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1983-03-25 第98回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十五日(金曜日)    午前十時十四分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中野  明君     理 事                 後藤 正夫君                 太田 淳夫君     委 員                 江島  淳君                 片山 正英君                 杉山 令肇君                 高平 公友君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 吉田 正雄君                 佐藤 昭夫君                 小西 博行君                 山田  勇君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      安田 佳三君        科学技術庁計画        局長       下邨 昭三君        科学技術庁研究        調整局長     加藤 泰丸君        科学技術庁振興        局長       原田  稔君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        科学技術庁原子        力安全局長    赤羽 信久君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        松田  泰君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        資源エネルギー        庁長官官房エネ        ルギー企画官   雨貝 二郎君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事  中島健太郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (科学技術振興のための基本施策に関する件) ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管科学技術庁)) ○派遣委員報告に関する件     ─────────────
  2. 中野明

    委員長中野明君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査議題といたします。  安田科学技術庁長官から、科学技術振興のための基本施策について、その所信を聴取いたします。安田科学技術庁長官
  3. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 科学技術庁長官安田隆明でございます。  このたび、重要な科学技術行政を担うことになりました。よろしくお願いを申し上げます。  第九十八回国会に当たり、科学技術庁長官といたしまして、所信を申し述べさせていただきます。  現下の厳しい内外諸情勢の中にあって、わが国が直面する幾多の制約を打開し、経済の安定的な成長と国民生活の一層の向上を図っていくためには、科学技術振興が不可欠でございます。  国土が狭く、資源に乏しいわが国は、幸い、国民の高い知的能力に恵まれており、この貴重な国民的資源を活用して創造性豊かな科学技術を創出することにより二十一世紀への礎を築くことは、われわれの世代に課せられた責務であります。  また、昨年六月に行われたベルサイユサミットにおいては、科学技術の発展は停滞した世界経済の再活性化への活路となるとの認識で各国首脳の見解が一致し、国の内外を問わず、科学技術振興に対する機運は盛り上がりを見せております。  このような状況のもとで、私は、昨年科学技術庁長官に就任して以来、科学技術政策推進のため精力的に取り組んでまいりましたが、今後とも科学技術振興を国家的な重要課題として位置づけ、その強力な推進を図ってまいる所存であります。  以下、昭和五十八年度における科学技術庁の主要な施策につきまして所信を申し上げたいと存じます。  まず第一は、科学技術振興調査費拡充等科学技術行政企画調整機能強化であります。  近時、科学技術行政の強力な展開が強く求められております。このため、科学技術会議調査企画機能強化、同会議方針に沿って運用する科学技術振興調整費拡充等により、科学技術行政企画調整機能強化を図ることとし、ライフサイエンス、新材料等、将来画期的な技術革新をもたらすことが期待される先端的科学技術等重要研究業務の総合的かつ効率的な推進を図ってまいります。  第二は、流動研究システムによる創造科学技術推進であります。  今日、科学技術振興を図るためには、基礎的研究段階からの創造的な新技術創出のための研究が不可欠となっております。  このため、産学官のすぐれた研究者を結集して次代技術革新を担う科学技術の芽を生み出すための研究を行う創造科学技術推進制度の一層の推進を図ることとしております。  第三は、原子力研究開発利用推進であります。  原子力発電は、いまや、総発電電力量の約六分の一を占めており、電力供給の重要な柱となっております。  このような原子力研究開発利用推進に当たっては、安全性確保が大前提であり、原子力安全規制行政充実安全研究推進等各種安全対策を強力に展開するとともに、電源三法の活用による地域住民福祉向上及び産業振興のための施策等を講ずるなど、原子力開発利用促進を図ってまいります。  原子力発電を一層拡大していくためには、原子力発電規模に見合った核燃料サイクルを確立することが不可欠であり、ウラン濃縮国産化使用済み燃料の再処理放射性廃棄物処理処分対策等推進いたします。  また、核燃料有効利用を図る観点から、高速増殖原型炉「もんじゅ」の建設新型転換炉実証炉研究開発など新型動力炉開発を進めるとともに、核融合研究開発等を積極的に推進いたします。原子力船むつ」につきましては、その新定係港整備を進めてまいります。  第四は、宇宙開発推進であります。  先般、通信衛星号aの打ち上げに成功し、わが国は、いよいよ本格的な実用衛星打ち上げ段階に入りました。  昭和五十八年度におきましては、通信衛星号b放送衛星号aを打ち上げるほか、静止気象衛星三号、海洋観測衛星一号、技術試験衛星V型等、幅広い分野における各種人工衛星開発推進いたします。  また、昭和六十年代の大型人工衛星の打ち上げに対処するため、自主技術による液酸液水ロケットエンジン慣性誘導装置等を用いたHIロケット開発を進めるなど人工衛星打ち上げ用ロケット開発推進いたします。  第五は、海洋開発推進であります。  海洋国家日本としては、海洋科学技術に関する研究開発を横極的に推進していく必要があります。  このため、昭和五十八年度におきましては、潜水調査船「しんかい二〇〇〇」による深海調査研究を進めるとともに、潜水作業技術に関する実海域実験を行うための海中作業実験船建造を進めるなど、総合海洋科学技術プロジェクトを積極的に推進することといたしております。  第六は、各般の重要な総合研究推進であります。  医療、農業、工業等、広範な分野において画期的な技術革新をもたらすものと期待されているライフサイエンスにつきましては、人工臓器等研究推進するとともに、遺伝子組みかえ研究施設建設等を進めてまいります。  また、防災科学技術につきましては、震災雪害等の防止、軽減を目的として、地震予知震災対策雪害対策等研究中心にその積極的な推進を図ってまいります。  航空技術開発につきましては、ファンジェット短距離離着陸機実験機STOL機昭和五十八年度に製作最終段階を迎えますので、その完成を目指して努力してまいります。  さらに、極限科学技術関連材料など材料技術研究開発資源総合的利用方策調査等を進めてまいります。  第七は、国際協力推進であります。  国際化の進展に伴い、国際交流重要性が一段と高まりつつあります。  このため、日米科学技術協力を初めとする先進諸国との協力推進を図るとともに、ベルサイユサミットで合意された科学技術国際協力に積極的に対処してまいります。  また、中国、東南アジア等開発途上国との科学技術協力推進してまいります。  第八は、科学技術振興基盤整備であります。  科学技術振興を支える研究者養成等研究基盤強化を図るとともに、高度な知識と多額の投資が集約された科学技術情報の効率的な流通を図るため、科学技術情報全国流通システム整備等促進いたします。また、本国会におきまして、科学技術に関する高度な技術コンサルタントとしての技術士制度を改善するため、技術士法改正法案を提出いたしておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  最後は、国際科学技術博覧会開催準備推進であります。  科学技術重要性に関する国民理解を深めるとともに、科学技術国際交流促進に寄与することを目的とした国際科学技術博覧会昭和六十年に筑波研究学園都市において開催するため、会場及び政府館建設を進めるとともに、政府出展展示物製作に着手するなど、国家的事業にふさわしい博覧会となるよう強力に開催準備を進めたいと考えております。  以上、昭和五十八年度における科学技術庁施策に関し、その概要を申し上げましたが、これらの諸施策を実施するため、昭和五十八年度予算といたしまして、一般会計三千二百七十二億円を計上いたしますとともに、総理府大蔵省及び通商産業省共管による電源開発促進対策特別会計におきまして、科学技術庁分といたしまして七百七億円を計上いたしました。  エネルギー問題を初めわが国が現在直面している諸問題を解決し、豊かで明るい人類の未来を建設するための重要なかぎとなるのが科学技術でございます。  私は、科学技術行政を担当する者としてその使命の重大さを深く認識し、科学技術振興に誠心誠意努力してまいりますので、何とぞ委員各位の御指導、御支援をお願い申し上げますとともに、国民皆様方の御理解、御協力を心からお願い申し上げる次第であります。
  4. 中野明

    委員長中野明君) 以上で所信表明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  5. 中野明

    委員長中野明君) この際、御報告申し上げます。  去る十五日、予算委員会から、本日一日間、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち科学技術庁について審査の委嘱がありました。  この際、本件議題といたします。  安田科学技術庁長官から説明を求めます。安田科学技術庁長官
  6. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 昭和五十八年度における科学技術庁予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十八年度総理府所管一般会計予算要求額のうち、科学技術庁予算要求額は、歳出予算額三千二百七十二億一千三百三十七万八千円を計上いたしております。  また、総理府大蔵省及び通商産業省共管による電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁分といたしまして歳出予算額七百七億四千百六十六万四千円を計上いたしておりますが、両会計を合わせた科学技術庁予算要求額は、歳出予算額三千九百七十九億五千五百四万二千円であります。これを前年度の当初歳出予算額三千八百六十億八千七百九十万五千円に比較いたしますと、百十八億六千七百十三万七千円の増額となっております。  この歳出予算のほか、国庫債務負担行為限度額といたしまして、一般会計一千三百八十一億二千八百二十八万二千円、電源開発促進対策特別会計百六十一億一千二百六十万円を計上いたしております。  次に、一般会計歳出予算要求額のうち主なる経費につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、科学技術会議方針に沿って、科学技術振興に必要な重要研究業務総合推進調整を実施するための科学技術振興調整費拡充を図る等、同会議中心とする科学技術行政における企画調整機能の一層の強化を図るための経費といたしまして、六十二億八百九十万三千円を計上いたしました。  第二に、流動研究システムによる創造科学技術推進といたしまして、産学官のすぐれた研究者を弾力的に組織化して、次代技術革新を担う創造性に富んだ新技術を生み出すための研究推進に必要な経費として、新技術開発事業団に二十二億一千十三万四千円を計上いたしました。  第三に、原子力研究開発利用推進といたしまして一千七百三十一億二千六百七十九万八千円を計上いたしました。  これは、まず、原子力安全規制行政及び原子力安全研究など安全対策を進めるための経費、次に、海外におけるウラン資源調査探鉱ウラン濃縮国産化使用済み燃料処理及び放射性廃棄物処理処分対策等核燃料サイクル確立のための経費新型動力炉開発として、高速増殖炉及び新型転換炉研究開発を行うための経費のほか、臨界プラズマ試験装置建設等核融合研究開発及び多目的高温ガス炉研究開発のための経費原子力船むつ」の新定係港整備等に必要な経費並びに国立試験研究機関等における原子力研究開発利用に関連する各種試験研究を行うための経費などであります。  第四は、宇宙開発推進といたしまして八百七十四億二千八百四十七万六千円を計上いたしました。  これは、宇宙開発事業団における放送衛星二号、静止気象衛星三号、海洋観測衛星一号、技術試験衛星V型、通信衛星号等幅広い分野衛星開発及び昭和六十年代の大型人工衛星の打ち上げに対処するため、自主技術による液酸液水ロケットエンジン慣性誘導装置等を用いたHIロケット開発などを進めるための経費のほか、航空宇宙技術研究所における宇宙開発のための基礎的、先行的研究を行うための経費などであります。  第五に、海洋開発推進といたしまして五十二億一千九百六十五万三千円を計上いたしましたが、これは海洋科学技術センターにおいて水深二千メートル級潜水調査船による深海調査研究を進めるとともに、水深三百メートルまでの潜水作業技術の実海域実験に使用する海中作業実験船建造等を行うための経費などであります。  第六に、重要総合研究等推進といたしまして二百六十九億九千九百八十七万八千円を計上いたしました。  これは、すでに御説明いたしました経費のほか、理化学研究所における最高度物理的封じ込め機能を有する遺伝子組みかえ研究施設建設人工臓器研究などライフサイエンスに関する研究開発を初め、レーザー科学技術等各種研究推進するための経費国立防災科学技術センター中心とする地震予知震災対策雪害対策等防災科学技術に関する試験研究に必要な経費、当庁附属機関のうち、航空宇宙技術研究所におけるファンジェット短距離離着陸機実験機開発等航空技術研究開発金属材料技術研究所及び無機材質研究所における材料技術に関する各種試験研究及び関連施設整備に必要な経費並びに資源調査所における各種調査に必要な経費のほか、独創的な国産技術企業化促進などを目的とする新技術開発事業団事業推進するための経費などであります。  第七に、国際協力推進を図りますため、エネルギー分野及び非エネルギー分野における日米科学技術協力を初めとする先進国との科学技術協力東南アジア地域等開発途上国との科学技術協力及び国際機関との協力に必要な経費として百四十六億四百九十二万四千円を計上いたしております。  第八に、科学技術振興基盤整備といたしまして、まず、科学技術振興を支える研究者養成等研究基盤強化を図るための経費日本科学技術情報センターにおける内外科学技術情報の収集、整理及び提供業務充実を図るための経費など四十九億二千七百三十五万三千円を計上いたしております。  第九に、昭和六十年に筑波研究学園都市において、国際科学技術博覧会を開催するため、会場及び政府館建設を進めるとともに、政府出展展示物製作を行うための経費など百六十二億四千四百二十九万円を計上いたしております。  次に、電源開発促進対策特別会計について御説明申し上げます。  この特別会計につきましては、電源開発促進税を財源としておりますが、昭和五十八年度税制改正の一環として、電源開発促進税の税率を、現行の千キロワット時当たり三百円を四百四十五円に引き上げることといたしております。  以下、歳出項目のうち科学技術庁分重要項目につきまして、その大略を御説明いたします。  まず、電源立地勘定におきましては、原子力施設立地対策として、原子力施設周辺地域住民等に対する給付金の交付及び周辺地域における雇用確保事業推進を図るとともに、関係地方公共団体公共用施設整備のほか、放射線監視対策原子力防災対策などの原子力発電安全対策等に必要な経費として九十四億八千七百七十万五千円を計上いたしました。  また、電源多様化勘定におきましては、高速増殖原型炉建設使用済み燃料処理技術開発及びウラン濃縮技術開発を行うための経費など六百十二億五千三百九十五万九千円を計上いたしております。  以上、簡単でございますが、昭和五十八年度科学技術庁関係予算につきまして、その大略を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほど、お願いいたします。     ─────────────
  7. 中野明

    委員長中野明君) この際、お諮りいたします。  昭和五十八年度科学技術庁関係予算についての安田官房長説明は、これを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 中野明

    委員長中野明君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  9. 中野明

    委員長中野明君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 吉田正雄

    吉田正雄君 ただいまの大臣所信表明内容につきましては改めて質疑を行う予定になっておりますので、その際詳細にお尋ねをいたしたいと思います。  科学技術特別委員会がなかなか法案審査以外多く開かれないということもありまして、いろいろ問題が山積をいたしております。たとえば、かつて世間を大騒ぎさせました原電敦賀発電所事故等につきましてもその一例だと思います。通産省とそれから原電当局から経過報告書といいますか、調査報告書も発表されておりますし、それから原子力安全委員会現地に乗り出して調査をやり、通産省調査報告書についても一応チェックをされて、これを承認といいますか、肯定するというふうな態度をとられております。  私も、この原電からの調査報告書というものと、通産省中間報告最終報告書というものを読ませていただいたのですけれども、これらの三つの報告書というものを見ますと、原電の発表した報告書と大同小異というよりも、原電報告書基礎になって、部分的に字句を変えておるという程度の内容であるわけですね。そういう点で、果たして通産当局それから原子力安全委員会調査が十分であったのかどうか、その報告書を見たときにまず疑問に思ったんです。  その後、私たち社会党でも調査団を派遣いたしまして、現地調査を行ったわけです。原電本社あるいは現地の所長以下関係者から事情を聴取し、さらにマンホールから土砂も採取をいたしましてこの分析も行ったわけです。この分析は、原電現地通産報告をしたと同様の、同じ機器を用いたわけです。それから調査についても、原電敦賀研究所といいますか、実験室依頼をして、私たち依頼をした学者がこれに参加をするというよりも、その調査結果についてチェックをするという形で分析を行ったわけです。その結果、原電通産省の発表した調査結果とは異なる結果が出てきた。これは私どもが他の機関とか、独自に調査をしたわけじゃないんです。原電現地実験設備を使い、実験者を使っての分析の結果なんです。そういう点で、あの調査報告書というものがきわめて不十分だという結論を私どもは持ったわけです。  そこでお尋ねをいたします。  まず通産当局お尋ねいたしますが、あの最終報告書を発表された以後、さらに追加あるいは追跡の調査を行われたかどうか。
  11. 松田泰

    政府委員松田泰君) 私どもの方では、放射能漏れ原因等につきまして、それ以後特に追加調査を行っておりません、いろいろな安全対策強化策はいろいろやっておりますけれども
  12. 吉田正雄

    吉田正雄君 あの調査でもって十分だと思っておいでになりますか。
  13. 松田泰

    政府委員松田泰君) 細部についてはいろいろ御意見があるかと思いますが、一応現段階ではあの調査で十分であると思っております。
  14. 吉田正雄

    吉田正雄君 現在でもそう思っておいでになりますか。
  15. 松田泰

    政府委員松田泰君) 現在でもそう思っております。
  16. 吉田正雄

    吉田正雄君 現在でもそう思っておいでになると断定をされたこと自体、あの事故に対する通産当局調査態度がいかに不十分なものであるか、姿勢というものがそこにあらわれていると思うんですよ。私はこれから幾つかの点を指摘して聞きますから、それではお答え願いたいと思うんです。  まず第一点は、事実経過についてですけれども、たとえば、汚染水が床にあふれたということがあるわけですけれども、そのときに、床サンプ水位を示す低、高、高高というランプがあるわけですけれども、その水位高高警報が本当に鳴ったのだとすれば、だれかがその確認ボタンを押したはずであるわけですね。ところが、押す可能性のある人というのは限られているわけですよ。わずか数人なんです。しかし、報告書にはだれがいつどのような状況警報確認ボタンを押したのかということは全然触れてないわけです。これはどういうことなんですか、調査をされたんですか。
  17. 松田泰

    政府委員松田泰君) この警報技術的にだれかがリセットボタンを押さないと鳴りやまないという構造になっておりますので、だれかが押したとは考えられるわけでございますが、具体的にだれが押したかということまではわれわれとして追跡調査できなかったというのが実情でございます。
  18. 吉田正雄

    吉田正雄君 あれだけ現地調査官が長く滞在をし、本省からも調査官を派遣されながら、追跡すればだれかが押さなきゃならぬはずだと言いながら、対象者は何人なんですか、その押す可能性のある対象者というのは何人だと思われますか。
  19. 松田泰

    政府委員松田泰君) 対象者は二人でございます。
  20. 吉田正雄

    吉田正雄君 お二人にお聞きになりましたか。
  21. 松田泰

    政府委員松田泰君) 事情聴取をいたしておりますが、その結果について断定できないということでございます。
  22. 吉田正雄

    吉田正雄君 汚染水サンプからあふれて警報機が勝手に鳴ることはないわけです。しかも、皆さん方スリーマイルアイランド原発事故調査報告書を出されたとき、これは科技庁からも出ておりますけれども、あのときに、オペレーターだとか保安要員の手落ちであったとか、そういうことを盛んに指摘されておったわけでしょう。わが日本においては職員訓練コードは高い、そんなことはあり得ない、そういう職員によるミスなんということは日本では余り考えられないって、あれだけ大言壮語されたでしょう。たった二人しかいない人に事情を聞いて、どっちが押したかわからぬなんて、そんなずさんな調査がありますか。聞かれたんですか、本当に。
  23. 松田泰

    政府委員松田泰君) 先生御指摘のように、その点につきましては、対象者も少ないことですからそういう疑問をお持ちになることは当然かと思いますけれども、一番重要な、そもそも事故原因経過等につきましての判断をする上におきまして、余り個人的なところまで突っ込んで聞くことが実際問題としてむずかしかったというのが実情でございます。
  24. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの答弁はますますけしからぬですよ。警報機が鳴った、事実あふれたから押す必要があるわけですよ。誤警報じゃないでしょう。あれだけの事故が起きておりながら、だれがボタンを押したのかわからぬ。またそれを確定しなければならぬ調査にもかかわらず、確定することが何か個人的な名誉か何かにかかわるようないまのちょっと発言でしょう。そんなことで今後事故が防げますか。そんな態度自身が問題じゃないですか。
  25. 松田泰

    政府委員松田泰君) 当時の細かいことを私自身知りませんもので大変申しわけないと思っておりますが、警報の表示と実際のランプ表示とがそごをいたしております状況があったようでございまして、そういうことで、この警報のセット自身がこの事故原因であったかというふうには即断できないという実情があったということで、この辺の調査が余りはっきりしてないというようでございます。
  26. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの答弁はめちゃくちゃですよ、なってないですよ。何を言っていますか、あなた。そういう程度の調査なんでしょう。問題にならぬ、それはもう。幾ら聞いたってわかりっこないです。報告書にもそんなことは書いてないですよ。幾ら読んだって書いてない。事実、調査は余りそこのところをはっきりやられてないんでしょう。もう幾ら聞いてもだめですから、これはその点でやめます。とにかくそういうずさんだったということだけははっきりしているわけです。  その次、一般排水路への漏洩経路の推定なんですけれども事故現場であるフィルタースラッジ貯蔵タンク室は、これは確かに高線量のために立ち入りはできませんよ。できないんですけれども、それはその後調査とか何らかの形で、これは事故原因の究明にとってもきわめて重要なんですね、いまも使われていると思いますから、その後この調査はされましたか。どうなんですか。
  27. 松田泰

