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1983-05-12 第98回国会 参議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  五月十一日     辞任         補欠選任      宮澤  弘君     安田 隆明君  五月十二日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     長谷川 信君      鈴木 正一君     大城 眞順君      安恒 良一君     本岡 昭次君      三治 重信君     伊藤 郁男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         矢追 秀彦君     理 事                 伊江 朝雄君                 江島  淳君                 青木 薪次君                 黒柳  明君     委 員                 大城 眞順君                 梶原  清君                 木村 睦男君                 関口 恵造君                 高平 公友君                 内藤  健君                 長谷川 信君                 山崎 竜男君                 小柳  勇君                 瀬谷 英行君                 本岡 昭次君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君                 三治 重信君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        内閣審議官    林  淳司君        行政管理庁長官        官房総務審議官  竹村  晟君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   宍倉 宗夫君        運輸政務次官   関谷 勝嗣君        運輸大臣官房長  犬井 圭介君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  棚橋  泰君        運輸省自動車局        長        角田 達郎君        自治大臣官房審        議官       津田  正君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        大蔵省主計局主        計官       藤井  威君        労働省労働基準        局監督課長    野崎 和昭君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本国有鉄道常        務理事      橋元 雅司君        日本国有鉄道常        務理事      三坂 健康君        日本国有鉄道常        務理事      坪内 享嗣君        日本国有鉄道常        務理事      岩瀬 虹兒君    参考人        慶應義塾大学教        授        加藤  寛君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案(第九十七回国会内閣提出、第九十八回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  前回に引き続き、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄総裁にお伺いいたしたいと思いますが、運輸省なり国鉄当局国鉄職員乗車証の見直しというか廃止について決定して、すでに実行に移しているわけです。私ども国鉄に入りますときには安月給だ。しかし、家族も安月給のかわりにパスを出してくれる、職員パスをもらえる、これが最大の実は魅力であったわけであります。このことを今回外しておいて、そして職員に対してさらに合理化が、実は私が国鉄にいた時分なんかと問題にならない形で減らされているわけでありますが、苛斂誅求という言葉があるけれども総裁、いま厳しい対応職員に迫っているということについて、あなたはどう考えておりますか。
  4. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 大変失礼でございますけれども先生国鉄にお勤めになった御経験をお持ちと承りますが、昭和四十五年までは、貨物について申しますと前の年よりも輸送量がふえ続けてきた、また昭和五十年までは旅客についてもふえ続けてきたわけでございますけれども、その後はお客がどうも伸び悩みという状態にございますので、やはりそういう企業実態というものに即してもろもろの待遇なりを決められなければならない。企業実態がどうであっても、昔からそういうルールがあったので、そういう制度を残していくというわけにはまいらぬのではないかということで、従来から職員パスの問題いろいろ言われましたけれども、今日まではやはりおっしゃいますような長い歴史もありますし、待遇の問題もありますので、ぜひ続けさしていただきたいということで参ったわけでございますけれども、ここまで企業経営状況が将来に向かって伸び悩みという状態になりますと、また心を新たにして取り組まなきゃならぬということで、職員には率直に言って気の毒だと思っておりますけれども、思い切って廃止をするということにいたした次第でございます。
  5. 青木薪次

    青木薪次君 確かに、いま再建法議論収入が減ったということなんでありますが、国鉄職員なりその他がパスがなくなったということは、反面、自分は金を出して乗っていくということに通ずるということになるわけでありますが、それはそのために旅行を差し控えるとかいう問題は、これは副次的に起こってくるわけです。したがって、総裁はこのことは結局のところ姿勢を示すことだというように返す返すも言っているわけであ りますが、あなたは収入が減ったので増収のためにこういう措置をとったというように私は受け取ったんです。そういうことだから、どういう立場で、こういうことで楽しみをとってしまったということについて考えていますか。
  6. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 決して、パスがなくなれば今度は自分負担をして運賃を払って利用をするというふうにはつながらない。私ども職員はそう決して給付水準が高いわけでございませんから、いままでパスで乗れたものが今度は乗れなくなる、それじゃ自分で払ってということにはなかなかならないわけでございまして、そういう意味パス廃止という制度増収ということは全く関係ないものというふうに考えております。  また、しかし自分鉄道でございますから、同じ余暇がある場合に、ほかで余暇の時間を費やすよりは鉄道を使って、うちの鉄道自分の勤めているところとはまた別に離れた北海道や九州ではどんなふうになっているのかというのは、余暇を利用して見てくることは非常に有効なことなのでありますから、本来はできるだけ、過去の歴史もありますし、残していきたいと思っておったわけでございますけれども、いかにもこういう情勢になってまいりますと、そういう待遇、給与にかかわる問題も経営実態と離れて議論することはできないわけでございますので、一たんはこの際やめにするということにならざるを得ないのではないか。  従来からパス廃止論はありました。しかし、それはかなり世論に抵抗しながら続けてきたわけでございますけれども、一昨年、昨年にかけてのいろいろな国民の皆さん国鉄に対する目ということからいいますと、この際内部の気持ちだけで物事の判断をするわけにもいかないということで思い切った措置に方針を変更して踏み込まざるを得ないということに私は決断をいたした次第でございます。
  7. 青木薪次

    青木薪次君 私は、能率的な経営とかあるいはまた態度の厳正とかということについて、これはだめ、あれもだめなんと言っているわけじゃないんです。やっぱりいま非常に物すごい要員減の中で、現に私のもとおったところでは、この間聞いてみましたら、年次有給休暇もとれないくらい人が足りなくなって、年休をとりたくても人がないからがまんしてくれという状態、こういう状態というものは一体どういう状態のもとに起こるんですか、ちょっと聞かしてください。
  8. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 全国はいろいろな職場がございますので、私も目が届いているわけではないのでございますけれども、昨今に至って年次有給休暇もとれないほどの職場があるということは、数多くの中でございますから、それはありましょうけれども、特に昨今に至ってそういうふうになっておるということは、私の情報不足かもわかりませんが、余り耳にいたしておりません。
  9. 青木薪次

    青木薪次君 それは、総裁、数多くある中だからそういうところもあるかもしれないなんという、そういう他人ごとのような答弁というのはけしからぬと思う。いま現実にそういう状態で採用ゼロでしょう。そして、その単位が三分の一近く減らされているところだってあるわけです。そういうところは年次有給休暇をとろうと思ってもとれない。それくらい厳しい状態に甘んじて、いま歯を食いしばって世論の動向も見ながらがまんしてがんばっているということについて、あなた、他人ごとのような答弁はいけないと思うのだけれども、どうなんですか、この点。
  10. 高木文雄

    説明員高木文雄君) どこの職場でございましょうか、ちょっとお教えいただけたらと思います。
  11. 青木薪次

    青木薪次君 どこの職場ということは私のもとおった職場を調べればわかることなんで、そういうような状態。静岡の運転所です。  そういうようなところもあるということで、その中でふろにも入れない。真っ黒になって仕事をしておって、皆さんが、ほかの日勤勤務者が帰った後でふろに入る、こういう現状でしょう。これは大臣も聞いておってもらいたいのですが、私は車両のいろんな設計もやった。それから中に入って点検ハンマーを持ちながらどういうところにきずが入っているか、どういうところがどういう状態になっているか、摩耗しているかというようなことについて念入りに、真っ黒な中に入ってそして顔も真っ黒に、黒ん坊のようになってそして仕事をする。そして来たら、仕事から帰ってくると日勤勤務者はみんなさっと家へ帰っちゃう、それからふろに入る。ふろに入っても、普通の油、灯油が体についたのとは違うんです。べっとりとほこりがたかって、顔についたら石けんでもなかなか取れない、こすらなきゃ取れないというような状態の中で、それからふろに入って、ほかの汚染職場と違うのだから三十分ぐらいかかるんですよ、きれいになるには。そのことについてもそのとおりやれというお考えなのかどうなのか、その点もお伺いをしたいと思います。
  12. 三坂健康

    説明員三坂健康君) お答えします。  入浴問題は非常に長い問題となっておりましたことで、私ども十年前からいろいろな職場監査をやっておりますたびごと勤務時間中入浴は中止するようにということで再三地方機関指示をいたしておった問題でございます。  昨年、新聞等で非常に国鉄職場におきます勤務状態等が報道されまして、運輸大臣からこの際厳正に職場規律のあり方を調査するようにという御指示を受けまして、昨年三月時点で約千七百カ所に勤務時間内入浴実態がございまして、これの是正に取り組んだわけでございます。九月時点で再度調査いたしましたところ、約六百カ所にこれが減少をいたしております。今年、現在さらに点検を実施いたしておりますが、この三月時点ではほぼ百以内にまで減ってきたのではないかということで、そういう意味で、いろいろ現場実態はあると思いますが、職員も今日国鉄の置かれておる厳しい現状を認識しまして非常に是正が進められ、さらにこの四月時点では労働組合側もこの際は時間内入浴実態を一時自粛しようということで、現在では正常化をいたしておるところでございます。
  13. 青木薪次

    青木薪次君 現状対応について、出ている事象というのはそうでしょう。私が現実に一介の技術者としてやっておったときには、中に入って顔を真っ黒くして、そしてほこりの入った油にまみれたのが体や顔について、そして顔をずっと入道雲のように出して検査しなければわからぬのです。ですから、そういう中で顔を真っ黒くしてやったのについて、皆さんが帰ってからおもむろにふろに入って、皆さんが五時に帰ったら五時半に帰ればいいというように考えているのかどうなのか、こういうことを聞いているんです。
  14. 三坂健康

    説明員三坂健康君) お答えいたします。  国鉄にはいろんな職場がございまして、いろいろ汚染の業務もあると思います。特に、保線従事員ふん尿を浴びる、あるいはただいま先生お話がありましたように、車両検修従事員油まみれになるというふうな事態はございます。ただ、社会常識的に見てこれは余りにもひどい、非常に雨の中を長時間勤務した、あるいは通過する列車のためにふん尿を浴びたというふうなときは、随時管理者がきょうはこういう状態だから入浴してよろしいというふうな適宜な措置をとることはとっております。  ただ、一般社会の現象から申しまして、やはり自動車整備工でありますとか、いろんなところに民間企業にも汚染職がございますが、それらはすべてやはりノーワーク・ノーペイの原則からいたしまして、勤務を終了した後入浴するというのが一般企業実態でございます。特に、国鉄のように昨今多額の財政援助を得ておって民間企業並み生産性を上げるべきである、また民間企業に劣らぬ働き方をすべきであるという御指示を受けておりますので、やはり私どもとしては、余りにひどい場合にはそれぞれ現場長裁量でもってやるけれども原則としてはやはり二十分か三十分待っていただければいいことでありますので、ぜひ勤務時間が終了して入浴していただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  15. 青木薪次

    青木薪次君 私の質問に答えていないんです、こういうようなときにはどうするのだと具体的に聞いていることについて。何もかも全部勤務時間内にやれということを言っているのじゃないんです。それからまた、この際そういうことについても世間のいろんな御意見もあるところだから、その点についてのいろんな形で自粛すべきところは自粛するということはあっていいと思うんです。私はそんなことまで言っているわけじゃない。  ただ、体が真っ黒くなってしまって、皆さんよりも、これはなかなか石けんひとつ塗ったぐらいじゃ取れない。私は極端なことを言っているのじゃないんです、私の長い間の経験を言っているんだから。そういうような場合においては、何としてもお互いに組合と話し合って、そしてこういう問題についてはひとつこの際、ほかのところとは違うのだから、ある意味ではやっぱり勤務とみなしてもいい状態だってこれはあり得るのじゃないか。  それを三十分が三十分認めろと言っているわけじゃないのであって、勤務の厳正ということはこれは必要でしょう。こんなことも否定していないし、そういうことを私は言っているんだから、全部が全部皆さんが帰っちゃってから後ゆっくりふろに入って、皆さんより三十分おくれて帰りなさい。しかし、列車通勤なんていうものは、その次は一時間とか一時間半おくれるということになります。そういうことも考えて随時適切に、一たんこういう状態当局の言うように全部五時なら五時になって、いま勤務時間外に入浴しているというような状態なので、改めて話し合って、これらのことについては、特に汚染のはなはだしいものについては話し合って解決するというようなことについて、総裁もこの間の連合審査のときには早急にひとつ解決したい、私の責任でやってきたけれども早急に解決したいと言ったのだけれども国鉄総裁、どうですか、その点。
  16. 三坂健康

    説明員三坂健康君) 先生お話がありましたように、私どもも非常に常識的に見てこれは大変汚染しておるというところは随時その現場長裁量対応いたしておりますが、幸い労働組合側現状を一度白紙に戻しまして、去る四月二十日に特定の職種、特定の場合について新たな制度について団体交渉をしたいという申し入れを受けまして、自来数度にわたって団体交渉をいたしております。したがいまして、私ども誠意を持ちまして団体交渉を行ってまいりたいというふうに考えております。
  17. 青木薪次

    青木薪次君 誠意を持って団体交渉に応じてまいりたい。  総裁、このことについては余りかっこうのいい話じゃない、あれがテレビに出たり新聞に載ったりすることについて。私が実はいま申し上げたのは、私自身が汚染職場にあって大変苦労をしたということの体験を通じてそういう職場もあるということで、そういうことも含めて早急に解決するということについて、総裁はこの間連合審査でも言ったのだけれども、改めて一言おっしゃってください。
  18. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 私どもも、何とかそういう紛争を避けなければいけないし、またいまお示しの汚染の激しい職場については新しい取り決めといいますか、ルールができなければいけないのじゃないかということで、団体交渉を通じて解決の道を誠意を持って見つけたいと思っておる次第でございます。
  19. 青木薪次

    青木薪次君 わかりました。誠意を持ってなるべく早く解決するように要請いたしたいと思います。  それから、大蔵省宍倉主計局次長が見えているわけでありますが、国鉄責めによらないと言っては恐縮ですけれども、たとえば、おとついも議論になったわけでありますが、東北新幹線上越新幹線、新たに青函トンネル本四架橋といったような事態が発生してきたわけでありますがこれらの点について、国鉄責めによらない、国家的見地に立った新しい大型プロジェクトの場合においては、これまで赤字の国鉄でやりなさいよということはちょっとこれも過酷だと思うんですけれども次長、どう思いますか。
  20. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 東北・上越新幹線の場合には、すでに国鉄が使っておるわけでございます。東北新幹線関係債務につきましては国鉄債務であり、上越新幹線については鉄建公団債務になって、国鉄が借料という形でそれを賄っているわけでございます。この二つについては、現にともかく国鉄が使っているわけでございますからして、それは国鉄債務の償還を直接なりあるいは間接的に負担していくというのはこれはやむを得ない話だと思います。  青函トンネルとそれから本四架橋でございますが、これはまだできていない話でございます。青函トンネルにつきましては、これをどういうふうに利用していくのが最も合理的であるかということにつきましては、最近運輸省におきまして特に懇談会などをお設けになり御検討になっておられるところでございますので、それらの結果を見てみないとなかなか何ともはっきり申し上げるわけにはまいらないのではなかろうかと思います。  それから、本四架橋につきましては、本四架橋ができますればそこに線路を通すということで、下をいま走っております船をどうするかという手当てまでこれは話が進んでいるわけでございますが、この辺のところも船とのかかわり合いが一体どういうふうになるのかということで、これはもう少ししてみませんと、具体的な姿として国鉄がどれだけ負担をしなくてはならないのかということが定かでございません。  結局のところ、これらの問題につきましては、原則としてこれを国鉄が使うということならば国鉄負担をするというのが当然のことだと思いますが、しかし国鉄が健常な姿でいまいるわけではございませんで、非常に財政状況がゆがんでいるわけでございますからして、それらも考え合わせた形で過大な負担になるようなことのないようにこれから配慮していく必要はあろうかと思いますが、もう少し具体的には時日を経過してどういう姿になるかを見きわめてから考えてまいりたいと思います。
  21. 青木薪次

    青木薪次君 宍倉次長、私が一番懸念をしておりますのは、すべてが監理委員会任せでしょう。先般、二年半前でしたか、国鉄経営再建促進特別措置法をつくって、その法律が現に動いている。それから今度、監理委員会法ができて出発する。両方法律、ある意味では内容が違う法律が同時発車しているわけです、現に進行中のものと新しく発車するのと両方が。こういう点について非常に問題なのでありますが、この点について、この答申最大限尊重するという閣議決定がなされているわけでありますから、大蔵省としても、過去に何回も附帯決議をやって、そのたびに、宍倉さん、あなたも主計官としておったし、僕らとの間にいろいろ答弁を繰り返してきたという中において、おとついも言ったのだけれども、一つとして解決していないということについて、今回は絶対に大蔵省としても監理委員会決定があればこれは最大限尊重するということは、最大限ということは限りがなく尊重するということです。ですから、そういうことをそのように理解していいのかどうなのか、ひとつ答弁してください。
  22. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 今回の臨調答申を受けまして、監理委員会をつくっていただくようにお願いをしているわけでございます。この監理委員会で御決定なさるについては、監理委員会がもちろん御協議しておやりになるわけでございますが、私ども意見も聞いてくださらないということはないのだと思っております。でございますから、監理委員会が御決定をなさったことにつきましては、政府としてはこれを受けまして、それで政府としての決定というものがあるわけでございますけれども、その場合には当然のことでございますけれども最大限に尊重するということは、これはあたりまえのことかと思います。  長期債務をどうするかというような問題につきましては、実際問題なかなかむずかしい問題がございますので、たとえば臨調答申一つとってみ ましても、国鉄を一応分割するというお考えになっておる。分割しまして、その分割した会社についてはある程度の債務は持っていってもらう。それでそれは支払えるだけの債務である。そうすると、支払えないで残る債務というのがある。その残る債務国鉄本体に残して、これは国がみんな補てんする。こういうことになっておるわけですが、さて、これがどの程度かということがまずわからないのに余り議論しても意味がないかもしれませんが、しかしいま全体に二十兆円国鉄債務がある、これから年々でございますと二兆円近くずつふえていくわけでございますから、かなり大きなものを国が補てんするということで、そのままできるのかどうかという大変むずかしい問題があるわけでございます。  でございますから、その財源措置を一体どうするのか、これは臨調でも十分考えてほしい、私どもとしてはそういうお願いもしたのでございますけれども臨調の方としては、国がその財源措置を検討する、こういう御報告になっておりますので、私どもこういった宿題というものがまだまだあるわけでございまして、こういった問題、全体の宿題の問題を踏まえて監理委員会でいろいろ御議論があるのだと思っております。でございますから、それらを踏まえた上で監理委員会の御決定がございますれば、私どもも当然そういったことで一緒にやってまいりたいと思っております。
  23. 青木薪次

    青木薪次君 私鉄関係を見てまいりますと、私鉄にも長期債務があるんです。これは、東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京浜、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄、これだけのところででも二兆二千九百八十九億円、実は累積債務がある。そして、その支払い利息については二千三百四億円ですから約一〇%です。  しかし、これらの累積債務もあるんですけれども国鉄と対比いたしまして、後でいろいろ関連事業関係なんかも考えて、国鉄には、関連事業考える場合に法律がどうだ、あるいはまた営業政策上どうだ、あるいはまた人の問題でこうだとか、いろいろなことで縛られてきたんですが、私鉄の場合においてはあらゆる多角的な投資事業ができるということで、何とか早い時点で問題を先取りしてペイをしていくというよさが実はあるわけです。  今度は分割民営ということになれば、その点について私はある意味では相当有利になるのじゃないかということも言えるんですけれども、しかしあなたもちょっと触れられたように、分割された場合においては赤字の国鉄を背負って、借金まで背負ってやるというとこれはなかなか少なくなるので、少なくなるというよりも皆無に等しいのじゃないかと私は思うので、その点から考えてみて大変問題点があるので、結局はスクラップになっていくのじゃないか、解体になっていくのじゃないかということを大変心配しているわけです。  これは、あなた首をかしげているけれども、今日すでに地方交通線の第一次、第二次の提案がなされているわけでありますが、これもやはり一つの例というように、今回の法律はこれは組織をつくる法律ですから直接的にいま地方交通線の問題に言及していないんですけれども、この問題も含めて問題を先送りしていると言わざるを得ない。  そこで、私は国鉄長期債務問題を考える場合には、将来の国鉄負担に転嫁されるおそれのある鉄建公団とか本四架橋公団が実はあるんです。閣議で、これらの公団についてどうするのかという点については、青函トンネルができて完成したときにはこれらの公団はこれは自然的になくなるのだということを確認しているわけです。大臣も御出席になっているから、そのことを大臣も出席されてやったか、あるいはまた前大臣からの引き継ぎがあったかしれませんが、そういうことになっているわけでありますが、これらのものも結局は国鉄に、おまえ、しょえということになることは私は必然の結果ではないかと予想しておるわけであります。こういう点について、あなたは大蔵委員会の方にも行かなければならないということなので先に質問いたしますけれども、この点、どうお考えになりますか。
  24. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 先ほども申し上げましたように、それらの施設は、いまつくっておりますものの考え方といたしましては、それを利用する者がその負担をするというのが原則でございまして、そういう考え方のもとにつくっておるわけでございます。でございますからして、青函トンネル国鉄が利用し、本四架橋鉄道部分を国鉄が利用するということであるならば、国鉄負担をするというのはこれは当然なことでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、国鉄負担をするというのは大原則でございますけれども青函トンネルでございますればそこへ鉄道を通しまして、それだけで最も合理的な利用方法なのかどうなのかというような問題が片方出てございますものですから、その辺のところをいま運輸省におかれまして一生懸命詰めて御議論をいただいておりますので、そういったものの結果を見ました上で判断をしていくべき問題かもしれないということは申し上げたわけであります。どういう利用方法になるにいたしましても、鉄道が走るということであるならば、鉄道がその負担をするということはそれはいたし方ないことだと思います。
  25. 青木薪次

    青木薪次君 宍倉さん、あなた忙しいようだから、もう結構です。また、随時適切に来てもらってやってもらいますから。  運輸大臣にお伺いいたしたいと思うのでありますが、臨時行政調査会ができて、昨年七月に国鉄再建について分割民営化の答申政府に提言をして、これを政府最大限尊重する、これがどうしてもひっかかるんです、大臣。したがいまして、いま言った問題等についても監理委員会の言ったことは最大限尊重するというけれども、肝心かなめな大蔵省、国が負担するというところになると、私だって前もって再建監理委員会に工作をしておきますよ、国の負担とならないように赤字の国鉄にまた負担させるようにそのための努力はしますよ、ということをちょっと言っているんです、これは言葉はなかなか丁寧だけれども。その点が私は非常に心配だ。したがって、閣議でもって本四公団や青函トンネルの問題等についても結果として国鉄負担をさせることは無理だというように大臣考えになりませんか。
  26. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 先ほど大蔵省の方から御答弁がありましたようなことでございますけれども、現在の段階で試算されているところでは、青函トンネルが完成すれば年間約八百億程度の借料が発生するであろう、それから本四架橋の場合には約五百億程度の借料ということが言われております。  現在の国鉄制度というものを前提にこれをどうするかということではないわけでございますけれども、いずれにしてもこれだけの借料というものをしょって、果たして、どういう形であれ健全な鉄道事業経営ができるかどうかということについては、かなりやはり疑問があると言わざるを得ないと思います。今後、監理委員会におきまして効率的な経営形態というものについて徹底的な検討が行われるわけでございますが、その段階でどういうふうな形で経営というものを弾力的にやっていくか、自主的に自主性を付与された形で経営をやっていくか。それによってどういう合理化なり生産性向上の効果が上がるかというふうなことにもよるわけでございますけれども、そういう諸条件というものを踏まえた上で、なお本当に必要な鉄道事業というものが健全に経営されていく。健全経営を今後さらに維持をしていくというために、そういう前提に立って、なおかつ経営上のお荷物になるというふうなものがあるとするならば、これはやはり何らか適切な解決をせざるを得ない。このように私ども考えておりまして、監理委員会においても、当然そういう見地から、国家財政の見地も踏まえ、かつ国鉄の行っている事業の健全経営という面も踏まえ、適切な結論が出されるもの、このように期待しております。
  27. 青木薪次

    青木薪次君 頑迷固陋な自民党が――国鉄を七 分割することについて、北海道、四国、九州、そして本州を四つに分ける、この具体的提言を臨調はやったわけです。そしたら、そのことについて最大限尊重しますと言って、後で中曽根総理大臣に質問しますけれども、そういうことでやった。しかし、国鉄は解体しませんと言う。解体しないと言うならば、北海道鉄道会社というものができるかどうか知らぬけれども、九州鉄道会社というものができるかどうか知らぬけれども、四国鉄道会社ができるかどうか知らぬけれども、これらの島の鉄道国鉄から分離されて大体においていまの借金を背負っていくだけの能力がないとするならば、その点は政府がこの債権債務関係についても保証するという前提がなければならない。  また、もう一つは、分割したら急に黒字になっちゃったなんというものじゃないです、打ち出の小づちを持っているわけじゃないんですから。そういうことになりますと、勢い北海道でも四国でも九州でも、いまのたとえば北海道に国鉄職員が四万人、このうちの半分を減らす、運賃は営業係数が三百数十ですから、人を半分に減らして運賃を三倍にするということが理屈としてはね返ってくるわけでありますが、この点について、そういうことを踏まえた立場に立ってこの臨調答申に賛成したのかどうなのか。その点、大臣、どうなんですか。
  28. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 臨調でいろいろ議論があったと思いますが、あった原則は民営分割、そして再建をしたい、こういうことでございまして、恐らく、どういうケースで長期債務をどうこうするという一つ一つのケースについては私はまだ話が出ていない。しかしながら、この法律が通って監理委員会が生まれた場合に手をつけなきゃならぬことは、いままでの経営形態である公社ではなかなか能率が上がらぬ、そこで経営も変えようじゃないかということが一つと、その場合に、また長期債務があるから、こういう長期債務について監理委員会としても考えなきゃならぬのじゃないか、こういう大まかな問題が出ておりますから、どの島にどれだけ借金があるからこれをどうするああするというふうな具体的な話には私はまだ入ってない、まだ委員会が生まれておりませんから。こういうふうに考えます。
  29. 青木薪次

    青木薪次君 よく、大臣、あなたの答弁で、国鉄職員がサービスが悪けりゃサービスのいい方へ行くのはあたりまえじゃないかとか、サボってりゃ何だとか、こういった発言がときどき飛び出すのですが、この点は、これだけの全国膨大な職場があれば、中にはちょっとそういう問題の職場があったりすることあるかもしれない。どこの日本全国の企業においても官庁においてもそういうことはあり得るんです、こんな大組織になれば。それでいいと言っているわけじゃない。しかし、全体の九九・九九%の職場というものは、今日のこの中においてまことにまじめに、まともにやっている。そして、どなたかがおっしゃったように、この国鉄職員の数とこの国鉄の技術というものは世界に冠たるものであるということをあなたに認めてもらいたい。  それから、この法案の審議に当たって私どもが言ってまいりましたのは、今日の国鉄の危機を招いた最大の原因はこれはモータリゼーション、このモータリゼーションへの対応のおくれとか、あるいはまた特定人件費の圧迫とか、過大な支払い利息とか、赤字の政治路線をいままで建設し過ぎた。社会党がやったわけじゃありません。与党の皆さんがやってきたんです。こういう問題とか、国鉄経営権とか、当事者能力が全くなかったというような問題等についても、これに触れることなくして、何か枝葉末節的なそっちの問題に、問題職場とかいって出かけていって、そして言葉の端々をとらえて、こうだと言って新聞発表したりする。ここに私はもと国鉄におった先輩として大変耐えがたい屈辱と怒りを持っているわけであります。ですから、その点について、監理委員会になったら現状を踏まえて単なる分割民営というものはない、いまよりもかえってよくなるというようなことについて、大臣考えになりませんか。
  30. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 青木さんが先輩としていろいろ国鉄のことを考えておられることに敬意を払います。  先ほど宍倉君から説明がありましたけれども、最近国鉄が、労働組合が非常によくなりました、こんな話が出ているわけです。私はよくなったことを認めております。何といっても、最近は九〇%以上がよくなった、そして能率も上がっている。こんなことでございますから、問題はやっぱり国の金の入るそういうところが一生懸命やっている姿というものを国民が歓迎するというところだろうと思います。  いまから先も、国鉄がすばらしい技術を持っていることを私も皆さんに負けないで認めますから――きのうでしたか、私のところにアメリカの新幹線の総裁が来まして、日本の新幹線から五十人の技師が来ていろいろ計算してやってもらっているが、自分の方の計算と日本の計算が一つも狂ってない、三千数百億の金を集めているのだが、日本の方もぜひこれの話に乗ってくれということでございました。こういう技術は、長い間培われた技術陣の伝統がそうさせていると思いますので、私はいいものがあった場合にはそれをますます拡大することによってお互いの生活向上、それに向けていかなきゃならぬ。これは青木さんに劣らないほど私も懸命にがんばります。そのかわり文句を言うところもあります。文句を言うときはしっかり言って、それで一緒にやっていくというのが一番いいのじゃないでしょうか。
  31. 青木薪次

    青木薪次君 総裁にお伺いいたしたいと思いますが、昭和五十年度のときに、私の手元にある資料でいけば四十三万一千人の職員は、五十八年度末には予算人員を引いて、しかも退職者を減らして幾人になりますか。
  32. 三坂健康

    説明員三坂健康君) 五十六年度末で四十万八千五百でございます。それで現在、五十八年度初で三十七万三千九百になってございます。
  33. 青木薪次

    青木薪次君 それから退職者が減るんでしょう。
  34. 三坂健康

    説明員三坂健康君) これは合理化した要員から新規採用を引きまして、その退職者は現在員で、予算定員とは別でございまして、その退職者の減った分を合理化数で賄っておるわけでございます。
  35. 青木薪次

    青木薪次君 そうしますと、昭和六十年には推定値は何人ぐらいになりますか。
  36. 三坂健康

    説明員三坂健康君) 昭和六十年は現行経営改善計画では三十五万人というふうなことになってございますが、先生御存じのとおり、五十七年度は経営改善計画を八千三百人上回る合理化をいたしておりますし、五十八年度、今年度も昨年度以上の合理化を実施したいというふうに思っておりますので、この六十年度三十五万という定員は業務量の実態等に合わせて経営改善計画を変えざるを得ないというふうに考えてございます。現在、予算定員が三十七万三千九百でございますが、今後、五十八年度末、五十九年度末に、合わせて四万数千人の退職者を予定いたしておりますので、そういたしますと、その計算どおりの退職者が出るといたしますと、三十三万あるいは三十二万台になるというふうな予測はいたされます。
  37. 青木薪次

    青木薪次君 私ども国鉄再建法議論する三年前は、三十五万人体制、当時の塩川運輸大臣は、これを認めてくれれば、青木さん、私どもは助成はどんどんやりますよ、それから国鉄は蘇生するでしょう、胸をたたいて――胸をたたいたんですよ、現に。胸をたたいて、そのことを言いますといって、塩川運輸大臣は私たちに力強く確約をしたのであります。ところが、これが三年足らず、二年余ちょっとでもって、もうすでにこの国鉄再建法に基づく計画というのは全く破綻をした。この原因について私は前にもちょっと聞いたことがあると思うのでありまするけれども大臣、一体どういうように考えていますか。余りにも私は情けないと思っているわけでありますが、そのことを含めて、簡単で結構ですから答弁してくれませんか。
  38. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 当時からいましたから申し上げますけれども、それはやはり輸送量の減ということに、そのこと一つに尽きると思っております。
  39. 青木薪次

    青木薪次君 総裁政府のこのことに対する答えを聞いておかないと、政府はどう考えているか。総裁には後で聞こうと思ったら、あなたは演説したいものだからすぐ手を挙げてやってしまうけれども大臣にまず聞いてから総裁に聞こうと思ったわけです。  大臣、どう考えますか。
  40. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 総裁が答えてしまいましたけれども、予定しておったところの輸送計画ほどお客さんがなかったこと、あるいはまた、きのうか、ここで話がありましたが、たとえば東京と大阪の間の貨物は、国鉄の積み取り率がわずか一%に足りるか足りないかというふうなことで全部計画が外れてしまった、それにどう合わせていくかということがいまからの問題じゃないだろうか、こう思っております。
  41. 青木薪次

    青木薪次君 いま私どもが、国鉄生産性の向上というような問題等について、いま三坂常務が説明したように、昭和六十年を新規採用なしでそこまでいきますと三十三万弱になるということについて、いま心配なのは技術断層の問題があるでしょう、将来の要員計画の問題があるでしょう、そういうような問題等について、政府としてはこれはゆゆしい問題だと思うのでありますが、どうお考えになっていますか。新規採用のないという点、それから生産性の向上については、人を徹底的に減らして生産性向上をやっている、こういうような点について問題があると思いませんか。
  42. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 現時点において新規採用を原則的に停止しておりますし、来年度も引き続きその方向でいくということを聞いております。その説明、内容等々いろいろ聞いておりますが、やはり現時点におきましては、それぞれの職種なり営業部門あるいは地域的な問題等をいろいろ調整しながら、いま先生がおっしゃったようなことがないようなことを十分配慮しながら国鉄当局の方で合理化を進めていくというふうにわれわれは考えておりますので、当然われわれもそういう合理化国鉄が進めていく場合に、輸送サービス等においていろんな面でこのニーズにこたえられないことがないようにその点は配慮したい、こういうふうに思っております。
  43. 青木薪次

    青木薪次君 この間、貨物問題で質問いたしましたけれども国鉄当局は、ことしの一月三十一日に、国鉄の貨物輸送史上初めてと言われるくらいかつて見ない減少計画といたしまして、「新しい鉄道貨物営業について 拠点間直行輸送体制への転換」ということで、貨物の駅体制の再編成と輸送システムの変革案を内外に明らかにしたわけでありますが、この計画はまさに地域鉄道輸送の切断と全国ネットワーク輸送のそういう体制を全く放棄した、こういうことに言われておりまして、内外に与える影響というものはきわめて大きいわけであります。  この点について、なぜ国鉄に貨物が来ないのかという点について、運賃制度の非常に固定したやり方というものがあって、そして自動車輸送にとられる。たとえば、私が知っているんですけれども、運送業者が三割ぐらいの運賃で帰り車で帰り荷を背負ってくるというようなことも含め、いまの国鉄の運賃制度というものが一つは貨物を減らしたのじゃないかというようなことが言われているわけでありますが、その点についてはどう考えていますか。
  44. 橋元雅司

    説明員(橋元雅司君) 先生御承知のように、国鉄あるいは鉄道貨物運送につきまする運賃制度は、創業以来従価等級制度ということでやってまいりました。要するに、運送貨物の価格に応じた一種の負担力主義でございますが、そういった形で百年来やってまいったわけでございますが、他の運輸機関の運賃制度等を考えますと、それではとても競争力がつかぬということで、昭和五十五年でございましたが、四月の運賃改定の際にこの従価等級制度、かつては十四等級ございましたが、五十五年当時は三等級になっておりましたけれども、これを全面的に廃止いたしまして、かわりまして、輸送の態様に応じコストを反映する運賃制度ということで五十五年以来いろいろやっておるところでございます。  そのポイントとなりますのは、やはり他の運輸機関の、先生おっしゃいましたようないろいろな弾力的な運賃適用がございますので、そういったものをよく調査し、それらを勘案しながら私どもも弾力的に対応しようということで、荷主さんとのそれぞれの具体的な折衝と申しますか、お話し合いで運賃を決めるということでございます。もちろん、先生おっしゃいました季節的な割引であるとか、あるいは大量定型の割引であるとか、あるいは空車回送方法に対する割引といったもろもろの割引制度につきましては道が開けておりまして、かなり個別具体的な運賃制度に目下はなっておる。問題は、その運賃制度をさらに今度この拠点間直行輸送体系に全面的に転換するにつきまして、さらに大きくまた変えていかなければならぬということで目下勉強いたしております。  いずれにいたしましても、運賃制度だけの問題ではないと思います。輸送上のいろいろなサービス上の問題がございますが、この運賃制度と輸送両面にわたってよくかみ合った制度として荷主さんの御利用を慫慂するような形にもっと勉強を重ねてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  45. 青木薪次

    青木薪次君 私どもは、十日ほど前に路線トラックの規制という問題について、トラック乗務員が神風運転で全く事故を背中に背負っていま運転をしている。ここには過積載もあるし、いま言ったオーバーワークの問題もあるし、いろいろあって、しかもいわゆる青ナンバーと言われる正当な許可をされたトラックが五十三万台でしたか、それから白ナンバーで八百何万台か、私ちょっと忘れましたけれども、八百万台の白トラックが違法行為をやって運転をして稼いでいる。したがって、道路がふくそうしたり、エネルギー問題が起こったり、事故が起こったり、公害問題が起こったりで大変なことだ。このことについては、違法な運転をすることについてこれはけしからぬ。しかも、梶原先生がいますけれども、大変この問題については熱心にやっていらっしゃるんですけれども、違法行為をする者についてはやっぱり取り締まらなきゃいかぬということになるわけであります、このことが事故を誘発しているわけですから。  ところが、貨物は戸口から戸口というような非常に便利なものだから、国鉄貨物はついに八%を割る事態になってしまったということについて、国鉄貨物の役割りというものは、私はやっぱり北海道北部の農業生産物、ジャガイモとか麦とか、いろいろなものがあると思う。それから、そのほか九州や近畿、わが静岡県にもいろいろあるわけでありますが、そういうものとか危険物だとか、いろいろな第一次生産品を初めとして大変な今日国鉄の貨物に対する期待というものはいまだもってなくなってはいないわけであります。これが全部トラックにそれじゃ集中されるということになりますと、これは今度の貨物の拠点駅の廃止と取扱駅の廃止によってまた半分になるわけでありますが、そのことによって受ける国民経済的な損失というものもはかりにかけていかなきゃならぬと思うのでありますが、国鉄貨物をこれ以上ひとつ後退させないというためにどんなことを考えているか、お伺いいたしたいと思います。
  46. 橋元雅司

    説明員(橋元雅司君) 今回の改善策は、一面においてもちろん陳腐化した部分をスクラップダウンするわけでございますが、逆にその特性が発揮できる分野につきましてはむしろ積極的にビルドアップしていく、こういう施策でございます。私どもとしては、やはり一日も早く大量、高速あるいは定時定型といった鉄道の特性を発揮できる分野でより増送、増収に努めたいということでございます。他の運輸機関にもいろいろ内在する問題がございまして、よく承知しておりますが、まずもって私どもがその特性が発揮できるような形に 早くシステムチェンジをした上で、いろいろまたお願いを申し上げたい、こう思っておるところでございます。  実は、ャードを使わないという輸送につきましては長年のいわば悲願に近いものがございまして、ヤードという非常に労働条件の悪い、劣悪な設備を使う輸送というのはこれはできればなくしたい、あるいはヤードを経由する列車のスピードは現在八十五キロ程度でございまして、貨物は当然昼間集荷して夜間発地を出て翌朝着地に着くということでございますが、その限られた有効時間帯に必要なところには列車単位で続行便でも何でもどんと増発したいというわけでございますが、なかなかそれができない。それはなぜかと申しますと、やはりそのャード系の八十五キロ程度のスピードの列車は夜間とろとろ走っておるということがございます。いろんな問題点がございますけれども、拠点間直行輸送に徹する、そしてコンテナ輸送を大いにふやすということを通じて鉄道貨物輸送をもう一回活性化するということで私ども十分自信を持って今後やってまいりたい、こう思っておるところでございます。
  47. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄では、増収対策として経営改善計画において私鉄経営状況等を参考にする、これは何回も言っているわけでありますが、効率の向上を図ろうとすることは勢い生産性を向上することである。しかし、その生産性の向上というのは何かと聞いてみたら、大量人減らしだ、これじゃ余り芸はないわけです。したがって、今後の方針としては、運賃料金制度のあり方とか事業の多角的経営の問題について私鉄並みに弾力化を検討すべきだと思うのでありますが、これは監理委員会の課題であると思うのでありますが、林審議官、この点どう考えますか。
  48. 林淳司

