の油の資源に大きく依存している。それからヨーロッパ方面あるいは中近東方面、それから日本との貿易経済関係考えましても、やはりASEAN周辺の海あるいはインド洋というものがどうしても通路に当たる。その通路に当たるところのインド洋でありますとかあるいはペルシャ湾でありますとか、あるいは近くはASEAN諸国周辺の海が静ひつでなければならない、そういう趣旨から申し上げた言葉ではなかったかというふうに推定いたします。
  239. 立木洋

    立木洋君 御本人がいないから、聞いても推測でしか回答がないでしょうけれども。  大臣ね、先ほどのお話にありましたけれども、ASEAN諸国で一九七〇年代後半、とりわけここ数年来非常に軍備が増強しているのですよ。それまで大体国内的な治安の維持というふうな範囲にとどまるものだったのですけれども、最近はそうではなくて、対外的にも戦闘能力が可能な状態にずっと軍備を増強してきている。それで、つまりASEANというのが軍事同盟化するのではないかというふうないろいろな懸念だとか、問題点なんかも指摘されているのですね。こういう動きは、先ほど来、ASEAN諸国が平和維持のためにというふうに大臣はおっしゃったけれども、こういうASEANが軍事同盟化していく動き、ここで対外的な戦闘能力を持ついわゆる軍備の増強というのをどういうふうに御判断なさいますか。
  240. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そこまで考えられるということは、私は少し事態を深刻に考え過ぎておられるのじゃないかと思います。確かにASEAN諸国が、カンボジア問題が起こったものですから、非常にいままでと違った脅威といいますか、そういう面に直面しているという認識を持っていることは事実であります。それなりにASEANとしての連携を深めておるということも事実でありますが、しかし、軍備をそう強大に増強しているというふうには私は受け取れないのですね。ASEAN諸国も相当経済が厳しいものですから、そこまで軍備が具体的に、実質的に増強されているというふうにはちょっと判断できないわけです。ましてや軍事同盟的なものにこれを持っていこうという、何といいますか、そういう方向へどんどん動いているというふうにも見えないわけですが、いずれにしても私どもはASEAN諸国が自主独立の体制を維持しながら、あそこが平和で安定しておるということが、日本としてはこれが最も求めておる姿でありまして、そのために日本もいろいろな協力はしなければならない、惜しんではならないと、こういうふうに思います。
  241. 立木洋

    立木洋君 軍備が増強して、ASEAN諸国が大変な軍事同盟化の方に動いておるということを私が言ってるのじゃないのですよ。そういうことを書いている新聞があり、雑誌があり、それは何も共産党員がということじゃなくて、いろいろ研究なさっている人がそういうことを分析して書かれているわけですから、そういうことを念のために述べたので、そういうふうに考えるのがどうかということは、たとえばASEAN諸国に対する軍事援助というのはアメリカ軍のはふえているんですね。それから、御承知のように日本なんかともいろいろかかわりがあると言われておった、たとえば韓国の昌原団地。だから、いま韓国がアジアの兵器廠だと言われて、韓国から大分兵器がASEAN諸国にも流れているというふうなことも事実報道されているわけですね。だから、こういう動きというのはよく慎重に注意しておく必要が あるだろうと私は思うのです。そういうことが緊張を激化させたり、好ましくない事態をアジアに醸し出さないためにも、そういう点については日本の外交上よく見ておく必要があると思うのですね。  そこで大臣、今度ASEAN諸国においでになって、ASEAN諸国のもちろん安全保障上の問題だとか、日本とのかかわりで安全保障上の問題についてお話し合いなさるのかどうなのか。その点はどうです。
  242. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本とのかかわり合いで安全保障上の問題を話し合う必要は私はないのじゃないかと思いますが、ASEANがASEANの立場において安全保障をどう考えておるかということは、それはASEAN諸国の話として出てくる可能性もあると思いますし、日本日本なりの防衛政策あるいは外交政策というものを同時に説明するということも当然あり得ると思います。
  243. 立木洋

    立木洋君 ASEAN諸国が行う軍備の増強ですね、それからまた集団的な軍事同盟化ですか、そういう方向に協力するというふうな立場日本としては当然とるべきではないだろうと思うのですけれども、その点を念のためにお聞きしておきますが、いかがでしょうか。
  244. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 前提として、いまASEANが軍備を増強していると、あるいは軍事同盟化に進んでおるというようなお話でしたが、その前提が私はちょっと納得いかない点もありますけれども、いずれにいたしましても、日本とASEANとそうした安全保障上の協議をするとかあるいは安全保障上の枠組みをつくるとかそういうことはあり得ないことだと、それは日本立場からいって当然のことだと思います。
  245. 立木洋