    政府委員松田泰君) 最後の総点検のときに、きのうも確認しておりますが、御存じのようにここには直接立ち入ることはできませんので、じかに立ち入って調査は行っておりません。
  28. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、入って調査はされておらないわけでしょう。したがってこの調査、それから対策を抜きにして、事故処理は完了したというふうにお考えになるんですか、それじゃ。
  29. 松田泰

    政府委員松田泰君) フィルタースラッジのタンクの部分につきましては、高線量領域でございますので直接そこに立ち入ることはできませんけれども、洗濯廃液ろ過装置の置かれておりますところでありますとか、このスラッジタンクからつながっております廃水が出る経路等につきましては調査をいたしておるわけでございます。
  30. 吉田正雄

    吉田正雄君 やられてないからわからぬということはもうわかりますよ、それでね。  そこで、廃液がどこから漏れていったのかという点ですけれども、皆さんのこの発表では、ろ過装置室の水張り実証試験というものによって、いま言ったフィルタースラッジ貯蔵タンク室と洗濯廃液ろ過装置室との境界部分に小さな穴があいておった、そこから漏れたんだと、こういうのが結論のようでありますけれども、そういうことですか。
  31. 松田泰

    政府委員松田泰君) そのとおりでございます。
  32. 吉田正雄

    吉田正雄君 そのとおりで、間違いないですね。
  33. 松田泰

    政府委員松田泰君) 厳密に申し上げますと、建屋の接合部分等のコンクリートにありますひび割れ等からも漏洩しているところもあるわけでございますが、大きな漏洩につきましては先ほどのところが原因であるというふうに思っているわけでございます。
  34. 吉田正雄

    吉田正雄君 ただ、おたくの報告書では他の流出場所の存在というのを否定はしていないんですよね、読んでみますと。しかし、そこを何か特定をしているということなんですよ。しかし他の存在は否定していないということなんで、このことからも調査がきわめてずさんだということなんです。つまり、他の可能性というものを十分に調査をしないで結論を出しているということなんです。その点、そうでしょう。
  35. 松田泰

    政府委員松田泰君) 報告書を読みますと、他の場所は主としてほかのマンホールが考えられるわけでございますが、その部分の開査結果によりますと、蓄積されている放射性物質の量等が余り多くないというようなことから、いまのような結論を出しているわけでございます。
  36. 吉田正雄

    吉田正雄君 だんだん聞いていきますけれども、いま漏洩経路の問題を聞いておりますから引き続いて漏洩経路の問題をお尋ねいたしますと、経路が皆さんが発表したように単一であれば、マンホール中の土砂の放射能というのは上流から下へだんだん減少していかなきゃならぬでしょう。それは間違いないでしょう、並一であれば。
  37. 松田泰

    政府委員松田泰君) おおむねそのようになるのが普通だと思われますが、一つはその経路の途中の堆積の仕方等によっては、場所によって若干の変動があり得るとは考えられます。
  38. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、若干減りぐあいがこう波を打っておっても、減っていくことは間違いないでしょう。
  39. 松田泰

    政府委員松田泰君) 厳密に申しまして、下流側が上流側よりも必ず低いとは言い切れないと思いますけれども、傾向はそうだと思います。
  40. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、皆さんの調査結果からすればそうならなきゃいけないんですよ。事実、発表はそうでしょう。何かそれを否定するようなものが皆さんの発表の中にありますか。一つの経路だと皆さん方は特定をされている、結論づけられているわけですよ。発表された数値も、放射能の度合いというのはだんだんこう低くなってきているんですよ。それは間違いないでしょう。
  41. 松田泰

    政府委員松田泰君) まあ測定値にも誤差はございますし、それから堆積する土砂もそのマンホールの大きさ、形状等によっていろいろ変動する要因があるわけでございますから、その流れ方を断定したことにつきましても、必ずそのデータはそういうふうに下がっていかなきゃいかぬということではないわけでございます。私ども調査によりましてもいろいろ変動があるわけでございます。
  42. 吉田正雄

    吉田正雄君 単純に直線で下落しているとは言っていませんよ。若干の波はあるでしょう、それは。あるけれども、全体としては下がっていますね。  じゃお聞きしますが、ナンバー3のマンホールとナンバー4のマンホールの間を谷間とする二つの大きな山形になっているんですよ。この結論についてはどういうふうにお考えになるんですか、この結果については。
  43. 松田泰

    政府委員松田泰君) そのような事実があったことは私も承知しておりますが、その谷間のところの物質がどうであったというところまでまだ細かくちょっといま申し上げられませんけれども、一般的にそこにはたまたまそういう物質がたまりにくいということがあったというふうに考えるわけでございます。
  44. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは一般論を聞いているのじゃないんですよ。現実に事故が起きて、皆さんはみんなマンホールの土砂も採取をされて調査をされたわけでしょう。それが、いまの答弁だと、具体的な事故がなくて、ただ一般論で何かこんなことがあるんじゃないかとかあんなことがあるんじゃないかといういまの答弁ですけれども、全然答弁になっていないですよ、それは。それでは、皆さん方は、調査の結果とか分析の結果というのはそんなに誤差が大きくて信用ができないほどのものなんですか。これは後でまたお聞きしますけれども
  45. 松田泰

    政府委員松田泰君) 私ども調査によりますと、若干の変動、まあいろいろ変動はしておりますけれども、傾向として汚染源と思われる方が非常に高い放射性物質を持っておりますし、その傾向が見えるということから、そういう結論を出しているわけでございます。
  46. 吉田正雄

    吉田正雄君 その汚染というのは、単一の事故、あの事故によって汚染をされた結果がそこに出てきているというふうにお考えになっていますか。
  47. 松田泰

    政府委員松田泰君) オーバーフローをした事故原因であの汚染が起こったというふうに考えております。
  48. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすれば、各マンホール中の土砂の放射性核種の放射能濃度比というものは大体こう一定になっていかなきゃいかぬですよ、単一事故から出た同じ放射性核種を含んでいるわけですからね。その割合というのは大体一定でずっといかなきゃいかぬということになりますね。
  49. 松田泰

    政府委員松田泰君) 基本的にはそうだと思いますが、測定値には、たとえば核降下物の影響とかいうようなほかの要因による誤差というのは当然考えられますけれども原因が単一であれば大体その傾向になるのが普通ではあります。
  50. 吉田正雄

    吉田正雄君 核実験とかその他の放射能という言い方ですけれども、それは一律に影響が出てくるわけでしょう。いま言っているのは、単一の事故によるというふうに判断されているわけですから、当然、いまちょっと認められたように、この核種の比率全体として少なくなっていっても、含まれている核種の割合とか濃度比というものは大体比例するというのはこれはあたりまえなんです。ところが実際はマンホールによって著しく異なっているんです。これはどういうふうに理解されているのですか。著しく異なっている、マンホールによって。
  51. 松田泰

    政府委員松田泰君) 原因を断定するにはいろいろ推論が必要なわけでございますけれども、変動のぐあい等から見まして、たとえばマンホールに入ります雨水の量の相違その他の影響によってそのような差が出てくるというふうに考えるわけでございます。
  52. 吉田正雄

    吉田正雄君 全然あなたの答弁というのは問題にならぬ。というのは、通産省が発表された数字と、それから、私ども現地で採取をして原電現地分析依頼したんですが、その結果というものが著しく違っているんです。つまり、同一事故による汚染だという判断には立たない。立てない。これははっきりしている。  たとえばどういうことかというと、通産省は五十六年四日十八日に敦賀発電所における放射能の検出についてということで、マンホール中の土砂の放射能測定結果というものを出しているんです。ところが、私どもの測定ではどういうことがあるかというと、セシウム137による特異な汚染というものが検出されたんです。皆さんが発表されたナンバー6のマンホールの測定結果ではそれは出てないんです。発表していないんです、マンホールナンバー6については、分析結果を。これはもう意図的なんですね、はっきり言って。それ以外にも、ナンバー4、ナンバー8というものについても発表がないんです、皆さん方の発表の中で。  こういう結果をもとにして最終報告では「一般排水路を上流に遡るに従い傾向として放射能は高くなり、」ということなんだけれども、何でナンバー6を除外したのか全然説明もなければ何でもないんですよ。ナンバー6を調査されなかったんですか。あるいはナンバー4、ナンバー8はされなかったんですか。
  53. 松田泰

    政府委員松田泰君) ナンバー6の調査はやっております。特に意図的に発表しなかったわけじゃございませんで、傾向を見るためのサンプルということで幾つかのマンホールの数字を発表しておるものでございます。
  54. 吉田正雄

    吉田正雄君 傾向を見るために。何でナンバー6を発表してないんですか、それじゃ。
  55. 松田泰

    政府委員松田泰君) どうも、いま担当に聞きますと、ナンバー6の数字は発表しているというふうに言っておりますが……
  56. 吉田正雄

    吉田正雄君 そんなことないでしょうが。発表されていませんよ。ナンバー4、ナンバー8もそうでしょう。
  57. 松田泰

    政府委員松田泰君) 大変失礼いたしました。MHシリーズと混同していましたので。  御指摘のようにナンバー6については発表いたしておりませんが、調査はしております。
  58. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、そこに、出ては困るセシウム137というものが出ているわけですよ。ぐあいが悪いから発表はしなかったんでしょう。4と8も発表していないんですよ、4と8も。――いや、そんな調査書を幾らひっくり返してみたって調査書には出ていないんですよ、それは。ないものを幾ら見たってありっこないじゃないですか。
  59. 松田泰

    政府委員松田泰君) 私どもの方としては一つの傾向を見るためのサンプ調査という認識でございまして、そのために幾つかのマンホールの値が発表されてないということでございます。
  60. 吉田正雄

    吉田正雄君 この三つの数字を抜きにしてね、事故原因の究明とか、事故が一つのものであったのか複数であったのか、あるいは漏洩経路が特定されるたった一つのものなのかどうなのかを判断するきわめて重要な資料でしょう、それが。一番重要、肝心なところの資料を発表してないんでしょう。そんなばかなことがありますか。だから、全然結果は違ってくるじゃないですか。皆さんが発表されただけの数値に基づく結論と、私ども調査をして皆さんが発表しなかったナンバー6、ナンバー4、ナンバー8、こういうものの数値を合わせてみたら結論が全然違ってくるでしょうが。だから、ずさんだと言っているんですよ。  もし調査が十分だとするならば、それを承知の上で隠匿したということになる。大変なことになっちゃうんですよ、逆に言ったら。一般的な傾向どころの騒ぎじゃないでしょうが。一般傾向じゃないですよ。事故原因を究明するためにやった調査だというのに、肝心な三つのマンホールの分析結果を発表しないなんていうそんなばかげた調査がありますか。    〔委員長退席、理事太田淳夫君着席〕 これは全く隠匿でしょう。事故原因の隠匿ですよ、それは。大変な責任問題になってくるじゃないですか。そんな答弁で成り立つわけがないでしょう、これは。
  61. 松田泰

    政府委員松田泰君) 当時の状況につきましていささか、手元に資料もございませんのであれでございますが、このマンホールの中には通産省としては調査してないものもあるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、調査してないもの、あるいは傾向を見るために不必要だと思って発表してないものというものがあるわけでございます。ですから、その辺の詳細につきましては、いずれ必要でございましたら改めて調べて提出したいと思います。
  62. 吉田正雄

    吉田正雄君 一番重要な、いいですか、マンホールから流れた水が一般排水路を通って――一般排水路の中へマンホールがずっとあるわけですからね。その一般排水路を通って浦底湾を汚染して、そして福井県のモニタリングによってホンダワラを分析した結果から、大変だということになってきたんでしょう。一番重要なところじゃないですか。それを、調査しないところもあるなんて今度は言い出したですね。何を調査をやったんですか。  だから私は当初に聞いたでしょう。調査は十分だと思っておりますかと言ったら、十分だと思っていると言ったじゃないですか。ところが、幾つかの点は今度は調査をしてないなんてね、そんな矛盾した答弁がありますか。じゃ、何を根拠にこうだという結論が出たんですか、幾つかの手抜きの調査をやっておいて。調査は十分です、つかれるというと手抜きはしています、調査をしてないところがあります、しかし結論は大丈夫です。そんな不十分な調査、ずさんな調査がありますか。これは隠匿ですよ、はっきり言って。原電当局も、合同の調査ですからね、私どもが当初、原電も発表したり通産省が発表した数字と食い違っておりますと。確かにここは高い、認めているわけですよ。それだというのに何ですかいまの答弁は。  だから、通産調査というものは全くずさんである。事故原因も一つだとは考えられない。いろんな幾つかの事故があったんだろう。そのことが、その後通産省も発表したり、新聞でも大騒ぎになって、まだその前にも幾つかの事故があったと。給水加熱器の事故等があった。ところが、それについても、詳細な事故原因だとか、そういうものの調査通産としては行われていない。だから、あのときの事故というのは一体単一の事故原因であったのかどうなのか、いまもって不明なんですよ。私どものその調査資料というものを安全委員会にも突きつけた。ところが答弁できない。安全委員会自身も通産省報告をそのままうのみにして、結構ですという、こういう態度なんですよ。何をチェックしたのか。安全委員会がそもそもできた、安全性についてのダブルチェックの機能というものが全然果たされていないですよ。だから、そういう点では不安全委員会だと言うのです、私は。むしろそういう危険性を安全委員会の名前において容認をしていくという、いまそういう機関に成り下がっているんじゃないかと言うのです。この敦賀の事故一つとってもそういうことが言える。  もうこれははっきりしているのですよね。発表もされてない、調査もしてないという、それでそういう結論を出す。数字が食い違ってくるのは当然なんですよ。だから発表された数字が欺瞞的な数字なんです。欺瞞、これははっきりしていますよ。原電だって認めているんですからね、後になって。  それからもう一つさらに聞きますよ。  今度は漏洩量の推定ですけれども皆さん方の場合には、オーバーフロー廃水の総量というのを当初は四十トンと発表されたんです。ところが、その後今度は十六トン、さらにまた十四・五から十五トンだというふうに、次から次へと修正されているわけです。いかにずさんだかということなんです。この根拠というのはどういうことなのかというと、さっき私が当初言ったように、原電調査報告書をもとにして、一番肝心な、最も重要部分については通産独自の調査というのがほとんどなされていない。あるいは、やっても形式的なものだ。原電調査を追認するような、そういう形式的なものだったということなんです。  つまり、原電職員からの簡単な事情調査、ボタンをだれが押したかもわからぬ、たった二人のうちのだれが押したかもわからぬようなね、押すこと自体はいいことなんでしょう、そういう事故が起きたんですから。むしろ押したことは褒められるべきことなんですよ。ところが、それをだれが押したかも全然事情聴取していない。漏洩水についても、原電職員からの事情聴取をもとにしてやられているから不確かなんで、どんどんどんどん今度推定値が下がってきたわけですよ。こんなずさんなことがありますか。  したがって今度は、ちり取りでもってポリバケツに汚染水をくみ取ったとか、常識では考えられないような簡易除染もやってあるんですけれども、これを正しいと思われているんですか。徹底した調査は行われていたんですか、どれだけ一体その汚染水が流れたかということの。これは大変な問題ですよ。
  63. 松田泰

    政府委員松田泰君) 先生おっしゃいましたように、当初の見積もりから、原電職員事情聴取あるいはわれわれの方でやりました漏洩量の実験といいますか、測定のためのテストというようなものを繰り返しまして、発表の水量が少しずつ変わってはきておりますけれども、最終的にはこの量で推定される最も妥当な量ではないかというふうに考えております。
  64. 吉田正雄

    吉田正雄君 どこまで調査をやられたか。  それじゃお聞きをしますけれども、フィルタースラッジ貯蔵タンクは二つありますけれども、そのうちのあふれた方の、連続式の水位記録計というものが設置されておりますね、この記録計というものをずっと見ていけば、これこそまさに話、目でなくて、科学的な漏洩水の量の推定というのはそれが有力な根拠になってくるわけです、科学的な根拠になる。ところが、何でこれを発表されないんですか、この数字を。発表されましたか。
  65. 松田泰

    政府委員松田泰君) われわれの方でもそれは調べておりますけれども、それを使って算定の根拠に用いているわけでございますが、特に意図があってではなくて、発表しなかったということでございます。
  66. 吉田正雄

    吉田正雄君 調べていますが発表していませんなんて。公表されていないでしょう。公表されないそのまた理由は何ですかと聞いているんですよ。
  67. 松田泰

    政府委員松田泰君) 特に理由はございません。
  68. 吉田正雄

    吉田正雄君 特に理由がございませんって。さっきのナンバー4、ナンバー6、ナンバー8の一番大事なところのマンホールの数値も発表されていない。それから漏洩水がどれだけ出てきたか。皆さん、じゃ、それを直接調べられましたか。当初四十トンと言ったんでしょう。どんどんどんどん減ってきて、最後は十四・五トンから十五トンだと。それをずいぶん吸い取った、ちり取りで取った、ポリバケツで何か二十杯分とかなんとかすくって、その後は適当に、ふいたりなんだりいろいろなことをやったんでしょうけれども、一番大事なことでしょう、どれだけ一体汚染水が流れたかということは。この連続記録計というのは、皆さん方自身で調べられたのなら、その調べられた結果はどうなっているんですか。調べてはいないでしょうが。
  69. 松田泰

    政府委員松田泰君) 連続記録計にはもちろん連続記録チャートとして残っておりますので、それは調べております。調べた結果を用いて推定しているわけでございます。
  70. 吉田正雄

    吉田正雄君 調べた結果の推定というのはどういうことなんですか。その記録上からはどういう数字が出てくるんですか。
  71. 松田泰

    政府委員松田泰君) その調べた結果の具体的な数字等については、いまちょっと手元にデータがございませんので、ちょっと申し上げられませんのでお許し願います。
  72. 吉田正雄

    吉田正雄君 あのね、きょうは通産大臣はおいでにならぬですが、科学技術庁長官、これをいま私がなぜこうやってしつこく聞いているかといいますと、事故というのはきわめて重要でしょう。いま聞いているように、通産事故調査なんて私の方から言わせたら全くナンセンスですよ。これは、調査の名に値しない、はっきり言って。私どものたった一日の調査結果からもこのずさんさというのがもう明確になっているんです。原電も認めざるを得ないですよ、その数値については。だって、自分たち分析したんですからね。そこではシャッポを脱いでいるわけですよ、はっきり言って。そういうずさんな調査原電が発表したものを、結局ただ通産はうのみにしている。形式だけやったように見せかけて、そして原電の基本的な数字はそのままなんですよ。だから、通産省が、ここは間違っているじゃないか、独自に調査した結果はこうじゃないかということが何にもないわけです。ぐあいの悪いところは全部発表を伏せている。  それから、いまの連続記録計だってそうですよ。見ました、推計の結果は原電の言うとおりですと。いま具体的にじゃ皆さん方調査結果からどれだけの量が推定されるかと言ったら、いまここに数字はありませんと言う。こんなばかな話はないんですよ。  ところが、大事なことは、そういう通産のずさんな調査を安全委員会が追認をしているということなんですよ、いいですか。もうこれ全然また問題にならない。だから私は不安定委員会だと言っているんですよ、これを。  まだいろいろたくさんあるんです。きょうは予定の時間が短縮をされまして、これはまた次の所信にも持ち越していきますけれども、もう一、二聞いておいてからにした方がいいのかどうか。まあいまの点についてだけ、安全委員会はどういう調査をされましたか。これも現地へ行かれた。安全委員長以下何人かおいでになったでしょう、職員も一緒に行ったと思われるんですが、当時だれとだれが行ってどのような調査をされたのか。
  73. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 恐縮でございますが、記憶をたどっての御答弁になりますのでちょっと概要になるかと思われますけれども、当時、事故原因調査につきましては、第一義的には通産省からの調査結果を逐次聴取しながら判定をし、また口頭で注文も出すというのが安全委員会の調査方針でございました。ただし、現場におきますやや複雑な状況がございますので、現地通産省あるいは当事者から聴取する方が適当だという事項もございましたので、現地調査もいたしたわけでございますが、これはみずから調査あるいは分析をするということではなくて、現地で実態を見ながら通産省から説明を聞くということであったわけでございます。  それで、ただいま御指摘の二点でございますけれども、これも厳密なことはちょっと記憶がはっきりしておりませんが、安全委員会が通産省調査結果を了としました経過をざっと申し上げますと、単一の原因によって今回の漏洩が起きたのだということを了としましたのは、セシウム137が出たり出なかったりということがございますけれども、コバルト60とセシウム137、要するにコバルトとセシウムとは非常に化学的性質が異なっておりまして、コバルトは早期に沈着してしまう、セシウムは土砂に吸着されやすい性質と水に溶ける性質とをあわせ持っております。その関係で同じ並行していくことはないと。しかも、そういう性質がありますので、土砂の性質によって吸われ方が違う、それから土砂の層によって吸われ方が違うし、これはサンプリングの方法によってデータが違ってくるということと関係するわけでございますが、それから流れる早さ、瀬になっているところとよどむところと、これによっても違う。そういうことを総合的に評価いたしますと、大体考えられる範囲に入っているということで、セシウムが出たことが別のソースから、別の根源から流れて出たと考える必要はないという意味で了承したわけでございます。  それから流量の算定につきましては、現在算定方式は記憶しておりませんが、数字が変わりましたその都度各種の方法によって計算が行われ、その方法がだんだん精度が高まっていって、その結果、数字が小さくなるという結果にはなりましたけれども、それも算定方法は、完璧とは言えないまでも、大ざっぱにこの場合の事情を把握するには足りる計算が行われたという認定をしたわけでございます。  大体以上のような経過でございますので、ただいま通産省からの答弁、ややそのときの詳細にわたっていない面があるかと思われますが、私の方の記憶で申し上げますと、そういうことで、それほど不確定なあるいは疑義の多い結論であったとは思っておりません。
  74. 吉田正雄