    政府委員(林淳司君) その点はまさに先生御指摘のとおりでございまして、やはりこれから国鉄経営というものを考えていく場合に、経営の自主性ということが非常に重要な要素であろうと思います。その場合に、経営の自主性の中にやはり営業の自由度、弾力性というものもこれはきわめて重要な要素でございまして、やはり私鉄が行っているように、直営事業あるいは関連事業というものを含めまして、その辺の自由度を回復するということは、これからの国鉄経営の仕組みを考える上において非常に重要な問題であろうというふうに考えております。
  49. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄の関連事業現状はどうなっていますか。
  50. 岩瀬虹兒

    説明員(岩瀬虹兒君) 関連事業と申しますと、国鉄法第三条におきます国鉄事業の附帯事業としての関連事業と、国鉄法第六条によります出資事業の二つがございます。  このうち、附帯事業につきましては国鉄直営が可能でございますが、その効率的な運営を考慮いたしまして、たとえば鉄道弘済会等の国鉄とは別の事業者に行わせまして、国鉄がそれから料金を徴収するという形態で行っております。  また、第六条につきましては、これは当初は非常に限定をされておりましたけれども、四十六年の政令改正による駅ビルへの進出、あるいは五十二年、五十三年の国鉄法及び政令の改正によりまして国鉄用地の高度利用でございますとか、あるいは五十七年の政令改正によります住宅事業への出資等、逐次その範囲を拡大していただいておりまして、今後もこのような形の中で関連事業増収を図ってまいりたいと考えております。
  51. 青木薪次

    青木薪次君 私鉄並みの経営にするには、どういうような制度なり法律改正があるんですか。その点、聞いておきます。
  52. 岩瀬虹兒

    説明員(岩瀬虹兒君) 私鉄収入は関連事業が非常に高いウエートを占めておるわけでございまして、ちょっと古くなりますけれども、私ども承知しておりますところでは、昭和五十五年度で大手私鉄十四社の営業収入総額の中で関連事業収入は約三四%というふうに聞いております。その大部分はやはり不動産関係でございます。これに比べまして、国鉄の方は非常にまだまだおくれておりまして、関連事業二%ほどでございますが、やはり国鉄私鉄とはこの率だけではちょっと比べられないのでありまして、国鉄の方はいま申しましたような料金方式でございますので、どちらかといいますと非常に密度の濃いあるいは純益に近い形のものの収入であるわけでございます。  この不動産事業が非常に大きな収入を占めておりますが、果たしてこれから不動産事業国鉄がやったらいいかどうかという問題については非常にこれは問題があるわけでございまして、たとえば現在のように非常に冷え切っているといったような中で新たに進出していくということは非常な危険もまたあるわけでございます。しかしながら、いろいろな事業がやはり直営で行えるということが非常に大きなメリットでございますので、今後はそういう形の中でどのように進めていくかについては十分勉強してまいりたいというふうに考えております。
  53. 青木薪次

    青木薪次君 いまお話しになりました仕事としては、国鉄自体でやれる範囲として日本国有鉄道法の三条があります。第三条は、「日本国有鉄道は、第一条の目的を達成するため、左の業務を行う。」、「附帯事業経営」、「連絡船事業及びその附帯事業経営」、「自動車運送事業及びその附帯事業経営」、「石油パイプライン事業」、こういうようなものが列挙されているわけでありますが、その範囲の拡大ということは具体的にはどういうような点を改正したら私鉄並みになるのか、その点についてどうお考えになりますか。
  54. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 最も基本的には、私鉄の場合は別に制限されていないわけでございまして、国鉄の場合はまず鉄道をやりなさい、ただ、いろんな制約つき、条件つきのもとにそこに示されましたようなところまではやってもよろしいということになっておるわけでございます。これを私鉄並みにするということはやはり非常に困難なことでございますし、また適当かどうかということには多くの疑問があるわけでございますが、私どもは非常に慎重に考えながら、間違いのないといいますか、堅実な仕事でかつ将来性のある仕事に少しずつ広げていきたいと思っておりますが、当面、よく御指摘ありますのは不動産事業でございます。しかし、不動産事業というのは非常にリスキーな面もあるわけでございますので、私もいまのところはまだ不動産事業まで拡大さしていただくということにはなかなか踏み切れない状況でございまして、現在のところ制度的に、つまり法律の上で制限があるからうまくいかないというよりは、何かわれわれにふさわしい仕事を見つけることに最大の力を入れていくべきだというふうに考えております。
  55. 青木薪次

    青木薪次君 いま総裁のおっしゃったように、制度なり、あるいはまた国民経済的な立場から地元の反対があるとか、いろんなことがあったわけでありますが、私の静岡等におきましてもいろんな議論がありましたけれども、積極的に地元は推進しようというような空気になってきたわけであります。駅ビルもあるし、それから県内一のホテルもできる。これが地元の皆さんと整合性のある形で進められて、そしてたとえば地場産業の家具、鏡台とかケミカルサンダル業界とかというものは日本で最高なんですけれども、全国からお客さんがどっと来る。そして、全体がある意味ではやっぱりグレードの高いホテルを欲しておる、それが全部泊められるというようなことで大変喜ばれているわけです。  しかし、今日こういうように貨物は八%に減ったわ、お客さんもだんだん減ってきたわ、競争が激しいバスや航空機や内航海運の方もどんどんハッスルしているという中で、国の中におけるパイは一つなんですから、それを取りっこするということだけでなくて、新しく事業を発生させる、消費の拡大もやる、これがやっぱり景気の回復にも通ずるわけであります。そういう意味で、先ほど質問いたしましたように、二万五千人も一年間に人を減らす、そうするとその人たちの行くところがない、採用はゼロだ、こういうことで国鉄も厳しいことをやったものだと言って実は世間ではあっと驚いているわけです、急激にそういうことを やるものですから。  だから、この雇用対策だって考えなければならぬということになると思うのでありますが、その点について、たとえばあちらこちらに飛び地がある。宿舎の跡が廃止されてクモの巣がかかっているというところも中にはある。そういうようなところとその隣が一つおいて向こうとか、飛び地なんかについてもいままで全然法的にできなかったんですけれども、これは何とかできるという方向になっているんですかどうですか、その点をお伺いしたいと思います。
  56. 岩瀬虹兒

    説明員(岩瀬虹兒君) これは五十三年の政令改正の際に飛び地についても開発できるように措置をしていただいております。
  57. 青木薪次

    青木薪次君 この点については、私鉄の場合は、たとえば不動産事業ということをさっき総裁が言ったのだけれども、住宅対策なんかについても土地を開発して住宅を建てて皆さんの利便に供する、あわせてその辺を開発して、私鉄は借金でもって鉄道を敷いたけれどもすぐペイをしてしまった。これができないわけです。そういう点については、そういう考え方はあるのですか。先に先行投資するというようなことです。
  58. 岩瀬虹兒

    説明員(岩瀬虹兒君) ただいまお話ございましたように、住宅事業につきましてもすでに手がけておるわけでございますが、これは具体的には巣鴨の駅前にございます貨物用地を開発しようとするものでございます。これなどはやはり出資会社方式でございますので、ただいま申しましたような先行投資とはちょっと違うかもしれませんけれども、これもやはり国鉄のお客さんをふやすことができる施策というふうに考えております。  また、先ほどの飛び地開発の際に御説明が欠けましたけれども、ホテルの開発なども飛び地としてやっているものがございます。近くは池袋にホテルを開発することにしておりますけれども、これもやはり国鉄の旅客の需要を開発するという効果を持つものとして私どもは期待をしているものでございます。  先ほど非常に人の問題が出てまいりましたけれども、ホテル経営の場合には、やはり池袋で申しますと四百数十名の雇用ができるわけでございまして、その中にやはり国鉄経験を持った人も働いていただくということを考えておるわけでございます。
  59. 青木薪次

    青木薪次君 これらの点については政府もこれを応援する気持ちがあるんですか、どうなんですか。
  60. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 国鉄の関連事業につきましては、これは改善計画におきましても大幅な増収を図るということで積極的に国鉄の土地を有効活用して関連企業増収を図ることにいたしておりますので、政府としましても多角的に関連事業の開発、それによる増収ということに協力といいますか指導してまいりたい、かように思っております。  ただ、先ほどいろいろ議論がございますが、現在の体制のままで不動産業とかあるいはその他いわゆる鉄道事業と余り関連のないようなところまで広げることにつきましては、武家の商法と申しますか、そういう問題もありましょうし、現在の体質上いろいろ問題があると思いますけれども、いま申し上げましたように、関連事業につきましての増収策につきましては、われわれとしても前向きに対応したいと思っております。
  61. 青木薪次

    青木薪次君 今後の貨物合理化なんかで生み出されるヤード、こういうようなところも膨大な用地があるし、現に地上空間が市や県でもって住宅団地をつくろうとしてもないのです。山を切り開くということになると、いろんな規制の法律もあるし、また遠くてとても関連する学校も建てなきゃならぬ、排水も何とかしなきゃならぬ、交通はどうするということで、これも不可能ということで脚光を、地方自治体やその他からも刮目されてきていることは事実です。ですから そういうようなことから、これら建設省や地方自治体とも提携して、住宅分譲事業なんかについてやる気持ちはあるのかどうなのか、その点もお伺いします。
  62. 岩瀬虹兒

    説明員(岩瀬虹兒君) 先ほどのお話に出ましたような大規模貨物跡地につきましては、今後やはり有効活用の方策を私どもは重点的に考えていくつもりでおります。いずれもこれは大都市周辺にあります非常な貴重な空間でございますので、沿線市町村にとりましては非常に注目をしているところでございますし、都市再開発の観点からも密接な連絡をとりながらやってまいりたいというふうに考えております。特に、これらの用地は、やはり非常に大規模でございますので、住宅開発というのには非常に適しているものではないかと思います。それらにつきましては、先ほどお話ししました巣鴨等の経験をこれからも積みつつ、やはり国鉄で開発してまいりたいと思います。  先ほど国鉄は不動産事業を余りやりたくないような御答弁を私は申しましたけれども、今後少なくとも発生をいたします大規模な貨物跡地につきましては、ただ単に売るとか、そういうかっこうではなくて、いろいろな都市基盤の整備などをして、ぜひ使える形にしてそれを提供いたしたいというふうに考えております。売るものにいたしましても、使える形にして売るようにしたいと考えております。そういう意味で、いままで国鉄はそれが直接できないわけでございますけれども、これにつきましては何らか法律あるいは政令の改正もお願いをしていきたいというふうに考えているところでございます。
  63. 青木薪次

    青木薪次君 私鉄においては、さっきも言ったんですけれども、新線建設をして、そして不動産事業を前広に行っている。多角経営によって経営の能率化を図っているわけでありますが、借入金への依存度はきわめて低いと聞いているんですけれども、私はさっきの私鉄の累積債務二兆二千億の関係についても全国の私鉄の合計を聞いたんですけれども、この点について、国鉄との関係についてはその点どう考えていますか。
  64. 岩瀬虹兒

    説明員(岩瀬虹兒君) 私鉄の借入金につきましては、私どもまだよく承知をしておりませんが、たとえば国鉄がそのようなことをやる場合に考えられますことは、出資会社の場合には、たとえばビルをつくるにいたしましても、その資金調達は中に入りますテナントからの保証金が七、八割、場合によっては九割とれるわけでございますので、非常に資金調達は楽であるわけであります。私鉄がたとえばそういうビルをつくります場合にも同じような形で資金調達ができますので、いわゆる銀行等からの長期借入金というのは非常に少なくて済むのが一般ではないかというふうに思います。  ただ、国鉄がもし直営でそういう事業をやります場合には、これはやはり保証金といいましても国鉄の借入金であることには変わりないわけでありますので、そういう意味では非常に現下の逼迫した国鉄の情勢の中では非常に問題があるのじゃないかというふうに逆に思うわけでございます。ちょっと御答弁になりましたかどうかわかりませんけれども、そのように考えます。
  65. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄に対する長期債務負担軽減という問題は、先ほど宍倉主計局次長にも聞いたわけでありますが、長期債務負担軽減対策というような点については私鉄状況を参考にしてもっと積極的に取り組む必要があると実は思うのでありますが、大蔵省主計官見えていますな。藤井主計官ですね。  大蔵省としては、これらの関係の中において、この長期債務についてはどういう形でもってこれを消化というか、負担を肩がわりするというか、そういうことについては考えていますか。
  66. 藤井威

    説明員(藤井威君) 長期債務の問題につきまして、現行の経営改善計画の初年度におきましていわゆる棚上げ措置を強化いたしまして、五十八年度末でございますが、二十兆ほどたまっております累積債務のうち五兆円余りは現在別勘定にいたしまして、その金利を一般会計で負担しておるということは御承知のとおりだと思います。  ただ、宍倉次長も御答弁申し上げましたが、二十兆円の累積債務全体の中のどの程度がいわゆる国鉄責めに帰すべからざる理由によるものか、 いまいろいろ議論があるところでございまして、やっぱり基本的には国鉄企業経営努力の中で当然償還していくべき性格のものであるという原則は、これは曲げることができないと思います。そうは言いましても、これだけのものを抱えたままで国鉄が健全な経営体質に移行できるかどうかということについては非常に大きな疑問があることは事実でございますので、それらの点を踏まえて再建監理委員会で処理の問題を検討していただく、それをわれわれとしても見守ってまいりたいと思っておる次第でございます。
  67. 青木薪次

    青木薪次君 いろいろと、おとつい、十日の日に私は三時間にわたって質問いたしましたし、きょうも大体二時間半ぐらい、まだ後、総理の質問も残っているわけでありますが、総じて言えることは、この間の連合審査大臣がおっしゃったように、わが党の対馬孝且委員の言いましたように、北海道で地方公聴会をやったところが、この法案に賛成の人も反対の人も北海道において分割民営はできませんということを異口同音に言ったわけであります。そのことについて大臣は、おれはそこへ出席していないから知らぬよと、こう言ったから、それは困るということでいろいろ話をしていった結果、そのことについては全くよく理解できたということをおっしゃったことは大臣覚えていらっしゃいますね。そういう点について、私はどうしても北海道会社とか九州会社、四国会社なんということは絶対にできない、これは九九%というよりも一〇〇%できないということについて改めて大臣の御所見を伺いたいと思います。
  68. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) いずれにいたしましても、先生のおっしゃったような結論というものは、この監理委員会が生まれたときに縦横無尽の議論が出て、その中から一つの結論が出てくる、こういうふうに考えます。そこを私たちよく見てまいりたい、こう思っております。
  69. 青木薪次

    青木薪次君 まず、この点につきましては監理委員会にすべてを先送りする、それから臨調としてはできないことも、あの土光さんなんという財界の化け物みたいな人が出てきてやるわけですから、国鉄の営業係数はこの線区はどうなっている、この線区はどうなっていることもわかるわけじゃないし、また午後には加藤さんだなんというテレビによく映る人が出てくるわけでありますが、この人も内容は何にもわかっちゃいない。ただ、自分の頭の中でもって、赤字だから赤字の原因はこうだとか、サボっているからこうじゃないかとかということを言うだけなんです。  ですから、その点は後でわが党の瀬谷委員が克明にただしていきますけれども、私はやっぱり今日までのわが党の国鉄再建に対する提言というものについて改めて指摘をいたしたいと思うのでありますが、特定人件費とか、長期債務にかかわる利子とか、運賃の公共割引とか、こういうようなものがいわゆる構造的な欠損でありますので、その点に対しましてはこれは国鉄経営から切り離して別途解決するということについては、大臣、ひとつ理解を示したと、再建監理委員会が何と言うかそのことを見守りたいと言うのじゃなくて、主管大臣として今日までの議論の中でそういう問題については別途解決を図ることが望ましいということを、大蔵省も出席してこの点については理解を示しているわけでありますから、その点について大臣から一言御所見を伺いたいと思います。
  70. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) どうも議論が私は二つに分かれているような感じがするのです。いままでの国鉄を論じながら何もかにもいままでのままでいいのだ、そういうふうな発想から出てくるような議論と、やっぱりこんなに未曾有の危機でどうなるかわからぬという国鉄、これを何とかしなきゃならぬというそういう議論と二つありまして、私聞くところによると。そこで、監理委員会というのが生まれた場合に、従来も勉強してもらったことでもありますし、そしてまた国鉄というものは大量輸送機関としてまだまだ将来があるわけですから、そういうものをどう生かしていくかという形で持っていくべきであって、従来ともに解決できなかった問題はそうした中において私は時に強力に推進して片づけることもできるし、またそういう気持ちであるから国民に理解してもらうこともあり得るのじゃなかろうか。私自身も、専門家じゃありませんが、そんな気持ちで問題を見てまいりまして、ここで国鉄再建の一つの基礎というものをつくる加勢ができるなら皆さんと一緒に光栄の至りだ、こう思っております。
  71. 青木薪次

    青木薪次君 いままでのことは全部いいという前提に立っている考え方と、何とかしなきゃならぬという考え方と二つあるなんという、そんな認識で大臣はおるからあなたの発言の中にときどき落ちこぼれがある。ですから、これは注意してください。何とかしなきゃならぬということについては一致している。一致しているけれども、分割民営というような問題へ、いまの国鉄の百年の伝統を持った経営の体系と、いままでの歴史というものを一遍に百八十度ひっくり返すということについては、これは大変問題がある、国民の足と国民経済の点から考えて問題があるということを指摘しているんですから、その点、あなた答弁をやり直してください。
  72. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 大きな議論としますと、青木さんが申されたことはよく理解しているつもりであります。
  73. 青木薪次

    青木薪次君 それから、法的な立場から、人事の面から、財政の面から国鉄当局経営の権限を付与しなければやれない、こう思うのでありますが、この点どうですか。
  74. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 私もかつて労務を担当したことがありますが、そういう面からするとやはり自主的なものを与えなければぐあいが悪い。何もかにも不動金縛りで縛られた中では、幾ら国鉄の中央の諸君が頭がよくてもなかなかできない問題がたくさんあった、だから時勢の変化に対応できないでばたばたと後退せざるを得ない面があった、こう思います。
  75. 青木薪次

    青木薪次君 年度末手当の〇・一を国会へ持ってきて、国会でもっていろいろ与野党で折衝したり、政府と話し合ったりするなんということは、これは全く国鉄総裁に権限のないことをそのことだけでも裏書きしていると私は思いますので、いまの大臣答弁をひとつ大いに推進をしていただきたいと思います。  それから、総合交通体系というものはこれはやっぱりつくらなきゃだめだ。昭和四十六年でしたか、つくったのでありますが、その後いろんな変遷を経てまいりまして、新しく総合交通体系をつくって、国鉄の役割り、それから私鉄の役割り、バス、タクシー、トラック、あるいはまた内航海運、航空機、これらの役割りというものについてやっぱり明確に位置づけする中に、この監理委員会法案の内容とする将来の国鉄に対する任務と役割りというものがあり得るのだ、この点については全く一致していると思うのでありますが、いかがですか。
  76. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) いま御指摘のように、国鉄が今後どのような役割りを果たしていくかということについての基本的な認識は、再三申し上げてますように、都市相互間の中長距離輸送なり、あるいは大都市の輸送なり、あるいは大量定型の貨物輸送なり、そういった点に特性を発揮していくということが今後の国鉄のあり方のやはり根幹になるべきものでございます。  こういったことを今後の国鉄再建の場合の交通政策の基本としまして国鉄のあり方を考えていくということが、これからの監理委員会の場におきましてもそういうことを前提にしていくべきことと考えます。
  77. 青木薪次

    青木薪次君 それから、私は国鉄企業性のみで縛ってしまうということにいろいろ言うものだから、公共輸送なんというものは関係ない、企業性だけを考えればいいのだという考え方ではない。企業性ということも、もちろん必要でしょう。さっき言った関連事業なんかの問題いろいろ出てきたのもそこにもあるわけでありますが、国鉄というのは、新幹線のたとえば東海道新幹線や山陽新幹線あるいはまた国電のこの中の一部というようなものについては、これは黒字で輸送をい たしております。しかし、全体として――私はこの間九州へ皆さんと一緒に出かけましたが、鹿児島本線でさえも二三〇前後の営業係数を示しているわけです。したがって、本来黒字になるにはなかなか大変である。これは郵政事業とか、たばこ専売事業とかというような全くの独占の事業と、全く毎日毎日競争力にさらされている事業と、しかもモータリゼーションの中におけるこのことがまさしく過熱化している競争場裏の中にあって、今日企業性を考えながら、公共性も追求しながら輸送していくということについて大変な努力をしているということについて、企業性のみで物事を判断しちゃいけない、公共性ということが頭になければ国鉄の本来あるべきものはないのだということを念頭に置いてもらいたい。  それから、先ほど総裁が、国鉄労使の正常化という問題についてはこれは本委員会において責任を持ってひとつなるべく早期に解決するようにしたいと言うし、いまテーブルに着いているということを聞いて安心をしているわけでありますが、それらの点を私は最後に要望いたしまして、あとは総理大臣との質問に譲りますので、これで一たん私の質問を中断いたします。  以上です。
  78. 小柳勇

    ○小柳勇君 この前、私は質問の途中で行管長官に、臨調委員の審議された議事録を公開すべきであるということを提案いたしました。再三要求いたしましたが、行管長官は提出ができないということでありました。したがって、私は質問を中断しております。その後、理事会でいろいろ協議されたのでありますが、どうしても議事内容の公開はできないということのようであります。そのかわり、監理委員会が設置されたら委員皆さんがこの運輸委員会に出ていろいろ意見を開陳されることはあり得る、そういうことを社会党の理事から聞きました。  将来の問題については、またこの参議院の運輸委員会理事会その他で善処されると存じますが、百何年にわたる日本国有鉄道を民間に移し、あるいは分割するというこの大きな法案の審議をするのに、臨調委員のいろいろの意見を公開できないということは非民主的です。現在の民主主義の社会で、もちろんその過程ではいろいろ審議の妨害になりましょうからやむを得ないが、もう臨調は解散されておりますからその会議録は当然私は公開すべきであろうと存じました。しかし、再三の要求でも出ません。まことに残念であります。  将来、こういう審議会などが設置され、それによって法律ができて、その法律を国会で論議する場合は、その基礎になる審議会なりあるいは各委員会の内容を、こういうものでこの答申を出しましたと、これが私は当然民主主義の大きなルールであると思う。しかし、私はそれにこだわって質問いたしませんとこの委員会が中断いたします。理事会の非常な協議の御苦心も聞きましたから、それはそれとして、将来そういうものはなるべく国民の前に公開されて、そして国民がその委員会の審議の内容がわかって、その上でこんな法律が出たのだと納得するような政治をしていただきたい、これを要望しておきたいと思います。  次の質問に入りますが、時間がわずか一時間しかありませんから要点だけを申します。  私は、ほとんど具体的な問題を質問していません。一番初めには、いままで十一年間にわたる衆参両運輸委員会の審議、それを政府が無視している、また有益な衆議院の提案とか参議院の附帯決議を無視している、あるいは総理大臣答弁をほとんど政府が実施していない、だから国鉄はこうなったのですよと政府の責任を追及いたしました。しかし、その責任追及だけでは問題は解決いたしません。ただ、この間の質問の中で、林審議官の方で、この監理委員会がこれから三年ぐらいいろいろ現状を分析して答申をされるでしょう、その間は現在の国鉄再建措置は生きております、並行して国鉄再建に当たりますという答弁がありました。これは運輸大臣もそうおっしゃいました。したがって、そういう立場からきょうは具体的な質問をしておかなければなりません。  まず第一は、林審議官に質問をいたしますのは、私はこの間、後藤田長官に面詰いたしました。それは総理がおれば――きょうは恐らく青木理事が総理に厳しく責任を追及すると思いますけれども、今日までいろいろ論議したもので国鉄の問題は明らかに出ているのだから、これを政府、各省庁が本気でやる気になれば今日のような状態国鉄はなっておりませんですよと、そう申した。ところが、今度はこの監理委員会をつくって監理委員会から政府答申が出る、政府はこれを金科玉条として聞かなければならぬと、こう法律に出ている。非常に強い権限を持っています。  そこで、心配するのは、いま社会主義の国でも、たとえばポーランドでもワレサの連帯などで、社会主義の国でも国の統治者に対して労働者が、狭義の労働者が団体交渉をやろうとしている。監理委員会の諸君、五人の先生方がおいでになり、総理大臣よりも内閣よりもあるいは国会よりもっと大きな権限を持ってばあんと答申が出されるようなことで、たとえば国鉄に働く労働者など、あるいはそれに関連する通運事業者もありましょうし、あるいはその他の旅行関連業者もありましょうが、そういう諸君のいわゆる労働者の意見などというものはほとんど監理委員会先生方が聞かぬままばあんと国鉄民営分割、それを中心にいろいろ御検討されるのではないかという心配があるわけです。  それは、せっかくこれまで終戦以来平和憲法によって労働者は団体交渉権、団結権を持ってきている。そういう思想を否定して、屋上屋の絶対者からばあんと出て、政府はこれをいいことにして、隠れみの、盾にして団体交渉の精神などを無視してどんどん事態が進むのではないかという心配がありますが、この点については、いますぐ監理委員会の性格について御発言できないかもしれませんけれども、いま監理委員会設置法が出ていますから、その監理委員会なるものに対しては労働者などの――いままでのたとえば労使間のいろいろ話があります。労使間で問題が解決しないで、今日ももたもたしているわけです。そういうときに、監理委員会としては労働者の意見をどういう方法でお聞きになるであろうかという心配がありますが、いかがでしょうか。
  79. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 国鉄再建という問題は非常に重要な問題でございますし、それからまた非常に複雑困難な問題もたくさんございますと思います。したがいまして、これについて本当に実施できる有効な再建案というものをつくるに当たりましては、やはり一握りの人たちだけの考え方だけではなくて、やはり各方面の御意見というものを十分拝聴しながら審議を進めていくということは、これは当然だろうと思います。  したがいまして、いま御質問の件については、これは監理委員会ができてからの問題ではございますけれども、やはり労働組合の御意見も含めまして、各方面の広い御意見を伺いながら審議が進められていくであろうというふうに考えております。
  80. 小柳勇

    ○小柳勇君 その点は、これは設置されましてから、この間の理事会の私に対する青木理事を通じての答弁は、監理委員会先生方も国会に来ていろいろ意見を開陳してもらう、意見を聞く、そういう答弁がありましたから、その中で解決されるものと思いますけれども、いまの林審議官答弁は貴重な意見として聞いておきます。  それから、第二の大きな問題は、いまちょっと青木委員の発言の中にも聞きましたが、総合交通体系といいましょうか、いま、たとえば物で言いますと六十億トンの物が日本の国土を動きませんと一億二千万の人間が生活できない。人は、もちろんこれは自由意思で人間が選択いたしますが、物は、総合交通体系をもっていろんな要求の中で――貨物は自分で言いません。だから、周囲の条件によって輸送機関というものが客観的に決めていくから、総合交通体系というものがないために国鉄がこんな現状が生まれていると私は理解している。これは数年前からここで言っているわけです。  いま運輸省に企画関係の審議官をお二人おつくりになっている。最近、運輸省の各局の構成を変えて総合交通体系をできるように機構改革についても考えておられるように新聞は報道いたしておりますが、運輸大臣、こういう点どういうふうになりますか。
  81. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 運輸省におきまして、交通政策、各交通機関を総合的に一番効率的な輸送サービスをさせるということは、これは政策のきわめて根幹的なことでございます。  これまで、どちらかと申しますと、各交通機関別の所掌する各局がそれぞれの分野のものをやっていくということでございますが、こういう組織だけでございますと、それぞれの交通機関の問題だけに終始しがちでございます。今後は各交通機関を、よいものを伸ばし、そして合理化すべきものは合理化するという視点がどうしても全体の交通政策を推進していく上からは重要なことでございます。  そういう意味で、いま先生からお話がありました物の流れの問題、これにつきましては貨物流通をもっぱら所掌するような組織をつくりまして、それは内航海運もトラックもそして鉄道もあわせて考える、そういった形で総合的な物の流れということを所掌して全体の物の流れの中でどういうふうに交通機関を育成し位置づけていったらいいかということをもっぱらやるような組織に変えていきたい、旅客交通につきましてもそのような考え方をとっていきたいというのが、今後の運輸省の行政組織のあり方に対する対応の方針でございます。
  82. 小柳勇

    ○小柳勇君 それは、いつできますか。
  83. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 現在、行政改革のこれからの進め方につきましては、政府は行革大綱をつくりましてこれからやっていこうということでございます。実際のスケジュールの問題は、行革大綱でこれから政府全体として決めていこうということでございますが、できる限り早くそういう体制に移っていくべきだということでございますので、早ければ五十九年度にそういう体制をとっていくということを現在検討している段階でございます。
  84. 小柳勇

    ○小柳勇君 五十九年といいますと来年、これから一年しましたらそういう体系になるとしますと、鉄道も航空も海運も自動車も、全般的に五十九年度ごろからはその総合交通体系の中で人の動き、物の動きを勘案できると判断していいですか。
  85. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) これまでも各局別のそれぞれの所掌の中で他の交通機関のあり方を考えてきたわけですが、これからの行政組織改革が行われましたときは、一つの局の中ですべての物的輸送なら物的輸送のあり方というものを相互に比較しながらこれを是正していくという仕組みができ上がっていくと思います。行政の展開もそのようにすることを私どもは期待しております。
  86. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういう制度ができましたら――今日まで各種審議会とか運輸政策審議会の総合交通政策に関する答申など前に出ています。あるいは国鉄からは昭和五十二年に総裁名で運輸大臣に総合交通政策に対する要望などがあります。ここで、実際はこれは読み上げて一つずつ、これはどうするか、これはどうするかと私は聞きたいわけです。でないと何にもならぬです、抽象論議をここで幾らやりましても。何年もこういう論議をしてきているわけですから。ただし、そういうふうな方向に回っておることでありますから、重ねて読み上げませんけれども、早急に客貨とも総合的に運輸省で見れるようにしてもらいたい。それが第一の私の希望です。  第二に、今度は質問。お客の場合にはみずから、安いこと、速いこと、きれいなこと、楽しいこと、いろいろ選択のあれがあります。貨物の場合は、ばらばらでいきますと安い運賃のところに集中しがちです。したがいまして、貨物輸送の問題で、特にきょうは客よりも貨物の方を中心にしてお聞きしたいんですが、国鉄の貨物合理化計画について概要を簡単に説明してください。
  87. 橋元雅司

    説明員(橋元雅司君) 今回の貨物改善計画は、一月の三十一日に発表さしていただきました。  実は、私ども現在推進中の経営改善計画におきましては六十年度で貨物駅数を約八百駅、ャードを百の体制にするということでやってまいったわけでございますが、先生御承知のようなここ数年の貨物の大変な落ち込み、これは経済の物離れとかあるいは軽薄短小というような傾向に見られるようないろいろなことがございますが、いずれにいたしましても、そういった輸送量、需要量の推移に見合ったいわば一種の需給調整をやるということで、五十七年、昨年の十一月のダイヤ改正の際に六十年度までの計画をすでに行ったわけでございます。しかし、どうも見通しとしてはなおやはり抜本的な改善を要するということで、これはかねてからいろいろ議論があったところでございますが、一日も早く鉄道の特性の発揮できる、特性と申しますのは大量、高速あるいは定時定型ということでございますが、その特性の発揮できる分野に重点化するということでやってまいろうということで、ヤードを使わない拠点間直行輸送に全面的にシステム転換するということを考えているわけでございます。これによりまして、百のャードは必要なくなる。約四百五十ばかりの駅間で高速の直行列車を仕立てて、これによって貨物をもう一回活性化しようということでございます。  いずれにいたしましても、百年使ってまいったャードを中心とする輸送システムを大変大きく転換するわけでございますので、物流体系全般について大きな影響を与えるわけでございますが、いま、来年の二月を予定しておりますダイヤ改正に向けまして、個々の荷主さん、その他いろいろな関係の向きと具体的な問題についてきめ細かく詰めておる最中でございます。
  88. 小柳勇

    ○小柳勇君 現在、一億一千万トン余り国鉄は分担しています。六十億トンの中の一億一千万、全くこれは残念です。したがいまして、これは総合交通体系の中で私はもっと鉄道が運搬できるようにしなければならぬ。そういうものを考えますと、いまおっしゃったように、直行貨物大量輸送だけにしておきますと、近い将来しまったという時期が来はしないかと思う。  特に、ここに新聞の切り抜きがたくさんありますのは、今度の貨物合理化計画によりまして、「物流大異変に当惑する産業界」、「転換むずかしい化成品輸送」、あるいは「代替手段なく頭抱える重電機業界」、「製錬所閉鎖へ追い込まれる?」、国鉄寄り工場配置ができないとか、アルコール醸造の会社が専用線がなくなりますとどうしようもない、これは閉鎖しなければならぬという陳情がたくさん出ている。だから、そういう大量直行輸送、そういうものだけで、ただ営利性、金もうけだけで日本国有鉄道の貨物輸送を考えることは私は間違いであると思う。  これだけの工場などが、鉄道がある、専用線を持っているから一生懸命に働いて生産を上げている、大事な医薬品、化学薬品などその他。そこにはまた、その地方の働く人たちの生活もかかっている。だから、単に赤字だから、国鉄の赤字の何割かが鉄道貨物だから、この貨物の途中のヤードを全部全廃して拠点間大量貨物輸送だけにしようという、そういう本当に小学校の計算のような短絡した発想でよろしいだろうか。  私は、総合交通政策の中で、後で運輸省自動車局長にも聞きますけれども、たとえば、いまの労働省の二七通達で運転員の労働条件を守ってやれば六割の輸送会社がいま倒産だと言われるほど労働者をむちゃくちゃ使って、あるいは白トラが横行してダンピングするから鉄道の貨物が流れていった。流れていったから、それに合わせるために鉄道の方をうんと削減する。そういうような後追いの、小学校の算術のような短絡した考え方の政策は私は本当に間違いではないか。もう五年、十年たったら明らかになるのじゃないかと思うんです。部分的なことはいろいろありますが、運輸大臣、どうでしょうか。大臣の見解を聞いておきたい。
  89. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 何さま、最近の経済情 勢というのは刻々と変化をして、とてもお互いの知恵でははかり切れないものがあるわけです。一つの総合交通体系でずっとシステマチックに縦割りにして片づくようなものじゃないところに計画の変更ということがずっと起こるわけでして、その辺上手な協調をどうとっていくかというのがいまからの大きな物流界の問題でもある。問題は、その間にこちらの方で知恵を出して工夫して、ニーズにこたえ、向こうの希望を先取りするというところにまたお互いの生きる道がある。これを経済界挙げていま自分自身でやっているわけであります。私の方は、国鉄、お互いの金で出しているところであるから多少はゆっくりしておった、そういうところにすきもあったのじゃないか。ここにおいてか、今度はみんなでニーズの先取りもするし、そしてまた懸命にやろうじゃないかという気分がこういう委員会の審議を通じて盛り上がってきておる、こう思っております。望みなきにあらず、その望みをひとつお互いで大きくしていく努力が国会の仕事じゃないだろうか、こう思っております。
  90. 小柳勇

    ○小柳勇君 貨物合理化の問題は、経営の赤字減らしという立場ではなくて、総合交通体系の中で国鉄総裁もひとつもう一回検討してもらいたいと思います。  それから、自動車局長がお急ぎのようですから、自動車局長意見を聞いておきたいが、この間もここで一日、貨物自動車の輸送秩序を守る集中審議いたしました。きのう通運業者及び通運関係労働者からの強い陳情がございました。私は、本当は通運が鉄道の貨物を集めないで自分で運搬するから鉄道貨物はこれで減ってしまったのだ、その方が優先的ではないかというようなことを考えないでもなかった。ところが、通運業者の皆さんが言うのは、そうじゃない、鉄道貨物をどんどん集めたいからヤードの縮小などをやってくれるなと、そういう本当の逆の陳情。したがって、国鉄当局と通運業者とがしょっちゅう話ししながら、短距離はそれは通運業者がみずから運んでいいが、長距離は鉄道ですよというようなことがいままでなぜ話し合いができなかったのかということ。それから、特に自家用自動車などの輸送秩序の確立、あるいは過積荷に対する取り締まり、そういうものに対して、この間も言いましたけれども、もう一回、この監理委員会法を論議するというその場で、自動車局長の見解、決意を聞いておきたいです。
  91. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 第一点の通運と国鉄との問題でございますが、これは御批判、御意見はいろいろあろうと思いますけれども、私ども通運事業者の事業のあり方、こういうものを数字的に見ました場合に、やはり通運は通運なりに国鉄の貨物を運ぶという努力をなさってきたと思います。大体、通運の国鉄のレールに載せた貨物の量というのは鉄道全体の貨物の量の六割前後を毎年運んでいたはずでございまして、特に国鉄で運ぶべき荷物をトラックの方にどんどん回していったというような状況ではないと思います。従来も通運の問題につきましては、国鉄と通運業者といろいろな機会をとらえて話をしてこられたはずでございますし、今回、先ほどもお話ございましたような国鉄の貨物輸送の合理化という大きな問題に通運業者もぶつかっているわけでございまして、そういうような状況に合わせて通運の体制をどう持っていくか、これは通運業者と国鉄とさらに真剣にいろいろな問題の話し合いをしていただきたいと思いますし、私ども行政の立場でその辺のお手伝いができるならば一生懸命努力してみたいと思っております。  それから、第二番目のトラックの輸送秩序の確立の問題でございますが、先ほど来いろいろとお話ございましたように、トラックの輸送に占める、物流体系の中に占める比率というのは飛躍的に上がってきております。したがいまして、そのトラック運送事業の中におけるいろいろな無秩序な問題、たとえば過労運転あるいは過積載、運賃のダンピング、こういうような輸送秩序の問題というのは非常に重要な問題だというふうに私ども認識しておりまして、お話ございましたように、過日の四月二十一日の当運輸委員会でトラック輸送に係る秩序確立の問題についての御決議がなされましたので、私どもとしてはこの御決議の趣旨にのっとりまして関係の行政機関ともよく協議いたしまして実現に向けて最大限の努力をしていきたい、さように考えております。
  92. 小柳勇

