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1983-05-16 第98回国会 参議院 安全保障特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十六日(月曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      立木  洋君     上田耕一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         堀江 正夫君     理 事                 大坪健一郎君                 竹内  潔君                 勝又 武一君                 渋谷 邦彦君                 上田耕一郎君                 柄谷 道一君     委 員                 板垣  正君                 大木  浩君                 源田  実君                 夏目 忠雄君                 村上 正邦君                 小野  明君                 寺田 熊雄君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省条約局長  栗山 尚一君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        警察庁警備局外        事課長      吉野  準君        科学技術庁長官        官房審議官    辻  栄一君        外務省経済協力        局外務参事官   松浦晃一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国の安全保障に関する調査  (我が国の安全保障政策ASEAN諸国との関係に関する件)  (防衛費に関する件)  (防衛力整備に関する件)  (人工衛星の軍事的利用問題に関する件)  (自衛隊航空事故に関する件)  (シーレーン防衛問題に関する件)  (日米防衛協力問題に関する件)  (レフチェンコ証言問題に関する件)  (対韓経済協力に関する件)     ─────────────
  2. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) ただいまから安全保障特別委員会を開会いたします。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事上田耕一郎君を指名いたします。     ─────────────
  4. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 国の安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 板垣正

    板垣正君 初めに、外務大臣にお伺いいたしたいと思いますが、中曽根総理が十日間ASEANを歴訪されましていろいろ大きな成果を上げられたことを評価いたしておるものでございますが、その中で防衛問題に関連をして、わが国防衛政策について各国首脳理解と支持を得ることができたと総理も言明しておられる。報道もいろいろ取り上げられたわけでありますが、まず第一にお伺いしたいのは、各国との首脳会談でこの防衛の問題というのがどの程度論議になったのか。どうもマスコミ等では大きく取り上げられておりますけれども、きわめて当然なわが国自衛の問題でありますから、ASEAN諸国はこれについて異議のあるべきはずもないと思っております。そういう点で、全体的なウエートからいけば防衛問題についてどの程度の話し合いがあったのか。また、これについて個々におっしゃっていただくと時間もございませんけれども、いわゆるそれについて何か相手が条件をつけるというふうな言い方等もあったのかどうか。その辺をまずお伺いいたしたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回の総理ASEAN訪問に当たりましては、ASEAN各国との首脳会談におきましては、会談の中の一環として日本防衛問題が取り上げられたというよりは、むしろ総理の方から日本防衛政策についての説明がありまして、これに対してASEAN諸国首脳がこれに理解を示したと、こういうことでありまして、大きないろいろの各問題が取り上げられましたが、その中の一環としてむしろ中曽根総理の方から発言をされて、そして説明をされた、こういうことであります。各国首脳の受け取り方は、日本のいまの中曽根総理考えておる日本防衛政策であるならば、これに対しては異議は申し上げる問題ではない、理解をいたします、こういうことであったわけであります。
  7. 板垣正

    板垣正君 したがって、ことさら深刻な論議があったとか、またそれについて何か格別の具体的な条件をつけるとか、そういう話というところまではいかなかったわけですね。
  8. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん条件とか枠をはめるとかそういうことではありませんで、あえて言うならば、日本憲法の枠内あるいは自衛の枠内であるならば異存はないと、こういうことでございました。
  9. 板垣正

    板垣正君 それで、中曽根総理アメリカに本年初頭に行かれて、レーガン大統領との会談を通じて、昨年の鈴木・レーガン会談における共同声明、これを再確認され、同盟関係の再確認、そし て今後の防衛努力、これについても日本自主的努力を見守ってもらいたいと積極的な姿勢を示された、こういうことでございますが、この日米会談に臨まれた中曽根総理、そしてまた今回ASEANを回られた中曽根総理、外相も御一緒だったわけですが、そうした基本姿勢においては一貫して何ら変わるところはないと、こう理解していいわけでございますか。
  10. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中曽根総理は、今次のASEAN諸国歴訪に際しましてASEAN各国首脳に対して、わが国は積極的な外交努力日米安保体制の堅持及び必要最小限自衛力整備を行うことをもって安全保障政策基本としておる。また、自衛力整備に当たっては、平和憲法のもと専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とはならないとしていることを説明をされました。  このような現在の内閣政策歴代内閣政策を引き継いだものでありまして、先般の訪米の際の総理発言と今次ASEAN諸国訪問の際の発言に相違、矛盾があるとは考えておりません。
  11. 板垣正

    板垣正君 次に、防衛庁長官にお伺いいたします。  五十九年度の政府予算編成もやがて迫ってまいりますが、最近長官としてこの五十九年度事業計画作成に際しての指針とすべき事項について指示をされたということでございますが、これについての基本的な考え方をお伺いいたしたいと思います。
  12. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 毎年概算要求財政当局へ提出するまでに業務計画として長官指示をいたしまして、内部でこれにつきましてそれを土台にいたしまして概算要求の骨子を取りまとめるわけでございますが、五十九年度予算見積もり等基礎となりまする今年度の業務計画作成作業開始に当たりまして、私といたしましては、まず第一に前年度の指示基礎といたしまして、そして五十九年度、当年度の概算要求をつくり上げます特に必要な点を指示をいたしたわけでございます。  それについては、実は五十九年が五六中業の二年目でございまして、したがってまず第一にその五六中業目標の着実な達成を第一にすると、それから二番目には、臨調答申を得ておるわけでございまして、したがいまして、この臨調答申の趣旨、それからさらに現在の財政の諸事情がございますので、この財政事情にかんがみまして、一層の効率化合理化努力をすべきである、こういうことを中心にいたしまして、ただいま申し上げました二つのところを主といたしまして、先ほど申し上げましたように、昨年出ております業務計画の中から、特に五十九年度において必要な点としていまの二点についてこれを申し添えまして長官指示をいたしたと、こういうことでございます。
  13. 板垣正

    板垣正君 財政が非常に厳しい中で、しかも防衛問題に対して必ずしも理解が十分得られておらない、こういう中で、しかし日本防衛体制確立のために、これはどうしても五六中業目標達成を図っていかなければ相ならないと思うわけでございます。これは日本のための防衛問題でありますが、先ほど外務大臣も言われたとおり、国際的な立場からも非常に注目されておると、こういう中ですでにいろいろ出ておりますけれども、いわゆるGNPの一%、これは五十九年度においては超えることは心至であろうと、こう見られておりますが、長官としては五六中業、これを何としても実行していく、実現を図っていく、そういう前提に立って、仮に一%超えてもこれはもうやっていくと、こういう強い決意をお持ちかどうか、その点を伺いたいと思います。
  14. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 毎々答弁をさしてきていただいておりますがごとく、私どもが現在防衛力整備に努めております大きな目標は、いずれにいたしましても、防衛計画大綱水準にできるだけ早く達したい、到達いたしたい、これが大原則でございます。  それから五十九年度予算につきましては、ただいま防衛庁長官指示をいたしまして、業務計画作成に関する五十九年度予算見積もり等基礎となりまする業務計画作成作業開始をさせたという段階でございまして、まだ五十九年度概算要求につきましては、ここで確定をいたしておるわけではございませんし、さらに現在五月の時点でございます。これから政府原案作成されるまでの期間、わが国経済の見通しなどもどういうふうに変わっていくのか存じませんが、いずれにいたしましても、現在の私の基本的な考え方といたしましては、五十一年に閣議決定をいたしておりまする一%という問題でございますが、この問題につきましてはできるだけその一%という閣議決定の線は尊重いたしたい、したがって先ほど来申し上げておりますように、いまこの時点でどういう形の概算要求をつくり、またさらに政府原案なるものがどういう形で決まっていくかという防衛総費について申し上げることができませんし、と同時に、経済の様相につきましても、ここではまだはっきりその検討ができないわけでございますから、この時点で一%云々という問題につきまして答弁をいたしますことについては私は差し控えをさせていただきたいと存じます。  くどいようでございますが、私の現在の考え方は尊重をいたしていきたいということが基本的な考え方でございます。
  15. 板垣正

    板垣正君 私どもは五六中業と言っても六十二年、しかも実際にそれが配備されるのはまた数年先というような形で、防衛計画大綱ということが何年来言われているけれども、果たしていつの日かその水準達成できるのか、しかもこの防衛計画大綱自体、御案内のとおりに、いわゆる平和の基盤的な整備と言われておって、果たして現在の厳しい内外情勢の中において見直しを必要とするのじゃないか、そういう状況まで来ていると思うのですね。その辺でやはり一%の問題もいまの時点でおっしゃるのはそう言うほかないかもしれませんが、腹構えとしては、やはり腹の中には防衛計画大綱見直しGNP一%分、そうした合理的根拠のない形でいつまでも遅々として進まない、国際的な応分の責任を果たすと言いながら、みずからの足元も守りきれない、こういう姿勢では、せっかく中曽根総理アメリカに行かれて、また東南アジアを回られて、非常にいい空気をつくっておられながら、また同じような外向けと内向け、違うじゃないかというような非難を浴びるようなことになりかねないことを危惧するわけでありますが、その点もう一つ伺いたい。
  16. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私どもが現在努力いたしておりまする防衛力整備というものは、私は日米安保体制を基調といたしまして、現在これだけ厳しい諸財政事情その他の中にかかわらず、わが国自身判断によって努力をし続けておることでございますが、このことは当然わが国の安全がより一層確保されるというだけではなくて、東西間の軍事バランス維持を通じて、やはりわれわれがみずから所属するという判断をいたしておりまする西側諸国全体の安全保障維持にもつながってきている。私は大いにその意味ではわが国防衛努力整備というものは評価されておるというふうに考えております。  一方、先ほど来答弁さしていただいておりまするように、われわれの防衛力整備基本的な目標は、できるだけ早い時点防衛計画大綱に従って防衛力整備するということでございますが、五六中業にいたしましても、いずれにしましても五十八年度予算を初年度として始めたところでございまして、われわれとしてはまず五六中業においてわれわれが期待いたしておりまする、希望いたしておりまする防衛力の充実をまず図っていくこと、現在では防衛計画大綱見直しに直ちに入るというような段階ではなくて、むしろ着実にいままでの計画実現を図っていく時期であろうと、私はそういうふうに判断をいたしております。
  17. 板垣正

    板垣正君 時間がありませんから、今度具体的なことでひとつお伺いをいたしたいと思いますが、これは去る四月十九日に航空自衛隊のC1輸 送機の事故がございまして、それに一週間後、四月の二十七日には岩国基地において海上自衛隊の対潜哨戒機の大きな事故がございました。これは大変心痛むことでございます。これらについての原因調査等はいま進めておられる段階であろうと思いますから、別の機会といたしまして、私はここで特にお願いしたいのは、こうした殉職をされた方たちですね、こういう方たちに対する補償の問題であります。それに関して私は資料もいただきました。拝見いたしましたが、非常にわずかなんですね。大体国家からの補償、これは階級その他によって、それから遺族がいるかどうかというような点でも差がございますけれども、大体国から出るのが、多い人でも千四百万、少ない人では八百万から七百万、そのほか共済組合から約二百万程度、だから千五、六百万、一千万かすかすと、こういうのが補償の実態ですね。これ警察の方も実は調べたわけなんです。警察官の場合も根拠になる法律、これは地方公務員災害補償法というような形で、自衛隊の場合との根拠法というのはそう変わらないと思いますけれども、ほかに功労に応じ、内閣総理大臣による特別褒賞金一千万円以下、警察庁長官特別賞じゅつ金千五百万円以下、警察庁長官による殉職者賞じゅつ金千三百万円以下が付与される、あるいは都道府県警察は別に条例等賞じゅつ金の付与も定めている。殉職した警察職員の子弟に対しては、財団法人警察育英会学資援助等奨学事案を行っている。叙位叙勲状況殉職者勤務年数階級表彰等の内容により叙位叙勲を上申している、こういうことであります。一千五百万円程度というのは一般交通災害ですね、一般交通事故で亡くなった場合ですよ。これは交通調停事件の総支払い額の件数という資料がございます、昭和五十六年。これによりますと、死亡事故の場合、総支払い額二千万円を超えるというのが四四・五%なんですね。半分近くの者がやはりもう二千万円を超えている。高い者になりますと七千万、判決で七千万、調停で六千万、これは人の命のとうとさ、そういうようなことで、補償というふうなことももう少し配慮されていいんではないか、その辺はどうなんでしょうか、どういうふうなお考えでございましょうか。
  18. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 殉職隊員公務上の災害に対します補償というものにつきましては、先生承知のとおり、これは国家公務員災害補償法が準用されます。その限りにおきまして、これは一般職国家公務員と全く扱いは同様であるということになっております。いま先生の御指摘になった警察官地方公務員である者につきましては、これは、たとえば賞じゅつ金等におきまして、国家公務員とは別の体系の補償がなされるということは、これはおっしゃるとおりでございます。  そういう意味におきまして、国家公務員地方公務員という、そういう身分の差によります、それに対処する補償に関しますやり方の違いというものがあるということにつきましては、これはやむを得ないと申しますか、そういう制度のたてまえ上そうなっておるということだろうと思います。問題は、その御本人あるいは御遺族に対しますいわばトータルとしての補償額の多寡というものだろうと思われます。  ただいま先生の御指摘になりました、数字をお挙げになりました補償の額は、これは一時金と年金が含まれております。一時金につきましては、これは文字どおりその場限りの、災害が起こりました際にお支払いする全く一時のものでございますが、年金につきましては、これは御遺族に対しまして、いわばその資格のある限り、御遺族資格をお持ちの限り、生涯にわたって支払われるものでございます。  これの一例を挙げますと、C1の事故におきます二等空佐の例で申し上げますと、この御遺族に対します年金は、年額約四百七十万円でございまして、これはその御遺族資格を有する限りずっと生涯にわたってお支払いするというものでございます。  なお、奨学金等につきましては防衛庁におきましても、警察ではその部外団体と申しますか、財団法人等学資援助等を行っておられるようでございますけれども、私どもの方の防衛弘済会という部外団体がございますが、そこにおきましては、あるいは育英援護あるいは老齢父母援護ということで、老齢の御父母におきましても、国からの援護を得られない、資格によりまして得られない方もおられますけれども、たとえば生計維持関係がなかったとかいうことで、奥さんにはそういう年金はいきますが、御父母にはいかないという例もございますけれども、そういう国からお支払いするものの資格がなくても、老齢の御父母に対しましてはずっと、月額わずかではございますけれども、お支払いするというようなこともございます。私どもいろいろ知恵をしぼってやっておるつもりでございますが、なお十分でないということにつきましては、私どももその点につきましてはさらに今後努力を重ねてまいりたいと存じております。
  19. 板垣正

