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八百板正君 それで、この
法案の
趣旨は、
技術士の
試験制度と申しましょうか、
試験の実務的なものを
民間に移す、
日本技術士会に移すという
考え方に立ったものだと思います。
そこでこれは、
技術士会の
試験実務に取り組む
態度、それからまた、
試験問題を出したり
試験を扱っていく
科学技術庁、それから、これはすべてほかの
試験制度とかに共通するものとして、その中でこの
技術士についてもそういうお
考えがあってほしいという
意味で申し上げるのでありますが、えてして
試験というものは、いわゆる上げるという
立場ではなくて、落とすという
立場に立った
試験の
態度が多いのであります。極言するというと、
試験を受ける受験生というのは敵だ、敵性を持っている。何とかしてむずかしい、ひっかかりやすい問題を出してふるい落としてやろうという、そういう
立場の
試験問題なり
試験官の
態度が共通してあります。
これは非常に問題なんです。これは、そうでないとは恐らくどなたも言わないと思うのです。
試験問題を選ぶ、あるいは選考する
態度というものは、何とかしてむずかしいものを出して振り落としてやろうという、そういう
態度がおのずから出てくる。これは
木戸番みたいなものでありまして、
木戸番というのは
木戸破りに対しては非常に敵意を持ってくるというふうな
傾向がある。この
態度は、少なくとも
科学技術の
発展向上というものから
考えると非常に危険な
考え方だと思う。
こんな話をしているともう私の持ち時間がたってしまいますが、大事な点ですから触れておきます。
それで、これは
行き過ぎではありますけれども、十年ほど前に、
中国にいわゆる
白紙英雄というのが出ました。
試験のときに
白紙を出したんです。
白紙の答えを出した。これはどういうことか。ただ、
白紙だけれどもそこに
意見を述べたんです。私は
国家指導者の、あの当時
毛沢東ですね、
毛沢東の
趣旨に従って、こういうふうにして現場に入って一生懸命に働いた、だから高校で勉強したことなんか忘れてしまった。朝から晩まで働いた、だからこんな問題はとても書けないというようなことを書いた。しかし、みんなからすすめられて、あなたは大学の
試験を受けなさいと言われて推薦されたことを私は光栄に思うというふうなことを、いわゆる答案ではなくて、
意見を書いた。これを見た
先生が、頭を抱えちゃったんですね。これは一体われわれの
態度が間違っていたんじゃないかというふうな
考えでもって、
国家的論議になりまして、結局この
白紙の
青年を採用したのです。そして、やがてこれが認められて、
中国の
中央委員候補にまでなったんです。
日本にも来ました。
張鉄生という
青年であります。このことがいい悪
いということはしばらく別として、
行き過ぎであることは間違いでありまするが、あの当時の
中国の
事情の中でこういう者が出ました。
しかしこれは、一面大変重要なことで、やっぱりどこかにいいところがあれば、ふるい落とそうというんじゃなくて、それをなるたけ取り上げようという
態度で
試験というものは取り扱っていかなければ、
科学技術の
発展というのは私はないと思います。そういう
意味で、この
試験問題にしても、
試験をする
態度というものにしても、これは
科学技術庁だけじゃございません、おしなべて今日の
試験制度の中で、何かひっかかるような問題を出してひとつひっかけて落としてやろうというんじゃなくて、いいものを見つけて、それを引き上げて、励まして伸ばして、そうして
科学の創造と
技術の
発展に役立てるような、そういう
配慮が常にどこかに幾らかなくちゃいかぬ、私はそういう
意味で、そういう
配慮がこの
試験制度の今後の上に
考えられてほしいと思います。
だからというわけではございませんが、なるたけふるい落としてとっちめてやろうというような
立場の
試験だからというわけではございませんが、いわゆる独占排他的な形で、外国と比べてもそうでしょう、
技術士というものは非常に少ないですね。アメリカの
プロフェッショナルエンジニアが三十五万人もおって、イギリスのチャータードエンジニアが二十一万人もおるというのと比べると、
日本が一万五、六千人しかいない、合格したのが二万人もないというふうなことになると、これは一体、
日本の
技術陣が層が薄いのか、それともおくれているのかということになります。私は、
最初に申し上げましたように、
日本の
技術を
移転するというようなことが
日本のいま必要なことだと言われておるほど、ある程度進んだ、層の厚いものがあるだろうと思うのであります。
そういう
意味で、なるたけ落第生をよけいつくってやろうというのじゃなくて、特色のある者はどんどん取り上げて
技術士にして、
日本の
科学技術の
発展のために励まして、国際的にも
国内的にも役立てるという、そういう
積極性で取り組んでいくべきだと思います。この点、
大臣の御
見解はどうですか。