    ○小柳勇君 労働省から見えておりますから、その二七通達の実施状況なり、どうしたらもっとこのトラック業者あるいは交通労働者の労働条件が守れるか。  実は、この前いらっしゃったかどうかわかりませんから繰り返しますと、私が一昨年、ずっと西欧諸国のトラック輸送の実態を調査しましたときに、一番耳に残っておりますのは、ドイツの遠距離輸送協会の会長が、いろいろあるけれども、各交通機関の労働者の労働条件を均一にすることがその国の貨物の輸送の流れの秩序を守る一番大きな要素ですよとおっしゃった、そのことが一番耳にあります。  したがって、二七通達というもの、あるいは鉄道の貨物の運転士はちゃんと鉄道の基準で動いています。労働条件、それに水準が合った二七通達だと思う。したがって、それを守っていく。そのことによって貨物の流れが、おのおの特性によって貨物が秩序よく流れるわけです。なぜそういうことを言うかというと、御存じのように、いま県道、国道合わせて十七万キロしかございません。全体の車の数は四千五百万台、トラックだけで大体八百五十万台、いま朝晩、道路情報を知らなきゃ車の運転はできないような情勢です。これから五年いたしましたら、恐らくトラックの運転手さんは気ばかり焦ってスムーズに運転できぬのじゃないかという心配すらあるわけです。毎日、夕方になると道路情報をとらなきゃ運転できないような国というのはたくさんないわけです。  そういうものを考えますと、その二七通達を実施しながら各交通機関の労働者の労働条件を大体似通ったものに置くことによって運輸省の総合交通体系というものはそこから青写真ができるわけです。したがって、労働省としてはどういう決意でいままでやってこられたか。二・九通達が二七になりました。これからはさらに前進をしなきゃならぬ。われわれはこれを省令にしてもらいたいと思っている。これに対する見解を聞いておきたい。
  93. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) 労働省といたしましても、トラック運転者の労働条件、特に労働時間につきましては非常に問題がある業種の一つであるというふうに認識しているわけでございます。したがいまして、先生御承知のように、昭和五十四年に従来の基準を見直しまして新しい労働時間等の改善基準を策定してその周知徹底に努めているところでございます。  お尋ねのございましたその遵守状況でございますけれども、昨年、五十七年度上半期におきましてはトラック関係四千八百五十事業場を監督、指導いたしまして、その結果何らかの違背が認められた事業場というのは五四・六%ございます。ただ、前年の同期に比較いたしますと、若干ながら改善はされておりまして、三・九ポイントほど減になっているということでございます。  そういうことで、五十四年以来三年間新しい基準で周知徹底に努めてまいりましてある程度周知はされた、少しずつは改善されているというふうには思っておりますけれども、まだまだとうてい満足すべき状態ではないということで、今年度におきましてはもう少し掘り下げた実態把握に努めよう、それから労使の方からも直接御意見をお聞きしてどういう点に守れない原因があるのか、守れるためにはどうしたらいいのかというような点もお聞きいたしまして、その結果あるいは経営上の問題というのが出てまいるかと思いますけれども、そういった問題につきましては運輸省とも十分協議させていただきまして、さらに一層これが守られるように努力してまいりたい、そのように考えております。
  94. 小柳勇

    ○小柳勇君 貨物問題も、先般も集中審議やりま したから、たくさんありますけれども自動車局長、お急ぎのようですから退席してください。それから労働者も結構です。  それから、総合交通体系の中で最後はこれは監理委員会で、たとえば民営分割、いままでもずっと衆参の論議の中では、いや民営分割は直行ではないのだ、これからいろいろ経営形態を検討しながら民営分割もあるいはその他もあり得るのだ、いまのままいくかもわからぬというようなことですが、それならばローカル線の廃止はちょっと時期を待ったらどうか。これはこの間の公聴会でもそういう意見が出ました。したがって、余り地方交通線の廃止もちょっと待つ。特に、運輸省では地方交通対策協議会を持っておられるから、それで各県で県知事やあるいは市長さんを集めて十分に地方交通を論議した上で最終的に撤廃する、たとえば地域経済の差別、あるいは老若男女のマイカー運転できない者との差別などを考えて、この委員会が。きょうは、われわれが幾ら反対してもあるいは通過するやもわかりませんから、ちょっと待ったらどうかと思うが、鉄監局、いかがですか。
  95. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 基本的な国鉄再建対策につきましては監理委員会での検討結果を得て進めていきたい、こういうふうに思っております。  しかし、その結論が出るまでにはなお相当の期間が要ると思うわけでございますが、臨調答申でもそういう国鉄の危機的状況の中で抜本的な対策を講ずる、その検討の過程において現状できるだけ支収の悪化を防止し、経費の節減等に積極的に努めるべきだという考え方を示しておりますし、われわれも監理委員会等でいろいろ議論があるのと並行しながら、やはりこの国鉄赤字ローカル線問題というのは国鉄経営の一つの大きな柱でもございますし、地元の皆様方の意見を十分に聞きながら並行的に他の合理化施策とあわせてやはり進めさせていただきたい、かように思っております。
  96. 小柳勇

    ○小柳勇君 地域でもローカル線を余り廃止してくれるなという陳情がたくさんありますから、特に北部九州、北海道などはビルドの方を考えてくれないかという意見が非常に強いわけですから、この間の公聴会の報告にも出してありますから、鉄監局長、御存じですから十分考慮しておいてください。  それから国鉄総裁にお伺いしますが、昭和六十年まではいまの再建法が生きている。経営改善計画はお出しになりました。また、見直しもしなければならぬとおっしゃっていますが、当面、たとえばここ一年間ぐらい何を一体政府にやってもらいたいか。どうしたら世間に対しても余り非難がないように国鉄を運営できるのか。二年まだありますが、一年、当面何が一番緊急に総裁としては政府に希望され、あるいは国会に希望されますか、お聞きいたします。
  97. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 再建監理委員会がお取り組みになります問題は、分割あるいは民営化といった組織にかかわる問題と、それから私どもがいま取り組んでおりますいわゆる緊急十項目の実施状況をトレースする問題とございますが、それと並んで、あるいはそれ以上に重要な問題として過去債務の問題あるいは年金の問題あるいは大型プロジェクトに関する負担の問題といったようなことについて、現在国の財政が全体として非常に悪いわけでございますので、なかなか手がつかぬという状態の中でそれらをどう処理したらいいかという問題と、大別して三つあると思うのでございます。  第一の問題は、しばしば当委員会で御議論いただいておりますように、分割なり民営化なりの特にデメリットの問題を議論していただきたいと思っておりますし、二番目の問題についてはわれわれ最大限がんばってまいりたいと思いますが、第三の問題につきましては、実はこれまた相当緊急の事態になっておるわけでございまして、言ってみれば自転車操業的な状態で金利が金利を生むようなことになっておるものでございますから、これとのお取り組みをやはり政府にもお願いいたさなきゃなりませんが、監理委員会においてもその監理委員会の設置の期限の参ります六十二年というようなことでなしに、一日も早く取り上げてもらいたいということを熱望いたしておるわけでございます。
  98. 小柳勇

    ○小柳勇君 これは林審議官に聞いても、将来のことですから御答弁できるかどうかわかりませんが、たとえば累積赤字の問題についても、監理委員会の結論が出るのは大体われわれは三年ぐらいかかるだろうと考えているけれども、いま総裁から、その途中においても監理委員会考えていただきたいという意見がありましたが、監理委員会というのは途中でも、たとえばいま監理委員会ができたとすると、この暮れに政府にそういう答申を出すことができますか。累積赤字についてはこうしなさいと、そんなことを政府に言うようなことも考えておられますか。
  99. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 国鉄再建の基本的な方策については、やはりいろいろな要素というものが相互に非常に密接に絡んでいると思います。したがいまして、断片的に意見を総理に申し上げて実施をしていただくというのはなかなかこれはやはりむずかしかろうと思います。  長期債務の問題にしましても、現在五兆円強について棚上げをしているわけでございますが、これが二十数兆と額の面でも非常に大きな数字が出てくる。そうすると、やはり国家財政との面、あるいはさらには財源も含めての検討が必要になる、さらには効率的な経営形態という中身との関連もまた出てくるということで、いろいろ複雑に絡んでまいりますので、やはりその辺は総合的に結論を取りまとめて基本的な方策というものを御提言申し上げるという形にならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  100. 小柳勇

    ○小柳勇君 ちょっとはっきりわからないのだけれども、たとえば五十五年度までの棚上げの分五兆五百九十九億円が累積赤字としてあります。それから五十八年度の予算ベースを含めて繰越欠損四兆一千九百億。大体明らかなんです。これは、運輸大臣、もう御存じのように、監理委員会があろうがなかろうが大体明らかなんです。こういう問題の処理は現在の政府がお考えにならなきゃ、監理委員会が言わなきゃやらぬのですか。あるいは蹄理委員会の意見がなくとも、政府としては当然やっていかなきゃ国鉄運営はできませんでしょうに。これは、運輸大臣、どうでしょうか。
  101. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 現在、法案を審議いただいておりまして、国鉄再建監理委員会が設置されて、この経営形態の問題を含めてその全般にわたって抜本的な検討を行うという段階になりまして、やはりその大きな課題であります長期債務等あわせてやはりいろいろ基本的な議論をし、その方向を出すということが適切ではないか、こういうふうに考えております。
  102. 小柳勇

    ○小柳勇君 ちょっといまはっきりわからぬから、もう少しはっきり言ってちょうだい。
  103. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 要するに、現在の国鉄経営形態というのは非常に体質的にいろんな問題があって、やはり赤字がどうしても出ていくという体質であるわけです。したがって、経営形態を基本的にやはり考え直そうというのがこの監理委員会考え方だと思いますので、それとあわせてやはりいままでの債務についてどうするかということを議論していただくことが適当ではないかというふうに考えておるところでございます。
  104. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうしますと、これから三年検討して答申を書いて二年、五年ぐらいに政府に対する意見書が出るのだけれども、それまではもう手がつきません、国鉄に任しておいて傍観というんですか。さっきの話では、いや、それはそれで別です、法律があるんですから、再建法があるんですから政府としては並行して考えなければならぬとおっしゃったからいま質問しているんです。何もかにも国鉄の生んだ累積赤字は監理委員会に任せて、監理委員会がどう言うか。経営形態を変えなければ赤字は解消せぬと言うのか。いまのままでもという意見もあるんですから、はっきりわから ぬ。林審議官、どうですか。もう一回はっきり言ってください。
  105. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 御答弁の前に、先般から大分スケジュールの問題について先生から御指摘ございますけれども、その点について若干ちょっと御説明申し上げておきますと、この法律案では第十五条で昭和六十二年七月三十一日までにいわゆる再建のための体制を整備するということになっております。六十二年七月ということはいまから四年強ということになりますけれども、それまでの間に新しい仕組みのもとで効率的な経営体というものがスタートを切る、こういうことでございます。したがいまして、そのためには監理委員会はそれに相当先立って、これはこれから何年ということになるかはっきりわかりませんが、たとえばおおむね二年程度というような期間内に意見を取りまとめてこれを政府に提出する、政府の方はそれを受けて、もし法律改正が必要であれば必要な法律改正をやっていく。さらに新しい経営体というものを設立するのであれば、そのための準備も進めていかなければならぬ。それらを全部終了するのが昭和六十二年七月三十一日ということでありますので、監理委員会意見はそれに先立って相当前広に出さなければならない。かなり速いペースで作業が行われる、こういうことでございます。  それで、先ほどの御質問でございますけれども、先ほど申しましたように、やはり長期債務の問題、これは法律にもございますように、「効率的な経営形態の確立」、これを円滑に行うための前提という位置づけになっておりまして、やはり経営形態の問題、さらにはそれの前提としての長期債務の問題、これらは一連の密接に関連する問題としてこれを同時に案をつくり、意見を申し上げる、こういう形にならざるを得ないのではないか、こういうふうに考えております。
  106. 小柳勇

    ○小柳勇君 いま私が質問しているのは、監理委員会はそうやってあと五年間かかって仕事をやることはわかりますけれども、当面この一年間ぐらい何が一番問題ですかと総裁に聞いたわけ。そしたら、累積赤字などがやはり一番頭にあるわけです。これは当然公共企業体ですから、民営鉄道なら金を貸してやるとか補助するとか言えばいいわけですが、公共企業体として、いままで国会が決議をしながら再建法法律に乗って歩いているんですから国会も責任がありますし、政府も責任があるわけです、国鉄に対しては。したがって、その五十八年度予算ベースを含め四兆一千九百億円、この繰越欠損がいっぱい頭にあると思うんだ、総裁は。それはどうやって処置してやりますか。  それを言いますのは、たとえば、きょう国鉄職員のベースアップの委員会の考えなどが明らかになるかもわかりませんけれども、公共企業体の中のベースはそのままでもあるいはボーナスには差がつきますよなんということが、いまから街角に評判が流れているわけです。それは経営が苦しいからだということです、言うなら。国民にまでそれが通るわけだ。国鉄経営が苦しいのだからボーナスはそれは少しぐらい減るのがあたりまえじゃないかなんて、こう常識論が通りますね。  それは国鉄としては、政府の政策で新幹線もつくりました。青函トンネルも掘りました。本四架橋もやらなければなりません。それは国鉄だって、いままで民営であるなら赤字になるようなことはしませんです。将来が黒字になるなら投資しますけれども国鉄としては国策としてやってきている。そんなものが累積赤字になっているわけです。それは国が見ていかなければ、即それが今度は経営が悪いから職員のボーナスは下がるのがあたりまえだという国民の常識になって流れるようなことでは、それは間違いではないかと言いたいわけです。常識はいいです。常識は結構ですけれども国鉄は労使とも一生懸命やっている。その中で緊急十一項目出たから合理化もどんどん進めている。パスもなくなった、兼職も禁止された。緊急十一項目はどんどん進んでいるわけです。  そうすると、六十年までには大体そいつは完成するだろうとわれわれは見ている。そうしますなら、国策によって生じた構造的欠損というものは、当然とは言いませんが、国がちゃんとこれをめんどう見ていくことを私はやるべきだ。諸外国はやっています。先進諸国は一般会計の中から国鉄経営の赤字を毎年毎年補充しています。そして、一年一年で決算終わっています。  したがって、運輸大臣に、この問題の最後に、さっき三つばかり国鉄総裁言われました、この一年間の間気にかかっておりますと。それに対して運輸大臣としてはどう対策をお立てになりますか。
  107. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 国鉄総裁が申されたこと、御自分の方の問題として監理委員会お願いしたいという赤字の問題等々あるわけです。そしてまた、私たち全体としても国鉄というものをつぶすわけにはもちろんいきませんし、これをやっぱり能率的にやることによって国民の信用と負担を軽減させる、こういう大きな問題がありますから、ここまで御議論いただいて監理委員会が生まれた場合には、こういう御議論をその場によく上通させて、関係者は恐らく出席することですから、ょき結論を得るように、そして再建の方途が生まれるように私たちは期待しています。
  108. 小柳勇

    ○小柳勇君 時間が少ないので、鉄監局長に念を押してもう一回言っておきますけれども、私、この間も、少し極端だったですけれども国鉄の従業員の立場になりますと、特に運転とか、施設とか、営業などは窓口におりますからお客と接触いたしますけれども、お客に接触しない職員がたくさんおります。あるいは局にも計画者もおります。そういう諸君は、A駅から列車が定時に出て安全にB駅に定時に着きましたら大体百点の仕事をしているわけです。それで国有鉄道というものが動いている。  ただ、収益があるないは全般的なさっきの総合交通政策、貨物がどんどんトラックにとられて貨物が赤字になりました、こういうものは国鉄の大半の職員の直接の責任じゃないわけです。にもかかわらず、いま国民の常識としては、いや国鉄はあれだけ赤字だからというのと、その赤字は国鉄職員が働かぬからだ、あるいは一、二の悪い職員がおりますと新聞に出ます。それが直結して世間にとられるわけです。そうしますと、今度は給与はそれは平等だけれどもボーナスぐらいは少しは減るだろうというような非常に常識に流れるから、私は重ねて鉄監局長にこの場で言っておきたいわけです、それは重要な論議ですから。公共企業体として、公共的な輸送機関として、それに精いっぱい自分の労働をささげている者については、それは精いっぱいの給与を、世間並みの、公務員並みとか、あるいは民間並みとか、ちゃんと計算して出ますから、それは保障するのが当然ではないかと思いますが、いかがですか。
  109. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 給与の問題は、公共企業体でありますが、基本的には労使間の問題だと思います。ただ、先生がいまおっしゃいましたいろいろな労働者といいますか、働いている方々の実情というのは十分われわれも理解できますし、十分拝聴いたしまして今後に対応いたしたい、かように考えます。
  110. 小柳勇

    ○小柳勇君 答弁がうまいからはっきりわからぬのです、非常に言い回しが。  だから、私がただいま申し上げましたように、いま非常に苦しい経営にありますけれども、これは国鉄経営陣の計画の間違いもあると思いますが、もっと政府に強く、がんじがらめになっているこの規則をやっぱり政府に緩めるようにしなければならなかったけれども、その主張が足らなかったように思います。それは国鉄総裁以下幹部がここにたくさん見えていますから、一体となってやはり政府なり国会に、こうしてくれ、こうなったらもっとよくなるということをもっと強く言われてしかるべきだったと思いますけれども、監督官庁としての運輸省があるものですからじっとがまんしておられる面もあるんです。そういう面はやっぱり運輸省として勘案してもらわぬと困りま す。  そこで、最後は国鉄技術の国際協力の拡大強化。いま二十九カ国に対しまして日本の国鉄の技術が、専門家が行きましてその国の指導をしながら新線建設なりあるいは架設をやっているそうでございます。そういう国鉄技術を国際的にもう少し強化する、拡大する、こういうことに対しまして運輸省及び国鉄の見解を聞きたい。
  111. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 昨年、私はアフリカのザイールに行きました。ザイールには三百九十億円日本が経済援助をしております。そこへ見に行ったわけじゃありませんが、目的じゃなかったが、そういうことをやっておるというので現場まで行きました。そうすると、国鉄の幹部がその国に行って、まさに治安が悪い。朝に物を置けば盗まれる。盗んだ物を取ってくると、まただれかが持っていく。そういう中に苦労して、一方はなかなか政界も大変らしくて、賄賂がなければさっぱり動かない。そこで、自分たちは軟式庭球を始めて、ナンテイという言葉はそこからはやった。そして、ようやくこのプロジェクトをいまやっております。これはすばらしいプロジェクトで、大歓迎しております。  おとついでしたか、私のところへ、きょうあたり新聞に出ているアメリカの新幹線の社長が来ました、二、三人連れて。これは皆さんのところにも恐らく陳情に行っていると思います。日本から五十数名の技術者が来て、新幹線の設計、いろんなデータをつくっています。そのデータを英文にしないで日本語にしたのを持ってきました。自分の国で計算した、コンピューターではじいた数字と、ありとあらゆるおたくの方ではじいた数字はこのとおりぴしゃっと合う。いまアメリカでは鉄道は斜陽であるけれども、ロサンゼルスであり、サンチアゴであり、こういうところはずっと人間がふえるところで採算がとれます、大統領もその気ですという話で来ました。  いま新幹線に乗るとただの雑誌をくれます。「グッデイ」、あれを見ますというと、いま先生のおっしゃった二十九カ国に日本の国鉄が技術援助している実態が書いてあります。そういうところにまた調査費を出している日本国内の団体もあります。  そういうことからしますというと、私はこれだけの新幹線を築いた日本、そして人身事故がないということ、もう一つは先日の青函トンネルのようなものを築いた技術、これは宝ですから、どこかで腰を突かしたら宝というものはだめになりますから、こういうものをやはり、よく日本の摩擦、経済摩擦が言われますが、これは軍事進出でも何でもありません。向こうの民生を拡張して、向こうの雇用を創出する数字にまで出てきていますから、こういうものはいまから先技術協力として、本当にいま国内でいろんなことでグルーミーになっている国鉄の従業員に元気をつける最大の贈り物じゃなかろうか。予算かれこれでも私もがんばりますが、どうぞひとつ、御理解ある皆さん方、いわんや国鉄の先輩である皆さん方はぜひひとつ御声援のほどをお願いします。
  112. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 最近、ここ数年でございますが、私どもの技術職員が海外に参りまして、それぞれの国の要請に応じてお手伝いをする仕事のボリューム、それは人数と日数を掛け合わしたようなもので見ますと、毎年倍々の割合でどんどんふえるというようなことでございまして、世界各国からの日本への要請はきわめて急激に拡大をいたしつつございます。  私どもも、しかしそういうことのお手伝いをできる技術屋さんというのはそう大ぜいいるわけではないわけでございまして、海外に行く場合に、国内で仕事をします場合のようにそれぞれ専門専門だけがわかっておってもうまくいかないという点がありまして、かなり幅広く鉄道技術の問題がわかる人でないとなかなかお役に立たぬということがありまして、率直に言いまして、海外からの派遣要請になかなかこたえ切れないという状態でございます。  一方、海外からの研修のために来る人たちの数もだんだんとふえてきておるわけでございまして、いろいろ困難はありますが、こうした世界の情勢に対応して日本の鉄道技術を世界の人々に知っていただくということはきわめて意義のあることであると思いますので、大いに力を入れておるところでございます。  ただ、いまの段階は大部分が調査研究といいますか、そういう段階にありまして、現実にいろいろな、たとえば土木工事につながるような仕事というのはアルゼンチン等ではやっておりますけれども、まだそう一般的にはなっておりませんで、いま大臣が触れられましたアメリカの鉄道の問題というのが規模も大きゅうございますし、現実性も非常に強いということで、いま私ども一番それに当面力を入れて協力を進めてまいりたいと思っております。
  113. 小柳勇