    板垣正君 叙勲の方はどういうふうになっていますか。
  20. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 叙勲につきましても、今回の場合はまだ事故原因等の究明もなされておりませんので、それの進展の状況を見てということになりますけれども、これにつきましても通常の死亡者に比較いたしまして、たとえば病死の方とかそういう方に比較いたしまして、さらに一段の配慮がなされるように努力をしております。また従来の例で申し上げますと、こういう特別の場合と申しますか、公務上の死亡につきましては、特に関係の御当局賞勲当局におきましても配慮をなされております。  なお、昇任でございますが、この特別昇任の方は、これはすでに今回の殉職者の方に対しましては一階級特別昇任を実施しております。
  21. 板垣正

    板垣正君 そうすると、実質的には警察官殉職された場合と、自衛隊の人が殉職された場合と大体同じくらいの処遇はやっている、こういうことになりますか。
  22. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 警察官の場合、特に有名な浅間山荘事件のときの殉職警察官に対しまして問題が起きまして、それに対しましていろいろ総理大臣褒賞特別褒賞金とかいうような制度がつくられたやに記憶いたしておりますけれども、そういうものにつきましては自衛隊はまだそれに類する事例がないということで、その後内閣総理大臣による特別褒賞金という制度は現在とられておりません。ただ、御承知のとおり、いわゆるジェットパイロット死亡者につきましては特別弔慰金、それから災害派遣等、あるいは武器、弾薬等の防護につきましては賞じゅつ金という制度がございまして、これらにつきましては、特別弔慰金の場合は最高額一千三百万、賞じゅつ金につきましても最高額は一千三百万ということで、そういう制度はとっておるところでございます。
  23. 板垣正

    板垣正君 警察官の方も、こういう殉職される方は公務のために殉ぜられるわけですから、これらの方に対しての補償ももちろん考えなければならない。しかし、自衛隊の場合ですね、これはやはり特別な事情があると思いますね。これは宣誓というのがございますね。全自衛官が入隊時に署名捺印、部隊によっては読み上げる、全自衛官ですね。   私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使 命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一 致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、 人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、 政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専 心職務遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧 みず、身をもつて責務完遂に務め、もつて国 民の負託にこたえることを誓います。 と。特に、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務完遂に務め、もつて国民負託にこたえる」、これを一人一人誓っておるわけですね。そうでなければ、また自衛隊任務達成できない、本来そうしたものでもあろうかと思います。警察官宣誓もございます。これは、そういうことは書いてないですね、そういうことはございませ ん。「何ものにもとらわれず、何ものをも恐れず、何ものをも憎まず、良心のみに従い、不偏不党且つ公平中正に警察職務遂行に当ることを固く誓います。」と。自衛隊の場合、本来の任務からいって、隊員になられた方には、やはり事に臨んでは危険を顧みずにやれと、やりますと。だから飛行機でも非常な無理な状況下でも訓練が行われる、また行わざるを得ない。そうでなければ精強な自衛隊を養えない、有事に即応できない。それで、そういう立場に置かれている自衛隊一般隊員方々あるいはその家族、そうした人たちがやはりこれだけの、平和な国を守るために身の危険を顧みないと、こういう宣誓までしてひたすら任務に精進している。こういう立場方々が不幸にして訓練中に殉職される、こういう扱いに対しては、これはまあ防衛庁だけの問題ではないかもしれない、もっと国の立場考えなければならない問題ではないかと思いますけれども、もっと国家として配慮されるべきではないのか。後顧の憂えなくこれらの方々訓練に励まれる、またそうした志ある方々が国の守りについていただくと。これは何といっても隊員精強いかんによって自衛隊の資質、実力も問われるわけでございます。  この点についての防衛庁長官のお考えを承りまして、私の質問は終わりたいと思います。
  24. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) まず、大きな航空機事故を引き続いて起こしまして、有為有能な隊員を一挙に二十五名失いましたこと、それから、国民の財産でありまする航空機三機を損害いたしましたこと、さらには、国民の多くの方々不安感を与えましたこと、まことに遺憾なことと申しわけなく感じております。  ただいまは殉職者補償について大変温かい御発言をいただきまして恐縮をいたしております。私どもといたしましては、訓練のみならず、身をもって責務完遂に努めると、事に臨んで危険を顧みないと、こういう隊員宣誓もございますが、実は、たとえば荒天におきまする海難救助あるいは山林火災における消火活動、あるいは水害等でまだ水が完全に引き切っていないときの出動、その他いろいろと責任といたしまして危険を伴う出動もそれはあるのでございます。したがいまして、ただいま大変にありがたい御指摘いただきましたが、しかし、殉職者災害に対する補償につきましては、先ほど政府委員から答弁をさしていただきましたように、政府の行われる、つまり国から給付されるもの、これは法律で法定されておりまするし、国以外からの給付につきましても制度上、ある制度が確定をいたしております。したがいまして、ただいま大変に温かい御指摘をいただきましたんで、われわれも鋭意さらに一層努力をいたしまして、殉職をしていった諸君の霊を弔いつつ、遺族補償につきましても万全の努力を傾注いたしたい、こう考えます。ありがとうございました。
  25. 柄谷道一

    柄谷道一君 まず、外務大臣にお伺いいたしますが、去る四月十四日、極東米軍視察のために来日しましたセイヤー・アメリカ国防副長官が、外務大臣及び防衛庁長官とお会いになっておりますが、その中でセイヤー国防副長官は、わが国防衛予算の拡充を評価する一方で、ソ連の軍事力増強はあらゆる面で一貫して継続されている、こう指摘いたしまして、外務大臣に対し防衛計画の早期達成を求めた、こう新聞で報道されております。これは、中曽根総理が訪米中に表明いたしました日米防衛同盟強化の言動や姿勢を受けて、アメリカが五六中業の早期達成を求めたものと、こう理解するわけでございますが、私はこの総理の訪米中の言動からすれば、アメリカ中業の早期達成に対する要求、期待というものは当然相当強いと、そう必然的に考えるわけでございます。  その会談の概要及び外務大臣としての御認識をまずお伺いいたしたいと思います。
  26. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 去る四月の十四日にセイヤー米国防副長官会談をいたしました。その際、同副長官から、日本防衛力整備がなるべく早く進められることを期待する旨の発言があったのは、これはまあ事実であります。セイヤー副長官のこの発言は、五六中業の早期達成といった観点というよりは、ソ連の軍備の増強が一貫して進められておる中で、わが国憲法及び基本防衛政策に従って防衛力整備をできる限り早急に行ってほしいという一般的な観点から行われたものと、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  27. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は四月一日の予算委員会の外交・防衛問題の集中審議の際に、総理にお伺いをいたしました。その要旨は、総理大臣として日米関係の相互信頼を高めることを重視して、財政事情にある程度目をつぶっても、防衛費の対前年度比伸び率を高めて、GNP一%以内という閣議決定を場合によっては見直しても、五六中業を予定どおり期間内に達成するという道を選択するのか、それとも、財政状況や他の政策とのバランス等を考慮して、日米関係の信頼をある程度損なうことがあったとしても、五六中業達成の期日を先送りすることもあるという道を選択するのか、きわめて防衛予算と深いかかわりを持つのでその姿勢を明らかにしてもらいたいと求めたわけでございます。それに対して総理大臣は、日本政府が防衛努力に誠意を尽くしてできる限り努力する限り、財政事情その他の問題は話せばわかってくれると思う、こうお答えになりました。で、これは私は、五六中業の期間内完全達成がされなくてもアメリカ理解が得られるという、楽観的な総理の見解を示されたものと受けとめているわけでございます。  そこで、外務大臣総理の訪米に終始同行されておったわけでございますが、五六中業が期間内に達成されなかった場合、総理の言動からしてこの早期達成を強く期待いたしておりますアメリカ側は、これに対して反発をし、貿易摩擦問題とも絡まって、かえって一時的に改善をした日米関係を阻害することになるのではないか。別な面から申せば、総理は一時的に日米関係の信頼関係を回復したと言っておられるけれども、これを中長期的に眺めるならば、大きな不信感の種をまいたのではないか、私はこう理解せざるを得ないわけであります。外務大臣の御認識、いかがでございますか。
  28. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 五六中業につきましては、私から申し上げるまでもないわけですが、防衛計画大綱に定める防衛力水準達成することを基本として、防衛庁が各年度の概算要求等を作成する際の参考資料として策定されたものでありますが、いずれにしましても政府といたしましては、しばしば国会でも総理大臣を初め説明をいたしておりますように、わが国自身の平和と安全の確保のために大綱水準をできるだけ早く達成することが望ましい、こういうことでありまして、この点については米国も日本の今日の防衛努力、そしてまたこの水準達成するための今日までやってきておるところの日本努力といったものは、私はもう理解をいたしておると、こういうふうに判断をいたしております。
  29. 柄谷道一

    柄谷道一君 くどいようでございますが、できるだけ早く達成するというこの日米双方の認識ですね、アメリカ側の言っておるできるだけ早くということは、すでに定まっております予定期間をできるだけ短縮してもらいたいという期待だろうと思うんですね。ところが財政事情によって、できるだけ早くと言っておる日本の言葉の中には、努力はするが、場合によっては期間が先送りされることもあるという意味を含めてのできるだけ早く、こう総理答弁からすると考えざるを得ないわけですね。両国間の認識というものに非常に差があるのではないかと思うんですが、私の認識は外務大臣、これは間違っておりますか。
  30. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるようにアメリカは、日本防衛計画大綱水準ができるだけ早くということは、まあとにかく早くしてほしいという強い気持ちを持っていることは、これはもう事実だと思います。しかし、これに対しまして日本としても日本財政の問題があるわけでありますし、また日本防衛力整備というのは日本自身が自主的に行うべき問題でございますか ら、そうしたアメリカの要請等は踏まえながら、日本日本のあらゆる条件の中で努力をしていくということでやっておるわけでありまして、私はそう大きな認識の差といいますか、はないんじゃないか。またこれは、アメリカとしては単なる要請でありますし、日米安保という観点から言えば当然の要求であろうと思うわけでありますが、日本としても努力をしておる。しかし、これはまあ日本の自主的な問題であるというたてまえはもちろんあるわけであります。その点はアメリカとしても十分理解をしておるわけで、今後とも日米間で十分話し合っていけば、アメリカ理解ができるんじゃないかというふうに私は考えております。
  31. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいまの御答弁からしますと、できるだけ早くという意味は、日米双方がそれぞれバラ色の夢を持っておる、まあこうしか受けとれないわけでございます。  そこで、防衛庁長官にお伺いいたしますが、先ほど板垣委員の質問に対して、できるだけ早くという表現を使われたんですね。ところが新聞報道によりますと、防衛庁は五六中業計画初年度である五十八年度防衛予算が主要正面装備において要求段階から大幅に削られた、こういう事情を踏まえ、厳しい財政状況の中で五十九年度防衛予算のシーリングを低目に設定されるであろう、こういう分析のもとに五六中業を期間内に達成することは困難であるという判断を固めて、八月にも開かれるであろう日米安全保障事務レベル協議でアメリカ側にこの判断を伝えて理解を求める方針である、これは新聞報道ですね、これは事実でございますか。
  32. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず第一点の、五十八年度予算の結果、五六中業をすでに断念したのではないかというふうな御趣旨の発言でございますが、確かに五十八年度予算の中身を見ますと、五六中業の初年度として必ずしも全面的に満足すべきものとは思いませんけれども、これは五十九年度以降の努力いかんによって左右される問題であるということでございましょうし、また私どもとしても、これも先ほど御答弁申し上げたとおり、五十九年度の業務計画作成に関する長官指示の中においても、五六中業の二年度としてこの五六中葉を着実に達成したいというふうな趣旨の長官指示を発出した次第でございます。そういう意味合いから、五六中業防衛庁が断念したということは当たらないんではないかというふうに思っております。  それから第二点の、五十九年度の概算要求が低いシーリングになることを見越してと、こういうふうな御指摘でございましたが、私どもまだこの五十九年度予算のシーリングについてどうなるかについての材料の持ち合わせはございません。これからの問題であろうというふうに理解しております。  それから第三点の、この八月にも開かれるであろう安保事務レベル協議においてそういった点についてアメリカに釈明するのか、こういうふうなお話でございましたが、この日米防衛安全保障事務レベル協議というのは、国際情勢その他、日米双方が相互に関心があるもろもろの安全保障上の問題について自由に意見交換をするということでございまして、現在まだいつ開かれるか、あるいはどういうことを話し合うかということについての材料というか話し合いというものは一切なされておりませんので、これも、いつ、どういう話し合いが行われるかということについていま申し上げるような状況にございません。
  33. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいま局長答弁は、五六中業期間内達成ということはまだ放棄していない、長官指示でこれを確実に達成できるような予算検討を行っておる、こういうことですね。ところが、防衛局長予算委員段階で、五六中業達成しようとすれば、五十九年以降、初年度が切り込まれておりますので、四年間で平均七・三ないし九・八%の防衛費の対前年度伸び率を確保する必要があると、これは予算委員会で述べておられる答弁ですね。そこで、具体的にお伺いするんですが、五十八年度の防衛費は二兆七千五百四十二億円でございます。五十八年度のGNPの伸び率、これは恐らく長官はまだ推定できないと逃げられるんでしょうけれども、これは政府の予測ですよ、名目五・六、実質三・四%、これが基本になって予算が組まれているわけですね。この伸び率とした場合にGNPは二百八十一兆七千億円となるわけでございますから、対GNP比率は〇・九八%ということになるわけです、五十八年度。ところが、この五十八年度の防衛費の中の人件費は一兆一千八百七十八億円、給与改定費は百十億円しか見込まれていませんから、仮に五十八年度人事院勧告が六・五%と仮定をして人件費は一兆二千五百四十三億円、したがって防衛費は二兆八千二百七億円となりまして、政府が五十八年度人事院勧告の実施を決定した段階で、その時点GNP一%の以内という枠を超えるということがあらわれてくるわけですね。これ間もなくですよ。また、五十九年度のGNPの伸び率を五十八年度と同様とした場合、GNPは二百九十七兆四千億円となりますから、その一%は二兆九千七百四十億円でございます。ところが、防衛費概算要求防衛局長の言いますように伸び率七・三%とすれば二兆九千五百五十三億円、九・八%とすれば三兆二百四十一億円、平均の八・六%としても二兆九千八百九十七億円になります。しかもこれは五十八年度で人件費増が人事院勧告で当然あるわけでございますから、五十九年度予算は明らかにGNPの一%を超える確率がきわめて高いということが言えると思うわけでございます。  私は、いずれにしても早晩一%の枠内という閣議決定を超える事態は避けられない状態になってくる、しかもそれは早ければ五十八年人勧実施決定時、または五十九年度概算要求時に生ずると考えられるわけでございます。防衛庁長官は、GNPの一%を超えるということが明らかになった場合、改めて閣議決定見直しを求められる決意でございますか。
  34. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいまのいろいろの数字を挙げられまして、いわば予測されるであろう計算を踏まえて御質問がございましたけれども、しかし、御指摘いただきましたいろんな数値はこれからともに詰まっていく数値であろうかと存じます。したがいまして、いまこの時点でどういう五十九年度の防衛費政府原案なるものが固まっていくであろうか、それからそのときの経済の見通しというのはどういうものになっているか、両方ともに可変、動きやすい数字でもございますので、いまこの時点でその問題については触れさしていただき、それから結論を申し上げますことは差し控えさせていただきたいと思いますが、私といたしましては、従来答弁さしてみていただいておりますように、五十一年に閣議決定をいたしました国民総生産の百分の一を超えないことをめどとするというこの決定については、現状でこれをまず外して概算要求を組むとか、これをまず外さなきゃならぬとかいうことを考えているわけでございませんで、尊重していきたいということを考えておるわけでございますが、現時点においてはこれを外してしまわなきゃならぬというようなことを考えているわけではございません。  それから、もしそれでは政府原案が固まっていく時点において明らかにそういう事態が生じた場合にどうなるのかという御質問でございますが、そのときにはそのときの対応の仕方として改めて考えなきゃならぬことであろうかと、こう考えておる次第でございます。
  35. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が参りましたので、これは念を押したいんですけれども、私は荒唐無稽な推定をやっているわけじゃないんですよ。人事院勧告が、二年分ですから、六・五%程度の人事院勧告が出るだろうと、これは一般に言われている推定ですよね。GNPにしても、政府の経済成長の見通しの率を使っているわけです。そこでいま防衛庁長官、相矛盾した答えを言っておられるんですよ。片や五六中業達成したい、一%は尊重したい、両方の答えが賄えて、それが満たされて計画達成されるはずはないと思うんですね。  そこで、最後の質問ですが、内容はともかくと して、一%にかわる新たな歯どめについて防衛庁は検討しておられるのか、いま検討していないとすれば、どういう時点からその検討に着手するのか。一般論として一%にかわる防衛費の歯どめというものについてどのようなことが考えられるのか、これに対して御質問して、時間が参りましたから終わります。
  36. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 予算概算要求をつくり上げるときから、さらに政府原案が決定するまでの間、やはり相当時間的な問題もございます。それから概算要求をつくるについてもいろいろなつくり方といいますか、手だてがございます。それから経済の予測そのものは、もういまここでちょうちょう申し上げませんが、非常に大きく変わる可能性のあるものであるとも言える面もないことはございません。いろいろございますが、いまこの時点で一%にかわる歯どめを考えておるかという御質問に対しましては、私は現在考えておりませんと、こう御答弁申し上げますし、それから一%それじゃ超えたらどうするのかという御質問に対しましては、先ほどの答弁を繰り返さしていただくようで恐縮でございますが、そのときに改めて考えるべき事柄であると、こういうふうに考えております。
  37. 柄谷道一