    吉田正雄君 通産省報告書を見る限りでは、つじつま合わせが行われているからそれはあなたの言ったとおりになるんでしょう。独自にやられましたか、それじゃ。マンホールの土をとって全部やられましたか。
  75. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 最終的な通産省報告書は結論しか出ておりませんので、これだけ拝見してもわからない面がございますけれども、委員会の審議におきましては……
  76. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、質問に答えてもらえばいいんですよ。
  77. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) やりました方法等すべて詳細に聴取した上で結論を出したわけでございます。安全委員会はみずから……
  78. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、質問に答えてくださいって。そんな安全委員会の審査とか聞いているんじゃないんですよ。事実それをやったのかどうか聞いているんでしょう。
  79. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 直接の分析等は一切いたしておりません。
  80. 吉田正雄

    吉田正雄君 実際の分析調査もやっていなくて、結局皆さん方チェックをしたというのは、通産省最終報告書を読んで、ああこれなら間違いないだろうというだけのことじゃないですか、いまの答弁を聞いたって。だから不安全委員会だと言うんですよ。行った意味がないじゃないですか、全然。私どもが一回行ってやった方がよっぽどいい調査をやっているじゃないですか。専門家がそろって何をやったんです。  そこで松田審議官にさらに聞きますが、このことをどういうふうにお思いになりますか。  いいですか、皆さん方がこのことを御存じなのかどうなのか。運転日誌に記入をされております廃棄物処理施設の巡回点検記録中、この事故に関係した三つのタンク、というのはさっき言ったフィルタースラッジ貯蔵タンク、あふれたやつと、それから二つのフィルタースラッジドレンタンクの水位記録だけが誤記されているんです。違えて書いてある。これ、事実を御存じですか。
  81. 松田泰

    政府委員松田泰君) 現在、私自身当時おりませんでしたわけでございますので、記憶が余りはっきりしておりませんので確かに申し上げられませんけれども、そういう事実を聞いたようなという記憶はあるようでございます。
  82. 吉田正雄

    吉田正雄君 さっき言った連続記録計ね、この数字が発表されればこれはおのずから明らかになるわけだ。だからそれを発表できないわけです。いいですか。そうですよ。発表しなさいよ、それじゃ。それならはっきりするんだから。
  83. 松田泰

    政府委員松田泰君) 当時われわれが得ましたチャートをもちろん計算根拠に使っておりますし、それを発表しなかったことは別に意図があるわけでございませんので、大分時間がたっておりますが発表することは構いません。
  84. 吉田正雄

    吉田正雄君 数字はつかんでおられるのですね。計算もされたんですね、それじゃ。もう一回聞きますが。いまそこに担当官がおるようですが、わかったら発表してください、それじゃ。
  85. 松田泰

    政府委員松田泰君) それを使って計算しております。
  86. 吉田正雄

    吉田正雄君 まあいいですわ。とにかく、きわめてずさんなものであるということがもうはっきりいたしておるわけですよ。これはいずれ聞きますから。まだあるんですよ。あるんですけれども、ほかのことも聞きたいからこの程度にしておきますし、科技庁にも改めて聞きます。次回聞きますから。  その次、最後に私は結論だけを言っておきたいと思うのです。原子力委員長ね、先ほどの所信表明を聞きますと、原発開発積極推進ということで大変意欲を燃やされておりますけれども、これは私きょう時間があればですね、この前の予算委員会の一般質疑でも聞きましたように、原発が安いなんというのはこれは私に言わせれば全く大うそだ。政治的コストなんですよ、これは。これもこの次に聞きますよ。安い安い安いと言って国民をだましてね。そんなものは政治的コストであって、当面幾らでも安くしておって原発建設だと。もう原発以外には電気がないという段階では今度高くなるということはもうはっきりしているんです。  具体的に数字をこの前も聞きたかったのですが、時間がなかったから聞きません、次に譲りますけれども、今度の調査の結果一体どういうことがわかったかといいますと、放射性廃棄物処理の失敗なんですよ、これは、はっきり言って。というのは、廃棄物の発生量の予測というものを大幅に見誤っているんですね。だから、次から次へと六回にわたって増設をやっているのですよ。だから非常に無理がある。それから、建物増設ですから、当初からの一貫した計画性がないものですから、普通の簡単なビルディングを建てる場合にも、三階に四階を継ぎ足したとか渡り廊下をつけたなんていうとそこから雨漏りがしますよ。それと同じようなことなんです。事が廃棄物、放射性物質ですからこれは大変なことになってくる。  これがまず一つの原因だろうと思いますし、もう一つは、廃棄物処理方法というものが決まっていないというにもかかわらず建設と営業というものを優先させたということなんです。これは原子力行政のあり方の基本ですよ。いずれ何とかなるだろうと。つまりトイレなきマンションなんです。ということで、たまってきたからあわてて、すぐ洗面所をつくれと言うようなものなんです。ここに問題があるわけです。だから、こういう方法でいったら、今後も私は事故というのはできてくるだろうと思うのです。  それから安全審査体制なんですけれども、これは設計工事を認可する場合、でき上がりましたといった段階で、これでいいのかと、設計どおりにいっているのかどうなのかという使用前検査についても十分チェックをすべきなんですね。これは一義的には通産がやるべきなんです。この点でも、通産がほとんどやっていなかったということなんです。それから今度は安全委員会の――これができた当時は安全委員会ができておりませんけれども、今度二次チェック制度ができたわけですから当然それをやらなきゃいかぬのにこれが行われなかった、事前には。これは安全委員会は後だからいいんですが、事故が起きた後のいまの調査、ダブルチェック、これは私に言わせればもう全く調査の名に値していないのですよ。何のための独自調査をやったのか意味をなしていない調査だった、結論から言うと。それから、原子炉等規制法では、総理府令で、廃棄物の廃棄施設は構造はもとよりその廃棄物の処理能力というものが審査及び検査の対象になっているんですね。ところがそういうものがほとんど機能していなかったということなんです、結論から言うと。  そういう点で私は、現在の原子力行政というものがとにかくもう建設建設に重点が置かれ過ぎて、うたい文句では安全性を最重視するとか優先させると言いながら、一番そこが軽視をされてきた結果が今回の事故を起こした最大の原因だと思うのです。ところが皆さん方通産省の発表はどうかというと、原電の保安管理体制に問題があったというふうに、何か職員の、ちょうどスリーマイルアイランドの事故で一部の職員の何か責任にするようなくだりがありましたけれども、そんなものじゃないのですよね、そういうことでごまかそうとしている。  それからもっと私が驚きましたのは、通産省があの朝、早朝に新聞記者の皆さんを集めて発表をされた後、あんなことをやるから大事故だということになって大騒ぎしたのだと。私が現地へ行って聞いて驚いたのは、あんなものはしょっちゅうあると言っているのですよ、職員は。驚いたんですよ、これは。なるほど前にも何回かあったでしょう。これを全部通産にも科技庁にも報告していないですよね。俗に言う事故隠しというのが何回か行われてきた。あんなもの事故だと思っていませんと。どういう考え方かというと、現地職員の考え方というのは、事故というのはとにかく人身事故が起きて、死んだとか大量の被曝でもってもうえらいことになったとか、そういうことでもなければ事故だとは思っていない。これは歴代大臣が言うでしょう。いままで日本には事故らしい事故はないじゃないですかと、こういつも言われるのですよ。とんでもないですよ。それじゃいまのは事故じゃないかと言うのです。これは明確な事故ですよ。  しかも浦底湾のあの放射能汚染についても、現地ではどうか、漁民の皆さんはどうかというと、あの後は全部、若狭湾産物とは書かないで、ほかの土地の名前をつけて売っている。これも確かめてきた。それから一番いい例が、原電職員があそこに泊まっています。あの若狭湾からとれる海産物なんて食べないと言うのですよ。そういう状況でしょう。知っている人は知っているんですよ、これは。だから私は、あんなものはしょっちゅうあることだという発言を聞いて実はびっくり仰天しちゃった。まあしょっちゅうというのはどの程度のことを言うのか。いままでの一連の事故を言っているのでしょう。だから今回の事故だってその程度であって、新聞で大騒ぎするほどのことはないんだというそういう印象なんですよ。新聞にさえ発表しなかったらこんなことにならなかった、大騒ぎにならなかったという、そういう認識だから私はこわいということを言っているんでして、大臣はその点を十分認識してもらいたいと思うんです。  そこで、労働者被曝の問題に移りますけれども、現状と対策がどうなっておるかということなんです。さっきも、ちり取りでもってポリバケツにその汚染水をすくったなんという非常にお粗末な安全管理体制なんですし、それは事前の教育が徹底していなかったということもあると思うんですけれども、全国の原発、原子力施設の労働者被曝のうち下請労働者の平均被曝線量というものはどんなになっていますか。
  87. 松田泰

    政府委員松田泰君) 五十六年度の実績の統計によりますと、平均被曝線量で申し上げますと、下請、請負等社員外従事者という項目がございますが、それが〇・三三レムでございます。
  88. 吉田正雄

    吉田正雄君 最高の人はどれくらいですか。
  89. 松田泰

    政府委員松田泰君) 三カ月の線量で、最大被曝量二・二二レムというのがあります。
  90. 吉田正雄

    吉田正雄君 各原発における各作業ごとの管理被曝線量というものについて通産省はどのように把握をされておりますか。
  91. 松田泰

    政府委員松田泰君) 定期検査をやります場合に、定期検査の内容につきまして、一応被曝の多いと思われます作業につきましては計画的な目安の線量を設けているということにつきまして事情を聞いております。
  92. 吉田正雄

    吉田正雄君 幾らですか。
  93. 松田泰

    政府委員松田泰君) 最大のものは、BWRにおきます給水スパージャーの工事は一日一レムというのがございます。多くのものは百ミリレム以下でございますけれども、幾つかはそれを超えているものがございます。
  94. 吉田正雄

    吉田正雄君 この被曝線量は、いまBWRの場合の給水スパージャーの取りかえについては一日に千ミリレムと。これは高いと思われますか、低いと思われますか。
  95. 松田泰

    政府委員松田泰君) ほかの作業に比べますれば非常に高うございまして、これは非常に高い水準であると思いますが、作業の内容から見ますと、現段階ではやむを得ないというふうに考えております。
  96. 吉田正雄

    吉田正雄君 やむを得ないというお考えですと、これは大変だと思うんですよね。それじゃ、一日三千ミリレムでもいいんですか、やむを得ないということになれば。
  97. 松田泰

    政府委員松田泰君) 現在の被曝線量にかんがみます考え方に立ちますと、短時間でたくさん浴びるのは好ましいことではないというふうに考えます。
  98. 吉田正雄

    吉田正雄君 好ましいことじゃないけれどもやむを得ないというのは、どういうことなんですか。
  99. 松田泰

    政府委員松田泰君) 被曝は少なければ少ないほどいいという考え方がございますが、作業の状況あるいはその他いろいろの観点から安全上一応許容されている範囲以下でございますれば、それはやむを得ないと考える場合もあるわけでございます。
  100. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは前の委員会でもずいぶん論議をやったんですけれども、ICRPのあの基準量、あるいは国内で定めてある許容量というのは、そこまで浴びていいという数字じゃないんですよ。浴びていいというふうに考えられたらこれは大間違いなんでして、その認識が非常に違っているわけです。  それで、前のときこの委員会で、ずっと前の児玉審議官、各原発では相当きついところでも、三百ミリレムを超えるところはないというふうに私ども認識をしておりますと。だから私は、千ミリレムというのがあるんじゃないかと言ったんだが、そのとき否定をされた。ところがその後、いま言ったようなところでは、たとえば東電でもほかでもそうでしょうけれども、千ミリレムという管理被曝線量があるという事実がわかったんですよ。それまでは、絶対ないと言って通産は否定しておったんです。ところが、事実を突きつけられて、ありましたということを認めてこれは陳謝されたんですけれども予算委員会でも、私どもとしては決してそれでいいと思っておりませんから今後はできるだけ少なくするように――いまあなたがおっしゃった、少ないほどいい、あたりまえの話なんですよ、それは。少なくするようにこれから各電力会社に対しては指導をいたします、こういう答弁をされているんですよ。  ところが、あなたはまたいま、これはやむを得ないと思うという、そういう後退した答弁をされているんです。ですから、あなたの考え方からいけば、一日三千ミリでも結構ですねと、こう聞いているんです。やむを得ないという数字でいいんですねと、こう聞いているんです。
  101. 松田泰

    政府委員松田泰君) つまり、三カ月の被曝線量を一日で浴びてしまうというようなことは非常に好ましいことではありませんし、やむを得ないと判断するには相当の理由がなくちゃいかぬと思いますが、そういう意味におきましては、通常といいますか、実際問題としてはそのようなことをいいというケースはほとんどないと思います。
  102. 吉田正雄

    吉田正雄君 いいというケースがないんじゃなくて、皆さんはどういうふうに考えておいでになるかというんですよ、この労働者被曝についての基本的な考え方は。
  103. 松田泰

    政府委員松田泰君) もちろん、できるだけ少なく被曝するのがいいことでございまして、少なくするように計画的に作業を考えるというのが基本的な考え方でございますが、しかし、作業の実態あるいは作業の人たちの人数あるいはいろいろな理由から会社が計画しますものにつきましてある程度の範囲でやむを得ないものを認めるということでございます。
  104. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、通産としては、それはやむを得ないのだから千ミリレムでも結構だというふうに認めておいでになるわけですか。
  105. 松田泰

    政府委員松田泰君) 給水スパージャーの作業につきましては、やむを得ないとして認めております。
  106. 吉田正雄

    吉田正雄君 じゃ、実態はどうなっています。千ミリを超えることはありませんか、そういう実例は。
  107. 松田泰

    政府委員松田泰君) 千ミリを超えたものはないと思っております。
  108. 吉田正雄

    吉田正雄君 思っているのか、調査の結果ないのか、報告にはどうなのか。
  109. 松田泰

    政府委員松田泰君) われわれの調査によりますと、給水スパージャーで実績で一番大きいものは九百二十ミリレムというのがございます。しかし、そのほかの場合におきましては三百とか二百あるいは六百というふうにばらついております。
  110. 吉田正雄

    吉田正雄君 もうちょっと事実調査を私はやってもらいたいと思うんですよ。  中央に登録センターというのがございますね、科技庁。登録センターというのがある。原発施設に働いている労働者の被曝線量を中央で一括集中管理をやっているんです。私は、この登録センターが一体何の役目を果たしているのか、あれを設置した理由があるのかどうなのか、全く疑問に思っているんです。一体、中央に登録する登録義務者、これはだれか登録義務者になっているんですか。登録というのか報告というのか、だれだれがどれだけのどういう被曝を受けたかというそういう履歴ですね。
  111. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) これは、従事者が特に職場を動いた場合に、個人の生涯を通しての被曝を明瞭にするというのが第一義的な目標でつくられたものでございますが、現在のところ民間機関の自主的な団体として登録センターが設けられているわけでございます。したがいまして、義務という形にはなっておりませんが、自主的にセンターをつくったいきさつ、それから被曝の可能性の多い機関に関して現在原子力発電所を持つ事業者、これは全部登録をしております。
  112. 吉田正雄

    吉田正雄君 だれがやるんですか、報告は。
  113. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 事業者が、自分が使いました、自分の構内に入りました従事者についてすべて行います。
  114. 吉田正雄

    吉田正雄君 そこのところをはっきりさせてください。事業者というのはだれを指すんです。
  115. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 規制法上設置の許可を受けました事業者でございます。
  116. 吉田正雄

    吉田正雄君 じゃ、具体的に聞きますが、東京電力なら東京電力がその報告をする、こういうことですか。
  117. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 東京電力の場合は東京電力が登録いたします。
  118. 吉田正雄

    吉田正雄君 たとえば福島第一でも第二でもいいですよ、東電の原子力発電所に働いている労働者の被曝線量、手帳がありますけれども、あれに基づいて報告するわけですが、これはそこに働いている人は全部東電が報告するというか登録するということになっているんですか。
  119. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 厳密に申しますと、独立の登録ルートを持っている大きい業者、これは自分の手で行いますが、そのほかは事業者が、たとえば福島の発電所ですと福島の方から、自分の構内に入りました従事者について登録を行います。
  120. 吉田正雄

    吉田正雄君 局長、あなたの認識は全然ずれているというか、違っていますよ。重要な安全局長が、労働者被曝がどういうぐあいな手続で登録されているのかわからぬじゃ困るんですよ。はっきり言ったら、東電の職員なんというのはわずかなんですよ。たとえば給水スパージャーの取りかえなんというと、一日五、六千人の人間を動員してやっているんですよ。おいおまえ、炉心へと、何分何分でもってもう次から次へと送り出す。私たちが行ったときには、一日六千人の人間が、ピストン輸送じゃありませんけれども、どんどんどんどん入れかわり立ちかわりやっているんですよ。これはだれが登録していると思いますか。下請会社ですよ。下請会社で管理をして数値を記録して、そしてやっているんですよ。東電は、私どもはそれは関係ありませんと言っているんです。東電じゃないですよ、それは。
  121. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) ただいま申し上げましたように、事業所に入ります下請といいますか、個別の事業、工事をする会社がございまして、そこがセンターにルートを持っている場合はそこから行います。そこの下請従事者も、その工事会社あるいは機器メーカーから登録を行います。
  122. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、設置者じゃないじゃないですか。全然違うでしょうが。そうですよ。局長の最初の答弁と、いま言ったのは全然違うでしょう。私に言われたからそう答えたんであってね。そういう程度の認識なんですよ。  そこで、私はつい去年の秋、ことしの初めですか、東電へ行ってきたんですよ。どういう事実を聞いてきたかというと、これは所長以下が全部出ましたよ。一体管理被曝線量をどうやっている、最高幾らだと言ったら、そんなものはありませんと当初答えたんです。それで驚いちゃったんです。そんなことはないでしょうということで、本社からも行っていましたからあわてまして、それでは調査をしてどういう作業ではどういう管理被曝線量になっているのか資料を出しますということで、私のところへ送ってきましたよ。そこでは前とほぼ同じ、炉心内部の作業等については千ミリ、それからその他の配管等について高いところでは三百ミリというふうなことが書いてあったのですが、私が一番驚いたのは何かというと、一番現場の担当責任者が、名前を言うとちょっとあれですから名前は言いませんけれども、黒人労働者の場合にはもう千ミリなんと言わぬでもっとでもいいから働かしてくれとこう言っているということで、それを認める発言をしたんですよ、千ミリレムを超えるのを。ところが、東電はセンターにはそういう報告をしないんです。黒人を雇った下請の保全業者が、原子力代行か何か知りませんけれども、そういうところが勝手に数字を書いて報告しているだけなんです。だから本人も、どういう報告が中央になされているか本人自身も知らない。  これも私は東電で前のときに聞いたんです。じゃ、本人が自分の記録が一体どうなっておるのか知りたいということで聞いたら聞かしてもらえますかと言ったら、それは東電がうんと言わなきゃ本人にも聞かせられないと、こうはっきり言ったんです。こんなばかな話はないんですよ。一体、黒人労働者がどれだけ働いていると思いますか。
  123. 松田泰

    政府委員松田泰君) 申しわけありません。それは現在手元に数字がございません。
  124. 吉田正雄

    吉田正雄君 安全委員会、どうです。
  125. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 安全委員会としては、事業所の従事者の被曝状況通産省から定期的に報告を受けております。いまの御指摘の点は特に報告を受けたことはございません。
  126. 吉田正雄

    吉田正雄君 これね、大臣、私は大臣が一々そういう細かいことはわからぬと思うんです。わからぬで当然なんですよ。大臣は任期で結構次から次へかわってまいりますので無理もないのですが、私はやはり官庁のあり方として、これはそこにおいでになる職員もそうだと思うが、自分の任期のときだけとにかくうまくやって問題が起きないようにして次から次へと渡していくという、そういう官僚組織というのが問題だと思うんです。  黒人労働者の問題は、これはもう何年か前に私が福島へ行ったときも、所長以下、いま一体黒人がどれくらいおるかと言いましたら、大体外国人としては百人くらいいま働いていますと。で、五、六十人くらいおるでしょうと、こう言っておった。ちょうど私ども黒人にぶつかりましたよ、その一番危険な作業の場所で。そしてさっきの、ことしの初めか去年の暮れでしたか、そのときの福島での現場担当者の話では、いま言ったように、千ミリレムを超えてでもやらしてくれと黒人が言っておりますと、こう言って認める発言をしているわけでしょう。こういうことが現実に行われているわけです。これは大変な話です。労働省にも私は聞いた。一体外人として黒人がどれだけ、国籍別にどれだけの人が原発で働いているか聞かしてくれと言ったら、数字を持ってきましたよ。一番肝心な通産がその数をつかんでいないなんといったら、労働者被曝管理に関する通産省の姿勢というものがもうはっきり出ているじゃないですか。こんなことで何が安全ですか。大変な状況でしょう、これは。  そして、そこで働いている黒人は、アメリカから日本へ連れてこられるときに、私が聞いている限りでは、日本へ行ったらとにかく物すごいもうけ仕事があると、こう言って連れてこられる。十分か十五分働けば、アメリカでは考えられない物すごい金がもらえるということで来る。それでさんざん、いま言ったように本人はどれだけ浴びたかもわからぬ。そしてアメリカへ帰る。半年、一年後になって白血病になった、がんになったなんて言ったって、そんなのは原因究明なんかできませんよ。  こういう状況で、使い捨てでもってやられているわけでしょう。これは黒人だけの問題じゃないです。今度のときにもうちょっと詳細に申し上げますがね。現地とか、そこに働いている人間がどういう人間だかということを皆さん調査されたことがありますか。ないでしょう。まさに使い捨てですよ、はっきり言って。そういう実態を知らぬで安全だとかなんとかと言う。全く被曝管理についてはずさんなんです。だから、中央の登録センターの数字なんというのは全然信用できないですよ。これは私たちが行ったときもそうです。アラームが鳴ったら、そんなものは外しちゃう。これは現に聞いているんですからね。管理線量なんか守られてはおりませんよ。  そこで聞きますが、この有意の遺伝的影響というのは、従事労働者の総累積被曝線量がどれくらいになったときに遺伝的な有意的な効果というものが出てくるというふうに皆さんは考えておいでになりますか。通産と科技庁と両方答えてください。
  127. 松田泰