    ○小柳勇君 時間が参りましたから、運輸省並びに国鉄に要望だけ二点。  一つは、監理委員会設置にわれわれは反対であります。それはいままで言ってきたとおり、屋上屋で、国鉄の本当に専門家の国鉄の幹部諸君がおられる、また運輸省に専門家がおられる、またこの衆参の運輸委員会の諸君、それが十年も論議して問題は明らかになっているんですから それを政府運輸省が中心になって監理委員会が論議されるのを待つまでもなく、とにかくどんどん国鉄再建の方向で具体的に施策を立てていただきたい、これが第一であります。  それから、国鉄の幹部の皆さんには、労使問題がことさらに新聞で喧伝されて、そのことが国鉄の赤字の原因であるし、再建を阻害しているという直結した国民の感情があります。われわれも労働組合の諸君には事あるごとに、いま世間の批判が非常に厳しいから自重して、国鉄再建がまず先決であるということは口を酸っぱくして言っております。したがって、労使関係を早急に新聞で騒がれないような方向で収拾してもらって、みずからの責任で国鉄再建をしていただく。そして、言いたいことをもう少し政府にも自民党にもわれわれにもどんどん言っていただいて、こうせいと、それを言っていただいて、そして一日も早く日本の経済発展の動脈ですから、これを民営分割するようなことは絶対ありませんで、公共性を十分にひとつ持って、そしてがんばっていただくように要望いたしまして、質問を終わります。
  114. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  115. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、慶應義塾大学教授加藤寛君を参考人として御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  加藤参考人におかれましては、はなはだ突然出席の御依頼を申し上げましたところ、早速御快諾くださり、また本日は御多忙中にもかかわりませず御出席を賜り、まことにありがとうございます。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  116. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 早速、質問に入りたいと思いますが、時間の制約がございますので余り細かい問題にまで触れることはできないかと思いますが、とりあえず冒頭に申し上げたいのは、この臨調答申というのが政府の責任回避の道具、隠れみのになっている。いままでの衆議院の審議、それから参議院の審議を通じまして、何かというと臨調答申を尊重するということです。それからむずかしい問題になりますと、監理委員会の方で十分に御検討願う、これだけなんです。いままでの議事録の内容を精査すると、そういう言葉がどのくらいあるかわかりません。そして、具体的な内容に入ってまいりますと、全部こういう隠れみのでもって逃げられてしまう。したがって、この法案の出どころである臨調答申のいろいろな問題についてわれわれが聞こうといたしましてもわからない、率直に言って。なぜこういう答申が出たのか、その答申のねらいとするところは何なのかかいもくわからない。かいもくわからないまま採決しようじゃないかというところまで来てしまった。きわめて私は残念だと思うんです。  しかし、そんな繰り言を言っておりましても始まりませんので、この答申の問題点について端的に質問いたしたいと思うのでありますが、この答申の骨子というのは七ブロック程度に分割をして民営にしようということが答申の骨子である、柱である、こういうふうに私は思うんです。ところが、いままでの論議の中では、分割民営についての政府側の答弁というのは必ずしも分割民営ということを強調しないんです。これよりもっといい方法があればそっちの方をやってもいいのだというふうな言い方なんです。だから、そこでその骨子は分割民営、七ブロック程度ということに間違いがないのかどうか、その理由としてはどういうことなのかということを冒頭にお伺いしたいと思うんです。
  117. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) きょうは、こういう審議の機会を、私どものやりました答申につきまして御検討いただくということで大変ありがたいことだと思っております。  端的にお答えをさせていただきますが、政府が必ずしも分割民営化について明確でないというような御意見だったと思いますが、私自身は政府がどういう考え方でいまこれを進めているかということについてはつまびらかにしておりません。ただ、私が思いますことは、臨調答申といたしましては、七ブロック程度に分割民営化を行うというこの姿勢は、基本的姿勢といたしましてぜひ貫いてほしい、こういうふうに考えております。  したがって、どうしてそれでは七ブロック程度の分割民営化という考え方が出たかということになりますが、これにつきましての理由は、第一に、まず国鉄という一つの公社が新しい時代の変化に対応することができなかったということであります。この場合の新しい時代の変化とは何かと申しますと、それは急速な需要の変化ということがございますが、それ以外に高齢化社会の急速な進展あるいは物量社会から質的な社会への転換、こういうようなことが急激な変化としてあらわれております。それに対応することができなかったところに国鉄の大きな問題があると私どもは指摘しておりまして、その問題点は何かといえば、それは公社という制度そのものにあります。したがって、その公社、公共企業体という制度をやはりつくってきたことは当初においては成功したかもしれないけれども、現在においては不十分な状況に立ち至っている。このようなことをもし根本的に改めるとすれば、それは当事者能力というものを十分に考え、そして官業と民業とのあり方をよく考える、そういう仕組みにしなければならないということになります。  したがって、私どもは民営化という言葉を使ったわけでありますが、この民営化という言葉は、いろいろな事情もございますから急激にできないというような場合があったとすれば、それは当然暫定的な措置といたしまして私どもは幾つかの手段を考えなければならぬと思いますが、しかしながら、民営化という方向については、これは現在の国鉄を立て直す最善の方法であると考えております。  そしてまた、分割という問題につきましても、地域との密着した、そういう地域のニーズにこたえていくためにはきわめてそれは適切な方法であるというふうに考えております。詳しいことをさらに申し上げる必要があれば申し上げますが、一応、方針といたしましてはそういう考えであるということでございます。  また、七ブロック程度ということにつきましては、これは私どもといたしましては、現在の国鉄の仕組みから申しまして、総局とかあるいは地方の各理事がおりますが、こうしたことから考えると七分割というのは大体一つの考えられる線であろうかというような考え方で七ブロック程度という言葉を使っている、こういうことでございます。  以上でございます。
  118. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 やはり私は、国鉄経営形態を考える以上は、国鉄が利用者である国民のニーズにこたえられるようでなければいかぬだろうと思うんです。民業とか官業とかいう前に、輸送需要に対応できるということが必要だろうと思う。  ところが、輸送需要に対応できるのかどうかという具体的な問題になりまして、じゃ七ブロックということになると、北海道、九州、四国、本州、本州をどうやって分割するかは別として、そんなような分け方になるだろうというふうにだれしもが常識的には思う。じゃ具体的に北海道の場合はどうなんだというと、この間北海道と九州でもって地方公聴会をやりましたけれども、北海道のそれぞれの地域では賛成、反対二人ずつ公述人が出ました。そして、それぞれの意見を述べてもらったのでありますが、北海道の場合を例に挙げますと、賛成者も、原則としては賛成なんだけれども、しかし北海道を分けて北海道だけでやっていくことはできない、こういうようなことを言っているんです。だから、私は言ったんです。原則には賛成だけれども、おれのところだけ別にしてくれ、そんなわけにはいかない、こう言ったんですが、そういうふうな意見が出ておりました。  いままでの審議の中でも、営業係数から言うと三百幾つだ、そうすると北海道を独立させてやっていくためには人間を減らしてでも運賃は三倍以上にしないというとやっていけない計算になるじゃないか、こういう指摘がございました。その人の指摘に対して運輸大臣ははっきりした答弁していないんです。体をかわしちゃっているわけです。隣にいらっしゃるからあえて私、言います。うそじゃないんです。体をかわしちゃっている。これはまことに答申に対する自信のなさのあらわれだと私は思ったんです。  参考人自身の御意見は、そうすると北海道、九州、四国、こういったようなところは、具体的に言いますと、分けるということは地域運賃というものを別に設けても仕方がない、こういう前提にお立ちになるのか、あるいはまた政府の補助というものを特別に考えてもらうということになるのか、その点はどうなりますか。
  119. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) いまの御意見につきまして、よく世上に誤解がございますので、そのことをまずちょっと申し上げておかなければなりませんが、北海道、四国、九州を分離独立させるという考え方は、これはそういういわゆる赤字になって仕方がないというところを切り捨てるのではないか、あるいは見捨てるのではないか、こういうような意見がありますけれども、私ども考え方はそうではなくて、むしろこうした地域でどうすれば黒字になれるのか、あるいは赤字の幅を大きく減らすことができるのかということに私どもの焦点があります。つまり赤字になっているところをまずきちんと見詰めて、その見詰めたことによってそこから対応策をつくり出す、こういうことが必要である。こう考えて、むしろ見捨てるのではなくてその地域を重視しているために私どもはかえってそういう考え方を出した、こういうことでございます。  さて、そうなりますと、それではそれぞれの地域、赤字が大きいのに、収支係数から見てもひどいのにとてもできないではないか、こういう御意見があり得ると思いますが、実は私ども考え方は、分割民営化をすることによって政府の助成金、それからまたそれぞれの財産の分割という、そういうようなことを通じまして全体としてそれぞれの地域が同じような収支係数で出発をすることができる、そういうスタートラインをつくっていきたい。こういうふうになりますと、赤字になるか黒字になるかは、それはそれぞれの地域の努力になり、その地域の努力によって一種の競争が 出現いたしますから、それによってむしろ大きくそれぞれの企業の効率化が図られていく、こういう考え方に立っています。  したがって、運賃について大きく上げるのかという御意見がございましたが、これはそれぞれの企業状態を見た上で考えなければなりませんし、またそれぞれの地域に応じた経営の効率の仕方があり得るだろう、こういうような判断で考えているわけでございます。  それから、さらに需要の問題でございますけれども、これは官業か民業かを考える前にというふうにおっしゃったわけでございますが、私もその点については同感でございます。一つの事業というものをやりますときに、官業と民業というものはどちらでもよろしいのでありまして、最も最適なふうに持っていくことがこれが公共的な物の考え方でございます。したがって、社会的な需要というものに、どういう姿勢で、どの地域はどういうふうな経営形態でいくのが望ましいかというふうにそれぞれの工夫をしながらやっていくことにこの分割民営化の大きなメリットがある、こういうふうに考えております。
  120. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 企業状態に応じて努力をすれば採算が合うようになるかもしれない、こういう御意見でございますが、国鉄を全国的に見ますと、採算が合うところは関東とか関西とか、こういういわば人口の密集地帯です。それ以外の過疎地帯は明治以来ずっと赤字なんです。私鉄がそういうところに出てないということは、私鉄はもうからないからこの過疎地帯には行かないわけです。もうかれば、北海道だろうと四国だろうと、これは飛び込んでいって一生懸命稼ぎまくるだろうと思う。それをやってないということは、いかに過疎地帯ではどう工面してももうからないから行かないのだというふうに理解をする以外にないんです。  特に、北海道の例を挙げますと、北海道の人口は五百万です。面積が七万八千平方キロ。私のところは埼玉県なんですけれども、埼玉県の面積の二十倍で、人口が同じなんです。しかも、そのうち百四十万以上は札幌に住んでいる。だから、あとは田舎の方へ参りますと、走っても走っても人影が見つからない、こういうところになるわけです。これは赤字になるのはあたりまえだと思うんです。だれがどう工面してみても、この地域でもって黒字経営にするということはできない。ということは、総裁自体がこの問題についての具体的な質問に対して答えている、これはとてもやっていけませんということを。本職がそうやってそろばんをはじいている。やってみたけれども、とてもできませんでした。  だから、抽象論として何とかやっていけば、工夫すれば黒字になるだろうというのは、現実の問題としては当てはまらないと思うんです。その点まで臨調の中で検討し、御議論になっているのかどうか、その点もお伺いしたいと思う。
  121. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) ただいまのことに対しまして、私は必ずしも同じ考え方ではございません。  と申しますのは、一つの企業がプラスになるかマイナスになるか、これは現在の企業制度をそのままにしておいて考える場合と、それから企業の体制を変えていく場合とでは、当然違わなければなりません。もし国鉄総裁現状ではとてもだめです、こう言われたとすれば、それはあくまでも現体制のもとではという条件がついているはずでございます。つまり現体制のもとでは赤字を減らすことができませんでも、たとえば分割民営化をいたしまして、それぞれの地域の要望にこたえていけばプラスになり得るということは幾つかの例の中にすでにあらわれております。そうした例は、まだ全国からいきますと非常に小さいものでございますけれども、しかしそれぞれの地域でもって努力をすれば大いに効果を上げ得るという可能性があるということは、すでにそうした小さな例が示しているのでございます。  そしてまた、同時に、私どもといたしましては、そうした分割民営化をしていくことは、いまの国鉄とは違って新しいまた一つの仕事を発見することもあり得る。そうしたようなことがプラスされてまいりますと、全部黒字にすることはできなくても赤字幅を大きく減らすことは可能である。しかし、どうしても国鉄が赤字が出て、そしてどうしてもそれは国民的な一つの必要として残っているものであるとするならば、それは国民も政府が助成をすることに対して決してそれを拒絶しないであろう。こういう努力を示さなければ、私は国民の支持を得るような鉄道にはなり得ないというのが私ども考えであります。
  122. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 北海道なんかの場合は、人件費ゼロにした、つまり職員がただ働きしたって黒字にならぬ、こういう数字が出ているくらいです。だから、そういう数字が出ているのは、民業、官業の問題じゃないと思う。住んでいる人間が少ないところでは交通業というのは成り立たないわけです。たとえば人里離れた山の中にデパートをこさえて、スーパーをこさえて、そして黒字経営をやってみろといったってこれはできないことなんです。それと同じ理屈が地域では言えるというふうに私は思うんです。東北にしたところで、あるいは裏日本にしたところで人口が少ない。私らが現に列車に乗ってみてわかるんです。一列車の中に三人か五人しか人が乗ってない、閑古鳥が鳴くようだ、こういう状態の中で無人駅にしようと何にしようとこれはどうにもならぬということがわかります。  そこで、そういう問題について努力すれば何とかなるだろう、こういうのは、これは戦時中の私ははしなくも戦陣訓というのを思い出したんですけれども、がんばれば何とかなるのだというふうに偉い人から言われてやってみたけれども何ともならなかったわけです。そこで、これらの問題について抽象論でもってやりとりしておりますと、これは時間を食うばっかりです。それで、特に北海道や四国や九州や、それからの問題については現実に私は試算をしてもらえば明らかになってくると思います。  そういうことは後日に譲りますけれども、この答申の中で累積赤字の問題についてもっと具体的に示してなきゃいかぬと思われる点が多いと思うんです。それは私自身の意見じゃなくて、地方公聴会でも言われたんです。肝心かなめの根本問題の究明がなされてないじゃないかと言われているんです。確かに、ここにはいろいろなことが書いてあります。抽象論としてはいろいろなことが書いてありますけれども、この累積赤字の最たるものは借入金で、つまり借金でもって採算に合わない投資をじゃんじゃんやってきた。たちまち兆の単位になる。  具体的な例を挙げますと、青函トンネルだってそうでしょう。ああいう世界一のトンネルをつくるのに莫大な投資が行われている。しかも、でき上がるまでは役に立たない。でき上がってからだって採算に合わない。こういうことを国鉄は政治的な圧力でもってやらされてきた。  したがって、これらの累積赤字の原因というものを、もっとずばりと指摘をしなきゃならない。歴代内閣の責任というものは、そこに明確になってこなきゃならない。これは何となく累積赤字がふくれ上がったわけじゃない。畑の草とわけが違う。それ相応の理由があって累積赤字がたまったわけですから、その一番大きな根本原因についてどうしてメスがはっきりと入れられないのだろうか。これは政府の責任を追及することになるので、そこのところはわざと避けているのじゃないか、こういうふうに見ざるを得なくなるんです。なぜそこのところをもっと的確に指摘をしていないのか。これはこの臨調答申の中で欠けている最たるものだという感じがいたしますので、その点をお伺いしたいと思うんです。
  123. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) いまの問題につきましては、私はいささかちょっとびっくりいたしましたが、この臨調答申を出しましてからいろいろな批判もございました。そうした中で、分割民営化については賛成できないけれども国鉄の赤字の体質、責任の問題については非常に明確にしてきたという批判が、むしろ批判というか論評が多か った。したがって、私はむしろそちらの方はそうではないのではないかというふうに思っておりまして、いまの御質問の意味がちょっと私にわかりかねるのでございますが、少なくとも現在の国鉄がこのような状態に陥ったのは、御承知のように、この臨調答申にも指摘してございますけれども、急速なモータリゼーションの問題、それから国会、政府の関与、住民エゴの問題、そしてそこから出てくる労使関係の乱れの問題、こういったものと、さらにいま非常にいいことを御指摘いただきましたが、利用負担の問題、こういうようなことが重なっているわけでございます。  したがって、国鉄についてだれに責任があるか、こういうふうになりますと、それは私どもから言わせれば、結局だれに責任があるかと探しているだけで問題の解決にならない。むしろ、そうした状態をなぜ国鉄が生んだかというところに問題があるわけでありまして、たとえば過大な設備投資をなぜしたのか。それについて、当然国鉄は国有鉄道ではないのだからそれは絶対に認められないと言ってはねつけるだけのもし力があれば企業として成り立ったはずであります。それができない。そのできないところに国鉄の持っている公社としての限界があります。その限界を直すべきだと私たちは主張しているのでございますから、その意味においては国鉄の赤字体質の抜本的な問題に手を入れた、こういうことになるのではないかと思っております。
  124. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 十何兆というちょっとけた外れの累積赤字、この中にも、「累積債務に対する巨額な利子負担」というのが書いてあります。私は、ここに書いてあること全部にけちをつけるつもりはございません。中には、長期債務や共済年金等の諸問題は解決をしておく必要があるのだということを指摘しております。これは当然のことです。結構なことです。しかし、累積赤字の大部分はだれがつくったかというと、これはいままで政府が予算を編成し、国会にかけ、時とすれば強行採決をやってまで野党の反対を押し切って強引に通してきたわけです。これが重なり重なって十何兆になっちゃったわけです。つまり借金でもって採算のとれない投資をするということがどんなに恐ろしいことかということは、よく国鉄のいままでの財政状態にあらわれていると思うのです。そこのところを私はもっとずばりと指摘をすべきだ。もちろん、たくさん書いてあるから、その書いてあることの中に触れているのだと言われればそれっきりです。だから、私は全然書いてないのだと言わないけれども、たくさん列挙してあって、そしてその中に本当はそういう意味も込めていると言われると、そうかもしれません。  しかし、この 一番大きな原因は何かというと、歴代の政府がこれだけの投資をやってきた、採算の合わない投資を借金でやってきたというところに原因があるのじゃないかということを指摘しないわけにいきません。たとえば俗な言葉で言いますと、サラ金から銭を借りて庭木を手入れしたり、お祭りの寄附でもっていい顔をしていれば、やがてはどんなことになるかということは借りた瞬間からわかっているんです、そんなことは。そうでしょう。ところが、国鉄も同じことをやってきているんです。借入金でもって、借金でもって投資をする。それはいままでの投資の中には東海道新幹線みたいにもうかったところもあるかもしれない。しかし、そうでないところが大部分です。特に、鉄建公団にやらした上越新幹線あるいはまた青函トンネルは、赤字の種を現実にまいています。こういう問題をほうっておいて、細かなことを言ってみたところで、これは赤字の根本問題に触れることにはならないのじゃないのかということを言いたいんです。その点、それは若干の見解の食い違いがございますし、わずかの時間でやりとりしてみてもどうにもなりませんけれども、その点が十分じゃないということは私も指摘をしたいし、また地方公聴会でもそういう指摘があったのだということなんでありますから、これは不十分な点として私の方では指摘せざるを得ないんです。その点はどうですか。
  125. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 不十分という点について、私もちょっとどういうふうにお答えしていいかわかりませんが、歴代内閣が全く責任がなかったということには私はならないと思います。同時に、また国民に責任がなかったとは言えません。それは、たとえば歴代内閣に対してこういうものをつくれ、ああいうものをつくれという要求はやっぱり国民の声として出ております。したがって、国民にも一つの地域的な要求からくる責任もあります。それからまた、それを受けたいろいろな政治の動きも否定することはできないと思います。あるいはさらに、国鉄当局がそれを、そんなことは無理だ、青函トンネルなどはつくれるかというようなことまでもはっきり言い得なかった、そこら辺にやはり責任があります。  したがって、どこに一番大きな責任があるかと言えば、それは国鉄企業として自主的な判断をしていくような仕組みにしてなかったというところに最大の問題がある、こういうふうに申し上げたのでございまして、叙述の仕方において若干並列的になりますが、これはしばしば私どもも官庁文書というのはそういうものがあるなということを感じないわけではございません。ただ、これがそうだというわけではございませんが、そういうようなことがございますから、私といたしましては一生懸命とにかく言うべきことは言ったのじゃないか、こういうふうに理解をしているわけでございます。
  126. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄に当事者能力がないという点については私も同感です。この間の委員会でも私は言ったんです。総裁を前に置いて、失礼な話だけれども雇われマダムと同じじゃないかと言ったら、総裁自身が全くそのとおりです、雇われマダムと同じだと自認されたんです。こういうふうに総裁を雇われマダムと同じ状態にしているということは、実権を握っている人がいるということです、バックに。だれが財布のひもを握っているのか。大蔵省が握っておいて、そして運輸省は予算の編成をするけれども、具体的な問題については何か事があれば総裁を矢面に立てて防波堤にしてきたわけです。この点では私は、いまの中曽根総理大臣を含めて歴代の運輸大臣に、こうなることを承知しながらこのような予算を毎年毎年繰り返して組んできたということの責任を痛感してもらわなきゃならぬ。また、臨調答申でもそのことをもっと手厳しく追及してもらわなきゃいかぬ、こういう気がするんです。それはその答申の中に、確かに「国会及び政府の過度の関与」、こういうふうに書いてあります。いまおっしゃるように国民も悪いのだ、こう言ってしまえば実もふたもなくなっちまうんです。国民も悪いんだと言ったところで、国民は何も借金でもって青函トンネルをつくってくれとか、あるいは上越新幹線をつくってくれとか言っているわけじゃないんです。  しかし、そこで、これらの問題に触れましたから、私は借金政策の一つとして、たとえば鉄建公団の問題を挙げてみたいと思う。この鉄建公団は、言ってみればサラ金とそれから国鉄お抱えの土建屋と二つ兼ね備えているんです。せっせとトンネルをこさえる、これは技術的にはりっぱなものだと思います。しかし、たとえば上越新幹線は使用料を国鉄に払わせるようになっています。千何百億からの使用料を払わせることになっている。これは世話ないんですね、どんなに金がかかろうとも自分がしょうわけじゃないんですから。そういう鉄建公団そのものの存在、そういう機関にどんどんつくらせるという仕組み、それを断ることができない。青函トンネルなんというのは、八百億の金を毎年払えと言われたら、これは企業性を優先的に考えろというのなら拒否権を与えなければいかぬ、本来ならば。拒否権はないわけでしょう。したがって、こういうような仕組みでもって設備投資を続けていくといういまのやり方そのものにやはり問題があるというふうにお考えになりませんか。
  127. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 大変私も同感の御意見でございます。  国鉄といたしましては、私はそういう拒否でき る仕組みをつくることに大切なことがあるのであって、それをいままでの公共企業体であった国鉄は断ることができないというところに問題があるのだ、こういうのが私たちの指摘であります。  同時にまた、いまおっしゃいましたように、国民がいろいろと要望することにも私は責任があると申しましたが、国民からすれば、それはどんなに赤字であろうとも、当然過疎な人々のために必要なものであるから国はどんな赤字の負担をしてもやるべきであるという考え方が基本にあるために、国鉄自身が身動きがとれなくなるという事態に立ち至りました。  鉄建公団につきましては、私もあの鉄建公団ができますときに、むしろ、国鉄が全部建設費を引き受けてやっているのだから無理だから、そういうものは独立してどのくらいの赤字になるかを明確にすべきだという考え方を個人的に主張したことがございます。しかし、現在になってみますと、やはり鉄建公団はそうした意味においては赤字をかえって累増させました。そこで、私どもといたしましては、鉄建公団について特殊法人の一つとしてこれは整理しなければならないと考えています。  できました青函トンネルにつきましては、これは現在運輸省もその重大性に気がつきまして、何とかしてこれにはうまい利用の仕方を考えなければならないということで、青函トンネルの利用のための懇談会を開いて研究しているところでございますから、私はそうした国民の知恵を出して、とにかくやってしまったことはこれはやむを得ないことでありますから、それをいかにして国民の知恵を使っていまここで解決すべきかというところに来ているのではないか。  国民も、歴代内閣の問題とか、あるいはそれぞれの政治的問題とか、あるいは国民自身のエゴといった問題につきましては、これはみずからもそれぞれ一部の責任はあるということを知っております。そこでこそ、かえって国民としては、いまはもうそういった責任のことを論ずるのではなくて、いかにして国鉄を次の時代にふさわしい鉄道にするために直していくかというところに大きな目的が来ているのではないか、こういうふうに私は考えております。
  128. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 地域住民の問題についてもいま触れられました。赤字線の地域の諸君が、おれのところの鉄道をやめてもらっては困るとか、もっと本数をふやしてくれとか、これだってやっぱり地域住民の貴重な声なんです。赤字線だけじゃありません。たとえば私のところは黒字線なんです、埼玉県を走っている高崎線というのは。黒字線だけれども、ところが住民のニーズにこたえてない。一時間に一本しか走ってない。これはひどいじゃないかという住民の声が出てくるのはあたりまえなんです。東海道線と比較をして、何でこんな不便な思いをしなければならないのか。これは地域住民の過大な要求というふうに言えるでしょうか。私は、こんなのはちっとも過大な要求じゃないと思います。こういうのはあたりまえの要求だと思う。おれらのところも同じ首都圏の中で東京から同じ距離にあるのだから、電車区間のところは電車区間並みに走らせてくれてもいいじゃないか、こういう要求が出てくるのはあたりまえです。ところが、そういう要求が出ても、国鉄の方は人減らしをしなければならないから、合理化をしなければならないからがまんしてくれということでもって住民の声をシャットアウトしちゃった、こういう現実があるんです。  そこで、さらに具体的な問題についても触れたいと思いますけれども、「地方交通線についても、私鉄への譲渡、第三セクター化、民営化等を積極的に行う。」、こういうふうに書かれてあります。しかし、私鉄への譲渡といっても引き受ける私鉄があればいいけれども、大体において地方交通線なんというのは採算に合わないところが多いわけです。それから地方自治体も、これ以上は負担できませんというところが多いわけです。そういうところで引き受け手がなかったならば、そういう地域のその地方交通線というのはどういうことになるのか。がまんしてもらって線路を外してもらう、あきらめてもらうという以外になくなってしまうのか。この答申どおりにいけばそういうことになってしまう。条件があります。第三セクターといったような、あるいは私鉄譲渡といったような条件がありますけれども、そういう条件がかなえられない場合にはどうなるのかということもあわせてお伺いしたいと思います。
  129. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) いまのお考えでございますが、若干私どもはそれに対しましては違った考え方がございます。  それは地域の住民が、赤字になった場合にこれを何とかして削っていきたいということを国鉄側が申しましても、なかなかそれに対して賛成はしてくれないということはあり得ると思います。私は、そうした場合に一番大切なことは、一つの赤字路線というものに国民全体がそれを支持するような気持ちを持つかどうかというところに一つのポイントがございます。もし国民が多少自分たちは黒字だからその黒字を使って負担をしたっていいのだ、こういう考え方になったときには地域のローカル線が赤字だからといってすべてこれをなくしてしまえということを私どもは結論として持っておりません。国鉄といたしましては、いままでの経営改善計画がございまして、四千人未満のところはこれはやらなければならぬというような考え方で整理ということが出ておりますが、そうしたものについてある程度やはり私どもとしても認めざるを得ないものもあるかもしれない。しかし、全体として考えるべきことは、やはりローカル線というものについて本当に必要であるかどうかということを検討することが必要なんです。そうしたことを通じて、もしどうしても必要であるということになってくればそれは政府の助成をすることを認めるのだ、これが私ども考えでございまして、すべてにおいて民間に移してしまえと言っているわけではございません。  特に、民営化という言葉について、これは私個人の解釈も入っているかもしれませんけれども、民間化と私どもは申しませんでした。それは民営化という意味を強く言っておりますのは、民間経営と同じような仕事のできる仕組みにしなければならない、これが民営化ということの一番基本的な考え方でございます。そのような考え方で私どもは貫いておりますので、地方の赤字ローカル線の場合でも、もし努力によっては赤字幅を減らし、その残った赤字について国民の合意が得られるならばそれを助成することにおいては決してやぶさかではない。しかし、それをまた甘えて、赤字になっても構わないのだということになってどんどん赤字をふやしていくようなことがあればこれはよろしくありませんから、その助成については期限を限りながらやっていかなければならない、こういう考え方を貫いております。
  130. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 地方の赤字ローカル線なんというのは、いまは合理化合理化を重ねて大概無人駅になっちゃっているんです。運輸大臣は一生懸命やっているなという姿が見えればいいというふうに言っておりますが、その姿を見ようといったって、無人駅なんですからだれもいやしません。また、無人駅ではこれ以上人を減らしようがないわけです。そういうところを一体どうやって合理化するのか、こういう問題が出てきます。それから、そういうところでもこういう場合には何とかやればやっていけそうだというお話がございました。  ここで私は、これは一九八二年五月、去年の朝日に出ておったことなんですが、「分割会社に対する助成額は年間約五〇〇〇億円、長期債務についての利子負担約九〇〇〇億円、青函トンネルと本四連絡鉄道を合わせ赤字約一〇〇〇億円、これらを合計すると、一般会計からの持ち出しは年間二兆円を越え、五七年度予算の国鉄助成額七三〇〇億円の三倍程度になると大蔵省はみている。」、こう言うんです。つまり、どうしてもやらざるを得ないような助成をこの答申に基づいてやっていくというと、いままでの国鉄に対する助成よりはるかにオーバーしたものになる。いまのお話のよう に、赤字ローカル線でも何とか補助してやっていくということでもって補助をやっていけば、その数字はいままでよりもはるかに大きなものになってくるのではないかというふうに予想されますが、それは仕方がないというふうにお考えになるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  131. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) そういった事情については、さらにその需要の問題とかあるいはコストの問題とか、こういうことについての細かい検討はなく、ただ現状においてどうなっていくかということで計算をいたしますからそうなりますが、しかしながら、このような変化がいま起こることを考えました場合にはもう少し違った状況が生まれるかもしれません。私どもといたしましては、当面おっしゃるようなことになるかもしれない、しかしながらこれは必ず将来は立ち直っていくという見通しを持った明るい意味での負担でございますから、国民としても納得しやすいのではないか。ところが、幾ら国民がそれを援助して国鉄を助けてみてもどんどん荒廃をしてしまい、そして国民が国鉄に乗るというよりも乗せてくれるのだというような感じになっているのでは納得いかない、こういうような雰囲気になっているのではこれは国民の合意は得られないというふうに考えます。したがって、現状のそのお金の問題につきましては、そういう一つの計算もあり得るでしょうということはこれは認めてもよろしいかと思っております。
  132. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もう一つ、細かな問題になりますけれども自動車とか工場とか病院等の分離を推進する。分割会社にして、しかもなおかつ自動車や工場や病院をどうして分離をしなきゃならないのかというのはちょっと腑に落ちないんです。工場といいますけれども鉄道工場というのは鉄道車両を修理したり鉄道仕事をやるのが鉄道工場です。その鉄道工場を何で鉄道から分離をしなきゃならないのか、分離して一体どうするつもりなのか、ここのところがよくわからない。私鉄でも、みんな工場というのは持っているんです。国鉄でも工場を持っています。あっちこっちにあります。その国鉄の工場を国鉄から分離をしろ、それは何のためにだろうか。これは、たとえば病院から看護婦を分離しろとか、デパートから売り場を分離しろというようなことになっちまうわけで、これは離れ離れにしたのじゃそれぞれが今度は困るわけです。これは一体どういうお考えに基づいているのか。
  133. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 工場、自動車、病院それぞれ事情が少しずつ違うのでございますが、工場につきましては、私が申すまでもございませんけれども、それぞれ線路とつながった形での工場でございますから、これを分離することは不可能であるというような技術的な立場からの御意見がないわけではありません。しかし、私どもとしましては、そうしたことがあるにしましても、あれだけの工場というものをもっとほかの会社によって、たとえば名鉄などはそういうものがもし国鉄の工場を使うことができるのは大変いい、こういうような考え方もございますが、そうしたような工夫をどんどん取り入れることができるようにするためには、やはり基本的に工場、病院、それから自動車につきましてもこの自由な一つの競争条件を入れていくことは必要であると考えております。  そのようなことを考えますと、いま国鉄がこれほどの大きな赤字の現状で苦しんでいる段階では徹底した合理化をすることが基本であります。そのような意味から申しまして、むしろそうしたものが独立をしていく、そしてその独立をすることによってさらに赤字がはっきりしていく、あるいはその赤字の部分を何か別な方法によって埋めることも可能である。たとえば病院などは、そういう意味では活性化することは可能でございます。こうしたようなことの工夫を取り入れていくことが必要なんです。こういうことから工場、自動車、病院については分離というのを提案しております。
  134. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そこのところが、どうもよくわからない。自動車を分離しろと言いますけれども、総理のおひざ元の長野原から草津まで通っている国鉄バスがあります。営業係数八三です。十分な黒字線なんです。こういうところを分離して一体どうするのか。そんなところを分離しろということになれば、よだれたらして待っている私企業があるわけです。これをもらったらまさに棚からぼたもちです。そういうことをなぜしなければならぬのか。赤字経営を何とかしろというのならば、黒字のところまで切り捨てろというのはそれは理屈にならないという気がいたします。これは総理のおひざ元に具体的な例があるわけです。これも、そうすると黒字だけれども競争しろといってみたところで、これは恐らく長野原と草津の間は独占的にやっているのじゃないかと思います。そのほかにも、たとえば東海道高速道路なんかの場合も黒字でやっているんですが、それを切り離してしまえというのはどういうことなんでしょうか。ちょっとわかりにくいのですが。
  135. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 逆の場合もございます。たとえば十和田湖の場合には私鉄バスが二つ入っておりますが、ここに国鉄のバスが入りました。そのために、この三社とも赤字になることが予想されています。こういうようなことを考えますと、企業性というものがもしありました場合には、どこの自動車、バズを運営していくことが望ましいかを考えることだと思うんです。それを国鉄の線路を使った鉄道とそれからバスというものとを一緒にしておりますと、どこでどういう利益が出てくるかがはっきりしませんために、それぞれがお互いにもたれ合いになりまして、これが結果的には効率を上げることを妨げることになりやすい。したがって、これは検討すべき問題ではありますけれども、私どもといたしましては、むしろその効率をはっきりさせるために分離することが望ましいという提案をしております。
  136. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、制限時間が参りましたからこの辺で打ち切らしていただきますが、逆の場合もあるとおっしゃったけれども、それならば一律に分離しろと言わないで、もうかっているところはとっておけ、赤字のところは切り離せと言った方がよほど筋が通るわけです。そうじゃなくて、みんな切り離してしまえということになるのだから全然これは矛盾したことになってくるわけです。  もちろん、この自動車路線だけじゃありません。地方交通線についても同じことなんですが、どういうわけで切り離さなければならないのかという理由がどうもわれわれがちょっと聞いただけで何とも納得できないまま、しゃにむにこうやって切り離していくということになると、これは国鉄を解体して、そして結局財界のしかるべきメンバーが国鉄財産をつまみ食いをするためのお墨つきに利用されているのじゃないのか、こういう疑問が出てくるわけです。  これらの疑問が当然出てくるわけでありますが、それらの疑問については監理委員会でもって検討をした上で改めて、この臨調答申とは食い違うというようなことがあっても監理委員会の方の答申に任せるのだ、食い足らない点、つまり消化不十分の点については監理委員会でもってやっていくという意味を持っているのかということも、ちょっとあわせてお伺いをしておきたいと思います。
  137. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) いま私が申し上げたのは、赤字と黒字のことだけを申し上げたのではなくて、一つの輸送体系を考えますときに自動車部門は独立をした方がいいというふうに申し上げたわけです。つまり黒字だからとっておけというのじゃなくて、自動車部門は自動車部門として成立する余地というものはないかということを考える、こういうふうに申し上げた。  これはいろんな例がございますが、時間がないところで申しわけございませんけれども、たとえば国鉄バスを民鉄のバスに切りかえましたところが、そこで工夫をいたしましてマイクロバスに切りかえる、マイクロバスに切りかえましたところが、今度は一往復ではなくて三往復できるようになり、しかも民鉄でございますから駅の間隔を短 くした、そうするとそれによってかえって効率は高まりお客が集まってきた、こういうような例もございます。こういうふうに自動車自動車だけの努力というものがございまして、私はそういう意味では分離をしてそこのところをもう一度よく考えることが望ましいと思っております。  それから、臨調の方向につきまして私は監理委員会がどういうふうに考えていくのかはまだつまびらかにしておりませんけれども、少なくとも臨調の基本答申に沿って監理委員会ができるのでございますから、私どもがいろいろ検討してこういう分割の方法もある、分割といっても機能分割もあるし地域分割もあるといろいろ考え、比較しながらこういう結論を出してまいりましたので、私どものそうした基本的な方針に従って恐らく監理委員会も進めていってくださるのではないか、こういうふうに考えております。
  138. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 時間が参りましたから……。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 加藤先生には、臨調解散した後、また緊急に御足労いただきまして、恐縮です。  私どもは、この法案に賛成の立場なんです。ただ、賛成の立場なんですが、どうも審議の経過、政府側の答弁を聞きますと、賛成者が疑惑というと反対に回りゃいいじゃないかとこうなるので、不安がいろいろありますので、そういう面から、部会長であられました、あるいはもしかするとこれからもまた責任のある立場になる可能性もあるかと、こう思いますので御質問したいと思うんです。  分割民営化、この民営化というのは民間じゃない、しかもストレートですぐ分割民営でもないんだ、中間的な処置も当然あり得るんだ、こんなこともおっしゃったわけでありますが、これで一〇〇%現在の国鉄経営する事業内容というものが回復できる、再建できる、赤字がなくなって黒字になるという、失礼ですけれども、一〇〇%の大確信をお持ちでございましょうか。答申を出されたわけですから、また政府が責任を持って委嘱された臨調であり、その責任者であらされた加藤先生ですから、当然大確信を持った答申には間違いないと思いますが、いま前提としまして、どうも政府側にいろいろ質問しますと、そこらあたりがちょっと不安な材料が多うございますので、失礼かと思いますけれども、この分割民営、その経過処置としては政府の助成金はあってもいいんだ、ストレートにすぐ民営化じゃなくてもいい場合もあるんだ、こんなことを前提におっしゃったんですが、それでもなおかつ自信があるわけでしょうか。
  140. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 大変御理解いただきましてありがたいと思っておりますが、現在の国鉄状態を放置しておきましたならば一層国鉄の問題は深刻になり、そして国民から見ても納得のいかない点が出てくることはこれは否定することができません。したがって、私どもといたしましては、そうでない、いまの国鉄でない方法でやるとすればどういう方法があるかということをいろいろ考えてまいりますと、いまの分割民営化を除いてはあり得ない。したがって、将来のことでございますから、大確信あるかと言われましたらば、これは神ならぬ身でございますからとても私にはそれだけのことを言うことはできませんけれども現状において人間の考え得る、あるいは日本人として現在の国鉄を憂えて考え得るものとしてはまずこの方向は間違いないという、私だけではなくて臨調すべての方々に共通した意見であった、こういうふうに私は理解しております。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 現状がだめだということは、恐らく反対する方の中でも大多数の方が現状はうまくない、しからば便法はというとちょっと考えつかない、こういうことだと思うんですが、大確信を持たれている。人間として、日本人としてという非常に強烈なお言葉を承った。  政府の方からそういう答弁が出てこないんです。だからこそ、先ほど社会党の先生からありましたように、その監理委員会の検討によってはという前提はつきますけれども臨調答申の分割民営じゃない方向の結論もあり得る、こういうお考え。そのお考えというのは、いま申しましたように、これはあくまでも委員会の方にこれから全面的に任せるわけですから、あるかどうかもわからない。ただし、逆に言いますと、いまの加藤先生のような大確信は全然ないわけです。現状において、日本人として、国鉄を憂える身、これはみんな国鉄を、特に政府側は、失礼ですけれども臨調の何百倍もあるいは何倍もの長きにわたって憂えてきたことは間違いないと思いますが、でありながら私のこの委員会での質疑の中の答弁、返ってきた答えではそんな大確信なんか毛頭ない。現状がだめだからという、むしろ次善の方法。だからこそ、その中に、監理委員会の結論というものは必ずしもこうじゃなくてもいいのだ、こうじゃない、分割民営じゃないこともあり得るのだ、こういう答弁が出てきているんですが、そうなりますと、臨調側、精力的に一生懸命にやった側としてはちょっと何かぴんとこないものが、しっくりしないものがあるのじゃなかろうか、こう思うんですが、この点いかがでございましょうか。
  142. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 政府がどういうふうに考えておられるかということについては、私は政府の一員ではございませんのでよくわかりません。わかりませんけれども、少なくとも、臨調答申をめぐりまして国鉄再建監理委員会ができましてこれからやっていきますときに、当然臨調考え方をすべて御理解いただいた方がなられるわけとは限りません。そうなったときに、私は、臨調考え方はこうなんですということを、とにかくそれを説得してといいますか、その論理を展開することによって十分に御理解をいただける方向だと考えています。したがって、このような時間をかけていけば必ず御理解いただけるという気持ちを私は持っておりますので、そうした意味でこの監理委員会が私ども臨調答申に沿っていってくださるであろうということを期待している、こういうわけでございます。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 神ならぬ身ですから将来的なことはわからない、この言葉は確かに私もそうだと思いますが、これだけの大確信を持たれて検討された、しかも国鉄百年の歴史を根底的に明らかに五年間で変えるこれだけの答申を出されたわけなので、幅広い縦横の知識を駆使されまして出された答申かと思うんですが、その中には分割民営なら大丈夫という具体的なデータも、先ほど社会党の先生方に冒頭に時間があればもっと申したいことがあると、あるいはその中に含まれてたのかわかりませんけれども、そういう具体的な裏づけのデータなり検討した議事録――議事録は非公開なものですから何とも私たちわからないんですが、そういう裏づけが当然あられてそういう大確信を持たれた答申になっている、こう思うんですが、その点。  もう一点、将来的なことで済みませんが、五年たって完全に変わるわけですが、それからどのぐらいやればめどとしまして再建が成るのか。ここらあたりの時間的な、ある程度の検討の中、答申を出された中においての時間的なめどあたりも持たれて答申を出されたのか。それはいかがでございましょう。
  144. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 現在まで国鉄の改善計画といいますか、いろんな計画は六回出ておりますが、この六回の計画、いずれもそのときの方々の御努力によって懸命にそのあり方を考えてつくられたものでございまして、非常に私どもとしましてもこれは貴重な歴史あるいは経験であろうと考えております。そのような意味で、私は、自分たちがいま出しましたことがどこまで計画的になっているかということにつきましては、これはいろいろと御批判の点があることは否定いたしません。  特に、私ども経営形態を問題にいたしています。経営形態というのは、御承知と思いますが、効率というものをはかりますときには資本の効率と労働の効率というものがございますが、最近はX効率というのが非常に問題になります。このX効率と申しますのは、日本が資本と労働力においてこの状況の中でどうしてこんなに高度の成長を 遂げたかということで、アメリカなども盛んにそのことを最近は学ぶようになっておりますが、そのX効率というものがやはり大切でございまして、企業形態の変更において――いままで改善計画は、すべて資本それから労働力ということだけをめぐって計画は立てられたわけです。ところが、これが全部一年もたたずして崩壊していくというような計画が多かったわけですが、なぜそうなったかと言えば、それはX効率というものが十分な効果をそこで出すことができないというか、X効率そのもの――X効率と申しますのは、簡単に申しますと、要するに国鉄をみんなでもって守ろうという気持ちの上での一致した考え方です。そうしたようなX効率というものが日本の企業にはほとんどがあるのですけれども国鉄の場合それがいろんなところでもって制約されていてなかった。そこに限界があったわけですから、それに私たちがメスを入れたということであれば、そこで資本、労働、そしてX効率と三つそろいますので、私は可能性としては十分に再建できるのじゃないか、こう考えているわけです。  同時に、何年ぐらいというふうにおっしゃいましたが、私は国鉄だけについてこれを申し上げることは至当ではございません。と申しますのは、私どもは財政の再建ということに大きな目を持っております。その財政の再建は、私のこれは個人的な考え方でございますからとても公認されるべきものではございませんけれども、しかしもしお許しをいただけるならば、個人的に私の考えております範囲では、十年以内に確実にできる、こういう判断。財政再建の大きな枠の中での国鉄再建を含めてでございますが、すべてにおいて十年の中にできる、こういう私は見通しを持っていると申し上げます。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは当然、失礼ですけれども政府の立場と臨調の立場とは完全に違いますので、政府がそういう大確信を持て、あるいは時間的なタイムテーブルを出せといっても全く困難のことは承知の上ですけれども、何かやっぱり――私たちこの法案に賛成しますと、賛成したということはこれは将来とも残るわけです。ところが、賛成したはいいけれども、いままでの再建法案みんな失敗しちゃっている、だからあんなものに賛成しなきゃいいじゃないか、こういう可能性がまだあると私は不安を感じていますんです。政府からはトンネルの後がまたトンネルというような答弁しか返ってこないんです。いまの加藤先生答弁を聞いて何か私自信がわいてきまして、これはもろ手を挙げてきょうは賛成しなきゃならないと、このような感じにだけ……。  ただ、将来のことですから、加藤先生くしくも神ならぬ身だからわからないと、わからない要素は十二分にありますが、やっぱりこれは政治が国民に対してどれだけアピールするか。X効率ですか、私ども寡聞にしてそういうことわからないんですが、確かにそういうようなことが十二分にあるかと思います。ただ、あくまでも国民にも当然愛される国鉄、これは防衛論でありませんけれども政府も当事者も口にはしてもなかなかその方向には行ってないのが相当の範囲においての実態でございますが、確かにそういう効率を国鉄にもたらすためにはいろんな面を抜本的に変えなきゃならない。ところが、それと同時に、やっぱり民営化、たとえ民間化じゃなくても現在の国鉄の公共的な面がダウンすることはこれはしようがないとこう思うんですが、その公共性はダウンしてもこれはやむを得ない、こういう面も当然この答申の中には暗に含まれていると思うんですが、いかがでしょうか。
  146. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) いまの非常に重要な問題を御指摘いただきましてまことにありがたいのでございますが、公共性というのは一体何かというときに、しばしば私は世上において誤解があるような気がいたします。と申しますのは、御承知のように、公共性というのは社会的な必要性でございます。その社会的な必要性、つまり社会的な需要であります。その社会的な需要というものがどのような形態で供給されるかということについては、これは公共であることがふさわしいものがあるというだけでありまして、必ずしもそれは民間ではできないというものではございません。  そこで、私どもは公共性ということについてこのように考えております。公共性というものが社会的必要であるとすれば、それを達成するために、当然のことでありますけれども、民間にふさわしいものであるならば民間でやるべきだし、政府の手によってやることがふさわしいならば政府の手によってやるべきである。しかし、政府の手によってやる場合にはしばしば効率性というものが失われる危険があります。したがって、効率性というものを強く強調しなければなりません。政府仕事であればあるほど民間よりも効率性というものを強く言わなければ、それをなかなか考えないということがございます。そういう意味で、私は政府の手によってそうしたものが行われるときには効率性を強く言わなければなりません。そこで、こうなります。効率性は公共性を達成するための基礎であります。つまり効率性というものがなければ公共性は達成できません。これは公企業であろうと官業であろうと民業であろうと同じことでございます。  さらに第二番目。公共性というものは、効率性を達成した上で初めてできるということでございます。ちょうどこれは御承知のように、なぜわれわれは公共的なことを幾つもやることができるかというと、それはそれだけ日本が経済力において豊かになったからであります。経済力において効率性がない国は公共性すらも守ることができないという状態に陥っております。そのことから考えまして、私は官業部門においてはより一層効率化の追求が望ましいのだ、こういうふうに考えているわけでございます。しかし、それはあくまでも官業の場合は公共性を達成するためのものでございます。これは日本国有鉄道の目的のところにもはっきりと明記してありまして、国鉄は効率性を高め、その発展をもって初めて公共の福祉に貢献するのだということが明記されております。したがって私は、公共性はこれから国鉄が立ち直ればより一層達成できるものになる、こういうふうに考えております。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほどもお話がありましたけれども、北海道と福岡の地方公聴会、賛成の人たちも北海道は反対だ、分割なんかしてもらっちゃ困る、民営化なんか実現不可能だと、北海道に長く住まわれていた財界の方、しかも将来ともに北海道の有力な地位あるいは北海道で相当専門的な知識を持っている学者の方、くしくも同じ意見でございました。  たとえば北海道――四国、九州も同じ立場だと思うんですが、特に北海道をとった場合に、いま加藤先生は、何もすぐ民営化じゃないのだ、その経過処置はあったっていいのだ、こんなことをおっしゃいましたが、これは監理委員会の方に全面的に当然検討を任せるわけですが、この答申をつくるに当たりまして、北海道につきましては必ずしも直ちの分割じゃないのだ、あるいは直ちの民営化じゃないのだ、もっと経過処置をした方がいいのだ、こういうふうなお考えなんでしょうか。あるいはそれとも、いや七ブロック程度民営化というのは一斉にやった方がいいのだ、こういうことで地域エゴなんというものは排除してからでなきゃ、とてもじゃないけどそんなものは進まないのだ、こういうお考えでしょうか。いかがでしょう。
  148. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 考え方といたしましては後者ではございません。つまり前者の考え方でございます。  つまり、それぞれの地域にはそれぞれの地域に合った形で考えていかなければなりませんから、それぞれの地域に応じた経営形態あるいは方法というものを考えてみたい、こういうふうに思っております。それが監理委員会というものを設置して検討しなければならない方法でございます。手続のプロセスなどの検討をしなければならないということで設けたいと私ども考えた理由でございます。  そしてさらに、そうした中でもって、北海道のようなところはなかなかこれはむずかしいなということについては私どももいろいろ議論をいたしました。これはなかなかむずかしい。むずかしいがゆえに、私どもといたしましては何とかしかし、それでもいままでみたいに赤字がふえていいのだぞという状況じゃなくて、赤字を少しでも減らすのだ、こういう努力をすることが国民にわかるような姿勢でいってほしいのだ、そのためにも北海道、四国、九州の分離独立といいますか分割を考えた、こういうことでございます。したがって、やみくもにすべてがこうなるべきだということではございません。目標として七ブロック程度の分割民営化を考えていきたい、こういうふうに考えているわけです。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません。また、マターに戻った質問ですけど、そうすると、答申は明らかに分割民営、それから監理委員会の法案はちょっとそれが効率的なという、それは分割民営なんだと、こういうことですが、先ほどは大確信を持ってこれでなきゃならない、分割民営なんだ、この大確信を持たれておっしゃったのと、いま、いや必ずしも分割民営じゃなくて、むしろ地域に合わせてやることが望ましいのだ、こういうことになると、そうすると分割民営という大前提は後退するような感じをちょっと受けたんですが。  分割民営が大確信だと、私、前に聞きますと。これをやれば、しかも個人的だというお考えを吐露しながらも、十年ぐらいで何とかなるだろう。だけれども、いまおっしゃったのは、地域別なことを考慮するとなりますと、政府考えも非常にそれに近いのであって、いやいや、監理委員会がどう考えるか、分割民営なんというのは出ているけれども監理委員会に任すのだから、そういう違った考えも出てくるんだと。しかも、そういう違った考えについて、われわれはこの審議の中でそんなことないんだと、分割民営ということで、しかも総理を初め皆さん方はそれを尊重すると言っているのだから、これしかないのだろう、こういうことで審議をしたんです。しかも、加藤先生はこれは大確信を持っている、こうおっしゃったのが、いまのお言葉ですと、失礼ですけれども、その前にもっと地域的なことを考慮することから始まるのだとなると、大確信の分割民営化がどうなのかとちょっと疑問が出てくるんですが、いかがでございましょう。
  150. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) これはちょっと私の言葉が不十分で申しわけございませんでした。  分割民営化ということは決まっているのです。問題は、その民営化の中でも、たとえば第三セクターの方がいいかもしれないし、あるいはもっと本当の民間にしてしまった方がいいかもしれないし、あるいは特殊会社という形の方がいいかもしれない、こういう経営形態については一つの大きなレールの中での弾力性があり得るということでございます。それは地域によってあり得るわけでございます。その意味では分割民営化の大方針は全く私どもとしては確信を持っている、こういうことでございます。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません。それじゃ、もう一回北海道につきましてですけれども、そうすると、その答申をつくられた現時点までのお考えで結構なんですが、北海道については当面どういうふうにやった方が一番いいのかなと、こういうお考えをお持ちでしょうか。
  152. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) これは非常にむずかしい問題でございますので、その辺こそがむしろ監理委員会で検討していただくことでございます。私どもも、もちろん個人的には一つの考え方がいろいろございますけれども、しかしこれは公的なものではございませんので、ここではむしろ監理委員会に御検討いただきたいということでございます。
  153. 立木洋

    ○立木洋君 加藤参考人が山同さんと御一緒に書かれました「再生の構図」、これは参考人のお考えがよくわかるので読ましていただいたんですが、臨調考え方については数字の裏づけのない観念論だという批判があることを承知の上で、なおかつ分割民営という方針を提起した、しかしそうではなくてやはり数字と施策の裏づけがあったんですよということをお述べになっている。  そこで、ここに、「事務局はこの見地から国鉄および運輸省の提出する限定された資料をさまざまな角度から分析して、一つの未来像を描き上げていた。」、こういうふうに百三十八ページにお書きになっているわけです。  この「一つの未来像」というのは、端的に言って、あったのでしょうか。
  154. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) お答えさせていただきます。  「一つの未来像」というこの言葉は、私ども考えではこれはちょっとこういう比喩がいいのかどうかわかりませんが、英語で申しますと、ア・ピクチャーというのとザ・ピクチャーというのがあります。私どもが言っておりますのは、これはア・ピクチャーでございます。したがって、「ある一種の」、 こういう意味でございます。したがって、それはインテグレートされた、統一された全体像の問題ではない。したがって個別的には、たとえば人員については昭和六十年にはこんなになりますよとか、あるいは昭和六十年に債務はこうなりますよとか、そういう個別的なものはあったけれども、それを全体として統一したものとしての意味ではございません。ということで、この「一つの」という意味はちょっと日本語が不正確でございまして、日本語の不正確さで私どもはこういうふうにしか表現できないので、こう言っただけでございます。
  155. 立木洋

    ○立木洋君 統一された、また総合した、何といいますか、ここで言われる「一つ」というのはザという意味だということなんですけれども、しかし、いずれにしろそれを基礎として、それを参考として参考人は試算をされているわけです。だから、そういうものがなかったわけじゃなくて、あるにはあったでしょう。ないのかあるのかということが大切なんです。
  156. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) これは個別的にはあるのです。個別的にはという意味は、たとえば昭和六十年までには人員はこうなりますとか、あるいはこういうふうに社会情勢の需要が変わるでしょうとか、そういうのは運輸政策審議会なんかでもどんどん出しておりますから、そういうのはあるわけです。そういうものを参考にしてどう判断するかというときに、臨調のこの答えを出しますときには、私どもとしては個人的なものでございますから、それは出しておりません。そして、むしろ皆でもって経営形態をどうしたらいいかということの議論をいたしました。そして、私どもが出したのは、そのことを後でもって臨調の言う答申どおりにやってみるとこんなことになるのかなという一つのこれは試算でございます。
  157. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、あったのかなかったのかということが非常に大切だという意味は、全くなかった、そういう未来像そのものがなかったのだ、つまり生のデータがばらばらばらばらあったのではなくて、ここに「一つの未来像」というふうに言われていますから、いずれにしろ一つのものがあったのだ、だからそれがもしかないというのだったら、全く先生のお書きになったこの「一つの未来像を描き上げていた。」ということはこれは正確ではない、つまり誤認であるというふうに解釈されることになるんですが、あったのかなかったのかがそういう意味で事実としてどうなのかということが大切なので重ねてお聞きしている。簡単で結構です。
  158. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) ちょっとさっき申し上げましたけれども、「一つの」という日本語はいろんなものがばらばらにあってもこれは一つなんです。問題は、それがインテグレートされているというときのことはザなんです。したがって、これは私どもはザがあったとは思いません。ないということです。
  159. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、こういうふうに書かれますと、やっぱり誤解を生むんです。正確じゃないんです。つまり「一つの未来像を描き上げていた。」というふうに書かれますと、そういう意味 で、どうもそうするとこの先生のお書きになっているものは余り信用できないのではないかというふうなちょっと疑念がわきますので。  いずれにしましても、このことを根拠にされて試算をなさっています。いわゆる分割民営でやった場合にどういうふうになるかという試算をなさっている。いま、いみじくも将来十年間のと、こういうふうな説明でなされました。  参考人がなさっている試算の内容というのは、昭和六十六年の国鉄の人員が二十三万六千人。地方交通線、これは収入の面から見て第一次で一五%、第二次で三五%、合わせて五〇%の削減。これは収入の面ですから、私は統計をとって数字を調べてみますと、いまある地方交通線百七十五線のうち百三十一線がなくなる、四十四線だけが存続するという数字になります。それから設備投資が二分の一にされる。それから貨物輸送は、ヤードが六十年度に二分の一、そして六十三年度には全廃。こういうことが加藤参考人が山同さんと御一緒になさった試算の結果として出ているわけです。そして、六十六年度には助成ということも前提として考慮するならば収支相償するというふうな結論まで出されている。  そうすると、これはきわめて大変なものだ。つまり採算の立つところだけはやりましょう、採算のとれないところは全部ぶった切っていきます。言うならば、端的に言えばもうけのないところはできないのだからやめてしまうのだという形です。そうすると、地方の人々の交通、国鉄に依存しておる住民、これは大変な被害を受ける。また、これだけの貨物に依存をしておる荷主の人たち、これも大変な経済的な打撃を受ける。こういう問題が多大に存在すると思うんですが、つまり採算が立たないところはぶった切ってしまえ、極端な言い方をすれば。そういうふうなお考えでの試算の結論だというふうに解釈してよろしいでしょうか。
  160. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) この本が、先ほどの「一つの未来像」というので信用がおけなくなったということになりますと私の本が売れなくなりますので、これは私としては非常に困るのでございます。これは「一つの未来像」と申しますのは、日本語では仕方かないのでございまして、こういうときは「一つの」と、こう言うのです。たとえば運輸審議会でもって出すのは一つの未来像なんです。ですから、「一つの未来像」というのは、これはいろいろあり得るわけなんです。そういう意味でアなんです。確定したものではないということです。  そういう意味で、私どもはそれを確定してみるとこうなりますよということを言った。しかし、そのこうなりますよと言ったことにつきまして、いまいろいろなものをぶった切っちゃうと、こういうお話でございましたけれども、実はこの中には、たとえば債務の利息についてはある程度棚上げをしなければならないとかいうふうに、何とかして公共的な、みんなが必要だと考えているならば無理をしないでやれるということも考えてみようということをやっておりまして、ある程度痛みが出ることは仕方がないけれども、しかし行政改革というものは痛みのない行政改革はあり得ないのでありますから、そういう意味で私はあるところには若干のものはあるでしょう、痛みはあるかもしれません、しかしそれは日本全体から見れば非常にプラスになりますということが強調されていかなければならないという意味で私どもは申し上げているわけです。  しかも、これは単なる試算でありまして、数字がひとり歩きをしては困るということは、これは第六次経営改善計画が数字合わせをやっただけでもって結果的にだめになっていきそうになっていますが、そういうことも問題になりました。あるいは長期経済計画を、日本もたくさん経済計画を出しますけれども、五年ごとに計画を出したって当たるはずがない。当たってないわけです。ということは、いろんな欠陥がございますけれども、やはり数字というものだけに頼るのは危険なんだということです。だから、私どもとしては、これは個人的なものでありますよということを断って――これをお読みいただくということはこれは大変ありがたいことでございまして、さすが専門家でいらっしゃるからお読みいただいたのでございまして、一般の人はなかなか読んでくれないので残念なんですが、それは別といたしましても、そういうことでございます。
  161. 立木洋