    柄谷道一君 満足はできませんが、終わります。
  38. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時五十分まで休憩いたします。    午前十時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時五十二分開会
  39. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) ただいまから安全保障特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国の安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 法制局長官にまずお尋ねをしますが、宇宙天体の利用という問題に関しましては、宇宙開発事業団法が制定せられましたとき、宇宙条約の批准がありましたとき、そのほか最近も予算委員会、あるいは衆議院の外務委員会等で非常に精緻な討議が行われておるわけでありますが、その中で、去る四月四日の予算委員会におきまして秦豊議員の質問に対して法制局長官が、「憲法の範囲内であくまで専守防衛という見地から必要な情報を収集するために偵察衛星を保有するということについて、現行法制の規定だけに限って言えば、それを妨げるものはないと思います。」という答弁をしておられる。これは秦豊議員の質問というものがもともと戦略情報という軍事的なことに関連しての質問でありましたので、ちょっと私、いろいろ問題点を含む御答弁のように思うんですが、この答弁の趣旨をもう一遍法制局長官説明していただけますか。
  41. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 御指摘の私の答弁についてでございますけれども、当時私は、宇宙開発事業団法の審議その他の機会に国会においていろいろな御決議がありましたことは十分承知しておりました。ただ、これは私の推測でございますけれども、そういう御決議のあることを前提とした上で、法制局の長官である私に対して特に指名しての御質問でございましたので、私はあくまで法制的な見地からの御質問であるというふうに理解をしまして、特にその点については誤解のないように、答弁の際にも、「現行法制の規定だけに限って言えば」というふうに慎重に限定をした上で、そういう現行法制の上でそれを禁止しているものはないと、特に戦略情報というようなお話でもございましたから、その点にも顧慮をいたしまして、「憲法の範囲内であくまで専守防衛という見地から必要な情報を収集する」というふうに申し上げて御答弁申し上げた、それが私の真意でございます。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、細目に入った議論になるけれども、たとえば宇宙開発事業団がこういう軍事目的の偵察衛星を打ち上げることは同法の第一条の平和目的に限りという条項から言っても、それが非軍事という要請を満たすための修正の結果その文言が挿入された経緯から言っても、国会論議の中から言っても、宇宙開発事業団が打ち上げるということはこれは恐らくできないと思うんですよ、法制的に。しかも宇宙開発事業団というものは国家機関の一つと見てもいいわけで、それが大体わが国のそういう平和目的の衛星を打ち上げる主要な機関だから、そういうものを念頭に置いて言っていただかないと、法制的には何らの制約がありませんというようなことになるとちょっとおかしいのじゃないかね。やっぱり宇宙開発事業団法というものを念頭に置いて答弁していただかないと過つのじゃないかと思いますが、それはどうです。
  43. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 宇宙開発事業団法に平和目的に限りという言葉があることも無論承知しておりますし、先ほど申し上げたように、いろいろ国会の決議のあることも十分承知しております。ただ、御質問者である秦委員の前で大変言いにくいのですけれども、非常に短い時間に短い答えをするようにというのが恐らく御趣旨であったと思います。したがって、一々細かい問題まで立ち入ってお答えをしなかったまでで、私の趣旨は、そういう細かい問題まで全部含めてすべてがイエスであるとかノーであるとかいうことについて断定的に申し上げたつもりはございません。ただ、翌日の新聞などでも、あの法制局長官答弁はあくまで法制的な見地からのものであるというふうに正確に報道されていたように私は記憶しております。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたは、宇宙開発事業団の問題を非常に末梢的なことのように言われるから、私は法制的に言っても、宇宙開発事業団という国家機関が発射する、打ち上げる衛星というものは、非常にやっぱりわが国の宇宙開発利用に関する非常に重大な、重要部分を占めるわけだから、だから宇宙開発事業団法という法律をわが国の法制上において捨象してしまうほど小さな問題じゃないと、やっぱりそれはあなたが念頭に置いて、宇宙開発事業団が打ち上げることは法制的にいけません、それはできませんというその一言が欲しかったわけですね。それをあえて捨象してしまって法制的に何にも制約はありませんというのは不適当じゃないかと、こう言ってお尋ねしているんですが。
  45. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 重ねてのお尋ねでございますけれども、宇宙開発事業団が打ち上げる場合に、いまのような偵察衛星と申しますか、そういうものを打ち上げることはできないということはもう秦委員は十分御承知の上で御質問になったと思いましたので、あえてそこまで申し上げるのはかえって失礼だと思って私は何にも答えなかったというのが私の気持ちでございます。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう釈明をなさるなら、あなたも法律関係では大事なお方だし、あえて私も余り追及する気持ちはないんだけれども、とうとうとして平和的なものから軍事的なものへというふうにいま時の流れが行っておるからやっぱり法律家としては余りとっとっと右へ流れる方向にあなたが利用されては困る。やっぱり法律家というものは厳として法律家としてのあれを守って、そういう時流というものに流されないようにという、私はそれを希望しているわけだからね。  それで、いま科技庁の主管局長か審議官かおられるんですか。——これは国会論議が、そういう偵察衛星のような軍事的なものを打ち上げることが法律的に許されないという問題と、それからさまざまな衛星の収集するデータを防衛庁がどの程度まで利用することが許されるかという問題と、ごっちゃにして論議が行われているものだから、だからややこしいんだけれども、あなたは宇宙開発事業団が軍事用の衛星を打ち上げることは現行法上はできませんということを、その立場は厳として守られるのか、守られないのか、どちらです。
  47. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 科学技術庁といたしましては、事業団の平和の目的につきましては、従来から非軍事と同様の趣旨で国会で種々議論されておりまして、当庁といたしましては国会の御議論を 踏まえて開発を進めているところでございます。  防衛庁の衛星を打ち上げるという問題については、したがいまして具体的なスケジュールとしては私ども何も持っておりませんので、個々具体的に検討したことはございませんけれども、ただいま法制局長官の御趣旨の法令解釈が適当であろうかと存じております。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大胆率直にとまで言わなくても、普通に言っていただけりゃいいんだけど、つまり「平和の目的に限り」という宇宙開発事業団法第一条の解釈ですが、当時の会議録を読むと、これは非軍事ということでありますということで大体国会は通っていますね。それから佐藤総理大臣も平和目的というものを厳に徹底していくというような趣旨の答弁をしていらっしゃるわけだね、この法案の答弁で。平和目的に徹してという表現だけどね。だから、これはあれでしょう、軍事的な用途に使う衛星を打ち上げることは宇宙開発事業団としては許されないということを端的に言っていいわけでしょう。
  49. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 大体そのとおりと存じます。
  50. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 「大体」ということをあなた言われたが、これはどういう意味かね。というのは、先ほど科技庁の職員を呼んで聞いてみると、やはりそういう逃げ方をするわけだね。木内四郎国務大臣もやはり大体御説のとおりでありますと言う、何かはっきり言うたら都合が悪いような含みを感じる、憶病な態度のように思うんだが、「大体」というのはどういうわけかね。やはり大胆率直に軍事的な用途に使う衛星は打ち上げることができないと解釈していいんでしょう、どうなの。
  51. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 私、「大体」と申し上げましたのは特段の意図があるわけではございませんで、法制局長官の御答弁のとおりでございます。
  52. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もう一遍言うてちょうだい。  法制局長官の言うとおりだというのは、あなた方の解釈としても軍事的な目的の衛星を打ち上げることは、宇宙開発事業団法第一条の趣旨から言って許されないという理解であると聞いてよろしいか。
  53. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) そのように存じます。
  54. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 法制局長官も、いまの科技庁の審議官があなたの御答弁を踏まえて答弁したわけですが、いままでの論議を踏まえて、開発事業団法第一条の趣旨にのっとって、軍事目的の衛星は打ち上げることは許されない、現行法上、そういうふうにあなたの御答弁を正しく解釈してよろしいでしょうね。
  55. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 理屈を申し上げるようで恐縮でございますけれども、先ほどの御質問はいわゆる偵察衛星、それについての御質問だったと思います。そういうものを上げることは宇宙開発事業団はできないというふうに私はお答えしたと思います。そのとおりだと思います。いまの科学技術庁の方の答弁もそのとおりだと思います。
  56. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 偵察衛星というのは私は非軍事にあらざる、つまり軍事的な用途だから偵察衛星ということをお話ししたわけですよ。そういう理解でいいんでしょう、いかがです。
  57. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) そのとおりでございます。
  58. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 はい、それじゃもう長官よろしいですよ。  さあそこで、外務大臣にお尋ねしますが、あなたは、衆議院の外務委員会、四月二十七日に宇宙三条約の審議が行われておりましたときの大臣の御答弁を見ますと、土井たか子議員の質問に対しては、「もちろんわが国は平和国家目標としておるわけですから、いままでの憲法その他の枠組みというのがありますし、そういう中で宇宙事業団法ですかもありますし、要するに平和目的に限るということになっておりますからその趣旨に従ってこれをやらなければならない。国会決議もありますから、その趣旨に従ってやるのがこれはもう当然のことだと考えます。」という御答弁があるんです。これはまあきわめて私は正しい御意見だと思うんですが、これが民社党の議員、衆議院の塚本さんの質問でも、総理大臣が、塚本さん、民社党が言うなら検討してみますというような衆議院の予算委員会での御答弁があって、その検討がいまどうなっておるのかということは総理に伺わないとわからないけれども、今度民社党の渡辺朗議員が質問をしました。これは、偵察衛星という問題がいろいろ論議されておるけれども、「何らかの歯どめをかけた上で情報収集手段としてこれを採用するというのは合法的でもあり経済的でもある、そういう議論がいままであったと」思うと、そこでどういうお考えでしょうかという大臣のお考えをお聞きした。それに対すると少し答弁が若干変化したような印象を受けるんですよ。というのは、   いま偵察衛星を持つべきであるというふうな動きもあるわけでございまして、また総理もこれらの問題につきまして答弁をいたしております。私はやはり平和目的という立場から、この偵察衛星という問題は今後そうしたいろいろの動きとか、あるいは自民党の特別委員会の決議等もございますが、そういうものを踏まえながら全体の枠組みの中で検討をしていったらいいのじゃないか、こういうふうに考えます。 つまり、平和目的でなきゃいかぬと土井たか子議員に言い切った後、今度は民社党の議員には少しトーンダウンしたといいますか、全体の枠組みの中で検討したらいいじゃないかというふうにやや後退が見られるんですね。これは大臣としてはどういういま見解をお持ちなんでしょうか。
  59. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまお話がございましたことを私いま思い出しているわけでありますが、私の基本的な考え方は、これは先ほどから法制局長官とかあるいは科学技術庁から答弁いたしましたように、宇宙開発事業団法がありますし、あるいはまた憲法があります。その他の法律の枠組み等もありますから、そういう枠組みの中でやはり考えていかなきゃならぬと、そして「平和の目的に限り」というのは、これは宇宙開発事業団法にはっきり明示をしてあるわけでありますし、そういう中で考えていかなきゃならぬということを言っておるわけで、確かに現状の動きとしては、先ほどもお話がありましたようないろいろわが党内におきましてもその他におきましても検討が進められておることは事実であります。事実でありますが、しかし、先ほどから申し上げましたいろいろな憲法、法律その他の枠組みというものの中でこれは判断をすべきことであるということで首尾は一貫をしておるというふうに考えております。
  60. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それで四十四年の五月九日の衆議院会議録、これは本会議の会議録ですね。それを見ますと、これは自民党の小宮山重四郎さん外三名提出のわが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議案と、これはたまたま時を同じゅうして宇宙開発事業団法案というものが本会議にかかりましたけれども、参議院の場合はこの法案に対する附帯決議として大体同趣旨のことを決議しておるわけですが、それとは違いまして、この法案と時は同じゅうしたけれども、独自にわが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議案というものがなされているわけですね。これは小宮山重四郎さんの提案理由の説明を見ましても、平和の目的に限るんだということをおっしゃっておられる。それから決議自体が「平和の目的に限り」と、ちょうど宇宙開発事業団法第一条の修正の文言と同趣旨の文言を用いておるわけです。そうとしますと、これはやはり宇宙開発事業団の打ち上げる衛星に限らず、わが国の宇宙開発及び利用の基本に関する国会決議ですので、これを無視して、宇宙開発事業団はもちろんのことですが、それ以外の国家機関といえどもこの決議に違反して軍事用の衛星を打ち上げるということは、国会決議に対する背反として許されないと私は考えておるんですが、大臣の御認識はいかがでしょうか。
  61. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もやはり国会決議というのは非常に重いと思っております。そして これは尊重していかなければならぬことは当然でありますし、そうした国会決議あるいは法律さらに憲法、そういうものを踏まえながらこの問題に対応をしていくということは当然のことであろうと思います。
  62. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、いま大臣がおっしゃったことを科技庁の主管の審議官ですか、いかがお考えですか。
  63. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 私どもも事業団に限らず国家関係機関が尊重していかなければならないものというふうに考えております。
  64. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そこで、こういう国家機関が国会決議を尊重してやらなければならぬということは当然ですが、民間の機関がいまあれですか、こういう衛星を打ち上げるシステムというのはあるんですか。これは科技庁にお伺いしたいです。
  65. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 民間が人工衛星を開発し、これを打ち上げるというシステムは現在のところはございません。
  66. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、民間のものが打ち上げる、それを国家機関が許さないとかあるいは行政指導をしてそれをさせないようにするというような問題は現在のところでは生じないわけですね。
  67. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 具体的には生じてまいりません。
  68. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまの趣旨を貫きますと、防衛庁なり自衛隊が外国に依頼して軍事目的の衛星を打ち上げるということはどうなりますか。これはやっぱり国会決議の趣旨からかんがみて許されないと考えるけれども、その点どうでしょうか。これは防衛庁長官にお伺いする。
  69. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この偵察衛星なり通信衛星というものが一般的に申し上げて、われわれ関心は持っているということは従来も御答弁申し上げたことがございますけれども、現在防衛庁としてみずから保有し、あるいはよそに委託して打ち上げてもらおうというふうな計画は一切ございませんので、全くいま先生の御指摘のようなことについて考えたこともございません。
  70. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 長官、いま主管の局長が全く考えたこともないということでしたけれども、これは長官として、やはり国会決議を尊重していかなきゃならぬということは外務大臣もおっしゃったけれども、国会決議は、わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議ですからね、これはやっぱり尊重してあなたも大臣として御指導いただかなければいけませんよ。いかがでしょうか。
  71. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 幾つかに分けて御答弁させていただきたいと思いますが、その前に、まず現行法並びに国会決議、法よりも決議の方を私は重く見ておりますが、いずれも尊重しなければならないと思っております。それから平和利用は非軍事という共通の理解があるというお話がございましたが、この非軍事というものについてひとつ具体的に現在考えておりますことを申し上げさしていただきますが、この夏から実用化されるかもしれないと言われておりまする打ち上げに成功いたしました「さくら二号a」という通信衛星の利用につきましては、もしその通信衛星が利用ができるのであれば、われわれとしても幾つかの離れた地域に連絡をいたしたいところもございまして、それがわれわれとして何らかの形で、直接利用でなくて公社の回線を経て利用するにしても、利用さしていただけるものであればこれはぜひ利用さしてみていただきたいと、こう考えてもおります。それから偵察衛星を含める軍事衛星、これについてわが国の衛星ばかりでない、いま地球上にはずいぶんたくさんの衛星が飛び交っておると思いますが、その中で得られまする各種の情報につきましては、私どもとしてはこの情報については非常に関心を持っております。しかしながら、ただいま政府委員から答弁をさしていただきましたように、われわれがさような衛星を打ち上げてみずからの手でそういう情報をいまとるような手だてを現在考えておるわけではございませんで、その意味では先ほど答弁ございましたようにその応用問題につきましてはいまいささかも思いいたしてはおりません。  以上でございます。
  72. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまいわゆる通信衛星「さくら二号」ですか、これの利用の問題に大臣が私まだ質問をしないうちに踏み込まれたわけで、あなた方の願望がいかに強いかということを証明するものだと思いますが、これは電電公社が開設する一般公衆電話回線を使うというそのクッションがあるという、そこであなた方はこれは当然許されていいというようなそんなお考えですか。
  73. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 防衛庁としましては、いま長官からも申し上げましたように、「さくら衛星二号」を使いまして電電公社が公衆電気通信役務を提供するというような計画をお持ちだと伺っておりますのでその一環として使わしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。これは単に硫黄島の問題だけじゃございませんで、古くは日本が打ち上げた衛星じゃございませんが、インテルサット衛星というのがございまして国際電話やなんかに使っておりますけれども、そういう衛星については私どもが電話をかければそれがそのまま衛星を通じてワシントンなりロンドンなりに届くというような形での利用というのは従来から行われてきておるわけでございます。それから今回打ち上げられました衛星で、電電公社が父島その他の離島に地上局を置かれて公衆電気通信役務のサービスの提供を行われるわけですが、その場合に、防衛庁がたまたまそういうところと電話連絡をいたします場合には、当然その回線が利用されることになる、そういうような意味がございまして、私どもとしてはそれと同じような意味で硫黄島についてそういう地上局を置いていただくようにお願いしたいなというようなことを考えて、現在、科学技術庁や郵政省の方と御協議申し上げているところでございます。
  74. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 時間が来ましたのでこの問題はひとつ次回に質問したいと思います。
  75. 勝又武一