    立木洋君 ASEANの軍事の動向については、橋本さん、よく大臣資料を見せてあげて、いろいろ最近の動向を、よく情報を提供していってくださいよ。またASEANから帰ってこられたらこの問題についてはいろいろお尋ねしたい、こう思います。  では協定の問題で若干お尋ねすることにしますが、先ほどのジュート協定との関連ですけれどもジュートの現在の全世界的な輸出量がどういうふうに推移しているのか、あるいはまた輸出価格、これがこの十年近くの間にどういうふうに推移しているのか、御説明ください。
  246. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  ジュートの輸出量でございますが、その前に、生産量の数字が手元にございます。とりあえずそれを申し上げますと、生産量は七五年から七八年の平均が約三百万メトリックトン、それから七八—七九年が三百九十七万、それから三百九十、三百四十四、三百二十、三百二十という数字で推移してきております。  輸出量は、繊維と製品と合わせた輸出量でございますが、七七年が百六十三万メトリックトン、七八年が百四十九万、七九年が百五十八万、八〇年が百六十七万、八一年が百五十六万という数字になっております。  それから価格でございますが、これはちょっと私どもの手元にございますのは国別の数字でございまして、国によって……
  247. 立木洋

    立木洋君 簡単な傾向がわかればいいです。
  248. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) そうでございますか。  ジュート繊維、バングラの場合はごく最近におきましては、おととしの暮れから去年にかなり値上がりしております。それからタイは一貫して下がっております。それから製品の方の値段の方は一貫して非常に大きく下がっております。たとえばバングラのジュート製のズックは、八〇年の七月の指数が一〇四といたしまして、去年の十月が七二、袋が一〇五が八三、カーペットの裏地が、これは八〇年の八月の数字が九二で、それが八〇年の十月では七二というふうに推移しております。
  249. 立木洋

    立木洋君 先ほどあなたが説明なさったのでは、今度の場合、たとえば緩衝在庫もないわけですし、それから輸出割り当てなどについてのこういう経済条項もない。価格安定措置をこういうふうにして定められていない。しかし問題は、研究開発など三項目の事業ですか、ここでやっていけばほぼ目的が達成されるのではないかというふうに言われたのですが、生産の状態を見てもそれから輸出の状態を見ても、きわめて大きな変動はないけれども、若干価格的にやっぱり下がってきているわけですね。だから輸出国として、本当にこういう価格安定措置を講じてくれというふうな意見が全く出なかったのかどうなのか、そこらあたりがどうもやっぱり理解できない点なのですけれどもね。
  250. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) まず、私が申し上げたことでございますが、現在御審議いただいているこの協定案で、ジュートのあらゆる問題を解決するということではございません。ジュートという商品について考えられる商品協定としては、こういうものが現実的かつ効果的なものではないかということを申し上げたつもりでございます。  それから、ただいま御質問の点でございますが、御指摘のとおりのことは実際あったわけでございまして、生産国側からは、緩衝在庫のようなことは考えられないかという話は、これはもう非常に早い段階からあったわけでございます。ただ、先ほど木島先生のときに申し上げましたとおり、その緩衝在庫というのはジュートの場合最も効果的な解決策かということについては、いまのような長期的な価格低落傾向というようなところで緩衝在庫をつくりましても、これは値段が下がる一方ですから、金をつぎ増すだけでどんどん金を足していかないと十分に機能しない可能性が強いわけでございます。その金は生産国と消費国から半々で出すということになりますと、バングラデシュは全体のうちの四割ぐらいを払わなきゃいけないというようなことになってくるわけでございまして、なかなかそういう協定はつくりにくいという事情があったということでございます。
  251. 立木洋

    立木洋君 先ほどの話もあったのですけれども、輸出所得の安定を図ろうということでいろいろ事業をやると。その事業を行う財源が、共通基金ですか、なんかからも考えられるし、たとえばその他国際金融機関やあるいはある国の任意の拠出なんかというふうなことの見通しはあるのでしょうかね。この点はどうなのですか。
  252. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) その辺はまだ十分な討議が行われていない段階でございまして、これまでのところは協定の案文づくりということで来たわけでございまして、これで協定ができて発効すれば理事会を開いて事業計画をつくって活動を開始するということになるわけでございまして、その過程でただいま御指摘のような問題が検討されることになると思います。
  253. 立木洋