    ○立木洋君 私は、加藤参考人の本の売れ行きを妨害しようという気持ちは毛頭ございません。そうではなくて、この間の議論で、これはそういうものがないんだと。私は部会長であった加藤さんがこういう試算をなされているその根拠のデータがあるというふうに書かれているから、そのデータを私研究したいから出してくれと言ったら、そういうものございませんと言うんです。だけど、ございませんというのはおかしいじゃないか、加藤さんが書かれた本の中にはちゃんと「一つの未来像を描き上げていた。」と書いているんだから、だからそれを出してください、いやそれはどうしても出せません、ありませんから出せないんだ、こう言うので、そんなら事実関係をおいでになったときにお確かめしましょうと、こういうことになっているわけです。ですから、決して本の売れ行きを妨害するために私は持ち出したのではないので、あとはその点はまた政府の方にいろいろお尋ねすることにいたしますけれども、しかし、いま言ったこの試算をなさったので私もデフレーター四%で計算したんです。これは運輸大臣の方にも出しました。  それをやりますと、これは北海道と四国と九州と計算したんです。計算してみますと、これは大変なことになっているんです。加藤さんが収支が相償すると言う昭和六十六年までの計算でいきますと、北海道の場合はいわゆる収支差が一千九百二十六億円、これは私が試算した数字をいま申し上げているんですが。それで償却前の損益が四千七百九十七億円、純損益が五千二百七十三億円、そして累積欠損が四兆一千百四十八億円、こうなっているのです。これは簡単に北海道のことだけ申し上げました。人数を言いますと、いま北海道の要員が五十七年度四万一千四百人ですが、これが労働者は、加藤さんがおやりになった同じ計算の方法でやりますと、北海道では一万五百人になる。これと同じように四国でやってみますと、四国でも欠損が、いわゆる純損益が一千億円ぐらいになる。それから九州の場合には四千億余りになっているわけです。こうしますと、北海道でも五千億、九州でも四千億、四国でも一千億。  それから、これは九州、四国の分割の方法どうなるかわかりませんから計算の方法がなかったわけですけれども、これをやってみますと、これだけの収支が先生は六十六年度に相償すると言われるけれども、そうすると新幹線だとか国電でこれをカバーするだけのもうけが出てくるのか。数字がひとり歩きされるとおっしゃったけれども、まさにこの試算そのものがそういう大変な事態を含んでいるのではないかというふうに私は北海道、九州、四国の試算から感じたのですけれども、その点いかがでしょうか。
  162. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) いまの資料、私持っておりませんので、ちょっとわからないのですけれども、いまお聞きしておりました限りでは、恐らく私どもも累積債務の棚上げをしない状況のときにはこれだけの赤字になってしまいますということを一応出しまして、そしていつの時点でもいいからとにかくある年に累積債務の棚上げをある程度やりますとこれだけプラスになりますというふうな形にしているわけです。ですから、いまの計算も、どこかでもって債務の棚上げをやりました場合は恐らく収支相応するところが出てくるはずであると私は考えております。  それからさらに、いまお聞きしまして思ったことは、これは私ども考え方で一つの試算でございましたけれども、おやりいただいたことによって、なるほど北海道はこういうような赤字になり、そして四国もこういう赤字になり、九州もこうなる、そうすると収支係数のバランスをとることを考えてスタートのポイントを一緒にすると案 外これはうまくいくかもしらぬという意味で、私どもの試算結果を大変横から傍証していただきまして、お礼を申し上げます。
  163. 立木洋

    ○立木洋君 それは、私はまるっきり反対だと思う。  それで、時間がありませんので最後の質問にしますけれども、つまり私たちの考え方というのは、臨調のこういう答申、またそれに基づく監理委員会というのに反対なんです。先ほどの同僚議員とはまるきり違う立場で質問しているわけですけれども、そこで私はまるっきり反対だということの立場でありますけれども臨調答申をされた立場から見て、いま政府が進行しておる、この臨調答申に基づく国鉄再建という課題で進行していますが、この進行している過程、これは大体うまくいっているというふうに臨調の立場からごらんにたって何点ぐらい点数つけられるのか。つまり、なぜかというと、この中には自民党の基本調査会とはすり合わせをしたけれども意見の違いがあるということも書いてあります、出口論入り口論の問題がありますから。だから、臨調の立場から見て、いま政府を何点というふうに点数つけられるか、そのことだけお伺いしておきます。
  164. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 国鉄再建監理委員会国鉄だけについて申し上げるならば、国鉄再建監理委員会をつくってほしいという私ども臨調の提案に対しまして即座にこうして御審議をいただいているということ自体は、私は非常に感謝しております。そして、これについて非常によくいま政府は努力をしていただいているのじゃないか、こんな気持ちを持っております。  それから、電電あるいは専売そのほかの行革全般につきましては、これはいろいろな事情もございましょうけれども、私はこれから臨調答申も一遍にはなかなか理解していただけませんので、だんだんとこれから私どももいろいろのところで国民に御説明をしたりなんかすることによって前進していくことも考えられますので、政府としても大いにやってほしいと思いますし、同時にまた先生方の御支援をぜひ期待しておるわけであります。
  165. 三治重信

    三治重信君 どうも加藤参考人、御苦労さまです。  私ども民社党は、この臨調答申に賛成の立場でございまして、また監理委員会のこの設置法案も賛成の立場で御質問をしたいと思うんです。  この国鉄の分割民営の結論を出されたというのは非常な大英断だと思うんです。この分割民営化をしなくちゃだめだという結論というものは、一体先生の言ういわゆる経営形態というものが根本原因ですか。それとも、やはりこういう国鉄のように輸送革命あるいは社会情勢の変化に対応できない体質、鉄道営業というそのものの問題があるのだというふうに考えるのか。分割民営で再建を図る以外にこの国鉄のどんどんふえいく赤字を解消する、ストップさせる道はないのだというふうに考えられた根本原因はどんなところにあるのでしょうか。
  166. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 大変こうした国鉄の問題について御理解いただいてありがたいのでありますが、いま御質問のございました分割民営化のことでございますが、この原因、考え方は、いままで申し上げましたことの中に含まれておりますが、要するに公社という公企業の形態が当初の予定していた方針どおりにいかない、つまり効率化ということを前提としながら公共性を追求するというこの行き方が、考え方自体はよかったのですけれども、日本にパブリックコーポレーションがなかったために、どうもそのままの、つまり国有鉄道そのままの形態で残ってしまった、そこに新しい時代に対する対応ができなかったということになります。  したがって、変化が急激に起こったことという外側の条件と、それから公社という形でいきましたその基本的な体質がうまく合ってないということでございますから、その意味国鉄の問題については私たちは本質的な、抜本的な対策を立てなければならない、こういう考え方で分割民営化という考え方を出しております。
  167. 三治重信

    三治重信君 そうしますと、結局、国鉄経営形態としてはそういうことなんだけれども、私は電電や専売というのも、それは本当の民間で言う効率性ということから見ればそれはまだ、いろいろ比較の問題があると思うのだけれども、電電の関係者なんかはやはり電電が一本であったために通信のいわゆる技術革新に先端を切っていけるようになったのだ、むしろ公社という経営形態があったためにいまの電気通信の本当の技術革新の波に先端的に乗れたのだというようなことも聞く。  そういう技術革新という時代の変化に片方は乗れる。国鉄の方は、やはり技術革新より輸送革命によって自動車に負け、飛行機に負け、いろいろな競争条件がある。片方は、電電は技術革新だけで非常にもうかるというわけじゃなくて、やはり競争者がない独占者だけれども、そこの弊害が、技術革新ということでやはり収益性が保たれてきた。だから、経営形態だけでこの国鉄の問題を処理するのは、やはり私はむしろ時代の変化による輸送革命に対応できぬといいますか、それに同じことかもしれないけれども、むしろそういう社会の変化というものが非常に大きな原因にあるのじゃないかと思うんですが。
  168. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) いまおっしゃるとおりでございまして、国鉄が早くも破産状態になってしまいましたのは、これは時代の変化に対応できなかった点でございます。  問題は、それではほかの三公社のうちの二公社、これはどうなのか、こういう御質問でございますが、ほかの二公社はいまのところ成長産業の中の電電公社、それからまた独占的な経営を許されている専売公社という中での黒字でございます。したがって、これから情報化社会ということで放送衛星、通信衛星が上がったりというような大きな変化が起こりますにつれて、次第に電電公社自体もその対応を怠った場合にはうまくいかなくなるということが起こり得るのでございます。それから専売公社の場合も、外国からのたばこについての輸入問題というようなことが起こってまいりますと、専売公社もそれに太刀打ちすることができなくなります。  こういうわけで、公社というものは本来、企業性を持った弾力的なものでなければならないはずなんですけれども、実際はいまの日本の公社の形態はちょっとパブリックコーポレーションなどと違いまして、全体としてそうした新しい時代に対応するための積極的な経営というものができない体質を持っていると言わざるを得ないのでございます。これは成長しているときにはいいのですけれども、成長がだめなときはだめです。したがって、国鉄も最初からだめだったのじゃなくて、国鉄も、自動車がひどくならないで発展しているときはこっちもよかったわけです。それから電電公社もいまのところはうまくいっているわけです。ところが、これも競争が激しくなってくるとそれに対応できない状況の体質を持っていると言わざるを得ないわけです。
  169. 三治重信

    三治重信君 そうすると、日本で戦後つくりたいまの現行法の公共企業体という経営形態、それが日本的に運営された今日の姿を見ると、いろいろの社会の変動、革新に対応する形態としてはこういう既定の経営形態というのはよくないのだ。もう少しそれぞれの事業に合った経営形態を考え直すべきだ。そこは、いや政府が責任があるのだとか、公社の総裁経営陣が無能だとか、そういう問題を離れて、それぞれの事業経営形態というものをこういうふうに固定していくのがまずいのだ、こういう御意見ですか。
  170. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) やはり公社というものの総裁経営者としての力をつけてもらう、当事者能力をそこでつける、そこに私は企業性というものを発掘できる大きな条件があります。その意味では、国鉄総裁にやはり経営者としての経営力を付与するということが基本でございますから、その意味では国鉄総裁が大いにこれを支持してくださると私は信じております。
  171. 三治重信

    三治重信君 何といいますか、いまの公社形態 というのは、確かに予算は大蔵省が監視する、それからいろんな料金の変更とかなんかについては国会がやる、そういうことからいろいろまた総裁として物も言えない、遠慮しなくちゃならぬこともたくさんある。これは国有関係ということになっていると、当然、民主制度だとそれがなっちゃうわけだから、むしろそういうふうなあれからいくと、企業形態としては公共性を重んずれば、必ずしも議会の制肘なり支配を受けなくても、もっと効率性というものが中心になった経営形態を考えるべきだ、こういうふうに結論づけていいわけですか。
  172. 加藤寛

    参考人(加藤寛君) 効率性を高めることによって公共性に奉仕できる、こういうふうに考えております。
  173. 三治重信

    三治重信君 終わります。
  174. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 以上をもちまして加藤参考人に対する質疑は終了いたしました。  加藤参考人に一言御礼申し上げます。  本日は、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。御退席されて結構です。  これより、引き続き、本案の質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  175. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まず、運輸大臣に質問いたしたいのでありますが、いまの臨調の当事者に対する、わずかな時間でございましたけれども、質問を通じましてはっきりしたことは、果たして分割をした場合に非採算地域の分割会社がやっていけるかどうか、こういう問題なんです。それについては、参考人意見というのは希望的な意見なんです。やりようによっては何とかやっていけるのじゃないかと思います、こういうのが加藤参考人意見なんです。だから、私はあえて言ったんですが、これは戦争末期の戦陣訓と同じじゃないか、必勝の信念でもって戦えば何とかなるというのと同じわけです。  だから、この北海道の問題については、しばしば私のほかにも黒柳さんからも御意見が出ました。いままでも御意見が出ておりますけれども、人件費をゼロにしてもやっていけない。にもかかわらず、やりようによっては何とかやっていけますというのは、きわめてこれは責任のない話なんです。しかし、政府の場合は、評論家みたいな顔をして、やりようによっては何とかやっていけますでは済まないんです。    〔委員長退席、理事青木薪次君着席〕 その点、運輸大臣としては、現実の問題として具体的に分割民営という問題が出てきた時点において、これはやはり速やかに北海道について、あるいは九州についてプランを立ててみる、試算をしてみるという必要があるのじゃないかと思うんです。その点はどうでしょうか。
  176. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 北海道が通常言われるようなケースならばとても採算がとれないだろう、こう言われたわけでありますが、そういうこともあろうかと私は思います。いずれにしましても、さてそうであっても、この再建委員会が生まれまして分割民営で計算を始めるという、その計算の中に大ぜいの方々がデータを出すでしょう。そして、従来の効率をいかにしてよくするかというふうな積み上げの中にいろいろな私は議論が出てくるのじゃなかろうか。それらを最初からとにかく全部区域的には採算がとれないことははっきりしているけれども、とれないというだけではいけませんので、変化させることによって効率を上げる面がどれだけあるかというメリットが出てくると思いますから、そういう意味では私の方が試算させるかどうか知りませんけれども、そういう試算が出てくることも期待するものです。
  177. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、やはりこれは参考人に対する質疑は全く時間が限られておりますし、本当ならば、この問題で臨調の方から責任者に出てもらって二週間や三週間は集中審議をやる値打ちがあるんです。一時間半ぐらいでごまかされちゃったのでは、まことにわれわれとしては残念なんです。  しかし、やりようによってはと言ったって、人件費をただにしたって赤字になる。それをやりようによってはどうやって黒字にできるかというんです。それじゃ、人件費をただにしてもだめならば、みんな銭の持ち寄りでもって職員仕事をしなきゃならぬということになるでしょう。月給を返上するのじゃなくて、月給は各人出してやらなきゃやりようがないでしょう。そんな物好きは、北海道でなくたって、どこを探したっていやしません。こんなわかり切ったことを、やりようによれば何とかということでもってのほほんと構えちゃいかれないと思うんです。  それで、この監理委員会の場合は五年という年数があります。五年の間、この五人の人がこういう夢のような話を繰り返していって、五年たって結論が出るかどうか疑問です。そんなことをしていたのじゃ、これはますますもって国鉄の財政というものは破綻の上にも破綻を重ねるということになると思うんです。そんなことをしちゃいられないと思うでしょう。第一、新規採用もするなということを言っているでしょう。新規採用しないで一年、二年、三年と過ごしていけば、これは仕事の面でも必ず支障が出てきます。  それらの点について国鉄総裁にお伺いしたいと思うのでありますけれども、そういうことをやっていって業務の運営上支障がないのかどうか、またそれに対応する国鉄側の処置というものは考えられているのかどうか、これは国鉄総裁にお伺いしたいと思う。
  178. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 現在の新規採用抑制の作業というのは、いきなり新規採用抑制ということを頭から決めているわけでないわけでございまして、従来からやっておりましたように、毎年毎年翌年度はどういう仕事のやり方をするか、まず輸送量はどのぐらいあるかというところから始まって、どういう仕事のやり方をするかということで、何人おれば仕事ができるかということを計算してみて、従来よりも少し能率を上げるということを前提にしながらそういう計算をいたしました。  その結果、五十八年度は五十七年度に比べまして二万二千六百人少なくても何とかやれますということになりました。そうすると、その二万二千六百人少なくしてやれるというのであれば、退職者の数とにらみ合わせまして採用ゼロでもできる、こういうことになったわけでございます。  それをもう一回五十九年度でもやっていこうということをつい一カ月ほど前に決めたわけでございますけれども、この場合にも完全ではありませんけれども、ほぼ各管理局別に作業をいたしまして、計算をいたしまして積み上げてまいりました結果、五十九年度の仕事は五十八年度の予算定員よりもさらに少ない人間で何とかやれるという見当がついたわけでございまして、そしてその数と来年の三月三十一日に予想されます退職者の数を引き合わせてみますと新規採用を抑えても大丈夫だということになっているわけでございまして、これは決して抽象的に新規採用ゼロ、こう決めたわけではないので、表へ出ている姿はそうなっておるのですけれども、内部作業的にはそういう手順を踏んでおります。  したがって、今後どの程度新規採用を抑制する状態を続け得るかというのは、毎年毎年の作業によるわけでございますので、少なくとも今日までのところ、つまり五十九年度の運営に関する限り、五十八年度に相当いろいろ工夫をいたしまして、五十九年四月一日の新規採用を抑制しても五十九年中は列車、電車とも順調に動かし得るというふうに見ております。それ以降はまだ見当がついておりません。
  179. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大蔵省関係にお伺いしたいと思います。  先ほど参考人にもちょっと質問したのでありますけれども、分割をした場合に、分割会社に対する助成額が幾らになる、それから長期債務についての利子負担がどうなる、青函トンネル本四架橋についてはどうなる、こういうのを合算すると結局はいままでの国鉄助成額よりもはるかにオーバーする、単純計算をしても三倍になる。こうい うことになると、大蔵省として、そういう点は、臨調答申に基づいたわけでございますから、何倍になろうと幾らでも気前よく出しますということになるのかどうか、その点をお伺いしたいと思う。
  180. 藤井威

    説明員(藤井威君) 御指摘のとおり、臨調答申では民営分割の前提としての長期債務の処理の問題あるいは本四等の大規模プロジェクトの後始末の問題、そういうような問題をその前提として解決すべき問題であると指摘すると同時に、まずそれ自体かなりの大きな財政負担をも伴うのじゃないかという感じの答申になっておることは事実でございます。  われわれは、そういったようなものが理の当然として一般会計あるいは税金の負担ということになるという、そういう趣旨ではないと思っておりますが、やはりそういうものの解決の問題、処理の問題は基本的に国鉄企業性の中から出てくるものだというのは、基本論としてはわれわれもそう考えておりますけれども、実際問題としてそういう問題をそのままにしておいて本当に健全な経営基盤の確立ができるものかどうかということについてはやはり問題があると言わざるを得ない、そういうふうには考えております。  ただ、その結果、一体どのぐらいの負担になってくるのか。これが先生御指摘のように、現行の七千億という水準でもそれでもなおかつ多いのじゃないかというような議論もあるような状況のもとで、それが倍とか三倍とかになるということになりますと、これはとても対応できません。われわれとしましては、そのためには同時に新たな財源措置の検討が行われない限り、なかなかそういうことはうまくいかないだろう。臨調答申でもその点は御理解いただいておりまして、それらをやるにはやはり新たな財源措置の検討が必要だろう、そういう御提言になっておると考えております。
  181. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 答申は結局政府としても尊重しなきゃならぬということになると、少なくとも七つの会社が、名称はどうだか別として、できるわけです。総裁も当事者能力が付与されるということになるのだから、答申の実現を喜んでいるのじゃないかというような参考人意見がありました。しかし、そうは言っても、これは七つの会社をこさえるわけだから、総裁が今度七人になるわけです。高木総裁一人で七つかけ持ちするというわけにいかないと思うんです。そうすると、総裁が七人になって、副総裁が七人ふえて、常務理事もまた七倍になる。これが行政改革の趣旨に合うことになるのかどうか、まことに疑問だと思うのでありますけれども、しかしそのうちで、どういうふうに分けるにいたしましても、    〔理事青木薪次君退席、委員長着席〕 自前でもってやっていける可能性のあるのは関東とか関西というふうに限られている。あとのところは自前じゃやっていけない。しばしば北海道が例に挙がったけれども、北海道だけじゃないわけです。九州の派遣報告も読ましてもらいましたけれども、九州でもこの答申がそのまま実現をされてやっていけるのかという疑問が出ています。九州あるいは四国、こういうところは、やっていけなかったらやめちまえというわけにいかないでしょう。大蔵省といえども、どういうふうな分け方をするかわかりませんが、裏日本であろうと四国であろうと、やっぱりちゃんとめんどう見なきゃならぬ。そうすると、その地域に合わせてやはり財政上の措置を講じなきゃならぬということになってきます。  それから、いままでの長期債務をどういうふうにするかわかりませんけれども、これは全部一括して棚上げするということになりゃ別だけれども、そうもいかないでしょう。そうすると、長期債務を分担して、さらにまたそれぞれの地域でもって独立採算でもって事業を運営しなきゃならぬということになると、その試算だけでも相当なものじゃないかという気がいたしますが、仮に今回その監理委員会法が通って、来年からじゃひとつテストケースとしてやってみようじゃないかというふうに言われた場合に、大蔵省としてその種の試算はしているんですか。しているとすれば、総体的に日本全国でどのくらいの財政上の負担というものを現在以上にしなければならないのか、その点お伺いしたいと思う。
  182. 藤井威

    説明員(藤井威君) まず、第一前提といたしまして、分割民営というもの、仮にそういうことを五年以内に行う。そうした場合に、分割民営されました各会社が最も効率的な、最も合理的な経営を行う、あるいはその地域輸送のサービスの実態に合わせた、たとえば仮に鉄道輸送が特性を発揮しにくい分野、そういう分野では代替交通手段に席を譲っていくというような、非常に合理的なかつ健全な経営が行われたとして何とか収支償っていけるようになるその前提は何かということについての検討すらまだ実際には行われていない。  と申しますのは、そういう前提として、先ほど申し上げましたように、長期債務の処理をどうするのか、あるいは大規模プロジェクトの処理をどうするのか、そういうようなものが非常に大きな検討材料でございますから、あるいはもしそれが本当に大きな財政負担を伴うならばそれに対する財源措置をどうするのか、そういったようなものを一括して含めた総体的な検討というものがまだ全く行われていない。  したがいまして、その後仮に分割民営された各会社がどういうふうに各地域ごとにどのような収支で推移していくことが期待できるか、あるいは予想できるか、そういうような積算までにはまだとうてい及んでおらない、そういう段階でございます。
  183. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 運輸大臣、お聞きになったと思いますが、そろばんの方はまだ全然できてないんです。分割民営という、そういう構想だけ先行しちゃっているわけです。先行しちゃっているけれども、これはいままでの国鉄というのが、少なくともこの答申のとおりにやるということになると七つになるわけですから、そうすると、それぞれの地域のうち自前でやっていけるところは二カ所ぐらいしかないだろう、あとはみんな相当国家がめんどうを見ないと、財政的な援助をしないと立ち行かないということははっきりしています。そうすると、それまで何となく手をこまねいて見ているといるわけにもいかないでしょう。  特に、緊急事態宣言などという仰々しいことまでやって、これは大急ぎで何とかしなきゃならないという意味なんでしょう。ところが、実際の作業はちっとも大急ぎじゃないんです。この監理委員会ができて、五年の間に何とかしようというのだからずいぶん気の長い話です。緊急何項目だなんという話ばかりでは財政再建には何の足しにもならないです、こんなものは。何の足しにもならないことだけ大急ぎに急いで、そして肝心なところはゆっくりと構えていくということだと、これは一体どういうことになるのか。それで、なおかつ国民のニーズにこたえることができるかどうか、これは大変な不安があるわけです。  一体これらの七つの会社などというものができる場合には、どういうふうに運輸省としてはこれを指導していくのか、大変むずかしいことになると思うんです。いまのところ、鉄監局なんというのは開店休業みたいなものです。法律の点からいうと、おれらがやるのだから、おまえらしばらく昼寝していていいと言われたような状態なわけです。しかし、実際問題として仕事をやるということになると、えらいことです。この五人の監理委員会といったって、どんなに頭のいい人が出てきたところで、これは具体的な分割民営の構想ができていないというのは、臨調二年間かかったっていい知恵が出なかったから、最後に五人の監理委員会に押しつけちゃっているわけです。責任を回避している。問題を先送りしちゃっている。だから、これは一体どのようにして受け皿をこさえなきゃならぬかということは、運輸省としてはきわめて重要な問題になってきます。運輸省抜きにしてなんか恐らくできっこないです。だから、人ごとのような顔していないで、十分に受け入れ体制というものをいまから用意してなきゃならないと 思うのでありますが、その点は一体どういうふうになっておりますか。
  184. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 受け皿、どこをどうするかというふうな話は運輸省の中にはございません。何さま、臨調がいままで二カ年かかってつくった案から初めて国会にこういう監理法案というのを出して、そして皆さん方の御審議をいただいている段階でございますから、具体的作業をするいとまも余裕もございません。  いずれにしましても、先ほどの慶應の加藤さんのお話のように、あれだけ強い意志で臨調議論されて、そしてそれが国のためになる、あるいはまた国鉄のためになる、こういうことで議論を固めたことでございますから、これは無視するわけにはいかないと思います。そういう意味からすると、いまから先、運輸省とすれば、五つになるか六つになるか七つになるかわかりませんけれども、出てくる問題に対して、時にフォローし、時には材料を提供し、時にはまたアドバイスをするというふうなことになろう、こう思っております。
  185. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それは運輸大臣の立場からすれば、臨調は強い意志でどうのこうのと言っておられますが、言葉の多い割りには積極的なプランというものはさっぱりないんです。輸送計画、将来に対するビジョンなんというものは何にもないんです、臨調答申の中には。あったならば出さなきゃならぬわけです。出せないわけでしょう。いろいろ練り回してみたけれども、うまいこと、北海道一つの例をとってみたって、この北海道はこういうふうにやりますというプランが出せないじゃないですか。そうでしょう。だから、われわれの方で同僚議員から、いろんな人から、北海道は具体的にどうするんだと、大臣は答えられないじゃないですか。そうでしょう。答えられないということは、臨調の方にも受け皿も何もなかった、プランも何もなかった、こういうことなんです。  それをこれから五年間かかってやりますなんて、やりますという意気込みだけで何とかなるという問題じゃないと思う。私は、この臨調答申というのは具体性に富んでおって、将来のビジョンがあって、実行が可能であるならば、いままでのこのやりとりの中でもう少し自信のある回答が運輸大臣から出てしかるべきだと思うんです。全然自信がないじゃないですか。これは大臣の健康とは関係ないですよ。全然自信がない。具体性のある問題は何一つない。こんなことで一体どうなるのかというふうに私は思います。こんなことで国民のニーズにこたえられるのかということです。ただ、当面、毎日電車が走っていればそれでいいというものじゃないです。まだまだ利用者は多くの注文を持っています。こうしてほしい、ああしてほしいという注文がいっぱいあるんです。その注文にこたえる義務があると思うんです。ところが、現状はどうも残念ながらそういうふうになってない。  そこで、監理委員会を発足させるということは、自民党が多数で賛成者が多いということになればそれは監理委員会自体は法律的には成立するかもしれない。それで仕事が済むわけじゃない。だから、私はあえて言いたいのだけれども、この臨調答申が実行できるのかどうか。もし成立したならば、具体的に個々の面からプランをつくってやってみたらどうですか。北海道でも九州でもいい。できるかできないかやってみたらどうですか。できなかったならば、これは監理委員会というよりも臨調答申の責任です。できないような答申を出したその臨調に対して責任を追及しようといったって解散しちゃったのだから、これはこういう逃げ方されるというと困っちまうのだけれども、責任の追及のしようがない。昔だったらこれは腹切りものなんです、実行のできないプランを出したというのは。しかし、実際にできなかったならば、今度は政府自身が監理委員会を叱咜激励してでもどうしたらいいかということを考えなきゃならぬと思います。その点、どうやって責任をとるつもりなのか。いままですら答えられなかった問題が、これからうまいことすらすら答えが出てくるわけはない。私は、その点をお伺いしておきたいと思います。
  186. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 監理委員会が発足して、そこで自分たちの原則に基づく案をつくってくれることだろうと思います。私どもの方はそれを見て、そして時には資料を提供したりいろいろなことがあるでしょうが、それを見ないことには話になりません。そしてみんな、国鉄の従来の経営形態ではおかしい、能率が上がらぬ、これはしっかり経営形態を変えようという気分では、御議論されている方々はそれぞれの立場があるかもしれませんけれども、大体において一致していると思うのです。それをどういうふうにして、今度監理委員会が生まれて、北海道、東北あるいは関東、これは私たちの方の仕事じゃありませんで、向こうから出してもらうものに、時に参考意見等等を申し上げる、こういうことだ、こう思っております。
  187. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私が気になるのは、臨調から参考人に出てきてもらって、いろいろ聞いてみた。しかし、たとえば具体的に言うと、北海道の問題一つを取り上げてみても、やりようによれば何とかなるでしょう、この程度なんです。確信に基づいた作業によってできますという話じゃないんです。単なる北海道の一例を挙げてみてもそうなんです。このたくさんの問題を一体これからどうするのか。その場合に、できなかった場合にはその責任をとってもらうといっても責任のとりようがないから、その場合には答申を白紙に戻して、そして新たな構想でもって方針を立てる以外にないのじゃありませんか。もし当事者能力が総裁にない、こういうことならば総裁に当事者能力を与えりゃいいことなんです。きわめて簡単なんです。できることから実行するということを私はこの際決意をすべきである、この先々のことを考えてみた場合。こう思うのでありますが、大臣のお考え方をお伺いしたいと思います。
  188. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 臨調答申につきましては、これは先生御承知のとおり、先ほども参考人から御説明がありましたとおり、そのねらいとする基本的な方向というものは、国鉄経営に対してもっと自主性を付与しなければだめだ、いわゆる当事者能力をもっと付与しなければ再建というものは達成できない、これが臨調答申の基本を通ずる理念だろうと思います。  その方法として、分割民営というものを一つの方法として提言しているわけでございますけれども、私どもこれを政府として尊重するという意味は、その基本を流れる思想そのものについてはこれはなるほどごもっともである、妥当である、こういうふうに評価しているわけでございまして、そこで今度監理委員会をつくって、その基本的な流れのもとに具体的なかつ詳細な検討を進めていこう。臨調答申は、一つの案として分割民営が最適である、こう提言しておりますけれども、これについては具体的にどうなのかということになりますと、ただいま先生御指摘のようないろんなお考えもございましょう。あるいは先ほど加藤参考人が言われましたように、北海道を分離した場合に、やりようによってはやっていける可能性もあるかもしれない、しかし仮に赤字が出るとしてもいまのままよりは赤字が少なくなるかもしれない、こういうお考えもありましょう。  しかし、私どもの方としては、これを受けて、現実のやっぱり政策にこれを落としていくためには、どうしてもその辺のところを詳細かつ具体的にデータに基づいて検討していかなければなりません。したがって、いろんな御意見を踏まえながらも、かつ、じみちにデータに基づいてその実施可能性というものを十分検証しながら監理委員会においてその具体的なものをつくり上げていく、現実の政策に落とせるものをつくり上げていく、こういうことで対処をしていきたい、こう考えているわけでございます。
  189. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 時間が参りましたから、これで私の質問は終わりますが、ただ、先ほども質問いたしましてどうもはっきりいたしませんのは、この答申の背景になっている考え方なんです。これが 純粋に国民のニーズにこたえるためにこうしたらいいという考え方に出ているものかどうかわからない節があるんです。  たとえば工場だとか自動車だとか病院とか、こういうものを分離しろと言っているんです。分離しろと言っているけれども、中には十分に採算のとれる自動車部門だってあるわけです。工場だって、そうでしょう。鉄道工場を鉄道から分離して、一体どうするか。缶詰工場にしたり、製紙工場にするわけにいかないでしょう。それを考えてみると、何でそんなことを考えるのか、こういう疑問があります。  それは、ストレートに言えることは、こういう国有財産を分割して、解体して、うまいところだけつまみ食いをしようじゃないか、財界がそれを待っているというような疑惑が出てくるわけだ。だから、へたまごつくと、この臨調答申というのは第二のロッキードになる可能性すらはらんでおるということを指摘したいんだ。そういうふうにしないようにするということがまず当面の問題じゃないかという気がいたしますから、その点を大臣の方にはっきりとくぎを刺しておきたいというふうに考えます。その点についての大臣の見解を承りまして、私の質問を終わります。
  190. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 第二のロッキード事件とか、そういう話が出ましたが、そんな忌まわしいことは私たちの周辺から出ないようにがんばりたいと思います。  いずれにしましても、この委員会が始まって以来、それぞれの立場がありますけれども、御熱心に御審議いただき、その御審議の中には大変参考になる問題もございます。それらを体して将来ともに国民が期待しているところの国鉄再建、これに向かって邁進していきたい、こう思っています。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 運輸大臣、大分お疲れのようですから、しばらくまたほかの人に私質問しますから、その間、聞いておいてください。  佐々木さん、きょう加藤さんが出てこられて、日本語の表現のアだとかザだとか言って、うまいぐあいにあなたとつじつまを合わされているわけですが、この問題、私納得したわけじゃないんです。しかし、何も決して私は佐々木さんを困らせるためにこの問題を持ち出したわけじゃないので、審議を十分に尽くす必要があるということで、この材料があるかないかを十分に確かめる必要があったから指摘した。この問題については、きょうこれ以上議論はする時間がありませんので、また別の機会にしたいと思います。  民鉄の問題がいろいろ問題になってきているので、私は本当に民営ということが国鉄再建にとってどうなのかということを少し議論したいと思うので、最初に高木総裁にお尋ねしますが、この間言いましたこの本です。私鉄の九人の社長の方々と総裁が対談をなされております。  それで、私は二つの点をお尋ねしたいんですが、一つは、国鉄の公共的福祉という立場を維持していきながら、この民鉄経営者との懇談の中から最も学ばれた点は何か、学ぶべきだというふうに感じられた点は一体何か、それが一つです。  それからもう一つは、この対談の経過を通じて、いまの国鉄仕事の量を維持していくという見地に立つならば、どういう点で民営ではとても無理だ、あるいは困難だというふうにお感じになった点があるかないか。あったとしたら、それはどういう点か。  この二点を、ひとつ端的にお尋ねしたいんです。
  192. 高木文雄

    説明員高木文雄君) やはり経営の問題としましては、私どもの人事管理に相当問題がある。もっともっといろいろ工夫しなきゃならぬ点があるのじゃないかと思います。大体の私鉄におきましては、入社をした人が一生運転士さんをやっているとか、一生車掌さんをやっているとかいう形の人事管理が行われているわけではなくて、ほとんどその会社に勤める三十年なら三十年の期間にいろいろの職種に従事するという形を通じて企業全体の雰囲気というものを職員の一人一人がよくのみ込めるような雰囲気になっておるようでございまして、そうした人事管理面についていろいろ教えられるところがございました。私も、その前から気がついてないわけではなかったのですけれども、なかなか長い、よいにつけ悪いにつけ、伝統と習慣がありますので、それがなかなかできにくいのでございまして、これらの点は大いに今後取り入れていかなきゃならぬ点だと思っております。  それから第二の点は、鉄道はいまや独占産業ではないわけでありまして、競争産業になっていっておるわけでございますが、しかし私鉄の場合にはかなりの程度地域独占を志向しておるという感じがいたしております。鉄道経営するだけじゃなくて、バスの経営を行う、あるいはまたお客さんが集まるようにデパートを経営したりということで、また極端な場合には、東急の経営にありますように、自分が持っている土地を慶應大学に寄附して、お客さんの流れの逆方向にお客さんがまた出てくるようなことを考えるというようなことを通じて大変地域に密着をしていると同時に、その密着という意味は、逆に言えば、もろもろのバスその他の経営を通じてこの地域は東急のエリアだとか、この地域は近鉄のエリアだとかというものをつくり上げつつ経営をやっていくということで、競争が盛んになればなるほどいかにしてその独占的なものをつくり上げていくかということに皆さん骨を折っておられるということを大変教えられたわけでございます。  それから、さらにつけ加えて申し上げますならば、ほとんど全員の社長か、現在の運賃水準を前提とする限り鉄道だけでは経営は成り立たない。なるほど私鉄とデパートその他は別会社になっておりますけれども、しかしそれは人事のやりくりであるとか、あるいは退職金の支出をどこでするかというようなことを通じて、いろいろな経理の形を通じて表面の経理とはまた違った意味で経理が行われておるようであります。現状運賃をもってしてはなかなか大手十四社といえども鉄道だけでは経営がいま現在成り立っていないということであると同時に、それを何とかつじつまが合うようにできたのは、実はこの本では私その部分を若干記載から削除しましたけれども、たまたま不動産会社を行うことができて、不動産会社というものが経営的に非常にぐあいのいい時期にぶつかったので、ここ十五年ぐらいは余り運賃の改定をしないでやってきたけれども、実はかなり困難があるのだということを言っておられました。この点は、いろいろな問題もありますので、ちょっとこの本には入れませんでしたけれども、お話の中にはそういう話がありました。  その三点が、私が最も教えられた点でございます。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 林さん、あなたは準備されているので、これはよく聞いておいてもらわぬといかぬのだけれども、近鉄の佐伯社長がこう言っているんです。「少ない元手でたくさんの利益を上げるということは、経営の鉄則ですからね。できるだけ利益を多うせないかん。」、「株を持ってもらったら後は配当せんでもええという心得では、誠にいかん思います。そやから、集まった資本に対して配当するということは、至上命令ですな。」と、こう言っているんです。つまり民間経営というのはもうけがなかったらやらないんです。これが基本だと思うんです。林さん、そうでしょう。
  194. 林淳司