    政府委員松田泰君) 申しわけありません。いまのところ私自身それについての数字がよくわかっておりません。
  128. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 現在のところ、どの数字をもって問題にするというところまで総線量の数字が挙がっておりませんので、直ちにその目標値を云々するということは安全委員会としても考えておりませんが、原子力発電所がだんだんふえて被曝量がふえてきますので、そういう考え方を検討する必要があるという認識は持っております。
  129. 吉田正雄

    吉田正雄君 累積総被曝線量はわかるでしょう。通産ではわかるはずですよ。  科技庁としては、累積総被曝線量がいまわからなくても、私がいま言ったように、有意の遺伝的影響を及ぼすと思われるのはどれくらいになったときというふうに判断をされておりますかと聞いているんですよ。
  130. 松田泰

    政府委員松田泰君) 統計によりますと、手元にいま毎年のマン・レムの数字が出ているわけでございますが、最近五十四、五十五、五十六ですと大体一万二千……
  131. 吉田正雄

    吉田正雄君 年度じゃないですよ。いままでの累積総被曝線量。
  132. 松田泰

    政府委員松田泰君) そうです。ですから、この合計した数字が上がっておりませんので、約十年分ぐらいを掛け算すればいいわけでございまして、それでいま私の暗算でやりますと、十万にはなりませんけれども、七、八万人レムぐらいになるのじゃないかと思います。
  133. 吉田正雄

    吉田正雄君 そこで松田審議官、あなたはこの程度の作業で千ミリレムはやむを得ないというふうにおっしゃったでしょう、さっき。そこで私が聞いたのは、統計学的な遺伝に影響を及ぼす有意な数値というのは大体どれくらいというふうにお考えになっているのですかと聞いているんですが、その件はわからぬとおっしゃる。それがわからなくて、千ミリレムなら結構だという結論は一体どこから出てくるんですか。そうでしょう。だから、そういう認識だから困ると言っているんですよ。  私がいま言っている意味はわかると思うんですがね。自然の放射能というのはあるんですよね。放射線を浴びていますよ。そこに、いま言ったような原発あるいは核実験による影響というものがずっと加算されるわけです。それが一体どれくらい加算されたら――個人的な点はもちろんですけれども、民族的に考えた場合にそれが、遺伝的なそういう悪影響というものが出てくるわけですわね。それは一体どれくらいになったら出るというふうにお考えになっているのかということなんです。  そうなると、軽々に千ミリレムならいいなんということにはならぬだろう。定期検査や保修で一日五、六千人もどんどんどんどん入れかわり立ちかわりやっているわけでしょう。そういう人たちが千ミリレムずつ浴びたらどうなるかというんです。えらい影響が出てくるんですよ、民族的に言って。そういう検討もなさらぬで千ミリレムなら結構だというそういう認識ではこれは大変な問題じゃないかということを私は指摘しているんです。その数字がわからないと言う。わからぬで、片方では千ミリは結構だなんて、そんなばかな話があるかというんです。
  134. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 先ほどの答弁を補足させていただきますと、たとえば三レム三カ月というような基準は個人を対象にしたものでございまして、個人に対して有意な影響が出ない限度として設けられているわけでございます。一方、国民線量あるいは集積線量と申しますのは、元来画一的影響を防ぐという意味の目安としてとらえる数字という概念があるわけでございます。国民線量あるいは従事者の総集積線量がどのくらいであるべきかということは、これはいろいろな観点があって定説もないわけでございます。たとえば、自然放射線の線量、これは国民日本人全部を合わせますと、一年当たり数百万レムになるわけでございますし、さらに統計的に考える場合には、特に多い医療被曝についても加味しなければならない。  結局現在では、自然放射線に対して、あるいは限られた地域での自然放射線の被曝量に対して、従事者の被曝量がどのくらいになると有意とみなして考えるかということが議論されるわけでございまして、ただ数値としてはなかなか定説がないわけでございます。しかし、トータルの線量を下げるということは非常にどのレベルにしましても重要でありますし、それから、手前から、早くから対策を打っておかなければいけないということが重要でございますので、従事者の被曝の低減化につきまして、ハードウェア、ソフトウェアを含めまして低減化する方策を通産省、あるいはこれは当庁におきましても、検討あるいは研究を進めている次第でございます。
  135. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの答弁を聞いたってちっとも明確じゃないんです。つまりはっきりしていないんです、皆さん方では。どういうふうに考えていいのかという考え方すらまだ定まっていないという実情なんです。そういう中で、労働者被曝は物すごい勢いでいま進行していますよ。次回にもうちょっと具体的に福島の例をとって申し上げますけれども、これはすごいですよ。  しかも、それを管理している下請の会社というのはどうか。私はこの前も申し上げたと思うんですけれども、俗に言う暴力団系と言われるところでもってこれは全部管理をしているわけです。行ってごらんなさい。何とかという看板がかかって、こういうこわい人たちがたむろしているんです。そういう皆さんによって管理をされているんですよね。そういう実態を御存じないでしょう。現地なんて、おっかなくて、そこへなんか近づかぬですよ。  そういう実態も知らぬで、それからいま聞いたって、一体その総被曝線量、これがどういうぐあいに遺伝的に影響をしていくのか、そういう検討も不十分だ。それで一方でもって、千ミリレムは結構です、やむを得ないなんて言って、どんどんどんどん入れかわり立ちかわりそんなことをやられて、一体どうなるんですか。しかも、いま言った千ミリで抑えられていない。三百と言ったって三百を超えている。現在でもそうだそうですよ。自分で記録するところでも、三カ月三レム、一年間五レムという制限があるから、相も変わらず自分の記録を実際よりも低く記録している。現状はちっとも変わっていない。恐ろしい勢いで進行しているんです。これはうそだと思ったら、今度皆さん現地へ行って実際に調査してごらんなさい。さっきの敦賀原電のようなそんなずさんな調査じゃだめですけれども、これは本当に深刻なんですよ。  もうそろそろ時間が来ますからやめますけれども、次回までにもうちょっと実態調査をしておいてくださいよ。それから、少なくとも通産、安全委員会、どれくらいになったら大変になるんだというくらいの検討なり、そういうものをやっておいてもらわなかったら困るじゃないですか。自然の放射能による国民総被曝線量がどれぐらいになっているから、それから比較すればまだ少ないなんて、そんな認識じゃ困りますよ。しかも、あの数字は控え目な数字だ、通産でまとめているのは。私どもの、これこそまさに推測ですけれども、あの数字の一体何倍になるんだろうとみんなこれは心配しているんですよ。  そういうことで、時間も参りましたからきょうはこれでやめますけれども事故原因調査にしても、それからいまの労働者被曝の問題にしても、私は通産、安全委員会当局の調査なり管理の状況というのが本当にずさんだということで肌寒い思いをしているということで、大臣からも真剣にこの問題については取り組んでいただきたいということを要望して、きょうの質問は終わります。
  136. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時八分開会    〔理事太田淳夫君委員長席に着く〕
  137. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を再開いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  委嘱審査のため、本日の委員会に、動力炉核燃料開発事業団の役職員参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  139. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) 休憩前に引き続き、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち科学技術庁議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  140. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 まず最初に、先般科学技術庁が発表されました、昨年の十二月でありましたが、技術予測につきまして御意見を伺いたいと思います。  昨年の十二月に技術予測が発表されましたが、これは、第一回が昭和四十六年、第二回が昭和五十一年、これに続いて行われた第三回の予測の結果でありました。私もこれを大変関心を持って見たわけでありますが、この予測は、予測の方法としてはデルファイ法、外挿法であるとか、あるいはエンベロップ・カーブ法という、封筒のシールのカーブですね、そういう方法とか、いろいろな方法がありますけれどもわが国では初めて行われたデルファイの方法による予測であって、調査を繰り返しながらその内容を集約していくという方法による調査として、そういう意味からも注目された調査の結果であったと思います。  第一回目の調査の結果と第二回目の調査の間に石油ショック、オイルショックがありました関係から、第一回目と第二回目とはかなり重要の度合いの順位が入れかわっていたようでありました。特に、資源エネルギーが第五順位だったのが第一順位に上がっているというような点に大変私も関心を持ちました。第三回目の予測につきましては、これは第二回目の予測とは余り違わない傾向であったと思いますが、しかしまたその後に第二次の石油ショックがいま起きているというようなことで、この第三回目の結果というのが今後の日本科学技術の政策の上にいろいろ考えなければならない問題を含んでいるのではないかと思います。  そういう点から、科学技術庁として、技術予測について、いままで三回にわたって行われましたデルファイ法による技術予測の顕著な相違点、あるいはどういう問題について今後に示唆が与えられているかというような点について御意見を伺いたいと思います。
  141. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 先生の御指摘のとおり、技術予測を私ども昨年の十二月に発表いたしました。第三回目でございます。これは、約三十年、二〇一〇年を見通しまして予測をしたわけでございまして、十五の分野につきまして八百課題の予測をいたしました。方法といたしましてはデルファイ法というアンケート方式を用いたわけでございます。過去二回と同様でございますが、対象者といたしまして約二千人の有識者にアンケートをいたした次第でございます。回収率が九〇%近いものになっておりまして、こういうアンケート方式では非常に関心を持っていただいたと思っております。  全分野の課題を通じまして重要度大というふうに言われておりますものの上位を見ますと、保健医療分野とかライフサイエンス分野におきますがん等の各種の疾病の治療とか予防に関するような課題、生命とか健康に関します直接的な課題が目立っておりました。そのほか高速増殖炉とか放射性廃棄物に関するもの、それから原子炉の廃炉に関するもののようなエネルギー関連の課題、それから災害の予知、防止等に関します課題など、社会の基盤を支えるような技術開発課題に重要度が大であるというアンケートが出ておりました。  このうち、たとえばがんの転移やがんそのものの予防は約二十年後の二〇〇〇年前後に実現すると予測されておりますし、またエネルギー関連では高速増殖炉のシステムの開発が今世紀末には実現する、また大規模な地震につきまして一カ月以内の予知が二〇〇六年ごろに実現するというようなことが予測されております。  国が中心となって推進すべきものだとされたものにつきましては、長期にわたりましてかつ多大な資金を要するようなプロジェクト開発とか、基礎的な研究開発、それから農林水産分野、環境、安全分野など民間に多くを期待できないような分野などについて、国が中心となって推進すべきものとされております。また、がん対策など人類共通の課題とか、宇宙ステーションとか人工衛星を使いましたグローバルな利用システム、そのような開発、それから環境問題などの地球的規模で取り組む必要のある課題につきましては、国際協力によって開発することが望ましいという結果も出ております。  それから、今回の技術予測の課題の中で、前回の調査と同一あるいは類似の課題もございました。その結果を比較してみますと、重要度が大であるという比率が大幅に増加したものといたしまして、通信、情報、エレクトロニクス分野などがございます。近年のこの方面の技術の進展を反映しているものと考えております。また、ライフサイエンス分野とか宇宙分野等の、未来を担う科学技術におきまして重要度大の比率が増大しております。未来社会におきます科学技術の果たす役割りに対して期待が高まっていることを示しているものと考えております。石油危機の後で前回悲観的な見方が強かったのでございますが、このように、今回は未来を担う科学技術分野に対する期待が高まってきておる、科学技術重要性が増してきたという結果が出ております。  私どもといたしましては、それぞれの研究開発分野課題につきましての有識者の予測を踏まえまして、今後とも研究開発を強力に推進していきたいと思っております。二千人の有識者が何を重要と考えているか、またどういうものについて国に期待しておるか、それから自主開発でやるべきものかあるいは国際協力が必要なのかというようなこともその中に出ておりまして、今回の技術予測の結果を踏まえまして各般の施策推進していきたいと思っております。  また、先日、科学技術会議に対しまして新たな科学技術政策の長期ビジョンの作成が諮問されておりますけれども、この答申案の作成に際しまして、今回の技術予測の成果を十分活用してまいりたいと考えておるところでございます。
  142. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 このデルファイの方法による予測は、今後も大体同じメカニズムによって課題を選択するというやり方でありますので、この方法は今後も引き続いてやはりやっていただきたいと私は思います。また、そのほか未来予測に関してはいまいろいろな文献、資料などがたくさん出ておりますが、そういうものもあわせて参考にされる価値があるのではないか。  これは私自身の経験を申し上げることになりますけれども、一九三四年、昭和九年に出されたイギリスのA・M・ローという人の「明日の驚くべき世界」という本がありました。科学技術情報センターであのキーをたたきますと、この人のペーパー、論文、単行本、二十ぐらいずっと出てまいりますが、その中には未来予測に関するものが非常に多いのです。いま私の申し上げた「明日の驚くべき世界」は二百年、三百年後の世界がどうなるかという予測をしておりましたけれども、結果的に見ますと、大体その十分の一、二十年、三十年でその大部分のことが実現をしてしまっている。最近も世の中の科学技術の変化の速度が非常に速いということはいろいろ言われておりますけれども、三百年後と言われたのが三十年以内に実現をしてしまっていることが多い。  たとえば、その中に書かれていたエネルギーの問題については、将来エネルギーが最も重要な課題になるであろうということを予測しており、その場合の中身としては、太陽熱の利用、それから、波の高いところで波力による発電をやるようになるだろう。それから、潮の干満の差による潮力発電をやるようになるだろう。それから、海面の温度差の発電をするようになるだろう。もっともそのころは、すでにジョージ・クロードによって温度差発電の実験がジャマイカで行われていた時期でありますから、これはその当時すでにあったということが言えると思います。そのほか、テレビジョンを使って犯罪の光景を目撃することができるようになるであろうとか、あるいは道路が立体交差になるだろうとか、そういういろいろなことが書かれておりました。  もっとも、中にはまだ当たっていないこともありまして、そのころになると人間の頭髪、頭の毛は無用のものになって、なくなるだろう。私などは未来人間の一人かもしれないと思いますけれども、そういう当たっていないのもありますけれども、かなり当たっているのが多い。  また、「一九八四年の世界」という調査がアメリカのある調査機関によって行われましたけれども、これは十年後を一九七四年に予測をしていたものでありますけれども、これなどを見ましても、たとえばいまの頭髪の問題がまた出てきますけれども、アブセント・ヘア・スタイルというのが流行する。髪の毛がなくなる、それが流行するようになるだろうとか、それから、鉢巻きが流行するようになるだろうとか、それから、印刷のメディアが変わって新聞などの活字が大きくなるであろうとか、あるいは月や星がロマンチックではなくなる。これは月に人類がおり立ったときから大分ロマンチックではなくなりましたけれども、そういうこともあり、人間が物を考えないで本能的に躍動するようになり、若者は自制心を失って、教師は教育についての自信を失うようになるであろうとか、いろいろな予測がなされておりますけれども、この中にはかなりの示唆に富んでいるものも多く、また科学技術の問題を示唆しているものもあったように思います。  そういう点から、科技庁におかれましても、いまのデルファイによる技術予測以外にいろいろな将来の予測について、私は未来学というところに少し関係があったから特にそういう点を感じるのかもしれませんけれども、予測の問題についていろいろとひとつ調べてみていただいて、その中から将来の計画についての示唆を得るような努力をしていただきたいということをお願いしたいと思います。  次に、臨調答申について御意見を伺いたいと思います。  臨調答申の特殊法人等の整理統合というところの中で、科学技術庁関係の法人につきまして、二つの法人が指摘をされておりました。第一は理化学研究所でありまして、「理化学研究所については、国の施策に即応した研究開発課題への重点化及び他の研究機関との連携強化を図り、これに伴い組織の整理及び運営の改善を行う。」ということであります。もう一つは日本科学技術情報センターのことであります。  理化学研究所は、わが国の科学研究の歴史としては非常に古い歴史を持った機関であります。ここからは日本の産業の中で実に多くの重要な役割りを担うものが誕生をいたしておりました。そして現在の理化学研究所も、戦後特殊法人になりましてからはその内容もまた一変いたしまして、大変な近代化が進められまして、昔とはまた面目を全く一新した形の研究機関になっております。  臨調としては各省庁についてどこかに手をつけなければならないというやむを得ない事情もあったのかもしれないと思いますけれども、理化学研究所は今後果たすべき役割りが私は非常に大きいと思います。科技庁におかれては、臨調答申を受けて、それに対してどういう措置を考えなければならないかという何か意見を恐らくお出しにならなければならないんじゃないかと思いますけれども、同時に、理化学研究所の持つ今後の役割りというのはますます大きくなるということも十分考慮に入れて、今後の行き方をお考えいただきたいと思いますので、この点についての科技庁としての見解を伺いたいと思います。
  143. 原田稔

    政府委員(原田稔君) 臨調の答申の中で、理化学研究所につきまして、ただいま先生が御指摘のとおりのような御答申をちょうだいしたわけでございます。  この研究所は御案内のとおり非常に古い歴史を持っておりまして、かつまた、基礎から応用まで非常に広い分野にわたって、従来からりっぱな業績を上げてきております。また、最近特に創造的あるいは独創的な科学技術が各方面におきまして非常に求められているわけでございまして、こういった独創的、創造的な科学技術を生み出す原動力の一つとして非常に期待をされているところでございます。私どもは従来から、研究開発課題のプロジェクト化、あるいは内外研究者との交流の強化という点につきましては非常に努力をしているところでございまして、むしろ臨調の御答申は私どもの従来の努力の方向に沿ったものではないかと、かように考えております。そういう意味におきまして、今後ともさらに一層努力いたしまして運営の改善等を図ってまいりたい、かように考えております。
  144. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 そういう方向でぜひ一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、日本科学技術情報センター。臨調答申をそのまま読み上げるのはもう省略いたしますけれども科学技術情報センターは、二十何年かの年月をかけてようやく今日の充実した形にまで育ててきているというふうに思います。特に、利用者に対するサービスのシステム、コピーであるとか、翻訳であるとか、あるいは調査情報であるとか、あるいは省力サービスであるとか、あるいはテープの提供サービスであるとか、機械検索のサービスであるとか、そういう一つのシステムとして育ってきて、ようやくその機能を相当程度発揮できる形になってきている。もしこれを逐次縮小をしたりあるいは他の機関に、民間にこれを移していくというようなことになりますと、せっかくここまでシステムとして育ってきた情報センターの機能というものが損われて、逆行をしてしまうというおそれもあると思いますので、臨調の答申の線に沿ってできるだけ簡素化あるいは能率を上げなければならない点についてはそれは努力をされるべきであると思いますけれども、全般として科学技術情報センターの機能が壊れないようにしながら、さらにこれを充実していくということが必要であると思いますし、また、東南アジア開発途上国等に対して日本のこの面での協力をしなければならない役割りということを考えますときに、科学技術情報センターの持つ責任というものは非常に大きいと私は思いますので、そういう努力をしていただきたいと思います。これにつきましても科技庁の御意見を伺いたいと思います。
  145. 原田稔