    立木洋君 これはやっぱり有効に機能して、その一次産品の輸出国である国々がこれによって価格の安定を図って、また生産の向上が求められて、そしてその国の利益に役立つような方向にやっぱり作用するような努力が必要だろうと思いますね。とりわけバングラデシュというのは、これは小麦協定関係資料をいただいて見てみたら、世界の中でも小麦援助を受けておる最大国の一つですよね。だからそういう点から考えても、この問題で有効に作用されるように日本としても今後努力していくことが望ましいのではないかというふうに考えます。  それから、領事条約のことに関してちょっとお尋ねしますが、日米、日英——日ソは入っていませんから別として、先ほどの説明でちょっと正確に聞いていなかったのですが、いわゆる特権免除の適用ですね、これはこの条約のどちらか広い方を適用するということですか。
  254. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) お答え申し上げます。  先ほども若干舌足らずだったかもしれませんけれども、確かに二国間条約とそれからこのウィーン領事条約の両方が適用されることになるわけでございますから、それでウィーン領事条約の方におきましても既存の条約を排除しておりませんので、双方の条約が適用されるということになるだろうと思うわけでございます。そこで個々の特 権、免除に照らして見てみまして、特権免除の厚い方あるいは広い方、これを適用していくということにすれば問題はないのじゃないかということで、個々の条文あるいは特権免除について今後処理していくというのが基本方針でございまして、その点につきましてはアメリカもイギリスも基本的に同意しているということを先ほど御説明申し上げたわけでございます。
  255. 立木洋

    立木洋君 日米のあれを見ますと、十七条の一項の(b)ですか、徴兵検査が領事館によってできるという項目がありますね。これは今回のウィーン領事条約の中ではそういう項目があるのでしょうか、それに該当するような。
  256. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 今回のウィーン領事条約の中には一般的な領事の職務権限は決められておりますけれども、このような特に国民的服役義務に関連する身体検査についての特別な条項は入っておりません。そういう意味で、これは日英、日米の特約でございますので、そういう意味ではこの特約がこの両方を適用する場合に生きてくると、こういうことではないかと思います。
  257. 立木洋

    立木洋君 これはやっぱり相互主義の内容になるから、日本はもちろんいま徴兵検査はやっていませんけれども日本も領事部で徴兵検査をやろうとすればできるということに法的にはなっているわけですね。
  258. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 当然日英、日米両条約のこの該当規定は双務的な規定になっておりますので、確かに先生御指摘のように、日本は憲法上のたてまえから徴兵検査、徴兵制度というのはしいておりませんけれども、理論的に申し上げればそのようなことは日本側としても可能な体制に領事条約上はなっております。
  259. 立木洋

    立木洋君 本来条約というのは双務的なものなのですよね。日本はそれは憲法上できないので、相手側だけができるということに事実上この条項はなるわけでしょう。それから、一方ではそういうことが憲法上禁止されているのにできるという条項があるというのもどうもどういうものかという、つまり相互主義という観点から言うならば、事実上日本ができない、できないことを相手にだけ認めるという条文があるということはいかがなものか。また、憲法上そういうことができないのにできるという条項を日本が持つと、日本政府が。ということはいかがなものかと。この点どうなのでしょうね。これは条約局長の方がいいかもしれぬけれども、どうですか。条約上の解釈ですから、そういうことがほかの条文でもあるのかどうなのか。そのことをちょっと念のために。これで質問終わりますけれども、説明してください。
  260. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 立木委員の御質問でございますので、これは二国間の領事条約、日米の領事条約ができましたときにもたしか国会でいろいろこの点について御質疑があったというふうに記憶いたしております。  ほかの条約で具体的にこれと比較し得る例があるかどうかということになりますと、私直ちに思い浮かびませんけれども、たとえて申し上げれば、これはちょっと比較が、次元が異なるかと思いますが、これもよく御質問がある事項でございますが、日米安保条約等で日本は国際法上の集団的自衛権が認められておるということが条約上は書いてあると。しかるに憲法上は、累次政府が申し上げているように、集団的自衛権は持たないということになっておるので、そこのところは、条約上はあたかも日米双方が集団的自衛権を国際法上当然持つことができる権利として規定されておるけれども、実態的には集団的自衛権に関する限りは全くいわば片務的なものであるということが一つの例としては申し上げられると思いますが、これは領事条約のこの規定と直ちに比較し得る次元のものではないとは思いますけれども、そういう例が全く皆無ではなかろうというふうに考えます。本件に関する限りは、先ほど参事官より御答弁申し上げましたとおりに、確かに徴兵制度というものは日本側に関する限りはないということではございますが、それではその相手国の領事館が、そういう仕事を実態的に日本でやること自体日本としてどう考えるかということに着目した場合に、そういうことを認めることがわが国の憲法上、わが国の法令上特に差し支えがないというものであれば、そういうものは便宜的に認めてよかろうということで置かれた規定であって、それ以上の意味は特にないというふうに御理解いただければよろしいだろうと思います。
  261. 立木洋

    立木洋君 質問が大分残りましたけれども次回にいたします、時間がなくなりましたから。
  262. 増田盛

    委員長増田盛君) 七件に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十分散会