    政府委員(林淳司君) いわゆる純民間経営というものは、そういうものだと思います。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 鉄監局長私鉄の大手十四社で現在貨物営業を行っているのは何社なのか。その五十六年度の収入額と、鉄道収入に対する比率がどうなっているか、簡単にちょっと。
  196. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 十四社のうち貨物取扱会社が六社ございまして、過去三年間、五十四年から五十六年までについて見ますと、五十四年度が三十六億円、五十五年度が三十七億円、大体横ばいを続けておりまして、全収入に占める割合は各年度約一%程度でございます。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 これは詳しく資料をもらった点で青 いますと、現在十四社の中で営業を中止しているのは八社です。貨物の営業をやっているのは六社です。六社というのが、いま言ったように一%になるかならないか。見てみますと、近鉄だとか南海というのは〇・〇六です。いわゆる貨物営業、貨物収入鉄道収入に対する比率というのはきわめて少ない。ですから、東武の三・六四%、五十六年度ですが、これを除くときわめて少ない。こういうふうな東武を除けばゼロに近い状態になっている、この貨物の収入が。これはどうしてなのか。原因についてどのようにお考えでしょうか、鉄監局長
  198. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 恐らく、そもそも東京のこういう大手の私鉄は、発生的にやはり旅客輸送を中心に営業を始めて、それで、たとえば秩父鉄道との関連とか、あるいは秩父のセメントとかというような関連から、若干マージナルなものとして貨物輸送をやっていたということだと思いますし、また貨物そのものがモータリゼーション等によってやはりどうしても企業としてなかなかうまくいかないというようなこともあったかと思います。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 この中に、貨物というのはもうからぬのだと書いているんです。もうからぬからやめてしまおうと思ったと書いているんです。これは名鉄、いまやっています、貨物を。貨物は非常に不経済です、貨物は廃止しようという方針なんだと、私は貨物課長に対しては、君は貨物をとめる課長だよと言って指示している。もうからぬからやめるんです。そこのところをはっきりしておかぬといかぬです。  次に、それならば戦後、民営鉄道廃止した状況。これまで距離にしてどれぐらいの鉄道廃止されてきているのか。大手十四社で大体全体的に何キロぐらい廃止しているのか。いかがでしょうか。
  200. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 四十八年からの十年間を見ますと、五十七年度まで五百二十六キロ。これはさらにさかのぼりまして戦後と申しますか、三十八年からの二十年間、三十八年から四十七年までの十年を見ますと二千五十六キロということになりますので、過去二十年間では二千五、六百キロ、こういうことでございます。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 これは資料をもらって、見て大変びっくりした。毎年のようにこれは切り捨てていっている。これは昭和二十三年からの資料をいただいてずっと見たわけですけれども、二十三年から三十九年までですか、大体少なくても九十、百以上毎年のように削られているんです。それから、とりわけ四十三年から五十年近くまでの間、相当またこれは二百台から三百ぐらい毎年のように削られている。五十年代になって多少少なくなったという経過がありますけれども、これは大変な量の民鉄が削られていった経過があるんですけれども、これはどうしてこんなに削減されたんでしょうか。それについては、運輸省、どんなふうにお考えでしょうか。
  202. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 基本的には、やはり道路輸送が非常に発達をして自動車による輸送の方がより合理的だということ、あるいは過疎化現象等によって著しく旅客が減少したというようなことだと思います。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 これも東武鉄道の根津さんがはっきり言っているんです。「非常に不採算な路線は、やめることにさせていただいております。」、つまり、もうけにならない線はやめるということなんです。永光さん、端的に言わぬといかぬです、あなた、ややこしい言い回しをしないで。つまり東武鉄道の場合は貨物を三・九%ですか、やっているというのは、これは高木さんとの話の中に出てきますけれども、これは国鉄のかわりをさせていただいているんですと、本来ならばやめたいんだ、もうけにもならぬのを。鉄道を切ってきたというのは、一番多いのはこれは東武です。東武は二十七年から百十キロの路線を撤去した。それから一番いま名鉄なんか採算が合わないと、東急だとか小田急なんかというのはうちの五倍も収益を上げている、小田急やあそこから比べるなら私たちは収益は五分の一ですよと、こういうことまで言っているんです。つまり採算が合うか合わないか、そこを中心にして考えているんです。そのことでこんな大変ないわゆる不採算路線というのが大幅に削られてきた。こういう経緯というのが民鉄の歴史にあるんです。  それから、もう一つお伺いしたいのは、つまりこういう私鉄、たとえば近鉄、東武、京成、小田急なんていろいろありますけれども、この中でそれらの会社が占めておる鉄道による収入がどれだけなのか。利益じゃないですよ、収入がどれだけなのか。それらの会社の占めておる今度収益から見たら、いわゆる鉄道の収益というのはどの程度占めているのか、いわゆる兼業がどの程度の収益になっているのか、その対比をちょっと出してみてください。
  204. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 昭和五十六年度、大手十四社で申しますと、鉄軌道部門の収人が六千九百六十九億、約七千億でございまして、支出が六千八百二十億、差し引き百四十九億円の利益を生じております。これに対しまして兼業部門は、自動車業等を含めまして収入で七千二百四十五億、支出で七千八十二億、差し引き百六十三億の利益を生じております。全業では、したがいまして三百十二億円の利益を計上しております。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 数字をそういうふうにすらすらすらすらと並べられると余り大してわからないかもしれませんけれども、これはずっと毎年の業績を見ていきますと、たとえば東武なんかの場合ですと、鉄道による収入というのは総額から見れば約五〇%以上を占めている。ところが、今度収益の方を見てみますと、東武の場合鉄道以外からの収益が八〇%以上です。これは大変なものなんですよ。これは東武だけではない。これは京成なんかの場合にしたって鉄道からの収入がやっぱり三割以上ありますけれども、しかし兼業からの収益という面から見れば八割から九割にも上っている。これは大変なものなんです。  だから、結局問題は、国鉄の貨物の問題が戦後どういうふうになってきたのか、あるいは交通線、いわゆる鉄道自身がどういうふうに軌道が外されてきているのか。いまの収益の実態等々見ても、これは民営鉄道でやればうまくいくというふうなことにはならない、つまりもうけにならないのは全部削っていくんですから。このことの負担というのをどこが請け負うか。最も徹底して合理化されるわけですから、これは労働者が大変な状態になる。運賃がどんどん独占化――先ほどのお話じゃないけれども、独占化された地域では運賃は自分のところだけで決められますから、運賃が高くなる。地方の大変な不便なところの足は削られてしまう。こういうふうな結果というのが、結局これは公聴会の内容でも明確にされましたけれども、大体採算のとれるところというのは東京だとかあるいは大阪だとか名古屋、こういう都市圏だというんです。ほかのところは全部採算がとれない。こういう状態にまで、この法案に賛成しておる公述人ですらそういうことを述べているわけです。そうすると、こういう分割民営という形にやっていった場合、これまでの民営鉄道歴史から見て一体どういう事態になるかということは、私は明白だと思うんです。こういうふうなこれまでの戦後の民鉄が歩んできた経緯から見て、いまの国鉄を分割民営化するということで本当に勝算があるなんというふうに、大臣、腹の底からお考えですかどうですか、この点については政治的な判断ですから――林さん、いいですよ、手を挙げる準備されているけれども、あなたではないんだ。大臣に、この政治的な判断をお聞きしておる。
  206. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) こういう時代でありましても、ことしは地方のバス、こういうのには補助金をよけいもらっているわけでありまして、みんな切られればだめになるということでなくして、その点に対する行政の手当てというものはしております。一般的ないまのような傾向があるかもしれませんが、この辺は行政の手当てによってカバーしていく、こういうことです。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 そういうお考えだから私はだめだと思うんです。これ以上言っても結局答弁は同じでしょうから、少し変わった尺度から今度林さんの方にお尋ねします。  先ほども述べられましたけれども、この第十五条には、「第一条に規定する体制整備を図るための施策は、昭和六十二年七月三十一日までに講ぜられるものとする。」、こういうふうに書かれてあります。それで、こういうことから見て、この第三条の「(緊急に講ずべき措置)」、いわゆる臨調が出している十一項目というのはいつまでにやらなければならなくなるという計算になりますか。
  208. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 緊急措置についてこれをいつまでにやるということでなくて、昭和六十二年七月三十一日の時点で新しい体制が整備されるということでございますが、その体制整備に至るまで極力その体制整備を円滑に行うために、その間継続的に経営改善を行っていくというのが緊急措置の本来のあり方でございます。
  209. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっと衆議院であなたが答弁されておる内容から見ると、若干私の質問を先取りして勘ぐっているのかどうか知りませんけれども、円滑な答弁の仕方しましたけれども、あなた、ここに、  第十五条にございますようにこの施策を完了させるべき目標は六十二年七月ということでございまして、それまでの間にいわゆる体制整備を完了させる。体制整備というのは合理的な経営形態がもうすでに確立されておる、諸般の問題が前提として全部解決されておるということでございますから、そうなると監理委員会はあくまでも企画立案の機関である以上、それに先駆けて相当早い時期に結論を出して、政府の方へこれを意見として渡さなければいけない。政府はそれを受けまして所要の立法装置とか実態的な準備を進めていかなければならぬわけでございますので、かなり早い時期に監理委員会から政府意見を申し述べるということになろうかと思います。 これがあなたが述べている内容です。  ですから、これで逆算していきますと、つまり六十二年七月には合理的な経営形態ができている、前提がすべて解決されている、こういうことだとあなたが言われた。だから、逆算しますと、その前に政府がそれに必要な立法措置実態的な措置というのは全部やらなければならない。これにどれだけの期間かかるか。国会へ法案を出して審議して、そして国会で賛成してもらって通過するか反対するかどうかは別として、いわゆる立法措置がとられて実態的な準備が必要だ。政府は直ちにそれを検討する。法制局でいろいろ法案をつくる、各部局で。それには作成するまでに政府にそれ以前に方針が提案されていないといけない。提案される段階で、緊急措置がどうなっている、どういう方向に行っているのかさっぱりわからないという見当がつかないような状態で、あなた、監理委員会答申できないでしょう。だからこそ、これは何とここに書いてあるんですか、あなた。これは臨調答申によってもはっきりしていますように、「新形態移行までの間緊急にとるべき措置」と書いてあります。そしたら、おのずから計算してみたらいつごろまでにこの移行措置、いわゆる緊急にやらなければならない措置というのはおよそいつごろまでにやらなければならないかということはほぼ見通しが立つのじゃないですか。そこまで計算、林さんはされていないとは私は思いませんけれども
  210. 林淳司

    政府委員(林淳司君) ただいまの先生の御質問でございますが、昭和六十二年の時点で新しい体制が確立しておる。その新しい経営形態確立の前提条件がすべて解決されておる。その前提条件と申しますのは、この法律に基づいて言いますと、長期債務等の諸問題、いわゆる構造的な諸問題というものが解決されておる、こういう意味でございます。  それで、緊急措置というのは、これと並行してそういう基本的なものについて検討し、結論を出し、それを実施に移していく。それで、新しい経営形態が確立されてそれが運営されていくというときまで、さらにその後引き続きいわゆる経営改善というものについてこれを並行して継続的に行っていくというものでありまして、これは新しい経営形態確立のための条件という位置づけではございません。当然それは新しい経営形態というものを考えていく場合には、どこら辺まで経営改善が可能か、現在の時点でどこまでそれが実現されてきておるか、将来どういう見通しかということについては、それはかなりの程度の勘案要素にはもちろんなりますけれども、しかしそれが新しい経営形態確立の前提条件というわけではございませんで、経営改善というのは新しい経営形態を確立するまでさらにその後引き続き継続的に実施されていくべきものである、こういうふうに考えております。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 つながりを変なぐあいに言われると、また変なふうに質問されると思っているものだから、あなたは日時をはっきり言われない。日時をはっきり言われないのは――これは、だけれども、「新形態移行までの間緊急にとるべき措置」ですから、新形態移行までの間だらだらといつまでやっても結構だと書いてないんです。緊急という意味はどういう意味か、林さんだってわからぬはずがないでしょう。なら、六十二年七月からちゃんと体制が確立されて新しい経営形態で発足しますよ、すべての体制を整えてすべての前提条件解決していますよというのだったら、それより過ぎたらこれは仕方がない。それまでにやらなければいかぬ。しかし、それまでやっていいですよとは書いてない。「緊急に」と書いてある。そうしたら、おのずから大体いつごろまでにやらなければならないかということは概算されてくるだろうと思うんです。あなたは、その年度を言いたくないならば言わなくても結構です。  ただ、そこで私はお聞きしたいのは、これは鉄監局長の方にお尋ねした方がいいのかな。この緊急措置の内容の(イ)のところに書いてありますけれども、要員についても「徹底的に合理化する。」と書いてある。「私鉄並みの生産性を目指す」というふうに言われていますが、たとえばこれは五十六年度でいわゆる私鉄生産性、それから国鉄生産性というのはどういうふうになっているのか。実態はどうでしょうか。
  212. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 生産性と申しましてもなかなかいろいろ比べるものがございまして、たとえばいま先生国鉄「再生の構図」という中で、国鉄と民鉄を比べた生産性は水揚げを人間の頭で割っておるのではないかと思いますし、それからまた別途の考え方としては輸送の人キロあるいはトンキロをそれぞれの職員数で割るという生産性もございましょうし、あるいは職員一人当たりの列車走行キロというようなもので生産性を見るということもありましょう。それから、やはり大都市と地域にそれぞれの格差が、それぞれ収入なり物量、人量違いますので、そのあたりをきめ細かく分けるという問題もあると思います。  いま手元にあります資料では、輸送人トンキロと人との比率でございますと、五十六年度に国鉄は五十六万一千人トンキロ、これは一人当たりでございます。全民鉄、大手、中小含めまして、これはほとんど貨物がございませんので、人キロだけでございますが、百二十二万八千人トンキロということで、この数字だけ見ますと、これを国鉄生産性と見れば約半分ということになるかと思いますし、収入の方は先ほどの「再生の構図」にございますような〇・五幾つというような形になっておるかと思いますが、なお生産性を比較しますにはもう少しきめの細かい考え方で比較をしなきゃならぬのじゃないかと思います。マクロに見ますと、輸送人トンキロなりあるいは収入でのいわゆる生産性というのは、五十六年度はいま申し上げたような数字になっていると思います。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 いろいろな計算の仕方があるというのは承知しておりますけれども、そういういまマクロの形で大体概算するとこういうふうな形になるだろう。そうすると、この私鉄並みの生産性を上げるということになれば、いまの国鉄の労働者 というのは何名ぐらいにしなければいけないのか。人質の点からいったらどうなりますか。私は計算したものを持っていますけれども、ちょっとお尋ねしておきたい。
  214. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) いま申しましたように、たとえば収入でありますと運賃の水準をどうするかという問題もありましょうし、トンキロ、人キロと申しましても非常にやはりローカルなところが約1万キロほどございますので、民鉄となかなかそのマクロでは比べにくいと思います。あるいはやはりある程度の夜行列車等で夜間の勤務もあるとか、いろんな問題があると思いますので、一概にただ二分の一だからいまの人間が半分でいいのだというようなことにはなかなかならないと思いますので、もう少し精密に精査をしてまいらにゃならないと思いますが、いずれにしましても、ここの臨調答申にありますように、現状においてやはり私鉄に比べて一般的に生産性が立ちおくれておるということはこれは明らかであると思いますので、少なくともいろんな指標における生産性を上げていかなければならない、こういうふうに思っております。
  215. 立木洋

    ○立木洋君 林さん、これはたとえば債務の問題だとか、それから今後生産性がどう移動するか、あるいは物価の上昇、下降、あるいはその他賃金の内容、これらのものは抽象して私が計算してみますと、概算で二十四万四千五百人、大体当たらずとも遠からずだと思うんです、あなたが頭の中で描いている数字と。二十四万四千五百人といいますとこれはどうなるか。たとえばさっき来ました臨調の加藤さんの計算したのでは、昭和六十四年に二十四万四千人です、この試算では。ところが、この臨調で言われている新しい形態移行まで緊急にとる都市で「私鉄並みの生産性を目指す」ということになってやれば、これは六十二年七月までにやる、二十四万四千五百人。臨調の加藤さんが出しておる試算よりも二年間早くやれという数字なんです。これを一体どう思われますか。
  216. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 臨調では、この趣旨は、再三申しますように、民鉄の生産性に比較しましてなおまだ国鉄合理化が足りないということから、民鉄の生産性に近づけるように目指して合理化を徹底的に行うという趣旨でありまして、いわゆる何年に幾らというところを具体的に指しておるというところまでは言ってないのではないかと思いますので、少なくとも逐年民鉄との生産性に比較して隔たりがあるところは徹底的にその効率化を進めていく、そして民鉄の生産性の方へできるだけ近づけていくということではないか、こういうふうに考えております。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、これは大変なことなんです。つまり、これは生産性が低いというのは何も国鉄の労働者の責任じゃないんです。いわゆるローカル線だとか地方のいろいろ交通線だとか、全部採算が立たないところまで受け持ってその国民の足を保障しているわけです。いわゆる民鉄というのはこれは全部もうけの採算のとれるところだけしかやってないのですから、それで計算しているわけですから、これは生産性の違いが出てくるのはこれはあたりまえのことなんです。それをいわゆる分割民営だ、分割民営だ、分割民営を六十二年七月までにどうなるか答申して全部発足の体制を決めてしまおうと。ところが、それまでの間に臨調の加藤さんが試算した二十四万四千人、同じ水準を六十二年前までにやってしまえというのです、この緊急措置というのは。大変なことなんです。よくこのことをお考えおきいただきたい。  それからもう一つ、この緊急措置の内容で出されておりますが、「地方交通線の整理を促進するため、遅延している特定地方交通線対策協議会の早期開催を図るとともに、残余の対象路線についても昭和六十年度までに結果が得られるよう早急に選定を行う。」、こういうことになっています。第一次の場合には四十線で、第二次の場合が三十三線ですか、合わせて七十三線。この七十三線を「六十年度までに結果が得られるよう」にと書いてあるのです。これ自体きわめて大変なことだ。つまり六十年度までにこれだけ七十三線、いま大変な地方自治体の中で反対があり、問題化されている状態を六十年度までにこれをやる。鉄監局長、どうですか。
  218. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 現在推進しております国鉄再建措置法に基づきます経営改善計画によりましても、またそのもとになりました五十四年の閣議了解によりましても、昭和六十年までには乗車密度が二千人未満でバスに転換が可能なものについては第三セクター等の施策も含めて転換を図るというふうに政府の方針で決めてございます。若干、この答申が作成されるころにその計画が遅延ぎみでありましたので、「特定地方交通線対策協議会の早期開催を図るとともに、残余の対象路線についても」云々と書いてございまして、現在われわれが考えて施策を遂行しようとしておりますものはこの答申の趣旨に合うものと考えております。
  219. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、この問題も結局分割民営化を日指す、それを基調として討論の結果では変わったこともあるかもしれませんと大臣はおっしゃっていますけれども現実にこういう形で採算が立たないところはぶった切られていくということが強硬に進行されていくのです。  次に、貨物営業の問題。ここでは、「固有経費における収支の均衡を図る。」、こういうことになっています。もちろん、いまこういう答申が出たものですから、これは鉄道の方では「新しい鉄道貨物営業について」、いま一生懸命大変やっておられる。ここで見ますと、たとえばこれは五十六年度の貨物部門の収支、これを見てみますと、収入は三千二百億円、固有経費が四千九百億円なんです。直行系で見てみますと、輸送している輸送トン数が五五%、その収入が四一%で、いわゆる固有経費というのが二二%だ。ヤード系を見ると、四五%輸送しているのだけれども、それに比べるならば固有経費というのは七八%もかかっている。だから、これをぶった切れば採算が立つのだということで、いわゆる六十年度には収支相償えるようにいたしますということになっている。そのこともこの緊急措置は要求している、大急ぎでそういうことをやれと。だけど、これは大変なことです、この問題というのは。  いま一つ、そのことと関連してその前にちょっとお尋ねしておきたいのは、こうした大合理化を五十九年の二月に実施しようとしていますけれども、この合理化に伴って余ってくる車両数というのは一体どれぐらいありますか。車両別にちょっと述べてください。
  220. 橋元雅司

    説明員(橋元雅司君) 昨年の十一月にダイヤ改正いたしまして、それ以降の貨車保有両数は八万五千両でございます。今回の計画によりますれば、貨物輸送量の減少、特に拠点間高速直行輸送体系になりますので貨車の運用効率が大変高まるということもございまして、私どもの推定では約四万両で対応は可能であろう、こう考えておりますので、その差の四万五千両は余剰となるわけでございます。  実は、貨車はすでに数年前から新製を一切停止いたしております。原則的にはやっておらないということでございまして、大変老朽化が一般に進んでおります。経年二十一年以上が二万六千両というようなことでございますので、また十八年以上で見ましても大体五万両近くあるということでございますので、私どもとしてはこの余剰となる四万五千両につきまして、いま申し上げた老朽劣化の著しいものから逐次廃車をいたしてまいりたい、こう思っております。  それから機関車でございますが、これは電気機関車並びにディーゼル機関車両方あるわけでございますが、これは目下ヤード作業の廃止に伴う新しいシステム転換に伴います車両の所要を計算いたしております。最終的に精査をいたしております。しかし、おおむね電気機関車で二百五十両ばかり、ディーゼル機関車で大体四百五十両ばかり、合計七百両ばかりの余剰が生ずる。このうち電気機関車はすでに耐用命数を超えているものが過半でございますので、これは余り問題はないわけでございますが、ディーゼル機関車については なお経年の残っているものもございますので、これの転活用法につきましてこれからさらに検討を進めてまいりたい、こう思っております。
  221. 立木洋

    ○立木洋君 これは大変なことなんです。いま言ったことでも、貨車は四万五千両、それから機関車、電気とディーゼル合わせて七百両、これだけが言うならば不用になる。耐用年数にほぼ来ていますなんというようなことをおっしゃいましたけれども、大体帳簿の上での耐用年数というのと実際に使っている年数とは違うのですから、これはそういう意味ではまだ使えるものなんです。これはほかにどこに回すか検討しますなんと言ったって、ほかのところもみんなあっぷあっぷしているでしょう。これだけ切ってしまったらそれだけ要らなくなるわけだから、ほかのところだって余っているわけだから回しても使うところはない。結局これだけのものをスクラップする以外にないじゃないですか。それとも外国にでも売るんですか。
  222. 橋元雅司

    説明員(橋元雅司君) お言葉でございますけれども、たとえばディーゼル機関車につきましては、下履きと申しますか、下回りを少しかえまして他への利用も考えられるという技術的な検討もございますが、ただ、外国へ出すことにつきましてはいろいろの問題がたくさんございますので、これはちょっとむずかしいのではないかと思っております。
  223. 立木洋

    ○立木洋君 結局は一部が活用されるにしても、ほとんどがスクラップにされるという状態だと思います。  それから、これはあわせて聞いておきたいのですけれども、地方交通線で一次、二次の廃止になった場合に、車両の過剰状態というのはどういうふうになりますか。
  224. 坪内享嗣

    説明員(坪内享嗣君) 五十八年四月現在でございますけれども、一次、二次の地交線で使用しております車両数は、機関車が約三十両、気動車が約三百五十両、客車が約三十両でございます。
  225. 立木洋

    ○立木洋君 結局、合計して合わしてみますと、地方交通線で不用になるのが四百十両ですか。結局、先ほど言った貨物の廃止による不用になるものと合わせると四万六千百十両の車両が不用になる。このほとんどがスクラップというのだから大変なものです。何かお伺いしてみますと、これをぶっ壊す費用とその廃鉄を売る費用と大体とんとんになるそうです、一車両十万円ぐらいで。こんなまだ使えるものがそういうふうになってしまうんですね。  問題はそこにあるだけではなくして、先ほどの貨物の撤去の問題で、そういうャードをやめて変えるということで大変なことが起こってきているのは、たとえば現在の貨物駅八百五十一駅、これを四百五十七ですか、結局各地域の通運の業者の営業に対しても、また通運の労働者の生活という点でもこれを直接脅かす大変な問題が出てきている。いわゆる免許をもらえばいいと言いますけれども、免許というのは地域ごとに出されているわけでしょう。地域が変わるとなると免許を申請する。あれは免許を取るというのはなかなか大変らしいですね。競争があるものですから、なかなか免許が取れないんです。仕事がなくなるから自分たちの生活にかかわっているというのです。こういう問題まで起こってきているし、荷主の人たちにとっても、化学品の関係というのは規模が小さい。そうなってくると、もう輸送は不可能だ。そうすると、約二百万トンからの全体の化学品の五〇%にも及ぶ品物の輸送が大変困難になる、こういう事態まで起こってきている。  これを結局言うならば、ここに出されている「固有経費における収支の均衡」、つまり採算、いわゆる民営的な考え方、もうけが上がらないものはどんなに困る者があってもぶった切れということがこの「新形態移行までの間緊急にとるべき措置」の中に入っているんです。こういう大変な事態だと思いますけれども、貨物の問題についてのそういう問題が出てくる。それでも、なおかつ、これを緊急措置としておやりになるというお考えをお持ちなのかどうか、この点、大臣にお尋ねをしておきます。
  226. 高木文雄

    説明員高木文雄君) 国鉄の貨物が大変赤字を生むということが問題になりまして約十年以上経過をいたしました。その間これをどうしていくべきかということで大変苦慮いたしまして、第一回に手をつけましたのは五十三年の十月のダイヤ改正であり、自後五十五年十月、五十七年十一月というふうにいたしました。これをもって経営改善をいたしましたのですけれども、それでもこれでは間に合わぬということでこういう決意をいたしたわけでございまして、御協力賜りたいと存じます。
  227. 立木洋

    ○立木洋君 総裁、お述べになるのはあれですけれども、時間が非常に短くてあと五分ぐらいしかないものですから、まだしゃべりたいことたくさんあって、これでやめるといって言われているので私は大変憤慨しているんですけれども、時間を守らなければならないので、ひとつよろしくお願いします。  それからもう一つの問題ですが、運賃の問題。「国鉄運賃については、当該地域における私鉄運賃、線区原価等をも十分配慮して定める。」ということになっていますが、こういうことになりますと、この緊急措置で現在の全国一律運賃制度を改めて線区別の運賃や地域別の運賃等を導入するということになるんでしょうか、林さん。
  228. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 原価をできるだけ反映して、その実情に合った運賃ということでございますので、現在でも遠距離逓減というふうなことでやっているわけでございますが、それをさらにきめ細かく運賃制度というものを実態に合わしたものにしていくということであろうと思います。
  229. 立木洋

    ○立木洋君 これは大変なことなんです。線区別運賃といえば、その一つの線で採算が合うような運賃にしなければならない。地域別運賃だったら、たとえばこれは北海道だとか九州だとか、そういう地域別に運賃が決められるのか。これはいま検討しているんですか。どこで検討しているんですか。
  230. 橋元雅司

    説明員(橋元雅司君) ただいまお話がございましたように、一律の運賃についてはいろんな矛盾がございます。たとえば大都市圏におきましては、よく言われるように……
  231. 立木洋

    ○立木洋君 検討しているんですか、どうですか。
  232. 橋元雅司

    説明員(橋元雅司君) はい。検討いたしております。
  233. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、これは大変な問題なんです。いわゆる分割民営という方向で進んでおる、そのための緊急措置だと言われていますけれども、常に採算が立つように運賃体系を変える、それぞれの線区で採算が立つような運賃にするというのは大変な金額になります、運賃額が。同時に、それは地域別に検討されているということも含めてあるならば、北海道の運賃、九州の運賃、それを検討しているというのですから、分割民営になるかならないかわからないと言ったって、緊急措置でもうすでに採算が合うようにということで、もうけ本位の体制が進んでいるのじゃないですか。  時間がないので締めくくりしなければなりませんけれども大臣、この緊急措置の内容というのは大変なことなんです。採算合うようにということで、すでにこれは六十二年七月まで、それまでに二十四万人にするというのです、労働者を。捨象した形で私は言いました。同時に、貨物は固有経費における収支の均衡を図る。荷主の反対からいわゆる通運業者や労働者の大変な状態があるにもかかわらず、これが強行されている。そして同時に、地方線七十三線が六十年度までにぶった切られる。それが進まぬならば進める措置をとれとまで書いてあるんです。そして、国鉄運賃は私鉄運賃や線区別原価を相償うようないわゆる運賃の検討がすでに始まっている。そうすると、地方の運賃だとか線区別の運賃が膨大な金額になる。高くなる。こんな大変な事態というのがすでに緊急措置として進行させられている、あなたの手のもとで。そして、これは監理委員会ができて、監理 委員会がこれを全部チェックするというんですから。  さっき同僚議員が、鉄監局長はこれから仕事がなくなるのじゃないかと言われたけれども、あなた、これから監理委員会からしりたたかれるんですよ、緊急措置どうなっているか、やってないじゃないかと。首だと言われるかどうかしりませんけれども。そういうことになって国民をいじめ、国鉄の労働者の首を絞める。その先頭に、矢面にあなたが立たなければならない。こんな事態なんです、この緊急措置の内容というのは。大臣、そこまであなたお考えになっているんですか。あなたのお考えを、まず聞いておきたい。
  234. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 緊急措置、多少研究していることも知っておりますけれども、何さま国鉄の財政が本当に大変なことでありますから、やっぱり一遍みんなで真剣に全体で考えるチャンス、しかしその間といえどもいろいろまた手があると私は考えております。
  235. 立木洋

    ○立木洋君 済みません。これで、時間が来ましたので、最後にします。  つまり、この間から言っていますように、本当に政府がやり方が悪かったからなんです、問題は。あなた、収入の六割も投資するなんというような企業ないですよ。もうけの六割じゃないです。収入の六割も投資する、無計画的に。それが全部借金だ、一〇〇%近くも。こんな形でやって、鉄建公団なんかつくられてから、だから国鉄の意思と離れたところで投資がやられて、そして国鉄はあと責任だけ負わされて、借金抱えてどうだ。さっき加藤さんは国鉄が悪い、国鉄が悪いと言われたけれども、そういうふうに指導している政府自身に最大の責任があるんです。私はそのことだけ言って、そのことを肝に銘じないと、何ぼ言ったって国鉄はよくならない。採算、もうけなんかでやれば国民に苦しみを負わせて労働者をいじめる、こういう結果になるのだということだけを述べて、残念ですが、時間が来ましたから終わります。
  236. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  237. 青木薪次

    青木薪次君 総理大臣、御苦労さまです。  国鉄経営が破局的な状況に陥った原因について、過日、私は代表質問をいたしました。そのときに総理の答弁は、モータリゼーションの進展等の社会的な環境の変化に国鉄が十分対応し得なかった。そしてまた、そのことを中心として物差しを当てて国鉄経営再建を図っていくためには、国鉄経営を今日の状況に陥れた真の原因、すなわち道路投資とか、あるいはまたこれらの問題について交通公害の元凶であるモータリゼーションを野放しにしてきた政府の交通政策の失敗を私は指摘しておかなければならないと思うのであります。いままでの質問でも、私は長谷川運輸大臣に主にこの点を中心として質問をいたしたのであります。今後とも高速道路の整備を軸とした道路優先の交通政策が改められない限り、国鉄経営形態をいかに変化させても根本的な解決にはならないと私は思うのであります。この点について、まず総理の御所見を伺っておきたいと思います。
  238. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) いろいろ原因があると思います。その中にやはりモータリゼーションというものがございまして、それに対する対応力がおくれたという点も識者の指摘しておるところでございます。さらばと言って、じゃ道路の建設を中止したり変更したりしてよろしいかというと、そういうものでもないと私は思うのであります。やはりモータリゼーションというものは歴史の趨勢、文明の推移というものに乗ってきておるものでございますから、これが過剰になったり余り弊害を及ぼしてくるという場合にはいろいろ考えなきゃならぬ点もあると思います。  たとえば公害問題とか、あるいは交通によるいろいろな殺傷問題とか、その他不幸な事件が起きたりしております。そういうような問題についてはもちろん規制をする必要があると思いますが、やはり新しい文明の機器ができて、農村でもみんな自動車を一台、二台持つという喜びというものがあるわけでございますから、都会と同じようなそういう文明の恵沢に浴したいというその欲望を抑えることはできないと思うのです。  そういうような中にあって、いかに国鉄がモータリゼーションの時代に対応していくかという努力を怠っていた点あるいは対応力が遅かったという点があるのではないかという気がいたします。たとえば宅配というようなものが出てきておりまして、これが国鉄の小荷物をほとんど奪っているという点がございます。ああいうのは、やっぱり民間企業というものは採算性やらあるいは需要者の要望を酌み取りましてああいうものを考えついたわけでございましょう。そういうようないろいろな面から考えてみると、国鉄の側におきましてももう少し商人的な発想で対抗力をつくっていくという点が必要ではなかったのかとも考えられると思います。しかし、それだけではないと思います。いろいろな構造的な原因もほかにあると考えております。
  239. 青木薪次

    青木薪次君 総理の言いたいのは、企業努力がもう少し足りなかったというところを言いたいと思うのでありますが、それはそれなりにまた後で議論するといたしまして、たとえばいまトラックの関係等においても、白ナンバーで営業行為をやっているトラックが約八百五十万台と言われています。それからちゃんと許可を得てそして営業行為をやっている青ナンバーのトラックが約五十三万台ということが言われている。こういうものについても私どもは違法行為は規制しようというような努力をしたし、また時代の進展に伴って、いま総理の言われました、農村でも一軒に一台ぐらいはマイカーがあるというような旅客車なんかも加えていくと、これがどっと道路に流れていく。しかしながら、今日、道路は満杯の状態である。総理も御案内のように、毎日毎日テレビでもって道路情報を伝えておりますけれども、これを聞かなければ仕事ができないという状態になっている。まさに私は飽和状態にあると思うのであります。  こういうようなモータリゼーションの世の中における対応を誤ると大変なことになる。これが今日もうすでにあらわれていると考えているわけでありますが、今後の国鉄改革を進めていく上で重要なことは、公共輸送機関としての国鉄の使命をどのように考えているか、またどのように評価するかという点があろうかと思うのでありますが、そのことは反面、どの程度の公共的な性格を付与していくかということが国民経済的な見地からなされなければならないというように私は思うのであります。したがって、総合的な政策判断を下すことであると考えるのでありまするけれども、総理に、国鉄が公共輸送機関としてどのような位置づけが必要であるかという点について御答弁願いたいと思います。
  240. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国鉄は明治以来由緒ある歴史を持ちまして、日本の公共輸送及び産業の発展に偉大な貢献をしたことを忘れてはならないと思います。国鉄が現在非常に苦しい状態にあるからといって、過去の日本の歴史にあれだけ大きな貢献をし、情勢によっては国家財政にも寄与いたしまして、国鉄財政から国の一般会計に相当なお金を入れた時代もございます。そういう大きな貢献をしたことも忘れてはならないと思っております。  しかし、最近の戦後の情勢から見ますと、モータリゼーションその他の影響によりまして著しく時代環境が変化してまいりました。しかし、公共輸送としての国鉄の使命、任務、機能というものはまだ重大なものがあると私は考えております。たとえば、これは中距離旅客輸送の問題、あるいは近距離の都市間輸送、あるいは大都市圏内輸送、あるいは一部の貨物輸送、つまり大型定型化したものや定量的なもの、たとえば石油輸送とかあるいは農業関係の米の輸送とか、そういうような定型化した長距離的なもの等については国鉄はまだ十分機能しているところがあると考えております。
  241. 青木薪次

    青木薪次君 そこで、欧米の各国では多額の公費を支出して傾斜化した鉄道の維持に努めているのでありますが、それぞれの国の国家的な見地から公共輸送機関としての鉄道の存在を認めて、国民的な合意のもとに全国的な鉄道網を政策的に維持する努力を実はいたしておるのであります。  ここに資料があるのでありますが、イギリスの国鉄は、収入が一兆三千二十一億円、支出が一兆三千百八十六億円で、損益が百六十五億円の赤字、この中で助成額が何と四千二百七十七億円、三分の一でございます。  それからドイツ連邦鉄道の場合においては、収入が二兆七千五百四十六億円、支出が三兆一千七百二十八億円、この中で一兆二千百三十五億円、収入の半分近いものを国が支出いたしております。  フランスの国鉄は、収入が一兆八千七百五十二億円、支出が一兆九千六百五十二億円、一兆五百二十一億円の助成をしている。  アメリカの一級鉄道は、収入が六兆二千五百二十六億円、支出が五兆七千九百三十四億円でありますが、貨物鉄道が主で、民営鉄道であるために連邦からの助成は、これは黒字でありますし、ない。  こういうことでありますが、これらの点を考えたときに、いま言った鉄道網を政策的に維持する努力というもの、単に経済的な見地から赤字を解消するというだけでもって国民の財産である国鉄を分割して解体して民営に持っていこうとする臨調考え方というものについては私は大変問題があると思うのでありますが、総理はその点についていかがでございますか。
  242. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国鉄あるいは鉄道経営状態あるいは形態というものにつきましては、各国おのおの歴史的因縁及び現代的意義というものにかんがみて、おのおのがそれぞれの処置をとっているものであると考えております。  日本におきましては、国鉄につきまして六次にわたる改革案をたしか実行してきたつもりでございます。そういう情勢を踏まえまして、臨時行政調査会において国鉄に関する改革案を提示いたしました。政府といたしましては、その方針を最大限に尊重してこれを実行していく、こういう閣議決定もやっておりまして、臨調の線に沿ってこれを実行していきたいと考えておる次第であります。
  243. 青木薪次

    青木薪次君 欧米各国の国鉄に対する三分の一または二分の一の多額な助成について、日本の総理として中曽根総理大臣はどうお考えになっていますか。
  244. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) わりあいに欧米は国有型あるいは公有型の社会あるいは国柄が多いといままで私、観察しておりました。たしかサッチャーさんのイギリスは、しかしこれを民有化していく、そういうような改革をやろうとしているというふうに先般聞いておるところでございます。  したがいまして、国によっておのおの特色があると思うので、一概にそのやり方を日本に援用してくるということはまた問題ではないかと思うわけです。その国の人口、あるいは貨物や旅客の移動状況、あるいは鉄道の果たしている機能、人口の都市集中度、その他いろんな面がございまして、必ずしも一概に断定するわけにはいかないと思います。
  245. 青木薪次

    青木薪次君 いま総理が、臨調答申を受けてこの国鉄監理委員会制度をつくって、ここで出された結論については最大限尊重する、最大限ということをあえてうたっているわけでありますが、いまもその気持ちには変わりありませんか。
  246. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 変わりはございません。
  247. 青木薪次