    政府委員(原田稔君) JICST、日本科学技術情報センターにつきましても、臨調から御答申をいただいております。その御答申の中心は、情報提供事業に関してでございます。情報提供事業につきまして、臨調の御答申をいただいた背景、バックグラウンドは私どもはこう考えております。  最近におきましては、民間の情報提供機関、民間が商業ベースで科学技術情報を提供するという仕事が出つつあります。これは最近の新しい事態でございまして、こういったような状況を踏まえて臨調はあのような御答申をしたものと考えております。ただ、科学技術情報を的確に収集しこれを利用しやすいように提供するというのは、先生の御指摘のとおり非常に大事なことでございまして、あらゆる科学技術研究のベースになるものだと考えております。そのような意味におきまして、JICSTの役割りというものは今後ますますその重要性がふえてくるわけでございまして、日本国内においてはもちろん全国的にしっかり利用体制ができていなくちゃいけないし、また分野におきましても、商業ベースに乗れるような、利益を生むようなそういう分野だけではなくていろいろな分野がございますから、そういうあらゆる分野を網羅して初めて一つのセンターとしての役割りを果たすことができるわけでございますから、こういった点もよく念頭に置きまして、かつまた民間における情報提供事業の発展状況等も今後よく注視しつつ、同センターの業務の改善強化につきましては従来にも増して努力をしてまいりたいと思っております。
  146. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に、別の問題で、宇宙関係のことについて伺いたいのです。  わが国で宇宙関係の開発のために、これまでどれぐらいのお金が投資されているか、その投資額というのは諸外国に比べてどれぐらい差があるのかというような点についてまず伺いたいと思います。
  147. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) わが国並びに諸外国の宇宙関係の予算についてでございますが、昭和五十七年度を見ますと、わが国の場合約一千八十億円でございます。そしてまた、それまでの累計値は九千五百億円、かようになっております。  先進諸国におきましてはわが国よりもかなり多くの予算をいままでに投入してきたという実績がございますが、各国の宇宙開発担当部局が公表しました数字を幾つか挙げてみますと、まず、何と申しましても世界でもって一番多くの宇宙開発投資を行ってまいりましたのがアメリカでございました。これは統計的には昭和五十六年度までしかございませんが、昭和五十六年度の予算はアメリカの場合約一兆一千四百億円、さらに五十六年度までの累計では二十五兆五千億円、かようになっております。アメリカに次ぐものとしましては欧州宇宙機関すなわちESAでございますが、五十六年度予算が二千三百億円、五十六年度までの累計が一兆四千五百億円でございます。次いでフランスでございますが、フランスは五十六年度で一千六十億円、五十六年度までの累計で一兆三千億円、かようになっております。ドイツが同じように五十六年度六百九十億円、五十六年度までの累計が八千八百億円。イギリスの場合、五十六年度が三百五十億円、五十六年度までの累計が三千九百億円。  大体主要な国の予算は以上でございますが、これに対しまして五十六年度につきましてわが国を見ますと、わが国の場合は一千五十億円であります。そしてまた五十六年度までの累計では八千五百億円、かように相なるわけでございます。  いま申し上げましたような数字をわが国との関係で比較してみますと、端的に申しますと、アメリカに比べますとわが国の場合は、単年度的に見ますと約十分の一、累計値では約三十分の一の規模になっております。また、ヨーロッパ全体ということで合計してわが国の場合と比べてみますと、これは単年度につきましてもあるいは累計につきましてもほぼ数分の一の程度だと、大体以上がわが国並びに海外の宇宙関係予算の比較でございます。
  148. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 いまの数字を聞いておりますと、日本では、いわゆる先進国と言われたアメリカに比べて、きわめてわずかな経費で今日までの実績を上げてきているという、これは日本人が非常に器用で、外国で、先進国でつくったものをまねてよりよいものをいままでもつくってきているというそういう一つの日本人の特性のあらわれであったかもしれないと思いますけれども、しかし、そういう考え方だけではこれからはもういけなくなる時代にきているように思います。日本宇宙開発はこれまで、諸外国の技術水準に比べて日本技術水準というものはどれぐらいに評価をされているのかどうか。  それからもう一つは、これまでわが国においてもロケットの打ち上げに失敗した幾つかの例もあったと思いますけれども、その失敗の例を見ておりますと、どうも日本製のものよりも外国製の部品に、たとえばアメリカの方が恐らくたくさんの数、量産的なことをやっているのでコストが安くなって値段も安いというようなことからそれを利用するということがあるのはやむを得ないことであるかもしれないと思いますけれども、故障の原因のかなり大きなものが輸入品の方にあったのではないかというふうに思われますが、その点はどうであるか伺いたいと思います。
  149. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) お答え申し上げます前に、いま私が各国の比較の数字を申しました中で、フランスにつきまして、累計値が一兆三百億円というのを一兆三千億円と申しましたが、これは一兆三百億円の間違いでございますので御訂正いただきたいと思います。  ただいまの後藤先生の御質問で、まず、わが国の宇宙技術の水準がほかの国に比べてどうであるかと。この比べ方はなかなか比較する物差しもむずかしゅうございますけれども、何と申しましても、先ほど先生のお話にもございましたように、たとえば月の上に人類が着陸をしたというのは昭和四十四年で、これはアポロ十一号が行った事業でございますが、私ども宇宙開発事業団が設立をしましたのもちょうど同じ年の昭和四十四年でございまして、それだけ見ましても、アメリカに比べてかなりおくれて日本の国はスタートをした。しかし、われわれ日本人の科学技術に対する努力の結果、昭和四十五年には世界で四番目の国産衛星の「おおすみ」を打ち上げましたし、また五十二年には世界で三番目の静止衛星である「きく二号」を打ち上げるというような成果を上げてまいりまして、スタートの遅いわりには非常に早いうちに大きな成果を上げてきた、かように言ってよろしいと思うわけでございます。  また、人工衛星の数で申しましても、わが国はすでに科学衛星分野で十三個、実利用分野で十一個、合計二十四個の人工衛星の軌道投入に成功しておりまして、これは、数の差はかなりございますものの、世界的に見ましてもアメリカ、ソ連に次ぐ三番目の有数の人工衛星打ち上げ国というふうなところまでわれわれの宇宙開発は進んできたわけでございます。  また、技術的な内容にいたしましても、たとえば文部省が打ち上げておりますミューロケットにつきましてはこれは大部分が国産の固体推進薬の技術中心開発をしたものでございますし、また今後の方向としましては、六十年代の大型衛星の打ち上げに備えまして、二段目に液体水素と液体酸素の推進薬を用いたHIロケット開発を進めているというところまで、われわれの技術水準は高まってきたということが言えると思います。しかしながら、そうは申しましても、わが国のロケット技術は、その打ち上げの能力の点、あるいはまた人工衛星につきましても国産化率を上げなければならないといったような問題もございますので、今後とも宇宙開発技術向上には全力を投入していくということが必要であろうかと思います。  次に、いままでに起きました、わが国で経験しました幾つかの人工衛星打ち上げに伴うふぐあいの問題についてでございますが、先ほど申しましたように、わが国が打ち上げました実利用分野衛星の数で軌道投入に成功したものは十一個でございますが、全体では十三個打ち上げたわけでございます。その差の二個につきましては、これはいずれも実験用静止通信衛星の「あやめ」シリーズでございました。五十四年二月に打ち上げました「あやめ一号」の場合には、衛星と第三段ロケットとの分離後に相互の衝突を避けるためのヨーウエートの放出に関係するふぐあいでございます。二つ目の、昭和五十五年二月に打ち上げました「あやめ二号」の場合につきましては、これはアポジモーターの異常燃焼によるふぐあいでございます。以上二つの例を申しましたが、これらのふぐあいはいずれも輸入品にかかわるふぐあいであったわけでございます。
  150. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 今後のわが国宇宙開発推進のためにはできるだけ国産のものを使うように、国産化を進めていただきたいと思いますし、また国産化を進めることによって宇宙開発のいろいろなリライアビリティー、信頼性を高めるというための成果が期待できると思いますので、その点について科学技術庁においてもひとつ御努力をいただきたいと思います。宇宙開発については、大臣にも、これをひとつ推進していただくようにぜひお願いをいたしたいと思います。
  151. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 宇宙開発について一段の努力をしなさいという後藤先生のお話、いま加藤局長からお話がございましたけれども、一番初め星を上げたのがソ連で三十二年、そしてその翌年三十三年にアメリカが一号を打ち上げた。そしてそれから十年たって四十四年にアポロ、そこで初めて事業団ができてそして今日までの歩みの経過があるわけでありますけれども、世界から言いまするとこれは本当に日本は後発の国であります。    〔理事太田淳夫君退席、藤井孝男君着席〕 それが今度六十二年に向かっての計画、先ほどお話がございましたけれども、もうすべてこれ自主開発技術でもって今度打ち上げるということでございますから、いままでの行政目的を果たすその実績というものは私はこれを評価してほしいと、こう思っております。  しからば今後はどうか、こうなりまするというと、いま経団連の、そして党内の、各党の、いろいろな考え方がございます。これにこたえるためにはよほどの努力を要する、こういうことを私も考えておりまして、いま局長のお話がございましたけれども、やはり宇宙につきましては本当に日本は先端的な、われわれはスペースシャトルのようなそういうものにまで手をつけるということはここ当分考えていませんけれども、いわゆる星の問題につきましては、これは実用に向かって世界の先端を歩む、こういう私たちの考え方で努力してまいりますから、御努力を願いたいと思います。
  152. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 もう時間がわずかしかなくなりました。バイオテクノロジーの問題につきまして科技庁の御意見を伺いたいと思いましたが、これはもう時間がありませんので、この次の機会にいたしたいと思います。  科学技術博覧会につきましてひとつ御意見も伺いたい、またお願いしたいと思います。  今度の科学技術博覧会は、科学技術と人間生活を主要なテーマにしまして計画されておりますけれども、この国際科学技術博覧会には人類の夢とロマンが私はぜひ打ち出されてほしいということを期待いたしたいと思います。  一九六七年にモントリオールの万国博覧会が行われましたときに、人間と共同社会というテーマでこのエクスポ六七が行われましたけれども、このエクスポを見たときの後の印象というのは、何か非常に暗い感じがいたしました。人類の未来についていろいろ困難な問題に直面しているということをそこで訴えたかったのだろうと思いますけれども、人間はみずからの道を自由に選択できなくなってしまっているというようなことでした。たとえば真っ白い部屋の中、すべてがもう真っ白、台所、オフィス、戦場、すべてが鉄の格子の中で真っ白ずくめであって、最後には、鉄の格子の前に立つと自分自身の姿が向こう側の鏡に映って、こちらが鉄の格子の中に入れられているというような、そういう極端なところまであったように思います。そういうことから何となく暗い印象を私は受けたのでありますけれども、もちろんそういう暗いイメージを持つようないろいろな要因は人類の前途にはたくさん横たわっておりますけれども、それを打ち破って明るい未来に通じるような道をわれわれ人類の力で切り開いていくことができるのだというような考え方をこのEXPO、科学万博に取り上げていただきたい。そのテーマを決めるのは、それぞれの学者の専門家の方々が衆知を集めてやっておられることであろうとは思いますけれども、そういう方向で努力をされることを私は期待いたしたいと思います。  この問題につきましては、また次の機会にお願いをし、御意見も伺いたいと思います。  最後に、二十三日の夕刊に、国連の一九八一年の人口統計年鑑が発表されておりますが、一九八一年の年の中央の人口は四十五億八百万人ということで、朝日新聞のタイトルは「地球号乗員四十五億人超す」ということが書かれておりました。  ちょうどいまから五十年前でありますけれども、アントン・チシュカという人が「二十億人口の食糧」という本を、これはドイツでありますけれども、出しておりましたが、人類は二十億になっていると。この二十億の人口の食糧をどうやって賄っていくべきかということについていろいろな問題を提起しておりました。五十年たちました今日、人口は四十五億になっている。この問題は非常にむずかしい事態を迎えようとしております。  これを科学技術の力によって突破していかなければならない問題であるということから、私は科学技術研究開発について、科技庁はもちろんのこと、これに関係のある通産省あるいは文部省の基礎研究、すべて広いすそ野を持って科学技術研究を育てていくという努力をこの上とも政府にぜひ期待をいたしたいと思いますので、これについてお願いをいたす次第でございます。大臣、これについてのお考えがございましたら、一言でも伺えればと思います。
  153. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 食糧の問題というのは大変なことでございまして、特にわが国におきましても食糧の相当部分を海外から輸入しておるというような状況でございます。したがいまして、その食糧の安定的な確保のためには、食糧資源有効利用とか代替たん白資源開発利用とか、そういうことについて十分な対策を進めていく必要があるというふうに考えております。  私どもといたしましては、資源調査所におきまして、内外のたん白資源の需給の現状分析とか、陸上とか海域におきますたん白資源供給の増強方策とか、あるいは新技術開発利用によりますたん白資源有効利用方策ということにつきまして調査を開始することといたしておりますし、またたん白資源有効利用を図るための基礎資料となりますアミノ酸組成表の作成作業にも入っているところでございます。
  154. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 時間が参りましたので、いまの食糧問題につきましてはまた次の機会に、人工たん白等の問題とも関連して、科技庁にも御意見を伺うことにいたしたいと思います。  私の質疑はこれで終わります。    〔委員長代理藤井孝男君退席、理事後藤正夫君着席〕
  155. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、予算関連で二、三お尋ねいたしたいと思います。  現在の科学技術政策は、昭和五十二年五月に出されましたところの、諮問第六号「長期的展望に立った総合的科学技術政策の基本について」、これに対する答申に基づいているわけでございますが、今年新たに、新たな情勢変化に対応し、「長期的展望に立った科学技術振興の総合基本方策について」中曽根首相の方から諮問されたと聞いていますけれども科学技術の進展というのは非常に目覚ましいものがありまして、それを含めて二十一世紀への展望も必要とされているわけですけれども、六号諮問も十年間の基本的計画を問うということでございましたが、五年で見直されなきゃならないような状況でございますし、さらにそのテンポが速まることも考えられる現状でございますから、そういう状況を踏まえながら、大臣は新時代に応じた科学技術政策の樹立についてどのように取り組まれるのか、お尋ねしたいと思います。
  156. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 太田先生いま御指摘ございましたけれども、おっしゃるとおり、先般諮問をいたしました。私も赴任しまして、わが国科学技術の全体像というものをとらえてみると、今日の行政体系というものはこれでいいのかなといういろいろな問題をやはり私も頭の中に浮かべながら考えてみておりました。いまの行政体系、これはこれとして大体いいでしょう。しかし、科学技術会議が将来に向かってどのような長期展望に立ってどのようなテーマを一体とらえるか、こうなりますると、社会経済の変動というものは、今日もう確かに見直すものがある、こういう前提に立ったわけであります。  それではどこを一体見直すべきだということも、私なりに考えてみると、世界の最も熾烈な最先端のいわゆる研究開発分野で、日本はいまだしというものを見出すとするならばどこであろうかな、こう考えてみれば、やはりライフサイエンスの問題などはその一つになるのじゃないでしょうか。先ほど後藤先生から観測の問題がございました。これも私、非常なこれの反響を見ました。論評も見ました。その中で、医学方面の人たちから相当な、あの資料をひとつ提供してくださいという注文も受けました。そういうことを考えてみると、やはり遺伝子工学、こういう分野に対する科学者、医学者の関心も非常に深いんだなと。  総理からまた、がん対策を十年間でめどをつけられないだろうかというわれわれに対する指示もありました。あれこれ考えてみまするというと、今日の、そして将来の展望に立ったわが国科学技術のあり方、こういうものについては確かにわれわれは見直す必要がある。いま私たち科学技術会議がどのような答申を示してくれるであろうか、これを見守る、こういう段階でございますが、私たちが頭の中に描いている問題としましてはたくさんの問題がありますけれども、太田先生も非常に御専門の方でありますが、私たちが期待する、国民が期待する世界に協力し得る分野というものを必ずこの答申の中でわれわれはいただけるものと、こういうふうに思っております。重大な関心を寄せております。
  157. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 お話の中にありましたように、科学技術会議の役割りということも非常にこれは重要な問題に当面しているわけでございますし、これに対する適時的確な処方せんを提示することがいま求められているわけでございますが、その点についてどのような所感をお持ちでしょうか。
  158. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 科学技術会議は三十四年に設立されまして、それ以来二十有余年にわたりましてわが国科学技術一般につきましての基本的、総合的な政策の樹立に関しまして、きわめて重要な役割りを果たしてまいりました。しかし最近は、より具体的、機動的な運営を要するような問題が増大してきておりまして、そのためには内部体制を整備しなければならぬというようなことを考えまして、三月十四日に開かれました科学技術会議の本会議の決定を得まして、政策委員会を設置するということになりました。今後は、この政策委員会を十分に活用いたしまして、科学技術政策におきます重要事項の適時的確な処理を行いまして、時代の要請にこたえてまいりたいというふうに考えております。
  159. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いま政策委員会の設置というお話もあったわけですが、これはお話によりますと、それを活用し、そして重要事項についての運営を強めていこうということでございますけれども科学技術会議の機能を強化するためにこれが設置されたとしましても、この委員会でも前々からいろいろと論議されておりますけれども、現在の縦割り行政の厚いそういう障壁の下では、科学技術会議の機能強化を期待するのは困難だという声もあるわけですけれども、問題はむしろ科学技術会議の指導性にあるんじゃないかと思いますが、その点はどのように確保されるつもりでしょうか。
  160. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) これは太田先生御理解いただきたいのでありますけれども科学技術会議に負荷された機能というものは非常に重いものがございます。したがって、科学技術会議が策定された長期計画、これは私たちは行政の路線の中、軌道の中で誤らせない。ただ、非常に縦割りでと、こうおっしゃいます。これは確かに私もその点は全面的にこれを、いやそうじゃないんですと、こういうふうに頭から全く否定する、こういうこともなかなかむずかしい。しかし、私も当庁へ参りましていろいろやってみまするというと、やはり調整機能だけは当庁はしっかり持ってやっておりますから、これは誤ることなくこの点は十分理解してほしいと思いますし、私たちは、調整機能をなくした科技庁というものはありっこない、そういうことで使命感に燃えてやっておりますから、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  161. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 科学技術振興調整費というのがございまして、これは各省庁にまたがる分野、あるいは谷間にある分野で、重要なしかも見落とされがちな研究テーマに対して重点的に研究費を配分するということで、五十六年三十三億円ですか、五十七年六十億円、そして五十八年は六十一億円と計上されてきているわけですね。これは国や地方公共団体の負担する研究費の総額から見ますとわずか〇・五%にすぎないわけです。しかし、この調整費というのは非常にこれは重要な意味があろうかと思います。これからは、各省庁各分野の壁を乗り越えて研究計画を総合調整しながら、研究費を適切に再配分して、効果的に使用することが必要になってくると思うんですけれども、そういう点が政策委員会の設置で期待できるのでしょうか、どうでしょうか。
  162. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 総合調整の強化の一環といたしまして五十六年度に科学技術振興調整費が設けられまして、私ども科学技術会議方針に沿って運用をしてきたところでございます。今後、この政策委員会を中心にいたしまして振興調整費の具体的な運用方針を検討していくことになりますし、また、各年度の重点事項の検討整理もこの政策委員会で扱われるというふうに考えておるところでございます。
  163. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほど大臣のお話の中に、がん対策の推進ということがございましたのですが、がん対策の推進ということは、小手先だけの対応でなくて、むしろその原因についても研究を進めて、抜本的な解決を図っていくことがこれは必要だろうと思うのですが、今後政府としてはどのように取り組んでいかれる所存でございますか。
  164. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 最近の科学技術の進展に伴いまして国民の健康は著しく改善されておりまして、平均寿命から見ますとわが国は世界でもトップクラスの長寿国になっております。死亡率につきましても、各国に比較して低いものになっておりますけれども、その中でがんにつきましては漸増傾向にございまして、近年ではわが国の最大の死亡原因となっておるわけでございまして、がん対策は緊急かつ重大な課題というふうに考えておるところでございます。  がんの早期の撲滅を図るためには、がんの発生機序の解明等の基礎研究というのも非常に重要なことでございまして、最大の課題だと考えております。それから予防、診断、治療のための研究等を強力に推進する必要があるわけでございます。私ども昨年の末に発表いたしました技術予測報告におきましても、がんの研究というのはきわめて重要度の高い研究であるというふうに指摘されているところでございます。一方で、最近は、遺伝子組みかえ、組みかえDNA技術と言っておりますけれども、組みかえDNA技術によりまして、がんを起こす遺伝子に関します理解が相当進んでまいりました。これによりまして、がんの発生機序の解明がかなり早く進むのではないかと思っております。  こういう状況のもとで、先ほどお話が出ております、科学技術会議の本会議の場におきまして総理大臣から、がんの研究について各省庁協力して推進を図るようにという指示もございましたところでございます。科学技術会議の中におきましても、ライフサイエンス部会の下に新たにがんの研究推進の基本方策を検討するための分科会を設置いたしまして、早急にがんの研究推進の基本方策を策定することといたしておる次第でございます。科学技術庁といたしましても、この科学技術会議で策定されますがん研究推進の基本方策に沿いまして、関係省庁と緊密な連携を保ちながらがん研究推進に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  165. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 科学技術会議が新しく、そうしたわずかな点でございますけれども、機構改革等に取り組んでおられる点から、今後もさらに、名前だけでなくて実の伴ったそういう政策審議機関に成長してもらいたい、このように私たちも思っておるわけでございますし、大臣からも一層の努力をしていただきたいと思いますし、いまお話のありました振興調整費にしましても、非常にまだ少額だと思うんです。わずか六十億円でございますし、これはやはり科学技術のいろいろな進歩発展、あるいはそれが人類に寄与するためにということになりますと、まだまだ多方面にわたってそういった振興調整費が必要になってくるかと思いますので、その点の努力をぜひともお願いしておきたいと思います。  次に、宇宙開発委員会でございますが、これが三月十六日に宇宙開発計画を見直したということでございますけれども、その概要はどのようになっておりましょうか。
  166. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) 三月の十六日に見直しました宇宙開発計画の中身につきましてきわめて簡単に申し上げますと、まずその内容は二つの範疇に分かれまして、一つは既定の計画どおりに進める事項というのがございます。もう一つは新しく追加した事項ということで、二つに分かれます。  既定の計画どおりに進める事項の中身は、たとえば現在すでに開発を進めております通信衛生二号bあるいは放送衛星二号、気象衛星三号、MOS1といったような衛星の打ち上げとか開発、そういったようなものが述べられております。新しく追加した事項についてでございますけれども、まず、昭和六十二年度におきましてHIロケット三段式試験機の性能の確認等を兼ねまして技術試験衛星V型の開発に着手をする。それからまた、昭和六十二年度と昭和六十三年度に同じHIロケットを用いて打ち上げます大型通信衛星号a及びbの開発に着手をする。さらに、これらの人工衛星を打ち上げるために必要なHIロケットにつきましては、まず二段式の第一号試験機の試験打ち上げを昭和六十年度に行うことを目標に開発を進める。さらに、その予備機の打ち上げが六十一年度に可能になるように開発に取りかかる。また、三段式試験機につきましては昭和六十二年度に打ち上げることを目標に開発に着手をする。  以上が開発に着手するような事項の概要でございますが、そのほか開発研究ないし研究に着手する事項といたしましては、大型の放送衛星であるBS3の開発研究に着手をする。また、スペースシャトルを用いまして第一次材料実験を昭和六十二年度ごろに実施するということを目標にしまして開発研究を進める。さらには、アメリカで検討をされております宇宙基地計画への参加についての検討、そのための調査研究、また将来の大型人工衛星の打ち上げ需要に対処するためのHIロケットの性能向上に関する研究、大体主な点は以上でございます。
  167. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほど自主開発等のことについても同僚委員からの御質問がありましたけれども、現在の宇宙開発政策というのは自主開発路線がとられているわけですけれども、これに対しまして経団連の中では、最近自主技術開発を加速化すべきだという要望を出すということも伝えられております。また中には、同じ経団連の中でも、通信衛星の実用化時代を迎えて外国の力をかりても早期打ち上げを図るべきだ、こういうような意見も出ておるようでございますが、科学技術庁長官としましては、やはり自主技術開発は不可欠である、このようにお考えと思いますが、その点いかがでございましょうか。
  168. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 太田先生のおっしゃるような意見が経団連の中にありました。いろいろと討議が重ねられまして、そしてその結果はやはり大前提は自主開発、これでいくべきである、そしてスピードを、テンポを上げて大型の需要にこたえるべしと、こういうまとめ方に大体なっておるわけです。だから私たちは、長い間本当に後発のわが国がここまできた技術の蓄積というものは非常に貴重なものを持っておりますから、それは可能なわけですわな。ただ問題は、そこに一体どういう財源の見出し方が伴うかと、そこにひっかかるわけです。だから私たちは、万難を排して、いま太田先生のおっしゃるように、まず自分の自主開発、もうブラックボックスは持たない、全部自分の力でもって、しかもユーザーの要望にこたえるもの、こういう目標の設定でがんばりますから、御協力、御理解お願いいたしたいと思います。
  169. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 確かに、外国に打ち上げを委託した場合には、日本が期待するような時期とかあるいは価格の面でなかなか実現するかどうかむずかしい問題もあろうかと思いますし、また、大臣がおっしゃったように予算の点で、財政再建という現在の情勢下ではなかなか限界もあろうかと思いますが、しかし自主技術開発することも必要でありましょうし、また最大の努力を重ねていただきたいと思います。  五十七年の九月に、宇宙開発委員会、このもとに設置されました長期ビジョン特別部会は、今世紀末ごろまでの宇宙開発のビジョンに関することを審議しておるわけですが、これは五十八年三月末までに審議を終えるということになっていますが、その見通しはどうでしょうか。また、この部会では、外国への打ち上げ委託についてはどのような議論が交わされたのでしょうか。
  170. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) いま先生がおっしゃいましたように、宇宙開発委員会におきましては、今世紀末までを見通した宇宙開発のビジョンをつくるための特別部会を組織しまして、先年来鋭意その検討を進めているところでございまして、いまのところ、三月末というふうなお話でございますが、なかなか中身的にもむずかしい点もございますのでもう少々時間がかかるかもしれません。ただ、その中ではいろいろな事項について検討をしているわけでございますが、先ほど系からもお話がございましたような、いろいろな方面からの新しい需要というものに対してわが国宇宙開発がどのようにそれにこたえていくべきかということがその検討の大筋でございます。  たとえば、一つの例でございますが、最近一番よく言われますのが、わが国におけるところの打ち上げ手段、すなわちロケットのいわば開発のスピードとそれからユーザーのニーズの対応とのギャップというものを、一体どのようにこれからわが国宇宙開発では埋めていくべきかということが一つの論点になっておりますが、そのような点につきましても長期ビジョンの特別部会では非常に突っ込んだ検討をしているわけでございます。ただ、結論がまだ出ておりませんけれども、いままでのいろいろな段階では、なるべく大型化、大型化の需要と申しましてもやはりそれにはおのずから一定の限度があるだろう、だけれどもわが国としましては、現在世界各国が持っているようなその程度のいわば打ち上げ手段はなるべく早い機会に追いついて持つような努力をするということが必要ではないか、というふうなことが一つの議論の中心になっているわけでございます。
  171. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 やはりユーザーの中には早く打ち上げを進めてもらいたいという意見もあるんですが、ちょっとお尋ねしておきたいと思うんですが、静止軌道、静止衛星の軌道上にはたくさんいま各国の静止衛星が乗っているわけですけれども、やはり無制限にあるわけではないために、わが国宇宙開発政策の現在のテンポでいきますと、本当にその最適な地点をどんどん他の国に占領されてしまうのじゃないかという心配があるということですね。二月四日に打ち上げられました「さくら二号」aですか、あの場合でも、いろいろとその位置をめぐりましてソ連と調整がつくのが長引いたというような話も聞いておりますが、その点どうでしょうか。
  172. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) 静止軌道の位置取りの問題でございますが、「さくら二号」のa及びbにつきましては、ただいま先生お申し越しのように、静止軌道の位置をめぐりましてソ連との間の調整がかなり必要であったわけでございますが、最終的にはソ連の方との話し合いがつきまして、二号aにつきましては東経百三十二度、二号bについては東経百三十六度ということで位置を確保することができたわけでございます。
  173. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 静止衛星の軌道問題につきましては、二年後に国ごとの位置割り当てを討議する会議が開催されるというようなことも聞いていますけれども日本としてはこの問題にどのように取り組む方針でございますか。
  174. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) その件は本来は担当が郵政省の担当でございますが、いまお申し越しのお話は、ITUと申しまして世界通信連合と訳しますか、ITUを中心に世界の無線通信関係の主管庁会議というのがありまして、その主管庁が集まりまして今後のそれぞれの国の静止軌道の利用の仕方等の計画を出し合いまして、意見の調整をする場がございます。数年後に考えておりますところの世界主管庁会議において、日本としましてどのような主張をするかという点につきましては、これから鋭意検討を進めていくということになろうかと思います。
  175. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、宇宙空間で無重力を利用した材料実験計画があると聞きますが、その概要はどうでしょうか。
  176. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) 宇宙空間では無重力、これは正確に申しますと微小重力と言う方が正確かもしれませんが、いずれにしましても非常に重力が少ない、あるいは無重力に近い、そういった場を利用いたしますと、地球上では得られませんような、たとえば比重が非常に違う物質をうまく均一にまぜたような合金であるとか、あるいは地球上では非常に分離がむずかしいような生体物質の分離であるとか、そういったようなものが可能になるということでございます。したがいまして、わが国としましては、世界的にもそういった新しい分野について各国が鋭意その研究に取り組んでいるという中におきまして、わが国もスペースシャトルにわが国科学技術者を搭乗させまして、そのような宇宙空間の特性を利用しました材料実験を行うことを目的としまして、第一次材料実験と申しますが、これを昭和六十二年度ごろに実施することを目標に、当面実験システムの開発研究、あるいは搭乗科学者の募集及び選抜を行おうとしているわけでございます。  なお、この件につきましては、先般わが国の総理大臣が訪米の際、レーガン大統領にお会いになった際に、レーガン大統領の方からもこの件に関連して、日本人のスペースシャトルへの搭乗を歓迎するというようなお話もございましたし、われわれとしましては、今後宇宙開発における日米間の緊密な協力をさらに進めるという面におきましても、この宇宙空間を利用した材料実験の推進というところに力を注いでいくべきだと、かように考えております。
  177. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、科学万博の件についてちょっとお尋ねしますけれども、現在までどうでしょうか、六十年に開催される予定でございますけれども、どのような進捗状況になっておりますか。
  178. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 科学万博の開催につきましては、五十四年の十一月に閣議了解が得られまして、国際博覧会条約上の開催申請を進めたわけでございますが、それ以来、六十年三月の開催を目指しまして関係機関協力を得ながら鋭意準備を進めているところでございます。  会場となります筑波研究学園都市内の約百ヘクタールの用地につきましては、茨城県がその取得に当たりましたが、昨年の七月に用地の取得を完了いたしております。続きまして、博覧会協会におきまして昨年の十月八日に会場建設の起工式を行いまして、現在おおむね敷地造成は終了いたしまして、電気、ガス、水道等の整備等を行っているところでございます。  科学万博の出展につきましては、政府出展と外国出展、国内出展の三つの部門から成るわけでございます。  このうち、政府出展につきましては、大阪で開かれました万国博覧会、それから沖縄で開かれました海洋博の際と同様に、主催国にふさわしい出展を行わなければならないと考えておりまして、その内容につきましては、この三月の初めに政府出展の基本設計を決定いたしまして、現在関係省庁とか民間の専門家の協力を得まして展示内容の詳細な設計を進めているところでございます。政府館の建築につきましては、間もなく工事の契約ができる段階にきておるところでございます。  外国出展につきましては、五十六年の秋に百六十一カ国、五十四国際機関に対しまして正式に招請状を発出いたしました。これまでにすでに九カ国、四国際機関から参加の意思表明を受けております。今後とも、関係方面の協力を得ながら、一層積極的な招請活動を展開していきたいというふうに考えております。  また、国内出展につきましては、昨年の春に出展参加の受け付けを行いました。二十九という多くの企業、団体から申し込みを得ております。民間の関心の高さがうかがわれるわけでございます。昨年の七月にはすでにこれらに対します敷地の割り当ても終わりまして、現在各出展者がそれぞれ出展内容についての構想あるいは設計等を進めているところでございます。  入場者の予測は二千万人と考えておりますけれども、その二千万人の輸送問題というのがいま検討されておるところでございまして、一千万人は鉄道で、一千万人は自動車でというような構想になっております。博覧会協会とか茨城県等の協力を得まして、また関係省庁と検討を進めまして、五十六年の十一月に第一回の国際科学技術博覧会関係閣僚会議を開いていただきまして、常磐自動車道、それからそれにつながります首都高速道路、それから広域的な道路、それから会場付近の周辺の道路等、道路網の整備に努めておるところでございます。また、国鉄の常磐線の輸送につきましても、その増強等を図らなければなりませんので、そういう緊急を要するものについて五十六年の十一月の関係閣僚会議事業計画を決定していただきました。それに沿って、万博に間に合うように現在鋭意準備を進めているところでございます。また、交通安全施設とか水道等の整備も必要でございますが、これにつきましては、ことしの一月に開催されました関係閣僚会議におきまして事業計画が決定されまして、現在事業が進めるれているところでございます。このほか、宿泊対策とか医療対策とか、いろいろな問題がございます。関係省庁、それから茨城県等の協力を得まして準備を進めているというところでございます。
  179. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 こちらが質問する前に全部答えていただきましたので終わりますけれども、大臣に最後に、今後準備に努力をしていただきますよう、所見をお伺いして終わりたいと思います。
  180. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 私がこの万博の担当大臣と、こういうことでございますから、非常に責任の重さを感じておりますし、そして、いままでお話がございましたが、私が一番いま頭の痛い仕事は何だろうかな。たくさんあります。たくさんありますけれども、何と申しましても、あと七百日ちょっとになりましたが、この万博だけはひとつ日本の万博史にやはり輝かしい歴史を残すものと、こういう意気込みで一生懸命に進めておるわけであります。  いまのお話のとおり、どうかと、こうなりますれば、順調にいま進んでいる、こういうことになろうと、こう思います。しかし、いま太田先生のおっしゃいますように、非常にこれは万般にわたっておりまして、これは政府全体の責任であります。しかし私は、自分から申し上げてなんですけれども、本当に各省庁はよく協力してくれております。臨時駅舎も、それから高速道路も、建設省、それから二千万人以上と、こういうことでございますから、じんあいの処理等々いろいろあるわけでありますが、幸い、茨城県も本当に一生懸命に受け皿に協力してくれておりますので、私は、非常に頭が痛い、こういう思いの中からも、よくやってくれているという感謝の気持ちを込めて、絶対これは万博史上に輝かしい歴史を残す、こういう気持ちでやっておりますから、ひとつ御理解いただきたいと思います。    〔理事後藤正夫君退席、理事太田淳夫君着席〕
  181. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、きょうは核再処理の問題を中心にいろいろ質問をいたしたいと思います。  まず動燃の再処理工場、これは定期検査を終えて二月の十五日試運転に入ったやさきに、二月の十八日、十九日に続けてトラブルを起こし、運転を全面ストップしたわけでありますが、昨年の四月以来、二基の溶解槽、R10、R11、このうちR11が故障し、R10だけで運転を断続して続けてきた。その頼りのR10も同じような故障が起こった。これら二基の溶解槽の修理にまず今後どれくらいの期間、どれくらいの修理費が必要と見込んでいるんですか。
  182. 中島健太郎