    ○勝又武一君 私、防衛庁長官に伺いますが、三月二十四日の内閣委員会と二十六日の予算委員会で例の航空自衛隊事故について伺いましたが、その際に、私は非常に原因の追求それから上層部の責任のとり方あるいは処分が甘い、そういう点を指摘をいたしました。一カ月に三回も起きているというあの時期ですね、そのことを言いまして、何かブルーインパルスの方は五月にはわかるというようなことを答弁がありましたけれども、今度また続いて二度ですよね。私は再びお伺いしますけれども、やっぱりこの原因の追求なり責任のとり方なり処分に対する甘さなり、そういう対処の仕方がきわめてイージーだ、むしろ軽率じゃないか、こういうように考えますけれども、その反省はいかがですか、長官
  76. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 特に四月に入りまして大型の航空機事故を二件続けて引き起こしまして、大変国民の多くの方々に大きな不安感を与えましたこと、さらに有為な人命も失いましたし、国民からお預かりしておりまする機材も失ったこと、まことに遺憾でございます。申しわけない限りでございます。  いま事故原因とその責任のあり方について関連して御質問がございましたが、四月に起こりました航空機事故に限ってだけ申し上げさせていただきますが、現在鋭意その原因の調査中でございまして、したがってこの問題に関してはその調査の結果を見て判断をいたさなければならぬと思っておる次第でございます。一般論として責任の追及、とり方、甘いんじゃないかという趣旨の御発言がございました。航空機事故に限らず自衛隊事故というものが国民の不安を引き起こすというようなことであっては自衛隊としては許されるものではございませんので、特に私は四月二十七日の時点で二つの事故が相次いだということも実は直接の動機でございましたが、訓練計画の立て方、あり方まで含めまして、とにかくここで総点検をいたす、機材の点検といったようなことだけでなくてすべてについて総点検をするという長官指示を発出いたしたわけでございます。もう少したちますと事故調査の結果も私の手元に届いてまいると思いますので、それを見た時点でただいま先生 から御指摘のありました問題点につきましても検討をしなければならないだろう、こう考えておりますが、現時点においてはまず調査の結果を待ちたい、こういう心境であるわけでございます。
  77. 勝又武一

    ○勝又武一君 ブルーインパルスのときも私言いましたけれども、十一月の事故が四カ月で大体出すのを慎重にということであなたは五月まで延ばしたということを答弁されている。まだわからないんでしょう。まだ出されないでしょう。そしてまた続いて二度でしょう。私はやっぱり一つは米国の強硬な対ソ戦略が組み立てられてきた。そういうことから、いまは有事を想定しての訓練が非常に過重になってきている。だから追っついていかない、いままでの体制と。こういう訓練の、そういう意味での有事を想定しての過重なやり方、ですからむしろ危険性が高くなってきている。そういうことも百も承知をしながら任務の方が優先で人命を尊重するという認識が欠けている。きょう時間がありませんからもう細かいことを言いませんけれども、消耗品と考えているというくらいにしか率直に言って言えないわけです。あれはハイジャックのときですか、時の総理が、人の命は地球より重いんだということを国会でもおっしゃっていますよね。私はそういう意味で、何かきょう午前中聞きますと、叙勲とか昇任も一階級昇任するとか、何か自分が特攻隊にいたときの二階級特進という言葉を僕は思い出すくらい、やっぱりそういうことの方が優先をして人命尊重ということが本当に軽視をされる、大変なことだというように思うんですよ。そういう意味で原因の追求なり対処の仕方なり特に上級幹部の皆さんの対処の仕方という点について大変問題がある、そう思うんですけれども、いかがですか。
  78. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 自衛隊は常に厳しい訓練をいたさなきゃならぬという集団であること、これは事実でございます。しかしながら、御指摘にもございましたが、いやしくも人命を軽視するというようなことは、これはもうあってはならぬことであると思います。  それから訓練におきましても、事故に結びつくような仮に訓練というようなことがあり得るとすれば、それはあってはならぬことだと思います。しかしながら、私自身は今日の自衛隊訓練のあり方その他につきましては、総点検について指示をいたしましたが、それは相次いで四月に入って二つの大きな航空機事故が起こったということもございまして、その反省からそういう長官指示を出しましたが、必ずしも自衛隊が現在御指摘のような形で訓練をいたしておるというような判断に立って行ったわけではございませんが、しかしながら、各方面から特に御指摘もいただいておる問題点でもございます。十分心いたしまして、私は相次いで原因調査の結果が上がってくると思いますのでそれを見まして、ただいま委員の御指摘のありましたような問題点について十分今後検討を加えたい、こう考えております。
  79. 勝又武一

    ○勝又武一君 二度あることは三度あると言いますけれども、三度どころじゃないんですよね。もうブルーインパルスで、三月に私が指摘したばかりですよ。その途端に二度でしょう。これはさっき言ったような趣旨で特に私は上級幹部の対処の仕方という点について本当にはっきりしていただきたいと思う。しかもこの原因追求もきわめて遅い、これははっきりしていただきたいというように重ねて要望しておきます。  時間がありませんからもう一つの問題だけに限定しますが、これも三月二十四日と二十六日に伺った硫黄島の問題ですけれども、あのときに私は、特に硫黄島について一日も早く島に帰りたいという住民の皆さんの願望が通るようにしてくれと、国土庁も積極的にそういう方向で現在進めているという答弁でありましたけれど、どうも最近の風潮といいますか、状況を見ますと、従来の硫黄島が訓練基地だった。その訓練基地というのがいまやシーレーンの問題だとかF4とF15の問題だとか、そういうことからまさにシーレーン防衛との関連で作戦基地にどんどん移行しつつある。それがすればするほど島に帰りたいという島民の皆さんの希望はじゅうりんされる。国土庁が考えていることよりははるか遠くなっていく、そう思いますけれど、長官いかがですか。
  80. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 硫黄島への帰島希望者が主として東京都内に数多く居住しておられることも存じております。それから硫黄島は現在非常に離れたところであって、水の便も必ずしも十分ではないということもございまするし、帰島する方々の今後の生活のことから、これは防衛庁の仕事でない、国土庁の仕事として関係省庁、国土庁が中心になって開発事業を進めようといたしておることも存じております。さらにわれわれとしては、これだけ狭い国土の中で硫黄島のわれわれが持っておりまする特に航空機基地を中心といたしました飛行場といたしましたところにおける訓練は、訓練基地として非常にわれわれにとってありがたい場所に位置づけられておるものですから、われわれとしては過去数年にわたって硫黄島の特に航空機基地を中心といたしました基地整備を行ってきております。しかし、現時点で御指摘のような硫黄島全体を要塞化するような、あるいは硫黄島に帰島する方々の希望に反するような形でこれを基地化するような、そういう意味でいわば硫黄島基地整備をいたしておるのではございませんで、ただいま防衛庁が持っておりまする硫黄島の中の防衛施設の整備にもっぱら専心腐心をいたしておると、こういうところでございます。
  81. 勝又武一

    ○勝又武一君 そうすると重ねて伺いますが、この硫黄島全体を作戦基地としてしまって帰島する皆さんの希望が踏みにじられるような、つまり国土庁の方から言えばそういうことが非常に障害になる、そういうようなことは一切防衛庁としては考えていかない、訓練基地だけだと、こういうことで再度くどいですけれども、確認してよろしいですか。
  82. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 先ほど来答弁さしていただいておりますように、現在われわれが行っておりまする整備自衛隊の持っておりまする範囲の中の整備でございまして、御指摘のようなことを考えておるわけではございません。
  83. 勝又武一