    青木薪次君 そういたしますと、今日、北海道、四国、九州、本州をまさに七分割するというような、私どもから言うならあえて無謀な答申臨調が出した。そのもとに七分割した場合においては、そのところどころの北海道鉄道会社、あるいはまた九州、四国、それぞれの鉄道会社、本州を四分割したいわゆる七分割ということを明記いたしまして、そしてそれを前提として分割民営だということを言っているのでありますが、この結論について総理はどういうようにお考えになっていますか。
  248. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 御承認をいただいて設立されるこの監理委員会におきまして、それらの具体化については鋭意検討して成案をつくっていただけるものと考えております。  その監理委員会の結論について政府はこれを尊重して実行すべきものと考えておりますが、監理委員会はこの臨調答申というものを基本線としていろいろ現実案をお考えになるのではないかと思います。そういう意味において、監理委員会臨調答申を尊重してその結論を出すことを政府としては期待をしておりますが、それらは監理委員会皆さんがお考えくださることであると考えております。
  249. 青木薪次

    青木薪次君 主に赤字の地域ですね、ほとんど赤字なんでありますけれども、たとえば総理の地元の、午前中もちょっと同僚委員から出たわけでありますが、長野原というところがあります。ここの自動車常業所は黒字なんです。これもたとえば民営ということになった場合においては、単に赤字だけの分野においてこれらの問題を議論するということでなくて、やはり分割民営といったような問題については今日の国鉄の特性を発揮することについては困難じゃないかというように考えているのでありますが、その点いかがですか。
  250. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国鉄全般を見ますと、黒字の部分もあれば赤字の部分もある、あるいは公共的な部面で国鉄が公共性をしょっているという部面もある、おのおのこういうセクション、セクションによって特色があると思います。それら全般を踏まえましていかに合理的な案をつくるか、監理委員会皆さんがお考えいただけるものと期待しておるわけであります。
  251. 青木薪次

    青木薪次君 自動車とか内航海運とか航空とか、この間で、いま全く独占ではない交通産業の中において厳しい競争下にあるわけであります。鉄道を今後どのように維持して再生していくか。総理が先ほどおっしゃったように、中長距離の輸送あるいはまた地域間の輸送といったような問題についての国鉄の役割りというものは私もまた同感なんでありまするけれども、総合的な交通政策上の見地から鉄道の将来というものが展望されなければならない。  そういう意味で、本当の意味での国鉄再建はそういう立場に立って進められるべきであるというように考えているわけでありますが、臨調答申は交通政策的な立場を余り考えずに、合わせて一緒とかというぐあいに出してきている。したがって、日本の各地域、北海道、四国、九州ということを言ったのでありまするけれども、本州の中においても東北と関東、あるいはまた関西等の事情というものは違っているわけでありますが、それらの関係を余り考えないで分割民営ということだけで出してきたという点について私は大変問題があると思っているわけでありますが、この点について、総理は任したのだからいいのだという立場におられるかどうか、御所見を伺いたいと思います。
  252. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) いろいろ御議論があると思いますが、臨調の皆様方は各地の特性等も十分お考えの上、かつまた総合的な輸送体系全般の中で国鉄が今後どういうふうに運命をたどっていくであろうかという点も十分お考えの上案を練られたと聞いております。そういう観点からいたしまして、臨調答申の線というものは妥当な線ではないかと自分としては考えていることでございます。
  253. 青木薪次

    青木薪次君 臨調答申どおり国鉄の分割民営化が実施されていきますと、地域の鉄道網は一体どうなるだろうか。先日、北海道と九州でもって本委員会で地方公聴会を開催いたしました。北海道では賛成、反対という立場に立って、それぞれ学識経験者、民間の有識者の御参会を得て、いろんな貴重な御意見を聞いたわけでありますが、監 理委員会法、いわゆる国鉄経営する事業再建推進に関する臨時措置法、この法律については賛成だという立場の人も総じて絶対に分割民営化はやってはならない、こういうような意見がこれがいわゆる島と言われる人たちの大勢であるということについて、私は、いま総理が妥当な意見だということをおっしゃっても、九州も四国も北海道も日本ですから、その点については大変問題があると思うのでありまするけれども、この点についてはいかが考えますか。
  254. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国鉄責めに帰すべからざるいろいろな経費等については、これは監理委員会におきましてもまたいろいろ考えるところはあるだろうとわれわれは考えております。しかし、一応経営の効率化、あるいは経営者とそれから労働者の側における主体性の確保等々の考慮から見まして、かつまた管理能力という限度から見なして、一応大体五万人ぐらいが現場を持っておるところを管理する可能性があるという点等々も考えまして、いろいろな研究が臨時行政調査会においてなされたと私は聞いております。そういう面からいたしまして、いろいろな問題点は内包されていると思いますが、それらは監理委員会におきまして十分いろいろ考えた上処理されて案が出てくるものであろうと考えております。
  255. 青木薪次

    青木薪次君 今後の国鉄経営形態を検討していく場合には、国鉄の公共的な役割り、それから総理がいま五万人と言われたのでありますが、全国的なネットワークですね、これが国鉄が公共的な役割りというものに裏づけされて対応しなければならぬと思うのでありまして、公共的な負担をどのような方法で負担をしていくかが明確化される必要があると思うのでありますが、その点について、ただ五万人、こちらも五万人程度ということだけで考えていくと大変問題があると思うのでありますが、管理体制の問題と、分割民営化という形で分離してしまって財産も資産も全部分けてしまう、そしてそのところどころでもって経営をしていく、こういうことと私は違うと思うのでありますが、その点、総理は、ただ臨調皆さん御苦労さん、監理委員会すべて頼む、こういう立場だけに立っていくと大変問題が出てくると思うのでありますが、その点どう思いますか。
  256. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 基準点は臨調答申というものがあると思います。それを具体的に処理していく具体案をつくるという、ある意味における応用問題も含めた処理案というものは監理委員会皆さんがおつくりいただけるものであると政府は期待しておるわけであります。
  257. 青木薪次

    青木薪次君 公共負担を受け入れやすい経営形態、これはどういうものであるかということになりますと、そういう見地から今後の国鉄経営形態というものを議論いたしてまいりますと、ただ単に企業的な側面だけで問題を見ることは大変問題だ。総理も公共的な役割りというものをいまお認めになっておられますけれども、どうしてもやはり先に出てくるものは企業性という問題だけ先に出て、そのもとで議論をして、そして人は何十万人減らすとか、何万減らすとかという議論がそれだけに出てくる。  いまの国鉄は、総理も御承知のように、生産性の向上という問題については、働く労働者にそれこそ苛斂誅求を課して、そして頭数をどんどん減らしていく中において生産性を向上している。こういう状態から脱皮しなきゃならぬと思っているわけでありますが、企業的な側面だけ考え国鉄経営形態のあり方を考えるという点についてはこれは大変な問題があるのではないだろうかというように考えているわけでありまして、いま国鉄の労使が大変な努力をいたしているわけでありますが、その点について企業的なものだけを追求するということでは大変問題があるというように、いままでの長い間の本委員会の本法案に対する議論を通じて、大体その点については一致した見方だと思うのでありますが、総理はどうお考えになりますか。
  258. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げますように、国鉄に内包されておる公共性というものは十分われわれも意識しなければならぬと思いますが、しかし国鉄がなぜ改革を要するか、国民の側から激しい批判をなぜ国鉄がいままで受けてきたか、そういうものを見ますと、端的に考えてみますと、私鉄国鉄とをすぐ比べられるわけであります。  桜木町の駅一つ考えてみた場合に、国鉄の桜木町の駅とほかの東急でございましたか、桜木町の駅の人員、電車が入ってきた場合に何人飛び出すか、職員の数、そういういろんな面等も見まして、民衆は鋭くそれを見ておったわけでございます。そういういろんな面等も一つの要素としては考えざるを得ない。  そういう意味から見ましても、一面において経営の主体性を確立する、また一面においては労働権も確立する、そして経営と労働というものがおのおの主体性を持って、しかも責任を持って相対し、相協力しつつ効率を上げていくという方が長い目で見て効率的ではないかという、そういう判定を持っているのではないかと考えております。
  259. 青木薪次

    青木薪次君 総理、国鉄の受け持っている業務内容が、徹夜でもって朝まで全部列車が通る、夜間の人も必要だという中で、その点はちゃんと比べています。私たちも検討しました。ただ、桜木町の駅には、私鉄は何人いる、国鉄は何人いるというようなことだけで問題を見るということは、これはまことに皮相的な見方じゃないかというように考えているわけです。能率的な経営をすることについて何もわれわれも反対しているわけじゃないんですから、この際、総理はそういう点についてやはり検討をしてもらいたいというように思います。  さきの臨調答申を受けて直ちに最大限尊重するという方針を政府は出したけれども、これまでの審議の過程で担当の長谷川運輸大臣にも、後藤田官房長官にも、行政管理庁長官にも、答申が出されるまでの議事録について、私どもはどういう意見があるかということを検討したいということを言っていたのでありますが、日本の有識者に議論をしてもらったわけでありますから、これらの議論なり討論の過程というものについて国会はこれを知る必要があると思いますが、いかがですか。
  260. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) これは行政管理庁長官のころから一つの問題点でございまして、国会で私も質問を受けたことがございます。しかし議事録は公表しない、そういう結論を臨時行政調査会におきましてもみずから決めたのでございます。私はそれは妥当なやり方であると思っております。やはりこういう重大な、機微な問題につきましては、委員の自由な言論を保障するということが大事であると思いまして、議事録を公表するということは今後やはりいろいろな問題を後から起こす、そういうことになって結局自由な言論が保障されない、そういう危険性がなきにしもあらずであります。そのかわり、会議がありました後で常に報道係がその会議の内容を報告しておりますし、あるいはまた適当なときに委員会の報告書として、専門部会の報告書としてそれらは提出されておるのでございまして、そういう国民大衆に対する情報の供与という点においては十分行われている。要するに、結論が国民の前に明らかにされる、結論が生まれるまでの各委員の発言や何かについてはこれは表へ出さない、それが自由を保障するもとになるのではないか、そういう考慮であります。
  261. 青木薪次

    青木薪次君 一国の総理がそういう答弁をされるというのは、私は大変残念なんです。なぜかといえば、国権の最高議決機関であるところの国会に対して、どなたがどういう良識に沿った議論をしているか。われわれは、やはり国鉄をよりよいものにして、国民のために役立てる国鉄にしていこうとする努力というものが今日の議論の内容であることは間違いないわけですから、そういう点で答申の内容を十分吟味することなく安易にやっぱり最大限尊重と言った政府に問題があるのだけれども、この点は常に私どもが本委員会において議論をしてきた一つでもあるわけでありますが、 総理も前行管庁長官として、ただ単に結論を事務局から聞いて、内容を全部調べないでやるといったことではないと思うんです。今日、総理になられて、どなたがどういう見識を持っておられるか、どういう意見を持っておられるかということについては、私はやっぱり聞いておくべきだし、また今後において私ども議論の参考とするということについては当然の考え方であると思いますが、私の考えは間違っていますか。
  262. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 私も、行管長官在職中は委員会の内部における顕著な御議論については聞いておりました。それはいろいろわれわれが参考にする必要のある議論がまたあったからでもあります。しかし、それはだれがどう言ったかということは、私はだれにも言いません。外には言いません。それはやはり行管長官として取りまとめをしていく必要上知っておく必要があるから、そういうことになっておるわけでございます。  しかし、委員の中には、またある段階になりますと、個人的意見をパンフレットにして配布なされた委員もございます。それはその委員意見を、皆さんの御了承も得て明らかにしたことでありまして、そういうこともある次第でございまして、必ずしもそういうものを出すのを否定まではしておらなかったのでございます。私は、臨時行政調査会がとりました議事に関するやり方は適当であると考えております。
  263. 青木薪次

    青木薪次君 私は、民主主義下において秘密があってはいけない。特に、これらのことは国家機密とかなんとかという範疇には入らないと思うのでありますが、総理、どう考えますか。
  264. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国家機密という、そういう性格のものではございませんが、しかし国鉄の重大な問題の運命を決めるという大事な内容を持っておるものであります。あの審議の過程を見ますと、土光さん以下、委員あるいは専門委員のところには、何十枚、何百枚という手紙やはがきがあのころ来ております。また、電話も相当個人的に来ておりまして、なかなか熾烈な議論が行われたときになりますと、ある委員からの話によると、脅迫がましい電話も来ておったということを当時私聞いております。そういういろんな面からいたしましても、言論の自由を保障するためににやはりそういう内容は秘密にしておくことが適当であると感じておった次第であります。
  265. 青木薪次

    青木薪次君 この点は大変問題になったところなんですけれども、私どもは国民代表としてそれぞれ何十万、百万という単位で選出をされてきている国民代表です。そのところでもって脅迫的な議論をするわけでもなし、あるいはまた真剣になって国民経済的な立場、国民福祉的な立場から国鉄の将来のあり方等について検討するこの権威ある委員会に対して、その討議の過程について報告をしないで、また資料の提示もしないでやられるということについては、僕は大変問題があると実は思っているわけであります。この点については、やはりこれは将来とも問題になると思うのでありますが、この臨調というものがいま解散いたしましたけれども、将来またあり得ると私は思うのです。その点、総理がそういう姿勢であっては私は困ると思うのでありますが、もう一度その点について、国民代表のこの委員会にも提示できない秘密なものなのかどうなのか、これは今後の参考のために私は聞いておきたい、こう思います。
  266. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国会の場合は憲法上の身分の保障がございまして、院内における発言、表決については院外で責めを負うことがない、そういう保障もございます。あの八条委員会、政府の諮問委員会の場合にはそういうものもございませんし、かつまた審議の内容等につきましてはいろいろ国鉄の運命を左右するようなデリケートな問題もございます。したがいまして、ある場合には労働組合に嫌な発言をする場合もありますし、ある場合には経営者に対して著しく厳しい批判をする発言もございます。そういうものが一々外へ出るということは必ずしも将来委員会を円滑に運営するゆえんにはならないと思うのであります。  ただし、それらの審議の結果、結果がまとまったとかまとまらなかったとか、そういうことにつきましては一々その都度新聞記者の皆さんを初め一般に公表して報告しておるところでもあり、かつ専門部会は専門部会としてその報告書を提出しておる次第でございますから、まず妥当な考え方であると思っております。
  267. 青木薪次

    青木薪次君 この点は、これは将来の課題として私は時間がありませんから質問を保留いたしますが、いずれまた予算委員会やその他において総理の意見をいろいろと聞いてまいりたい、こう思っております。  長期債務の処理と青函トンネル等の負担の問題、特定人件費の負担問題等の重要な問題について政府はすべて国鉄再建監理委員会で検討してもらう問題だとして、私はこれは全く責任逃れの答弁に終始していると思うのでありますが、これでは国鉄再建の問題を論議してもなかなかこれはうまくいかない。国鉄再建監理委員会任せの態度というものはこれは早急に変えてもらわなきゃならぬと思うのでありますが、政府みずからこの処理に当たるという姿勢をこの際示すべきじゃないか。特に、総理が指導力を発揮いたしまして、関係の各省を督励いたしまして問題の処理に当たるとの態度を示してもらいたいというように思うのでありますが、総理の御決意を伺いたいと思います。
  268. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) いま御指摘になりました問題は非常に重要な問題でございまして、ある意味においては構造的要素を持つものでもあります。これらは国鉄全体の改革案の中でどういう位置づけが行われるべきか、またそれらの負担分割についてはどういうふうに行わるべきか、きわめて財務上の関係もあるむずかしい専門的な問題でもございまして、これらを判定するには若干の時間と勉強を必要とする内容であると思っております。そういう意味から、この監理委員会の皆様方が国鉄のこの再建全般というものをにらみながらこれをどういうふうな位置づけをし、処理していくかということが適当な問題であると考えております。
  269. 青木薪次

    青木薪次君 総理、長い懐妊期間を持っておりましたが、東北・上越新幹線が開通いたしました。これは東北や上越方面においては相当国民経済的にもプラスになったし、またこの地域における開発にも相当役立ったわけでありますが、内容はと見ていきますと、東北新幹線は、収入が一千億円、そして運営費が五百億円、利子、減価償却が二千四百億円で合計して千九百億円の赤字であります。上越新幹線は、収入が五百億円で運営費三百億円、借料が一千億円、利子が二百億円で、これがまた合計して一千億円の赤字となっているわけであります。合計して二千九百億円の赤字というものを負担しなきゃならぬということになっているわけでありますが、これからどうなるかわからぬし、まだ使い道もわからぬような青函トンネルの使用の仕方等についても私は大変問題になるところだと思うのでありますし、これは政府の政策的な立場から二転、三転いたしまして、青函トンネルは掘るのだ、こういうことに実はなったのであります。  私どもが先般OECDへ行きましたら、イギリスやフランスの代表から、一体あの青函トンネルは何するんですか、これは防衛のために役立てるというけれども本当ですか、あるいはまた油タンクをここに貯蔵するそうだけれどもどうなんですかということさえ聞くくらい、その帰趨については一体どうなるかということが実は注目されているわけであります。しかし、国鉄で現在線を通すということが大体においてあうんの呼吸で決まったというようなことを言われておりますが、こういうことになったら私は大変な赤字になってくるのじゃないかということで、実はいま大変な恐れをなしているわけであります。本四架橋といえどもそのとおりであるわけでありますが、こういう点について国鉄当局にこれは負担せよというようなことをよもや言わないと思うのでありますが、これも監理委員会に全部任して総理は黙って見て いるんですか。
  270. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 青函トンネルにつきましては、すでに運輸大臣から御答弁があったと思いますが、それは活用したい。  それから、新幹線の赤字問題等につきましても、同じようにこれは国鉄全般の問題としてこれをどういうふうに処理していくかという考え方で処理すべきものと思っております。
  271. 青木薪次

    青木薪次君 それでは、この問題は、当然公共性のある国鉄といえども、今日ここまで負担をして、そして国鉄が引き受けるという点については大変問題があるということを総理もお認めになっていると私は理解いたします。  そのほかに、いままで私ども運輸委員会で六たびも国鉄再建問題について議論をしてきた経過があるわけであります。それから附帯決議等においても何回も何回もやってきたのでありまするけれども、一回といえども、一項目といえども政府はこれを守ったことが実はないのであります。金がないと言えばそれまでなんでありまするけれども、たとえば通学割引や身障者の割引等の公共割引のために毎年七百億円程度の負担を強いられているのでありますが、この点については今度の監理委員会できちっと結論が出るというように考えておりますか。総理は運輸大臣をやられたことがあるわけでありますが、結論が一向に出ないという点についてはどうお考えになっていますか。
  272. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、今回の臨調答申におきましてもその処理について言及しておるところがございまして、監理委員会においてもこれは結論を出していただけるものと思い、政府はその監理委員会考え方を尊重すべきものと考えております。
  273. 青木薪次

    青木薪次君 いまの是正の問題については、五十五年に各政策担当の省庁で予算措置をとることを決めているんです。決めているけれども関係各省の調整がつかないということになっているわけでございますが、この問題の解決に監理委員会任せということは、これはやっぱり今日責任逃れもはなはだしいと私は考えているわけでありますが、総理が指導力を持って監理委員会皆さんとの話し合いに応ずるという考えはありませんか。
  274. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) この点は、すでに先ほど申し上げましたように、臨調答申の内部におきましても大体の処方せんが明示されておるのでございまして、監理委員会はその臨調答申を尊重して具体的なお考えを示していただけるのではないかと思うのです。政府は、それを尊重すべきものと考えております。
  275. 青木薪次

    青木薪次君 これらの問題は、総理の権限をもってしてはこれはたちどころに実はできる話であります。いま内閣に国鉄再建対策推進本部を設けたり、国鉄再建関係閣僚会議を設けているのでありますが、この役割りというものは一体どういうものですか。
  276. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 推進本部の方は、たしか私が本部長でありまして、いま国鉄がせっかく努力していらっしゃる十一項目初め、そのほかの国鉄再建に関するいろいろな努力を推進する、そういう役目であります。また閣僚会議は、この監理委員会からいろいろ案が出てきたりいたしましょう。その監理委員会の案をいろいろ検討いたし、監理委員会とよく協力し合いまして、国鉄再建につきましていろいろ各省統一した意見をつくり、協力していく、そういう性格のものではないかと思っております。
  277. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄監理委員会との関係では、私はあえてこの監理委員会皆さんがどういう人がなるか知りませんけれども、内閣の中に国鉄再建関係閣僚会議を設けたり、推進本部を設けたり、しかもその推進本部長が中曽根総理大臣だということになれば、監理委員会で決めたものを総理が受けて、そして最大限尊重するという立場に立ってそれを推進するという役割りを果たすのか、あるいはまた別にこの国鉄再建関係閣僚会議は国鉄問題を扱う関係の省庁の大臣が中心となって一般的意味においてやられるのか、その点は大変疑問になっているわけです。屋上屋を重ねるのじゃないかという議論が、臨調で行政改革をやるというときに、二階どころか三階も四階もできているのじゃないかというような議論があるわけでありますが、もう一度その点について、総理の指導力というものは一体どこに出てくるのか、担当大臣の指導力というものはどこに出てくるのかという点について非常にいま国民は疑惑に思っているわけです。その点について、ひとつ明確に答弁してもらいたいと思います。
  278. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 閣僚会議は、国鉄再建問題等につきまして各省の意見を統一し、そして監理委員会がつくった問題、あるいは監理委員会からいろいろ具申やら意見が出てまいりますが、それらを閣僚会議において審議して、政府としての統一見解を決める、そういうことであると思います。  また、推進本部は、ただいま実行していらっしゃる十一項目初め、国鉄再建に関する実行行為についていろいろこれを推進していく、そういう立場にあると考えております。
  279. 青木薪次

    青木薪次君 これは変わった質問でありますが、総理は、今回東南アジア五カ国を訪問された際に、マハティール・マレーシア首相との間に鉄道の建設について七百五十キロ、もちろんこれは日本で言えば赤字の最たるものになると思うのでありますが、この鉄道の建設について、また近代化について積極的に援助しようということを決めてこられたということが報道されておりますが、これは事実ですか。
  280. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) マハティール首相は、ルックイーストという政策をもちまして、東を見る。日本や韓国やそのほかアジアの東の地帯を勉強する。そういう政策をもちまして、いままで英国やヨーロッパを見ておったのに大転換の政策をいま行いつつあるところであります。  そのマハティール首相のお考えについては、私もできるだけ努力いたしましょう。日本がそんな模範になったり、モデルになるという要素があるとは思いません。特に、経済的に強いからといって道徳的に価値があるものとは別のものである、そう考えています。そういうことも申し上げましたが、しかし、そういう技術的な問題や経済的な問題についてわれわれが役に立つならば御協力申し上げましょう。そういうように申し上げてきまして、その中に鉄道建設の問題があったのであります。  現在ある狭軌のものや古臭いものを直したい、あるいは新しく横断鉄道をつくりたいというような構想を私におっしゃいました。すでにわが国におきましては、JICAがこれに協力して一部調査をやっておるところもあるのであります。したがいまして、この調査につきましてはJICAを通じまして御協力申し上げましょう、そういう答弁をしてきた次第でございます。
  281. 青木薪次

    青木薪次君 総理は、レーガンのところへ行くと大変すばらしいタカ派的な発言をする。すばらしいかどうか知りませんか、大変国民をあっと言わせるような、それこそ東条さん以上の強力な発言をする。そして、今度は東南アジアへ行くと、これまた中曽根総理はハトもハトも全く平和なハトだというような発言をされている。この中で、私どもはこうも違うかと。あなたは鶏と言われた。鶏がハトに変わったのじゃないかと新聞に出ておったんですけれども、円借款は千九百九十九億一千万円を新たに追加したんですか。いままであるのと合わせるとこれだけになったというんですか。どうなんですか、この点は。
  282. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 別にハトになったりタカになったり鶏になったりするところではございません。私は一貫して同じ政策をアメリカにおいても言い、日本においても言い、ASEANにおいても言ってきておる次第でございます。  円借款は、いままでASEANの国については毎年供与しております。日本は軍事大国にならない、そういう約束をいたしまして、そしてそのかわり経済的、技術的にいろいろ貢献をいたします、国際的な協力もいたします、国際並みの努力をいたします、そういうことも言いまして約束し てきておるところでございます。特に、南の国の方からは北に対する厳しい批判がございます。私が回りましたブルネイを入れますと六カ国になりますが、皆さん異口同音に北の国に対するいろいろ批判や要望を強く言われまして、来るべきサミットにおいて発言してくれと各地で言われてまいりました。日本は、そういう意味におきまして軍事的貢献はできないけれども、しかし技術的、経済的な貢献は御要望があればできるだけやります、そういうことを私言ってまいりましたが、歴代の内閣もそれをやってきたわけです。  それで、大体年間、国によって違いますが、四百億円とか六百億とか、そういう円借款を供与し、また数十億円、場合によっては百億円ぐらいになるかもしれませんが、いわゆる無償協力をやってきた。この円借款と無償協力、これは毎年やってきておるわけです。今回、私が参りました時期に今回の分を私が申し上げてきた、そういうことでございます。
  283. 青木薪次

    青木薪次君 いま日本は、非常に財政的な困難な事態に逢着しているわけであります。私は、東南アジアその他の国に対して援助をすることについても賛成です。賛成ですけれども、どうも総理はこの辺へ行って非常に大盤振る舞いをした傾向を指摘せざるを得ないと思う。ですから、うちの中の問題については内面をきわめて悪くしておいて、外面だけはきわめていいというかっこうだけは、これはやっぱり慎むべきだと私は思うんです。  そういう意味で、国鉄再建を図っていくために一番重要なことは自主的な経営権限を国鉄に与えることだ。年度末手当の〇・一を国会に持ってこなきゃ決まらぬような状態では、これは総裁あっても総裁じゃないんです。雇われマダムという話が出たけれども、雇われマダムはもっと権限を持っていると私は思うんです。ですから、国鉄職員等についても、分割民営化というならば労働基本権も与えなきゃならぬし、そういう点についても、あわせてやっぱり待遇の問題やその他についてもしかるべく両々相まってやっていくべきである、これを監理委員会として位置づけてやるべきであると思うのでありますが、総理の御意見を伺いたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 民営化という形になりますれば、当然そういう形になると思います。  ただ、国鉄は大きな公益性を持っておるものでございますから、私鉄も公益性を持っておりますが、一般のそういう公益性のないものとあるものとの差はあるでしょう。しかし、経営権、労働権というものが、お互いに対等の立場で協議をし、団体交渉をして物を決めていく、そういう労働法等に基づく権利は当然これは回復さるべきものであると考えます。
  285. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄再建監理委員会を早期に発足したいということをおっしゃっているわけでありますが、監理委員会を五人と予定されていらっしゃるようでありますが、この具体的な選考基準については国民の各界各層を網羅した形でもって人選をされる、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  286. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 結構でございます。
  287. 青木薪次

    青木薪次君 そういたしますと、たとえば労働代表といったようなものについても考えているということに受けとめてよろしゅうございますか。
  288. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) まだ法律が成立もしないうちに、だれをどう選ぶなんという越権なことはやっておりません。ともかく、国民的視野を持った、そして国鉄問題等について見識のある、しかも国鉄について情熱を持っておる、そういう普遍的な形を持った人種を選抜すべきものであると考えております。
  289. 青木薪次

    青木薪次君 私どもだって国鉄問題についての見識を持っているし、これは人種に入るかどうか知らぬけれども、大体そういう立場で、議会の代表を選ばれるかどうかは知りませんし、また恐らく選ばれないのではないかと思っておりますが、長谷川運輸大臣のところではひそかに検討が加えられているということのようでありますが、これは総理と運輸大臣との間でこの再建監理委員会の選考について話し合ったことはありますか。
  290. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) まだございません。
  291. 青木薪次

    青木薪次君 私は、やはりこれらの点についてはひとつ議会側、特に各党ともいろいろ話し合って参考にするなど、広く国民代表あるいはまた各界各層の意見を聞くという態度をとってもらいたい。事柄がきわめて重大な問題を審議し、決定されるわけでありますから、そのように要望いたしたいと思いますが、いかがですか。
  292. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように、全国民的視野を持って、しかも国鉄経営あるいはこの再建についてやはりしっかりした見識を持っていると国民からも見られる方で、しかも情熱を持っておる、そういうりっぱな方を選ばしていただきたいと考えております。
  293. 青木薪次

    青木薪次君 いつ発足させる予定でおりますか。
  294. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) いつ法案を成立さしていただけるかということにかかっております。
  295. 青木薪次

    青木薪次君 私は、この再建監理委員会というものは屋上屋を重ねるものである、こういう立場に立って反対という立場をとっておりますけれども、やはりそれらの関係については、できるということになるならば、これはやはりわれわれの意見というものを十分聞いて、そして公平無私、まさに私が質問してきたような問題がこれらの監理委員会皆さんで取り上げられて可能になり得るような見識を持った、情熱を持ったと総理が言われましたけれども、そういう人の人選を要請いたしまして、私の質問を終わります。
  296. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣、私たちはこの法案については賛成の立場ですが、またいろいろ審議の過程においてまだまだすっきりしないものもありますけれども、疑惑も解明してきました。今回、連休も続きましたし、総理も東南アジアからお帰りになったばかりなものですから、いい機会ですから、まず冒頭、当面の政治課題につきまして二、三お聞きさせていただきまして、あと本法案について、行革を含めまして、広い範囲でひとつ聞いていきたい、こう思います。  まず第一は、田中元総理の辞職決議案のことですが、この過程につきましては総理御案内のとおりでございまして、衆議院の議運で、与野党の攻防というよりも完全に対決の姿勢で終始しているわけでございまして、野党側はすぐ採決しろ、与党自民党さんの方は審議をもっとやりたい、採決は延ばしたい、こういうことでありますが、総理大臣としまして、また自民党の総裁としまして、この辞職決議案の取り扱いは、国会におきまして先国会から非常に重要な問題として国民注視のもとでやっと審議が再開され、しかし幾ばくもない今国会の中において与野党は完全に行き詰まりだ、こんな様子なんですが、総理大臣、ひとつ、基本的には総理はこの決議案には反対、こういう姿勢をとられていたわけでありますが、いまのこの衆議院の議運の様子をごらんになりまして、もっと審議を尽くす、そして採決はもっとその後にすべきだ、こういう考えをお持ちでしょうか。
  297. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) この問題はすでに国会の重要案件になっておりまして、議運でいろいろ御論議を願っておるところでございまして、行政府がくちばしを入れる筋のものではない状態になっております。したがいまして、国会における御審議の情勢を見守っていきたいと考えております。
  298. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういう答弁がこういう問題についていままで絶えず総理の口から出てきたわけでございますけれども、重要だというこの総理の御発言、重要だからこそ審議の状態というものが非常にいまデッドロックに上っているわけであります。総裁としても、やはりこれについて重要だという立場から国会、立法府に圧力を加えるということじゃございませんで、与党自民党の総裁、責任者としても、また当然行政府の長としましても、これについてやはり全然考えがない、こういうことではないと思うんです。見守るという姿勢はわかります。立法府でやっていることですか ら、見守るという姿勢は当然だと思うんですが、総理大臣としても、また自民党の総裁としましても、やっぱり一つの意見を持ち合わせていないということはないと思うんです。ですから、その意見をお聞かせ願いたい、こういうことなんですが。
  299. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) ともかく、この問題はいま議会の重要案件に上程されておりまして、各党でいろいろ御論議をしておるところでございますから、行政府の長といたしましては意見を申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  300. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません。もう一つだけ、くどいようですけれども。  先国会からの重要案件なわけです。あと参議院の選挙もありますし、もう二週間足らずで国会が閉会するわけです。延長したって、これは一週間延びるか延びないかです。そうすると、いまのままですと、これは完全にたなざらし、マスコミの活字には自民党はたなざらしをはかっているのではなかろうか、こういうベースにいっているわけでありますけれども、できれば今国会で、重要だという総理の発言があればこそ何とかやっぱり国民の皆さん方に対してどうなり一つの決着をつけなきゃならないのじゃないか、こう私は思うんですが、その意見について総理はどうでしょうか。
  301. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 黒柳さんの御熱意はよく理解できるところでありますが、行政府の長としては国会の審議を見守らしていただきたいと思います。
  302. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一つ、済みません。  緊急の政治課題ですが、衆議院の解散のことですけれども、同時選挙は一〇〇%近くない、こういうふうに総理みずから断言されたわけでありますが、しかしいままで総理大臣は野党から内閣不信任案が出されればそれに応ずる、解散の示唆と、こういうことが報道されてきたわけでありますが、いまの時点においては総理はどうお考えでしょう。
  303. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) これは野党の皆さんが御自由にお考えくださることでありまして、われわれがとやかく制肘すべき問題ではないと考えております。
  304. 黒柳明

    ○黒柳明君 確かに衆議院の解散は総理の専権事項であります。しかし、かといいまして、その解散権をいたずらに乱用することはまかりならぬ。国民に対して政策の選択を問うとか、あるいは野党から不信任案が出た場合、そういうときに当然総理の専権事項である国会の解散権、こういうものについて決を下すときが来るわけでありますけれども、一部の報道やなんかについてのこれはうわさとして、総理も東南アジアから帰られて否定はしたんですけれども、そういう筋論からいいますと、どうもロッキード判決の田中元総理の第一審判決の秋、その前の八月の解散ということは筋論として通らないという感じかするんですが、その点いかがですか。
  305. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 私は、クアラルンプールでいわゆる内政懇ということをやりましたときに、記者の皆さん方とお話し合いをいたしました。今議会はともかく行政改革法の重要案件を成立させることに専念をして全力を注ぎます、それでこの重要案件が成立すれば今議会後半の意義は大部分達せられたものと自分は思います、なおウィリアムズバーグのサミットもありまして、やはり国会解散というような宙ぶらりんな状態でそういう重大な国際会議に出ることは余り好ましくない、一体選挙があってどういう内閣ができるかわからぬ、そういう状態のもとに重大な国際会議に出ることは私は適当ではない、そう自分は思っておる、したがってダブル選挙というものは好ましくない、考えておらぬ、そういうことを実は言明しました。  特に、ウィリアムズバーグの国際会議というものを非常に重要視して、そういう宙ぶらりんな形で行くことは本当に適当ではない、日本の発言権にも関係してくる、そう思っておったからでございます。新聞記者の皆さんが、それじゃ夏まで解散はないのかというお話でありまして、参議院選挙がありますし、参議院選挙が終わったら臨時国会が召集されますから、暑いうちはそういうことはないと思いますと。じゃ、八月まではないのかと言うから、そんなことでしょう、そういうふうにお答えしたのが新聞に載った内容で、本当の内容でございます。それ以後のことは一切発言しておりません。
  306. 黒柳明

    ○黒柳明君 秋十月ごろに予定されております第一審判決、ロッキードの田中元総理の判決と解散とは総理の頭の中で何らかの関係性というものを持って考えておりますか、あるいはそんなものは全然関係がない、こういうふうに思っていますか。
  307. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 全然関係ありません。
  308. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど加藤さん、臨調の元第四部会長に話を聞きまして、その前に政府側といろいろ国鉄の今回の委員会の問題につきまして論議したんですが、結論としまして、臨調の加藤元第四部会長は非常に大確信を持って分割民営について将来は明るい、ただし、これも絶対成功するかどうかということは神ならぬ身の知る由はないところである、こう言っているわけです。ところが逆に政府の方は、将来の見通しについてはともかくやってみなきゃわからない、こういう発言がしばしば答えで返ってきました。  そこで、総理大臣、この臨調答申を尊重する、これは結構です。ただし、尊重するだけじゃ、臨調の姿勢と行政府の立場とはこれは全く違って、これからも責任を問われる立場であります、総理大臣は、行政府は。となりますと、やっぱり今後の見通しについて、総理大臣としてはこの分割民営という臨調答申というものを実行に移せば間違いなくこの国鉄再建はできる、そういう確信があってのこの法案の提出、早期成立を願っている、こういうことなんでしょうか。運輸大臣や準備室は、そこまでは確信を持っていないみたいなんです。ともかく現状じゃどうしようもない、だから努力するから一回ともかくやってみたい、やらしてもらいたい、こういうようなニュアンスに私受けとめたんですが、総理大臣は、この法案について成立後、しかも五年後経営体が全く移行して、それで国鉄再建が完璧に分割民営にすればできる、こう大確信を持っていらっしゃいますか。
  309. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) この問題は、臨調におきましても長い間論議をされ、また国民の皆様の間にもいろいろ議論が沸騰されまして、それが最終的に収斂されて臨調答申のようになってきたと自分考えております。したがいまして、いろいろな御意見があることはよく承知しておりますが、いろいろな選択肢があると思うのです。しかし、現在の状況から考えまして、この臨調答申の線というものは考えられる最善の考え方ではないかと私たちは受けとめております。
  310. 黒柳明

    ○黒柳明君 先般の臨調の最終答申を見ますと、このいまの第一次から第三次までの答申の指摘事項がずっと書いてありまして、遺憾ながらその答申の実施状況は必ずしも十分と言えないと、こう政府に対してクレームをつけているわけです、総理も御存じかと思いますけれども。当然、鈴木内閣の副総理格の行管庁長官として、またいまも行革推進の総理として、行革ともかく実施、こういうことで目玉としての国鉄法案、これをいま審議しているわけでありますが、この臨調の過去の答申に対して政府の実施が十分とは言えないと非常に遠慮がちに言っていますけれども、逆に言うと、もっとしっかりせい、こういう最終答申の批判なり激励なり叱咜、おしかりと思うんですが、総理、これをどう受けとめていますか。
  311. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) これはやはり謙虚に受けとめて、まじめに考えていかなければならないと思っております。
  312. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣は、これは正確かどうかわかりませんけれども、行革や教育問題を取り上げたい、参議院選挙に。そうすると、行革は推進するんだ、やるんだ、こういう総括的なことでこの 参議院選挙に臨むのか。それとも、もっと具体的なテーマを出して、そしてその参議院の一つの争点にしていくつもりなのか。いかがでしょうか。
  313. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 選挙戦術というものは秘中の秘でありまして、そう簡単に言えるものじゃありません。
  314. 黒柳明