    参考人中島健太郎君) お答えいたします。  現在、もうすでに機器の開発を進めておりまして、ことしの秋には修理を終えたいというふうに考えております。  それから修理費でございますが、機器の開発費も含めまして約十二億円と考えております。
  183. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 かなり膨大な修理費用が要るということでありますが、こうした一連の事故が続出をしたわけで、しかもこの故障の内容が以前の酸回収蒸発缶の故障、これを含めて、硝酸によるピンホール発生、こういうことでありまして、これはいわば再処理工場にとっての宿命的な構造的欠陥と言うべきものかと思うんですが、この欠陥の性格について科技庁はどういう把握ですか。
  184. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 先ほど参考人の方から御答弁申し上げましたように、去年の四月とことしに入りましてからで溶解槽、それから酸回収の蒸発缶、いろんな故障を起こしまして、現在のところ、使命といたしております使用済み燃料の再処理ができないという状況になっておるわけでございますが、この動燃の再処理工場で採用しております技術につきましては、私どもといたしましては、フランスでありますとかあるいは英国でありますとか、現に使用済み燃料の再処理をやっております国々でひとしくこの方法を採用しておるわけでございまして、湿式法といいますか、ピュレックス法というものでございますが、基本的には使用済み燃料の再処理技術として完成されたものであるという認識を待っております。でございますけれども、先ほど御指摘がございましたようないろいろな故障、トラブルが続発しておるわけでございまして、材料の腐食あるいはピンホールの発生というようなことで、現実の問題といたしまして使用済み燃料の再処理ができないというような状況になっておるわけでございまして、非常に残念でございますが、こういった問題につきましてはいままでも逐次克服をしてまいりましたし、今回起こっております問題につきましても、日本技術をもってして克服できるものだと、こういう認識を持っております。
  185. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 故障の深刻さについての受けとめ、いまの答弁でいいのかという感じでありますが、そもそもこの工場には五十六年度末までに千三百九十二億円の投資が行われた。五十七年度さらに四百四億円、五十八年度四百七十億円という予算が計上されている。そのうち五十六年度末までの建設費だけでも約七百億円と、当初この事業がそもそも出発をするその時点での予定額の三倍以上も投資が行われてきたということでありますが、その投資の大半を国の出資で行ってきたわけであります。本来であれば、五十六年一月以降の本格操業後は再処理料金によって採算がとれる、こういう計画になっておって、予算上も五十六年度八十トン処理で百八億円、五十七年度百トン処理で百三十五億円の再処理収入を見込んでおった。この予算でもなお、年間の投資その半分にも満たず赤字をふやす、こういう計画になっておった。ここへ今回の一連の事故が起こった。再処理事業をストップせざるを得ない、こういう事態になっておるわけであります。したがって今日の姿というのは、五十六年度五十三トン、五十七年度は三十二トンしか処理ができなかった。予算よりも五十六年度三十七億五千万円、五十七年度について言えば九十一億八千万円の減収という姿に残念ながらなっておるということであります。しかも今後修理に莫大な費用がかかる。  こういうことで見ていきますと、再処理料金によって投資した資金の回収を図るというこのこと自体が果たしてやり得ることなのかということについて、そういう考え方、方針というのがもう事実上破綻をしてきているのではないかというふうに言わざるを得ないと思うんですが、こういったコスト回収主義といいますか、この方針というのは今後も踏襲するということですか。
  186. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) この動燃の東海の再処理工場につきましては、先生十分御案内のことかと思いますが、かいつまんで当初の運営についての理念を申し上げますと、まず第一に、再処理技術の確立を図るということでございます。日本で最初の使用済み燃料の再処理施設でございますから、そういった技術的な信頼性といいますか、そういうことの確認をするということが一つの大きな目的でございます。  もう一つは、いま御指摘がございましたように、そういった技術開発をやりながら、原子力発電所から出てまいります再処理需要、使用済み燃料の再処理、そういった需要を賄うという目的を兼ね備えておるわけでございまして、使用済み燃料の再処理を負担するということにつきましての機能が今回のような故障によりまして果たし得なくなったということは非常に残念でございます。その結果、いま御指摘がございましたような、収入が上がらない、そのために事業としての赤字が累増するということがあるわけでございます。  でございますが、この工場につきましては、先ほど申し上げましたように、当初から、使用済み燃料の再処理を一種の事業と考えて、運営する面の資金につきましては借入金で賄うということをとっておりますけれども研究開発的な要素の強い経費、あるいは安全確保のための経費でありますとか、公共的な性格を持ちます経費というものにつきましては、一般会計の国の資金で賄うという考え方をとっております。でございますから、いま御指摘がございましたような、運営についての基本理念を根本から考え直すということではございませんけれども、再処理をしましてその料金収入によって運営をするという面での収支の問題については、非常に深刻な事態になっておるという認識を持っております。  この問題の解決につきましては、何としても今回のようなトラブルによります運転停止の状態ということをできるだけ早く脱却するということがまず第一でございまして、できるだけ早い機会に、設計能力が一日当たり使用済み燃料処理能力で〇・七トンという施設設備でございますが、その所期の能力、それに近いものでできるだけ早く安定して操業できるようにしたいというのが私どもの現在持っておる考え方でございます。
  187. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、私いまかなり数字を挙げていろいろ指摘をしてきたわけですけれども、再処理技術については相当の水準へきている。だからまあまあ何とかうまくいくだろうというこういう前提に立ってそもそも事が始まってきたわけであります。ところが、もういまも指摘しましたような事故が連続して起こっている。一時的にちょっと起こったという程度のなまやさしい姿ではない。また、莫大な経費を投入してきている。そして、この再処理の料金収入で投入した経費の解消を図っていくということを方針にしてきたわけですけれども、とんとその方向では進んでいない。赤字はふえる一方だ。こういうことになってきておるという状況のもとで、大臣、大臣職といいますか、原子力委員長職、これを引き継がれて、一体これからうまいこといくというふうに大臣として見ておられますか。今後の展望についてどういうふうに見ておられるか。ここらあたりでもう一遍方針の見直しをすべきではないかというふうにお考えにならないでしょうか。
  188. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 再処理工程というものをわが国が自分のサイクル計画の中から、手から放すということは絶対できない。これはもう佐藤先生も御理解いただきたいと思います。だからして私たちはいま、再処理工程、この計画を一時停止をするとか、あるいは将来見合わすとか、こういう軌道の修正は毛頭考えておりません。  そこで、佐藤先生御指摘のように、最初の計画と現況はずいぶん違うじゃないかと。これは私は率直に佐藤先生の御指摘を受けますわ。トラブルが起きたことは事実です。だからしてこの事実に対してどう対応するかということになると、まずそこには反省が要るでしょう。なぜなったのだろうか。反省をうんと詰めていきますと、そこには今度次は教訓が生まれるわけでしょう。その教訓というものをどう一体生かすのか、ここが私たちに与えられた課題でしょう。これはもう科技庁の、原子力委員会の、動燃のこれは最大のいま課題であります。しかしそれは、反省から教訓に入って、その教訓の中から今度は、必ずこれを克服できるという再生の道を私たちは信じておるわけです、克服できると。これは、率直に申しますが、若干時間がかかります。非常にあの遠隔操作で、操作そのものの開発からこれは手をつけておるわけでしょう。手法は幾つもあります。  次に今度は採算の問題に入りまするというと、私もあそこを見に行きました。まず資本構成が少し無理があったのじゃなかろうか。研究開発、そして採算性と、いわゆる二兎をここに並べた。そういう事業計画、もくろみであったわけなんです。それがまた中に入れば、きょう理事お見えでございますけれども、資金構成が、資本参加の内容が非常に高い高い金利であるのですな。だから、財投その他の資金でもってとにかく金利負担の軽減措置というものもこれは私、いずれかは私たちが中に入ってやってやるなきゃいかぬだろうと。そして、第二工場へと今度日程をつづっていったその中で一体これをどう結び合わせるか。大体こういう私、戦略の中でこの問題をひとつ見直していかなきゃならぬのだなと、これは私の考え方ですよ、そういうふうな私は考え方を持っておるわけです。  いまの佐藤先生の御指摘を私は率直にそのまま受けています。本当にもう赤字に赤字、こういう状況であることは事実でありますから、これを全部国がけつを持ちなさいと、こう言ったって、私たちはこの厳しい財政の中でできません。だからして、資金参加をどうするか、資金構成をどうするか、そして次の実用の工場の稼働状況の中において一体この償還計画をどう見るか、こういうところにいくものだと、私はこのように理解いたしております。もう少し時間をかしてください。
  189. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣はいかにも厳粛な、言葉つきはそういう言葉つきを使いながらね、しっかりした反省の上に立ち教訓を引き出してそれを今後に生かしていけば必ず展望ありと、こう言われていますけれども、何を教訓として引き出すのかということについては、先ほどのお話を聞いておってもちっとも出てこない。まあ強いて言えば、その結論らしきものは、もっと国がどんどんお金をつぎ込みましょうということだけを力説された。しかし、金をつぎ込んできてこういう姿になっているというここから、どういう教訓を引き出すのか。中でも、事故続出と、こう続いておるこの技術的欠陥はどこにあったのかということについてはお触れにならぬわけですね。  その問題をさらにおいおいひとつただしていきたいと思うのですけれども、そこで、こうした現状のもとで、第二再処理工場の例のあの原燃サービス会社あるいは電力業界、こういったところは、このような事故続出をしておる動燃の技術を有償で入れるぐらいならフランスから技術導入した方がましだ、こういったような議論も起こっておるというふうに私ども聞いておるわけです。しかし、この問題を進めてくる中で、私ども共産党としては、民間の第二再処理工場というものについてはそもそも賛成はできなかったんです。ですが、当委員会としても、昭和五十四年の五月でしたと思いますが、民間の第二再処理工場の建設及び運転は動燃において蓄積された技術と経験を十分活用する、こういう内容の附帯決議を行ってきたと思うんですけれども、この方向、動燃でしっかり自主技術を蓄積し、確立し、そういう上で再処理事業というものに向かっていくんだというこの基本方針、これはお尋ねするまでもないと思いますけれども、堅持するわけですね、大臣。
  190. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) いま先生がお触れになりました基本方針は、結論的に申し上げますと、そのとおりわれわれその御意向を体しまして、再処理技術開発、それから第二再処理工場の計画を推進しておるわけでございます。  いま先生がお触れになりました、動燃の技術を余り利用することなく海外からの技術導入によって民間の再処理工場ができるのではないか、そういうことを考えているのではないかという御指摘がございましたが、この点につきましては、念のために申し上げておきたいと思いますが、動燃の再処理技術といいますか、蓄積されました動燃が持っております技術をベースにいたしまして民間の再処理工場計画が進められるというのは当然でございまして、民間の方でもそういうふうに考えております。  ただ、動燃の再処理施設というのは、一日当たりの処理能力が先ほど申し上げましたように〇・七トンといった非常に規模の小さいものでございますので、英国あるいはフランスは実際にコマーシャルのプラントとして一つの工場、ユニット当たり八百トンでありますとかあるいは千二百トンでありますとか、非常に大規模な工場を運転し、また建設を行っております。そういった大規模の商業プラントについての知見といいますか、技術経験というものは、これまた非常に貴重なものでございますから、民間で商業用のプラントを考える場合にそういうものの導入を図るということはあろうかと思いますが、基本的には、国内の動燃の技術をベースにして計画し建設を進める、こういうことで理解しております。
  191. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 自主技術を蓄積し、その確立の上で再処理問題についてのいろいろな検討、取り組みに対処をしていくというこの基本方針は堅持をするというわけでありますね。  そこで、実は昨日付、三月二十四日付日本経済新聞、ごらんになっていると思いますけれども、こういう報道がされました。第二再処理工場についてアメリカのべクテル社、ここからの技術を新たに導入するということであります。この報道は大体日米両国で大筋合意をしているという報道でありますけれども、このことは事実ですか。
  192. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) きのうの朝その記事を見まして、私も非常にびっくりしたわけでございますが、早速担当の者から原燃サービスの方に確認をしてもらいましたところわかりましたところは、ベクテルというアメリカのエンジニアリング会社でございまして、これはアメリカで再処理施設の建設その他に経験を持っているところでございますけれども、そこを相手にして技術導入あるいは技術導入のための話し合いをやっておるという事実は全くないというのが実情のようでございます。そういうふうに理解しております。
  193. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 現在は全くないということで、将来はあり得る。逆に言えば、今後ともあり得ないということですか。
  194. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 再処理技術というのは、申し上げるまでもございませんけれども、イギリスでありますとかフランスでありますとかアメリカで経験がございますが、そう多くの会社で建設あるいは運転の経験を持っておるわけではございませんので、商業プラントの技術を導入する相手といたしましては、数は非常に限られようかと思います。御指摘のべクテルという会社は、アメリカにおきます比較的数の少ない、そういう知見を持っておる会社の一つでございます。でございますから、結果的にはといいますか、そういう商業プラントの建設なり運転についての技術の導入元ということの候補としてはあり得るかと思いますけれども、そういうことを決めておるわけでもないし、交渉をしておるわけでもないというのが実情でございます。  将来とも絶対ないかとおっしゃれば、それは私どもが決めることでもございませんし、何とも申し上げかねますけれども、そういう可能性はあるだろうと私は思いますけれども、そういうことは決まってもいないし、というのが現在の状況だということでございます。
  195. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 将来とも絶対にあり得ないというふうには言えないということでありますが、そうしますと大臣どうでしょう。  さっき私、決議を引用いたしましたけれども、動燃において蓄積をした技術と経験を十分活用する。表現はそういうことですけれども、いわば日本自主技術をよく研究し、蓄積し、それを確立して、そして日本の再処理事業に臨んでいく。よそからの借り物技術ではどうしてもいろいろその後の故障が起こる。故障が起こったときに、どこに原因があるかということを早期発見して効果的な手だてを尽くすということができないのは、再処理問題に限らず原子力発電のこの分野では多々苦い思いをしてきた。「むつ」の問題しかり。こういう状況のもとで第二再処理工場――あの決議は第二再処理工場についてはということでわざわざ主語を明らかにしてああいう決議をやってきたわけですけれども、ところがまたもや、フランスに頼ってきたこれも事故が続出する。だからどうもフランスももう頼りなくなったというので、またアメリカに頼るという誤りの繰り返しじゃありませんか、これは。そういう方向というものが絶対にあり得ないことだというふうには否定できませんというわけで、場合によればあり得ることだということになると、本当に進むべき道はこの道だというふうにわざわざ国会として決議をしてきたこの方向からの、またもや逸脱じゃないですか。国会の決議を何と心得ておるんですか、大臣。
  196. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 大臣からまた後ほど御答弁があろうかと思いますが、先ほどお答え申し上げましたことの繰り返しになろうかと思いますけれども、第二再処理工場の計画につきましては、動燃がやっております再処理施設によります知見をベースにして計画をし運転するというのが基本理念でございますし、現在時点でもそれを堅持しておるわけでございます。でございますが、商業プラントの運転経験というのは、われわれといいますか、日本にはないわけでございまして、フランスなりあるいは英国なりアメリカではそういうものを持っておるわけでございますから、そういうものを補助的といいますか、追加的に活用するということは当然といいますか、妥当な考え方だと思いますし、そういうことは国会の御意思といいますか、御意向に反するものではないというふうに私ども理解をいたしております。
  197. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) いま高岡局長のお話がございましたが、結局私たち、動燃で蓄積したデータ、集積というものは、これは貴重なものを持っていると、こう思っております。次にフランス、イギリス、それからアメリカは再処理にいま入ってないんでしょう、とめておるんですね。いずれにしましても、私たちの蓄積したデータ集積というものはこれは何といったって基調になりますわね。基調になる。だから、あるときにはやはりアメリカなりそういったものの技術というものを参考に供するということはこれはあり得るでしょう。あり得ると、こう申し上げた方がいいかもわかりません。いずれにしましても、私たちはやはり世界各国の……
  198. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 アメリカを参考にするかどうかということじゃないんですよ。技術導入をして建設をやると。
  199. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) それは、私たちの方の蓄積というものは、これは私たちはもうすばらしいものを持っておりますから……
  200. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そういうことを否定しないというんです。将来あり得ないとは言い得ませんと、こう言っているんです。
  201. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) ストレートに全部これを入れるということは私たちは現時点では考えられないと、こう思っておりますね。
  202. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちょっと休みましょう。本会議から戻られてからまたしましょう。
  203. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) 暫時休憩いたします。    午後二時五十三分休憩      ─────・─────    午後二時五十四分開会    〔理事太田淳夫君委員長席に着く〕
  204. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) 委員会を再開いたします。
  205. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 動燃で蓄積した技術を民間の第二再処理工場に生かすという場合、この技術移転は一体有償にするのか無償にするのか、この点はどうなんですか。
  206. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 動燃から民間の日本原燃サービスという会社に対する技術移転というのは非常に大事なことでございまして、去年の六月に動燃と日本原燃サービスとの間で技術協力基本協定というのが結ばれております。これによりまして技術者の相互派遣、技術資料の提供、共同研究の実施、技術者の訓練というようなことが行われることになっております。なっておりますが、いまお尋ねのございました技術資料の移転提供につきましては、動燃事業団としての財産の保全でございますとかという点を一方では考えぬといけませんし、かつまた一方では、受け取ります原燃サービスの方で、移転された技術が十分活用されるという点も重要な点でございますので、これらの点を考えまして、有料にするのかどうか、あるいは有料にした場合の評価をどうするかということの検討をいたしておるところでございます。その結果を待って、先ほど申し上げました技術資料の移転を図りたいというふうに考えております。
  207. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろ説明をされておるのですけれども、結論は有料制になるのか無償なのか。そこの結論は出ていないということなんですか。
  208. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 有料かどうかということも、先ほど申し上げましたように、まだ明確な結論は出ておりません。おりませんが、考え方の方向として御了解いただきたいのですけれども技術というのは貴重な国費を使いまして開発した成果でございますから、やはり事業団の財産の保全という観点から、無料で提供するということを頭から決めてかかるという検討はいたしたくないと思っております。
  209. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 無料ということを頭から決めてないというのはあたりまえのことで、しかし、果たして有料制になるかどうかというそこのところについても検討中だと。この点についても、ずいぶんずさんな方針ですね。  いずれにしても、国民の立場から見ますと、技術移転については無償だという、このことは、結局それを税金で負担をするのだということであるわけだし、有料制だということは、それは電気料金という形ではぬ返ってくる。いずれにしても国民に対して負担、ツケが回ってくるということにはこれは変わりがないわけであります。営利事業、利潤を上げる民間の第二再処理工場なる工場、ここに対してどういう仕組みをとるのかという問題について、あれだけぐいぐいぐいぐい法案を進めながら、しかしいまだにそこについての結論が出ておらぬという、この点でもずいぶんずさんな方針だというふうに言わざるを得ないわけです。私はきょうも、第二の「むつ」のあの愚を、誤りを繰り返すということではないかということで、国費のむだな投入、とにかく莫大な国費を投入して、しかし事故が続出をする、料金で投入した資金の回収を図ると言いながら、もう全くと言っていいがそれは成功していない、こういう状況で、この第二再処理工場に対する有償か無償かということの仕組みも、そこのルールもいまだに確立をしていないということで、いささか怒りを禁じ得ないわけでありますけれども、さらにもう少しお尋ねしましょう。  この事故内容でありますが、再処理工場の、当初酸回収蒸発缶で放射能漏れが発見されて全面ストップした。この蒸発缶にピンホールがあって十五カ月間工場の運転をストップした。日揮というメーカーにつくらせたものでありますが、これが三年余りたって前回と同様な故障を繰り返したということであるのですが、本来これは十五年ないし三十年のメンテナンスフリー、こういう耐え得るものだということで非常に強調されてきたものであったわけです。ところが今回、普通の化学工場と比べても非常に早々とその欠陥が露呈をして、全面停止せざるを得ないようなそういう状態になっておるということなんでありますが、ここらの問題についてどういう理解ですか。
  210. 中島健太郎