    ○勝又武一君 もう一つ、硫黄島にかかわりましてこれも先ほど寺田委員が質問されました通信衛星の関係が、硫黄島にかかわってきていますね。それでこれは寺田委員が後引き続いて抜本的な問題の所在を明らかにした御質問をされるというように先ほども御本人がおっしゃっていますから、私は短い時間であえて多くを言いませんけれどもね。一つだけ伺っておきたいのは、通信衛星であろうが——先ほど偵察衛星については軍事的目的があってやらないという最初の答弁と違って、今度通信衛星の方はいいんだというお話でしたけれども、通信衛星そのものもこれが軍事的目的に使われる、転化される可能性はありますね。そのときにはどうなさるのですか、防衛庁
  84. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 技術的な問題を含んでおりますから技術的な問題につきまして担当官からお答えをすべきだと思いますが、すでに打ち上げられました「さくら二号」というものは、警察庁と電電公社と、言うならば初めから、打ち上げる前から十分話し合いの上で行われているものでありまして、われわれはその中の電電公社の回線をぜひ使わしていただきたいということを電電公社を介して作業中なのでございまして、今後の通信衛星全般の問題についてはまだ何も議論をいたしておるわけじゃございません。特に「さくら二号a」という通信衛星が実用化されるというのが近づいてきておるということから、先ほど申し上げましたような作業を開始したということでございます。詳しくはなお担当局長から答弁をいたさせます。
  85. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 先ほども説明申し上げましたが、打ち上げられました衛星は電電公社が公衆電気通信役務を提供するということになるわけでございまして、その公衆電気通信回線をその利用者の一人である防衛庁が使わせていただくというのは、現在でもいろいろな形での回線で公衆電気通信役務をやっておる電電公社の回線を使わしていただくというものと全く同じだというふ うに私ども考えております。  公衆電気通信法によりますと、その利用については「差別的取扱をしてはならない。」という規定もございますので、防衛庁が使用しますために、通信役務を提供する部分についてそれがたまたま衛星を通れば防衛庁だけ使えないというのは必ずしも実情に沿わないのじゃないかというような感じもございまして、いま鋭意関係省庁と御相談しておるところでございます。
  86. 勝又武一

    ○勝又武一君 私が軍事目的に転化すると言った意味は、平常時に使っている場合とそうでなくなる場合があるんでしょう。その場合にどうなさるんですかということを聞いているんです。つまり通信衛星にしても、この国会決議の趣旨からいけば、先ほどから再三科学技術庁も答弁をしておるし、長官も確認をされましたように、軍事目的に使わないというのでしょう。ところが、その通信衛星で使っている電話回線を自衛隊が使うということ、自衛隊が使うということによって、一たん有事の場合には軍事目的で使われることになるんでしょう。そのときにはそれは背反することにならないですかとお聞きしているのです。
  87. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 公衆電気通信につきましては、国際的な電話についても、それから国内電話についても一般的にいろいろな人が利用しておるわけでございまして、それを利用しているのは、その時点がそういう有事の事態か平和の事態かということで区別され得る性質のものじゃないと私ども考えておるわけでございます。
  88. 勝又武一

    ○勝又武一君 それはやはり防衛庁長官おかしいでしょう。軍事目的に使わないということとはやっぱり背反するんでしょう、そこで。いかがですか、長官の御見解は。
  89. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) その点がどうもよく私理解できないんでございますが、国会決議並びに事業団法第一条の精神というものは、宇宙の平和利用ということが非常に大きな下敷きになっておるんだろうと思います。ただ、その場合に、平和利用という、平和目的というのは非軍事、こういうことになっておる、共通の理解が成立しているというふうに私は判断をいたしておりますが、その中で言われておる非軍事という問題においては、先ほど来議論されておりますようにわれわれは、たとえば災害の場合でもわれわれ自身が持っておる自衛隊の通信網とさらに公社の通信、それからもう一つ大きくはその他の通信手段、あらゆるものをみんな使うわけでございますが、有事になった場合に、しからばどこまでが使えるのかということで、通信衛星の問題まで実は私ども検討はいたしておりませんでしたものですから、その問題については現在この時点で私自身はいま実用通信衛星について、打ち上げられて実用がもう目前に迫っておる通信衛星の利用、間接的な利用ですけれども利用、この問題だけを実は念頭に置いていままで、今日まで議論をしてまいったわけでございます。
  90. 勝又武一