    ○黒柳明君 秘中の秘と言ったって、各党ともいわゆる選挙に臨むための政策を国民の前に示して、それにのっとってやっぱり一つの選挙戦をやるわけです。ですから、選挙戦術は秘中の秘と言ったって……。  そうすると、総理大臣が六月六日に街頭に立って初めて行革に対する姿勢というものを打ち出す、その前は与党自民党としては政策は打ち出さない、今回の参議院に当たっては。こういうことですか。そうじゃないですよ。いままで選挙の前にはちゃんと各党とも基本政策なり細目なりを打ち出して、それでやるじゃないですか。まして今度の選挙というのは、総理はそういう問題も選挙戦で国民に訴えていく、これは国会審議の中にたびたび繰り返していますから。そうすると、秘中の秘というのは相当やっぱり国民にアピールするような隠し玉でも持っているんですか。要するに、自民党のいままでと同じようなパターンの政策の中に入れられないような相当のものを総理は胸の中におさめている、そんなことはないと思います。そんな行革で秘中の秘なんて私はないと思いますけれども考えがちょっと違って御答弁されたのじゃないですか。
  315. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 選挙の公約について御言及になったものと考えておりますが、これはいま政調会におきまして目下いろいろ勉強しておるところでございます。いずれ時期が来れば党として公表いたしますが、それまではうかつに言い出すべきものではない、そう考えております。
  316. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはそうですね。党として決めることですから、総裁が先行するわけにいきませんけれども。  そうじゃなくて、私は、いままでの国会の審議の中で総理大臣がそういう発言をしていますから、だから今回も参議院の選挙に臨んではやっぱり行革問題も具体的な問題で国民に信を問うていくのではなかろうか、こういうことで聞いたわけです。ですから、党の方としての公約は公約、あるいは政調会は政調会のことですけれども、総理大臣がいままでの国会での答弁を踏まえて、今回の参議院の選挙では、ただ行革推進内閣、行革推進する自民党、こういうことじゃなくて、相当進んで――この法案だってあと一時間二分かなんかたつと成立の可能性があるわけです。そうなると、もっと具体的な局面に行政改革も次元が移っているわけでしょう。それで選挙戦が進んでいくわけだ。そういう面で私はお伺いした。私の質問に、答えがそれだけならそれだけで結構です。  それから、答申の中に総合管理庁の設置が必要である、こういうことが出ておりますけれども、総理はこれについてどういうお考えをいまの時点でお持ちでしょうか。
  317. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) これは臨調答申の中でも答申されておるところでございまして、調整官庁としての行政管理とそれから一部の人事管理というものを整合させて、効率的に行政と人事関係というものを調整しようという発想のもとにできたものと考えておりまして、これは適当な考えであると思います。
  318. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、適当な考えであるということを前提にこれから事務局で設置の方向で決めていく、こういうことで考えていいわけですか。
  319. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) よく検討してみたいと思っています。これは自民党のいま行革調査会におきまして検討中のことでございまして、それらの御意見もよく承って考えてみたいと思います。
  320. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、自民党の政調会の検討を待ってという前提はあるけれども、総理としてはやっぱり総合管理庁の設置は一応妥当である。そうすると、まだその検討を待つ前には、権能とか、権限とか、いつごろ設置するとか、そういうことについてはまだ考えとしては未定である、こういうことでしょうか。
  321. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) そのとおりでございます。
  322. 黒柳明

    ○黒柳明君 ポスト臨調の法案も衆議院を通過して、今国会で成立する可能性が出てきたわけでありますが、土光さんにその委員長を依頼するとか、あるいは固辞するとか、マスコミは先行してたびたび出ておりますけれども、これは土光さんに正式に依願はしたんですか。あるいは受けるかどうかの可能性については感触を得たんでしょうか。
  323. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) まだ、法律の成立する前に、そういう軽率なことはいたしておりません。
  324. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは三年となっていますけれども、総理大臣は行革というのは十年もかかるのだ、こういうような発言もしておりますけれども、それとこの三年というのはどうなんでしょうか。やっぱり行革の答申をつくるのだって相当精力的にやってきたわけです、一次、二次、三次と。これから三年間でポスト行革の問題が片づくとは思わないんですが、総理のこれから十年もかかるのだという国会の答弁と、そのポスト行革の範囲が三年というのはちょっと食い違いがあるというような感じがするんですが、その点どうお考えでしょう。
  325. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 軌道を敷設して機関車を乗っけるのに三年ぐらいでできるだろう、そう考えております。
  326. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません。ちょっと下を見ていて聞こえなかった。  機関車を乗っけるまで三年かかるんですか。
  327. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 軌道を敷設して機関車を乗っけるまでに三年ぐらいだろう、そう考えているわけです。
  328. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうですか。  そうすると、十年のうち三年はやっぱり基本的なものをつくっていく、それだけの間のポスト行革推進委員でいいんだ、こういうお考えですね。
  329. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 行革をそうのんべんだらりんとやるわけにまいりませんから、三年ぐらいの間にともかく大事な問題について軌道を敷設して、そして牽引車を乗せ、またそれに後続するいろんな案件を積んだ車両を引っ張っていってもらう、そういう意味のことを申し上げたわけです。
  330. 黒柳明

    ○黒柳明君 減税のことですけれども臨調は税の公平、これしか触れてないですね。減税のことは書いてないんです。増税なき財政再建ということは、これは政府・与党としましても臨調としましても、ある程度基本精神として踏まえているんですけれども、税の公平というキャッチフレーズのほかは臨調は何にも答申では触れてないんです。私は、所得税減税なんというのは臨調の一つの柱になってしかるべきだと思っているんですが、残念ながら触れてない。減税というのは行革の柱にしてもいいのじゃないかと思うんですが、臨調答申答申で、総理としてはどうでしょうか。増税なき財政再建、その中には――反面、所得税減税なんか六年ない。いま、これもまた国会でマターになっていますけれども、これは国会のマターですけれども、先ほどの田中さんの辞職決議案とちょっと次元は違いますが、これこそ行革の一つの柱として減税問題を取り扱うべきだと思うんですが、いかがでしょう。
  331. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申には直接載っていませんが、たしか租税特別措置の改廃については載っていたことがあると思います。さりながら、所得税減税の問題は与野党の間におきまして合意が成立しているところでございまして、政府といたしましてはこれを誠実に守っていきたいと考えております。
  332. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、減税で与野党いままでも当事者が論議をしてきまして、七月以降にという話がきのうも出ておりますけれども、少なくとも、 総理大臣、どうなんでしょうか、五十八年度内にやっぱり相当規模の減税はする、間接税の増税とは別にしまして。何か増税と減税と対になってくるようなことで非常に困るんですが、その間接税増税とは別にしまして五十八年度以内にはやる、こういうことははっきり、総理、ひとつ明言をしていただけませんでしょうか。
  333. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国会における御論議及び幹事長、書記長等の会談の内容というものは政府税調に余すところなく報告いたしてありまして、政府税調におきましても所得税、地方税の減税に関する分科会をつくりまして活動を開始している、そういう状況でございます。国会及びわれわれの間に行われました約束については十分政府税調も知悉しておるところで、その線に沿って処理してくれるものと期待しております。
  334. 立木洋

    ○立木洋君 総理、時間差はもう問題ございませんか。――これまで運輸委員会で行ってきた議論の内容から言いますと、臨調については分割民営を促進する、それを最大限尊重するということが繰り返し答弁されました。同時に、具体的には今後どうなるのかという問題に関して言いますと、その点では監理委員会でいろいろ検討していただき、その推移を見守る。それでは政府のいまの具体的な考え方がどういうところにあるのか、いささかもはっきりしないんです。私は、そういう点で総理にこの際明確にさしておいて、いただきたいと思うので、ひとつよろしく御答弁願いたいと思うんです。  総理も、この臨調答申最大限尊重するというふうに繰り返して述べられましたが、この最大限尊重という意味なんですけれども、この臨調答申の分割民営化という方針がおおむね妥当であるという意味合いでの最大限の尊重なのか、あるいは臨調答申は総理のお考えになっていることと完全に一致するという意味最大限に尊重するというのか、その程度の問題についてですけれども、総理のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  335. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) おおむね妥当であると考えております。
  336. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つは、    〔委員長退席、理事青木薪次君着席〕 運輸大臣答弁の中に再三あったわけですけれども、分割民営化、これは監理委員会で検討してもらった結果それと異なる結論もあり得る、それは重大な支障がある場合、また特段の理由がある場合というふうに述べておられるんですが、こういう重大な障害、特段な理由がある場合には必ずしも分割民営という結論だけではないという見解に総理も同感ですか。いかがでしょうか。
  337. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 臨調におきましては長い間いろいろ専門的な御論議も願い、また関係者、参考人等もお呼びいただき、また現地の視察等も行いまして入念につくった案が今回の案であると思います。したがいまして、私はこれがおおむね妥当であると考えたわけでございまして、監理委員会におかれましてもこの線に沿って結論を出していただくものであり、障害は起こらないと自分考えております。
  338. 立木洋

    ○立木洋君 私、衆議院での総理大臣答弁されている内容をつぶさにずっと見ていったんですよ。そうしますと、一つのことに気づいたんです。それは、臨調考え方を総理大臣が述べられているところでは、民営をするあるいは民間経営方式をとるということが臨調考えでございますということは非常に明確に述べられている。ところが、総理自身の考えを述べられているところにはそういう表現というのはないんです。つまりどういうふうになっているかというと、民営的な手法を取り入れたい、つまり民営にするということと民営的な手法を取り入れるということを明確に総理は区別して衆議院での質問に答弁されているんです。これはどういう違いがあるのか。つまり、先ほど言いました繰り返しになりますけれども長谷川運輸大臣が言われたように、それは臨調最大限尊重するという総理のお立場ですから、いまからけちをつけるような答弁はもちろんできないでしょうけれども、しかし別の考え方をやはり持っているというふうに受け取っていいものなのかどうなのか、その点を明確にしておいていただきたいんですが、いかがでしょうか。
  339. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 臨調が民営分割論、いわゆる民営分割論というものを持ってきたゆえんは、いままでのような公社形式ではだめであって、    〔理事青木薪次君退席、委員長着席〕 私鉄がやっているような、あるいはそのほかの民間会社がやっているような民営的手法を取り入れて、そしていわゆる民営分割論、いわゆるという言葉をつけておきますが、そういうようなものの結論を得たのだと、そういう意味のことを申し上げておると記憶しております。  そしてさらに、この臨調答申のいわゆる民営分割論というものを監理委員会は尊重して結論を出していただけるものと期待しております、政府はそれを尊重して実行いたします、こういう筋のことを述べているものと記憶しております。
  340. 立木洋

    ○立木洋君 臨調答申というのはもっと明確なんです。いま総理が言われたような程度の問題ではなくて、分割民営にするというのです。十一項目の措置がうまくいったから途中で変更していいというようなものではございません。あるいはまた、特殊会社を一時的にはつくるというふうなことがあっても、それは決して特殊会社がいいからということではなくて、それは分割民営に至る――特殊会社ということは、直ちに民間が引き受け手がないからそういう特殊会社をつくって政府の助成を得たいための手段であって、結論はあくまで民営だ、これは明確なんです。だから、臨調答申というのも分割民営、途中でいろいろな過程を経るかもしれないけれども、そうなんだということをはっきりさしているんです。だから、それ以外の結論がないというふうに考えると、総理の御答弁はいろいろな形でニュアンスがあるやのように見受けられるので、その点、もう一遍はっきりしておいていただきたい。
  341. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国鉄経営については公社的手法と民営的手法とそういうものがある、その中で公社的手法は適当でない、民営的手法が適当である、そういうような考えに基づいてそういう表現をしたものと思います。
  342. 立木洋

    ○立木洋君 民営的手法についてはいろいろな段階がありますから、だからこの問題だけで議論をしておりますと私の持ち時間がなくなるので、この点についても総理のお考えを最後まで明確に聞くことができなかったということはきわめて残念です。  ただ、このことと関連してですけれども、私は今回のこの運輸委員会議論を通じて、一つは、いままで臨調答申、これに基づいてこれを最大限に尊重する、国鉄が大変な事態になってきた、これを臨調によって検討してもらった、そして今度はこれからどうするのかを五人委員会の監理委員会で検討していただく。これは先ほど総理は、国鉄の主体性を確立していわゆる自主的にやってもらう、そのためにも重要だということを国鉄に対してお述べになりましたけれども臨調にやってもらったことを聞いて今度は監理委員会にまたやってもらう、政府の主体性というのは一体どうなるのだろうか。政府はこの問題でどういう形で責任をとるのだろうか。こういうようなあいまいな形で出される法案というのは私はきわめて無責任ではないか。ここでの政府の責任を明確にして、われわれはこういう根拠があるからこれをぜひともやっていただきたいのだというふうに言う答弁をいままで当委員会で聞くことができなかったわけですけれども、そういう法案の提出の仕方について、私の見解を総理はどのようにお考えでしょうか。
  343. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 国鉄再建につきましては、民営的手法というものを取り入れる必要が大いにあるわけです。いわゆる公社的手法ではだめだ。それについては、国家公務員、国鉄の方方やあるいは運輸省の方々というものは民営的手法というものを知らないわけです。やっぱり民営 的手法、民間経営というものを知っている権威者がやはり国鉄点検してそういう案をつくるにふさわしい。そういう意味監理委員会というものができ、かつまた国民的視野、全般的視野に立って国鉄の改革というものも論じていただくし、国家財政との関係等々も考え、地方との関係等も考えてこれらの国鉄改革の具体案というものは出てくるべきものである、そういう意味におきまして一運輸省あるいは自治省あるいは大蔵省というような公務員ベースでやれる仕事ではない、それじゃまた役所的なものになってしまう、そういう考えに立って民間人の大きな知識を活用する、そういう考えに立っておるものであります。
  344. 立木洋

    ○立木洋君 これまで国鉄が百年余り行ってきた実績というのももちろん総理は否定されないだろうと思います。問題は、民間の経営にするならば第一の鉄則というのはつまりもうけなんです。いわゆる言葉で言えば採算が立つか立たないか。これはきょうも私は高木総裁にお尋ねした。高木総裁がいまの民営鉄道の九人の社長と対談をされている内容がこの本に収録されております。だけれども、これはもうけが鉄則だというんです。もうけができないところは全部やめる。貨物ももうけにならないからといって全部やめてきた。地方鉄道も、うまくいかない、採算が合わないところは全部ぶった切る。そして、もうけのあるところだけをやる、この思想なんです。  私は、国有鉄道、これが本当に公共の福祉ということを考えて、国民の足をいかに保障するのか。地域の経済、御承知のように、大臣、北海道では過疎地に住んでいるのが五人に一人なんだ。九州でも五人に一人が過疎地に住んでいる。中国地方、四国地方、東北地方七人に一人が過疎地に住んでいる。これは国土庁が発表した統計の数字です。そういうところは、このもうけの鉄則でやるならばこれはできないことになる。そうしたならば、そういうところの国民は全く鉄道の足を奪われて大変な事態になる。今度の貨物の問題でもそうです。ヤード系をぶった切るということになって、いまそのために通運の関係者や労働者たちが大変な自分たちの生活にかかわるという問題にまでなってきておる。荷主の間からも大変な問題が出てきている。私は何も採算がとられることがすべて悪いという言い方はしません、いまは資本主義の世の中ですから。しかし、私はそういう公共ということが本当に重視されなければならないのではないかということを非常に強く感じるわけです。この点についての御答弁は要りませんけれども、そのことを私はよく考えていただきたいと思うんです。  同時に、私がこの際述べておきたいのは、やはり政府の責任の問題なんです。私は、設備の投資がすべて悪だなんというようなことは考えておりません。それは世の中の進歩のために設備の投資をするということも必要なことがあります。しかし、これまで国鉄が出してきた材料の内容から見ても明らかなことは、国鉄収入の六割、これが設備に投資されているんです、二十年間近く。もうけの六割じゃないんです。収入の六割が投資されておる。その一〇〇%近くがすべて借金だというんです。こんな経営のやり方をさしたのは一体だれなんですか。鉄建公団がつくられて、つくられた鉄建公団が結局どうなんだ。国鉄の意思とは別のところで投資計画が政府の指導によって行われて、その責任だけを国鉄が負わなければならない。借金は雪だるまのようにふえていく。  この一事を考えてみても、私は衆議院での議事録を読んで、総理がどこかで政府の責任について述べられているところがあるかと思って全部ひっくり返してみた。そしたら、政府の責任は、政府としての責任は、という答弁は一言もありませんでした。「政府の責任も」というふうにして述べられている。そして、その後、結局その中心的な責任が国鉄にある、国鉄労使にあると言わんばかりの議事録の内容になっているのを見て、私は大変残念です。このような無計画な、ずさんなこうした投資のやり方を指導してきた政府のあり方。  これまで六回にわたって改革案が出されてきました。しかし、出されてきた改革案はどれ一つも成功しなかった。それがすべて閣議で決定されてきた。すべての閣議の決定がだめだったということが証明されたわけです。ところが、この間問題にされたように、これほど重大な問題でこうした失敗、大変な事態が起こっているのに、ただの一人の大臣でもこの問題に責任をとった人があるでしょうか。長谷川運輸大臣は、そういう大臣はいませんと。ただの一人の大臣でもこうしたずさんな状態になった状況を国民の前に述べて、済まなかったと言った大臣が一人でもいるだろうか。大臣は、そういうふうなことを述べた大臣は私は知りませんと。私は、こういうような姿勢ではいまの国鉄の大変な状態を本当にやっていくことができないのじゃないか。いまの中曽根内閣に要求されているのは、国鉄が問題になっているのはここにある、この点での政府の責任がここにあった、しかしこれからは政府としてはこういうふうにしてやるからひとつ考えてくれないかということを率直に言われるべきであって、これを監理委員会に提起して、臨調にやってもらって今度は監理委員会、私はいささかこれは無責任なやり方であって、こういうやり方では本当に国鉄再建することができないのじゃないかというふうに思います。  きわめて残念なことでありますが、時間が来ましたから、私のこうした考え方に対して最後に総理の御所見を述べていただいて、私の質問を終わります。
  345. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 立木さんの貴重な御意見として承っておきます。
  346. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総理に端的にお伺いをしたいと思うんですが、この法案が通りまして、再建監理委員会ができて、いよいよ本格的な論議が始まるわけですが、この監理委員会がこの国鉄改革に関していわゆる分割民営化、こういう結論を明確に出てたという場合に、仮定でございますけれども、そういう場合に、総理としてはこれを尊重し、そして国鉄の分割民営化を実行する、このことにお考えは変わりはないと思うんですが、その点、まずお伺いをしておきます。
  347. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) そのとおりでございます。
  348. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そこで、第二点でございますが、仮にこの再建監理委員会が、いまもさまざまな論議がございましたが、分割民営化ということと違う結論、仮に分割民営化以外の結論を出した場合、その場合はその分割民営化以外の結論に従ってそれを尊重するのか、あるいは分割民営化をあくまでも総理としては進めたいと考えておられるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  349. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 政府としては、監理委員会臨調答申を尊重してその線で結論を出していただけるものと期待しております。監理委員会設置法の中でも臨調答申の筋というものに言及している部分がたしかあったはずでございまして、臨調答申を尊重して結論を出していただけるものと期待いたします。
  350. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは、第三点でございますが、この再建法が成立して国鉄再建監理委員会が設置されれば、それで国鉄再建問題これはすべて解決するのだ、こういうような考えは厳に慎まなければならぬのではないか、こう私は思っているわけです。再建監理委員会がこれからどのような結論を出すかはわかりませんけれども、どのような結論が出されるにしても、私は政府の腹がきちっと定まっていないと真の国鉄再建というものはなし遂げられないのではないか、こう思っているんです。  特に、十六兆円あるいは六十年度には二十四兆円にも達するという長期債務、累積債務の問題でございますけれども、これらの処理問題について私は監理委員会の努力に大いに期待をしたいわけですが、要はこの問題も具体的にどう処理するかというのは政府の腹次第、こう思いますし、あるいは共済年金問題、これは法案がもうすでに衆議院段階で提起をして議論になっているわけですが、この問題とか、さらに緊急十一項目の早期全 面達成問題、これらのそれぞれの重大な諸問題、大変困難な諸問題でありますけれども、これはやはり政府が責任を持って本腰を入れて国鉄を監督し、そして臨調答申に基づいて対処していく、こういうきちっとした本当の腹構えというものが勝負を決める、こう私は思うんですが、総理の決意をお伺いしたい。
  351. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申を全面的に尊重して実行するというのが歴代の内閣の立場でもあり、かつまた国鉄監理委員会設置法という重大法案も提出いたしまして、政府としては不退転の決意で国鉄改革に取り組んでおるものでございまして、この法案をぜひ御成立願いまして、できるだけ早期に改革案を出していただき、国民の皆様方にもよく見ていただき、そして各党各派の御論議もいただいて、そしてこれを勇断をふるって実行していく、そういう考えでおる次第であります。
  352. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 強い決意が表明されたものですから了としますが、第四点として、五十七年度末における合理化問題の処理に見られる労使の努力、これは私は大いに評価することにやぶさかではありません。この努力の結果、ポカ休とかやみ手当の問題とか、一昨年以来指摘された諸問題というのがある程度いい方向に向かってきたことは、これは私は評価することに決してやぶさかではありません。しかし、まだ職場における労働規律、これが確立されているとは私は言いがたい現状ではないか、こういうように思っています。  最近、各方面でなお暴力事件が種々発生しているわけです。四月十八日には、仙鉄局の喜多方駅で、ロッカーに張られたビラをはがしていた助役が左腕をけられて二週間のけがを負うとか、あるいは四国松山電気支区で、五月四日に、点呼中に支区長に対して暴力行為が行われているとか、あるいは米子、鳥取駅、これは国労と鉄労との関係でありますけれども、この関係で暴力事件が発生しているという、こういう最近における、労働組合運動以前とも思われるようなそういう事件がなお発生をしているということは、まだ職場規律問題が確立されていない、こういうことをはっきり物語っていると私は思います。  これは、昭和四十年代の生産性向上運動がいわゆる政府・自民党の安易な妥協によって挫折をした、それから今日の国鉄職場の荒廃が始まっている、私どもはそういうように考えているわけです。そして、この生産性向上運動に積極的にやる気になって取り組んだ当局者が二階に上げられてはしごを取り外された、そして要するに冷や飯を食わされて干ぼしにされたという、まさにあのようなやり方というものが根強く職場に残っているこのことに根源がある。このことを再度深く認識をして国鉄職場規律というものをぴしっとしなきゃならない。そして、労使が一体になって燃える火の玉のような形になって国鉄再建というものに取り組んでいかなければとうてい真の再建はできない、こういうように思うわけであります。職場で起こっている職場規律の荒廃の問題について、さらに不退転の覚悟で引き続きこの問題について取り組んでいくべきではないかと思いますけれども、総理の御見解をお伺いして、私の質問を終わります。
  353. 中曽根康弘

    ○国務大臣中曽根康弘君) 伊藤さんの御見解に私も同感でございます。  ただいま十一項目の諸点について実行中でございますが、政府といたしましても私が本部長になりまして対策を講じておるところでございまして、今後とも労使間の協調を保ちながら規律を遵守していくように督励してまいりたいと思っております。
  354. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  355. 青木薪次

    青木薪次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  反対の第一の理由は、言うまでもなく、この法案は、昨年出された臨時行政調査会第四部会の答申をそのまま受け継いで政府がまとめたものであり、その中心は国鉄を分割民営化をすることによりその再建を図ろうというものであります。  しかし、これは一体どういうことでありましょうか。国鉄再建方策は、現在、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に基づいて鋭意進められているのであります。そして、この現行再建法が成立の過程で、わが党は強く反対し、その修正を求めたことについて政府も与党も十分知っているはずであります。そして、これが国鉄再建の最後の機会である、そして最善の方策であると断定し、われわれの意見を退けて強引に成立させ、昭和六十年の再建基盤確立に向けて相当厳しい犠牲を労働者と国民に強要してきたではありませんか。そして今度は、この再建法が早くも破綻したからといって、今度は臨調を隠れみのにし、これまでの主張をかなぐり捨て、現行再建法さえも真っ向から否定し、かつ国鉄の基本的使命の放棄と解体につながる分割民営化のあの臨調答申をそのまま実現させるための法案をまとめたのであります。その無神経ぶりに憤りをさえ覚えるものであります。  われわれが国会で十数年かかって論議し、そこで得た結論を無視し、まさに超法規的とも言える権限を持っているかのような姿勢を臨調にとらせ、それを利用することによってみずからの責任を回避するやり方は、まさにわが国の民主主義を冒涜するものであります。  反対の第二の理由は、法案で規定された具体的な内容についてであります。法案は、大別して国鉄再建のための国の責任と、国鉄再建監理委員会の設置とその役割りについて規定しておりますが、具体的方針は何もなく、結局は問題を先送りし、新たに設置される再建監理委員会にすべてをゆだねることになっているのであります。政府は、このたびの審議でも国鉄再建は時間との闘いであると何度も強調してきました。累積債務が五十八年度に二十兆円にも達することを考えるならば、確かに一刻も早く手を打たなければなりません。しかし、この法案は、まず監理委員会を組織し、これから五年間に分割民営化の方向で具体策を確立し、それを実行するというのですから、まさに何をか言わんやであります。  国鉄に係る解決しなければならない基本的問題は、すべて出尽くしているのであります。長期負債や新幹線建設に係る負担増、設備投資とその費用負担のあり方、年金や退職金に係る特定人件費、公共負担問題など、国鉄だけで解決できない課題についてこれまでも論議をしてきたし、今国会でも相当審議を深め一定の合意ができているはずであります。したがって、問題の所在は、これらの案件について政府がサボタージュし、何ら具体的責任を果たさないことにあるのではないでしょうか。これから五年間に何か新しいすばらしい解決策が生まれるでしょうか。  北海道や四国、九州、そして本州も四つに分割され、民営化を図り、そのことによって国鉄再建するなどと言っておりますが、このような非現実的でかつ無責任なやり方で本気で再建できると思っていることについては、まさに荒唐無稽であります。  私どもは、第三の理由として、国鉄再建監理委員会そのものが行政改革とは逆行するということであります。臨調自体が国鉄問題で具体的提言をしているのは、再建の基本とは直接関係のない労働者と国民に大きな犠牲を強いる緊急十一項目についてだけであり、重要事項はすべて再建監理委員会の検討にゆだねております。これはまさに卑劣なやり方であると言わざるを得ません。一方で、行革は天の声などと声高らかに宣伝し、その傍ら、国鉄の危機をこれまで深めた政府・自民党の責任には一切触れずにその逃げ場を提供し、そして臨調みずからもすべては監理委員会でやるということでありますから、まさに責任回避の何物 でもないのであります。  以上、私は本法案の基本的問題を中心にその不当性を指摘してまいりました。  つい最近まで行政管理庁長官として臨調そのものを担当し、行革には並み並みならぬ決意で臨む中曽根総理は、レーガン会談ではその持ち前のタカ派ぶりを発揮し、御機嫌をとり、今度はASEAN諸国に至っては、耳ざわりのいい言葉を連発してハト派を装うなど、みずからその場しのぎの天才ぶりを示しておりますが、全く言語道断と言わざるを得ません。  したがって、私ども日本社会党は、こうした中曽根内閣の基本的な政治姿勢を強く批判するものであります。  以上をもちまして反対討論といたします。
  356. 江島淳

    ○江島淳君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表し、ただいま議題となっております日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案につきまして賛成の討論を行うものであります。  御承知のように、国鉄経営は、昭和三十九年赤字に転じて以来毎年悪化の一途をたどり、今日では一兆円を超える赤字を生じ、昭和五十七年度では長期債務は十八兆円を超すというきわめて深刻な状況となり、今日の厳しい国家財政のもとでは財政的見地から見ても放置できない問題となっております。  そもそも日本国有鉄道は、昭和二十四年、公共企業体として発足したのでありますが、国鉄企業体というより、官営時代と同様の体質を持ったまま公社に移行され、予算、給与等、国の統制によって国鉄自身の自主性を付与されず、財政的裏づけなくして公共性のみを強調され、企業性が軽んじられてきたところに今日の状態に立ち至った原因があると考えられるのであります。  しかし一方、国鉄は、国民経済的に見ても、また毎日の国民生活から見ても欠くことのできない交通手段として全国ネットワークを形成しており、国の動脈となっております。今後とも国鉄は、わが国交通市場の中で果たさなければならない重要な使命を担っているものと思われます。  このような状況の中で、今回、臨時行政調査会が国鉄再建について答申を出されました。政府は、それを受けて、最大限尊重することを基本方針として国鉄事業の効率的経営形態を確立し、長期債務等の財政的負担を積極的に解決することにより国鉄再建を促進しようとする意図のもとに本法案が提出されたものであります。  本法によれば、総理府に国鉄再建監理委員会を設置することになっておりますが、同委員会は国鉄再建にかかわる重要事項につき、みずから企画し、審議し、決定を行い、内閣総理大臣は同委員会の意見を尊重しなければならないことになっており、国鉄問題を運輸大臣の所管事項に限定せず、内閣総理大臣のもとに政府が一体となってっ国鉄再建の施策を推進する仕組みとなっております。これはいままで数次にわたり挫折した再建計画案をこのたびこそは何が何でも完遂する熱意のあらわれとして評価するものであります。  次に、国鉄経営形態についてでありますが、国鉄が効率的な運営をなし得るためにはいかなる経営形態にあるべきかについて、臨調答申は一つの方法論として分割民営化の線を出しています。しかし、これはしばしは本委員会においても論議されたごとく、あくまでも基本的な考え方のみを示しているのであって、その実施可能性は一体どうなんだという検討については臨調答申は何ら突っ込んでおらず、これを詰めないことには現実の施策に落とせないものであります。加藤参考人臨調答申の結論を強調しておられますが、国鉄が国民の足としての務めを果たし、かつ効率的な運営をなし得るための形態はいかにあるべきかという事柄について、このたび新設される監理委員会において、長期債務の処理等の財政的諸問題を含めて、実現可能な線に沿って精力的に詰めなければならず、この意味において一日も早く監理委員会の設置を望むものであります。  また、監理委員会委員の人選についてでありますが、国鉄の改革が国民的課題であるという認識に立って、委員は国民各層の声を代表する幅広い分野から選ばれ、自己主張だけにこだわらず、多くの人々の意見に耳を傾け、人格識見ともにすぐれ、真に国鉄再建に情熱を持った方々が選任されることを強く強く要望するものであります。  最後に、国鉄再建の基本は、何といっても日々の国鉄の運営に携わる労使双方の再建に対する熱意と努力がまず第一であり、国民の皆さん国鉄職員のこの姿勢を十分に認識してもらうことが必要であります。私は、かかる意味において、国鉄職員の一層の奮起を要望するとともに、政府は本法成立後は速やかに国鉄再建監理委員会を発足させ、強力に国鉄再建策を推進されるよう要望し、賛成討論を終わります。
  357. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対し、反対の討論を行うものであります。  まず、最初に申し上げたいことは、この法案の審議が時間的にも内容的にもきわめて不十分のまま終了されるということについてであります。  この法案の内容については、さまざまな問題点が指摘されましたが、審議の過程で政府は何らの解決策も具体的に提示もせず、また提示もし得ないという無責任な欠陥法案であるということが明らかになりました。しかも、まだ審議日程や詰めるべき問題点が十分に残っているにもかかわらず、審議終了を強行したということについて強く抗議するものであります。  反対理由の第一は、本法案が真に国鉄再建するものではなく、逆に国鉄を解体し、これまで以上に財界、大企業の思うままにされるという不当なものであるという点であります。  分割民営化以外に再建ができ得ないということを明言している臨調答申最大限尊重するということは、企業の論理で対応するということではありませんか。そこには政府が弁解するような他の方法の存在する要素は全くないのであります。その結果、わが党が一貫して指摘し主張しているように、貨物やローカル線等の不採算路線の大幅な切り捨て、運賃値上げ、過酷な合理化などを推し進め、全国的な公共交通網を解体するものであるということは火を見るよりも明らかであります。  さらに重大な点は、分割民営化によって経営が成り立つのかどうかという根拠を政府はいまだに明示できないということであります。できないのは当然であります。臨調自身が、北海道、九州、四国等についてはどんなに努力をしても経営が成り立つ見込みがないということを認めていることは、わが党の資料によっても明確に示したところであります。  反対の第二は、本法案の監理委員会の性格や強大な権限についての問題であります。  同委員会は、これまでの政府の各種委員会とは明らかに異なり、はるかに強大な権限を与えられています。国鉄経営形態を初め、広範な事項をわずか五人の委員が意のままに実行し、総理にその尊重を義務づけているのみならず、予算や各省庁への必要な調査権限まで与えられているのであります。しかも、委員会の審議内容については、それが公開され民主的に検討されるという保証は十分に存在しておりません。これはまさに事実上やみからやみに国鉄を葬り去ろうということにほかなりません。このような白紙委任的なやり方は民主主義のルールにも反するものであり、議会制民主主義にとってきわめて重大な問題であるということを指摘するものであります。  反対の第三は、国鉄再建の最大の柱の一つである莫大な赤字と借金について、その具体的な方策が何一つ明らかにされていないということであります。  十六兆円にも上る長期債務のほとんどは政府がつくったものであり、当然政府の責任で処理すべきものであります。特に、国鉄収入の五〇%から六〇%を設備投資に充て、しかもその九〇%以上を借金で行わせるなどという社会常識では考えら れない方法を行わせた政府・自民党の責任は重大であります。さらに、年金、退職金の負担や、青函トンネル本四架橋財源措置など、肝心な重要問題をすべて監理委員会任せにしようとする政府の態度は、まさにみずから解決する能力も意思もないことを示したものではありませんか。  以上述べたように、無責任な、反国民的な構想のこの本案の撤回を強く求めて、反対討論を終わります。
  358. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、公明党・国民会議を代表して、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案について、賛成の立場から討論を行うものであります。  現在、国鉄がどのような経営状態にあるか、深く認識すべきであると思います。国鉄経営状態は、破産という言葉が適当な事態に直面しており、国鉄がかくも惨たる事態に立ち至った根本的原因は、挙げて歴代政府・自民党の責任にあります。国鉄の窮状を見ながら適切な対策を実施しなかった歴代政府の姿勢に強い憤りを感じ、厳しく反省を求めざるを得ません。国鉄経営の危機を招いた責任は明確にされなければならないと思います。  しかしながら、その責任は責任として、いま政治に求められているのは、国鉄経営危機をいかにして回避するかであり、われわれが全力を傾け、それに取り組むことであると思うのであります。また、いつまでも現状に固執することなく、経営危機を乗り越えるため、国鉄の改革に向け、まずその第一歩を踏み出さなければならないと思います。  本法案の成立後は、極力経営に対する政治的、行政的介入を排除し、経営の主体性が確保できる体制をつくることになれば、国鉄経営の改善に大きく貢献することが期待できると考えます。国鉄改革が政治的、国民的な緊急課題であり、一たびその改革に失敗すれば国鉄経営は二度と立て直しが不可能となることは前に述べたとおりであります。  それだけに、国鉄の改革案を確立する国鉄監理委員会の責任は重大であり、その人選に当たっては、国民の意見、意向を正しく伝え得る人でなければなりません。また、その構成も、政治的な偏向があってはならないのは当然のことであります。政府は、このことを深く理解し、その人選に当たるよう強く要求しておきたいと思います。  さらに、重ねて政府に要求したいことは、国鉄再建はもはや後のない瀬戸際の事態にあることを認識し、従来のような糊塗的な施策をもって処理するような姿勢を改め、国鉄改革に真剣に取り組むべきであるということを述べて、私の賛成の討論を終わります。
  359. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対し、賛成の討論を行うものであります。  いまや国鉄経営は危機的状況を通り越して破産状態にあり、一日も早い再建が強く求められております。すなわち、国鉄の赤字は五十七年度で一兆三千八百五十三億円、五十八年度では一兆六千八百九十億円と見込まれており、五十七年度末における累積赤字は八兆九千七百二十一億円に達するとされているのであります。  また、累積赤字を含めた長期債務は五十七年度末で十八兆四千四十億円に上り、五十八年度の支払い金利総額は一兆四千二百七十四億円に及んでおります。しかも、このうち三千四百五十七億円は棚上げされた債務に対する金利であり、全額政府が支払っているものであります。  このように国鉄経営は文字どおり破産状態に直面しているにもかかわらず、国鉄労使の状況認識や再建への努力は依然として不十分と言わざるを得ません。昨年来、新規採用の停止、職場点検現場協議制の改定、無料乗車証廃止等の措置が実施され、やみ休暇ややみ超勤、ポカ休や時間内の組合活動等は減少しているとはいえ、国鉄現状に対する認識は労使ともに依然として甘いのが現実であります。  以上申し述べましたように、いまや国鉄はその経営の面でも職場規律の面でも決定的な行き詰まりを見せており、抜本的な改革が一刻も早く求められているのであります。臨調国鉄改革に対する答申は、まさにこうした認識に立って策定されたものであります。  答申は、国鉄を破産状態にあると規定し、これを改革するには公社制度をやめ、国鉄を分割して特殊会社とし、条件が整ったものから逐次民営化するという思い切った方向を打ち出しました。そして、国鉄改革の具体的方法を決定するかなめの機関として国鉄再建監理委員会の設置を求めているのであります。  民社党は、こうした臨調答申を基本的に評価し、国鉄改革を強力かつ速やかに推進するよう主張してまいりました。私は、かかる方針を踏まえ、一日も早く本法律案を成立せしめ、もって速やかに本格的な国鉄改革に着手すべきであると考えます。  その際、政府は次の諸点について十分に配慮すべきであります。  まず第一は、国鉄改革の推進に当たっては、臨調答申 踏まえ、これを十分に尊重して進めることであります。  第二は、国鉄再建監理委員会が権威と実力を持って国鉄改革を推進し得るよう、これにふさわしい委員長委員とを選任することであります。そのためには、臨調答申を尊重し、積極的に国鉄改革を進め得る権威と実力を持った人材を広く民間等からも選出することが必要であります。これは同時に、委員会の事務局を構成する場合も同様であります。  第三は、臨調の指摘を受け、国鉄が主体となって進めている職場規律確立等のいわゆる緊急十一項目については、政府としてもさらに厳正にその実施を監督していくということであります。  いまや国鉄改革は国家的課題となっており、一日も早く達成しなければならない緊急テーマとなっております。よって、私は、一日も早く本法律案を成立させるとともに、政府が勇断を持って国鉄改革を推進されるよう切望するものであります。  総理並びに関係大臣のいま一段の御努力をお願いし、私の賛成討論を終わります。
  360. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  361. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  青木薪次君から発言を求められておりますので、これを許します。青木君。
  362. 青木薪次

    青木薪次君 私は、ただいま可決されました日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対する附帯決議(案)   日本国有鉄道経営が未曽有の危機的状況にあることにかんがみ、その事業再建推進するため、政府及び日本国有鉄道は、次の事項につき、万全の措置を講ずるべきである。  一、日本国有鉄道再建監理委員会委員の人選に当たっては、その任務の重要性にかんがみ、国民的視野に立った広い見地から、適切かつ公正に行うこと。  二、日本国有鉄道経営する事業に関する経営形態のあり方については、我が国の交通体系において鉄道輸送が担うべき役割、経営の主体性の確立等に配慮し、その特性が発揮され、基幹的交通機関としての役割と使命を達 成できるよう、日本国有鉄道再建監理委員会において慎重かつ十分な検討を行うこと。  三、日本国有鉄道事業再建に当たっては、その前提として、日本国有鉄道長期債務、共済年金及び特定人件費に係る負担、運賃上の公共負担等に関する問題を解決すること、及び財政的基盤を強化することが極めて重要である。よって、日本国有鉄道再建監理委員会において慎重な審議により、速やかに解決策を出すとともに、政府においても、自らその解決に努め、適切な措置を講ずること。  四、青函トンネル及び本四連絡鉄道橋の使用に当たっては、その運営が日本国有鉄道経営する事業にとって負担とならないよう配慮すること。  五、日本国有鉄道事業再建推進に当たっては、その保有する資産の有効活用をはかるとともに、その事業のより多角的な経営が行われるよう体制の整備をはかるなど、積極的な施策が講ぜられるよう努めること。  六、日本国有鉄道は、労使関係の安定に格段の努力を払うとともに、労使双方は、事業再建推進に積極的に取り組むこと。   右決議する。  以上でございます。  皆様の御賛同をお願いいたします。
  363. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) ただいま青木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  364. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 多数と認めます。よって、青木君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、長谷川運輸大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長谷川運輸大臣
  365. 長谷川峻

    ○国務大臣長谷川峻君) 日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案につきましては、慎重御審議の結果、御採択をいただきましたこと、まことにありがとうございました。  また、ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に体し、その実現に努力してまいる覚悟であります。どうもありがとうございました。
  366. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  367. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十二分散会