    参考人中島健太郎君) ただいま先生のおっしゃいましたのは、五年前の酸回収蒸発缶のことであろうと思います。これはちょうど五年前の八月に起こったわけでございますが、事象といたしましては、エバポレーター、蒸発缶に加熱用の蒸気を供給しておる、その蒸気の凝縮水の系統に、ほんの微量でございますが中の液が漏れたということでございます。その時点でわかることは、非常に小さなピンホールであろうということがわかったのでございます。  その後、これをどうするかということで、その方法としては三つ考えられたわけです。一つは補修をすること。それから次は、外国なんかでは代替法と言っております、使わない方法。それからもう一つは、取りかえるということでございます。われわれいろいろな角度からこれを検討いたしましたけれども、やはりこの際、こういうことについての貴重な教訓を得るためにも、この際取りかえる、そしてよく調べようということでそういう措置をとったわけでございます。  それから次に、そのときの時点では約六千時間であったわけです。それでわれわれ、化学工業、特に硝酸メーカーあたりの方々の意見も十分に徴しました。それで……
  211. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 簡略に。
  212. 中島健太郎

    参考人中島健太郎君) わかりました。それで、結果としては取りかえになりまして、構造的にもあるいは加工方法につきましても十分な検討を加えたものとして今度のものを翌年据えつけたわけでございます。この間に、確かにホットメンテナンスとしての非常な経験もまた得たわけでございますが、これがちょうど一万三千時間でございますから、約倍もったわけです。しかし、それにしてもわれわれはまだこれでは満足いたしておりませんので、今回に照らしてさらにいいものをと考えておるわけでございます。
  213. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ところで、いろいろ説明があったんですけれども、一つの重大な問題は、この二月十五日の試運転に先立つ定期検査で、問題の酸回収蒸発缶あるいは溶解槽、こういうものの点検はきちっと行われておったのかどうかという、ここが問題でありますが、一月の動燃の発表によりますと、承知をしておる限り、ピンホール事故前歴がある装置の安全点検を科技庁の検査官の立ち会いで行い、健全性を確認したというふうに発表されておりました。ところが科技庁の方は、この酸回収蒸発缶は放射線量が非常に高くて危険なんで、検査官は立ち会わず工場側の自主検査に任せたと、こういう説明になっている。ここで考え方、対処の仕方の重大な違いが出ているじゃないか。またこの発表も、ここでまたうその発表がやられておるんじゃないかという、そういう疑いさえ持たざるを得ないということであるわけですけれども、実際はどういうふうに点検をしたのか、立ち会いをきちっと行ってやったのかという問題ですね。そこらはどうですか。
  214. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) 佐藤君、時間になりました。
  215. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 私どもの方で直接行いました検査項目は、大ざっぱに言いまして安全保護系の検査でございます。内容としましては、蒸発缶の処理能力、それから加熱用の蒸気がございますが、これの温度の警報、それから加熱用蒸気の緊急操作、それから蒸発缶セル内の負圧の測定、こういうことを行ったわけでございます。御指摘のように線量が高うございますから、直接材質を調べるということは行っておりません。
  216. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 動燃。
  217. 中島健太郎

    参考人中島健太郎君) 酸回収蒸発缶につきましては、われわれは、やはりこれはセル内のものでありまして、したがって間接的な方法で確認をしております。それは先ほど申しました蒸気の凝縮水の核種分析でございます。これを実施いたしまして、特に異常はないということでございます。  それから、もちろん先ほど安全局長が申された安全保護系の検査も実施しております。
  218. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 科技庁の立ち会いのもとで行ったというふうに当時説明をしておったんじゃないですか、一月。
  219. 中島健太郎

    参考人中島健太郎君) そのようなことは申しておりません。
  220. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いや、そうじゃないです。  大臣に一問だけ残して休憩を。
  221. 太田淳夫

    ○理事(太田淳夫君) 暫時休憩いたします。    午後三時七分休憩      ─────・─────    午後三時十八分開会
  222. 中野明

    委員長中野明君) 委員会を再開いたします。
  223. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは、大臣にもう一遍最後に一問尋ねておきたいと思うわけでありますが、その前に、局長の先ほどの答弁、私は大変不満です。そういう立入検査なんかは危険区域だからできないということですけれども、そうであればあるだけに、危険な区域だからこそ、そこの厳密な点検、検査をどうやるか、その手法をよく考える必要があると思うのですが、その問題はまた次の機会にいろいろやりましょう。  そこで大臣、お尋ねをしますが、さっき、民間第二再処理工場のあり方をめぐっての日本経済新聞の報道で、これからアメリカの技術導入をやるということの問題をめぐっていろいろ御質問をしておって、大臣は、本会議に行かれる直前のあの最後の答弁で、フランスやイギリスやアメリカやいずれの国を問わず、いろいろそういう経験を大いに参考にしていく必要があるということを言われましたけれども、しかし、実際に考えてみれば、フランスの再処理技術にしたって本国自身でも事故続出、それをモデルにしたという日本の動燃工場、きょうるる申し上げたような事故続出、アメリカに至っては商業用の再処理工場というのはないわけですね。  これを大いに参考にするといったって、一体それが何が参考になるのか。何よりもいま大切なのは、日本自身が再処理問題についての自主技術研究し、蓄積し、それを高い水準の体系にまとめ上げていくということが何にも増して大切で、この根本方針をいまこそますますしっかり堅持して再処理問題にも対処していくこと。こうしませんと、相次ぐ原発事故の連続、「むつ」問題、ああいった誤りをこの再処理問題でも再び繰り返すということになるから、この自主技術研究開発というのが何にも増して大事なんだというこのことをやっぱり科技庁の長、原子力委員会の長たる者、そのことを明確にしてもらいたいというふうに思いますので、その点もう一遍、念を押すようですけれども質問しておきます。
  224. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 先ほど佐藤先生へのお答えに私はそのようなつもりで、本当に貴重な、とにかくトラブルを起こしました、トラブルを起こしたところには必ず反省があってしかるべきです、一体原因は何だったんだろうかと。そしてその反省の上に立って、ここに教訓というものを必ずわれわれは見出さなきゃならぬわけであります。そしてその見出した知見の中からわれわれは、かくあるべしと、こういうふうに教訓を生かして自己技術というものを確立していく。この基本線はこれは絶対、佐藤先生おっしゃるとおり、われわれはこれを軌道を修正するようなことがあってはならぬ、選択を誤ったらいけない。ただし、各国の情報というものは、これはやはりそれなりの知見を持っておるわけでありますから、これは参考にすることもあり得る。あり得る。基本線は、いま佐藤先生がおっしゃいました、私たちは、何としましても自己技術、これを基調としてこれに対応していくということだけは間違いございません。そういう方針で臨みますから御理解願いたいと思います。
  225. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わります。
  226. 小西博行

    ○小西博行君 きょうは大体三点の問題について質問させていただきたいというふうに考えてきたわけでありますが、先ほど同僚議員の方から衛星の問題についてはかなり詳しく質問がございましたので、急遽通産の方に来ていただきまして、代替エネルギーの問題について少し質問をさせていただきたいと考えております。通産の方、いらっしゃいますでしょうか。まだ来られていませんか。  それではちょっと変更して、予算の問題から質問をさせていただきたいと思います。  予算を見せていただきますと、五十八年度の科学技術予算、これは一般会計で三千二百七十二億円、前年度に比べまして二・五%増というふうになっております。そういった意味では、なるほど科学技術というのは将来にとっても非常に大切なんだなと科学技術庁の人もずいぶん喜んだのじゃないかというふうに、まず感じたわけであります。  ところが、いろいろ調べてみますと、そのうちの科学博の予算が百六十二億円、全体の五%、そして伸び率は二四二%ということでこれは大幅に伸びているわけです。それから「むつ」問題、例の定係港の問題その他、これが百八億円、これが全体で三・三%、伸び率が五〇・三、非常に大きな伸びを当然しているわけです。したがいまして、その逆に、核融合研究予算、これがマイナス六・〇、それから宇宙開発予算がマイナス〇・三%。ただ、大変うれしかったのは、流動研究システム予算、これがプラスの一一・六%、こういうかっこうになっております。これが来年度ということになりますと、さらにこの傾向があるいは強くなるのじゃないかなという感じがするものですから、その辺に対しての大臣の御所見を得られればと思います。
  227. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) いま小西先生のおっしゃいましたように、私がいま一番重荷になっているのは、どうしてもこれはもう出口、入口の決まった万博、この財政負担をどうするかということ、それから長い経過のあります「むつ」の問題、これは地元との関係がいろいろございますことも御承知のとおり。「むつ」の約束をいかに履行するかという財政負担。入口、出口の決まった万博、これはもう避けて通れません。だから、その辺に義務的経費に等しいような予算の執行を今度は求められております。そのために他の方にある程度のしわが寄る、影響を及ぼしておる、これも私は率直に認めます。  しかし考えてみるというと、「むつ」の問題は、これは新しい舶用炉の研究、こういうことにつながる問題でありますから、これは当然科学技術庁の、それから万博、これも何と申しましても当科学技術庁の大きな行政の一つでございます。だからそういうことをどれこれ言わずに、とにかく限られたマイナス三%のシーリングの中でプラス三・一%というこういう伸びが出た、いただいたわけでありますから、これを厳正に有効に使う、こういうことでことしは行く。そうすると、来年はどうなるのか。来年もその辺の問題は確かに残ります。残りますけれども、やはり目標を決めた事業でしょう、しかもこれの今度はテンポを緩めることのできない仕事でしょう。そういうことを考えれば考えるほど、財政当局との交渉には、理解を求めて、期待にこたえる、これを私たちの努力でやる、こういうふうでしっかりとがんばりまして、御心配のないようにしたいと思っております。
  228. 小西博行