    ○勝又武一君 時間が来ましたから答弁は結構ですけれども、私はやっぱり最後に申し上げたいのは、いまや軍事目的という範疇は非常にむずかしいわけでしょう。有事即応、宣戦布告するしないにかかわらずそういうことがもうずいぶん言われているわけでしょう。まさに先鋭化すればするほどシーレーン問題とあわせて硫黄島の問題は特にそうなる可能性をはらんでくる、まさにもう軍事目的そのものだということになりかねない事態が僕は目前にある、こういうことだって言える。非常にそれはむずかしいわけですよ。だからそういう意味で言うと、いま皆さんのおっしゃっている軍事目的でないんだから通信衛星を自衛隊が利用するということは国会決議にも反しないと言うけれども、私は全く反する、こういうことを重ねて申し上げて、時間がありませんからきょうの質問は終わります。
  91. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに防衛費の問題についてお伺いをいたします。  この件につきましては、もう数年来衆参両院のそれぞれの当該委員会で問題になって現在に至っているわけであります。一番大きな焦点となるところは、もう言うまでもなく、このまま経過すれば歯どめとなっているGNP比一%を超えるのではあるまいか、そういう危惧を抱いたやりとりというものが現在なお続いているという、午前中にもそうしたような内容が取り交わされました。ただ、常識的に見て、せっかく設けたこの一%の歯どめというものが近い将来やはり崩れるということはどう見ても判断できる面ではなかろうかというふうに考えるわけです。  そこで、谷川さんは午前中の答弁の中で、その時点が来れば改めて考え直すということの裏側を、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、やはり考え直すということは、その時点考え直したのでは遅いわけでありますので、もうすでにそういったことを予測しつつ、当然あるべき今後の防衛費の組み方というものはどう一体したらいいのかということは恐らくお考えの中におありになるんではなかろうかと思いますし、これは公式ではまだまだ明確にお話のできないいま段階であろうと思うんです。しかし、その時点に来て急激に考え直すんでは、これはだれが見ても間に合わないということが考えられると思うんですね。  きょう午前中ですか、総理がNHKのビデオ撮りの中でも、五十九年度の予算編成というのは非常に厳しい、マイナスシーリングである。もういままでも一貫して政府がおっしゃってこられたことは、防衛費といえども聖域化しない。しかし、これも毎年毎年防衛費だけが突出するということで非常に批判の的になってきたことも否定できない事実であります。そうすると、五十八年度に限ってみましても、恐らく防衛庁が予定していた概算要求を通じて実際獲得し得たその予算というものは、当初の方針よりも恐らく相当ダウンしているはずだと思うんです。五六中業達成するためにはそれなりの防衛費の枠組みというものは必要なはずであります。恐らくその達成率というものは七〇%前後ではあるまいか。だんだん先に行くに従って非常に窮屈な面が出てくるということが一つ挙げられます。  それからもう一つは、これも言うまでもなく人件費の問題であるとか食糧費の問題、これはどんどんやはり年々歳々上がるわけでございます。それから、装備自体についても資材というものが高騰するわけでありますから、そういうものを見込んだ上で新しい機種の選定であるとかということが絡んでまいりますと、いま五十九年度、恐らくもう近々七月以降に入りますと概算要求が始まると思うんです。そういった中で果たしてその一%というガイドラインというものが守れるのかどうなのか。先ほどの御答弁ではどこまでも尊重する。これは総理御自身も言っていますね。四月二十六日の衆議院の大蔵委員会で、全力を尽くすと、こう言っている。しかし、果たしてそれが可能なのかどうか。可能であればまことに結構だと思うんです。もう何もかも歯どめがなくなってしまったんでは国民としてもやはりそうだったのかという危惧感がもう傾斜的にそういう方向へ動いていくであろうというふうに思えてならないわけでございますので、そういった面を、私がいま危惧している面を通じまして、長官としての、まあいまここで明確なと言ってもなかなか明確にならない答弁になるかと思うんですけれども、疑念を晴らす意味においてここで再度長官からの御答弁を求めたいわけであります。
  92. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) すでに御案内のように、予算の編成に当たりましては、その年々の諸事情を勘案いたしながら、財政当局概算要求なるものを持ち込むわけでございます。しかしながら、現在この時点で私といたしましては、この委員会で午前中答弁をさしていただきましたように、業務について来年度予算のいわば骨子になる長官指示なるものを出したところでございまして、これから鋭意庁内ではその長官指示に基づいて概算要求の骨子をつくってまいるわけでございます。さらに、その概算要求なるものが財政当局に持ち込まれましても、財政当局もまた時間をかけまして政府原案をつくり上げるまで相当な検討を加えるわけでもございます。一方、わが国の経 済の動向にいたしましても、ただいま四月、五月と二カ月ようやく経たところでございますが、経済そのものの年間の見通しというものもいまこの時点で直ちにつけるということは、これは経済運営をいたしておりまするそれぞれの役所といたしましても、それはいたさないところでもございます。そういうことから考えましても、いまこの時点で五十九年度の防衛総費が国全体の経済の中にどういうような割合を占めていくだろうかというようなことを申し上げる段階に至っていないことは、これは御了解をいただきたいところでございます。基本的に私は、五十一年になされた閣議決定の線ではございますけれども、でき得る限りこの線はこれを保持していきたい、守っていきたい、こう考えております。  しかしながら守り切れないような状態になる、一つには経済の成長がわれわれの予測以上に落ち込むようなことがあった場合にそういうことが起こるとは思いますけれども、その場合にどうするのだという御質問が毎々ございますが、これにはいまその段階のことを考えながらというわけにもいかぬものでございますから、そのときにはまたそのときで御判断をそれぞれいただくようなことを考えなきゃならない。いまは私といたしまして五十一年の閣議決定の線に沿って、これを尊重しながらあらゆる角度で検討を加えておると、こういうことで答弁としてはお許しをいただきたい、こう考えておる次第でございます。
  93. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 恐らくいま谷川さんおっしゃっておることは今日までの繰り返された答弁をいまここでまた再度確認をされたということであろうと私は思うんですね。なるほど経済成長というものもそれは流動いたしますので明確にこうだというその視点をとらまえることはなかなか困難であろうというふうに思うんです。しかし、いまこういう経済環境の中で急速な伸びということが考えられないこともまた事実であろうと思う。恐らくいろんな点を想定しながら、そういう中でその平均値を求めながらこの辺が妥当であろうという、そういう想定に立って立案をされるということがこれは常識じゃないかと私は思うんですね。  それはさておきまして、いますでに防衛庁としてはたとえば次期の主力地対空ミサイルですか、SAMX等々の導入を真剣に検討されている、あるいはヘリコプターの新しい機種も考えられておられるようであるし、あるいはナイキやホークについてももう大変古くなってきた、耐用年数もあるいは相当経過しているかもしれない。兵器なんてものはもう年々再々開発が進んで相当すぐれたものが出てくるわけでありますから、それに対応するためにはせめて最低限度は守らなきゃならぬというのが防衛庁の見解でもあろうかと思うんです。そうすると、それに要するもう代替の時期が来ているというような状況考えますと、相当のやはり予算要求をいたしませんと防衛計画大綱に迫れないということが、これは専門家ならずとも常識で判断してそういう事態が来ることは当然予測されるのではなかろうか。  それともう一つ、これは数字の魔力ということになるんでしょうけれども、後年度負担が先へ行けば行くほどがっとふえてくるわけですから、こういったことを合算いたしますと、防衛費に占める割合というものはまさしくこれは突出していると言われても否定できない、そういうことにつながっていくのではあるまいか、こういうふうに思えてならないのですけれども、その辺の整理は当然いままでの多くの議論の中で整理がなされてきているだろうと私は思うのですが、それを踏まえた上でなおかついま長官がおっしゃったような方向で取り組まれようとしておられるのか、いや、やはりいま申し上げているような方向をある程度考慮の中に入れながら防衛費というものはこうあるべきだということを設定されようとしているのか。それはなるほど長官指示というものをお出しになってこれから具体的にはおまとめになる段階であろうと、こう思うんです。  その中にはいま申し上げたほかにもあるわけですね。七四戦車にいたしましてもP3Cの問題にいたしましても、あるいは護衛艦の問題にしても、あるいはF15の導入にいたしましても、やはりそれも五十九年度にはある一定のものを確保しなければ防衛計画大綱水準には迫れないと、こうなりますと、どうしてもそれが必要だとすると、一%の枠を超えやしまいかというのがいままでの長い議論の中で言われ続けてきた。しかし、それはあくまでも尊重すると言われ、尊重するのならばその計画というものは達成できない、じゃこういう考え方に立っているのか。やむを得ず突破しようとする場合には、新しい判断をいつ、どういう時点防衛庁としてはお立てになるのか、それを発表するおつもりなのか。そうしませんと国民のコンセンサスというものは得られませんわな。そういう点は当然お考えになっていると思うのです、ここで改めて議論されなくても。その点を重ねて明らかにしていただいた方が大変ありがたいと思うんですが、谷川さんからの御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  94. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私どもの現在行っております防衛力整備の一番基本になる基本考え方は、防衛計画大綱水準にできるだけ早く到達をいたしたい、これが基本なんでございますが、確かに振り返って考えてまいりましても、実は昭和年次で申しましても昭和五十一年までの間に石油ショックの後に人糧費の高騰ということもございました。それから後、人件費その他がモデレートな事態に落ちついてきてからいよいよ正面整備にもう一遍戻ろうという時期に、財政再建という大きな財政の非常に厳しい状況が出てまいりました。そういうことから申しまして、防衛計画大綱水準にそれじゃいつごろ到達できるのだということになりましても、これはできるだけ早くというところでいま必死になっておるところでございますが、具体的にはわれわれとしては五十八年予算でスタートいたしました五六中業、これが五十九年で第二年次に入るわけでございますが、とにかく五六中業で打ち出しました程度のところをとにかくこれを達成するように進めていきたいと、こういう感じで、実は今回の長官指示の第一項目にもそれを置いておるわけでございます。  しかしながら、片や財政というものがいつまでもいつまでも俗に言う危機的な状態を取り続けていくということになってまいりますと、これは確かに天井がどんどん低くなるわけでございますから、大変そこはむずかしい問題が出てくることは当然でございます。したがって、われわれとしては国の他の施策とのバランスとか、あるいは国民の御理解とかいうものをいただきながら、その都度その都度あらゆる努力をして、概算要求にいたしましても、あるいは政府原案をつくるにいたしましても努力をし続けていかなきゃならぬ、非常に厳しい年次が当分の間、少なくとも一、二年の間続くであろうと思ってはおります。  しかしながら、私としては、五六中業に関してだけ申しますと、ことしスタートをいたしました五六中業がもうここでどうにもこうにもいかないんだと、だめなんだというようなところには何としても持ち込みたくない、そういう気持ちで五十九年の予算につきましてもあらゆる知恵を出しながら検討していきたいと、こう考えておるわけでございます。
  95. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 長官御自身もすでにもういろんな分析、経済成長を通じての分析というものをおやりになっていらっしゃるだろうと当然思いますし、いままでも一般化されたような報道の中にも来年度は五%ないしは一〇%のマイナスシーリングであると、こういう事態になった場合に、それは防衛費といえども聖域化しない、こういった場合に、いまおっしゃっているようなことが、確かに厳しいという認識は全くそのとおりだと私は思うんです。そういうような状況で、これはとてもじゃないけれども五六中業達成、あるいは防衛計画大綱水準まで到達するためにはいつになるのかわからない。しかし、周りの環境を考えれば早期に達成しなければならぬというのがいままでの防衛庁基本的な方針であったろうと私は思う んですね。そうすると、いまこうやりとりをしながら考えましても、これは遅かれ早かれこの一%という枠は取り外さざるを得ないという行き方になりはしまいかということを恐れるんですが、恐らく谷川さんとしての御返事はあくまでも尊重するとおっしゃるであろうし、またその時点になって改めて考え直すというふうな結論にしかおなりにならないであろうと、それ以上伺ってみても平行線をたどるだけでありまして、むだな議論になるであろうと私思うんですが、しかしやっぱりせっかく政府が統一見解をもって決められたその方向というものは堅持してもらうということが一番重要な方向ではなかろうか。そういった中でどういう知恵をしぼられてこれからの整備をお図りになっていくのか。後年度負担という膨大なこれからの負担を考えますと、大変な防衛費の増というものが目立ってくるような事態というものがそれでなくてもやってきているわけですから、この辺をまだ未整理のままに、きょうはそれだけの答弁しか伺えないということは非常に残念でありますけれども、やむを得ないと思います。いずれにしても一%の枠というものは踏み越えないと、そういう方向でぜひ御努力をいただきたいなと、こういうふうに思います。その点はいかがですか。
  96. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) わが国防衛力整備ということ自体、わが国が日米安保条約の体制の中にありまして、わが国わが国として防衛努力をしていくこと自体、私は確かにわれわれが属しております西側の抑止の基本的な平和戦略というものに大いに益しておる、こう考えております。また、諸般のいろんな情勢から判断をいたしまして、着実にわが国としては防衛努力を続けていくべきだというふうに基本的には判断をいたしております。そのことと、五十一年に閣議決定をいたしましたこの一%の問題との間について、これは私としては五十九年に関する限りできるだけの努力をして、その五十一年の閣議決定についてはこれを尊重していくという基本姿勢で概算の要求並びに政府原案達成を図りたいと、こう考えておるわけでございます。それから先のことについてこういう場合だったらどうか、こうなったらどうするという御質問に対しては、いまここで直ちにこうでございます、ああでありますということは、まことに申しわけございませんが答弁をいたす時期にまだ至っておりませんで、先ほど来の繰り返した答弁になりますので、ここであえてまたもう一度繰り返させていただくことは省かしていただきたいと思います。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題はいろいろな絡みを持つことにつながると思うんです。先般来これも問題になり世論の脚光を浴びた中に、海上護衛についていわゆる核積載艦をも対象とするというような、何かだんだんエスカレートしていくようなそういう危険性というものがありはしまいか。ただ、このことを考えますと、現有海上自衛隊あるいは空の場合も同じだろうと思うんですけれども、たとえばシーレーンのそれ自体を防衛するに当たりましても並み大抵のことじゃないと思うんですね。広い地域を守るなんていうことは何ぽ船があっても間に合わない、何ぼ飛行機があっても間に合わない。それをあえて個別的自衛権の名のもとにそれを援護するということは果たして可能なのかなという、こうした問題についてもいろんなことを、それは戦術的に想定をされながら一つの結論を得て国会における答弁となったんだろうと私思うんでありますけれども、まかり間違うと集団自衛権につながるおそれも出てくるでしょうし、果たして現在の自衛隊の能力においてそうしたことが可能であるのかどうなのか。たとえば米国の有する艦艇にしても、それを守り切れるだけの能力があるんだろうか、いわゆる海上打撃能力といった方がいいのかもしれませんね。これはもう比較にならない、非常にナンセンスな話。できないことをなぜ国民の疑惑を増幅させるような方向へ防衛庁としてはあえて踏み切るような発言をなさってこられたのかなあという点について、ひとつ谷川さんから明確にそういうおそれは全くありませんというふうにおっしゃっていただけると大変にありがたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  98. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) シーレーン防衛能力が膨大な兵力を要することから、全く不可能なことを言っているのではないかと、こういうふうな御指摘でございますけれども、これはシーレーン防衛に関するだけでなく、すべての作戦について言えることだと思いますが、たとえば相手国の潜水艦を一隻残らずやっつける、あるいはわが国の海上交通に従事している船舶というものを一隻の被害も起こさないで守り切るというふうなことをおっしゃるのであれば、それはまさに不可能であろうというふうに思います。もともとこれも何回も御答弁申し上げておりますが、このシーレーン防衛というのは、港湾防備なり海峡防備、その他の洋上哨戒、それから航路帯の防衛というふうなもろもろの作戦の累積効果によって、相手の潜水艦なら潜水艦の行動をある程度抑止する、自由を阻害する、わが方の船舶になるべく被害を加えないようにするという意味での効果を期待しておるものであって、われわれがこうした能力を持つというのは、いわゆる抑止力としてきわめて重要な意味を持つのではないだろうかというふうに考えております。  それからもう一つ、広大な大洋でというふうな御指摘でございましたけれども、われわれが現在考えておりますこのシーレーン防衛能力というのは、あくまでもわが国周辺の数百マイルあるいは一千マイルということを前提にしているわけでございまして、太平洋の全域にわたって作戦を考えているというものではない。ちなみに具体的なことを申し上げれば、一千マイルというのはわが方の艦艇の行動について言えば、経済スピードで約二昼夜、対潜哨戒機のP3Cで言えば三時間そこそこで現地に到達して、数時間のオペレーション・オン・ステーションができて、帰投し得る程度の範囲であるということでございます。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いままでの防衛庁のずっと見解はいささかも変わりがないと思いますし、安保条約第五条に基づいて日米共同対処ができるというそういう原点に立った上で、いまおっしゃるような考え方に立つのであろうと、こういうふうに理解をしているわけであります。  ただ、現実問題として領海だとか、本当は専守防衛の枠から外れてしまうのじゃないかという危惧が一方においては出てくるんですよね。しかし、有事の際はそんなことを言っておれない、領海だとか公海の区別なんかしたのじゃ戦闘行動はできない、そういう発想も一方においてはあり得るのではないだろうかということが考えられるわけです。そうすると、一体専守防衛とは何だと、あるいは場合によるとこれは全く仮定の話ですから、いま直ちにこうだという断定的な結論は出ないにいたしましても、核戦争に巻き込まれないとも限らぬという、そういうおそれすら出てきはしまいかという感じがしてならないわけです。少なくとも最近ではカール・ビンソンを初め、ミッドウェーあるいはエンプラ、近くはニュージャージーというような艦艇が続々佐世保あるいは横須賀に寄港するということが言われておりますし、特にカール・ビンソンやニュージャージーなんかについては、今年夏あたりにはどっちに寄港するのかわかりませんけれども、だんだんだんだんそういう形態がもう拡大されていく、あくまでも対ソ戦略の一環としてアメリカ側もそういうような考え方の上に立って逐次海上部隊というものを拡大していこうとする。それに今度連動した場合、果たして追いつけるのか、果たして有事の場合対処し切れるのかどうなのかなという、もう日米の軍事能力なんていうものは大変な開きがあるわけですからね。確かに日米共同対処ができるという点から言えばそういうことも抑止力の一環として当然それは使わなければならないし、当然そうあることが理論的に言っても成り立つであろう、これは従来からの防衛庁考え方であろう。しかし、やはり心配事というのは、その専守防衛の枠からはみ出しちゃったりというようなことが、いままでの国是に反するような方向へ有事の場合には行 ってもやむを得ないんだ、こういうことになるのかどうなのか、その点重ねてここで明確にしておいていただきたいというふうに思います。
  100. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 一点だけ明らかにさせておいていただきたいと存じます。  日米の軍事能力の問題ということよりもわが国のたてまえとして、これは御指摘ございましたので万々私から重ねて申し上げる必要ないことでございますが、一般国民方々におわかりいただくという意味でここの場で申し上げさせていただきますが、あくまでわが国の米艦護衛というような言葉で使われておりまする行動も、わが国がすでにどこかの国から武力攻撃を受けておるというときにのみ初めて、つまりわが国有事のときに初めて、わが国に対してわが国防衛のために向かいつつある米艦を護衛するという趣旨で申し上げておるわけでございます。  それから、現在われわれがとり続けておりまする防衛力整備の問題も、これはあくまで、専守防御というお言葉を使われましたし、われわれもそういう言葉を使ってまいっておりますが、わが国防衛するためにとり続けておりまする防衛力整備でございます。  それからさらに、今後われわれとして、シーレーン防衛のような問題、これをどんどん拡大すればそういう大きな枠組みが崩れるのじゃないかというような御心配もあるやに承りましたけれども、あくまで、これも先ほど来申し上げておりまするように、わが国がみずからを守るという範囲の中で行う行動について、これは個別的自衛権の範囲の中で許されることだ、こういう判断で行動をいたしておるわけでございます。
  101. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 限定された時間の中で、あれもこれもと思いつつ、相当質問を残さなくちゃなりませんので、最後に一点だけお伺いして私の質問を終わりますけれども、今月の十一日ですか、ソビエトのトロヤノフスキー国連大使が国連において演説をした、その中に、シーレーンの問題についても日本と、あるいは中国と話し合う用意があるということが一つと、それから、ソビエトが軍事演習をする場合には事前通告をする、そういうような用意もあるので交渉してもよろしいという趣旨のことが報道されておりましたけれども、その真意、その可能性があるのかどうなのか、その点についてお伺いして質問を終わります。
  102. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま御指摘がありましたトロヤノフスキー大使の発言につきましては、一九八一年二月のソ連共産党第二十六回大会におきまして故ブレジネフ・ソ連共産党書記長が提案をして以来、繰り返しソ連側より言及をされておるわけであります。いわゆる極東における信頼醸成措置の提案と基本的に同じでありまして、何ら新味はないと考えております。  極東信頼醸成措置については、すでに一九八一年四月わが方からソ連に回答してあるとおり、北方領土問題が依然として未解決であって、特にソ連が軍備増強を続け、アフガニスタンへの軍事介入を行うというような行動をとっていることが信頼の醸成を困難にしていると考えるものでありまして、かかるわが国考え方は現在においても変わりはありません。かかるわが方の態度は、先般の第三回の日ソ事務レベル協議でも改めてソ連側に伝えたところであります。
  103. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 初めに外務大臣に二、三お伺いしたいのですが、五月二十八日からウィリアムズバーグで第九回サミットが行われますが、その際中曽根首相とレーガン大統領との会談が予定されているのかどうか、もし行われる場合はどういうテーマになるのでしょうか。
  104. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだはっきり確定されたとは聞いておりませんが、サミットに入る前に中曽根総理レーガン大統領との間で会談が行われるというふうに承知をいたしておりますが、もちろん内容についてはいまのところ何ら決まっておらない、こういうことであります。
  105. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 きょうの朝日の朝刊に、サミットを前にしてパリのアトランチック国際問題研究所それからアメリカの世論調査機関ルイス・ハリス社が先進九カ国の世論調査をしたというのですけれども、その中に注目すべきことは、すべての国で、軍事支出を削り社会、医療、教育支出をふやせとの声が強い、九カ国すべてでこういう声が強いというような結果が出ている。  この新聞は次のページをあげますと、福田元首相が、いまの政治は狂っておる、私の仕事は世直しだということを言われているんですね。まあ福田さんはタカ派ですから、田中派批判、倫理問題を言っていると思うんですけれども外務大臣ひとつ、この軍拡、不沈核空母政策ですね、こういう問題についても、外務大臣としてこの九カ国の世論にこたえて中曽根首相に軍拡政治の世直しですな、軍備より福祉を望むと、こういうことを率直に提言するお気持ちはないかどうか。
  106. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もいまの軍拡の状況がこのまま続くと非常に危険な状況になるのではないかと心配をいたしております。残念ながら現在の平和というのが力の均衡によって成り立っておる、こういうことでありますから、したがって、やはりバランスのとれた軍縮といいますか均衡のとれた軍縮が現実的に行われて、そしていまお話しのような、その余分の力があるいは経済の開発に、あるいはまた福祉、民生の安定のために使われるということが望ましいことは当然のことであると思いますし、日本もまたそのためにやはり努力を傾けていくことは当然のことではないか、そういうふうに思います。
  107. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ただ外務大臣のお言葉と違って、いまも質問がありましたけれども、やはりかなりのテンポの軍拡が進んでいるわけですね。大きな問題は、その軍拡並びに安保の強化、集団自衛権等々が、アメリカからの圧力、アメリカからの干渉で行われているということがあるわけですね。これは非常に大問題だと思う。  私、ちょっと古いことなんですけれども谷川長官に一つお伺いしたいのは、谷川さんの前任者の伊藤防衛庁長官が昨年九月から十月にかけてアメリカへ行かれてワインバーガー国防長官と定期協議、その他上下両院の議員やクラーク大統領安保補佐官などと会談した後、日本へ帰ってこられて、十月の二十一日仙台市内で有名な講演をしているんです、「当面する防衛の諸問題」。この中で、聞き捨てならないことなんですが、「平和憲法、非核三原則、専守防衛などは独りよがりの理論であり、国内で大事にするのはいいが、これ見よがしに世界にいってもアピールしない」、そう述べているんですね。アメリカに行って全然アピールしなかった、これはもうひとりよがりで直さなきゃならぬということをつくづく思って、鈴木首相の退陣表明の後、最後っぺみたいと私言いたいんですけれども、話された。この前任者の伊藤防衛庁長官考え方を現在の防衛庁長官としてどうお考えになりますか。
  108. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私はわが国防衛基本的な大きな枠組みとして、当然でございますが、憲法の問題もございまするし、それから非核三原則の問題もございます。あるいは防衛力整備につきましても、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならない。そして、先ほど来議論がございましたが、もっぱら自国を守る、専守防御に徹する、こういう基本方針を堅持して防衛力整備がなされておる。この問題につきましては、伊藤前長官、全く同じ御判断であろうと思います。そして、さらにわが国は国際社会の一員である、国際社会の一員であることもこれは当然でございます。わが国のいま申し上げたような基本的な防衛政策にのっとって、いろいろと前長官は前長官なりの御発言を前長官時代になさっておられたことだと思っております。
  109. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたはひとりよがりだとは思っていないというわけですか、平和憲法、非核三原則、専守防衛
  110. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 伊藤前長官の御発言については、前長官の御発言なさったその場に私おったわけじゃございませんから、ひとりよがりという言葉がどういう文脈の中で出てきたのか、どういう意図で伊藤前長官がその言葉を使われたの か存じませんが、わが国基本的な防衛政策として持っておりまするこの憲法あるいは非核三原則あるいは軍事大国にはならないという、近隣諸国に脅威を与えるような国にはならない、あるいは大きな枠組みとして日米安保体制を堅持しつつわが国自衛の能力を高めていくと、こういう枠組みは、前長官、全く現在私の判断をいたしておりますことと同じように判断をしてきておいでになると、こう考えております。
  111. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 夏目防衛局長は、去年のこの伊藤防衛庁長官の訪米に随行しておられるわけですが、恐らくすべての会議に同席されたと思いますけれども、ワインバーガー国防長官との協議あるいは上下両院の外交委員会、軍事委員会や、議会関係者との懇談、ダム国務副長官との会談、クラーク大統領補佐官・国家安全保障問題担当との会談、これらの会談アメリカ側からこういう日本防衛についての基本姿勢基本政策憲法、非核三原則、専守防衛などについて見直しの時期が来ているんじゃないかという発言はあったんですか、なかったんですか。
  112. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 昨年の九月の二十五日から十月四日まで、前防衛庁長官、伊藤防衛庁長官アメリカを訪問いたしまして、ワインバーガー国防長官あるいはクラーク大統領補佐官等と会談を、その他議会の関係者も含めて数次にわたる会談を行ったわけでございますけれども、その会議のあらゆる機会をとらえまして伊藤前長官は、わが国憲法あるいは基本的な防衛政策を踏まえて、しかもなおその上、厳しい財政事情というようなものもできるだけ考慮しながら自主的な立場防衛努力をしているという旨を再三にわたって強調されておりまして、これに対しまして米側の関係者は、それぞれわが国事情というものは十分理解をした。ただし、そういうふうな理解を示しながらも、さらに一層の防衛努力をしてほしいというのがまず一般的な私の受けている記憶でございます。
  113. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 帰途、日本時間で三日ですけれども、十月三日サンフランシスコで記者会見を伊藤さんしているわけです、日経の記者とですね。日経の十月四日付にその記者会見の内容が書いてある。  伊藤さんは、こう言っている。「今回の一連の日米防衛協議で米政府、議会関係者がいつまでもいまのような姿勢でよいのかとわが国防衛基本政策を転換するよう迫った事実を明らかにした。」というんです。これは、「日本側が憲法や専守防衛などの基本的な防衛政策」これについて「防衛努力を怠るのは容認できないとの強い意思表示をしたもの」だという記事なんですね。  伊藤長官発言内容が詳しく出ています。「ホワイトハウス、国防総省、議会の幹部から一様にいつまでも今のような姿勢で良いのかと迫られた。その一部からは日本政府はなぜ基本政策見直しについても国民理解を求めようとしないのか。選挙が怖いのかと詰め寄られた。」と記者会見で述べているんですね。アメリカ側がこういう問題について詰め寄ったということは御自分が明らかにしているし、夏目さんもこのとき恐らく、当然いらしたと思うんですね。だからこそ帰国して平和憲法、非核三原則、専守防衛、これはもうひとりよがりでアピールしないということを述べたんじゃないですか。
  114. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 私の記憶によりますれば、大臣はワシントンを離れましてサンフランシスコでの記者会見というものはなかったように思います。もしそういうふうなことがあるとすれば、あるいは大臣が個人的な懇談で言われたかどうかそこまでは私知りませんが、私の知っている範囲で記者会見というのはなかったというふうに思いますし、また私が立ち会ったあらゆる会議の中で、アメリカわが国憲法を批判し、あるいは非難するというふうな言辞は一切ございませんでした。  ただし、先ほども申し上げたとおり先方はわが方の防衛努力のいわゆるスピードといいますか、ペースについてもう少し防衛努力を早めてほしいというふうな期待というものは数回にわたっていろいろな人から聞かれた意見ではございます。
  115. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一般の記者会見ではなくて、日経の秋山特派員の会見に応じてというので大きな記事が載っている。あなたは立ち会わなかったかもしれませんけれども、ちゃんとこれは事実なんです。この中で防衛努力アメリカが求めたことについても、五十八年度防衛予算の伸び率を求めたと、「実際は難しい。タネもないのに手品をやるようなもので、」と、なかなかうまいことをおっしゃっていますけれども、だから記者会見じゃないけれども記者との会見に応じていまのような事実を述べたことはもううそじゃない、事実なんです、夏目さん御存じなくてもね。  アメリカ側がこういう基本姿勢基本政策の変更を求めたということは伊藤防衛庁長官が公然と述べている。  私はこれは非常に重大問題で、平和憲法と非核三原則と専守防衛変えろということは九条を変えろということ、非核三原則変えろということは核持ち込みを認めろということ、専守防衛変えろということは共同防衛——集団安全保障ですね、それに組み込めということなんですね。向こうの考えていることはもう明白だと思いますね。だから、アメリカがこういうことを考えているから、中曽根さんはことしの一月の会談で例の不沈空母発言とか運命共同体とかシーレーンとか三海峡防衛等々約束したわけだ。ですから、私は今度のレーガン・中曽根会談も非常に危険なものになるでしょうし、特に今回予定される日取りはまだ決まってないとおっしゃっていましたけれども、安保事務レベル協議ですね、これは大変なものになるだろう、そう思いますね。  伊藤さんはこの記者会見の中でも、日本側はソ連の脅威について潜在的危険だと見ているんだが、「一方、米側が今にでも武力紛争が起こりうる」としていると、受けとめ方に微妙な違いがあるんだ、「それが防衛力増強の質、量の問題にかかわってくる。」ということまで述べておられるので、いまにでも武力紛争があるという考えで迫ってくるわけだから、防衛庁も、アメリカ側の圧力は物すごいものだ、ことしももっともっと強くなると、いいかげんな腹で臨んでもらいたくないというふうに思うんです。  もう時間がありませんので、ちょっと具体的にあと二つだけお伺いしたいんですが、こういうアメリカの要望にこたえて、たとえば非核三原則のなし崩しの空洞化も進んでいます。新聞報道によりますと、ミッドウェーが寿命が来るので長期改修工事に行くという報道が大きく出ておりますけれども、公式、非公式を含めてこのミッドウェーの長期改修工事、この話は外務省あるいは防衛庁に来ておりませんか。
  116. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 政府といたしましては、ミッドウェーを含めましてアメリカの艦艇の改装計画というものについて一々米側から通報を受けているわけではございませんけれども、ミッドウェーにつきましては、これは従来から一年に二、三回横須賀に寄港するその都度必要に応じて整備を行ってきておるというふうに私ども一般的に承知をいたしております。こういう態様の整備というものは今後とも必要に応じて行われるものと考えられます。しかし、いま御指摘のような非常に大規模な整備を行うとか、あるいは改装を行うとかいうようなことは、これは私ども承知いたしておりません。
  117. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ミッドウェーは八七年、八八年に寿命が来るので、それを九〇年までの寿命にしようというので、一年から二年かかる改修をどうも横須賀でやるというんですね。ここで問題が起きるのは、その期間、そうすると、代替の空母ですね、これが何になるかということ、一、二年とにかく穴があくわけですから。先日内閣委員会でも、新井参事官がうちの安武委員の質問に対して答えている。国防報告にある柔軟作戦ですね、日本海に対しては空母の運用がふえると。今回のエンタープライズの佐世保寄港もそういう大枠の中であろうという答弁をされているわけですね。そ れで新聞報道では、それにかわるミッドウェーの穴を埋める空母としては、さきに佐世保に寄港した原子力空母エンタープライズ、それから新鋭原子力空母カール・ビンソンなどが有力視されているというわけです。それで安倍外務大臣は、エンタープライズの寄港の申し入れが横須賀などにあった場合、断る理由はないということを予算委員会でも答弁されておりますが、今度もしエンタープライズが代替空母として横須賀に来るとすれば、単なる寄港じゃなくてミッドウェーのかわりですからね、いわゆる括弧つき母港化、乗組員もあそこに来るというような横須賀が一つの有力な根拠地になる。横須賀に対してエンタープライズがそういう根拠地になるということになると、初めての横須賀に対する原子力空母の寄港であり、括弧つき母港化になるわけなんで、こういうものについても外務省としては、もしアメリカがエンタープライズあるいはカール・ビンソンの横須賀への頻繁な寄港、すなわち母港化あるいは乗組員の住宅居住ですね、こういう申し入れがあった場合どういう態度をとりますか。
  118. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先ほど御答弁いたしましたように、ミッドウェーについて非常に大規模な二年も要するような艦齢延長を行うようなそういう改装計画というものは、私どもアメリカから聞いておりません。またアメリカ側に確かめましても、そういう計画は現在のところないということでございます。そこで、そういうことでございますので、そのミッドウェーにかわるほかの空母が特に横須賀に寄港を大幅にふやすというようなことも私どもは特段に予想をされていないわけでございます。  それからさらに御質問のございました、仮にエンタープライズが横須賀に乗組員の家族を置くというようなことになればどうするかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては、そういうようなことはいま一切お話がございませんので、そういう要請があったときに検討はいたしますけれども、これはいろいろな施設区域の問題、いろんなことがございますので、アメリカ側が勝手にそういうことは計画できる問題ではございません。
  119. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あと一問、じゃ具体的な問題ですね。  四月五日の海上自衛隊の海幕長の記者会見で、この秋海上自衛隊の全部隊を動員して海上自衛隊演習をやると。ことしは初めて米海軍が参加するということが明らかにされています。海上自衛隊では、演習内容は対潜水艦作戦が中心なので原潜の参加もお願いしていると言っている。場合によっては米海軍の攻撃型空母が参加することになりそうだというわけで、米軍が参加するとすれば、その規模は、また艦種はどういうものかということが一つと、それから第二点に、この演習の中で三海峡封鎖、宗谷、津軽、対馬、この三海峡封鎖を米軍と一緒にやるのかどうか、これについてお答え願いたいと思います。
  120. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 海上自衛隊演習をやることにつきましてはいま御質問のとおりでございますが、その中で米海軍がどの程度参加をするかということにつきましては、現在のところまだ米海軍と具体的な打ち合わせをしておるわけじゃありませんので、具体的に何も決まっておりません。いずれにしましても、この海上自衛隊演習のためにそう特別な部隊が参加するというふうには私ども考えておりませんので、相当量といいますか、大きな部隊が全面的にこれに参加する、共同演習になるというようなことはないというふうに考えております。  なお、海上封鎖についてどうかということでございますが、海上自衛隊演習は総合的な演習でございますので、沿岸警備から海峡の防備その他もろもろのパターンについての演習をするということになると思いますが、いわゆる海峡を封鎖するといったようなことは考えておらないと思います。
  121. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いま二つだけ問題を出しましたけれども、先ほどのアメリカ側の要求がああいう形で出ていると、直ちに憲法改正とか非核三原則改正という方向にいかないでも、事実上この三海峡封鎖、シーレーン防衛等々で実際上先取り的に危険な事態が進んでいるということは非常に重大問題だということを指摘して質問を終わりたいと思います。
  122. 秦豊

    ○秦豊君 外務、防衛に入る前に、レフチェンコ証言問題について警察庁側に一問だけ聞いておきたい。御出席ですね。  外務省は、すでにこのレフチェンコ問題なるものについての調査を打ち切ったと聞いておりますが、衆議院側はあすにも議運レベルの訪米調査団の派遣も考えているやに聞いている。しかしこの問題の場合の大前提は、特に私における大前提は、CIA側に完全コントロールされている亡命スパイのいわゆる証言という括弧つきで私は受けとめているのだけれども、この段階警察庁側に改めて、だから、伺っておきたいんです。つまり政府内部にも若干感じの受けとめ方の差があるんだけれども警察庁としては改めてこの段階で今後の捜査、立件の可能性、あるいは進展、あるいはその感触を含めて、証言全体の信憑性に触れながら、どういうふうな見通しを持っていらっしゃるのかが一つ。  関連して、たとえば彼の証言によりますと、「シュバイク」なる暗号名で有資格者の高級警察官僚、イニシァル「S」というふうなものが該当者の一人であるというふうな説がやや意図的に流されている嫌いがあるが、それに対しても警察庁はどのように考えているのか。二問は表裏一体ですから、まとめてお答えしてくだすって結構です。
  123. 吉野準

    説明員(吉野準君) このレフチェンコ元KGBの少佐でございますが、これは昭和五十年の二月に「ノーボエ・ブレーミヤ」——日本語で言いますれば「新時代」という雑誌の特派員といいますか……
  124. 秦豊