    ○小西博行君 意気のいいお答えをいただいたわけでありますが、というのは、私は特に科学技術というのはいまの時期はもうすでにむしろ遅いんじゃないかというぐらい、世界全体の中、特に先進諸国の中ではもう新しい何か技術を買うといっても買えない時期にきているので、何としてもということで前の中川長官時代にもそういうお話を何回もさせていただいたし、同時に予算獲得の問題のときにも、前大蔵大臣との話で、たとえば流動研究システムという問題も将来は五百億くらいまでもらうのだという大変意気のいい状態でもってずっと推移してきていると思うんですね。  それだけに、科学博をやっちゃいかぬということは私は全然言っていない。大いに「むつ」問題も、われわれも賛成して、かなりポンコツの船だけれどもしかしそれが将来に何かプラスになればということで、ちょうど紙を両方から眺めているような感じがいたしますが、せっかく投資をしているんだから、いままでの経費をずっと入れますとトータルで一千億くらいかかるかもわからない、だけれども、そんなに金がかかってもやっていただきたい。これについては大臣、全く同じ考え方なんです。  ただ、研究開発というのは日本ではなかなか伸びない要素があるわけですね。特にこういうふうに景気が悪くなりますと、大変じみな分野ですから、科学技術庁は絶対そうだと思うんです。ですから、そこのところをもう少し力を入れて大蔵省に対して説得しなきゃいけませんから、その辺のところを含めてひとつ考えていただきたい。当然もうこれ、いままであれでしょう、科学博の場合でも、総費用が五百八十三億円という中で二百十八億円予算が一応ついている。残りが三百六十五億円ですから、これはもう一気に、要するに協力してもちわなきゃいかぬと。これはよくわかるんです。しかし、それを全部をトータルして、ほかのやつを少し遠慮してくれという言い方はちょっと別だというふうに私は考えておるものですから、何とかその辺でがんばっていただきたい。しわ寄せしてもらいたくない。  そういう意識があるものですからこれを申し上げたわけです。何か御意見、局長ありましたら。
  229. 安田佳三

    政府委員安田佳三君) 予算の数字の点につきましては、いま先生御指摘のとおりでございます。ただ、全般の財政事情が非常に厳しい折でございますので、私どもといたしましてもできるだけ多額の金を研究開発に向けたいという気持ちはございますが、やはり全体の財政状況との兼ね合いということがございますので、私どもとしましては、予定いたしました研究をできるだけ当初の予定どおり進めたいという考え方と、それからその乏しい予算の中でも目下必要とされているものについてはできるだけ不足のないような形に持っていきたいというような考え方でやってまいりました。したがいまして、確かにもっと欲しいという面はございますが、いま御指摘のありました核融合等につきましても、当初予定された期間内に完成と申しますか、実験ができますような努力は、乏しい金の中でもできるだけ実行してまいりたいというふうに考えております。  また、明年以降につきましては、これは今後の問題でござますが、やはり財政状況も考えながら、各方面の御意見も伺いながら努力してまいりたいというふうに考えております。
  230. 小西博行

    ○小西博行君 財政が大変厳しいという御意見なんですけれども、たとえば大阪の万博の場合と比較した数字があるわけです。  それで、展示館の床面積ということでずっと比較しておるわけですが、それを見てみますと、これはずいぶん政府の面積が大阪万博に比べて大きいわけですね。全体の三〇%ぐらいとっておられるんです。四万平米ですか、政府は。大阪の万博の場合は全体の八%。いろいろ聞きますと、民間が何とかもっと面積をたくさん欲しいと。これは六万平米民間はとっているわけですが、そういうような御意見も十分あったというようなことを聞いているんですが、なぜ結果的にこういうふうに政府の方の面積が非常に大規模になったか、その辺の御意見をお聞きしたいと思います。
  231. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) この博覧会開催の申請をいたしますとき、もうすでに財政事情が厳しいという事情がございました。したがいまして、全体の規模でございますとか、所要経費につきまして、できるだけ切り詰めて、必要最小限度のものにする。しかし、国際博覧会としてふさわしいもの、恥ずかしくないものにしなければならぬということで計画を進めてきたわけでございます。また、資金の調達につきましても、できるだけ多様な資金の導入を図るということで鋭意努力をしてまいったところでございます。  この科学万博は、国際博覧会条約に基づく特別博覧会ということになっておりまして、特別博覧会におきましては、従来から開催国の政府がその博覧会の基調となる展示をする、中核的な展示をするということが義務になっております。  それで、私どもといたしましては、その基調となる展示をする役割りを担う必要がありますので、「人間・居住・環境と科学技術」というテーマにふさわしい政府出展をするということにいたしておるわけでございまして、その必要最小限のものであると考えております。  先ほどお話が出ましたパビリオンブロックの床面積の件がございますが、私どもといたしましては、全体の延べ床面積中の政府館の延べ床面積の占める割合は、同じ特別博覧会でございます沖縄の海洋博に比べましてかなり小さなものになっております。ちなみに数字を申し上げますと、海洋博につきましては全体の五一%が政府出展の床面積でございましたが、この科学万博では二七%ということにしてございます。その面積に出展をするということで、主催国としてふさわしい出展にしたい、恥ずかしくないものにしたいということでございます。  先ほど、民間出展の希望があるというようなことでございます。民間出展の延べ床面積につきましては、去年の六月に取りまとめました会場基本設計におきましては、計画値を六万平米ということにいたしました。現在、各民間の出展者が出展内容につきまして構想を取りまとめておるところでございまして、民間出展の延べ床面積につきましては、まだ企業、団体からの面積の提示が来てございません。総計がどれぐらいになるかというのは現時点ではわからないということでございますが、民間出展をするための敷地面積について、参加企業からの申し込みは当時十一万平米強のものがございました。しかし、全体としてオープンスペースをある程度確保しなければならないとか、観客の安全性とか快適性を確保するというような観点から、これをほぼ計画値の十万平米、敷地面積としてはそういうふうにしたわけでございます。しかし、建蔽率につきまして一応六割ということにしておりますので、延べ展示面積ということで考えますと、ほぼ民間出展者の希望どおりのものになるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  232. 小西博行

    ○小西博行君 そういうことなら結構だと思いますけれども、政府はえらい困っているわけですから、できるだけ民間の力をかりて、ぜひとも民間の活力を生かしてどんどんやっていただいた方が、後の効果のためにも非常にいいんじゃないかなという感じがしたものですから、ぜひそのようにやっていただきたいというふうに思います。  次に移ります。  科学技術振興調整費というのが実はございます。これも、前年度に比べて二・五%増になっております。「科学技術研究調査報告」というこれは総理府で出したものから拾ったわけでありますが、政府がどのぐらい研究費に対して負担割合をしているかというのは、これは前々から何回もお話し申し上げているところなんですが、五十三年が二八%、五十四年が二七・四%、五十五年が二五・八%、五十六年は二五・〇%、だんだん少なくなっている。諸外国、先進諸国ではこの割合が非常に高いということですね。特に先端技術ということになりますと、どうしても民間産業では、経済的に落ち込んでいる場合には、なかなかリスクを伴うような研究投資はできないということで、この際ひとつがんばっていただきたいということを私は再三申し上げているんですが、傾向としてはだんだん下がっている、そういう実態が出ていると思います。  それからまた、その研究費のうちで基礎研究費という項目があるんですが、これも五十三から五十六年までずっと数字を拾ってみますと、五十三年が一六・六%、五十四年が一五・五%、五十五年が一四・五%、五十六年が一三・九%、このようにずうっと低下をしてきているわけですね。特に科学技術というのは基礎研究が非常に大事だということで、せっかく流動研究システムということでやっているわけですが、どうしてこういうふうにだんだん基礎研究分野が下がってきているのだろうか。何か大臣の方で、そういうふうに特に下げたいというような意向なんかでもおありなのかどうか。もしあれば、そこをお聞かせ願いたいと思います。
  233. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) わが国の自然科学関係の研究投資は、五十六年度で官民合わせますと五兆三千六百億程度になります。これはアメリカの三分の一、ソ連の約六割程度でございまして、世界の第三位ということになります。国民所得比で考えますと二・六五%ということでございまして、科学技術会議が当時五十二年の長期政策を立てたときに当面の目標といたしました二・五%を超えました。長期目標は三%でございまして、これに向かって努力をするということでございますが、この二・六五%というのは、ソ連、西独に続きまして、アメリカとほぼ並んでいるということでございます。  しかし、その内容を見ますと、先生御指摘のとおり、官民分担というのは、官の比率がだんだんと下がってきております。これは、官が努力しないということではございませんで、官の方も精いっぱいの努力をしております。しかし、民の方も精いっぱいの努力をしております。民の伸び方が大きいということがあって、比率としては若干下がって二五%というようなことになっているわけでございます。  しかし、技術貿易等で見ますと、受け取りと支出と比率を見ますと、〇・三一とまだまだ支出の方が多いということで大幅赤字になっておりまして、まだまだ技術貿易での力は日本は足りないというようなことでございます。それで、それはどういうことかということでございますが、先生御指摘のように、やはり基礎的な研究開発と申しますか、そういう面についてもっと力を入れていかなければならないというようなことでございまして、私どもも独創的な研究開発を進めるために精いっぱい努力しておりますし、今後ともその面の推進を図っていきたいというふうに考えております。
  234. 小西博行

    ○小西博行君 大臣、たびたびこの委員会でも申し上げておるのですが、流動研究システムというのができていますね。これが実は省庁の縦割りの悪弊を解除できる一番いい方法じゃないかと私は思っているんです。  というのは、たとえば農林省だとか科学技術庁のいろいろな関連の特殊法人がありますね。同じようなレベルの同じような研究をやっている場合が非常に多いんです。大学へ行ってもまた大学でやっている。ところが、省庁が全部縦割りなものですから、そこのある委員会に所属すれば、説明を聞いてね、ああここは同じじゃないか、そういう場合がありますものですから、競争という原理では、お互いにそれぞれパラでやっていただくというのも非常にプラスなんですけれども、これは恐らく、流動研究システムが、民間からももちろん入っていただくということで、非常にいい方法だと思います。  この流動研究システムのいろんな問題につきましては、ちょうど二十八日、予算委員会で私またやらせてもらうようになっておりますから、そこでもっと細かい問題を質問させていただきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。非常に私は大切な問題だと思うんです。ですから、基礎研究をどなたかが本気になってやってもらわないと、これから先はどうするのかといっても、商品の輸出というようなことで貿易摩擦になるし、やっぱり技術輸出ができるような技術立国になっていかなきゃいかぬだろう、このように私考えているわけです。  次に、わざわざ来ていただきましてありがとうございました。きょうはこの問題をやろうとは全然思わなかったのですが、少し先生方とダブりましたものですかち急遽来ていただきましたがこれは後で大臣にもぜひ答えていただきたいんですが、通産の方からちょっと来ていただきました。  最近、原油がダウンしていますね。非常に安くなったということで、二十九ドル、これが二十五ドルにひょっとしたらなるのじゃないか、あるいは二十ドルになるのではないかというようなことで、私大変これがまた科学技術に影響があるのじゃないかという気持ちを持っておるんです。つまり、代替エネルギーということで官民一体になりまして、いろんな技術投資といいますか、あるいは世界のいろんな国々でやっています。そういう問題に対して、せっかくやっておるのに、値段が安いということで、やっぱりもとの石油に返ろうと、まさにヤマニさんの考えているとおりに方向転換してきよるんじゃないかという感じがちょっといたしますので、そのメリットとデメリット、メリットの方は言ってもらわなくても大体わかりますから、デメリットの方、これは科学技術庁としてはどういうふうにお考えなのか。それから通産の方としてはどのように掌握しておられるのか。どういうデメリットがあるのか。その辺をお伺いしたいと思うのです。
  235. 雨貝二郎

    説明員雨貝二郎君) 御指摘のとおり、今回の原油価格の引き下げに伴いまして各般の影響が生ずるだろうというふうに考えられますけれども、特にエネルギーの分野につきましては、需給という面では大きな影響を生じないだろうと思っておりますけれども、ただ、先生御指摘のように、技術開発等の面においてはある程度の影響が生ずるかもしれない、そういう懸念は確かにあろうかと思います。  特に私ども中長期の観点から国が中心となって推進しております石油代替エネルギーの技術開発、これらにつきましては従前どおり計画的かつ総合的に着実に推進してまいりたいと考えておりますけれども、民間が中心となって進められております技術開発につきましては、今後の原油価格の動向いかんにもよりますけれども、若干の期近な実用化が目途とされておりますところでございますので、採算性の悪化等が生ずれば遅延等のおそれがなきにしもあらずと、かように考えておりまして、私どもとしては、基本的には日本のエネルギー供給構造は諸外国に比して際立った脆弱性を示しておるところでございますので、これまで官民挙げて取り組んでまいりましたエネルギー問題解決の努力を怠ることなく、引き続き着実にエネルギー対策を推進してまいりたい、かように考えているところでございます。
  236. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) いまお話がございましたが、今度の油価のダウンとそれから供給緩和、この問題をどう見るかということで、これは吉田先生からも厳しく御追及がございました。  私はこのように理解しておるわけであります。これはもう絶対に有限であるということは間違いないでしょう、世界の見識者はみんなそう言っているんですから。しかも、これを戦略的物資として使わないという保証があるのでしょうか。だから、考えれば考えるほど、今度のこの問題で長期的にそういう判断の上に立つということは私はこれ危険きわまりないと。極端に言うならば、これは一過性というとらえ方で私どもはとらえるべきじゃなかろうか、私はそのように考えておるわけであります。だからして、いま通産の方から話がございましたけれども、ここでもって省エネルギー政策の手を緩めるとか、あるいは代替エネルギーの手を緩めるとかは、これは日本が置かれている立場から見ると、ほかの国はわかりません、日本の国に関する限りは、いわゆる供給構造の改善という中においては、これは絶対私たちは代替エネルギーの柱である原子力というものの手を緩めてはいかぬ、こう思っております。  そして世界はどうなんだろうか。世界へ一遍目を転じて見ますると、なぜ中国が――油を持っているんでしょう、石炭を持っているんでしょう、水を持っているんです。私きのう中国の原子力の代表者と会いました。もう中国が原子力に手をつけている。いよいよやりますから協力してくださいと、こういうことです。あれだけ油を持っているソ連がなぜ、いま稼働しているのは三十でしょう、いま建設中は三十三ですよ。みんなこれは戦略的でしょう。だから私は、いまお話がございましたとおりに、日本の供給構造の中で、いまの油価の問題、同時にまた供給の緩和の問題、これを見てここで考え方を見直す、供給構造の見直しをする、こういうことは私たちは選択すべきでない、私はそのように考えております。
  237. 小西博行

    ○小西博行君 アメリカあたりで一番大々的に、アラスカの石油を、七千キロですか、のパイプラインを引いてやろうと。これは当然石油がだんだん上がっていくだろうという前提に立っていまして、一バレル百ドルぐらいまでいくだろうという予想の上に、少々高くかかってもいいから運ぼうじゃないかと。それが非常にわが国にも関係があったわけです。つまり、たとえば掘削機であるとかあるいはパイプの材料とか、こういうものをどんどん輸出できるというメリットがありましたから、日本からも相当資金援助あたりもやっているわけですね。これはアメリカだけじゃなくて、いろんな国でやっています。オーストラリアはもちろんやっていますね、石炭の液化の問題あるいはガス化の問題。これを全部一応ストップしようという状態になっているんですね、現実に、いまのところ。  そういう状態なものですから、科学技術に関係のある問題でいきますと、たとえば原子力行政、発電所は大体計画を立てていますね大臣、六十五年までに五千百万とか五千三百万。これは大幅におくれていますね。これは地域住民のいろいろな問題もあります。  ところが、実際われわれ自身が電力会社といろいろ話してみますと、最近景気が悪いので電気も余り売れないので少しのんびり構えようかというのも一つあるんです。ましてや、石油が安くなるということになりますと、その辺が非常に消極的になりはしないかな、私はむしろいまやるべきだと考えておるわけですけれども。先ほどの話じゃないですけれども、もちろん安全というのが第一ですから、その辺のところはしっかりと管理体制をつくってもらいたいと思いますが、やっぱり原子力というものを将来考えていかなきゃいかぬだろう、こう考えているわけです。その辺が、私は影響が大いにあるのではないかと心配なわけです。  大臣はそのように、とにかくやらなきゃいかぬとおっしゃるんですが、世界全体の動きがそうである。銀行関係がもうちょっと困ったという状態に事実なっているのじゃないかと思うものですから、その辺に対してよほど信念を持ってやらないと、特にそういう技術的にお互いに協力し合おうという形が、だんだんいい方向にいかなくて、かえってマイナスの形になるんじゃないかなと、そういうことを私は心配するものですから申し上げているんです。そういうことがございますか。
  238. 雨貝二郎

    説明員雨貝二郎君) 五十七年度に運転開始いたします発電所をモデル的に計算いたしますと、石油火力についてはキロワットアワー当たり二十円程度と試算されます。他方原子力発電については十二円程度というふうに計算されまして、この格差が大変大きい状況でございます。  この点から考えますと、確かに石油火力の場合には原油代金、燃料費が相当のウエートを占めておりますけれども、今回の五ドル程度の引き下げ、すなわち一五%弱だと思いますが、こうした引き下げによってはまだまだはるかに原子力の方がコスト的にも有利でございます。こうしたことから私どもとしては、引き続き原子力については石油代替電源の中の中核的役割りを担うものとして積極的に推進してまいりたい、かように考えております。
  239. 小西博行

    ○小西博行君 悪い影響が出ない方がいいのですが、ややもすると、安い石油が入ったぞというようなことで、喜ぶのは当然なんですけれども、私は研究開発という面では少し後退になる危険性があるのじゃないか、このように考えておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それから最後に、大臣にお願いしたいわけでありますけれども研究開発わが国の状態をいろいろ見てみますと、やはり研究開発のシステムが非常にまずい面がたくさんあるのじゃないかという感じがしているんです。先ほど申し上げましたような縦割り行政というのもその一つだと思うのです。  ですから、科学技術の優秀な方がたくさんいらっしゃるわけですから、従来のような、予算配分という形だけあるいは調整役だけというんじゃなくて、たとえば理化学研究所に対して本当に強いパイプでもってその内容について理解される方々、こういう方の交流というのでしょうか、そういう方々が私は非常に大切じゃないかと思うんです。ここでいろいろな議論をする場合も、わりあいに現地で実際がんばっていらっしゃる方の御意見を聞いた方があるいはいい場合もあるんじゃないかなという感じがいたします。  特に、理化学研究所へ行きますと、優秀な方がたくさんいらっしゃいまして、普通の通訳ではなかなか理解できないような言葉でたくさんの話をしていただくというような現実があるわけです。ですから、本当にあの一生懸命やっている方々を何かいい形で刺激できるような形をとってあげるべきじゃないか。そういうことで、私は再三研究者の評価という問題を言っておりますが、せっかくいい研究をやったんだったら褒めてあげるということ。悪かったら怒るばっかりで褒める機会というのはわりあい少ないものですから、やはりその辺をかっちりしないと、優秀な研究者というのはどんどんアメリカあたりへ流れてしまうんじゃないか。さっき大臣がちょっと言われましたように、ライフサイエンス分野は海外へ大分流れていますね。最初から優秀な人が流れたのじゃなくて向こうで勉強しながら偉くなっているというのが正当かもわかりませんけれども、いま優秀な人も何人かいらっしゃるわけですから、中で刺激を上手に与えていただけるようなそういう研究体制をぜひつくっていただきたい、そういうシステム化をしていただきたい。  これを申し上げまして、お答えをいただいて私は終わりたいと思います。
  240. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 研究開発を進めますにはいろいろな方法があろうかと思いますが、いま一番求められているのはやはり総合的、効率的に行うということと、あと産学官の連携をいかによくするかということだと思います。産学官の連携につきましては従前から叫ばれているのですが、やはりいろいろな問題があってうまくいかないという面もございます。そのために創造科学技術制度、流動システムというようなものをつくりましてその交流を深めることを進めているわけでございますけれども、今後とも、何が障害になっているのかというようなことを一つ一つ洗い直しまして、その問題点をつぶしていくというようなことで交流が従来より進むように措置してまいりたいと考えております。  また、いま褒めるということがございましたけれども、足を引っ張るだけではなくて、やはり褒めることが大事だと思います。当庁といたしましても、いろいろな表彰制度もございますし、そういうことで研究意欲を増大させるというようなことで、研究開発推進を図っていくということにしていきたいと思っております。
  241. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 御質問のことは非常に大事なことでございます。  私はノーベル賞の江崎先生とお話をしました。一体日本科学技術というものにどういういわゆるシステムというものを考えたらいいかという問題を伺って、そのときにいろんな貴重な御意見が出ました。その中の一つにそれがございました。だから私、いま局長が話をしましたように、確かに産学官一緒になって受け皿をつくって最先端のものに踏み込むと。これは私非常に評価してもらいました。  私は、日本の科学者というものは、国家公務員が出ていって、なぜ民間の研究機関の方と一緒にそこで一定期間官産の交流ができないんだろうか。もう一つは、いわゆる民の者が官の方へ入ってきていろいろやる、それから官の者は今度海外へ行って一定期間やる、頭脳、知恵を入れてくる。こうなりますと、国家公務員法というやつがありまして、なかなかそこに流動的なやり方のむずかしさが一つあるわけです。だから、これは私たち科学技術庁、文部省、ことの一つの研究課題だと思っているんです。これは私、まじめに取り組んでみたいと思っています。そういうことをちょっと申し上げておきます。
  242. 小西博行

    ○小西博行君 ぜひがんばっていただきたいと思います。  終わります。
  243. 中野明

    委員長中野明君) 他に御発言もなければ、これをもって昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち科学技術庁についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 中野明

    委員長中野明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  245. 中野明

    委員長中野明君) 次に、派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般当委員会が行いました委員派遣につきましては、派遣委員から報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 中野明

    委員長中野明君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十七分散会