    ○秦豊君 間は詰めていただいて結構、ポイントだけで結構です。
  125. 吉野準

    説明員(吉野準君) はい。ということで来まして、それ以後私どもはいろいろな情勢からしましてKGBの機関員であると、こう見ておりまして、関心を持って視察しておりました。その視察の結果と、それから昨年来議会その他でまた私どもに対しても供述しておりますけれども、レフチェンコ氏がいろいろ供述いたしております。その裏づけの調査は現在やっております。つまり在日中のわれわれの調査、それから現在進行中の調査、これを合わせますと彼の証言というのは全体としてきわめて信憑性が高いと、こういうふうに見ております。  それでお尋ねの見通しでございますが、これは現在調査を進行中でございますので、その「シュバイク」も含めまして、このケースにつきまして申し上げるのは現段階では差し控えたいと思いますが、一般的に申し上げますと、この政治工作なるものは非常に事件になじまない性格を持っておりますとともに、一つは古い話でもありますし、それから彼自身が直接扱ったケースでないものもたくさんあるということでもって、捜査の端緒を見出すのはむずかしいのではないかと、こういう感触を持っております。
  126. 秦豊

    ○秦豊君 この一問で結構です。  外務省に伺っておきますが、現在外務省で開かれておりますアジア・アフリカ法律諮問委員会ですね、これに北朝鮮代表の入国を認められたことは私大変結構な措置であり、はるかな積み重ねの一つになり得ると思っておりますけれども、質問は、これからこれに類する、つまり今回の諮問委員会、これに類する国際会議がわが国で開かれた場合にも今回と同じように対応されますか。
  127. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいまの御質問に対してはきわめて一般論ではお答えにくい面がございますけれども一般的に北朝鮮民主主義人民共和国それから韓国両国が参加しておるような国際会議が日本で開かれるというような場合に、その国際会議を有効に機能させるためには両者が必要なわけでございますので、北朝鮮の代表の入国を認めるということはむしろ一般的に当然であると いうふうに存じます。もちろんその場合でも、北朝鮮は未承認国でございますので、個々の入国につきましてはその都度政府部内での入国許可という手続を経ての是非の検討ということは必要かと存じます。
  128. 秦豊

    ○秦豊君 いろいろ言われたけれども、事務的な対応を別にして、同種の国際会議には、じゃ今回と同じような対応が十分可能性としてはあり得ると、こう理解していいですね。
  129. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) そういう趣旨でございます。
  130. 秦豊

    ○秦豊君 それから、日本の外交官に対して北朝鮮側が招待の意思を持ってそれを実行しようとした、つまり招いたという場合、この場合どんな対応が可能でしょうね、今日以後。
  131. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 従来お尋ねのようなケースがございませんので仮定の問題ということになりますが、一般的には北朝鮮とわが国は国交がないわけでございますので、直接的な招かれたり呼ばれたりということは通常はないわけでございますけれども、たとえば、ただいま申し上げましたような国際会議の範囲内であるとかいろいろな状況、これはケース・バイ・ケースで考えていくわけでございますが、状況によりましては北朝鮮に招かれてそれに対して日本の外交官がその会食等に出席するということは考えられると思います。
  132. 秦豊

    ○秦豊君 大変結構ですね。フランクにそういう少し開かれたドアから入っていくといいと思いますね。  それから対韓経済援助を確認をしておきますが、前回の私の関係委員会での質問に対して、対韓経済援助問題はかなり進んでいて、六月ごろには締めくくりとしての交換公文の可能性もあり得るという答弁が確かありましたが、その後新たな増額要求等も散見されたし、それを含めていま何が交渉として残されているのか、言いかえればどこまで煮詰まったのか、まとまったのか。それから最終的に詰め、まとめるためにはどんな場でいつごろどんなことが必要なのか、それをまとめて伺っておきたい。
  133. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 韓国との経済協力交渉につきましては、円借款の八二年度分につきまして四月の末に折衝がまとまりまして、正確に申し上げますと、四月の二十八日に四事業を対象にいたしまして四百五十一億円の円借款を意図表明を行いました。この四事業と申しますのは、多目的ダム、小児病院、下水処理、それから上水道でございまして、今後残されました手続は先生指摘の交換公文でございまして、これは意図表明の後大体二、三カ月かかりますので、六月ないし七月には交換公文を締結したいと考えております。
  134. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、新たな増額要求に対する外務側の対応はないわけですね。
  135. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 私がいま申し上げました八二年度の円借款に関しましては、当初韓国側が大体七百億円の要求を出してまいりましたが、いま申し上げましたように四カ月にわたりましての事務的な積み上げ作業の結果四百五十一億円というラインで合意を見た次第でございまして、今後の問題といたしましては、八三年度に関しまして折衝を始める必要がございますが、八三年度に関しましてはまだ韓国側から具体的な要望が参っておりません。
  136. 秦豊

    ○秦豊君 ならば、八二年度に関する交換公文は、あなたが一度答弁されたように、六月中取り交わしの公算はきわめて大きいということですか。
  137. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 八二年度の円借の交換公文に関しましては六月ないし七月と考えております。いま日本側も交換公文の案文を詰めておりまして、今月中には韓国側に提示したい。その上で韓国側と折衝いたしますので、早ければ六月中、状況によっては七月にずれ込む可能性もあると考えております。
  138. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁の問題に関連して法制局長官にこれ確認というか、あなたの明快な答弁をあえて求めておきたいことがあります。  それはさる三月二十四日の内閣委員会で夏目局長が、前提は日本有事において、私の質問に対する答弁。沿海州攻撃に向かうアメリカタスクフォースを護衛することは個別的自衛権の範囲内であり問題はないと、日本有事が前提ですよ、こういう答弁が私に対して行われました。しかしこれ、今九十八国会でさまざま突出答弁があったけれども、概して日本に向かうアメリカの船団とかあるいは艦船というケースが大半であって、巨大な核基地群である沿海州攻撃に向かうという私の特定に対して、これを個別的自衛権の範囲内と答えられた夏目氏の答弁というのは最も鋭角的な答弁として突き出していると思うんです。こちらも常識的に核装備をして沿海州を指向し、反撃も攻撃もすさまじいと、しかも第七艦隊は言うまでもなくアメリカの主権の延長線上にある巨大な最高水準の武装集団であると、しかも目的は攻撃であるという場合、それを護衛という名の共同作戦を展開することをしもなおかつ個別的自衛権の範囲内であると、これは単なる答弁というよりは強弁であると私は思っていますけれども、法制局長官のフィルターを通すと一体どういうことになりますか。
  139. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 大変微妙な、むずかしい問題だと存じますし、また御指摘のような場合の米艦護衛の態様、条件というのにもいろんなものがあると思いますから、一概に申し上げることは非常に困難だと思います。一般論としてまず申し上げるならば、あくまでもわが国自衛隊の行動についてはわが国に武力攻撃があった場合のわが国防衛のための必要最小限度の範囲内に限られるという憲法上の制約があるわけでございまして、この制約は、わが国に対する武力攻撃があって安保条約五条が発動されて自衛隊が米軍といわゆる共同対処、共同作戦行動をとる場合にも当然かかってくるわけでございます。したがって、自衛隊としてわが国防衛のために必要最小限度の範囲を超えるような行動を共同対処行動の名において、たとえば護衛というようなことにおいて米軍を護衛するというようなことが共同作戦行動の名において常に許されるとは私は考えません。
  140. 秦豊

    ○秦豊君 あなたがやや含みを持たされた日本語を使われましたね、常に許されるとは限らない。沿海州攻撃に向かうタスクフォースの護衛ということは、あなたのもっと踏み込んだ答弁としては、常には許されない範囲、許容範囲を超えるというふうに受け取ってよろしいですか。
  141. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 最初に申し上げましたように、具体的な条件、態様というものはいろいろあると思いますし、また私がその具体的な態様、条件の一つ一つについてそれを前提として議論するほどの軍事的な知識も持っておりませんから、はっきりしたことを最初から申し上げることを避けたわけでございます。ただ私は、二月の最初にこの問題が問題になりましたときにも、典型的な自衛隊の行動として個別的自衛権の範囲内として許されるものとして、御指摘にもなりましたように、米艦がわが国防衛のために日本までやってきて、そしてそのときに米艦を自衛隊が護衛するということは個別的自衛権の範囲内において許されるその典型的なものということを申し上げましたけれども、そういう典型的なものとは何か言いにくいような気がするということを申し上げております。
  142. 秦豊

    ○秦豊君 私が特定した沿海州攻撃はなじまないということですね、ずばりおっしゃっていただければそういうことですか。
  143. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) それは非常にお答えがむずかしいと思います。ずばり申し上げることはむしろ私はあえて避けて申し上げているわけで……
  144. 秦豊

    ○秦豊君 しかし、なじまないというトーンで言われたでしょう。
  145. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 私はそういう問題については、やはりいろいろな具体的な条件、態様に応じて検討すべきものだと思います。
  146. 秦豊

    ○秦豊君 少なくとも法制局長官とされては、肯定的な答弁とは受けとれない。肯定的ではない答 弁と受けとっていいわけですね。
  147. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 私はいろいろな具体的な条件、態様があると思いますから、一〇〇%個別的自衛権の範囲に常に限るとは申しておりませんということを申し上げたわけでございます。
  148. 秦豊

    ○秦豊君 これはこれだけやっていっても優に一時間半にたえ得ると思うけれども、ちょっといまの答弁では不満なあいまいな点もあるけれども、残された時間の中でもう一つだけ聞いておきたいから、改めましょう、これ長官、討論は。含みはわかりましたから。それ以上はなかなかおっしゃりたくないらしい。  西廣参事官の領域でしょうか、山桜シリーズの発展として、特に北海道を舞台とした日米合同訓練について、今年度以降どんなことをお考えになっていらっしゃるのか。どんな位置づけのどんな訓練を。それをちょっと簡潔に伺っておきたい。
  149. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 日米の共同指揮所訓練につきましては、先生御案内のように日米両国で交互にやるということになっておりまして、現在「山桜4」をアメリカで実施をしようということで、北海道では「山桜3」を昨年の暮れにやったところでございます。現在のところ「山桜4」以降の問題については具体的に決めておらないわけですが、一般論だけ申し上げますと、一つは自衛隊にしろ米軍にしろ、できるだけ多くの者に日米共同指揮所訓練の経験をさせたいということであります。もう一方、北海道には自衛隊の中で主力の部隊が集まっておる、あるいは各種の部隊がおるということで、北海道については他の方面よりもより手厚くやりたいという希望が一方にあります。そういうことを踏まえながらやるということになると思いますが、当面、北海道ですぐ今年度やるとか、そういった計画はございません。
  150. 秦豊

    ○秦豊君 しかし、参事官の答弁のニュアンスをつなぎ合わせると、「山桜4」以降の日本における訓練においては北海道が非常に有力であり蓋然性として大きく、かつ、それは五十九年度以降の可能性は否定されませんか。
  151. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 他の方面隊と同じように聞かれたら、北海道も五回に一回やるということでないことは、私いま御答弁申し上げたとおりになると思いますが、日本側ではすでに幕僚監部の地元であります東部方面でやり、北海道方面で昨年やったわけでございますから、次には恐らく北海道でないところで一回やるというようなことになろうかと思います。
  152. 秦豊

    ○秦豊君 七艦隊の前司令官ホルコム中将が、有事の際のソビエトは宗谷海峡の通過を最重点とした対応をし、情勢によっては北海道の限定占領を目指すだろう、と述べているんだけれども、これについては防衛庁の認識、とらえ方はまずどうでしょう。
  153. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 今月の初めでございましたか、ホルコム前第七艦隊司令官が、いま御指摘のような発言をされたことは報道によって承知しております。しかし、具体的に実際ホルコム司令官がどういうことを言ったかということについて承知しているわけでもございませんし、また防衛庁として、このホルコム司令官の発言の逐一について論評することも必ずしも適当でないというふうに思っております。
  154. 秦豊

    ○秦豊君 そういう答弁でしょうね。そう言う防衛庁に重ねてこれは聞くわけだけれども、あなた方の堅持している、限定的かつ小規模侵攻に対する対応と言うんだが、この五十一年当時の認識と五十八年現在の水準と、ソ連の対日侵攻能力の現状と拡充傾向において、もはやこの小規模侵攻という認識はかなりタイムラグがあり過ぎて現実的要請を持たないのではないかと私は思うが、この点についてはどうですか、有事の際に。
  155. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 確かにこのわが国に対する侵攻のあり方を考えた場合に、まず一般論として申し上げますと、相手方の国に攻撃をしかけるというときには、一般的にも相手方の防衛力というか軍事力を上回る戦力を一挙に投入して侵攻してくるというのが一般的な戦略であろうと思います。そういう意味合いで、われわれ決してソ連を仮想敵国としているということではないですが、一般論として申し上げれば、ソ連の軍事戦略にもそういうふうな考え方があるということもまた承知しております。しかしながら、実際に攻撃が行われる場合における具体的な規模というものは、作戦の目的なりあるいは相手方、すなわちわが国に対する侵攻を考えた場合には、わが国の戦力あるいはその他、作戦等に関するいろいろな見積りなり予想というものがあります。そういったものから総合的に判断されるわけでございまして、必ずしも規模の大小を論ずることは適当でないんじゃないかというふうに思います。
  156. 秦豊

    ○秦豊君 委員長、最後の一問は許されませんか。
  157. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 秦君。
  158. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ最後に、恐縮ですが、第七艦隊司令官の交代行事のために来日をしたフォーリー太平洋艦隊司令官がやはりエンタープライズをあたかも既定の事実のごとく前提した上でエンプラ搭載機の例の夜間離発着訓練の代替基地、つまり厚木の代替ですが、これを要請して帰ったという報道がちらついております。  防衛施設庁に最後にこれを確認しておきたいんだが、今後代替基地を考える場合には、たとえば下総とか浜松とか百里とか滑走路の条件を満たす幾つかの複数基地群を代替基地群として一括運用するのか、あるいはその中では下総あたりを特定するのか、あるいはさらに、反対運動の激化等によってはよく情勢を考えて、一度は消えたかに見える浮体滑走路というふうな選択に立ち戻ることはもはやないのか、依然として浮体滑走路構想は幾つかの候補地の選定とともに生き続けるのか、この辺だけを伺っておいて終わります。委員長、恐縮です。
  159. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現時点では、最後におっしゃいました浮体滑走路の問題も、それから現在ある飛行場を活用する問題も、あるいはまた新設の飛行場をどこかにつくるかという案につきましても、依然としてわれわれの選択肢のそれぞれの一つであるということで調査研究をしたいということでございまして、そのうちのどの案というふうに決めた段階ではございません。
  160. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時五十八分散会